○議長(増子ひろき君) 三十四番原純子さん。
〔三十四番原純子君登壇〕
○三十四番(原純子君) 昨年の日本被団協のノーベル平和賞受賞は、本当にうれしいニュースでした。
ノーベル平和委員会のフリードネス委員長は、十二月十日の授賞式で、次のように話しました。
あなた方は被爆者であることに甘んじませんでした。大国が核武装へと世界を導く中、あなた方は恐怖の念に駆られながらも沈黙を拒否しました。あなた方は立ち上がり、かけがえのない証人として、自身の体験を世界と分かち合う選択をしたのです。あなた方は抵抗し続ける力の象徴です。あなた方は世界が必要としている光なのです。
原爆の被害は、私たちで最後にしてほしいという被爆者の思いと活動が、今、歴史を動かしています。
小池知事は、被団協のノーベル平和賞受賞について、昨年十二月の我が党の質問に対し、原爆の記憶を人類共通の記憶として次世代に語り継いでいくことは、今を生きる私たちの重要な使命、ノーベル平和賞の受賞は、そうした取組を後押しするものと答弁しました。
それならば、被爆八十年に当たる今年を、被爆の実相を伝え、核兵器廃絶に向かう新たな出発の年にすべきだと考えますが、知事の決意を伺います。
被団協の田中熙巳代表は、授賞式のスピーチで、核兵器の保有と使用を前提とする核抑止論ではなく、核兵器は一発たりとも持ってはいけないというのが、原爆被害者からの心からの願いですと訴えました。
核兵器の廃絶こそが被爆者の願いですが、知事も同じ思いですか。
核兵器が使用されかねない危機に直面する国際情勢の中、世界の人々は、核兵器廃絶に向かう大きな流れを起こしています。
その中で、三月三日からニューヨークで開催される核兵器禁止条約第三回締約国会議は重要ですが、日本政府は、会議へのオブザーバー参加を見送ると表明しました。ノーベル平和賞受賞のタイミングでなお被爆者の願いに背を向ける政府の姿勢は許されません。
核兵器禁止条約第三回締約国会議への知事の参加、または都の職員の派遣を求めますが、いかがですか。
核兵器禁止条約を日本政府が批准することを強く求めるべきですが、知事の見解を伺います。
都の平和への姿勢も問われます。
小池知事は、施政方針で、ミサイル攻撃を現実的な脅威と捉え、その対処を強化するなどと発言しましたが、今やらなければならないのは、戦争の準備ではなく、平和をつくる努力です。
唯一の戦争被爆国の首都東京で、今こそ非核平和都市宣言を上げませんか。核兵器ノーの大きなアピールになるでしょう。知事、ぜひ前向きな答弁をお願いします。
そして、例えば、都庁舎に、被団協のノーベル平和賞受賞、おめでとうの横断幕を掲げるなど、多くの人に知ってもらう取組を要望いたします。
私の地元江戸川区在住の被爆者で、今、八十七歳の山本宏さんは、七歳のときに広島で被爆し、後頭部や右肘に大やけどを負いました。ご家族と必死で避難した山の上から見た市内は火の海で、学友の多くが亡くなられたそうです。
それから七十年余りの歳月を経て、山本さんは、封印していた被爆の記憶を語り始めました。現在は、小中学校に被爆体験を話しに行く山本さんですが、今でも体験を語ったその夜は、あの日の恐怖の光景がよみがえり、悪夢にうなされるというのです。それでもなお語りに出かけるのです。
私たちの世代は、被爆体験を当事者から直接聞くことのできる特別な世代です。被爆者の体験を継承することが、私たちの使命だと考えます。
都庁舎内で、原爆写真や原爆の絵の常設展示をする、あるいは広島資料館にある被爆者証言ビデオを視聴できるようにするなど、次世代に語り継ぐ取組を提案しますが、いかがですか。
都内各地で、原爆展、戦争展を開くなどの努力が続けられています。区市町村や民間団体による被爆の実相を継承する取組や原爆碑の維持管理に対する都の支援を提案します。いかがですか。
広島市の外郭団体、広島平和文化センターは、より多くの生徒に被爆の実相を学んでもらおうと、来年度から、東京都を含む一都五県からの修学旅行に、生徒一人当たり三千円を助成する制度を始めるそうです。
都内の生徒が原爆の実相を学ぶ貴重な活動ですから、東京都こそ、広島、長崎への修学旅行などに補助をすべきです。いかがですか。
都において、平和事業を総合的に担当する部署を創設することを求めます。いかがですか。
二〇二四年三月時点で、東京の被爆者は三千五百五十七人、平均年齢は八十五・三歳になっています。被爆二世は八千八百三十人で、平均年齢は六十一・四歳です。
東京の被爆者の会である東友会は、一九五八年の設立以来、被爆者に寄り添い、都の委託を受けて、被爆者健康指導、相談事業に取り組んでいます。被爆二世の医療費助成を全国に先駆けて実現するなど、都と共に被爆者と被爆二世の健康、生活を支えています。相談件数は、年間一万数千件に上ります。東友会への委託事業を今後も維持、継続することを求めるものです。
