平成十九年東京都議会会議録第十三号

平成十九年九月二十六日(水曜日)
 出席議員 百二十六名
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番米沢 正和君
四番鈴木 章浩君
五番きたしろ勝彦君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番西崎 光子君
十一番西岡真一郎君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番田中たけし君
二十一番神林  茂君
二十二番早坂 義弘君
二十三番高木 けい君
二十四番崎山 知尚君
二十五番宇田川聡史君
二十六番高橋 信博君
二十七番原田 恭子君
二十八番佐藤 広典君
二十九番尾崎 大介君
三十番山口  拓君
三十一番伊藤まさき君
三十二番松下 玲子君
三十三番野上ゆきえ君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番村上 英子君
四十一番鈴木あきまさ君
四十二番秋田 一郎君
四十三番山加 朱美君
四十四番串田 克巳君
四十五番吉原  修君
四十六番山田 忠昭君
四十七番田代ひろし君
四十九番山口 文江君
五十番今村 るか君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番野上 純子君
六十番東村 邦浩君
六十一番長橋 桂一君
六十二番小磯 善彦君
六十三番三宅 茂樹君
六十四番高島なおき君
六十五番鈴木 一光君
六十六番菅  東一君
六十七番石森たかゆき君
六十八番矢島 千秋君
六十九番鈴木 隆道君
七十番こいそ 明君
七十一番倉林 辰雄君
七十二番遠藤  衛君
七十三番大西由紀子君
七十四番いのつめまさみ君
七十五番門脇ふみよし君
七十六番小沢 昌也君
七十七番石毛しげる君
七十八番岡崎 幸夫君
七十九番柿沢 未途君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番東野 秀平君
八十四番ともとし春久君
八十五番鈴木貫太郎君
八十六番石川 芳昭君
八十七番三原まさつぐ君
八十八番田島 和明君
八十九番林田  武君
九十番野島 善司君
九十一番高橋かずみ君
九十二番樺山たかし君
九十三番新藤 義彦君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番立石 晴康君
九十六番桜井  武君
九十七番初鹿 明博君
九十八番酒井 大史君
九十九番花輪ともふみ君
百番大津 浩子君
百一番大塚たかあき君
百二番相川  博君
百三番中村 明彦君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番藤井  一君
百七番中嶋 義雄君
百八番木内 良明君
百九番石井 義修君
百十番宮崎  章君
百十一番服部ゆくお君
百十二番川井しげお君
百十三番吉野 利明君
百十四番野村 有信君
百十五番比留間敏夫君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番馬場 裕子君
百二十一番大沢  昇君
百二十二番山下 太郎君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員 なし
 欠員
四十八番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事谷川 健次君
副知事菅原 秀夫君
副知事山口 一久君
副知事猪瀬 直樹君
教育長中村 正彦君
知事本局長大原 正行君
総務局長押元  洋君
財務局長村山 寛司君
主税局長熊野 順祥君
警視総監矢代 隆義君
生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君
都市整備局長只腰 憲久君
環境局長吉川 和夫君
福祉保健局長安藤 立美君
産業労働局長佐藤  広君
建設局長道家 孝行君
港湾局長津島 隆一君
会計管理局長三枝 修一君
交通局長島田 健一君
消防総監小林 輝幸君
水道局長東岡 創示君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長久我 英一君
東京オリンピック招致本部長荒川  満君
病院経営本部長秋山 俊行君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長梶原 康二君
人事委員会事務局長矢口 幸一君
労働委員会事務局長有留 武司君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長中田 清己君

九月二十六日議事日程第二号
第一 第百五十六号議案
  平成十九年度東京都一般会計補正予算(第二号)
第二 第百五十七号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百五十八号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百五十九号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第五 第百六十号議案
  都市計画法に規定する開発許可等の基準に関する条例の一部を改正する条例
第六 第百六十一号議案
  東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第七 第百六十二号議案
  東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第八 第百六十三号議案
  東京都看護師等修学資金貸与条例の一部を改正する条例
第九 第百六十四号議案
  東京都認定こども園の認定基準に関する条例の一部を改正する条例
第十 第百六十五号議案
  旅館業法施行条例の一部を改正する条例
第十一 第百六十六号議案
  プール等取締条例の一部を改正する条例
第十二 第百六十七号議案
  東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第十三 第百六十八号議案
  緑の東京募金基金条例
第十四 第百六十九号議案
  温泉法に基づく温泉の保護に係る手数料に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第百七十号議案
  東京都公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例
第十六 第百七十一号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第十七 第百七十二号議案
  東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)Ⅰ期新築工事請負契約
第十八 第百七十三号議案
  都立永福学園養護学校(H十九)増築工事請負契約
第十九 第百七十四号議案
  妙正寺川整備工事(激特─一)請負契約
第二十 第百七十五号議案
  妙正寺川整備工事(激特─二)請負契約
第二十一 第百七十六号議案
  妙正寺川整備工事(激特─四)請負契約
第二十二 第百七十七号議案
  公立大学法人首都大学東京中期目標の変更について
第二十三 第百七十八号議案
  公立大学法人首都大学東京定款の変更について
第二十四 第百七十九号議案
  公立大学法人首都大学東京が徴収する料金の上限の認可について
第二十五 第百八十号議案
  公立大学法人首都大学東京に対する出資について
第二十六 第百八十一号議案
  道路標識設置等工事に係る損害賠償請求訴訟事件に関する和解について
第二十七 第百八十二号議案
  土地及び建物の売払いについて
第二十八 第百八十三号議案
  東京都江戸東京博物館外二施設の指定管理者の指定について
第二十九 第百八十四号議案
  東京文化会館の指定管理者の指定について
第三十 第百八十五号議案
  職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京大気汚染訴訟の和解に関する報告及び承認について
議事日程第二号追加の一
第一 平成十八年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
第二 平成十八年度東京都公営企業各会計決算の認定について

   午後一時開議

○議長(比留間敏夫君) これより本日の会議を開きます。

○議長(比留間敏夫君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(比留間敏夫君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(大村雅一君) 知事より、地方自治法第二百四十一条第五項の規定により、平成十八年度東京都区市町村振興基金及び東京都用品調達基金の運用状況に関する調書等の提出がそれぞれありました。

○議長(比留間敏夫君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、平成十八年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について外一件が提出をされました。
 これらを本日の日程に追加をいたします。

