○副議長(谷村孝彦君) 四十二番磯山亮君。
〔四十二番磯山亮君登壇〕
○四十二番(磯山亮君) 今年度から法定雇用率が引き上げられていますが、障害者の得意なスキル、環境面でのサポートについて、実際の職場を体験しながらマッチングを目指す企業の取組が広がりつつあります。
ニューロダイバーシティは、発達障害などがある人の特性を、脳機能の違いによる強みや弱み、誰もが有する個性と捉えます。この考えを発達障害教育に取り入れ、親や教員、学校や地域社会が協力し、子供の頃から根づかせていく体制を構築することが必要です。
これが浸透すれば、一人一人の特性に応じた仕事内容や働き方を柔軟に選べる企業風土が広がり、障害者手帳の有無はもとより、誰もが自身の強みを生かし、戦力として働く未来が開かれます。
そこで、都は、発達障害などのある子供たちが社会の中で一人一人の特性を生かし輝いていけるよう、障害を個性と捉え、企業で戦力として活躍する障害者の事例を社会に発信するとともに、教育環境の一層の充実を併せて進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
重度の障害があるため外出ができず、これまでであれば仕事に就くことを諦めざるを得なかった方も、分身ロボットなど進化を続けるテクノロジーの活用により、やりがいを持って働くことができるチャンスは広がりつつあります。
自宅から分身ロボットを使って都庁展望室での仕事を経験した方々から、人に喜んでもらえる仕事をする夢がかなった、初めて欠勤せず長く働けた、外国の方向けに外国語の勉強も始めたとの話を伺いました。その声は、自信や向上心、何よりわくわく感にあふれていたように感じました。
昨年の予算特別委員会では、知事から、障害者の新たな働き方のフォーマットを広げていくと力強い答弁をいただきました。都は、重度の障害のある方が分身ロボットを使い働く事例の発信はもとより、そうした環境を整備し、重度障害者の方が勤務時間や働く場所にとらわれず活躍できる新たな雇用の機会をつくる企業を支援すべきでありますが、都の見解を伺います。
不登校の理由の一つに、学業不振が挙げられます。その原因として、学習障害が影響を与えていると考えます。学習障害であるにもかかわらず、把握されていない、もしくは把握されていたとしても適切な支援を受けられていない子供の抱える学業不振に対する悩みや苦しみの深さは計り知ることができません。不登校につながっている可能性は高いと思います。
グーグルの調査によると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、ほかのチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用でき、収益性が高く、マネジャーから評価される機会が二倍多いということが判明したそうです。
心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態を表す言葉です。学校現場の心理的安全性を高めることで、読めない、書けない、計算できないなど、困り事を素直にいえる、認めてもらえる、理解してもらえるようになれば、不登校対策になるだけでなく、安心して楽しく学び、得意な分野を伸ばしていくことにもつながると考えます。
そのためには、アセスメントによる対象者の支援、当事者の困り事の把握、適切な支援を行う人材育成が必要ですが、まずは、教員が学習障害への理解を深め、当事者の声を聞く機会をつくるなど、取組を行うことで、一歩を踏み出すべきと考えます。来年度、学習障害への支援について、都の取組を伺います。
技術が進み、誰もが生成AIを利用できるようになりました。本年度、特別支援学校四校でも活用を研究してきました。体育祭のキャッチフレーズを生徒自ら作成することにつながった事例もあったそうです。
このように、生成AIの活用は、教育現場において今までできなかったことができるようになる大きな可能性を秘めています。今後は、都立学校全ての生徒が生成AIを活用していくことが必要です。
そこで、都教育委員会はこれまで、都立学校生成AI研究校を指定し、授業等での活用法を研究してきたとのことですが、その研究成果を今後どのように生かしていくのか、都の見解を伺います。
現在、都は、スポーツ推進総合計画の改定を進めており、その中で、デジタルの力で、誰もが自らに合ったスポーツを楽しんでいる東京を実現することを重点政策テーマとしています。
とりわけeスポーツは、子供に絶大な人気を誇ることはもちろん、障害者や高齢者も楽しむことができ、大きな広がりを見せています。スポーツ推進総合計画にeスポーツを位置づけ、施策を展開していくべきと考えますが、見解を伺います。
日本で生まれた技術である次世代型ソーラーセル、いわゆるペロブスカイト太陽電池は、軽量、柔軟で、壁、窓などにも設置が可能となるため、都市における再エネ活用の拡大が期待できます。
