平成十二年東京都議会会議録第十七号

○副議長(五十嵐正君) 八十九番新藤義彦君。
   〔八十九番新藤義彦君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○八十九番(新藤義彦君) 初めに、介護保険制度についてお伺いします。
 昨年十月の介護保険、要介護認定事務などの事前準備に引き続き、ことしの四月から介護保険制度がスタートしました。さらに、この十月から第一号被保険者の保険料徴収も始まり、名実ともに介護保険制度が本格的に実施された感じがいたします。これまで、国も都も、また保険者である区市町村も、そして何よりも都民自身も悩み考え模索して今日に至ったと思います。この間、都当局並びに関係機関の皆様のご尽力に感謝申し上げます。
 しかし、制度の継続的かつ安定的な運営を目指すことはこれからであると考えられます。むしろこれからの方が制度の定着に向けて責任が重いように思われます。
 例えば、サービス供給体制の整備については、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの施設サービス、また、訪問介護や通所介護などの在宅サービスについて、都では、平成十二年三月に東京都高齢者保健福祉計画を策定し、積極的にサービス供給基盤づくりに努めていると伺っております。
 今後とも、国、都、保険者である区市町村、そして都民の皆さんとも十分な調整をしながら、介護サービス供給体制の整備や制度の安定的運営を目指していただきたいと存じます。
 ところで、私も都民の皆さんから保険料や利用料の減免についてお話を伺ったり、また、新聞でサービスの利用率が半分を下回っているとの関係記事を目にしました。そこで、低所得者への対応についてお伺いします。
 介護保険制度になって、サービスの提供がこれまでの措置から契約に変更になって、サービスの利用者は一割の負担をすることになりました。この一割の利用料負担が重いために、利用者がサービスの利用を手控えているとも一部でいわれていますが、一方、サービスが以前に比べると受けやすくなったと喜ぶ声も聞いています。もちろん、要介護認定を受けても、また、サービスの提供基盤が整備されていても、安心して介護保険のサービスを利用できなければ、介護保険制度が実施された意味はありません。
 実際に利用料負担がサービスの利用を抑制しているのか、所見をお伺いいたします。
 また、都内を初め、全国の区市町村の中には、低所得者に対して、保険料の減免や利用料の軽減策を独自に実施しているところがあります。こうした保険者ごとの対応は、介護保険制度が幾ら自治事務であるからといっても、制度を長期的に見た場合、安定的な運営につながるといえるのか、私としても疑問に思っております。
 なぜならば、第一号被保険者の保険料については原則五段階方式として、所得の低い世帯には一定の配慮がなされています。また、サービス利用に当たっても、国は特別対策として一定の経過措置を設けています。
 これらの対策があるにもかかわらず、制度発足間もない現時点において、保険者が独自に保険料や利用料の軽減策を安易に講ずるのはいかがかと思っています。低所得者に対する配慮は既になされているということを、保険者である区市町村を初め都としても、多様な広報の手段を活用して、正しく都民にお知らせすることが重要であると考えておりますが、その所見をお伺いいたします。
 次に、都保健所のあり方についてお伺いします。
 介護サービスや福祉サービスの整備充実もさることながら、都民の健康を守るための地域保健対策も大切であります。
 とりわけ、エイズやクロイツフェルト・ヤコブ病などの特殊疾病、O157などの食中毒、アレルギー疾患、生活習慣病など、都民の健康を阻害する要因は数多くあります。
 これまで、多摩地域においては保健所を中心に対応してきたところであり、高く評価するところであります。
 現在、地方分権の推進等により、保健・医療・福祉サービスが従来にも増して区市町村を中心として展開されてきております。既に平成九年度には、母子保健事業などの住民に身近で利用頻度の高い保健福祉サービスが市町村に移譲され、精神障害者に関する事務の一部も平成十四年度には区市町村に移譲されることになっております。
 このような状況の変化の中にあっても都保健所の果たす役割は重要と考えておりますが、都保健所はどのような役割を担っていくべきとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
