平成十六年東京都議会会議録第十五号

平成十六年十二月一日(水曜日)
 出席議員(百十九名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番村上 英子君
四番秋田 一郎君
五番矢島 千秋君
六番鳩山 太郎君
七番後藤 雄一君
八番福士 敬子君
九番林  知二君
十番伊沢けい子君
十一番新井美沙子君
十二番相川  博君
十三番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
二十一番高橋かずみ君
二十二番山加 朱美君
二十三番小美濃安弘君
二十四番吉原  修君
二十五番山田 忠昭君
二十六番臼井  孝君
二十七番林田  武君
二十九番山口 文江君
三十番柿沢 未途君
三十一番初鹿 明博君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番東野 秀平君
三十七番藤井  一君
三十八番ともとし春久君
四十一番野島 善司君
四十二番真鍋よしゆき君
四十三番松原 忠義君
四十四番田代ひろし君
四十五番三宅 茂樹君
四十六番川井しげお君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番こいそ 明君
五十番執印真智子君
五十一番花輪ともふみ君
五十二番真木  茂君
五十三番大津 浩子君
五十四番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番木内 良明君
六十番鈴木貫太郎君
六十一番森田 安孝君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番鈴木あきまさ君
六十七番近藤やよい君
六十八番串田 克巳君
六十九番中屋 文孝君
七十番三原 將嗣君
七十一番樺山たかし君
七十二番田島 和明君
七十三番宮崎  章君
七十四番大西由紀子君
七十五番樋口ゆうこ君
七十六番中村 明彦君
七十七番馬場 裕子君
七十八番和田 宗春君
八十番大山とも子君
八十一番東ひろたか君
八十二番池田 梅夫君
八十三番中山 秀雄君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番いなば真一君
九十番高島なおき君
九十一番服部ゆくお君
九十二番古賀 俊昭君
九十三番山本賢太郎君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十七番大山  均君
九十八番大河原雅子君
九十九番田中  良君
百番小林 正則君
百一番藤川 隆則君
百二番坂口こうじ君
百三番曽根はじめ君
百四番渡辺 康信君
百五番秋田かくお君
百六番中嶋 義雄君
百七番石井 義修君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番野田 和男君
百十二番野村 有信君
百十三番比留間敏夫君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番富田 俊正君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番木村 陽治君

 欠席議員(なし)
 欠員
十四番  十九番  二十番
二十八番 三十九番 四十番
五十五番 七十九番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事濱渦 武生君
副知事大塚 俊郎君
副知事竹花  豊君
出納長櫻井  巖君
教育長横山 洋吉君
知事本局長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長松澤 敏夫君
警視総監奥村萬壽雄君
主税局長山口 一久君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長梶山  修君
環境局長平井 健一君
産業労働局長関谷 保夫君
建設局長岩永  勉君
港湾局長成田  浩君
交通局長松尾  均君
水道局長高橋  功君
消防総監白谷 祐二君
福祉保健局長幸田 昭一君
下水道局長二村 保宏君
大学管理本部長村山 寛司君
病院経営本部長押元  洋君
中央卸売市場長森澤 正範君
新銀行設立本部長津島 隆一君
選挙管理委員会事務局長高橋 和志君
人事委員会事務局長佐藤  広君
地方労働委員会事務局長久保田経三君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

十二月一日議事日程第一号
第一 第二百十一号議案
  東京都行政手続条例の一部を改正する条例
第二 第二百十二号議案
  東京都行政手続等における情報通信の技術の利用に関する条例
第三 第二百十三号議案
  東京都統計調査条例の一部を改正する条例
第四 第二百十四号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第二百十五号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六 第二百十六号議案
  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第七 第二百十七号議案
  職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
第八 第二百十八号議案
  職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第九 第二百十九号議案
  非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第十 第二百二十号議案
  東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十一 第二百二十一号議案
  職員の結核休養に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第二百二十二号議案
  東京都職員の公務災害補償等に伴う付加給付に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第二百二十三号議案
  都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第二百二十四号議案
  東京都個人情報の保護に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百二十五号議案
  東京都情報公開条例の一部を改正する条例
第十六 第二百二十六号議案
  学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第十七 第二百二十七号議案
  義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第二百二十八号議案
  学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百二十九号議案
  公立大学法人首都大学東京に係る地方独立行政法人法第四十四条第一項の条例で定める重要な財産を定める条例
第二十 第二百三十号議案
  公立大学法人首都大学東京に係る地方独立行政法人法第五十九条第二項に規定する条例で定める内部組織を定める条例
第二十一 第二百三十一号議案
  東京都立大学条例等を廃止する条例
第二十二 第二百三十二号議案
  東京都市計画事業大橋地区第二種市街地再開発事業施行規程
第二十三 第二百三十三号議案
  東京都市計画事業亀戸・大島・小松川第二地区第一種市街地再開発事業施行規程等の一部を改正する条例
第二十四 第二百三十四号議案
  東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十五 第二百三十五号議案
  東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十六 第二百三十六号議案
  東京都立老人医療センター条例の一部を改正する条例
第二十七 第二百三十七号議案
  東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百三十八号議案
  東京都結核診査協議会条例の一部を改正する条例
第二十九 第二百三十九号議案
  東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援条例
第三十 第二百四十号議案
  東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第三十一 第二百四十一号議案
  東京都地方労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第二百四十二号議案
  東京都地方労働委員会あつ旋員の費用弁償条例の一部を改正する条例
第三十三 第二百四十三号議案
  審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第二百四十四号議案
  公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第二百四十五号議案
  性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第二百四十六号議案
  都立青梅地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)改修工事請負契約
第三十七 第二百四十七号議案
  都立東久留米地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)増築及び改修工事請負契約
第三十八 第二百四十八号議案
  日暮里・舎人線舎人公園駅(仮称)建築工事請負契約
第三十九 第二百四十九号議案
  当せん金付証票の発売について
第四十 第二百五十号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び瑞穂町公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十一 第二百五十一号議案
  公立大学法人首都大学東京定款について
第四十二 第二百五十二号議案
  公立大学法人首都大学東京(仮称)に対する出資について
議事日程第一号追加の一
第一 議員提出議案第二十九号
  地方分権の推進を求める意見書
第二 議員提出議案第二十八号
  真の地方分権改革の推進に関する意見書

   午後一時一分開会・開議

○議長(内田茂君) ただいまから平成十六年第四回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(内田茂君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   十一番  新井美沙子さん 及び
   六十八番 串田 克巳君
を指名いたします。

○議長(内田茂君) この際、謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民島田正吾氏には、去る十一月二十六日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(内田茂君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(谷村隆君) 平成十六年十一月二十四日付東京都告示第千六百二十六号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、平成十六年十一月二十四日及び十二月一日付で、本定例会に提出するため、議案四十二件の送付がありました。
 次に、平成十六年第三回定例会の会議において同意を得た監査委員、教育委員会委員、公安委員会委員及び土地利用審査会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、東京都人事委員会より、平成十六年十月七日付で、都の一般職の職員の給与について報告等がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が二件ありました。
 内容は、東京都立学校設置条例の一部を改正する条例の報告について、並びに訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。
(別冊参照)

○議長(内田茂君) この際、報告いたします。
 このたびの新潟県中越地震により被災された方々に対し、衷心よりお見舞いを申し上げます。
 本議会は、新潟県議会議長及び新潟県知事あて、見舞い状を送付いたすとともに、全議員の拠出による見舞金を贈呈いたしました。

○議長(内田茂君) この際、平成十六年十一月三日付をもちまして藍綬褒章を受章された方々をご紹介いたします。
   野村 有信君
   古賀 俊昭君
   服部ゆくお君
 ここに敬意を表し、心からお祝いを申し上げます。
   〔拍手〕

○議長(内田茂君) 次に、平成十六年十月二十六日付をもちまして、全国都道府県議会議長会において、自治功労者として表彰を受けられた方々をご報告申し上げます。
 在職二十五年以上、大山均君。
 在職二十年以上、尾崎正一君、渡辺康信君、土持正豊君、大木田守君、中山秀雄君、川島忠一君、坂口こうじ君、佐藤裕彦君。
 在職十五年以上、東ひろたか君、名取憲彦君、森田安孝君、鈴木貫太郎君、内田茂。
 在職十年以上、古賀俊昭君、大河原雅子さん。
 ここに敬意を表し、心からお祝いを申し上げます。
   〔拍手〕

○議長(内田茂君) 次に、閉会中の議員の退職について申し上げます。
 去る十一月七日、荒川区選出北城貞治君は、公職選挙法第九十条の規定により、退職となりました。

○議長(内田茂君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第三回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一〇ページ)に掲載〕

○議長(内田茂君) この際、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第二十九号、地方分権の推進を求める意見書外意見書一件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(内田茂君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十二月十六日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十六日間と決定いたしました。

