平成十二年東京都議会会議録第十七号

○副議長(五十嵐正君) 四十八番樺山卓司君。
   〔四十八番樺山卓司君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十八番(樺山卓司君) まず初めに、オウム真理教対策について伺います。
 平成七年の地下鉄サリン事件、坂本弁護士事件など、オウム真理教団が犯した数々の凶行は、今もなお人々の脳裏に深く刻まれております。彼らは、大量殺りく行為を行った団体であるにもかかわらず、いまだに団体としての組織犯罪であることを認めておらず、その拠点となっている周辺の住民の方々に、いたずらな不安を与え続けております。
 とりわけ、教団名をアレフと改称後も、教団を事実上支配していると見られる上祐史浩氏が昨年末刑期を終え出所後、その行く先々の地域と地域住民は、過去の凶悪犯罪を極めて身近な事柄として受けとめざるを得ない状況に直面し、不安と緊張のただ中での生活を余儀なくされております。
 上祐幹部は、昨年十二月二十九日に出所後、本年九月二十日までは横浜市中区の教団施設に、そして突然、足立区保木間に移動、さらに十月八日には北区浮間、そして、ついに去る十一月七日未明、突如として私どもの葛飾区金町へと移動をしてきたのであります。そして、彼は多くの教団関係者とともに金町四丁目十番五号の金町シティハイツ四〇一号室に、まさに籠城のように立てこもり、近隣住民にいい知れぬ不安を与え続け、ちょうど一カ月後の一昨日未明、次の移動先は杉並区西荻北ではないかとの推測をしり目に、今度は大田区山王一丁目三十九番二十二号の一戸建て住宅に移動をしたのであります。
 今や主戦場は大田区山王地区へと移ったわけでありますが、ここでは、この一カ月間の金町地区での住民の方々の壮絶な闘いを振り返り、行政が主体となって、一日も早くこの問題の抜本的な解決を図るべきとの観点から質問をいたします。
 ただいま申し上げましたとおり、葛飾区金町には、去る十一月七日未明にやってきたわけでありますが、地元区である葛飾区も、これに直ちに反応し、翌十一月八日に、青木勇区長を本部長とする葛飾区オウム真理教対策本部を設置し、住民票の不受理の再確認、亀有警察署への警備要請、住民決起大会の開催等、退去を求めての一連の活動を展開をすることとなりました。
 とりわけ、この迷惑きわまる突然の闖入者に揺れる地元の自治会や近隣商店街では、年末の多忙をきわめるこの時期、仕事もご商売も全く手につかない状態の中、連日連夜にわたって監視活動や抗議行動に明け暮れ、自治会長さんを初め関係者の疲労も極限状態となっていたところでありました。
 そして、何といっても、この場所には末広小学校、金町幼稚園という教育施設が存在をし、この両小学校、幼稚園に通う多くの子どもたちにとっては、世にも怖いおじさんやおばさんたちがすぐそばにいるという不安と緊張、そして街宣車が走り回るという異様な環境の中での登下校を余儀なくされて、この状態が長く続けば、発達途上の子どもたちの心の形成に何らかの影響が及ぶのではないかとの心配の声すら上がったのであります。特に、近隣住民が一様に抱いたのは、なぜこの場所にという思いとともに、この場所が教団にとって永久的な拠点になりはしないかという不安であります。
 ちなみに、この場所は、我が会派の鈴木一光都議の自宅のすぐそばであり、私ども葛飾区選出の都議も、この際黙っているわけにはいかないとの思いから、去る十一月二十三日、今井悦豊、木村陽治、鈴木一光、そして私樺山の四名が超党派で打ちそろい上祐幹部に面会を求め、強く退去勧告を行う等、可能な限りの努力を展開をしたところでもあります。
 以上述べた現実は、平成九年一月十三日に公安審査委員会が破壊活動防止法、いわゆる破防法に基づく解散請求を棄却した時点から大いに予測ができたことでありまして、私自身は、もしあのときに破防法による解散指定が行われていればとの思いを強く抱く一人でありますが、そんな中にあって幸いとでもいうべきは、昨年十二月二十七日に、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律、いわゆる団体規制法が制定され、ことしの二月には、この団体規制法に基づく観察処分が教団に対して付され、これによって教団の活動について、一部、行政の監視下に置かれることとなったことであります。しかし、だからといって住民の不安を解消するにはほど遠く、教団幹部や信徒の移動のたびごとに、転入された地域住民は必死の思いで自己防衛をせざるを得ない現実は、以前と何ら変わることなく、恐らくこれからも、突然やってこられたオウム対地域の戦いは、さらに激化すること必定であります。
