令和二年東京都議会会議録第十七号

○議長(石川良一君) 二十八番田村利光君。
〔二十八番田村利光君登壇〕

○二十八番(田村利光君) 都議会自由民主党田村利光です。
 まず、コロナ禍における医療体制支援についてお聞きします。
 新型コロナウイルス感染が拡大する中、医療機関への受診を控える動きがあります。過度な診察控えは症状悪化につながりかねません。同時に、検診の受診者も減っていると聞きます。必要な診察と検診の受診は、都民の健康を守る両輪です。東京都医師会からも検診に対する支援の要望が出されています。
 そこで、東京都として都民の健康を守る意味からも、都民が適切に健康診断を受診できるような取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 さて、医療機関の受診控えは、都民の健康へ影響を与える可能性があるとともに、医療機関の経営悪化を招き、医療体制の確保にも影響を与えています。多摩・島しょ地域では、地域医療の中核を担う公立病院の経営が悪化し、市長会、町村会からも、医療体制の確保への危機感を訴える声が上がっています。
 地域医療確保のため、多摩・島しょ地域の公立病院の経営に対する支援が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、不妊に関する情報の周知についてお聞きします。
 菅総理は、少子化対策の一環として、不妊治療の助成に言及しました。多額な費用のかかる不妊治療の経済的負担の軽減は、多くの治療者の励みになると思います。
 また、特に女性の不妊治療は、頻繁な通院や自宅での治療など、時間的、精神的な負担も大きく、短期で結果を出すことも必要です。
 そこで、不妊治療の成功の鍵は、治療開始の年齢にあるともいわれています。患者の年齢が三十三歳までは二〇%程度の出産率がありますが、四十歳では七・七%にまで下がります。また、結婚してから不妊治療を始めるまでの期間を短くすることも必要です。
 都は、未来の東京戦略ビジョンにおいて、二〇四〇年代に合計特殊出生率が二・〇七になると描いていますが、ならば、揺りかごからの道だけでなく、揺りかごまでの道のりも整えるべきだと思います。
 そこで、若年層への不妊に関する情報の周知、啓発活動が重要と思われますが、都の取り組みについてお聞きします。
 次に、昨日の我が党の代表質問でも取り上げた特別支援学校のICT環境についてお聞きします。
 特別支援学校に通う生徒の障害は、盲、ろう、肢体不自由、知的障害、病弱と、その種類も程度も違います。つまり、子供一人一人に合ったICT環境が必要です。そして、それさえ整えば、意思表示が可能になり、将来の就業にもつながる可能性も出てきます。
 そのために必要不可欠なのは、ICT機器の整備と利用方法のアドバイスを行うICT支援員の充実です。現在、一校につき二週間に一回程度の支援員の巡回の回数をふやすとともに、教員とICT支援員が協力したICT教育体制の充実が必要と考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、働き方改革の取り組みについて伺います。
 建設業界では、現場従事者の不足が深刻化しており、若手技術者の確保と育成が課題となっています。そして、若者に選ばれない原因の一つに、休日が少ないことが挙げられます。
 そのような中、建設業界では、長時間労働について、二〇二四年四月より罰則つき上限規制が適用されることを踏まえ、その対応の中心となる週休二日の取り組みを進めています。
 都は、働き方改革の一環として、週休二日モデル工事を発注していますが、例えば、財務局の工事では、週休二日の対象が土日祝日のみであり、現場の実情に合った柔軟な取得が認められていません。
 そこで、平日も週休二日の対象にするべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、災害時の応急復旧工事対応の契約の取り扱いについてお聞きします。
 数十年に一度といわれる風水害が毎年のように我が国に来襲しています。都では、先人たちの努力によって、都民の生命、財産を守り、首都機能を維持していくために、インフラ整備に膨大な資源を投入してきました。
 しかし、課題も残されています。例えば、西多摩や島しょなど災害時に孤立しやすい地域の住民生活をしっかり守っていくことは、その一例です。