○議長(内田茂君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十六年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 去る十一月二十六日、名誉都民である島田正吾さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 幕末のペリー来航から百五十年、今日に至るまでの歴史の流れを俯瞰するとき、ある種の感慨を禁じ得ません。開国から明治維新、敗戦、そして近年のバブル崩壊と、日本は、歴史の節目節目で国の内外から改革を強く迫られてきました。
 一世紀前、近代化という目標に向かって国を挙げ努力していた我が国は、歴史の大きな岐路に立たされておりました。欧米列強が支配する当時の世界にあって、極東の一小国にすぎなかった日本が、大国ロシアとの国家の存亡をかけた戦いに辛くも勝利できたのは、国際環境を見据えた、冷徹で戦略的な思考とたゆまぬ自己改革、そして、講和をも視野に入れた周到な準備があったからにほかなりません。
 今日の日本もまた大きな困難に直面し、抜本的な改革を迫られております。しかし、百年前と決定的に異なるのは、国家の進むべき方向を定めることができず、ただ漂流を続けていることであります。
 この十年余り、総論ではだれもが改革を唱えるものの、いざ具体化の段になると、抵抗勢力によって改革の芽が摘み取られていくという、同じプロセスが判で押したように繰り返されてきました。国の政治家も官僚も、旧来の枠組みの中に安住し、目先の利益を守ることにのみ明け暮れて、国の形を変えるという本質的な課題に目を背けたままであります。
 こうした状況を象徴的にあらわしているのが、国のいわゆる三位一体改革であります。
 先週、政府・与党は、改革の全体像なるものを発表しましたが、その内容は、地方分権の実現にはほど遠いものであります。三兆円というまず数字ありきの補助金削減、地方の財政的自立に結びつかない税源移譲、地方交付税に至っては制度の改革の発想すらありません。議論の手順が初めから間違っていたのであり、これでは、明治以来続いてきた旧弊な政治の骨組みを根本的に変えることは到底できません。
 義務教育費国庫負担金の削減にしても、国民健康保険への都道府県負担の導入にしても、本質的な議論を行うことなく、削減だけを急いでいるように見えます。国の負担を地方に肩がわりさせるだけであり、分権とは何の関係もありません。
 国の政治が利害調整能力を失い、族議員や官僚の利益が優先されていることが白日のもとにさらされました。分権改革の初心に返って仕切り直しを行うことを強く求めたいと思います。今必要なのは、日本全体の発展につながる改革を実現することであります。今後、平成十七年度予算編成において、東京を初め不交付団体に対する不当な財源調整措置を決して許してはならないと考えております。
 今回のいわゆる三位一体改革は、真の地方分権改革の実現に向けた道程の入り口にすぎません。都は引き続き、我が国の行財政制度の枠組みを百数十年ぶりに根底から変えるという視点に立ち、分権改革の実現に全力で取り組んでまいります。
 同時に、まず隗より始めよの言葉どおり、東京都自身も、根本的で思い切った自己改革を進めていかなければなりません。都みずからのさらなる行財政改革はもとより、大都市行政の充実強化や、首都圏全体の広域的な課題への新たな対応など、困難な課題に正面から立ち向かっていくことが、都に課せられた責務であると思います。
 去る十月、新潟県中越地方が震度七の激しい地震とたび重なる大きな余震に見舞われ、甚大な被害を受けました。犠牲者の皆様に深く哀悼の意を表すとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 地震発生の報を受け、直ちに、警視庁、東京消防庁の救援部隊と東京DMATが現地に急行したほか、給水車や、食料、毛布などの支援物資を緊急輸送いたしました。民間事業者の協力も得て、上下水道など生活基盤の復旧活動も行いました。土砂崩れの現場では、東京消防庁のハイパーレスキュー隊が、他県の救助隊員と連携して、二歳の男の子を奇跡的に救い出すことができました。
 また、都の要請により、横田基地から米軍の輸送機が、都と基地周辺自治体の支援物資を被災地に搬送いたしました。この取り組みによって、日米の連係プレーによる災害時の米軍基地の有効活用に新たな道筋をつけることができたと思います。今後さらに、発災後直ちに自治体が米軍基地を有効に使用できる枠組みを早急に構築する必要があると思います。
 今回の地震では、道路の寸断や通信の途絶などにより、山合いの集落が孤立し、情報連絡体制の確立や、ヘリコプターなどによる救助活動の迅速化、避難所運営のあり方など、さまざまな課題が浮き彫りになりました。こうした教訓を踏まえ、同様の事態が予想される多摩地域の山間部を中心に、地元自治体や関係機関と連携して対策を拡充してまいります。
 広域的な対応の強化も不可欠であります。先月、首都圏直下の大規模地震を想定した広域防災計画を八都県市共同で策定いたしました。今年度じゅうに、この計画に基づく合同の図上訓練を実施し、危機管理体制をさらに強化してまいります。
 ことし、日本列島は、台風の上陸が観測史上最多の十回を記録するなど、自然災害の猛威にさらされました。東京も、二つの台風の相次ぐ直撃を受けました。
 環状七号線地下の巨大な調節池などの対策は所期の成果を上げましたが、区部全体で約千三百棟が浸水するなど、都市型水害に対する備えは決して万全ではありません。既に実施した緊急点検で護岸の亀裂などが認められた河川については、今年度じゅうに応急対策を完了させるとともに、来年度、本格的な補修を集中的に実施いたします。また、ポンプ所などの下水道施設を整備するほか、東京港の水門、防潮堤の整備を進めるなど、水害、高潮から都民を守る対策を講じてまいります。
 次に、三宅島についてであります。
 全島避難から四年数カ月、村民の皆様が待ち望んでいた帰島が来年二月に迫ってまいりました。火山ガスの放出が依然として続く中、生命、健康の安全を確保しながら、いかに生活再建を図るかが大きな課題となっております。
 都は既に、港湾や道路、砂防ダム、ライフラインの整備をほぼ完了し、現在、村営住宅の建設や学校の再開、産業基盤の整備など、生活の自立を目指す取り組みを村とともに進めております。
 帰島後の生活には、その基礎となる住宅の再建が不可欠でありますが、国の制度は住宅の再建そのものには適用されません。そのため、都は独自の支援策として、住宅の新築や修繕等に要する経費を支給することとし、今定例会に条例を提案いたしました。
 村民の皆様が一日も早く安心して生活できる日々を取り戻せるよう、心から願っております。
 次に、重点事業についてであります。
 近年、経済のグローバル化や高度情報化、産業技術の高度化が急速に進展し、少子高齢化がさらに進むなど、都政を取り巻く状況は大きく変化しております。
 そうした中、日本経済は、先行きに不安を残しながらも緩やかな回復を続け、地方分権の取り組みが国政を揺るがす議論となるなど、新たな動きも見られます。こうした変化を的確にとらえ、都財政の負の遺産である隠れ借金を解消し、財政再建の取り組みをさらに推進するとともに、新たな発展を目指す都民や企業の努力を後押しする政策展開が求められております。
 このため、昨日、予算編成に先立ち、平成十七年度の重点事業を策定いたしました。時代の変化を見据え、新たな行政ニーズを先取りする取り組みや、都民不安の解消など緊急課題への対応を初め、真に優先度の高い三十四のプロジェクトを厳選し、集中的に資源を投入することといたしました。
 以下に、重点事業の主な取り組みと関連する事業について申し上げます。
 初めに、まちづくりについてであります。
 大都市東京の活力と魅力を高めるため、都市インフラの整備を着実に進めるとともに、住宅の質の向上などに取り組んでまいります。
 三環状道路の一つである中央環状線については、先月、都市計画決定した品川線の早期整備に向けて積極的に取り組むとともに、東名高速道路方面への結節点となる大橋ジャンクションについては、今年度じゅうに市街地再開発事業に着手し、引き続き周辺のまちづくりと一体となった整備を進めてまいります。
 東京オリンピックの時期をピークとして整備された東京の都市基盤施設は、近い将来、一斉に更新期を迎えます。現在、道路、橋梁で進めている予防保全型の施設管理手法を、河川の護岸、港湾の岸壁などにも拡大し、都市基盤施設の長寿命化と管理コストの縮減に取り組んでまいります。
 品川駅周辺から田町にかけてのエリアでは、新幹線新駅の開業や民間開発により地域のポテンシャルが急速に高まっております。広範な市街地の開発を適切に誘導するため、国、地元区などと協力して全体構想を策定し、東京の南の玄関口として整備してまいります。
 住宅政策について、都は既に、良質で低廉な戸建て住宅供給の実証実験に着手しております。今後さらに、安心して取引できる中古戸建て住宅の流通促進を図るとともに、増加する老朽マンションの長寿命化に取り組むなど、東京の住宅の質の改善に努めてまいります。
 次に、産業振興についてであります。
 将来にわたって東京の産業力を高めていくため、成長が期待される産業分野への支援と人材の育成に取り組んでまいります。
 現代日本文化の一翼を担っている我が国のアニメ・映像産業は、その大部分が東京に集積しております。急速に追い上げる近隣諸国との競争が厳しさを増す中、アニメ・映像産業の振興を図るため、東京国際アニメフェアの開催等に加え、制作資金や販路開拓に対する支援の仕組みを国と協力して構築してまいります。
 ナノテクノロジーは、今後の成長分野であり、中小企業が大きな役割を担うものと期待されております。そのため、ナノテクセンターを城南地域に設置し、高い技術力を持つ中小企業を対象に、最新機器の開放や技術相談、共同研究などを実施してまいります。
 新たな産業を発展させる上で、すぐれた人材の確保が喫緊の課題となっております。時代の変化をとらえる高度な開発力、企画力を備えた人材の育成を目指し、平成十八年春に産業技術大学院を開学いたします。教員に産業界の実務者を招き、既存の大学院ではできない実践的な教育を実施いたします。これと連動して、都立高等専門学校の改革を進めます。二つの高専を統合、再編して専攻科を設け、九年間の一貫した体系的な技術者教育を実現してまいります。
 東京には多くの外資系企業が進出していますが、近年、撤退する企業が増加傾向にあります。都の調査によれば、行政手続の煩雑さや、病院や学校など生活関連情報の入手の難しさを訴える声が寄せられております。外資系企業の定着を促進するため、専門の窓口を設置し、必要な情報をワンストップで提供してまいりたいと思います。
 また、新銀行東京において、資金繰りで困窮する中小企業の期待に少しでも早くこたえるため、従来の方式に加え、地域金融機関とより緊密に連携をとった、新しい再生ファンドを今年度から立ち上げ、順次事業を展開してまいります。
 隅田川周辺や臨海部には、新旧の魅力のあるスポットが数多くありますが、観光資源として十分に生かされておりません。親水性や景観を向上させ、回遊性を高めるため、水辺へのアクセスの改善、テラスの連続化などに総合的に取り組む必要があります。来年度、隅田川から臨海部に至る東京の水辺空間を観光資源として再生する全体構想の策定に着手するとともに、天王洲や芝浦などにおいて、先行的な取り組みを進めてまいります。
 また、ICタグなどのIT技術を活用して、観光情報を都民、来訪者に提供する実験的な取り組みを秋葉原や上野などで実施し、まちのにぎわいや魅力の向上を図ってまいります。
 次に、教育改革についてであります。
 児童生徒の基礎学力や規範意識の低下に対する都民の不安を解消するため、授業内容の改善や教員の資質向上などに取り組んでまいります。
 都が独自に実施している一斉学力調査の結果をもとに、すべての公立小中学校の全教科で授業改善推進プランを策定し、学力の向上を図ってまいります。また、若手教員に授業をわかりやすく進める力を習得させるため、採用二、三年目の全教員を対象に研修を実施してまいります。
 平成十九年度を目途に、奉仕体験活動をすべての都立高校で必修科目といたします。福祉施設での介助や地域での美化活動などを通じて、人への思いやりや社会の一員としての自覚を身につけさせてまいりたいと思います。
 首都大学東京については、来春の開学に向け、現在、学生の募集を行うなど、順調に準備を進めております。今後、大都市の特色を生かした教育をさらに充実するため、平成十八年度には新しく六研究科から成る大学院を設置するほか、システムデザイン学部にインダストリアル・アート・コースを新設する予定であります。また、青少年を取り巻く環境の総合的な調査分析など、都政と連携した取り組みにも力を入れてまいります。
 次に、福祉・医療の充実についてであります。
 都は、これまで民間企業やNPOの参入を促す独自の取り組みにより、痴呆性高齢者のグループホームを積極的に整備してまいりました。今年度からさらに定員の倍増を目指し、三年間の緊急整備を進めています。
 こうした中、国は、痴呆性高齢者グループホームが全国的には充足しつつあることを理由に、来年度から国庫補助金を削減する動きを見せております。都は、国に対し、必要な財源措置を講ずるよう強く働きかけていますが、国が責任を放棄したとしても、この事業が滞ることがないよう着実に整備を促進していく考えであります。
 清瀬、八王子、梅ケ丘の三つの小児病院を移転統合して、小児総合医療センターを開設いたします。救命救急に対応する小児ICUの設置など、全国初の取り組みを積極的に取り入れ、平成二十一年度開業を目指し、東京における小児医療の拠点として整備してまいります。
 大気汚染を改善するには、移動発生源、固定発生源両面の対策が不可欠であります。
 移動発生源に対しては、ディーゼル車排出ガス規制を初め、不正軽油撲滅作戦の遂行や、サルファーフリー燃料の全面供給促進など、あらゆる対策を講じてまいりました。さらに先月には、自動車メーカー各社に対して、低公害で低燃費な自動車の早期開発、早期普及を強く要請いたしました。都は、開発を後押しする取り組みを実施してまいります。
 固定発生源対策についても、焼却炉の排出ガス対策など、独自の取り組みを推進してまいりました。
 残された課題は、浮遊粒子状物質などの生成要因となっているVOC、揮発性有機化合物対策であり、今後、関係業界の協力を得て積極的に取り組んでまいります。
 これらの対策を実施することにより、平成二十二年度までに、すべての測定地点で浮遊粒子状物質の環境基準を達成したいと思います。
 一都三県が共同で実施しているディーゼル車排出ガス規制については、都議会の皆様と一体となった取り組みを進め、成果を上げてまいりました。ところが、このたび、排出ガス浄化装置、DPFの不正改造やリコールに続き、データを捏造した虚偽の申請により、基準に適合しない装置が多量に販売されていた事実が明らかになりました。規制に誠実に対応してきた事業者の努力と、大気汚染の改善を求める都民、国民の願いを裏切る許しがたい背信行為であり、その責任を厳しく追及してまいります。
 この夏、東京は大変な猛暑に見舞われました。これは世界的な異常気象に加え、大都市特有のヒートアイランド現象によるところも大きかったと思います。都は、これまで独自のヒートアイランド対策として、丸の内、汐留などでのモデル事業や壁面緑化等の実証実験に取り組んできました。こうした取り組みの成果を踏まえて推進エリアを設定し、ここを中心に道路の保水性舗装や下水再生水などの散水、都立施設の緑化、校庭の芝生化などを重点的、集中的に実施してまいります。
 国に対しては、都市再生の一環として積極的な対策を講じるよう強く働きかけ、連携して取り組んでまいります。
 東京では、毎日約百二十トンの医療廃棄物が発生しており、不法投棄の防止など適正処理が課題となっております。スーパーエコタウンで現在建設中の施設が平成十八年度に稼働すると、都内で発生する全量を処理することが可能になります。こうした状況を踏まえ、来年度、最新の情報技術を活用した追跡システムのモデル事業に取り組みます。あわせて、都内のすべての病院など排出事業者と産廃処理業者に取り組み状況を報告させ、公表するなど、適正処理を促進してまいります。
 次に、危機管理についてであります。
 緊急治安対策本部の設置から一年半、この間の官民挙げての取り組みにより、強盗やひったくりなどの認知件数が前年に比べ大幅に減少するなど、一定の成果が上がり始めております。今後とも、治安回復の取り組みを緩めることなく、警察力の強化や外国人組織犯罪対策の徹底を図るとともに、新たな取り組みにも力を注いでまいります。
 都内の盛り場では、路上での悪質な客引きや強引な勧誘が横行し、多くの人が迷惑をこうむり、不安を感じています。いわゆる迷惑防止条例等を改正して、性風俗関係の客引き、スカウトなどを禁止し、徹底した取り締まりを行うことにより、安心して繁華街を訪れることができるようにしたいと思います。
 いわゆる脱法ドラッグが、法の規制を免れて繁華街やインターネット上で公然と売買され、青少年への健康被害の拡大が懸念されております。今年度中に条例を制定し、ドラッグGメンが店舗等に立ち入って調査し、監視、指導を行うなど、都独自の対策を講じてまいります。
 今年度から、不整脈を取り除く除細動器を医療従事者以外の者が使用できるようになりました。新たに消防隊に配備し、救命率を向上させるとともに、都立施設や区市町村などにも配備して、現場での救命に役立ててまいります。また、気管挿管や薬剤投与などの特定行為を行える救急救命士を、平成十八年度までにすべての消防署に配置できるように研修を充実してまいります。
 さらに、東京DMATについては、指定病院の拡大や隊員の増員などを実施し、大規模交通災害やNBC災害などへの対応を強化してまいります。
 次に、青少年の総合対策についてでありますが、仕事についていない若者やフリーターの増加が、その実態はさまざまでありますが、社会的な関心を呼んでおります。働く意思がある若者の就職を支援するために協力企業を広く募り、しごとセンターにおいて、一定期間仕事を体験させるインターンシップなどを実施してまいりたいと思います。高校中退者に対しても、関係機関が協力して、就労や復学のためのきめの細かい情報提供を行ってまいります。
 若者の社会的な自立を促進するには、中学生、高校生の段階から働く場に触れさせることが重要であります。来年度、区市町村と連携して、公立中学校において一週間程度の職場体験を試験的に導入し、実施校を拡大していきたいと思います。都立高校では、卒業生による指導、助言を実施するほか、インターンシップのモデル実施に取り組み、拡大を図ってまいります。
 児童虐待の相談件数が急増し、不登校やひきこもりが社会問題化しております。地域における子育ての支援体制を強化するため、児童福祉司の増員など、児童相談所の機能を充実するとともに、児童相談センターの専門機能を拡充した子ども家庭総合センターの設置に向け、準備を進めてまいります。
 出会い系サイトを通じて犯罪に巻き込まれるなど、子どもたちがネット社会の被害者となったり、ホームページへの書き込みなどがトラブルに発展するケースが多々生じております。有害な情報、環境から子どもを守るため、児童、保護者、教師向けにインターネットの適正利用に関するセミナーを開催するほか、業界にも協力を要請し、自主的な取り組みを促進してまいります。
 子どもを取り巻く危機的な状況を、親はもちろん、私たち大人はもっと正しく知る必要があります。都は、子どもたちの実態を周知する取り組みを進め、すべての都民が子どもの問題に関心を持つように努めてまいりたいと思います。
 多摩・島しょ地域では、都市基盤の整備や豊かな自然環境の回復などが課題となっております。
 多摩地域の都市計画道路について、着実に整備を進めるために新しい方針を策定するとともに、地域の生活道路について、取得済みの道路用地に歩道を先行的に整備するなど、効果が実感できる手法を取り入れてまいります。
 多摩地域の医療拠点として、府中病院の機能を強化した多摩広域基幹病院を設置いたします。平成二十一年度の開設を目指し、小児総合医療センターとの一体的な整備を進めてまいります。
 近年、多摩の森では、シカの食害が非常に急速に広がり、森林の荒廃が進んでおります。これまで進めてきたシカの捕獲頭数をふやすとともに、植生の回復などに取り組んでまいりたいと思います。
 都が独自に設置したレンジャーについては、その成果を検証しつつ、着実に増員を進めるとともに、来年度、首都大学東京にボランティア養成の公開講座を開設いたします。また、世界自然遺産登録を目指す小笠原諸島では、ノヤギの捕獲や固有種の保護などに取り組んでまいります。
 島しょ地域では、東海地震等への対応として、津波対策が緊急の課題となっており、避難階段や標識などの設置について地元自治体と共同で調査を行い、整備を促進してまいります。
 一国の国力は、経済規模や軍事力だけではかることはできません。産業技術の高度化が急速に進む二十一世紀にあっては、国力に占める技術力のウエートがますます高まってまいります。現在、日本経済が長期にわたる低迷から曲がりなりにも脱しようとしているのも、私たちが長い歴史で培ってきた技術の力によるところが大きいと思います。
 歴史的に見ても、新しい技術の開発が世の中を変え、人類の発展を支えてきましたが、ピーター・ドラッカーが指摘したとおり、いかにすぐれた技術であっても、商品化することができなければ、ただの石ころにすぎません。かぎを握るのは、技術の原石を製品化、実用化する力であります。そして、これに最も秀でているのが日本人であり、私たち自身がこのことを正確に認識する必要があります。
 ことしで五回目を迎えたベンチャー技術大賞の受賞作品を見て、改めてこのことを実感いたしました。東京には、世界の最先端技術を開発し製品化できる中小企業が数多くあり日本の国力を下支えする重要な存在となっております。こうした企業を初め、都民が持てる力を十分に発揮できるよう支援の仕組みを整えていくことが行政の重要な役割であります。
 冒頭で述べたように、この国は漂流をいまだ続けておりますが、東京の力、日本の可能性を信じ、戦略的にこれを伸ばしていくことこそが、東京をあずかる者たちとしての責務であると思います。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案三十五件、契約案三件など、合わせて四十二件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。 以上をもちまして所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一及び第二を先議されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一及び第二を先議することに決定いたしました。

○議長(内田茂君) 追加日程第一、議員提出議案第二十九号、地方分権の推進を求める意見書を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

議員提出議案第二十九号
   地方分権の推進を求める意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十六年十二月一日
(提出者)
 河野百合恵  清水ひで子  かち佳代子
 小松 恭子  古館 和憲  松村 友昭
 丸茂 勇夫  大山とも子  東ひろたか
 池田 梅夫  曽根はじめ  渡辺 康信
 秋田かくお  吉田 信夫  木村 陽治
東京都議会議長 内田 茂殿

   地方分権の推進を求める意見書
 政府が、十一月二十六日に決定した「三位一体改革の全体像」は、「地方権限の拡大」の名のもとに、福祉や教育などに対する国の責任を後退させ、地方財政の削減をこれまで以上に進めるもので、地方自治体に課せられた「住民の福祉の増進」という仕事を一層困難に追い込むものとなることは明らかである。
 とりわけ、八千五百億円に上る義務教育費国庫負担金の削減は、憲法が保障する国民が等しく教育を受ける権利を危うくするものであり、認められない。国民の「健康で文化的な最低限の生活」を保障するための生活保護費の国庫負担率の引下げは先送りされたものの、来年度検討するとされたこと、国民健康保険への都道府県負担の導入を掲げたことなどは、国の責任を地方に転嫁するものであり看過できない。
 一方、「全体像」は、肝心の税財源の移譲について、国庫補助負担金の削減額を四千億円も下回るものとしており、その影響は甚大である。低所得者層に負担を強いることとなる個人住民税のフラット化を実施するとしていることも重大である。
 地方交付税は、平成十七年度も削減するとされた。これは、国庫補助負担金の削減と合わせ、長期の不況のもとで財政難に苦しむ地方自治体の財政運営を一層困難に追い込むものであり、容認できない。
 今日の地方自治体の財政難の原因は、住民のための仕事を地方が六割受け持っているのに対し、そのための財源は四割しか保障されていないことにある。本来、地方分権の推進は、このような逆転を解消し、地方自治体が自主的・自立的に行財政運営を行うための権限の移譲とそれを裏付ける税財源移譲が一体的に進められることが不可欠である。また、引き続き、憲法が保障する国民の生存権、基本的人権にかかわるナショナル・ミニマムを財政的に保障することが、国の責務であることも論をまたない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要請する。
一 税財源の抜本的移譲を進め、国と地方自 治体間の仕事と財源の逆転の解消に努める こと
二 福祉・教育などの国庫補助負担金制度の 基本及び地方交付税の財源保障機能を堅持 すること。浪費的な公共事業の押し付けを 止め、地方自治体の裁量の範囲を拡充する こと。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十六年十二月一日
東京都議会議長 内田  茂
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
文部科学大臣
厚生労働大臣
経済産業大臣
経済財政政策担当大臣 あて

○議長(内田茂君) 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(内田茂君) 起立少数と認めます。よって、本案は否決されました。

○議長(内田茂君) 追加日程第二、議員提出議案第二十八号、真の地方分権改革の推進に関する意見書を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

