○副議長(谷村孝彦君) 十六番玉川ひでとし君。
〔十六番玉川ひでとし君登壇〕
○十六番(玉川ひでとし君) フェーズフリーについて質問します。
先月、石川県金沢市を訪れ、能登半島地震の災害復旧に尽力されている方々と意見を交わしてきました。過疎化、高齢化による地域力の低下、人手不足といった課題や、改めて、平時からのインフラの整備、備えの重要性を身にしみて感じてきました。
平時と災害時の垣根を取り払い、身の回りにあるものやサービスを、日常時はもちろん非常時にも役立てるという概念がフェーズフリーでありますが、内閣官房での国土強靱化実施中期計画の策定方針の素案では、フェーズフリーな仕組みの導入、フェーズフリーなデジタル体制の構築など、資料の中にフェーズフリーの考え方が繰り返し示されており、その重要性が増していることがうかがえます。
都は、二〇五〇東京戦略において、都市の強靱化や防災など、都民の安全・安心の確保に向け、災害対策を強化することとしています。
そこで、この戦略を進めていくに当たり、都としても率先してフェーズフリーという概念や考え方を取り入れ、都民にも広くこの概念を周知すべきではないかと考えますが、都の見解を求めます。
次に、避難所運営体制構築の支援について伺います。
昨年末、私の地元の大田区で、二十三区初となる物資輸送訓練を視察しましたが、学校避難所に届いた物資の仕分け後に発生する廃棄物の対応に手間取る場面など見受けられました。
実際に災害が起きたときには、避難所に大量の物資が届きますが、それらの物資を適切に管理し、全ての避難者に必要な物資を滞りなく配布ができるのだろうかなど、物資輸送に限らず、避難所運営全般について懸念を覚えました。避難所を取り巻く状況は地域によって異なるため、避難所の運営は、地域の実情に明るい住民が主体となることや女性視点での運営も重要と考えます。
そこで、地域住民が主体となる適切な避難所運営体制を構築するためには、都が積極的にリーダー育成を図るべきです。都の見解を伺います。
次に、災害時の避難所のペット受入れについて質問いたします。
近年、ペットと一緒に避難したいと考える住民ニーズが高まっており、飼い主がペットを連れて避難所まで安全に避難する同行避難について、飼い主はもちろんのこと、ペットを飼っていない方々も含めた地域全体の理解を深める取組が必要だと考えます。
ペットと一緒に避難し、ペットが避難所で飼い主以外にも受け入れられるよう、飼い主による日頃の基本的なしつけや災害への備えについて、情報提供を進めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
さらに、避難所での混乱を防ぎ、円滑な避難生活を実現するためには、避難所でペットと飼い主が同じ場所、同じ空間で避難生活を送ることができる同伴避難を行えるよう、避難所でのペット受入れ体制を強化することが不可欠です。そのためには、区市町村の取組を都として支援すべきです。
また、都は、避難所運営指針の素案を公表しましたが、避難所の環境を整えるだけでなく、訓練なども実施していくことで実効性を上げるべきと考えます。併せて都の見解を伺います。
次に、小一の壁について質問します。
地元の大田区では、小一の壁による子育て家庭の負担軽減を図るため、学校休業時等における学童保育開室時間を朝三十分前倒しにした開室を試験的に行う予定です。その上で、現場から寄せられた今後の課題は、夏休み、冬休み以外の日常の朝は、開門まで子供たちは外で待つこととなり、熱中症、寒い日の疾患、交通事故などに遭わないかと心配されています。
先日の知事施政方針表明では、安心して子供を産み育てられる東京の実現として、朝の居場所の充実等に取り組むと述べられました。
都は、始業前の二時間を対象として地域住民や民間事業者を活用した朝の子供の居場所づくりを行う区市町村を支援するとしています。
そこで、安心して子供を育てられる東京の実現に向け、都は、教育と福祉の分野などで連携して、各区市町村がよりよい事業が行えるよう支援を進めるべきと考えます。都の見解を求めます。
続いて、福祉の視点でのディスコの普及活用について質問いたします。
今、安心・安全で健康的なディスコの魅力が注目を浴びています。ディスコの最大の魅力は、その普遍的な踊る喜びにありますが、目黒区や狛江市など一部の自治体において、七〇年代、八〇年代の音楽で、高齢者を中心にディスコの体験をするシルバーディスコというイベントが開催されています。高齢者の方々を中心に、音楽に合わせて楽しく体を動かしながら交流を深める場となっています。特に高齢者の集まりに参加率が低いといわれる男性にとっても、若かりし頃の懐かしい音楽を楽しみながら、自然と体を動かし、人とのつながりを持つきっかけとなるなど、大変意義のある取組であります。
