令和二年東京都議会会議録第十六号

   午後三時二十五分開議

○議長(石川良一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十二番山崎一輝君。
〔百二十二番山崎一輝君登壇〕

○百二十二番(山崎一輝君) 令和二年第三回定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 初めに、このたび名誉都民に選定された石井幹子様、瀧澤利夫様、横尾忠則様、これまでのご功績に敬意を表し、心からお祝いを表させていただきます。
 さて、世界はコロナ感染拡大の中にあり、日本、そして東京も感染防止対策が長引く中、重苦しい日々を過ごしています。
 現在、都内の感染者数は増減を繰り返し、いまだ予断を許しませんが、感染の大幅な拡大は何とか防いでいるといった状況のように見えます。
 これは、これまでの間、医療従事者の方々、そしてエッセンシャルワーカーの方々のご尽力とともに、都民お一人お一人が、日々の生活の中で手洗いの励行、マスクの着用、外出の自粛など、感染防止対策に誠実に、そして辛抱強く取り組んでいただいた結果だと考えております。
 公助としての東京都のコロナ対策は、こうした方々のご理解とご協力に基づく自助、共助の支えがあってこそ初めて有効に機能するのです。
 都議会自民党は、そのことを忘れず、医療現場や都民生活の実態を踏まえ、感染防止と経済活動の両立という難しい課題に全力で取り組んでいくことを、代表質問に先立ち、都民の皆様にお約束申し上げます。
 都は、今年一月末より今日まで、新型コロナウイルス感染症対策本部会議やモニタリング会議などを開催し、感染症や医療提供体制の分析を行い、その都度対策を講じてきました。
 この未知の感染症の克服にはまだ時間がかかりますが、これまで膨大な人員と予算をかけて行ったこれらの対策は、都民の安全・安心に効果があったのか、あらゆる角度から検証した上で、次の対策を講じることが重要です。
 今定例会にも、新型コロナ対策の実効性をより高めるための条例改正や感染拡大を阻止する対策、経済活動などを支えるセーフティーネットの強化充実などを目的に、約三千四百億円もの補正予算が計上されました。
 第二回定例会において我が党は、科学的根拠をもとに、感染の実態や傾向を都として把握し、予算に裏づけられた対策を講じ、都民の理解と共感のもとに自粛要請をすべきである、そして、コロナ対策の中には、客観的かつ合理的とは思えない積算根拠や、思いつきで、内容が不確定のまま発表されることにより、事務処理が機能していない事業も散見されるので、早急にコロナ対策を含め必要な検証を行うべきであると指摘をしてきました。
 これまでに実施した新型コロナ対策の検証はどうなっているのか、検証に基づいて次なる施策を講じるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図りつつ、事業を実施していくためには、店舗等での感染防止対策の徹底が不可欠です。都はガイドラインを策定し、実施した事業所には、感染防止徹底宣言ステッカーの掲示を推奨しています。知事も会見で、百万件を目指したいと述べられていましたが、発行数は現在までに約二十一万件にとどまっています。
 このステッカーの本来の目的は、都民が安心して利用できる施設であることをわかりやすく示すものでした。
 しかし、千代田区を初め都内の自治体でも独自のステッカー制度が設けられ、わかりにくいといった都民の声も上がっております。また、都の職員も実態把握と普及啓発を兼ねた訪問を行っていますが、その数は約七千件と、申請件数には全く追いついておりません。
 ステッカーにより、感染抑止にどの程度効果があったと認識しているのか、伺います。
 さて、感染拡大防止協力金はこれまで四回にわたり実施されました。感染拡大が逼迫する中で、制度設計も実施方法も拙速であったことは、緊急事態に基づくものであり、当初はやむを得ないところもあったのは事実であります。一方で、総予算二千億円という莫大な金額を投じた施策でありますので、施策の効果検証をすることは極めて重要と考えています。
 都の説明によれば、損失補償ではなく、あくまでも要請に対する協力金とのことですが、再び感染拡大も想定される中、支給された事業者にとって果たして有効に機能したのか、施策の調査検証は不可欠であります。
 また、都も多大な労力をかけて膨大な事務量に対応してきましたが、休業要請及び感染拡大防止協力金の効果と今後の対策に向けた見解を伺います。
 新型コロナウイルスという見えざる敵との闘いが長期化する中、我が国の実質成長率は戦後最大の落ち込みを記録し、倒産、廃業も頻発するなど、コロナ危機が国内経済に与える影響の大きさが浮き彫りになっています。特に経営基盤が強固とはいえない中小零細企業がこうむる経済的打撃は甚大です。
 都はこれまで、数々の緊急対策を打ち出してきましたが、都内の小零細企業の経営者からは、緊急事態宣言が解除されても需要回復の動きは鈍い、また、受注は減ったままで先行きが見通せないといった声が多数上がっております。
 この難局を乗り越えるためには、事業者にさらに寄り添ったサポートが不可欠です。厳しい状況にある中小零細企業が倒産や廃業に追い込まれることがないよう、あと一歩踏みとどまって、経営を立て直すための支援が今求められております。
 都は、中小零細企業の倒産や廃業を防ぐため、支援を強化していく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 コロナが企業経営に与える影響は、雇用面にも波及し、厚労省の調査によれば、コロナに伴う解雇や雇いどめは全国で五万人を超え、有効求人倍率の悪化にも歯どめがかからないなど、雇用情勢も悪化の一途をたどっております。
 中でも、流通、小売、サービス業といった職種は顕著で、特に非正規や経験が浅い若手などは、同業同職種間での転職も困難をきわめ、将来不安を抱える若者が後を絶ちません。
 都は、既にさまざまなキャリア支援を講じていますが、国がデジタル庁を設置し、強力にデジタル化を推し進める中、次世代社会に必要な職種、技能を習得できる環境をさらに拡充すべきと考えます。
 特に、労働ブランクが長期化する懸念もあることから、短期集中型や、働きながらIT技能を取得できるカリキュラムなど、早期に復帰できるメニューが求められます。同時に、若手ローキャリア層の雇用を企業が積極的に導入するインセンティブが働く仕組みを包括的に検討すべきと考えます。見解を伺います。
 新型コロナウイルス感染拡大の中、渡航制限により、外国人旅行者は大きく減少し、国内の旅行者も外出自粛で大幅に減少したことから、都内の観光関連事業者の経営は大変厳しい状況にあります。
 九月十八日から国のゴー・ツー・トラベルの対象となる東京発着旅行の販売も始まり、都内観光産業も、これを足がかりに立ち上がろうとしております。
 本事業の開始に伴い、都心の主要観光地を初め、豊かな自然と独自の食文化など、地域で大切に育まれた貴重な観光資源のある多摩・島しょ地域にも、国内各地から観光客が再び訪れることが期待をされます。
 一方、多摩・島しょ地域は病院等の医療資源が限られており、感染者が発生した場合の対応は困難であり、観光客、事業者、地域住民それぞれの立場から、観光振興と感染防止の両立を図る必要があります。
 こうした地域の実情も踏まえつつ、都がこれまで取り組んできた多摩・島しょのさまざまな観光施策を生かしながら、今回の観光促進事業をどのように進めて観光振興を図っていくのか、見解を伺います。
 コロナの影響で、修学旅行の機会を失った生徒、児童が多数おります。振り返ると、ことしは授業の開始時期のおくれから始まり、運動会などの学校行事も十分に実施できませんでした。それに加えて、学校生活で最も大切な思い出となる修学旅行にも参加できなかった子供たちはとても傷ついております。社会全体でコロナの拡大を防ぐため、我慢をして協力してくれた子供たちに、残る半年で修学旅行にかわる思い出の場を提供してあげたいと考えます。
 都内には、都立施設だけでもなく、たくさんの観光資源があります。上野動物園のパンダのもりや、先日オープンした新客船ふ頭ターミナル、東京二〇二〇大会の新規恒久施設を含め、美術館や博物館、水族館など、さまざまな名所があります。
 コロナ禍であるために従来どおりの修学旅行は難しくても、身近にあるさまざまな都立の施設や資源を活用して大切な思い出づくりができるよう、修学旅行にかわる活動を実施すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、家庭内での感染が広がる中、コロナに感染した高齢者や子供たちへの差別やいじめ、さらには職場において出社拒否を強いられるなど、感染防止の趣旨を履き違えた心ない言動も散見されています。コロナに感染したことが悪いことであるかのような風潮を蔓延させてはなりません。感染された方の心を殊さらに傷つけるような風潮には、断固とした態度で接するべきであります。
