令和二年東京都議会会議録第十七号

○議長(石川良一君) 二十六番斉藤れいなさん。
〔二十六番斉藤れいな君登壇〕

○二十六番(斉藤れいな君) 無所属東京みらいを代表して、新型コロナウイルス感染症対策をさらに取り組むことに加え、特に社会的に弱い立場にある方々への支援は決して停滞させてはならないという思いから、一般質問を行います。
 まず、児童虐待の根本解決について伺います。
 本年立ち上げられた専門部会では、予防的支援の議論が行われていますが、どこまでさかのぼって支援できるかという視点が重要であり、産後ケアや切れ目のない子育て支援に加え、特定妊婦への支援や学校における性教育、経済的困窮を防ぐための就労支援など、複数の局にまたがる取り組みを推進する必要があります。
 福祉の観点だけでは、虐待のリスクのある当事者とのつながりに限界があり、支援が届かないことも想定し、関係各所と連携をとり、課題解決に取り組んでいくべきと考えますが、専門部会の検討状況について伺います。
 虐待の未然防止には、未受診妊婦や無戸籍者、児童養護施設退所者など、あらゆる属性の親や、これから親となる方々に対する幅広い支援が必要です。例えば虐待を受けた経験のある方、いわゆる虐待サバイバーからは、みずからが親になることへの不安を抱え、フラッシュバックを起こすということも伺っています。
 こうした方々を初め、子供の養育に不安を抱える当事者への支援として、学齢期からメンタルケアを受けられるよう取り組むことや、親となるに当たってのペアレンティングトレーニングが受けられるよう、親支援を行っていく必要があります。
 地元多摩市からは新宿児童相談センターまで距離があり、小さなお子さんを育てているご家族が通うには難しさがあるとも伺っており、現在、児童相談所で行っている親支援のプログラムを幅広く区市町村にも広げるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、就労支援について伺います。
 厚生労働省の委託を受けて民間団体が行ったアンケートによると、新型コロナの感染が流行していた都市部においては、お金や暮らしのことで困ったという人が七割弱にも上り、失業や借金などの困難を抱えている実情が明らかになりました。
 特に、若年女性やDV被害者、また児童養護施設退所者など、就労を望んでいるけれども保証人を立てることが難しく、望むような職場と出会うことのできない方々がいることは解決すべき課題といえます。
 企業等から保証人の提示を求められた場合、現在は、民間支援団体が善意で個人的に保証人になるなどしているということですが、その負担は大きく、なかなかなり手が見つからないのも現実です。
 本人の適性や能力に合った職場で継続的に働いていくために、行政が何らかの支援を行うべきであると考えますが、都の取り組みを伺います。
 続いて、児童生徒のメンタルケアについて伺います。
 国立成育医療研究センターのアンケート調査では、新型コロナの影響により、子供の七割が何らかのストレス反応を示していることが明らかになりました。学校再開後も登校を難しく感じる生徒や、精神的な不調を訴える生徒も少なくないと伺います。
 授業に追われ、あるいは感染拡大を防ぐために、おしゃべり禁止などの厳しい指導を行うケースもあると伺っており、そのような状況では、児童生徒のメンタルヘルスを保つことは難しくなります。
 身近なところで相談できる存在や場所が必要であることはいうまでもなく、本来は、学校がその役割を果たすことが望ましく、スクールカウンセラーによる全員面接や生徒へのメンタルケアを積極的に行うべきと考えますが、見解を伺います。
 児童生徒の学びを支える上で、居場所の確保も重要です。
 勉強に集中しにくい家庭環境である場合、学校や図書館の利用に制約が生じている現状は憂慮すべき問題です。東京都の実施している子供の学習・生活支援事業について、コロナ禍においても開催することができるよう、感染防止対策を施した上での居場所づくりの継続を支援すべきです。
 また、本事業の対象を生活保護や就学援助等の児童生徒とする自治体も多いですが、例えばネグレクトなど、経済面以外の困難を抱えた児童生徒にとっても、このような第三の居場所につながるよう支援すべきです。見解を伺います。
 続いて、災害対策について伺います。
 在宅人工呼吸器使用者やその家族にとって、災害時の避難は物理的にも精神的にもハードルが高く、特にコロナ禍に災害が発生した場合には、自宅もしくは地域の通いの場である放課後等デイサービスなどに、非常用電源装置を補助してほしいという声が上がっています。
 都では、医療保健政策区市町村包括補助事業などで、非常用電源整備を推進しているとのことですが、現状では取り組んでいない区市町村も多く、さらなる活用を促すべきです。
 また、医療的ケア児者へ災害時の個別支援計画を立てる際にも、きめ細かい地域の福祉支援拠点を避難先として想定していくことができるよう、個別給付や保健センターに加え、放課後等デイサービスなどへの整備も促すべきです。
