平成十六年東京都議会会議録第十六号

平成十六年十二月八日(水曜日)
 出席議員(百十七名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番村上 英子君
四番秋田 一郎君
五番矢島 千秋君
六番鳩山 太郎君
七番後藤 雄一君
八番福士 敬子君
九番林  知二君
十番伊沢けい子君
十一番新井美沙子君
十二番相川  博君
十三番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
二十一番高橋かずみ君
二十二番山加 朱美君
二十三番小美濃安弘君
二十四番吉原  修君
二十五番山田 忠昭君
二十六番臼井  孝君
二十七番林田  武君
二十九番山口 文江君
三十番柿沢 未途君
三十一番初鹿 明博君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番東野 秀平君
三十七番藤井  一君
三十八番ともとし春久君
四十一番野島 善司君
四十二番真鍋よしゆき君
四十三番松原 忠義君
四十四番田代ひろし君
四十五番三宅 茂樹君
四十六番川井しげお君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番こいそ 明君
五十番執印真智子君
五十一番花輪ともふみ君
五十二番真木  茂君
五十三番大津 浩子君
五十四番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番木内 良明君
六十番鈴木貫太郎君
六十一番森田 安孝君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番鈴木あきまさ君
六十七番近藤やよい君
六十八番串田 克巳君
六十九番中屋 文孝君
七十番三原 將嗣君
七十一番樺山たかし君
七十二番田島 和明君
七十三番宮崎  章君
七十四番大西由紀子君
七十五番樋口ゆうこ君
七十六番中村 明彦君
七十七番馬場 裕子君
七十八番和田 宗春君
八十番大山とも子君
八十一番東ひろたか君
八十二番池田 梅夫君
八十三番中山 秀雄君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番いなば真一君
九十番高島なおき君
九十一番服部ゆくお君
九十二番古賀 俊昭君
九十三番山本賢太郎君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十八番大河原雅子君
九十九番田中  良君
百番小林 正則君
百一番藤川 隆則君
百二番坂口こうじ君
百三番曽根はじめ君
百四番渡辺 康信君
百五番秋田かくお君
百六番中嶋 義雄君
百七番石井 義修君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番野田 和男君
百十二番野村 有信君
百十三番比留間敏夫君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番富田 俊正君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番木村 陽治君

 欠席議員(二名)
九十七番  大山  均君
百二十五番 名取 憲彦君
 欠員
十四番  十九番  二十番
二十八番 三十九番 四十番
五十五番 七十九番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事濱渦 武生君
副知事大塚 俊郎君
副知事竹花  豊君
出納長櫻井  巖君
教育長横山 洋吉君
知事本局長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長松澤 敏夫君
警視総監奥村萬壽雄君
主税局長山口 一久君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長梶山  修君
環境局長平井 健一君
産業労働局長関谷 保夫君
建設局長岩永  勉君
港湾局長成田  浩君
交通局長松尾  均君
水道局長高橋  功君
消防総監白谷 祐二君
福祉保健局長幸田 昭一君
下水道局長二村 保宏君
大学管理本部長村山 寛司君
病院経営本部長押元  洋君
中央卸売市場長森澤 正範君
新銀行設立本部長津島 隆一君
選挙管理委員会事務局長高橋 和志君
人事委員会事務局長佐藤  広君
地方労働委員会事務局長久保田経三君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

十二月八日議事日程第二号
第一 第二百十一号議案
東京都行政手続条例の一部を改正する条例
第二 第二百十二号議案
東京都行政手続等における情報通信の技術の利用に関する条例
第三 第二百十三号議案
東京都統計調査条例の一部を改正する条例
第四 第二百十四号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第二百十五号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六 第二百十六号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第七 第二百十七号議案
職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
第八 第二百十八号議案
職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第九 第二百十九号議案
非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第十 第二百二十号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十一 第二百二十一号議案
職員の結核休養に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第二百二十二号議案
東京都職員の公務災害補償等に伴う付加給付に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第二百二十三号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第二百二十四号議案
東京都個人情報の保護に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百二十五号議案
東京都情報公開条例の一部を改正する条例
第十六 第二百二十六号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第十七 第二百二十七号議案
義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第二百二十八号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百二十九号議案
公立大学法人首都大学東京に係る地方独立行政法人法第四十四条第一項の条例で定める重要な財産を定める条例
第二十 第二百三十号議案
公立大学法人首都大学東京に係る地方独立行政法人法第五十九条第二項に規定する条例で定める内部組織を定める条例
第二十一 第二百三十一号議案
東京都立大学条例等を廃止する条例
第二十二 第二百三十二号議案
東京都市計画事業大橋地区第二種市街地再開発事業施行規程
第二十三 第二百三十三号議案
東京都市計画事業亀戸・大島・小松川第二地区第一種市街地再開発事業施行規程等の一部を改正する条例
第二十四 第二百三十四号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十五 第二百三十五号議案
東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十六 第二百三十六号議案
東京都立老人医療センター条例の一部を改正する条例
第二十七 第二百三十七号議案
東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百三十八号議案
東京都結核診査協議会条例の一部を改正する条例
第二十九 第二百三十九号議案
東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援条例
第三十 第二百四十号議案
東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第三十一 第二百四十一号議案
東京都地方労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第二百四十二号議案
東京都地方労働委員会あつ旋員の費用弁償条例の一部を改正する条例
第三十三 第二百四十三号議案
審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第二百四十四号議案
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第二百四十五号議案
性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第二百四十六号議案
都立青梅地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)改修工事請負契約
第三十七 第二百四十七号議案
都立東久留米地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)増築及び改修工事請負契約
第三十八 第二百四十八号議案
日暮里・舎人線舎人公園駅(仮称)建築工事請負契約
第三十九 第二百四十九号議案
当せん金付証票の発売について
第四十 第二百五十号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び瑞穂町公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十一 第二百五十一号議案
公立大学法人首都大学東京定款について
第四十二 第二百五十二号議案
公立大学法人首都大学東京(仮称)に対する出資について

   午後一時一分開議

○議長(内田茂君) これより本日の会議を開きます。

○議長(内田茂君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(内田茂君) これより質問に入ります。
 百十二番野村有信君。
   〔百十二番野村有信君登壇〕

○百十二番(野村有信君) 去る十月、新潟県中越地方に発生した大地震での犠牲者の皆様に深く哀悼の意を表すとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 それでは、平成十六年第四回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 さて、世界情勢も我が国の社会経済情勢も混迷の度を深めております。イラクやパレスチナを初めとする中東情勢、そして北朝鮮の核や拉致の問題、いずれの問題をとっても、解決の道筋すら見えておりません。
 国内に目を転じても、痛ましい犯罪が多発しております。先日の奈良県で起こった少女殺害事件は、その卑劣さ、残忍さにおいて、到底許すことのできない犯行であります。
 かつて日本は、世界で最も安全な国でありました。そうした国を今取り戻すことを都民は切に願っています。我が党は、都民の皆様が安心して生活できる東京を目指して全力で取り組むことを改めて表明いたします。
 経済面においては、長いトンネルの出口がようやく見えてきました。これは、民間企業がまさに血のにじむような努力を重ね、体力増強を行ってきたからです。また、我が党もこれまで、あらゆる手だてを尽くして、必死で頑張る中小企業や商店街等のため働いてまいりました。しかし、原油高や円高など新たな不安材料も生まれ、日本経済はまだまだ弱含みで推移しております。
 今こそ、こうした状況に活を入れ、東京の中小企業者や都民に再び活力を呼び戻し、明るい展望を開く施策を重点的に実施することが重要であると考えます。東京がよみがえることこそ、日本経済全体が新たな成長軌道に乗る原動力であると確信しております。
 同時に、都政の構造改革も忘れてはなりません。組織、職員定数、職員給与を都民の目線に立って不断に見直し、また、民間でできることは民間に任せていくべきです。そうして、都民のための施策を素早く着実に実現できるように改革を進めることを改めて強く求め、質問に入ります。
 まず、真の地方分権改革について伺います。
 我が国を取り巻く国際環境や少子高齢化に伴う将来的な活力低下への懸念など、今、国民、都民の心には幾多の不安が重くのしかかっています。
 こうした閉塞状況を打破するためには、今こそ政治が、我が国のあるべきグランドデザインをしっかりと見据えて、真の改革を推し進めていくことが必要です。しかしながら、国において行われている改革は、これに値するものとは到底思えません。
 特に三位一体改革については、先月末にようやく改革の全体像として政府・与党合意が成立しましたが、その内容は本質的な議論が全く行われず、地方が求める分権改革の実現からほど遠いものとなっております。
 このため、都議会としても、我が党が中心となって、地方分権改革の基本理念に立ち返って抜本的な改革を進めるよう、真の地方分権改革の推進に関する意見書を本定例会の初日に採択したところです。
 全体像の中でとりわけ問題なのは、義務教育費の取り扱いです。義務教育費のあり方については、中央教育審議会で検討し、来年秋までに結論を得るとしながら、約八千五百億円の国庫負担金を削減するとしております。
 また、社会保障についても、唐突に国民健康保険への都道府県負担を導入するとし、約七千億円の地方負担を打ち出しています。どう考えても削減ありきの議論であるとの感は否めません。
 総じて改革の全体像は、本質的な議論をないがしろにしたまま、三兆円の国庫補助負担金削減額を積み上げることだけに腐心したものと評価せざるを得ません。このようなその場しのぎの矮小化した議論だけで改革に決着がつけられてしまうことは、我々地方自治に携わる者として容認できません。
 知事は、国が決定した改革の全体像についてどのような感想をお持ちか、忌憚のないご所見をお伺いいたします。
 もう一点、改革の全体像に関して見過ごせないのは、税源移譲にあわせて地域間の財政力格差の拡大について確実な対応を図るとしている点です。
 全体像の決定に先立って、先月中旬の経済財政諮問会議において総務大臣が提出した改革案では、行政体である東京都と地域としての東京を意図的に混同して使い、国の三位一体改革により東京に税収が集中することを殊さらに強調した上で、法人事業税の分割基準の見直しや地方譲与税の譲与制限を実施すべきとの考え方が打ち出されています。
 我が党は、このような東京をねらい撃ちにした財源調整の強化は、膨大な財政需要を擁する大都市東京の実態に目をつぶり、東京を富裕団体とみなす東京ひとり勝ち論に基づくものであるとして、その誤謬を一貫して批判してまいりました。
 地方に比べて東京だけが過度に潤っているかのように喧伝し、法人事業税の分割基準の見直しなど不合理な財源調整措置の強化を企てようとする国の動きに対して、知事はどのように対応していこうと考えておられるのか、ご所見を伺います。
 今断行すべきは、東京を初めとする大都市の活力を生み出し、ひいては日本全体の発展を永続的に支えることのできる行財政システムを再構築することであります。そのためには、三位一体改革に加えて、東京の行財政制度全般の見直しが不可欠です。
 我が党は、こうした観点から、さきの行財政改革基本問題特別委員会の調査報告を礎に、従前の組織見直しといった都庁内部の単なる行革にとどまらない、大都市東京の行財政システムの抜本的改革を進めることが使命であると考えています。
 石原知事は、大都市東京を支える行財政システムの改革に関して、いかなるデザインをうちに描いておられるのか、お聞かせください。
 さて、大企業の製造業を中心とした本年三月期の企業収益は、海外経済の堅調な動きを背景に、輸出や生産が増加するなど都税収入にも反映し、本年度上期で約千六百億円の増収と聞いております。また、本年九月期中間決算においても、上場企業は引き続き業績を伸ばしていると報道されております。
 一方、十一月に発表された七月から九月期のGDPでは、年率換算〇・三%増にとどまり、原油高やアメリカ経済の減速などによる懸念材料が入り、景気の持続回復への展望に不安を抱かせる面も見られます。
 そこで、まず都税収入ですが、堅調期を反映している本年度の都税収入の動向についてどのように見通しているのか、また、十七年度の都税収入の見通しについてお伺いいたします。
 次に、都税収入に大きな比重を占める固定資産税についてお伺いします。
 我が党は、固定資産税について、これまでも、地価が下がっているのに税負担が下がらないなど、現行制度が抱えるさまざまな問題点を指摘するとともに、特に負担が過大になっている二十三区の商業地等の負担を軽減するよう、繰り返し求めてまいりました。
 そうした中、知事は、平成十四年度に、小規模非住宅用地に対する都独自の軽減措置を導入されました。この英断が厳しい経営環境にある中小企業者の大きな力添えになってきたことは、申し上げるまでもございません。
 しかし、これで固定資産税の問題が解決したわけではありません。現在、固定資産税においては、同じ評価額の土地でも、土地ごとに税負担が異なる不均衡が生じております。
バブルの生成、崩壊に伴って生じた矛盾であり、十年余を経た現在まで、解消されないまま残されてきた制度のゆがみであります。
 二十三区の商業地等では、全国に比べ負担水準の高い土地が多くなっております。二十三区の事業者は、依然として高い地価に加え、負担水準の不均衡により、二重に負担が過大となっているわけであります。
 こうした固定資産税の現状について知事はどのように考えているのか、改めて所見をお伺いいたします。
 国は、おくればせながら、平成十六年度の税制改正において、商業地等の負担水準の上限を自治体が裁量で引き下げることができる条例減額制度を創設いたしました。
 負担水準の上限の引き下げは、不均衡の是正はもとより、二十三区の商業地等の過大な負担を軽減することで、地域の活性化にもつながります。既に我が党には、中小企業を初め数多くの関係団体から、引き下げを求める声が寄せられております。
 都は、税負担の公平等の視点に立ち、商業地等の負担水準の上限を引き下げるべきと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 あわせて、非住宅用地などに対する都独自の軽減措置についても、引き続き景気に配慮し、来年度は継続すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 さて、来年度予算の編成は、一月の原案策定に向けてまさに佳境に入っていきます。東京がかつてのような繁栄を取り戻すためには、何といっても、東京に根づき、地域経済を盛り立て、そして日本経済をしっかりと下支えしている都内の中小事業者の皆さんに元気になっていただくことが不可欠であります。
 回復基調にある景気の足取りを確かなものとするためにも、今こそ東京に活力を呼び戻すための施策を重点的に展開することが望まれております。
 もちろん、財政再建もまた都政の重要な課題であります。我が党は、都議会において最大の議席を預かる責任政党として、目先の問題だけを扱うのではなく、将来を見据えての必要な取り組みに対しては、協力を惜しむものではありません。
 例えば、都債については、将来の負担を十分検討した上で発行することが必要であり、近年、都債の発行額が、その返済である公債費を下回る水準に抑制されているのも、我々が執行機関と協力して財政再建に取り組んだ成果であると考えております。当然ながら、十七年度予算編成においては、この流れをとめることなく、さらなる都債の抑制に努めるべきと考えます。
 いずれにしても、来年度予算をどのような予算に仕上げるか、これからがいよいよ知事の腕の見せどころであります。平成十七年度予算編成に対する知事の基本的な考え方をお伺いいたします。
 さて、我が党は、さきに知事に、東京都の今後の政策展開について要望いたしました。
先日発表されました平成十七年度重点事業は、これにもこたえた内容となっており、評価しております。さらに、今後、予算編成においても、我が党の考えが十分反映されていくことを期待しながら、個々の政策について質問をさせていただきます。
 まず、震災対策について伺います。
 先般発生した新潟県中越地震においても、いまだインフラが大きなダメージを受けたままであり、災害復旧の難しさが露呈しています。今こそ、東京の地震災害に対する備えに万全を期していくときだと考えます。
 先月十七日には、国の首都直下地震対策専門調査会が首都圏で起きる地震を想定し、震度分布図を発表しました。これによれば、都内の広範囲の地域で大きな揺れが生じ、甚大な被害が発生することが危惧されます。
 都は、八都県市と連携し、広域防災プランを策定したり、応援協定を結ぶなど応援体制を整えていますが、首都圏直下地震では八都県市が同時に被災することも予想され、実際には支援も受けられないのではないでしょうか。
 現在の地域防災計画で定めている体制で十分なのか、お伺いいたします。
 東京においても、直下の地震が起きた場合、火災の発生はもちろん、建物の倒壊や落下物、またはパニックなどにより、救助を求める人が多数発生することが予想されます。
 そこで、地震による各種災害に備え、ハイパーレスキュー隊を増強するなど、救助活動体制をさらに強化していく必要があると考えますが、ご所見を伺います。
 次に、三宅噴火災害に対する都の支援について伺います。
 三宅村では、来年二月の避難指示解除に向け、いよいよ村民の引っ越し準備が始まっています。我が党の申し入れを受け、都は三宅村民の生活再建支援のための独自制度を創設する条例案が今定例会に提案されています。しかし、村民の生活再建への支援は、今回の新制度だけでなく、他のさまざまな支援制度を含めて総合的に講じるべきです。
 そこで、帰島後の生活再建の支援に当たっての都としての基本的見解についてお伺いいたします。
 なお、条例案は、支給対象が帰島後に居住する世帯家屋を対象としており、高濃度地区に設定されている地域内の建物は対象外となっています。しかし、高濃度地区においても家屋修繕等は同じように行われることから、この支援事業にこだわらず、何らかの方法により救済を講じることを要望しておきます。
 また、帰島後に商工業者が事業を再開するに当たっては、多額の資金が必要となります。融資による支援強化に努めるべきと考えますが、所見を伺います。
 日本はまさに地震列島です。東京における防災対策は重要課題の一つであり、真剣に取り組まなくてはなりません。都民の生命、財産を守る立場から、知事の決意を伺います。
 次に、三井物産株式会社によるDPF装置の指定申請に関する不正事件について伺います。
 昨年十月に始まったディーゼル車規制は、知事のリーダーシップのもと、とりわけ運送事業者の皆さんのご理解とご協力により、多大の成果を上げてまいりました。
 こうした中で発覚した三井物産の不正は、全くの詐欺行為であるのみならず、長年にわたり東京の環境の改善を切実に求め、効果に期待してきた都民にとっては、その信頼を裏切る最悪の背信行為といわざるを得ません。
 日本を代表する大企業の不祥事が続く中、またしてもの感を抱かざるを得ず、大企業の倫理感の欠如の蔓延に愕然としながら、強い怒りを覚えるものです。昨日、一都三県が共同して刑事告発を行いましたが、今後とも、三井物産に対し徹底した責任追及を行うべきと考えます。
 我が党は、この事件発覚後、直ちに対策委員会を設置し、事業者の皆さんの声をつぶさにお聞きしてまいりました。
 今回の事件の被害者となった皆さんは、貨物量の減少や料金引き下げへの要請など、引き続く厳しい経営環境の中で、都民の健康と東京の環境の改善のために、必死の努力をして都の施策に協力してこられた方々であります。
 運送事業者の中には、ディーゼル車規制に対応できず、廃業のやむなきに至った方もいらっしゃるのです。三井物産の装置を装着している事業者は、今後、DPFの交換などの措置が必要になるわけですが、これまでディーゼル車規制に誠実に対応してきた事業者の方々には、今回の問題で新たな金銭的負担を一切かけさせないよう、三井物産に厳しく迫るべきだと思いますが、所見を伺います。
 三井物産からは、先日、対応策なるものが公表されておりますが、個々の事業者は、厳しい経営環境を反映した、それぞれ深刻な事情を抱えております。
 こうした状況にある事業者の皆さんが、新車への買いかえ、DPFの交換など、最良の方法を考えて、十分納得のいくような選択ができるようにする必要があります。このため、被害に遭った事業者には、親身になった弾力的な対応が行われるようにすべきと考えますが、所見を伺います。
 今回の事件は、確かに三井物産側の徹底した偽装のせいではありますが、装置の指定に当たって万全を期すべきことは当然であり、都は、国に先駆けて、他県を引っ張ってこの規制を進めてきた立場として、指導監督責任を強く自覚し、再発防止も含め、今後の対応に当たるべきでありますが、所見を伺います。
 我が党としても、ディーゼル車規制について、事業者や関係団体、隣接各県市へご理解、ご協力をお願いしてきた立場として、責任の重さをひしひしと感じております。
 また、一昨日、審査に当たった職員が、公務員倫理にももとる行為を行ったとの報道がありましたが、関係局においては、失われた都民の信頼の回復を図るため、厳正な対応を求めます。
 この事件における三井物産と都の対応を厳しく見守っていく決意を明らかにして、次の質問に移ります。
 都市のヒートアイランド対策について伺います。
 ことしの夏は記録的な猛暑となり、熱中症で約九百人もの人が搬送されるなど、ヒートアイランド現象が都民の健康にも悪影響を及ぼしております。事態は殊のほか深刻で、実効性ある対策が急がれます。
 都市にさまざまな機能が集積し、発展していくことは、日本経済の活性化に欠かすことができないものですが、一方で、都市の生活環境を改善していくことも重要な課題です。
夏を迎えてからでは遅きに失します。今こそ、来年に向け対策を推進していくための仕組みづくりを進めていくべきと思いますが、知事の所見を伺います。
 さて、知事への緊急要望の中では、ヒートアイランド現象の緩和に向け、学校の校庭芝生化など、これまでの取り組みをさらに充実させた総合的な対策を講じるべきとしています。
 都はこれまで、緑化計画書制度により、新築建築物等の屋上緑化等に取り組んでおりますが、一層の推進を図るためには、学校の校庭芝生化は重要な対策です。今後、区とも連携して校庭の芝生化を進めるなど、学校の緑化を積極的に推進すべきと思いますが、所見を伺います。
 また、保水性舗装についても大幅に拡大することも要望しています。夏の晴天時には、路面温度が五十度以上にもなるアスファルト舗装の道路は、都心部において面積の四分の一を占めており、ヒートアイランド現象に大きく影響していると考えられます。保水性舗装は、路面温度上昇を約十度抑制する効果があることが検証されています。なお一層の拡大を図るべきと考えますが、今後の展開についてお伺いします。
 次に、産業政策の展開についてお伺いします。
 都内至るところ網の目のように張りめぐらされた商店街は、まさに大東京の活力の源泉であります。我が党は、商店街を一貫して応援してきたところであり、都の商店街振興施策の中心的事業である新・元気を出せ商店街事業の構築に当たっても、最大限の努力をしてまいりました。
 新・元気を出せ商店街事業は、都内の半数以上の商店街が活用する制度となり、商店街活性化に着実な成果を上げております。今後、さらなる充実を要望いたします。
 元気な商店街には共通する要素があります。アイデアや発想が豊かで、企画力にすぐれていること、企画を実行に移す行動力と組織力があること、そして、こうした取り組みを支える財務基盤がしっかりしていることが挙げられます。
 中でも、財務基盤の強化は必要不可欠です。商店街の中には、駐車場の運営やポイントカード事業による収益確保のほか、株式会社を設立して収益事業を行い、地域コミュニティ活動や商店街振興に還元しているところもあります。
 このほかにも、例えば、商店街ネーミングライツ、街路灯やアーケードへの企業広告掲示、オープンカフェやフリーマーケットの運営など、工夫次第で、地域の活性化を図りながら、商店街の財務基盤の強化にも役立つさまざまな事業が可能だと考えます。
 都は、商店街のアイデアと発想を生かしたこのような取り組みを積極的に支援していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、中小企業金融について伺います。
 今年度に入り、当初は景気が回復に向かっているとの見方が支配的でしたが、十一月の内閣府発表による月例経済報告では、景気判断が下方修正されるなど、ここに来て先行きの不透明感が広まっています。
 こうした中、産業労働局では、我が党の主張にこたえる形で、現在、制度融資の年末年始特別対策に取り組んでおります。今後、景気回復を減速させないためにも、来年度に向けて中小企業の資金繰りの改善や新たな事業展開を支える制度融資の充実を図るべきと考えます。所見を伺います。
 依然として厳しい経営状況にある多くの中小企業は、新銀行の本格開業を心待ちにしており、新銀行がさまざまな手法を駆使して金融支援に取り組むことに大きな期待を寄せています。
 こうした中、知事は、地域金融機関と連携をとった新しい企業再生ファンドを新銀行の本格開業前に立ち上げ、順次事業展開を図っていくと表明されました。
 そこで、このたびの新銀行が設立する再生ファンドについて、全体構想をお示しください。また、従来の方式に加え、地域金融機関とより緊密に連携をとった新しいファンドと述べていますが、具体的にどのような点が新しいのか、お伺いします。
 次に、新銀行ファンドの設立準備の状況は、現在どのようになっているか、また、その設立時期について、あわせて伺います。
 次に、アニメ・映像産業への支援について伺います。
 アニメ・映像産業は、国内だけでなく、海外への展開が期待される分野です。また、アニメプロダクションの約八割が東京都内に立地しているなど、アニメ・映像産業は東京の地場産業ともいえる存在です。
 しかし、韓国、中国などの各国が、映画産業やアニメ産業の振興を国家戦略とし、国を挙げて積極的な支援を行っていることから、今後、この分野における国際競争はますます激しくなると予測されます。
 したがって、都として、アニメ・映像産業に対するさらなる支援策が必要であると考えます。今回打ち出されたアニメ・映像産業支援策では、具体的にどのような内容を考えているのか、お伺いします。
 次に、産学公の連携について伺います。
 去る九月三十日、首都大学東京の十七年四月開学が文部科学省より認可されました。首都大学東京は、これまでの大学にはなかった新しい大学の形を目指すものであり、都民にとって本当にふさわしい大学の実現に向けて、開学準備に万全を期すよう強く望みます。
 都は先般、東京の産業を活性化する意欲と能力を持つ人材を輩出するため、大学改革の一環として、平成十八年度に産業技術大学院を開学することを明らかにしました。
 我が党は、首都東京が将来にわたって発展していくためには、人材の育成こそが不可欠であり、とりわけ産業の活性化に寄与し得る人材を育てていくことが今こそ求められていると主張してきました。
 そこで、産業技術大学院における東京の産業活性化に向けて育成する人材像と、そのための取り組みについて所見を伺います。
 先般、都は、産業技術大学院の開学にあわせ、二つの高専を統合再編して専攻科を設け、産業技術大学院も視野に入れた、九年間の一貫した体系的な技術者教育を実現させていくことを明らかにしました。このための取り組みと、より高度な専門性を持つ人材の育成という点でどのような期待ができるのか、所見を伺います。
 東京における産業活性化のためには、人材の育成のみならず、先端技術の研究活用もまた重要であります。東京の発展を支える新たな産業への支援が重点事業としても選定されておりますが、中でもナノテクノロジーは、情報通信、環境、医療など多くの産業において利用が期待される技術であり、中小企業が行うナノテクノロジーに関する技術開発や製品開発への支援は、将来にわたって東京の産業力を高めていく上で大きな意義があります。
 我が党も本年六月、最先端技術ナノテクノロジー推進議員連盟を立ち上げ、中小企業の技術開発などの取り組みを後押ししてきたところです。
 大田区の城南地域中小企業振興センターに、来年二月、ナノテクノロジーセンターの開設が予定されていますが、都は具体的にどのような事業を展開するつもりか、お伺いいたします。
 新大学と企業、そして行政が相互に密接な連携を図りつつ産業の活性化を図っていくことが今こそ求められています。そのためにも、首都大学東京においては、今後、東京のシンクタンクとしてその機能を十分に発揮していくよう要望しておきます。
 次に、都市基盤整備について伺います。
 まず、大橋地区再開発事業ですが、首都圏三環状道路の整備は、東京の活力や国際競争力を高めるなど、首都東京を再生する上で不可欠です。とりわけ整備の進んでいる中央環状線は、この十一月に最後に残った区間である品川線の都市計画決定を行うなど、全線開通に向け大きく動き出そうとしています。
 目黒区大橋地区には、この中央環状線と放射方向の首都高速三号線とを結ぶ大橋ジャンクションが予定されています。このジャンクション整備と再開発事業とはどのように関連するのか、お伺いします。
 首都圏の交通事情をかんがみますと、三環状の早期開業は都民の悲願であります。特に、現在工事中の中央環状新宿線の一刻も早い開業が期待されており、再開発事業も早期に進める必要があると考えます。
 そこで、再開発事業の具体化に向けてどのような取り組みをしているのか、お伺いします。
 次に、交差点すいすいプランですが、国土交通省の調査によると、都の交通渋滞による損失時間は全国一位となっており、都内の慢性的な交通渋滞は、都民の日常生活、生活環境、産業活動にはかり知れない悪影響を及ぼしています。
 現在、多摩地域を中心に実施している交差点すいすいプラン一〇〇は、渋滞緩和や交通安全を図るもので、完成した箇所では渋滞が大幅に緩和されるなど、大きな効果が明らかになっています。
 本プランでは、平成六年度から十カ年を経過した平成十五年度末で七十三カ所が完成または一部完成しており、都民からの高い評価を得ております。しかし、多摩地域においては、いまだ多くの渋滞交差点があり、その改善が急務であります。現行プランで事業が完了しない箇所について対応をどうされるのか、所見を伺います。
 また、現在策定中の次期プランでは、整備規模や計画期間をどの程度にするのか、お伺いします。
 次に、治水事業の効果と今後の取り組みについて伺います。
 東京でも、ことしは、二つの台風が来襲するなど、一時間に五〇ミリを超える豪雨が五回ありましたが、これまでにたびたび水害が発生していた神田川や目黒川、空堀川などでは、幸いにして大規模な浸水被害は発生しませんでした。これは、中小河川の護岸整備や調節池の整備など、都がこれまで取り組んできた治水事業の成果であります。
 そこで、まず、これまで整備してきた治水施設の具体的な効果について伺います。
 一方で、都心部の港区を流れる古川では、ことしも二度の台風により、明治通りや地下鉄南北線麻布十番駅が冠水するなどの被害が発生しました。
 そこで、今後、都内中小河川の整備にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、海の森の構想について伺います。
 先月下旬、中央防波堤内側海の森構想中間のまとめが報告されました。我が党はかねてより、この構想に対し、広大な空間を活用して豊かな森をつくることや、都民とともに植樹をしていくこと、また、それが次の世代へのプレゼントとなるものであることなどを主張し、応援をしてきました。これが実現すれば、面積約八十八ヘクタールの区部最大級の公園となり、都民に憩いと潤いを与える貴重な財産となります。
 こうした大規模な森をつくるに当たっては、都民を初め企業やNPOなど幅広い主体へ積極的にPRを行い、これらの人々に具体的に参加してもらうことが必要です。特に、企業の社会的責任が問われている今日、社会貢献活動に積極的に取り組もうとする企業、団体などにとって、この事業は格好の受け皿となります。
 そこで、こうした民間企業や団体などに対し、今後、理解と協力を得て整備すべきと考えますが、所見を伺います。
 第二回定例会の代表質問において、我が党は、森になるまでに長い年月がかかるからこそ、早期にドングリから苗木にし、それを植えるべきだと主張しました。
 この計画地では、天皇皇后両陛下の行幸啓を仰ぎ、平成八年に全国植樹祭を催し、天皇陛下の御製「埋立てし 島に来たりて 我が妹と いてふの雄木と 雌木植ゑにけり」を賜りました。既に両陛下お手植えの植樹地が整い、今回の構想を受けて、一日でも早い取り組みが望まれるものであります。
 そこで、改めて今後のスケジュールと具体的な取り組みについてお伺いします。
 次に、東京の基盤整備を担う中小建設業への発注にかかわる入札・契約制度について伺います。
 先般の国会において、我が党の公共工事品質確保に関する議員連盟で検討を進めてきた公共工事の品質確保の促進に関する法律が上程され、来年には成立するものと見込まれています。これは、公共工事の質を向上させるために、従来の価格面だけの競争から、価格と品質の両面で総合的にすぐれた調達へ転換を図るものです。
 都議会においても、我が党はこれまで、くじ引き落札や不良不適格企業の問題をたびたび取り上げ、指摘してまいりました。都は、その対策として、価格だけでなく技術力などもあわせて評価する総合評価の新たな契約手法の取り組みを表明しております。
 そこで、都が検討を進めている新たな総合評価の契約手法について、その内容と今後の実施予定についてお伺いいたします。
 次に、福祉・医療政策について何点か伺います。
 まず、次世代育成支援対策について伺います。
 我が国は、少子化の進行という国家の存亡にかかわる危機的な状況に直面しています。とりわけ東京においては、合計特殊出生率がついに一・〇を割り込み、少子化現象が先鋭的にあらわれています。
 我が党は、このような事態にかんがみ、働きながら育児を行うなど、すべての子育て家庭に対する支援の充実に加え、総合的な次世代の育成支援について社会全体で取り組むべきと主張してまいりました。
 こうした中にあって、都は、平成十七年度の新規事業として、次世代育成支援のための都独自の総合的な補助制度を検討しているとのことであります。このことは、我が党の主張を踏まえて積極的に取り組む姿勢が示されたものであり、高く評価いたします。
 都はこれまでも、石原知事のもと、東京から日本を変える政策を次々に打ち出し、大きな成果を上げてきました。この次世代育成という国家的命題に対しても、都が先導的な役割を果たすべきであります。
 また、来年度は、次世代育成支援対策推進法に基づく地域行動計画の初年度にも当たっております。
 そこで、改めて、本制度の考え方及び具体的な検討内容についてお伺いいたします。
 一方、次代を担う子どもを健やかに育てていくためには、児童虐待や少年非行等の問題に早急に対応していく必要があります。現在、子どもの問題に対する専門相談機関として、児童相談所、保健所、教育相談センター、少年センター等があり、それぞれ一定の連携のもとに専門的な見地から対応しております。
 この児童虐待などの問題については、まず、住民に身近な区市町村がこうした専門相談機関の支援を受けながら積極的に対応し、困難事例については、専門相談機関同士が一体となって取り組むことが極めて重要であります。また、子どもに適切な支援を行っていくと同時に、親に対する支援や指導など、総合的な支援を強化していかなければなりません。
 今回、平成十七年度の重点事業として、設置に向けた検討を行っていくこととされた子ども家庭総合センターは、支援の核となるべき拠点として期待を寄せるものです。
 そこで、この子ども家庭総合センターは、具体的にどのような役割、機能を担っていく考えなのか、所見を伺います。
 また、現在、児童虐待と並んで深刻化している少年非行についても、児童相談所における相談実態等を広く都民に明らかにしていくことが必要であると考えますが、所見を伺います。
 次に、都立病院における専門医の育成について伺います。
 近年、過疎地域を中心に、全国の公立病院では深刻な医師不足に陥っております。とりわけ小児科や産婦人科では、医師の過酷な勤務によって小児救急や周産期医療を支えている実態があります。
 多摩地域の公立病院においても、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科などの医療分野では、医師の確保に大変苦慮しております。現状では、地域的にも、また専門分野によっても、医師の充足状況にかなりの偏りがありますが、国は楽観視しており、専門医養成の具体的な取り組みは立ちおくれているといわざるを得ません。
 現在、都立病院は、行政が主に担うべき医療課題に着目し、小児総合医療センター、がん・感染症医療センター、精神医療センターなどの再編整備を進めています。国の動きが立ちおくれている中、都が、都立病院改革を契機として、率先して地域に不足する専門医の育成を図るため必要な努力を惜しむべきでないと指摘しておきます。
 そこで、まず、都立病院の臨床現場を活用して、専門性の高い臨床医を体系的に育成すべきと考えますが、現在の取り組み状況と今後の方針についてお伺いいたします。
 また、将来は、都立病院で育成した医師を多摩地域の公立病院へ派遣するなど、いわば都立病院が一つの医局として機能するような仕組みをつくってはどうかと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、個人情報保護条例について伺います。
 今回の条例改正の大きなポイントは、一つは、公安委員会及び警視総監が条例の実施機関となることであり、二つには、都が都内民間事業者の個人情報の取り扱いについて指導等を行うようになることです。
 公安委員会、警視総監が条例の実施機関に加わると、都の行政機関のすべてが条例の適用を受けることとなり、都における個人情報保護の実効性がより高まることを期待するものです。
 民間事業者については、おれおれ詐欺の頻発に見られるように、個人情報の悪用に対する都民の不安は大きなものがあります。来年四月からは個人情報保護法が施行され、民間事業者は個人情報保護の義務を負います。しかし、個人情報が五千人以下の小規模事業者については法の適用がなく、条例による支援や指導が必要なわけであり、今回の条例改正は、この点で重要な意義があります。
 では、都内の民間事業者、特に小規模事業者が個人情報を保護し、適切に管理していくために、都は具体的にどのような取り組みを行っているのか、お伺いします。
 次に、教育関係について伺います。
 十一月に東京都特別支援教育推進計画が示されました。この計画は、心身障害教育の歴史において初めての大きな改革ともいえるものです。この計画全体を見ると、東京都の心身障害教育がこれまで抱えてきたさまざまな課題に抜本的、総合的な改善を図り、ノーマライゼーション社会の進展に寄与することを目的とした姿勢がよくわかります。
 今回の計画は、ろう学校や寄宿舎の再編整備に対する我が党の主張や、都民、学校関係者等の意見が具体的に取り入れられております。
 例えば、知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校高等部の職業学科では、一〇〇%の企業就労を目指すとされています。計画の推進に当たり、この新たに設置する知的障害養護学校高等部が期待された成果を上げるためには、きめ細かな施策の展開が必要と考えます。見解を伺います。
 知的障害の軽い生徒に対する支援も重要ですが、従来からの養護学校を卒業した生徒それぞれの就労への支援も必要があると思います。新たなタイプの学校による職業教育の充実のほか、公助に依存していたこれまでの考え方から脱却し、公助、共助、自助のバランスのとれた施策を推進するためには、地域の知的障害の児童生徒を受け入れている従来からの養護学校においても、自立に向けた職業教育の充実が必要と考えますが、見解を伺います。
 また、障害者が企業就労を目指すには、雇用や福祉などの施策との関連も大きいと思いますが、これまで、それぞれの障害者施策が縦割り的に行われてきた傾向が見受けられました。こうした生徒の社会参加や自立に向けた施策の実施に当たっては、東京都の関係機関の相互の連携が欠かせないと思います。見解を伺います。
 次に、国民体育大会について伺います。
 来年二月に東京都で初めてアイスホッケー国体が開催されることになり、国体に対する都民の関心も徐々に高まってきています。平成二十五年に開催を予定している東京国体は、多摩・島しょの地域振興に係る大会として、その招致が都議会で決議されております。この趣旨を生かした国体として計画されていくものと、我が党は期待しています。
 この東京国体も開催まであと九年となりました。既に国体を開催した県の例では、国体の準備組織を立ち上げ、会場地となる区市町村の選定などの準備を開始する時期と聞いています。東京においても、速やかに開催に向けた準備を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 また、開催に当たっては、首都東京にふさわしい国体として、単なるスポーツの祭典に終わらせることなく、多摩・島しょ地域の発展にもつながるようなものとするべきです。そのためには、運営内容はもとより、都を初め会場地となる区市町村とも連携を図り、万全の体制で臨むことが重要であると考えますが、所見を伺います。
 教育問題の最後に、留学生対策など、私立専門学校の振興に向けた施策のあり方について伺います。
 去る十一月二十四日、都は、治安対策の一環として、留学生、就学生の違法活動防止のための学校調査結果を発表しました。現在、都内には、五万人を超える留学生や就学生が大学や日本語学校で学んでいると聞いています。しかし、一部の報道では専門学校だけが取り上げられたため、専門学校全体が悪印象を持たれてしまった嫌いもあります。治安対策も大事であり、それを進めるとともに、留学生の受け入れを適正に行っている学校や、まじめに勉学に励んでいる学生たちに対しては、さらに頑張っていただけるように、側面から何らかの応援をしていくべきではないかと思いますが、所見を伺います。
 以上で質問は終わりますが、本日は、昭和十六年の大東亜戦争における日米開戦の日に当たり、また、日露戦争開戦から百年目に当たります。司馬遼太郎氏の小説「坂の上の雲」に、極東の小国日本が大国ロシアとの戦いに勝利するまでの道のりが描かれております。そこで登場する人々は、日本という国の国づくりに夢と志を抱き、我が身を燃焼させた、凛とした背骨を持つ美しい日本人であります。
 さて、百年の時を経て、今の日本はどうでしょうか。戦後、奇跡の経済復興を遂げ、世界で最も豊かな国の一つとなり、ある意味で坂の上の雲をつかみましたが、同時に多くのものを失いました。犯罪の激増や企業の不祥事、また、権利を主張するばかりで義務と責任を顧みない風潮や助け合う精神の希薄化に、強い危機感を感じないわけにはまいりません。
 都政がこれらの社会的風潮を正し、東京と日本が再生できる施策を全力で推進されることを強く要望します。
 そして、我が東京都議会自由民主党は、責任政党として、改めて凛とした背骨を持つ美しい日本人の姿を思い起こし、東京と日本の再生に全力を尽くすことをお誓い申し上げ、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野村有信議員の代表質問にお答えいたします。
 いわゆる三位一体改革についてでありますが、今回の分権改革は、政府がみずから決めた骨太なる方針によりますと、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主自立の地域社会から成る地方分権型の新しい行政システム、つまり国全体の政治のスキームを構築し直すことにあったはずであります。
 しかし、国が決定しました全体像は、こうした理念からはるかにかけ離れておりまして、国庫補助負担金削減の数字合わせでしかないとしかいいようがございません。国の各省やそれぞれの政治家による目先の利害調整に終始しておりまして、地方分権の実現という改革の目的は忘れられていると思います。
 その政治のリーダーシップが一向に感じられず、実態は中央集権どころか、まさに実態は縦割りの中央分権という現状でありまして、極めて嘆かわしいというか、肌寒い思いがいたします。
 今、求められているのは、日本全体の発展につながる基本的改革を実現することでありまして、国と地方の役割分担を徹底してまず議論することから始め、明治以来の旧弊な現行の制度を、税制、財政の体質を思い切って改善することによって、旧弊な制度を根本的に改革することが必要だと思います。
 分権改革の成功なくして今後の我が国の確かな発展はあり得ないと思います。初心に返って仕切り直しを行うことを、国に強く求めていきたいと思います。
 大体、今回の混乱の中で、総理大臣が、余りおれの出番をつくるなと側近にいうというのは、私はどうも解せない話でありまして……。
 次に、不合理な財源調整措置についてでありますが、本来、税財源の地域配分は、我が国全体の発展を実現するとの観点に立ちまして、地域の行政需要に応じて行われるべきであります。
 東京を初めとする大都市は、日本の経済を牽引する重大な役割を担っておりまして、膨大な行政需要を抱えているにもかかわらず、それに見合う十分な税財源が配分されてはおりません。その例には枚挙のいとまがございませんが、こうした問題については、私たちも、ある危機感を持ちまして、事前に、知事本局長と一緒に諮問委員会の有力な民間の議員を歴訪しまして、意見もただし、こちらの主張もしましたが、本質的にはみんな社会工学的に持つ大都市の意味というものを理解してくれていると思いますけれども、今後、これがどういう形で反映されるかは、まだ予断を許さないところであります。
 お話のその総務大臣案は、行政体としての都と地域としての東京を、実は知りながらあえて混同し、改革によって都だけが増収になるような内容となっております。東京と地方を意図的に対立させ、東京からさらに税財源を吸い上げようとする、ためにする非常にこそくな論だと思います。このような都だけをねらい撃ちにした不合理な財源調整の強化は、断じて容認できません。
 都は、富裕団体、富裕団体といわれますが、富裕というものの意味合いはいろいろありまして、確かに財政の上ではまだ不交付団体に辛うじて立ちどまっておりますけれども、例えば通行、交通に関する時間というものの大きさ、あるいは個人の住宅の個人当たりの狭さなど、あるいは環境の問題もそうでありますけれども、富裕度というものは決して金目の上ではかれるものだけではないということを、やっぱり行政の主体である国も強く認識すべきだと思いますし、そういうものを踏まえて、都としては、大義なき国の動きが今後具体化することのないよう、都議会の皆様のご協力をいただきながら国に対して働きかけていくつもりでございます。
 次いで、行財政の改革についてでありますが、現在の日本が敗戦以来の歴史的転機にあることは、だれしも異論がないと思います。このような時期にあっては、確固たる歴史観、文明観に立って、将来を見据えた国の形を構想し、真の改革を実現することが政治の役割であると思います。
 現在、国が進めているいわゆる三位一体改革なるものにおいては、そうした指導性というものが一向に感じられません。首都東京の行政を預かる者として、国の分権改革の混迷をただ座視するわけにはいきませんし、まず、隗より始めよの言葉どおり、都みずからも、基本に立ち返りまして、東京の未来を開く抜本的な改革に取り組むことが必要であると考えております。
 官と民との役割の変化など、時代の動きを先取りした行政サービスの改革を進めるとともに、大都市行政の充実強化や首都圏全体の広域的な課題への新たな対応など、困難な課題にも立ち向かっていく決意でございます。
 従来、今までやっていなかった外部監査も入れまして、内部監査だけではなかなかつかみにくい行政のむだというものを、会計の専門家の監査の方々、公認会計士の方々に分析、指摘をしていただきました。鋭い改良についての指摘もありまして、内部も努力をしておりますが、これが一時に終わらないように、永続的にこういう姿勢というものを保持できるような、そういう新しい監視機関、管理機関というんでしょうか、それを、議会と民間、折衷した形で、私は、設けることで行政の合理性というものは確保されていくんではないか、今、その基本構想について検討中でございます。
 次いで、固定資産税の現状についてでありますが、国は、バブルの生成、崩壊の過程において、固定資産税については有効な策をもう講じることができませんでした。その結果、現行制度では負担の不均衡などさまざまな矛盾が生じておりまして、特に二十三区の商業地等は、全国に比べ過大な負担を強いられております。
 こうした状況を少しでも改善するため、平成十四年度に小規模非住宅用地の減免措置を導入しましたが、これで本質的な解決が図られたわけではありません。固定資産税に対する納税者の信頼を確保していくためには、現行制度を抜本的に見直し、不均衡を解消していく必要があると考えております。
 次いで、負担水準の上限引き下げ等についてでありますが、固定資産税は都と特別区の貴重な財源でありまして、公平、公正であることが税制の基本でありまして、不均衡の是正は早急に取り組まなければならない課題であると認識しております。
 商業地等の負担水準の上限引き下げについては、引き下げによる効果、都の財政状況、特別区や市町村への影響などを踏まえて、今後、積極的に検討していくつもりでございます。
 あわせて、小規模の住宅用地や非住宅用地、新築住宅に対する都独自の軽減措置の平成十七年度の取り扱いにつきましても、景気状況、都民の負担感などを踏まえ、今後、検討してまいります。
 次いで、十七年度予算編成についてでありますが、東京は、国際競争力の向上や治安の回復、災害への備え、中小企業対策など、数多くの課題に直面しており、来年度予算では、その解決に向け、重点的に財源を配分し、都民の負託に積極的にこたえていく必要があると考えております。
 また、都財政を取り巻く環境について見ますと、昨年度までとは異なりまして、企業業績の上向きを受け、税収の回復が期待できます。しかしながら、この景気がいつまた反転するかも知れず、その兆候も散見されておりまして、加えて、三位一体改革が都財政に与える影響については、予断を許さない状況にあります。
 したがって、十七年度予算の編成に当たりましては、首都東京の再生と都民サービスのさらなる充実を目指しつつ、依然として厳しい財政状況が続く中で、第二次財政再建推進プランの着実な実施と隠れ借金の──これはかなり膨大なものがございますが、隠れ借金の解消など、都財政の体力回復に努めていきたいと思っております。
 次いで、震災対策についてでありますが、今回の新潟中越地震では、まず、みずからの生命はみずからが守るという自助と、地域の中で間近に住んでいる人たち、住民同士が助け合うという共助の大切さを再認識いたしました。
 一方、その自助、共助を前提とした、県なり、他県なりあるいは国全体の公助としてのセクターの役割の重要性も痛感いたしました。
 迅速な初動態勢の確立や適切な情報把握、指揮命令系統の一元化などの課題が改めて浮き彫りになりましたが、こうした教訓を踏まえて、今後、国、区市町村等と連携を一層強め、より震災に強い首都東京を目指していきたいと思います。
 私も、偶然、ワシントンに用事があっておりまして、九・一一を間近に体験し、私のホテルの目の前で昨日訪れたペンタゴンが炎上するのを眺めて、強いショックを受けましたが、帰国してすぐ、他県とも諮って、国にも建言しましたが、まず、国が動かないので、首都圏に限ってのFEMA、災害対策の連絡体制のようなものをつくりました。
 今までは、災害が起こったときに、東京なら東京、埼玉なら埼玉から、官邸、中央政府への連絡のカウンターパートはわかっておりましたけれども、ならば、隣接した神奈川県と東京、東京と埼玉県の連絡網というのはあるかといったら、これは全然なかったわけでありまして、そういうものを設定することで、図上訓練の上でもかなり機能的な構図ができて、これは、一たん緩急のときには即座に活用のできるそういった機能を改めて備えることができたと思っております。
 次いで、ヒートアイランド対策についてでありますが、この夏は記録的な猛暑となりました。これは、世界的な異常気象に加え、大都市特有のヒートアイランド現象によるところも大であります。
 都はこれまでも、丸の内や汐留などで、モデル事業として保水性舗装や屋上緑化等の対策を実施してまいりました。今後は、特に対策が必要な地域を推進エリアとして設定しまして、地元自治体や民間事業者と協働し、保水性舗装や校庭芝生化などの対策を中心的に実施してまいります。
 国に対しては、都市再生の一環として積極的な対策を講じるように強く働きかけ、連携して取り組んでまいります。
 次いで、新銀行の中小企業ファンドについてでありますが、中小企業が保有する貴重な人材やノウハウ、技術というものは、一たん企業が破綻すると回復がもう困難でありまして、ひいては東京の、いや、もう世界の経済にとっても大きな損失となりかねません。
 例えば、ご存じかもしれませんが、アメリカが時々新規に上げます新しい宇宙船、この宇宙船の頭部というものは、非常に巧緻に計算されたラインでできておりまして、これを計算どおり正確につくり出す技術は日本にしかありません。
 これは、本当に限られた職人が、金属の盤を回して、遠心力を使ってそれを曲げて設計図どおりつくっていくという、へら絞りという技術でありますけれども、これも、その継続者がだんだんいなくなって、非常に危機にさらされておりますが、こうした、つまり、限られた技術者というものがだんだんだんだん喪失されているということは、東京にとっても世界にとっても大きな損失となりかねないわけであります。
 また、中小企業を支える地域金融機関においても、速やかな不良債権処理が迫られておりまして、こうした状況を踏まえ、早期に中小企業の再生支援に取り組む必要があることから、先にもCLO、CBOといった債券市場というものを創設しました。
 世間から見ればといいましょうか、彼らにとっては大変なお金でありますけれども、しかし、大手の銀行が融資している額に比べれば、本当に何百万、せいぜい多くて千万、二千万という単位の金融を受けることで再生して、実際、我々が今まで対象としてきた七千社の中から既に三十二社が、再生しただけではなくて上場にこぎつけたというのは、非常に私は意味ある事実だと思います。
 こうした状況も踏まえまして、さらに早期に中小企業の再生支援に取り組む必要があることから、本格開業前に再生ファンドを立ち上げることにいたしました。
 このファンドは、従来の方式によりますが、中小企業を幅広く支援するファンド、地域金融機関との協調、連携をして再生を支援するファンド、新銀行自身の不良債権を対象とするファンドの、異なる機能を持つファンドを、地域金融機関と連携し、状況に合わせて適切に活用することによりまして、中小企業の再生を柔軟かつ効果的に実現するものであります。
 なお、他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育並びに国体に関します六点の質問にお答え申し上げます。
 まず、産業技術大学院を視野に入れた一貫した技術者教育についてでございますが、都立高等専門学校は、現在、法令の規定によりまして、教育委員会の所管となっております。
 このため、産業技術大学院との一体的な運営を行っていくことができますよう、構造改革特区提案を行うなど、都立高等専門学校を、都教育委員会から、来年四月設立予定の公立大学法人、首都大学東京に移管する準備を進めております。
 また、人材育成の観点からは、近年の国際競争の激化、産業の空洞化に対応するため、付加価値の高い製品を生み出すことができる開発型人材の育成が求められておりますことから、十六歳という若い世代から産業技術大学院を視野に入れた体系的な技術教育を行うことによりまして、企業が求める応用力と創造力を兼ね備えた高度専門技術者を育成してまいります。
 次に、新たに設置します養護学校高等部についてでございますが、特別支援教育推進計画の第一次実施計画におきまして、知的障害が軽い生徒を対象とした職業的自立を目指した養護学校高等部を三校設置してまいりますが、この新たな養護学校高等部の設置に当たっては、既に二校に設置されている職業学科の実績を生かし、新たな教育課程を開発、実践しますとともに、インターンシップの活用、充実など、将来の職業的自立に向けた専門的な教育を行っていきますとともに、就労促進や職業定着を目的とした学校版ジョブコーチ制度の導入を検討するなど、職業教育の充実と就労支援が一体となった施策を展開してまいります。
 次に、既存の知的障害養護学校におきます職業教育の充実についてですが、ご指摘のように、障害のある生徒の社会参加や自立に向け、従来からある養護学校におきましても、職業教育の充実を図ることは重要でございますので、既存の知的障害養護学校におきましても、学齢期から社会参加期への円滑な移行支援を目指します個別移行支援計画の充実や、福祉、労働との連携による就労支援などを行いますとともに、小学部から高等部までの十二年間の一貫性のある教育内容、方法の充実のあり方の検討や、企業等の専門家を講師として活用するなど、職業教育の一層の充実を図ってまいります。
 次に、障害のある生徒の社会参加や自立に向けた関係機関の相互の連携についてですが、障害のある児童生徒に対する、個に応じた教育内容、方法を充実するためには、保健、医療、福祉、労働等の関係機関や専門家との連携を一層推進する必要がございます。
 このため、平成十六年度中に関係者間の調整を行い、十七年度に教育庁と関係局等によります協議会を設置をして、就労支援を初め、障害のある児童生徒の乳幼児期から学校卒業後までのライフステージに応じた効果的な支援を行うなど、相互の連携を図ってまいります。
 次に、国民体育大会の開催についてですが、都としては、多摩・島しょと区部の多様な地域特性を生かしながら、議会における招致決議や都民の期待、さらには昨今取り組まれている国体改革の動向を踏まえて、多摩・島しょ地区を中心とした魅力ある国体を目指してまいります。
 今後、国体の開催に向け、関係部局や区市町村による検討組織を設置しまして、区市町村や競技団体の意向を調整し、会場地などを選定しますとともに、開催基本構想の検討を行ってまいります。
 また、平成十九年には、都議会や区市町村、経済界、市民団体など、各界各層の方々による東京国体準備委員会を設立しまして、開催の具体的な取り組みを決定していく予定でございます。
 最後に、国体開催の目的とそれに向けた区市町村との連携についてですが、お話のように、都としましても、東京、とりわけ多摩・島しょ地域の持つ産業や観光資源などの魅力を全国に十分アピールして、これら地域の発展に資する大会とすることが重要でありますことから、都と区市町村が密接に連携することが不可欠でございます。
 都としましては、各種目ごとに開催される競技会の会場や宿泊などの準備の主体になる区市町村との連絡調整が円滑に進むよう、連絡会議を設置をしまして、大会に向けた合意形成を図りながら、開催準備に万全を期してまいります。
   〔主税局長山口一久君登壇〕