 六月には同趣旨のメッセージを知事として発信されていらっしゃいますが、改めて知事の見解を伺います。
 新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない中、冬に向け、季節性インフルエンザとの同時流行に備えていくことは急務であります。不安なく適切な医療を受けられるためには、コロナ診療を行う一部の医療機関だけでなく、発熱患者を診療する多くの地域医療機関にも対応していただく必要があります。
 臨床的にはインフルエンザとコロナウイルスを診断することは困難といわれています。医療現場では、コロナのリスクを常に考慮しながら発熱患者に対応をしています。その場合、ほかの患者と区分けした動線や診療場所の確保など、さまざまな備えを講じる必要があり、規模の小さな診療施設にとっては大きな負担となっています。例年のインフルエンザ等による発熱患者の受診希望にも対応するためには、こうした負担の軽減措置は欠かせません。
 都は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に備え、多くの医療機関の協力を得ることで、各医療機関の感染拡大防止策をしっかりと講じてもらうことが重要です。こうした点を踏まえ、体制整備を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 続いて、特措法について伺います。
 都議会自民党は、都民のために必要な特別措置法の改正を行うべきとの立場です。
 コロナ禍の長期化に伴い、危機に直面する都内事業者には、もはや余力は残されていません。一刻も早い感染終息に向け、最善を尽くすことはもちろん、最悪のケースにも備えることは行政の責務です。万が一感染が再拡大し、再び休業要請となった場合には、法令に裏打ちされた十分な補償を行うべきであり、そのためには、特措法改正は不可欠です。
 先日、小池知事は、国への要望に向けた協力要請のため、初めて我々自民党東京都連に足を運ばれました。その際、特措法について、休業要請に伴う経済的支援の創設の要望、協力を求められました。同時に、協力要請に当たり、コロナ対策が今一番重要であることを考えれば、国政と都が連携していくことは意義があると語られました。
 緊急事態宣言以来今日まで明らかになった特措法の課題を整理して、必要な改正を国に求めていく必要があるという思いは、知事と同じであります。
 私たちには、国政にパイプがあります。特措法改正を実現し、都道府県知事の権限の拡充など、我々都議会自民党は国に対し、積極的に働きかけを行ってまいります。
 知事は、特措法改正についてどのように国に働きかけていかれるお考えなのか、見解を伺います。
 次に、東京二〇二〇大会について伺います。
 東京大会は、コロナという大きな課題に直面をし、大会を行う意義が改めて問われています。
 大会を招致した当時、東日本大震災の大きな爪跡が残る中、我が国は将来への不安と閉塞感に覆われていました。大会招致の意義は、被災地を初め全国民に夢と希望を与え、ともに手を携え、未来へと前進していくことでした。大会の原点は、復興五輪と日本再生だったのです。
 現在、日本そして世界は、コロナにより傷つき、分断されています。東京大会の開催は、コロナ禍の困難を乗り越え、人類が一つにつながることの大切さを伝える機会となります。世界中の選手が困難を乗り越えてともに集い、世界一の熱戦を繰り広げる、それは人類全体の再起と夢や希望の象徴であり、大会開催に向けた歩みをとめることは許されません。
 大会成功に向けて、菅総理率いる国を初め、組織委員会や関係機関と連携をし、専門的、科学的な議論を踏まえ、世界に通用するコロナ対策を、国主導のもと、都も一体となって検討、実施すべきと考えますが、知事の見解を伺います。あわせて、知事の大会開催に向けた強力な思いも伺います。
 東京大会の追加経費について伺います。
 日本は今、非常に厳しい社会経済状況にあります。大会を経済再生の起爆剤として成功させるため、都は開催都市としての責任を果たし、必要な取り組みは将来への投資として果敢に実施するべきです。
 一方で、経費の中で削減できる部分は精査をし、都民に示す必要があります。
 先日のIOC調整委員会では、サービス水準の見直しの検討状況が示されたところですが、今後も費用の精査を進めるとともに、追加経費については、IOCなど関係者にも積極的に負担を求めることも含め、十分に協議をしていくべきと考えますが、改めて知事の見解を伺います。
 さて、内閣府の発表によれば、四月からの四半期のGDPは年率換算で二八%も減少し、リーマンショックを超える低迷に陥るとされています。都内の企業においても、収益力は著しく低下し、中小、小規模事業者は、収益どころか存続していくことすら困難な局面にあります。
 東京都の令和三年度予算編成においても、大幅な財政調整基金の取り崩しに加え、税収減が確実視される中、さらなるコロナ対策、疲弊した都内経済への支援など、多くの課題に取り組むことが必要です。都財政がこの難局を乗り越え安定を取り戻すのか、転落の序章となるのか、分かれ目となる重要な予算編成といえます。
 事業の優先順位を明確にし、合理的かつ妥当な積算をする、この財政運営の基本を守ることが何よりも大切です。今後、機動的で柔軟な対応を避けては通れない状況の中で、都民生活を守り、都内の経済を支え、未来を見据えた布石を講じていくために、都財政を堅持することが財務局の使命ではないでしょうか。
 都の財政悪化を食いとめるため、来年度の予算編成において何を重視し、具体的にどのように取り組むのか、財務局の見解を伺います。
 都財政は、前例のない危機に直面しています。行財政運営の戦略や工程を早期に示すことを強く求めておきます。
 こうした予算や事業の見直しに加え、財源の捻出を講じることも必要です。現在の厳しい状況下では、都債の増発も手段の一つではありますが、それだけでは全てを賄えません。コロナ禍により都財政は一変した。機動的な財源が求められる中、特定目的基金を統廃合し、財政調整基金に組み入れるべきことは、さきの第二回定例会で指摘をしたとおりです。
 かつて、バブル崩壊後の財政難に陥った際、都は、大規模財産の処分促進や積極的な都有地売却に果敢に取り組み、財政再建に道筋をつけました。
 税収減など、今後さらに都財政の逼迫も想定される中、保有資産の売却やさらなる有効活用についても検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 続いて、国際金融都市について伺います。
 国際金融都市の確立は、日本全体で取り組むべき課題です。とりわけ金融業者や、これを支える多様な事業者が集積する東京が先頭に立って取り組んでいかなくてはなりません。
 国においては、ことしの経済財政運営としての改革の基本方針、いわゆる骨太の方針において、世界、アジアのハブとしての国際金融都市の確立を目指すとしています。その実現に向けては、税制面の課題や各種手続の複雑さなどについて、国家レベルの観点からの取り組みが不可欠です。
 今こそ、ポストコロナを見据えた東京の成長に向け、国と密接に連携をし、東京を世界に冠たる国際金融都市にするための取り組みを加速するべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 入札制度について伺います。
 昨年の第四回定例会の我が党の代表質問において、国が策定する運用指針を都の制度にどう反映させ、運用していくのかとの問いに対し、改正運用指針の趣旨にかなう委託業務の平準化や工事関係書類の削減などを初め、運用指針をもとに必要な制度等の見直しを図ると答弁がございました。
 この国による運用指針は本年一月に公表されましたが、国の指針を踏まえつつ、都は基本的な考え方を示していくべきと考えます。さきの答弁にあった必要な制度の見直し等、今後は一層の具体的な取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 改正品確法では、工事請負に限ることなく、設計等調査委託についても重要な位置づけをしており、公共工事の目的物の維持管理についても適切に実施をするよう求めています。
 都では、従来から工事請負については、品質確保やダンピング防止に資する最低制限価格制度を広く適用してきました。
 また、都は、ここ数年間、印刷等の業務発注において最低制限価格制度を試行しておりますが、ダンピングに陥りやすい委託業務においては、試行の検証を行いつつ、最低制限価格制度の導入をさらに一歩前進させるべきと考えますが、見解を伺います。
 続いて、災害対応について伺います。
 災害対応力の強化は、都政の最重要課題の一つです。近年、台風などによる風水害も激甚化しており、複合災害にも備える必要があります。すなわち、ソフト、ハードともに従来の常識とは次元の異なる対応が必要とされています。