議員提出議案第二十八号
   真の地方分権改革の推進に関する意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十六年十二月一日
(提出者)
 谷村 孝彦  東村 邦浩  村上 英子
 秋田 一郎  矢島 千秋  鳩山 太郎
 林  知二  新井美沙子  相川  博
 山下 太郎  長橋 桂一  小磯 善彦
 野上じゅん子 高橋かずみ  山加 朱美
 小美濃安弘  吉原  修  山田 忠昭
 臼井  孝  林田  武  山口 文江
 柿沢 未途  初鹿 明博  酒井 大史
 東野 秀平  藤井  一  ともとし春久
 野島 善司  真鍋よしゆき 松原 忠義
 田代ひろし  三宅 茂樹  川井しげお
 鈴木 一光  吉野 利明  こいそ 明
 執印真智子  花輪ともふみ 真木  茂
 大津 浩子  大塚 隆朗  木内 良明
 鈴木貫太郎  森田 安孝  石川 芳昭
 土持 正豊  倉林 辰雄  遠藤  衛
 鈴木あきまさ 近藤やよい  串田 克巳
 中屋 文孝  三原 將嗣  樺山たかし
 田島 和明  宮崎  章  大西由紀子
 樋口ゆうこ  中村 明彦  馬場 裕子
 和田 宗春  中山 秀雄  大木田 守
 前島信次郎  桜井良之助  新藤 義彦
 星野 篤功  いなば真一  高島なおき
 服部ゆくお  古賀 俊昭  山本賢太郎
 立石 晴康  清原錬太郎  小山 敏雄
 大山  均  大河原雅子  田中  良
 小林 正則  藤川 隆則  坂口こうじ
 中嶋 義雄  石井 義修  橋本辰二郎
 藤井 富雄  桜井  武  野田 和男
 野村 有信  比留間敏夫  大西 英男
 山崎 孝明  佐藤 裕彦  川島 忠一
 内田  茂  三田 敏哉  田中 晃三
 藤田 愛子  尾崎 正一  土屋たかゆき
 富田 俊正  名取 憲彦
東京都議会議長 内田  茂殿

   真の地方分権改革の推進に関する意見書
 地方分権改革は、本来、地方自治体が、自主的・自立的な行財政運営を行い、より住民に身近なところで、住民の意向に沿った施策を行うことを可能とするものでなければならない。
 このたび、政府が発表した三位一体の改革についての「全体像」は、地方自治体の意見が十分に反映されず、三兆円という数字ありきの国庫補助金等の削減、地方の財政的自立につながらない税源移譲など、地方分権の実現には程遠い内容となっている。
 特に、本質的論議を行わないまま、義務教育国庫負担金八千五百億円削減、国民健康保険への都道府県負担導入を決めたことは極めて遺憾である。また、生活保護費負担金の見直しを検討するとしたことは、国の責任を地方に転嫁しようとするものであり、到底、容認できるものではない。さらに、国庫補助負担金を削減して移譲された事務事業について国によるチェックの仕組みを検討するとしたことも、分権改革の本旨に反するものである。
 しかしながら、今回の「全体像」策定の過程において、国と地方とが協議の場を設けたことは評価できるものであり、今後の真の地方分権改革に向けての出発点とすべきである。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を目指すという地方分権改革推進の基本理念に立ち返って、国が地方と対等な立場で十分に協議を行い、改めて抜本的な改革を進めるよう強く要請する。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十六年十二月一日
東京都議会議長 内田  茂
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
文部科学大臣
厚生労働大臣
経済財政政策担当大臣 あて

○議長(内田茂君) 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(内田茂君) 起立多数と認めます。よって、本案は、原案のとおり可決されました。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二日から七日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二日から七日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十二月八日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時三十九分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一六財主議第四〇九号
平成十六年十一月二十二日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 内田  茂殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十六年第三回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   後藤雄一議員
   河野百合恵議員
   かち佳代子議員
   小松恭子議員
   和田宗春議員
   大山とも子議員
   木村陽治議員

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  後藤雄一

質問事項
 一 警視庁の情報公開について
 二 交通局、運輸業務職員の勤務について
 三 社会福祉法人「西原樹林会」の補助金返還について
 四 都営住宅、公務員の収入超過者について
 五 防災訓練の意気込みについて
 六 議会棟の警備について
 七 都立病院の備品の管理、効率化について


一 警視庁の情報公開について
  警視庁本部庁舎清掃委託の入札経過調書を情報公開請求したところ、入札業者の内、落札業者だけが非公開になった文書が公開された(予定価格は非公開)。
  非公開の理由は以下の通りである。
 ・ 落札業者は、警察施設の構造等に関する情報を保有しているだけでなく、日常的に同施設に出入りしていることから、当該業者名を公にした場合、犯罪を企図する者が当該業者へ潜入する事が可能となり、その結果、不法行為等の敢行を容易にするおそれがあるため。
 ・ 落札業者等を公にすることにより、犯罪を企図する者が警察業務への妨害行為等を画策し、若しくは警察施設の構造等に関する情報を入手する目的で、当該業者に対して圧力や不法行為等を加える事が可能になり、その結果、入札を含む各種業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
  行革110番が情報公開請求した平成16年3月2日、警視庁本部庁舎年間清掃委託の入札経過調書の入札金額をみると、
 落札・・65,000,000円 2番・・65,900,000円 3番・・66,000,000円
 4番・・66,100,000円 5番・・66,200,000円 6番・・66,300,000円
 7番・・66,600,000円 8番・・66,700,000円 9番・・66,800,000円
 10番・・66,950,000円
と、2番札から6番札まで10万円刻み、そして、7番札から9番札も10万円刻みと整然としており、不自然な入札金額になっている。
  その上、落札業者を非公開にしては、入札に不審を抱いた都民が調査しようにもできない。
 1 落札業者名も公表すべき、と考えるが見解を伺う。
 2 また、警視庁本部庁舎の清掃業務委託は、銃器等の保管スペース、留置スペース、取り調ベスペース、事務所スペースも、同一業者が行うのか?行うとしたら、警察官のたち合いのもとに行われるのか?伺う。行わないとしたら、清掃業務は警察官が行っているのか? を伺う。
 3 上記事項に疑問を抱いた行革110番は、警視庁に「警視庁の食堂業務委託」について公開するか否かを聞いてみると、清掃委託同様、落札業者名は非公開にする、という。
   食堂業務委託の落札業者を公開しても、警備上の不都合に該当すると思わないが、いかなる理由で非公開になるのかうかがう。また、今後公開するつもりがあるのか? 伺う。
二 交通局、運輸業務職員の勤務について
 1 平成16年8月末まで、交通局組合役員・支部長は運転等の本来業務を行っていなかった。行革110番の指摘で平成16年9月より、支部長は本来業務を行う事になった。しかし、運転等を本来業務にする組合役員は、長く運転等の業務を行っていなかった事から研修等を行っても運転等の本来業務を行う事は危険との理由から、運輸業務に転職した。
   研修を行えば本来業務を行う事が可能と考えるが、何故、研修を行わず運輸業務に転職させたのか伺う?また、運輸業務の具体的な仕事、そして、いままで放置していたか伺う。
 2 上記職員の運輸業務の仕事は交通局の本庁、及び、各営業所等で行われることになる。交通局の一般現業職員は、運転等のローテーションに組み込まれており、業務内容を示す文書が存在する。しかし、運輸業務は、ローテーションに組み込まれない場合もある。また、運輸業務の作業は明確でなく、文書も存在しない。そこで、運輸業務職員一人一人に、各所属長が職務命令を発し、職務完了を確認する、という業務報告書を作成すべき、と考えるが見解を伺う。
三 社会福祉法人「西原樹林会」の補助金返還について
  平成14年5月14日、特別養護老人ホーム建設をめぐり、国の補助金約3億6千万円を不正受給したとして、埼玉地検は社会福祉法人西原樹林会の理事長等、そして、不正を知りながら、国に補助金を申請するよう決定した「前東京都福祉局長で都社会福祉事業団理事長」を逮捕した。この事件が舞台になったのが社会福祉法人「西原樹林会」である。東京都福祉保健局は上記事件で、西原樹林会の不正請求に対する都が支出した補助金返還に向けた検討を行っていると聞いている。しかし、未だに返還が実現していない。施設整備補助金の返還請求権は、平成17年中に時効が成立してしまう。返還請求に向けた手続きについて、お考えを伺う。
四 都営住宅、公務員の収入超過者について
  東京都は、都営住宅に年総収入総額約790万円以上(標準世帯における給与所得者の諸所得控除前の年総収入額)の高額所得者が入居している問題に関し、明け渡しを請求している。東京都は今年2月から「高額所得者明け渡し請求審査結果」に公務員の入居がある場合、高額所得者の勤務する自治体名等を公表するようになった。
  公営住宅法28条には、標準世帯の年総収入が約510万円以上の「収入超過者」は「明け渡すようつとめなければならない」と、努力目標を規定し、都は収入超過者に対して、「収入超過のお知らせ」を郵送している。上記「収入超過者」のうち公務員も少なくないという。都営住宅は、住宅困窮者向けの住宅であり、収入の限度を超えた公務員が入居することは、公務員の信用失墜行為に当たり許される行為ではない。
  都は、国又は地方自治体に勤務する収入超過者のいる場合は、高額所得者同様、勤務する各自治体名等を新聞等に公表、そして、各自治体等に通知し是正するよう申し入れるべき、と考えるが見解を伺う。
五 防災訓練の意気込みについて
 1 今年も9月1日、恒例の防災訓練が行われた。行革110番は都民の目線で都職員の働き振りをチェツクした。浅草駅周辺で行われていた伝達訓練では、災害用被服(以下「作業服」という)を着ているが作業服の肩につけるはずの災害対策用ワッペン(以下「ワッペン」という)も付いてなく、その上、ネームプレート等も付けておらず、傍から見ると誰が誰だか分らない状態で訓練が行われていた。災害対策担当者は、ワッペン着用について、「第3次非常配備についたとき、災害業務に従事した職員は、ワッペンを付けることになっている。」という。つまり、9月1日は訓練なので、ワッペンを付ける指示は出していない、と言うらしい。しかし、実際に災害が起った事を想定して行うのが訓練だ。次回の訓練から、災害・非常事態を想定してワッペンを付けるべき、と考えるが見解を伺う。
 2 また、ネームプレートは、人事部の「職員のネームプレートの着用に関する要綱」に「ネームプレートは通常は付ける。しかし、出張して職務を行う時には、付けない事ができる」と書かれているので、付ける指示はしていない、という。しかし、この要領は平常時の職務について定めた要領である。災害は非常時であり、平常時と同じ扱いをするべきでないと考えるが、見解を伺う。しかし、ネームプレートを付けることは、落としたり、作業上危険という指摘もある。そこで、作業服は個人に支給されるものであり、作業服に名前を縫い込むべき、と考えるが見解を伺う?
   同時に、災害用作業服等の規定の整備についても検討すべき、と考えるが見解を伺う。
六 議会棟の警備について
  都庁第1庁舎と議会棟の間に「サンクス広場」があり、広場地下にはパスポート窓口、テナントが入った食堂街がある(以下「食堂街等」という)。
  食堂街等が入居する地下街には朝8時以前、夜22時以降の出入り口がなく、この時間帯は議会棟1階の北側入り口を利用し、議会棟防災センターでチェックを受け、議会棟内部を通り、地下駐車場に下り、食堂街への扉(以下「地下中央扉」という)を利用して出入りをしている。当然、上記時間帯に利用している食堂街等の利用者は議会棟内を通行するため、議会棟階段(非常階段を含む)を利用し、自由に議会棟上階部に行くことが可能である。
  また、食堂街等の生ゴミ、段ボール等のゴミ置き場(以下「地下ゴミ置き場」という)が議会棟地下駐車場内にある。食堂街等から地下ゴミ置き場へは鍵が付いた扉(以下「地下ゴミ置き場の扉」という)があり、各テナント等に鍵が貸与されている、という。食堂街等関係者のゴミ出しは、都庁オープン時間帯は地下中央扉を利用し地下ゴミ置き場を利用する。地下中央扉が閉まっている時間帯は、テナント等が都庁から貸し出されている地下ゴミ置き場の扉の鍵を使い、議会棟地下駐車場に入りゴミ出しを行っている。当然、テナント等は地下ゴミ置き場の扉の鍵を利用し、議会棟上階部に行く事が可能である。
  先月土曜日(閉庁日)午後2時頃、行革110番関係者がサンクス広場食堂街から議会棟4階議員控室に上がってこれた、という。経路を聞いてみると、本来施錠してあるはずのサンクス広場地下食堂街の地下中央扉が開いており、議会棟地下駐車場に入り、階段を利用して4階まで徒歩できた、と言う。このように、閉庁日には閉まっているはずの地下中央扉さえ施錠されていなかった。
  行革110番が現場を調査したところ、サンクス広場地下には5ヶ所の出入り口(地下中央扉、地下ゴミ置き場の扉を除く)があり、その内1ヶ所は午後10時まで開いている、と言う。)つまり、午前8時前、午後10時以降の前後1時間ほど食堂街等関係者の出入り口を確保すれば、サンクス広場地下の食堂街等関係者の議会棟北側入り口からの出入りを原則禁止することが出来る。そこで、サンクス広場地下の非常口の一つに、午前7時から午前8時まで、午後10時から午後11時まで、計2時間に警備員を配置すれば、議会棟を通らないで食堂街関係者の出入りが可能になる。また、議会棟地下ゴミ置き場と駐車場との間にはシャッターがあり、シャッターを閉めればごみ置き場から議会等への出入り阻止出来る。そこで、議会棟の警備の為に、平日の午後18時から翌午前8時まで、及び、都庁閉庁日の地下中央扉施錠時間帯は、サンクス広場地下の非常口の一つに、午前7時から午前8時まで、午後10時から午後11時警備員を配置し、議会棟地下ゴミ置き場と駐車場との間にはシャッターを降ろすなどして警備を改善するべき、と考えるが見解を伺う。
七 都立病院の備品の管理、効率化について
  都立府中病院検査科休憩室を調べたところ、昭和38年製造の冷蔵庫、ショウケース型サンデン社製冷蔵庫、家庭用シャープ社製冷蔵庫が2台、計4台の冷蔵庫が福利厚生の目的で設置されている。行革110番が目視したところ、昭和38年製造の冷蔵庫には、酒、ウイスキー、ビール、ブランデー等の酒類が。ショウケース型サンデン社製冷蔵庫には、多くの飲料用のペットボトルが。家庭用シャープ社製冷蔵庫には、ワイン、発泡酒、他の食事等に使用する調味料等が冷やされていた。
  検査科休憩室の冷蔵庫利用状況を見る限り、酒の利用は論外であるが、飲料用自販機を設置する方が、職員の福利厚生目的に合致すると考える。自販機を設置すれば自販機の電気使用料は設置する業者の負担になり、経費も節減できると考えるが、見解を伺う。
  また、行革110番は府中病院検査科休憩室しか調査していないが、他の都立病院を調査し、無駄な冷蔵庫、備品等の使用状況を調査し、自販機設置も考え、効率化を図るべき、と考えるが見解を伺う。

平成16年第三回都議会定例会
後藤雄一議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 警視庁の情報公開について
1 警視庁本部庁舎清掃委託の入札経過調書を情報公開請求したところ、入札業者のうち落札業者だけが非公開とされた。落札業者名も公表すべきだが、見解を伺う。

回答
  警視庁本部庁舎の清掃委託に係る落札業者は、警察施設の構造等に関する情報を保有しているだけでなく、日常的に同施設に出入りしていることから、当該業者名等を公にした場合、犯罪を企図する者が当該業者から警察施設等の情報を入手し、又は当該業者へ潜入することが可能となり、その結果、不法行為等の敢行を容易にするおそれがあります。
  また、当該落札業者名等を公にした場合、犯罪を企図する者が警察業務への妨害行為等を画策し、又は警察施設の構造等に関する情報を入手する目的で、当該業者に対して圧力や不法行為等を加えることが可能となり、その結果、入札を含む各種業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあります。
  このようなことから、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)第7条第4号及び第6号の規定に基づき、非開示としました。

質問事項
一の2 警視庁本部庁舎の清掃業務委託は、銃器等の保管スペース、留置スペース、取り調ベスペース、事務所スペースも同一業者が行うのか、伺う。また、警察官の立ち会いの下に行うのか、伺う。

回答
  当庁は、銃器等の保管スペース、留置スペース及び取り調ベスペースについては、すべて警察職員が清掃を行っていますが、本部庁舎内の事務所スペースについては、清掃業者に委託しています。
  また、清掃委託業者が事務所スペースの清掃を行う際には、必ず警察職員が立ち会っています。

質問事項
一の3 警視庁は、食堂業務委託の落札業者名も非公開にするとのことであるが、非公開の理由について伺う。また、今後公開するつもりがあるのか伺う。

回答
  警視庁と契約を交わしている食堂業務委託業者は、警察施設の構造等に関する情報を保有しているだけでなく、日常的に同施設に出入りしていることから、当該業者名等を公にした場合、犯罪を企図する者が当該業者から警察施設等の情報を入手することや、当該業者へ潜入することが可能となり、その結果、不法行為等の敢行を容易にするおそれがあります。
  また、当該業者名等を公にした場合、犯罪を企図する者が警察業務への妨害行為等を画策し、又は警察施設の構造等に関する情報を入手する目的で、当該業者に対して圧力や不法行為等を加えることが可能となり、その結果、契約を含む各種業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあります。
  このようなことから、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)第7条第4号及び第6号の規定に基づき、非開示となります。
  今後も、法令に基づいた適切な対応をしていきます。