 こうした課題の解決には、計画的に首都強靭化に取り組む必要があります。
 また、昨年の台風十九号のような甚大な災害が発生した際の、被災地域での災害復旧対応力の強化が重要な課題です。
 このような災害時には、地域貢献意欲を持つ地場の中小建設業の能力を生かすため、地場建設業が応急復旧工事に柔軟に対応できる環境の整備が必要です。
 今後、同様の災害が発生した際の都の契約上の取り組みについて伺います。
 次に、多摩地区の水道の災害対策についてお聞きします。
 多摩地区の水道は、都営一元化後、小規模浄水所の整備、送配水管ネットワークの構築、配水管の耐震継ぎ手化など計画的に進められており、近年、給水安定性は格段に向上してきています。
 しかし、昨年の台風十九号では、小規模河川の増水などにより、取水施設への土砂流入、送配水管の流出など、西多摩地域の山間部を中心に多くの水道施設が被害を受け、奥多摩町では約二千七百戸、日の出町では約五百戸の断水が発生しました。
 このように、風水害に対する備えは、西多摩地域を中心に脆弱であり、災害時におけるバックアップの確保などの施設整備を早急に進めるべきです。
 また、施設整備には時間を要するため、災害時の応急給水の体制整備も喫緊の課題です。
 そこで、西多摩地域の風水害対策を積極的に推進するべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、我が党の代表質問でも触れましたが、多摩地域の観光振興についてお聞きします。
 ことしの夏、西多摩地域には、キャンプや温泉などを目当てに大勢の方々に訪れていただき、交通渋滞やごみの投棄など課題も幾つかありましたが、コロナ禍の中、観光関連の事業者の経営が大変厳しい状況の中で、小さな光となりました。
 九月十八日から東京発着旅行が国のゴー・ツー・トラベルの対象になりました。多くの皆様に多摩地域の魅力を知ってもらう機会になればと期待しています。
 多摩地域には、豊かな自然のもと、多くの魅力的な観光資源が広く点在しています。観光が動き出そうとしている今こそ、多摩地域の魅力を存分に活用した新たな観光資源を開発し、将来の観光需要の回復につなげていくべきだと思います。
 都は、今後、多摩地域の観光振興をどのように進めていくのか伺います。
 次に、狩猟免許取得者の狩猟促進についてお聞きします。
 東京都の森林は、都内最高峰、標高二千十七メートルの雲取山など、多様性に富んでいます。
 こうした森林において、近年、鹿が貴重な植物や苗木を食べるなどして、深刻な影響を生態系に及ぼしています。また、鹿の生息域が東に拡大し、推定生息数も約三千頭まで増加しています。この増加した鹿の個体数を管理するには、捕獲が重要です。
 しかし、捕獲の重要な担い手である猟友会の会員の高齢化が深刻な問題となっています。捕獲の担い手の確保が重要です。
 そのような中、東京都では、新規狩猟免許取得者が急増していると聞きます。
 一方、免許取得者は、狩猟する場合、毎年、狩猟を行う都道府県に登録する必要がありますが、東京都への登録者数は微増にとどまっています。東京都への登録者がふえることが鹿の個体数の管理に貢献します。
 そこで、免許取得者が都内で狩猟にかかわることを促す取り組みが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、東京の林業振興についてお聞きします。
 都内における林業は、担い手の減少に加え、林道から離れた奥地や急傾斜地等、作業現場が困難な地域に移行してきています。
 そのような中、都内の林業事業体においても、機材の運搬など、試験的にドローンが使われていると聞いています。
 一方、二〇二二年には、ドローンの目視外飛行が可能となり、補助者が不要になる方針が示されるなど、規制緩和による活用方法の拡張も期待されます。
 ドローンなどの新しい技術を林業に積極的に取り入れていくことで、東京都の森林特有の急峻な地形による作業の負担が軽減され、生産性や安全性が格段に向上する可能性があります。
 多摩地域の林業が持続的に発展していくためには、このような技術の積極的な活用が重要であり、都が支援していくべきと考えますが、見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 田村利光議員の一般質問にお答えいたします。
