平成十二年東京都議会会議録第十五号

平成十二年十二月一日(金曜日)
 出席議員(百十九名)
一番織田 拓郎君
二番中嶋 義雄君
三番羽曽部 力君
四番服部ゆくお君
五番真鍋よしゆき君
六番松原 忠義君
七番町田てるよし君
九番大西由紀子君
十一番林  知二君
十二番福士 敬子君
十三番山本  信君
十四番くぼた 光君
十六番木内 良明君
十七番藤井  一君
十八番東野 秀平君
二十番中西 一善君
二十一番田代ひろし君
二十二番川井しげお君
二十三番いなば真一君
二十四番近藤やよい君
二十六番藤田十四三君
二十七番大河原雅子君
二十九番土屋たかゆき君
三十番竹下 友康君
三十一番田中 智子君
三十二番浅川 修一君
三十三番清水ひで子君
三十四番吉田 信夫君
三十五番かち佳代子君
三十六番鈴木貫太郎君
三十七番森田 安孝君
三十八番谷口 卓三君
三十九番今井 悦豊君
四十一番高島なおき君
四十二番鈴木 一光君
四十三番小礒  明君
四十四番倉林 辰雄君
四十五番遠藤  衛君
四十六番野田 和男君
四十七番三原 將嗣君
四十八番樺山 卓司君
四十九番藤田 愛子君
五十番沢西きよお君
五十一番和田 宗春君
五十二番西条 庄治君
五十三番馬場 裕子君
五十四番藤岡 智明君
五十五番古館 和憲君
五十六番小竹ひろ子君
五十七番小松 恭子君
五十八番前沢 延浩君
五十九番大木田 守君
六十番曽雌 久義君
六十一番石川 芳昭君
六十二番白井 常信君
六十三番前島信次郎君
六十四番大西 英男君
六十五番田島 和明君
六十六番吉住  弘君
六十七番三宅 茂樹君
六十八番古賀 俊昭君
六十九番吉野 利明君
七十番比留間敏夫君
七十一番星野 篤功君
七十二番山本賢太郎君
七十三番松本 文明君
七十五番坂口こうじ君
七十六番田中  良君
七十七番寺山 智雄君
七十八番大山とも子君
七十九番曽根はじめ君
八十番たぞえ民夫君
八十一番松村 友昭君
八十二番丸茂 勇夫君
八十三番五十嵐 正君
八十四番石井 義修君
八十五番萩谷 勝彦君
八十六番桜井良之助君
八十七番田村 市郎君
八十八番花川与惣太君
八十九番新藤 義彦君
九十番野村 有信君
九十一番宮崎  章君
九十二番井口 秀男君
九十三番藤沢 志光君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十七番大山  均君
九十八番藤川 隆則君
九十九番河合秀二郎君
百番尾崎 正一君
百一番東ひろたか君
百二番野村 友子君
百三番池田 梅夫君
百四番村松みえ子君
百五番植木こうじ君
百六番土持 正豊君
百七番中山 秀雄君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番白井  威君
百十二番山崎 孝明君
百十三番佐藤 裕彦君
百十四番川島 忠一君
百十五番矢部  一君
百十六番内田  茂君
百十七番三田 敏哉君
百十八番渋谷 守生君
百十九番田中 晃三君
百二十番奥山 則男君
百二十一番三浦 政勝君
百二十二番嶋田  実君
百二十三番小林 正則君
百二十四番西田ミヨ子君
百二十五番渡辺 康信君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(二名)
十九番  原  環君
七十四番 山崎 泰君
 欠員
八番   十番   十五番
二十五番 二十八番 四十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山やすし君
副知事浜渦 武生君
出納長佐々木克己君
教育長横山 洋吉君
政策報道室長安樂  進君
総務局長大関東支夫君
財務局長木内 征司君
警視総監野田  健君
主税局長大塚 俊郎君
生活文化局長高橋 信行君
都市計画局長山下 保博君
環境局長中野 英則君
福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川 燿男君
衛生局長今村 皓一君
労働経済局長浪越 勝海君
住宅局長戸井 昌蔵君
消防総監池田 春雄君
建設局長古川 公毅君
港湾局長齋藤 哲哉君
交通局長寺内 広壽君
水道局長赤川 正和君
下水道局長横山 博一君
都立大学事務局長川崎 裕康君
多摩都市整備本部長田原 和道君
中央卸売市場長大矢  實君
選挙管理委員会事務局長南  靖武君
人事委員会事務局長中山 弘子君
地方労働委員会事務局長歩田 勲夫君
監査事務局長久保田康治君
収用委員会事務局長安間 謙臣君

十二月一日議事日程第一号
第一 第二百七十八号議案
  平成十二年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第二 第二百七十九号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第二百八十号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第二百八十一号議案
  東京都震災対策条例
第五 第二百八十二号議案
  東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例の一部を改正する条例
第六 第二百八十三号議案
  東京都議会議員及び東京都知事の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部を改正する条例
第七 第二百八十四号議案
  東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第八 第二百八十五号議案
  東京都教職員研修センター設置条例
第九 第二百八十六号議案
  東京都教育相談センター設置条例
第十 第二百八十七号議案
  都民の健康と安全を確保する環境に関する条例
第十一 第二百八十八号議案
  東京における自然の保護と回復に関する条例
第十二 第二百八十九号議案
  火薬類取締法関係手数料条例の一部を改正する条例
第十三 第二百九十号議案
  東京都環境衛生適正化審議会条例の一部を改正する条例
第十四 第二百九十一号議案
  東京都動物の保護及び管理に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百九十二号議案
  東京都中山間地域等農業活性化支援基金条例
第十六 第二百九十三号議案
  東京都営空港条例の一部を改正する条例
第十七 第二百九十四号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第二百九十五号議案
  東京消防庁の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百九十六号議案
  都営住宅十二H―一〇四北(村山)工事請負契約
第二十 第二百九十七号議案
  都営住宅十二H―一〇六北(村山)工事請負契約
第二十一 第二百九十八号議案
  戸吹トンネル(仮称)整備工事(その一)請負契約
第二十二 第二百九十九号議案
  神田川・環状七号線地下調節池(第二期)善福寺川取水施設工事(その四)請負契約
第二十三 第三百号議案
  平成十二年度新海面処分場Gブロック西側護岸地盤改良工事(その一)請負契約
第二十四 第三百一号議案
  高砂橋鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十五 第三百二号議案
  消防事務の受託の廃止及び受託について
第二十六 第三百三号議案
  当せん金付証票の発売について
第二十七 第三百四号議案
  東京空襲犠牲者を追悼し平和を祈念するための碑の建設募金の寄附受領について
第二十八 第三百五号議案
  東京スタジアムの買入れについて
第二十九 第三百六号議案
  都道の路線の廃止について
第三十 第三百七号議案
  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三百八号議案
  職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三百九号議案
  東京都知事等の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三百十号議案
  学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三百十一号議案
  学校職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 平成十一年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について

