令和二年東京都議会会議録第十七号

○議長(石川良一君) 六番内山真吾君。
〔六番内山真吾君登壇〕

○六番(内山真吾君) 子供ホスピス設置支援についてお伺いをいたします。
 子供ホスピスとは、小児がんや難病など生命を脅かす病気等を患う子供の心、成長、発達とその家族を支える施設であります。一九八二年に英国オックスフォードに設立されたヘレン・アンド・ダグラスハウスをきっかけに世界的に広がりました。海外では、イギリス、オランダ、ドイツを初め各国で取り組まれております。
 一方、日本では、大阪や横浜で開業し始めておりますが、東京都にはまだありません。
 小児がん、難病等の子供たちは全国で十四万人、うち東京都には約八千人、家族を合わせると三万人といわれております。子供は、病気や入院によって、遊びややりたいことを制限され、学校や友達と離れて寂しい思いをしています。また、治療方法がない子供たちを支える家族には、心身ともに大きな負担がのしかかります。
 そういったさまざまな制約の中で生きている子供たちに、楽しい時間を家族で寄り添いながらつくり出し、どんなに重い病気や障害のある子供も一人の人として大切にされ、家族のきずな、地域のつながりのもとで、それぞれが自分自身の可能性を発揮できるように、子供の命と向き合う家族の大切な時間を支えていく場所が必要です。
 生命を脅かされている子供たちに対し、痛みを和らげ、安らぎを与え、たとえ残された日々がわずかであったとしても、命が尽きる瞬間まで成長を促し続けることを目的とした子供ホスピスの設置に向け、支援すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 続きまして、児童相談所一時保護所の改善に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
 このテーマは、昨年三月の予算特別委員会で質疑をし、一時保護児童への支援体制の強化策等についての検討が始まりました。
 昨年九月の一般質問では、入所時に行っていた頭髪の黒染め強要の取りやめ、懲罰的に行ってきたとの指摘もあった個別指導のあり方の見直しにも言及があり、昭和から脈々と続いてきた非行児童を前提とした管理的、懲罰的な運営から、被虐待児童やさまざまな厳しい環境で育った児童を対象とした一時保護施設として、歴史的な脱却、転換のさなかにあるといえます。
 その改善に向けた取り組みに関しては、現在八つのテーマを掲げており、このうち懲罰的との指摘のあった個別指導の廃止や、食事時間の私語禁止が見直しとなるなど、改善に向けた取り組みが始まっていると聞いております。
 しかし、一方で、私服の持ち込みについては、いまだ実行に至っていないと聞いています。
 私には現在、小学校二年生と、二歳になる二人の娘がいます。ピンクや紫、水色の服が好きで、上の子は、最近ちょっと大人っぽい服に興味を持ち出して、先日購入した服を、先生や友達におしゃれだねと褒められ、最近では二日に一回その服を着ています。
 その同世代の子供たちが、虐待等とはいえ、親元を離れて施設に保護され、精神的に不安でいっぱいの中、お気に入りの、例えばピンクや紫、水色の洋服も着られずに、自分の好みとは違う服を日々着なくてはならないとすれば、子供たちの精神的ダメージに追い打ちをかけることになります。そして、これはハイティーンの児童も含めて、年齢に関係なくいえることだと思います。親との関係もあり、着がえをすぐに用意できないケースがあることは理解をいたします。しかし、そうではないケースも当然あり、着てきた洋服を洗濯して、ローテーションの一つに加えることなどは容易にできるはずです。
 そこで、改善に向けた八つのテーマについては、どれもできることから速やかにスピード感を持って取り組むべきであると考えますが、私服の持ち込みも含む現在の支援改善に向けた取り組み状況についてお伺いをいたします。
 続きまして、教員の資質向上についてお伺いをいたします。
 現在、小中学校教員のなり手不足は深刻で、教員採用選考の倍率は年々下がり、非常勤講師や産休育休代替等の臨時的任用教員も各学校ごとに探しておりますが、探し出すのにかなり苦労しているのが実態であります。
 一方、国においては、三十人学級の導入もにわかに現実味を帯びてきました。少子化で生じる余剰人員などで、十年かけて段階的に移行すれば対応可能との見解も文部科学省は出しておりましたが、確かに国全体としては子供の数は確実に減っており、既に独自に少人数学級を導入している県も少なくありません。
 しかし、これまでの三十五人学級等の少人数学級の導入に関しても、まだまだ子供の数がふえている首都圏、東京都においては、空き教室の不足とあわせて、教員の質、量の確保が課題となり、慎重な議論がされてきました。
 教員の採用は都道府県ごとですので、地方は導入可能でも、首都圏、東京都において、少子化の余剰人員などで対応できるかといわれると、大きな疑問が残ります。
 私は、三十五人、三十人学級などの少人数学級に関しては賛成です。どんな事情であれ、これらが進むことは歓迎します。大歓迎です。
 一方で、ただでさえ年々下がっている現下の採用倍率を考えると、新規採用教員を選考して、研修して、育てていくという段階から、何とかこの定数を確保して育てていくという状況になっていくことが予想される中で、これまでの新規採用教員の研修体制の抜本的な見直しを図らなくてはならないと思っています。
 採用後の研修に関しては、働き方改革の中で、むやみにふやすことは難しいと理解しています。
 そこで、お伺いしたいのは採用前の研修についてです。