 特別支援学校におけるICT支援員の活用についてでございますが、特別支援学校において、ICTを活用して児童生徒の障害の種類や程度に応じた指導を行うためには、一人一人の特性を把握している教員と機器の利用にたけた支援員が協働して教育活動に取り組むことが必要でございます。
 都教育委員会は、本年七月から、学習支援クラウドサービスの利用を促進するため、全ての特別支援学校に、ICT支援員が巡回し、教員に対してICT機器の操作方法などに関する研修等を実施しているところでございます。
 今後、各学校において、支援員の巡回の回数をふやすとともに、教員が支援員と協力し、ICT機器を効果的に活用して、障害による学習上の困難さを軽減する実践研究を進めてまいります。
 それらの成果につきましては、全ての特別支援学校で共有を図りまして、ICT活用の取り組みを推進してまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、新型コロナウイルス感染症の状況下での検診等についてでございますが、国の緊急事態宣言解除を受け、都は、区市町村に対し、感染防止対策を徹底した上で検診等を実施し、受診機会の確保に努めるよう通知するとともに、六月以降、がん検診や特定健診の実施状況調査を行い、全ての区市町村で実施または準備がされていることを確認しております。
 また、乳幼児健診では、個別健診で実施する場合の留意点等について区市町村に周知しております。
 今後、検診の受診状況等を把握しながら、さまざまな機会を通じて、区市町村に感染防止を徹底した検診等の実施を働きかけていくとともに、都民がより安心して検診等を受診できるよう、SNSなどを活用し、各検診の受診の重要性等を発信してまいります。
 次に、妊娠、出産に関する知識の普及啓発についてでございますが、都はこれまで、体外受精や顕微授精の特定不妊治療費の助成を実施するとともに、都独自で不妊検査及び一般不妊治療に係る費用の一部を助成しております。
 また、若いときから男女を問わず、妊娠、出産に関して正しい知識を持てるよう、不妊の原因や妊娠、出産の適齢期などを紹介した小冊子を作成し、大学や専修学校などで配布しております。
 今後、この小冊子の配布先を拡大するほか、子供を持つことに関する幅広い知識を掲載した専用のホームページに、不妊治療等の体験談を順次掲載するなど、継続して若い世代への妊娠、出産に関する正しい知識の普及啓発に取り組んでまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 多摩・島しょ地域の公立病院への経営支援についてでございますが、地域医療の確保において重要な役割を担う公立病院では、新型コロナウイルス感染症の発生以降、経営環境が悪化してございます。
 都は、本年四月に創設した市町村新型コロナウイルス感染症緊急対策特別交付金において、医療機関等を設置する市町村の財政需要に対応するため、総額百億円のうち一割を公立病院等の設置状況に応じて配分をいたしました。
 また、公立病院の資金繰りにつきましては、特別減収対策企業債や都が設置している区市町村振興基金を活用することも可能でございます。
 引き続き、これらの対策を効果的に活用していただきまして、公立病院の実情を踏まえた支援を行ってまいります。
〔財務局長潮田勉君登壇〕

○財務局長(潮田勉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、週休二日工事の休日の設定についてでございますが、工事現場の週休二日の取り組みを促していくためには、都としても、施工体制や工程管理に応じて受注者が任意に休日を定めることができる仕組みが必要であると認識しております。
 このため、財務局が実施する建築工事においては、土日祝日等を休日とする従来の週休二日モデル工事に加え、新たに、受注者の希望に応じて休日を設定できるモデル工事を試行いたします。
 例えば、四週間の土日祝日のうち、四日間を休日とし、残りを平日に振りかえることを可能とし、これにより、受注者は、施工状況や天候、敷地の周辺状況等に応じ、工程を柔軟に計画することができます。
 こうしたことを通じて、建設現場の環境整備に取り組み、働き方改革を推進してまいります。