 去る一日、団体規制法に基づく立入調査が公安調査庁によって金町シティハイツになされたとのことでありますが、住民不安の解消がその目的の一つであるとするならば、少なくとも関係住民には、その内容を可能な限り公表することを公安調査庁に求めるのも行政としての責めであると考えますし、何よりも、この地域対オウムの戦いに、一日も、そして一刻も早くピリオドを打たせるために、現在の法規で考えられるありとあらゆる方法をもって、この異常集団を駆逐すべきと考えますが、都としてこの教団の動きに対してどのような対策を講じていくつもりか、願わくば住民の不安を払拭するような積極的なご回答をぜひいただきたいと思います。
 次に、身近な生活圏のまちづくりについて伺います。
 去る九月に発表された東京構想二〇〇〇の中間のまとめでは、東京圏レベルの大きな骨格的な都市構造と重なり合う形で生活圏レベルの都市構造があることを指摘をいたしました。そして、この生活圏レベルの将来の都市像として、鉄道の駅を中心とする徒歩圏などにおいて、業務・商業施設や生活機能が充実したコンパクトな生活圏のまちが実現されていくことを述べております。
 高齢化社会を迎えるこれからは、地域の核となる商業施設や子育て施設、医療・福祉、さらには教育施設などといった生活機能が集積した生活圏のまちを東京の中にきめ細かく配置して、都民にとって暮らしやすく、生き生きとしたコミュニティが根づくまちを実現していくことが重要であると考えます。
 近く東京構想二〇〇〇の最終的な取りまとめが発表されることになると思いますが、都は、この生活圏レベルの都市像の実現に向けて、どのような施策を推進していこうと考えているのか伺います。
 また、こうした生活圏のまちを実現していく上で、地域のまちづくりへの取り組みが重要であることは言を待たないわけでありますが、例えば、私の地元である葛飾区新小岩地区でも、平成十年に、生活圏の前身ともいうべき生活心しんのモデル地区の指定を受け、葛飾区がまちづくりの調査を行う一方、自治町会や商店街や地元有志が中心となって、精力的にまちづくりの勉強や研究に取り組んでおります。
 しかしながら、まちづくりをダイナミックに、そしてドラスチックに動かしていくためには、道路整備、跡地開発、駅施設の改良など、核になる事業をてこにして集中投資をしていくことなしには進まないと考えます。IT関連が牽引役となった景気の持ち直し、外形標準課税の導入などにより都税の増収が見込まれることとなっているところから、大規模インフラへの投資もさることながら、こうした生活圏のまちづくり促進のための財政支出にも十分に考慮すべきであります。
 そのために、例えば生活圏のまちづくり促進特別枠なるものを設けて、増収分の何%かをこれに充てるべきだと考えます。都は、生活圏のまちづくりへの取り組みに対して、どのように支援していこうと考えているのか、具体的な所見を伺います。
 次に、IT革命に対応した推進体制について伺います。
 IT基本法の制定やIT戦略会議におけるIT基本戦略など、国においては強力にIT化への取り組みがなされております。都においても、IT革命への対応は一刻の猶予もなく推進を図っていくべき最重要課題となっており、年内には電子都庁推進計画が提案されると聞いております。こうした取り組みを進める上で、都政の情報化を推進する体制も、これまた大変重要であります。
 我が党がこれまでに指摘したとおり、IT化はさまざまな分野が関連する総合施策であり、情報教育や情報インフラ整備など東京の地域情報化施策と、行政手続の電子化や内部事務のシステム化などの行政情報化施策は、深いかかわりを持つものであります。現在のような体制では、IT革命の波に乗りおくれることが憂慮されます。そこで、IT化に対する組織体制整備について、どのような考えなのか伺います。
 次に、我が東京都立大学の産・学・公連携への取り組みについて伺います。
 アメリカでは、シリコンバレーに代表されるように、大学の果たしてきた役割は極めて大きく、特許の活用など、大学の研究成果をもとにした大学発の企業も多く生まれており、いわゆる産・学・公の連携が、まさに現在のアメリカの産業活力の大きな要因になっているようであります。
 都においても、東京の地域産業の活性化のために、独創的な技術力や、それを事業化する企画力が何より求められ、特許の活用などが競争を勝ち抜くための決め手となる時代に入りました。こうした新技術や特許に関して、大学の研究開発力が大いに期待をされておりますが、東京都の直営大学である都立大学についても、その資源をもっともっと活用すべきと考えます。
