令和二年東京都議会会議録第十七号

   午後六時開議

○議長(石川良一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十七番伊藤しょうこう君。
〔二十七番伊藤しょうこう君登壇〕

○二十七番(伊藤しょうこう君) まずは、多摩ニュータウンのまちづくりについて伺います。
 多摩ニュータウン事業は、今から半世紀以上前に、都心で働く人々の住宅難の解決策として、低廉で良好な住宅の大量供給を目的に始まりました。東京都もURなどと事業主体となり、地元四市や住民の協力により、まちづくりを進めてきました。
 現在では、ハード面の整備はおおむね終了し、住宅、業務、商業など、多様な施設が立地する複合拠点となりましたが、未利用地の開発を進める一方で、初期入居地区では、団地の老朽化などの課題も顕在化しています。
 そのため、都は、多摩ニュータウン地域再生ガイドラインを策定し、広域自治体として地元市を積極的に支援しながら、住宅の更新や地域包括ケアと連携した取り組みなどで再生を目指しています。
 かつて、多摩都市整備本部の廃止が打ち出された際に、都がニュータウン事業に対し無責任になるのではとの懸念があり、事業を一体的に所管する組織や担当理事の配置を求める要望が地元各市から出されました。都有地の処分が終わりつつある現在でも、都としてしっかりとした窓口を残してほしいという住民の声は強くあります。
 それでは、多摩ニュータウンのまちづくりと再生に、今後も都として責任を持って取り組む意思があるのか伺います。
 近年、多摩ニュータウンの八王子地域において、買い物など地域の利便性向上を目指し、都と市が土地利用方針を検討して、都市計画の位置づけや用途地域も変更した上で住民に説明したにもかかわらず、立て続けに起きた事例を紹介します。
 一つ目は、財務局の用地を都の施設として、地元とも十分に調整せずに活用を検討していた事例であり、二つ目は、都市整備局用地の売却先に民間事業者を選定しましたが、承認した物流施設を地元が反対した事例です。
 こうしたことが続くと、地元住民は困惑するとともに、都政への不信感にもつながりかねません。
 よって、今後都が土地の売却や定期借地など、多摩ニュータウンの土地利用を行う際には、都と地元市と地域住民が意見を交わし、積み重ねてきた合意をもとに、丁寧に進めるべきと考えますが、都の見解と対応を伺います。
 次に、高齢者の運転免許の更新について伺います。
 我が党は、高齢者がいつまでも元気に活躍できる健康長寿社会の実現を目指しており、高齢者が知識や経験を生かして、社会経済活動に活発に参加していただくことは大切です。
 特に、公共交通機関が未整備な多摩地域の元気な高齢者にとって、運転免許は日常生活を営む上で必要です。
 都内の運転免許保有者のうち、七十五歳以上は約二十九万人であり、今後十年間でさらに十万人以上ふえることが見込まれています。
 さて、最近、高齢者の運転免許の更新に必要な高齢者講習や認知機能検査について、何度かけてもつながらない、予約がとりづらいなどの声が寄せられています。
 新型コロナの影響により、一時期の間、検査、講習がストップしたことや、また、三密防止のため、受講参加の人数制限や申し込みの地域的な偏在もあるようです。
 こうした実情を踏まえ、状況を改善すべきと考えますが、警視庁の見解と改善への取り組みを伺います。
 次に、流域下水道の雨天時浸入水対策について伺います。
 都が管理する七カ所の水再生センターでは、多摩地域住民の七割の下水処理を行っています。
 昨年の秋の台風十九号により、各地で道路の損壊や河川の溢水など、大きな被害がありましたが、八王子水再生センターにつながる小宮町交差点のマンホールからも、高さ二メートルほどの汚水が十時間以上吹き上がり、周辺地域に多大な被害を与えました。
 この要因は、当日の二十四時間で三百ミリを超える記録的な豪雨があり、汚水処理のみが基本の分流式下水道の汚水管へ、大量に雨天時浸入水が発生したことに起因しています。
 そもそも水再生センターは、衛生的な都民生活のため不可欠なインフラ施設ですが、同時に、施設周辺住民のご理解とご協力で成り立っています。
 今回のマンホールからの溢水に伴う汚水の浸水に対し、多摩都民の安全・安心を守る流域下水道事業を担う当事者意識を持って、被災者への対応や改善策へ取り組むべきです。
 さて、流域下水道は、都が下水道幹線と水再生センターを、そして市町村が各家庭から幹線までの下水道施設をそれぞれ設置、管理しています。
 すなわち、ハード、ソフト両面で市町村と協力を図り、雨天時浸入水対策を行う必要がありますが、都の見解と取り組みを伺います。
 さて、この浸水被害に遭った八王子市小宮地区は、豪雨による用水の溢水や市道の雨水排水などにも課題が明らかになりました。そのため、地元も対策委員会を設けて、国と都と市との連携のもとで、浸水防止対策の実施を求めています。
 三年前にも同様の被害があり、住民からは、当日はもとより、その後の清掃や消毒などの復旧作業は非常につらいものであったので、二度と起きてほしくないと強い要望を受けました。
 近年、集中豪雨など災害の激甚化が顕著ですので、今回のような浸水被害が起きないよう、溢水防止に向けた実効力ある施策に対する都の取り組みを伺います。
 次に、建設残土の処分場の安全対策について伺います。
 平成二十九年の台風により、八王子市にある残土処分場で大規模な土砂崩落事故が発生し、都道が約二カ月間通行どめになりました。今後、同様の事故が起きれば、人的被害の可能性も大であります。
 昨年の三定において、土砂崩落事故の再発防止に向けて速やかな対応が必要と指摘したところ、都は、自然保護条例の開発許可制度を見直すため、施行規則の改正について自然環境保全審議会に諮問し、このたび中間のまとめの報告がありました。
 よって、このまとめの内容を踏まえ、残土処分場からの土砂崩落事故が二度と起きないよう、実効性のある安全対策が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 また、残土処分場となり得る山間地域を抱える多摩西部地域の市町村は、事業者の対応や住民の安全確保にこれまで苦労してきました。よって、土砂崩落事故を未然に防ぐためには、地元自治体との連携も欠かせません。
 それでは、これまで地元自治体との間でどのような協議を行い、今後どのように対応していくのか、都の見解を伺います。
 次に、都立高校体育館のLPガス空調機を活用した災害対策について伺います。
 猛暑対策のみならず、災害時の避難所機能も考慮し、LPガスを動力とする都立高校体育館空調機導入の検討を提案したところ、現在、都内で十一校に採用されました。
 そのうち、南多摩中等学校と深川高校を視察しました。各校とも空調機のほかに、災害用キットや発電機も配備されていました。授業や部活の熱中症対策にも効果がある上に、冬場でも快適な環境が期待できると、学校関係者からはおおむね好意的な評価でありました。
 さて、過去の災害時を振り返ると、猛暑や寒冷期も多いので、避難者が安心して過ごせる環境の一助となり得ます。避難所の運営に際しては、スマホの充電や投光器など、発電機の重要性が指摘されていますが、災害時に活用されなければ宝の持ち腐れとなりかねません。
 よって、LPガス空調機設置校を含め、都立高校を避難所として使用するために、その開設、運営を担う区市町村との連携や訓練が肝要ですが、どのように対応しているのか伺います。
 次に、都道北野街道の整備についても伺います。
 この付近一帯は、国道一六号の拡幅と八王子南バイパスの整備、それと連携する北野街道の整備を進めることにより、地域の交通機能が飛躍的に向上することが期待されます。
 今月には、第二回目となる国と都と市との共同による対策調整会議も開かれ、交通量調査の分析などを行ったと聞いています。
 それでは、都市計画道路の整備方針において、新たな検討箇所として位置づけられている北野街道について現在の取り組み状況を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
〔警視総監斉藤実君登壇〕