 まず、東京教師養成塾です。平成十七年度からスタートしたこの事業は、通常の教職課程に加え、特別教育実習や教科等指導力養成講座など、採用前から学校現場に入り、経験を積んでいきます。現在、小学校コース百三十名以内、特別支援学校コース二十名以内となっておりますが、平成二十九年からは右肩下がりに人数が減ってきており、ここ数年は、募集人員まで応募が届いていない現状があります。
 採用前研修がなかなか打てない中において、この養成塾での研修は非常に貴重な機会だと思いますが、定員まで届かない理由としては、学生から見ても、そもそもこの養成塾に魅力がなくなってきているのか、はたまた金銭的な事情等で、何らかの理由によって参加できないかというのが考えられます。
 そこで、お伺いいたします。
 東京教師養成塾事業について、しっかりとその内容をわかりやすくPRするとともに、学生にアンケートをとるなど、なぜ、現在右肩下がりで応募が少なくなっているかなどを研究し、教員の資質向上が今まで以上に求められている中において、そのあり方を検討するなど、教員志望者の資質向上のための方策が必要であると考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 また、都教育委員会が、採用前の選考合格者に実施をしている採用前実践的指導力養成講座ですが、これまでは、会場のキャパシティーに上限があったり、遠方からの参加が負担になったり、受講することにハードルもありましたが、そもそもこのコロナ禍においては、一カ所に集めて講座を実施することは困難なことから、オンラインに切りかえての実施をすべきであると考えますが、いかがでしょうか、見解を伺います。
 続きまして、スクールサポートスタッフについてお伺いをいたします。
 都内小中学校では、三月から三カ月間、臨時休校となりました。六月一日から段階的に学校再開となった自治体が多く、実質三カ月半のおくれを九カ月半で取り戻すことになり、土曜授業の実施や夏休みを短縮、自治体によっては、学校行事を極力減らすなど、標準授業時数の確保に追われているのが現状です。
 また、それにあわせて感染症対策も加わり、学校現場では、教員の加配とともに、さまざまな業務をサポートするスクールサポートスタッフの増員を求める声が、我々のもとにも東京都中学校長会を初めとして多く寄せられています。
 しかし、一方で、コロナ禍によって、六月から一校当たり予算上限百三十万円を百六十万円に引き上げたにもかかわらず、市区町村教育委員会を通じた都への要望はさほど上がってきておらず、予算にもまだ余裕がある状態であると聞いています。
 都は、予算をつけていて、まだ余裕があるのに現場から要望が上がってくる。この不可解な現象を学校現場、市区町村教育委員会、東京都教育委員会のそれぞれにヒアリングをしていくと、幾つかの原因が見えてきました。
 大きく分けると、そもそもスクールサポートスタッフのなり手を見つけることが大変なこと。そして、市区町村教育委員会や各学校に情報がしっかりと周知されていないということです。
 例えば、一部の自治体では、スクールサポートスタッフの手配を学校任せにせず、教育委員会で募集をかけ、各学校の要望に合わせて手配をしています。
 これと同様の機能を東京学校支援機構、ティープロに持たせて、人材バンクとして機能できないかを確認したところ、実は既に募集を行っており、ことし九月現在では、そのバンクには千六百人近い方々が登録をされているとのことでした。しかし、実際に採用されたのは、スクールサポートスタッフを含む事務事業で何と七十五名のみとなっており、この一年間で登録された方々の中には、いまだに多くの採用されていない方々がいらっしゃるということが明らかになりました。
 何人かの校長に話を伺いましたが、学校現場には、スクールサポートスタッフの紹介をティープロに依頼できるということはまだまだ知られていないのは現状のようです。
 教員の負担軽減は、コロナの前より重要な問題でしたが、コロナによってさらに負担がふえ、必要とされているのに、学校の予算の上限額まで活用することができていない現状を鑑み、学校現場において、感染症拡大で増大する業務にもスクールサポートスタッフを柔軟に運用できることをさらに周知するとともに、人材確保について支援する取り組みを行うべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 続きまして、傷病鳥獣の保護についてお伺いをいたします。
 東京都は、一千四百万人が住む大都市であると同時に、特に多くの自然と隣接した多摩地域では、市街地においてもタヌキ等の鳥獣と遭遇することもあるなど、依然として自然が残っております。
 これら野生鳥獣が交通事故に遭遇するなどして傷ついた場合、人道的な観点からも保護するべきとされており、都では、生活被害をもたらしているカラスやドバト、外来種のアライグマ等を除く鳥獣については保護を行っておりますが、現在、新型コロナウイルス感染拡大に当たり、感染リスクを理由に傷病鳥獣の保護を原則停止しています。
 ところが、野生鳥獣の保護、取り扱いには、そもそもさまざまな感染症のリスクがあるため、獣医師や鳥獣保護管理推進員は、コロナ以前より万全の対策をしていると聞いています。
 そこで、傷病野生鳥獣保護を速やかに再開するべきと考えますが、都の見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 内山真吾議員の一般質問にお答えいたします。
 小児がんや難病の子供たちへの支援についてのお尋ねでございます。