質問事項
 二 交通局運輸業務職員の勤務について
  1 運転等を本来業務とする交通局組合役員について、なぜ、研修を行わず運輸業務に転職させたのか、伺う。また、運輸業務の具体的仕事及び今まで放置していたかを伺う。

回答
  運輸業務の職務内容は、事業所における運行管理業務(ターミナルでの運行調整など)、施設管理業務(停留所清掃など)、庶務事務(文書整理など)等であり、運輸業務への転職は、乗務員が運転職としての適性を欠いた場合等に実施されている人事上の制度です。
  乗務員の職にある組合役員の業務については、これまでも逐次見直しを行ってきましたが、今回、さらに見直しを図ったものです。

質問事項
二の2 運輸業務の作業は明確でなく、業務内容を示す文書もない。運輸業務職員に対し各所属長が職務命令を発し、完了を確認する業務報告書を作成すべきであるが、見解を伺う。

回答
  運輸業務に従事する職員については、事業所の所属長が係に配属し、具体的な業務を担当させていますが、業務の執行状況を必要に応じて書面等により管理していきます。

質問事項
 三 社会福祉法人「西原樹林会」の補助金返還について
   福祉保健局は、社会福祉法人西原樹林会の不正請求に対して支出した補助金の返還を検討している。補助金の返還請求権は、平成17年度中に時効となるが、返還請求に向けた手続きについて伺う。

回答
  都は、国庫補助金を含む施設整備費補助金の返還に向けた検討を継続して行っており、現在、国との協議を進めています。
  今後、国との協議が整い次第、社会福祉法人西原樹林会に対して速やかに返還請求を行っていきます。

質問事項
 四 都営住宅、公務員の収入超過者について
   都営住宅入居者のうち、国または地方自治体に勤務する収入超過者については、高額所得者と同様、勤務する自治体名等を公表し、各自治体等に是正するよう申し入れるべきだが、見解を伺う。

回答
  公営住宅法及び東京都営住宅条例上、明渡しの義務を課される高額所得者と、明渡しの努力義務を課されているにとどまる収入超過者とは、その法的地位に大きな差異があり、両者を同様に取り扱うのは適切ではないと考えます。
  なお、都は、都営住宅に居住する収入超過者に対し、収入に応じた割増しの住宅使用料を徴収しています。また、毎年、「収入超過についてのお知らせ」を送付し、明渡しに努めるよう促しています。

質問事項
 五 防災訓練の意気込みについて
  1 防災訓練時、職員は災害対策用ワッペンを付けていなかった。次回の訓練からワッペンを着用すべきであるが見解を伺う。また、ネームプレートの着用について、要綱に着用の指示はないが、災害は非常時であり、平常時と同じ扱いをするべきではないが、見解を伺う。

回答
  災害対策用ワッペンの着用については、「東京都災害対策用被服等取扱い及び着用要領」に基づき、災害発生時の被害状況等情報収集、各防災機関との連絡調整、指揮命令の伝達等、災害対策業務に直接携わることとなる第一から第三非常配備態勢の職員に義務付けており、補完的業務を行う第四・第五非常配備態勢の職員には義務付けていません。
  平成16年9月1日の防災訓練には、ワッペンの着用を義務付けていない職員も参加したことから、着用、非着用の職員が混在していました。
  なお、指揮命令系統については、災害対策用被服、ワッペン等の着用により明確にしています。

質問事項
五の2 ネームプレートの着用は作業上危険という指摘もある。災害用被服に名前を縫い込むべきであるが、見解を伺う。同時に、災害用被服等の規定の整備について検討すべきであるが、見解を伺う。

回答
  災害発生時の災害対策業務に直接携わることとなる職員の業務内容は、「東京都災害対策本部条例施行規則」で定めており、指揮命令系統についても、災害対策用被服、ワッペン等の着用により明確にしています。

質問事項
 六 議会棟の警備について
   議会棟地下食堂街の警備について、警備員を配置し、ゴミ置き場と駐車場間のシャッターを下ろすなどして警備を改善すべきだが、見解を伺う。

回答
  庁舎内の警備については、セキュリティに支障をきたすため、具体的に述べることはできませんが、都議会議事堂の地下部分については、駐車場や多くの都民が利用する飲食店等があるため、これまでも、その特性を踏まえた適切な手法により、警備を行ってきました。
  今後とも、状況に臨機に対応しながら、それぞれのゾーンや機能に応じた警備を行い、秩序保持と安全確保に万全を尽くしていきます。

質問事項
 七 都立病院の備品の管理・効率化について
   府中病院検査課休憩室には四台の冷蔵庫が福利厚生の目的で設置されている。冷蔵庫利用状況を見る限り、飲料用自販機を設置する方が目的に合致し経費節減できると考えるが、見解を伺う。また、他の都立病院の備品等の使用状況を調査し、自販機設置も考え、効率化を図るべきであるが、見解を伺う。

回答
  都立病院の備品管理については、従来から適正に行っており、今後とも、適正な管理に努めていきます。

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  河野百合恵

質問事項
 一 高齢者虐待防止について

一 高齢者虐待防止について
 1 わが党は、昨年の第3回定例会に提出した大山とも子議員の文書質問で、東京都が具体的な高齢者虐待対策を講じるよう求めてきました。被害の通報と虐待をうけている高齢者を保護する仕組み、相談・支援の専門機関の確立などを提案しましたが、都の回答は、「現行の制度の中で対応していくべきと考えている」というもので、新たな施策構築への努力はなされないまま1年が経過しました。
   この間に他県では、群馬県や三重県がいち早く事業をスタートさせていたのにつづき、ことしの第2回定例会の代表質問で指摘したように、今年度新たに、青森県、栃木県、大阪府、鳥取県、岡山県が高齢者虐待防止対策の新規事業をスタートさせています。
   東京都は一歩も二歩も出遅れましたが、去る9月29日の都議会本会議で、福祉保健局長が、「今後、虐待に早期対応するためには、住民に身近な地域において、虐待防止のネットワークを構築することが重要。このため、外部委員を含む検討組織を発足させ、区市町村への具体的支援や都民への啓発普及のあり方など、効果的な虐待防止策の検討に着手する」と答弁し、はじめて前向きの姿勢に転換したことは重要です。
   生命の危険と隣り合わせの状態に数多い高齢者が置かれているにもかかわらず、虐待を受けている高齢者自身が訴える力が弱いことなどで、児童虐待やDV被害と比べて、高齢者虐待は顕在化しにくく、それだけに救済が難しいと言われています。
   国連の「高齢者のための国際連合原則」は、「高齢者は身体的、精神的および情緒的に最高水準の状態を維持しまたその状態を回復し、発病を予防しまたは遅らせるように高齢者を援助する健康へのケアを受けなければならない。」「高齢者は、搾取ならびに身体的あるいは精神的虐待を受けることなく、尊厳を保ち、安心して生活できなければならない」と記し、高齢者の人権、尊厳の尊重を明確にしています。
   2002年4月、マドリッドで開催された国連主催の「高齢化に関する世界会議」で採択された行動目標では、高齢者虐待を防止するための法律の制定や、虐待についての意識を向上させる努力方向が示されました。
   高齢者虐待防止にむけて国際的な気運が強まっている現在、高齢者の基本的人権と尊厳擁護のために、都政が講じるべき高齢者虐待防止策について、以下、質問します。
   まず、外部委員を含む検討組織を発足させて効果的な対策の検討に着手するとのことですが、すでに日本高齢者虐待防止学会が設置されているほか、東京には日本高齢者虐待防止センターや老人虐待予防・支援センターなど、先駆的に高齢者虐待防止にとりくんできた民間団体もあります。これらの学会、団体や在宅介護支援センターなど現場から外部委員をまねき、実践的な経験を十分に生かした検討をおこなうことが必要だと考えますが、見解を伺います。
 2 また、来年度検討に着手し、その結果がでてから具体策にふみだすというのでは、高齢者虐待防止対策が実際にスタートするのは再来年度ということになってしまいます。検討をすすめるのと同時に、できることは来年度からただちに具体化することが必要です。そのための予算措置もふくめ、答弁を求めます。
 3 効果的な施策を確立するうえで、正確な実態の把握は欠かせません。
   今年4月、厚生労働省は医療経済研究機構に委託した「家庭内における高齢者虐待に関する調査」の結果を発表しました。虐待を受けたと考えられる65歳以上の高齢者を対象に、暴力的行為などによる身体的虐待、脅しや侮蔑・無視などによる心理的虐待、性的虐待、経済的虐待、ネグレクトと言われる介護・世話の放棄などについての調査で、在宅介護サービス事業所等の関係機関16,802ヶ所(回答6,698)と、区市町村3204自治体(回答2,589)からの回答が集計されています。
   調査の結果では、回答のあった6,698機関のうち、虐待があったと回答したのは2865機関(42.8%)、また、回答した区市町村では、「過去1年間で高齢者虐待を主たる原因として持ち込まれた相談件数は6,062人」となっています。
   虐待を受けている人の平均年齢は81.6歳で約8割が75歳以上の後期高齢者であり、女性が4分の3を占めています。そして、なんらかの痴呆症状を有する人が8割に及んでいます。虐待がもっとも深刻だった時点の高齢者の状況は、約1割が「生命に関わる危険な状態」であったほか、約半数の人が「心身に悪影響がある状態」となっています。
   昨年第3回定例会のわが党の文書質問で、都として実態調査をおこなうよう提案したのにたいし、都の回答は、「国が、都を含む全国規模で調査を行なうこととなっている」というものでした。今回発表された厚生労働省調査における東京の実態について、どう把握し、分析しているのか伺います。
 4 厚生労働省の行なった高齢者虐待の調査は、家庭内におけるものです。高齢者虐待は家庭内で起こるものだけでなく、病院、診療所、老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホームなどの各医療機関、介護施設などでも発生しています。とりわけ、大都市は人間関係が希薄で、虐待の迅速、正確な実態把握が難しいとされています。国の調査にとどまらず、家庭及び施設における高齢者虐待の実態調査を大都市である東京都だからこそ、独自で行なうことが重要と考えます。家庭と施設を含めた総合的な実態調査の実施を求めます。お答えください。
 5 家庭内での虐待の多くは、介護で疲れきった家族が、心ない言葉で高齢者を傷つけたり、暴力行為に及んでしまうものです。在宅介護の努力に限界を感じ、特別養護老人ホームに入所申し込みをしても、数年も待たされてしまうという介護基盤の著しい不足が虐待発生の一因になっているとの指摘もあります。
   家庭だけでなく、施設においても心痛む虐待が数々起こっています。病院や介護施設では、看護、介護にあたる職員の数が少ない、経験が未熟であることなどで、適切なケアが行えず、虐待行為を生み出してしまうと言われています。2000年からスタートした介護保険は、「介護の社会化」をうたっていますが、残念ながら、介護基盤整備もサービスの質や量も、深刻な実態に追いつかないまま今日を迎えています。
   家庭、施設、それぞれの場での高齢者虐待をなくしていくためには、家族への支援の充実、介護施設の増設、看護・介護職員の増員と知識の向上などに手厚い対策が望まれます。都が今後具体化する高齢者虐待防止対策は、これまでとりくんできた施設における身体拘束ゼロ運動を発展させることもふくめ、家庭と施設の両方を対象にして推進することが重要だと考えますが、認識を伺います。
 6 高齢者虐待について、「どのようなことが虐待にあたるのか」の定義を明らかにすることも重要です。
   私の知人のAさんは、介護をしているお母さんが紙オムツをむしって部屋中ゴミだらけにしてしまうので、やむなくファスナーに鍵がついたつなぎ服を着用させました。後に、鍵付きのつなぎ服は「身体拘束」であり、虐待に通じると知ったそうです。介護の努力をしたつもりでも、実際にはお母さんを苦しめていたことがわかり、Aさん自身がつらい思いをした、と語っていました。
   「高齢者虐待とはなにか」が認識できるようなガイドラインを、厚生労働省が調査した、身体的、心理的、性的、経済的、介護放棄など5つの観点にそって、策定することは虐待防止にむけての意識向上に必要です。東京都が高齢者虐待についてのガイドラインを策定するよう求めるものですが、お考えをお示しください。
 7 つぎに、虐待をうけた高齢者を保護するしくみと相談・通報体制の整備です。
   今年7月、世田谷区は、増加する高齢者虐待に対して「人権問題として社会的な対応が必要」と対策にのりだすことを明らかにしました。虐待が深刻で、家族と本人を分離する必要があると判断した場合には、施設への短期入所やシェルターでの緊急保護を実施する考えが示されています。
   現在、高齢者虐待に備えた緊急一時保護所(シェルター)の取り組みは極めて遅れています。東京都が緊急一時保護所を設置すること、合わせて世田谷区のように、実施に足を踏み出した自治体を支援することを求めます。お答えください。
 8 高齢者虐待の取り組みが進んでいるアメリカでは、年間40万件の報告があると報道されています。連邦レベルの法律だけでなく、ほとんどの州が独自の法律を策定しています。虐待を発見したときの通報義務は40以上の州で定められており、なかでもテキサス州においては、24時間365日、高齢者虐待の通報を受ける態勢がとられています。
   日本では、児童虐待については法の制定によって、通報のしくみがつくられました。しかし、高齢者虐待は未だ法律が制定されておらず、早期に虐待の事実を把握するのが困難であるのが現実です。
   江戸川区では、関係者からの要望があったことから、介護保険担当課が家庭内の虐待についての相談、通報の窓口を設け、介護施設や病院と連携した適切な対応ができるしくみがつくられました。
   現在、東京都では高齢者虐待について、相談したり、連絡をする専門性をもった窓口が設けられておらず、迅速な対応が行われにくい状態が続いています。虐待を早期に発見し、高齢者の保護、救済がすみやかに行なえるよう、東京都として「高齢者虐待相談通報センター」を設置するよう要望します。お考えはいかがでしょうか。
 9 最後に、高齢者虐待防止法の制定です。
 高齢者虐待防止の法律制定を求める世論が強まっています。法整備について、東京都はこれまで、「現行の老人福祉法に基づく措置や成年後見制度を活用して、虐待を受けた高齢者の保護・支援に対応していく」と言ってきました。しかし、厚生労働省の「家庭内における高齢者虐待に関する調査」によると、区市町村に寄せられた6062人の相談のうち、老人福祉法によって「高齢者虐待を理由とした措置」は97件(1.6%)、在宅介護支援センターなどの機関調査で成年後見制度を利用(相談)した人は2.5%です。制度があっても活用されていないのが実態です。
   介護の現場からは措置について、「措置は家族への説得が困難」「措置で施設入所をした場合は、行政側が本人分の費用負担を肩代わりすることになる」などの問題で、使いづらい制度であると率直な声があがっています。
   厚生労働省は、老人福祉法に基づく措置について「虐待の被害者を行政が緊急保護できる制度」とし、昨年9月の全国介護保険担当課長会議で「虐待事例では措置の実施が求められ、適切に措置を行うよう、指導の徹底を図られたい」としています。国は今のところ、老人福祉法による措置で、虐待を受けている高齢者を家族から切り離し保護する方針であり、新たな立法化は必要ないとの判断をしているといわれていますが、現行の法制度のままでは、高齢者虐待防止にむけての十分な対応ができないのは明らかです。
   虐待の定義、相談・通報のしくみ、関係機関のネットワークづくり、適切なケアと介護基盤整備などを総合的に推進していくうえで、高齢者虐待防止の法制化は避けて通れない問題です。東京都が強く国に要望するべき時に到っていると考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

平成16年第三回都議会定例会
河野百合恵議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 高齢者虐待防止について
 1 今後発足させる虐待防止策検討組織には、在宅介護支援センターなど現場から外部委員を招き、実践的な経験を生かした検討を行うべきだが、見解を伺う。

回答
  現在、発足に向けて準備を進めている検討組織においては、本会議でお答えしたとおり、外部委員を入れ、具体的な検討を進めていきます。

質問事項
一の2 来年度の検討結果を待っていては、具体策が始まるのは再来年度になってしまう。検討と同時に、できることは来年度から具体化することが必要であり、予算措置も含め、答弁を求める。

回答
  高齢者虐待についての具体策は、新たに発足する検討組織において、実施時期も含めて、今後検討していきます。

質問事項
一の3 今年4月に厚生労働省が発表した「家庭内における高齢者虐待に関する調査」における東京の実態について、どう把握し、分析しているのか伺う。

回答
  厚生労働省が発表した「家庭内における高齢者虐待に関する調査」は、都道府県別の詳細は不明だが、都を含む全国規模で行ったものであり、調査結果を参考としていきます。

質問事項
一の4 厚生労働省の調査は家庭内の虐待である。高齢者虐待は各医療機関、介護施設などでも発生している。家庭と施設における総合的な実態調査を都が独自で行うことを求めるが、所見を伺う。

回答
  都はこれまでも、指導検査などを通じ、施設等における状況把握に努めてきました。また、家庭内の高齢者虐待については、都内の事業者等を含めた実態調査を厚生労働省が行ったところであり、都として独自に総合的な実態調査を行うことは考えていません。