○警視総監(斉藤実君) 伊藤しょうこう議員の一般質問にお答えをいたします。
 コロナ禍における認知機能検査や高齢者講習への対応状況についてでありますが、議員ご指摘のとおり、近年の認知機能検査や高齢者講習の受検、受講者の増加によって、これらの予約がとりづらい状況にあり、ご不便をおかけしております。
 これを受けて警視庁では、昨年九月末から、認知機能検査と鮫洲及び府中運転免許試験場で実施する高齢者講習の予約受理業務を外部委託することで、受理体制の強化を図ったところであります。
 こうした中、新型コロナウイルスの影響により、四月十五日から一カ月半もの間、運転免許更新事務の停止を余儀なくされたほか、再開後においても受け入れ人数を制限せざるを得ず、それに伴い、認知機能検査の受検を希望される高齢者の方々にも、さらなるご負担をおかけする状況が続いております。
 こうした状況を解消するため、警視庁では、認知機能検査の実施回数をふやすことにより、昨年度以上に実施枠を確保し、検査を行っております。
 今後も、認知機能検査実施枠をさらに拡大するほか、予約方法のオンライン化についても検討をしてまいります。
 また、高齢者講習については、引き続き各教習所に対して、受講人員枠を拡大するよう申し入れを行ってまいります。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 災害に備えた区市町村と都立学校との連携についてでございますが、発災時の避難所運営が円滑に行われるためには、避難所の開設、運営を担う区市町村や自治会等と都立学校との協力関係を日ごろから築いていくことが重要でございます。
 このため、避難所指定を受けている学校では、区市町村等と発災時を想定した協議を行っております。具体的には、災害時における連絡体制や施設、設備の使用方法、物資の運搬方法などについて確認をしているところでございます。
 今後とも、都教育委員会は、総務局等の関係局と連携し、区市町村との関係強化を図るとともに、各学校において発災時を想定した防災訓練の実施など、実践的な取り組みが進むよう支援してまいります。
〔都市整備局長上野雄一君登壇〕