○主税局長(山口一久君) 本年度の都税収入についてでございますが、輸出、生産の増加等を背景とした企業収益の大幅な改善によりまして、法人二税を中心に堅調に推移しており、本年九月までの上期で、既に前年同期比約千六百億円の増収となっております。
 今後の税収の動向につきましては、十一月末の申告状況等を見きわめる必要がありまして、確たることを申し上げる状況ではございませんが、最近の企業業績の動向を勘案しますと、当初予算額を相当程度上回る税収が期待できるものと考えております。
 また、平成十七年度の都税収入見積もりにつきましては、現在、精査中でございますが、十七年三月期決算の大企業の収益が引き続き好調といわれています。一方、このところの景気減速に加え、原油高、円高などの懸念材料もあり、今後、景気動向などを注視しつつ、的確に算定してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 大規模震災時の応援体制についての質問にお答え申し上げます。
 被害が広範囲に及ぶ場合は、国はもとより、被害を受けてはおりません他府県や民間の協力を得ることが不可欠でございます。都は、地域防災計画で八都県市や一都九県など、相互応援協定によりまして、救援、救護や応急復旧対策における人的、物的支援を確保いたしますとともに、防災機関、民間団体との協力体制の確立に努めております。
 先月には、八都県市が共同で広域防災プランを策定いたしまして、複数の都県市で震度六弱以上の揺れが観測されました場合には、合同で応援調整を行う組織を設置するなど、広域応援の仕組みを構築いたしました。
 また、新たな大規模事故への対処なども含めまして、相互応援協定の見直しを検討することにいたしました。
 今後とも、他の自治体との連携を強めますとともに、民間団体、事業者との協定締結を推進し、応援協力体制の確立に努めてまいります。
   〔消防総監白谷祐二君登壇〕

○消防総監(白谷祐二君) 救助活動体制の強化についてのお尋ねでありますが、東京消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、消防救助機動部隊、通称ハイパーレスキュー隊を平成八年に二部隊整備し、その後、平成十四年には、NBC災害に対応する一部隊を増強してまいりました。このほか、救助活動専任の特別救助隊を二十二の消防署に配備するなど、救助活動体制の整備に努めてまいりました。
 しかしながら、首都東京に地震等の大規模な災害が発生した場合には、甚大な被害が想定されております。このため、今後、新潟県中越地震の被害調査結果なども踏まえまして、ご指摘のハイパーレスキュー隊の増強整備を初め、救助訓練施設の拡充や新たな救助活動資機材の導入を検討するなど、救助活動体制の一層の強化に努めてまいります。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 災害対策及び福祉・医療施策に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、三宅村民の帰島後の生活再建についてでありますが、村民の生活再建は、自助努力を基本に、国の支援金や貸付制度などを最大限に活用しながら進められるべきものと考えております。
 しかしながら、今回の三宅島災害は、四年以上の長期にわたって避難生活を余儀なくされている、過去に例のない災害であり、住宅などの生活基盤に甚大な被害が生じていることから、今回、都は、国の制度では適用されない住宅の修繕などを対象とした、都独自の支援制度を創設することといたしました。
 これに加え、村民に対する支援策として、国の貸付金に対する都独自の上乗せや、これら貸付金に係る利息分に対する補助を実施し、負担の軽減を図ることとしております。
 都としては、村民がこれら諸制度を最大限有効に活用し、早期に生活再建を図ることができるよう、村などと緊密に連携しながら積極的に支援してまいります。
 次に、次世代育成支援緊急対策総合補助制度についてでありますが、次代を担う子どもたちが、個性を生かし、創造力を培いながら、健全に成長することができる環境を整備することは、親はもとより、私たち大人に課せられた責務であり、社会全体の課題であります。
 本制度は、こうした観点から、区市町村が、これまでの取り組みに加え、次世代育成のための基盤を緊急に整備できるよう、都独自の総合的な支援策として検討しているものであります。
 具体的には、すべての子育て家庭に対する支援を基本に据え、子ども施設の安全・安心の実現や子どもたちの居場所づくりなどを考えております。
 次に、子ども家庭総合センターの役割及び機能についてでありますが、家庭や地域の養育力が低下する中、虐待、非行などの問題は複雑、深刻化しております。問題の解決を図るためには、福祉保健医療、教育などの専門相談機関が一体となって、子どものみならず、親も含めた家庭に着目した総合的な支援を強化していく必要があります。
 そのため、都においては、虐待や非行に関する専門相談機関から成るチームが行う子どもと家庭に対する総合的かつ効果的な支援、及び虐待などにより分離した家族の再統合への専門的な支援などの機能を持つ、仮称子ども家庭総合センターの設置に向けて準備を進めてまいります。
 最後に、非行児童の相談実態についてでありますが、児童の非行は、本人自身の問題だけではなく、家庭における不適切な養育や、社会全体の規範意識の低下などが相まって生じているものと認識しております。
 非行児童に対する有効な立ち直り支援策を講ずるためには、非行に走った原因、家庭の状況などを詳しく分析、検証を行い、実態を明らかにすることが必要であります。このため、ご提言も踏まえ、都内のすべての児童相談所と児童自立支援施設における非行相談事例の現状と課題を取りまとめ、その結果を来年の早い時期に公表し、今後の非行児童の自立支援の取り組みに生かしてまいります。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 災害対策及び産業政策に関する四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、三宅島への帰島に伴う商工業者への支援についてでございますが、三宅島の商工業者に対しましては、これまで、災害復旧のための新規融資に対する利子補給や信用保証料の補助、既往債務の返済猶予などの措置を講じ、負担の軽減を図ってきたところでございます。
 帰島後の円滑な事業展開のために、新たな資金需要にこたえるべきことはご指摘のとおりでございまして、今後、災害復旧融資における支援の充実を検討してまいります。
 次に、商店街の振興についてでございますが、お話しのように、商店街が、地域の特性や商店街の実情に合わせてみずから創意工夫し、自主財源を確保しながら地域や商店街を活性化する取り組みを行うことは、極めて有意義でございます。一方、その実施に当たっては、街路の占用や景観への配慮など、関係機関との調整や地域住民の理解が必要となることもございます。
 今後、関係局等と調整を図るなど、商店街がこのような取り組みを円滑に進めていけるよう積極的に支援をしてまいります。
 次に、制度融資の充実についてでございますが、現在、制度融資では、中小企業の年末の資金需要にこたえるため、経営支援融資の対象事業者の売り上げ減少要件の緩和、クイック融資の限度額引き上げなどの特別対策を行っております。
 さらに今後も、引き続き厳しい経営環境にある中小企業を資金面で支えるとともに、新たなチャレンジを行う中小企業の支援にも力を入れ、本格的な景気回復と東京の産業の活性化を目指してまいります。
 こうした考えのもとに、中小企業の資金ニーズをきめ細かく把握し、制度融資の一層の充実に努めてまいります。
 最後に、アニメ・映像産業への支援策についてでございますが、アニメや映像産業を支えている制作会社は、そのほとんどが中小企業であり、資金調達力や事業展開力が弱く、十分に制作能力を発揮できない現状にございます。
 都は、制作会社への資金面での支援の仕組みを国と協力して構築するとともに、アニメ・映像作品等の情報を検索、発信できるデータベースを構築するなど、海外への販路開拓を含めた事業展開支援に取り組んでまいります。
 こうした取り組みを通じまして、中小制作会社の自立的経営を促すとともに、アニメ・映像産業の活性化を図ってまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) DPF装置の指定申請など、四点のご質問にお答えいたします。
 まず、DPF装置の指定申請に関し不正を行った三井物産への対応についてでございますが、事業者の方々の骨身を削るようなご努力をいただいて進めてきたディーゼル車規制に関連しまして、このような事件が起きたことはまことに残念でございます。
 今回の事態は、三井物産が虚偽のデータを使用したという、事業者には全く責任のない原因によるものでございます。今後、三井物産がユーザーへの対応を誠実に実行し、被害を受けた事業者に不利益が生ずることのないよう、都として強く指導してまいります。
 次に、事業者に対する弾力的な対応についてでございますが、三井物産では、十二月一日にユーザーへの対応策として、代替品との無償交換、交換作業中の休車損害の補償、車両の買いかえが必要な事業者への対応などを公表いたしました。これらは当然の措置でございまして、三井物産に対しては、事業者の実情を踏まえた必要な対策をとるよう、さらに求めてまいります。
 また、事業者の方々の対応にはさまざまな選択が予想されるため、都としても、事業者の声を親身に受けとめまして、適切な取り扱いを行ってまいります。
 次に、再発防止など、今後の都の対応についてでございますが、多くの事業者の方々の多大な協力をいただいて進めてきたディーゼル車規制に関連してこのような事件が起きたことを都は重く受けとめており、今後新たに行うDPF指定審査におきましては、環境科学研究所で確認試験を行うなど、虚偽の申請に対する効果的な再発防止策を早急に講ずるほか、的確な執行体制の整備に努めてまいります。
 最後に、ヒートアイランド対策に関しまして、校庭芝生化についてでございますが、校庭の芝生化は、大きな緑化面積が確保でき、高いヒートアイランド対策効果があるばかりでなく、環境教育の生きた教材としての活用も期待されます。また、保護者や地域と協働で芝生の維持管理に取り組み、地域コミュニティの活性化に寄与した事例もございます。
 こうしたことから、十七年度の重点事業といたしまして、区立の小中学校の校庭芝生化や壁面緑化など、学校の緑化を地域と協働して進めるための財政支援を行うなど、ヒートアイランド対策の一層の推進を図ってまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 道路及び河川に関する五点の質問にお答えいたします。
 まず、保水性舗装についてでございますが、ヒートアイランド対策の一環として、平成十三年度から十六年度までに、都道上で約六・四ヘクタールの試験施工を実施いたしました。その結果、路面温度上昇の抑制効果や舗装の基本的性能である、ひび割れなどに対する耐久性を確認できました。
 これを踏まえ、保水性舗装を本格的に実施するため、経済的で効果的な標準構造や施工方法について、国に先駆け、都独自の基準を今年度内に定めてまいります。
 十七年度は、この新たな基準に基づき、重点事業として、ヒートアイランド対策推進エリアにおきまして保水性舗装を集中的に実施してまいります。
 次に、交差点すいすいプラン一〇〇についてでございますが、すいすいプランは、比較的短期間に少額の投資で、交通渋滞の緩和、交通事故の防止、沿道環境の改善に大きな効果を上げております。平成十六年度末で八十三カ所が完成または一部完成する予定でございます。
 現行プランは、平成十七年度を最終年度として事業を進めておりますが、期間内に完了しない箇所につきましては、基本的に次期プランに組み入れ、引き続き早期の完成を目指してまいります。
 次に、次期プランの整備規模と計画期間についてでございますが、次期プランは、これまでの実績や他事業との連携など路線全体の効果を重視し、現在、中間のまとめを公表し、都民の意見を聞きながら計画策定を進めております。その規模は、現行プランと同程度のおおむね百カ所、計画期間は十カ年と考えております。
 多摩地域の渋滞対策につきましては、交差点すいすいプランの着実な推進に加え、道路ネットワークの整備や連続立体交差事業など、総合的に取り組んでまいります。
 次に、治水施設の具体的な効果についてでございますが、ことしの台風におきまして、神田川や目黒川などでは、河道拡幅の進展に加え、環状七号線地下調節池や荏原調節池などの整備により、幸いにして河川からの洪水被害を免れました。
 特に神田川では、台風二十二号において、これと同程度の豪雨であった平成五年の台風十一号と比較して、浸水の被害を受けた家屋は三千棟から十棟程度に激減いたしました。これは、環状七号線地下調節池が一時的に洪水を貯留し、治水機能を最大限に発揮したことによるものでございます。
 最後に、中小河川整備の取り組みについてでございますが、都は、水害から都民の生命と財産を守るため、現在、市街化が著しく進展し、水害の危険性が高い石神井川や空堀川など十六河川で、重点的に河道の拡幅を実施するとともに、第二期環状七号線地下調節池などの整備を進めております。
 また、都心部の古川は、川沿いに高速道路の橋脚やビルが建ち並び、拡幅が困難なことから、早期の水害軽減に効果的な地下調節池の整備に係る基本的な調査検討を行っております。
 今後とも、財源の確保に努め、重点的かつ効率的に中小河川の整備を進めてまいります。
   〔新銀行設立本部長津島隆一君登壇〕