高齢で介護が必要になった被爆者への介護手当や家族介護手当などの制度が十分に使われていません。本人や介護従事者などへの一層の制度周知を求めますが、いかがですか。
被爆者の子の健康診断を五、六月と十一、十二月の期間のみでなく、通年受けられるようにすべきです。また、健診項目に甲状腺機能を加えるなど、必要な健診メニューに更新することを求めます。いかがですか。
被爆者や被爆二世の健康不安、暮らしの不安に寄り添い、当事者の願いに応えた制度の充実を求めます。
次に、火葬行政についてです。
お葬式を出すのに、分割払いの相談があったと葬儀社で伺いました。東京二十三区での高額な火葬料が社会問題になっています。二十三区では、公営火葬場は、都立瑞江と臨海斎場の二か所で、あとの七か所が民営火葬場です。うち六か所を運営している東京博善株式会社が、五万九千円だった火葬料を二〇二一年以降、相次いで引き上げ、三年半で一・五倍の九万円になっています。一方、全国八十八都市の平均は約一万円です。
火葬事業は、墓地、埋葬等に関する法律で規定されており、厚生労働省からは、火葬場の経営主体は、原則として地方公共団体でなければならない、経営については、その永続性と非営利性が確保されなければならないと通知が出ています。
火葬は、誰もが通る道であり、火葬業務において、非営利性を確保することは大原則ですが、知事はどう認識していますか。
厚生労働省が、二〇二二年十一月二十四日の事務連絡で、火葬場経営が利益追求の手段となって、利用者が犠牲になるようなことはあってはならないものと指導監督の徹底を求めています。厚生労働省がこのような通知を出さざるを得ない事態であることを、都は重く受け止めるべきです。
二〇二一年に東京博善が火葬料を上げ始めたときの理由の一つが、公営火葬場である瑞江葬儀所の都民外料金や臨海斎場の組織区外住民料金とのバランスです。二〇〇二年に七千二百円だった瑞江葬儀所の火葬料は、受益者負担だとして五万九千六百円まで、この二十年間で八倍に引き上げられました。東京博善は、こうした都営の料金設定を口実にして、急激な引上げを始めたのです。
都営葬儀所の火葬料を引き上げ続けてきた受益者負担の考え方はやめるべきです。答弁を求めます。
火葬場の指導監督については、火葬場が設置されている区にその権限がありますが、この二年間だけでも、都に対し、七区議会から意見書が出されています。民営火葬場の火葬料の規制、火葬場新設の検討、また、火葬の現状と今後について、二十三区と連携して議論する検討会の設置などの要望が出されています。
区議会から出されている要望を受け止め、火葬の在り方に関する検討会を設置し、火葬料の基準を示すことなどが必要だと考えますが、いかがですか。
死亡者数は、二〇六〇年代まで伸びると予測されています。都としてしっかりと受入れの見通しを持ち、都立火葬場を新設すべきではありませんか。
区市町村から火葬場新設の相談があった際には、都立公園をはじめ、都有地の提供について、親身に対応すべきと考えますが、いかがですか。
誰もがお金の心配なく、故人を安心して見送ることのできる火葬行政を確立するために、都が役割を果たすことを強く求めるものです。
最後に、特別支援学校の教育環境の改善についてです。
都立鹿本学園の大規模化と教室不足による教育環境の悪化について、私は二年前にも質問し、学校新設を求めましたが、その後、二年間、何の計画も示されませんでした。そのときからさらに児童生徒が増え、今年度は四百九十五人に、学級数は五クラス増え、百八学級にもなり、来年度はさらに増加する見込みです。
そもそも、子供たちの教育環境を悪化させる教室の間仕切りや転用は、緊急対応に限定すべきです。来年度も学級増に同じ対応をすることは許されません。
既に限界を超えているのではないですか。どう認識していますか。
鹿本学園の仮設校舎建設に関する入札を行ったと聞いています。特別支援学校の子供たちの教育環境を守る対応方針を伺います。
東京の東部地域に特別支援学校を新設することが必要です。在籍児童、生徒数の増加傾向に対応し、特別支援学校を一刻も早く増設することを求めます。
答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 原純子議員の一般質問にお答えいたします。
核廃絶への認識について、二つの質問をまとめてお答えをいたします。
さきの定例会でもお答えいたしましたとおり、原爆の記憶を人類共通の記憶といたしまして、次世代に語り継いでいくこと、これは今を生きる私たちの重要な使命でございます。
核廃絶に向けました取組は、国の安全保障に関わる問題でございまして、核の脅威に対する都民、国民の不安を踏まえ、国にしっかりと対応をしていただきたいと考えております。