○議長(比留間敏夫君) これより質問に入ります。
 百十三番吉野利明君。
   〔百十三番吉野利明君登壇〕

○百十三番(吉野利明君) 平成十九年第三回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問いたします。
 去る七月十六日に発生した新潟県中越沖地震は、柏崎市や刈羽村などで、多くの死傷者や多数の家屋の全半壊など大きな被害をもたらしました。地震により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
 都は直ちに救助活動を展開しましたが、都議会自民党も、東京への重要な電力供給地でもある被災地に対して一刻も早く支援するように、知事に対して十分な対応を要請したところです。
 さて、知事は今般、東京を水と緑にあふれ、美しく安全な都市へと生まれ変わらせるために、年内に「十年後の東京」の実現に向けた実行プログラムを策定し、今後の都の事業展開を明らかにすると表明されました。オリンピック招致を目指し、東京をさらなる成熟を遂げた都市として二十一世紀の都市モデルを実現するには、都の具体的な取り組みをしっかりと構築するとともに、都民、企業、区市町村などとの協働を強力に推進し、東京全体で一丸となった取り組みをいかに進めていくかが大きなかぎとなります。
 今回の実行プログラムでは、広範なムーブメントの醸成に、共感を呼ぶキャッチフレーズを初め、緑化の推進に向けて都民、企業が受け入れやすい仕組みづくりや、区市町村の積極的な参加など、さまざまな主体の具体的な行動を促していく熱意と創意工夫にあふれた取り組みを提起すべきと考えます。
 とりわけ「十年後の東京」には、区市町村の取り組みが数多く掲げられていることから、区市町村との連携体制をどのように構築していくかが極めて重要であります。我が党としても、常にアンテナを張り、さまざまな地域の声を聞き、新たなニーズの掘り起こしも含め汗をかいていく所存です。
 実行プログラムの策定に当たって、区市町村を初めとする東京の総力をいかに結集し、目標実現に向けた政策を着実かつ迅速に実施していくか、知事の所見を伺います。
 次に、東京大気汚染訴訟について伺います。
 先般、和解が成立し、これにより足かけ十一年にわたる訴訟が終結いたしました。この和解の最大の原動力は、知事が強い信念で解決をリードされたことにあります。
 思い起こせば、平成十四年に、健康被害者の救済と自動車排出ガス対策の強化を早急に実施することが行政の使命であるとして、知事は控訴しない決断をされました。我々は、これを強く支持したところであります。知事と都議会が手を携え、東京の大気汚染問題の抜本的な解決を目指して取り組んできたことが、今回、首相の決断を引き出し、メーカーに社会的責任を自覚させ、過去に例を見ない充実した内容の和解を成立させたのであります。
 一方で、和解の柱である医療費助成制度に対する首都高速道路株式会社の対応は、都の提案したスキームの一部しか負担を明確にせず、不十分といわざるを得ません。首都高は、和解の意義を重く受けとめ、社会的責任を果たすべきであります。都としても応分の負担をするよう強く求めていく必要があります。
 そこで、和解の意義と今後の首都高との協議について知事の所見を伺います。
 次に、低所得者対策について伺います。
 みずからの生活を向上させる意欲のある方々が、将来にわたって社会的、経済的な自立を確固たるものとできるよう、行政が積極的に支援を行っていくことは当然のことであります。我が党は、こうした方々への支援は、少子高齢化が進む中で東京の活力を維持していくためにも不可欠と考えます。
 さて、石原知事は、さきの施政方針で、低所得者の方々への支援策として検討してきた個人都民税の軽減について、きめ細かな施策を重点的に講じる方針への転換を明らかにされました。
 都政が都民の貴重な税金で賄われる以上、場合によっては、よりよい方法に変えていくことはもちろん必要であります。今回の方針の転換に当たって、今後、我が党と知事との関係をさらに建設的なものとしていくために、幾つか提言をさせていただきます。
 施策を構築していくに当たっては、まず、その効果や対象とすべき方策を精査すべきであり、庁内で広く活発な議論を行い、トップダウンとボトムアップを融合させた上で進めるべきです。また、都政運営のあり方という点から見れば、対等協力の関係である区市町村との関係も十分に考慮する必要があります。議会とも十分な意思疎通を図るべきであります。
 ところで、知事は、さきの定例記者会見で、今回の方針転換を公約の進化という言葉であらわされました。進化に当たっては、きめ細かく、的確に施策を講じることが重要であり、必要かつ十分な事業費を措置すべきです。
 そこでまず、今回の公約の進化に当たっての知事の決意を伺います。
 また、知事は、さきの所信表明で、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せないまま不安定な生活を余儀なくされている方々が、みずからの人生を切り開き、将来の展望を見出すことができるよう、多様な施策を講じていくことを明らかにされました。
 雇用施策についていえば、被雇用者と雇用主の両方に対して総合的な対策を講じていくことが必要と考えます。
 まず、被雇用者への施策としては、例えばフリーターの方が正規雇用を希望するときに、職業能力の向上を支援していくなど、一人一人の状況に合ったきめの細かい多様な支援策を充実させることが重要であります。また、受け入れ側となる雇用主に対しては、新たな雇用へのインセンティブとなる施策の充実が必要と考えます。今後、議会の意見を十分踏まえながら、施策の具体化に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、都が考えている新しい施策の方向性はどのようなものか伺います。
 次に、今後の財政運営と新たに発表された都財政の年次財務報告書について伺います。
 今年度は、「十年後の東京」の実現に向けた基礎固めとなる大事な年であります。それを支える都財政は、財政再建に一つの区切りをつけ、新たな段階に入りました。今後は、財政再建の成果を、効果的な施策の展開によって都民にきちんと還元していくことが重要であります。
 一方で、現在の都財政の好調がいつまでも続くわけではないことは、歴史を振り返るまでもなく明らかです。これからの都財政は、いかなる状況にあっても、「十年後の東京」を支え得る持続的な財政体力を備えていなければなりません。都財政は、財政基盤のさらなる強化と、施策展開のバランスというきわめて難しいかじ取りを迫られているのであります。
 こうした中で、初めての試みとなる都財政の年次財務報告書が発表されました。この報告書は、新たな公会計制度に基づく初めての決算をまとめたものであり、財政運営の一つの新しい羅針盤としての役割が期待されています。都のここ数年の財政運営のかじ取りが、十年先の東京の姿を決定づけるともいうべき重大な岐路に立たされているわけですが、新たな公会計という羅針盤を手に入れた今、今後の財政運営について知事の所見を伺います。
 今年度の年次財務報告書では、幾つかの興味深い事実が明らかになりました。東京都の貸借対照表によれば、平成十八年度末現在で、期限内に回収ができていない債権が千三百五十八億円存在し、それらは都の資産として計上されています。債権については、日々の適切な管理の積み重ねが何より重要であり、しっかり行っていただきたいわけですが、それをもってしてもなお、どうしても回収できない債権については、資産価値の適正把握という観点から速やかに損失処理に踏み切ることも必要であります。
 そこで、より適正な債権管理を行っていくために、今後、都としてどのような取り組みを進めていくのか伺います。
 貸借対照表の作成により、東京都の資産において建物の占める割合が非常に大きいことが明らかになりました。行政財産の有形固定資産全体のうち、建物は実に三五%の割合を占めています。
 さらに、新たな公会計制度では減価償却の概念が導入され、都が所有する建物の資産価値が年数の経過とともに減価し、今後の改築、改修などの需要につながっていることも示されました。これまでも、都の大規模施設に膨大な更新需要が控えていることは指摘されていましたが、今回の財務諸表によって、そのことが数字の上でも明らかになったわけです。
 耐震化などの観点から、古くなった施設を改築、改修するのは当然ですが、多額の費用を投じる以上、それらは都民の納得が得られるものでなければなりません。そのためには、必要性が低下した施設については統廃合を含めた抜本的な再編整理に踏み切る一方、真に必要な施設についてはしっかりとした整備を行うなど、めり張りのきいた取り組みが求められます。
 そこで、大規模施設等の改築、改修についてどのような考え方に基づいて進めていくのか伺います。
 次に、オリンピック及びパラリンピックの招致について伺います。
 九月十一日、二〇一六年オリンピック、パラリンピック競技大会の東京招致について閣議了解が得られました。ここに晴れて、東京へのオリンピック招致が国の事業として正式に位置づけられ、いよいよ本格的な招致活動が開始します。
 また、これに先立って、九月七日には地方六団体による招致決議がなされ、全国からオリンピック招致への取り組みに対する支持がありました。
 我が党はこれまでも、知事とともに先頭に立ってオリンピックの東京招致に向けて邁進してきました。特に、招致実現のためには、まずは都民、国民から幅広い支持を得ることが重要であるという観点から、招致機運の盛り上げについてさまざまな提案をしてきました。こうした提案を踏まえ、都では招致委員会を中心に、招致大使の選定、東京タワーのディスプレー、プロ野球の始球式、ロゴ入りのバナー、横断幕の掲出などさまざまな広報活動を展開してきましたが、まだまだ十分とはいえません。
 今後、都は、申請ファイルの提出に向けて世論調査を行い、IOCは来年一月の申請ファイル提出後に独自に世論調査を行うと聞いています。都における世論調査の予定と、その中で高い支持率を得るために、今後、どのような取り組みを進めていくのか所見を伺います。
 国や地方六団体の力強い支持表明はありましたが、都民の盛り上がりを図っていくためには、都と区市町村の緊密な連携、そして区市町村の積極的な参加が必要です。都内の区市町村では、直近の定例会でも二区市が決議し、都内六十二の自治体のうち五十一団体となり、さらに数団体で協議中です。
 一方で、競技会場などのある区市町村と、そうでないところとでは、参加意識の高さに差があるのが現状です。こうした状況も踏まえ、すべての区市町村の参加意識をどのように高めていくのか、具体的な方策について伺います。
 去る九月十四日に、二〇一六年オリンピック申請都市が発表されました。シカゴ、リオデジャネイロ、マドリード、ドーハ、バクー、プラハといったそれぞれの国を代表する強豪都市を相手に、まずは来年六月に立候補都市として勝ち残らなければなりません。これらの都市に勝ち抜くためには、世論の盛り上がりもさることながら、IOCに高く評価される申請ファイルの提案が必要であります。
 ファイル策定に当たっては、判定者であるIOCが何を重視しているのか正しく認識しておく必要があります。都はどのような分析を行い、ファイルの策定を進めているのか伺います。
 オリンピック招致は、国際都市間の熾烈な競争であり、勝者の方程式など存在しません。質の高い計画をつくり、国を挙げての綿密な戦略のもと、正々堂々と戦っていくことが必要であります。戦いの相手が決まった今、熾烈な招致競争に勝ち抜いていく知事の決意を伺います。
 こうしたオリンピック招致機運の盛り上げを絶好の機会ととらえ、都民がスポーツに親しむ機会を拡大し、スポーツ実践層のすそ野を広げることが、健康の増進や地域の活性化の視点から必要であります。また、子どもたちに夢を与え、スポーツへのあこがれを醸成する意味からも、トップアスリートの育成を通じて競技力の向上を目指すことも重要です。
 この夏、アジア十二都市の選手が東京に集って行われた二〇〇七ジュニアスポーツアジア交流大会では、連日の猛暑の中、将来、オリンピックでの活躍を夢に抱くジュニア選手たちが、バドミントンの交流試合に取り組みました。その結果、競技力の向上のみならず、国を超えた相互理解を深め、精神的にも大きな成長をもたらしたと聞いています。スポーツを通じたアジアの次世代育成に大いに貢献するものであります。
 このように、すばらしいスポーツイベントを通じてスポーツの意義や楽しさを広く都民に伝えることは、スポーツムーブメントの醸成に大きな意義があります。都は、テレビ番組などさまざまなメディアを活用して、積極的にスポーツ情報を発信していくべきであります。
 我が党は、第二回定例会で、まさにオリンピック招致都市にふさわしいスポーツ都市東京の実現に向け、スポーツ振興戦略の早急な策定を提案したところであります。都は、新たなスポーツ振興の戦略の策定に当たって、スポーツ人口の拡大を目指し、率先してその役割を果たすべきと考えます。
 この点も含め、今後、どのように施策の展開を図っていくのか伺います。
 ところで、東京オリンピックの三年前の平成二十五年には、五十四年ぶりに東京国体が開催されます。東京国体は、多摩・島しょ地域にとって、地域の魅力を全国に発信するとともに、産業や経済の活性化を呼び起こす起爆剤として大きな期待が寄せられています。また、三年後の東京オリンピックを成功させるためには、東京国体をぜひとも成功させなくてはなりません。
 去る七月九日には東京国体の準備委員会が発足しましたが、東京オリンピックやパラリンピックの招致機運を盛り上げていくためにも、また、多摩・島しょ地域の熱い期待にこたえるためにも、今まで以上に東京国体の準備活動に全力を尽くしていただくよう知事に強く要望し、次の質問に移ります。
 環境対策について伺います。
 まず、地球温暖化がもたらす気候変動の問題について伺います。
 このたび、都は、六月に策定した東京都気候変動対策方針に基づく具体的な取り組みの第一弾として、中小企業を対象とした環境CBOの創設を明らかにしました。中小企業のCO2排出量は都内の排出量の約二割を占めており、この削減策、すなわち中小企業の省エネの推進は極めて重要な課題です。省エネは、光熱水費の節減につながるメリットがありますが、中小企業はそもそも省エネ促進に関するノウハウや設備投資の資金が不足していることから、全体として取り組みがおくれております。
 こうした状況の中で、都が環境CBOを創設することは大いに意義あることであり、今後とも積極的に中小企業の気候変動対策を進めていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 さらに、同方針では、自動車交通における取り組みも不可欠であると述べられております。自動車からのCO2排出量は都内の排出量の約二割を占めており、その削減は極めて重要かつ急務となっています。自動車交通に起因するCO2の削減を進めていくためには、自動車の環境性能の向上などさまざまな対応が求められています。
 中でも、急な加減速やアイドリングなどを行わない運転方法であるエコドライブは、だれもが手軽に実践でき、速やかにCO2を削減できる効果的な取り組みです。しかしながら、エコドライブは、都内車両の大部分を占める小規模事業者やマイカー保有者では取り組みがおくれている状況にあります。
 そこで、事業者や都民に幅広く普及啓発を行うとともに、エコドライブを社会に定着させるような仕組みの構築を急ぐべきだと考えますが、所見を伺います。
 次に、太陽光発電の普及について伺います。
 家庭のCO2排出量は都内の排出量の約四分の一を占めており、「十年後の東京」でも、太陽エネルギー利用を百万キロワット相当に拡大すると数値目標を設け、住宅などへの太陽光発電の普及促進が示されています。ところが、国は、市場が自立したという判断で補助を打ち切り、そのため、我が国の太陽光発電の普及は減速するに至りました。
 一方、ドイツは、国家的な電力の買い取り制度の実施により、日本を追い抜いて世界一の太陽光発電国になっております。太陽光発電を自宅に設置する都民の経済的負担は大きく、このまま都民の志に任せていても、飛躍的な普及は期待できません。
 家庭からのCO2削減を本格化するためには、都は、国を待つことなく、太陽エネルギーの導入促進策の構築を急ぐべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、新たな緑施策について伺います。
 六月に策定された緑の東京十年プロジェクト基本方針においては、緑の再生を目指す取り組みの一つとして、新たな緑の募金制度の創設が示されています。この具体化として、このたび、七月にスタートした海の森募金を拡大した緑の東京募金の設置が打ち出されました。我が党は、この募金を、都が都民、企業と協働する有効な取り組みとして期待を持っております。緑の東京募金を創設するに当たり、改めて知事にこの募金の意義を伺います。
 また、新たな緑の東京募金については、その意義に加え、募金活動の具体的な進め方においても幅広い都民の賛同を得ることが何より大事だと考えます。そのために、具体的にどのような取り組みを進めようとしているのか伺います。
 我が党は、都が石原知事を先頭に、これまで以上に先駆的な環境対策に取り組み、日本の気候変動対策をリードしていくとともに、東京オリンピックを環境オリンピックとして世界にアピールしていくことを期待しています。
 次に、羽田空港の国際化について伺います。
 知事は、首都圏の喫緊の課題として羽田空港の再拡張、国際化の推進を、これまでも国に対して強く働きかけてきました。その結果、多くの困難な課題もありましたが、知事を初め関係者の並々ならぬご努力が実を結び、本年三月に、四本目となるD滑走路の工事がようやく着工の運びとなりました。今後は、我が国の国際競争力をより強化するためにも、三年後の平成二十二年十月の供用開始を目指し、着実にD滑走路の整備を進めていただきたいと願っております。
 国において、民間を含めた幅広く活発な議論が行われ、本年五月には、アジア・ゲートウェイ戦略会議においてアジア・ゲートウェイ構想を示し、羽田空港のさらなる国際化、大都市圏国際空港の二十四時間化など、航空自由化に向けた航空政策の転換を図る具体的な施策を提案しました。
 また、六月には、経済財政改革の基本方針二〇〇七が閣議決定され、その中でも、オープンな国づくりに向けてアジア・ゲートウェイ構想を推進するため、羽田空港のさらなる国際化が盛り込まれています。
 知事は、第一回定例会の我が党の一般質問において、再拡張後の羽田空港の国際化に向けた強い決意を述べられました。この間、今述べたように、国などで航空自由化に向けた新たな動きが展開されておりますが、羽田空港の再拡張、国際化について事あるごとに国に働きかけてきた知事の所見を伺います。
 次に、道路の整備や高速道路の利活用に向けた財源確保について伺います。
 都内の自動車の混雑時の速度は、区部では時速約十八キロと、全国平均の約三十五キロより著しく遅く、慢性的な交通渋滞が生じております。このことが都市機能の停滞や都市環境の悪化を招くなど、東京の最大の弱点となっています。
 加えて、首都圏の高速道路では、事業主体や料金圏が異なることで生じる割高感が顕在化しており、現在の料金体系のままでは高速道路ネットワークが十全に機能せず、非効率な利用形態となってしまうことは明らかです。
 人、物及び情報が高度に集積している東京が、これからも日本の首都として日本経済の全体の牽引役を果たしていくためにも、首都圏の道路ネットワークの整備は不可欠です。 一方、現在、国は、昨年十二月に閣議決定された道路特定財源見直しに関する具体策を受け、今後の具体的な道路整備の姿や既存高速道路ネットワークの効率的な活用などを示した中期計画を作成しているところです。
 このような状況の中で、道路特定財源は、三環状道路などの幹線道路ネットワークの整備のみならず、高速道路の有効利用のためにも積極的に活用されるべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、首都高速道路中央環状線の機能強化について伺います。
 三環状道路の一番内側の中央環状線には、都心部に集中する交通を分散し、渋滞が大きく減少する効果が期待されています。
 しかし、中央環状線には、堀切、小菅ジャンクション付近など、放射方向の路線と分合流する区間があり、そこを中心に渋滞が発生しやすい構造となっています。こうしたことから、中央環状線が全線整備されても、道路ネットワークとしての機能が十分に発揮されないことが懸念されます。
 このため、中央環状線の既に完成している区間についても、今のうちから渋滞の解消に向けた機能強化策を講じていく必要があると考えますが、今後の都の取り組みについて伺います。
 次に、外環道について伺います。
 外環については、本年四月に大深度地下方式に都市計画が変更され、いよいよ事業実施段階を迎えることとなりました。外環の早期事業着手を国に働きかける一方で、インターチェンジ周辺のまちづくりなど、外環整備に伴う地域の課題に都は今後どのように対応していくのか、伺います。
 また、地下方式に都市計画変更された外環の地上部には、従前より地上部街路の外環ノ2が計画されています。この地上部街路についてはさまざまな意見があると聞いていますが、今後の取り扱いについて都の所見を伺います。
 次に、都内の鉄道計画について伺います。
 「十年後の東京」における成熟した都市東京の実現には、先ほど述べた三環状を初めとする道路整備に加え、鉄道の利便性をさらに向上させていくことも重要であります。
 東京圏の鉄道計画は、平成十二年の運輸政策審議会答申第十八号に基づき整備を進めることとされています。この答申から既に七年が過ぎ、目標年次とする平成二十七年に向け、折り返し地点に差しかかっています。
 これまでに、目標年次までに開業することが適当とされた路線は、つくばエクスプレスなど、その整備が着実に進められています。
 しかし、目標年次までに整備着手することが適当とされた路線はすべて未着手であり、今後はこれらの路線について具体化を図っていくことが必要であります。
 鉄道の整備は、鉄道事業者が主体的に実施することが基本ですが、都としても、実現に向けて関係機関に働きかけるとともに、みずから実現の可能性を検討することも必要と考えます。
 そこで、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた未整備の鉄道路線に対する今後の都の取り組みについて伺います。
 次に、連続立体交差事業について伺います。
 知事は、鉄道の連続立体交差事業について、第一回定例会の施政方針で、今後十年間に事業中の八路線十カ所の立体化を完了させると表明されました。
 この中で、JR中央線連続立体交差事業については、本年七月一日に三鷹駅から国分寺駅間における下り線高架切りかえが行われました。これは長年、踏切の存在によって不便を強いられてきた都民にとって大きな喜びであります。
 そこで、このJR中央線の高架切りかえによる効果と、今後の事業スケジュールについて伺います。
 また、都は、新規事業化に向け、踏切対策基本方針における鉄道立体化の検討対象区間となっている二十区間について、道路ネットワークの形成やまちづくりへの寄与などの事業効果を調査していると聞いています。
 連続立体交差事業は、交通渋滞の解消に加えて、道路と鉄道双方の安全性の向上や、まちづくりにも資するものであります。
 都民が安心して暮らせる快適な東京を早期に実現するために、新たな区間を積極的に事業化していくべきであると考えます。
 そこで、今後の連続立体交差事業の新規事業化に向けた取り組みについて伺います。
 次に、多摩都市モノレールへの経営支援について伺います。
 多摩都市モノレールは、多摩の南北交通の軸であり、平成十年の開業以来、地域間の人的交流や沿線地域の発展など、多摩の自立的都市圏の形成に重要な役割を果たしてきました。
 乗客数の増加やモノレール会社の経費削減により、平成十六年度以降は継続して営業黒字を達成しているにもかかわらず、他の三セクとの整備スキームの違いにより、初期投資が重くなったことなどから、会社が苦しい経営状況に陥っていることに対し、我が党は、これまで支援の必要性を訴えてきました。
 そんな矢先、先日、一部のマスコミにより、多摩都市モノレール支援の内容が伝えられました。報道としてはやや時期尚早な感も否めませんが、市や金融機関とともに、会社に対する抜本的な支援を都が行うべきという我が党の主張について、改めて強く実現を求めます。
 多摩都市モノレールは、今では東京モノレールに次ぐ全国二位の乗客数を誇っています。こうした会社について、安全な運行を確保するためにも、経営の安定化が不可欠です。
 そこで、多摩都市モノレールに関する今後の支援について、知事の所見を伺います。
 次に、都営地下鉄駅におけるホームからの転落防止対策について伺います。
 鉄道駅では、ホームさくの設置を初めとするホームからの転落防止対策をより一層講じるなど、すべての駅の安全対策を向上することにより、だれもが不自由なくまち歩きを楽しめる東京を目指していくことが必要です。しかしながら、ホームさくの設置については、新設の路線以外には大きな進展が見られないのが現状です。
 東京のすべての鉄道駅でのホームからの転落防止対策を加速化するには、都内でいち早く三田線に導入した都交通局の果たす先導的役割は大きいものと考えます。
 そこで、他の都営地下鉄路線においてもホームからの転落防止対策を積極的に推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、東京港のあり方について伺います。
 我が国は、国際貿易によって大きく経済発展してきました。四方を海に囲まれた我が国にとって、その主役は港湾であり、今後もその役割は変わらないでありましょう。しかしながら、中国を初めとするアジア諸国の急速な経済拡大を背景として、シンガポール、上海、釜山といったアジア諸港は大規模な整備を進め、巨大コンテナ船による国際航路を次々と開設する一方、低廉な価格設定等で貨物取扱量を大きく伸ばしてきています。
 その結果、我が国港湾の相対的地位は大きく低下し、我が国経済への打撃も大変危惧されている状況にあります。国においても、スーパー中枢港湾等の取り組みも進めていますが、なかなか目に見えた効果というものがあらわれてきません。
 このような中、東京港においても、港湾計画に基づき、国際競争力強化に向けて取り組んでいることは承知していますが、企業活動のグローバル化に伴う物流構造の変化など、東京港を取り巻く急速な環境変化を踏まえ、新たな経営戦略を策定することが必要と考えます。知事の見解を伺います。
 また、戦略的に港湾経営を進めるには、厳しい国際競争にさらされている東京港の現実を直視した上で、荷主など利用者の多様なニーズに十分耳を傾けるとともに、港の特性を踏まえた施策の展開が必要と考えます。
 今後、東京港の課題として具体的にどのようなものがあるのか、また、その取り組みの方向性についてどのように考えているのか伺います。
 ところで、東京港を中心とする臨海部は、物流機能を担う一大拠点であるだけでなく、憩いと安らぎを与える水辺と緑や、人々を魅了するすばらしい都市景観という豊かな観光資源を有しています。
 特に、臨海副都心は、都心からのアクセスも充実し、身近な水辺空間である海上公園、イベントやショッピングが楽しめる商業施設が立地するなど、まさに国内外の観光客を呼び寄せるのにふさわしいまちへと成長してきており、昨年は過去最高の四千二百八十万人の来訪者があったと聞いています。
 現在以上に、一年を通じて若い世代からシニア世代までさまざまな人々を引きつけ、常に新鮮な驚きと満足感を得られる魅力を備えたにぎわいあふれるまちにしていくために、臨海副都心の観光振興にどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、産業振興について伺います。
 先般、産業技術センターの独立行政法人化後初めての業務実績評価結果が公表されました。同センターにおいては、独立行政法人のメリットである柔軟性や機動性を生かし、中小企業の要望に応じた製品試験やセミナーの開催、国などの外部の資金を活用した研究の拡充など、中小企業に対する技術支援を着実に実施しています。
 こうした中小企業の視点に立ったきめ細かな支援は、産業技術の高度化に伴いますます重要となることから、今後もセンターの技術支援機能を高め、さらなるサービスの充実が必要であります。加えて、環境、健康など広く社会が抱える課題を産業技術の力で克服することも重要な視点です。
 東京の中小企業の中には、独自の技術、高度な技術を有する企業も多数存在しており、センターには、こうした中小企業への技術支援を積極的に行うことにより社会的課題の解決に寄与することも求められています。
 産業技術研究センターが果たすべき役割は極めて大きいと考えますが、今後、中小企業に対する支援策をどのように充実させていくのか、所見を伺います。
 また、都は、産業支援体制を整備し、平成二十一年度には多摩に、平成二十三年度には区部に、新たな産業支援拠点をそれぞれ開設する予定とのことです。
 「十年後の東京」では、圏央道などのインフラ整備により、広域的な産業交流が加速され、多摩シリコンバレーが形成されるとの認識が示されています。
 こうした認識に符合するように、最近では、八王子、町田、神奈川県相模原市の商工団体が共同でロボット産業振興に乗り出すなど、都域を超えた交流、連携の動きが見られるようになってきています。
 今後、こうした動きをにらみながら、新たに整備される多摩産業支援拠点の機能を十分に発揮し、多摩シリコンバレーの形成を一層加速させるべきと考えますが、所見を伺います。
 都市農地の保全について伺います。
 都市農地は農産物の生産基盤であるとともに、都民生活への潤いの提供や災害時の避難場所などさまざまな機能を持つ貴重な緑地空間であり、「十年後の東京」の水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させるという目標達成のためにも、農地を保全することは極めて重要であります。
 我が都議会自民党は、都市農政を考える議員連盟を中心に現在まで、都市農地保全について、農業者との意見交換や国会議員への要請を繰り返し行ってきました。
 去る九月十九日にも、都内の農業団体と若い農業者、そして東京都選出の衆議院議員との意見交換を行ったところであります。この中では、農地を保全するためには、農業者が安心して農業を継続できる仕組みが必要だという意見が多く出されました。
 農地制度や税制度の改善は国の役割であり、我が党としても、引き続き国へ働きかけてまいりますが、都としても、独自に取り組める農地保全策について積極的に取り組んでいくべきと思います。
 第二回定例会で、我が党の質問に対し、農業者が病気や高齢で耕作ができない場合でも農業が継続できるよう、農作業受委託の仕組みを構築していく趣旨の答弁がありました。
 そこで、農作業受委託について、現在どのような取り組みを行っているのか伺います。
 次に、都におけるがん対策の推進について伺います。
 国は、本年四月に、がん対策基本法を施行し、六月には、がん対策推進基本計画を策定、公表しました。
 第一回定例会において、我が党の代表質問に対し、都における総合的ながん対策を明らかにする東京都がん対策推進計画を今年度内に策定し、がん対策の充実に取り組むとの答弁がありました。この計画では、がんの予防、早期対策の推進や情報収集、提供体制の整備、医療水準の向上などが主要な項目になると聞いています。
 そこで、この計画のねらいと、これを踏まえた政策展開の基本的な考え方について伺います。
 安心して納得できるがん医療を受けることは都民の切なる願いであります。国の推進基本計画においても、医療水準の向上の中心としてがん診療連携拠点病院の役割が盛り込まれております。この拠点病院は、専門的な診療や緩和医療の提供、相談、情報提供など地域のがん医療の中核を担うものであり、都においても、拠点病院が今後のがん対策成功のかぎを握っているといっても過言ではありません。
 都内には、高度のがん診療を担える病院が数多く存在します。千二百万人の人口を抱える首都東京のがん医療を充実させるためにも、これらの病院の有する機能を活用し、都民に必要な医療水準を確保すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、医師の確保対策について伺います。
 先日、奈良県で、救急搬送中の妊婦さんが死産するという大変痛ましい事件がありました。このことで、単純に受け入れを要請された病院や医師だけを責めることはできません。我が国の現状である深刻な医師不足や医師の過重労働を背景とした構造的な問題がこうした悲しい事態を引き起こしたのであります。
 医師確保対策については、制度設計者である国がまずその責任を果たすべきものでありますが、本年六月、都は、国に対して、産科、小児科等の病院勤務医師の養成や医師の過重労働軽減のための事務補助者の設置など、具体的な緊急提案を行いました。
 しかし、国の対策を待つのみでは、この医師不足問題は解決しません。国は、医師が不足する地域や診療科を中心とした緊急医師確保対策を二十年度に向けて打ち出しましたが、その中には、研修医の都市への集中の是正など、都市、地方間の問題であるという観点からの対策も含まれており、決して座視するわけにはまいりません。
 都においても、分娩制限をする医療機関や小児の二次救急の取り扱いができない地域が存在するなど、特定の診療科の偏在と不足が顕著になってきております。
 こうした状況を踏まえ、都としても、医師確保を喫緊の課題として早急に対策を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
 特に、行政的医療を担う都立病院や地域医療を担う公社病院においては、医師を安定的に確保し、都民の期待にこたえていかなければならないと考えますが、所見を伺います。
 さらに、外国人の看護師、介護福祉士候補者の受け入れについてであります。
 今回の受け入れは、我が国とフィリピン、インドネシア両国との経済連携協定に基づき、両国から看護師、介護福祉士候補者おおむね二千名程度を日本の病院、福祉施設に受け入れ、我が国の看護師資格、介護福祉士資格の取得と取得後の就労を目的に実施されるものであります。
 同協定は、既に両国の首脳間での署名を終え、今後、批准手続を経て、早ければこの秋にも発効することとなっております。
 そこで、この受け入れ制度について、都はどのように取り組んでいくのか、基本的な考えを伺います。
 次に、医療制度改革について伺います。
 全国に比べて高齢者人口に対する療養病床の割合が低いという東京の現状を踏まえ、我が党は、一連の医療制度改革の中でも、療養病床再編については重要課題の一つに位置づけ、これまで都議会で質疑を重ねてまいりました。
 この秋策定する東京都地域ケア体制整備構想では、地域におけるケア体制とあわせて、療養病床転換推進計画が盛り込まれることとなりますが、都独自の課題を踏まえ、東京方式ともいうべき構想にすべきと考えます。
 そこで、都としてどのような構想とするつもりなのか、所見を伺います。
 特に、療養病床転換の推進については、国が介護療養病床の廃止とともに、医療療養病床についても大幅な削減を目指す再編整備案を打ち出したことにより、患者やその家族を初め、多くの都民に不安が広がっています。
 国は、全国一律の割合で療養病床の削減を求めておりますが、医療難民、介護難民の発生という事態を招くことのないよう、都民が安心して療養に専念できる環境を整備していくことが肝要であります。
 都は、一律削減という国の方針にとらわれることなく、現在、一万四千床しかない医療保険適用の療養病床をふやすことを含め、今後検討を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 平成二十年四月から、七十五歳以上の高齢者を対象とする新たな後期高齢者医療制度が開始されることとなりました。これに伴い、本年三月には、都内すべての区市町村が加入する東京都後期高齢者医療広域連合が設置されたところです。
 この新制度では、個人ごとに保険料を徴収する仕組みとなっているため、これまでは保険料負担のなかった被扶養者である高齢者など、新たに負担が発生する場合や、国民健康保険料と比べての負担増が予想されています。
 我が党としては、高齢者が負担する保険料の設定などに当たり、できるだけ負担を軽減する方策を講じるべきと考えます。
 そこで、今後、都はどのような対応をしていくのか、広域連合の現在の取り組み状況とあわせて所見を伺います。
 次に、犯罪被害者等への支援について伺います。
 都内の刑法犯認知件数は、近年、改善されていますが、それでも、平成十八年は約二十四万五千件と全国最多であり、まさに都民のだれもが被害者になる可能性があるといえます。
 こうした中、都は先月、犯罪被害者等支援推進計画中間のまとめを公表しました。被害者本人はもとより、ご家族の精神的、経済的な厳しい状況を考えると、被害者の置かれたさまざまな状況に応じて的確に対応できる施策を体系的に展開していくことが求められていると考えます。今後、さらに都民の幅広い意見を聞き、被害者の回復に真に役立つ施策を構築してほしいと思います。
 その際留意すべきことは、行政主体の取り組みだけでなく、さまざまな民間団体の力を十分に活用するなど、東京ならではの総合力を発揮させていくことだと思いますが、基本的な考え方について伺います。
 次に、教育について伺います。
 我が党は、戦後六十年を経て、長年懸案であった教育基本法を全面的に改正しました。新しい教育基本法では、公共の精神や伝統と文化の尊重などが盛り込まれ、当たり前の取り組みがようやく展開できることとなりました。また、改正した教育三法によって、指導力が不足する教員への対応や、公立学校への副校長や主幹の導入などもようやく実現できることとなりました。
 都教育委員会でも、例えば、全都立高校における教科「奉仕」の必修化、指導力不足教員への対応、副校長や主幹導入による学校経営の支援など、国に先駆けた取り組みを積極的に推進しております。
 しかし、現在、教員の大量退職時代を迎え、質の高い教員をいかに養成、確保し、生徒の学力低下を防いでいくかという問題や、一部の保護者からの過大な要求への対応、地域の協力を得た教育のあり方など新たな課題も生じております。
 現在、国では、中央教育審議会において、教育振興基本計画の策定など教育改革の取り組みについて検討が行われている中で、都は新たな教育ビジョン策定に着手したとのことです。「十年後の東京」を支える新たな教育ビジョンを策定し、さらなる教育改革を進めていくことは、まことに時宜を得たものであると考えますが、策定に当たっての基本的考え方を伺います。
 次代を担う子どもたちの現状を考えると、戦後教育は、自由や権利を重視する余り、子どもたちの育成にとって大切なマナーや公共心、責任や義務を果たす心など、精神的な価値を軽視してきたように思います。また、他人との関係が結べなかったり、仕事を見つけようとしない若者も多いのが現実です。
 本来、このようなことは学校に期待するのでなく、家庭や地域で身につけなければならないことですが、核家族化が進む中で、おざなりにされてきた感があります。子どもたちをめぐってさまざまな課題がありますが、新しいビジョンの中ではどのような視点を重視していくのか伺います。
 次に、公立学校における食育の推進について伺います。
 都が本年度から各学校に食育推進チーム及びその中心となる食育リーダーを設置し、校内指導体制を整備するなど、独自の取り組みにより食育の推進を図っていこうとしていることについては、その取り組みに期待するものであります。
 ところで、平成十七年度から制度化された栄養教諭についてですが、平成十九年四月現在、全国で九百七十四名が配置されていると聞いています。
 今後、これまでの取り組みに加え、この栄養教諭を早急に全区市に導入し、公立学校における食育を推進していくべきであると考えますが、都の考えを伺います。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉野利明議員の代表質問にお答えいたします。
 「十年後の東京」実現に向けた実行プログラムについてでありますが、今回の実行プログラムは、「十年後の東京」の実現に向けた三カ年のアクションプランでありまして、今後の東京の事業展開と、都民、企業、行政との協働によります、東京の総力を挙げた取り組みを内外に明らかにするものであります。
 このため、例えば地球温暖化対策推進基金など新たな基金を活用した都みずからの先進的な取り組みを加速させることはもとより、緑の東京募金など、都民や企業の参加を促す仕組みを構築しまして、東京全体で広範なムーブメントを展開していきたいと思っております。
 その具体化に当たっては、街路樹の倍増や緑の保全、地域の魅力発信や産業振興など、多摩・島しょ地域も含めた都全域の区市町村の積極的な協力があくまでも欠かせないことでありまして、今回、すべての区市町村の意向調査を実行しまして、区市町村との連携に万全を期すことにいたしました。
 オリンピックの招致はもとより、東京国体の開催も視野に入れまして、都議会の皆様からのご意見を十分に踏まえながら、年内を目途に実行プログラムを策定し、「十年後の東京」で描いた東京の近未来図を実現していきたいと思っております。
 次いで、東京大気汚染訴訟についてでありますが、東京の大気汚染問題の解決に当たって私が目指してきたことは、環境庁時代の水俣の体験を踏まえまして、これまで長い間苦しんでこられた患者の方々の救済と、新たな患者発生の防止に向けた取り組みの二点でありました。
 患者救済の枠組みについては、過去の負の遺産を社会全体で解決すべき課題と考えまして、東京高裁にみずから出向きまして、正当な文明批判を踏まえて、医療費助成制度の創設を提案いたしました。
 また、安倍前首相とも直接会談しまして、これまで一切の費用負担を拒んできた国の姿勢を転換させることができたと思います。
 新たな患者発生の防止に向けた取り組みについては、和解に向けた協議を通じて、国と首都高を含めた東京都域における広範囲な環境対策を幅広く構築し、未来に向けた取り組みとして道筋をつけることができました。
 こうした意義の深い和解を一日も早く成立させることが肝要だと考えまして、和解の専決処分を行いました。
 首都高の医療費助成制度への拠出については、今後協議を行っていくことになりますが、都の提案したスキームに従って、応分の負担をするように強く求めていきたいと思っております。
 首都高もそれなりの実績を上げておりますし、和解の歴史的意義を踏まえて、社会的責任を果たしてくれるものと期待をしております。
 次いで、低所得者の方々に対する支援についてでありますが、近年、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せないまま、不安定な生活を余儀なくされている方々が増加しておりまして、こうした方々への支援は、安全・安心が確保された活力のある東京を実現する上で重要な課題だと思っております。
 三月に個人都民税の軽減策を公表して以降、低所得者の方々の状況について詳細に把握するために検討を行ってまいりました。
 その結果、低所得者の中でも、本人以外の家族に収入がある方や、資産を保有している方もいることがわかりまして、真に支援が必要な方は、今まで対象としてきました八十万人の方々のすべてではなくて、うちのある部分と推計するに至りました。
 低所得者の方々に対しては、税による一律の軽減よりも、きめの細かい施策として手当てする方が公平で効果的と判断いたしました。これは、当初の策を建言してきました都庁の中の部分からも再建言がありまして、それを踏まえて私が方針の転換を決断いたしました。
 意欲がありながら低所得の状況から抜け出せない方々に支援が必要であるという認識は一貫して変わりません。
 今後、都議会とも相談しながら、目的を達成するため、減税の規模を上回る事業費を措置し、区市町村とも十分に連携して、的確で効果的な支援策を積極的に講じてまいります。
 次いで、今後の財政運営についてでありますが、今日、東京は、さらなる成熟した都市へ発展する上で、超高齢社会の到来や地球温暖化への対策、あるいは更新期を迎える都市インフラの整備充実など、多額な財源を要する多くの課題に直面しております。
 しかも、都財政をめぐる環境は、景気動向の先行きが不透明な上、都の財源を奪おうとする国の動きがこれまでになく高まるなど、予断を許さない状況にあります。
 こうした中、いかに活路を切り開いていくか、ここ数年の取り組みが東京の将来を大きく左右することになると思います。
 都が独自に導入した新たな公会計制度は、ストックやコスト情報の明確化、あるいは事業分析の強化など、財政運営に強力な武器を与えたと思っております。
 今後とも、これらを活用しながら、いかなる荒波にも耐え得る、強固で弾力的な財政基盤を構築し、「十年後の東京」の実現に向け、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
 次いで、オリンピック招致についてでありますが、今月十四日に立候補申請都市の顔が出そろい、戦いの火ぶたが切って落とされました。いずれの都市も各国を代表する強豪都市でありまして、勝ち抜いていくのはなかなか大変なことだと思います。
 それにしても、ちょっと国の反応は鈍くて、とりあえず閣議了解を得ましたが、ほかの外国の都市に勝つためには、国にもっと世論喚起、財政支援、外交戦略など、あらゆる面で本腰を入れてもらうことが絶対に必要だと思っております。
 これから展開されますIOCの中での競争は、仄聞しますと、新しいロゲ会長が、その競争についていろいろ規制をし、大分合理化されたと聞いておりますが、しかしなお、仄聞しますと、不透明な部分が多うございまして、なかなか厄介な戦ではあるという気がいたします。
 新しい首相にも全面的な協力を求めて、国と一体となって招致活動を展開し、オリンピック、パラリンピックの実現に向けて全力を尽くしていきたいと思っております。
 次いで、中小企業の気候変動対策についてでありますが、地球温暖化がもたらす気候変動の危機は、今やもう現実のものでありまして、これを回避するためには、CO2の劇的な排出削減、これは主に節電その他の方法でございますけれども、それを進めることが重要であります。中でも、中小企業の省エネ促進について、企業の自主努力のみならず、積極的な行政の誘導が必要であると思っております。
 今回の環境CBOは、CO2の削減に向けた事業者の取り組みを引き出すために、環境対策に積極的な中小企業を金融面から支援するものであります。
 こうした新しい資金援助のスキームを先導的に実施していくことなどによりまして、地球温暖化対策推進に向けた広範なムーブメントを醸成し、日本の気候変動対策をリードしていきたいと思っております。
 次いで、緑の東京募金の意義についてでありますが、緑あふれる東京の再生は、「十年後の東京」の具体化に向けた極めて重要な課題であります。
 都民、国民の幅広い参加を得て、緑を植え、育て、守る運動につなげていくために、七月に海の森募金を先行して開始いたしました。さらに、東京の緑化をより一層広範かつ強力に進めるため、海の森の整備にとどまらず、街路樹の倍増や校庭の芝生化、スギ花粉発生源対策に募金の対象を拡大して、緑の東京募金を創設することといたしました。
 こうした募金の活用などによりまして、従来の行政の枠を超えた新しい発想で、広く緑のムーブメントを巻き起こしていきたいと思っております。
 この募金の趣旨に都民を初め多くの方々からのご賛同をいただきたいと念願しておりますが、既に幾つかの公園で設置しました、都民からの寄附金によります思い出ベンチは非常に成功をおさめまして、他の都民の方々にも非常に感謝されておりますが、そういったぐあいにこれが展開すればと願っております。
 次いで、羽田空港の再拡張、国際化についてでありますが、首都圏全体の空港機能を飛躍的に高める羽田空港の再拡張、国際化は、我が国の経済を活性化し、国際競争力を強化する極めて重要な国家的プロジェクトであります。
 今回、国が取りまとめたアジア・ゲートウェイ構想は、航空自由化に向けた航空政策の転換を目指すものと評価はできますが、再拡張後の羽田に就航させる国際線については、いまだ上海程度の近距離路線にこだわっておりまして、これはもう論外で、全く不十分であると私は思っております。
 羽田の国際線が、都心に近接する利便性を生かして、とにかく羽田から、深夜ならばダウンタウンまで車で二十分足らずで行くわけでありますから、こういう近接の利便性を生かしまして、需要の多い東南アジアの主要都市にまで足を伸ばすのは当然のことであると思います。
 国際都市東京が真にアジアのゲートウェイとなるためにも、再拡張後の空港機能を十分に生かして、活用して羽田の国際化を進めるように、引き続き国に積極的に働きかけてまいります。
 アメリカを初めいろいろな外国から、日本の空を開いてくれと、オープンスカイという要望が非常に強くございますが、これは日本の空全体をあけることじゃなしに、これだけいろんな機能が集中し、集積した、世界の経済の大きな拠点でもあります首都圏の空をあけることこそが肝要だと私は認識しております。
 道路特定財源についてでありますが、首都東京が持っている力を十全に発揮するには、三環状道路を初め幹線道路ネットワークや連続立体交差などの早期整備が必要でありまして、そのためには道路特定財源の確保が不可欠であります。
 加えて、首都圏の高速道路において、環状道路の利用促進や長距離利用車の負担軽減、会社間の乗り継ぎ割引など、高速道路網が最大限に利活用される料金政策を導入することが必要でありまして、道路特定財源を活用し、これを国策として実施していくことが必要であると思います。
 これらを、現在、国が策定中の中期計画に明確に位置づけるとともに、道路特定財源を本来の目的であります道路整備や関係施策に集中的に投入するよう、国に強く求めてまいります。
 たまたま昨日、国交省の幹部たちと懇談しましたが、東京のオファーについてはすべて彼らも同意でありまして、これからそれを積極的に進めたいと思っております。
 次いで、多摩都市モノレールへの支援でありますが、多摩都市モノレールは、一日十一万人が利用する、多摩の南北を結ぶ広域的な公共交通機関として大きな大きな役割を担っております。
 会社は既に営業黒字となっておりますが、他の軌道系三セクと異なりまして、車両基地用地の取得にお金がかかりまして、会社の負担となったことなどから、結果として厳しい経営状況にあります。
 このため、都は、会社のさらなる経営努力を前提に、新たな出資などによる抜本的な支援を実施してまいります。
 今後とも、沿線市及び金融機関と連携しながら、将来に向けて経営基盤を確固たるものとして、多摩都市モノレールの安定的な運行を確保していきたいと思っております。
 次いで、港湾経営戦略の策定についてでありますが、世界最大規模の経済圏を背景に持ちます東京港は、北米、欧州、アジアの三地域を機軸とする国際海上物流の大動脈において、貨物集積の重要な拠点であるとともに、日本経済を牽引する原動力としての役割を果たしております。
 ただ、一方、躍進するアジアの主要港湾と比べますと、港湾の水深が浅かったり、今以上の大きなコンテナ船の発着が非常に不可能に近くなりまして、こういった大型化するコンテナ船への対応のおくれや、割高のコスト、長いリードタイムなど、日本の港湾は大きく立ちおくれておりまして、このままでは国際基幹航路の日本への寄港がますます減少し、将来に禍根を残すことになると思います。
 ちなみに、世界の主要港湾になりましたシンガポールなどは、あそこで運用されているソフトもハードも全部日本製でありますが、日本は日本なりの独特の事情がありまして、なかなかこういった合理的な施設を運用することができないといううらみがあるのが現実であります。
 東京港の国際競争力強化は喫緊の課題でありまして、その実現に向けては、港湾施設の充実を図るとともに、内陸部も包括した物流体系を視野に入れまして、横浜港などと連携した、東京湾全体の総合力を高めるような、戦略的な港湾経営を進めていくことが肝要であると思っております。
 このため、これまでの計画や施策の有効性を検証しつつ、今後十年程度を想定した経営戦略を早急に検討したいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、新・教育ビジョンの策定についてでありますが、二十一世紀の東京の創造的発展を担う人間の育成を目指して策定いたしました東京都教育ビジョンにつきましては、家庭、学校、地域等の課題解決に向けた多くの取り組みを施策化しまして、それを推進するなど、着実な成果を上げてまいりました。
 しかし、「十年後の東京」が目指す方向性や、時代状況の変化を見据えまして、ご指摘のような問題を含めたさらに困難な課題に対応していくためには、これまでの取り組みの成果を踏まえた新・教育ビジョンの策定が必要でございます。
 本年七月に設置しました検討会におきまして、有識者等からも幅広く意見を集め、平成二十年六月を目途に新・教育ビジョンを策定して、日本の教育をリードする東京の姿勢をアピールし、東京の教育改革をさらに進めてまいります。
 次に、新・教育ビジョンの視点についてであります。
 次代を担う子どもたちにみずからの生き方や社会とのかかわりを考えさせるきっかけを与えるためには、学校教育だけの取り組みでは限界がありまして、家庭や地域、社会が連携して取り組みを行うとともに、それぞれの教育力を総合的に高めていく必要がございます。
 引き続き児童生徒の学力を向上させ、みずからの生き方を考えさせるなど、学校教育の質を充実させるとともに、これまで十分とはいえなかった家庭教育への支援や、学校、家庭、地域社会の相互の連携協力を図る仕組みづくりや、人材を育成していく視点などが重要と考えております。
 新・教育ビジョンは、これらの視点に基づきまして、具体的な施策も含めて提示してまいります。
 次に、栄養教諭の導入についてでありますが、都教育委員会では、学校教育全体としての取り組みの中で、食育をさらに推進するため、食育リーダーなどの東京都独自の仕組みを前提とした栄養教諭導入のあり方について、庁内での検討を進めてきたところでございます。
 今後は、この検討結果を踏まえ、具体的な任用方法等を決定し、関係教育委員会との協議を行った上で、早急にモデル地区を設置し、栄養教諭を配置するとともに、計画的に全区市への導入を図り、食育を推進してまいります。
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) 低所得の方々への新しい施策の方向性についてでございますが、新しい施策につきましては、次の二点を中心に検討を進めております。
 まず第一に、施策の対象という点で、意欲がありながら低所得の状況から抜け出せない方々の多様な生活の実態、幅広い年齢層を把握いたしまして、きめの細かい多様な支援策を用意いたしますとともに、雇用主に対しても的確な施策を講じていくことであります。
 次に、施策の効果という点でございますが、働く意欲のある方が努力し、将来に向かって明るい展望を持てるような施策を講じていくことでございます。
 そのためには、まず、生活の改善から、能力開発、就労までをカバーし、一人一人の実態を踏まえた適切な支援策を提供できますよう、相談体制を整備することが必要であると考えております。
 相談の結果を受けまして、現在の生活状態を改善していくための取り組みですとか、安定した就労に結びつくよう職業能力の向上を図るための経済的な支援などを行っていく考えでございます。
 また、雇用主の方に対しましては、企業が求める能力などニーズを把握いたしますとともに、インセンティブを付与するなど多様な支援を検討していく必要があると考えております。
 今後、都議会の意見も十分伺いながら、具体的な施策の内容を詰めてまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、債権管理への今後の取り組みについてでございますが、今回の年次財務報告書におきましては、未収債権の中に、このままでは最終的に回収が困難となるものが相当程度見込まれるなど、債権管理をめぐる課題が浮き彫りとなっております。
 これを受け、今後、この課題を正面に据えまして、まず、債権を所管する局が、より一層の回収努力に取り組むこと、それを都全体として支える体制を整備すること、そして、そのような適切な管理を行ってもなお、債務者の無資力などにより実質的に回収不能となったものについては、基準を設けて的確に放棄の手続を行うことなど、全庁を挙げた系統的取り組みを実施することといたします。
 また、こうした取り組みを制度的に裏打ちするため、新たに債権管理に関する条例を制定すべく、平成二十年第一回定例会をめどに条例提案を行うことを目指しまして、今後、準備を進めてまいります。
 次に、大規模施設等の改築、改修についてでございますが、今回の財務報告書でもう一つ明らかになったことは、都民が利用する施設等について、多額の減価償却累計額が存在していることでございます。このことは、将来にわたって継続的に都民サービスの水準を確保していくためには、これらの施設について、今後、的確に改築、改修を行っていくことが必要不可欠であることを示したものでございます。
 同時に、改築、改修を行うに当たりましては、限られた財源を最大限有効に活用する視点に立ちまして、施設そのものの必要性や効率的利用の検証、耐震化やCO2排出量の削減など、都市施設として備えるべき新たな機能や価値の付加、建設のみでなく管理なども含む、施設の生涯にわたるコストの縮減、世代間のバランスと財政負担の平準化に配慮した安定的な財源の確保策など、多面的な対応を行っていくことが必要であると考えております。
 今後、こうした観点に立ちまして、大規模施設等の改築、改修に関する実施方針を策定し、これに基づき、この課題に積極的に取り組んでまいります。
   〔東京オリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(荒川満君) 三点についてお答えいたします。
 まず、世論調査の支持率についてでございますが、都議会にもご協力をいただいているPR活動によりまして、オリンピック、パラリンピックを東京に招致すること自体についてはそれなりに周知が進んでいるものと認識しております。
 世論調査は十一月末までに実施する予定でありまして、そのことを念頭に置いた場合、今後は、周知だけではなく、賛同の輪を広げていくことが重要であり、このため、開催意義やコンセプトのわかりやすい説明、東京に勝機が十分にあることの理解促進などに重点的に取り組んでまいります。
 具体的には、招致大使やふるさと特使、著名人によるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等での開催意義等の訴え、また、スポーツ界や環境分野など各界の有識者が参加したオリンピック招致を支援するシンポジウムや決起集会の開催、また、人気のトップアスリートがオリンピックのすばらしさを全国各地で伝えていきます「みんなのオリンピック」などを、今月から十一月にかけて集中的に実施してまいります。
 加えて、従来から行っておりますPR活動につきましても、ラッピングバスや繁華街でのパレードなど、なお一層目立つPRを行ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、これまでオリンピック、パラリンピックに関心の薄かった層の共感を広げてまいりますとともに、支持をいただいている層にも一層強い賛同を得られるようにして、支持率全体の向上を図ってまいります。
 先般、国からの閣議了解、地方六団体からの招致支援決議をいただきました。これらを弾みに、全力で都民、国民の支持拡大に努めてまいります。
 次に、区市町村の参加意識を高める方策についてでございます。
 これまで、区長会、市長会、町村会、そして大部分の区市町村議会から招致決議をいただくなど、多くの賛同を得てまいりましたが、競技会場等の配置が予定されていない地域では、オリンピック、パラリンピックの参加意識が醸成されにくいなどの意見もございました。
 しかし、招致活動を勝ち抜くためには、IOCから高く評価される開催計画を策定していく必要があり、これまでの開催都市の例を見ましても、競技会場等につきましては、選手村から近いといったコンパクトな配置が必須条件でございます。
 このため、競技会場等が配置されない地域が生じることについてのご理解をお願いするとともに、こうした地域におきましても、練習会場等の配置や競技運営面での参加、海外からの選手、観客との交流、文化プログラムの実施、そして、これらを通じました子どもや青少年の情操の育成などを行うことによりまして、オリンピック、パラリンピックの開催が大きな意義を持つことをご理解いただきたいと考えております。
 来月一日には、都と区市町村及び東京オリンピック招致委員会の部課長級の職員をメンバーとする都・区市町村連絡協議会を設置しまして、実務レベルにおいて、共同してオリンピック、パラリンピックへの具体的な参加方法を検討してまいります。
 最後に、申請ファイルの作成についてでございますが、来年一月提出の申請ファイルは、施設面、運営面にわたって二十五の基本的な項目について記載が求められております。
 IOCが立候補都市を選定するに際しまして、これらの項目ごとにウエートをつけて評価を行います。二〇一四年の冬季大会の例を見ますと、評価ウエートが高いのは、道路や交通機関等の輸送インフラ、宿泊施設の部屋数や質的内容、コンパクトな競技会場の配置、セキュリティー対策などでございます。
 今回の申請ファイルの作成に当たりましては、二十五項目いずれも十分な検討が必要でございますが、評価ウエートの高い項目につきましては特に重点を置いて検討を進め、IOCから高い評価が得られるようにしてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(渡辺日佐夫君)  スポーツ振興策の展開についてでありますが、これまで都では、競技レベルに応じたさまざまなスポーツ大会やスポーツイベントを開催することにより、都民のだれもが身近でスポーツを楽しむことができる機会の拡大に努めてまいりました。
 今後は、地域におけるスポーツ活動への支援や国際交流事業の一層の充実を初め、ご提案のスポーツ情報の発信についても積極的に取り組むとともに、さらに、都民がスポーツに親しむことができる環境づくりを通じてスポーツ人口の拡大を図ってまいります。
 こうした取り組みを含め、オリンピック招致都市にふさわしい新たなスポーツ振興戦略の策定に向けて幅広くご意見を伺うため、十月にスポーツ振興審議会を立ち上げることといたしました。
 審議会での検討を踏まえ、「十年後の東京」の実現につながる総合的なスポーツ振興策の展開について道筋を示していきたいと存じます。
   〔環境局長吉川和夫君登壇〕