○新銀行設立本部長(津島隆一君) 新銀行の再生ファンドに関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、地域金融機関と連携をとった新しい再生ファンドについてでございますが、従来の再生ファンドでは、取引先に対する債権の全額をファンドが買い取るため、長年取引のある金融機関と債務者とが切り離されることになり、企業再生が進みにくい面があることから、ファンドの活用について一定の制約がございました。
 新銀行ファンドは、提携地域金融機関と密接な関係にある中小企業に対する債権について、当該金融機関の意向を踏まえつつ、その一部を買い取り、残りの債権は地域金融機関が引き続き保有し、債権者として残る新しい方式を取り入れており、これにより、地域金融機関が当該企業との取引の継続性を保ちながら、より確実な企業再生を実現する効果を期待するものでございます。
 次に、再生ファンドの設立準備状況及び設立時期についてでございますが、現在、出資に関する規程、システム、運営体制などのインフラ整備や買い取り可能な不良債権について、必要な調査等を行っております。
 設立時期につきましては、まず、来年二月を目途に、中小企業の再生を幅広く支援する従来方式の再生ファンドを立ち上げます。さらに、新銀行の開業後に、地域金融機関の不良債権の一部を買い取り、地域金融機関と協調、連携して企業の再生を支援する新方式のファンドや、新銀行自身の不良債権を対象とするファンドを順次立ち上げてまいります。
   〔大学管理本部長村山寛司君登壇〕

○大学管理本部長(村山寛司君) 産学公連携に関します二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、産業技術大学院についてでございますが、現在、産業界におきましては、高度なIT技術を持った人材の不足が深刻化しております。また、東京の中小企業が持っている高度な技術を的確、迅速に製品化に結びつけることのできる人材の確保が、アジア諸国との厳しい競争の中にあって急務となっております。
 平成十八年に開設を予定しております産業技術大学院は、こうした産業界のニーズにこたえられる高度な開発力、企画力を備えた人材を育成し、東京の産業力の向上に寄与することを目的とする専門職大学院でございます。
 したがいまして、企業の現場で活躍している実務家を教員に招きまして、実際に現場で生じている具体的課題を取り上げ、それを解決することを通じまして技術や知識を体得させていくといった、一般の大学院ではできない実践的な教育に取り組んでまいります。
 次に、ナノテクノロジーセンターについてでございます。
 いわゆるナノテクは、今後有力な成長分野であるとともに、さまざまな産業の基盤となる技術でございまして、東京の産業力強化にとって不可欠なものでございます。産業界の関心も高く、既に意欲的な七十六社がナノテク事業化協議会に参加している状況にございます。
 来年二月の開設を予定しておりますナノテクセンターにおきましては、中小企業、都立産業技術研究所、大学等による共同研究を推進するとともに、最新の機器を設置して中小企業に開放し、技術指導や技術相談を行ってまいります。
 こうした取り組みを通じまして、ナノテクセンターをナノテク分野における産学公連携、企業間連携の拠点といたしまして、中小企業の技術力の向上を図り、東京の産業を活性化してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 大橋地区再開発事業に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、大橋ジャンクション整備と再開発事業との関連についてでございますが、首都高速中央環状線の大橋ジャンクションは、事業中の新宿線、東名高速とつながる三号線及び品川線と接続するなど、高速道路ネットワークの形成を図る上で極めて重要な施設でございます。
 本ジャンクションは、地域のまちづくりに大きくかかわることから、その整備に当たりましては、定住性の確保はもとより、周辺環境に配慮したにぎわいのあるまちをあわせて実現していく必要があります。このため、周辺のまちづくりを、土地の高度利用を図りながら、都施行の再開発事業で行うことといたしました。
 次に、再開発事業の具体化に向けた取り組みについてでございますが、大橋地区再開発事業は、その進捗が中央環状新宿線に大きな影響を与えることから、早期事業化が何よりも重要であります。
 このため、地権者などと精力的に話し合いを行い、コンピューターグラフィックスなどを積極的に活用いたしまして、新しいまちのイメージを具体的に提案しながら、再開発の事業計画案を作成してまいりました。
 今後は、国に事業認可申請を行うなど、事業着手に向けた手続を迅速に進め、ジャンクション整備と一体となった大橋地区のまちづくりの早期実現に努めてまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 海の森構想についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、海の森構想における企業等の協力についてでありますが、お話しのように、都民はもとより企業などに対して、海の森の事業についての理解と協力を得て、連携して事業を進めていくことは、この構想の大きな柱でございます。
 その一つの試みとして、この秋に、民間団体などの協力を得て、海の森に植樹する苗木を育てるため、小学校でドングリからの苗木づくりを始めたところでございます。
 現在、海上公園は、都民や地元企業の参加を得て、砂浜の清掃を行うなどの社会貢献活動の場ともなっております。
 今後、こうした実績を生かしまして、海の森づくりにおける民間との連携の仕組みを構築しながら、経済団体や個別企業等に対し、積極的な参加を働きかけてまいります。
 次に、海の森構想の今後のスケジュールと具体的な取り組みについてでございますが、現在、中間のまとめにつきまして都民意見を募集しているところであり、今年度末の最終答申に反映させてまいります。これを踏まえて、来年度は基本計画を策定し、その後、三十年にわたり段階的に整備を進めてまいります。
 これと並行しまして、土壌改良のための剪定した枝葉のリサイクルや、ドングリからの苗木づくりなどを行い、できるだけ早期の植樹に向け、着実に取り組んでまいります。
 また、森づくりの過程で利用者等の意見も聞きながら、暫定的な利用も図ってまいります。
   〔財務局長松澤敏夫君登壇〕

○財務局長(松澤敏夫君) 新たな総合評価による契約手法についてのご質問にお答えいたします。
 公共工事の発注におきましては、価格だけでなく品質の確保を図ることが極めて重要であり、通常の最低価格による自動落札方式ではなく、技術力もあわせて評価する簡易な総合評価方式について、現在、具体的な検討を進めているところでございます。
 この方式の実施に当たりましては、価格とあわせまして、入札参加者の施工能力を示す過去の工事実績や、配置予定技術者の資格、経験等を評価対象とする方向で検討しておりまして、このことにより、安定した品質の確保や、不良、不適格企業の排除に効果が期待できるものと考えております。
 今後、本年度中に検討結果を取りまとめまして、試行を開始し、平成十七年度以降、本格実施に向けて鋭意取り組んでいく予定でございます。
   〔病院経営本部長押元洋君登壇〕

○病院経営本部長(押元洋君) 都立病院における医師の育成について二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都立病院における専門医の育成についてでございますが、都立病院では、これまで、若手臨床研修医の受け入れを初め、都立病院独自の施策として、一定の臨床経験を有する医師を対象とし、救急、小児、精神などの各専門分野における専門研修医の育成に取り組んでまいりました。
 今後は、こうした臨床研修制度をより体系的に整備、拡充いたしまして、高度な専門知識と診療能力を有し、患者中心の医療を実践できる専門医の育成に力を入れてまいります。
 次に、都立病院で育成をいたしました医師の派遣についてでございますが、経験豊かな指導医のもとで多様な症例を数多く経験できるという都立病院のメリットを生かしまして、若手の医師を幅広く募集し、優秀な専門医として育成、供給することを通じまして、都立病院といたしましても、多摩地域の公立病院の人材の確保に積極的に貢献をしてまいります。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君) 個人情報保護に関する質問と私立専門学校に関する二つの質問にお答えいたします。
 まず、民間事業者の個人情報保護に対する都の取り組みについてでございますが、取り扱う個人情報が五千人以下の中小事業者については法の適用がありません。個人情報の適正な取り扱いを確保できるよう、都が指導を行っていく必要がございます。
 このため、都では、これまで、都内の事業者団体を訪問し、個人情報保護についての認識や意見、取り組み状況の把握を行いました。その結果、具体的な対応に悩む中小事業者が多いことから、その実態や要望を踏まえまして、個人情報を適正に取り扱う具体的方法を示した標準的な指針を策定しまして、広く周知を図るとともに、個別相談に応じるなど、きめ細かな対応をしてまいります。
 また、不適正な取り扱いが生じた場合には、今回、条例の改正によりまして、都が助言、指導、勧告などを行えることといたしまして、個人情報取り扱いの適正化を図ってまいります。
 次に、留学生対策など、私立専門学校の振興についてでございますが、今回の調査は、留学生、就学生の違法活動防止のための学校調査でございまして、都が先鞭をつけることで全国に波及させていこうとしたものでございます。
 お尋ねの私立専門学校の振興策につきましては、現在、都の重点事業として、留学生などが在籍する学校に対する相談窓口の設置を行っておりますが、今後とも、多言語による留学生などの生活マニュアルの作成、学校関係者に対する研修内容を充実するなど、ご指摘の点を踏まえまして、留学生等が安心して生活できる環境づくりに努めてまいります。

○議長(内田茂君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時四十九分休憩

   午後三時十二分開議

○副議長(中山秀雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十四番富田俊正君。
   〔百二十四番富田俊正君登壇〕

○百二十四番(富田俊正君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について何点かお伺いをさせていただきます。
 まず、分権改革の推進についてお伺いをいたします。
 去る十一月二十六日、国の三位一体改革の全体像が政府・与党合意の末にまとめられました。地方六団体が国庫補助負担金の改革案を国に提出して以来、削減対象とされた国庫補助負担金を所管する各省や国会議員など、利害関係者がこの改革案に一斉に抵抗するなどの混乱がありました。これに対し、改革の実現を求める自治体側が反論を展開し、三位一体改革をめぐる議論が連日新聞紙面を大いににぎわしました。
 しかし、これだけ議論が盛り上がったにもかかわらず、改革の全体像として合意された内容は、三兆円の補助負担金削減を達成するため、例えば国民健康保険の国庫負担切り下げに見られるように、地方の権限を拡大するどころか、将来の国の負担増大を見越して、自治体への負担転嫁を意図したとしかいいようのないものまで持ち出されています。国の各省と、これに便乗した族議員などの利害調整ばかりが優先され、改革に関する本質的な議論は骨抜きにされてしまったというのが率直な感想であります。本当に自治体の自立実現を目指すというのであれば、国のあり方そのものにまでさかのぼった抜本的な改革が必要であり、そのためにはまさに政治が我が国の将来を見据えて、強力なリーダーシップを発揮していくことが何よりも不可欠だと考えています。しかし、地方案を真摯に受けとめるとした小泉首相は、政府と与党との調整の過程では、できれば自分のところに持ってこないでほしい、結論を出してほしい、そしてこの無惨な結果に対しては、私の出番をなくしてくれて感謝していますと述べたとされています。余りにも無責任だといわざるを得ません。
 このような政治によるリーダーシップのあり方も含め、今回の改革の全体像に対する知事の率直な感想をまずお伺いをいたします。
 次に、震災対策について伺います。
 去る十月二十三日、新潟県中越地方において震度七という激しい地震が発生し、その後の活発な余震活動などで甚大な被害が発生しました。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災されました皆様にお見舞いを申し上げます。
 東京都では、早くも発災翌日から関係各局がそれぞれの分野で積極的に支援行動を開始しており、その中で、東京DMATやハイパーレスキューは十分に機能することが証明され、私たちは高く評価をしているところでございます。しかし、こうした被災後の対応力が充実してきているとはいえ、地震時の被害抑止力、特に住宅の耐震性にはまだまだ問題があるのではないでしょうか。
 耐震診断にかかる費用は比較的安価ですが、自宅が耐震上問題ありとなった場合の工事費用の負担を心配する余りに、診断さえ受けない都民が多くいます。補強工事にかかる費用は、ある業界団体の実績データでは、木造住宅の場合、平均百十万から百二十万円程度です。この金額は被災時のリスクを考えるならば決して高いとはいえないと思いますが、それにもかかわらず耐震改修が進まないのは、やはり一時的投資に対する経済的な負担感が大きいからではないでしょうか。
 折しも、国土交通省が、住宅の耐震補強工事について所得税と個人住民税の控除により支援する制度を導入する方針を打ち出したところです。これに加えて、都独自の支援制度を導入することにより、住宅の耐震補強はより一層推進するものと考えます。例えば耐震診断の経費に対する補助、耐震補強工事の借入金に係る利子補給、固定資産税の減免などが考えられますが、建物が壊れないということを公共性の一面としてとらえるならば、耐震補強工事費に対する公的補助へも踏み込むべき時期にあるのではないかと考えます。
 また、工事費の低減に寄与する一方策として、多摩産材を補強材として安価に提供するということも考えられますが、これは森を守りながらまちも守るという側面をあわせ持ちます。こうした種々の施策の総合的実施により、住宅の耐震補強が一層促進されるものと思います。そればかりか、それが仮設住宅の設置、復興、復旧への公的資金の導入などを最小限にとどめるものにもつながると考えます。こうした耐震補強の促進及び支援方策に対する石原知事の見解をお伺いいたします。
 また、あわせて、住宅の耐震補強の促進に対する東京都の考え方を改めてお伺いをいたします。
 ところで、中越地震の発災直後、二十五日には、我が会派の坂口こうじ議員が、また、一週間後の先月二十九日から三十一日までは柿沢未途議員が被災地に入り、ボランティアとして汗を流しました。それを通じて感じたことは、関係者が情報を共有することの重要性であります。被災地のどこにどのようなニーズがあるのか、被害の程度はどのぐらいなのか、そういった情報を共有化できなかったことで、現地での救援活動に少なからず混乱が生じました。本来、被災時には県や市といった行政が、入ってくるさまざまな情報を集約して、関係先に適切な指示を出す司令塔の役割を果たすべきですが、地震発生直後の混乱状況の中では、そうした系統だった指示命令系統が機能しない場合も往々にしてございます。現場ごとの判断が必要とされ、そのときその場で何が起きていて、必要な物資は何か、使えるリソースは何かといった情報を関係者が広く共有化できることこそが、有効な救援活動を行えるかどうかのかぎとなります。
 防災についての関心が高まっている今、都民は万が一のとき、自分の身の安全を守るための情報を求めています。にもかかわらず、現在、東京都のホームページの中にある総務局総合防災部のページは、東京における直下型地震の被害想定や避難場所の一覧、地震のときの行動マニュアルなどが掲載され、かなり充実した内容にはなっておりますが、残念ながらこのページを活用する人は少ないというのが現状であります。そこで私は、現在の総合防災部のページを、よりアクセスのしやすい防災情報に関する総合的なウエブサイトへリニューアルし、被災地支援の情報共有化にも活用できるような、東京の防災といったような防災情報の案内ページとすることを提案いたしますが、所見をお伺いいたします。
 次に、三宅島帰島支援についてお伺いいたします。
 三宅島避難指示解除が来年二月に予定されている中、都は住宅の新築や修繕にかかった費用として、一世帯当たり最高百五十万円を住民に支給する独自の制度をつくることを決め、今定例会にその条例案が提案されています。
 阪神・淡路大震災の教訓から制定された国の被災者生活再建支援法は、法施行後六年がたったことし、全壊した住宅の再建支援に最高三百万円を支給するなどの法改正が行われました。しかし、この支給の対象となるのは壊れた住宅の解体、撤去等にかかわる費用に限定されており、住宅本体の建てかえや補修については、個人の財産の形成に公費を投入することはできないとして、支給の対象から外されております。こうした国の見解に対しては、個人財産にこじつけて、国民の最低限の生活を保障する国の責任を放棄しているものだと批判の声が上がっています。全国知事会でも、相次ぐ豪雨災害や地震などを受けて、先月、住宅本体の再建、補修費を法律の支給対象に含めるよう法改正を求める緊急提言を行っています。
 今回、都は、三宅島の生活再建に当たって、国が支給対象としていない住宅の新築、修繕も含めた独自の支援制度をつくり、国の制度よりも一歩踏み込んだ対応をしており、そのことは高く評価をしたいと思います。しかし、被災者の生活の基盤を確保することは、本来国の責任において行わなければならないことです。今後は、都としても、こうした住宅の新築、修繕費用について、法律の支援の対象とするよう被災者生活再建支援法の改正を国に粘り強く働きかけていくべきだと考えますが、所見をお伺いいたします。
 災害時における生活再建のあり方として、自助、共助、公助ということがいわれます。みずからの力で生活を再建する努力をし、それで力が及ばない部分は、心ある人々や地域社会の支援を受けてともに助け合う、そして最後に公的な支援制度がある、そういう順番で考えるべきだということです。その意味で考えると、ともに助け合う共助に当たるのが義援金ではないでしょうか。中越地震の被災者に対する義援金は、発生から一カ月足らずの先月十二日の時点で、早くも百億円を突破しています。その義援金の中から、住宅が全壊した世帯には二百万円、大規模半壊には百万円が支給されることが既に決まっています。
 北海道奥尻島を中心として、津波などの大規模な被害が出た平成五年の北海道南西沖地震では二百五十六億円の義援金が集まり、全壊した住宅には一世帯当たり最大一千二百万円が支給されました。
 一方、三宅島はどうでしょうか。四年以上の全島避難という大きな被害に見舞われているにもかかわらず、これまでに島民に支給された義援金は総額で十九億六千万円、支給総額は、三人世帯で百四十三万円、四人世帯でも百八十二万円となっています。一けた違うというのが実態でございます。もちろん義援金の総額は被災人口や倒壊家屋の数、そして被災規模などによって異なるため、単純に比較することはできません。しかし、義援金はただの気持ちではなく、被災地の復興に大きく寄与するものであり、より多く集めることができるならば、それにこしたことはないと思います。帰島の始まるこの機会をとらえて、都としても、報道機関や各団体と連携しながら、三宅村の今を伝え、広く生活再建支援のための義援金募集を行う、頑張れ三宅島キャンペーンともいうべき活動を展開すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、自動車公害対策についてお伺いをいたします。
 まず初めに、三井物産による虚偽データの使用についてであります。
 都が実施しているディーゼル車規制に関して、去る十一月二十二日、三井物産は同社の粒子状物質除去装置、DPFについて、装置指定申請の際、虚偽のデータを使用し、基準に満たない装置を販売していたと発表しました。三井物産という名のある大企業のコンプライアンスの欠如はあきれるばかりですが、それ以上に、今回の不正行為は、厳しい経営環境の中、まじめに規制に対応してきた運送業者などの事業者の努力を裏切るものであり、強い憤りを感じるところであります。
 既に石原知事も所信表明において、その責任を厳しく追及すると述べたところであり、昨日、東京都は、埼玉、千葉、神奈川の三県と共同して告発状を提出したところです。私たち都議会民主党も、ユーザーへの対応や補助金の返還など、その責任を厳しく追及すべきであると考えますが、改めて石原知事の見解をお伺いいたします。
 三井物産の不正行為について、装置を指定した東京都の責任も問われるべきだと考えます。事件の背景には、都がディーゼル車規制に間に合うように、DPFの開発や大量供給などを要請してきたこともあるでしょう。また、DPFの認定審査が書類審査だけであったこと、さらには、都職員の立ち会いのもと行われた排気ガス測定実験でも不正を見抜けなかったことがあります。今回の不正行為は内部告発があったために発覚したものですが、内部告発がなければ、今でも基準に適合しないDPFが使われ続けていることになります。今回の事件を契機として、検査体制のあり方を見直し、都としてもしかるべき措置をとるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、三井物産以外のDPFについても、都は改めて基準に適合しているのかを調査する必要があると考えます。ことし三月一日、都の指定したDPFに穴をあけるという改造がされたDPFの問題が発覚し、都はこの事件を受けて、他社の装置についても同様の改造がないか調査したところ、さらに二社の不正が発覚いたしました。私は、三井物産以外のDPFについても改めて調査し、ディーゼル車規制に対する都民の信頼回復を図っていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 都の環境確保条例では、ディーゼル車から排出される粒子状物質、PMの排出基準をさらに強化する第二弾の規制が定められており、都は去る十一月三十日、二〇〇六年四月一日から実施する旨の告示を行いました。このさらなる規制の強化は、二〇一〇年度までに都内のすべての測定地点で浮遊粒子状物質、SPMの環境基準の達成を目指す上で不可欠な取り組みであり、また、動きの緩慢な国の大気汚染対策を促していくためにも非常に意義のあるものと考えています。
 しかしながら、八都県市の状況を見ると、埼玉県は東京都と足並みをそろえていますが、千葉県、神奈川県では第二段階の規制は条例で規定されていません。私は、ディーゼル車規制のさらなる強化についても、八都県市が可能な限り連携して実施すべきと考えますが、都は二〇〇六年四月一日の規制強化に向けて、八都県市との連携協力にどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いをいたします。
 次に、ディーゼル車規制に関連して、PM二・五についてお伺いをいたします。
 現在、環境基準が定められている浮遊粒子状物質、SPMは、その粒径が十マイクロメートル以下のものですが、それよりもはるかに小さい粒子であるPM二・五については、環境基準が定められておりません。ちなみにマイクロメートルとは百万分の一メートルであり、PM二・五は直径が千分の二・五ミリメートル以下の粒子状物質であります。PM二・五はディーゼル車が排出するディーゼル性排気微粒子など、化学物質が主な成分と見られており、ぜんそくや気管支炎を引き起こすばかりか、むしろ大きな粒子よりも、気管を通過しやすく、気道よりも奥の肺胞などに付着するため、人体への影響が大きいと指摘されています。PM二・五については測定方法が確立していないことを理由に、国は環境基準を定めることに及び腰ですが、都はPM二・五についても環境基準の設定と、その抑制に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、廃棄物行政についてお伺いをいたします。
 容器包装リサイクル法の見直しが国において検討される中、都は、都内区市町村と連絡会を設置し、去る十一月十五日に法律の抜本改正を国に提案しました。私は特に、現行法に欠けている発生抑制と再使用の促進という考え方を盛り込み、それを実施するために、事業者に容器包装利用量の報告を求め、公表するといった具体的な制度を提案している点を評価したいと思います。私は、都と区市町村との共同提案の実現に向け、都が国を動かすよう積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 ペットボトルなどの廃プラスチックの発生抑制を徹底した上で、再使用、再生利用もできない廃プラスチックについては、今までのように埋立処分するのではなく、国を上回るダイオキシン規制を前提として、熱として回収するサーマルリサイクルを導入すべきだと考えています。プラスチックはそもそも化石燃料の固まりであり、軽くて丈夫でかさばるために、これを埋立処分するには大変なコストがかかります。また、付着混入している有機物の分解によりメタンガスが発生し、汚水の原因にもなります。プラスチックを埋立処分することは、環境負荷を何年にもわたり与え続けるということなのです。これまで燃えないごみとして出してきたプラスチックを燃えるごみとすることに、不安や抵抗を覚える都民も少なくないと思います。しかしながら、私は、都としても廃プラスチックのサーマルリサイクルの導入を促進していくべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、産業廃棄物の不法投棄の防止についてお伺いいたします。
 不法投棄の防止に向けて、ことし五月の廃棄物審議会では、排出事業者の適正処理への取り組みを公表する制度や、処理業者の産業廃棄物処理の状況を公表する制度といった、全国でも初めての制度を答申しました。私は、早期に制度を構築するとともに、八都県市が連携して産業廃棄物の不法投棄の防止に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、産業廃棄物の不法投棄防止に向けて、GPSやICタグなどのIT技術を活用した追跡システムについても積極的に導入していくべきだと考えます。十七年度の重点事業では、医療廃棄物でのICタグの活用を打ち出していますが、廃棄物審議会で求めていたPCB廃棄物や、福岡県で実施されている公共機関からの廃棄物など、他の産業廃棄物へのIT技術の活用を拡大し、不法投棄の防止に役立てていくべきだと考えています。IT技術を活用した産業廃棄物の不法投棄防止への取り組みについての見解をお伺いいたします。
 廃棄物問題の最後に、循環型社会の形成についてお伺いをいたします。
 循環型社会形成推進基本法では、政策の優先順位として、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用、そして熱回収、さらに適正処分という順を掲げております。しかしながら、現行の廃棄物行政での税金のかけ方は、こうした優先順位に基づいているとは思えず、逆に、埋立処分することにウエートを置いているように思われる例があります。
 十一月十九日、私たち都議会民主党は、食品廃棄物を家畜の飼料としてリサイクルする工場を視察してきましたが、事業者からは、行政の廃棄物手数料が低く抑えられているため、リサイクルが事業として成り立たないとの意見を伺いました。もちろん一般廃棄物を適正に処理することは区市町村の責任ですし、むやみに手数料を上げろという話ではもちろんございません。しかしながら、ごみを出す側からすれば、清掃工場で燃やし、最終処分場に埋め立てた方が税金で低く抑えられた費用で済むため、何の補助金も受けていないリサイクル業者に引き渡すよりも有利ということになります。これではリサイクルが円滑に進みません。私は、循環型社会の形成に向け、食品に限らず、さまざまなリサイクルが産業として成り立つような政策を都においても積極的に推進すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、雇用就業対策について伺います。
 まず、若年者対策について伺います。
 九月十日に厚生労働省が発表した労働経済白書によると、二〇〇三年のフリーターは前年比八万人増加し、二百十七万人。十五歳から三十四歳の若年層のうち、仕事もせず、学生でもなく、職業訓練もしていない無業者、いわゆるニートが五十二万人にも上り、一年間で四万人も増加していることが明らかになりました。十七年度重点事業では、青少年対策として若者の社会的自立を支援する取り組みを掲げていますが、都がこれまで取り組んできたフリーター対策や新卒者の就労支援などに加え、これからは、アルバイトもせず、就労意欲もないニートに対しても積極的に支援をしていく必要性があると考えます。
 また、既にニートとなっている人は二十代、三十代にも多く、十八歳未満という青少年というカテゴリーではとらえることはできません。そこで、まずニート対策に向けた都の基本認識をお伺いいたします。
 ニートは、学校を初め公共機関に抵抗感を抱いている人も多いように思います。十七年度重点事業では、しごとセンターでの取り組みや高校中退者への支援などを打ち出していますが、公的機関であるしごとセンターに立ち寄りたくない人、あるいは自分がやめた学校やその担任から連絡をもらいたくない人などには、その対策は及びません。労働政策研究・研修機構副統括研究員の小杉礼子氏は、ニートを、反社会的で享楽的、今が楽しければいいというヤンキー型、社会との関係を築けず、こもってしまうひきこもり型、就職を前に考え込んでしまい、行き詰まってしまう立ちすくみ型、一たんは就職したものの早々にやめ、自信を喪失したつまずき型の四つに類型化しており、ニート対策はこれらのタイプに分けて、必要に応じた取り組みをとるということが求められています。
 私は、ニート対策に取り組む上で、まず実態をしっかり把握し、その上で適切で有効な施策を講じていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 ニートの自立には、就業を通じた社会参加が不可欠です。都は、ことし七月に開設したしごとセンターに、東京版ジョブカフェであるヤングコーナーを設置し、若者に対する就職相談、セミナー、職業紹介等の総合的な就業支援サービスを提供し、これまでに一定の成果を上げています。しかし、こうした施設は、しごとセンターにみずから出向いてくる若者に対しては有効な施策ではありますが、ニートと呼ばれる、就業をためらっている若者や就業に自信を喪失している若者が、飯田橋にあるしごとセンターにわざわざ出向くことは余り期待できません。都は、いわゆる待ちの姿勢ではなく、しごとセンターから出て、若者に身近な場所でサービスを提供するとともに、しごとセンターについても、若者が親しみやすい雰囲気づくりを行うべきと考えますが、見解を伺います。
 また、ニートになった人への施策だけでなく、ニートになる前のなるべく早い段階で本人の意識改革を促し、これ以上にニートになる若者を増加させないための取り組みも重要です。十七年度の重点事業では、中学校において一週間程度の職業体験を実施したり、高校においてもキャリア教育の充実に向けた事業を展開することになっており、私はこうした取り組みをさらに拡大していくべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、労働相談の充実について伺います。
 東京都における中小企業の景況は三カ月連続の悪化で、景気回復に陰りが出るなど、憂慮すべき状況にあります。また、雇用状況につきましても、完全失業率が再び五%台となり、対前年同期と比べて〇・二ポイント上昇となるなど、依然として厳しい状況が続いています。労使関係に目を向けますと、賃金の不払いや、解雇予告なく解雇がされるなど、労働法規が遵守されないといった問題が顕在化しています。また、パートタイム、派遣労働など、就業形態の多様化に伴い、労働相談も個別化、複雑化の傾向を強めています。
 こうした状況の中で、都はことし四月、労政事務所を再編し、新たに労働相談情報センターを設置しました。三月の予算特別委員会で私の締めくくり総括質疑に対して、都は、再編に当たっては労働相談情報センターの各所における相談情報を集約し、情報の共有化など、相談機能の充実強化を図っていくと答弁しています。現在、相談が困難性を増す中、働く都民の駆け込み寺として新しくスタートした労働相談情報センターが、さまざまな労働相談に的確に対応していくことが強く求められています。今後とも、労働相談機能の充実強化に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 ところで、解雇等、迅速な対応を必要とする労働相談は、やはり相談する都民にとって身近なものでなければなりません。都ではこれまでも、出張労働相談や平日夜間及び土曜の相談実施など、都民の利便性向上に向けた取り組みを実施していることは承知しています。しかし、事務所の立地についても、相談者にとって利用しやすいものとすべきです。既にこの問題も、私たちが議会で指摘してきたところでありますが、労働相談や労使紛争の未然防止の拠点にふさわしい事務所の配置について見解をお伺いいたします。
 雇用の回復、促進にとって、今なお厳しい状況にある中小企業の再生は喫緊の重要課題であります。そうした中で、知事はさきの所信表明において、新銀行東京において、資金繰りで困窮する中小企業の期待に少しでも早くこたえるため、従来の方式に加え、地域金融機関とより緊密に連携をとった新しい再生ファンドを今年度から立ち上げ、順次事業を展開するとされました。
 しかし、去る十月には、産業労働局においても、地域金融機関等との共同出資による再生ファンドを創設し、中小企業の再生支援に乗り出しております。
 中小企業再生の手段が数多く提供されることは基本的に歓迎するものではありますが、今回の新銀行東京のファンドと産業労働局のファンドとは何が違うのか、また、双方がどのような関係にあるのか、お伺いをいたします。
 また、新銀行東京は、平成十七年四月以降に開業を予定しており、十六年度はその準備期間であることから、一部業務停止状態にあると聞いておりますが、このような状況において本格開業前に再生ファンドを設立することは、特に監督官庁である金融庁との関係において支障はないのか、お伺いをいたします。
 次に、DV対策についてお伺いいたします。
 DV、ドメスチックバイオレンスは、配偶者や恋人など親密な関係にある、または過去にあった者からの暴力であります。他人の介入しにくい親密な人間関係において行われる、人の目に触れない場所で暴力を振るう、物理的に閉ざされた空間での行為であり、こうした特徴があります関係で、被害者は周囲からの助けも得られず、結果として長期間にわたり暴力を受け続けることがあります。暴力から逃れて自活の道を選ぶにしても、経済的な不安や子どもの養育への不安などから、なかなか踏み切れない人が多いのが現状であります。
 六月に改正されたDV法が十二月二日から施行され、保護対象の拡大ほか、民間と連携した取り組みや、区市町村による配偶者暴力相談センターの設置が可能となるなど、対策の充実、改善につながる内容となっています。
 そこで、都におけるDV対策の充実について幾つかお伺いをいたします。
 暴力の被害者がまず必要とするのは、支援の情報提供を受けることです。現在、各市町村にも相談機能が置かれており、行政の支援を受けるための一次窓口の役割を果たしています。
 都に寄せられたDV相談件数は、平成十二年度の一千六百九十四件から、平成十五年度には九千百二十七件へと増大しており、安全・安心の確保や心のケアの必要な相談者の増加もうかがえます。これらの相談に適切に対応するためには、区市町村も含めた相談機能のさらなる充実が必要です。
 そこで、DVに関する相談機能についてどのように充実強化を図っていくのか、お伺いをいたします。
 次に、一時保護についてお伺いをいたします。
 配偶者などによる暴力の被害者が緊急時に必要とするのは、一時的に身を寄せることができる場所であります。一時保護の件数は、平成十二年度が二百二十七件、十五年度は六百十四件へと、これも増大しています。一時保護件数の増加に対応できるよう、一時保護の受け入れ可能体制を充実する対策が早急に必要と考えます。
 改正法では民間との連携が盛り込まれました。一時保護について、民間委託などの方策で充実する必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、被害者の自立支援についてであります。
 改正法では自立支援が明文化されたこと、これは大きな成果だと考えています。被害者が暴力の影響から回復するためには欠かせないものであります。自立支援については地方公共団体の責務とされており、福祉事務所の役割も明示されました。今後の取り組みが求められますが、都は自立支援をどのように行うのか、お伺いをいたします。
 DVについて伺ってまいりましたが、家族の間で起こる暴力はDVだけではありません。このほか、児童虐待、そして、子どもから親に対する暴力、いわゆる家庭内暴力もあります。ご承知のとおり、これまで述べてきましたDVや児童虐待に関しては法整備がされていますが、子どもの親に対する暴力の場合、家族の中で解決すべきだという考え方が強くあり、また、暴力の対象者が親であるために、児童虐待やDVのように絶対的な弱者とみなされないなどの理由から、法整備などの特別な枠組みができないという考え方があります。
 しかしながら、子どもによる親への暴力に関しては、当事者の関係が近いがゆえに、家族では解決できないほど深刻な事態に陥ってしまいがちです。外からの支援を得て、なぜ暴力を振るうようになったのかという家族の問題にアプローチしなければ、解決には結びつきません。
 先月二十五日に、茨城県土浦市で、長男が父母と姉を殺害するという事件が起こりました。犯行に及んだ長男は、日常的に母親に対して暴力を働いていたといいます。また、二〇〇〇年一月に明らかになった、新潟県で九年間少女を監禁していたという衝撃的な事件でも、母親に対して長期にわたり暴力を加えておりました。どちらのケースも、重大な結果になる前に行政が何らかの支援ができていたならば、最悪の事態は避けられたかもしれません。
 家庭内暴力についても早期の対応が重要であり、暴力が深刻化しないうちに、特に小学校、中学校の時期に、子どもに問題行動が見られるようになった段階で、家庭から相談を受け、支援をしていく必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
 最後に、犯罪対策についてお伺いいたします。
 東京の犯罪というと、残念ながら有名になっているのが、都庁のおひざ元、歌舞伎町です。警察と地元区、商店会、自治会とが連携した浄化作戦が展開されており、都民のだれでもが安心して楽しめるまちへと確実に変貌を遂げていると感じられています。
 しかし、警視庁が公開しているホームページの中の犯罪発生状況を見ると、ひったくり、侵入盗、車上ねらい、粗暴犯などの発生件数では、相変わらず歌舞伎町周辺の濃い赤さが目立ちます。この赤さというのは、犯罪件数が多くなると赤くなるというわけでございます。やはり歌舞伎町を完全に浄化することというのは困難なのでしょうか。歌舞伎町が浄化されれば、東京都全体の安心・安全感、体感安全度が増すことは容易に想像できます。そこで伺います。
 警視庁では、新宿歌舞伎町地区における盛り場対策を重点的に進めておりますが、取り組みとその成果についてどのように認識されているのでしょうか。改めて警視総監にお伺いをいたします。
 新宿歌舞伎町を初めとする都内の繁華街では、さきに述べました犯罪行為のみならず、性風俗店への客引き、性風俗店で性的サービスへの従事やポルノビデオ出演等に関する勧誘、現行法では規制できないピンクビラ、そして暴力団による威嚇行為など、目に余る行動が横行しており、来訪者や地域住民の安全・安心を守り、都内繁華街の健全な発展を図るためには、これらの迷惑行為に対する取り締まりが求められております。
 そこで、本定例会には、これらの行為を取り締まるための迷惑防止条例等の一部改正案が提出されています。これらの条例案は、これまでの脱法行為に対する禁止規定が厳密に規定されており、まさに徹底的に取り締まるものとなっています。
 しかし、歌舞伎町で徹底的な取り締まりを行っても、この種の需要がある限り、他の地域で同様の行為が繰り広げられることになります。こうした迷惑行為等の他地域への拡散についてはどのように対処されるのか、警視総監にお伺いいたします。
 さて、歌舞伎町を所管する警察は新宿警察署であり、この都庁から歩いて数分の西新宿六丁目にあります。この警察署と歌舞伎町の間にはJR線があり、駆けつけるには、常に渋滞している靖国通りを使うことになります。緊急車両ですから、それほどの時間はかからないにしても、一たん歌舞伎町の中に入るとどうなのでしょうか。容易ではございません。
 そこで交番の出番となるわけですが、歌舞伎町の中には、大久保病院の隣に、歌舞伎町二丁目に歌舞伎町交番があります。常時パトカーが二台待機しておりますが、これだけであります。あとは、二〇〇二年二月に五十台設置された防犯カメラで二十四時間体制で監視するシステムです。やはりカメラで監視するということではなく、人の目が大切なのではないでしょうか。まちに掲示されている、だれかが見ているという標語と、あの目は、やましい気持ちがなくても、どきっとするものであります。
 ここで、警視庁が進めている盛り場対策をさらにバックアップする意味から、夢物語かもしれませんが、ちょっと提案をしてみたいと思っております。
 それは、思い切って、歌舞伎町の真ん中にある新宿区役所と新宿警察署の場所を交換するということでございます。犯罪の発生を抑制するには、短絡的なようですが、犯罪多発地帯に警察署をつくるという、これに尽きるわけでありまして、昔、シムシティというパソコンゲームがありましたが、このゲームで都市をつくるわけですが、都市に犯罪が多発するというと、そこに警察をつくる、そうするとその都市が安定するというようなゲームがございました。新宿区役所を利用する方々にとっても、日本一の繁華街のど真ん中にあるよりも、都庁のそばにある方がよいと考える方が大方だと思います。
 もちろんのこと、一方では新宿区役所の移転を前提とするものですから、地方自治法に定める地方公共団体の事務所の位置の変更として、地元の新宿区及び区民の賛同が必要であることは承知しております。しかし、治安の改善は、新宿区民、都民がこぞって願うところであり、歓迎されると思います。
 政治家として石原知事に、この提案についてどのように受けとめられるか、感想があればお聞かせをいただきたいと思います。
 以上で、都議会民主党を代表しての代表質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 富田俊正議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、いわゆる三位一体改革についてでありますが、骨太、骨太というからには、日本の政治の骨組みを本質的、根本的に変えるようなものでなければならないはずだと思います。しかし、今回国が決めました全体像なるものは、どう見ても、こうした理念からかけ離れて、国庫補助負担金削減の数字合わせでしかないような代物だと思います。国の各省や、それぞれの立場を違える政治家たちの目先の利害調整に終始しておりまして、地方分権の実現という改革の目的が全く阻害されていると思います。
 どう眺めても、総理大臣が、この問題に対する歴史観、文明観というんでしょうか、大きな日本の歴史の流れの中で、これが、日本をこれから発展させながら、かつ変えていくために、歴史的に必然、蓋然の政治的なイシューであるという、そういう意識というものがほとんど欠けているというような気がいたします。
 たびたび申していることでありますけれども、地方分権なるものは、徳川の体制が崩れて太政官制度が始まり、憲法の発布される前に既に明治政府ができて、結局、中央集権という形の一種の官僚統制が続いてきたわけでありますが、それをここから画期的に変えるという命題でありまして、日本の国運というものも、これからは、この政治的イシューというものがどう成就していくかということにかかっているといっても過言でないと思います。今こそ、国、地方を通じて、国民もこれを強く意識して、その意識に支えられて、政治が断固たる決意を持って抜本的な改革に取り組むべき問題であると思っております。
 次いで、住宅の耐震化への支援についてでありますけれども、先ごろの新潟中越地震で大規模な被害が発生し、震災対策の重要性を再認識いたしました。
 あそこで印象的だったのは、現地からの報告を聞きましても、同じ木造の割と骨組みの弱い建物でも、上がトタン張りの家と、上にかわらを乗っけた家では被害状況が全然違うという、それぐらいひ弱な住宅が多かったわけですが、それでもなお、屋根の構造いかんによって被害が随分違ったようです。
 住宅の耐震改修につきましては、国では減税などの支援策を検討していることは承知しておりますけれども、震災対策の基本は、自助、共助、公助という原則によって進めるべきものでありまして、都としては、災害に強い都市を目指し、木造住宅密集地域などの整備、改善を進めるとともに、住宅の耐震改修についても、都民への普及啓発などにより、住宅の安全確保に努めてまいりました。
 今後とも、首都東京の安全性を一層高めるために、ハード、ソフトの両面から取り組みたいと思いますが、私、あの阪神大震災のときも、直後に、運輸省から頼まれて港湾の被害状況の視察に行ったついでに、地元の友人の案内で、東灘区と長田区と二つ、非常に被害の多い地域を眺めた。特に長田区というのは住宅区でありまして、そこで見ましたものは、木造住宅は全部壊滅、ただ、鉄骨鉄筋の建物は、比較的古いものでも全部残っているという歴然たる相違であります。
 東京にもいわゆる木密地域がたくさんありまして、先般の災害対策のときにも視察をいたしましたが、しかし、むしろそういう地域の人情の方が、私には何か非常に親近感がありまして、例えがよくないかもしれませんが、用を足しながら小窓を開けると、隣のうちの台所が見えて、サンマを焼いていて、きょうはサンマですか、そうなんですよというような会話がある生活状況の方が、私、実は高級マンションよりも好きといえば好きなんですが、これはやっぱり、人間というのはそういうものに対する愛着というのは簡単に捨てられませんで、地震が来なければわからないことでありますけれども、それを行政が幾ら金を積んでも、地震に強いと称する新しいまちに変えることそのものの精神的な受容というものをうまく喚起できるかできないかというのは、これは政治を超えた難しい問題だと思いますが、市民の方々が同意されたときに、それに呼応できるような資金援助の体制も含めた準備は、やっぱり行政の責任ですべきだとは思っております。
 それから、DPF装置指定申請に際した虚偽データの使用でありますけれども、これは本当に、人の弱みにつけ込んだ卑劣きわまりない私は行為だと思います。天下の大商社が、その子会社か何か知りませんが、商社というのは薄利多売と申しますけれども、いずれにしろ、こういう事態につけ込んでデータを捏造して、それで金をもうける。
 大気の汚染で苦しんでいる若い人たち、アトピーの若い女性、小児ぜんそくで悩んでいる乳幼児、そういった者の救済というものを私たちは考えて、行政機関も議会も一緒になって決めたことで、推進したことで、また、それに本当に零細の企業の方々が熱い心でこたえてくださった、そういう共同作業の中で、首都圏に限っては、ある歴然とした結果が出ました。
 私いつも、ばかの一つ覚えでボトルを見せて歩いていましたけれども、報告では、結果として一日十二万本が五万本に減ったと。もしこういう虚偽行為がなかったら、それは三万本に減ったかもしれないわけでありまして、こういう背信行為というものが、相手が大企業か何企業か知りませんが、絶対に許されるべきじゃないと思います。
 これからの環境行政というものは、経済活動のある犠牲を伴わなきゃならないと思いますけれども、そういったものの、企業の営利というものを踏まえた背信行為というものが許されるか許されないか、どこまで罰せられるかということの、一つの新しいこれは凡例になると思いますので、関係首都圏とも合議しまして、徹底した糾弾と、これは後は結局司法任せでありますけれども、強い意思で刑事告発を行ったところでありまして、今後ともその責任を徹底して追及するつもりであります。
 次いで、新宿警察署の移転についてでありますが、これはまあ、ただ、大体建物の大きさも同じようなものでして、離れているようで近い、近いようで離れているんですが、あなたも選挙区のあそこら辺でいつも演説していると、なかなかファンの方も多くて、そういう人からもそういう声があるのか知りませんが、ただ、これはやっぱり警察の治安活動のこけんにもかかわることで、新宿署にしてみれば、わずか数百メートルのところに移したことで状況が変わるんだったら、これまで一体、おまえたち今まで何していたということになるわけで、私、野沢君という法務大臣を昔から知っているので、ちょっと動かして、入管の事務所を少しこっちに移して、そのために視察にも行きました。
 要するに、警察も含めて行政の機関がちょっと動くと、たちまちあそこから不良の外人たちは姿を消して、翌日には黄金町、日ノ出町にいる。数日後、横浜の市長の中田君に会いましたら、東京が歌舞伎町をやったので、あの連中、次の日には横浜に来て、参りましたというから、じゃ横浜で同じことをやってくれと。今度、横浜を追い出したら、どんどん追い詰めて、要するに日本にいちゃいけない、いてはならない、そして、悪いことをしている外国人は最後は日本からたたき出せばいいんだということを私は申しました。そのかわり──そうすると、またいろいろ物議を醸すでしょうけれども、私は、日本はもうちょっと徹底した大幅な移民政策をすべきだと思っております。それとこの問題は関係ありませんが……。
 さあ、これはなかなか富田さんらしい発想でありますけれども、もう少し熟慮させて、結論を出したいと思います。
   〔副知事竹花豊君登壇〕