   午後一時四分開会・開議
〇議長(渋谷守生君) ただいまから平成十二年第四回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(渋谷守生君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   十二番  福士 敬子さん 及び
   六十五番 田島 和明君
を指名いたします。

○議長(渋谷守生君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(會田紳次君) 平成十二年十一月二十四日付東京都告示第千三百四十二号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案三十四件の送付がありました。
 次に、知事より、平成十二年第三回定例会の会議において同意を得た東京都監査委員、東京都教育委員会委員、東京都公安委員会委員及び東京都固定資産評価審査委員会委員の任命について、発令したとの通知がありま
した。
 次に、東京都人事委員会より、平成十二年十月五日付で、都の一般職の職員の給与について勧告がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、知事より、地方自治法第二百四十一条第五項の規定により、平成十一年度東京都区市町村振興基金、東京都土地開発基金及び東京都用品調達基金の運用状況に関する調書等の提出がそれぞれありました。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。

○議長(渋谷守生君) この際、議員の表彰について報告いたします。
 平成十二年十月二十六日付をもちまして、全国都道府県議会議長会において、自治功労者として表彰を受けられました方々をご報告申し上げます。
 在職三十年以上、奥山則男君。
 在職二十年以上、清原錬太郎君、田中晃三君、三田敏哉君、藤田十四三君、河合秀二郎君、池田梅夫君、木村陽治君、今井悦豊君、五十嵐正君、秋田かくお君、前島信次郎君、石井義修君、立石晴康君、白井常信君、小山敏雄君、石川芳昭君。
 在職十五年以上、尾崎正一君、井口秀男君、花川与惣太君、谷口卓三君、嶋田実君、渡辺康信君、西田ミヨ子さん、土持正豊君、大木田守君、中山秀雄君、川島忠一君、曽雌久義君、坂口こうじ君、矢部一君、佐藤裕彦君。
 在職十年以上、山本賢太郎君、山崎孝明君。
 ここに謹んで敬意を表します。
   〔拍手〕

