令和七年東京都議会会議録第四号〔速報版〕

○副議長(谷村孝彦君) 二十二番吉住はるお君。
   〔二十二番吉住はるお君登壇〕

○二十二番(吉住はるお君) ペットを飼育することによって、心身ともに健康につながることが近年明らかになっています。
 東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、フレイルの発生リスクは、ペットの飼育経験のある人たちで大きく低減し、特に犬に限った場合では、過去に飼育していた人たち、現在飼育している人たち、いずれも約二〇%リスクが減ることが分かっています。
 また、要介護状態や死亡といった自立喪失のリスクの追跡調査では、ペットを過去に飼育していた人たちで一二%減、現在飼育している人たちで約三〇%リスクが低減します。こちらも特に犬に限った場合に顕著で、犬を過去に飼育していた人たちで約一六%減、現在飼育している人たちで約五〇%減と、大幅にリスクが低減することが指摘されています。
 さらに、一月当たりの介護保険サービス利用費の調査では、ペットを飼っていない人たちが千四百二十円であったのに対し、ペットを飼っている人たちは六百七十六円と、最大二・三倍の差が見られるとのことです。
 また、子供たちの健康に関する調査研究も国内外で行われており、ぜんそくなどの呼吸器アレルギーや食物アレルギーの発症リスクを低下させる可能性が示唆されています。
 ペットは、都民を心身ともに健康に、豊かにしてくれる重要な存在です。ペットと暮らしやすい社会を目指して、東京都は取組を一層前に進めていく必要があると考えます。人と動物が共生できる東京について、知事の見解を伺います。
 人がペットと共生しやすい社会を実現していくためには、動物が苦手な方にも理解してもらい、ペットを飼うことを受け入れてもらえるよう、飼い主マナーの徹底が非常に重要です。
 都は、区市町村とも連携しながら、マナー啓発の取組を一層強力に推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 急速に進む物価高は、年金だけで生活している高齢者世帯に深刻な影響を与えています。
 年金は物価などに合わせて一定程度は引き上げられていますが、その伸びは物価や賃金の伸びより低く抑えられ、実質的には目減りしています。年金生活者の多くは、自身の貯蓄を年々多く切り崩して生活しているのが現状です。
 特に体調に不安があり、働くことが困難な年金生活者にとっては、住み慣れた愛着のある地域で暮らし続けることが困難になりつつあり、大きな不安を抱えています。私の地元新宿区の高齢者福祉の窓口にも、そのような方々の相談が増えていると聞いています。
 都市型軽費老人ホームは、身体機能の低下などで自立した日常生活を送ることに不安があり、家族の支援が難しい方のための施設です。現在、都内施設の入所率は九割を超えており、ほぼ満室状態となっています。
 平成二十三年以来、安定的に施設の開設数は増え続けてきましたが、ここ数年は建築費高騰などで停滞ぎみであり、需要に追いついていません。低所得高齢者の住まいの一つとして、都市型軽費老人ホームは重要と考えますが、どのように整備を進めるのか、都の見解を伺います。
 近頃、都民の方から、都営住宅を何度も応募しているが、なかなか当たらないのに、外国人居住者が増えているように感じる、また、既に都営住宅にお住まいの方からは、外国人は日本の慣習に不慣れなため、コミュニティになじめていない方が多く、困っているなどのお話をよく聞くようになりました。
 令和五年度の都内の世帯向け都営住宅定期募集における倍率は約八倍、高齢者など単身者向け都営住宅定期募集における倍率は約三十倍。私の地元新宿区の場合は、いずれも平均を大幅に上回る倍率となっています。
 国勢調査によると、新宿区内の公営の借家に住む外国人の割合は、平成二十七年では七・四%、令和二年では九・一%と増加傾向にあります。日本国籍を持つ都民が都営住宅になかなか入居できない一方で、外国人居住者が増えている状況に批判や不安の声が増えています。
 このような状況の中、外国人の入居資格も含め、都はどのように対応しているのか伺います。
 地域の方々から、狭い道路でもすごいスピードで通過していく車があり、とても危険を感じる、三十キロ規制の場所を二十キロ規制にしてほしいなどのご意見をよく伺います。
 昨年は、都内交通事故死亡者数が増加するなど、交通安全対策は社会的に注目を集める課題となっています。そのような中、生活道路における道路交通環境の整備を一層推進していくべきと考えますが、警視庁の取組について伺います。
 児童虐待などにより一時保護を必要とする児童は増加の一途をたどっており、一時保護所が担う役割はますます大きくなっています。
 現在、都においては、トー横など大都市特有のケースやケアニーズが高く、個別支援が必要な児童の一時保護が増加しており、受け入れる児童の状況は一層多様化、複雑化をしているところから、さらなる体制強化が必要と考えます。
 さきの第四回定例会において、一時保護所の体制強化について、社会的養育推進計画の策定に合わせて、一時保護所の設備及び運営を定める条例の準備を進めているとの答弁がありましたが、今後、具体的にどのように取組を進めていくのか、都の見解を伺います。
 新聞報道によると、都立高校の定員割れが指摘されています。都立高校が選ばれるためには、約二百校の都立高校がネットワークを生かし、連携しながら、各校の特色を生かし、切磋琢磨し、その魅力を伝えていく必要があります。