 次に、労働経済局における今後の事業展開にかかわる新たな推進体制についてお伺いします。
 労働経済局は、東京都の農林水産、商工、労政等を所管する窓口で、産業経済、労働面の身近な存在として、長年その役割を果たしているところでございます。
 労働経済局では、七月に産業振興ビジョンを発表し、新たな施策展開に的確に対応するための組織体制を整備することが喫緊の課題であるとしていますが、さらに東京構想二〇〇〇、多摩の将来像を踏まえ、多摩地域の特性に合わせた産業政策並びに労働政策を着実に推進する機能の整備を図るべきと考えます。社会経済情勢の変化に応じた的確な施策の推進と執行体制の整備を図ることは当然であり、むしろその変化に対応しないのは、怠慢と退歩以外の何物でもありません。
 こうした状況を踏まえ、新たな労働経済行政の推進体制など、次の三点についてお伺いします。
 まず、多摩地域中小企業振興センターについて伺います。
 昨日の本会議において我が党の山崎議員の代表質問に対し、多摩地域中小企業振興センターについては、厳しい都財政などを踏まえると当初計画を変更せざるを得ないが、施設開設までの当面の措置として、経営、技術の支援拠点としての整備について検討していくと答弁されました。
 整備に当たっては、最近のIT革命に代表される多摩地域の産業を取り巻く環境変化、中小企業のニーズなどを踏まえて、その機能を検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
 また、多摩地域の今後の産業振興を図るためには、立川基地跡地に建設することになっている本格的な多摩地域中小企業振興センターを早期に設置することが必要であると考えますが、ご所見をお伺いします。
 二点目は、勤労者福祉施策についてであります。
 働く人々の価値観や就業構造の多様化が進行する中で、働く人々が人間性豊かな安定した勤労者生活を送っていくためには、今後とも時代のニーズに即応した勤労者福祉施策の構築が必要であると思います。
 今後、都は、市や町の役割分担を踏まえ、地域の特性を踏まえた勤労者福祉施策をどのように展開していこうとしているのか、お考えをお伺いします。
 次に、高齢者の就業対策についてお伺いします。
 近年、東京の高齢化は急速に進んでおり、その中でとりわけ注目されるのが、健康なうちは働くことを希望する高齢者の急増であります。
 しかしながら、現在、多くの企業が六十歳定年制を設けている中で、年金の支給開始年齢は段階的に六十五歳に引き上げられることに決まっております。この間に安定した収入を得るべき雇用機会の確保をどうするか、また、年金支給開始年齢の六十五歳に達した以降も、さまざまな形の就業機会の確保をいかに図っていくかは、これからの対応が待たれる問題として残されている状況にあります。
 私は、東京が今後とも日本をリードする先進都市としてその活力を維持向上していくためには、産業施策や福祉施策の充実とあわせ、増大する高齢者の旺盛な就業意欲とこれまでに培った経験や能力を、社会を支えるエネルギーとして有効に活用していく社会づくりが求められていると考えますが、知事のご所見をお伺いします。
 次に、大規模小売店の出店についてお尋ねいたします。
 これまで、大型小売店の出店等に当たっては、大規模小売店舗法、いわゆる大店法に基づいて、地元の商店街等の小売商業者との調整が行われてまいりました。具体的には、大規模小売店の出店によって、その地域において、地元の商業集積に不当に過度の影響が生じないように、大型店の開店日や店舗面積、閉店時刻、休業日数を調整した上で出店するという仕組みでありました。
 しかしながら、近年の規制緩和の流れを受けて、本年の五月末に旧大店法は廃止され、新たに大規模小売店舗立地法が施行されました。この新法は、これまでの商業調整とは異なり、出店地域周辺の生活環境との調整が求められております。
 大型小売店が出店するということは、いうまでもなく、地元の商店街のみならず地域全体の生活環境に大きな影響を及ぼすものであります。その意味で、新たな大規模小売店舗立地法が施行されることについては、大きな役割が期待されており、まちづくりの中での商業の振興、発展が位置づけられているものと考えております。
