平成十二年東京都議会会議録第十七号

○副議長(五十嵐正君) 二十番中西一善君。
   〔二十番中西一善君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十番(中西一善君) 世紀を越えるこの時期、質問をさせていただくことを大変光栄と感謝しつつ、質問に入ります。
 初めに、東京から日本を変えるという石原知事の地方自治と政治的リーダーシップについてお考えをお伺いいたします。
 日本国憲法第八章にあります地方自治の本旨は、団体自治と住民自治によって実現されるといわれております。石原知事の強力なリーダーシップのもと、東京都における団体自治は見違えるように強化されてまいりました。まさに日本に東京都ありと、国民が改めて東京都を高く評価し始めたところであります。
 石原知事は、グレートコミュニケーターとして世論を喚起し、それをバックにさまざまな問題を政府や各方面に突きつけて、東京から日本を変える、国がやらないのなら東京都がやるという動きをしておられます。
 一方、住民自治の喚起については、先日のように、知事と議論する会を開催し、都民と直接コミュニケーションをされるなど、都民の意識を高揚する努力をされていることを高く評価するものであります。
 団体自治と住民自治は、いわば車の両輪であります。団体自治とあわせて、今後より一層、住民自治を喚起することが必要と思われますが、石原知事は住民自治をどのように考えておられるのか、今後どのようなことを行っていこうとされるのか、伺います。
 次に、最近、日本各地の地方政治で新しい動きが出てきております。宮城県の浅野知事、三重県の北川知事、高知県の橋本知事など、いわゆる改革派知事と呼ばれる方々が積極的な発言をし、新しい試みを次々と打ち出しております。また、つい最近の選挙では、圧倒的に強いといわれた現職やその後継者を押しのけて、まさかと思われた長野県の田中知事、栃木県の福田知事が誕生しております。
 石原知事としては、これら改革派知事の行動や新しい知事選挙の結果をどう思っておられるのか、忌憚のないご見解をお伺いいたします。
 また、石原知事は、硬直した日本の行財政構造を変えようとしない国に対し、東京から日本を変えることを強く打ち出されているところであります。これまでも首都圏サミットなどで首都圏の知事や市長をまとめ、首都移転論に対する首都圏としての反対論や首都圏としての一体性を強く打ち出されたりしているところであります。
 今後、さらに各地方から日本を変えるために、石原知事がリーダーシップをとって、今述べた改革派知事たちと、例えば改革知事連合のようなものをつくり、シナジー効果をもって力を倍増させていくようなことも必要ではないかと考えておりますが、このような試みはいかがですか。見解を伺います。
 次に、中小企業の金融に関する問題についてお聞きします。
 金融は経済の血液であります。マクロとミクロの両面があります。まず、金融のマクロ面でありますが、債券市場構想は、日本の中小企業の間接金融偏重を改める、いわばアリの一穴となるものであり、高く評価しております。
 ことし三月に、千七百社の中小企業が参加し、約七百億円もの債券が発行されたことは、直接金融への道を開き、間接金融との両立について大きな影響を与え、大変重要なことと考えます。
 そのような成果を踏まえ、先日、第二回の債券発行に向けて、参加企業の募集が開始されました。中小企業の資金調達多様化を支援し、将来的に債券市場を創設するためには、継続的に債券発行を行うことが重要であり、一方で、より直接金融の形に近づけていくことが必要であります。
 その意味で第二回の債券発行は、第一回のときよりも真価が問われるわけでありますが、第二回の債券発行はどのような特徴があるのか、伺います。
 次に、ミクロ的な面からお尋ねいたします。本年四月に、信用組合の監督業務が都道府県から国に移管され、金融検査マニュアルに沿って検査が行われております。
 ある信用組合の話などをお聞きいたしますと、この検査が非常に厳格であるということであります。余りにもしゃくし定規で、大手都銀と同一のマニュアル検査が行われると、地域に密着し、その会社の社長の人柄、能力、将来性など、実情に合わせてきめ細かな融資を行ってきた信用組合も、引当金の積み増し等により、中小零細企業への貸し出しに慎重になってくるのではないでしょうか。また、来年三月には、金融安定化特別保証制度も終了いたします。となれば、あの貸し渋り、金融収縮の悪夢が再来し、いわば金融マニュアル倒産が懸念されます。
 中小零細企業の皆様が血のにじむような努力をされ、国や都もさまざまな中小企業対策を行ってきたことで、企業の業績回復も兆しがようやく見えてきたのに、水泡に帰すことになります。中小零細企業の存亡にかかわる重大な問題であり、日本の宝であります物づくりなど技術基盤が失われるなど、取り返しのつかないことになってしまいます。
 このような厳しい見通しを踏まえ、今後、特に来年四月以降、中小零細企業の金融に関する問題についてどのように対処していくのか、伺います。
 次に、羽田空港の再拡張について伺います。
 我が東京都議会自民党は、昨日の代表質問で、知事が発表した羽田空港の再拡張、いわゆる再沖合展開に対し、我が会派の主張が反映されたものであり、全面的に協力を行うことを表明いたしました。
 東京の国際競争力を高めるとともに、日本の活性化にとって羽田の国際化は不可欠であります。そのためには、羽田空港の再拡張により発着枠を増加させることが必要であり、一日も早く羽田の再拡張を実現させることが求められるところであります。