 次に、災害発生時の都の契約上の取り組みについてでありますが、台風等により甚大な災害が発生した際には、被災地における災害復旧等への優先的な対応が重要でございます。
 都では、従前より、こうした場合には、応急復旧工事等の優先的かつ円滑な実施のため、国と同様の取り扱いにより、契約上柔軟な対応を図ってまいりました。
 この取り扱いにおきましては、例えば、都と契約中の工事の受注者に、別の災害応急対策工事を優先して対応するよう依頼する必要がある際は、その受注者の意向を確認の上、契約中の工事の一時中止ができるなどとしており、発災の都度、この旨を各局等に速やかに通知をしております。
 今後とも、甚大災害発生時には、適切な対応を行ってまいります。
〔水道局長浜佳葉子君登壇〕

○水道局長(浜佳葉子君) 西多摩地域の水道の風水害対策についてでございますが、水道局では、昨年の台風被害の教訓を踏まえ、山間部にある小規模配水所等十九カ所に被災状況を確認する遠隔監視設備を既に導入いたしました。
 また、奥多摩町にある大丹波浄水所では、取水施設への土砂の流入を防止する改良工事に今年度中に着手するとともに、日の出町にある文化の森給水所への送水管の二系統化に向け、設計を進めております。
 今後、さらに、被害の大きかった河川沿いの送配水管を優先的に耐震継ぎ手化するなど、水害に強い施設整備を積極的に進めていくこととしております。
 こうした施設整備に加えまして、災害発生時の仮設給水槽の設置箇所や応急給水が特に必要な施設等について、関係市町と確認を行うなど、迅速な応急給水を可能とする体制の充実を図りました。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩地域の観光振興についてですが、多摩地域を訪れる旅行者をふやすため、地元の自治体や観光関連の団体等と協力して、新しい発想も取り入れながら、さまざまな観光資源を開発することは重要でございます。
 これまで都は、多摩の自治体や観光協会と連携して、豊かな自然や独自の文化を生かし、山歩きや伝統芸能の鑑賞による誘客を進めてまいりました。また、地元の商工業や農業の団体が協力し、古民家に泊まり、農作業を体験できるツアーや、酒蔵を訪れる観光プログラムをつくる取り組みへの支援を行ってきたところでございます。さらに、新しい視点で観光資源を生み出すため、大学生が地域に企画を提案する取り組みも後押ししてまいります。
 今後、これらの支援に加え、都内観光を促進する助成事業も展開して、多摩地域の観光振興を図ってまいります。
 次に、林業における新しい技術の導入についてですが、急峻な地形の多い多摩地域におきましては、新しい技術を活用して森林作業の効率化を図ることが有効でございます。
 このため、都は、林業事業体に対し、高性能林業機械の導入やドローンなどの操作に必要な資格取得等に係る経費を補助し、作業効率の向上や省力化を支援しているところでございます。
 今後、急傾斜で作業が困難な現場でのドローンを使った資材の運搬やレーザーによる樹木の計測など、新しい技術の活用によって、林業事業体等の作業がより一層効率化していく方策を検討してまいります。
 こうした取り組みにより、東京の林業の持続的な発展につなげてまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 狩猟免許取得者の狩猟促進についてでございますが、鹿等の野生動物の適正な個体数管理には、狩猟等に携わる担い手の中長期的な確保が重要と認識してございます。
 都はこれまでも、狩猟免許試験の実施回数をふやす等の取り組みによりまして、狩猟免許取得者の増加に努めてまいりました。
 その結果、新規狩猟免許取得件数は、平成二十六年度四百八十六件から平成三十一年度九百八十九件へ、五年間で倍増したところでございます。
 今後、新規の免許取得者に対しまして、都内で狩猟を行う際の注意事項や狩猟が可能な地域を記載した資料等を配布するとともに、免許保有者の実態を把握しまして、狩猟登録者数の増加に向けた対策を検討してまいります。
 こうした取り組みを通じて、免許取得者が都内で狩猟にかかわることを促し、鹿等による被害を防止し、豊かな生態系を保全してまいります。

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