また、主な原料のヨウ素を含め、国内でのサプライチェーン形成にも貢献することから、早期実装や普及拡大を図ることを継続して求めてきました。
先般、都は、二〇三五年に都内に約一ギガワット導入する目標案を公表しました。事業者の投資の予見性を確保し、生産体制の構築を促す観点からも、目標実現に向けた取組の方向性を示すことが重要です。
また、社会に広く浸透させるには、都民の関心を高めることも不可欠です。次世代型ソーラーセルの普及拡大に向け、今後どのように取り組むか、都の見解を伺います。
東京の農業は、食料の供給のみならず、地産地消や食育等にも寄与しています。中でも学校給食での東京産農産物の活用は、子供たちの東京の農業への関心や地域への愛着を育むものであるとともに、農家にとっても、安定した取引価格により一定の収入が確保できるなどのメリットがあります。
小平市でも、農業者団体が地元農家から集荷した野菜を小学校に配送し、給食での活用を進めており、子供たちに大変好評です。農家からも、品質管理に苦労があるが、やりがいがあり、収益向上にもつながったと伺っております。
農家の経営安定にもつながる学校給食における東京産農産物の活用を一層進める必要があると考えますが、都の見解を伺います。
近年、利用者が野菜や花を育てられる市民農園の人気は高く、中でも農業者が自ら経営する農業体験農園は、プロの農家から直接ノウハウを学べる場として注目をされています。農家にとっても、利用料による収入が見込め、経営を助ける一つの手法となっています。
小平市の体験農園では、季節ごとの講習会を通じて様々な野菜の栽培を楽しめるほか、利用者同士の触れ合いの場として、地域コミュニティの中核となっています。こうした農園を都内各地に広げていくことが非常に効果的であると考えます。
そこで、都は、農業者における体験農園が都内で広く展開されるよう、普及に向けた取組を強化すべきと考えますが、見解を伺います。
社会保障費の負担が年々増大して、子育て中の現役世代に重くのしかかっていることが少子化の一因ではないかと考えております。
夫婦が持つ子供の数である有配偶出生率の推移を見ると、以前は全国平均とほぼ同一水準でしたが、直近では上回っております。これまでの都の取組に一定の効果があったといえます。
子供は、親の背中を見て育つものであります。子供たちが、経済的な理由などにより親が子育てに苦しむ姿を目の当たりにして、将来的に子供を産み育てることに不安を感じることがあってはなりません。
また、行動経済学的な観点で見ると、子育て支援が手厚くなり、子供を持つことの経済的なメリットが相対的に大きくなれば、将来子供を持ちたいと潜在的に思っている方々の背中を押すことにもなると考えます。
こうした観点から、戦略的に少子化対策に取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
都はこれまで、代替養育が必要な児童については里親への委託を推進してきており、里親委託率は年々上昇しているものの、全国平均と比べると低く推移しています。
里親委託を進めていくためには、里親への支援の充実や里親の負担軽減を図る必要があります。里親登録を更新する際の研修の見直しを求める声や、これまで以上に里親支援に施設を活用することなどの要望を伺いました。
都は、里親の負担軽減と里親委託の推進に向けて、来年度はどのように取り組んでいくのか伺います。
保育所等においては、保育の質の向上に不断に取り組んでいくべきと考えます。そのためには、書類作成や会計処理等により業務が逼迫している施設長の事務負担の軽減を図ることは重要です。
また、保育の現場では、不適切な保育も散見されています。さらに、メンタルヘルスの不調を来す職員も多くいると聞いており、保育への影響が懸念されます。
こうした課題に対応し、保育の質の向上を図ることが求められていますが、都の来年度の取組を伺います。
踏切対策基本方針において、西武新宿線田無駅から花小金井駅の区間は、鉄道立体化の検討対象区間に位置づけられており、基本方針が改定されても、引き続き鉄道立体化に向けて検討を行うことが重要です。
その上で、今回の改定を機に、さらなる踏切対策の実施を検討すべき踏切があると考えます。具体的には、小平駅西側の小平一号踏切です。これまでの様々な対策も、抜本的な解決には至っておらず、地元からは、鉄道立体化による対策を望む声があります。
小平駅付近の鉄道立体化も含めたさらなる踏切対策について、都の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 磯山亮議員の一般質問にお答えいたします。
ダイバーシティの実現についてのお尋ねでございました。
一人一人が輝く東京を実現する、そのためには、多様な人々と関わる中で、互いの違いを認め、支え合いながら成長し、働き続けることができる環境を整えていく、これが重要でございます。