 ことし一月には、国と都の技術職同士が現場の課題と取り組み方針を議論する、災害に強い首都「東京」の形成に向けた連絡会議が初めて設けられ、先日、中間のまとめも提出されました。
 東京は人口も他県に比較にならないほど多く、また、都市の密集度も高い上、経済社会など、あらゆる分野の集積地となっています。こうした首都東京で避難所は本当に機能するのか、障害者、要介護者など、災害弱者の安全は確保できるのか。
 コロナ対策や近年の激甚化した災害実態を踏まえ、都はどのように風水害時の災害対応力を強化していくのか伺います。
 災害時には、障害者や要介護者など要配慮者に対し、災害の程度や状況に応じたきめ細かな対応が必要です。高齢者施設や障害者支援施設、児童福祉施設などの防災上の配慮を要する方のいわゆる要配慮者利用施設については法整備が進み、避難に関する計画作成や訓練が義務化されました。
 整備が進んだ土砂災害、浸水ハザードマップへの対応や福祉避難所の耐震化などの課題がありますが、防災上配慮が必要な方が利用する社会福祉施設等の安心・安全の確保をするため、都はどのように取り組みを行うのか伺います。
 災害時には住民の安全確保が最優先ですが、ペットの安全確保についても、飼い主の責任が第一とはいえ、自治体にも同行避難などへの対応が求められています。
 昨年台風十九号の実態を踏まえ、我が党からもペットの同行避難に関する地域防災計画への取り扱い、体制整備、避難所を運営する区市町村との連携について課題を指摘してきました。
 災害時におけるペットの救護体制の整備については、専門家の知見も得ながら、昨年の台風の教訓を踏まえ取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 大災害時の通信環境確保についてお聞きします。
 デジタル化の進展により、IoTデバイスの数は毎年三割近く増加をしています。二〇二五年には、四百十六億台のIoTデバイスがインターネットにつながる社会となります。デジタルガバメントの前提として、自然災害に強く、持続可能性のある強靭な政府であるべきことはいうまでもありません。
 デジタル都庁を標榜する都において、大災害時でも安定した通信環境を維持確保するために、バックアッププランを用意しておくことは大前提であります。
 例えば、京都大学などが研究している広域無線は、5Gに比べ接続障害が起こりにくく、通信が途切れにくいことや、伝送距離も圧倒的に広範囲に及ぶ、また、設置が現状のWi-Fi同様に容易で速いなどの利点があります。
 都は、こうしたさまざまな広域無線網や情報圧縮技術を調査し、平時から災害に備え、導入しておくべきと考えますが、何があってもつながる東京の実現に向けて、危機下における通信環境の保持についてどのような準備検討を行っているのか、宮坂副知事に伺います。
 次に、木密不燃化十年プロジェクトについて伺います。
 このプロジェクトの取り組みは、特定整備路線の用地取得率が約五〇%と一定の評価が見られるものの、整備地域全体の不燃領域率七〇%を目標としてきましたが、その達成に至っているのは二十八地区中四地区と課題が残ります。
 事業期間の延伸について今後さらなる促進を図るため、木密地域の解消に向け実効性を高めるには、大胆な規制緩和など新たな対策こそ必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、河川施設対策についてです。
 平成七年の阪神・淡路大震災では、液状化により淀川堤防の沈下は最大三メートルにも及び、大規模損壊が発生しました。また、我が国観測史上最大となるマグニチュード九・〇を観測した東日本大震災でも、多数の堤防が液状化で沈下しました。
 いわゆるゼロメートル地域といわれる区部東部低地帯では、大規模震災時に堤防や水門等の施設が大きな損傷を受けると、甚大な被害となるおそれがあり、河川堤防や水門等の施設の耐震対策が急務です。
 近年、豪雨災害の激甚化も危惧されております。区部東部低地帯における液状化対策を含め、河川施設の耐震対策の進捗並びに今後どのような計画で整備を促進するのか伺います。
 さて、世界的にデジタル化の波が押し寄せている中、国も都も大きくおくれをとっている現状にあります。今回の新型コロナウイルス感染症対策においても、都や都内自治体の混乱をよそに、デジタル化が行政サービスに浸透し、円滑に機能した海外諸都市との乖離には、改めて強い危機感を覚えたところであります。
 デジタルシフトの潮流が急速に進む中、基幹系システムや個人情報の取り扱いなど、円滑なデジタルトランスフォーメーション推進には国との連携が欠かせません。あすには推進室も設置される予定となった国のデジタル庁の創設と歩調を合わせ、都はどのように調整、連携を図っていくのか、宮坂副知事の見解を伺います。
 都は、幾度も行政サービスのデジタル化、オンライン化に取り組みながら、成果は乏しいものでした。今回、条例改正を行いましたが、政策の実効性が担保されるわけではありません。
 都がデジタルトランスフォーメーションを推進する中で障害となるのが、区市町村のシステムとの連携や基盤となるIT人材確保、育成です。
 国のデジタルシフトの加速に合わせながら、さまざまなリソースが枯渇した区市町村のデジタル対応にも都が支援をしていくことは容易ではありません。
 宮坂副知事も、みずからのSNSや対談で同様の内容を発信されておりますが、既存の制度や仕組みで課題解決を図ることは困難といえます。どのように解決を導いていくのか、宮坂副知事の見解を伺います。
 GIGAスクール構想、特別支援学校について伺います。
 GIGAスクール構想とは、多様な子供たちを誰ひとり取り残すことなく、子供たち一人一人、公正に個別最適化され、資質、能力を一層確実に育成できる教育ICT環境を実現させるものであります。それは、特別支援学校及びその児童生徒においても同様です。
 しかし、障害の種別や程度によって必要とされる端末機種は異なり、同様の機能を搭載した端末やソフトは大変高額です。区市町村は日常生活用具給付を行っておりますが、自治体により格差があり、支援の対象から漏れるケースも多々見受けられます。
 我が会派は、再三是正の要請をしてきましたが、いまだに解消には至っておりません。
 特別支援学校の保護者や教員からは、さらなる学習格差が生じないか、さらに経済負担が重くなるのではないかとの声が上がっております。
 今後GIGAスクール構想を推進する中で、都として、特別支援学校の生徒への端末をどのように導入していくのか、知事の見解を伺います。
 特別支援学校の通信環境は、ほかの公立校に比べても脆弱であり、複数の生徒が同時に使用した場合を想定されていません。寄宿舎においても同様です。GIGAスクール構想やTOKYOスマート・スクール・プロジェクトが、その理念の実現に向けて、実効性の高い政策とするため、どのように通信環境を整備していくのか伺います。
 東京都の待機児童解消に向けた取り組みは、平成二十八年から四年間で七万二千七百五十九人定員増を図るなど、さまざまな策を講じることで一定の成果を上げてきました。保育施設のハード整備だけでなく、ソフトの質の向上があわせて重要となる中、子ども・子育て新制度による新たな事務作業や、年々増加傾向にあるアレルギー対応、多言語化対応など、保育所の業務負担は増加をしております。
 そこで、保育所における業務を見える化し、保育士が担うべきもの、集約化できるものは仕分けを行い、業務の改善を図る必要があります。保育の質を高めていくために、保育事業者の運営をどのように支援をしていくのか、都の見解を伺います。
 都が進めている認証保育所制度は、大都市の保育ニーズに柔軟に対応する点において、認可保育所に比べ優位性があります。その特色の一つに直接契約があります。直接契約により、一つの園で兄弟が預かりやすく、保護者や子供から喜ばれております。
 一方で、認証保育所のB型は、ゼロ歳児から二歳児までが対象であることから、兄弟での預かりは難しく、対象年齢を拡大してほしいという声も聞いております。
 認証保育所制度開始から二十年の節目に当たり、認証保育所事業者が、制度の特色である直接契約を生かした創意工夫により、保護者や子供のニーズに合ったサービスを提供できるよう、さらなる支援、制度の見直しが必要と考えるが、都の見解を伺います。
 続いて、児童虐待について伺います。
 子育て支援から児童虐待の介入まで、一貫して迅速に対応をすることを目指し、今年度、世田谷、江戸川、荒川区が児童相談所を開設しました。
 区設置の一時保護所により、都区全体の保護所の定員枠が大幅に拡充され、これまで課題とされてきた、都の一時保護所の年間を通じた定員超過の状態が改善されると期待されておりましたが、現在、都も区も保護所は既に定員が満員状態だと聞いています。
 特に児童虐待事案では、区の児相が、自区内の保護所に入所させるよりも離れた場所で保護した方がいいという事案もあると聞くため、子供たちの安全を確保するためには、区設置による一時保護所の増設が進んでも、一時保護の広域性に鑑み、都として一時保護所を今後も拡充していく必要はあると考えますが、見解を伺います。