質問事項
一の5 都が今後具体化する高齢者虐待防止策は、家庭と施設の両方を対象にして推進することが重要であるが、認識を伺う。

回答
  都はこれまでも「身体拘束ゼロ運動」の中で、身体拘束廃止推進員研修や相談窓口の設置などを行い、施設における介護の質の確保及び向上に取り組んできています。今後は、新たに発足する検討組織において、区市町村や関係者等とも協力しながら、高齢者虐待に関する具体的な方策について検討を進めていきます。

質問事項
一の6 「高齢者虐待とはなにか」が認識できるガイドラインを、身体的、心理的など五つの観点に沿って策定することは、意識向上に必要である。都がガイドラインを策定するよう求めるが、所見を伺う。

回答
  高齢者虐待の防止を進めていくには、都民の意識向上が必要であり、本会議でお答えしたとおり、新たに発足する検討組織において、都民への効果的な啓発の方法等について、検討することとしています。

質問事項
一の7 高齢者虐待に備えた緊急一時保護所の取組は遅れている。都による緊急一時保護所の設置、実施する自治体への支援を求める。所見を伺う。

回答
  虐待を受けた高齢者の保護については、身近な自治体である区市町村が、老人福祉法に基づく措置などを活用して対応することとなっています。
 なお、区市町村における緊急一時保護などの先進的取組については、都は包括補助制度により支援しています。

質問事項
一の8 都では高齢者虐待についての専門性を持った窓口がない。虐待を早期に発見し、高齢者の保護、救済が速やかに行えるよう、都による「高齢者虐待相談通報センター」の設置を要望する。所見を伺う。

回答
  高齢者虐待に関する基本的な対応は、住民に身近な自治体である区市町村が担うものであり、都はこれまでも、在宅介護支援センターを中心とした地域のネットワークづくりなどへの支援を行っています。
  お話しの「高齢者虐待相談通報センター」を、都として新たに設置する考えはありません。

質問事項
一の9 現行の法制度のままでは、高齢者虐待防止に向けての十分な対応ができないのは明らかである。高齢者虐待防止の法制化について、都が強く国に要望すべきだが、所見を伺う。

回答
  都は、平成16年4月の「介護保険制度の見直しに向けた東京都からの提案」の中で、高齢者に対する虐待の通報窓口の整備や行政による関与の制度化などを、すでに国に対し提案しています。

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  かち佳代子

質問事項
 一 生活保護制度の改善・充実について

一 生活保護制度の改善・充実について
 1 憲法第25条の理念に基づき、国が、生活に困窮しているすべての国民に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としている生活保護制度は、わが国の社会保障制度の根幹をなすものであり、国民の「最後のセーフティネット」として重要な役割をはたしています。
   東京都においても、近年、生活保護をうける人はふえつづけており、1990年度の67,564世帯、97,644人、保護率8.2%にたいし、2004年7月時点で、136,961世帯、182,137人、保護率14.6%におよびます。この14年問に、被保護世帯は2倍、人数で1.87倍、保護率も1.78倍に、急増しています。このように都民生活の困窮が深刻化しているなかで、生活保護制度の役割は、いままで以上に重要なものとなっています。
   ところが国は、財政削減のため今年4月から生活扶助の老齢加算を大幅に減額し、3年間で段階的に廃止する計画です。これにより、高齢者の生活保護受給者の生活は、深刻な影響をうけています。さらに、今後、母子加算についても存廃を含めた見直しのほか、生活保護費国庫負担割合の引き下げを検討しています。このような生活保護制度の切り下げは、絶対に認めることはできません。
   国庫負担割合の引き下げは絶対にしないよう、ひきつづき都として国につよく要請するとともに、老齢加算の削減・廃止はやめ、元に戻すこと、母子加算の廃止や切り下げはしないことを、国に要請すべきと考えますが、お答えください。
 2 東京都は今年7月、国にたいし「生活保護制度改善に向けた提言」をおこない、福祉事務所に就労支援専門員を配置するなど「自立支援の仕組みの構築」、教育扶助、生業扶助をはじめとした「各種扶助制度の見直し」、困難事例に対応する専門的人材を配置するなど「福祉事務所の機能強化」等を提案しました。いま問われているのは、都がこのような必要性を認めるのであれば、国に要請するにとどまらず、都として必要な充実・改善にただちにふみだすことです。
   とりわけ急がれる課題のひとつは、教育扶助の充実です。
   高校進学のために積み立てた学資保険の満期金を福祉事務所が収入とみなし、生活保護費を減額したのは違法として、減額処分の取り消しなどを求めた学資保険裁判で、最高裁はことし3月6日、原告全面勝訴の判決をくだしました。「高校進学のための費用を蓄えることは、生活保護法の趣旨に反しない」とのはじめての判断を示し、そのうえで減額を違法とした2審判決を支持し、福祉事務所側の上告を棄却しました。この判決は事実上、高校教育を生活保護基準の中身として認めたものといえます。
   都は「提言」で国にたいし、被保護世帯の子どもたちが高等教育をうけやすくする環境を整備することによって、いわゆる「貧困の再生産」を未然に防ぎ、世帯の自立を支援する観点から、教育扶助の適用範囲を高等学校等まで拡大し、入学料、授業料、教材費、交通費などを支給対象とすることを提案しています。その必要性を認めるなら、国に先駆けて、こうした高等学校等の教育費について都独自の法外援護を創設すべきではありませんか。見解を伺います。
   あわせて、都がこれまでおこなってきた夏・冬の見舞金支給や・学童生徒の健全育成及び自立援助をはかるのための法外援護事業がはたしてきた重要な役割をどう認識しているのか、今後とも堅持する必要があると考えますが、認識を伺います。

 4 住宅扶助については、都独自の加算が重要な役割をはたしていますが、それでも家賃の高い東京においては、老朽アパートの更新等がすすむにつれ、上限額の範囲内で入居できる住宅の確保そのものがむずかしくなっています。
   マンション、アパートをはじめ民間住宅の借り上げや、都独自の低家賃住宅建設支援事業の創設などにより、生活保護をうけている人や所得の低い人が、健康で文化的な生活をおくることができる低家賃住宅の確保、および整備をすすめることが必要です。見解を求めます。
 5 また、老齢基礎年金しか収入がない、ひとり暮らしなどの高齢者をはじめ、家賃・住宅費の支援さえあれば生活保護をうけなくてもなんとかやっていけるばあいが少なくありません。資力所得調査を大幅に緩和した都独自の「住宅手当」の創設にふきみることを提案するものです。お答えください。
 6 福祉事務所の相談援助体制、および就労支援等の機能強化も重要な課題です。
   都は「提言」で国にたいし、福祉事務所の業務が増大するとともに、多様化・複雑化していることを指摘し、専門職員の配置とその活用、研修体制の整備など人材の育成、さらに就労支援専門員の配置など、福祉事務所の機能強化を提案しました。これらはいずれも、国の対応を待つのでなく、都として率先して具体化をはかることが必要です。
   今定例会本会議で、福祉保健局長から、今後、都として、「福祉事務所が効果的な自立支援施策を講じていけるよう、既存の仕組みの再構築を含め、積極的に対応してまいります」との答弁がありましたが、具体的に、どのような対応をおこなうのですか。福祉事務所のケースワーカーを増員し、なかでも専門技術をもった専任職員である杜会福祉主事の有資格者をふやすこと、ケースワーカーの専門性を高めるための研修体制を整備するなど、福祉事務所の機能強化に都としてふみだすことを求めるものです。お答えください。
 7 就労支援専門員の配置、あるいは福祉・住宅・就労支援・メンタルヘルスなど「専門職によるチームアセスメント」や「個別自立支援計画」の導入など、先駆的なとりくみをすすめる福祉事務所を支援する、福祉事務所の「自立支援機能強化モデル事業」(仮称)に都としてとりくみ、効果を検証してはいかがでしょうか。見解を伺います。
 8 自立支援・就労支援をすすめるうえで、技能習得費や就職支度費などの生業扶助の役割は重要です。ところが現状では、有効に活用されていません。2004年7月の生業扶助の利用者は、わずか143人で、316万6千円の扶助費(1人あたり平均月額2万2千円)が支出されたにすぎません。
   都は「提言」で国にたいし、生業扶助の改善を提案していますが、都独自に生業扶助の拡充や運用の改善をおこない、生業扶助の利用の抜本的拡大を推進する必要があるのではないですか。答弁を求めます。
 9 生活保護制度の改善・充実をすすめるためには、生活保護の適用にはいたらない人もふくめた低所得者の生活実態を把握することが不可欠です。本来、生活保護を必要としている人、あるいは現行の生活保護制度の対象とならないが、なんらかの生活支援が必要な人はどれぐらいいるのか、どういう困窮の状態にあるのかという「実態調査」と、そのなかで実際に生活保護をうけている比率を確認する「捕捉率調査」を、都としておこなう必要があると考えますが、見解を伺います。
 10 生活保護の適用にはいたらない低所得者にたいし、自立した生活ができるよう区市町村等が「自立支援計画」をつくり、福祉・住宅・就労支援をはじめとした支援をおこなうなど、生活保護の適用にはいたらない低所得者にたいする支援策の拡充をはかることを提案するものです。お答えください。

平成16年第三回都議会定例会
かち佳代子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 生活保護制度の改善・充実について
  1 生活保護費国庫負担割合を引き下げないよう、国に要請するとともに、老齢加算の削減・廃止はやめ、元に戻すこと、母子加算の廃止や切り下げはしないことを国に要請すべきだが、答弁を求める。

回答
  国は、平成15年11月、三位一体改革への対応策として、生活保護費国庫負担金の負担割合の削減方針を明らかにしました。
  このため、都は、直ちに削減に反対する旨の緊急要求を行うとともに、平成16年6月及び同年10月にも同様の趣旨の提案要求を行うなど、これまでに適切に対応しています。
  また、老齢加算や母子加算については、国がナショナル・ミニマムとして、その責任に基づき、国民の消費生活水準等との均衡を失しないよう留意しながら、その見直しについて判断し、決定すべきものです。

質問事項
一の2 都は国に対し、教育扶助の適用範囲を高校等まで拡大することなどを提案している。国に先駆けて、高校等の教育費について都独自の法外援護を創設すべきだが、見解を伺う。

回答
  生活保護は、本来、国が自らの責任の下に実施していくべきであり、そのために必要となる扶助費についても、国が措置すべきものです。
  こうした基本認識に基づき、高等学校等への進学が一般的となっている現在の状況を踏まえ、教育扶助の対象拡大を国へ提案したものです。

質問事項
一の3 都が行ってきた見舞金支給や、学童生徒の健全育成及び自立援助を図るための法外援護事業が果たしてきた役割をどう認識しているか、今後とも堅持する必要があるが、伺う。

回答
  被保護世帯に対する法外援護事業は、これまでも社会経済状況の変化に的確に対応しながら実施してきており、その事業目的に沿って一定の役割を果たしてきたものと認識しています。
  今後とも、不断の見直しを行い、被保護世帯の自立等がより一層促進されるよう努めていきます。

質問事項
一の4 住宅扶助に関し、家賃の高い東京では、上限額の範囲内で入居できる住宅の確保が難しくなっている。民間住宅の借り上げなどにより低家賃住宅の確保、整備が必要である。見解を求める。

回答
  都は、これまでも真に住宅に困窮する者に対し、都営住宅を適切に供給するよう努めてきました。
  今後とも、都営住宅を都民共有のセーフティネットとして一層有効に機能させ、都営住宅を適切に供給していきます。

質問事項
一の5 家賃・住宅費の支援さえあれば生活保護を受けなくてもよい場合が少なくない。資力所得調査を大幅に緩和した都独自の「住宅手当」の創設に踏み切ることを提案する。答弁を求める。

回答
  都としては、都営住宅が真に住宅に困窮する人のためのセーフティネットとして的確に機能することが大切であると考えています。したがって、ご提案の住宅手当の創設は考えていません。

質問事項
一の6 今定例会で福祉保健局長から「福祉事務所が効果的な自立支援策を講じていけるよう、積極的に対応する」旨の答弁があった。ケースワーカーの増員など福祉事務所の機能強化を求めるが、所見を伺う。

回答
  生活保護制度は、本来、国が自らの責任の下、実施していくべきものです。
  したがって、福祉事務所の自立支援機能の強化に向けた具体的な支援方策については、国の責任で実施すべきものです。
  都としては、こうした制度の基本的な性格を踏まえ、引き続き国に対し、都が提案した自立支援方策の具体的な実現を働きかけるとともに、福祉事務所が、就労支援専門員の配置など国庫補助事業の活用等を図りながら、効果的な自立支援施策を講じていけるよう、今後、助言・指導していきます。

質問事項
一の7 「個別自立支援計画」の導入など、先駆的な取組を進める福祉事務所を支援する「自立支援機能強化モデル事業」(仮称)に都として取り組み、効果を検証してはどうか。見解を伺う。

回答
  ご指摘のモデル事業も含め、福祉事務所の自立支援機能の強化に向けた具体的な施策については、生活保護が国の責任で行われるべきであることを踏まえ、国において実施すべきものです。
  なお、国においては、都の提案を受け止め、「自立支援プログラム」の策定など、福祉事務所の取組を支援する国庫補助事業を、平成17年度からモデル的に実施していく方針であると聞いています。

質問事項
一の8 自立支援・就労支援を進める上で、生業扶助の役割は重要であるが、現状では有効に活用されていない。都は国に対し改善を提案しているが、都独自に生業扶助の拡充や運用の改善を行うべきである。答弁を求める。

回答
  現在、国においては、都の提案を受け、生業扶助を含め、被保護世帯に対する就労支援のあり方を生活保護制度の検討課題として取り上げています。
  都としては、今後、都の改善提言の実現に向け、引き続き国に対し、働きかけていきます。

質問事項
一の9 生活保護制度の改善・充実のためには、生活保護の適用には至らない人も含めた低所得者の生活実態の把握が不可欠である。「実態調査」「補捉率調査」を都として行うべきであるが、見解を伺う。

回答
  都は、毎年、全福祉事務所を対象に、保護の適用が漏れなく的確に行われているか指導検査を実施し、実態を詳細に調べるとともに、是正が必要な場合には助言・指導を行っています。特に近年では、「保護の申請時における適切な対応」を重点事項として検査を実施しています。
  その結果、保護が必要な方には、制度が適切に適用されているものと認識しています。

質問事項
一の10 生活保護の適用には至らない低所得者に対し、区市町村等が福祉・住宅・就労支援を行うなど、支援策の拡充を図ることを提案する。答弁を求める。

回答
  低所得者に対する支援については、各区市町村において、一時的に生活が困窮した際に利用することができる応急小口資金の貸付制度や公営住宅の家賃の減免制度など、多様な施策を講じています。
  都としては、今後とも区市町村が自らの判断に基づき、低所得者に対する支援策を適切に講じていくものと考えています。