 そのように考えてきたときに、幾ら規制緩和とはいうものの、もし新たな大規模小売店舗立地法において求められているような規制の内容や水準を守らないで出店するような大型店を認めていかざるを得ないようなことがあれば、大きな問題や影響を地域に与えます。
 そこで、新たな大規模小売店舗立地法に基づく今後の届け出案件の処理について、改めて都としてどのような考えに基づいて審議、検討を進めていこうとしているのか、お尋ねいたします。
 次に、さきに触れました多摩地域中小企業振興センターが新たに立地を予定する立川基地跡地昭島地区の土地利用構想についてお伺いします。
 新しい地域中小企業振興センターの建設には、この土地利用構想の実現が重要であるからであります。
 東京都は、一昨年十一月に、立川基地跡地昭島地区の開発について、地元立川市、昭島市両市の合意のもとに土地利用構想を発表しました。当地区は、JR青梅線東中神駅北側に位置し、立川基地跡地の約六十六ヘクタールを含む、総面積七十九ヘクタールの地域です。
 土地利用構想については、水と緑による環境づくりをテーマとした、潤いのある市街地整備を行うとしております。約二十二ヘクタールの流域下水処理場、その上部約六ヘクタールを含む十五ヘクタールの都立総合公園、その他、商業・業務地及び住宅地などが計画されております。そして、多摩地域中小企業振興センターは、この商業・業務地に建設されることになっています。
 立川基地跡地昭島地区の整備については、昭和五十二年の全面返還以来、二十年以上が経過しており、地元としても長年の懸案であるとともに、周辺地域の多くの市民からも早期整備が切望されているところでもあり、東京都の構想実現に大きな期待が寄せられているところであります。
 このような立場から、私は昨年、第一回定例会において、昭島地区の土地利用構想の進め方や内容について詳細に質問したところでありますが、その後の進捗状況はどうなっているのか。また、多摩都市整備本部が既に事業化を目的とした地元説明会等を実施していると伺っておりますが、今後のまちづくりに向けて、地元市や地元住民とどのような対応を行っていくのか、お伺いいたします。
 以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 新藤義彦議員の一般質問にお答えいたします。
 高齢者の意欲と能力を有効に活用できる社会づくりについてのご質問ですが、急速な高齢化が進展する中で、東京が全国に誇れる活力ある高齢社会を実現するためには、何といっても、高齢者が長年培ってきた経験や知識、旺盛な意欲を活用して、希望すれば年齢にかかわらず社会の担い手として活躍できる環境づくりが重要であると思っております。
 このため、今後とも、地域に密着した雇用、就業機会の提供や、職業能力の開発などの支援を行って、高齢者が生き生きと働けるように取り組んでいきたいと思っております。
 なお、新規に設けて実施いたします政策指標の一つとしても、数字を構えまして、六十五歳以上の高齢者の就業率というんでしょうか、そういったものを高い数値に設けて、その実現に多角的に努力していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 介護保険制度につきまして、二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、介護サービスの利用状況でございますが、国の資料によりますと、既に七月の時点でも、制度開始前に比べ、サービス利用者数が増加しているのに加え、サービスの利用量も従来からの利用者の約七割においてふえております。
 サービス内容への満足度につきましても、約八割の利用者がおおむね満足と回答いたしております。
 こうしたことから判断いたしますと、利用料負担がサービスの利用を抑制しているとはいえないと考えております。
 次に、低所得者への対応策の周知についてでございますが、ご指摘のとおり、介護保険制度におきましては、低所得者への配慮として、所得に応じた保険料の設定方式や、利用料負担が著しく高額とならないための仕組みが設けられております。
 また、生活保護制度におきましても、介護保険のスタートに合わせて、新たに保険料や利用料が扶助の対象とされております。