○都市整備局長(上野雄一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩ニュータウンのまちづくりについてでございます。
 都は、国などと大量の住宅を供給するとともに、道路や公園などの都市施設を計画的に整備し、多摩ニュータウンのまちづくりを先導的に進めてまいりました。
 一方、現在は、少子高齢化や住宅、施設の老朽化など、さまざまな課題が顕在化してきております。
 このため、多摩ニュータウンの再生に向けたまちづくりの方針や、都の基本的な考え方などを示す地域再生ガイドラインを策定いたしまして、地元市などによるまちづくりへの技術支援を行っております。
 今後も、都として、地元市や民間事業者などさまざまな主体と緊密に連携し、地域住民とも協働しながら、多様な世代が豊かに暮らせる活力あるまちの実現に向けて、多摩ニュータウンの再生により一層取り組んでまいります。
 次に、多摩ニュータウンの土地利用についてでございます。
 都はこれまでも、民間住宅事業者への用地の分譲に当たりましては、地元市との土地利用計画など建築条件についての協議や、これらの情報の地元住民への提供などを内容といたしました事前調整の確認書を交わしまして、このルールに基づき、まちづくりを進めてまいりました。
 かつては、住宅を大量供給していた時代でございましたけれども、今や豊かな暮らしと地域の活力の側面から、適切な土地利用が求められております。
 多摩ニュータウンが目指す将来像の実現に向けて、地元市とも連携し、地域住民等に対して必要な情報提供をするなど、合意形成を図りながら、多摩ニュータウンの再生を進めてまいります。
 最後に、北野街道の現在の取り組み状況についてでございます。
 都は、平成二十八年三月に都市計画道路の整備方針を策定いたしまして、道路網の拡充による東西方向のアクセス強化のため、国道一六号と八王子南バイパスとを結ぶ北野街道を新たな都市計画道路の検討箇所に位置づけました。
 これを踏まえ、交通量調査、将来交通量の推計及び道路構造の検討を行いまして、関係機関との協議を進めてまいりました。
 引き続き、国などの関係機関と連携しながら、計画案の取りまとめに向けて取り組んでまいります。
 さらに、地域の良好な交通環境を確保するため、北野街道の整備に合わせまして、国道一六号の交通円滑化対策が進められるよう、都は、国や八王子市とともに、対策の検討を進めてまいります。
〔下水道局長和賀井克夫君登壇〕

○下水道局長(和賀井克夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、市町村と協力した雨天時浸入水対策についてでございますが、雨天時浸入水対策を効率的、効果的に進めるためには、公共下水道を管理する市町村との連携が重要でございます。
 都はこれまで、流量調査など、市町村とともに雨天時浸入水の発生原因の調査と対策を着実に進めてまいりました。
 今年度、新たに流域下水道と公共下水道の接続点にICTを活用したマンホールぶたを設置することで、リアルタイムの水位情報を市町村と共有し、効率的に原因調査を進めてまいります。また、その原因が判明した箇所について、施設の改良に協力するなど、対策のスピードアップを図ってまいります。
 引き続き、市町村との連携を一層強化し、雨天時浸入水対策を積極的に推進してまいります。
 次に、流域下水道からの溢水を防ぐ対策についてでございますが、お話の令和元年東日本台風では、雨天時浸入水により、八王子水再生センターに晴天時の五倍を上回る下水が流入し、ポンプを全台稼働いたしましたが、流域下水道のマンホールから溢水したものでございます。
 そのため、八王子水再生センターにおける単独処理区編入に向け整備してまいりました来年一月稼働予定のポンプの稼働時期を四カ月前倒しするとともに、マンホールの流下能力を向上させる改造など、施設の排水能力をより一層強化することで、昨年の台風を踏まえた溢水被害の防止に向け、さまざまな対策を図ったところでございます。
 今後、今回の対策の効果検証を速やかに実施し、さらなる改善策につなげるなど、近年、大型化する台風に備え、都民の安全・安心の確保に向け、全力で取り組んでまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、残土処分場の実効性ある安全対策についてでございますが、近年増大化する台風の影響等に鑑み、自然保護条例の開発許可制度におきまして、これまで以上に土砂災害等の未然防止に配慮していくことが重要でございます。
 自然環境保全審議会の中間のまとめでは、許可基準を盛り土の安定等について詳細な定めのある都市計画法の基準等と同様のものとすべきことが、報告に盛り込まれました。
 また、許可条件への定期的な施工状況報告の追加や、適切に監視指導する指針策定が望ましいとの意見がございました。
 現在、中間のまとめについて、土砂埋立事業の規制条例を有する自治体も含め、都民の意見を募集してございます。
 今後、審議会の答申を踏まえて制度の見直しを行い、自然地における土砂災害を未然に防ぐことのできる、実効性のある安全対策に取り組んでまいります。
 次に、残土処分場の安全対策に係る地元自治体との連携についてでございますが、自然地における土砂災害の未然防止には、都による監視のみならず、地元自治体とも情報を共有しながら、災害発生のおそれを早期に発見し、対策を講じていくことが必要でございます。
 これまでも都は、土砂埋立事業につきまして、規制条例を有する市町における情報連絡会議等を活用しまして、地元自治体と情報交換を行うことで、危険性や違反等の早期発見に努めてまいりました。
 今後、開発許可制度の改正に合わせまして、地元自治体から危険性、違反等について速やかに情報提供を受ける仕組みを検討しまして、災害の未然防止を図ってまいります。

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