 コロナ禍において、一層増しているニーズや重要性を踏まえ、より一層取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 なお、本補助事業では蓄電池を対象としておらず、都内ではマンション等に居住する場合、発電機の使用には騒音等の困難があるという指摘があると申し述べておきます。
 続いて、LGBT等性的マイノリティーの方々が、自分らしく誰からも差別されることなく暮らしていける社会を目指して質問します。
 東京都が、慶弔休暇や結婚祝い金などの職員向け福利厚生制度を適用しないのは不当な差別であるという職員の方からの訴えがあり、東京都の各種制度が同性カップルを想定していない部分があることが明らかになりました。
 東京都では、一昨年、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例を制定し、その第四条において、都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならないとしています。
 確かに、同性婚の認められていない日本においては、法律上の課題や、いかにしてパートナーであることを証明するかといった課題があることは理解します。しかし、法律上の婚姻関係ではない事実婚については適用されている制度が、同性カップルに適用されないという点については、本条例の趣旨に反するものであると考えます。
 そこで、今般の福利厚生制度を初めとして、東京都の各種制度を見直していくに当たっては、五輪人権条例の趣旨に沿って、不当な差別的取り扱いをせず、LGBT当事者を支援していくべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、文化支援について伺います。
 文化芸術活動は、命を守る分野の一つとして、フランスの経済学者ジャック・アタリ氏がその価値について言及をしています。この意味合いにおいて、間違いなく文化はエッセンシャルワークであり、人が生きる力の源泉ともなる、人類にとって必要不可欠な営みと考えます。
 しかし、現状のコロナ対策を受け、アーティストのみならず、ともに活動を支えるイベント事業者や施設管理者、また、運営や機材準備、警備等の関係スタッフなど、文化活動の継続にはなくてはならない全ての関係者の間には、大きな閉塞感が漂っています。
 感染リスクに鑑み、観客を入れた活動の再開をいまだに自粛している事業者も多く、都内ライブハウスでは十四カ所が年内に閉店することが決定し、今後さらにふえ、全体の八割が閉店に追い込まれるともいわれています。また、リハーサルスタジオや貸しスタジオなどの閉店も相次いでおり、実演の場が次々と失われているのが現状です。
 文化関係者は、今もみずからの足で立とうと努力をしておりますが、一日でも早く元どおりの形で活動を再開し、継続していけるよう、行政からの後押しも必要です。
 都では、アートにエールをステージ型として無観客ライブ配信などを支援していますが、無観客ライブ配信は収益化の難しいモデルであり、そもそも本来のリアルな体験の価値のかわりにはなりません。
 九月十九日から全国的にイベント観客数の制限が緩和をされています。アートにエールをステージ型においては、公演が再開をされるとともに、観客を入れた元どおりの形での開催に向けた歩みが進んでいることを知ってもらう契機とすべきです。例えば、公演そのもののみならず、感染防止対策を徹底している舞台裏などを取材してもらうように働きかけるなども一つの方法です。
 そこで、民間イベントでも徐々に観客をふやすことができるように、動画作品等、本プロジェクトの取り組みを積極的に発信してもらいたいと考えますが、都の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 斉藤れいな議員の一般質問にお答えいたします。
 子供の心のケアの充実についてでございますが、感染症対策として、人とのかかわり等に制約がある中で、多くの子供が通常とは異なる不安を抱えているということを踏まえ、心のケアを十分に行っていく必要がございます。
 そのため、都教育委員会は、学校の臨時休業明けに、教員が全ての子供のストレスの状況を把握し、必要な支援を行うとともに、スクールカウンセラーとの面接を、まずは心配な様子が見られる子供たちから優先して行いつつ、年度内に小学五年生、中学一年生、高校一年生の全員と行うよう求めたところでございます。
 その後も、学校が保護者や関係機関と連携して、適切に子供を支えることができるよう、相談機関の連絡先を子供や家庭に繰り返し案内をしております。
 今後とも、こうした取り組みを通して、子供の不安や悩みを解消に導く取り組みの充実を図ってまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、児童虐待の未然防止についてでございますが、子供を虐待から守るためには、関係機関が連携しながら、援助や見守りが必要な家庭を早期に発見して、適切な支援につなげていくことが重要でございます。