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  小松恭子

質問事項
 一 呼吸機能障害者の施策拡充について
 二 シカ被害対策について
 三 農林水産試験場のあり方について

一 呼吸機能障害者の施策拡充について
  内部障害者といわれる障害者のなかで、呼吸機能障害者は全都で9000人をこえています。しかも高齢化の進行とともにCOPD(慢性閉塞性肺疾患)等の患者はふえる傾向にあり、呼吸機能障害者の施策拡充は、これからの都政の重要課題となっています。
  在宅酸素療法の普及にともない、呼吸器疾患の患者、呼吸機能障害者は地域の中で生活することができるようになり、在宅療養のもっとも先進的分野ともいわれていますが、その一方で、医療・福祉が連携した地域生活支援体制の構築は、いまだきわめて遅れた状態にあります。この深刻な遅れを早急に打開することを求めて、何点か伺います。
 1 第一に、ショートステイ、およびデイサービスの体制整備です。
   地域で生活する呼吸機能障害者にとって、いちばん心配なのは体調をくずしたときです。とくに風邪ひきはこわい。呼吸機能障害者の風邪は、すぐ肺炎を併発したり、ときには生命にもかかわることになります。ところが、風邪をひいたといって病院に行っても、なかなか入院はできません。そんなときショートステイがあったら--。呼吸機能障害者のだれもが切実に望んでいます。また、入退院をくり返す生活のなかで、退院後、すぐにわが家に帰宅するのでなく、体力が回復し、日常生活に戻れるまでショートステイを何日か利用することができたら、入退院のくり返しもすくなくなるのでは--との声もあがっています。どの病院も入院日数短縮がつよまっているため、十分に体力が回復しないまま退院となり、無理な生活を強いられ、また入院を余儀なくされる悪循環となっているのです。
  ア そこで伺います。呼吸機能障害者のための都立入所授産施設である清瀬喜望園で、ショートステイの受け入れができないものでしょうか。清瀬喜望園は、重度の呼吸機能障害者が24時間、安心してくらせるよう、廊下も浴室もトイレにも、酸素設備を完備しており、診療室が設置され呼吸器専門医師、看護師が専任配置されています。都立施設であるだけに地域支援に積極的にふみだし、ショートステイの実施を求めるものです。
  イ 同時に、清瀬喜望園でのデイサービスの実施も切実な要望です。清瀬喜望園では、呼吸器リハビリや作業療法、七宝焼きや袋物づくりなどの日中活動、入浴、食事サービスなどが可能ですが、地域でくらす呼吸機能障害者が清瀬喜望園に通うには送迎車の確保も不可欠です。送迎車の体制も確保し、清瀬喜望園の機能をぜひ地域支援のデイサービスのために活用していただきたいと思います。お答えください。
  ウ 呼吸機能障害者のショートステイのためには、老人保健施設の活用も重要です。
    東村山市の新山手病院内にある老人保健施設「保生の森」は結核予防会の運営ですが、100床のベッドのうち48床が酸素対応となっています。しかし、そのうち41床は酸素を必要としない利用者で満杯状態、酸素が必要な呼吸機能障害者は現在7床しか利用できていないのが実態で、利用の希望があっても残念ながら対応できないとのことでした。
    このように、酸素設備がある老人保健施設で、呼吸機能障害者のショートステイが対応できるように、各施設せめて1~2床でもベッドを確保するなどの都の支援をおこなうことを提案するものです。見解を伺います。
  エ 高齢の呼吸機能障害者は、酸素対応ができる施設をさがすために、たいへんな苦労をしています。「保生の森」の利用者にも、酸素対応を求めたために他の老人保健施設で断わられ、ようやくたどりついたという人もいます。
    都内で酸素対応ができて呼吸機能障害者が利用可能な老人保健施設の状況を都として把握し、都民にわかりやすい情報提供をしていただきたいと思いますが、お答えください。
 2 第二に、地域生活をささえるため、どうしても必要な経済的支援です。
 呼吸機能障害者の多くは高齢者で、なかでも多くをしめているのが結核回復者です。これらの結核回復者は、若い頃に発症して病床にあり、正規勤務につけなかったり、その期間が短いため、60歳をすぎても厚生年金をうけている人は少ないという状況にあります。収入は、老齢基礎年金プラス障害加算でも1カ月10万円足らず、あるいは10万円にはとてもとどかないという人も多くいます。そのうえ病院通いはかかせません。入退院をくり返すことも少なくない。医療費そのものは都の障害者医療費助成で無料の人でも、交通費や入院食事代など出費はかさみます。
   2000年の都の障害者医療費助成制度改悪で、住民税課税の人は医療費が有料化され、COPDの疾患等により65歳をすぎて内部障害の認定をうけた人は、医療費助成そのものの対象外とされました。それにつづく2002年の国の医療改悪で在宅酸素療法患者の医療費がはねあがり、深刻な負担増となっています。
   また介護保険がはじまってからの負担は大きく、かつて無料だったベッドのレンタル料や訪問看護料などがすべて利用料のかたちで有料になっています。清瀬市在住の71歳のひとり暮らしの呼吸機能障害の女性の例ですが、1か月の収入は遺族年金、障害加算をあわせて10万円弱。そのなかから、ヘルパー代、訪問看護料、ベッドのレンタル料、介護保険料だけで1万6720円を月々支払っています。たいへん重い負担であることは明白です。
   それにくわえて呼吸機能障害者のばあい、どんなに苦しくても空気清浄機をともなうヒーターやエアコンは欠かせません。その分、食費を切りつめる。そのことが体力を弱めるというように、悪循環の生活がつづきます。これらの人に、行政は光をあてるべきではないでしょうか。
  ア 呼吸機能障害者にとってきってもきれない、こうした医療、看護、介護をはじめとした重い経済的負担にたいする何らかの支援策を都として講じていただきたい。答弁を求めます。
    せめて在宅酸素濃縮器の電気代助成は、ただちに実施してほしい--それが呼吸機能障害者の切実な要求です。この願いにこたえて、東村山市は、地域でくらす呼吸機能障害者にたいし、在宅酸素濃縮器の電気代助成にふみきりました。月2000円の助成ですが、1年目は所得税非課税者で、24時間とおして濃縮器を使用する身体障害者手帳1級のみとしたため、思ったほど申請者がいませんでした。そこで、市は詳細な実態調査をおこない、翌年からおおきく枠をひろげ、酸素濃縮器使用者全員を対象にしたことで、濃縮器使用者のほとんどの人が申請し、喜ばれています。
  イ 住みなれた地域でくらしつづけ、生命をつなぐためどうしても必要な在宅酸素濃縮器ですが、電気代が毎月5000円前後かかることが負担になっています。都は、在宅酸素濃縮器の電気代は国の医療保険制度で対応すべきだといいますが、それが実現する見通しがあるのですか。それどころか、2002年の国の医療改悪で、在宅酸素療法患者の医療費負担がはねあがり深刻な問題となっているではありませんか。都は、障害者の地域生活支援を大方針としているのですから、そうであるなら、呼吸機能障害者が地域でくらしつづけるために必要な在宅酸素濃縮器の電気代助成にふみきるべきです。大きな予算が必要なものではなく、その一方で、当事者の方々にとってはほんとうに切実な要求です。ぜひ、お答えください。
 3 第三に、呼吸リハビリテーションの普及促進です。
   呼吸機能障害者にとって、口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの理学療法、持久力・筋力トレーニングをはじめとした運動療法、栄養指導などをくみあわせた包括的な呼吸リハビリテーションが、QOLの改善、入院回数・入院期間の減少、社会参加の促進などに、大きな効果があることがあきらかになっています。
   医療機関でおこなう呼吸リハビリテーションは、チーム医療が原則であり、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士、ソーシャルワーカー、薬剤師、保健師など専門のスタッフが連携し、さらに家族やボランティアが参加しておこないますが、診療報酬が低いこともあり、専門的な人材や対応できる医療機関は不足しており、スタッフの教育・研修体制も整備されていません。また、医療機関だけでなく、身近な地域で呼吸リハビリテーションをうけることができるよう、地域における人材育成、医療・福祉が連携した体制整備が急がれます。
  ア まず、都として包括的呼吸リハビリテーションの効果をどう認識しているのか伺います。
  イ 呼吸リハビリテーションにとりくむ医療機関をふやすとともに、専門スタッフの教育・研修体制整備など支援を強化する必要があると考えますが、答弁を求めます。
  ウ 東京都心身障害者福祉センターが地域支援事業としてとりくんできた呼吸リハビリ教室は、地域における呼吸リハビリテーションを普及するうえで先駆的役割をはたしてきました。この事業をさらに拡充するとともに、身近な地域における呼吸リハビリテーションの推進体制および呼吸機能障害者にたいする相談支援体制の確立をはかる必要があると考えますが、見解を伺います。
二 シカ被害対策について
  まずはじめに、早急な対策が求められている奥多摩のシカ被害対策についてです。
  近年、奥多摩地域の山林において、サル・シカなどによる森林や農作物の被害が増大しています。とりわけ、シカ被害は、サルの被害額を大幅にうわまわる毎年、5000万円を超える被害にみまわれています。
  被害の影響は、農林業に深刻な打撃をあたえるだけでなく、森の植生をくずし、河川の汚濁や豪雨時の氾濫などの危険も指摘されているところです。
  こうしたなか、わが党は、去る8月6日に、野生シカが木の皮や根などを食い荒らして、木々が枯れ、山はだがあらわになっている奥多摩の川苔山などを視察し、その被害のおおきさに、認識をあらたにしたところです。
  その際、「氷川保全会」の関係者は、「町や猟友会などで毎年約400頭を駆除しているが、繁殖に追いついていない」と実情をのべるとともに、東京都が、「特定鳥獣保護管理計画をつくり、生息数や駆除数を管理していくこと」の必要を訴えていました。
  また、奥多摩町議会は「大規模な森林崩壊」「河川汚濁」「飲料水源」など多方面への影響を危惧し、シカの食害などによる被害にかかわる早期の対策を要望をしています。
  一方、東京都は、関係者による「シカ対策連絡調整会議」を設置し、シカの捕獲、治山・治水工事、植生の保護と回復、隣接県との連携などをすすめるとしていますが、十分ではありません。
  問題の第1は、広域的連携が不可欠だと言うことです。この点では、かつて山梨県が捕獲にふみだしたときに、シカの狩猟禁止地域となっている奥多摩町におおくのシカが逃げこんできたといわれています。
 1 そこで、まず、山梨県、埼玉県、神奈川県などと連携し、広域的なシカの保護管理計画を策定し、統一的方針と計画のもとに対策にあたることが、必要と考えますが、見解を伺います。
 2 保護管理計画の策定にあたっては、生態系の保全をはかる立場から、シカの頭数監理とともに、保護のための対策を講じること。
 3 地元、奥多摩町や農林業関係者にとって、おおきな負担となっているシカの駆除費や防護柵の購入費などについて、補助の拡充を行うこと。
 4 また、シカやサルの被害を防ぐためには、荒れた奥多摩の森林の回復と保全をはかることも欠かせないと考えますが、どうか。それぞれ答弁を求めます。
三 農林水産試験場のあり方について
 1 次いで、農林水産関係の試験研究機関の廃止、機能縮小の問題についてです。
   石原都政は、この5年の間、「都庁改革アクションプラン」などにもとづいて、多摩地域の経済事務所の廃止や畜産試験場の統廃合、水産試験場奥多摩分場の農林水産振興財団への移管などを、関係者、都民の反対をおしきってすすめてきました。
   そして今回、あらたに農業試験場江戸川分場の廃止、畜産試験場、林業試験場の財団移管が検討されているとのことです。
   しかし、本来、これらの試験研究機関は、広域行政たる都道府県の仕事とされ、その業務は、試験研究という性格上からも、直営がのぞましいとされているものです。実際に、すでに、「食の安全・安心や都市農業の振興などの課題に対してより機動的に対応」するためとして、(財)東京都農林水産業振興財団に移管され、「奥多摩さかな養殖センター」とされた水産試験場奥多摩分場の場合、「機動的な対応」どころか、試験、研究機能が縮小されることによって、「飼育の指導がなくなった」「気軽に相談できる機関がなくなった」「魚病の対応に時間のロスがある」などの問題が生まれていることが指摘されています。
   また、漁業協同組合などの関係者からは、「魚病対応の遅れ」、「巡回指導が減少」「川づくりの調査に影響」など、共通して不満の声が出されていることも、重大です。
   このように農林水産業振興財団への、移管はあきらかに試験・研究機能の低下をまねき、関係者におおきな影響をあたえるものとなっているのです。
   ご承知のように、東京の農林水産業関係の総生産出荷額は年間344億円を超え、その振興は、東京に活力をもたらすだけでなく、奥多摩の森林や河川、さらには生態系の保全などにおおきな役割をはたすものです。
   そこで、「奥多摩さかな養殖センター」は試験場分場として直営にもどし、地元関係者の声に応えられるような体制にすべきです。また、「魚病対策の担当者を近くに配置してほしい」「巡回指導を今までの様にしてほしい」などの漁業関係の声については、真摯に受け止め、今すぐにでも改善すべきと思いますが、あわせて答弁を求めます。
 2 石原知事は、これまでも「東京の農業は、畜産も含めて、都民に非常に新鮮で安全な農産物を間近なところで生産して供給する場として、非常に重要な存在だ」、とのべ、「東京農業を魅力と活力ある産業として再生するため、都民の皆さんと農業者、行政がしっかりと手を結び、都民生活に一層貢献するよう様々な可能性を積極的に開拓していきたい」などと表明してきました。
   また、東京都農林漁業振興対策審議会の答申では、「農業は東京になくてはならない重要な産業」「林業及び木材産業が果たす役割は大きい」「豊かで安心できる都民生活を支える水産業として発展させていくことが求められる」などとされています。
   東京都のこれらの試験研究機関の役割と意義について、どのように認識しているのか、知事の見解を伺います。
 3 来年度予算編成にむけて廃止、財団への移管等の機能縮小が検討されている農業試験場江戸川分場、林業試験場、畜産試験場についてです。
   うち、廃止が検討されている江戸川分場は、江戸川、足立、 飾地域を所管していますが、その地域から出荷される農産物は、コマツナなど東京全体の農業生産額の1割以上を生産し、都市農業を代表する地域となっています。
   江戸川分場は、入谷の朝顔市に合わせた開花調整、コマツナの周年栽培をはじめ、エダマメ、ワケネギなどの野菜、シクラメンなどの鉢花、花壇苗の生産基地として都市地域独特の集約的な産地を形成してきました。また、都内での生産緑地の追加指定もすすんでおり、現場にそくした研究成果は、都市農業をすすめる農家の支えとなっています。今後、品質・土壌の改良、栽培技術の改善・普及、環境に配慮した生産技術など、21世紀における東京農業の振興をはかるうえで、江戸川分場のはたす役割はますます、重要になっています。
   今回の廃止の計画に対して、関係農家、住民からは「分場の廃止には反対」の声があげられ、「子どもの教育にも必要な場」などの声が上がっています。
   生産緑地の存在は、ヒートアイランド対策としてもその役割が期待されているところです。
   知事、江戸川分場を直営とし、試験・研究の機能の拡充をはかることこそが、東京都が行うべきことではありませんか。答弁を求めます。
 4 林業試験場の試験・研究の機能の縮小、廃止も道理がありません。
   林業試験場は、現在、木材利用拡大、東京にあった森林経営の確立、森林の育成管理、森林被害対策、鳥獣害対策などで役割を発揮しています。
   また、最近では「多摩産材の品質向上」「木質バイオマスの利用開発」「下刈り、間伐などの省力化」「獣害対策」など、林業振興、環境対策など重要な役割を果たしており、機能の縮小は時代の要請に逆行するものといわざるを得ません。
   このため、東京の木を使った家づくりの運動に取り組んでいる団体の理事長は「林業試験場は、東京の林業をサポートする組織」、「林業試験場の仕事を財団にうつせば、林業家の生産意欲は今以上にうすれ、木材がうまく入ってこなくなるし、森林が放置されて荒廃がすすみ、環境にも悪影響を及ぼします。林業施策は後退させるのではなく、充実すべきです」と話しています。
   また、畜産試験場は、東京X豚、東京シャモ、東京うこっけい、乳牛の飼養技術試験、飼料作物の研究など、マスコミでもたびたび紹介されるような、成果をあげてきた試験場です。また、畜産経営に有効な試験・研究課題を設定してとりくみ、その成果は農家・都民に還元し、都内畜産業の振興と都民の食生活の安定・向上に寄与してきました。今日、BSE、コイヘルペス、鳥インフルエンザなど農畜魚産物の輸入拡大に伴う海外からの感染病の侵入、発生が相次いでおり、試験研究機関の重要性はますます高まっています。
   畜産試験場が、財団に移管されることになれば採算が重視され、これまでの試験・研究の水準が後退せざるを得ないことはあきらかではありませんか。なぜ、林業試験場や畜産試験場を財団に移管しなければならないのですか。直営ではいけない理由は何なのか、明確に説明してください。
 5 昨年、策定された「第2次都庁改革アクションプラン」では、「農業試験場、畜産試験場、林業試験場及び水産試験場について、全庁的な検討をふまえ、事業のあり方を整理したうえで、(財)東京都農林水産振興財団への移管など、17年度までにふさわしい形態に移行します」としており、今回の廃止・統合、財団移管の方向は、これに基づいてすすめられているものです。
   しかし、このアクションプランが、道理も説得力もないことは、都自身がこれまで、これらの各試験・研究機関の役割を高く評価してきたことでもあきらかです。
   例えば、2001年に策定された「農業振興プラン」は、「都は、21世紀における東京農業の振興を図るうえで、その裏付けともなるあらたな技術の開発とその確実な普及を積極的に行わなければなりません。安全や環境に一層配慮した持続性の高い農業生産方式や交流型の農業を展開するための経営手法を確立するためにも、試験研究や普及指導の果たす役割がますます重要となっています。このため、都は、研究課題等の目標設定を明確にしつつ、国や大学などの研究機関等との協力関係を強めるとともに、試験研究部門と普及指導部門の緊密な連携の下に技術開発のスピード化、情報提供の迅速化に努めていきます」としていたのです。
   水産試験場については、昨年の農林漁業振興対策審議会答申が、「広域的な資源管理を効果的に行っていくためには、試験研究機関は、近隣県の研究機関や民間企業、大学などとの共同研究や調査船を活用したより広範囲に及ぶ調査を実施するとともに、資源を増やすための技術開発や水産資源・漁業に影響を及ぼすサメやイルカなどの被害防止対策の研究にも積極的に取組むべきである」としています。同様に、林業試験場については、「(着実な施策の遂行には)単一的ではない多様な施策を有機的かつ効果的に展開していく必要がある。その際の基礎的なデータや技術手法の確立を目指して、林業試験場には、地域に根ざし、行政ニーズに即した研究や技術開発を担うことを期待する」としているのです。
   知事、こうした立場に立ちかえって、これらの農林水産関係試験研究機関については、直営とすること。また、この5年の間に、半減させられている試験研究予算を、復元、拡充することをもとめるものですが、答弁を求めます。

平成16年第三回都議会定例会
小松恭子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 呼吸機能障害者の施策拡充について
1 ショートステイ、デイサービスの体制整備について
 ア 呼吸機能障害者のショートステイの要望は多い。呼吸機能障害者のための都立入所授産施設である清瀬喜望園でのショートステイの実施を求めるが、所見を伺う。