 また、区設置、都設置の児童相談所ともに、児童虐待防止のためには、児童相談所と子供家庭支援センターの連携が重要であると考えます。
 また、今年度より、新たな都と区の連携モデル事業として、練馬区の子供家庭支援センターにサテライトオフィスが設置されました。こうしたモデル事業の取り組み状況も踏まえ、児童相談所体制を強化していく必要があると考えますが、見解を伺います。
 続いて、高齢者施策についてお伺いします。
 新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅の認知症の人の生活に大きな影響が出ているといわれております。
 コロナ禍においても、認知症の方への影響把握に努めながら支援を続けていくことが重要と考えますが、都の取り組みについて伺います。
 団塊の世代が七十五歳を迎える二〇二五年問題と、高齢化の進展に伴い、増大する介護ニーズに対応するには、介護サービスを担う人材確保が重要です。一方で、介護職の有効求人倍率は約七倍と上昇しており、人員不足による介護事業者が経営難に陥るケースが仄聞されています。
 都はこれまで、第七期高齢者保健福祉計画において重要課題と位置づけ、広域的な観点からさまざまな介護人材対策を講じてきましたが、今後は、地域の実情に応じた区市町村への支援がより一層重要であります。今後、どのように都は介護人材対策に取り組むのか伺います。
 IoTを通じた安心まちづくりについてもお伺いします。
 視覚障害者の駅のホーム転落事故が後を絶ちません。日本盲人会連合が実施したアンケートによると、視覚障害者の四割がホームからの転落を経験しています。まさに視覚障害者にとっては、柵のない絶壁だといえます。
 鉄道各社はホームドアの設置を推進しておりますが、一駅で数億円ともいわれる経費がかさみ、整備促進を妨げる一因となっております。
 先日、小田急経堂駅での転落検知システムの運用による、転落による列車との接触事故を防ぐ取り組みを視察してまいりました。IoTの技術を活用することで、安心・安全なまちづくりを実施できることを目の当たりにしました。
 しかし、都は、スマート東京を掲げながら、こうしたIoT技術を活用した事業に対して財政支援が十分整備されておりません。次世代社会を見据えた取り組み、シビックテックにこそ支援を拡充すべき段階にあると考えます。知事の見解を伺います。
 次に、環境対策であります。
 持続可能なごみ処理の実現のために、ごみ減量に対する都民への意識啓発、都内ごみ収集方式の効率化、中間処分のコストの削減、最終処分場のさらなる延命化など、対応すべき課題は多く、かつ多岐にわたります。
 市町村及び二十三区のごみ減量化への意識啓発やリサイクル政策は自治体によって異なっており、大規模で画一的な削減が難しい現状です。
 廃プラスチック処理問題だけがごみ問題ではありません。残余期間が五十年といわれる最終処分場をこのまま放置することは、課題の先送りにすぎません。
 サステーナブルな社会の実現のためには、延命化に向けたごみ減量への取り組みや処分場に関する新たな施策が必要と考えますが、見解を伺います。
 また、資源の循環利用のあり方を改めて考える必要があると考えますが、都の認識と今後の取り組みについて伺います。
 下水道事業について伺います。
 下水道の事業再構築や浸水対策などを着実に実施をしていくことは重要です。
 さて、このたび東京にふさわしい下水道施設運営手法のあり方が議会に報告されました。その報告によると、各施設のネットワーク化による運転管理の困難性や災害時のリスク、また、ICTやAIなど技術革新への柔軟な対応を考慮し、将来にわたり安定的に事業を実施していくために、コンセッションではなく、一部の水処理施設に包括委託を導入していく方針となりました。
 そこで、包括委託の導入によって下水道は現場の技術力を失う危惧はないでしょうか。
 また、ゲリラ豪雨など、激甚化する災害にどう対応していくのでしょうか。そして、公営企業として、下水道事業の基本である都民サービス向上にどうつなげていくのか伺います。
 国境離島について伺います。
 日本の最東端南鳥島、日本の最南端の沖ノ鳥島は小笠原村に属し、日本の排他的経済水域の約四割が東京都に属していますが、本年七月、中国の海洋調査船が沖ノ鳥島周辺のEEZで無断活動を行いました。沖ノ鳥島を守り、我が国の権益を守るためにも、周辺海域で経済活動や海洋実験、気象や自然環境調査等の活動を進めるべきです。
 南鳥島や沖ノ鳥島など、国境離島を守ることは国の責任ですが、都としてもできる限りのことをするべきです。知事の見解をお聞きします。
 最後に、コロナ禍という未曾有の危機において、小池知事はウイズコロナ、アフターコロナ、新しい日常と、次々とコンセプトを繰り返しておられます。
 その一つ一つに関して、我々都議会自民党は、真摯かつ積極的に議論をしていきたいと考えております。行政機関と議会との議論こそが、首都東京の未来をより輝かしいものにすると信じているからです。この観点から、本定例会での知事提案に関して二点指摘をさせていただきます。
 まず、コロナ条例の改正案です。
 この改正案の前提となる都民や事業者に努力義務を課すコロナ条例は、知事が七月三十日に専決処分をしたものであり、本定例会最終日に承認の手続がなされることになっております。つまり、現時点で議会の承認を得ていない条例をさらに改正するという提案であります。
 コロナ対策は重要ですが、都民や事業者の方々に努力義務を課す以上、スピード感も大事でありますが、手順を踏んで議会と審議をすることが必要です。そうした民主的な手順を踏んでいるからこそ、都内全域で効力を発揮する条例の正当性が担保されるのです。この二元代表制の基本をしっかりと踏まえ、条例の制定、改正の手続を丁寧に進めていくべきと指摘をしておきます。
 加えて、知事の選挙公約であった東京版CDCについて一言申し上げます。
 先日、東京版iCDC構想が示されました。構想が目指す姿を否定するものではありません。しかし、都の場当たり的なコロナ対策は、さまざまな面であつれきと混乱を引き起こしてきたのが実態です。こうした課題を解消することを優先すべきではなかったでしょうか。このこともあわせて指摘をさせていただきます。
 海外のCDCと比較しても、人的、財政的資源が貧しい中ではありますが、知事が設置を決意した以上、その機能が十分発揮できるよう、我々も注視をしていきたいと思います。
 コロナ危機と対峙をしながら、未来に向けて確かな一歩を進めるためには、知事もおっしゃっているとおり、菅総理を初め、国との連携がますます重要になってまいります。
 都議会自民党は、引き続き全力で首都東京の発展に向け、課題解決に取り組んでいくことをお誓い申し上げて、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 山崎一輝議員の代表質問にお答えいたします。
 これまでの感染症対策の課題の検証を踏まえた施策の展開についてのご質問がございました。
 見えざる敵であります、この新型コロナウイルスとの長い闘いは、東京がかつて経験したことがないものでありまして、感染拡大防止と社会経済活動とを両立させることが、この難局を乗り越えるための大きな命題でございます。
 現在の新規陽性者数は、八月上旬をピークに減少傾向にはございますが、今後、再拡大に厳重な警戒が必要となっております。
 この間、感染症対策を効果的に推進するため、私を本部長といたします感染症対策本部を中心に、例えば、営業時間の短縮要請を延長する際に、人口に比べて感染者数が区部より抑えられている多摩・島しょ地域を除外するなど、課題を検証しながら見直しを図ってきたところでございます。
 今後とも、手綱を緩めることなく、時々刻々と変化する感染状況や社会経済状況なども勘案をいたしまして、これまでの対策の課題の検証を行いながら、今後懸念される感染拡大への備えに万全を期してまいります。
 次に、新型コロナウイルスに関する差別への対応についてのご質問がございました。
 新型コロナウイルスに感染された方やそのご家族、また、医療従事者の方々等への誹謗中傷や不当な差別的扱いは、決して許されるものではございません。
 このため、都民一人一人が正しい情報に基づき、冷静な行動をとることが大切であること、また、闘うべき本当の相手はウイルスであるということを、私自身が動画を通じましてメッセージを発信したところでございます。
 さらに、その動画におきましては、医療や保育、介護に従事する方を初めとして、ライフラインや物流等の私たちの生活基盤を支えてくださるエッセンシャルワーカーの皆様に感謝をし、エールを送らせていただきました。
 このほか、ホームページや「広報東京都」におきましても、人権に配慮した行動をとるように都民の皆様に働きかけてきております。
 こうしたさまざまな取り組みを着実に積み重ねて、差別や偏見は断じてあってはならないことを広く都民に向けて訴えてまいります。
