令和七年東京都議会会議録第五号〔速報版〕

○副議長(谷村孝彦君) 五十三番鈴木烈君。
   〔五十三番鈴木烈君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○五十三番(鈴木烈君) 今日は、少子化問題に絞って、皆さんと議論したいと思います。
 日本の将来推計人口によれば、我が国の人口は五十年後に現在の七割に減少。現在、現役世代二・一人で高齢者一人を支える状況が、二〇七〇年には、現役世代一・三人で高齢者一人を支えねばならない、そんな状況になります。深刻です。
 一方で、今、我が国は子育て支援ブームです。今国会では、高校無償化が全国でも実現する見通しとなりました。
 都の予算案でも、さらなる少子化対策、子供政策の推進として二・〇兆円という巨額の予算が計上されています。子育て支援の強化で出生率を上げるというストーリーが日本全国まことしやかに唱えられています。
 ここで皆さんに伺いたい。子育て支援は、本当に少子化対策になりますか。
 多くの専門家が、我が国の少子化の原因は非婚化、晩婚化だと指摘しています。我が国では、結婚した夫婦間での出生率の低下は限定的です。では、なぜ全体の出生率が下がっているのか。婚姻数が大きく減少しているからです。強化すべきは、子育て支援ではなく、様々な理由で結婚できない人々を応援することなのは明らかです。
 都の少子化対策は、明らかに子育て支援に偏っています。新年度予算案の筆頭に位置づけられている出会い、結婚、妊娠、出産、子育てをシームレスに支援では、五千四百七億円が計上されていますが、その九九%が既に結婚された方々への支援策で、結婚前の人々への支援は僅か一%。
 子育て世帯は、子供会やPTA等、地域で活躍されている方々が多く、SNSも巧みで政治的影響力が大きい。だから、子育て支援を推進したくなる気持ちは、私も政治家ですからよく分かります。しかし、そんな雰囲気に流され、本当に必要な少子化対策を講じないのなら、我々政治家の存在意義が失われると思います。
 そこで、知事に伺いたいと思います。新年度予算案について、知事は少子化対策としてどんな問題意識を持ち、どんな方針から、どんな成果を目指していますか。
 政策企画局にも伺いたい。二〇五〇東京戦略案において、都は、前身の「未来の東京」戦略で掲げた少子化対策をどう検証し、新計画に生かしているのか。チーム二・〇七の取組は出生率にどう影響を与えたのか、見解を伺います。
 我々は、かねてより、我が国の少子化の主要因は非婚化、晩婚化であり、少子化対策として現役世代の雇用の安定、手取りの増加を訴えてきました。今回、私は違う観点から提案を行いたいと思います。
 二〇七〇年の話をするまでもなく、今、既に東京はどこも人不足です。工事現場も、福祉の現場も、学校の教員も、児相の職員も人が足りません。既に社会の担い手不足は始まっています。
 一方で、今の日本には、時代遅れの社会的慣習や制度のために、潜在能力を発揮できない人々が大勢います。非正規雇用者、女性、高齢者、障害者とその保護者。この世に生を受けながらも、本来の潜在能力を発揮できない人々が活躍できる社会をつくることで、少子化問題に対応することを私は提案いたします。
 まず、非正規雇用についてです。我が国の働く人の四割は非正規雇用、その七割が女性です。子育てや介護、夫の残業や転勤などの事情により、フルタイムで働くことができない人々にとっては、成長の機会が制限される非正規雇用の仕事を選ばざるを得ない、そんな現実があります。
 そこで伺います。現在、都は、非正規雇用は多様な働き方の一つという価値中立の立場だと認識しています。しかし、少子化の時代には、成長の機会が制限される非正規雇用は、人材の無駄遣いであり、社会的損失であると認識を改めるべきです。見解を伺います。
 次に、公契約条例について伺います。
 非正規雇用の正規化を促す都が取り得る最高の施策は、ILO型の公契約条例を制定し、都内事業者に対して、従業員の正規雇用を促していくことです。見解を伺います。
 次に、都の非正規雇用について伺います。
 現在、知事部局の三割の職員が非正規雇用、こんな状況を見直すべきです。
 昨年、都の教育委員会は、二百五十名ものスクールカウンセラーを一斉に雇い止めにし、多くのマスコミがそれを報じました。昨年十月には、勇気ある十名の方々が東京地裁に提訴する事態に発展しています。公の機関として恥ずべき大失態です。