○議長(渋谷守生君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第三回定例会に提出されました、藤田十四三君、大河原雅子さん、和田宗春君、前沢延浩君、たぞえ民夫君、松村友昭君、花川与惣太君及び木村陽治君の文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る十一月十七日付をもって、総務委員樺山卓司君から厚生委員へ、厚生委員佐藤裕彦君から総務委員へ、それぞれ常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の許可のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長許可のとおり承認することに決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の平成十一年度公営企業会計決算特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 去る十月十日付をもって、森田安孝君より辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、十月十一日付をもってこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました特別委員の辞任に従い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、同日付をもって前島信次郎君を指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、議長指名のとおり承認することに決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十二月十五日までの十五日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十五日間と決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 今世紀最後の定例会となる平成十二年第四回都議会定例会の開会に当たり、私の都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会並びに都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 三宅島は、最初の火山活動から五カ月以上が経過いたしました。爆発的な噴火の可能性は低くなったものの、依然、有毒な火山ガスが多量に発生しており、島民全員が島外での退避生活を余儀なくされております。九月中旬からは、保安要員が島へ上陸することさえ危険な状態が続いており、まことに残念ながら、退避生活がさらに長引くことも覚悟しておく必要があると考えられます。
 東京都は、安全が確認できた際に、一日も早く帰島がかなうよう、可能な限りの対策を講じております。十月には、現地の災害対策本部を神津島に移すとともに、専門家による三宅島火山活動検討委員会を設置いたしました。現地では、観測態勢と通信機能の確保、ライフラインの維持活動に力を尽くしております。
 一方、新島、神津島などで長期にわたり続いていた地震活動は、地殻変動も含め、ほぼおさまったといわれております。本格的な復興に向け、住宅、道路、漁港などの復旧作業を急ピッチで進めております。
 冬の到来を前に、生活支援のための応急措置や、道路、河川の復旧、産業復興などを滞りなく実施するため、伊豆諸島の災害対策に必要な補正予算を編成いたしました。
 政府は、昨日、三宅島からの退避が長期化することも念頭に、支援策を講じることを決定しており、東京都は、本日、全世帯を対象に被災者生活再建支援法を適用することにいたしました。今後、関係機関と連携しながら、同法に基づく支援金の支給手続を早急に進めるとともに、就労対策や教育面での支援を強化してまいります。
 この間、非常に多くの方々から心温まるご支援をいただいております。東京都などに寄せられた義援金については、昨日までに、三宅村、新島村、神津島村へ合わせて十四億円を配分いたしました。これまでの皆様のご厚情に対し、深く感謝を申し上げます。
 島の方々、とりわけ帰島を願いながら果たすことのできない三宅島の方々に、心よりお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い災害の終息と島の復興を願っております。島が安寧を取り戻すまで、関係機関と連携を密にしながら、全力で支援を続けてまいります。島民の皆様には、直面する困難に決して負けることなく、この危機を乗り越えていただきたいと思います。
 東京の大気は、他の都市と比べ著しく汚染が進んでおり、多くの都民の健康がむしばまれております。
 大気汚染の元凶であるディーゼル車対策として、昨年よりディーゼル車NO作戦を展開しておりますが、いよいよ本格的な規制に乗り出すことにいたしました。
 九月には、大気汚染を増幅し脱税の温床ともなっている粗悪な軽油を追放するため、不正軽油撲滅作戦を開始いたしました。悪質な小売業者の摘発はもちろんのこと、製造、流通の段階からもメスを入れるべく、路上における抜き取り検査、販売元、製造元への追跡調査などを行い、製造基地の発見に努めております。さらに、都内最大の事業者として、東京都発注の工事現場から不正軽油を排除いたします。
 私は、この大規模な作戦を成功させるため、時に陣頭指揮もとりながら、東京都の総力を傾ける決意であります。
 今定例会には、自動車公害対策を初めとする環境問題全般への取り組みを強化するため、制定以来三十年以上が経過した公害防止条例の全面改正を提案しております。名称を都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に変更するとともに、数多くの新しい対策を講じております。
 条例改正の中心となるディーゼル車規制は、全国で最も厳しいものとなります。東京都独自の排出ガスの基準を設定し、基準を満たさないディーゼル車に対しては走行を禁止するとともに、大規模事業者には、低公害車の導入を義務づけました。規制が遵守されるよう、自動車Gメンも新設し、検査、摘発に当たるほか、罰金刑など厳しい制裁をもって臨むことにしております。
 このほか、温暖化やオゾン層の破壊が進む地球環境を守るため、二酸化炭素の削減やフロン規制の強化を重点的に推進いたします。さらに、トリクロロエチレンの適正管理など、有害化学物質対策に取り組んでまいります。一連の対策は、拱手傍観している国にかわり環境を守る、画期的なものであると考えております。
 環境問題は、我々が現代文明による恩恵を享受する限り、継続的な取り組みを必要とする分野であります。平成九年に策定した環境基本計画は、時代の変化に立ちおくれており、全庁的な推進体制の再構築が必要なことから、早急に全面改正し、都民の健康と安全を守るために必要な、先駆的な施策を展開いたします。
 財政再建は、就任以来、最も腐心している問題であります。
 これまで東京都は、巨額の歳入欠陥を、他会計からの借入金や減債基金積み立ての一部先送りなどにより何とか穴埋めをし、財政再建団体への転落を回避してまいりました。今や、このような隠れ借金は、総額で八千億円近くに達しております。これは、非常事態を乗り切るためのあくまで緊急避難的な措置であり、一日も早く解消すべき性格のものです。
 今年度の都税収入は、相当程度の増加が見込まれてはおりますが、隠れ借金を解消させるには、なおなお不十分な額としかいいようがありません。七兆円を超える都債残高や二年連続の赤字財政に加え、老朽化した施設の更新など、将来に大きな負担となる事業が多数存在することを考え合わせると、都財政は、危機的状況が続き、まだまだ前途多難であります。
 現在、財政再建二年目となる来年度の予算編成を進めておりますが、都債の償還経費や退職手当が増大し、財政の硬直化はさらに進行するばかりであります。施策の見直しなど思い切った構造改革を一層強力に進める必要があります。
 間もなく二十一世紀を迎えようとする今日、世界に目を転ずると、東京は、躍動を続ける国際的な大都市と比べ、多くの致命的欠陥を有し、競争力を失いつつあります。東京の将来を考えた場合、都財政がいかに厳しくとも、首都機能の充実、新しい産業の創出、福祉、医療の改革など、都市の活性化につながる事業には、時機を逸することなく財源を重点的に投入することも必要であります。施策を厳選し、将来の財政負担を見通すことで、財政再建をなし遂げながら、東京を再生させる政策を早急に取りまとめ、これを緻密に進めていきたいと考えております。
 財政再建と東京の再生という二つの大きな課題を抱え、極めて難しいかじ取りを迫られておりますが、都議会並びに都民の皆様のご協力を得ながら、この難局を乗り切ってまいります。どうかよろしくお願いいたします。