 私がこの案に賛成し、強く要望することは、この再拡張を機に、地元住民の受けている左旋回による騒音被害を軽減することであります。羽田空港では、ことしの七月から、朝の混雑時間帯の五便に限ってでありますが、羽田空港のA滑走路から市街地側に飛行機が離陸しており、その騒音対策を要望する声が私にも地元から数多く届いております。
 しかし、今回の再拡張により、新しくD滑走路が建設できれば、北に向かって二キロ海側のC滑走路に左旋回を移すことが可能になり、市街地への騒音影響もずっと小さくすることができると考えられます。
 知事の所信表明にあったように、桟橋方式という環境にも配慮された手法で整備される再拡張案でありますので、地域住民の生活権を守ることにも十分配慮し、国際化への道を切り開くことのできるこの案を直ちに実現するよう国に強く働きかけるべきであると考えますが、都市計画局長のご所見を伺います。
 次に、羽田空港の一部に都が指定している広域避難場所の関係で伺います。
 私が調査したところによりますと、周辺住民五万二千人の災害時の避難場所となる地域に、国が五百台近くの駐車場を設置するとのことであります。運輸省東京航空局飛行場部の説明から判断すると、今回の駐車場予定地は、七カ所の候補地の中から、駐車場利用者の利便性だけを優先して選定されており、少しでも周辺地域住民への思いやりを考慮するなら、他の候補地に移すことは十分可能であります。
 三カ年の暫定利用とはいえ、人口密集が著しい地域に隣接した避難場所入り口に、ガソリンを積載する自動車の駐車場を設置することは、災害時の避難経路の遮断、また周辺地域への延焼の危険もあり、地元住民の安全を考えると、許しがたいものがあります。
 私は、羽田空港の国際化は国益のためにも絶対必要であると確信しております。現在、左旋回による騒音で、地元住民は多大な迷惑をこうむっております。このような時期に、よりによって住民の意向を逆なでするような国の駐車場設置については、都としても、地元住民の意向を踏まえ、住民の生命と財産を守る見地から国へ働きかけるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 次に、ディーゼル車対策について伺います。
 昨日の代表質問において、我が党は、都民は被害者であると同時に加害者であるという観点から、規制の実施に伴うコストについて負担の公平を図るべきことを指摘し、事業者に対する経済的支援に対する都の見解をただしたところであります。
 昨年八月に、ディーゼル車NO作戦を立ち上げた当時、都は、どのようなディーゼル車対策を進めるべきか、費用負担のあり方も含めた活発な議論を広げると説明しておりました。
 しかし、その後の経過を見ると、規制の内容についてはさまざまな議論はされましたが、費用負担のあり方については、全くといっていいほど議論の内容が聞こえてきません。規制に係る経費負担を運送事業者に一方的に押しつけることは、物価上昇をもたらして、我が国のGDPの六割を占める民間消費支出を抑制し、景気の足を引っ張ることになるわけであります。
 さらには、節税対策のために、日本の船であるにもかかわらずパナマなどの外国に船籍を移しているように、東京のトラックが他県に流出して物流網が空洞化するなど、都民の生活にも重大な影響を及ぼすことになるやもしれません。
 すべての事業者が進んで規制を遵守できる環境を整えるために、特に経営基盤の弱い中小事業者の声を十分に聞いて、大規模な支援策を検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、支援策は、その規模のみならず、内容についても十分配慮される必要があると思います。保有している車種や営業の範囲、さらには顧客層など、一口に自動車を使用する事業者といっても、その業態はさまざまであります。支援策は、個々の事業者の多様なニーズにこたえられる仕組みであって初めて有意義なものとなるのであります。
 そこで、選択の幅を広げるなど、中小事業者の立場に立った柔軟できめ細かな支援策を検討すべきであると考えますが、都の見解を伺います。
 それでは最後に、二十一世紀に向け、この本会議場にいらっしゃる議長を初めとする全議員、全会派の皆様に、この場で提案したいと思います。
 ただいま冒頭で申し上げましたように、石原東京都知事は、大変なリーダーとして、グレートコミュニケーターとして、都民に対し情報を発信し、世論を引きつけております。我々東京都議会は、知事と車の両輪として、情報を発信していかなければならない立場にあります。
 ただいま国において、党首討論、クエスチョンタイムが行われ、多くの議論を呼び起こしているところでございます。ぜひとも東京都議会においても、各会派によります討論の機会を、都議会版クエスチョンタイムを私は設けるべきだと思います。
 全議員の皆様が、石原知事に負けずにグレートコミュニケーターを目指して、私の提案にご理解いただけますよう心からお願いを申し上げ、私の一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中西一善議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、住民自治強化のために都民の意識を高揚する取り組みについてでありますが、住民の意向を地方政治に反映させるには、選挙を通じ、住民の負託を受けた首長たる政治家が、確固たる信念を持って行政の指導力を発揮する必要があると思います。
 私は、そういう姿勢を明らかにするために、折々機会をとらえて、都民が都政、国政の問題をより深く認識できるよう問題も提起し、行動もしてきたつもりでございます。今後もこういう努力を重ねてまいりたいと思いますが、しかし、その選挙の後も、選ぶだけではなしに、都民の皆さんもメディアの報道だけを頼らずに、都政に自分の視点を据えて、具体的な関心を持っていただきたいものだと思っております。