○副知事(竹花豊君) いわゆるニート問題についてでございますけれども、次代を担うべき若者が少なからず、働くことも学ぶこともなく、またそうした意欲にも欠けるということは、本人はもちろん、社会全体にとっても大きな損失でございます。
 こうした状況は、既にイギリスでは大きな問題として取り上げられておりまして、数年前から、青少年を対象とした対策が政府により進められていると聞いております。
 一方、我が国においては、この問題が本格的に取り上げられたこと自体、最近のことでございまして、その実態はよくわかっておりませんけれども、若者が社会に適応できない状況の一つのあらわれでありまして、何らかの対応が必要であると思います。
 もとより、本人の自覚、保護者の指導が重要でありますけれども、都といたしましても、中学生の職場体験や高校生のキャリア教育、奉仕体験活動などの取り組みを拡充するなどいたしまして、生活の糧をみずから得ることのできる自立した青少年の育成に努めてまいりたいと思っております。
 また、都は今年度から、ひきこもりで悩む若者へのインターネット相談を実施しておりますが、さらに来年度以降は、高校を中退し、将来を決めかねているような若者への支援を実施することといたしておりまして、これらを通じまして、いわゆるニートといわれる方々の実態がより明らかになれば、さらに有効な手だてを講じることも期待できるものと考えております。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 新宿歌舞伎町での盛り場対策に関する二点のご質問についてお答えをいたします。
 まず、歌舞伎町対策の取り組みとその成果についてでありますが、警視庁といたしましても、我が国有数の盛り場である歌舞伎町の環境浄化は、東京の治安回復の一つの象徴的な意義を持つものであると考えております。
 そこで、この歌舞伎町に池袋、六本木を加えました三地区の環境浄化を図るため、この春から三地区特別対策本部を設置いたしまして、本部捜査員を集中投入しての一斉摘発や、新宿署と周辺警察署との共同捜査、あるいは東京入管との合同摘発等を集中的かつ継続的に行っているところであります。
 対策を始めました四月から十月末までの歌舞伎町での摘発の成果を申し上げますと、違法マッサージ店など風俗営業関係事犯を百六十二店、人数にいたしまして約五百人、また暴力団員を約二百人、それから不法滞在等の不良外国人約七百人をそれぞれ検挙いたしておりまして、その結果、違法風俗店等は相当数廃業するに至っております。
 また、この期間中の歌舞伎町における刑法犯全体の認知件数でありますが、昨年の同期に比べまして一六%減少しております。また、ご質問にありました、ひったくり及び侵入窃盗はいずれも六〇%減少、車上ねらいが五〇%減少、暴行、傷害等の粗暴犯が二四%減少など、着実に成果が上がってきているところであります。
 今後とも、この歌舞伎町を含めました三地区対策は、引き続き強力に推進してまいりたいと考えております。
 それから、次に、歌舞伎町以外の地域への対処についてでありますが、歌舞伎町の取り締まりを強化した場合、歌舞伎町で行われているような迷惑行為がほかの地域に拡散するということはあり得るものと考えております。
 このため、歌舞伎町以外の盛り場を管轄する警察署につきましても、盛り場総合対策を進める重点警察署に指定をいたしまして、例えば上野や錦糸町等の各地区におきましても、客引きなどを鋭意検挙しているところであります。
 また、今回上程されております、いわゆる迷惑防止条例等の一部改正案は、そのほとんどが都内全域を対象としておりますので、歌舞伎町以外の地域でも大いに有効性を発揮するものと考えております。
 いずれにいたしましても、警視庁といたしましては、いろいろな施策や取り締まりを総合的に推進いたしまして、都内における盛り場環境の浄化に一層努めてまいります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 学校教育におきます職場体験やキャリア教育の充実についてのお尋ねでございますが、職場体験や就業体験は、生徒に働くことの意義を理解させまして、社会的自立を促す上で極めて重要な教育活動の一環でございます。
 平成十五年度には、都内の八三%の公立中学校、四六%の都立高校におきまして、地元の商店街や福祉施設、企業等で職場体験や就業体験を行いまして、生徒の望ましい勤労観や職業観の育成を図っておりますが、今後、中学校におきまして、一週間程度の職場体験モデル事業を実施しまして、その成果と課題を踏まえまして、区市町村教育委員会と連携して、実施校の拡大を検討してまいります。
 また、高校におきましては、社会で活躍する卒業生の話を聞く機会の充実や、経済団体が主催する研修講座への教員の派遣、インターンシップの充実を図るためのモデル校の指定などによりまして、各学校におけるキャリア教育の一層の推進を支援してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 住宅の耐震補強の促進についてのお尋ねでございますが、住宅の耐震化は、災害に強い都市づくりを進める上で重要な課題であると認識しております。
 都といたしましては、これまでも木造住宅密集地域の整備改善などに取り組むとともに、耐震診断講習会の開催や簡易な診断方法の周知を行うなど、技術者の育成や都民への普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後は、耐震フォーラムを開催するなど一層の普及啓発に努めるとともに、木密事業や街区再編まちづくり制度などさまざまな施策を活用することで、建物の更新や耐震化を促進し、安全な住宅の確保に努めてまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 防災情報の提供についての質問にお答えいたします。
 都民が防災意識を高め、災害時に適切に行動するためには、発災時はもちろん、平常時から必要とする情報が容易に得られ、共有できることが重要でございます。
 このため都は、ホームぺージで、東京都の防災対策に加えまして、家庭や事業所におけます防災への取り組みにつきまして常に新しい情報を提供いたしますとともに、地震や降水量、河川水位などの緊急情報を提供しております。都民がアクセスしやすいページ立てや、わかりやすい情報を提供するなど、内容の充実に努めてまいります。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 三宅島帰島支援及びDV対策についての四点のご質問にお答えいたします。
 まず、被災者生活再建支援法の見直しを国に働きかけるべきとのお尋ねについてでありますが、都はこれまで、本年三月の法の見直し時期に合わせ、住宅本体の建築費、補修費を支給対象とするなど制度の拡充を図るよう、全国知事会とも連携し、国に対し強く提案要求してまいりました。しかしながら、今回の法改正では、住宅の解体、撤去費等のいわゆる周辺経費のみが対象とされました。
 都としては、今後とも、住宅の建築費、補修費を法の支給対象とするよう、粘り強く国に働きかけてまいります。
 次に、三宅村民支援のための義援金の募集についてでありますが、平成十二年の発災以来これまで、多くの都民や団体、企業の皆様から多大な募金を賜ったことに対しまして、都として心から感謝を申し上げたいと思います。
 都は、本年七月、村が帰島方針を決定したことを受けまして、直ちに帰島に向けた義援金の募集を開始し、現在、区市町村などの行政機関はもとより、社会福祉団体や商工団体、報道機関などに対し幅広く募金活動への協力をお願いしております。
 今後は、来年二月の村民の帰島時期に合わせ、新たに作成するポスターの交通機関や飲食店などへの掲示、報道機関と連携した効果的なPR活動、各種のイベントなどにおける募金の働きかけなど、さまざまな取り組みを強力に展開してまいります。
 次に、配偶者などからの暴力被害者にかかわる一時保護についてでありますが、都はこれまでも、女性相談センターで実施している一時保護に加え、四カ所の施設に委託し、配偶者などからの暴力被害者の保護に努めてまいりました。
 今後とも、今回の法改正の趣旨も踏まえながら、活動実績のある民間団体に一時保護を委託するなど、受け入れ体制の確保に努めてまいります。
 最後に、子どもの問題行動に対する支援についてでありますが、子どもの家庭内暴力は、思春期における心の問題の一つとして大きな課題となっていますが、その背景には、家庭環境や親の養育力など、複雑かつ多様な要因があります。
 都では、児童相談所において、十八歳未満の子どもに関する性格行動の相談を受け、問題行動に至った原因や子どもの心理状態を把握し、本人や親への指導助言を実施しております。また、精神保健福祉センターを中心に、学校、保健所などが連携して援助活動チームを編成するなど、地域で、本人を含む家族を支援する取り組みを進めています。
 今後とも、こうした関係機関が連携を図り、必要な場合には一時保護をするなど、適切な支援に努めてまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 自動車公害対策及び廃棄物行政について、九点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、DPF装置の審査体制についてでございますが、今回の経験を踏まえまして、今後、新たに行うDPF装置の指定審査におきましては、環境科学研究所で確認試験を行うなど、虚偽申請に対する効果的な防止策を早急に講じてまいります。
 次に、三井物産以外のDPFの調査についてでございますが、今後、既に指定いたしました他のメーカーの装置につきましても、指定審査会の意見を聞きながら、PM低減性能を確認するため、環境科学研究所などにおきまして装置の排出ガス測定をできるだけ早期に実施し、都民の信頼回復に努めてまいります。
 次に、八都県市での連携協力についてでございますが、昨年十月から開始したディーゼル車規制は、住民の方々が実感できる大きな成果を上げてございます。本来、対策に根本的責任を持つ国の取り組みは極めて不十分であり、首都圏の大気汚染を一層改善していくためには、八都県市が協力して、使用過程車対策をさらに強力に進める必要があるものと考えております。
 平成十八年四月から実施することとしております第二段階の規制につきましては、八都県市で広域的に取り組むことができますよう、今後とも積極的に働きかけてまいります。
 次に、PM二・五に対する取り組みについてでございますが、大気中のPM二・五は、SPMのおよそ七割を占め、特に人への健康影響が危惧されております。都の調査結果におきましては、PM二・五の大部分は、ディーゼル車から排出される粒子と揮発性有機化合物、いわゆるVOCなどからの二次生成粒子でありまして、大気汚染の測定結果からも、今回のディーゼル車規制により大幅に削減された状況が明らかになっております。
 今後、ディーゼル車対策に加えましてVOC対策に取り組むなど、その一層の削減に努めるとともに、国に対し、引き続きPM二・五の環境基準の設定等を求めてまいります。
 次に、廃棄物行政に関しまして、まず、容器包装リサイクル法の見直しに係る共同提案の実現についてでございますが、現在の法律は、リサイクルの推進に一定の成果を上げているものの、発生抑制や再使用は進んでおらず、これらを進めるための仕組みが必要であるものと考えております。
 今回の国への提案は、事業者が発生抑制や再使用に向けて取り組むべき事項について国が定めることなどを、都及び区市町村が共同して取りまとめたものでございます。
 今後、都は、八都県市を初め全国の自治体とも連携して、国に提案の実現を強く求めてまいります。
 次に、廃プラスチックのサーマルリサイクルの促進についてでございますが、廃プラスチックは貴重な資源でありまして、本来埋め立てには適さないものでございます。したがって、廃プラスチックの埋立処分を見直し、発生抑制と再生利用に加え、熱エネルギーとして有効利用するサーマルリサイクルを推進することが必要なものと考えております。そのためには、都民の不安を払拭し理解を得ることが重要であり、都は、区市町村と連携し、清掃工場の安全性やサーマルリサイクルに関する正確な情報を都民に十分に伝えてまいります。
 次に、産業廃棄物の不法投棄の防止に向けた新たな制度の構築についてでございますが、東京都廃棄物審議会の答申は、排出事業者や処理業者に、適正処理への取り組みや処理状況などの報告を求め、公表する制度を提言しております。
 この答申を受け、現在、具体的な内容の検討を行っているところでございまして、できるだけ早期に、報告、公表の仕組みを構築してまいります。
 また、産業廃棄物は都県を越えて広域的に処理されるため、八都県市の調整を図り、広域的な仕組みを構築するよう努めてまいります。
 次に、IT技術を活用した産業廃棄物の不法投棄防止への取り組みについてでございますが、不法投棄を防止し、適正な廃棄物管理を行うには、IT技術を適切に活用することが有力な方法と考えております。
 このような観点から、都はこれまでも、バーコードを活用した医療廃棄物適正処理モデル事業を支援しているところでございますが、来年度からは、重点事業として、病院を対象にICタグを活用した医療廃棄物追跡システムのモデル事業を実施するほか、PCB廃棄物の処理において、処理事業者に対し、運搬車両の位置が随時確認できるGPSの採用を処理施設への受け入れ基準とするよう働きかけてまいります。
 最後に、リサイクルが産業として成り立つ政策の推進についてでございますが、循環型社会形成のためには、リサイクル産業の発展が不可欠でございます。
 都はこれまでも、スーパーエコタウン事業による新たなリサイクル産業の育成などの取り組みを行ってまいりました。
 今後、これらの取り組みとともに、再生資源の一層の需要拡大などを通じて、さまざまな分野においてリサイクルが産業として成り立ち、円滑な資源循環が進むよう、区市町村などとも連携して積極的に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 雇用・就業対策に関する三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、若年者の就業支援についてでございますが、就業を支援するには、さまざまな方法により若者と接する機会をふやし、働きかけを行うことが必要でございます。このため、しごとセンター事業の一環として、新たに若者や家族の目にとまりやすい場所に出向いてカウンセリングを行うなど、身近な地域できめ細かな就業支援サービスの積極的な展開を図ってまいります。また、当事者の声も参考にしながら、しごとセンターのヤングフロア等を、若者が気軽に足を運び、一層親しみが持てるものとするよう努めてまいります。
 次に、労働相談機能の充実強化についてでございますが、昨今の労働相談は、個別化、複雑化の度合いを増しており、労働相談情報センターは、こうした相談に的確に対応することが必要とされております。
 このため本年度は、外部の有識者等で構成する労政事業評価委員会におきまして、相談機能の強化策を検討しているところでございます。また、本年度、労働相談の研究会を設置し、困難な事例を収集、分析しているところであり、今後、相談現場に還元するなど、労働相談情報センターの相談対応力の向上を一層図ってまいります。
 最後に、労働相談情報センターの事務所の配置についてでございますが、各事務所が地域でその役割を十分果たしていくためには、配置についても、都民の利便性をより一層高める配慮が必要でございます。
 こうした観点から、老朽化した王子事務所を廃止し、新たに、山手線等多くの鉄道の結節点である池袋に事務所を整備する方向で、現在、準備を行っているところでございます。
 来年度早期の開設に向けて、着実に取り組んでまいります。
   〔新銀行設立本部長津島隆一君登壇〕

○新銀行設立本部長(津島隆一君) 新銀行の再生ファンドについて、二点のご質問にお答え申し上げます。
 初めに、新銀行と産業労働局との二つのファンドの違いと関係についてでございますが、新銀行のファンドは、商法に基づく匿名組合方式をとる債権買い取り型であり、再生可能性を比較的弾力的にとらえ、金融機関の保有する債権の一部買い取りも行うなど、幅広い業務状況にある企業を対象にするものでございます。
 産業労働局のファンドは、投資事業有限責任組合法に基づく組合方式をとっておりまして、債権買い取りに加え株式取得も可能であり、再生対象企業に手厚い経営支援を行っていくことが特徴であります。
 このように、それぞれがその強みを発揮し、相互に補完し合うことで、より幅広く中小企業の再生に取り組んでまいります。
 次に、金融庁との関係についてでございますが、金融庁からは、主に開業準備期間中の預金者等の混乱を避けるため、業務上の措置として業務の一部停止命令が出されており、再生ファンドの立ち上げに当たっては、この業務停止命令の一部解除が必要でございます。
 再生ファンドは、今年度から立ち上げ、新銀行の審査体制の整備に合わせて順次事業を展開していくこととしておりますが、こうした方針を新銀行から金融庁に十分説明しており、手続上円滑に進むものと考えております。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君) DV対策に関する二つの質問にお答えいたします。
 まず、DVに関する相談機能の充実強化についてでございます。
 都においては、東京ウィメンズプラザと東京都女性相談センターが中心となりまして、さまざまな困難な状況にあります被害者からの相談に応じまして、弁護士や精神科医師による専門的アドバイスも含め、助言や情報提供を行ってまいりました。また、身近な地域における相談窓口の整備が重要であることから、区市町村の相談員や、福祉事務所など関係機関の職員に対する研修等も実施してまいりました。
 今回の法改正で可能となった区市町村における配偶者暴力相談支援センター機能の整備や相談事業のレベルアップに向けて、研修内容の充実を図るなど、今後とも、都と区市町村が連携した相談体制の整備に努めてまいります。
 次に、配偶者暴力被害者の自立支援についてでございます。
 東京都はこれまで、関係機関と連携し、生活の援護、就労の支援や心のケアのための講座等を実施してまいりました。被害者の自立支援のためには、都や区市町村、民間団体などが協力し、被害者のニーズに応じたきめ細かな対応を行っていくことが重要と考えております。
 このため、区市町村などの関係機関と連携しながら、被害者の総合的、体系的支援のための基本プログラムを新たに作成し、各支援機関のネットワークの構築など、支援体制の整備に取り組んでまいります。