 次に、我が国の発展と東京の再生に直結する、東京圏のこれからの都市基盤整備のあり方について申し上げます。
 国家の大事を考える場合、広範な議論と、その前提となる多くの基礎調査及び情報公開があってしかるべきでありますが、事首都移転に関しては、そうした手続が全く欠落しております。
 例えば、政府は、すべての新規公共事業に費用対効果の分析を義務づけており、今年度の道路整備だけでも、既に二百カ所を超える新規事業を評価しております。しかしながら、史上最大の公共事業ともいうべき首都移転については、調査分析を全く怠り、経済的妥当性すら確認しておりません。
 そのため東京都は、対応の遅い国にかわって、先月、三カ所の候補地すべてを対象に、移転に要する費用と、移転がもたらす便益とを比較検証いたしました。その結果、移転を遂行した場合、我が国に四兆円から六兆円を超える巨大なむだの発生することが明らかになりました。首都移転は、社会的、国際的、文化的な面、どの面から見ても、国民の利益を損なうものでしかありませんが、経済的な面からも、論ずるに足りない計画であることを裏づけるものとなりました。
 今日、先進国と呼ばれ、世界をリードすべき地位にある国の中で、このような膨大な手間と経費、そして大きな混乱をもたらす事業計画をしている国は、残念ながらこの日本だけであります。国家の間で生き残りをかけた必死の競争が進行している今、首都移転に国力を割いているいとまなど決してないはずであります。首都移転は、最後まで残されたバブルの大いなる負の遺産であり、移転反対は、東京のみならず、東京圏を構成する七都県市すべての一致した見解であります。
 私は、日本の将来のため、都議会の皆様とかたく連携しながら、国に対し、首都移転の白紙撤回を強く強く働きかけてまいります。
 今、政府が国家戦略として取り組むべきことは、日本のダイナモである東京圏に、国家予算を重点的、集中的に配分することであります。
 圏央道、外環道などいわゆる三環状道路は、完成に約九兆円の事業費を要する巨大なプロジェクトでありますが、一方で、経費の九倍を超える整備効果が期待できます。連続立体交差事業は、交通混雑の解消や沿線市街地の一体化はもとより、安全対策や環境改善にも結びつく多面的な効果を生み出す事業であります。そのほか、環状二号線と晴海通りの延伸、湾岸道路の東京港トンネル部分、城南島と若洲を結ぶ臨海道路は、開通すれば、湾岸エリアへのアクセスを大きく改善いたします。
 愚にもつかぬ首都移転に比べ、極めて大きな効果を生み出す東京圏の道路整備に思い切って国費を投入し、短期間で整備するよう、国に強く要求してまいります。
 現在の羽田空港及び成田空港は、増加を続ける首都圏の航空需要に十分な対応ができず、新空港の整備は火急の事案となっております。このままでは、早晩、空港問題が我が国発展のブレーキとなるのは明らかであり、国もようやく首都圏新空港の本格的な検討に動き出しました。
 私は、この機会をとらえ、桟橋方式により羽田空港を沖合に拡張する、実現可能性の高い具体的な空港整備策を既に国に提案いたしました。この方式は、新滑走路を一本整備するだけで、羽田空港の発着枠が五割増加し、新空港を建設する場合と比べ、工期と経費を大幅に圧縮することができます。埋立方式による拡張と比べても、既存の航路への影響が少なく、環境に配慮した手法であります。国に対し働きかけを強めるなど、早期実現に向け、全力で取り組んでまいります。
 このほか、航空行政を進める上で、羽田空港の国際化、首都圏の空域の効率的な利用などが重要な課題となっております。今月、東京都が策定する予定の航空政策基本方針では、こうした内容を盛り込みながら、四半世紀後の空港のあるべき姿や取り組むべき政策の方向性を明らかにいたします。
 横田飛行場に関しては、十月に開催した第三回横田基地の民間利用を考える会において、ワールドカップ期間中の共同利用を働きかけることで意見がまとまりました。先月には、地元の経済団体から、民間航空利用の早期実現のために、世論を喚起することやアメリカ政府へ要望を伝えることを要請されました。また、横田基地周辺の自治体とは、基地の整理、縮小、返還について、今後協議していくことを合意しております。
 しかし、ワールドカップの開催と同じ時期に、横田飛行場の滑走路の全面大改修が予定されるなど、相手のガードにはなかなかかたいものがあります。返還を最終的な目標に置きながら、あらゆる手だてを講じてまいります。
 ただいま申し上げたように、東京圏は、国際競争力の強化に必要不可欠な都市基盤の多くが未完成となっており、国を挙げた整備の促進が焦眉の急となっております。従来の枠組みにとらわれず、新年度予算を手厚く措置するよう、国に強く迫ってまいります。
 建設大臣が主催し、私も委員を務めた都市再生推進懇談会が、昨日、重要な提言を出しました。国際都市東京の魅力を高めていくために、都市の再生を国政の最重点課題とすべきであるとの極めて的確で明快な見解が論じられております。私がかねて提案していた常設の協議組織についても、この提言に盛り込まれております。国と首都圏の七都県市との連携を深めながら、共通の諸課題を解決し、東京圏全体の発展に取り組んでまいります。
 次に、都政の基盤となる行財政システムを強化する取り組みについて申し上げます。
 都政の改革を進める上で避けて通れないのが、監理団体の抜本的見直しであります。先日取りまとめた監理団体改革実施計画は、半年以上にわたって進めてきた総点検の結果をもとに、経験豊富な民間企業経営者の提言も受け、十五年度までの具体的な改革の内容を示したものであります。
 都民サービスの向上が今後も期待できる団体は、事業の再編など必要な見直しを行った上で活用を続ける一方、もはや存続させる意義を失った団体などは、ちゅうちょなく統廃合することにいたしました。経営責任の明確化、業績を反映した人事・給与制度の導入など、これまでの都政がなし得なかった、経営の基本にまで踏み込んだ改革プランを作成することができたと考えております。
 ここで最も大切なことは、この実施計画を確実に実行していくことであります。早速この内容を来年度予算に反映させるとともに、計画を進行管理する組織を早急に立ち上げ、不退転の決意で監理団体を改革いたします。
 税は、すべての行政サービスの根幹をなすものであり、真の地方自治を確立するには、税制度の改革が不可欠となっております。新しい制度の構築に当たっては、地方自治体が、みずからの問題として十全の議論を重ね、意見を発していくべきであります。
 昨日は、二十一世紀の地方主権を支える税財政制度のあり方について、東京都税制調査会から極めて有意義な答申を受けました。
 大きな特徴は、七兆円を超す国から地方への税源移譲を、国庫支出金及び地方交付税の見直しと結びつけて、現実的かつ具体的に示している点であります。国と地方の税額が同程度になることを基本に、消費税、所得税、たばこ税の一定額を、三段階に分けて無理なく移譲するシナリオが描かれております。
 また、環境重視の視点に立った自動車税制の見直しや軽油引取税の課税の適正化など、今後の税制のあり方について、大胆かつ明快な問題提起を受けました。さらに、大型ディーゼル車高速道路利用税を初めとした東京にふさわしい法定外税や、都民が高い関心を持っている資産課税の今後のあり方など、幅広い項目にわたって提言がありました。
 この答申に盛り込まれた内容は、地方自治体がみずからの財源とみずからの責任に基づく行政運営を行う上で、いずれも大きな役割を果たすものであります。国に対し制度改正を強く建言するなど、今後、答申を有力な武器として最大限に活用し、東京から新しい税の形をつくり上げていきたいと思います。
 次に、活力と魅力にあふれた東京の創造に向けた、新しい政策の展開について申し上げます。
 私は、多くの人命と財産を奪った数々の地震災害を教訓として、東京の災害対策に努力してまいりました。
 今回提案している震災対策条例は、現行条例が行政の主導による震災の予防を中心としており、震災の被害に対応する上で限界があることから、これを全面改正し、東京独自の総合的な震災対策を構築するものであります。
 条例では、みずからの生命はみずからが守るという自己責任の原則を基本理念に据え、都民、事業者の責務を明確化いたします。さらに、自分たちのまちは自分で守ること、すなわち共助の確立を目指し、地域住民や事業者の助け合いを促す仕組みを整備するとともに、ボランティア活動への支援を充実いたします。
 応急・復興対策としては、自衛隊、警察、消防などの活動拠点や、仮設住宅建設用地などを事前に指定する制度を導入いたしました。また、都民生活の再建を速やかに進めるため、震災復興計画の策定を条例に盛り込み、震災に対する備えを強化しております。
 今後、基礎的自治体として第一義的責任を持つ区市町村、広域的役割を担う東京都、そして国が一体となって、都民、事業者と連携し、震災対策を推進してまいります。