○環境局長(吉川和夫君) 環境対策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、エコドライブを定着させる仕組みについてでありますが、エコドライブは、自動車から排出されるCO2の削減などで環境面に寄与するだけでなく、燃費節約や事故防止の面でも大きな効果が期待できる取り組みでございます。
 しかし、マイカー利用者には、エコドライブをするための具体的な運転方法やその効果が十分に浸透しておりません。また、小規模な事業者では、エコドライブを組織的に推進するための仕組みの整備や、CO2の削減にも有効なドライブレコーダー等の機器の導入が進んでいない状況にございます。
 こうした点を踏まえ、都は、今後、エコドライブの具体的な手法や効果について、講習会などさまざまな機会を活用し、都民に幅広く普及啓発を行ってまいります。
 また、事業者が継続的かつ確実にエコドライブを推進することができるよう、指導体制等の構築や機器の導入に向けた支援など新たな取り組みを展開し、エコドライブが社会に広く定着するよう努めてまいります。
 次に、太陽エネルギーの導入促進策についてでありますが、太陽エネルギーの利用は、住宅の省エネルギー化と相まって、家庭におけるCO2排出を大幅に削減する重要な手段であり、都は、「十年後の東京」で掲げた目標の実現に向け、気候変動対策方針においても太陽エネルギーの飛躍的な普及拡大を位置づけております。
 このため、現在、住宅・設備機器メーカー、電気・ガス事業者、学識経験者などから成る検討会を設置し、普及策を検討しておりますが、この検討会では、都民の費用負担低減の取り組みを含め、太陽光発電利用を進める仕組みづくりの必要性が指摘されております。
 ご指摘のとおり、国が太陽光発電補助を打ち切った以降、普及が減速しているにもかかわらず、何ら抜本的な対策に着手していない中で、今後、都は、検討会の結果も踏まえ、太陽エネルギーの導入を促進する具体的な方策を早急に取りまとめてまいります。
 最後に、緑の東京募金の具体的な進め方についてでありますが、ご指摘のとおり、募金を進めるに当たりましては、幅広い都民の皆様の賛同を得ることが重要でございます。
 このため、海の森の整備、街路樹の倍増、スギ花粉発生源対策及び校庭芝生化という、募金を活用して推進する緑化事業の内容を明示するとともに、これらの中から募金の対象事業を選択できるようにするなど、寄附される方の理解が得られるような仕組みを工夫してまいります。
 また、寄附を全額損金算入できるという法人税法上の優遇制度を活用し、企業からも賛同を得やすくしてまいります。
 さらに、できるだけ広範な都民や企業に協力していただけるよう、募金による事業成果を幅広くお知らせするなど、わかりやすい仕組みづくりに努めてまいります。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) まちづくりについての四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、首都高速中央環状線についてでございますが、現在、平成二十五年度の全線完成を目指し、整備を進めております。
 中央環状線の道路ネットワークとしての機能を十分に発揮させるためには、既に供用している区間においてもボトルネックとなる箇所の拡幅など、局所的な対策について、全線完成を見据えて取り組んでいくことが必要でございます。
 このため、都は、六号線と分合流する堀切・小菅ジャンクション付近及び五号線と分合流する板橋・熊野町ジャンクション付近の拡幅について、近く地元説明会を実施し、本年度内の都市計画決定を目指してまいります。
 また、交通の迂回、分散を図るため、小松川付近において、七号線の郊外方向と中央環状線の北方向とを結ぶ連絡路の新設について、早期具体化に向けて関係機関との協議を進めてまいります。
 次に、外環整備に伴う地域の課題への対応についてでございます。
 外環につきましては、都市計画変更が完了し、事業実施段階に移行することを踏まえ、今後、まちづくりなど沿線地域の諸課題に取り組んでいくことが重要でございます。
 これまでも、都は、中央道ジャンクション付近や上石神井地区などにおきまして、地元区市の行うまちづくりの検討に参画してまいりました。
 今後は、代替農地の確保策や地域分断対策等、まちづくりにおける具体的な課題について、国や沿線区市と連携し、地域ごとに住民と話し合う場を設けるなどして、解決に向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、外環の地上部街路の今後の取り扱いについてでございます。
 本道路は、目白通りから東八道路までの外環ルート上の地上部に計画決定されている幅員四十メートルの道路であり、東京の都市計画道路ネットワークの一部を担うものでございます。
 この道路につきましては、都はこれまで、現計画の幅員を維持する案、幅員を縮小する案、計画を廃止する案の三つの考え方を示してまいりました。
 今後は、さらに、環境、防災、地域の交通ネットワーク等の観点を踏まえまして、この道路の必要性や整備のあり方等を早期に地元に示し、広く意見を聞いた上で都としての方針を取りまとめてまいります。
 最後になりますが、未整備の鉄道路線に対する取り組みについてでございます。
 都は、鉄道事業者とともに、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた路線の実現に順次取り組み、平成二十七年までに開業することが適当とされた十六路線のうち十五路線は、既に開業もしくは事業中でありまして、残り一路線も事業着手に向け手続中でございます。
 また、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線については、すべて未着手でございまして、事業主体や採算性などの課題解決に向けた取り組みが必要であると認識しております。
 都といたしましては、公共交通ネットワークのさらなる強化に向け、将来の輸送需要の動向などを見据えながら、これらの未着手路線などの整備について、国や関係自治体、鉄道事業者とともに検討してまいります。
   〔建設局長道家孝行君登壇〕

○建設局長(道家孝行君) 連続立体交差事業についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、JR中央線の高架切りかえによる効果と今後の事業スケジュールについてでありますが、連続立体交差事業は、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化にも資する極めて重要な事業であり、現在、八路線十カ所で事業を進めております。
 JR中央線では、本年七月、三鷹駅から国分寺駅間の下り線を高架化したことにより、十三カ所の踏切の遮断時間が平均で約四割減少し、また、このうち六カ所で、ピーク時一時間当たり四十分以上遮断されている、いわゆるあかずの踏切状態が解消されました。さらに、小金井街道では、踏切遮断による最大渋滞長が約四割減少するなど、高い効果が得られております。
 また、今後の事業スケジュールですが、西国分寺駅から立川駅間の下り線を平成二十年度末に高架化する予定であります。また、上り線については、三鷹駅から国分寺駅間を平成二十一年度末に、西国分寺駅から立川駅間を平成二十二年度末に高架化し、十八カ所すべての踏切を除却する予定でございます。
 次に、連続立体交差事業の新規事業化に向けた取り組みについてでありますが、このたび、踏切対策基本方針における鉄道立体化の検討対象区間二十区間のうち、骨格幹線道路と交差し、まちづくりへの取り組みの熟度も高い、京王京王線の代田橋駅から八幡山駅間と西武新宿線の中井駅から野方駅間について、新規着工準備採択を国に要望いたしました。
 都は、この二区間の事業化に向けて、今年度、構造形式の検討などに着手いたします。
 また、二区間以外についても、引き続き事業効果等の調査を進め、事業中箇所の進捗状況などを踏まえながら、事業化へ向けて積極的に取り組んでまいります。
 今後とも、必要な財源の確保に努めるとともに、沿線区市、鉄道事業者など関係者間の連携を強化し、連続立体交差事業を一層推進してまいります。
   〔交通局長島田健一君登壇〕

○交通局長(島田健一君) 都営地下鉄駅におけるホームからの転落防止対策についてであります。
 交通事業者にとりまして、お客様の安全・安心の確保は最大の使命であり、ホームからの転落防止対策を強化していくことは極めて重要であると認識しております。
 このため、「十年後の東京」も踏まえ、現在、総合的な検討を進めておりますが、転落防止対策としては、ホームさくの設置が最も有効な方策であると考えております。
 都交通局は、平成十二年に、営業中の路線として全国で初めて三田線にホームさくを設置いたしましたが、引き続き大江戸線への導入に向けまして、早急にホームさくの整備計画を策定してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 東京港のあり方について、二点のご質問にお答えいたします。
 まず、今後の東京港の課題と取り組みの方向性についてでございます。
 東京港の貨物取扱量は、アジア貨物の急増によりまして引き続き増加しているものの、その増加率は平成十五年をピークに鈍化しております。これは、ヤード不足や背後道路の渋滞など、施設の対応能力が限界に近づきつつあることが要因でございます。
 また、ソフト面の課題としては、物流構造の変化が急速に進む中、一層のコスト低減と物流効率化が求められておりますが、世界の主要港湾に比べると、まだその対応が不十分であることが挙げられます。
 このため、東京湾全体を視野に置きながら、ハード面では、今後、中央防波堤外側地区に新たなふ頭を整備するとともに、背後用地等の充実、道路ネットワークの構築などに努めまして、大井、青海とあわせて大型コンテナ船にも対応可能な外貿コンテナふ頭の三極体制の構築を図ってまいります。ソフト面では、今後五年を目標に一層の物流効率化のための取り組みを目指し、官民一体となって新アクションプランの改定作業に今年度より着手いたします。
 また、東京港埠頭公社の民営化を機に、貸付料の弾力化や、公共ふ頭を含めた外貿コンテナふ頭の管理一元化に取り組んでまいります。
 こうした取り組みに当たりましては、国、関係各港及び港湾事業者等に対して幅広く必要な働きかけを行ってまいります。
 次に、臨海副都心の観光振興の取り組みについてでございます。
 臨海副都心は、テレビ局や大型ショールーム、テーマパーク型施設など、魅力ある多くの施設が進出するとともに、水辺やプロムナードを活用したスポーツ大会や文化的イベントが数多く開催され、国内有数の観光スポットとして大きなにぎわいを見せております。
 こうした臨海副都心のにぎわいをより一層高め、さらなる観光振興を進めるには、海辺と潮風にあふれたリゾート性、最先端技術と情報の発信基地を持つ先進性、美しい夜景やエンターテインメントなどの文化性など多様なポテンシャルを生かし、若者から高齢者まで幅広い来訪者が躍動感と非日常性を体感できるような観光まちづくりを目指してまいります。
 このため、今後、開発の中心となる青海地区北側において、事業者の創造性や企画力あふれる、他の地域にはないオンリーワン施設を誘致するとともに、地域の観光の担い手でございますまちづくり協議会の体制強化を支援してまいります。
 また、観光振興とにぎわい創出を経営の柱の一つに位置づけた臨海ホールディングスグループと連携し、地域の観光振興に積極的に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、産業技術研究センターについてでございますが、同センターは、機器利用サービスや技術相談におきまして中期計画の目標を上回る実績を上げるなど、中小企業の技術力の向上に向け着実な成果を上げております。
 こうした技術支援に加えまして、環境、健康、安全など社会的課題の解決はビジネスチャンスの拡大にもつながることから、現在、大気汚染の発生源の一つであります揮発性有機化合物、いわゆるVOCの処理技術の開発に中小企業と共同で取り組んでいるところでございます。
 今後は、社会的課題への対応などを考慮した幅広い視点から、これまで以上に技術支援の充実を図ってまいります。
 次に、多摩産業支援拠点についてでありますが、近年、多摩地域の企業や大学が都外の企業や研究機関と共同して環境分野の新技術を開発するなど、東京都域を超えた連携が大きく動き出しております。
 都は、広域連携の活発化の動きを見据え、研究開発、新事業創出の中核拠点として、平成二十一年度開設予定の多摩産業支援拠点の整備を着実に進めてまいります。
 この多摩産業支援拠点では、多摩シリコンバレーの形成を目指し、技術支援、経営支援に加えまして、産学公連携のコーディネート機能を強化するとともに、インキュベーション施設を整備するなど中小企業を強力に支援してまいります。
 最後に、農作業の受委託についてでございますが、都は、高齢等により労働力が不足する農家を支援するため、今年度から農作業受委託推進事業に取り組んでおります。
 本年七月には、農作業の受委託を円滑に進めるため、東京都及び農業団体などで構成する推進会議を設置するとともに、農作業受委託に関する実態調査を実施いたしました。
 また、九月には、東京都農林水産振興財団に相談窓口を開設いたしまして、農作業を受託する農業者や団体への情報提供などを始めたところでございます。
 今後は、受託者の登録を行い、年内には農家から農作業の委託申し込みの受け付けを開始できるよう努めてまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 七点の質問にお答えを申し上げます。
 まず、東京都がん対策推進計画についてでございます。
 本計画は、がんの予防から治療及び療養生活の向上に至るまでの都の総合的な計画といたしまして、がん検診の受診率の向上、地域医療機関の連携や緩和ケアの推進、また、相談体制の充実による患者、家族等への支援などについて明らかにするものでございます。
 この計画の策定に向けまして、本年五月に、医療関係者や学識経験者、患者団体代表などから成ります東京都がん対策推進協議会を設置いたしまして、現在、活発な議論を重ねていただいております。
 協議会での検討結果を踏まえ、平成二十年度を初年度とする五カ年計画を策定し、今年度新たに設置をしました福祉・健康安心基金などを活用しながら、積極的な施策の展開を図ってまいります。
 次に、がん診療を担う病院の活用についてでございますが、国は、都道府県がん診療連携拠点病院のほか、地域がん診療連携拠点病院を二次医療圏に一カ所程度、都道府県の推薦を受けて指定することとしており、都は、平成二十年四月からの指定に向けまして、候補となる病院を公募し、現在、選考を行っております。
 応募されました病院の中には、国の指定要件を満たし、専門的ながん医療の提供体制が十分に整っている病院が多数ございますが、そのすべてが地域のがん拠点病院に指定されるものではございません。
 都民に必要な診療体制を整えるためには、国指定のがん拠点病院だけではなく、ご提言のように、専門的ながん医療を担える病院の活用についても検討を行い、都内のがん医療水準の向上に努めてまいります。
 次に、都としての医師確保対策についてでございます。
 小児科や産科など、特定の診療科における病院勤務医師の不足に対して実効性のある取り組みが急務となってございます。
 このため、本年六月に、産科、小児科医師の代表、臨床研修病院等の院長、大学医学部長などから成ります東京都地域医療対策協議会を設置いたしまして、都における医師確保対策について精力的に協議をしてございます。
 今後、本協議会での検討も踏まえ、病院勤務医師の負担軽減に向けて、勤務環境の改善、助産師や医療補助者の活用などの取り組みを進めるとともに、さらに長期的視点に立ち、医師の養成、専門医の育成等についても積極的に取り組んでまいります。
 続きまして、外国人の看護師、介護福祉士候補者の受け入れについてでございます。
 今般の受け入れは、フィリピン、インドネシアとの経済連携協定に基づくものであり、三年ないし四年の間、日本の医療機関や福祉施設に就労しながら、我が国の国家資格の取得とその後の就労を目指すものでございます。
 都としても、国際協力の観点に立ち、来日する候補者が在留期間内に国家試験に合格し、引き続き就労できるよう支援することが重要と考えてございます。
 今後、両国の医療、介護の実情等の把握に努めるとともに、都立の病院や施設への受け入れ、看護専門学校での学習指導、民間施設が受け入れる場合の支援など、効果的な受け入れ体制のあり方について検討してまいります。
 次に、東京都地域ケア体制整備構想についてであります。
 この構想は、高齢者が住みなれた地域で安心して生活するための基盤となる地域ケア体制整備の基本的考え方を示すものであります。
 今後、都におきましては、大都市特有の課題として、高齢化が急速に進行し、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯の急増が予測されます。
 このため、構想では、豊富な社会資源が集積をしている東京の強みを生かし、多様な主体による介護、医療、見守りなど、地域におけるケア体制を明らかにしてまいります。
 また、構想に盛り込む療養病床転換推進計画につきましては、他県と比較をして高齢者人口当たりの療養病床が少ないことに留意をし、医療機関の動向を的確に把握しながら検討してまいります。
 本構想の策定に当たりましては、ご指摘の点を踏まえ、都独自の課題の克服に向け、東京の介護、医療の状況にふさわしい取り組みの方向を示してまいります。
 続きまして、医療療養病床についてでございます。
 ご指摘のとおり、国は、現在全国に二十五万床ある医療療養病床を十五万床程度に削減する方針であります。
 急速な高齢化が見込まれる都におきましては、急性期の医療を終えたものの、引き続き医学的管理が必要な患者を受け入れる医療療養病床は今後とも重要であると考えております。
 このため、今年度末の改定を予定しております東京都保健医療計画におきまして、東京都地域ケア体制整備構想も踏まえながら、適正な病床数について定めてまいります。
 最後に、後期高齢者医療制度についてでございます。
 現在、広域連合では、保険料の設定や健康診査を初めとする保健事業について検討を行うなど、制度の円滑なスタートに向けて準備を進めております。
 保険料につきましては、医療費及び保健事業費などの推計や、被保険者数の見込み、さらには国におきます後期高齢者医療の診療報酬体系に係る審議状況など、さまざまな要素を勘案し、広域連合が本年十一月の議会において決定される料率をもとに算定する予定でございます。
 都としては、今後も引き続き広域連合の検討状況を把握するとともに、国の動向を十分見きわめながら、適切に対応してまいります。
   〔病院経営本部長秋山俊行君登壇〕

○病院経営本部長(秋山俊行君) 都立病院並びに公社病院におきます医師の確保についてでございますが、ご指摘のとおり、医師の採用環境は極めて厳しさを増しておりまして、両病院におきましても医師の確保は喫緊の課題であると認識をしております。
 このため、都は、来年度、東京医師アカデミーを開講いたしまして、総合診療能力と高い専門性を兼ね備えた若手医師の計画的な育成と確保に取り組んでまいります。
 また、医療の中核を担う優秀な中堅医師の確保と定着を図るために、勤務条件の改善や福利厚生の充実などの医師確保対策も積極的に進めていく考えでございます。
 こうした取り組みによりまして、都立病院、公社病院がそれぞれ担っている役割を確実に果たすことで、引き続き東京における総体としての医療サービスの向上を図ってまいります。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 犯罪被害者等支援推進計画の策定に当たっての基本的考え方について、お答えを申し上げます。
 被害者やそのご家族は、犯罪による直接的な被害はもとより、犯罪の対象とされたことによります精神的な苦痛や高額な医療費の負担、経済的な困窮など、さまざまな問題を抱え、極めて過酷な状況に置かれております。このため、被害を受けた方々が再び平穏な生活を営めるようになるまで、都は途切れることなく十分な支援を提供していくことが求められております。
 ご指摘の点を踏まえまして、民間団体の力も活用し、今後、被害者の方々の多様なニーズにこたえるための総合的な窓口の設置や、一時的な居住場所の確保、精神的ケアの実施などの施策を検討いたしまして、来年一月を目途に計画を策定してまいります。

○議長(比留間敏夫君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩をいたします。
   午後二時五十三分休憩

   午後三時十五分開議

○副議長(石井義修君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十三番土屋たかゆき君。
   〔百二十三番土屋たかゆき君登壇〕