 次に、特措法改正に向けた国への働きかけについてであります。
 国難ともいえる危機に直面している中で、新型コロナウイルス感染症の対応におきましては、国との緊密な連携を図りながら取り組むことが必要不可欠でございます。
 感染拡大防止対策の実効性の確保に向けまして、知事の権限を拡充するためには、特措法を改正して、休業要請に伴う経済的な支援措置などを盛り込むことは極めて重要であります。
 これまで、私自身、西村担当大臣と幾度も面会をし、特措法の改正に向けた要望を直接訴えるとともに、都議会各会派や全国知事会を通じましても要望してまいりました。
 今後とも、私の考えと軌を一にする都議会各会派の皆様と緊密に連携をいたしまして、国に対して特措法の改正を粘り強く訴えることによりまして、感染拡大の防止に全力を尽くしてまいります。
 大会におけます新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
 東京二〇二〇大会は、人類が一丸となって見えざる敵に打ちかって、スポーツを通じてそのきずなをさらに強め、人々に希望と自信を与える、極めて意義の高い大会でございます。大会を心待ちにしている全ての人々のため、未来への希望をともす祭典として成功させたいと考えております。
 大会を成功へと導くためには、選手、観客、関係者など、全ての方々にとって安全・安心な環境が提供できるよう準備を進めていくことが重要であります。
 そのため、国のイニシアチブのもと、設置された調整会議において、国、組織委員会などとともに、水際対策や競技会場、選手村におけます感染防止対策、検査、治療、療養体制の確保など、幅広く議論を行っております。
 感染症の専門家の科学的知見もいただきながら、具体的な対策につきまして検討を進めておりまして、年内を目途に中間の整理を行うことといたしております。
 今後とも、IOC、IPC、国、組織委員会など関係者と協力をいたしまして、大会後のレガシーも見据えながら、安全・安心な大会の実現に向けて着実に準備を進めてまいります。
 大会経費についてのご質問がございました。
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って経済が停滞する中にあって、大会の開催に向けた準備を進めるためには、都民、国民の理解や共感が得られる大会である必要がございます。
 そのため、大会経費につきましては、サービスレベルの水準を最適化、合理化するとともに、延期により生じるコストの削減を図ることといたしまして、組織委員会とともにIOCと大会の簡素化に向けた見直しを行って、先週のIOC調整委員会において、これまでの成果として五十二項目について合意をされたところであります。
 今後、引き続き、国際競技連盟、各国オリンピック委員会などの関係者と簡素化に向けました努力を重ねるとともに、追加経費に係る負担も含めまして、IOCと組織委員会を含む日本側が共同で議論を行ってまいります。
 次に、国際金融都市東京についてのご質問がございました。
 ポストコロナの時代におきまして、東京の経済を振興し、稼ぐ力を高め、都民の豊かな暮らしを実現していく、そのためには、経済の血液であります金融分野の強化によって、都内企業の資金循環を活性化させることが必要であります。
 海外におきましては、例えばシティー・オブ・ロンドンやシンガポール金融管理局といった組織が推進役となって、官民一体となって金融分野の振興を図っております。
 都におきましても、昨年度、官民連携組織でありますフィンシティー・トーキョーを設立して、海外に向けたプロモーション活動を実施いたしております。
 東京は、金融人材や資金などが集積する金融エコシステムが形成されている、それに加え、治安のよさ、整備された社会インフラなど、外国人にとって住みやすい生活環境を有しておりますが、一方で、所得税や法人税など、税制面や金融に関します各種手続の複雑さ、不十分な英語対応などといった課題がございます。
 これらの課題の速やかな解決に向けましては、制度を所管する国、そして、実際のプレーヤーであります金融事業者との連携を強固にすることが必要であり、都は先頭に立ってさまざまな対策を講じてまいります。
 その一つといたしまして、今回、新たに東京に拠点を設立することを検討している金融系の海外企業に対する支援策を年内にも実施して、企業誘致をさらに促進してまいります。
 ご指摘にありましたように、東京とアジア諸都市との競争がますます激化する中で、今後、都議会の皆様と緊密に連携をしながら、国と調整を行うなど、オール東京として金融系海外企業、そして、人材の誘致に、より一層積極的に取り組むことで、国際金融都市としての地位を盤石にしてまいります。
 次に、特別支援学校のICT環境整備についてでございます。
 全ての子供たちが将来の夢や希望を実現するためには、子供たちの学ぶ意欲に応えて、その力を最大限に伸ばす教育のICT化は重要であります。
 特に、障害のある子供たちにとりまして、ICTを活用して学ぶことは、抽象的な事象を視覚的に理解することに加えまして、視線での入力であったり、音声での読み上げなどによってコミュニケーションが円滑になるなど、学習上の困難を軽減することに有効とされております。
 こうした強みや特性を最大限生かしまして、一人一台端末によります個別最適化された学びを実現することで、より一層学ぶ意欲を高めて、主体性を育む教育を行ってまいります。
 このため、この定例会におきまして、都立特別支援学校の小学部、中学部におけます一人一台端末と必要な支援装置の整備を行う補正予算案を提案したところでございます。
 今後、特別支援学校におきましても、子供たち一人一人に合った教育環境の充実を図って、自立、社会参加に向け、教育の質の向上を図ってまいります。
 次に、IoTを通じた安心まちづくりについてのご指摘がございました。
 東京におきまして、DX、デジタルトランスフォーメーションを深化させ、先端技術の社会実装を進めていくことは、世界の都市間競争に打ち勝つためのみならず、これまで克服が困難でありましたさまざまな社会的課題の解決に向けた新たな糸口として、デジタル技術の積極活用を図るためにも極めて重要であります。
 都はこれまでも、昨年の台風十九号の際、孤立集落へドローンを活用した救援物資を搬送したり、宿泊療養施設におけます健康管理アプリケーションの導入など、最先端のIoT技術を活用した取り組みを先導してまいりました。
 また、5Gネットワークを基盤として、防災力の強化を図るため、情報サービス事業者と連携した水防災情報の発信強化を初め、多岐にわたる取り組みの具体化を進めております。
 これらの推進に当たりましては、民間の技術力、専門的知見の活用が不可欠でありますことから、官民の強固な連携が必要となります。
 このため、今般立ち上げました都政の構造改革推進チームによりますシビックテック等との協働推進プロジェクトを先導役といたしまして、都の各施策に応じた官民連携を進めてまいります。
 最後に、国境離島についてのご質問がございました。
 我が国は、世界有数の海洋国家であります。これを堅持するためにも、排他的経済水域の根拠となります、いわゆる国境離島の維持、保全が重要であります。
 南鳥島の周辺海域におきましては、海洋鉱物資源でありますレアアース泥や、本年七月に掘削試験が成功いたしましたコバルトリッチクラストなどが確認をされておりまして、これまで都は、国に対して資源開発の推進などを要請してまいったわけであります。
 また、沖ノ鳥島につきましては、これまでも国が島の適切な保全に取り組んでおり、都におきましても、周辺海域での海洋観測や水産資源の調査、外国漁船の違法操業等の監視などを実施いたしております。
 今後とも、都は、国に対して積極的に働きかけを行うとともに、緊密な連携を図って、国境離島の維持保全に向けまして取り組んでまいります。
 残余のご質問につきましては、副知事、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔副知事宮坂学君登壇〕

○副知事(宮坂学君) 初めに、大災害時の通信環境の確保についてでございますが、大規模災害時には、都民の皆さんに正確で命を守るために必要な情報を伝えるため、つながる通信環境を維持し続けることが重要でございます。
 昨年の台風十九号の際、都や区市町村のホームページへのアクセスが集中し、閲覧しにくくなる事態が発生したことを教訓に、防災ホームページ等へのアクセス集中対策マニュアルを作成して、二月に全市区町村の情報技術担当に配布し、実装を要請しました。現時点では、多くの区市町村で実装に取り組んでいると聞いており、昨年よりホームページの強靭化については進んでいるものと推測しています。
 このほかにも、都では、テレビ、ラジオ、防災行政無線、緊急速報メール、デジタルサイネージなど、情報提供手段の多様化に取り組んでおります。