記憶や計算など高い能力を持つ発達障害の方が、それを強みとして活躍できる雇用を増やしてまいります。中小企業の交流の場を設けまして、職場におけるノウハウを共有し、ニューロダイバーシティの発想を企業に広げるムーブメントを展開いたします。
障害を個性と捉え、様々な子供が共に学べる環境づくりを着実に広げてまいります。デジタルの力を最大限に活用いたしまして、一人一人の強みを生かし、将来の選択肢を広げる教育を進めてまいります。
障害の有無にかかわらず、誰もが夢や希望を持ち、当たり前に活躍できる社会を実現してまいります。
なお、その他の質問につきましては、教育長、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長坂本雅彦君登壇〕
○教育長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えをいたします。
まず、学習障害のある児童生徒への支援についてでございますが、学習障害のある児童生徒をサポートする上で、子供の状況を正確に把握し、適切な対応へつなげることは重要でございます。
このため、都教育委員会は来年度、読み書きや計算等に困難を抱える児童生徒の状況を理解し、教員の指導に反映するための取組を行います。
具体的には、そうした児童等の様子を確認するアセスメントの方法を学ぶほか、成人がこれまでの経験を伝える動画を区市町村に配布し、活用を働きかけます。こうした動画による成果を調べ、学習障害のある児童等へのサポートの充実につなげてまいります。
次に、都立学校の授業での生成AIの活用についてでございますが、これからの教育活動で重要なツールとなる生成AIに関し、生徒や教員等が適切に使いこなす力を習得するとともに、安全に利用できる環境の速やかな整備は重要でございます。
これまで都教育委員会は、都立の二十の学校を選び、教員が生成AIの効果的な活用を学び、生徒等に的確な指導を行う方法を研究してまいりました。来年度、この成果を含めた内容を教材に取りまとめ、生成AIを適切に活用するリテラシーを生徒や教員が高めることのできるよう、全ての都立学校に提供をいたします。
これに合わせまして、情報管理を徹底した各校専用の生成AIの環境を全都立学校につくり、授業での活用を進めてまいります。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 小平駅付近の踏切対策についてでございます。
小平一号踏切を含む小平駅付近の区間は、平成十六年に策定いたしました踏切対策基本方針におきまして、鉄道立体化以外の対策の検討対象区間に位置づけられております。早期に実施可能な対策を関係者間で検討すべき箇所としております。
小平一号踏切では、これまで踏切道のカラー舗装による歩行者通行帯の明示や、踏切支障検知装置の高機能化等の安全対策を実施しております。
鉄道立体化の検討に当たりましては、まずは地元市のまちづくりの取組が必要であり、都といたしましては、市の将来的なまちづくりの動向を踏まえた支援を行うなど、適切に対応してまいります。
〔産業労働局長田中慎一君登壇〕
○産業労働局長(田中慎一君) 三点のご質問にお答えいたします。
初めに、重度障害のある方の雇用の促進についてでございます。
最新のテクノロジーを活用し、場所や時間の制約を超え、障害のある方が働き手として活躍できるよう後押ししていくことは重要でございます。
都は今年度、重度障害のある方が自宅等から分身ロボットを操作し、観光客の案内を行う取組を開始いたしました。
また、分身ロボットを導入し、重度障害の特性に配慮しながら、職場定着に取り組む民間企業のノウハウを障害者雇用のイベントなどで幅広く発信してございます。
これらに加え、来年度、短時間勤務の重度障害者を六か月以上雇うなど、障害者の雇用を初めて実現した中小企業に奨励金を支給し、多様な活躍の機会を創出してまいります。
次に、東京産農産物の学校給食での活用についてでございます。
東京で取れた農産物が都内の多くの小中学校で利用されるよう農業者を後押しすることは、地産地消を推進するとともに、経営の安定を図る重要な取組でございます。
このため、都は、収穫した野菜を集荷し、学校等に配送する団体を支援しております。
また、学校給食に出荷する野菜の洗浄機等の機械を導入する農業者へ助成しており、来年度は、より多くの方が活用できるよう規模を拡充いたします。
さらに、農地のない区などの小中学校への出荷を広げるため、農業者と学校をつなげるプロモーターの派遣を開始するとともに、意欲的に取り組む生産者を紹介する冊子を作成し、学校等に配布いたします。
最後に、農業体験農園の普及についてでございます。