高齢者が社会との関わりを持ち続け、健康寿命を延ばすことはとても重要であり、特にフレイルの予防には、運動、栄養、社会参加の三要素が不可欠とされており、シルバーディスコはこれらを総合的に促進する可能性を持っています。
そこで、高齢者の社会参加、通いの場として、このような取組をより広く展開し、団体や各自治体等が積極的に導入できるよう支援するべきと考えます。こうした長寿社会に向けた取組について、知事の見解を求めます。
一方、老若男女、年齢や性別を問わず、障害やハンデを負った人たちが差別なく楽しめるユニバーサルディスコというイベントもあります。私も実際に何度も参加していますが、きらびやかな光とダンスミュージックの中、非日常的な空間で誰もが笑顔で自然と体を動かしている光景は、今でも目に焼きついています。外出機会が限られがちな障害者にとって、このようなイベントが社会参加のきっかけになることは大変意義深いことであります。
障害者の社会参加を進めていくために、このように障害者が楽しめる取組を障害福祉の視点からより広く展開し、文化芸術活動やレクリエーションを実施する各自治体を都として支援するべきと考えます。都の見解を求めます。
続いて、職場における睡眠環境整備の支援について質問します。
先日、ライフ・ワーク・バランスEXPOに参加しました。昨年に引き続き、職場環境の改善や睡眠への取組に注目して各ブースを回りました。
ある企業の健康増進施策では、運動の頻度や睡眠、体の姿勢などの確認に加え、社員の食生活にも配慮して社食の導入も行い、さらに腸内環境を整える腸活ドリンクを自由に飲めるようにした効果で、多くの社員が快適な睡眠を取れるようになり、健康への関心も高まり、業務や私生活に前向きになる社員が増えたとのことです。
また、同イベントでは、短時間の仮眠ができる機器も展示されており、私も体験いたしました。この短時間の仮眠はパワーナップと呼ばれ、判断力、集中力、創造力、作業効率などの向上が見込まれるものです。厚生労働省において、健康づくりのための睡眠指針の中で推奨されているものであります。このような短時間仮眠をサポートできる機器を職場に導入できれば、勤務時間内に従業員の健康改善や作業効率の向上などに取り組むことが可能となります。
そこで、都は、中小企業がこうした環境づくりに取り組めるように、社員満足度を向上させる事業を拡充していくべきと考えますが、見解を求めます。
続いて、公衆浴場、銭湯について質問します。
先月の八潮市での道路陥没事故に伴い、足立区内の公衆浴場、銭湯が、下水道使用制限地域の方に無料での入浴を提供したのを皮切りに、葛飾区、台東区、荒川区、千代田区、新宿区、墨田区、豊島区と続々と銭湯への入浴支援が広がっていきました。埼玉県の十二の市町の皆さんに、心とともに温まっていただきたいとの各浴場組合の皆様の心意気に感動するとともに、災害時における銭湯の重要性を再認識いたしました。
一方、コロナ禍、原油高、燃料価格の高騰で苦境を強いられていた銭湯の利用者を増やしていく持続可能な支援策として、令和四年度夏から東京一〇一〇クーポンの配布事業が始まりました。
キャンペーン実施の半年間で十二万回を超える利用があり、翌令和五年度は無料ではなくワンコイン、百円で入浴できるクーポンへ、そして、今年度は、インバウンド対応ということで、外国人旅行者中心のクーポン提供へと形を変えていきました。ネット上では、外国人の利用で銭湯のマナーが守られないのではないかとの声を目にしましたが、意外と事前に銭湯マナーを学んできていて、日本人の若者よりもマナーができていると浴場経営者からの声も聞いています。
このように外国人への日本の銭湯文化の理解促進は大きく進んでいると考えられます。今後は、例えば、世界陸上やデフリンピックを応援することでクーポンが取得できるなど、一工夫を加えていくべきです。
この三年間の一〇一〇クーポン事業の総括とともに、さらなる新たな取組を展開すべきと考えます。都の見解を求めます。
最後に、私の地元大田区の文化的資産の魅力の発信について質問いたします。
大正末期から昭和初期にかけて、人生劇場の作家尾崎士郎、赤毛のアンの翻訳者村岡花子をはじめ、川端康成や北原白秋など、約百人もの文士や芸術家が現在の大田区の大森、馬込地域に移り住み、交流を深めました。彼らはこの地で創作活動に励み、馬込文士村と呼ばれる文化圏を形成しました。現在、文士たちの旧宅跡には案内板などが設置されているものの、保存、活用の取組は、区や市民団体の自主的な活動に依存する部分が大きく、十分な保護、整備がなされていない史跡もあり、歴史的価値を次世代に継承するための施策を都と地元自治体が連携して取り組む必要があります。
