平成十二年東京都議会会議録第十七号

○議長(渋谷守生君) 九十六番小山敏雄君。
   〔九十六番小山敏雄君登壇〕

○九十六番(小山敏雄君) まず最初に、住民基本台帳ネットワークシステムについてお伺いをいたします。
 国は、今、情報技術の進展に合わせた行政サービス向上のため、電子政府や電子自治体の実現に向け、IT化を強力に推進をいたしております。さきの国会では、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、いわゆるIT基本法が成立したところであります。
 こうした中で、昨年八月には、住民基本台帳法の一部が改正をされ、全国の区市町村と都道府県間などを専用回線で結ぶ、住民基本台帳ネットワークシステムの導入が決定をされました。
 このシステムが導入されますと、区市町村の区域を超え、全国どこの市町村でも住民票の写しが交付されるなど、広域的な行政サービスが実施されることになります。
 また、国や都道府県において、雇用保険の支給や児童扶養手当の支給等の審査事務などで本人確認をする際、住民票の添付が不要になるなど、各種の行政手続において住民の負担軽減が可能となると聞いております。
 現在、平成十五年八月のネットワークの本格稼働に向けて、システム構築作業を行っているようでありますが、現在の進捗状況と今後の予定について、まずお伺いをいたします。
 また、この住民基本台帳ネットワークシステムは、ただいま申し上げましたように、利便性、効率性の高いシステムではありますが、一方で、導入経費としては、全国規模で約八百億円と、莫大な額が予定をされており、現在使用されている住民基本台帳システムの改修経費だけを見ても、特別区で、一区当たり四、五千万円から一億円という多額の費用が必要とされているようであります。
 この財政措置については、法律に基づく全国一律のシステムであることから、基本的には地方交付税により措置することとされ、普通交付税による一定の財政措置とともに、不交付団体の市町村に対しても、特別交付税により別途財政措置することと聞いております。
 しかし、私の地元の目黒区を初め、特別区は、ご案内のとおり、地方交付税の都区合算規定という特別な制度のもとに、地方交付税は実質的に交付されず、このままでは、事実上、区の自主財源でシステムを構築することになってしまうわけであり、大変憂慮しているところであります。
 このような特別区に対する財政措置について、国の対応などで、今後の見通しをお聞かせをいただきたいと思います。
 私は、情報ネットワーク社会が急速に進展する中、住民負担の軽減、行政サービスの向上、国、地方を通じた行政の効率化のためには、この基本台帳ネットワークシステムの導入がぜひとも必要であると確信をいたしております。
 また、このシステムを構築していくに当たっては、区民にとってよりよいものとなるよう、区の意見などを十分に反映させるとともに、個人情報の保護について十分配慮することが肝要であると考えております。
 この住民基本台帳システムに取り組む石原知事の決意のほどをお伺いをいたします。
 次に、道路用地の活用についてお伺いをいたします。
 いうまでもなく、道路を整備する際には、まず道路用地を確保しなければなりません。通常、地権者の理解と協力を得て買収という形をとりますが、ここに大きな問題があります。
 都内の道路の大半は、戦後すぐに都市計画決定をされて以来、既に半世紀を経過をしましたが、いまだ約五二%しか完成しておらず、先ほどの我が党の大西議員の質問や、石原知事のご答弁の中での経緯のように、数多くの道路が未着手の状態にあります。
 しかし、このような状況の中でも、ようやく事業に着手をし、用地折衝に長い時間をかけて、やっと買収できたとしても、ある程度まとまった区間の用地買収が終了するまでは、道路の整備工事には入れません。この期間は、往々にして、実に気の遠くなるような年月になることが多々あります。この間、買収した用地は、味もそっけもないパイプなどで囲まれ、時には十年以上もの長い間、町の美観や活動にかかわりなく放置されている箇所が多く見受けられます。
 そこでお伺いをいたしますが、用地買収に着手してから五年以上たっても工事に取りかかっていない道路は、都内でどれくらいあるのでしょうか。また、その道路を完成させるには、財源はどのくらい必要なのか、お答えをいただきたいと思います。
 私の目黒区にも、補助第四六号線の目黒本町三丁目あたりでも同様な事例があります。地元の方々から私のところに、さまざまな意見が寄せられてきており、せっかく協力をして用地を提供したのに、いつまでも工事をしないのでは、何のために協力をしたのかわからない、パイプの囲いは町並みの景観を壊す、交通事故をも起こしかねない、これだけまとまった土地を放置して、もったいないと思わないのか、などなどであります。
 これまで、都においても、むき出しの単管を白いパイプさくに切りかえたり、用地を駐車場や花壇として暫定使用するという試みをしてきたことは承知をいたしておりますが、しかし、それも、いずれもが単発的であり、一貫した姿勢というものが全く感じられないのであります。
 活用方法については、もちろん将来の道路整備の際に支障になるような方法はとれないとは思いますが、地元住民の方々の意見やアイデアなどを真正面から受けとめ、地域の活性化に結びつくような有効活用を図るべきと考えます。
 そのために、まず、地元との話し合いの場や、また、広く都民からアイデアを募集するなど、さまざまな工夫を凝らすべきだと、私は提案申し上げたいと思います。
 すなわち、現下の財政状況では、潤沢な財源を一遍に投入することは困難な時期だけに、住民の方々や広範な都民の方々からもお知恵をおかりして、道路用地の活用を図っていくことが、地域住民の不安や不満の解消のためにも必要ではないかと考えますが、建設局長のご所見をお伺いをいたします。
 最後に、震災時における都民からの災害情報収集について伺います。