○百二十三番(土屋たかゆき君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 初めに、新潟県中越沖地震について申し上げます。
 三月の能登半島地震に続き、七月には同じ震度六強を記録する新潟県中越沖地震が発生しました。ここに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興を祈念するものであります。
 まず、今後の都政運営について伺います。
 国政の現状について伺います。
 代表質問には答えられない、これは安倍前総理の辞意報道の際に報じられた発言です。この七月の参議院選挙で敗北を喫したにもかかわらず、続投を宣言し、内閣改造を行い、ブッシュ米大統領に給油活動継続を約し、国会における所信表明を行ったその二日後に辞任表明を行うという、前代未聞、異例の事態が生じました。
 そして昨日の両院協議会を経て、福田康夫元官房長官が新総理に選出されました。現在の衆議院与党体制は、小泉元総理のもとで行われた総選挙の結果生まれた体制であり、その後総理となった安倍晋三氏、そして福田新総理と、総選挙での信任を経ない二人目の総理が誕生することになりました。いかに議院内閣制とはいえ、民意の信任を得ることなくして新総理の正統性は担保されません。早い段階で衆議院の解散・総選挙を行い、民意を問うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 福田新総理も安倍前総理と同じ自民党の総裁とはいいながらも、内政、外交に臨む姿勢は安倍前総理とは明らかに違っているといえるのではないでしょうか。一見、古きよき自民党に戻ったとも見えますが、政権公約の基本理念には自立と共生を掲げ、我が党と基本理念を共有されてもいます。
 福田新総理のこうしたスタンスについて、都知事はどのように受けとめておられるのか、また、今後の都政への影響についてどのようにお考えなのか、見解を伺います。
 こうした国政の変化にもかかわらず、東京都には自治体としての主体的なあり方が常に問われています。知事は、弁慶橋風致地区における参議院議員宿舎建設について、時代の変化や国民意識の変化を踏まえ、再度議論すべきことを指摘し、再考を求められました。さきの所信表明においても、国に唯々諾々と従うのではなく、主張すべきを主張し、分権の時代にふさわしい地方の姿を示したとされました。
 平成十二年の地方分権一括法によって機関委任事務が廃止され、国と自治体が対等平等な関係と位置づけられたにもかかわらず、国の過剰な関与が続き、自治体の側にも対等平等を主張し切れない関係が続いています。改めて、国と自治体との役割分担明確化の観点から、国の過剰な関与を改めさせ、役割分担に基づいた地方税財政制度の再構築を働きかけていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 さて、七日、石原知事は、知事選直前に発表した都民税所得割の軽減措置を撤回しました。
 そもそもこの措置は、低所得者の自立支援や所得向上策と結びつく一貫した政策体系に基づくものではなく、単に税体系の一部に軽減措置を行うだけの理念なき公約であり、撤回は当然の判断と考えます。
 石原都知事は今回の撤回を公約の進化だと述べられておりますが、この政策を打ち出すに至った経過や、今回の撤回に至るまでの過程について明らかにし、素直に公約の撤回を認めるべきであります。同時に、知事が時として批判を受けるトップダウンの弊害や、それに目を閉ざしてきた都庁の体制を検証し、正してこそ、真の意味での進化が始まると考えます。知事の見解を伺います。
 私たちは、これまでにも職業訓練等を初めとした低所得者の所得向上策を求めるとともに、ことしの予算議会では、若年者・年長フリーター対策として、奨学金制度や教育訓練給付金制度の創設、あるいは非正規勤労者の待遇改善に取り組む企業へのインセンティブの充実などを提案してきました。また、さきの定例会においては、生活保護受給者に、就労、保障、医療面での自立促進を行う自立支援プログラムを積極的に推進するよう求めてきました。
 石原都知事には、私たちのこれまでの提案を踏まえて、格差是正策を早急に具体化するよう求めるものですが、見解を伺います。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 東京都が設置した豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議について、まず移転ありきの議論だとか、調査内容が不十分だといった疑問や不満の声が少なくないことは石原都知事もご存じのことだと思います。
 また、国においては土壌汚染対策法の見直しに向けた取り組みが始まっており、今後、汚染土壌に対する調査、対策については、より厳しい対応を求められることが予想されます。
 さらに、昨今では中国の輸入食品問題など、食の安心・安全に対する都民、国民の関心は極めて高くなっており、世界の食糧事情を勘案すれば、この傾向は今後ますます強くなるものと思われます。首都圏の食を支える東京の中央卸売市場が一度豊洲に移ってしまえば、五十年後、百年後、あるいはもっと先の時代まで、豊洲にあり続けることになるのです。私は最低限、今の法律レベルでの調査を実施した上で、汚染土壌の全面的な除去や地下水の管理徹底など、だれが見ても納得のできる対策を講じていくことが必要であると考えます。
 また、このまま汚染土壌の残る土地へ市場を移転すれば、将来に著しい禍根を残すことになりかねないかと懸念するものですが、石原都知事の見解を伺います。
 私たちは、東京都が全面的な汚染土壌の調査を実施しないのであれば、法的な対応を講じるべきだと考え、八月七日、民主党本部に対して、土壌汚染法の改正に関する申し入れを行いました。これは法施行前の適用除外を規定している附則三条を見直し、現行法レベルの調査の実施を法的に担保しようというものです。
 もちろん、このような法改正によらずとも、東京都がみずから率先して土壌汚染対策法のレベルに基づく調査、すなわち敷地全域にわたる十メートルメッシュの測定点を設けるとともに、液状化現象を考慮して、深さ二十メートル以上のボーリング調査を実施することが最も好ましいことは当然のことです。八月二十七日には、東京都が実施しているボーリング調査や水質調査の現状を視察したことで、その思いをますます強くしてきました。
 私は、改めて、今の土壌汚染対策法のレベルに基づく全面的な調査を求めるものですが、知事の見解を伺います。
 専門家会議について、私たちは、そもそも専門委員の数が四名では少ないのではないかなどと指摘してきました。私たちの質問に、東京都は、密度の濃い実質的な議論が行われるよう、各分野から一名ずつの構成としたと答弁してきましたが、逆に、各分野の専門家が一名ずつしかいないため、その人の意見に専門的な立場で異議を唱えたり、同調したりする人もいないというような結果となり、会議の議論は極めて低調だといわれています。
 また、専門家会議ではようやく傍聴者からの質問を受け付けるようになりましたが、質問回数が一人一回に制限されることなどから、不満の声も聞かれます。
 このようなことから、私は、少なくとも専門家会議において公聴会を開催するなど、東京都として責任を持って委員以外の専門家や都民の意見を聞き、これらの意見に懇切丁寧に答えていくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、中小企業対策について伺います。
 東京都は、ことし三月に取りまとめた産業振興基本戦略をもとに、今年度中にも、今後三年間で展開すべき施策を盛り込んだ産業振興指針を発表する予定です。
 基本戦略の戦略の第一は、重点産業を育成し、東京の産業を牽引することとなっていますが、この九月に私たちが行った関係団体からのヒアリングでは、むしろ商取引や人材確保の面などにおいて、大企業と公正な条件のもとで競わせてほしいという要望が強く寄せられました。
 例えば、この間の原材料価格の上昇分を販売価格に転嫁できなかった中小企業は約六割に達するという調査もあるなど、経済のグローバル化や原材料価格の高騰等を背景とした取引上の優越的地位の乱用などが指摘されています。
 また、人材確保の面では、学生の就職先として、中小企業より大企業を希望する風潮がある上、この間、大企業を中心とする若年層の採用が活発化する中で、中小企業の人材確保がますます困難になっているといわれています。私は、中小企業の振興を図っていくためには、東京の産業を牽引するようなすぐれた中小企業に着目するだけでなく、多くの中小企業が大企業と公正、公平な立場で競争できる条件を整備することにも力を注いでいくべきと考えますが、石原都知事の基本姿勢について伺います。
 次に、ものづくり産業の中核をなす工場の集積、再生について伺います。
 既に大阪府など幾つかの府県では、工場の集積に向けて不動産取得税の税率を軽減したり、設備整備に助成金を出したりするなど、税財政の面からの支援策を講じています。
 また一方で、都内自治体に目を転じてみれば、府中市や三鷹市のように、特別用途地区の指定など、都市計画的な手法を用いて工場の建設を緩和したり、住宅の建設を抑制するなどして産業集積を図ろうとしている自治体もあります。
 東京都としても、工場の建てかえや拡張に向けて、区市町村への情報提供などを通じて特別用途地区の指定などを促していくとともに、広域的な視点から、空き工場の情報提供を初め、税財政的な支援策を講じて、工場の集積、再生に積極的に取り組んでいくべきだと考えます。東京都の工場の集積、再生に向けた取り組みについて見解を伺います。
 次に、中小企業における人材確保について伺います。
 ニートやフリーターなど、若年者の就業対策が求められている一方で、中小企業では人材確保に苦慮しています。現在、東京都ではインターンシップや職場体験の受け入れなどを実施する若者ジョブサポーター企業の組織化などに取り組んでいますが、現在までの登録数は三百三社にとどまっています。また、若者ジョブサポーター企業に対しては、産業力強化融資などを通じて支援しているところですが、都内自治体にはインターンシップの受け入れそのものに補助金を出している自治体もあり、東京都としても助成制度の創設など、支援の充実を図っていくべきと考えます。中小企業の人材確保に向けた若者ジョブサポーター企業への支援について、東京都の見解を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 新体制での運営が始まった新銀行東京は、七月三十一日、店舗外に設置しているATM全百二十六台の稼働停止を発表しました。今では地下鉄各駅でシャッターがおりたままのATMを多く見かけます。また、八月十日には店舗統合を発表し、既に八王子出張所を廃止したほか、今定例会中には蒲田出張所と錦糸町出張所もそれぞれ統合される予定です。ATMの問題はこれまで都議会民主党が取り上げてきましたし、また、店舗については、一昨年の予算議会で自民党議員が早期開設を求めていたものを統合するわけです。
 石原都知事は、これまでの新銀行東京に対しては、全くといっていいほど情報が入ってこなかったと不満をぶつけていましたが、新体制になったことでコミュニケーションはとれるようになったのでしょうか。
 また、この間のATM撤去や店舗の統合などに知事の意向は反映されているのでしょうか、見解を伺います。
 次に、新銀行東京の経営情報の公開についてですが、前回の私たちの代表質問に対して、東京都は、企業運営上秘密としているものを除いて、積極的かつわかりやすい情報開示を行っていくよう働きかけていくと答弁していました。
 しかしながら、いまだに四半期情報さえ公開されていません。四半期情報は各事業年度及び中間期の決算発表とは別に公開されているもので、七月三十一日前後には多くの銀行で公開されています。また、新銀行東京は、昨年八月四日に一度だけ第一・四半期の決算状況を公開したことがあり、これを拒む企業運営上の秘密はないはずです。それ以降、四半期情報が公開されてないことも不可解ですが、少なくとも、進むも地獄、引くも地獄といわれている新銀行東京の経営状況を適切に管理していくことは、株主としても当然の責務ではないでしょうか。
前回の答弁を踏まえるのであれば、最低限、四半期情報などは公開していくべきと考えますが、新銀行東京の情報公開について、改めて見解を伺います。
 次に、医療行政について伺います。
 まず、リタリンなど薬物乱用の問題について伺います。
 我が会派は、昨年の第四回定例会で、リタリン乱用の実態や、十分な診察なしに安易に処方する、リタリン販売所と呼ばれるクリニックについて問題を指摘し、早急な対応を求めていました。今月十八日に、都と新宿区が合同で、新宿区歌舞伎町の診療所、東京クリニックに対して立入調査を行い、多くのマスコミに報道されました。
 これらの動きを受けて、製造元は、急遽リタリンの適応症からうつ病を外す方針を示しました。安易にうつ病と診断し、処方するケースが後を絶たなかったわけですから、うつの適応症を外すのは画期的な前進と評価しております。
 しかしながら、覚せい剤と同じ効果を持つ薬剤はリタリンに限りません。リタリンの安易な処方に歯どめがかかっても、類似薬剤が安易に処方され続ければ、薬物乱用の問題は根絶できません。都としては、薬剤の不適切な処方を行う医療機関に対しては厳しく指導を行っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、産科医療確保について伺います。
 先日、奈良県において、搬送先の病院が見つからず、死産する痛ましい事件が起きました。産科医不足が叫ばれる中、千葉県でも妊婦受け入れ拒否が百四件あったという報道もなされています。たらい回しへの懸念が高まる一方で、現場の医師からは、手いっぱいで、新たに診られる状態にない病院が、他を探してくださいというのがたらい回しといえるのかとの指摘もあります。確かに産科医が不足しており、断らざるを得ない状況になっているというのが現実ではないでしょうか。
 一般的に、医師は外来診療、入院病棟、救急への対応を行っていますが、一人しかいない産科医が、病棟の急変者や他の救急患者の処置中であれば、救急搬送の打診をされても無責任に受け入れることはできません。産科医療の現状についてどのように認識しているのか、見解を伺います。
 また、平成十九年四月一日から八月三十一日までに限った数字ですが、東京消防庁によれば、周産期救急搬送事案における、現場到着から病院への出発までは平均約十六・三分、病院到着までは平均約四十・六分であり、搬送先が決まるまで六カ所以上の病院に連絡した事案は約三%とのことです。
 医師が一人前になるには十年、十五年かかるといわれ、医師不足の根本解決には長い時間がかかります。都においては、二次救急における病床の確保、多くを占める正常分娩を担う診療所、病院、さらに高度な医療を担う各医療機関の役割分担医に基づくネットワーク化など、今ある資源をどのように有効活用するかという視点が重要であると考えますが、都はお産の安全・安心を確保するためにどのように取り組むのか、見解を伺います。
 都立病院でも、医師の確保困難から、豊島は産科が新規取り扱いを休止中、墨東は外来診療を縮小しています。多摩地域でも医師不足は深刻で、産科医は人口十万人当たりの病院数が四・〇と、二十三区より二以上も少ないのが現状です。私たちが把握している範囲でも、産科の取り扱いをやめた病院、高齢の医師一人が頑張っている病院があります。五年後、十年後を考えると、東京でお産ができなくなってしまうのではないかという危機感を持たざるを得ません。
 その一方で、東京では新たに産科医院、病院を開業することが非常に難しい環境となっています。その大きな原因は、国の病床規制です。東京には全国から患者の集まる高度医療施設が集積していること、実態的には稼働していない病床までカウントされていることなどから、地域によりますが、ほぼ限度に近い病床を持っています。国は総病床数で人口当たりの基準病床数を定めており、現に足りない産科や小児科を開設しようとしても、それを超えては開設できないという理不尽な状態なのです。
 これに追い打ちをかけたのが、新たに二十床以下の診療所もこの基準病床にカウントするという基準変更です。医師不足の最中、多くを占める正常分娩を担うべき地域の診療所の役割が高まる中でのこの変更は、不足する診療科への新規参入が必要な状況に対し、逆効果をもたらすものです。
 しかし、医療法には特例規定があり、医療計画に明記すれば、産科、小児科など、不足している科目については診療所を開設させることができます。この規定を活用し、必要な地域医療の確保の一助とすべきです。
 また、病院の開設に係る都の手続も問題があります。
 病院開設の手続には短くても六カ月以上かかりますが、この間、予定地を押さえておく必要があり、相当な資金がなければ開設が不可能な仕組みであることがまず一つの問題です。
 そして肝心の許可は、国の規制の範囲内であきが出た分だけですが、いつ、どこで出たのかはオープンにされていません。これが二つ目の問題点です。
 こうした事務手続の面でも、住民ニーズにこたえる医療を提供しようという意欲のある医師を歓迎する環境整備をすべきです。こうしたことを含め、都は産科医療の確保のため、細かな点もすべて総点検し、できることは何でもやるべきだと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、介護保険制度について伺います。
 介護保険制度が始まり、八年目を迎えました。しかし、国は制度導入時の理念から大きく後退し、給付を抑えることに力を入れています。そのため、介護従事者の給与は、平成十四年をピークに減少傾向にあり、それに伴う介護従事希望者の減少と、本格的な高齢化社会を目前にして、不安な状態が続いています。
 その一方、現在審議中の介護福祉士法の改正案では、実務経験三年以上のヘルパーも、養成施設に一定時間通った上で国家試験を受けることになります。しかし、養成施設が偏在し、学費もかかることから、果たして国の思惑どおりに事が運ぶか疑問視されています。
 また、国が昨年行った制度改正で、中小の事業所であっても事業量が膨大となり、事業運営、人材確保に大きな負荷をかけています。
 さらに、ケアマネジャーについては、受け持ち人数が制限されたことにより所得は頭打ちとなり、その反面、包括支援センターとの連絡など仕事量は逆に増大しました。その結果、事業者が広告を出して募集しても、人材確保が困難な状況です。
 ヘルパーや介護福祉士にしろ、ケアマネジャーにしろ、要介護者がふえることが予想される今後、ニードがふえこそすれ、減ることは考えにくい状況です。このままでは介護の現場から人材が枯渇してしまうことが懸念されます。これらの点について都の所見を伺います。
 次に、障害者自立支援法について伺います。
 自立支援法の全面施行から一年がたとうとしています。この間、与党による激変緩和措置が行われましたが、自立阻害法ともいわれるその問題自体は解決されていないままです。
 限られた障害年金で余裕のない生活を強いられている障害者家庭もあります。多くの介護サービスを受けざるを得ない重度障害者に経済的余裕があるとは限りません。応益負担ではなく、応能負担を基本とする利用者負担の仕組みとすべきです。また、自立と題しながら、所得の判断に当たって世帯単位として、結局、老親や兄弟といった経済的な家族依存制度となっているのは、やはり個人単位へ変えるべきと考えますが、都の所見を伺います。
 自立支援法における訪問介護の事業所への報酬単価は、一時間千六百円程度です。実際には、訪問における移動時間があるために、一時間の介護で一時間半必要とする上に、事務費も含まれています。この報酬単価は介護保険よりもさらに低く、有能な人材の他業種への流出や、官製ワーキングプアと評される無理な労働を強いる結果となっています。これではまるで、国が率先して、福祉だからボランティア的でよいのだと考えているかのごとき報酬体系です。
 現行制度では、報酬額を今よりも上げるには利用者負担を上げなくてはならないという問題があり、これを改善するための研究、提言を期待します。
 自立支援法は就労への支援に重点を置いています。これ自体は、これまで重視されてこなかった支援であり、必要な施策と考えます。しかし、その一方で、現実に障害の程度により就労ができない障害者もいます。すべての障害者にとって就労だけがゴールでないことを念頭に置いて、施策を構築すべきです。
 その就労支援策に着目すれば、国は、小規模授産施設等を、自立支援法に基づく就労継続支援事業、就労移行支援事業に移行を進めていますが、ためらう事業所が数多くあり、スムーズな移行ができるよう、しっかりと支援していく必要があります。
 さらには、就労といっても、まだまだ企業の理解は進んでおらず、小規模な事業者は、企業と接点を持つことは大変ハードルが高いのが現実です。都庁を含めた多くの事業体、企業が本気になって積極的な障害者雇用をするよう就労支援をすべきであり、企業の理解を得るよう努力すべきです。これこそ東京都だからこそできる事業と考えますが、所見を伺います。
 次に、震災対策について伺います。
 まず、住宅の耐震化促進について伺います。
 七月の新潟県中越沖地震では、全壊住戸が約一千戸、半壊や一部損壊は約三万八千戸に上る被害が引き起こされました。被害を受けたのは古い木造住宅が多かったと報告されています。
 一方、都は、住宅の耐震化率九〇%以上という目標を掲げ、昨年度から、木造住宅の耐震化促進のため、耐震診断と耐震改修に対する助成を行っていますが、私たちがたびたび指摘したように、その利用はまだまだ少ないのが実情です。特に耐震改修は、昨年度予算では四百八十件分を用意したにもかかわらず、わずかに二十二件の利用しかなかったという事実は重く受けとめるべきです。
 制度の利用促進のためには、例えば、既に墨田区などで実施されているように、簡易補強についても助成の対象とすることも有効ではないかと考えます。都では、既存の建物内に設置する耐震シェルターなど、安価で信頼できる耐震技術の紹介を行っていますが、それらの耐震技術による耐震化も助成対象とすべきです。また、適用地域を限定せず、都内全域で制度の活用を認める必要もあります。さらに、これらの措置によって国の補助の対象から外れてしまう分に対しては、都として独自に上積み補助をすることも検討すべきです。
 このような耐震改修促進制度の適用範囲の拡大について見解を伺います。
 住宅の耐震化を進めるためには、まず、適切な耐震診断が実施され、住宅の耐震性能が正しく評価されなければなりません。そのために、都では昨年度から、一定の要件を満たす耐震診断事務所を登録し、公表することにより、住宅の耐震化に取り組もうとする都民が安心して耐震診断を実施できる制度を実施しています。
 住宅の耐震化率九〇%以上という目標を達成するためには、単純計算で一年当たり三万戸を超える耐震改修を行う必要があります。しかし、一方で、本制度での登録事務所数は、平成十九年八月現在、わずか三十九事務所にすぎません。これでは、耐震診断でさえ目標の戸数をこなし切ることは不可能であり、登録事務所をふやしていくことも重要と考えます。
 都で登録している建築士事務所以外にも、木造住宅の耐震診断を適切に実施している建築士事務所は数多くあるはずです。住宅の耐震化の目標と耐震診断の実務的な受け皿の現状との乖離についてどのようにとらえ、また今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、新潟県中越沖地震に起因する電力供給にかかわる首都圏の危機管理について伺います。
 今回の地震では、原子力発電所の耐震設計基準値を大幅に超える揺れが観測され、柏崎刈羽原発が被災、原子炉を全面停止し、現在も復旧、点検中です。この停止によって、東京電力では供給力の確保と節電への協力を訴え、都も省エネ・節電緊急対策本部を設置し、さまざまな取り組みを行ってきました。
 しかし、八月二十二日には、東電の当初予測を超える六千百四十七万キロワットの電力供給が必要となったため、一部企業に電力供給を抑制し、生産ラインを停止せざるを得ない事態が発生しました。
 来年以降も首都圏における夏の電力供給の課題が継続すると予想される一方、電力を供給する原子力発電所の耐震安全性についての再評価が必要であると考えます。
 そこで、都は、電力の安定供給の確保とともに、生産、消費地の視点などから、福島第一、第二原発など、すべての原子力発電所の海域を含めた立地調査や、周辺施設を含めた耐震安全性の確保、防災対応の強化、情報の迅速な提供など、危機管理体制の強化を国や電力会社などに求めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、新しい建築確認制度について伺います。
 一昨年の耐震偽装事件を受けて建築基準法が改正され、本年六月二十日から、建築確認や検査の厳格化が図られた新しい建築確認制度が始まっています。関連する政省令、告示などの整備が施行直前にずれ込んだこともあり、建築確認手続が滞るなど、関係実務者間で混乱が生じています。
 法改正によって、構造の専門家による第三者チェックを義務づける構造計算適合性判定制度が創設され、それに伴い、法定審査期間が最大七十日間に延長されたことや、改正前には認められていた設計図書の訂正や差しかえができなくなり、設計図書に不備があった場合には、再度手数料を払って申請し直さなければならなくなったことなどから、設計段階での、建築確認がおりるまでのスケジュールが不透明になってしまったといわれています。
 建築確認の審査そのものが厳しくなったことと、建築確認のスケジュールの不透明さとが相まって、建築確認申請を手控える動きもあります。国土交通省の統計では、ことし七月の民間居住用建築物の着工床面積は前年同月比二三・三%減、非居住用建築物では二一・三%減となっており、建築確認制度の変更の影響であると分析されています。このような建築投資の冷え込みは、景気に対して大きなマイナス影響があると指摘する投資家もいます。
 このようなことからも、都は、審査を行う特定行政庁としての立場から、新しい建築確認制度を円滑に進めるための取り組みを行っていくことが極めて重要であると考えます。景気に与える影響も含め、基本認識を伺います。
 新しい建築確認制度を円滑に進めるためには、建築設計事務所の業務改善はもちろん必要ですが、審査をする側も、申請に当たって、提出図書のチェックリストの作成を求める、意匠、構造、設備の図面内容を説明できる担当者の立ち会いを求める、申請書類の事前審査を行うなどの独自ルールを定めるといったことなども有効と考えます。また、実務上生じた新制度の課題について、国に対して再度の法改正の働きかけも行っていく必要があります。
 新しい建築確認制度を円滑に進めるため、都は具体的にどのような取り組みを行っていくのか、見解を伺います。
 次に、緑の保全について伺います。
 まず、緑の東京募金基金条例について伺います。
 今定例会に提案されている緑の東京募金基金条例の目的は、海の森や街路樹など、緑の保全と創出を強力に推進していくことにありますが、これに加えて、緑のムーブメントを広範に起こしていくこととされています。
 私は、緑のムーブメントを広範に起こしていくというのであれば、ただ単にお金を募るだけでなく、都民の活動を募り、緑の管理などといった面でも都民との協働を広く展開していく必要があると考えています。
 海の森では、平成十七年二月の港湾審議会答申において海の森のパークマネジメントを打ち出し、その中で、都民、企業、NPOなどの参加を得ながら、公園整備の初期から植樹を中心とした協働活動を行い、さらに、段階的な整備の進展に伴い協働活動も発展させていくという考え方が示されています。
 また、昨今は、いわゆるアダプト制度という取り組みも進み、例えば、企業と自治体とが協定を結び、企業が歩道の清掃や街路樹の剪定などを行っている例もあるようです。
 このような緑に対する都民の関与を積極的に進めていくべきと考えますが、都民等との協働による緑のムーブメントの展開について見解を伺います。
 次に、緑の保全について伺います。
 基金条例による緑の創出も重要ですが、昔からある貴重な緑を保全していくための努力も欠かせません。
 この間、石原都知事は、参議院議員宿舎の建設問題に関して、森をつぶすのは許さないとして、国と戦う姿勢を示しています。しかし問題は、参議院であっても、国有地の払い下げを受けた民間事業者であっても、仮に条例の基準内の建物であれば建築が許可され、あの森も簡単につぶされてしまうことにあるのではないでしょうか。
 私は、今回の件を教訓にするのであれば、都内にある二十八カ所、三千五百七十ヘクタールの風致地区についても、保全に向けた総合的な対策を講じていくべきだと考えています。例えば、それぞれの風致地区における良好な風致や目指すべき姿を保全方針として定めるとともに、条例の運用に当たっては、地域の現状や特性をさらに踏まえて、風致の維持に取り組んではいかがでしょうか。
 風致地区の緑の保全に向けた取り組みついて見解を伺います。
 次に、犯罪被害者施策の推進について伺います。
 思いがけず犯罪被害者になった皆さんは、多くの場面でその権利が保護されずに苦しんできました。そこで、国では、平成十六年十二月に犯罪被害者等基本法を制定し、翌年には基本計画を策定しています。
 国とともに施策実施の責務を負う自治体では、条例や推進計画などを策定し始めました。都においても現在、推進計画の中間のまとめを公表、パブリックコメントを行っています。当計画は、国の基本計画と役割を分担して策定されるとともに、今年度の、第一回定例会で、我が会派の提案に対して知事が計画の作成を明言して、実現するものです。
 そこで、まず、全国犯罪被害者の会を支援するフォーラムの発起人代表でもあった知事に、犯罪被害者等支援推進計画に対する見解を伺います。
 この中間のまとめには、計画の位置づけや現状把握、施策の内容、目標に不十分な点も見受けられます。
 国の基本計画の位置づけは、具体的な設計図と工程を示し、個別具体的な施策の着実な実施を図っていくこととしています。施策に関しては、新たに取り組むものと既存の取り組みをさらに充実させるものを列挙し、既存の取り組みは今後も継続していくことで基本計画には盛り込んでいません。
 一方、都の推進計画では、既存の取り組みを列挙する中で、新たに取り組むテーマは今後検討予定としています。また、検討結果を具体化するスケジュールや施策の実施状況の検証、評価、監視については一切示されておらず、仕組みの構築のみをうたっている点が推進計画としては不十分と考えます。計画の文章も、犯罪被害者や一般都民に理解され活用されるよう、よりわかりやすい記述にすべきです。見解を伺います。
 次に、東京都の状況に応じて適切な計画策定に取り組むことが重要です。計画の策定趣旨では、都内の刑法犯の認知件数が全国トップで推移し、都民の治安に対する不安は依然として高いとしています。また、犯罪被害者の多くは、都市における家族関係や近隣関係が希薄な状況の中で、地域社会の中で孤立することを余儀なくされてきたともしています。
 一方、都内の犯罪被害者の人数や相談、保護件数などの実態など、都における現状把握と分析は少なく、不十分であるといわざるを得ません。既存の取り組みもさらに充実させ、関係機関が連携して総合的施策に取り組んでいくことが必要です。見解を伺います。
 次に、推進計画がより犯罪被害者の視点に立ち、来年一月に確定する本計画においてより充実したものとなるよう、何点か提言いたします。
 損害回復、経済的支援では、国は、犯罪被害者給付金の最高額を自賠責並みの金額に引き上げる方向にあります。都においても、犯罪被害者が被害直後に当面必要となる資金について支援する制度を検討、創設していくべきです。
 精神的、身体的被害の回復、防止の取り組みでは、救急医療に連動した精神的ケアとともに、犯罪発生直後から、普通の生活を目指した軽度なサポート体制の整備も行っていくべきです。
 支援のための体制整備を進めるには、警察と被害者団体との連携協力も不可欠です。都民の理解を増進させるには、学校教育における生命の大切さの教育のほかに、被害に遭った場合の対応についての教育も進めるべきです。
 そして、計画を策定した後には、都として、犯罪被害者等支援推進の姿勢を、都民のみならず全国に向けて発信していくため、都条例を制定すべきと考えます。都の見解を伺います。
 最後に、二点述べさせていただきます。
 さきの矢代警視総監の就任あいさつの中で、立川警察署警察官の殺人及び自殺事件について、謝罪と今後の取り組みに向けた決意の表明がありました。
 二十四時間三百六十五日交代で活動する治安系公務員の職務、生活は、時間的な流れや活動の流れが、その職務内容ゆえにどうしても散漫になりがちです。それゆえに、職員同士が勤務のルールにのっとって活動することで、節度と緊張感のある職務、生活を送ることが可能となります。つまりは、このようなルールを無視する職員が一人いることで、組織やチームの節度が崩れていくわけです。
 中堅の世代の職員のとったこのような逸脱行為が、職員研修で幾ら許されない行為だと教えられていても、ベテラン先輩職員が行っていれば、若手の職員が、現場の雰囲気の中で注意できないということもあったのではないかと思われます。
 職務倫理教養や人事管理、勤務管理の徹底について、私たちからも改めて求めておきたいと思います。
 また、本年八月一日より駐車禁止規制からの除外措置の一部が変更となり、除外する車両を特定せず、駐車禁止等除外標章の交付を受けた身体障害者等本人が現に使用中の車両が除外対象となることになりました。この結果、身体障害者等は、タクシーや福祉車両等を幅広く使用することができるようになりました。
 しかし、その一方で、三級の二または三級の三の下肢機能障害者は、交付対象から外れることになってしまいました。新規則施行後三年という経過措置があるため、今すぐ対象外ということではありませんが、当事者にとっては厳しい措置です。
 今後、当事者の現状を十二分に把握し、こうした除外措置については配慮されるよう求めます。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 土屋たかゆき議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、衆議院の解散・総選挙についてでありますが、さきの参議院選挙の勝利で、民主党がヒートアップし、舞い上がっているのはわかりますけれども、それにしても、議会の代表質問でこうした質問はちょっと筋違いじゃないかと思います。
 あくまでも参議院は、衆院の判断をチェック・アンド・バランスする第二院でありまして、私自身も在籍しておりましたが、その機能の本質というのは理解しているつもりでございます。
 あえてお答えしますけれども、新首相のもとで政府は、まずもってしっかり行政の体制を立て直して、一刻の猶予も許されない焦眉喫緊の国内外の難題を着実に処理してもらいたいと思っております。
 例えば、私の認識している限り、選挙中までのことであります、その後どう変わったかわかりませんが、あの問題の多い、でたらめな公務員の組織の社保庁を民主党は存続するんでしょう。自民党、公明党はこれをとにかく解体して民営化しようというのに、こういった本質的な問題が棚上げされて、私は、選挙、選挙といってはしゃぐ必要はないと思います。
 第二院とはいえ、参議院で多数を得た以上は、民主党はこれまでとは比較にならない重い責任を負ったのでありまして、いたずらに解散・総選挙を急いで、国民を置き去りにしたり対外関係をおろそかにすれば、結果として、国家、国民の利益を大きく損なうことになるのではないかということを肝に銘じて行動されることを期待しております。
 次いで、福田政権誕生の都政への影響についてでありますけれども、ご指摘のように、福田さんは、自立と共生というものをしんに据えた政治を行いたいとおっしゃるようで、これは大変結構なことであります。情報の流通がスムーズになって、時間的、空間的に世界が狭くなった、こういう時代に、私はやはり、自立と共生というものをしんに据えた政治のかじ取りというのは不可欠だと思っております。
 しかし、まだ具体的にどういう政権運営されるか、所信表明をされていない次元でありますから、これから新政府の財政のかじ取りを見守る必要があると思っております。
 次いで、低所得者の方々に対する支援についてでありますが、先ほども申し上げましたけれども、近年、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せないまま不安定な生活を余儀なくされている方々が増加しております。低所得者への支援が重要であると認識しております。
 その中で都民税の軽減を検討してきましたが、税による一律の軽減よりも、きめの細かい施策として手当てをする方が公平で効果的であるということが明らかになりましたので、方針を転換いたしました。
 これは、あなたのおっしゃるように、決して私の思いつきのトップダウンではございません。選挙の前に、新しい政策、公約について何か建言してほしいといって、出てきた案でありまして、私も、大変結構だな、東京も財政再建できましたので余裕もできましたから、そのことはしようじゃないかといいましたが、その後、発信元から、その後、熟慮したら、結果としてばらまきになりかねない、これでは決して本当の福祉行政にならないから、もうちょっときめの細かい施策を講じたいということで、修正の建言がありました。それを詳細聞きまして、私もその方が妥当だと思って、その案を採用した。つまり、公約は決して取り消されたんじゃございません。あくまで進化したわけでございます。
 次いで、格差是正についてでありますが、格差のない社会はあり得ません。個人の能力や努力あるいは成果が正当に評価され、意欲のあるだれもがチャレンジできる社会の実現に取り組んでいくことが重要であります。だからこそ、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず低所得の状況から抜け出せない方々への支援を充実させることといたしました。
 今後、こうした方々に対して、一人一人の状況に合った、きめの細かい、また将来に向かって明るい展望が開けるような、これは個々人によって方策も違うでしょうけれども、いずれにしろ、生活改善や職業能力の向上など、多様な施策を講じていくつもりであります。
 次いで、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策についてでありますが、豊洲新市場予定地については、生鮮食品を扱う市場として、食の安全・安心に万全を期すため、本年五月から専門家会議において、東京ガス株式会社及び都の調査、対策の評価、検証を進めております。
 専門家会議では、科学的知見をもとに広範な角度から議論が行われておりまして、その検討に基づいて、現在、必要な追加調査を敷地全面で実施しております。また、これと並行して、追加の対策についても議論が進められています。
 今後、専門家会議から、市場用地という特性を踏まえた具体的な提言がなされる予定でありまして、都としてこの提言を確実に実施していくことで、都民や市場関係者が安心できる市場として開場させていきたいと思っております。
 次いで、中小企業の競争条件の整備についてでありますが、企業といえども、やっぱり競争の社会に身を置いているセクターでありまして、これは努力次第、能力次第ということは原則に、避けられないと思います。
 つい最近、毎年やっております東京のベンチャーテクノロジーの大賞の候補企業の内訳の報告がございましたが、非常に感心するような画期的な発明が幾つもございました。そういうものが数多く羅列できる東京というものは、すばらしい可能性を秘めた中小企業の世界だと思いますけれども、いずれにしろ、これは東京のみならず、日本全体の産業を支える基盤として重要な役割を果たしておりまして、これらの中小企業が競争力を発揮できる、あくまでもその能力、潜在力というものを発揮できる条件を整備することは必要だと思います。
 東京はこれまで、CLO、CBOによって資金供給の円滑化を図るとともに、区部と多摩において幅広い技術、経営支援のニーズに対応する産業支援拠点の整備に着手するなど、先進的かつ多面的な政策を講じてまいりました。このCLO、CBOのサポートによって、既に今限りで六十六社が上場を果たしております。
今後とも、東京の産業力を支える中小企業が十分にその力が発揮できるように条件整備を進めてまいります。
 次いで、新銀行東京についてでありますが、新銀行東京では、現在、新経営陣のもとで、デフォルトの圧縮や営業経費の削減などを柱とした思い切った経営改善の取り組みを進めております。店舗外のATMの撤去や店舗の統廃合などもその一環でありまして、取り組みが着実に進展しているものと認識しております。また、新経営陣から適宜業務に関する報告を受けておりまして、都としては、今後とも適切な経営が行われるように働きかけてまいります。
 次いで、電力供給に係る危機管理についてでありますが、柏崎刈羽原発の被災に際しては、地元住民の安全を確保することはもとより、都民生活や経済活動に大きな影響を与えるおそれがあるために、都は直ちに東京電力に対し、原因究明や安全対策の実施、電力の安定供給を要求してまいりました。
 また、省エネ・節電緊急対策本部を設置し、都みずからの節電に加え、都民、事業者などへの協力を呼びかけました。今後とも、国及び東京電力に対して電力の安定供給を要請するとともに、今回の地震を踏まえた原子力発電所の危機管理体制の強化を求めてまいります。
 次いで、犯罪被害者等の支援推進計画についてでありますが、犯罪被害者やその遺族の方々が、社会的にも非常に不遇な状況に置かれていることはまことに理不尽であります。 そもそもこの運動が展開した発端は、私の親友であります某大証券の顧問弁護士をしておりました岡村勲さんの奥様が身がわりになって殺害されまして、その結果、彼は、現代刑法の中での犯罪被害者というのがいかに人間的に不遇な立場にさらされたままでいるかということに気がつきまして、自分としては得がたい体験をしたと自戒しておりましたが、彼が私に申しますに、こういう自分の最愛の妻が被害に遭わなかった限り、おれはひょっとしたら今でも加害者の方の弁護を熱心にしたかもしらぬということを自戒しておりました。
 これは端的に申しまして、近代刑法というのはもともと、中世、近世にあったあだ討ちを禁止するということから構築された、ある意味で現代的というんでしょうか、しかしある意味では偏った、それを主宰する司法の当事者が同じ人間でありますから、司法にいろんな問題が出てくる。それから同時に、時代の風潮として、人間性とか人権というものが過剰に加害者の中にしんしゃくされて、大きなゆがみが生じてきて今日の問題になったと思います。
 今後、都は、犯罪被害者の切実な思いにこたえて、途切れることなく支援を行っていくことができますように、実効性のある施策を総合的に推進してまいります。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) 地方税財政制度の再構築について申し上げます。
 都はこれまでも、真の分権改革の実現には、まず国と地方の役割分担を明確にした上で、地方の事務と権限に見合う税源を配分すべきであると主張してまいりました。しかし、依然として国のさまざまな関与や補助金等が残されておりますために、地方が主体的に判断ができず、独自の施策展開が困難となっております。また、このことが責任の所在をあいまいにしております。
 こうした中にありまして、現在、国の地方分権改革推進委員会におきまして新たな分権改革の議論が進められております。都といたしましては、この動向も踏まえまして、まずは国の関与の実態を具体的に示して、過剰な関与を廃止し、国と地方の責任を明確にすることを求めてまいります。さらに、地方の自主的な判断を阻害しております補助金を廃止いたしまして、地方の責任に見合った財源が配分されるよう、地方税財政制度の再構築を求めてまいります。
 今後、地方分権改革推進委員会における検討状況を見据えながら、適宜、都としての見解をまとめまして、国に強く働きかけてまいります。
   〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕

○中央卸売市場長(比留間英人君) 築地市場の移転に関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、現行の土壌汚染対策法に基づく調査についてでございます。
 専門家会議の役割は、東京ガス株式会社が実施をいたしました調査を評価の上、生鮮食料品を扱う市場用地として必要となる調査や対策について検討することにあります。
 会議では、豊洲新市場予定地の地盤を地下水面から上の部分と地下水部分とに分けて検討してございます。地下水面から上の部分は、これまで考えてきましたように、計画地盤面から四・五メートル下までを健全土とすることに加え、コンクリートまたはアスファルトで覆うこととしてございます。地下水部分につきましては、水位が上昇した場合、その上の健全土への影響が懸念され、また、揮発性物質であるベンゼンが地下水によって移動し、ガス化して地表面に出てくる可能性があることから、適切な対応が重要としてございます。
 こうした観点から、地下水の状況や土壌ガス濃度を測定するため、豊洲新市場予定地全面にわたって二百四十三カ所で現在追加調査を実施しているところでございます。今後、調査結果を踏まえた専門家会議からの提言を受け、必要な措置を確実に実施してまいります。
 次に、専門家会議での都民意見の聴取と回答についてでございます。
 専門家会議においては、各委員の科学的知見をもとに、公正中立な立場から精力的に議論をいただいているところでございます。専門家会議での議論につきましては、その内容を幅広く理解してもらえるよう、会議を公開するとともに、わかりやすい要約版を作成し、ホームページへの掲載や市場関係者への提供を行ってございます。さらに、八月の第三回専門家会議から、傍聴者と委員との質疑応答の時間を設け、傍聴者からの意見や疑問に対して丁寧に回答しております。
 今後とも、都民要望を踏まえて、こうした方策を積極的に進め、豊洲新市場予定地における土壌汚染対策について理解と安心が得られるよう努めてまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京の工場の集積、再生に向けた取り組みについてでありますが、都はこれまで国に強く働きかけ、都内の工場立地を規制する工業等制限法や工業再配置促進法の廃止を実現してまいりました。また、産業集積の形成に向けまして、都におきましては、集積や企業ネットワークを生かす中小企業グループを支援するものづくり新集積形成事業を実施しているほか、都内の区市町村の中にも先進的な取り組みを展開しているところがございます。
 地域工業のさらなる活性化を図るため、今年度の重点事業として、ものづくり産業の集積を図る区市町村に対する支援策の検討を現在進めております。
 次に、若者ジョブサポーター企業への支援についてでありますが、都におきましては、インターンシップの受け入れなど若者の職業的自立を積極的に支援する若者ジョブサポーター企業を募集しております。これらの企業につきましては、都のホームページや冊子、新聞で企業名や活動状況を広く周知するとともに、直接若者へのPRを行う場としてジョブパーティーを開催するなど、その人材確保に資する取り組みを行っております。
 今後とも、ジョブパーティーの開催回数をふやすとともに、高校や大学などに対しましてインターンシップの情報を提供するなど、若者ジョブサポーター企業を支援してまいります。
 次に、新銀行東京の情報公開についてでありますが、新銀行東京では、新経営陣のもとで、今年度は、融資業務を行う上で不可欠な債務者実態の把握や、それに基づく貸し倒れ引き当ての見直しを行っており、その結果を反映した中間及び期末決算を開示することとしております。
 今後とも、新銀行東京が、他の金融機関との競争にかかわるものなど企業運営上秘密としているものを除き、業務等に関する情報を積極的かつわかりやすく開示するよう、都として働きかけてまいります。
 最後に、障害者の雇用についてでありますが、都は障害者雇用を促進するため、東京障害者職業能力開発校などにおける職業訓練や、企業等を活用した委託訓練を行うとともに、障害者雇用ハンドブックの配布や、本年度新たに始めました企業向けセミナー等を通じて普及啓発に努めております。
 また、障害者の就労支援拠点であります区市町村障害者就労支援センターにおきまして、本年度から地域開拓促進コーディネーターを配置し、企業等への就労を促進しております。
 さらに、経済団体や企業を初め、関係機関との連携を強化し、障害者雇用に対する企業等の理解と関心を高めていくため、現在、庁内関係局が共同して障害者就労支援協議会の設置を準備しております。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 六点についてお答えをいたします。
 まず、リタリンなど薬剤の不適切な処方についてでございます。
 都は、これまでも処方せんを偽造し、リタリンを不正に入手した事件を摘発するなど指導取り締まりを行ってまいりました。さらに、今般、医師が行いました不適切な処方について立入検査を実施し、これを契機としまして、国も医療機関及び薬局に対して、向精神薬の適正使用について通知を行ったところでございます。
 今後とも、医師会や薬剤師会とも連携をいたしまして、その周知徹底を図るとともに、不適切な処方を行っている医療機関について通報があれば、直ちに立入検査を実施し、厳正な指導を行ってまいります。
 次に、産科医療の現状についてでございますが、産科医療におきましては、昼夜を問わない分娩への対応などの勤務条件の厳しさや、出産、育児に伴う女性医師の離職などを理由に全国的に医師が減少しており、都内でも同様の状況にございます。その結果、産科医療の現状は厳しい状況にあると認識をしてございます。
 次に、お産の安全・安心を確保する取り組みについてでございますが、安全・安心なお産を確保するため、都はこれまでに、危険性の高いハイリスク分娩に対応可能な周産期母子医療センターを二十二施設まで拡大をしてまいりました。しかし、一方で地域の産科医の減少が進み、本来高度医療を担う周産期母子医療センターに一般医療機関で対応可能な分娩が集中し、負担が大きくなっております。
 こうした状況を受けまして、限られた医療資源を有効に活用するため、今年度、周産期医療協議会において新たに部会を設置いたしまして、分娩リスクに応じた医療機関の役割分担や連携を進め、安全な周産期医療を提供できるよう検討を進めております。この検討結果を今年度末の改定を予定しております東京都保健医療計画に反映させ、着実な実現を図ってまいります。
 次に、産科医療の確保でございますが、母子の安全に十分配慮した産科医療の確保は重要と考えてございます。
 有床診療所における医療法の特例規定の活用につきましては、地域における安全な産科医療を確保する観点から、先ほど述べました東京都保健医療計画改定の中で取り扱いを検討することとなってございます。
 また、病院、有床診療所の開設許可において、構造設備及び資金計画を確認することは、医療の安全と経営の安定を確保するために必要な手続であると考えております。
 なお、開設許可申請の参考となる病床の状況については、必要な方には情報提供しておりますが、さらに福祉保健局ホームページでの公開を検討してまいります。
 次に、介護を担う人材の確保についてでございますが、経済の回復基調とともに民間企業の求人が活発化する中で、介護分野における人材の確保は厳しい状況にあると認識をしてございます。
 このため都は、本年五月、国に対し、大都市の特性を踏まえた望ましい介護報酬のあり方について提言を行い、また八月には、東京都社会福祉審議会から、研修を充実するなどの人材育成に取り組み、人材の確保、定着を図る旨の意見具申が出されました。こうした中で、国は今般、労働環境の整備やキャリアアップの仕組みを構築することなどを柱といたします人材確保の新たな指針を示したところでございます。
 引き続き、国への働きかけを行うとともに、人材育成の充実、就労あっせんや相談機能の強化等に取り組んでまいります。
 最後に、障害者自立支援法の利用者負担についてでございますが、定率負担は、障害者自身もサービスを利用する対価として一定の費用を負担し、都民、国民みんなで安定的、継続的な制度運営を支え合う仕組みでございます。また、低所得者に対しては、所得に応じた負担上限額の設定や個別減免など、さまざまな負担軽減措置が講じられております。
 なお、所得を判断する際の世帯の範囲が、生計を一にする住民基本台帳上の世帯であることは、介護保険など他の社会保障制度とも整合性があるというふうに考えてございます。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 四点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、耐震改修促進制度の適用範囲の拡大についてでございます。
 都が実施しております木造住宅の耐震化助成は、自助、共助、公助の原則を踏まえ、公共的な観点から、住宅の倒壊による道路閉塞を引き起こすおそれの高い地域を対象としてございます。
 本制度は、昨年度創設したものでございまして、これを契機として、区における取り組みが急速に進み、今年度からはすべての区で助成が実施されております。これに伴い、今年度の助成件数は昨年度に比べて大幅に増加するものと見込まれておりまして、当面、制度の周知徹底など普及啓発に力を注いでいくことが重要と考えております。
 次に、耐震診断事務所の登録制度についてでございます。
 この制度は、都民が安心して耐震診断を依頼できる環境を整備するため、耐震診断技術者の育成を図るとともに、技術力の高い建築士事務所を登録し、都民に情報提供するものでございます。昨年度は三十九の事務所を登録しましたが、今年度も追加登録を予定しておりまして、登録総数は三倍程度にふえる見込みでございます。
 今後とも、技術者に対する講習会の充実、区市や関係団体との連携強化などによりまして登録事務所数の増大を図り、都民の耐震化への取り組みを支援してまいります。
 次に、新たな建築確認制度に対する取り組み姿勢についてでございます。
 今回の建築基準法改正は、構造計算書の第三者チェックの導入や図面審査の強化など、耐震偽装事件の再発を防止し、建築物の安全・安心に対する信頼を回復するための必要な措置であると認識してございます。
 しかし、新たな制度の内容の確定から施行までに十分な時間がなかったため、設計者等が的確に対応できず、建築確認申請が円滑に進まない状況が生じているものと思われます。このような状況が継続することによりまして、社会経済活動や都民生活に支障を来すことのないよう、都としても適切に対応してまいります。
 最後になりますが、新たな建築確認制度の円滑な施行に向けた具体的な取り組みについてでございます。
 都では、改正法の施行前から、説明会の開催や申請窓口における事前相談の実施など、新たな制度の周知徹底に努めてまいりました。また、施行後におきましても、国とも連携して制度の運用についてのQアンドAを作成、公表するとともに、電話相談窓口を開設し、設計事務所などからの問い合わせに対応してございます。さらに、今後は区市と連携して、実務者向けの講習会をきめ細かく開催するなど、新たな制度の円滑な運用を図ってまいります。
   〔環境局長吉川和夫君登壇〕

○環境局長(吉川和夫君) 緑のムーブメントの展開についてでありますが、緑あふれる東京を実現するためには、都民、企業など幅広い層からの賛同を得て行う募金事業とあわせて、それらさまざまな主体と協働し、緑を植え、育て、守っていくことが重要であります。
 そこで、緑の東京十年プロジェクトでは、緑のムーブメントの展開を第一の方針に掲げ、都民や企業等との協働の取り組みをさらに強化していくことといたしました。例えば、苗木づくりから管理運営まで幅広い世代が参画できる仕組みを導入する海の森整備のほか、公園、里山、森林の維持管理におけるボランティア活動など、緑をつくり、触れ合い、親しむ機会を拡充してまいります。こうした都民等との協働の取り組みにより、緑化機運を高め、緑のムーブメントを広範に展開してまいります。
   〔建設局長道家孝行君登壇〕

○建設局長(道家孝行君) 風致地区の緑の保全に向けた取り組みについてでありますが、風致地区制度は、指定区域内の緑や水辺など良好な自然的景観を保持することにより、都市環境の保全を図る役割を担っております。都は平成十一年に、風致保全の方針である保全育成方策を明らかにすることや、制度の運用を見直すことなどを盛り込んだ、東京における風致地区の見直し基本方針を公表いたしました。この基本方針を踏まえ、保全育成の方策も示した風致地区条例の運用のためのきめ細かな審査基準を定め、風致地区における良好な風致の維持を図っております。
 具体的には、風致地区内を地域の状況や特性、風致の状況に応じて五つに区分し、その区分ごとに建物の建ぺい率及び壁面後退距離などの規制を行うとともに、樹木の保全を含め、一定割合以上の緑地の確保を義務づけているほか、道路沿いの緑化や屋上緑化など新たな緑の創出を行うよう指導しております。
 今後とも、許可の審査に当たっては、風致の維持に関する関係局と連携して、条例を適切に運用してまいります。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 犯罪被害者支援に関します三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、犯罪被害者等支援推進計画の内容についてでございますが、今回公表いたしました計画は中間のまとめでございまして、今後、都議会、都民などからのご意見を伺いながら、さらに内容、施策の具体化に向けたスケジュールなどについても明らかにしてまいります。この計画が、犯罪被害者の方々や都民の皆さんにとって、より効果的でわかりやすいものとなるよう、来年一月を目途に最終的に取りまとめてまいります。
 次に、関係機関との連携などについてでございますが、昨年十月には犯罪被害者団体などのご意見やご要望を調査し、本年六月にはインターネット都政モニターアンケートを実施しており、最終的なまとめにおきましては、これらの内容を詳細にお示ししてまいります。
 また、施策の推進に当たりましては、関係機関と連携して総合的に取り組んでいくことは重要であると考えておりまして、相互の情報の共有化、連絡体制の整備など、支援ネットワークのさらなる充実強化についても盛り込んでまいります。
 最後に、計画の充実などについてでございますが、犯罪被害者支援に関しては、お話のようにさまざまなご意見があることは承知をしております。今回策定する計画については、犯罪被害者の方々の尊厳にふさわしい処遇を保障するものとなるよう、今後さらに検討を進めてまいります。
 都として、犯罪被害者等支援推進計画を策定し、その施策を着実に実施していくことにより、犯罪被害者の方々やそのご家族を支援してまいります。
   〔百二十三番土屋たかゆき君登壇〕

○百二十三番(土屋たかゆき君) 先ほど知事の答弁の中で、民主党は社会保険庁を残すとの誤解に基づく発言がありました。
 民主党は、さきの選挙で示したマニフェストの中で、社会保険庁は解体して国税庁に統合し、社保庁の組織体質を抜本的に改めて消えた年金の再発を防ぐとともに、重複する仕事を整理することによって効率的な体制をつくりますとしており、知事の指摘は当たりません。誤解に基づく発言の撤回を求め、改めて石原都知事の見解を伺います。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 今、日本の社会全体が変わろうとしている。どう変わろうとしているかというと、やはり実質的な官僚統制国家だった日本が、そういうくびきを断って、民間の力というものをフルに利用した行政の体制をとらなくちゃいかぬということで改革しているわけでしょう。国税庁だっていろんな問題がありますよ。結局、同じ役人にこのがたがたの組織をまた預けて、そんなもの国民が納得できますか。私は、それを正面から議論すればよろしいんです。そのために時間が要るから、解散・総選挙なんて先の先の話だということを申し上げたわけであります。

○副議長(石井義修君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後四時三十四分休憩

   午後四時五十二分開議

○副議長(石井義修君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十九番野上純子さん。
   〔五十九番野上純子君登壇〕