 そこで、我が東京都立大学でありますが、詳しく調べてみますと、意外な実像が浮かび上がってまいります。まず、その難易度でありますけれども、大手予備校発表の平成十年度の受験データによれば、驚くべきことに、人文学部系では、東大、京大、外語大等々を凌駕し、全国の国公立大学中の何とトップに位置しているのであります。法学部、政治学部系でも、東大に次いで第二位。ほかの学部でも押しなべて上位にランクされ、知事の母校である一橋大学とほぼ同レベルという極めて高い評価をされているのであります。著名な卒業生としては、ニュースキャスターの小宮悦子さん、俳優の阿藤海氏、また、私の知る方としては、牧野洋一元副知事、石川雅巳元福祉局長を初めとする多くの都庁幹部職員も輩出、現在でもその三分の一が管理職となる約六百名の都庁マンが都政の最前線で活躍中であり、さらに、我が都議会でも、公明党のホープ、中嶋義雄議員が活躍中であります。(笑声、拍手)
 教授陣も多彩で、通産省の産業技術審議会委員など産・学・公連携分野で活躍している機械工学の古川勇二教授や、若者に人気の異色の社会学者である宮台真司助教授などが在籍し、最近では、理学研究科教授陣がアルツハイマー病の発症に関するたんぱく質の分解酵素カルパインを突きとめ、痴呆の進行を抑える新薬開発に貢献するなど、研究分野でも社会的な大変な成果と実績を上げております。
 以上述べたように、都立大学は小規模ながら研究水準も高く、多方面で活躍する教授などの人材も豊富、こうしたすぐれた教員や研究成果をもっと産業界や社会に還元すべきであると考えます。
 そこで、大学教員の民間企業役員の兼業等に関連してでありますが、日本でも大学教員がもっと自由に企業と共同して研究開発ができるようになれば、教員のインセンティブも高まるし、企業の技術力向上や製品化など具体的成果にも結びつきやすいのではないかと考えます。国立大学の教員が民間企業の役員等に就任することについては、ことし四月に産業技術力強化法が施行され、初めて解禁になりました。そして、その後、国立大学の教員が民間企業等の役員などに就任した例は三十件あると報じられておりますが、都立大学においてはどのような状況か、伺います。
 次に、東京の産業活性化のための大学の役割についてでありますが、大学教員の企業役員兼業が可能になったことなどをきっかけにして、都立大学がこれまで蓄積してきた高い研究レベルを、宝の持ちぐされにならないよう大いに活用すべきであると期待するわけでありますが、東京の産業活性化の起爆剤、原動力となるような心意気で、積極的にその役割を果たしてほしいとの思いから、そのご所見を伺います。
 最後に、ユース・プラザについて伺います。
 ユース・プラザは、新しい青少年社会教育施設として区部と多摩の二カ所に設置されるものであり、このうち区部ユース・プラザについては、平成十五年度、開設の計画となっております。都議会第二回定例会における教育長の答弁では、区部ユース・プラザのPFI、いわゆるプライベート・フィナンシャル・イニシアチブの略でありますが、導入に関する調査を早急に行うとのことでありました。
 PFIは、公共施設の建設、運営に民間の資金とノウハウを活用し、効率的で質の高い公共サービスの提供を図る新しい手法でありますが、区部ユース・プラザにPFIが導入されれば、都民利用施設としては初めての事例であることから、これを成功させるために十分な検討を行うことが必要であります。特に、民間事業者の自由な創意工夫を最大限に認め、利用者サービスを向上させることが重要であり、このためには従来の制度や考え方にとらわれない柔軟な発想が求められます。
 そこで、教育長に伺います。
 PFIの導入に当たっては、事業の仕組みづくりや官民のリスク分担など、検討すべき課題が多いと思われますが、現在の検討状況はどうなっているのでしょうか。
 また、PFIの趣旨を生かすため、地方自治法の公の施設の制約を外すことによって、民間事業者の弾力的な運営を可能にすることが必要と考えますが、見解を伺います。
 PFIは新しい試みであり、検討に時間を要することは承知をいたしておりますが、都民が待ち望んでいる区部ユース・プラザを予定どおり平成十五年度にオープンをさせるべきと考えますが、今後の見通しについて伺い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 樺山卓司議員の一般質問にお答えいたします。
 IT化に対する都庁の組織体制整備についてでありますが、著しいIT化の進展の中で、都民ニーズは従来の情報化施策の枠組みを超えて複雑かつ多様化しております。これらに柔軟かつ的確に対応していくためには、総合的で一体的な体制で取り組む必要があると思います。今後、電子都庁実現に向けての取り組みの中で、一元的な情報化推進体制を整備し、都政の一体化を推進してまいるつもりであります。
 他県に比べて残念ながら東京が非常におくれたという状況を、逆に一元的な推進という形で有効に利用すべく努力したいと思っております。
 さきにも申し上げたように、こういう技術体系が進んでいきますと、電子取引の正確な把握というものが難しくなって、何というんでしょうか、正確な徴税に支障を来すようなことがあってもならないと思いますので、こうした十分にあり得る将来的な問題についても、地方自治体の先頭を切って整備をしていきたいと思っております。