 このため、本年七月から、児童福祉審議会の専門部会において、在宅子育て支援サービスや母子保健サービス等を活用した予防的支援、子供家庭支援センター等の体制強化、地域ネットワークの機能強化など、諸外国の例も参考に、新たな児童相談のあり方について検討を行っております。
 今後、この議論も踏まえながら、虐待の未然防止策の強化に取り組んでまいります。
 次に、保護者に対する支援についてでございますが、児童相談所は、児童虐待を行った保護者に対して、家庭機能の回復を図ることを目的に、児童福祉司や児童心理司等による家庭訪問や面接指導のほか、精神科医によるカウンセリングなどを実施しております。
 また、児童相談センターでは、保護者の養育力の向上等を図るため、家族合同でのグループ心理療法や、保護者のグループカウンセリング、ペアレントトレーニングなど、さまざまな援助を行っております。
 こうした支援を身近な区市町村で、より早期に始められるよう、今年度から子供家庭支援センターの心理専門支援員を児童相談所で短期派遣研修として受け入れるほか、児童心理司との定期的な連絡会や、子育てスキルを保護者へ指導する技法の研修を実施してまいります。
 次に、生活に困窮する方への就労支援についてでございますが、生活困窮者自立支援法に基づき区市が設置している自立相談支援機関では、ハローワークとも連携し、生活困窮者に対し、就労準備から就労自立まで個々の状況に応じたきめ細かな支援に取り組んでおります。
 また、都は、TOKYOチャレンジネットにおいて、住まいを失い、ネットカフェ等で寝泊まりしている方に対し、就労体験、技能資格取得支援、保証人を必要としない求人の紹介などを行っております。
 今後とも、区市やハローワーク等の関係機関と連携し、生活に困窮する方への就労支援に取り組んでまいります。
 次に、子供の居場所づくりの支援についてでございますが、さまざまな課題を抱える子供たちが、地域で安心して過ごせる居場所を確保することは重要でございます。
 現在、生活困窮者自立支援法に基づき、四十八の区市が子供の居場所の提供や学習生活支援等に取り組んでおり、町村部においては東京都が実施しております。
 また、都は、区市町村が民間団体等と連携し、支援員を配置して、学習支援や食事の提供、保護者に対する情報提供や相談支援などを一体的に行う居場所づくりを支援しております。
 今後とも、区市町村と連携し、感染症の拡大防止対策に配慮した上で、子供の居場所づくりを支援してまいります。
 最後に、在宅で人工呼吸器を使用する方への支援についてでございますが、難病患者についての自家発電装置等の整備は、国の制度の一環としての難病医療拠点・協力病院での整備に加え、都は、独自に対象となる医療機関を拡大し、補助事業を行っております。
 難病患者以外の方については、区市町村が自家発電装置等の貸与、給付を実施しており、その設置場所は、患者の個々の状況に応じ、個別支援計画において自宅や避難所等とすることが可能となっております。
 都は、こうした取り組みを行う区市町村を包括補助により支援するとともに、補助事業の説明会の機会などでその活用を促しており、今後とも、地区医師会や区市町村が参加する連絡会や研修会等において、本事業の活用を働きかけてまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 各種制度の見直しに当たってのLGBT当事者への支援についてでございますが、都におきましては、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いの解消のため、昨年十二月に基本計画を策定し、各施策に取り組んでございます。
 都の各種制度におけるLGBT当事者の取り扱いについては、それぞれ現行制度の趣旨や目的、法令等との整合性などを考慮して実施することが必要であり、都庁各局が工夫を凝らし、着実に歩みを進めていくべきものと認識しております。
 引き続き、普及啓発を通じ、都民一人一人の理解を得ながら、どのような配慮や工夫が可能であるかについて、個別具体的に検討してまいります。
〔生活文化局長野間達也君登壇〕

○生活文化局長(野間達也君) アートにエールを!東京プロジェクトについてでございますが、公演における観客数につきましては、九月十九日以降の催し物の開催についての国の通知やガイドラインなどを踏まえまして、主催者が判断することとなってございまして、本プロジェクトにおいても、十分な感染症対策を前提に、観客数を変更することは可能でございます。
 本プロジェクトの上映作品の動画につきましては、多くの都民が劇場等に足を運ぶきっかけともなりますよう、専用サイトなどで配信することとしてございます。

○議長(石川良一君) 以上をもって質問は終わりました。

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