○五十九番(野上純子君) 都議会公明党を代表し、知事並びに関係局長に質問いたします。
 アメリカの経済学者ケネス・ボールディングの夫人であり、国連の平和と教育活動に貢献し、ノーベル平和賞候補にも挙げられたエリース・ボールディング博士は、教育は地球全体に、そしてあらゆる生命に深くかかわるものでなければならないと、教育の重要性を訴えています。
 私は、二十五年間公教育に携わってきた経験から教育の重要性を痛感しております。人を愛し、人を思いやり、そして地球環境を大切にする教育観の確立が求められております。政治、経済、社会、そして都政改革、万般にわたる改革の根底に一人一人の人間に光を当てる人間教育の視点が重要であります。
 以下、そうした立場から、都政の課題について質問いたします。
 初めに、税財政問題について質問いたします。
 国の地方税財政制度においては、法人二税を地方の共通財源として国が一括徴収し、法人の事業活動にかかわらず、単に事業所数や従業員数に応じて自治体に配分するという案が検討されております。これが実施されれば、都は一兆円以上の減収になります。これは地方税である法人二税の国税化にほかならず、地方分権改革の流れに全く逆行します。
 そもそも法人二税は、受益と負担という観点から、法人の事業活動規模に応じ自治体に税収が帰属するものであります。そのような中、東京都は、平成十八年度より都の会計制度に複式簿記・発生主義会計を導入し、本年九月にはそれに基づく財務諸表を作成し、あわせて東京都年次財務報告書を作成いたしました。この年次財務報告書を分析することにより、東京都の現時点での財政状況だけでなく、将来のインフラ整備に伴う財政需要を見通すことも可能です。
 首都東京の社会資本整備は国全体の経済活動に不可欠であり、したがって、東京に本社機能を置く企業には都に対して受益と負担が発生します。こうした観点から、都は、年次財務報告書の社会資本整備費の見通しなどを挙げて、具体的で説得力のある反論を行うべきであります。知事の見解を伺います。
 また、東京都は、行財政改革の成果が出て黒字財政に転換した今こそ、当初計画と実績とが大きく乖離し、いずれ事業の見直し、再構築が避けられない事業への対応を行うべきであります。
 平成十九年度は、ひよどり山有料道路など二事業に取り組みましたが、多摩都市モノレールと稲城大橋有料道路は手がつけられていません。特に多摩都市モノレールについては、多摩の南北を結ぶ多摩都民の貴重な足として、なくてはならない交通機関でありますが、平成二十年秋には資金ショートするという見込みがなされております。
 この状況を受け、都議会公明党は第二回定例会において早急な支援を求め、現在、都は債務の株式化や出資などの支援スキームを検討していると仄聞しております。都はこれらの支援スキームを一刻も早く実施すべきであります。見解を伺います。
 次に、いわゆる負担増問題について質問いたします。
 これまでも都議会公明党は、老年者控除及び公的年金控除等の見直しに伴うシルバーパスや軽費老人ホームの利用者負担額の急増に対し、都の積極的な救済を求めるなど、負担増の緩和を強く訴えてまいりました。
 近年の税制改正の結果、前年に比較して収入はふえていない場合であっても、都民が公共サービスを利用する際に支払う金額がふえるケースが出てきます。その原因は、多くの公共サービスにおいて、利用者の負担額を住民税額などに連動させて算定している点にあります。例えば、福祉保健局において、難病医療費助成制度など住民税の課税の有無に応じて負担が発生するものや、税額や課税の有無に連動して負担額が大きく増減する仕組みのものが、それぞれ十施策以上に上っています。
 今後も、税制変更の可能性がありますが、再び今回と同じ事態を招いてはなりません。そのため、都はこの際、低所得者への配慮を講じつつ、税額に連動しない独自の算定制度を検討するべきです。見解を伺います。
 次に、年金収入の取り扱いについて提案いたします。
 年金のみで生活している人たちは、みずからの年金収入の中から税金や公共サービスの利用者負担などの公的な支払いを続けています。こうした公的な支払いの増加が年金生活における可処分所得を減らす結果にもつながっており、負担義務を伴わない生活保護制度への不公平感を募らせるきっかけにもなっています。このままでは、年金のみで生活している人たちの消費の差し控えが強まるだけでなく、若年者の年金離れにも一層の拍車をかけることになります。
 そこで、年金のみで生活している人たちが安心して東京に住めるように、国に先駆けて公共サービスにおける年金収入の取り扱いを見直し、負担を軽減する施策を実施すべきであります。見解を伺います。
 負担増問題の最後に、平成二十年四月の施行を予定される後期高齢者医療制度について質問いたします。
 この十一月にも、保険者である都内広域連合が保険料率を決定する見通しです。
 現在、都内広域連合は、国の調整交付金の支給率を現行の国民健康保険制度と同じ三〇%に想定し、保険料額の試算をまとめています。そこから推計すると、例えば年収二百四十万円の場合の年間保険料は約十五万四千円となります。これは、葛飾区を例にとると、現行制度の保険料の二倍強の高額になります。加えて、現在は世帯で保険料を支払っていますが、後期高齢者医療制度においては保険料を個々人で支払うことになり、高齢者世帯の負担増は極めて深刻なものになってしまいます。
 そこで、公明党は連立政権協議の中に、後期高齢者医療制度における家族の扶養親族になっている高齢者からの保険料の徴収を凍結することを盛り込みました。都も国に対して、高齢者の負担増を回避するための抜本的な見直しを求めるべきであります。
 その上で、今後の国の対策が不十分なものになる場合には、少なくとも年金収入のみの世帯が多く存在する年収区分だけでも、都独自に現行保険料との差額を軽減させるための施策を検討すべきであります。あわせて都の積極的な対応を求めて、見解を伺います。
 次に、低所得者対策について質問いたします。
 知事は、さきの所信表明で、春以来検討を行ってきた個人都民税の軽減策について、方針を転換することを表明されました。
 今、最も行政が手を差し伸べていく必要がある人たちは、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せない不安定な生活をしている人であります。したがって、今回の方針転換に際しては、このような状況にある人たちに対して積極的に支援を行っていくべきであります。知事の見解を伺います。
 失われた十年といわれる就職氷河期に、就職したくてもできなかった人やリストラされた人が年長フリーターとして滞留し、不安定な就労を余儀なくされています。また、リストラなどでアパートの更新ができず、住むべき家がない、住むところもないので、安定した就労ができない人もいます。こうした状況からは行政による後押しがないとなかなか抜け出すことはできません。したがって、住宅の確保や就労支援など都が積極的に具体策を講じるべきであります。見解を伺います。
 特に、最近社会問題となっている、リストラなどで家賃が払えなくなり、住まいを失うことによってインターネットカフェで常時寝泊まりする人に対して、都が実態把握した上で支援策を講じるべきであります。見解を伺います。
 次に、今日の社会で最も重要な課題である教育問題について質問いたします。
 知事は、二期八年のうちに行政改革を着実に進め、国や他の自治体に先駆けて財政再建をなし遂げました。次は、東京の未来を、日本の未来を背負って立つ子どもたちの教育に全力を挙げていくべきであります。
 いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊など、教育の抱える課題は深刻です。親も教員も、だれもが悪戦苦闘していますが、事態はなかなか好転していません。教育の成果は一朝一夕には出ず、不断の改革の努力を続けるしかありません。
 現在、学校では多様な住民要望や防犯防災対策など、かつては考えられなかった数多くの課題への対応が迫られています。その一方、少子化の速さ以上に教員定数を削減する国の行政改革のもと、一人一人の教員の負担は年々ふえ続けています。
 教員が子どもと向き合える時間をふやし、学校機能を活性化させるため、国は、文科省が来年度予算の概算要求に、国庫負担による定数増と全額国庫負担による非常勤講師の配置などを盛り込み、不登校や小一問題などに取り組む方針です。
 こうした国の動向を見きわめながら、都は、学校機能を活性化させるために、人的な配置を検討すべきです。例えば、少人数指導、食育推進のための栄養教諭、特別支援教育の充実のための教員が個々の力をより発揮できる環境づくりを推進していくべきであります。教育長の所見を伺います。
 次に、特別支援学校に通う障害のある児童生徒の放課後の居場所づくりについて質問いたします。
 都内の小学校では、放課後の居場所づくりが三分の一以上の小学校で進み、子ども同士がお互いに深くかかわり合う中で、安全・安心の居場所づくりや教育効果も上がり、高く評価をされております。ところが、特別支援学校においては、放課後、児童生徒を預かる制度は整っていません。
 制度確立のために、都立の特別支援学校で放課後のある一定時間まで預かり、その後はスクールバスの遅い便で帰るか、あるいは親が迎えに来るなど、いろいろなパターンが考えられます。障害のある児童生徒の放課後の居場所づくりを検討すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、特別支援教育支援員について伺います。
 普通学級に通学している児童の中には、約六%近くの割合でLD、ADHDを初め発達障害の子どもたちがいます。教室を飛び出したり、暴れたりする児童への対応で、疲れを感じている教師も多いと聞いています。
 このように特別の対応を迫られたときのために、退職した校長先生などの教職員関係者、医師、地域のボランティアの方々が支援員となり、学校を支援してくれると、安心して日常の教育に取り組むことができます。この支援員の活用により成果を上げられるよう、都としても積極的に学校を支援すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、寄宿舎の再編整備について伺います。
 都教委は、策定中の第二次実施計画で、江戸川養護学校、立川ろう学校の寄宿舎の廃止を打ち出しています。都民は、今回の再編により、現在寄宿舎の持つ教育的、福祉的な役割と活用が後退することを大変危惧しております。障害を持つ子どもたちが自立をし、社会参画をしていく上で、寄宿舎における生活訓練は非常に重要であります。
 そこで、寄宿舎を再編整備するに当たっては、寄宿舎の福祉的な機能も含めた自立支援施設を設置し、公設民営方式などによる新たな制度を検討すべきであります。所見を伺います。
 また、寄宿舎設置校と未設置校の格差をなくし、すべての児童生徒が適切かつ効果的に寄宿舎を利用できる仕組みとして、例えば長期休業期間中にサマースクールなどを開校すべきであります。所見を伺います。
 次に、子育て支援策について質問いたします。
 二〇〇五年には過去最低であった合計特殊出生率が、昨年は一・三二となり、六年ぶりに上昇に転じました。その背景には、児童手当の拡充や出産育児一時金の増額、仕事と生活の調和、いわゆるワークライフバランスの推進などの支援策があります。今後も少子化対策のためには間断のない子育て支援が重要であります。
 そこでまず、仕事と子育ての両立支援においては、多様な保育体制の確保が重要であります。事業所内保育所の推進はもとより、都は率先してワークライフバランス社会をリードすべきであります。
 まず、都は、三交代勤務が行われている都立病院などで二十四時間保育体制をモデル的に実施すべきであります。見解を伺います。
 都議会は昨年、少子化対策、子育て支援は全庁的、横断的にその課題に取り組むべきと主張し、都はこれを受け、副知事を先頭に子育て応援戦略会議を設置しました。そこで、この子育て応援戦略会議について何点か伺います。
 第一に、この会議においては、年々増大する子育てに伴う経済的負担の軽減策に触れていません。
 まず、義務教育期の教育費についてです。全国調査では、公立学校内において必要となる年間教育費は、給食費と授業料を除けば、小学生で五万五千円、中学生で十三万円、高校生では二十三万円となっており、きょうだいが二人、三人いる家庭には大変な痛手となっています。こうした実態を踏まえて、都は学校内教育費の実態を把握するとともに、負担軽減のため、教材の共同利用や取引業者の適正な競争による価格の低減化などに取り組むべきであります。所見を伺います。
 また、高校生が安定的に学業を継続できるよう、奨学金制度の充実は重要です。東京都育英資金の貸与額の増額や、所得制限の緩和、貸付人員枠の拡充をすべきであります。
 私立学校については、幼稚園から高等学校に在学中の生徒の家計の収入が、倒産やリストラなどにより急激に減少した場合に、授業料を減免する補助制度があります。この制度を活用して、家計急変による退学者が出ないよう都は努めるべきであります。あわせて所見を伺います。
 また、深刻なのは、子育て世帯に対する住宅問題であります。そこで、子育て応援戦略会議は、「十年後の東京」実行プログラムの中に、家賃補助、さらなる公営住宅の優先性など、子育て世帯に配慮した住宅環境の整備の具体策を重点戦略として明記すべきであります。
 第二に、在宅子育て家庭支援についてであります。
 戦略会議では、仕事と子育ての両立支援に重点が置かれておりますが、在宅子育て家庭にも重点を置くべきであります。ゼロから二歳児の在宅子育て世帯は全体の七四%に上っております。特に都市部は、核家族化により、在宅子育て家庭の母親は一人で子育てに追われる結果、孤立化、子育てに対する不安感が大きくなっております。こうした在宅子育て家庭に対しても的確な支援策を講じるべきであります。
 問題は、こうした課題に対して、会議を構成する各局が従来の施策の枠を乗り越えていないことであります。したがって、今後策定される重点戦略においては、局の縦割りと従来の施策の枠を排し、子育てに対する総合的かつ戦略的な施策を打ち出すことが重要です。そのためには座長である山口副知事の大胆なリーダーシップが不可欠です。見解を伺います。
 子育て支援の最後に、一点申し上げます。
 長年にわたる都議会公明党の主張を受けて、知事は義務教育期の子ども医療費助成の拡充を英断され、いよいよ十月一日からスタートします。それでも現状は区市により格差が生じています。そこで、子ども医療費について、都内全域で一日も早く中学三年生まで医療費ゼロを実現することを強く要望いたします。
 次に、周産期医療について質問いたします。
 奈良県でことし八月、救急車を呼んだ妊婦が十一の病院から受け入れを断られ、死産するという悲劇がありました。この妊婦にはかかりつけの産科医がおらず、その結果、周産期医療システムでの対応ができなかったということが指摘されています。
 東京都は、二十二の周産期母子医療センターを確保していますが、救急搬送において、病院決定までに多くの連絡をしなければならなかった事例も報告されています。また、かかりつけの産科医の体制が十分整っていない地域もあります。
 妊産婦に対し、安全・安心の医療を提供していくためには、まず身近な地域で日常的に健診、診察を受けることのできるかかりつけ医の確保や、医師の連携システムをつくり上げていくべきであります。
 一方、経済的な理由で十分な妊産婦健診を受けられないため、結果としてかかりつけ医を持てない人がいるのも事実であります。この問題は本来、基礎的自治体の課題ですが、都としても妊産婦健診や出産費用の無料化に向けた新たな検討を進めるべきであります。あわせて所見を伺います。
 また、周産期医療におけるもう一つの課題は、産科医や小児科医などの人材の確保であります。今、都内の病院で産科医、小児科医不足により診療科が閉鎖するなど、少子社会にあって深刻かつ緊急の課題が生じています。こうした中、産科、小児科医の人材確保に努めることはもとより、助産師の活用も重要であります。
 本年四月一日施行の医療法等の改正により、助産所は産科、小児科病院との連携が義務づけられました。しかし、実際にはさまざまな要因により連携は進んでおりません。したがって、都はこの法改正に対応すべく、必要な情報提供を含めた指導を行うべきであります。見解を伺います。
 また、限りある医療人材や施設を有効に活用するためには、医療機関の役割分担が極めて重要です。高度な総合診療基盤を備えた都立病院が、一般の医療機関では対応困難なハイリスク分娩や超未熟児に的確に対応していく必要性は、これまでにも増して高まっています。都立病院は、こうした産科、小児科などの人材確保を含め体制整備に全力を注ぐべきであります。見解を伺います。
 次に、がん対策について質問いたします。
 国のがん対策推進計画は、取り組むべき重点事項として、放射線療法及び化学療法の推進、治療の初期段階からの緩和ケアの実施、がん登録の推進の三つを掲げています。
 まず、放射線療法に関して伺います。
 欧米では、がん患者の約六〇%が放射線治療を受けていますが、日本では外科手術が中心で、放射線治療は二五%程度にとどまっています。専門家によると、がんの種類によっては放射線治療は手術以上の効果があります。また、放射線治療自体には痛みが全く伴わず、副作用も少ないため、患者に過度な負担を与えません。
 都は現在、がん対策推進計画を策定中ですが、少なくとも都のすべての二次医療圏のがん拠点病院等で標準的な放射線治療が受けられる体制を確立すべきです。所見を伺います。
 なお、関連して申し添えれば、放射線治療の中でも、がん細胞にピンポイントで照射できる陽子線治療は、手術が困難な肝臓がんや肺がん、頭頸部のがんに特に効果があるといわれており、都内における早期の陽子線治療実施に向けた取り組みを求めたいと思います。
 第二の緩和ケアの推進も非常に重要です。
 緩和ケアとは本来、がん患者、家族の苦痛軽減、療養生活の質の向上のため、治療の初期段階から並行して実施するものであります。残念ながら、こうした認識は都民にほとんど浸透しておらず、緩和ケアの普及を阻害しています。そこで、緩和ケアが早期に実施されるよう、都は普及啓発に努めるべきと考えます。見解を伺います。
 また、緩和ケアを提供する側の医師への知識や技術の普及が欠かせません。国は十月初旬にも、国立がんセンターで緩和ケア推進のための第一回指導者研修を開催する方針です。都としても早期に研修を実施する体制を確立すべきであります。所見を伺います。
 都では現在、今後の地域がん診療の連携拠点となるがん診療連携拠点病院の国指定に向け準備を進めています。この拠点病院は、専門的ながん医療の提供にとどまらず、地域のがん医療の連携拠点、情報提供、相談支援の実施など、中核的な役割を担います。
 そこで、この拠点病院設置を機に、すべての患者、家族が安心してがんに立ち向かえるよう、例えば、どの病院に行けばどんな医療を受けられるのかといった、いわばがん医療連携マップを提示すべきです。所見を伺います。
 また、拠点病院が担う広範な役割のうち、患者、家族にとって特に重要なのが、院内に設置が義務づけられている相談支援センターです。ここでは、治療にかかる経済的負担の相談や、セカンドオピニオンのコーディネートなどが期待されます。厚労省は来年度の概算要求で相談員の増員を求めていますが、都としても人材確保を含めた財政措置を行うべきです。あわせて、患者、家族の相談に体験者の立場からアドバイスしてくれる患者会にも協力を求めるべきです。それぞれ見解を求めます。
 都の住宅政策について質問いたします。
 東京の住宅状況は、都心部で価格の高い分譲マンションが次々と建設される一方で、都営住宅入居募集の倍率が年々高くなり、百倍を超えることも珍しくないなど、住宅困窮者の増加傾向により住宅格差現象ともいうべき状況が発生しています。
 特に、民間賃貸住宅に住んでいる方は、年金生活者、高齢者、子育て世代、障害者等の世帯も多く、収入に占める家賃負担の大きさ、住居空間の狭さ、耐震化、バリアフリー化など多くの課題や不安を抱えながらも、思うように転居できないのが実態であります。こうした相談が数多く寄せられ、事態の深刻さをうかがわせております。世界都市東京で、住宅困窮者がふえ続けるような事態は断じてあってはなりません。
 都の住宅政策は、ことし三月改定の住宅マスタープランをもとにさまざまな施策が進められておりますが、住宅困窮者の増加傾向の要因を明確にするとともに、今後の住宅政策においては、住宅困窮者対策を政策の中心に据えて取り組むべきであります。見解を伺います。
 次に、都民への住宅供給政策の根幹である都営住宅のあり方について伺います。
 都営住宅の整備に関しては、都は年間三千戸の建てかえと年間千九百戸のスーパーリフォームの推進を柱としておりますが、このペースでは、建てかえが終了するまで約七十年もかかり、耐用年限を過ぎる住宅が発生するという事態も招きかねません。
 したがって、建てかえについては、中長期的な視点から総合的に判断し、新たな整備手法を取り入れていく必要があると考えます。見解を伺います。
 また、建てかえに際しては、間取りの工夫など、現行の型別供給の見直しを検討するとともに、地域の実情に応じて、入居希望の多い地域の供給戸数をふやすなど、将来の入居倍率の低減化を図るべきと考えます。見解を伺います。
 このほか、都営住宅では、共益費の不払い問題、住民同士のトラブル等、多くの問題を抱えているにもかかわらず、住民の高齢化で自主的な運営や対処が限界に来ているのが実態です。こうした問題については、自治会の負担を軽減するために、都は積極的に責任を果たすべきです。見解を伺います。
 次に、都営住宅の使用承継について伺います。
 本年八月に、利用機会の公平性を確保する観点から、原則として名義人の配偶者のみとする使用承継の見直しが施行されました。ただし、公明党が昨年の第二回定例会で要望したとおり、弱者に配慮するため、高齢者、障害者、病弱者については三親等まで承継できるとの例外規定が置かれました。
 しかしながら、障害や健康上の問題を持ちながら住宅の承継ができず、行き場を失いかねないとの相談が相次いでおります。新制度が施行されて約一カ月が経過しましたが、例外規定である高齢者、障害者、病弱者の取り扱いについては、形式だけでなく、実情を踏まえて対応していく必要があると考えます。都の見解を伺います。
 また、そのためには、相談窓口の充実が必要であります。今後、実情を見きわめる間は特段の丁寧な対応を心がけ、相談窓口のさらなる充実をすべきであります。見解を伺います。
 今、東京は、十年後を目指して、成熟都市東京、世界都市東京の構築に向けて都市機能や社会基盤の整備に力を注いでおりますが、都民の暮らしの基盤である住宅政策がおろそかになってはなりません。住まいの安心があってこそ、真の成熟した都市といえます。
 公共、民間すべての住宅ストックを活用し、住宅困窮者対策、快適な住環境整備、耐震化、木密地域対策など、改めて住宅政策を総合的に推進していく必要があると考えます。知事の見解を伺います。
 次に、建築基準法の改正について質問いたします。
 去る六月二十日に、耐震偽装事件を教訓として、再発を防止し建築物の安全・安心を確保するため、建築確認検査を厳しくした改正建築基準法が施行されました。
 構造計算書の二重チェックや審査期間の延長、また、申請書類に不備があった場合は、審査段階での修正を認めず再申請をさせるなど、大幅な改革でありましたが、その内容が十分に周知されていないため、建築確認の申請が滞っている状況にあります。
 その結果、住宅着工の件数が大幅に減るといった弊害が出ております。国土交通省が発表した七月の新設住宅着工戸数は八万千七百十四戸と、前年同月と比べて二三・四%減という、十年ぶりの減少となりました。こうした状況は、景気の低迷など、大きな社会問題になりかねません。早急な対応が必要であります。
 そこでまず、都の建築確認の動向、推移の状況と、確認申請の激減に伴う住宅着工戸数減の影響について伺います。
 次に、その対応策についてであります。
 特に、より都民に身近な住宅の確認審査に対して過度に慎重になっている設計業者と区市や民間の確認検査機関に対して、早急に改正の内容について周知と情報提供を図るなど、都として対応すべきであります。見解を伺います。
 さらに、今回の法改正で導入された構造計算適合性判定は、耐震偽装の再発防止のかぎとなる制度であります。円滑に運用するためにも、都内の判定体制を拡充すべきであります。見解を伺います。
 次に、震災対策について伺います。
 都は、本年五月、東京都地域防災計画の見直しを行い、十年以内に達成する減災目標として、死者の半減、避難者の減、外出者の四日以内の帰宅などを設定いたしました。これは公明党の主張に沿うものであり、評価をいたします。
 都は、現在、東京都震災対策事業計画の中で、二十年度から二十二年度までの計画を策定中と聞いております。そこで、具体的な課題について伺います。
 第一に、阪神大震災の教訓を踏まえ、死者を半減するための最も重要な対策である住宅の耐震化についてであります。
 都は、住宅の耐震化率を十年以内に約七六%から九〇%にする方針を明らかにしましたが、そのためには、今後三十四万戸の改修が必要となります。しかしながら、木造住宅の耐震診断は、十八年度実績と十九年度予算を合わせても二千五十一件、耐震改修はわずか五百二十二件であります。耐震化が進まない原因は、住民の高齢化と経済的負担の大きさなどが挙げられます。
 そこで、都は、こうした原因を踏まえて、現行制度の活用や組み合わせ、さらに、例えば親子二世代住宅に対して耐震助成金の割り増しをするなど、新たな制度を創設し、目標を達成すべきであります。所見を伺います。
 第二に、木造住宅密集地域の不燃化についてであります。
 都は、十年以内に、木造住宅密集地域の重点整備地域については不燃領域率を六〇%にするとしております。しかしながら、木造密集地域は敷地が狭小であったり接道していないことから、自力での建てかえや更新ができないのが実情です。
 そこで、可能な地域においては、民間の活力により地域全体の再開発を行い、強力に不燃化を推進すべきであり、都としても支援策を講じるべきであります。所見を伺います。
 第三に、本年七月十六日に発生した新潟県中越沖地震についてであります。
 私たち都議会公明党議員団は、先般、新潟県柏崎市を中心に被災現場を精力的に調査するとともに、柏崎市長及び柏崎商工会議所の代表者と率直な意見交換をしてまいりました。
 その中で、現地の方々が最も深刻に、そして真剣に訴えておられたのが柏崎刈羽原発の風評被害の拡大です。原発が火災炎上した、あるいは放射能を含んだ水が海に漏れたなど、週刊誌の報道は余りにも事実をゆがめ、誇張したものでありました。その結果、柏崎市のホテル、旅館のキャンセルは約五万七千人に上り、県の試算では、風評被害の総額は、観光、農林水産関係を中心に約二千億円ともいわれております。
 こうした柏崎市の抱える風評被害について、柏崎刈羽原発の最大の電力消費地である東京の知事としての率直な見解を伺います。
 第四に、気象庁がことし十月一日より一般への提供を開始する緊急地震速報についてであります。
 この緊急地震速報は、適切に活用されれば被害の軽減に役立つ一方、速報を受信した人がとるべき行動がわからなければ、かえって混乱や損害等が発生するおそれもあります。
 そこで、都は、これまで以上に都独自の周知、広報を推進すべきであります。
 加えて、初期微動のP波から強い揺れのS波までの数秒から数十秒の間に適切に行動できるよう、訓練をしておく必要があります。
 仮に東海、東南海地震が発生した場合、東京で強い揺れを感じるまで約五十秒かかるといわれております。都は、来庁者の協力を得ながら、都庁舎全体でこの五十秒間の防災訓練をぜひ実施すべきであります。所見を伺います。
 以上をもちまして代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野上純子議員の代表質問にお答えいたします。
 税財源をめぐる国への対応についてでありますが、新たな公会計制度による今回の年次財務報告書では、都が所有する建物や橋梁などの減価償却累計額が二兆円を超えていることが明らかになりました。都市インフラの更新には膨大な財源が将来必要であることが改めて示されました。
 ちなみに、都有資産の減価償却累計額は、建物に関しては一・三兆円、橋梁などが〇・九兆円、計二・二兆円という額でございます。
 東京の都市インフラは、日本を牽引する首都としての機能や全国的な物流機能などを支えるものでありまして、その利益は国全体が享受しているものであります。
 これらの的確な更新なくしてさらなる成長はあり得ないにもかかわらず、国は、困窮する地方を救うという美名のもとに、都から財源を奪おうとしているのが現況であります。これは、税の原理にももとる極めて近視眼的な発想に基づくものでありまして、結局は、我が国全体の活力をそぐ愚策中の愚策であると思います。
 国の理不尽な動きに対して、今後とも、具体的な数値も示しながら、都議会の皆様と力を合わせて強力に対抗していきたいと思っております。
 次いで、多摩都市モノレールへの支援についてでありますが、多摩都市モノレールは、一日十一万人が利用する、多摩の南北を結ぶ広域的な公共交通機関として、大きな大きな役割を担っております。
 会社は既に営業黒字となってはおりますが、他の軌道系の三セクと異なりまして、車両基地用地の取得が会社の負担となったことなどから、結果的に厳しい経営状況にまだあります。
 このため、都は、会社のさらなる経営努力を前提に、新たな出資などによる抜本的な支援策を適切な時期に実施しまして、沿線市及び金融機関と連携しながら、将来の経営基盤を確固たるものにしていきたいと思っております。
 次いで、低所得者の方々への支援についてでありますが、額に汗して懸命に働いても、低所得の状況から抜け出せないまま不安定な生活を余儀なくされている方々を積極的に支援すべきとの考え方は、全く同感でございます。
 こうした方々に対しては、一人一人の状況に合ったきめの細かい多様な支援を行うとともに、将来に向かって社会的、経済的自立を確固たるものとできるよう、その努力を後押ししていくことが必要となってきております。
 今後、方針を転換しまして、公約を進化させるというためにも、今後、都議会とも相談をしながら、具体的な支援策がそれぞれ効果を発揮できますように、十分な事業費を措置して、区市町村とも連携して的確な施策を積極的に講じていきたいと思っております。
 次いで、住宅政策の推進についてでありますが、都民が真に豊かさを実感できる社会を実現し、東京がさらに高いレベルでの成熟を遂げるためには、居住の場としても魅力的な都市としていくことが不可欠でありまして、「十年後の東京」においても、成熟した都市にふさわしい豊かな住生活の実現を図るための施策に取り組むこととしております。
 今後、住まいの安全・安心の確保や、世代を超えて住み継がれる住宅まちづくりの推進など、社会経済状況の変化に的確に対応しつつ、住宅政策を総合的に展開していきたいと思っております。
 次いで、新潟県の中越沖地震についてでありますが、東京にとっても重要な電力供給地である柏崎市と刈羽村では、今回の地震により甚大な被害が生じました。
 都は、発災後直ちに警視庁や東京消防庁の部隊を派遣しましたほか、医療救護や水道復旧の応援、物資の提供など、さまざまな支援を行ってまいりました。
 また、原子力発電所の被災に伴うけしからぬ風評被害が広がりまして、被災地の方々の生活を高圧的に圧迫していることも承知しております。
 今月十日には、義援金の贈呈とあわせて、被害状況を把握するために谷川副知事を派遣いたしました。
 ご指摘のように、ともかくも昨今のメディアのあり方は、他人の迷惑を顧みることのない、堕落というか、行き過ぎといいましょうか、許しがたいものがあります。
 正しい情報が伝わることで風評被害がなくなり、一日も早く復興が進むよう強く希望するとともに、都は、今後とも必要な支援を行っていきたいと思っております。
 他の質問については、副知事、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔副知事山口一久君登壇〕