 これまでも、テレビ等の都提供番組やリーフレット等を活用いたしまして、これらの負担軽減策を含めた制度の広報に努めてまいりましたが、都民の理解が一層深まるよう、区市町村とも連携しながら、今後さらに積極的に取り組んでまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 今後の都保健所の役割についてでございますが、ご指摘のとおり、地方分権が進む中、保健、医療、福祉の分野で、母子保健事業の市町村移管など、区市町村を中心とした施策が進展しております。
 このような流れを踏まえ、都保健所は、その専門性を生かして市町村を支援しつつ、市町村の区域を超える施策の企画調整、健康危機対策など、広域的、専門的、技術的機能の充実へとシフトを移してまいります。
 今後とも、都は、地元市町村と適切な役割分担を図りながら、地域保健施策の一層の推進を図ってまいります。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩地域における中小企業への当面の支援拠点の機能についてのお尋ねでございますが、多摩地域の中小企業の振興のためには、経営と技術が一体となって支援することが必要でございまして、こうした考え方に基づいて、支援拠点の機能について検討してまいります。
 なお、検討に当たっては、大学などが多数立地していることや、圏央道、多摩都市モノレールなど交通インフラの一層の充実が見込まれるなど、大きなポテンシャルを有する多摩地域の特性に配慮するとともに、中小企業の情報技術に対するニーズなどにも的確に対応してまいります。
 次に、本格的な多摩地域中小企業振興センターの早期設置についてのお尋ねでございますが、厳しい都財政の状況を踏まえると、当初の計画を変更せざるを得ない状況ではございますが、できるだけ早期に設置していくことが望ましいと考えております。
 今後、地元商工団体や学識経験者などから成る設置検討委員会において、機能や建設方法などの検討を行っていく予定でございまして、本格設置のための基本計画の策定に向け、必要な調査検討を行ってまいります。
 次に、地域の特性を踏まえた勤労者福祉施策の展開についてのお尋ねでございますが、多摩地域における勤労者福祉施策については、市が設置する中小企業勤労者福祉サービスセンターなどへの支援を行うとともに、勤労福祉会館を拠点に事業を展開してきたところでございます。
 地域における勤労者福祉施策につきましては、身近な基礎的自治体が、地域の実情に合わせて主体性を持って取り組んでいくことが基本であると認識しています。
 今後とも、この基本認識に基づき、市町村と密に連絡をとりながら、多摩地域の勤労者福祉施策をさまざまな観点に立って進めてまいります。
 最後に、大規模小売店舗立地法に基づく、今後の届け出案件の処理についてのお尋ねでございますが、新たな大規模小売店舗立地法においては、出店地域周辺の生活環境との調和を図るため、店舗を設置する者が配慮すべき事項といたしまして、必要な駐車場の確保、騒音の低減化、廃棄物の保管、処理スペースの確保などに関する指針が定められております。
 都としては、本法律の趣旨に基づき、地元自治体の意見を聴取するとともに、大規模小売店舗立地審議会による審議を踏まえて、適切な処理を進めてまいります。
   〔多摩都市整備本部長田原和道君登壇〕

○多摩都市整備本部長(田原和道君) 立川基地跡地昭島地区の土地利用構想についてでございます。
 当地区は、基地跡地とJR東中神駅北側の既成市街地から成っております。平成十年十一月の土地利用構想策定以降、地元昭島、それから立川の両市とともに協議の場を設置をいたしまして、検討を重ねてきているところでございます。
 地元住民等への対応につきましては、平成十一年一月から、土地区画整理事業に関する説明会や事業手法の勉強会を開催するなど、事業について住民の方々に理解をしていただくための取り組みを進めてまいっております。
 また、地元昭島市におきましても、駅周辺のまちづくりのあり方について、地権者や学識経験者から成る協議会を設けまして検討を行っております。この会には、東京都も参加をしております。
 都といたしましては、今後も昭島市、立川市と連携を図りながら、地元住民の理解をいただきまして、構想の具体化に向けて努力をしてまいります。

○議長(渋谷守生君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時十九分休憩

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