令和二年東京都議会会議録第十七号

○議長(石川良一君) 三十九番大松あきら君。
〔三十九番大松あきら君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○三十九番(大松あきら君) 初めに、障害者支援について質問します。
 著名な歴史家のアーノルド・J・トインビー博士は、人類が厳しい自然環境から挑戦を受け、それに立ち向かい応戦を始めるとき、新しい文明が生まれると分析しています。このたびのコロナ禍に対しても、それを乗り越えようと立ち上がるとき、私たちの社会は大きく進歩していくものと考えます。
 その応戦の一つがデジタル化、オンライン化です。今、新型コロナ感染防止の観点から、あらゆる分野で急速にオンライン化が進んでいます。都庁においても、小池知事がバーチャル都庁構想を発表し、住民が都庁に来なくても済むように、各種手続のオンライン化が進められています。
 こうした改革で大きな恩恵を受けられる可能性があるのが、障害のある方々です。障害者差別解消条例で、事業者に対し、合理的な配慮を義務づけている東京都こそが率先して、障害のある方々の権利を守り、社会参加を促進し、利便性を向上させるようなデジタル化、オンライン化を進め、情報保障を推進していくべきです。小池知事の見解を求めます。
 今年度は、GIGAスクール構想により、タブレット端末が多くの小中学校生に配布され、広く普及していくことが予想されます。
 映像を扱いやすいタブレット端末は、聴覚障害者にとっては画面越しに手話でコミュニケーションができるすぐれたツールであり、これを活用した行政サービスの向上が期待されています。
 現在、都庁では、聴覚障害者が窓口までいらっしゃれば、タブレット端末を使い、遠隔手話通訳を活用し、各部署と手話で対話できます。
 今後は、来庁しなくても各部署と手話で話せるようにするなど、聴覚障害者への情報保障の充実を図るべきです。都の取り組みについて答弁を求めます。
 次に、教育について質問します。
 東京都教育委員会は、カナダのブリティッシュコロンビア州、オーストラリアのクイーンズランド州、中国の北京、台湾の台北、フランスのパリなど世界の各都市の教育委員会などと覚書を締結し、児童生徒や教員の国際交流を行っています。
 この中で、都教育委員会は、海外の教員による都内の学校におけるモデル授業や、東京都と海外の教員が文化や教育事情を紹介し合う情報交換会などを開催し、子供たちの国際感覚の育成とともに、教員の指導力向上に取り組んでいます。
 現在、新型コロナウイルスの感染拡大により、海外への渡航や日本への入国が制限され、国際交流は制約を受けていますが、ポストコロナを見据え、都教委がこれまで推進してきた国際交流を今後一層発展させていくべきと考えます。都教育委員会の取り組みについて見解を求めます。
 次に、災害対策について質問します。
 九州では、九月上旬、台風十号に備え、多くの方々が避難所に避難されましたが、新型コロナ対策で密を避けるために定員を設けた避難所が満員になり、定員を超えて受け入れたところもあれば、避難者を他の避難所に誘導したところもありました。
 東京都内では、昨年の台風十九号の際、合計約十八万人の住民がそれぞれの地域の避難所に避難されました。この秋、密を避けるために避難所に定員が設けられれば、九州と同様の事態が起きることが想定されます。
 北区では、昨年、隣接区からも多くの住民が避難されてきていらっしゃいましたし、ことしも区外の方々を受け入れる一方、区内の避難所が満員になれば、隣接区に受け入れをお願いしなければなりません。
 風水害時の避難者の受け入れについて、隣接自治体同士の連携を強化できるよう支援をしていくべきです。都の見解を求めます。
 その上で、避難所への避難について住民自身が判断できるよう、その混雑状況について情報を広く発信することが重要です。
 都はこのほど、区市町村に対し、テレビのデータ放送で災害情報を発信する東京都災害情報システム、DISに避難所の混雑情報を入力するように通知しましたが、都の防災アプリでも確認できるようにするよう求めておきます。
 また、車椅子使用者などにとっては、避難所のバリアフリーに関する情報が重要です。高齢者や障害のある方々が、前もって避難先に誰でもトイレやエレベーターがあるかどうかなどの状況を把握するために、適切な情報の発信が必要です。都の答弁を求めます。
