平成十二年東京都議会会議録第十七号

○議長(渋谷守生君) 四十九番藤田愛子さん。
   〔四十九番藤田愛子君登壇〕

○四十九番(藤田愛子君) 初めに、公害防止条例の改正について伺います。
 尼崎や名古屋の大気汚染公害訴訟において、国、自治体を含め、行政と事業者の責任を認めた判決は、本来、国が抜本的改革を図る必要性を迫られていることを示しています。
 今回、国に先んじてディーゼル車対策を打ち出し、また、今日的課題であるダイオキシン削減のための小型焼却炉全面禁止や、フロン対策、PRTRを条例化したことは、評価をするものです。今後、実効性ある施策の展開が重要になってきます。
 この点で、環境基本計画の全面改正が当面の課題となりますが、平成九年に策定したとき、また、今回の公害防止条例の全面改正に当たっても、都民みずからが環境問題を考え、NPO、NGOとの連携を図るために、意見発表の場を設定しました。知事は常日ごろ、異論、反論など代替案を含めて議論をすることを提唱されています。こうした提案を踏まえ、計画策定を都民参加で実施すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 化学物質の適正管理は、今回の改正条例に取り上げられていますが、微量の化学物質によって健康被害を起こす化学物質過敏症については、治療法が明らかにされておらず、全国で約二百万人の人が苦しんでいます。特にシックハウス症候群については、住宅の建材や畳、壁紙、カーテン等に含まれる揮発性化学物質が原因で、住宅を新築したにもかかわらず、そこに住むことができなくなるなど、重大な社会問題となっています。
 これが今、学校の中で起こっています。シックスクール症候群と呼ばれるもので、学校内にある化学物質が原因で苦しみ、この病気への無理解から追い詰められている子どもたちがいます。具体的症状としては、不眠や頭痛、鼻血や疲れやすいなど、アレルギー性症状と神経性・内分泌性症状があらわれます。学校内には化学物質がたくさんあり、改装時の塗料、ワックス、樹木へ散布する農薬、また、マジックペンや印刷物にも反応してしまう子どもがいることも報告されています。
 国では、室内空気汚染についての指針値を整備しつつあります。こうした動向を踏まえ、シックスクールに対応した、学校における室内大気についての基準を整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 こうした化学物質過敏症で、通常の登校によっての学習が困難な子どもが増加する可能性があります。現在、シックハウスフリーの共同住宅が日野市の応援でつくられていますが、将来的には、クリーンルームの設置や、山間部のシックハウスフリーな校舎の創設も検討すべきですし、そのためにも実態調査などの対応が不可欠です。
 このようなシックハウスにかかってしまって、現在、天然素材を使って自宅を建て直されたため、居住は可能ですが、通学できずにいる八王子の小学生の事例があります。中学への就学通知が来て、勉強はしたいのだが、学校へ行かれない状況を相談したそうです。しかし、化学物質過敏症はいまだに病気とは認められていないために、中学にも養護学校にも行けない、訪問教育も受けられないとのことです。都教委によれば、それぞれの学校長の判断で、家庭訪問による指導を行ったり、地域の教育センターの相談員を派遣している例があるとしていますが、八王子では教育センターからの特別指導を廃止してしまっているとのことでもあり、教育を受ける権利を保障されない状況になっています。こうした子どもたちの学習権の保障をすべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、水道水への弗素添加について伺います。
 十一月十七日に、厚生省が水道水に弗素添加の容認の方針を認めたとの報道がありました。さらに、厚生省内ではなお不統一との報道もありました。一九六九年に、WHOは、第二十二回総会で上水道弗素化決議を世界に発し、これに日本も賛同してきましたが、斑状歯事件以来、日本では水道水に弗素を添加することはしてきませんでした。厚生省の弗素添加容認方針は、弗素入りの水道水を飲みたくない人にまで飲ませることにもなり、認めることはできません。
 衛生局では、歯磨き粉の弗素添加や十分な歯磨きによって、虫歯予防はできるとしています。化学物質に対して、我が国は、疑わしきは使用せずとの原則を堅持してきました。弗素の副作用の指摘も考慮し、水道局としては当面この立場をとるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、女性財団廃止について伺います。
