令和二年東京都議会会議録第十七号

○議長(石川良一君) 十七番うすい浩一君。
〔十七番うすい浩一君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(うすい浩一君) 初めに、認知症施策について質問します。
 私は、平成二十九年の一般質問で、認知症に対しての早期発見の重要性を訴えました。
 知事からは、早期発見に力を入れていくとの答弁があり、早速、都は、平成三十一年度から認知症検診推進事業を開始したことを高く評価するところであります。
 この検診は、認知症に関する正しい知識の普及啓発と早期診断に向けた認知症検診を推進し、認知症の早期対応の体制づくりを進める区市町村を支援する事業であります。
 現在、二十三区のうち四区が取り組んでおり、令和三年度から五区が開始予定と聞いています。
 しかし、認知症の人や家族は、診断後、今後の生活などに大きな不安を抱えることになり、それぞれ診断された人に対して、個々につながりフォローしていくことが大変に重要であります。
 そこで、身近な地域で生活面の困り事に対する支援を担う人材の育成を区市町村と連携し、強力に推し進めていくべきです。都の見解を求めます。
 また、厚生労働省によると、六十五歳未満で発症する若年性認知症は、全国で約四万人といわれており、平均五十一歳という働き盛りの世代で発症するため、就労や生活費、子供の教育費等の経済的負担は大きいとともに、居場所づくり等、さまざまな分野にわたる総合的な支援が求められます。
 そこで、現在のコロナ禍の状況を鑑み、若年性認知症総合支援センターの相談もオンライン化を取り入れて、若年性認知症の方々に対し、寄り添ったサポートをするべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、事業承継について質問します。
 二〇一六年度総務省個人企業経済調査等を用いた中小企業庁の推計によると、全国で、二〇二五年ごろまでに平均引退年齢を超える中小企業、小規模事業者の経営者は約二百四十五万人となり、うち約半数の百二十七万人が後継者未定となっております。
 このままこうした状況を放置してしまうと、中小企業の廃業が急増し、二〇二五年までの十年間の累計で、約六百五十万人の雇用、約二十二兆円のGDPが失われる可能性があるともされております。
 加えて、この新型コロナウイルス感染症の影響により、都内においても、本来であれば承継されるべき事業も、急激な経営環境の悪化により、廃業に追い込まれてしまうことも懸念されます。
 こうした中、都においては、これまでも事業承継支援に取り組んできているところですが、さきの第二回臨時会では、経済・港湾委員会にて、我が党からの質問に答える形で、中小企業を取り巻く厳しい状況を踏まえ、事業承継支援のプラットホームを構築し、オンラインによる相談などに取り組むとしております。
 私も、かねてよりオンラインによる相談については、感染拡大防止につながる有効な取り組みと考えており、まさに時宜にかなった取り組みと評価します。
 一方、中小企業の経営者の方々は日々忙しく奔走されており、なかなか時間をゆっくりととることもできません。そのため、オンラインでの本事業の実施に当たっては、いつでも活用できるよう、パソコン以外の身近な機器でも簡単にアクセスできるようにすべきであり、あわせて、支援を本当に必要としている方々に対して、速やかに集中的なPRを行っていくことが重要と考えますが、都の見解を求めます。
 次に、木密地域対策について質問します。
 いつ発生してもおかしくない首都直下地震から都民の生命と財産を守るためには、木造住宅密集地域の不燃化対策のさらなる加速が必要です。その不燃化対策を着実に進めるためには、住民の積極的な協力が何より肝要です。
 そのためにも、移転が必要となる住民がコミュニティを失うことなく、夢や希望を持ち、安心して移り住む対策を講じるべきです。
 私は、平成三十一年第一回定例会の一般質問で、木密地域の権利者や借家人等の移転先の確保の重要性と、民間の力を生かしての魅力的な計画をつくることが必要と指摘しました。
 都が新たな取り組みとして、足立区の江北地区と関原地区の都有地を活用しての魅力的な移転先事業を開始したことは、高く評価いたします。
 そこで、魅力的な移転先整備事業の第一弾である江北地区の取り組み及び応募状況について、都の見解を求めます。