 水害は地震と違い、事前に発生を予測することが可能であり、大切な命を守るためには、逃げるべきときを逃さず逃げることが重要です。そのためには、住民自身が避難の判断に必要な情報を得ることが不可欠です。そこで、河川の水位など、その現状を知ることができる河川監視カメラが大きな役割を果たします。
 昨年の第四回定例会の一般質問で、私は、北区の低地帯を流れる新河岸川を初め、都の管理する河川への監視カメラを増設するべきと提案しました。
 その上で、監視カメラの映像を見ることができる現在の水防災総合情報システムでは、河川の映像は静止画で公開されていますが、今後は動画で公開し、よりわかりやすい情報発信を行うべきです。また、国が管理する多摩川などの映像も見ることができるようにするべきです。
 監視カメラの取り組み状況について、都の見解を求めます。
 昨年の台風十九号の際、荒川の水位は、北区の岩淵水門付近で避難勧告等を発令する氾濫危険水位まであと約五十センチのところまで迫りました。気候変動が進み、東京都内で大規模水害が発生するリスクは毎年高まっています。
 このため、荒川では、上流の埼玉県内で川の水を一時的にためることにより、東京を洪水から守る調節池の役割が重要になっています。既に国は、さいたま市内などの河川敷に荒川第一調節池を完成させ、昨年の台風の際には、川から取水し、下流の水位を下げる役割を果たしました。
 現在、国は、その上流に第二、第三の調節池の整備を進め、さらなる防災力向上に取り組んでいます。
 東京都としても、治水効果の早期発現に向けて、整備を着実に進めるよう国と連携して取り組むべきです。都の見解を求めます。
 次に、外堀の水質浄化について質問します。
 都は、貴重な水辺である外堀の水質改善を進める外堀浄化プロジェクトを今年度始動しました。
 この中で、将来的に外堀に水の流れをつくる導水の実現に向けた調査に加えて、明年の東京二〇二〇大会に備え、毎年夏に発生するアオコ対策を進めていく必要があります。
 都議会公明党は、本会議などで、都が外堀で実施が可能なアオコ対策を調査検討し、取り組んでいくことを確認してきました。
 そこで、外堀におけるアオコ対策の現在の取り組み状況について、答弁を求めます。
 また、本年の第二回定例会の都議会公明党の一般質問に対し、外堀浄化には導水が有効との答弁がありました。外堀への導水に向けた検討を着実に進めていくべきです。導水に必要な管路施設の機能の調査検討の進捗状況を明らかにするべきです。都の見解を求めます。
 新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方の遺族から、お通夜や告別式を行わない火葬のみの、いわゆる直葬であったにもかかわらず、葬儀事業者から高額の請求をされたという相談が都議会公明党に寄せられました。
 今、都内の消費生活センターには、コロナ禍の関連だけではなく、葬儀に係る苦情が多く、昨年度は、料金体系が不明確、当初の見積もりよりもかなり高額になったなどの相談が八十件程度寄せられました。
 葬儀業は、許可や認可、届け出などの法的規制がなく、誰もが参入できる事業であり、中には携帯電話やインターネットのみで運営するなど、顔の見えない事業者も多く存在しています。
 こうした状況を踏まえ、都民が消費者トラブルに巻き込まれないよう、都の取り組みが必要と考えます。見解を求めます。
 最後に、歯科健診について質問します。
 健康長寿のためには、歯の健康が欠かせません。八十歳で二十本以上の歯を持つ方は、都民の半数を超えていますが、三十代などで歯周病の治療が必要な方の割合が年々ふえています。
 そこで、今、若年成人の歯科健診が求められています。北区では、成人歯科健診は四十歳からですが、地区の歯科医師会が、虫歯菌や歯周病菌は両親から赤ちゃんに感染するリスクがあることを訴えながら、区の妊産婦健診に合わせて、お父さんも健診するイクメン歯科健診を独自に実施しています。
 都内の区市町村に対し、こうした地域の取り組みを紹介しながら、若年成人への歯科健診の促進に取り組むべきです。
 都の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 大松あきら議員の一般質問にお答えいたします。
 障害のある方への情報保障の推進についてのご質問でございました。
 障害の有無にかかわらず、都民一人一人が自分らしく輝くことができる共生社会、これが私の目指す東京の姿でございます。
 その実現のためには、障害のある方が円滑に意思疎通できる環境を整備して、社会参加を促していくことが必要でございます。障害者差別解消条例におきましては、情報保障の推進を基本的施策の一つとして規定をしているところでございます。