 そもそも、財団の役割は、各種講座の開催や女性団体との交流事業などの実施などにより、男女平等の社会風土づくりの機運の醸成に努めることという普及啓発であり、初めから事業収入は期待されず、一〇〇%東京都の出資によって運営されたわけです。そして、広く都民及び民間団体と行政が連携して、創意ある多様な活動を効果的に展開する中心的な役割を担うには、公設民営の財団方式が有効であるということが、設立時の経緯に明確に記録されています。それゆえ、私は、設立当時にさかのぼる評価なしに女性財団を廃止することについては、反対であることを表明いたします。
 女性財団独自の専門的、自主的な活動は、都民参加によって高められてきました。また、これからの社会に求められている行政とのパートナーシップや、NPO、NGOとの連携によって社会づくりをしていく先駆的な活動がこの女性財団にあったことは、評価されこそすれ、廃止を性急に結論づける根拠にはなり得ません。監理団体総点検の中で、なぜ女性財団へ改善計画を提示させることなく、また、経過措置もとらずに廃止を決めたのかを伺います。
 本年三月に、男女平等参画基本条例が、石原知事のもと制定されたことは、心強い限りでございます。男女平等ということは差別をなくすことであり、それは、とりもなおさず女性への差別を撤廃することにほかなりません。しかし、都は、これまでの知事を本部長とする東京都男女平等推進会議を、十二年度からは生活文化局長を長とするなど、施策が後退しているといわざるを得ません。
 国では、内閣府に男女平等参画局をつくり、国を挙げて男女平等の社会づくりを目指していく仕組みづくりが始まっています。現在の日本社会は、いまだ性的役割分業的男女観が強いのが実態であり、条例を制定した後の中身が問われます。全国の自治体は東京の動向を注視しており、これからますます女性財団の活動が期待されているのです。東京都の男女平等参画行政をどのように考えているのかを伺います。
 次に、遺伝子組みかえ食品について伺います。
 さきに市民団体の調査で、我が国では食品としてその安全性が未確認である遺伝子組みかえトウモロコシ「スターリンク」が市販のコーンミールなどから発見されました。アメリカでは、安全性の観点から食品への使用が禁止されているものです。当然、食卓に上ってはならないもので、実際、六日の新聞報道にもあったように、アメリカで発疹や下痢などのアレルギー症状を起こした患者の存在が報告をされています。国は、流通の事実を認めながら、来年四月一日施行予定の食品衛生法の枠外にあるとして、法律がない以上、回収命令等の措置をとることができないので、混入事実も公表しなかったとしています。
 既に市場になくても、私たちの台所に残っている可能性がありますが、商品名などが公表されていません。アレルギーの危険がいささかでもあるなら、未然防止の観点から、都民の健康を守るため、都が独自の措置をとる必要があります。都の消費生活条例の機敏な運用を行うとともに、国に対して強く対応を迫る必要があると考えますが、見解を伺います。
 また、こうした最新の技術による未知のリスクが疑われる中では、新しい食品や商品被害のおそれから、消費者の不安は大きいものがあります。危険の未然防止、そして消費者の選択権のための対策を強化すべきと考えますが、いかがでしょうか。見解を伺って、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 藤田愛子議員の一般質問にお答えいたします。
 環境基本計画の改正に当たっての都民意見の反映についてでありますが、これまでも、東京構想二〇〇〇や緑の東京計画など主要な計画の策定に当たっては、インターネットの活用など、さまざまな方法で各方面の意見を求めてまいりました。
 東京の環境再生は、東京で働き、暮らすすべての都民、事業者の生活に直接かかわる大切な問題でありまして、今回改正する環境基本計画においても、当然、幅広く意見を求めてまいります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、学校における室内空気の基準についてですが、都立学校におきましては、都立学校環境衛生基準を設定しまして、これに基づき対応しているところでございます。
 また、化学物質の放散量を考慮した建築材への転換、教室での適正な換気、農薬の使用を極力避けるなど、有害化学物質への一定の対応を行っております。
 お話のように、現在、文部省におきまして、学校環境衛生の基準について、有害化学物質を含め見直しを行っており、都教育委員会としましても、その動向を踏まえて対応してまいります。
 次に、化学物質過敏症の子どもの学習権についてでございますが、学校へ行けない状況にある化学物質過敏症の児童生徒への教育は、担任教員等による家庭訪問を通じた学習指導や、環境面等でより適応しやすい学校への転校など、学校長や区市町村教育委員会によるさまざまな工夫が考えられます。
 この化学物質に反応する度合いは個人差が大きいものですが、それぞれの相談の状況に応じて、児童生徒ができる限り学習の機会を得られるよう、さまざまな手法や工夫について、区市町村教育委員会と連携を図ってまいります。
   〔水道局長赤川正和君登壇〕