 この問題の本質は、都が定める会計年度任用職員の雇用年限五年ルールです。都は、勤務評定の結果と関係なく、五年で雇用契約の更新を拒否する制度を都の意思で続けています。既に国や多くの自治体が同様のルールを撤廃したにもかかわらずです。都のブラック体質の象徴、五年ルールを撤廃すべきです。見解を伺います。
 次に、高齢者の雇用支援について伺います。
 六十歳で定年を迎え、再雇用され、現役時代と変わらない仕事をしながらも、報酬が一挙に二分の一、三分の一に引き下げられ、報酬だけでなく尊厳まで奪われたと感じて、リタイアしてしまう人々が大勢います。
 従業員が定年を迎えても、現役時代に近い報酬で働けるようにするために努力する企業に対して、財政的支援等を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、障害者の雇用支援について伺います。
 一人の障害者が働き、自立することができれば、保護者ももっと社会参加ができます。だからこそ、障害者の雇用支援はとても重要で効果的です。
 しかしながら、都内企業の法定雇用達成率は三〇・五%と、全国平均の四六%に遠く及びません。都内企業経営者の社会的責任感が低いのではないか、都の取組が不足しているのではないかと懸念します。見解を伺います。
 次に、都教委の法定雇用率の未達問題について伺います。
 令和六年度の都教委の障害者雇用率は、法定雇用率の二・七%に対して大幅に未達の一・九五%。今定例会で提案されている第二期障害者活躍推進計画案では、計画期間内に法定雇用率を達成するためのロードマップもなく、五年間で七百人もの障害者雇用を増やせるとは到底思えません。民間の障害者就労支援サービスの活用など、踏み込んだ対策が必要です。見解を伺います。
 最後に、お金の話をします。
 働く人が足りないのであれば、お金を働かせる。成熟した先進国には、そんな知恵が必要です。我が国は世界一位の対外純資産国です。たとえ今後労働力不足で貿易収支の赤字が常態化しても、海外投資の黒字でそれを相殺できるように備えるべきです。
 そこで重要なのが、「国際金融都市・東京」構想二・〇です。構想に明示されているKPIの進捗を確認すると、重要目標では遅れが目立ち、加えて、グリーンボンドやフィンテック企業の増加といった、本来の目的から外れた目標が目につきます。国際競争力のある金融機関の誘致や、都民の資産形成への貢献といった本来の目的に即したKPIを再設定し、事業の軌道修正を図るべきです。見解を伺います。
 最後に、都の基金管理について伺います。
 都の直近四半期の基金平均残高は約三・九兆円。平均利回りは、僅か〇・一四九%です。現在の米国債一年物の金利は四・三%。基金の約四分の一、一兆円だけでも米国債で運用すれば、年間四百三十億円もの財源が生まれます。
 都は、円での運用が安全との考えですが、人口減少で経済的衰退も予想される日本の通貨よりも、米ドルの方がよほど安全だと私は考えます。外貨での運用を検討すべきです。また、外貨での運用は、有力な金融機関を東京に誘致する呼び水としても活用できます。見解を伺います。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鈴木烈議員の一般質問にお答えいたします。
 少子化対策についてのお尋ねでございました。
 少子化は国家的な課題であり、国が戦略的に取り組むべきでございます。社会の存立基盤を揺るがす重大な危機に対しまして、もはや一刻の猶予もないとの認識の下、これまでも、出会い、結婚、そして妊娠、出産、子育て期の支援に加えまして、教育、住宅、就労、職場環境などの幅広い分野で、望む人が安心して子供を産み育てられる環境づくりに、スピード感を持って取り組んでまいりました。
 こうした中、昨日公表されました国の調査によりますと、出生数の先行指標ともいわれます婚姻数につきまして、令和六年の都の速報値が前年実績を上回ることが明らかとなりました。これは、今後の出生数の増加につながり得る明るい兆しであると受け止めております。
 引き続き、ライフステージを通じたシームレスな政策を展開いたしまして、結婚したい、子供を持ちたいと望む人を強力に後押しをしてまいります。
 残余の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長坂本雅彦君登壇〕