 都は、ことし三月に防災都市づくり推進計画の基本方針を公表し、今年度内には整備プログラムを取りまとめ、来年度から新たな計画をスタートすると聞いています。
 魅力的な移転先整備事業の取り組み過程で、都はアンケート調査を実施し、その結果、木密地域の住民に移転先への関心があることが改めて確認されました。
 今後、このような事業を通じて得られた知見も踏まえ、住民の生活再建支援にも資するよう、木密地域改善に向けたさらなる取り組みを展開していくべきです。都の見解を求めます。
 次に、区市町村地域におけるリカレント教育の推進について質問します。
 これまでの伝統的な人生モデルは、教育を受け、就労し、退職後は余生という、単線一方通行型でありました。今後、人生百年時代が到来し、ソサエティー五・〇により仕事のスキルが変化し、学んで働くという関係が、より柔軟で複線的な形に移っていくものと考えます。
 多くの方々がパワフルに活躍し、持続可能な社会を創造していくためには、働くための学び直しであるリカレント教育が重要になります。
 リカレント教育には、若年層の就労支援や現役世代のスキルアップ、出産、育児で離職した女性の再就職や高齢層のセカンドキャリアまで、さまざまあります。産学官が連携し、ニーズに即したリカレント教育を実施する仕組みづくりに取り組むことは、世界の時流であります。
 昨年、都は、戦略ビジョンにおいて、キャリアアップデートプロジェクトとして、都立大学などにおけるリカレント教育の推進を打ち出しています。高く評価しますが、都立以外の大学と地元自治体が連携して行うリカレント教育への支援も大変に重要であります。
 現在、都内には百四十もの大学が集積しており、東京の大きな財産であります。
 私の地元の足立区でも現在五校の大学が存在し、来年度には六校目となる文教大学が開学します。地元の大学とのリカレント教育の連携強化は、足立区民にとっても、人生百年時代を元気に活躍する上で大きな礎となります。
 多くの都民がみずからの個性や能力を生かして、社会の重要な担い手として活躍していくために、各自治体、各大学が地域の実情を踏まえて進めるリカレント教育を都として支援していくべきですが、都の見解を求めます。
 また、都立以外の大学も対象に含めたリカレント教育の推進を都の計画に位置づけ、推進体制を庁内で整え、都が東京全体の包括的な推進役を担い、区市町村が個別の取り組みを実施することで、よりよい成果が得られるものと考えます。
 東京における総合的なリカレント教育の推進について、知事の所見を求めます。
 次に、私の地元足立区江北エリアのインフラ整備について質問します。
 江北エリアにおいて、足立区民の悲願であった大学病院の誘致が実現し、来年度中の開院が予定されています。その東京女子医科大学(仮称)東医療センター新病院は、区部東北部唯一の第三次救急病院であり、また、地域災害拠点中核病院として、足立区民のみならず、広域にわたって都民の命を守る大変に重要な病院であります。
 足立区としても、道路などの基盤整備や創出された用地を活用して施設整備とまちづくりを戦略的に進めていると聞いております。
 とりわけ病院周辺の道路は、災害時においても通行を確保する必要があり、無電柱化が急務であります。既に病院周辺西側の区道など一部の区間では、都の補助を活用して無電柱化が進められておりますが、例えば病院の最寄り駅である江北駅からのアクセスについても、同様に無電柱化が必須と考えます。
 そこで、この地域における区道のさらなる無電柱化の推進を図るべきです。都の見解を求めます。
 次に、この地域を通過している都道三〇七号線江北バス通りは、幅員が狭く、地域からは危険との声が多数上がっています。
 そこで、歩行空間確保のため、無電柱化を図るなど対策を講じるべきと考えますが、都の見解を求めます。
 この江北エリアにおいては、大学病院が来ることにより、区民にとって夢と希望が広がるまちづくりといっても過言ではありません。
 このエリア内には、施設が地下化され、地上部分が更地となっている江北給水所が昨年完成しました。その南側には、統合され更地となる足立区立高野小学校がありますが、区では、この敷地に、健康というテーマに沿って、少年サッカーの公式規格を満たし、かつ多目的に利用できる広場を整備する計画を作成していると聞いています。
 そこで、この江北給水所の上部利用については、都は、区の計画と連携して進めるべきであります。
 区立高野小学校の跡地と江北給水所の上部の一体利用について、都の見解を求め、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) うすい浩一議員の一般質問にお答えいたします。