 これまで我が国の経済発展の源泉となってきたのは、未知の分野に挑む中小企業経営者の起業家精神であります。社会経済がますます激しく変化する中で、中小企業が活力を持続していくには、資金を初めとする経営資源の確保が不可欠であります。
 過日、中小企業の多様な資金調達を促進するため、第二回のローン担保証券のスキームを決定し、参加企業の募集を開始いたしました。今回は、信用保証協会の保証を裏づけとする前回と同様の債券に加え、企業の信用力を裏づけとする債券も発行することで、より直接金融に近いスキームにしております。
 また、ベンチャー企業や経営革新期の中小企業の支援を強化するため、先月、中小企業振興公社に総合相談窓口を開設いたしました。各企業の必要に応じて、関係機関と連携しながら、技術や経営などさまざまな面できめ細かく支援をしてまいりたいと思います。
 東京には、機械・金属の城南、繊維・雑貨の城東など、我が国の物づくりを支えてきた産業集積地が数多く存在しております。しかし、近年、海外生産の増加や長期化する不況の中で、地域内の企業数が減少し、支え合いの構造が崩れ、ひいては技術力が低下することへの懸念が高まっております。
 まちづくりと産業政策の両面から、今ある集積地をさらに支援するとともに、ビジネスや人材の苗床となる新たな集積地の形成を積極的に推進していくことが必要であります。
 電子機械販売の集積地として世界的に有名な秋葉原は、神田市場の移転跡地などを中心に区画整理を進めている地区であり、大きく発展する可能性を持っております。秋葉原が持つ集客力と情報発信力を生かし、新しい産業や技術が生まれて育っていく拠点にしたいと考えております。
 地元、関係機関などと調整しながら、近く秋葉原地区まちづくりガイドラインを策定し、来年度中に土地処分を実施いたします。
 臨海副都心は、これからの企業活動に重要な役割を果たす大容量の情報通信網が整備されており、将来、交通施設の充実などに伴って一層の発展が期待されております。
 先月、進出を希望する事業者の申し込みを常時受け付ける新方式による誘致を開始するとともに、情報通信の機能集積を促進するため、民間企業との共同の研究組織を発足させました。今後、企業の意向を把握しながら、臨海副都心への誘致活動を積極的に展開してまいります。
 これまでの福祉システムは、戦後五十五年が経過する中で制度疲労を起こしており、今日の生活実態を踏まえた見直しが急務となっております。現在進めている福祉改革は、限りある資源を最大限効果的に活用し、利用者の希求に応じた福祉の実現を目指すものであります。東京都は、事業者間の競争を促しながら、都民が質の高いサービスを住みなれた地域の中で選択し、利用できるよう、条件を整備する必要があります。
 例えば、都会で子育てと仕事の両立を望む人にとって、通勤経路にあり、時間延長も可能な保育所は欠かすことのできない施設であります。大都市の特性に合った設置基準を東京都が独自に定め、企業の参入を容易にすることにより、都市型の駅前保育所の設置などを促進したいと考えております。
 また、自宅での生活が困難になった高齢者、障害者は、現状では、特別養護老人ホームなど手厚い介護が用意されている施設に頼らざるを得ない状況となっております。今後は、ケアハウスやグループホームなど、より家庭に近い環境で生活を支援する施設を重点的に整備し、都民の多様なニーズにこたえてまいりたいと思います。
 今月中に策定する福祉改革推進プランにおいて、こうした具体的取り組みを明らかにし、福祉改革を着実に推進してまいります。
 東京都の住宅政策は、これまで、都営住宅など公共住宅の整備に重点を置いてまいりました。しかし、世帯数を上回る住宅戸数が確保され、居住形態が多様化した現況では、住宅政策は、市場の活用を重視すべきであり、抜本的な見直しが必要であります。
 都営住宅には、必ずしも公的な住宅を必要としていない人が入居していたり、敷地が十分に活用されていないなど、多くの課題があります。このため、期限つき入居制度の創設や募集方式の見直しなど、公平性を高める改善に取り組んでまいります。また、建てかえなどの際、民間住宅や福祉施設等を積極的に併設いたします。
 一方、市場原理だけでは、良質な住宅の供給や望ましい住宅環境の形成が不十分なため、行政には適切な誘導策が必要となります。老朽化が進む分譲マンションの増加に対応し、相談体制の充実など円滑な建てかえを支援するとともに、中古住宅の流通の活性化に向け、品質の評価や保証などの仕組みを整備いたします。
 さらに、マンションの建てかえに都営住宅の空き家を仮住居として提供するなど、民間住宅を対象とする施策を、都営住宅制度の見直しと連動させながら展開してまいります。
 今後、公営住宅法の改正など、こうした住宅政策の改革に必要な法制度の整備を国に対し強く働きかけるとともに、早期に新しい住宅政策の全体像を明らかにいたしたいと思います。
 現在、新世紀の東京を展望する上で欠かすことのできない二つのプラン、東京構想二〇〇〇及び都政改革ビジョンⅠを作成しております。それぞれ九月に中間のまとめを発表して以降、多くの方々から意見をいただきました。そうした意見や都議会で審議された内容を十分踏まえながら、今月中に最終的な取りまとめを行い、東京の将来像と行政改革の具体的内容をお示しいたします。
 今月十二日に全線開通する大江戸線は、今世紀最後の鉄道の開通を飾るにふさわしい、大きな効果を生み出す路線となります。大江戸線の全線開通により、山手線内側のほぼ全域が、鉄道の駅まで徒歩十分以内で到達できるようになりました。稠密な人口を抱える世界の大都市の中で、最も便利で使いやすい公共交通網が形成されます。
 なお同時に、都営バスでは、大江戸線と重複した路線などを再編整備いたします。ご理解を願いたいと思います。
 今世紀最後の日には、カウントダウンイベントのほか、歌舞伎、オペラなど、さまざまな文化を取り入れた世界劇「源氏物語」を東京国際フォーラムで上演いたします。これをもって、都民や企業、団体などの参加を得ながら一年間にわたり展開した東京二〇〇〇年祭は終了となります。この間に開催した事業を通じ、江戸東京の歴史文化を、次の世紀にいささかなりとも伝承することができたのではないかと思っております。
 激動の二十世紀も、あと一カ月でその幕を閉じます。今世紀、日本は大きな発展を遂げながらも、戦後長い間、平和と繁栄が続く中で、いつの間にか、よって立つべき価値の基軸を喪失したように感じられます。そして今、環境、教育などのさまざまな危機が露呈し、大きな混迷のうちに世紀の終わりを迎えようとしております。
 我々が来るべき二十一世紀において、坂の上に輝く雲を再びつかむためには、我々自身の手で明確な進路を定め、強固な意志を持ってその実現に取り組む必要があります。この先、どのような困難、予期せぬ事態が訪れようとも、揺らぐことのない確かな時代認識を持ち、皆さんとともに、新しい東京、新しい日本を築き上げていきたいと思っております。都議会並びに都民の皆様の一層のご理解とご協力を心からお願いいたします。
 なお、本定例会には、これまで申し上げた予算案、条例案に加え、自然の保護と回復に関する条例の全面改正など、合わせて三十四件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願い申し上げます。
 以上をもちまして私の所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(三宅茂樹君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこの程度をもって散会し、明二日から六日まで五日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこの程度をもって散会し、明二日から六日まで五日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十二月七日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時四十三分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一二財主議第五二六号
平成十二年十一月二十二日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 渋谷 守生殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十二年第三回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   藤田十四三議員
   大河原雅子議員
   和田宗春議員
   前沢延浩議員
   たぞえ民夫議員
   松村友昭議員
   花川与惣太議員
   木村陽治議員