 次いで、最近の新しい知事の出現についてでありますが、知事は、議院内閣制の中で議員によって選ばれる総理大臣とは違いまして、直接選挙で選ばれる仕組みになっておりまして、それゆえにも、選挙結果には住民の見識がより鋭く反映されることになります。
 そうして選出されたあちこちの知事から、国の政治家や官僚が思いつかない新しい政策が次々に打ち出されるのは、現況の打開を望む国民の意思を反映したものであり、ごく当然の歴史的必然の成り行きであると思っております。
 最近の幾つかの知事選挙の結果は、既成概念からなかなか抜け出すことのできない既存の国の行政に対し――いや、既存の国も地方も問わず、行政に対して、国民の間に濃厚な失望感、不信感が広がっていることのあらわれだととらえております。
 次いで、他の知事との連携による日本の改革をとのご提案でありますが、東京には、教育や環境など、日本の危機の本質が非常に先鋭に顕著にあらわれております。まずは東京を再生に導くことでこのような状況を打開して、日本の改革につなげていきたいものだと思っております。
 しかし、どうも動きの鈍い国を変えるには、やはり改革意欲のある自治体が、それぞれ声を上げていくことが必要であると思っております。さらには、東京が、課題の認識や解決の方向などが一致する自治体と連携して事に当たっていくことも、極めて必要だと思っております。
 例えば、何度か行いました首都圏の七都県市の知事、市長の会議でも、これは非常になかなか有益な成果を上げておりますが、例えば首都移転に反対する根拠として、首都なるものは決して東京だけではなくて、この七都県市が機能として構成しているという新しいアイデンティティーというものを確かに取りつけることができました。これは非常にいい傾向だと思いますし、でき得れば七都県市を構成している各自治体の議員の皆さんも相互に交流して、ひとつそういった発想なり、行政に対する新しい刺激を講じていただきたいものだと思っております。
 最後に、羽田空港の再拡張についてでございますけれども、従来、政府・与党に強く、かなり激しくせかして申し込んでまいりましたが、先ほども、大西議員の質問にもお答えしましたように、きょう、自民党の政調会長と他の用件で話しているときに、亀井さんから確認をしてもらいまして、正式にこれが政府の軌条に乗り、調査費として国庫からの支出が決まりました。これでまたこの問題、一歩前進すると思います。私たち、油断なく、これが早期に実現するように、議会とも諮りながら努力していきたいと思っております。
 他の質問は、関係の局長がお答えいたします。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 中小企業金融についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、第二回の債券発行の特徴についてでございますが、ご指摘のとおり、金融をマクロの面からとらえ、今回は、より直接金融本来の姿に近づけるために、東京信用保証協会の保証を活用しながら、中小企業の信用力を裏づけとする債券も発行するとともに、財務内容が良好な中小企業については、負担金利を優遇することとしております。また、より多くの金融機関の参加を可能とするために、手形を併用することとしております。さらに、優秀な中小企業への投資を広く一般から求めるために、債券は公募で販売する方向でございます。
 次に、来年四月以降の中小零細企業の金融に関する対応についてでございますが、ご指摘の、金融機関の経営の健全性確保を目的とした金融検査マニュアルの適用により、万が一にも金融収縮の再来というような事態があってはならないと考えており、注意深く見守っていくことが必要であります。
 また、安定化特別保証制度が来年三月に終了することから、国においては、信用保険法等の一部改正による信用補完制度の充実が進められており、都においても、これを受けて制度融資の見直しを検討しているところでございます。
 今後とも、中小企業の資金調達の円滑化に万全を期してまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 羽田空港内の広域避難場所についてでございますが、旧B滑走路西側地域の一部は、現在、大田区羽田、東糀谷など地元住民のために避難場所として指定されております。
 当該地域への駐車場設置は、空港東旅客ターミナルビル建設のための暫定的なものでございます。
 また、国よりこの敷地に見合う空港用地を新たに避難スペースとして提供する旨の申し出を受けておりますが、都といたしましては、住民の安全確保を最優先と考え、住民の避難経路の確保や避難誘導に支障が生じることのないよう、地元の大田区や国など関係機関との調整を進めてまいります。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) ディーゼル車規制に伴う事業者への支援策についてでありますが、ディーゼル車に対する規制の実効性を高めるためには、規制に伴う経費を社会全体で負担する仕組みを構築し、多くの都民、事業者の協力を得ることが重要であります。
 特に、規制の対象となる事業者の業態はさまざまでありまして、お話しのように、柔軟できめ細かな支援策も大切なことと認識しております。
 したがって、こうした点に十分配慮しながら、できるだけ事業者の声を聞き、理解と協力を得られるよう、努めてまいります。

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