 私からは、リカレント教育の推進についてお答えをさせていただきます。
 デジタル化の急速な進展や雇用の流動化など、時代や社会構造の大きな変化に対応するためには、知識や技術を常にアップデートし、みずからの価値を高めることが不可欠であります。人生百年時代におきまして、リカレント教育の充実は今後ますます重要になってまいります。
 このため、未来の東京戦略ビジョンにおきましては、生涯を通じたキャリアアップデートプロジェクトを掲げまして、都立大学のプレミアム・カレッジを初めとしたセカンドキャリアにつながる学び直しや、現役世代の実践的な学びなどの施策を盛り込んでおります。
 こうした取り組みをさらに広げていくためには、東京に数多く立地する大学や、区市町村とも連携いたしまして、ライフステージに応じた幅広いリカレント教育の展開を図っていく必要がございます。
 生涯を通じた学びやキャリアアップを通じまして、都民一人一人が充実した人生を送ることが、東京の都市の活力向上や、持続的な発展につながってまいります。
 東京全体のリカレント教育の充実に向けまして、多様な主体と連携した取り組みなど、プロジェクトのバージョンアップを図って、長期戦略に盛り込んでまいります。
 その他のご質問につきましては、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、認知症支援を担う人材育成についてでございますが、認知症の方と家族が安心して暮らせるようにするためには、生活面での困り事や不安を理解し、身近な地域で生活支援を担う人材の育成が必要でございます。
 都は、認知症を正しく理解し、地域で認知症の方への声かけや見守り等を行う認知症サポーターを養成するため、サポーター養成講座の開催に取り組む区市町村を包括補助により支援するとともに、講師を養成しております。
 さらに、今年度から、困り事の相談や外出支援など、認知症の方や家族のニーズ等と認知症サポーターを中心とした活動をつなぐ仕組みの整備に向け、その中核となるコーディネーターの養成に取り組んでまいります。
 次に、若年性認知症の方への支援についてでございますが、若年性認知症は、働き盛りの世代が発症することから、都は、医療や介護だけでなく、就労の継続など多岐にわたる相談にワンストップで対応する若年性認知症総合支援センターを区部と多摩の二カ所に設置し、本人や家族の状況に応じた支援を行っております。
 センターでは、現在、若年性認知症の方やその家族からの相談について、来訪によるほか、電話、訪問、メールなど、相談者のニーズに応じたさまざまな方法で対応しております。
 これらに加え、ウエブ会議システムなどが広く普及してきたことから、今年度中にオンライン相談を開始いたします。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) オンラインを活用した事業承継支援についてですが、感染症の影響により、中小企業に直接対面して支援を行うことが困難な状況下にあっても、ニーズの高い支援を継続して提供していく必要がございます。
 このため、都は、相談窓口に来訪しなくても同様の支援を受けることができる事業承継プラットホームの構築を進めているところでございます。
 今月からは、ウエブ会議システムを活用した事業承継相談を開始しており、今後は、スマートフォンなどでもさまざまな支援を利用できるよう、利便性を高めてまいります。
 さらに、インターネットの検索キーワードに応じて表示される広告の仕組みを活用し、多くの中小企業への周知を今後集中的に行ってまいります。
 これまでの対面支援に加えまして、非対面でも多様な支援を提供し、円滑な事業承継を後押ししてまいります。
〔都市整備局長上野雄一君登壇〕

○都市整備局長(上野雄一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、魅力的な移転先整備事業についてでございます。
 木密地域の不燃化を加速するには、権利者の方々が安心して生活再建できるよう、コミュニティを維持しながら入居できる魅力的な移転先を確保することが効果的でございます。
 そのため、都は、都有地等を活用し、権利者の方々の受け皿となる移転先の整備に取り組むことといたしました。