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 藤田十四三

質問事項
 一 外部監査制度について
 第三回定例会に次の文書質問を提出し、知事並びに関係局長の誠意ある回答を求めます。
一 外部監査制度について
  地方自治法の改正により、都道府県及び政令指定都市・中核市については、平成十一年度から外部監査人による包括外部監査の実施が義務付けられた。
  都においても、公認会計士を外部監査人とし、事務の補助者二十八名を加えた監査団によって初めての外部監査が実施され、本年二月には詳細な報告書が発表されたところである。
  地方自治体に対する外部監査制度は、ある種「時代の要請」を背景として導入された経緯もあり、「一層開かれた行政を担保するためのチェック機能」として一定の効果が見込まれるが、一方で私は、都への導入に際し包括外部監査の実施が法定事項であることをもって、従前からある監査委員による監査との役割分担や、同じく時代の要請と言える行政評価制度との関係などが詰めきれないまま、言い換えればその有効な活用方法について十分な論議が尽くされないままスタートしてしまったのではないか、という思いが強い。
  初年度の結果が公表され、引き続き二年度目の外部監査が実施されている今、改めてその意義や、あるべき活用方法について少しく論議を深め、この制度をより有益なものへと発展させる立場から、この問題にしぼって何点か質問する。
 1 制度の意義及び実施方針等について
   まず、この制度の意義及び実施方針等について五点伺いたい。
   先に述べたとおり、外部監査制度は、平成九年六月の地方自治法の一部改正により導入されたものであるが、法改正の趣旨は、地方分権の推進に対応した地方公共団体の体制整備及び予算の適正な執行を確保するためとされている。
   法律で義務付けられた以上、実施の是非に関して議論の余地はないが、私は、単に「決められたことだから実施する」という受け身の姿勢ではこの制度を有効に活用することは難しいと考える。都としての主体的な取組が不可欠であるというのが私の認識である。
   一方、国の行政機関に対しては、地方の監査委員と制度的な構造がほぼ同じ会計検査院による検査が規定されているのみで、外部監査・検査の制度は何ひとつ定められていない。にもかかわらず国が地方にだけ、法律をもって外部監査の実施を強制するのは、「地方分権の推進に対応するため」という理由とは裏腹にむしろ地方分権に反するではないかと言わざるを得ない。その立場で順次、都の見解をお聞きしたい。
  ア まず第一に、各自治体の主体的な取組を明確にするために、外部監査の枠組みや要件等について法律で定めることに異論はないが、外部監査を実施する、しないは当該自治体の条例の規定に委ねるべきと考えるがどうか。
  イ 第二に、都としては包括外部監査制度導入の意義とその効果をどのように考えているか。
  ウ 第三に、監査委員による監査と、外部監査人による包括外部監査との違いは何か。外部監査人でなければ行い得ないような監査項目があるのか。
  エ 第四に、外部監査人は結果の報告に対してどのような責任を負うのか。仮に、報告に従って都が措置した事案に関して住民訴訟が起こされ、都が敗訴した場合はどうなるのか。
  オ 第五に、地方自治法には一般的な監査基準が規定されていないため、外部監査人によって監査の視点が大きく変動することも考えられる。
    しかし、外部監査人の独立性と専門性を尊重すべきことは当然としても、相当の経費をかけて監査契約を締結する以上、その結果を、都民サービスの向上につながる内容のある議論に発展させていく取組が重要であることは言うまでもない。
    従って、都においてはあらかじめ、条例等によって、外部監査人に期待する監査の視点やその役割を明示しておく必要があると考えるがどうか。
   以上、五点について具体的にお答え頂きたい。
 2 平成十一年度の実施状況について
   次に、平成十一年度実施状況について五点尋ねる。
  ア 第一に、外部監査人の資格要件として、法は弁護士、公認会計士、国の会計検査に従事したもの、税理士等を挙げているが、都が平成十一年度の外部監査契約において外部監査人に公認会計士を選んだ理由は何か。
  イ 第二に、初年度である十一年度の外部監査を次の諸点にかかわり合わせて、都としてどう評価するか。
   〇外部監査人の態勢や監査手法はどうか
   〇都の部局との連絡調整は円滑に行われたか。努力義務が課されている関係部局の協力は十分に得られたか
   〇外部監査人の選んだテーマはその内容や量などの点で適正だったか
   〇専門性を活かした提言が行われたか
   〇結果の報告に事実誤認など不適切な点はなかったか
  ウ 第三に、監査の結果報告に対してどのように対応したか。
  エ 第四に、都が支払った報酬三千百五十万円(消費税を含む)は、全国でも最高額であったと聞くが、積算方法は団体ごとに異なるのか。他団体の例などをふまえ改善する余地はないのか。
  オ 第五に、全国市民オンブズマン連絡会議の「評価」に関連して端的に伺いたい。
    本年八月、全国市民オンブズマン連絡会議が『包括外部監査の通信簿』と題して、都道府県及び政令指定都市を対象に、十一年度に行われた外部監査の結果を評価した冊子を発行した。市民団体の行った評価とはいえ、その内容は詳細な検証・分析に基づくもので、全国紙各紙にも大きく取り上げられたものである。
    AからDの四段階で評価した『通信簿』によれば、五十九団体のうちA評価を受けて<合格>したのはわずか三県市(宮城県、横浜市、福岡市)で、全体の六割以上がC<不十分>又はD<落第>であったという。
    都については、監査項目のうち「都立病院の経営管理について」がB、「未利用地の管理運用について」と「公の施設の管理について」がD、「出資団体の管理運営について」がCの評価で、総合評価はCであった。また、総合評価に付されたコメントも「病院の経営運営に対する監査以外は見るべきものが少ない。(中略)全体を通じて適法性監査は行われておらず、問題の原因、背景にまで踏み込んだ監査、提言は行われていない。都財政における重要性、影響評価の視点も欠落している。あまりに多くのテーマを選択した結果、表面的な底の浅い監査になってしまった。全国で最も多額の費用が投じられたにもかかわらず、全国水準を下回っている」という厳しいものである。
    都としてこの評価をどう受け止めているか。
 3 包括外部監査のあり方について
   最後に、質問の前提になる私見を五点にわたって述べつつ、包括外部監査のあり方について質問する。
   第一に、私は、今後、都が、積極的に行財政改革を進め、地方主権を確立し、都民サービスの一層の向上を図っていく上で外部監査は必要かつ有効な制度であると考える。
   先にふれた十一年度の内容・結果についての『市民オンブズマン通信簿』の厳しい評価は、今後あらゆる工夫をして制度の有効性を高め、完成形に近づけていくことが重要であるという緊急の課題をつきつけられたことは確かであろう。
   改めて強調するまでもなく、この制度を有効に運用するための最重要ポイントは、外部監査の位置付けを明確にすること、つまり、独立性や高度の専門性など、行政内部にはない外部監査人の能力を活用して、都政の中のどういう事案をどういった切り口からチェックしてもらうのかという方針を明確にすることである。
   第二に、「根っこからの議論を」という趣旨で言えば、外部監査の位置付けを明確にするためには、法が外部監査の対象や範囲に制約を設けているのかどうか。また、監査委員による監査との間に権能の差を設けているのかどうかという二点について、あらかじめ確認しておく必要があろう。
   私は、実質的に、そうした制約や権能の差はないものとうけとめている。法第百九十九条(監査委員の権能)と第二百五十二条の三十七(包括外部監査人の監査)とを比較して、「監査委員は財務監査も行政監査も行えるが、外部監査人は単に財務監査の一部を行い得るに過ぎない」とする解釈があることは承知しているが、私に言わせれば、このような見解は、新たな制度を十分に活用しようとする意欲の見えない消極的な解釈であると言わざるを得ない。財務監査といえども、その趣旨は、「単に不正又は非違の摘発にあるのではなく、行政の適法性あるいは妥当性を保障し、いかにすれば、公正で合理的かつ効率的な行政を確保できるかを示すことである」というのが現在の共通認識となっていることを忘れてはならない。
   第三に、私は、外部監査の役割は、既存のルールを前提として、個々の事務事業がそのルールに合致して執行されているか否かをチェックすることではなく、基本的なルール(あるいは基本的な政策)それ自体が、現下の時代状況を背景とした都民生活の中でなお価値を持ち続けているか否かを大胆に評価、判断し、知事・執行部のみならず議会をも巻き込んだ政策論争を喚起する材料を提供することにあると考える。
   事務事業に係る不正又は非違の摘発、個別の事務事業に着目した効率化の方策などは、一義的に監査委員がその責務の一端として行えば足りるのであって、三千万円もの経費をかけて外部監査人にチェックしてもらうまでもあるまい。
   そうした観点から十一年度の状況について見ると、私は、『市民オンブズマン通信簿』でB評価を得た「都立病院の経営管理について」にも不満が残る。
   このテーマに対する外部監査人の指摘及び意見は、
  〇医薬品の払出数量と保険請求数量との照合が行われていない
  〇実地棚卸から年度末までの医薬品入出庫が決算に反映されていない
  〇診療材料管理にバーコード導入を検討すべきである
  〇債権回収努力が不十分である
  〇特命随意契約の中に根拠の乏しいものがある
  〇医薬品の購入に非効率な点がある
  〇一般会計補助金の算定方式を一層明確にすべきである
  〇病院の規模・収入等に比較して人件費が過大である
  など六十項目余にものぼるが、そのほとんどが既存のルールを前提とした合致チェックに止まっている。
   勿論、こうした指摘や意見は正当なものであり、些末なことだなどと言うつもりはいささかもないが、今、広範な知恵を集めて論議すべきは、都立病院のあり方そのものなのではないか、というのが私の率直な見解である。
   第四に、都はこれまで、都立病院の基本的役割を、〔1〕感染症、救急医療など行政対応が必要な医療、〔2〕リハビリテーションなどの専門医療、〔3〕癌医療などの高度医療、の三点から説明してきた。
   一方で財務局は、本年六月に発表した「財政構造改革の推進に向けて」の中で、「都立病院に対する一般会計からの補助は道府県平均の一・五倍で、一床あたり年間五百八十七万円にもなっている」という問題提起をしているのである。
   こうした状況を踏まえて真に論議すべきは、三つの基本的役割の時代的妥当性ではないのか。直言すれば、外部監査人には「都立病院をなお維持運営すべきか」という大きな問いに対する提言を求めたいのである。
   感染症や救急医療はともかく、現在の東京で、高度・専門医療の分野をなお都立病院が担う必要があるのか、あるとしても現行の規模・態勢が本当に必要かといった課題に対する答えを、定性論だけでなく、都立病院の診療実績に占める行政医療、高度・専門医療の割合や民間病院との実績比較などを通じた客観的、合理的な検証の中に求めたいのである。
   私は、都立病院の存在意義を過小評価するものでないが、具体的なデータに基づく冷徹な論議も忘れてはならない。このような徹底した論議の全過程を通じて、都民の前に都立病院のあるべき姿が示されたとき、財務局の言う「一床五百八十七万円の税投入」の是非が自ずと明らかにされるであろう。
   第五に、外部監査人にこのような活動を求めるとすると、その適格者は果たして弁護士なのか、公認会計士なのか、税理士なのかという点について、現行法の規定はやや狭量に過ぎるのではないか。例えば、弁護士、会計士と経営の分野で実績のある民間人とが合議制のチームを組むなどの選択があって良いのではないかと考える。
   以上、五点が包括外部監査のあり方についての私の考えである。
   お尋ねしたいことは一点、私が述べた五点の見解すべてにふれて都の総括的見解をお示し頂きたい。
   言うまでもなく、発足早々の外部監査制度であるが、活用次第で行財政改革を進める強力なツールに成長することは論をまたない。従って、この制度が本来の任務を全うすべく育つかどうかは今後の取組如何であろう。そのためにこそ、まず、活発な論議が必要であることを強調しておきたい。
   来年七月任期切れをもって引退する私は、この制度の完成を見届けることは出来ないが、その礎を築く論議に加わり、よりよい制度の構築のため都議会議員として自らの果たすべき責任を果たしたいと思う。
   重ねて、真摯な答弁をお願いしておきたい。