○水道局長(赤川正和君) 水道水への弗素添加問題についてお答えいたします。
 弗素の添加につきましては、医学界のみならず、市民団体等におきましても、長年、賛否両論にわたる多様な論議がなされてきました。今後とも、こうした論議の動向や厚生省の検討状況などを慎重に見守ってまいります。
 水道局では、水質基準などを踏まえ、安全でおいしい水を供給するため、引き続き水質管理に万全を期してまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 女性財団事業の直営化についてでありますが、女性財団は、民間とも連携して、男女平等の社会的風土づくりに一定の成果を上げてまいりました。その間、経営評価上、改善も促してまいりましたが、今般の監理団体総点検におけるゼロベースの見直しの中で、当財団は自立的な経営体として存続するのは困難だと判断し、直営により普及啓発事業等を継続することとしたものです。
 また、現下の重要課題であります企業における参画促進や、家庭内等における暴力などには、本庁とウィメンズプラザとが一体となって、行政機関として対応する必要があることから、直営が最も適切と判断したものであります。
 次に、今後の東京都の男女平等参画についての考え方についてでございますけれども、東京が活力ある都市として発展するためには、個人の個性や能力が十分に発揮できる機会が、男女の別なく確保されることが重要であります。
 都は、こうした観点から、男女平等参画基本条例を制定したところであり、これまでの取り組みの成果である本条例の趣旨を十分に踏まえ、男女平等参画推進会議等を通じて、関係各局が緊密に連携し、より一層、男女平等参画施策を推進してまいります。
 今後、新たな行動計画を策定するとともに、企業における参画促進や、家庭内等における暴力対策などの課題に取り組んでまいります。
 続きまして、「スターリンク」混入トウモロコシに対する都の対応についてでありますが、国では、国内流通がないと考えられておりました安全性未審査の「スターリンク」の混入について、調査を行うとともに販売自粛指導等を実施しておるところでございます。
 都は、国が進めております流通調査等について、今後とも情報収集に努め、都民に積極的に提供していくとともに、とりわけ、重大な危害が発生するおそれがある場合については、迅速な情報開示を国に求めるなど、消費者の安全確保を図ってまいりたいと思います。
 次に、食品安全確保対策の強化についてでありますが、都では、遺伝子組みかえ食品等の新たな課題に対応していくために、食品安全確保対策基本方針の改定を行い、情報の蓄積や調査研究などに努めているところであります。
 今後、食品の危険を未然に防ぎ、消費者がみずからの判断で商品を選択できるよう、適正な表示を推進するとともに、リコール情報や警告情報などの幅広い安全情報を収集し、インターネットの活用など、効果的な情報提供の方法について検討を進めてまいりたい。

○議長(渋谷守生君) 以上をもって質問は終わりました。

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