農家の技術指導の下で農作業を学べる農業体験農園は、都民の東京農業への理解を深めるとともに、経営の安定化や農地の保全にもつながる取組でございます。
都はこれまで、生産緑地を活用し、体験農園を開設する農業者に対し、農園の整備や宣伝に必要な経費等への助成を行ってございます。
来年度は、都内の多くの地域で体験農園の普及を一層進めるため、開設に向けたノウハウを提供する研修会を開催するとともに、相談窓口を新たに設置いたします。
また、円滑な運営をサポートするため、都が設置したモデル農園の修了生を体験農園で活用する仕組みも構築いたします。これらによりまして、東京農業の振興を図ってまいります。
〔生活文化スポーツ局長古屋留美君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) 次期スポーツ推進総合計画におけるeスポーツについてお答えいたします。
都はこれまで、障害者のスポーツへの参画手法の一つとして、障害特性に合わせたeスポーツを取り入れてまいりました。この経験を踏まえ、次期スポーツ推進総合計画案においては、障害者や高齢者の健康増進等に資するものとして、初めてeスポーツの活用を位置づけております。
来年度は、国内外における先進事例等の調査研究を行うとともに、イベントなどにおいて、都民にバーチャルスポーツの効果を実際に体験していただける機会を提供いたします。
障害の有無や年齢、性別、場所や距離等の垣根を越えて楽しめるeスポーツの特性を生かしまして、誰もがスポーツに触れ合い、楽しむ機会を創出してまいります。
〔環境局長須藤栄君登壇〕
○環境局長(須藤栄君) 次世代型ソーラーセルの普及拡大についてでございますが、多様な建物を有する東京は、軽量で薄く、壁などにも設置できる次世代型ソーラーセルの導入に適しており、量産化を見据え、戦略的に需要を創出し、認知度を高めてまいります。
具体的には、二〇三五年の導入目標案である約一ギガワット達成に向けたロードマップを年度末までに策定し、普及を強力に進めてまいります。
また、これまでの都有施設などでの実装検証を生かし、実装化元年となる来年度は、複数の都有施設に、国内最大規模となる合計約百キロワットの導入を目指してまいります。
さらに、民間事業者に対して設置経費を全額支援するとともに、事業者と連携した広報展開などにより都民の関心も高め、実装を加速してまいります。
〔子供政策連携室長田中愛子君登壇〕
○子供政策連携室長(田中愛子君) 少子化対策についてでございますが、急速に進行する少子化に対し、都はこれまで、国の児童手当の所得制限撤廃につながった〇一八サポートの創設など、国をも先導する支援を迅速に講じてまいりました。
来年度予算案では、保育料の第一子無償化や学校給食費の負担軽減、高校等授業料の実質無償化等を盛り込み、ゼロ歳から十八歳まで切れ目のない経済的支援を充実いたします。
また、朝の子供の居場所づくりやアフォーダブル住宅の供給等、都民の抱える不安や悩みに寄り添う施策を展開いたします。
こうした支援策を子育て世帯やこれから子供を持つ方々も含め、幅広い層に対し戦略的に情報発信していくことで、都の少子化対策の効果を最大限に発揮させてまいります。
〔福祉局長山口真君登壇〕
○福祉局長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、里親への委託の推進についてでございますが、都は、里親のリクルートや研修、委託後のフォローなどを包括的に行うフォスタリング機関事業や里親制度の普及啓発など、里親委託の推進に向け、様々な取組を実施しております。
来年度からは、里親登録の更新期間を二年から五年に変更しまして、更新手続の負担を軽減するとともに、フォスタリング機関が里親の個々の状況に応じた研修受講を勧奨するなど、きめ細かにスキルアップを支援してまいります。
また、特別養子縁組を円滑に進めるため、乳児院に新たに専任の職員を配置するほか、特別養子縁組を前提として新生児を受け入れる施設を拡充するなど取組の充実を図りまして、里親への委託を一層推進してまいります。
次に、保育の質の向上に向けた取組についてでございますが、保育所などにおける保育の質を向上させるためには、子供一人一人の発達過程に応じた保育内容の充実や、子供の人格を尊重した保育の実践などの取組が重要でございます。
そのため、都は来年度から、施設長が保育現場のマネジメントに一層注力できるよう、事務負担の軽減を目的として、会計業務などを行う職員の配置を支援いたします。また、日々子供と向き合う保育士などの不適切保育の防止やメンタルヘルスケアの充実に向けまして、外部の専門家などを活用して研修を実施する場合の支援も開始いたします。
こうした取組によりまして、保育所などにおける保育の質のさらなる向上に取り組んでまいります。
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