 なお、他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 区部ユース・プラザに関する三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、区部ユース・プラザへのPFIの導入に関する検討状況についてでございますが、現在、外部の専門機関のアドバイスを得ながら、PFIを導入した場合の事業方式や都民サービスへの効果、想定されるリスクの分担や整備に向けたスケジュール、さらに財政上のメリットなどについて鋭意検討を進めているところでございます。
 次に、PFIを導入した場合の法制度上の公の施設との関係についてでございますが、区部ユース・プラザへのPFIの導入は、民間の資金とノウハウを活用するものでございますことから、より弾力的、効率的な運営を図るため、公の施設に位置づけない方向で検討を行っております。
 次に、区部ユース・プラザの開設時期についてでございますが、区部ユース・プラザは、青少年の自立と社会性の発達を支援する新しい施設として都民の期待が高いものでありますことから、計画どおり、平成十五年度中の開設を目指し鋭意取り組んでまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) オウム真理教の活動に対する都の対応についてでございます。
 都といたしましては、平成十一年七月、オウム真理教対策連絡会議を設置して以来、団体の活動に対しまして法令を厳格に適用することなどによりまして、その活動の抑制や、周辺に居住する方々の不安の解消を図るよう努めてまいりました。
 今後とも、国や関係自治体、関係機関とも緊密な連携を図りながら、適切に対応してまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 身近な生活圏のまちづくりについて、二点お答えいたします。
 まず、生活圏レベルの都市像の実現についてでございますが、ご指摘のとおり、ゆとりと豊かさを支える都市づくりを推進するためには、広域的な拠点の育成を図る一方で、身近な生活圏にも着目し、地域の拠点となるまちを計画的に育成していくことが必要でございます。
 こうした考え方は、東京構想二〇〇〇の中間のまとめにも位置づけられているところでございます。
 今後、この構想を踏まえ、地域のニーズに応じて、地域交通を改善したり、生活機能の集積を促進するなど、コンパクトなまちを目指す地域の取り組みを支援していく考えでございます。
 次に、生活圏のまちづくりへの支援についてでございますが、都は、新小岩地区など、身近な生活圏のまちづくりに取り組む区市に対しまして、これまで、ノウハウの提供や、各種まちづくり事業への補助を積極的に行うとともに、都みずからも、地域の特性に応じて、必要な基盤整備の推進などに努めてきたところでございます。
 今後も、引き続きこうした支援を行うとともに、国に対しても補助の充実などを働きかけてまいります。
   〔都立大学事務局長川崎裕康君登壇〕

○都立大学事務局長(川崎裕康君) 都立大学におきます産・学連携についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立大学教員の民間企業役員への兼業についてでありますが、産業技術力強化法施行に伴い、東京都におきましても、大学教員や試験研究機関の研究員の兼業に関する規定が整備されました。それにより、技術移転機関や、みずからの研究成果を事業化する企業の取締役等に就任することが可能となったところであります。
 現在、本学の工学研究科の教員について、技術移転機関でありますTAMA-TLO株式会社の取締役との兼業の準備を進めており、年内にも、公立大学として全国で初めての兼業が承認される予定であります。
 今後とも、産・学連携推進の立場から、このような兼業がふえるよう積極的に対応してまいります。
 次に、都立大学が蓄積してきた研究レベルの積極的な活用についてでありますが、大学が持つ知的資源をフルに活用して東京の産業競争力を高めることは、極めて重要なことであると考えております。
 これまでも、新産業創出につながる先端的な基礎研究や、新製品開発に向けた企業との共同研究を行ってきたところであります。
 今後さらに、技術移転機関を活用した研究成果の特許化の推進などに努めるとともに、検討中の大学改革の中でも、産・学・公連携による社会貢献を重要な課題として位置づけ、持てる資源の積極的活用に努めてまいります。
   〔樺山議員「議長、再質問。三十秒あるよ」と呼ぶ〕

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