○教育長(坂本雅彦君) 教育の職場における障害者雇用についてのご質問にお答えをいたします。
 障害者が教育の職場の中で活躍のできる機会を増やすことは重要でございます。
 このため、都教育委員会は、来年度、障害者の働く場を増やすため、グループで現場を巡回し事務補助を行うほか、学校の作業を請け負う仕組みを導入いたします。また、短時間勤務を取り入れ、関係局と連携し、PR活動等を行います。
   〔政策企画局長佐藤章君登壇〕

○政策企画局長(佐藤章君) 二〇五〇東京戦略における少子化対策の質問にお答えします。
 戦略の策定に当たっては、これまでの取組の実績や成果、社会情勢も踏まえ、政策を強化しております。
   〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、非正規雇用についてでございます。
 非正規雇用の方の正規雇用化は、安定した就労を実現するために重要であり、都は、その後押しを行っております。
 また、正規、非正規など雇用形態に関わらない待遇の確保を促すため、同一労働同一賃金に関する法令や考え方について普及啓発を行うとともに、短時間勤務など、多様な正社員制度を導入する企業を支援しております。
 次に、高齢者の就業支援についてでございます。
 定年退職の年齢が高くなる中、シニアの社員がその経験や意欲に応じ活躍できる機会を増やすため、都は、プラチナ・キャリアセンターを拠点として、五十歳以上の年代の方の新しいキャリア形成を支援しております。
 また、高齢期の社員の意欲を考慮した賃金制度の設計に関する助言を中小企業に行っております。
 最後に、都内企業における障害者雇用についてでございます。
 都は、中小企業が多く集まることなどから、障害者の実雇用率が法定雇用率を下回る状況を改善するため、各職場の実情を踏まえたきめ細かな支援を行っております。
   〔財務局長山下聡君登壇〕

○財務局長(山下聡君) 公契約条例に関するご質問にお答えいたします。
 労働条件は、労働関係法令による下支えの上で、各企業において対等な労使間での交渉により、自主的に決定されるべきものと認識しております。
 都の契約制度もそうした考え方に立脚しており、公契約条例により一定の労働条件を義務づけることは、労働関係法令との整合や、入札契約制度の前提であります公正性、競争性の確保などから課題があると認識しております。
   〔総務局長佐藤智秀君登壇〕

○総務局長(佐藤智秀君) 会計年度任用職員についてのご質問にお答えをいたします。
 常勤の職とするか、会計年度任用の職とするかにつきましては、専門性の有無、業務量、権限や責任の度合い、今後の事業の動向等を総合的に勘案し、判断をしております。
 また、会計年度任用職員の採用は、現職以外の外部の方にも公平な機会を提供し、競争によって能力本位で行うことが重要であり、原則は公募とされております。
 一方で、人材確保の観点も考慮する必要があることから、毎年度の能力実証を前提に、四回までは再度の任用を可能とすることで、外部の方を含めた競争による能力本位の任用と人材確保の両立を図っており、現行の取扱いは適切なものと考えております。
 なお、スクールカウンセラーの任用につきましても同様でございまして、ブラック体質の象徴とのご指摘は当たらないものと考えております。
   〔スタートアップ・国際金融都市戦略室長吉村恵一君登壇〕

○スタートアップ・国際金融都市戦略室長(吉村恵一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 「国際金融都市・東京」構想二・〇についてでございます。本構想は、外部有識者を交えた懇談会で議論を行い、パブリックコメントを経た上で策定しております。
 構想では、サステーナブルファイナンスへの関心の高まりやデジタル化の動きなど、金融をめぐる世界の環境変化や東京の直面する課題を踏まえ、グリーンファイナンス、金融のデジタライゼーション、それを支える金融関連プレーヤーの集積の三つを柱としてKPIを設定しております。
 さらに、都内GDPの押し上げ額をKPIとして設定し、金融産業の活性化による都内経済の成長や都民生活の向上などへの効果を測ることとしております。
 次に、有力金融機関等の誘致についてでございます。
 都は、国等と連携し、個人の金融資産規模や確固たる法の支配といった我が国の強みや、都市の魅力を海外に発信することなどを通じて、運用資産残高十億ドル以上の資産運用業者や、有力ベンチャーキャピタルなどの誘致を推進しております。
   〔会計管理局長梅村拓洋君登壇〕

○会計管理局長(梅村拓洋君) 基金の外貨での運用に関するご質問にお答えをいたします。
 基金は、地方自治法により、確実かつ効率的に運用しなければならないとされております。外貨建てでの運用は、為替変動リスクにより元本を毀損するおそれがあり、外部有識者も安全性の観点から懸念を示していることから、外貨建てでの運用は行っておりません。