 また、将来の予測が困難な時代においては、課題解決を通じて持続可能な社会を維持発展させていくことが求められており、それには探究的な学習が有益です。
 そこで、都立高校のネットワークを活用し、全ての都立高校において課題を自ら設定して解決を図る取組が必要と考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 国も都も、いわゆるインバウンドによる消費拡大を経済成長の起爆剤と捉え、様々な施策を展開し、昨年、訪日外国人旅行者による消費額が八兆円を超え、過去最高を更新しました。
 観光客を対象とする産業は、宿泊から飲食、エンターテインメントまで幅広い業種にわたり、地域経済の活性化や雇用の創出など大きく貢献しています。
 しかし、一方、地域の中小規模の事業者からは、資金力や人手、ノウハウの不足などの課題に直面し、インバウンドの受入れが十分にできていないという声もよく聞かれます。地元の人々に愛されてきた食堂や商店など、都内の津々浦々にもインバウンドがもたらす恩恵をしっかりと波及させていくことが極めて重要です。
 そこで、都内の観光関連事業者がインバウンド需要を取り込むための支援を都として強力に進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 経済効果も大きいインバウンド需要を盛り上げることも大切ですが、併せて大規模災害が起こったときの対応もしっかりと考えておくことが重要です。
 外国人旅行者は、言語の壁や国によって災害の知識が異なります。外国人旅行者にとっては、宿泊先のホテルや旅館が最も安心できる場所だと考えられます。
 災害時に外国人旅行者が安心して行動できるよう、外国人旅行者に対して、ホテルなどにも協力を得ながら、防災情報の発信に力を入れていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 先日、新宿区が一時滞在施設に指定している東急歌舞伎町タワーの帰宅困難者対策訓練がありました。現在確保されている四十七万八千人分の施設の中には、東急歌舞伎町タワーのような、繁華街の一角にあり遠くからでも目立つビルがあり、そのような場所には多くの行き場のない帰宅困難者が殺到することも想定されます。
 一方、例えば駅から離れていたり、住宅街の中にある施設は、場所や経路が分かりづらいことなどから、開設しても予定の受入れ人数を下回ることが懸念されます。
 災害時には、多くの行き場のない帰宅困難者が一か所の一時滞在施設に集中することなく、効率的に受け入れることが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 外国人観光客が都内の喫煙マナーをよく知らずに、区市町村が定めている路上喫煙禁止エリアで喫煙をしたり、吸い殻のポイ捨てをしたりすることがあり、地域住民とのトラブルになるケースもあります。
 受動喫煙対策の一環として、訪都外国人にも都内の喫煙ルールを知ってもらい、守ってもらう取組とともに、外国人も含め喫煙者と非喫煙者が共存できる環境を整備するためにも、公衆喫煙所の設置等に対する支援の充実が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 観光客の増加は経済効果をもたらす一方、深刻な観光公害を引き起こす要因にもなります。
 私の地元新大久保駅周辺地域においては、新型コロナ感染症の五類移行後、国内外からの観光客などが急増し、以前を大きく上回る混雑となっています。
 補助七一号線大久保通りのうち、新大久保駅周辺では、新型コロナ流行前の令和元年の年末、ピーク時の三十分間歩行者交通量が三千人であったのに対し、令和六年のシルバーウイークでは七千五百人となっており、約三メートルの歩道があるものの、路上飲食やショッピングなどを楽しむ観光客が滞留し、住民の通行も妨げられ、歩道からあふれた歩行者が車道を歩くなど、危険な状態となっています。
 補助七一号線大久保通りには都市計画線が入っており、この問題をハード面から解消するためには、現状の都市計画線に合わせた歩道の拡幅整備を行うか、現在の歩道幅員のまま車道を狭め、歩道を拡幅するかのどちらかの方向づけを行う必要があります。
 現行の都市計画道路の整備方針は令和七年度末までであることから、現在、都は新たな整備方針の策定に向けて検討中と聞いています。
 安全な歩行者空間を確保するためにも、新大久保駅周辺地域における補助七一号線を新たな整備方針において優先整備路線に位置づけることを含め、地元の意向を聞き取りながら早期に本路線の方向性を示すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 吉住はるお議員の一般質問にお答えいたします。
 動物との共生についてでございます。
 動物は、私たちの生活に潤いや癒やしを与えてくれる大切な存在です。飼い主にとりましては家族の一員であり、社会にとってもその一員でございます。
 こうした考えの下、飼い主への適正飼養、終生飼養の啓発や、地域の飼い主のいない猫対策、保護された動物の譲渡推進などに力を注いでまいりました。
 今後も、人と動物との調和の取れた共生社会の実現を目指しまして、区市町村、関係団体、ボランティアなど、多くの皆様と力を合わせまして、動物愛護施策を一層推進してまいります。
 なお、その他の質問につきましては、警視総監、教育長、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔警視総監迫田裕治君登壇〕