回答
  清瀬喜望園は、一般就労が困難な呼吸器機能障害者について、入所により授産等の活動を行う施設であり、常時の医学的管理は行っていません。
  従って、入院等を必要とする障害者のショートステイ事業の実施は、考えていません。

質問事項
一の1のイ 清瀬喜望園でのデイサービスの実施も切実な要望である。送迎車の体制も確保し、清瀬喜望園の機能を地域支援のデイサービスのために活用すべきである。答弁を求める。

回答
  デイサービス事業は、施設の近隣地域からの利用を前提として行うものであり、都内の身体障害者デイサービス事業のほとんどは、区市町村により行われています。
  清瀬喜望園における呼吸器機能障害者を対象としたデイサービス事業の実施について、特に地元等の自治体からの要望は聞いていません。

質問事項
一の1のウ 酸素設備がある老人保健施設で、呼吸機能障害者のショートステイが対応できるよう、各施設でベッドを確保するなど、都の支援を提案する。見解を伺う。

回答
  介護老人保健施設は、介護保険の要介護者に対して、在宅生活への復帰を目指して、看護、医学的管理下での介護、機能訓練等のサービスを提供することを目的とした施設です。
  介護老人保健施設における、呼吸器機能障害者を対象としたショートステイ事業の実施については、各施設の判断によるべきものと考えています。

質問事項
一の1のエ 都内で酸素対応ができ、呼吸機能障害者が利用可能な老人保健施設の状況を都として把握し、都民に情報提供すべきだが、答弁を求める。

回答
  介護老人保健施設における、呼吸器機能障害者を対象としたサービスの実施については、各施設の判断によるべきものと考えています。
  現にサービスを実施している施設が都内にあることは承知しており、情報提供については、施設が自主的にインターネット等により行っています。

質問事項
一の2 経済的支援について
ア 呼吸機能障害者に不可欠な医療・看護・介護をはじめとした経済的負担に対する何らかの支援策を都として講じるべきである。答弁を求める。

回答
  都は、現在、障害者の経済的負担を軽減する方策として、心身障害者医療費助成制度や心身障害者福祉手当の支給等を実施しています。

質問事項
一の2のイ 都は、障害者の地域生活支援を大方針としているのだから、呼吸機能障害者が地域で暮らし続けるために必要な在宅酸素濃縮器の電気代助成にふみきるべきである。答弁を求める。

回答
  酸素濃縮器は、医療保険によって貸与されており、利用に際して必要となる消耗品も医療保険の対象とされています。
  電気代の負担については、基本的に医療保険制度の中で解決されるべきものと考えています。

質問事項
 一の3 呼吸リハビリテーションの普及促進について
    ア 呼吸機能障害者にとり、包括的な呼吸リハビリテーションは、入院回数、入院期間の減少などに大きな効果がある。都としてその効果をどう認識しているのか、伺う。

回答
  呼吸リハビリテーションは、呼吸器機能障害者に対して、可能な限り機能を回復又は維持させることにより、障害者の自立を目指すものです。
  呼吸器機能障害者の日常生活における行動能力やQOL(生活の質)を向上させる上で、一定の効果があるものと認識しています。

質問事項
一の3のイ 呼吸リハビリテーションに取り組む医療機関を増やすとともに、専門スタッフの教育・研修体制整備など支援を強化すべきだが、答弁を求める。

回答
  呼吸リハビリテーションは、呼吸器疾患に力を入れている日本呼吸器学会の認定医療機関など、専門的医療機関を中心に提供されています。
  現在、同学会が他の学会と合同で、一定の経験のある看護師、理学療法士などを対象に呼吸療法認定士の制度を設けるなど、呼吸リハビリテーションの普及や人材育成の取組が行われています。

質問事項
一の3のウ 都心身障害者福祉センターの呼吸リハビリ教室事業をさらに拡充するとともに、地域における推進体制及び呼吸機能障害者に対する相談支援体制を確立すべきだが、見解を伺う。

回答
  本事業は、呼吸器機能障害者が地域で自立した生活を継続していくことを目的に、都立心身障害者福祉センターにおいて実施している事業です。
  区市町村が自主的に呼吸リハビリ教室を開催できるよう、情報提供や研修などの支援を行い、身近な地域における支援体制が整った段階で、心身障害者福祉センターによる事業は終了することとしています。

質問事項
 二 シカ被害対策について
1 山梨県がシカを捕獲した際、狩猟禁止区域である奥多摩町に多くのシカが逃げてきたと言われている。山梨県、埼玉県、神奈川県などと連携し、広域的な保護管理計画を策定し、統一的に対策にあたるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  シカ被害対策として、都は、今後、シカ保護管理計画を策定するとともに、隣接する山梨県及び埼玉県と連携して捕獲を行うなど、広域的な取組も進めていきます。

質問事項
二の2 保護管理計画の策定にあたっては、生態系の保全を図る立場から、シカの頭数管理とともに保護対策を講じるべきである。答弁を求める。

回答
  都が策定するシカ保護管理計画は、個体数管理、生息環境管理及び被害防除対策等を総合的に講じることにより、地域個体群の長期にわたる安定的な保護を図るものです。

質問事項
二の3 奥多摩町や農林業関係者にとって負担となっているシカの駆除費や防護柵の購入費などについて、補助の拡充を行うべきである。答弁を求める。

回答
 シカ被害の抜本的対策としては、増えすぎたシカを捕獲し、適正密度にコントロールすることが必要です。
  シカの捕獲については、奥多摩町が行っている有害鳥獣捕獲に加え、平成16年度は、都が委託により200頭を目途に特別捕獲を実施します。
  食害防止措置については、農作物被害防止のための電気柵や苗木を守るネットの設置などの補助を引き続き行っていきます。

質問事項
二の4 シカやサルの被害を防ぐためには、荒れた奥多摩の森林の回復と保全を図ることも欠かせないと考えるが、答弁を求める。

回答
  間伐補助などにより計画的な間伐を進めるとともに、健全な人工林や針広混交林の育成により、森林の回復と保全を図っていきます。
  一方、シカ被害地の復旧については、平成16年度に緊急の治山・砂防工事を実施していきます。

質問事項
 三 農林水産試験場のあり方について
  1 水産試験場奥多摩分場の農林水産振興財団への移管は試験・研究機能の低下を招いており、直営に戻すべきである。また、魚病対策や巡回指導などはすぐに改善すべきである。答弁を求める。

回答
  水産試験場奥多摩分場については、種苗生産事業の効率的な運営と本場との一体的調査研究活動を進めるため、試験研究と事業を分離し、事業を財団へ委託しました。
  魚病対策等については、水産試験場で集約的に対応しているほか、種苗生産事業に伴う魚病対策等については、「奥多摩さかな養殖センター」で適切な対応をしています。

質問事項
三の2 都の農林水産関係試験研究機関の役割と意義について、どのように認識しているのか、見解を伺う。

回答
  都の農林水産関係研究機関は、新品種の開発や病害虫等の危機管理、食の安全・安心の確保など、行政と地域の課題に密着し、農林水産業の振興に必要な試験研究を行っています。

質問事項
三の3 農業試験場江戸川分場の廃止計画に対し、関係農家、住民からの反対の声が上がっている。江戸川分場を直営とし、試験・研究機能の拡充を図るべきである。答弁を求める。

回答
  第二次都庁改革アクションプランに基づいて、農業試験場等の今後の事業のあり方について検討を進めており、その中で江戸川分場のあり方についても検討していきます。

質問事項
三の4 林業試験場や畜産試験場は重要な役割を担っているが、財団に移管されれば採算が重視され、試験・研究の水準が後退せざるを得ない。林業試験場や畜産試験場を財団に移管する理由について伺う。

回答
  東京都農林水産振興財団に移管した場合、都民のニーズに迅速に対応した試験研究や事業が可能となることや外部からの人材や資金の確保が容易になるなど、試験研究・事業の活性化を図ることができると考えています。

質問事項
三の5 各試験研究機関の役割を高く評価してきた立場に立ち返り、農林水産関係試験研究機関は直営とし、この五年間に半減した試験研究予算を復元、拡充すべきであるが、答弁を求める。

回答
  東京の財政が厳しい状況にあることはご案内のとおりであり、全ての事業について見直しを進めているところです。
  農林水産関係の試験研究についても、今日的な課題に的確に応える観点から内容を精査し見直しを進めています。
  また、産学公の連携の拡大を図り、他機関との共同研究や外部資金・外部人材の活用などによる効率的かつ効果的な試験研究のあり方についても検討していきます。

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  和田宗春

質問事項
 一 平成十七年高速道路等の自動二輪の二人乗りについて
 二 自転車事故の減少にむけて

一 平成十七年高速道路等の自動二輪の二人乗りについて
  現行の道路交通法によると、自動二輪免許を取得してから、一年未満は一般道路での二人乗りは禁止されている。また高速自動車国道や自動車専用道路では二人乗りが全面的に禁止されてきている。
  そこに平成十六年六月九日に道交法を一部改正する法律が公布された。
  それによると年齢が二十歳以上、自動二輪免許を受けていた期間が三年以上たてば高速道路や自動車専用道路で二人乗りができるとされている。
  この改正法の規定は公布の日から一年以内に施行されるのであるから、来年の六月までには自動二輪車の高速道路での二人乗りが実現することになる。
  このことをうけて警察庁は「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」を取りまとめたとされている。
  そこで警視庁に質問する。
 1 都内における自動二輪車の事故数の近年の傾向をどう把えているのか。
 2 「在り方について」がまとめられた目的は何であったのか。
 3 「在り方について」の骨子は何なのか。
4 今後、警視庁が「在り方について」にもとづいてどのように都民に対応していくのか。
二 自転車事故の減少にむけて
  平成十五年一月から二月にかけて、東京都立墨東病院の宮本伸哉医師が都内の自転車の幼児用座席を使っている幼稚園児の保護者にアンケート調査を行っている。五八一人より回答を得ているが、幼児用座席を購入した経験をもつ保護者が五六○人となっていて、九六.四%となっている。さらに幼児用座席を使用中に子どもがけがをしたと回答したのは二一七人にのぼっている。三七.一%になる。幼稚園児の保護者の三人に一人以上が幼児用座席使用時にけがをさせていることになる。
  このうち走行中が四二.二%、停車中が三二.二%である。原因は「誤って転倒」が四四.二%、「止めていて倒れた」が一四.二%であり幼児用座席の位置は「サドル後方」が三七.六%で「ハンドルとサドルの間」が三一.六%であった。
  けがをした体の部分は頭部が三六.二%、足二七.一%、手・腕が一二.五%であった。
  このような幼児を対象にした調査報告とは別に警視庁交通統計の平成十年版では自転車による事故総数は平成元年に一一,六九六件であったものが、平成十年では一六,六七○件と五千件も増えている。死者も四八人から五五人へと増えている。
  また警視庁によると北区内の最近の自転車事故は六二四件で死者二人、重傷者六人、軽傷者五七七人となっている。さらにその原因は「出会頭」の「安全不確認」となっている。
  このように幼稚園児から一般人まで自転車事故数が日常生活に密着して、増えてきていることを警視庁はさらに重要視していくべきである。たとえば自転車で横断歩道を渡れば、道交法二条一項の四などに違反すること、子ども用座席に前に一人、後ろに一人乗せる三人乗りは道交法五七条に違反し二万円以下の罰金または科料であることなどを明確に指導、指摘するべきである。
  最近、安易、安価で自転車が購入できるようになり街に自転車が溢れている。それだけに歩行者も自転車運転者も事故に巻き込まれる可能性が増えている。
  自転車も乗り方によっては凶器になること、さらに高齢化社会になり自転車と高齢者、身障者の事故も黙過できない状況である。
  そこで警視庁に以下三点にわたり質問する。
1 地域社会、学校、企業などの各団体にむけて、正しい自転車の乗り方と道交法上の規則を徹底して指導、指摘すべきであるがどうか。
2 おとなの二人乗り、無灯火などの注意、取締りなどを行なって自転車も自動車と同じ乗り物であることを都民にも自覚させることによって自転車による事故を減らす努力をすべきであるがどうか。
3 幼児事故による頭部などのけがを減らすために、ヘルメットの着用義務などを道交法改正にむけて国に働きかけをすべきであるがどう考えるか。

平成16年第三回都議会定例会
和田宗春議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 平成17年高速道路等の自動二輪の二人乗りについて
1 都内における自動二輪車の事故数の近年の傾向をどう捉えているのか、伺う。

回答
  都内の二輪車事故の発生件数については、過去10年間で平成12年が最も多く発生し、以降減少傾向を示していますが、依然として二輪車の死亡事故構成率は全死亡事故の約4割を占めています。
  従って、都内の交通死亡事故を減少させるためには、二輪車の交通事故防止が重要な課題であると考えており、二輪車事故の多発路線を都民やドライバーに広報し注意を促すとともに、交通違反の指導取締りや右折と直進の分離型信号制御等の対策を実施しています。

質問事項
一の2 警察庁は「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」を取りまとめたが、その目的について伺う。

回答
  これまで、高速自動車国道等での自動二輪車の二人乗りは、全面的に禁止されていましたが、平成16年6月9日に公布された道路交通法の一部を改正する法律により、年齢20歳以上で、大型二輪免許又は普通二輪免許を受けていた期間が3年以上の者であれば、高速自動車国道等において、運転者以外の者を乗車させて、大型自動二輪車又は普通自動二輪車を運転することができることとなりました。
  警察庁が取りまとめた「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」の目的については、この法改正等を踏まえて、これまで必ずしも体系的に行われていない自動二輪車の二人乗りに関する安全教育を充実し、二人乗りによる交通事故の防止を図るものとしています。

質問事項
一の3 警察庁が取りまとめた「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」の骨子は何であるのか、伺う。

回答
  警察庁が取りまとめた「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」の骨子については、
〔1〕 安全教育の目的として、運転者が同乗者に対して同乗方法等について必要なアドバイスを行うとともに、同乗者に配慮して安全に二人乗り運転をできるようにすること
〔2〕 安全教育の方法として、二輪車免許の取得・更新時などの各段階において、教育項目に従って二人乗りに関する安全教育を行うこと
などです。

質問事項
一の4 今後、警視庁は「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」に基づいて、どのように都民に対応していくのか、伺う。

回答
  警察庁が取りまとめた「自動二輪車の二人乗りに関する安全教育の在り方について」を踏まえ、警視庁交通安全指導所をはじめ、都内各地で行われている各種の二輪車交通安全教室において、二輪車関係機関・団体との連携を図りながら、自動二輪車の二人乗りに関しての安全教育(座学及び実技)を取り入れるほか、二輪車免許の取得・更新時において、二人乗りに関しての知識を提供するなど幅広く安全教育を行い、二人乗りによる交通事故の防止を図っていきます。

質問事項
 二 自転車事故の減少に向けて
  1 地域社会、学校、企業などの各団体に向けて、正しい自転車の乗り方と道路交通法上の規則を徹底して指導、指摘すべきだが、所見を伺う。

回答
  警察署員等が各地域、学校等に赴き自転車教室を開催し、正しい自転車の乗り方等についての指導に努めているほか、自治体と協力して小学生等を対象にした「自転車運転免許制度」を活用するなどして、交通安全思想の普及浸透を図っています。

質問事項
二の2 大人の二人乗り、無灯火などの注意、取締りなどを行い、自転車も自動車と同じ乗り物であることを都民に自覚させることによって、自転車事故を減らす努力をすべきだが、所見を伺う。

回答
  現在、自転車の二人乗り、無灯火などの違反者には、警告カードによる指導警告を実施するとともに、指導警告に従わないなどの悪質な違反者に対しては、交通切符による取締りを行っています。

質問事項
二の3 自転車での幼児の事故による頭部などのけがを減らすため、ヘルメット着用義務などを道路交通法改正に向けて国に働きかけるべきであるが、所見を伺う。

回答
  自転車の幼児用座席に乗車させた幼児の事故を防止するためには、自転車利用者に対し、事故実態、防止措置等について広報啓発活動をすることが重要と考えており、警視庁においても幼稚園・保育園等に赴き、親と子の交通安全教育などの実施を通じ、引き続き、幼児用ヘルメットの着用を含む事故防止措置の普及浸透を図っていきます。