○副知事(山口一久君) 総合的な子育て支援策の推進についてでございますが、子育て支援につきましては、子育てと仕事が両立できる雇用環境の整備を初め、課題は広範囲にわたっておりまして、福祉、労働、住宅、教育など、幅広い取り組みが必要であると認識しております。
 このため、私が座長をしております子育て応援戦略会議におきましては、こうした課題について短期間で集中的に検討するために、課題ごとに三つの部会を設置いたしまして、局の組織、事業の垣根を超えて知恵を出し合った上で戦略を練っていくように指示したところでございます。
 現在、各部会では、重点戦略策定に向けまして、ワークライフバランスの推進のほか、保育所や学童クラブの整備など、働きながら子育てできる環境の整備にとどまらず、子育て世帯に配慮した住宅環境の整備、在宅で子育てをしている家庭へのサービスなども含めて、さまざまな角度から検討を行っております。
 今後、「十年後の東京」で示しました、社会全体で子育てを支援するという目標の実現に向けまして、全庁を挙げて強力に推進してまいります。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 六点の質問にお答え申し上げます。
 まず、学校機能を活性化させる人的配置についてであります。
 都教育委員会はこれまで、いわゆる義務標準法や国の教職員定数改善計画を踏まえ、少人数指導や特別支援教育などの充実に向け、必要な教職員定数の改善を図ってまいりました。
 お話のとおり、文部科学省は、先月、教職員定数の改善や新たな非常勤講師の配置を図るため、概算要求を行いました。今後、財務省等との調整を行うと聞いております。
 都教育委員会は、都独自の仕組みを前提とした栄養教諭につきまして、モデル地区を設置するなどして計画的に導入を図るほか、国の動向を見きわめつつ、きめ細やかな指導や個に応じた指導の充実など、都におきます教育課題に対応していくため、必要な人的配置の工夫、改善に努めてまいります。
 次に、特別支援学校に通う児童生徒の放課後の居場所づくりについてであります。
 特別支援学校においても、児童生徒が放課後に地域の人々や学生など、外部の人材や異なる学年の児童生徒などとの幅広い交流を通して豊かな人間関係を築いていくことは、大変重要であると認識しております。
 今後、特別支援学校での放課後の居場所づくりを推進するため、保護者のニーズや、実施に当たっての解決すべきさまざまな課題などを整理しまして、実現可能な仕組みづくりを具体的に検討してまいります。
 次に、通常の学級に在籍する発達障害の児童生徒に対する支援についてであります。
 現在、特別な教育的支援が必要な児童生徒に対し、学級支援員や学習補助員として外部のさまざまな人材を活用するなど、サポート体制を整備している区市町村がふえている状況にございます。
 都といたしましても、こうした区市町村の取り組みに対し、例えば、支援員の効果的な配置や活用に関します先進的な実践などを調査、収集して情報提供を行うとともに、退職教員などの人材活用のあり方につきましても検討してまいります。
 次に、寄宿舎の再編整備についてであります。
 東京都特別支援教育推進計画におきましては、通学困難を理由とする入舎生が著しく減少していることを踏まえまして、平成二十七年度の計画終了時点で十一舎を五舎にするという、適正規模と配置のための再編整備策を示し、現在、実施しているところでございます。
 生活訓練の実施につきましては、教育課程に位置づけられる指導の一環として、寄宿舎の有無にかかわらず、今後とも、計画的、継続的に繰り返し実施していくこととしております。
 今後は、障害のある児童生徒の在宅支援事業の充実も含め、関係機関との連携を図ってまいります。
 次に、寄宿舎施設の活用についてであります。
 障害のある児童生徒の自立と社会参加に向けた計画的、継続的な生活指導や宿泊行事等の充実を図るため、長期休業期間中におきまして寄宿舎施設を活用することは有意義な取り組みであります。
 都教育委員会では、平成十九年度の夏季休業中に、特別支援学校の生徒による宿泊体験を二校の寄宿舎施設において行ったところであります。
 今後、こうした長期休業期間中の寄宿舎施設の利用について、児童生徒の実態を踏まえ、学習合宿などの活用方法を検討し、その拡充を図ってまいります。
 最後に、小中学校の学校内教育費の負担軽減についてでありますが、保護者の負担軽減の観点から、各学校においては、学校徴収金の効率化、適正化に向けた取り組みを常に行っていく必要がございます。
 都教育委員会としましては、区市町村教育委員会と連携して、小中学校における学校徴収金の実態を把握し、学校徴収金の軽減に取り組むモデル的な事例などを情報提供することなどによりまして、支援を引き続き行ってまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) お答えを申し上げます。
 まず、福祉サービスの利用者負担についてでございますが、個々の福祉サービスの利用者負担の設定に当たりましては、負担と給付のバランスや住民間の公平性を確保した上で、利用者の所得も勘案して定めているところでございます。
 具体的な基準の設定については、納税者や利用者から理解が得られる客観性、合理性を備えたものとする必要がございます。このため、法令や国の類似制度などで広く用いられている住民税課税の有無や税額などを基準として負担額を設定してございます。
 一方で、都は、低所得者への配慮及び激変緩和の観点から、税制改正を理由としてサービスの利用者負担が大幅に増加する場合などについて、都独自の負担軽減策等を実施してまいりました。
 今後とも、国の社会保障制度や税制の動向も見定めつつ、サービスを利用する都民の生活実態を踏まえ、適切に対応してまいります。
 利用者負担における年金収入の取り扱いについてでございますけれども、福祉サービスの利用者負担につきましては、負担と給付のバランスや住民間の公平性を確保した上で、利用者の負担も勘案して定める必要があることに加えまして、世代間の公平性にも十分配慮しなければなりません。
 その上で、各種の利用者負担の設定に当たりましては、制度の目的にふさわしい適切な負担となるよう、高齢者の生活実態の把握も含め、検討してまいります。
 続きまして、後期高齢者医療制度についてでございますが、現在、広域連合では、保険料の設定や健康診査を初めとする保健事業について検討を行うなど、制度の円滑なスタートに向けて準備を進めてございます。
 保険料につきましては、医療費及び保健事業費などの推計や被保険者数の見込み、さらには国における後期高齢者医療の診療報酬体系にかかわる審議状況など、さまざまな要素を勘案し、広域連合が、本年十一月の議会において決定される料率をもとに算定する予定でございます。
 都としては、今後も引き続き、広域連合の検討状況を把握するとともに、国の動向を十分見きわめながら、適切に対応してまいります。
 続きまして、妊産婦のかかりつけ医の確保や医師の連携システムについてでございますが、定期的な妊婦健診や健康管理等に関する相談、指導を行うかかりつけ医を持つことは、安全な出産を迎えるために大変重要でございます。
 現在、区市町村におきまして、妊娠届け出時や母親学級などの場を活用いたしまして、健診の受診を勧めるとともに、かかりつけ医を持つよう指導、啓発をしてございます。
 また、都としても、地域の診療所と比較的リスクのある分娩を扱う病院が緊密に連携できるよう、平成十七年度から病診連携システムのモデル事業に取り組んでおりまして、今後、この成果を踏まえて、よりよい連携システムを検討してまいります。
 続きまして、妊婦健診等の無料化についてでありますが、出産前後の諸費用については、医療保険各法に基づきまして、ほとんどの保険者において、三十五万円またはこれを上回る額の出産一時金を支給しております。平均的な出産費用に見合うものと考えております。
 また、妊婦健診につきましては、本年一月に、公費負担回数を二回から五回程度に増加する旨の国通知が出されました。
 これを受け、都は、来年度から都内全域で公費負担の回数増が図られますよう、現在、健診の検査項目や実施体制等について、実施主体であります区市町村や医療機関、学識経験者などとともに検討を行っているところでございます。
 次いで、助産所に対する指導についてでございますが、本年四月の医療法改正におきまして、助産所は、これまでの嘱託医に加えまして、産科及び小児科がある医療機関を嘱託医療機関として、来年三月までに確保することが義務づけられました。これは、妊娠、出産に伴う異常への対応に万全を期するために行われたものでございます。
 今後、助産所の運営が適正、円滑に行われるよう、医療機関に関する情報提供を含め、必要な指導、支援に努めてまいります。
 次に、がん対策に関しましてお答えを申し上げます。
 まず、放射線治療体制の拡充についてでございますが、我が国におけるがん治療は、長く手術療法が主流を占めておりましたが、ご指摘のとおり、患者にとって負担の少ない放射線療法の普及は、都民にとって有用なものと考えております。
 このため、放射線治療についても都民に適切に提供できるよう、がん診療連携拠点病院等におきまして、治療機器の整備や専門医等の人材の育成を図る必要があり、現在、東京都がん対策推進協議会において検討いただいております。この結果を東京都がん対策推進計画に反映させ、放射線治療の都民への普及を推進してまいります。
 続きまして、緩和ケアの普及啓発についてでございますが、緩和ケアは、がん患者が抱える身体的な苦痛や精神的な苦痛の軽減を図るものであり、治療の早期段階から緩和ケアを受けられることが望ましいと考えております。
 このため、緩和ケアに関する知識の普及が図られますよう、お話のございました相談支援センターの活動を積極的に支援するほか、インターネットなどを通じ、都民にわかりやすく情報を提供してまいります。
 次いで、緩和ケアの研修についてでございますが、がん治療の早期から適切に緩和ケアが提供されるためには、医療従事者への普及啓発が重要でございます。
 都は、これまで、病院や診療所医師等を対象に研修を実施してまいりましたが、ご指摘の国における取り組みを踏まえまして、今後、がん診療連携拠点病院によります地域の医療機関に対する研修を拡充するなど、緩和ケアの知識、技術の一層の普及を図ってまいります。
 続きまして、医療機関の情報提供についてでございますが、がんは、発生した部位やその進行の度合いによって治療法が異なることもございまして、都民が、適切な医療機関において、病状に即した治療を受けられるようにすることが必要でございます。
 このため、地域がん診療連携拠点病院を中心といたしました医療機関相互の連携体制構築に努めるとともに、相談支援センターにおいて、地域の医療機関の専門分野等の情報を収集し、患者や家族に提供してまいります。
 また、今後、東京都医療機関案内サービス「ひまわり」におきまして、医療機関のより詳細な診療機能情報を都民にわかりやすく提供してまいります。
 最後に、相談支援センターについてでございますが、センターが実施をする相談や情報提供の質を高めますために、相談員のカウンセリング技術の向上や、相談に必要な情報の収集、提供など、相談支援体制の充実に向けた支援のあり方について幅広く検討してまいります。
 また、患者、家族の立場に立って、その悩みや心配にきめ細かく対応するため、患者会の協力を得まして、がんの経験者によるピアカウンセリング事業を本年十月より開始をいたします。
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、低所得の方々への新しい施策についてでございます。
 新しい施策を講じていくに当たりましては、まず、一人一人の実態を踏まえた適切な支援策を提供できるよう、生活の改善から能力向上、就労までをカバーした相談体制が必要であるというふうに考えております。
 相談の結果を受けまして、例えば、住居の確保など生活改善のための資金の貸し付けを行いますとともに、安定した就労に結びつけるためには、職業能力の向上を図る必要がございますことから、訓練の受講を奨励し、一定期間、生活の心配をすることなく訓練に専念できるよう、経済的な支援を行うなどの施策を講じる考えでございます。
 今後、都議会の意見を伺いながら、具体策を詰めてまいります。
 次に、インターネットカフェで寝泊まりをする人に対する支援策についてでございます。
 厚生労働省の調査によりますと、さまざまな事情によって住居を失い、寝泊まりのためにインターネットカフェ等を週半分以上常連的に利用している方が、全国で五千四百人、そのうち、東京二十三区内には二千人程度いるというふうに推計をされております。
 意欲があるにもかかわらず、こうした状況を脱することができない方々には、一人一人の状況に合わせた、きめ細かい支援を行う必要があると考えております。
 そのために、インターネットカフェ等で常連的に宿泊している方々に対し、こちらからも出向きまして相談に応じ、就労支援や生活支援など、生活の実態を踏まえた的確な支援策を講じてまいります。
   〔病院経営本部長秋山俊行君登壇〕

○病院経営本部長(秋山俊行君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都立病院などにおけます二十四時間保育についてでございますが、三百六十五日二十四時間体制で医療を担っております病院職場におきましては、医師、看護師を初めとする女性職員が出産後も安心して働き続け、また、復職できる勤務環境を整備することが重要であると認識をしております。
 このため、都立病院などにおきましては、これまで、院内に保育室を開設するとともに、一部の病院では、保育ニーズに対応いたしまして、今年度から保育時間を夜間まで延長するなど、仕事と子育ての両立に向けた支援に努めているところでございます。
 ご指摘の二十四時間保育は、医療に従事する女性職員の確保と定着のためにも有効な方策の一つというふうに考えておりまして、今後、都立病院など各病院の需要を踏まえた上で、その実施に向けて検討を進めてまいります。
 次に、都立病院における周産期医療の体制整備についてでございますが、ご指摘のとおり、都立病院は、一般の医療機関では対応が困難な医療を提供する役割を担っておりまして、とりわけ産科等において医師や施設が減少しているという現況におきましては、この役割を発揮することが一層重要になっているというふうに考えております。
 このため、都は現在、複数の都立病院で周産期医療を行うとともに、平成二十一年度には新たに、府中キャンパスに母体胎児集中治療管理室を備えた高度な総合周産期母子医療センターを整備することとしております。また、来年度、東京医師アカデミーを開講し、計画的な医師の育成を図るとともに、勤務条件の改善を進めるなど、医師の確保、定着対策にも取り組んでいく考えでございます。
 こうした取り組みを通じまして、今後とも安全・安心の医療体制の整備を図りまして、都立病院が果たすべき役割を着実に推進してまいります。
   〔生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(渡辺日佐夫君)  二点の質問にお答えいたします。
 まず、東京都育英資金についてでありますが、勉学意欲がありながら経済的理由により修学が困難な高校生に対する東京都育英資金につきましては、国の高校奨学金が移管された平成十七年度に、教育を受ける機会をさらに拡充する観点から、貸付人員枠を拡大するとともに、自宅外通学者につきましては、その単価を増額いたしました。
 お話しの制度の拡充につきましては、都民のニーズに応じ、必要とする高校生が育英資金を借り受けられるよう、今後とも検討してまいります。
 次に、家計急変世帯への授業料減免制度についてでありますが、都は、私立学校が家計状況または家計状況の急変という理由により生徒の授業料を減免した場合に、減免額の三分の二を学校に対し補助し、保護者の経済負担の軽減を図っております。
 今後とも、各学校においてこの補助制度が積極的に活用されるよう、都としてもさらに働きかけてまいります。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 初めに、住宅政策についてのご質問にお答えいたします。
 まず、住宅困窮者に対する住宅政策についてでございます。
 東京都における居住水準は改善の傾向にある一方で、民間賃貸住宅において、高齢者や小さい子どものいる世帯等が入居の際に選別を受けるなどの実態も見られることから、こうした状況に留意しつつ、都民の居住の安定を確保していくことが重要な課題であると認識しております。
 都といたしましては、これまでも、都営住宅において高齢者や子育て世帯等に対する優先入居などを実施するとともに、入居制限を行わない民間賃貸住宅の供給促進などに取り組んでまいりました。
 今後とも、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的な住宅セーフティーネットの機能強化に向けて、さらに施策を総合的に推進し、都民の居住の安定確保に取り組んでまいります。
 次に、都営住宅の建てかえの推進についてでございます。
 約二十六万戸ある都営住宅につきましては、都民の住宅セーフティーネットとしての機能を保持するため、管理戸数の抑制を図りながら、計画的に建てかえを実施することとしております。
 このため、現在、昭和三十年代以前に建設した住宅を中心に、老朽化の度合い、居住者の移転先の確保の状況、地域のまちづくりとの連携などを勘案しながら建てかえを進めております。
 今後とも、都営住宅の建てかえについては、こうした考えに立つとともに、中長期的な視点も踏まえつつ、着実に進めてまいります。
 次に、都営住宅の建てかえの進め方についてでございます。
 都営住宅の建てかえに際しましては、居住者にとって住みやすい間取りとなるよう工夫しながら、世帯構成に応じた適切な規模の住宅を供給しております。
 また、建てかえで建設する戸数につきましては、住宅ごとの立地条件や従前の戸数、敷地の形状などを勘案し決定しております。
 今後とも、地元区市とも連携しながら、地域の実情を踏まえ、着実に建てかえを進めてまいります。
 次に、都営住宅の団地運営についてでございます。
 都営住宅の住まい方につきましては、入居の際、基本的なルールを説明するとともに、随時、居住者向けの広報紙で周知をしております。
 住民同士のトラブルなど、居住上のさまざまな問題につきましては、都が管理を委託している住宅供給公社が自治会等と連携をとって対応しており、今年度、職員を増員しまして強化を図ったところでございます。都におきましても、状況に応じて、法的な措置を含めて対応しております。
 今後とも、自治会等からの相談にきめ細かく対応するなど、都営住宅の適切な管理に努めてまいります。
 次に、都営住宅の使用承継でございます。
 今回の制度の見直しでは、都営住宅の利用機会の公平性を確保するために、名義人が死亡した場合等の使用承継を原則として配偶者に限ることといたしました。その際、高齢者、障害者、病弱者につきましては、居住の安定に配慮することが必要なことから、例外規定を設けたところでございます。
 施行に当たりましては、使用承継できない場合の退去猶予期間につきまして、従来、原則三カ月としていたものを六カ月に延長するなど、さまざまな工夫を行ってまいりました。
 今後とも、例外規定につきましては、居住の安定に配慮しながら、使用承継の申請者の状況を十分把握し、適切に運用してまいります。
 次に、相談窓口のさらなる充実についてでございます。
 今回の使用承継制度の見直しを円滑に実施していくため、これまで、居住者向け広報紙、ポスター、チラシなどにより制度の周知を図ってまいりました。
 現在、窓口においては、制度に関する相談や、住宅供給公社、都市再生機構などの賃貸住宅の募集情報の提供、区市町村の福祉窓口の紹介などをきめ細かく行っております。
 今後とも、居住者からの使用承継に関する相談につきましては、一層丁寧な対応に努めてまいります。
 続きまして、建築基準法の改正についてのご質問でございます。
 まず、建築確認の状況と住宅着工戸数減の影響についてでございますが、都の確認件数は、改正建築基準法の施行直後の七月は、前年同月比で約三割減少いたしました。これは、耐震偽装事件の再発を防止するため、建築確認の仕組みが大幅に変更されましたが、新たな制度の内容の確定から施行までに十分な時間がなかったため、設計者等が的確に対応できずにいる状況が生じているものと思われます。
 このような状況が継続すれば、社会経済活動や都民生活に支障を来す懸念もあることから、都といたしましても、新たな制度の円滑な運用を図っていくことが重要であると認識しております。
 次に、確認申請の減少への対応策でございますが、都では、改正法の施行前から、説明会の開催や、申請窓口における事前相談の実施など、新たな制度の周知徹底に努めてまいりました。
 また、これらの取り組みに加え、施行後には、国とも連携して、制度の運用についてのQアンドAを作成し、ホームページで公表するとともに、電話相談窓口を開設し、設計事務所等からの問い合わせにも迅速に対応しております。
 さらに、今後は、区市と連携して、実務者向けの講習会をきめ細かく開催するなど、都民に身近な住宅の確認申請についても的確に対応してまいります。
 次に、構造計算適合性判定の体制拡充でございます。
 適合性判定は、構造計算書を建築主事等の審査とは別に、第三者機関において、専門的な資格を持つ判定員がチェックするもので、耐震偽装の再発防止策の根幹をなす制度でございます。
 全国で判定員が不足しているといわれる中で、都では既に十二の法人を判定機関として指定してございます。さらに、国が行う判定員の増員に合わせまして、判定機関を追加指定し、体制を拡充することとしております。
 今後とも、構造計算適合性判定を初めとする建築確認制度を適切に運用し、建築物の安全・安心の確保に全力で取り組んでまいります。
 最後になりますが、震災対策についての二点のご質問にお答えを申し上げます。
 住宅の耐震化でございますが、「十年後の東京」で示した住宅の耐震化の目標を達成するためには、耐震化の機運を高める仕組みや、都民が耐震化に取り組みやすい環境の整備など、耐震化を加速する方策について総合的に検討することが重要でございます。
 このため、地震が怖くない東京の実現を目指して、ことし六月に設置しました建物の耐震化推進会議におきまして、全庁を挙げて検討を進めておりまして、年内にも効果的な施策を取りまとめてまいります。
 加えて、安価で信頼できる耐震技術の普及など、既に実施中の施策についても充実強化を図り、住宅の耐震化を促進してまいります。
 次に、木造住宅密集地域における不燃化の推進についてでございます。
 都は、防災都市づくり推進計画に基づき、重点整備地域を指定し、木密事業や新たな防火規制などとともに、街路や公園などの基盤整備事業を推進しております。とりわけ、都市計画道路の整備と沿道のまちづくりを進める沿道一体整備事業や、街区単位で建物の共同化と公共施設の一体的な整備を行う防災街区整備事業など、民間開発を誘発する事業手法が、不燃領域率を早期に向上させるためには有効でございます。
 今後とも、これらの事業のより一層の展開を図っていくとともに、地域特性に応じまして、事業手法を効果的に組み合わせるなど、木密地域の安全性の向上に積極的に取り組んでまいります。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 緊急地震速報についてのご質問にお答えいたします。
 都はこれまで、防災展や事業者セミナーなどの機会を通じまして、都民や事業者に対し、緊急地震速報システムの仕組みや活用方法などについて情報提供をしてまいりました。
 今後は、気象庁が十月に本格実施することを踏まえまして、テレビ、ラジオの提供番組や広報紙、ホームページなど、都のさまざまな広報手段を活用し、周囲の状況に応じて適切な危険回避行動がとれるよう、一層の周知を図ってまいります。
 また、都庁舎における自衛消防訓練の機会をとらえ、緊急地震速報システムを活用した避難訓練を年内に行い、地震への備えを強化するとともに、都民への啓発にも役立ててまいります。

○副議長(石井義修君) 八十番清水ひで子さん。
   〔八十番清水ひで子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○八十番(清水ひで子君) 日本共産党都議団を代表して質問します。
 今、都民の中であらゆる年齢層に貧困と格差が広がっています。厚生労働省の調査では、働いても働いても住居も確保できず、インターネットカフェや漫画喫茶で寝泊まりしているネットカフェ難民が、全国で五千四百人、東京で約二千人もいるとされ、それが若者だけでなく五十代にまで及んでいる結果が明らかにされました。
 日本共産党都議団が、青年とともに街頭での聞き取りなどを通じて行った約七百人の若者実態調査では、非正規労働者が半数を占め、その月収は二十万円未満が五割、十五万円未満も三分の一に及んでいます。正規労働者でも、月収二十万円以下が約三割で、月四十時間以上の残業時間の人が四割以上、残業代未払いの人も四分の一に及びます。若者の多くが、正規、非正規ともに低賃金と長時間労働、サービス残業に苦しめられている姿が浮き彫りになりました。
 高齢者は、平均所得で現役世代と変わらないなどといわれますが、実態は、ごく一部の高額所得者が平均を押し上げているだけで、圧倒的多数は低い所得階層です。
 東京の医療関係者の高齢者生活実態調査では、回答した約二千人のうち、四割近い人が月収十万円未満で、収入が低い人ほど健康状態がよくないという結果が示されました。
 だからこそ、暮らしや雇用を何とかしてほしいという、悲鳴ともいえる都民の声が広がり、さきの知事選で、知事は都民の支持を得るために、低所得者を対象とした個人都民税の軽減を約束したのではないでしょうか。
 ところが、知事は、今になって、所得以外の収入があり、多額の預貯金を保有している人がいるから、税による手当てでは不公平が生じるといって減税をやめるといい出し、低所得者の雇用対策などの対策を講じることをもって公約の進化だと開き直りました。
 そもそも、所得の低い人たちへの支援を行う場合、税の軽減と給付の両面から行うことは世界の常識です。だからこそ、政府税調も、参議院選挙の結果を受けて、所得が低い人たちに対し税の軽減と給付金の支給という組み合わせの対策を検討し始めたのではありませんか。
 そこでまず、税の軽減についてですが、知事は、公約について、これによって現行税制のゆがみを是正すると説明したのです。トップダウンではあったものの、収入の低い人には負担を重くし、高額収入者には負担を軽くするという日本の逆立ちした税制に一石を投ずる前向きのものでした。だから、都民の支持を受けたのです。だから、減税撤回について、マスコミは公約撤回と批判し、我が党にも、都知事選で都民税の減免を公約しながらすぐに撤回するとは、選挙目当ての手段だったとしか思えないという都民からの手紙が寄せられているのです。
 知事、減税は預貯金のあるなしにかかわらないものであることは、初めからわかっていたことであり、撤回の理由になりません。知事、答えてください。
 知事のやろうとしているのは、明々白々の公約違反です。既に区市町村に説明しているのです。減税撤回を取り下げ、来年度から実施するよう強く求めるものです。答弁を求めます。
 次に、給付を初め都民生活への支援の拡充が緊急課題となっていることです。
 公約の趣旨は、生活保護水準以下の収入で生活している人たちへの支援でした。若者や高齢者を問わず、月五万円とか十万円とかの収入で、生活に困窮している都民に月一万円程度の緊急生活応援手当を創設すること、都営住宅入居基準内の収入の人たちのために家賃助成を実施すること、ネットカフェ難民など住所を失った人への賃貸契約の支援や、緊急入居できる住宅提供などの対策が必要と考えますが、それぞれお答えください。
 ワーキングプア問題の解決のためには、何よりも、生活保護以下の収入にしかならない最低賃金を時給千円以上に引き上げることや、社会保険の加入などが不可欠であると考えますが、認識を伺います。とりわけ、都として雇用している臨時職員については、この点で範を示すことが必要です。答弁を求めます。
 次に、高齢者の医療です。
 政府が、来年四月から、七十五歳以上の後期高齢者を対象にした新たな医療保険制度をつくること、また、七十歳から七十四歳の医療費を一割負担から二割に引き上げるとしていることに、驚きと怒り、実施の中止を求める声が急速に広がっています。
 後期高齢者医療制度の保険料は、東京都の場合、一人当たりの平均年額が最大で十五万五千円という推計が発表され、衝撃を広げています。厚生労働省は、平均七万四千円、国民健康保険料と大差ないと説明してきましたが、国保料の一・五倍から二倍にもなる人が続出します。そして今、保険料負担がない、家族の扶養となっている人からも新たに保険料が徴収されます。一方、高額所得者の保険料は下がります。
 しかも、この保険料は介護保険料と一緒に年金から天引きされ、滞納すれば保険証を取り上げ、医療給付の停止や制限まで法律に規定されています。こんな高齢者差別の医療制度は世界に例がありません。
 国民の厳しい批判の中で、政府・与党からも見直しの動きが出ていますが、後期高齢者医療制度については、新たに保険料負担が生じる人の保険料を凍結するにとどまるものです。その対象は、東京の後期高齢者百十万人のうち二十万人にすぎず、数十万人の方の保険料の大幅負担増は避けられません。
 目先の医療費削減を最優先にして、七十歳から七十四歳の医療費を二割負担に倍増させ、七十五歳からの保険料負担を大幅にふやす、こんな医療改悪は凍結し、全面的に見直すよう、政府に迫る必要があると思いますが、知事の答弁を求めます。
 後期高齢者医療制度については、都民の保険料の負担増を招かない対策が絶対に必要です。実際、保険料の引き下げを求める意見書が次々上がっています。首都圏の一都三県の保険者である広域連合は、連名で、政府に対し国庫負担の拡充を求める緊急要望を提出しています。保険料軽減のために、国庫負担を大幅にふやすよう求めるべきです。また、都独自の財政支援を行うことが必要です。特に、後期高齢者の健診事業に対する都の財政支援は不可欠だと思いますが、それぞれ答弁を求めます。
 石原知事は、この八年、多くの切実な都民要望や緊急課題について、財政は厳しいなどと理屈をつけて、背を向け続けてきました。その一方で、知事が最優先で取り組んできたのが、財界、多国籍企業が求める世界都市づくりであり、そのための再開発や三環状道路などのインフラの整備でした。国の悪政から都民生活を守るべき都政がこうした逆立ちを続けることによって、東京は、貧困と格差、ワーキングプア、介護難民などの問題がとりわけひどくなったのです。この路線を進む限り、都財政や地球環境、ひいては都民生活に甚大な影響とゆがみをもたらすものとなることは避けられません。
 まず、都財政のゆがみです。既に都は、大型開発を中心に毎年一兆円規模の投資を重ね、借金を過去最高水準の七兆円規模に膨らませてきました。投資の水準をバブル前に戻すことは欠かせない課題です。
 にもかかわらず、石原知事は、オリンピックを最優先課題として、競技施設やインフラ整備を進めることに固執しています。我が党は、このための投資が八兆五千億円になることを指摘してきましたが、さらに膨らむ危険があることが明らかになりました。
 第一は、競技の施設整備費が四百五十三億円にとどまらず、少なくとも三倍の一千五百億円に膨れ上がることです。
これは安倍前首相が政権を投げ出す前日にようやく行った閣議了解で、メーンスタジアムは国立ではなく都立で建設すること、国の負担は二分の一であること、後利用は都が責任を負うこと、その他の施設やインフラは通常の公共事業の枠の中で進めるとしたことによるものです。つまり、国は、オリンピック対策のために何ら特別の費用負担を行わないのです。
 石原知事は、閣議了解について、これでナショナルイベントに位置づけられたといっていますが、実際は、東京がやりたければやりなさいというだけの話ではありませんか。知事の答弁を求めます。
 第二に、インフラ整備、とりわけ都の負担が青天井になろうとしていることです。
知事が「十年後の東京」で最重点の課題としている三環状道路の負担は飛び抜けています。特に外かく環状道路は、今日なお国の高速道路の整備路線にも入っていません。これをオリンピックに間に合わせるとして建設することになれば、地下部分で一兆三千五百億円、地上部合わせると二兆円といわれる莫大な事業を都の責任で行わざるを得ません。
 さらに、オリンピック招致委員会のもとに安藤忠雄氏を中心にオリンピックと臨海副都心を一体として開発する五十年構想が検討され、開発がエスカレートされようとしています。既にメーンスタジアムを結ぶ地下鉄やLRT、アクセス道路などの構想も浮上しており、これでは都の負担は膨れ上がるばかりです。このむだ遣いともいうべき構図にメスを入れることなしに都民の暮らしを守ることはできません。
 十一月には招致に関する世論調査を行う予定ですが、オリンピックのための直接投資や関連投資、さらにはオリンピックをてこにして、この十年間に行うインフラ整備の全容を明らかにすることなしに、都民が判断を下せないことは明らかです。世論調査前に財政投資の全容を明らかにすべきです。知事の答弁を求めます。
 都市再生のもう一つのゆがみは、地球温暖化に一層の拍車をかけることです。一番の問題は地球温暖化効果ガスといわれる二酸化炭素、CO2です。知事はこの対策として、三環状道路の整備を初め屋上緑化や学校の校庭芝生化、事業所での排出規制などを挙げています。しかし、これではCO2の削減は進みません。
 まず、発生面で見ると、三環状道路についていえば、国土交通省の研究をもとに環境政策研究所の方が試算してみると、道路整備による新たな自動車交通の誘発効果や道路の建設、周辺の開発などによって、CO2は減るどころか、二百九十一万トンも排出されることになることが明らかにされています。ビルの排出規制も、ビルごとの単体規制だけでなく、ビル建設を総量規制することなしにCO2は削減できません。現実に知事が就任した二〇〇〇年以降だけでも二十三区内で建設された百メートル超の超高層ビルは百三十五棟も建設されており、そのビルが発生するCO2は百十三万トンに達しています。これを吸収するには、日比谷公園約二千個分の樹木が必要となるのです。
 しかも、臨海部に沿って開発されている超高層ビル群によって海風が遮られ、四十度という熱暑や集中豪雨などのヒートアイランド現象が起きていることも重大です。
 世界一の温暖化対策というのなら、CO2発生やヒートアイランド現象を抑えることをも目的として、超高層ビルや三環状道路計画を抜本的に見直すべきではありませんか。知事の答弁を求めます。
 CO2を吸収する緑についていえば、幾ら屋上を緑化しても、そのビルの床面積がふえればCO2はふえ、逆効果です。芝生化は、冷却効果は認められるものの、CO2の削減効果は期待できません。
 しかも、東京の緑の減少は深刻です。とりわけ多摩地域では、この間に緑地、農用地、森林などが開発によって壊され、原野が二百七十四ヘクタール、農用地が千六百九ヘクタール、森林が八百十七ヘクタール、北区の面積に匹敵する緑が失われているのです。これによってCO2の吸収が三万三千トンも失われています。都民一人当たりの都市公園も、ニューヨークやロンドン、パリなどに比べても最低水準です。知事が目玉にしている中央防波堤内側処分場の海の森構想だけでは到底追いつくものではありません。
 そこで、未利用地が残されている臨海副都心地域を活用し、緑の公園を増設すること、開発の危機にさらされている稲城市の南山など里山や屋敷林の保全など、区市町村と協力した緑の保全と育成にこそ力を尽くすことが必要です。見解を伺います。
 今、世界の国々や都市が共通して目指しているのは、このような破滅の道ではありません。貧困地区の再開発や超高層ビルの制限、路面電車など自動車依存型からの脱却、緑の拡大などによる持続可能な社会づくりに取り組んでいます。世界の流れに学んで、持続可能な東京という立場に立って都政運営に当たることを強く求めておくものです。
 知事が、都民の暮らしへの公約を撤回する一方、みずからの豪華海外出張を続けていることにも都民の批判が改めて高まっています。
 知事は、海外出張について、知事選中、説明不足だった、反省しているといいました。しかし、知事選後、ニューヨーク、そしてツバル、フィジーと、既に二回も海外出張に出かけ、ニューヨークでは千六百二十六万円、ツバル、フィジーでも千五百万円ものお金を使いました。知事は成果を強調していますが、到底都民の理解を得られるものではありません。実際、都民から、貴重な税金を湯水のように使われる知事の気持ちがわかりません、外国に出かける前に環境破壊を調べてもらいたいなど、疑問や批判がたくさん出されているではありませんか。
 とりわけツバル、フィジー出張は、内容の面でもお金の使い方でも問題です。知事は、ツバルが温暖化で海面上昇の影響を受け、やがては沈んでしまうという危機的な状況を見て、都民に伝えるために出張したといっています。そうであるならば、なぜツバルに宿泊して、じっくり腰を据えて視察しなかったのですか。知事、お答えください。
 日帰りの日程にしたために、五つの調査のポイントはバスによる二時間ばかりの駆け足の視察となり、満潮時の水害の実態すら見ずに現地を出発するというお粗末なものでした。
 知事、現場を見なければわからないといって出かけたのに、海水の上昇により住宅が水浸しになるという一番大変な状況さえ見ないのでは、到底目的を果たしたとはいえません。知事、どうですか。
 フィジーでの環礁視察というのは、サンゴ礁の白化の実態を調査するためにダイビングをしてみるというものです。だったら、わざわざフィジーまで出かけなくても、日本で問題になっているところを調査すれば済むことです。フィジーは絶好のダイビングポイントとしても有名な場所です。知事は、ガラパゴス出張でもダイビングを行いました。こんなことを繰り返しているからこそ都民から、半分は知事の趣味の世界ではないかという批判を受け、マスコミにも、そんなことなら自分のお金でやったらといわれるのです。
地球温暖化対策のためにということでツバルに行くのであれば、緑を破壊し、自動車交通の増加を招く圏央道のトンネル工事を行う高尾山に行って現場を見て話を聞くことがなぜできないのか、知事、それぞれお答えください。
 お金の使い方も相変わらずひどいものです。航空運賃を今回だけビジネスクラスにしただけで、七人の出張なのに、フィジーからツバルにたった一日出かけるのに五十人乗りの飛行機を特別にチャーターしたことにより五百万円もかかりました。定期空路を使えば五分の一以下、約八十万円で済ませられたのです。
宿泊費についても、最大の目的地ツバルに泊まれば一泊一万二千円ほどで済むものを、わざわざフィジーで条例の二倍もの一泊五万六千八百円のお金を払って高級リゾートホテルに宿泊したのです。
少なくともツバルをじっくり視察したら、飛行機のチャーター代も宿泊費もそこで数百万円節約できたはずではないですか。知事、都民の税金を使う以上、仮に必要な出張であっても、節約に努めることがなぜできないのですか。
 調査の中身もインターネットや映像、書物でわかることがほとんど、お金の使い方もやりたい放題、こんな出張に千五百万円もかけるのだったら、東京のCO2削減対策などに少しでもそのお金を使うべきという都民の批判に知事はどう答えるのですか。お答えください。
 これまでの豪華海外出張もむだな視察が多かったことがさらに明確になっています。
例えば、三宅島で公道バイクレースをやるためといって、マン島に一千万円をかけました。知事はホームページで海外出張の成果の一つとして挙げていますが、とんでもありません。
 ことし十一月に実施予定だった公道レースは、バイクメーカーやテストライダーの反対を受け断念に追い込まれ、知事の発言をめぐって、バイクメーカーは協力を辞退、レースを主管するMFJも組織としての協力はしないことを決めるに至っています。
 レースでなくて、モーターサイクルフェスタに格下げしたものの、これも十九日の三宅村議会で我が党村議の質問で、協賛スポンサーが一社も集まっていないこと、大会の運営や募集の要項の詳細がいまだに決まっていないこと、発表は開催一カ月前の十月上旬になることなどが明らかにされました。開催は無理だ、やめた方がいいという声が広がっています。知事、モーターサイクルフェスタはきっぱりと中止し、知事の思いつきで三宅島島民や関係者を振り回してきたことを謝罪すべきです。
 ことしのフェスタの開催すら危ぶまれているのに、知事がいまだに公道レースにこだわって、来年はやるといい張っていることは許されません。しかも、知事は、公道は危ないというけれど、サーキットでは人は死んでいる、みんな危険を覚悟でやっているなどと、人の命を軽視する発言を繰り返していることは自治体の長としてあってはならない発言です。
 知事、安全対策を万全に施したサーキットでも、事故が起きれば死亡事故につながるものです。安全対策も十分でなく、観客を巻き込む危険のある公道レースではその危険ははかり知れません。だから、世界でも公道レースは極めて少数派になっているのです。
 公道レースについて、いまだに危険だというゆえんがわからない、レーサーの自己責任の問題などといっているのは、余りにも不見識であり、無責任です。知事、どうですか。
 最後に、猪瀬副知事に伺います。
 さきの参議院選挙では、国民の生存権を脅かす事態までつくり出した小泉・安倍政権の構造改革路線に対し、有権者がノーの審判を下しました。ところが、猪瀬副知事は、構造改革は日本が世界で生き残るための避けて通れない道といい張り、社会問題となっている格差社会についてもこれを否定し、不景気、不況の問題だという驚くべき認識を述べています。そして今は、自己責任の時代になったとして、民主党が参議院選挙で部分的に打ち出した格差是正の政策をばらまき呼ばわりしています。とんでもない時代認識といわなければなりません。
 猪瀬副知事、ワーキングプアの出現に見られるように、構造改革路線によって、必死に働いても生活保護以下の収入しか得ることができない人が大量に生まれているのです。それでも自己責任の問題として片づけるのですか。
 政府・与党の中からも、障害者自立支援法による負担増の抜本見直しなどがいわれ始めましたが、これもばらまきというのですか。
 また、あなたは、社会保障費を抑制するためには、医師、看護師などの医療関係者の給料を抑えるべきだと強調し、補助金をもらって、ずぶずぶの人件費を支払っているコスト意識のない特殊法人の世界とそっくりとまで攻撃しています。
 医師、看護師不足が深刻な社会問題となり、診療報酬の引き下げによって閉鎖を余儀なくされる医療機関が広がっているにもかかわらず、診療報酬、人件費をさらに引き下げよというのですか。
 その一方で、猪瀬副知事は、雑誌インタビューで、世界マネーを稼ぐ東京、東京は世界を相手に経済戦争を挑む戦場だとまでいって、大企業などの利益追求、経済活動を支える都市づくりを最優先課題として推進しようとしています。こうした発言を見る限り、猪瀬副知事は、都民の暮らしや福祉を守る姿勢が欠けているといっても過言ではありません。
 あなたは、我が党が公開質問状で地方自治の本旨への認識を問うたにもかかわらず、回答すらしませんでした。改めて聞きます。副知事として自治体の責務をどう認識しているのですか。地方自治法で明記されているように、都民の、住民の福祉の増進を図ることにこそ全力を尽くすべきではありませんか。
 さらに、今、政治資金をめぐる不正や虚偽報告が露呈し、政治と金の問題が大きな社会問題となっていますが、猪瀬副知事が政治資金収支報告の記載漏れの中に、まさに枝葉末節のことも多く、魔女狩りの様相を呈していたと発言していることは、副知事自身の政治と金に対する感覚を疑わせるものです。
 その一つの例が、四百五十万円もかけて、みずからの副知事室にトイレをつけたことです。過去の副知事四人体制のときには専用トイレの増設は持ち上がっていません。障害者団体などへの数十万円、百万円単位の補助さえ削られているとき、みずからの部屋のトイレの設置のために四百五十万円という公金を投入することに、都民や都庁内からも疑問の声が上がるのは当然ではないですか。
 以上、五点について、猪瀬副知事の明確な答弁を求めます。
 再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 清水ひで子議員の代表質問にお答えします。
 まず、個人都民税の軽減措置についてでありますが、同じ行政目的を達成するために、より効果的、効率的な施策を選択するのは当然のことではないでしょうか。
 今後、低所得者の方々に対しては、よりきめの細かい施策を講じて支援してまいります。
 最初に申しましたことは共産党の好きな一種のばらまきにつながりますので、これは政策転換いたしました。
 高齢者医療についてでありますが、我が国では、急速な少子高齢化、国民生活や意識の変化など、大きな環境変化に直面しております。国民の生命と健康を支える医療制度についても時代に見合った制度への変革が不可欠であります。今回の後期高齢者医療制度も改革の柱の一つとして打ち出されたものでありまして、世代間の負担を明確にし、公平でわかりやすい制度とすることを目指すものであると認識しておりますが、ただし、結果として貧しい年寄りは早く死ねということになっては決してならないと思います。
 都としては、今後、国の動向を十分見きわめながら適切に対応してまいります。
 オリンピック招致の閣議了解についてでありますけれども、共産党は閣議了解の意味を全くご存じないらしいですが、閣議了解は、オリンピック招致を国家行事として推進するという、内閣としての基本的な意思決定であります。共産党のいう、東京がやりたければやりなさいという、そんな無責任なものではありません。これは内閣に対する一つの冒涜だと私は思います。
 今後、国とはそれぞれ具体的な協議を進めていくが、経済界、スポーツ界、全国の自治体と一体となってオリンピック招致の実現に全力を尽くしていきます。
 共産党も少し発想を変えて、ぜひオリンピックの意義を理解し、積極的に協力していくことを大いに期待しております。
 地球温暖化対策に関する現場視察でありますが、行政を預かる者として、いうまでもなく現場に赴き、つぶさにこれを見聞きすることは大変重要であり、実際に私もそうしてまいりました。グローバルな温暖化現象の象徴的な被害地でありますツバルを目にすることでいろいろな発想も生じてまいります。
 圏央道など三環状道路の整備は、東京の弱点であります慢性的な渋滞を緩和し、CO2排出量を減少させることからも、温暖化対策の観点からも極めて有効であると思います。
 圏央道の整備に当たっては、環境……(発言する者あり)うるさいな。環境影響評価など諸手続において、広く国民、都民などの意見を聴取しておりました。また、都政の重要課題として、逐次関連する情報の報告も受けております。
 現場主義の観点から、私はこれまでも、外環や中央環状品川線など必要なところは随時視察しておりまして、既に圏央道にも実際に足を運んでおります。今後も必要に応じ、現場視察することは当然でありまして、共産党にご指示いただかなくても、私の判断で非常に適切に対応してまいります。
 ちなみに、私はフィジーではダイビングはいたしませんでした。必要ございませんでした。
 次に、三宅島での公道レースについてでありますが、安全面で十分な対策を講じるとともに、ライダーを初め関係者の理解と協力が得られれば、その開催は可能になるものと考えております。三宅の復興のためには何かよほどの効力のあるイベントを考えないと、あの島はだんだん衰微していくという認識のもとにこれを考えたわけです。
 他の質問については副知事及び関係局長から答弁いたします。
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