○警視総監(迫田裕治君) 生活道路における道路交通環境の整備についてでありますが、警視庁におきましては、歩行者等の安全な通行を確保するため、区域を定めて時速三十キロメートルの最高速度規制を行うゾーン三十のほか、そのような速度規制と路面を盛り上げるハンプや車道の通行部分の狭窄等の物理的デバイスを適切に組み合せたゾーン三十プラス、それらの整備を道路管理者等と連携して推進しております。
 今後も、地域住民の方々のご意見を十分に踏まえつつ、道路管理者等と連携して、安全で円滑な道路交通環境の整備に取り組んでまいります。
   〔教育長坂本雅彦君登壇〕

○教育長(坂本雅彦君) 都立高校の探究学習の推進についてのご質問にお答えをいたします。
 東京を取り巻く社会や経済の状況が急速に変化をする中、子供たちが様々な社会課題に対し解決の方法を主体的に考え出す探究学習を進めることは重要でございます。
 これまで都教育委員会では、都立高校の生徒による探究学習を後押しするため、大学や研究機関と連携を図り、専門的な知識の提供を受ける取組等を行ってまいりました。
 これらに加えまして、来年度から全ての都立高校において、生徒の興味や関心に応じ、教育委員会の提供するテーマの中から課題を選ぶ等によりまして、探究学習を幅広く実施する取組を開始いたします。
 また、その成果を全校が一堂に会するイベントで発表し、都立高校の間での共有を図ります。
   〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕

○東京都技監(谷崎馨一君) 補助第七一号線についてでございます。
 新大久保駅周辺における補助第七一号線は、沿道が商業地域であり、地域のまちづくりの視点から検討が必要な路線でございます。
 現在、新たな整備方針について、学識経験者による委員会や都と区市町による検討会を設置し、来年度の策定に向けて議論をしております。
 今後、区市町など関係機関と密接に連携しながら、将来の都市計画道路網の検証等を行い、優先整備路線を選定することとしております。
 本路線につきましては、新たな整備方針策定の中で、必要性も含め適切に検討してまいります。
   〔保健医療局長雲田孝司君登壇〕

○保健医療局長(雲田孝司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、飼い主への普及啓発についてでございますが、動物が人と一緒に生活する存在として社会に受け入れられるには、飼い主が社会的責任を十分に自覚して、動物を適切に飼うことが必要でございます。
 このため、都は、しつけの必要性や散歩のルールなど、動物の飼い方のポイントをまとめた小冊子などを作成し、区市町村の窓口やイベント、動物病院などで配布するほか、都の動物情報サイトでも紹介しております。
 また、都民からの相談などに区市町村の担当者等が適切に対応できるよう、毎年度、研修会を実施しております。
 今後も、様々な機会を通じて、飼い主の意識の向上を図る取組を一層推進してまいります。
 次に、受動喫煙対策についてでございますが、都は、東京を訪れる外国の方に、都内の受動喫煙対策や喫煙ルールを理解してもらうため、これまで行ってまいりました外国人向けリーフレットなどによる啓発に加え、来年度、新たにターゲティング広告などを実施し、外国人観光客などに向けた働きかけを強化いたします。
 また、区市町村が設置する公衆喫煙所について、近年の整備状況や区市町村の意向などを踏まえ、屋外コンテナ型公衆喫煙所の整備に係る補助基準額を一千万円から一千七百万円に引き上げ、支援を拡充いたします。
 今後も区市町村と連携し、外国人を含めた受動喫煙防止の啓発や環境整備に取り組んでまいります。
   〔福祉局長山口真君登壇〕