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  大山とも子

質問事項
 一 遺伝子組み換え食品について

一 遺伝子組み換え食品について
 1 今年8月、NPO団体「遺伝子組み換えいらないキャンペーン」が「遺伝子組み換えでない」という表示の豆腐を独自に検査したところ、7商品中3商品から遺伝子組み換え大豆が検出されたという報道があった。私たちは、「遺伝子組み換え大豆不使用」と表示されたものから検出されたことを重く受け止め、これまでの調査結果を調べてみた。
   大豆についてみると、2002年の厚生労働省の検出調査では大豆加工品は47商品中13商品(27.7%)から、遺伝子組み換え大豆が検出されている。2004年3月に、国民生活センターが調査した結果では、「遺伝子組み換え大豆を使用していない」と表示されている豆腐29商品中18商品(62%)から遺伝子組み換え大豆が検出という結果となっており、検出される割合が大幅に高くなっていた。東京都健康安全センターの検査では、2001年度は検査した大豆加工品54商品からはひとつも、遺伝子組み換え大豆は検出されなかったが、2002年度は83商品中15商品(18%)。2003年度は45商品中6商品(13%)からの検出だった。これらの混入率はすべて5%以下なので、法的には問題ないが、消費者から見れば「遺伝子組み換え大豆は使用していない」という表示を見て選んでいるのに、遺伝子組み換え大豆を食べてしまっているということである。同時に検出された商品の原料大豆はすべて、「分別生産流通管理」していることが確認されているにもかかわらず、検出されているという問題がある。
   どうしてこのように混入してしまうのかということの原因は、日本は大豆の約7割を輸入にたよっており、その75.5%は米国から輸入し、米国の大豆のうち81%は遺伝子組み換え大豆が作付けされていることが、あげられる。これらから試算すると、日本の食卓に遺伝子組み換え大豆が出回る割合は58%になるといわれている。表示が義務付けられている豆腐などの他にも表示の義務付けのない味噌、醤油、油などの原料として輸入され、知らないうちに口にしているということになる。輸入する業者は、「遺伝子組み換えでない」という証明書付きで輸入するものの、生産地での花粉による交雑や輸送段階をはじめあらゆる段階での混入の確率は、輸出国である米国の遺伝子組み換え大豆の作付けが増えれば増えるほど高くならざるを得ない。
   このまま輸入に依存していると、遺伝子組み換え大豆の混入がさらに増える可能性は否定できない。都として経年での変化が把握できるように、「国産100%」表示があるのかないのかも、明確にした検査を継続・充実することを求める。どうか。
 2 日本豆腐PRセンターが2003年に実施したアンケートでは、「原料大豆の重視点」という質問に、2002年には52%が、2003年には55%の人が「遺伝子組み換え大豆を使用していない」ということをあげており、この質問項目では一番多い回答となっている。また、原料と購入意向では、「遺伝子組み換え大豆で作られている」豆腐は「絶対買わない」が50.8%、「あまり買いたくない」が30.8%で8割以上の消費者は選んで買わないという状況にある。
   一方、国民生活センターの調査結果を見ると、今回テスト対象とした29商品は、すべてに「遺伝子組み換え大豆を使用していない」ことが表示され、そのうち検出されなかった11商品のうち、8商品については国産大豆使用の表示があり、2商品は有機JASマークがあった。「国産」「有機JAS」の表示のない商品は一商品を除いてすべての商品から遺伝子組み換え大豆が検出されている。つまり、国産大豆での加工品なら、表示通り遺伝子組み換え大豆は入っていないということである。
   これらのことから考えても、圧倒的に低くなっている自給率を高めていくことが必要である。都内での作付けを増やすことや、近県とも連携し大豆の国内生産量を上げ、豆腐組合などとも連携して、国産大豆での豆腐をはじめとした大豆加工品が生産できるような仕組みづくりを、都が率先して取り組むことを求める。
 3 日本の現状の問題として、表示の不十分さがある。日本で表示義務があるのは豆腐など30品目のみであり、表示方法は「遺伝子組み換え不分別」「遺伝子組み換えのものを分別」「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換えでないものを分別」「遺伝子組み換えでない」と、非常にわかりにくい。また、醤油や油は表示義務がない。さらに、加工食品だと食品成分表示の上位3品目のみ表示すればよいことになっている。一方、2004年からEUでは全食品にGMか非GMかの表示を義務付けた。しかもすべての成分についての表示することになっている。混入率もEUの表示義務はO.9%以上であり、日本は5%以上というのは非常にゆるいと言わざるを得ない。外食産業の場合もEUでは表示の対象であり、メニューに表示されている。飼料も表示の対象。このように表示を徹底することができるのは、すべての作物のトレーサビリティーが義務付けられており、製品から生産農家までさかのぼれるしくみになっているからであり、加工品になったときには既に検出できないものも、その加工品を作る原料を検査することができるからである。それは、何よりも自給率が高いからできることである。
   とりわけ、大豆とその加工品は豆腐・納豆・油揚げをはじめ味噌・醤油・油など日本人の食生活には欠かせないし、毎日食べるだけにその摂取量も多い。それだけに、わかりやすい表示は欠かせない。
   都独自に、大豆だけでも、遺伝子組み換え大豆使用なのか、組み換えでないものかということのわかりやすい表示の義務付けをすること。また、醤油や油についても、トレーサビリティーを行なうことによって、原料段階での検査ができるようにし、表示を義務付けることを実施することを求める。同時に、国に対しては、EU並みの表示をめざし自給率の向上とトレーサビリティーの実施を強く国に要請することを求める。
 4 遺伝子組み換え作物は環境を破壊するものであること。また、遺伝子組み換え作物を栽培することによって使用される科学物質が子どもの脳に悪影響を及ぼす心配が大きくなっていることも指摘しなければならない。
   遺伝子組み換え大豆は除草剤耐性である。これは種子と農薬がセットで販売されている。そこで使用されるモンサント社の農薬ラウンドアップの主成分はグルホシネートである。グルホシネートとグリホサートは類似しており、ともに神経毒性をもつ。
   東京都神経科学総合研究所の黒田洋一郎氏は、その論文で「GM作物とセットで使われている除草剤のもつ神経毒性・行動奇形学的毒性など、多様な毒性について、これまであまり問題にされていなかった。しかし、ラットの実験で、次世代の攻撃性、易興奮性を上げることが実験データとして示されている以上、グルホシネートについてはより詳細なリスク評価研究とともに、とりあえず、予防原則的に、規制に向かうべきであろう。似た構造をもつグリホサートの方も早急に十分な神経毒性試験、次世代行動試験が必要である」と警告している。
   除草剤耐性のGM作物が全GM作物の75%であるだけにこの問題は大きい。
   都として、グリホサート、グリホシネートの毒性の研究に早急に取り組むことが必要だと考えるがどうか。
 5 遺伝子組み換え作物の栽培は、農薬による汚染、花粉の飛散による交雑、雑草との交雑による農薬も効かないスーパー雑草の出現、殺虫性の作物による蝶、ミツバチ、てんとう虫などの短寿命化、害虫の耐性化、種の壁を越えて移る遺伝子など地球環境破壊という点でも放置できることではない。
   日本でも、試験栽培が行なわれて各地で問題になっている。北海道では、このことを重く受け止め、栽培に関するガイドラインを作った。「開放系での栽培計画を毎年把握するとともに、その栽培を中止するよう要請する。」というものである。
   東京でも西東京市にある東大農場での圃場での栽培実験が行なわれようとしたが、農業者、住民などの反対で今期の作付けはあきらめたが、実験自体をあきらめたものではない。東京都は遺伝子組み換え作物の栽培に関する検討委員会設置に向け、準備をしているということだが、
   都の指針を作るにあたっては、都内での実験を含めた栽培の状況を事前に把握できるようにすること。また、地球環境を守る立場で、東京は遺伝子組み換え作物を栽培しない地域とする宣言を行うことを求める。

平成16年第三回都議会定例会
大山とも子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 遺伝子組み換え食品について
1 都が行う遺伝子組換え食品の検査では、経年での変化が把握できるよう、「国産百%」表示の有無を明確にした検査を継続・充実すべきであるが、所見を伺う。

回答
  都は平成13年度から、大豆などを原材料とした加工食品について、JAS法に基づく遺伝子組換え食品の表示が適切に行われているかどうかの検査をしています。
  今後とも、国産品を使用した旨の表示があるものを含め、継続して検査を実施していきます。

質問事項
一の2 「国産」「有機JAS」の表示のない豆腐は、一商品を除いてすべての商品から遺伝子組換え大豆が検出されているが、国産大豆での加工品は、表示どおり遺伝子組換え大豆は入っていない。圧倒的に低くなっている大豆の自給率を高めていくことが必要であり、都内での作付けを増やすことや、近県とも連携し大豆の国内生産量を上げ、豆腐組合などとも連携して、国産大豆での豆腐をはじめとした大豆加工品が生産できるような仕組みづくりを、都が率先して取り組むことを求める。所見を伺う。

回答
  平成14年の国産大豆の生産は、作付面積約15万ヘクタール、生産量約27万トンであり、自給率は約5パーセントでした。
  このため、国では、国産大豆の自給率を高めるため、大豆の生産振興とともに、販路や需要の拡大も図っているところです。
  都では、都市農業支援の観点から、地元産の農産物を地元で消費する仕組みづくり等を支援していますが、大豆生産は広い農地を必要とする農業であり、狭い農地が多い都内での生産拡大は困難であると考えます。

質問事項
一の3 都独自に、遺伝子組換え大豆を使用しているかがわかりやすい表示の義務付け、醤油や油のトレーサビリティによる表示の義務付けを実施すべきである。同時に国に対し自給率の向上とトレーサビリティの実施を要請すべきである。所見を伺う。

回答
  都は、国が定めた表示を更にわかりやすくするため、平成13年12月に都独自のマークを定めその普及を図っています。
  醤油や油などの加工食品については、現時点では遺伝子組換え大豆を使用しているかどうか検証できないことからJAS法による表示対象からも除かれており、表示を義務付けることは困難です。
  なお、国は、大豆の自給率の向上のため、積極的に大豆の生産振興を行っており、食料産業へのトレーサビリティシステム導入についても、各業界が自主的にシステム導入を行えるよう支援をしています。
  都においても必要に応じこれら国の施策に協力をしていきます。

質問事項
一の4 都として早急にグリホサート、グリホシネートの毒性の研究に取り組むべきであるが、所見を伺う。

回答
  農薬の毒性試験については、農薬取締法により国の責務になっています。
  当該農薬は、製造者や輸入者が農薬取締法に基づき提出する薬効、薬害、毒性及び残留性の試験結果について、農林水産大臣が生物や環境に対する安全性を審査した上で残留などに対する基準や使用方法を定め、登録されています。
  また、食品に残留する農薬などの化学物質の安全性については、国の食品安全委員会が食品安全基本法に基づき、人の健康に及ぼす影響について評価しています。

質問事項
一の5 栽培に関する指導指針を作るにあたっては、栽培の状況を事前に把握できるようにすること。また、東京は遺伝子組換え作物を栽培しない地域とする宣言をすることを求める。所見を伺う。

回答
  遺伝子組換え作物の栽培は、法に基づき、国が承認しているものです。
  しかし、遺伝子組換え食品に対し、都民の不安があるので、法により栽培承認を受けた遺伝子組換え作物であっても、混乱を未然に防ぐための指導が必要であると考えます。
  このため、遺伝子組換え作物の栽培に関する検討委員会を設置し、栽培予定者からの事前の情報提供や、近隣住民等への説明を求めることなど、都の指導指針のあり方などについて検討していきます。
  今後、都内農業者や消費者の意向や遺伝子組換え作物に関するさまざまな動向を注視し、的確に対処していきます。

平成16年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  木村陽治

質問事項
一 23区消防団への支援策の強化について
一 23区消防団への支援策の強化について
 1 23区消防団に対する支援策の強化について伺います。
   消防団は、地域の実情に精通した防災機関として極めて重要な存在であるにもかかわらず、核家族化の進行や、個人商店や製造業の減少などで、次第に高齢化がすすみ、団員の充足率を守るために、ひとかたならぬ苦労を強いられています。
   このような時、きびしい家業のかたわら地域防災リーダーとしての志気を高め、若い人たちが意気に感じて参加できるように、都として消防団の施設、装備の充実、処遇改善に力をつくすことが、いま強く求められているのではないでしょうか。
   さきの本会議でわが党の東ひろたか議員が分団本部施設の整備のおくれを指摘し、整備促進を求めました。これに対して、白谷消防総監は、分団本部施設の整備については緊急の課題だとの認識をしめし、計画的な整備をすすめると答弁をされました。このことは重要な前進だと歓迎します。しかし、整備がおくれているのは分団本部施設クラスの格納庫だけではありません。その他の防災資機材格納庫や可搬ポンプを収納するプレハブ格納庫についても整備が急がれています。各分団がかかえる格納庫のなやみは、狭い、不便な場所、私有地で相続が発生して返還を迫られているなど、さまざまです。そうした分団の共通の声は「適地を都や区がもっと積極的に提供してほしい」ということです。
   また、最近各消防団に1台ずつ可搬ポンプを積載する軽自動車が整備されるようになりました。これも全分団に配備されるようにする必要があります。実際、団員の高齢化から「可搬ポンプを500メートルも600メートルも引っ張って火災現場にたどり着くと、息があがって消火活動ができない状態」という率直な声もあります。機動力を高めようと以前から、分団独自に軽自動車を購入しているところもあり、そこでは車検代やガソリン代、修理費などみな分団もちとなっているのです。積載車の配備は、そのための車庫の整備、格納庫の改善などとあわせてすすめることが必要であることはいうまでもありません。
   消防庁はこの際、可搬ポンプ積載車を全分団に配備することを目標に据えて、その実現をテコに、各分団の格納庫問題に取り組むべきではありませんか。また、軽のミニポンプ車を配備することなども考えられると思いますが、お答え下さい。
 2 つぎに、消防団員の出動手当についてであります。消防団員は自らの生活、時としては、身体、生命の危険をも顧みず出動しなければならない場合もあります。にもかかわらず、定められた出動手当が完全には支払われていないと言う現状があります。しかし、出勤手当は消防組織法に根拠をもつ費用弁償であり、財政難や予算不足と言うことが手当を支払われなくて良いという理由にはならないのです。ところが、現実には出動手当の支給率を維持するために消防団員の出勤日数の減少が図られています。これでは本末転倒もはなはだしいといわざるを得ません。
   消防団員の出動手当には完全に支払いするよう手だてをつくすべきと考えますが、見解を求めます。
 3 最後に、消防行政の中での消防団の位置づけについてです、23区の消防行政は大都市行政として都知事が責任もってすすめています。確かに消防署としての活動は区境を超えて、機動的にすすめられるべきは当然のことです。しかし、消防団はあくまで地域に密着した活動にその意義があります。その活動に対応する本来の行政体は、多摩地域の消防団を各市町村が所管していると同様に、各特別区と言うことになります。しかし、各特別区は(事務処理の特例に関する条例)によって、各区長が消防団長の任命を行う程度の権限しかありません。消防団行政について、各区は都と協力の内容についてとりきめがあるわけではありません。このことが23区消防団がさまざまな問題を解決できずに困っていることの一つの原因になっているのではないでしょうか。たとえば、葛飾区では区立公園のうち30カ所を目標に防災公園化する公園改修をすすめており、それらの公園に区は仮説トイレ、備蓄倉庫炊き出し施設などをつくっています。
   ところが消防団が改修工事が始まってから防災公園ができることに気づいて、消防団の施設を併設してほしいと区に要望してもすでに時期を失していることが多いのです。
   あらかじめ区の計画にあわせて都として分団本部施設などの整備年次計画がつくられていれば、施設整備は格段にすすむではありませんか。ついては、大都市事務の中の地域密着的事務である23区の消防団事務のすすめかたについて都と区はその協力の基準的内容を協議し、明文化することが必要ではないか。見解を求めます。

平成16年第三回都議会定例会
木村陽治議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 23区消防団への支援策の強化について
1 消防庁は、可搬ポンプ積載車を全分団に配備することを目標とし、各分団の格納庫問題に取り組むべきである。また、軽のミニポンプ車を配備することも考えられる。所見を伺う。

回答
  可搬ポンプ積載車については、消防団の機動力の向上による災害活動体制の充実強化とともに、消防団員の労力軽減を図るため、各分団に計画的に整備しています。
  このため、可搬ポンプ積載車を格納する分団施設についても順次、計画的に整備することとしています。
  また、可搬ポンプ積載車は、狭あい地域において動力ポンプを車両と切り離して運用できることや資機材等を搬送できるなど多目的に活用できます。
  このようなことから、現状では軽自動車のポンプ車の配置は考えていません。

質問事項
一の2 消防団員の出動手当が完全には払われておらず、支給率を維持するために出動日数の減少が図られている。消防団員の出動手当は完全に支払いするよう手だてを尽くすべきだが、見解を伺う。

回答
  平成15年度の消防団員の出場に対する費用弁償は、災害出場については100パーセント支給しています。訓練、警戒、行事等の災害以外の出場についても、行事等の見直しなど効率的な執行計画を作成し、引き続き計画どおりに支給できるよう努めていきます。

質問事項
一の3 消防団行政について、各区は都と協力の内容についての取決めはない。大都市事務の中の地域密着的事務である23区の消防団事務の進め方について、都と区は協力内容を協議し、明文化すべきだが、見解を伺う。

回答
  消防団に関する事務については、これまでも各区と密接な連携を図るとともに、分団施設整備のために必要な施設や用地等についても協力を得ています。
  今後とも各区及び関係機関と更なる連携に努め、協力を得ながら事務を推進していきます。

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