○副議長(中山秀雄君) 百六番中嶋義雄君。
   〔百六番中嶋義雄君登壇〕

○百六番(中嶋義雄君) 都議会公明党を代表して質問いたします。
 最初に、地方分権、いわゆる三位一体の改革について質問いたしたいと思います。
 十一月二十六日、政府・与党の合意により改革の全体像が明らかにされました。しかし、その内容は、既に繰り返し報じられているとおり、国庫補助負担金の削減額の積み上げを優先した、数合わせの印象が否めないものであります。
 元来、この三位一体の改革は、財政的裏づけを確保した地方分権の達成が目的であり、その地方分権が目指すものは、自治体の自立性を高めて、ニーズに的確に対応した行政サービスを提供し、国民生活の真の豊かさを実現することにあります。
 そこで、まず第一に、このような分権改革の本来の目的に照らして、今回の改革の全体像に対する知事の所見を伺います。
 さらに具体的にいえば、義務教育にかかわる補助金削減は、自治体の自立性の向上に無関係である上に、公教育の水準維持に逆行する危険性が指摘されており、国民健康保険の都道府県への負担転嫁は、国のご都合主義と厳しく指弾されております。また、協議事項として先送りされたとはいえ、生活保護費国庫負担金の削減は、国としての責任放棄にほかなりません。
 住民生活に直結する行政サービスを犠牲にするような改革は、そもそも改革の名に値いたしません。今後、地方分権改革を進めていく上で、社会保障制度はあくまでも国政の基盤にかかわる課題であると考えておりますが、知事の所見を伺いたいと思います。
 続いて、都の税財政問題について伺います。
 最近発表された経済指標では、我が国の企業収益は改善を示し、雇用についてもおおむね回復基調にあります。こうした景気の回復は、財政再建を進める都財政にとっても追い風であり、税収にもプラス効果があるはずであります。
 まず、現状での都税収入の見通しを明らかにしていただきたいと思います。
 いうまでもなく税収の伸びは、東京の再生を図り、都民生活の向上を目指す上で歓迎すべきことであります。しかし、現状では財政再建の手を緩めるわけにはまいりません。従来から繰り返し指摘されているように、都財政にはいまだ約一兆円もの隠れ借金が存在いたします。税収の増額は、こうした隠れた負債の解消を図り、都財政の体力を回復させるチャンスでもあります。
 いずれにしても、都税収入の落ち込みが継続した過去数年間とは大幅に異なる環境の中で、今まさに来年度予算編成の大詰めを迎えております。相矛盾する要請を抱えながらの予算編成になるわけでありますが、都民の負託にこたえることができる予算編成の方針について、都の見解を伺います。
 また、行財政改革がおくれている原因の一つは、いうまでもなく行政の会計制度の欠陥であります。明治以来の単式簿記、現金主義を基本とした現在の公会計制度が、多くの財政問題への弾力的な対応を阻害していると指摘されております。複式簿記、発生主義による企業会計的な会計制度への抜本的な制度改正が不可欠であります。
 現在、我が党の提案を受け、また知事の強い指示があり、都は新たな会計システムの構築に向けて努力していると聞いております。公会計制度の改革の目的は、予算の単年度主義を超えて事業達成の道筋を明らかにする一方、その達成度を客観的に評価することにより、財政の客観性と効率性を明らかにすることであります。バランスシートや行政コスト計算書などの作成は、その手段の一つにすぎません。事業目的に即した複数年度予算の編成を実現して初めて公会計制度の改革は完結いたします。
 国においても、現在、複数年度予算導入に向けた検討が始まっております。もちろん現状では法令上の制約があり、直ちに複数年度予算を導入できるわけではありませんが、バランスシートなどを活用した事業の計画的な管理を行えば、複数年度予算と同等の効果を上げることが可能であります。これは国に先鞭をつける取り組みとなり、都も早期に試みるべきであります。所見を伺います。
 次に、大きな課題となるのが職員の意識改革であります。
 元来、日本では、会計制度の重要性に関する認識が薄弱でありました。広く職員の会計制度に関する認識を改めない限り、改革は達成できません。新たな制度の導入まであと一年余りとなった今こそ、当初より強い問題意識を持っていた知事が先頭に立ち、職員の意識改革を促して、公会計制度の難事業の達成を目指していくべきであります。改めて知事の見解を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 知事は、所信表明におきまして、資金繰りに困窮する中小企業の期待にこたえて、新しい再生ファンドを立ち上げ、順次事業を展開すると述べました。東京都が創設する新銀行は、まさに中小企業を支援することが本来の使命であります。ぜひとも効果的な事業を積極的に実施すべきであります。
 そこでまず、この再生ファンドの持つ企業再生の手法を具体的に示していただきたいと思います。
 あわせて、再生ファンドと連携する地域金融機関にとってのメリットを明示するとともに、新銀行再生ファンドの規模について、将来的な見通しを含めて明らかにしていただきたいと思います。
 以上、都の所見を伺います。
 次に、震災対策について伺いたいと思います。
 まず初めに、新潟県中越大震災の被害者の皆様に、衷心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 さて、この新潟県中越大震災は、大きな衝撃をもって受けとめられました。公明党は、発災直後から、支援、調査のために、神崎公明党代表を初め議員を派遣し、私も調査団の一員として、十日町市や小千谷市、震度七を記録した川口町などを訪れました。
 特に印象的だったのは、川口町の田麦山地区であります。集落の家屋がすべて倒壊し、中には、百九十年前に建設されて以来、幾度もの災害に耐えてきた頑丈な民家が一瞬にしてつぶされた例もございました。住民が助かったのは、恐らく柱や、はりが太く、人がはい出る空間が残されたためだと思われます。
 また、直径一・五メートルもある庭石の周囲の土が十センチ以上も盛り上がっており、どう考えても、庭石が地震の振動で空中に飛び上がり、落下したとしか考えられません。すさまじいの一語に尽きます。こんな地震が東京を襲ったらと、まさに身の毛のよだつ思いがいたしました。
 今や早急に、阪神・淡路大震災はもとより、今回の新潟県中越大震災の教訓を生かして、東京の防災対策を見直すべきであります。新潟で火災の発生が少なかったのは、どんなに住民からの要請が強くても、電力会社が各家庭のブレーカーのオフを確認しない限り送電を開始しなかったためであります。これはまさに阪神・淡路の教訓にほかなりません。
 そこで、多くの教訓を総括して申し上げれば、地震の第一撃で家屋倒壊による圧死者を出さない、あるいは地震の第一撃で建物倒壊による火災を発生させない、これが重要であります。ここに焦点を絞って、住宅の耐震化、不燃化を急速に進める必要があります。
 屋根のふきかえなどを含む本格的な改修となると、数百万円単位の費用がかかります。これでは、たとえ補助が出たとしても、高齢者世帯などは二の足を踏みます。従来の国の耐震助成が普及しなかったのは、ここに原因があります。
 先日、都議会公明党は、防災に力を入れている新宿区早稲田の商店街の代表と懇談をいたしました。そこでの話題の焦点は、人命を守ることに焦点を絞った耐震改修であります。ボランティアで参加している専門家がまとめた資料には、さまざまな専門業者が提案している数万円から数十万円までの耐震補強工事のサンプルがあります。
 例えば、天井と壁を壊さず、その間の空間を利用して、金属や耐震ボードで剛性を高める工事があり、工期は半日で、費用は二十万から二十五万円。また、外壁部の一部に開口部をあけ、壁内部に金属性の筋交いと引き抜き防止装置を設置する工事、これは工期が二、三日で、費用は約百三十万円などと、補修のタイプ別に数十例が挙げられております。
 こうした工事を家屋や地域の特性に応じて選択し、そこに国や都、自治体から補助が出れば、多くの都民が耐震改修に着手できます。地震の第一撃から人命を守り、火災を発生させないため、早急に助成制度を導入して、個人住宅の耐震化を推進すべきであります。
 従来から指摘されてきた改修工事の施工に伴う一般耐震診断への補助、耐震改修工事に対する助成、国でも現在検討中の耐震改修費用に関する税の優遇措置などを含め、知事の所見を改めて伺いたいと思います。
 また都は、来年一月に、我が党提案による耐震フォーラムを開催する予定ですが、そこでも、わかりやすいパース等を活用して、これらの耐震手法を展示し、都民への周知を図るべきであります。そのほか、耐震工法の普及について局の所見を伺います。
 また、今回の地震では、震度四から六クラスの余震が何日間も繰り返し発生いたしました。都の防災計画では、震度六の余震が繰り返し発生するなどという事態は一切想定しておりません。前提が変わった以上、対策の軸となる被害想定を見直すべきであります。
 大都会東京で新潟のような地震が起きたら一体どうなるのかとの都民の不安を抑えるためにも、地域防災計画や被害想定などの総点検、見直しを早急に進めるべきであります。見解を伺います。
 次に、避難の体制です。
 新潟では約十万人の避難者でしたが、東京では約二百十万人が予想されております。ところが、東京では、大量の仮設住宅を設置できるスペースは限られております。また、一時避難場所である小中学校での長期の避難生活は、精神的、肉体的な健康の観点、また学校の再開の問題とあわせて、困難な側面があります。
 そこで、一つのアイデアは、国内各地との避難協定の締結であります。実は、これも既に早稲田商店街で実施されております。希望者は年間五千円を支払い、みずから選んだ地方と疎開契約を結び、いざというときには、そこで疎開生活を営めるというシステムであります。
 都内各自治体では、さまざまな地域と協定を結び、交流事業を行っております。そうした関係を活用し、高齢者や児童あるいは障害者、いわゆる災害弱者の避難場所を確保する努力が必要であります。自治体、商店街、町会、NPOなどの取り組みを促し、支援するシステムを検討すべきであります。見解を伺います。
 次に、ライフラインの根幹である水道の復旧について質問いたします。
 平成七年の阪神・淡路大震災では、電気や電話が一、二週間で復旧したのに対し、水道は応急復旧に約三カ月もかかっております。今回の新潟県中越地震でも、発生から一カ月以上が過ぎた現在、震源である川口町や小千谷市などでは、いまだに断水している世帯が数多く存在いたします。
 平成九年の都の被害想定によれば、発災一日後における水道の断水件数は約百五十万件に上り、復旧に必要な日数は三十一日としております。しかし、阪神・淡路より十年、この間、水道局は、管路の耐震性強化を初めさまざまな震災施策を実行し、復旧に必要な日数も間違いなく短縮されているはずであります。現時点における水道復旧に必要な時間を明らかにしていただきたいと思います。
 また、本格的な復旧までは、当然応急給水での対応となりますが、東京都のような大都市では、断水の解消までに時間がかかり、都民に不自由と我慢を強いる期間が長期に及ぶ可能性があります。そうした事態を避けるためには、引き続き施設の耐震性強化が不可欠であります。
 一方、我が党は、災害時の断水被害を最小限にするために、近隣の自治体と水の相互融通を行うべきであると主張してまいりました。その結果、埼玉県と川崎市の間で相互融通が実現したことを高く評価いたしております。そこで次は、浄水場から遠く離れた町田市など、給水の末端地域における水の相互融通の実現を図るべきであります。所見を伺いたいと思います。
 次は、東京港の震災対策の強化であります。
 一般に、軟弱地盤が多い湾岸地域では地震の揺れが激しいといわれ、現実に阪神・淡路では大きな被害が発生しています。しかし、一たび大規模地震が発生したら、阪神・淡路大震災の教訓からも、海上からの緊急物資の輸送が極めて重要であります。しかし、さきに述べた中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会では、東京湾北部を震源とするマグニチュード七・三の直下型地震の切迫性が最も高いと発表しております。
 したがって、直下型地震に対する東京港の対策には万全を期すべきであり、新潟県中越地震の教訓や中央防災会議の指摘を踏まえて、震災対策の着実な推進を図るべきであります。局の所見を伺います。
 また、復旧対策とともに、東京港には首都圏四千万人の消費生活と産業活動を支える重要な機能があります。こうした物流機能は、たとえ震災時でも休止することは許されません。震災時においても経済活動を継続、維持していくため、東京港の国際物流を支える岸壁のさらなる耐震化を実行すべきであります。所見を伺います。
 次に、教育問題について質問いたします。
 まず、特別支援教育推進計画についてであります。
 第一に、この計画では、知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校を、平成十九年度までに三校設置することが公表されました。この新しいタイプの学校は、職業教育を充実し、将来の職業的自立を目的としており、知的障害のある生徒やそのご家族から大きな期待が寄せられております。
 今後、全都的なバランスを考えて増設に取り組む方針ですが、それには時間がかかります。しかし、一日も早く東部地区などに設置してほしいという要望が強く、我が党にも多くの意見が寄せられております。しかし、都立高校跡地の活用という条件から、早期に設置することは難しく、実際には二次、三次計画まで待たねばなりません。
 そこで、本格設置までの間、現在ある養護学校の中で、比較的施設に余裕がある学校に職業コースを設置して、本人や保護者の要望に対応し、あわせて、本格的な設置に備えて職業教育に関するノウハウとデータ等を蓄積すべきであります。所見を伺います。
 第二に、LD児等の子どもたちへの対応であります。
 こうした児童生徒は、通常の学級で過ごすことには相当の困難があり、適宜適切な支援が必要であります。しかし、実際には適切な支援は提供されておりません。国においても、現在、特別支援教育を推進するための制度のあり方を検討中であり、現実的には国の動向を踏まえて慎重に対処していく必要がありますが、法改正まで拱手傍観して待つのではなく、都独自に取り組める事項に関しては、国に先んじて着手する必要があります。
 都教委は、小中学校における特別支援教育体制を整備するため、実践的な研究を行う特別支援教育体制モデル事業を、北区、八王子市、調布市、あきる野市等で実施しておりますが、こうした取り組みを他の地域へも拡大すべきであります。
 国が準備不足のまま特別支援教育に移行するとの方針を示したため、都内でも、保護者や教育現場に不安と混乱が生じたのは事実であります。それを払拭するためには、モデル事業の対象となっていない区市町村に対しても、特別支援教育への移行に向けた支援を行っていく必要があります。見解を伺います。
 また、教育にかかわるすべての人々が特別支援教育に対する理解を深めることが必要でありますが、それと同時に、小中学校における特別支援教育の核となるような人材の養成が急務であります。都教委は、区市町村の人材育成に対して積極的に支援策を講じるべきです。所見を伺います。
 一方、都立高校においても、LD児等の特別な教育的支援を必要とする生徒が実は存在しています。こうした生徒や保護者への対応のために、例えば臨床発達心理士などを学校に配置して支援を行うことが効果的であります。あわせて都教委の見解を伺いたいと思います。
 最後に、少人数指導、習熟度別学習の充実について伺います。
 現在、都内の一クラス当たりの児童生徒数は、小学校で三十・八人、中学校で三十三・七人となっています。そこに三十人を上限とする三十人学級制を導入すると、結果的に、十五人から十六人の小規模クラスが増加する結果となります。学校生活の基礎集団であるクラスには一定規模が不可欠であると考えますが、学級のあり方と教育効果の関係について、都教委の見解を明らかにすべきであります。
 また、学力低下が指摘されている今日、少人数指導と習熟度別学習は大変に重要であります。これまでの成果と効果、そして今後の拡充の方針を明らかにすべきであります。見解を伺います。
 次に、教育問題に関連して、若年者の雇用対策について伺います。
 若年者の雇用を取り巻く状況は依然として厳しく、東京都における完全失業率が、全年齢では五・〇%であるのに対し、十五歳から二十四歳までは八・二%、二十五歳から三十四歳までは七・一%となっております。また、フリーターやニートと呼ばれる無業者も依然としてふえ続けております。
 我が党はこれまで、若年者雇用について再三にわたり取り上げ、都の対策を求めてまいりました。しかし、若年雇用の問題は、都の取り組みのみで解決できるものではなく、区市町村や企業などの関係者と連携して、社会全体として取り組むことが重要であります。
 そこで、都は、各区市町村の実情に応じた若年の雇用就業対策が行われるよう、区市町村に対し的確な情報提供を行うとともに、先進的な取り組み事例の普及に努めるなど、具体的に今後連携していく必要があると考えます。見解を伺います。
 また、さきに発表された都の平成十七年度重点事業においては、若年者の社会的自立を促進する事業を盛り込み、若年者の就職を支援する企業を若者支援サポーター企業として組織化するとしております。若年者の就業を支援するためには、企業の協力が不可欠であります。今後、サポーター企業が若年者の応援団としての役割を十分に発揮できる、実効ある仕組みを構築すべきであります。見解を伺います。
 次に、次世代育成支援について伺います。
 現在、国は、深刻化する少子化の流れを変えるため、官民が一体となって、家庭や地域社会における子育て機能の再生を実現することを目的に、次世代育成支援対策推進法を制定し、地方公共団体や企業に対して具体的な行動計画の策定を求めるなど、対策に本腰を入れてきました。
 次世代の育成を図る上では、真に保育を必要としている働く女性や、育児に積極的に参画する男性等に対して、地域や企業等も含め、社会全体でサポートしていくことが重要であります。また、家庭で育児に専念するケースも含めて、すべての子育て家庭をサポートするための体制を早急に整備すべきであります。
 こうした中にあって都は、平成十七年度の新規事業として、子どもの施設の安全・安心の実現、すべての子育て家庭への支援策、さらなる保育サービスの向上、そして青少年の放課後拠点の確保の四つを柱にした、都独自の総合的な補助制度を検討しているとのことであります。まさに時宜を得たものとして高く評価いたします。
 そこで、二点質問いたします。
 まず第一点目は、すべての子育て家庭への支援策についてであります。
 核家族化とともに、地域のコミュニティ活動や近隣との関係が希薄化している現在の東京においては、だれにも相談できないで悩んでいる数多くの親が存在いたします。こうした人々をサポートするためには、地域全体での支援体制を早急に整備していくことが必要であります。具体的には、子育て親子の交流や育児相談などを行う、いわゆる子育て広場の整備とともに、ショートステイや一時保育など、在宅サービスの提供のための施設の整備を進めていくことが重要であります。
 そこで、既存事業に加えて、今回の新たな補助制度を通じ、こうした在宅で子育てをしている家庭への支援を強化すべきであります。所見を伺います。
 次に、青少年の放課後拠点の確保についてであります。
 ここでは、児童館の活用を訴えたいと思います。現在、都内には六百を超える児童館があります。児童館は、単に幼児や小学生の遊び場ではありません。実際、杉並区の児童館である「ゆう杉並」のように、楽器演奏やスポーツ、工芸などが行える設備を整備し、中高生に開放している先駆的な児童館もあります。このような児童館が全都に広がっていくことは極めて有意義であると思います。
 そこで、今回の補助制度においては、こうした児童館を活用した中高生の居場所づくりの整備についても対象とすべきであります。所見を伺います。
 次に、児童虐待の防止対策について伺います。
 繰り返される児童虐待の悲劇を防止するため、我が党は本年二月、児童虐待防止対策プロジェクトを立ち上げ、児童相談所を初めとする現場を視察し、その結果を踏まえて具体的な提案を行ってまいりました。そして今回は、先駆型子ども家庭支援センターの拡充を強く求めたいと思います。
 我が党が児童相談所を視察した際、児童福祉司から、虐待を認めない親や、時には職員に暴力を振るう親など、数多くの困難な事例を伺ってまいりました。また、一人の児童福祉司が常時百ケース以上の相談を抱え、きめ細かな対応が困難な現状も見てまいりました。
 こうした現状を改善するため、身近な相談窓口である子ども家庭支援センターの機能をさらに充実させ、児童相談所と連携して、児童虐待防止の機能を持つ先駆型子ども家庭支援センターを東京都が創設したことは、高く評価したいと思います。
 我々は、過日、足立区の先駆型子ども家庭支援センターを視察してまいりました。このセンターは、住民に身近なところで、子どもの状況や家庭の状況をいち早く把握することができ、子育ての不安を抱えた家庭への支援や、軽度の虐待への早期対応、施設を退所した後の子どもと家庭の見守り等に大変効果があると実感いたしました。しかし、この先駆型子ども家庭支援センターは、現在、都内に八カ所しかありません。
 そこで今後、すべての区市町村に先駆型子ども家庭支援センターが設置できるよう、都は努めるべきであります。所見を伺いたいと思います。
 次に、高次脳機能障害対策について伺います。
 平成十年第四回定例会での公明党の提案以来、都はマニュアルの策定、社会復帰のためのモデル事業の実施など、国を先導する事業を実施してまいりました。こうした都の取り組みに促され、国も平成十三年度からモデル事業を開始し、診断基準や各種訓練、支援のプログラムが作成されました。本年度からは、これらに基づく支援サービスの試行が進められております。そして今後は、新たな社会復帰支援事業の展開が必要であります。
 都は、東京都リハビリテーション病院において、医学的リハビリを実施するほか、職業訓練を主とした社会復帰マニュアルの策定に取り組み、来年度からは、このマニュアルに基づいて支援が実施されることになっております。一方、福祉の分野では、心身障害者福祉センターの更生施設等において種々の生活支援が実施されています。
 そこで、このたびの福祉保健局の発足を機に、医療と福祉の二つの機能を連携させ、さらに地域の保健福祉センターなどとも協力して、医療、リハビリから社会復帰、生活支援、さらに就労支援という一貫したサービスが提供できるシステムを構築すべきであります。福祉保健局の所見を伺います。
 あわせて、区市町村の窓口で相談に応じる職員や福祉サービスの従事者、さらに医療関係者への知識、技術の一層の普及と理解の徹底が、高次脳機能障害対策には極めて重要であります。今後の具体策について所見を伺います。
 次に、羽田空港国際化について質問いたします。
 今月一日、羽田空港に第二ターミナルが開業いたしました。都議会公明党は、開業直前、公明党神崎代表ほかの国会議員とともに視察を行いました。第一ターミナルを凌駕するすばらしい施設であります。その後、四番目の滑走路の建設予定地と国際線ターミナル予定地を国土交通省の案内で確認してまいりました。
 ご存じのとおり、国の説明では、滑走路の増設で、発着回数は約十二万回増加し、そのうち国際線は三万回としております。この三万回という数字には明確な根拠はありません。空港事務所で航空局長らと懇談した際に神崎代表も指摘しておりましたが、国内線の需要は頭打ちになったとの見方が有力であります。そうであるならば、増加する発着回数の国内、国際線の割合を見直す必要があり、東京都は国際線枠の大幅な拡大を国に要求すべきであります。
 成田を抱える千葉が反発すると国はいいますが、首都圏の航空需要の受け皿は、将来的には、羽田、成田、横田の三空港をワンセットに検討し、それぞれが機能別にすみ分ける必要があります。
 羽田の滑走路は最大三千メートル。これでは燃料を満載した欧米向けの大型機は離陸できません。したがって、羽田は本格的に国際化しても、アジア、オセアニア中心にならざるを得ません。
 羽田国際化の結果、成田の枠に余裕が出れば、現状でも数多く寄せられている世界各地からの増便要求にこたえることができます。成田の地盤沈下はあり得ません。むしろ、成田の第二滑走路の完工を急ぐことにより、国際長距離便のアジアの中心空港として、さらに活性化が図られるはずであります。
 いずれにせよ、これからの世界経済を左右するのは国際物流であります。特に、飛躍的に増大する中国の物流をだれが制するかが焦点になっています。したがって、中長期の国家戦略からも、羽田の圧倒的に有利なロケーションを生かした国際化を迅速に行い、アジアのハブ空港機能を確保することが極めて重要であります。一千億円の無利子貸付を行う東京都は、その当然の権利として、国際線枠の拡大を強く国に迫るべきであります。知事の見解を伺います。
 また、横田に関しては、管制空域の返還を急ぐべきであります。管制空域が返還され、最も効率的な羽田への航路を選択できれば、年間で、燃料が約一億五千万ポンド節約でき、コストが約四十四億円削減できます。また、CO2は一〇%から一二%削減でき、約二十万トンの削減になると、実は航空各社で構成する定期航空協会が試算しております。経済効果もさることながら、東京の環境に大きな影響があります。
 改めて知事の積極的な取り組みと、国への強力な働きかけを要請いたしたいと思います。あわせて知事の所見を伺います。
 次に、空に続いて、海に関して質問いたします。
 余り知られておりませんが、日本の排他的経済水域の約四割は東京が占めております。小笠原まで直線距離にして約一千キロ、およそ百七十一万平方キロメートルの海域は、日本海を上回ります。東京湾から広がる広大な海域は、壮大な可能性、潜在力を秘めており、東京は世界有数の海洋都市であることに改めて着目したいと思います。
 区部中心部は高機能で効率的な先進都市として整備を進め、多摩は、その田園と山間の自然を生かし、また集積する大学と情報産業を結びつけて、新しいタイプの田園・情報都市としての展望が開けます。そして、そこにもう一つの広がりをつけ加えるのが海洋都市・東京であります。
 折しも、小笠原は、世界自然遺産の登録とあわせた観光政策が立案され、テクノスーパーライナーの就航も間近であります。また、三宅島では、小笠原で生産されたハタとシマアジの稚魚の放流など、本格的な栽培漁業が試みられ、さらに東京の海域でとれたしゅんの魚を都民の台所に届ける事業も始まりました。また、島しょ部では、さまざまな特色ある農業生産がなされ、観光資源にも恵まれております。
 こうした東京の海域を舞台にして、自然体験や、農業や漁業のインターンシップ、エコツーリズムなどの新たな観光、さらに、リタイアした中高年の農業、漁業への参入などを特区制度などを活用した大幅な規制緩和によって可能にする海洋都市・東京構想を策定し、従来の島しょ振興策の総合化、体系化を図ると同時に、東京の新しい魅力と可能性を開拓する努力を行うべきであります。
 税金を使うのではなく、都が規制緩和などの誘導策を編み出し、民間の活力で東京の海域の活性化を図り、都民のみならず、内外の多くの観光客を招くことができる事業の展開を求めたいと思います。
 閉塞感がいまだ払拭できない日本にあって、東京が先陣を切って明るい展望を指し示す意味でも、海洋都市・東京構想をぜひとも検討すべきであります。知事の所見を伺います。
 次に、三井物産のDPFデータ捏造事件について伺います。
 昨日、都は、一都三県共同で刑事告発を行いました。今後は、事件の解明は司直の手にゆだねることになりましたが、都としても全容を解明すべき責務があります。今後の都の調査の体制を明らかにしていただきたいと思います。
 また、知事は、これまで都庁の先頭に立ってディーゼル規制を推進してこられました。今回の三井物産の行為は、そうした努力を裏切る行為にほかなりません。この事件に対する知事の所見、あるいは思いを伺いたいと思います。
 今回の捏造事件に関して、三井物産は四点の措置を発表いたしました。告発した後も、これらの三井物産の発表した事項を誠実かつ着実に実行させるべきであります。局の所見を求めます。
 また、現在使用している他のメーカーのPM減少装置については心配ないのかどうか、改めて試験をし、ユーザーの不安を払拭すべきであります。
 また、今後、このようなデータ改ざん等の事件が起きないように、都の審査体制を抜本的に見直すべきであります。
 以上の所見を伺うとともに、一言申し上げます。
 さきに、職員が検査の場を離れて釣りに行った事実が暴露されました。要するに、そうした気の緩みにつけ込まれて不正が行われたといわれても仕方がありません。猛省を促したいと思います。
 最後に、三宅島島民の帰島支援について伺います。
 まず、特別養護老人ホームについてであります。
 三宅村の阿古地区には特別養護老人ホームあじさいの里がありますが、この地域は火山ガスの高濃度地区と隣接しているため、入所者を復帰させることができません。そこで、別地域での建てかえに対する支援、あるいはそれにかわる在宅サービスでの支援などを総合的に講じるべきであります。
 さらに、農業復興についてでありますが、三宅島の園芸用ハウスは壊滅状態にあります。また、農地についても降灰除去や土壌改良が必要であります。そこで、島の農家が速やかに営農を再開できるように、これらに対しての支援策を講じるべきでありますが、以上二点について所見を伺います。
 最後に、これは要望であります。
 都が帰島村民の住宅再建支援制度を創設することは高く評価いたしますが、この制度は、帰宅が認められていない火山ガスの高濃度地区には適用されません。同じ村民でありながら、住宅再建支援に大きな格差があってはならないと思います。火山ガスの高濃度地区に対しても総合的な支援策を検討すべきであります。
 以上を要望して私の代表質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、いわゆる三位一体改革についてでありますが、今回の改革の本来の目的は、国による画一的な規制を排除し、おっしゃるとおり、地域の実情に応じて住民が真に求めるサービスを自主的、効率的に提供できる仕組みをつくることにあったはずであります。しかし、国が決定した全体像なるものは、地方の自主性を高めるにはほど遠い内容としかいいようがないと思います。数字合わせの国庫補助負担金の削減や交付金化では、分権にはとてもつながりません。
 また、全国知事会の議論など見ていますと、それでもいいんだ、とにかく金が欲しいんだというような論もありまして、結局、自治体を預かる者の志の問題だと思いますけれども、やっぱり日本の大きな歴史の流れを眺めて、この問題、私は、できれば大きく仕切り直しをすべきだという気がいたします。
 税源移譲により地方が実施することになる事業について国がチェックする仕組みを導入するに至っては、改革の本旨を全く理解していないというしかないと思います。
 今必要なのは、自治体の営みの総和が我が国全体の発展を支える国の形を実現することでありまして、初心に帰って仕切り直しを行うことが私は好ましいのではないかと思っております。
 とにかく、迂遠であろうと、まず、この時代に国はどこまでやるか、地方は何をやるかという大きな仕切りというものを国民的な討論で決める、その代表が決めるということ、そこからこの問題は始まらなくちゃいけないのに、いきなり三兆円というお金の額が出て、しかも、それが義務教育の国庫補助の削減という、非常に乱暴な第一案となって出てきて、まさに最初から手順が違っていたのではないかと思います。
 次いで、社会保障のあり方についてでありますが、生活保護や国民健康保険などの社会保障サービスは、国民生活の基盤を支えるものでありまして、本来は国が財政責任を負って行うべきものだと思います。しかし、今回の全体像では、こうした根本的な議論も全くないままに、ただ、いきなり削減の対象とされた。それも、ほかがごたついたために、一つの代案として引っ張り出された。
 そもそも社会保障については、平成十八年度までに制度全般にわたる一般的な見直しを行うことが既に約束されているはずであります。今回の国庫負担金の削減と全体的な見直しの関係は一体どうなっているのか、さっぱりわからない。
 繰り返して申しますけれども、改めて仕切り直しをしてでも、国と地方の役割分担を明確にしていくような本質的な議論から始まるべきだ。それなくして本当の改革はあり得ないと思っております。
 次いで、十七年度予算編成についてでありますが、都財政を取り巻く環境は、企業業績の上向きを受けて、税収の回復が期待できますものの、景気の行き先や三位一体改革の影響などを考慮しますと、決して楽観はできない状況にあります。また、都財政は、一兆円を超える隠れ借金──これはなかなか外から見えにくいものでありまして、議会の当事者とか、行政の当事者しかわからない。だから、外から見れば、東京はもうかっている、景気がいい、うらやましいという話になりますが、実は、皆さんよくご存じの隠れ借金を抱えるなどして、依然として危険な厳しい状況が続いているわけであります。
 来年度、都税がたとえ増収となったにしても、これを改革の好機ととらえて、都財政の体力回復に努めるとともに、第二次財政再建推進プランに基づきまして、財政構造改革に取り組むことが不可欠であると思っております。
 同時に、福祉、医療の充実や治安の回復、災害対策、中小企業の支援など、都政の喫緊の課題に対して重点的、効率的に財源を配分し、積極的に対応する必要があると思っております。
 十七年度予算編成に当たりましては、こうした考え方に立って都民の負託にこたえていきたいと考えております。
 次いで、公会計制度におけるバランスシートの活用についてでありますが、これは私もかねて申し上げている持論でありまして、知事に就任して真っ先に感じたことは、どうも行政には、国も都も、どこもここもみんな役所というのはそういうものでありますけれども、金利感覚、時間、コストの感覚が非常に乏しい。それから、行った、自分が手がけた事業が、例えばある瑕瑾を生じたときに、一体だれがそれを保険、保障するか、どういう責任を負うかという、そういう責任のメカニズムが非常にあいまいであります。
 ということで、私は、経営感覚という民間企業では至極当然の意識を都庁に持ち込んで根づかせたいと思いまして、国に先駆けて、その一つの助長方式であります複式簿記・発生主義の考え方を取り入れ、かつての公認会計士協会の会長の中地さんにもお願いして、あのチームで、機能するバランスシートという非常にわかりやすい会計の発想法をつくっていただきました。これを適用して、既に成果を上げつつあると思っております。
 都の公会計制度改革は十八年度から本格実施となりますが、そこでお話にもあったように、主要な事業についてバランスシートを作成しまして、これを目標の達成状況のチェックに活用すれば、単年度予算の弱点を実質的にカバーして、複数年度の計画的な事業管理や予算の効率的な執行などに役立つと考えておりまして、積極的に取り入れ、運用していきたいと思っております。
 また、公会計改革の達成に向けての取り組みについてでありますけれども、ご指摘のとおり、会計制度をいかにドラスチックに変えても、実際の行政を担う職員の一人一人が、これまでなじんできた、いわゆる単式簿記的発想を変えなければ、目に見える成果が上がってこないわけであります。せっかくの改革が仏つくって魂入れずにならないように、先ほど申しました金利感覚、時間、コストの感覚、それから、保険、保障というものに対するシステム、そういったものを着実に付与して、職員には相当の意識改革をしていただく必要があると思っております。
 私が先頭に立ちまして、公会計制度改革による都の構造改革を推進し、東京から新しい公会計のモデルを発信していきたいと思っております。
 次いで、住宅の耐震化への支援についてでありますが、今回、特に比較的東京に近い新潟のあの惨状を見まして、改めてあの悲惨さに他人事でないという実感を都民の皆さんは持たれたと思いますが、住宅の耐震改修については、いうに易しく、また、その被害を受けやすい住宅に住んでいらっしゃる方々もよくわかっていらっしゃるんでしょうが、ここには来まいという、そういう楽観が蔓延しているようですけれども、しかし、新潟もかなりの被害を受けましたが、東京もいわゆる木造密集地帯、木密地帯というものがあちこちにありますし、これほど過密な大都市もないわけであります。
 先般、二、三年前ですか、鳥取県に関東大震災並みの地震が来ましたけど、死者が一人も出ない。つぶれた住宅は何軒あったか、被害はあの程度で済んだというのは、つまり、そういういい方も失礼かもしれないが、過疎の田舎と大都市がいかに災害に対して違うか、弱いか強いか、そういうことの如実な対比だったと思います。
 住宅の耐震改修については、国において減税などの支援策を検討していることは承知しておりますけれども、震災対策の基本は、自助、共助、公助という原則で進められるべきものでありまして、都としては、災害に強い都市を目指し、木造住宅密集地域などの整備改善を進めるとともに、住宅の耐震改修についても、都民への普及啓発などによって、住宅の安全確保に努めてもまいりました。今後とも、首都東京の安全性を一層高めるため、ソフト、ハードの両面から取り組み、災害への備えに万全を期したいと思います。
 繰り返して申してきたことですが、日本は、世界最大の火山脈の上にあります。世界に現存する八百の活火山のうち八十五が日本にある。しかも、日本のすぐ東側の海底には、これは日本人の発見によったものですけれども、ある緯度からアラスカに上陸するまで、神武、綏靖、安寧、懿徳といって、徳川時代のある天皇の名前まで、数十の名前のついた海底火山が現に海底で火を噴いている。そういう国土に住んでいるわけでありまして、地震が来ないのがおかしいような話でありますが、私は、そういう認識を国全体が持ち直して、一種の年金のような──しかし、地震保険というのは現にありますが、非常に高くてなかなか入りにくい。そういうものでなくて、国が、つまり年金に似た形で、半強制というんでしょうか、ともかく何か互いに支え合って、いざというときに活用できるみたいな、そういうシステムというものを地震に対する保障として考えるべきではないかと思っております。
 それから、羽田空港の国際化についてでありますが、大変いいご質問で、これはここでやるよりも国会行ってやっていただきたい。国会には、そういう認識を持った政治家が非常に少なくて、私も運輸大臣時代に往生したんですけれども、とにかく増大する首都圏の国内線及び国際線の航空需要に対応するために、羽田空港の再拡張が本年度やっと事業化されます。これも、亀井静香君が政調会長のとき、私の弟分でありまして、両方とも運輸大臣をやりました、このままでは済まぬぞということで、政調会室に行きまして、私と二人で電話をとり合って、詳しく話しませんが、運輸省を脅迫するような形で調査費をつけて、ここまで来たんですけど、そうでもしなかったら、まだ羽田は滑走路があのままで済んでいたんじゃないかと思います。
 ただ、首都の空港で、羽田ほどダウンタウン、つまり中心地に至近の距離にある空港は世界にございません。これは東京の都心に対しても、横浜の中心地についても非常に近い。まして、これは二十四時間あいている空港ですから、日本のホテルのサービスの緊密さからいえば、たとえ深夜二時、三時に着いても、きちっとしたブッキングができるわけでありまして、何ら痛痒を感じない。こういう羽田というものを、当然国際化して、二十四時間これをフルに使う。しかも幸い東京湾があるわけでありますから、この東京湾をフルに利用して、騒音の対策も講じながら、これを活用するということが、日本の国力の維持のためにも絶対に必要であると思っております。
 台頭著しいアジア諸国の空港機能というものに対抗して、いかに我が国が国力を確保するための空港整備をするかという視点が、どうも国には欠けているんじゃないかという気がいたしてなりません。このため、長期的視点に立った航空政策のあり方を示すよう国に対して求めてまいりましたし、今後も再拡張後の羽田を十二分に活用した国際化の推進を引き続き国に働きかけてまいります。
 次いで、横田空域の返還に向けての都の取り組みについてでありますが、動いてから随分もたもたもたもた、特に外務省が変なバリアになって、あったんですが、一昨年ですか、昨年の五月のブッシュとの首脳会談で、前日、総理から電話がありまして、外務省を通すと手間暇かかるので、自分がじかに持ち出しますということで、それが俎上に乗りまして、ブッシュもわかったということで、これが首脳の一致ということで、日米間の正式な議題として登録されたわけです。
 そこら辺がちょっとアメリカと日本の違いは、アメリカは非常に早くて、首脳が合意したんだということで、これは国務省のマターを外れて、国防総省マターになって、すぐ国防総省の太平洋の総司令官からこちらにアプローチがあったりしましたが、残念ながら、日本の場合には防衛庁は防衛省に昇格しておりませんで、反対する勢力も随分ありまして、ですから、一々防衛庁に関する外交マターというものは外務省を通さざるを得ない。そこで非常に時間がかかり、いろいろな意識が屈曲して、特に今、アメリカ側との合議のチームがやっとできましたけど、率直にいって、ここから東京都を外したいというのがいろいろな人たちの意向なんじゃないでしょうか。彼らがつくってくる英文の文書を見ても、意識的に東京を外して、直させたりしておりますけれども、いずれにしろ、私たち、この問題を、アメリカが後にいい出したトランスフォーメーション、アメリカの戦略転換の中で、日本における基地をどう変えていくかという大きな問題も重大でありますけど、しかし、その前にこれは登録された問題でありますから、それとは切り離してやってほしいし、また、やるべきであるという要求を続けております。
 いずれにしろ、これがうまく展開しますと、各県の知事さんがおっしゃってくださっていますが、特に、山梨県、長野県、埼玉県、それから神奈川県の北部の方たちは非常に便利になるわけでありまして、これまた一つの人間の往復、情報の往復、その他この他国力の推進になると思っております。
 今後も我が国の航空政策を日本自身の手で推し進めるためにも、引き続き横田空域の返還について広範な働きかけを行うとともに、その実現を強く国に、要求したってしようがないので、場合によってはけ飛ばすぐらいして、実現したいと思っております。
 それから、海洋都市・東京構想についてでありますが、東京には伊豆・小笠原諸島を初め日本最南端の沖ノ鳥島、これはとても大事なんです。それから、最東端の南鳥島など、大小二百余りの島がありまして、その存在は日本の排他的経済水域にとって極めて重要であります。排他的というのは、言葉があんまり印象よくないんですが、いずれにしろ、ここは日本の商売、経済に関係のある領域で、うちの店先だということでありますから。これがしばしば侵犯されているのが現況であります。
 都は、これまでも、島しょの生活基盤整備、水産業の振興、東京版のエコツーリズムによる観光振興などに取り組んでまいりました。来年には、これは大事なことですが、小笠原へのテクノスーパーライナーが就航します。これは従来二十七、八時間かかったものが十五時間で行くわけでありまして、小笠原は、これによって一変すると思います。あそこで、今からやっても遅いぐらいですが、きちっとした都市計画を立てて、観光計画を立てませんと、またあの島はずたずたになってしまう。
 ご存じかどうか知りませんが、屋久島は世界遺産に登録されました。された結果、何になったかというと、国は何もコントロールしないから、屋久島は今めちゃくちゃになりました。実態を私たちは知って、国にすべき勧告をして、せっかくこういうものが就航したときに、多くの観光客が繰り込むでしょうが、そのときに、世界遺産に登録される、そういう資質を持ったかけがえのない小笠原が、一体どういう形で維持されるかという計画を我々自身が立てて、これを国にも協力させて実現していく必要があると思っております。
 次いで、三井物産による虚偽データの使用についてでありますが、これは本当に怒りを禁じ得ない。先ほど申しましたけど、人の弱みにつけ込んでというか、やり方は本当にやくざに近い方法であって、釣りに行った職員が、釣りに行こうが行くまいが、ごまかされたと私は思いますけれども、別に職員をかばうわけじゃありませんが、いずれにしろ、素人には非常にわかりにくい装置というもののわかりにくいデータというものを簡単に捏造して、人をいいくるめて、けしからぬ利益を上げる。これは本当に人類の将来を左右しかねない環境問題に取り組んでいる、協力してくださった東京在住の中小の運輸業者というのは、本当に血を流し、涙を流して、身銭を切って協力してくださった。そういう人たちをまさに裏切る行為でありまして、絶対に許せないと思います。
 彼らがいい出している四つの賠償というものをコンペンセーションする、しないじゃなしに、それプラス、三井物産という天下に名の通った企業というものが、企業の良心においてこれをどうとらえるか。それは社長が頭を丸めてここで土下座しても済むことじゃない。私は、非常に猛省を促して、どういう形で都民のあだをとるか、今でも考えていますけど、考えれば考えるほど腹が立つ問題であります。
 いずれにしろ、昨日、刑事告発を行いました。今後とも皆さんと協力して、徹底的に責任を追及してまいりたいと思います。
 他の質問については教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します六点の質問にお答え申し上げます。
 まず、知的障害が軽い生徒のための職業教育の充実についてでございますが、都教育委員会としましても、区部東部地区などに知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校が設置されるまでの間、地域バランスを考慮しまして、既存の知的障害養護学校高等部において職業自立を目的とした職業教育の充実を図りますとともに、今後の養護学校設置に備えた研究等を行っていくことが必要であると認識しておりますので、その具体化に当たりましては、ご指摘のように、第二次実施計画を待つことなく、企業就労を目指す職業コースの設置も含めて検討してまいります。
 次に、特別支援教育体制整備に向けた区市町村への支援についてでございますが、都教育委員会としましても、小中学校におけます特別支援教育体制の整備のための支援として、国の動向を踏まえますとともに、実践的な研究を行う特別支援教育体制モデル事業を、四区市をモデル地域として、今年度から平成十八年度まで実施いたします。
 今後、各区市町村にモデル事業の成果や課題について広く情報提供することによりまして、モデル地域以外の区市町村においても特別支援教育体制への移行に向けた準備が適切に行えるよう支援してまいります。
 次に、人材育成についての区市町村への支援についてでございますが、区市町村におきましては、小中学校におけるLD等を含め、障害のある児童生徒や保護者のニーズに適切に対応していくため、具体的な支援策の調整などを行う特別支援教育コーディネーターの育成が急務でございます。このため、都教育委員会としましても、平成十七年度から、区市町村における特別支援教育コーディネーター育成の中核的な役割を果たすことのできる人材を養成する研修を実施しまして、区市町村を支援してまいります。
 次に、都立高校のLD等の生徒に対する支援についてでございますが、都立高校に在籍しますLD等の生徒に対して、現在、各学校におきまして、個別の進路指導や生活指導などを行っているところでございますが、これに加えて、より専門的な見地からの支援が求められていると認識しております。
 都教育委員会としましても、今後設置される知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校高等部に臨床発達心理士などを配置しまして、都立高校に在籍するLD等の特別な教育的な支援を必要とする生徒やその保護者に対し、巡回相談等による支援を行ってまいります。
 次に、学級編制に関しまして、学級のあり方と教育効果との関係についてでございますが、児童生徒に望ましい人間関係や豊かな社会性を培うためには、学級集団として一定の規模が必要でございます。現在、都内の公立小中学校では、学習指導や生活指導などのさまざまな教育活動におきまして、そのねらいに応じた集団の形態を工夫して、児童生徒が充実した学校生活を送ることができるよう指導いたしております。
 お話のように、三十人を上限とする規模の学級にした場合、例えば、三十一人の学年では十五人と十六人の二学級となるなど、必然的に小規模な学級が増加することになりますが、このような状況では、学級内の人間関係が固定化したり、子ども同士の切磋琢磨する機会が不足したりするなど、生活集団として望ましいものとはならないと考えております。
 したがって、都教育委員会としましては、今後とも、現行の学級編制基準のもとで各学校が学習形態等を工夫して、児童生徒への教育効果を高めていけるよう支援してまいります。
 最後に、少人数指導と習熟度別指導の成果等についてですが、少人数指導は、習熟の程度や個人差に応じて、きめ細かな指導を行うことができる、極めて有効な指導法でございます。都教育委員会が指定した研究推進校の報告によりますと、少人数指導を通して、児童生徒が学習に対する理解を深めたり、意欲を高めたりすることができるなどの成果が上げられておりますし、複数の教員が協力して指導計画の立案や教材の作成などを行うことによって、教員が相互に指導力を高めることができるという成果も上げられております。
 都教委としましても、これらの成果を踏まえまして、今後とも区市町村教育委員会との連携を深め、少人数指導の充実を図ってまいります。
   〔主税局山口一久君登壇〕