 私は、先日、NPO法人東京こどもホスピスプロジェクトの方々と直接お会いする機会をいただきまして、懸命に病気と闘う子供たちやその看護に当たるご家族を支えたいという強い思いを伺うとともに、国内外の子供ホスピスの取り組みをお聞かせいただきました。
 都におきましては、がんを患う子供たちに適切に医療を提供できますよう、東京都小児がん診療病院の認定であるとか、医療連携体制の構築に取り組んでおります。
 また、難病の子供たちが、地域で安心して療養生活を送れるように、難病相談・支援センターにおいて、療養相談や患者、家族交流会への支援等も行っております。
 今後とも、在宅において療養生活を送る子供やその家族が安心して暮らせるよう、必要な環境の整備を進めてまいりたいと考えております。
 その他のご質問は教育長、関係局長からとさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、教員志望者の養成についてでございますが、教員を養成する段階におきまして、その資質の向上を図るためには、各大学が教職課程を充実させた上で、大学と教育委員会が、互いの役割を理解し、連携を強化して取り組むことが重要でございます。
 そのため、都教育委員会は、養成段階終了時に身につけておくべき最小限の資質や能力を示した東京都教職課程カリキュラムを平成二十九年に策定し、各大学に提示をしたところでございます。
 また、教員の一層の資質向上に向け、法に基づき、東京都教員育成協議会を設置し、大学、都及び区市町村教育委員会、都内公立学校間で、教員養成や教員研修のあり方について、毎年度協議を行っているところでございます。
 今後、この協議会におきまして、お話の東京教師養成塾事業のあり方などにつきましても、教員養成段階から採用後の人材育成について協議を行い、教員のさらなる資質向上を図ってまいります。
 次に、採用前実践的指導力養成講座のオンライン化についてでございますが、都教育委員会は、教員としての職務を円滑にスタートできるよう、教員採用選考の合格者を対象に、学習指導や学級経営、特別支援教育などについて学ぶことができる採用前実践的指導力養成講座を平成二十五年度から実施しているところでございます。
 これまでは、ご指摘のとおり、他道府県等、遠方に在住の合格者がこの講座を希望した場合には、東京都教職員研修センター等に来所して受講する必要がございましたが、昨年度は集合研修の一部の講座を動画閲覧できるようにいたしているところでございます。
 今年度以降は、集合研修は実施をいたしませんで、全ての講座をオンラインで動画閲覧できるようにいたしますとともに、採用後も閲覧できるようにし、さらなる利便性の向上を図ってまいります。
 最後に、スクールサポートスタッフについてでございますが、都教育委員会は、教員の負担軽減を図るため、スクールサポートスタッフを配置する区市町村に、その人件費を全額補助しているところでございます。
 今年度は、消毒等の感染症対策にも活用できることを周知し、年度途中に二回、区市町村の意向を調査し、増員のための追加支援を行っているところでございます。また、人材確保を支援する東京学校支援機構のティープロサポーターバンクの活用もあわせて周知をしているところでございます。
 今後は、本事業の活用を一層促進するため、区市町村と学校に対しまして、教員が児童生徒の指導に集中できた事例や、短時間勤務の人材を組み合わせて有効に活用している事例などを紹介いたしますとともに、東京学校支援機構において、人材確保に向けたマッチングをさらに進めてまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 一時保護所に関するご質問にお答えいたします。
 都は昨年度、一時保護所における児童への支援の改善を図るため、外部の専門家も交えながら、職員の支援力の向上や個別的な支援のあり方、私服を含む私物所持のあり方など、八つの項目について検討し、本年三月、結果を取りまとめました。
 今年度、この結果を踏まえ、保護所ごとに取り組む項目を決め、トラウマなど児童の抱える課題に適切に対応するためのアセスメントシートの導入や、心理教育を活用した個別支援などを実施しており、さらに十月から、これまで検討を進めてきた私服の持ち込みについても開始いたします。
 今後、各所の取り組みの効果を踏まえ、全ての保護所に展開していく予定であり、引き続き、支援の改善に取り組みながら、一人一人の児童に寄り添った丁寧な支援を行ってまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 傷病野生鳥獣保護業務の再開についてでございますが、都では、都民に被害をもたらすカラス等の有害鳥獣等を除きまして、けがや病気で弱った鳥獣、年間約五百から六百件につきまして、動物病院での治療や一時保護飼養を実施してございます。
 今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴いまして、緊急事態宣言が発令された四月から、傷病鳥獣搬送時の対人接触による感染拡大防止を目的としまして、都民に危険が及ぶ場合などを除いて、傷病野生鳥獣保護業務を停止してございます。
 今般、都は、感染拡大防止の徹底と社会経済活動の推進の両立に力を入れているところでございまして、傷病鳥獣の搬送等における十分な感染対策の検討や、受け入れに当たり、連携している関係団体との調整など、十月中の再開に向けて準備を進めてまいります。

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