 都は現在、聴覚障害者の意思疎通を図るため、タブレット端末を活用した遠隔手話通訳などに取り組んでおります。
 今後、都政のデジタルトランスフォーメーションの推進をてこといたしまして、ICTなどの先端技術を活用することで、さらなる情報保障を進めて、障害のある方々へのサービスの向上につなげてまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) ポストコロナを見据えた国際交流についてでございますが、都教育委員会はこれまで、学校での交流を支援するため、海外の国や地域との覚書の締結や、国際交流コンシェルジュによる交流のワンストップサービスを通じ、児童生徒の交流体験や教員の指導力向上を促進してまいりました。
 現在の世界の感染状況下にあっても、オンライン活用により交流を継続し、さらに充実することが重要であると考えてございます。
 このため、今後は、これまで構築してきた協力関係や仕組みを活用し、生徒や教員による相互訪問等の交流に加え、オンラインを活用した交流機会を創出するとともに、さまざまな交流事例を学校に情報提供してまいります。
 このような取り組みを通じまして、より多くの児童生徒や教員が多様な交流を体験できるよう支援し、子供たちが世界の人々とともに未来を切り開く力を育んでまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都庁における聴覚障害者への情報保障についてでございますが、都は、平成二十八年度から、タブレット端末を都立施設など六カ所に配置し、遠隔手話通訳や音声を文字に変換するサービスの提供を開始いたしました。平成三十年度からは、より柔軟にサービスを提供できるよう、タブレット端末を庁内各部署に貸し出すこととし、イベントや受付窓口などで活用しております。
 現在、聴覚障害者が来庁しなくても、都の専用サイトにアクセスし、遠隔で手話通訳者を介して都庁に電話できる電話代理支援サービスの開始に向け準備を進めており、こうした取り組みを通じて、聴覚障害者への情報保障を充実してまいります。
 次に、若い世代の方たちの歯科健診の促進についてでございますが、歯周病などの歯科疾患は、糖尿病、心疾患など全身の健康と深くかかわるとされており、その予防や早期発見のため、歯科健診を定期的に受診することは重要でございます。
 青年期は、学校歯科医による指導の機会が減り、虫歯や歯周病のリスクが高まる傾向にあることから、昨年度は、青年期の口腔の現状や、かかりつけ歯科医による定期的な口腔衛生管理の重要性等を解説したリーフレットやポスターを作成し、普及啓発を行いました。
 また、都は、健康増進法に基づく四十歳以上の節目年齢での歯周疾患検診に加え、若い世代の方の歯科健康診査に取り組む区市町村を包括補助で支援しており、今後も、各種会議の場で区市町村における取り組みを紹介するなど、歯科健診の受診促進に向けた取り組みを進めてまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、避難者受け入れに係る隣接自治体同士の連携強化についてでございますが、感染症対策として、三つの密を避けるため、各避難先で受け入れ人数を制限することが想定されており、隣接した自治体同士が相互に協力し、避難者を受け入れる体制を整えていくことが重要でございます。
 都内区市町村は、地域ごとや自治体間の協定により、避難者の受け入れや職員の派遣、救援物資の提供等、災害時における相互協力、支援体制を構築しております。
 都は、こうした協定が災害時に円滑に機能いたしますよう、自治体間での避難者の移送や受け入れを想定した図上訓練を、今年度、区市町村と実施する予定でございます。
 今後は、こうした訓練で顕在化する課題や成果の共有を図ることで、避難対策の強化に取り組んでまいります。
 次に、避難先のバリアフリー情報の発信についてでございますが、高齢者や障害者などの方々がニーズに応じた避難先を選択するためには、誰でもトイレやエレベーター等の有無といったバリアフリー情報を、避難の開始前に入手できる環境を整備することが重要でございます。
 このため、都は、避難先のバリアフリー情報を都民に提供するため、区市町村に対して、ホームページやハザードマップなどへの掲載を促していきます。また、都の防災マップや防災アプリなどで避難先のバリアフリー情報を閲覧できるよう、区市町村から情報収集するとともに、改修に向けた検討を進めてまいります。