○福祉局長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都市型軽費老人ホームの整備についてでございますが、都市型軽費老人ホームは、低所得高齢者が低廉な料金で見守りなどの支援を受けられる施設として制度化されたもので、地価の高い都市部に必要な施設でございます。
 都は、本施設の整備を促進するため、国の基金による補助に加え、整備費補助の上乗せなど、区市に対して独自の支援を行っておりまして、これまで九十五か所、定員千六百四十七人分の整備を行っております。
 来年度は、建築費の高騰状況を反映する物価スライド方式によりまして、定員一人当たりの基準単価四百万円に三百九十四万円を加算して整備費補助を行います。
 今後も区市と連携し、低所得高齢者の住まいの確保を一層推進してまいります。
 次に、一時保護所の体制強化についてでございますが、都は、児童福祉審議会専門部会の議論も踏まえまして、来年度から五年間を期間とする社会的養育推進計画の策定を進めております。
 この計画案では、近年の一時保護需要の高まりやケアニーズの高い児童への対応策として、新たな一時保護所等の整備や国基準を上回る職員配置の方針を明記するほか、通学や学習の支援など児童の権利擁護に係る施策の方向性を盛り込んでおります。
 本定例会には、一時保護所の設備及び運営の基準に関する条例案を提出しておりまして、今後、一時保護所における児童の支援体制について、ソフト、ハード両面での強化を着実に推進してまいります。
   〔住宅政策本部長小笠原雄一君登壇〕

○住宅政策本部長(小笠原雄一君) 都営住宅への外国人の入居についてでございます。
 都では、法令や国の通知などに基づき、中長期在留者等の入居資格を定めております。なお、中長期在留者については、永住者等を除き一年以上の在留実績があることを要件として付加しております。
 外国人を含めた居住者同士が生活ルールを守り、コミュニティを維持することは重要であり、都は、住まい方のルールが書かれた冊子等を多言語化して外国人入居者に配布しております。また、自治会等には、多言語翻訳機の貸出しや相談窓口の設置などの支援を行っております。
 改めて、これらの取組を通じてルールを周知徹底してまいります。
   〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) 観光関連事業者に対する支援についてのご質問にお答えいたします。
 地域の観光関連事業者がインバウンド需要を着実に取り込むことができるよう、生産性の向上や新たな商品の開発など、経営力の強化を図ることは重要でございます。
 都は現在、宿泊施設における受付業務の自動化や、地元の食材を使用した新たなお土産物の開発などの取組に対し、助成やアドバイスにより支援を行ってございます。
 来年度は、これまでの支援に加え、経営やDXの専門家が事業者のアイデアの具体化をサポートするとともに、必要となる経費の助成限度額を引き上げることとしてございます。
 これらにより、地域の観光関連事業者によります、さらなる収益力向上の取組を後押ししてまいります。
   〔総務局長佐藤智秀君登壇〕

○総務局長(佐藤智秀君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、外国人旅行者への防災情報の発信についてのご質問でございます。
 都は、大使館等へアンケートを実施し、外国人旅行者に対する災害情報はSNSや大使館等からの発信が有効との結果を得ました。それを踏まえ、発災時に多言語に対応した東京都防災X等を活用するとともに、大使館等と連携し、避難などに役立つ情報を提供することとしております。
 来年度は、英語による防災XのPR動画を作成し、空港や主要駅で配信するとともに、外国人旅行者が災害時に安心して行動できる電子版の防災ガイドを作成し、大使館やホテル等とも連携して周知を図ってまいります。
 これらを通じ、災害時に外国人旅行者に必要な情報が確実に届くよう、一層取組を推進してまいります。
 続いて、一時滞在施設への避難誘導についてのご質問にお答えをいたします。
 発災時に行き場のない帰宅困難者の安全を確保することは重要であり、都は、SNSや防災アプリを通じて適切に一時滞在施設へ案内することとしております。
 来年度からは、これに加え、新たなシステムを運用することにより、都や区市町村等が駅前の滞留状況や施設ごとの混雑状況をリアルタイムで把握し、その情報を基に帰宅困難者が一つの施設に集中することなく、適切かつ速やかに施設への誘導を可能といたします。
 今後、都、区市町村、関係事業者等が本システムを活用した訓練を積み重ねて、帰宅困難者の安全・安心の確保に努めてまいります。