 通信事業者においても、アンテナ基地局等の設置に当たり、耐震対策、風水害防護対策のほか、区市町村の役場など、重要エリアにおける基地局の無停電化等に取り組んでおります。
 また、通信途絶地域が発生した場合でも、伝送路断線や停電に伴うサービス中断に対応できる移動基地局車、可搬型衛星基地局、移動電源車などの活用により復旧することとしております。
 さらに、つながる東京の実現に向けては、スマートフォンなどの各種端末の充電機能の確保も重要であります。昨年度は、帰宅困難者の一時滞在施設におけるスマートフォン等の電源確保に取り組み、現在は、西新宿で試行設置するスマートポールにおいても充電設備を搭載しております。
 こうして、情報伝達手段の多様化を図るために、二十一世紀のライフラインともいうべき通信環境の強靭化に取り組み、新技術の動向なども視野に入れて、何があってもつながる東京の実現に向けて改善を続けていきたいと考えております。
 次に、国のデジタル庁との連携についてでございますが、今回のコロナ禍では、我が国の情報技術の利活用のおくれが浮き彫りとなりました。
 国のe-Japan戦略発表以降、我々は二十年近く、IT立国の形成を目指してデジタル化を推進してまいりましたが、デジタル化は進まず、都市全体のデジタル化のランキングを見ても、東京は世界で二十八位と、ほかの主要都市から大きくおくれをとっております。
 私は、改めてデジタルトランスフォーメーションを推進し、東京を変えていかなくてはならないという思いを強く持ちました。生活や行政に情報技術を取り入れるという目標自体は今も変わりませんが、やり方、手法を大きく変えなければならないと考えております。だからこそ、国もデジタル庁を創設し、規制改革、縦割りの打破も含めて、大胆にやり方を変えようとしているのではないでしょうか。
 都におきましても、デジタル技術を活用した都庁、都政に生まれ変わるためには、根本からのやり方の見直しが不可欠であることから、八月末に構造改革推進チームを立ち上げ、バーチャル都庁構想を打ち出しております。
 この実現に当たっては、デジタル人材の雇用、調達や契約制度、システムの評価、都庁内の情報環境整備、データの標準化や自治体クラウドやSaaSの利用に関する考え方の変更など、テクノロジーに限らず、幅広く国と連携、調整しなければならないものが多くあります。
 国は、年内に基本方針をまとめると聞いておりますが、デジタルトランスフォーメーションという大きな挑戦に対し、課題をクリアしながら歩みを進めていくためには、都と国が連携して取り組んでいくことが重要です。
 私自身も、これまで培ってきた経験なども生かしながら、国や基礎自治体とスクラムを組んで、デジタルトランスフォーメーションを進めていく決意であります。
 最後に、デジタルトランスフォーメーションに向けた区市町村支援についてでございますが、住民と身近に接している区市町村において、デジタルシフトを加速させ、行政サービス水準の向上を図ることは極めて重要で、これを支える区市町村間のシステム連携やICT人材の育成、確保は急務の課題でございます。
 まず、システム連携についてでございますが、現在、国では、自治体システムの標準化に向け、基幹系業務システムの仕様の統一、標準化に集中的に取り組み、年内に対象事務の特定と工程化を行うとしております。
 都においても、政府のCIO補佐官を兼務している都のデジタルシフトフェローの知見も活用しながら、国の動向を見定めつつ、各自治体による効率的なシステム連携の構築を支援してまいります。
 また、ICT人材についても、二〇三〇年には最大八十万人不足するという試算もあります。人材の問題はデジタル化を進める上で最重要の課題であり、区市町村においても同様の問題があると考えております。
 都では現在、ICTの専門性を持つ人材の任期つき採用やデジタルシフトフェローの活用など、さまざまな手法で人材の確保に努めております。また、来年四月にICT職の採用を新たに開始するとともに、外部人材の機動的活用についても検討を進めているところでございますが、これらの人材確保に向けた工夫も区市町村へ共有していきたいと考えております。
 さらに、これまで研修会等により区市町村の人材育成を促進してまいりましたが、今後、バーチャル都庁構想の取り組みを通して得られる情報環境の構築などのノウハウも共有し、働く環境のデジタル化による公務員のマインドチェンジも促していきたいと考えております。
 こうした取り組みなどを通じて、都と区市町村とがデジタル施策で強固に連携するとともに、意見交換を密にして、迅速にする手だてを講じてまいります。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、修学旅行等にかわる学校行事についてでございますが、宿泊を伴う行事や校外での体験学習等は、他者との触れ合いを深め、よりよい人間関係を形成しようとする態度を育むことができる意義のある教育活動でございます。
 都教育委員会は、来年一月以降は、感染状況を考慮しながら、都立学校における修学旅行や校外学習について、子供の安全を確保した上で計画、実施できるようガイドラインを改定するとともに、こうした方針を区市町村教育委員会にも周知をいたしました。修学旅行等を中止とした地区においては、代替行事として、日帰り遠足や都内での調べ学習等の実施を検討する動きもございます。
 今後、都立の施設の活用等を含め、さまざまな取り組みの工夫を紹介し、感染防止対策を講じた上で、子供の心情等に配慮した有意義な学校行事が実施できるよう支援を行ってまいります。
 次に、特別支援学校の通信環境の整備についてでございますが、これまで都教育委員会は、特別支援学校において、各教室に有線LANを配備し、インターネット環境を整えてきたところでございます。今年度中に行う児童生徒一人一台端末の整備に当たり、オンラインでの学習を円滑に進めていくためには、無線LANの整備による通信環境の充実が必要となってまいります。
 このため、TOKYOスマート・スクール・プロジェクトの一環として、今年度中に都立学校の通信基盤を増強いたしますとともに、特別支援学校七校の無線LAN設置工事を先行して実施をいたします。
 今後、都教育委員会は、特別支援学校においても、児童生徒一人一台の端末にふさわしい通信環境の整備を進め、ICTを活用した効果的な授業の実施を図ってまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ステッカーの感染防止の効果についてでございますが、感染拡大を防ぐためには、事業者がガイドラインを遵守し、利用客がステッカーのある店舗等を選択することで、双方の協力のもと、感染防止策を徹底していくことが重要でございます。
 この間の職員による現地確認では、ステッカーを掲示している店舗等におきまして、おおむねガイドラインに沿った適切な感染防止策が講じられてございました。また、ポスターやSNSなどさまざまな媒体を通じまして、都民に対し、ステッカーのある店舗等の利用促進を図ることで、感染拡大防止に一定の効果があったと考えてございます。
 今後も、事業者にガイドライン遵守の継続的な点検を求めるとともに、都民への普及啓発を通じて、ステッカーの実効性を高めてまいります。
 次に、災害対応力強化に向けた取り組みについてでございますが、激甚化する風水害から都民の命を守るためには、まずは適切な避難行動を促すとともに、災害状況に応じた安全な避難先を確保することが重要でございます。
 都はこれまで、東京マイ・タイムラインを活用した普及啓発や、的確な避難情報の発令に関するガイドラインを作成いたしますとともに、コロナ対策として、在宅避難等分散避難の周知や、ホテルや大型商業施設団体との協定締結等による新たな避難先の確保に取り組んでおります。
 ことし六月には、大規模風水害時を想定し、避難所の運営を担う区市町村との情報連絡や支援物資の手配等を実践形式で行う図上訓練を初めて実施いたしました。
 激甚化する風水害に対しまして、今後も、こうした区市町村と連携した実効性ある取り組みを進め、東京の災害対応力を強化してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、感染拡大防止協力金の効果と今後の対策についてですが、都はこれまで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、休業や営業時間の短縮の要請を実施してまいりました。
 その休業要請の実効性を確保するため、協力金を支給してきたところでございますが、ほぼ想定した対象事業者に申請をいただいたことから、その効果があったものと考えております。
 また、手続の簡素化などの課題を検証しながら、施策の充実を図り、早期の支給につなげてまいりました。
 今後とも、こうした施策の状況を踏まえながら、感染拡大防止と経済の再生との両立を図る観点から、的確な対策を講じてまいります。