非核平和都市宣言につきましては、核廃絶に向けた取組は、国の安全保障に関わる問題でございまして、都として非核平和都市宣言を行う考えは有しておりません。
その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長坂本雅彦君登壇〕
○教育長(坂本雅彦君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、修学旅行への支援についてでございますが、修学旅行の費用への支援は、小中学校の設置者がそれぞれの判断で対応していると認識をしております。また、都立学校において、給付型奨学金等により低所得世帯への支援を実施しております。
次に、特別支援学校の教育環境についてでございますが、知的障害のある児童や生徒が特別支援学校に通学するニーズが増える中、受入れのできる施設を確保する取組を進めることは重要でございます。
次に、特別支援学校の教育環境に係る取組についてでございますが、都教育委員会では、障害のある子供たちの能力を最大限に伸ばしていくため、特別支援学校において、良好な教育環境の確保に迅速に取り組みます。
最後に、特別支援学校の整備についてでございますが、都教育委員会は、児童生徒数の状況のほか、全都的な学校配置のバランス等を踏まえ、良好な教育環境の確保に向けて、新設や増改築等に関し、特別支援教育の新たな計画に盛り込みます。
〔政策企画局長佐藤章君登壇〕
○政策企画局長(佐藤章君) 核兵器禁止条約についての二問の質問にまとめてお答えします。
知事がこれまでお答えしたとおり、国の安全保障に関わる問題であり、核の脅威に対する都民、国民の不安を踏まえ、国において対応すべきものでございます。
〔保健医療局長雲田孝司君登壇〕
○保健医療局長(雲田孝司君) 八点のご質問にお答えいたします。
まず、被爆の実相についてでございますが、都は、被爆者の会である一般社団法人東友会に委託して、原爆犠牲者追悼のつどいを開催し、被爆者の方の証言を聞く機会を毎年設けております。
次に、被爆者の実相の取組についてでございますが、都はこれまで、東友会が開催する原爆展について、都の後援名義の使用承認が申請された場合には、実施内容を審査した上で承認しております。
次に、被爆者への介護手当等の周知についてでございますが、都は毎年度、介護手当等について分かりやすく説明した冊子を対象者へ個別に送付するとともに、被爆者が活用できるサービスや窓口等の情報を分かりやすくまとめたハンドブックを配布するなど、広く制度の周知を行っております。
次に、被爆者の子に対する健康診断についてでございますが、都はこれまでも、被爆者の子の健康の保持増進を図るため、国の基準に上乗せして、年二回の健康診断を実施するとともに、国に対して、健診項目の追加に関する提案要求を継続して行っております。
次に、火葬料金についてでございますが、墓地、埋葬等に関する法律、いわゆる墓埋法では、火葬場の管理等は、国民の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われることが求められており、国は、指導権限を有する自治体に対し、公衆衛生の確保のほか、永続性の確保や利用者の利益の保護等の観点から、適正な経営、管理について指導監督の徹底を求めております。
次に、区部の火葬場についてでございますが、墓埋法では、特別区の地域は、区が火葬場の指導監督を行うことになっております。
次に、公営火葬場についてでございますが、都は、公営火葬場における火葬炉の増設計画の動向等に関して、指導監督の権限を有する区と情報共有等を行っております。
なお、新たに整備する瑞江葬儀所の新施設では、火葬可能数を増やすこととしております。
最後に、火葬場に関する対応についてでございますが、都は、平成十六年に五区の一部事務組合により臨海斎場が開設された際、要請に応じて、都有地の減額売却等を実施いたしました。
〔総務局長佐藤智秀君登壇〕
○総務局長(佐藤智秀君) 平和事業を総合的に担当する部署についてのご質問にお答えをいたします。
平和に関する事業につきましては、各局におきまして、それぞれの分掌事務に基づき適切に対応しており、引き続き、適切な執行体制の下、取り組んでまいります。
〔建設局長花井徹夫君登壇〕
○建設局長(花井徹夫君) 都立瑞江葬儀所の火葬料についてでございますが、火葬料は、受益者負担の適正化を図る観点から、施設整備に要した費用や維持管理に要する費用など、原価相当額を基に設定することとしております。
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