○主税局長(山口一久君) 本年度の都税収入の見通しについてのご質問でございますが、本年九月までの上期の都税収入実績は、前年同期と比べ、約千六百億円の増収となっております。これは大企業の製造業を中心に企業収益が大幅に改善していることを反映し、法人二税が堅調に推移しているものでございます。
 今後の税収見通しにつきましては、十一月末の中間申告状況等を見きわめる必要がございますが、現時点で確たることを申し上げる状況ではありませんが、最近の企業収益などの状況を勘案しますと、当初予算額を相当程度上回る税収が期待できるものと考えております。
   〔新銀行設立本部長津島隆一君登壇〕

○新銀行設立本部長(津島隆一君) 新銀行の再生ファンドについて三点のご質問にお答え申し上げます。
 初めに、企業再生の手法についてのお尋ねでございますが、新銀行ファンドは、まず、当該企業の経営不振の分析などを行い、再生可能性を見きわめた上で、資金繰りの改善や不要な資産の売却、新たな市場の開拓などを内容とする再生計画を策定し、企業を解体することなく再生が可能な環境を整えてまいります。
 また、豊富な経験を有する提携企業、公的団体などとの連携により、経営コンサルティングなど、企業の経営力全般のレベルアップについても幅広く取り組んでまいります。
 さらに、地域金融機関が債権者として残り、これと密接に連携して企業の再生を図る新たな方式も実施してまいります。
 次に、地域金融機関にとってのメリットでございます。まず、再生ファンドに債権を売却することによる一般的なメリットとして、地域金融機関の不良債権処理を促進し、みずからの財務体質の強化を図ることができます。
 また、新銀行ファンドならではのメリットとして、地域金融機関が、一部債権を保有することにより、引き続きその取引先の再生に取り組み、必要に応じて追加的な経営支援策を選択するなど、実情に応じた対応が可能となることから、従来の信頼関係を維持するとともに、企業再生の確実性が一層高まることが期待できるものでございます。
 最後に、再生ファンドの規模についてのお尋ねでございますが、これは匿名組合契約の中で全体の枠として出資上限額を定め、実際に債権を買い取る際に、買い取り価格に応じた額の出資を行うものでございます。平成十六年度は、出資上限額として、新銀行が十億円、その他の金融機関が十億円で、合計二十億円程度の出資を見込んでおります。
 平成十七年度以降、事業を順次展開していく中で、買い取り債権の状況に応じ、この出資上限額をふやしていく予定でございまして、段階を経て、将来的に二百億円程度の規模を確保したいと考えております。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 耐震フォーラムの開催と耐震工法の普及についてのお尋ねでございますが、近年、耐震改修につきましては、コストが低く工期が短いなどの面ですぐれた工法が開発されております。これらの工法について、その性能を公益法人により技術評価する制度がこのたび開始されたところであります。
 都といたしましては、各工法の概要や評価内容について耐震フォーラムで紹介するとともに、ホームページやパンフレットなどで広く都民へ情報提供するなど、耐震工法の普及に努めてまいります。これらを通じて、住宅の耐震化をより一層促進してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 震災対策についての二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、地域防災計画や被害想定の総点検、見直しについてでございますが、都はこれまでも、阪神・淡路大震災等、過去の震災の教訓や被害想定に基づきまして、地域防災計画を見直してまいりました。平成十五年度には都民協働、広域連携、危機管理強化を主な柱といたしました修正をいたしました。また、平成十五及び十六年度には、東海及び東南海、南海地震に係る地域指定を踏まえた計画を新たに追加いたしました。
 今後、新潟県中越地震の教訓や、今年度中に発表予定の、国の首都直下地震対策専門調査会による想定結果をも踏まえまして、地域防災計画、被害想定の見直しについて検討してまいります。
 次に、避難体制についてでございますが、都は、災害時には、避難所生活の長期化を避けるため、公的住宅や民間住宅の空き家の一時的な供給及び応急仮設住宅の建設に努めますとともに、復旧復興には地域住民主体の活動が不可欠でありますことから、復興市民組織の育成に取り組んでいるところでございます。
 また、八都県市を初めといたします相互応援協定を締結し、他県市の公共住宅の確保にも努めております。
 災害要援護者の避難生活におきましては、とりわけ住民が助け合う共助が重要であります。今後、区市町村と連携し、お話の仕組みなど、さまざまな取り組みについて都民の選択の幅が広がるよう努めてまいります。
   〔水道局長高橋功君登壇〕

○水道局長(高橋功君) 水道の復旧など、二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、震災時における水道施設の復旧日数についてでございます。水道局では、これまで、震災対策を重要課題の一つに位置づけまして、地震発生時の被害を最小限にとどめるため、経年管の取りかえや送水管ネットワークの構築などによりまして、施設の耐震性強化を計画的に実施してきております。その結果、お話の平成九年の想定の南関東直下地震が発生した場合、被害を受けた送配水管の修理や仮設の蛇口を設置するなどの応急復旧に必要な日数は、現在では約一週間短縮でき、三週間程度になっております。
 なお、発災した場合、直ちに管路の系統変更などの緊急的な方策を講ずることによりまして、四日後には、十分な水圧、水量は確保できないものの、家屋の被害による断水を除きまして、九割以上の区域で最低限の水道水の供給が可能な状態になると見込んでおります。
 次に、今後の水の相互融通の考え方についてでございますが、近隣事業体との水の相互融通は、地震などの非常時における給水安定性の向上に効果的でありますことから、積極的に推進しております。これまで、埼玉県の朝霞や川崎市の登戸での相互融通実施につきまして基本協定を締結してきております。また、町田市域につきましても、かねてからのご指摘を踏まえまして、今年度中に合意の上、基本協定を締結できるよう、川崎市と鋭意協議を進めております。今後とも水道施設の耐震性強化を図りますとともに、こうした広域連携を積極的に推進いたしまして、震災時にも強く、より一層信頼性の高い水道システムを構築してまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 東京港の震災対策の強化についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、港湾施設の耐震対策についてでございますが、ご指摘のとおり、震災時における緊急物資の輸送には、耐震性の高い港湾施設の整備が喫緊の課題でございます。このため、東京港では、阪神・淡路大震災級の直下型地震を考慮した新たな基準に基づき、強度の高い耐震強化岸壁をこれまでに十バース整備してきたところでございます。
 このたびの中央防災会議では、東京湾北部の直下型地震の切迫性が指摘されるなど、東京港の港湾施設の耐震性の確保がますます重要となってきていると認識しております。中央防災会議における被害想定など、今後の検討結果を十分に踏まえ、港湾施設の耐震対策を鋭意進めてまいります。
 次に、国際物流を支える岸壁の耐震強化についてでございますが、東京港は、我が国の海上コンテナの約四分の一を取り扱うなど、首都圏の経済活動を支える国際貿易港でございます。このため、震災時においても、国際コンテナ物流を確保する拠点として、耐震性の高い港湾施設を整備することが重要であり、東京港では、先ほどの十バースに加えまして、大井ふ頭の三バースを耐震強化岸壁として再整備してまいりました。
 さらに、スーパー中枢港湾として、震災時における京浜三港間での耐震強化岸壁の相互利用について、早期の協定締結に向けた検討を進めるなど、ハード、ソフトの両面から東京港の震災対策の充実強化を図ってまいります。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 若年者雇用対策及び三宅島帰島支援につきまして、三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、若年者雇用就業対策の区市町村との連携についてでございますが、お話のとおり、若年者に対する就業の支援は、区市町村にとっても重要な課題となっております。今後は、しごとセンターのさらなる展開として、都と各地域との連携を深めていくとともに、先進的な取り組み事例の紹介や、情報交換の一層の充実を図るため、今年度から区市町村との連絡会議を開催いたします。
 今後とも、こうした取り組みを通じまして、地域の実情に応じた若年者対策が講じられるよう努めてまいります。
 次に、若者支援サポーター企業についてでございますが、都は、平成十七年度から新たに、企業と連携して若年者の就業を支援する仕組みとして、若者支援サポーター企業の組織化を進めてまいります。賛同いただいた企業につきましては、就業体験の場の提供や、しごとセンターのセミナーを通じた企業現場の紹介等の協力を依頼する予定でございます。さらに、若年者向けの就職面接会や各種就職支援講座への参加を初め、都が実施する事業への協力を働きかけるなど、この仕組みが若年者の就業支援策として有効に機能するよう努めてまいります。
 最後に、三宅村の農家の営農再開への支援についてでございますが、三宅島では、降灰や火山性ガス、さらに長期にわたる避難により、農地の土質が変化し、雑木なども繁茂しており、農作業の再開が困難な状況にございます。このため、都では、三宅村が行っている農地復旧のための土壌改良等につきまして、計画段階から技術的、財政的支援を行ってまいっているところでございます。
 また、共同利用のパイプハウスなど、栽培施設の整備につきましては、早期の営農再開に向け、農業者の負担を可能な限り軽減できるよう、国に一層の支援を要請してまいります。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 次世代育成支援、高次脳機能障害、三宅島帰島支援に関します六点のご質問にお答えいたします。
 まず、在宅の子育て家庭への支援強化についてでありますが、次代を担う子どもたちの健全な育成を図るためには、すべての子育て家庭への支援策を強化していくことが重要であります。今回、都独自の総合的な支援策として創設を検討している次世代育成支援緊急対策総合補助制度は、区市町村が、これまでの取り組みに加え、次世代育成のための基盤を緊急に整備することを目的としております。その中で、在宅で子育てをしている孤立しがちな親を対象とした子育てひろば事業や一時保育などの在宅サービス事業についても検討してまいります。
 次に、児童館を活用した中高生の居場所づくりでありますが、子どもたちの健全育成の観点から、地域の実情に応じて、小学生だけでなく中高生の居場所としても利用できるよう児童館を整備することは意義があると考えております。現在、都内六百二十九の児童館のうち四十九館で、音楽活動を行うスタジオや体育活動を行うトレーニング室など、中高生向きの設備を備えております。総合補助制度におきましては、一定規模以上の児童館を中高生の居場所として整備できるよう検討してまいります。
 次に、先駆型子ども家庭支援センターの設置促進についてでありますが、児童虐待に迅速に対応していくためには、発生予防から早期発見、早期対応、家族再統合に至るまで、児童相談所と区市町村を含む関係機関が一体となって取り組むことが極めて重要であります。このため、都は、区市町村における総合的な相談支援の拠点としての役割に加え、家庭における児童虐待防止のための機能も付加した先駆型子ども家庭支援センターの設置を、全国に先駆け推進してまいりました。来年度の都の重点事業におきましても、大幅な拡充を図ることとしており、区市町村に対し積極的に働きかけてまいります。
 次に、高次脳機能障害対策における医療と福祉の連携についてでありますが、高次脳機能障害者の支援については、これまで、東京都リハビリテーション病院が主として医学的見地から、心身障害者福祉センターが社会復帰の観点から、さまざまな取り組みを行ってまいりました。お話のように、これらの専門機関と地域の福祉、医療機関が連携し、生活面や就労面での自立を目指して一貫したサービスを提供することは、重要であると認識しております。今後、今回の局統合のメリットを最大限に生かし、福祉と医療が一体となった施策を展開させていく中で、関係機関が密接な連携を図っていけるような環境づくりに取り組んでまいります。
 次に、福祉、医療関係者への普及啓発についてでありますが、障害者本人やその家族に適切なサービスを提供するためには、障害者に接する機会の多い福祉や医療の関係者が、広く障害に対する理解を深めることが重要であります。高次脳機能障害に適切に対応するため、都はこれまでも、区市町村職員やリハビリテーション医療に従事する医師等を対象とした研修会などを開催し、知識、技術の普及に努めてまいりました。今後は、これらの取り組みに加えて、区市町村が主催する研修などへの技術的助言や、リハビリテーション医療を実施していない医療機関への普及啓発にも取り組むなど、高次脳機能障害のより一層の理解促進に努めてまいります。
 最後に、三宅村の介護サービス基盤の整備についてでありますが、帰島後も高齢者が安心して暮らしていけるようにするためには、介護サービス基盤の整備復旧が大変重要であると認識しております。特別養護老人ホームにつきましては、お話のように、解決すべきさまざまな課題があり、別地域での建てかえも視野に入れ、村や、あじさいの里の設置主体である社会福祉法人と鋭意協議を行っております。当面は、来年二月の帰島開始に向けて、デイサービスやショートステイなどの在宅サービス基盤の整備が最優先の課題であり、村とも協議の上、総合的な支援に努めてまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 三井物産のデータ捏造に関し、四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、三井物産の虚偽行為に係る調査についてでございますが、都は、第一報を受けた十一月十八日、詳細な調査報告を行うよう、即時、三井物産に指示するとともに、事実関係を確認するため、職員を相手方本社に派遣し、関係者の事情聴取を行いました。現在、DPF装置の指定に関する書類の調査分析などを進めており、今後とも局を挙げて事実関係の解明に努めてまいります。
 次に、三井物産のユーザーへの対応についてでございますが、先般、三井物産が発表した対応策は当然の措置でありますが、具体的な方策、スケジュールなど不明な点が多く、速やかに詳細な計画を明らかにさせるとともに、事業者の実情を踏まえた必要な対策をとるよう求めてまいります。
 また、これらの対応策につきましては、早期かつ誠実に実行していくよう、三井物産を強く指導してまいります。
 次に、他のメーカーのPM減少装置についてでございますが、装置の指定に当たっては、専門家で構成される指定審査会において、PM低減性能、信頼性等について総合的に審査しているところでございます。しかしながら、今回、こうした事態が生じたことを踏まえ、今後、既に指定した他のメーカーの装置につきましても、審査会の意見を聞きながら、PM低減性能を確認するための排出ガス測定を行い、ユーザーの不安の払拭に努めてまいります。
 最後に、都の審査体制の整備についてでございますが、今回の経験を踏まえまして、今後、新たに行うDPF装置の指定審査におきましては、環境科学研究所で確認試験を行い、虚偽の申請に対する効果的な防止策を早急に講じますほか、都の責務を重く受けとめ、的確な執行体制の整備に努めてまいります。

○副議長(中山秀雄君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後五時五十三分休憩

   午後六時十一分開議

○議長(内田茂君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百三番曽根はじめ君。
   〔百三番曽根はじめ君登壇〕