 本年に入って、北海道の有珠山、三宅島の火山災害を初め、新島・神津島近海地震、また鳥取県西部地震など、全国各地で震度五以上の地震が発生しており、首都東京におきましても、東京地方を含む南関東直下の地震が危惧されている状況にあります。
 こうした中、阪神・淡路大震災を初め、過去の地震災害の教訓として、被害の甚大な地域ほど、地震直後の災害情報が、電話回線のふくそうや通信設備の途絶などにより、消防機関に届かないなど、いわば被害情報の空白が生じ、これをどのように埋めるかが重要であると指摘されております。
 その教訓を生かすには、それぞれの地域から地元消防署に地震被害の早期情報を迅速に提供をするシステムづくりを推進していく必要があると思います。
 特に、地域に生活している住民の方々からの、火災の発生状況や建物倒壊などによる救助、救急などの各種情報を消防署に伝え、これらの情報をもとに消防署が効果的な消防活動を行っていくことが、地震被害を軽減する上で極めて重要なことであると考えております。
 そこで、消防総監にお伺いをいたしますが、東京消防庁として、発災後の被害情報を地域の住民などから収集し、それを消防署に通報する情報拠点について、どのような考えでおられるのか、お伺いをいたします。
 次に、私たちの生命を守るために欠かすことのできない救急活動についてであります。
 三百六十五日二十四時間、サイレンの音を聞かない日はないぐらい活躍をしておりますのが救急車であります。東京消防庁管内における、昨年平成十一年中の都民の救急車の利用件数は五十三万七千四百十六件で、ことしも、昨年の出動件数を上回る傾向にあると聞いております。
 このため、東京消防庁では、貴重な人命を守るため、救急車が効率的に利用されるよう、都民の理解と協力を呼びかけているとのことですが、ふえ続ける救急需要にあって、都民ニーズにこたえていくには、これまで以上に救急車を増強していく必要があるとは思いますが、ただ単に救急車を増強するだけでは、問題解決になるとは思いません。
 そこで、本年四月から、救急の要請内容によって、救急現場にポンプ車と救急車が同時に出動し、迅速かつ効率的な救急活動を行うとする、いわゆるPA連携活動を行っております。消防庁のアイデアに深く敬意を表しますが、この連携活動は、まだまだ都民に広く知られていないことも多々見受けられ、大変残念に思います。
 そこでお伺いをいたします。
 ポンプ車と救急車の連携活動を行うことにより、どのような効果が出ておられるのか、また、この活動を都民により広く周知していくためにどのような努力をされているのか、お聞きをしたいと思います。
 一方、家庭内や職場などにおいて発生した救急事故の中には、現場に居合わせた家族や同僚などが、救急車の着くまでの間、応急手当てを行い、救命に大きな効果を上げた事例も数多くあると聞いております。
 このような緊急の場面で、落ちついて必要な応急手当てを行うためには、日ごろから、応急手当てに関する知識や技術を学び、繰り返し練習をして、しっかりと身につけておかなければならないと思います。
 また、一人でも多くの都民が応急手当てを行えるようにしておくことが、救急事故に遭遇した場合はもとより、大規模な地震災害などへの備えとしても、自助、共助の観点から、今、都民の責務として求められているところではないでしょうか。ひいては、それが、救急業務に対する都民の一層の理解と協力を得ることにつながるものと考えます。
 そこで、東京消防庁では、都民個人や事業所などに対する応急手当ての普及に努めていると聞いておりますが、具体的にどのような取り組みをされているのか、最後にお伺いをし、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 小山敏雄議員の一般質問にお答えいたします。
 住民基本台帳ネットワークシステムにいかに取り組むかということでございますが、このシステムは、住民票の広域交付が可能となるなど、高度情報化時代に対応して、住民の負担軽減やサービスの向上を図り、行政の効率化に資する、極めて意義のあるものと心得ております。
 システム構築に当たっては、ご指摘のとおり、都内区市町村の意見を十分に反映させながら、あくまでも個人情報の保護にも万全を期するということが必要と思っております。
 平成十五年八月の本格稼働に向けて、今後とも、国の取り組みなどを十分に眺めながら、より利便性の高いシステムを、東京としても構築していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 住民基本台帳にかかわる二点のご質問にお答えいたします。
 まず、住民基本台帳ネットワークシステム構築作業の進捗状況と今後の予定でございます。
 現在、システムの基本設計が完了いたしまして、詳細な設計を行っているところでございます。
 これに基づきまして、平成十三年度から、各区市町村及び都道府県を通信回線で接続するとともに、テストランを行っていくこととなっております。
 さらに、平成十四年八月には、本システムが一部稼働いたしまして、本人確認情報の利用が可能となり、平成十五年八月には、住民基本台帳カードを発行し、住民票の写しの広域交付などの本格的なサービスが開始される予定でございます。
 次に、住民基本台帳ネットワークシステムにかかわる特別区に対する財政措置でございます。
 このシステムを構築するに当たりましては、お話しのように、特別区では、他の市町村と異なり、実質的に地方交付税による措置が行われないため、都として、これまで、国に対し、他の方法による財政措置を強く求めてまいりました。
 このことを受けまして、国においては、このシステムに関連した事業として、特別区に対し、地方交付税措置とは別途に、現在、所要の財政措置を行う方向で検討しているというふうに聞いております。
 今後も引き続き、特別区と連携を図りながら、国に対し、特段の配慮を求めてまいります。
   〔建設局長古川公毅君登壇〕