また、大田区には三世紀後半から七世紀にかけて築造された古墳が多数点在しており、特に多摩川流域の交通拠点として発展してきたこの地域には、有力な豪族の墓と考えられる古墳が複数残っています。馬込文士村や大田区の古墳群は、地域の歴史的遺産であるだけではなく、東京都全体の文化的資産としても重要なものと考えます。
これらの中には、国や都の指定となっている文化財もあり、こうした文化財が将来に確実に継承され、適切に保存が図られるよう、都として取り組むべきと考えますが、見解を求めます。
また、保存するだけではなく、地域のにぎわいづくりに活用し、広く発信していくことが東京の文化の多様性と深みを未来へつなげる重要な取組になると考えます。都の見解を求めまして、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 玉川ひでとし議員の一般質問にお答えいたします。
高齢者の社会参加の推進についてのお尋ねでございます。
都は、人生百年時代におきまして、活力にあふれるアクティブな長寿社会の実現を目指して、文化、芸術、スポーツなど、高齢者の生きがいづくりや自己実現、フレイル予防につながる区市町村の取組を支援いたしております。
今年度は、高齢者が楽しみながら体を動かすシルバーディスコや多様な教養講座を提供するシルバー大学など、様々な取組に対し補助を行っております。
こうした区市町村の取組をさらに促進するため、今年四月に開設するオンラインプラットフォーム、百年活躍ナビにおきまして好事例を発信するなど、多様なニーズに合わせまして高齢者の社会参加を推進してまいります。
なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長坂本雅彦君登壇〕
○教育長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えをいたします。
まず、朝の子供の居場所づくりについてでございますが、授業の始まる前や夏休み等の期間に保護者が出勤をする事例は増え、そうした小学生が朝の時間を安全で安心に過ごす場所を確保することは重要でございます。
このため、都は来年度、始業前の時間に関し、地域住民や民間等の力の活用により小学校に児童の居場所を提供する区市町村の取組への支援を開始いたします。具体的には、子供を見守る人材の確保など運営に必要となる経費の一部について、地元自治体へ助成を行います。
また、新たに開始する認証学童クラブ事業において、夏休み等に朝の時間延長を始める自治体への支援も行います。
これによりまして、関係局が連携し、朝の子供の居場所の確保を進めてまいります。
次に、文化財の将来に向けた保存についてでございますが、文化財は地域の歴史や文化を理解する上で都民共有の貴重な財産であり、これを確実に保存して継承していく取組は不可欠でございます。
このため、都教育委員会は、貴重な文化財について、国や都で指定をした場合、その所有者による維持や修理などに要する費用の一部に助成を行ってまいりました。また、文化財の保存を適切に行うことができるよう、技術的な助言を実施しているところでございます。
最近は近代以降の建築物を文化財指定する事例が出て、維持に関わる経費が増える中、来年度、歴史上の様々な時代のものを幅広く含め、それらの保存等の支援について拡充を図ります。
〔政策企画局長佐藤章君登壇〕
○政策企画局長(佐藤章君) 災害対策の推進についてのご質問にお答えします。
ふだん使っている物やサービスを非常時にも役立てる、いわゆるフェーズフリーの考え方は、防災対策を行う上で有効であります。
これまで、都は、災害時も見据えた公園の整備や、ふだん使っている物を多めにストックする日常備蓄などの取組を促進してきております。さらに、今回策定した二〇五〇東京戦略におきまして、災害から命を守るための備えとしてフェーズフリーの取組を掲げております。
今後、新たな戦略の下、災害にも強い安全・安心な東京を実現していくため、こうした取組をホームページや防災ブック等を通じて分かりやすく発信してまいります。
〔総務局長佐藤智秀君登壇〕
○総務局長(佐藤智秀君) 二点の質問にお答えをいたします。
まず、避難所運営のリーダー育成についてのご質問でございます。
都は、今般、避難所運営指針の素案を公表し、避難所は住民リーダーが中心となって円滑に運営されることを目指すべき基準として示しました。
本指針では、運営ノウハウを習得した住民リーダーの育成や、運営メンバーの四割を女性とし、正副リーダーのいずれかに女性を配置するなど、区市町村が直ちに取り組むべき具体的な方策をガイドラインとしてまとめております。