○百三番(曽根はじめ君) 私は、日本共産党都議団を代表して質問します。
 今、年金の切り下げ、来年一月の所得税、住民税の老年者控除や年金控除の改悪による増税、さらに介護保険の負担増など、国の悪政が次々に押し寄せています。だからこそ、東京都が都民生活を守る自治体本来の役割を果たすことが強く求められています。ところが、福祉や教育、暮らしにかかわる各局の来年度予算要求は、査定前で今年度予算を下回る異例の事態です。これでいいのでしょうか。
 これまでも石原都政は、福祉関係費をどんどん削ってきました。二〇〇三年度決算を見ると、九九年度に比べ、実に七百六十四億円、四年間で一割以上の削減です。全国で福祉関係決算を調べましたが、東京のように減らしたところはありません。
 削減で大きいのは経済給付的事業です。シルバーパス、マル福、老人福祉手当、障害者医療費助成、重度障害者手当の五つだけで三百二十一億円の削減です。
 もう一つは補助金です。この四年間に廃止や削減された補助金は百種類を超えています。中でも都民に影響の大きいのが、国民健康保険への補助の削減です。特別区と市町村、建設国保組合などに対する補助は二百億円以上の削減です。その結果、区市町村では国保料の値上げが相次ぎ、保険料が払えず、短期証や資格証となる人が急増しています。二十三区ではさらなる国保料の値上げが提案されています。
 特別養護老人ホームの都独自補助も二百億円を超える削減で、常勤職員を減らさざるを得ない、週に三回の入浴が二回しかできなくなったなどの悲鳴が上がっています。我が党の調査によれば、現在の経営支援事業を増額、拡充してほしいとの回答は七割近くに及びます。
 知事、このように、高齢者を初め都民に痛みを押しつけている現状をどのように認識しているのですか。答弁を求めます。
 石原都政は、福祉手当など経済給付的事業を切り捨て、補助金を廃止、削減し、保健所など都立施設を廃止し、さらに一律マイナスシーリングをかけて、福祉予算を冷たく削ってきました。しかも、その大幅に減らした予算さえまともに執行せず、昨年度だけで六百三十二億円も使い残した、その結果、決算で見ると、予算以上の大幅削減になっているのです。
 その一方で、基盤整備など、充実すると約束した事業はどうか。施設整備費は、ふえるどころか百九十八億円も削られました。だからこそ、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型を合わせた介護三施設の整備率の順位は全国最下位なのです。痴呆性高齢者グループホーム整備率も全国最下位で、定員の伸び率は、神奈川、千葉の半分、埼玉の四分の一にすぎません。シルバーピアも、訪問リハビリ、ショートステイも、今年度末の目標達成にほど遠いのが実態です。
 以上が、石原知事が推進してきた福祉改革の昨年度までの決算であります。東京の福祉は冬の時代に入ったといわれて仕方ないではありませんか。
 しかも、今後さらに第二次の財政再建推進プラン、都庁改革アクションプランに基づいて、区市町村や福祉団体などに対する補助の中で、補助率が高いもの、長く継続されているもの、当事者の皆さんにとっては切実な少額補助などを見直すといって、廃止、削減を進めようとしています。救急車の有料化、都立施設のさらなる廃止、縮小も検討されています。これ以上の福祉を初め都民施策切り捨ては、絶対にやめるべきです。
 そして、私は、今年度の補正予算や来年度予算で、ぜひとも福祉関係予算を増額し、福祉拡充の方向に大きく転換することを求めるものです。知事、お答えください。
 私が今、おくれを指摘した施設整備については、今年度、特別養護老人ホームなどの国庫補助削減が大問題になりました。このため埼玉県は、一床当たり三百万円の県独自補助を実施し、三億七千万円の補正予算を組みました。ホテルコストをとらない従来型特養の定員をふやすため、これも県独自補助を創設し、三億二千四百万円の予算を計上しています。その背景には、特養ホームの定員を四年間で一・七倍にふやすという県の積極的な姿勢があります。
 また、横浜市も、少なくとも要介護度四、五の待機者はすべて特養ホームに受け入れることを表明し、九月補正予算で五億円を超える整備費を組んでいます。
 一方、東京では、こうした対応を全くとらず、八カ所の整備が見送りとなりました。東京都がいかに高齢者に冷たいか、歴然としているではありませんか。介護の必要な高齢の方が特養ホームに入るのに四年も五年も待たねばならないという事態を、知事はいつまでに解決するのですか。特養ホーム整備の目標を大幅に引き上げ、埼玉や横浜のように独自の予算も組んで、整備を促進する必要があると考えますが、お答えください。
 異常な都政運営は、福祉の分野に限られたものではありません。この五年間、未来を担う子どもたちの教育も、東京の経済を支える中小企業対策も、住宅や環境政策も大きくゆがめられ、施策は後退させられてきました。
 石原知事は、財政が厳しいことをその理由として挙げましたが、事実は異なります。本当の理由は、超高層ビルと大型道路中心の都市再生に都財政をつぎ込むためだったことは、この五年間の財政運営を見れば明らかです。
 大型幹線道路や臨海副都心開発などの投資的経費と、首都高速道路公団への出資や無利子貸付など、経常的経費に含まれた投資を合わせたトータルの投資総額は、バブル前の二倍の一兆円規模に高どまりし、これが都の借金を七兆円規模にふやし、福祉など都民施策を圧迫する最大の要因になっているのです。
 全国の多くの自治体は、さまざまな問題があるにしろ、バブル時代の反省の上に立って、国いいなりの浪費的な公共事業にメスを入れ、抑制することで、福祉や教育などの分野に予算を配分する方向に向かっています。こうした全国の流れとは逆の方向を向いているのが石原都政です。
 例えば、投資的経費の中心である土木費について見ると、石原知事が最初に編成した二〇〇〇年度以降の四年間に、東京都ではふやしてきているのに対し、一方、首都圏の自治体はどうか。土木費を毎年抑え、埼玉県は半減、千葉県と神奈川県は六割台に削減しています。その上、東京都は、首都高速道路公団への出資、貸付金などを、経常的経費として毎年三千億円以上もつぎ込んでいます。圏央道など国が全額負担すべき国直轄事業負担金に至っては、この五年間に増額したのは東京都だけです。本来、東京都が負担する必要のないこうした投資だけで、この五年間に、年平均八百二十億円、合計四千億円を超える資金を投じてきたのです。これを改善するだけで、福祉予算は削減どころか、ふやすことができるではありませんか。
 大阪府では、予算のマイナスシーリングは建設事業費のみにかけています。そこから生み出された五十億円の財源を、子どもを育てる、雇用を生み出す、安全なまち大阪の三つの重点の事業に充てています。
 東京都でも、全国に比べ突出している都市再生事業について再検討することがどうしても必要です。
 都が重点として整備を進めている三環状道路は、外かく環状道路が国直轄事業となれば、合わせて一兆円規模の支出となり、そのほかに羽田空港再拡張の一千億円、さらには、区部、多摩地域の都市計画道路など、全体で数兆円規模の投資が予定されているのです。この路線を進めば、都財政はますます破綻の道を歩み、都民施策にしわ寄せがいくのは明らかです。今、地方自治体にあるまじき、このような都政運営を切りかえることこそが求められています。
 そもそも都市の再生というのであれば、経済や人口の東京一極集中を是正し、だれもが安心して住み続けられる東京、地震や災害に強く、環境と共生できる東京をこそ目指すべきであります。しかし、石原知事が目指す都市再生は、都民の願いとは裏腹に、東京を多国籍企業に役立つ都市に切りかえていくものであり、そのための超高層ビルや大型幹線道路を最優先に建設していくというものです。
 そして、この五年という短い時間の中でも、既に東京の都市構造は、東京一極集中、都心集中が激しさを増し、記録的なヒートアイランド現象や集中豪雨、自動車排気ガス公害など、今まで経験したことのない異常な環境悪化が進んでいます。安全性を棚上げした超過密の進行は、東京をますます災害に弱い都市にしています。
 今なすべきことの一つは、いたずらに新たな開発を進めて、今後人口減が予想される将来の世代に莫大な負の遺産を残すことではありません。何よりも、投資を適正な規模に抑えることが必要です。その上で、首都高速道路の耐震補強や、耐用年数を迎えつつある橋梁の改善こそが必要です。
 また、全体として、学校施設の改修など、既存ストックの維持、更新にこそ力を注ぐべきです。この方向こそが、都民生活の向上と東京の経済の持続的発展を図る道であると考えますが、知事の見解を伺います。
 重要なことは、今年度から来年度にかけて、都税収入が五千億円、うち都が使える分だけでも四千億円程度の増収になると見込まれていることです。この増収を、七兆円規模の借金の返済など財政立て直しに役立てることは当然ですが、何より都民の暮らしと営業を守るために優先的に活用することが重要です。
 例えば、三百億円で認可保育所や学童クラブ、特別養護老人ホームの大幅増設ができます。二万戸の木造住宅の耐震、防火改修への助成や、小中学校の耐震補強支援も三百億円あれば行えます。また、二百億円で、シルバーパスの負担軽減や乳幼児医療費の所得制限の撤廃、介護保険の保険料、利用料の軽減などが可能です。ぜひこの立場で予算を組んでいただきたいと思いますが、知事の見解を伺います。
 以下、幾つか、私は提案を行います。
 まず、少子化対策です。
 日本における女性の合計特殊出生率は下がり続け、東京ではついに一を割り込みました。その背景に、子どもを産みにくく、育てにくい日本と東京の実態があることは、共通して指摘されています。
 一方、世界を見ると、フランスでは、家族手当など二十種類もの経済給付を充実するとともに、週三十五時間労働制を実現し、三年間の育児休業または勤務時間短縮を認める中、合計特殊出生率は、九三年の一・六五から一・九一まで上昇しています。
 デンマークは、医療や教育費は大学まで無料、青年に住宅手当を支給して自立を促進し、子どもを産むことは権利として認めて、条件整備を進めることで少子化を打開しています。
 これに対して、東京の取り組みはどうでしょうか。先日、次世代育成支援対策法に基づく東京都行動計画の骨子案が示されました。その内容は、他府県の行動計画素案や骨子案と比べても、極めて抽象的、一般的なものです。
 そこで伺いたい。知事は、東京の深刻な少子化の現状をどう認識しているのですか。日本で最も深刻な現状にある東京都こそ、最も先進的で総合的な対策を打ち出し、具体的な目標と年次計画、財源的裏づけも明らかにした、実効性ある行動計画をつくる必要があると考えますが、答弁を求めます。
 具体策として、私は幾つかの角度に絞って提案します。
 第一は、若者の雇用の促進、育児と仕事の両立支援の両面での東京ルールの確立です。
 まず、方策の一つは、若年者雇用の促進です。
 今日、子どもを産み育てることが可能な社会をつくる上で解決に当たらねばならない問題の第一は、若い世代の仕事の確保であり、経済的基盤の確立です。この点で、日本、とりわけ東京では、大企業は過去最高の収益を上げる一方で新規採用を抑え、正社員の数をこの五年間に百八万人も減らし、フリーターや派遣労働者など不安定雇用を増大させています。若者の雇用の状況は最悪といわざるを得ません。これでどうやって結婚生活を営み、子どもを産み育てることができるというのでしょうか。
 打開のためには、大企業にその社会的責任を果たしてもらうことが必要です。東京には大企業の本社の多くが集中しています。これらの企業や財界も、それなりに企業の社会的責任をいわざるを得なくなっています。問題は、都民が求めているのとはほど遠い現状を改善させていくことです。
 すなわち、大企業に対して、パートや派遣労働など不安定雇用中心から正社員による雇用に切りかえること、サービス残業をやめワークシェアリングに取り組むこと、結婚して子育てできる賃金の保障など、目標を持って取り組むよう、都として求めること、そして、これら課題を、企業が策定する社会的責任の目標に位置づけさせ、東京都が、経済団体、大企業と協定を結ぶことを提案するものです。答弁を求めます。
 若者の雇用をふやしているのは中小企業ですが、その経営は大変です。高知県が実施しているように、若者を雇用した企業に助成を行うことが有効です。
 激務にさらされている教員や消防隊員を初めとする職員を、都として率先して採用に努めること、一定期間、職につけなかった若者に対し、都として緊急雇用事業を創設して雇用を促進することなども必要です。
 全国で、若者が新しく企業を立ち上げることが広がっています。山口県では、空き店舗を安い家賃で提供したら、若者が集まり、にぎわいを回復した商店街が生まれており、都内でも、高円寺では、若者の古着屋が相次いで開業している商店街もあります。空き店舗を使った開業のための家賃補助や経営相談など、資金力と経験に乏しい青年を応援する仕組みを提案するものです。見解を伺います。
 次に、仕事と子育てが両立できる職場環境の改善です。
 最近五年間で、夜七時以前に帰宅する父親は二〇%から一三%に減り、九時以降に帰宅する父親はふえて、全体のおよそ半数を占めています。結婚、出産を理由とした女性の退職の強要や解雇も横行し、女性は、第一子の出産をきっかけに三分の二が仕事をやめています。男性の育児休業取得率はわずか〇・一九%です。
 この問題についても、若者の雇用と同様、パートを含め、育児休業、育児時間、看護休暇、フレックスタイム、さらに育児休業の分割取得や時間単位での取得など、育児休業制度の活用と、法の枠を超えた拡充を進めることを、大企業、経済界に都として働きかけることが必要です。
 男性の育児休業取得率を特に重点事項として取り組むこと、民間を先導するために、東京都の男性職員の育児休業取得を抜本的に引き上げることを提案するものです。お答えください。
 育児休業を広げるためには、中小企業への支援が欠かせません。北海道、鳥取県、また千代田区など多くの自治体が、独自に支援事業をスタートしています。
 都議会は、二〇〇二年第二回定例会で、中小企業が育児休業、育児時間、家族看護休暇などの充実に取り組むことができるよう都の支援の実施を求める請願を趣旨採択いたしました。都議会の議決を尊重し、中小企業に対する支援策を具体化していただきたい。答弁を求めます。
 第三に、住宅の確保です。
 東京の民間賃貸住宅に住む若年世帯では、家賃の収入に占める割合が三割から五割にも及んでいます。このような若年ファミリー世帯の住宅事情の深刻さと支援の必要性を、知事はどう認識していますか。
 ファミリー世帯向けの都営住宅の増設や入居基準の緩和を初め、子ども部屋を確保できる広さがあって、家賃が安く、住み続けられるよう、都民住宅や公社・公団住宅などを活用した公的住宅の確保を提案するものです。
 大阪市では、新婚世帯への月二万五千円の家賃補助を実施しており、年間七、八千人の希望があります。新宿区や千代田区の月三万円から五万円の家賃助成も効果を上げています。このような家賃助成を都として実施することが必要です。見解を伺います。
 第四に、経済的支援を初めとした子育て支援の抜本的拡充です。
 今、東京二十三区を初め全国各地に、所得制限なしの小中学生までの医療費助成が広がってきています。都は、公平性のために所得制限は必要だと表明していますが、我が党が議会局を通じて行った区市町村アンケートでは、所得制限を撤廃した区から、これによって公平性が担保されている、毎年受給資格が変わることなく安定的に医療が受けられるようになったという効果が報告されています。
 東京都自身も、すべての子育て世帯への支援が重要だといっているのですから、乳幼児医療費助成の所得制限は直ちに撤廃すべきです。そして、小学生、中学生への医療費助成に踏み出すことを求めるものですが、見解を伺います。
 認可保育園は、少子化対策のかなめとなる施設であり、増設を進めることにより待機児解消の目標を明確にすることが必要ですが、どうか。
 また、運営費補助を削り続けていて、どうして保育園がふえるでしょうか。都加算補助の見直しやサービス推進費の削減をやめ、拡充することを求めるものです。
 次に、三十人学級の問題です。
 三十人を含む少人数学級に踏み出した県は、四十二道府県と急速に広がっています。にもかかわらず、いまだに東京都は冷たく拒否しています。石原知事も、子どもの社会性を養うために、生活集団である学級には一定の規模が必要であり、学級編制基準を四十人とする都教委の判断は妥当と繰り返し発言してきました。今、知事のこのいい分が正しいのか、それとも三十人学級を求める都民のいい分が正しいのか、このことが厳しく問われています。
 私は、北区の小学校三年生のクラスに行って調査してきました。その四十人のクラスでは、最前列の子どもの机は教卓の横まで出っ張り、先生の真横に座っています。後列の子どもは後ろの壁にくっついており、まさに超過密であり、先生が机の間を通るときは、カニのように横向きでないと通れません。授業中、明らかに多動で動き回る子や、騒ぎ回る子、外国から来たばかりの子など、先生がそばについていなければなりません。これは別に特別の学校の姿ではありません。東京じゅうの小中学校の約半分の学級で、これに近い毎日が繰り返されているのです。(発言する者あり)
 二日後に同じクラスを訪ねたときは、子どもたちが二十人ずつ別教室に分かれて、算数の少人数授業を受けていました。四十人がそのまま二学級になった状態です。すると、四十人のときと違い、子どもたちが動き出すと、先生がすぐに席に戻らせています。黒板に向かって扇状に並べた机の間も余裕があって、先生が十分子どもたちの間を回って行けます。みんな落ち着いて黒板の問題に集中でき、あ、そうか、わかった、などの言葉が飛び交い、子どもが次々立って黒板に出て問題を解きます。明らかに四十人の授業とは違う大きな変化がありました。私は、少人数学級にして、すべての授業をこの人数でやれたらどんなにいいだろうと、しみじみ思いました。
 知事、大人社会のゆがみが、子どものいじめや不登校、学習離れ、発達に大きな影響を与えています。今日、子どもと学校が抱える深刻な現状を直視するならば、二十四年前に決めた四十人学級基準では、もはや問題は解決しないことは明らかではありませんか。
 実際に少人数学級に踏み出した県では、クラスの子どもたちに担任の先生の目が行き届くようになり、学習面はもとより生活面でも、子どもたちからは、友達がふえた、係の仕事を頑張るようになったなどの感想が上がり、現に保健室登校や不登校が減るなど、明らかな改善が報告されているのです。知事のいう社会性を養うためにも、少人数学級の方がすぐれていることが実証されているではありませんか。知事のいい分は、明らかに間違っています。あくまでも四十人学級の方がすぐれているというのなら、都民の納得できる明確な根拠を示すべきです。知事の答弁を求めます。
 今、父母、教職員、私学関係者などが取り組んでいる、三十人学級など行き届いた教育を求める請願署名は、既に百万人を突破し、小学校校長会が三十人程度の学級を要望し、東京都市長会は、都への来年度予算要望で明確に少人数学級の都独自の実施を要請するなど、かつてなく少人数学級の要望が強まっています。
 少人数学級未実施の五県のうち、既に石川県、佐賀県が来年度からの実施を表明したのに続き、岐阜県も、教育長が議会で少人数学級を検討する意向を示しており、同じく香川県教委は、私の問い合わせに、少人数学級の要望が市町村からあれば協議すると答えています。これでは、全国で唯一、東京の子どもたちだけが少人数学級の大きな流れから取り残されることになりかねません。
 私は、知事が、東京の子どもたちが安心して学校で伸び伸び学べる教育条件の第一歩として、今こそ三十人学級に踏み出す決断をするよう、改めて強く求めるものです。知事の答弁を求めます。
 少なくとも区市町村から希望があれば、少人数指導の教員定数の三十人学級への活用を認めるべきと考えますが、お答えください。
 最後に、憲法と民主主義に対する知事の基本的態度についてです。
 一昨年の予算特別委員会で、我が党が憲法遵守義務に反する言動を追及したのに対し、知事は、九十九条違反で結構でございます、私はあの憲法を認めませんという、許しがたい答弁を行いました。しかも、その後も、都議会の内外で憲法否定発言を繰り返しています。最近のテレビ番組で、憲法なんてのは他人がつくった一つの条文、文言でしかない、いろんな間違いがあるとまで発言したことは、極めて重大です。知事の一連の憲法否定の発言は、現憲法はアメリカから押しつけられたものだから守る必要がないという、とんでもないものです。
 そもそも日本の憲法は、いろいろないきさつはありましたが、第二次世界大戦を引き起こした震源地の一つであった日本が、再び戦争の惨禍を引き起こさない、戦争のない国際秩序を生み出そう、国民主権、民主主義を貫こうという立場でつくられたものでした。だからこそ、国民の圧倒的支持を受けてきたのです。
 知事はアメリカから押しつけられたといいますが、逆に、今盛んに取りざたされている改憲論こそ、実はアメリカから押しつけられてきたものではありませんか。一番最初の改憲論は九条改悪論で、米陸軍がいい出したものです。現在の改憲論も、アーミテージ国務副長官らが公言していたものであり、九条を改悪して、集団的自衛権を認める、そして日本を、戦争をしない国から、アメリカとともに地球上どこでも戦争をする国に変える、ここにねらいがあることは明らかです。
 知事、あなたの憲法否定の立場も、知事のこれまでの日本の植民地支配の美化やイラク戦争容認、そこでの自衛隊の武力行使容認などの発言から見れば、侵略戦争の反省の上に築かれた憲法九条を否定し、日本を再び戦争をする国にしようというものであることは明白です。
 これに対し、今、世論調査でも六割が憲法九条は守るべきと回答しており、作家の大江健三郎さんを初め九人の呼びかけによる九条の会の運動を初め、立場の違いを超えて、憲法九条を守れの運動が広がっています。
 世界的にも、イラク戦争に世界の圧倒的多数の国々が反対したように、二十一世紀の世界の大勢は、国連憲章の平和のルールを尊重した、戦争のない世界を志向しています。二〇〇〇年の国連ミレニアムフォーラムにおいて、すべての国が日本国憲法九条の戦争放棄の原則を自国の憲法において採用することが確認されたように、憲法九条は、この流れの先駆けとしての人類的価値を持つものであることが、世界から注目されているのです。
 知事、あなたの憲法否定の立場は、日本とアジアの平和を守り、アジアとの関係を深めるためにも、百害あって一利なしといわざるを得ません。今、首都東京がとるべき道は、日本が憲法九条を生かし、国際平和のために先駆的役割を果たすよう、自治体として努力することです。それがアジアの平和と日本経済の発展に貢献する道ではないでしょうか。答弁を求めます。
 また、知事の一連の発言は、まさしく憲法をないがしろにし、憲法尊重擁護義務に反するものです。日本国憲法は九十九条で、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と明記しています。これは、憲法の最高法規性を確保するための厳格で重い規定であり、公務員である限り、これを否定し、逸脱することは許されません。
 また、公務員は、主権者の信託によって憲法の運用を任務としているのであって、憲法の尊重擁護は当然の責務なのです。だから知事も、新たに採用された都職員に対し、私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ、擁護することを誓いますとする宣誓書に署名し、提出することを義務づけているではありませんか。
 さらに重大なことは、知事の憲法否定の立場が単なる言動にとどまらず、日の丸・君が代の強制、靖国神社への公式参拝の強行など、都政運営の中で実際に憲法の原則に反する行為を持ち込んでいることです。
 日の丸・君が代の強制について、知事はテレビや記者会見で、国が決めた指導要領に公務員として従う義務がある、これを行うか行わないかの問題だ、強制ではなく義務だと強弁しました。
 しかし、そもそも国旗・国歌であっても、起立斉唱するかしないかは良心の自由の問題であり、これを義務づけし、良心の自由を制約してはならないことは、法制定時の小渕首相発言でも国会決議でも明確にされていることです。
 アメリカでも六十年も前に、ある州が法律で国旗への敬礼を子どもたちに義務づけたことに対し、連邦最高裁判所が、国民の良心の自由を侵すものだと厳しい判決を下しています。国家が国民の内心を制限したり介入できないことは、近代国家の共通の原則です。
 東京都が行っている日の丸・君が代の強制が、憲法の原則に反する憂うべき事態となっているからこそ、天皇も、東京都教育委員に対し、強制でないのが望ましいと発言せざるを得なかったのではありませんか。
 国会で決議された法律でもない、文部科学省が定めた基準でしかない指導要領を持ち出して、これを教員の義務だと押しつけること自体、間違っています。ましてや都教委の通達は、指導要領からもはみ出した異常なものです。これを義務化することは許されるものではありません。
 さらに重大なことは、ことし九月、都教委は、生徒が起立して斉唱するよう、教師が指導するよう求める個別職務命令を出すことを各学校長に指示したことです。生徒が起立斉唱しなければ、教員を職務命令違反として懲戒処分まで行えるようにしたことは、強制以外の何物でもありません。憲法十九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という原則を明白に踏みにじるものです。(発言する者あり)
 改めて知事に聞きます。憲法九十九条違反で結構とは、都政運営に当たって、憲法にとらわれないということですか。公務員の中でも重い責任を負う知事が憲法の尊重擁護義務を負わないというなら、知事の職務とは両立しません。知事を続けるというのなら、これまでの発言を撤回し、憲法を遵守する責務を果たす必要があります。
 また、一切の日の丸・君が代の強制はやめるべきです。教員への個別職務命令は、生徒の内心の自由を侵害するものであり、憲法違反であることは明白です。学校長への指示は直ちに撤回すべきです。
 それぞれ見解を求め、再質問を留保して質問を終わります。(拍手)
   〔発言する者あり〕
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 曽根はじめ議員の代表質問にお答えいたします。
 私、先週、東京が提唱してつくられましたアジア大都市ネットワークのジャカルタの会議に出まして、その後、具体的に要請がありまして、ハノイに参りました。あそこの県知事、市長その他を務めている共産党の幹部の諸君と会っていろいろ話をしまして、非常に強い感銘を受けました。行政者としても非常にリアリティーのある発言があり、そのときにやっぱり、東京都の共産党を思い出しましたね。随分違うなあと思った。吉田さんとそっくりな幹部がいましたが、考え方は全然反対だった。
 で、まず福祉施策の見直しについてでありますが、いつ、だれがこの質問をされても同じことをいわれますね。その質問の根拠がどういう数字にのっとっているのか、よくわからない。ちなみに、いろいろ非難があります(「勉強しなさい」と呼ぶ者あり)あなた方も勉強されたらどうですか。まあ冷静に聞いていただきたい。
 ここにわかりやすい数字がありますけれども、歴代知事による編成予算の比較、その中の福祉のパーセンテージが、私の場合には、これ、平成十二年から十六年度までの集計ですけど九・二%。青島さんのときは八・一%、鈴木さんのときは六・四%、美濃部さんのときも六・四%でございました。それから、決算の比較ですけど、つまり福祉に幾らお金を使ったかということでは、私の場合には、集計して平均八・五%。青島知事のときが八・〇%、鈴木さんのときが六・四%、美濃部さんのは数字が古くてわかりませんが。それから、いろいろいわれましたけれども、人口一人当たりの福祉費、これは十六年度予算額でいいますと、東京がやっぱり一番多くて、約四万一千円。次が、どこも大体二万円台です。これはどうでもよろしい。
 いずれにしましても、多様化する都民の福祉ニーズにこたえるために、都は、長期的、歴史的視野に立って、見直すべき事業は見直し、必要な施策には財源を集中投入して、福祉改革を推進してきました。都独自の認証保育所制度や、民間企業に対する痴呆性高齢者のグループホーム整備費補助の創設など、国に先駆けた施策を展開し、着実に成果を上げております。
 一連のばらまき、経済給付的な、つまりお金を差し上げる事業の見直しは、利用者本位の福祉の実現を目指す福祉改革の一環をなすものとして実施したものでありまして、既に都民の理解を十分に得て、過去のものになっていると思います。
 まあ、いずれにしろ、福祉なるもの、もう少し社会工学的に考えて発言をされたらよろしい。同じことを次の選挙でいわれるとどんな結果が出るか、楽しみにしていますけれども。
 それから、施策の見直しについてでありますが、改めて申し上げるまでもなく、都が進めております都政の改革は、社会状況が変化する中で、都民ニーズに的確にこたえ、行政サービスを着実に向上させていくための積極的な、前向きな取り組みであります。これからも、聖域を設けることなく、都政の各分野で内部努力や施策の見直しに取り組み、東京の再生とさらなる都民サービスの充実を実現していきます。
 よくこういう質問の中で表現されますが、確かに東京はあちこちクレーンを組んで超高層ビルが建っていますけど、あれ、全部多国籍企業のものなんですか。私は(「いってないよ」と呼ぶ者あり)よくいってますよ、あなた方は。議事録調べてごらんなさい。何百回も聞いたよ。そういう認識が、まあ言葉のレトリックかもしれないけど、アジ演説にもならない、本当に。それはやっぱり都民というのは、そっぽ向いて聞いていると思いますよ。
 それから、福祉拡充の方向に施策を転換せよとのことでありますが、何度も申し上げて、ご理解いただけないようですけれども、だれもが安心して快適に暮らせる東京を実現するためには、狭義の福祉だけではなく、治安対策、中小企業支援、インフラ整備など、都民ニーズに的確にこたえるさまざまな施策を複合的に展開していく必要がございます。
 これまで、一連の福祉改革を含め、施策の見直しに取り組みつつ、こうした住民福祉の増進策を充実してまいりました。この間の取り組みは、多くの都民のご理解を得ているものと受けとめており、転換せよとの主張は全く的外れであります。福祉についての、繰り返して申しますが、社会工学的な認識を欠いたものとしかいえないと思います。
 次いで、社会資本整備の進め方でありますが、今後、東京にとって、既存の社会資本のストックの維持更新が重要な課題であることはご指摘をまつまでもありませんが、同時に、道路、鉄道、空港などの都市の根幹となるインフラの新たな整備は、東京の活性化や都民の生活の質の向上のために不可欠な投資であります。
 私は就任以来、こうした大都市における社会資本整備の重要性を踏まえつつ、財政再建を進めていく中で、一層重点化、効率化を図りながら着実な都市基盤整備に取り組んできており、これまでの方向を改める考えは毛頭ありません。
 ならば聞きますけど、あなた方、羽田にもう一本滑走路、要るの要らないの。(発言する者あり)
 次いで、予算編成についてでありますが、都財政を取り巻く環境は、先ほど他会派にも答弁したとおり、税収の回復が期待できるものの、決して楽観できる状況にはありません。短期的な税収の動向だけを見て、ご指摘のような施策にやみくもに予算を増額することは適当でなく、全体的に施策の必要性、優先性を十分に吟味することが不可欠であります。
 したがって、予算編成に当たっては、財政構造改革を引き続き強力に進めながら、先ほども述べたように、都市再生、治安対策あるいは防災対策など、現下の都政の重要課題に対して重点的、効率的に財源を配分し、都民の期待にこたえていきたいと思っております。
 次いで、少子化の現況についてでありますが、少子化の進展は、未婚率の上昇、晩婚化、初産年齢の上昇によるものでもありまして、最終的には個人の価値観や人生設計に帰着するものと思います。
 一方で、ある程度社会が豊かになり、高齢化が進んだ先進国においては、長期的に見ると少子化はほとんど例外なく進行していますが、ある種の必然であるとの認識も必要でありまして、また、否定的な面ばかりとらえることは、問題の本質を見失うことにもなりかねないと思います。
 行政の関与により現在の少子化の急速な進展を転換することには限界があると考えますが、いうまでもなく、子どもを産んで育てることを望む人々が安心して子育てできる環境を整備することは、絶対に必要であると認識しております。
 フランスの例を見ますと、フランスはかつて非常に人口が減って懊悩した時代がございましたが、仄聞しますと、かなり思い切った金銭的なインセンティブを、三人以上ですか、子どもを産んだ家庭に与えてあげる、これは私、非常にサジェスティブだと思うので、近々、自分自身も赴いてそういう調査をしたいと思っています。
 それから、若年ファミリー世帯の住宅事情についてでありますが、バブル経済の崩壊の後、住宅の価格や家賃は大幅に低下しております。近年は、分譲マンションを中心に住宅供給が活発化しておりまして、ファミリー世帯向けの集合住宅など、多様な住宅の供給が進んでおります。
 このような状況から、都民の住宅事情は全般的には改善してきていると見ておりまして、民間の賃貸住宅に住む若年ファミリーの世帯についても、ご指摘のような深刻きわまりない状況にはないと考えております。
 これもいつもいつも繰り返しての質問ですけど、三十人学級についてでありますが、学級編制基準については、所管する教育委員会が、その専門的な判断により定めるべきであります。教育委員会が、児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、集団生活としての学級について一定規模が必要であるとする点には全く同感でありますが、学級編制基準を四十人とする教育委員会の判断は妥当であると考えております。
 さて、憲法九条についてでありますけど、かつて、有名な哲学者の田中美知太郎さんは、ある本にこういうことを書かれました。憲法に書くだけで平和を守れるというなら、憲法に(「聞いた、その話」と呼ぶ者あり)もう一回、あなた、聞きなさい。台風に日本の上陸を禁ずると憲法に書けばよい、それで台風が来るか来ないか、自明のことだと切り捨てましたが、けだし名言だと思います。
 同じように、中国は尖閣諸島を侵犯してはならない、沖ノ鳥島を日本の領土とみなすべきであると憲法に書いて、彼らはそれを遵守するんでしょうかね。私はやっぱり、場合によっては、自分の領土、自分の国民の財産、生命をみずから守ることなく、他人の手にゆだねることが最高の理念であるなどと信じ込んでいる国民は、世界じゅう日本人しかないんじゃないか。日本人の中で共産党ぐらいじゃないですか。北朝鮮は日本の国民を拉致、誘拐し、殺害すべきないと憲法に書いて、彼らはその手を緩めますかね。だったら、これから憲法にそれをうたったらよろしい、拉致事件が起こらないように。
 私は、どう考えても今の憲法には歴史的に正当性はないと思いますよ。だから、憲法を変えるか変えないかの前に、この都議会でも結構だ、まして国会で、今の憲法に正当性があるかないかという、ただそれだけの質問を、白黒で国会議員に投票してもらったらいいんだ。私は、その結果はかなり興味のある、自明のものだと思います。そういう国民の代表である国会議員の憲法認識というものを踏まえて、私は、現憲法を正面から議論することが必要だし、そのために有効な前提だと思います。
 それを踏まえて、私はやっぱり、破棄という言葉は強いかもしれないが、この憲法がなかったものとして、そういう認識の上で国民自身が自発的にやはり、どういう憲法をつくるかということを国会を通じて合議して、私自身、私たち自身の愛する日本語で正確につづられた憲法というものを書くべきだと思う。
 あなたは、前文で、例えば世界全体の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ云々、このワンフレーズ、正しいと思いますか、日本語として。正しいですか。間違ってますよ、これ。あなた、正しいというんなら日本語を知らない。こんな醜い言葉でつづられた前文があちこちにある。私はやっぱり、せめて前文でも──前文の理想は正しいと思いますよ。しかし、やっぱり日本語として正すことも改正の一つの必要な手段じゃないでしょうか。どうか共産党も、国際平和への貢献のためにも、新憲法の制定の議論に積極的に参加していただきたいと心から期待しております。
 なお、ちなみに、「日本共産党の八十年」という平成十五年発行の書物を読みますと、憲法草案の採択に反対した主な理由として、かつて共産党がですよ、一、天皇条項が主権在民と矛盾している。第二は、第九条は日本の主権と独立を危うくするものである。八三ページにこう書いてあります。
 それから、私が憲法を遵守するかしないか。私は、場合によったらしません。この間、こういう国際化の時代に、日本でテロが起こって、例えばラッシュの時間に二カ所でテロリストが、アメリカとロシアにいまだに温存されている、世界では一応絶滅しましたが、天然痘のばい菌を盗み出して、仮に散布したとする。それにどう対処するかという図上訓練をしました。
 既存の法律というものは全部憲法を踏まえてできています。そうしますと、何時何分、この電車でこういうテロが行われた。テロリストはつかまえたけど、目に見えない天然痘は、サリンと違って、その場ではすぐ発病しない。一週間から二週間かかる、人によって。その間、その電車に乗り合わせた人々は名乗ってください。これ、いえないんですよ。憲法の拘束がある。それから、仮に名乗り出た人も、その人たちの身柄を、家でとにかく、発病するかしないか、蟄居してください。これもできない。それから、その名前を公表することもできない。これは基本的人権というんでしょうか、プライバシーというんでしょうか、個人情報の不可侵というんでしょうか、全部憲法にひっかかってくる。
 私はそのときにどうしますかといったら、私は憲法を無視してやる。都知事として、その情報を散布する、公開することで多くの感染を防いで、多くの生命を防ぐために、私は憲法を無視してやる。超法規というのはそういうことなんだ。私はそれを首をかけてやるんだ。命がけでやるんだ。命がけで憲法を破るんだ。当たり前のことじゃないか。だれがつくった憲法なんですか。
   〔発言する者あり、拍手〕
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します四点の質問にお答えします。
 まず、学級編制基準の根拠についてでございますが、少人数学級編制につきましては、国の調査報告におきましても、定説的な見解が見出せないところでございまして、ご指摘のような三十人学級編制につきましても、教育的効果があるという定まった評価はないと考えております。都教育委員会としましては、生活集団としての教育効果を考えた場合、学級には一定の規模が必要であり、国の標準法で定める四十人を上限とする学級編制基準は妥当であると考えております。
 一方、学習集団としては、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できるよう、少人数による習熟度別指導などの充実を図っているところでございます。
 今後とも、現行の学級編制基準のもとで、基礎学力などの向上に配慮しました、きめ細やかな指導を行っていくため、少人数指導の充実に努めてまいります。
 次に、少人数指導の教員定数の三十人学級への活用についてですが、限られた教員定数の活用については、教育効果という観点から、都が主体的に判断すべきものでございます。都教育委員会としましては、これまで、少人数指導について、国の教職員定数改善計画を踏まえまして、着実にその充実を図ってきたところでございます。
 一方、国が今後、四十人を下回るような少人数学級を実施するための教員の定数増を別枠で措置するとは承知しておりませんので、これまでの成果を上げてきた少人数指導を変えてまで少人数学級を実施しなければならないとは考えておりません。
 次に、国旗・国歌の指導についてでございますが、学校における国旗・国歌に関する指導は、学習指導要領に基づき、すべての児童生徒に国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てるために行っているものでございます。このため、都教育委員会は、昨年十月に通達を出しまして、これに基づいて、入学式、卒業式等の儀式的行事が適正に実施されるよう、各学校に対して指導の徹底を図ってきたところでございます。
 今後とも、学習指導要領や通達に基づき、国旗・国歌の指導が適正に行われるよう各学校を指導し、教育課程の適正化を図り、児童生徒に対し、国際社会に生きる日本人としての自覚や資質を育成してまいります。
 最後に、教員への個別的職務命令についてでございますが、教員は、教育公務員としての身分を有し、法令や学習指導要領に基づき、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育成する責務がございます。
 しかしながら、この春行われた都立学校の卒業式、入学式において、生徒に不起立を促すなどの不適正な指導の実態が一部にございましたことから、学習指導要領に基づき、児童生徒を適正に指導することを盛り込んだ個別的職務命令を発出するよう各学校を指導したところでございます。このことは、児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものでは全くございませんで、あくまでも教育指導上の課題として進めているものでございます。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 住民の福祉の増進、少子化対策及び子育て支援に関する五点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別養護老人ホームの整備についてでありますが、特別養護老人ホームは、保険者であります区市町村の計画と調整の上、都が取りまとめ、策定した介護保険事業支援計画に基づき整備を進めております。
 埼玉県や横浜市のように独自の予算を組むべきとのお話でありますが、都は、従前より、独自の用地費助成を行うとともに、施設整備費についても国制度に上乗せするなど、手厚い補助を実施し、積極的に整備促進を図ってまいりました。その結果、平成十五年度末の整備目標であります三万一千五百人に対し、達成率は九九%であり、計画に沿って着実に整備が進んでおります。
 次に、次世代育成支援東京都行動計画についてでありますが、次代を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境の整備を図ることは、社会全体の課題であります。都はこれまでも、大都市特有の保育ニーズにこたえる都独自の認証保育所を初め、子育て家庭を支援する先進的かつ総合的な施策を積極的に推進してまいりました。
 今回の行動計画は、こうした取り組みをさらに進めるために策定するものであり、懇談会に提示したのは、あくまでも骨子であります。今後、施策の優先度や効果などを十分考慮しながら、すべての子育て家庭を視野に入れた総合的な子育て支援策を盛り込む方針であり、素案、原案の段階で広く都民の意見を聞くこととしております。
 次に、乳幼児医療費助成制度についてでありますが、本制度は、少子社会における子育てを支援する福祉施策の一環として、区市町村に対し都が補助を行っているものであります。所得制限の基準は、国における児童手当に準拠しており、一定の所得制限を設けることは必要と考えております。
 また、対象年齢については、これまで、義務教育就学前まで段階的に拡大してきており、さらなる拡大は考えておりません。
 次に、認可保育所の増設により待機児解消の目標を明確にすべきとのことでありますが、地域における保育サービスをどのように提供していくかについては、保育の実施主体である区市町村が、その地域の保育ニーズを的確に把握し、認可保育所に限らず、認証保育所や家庭福祉員などにより、質の高いサービス提供が可能な体制を確保していくべきものであります。
 都としては、待機児を解消していくためには、まず、認可保育所みずからが受け入れ枠の拡大、定員の弾力化など、実情に即した対策を講ずるとともに、ゼロ歳児保育、延長保育など、サービス向上に向けた取り組みを行っていく必要があると考えております。
 最後に、認可保育所に対する運営費補助についてでありますが、認可保育所の運営は、基本的に国基準の運営費負担金で可能であり、都はこれに加え、延長保育やゼロ歳児保育など都市型保育サービスを実施できるよう、独自の加算を行っております。しかし、認可保育所の取り組みは進んでおりません。
 こうした状況を踏まえ、都は、今年度、都民のさまざまな保育ニーズにこたえるとともに、保育サービスの質の向上を図るため、民間保育所に対するサービス推進費補助の再構築を行いました。保育所運営費補助については、本年五月の児童福祉審議会の意見具申を踏まえ、現在、補助のあり方についてさまざまな観点から検討を行っております。
 なお、先ほど知事が、歴代知事の一般会計に占める福祉予算のパーセンテージを申し上げましたが、このパーセンテージを見ますと、石原知事が歴代知事の中で一番福祉に情熱を注ぎ、予算を獲得しているということがいえようかと思います。
   〔発言する者あり、拍手〕
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 若年者雇用と両立支援に関する東京ルールの確立とその方策についての六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、若年者雇用に関する経済団体等への働きかけについてでございますが、企業には、国の定めるさまざまな法令や指針に基づき、雇用の確保、労働条件の整備等に向けての取り組みが求められております。都といたしましては、こうした法令等の趣旨や各種制度の周知と着実な実施を働きかけてまいります。
 次に、若年者を雇用した中小企業に対する助成についてでございますが、企業が若年者を雇用する場合の支援として、国の助成金制度が用意されております。都といたしましては、しごとセンターにおいて職業紹介などの支援を実施することにより、若年者の雇用の促進を図ってまいります。
 次に、若年者に対する緊急雇用事業の創設についてでございますが、都内企業の若年者に対する求人ニーズは旺盛であるものの、雇用のミスマッチが大きな要因となって就職に結びついていない現状がございます。そこで、都といたしましては、しごとセンターにおけるミスマッチ解消のための各種支援により、若年者の雇用の促進を図ってまいります。
 次に、商店街での若者の開業についてでございますが、都はこれまでも、新・元気を出せ商店街事業により、空き店舗を借り上げて開業者を誘致する商店街の事業等に対し、改装費や家賃等の補助を行っております。また、専門家の派遣による経営相談や、開業希望者に対するセミナー等も実施しているところでございます。
 今後とも、こうした施策を通しまして、商店街での若者の開業につきましても支援をしてまいります。
 次に、育児休業制度に関する企業等への働きかけについてでございますが、都はこれまでも、育児休業制度の活用と職場環境の改善、向上を促すため、各種セミナーや、仕事と家庭の両立支援に成果を上げている企業の紹介などを実施してまいりました。
 対象労働者の拡大などを内容といたします改正育児・介護休業法が来年四月に施行されることを踏まえまして、今後とも、労使双方に対する普及啓発に取り組んでまいります。
 最後に、中小企業における育児休業等の定着、充実に向けた支援策についてでございますが、現在、国は、企業に対する財政支援措置として、育児介護費用助成金など七種類の助成制度を設けております。
 都といたしましては、仕事と家庭の両立支援を図る上で、育児・介護休業制度の活用と職場環境の整備促進に向けた働きかけが重要な課題であると認識しております。引き続き、請願の趣旨を踏まえ、適切に対処してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、職員の採用についてでございますが、職員の採用は、事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案して行っております。
 現在、東京都では、第二次財政再建推進プランにおける内部努力の大きな柱として、職員定数の削減に取り組んでおります。したがいまして、採用については、職員定数の範囲内で、事業動向などにも留意しつつ、適切に対応してまいります。
 次に、東京都の男性職員の育児休業率についてでございますが、現在、都は、次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主としての行動計画を年度内に公表することを目途に策定を進めており、この計画の中で検討してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 住宅に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ファミリー世帯向けの公的住宅の確保についてでございますが、住宅の戸数が世帯数を上回り、さらに今後、世帯数の減少が見込まれることを踏まえ、都は、これまでの公的住宅の新規建設を中心とした政策から、住宅市場を活用したストック重視の政策に転換してまいりました。
 公的住宅のファミリー世帯への提供につきましても、現在あるストックを活用し、都営住宅における多子世帯の優先入居、若年ファミリー世帯の期限つき入居などの措置を講じながら、入居機会の確保を図っているところであります。
 次に、家賃助成についてでございますが、バブル期における人口流出などを背景として、一部の区において、人口定着を主な目的に、若年ファミリー世帯などに対する家賃助成を実施している例が見られますが、住宅価格や家賃の低下など、その後の状況変化もあり、近年、実施している区の数は半減しております。
 したがいまして、広域自治体である都といたしまして、ご指摘のような家賃助成を実施する考えはございません。
   〔百三番曽根はじめ君登壇〕