 先行実施地区の第一弾でございます江北地区につきましては、本年六月に事業者の募集を開始し、コミュニティの維持に配慮いたしました共用スペースの整備や、周辺環境、景観に配慮した緑化、さらには災害時の対応策など、多様な観点から事業者の積極的な創意工夫を促してまいりました。
 先日、事業者による提案書の提出を受けまして、今後、審査委員会によるヒアリングなどを実施し、十二月ごろに事業予定者を決定してまいります。
 次に、木密地域改善に向けた取り組みの展開についてでございます。
 都は、木密地域の不燃化を加速させていくため、ことし三月、防災都市づくり推進計画の基本方針を改定いたしまして、不燃化特区制度のさらなる活用に加えて、権利者の方々のニーズに応じた生活再建にも資するよう、高齢者の住みかえの円滑化策など、一歩踏み込んだ取り組みを新たに展開していくことといたしました。
 具体的には、都有地等を活用した魅力的な移転先の整備のさらなる展開や、不燃化特区制度を活用した住みかえ費用助成の活用の拡大などを図ってまいります。
 また、高齢者等の入居を拒まない東京ささエール住宅の一層の普及促進など、住宅施策とも連携してまいります。
 これらによりまして、住民が安心して移転できる環境を提供しながら、不燃化を促進してまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) リカレント教育の充実についてでございますが、人生百年時代を迎え、誰もが生涯を通じて活躍できる社会を実現していくためには、スキルや知識を常にアップデートするためのリカレント教育が求められます。
 都が設置する産業技術大学院大学及び産業技術高等専門学校では、自治体や企業等と連携し、シニアの起業を支援するスタートアップ講座や、社会人のスキルアップ等を目的とした情報セキュリティー講座を実施してございます。
 また、都では、シニアの希望等に応じまして、再就職や起業、NPO法人設立など、幅広くセカンドキャリアについて学べる講座も開催してございます。
 こうした取り組みに加え、今後、未来の東京戦略ビジョンに掲げる幅広い層への社会人教育を展開するため、多様な主体が連携した取り組みの充実を図ってまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、足立区に開院予定の大学病院周辺区道の無電柱化についてでございますが、無電柱化は、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を図る上で重要でございます。
 この病院の西側に接する区道につきましては、現在、電線共同溝本体工事が進められており、都は、防災に寄与する路線として財政支援を行っております。
 また、病院北側には環状七号線が、東側には尾久橋通りがあり、それぞれ第一次緊急輸送道路に指定されており、病院とこれら緊急輸送道路を結ぶ区道の無電柱化についても、防災に寄与する重要な事業でございます。
 今後とも、地元区に対して財政支援を行うなど、無電柱化を積極的に推進してまいります。
 次に、江北バス通りにおける無電柱化等歩行空間の確保についてでございますが、本路線は道幅も狭く、歩道もない状況であり、安全性を確保するため、路側帯のカラー舗装化や交差点部の滑りどめ舗装などを行ってきております。
 無電柱化につきましては、現在、都として、道幅の狭い道路においても整備を進めるため、電線管理者とも連携し、地上機器のコンパクト化や街路灯と一体となった機器の開発に取り組んでおります。
 引き続き、技術開発に取り組み、無電柱化を推進することで、安全で快適な歩行空間の確保に努めてまいります。
〔水道局長浜佳葉子君登壇〕

○水道局長(浜佳葉子君) 江北給水所の上部利用についてでございますが、江北給水所は、交通至便の好立地にあることから、水道局では給水所上部を貴重な経営資源として捉え、企業努力の一環として利活用を図り、収益の確保に努めることとしております。
 一方、足立区からは、給水所上部について、区がまちの将来像を示した江北エリアデザイン計画に配慮した活用を検討願いたいとの要望をいただいております。
 同給水所上部の利活用につきましては、配水池上部という事業上の制約や収益の確保、立地特性等を総合的に勘案するとともに、江北エリアデザイン計画に示されている健康という視点や高野小学校跡地との機能連携など、地元の意見も十分に考慮しながら検討を進めてまいります。

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