来年度は、こうした取組が着実に進むよう、専門家によるセミナーのほか、地域住民との避難所開設準備訓練などにより住民リーダーの育成を図りまして、避難所運営体制の構築を支援してまいります。
続いて、ペット同伴避難の実効性の向上などについてのご質問にお答えをいたします。
都は、全ての避難所でのペット受入れ体制確保を支援するため、区市町村が同伴避難に必要な資機材の整備を進められるよう、来年度、新たな補助金を創設いたします。
また、今般の避難所運営指針の素案においては、区市町村が直ちに取り組む具体的方策として同伴避難訓練の実施を掲げており、先日、板橋区との合同防災訓練では、ペット同伴避難訓練を実施をいたしました。
今後、その成果や課題を取りまとめ、区市町村に共有するとともに、さらなる訓練の実施を促していくことで同伴避難の実効性を高めてまいります。
〔保健医療局長雲田孝司君登壇〕
○保健医療局長(雲田孝司君) ペットの災害対策に関するご質問にお答えいたします。
飼い主が平時から災害に備えることができるよう、都は、ペットの身元表示の方法や備蓄品の確保、同行避難に必要なしつけや健康管理、避難所での注意点などをまとめたリーフレットを作成し、区市町村の窓口や動物病院で配布するほか、イベントやホームページを通じて広く都民に情報提供をしております。
また、身近な地域で都民の相談に応じる動物愛護推進員などを対象として、災害時の同行避難などをテーマとしたシンポジウムを獣医系大学と連携して開催しております。
今後、飼い主の意識の向上をさらに図るため、災害への備えの重要性について普及啓発を一層推進してまいります。
〔福祉局長山口真君登壇〕
○福祉局長(山口真君) 障害者の社会参加に関するご質問にお答えいたします。
障害者の社会参加を促進するためには、文化、芸術に親しみ、創作や発表等の多様な活動の機会を確保することが重要でございます。
そのため、都は、障害者による絵画や造形などの作品を展示する美術展や、障害のある人とない人が共に歌や演奏を発表する音楽会などのイベントを開催しております。また、誰もが楽しめるダンスなどのレクリエーション活動を実施する区市町村を支援しております。
今後、好事例を他の区市町村に周知するなど、障害者が豊かで潤いのある生活を送ることができるよう、障害者の社会参加を一層促進してまいります。
〔産業労働局長田中慎一君登壇〕
○産業労働局長(田中慎一君) 仮眠を通じ社員の満足度を高める環境づくりについてのご質問にお答えいたします。
仕事中に仮眠を含めた適度な休息が従業員の仕事の能率を高めることを中小企業に普及し、社員の満足度につなげることを後押しすることは重要でございます。
都は、ライフ・ワーク・バランスを推進するイベントにおきまして、仕事の合間に仮眠を取ることのできる時間帯やスペースを設けた会社を紹介しております。
今後は、セミナー等で仮眠などが生産性や働きがいを高める効果があることを伝えます。また、そのための機器の導入など職場環境の整備に関するノウハウを紹介していくとともに、こうした社員満足度向上の取組も支援いたします。
これらによりまして、働く方の健康確保を促進してまいります。
〔生活文化スポーツ局長古屋留美君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) 二点のご質問にお答えいたします。
初めに、いわゆる一〇一〇クーポン事業についてでございますが、都は、原油価格高騰の影響を受けた浴場を支援するため、令和四年度及び五年度に一〇一〇クーポンの配布を行いまして、若者やファミリー層などの新規利用者の開拓やリピーターの定着につながったところでございます。
さらなる利用者の増加に向け、今年度は、国内外の観光客を東京の銭湯に呼び込むPRキャンペーンを展開しておりまして、その一環としてクーポンを配布しております。
来年度は、世界中から多くの人が集まる国際スポーツ大会の開催も機に、東京の銭湯のさらなる認知度向上に向けたキャンペーンを展開してまいります。
次に、文化的資産を活用した魅力発信についてでございますが、東京には、歴史的な建造物や資産だけでなく、地域の伝統に根差した芸能やイベントなど多くの文化資源が存在しております。
都は、こうした地域の文化資源を活用した事業などを対象に、地域芸術文化活動応援助成を実施しておりまして、国の史跡を舞台にしたお祭りや地域の歴史を継承したイベントなどに助成してまいりました。
文化資源を未来に向けて継承するとともに、その魅力を広く発信していく取組を支援し、芸術文化を通じた地域の活性化や地域振興を進めてまいります。
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