 今後も、こうした取り組みを通じて、災害時における要配慮者に向けた防災情報の発信の強化に努めてまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、河川監視カメラの取り組み状況についてでございますが、水害から都民の命を守るためには、河川の状況をわかりやすくリアルタイムに伝える監視カメラの設置など、住民の避難に資するソフト対策を進めることが重要でございます。
 都は、近年の全国的な豪雨災害等を踏まえ、水防災総合情報システムにおいて、監視カメラの画像の公開をさらに拡充することとしておりまして、これまでの三十二カ所に加え、令和三年度までに、新河岸川など約四十カ所で新たに設置し、公開いたします。
 また、河川の水位や状況などをよりリアルタイムに、また、さらに多く伝えるため、河川の画像の動画化や、国及び区市町村のシステムとの情報共有化を検討してまいります。
 今後とも、住民の迅速な避難行動につながるわかりやすい水防災情報のさらなる充実に取り組んでまいります。
 次に、荒川第二、第三調節池の整備についてでございますが、激甚化、頻発化する豪雨から都民の命と暮らしを守るためには、国が管理する荒川においても、豪雨に対して大きな効果を発揮する調節池の整備を推進することが重要でございます。
 本調節池は、昨年の台風第十九号において総容量の九割を貯留いたしました荒川第一調節池の上流に隣接する総容量五千百万立方メートルの調節池で、平成三十年度より国が事業を実施しております。
 都は、本調節池の着実な整備について、荒川水系河川整備計画の変更時や毎年実施している政府提案要求などの機会を捉えまして、継続して働きかけております。
 引き続き、水害に強い首都東京の実現に向け、本調節池の整備等による安全性の早期向上を国に求めてまいります。
 最後に、外堀におけるアオコ対策についてでございますが、外堀については、東京二〇二〇大会の開催に向け、国の指定史跡にふさわしい良好な環境となるよう、水質改善を進めていくことが重要でございます。
 このため、庁内関係五局による検討会での方針に基づき、アオコに対する暫定対策として、水質改善処理剤の散布など、外堀に適用可能な対策に取り組むことといたしました。
 これまでの室内実験による処理剤の選定や、アオコを直接回収する方法などの検討結果を踏まえ、現在、市ヶ谷濠及び新見附濠で対策を実施しておりまして、引き続きその効果を検証してまいります。
 今後とも、関係局と連携し、外堀の水質改善に向けた取り組みを進めてまいります。
〔都市整備局長上野雄一君登壇〕

○都市整備局長(上野雄一君) 外堀への導水に向けた調査などについてでございます。
 水と緑を一層豊かにし、ゆとりと潤いのある東京を実現するには、水辺空間を生かした魅力ある都市の顔づくりを進めていくことが重要でございます。
 これまで都は、関係局が連携いたしまして、外堀の効果的な水質改善方策を幅広く検討いたしまして、河川水等の導水の有効性などを確認してまいりました。
 外堀への導水に向けては、玉川上水等の活用可能な既設水路や、新たに整備が必要となります導水路に関する調査検討が必要でございまして、関係局が役割分担いたしまして、新型コロナウイルス感染症への対応状況も踏まえ、現在、調査委託の契約に向けて準備を進めております。
 引き続き、国や地元区とも連携いたしまして、外堀の水質改善を進め、水の都にふさわしいまちに潤いを与える東京を実現してまいります。
〔生活文化局長野間達也君登壇〕

○生活文化局長(野間達也君) 葬儀に関します消費者トラブルについてでございますが、消費者被害を防止するためには、行政による消費者に対する普及啓発に加えまして、消費生活相談での対応や不適正な取引行為の是正に向けた取り組みが重要でございます。
 このため、都では、葬儀サービスに係る相談事例や留意点等につきまして、ホームページで注意喚起をするほか、消費者からの相談に対しては、専門知識を持った相談員によるアドバイスに加えまして、事案によってはあっせんを行うなど、トラブル解決に向けて支援してございます。
 今後は、都民向け情報誌、東京くらしねっとにも相談事例などを掲載いたしまして、注意喚起を強化いたします。また、事業者が行う広告や表示に対する監視強化を進め、法令に違反する場合には、表示の差しとめや再発防止を求める措置命令を行うなど、厳正に対処してまいります。

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