○副知事(猪瀬直樹君) 構造改革路線によってワーキングプアが大量に生まれたということでありますが、ワーキングプアというのは、バブルの崩壊などの影響があって、失われた十年と呼ばれる時代に発生したというか、そこから始まってきたんですね。共産党がいうように、構造改革路線のみによってワーキングプアが発生したのではないということをまず認識してほしいんですね。
 それで、そもそも共産党が「赤旗」で、貧困率十年で倍加といっているんですよ。これは、九五年から二〇〇四年までの十年ですよ。だから、構造改革は二〇〇一年です。「赤旗」をよく読んで質問していただきたい。
 構造改革に対する基本的な認識についてでありますが、これまで道路公団の民営化などを通じて、官の情報隠しや官のむだを放置することが国民に多大な損失を与えることを明らかにし、改革を主張してまいりました。官によるこの国の支配にメスを入れることは国民の利益にかなうものであると考えます。
 改革に取り組むに当たって、社会的弱者を切り捨てても構わないということは一言もいっておりませんし、そのような考えはありません。
 ワーキングプアなど、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず低所得の状態から抜け出せない方々に対して、きめ細かい対策をとることを知事は決断されたが、これに自分も同感であります。石原知事が示された方針のもと、副知事として全力で取り組んでいく所存でございます。
 共産党は、過去の僕の発言の一部を切り取って曲解しているようなんですけれども、批判は全く的外れなものであります。
 それから次に、行政施策のあり方についてですが、行政施策のうち、本来国民がみずからの責任でなすべきことを行政が肩がわりする施策や受益と負担のバランスを著しく欠いた施策はモラルハザードを引き起こし、将来にツケを回すことになります。こうした国民にとってマイナスな施策をばらまきと呼びます。ばらまきは慎むべきとして主張してまいりました。
 質問にありました障害者自立支援法の見直しについて、一切コメントした覚えはございません。あたかもコメントしたかのごとく事実に基づかない質問は、以後おやめいただきたい。
 次に、我が国の医療制度、診療報酬制度についてですが、これまでさまざまな曲折を経て、現在の医療制度、診療報酬制度が形成され、国民に医療を提供する体制が築かれてきました。しかし、我が国の医療制度、診療報酬制度を取り巻く状況は極めて厳しいわけです。少子高齢化社会において、高齢者にかかわる医療費の増大にどう対処するかなど、改革は避けられない状況にあります。こうした課題について、今まさに国民的議論を必要としており、これまで強い問題意識を持って調査、提言してまいりました。
 共産党も、一部の発言を曲解して批判するんじゃなくて、大所高所からちゃんと議論いただきたい。
 次に、副知事として住民の福祉の向上にどう取り組むかについてですが、自治体が担う住民福祉は、共産党が主張する医療や福祉にとどまらず、治安、社会資本整備、環境、さらに震災対策など、あらゆる分野にかかわるものであります。住民福祉のさらなる向上は、金の卵を産む鶏である東京の活力を高めることなしには実現できません。東京が日本全体を牽引し発展させることで、より充実した住民福祉が可能になると考えています。
 共産党はかたくなに認めようとしませんが、機能的で効果的な社会資本を整備することも、自治体が担うべき住民福祉の重要な要素であります。都民福祉の向上に当たっては、民間の発想を大胆に取り入れることが必要であり、民間出身の副知事として、これまでの都政にない発想を生かして、都政の改革に貢献することを求められていると思っております。
 知事の指示のもと、副知事として期待されている役割を十二分に果たし、都民福祉の向上に全力を尽くしてまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 個人都民税の軽減措置についてでございますが、制度構築に当たりまして、預貯金等の資産の状況など個別の事情を反映した軽減措置が可能かどうか、鋭意検討を行いました。結果としてそれが難しいという結論に至ったものでありまして、初めからわかっていたというご指摘は全く当たりません。
 なお、区市町村に対しては、制度設計の過程におきまして意見交換の場を設けてまいりましたけれども、今回の決定を受けて、既に説明を行い、ご理解をいただいております。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) お答えいたします。
 まず、低所得者に対する手当の創設についてでございますが、所得保障は、社会経済状況全体を踏まえ、基本的に国の責任で対応すべきものであり、都の役割は、地域特性に即した事業を効果的、効率的に展開することであると考えております。
 お話の手当については、こうした都の役割に合致するものではなく、創設する考えはございません。
 次に、低所得者等への居住支援についてでございますが、家賃助成については、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など、多くの課題があることから、都として実施する考えはございません。
 また、インターネットカフェ等で常連的に宿泊している方々に対しては、その生活実態を踏まえ、的確な支援策を講じてまいります。
 次に、後期高齢者医療制度に関する国への要求と財政支援の二点についてでございますが、後期高齢者医療制度の保険料につきましては、医療費及び保健事業費などの推計や被保険者数の見込みなど、さまざまな要素を勘案し、広域連合が、本年十一月の議会において決定される料率をもとに算定する予定でございます。
 都としては、引き続き、広域連合の検討状況を把握するとともに、今後の国の動向を十分見きわめながら、適切に対応してまいります。
 最後に、後期高齢者の健診事業についてでございますが、現在、広域連合において、健康診査を初めとする保健事業について検討を行っております。
 都としては、広域連合の検討状況や今後の国の動向を注視をしてまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 最低賃金の引き上げと社会保険の加入についてでありますけれども、最低賃金は、法に基づき、労働者の生計費、類似の労働者の賃金等を考慮し、国において、最低賃金審議会の審議を経て決定されており、都内の最低賃金はこの十月十九日から引き上げられることとなっております。
 また、社会保険につきましては、加入要件等が法令で定められており、これに基づき適正に運用されるように、都はこれまでに引き続き、労働相談やセミナー等を通じて、労使双方に助言や普及啓発を行ってまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 臨時職員についてでございますが、都の臨時職員は、一時的、臨時的な行政事務の増加に弾力的に対応することを目的に各局で雇用されるものでございまして、毎年度の予算見積もりに当たって、適切に算定した賃金の参考単価を各局に通知しております。
 また、社会保険の加入につきましても、法令にのっとり適切に対応しております。
   〔東京オリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(荒川満君) オリンピックに関する経費についてでございますが、大会運営費及び施設整備費につきましては、昨年夏、開催概要計画書の策定に合わせまして費用の概要を都民に公表しておりますが、現在、さらに施設内容を含めて精査しておりまして、今後、適時適切に説明してまいります。
 また、三環状道路を初めとする都市インフラの整備につきましては、オリンピック開催の有無にかかわらず、東京の機能をさらに向上させるために必要な将来への投資であると認識しております。
 なお、オリンピック大会開催の経済効果は、都の試算によりますと、全国で二・八兆円に及ぶものでありまして、オリンピックについては、こうした効果も合わせますと、都民、国民に十分ご理解いただけるものと考えております。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 温暖化対策として、超高層ビルや三環状道路を抜本的に見直せとのお尋ねでございますが、東京が国際競争力を有した世界的な都市であり続けるためには、計画的な都市機能の整備や更新が不可欠であります。温暖化対策の観点からも、三環状道路の整備などにより、慢性的な渋滞が緩和され、二酸化炭素の排出量は減少いたします。また、環境に十分配慮した民間プロジェクトを積極的に展開し、緑やオープンスペースの確保、省エネ化を推進してまいります。
 都といたしましては、今後とも三環状道路の整備や都市再生を着実に推進してまいります。
   〔環境局長吉川和夫君登壇〕

○環境局長(吉川和夫君) まず、臨海副都心地域の公園の増設及び区市町村と連携した緑の保全と育成についてでありますが、臨海副都心においては、水に親しめる緑豊かなまちを開発方針に掲げ、公園の整備や敷地内緑地の確保など、これまでも緑に配慮したまちづくりを進めております。
 また、都は、広域的な観点から、都立公園の整備や自然保護条例に基づく緑の保全などに取り組むとともに、身近な緑の創出、保全の主体である区市町村に対する支援を行い、これまでも東京全体の緑づくりを進めてまいりました。
 今後とも、緑の東京十年プロジェクトの基本方針に基づき、区市町村と連携した取り組みを進めてまいります。
 次に、ツバル、フィジー諸島共和国への知事の視察の意義についてでありますが、今回の視察は、知事自身が現地を視察し、目で見、肌で感じたことを、みずからの言葉で都民に温暖化の危機をアピールすることにより、気候変動対策に取り組む都の姿勢を内外に明確に示していくという意義を有するものでございます。
 視察期間中に東京で開催したシンポジウムでは、テレビ会議システムを用いて知事みずから現地報告を行いましたが、参加者からは、臨場感があり現地の深刻さがわかった、ツバルの現状を見てショックを受けたなどの声が寄せられ、約八割の方から、現地報告がとてもよかった、よかったの評価をいただくとともに、約九割の方から、きょうのシンポジウムに参加して、職場や家庭で地球温暖化対策を実行したいと思ったという回答を得ております。
 都は、今回の視察の成果も踏まえ、全庁挙げて、カーボンマイナス東京十年プロジェクトの具体化を進め、CO2削減に向けた取り組みをより一層着実に推進してまいります。
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) 五点の質問についてお答えを申し上げます。
 まず、知事のツバルへの出張日程についてでございます。
 ツバルの視察に当たりましては、地球温暖化による海面上昇の影響などの状況を把握するために必要な時間を確保いたしました。天候不良の影響で、予定していた行程の一部は割愛せざるを得ませんでしたが、現地の深刻な状況を知事みずから十分に視察することができたというふうに考えております。
 次に、視察の成果でございますが、知事は、ツバルでは、海岸侵食の状況、海面上昇による浸水に伴う耕作地の塩害とその影響によるごみ問題など、現地の深刻な状況を視察されました。
 また、海面上昇による住宅の浸水などの被害の状況につきましては、浸水が最も激しい村の集会所を視察いたしますとともに、政府関係者や現地の住民から直接、生活に根差した話を聞かれております。
 このように、現地に行かなければ得られない貴重な知見を得ることができ、出張の目的は十分に達成できたというふうに考えております。
 次に、出張におけるダイビングについてでございますが、出張先において、現場の状況を正確に把握するため、必要があれば、状況に応じてダイビングによる調査を実施することもございます。
 なお、今回の出張では知事はダイビングは行っておりません。
 次に、出張の経費についてでございます。
 今回の出張につきましても、航空運賃や人数の面などで十分な精査を行いまして、経費の節約に努めるとともに、条例に基づき適正な処理を行っております。
 なお、フィジーからツバルまでの飛行機のチャーターについては、両国間の距離が約千キロと大変離れております。定期航空便のみに頼って視察を行うことといたしますと、天候不良などによる欠航や遅延により、限られた日程の中ではツバルを視察できないことがあり、あるいは帰れないというような事態も想定されました。
 外務省からも、往復の航空機を確保しておくことが必要不可欠というアドバイスをいただいておりまして、チャーター機の利用を決定したものでございます。
 最後に、猪瀬副知事室のトイレの設置についてであります。
 副知事は、知事の意思決定を直接補佐し、知事不在の際は代理を行うなどの重責を担っておりますことから、セキュリティーの確保は重要でございます。そのため、現庁舎建設当初から、三副知事室には、セキュリティー対策の一環としてトイレが設置されておりました。このたび、四人目の副知事として就任されました猪瀬副知事室につきましても、同様の観点からトイレを設置したものでございます。
 費用については、トイレ機器に関する材料費は約三十万円でございます。付随いたします配管工事、電気設備工事などを含めた全体で約四百五十万円でございますけれども、ごく普通の一般家庭のトイレと同程度の仕様でございまして、豪華なトイレを設置したわけではございません。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 三宅島でのバイクイベントについてでございますが、三宅島の産業の重要な柱でございます観光の振興を図るには、十一月に開催を予定しておりますモーターサイクルフェスティバルのような斬新な取り組みがぜひとも必要であると考えております。
 現在、NPOを中心に、島の皆さんが一生懸命、島の復興を目指して一丸となって、このイベントを成功させるべく着実に準備を進めております。
 都としては、引き続き、こうした三宅島の取り組みを全力で支援してまいります。
   〔八十番清水ひで子君登壇〕

○八十番(清水ひで子君) 知事に再質問します。
 今、都民税軽減の撤回について、公約違反ではないといい張っていますが、とんでもないことです。知事はこの政策により税のゆがみを是正する、地方税制においてあるべき姿を示すものだと説明していたのです。都民税に手をつけないということは、この説明は間違っていたことになります。まさに知事の公約は、口先だけの都民を欺くものだったといわれても仕方がないではありませんか。知事が答えてください。
 豪華海外出張についてです。
 知事は、豪華海外出張について、説明不足だった、反省しているといったのです。なぜツバルに泊まらず、駆け足の見学にしてしまったのかということについて、知事のお答えはありませんでした。議会と都民に説明もしないのは、反省がごまかしだったということです。
 知事、小池環境大臣もツバルに宿泊したではありませんか。なぜ滞在して徹底した調査をしなかったのですか。現場を見るというなら、海水上昇の被害を知事の目で見ることができる季節、日数、時間を選ぶべきではありませんか。そうすれば、条例の二倍の料金の豪華なリゾートホテルも節約できたのではありませんか。都民が納得できるよう、説明責任を果たしていただきたいと思います。
 オリンピックについてです。
 知事のオリンピックの答弁で、驚いたのは私の方です。閣議了解は、東京都が招請することを認めただけで、費用負担についても通常の枠を超えないものです。大体、一九六四年の東京大会のときの閣議了解は、できる限りのことをすると、国を挙げて支援をすることを表明していたんです。今回の閣議了解とは雲泥の差です。知事自身、自民党の答弁では、国に本腰を入れてもらわなければとか、勝ち抜くのは大変だと、情けない認識を示していたではありませんか。ごまかさないでください。
 三宅バイクレースです。
 危険だというゆえんがわからないとか、レーサーの自己責任だなどという、人命にかかわる危険な公道レースに対する態度は、メーカーもテストライダーも明確にノーです。協力もあり得ません。知事一人のメンツのために多くの人に迷惑をかけるのはもうやめるべきです。
 知事のトップダウンの事業です。ご自分でお答えください。
 次に、猪瀬副知事に再質問いたします。
 構造改革の認識について持論を展開いたしましたが、格差の存在については答えていません。構造改革によってワーキングプアや非正規雇用労働者が大量に生まれたことは常識です。つい最近の月刊誌などで、格差社会じゃないなどと発言しています。そんなことをいっているのはあなたぐらいです。構造改革推進の自民党、公明党の今度の政権合意でさえ、形の上では負担増、格差の緩和をいわざるを得ないのです。あなたの認識が時代に逆行しているのです。副知事になった以上、これまでの認識を改め、都民に対し、自己責任だ、依存体質だなどというのはやめるべきです。答えてください。
 以上、質問を終わります。(拍手)
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

○副知事(猪瀬直樹君) ただいまのご質問は「赤旗」に答えが書いてありますので、説明いたします。
 先ほどいいましたが、貧困率十年で倍加したというところで、グラフがついているんですが、一九九五年から二〇〇四年まで、雇用労働者に占める非正規労働者の割合というのが、二〇%からだんだん一%ずつ上がっていって、そして二〇〇四年に三一%。ですから、この上がり方は毎年一%なんですね。したがって、構造改革があったから急激にカーブが変わったわけじゃないんです、これは「赤旗」にちゃんと説明してありますので。
 そこで、つまり、格差とは何かということを考える場合に、まず事実に基づいて冷静に分析しなきゃいけない。今、先ほど、公明党の代表質問の中に、年長フリーターという言葉が出てきた。この言葉の方が正確ですよ。つまり、九〇年代の失われた十年のときに就職できなかった人たちが、今、二十五歳から三十五歳ぐらいにずっと平行移動していっているわけですね。そこの部分がワーキングプアの一つの重要な部分なんですよ。ただ一般論で貧しい人がいるというだけじゃ、いつの時代も同じですよ、そんなものは、ということで、お答えしたと思います。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 幾つかの再質問がございましたけれども、それについては、私の後答弁した局長の答弁の中に、ディテールは詳しく述べられておりまして、お耳かどこか悪いので聞きそびれたのかもしれませんが、どうか後で議事録をもう一回読み返していただくと、ご理解いただけると思います。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 都民税の減税措置についてでございますけれども、税制の変更時にはどうしても摩擦が生じるものでございまして、そのことが低所得者層の方々にはとりわけ厳しい影響が出る。そういった面を考慮したことは確かでございますが、その後、総合的判断の中で、より本質的な施策による対応が望ましいと判断したものでございます。
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) ツバルの出張についてでございます。繰り返しになりますが、もう一度申し上げます。
 まず出張の時期でございますけれども、知事はやはり公務との兼ね合いもございまして、なかなかツバル最優先というわけにもまいりません。限られた日程の中で最良の選択をして、今回の出張がなされたわけでございます。
 先ほど申しましたように、フィジーからツバルへ行く定期便は週に二回でございまして、なおかつ天候不良等の影響もあって、欠航が大変多いということでございます。したがいまして、一度定期便で行って、とまれば帰れないとか、あるいは逆に、行って泊まるつもりで待っていたけれども、飛行機が飛ばなかったらばフィジーに行けないとか、そういうことがありますので、チャーター便を確保して、足を確保して日帰りで視察をしたということでございます。
 視察の成果については、先ほども申し上げましたように、宿泊はしなくても十分な成果が上がったというふうに考えております。
   〔東京オリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(荒川満君) オリンピック招致の閣議了解についてでございますけれども、この閣議了解は、オリンピック招致を国家行事として推進するということにつきまして政府の意思として決定されたものでございます。基本的な原則を定めたものでありまして、政府の具体的な支援策、東京都等との連携につきましては、今後協議していくことになっております。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 三宅島のバイクイベントについてでございますが、バイクイベントは、世界のさまざまな地域でそれぞれ魅力的な内容となるように、さまざまな工夫を凝らして実施されております。三宅島のこのモーターサイクルフェスティバルについても同様でございます。
 公道レースにつきましても、安全面で十分な対策を講ずるとともに、ライダーを初め関係者の皆さんの理解と協力が得られれば、その開催が可能になるものと考えております。

○六十七番(石森たかゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○議長(比留間敏夫君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認め、さよう決定をいたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時三分散会

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