平成十二年第三回都議会定例会
藤田十四三議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 外部監査制度について
  1 制度の意義及び実施方針等について
   ア 各自治体の主体的な取組を明確にするため、外部監査の枠組みや要件等について法律で定めることについて異論はないが、外部監査を実施する、しないは、当該自治体の条例に委ねるべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  地方分権の推進に対応して地方公共団体の体制の整備を図る観点から、地方公共団体の行政の公正を確保しその透明性を向上させるため、平成九年に地方自治法が改正され、監査委員監査制度の充実と合わせて外部監査制度が導入されました。
  都道府県、政令市及び中核市に実施が義務づけられたもので、地方分権の推進の一環として制度化されたものと認識しています。

質問事項
 一の1のイ 都として、包括外部監査制度導入の意義とその効果をどのように考えているか、伺う。

回答
  地方公共団体の組織に属さない外部の専門的な知識を有する者の監査を導入することにより、監査機能の独立性・専門性が確保されること、また、その効果としては、専門的な立場から、都政の各般の事業の成果について、経済性、効率性、有効性等の視点での監査を期待でき、都政の改革の手法の一つになると考えます。

質問事項
 一の1のウ 監査委員による監査と外部監査人による包括外部監査との違いは何か。また、外部監査人でなければ行い得ないような監査項目があるか、伺う。

回答
  包括外部監査の対象は、外部監査人が自ら定めた特定の事件(テーマ)について監査するのに対し、監査委員監査は、行財政運営全般にわたり行う監査であります。
  監査項目については、外部監査人でなければ行えないものはないと認識しています。

質問事項
 一の1のエ 外部監査人は、結果の報告に対して、どのような責任を負うのか。また、仮に報告に従って、都が措置した事案に関して住民訴訟が起こされ、都が敗訴した場合はどうなるのか。併せて伺う。

回答
  外部監査人は、外部監査契約に基づいて負う債務を履行する責任を有しているに過ぎず、結果報告の提出後は法律上の責任はないと考えます。
  監査の結果に基づき又は結果を参考に措置を講じるのは、あくまでもそれぞれの執行機関であり、その責任は措置を講じた執行機関に帰すると認識しています。

質問事項
 一の1のオ 外部監査人と監査契約を締結する以上、その結果を都民サービスの向上につながる内容のある議論に発展させていく取組が必要である。都においては、あらかじめ、条例等により、外部監査人に期待する監査の視点や役割を明示しておく必要があると考えるが、所見を伺う。

回答
  外部監査は、外部監査人の独立性と専門性を生かして、外部監査人が必要と判断した事件を特定し、自己のイニシアティブにより監査を行うことが、制度の趣旨であると認識しています。
  したがって、条例等で役割や視点等をあらかじめ定めないことが、妥当と思料しますが、外部監査制度の一層の充実を求めての御指摘と受けとめ、この制度の実効性が高まるよう努めていきたいと考えます。