 次に、倒産や廃業の防止に向けた支援についてですが、感染症の影響が長引く中、厳しい経営状況が続く中小企業に対し、事業の継続を下支えすることは重要でございます。
 そのため、都は、中小企業の資金繰り支援に向けて、新型コロナ対応融資を創設し、借り入れ後三年間を無利子化するなどの手厚い支援を講じているところでございます。
 また、中小企業の感染予防対策への助成や中小企業団体による販路開拓の取り組みへの支援を拡充し、事業継続を強力に支援してまいります。
 さらに、経営の立て直しに向けた集中支援を行うため、中小企業振興公社に相談窓口を設けるとともに、地域金融機関に要請してサポートが必要な中小企業を着実に呼び込み、連携して再生支援に取り組むこととしております。
 今後も、こうした取り組みを通じて、中小企業の倒産や廃業の防止を図ってまいります。
 次に、コロナ禍における雇用対策についてですが、新型コロナウイルスの影響により、市場規模が急激に縮小した業種を中心に、雇用情勢が深刻化しております。
 こうした中、離職を余儀なくされた方々に対して、IT等の成長産業への再就職を支援することは効果的な取り組みだと考えております。
 都は現在、失業者等に対して、システム開発の基礎知識やネットワーク構築の専門スキルなど、さまざまな技能を習得できる短期の職業訓練を幅広く実施し、多様なIT人材を育成しているところでございます。
 また、IT企業等に対して、正規雇用を目指す就労支援プログラムを利用した求職者を正社員として雇い入れた場合に助成金を支給するなど、採用へのインセンティブを付与してまいります。
 最後に、多摩・島しょ地域の観光振興についてですが、都内観光促進事業を地域にとってより有益なものとするためには、感染防止対策を徹底しつつ、その地域ならではの魅力的な観光資源を生かすことが重要でございます。
 都はこれまで、多摩・島しょ地域の観光振興のため、地元の観光事業者が行う自然を堪能するガイドツアー等の商品開発を支援するほか、島しょ地域におきましては、宿泊施設や飲食店、土産物店などで利用できるしまぽ通貨を販売してまいりました。
 多摩・島しょ地域の一層の観光振興に向けまして、今回の都内観光促進事業の実施に合わせ、旅行業者に対し、地域で開発した旅行商品を紹介し、新たなツアー造成を促す取り組みや、しまぽ通貨の販売開始を早急に検討してまいります。
〔福祉保健局健康危機管理担当局長初宿和夫君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(初宿和夫君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、インフルエンザ流行期の診療体制についてでございますが、秋冬に向けて発熱患者が多数発生することが危惧される中、都民が安心して地域の身近な医療機関を受診し、必要な検査が受けられる体制を整備することは重要でございます。
 都はこれまで、かかりつけ医等の医療機関が新型コロナウイルスの感染防止のために行う、発熱患者用の診察室の設置や動線の確保、診療所のレイアウト変更などに要する経費を補助してまいりました。
 今後、都医師会と連携して、国が新たに開始する発熱患者の外来診療及び検査体制確保のための支援策を周知し、多くの医療機関で発熱患者を診療できる体制の整備に取り組むとともに、改めて感染防止のための支援策を周知し、活用を促してまいります。
 次に、災害時の動物の救護体制についてでございますが、都は、災害時に飼い主と動物の安全を確保するため、避難所を設置いたします区市町村に対し、地域防災計画に動物救護対策を位置づけるよう働きかけるほか、負傷動物の応急処置等について東京都獣医師会と協定を締結しております。
 また、昨年の台風第十九号の際には、避難所での動物の飼育場所の確保や関係者の情報共有等が十分でない事例が見られたことから、専門家の意見も伺いながら、風水害時の具体的な対応策を取りまとめ、災害時における動物愛護管理対応マニュアルに織り込み、本年三月、全区市町村に提供いたしました。
 今年度は、区市町村の担当者に、風水害の発生に備えた対策を講ずるよう改めて周知するなど、災害時の動物救護体制の充実を図ってまいります。
〔財務局長潮田勉君登壇〕

○財務局長(潮田勉君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、来年度予算編成についてでございますが、財政環境が今後厳しさを増す中にありましても、新型コロナウイルス感染症対策を初め、都政の諸課題に積極的に対応するとともに、将来にわたり持続可能な財政運営を行っていくため、無駄をなくす取り組みの徹底が重要でございます。
 このため、来年度予算の見積もり方針におきましては、必要な都民サービスをできる限り維持する前提のもと、経常的、定型的な経費に対してマイナスシーリングを導入し、予算要求段階から経費の抑制を図ることといたしました。
 今後の予算編成におきましても、限られた財源を最大限有効に活用する観点から、事業評価の取り組みにより見直しを強化するとともに、必要性や有益性などを十分に見極めつつ、効率的で実効性の高い施策を構築してまいります。
 次に、保有資産の売却やさらなる有効活用についてでございますが、都有地は都民から負託を受けた貴重な財産であることから、山積する都政の諸課題の解決のために、その価値を最大限に発揮させていくことが必要であります。
 都は、過去の財政再建期には、二次にわたる財産利活用総合計画に基づき、不用な財産の積極的な売却を進め、収入確保に努めてまいりました。一方、平成十九年度以降は、未利用都有地を単に売却するだけでなく、福祉インフラ事業を初め、地域の課題解決を目的として区市町村や民間に貸し付けるなど、収入確保と施策実現を両立させる利活用をより積極的に推進しております。
 今後も、都の施策展開を財政面から支えるべく、多様な行政需要を見据えた都有地の最適活用に努めてまいります。
 次に、品確法に基づく運用指針への取り組みについてでございます。
 本年一月、運用指針が改正され、改正品確法における働き方改革の推進や生産性の向上、災害時の緊急対応等の理念実現に向けた方向性が示されたところであります。
 これらを踏まえまして、都では、働き方改革への対応として、繰越明許費等を活用した施工時期等の平準化のさらなる推進とともに、本年四月には建築工事標準仕様書を改正し、ICT活用など生産性向上に資する取り組みについて、受注者が提案できる規定を追加いたしました。また、近年頻発する自然災害の復旧に向けた調達について検討を進めており、今後も、法の理念をもとに、必要な都の制度等の見直しを行ってまいります。
 さらに、こうした都の考え方や取り組みを体系的に整理し、定例的な会議等により関係部局で十分に周知、共有を図り、発注事務の適切な実施に全庁で取り組んでまいります。
 最後に、業務委託の最低制限価格制度についてでありますが、委託契約の品質確保等を担保するために、都はこれまでも、実勢を踏まえた適切な予定価格の設定や総合評価方式の運用に取り組んでまいりました。
 これに加え、最低制限価格制度については、印刷請負において試行を実施し、この十月からは、設計等委託においても試行を開始する予定でございます。
 これまでの取り組みを通して、制度については、業務内容に応じた多様な積算手法や共通の基準の設定、適用範囲など、解決すべき課題が明らかになってきております。
 今後、業務の品質確保等の観点から、現行の試行を拡大し課題の分析を進め、実効性のある制度導入について検討を行ってまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、社会福祉施設等の安全確保についてでございますが、平成二十九年に水防法及び土砂災害防止法が改正され、浸水想定区域、土砂災害警戒区域内に立地し、区市町村が地域防災計画に定める要配慮者利用施設である社会福祉施設等に対して、避難確保計画の策定等が義務づけられました。
 都は、該当する施設に対し、計画策定の義務化等について周知するとともに、指導検査等の際に、未策定の施設には策定を求め、利用者の安全確保のため、区市町村にも情報提供を行っております。
 また、社会福祉施設等の耐震化が進むよう、技術的な助言や提案等を行うアドバイザーを派遣するほか、耐震診断、耐震改修経費を補助するなど、施設の取り組みも支援しており、引き続き、区市町村とも連携しながら、社会福祉施設等の安全の確保を推進してまいります。
 次に、保育事業者の運営支援についてでございますが、多様な保育サービスの提供や保護者へのきめ細かな対応などに加え、幼児教育、保育の無償化に伴う給食費の徴収などにより、近年、事務量が増加しているとの声が保育事業者から寄せられております。
 都は現在、保育事業者が行っている具体的な事務内容やICTの活用状況等を把握するため、認可保育所など千二百カ所を対象にアンケート調査を実施しております。
 さらに、一部の施設を対象にヒアリング等を実施し、負担が大きい事務の処理手順や業務分担等、業務実態の詳細を把握するとともに、介護サービス等の他の分野の先進的な取り組み事例について調査をしております。