○建設局長(古川公毅君) 都市計画道路についてですが、現在、都内で事業中の街路事業は約百二十キロで、用地取得の難航や財政上の問題から、五年以上経過しても工事に着手できない延長は、国からの補助金を受けられない路線を中心に、約十五キロです。
 また、これを完成させるための事業費は、約五百億円と見込まれます。
 道路事業用地の有効活用についてですが、取得した用地については、速やかに整備を進めることを第一と考えています。
 工事の着手までに時間を要する用地については、これまで、区市町村等の要望にこたえて、駐車場、歩行者通路や花壇などに活用してきましたが、ご指摘のように、活用されていない用地も存在しています。
 今後は、地元の要望や意見を尊重するとともに、区市町村と連携して、荷さばき場や遊び場など、地域の実情に応じた事業用地の一層の活用を積極的に図ってまいります。
   〔消防総監池田春雄君登壇〕

○消防総監(池田春雄君) 三点のご質問についてお答えいたします。
 まず、震災時の情報収集についてでございます。
 お話しのとおり、さきの阪神・淡路大震災でも明らかなように、地震発生直後において同時に多数発生する火災や救助、救急事象の情報をいち早く収集することが、震災時における消防活動には極めて重要なことと考えております。
 このため、消防職・団員による現行の情報収集体制に加え、震災直後の情報の空白を埋めるため、町会や自治会からの情報収集はもとより、地域に密着している事業所や店舗等からの情報収集についても有効であることから、その体制づくりを進めてまいりたいと考えております。
 次に、ポンプ車と救急車による連携活動の効果についてでございます。
 本年四月からの運用開始以来、活動件数は約五万件に及んでおります。ポンプ車のマンパワーが加わることにより、救護の着手の迅速化、現場活動時間の短縮、医療機関への早期搬送、さらには、心肺が停止した傷病者を早期の救命処置によって蘇生させるなど、連携活動の効果が十分にあらわれております。
 今後とも、積極的に推進してまいります。
 この連携活動を広く都民に知っていただくために、引き続き、マスメディア、消防署等で実施している救命講習、さらには防災訓練等を通じて、広報活動を行ってまいります。
 最後に、応急手当ての普及についてでございますが、急病人やけが人が発生した緊急時には、その場に居合わせた人、いわゆるバイスタンダーによる早期の応急手当てが極めて重要であります。
 このため、平成十一年度中では、都民七十一万人に対して、救命講習や各種講習会を開催し、応急手当ての知識、技術の普及を実施してまいりました。
 さらに、本年四月から、ホテル、デパートなど不特定多数の人が出入りする事業所を対象に、応急手当て奨励制度を設けました。これは、事業所に対して救命講習受講優良証を交付するなど、事業所の救命講習を奨励し、応急救護体制の充実を図るものであります。
 今後とも、積極的に応急手当ての普及を推進してまいります。

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