○百三番(曽根はじめ君) 知事に四点、再質問します。
 第一に、福祉関係費は七百六十四億円も減らされたのは事実です。今年度から来年度にかけて五千億円もの増収が見込まれる中で、福祉関係費をさらに減らすのか、それともふやすのか、はっきりお答えいただきたい。
 第二に、少子化の原因について、個人の価値観や人生の設計の問題だとおっしゃいましたが、個人の問題に解消できない経済的、社会的条件があることを認めるのかどうか。
 第三に、三十人学級について、社会性を養う観点から四十人学級の方が妥当だというのなら、具体的根拠を示してください。
 第四に、憲法九条の問題についてですが、知事は、私が聞いた九条の問題でも、尊重擁護義務についても、まともに答えておりません。知事の立場は、とどのつまり、アメリカが求めている戦争に参加していくために、九条が邪魔だというものではないかと質問しているんです。
 これは、国民世論の六割が九条を守れといっておりますし、世界でも、九条の戦争放棄原則を自国の憲法に採用しようという運動が広がっているんです。アジアの国々は、憲法を否定する言動や靖国神社への公式参拝について、知事のやり方に警戒感を強めています。アジアとの経済協力の発展にも大きなマイナス要因になっているんです。
 憲法改悪の旗振りではなく、日本が第九条を生かして国際平和のために先駆的役割を果たすよう、自治体として努力することが知事の役割だということを申し上げているんです。はっきり、この問題についてお答えいただきたい。
 以上です。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) あなたもご存じのように、現在、日本は、国民の生命、財産を北朝鮮に奪われ、かつまた隣の中国に日本の領土を侵犯されつつあります。私はやっぱり、これはだれが守るか、国家に守る義務があるでしょう。しかし、今の九条ですと、守れないとはいいませんよ。しかし、我々はやはり自衛のための戦力をはっきり保有するということを明言して、九条の精神は生かしながら、しかし、日本は完璧な防衛国家になる。非常に手ごわい防衛国家になる。日本を侵犯したらとんでもない目に遭うぞという、それだけの国力、それだけの武力というものを備えて、それをすることで、私は日米安保も生きてくると思います。そういう意味で、私は、九条は改正の余地がある、改正すべきだと。それ含めて、私は、他の、憲法にいろんな不満な点がありますが、九条に関してのご質問には、それで終わります。
 他の点については、詳しく担当の局長がお答えいたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 先ほども他会派のあれで答弁しましたが、主張しているように、三十人を上限とする規模の学級にした場合、例えば三十一人の学年では十五人と十六人の二学級、これは必然的にそういう小規模な学級が増加するわけでございます。このような状況では、学級内の人間関係が固定したり、あるいは子ども同士の切磋琢磨する機会が不足したりするなど、生活集団としては望ましくないと考えているわけです。
 したがって、都教委としては、生活集団としての教育効果を考えた場合、学級には一定の規模が必要でございまして、国の標準法で定める四十人を上限とする、つまり、二十人から四十人の幅の中でという意味ですが、学級編制基準は妥当であると考え、実施しているところでございます。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 福祉関係予算の拡充についてということでございますが、福祉改革を進めていく中で、必要性が薄れた経済的給付あるいは施策などは思い切って見直す一方で、新しい都民ニーズに適切にこたえるため、厳しい財政状況にあっても、福祉改革に必要な予算は十分に確保してきたと思います。
 平成十一年度以降、介護保険制度や支援費制度の導入、児童扶養手当の区市移管、公立保育所運営費の一般財源化など、福祉分野における国の制度は大きく変わってございます。こうした比較の前提となるべき制度変更などの状況を無視して、単純に予算額の多寡だけをもって議論することは意味があることとはいえず、まして、福祉の後退というようなお話は当たらないのではないかと考えます。
 それから、先ほどもお答えしたとおり、福祉、子どものを含めまして、多様な福祉施策については、現在、私ども、来年の子育て支援も含めまして鋭意取り組んでいるところでございます。今回新たに、今、施策を展開しようとしている中で、こういうものを十分ごらんいただければというふうに思っております。

○議長(内田茂君) 五十番執印真智子さん。
   〔五十番執印真智子君登壇〕
   〔発言する者多し〕

○議長(内田茂君) ご静粛に。

○五十番(執印真智子君) 私は、都議会生活者ネットワークを代表して質問いたします。
 族議員と中央官僚の高笑いが聞こえるような三位一体改革の最終決着に、分権の視点は全くなかったといえます。もちろん、地方六団体が小異を捨て大同に立って補助金の削減案を国へ提出したことは大いに評価をするものですが、やはり、国と地方の役割分担をどのようにするのか、補助金だけでなく交付税をどのようにするのか、詰めた議論がなかったところが、三兆円の数合わせを、反対に国に上手に使われてしまったことになり、反省せざるを得ません。自由度のないものを移譲し、国保の補助負担率削減など、都道府県にさらなる負担を求め、公共事業を温存したことは、まさに国に改革の意思なしといえます。
 この先、少子高齢化の中で七百兆円の借金を抱え、税収入の倍の歳出を維持しようとする国に、未来はありません。この三位一体改革の議論を出発点として、人口も総所得も右肩上がりにふえた時代の行政のあり方を根本的に見直さなければならないことを肝に銘じてほしいと思います。
 知事は、先般の国の形という考え方の中で、明治以来の中央集権的な社会のありようについて言及されています。地方分権が進展した後に、東京や首都圏のあり方をどのように描いているのか、お考えを伺います。
 阪神・淡路大震災から約十年がたち、防災に対する意識が薄れかけたこの時期に新潟県中越地震に見舞われ、まさに備えが重要なことを改めて痛感させられました。被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。
 十二月二日、消防庁は歌舞伎町を査察しました。事業所の防災計画はつくられているものの、依然として二割が消防法違反であり、関係者の防災意識が高まったとはいえません。震度六クラスが東京を襲ったとき、大都市特有の危惧として、不特定多数の人々の混乱が挙げられます。帰宅困難者はもとより、買い物客や観光客、外国人、通学途中の子どもたちがどのような被害を受け、避難をするのか。携帯電話での家族との連絡のとり方、また、地下街、超高層のビルで陸の孤島のように取り残される状況など、これまでの被害想定以上の新たな問題が山積みとなっています。
 昼間都民の混乱防止対策として、行政の役割と事業者の役割及びその連携はどのようになっているのか、伺います。
 防災の観点から、都内の地下ごうについて伺います。
 国土交通省は、経年変化による特殊地下ごうの劣化を起因とする大規模な陥没、崩壊による災害が発生するおそれがあることなどから、平成十三年度に特殊地下壕実態調査を実施しました。それによると、全国に五千三カ所、そのうちの危険またはその可能性がある特殊地下ごうは七百七十七カ所となっています。東京都においては四十八カ所、そのうちの危険またはその可能性がある特殊地下ごうは十二カ所となっています。
 九六年に続き二〇〇二年十月にも陥没事故があった日野市三沢地区の地下ごうは、終戦末期に陸軍からの命令で東京都水道局が築造したことが、東京都土木技術研究所の日野市三沢地区陥没事故調査報告書に記されています。
 地下ごうの上には、四十年ほど前に住宅団地が分譲されましたが、地下ごうは東西南北約三キロメートルにわたって存在しているといわれており、このうち、今年度中に五十メートルが埋め戻される予定で、約六千万円の費用が計上されています。地下ごうの埋め戻し事業は、国と基礎自治体が二分の一ずつ負担することとなっていますが、三キロメートル分を基礎自治体が負担するのは酷な話です。埋め戻されないまま残る部分が新たな陥没を引き起こすのではないかなど、近隣住民の不安は尽きません。
 実は、陥没事故があったこの地下ごうは、平成十三年度の特殊地下壕実態調査では危険箇所と指定されていませんでした。現在、危険箇所となっていないところでも、都市開発の影響や経年変化による劣化などにより、いつ陥没及び崩壊による災害が発生するかはわからない状況です。
 都民の安全を確保するため、国の責任において都内の地下ごうの再調査と埋め戻しを行うよう、国交省に働きかける必要があると考えますが、見解を伺います。
 一方、陥没事故のあった日野市三沢地区の南側に、新たに斜面地マンションの建設が計画され、開発許可が申請されています。このような過去に二度も陥没事故のあった場所に斜面地マンションがつくられることは、地下ごうの劣化や、工事による地盤の微妙な変化等も考えられ、さらに危険が増すのではないでしょうか。このような開発許可に対して、都はどのような審査をするのか、伺います。
 一九九四年の建築基準法の改正により、ゆとりのある住宅の供給を目的とした住宅地下室の容積率が不算入措置となり、がけ地など傾斜地にマンションの建設が始まりました。業者側は、利益を優先するため、住宅の質、床面積の増加よりも、住宅の戸数の増加に地下室の容積率不算入措置を悪用する結果となっています。斜面を切り崩し、大量の盛り土をして地盤面を操作し、大部分の階層を地下室扱いとした中層階型マンションの建設は、その結果として、斜面地に残された貴重な緑を破壊し、建物による圧迫感、日照被害、斜面の崩壊や大雨被害など、各地で住民の不安を呼び起こしています。
 景観上や住環境の問題などから、横浜市や川崎市などを初め、日野市においても独自の条例で規制に乗り出しているところですが、都はどのようにお考えか、伺います。
 次に、土砂災害防止対策についてですが、新潟県中越地震では、土砂災害により大きな被害が生じました。その一方で、新たな宅地開発に伴い、災害の危険性のある箇所も年々増加しています。
 平成十一年の広島の土砂災害をきっかけに、平成十三年四月、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律が施行されました。都道府県では、斜面や渓流及びその下流など、土砂災害により被害を受けるおそれのある区域の地形、地質、土地利用状況等について基礎調査を実施し、土砂災害のおそれのある区域を指定するとともに、その結果を市町村地域防災計画に生かし、必要な情報を住民に周知させるよう努めることとなっています。
 都においても、昨年度から、多摩西部の斜面を中心に調査を進めておりますが、災害から都民を守るために基本となる重要な調査であると考えます。このような危険性のある箇所については、土砂災害防止対策として、都民へ積極的に情報提供していくべきであると考えますが、見解を伺います。
 次に、景観法施行に関連して伺います。
 一九九二年の都市計画法改正において、市町村レベルで都市計画決定できる、市町村の都市計画に関する基本的な方針、市町村マスタープランを住民参加のもとで策定することが義務づけられ、多くの自治体でまちづくり条例ができました。
 東京都においても、二〇〇三年三月、東京のしゃれた街並みづくり推進条例ができ、住民の創意工夫を生かして、個性豊かで魅力のある街並みをつくる新しい制度として、現在、六地区を街並み景観重点地区に指定し、取り組みが進んでいます。
 このような地域の取り組みが国を動かし、ことし、我が国で初めての景観に関する総合的な法律として、景観法が成立し、いよいよ十二月十七日から施行されます。良好な景観の維持や向上には、景観要素となる個々の建物や外構の保全や規制、つまり、財産権の部分的な制限が不可欠なため、法律が条例の後ろ盾になることが必要です。その意味では、遅かったとはいえ、ようやく景観保全や形成を目的とした法体系が整い、これまでの条例による景観形成をさらに発展させる道具が備わったものとして評価、期待されます。
 景観法では、良好な景観を国民共通の資産とすることを基本理念とし、自治体が取り組む上での具体的な規制や支援も盛り込んでいます。この法律の大きな特徴として、都道府県、政令指定市、中核市または都道府県と協議をして同意を得た市町村が景観行政団体となり、建築物の形態やデザインを誘導したり、緑や里山の保全などを目的とした景観計画を策定することができます。
 そこで、初めに、景観行政団体に対する都の考え方について伺います。
 また、景観法では、市区町村が景観行政団体になった場合、都道府県との二重行政を避ける仕組みとなっています。例えば、丘陵や河川のように広域的な視点からの連携が必要な地区について、市区町村の景観計画が個別に策定されることも考えられます。都は、こうした点について市区町村とどのように調整していくか、考えを伺います。
 目指している都市の景観を、美しい風景、街並みだけではなく、心地よい風景、歩いて楽しむ視点、安心・安全の視点という発想の転換を図り、日常の生活レベルに近い視点を多く取り入れる必要があるのではないでしょうか。見解を伺います。
 この法律を一言でいえば、地域の特色を生かした多様なまちづくりが可能となる法律といえます。地域に合ったまちづくりを進めれば、当然、多様なまちづくりが展開されます。都は、市区町村が景観行政団体となって、景観の保全と創造に取り組むことを進めるという立場に立ち、技術的支援等の必要な支援を行うべきです。
 次に、福祉のまちづくりの推進について伺います。
 福祉のまちづくりは、高齢者や障害者などに対するさまざまな障壁を取り除いていこうというバリアフリーの視点で進められてきましたが、これからの社会には、すべての人にとって暮らしやすい環境づくりをいうユニバーサルデザインの考え方が重要になってきます。
 東京都の福祉のまちづくり推進協議会では、ユニバーサルデザインについて議論が行われ、各分野における取り組みの方向性についての中間的なまとめが七月末に発表されました。これまでのバリアフリーからユニバーサルデザインへの観点で政策転換を図ろうとする取り組みに期待するところですが、基本的な考え方と今後の検討の方向性について伺います。
 これまでのバリアフリーのまちづくりで、段差の解消やエレベーターの設置など、車いすでの移動の制約はかなり改善されてきました。それにつれて、これまで外出を控えがちであった重度の障害者も外出の機会が広がり、さらにきめ細かい福祉のまちづくりが必要になっています。
 ユニバーサルデザインには、利用者の声による改善の積み重ねが重要であり、改善を継続していくための仕組みづくりが求められていると考えます。そこには、当事者の参画、情報の公開、隠れたニーズへの配慮などを踏まえて評価が行われる必要があります。
 例えば、だれもが必ず必要なトイレの問題は深刻です。食事を一食抜くことはできても、トイレを一回抜くことはできません。障害者団体が実際にまちに出て一つ一つ調べた結果でも、幾つかの不備が指摘されています。特に、おむつ着用の体の大きな障害児及び障害者が、おむつを交換できるトイレが非常に少ないのは問題です。
 平成十二年十二月に出された施設整備マニュアルでは、誘導基準として、広いスペースがあれば、長いすまたは寝台を設けるとされています。市や区の施設の中には、折り畳み式のベッドが設置されている例もありますが、残念ながら、この都庁舎には一カ所もありません。多くの人が出入りする施設が誘導基準を採用することが望まれますが、まずは都が率先して庁舎に設置していただきたいと思います。見解を伺います。
 次に、薬物について伺います。
 麻薬と同じ作用がありながら法の規制外となっている脱法ドラッグについては、大都市を中心に流通実態が拡大しており、子どもでも簡単に、また気軽に携帯やインターネット等で手に入れることができる状況になっています。
 国では政令を改正し、麻薬に追加指定する方向にあり、都においても来年には脱法ドラッグを規制する条例の制定を予定しています。
 一方、直接子どもたちに危険を教え、子どもを薬物から守ろうと、南多摩保健所管内では、薬物乱用防止対策を南多摩保健医療圏の課題に位置づけ、保健所と地域の関係機関等の協働で、学年別薬物乱用防止教育プログラムを作成しました。未然防止の観点から小中学生に重点を置いたこの取り組みは、大変評価できるものです。
 今後さらに活用を進めていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 薬物対策は、低学年からの学習の積み重ねにより、健康を阻害することの恐ろしさを学習することが重要であり、有効であると考えますが、今後どのように取り組みを進めていくのか、見解を伺います。
 次に、三井物産によるディーゼル車粒子状物質除去装置、DPFをめぐるデータ偽装事件についてです。
 この問題は、条例に基づいてDPFの指定承認を行う権限の行使を妨害するものであり、確かにデータの捏造を見破れなかったゆえに、不十分で基準に満たない装置を流通させた都の行政上の責任は重大です。この問題は、単なる怠慢の問題に終わらせることなく、徹底的に究明する必要があります。
 しかし、三井物産の行為は、それ以上に都民と事業者に対する背信行為です。生活者ネットワークは、その意味は、条例違反という以上の政治問題であると考えています。
 第一に、この施策は、周知のように、遅々として進まない国の自動車公害対策に対する都の自治権の行使であり、先駆施策であるということです。今日、三位一体改革が議論されていますが、二○○○年の地方分権一括法にあらわれるように、分権、自治は大きな時代の流れであり、都のDPF対策はその流れと軌を一にするものでした。
 第二に、それゆえ、この自治の施策の推進のため、都内の関係業者は、その経済的負担などを含め、大変な思いで対応してきました。企業の社会的責任が問われる中で、国内の一流企業といわれる三井物産の行為は、その意図は定かではありませんが、この分権と自治の試みに対する重大な妨害といわざるを得ません。これを単に行政上の罰の行使だけで終わらせることは、分権の推進にとってマイナスです。
 この施策は、石原都政の施策の目玉です。これを大企業三井物産がないがしろにしたことは、自治にかかわる政治問題ととらえるべきです。知事のお考えをまず伺います。
 私たち生活者ネットワークは、この議場にいらっしゃる皆様とともに、この施策に賛成してきました。私たちにとっても、自治の侵害であり、議会議決をないがしろにするものであります。こうした自治にかかわる政治問題の解明や追及に関しては、議会として最大限に調査権限を行使すべきと考えます。三井物産を告訴したことで、司直の手に渡ってしまうと、都民の目には見えにくくなります。
 生活者ネットワークは、この場をおかりして、本会議場にいらっしゃるすべての議員の皆様に、委員会での参考人招致、特別委員会の設置、百条調査権を行使することを提案させていただきます。
 そこで、知事に伺います。この問題に関して、都議会への協力についての基本的考えを伺います。
 以上で生活者ネットワークの代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 執印真智子議員の代表質問にお答えいたします。
 今、地方分権一括法ができた後、ようやく具体的な実現のめどとして、税財源の分与をどうするかということも、一つの大きな要因としての、三位一体の問題がごたごたしておりますが、仮にこれが淘汰されて、望ましい──東京は東京の試案をもう既に提出しておりますけれども、さらにいい案が出てくるかもしれませんが。地方分権というものが税財源の分与を伴って実現したときに、この首都圏がどういう形になるだろうかという予測についてのお尋ねですが、私は、今ちょっと触れられましたDPFの問題も含めてのディーゼル規制、これは一種の広域行政として、進め方としては成功したと思います。
 その他幾つかのことを、首都圏の業務というものを推進、サポートしている隣の神奈川県、千葉県、そしてまた埼玉県の四県の知事、そして政令指定都市の市長さんたちと話しておりますけれども、やっぱり結果として私は、首都圏というのは一つの独立した自治体になっていくと思います。それがまた望ましいと思います。
 とにかく昼間人口も、今の行政区分だと、他県から昼間人口三百万もふえるという形になっておりますし、東京都の職員にしたって半分以上が都の在住者じゃないという実態ですが、これは非常に不自然な形だと思います。いずれにしろ、私は、道州制ということがいわれて非常に久しゅうございますが、地方分権に付随して首都圏はそういう形をとっていかざるを得ないと思いますし、また、どういう区分になりますか、今の四十七都道府県というのは非常に無理な形で運営されているわけですけれども、これは幾つかの道州制という形に移行していかざるを得ない。
 私は、余計な説明になるかもしれませんが、こういう歴史的な必然性というものを、ごく最近、新しいバリアが阻害してきた。それは田中角栄さんがいい出した列島改造論で、ああいった、ある意味では破天荒な論、田舎の人の都会に対する渇望、羨望というものを表象する、つまり、各都道府県に空港があり、新幹線が走っている、高速道路が走るという、そんな均一化というのは、要するにこの日本に必要ないし、また、すべきではないと思います。
 ただ、あれを彼が強引にいい出して、一部着手したために、つまり、我々の地方も大都会と均一であるべきだという妙な行政の妄執もできまして、それが非常に事を混乱し、阻害してきたという感じがいたしますが、それが国家の財政状況から見ても無理だということも国民が知ってきましたし、新しい流れというものが兆してきた。その中で、私は、ご質問のように、道州制や地方分権というのは、それなりに確立していったときに、今の行政区分というのはやっぱり崩壊していって、新しい行政区分、もっと大きなくくり方で地方というものを構成立てていく、そういう時代が来るんじゃないかと思っております。
 それから、三井物産による虚偽データの使用はまさに政治問題でありまして、本当に怒りとともに情けなさを感じる。つまり、日本人のモラル、誇りあるはずの大企業のモラルがここまで堕落したのかという慨嘆を禁じ得ません。
 これが議会でこれからどう扱われるか、議会の判断ですけれども、都はもちろん、それに協力をさせていただきますし、具体的なことは担当の局長が申し上げるでしょうが、いずれにしろ、司直の手に一応ゆだねられたわけであります。しかし、東京の主張は、あるいは関係都道府県の主張は、そこの法廷でもなされるわけでありまして、私は、単に彼らがいい出している賠償行為というものが満たされただけで、この問題の円満な解決には全くならない。私は、やっぱりここで大きな反省をすべきだし、その主張を東京も法廷でしたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 学校教育での薬物乱用防止の取り組みについてのお尋ねでございますが、薬物の乱用を防止するためには、児童生徒の発達段階に応じて、薬物に関する正しい知識を身につけさせ、適切に判断し、行動する態度を育てることが重要でございます。
 都教育委員会としましては、青少年の薬物問題の深刻な状況を踏まえまして、薬物乱用防止に関する指導資料やチェックリストの作成・配布、薬物乱用防止教室の実施等を通しまして指導の充実を図っておりますが、今後とも、小中高等学校で実施しておりますセーフティー教室に、薬物乱用防止の内容を計画的に取り入れるなど、警視庁、医師会及び学校薬剤師会、福祉保健局等と連携をしまして、児童生徒がみずからの健康を適切に管理し、改善していく力を育てる教育を推進してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 震災時におきます昼間都民の混乱防止対策についての質問にお答え申し上げます。
 混乱防止には、まず、自助、共助に基づく昼間都民や事業者みずからの取り組みが重要でございます。このため、東京都震災対策条例では、従業員や顧客及び周辺地域の住民等の安全確保を事業者の責務として定めております。
 一方、都は、災害時の心構えや安否確認の方法などについての普及啓発や帰宅訓練の実施とともに、事業者に対し事業所防災計画の作成などの指導を行っております。また、災害時には、報道機関、区市町村などと連携しながら、被害状況や交通機関の運行状況等について、迅速かつ的確な情報を提供することにしております。今後とも、区市町村、事業者、防災機関と十分連携を図り、昼間都民対策の充実に努めてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、特殊地下ごう対策事業についてでございますが、この事業は、旧日本軍などが築造し、市街地に現存する防空ごうで、陥没等により市街地に影響を及ぼすおそれのあるものを埋め戻すなど、防災対策を行うものでございます。
 危険性の高い地下ごうにつきましては、早急に対策を講じていく必要があり、国が相応の責任を持つべきと考えております。
 都といたしましては、今後、安全性に対する監視体制の強化や、危険な箇所についての速やかな対策がとれるよう、事業主体となる区市に対する、より一層の支援を国に要望してまいります。
 次に、日野市三沢地区の開発の審査についてでございますが、都市計画法では、良質な宅地水準を確保するため、宅地の開発に当たり事業者が守るべき技術基準を定めております。
 今回の開発許可において、都は現在、宅地の安全性の観点から、事業者に対し、敷地内の地下ごうの調査とその対応策を求めているところでございます。それらの結果も含め、法令の基準に照らし合わせ、適切な開発計画となっているかどうか、こういったことを審査してまいります。
 次に、斜面地マンションの条例による規制についてでございますが、容積率の緩和を活用し、傾斜地に建設されるいわゆる斜面地マンションにつきましては、住環境の悪化を招くとして、紛争に至る例が見られます。このため、自治体が必要な措置をとれるよう、本年六月、建築基準法が改正されました。
 一方、ご指摘のように、横浜市や日野市など、独自の条例を制定し、斜面地マンションを規制する自治体も出てきております。
 都といたしましては、こうしたマンションの建設により、市街地環境を悪化させるおそれがある場合には、自治体の条例により地域の実情に応じた適切な規制がなされるよう、区市町の取り組みを技術的に支援してまいります。
 次に、景観法に基づく景観行政団体についてでございますが、法律では、都道府県などが景観行政団体になり、また、区市町村は知事の同意を得て景観行政団体になることができるとされております。
 都は、法に先立ち、条例を制定し、東京全体から見て景観の骨格となる基本軸を指定して、届け出制度により景観を誘導するなど、広域的な視点から景観づくりを進めてまいりました。都といたしましては、このような従来からの取り組みを一層充実させるとともに、法に基づく景観行政団体として、区市町村と協力しながら、良好な景観づくりを推進してまいります。
 次に、景観計画に関する区市町村との調整についてでございますが、河川や連檐した市街地などにおいて良好な景観を形成するためには、行政区域を超えた取り組みが必要であると認識しております。
 このため、都は、区市町村とも連携し、東京を特徴づける地形や自然、風格ある街並みを生かしたまちづくりなど、広域的な景観づくりに取り組んでまいりました。今後、景観計画の策定など,景観法を活用する場合には、区市町村の意見も踏まえつつ、東京全体として施策の一体性、整合性が確保されるよう適切に対応してまいります。
 最後に、日常生活レベルの景観づくりについてでございますが、良好な景観は、視覚的な美しさにとどまらず、自然、歴史、文化など地域固有の特性を生かし、その多様な形成を図る必要があると認識しております。
 ご指摘の日常生活レベルの景観づくりにつきましては、区市町村が地区計画などを活用し、地域住民とともに取り組むことが望ましいと考えております。都は、区市町村との適切な役割分担のもとで、東京の持つ多様な魅力や個性を発展させるよう、総合的かつ計画的に景観づくりを進めてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 土砂災害防止対策についての質問にお答えします。
 都は、都民の生命や財産を守るため、これまで、土砂災害の危険の高い箇所について、砂防ダムやがけ崩れ防止施設の整備を進めてまいりました。
 また、土砂災害防止法に基づき、平成十五年度から、土砂災害のおそれのある区域を具体的に明らかにする調査を実施しております。今後、この調査結果を踏まえ、土砂災害のおそれのある区域の指定について、地元自治体と連携して説明会を開催するとともに、現地での掲示やインターネットなどにより住民に周知してまいります。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 福祉のまちづくり及び薬物に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ユニバーサルデザインのまちづくりについてでありますが、本年七月の福祉のまちづくり推進協議会の中間のまとめでは、ユニバーサルデザインとは、すべての人にとって暮らしやすい環境をつくっていこうとする利用者本位の考え方であり、都がこうした考え方を基本に、安心して安全かつ快適にだれもが暮らすことのできる福祉のまちづくりを進めることの重要性を述べております。
 今後、推進協議会では、建築物、公共交通などの専門部会を設置し、検討を進めることとしており、都としても、その議論を踏まえ、ユニバーサルデザインの視点に立ったまちづくりの進め方について検討してまいります。
 次に、学年別薬物乱用防止教育プログラムの活用についてでありますが、青少年の薬物乱用を未然に防ぐためには、小中学生に対し、その発達段階に応じて薬物に対する正しい知識を普及することが重要であると認識しております。
 お尋ねの教育プログラムは、こうした観点から、保健所と地域の関係機関などとが協働して作成したものであります。これまでも、その活用に向けて、各市の教育委員会や学校などへの説明及び講演会の開催などに取り組んできており、今後とも、薬物乱用の未然防止に資するよう、広く普及に努めてまいります。
   〔財務局長松澤敏夫君登壇〕

○財務局長(松澤敏夫君) 都庁舎における障害者のトイレ利用についてのご質問にお答えいたします。
 都庁舎は、福祉のまちづくり整備方針に基づき、障害者などの方々の利用に最大限配慮して建設しており、また、その後に制定された条例などにも適合するよう、改修や整備を行ってきております。
 このうち、車いすの方などが使用するトイレについては、幅の広い出入り口の確保など、施設整備の誘導基準をおおむね満たしてきてはおりますが、お尋ねの長いすまたは寝台の設置は、スペースの確保が困難なことから、これまで対応がおくれてきた面がございます。近年、折り畳み式などコンパクトな製品の開発もされてきたことから、今後、可能な箇所については設置に努めてまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 三井物産の虚偽データ使用に対する調査についてでございますが、都は既に三井物産に対し、詳細な調査報告を行うよう指示しているところであり、また、都といたしましても、関係書類の調査、分析を進めるなど、事実関係の解明に努めております。今後とも、議会からのお求めには誠実に対応してまいります。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時五十八分散会

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