 今後、この結果を踏まえ、保育事業者の事務負担軽減に向けた有効な方策を検討してまいります。
 次に、認証保育所についてでございますが、大都市特有の保育ニーズに対応するため、ゼロ歳児保育や十三時間開所等を義務づけた認証保育所は、利用者との直接契約により、利用者本位のサービスを積極的に提供するなど、都の保育施策の重要な柱の一つでございます。
 そのため、都は、開設準備経費や運営費を補助するほか、障害児やアレルギー児などに対応するための取り組みへの支援などを行っております。
 今年度からは、空き定員を活用して、待機児童数の大半を占める一歳児の受け入れを促進するための支援を開始したほか、二歳児までとしていた認証保育所B型の補助対象を三歳児まで拡大しており、今後とも、認証保育所が利用者のニーズに的確に対応できるよう、必要な支援や制度の見直しについて検討してまいります。
 次に、一時保護所の拡充についてでございますが、都はこれまで、一時保護需要の増加に対応するため、一時保護所の定員を、平成二十二年度の百六十八名から二百三十七名まで拡大してまいりました。
 今年度は、世田谷区、江戸川区及び荒川区が児童相談所を設置し、その一時保護所の定員は、合わせて七十一名でございます。
 都と区の児童相談所では、定員超過により適切な支援の確保が困難な場合や、非行児童を分散して保護する必要がある場合等に、それぞれの一時保護所を相互に利用しております。
 また、来年度は児童相談センターで十六名の定員拡大を図るほか、新宿区が設置する施設を借り上げ、保護所として活用する調整を進めており、今後の一時保護需要等を踏まえまして、必要な定員を確保してまいります。
 次に、児童相談に係るモデル事業についてでございますが、今年度から都が練馬区と共同で取り組んでいるモデル事業では、区の子供家庭支援センター内に都の児童相談所のサテライトオフィスを設置し、児童相談所職員が虐待相談に対応するとともに、都区の連携拠点として、合同調査や個別ケース検討会議などを実施しております。
 こうした取り組みにより、子供家庭支援センターと児童相談所の間で情報共有や協議を行う機会がふえ、迅速な一時保護や円滑な引き継ぎにつながっているとの報告を受けております。
 また、本年七月に立ち上げた児童福祉審議会の専門部会では、モデル事業の普及など、都と区市町村のさらなる連携強化策も検討しており、今後、この議論も踏まえながら、東京全体の児童相談体制の強化に取り組んでまいります。
 次に、認知症の方への支援についてでございますが、都は、認知症の方とその家族の在宅生活を支えるため、都内五十二カ所に認知症疾患医療センターを設置し、専門医療を提供するとともに、認知症カフェや家族相談会の開催などを支援しております。
 新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、関係機関を通じて、認知症の方の体調や生活リズムの変化、認知症カフェ等の支援策の実施状況等の把握に努め、地域の医療機関や関係自治体等と情報を共有するほか、認知症疾患医療センターによる電話での状況確認やオンラインでの家族交流会などにより、本人や家族への支援を継続しております。
 今後とも、認知症の方とその家族が地域で安心して暮らすことができるよう、認知症施策を推進してまいります。
 最後に、介護人材対策についてでございますが、都は、介護人材対策の推進を第七期高齢者保健福祉計画の重点分野の一つとし、人材の確保、定着、育成のため、職場体験や資格取得支援のほか、職員宿舎借り上げ支援事業など、さまざまな取り組みを実施しております。
 また、介護未経験者等に対するセミナーや研修、介護事業者等と連携して実施するマッチング事業など、地域の実情に応じた区市町村の取り組みを支援しております。
 今後の対策について検討するために立ち上げた介護人材総合対策検討委員会では、第八期計画の策定に向け、これまでの取り組みに加え、地域の特色を踏まえた支援の拡充など、新たな施策の方向性が示されており、今後、こうした観点を踏まえ、効果的な介護人材対策を検討してまいります。
〔都市整備局長上野雄一君登壇〕

○都市整備局長(上野雄一君) 木密地域の改善に向けた取り組みについてでございます。
 これまでの防災都市づくりの取り組みにより、整備地域全体の不燃領域率が上昇するなど成果が着実に上がっております。
 一方、無接道敷地や複雑な権利関係等により、改善がおくれている地域があることから、不燃化の一層の促進に向け、都は、ことし三月、防災都市づくり推進計画の基本方針を改定いたしました。
 基本方針では、建物の共同化のさらなる推進に加えて、新たに不燃化が進まない街区の改善に向け、無接道敷地の解消を図るとともに、木密地域外での民間開発の機会を捉えまして、容積緩和を可能とする都市開発諸制度等を活用し、木密地域内での基盤整備等の改善を進めていくこととしております。
 今後、こうした新たな取り組みも含めた方策をより効果的に展開し、地震に強い安全な都市を実現してまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 東部低地帯の河川における耐震対策についてでございますが、大地震による水害から、この地域に住む三百万人の都民の命と暮らしを守るためには、液状化などによる堤防や水門等の損傷を防ぐ耐震対策を推進することが重要でございます。
 都はこれまで、東日本大震災を受け策定した計画に基づき、高潮等により大きな被害が想定される地域を守る防潮堤や水門の整備を優先的に進め、計画の対象となる堤防の約六割と水門等九施設が完了いたしました。
 今後、水門の内側に位置する堤防にも重点を置き、関係機関との綿密な調整や施工方法の工夫により、整備を促進してまいります。
 さらに、国とともに取りまとめる災害に強い首都東京形成ビジョンに東部低地帯の水害対策を位置づけるなど、国や地元区とより一層連携して、液状化を含めた耐震対策を推進し、首都東京の安全性を高めてまいります。
〔港湾局長古谷ひろみ君登壇〕

○港湾局長(古谷ひろみ君) 新海面処分場の受け入れ容量の増大の取り組みについてでございますが、新海面処分場は、東京港に確保できる最後の埋立処分場でございまして、できるだけ長期間にわたって使用していくことが必要でございます。
 これまで都では、処分場内の海底面を掘り下げる深掘り工事や、これまで埋め立てを行った地盤等を圧縮、沈下させる沈下促進工事を実施いたしまして、容量の増大を図ってまいりました。
 また、新たな取り組みとして処分場内にプラントを設置し、既に受け入れたしゅんせつ土を掘り返し、脱水、改良を行うことで、土木材料として活用いたします取り組みも開始いたします。これにより、しゅんせつ土の受け入れ容量の増大を図ってまいります。
 引き続き、こうした取り組みにより、都市機能に欠かせない新海面処分場のさらなる延命化を図ってまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 新海面処分場の延命化及び資源の循環利用に向けた取り組みについてでございますが、埋立処分量のさらなる削減に向け、多様な主体と連携し、3Rの実現に着実に取り組むことが必要でございます。
 都は、二十三区等と連携し、焼却灰のセメント原料化の促進や、これまで埋立処分されてきた空き弁当容器等の焼却処理による埋立処分量削減の取り組みを推進してございます。
 また、食品ロス対策、プラ製容器包装の回収対象拡大や分別の質の向上、古紙の再資源化推進に取り組む区市町村を支援しまして、ごみの減量やリサイクルを促進してまいります。
 加えて、新型コロナウイルス感染症の影響が続く中でも3Rの着実な推進を図るため、テークアウト弁当にリユース容器を使用するなど、先駆的な取り組みを支援するとともに、さまざまな媒体を活用した都民へのわかりやすい情報発信に取り組み、脱使い捨ての生活様式への転換を促してまいります。
〔下水道局長和賀井克夫君登壇〕

○下水道局長(和賀井克夫君) 下水道施設運営手法のあり方についてでございますが、今後の施設運営に当たりましては、水再生センターの水処理施設を対象に、設置環境や運転管理の困難性などを比較し、一部の施設に包括委託を導入することといたしました。
 委託先となります政策連携団体及び民間事業者から、ICTやAIなど新たな技術の創意工夫を引き出し、柔軟に取り入れるなど、三者で競い合い、都民生活を支える下水道サービスのさらなる向上に努めてまいります。
 なお、豪雨時等の運転管理のリスクが高い施設におきましては、引き続き直営で運営することで、局が有する技術を継承してまいります。
 さらに、都民の安全に直結する豪雨対策などの施設整備や老朽化対策などの改築更新は、引き続き局の責任のもと、着実に推進してまいります。

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