質問事項
 一の2 平成十一年度の実施状況について
    ア 都が、平成十一年度の外部監査契約において、外部監査人に公認会計士を選んだ理由は何か、伺う。

回答
  平成十一年度は、制度が導入される初年度であることから、円滑な制度の定着を図るため、この制度が財務監査を主体としていること、及び都政の最重要課題である財政再建に寄与する観点から、公認会計士が適任であると判断しました。

質問事項
 一の2のイ 平成十一年度の外部監査の評価について、伺う。

回答
  外部監査人と公認会計士を中心とした補助者二十八名が「病院」、「未利用地」、「公の施設」及び「出資団体」の経営管理等の四つのテーマで監査を実施しました。
  テーマごとに得意とする分野の補助者がチームを組み、発生主義に根ざした経営管理の視点から実査が行われました。
  実査期間中は、監査委員監査と同様に、担当部局、団体は真しに対応し、資料要求についても十分な協力が得られたと外部監査人からも聞いています。
  監査結果も、従来の慣行にとらわれない独立した立場からの視点や公認会計士としての専門知識を活用した視点から、実に的確な指摘等を受け、今後の都政運営にとって有効なものと受けとめています。

質問事項
 一の2のウ 監査の結果報告に対して、どのように対応したか。

回答
  外部監査人から、結果報告の提出後、直ちに知事はじめ政策会議メンバー及び監査の対象となった局の局長に、報告の内容の説明と意見交換を実施しました。
  指摘等を受けた局は、結果報告に基づき改善計画を策定し、改善に取り組んでいます。既に、措置済みの事項もあり、早くも効果が上がっていると認識しています。

質問事項
 一の2のエ 都が支払った報酬は、全国でも最高額であったと聞く。積算方法は団体ごとに異なるのか。また、他団体の例をふまえ、改善する余地はないのか、所見を伺う。

回答
  各団体とも、日本公認会計士協会の法定監査の標準報酬規定を基礎に監査費用を見積もっており、積算方法に大きな違いはないと認識しています。
  東京都にあっては、その規模や監査委員監査の実績から三千百五十万円を報酬の上限としたものであり、妥当な額と考えます。

質問事項
 一の2のオ 全国市民オンブズマン連絡会議が実施した、包括外部監査の結果評価は、「全体を通じて適法性監査は行われておらず、問題の原因、背景まで踏み込んだ監査、提言は行われていない」という厳しいものであった。都としてこの評価をどのように受け止めているのか、伺う。

回答
  全国オンブズマン連絡会議の評価が、厳しいものであったことは承知しています。
  この評価は、監査結果報告書をもとに、独自の評価基準に基づき評価したもので、東京都としてはその評価について言及する立場にはありませんが、各方面の意見は真しに受けとめ、外部監査制度をより実効ある制度にしていきたいと考えます。

質問事項
 一の3 包括外部監査のあり方について
    包括外部監査の位置づけ、役割、適格者の選択など、都の総括的見解を伺う。

回答
  包括外部監査のあり方について、監査方針の明確化、財務監査の範囲の捉え方、政策論争に役立つ監査及び監査チームの編成等貴重な御意見をいただきました。
  御意見のとおり、外部監査が都政の改革のための手法として、活用されて初めて、この制度を導入した意義があると考えます。
  こうした観点から、平成十一年度の外部監査結果を見ると、合規性を監査の基本に据えつつ、事業の成果の有効性、効率性及び経済性の視点から監査が実施され、的確な指摘を受け、都政の改革の重要な手法の一つであると受けとめています。
  外部監査は、東京都の組織に属さない外部の専門的な知識を有する者が、自らのイニシアティブにより監査を行う制度であります。
  制度上の制約はあるが、この制度が、監査委員監査と相まって有効に機能していく制度となるよう運用していきたいと考えます。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 大河原雅子

質問事項
 一 人権施策について
 二 都有地の処分について
一 人権施策について
  東京都は、国連の「人権教育のための十年」を受けて、九八年十一月に「人権施策推進のための指針」策定にとりかかり、専門懇談会を設置しました。そして検討が開始され提言がなされ、これを受け今回「骨子」がまとまりました。
  都はこれまで分野別の人権施策を展開してきましたが、人権施策全体に関わる基本的施策の策定や各施策の連携をめざして検討することには大きな意義があると考えます。
  以上を踏まえ質問致します。
 1 懇談会において、性的マイノリティー等(同性愛者、性同一性障害の当事者などを含む)、医療被害者、そして犯罪被害者などの方々の人権問題を検討してきた、意義と経過を伺います。
 2 性的マイノリティーの方々に対する、人権侵害の実態をどう認識しているのか、伺います。
 3 同性愛者をはじめ、性的マイノリティーの方々の人権問題を「指針」に位置づけるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 4 各部で行われている人権施策の連携は、具体的にどう進めるのでしょうか、伺います。
 5 多元的な人権についての価値を認めるとはいえ、差別解消は大切な課題です。今回の自治法改正の中では「義務を課し、又は権利を制限」するには「条例によらなければ」と明確にされました。悪質な差別や排外をなくすためにも、慎重な検討を要するとはいえ、条例制定が必要と考えますが、クリアーすべき課題を伺います。
二 都有地の処分について
  都有地について、都にとって不要な都有地の処分は、過去にも例がありますし、今後行財政改革の一環としても、多くのケースが予想されます。
  そこで以下質問致します。
 1 一般論として、都有地を処分した後に、都有地の中に産業廃棄物や有害化学物質など、除去しなければならない物質が発見された場合、都の責任はあるのでしょうか、お伺いいたします。
 2 都有地の中に産業廃棄物や有害化学物質等が発見され、かつその原因者(汚染者)が明白な場合、都が取りうる措置を伺います。
 3 八王子市石川町の現大学病院地は、都が八王子市に売却したものです。現在、敷地内に産業廃棄物が発見され、市が除去しようとしています。売却時に廃棄物の存在の認識の有無と売却の経過を伺います。
 4 今回の八王子の件のような事態が、再発しないことが望ましいと考えますが、今後の対策がありましたら、伺います。
 以上

平成十二年第三回都議会定例会
大河原雅子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 人権施策について
  1 「人権施策推進のための指針」策定のため設置された専門懇談会において、性的マイノリティー等(同性愛者、性同一性障害の当事者等を含む)、医療被害者、犯罪被害者などの人権問題を検討してきた意義と経過について、伺う。

回答
  人権施策推進のあり方専門懇談会においては、東京にふさわしい人権施策の推進という観点から、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画における重要課題に加えて、同性愛者や性同一性障害者などの性的マイノリティー、医療被害者、犯罪被害者等においても、いかなる人権問題にかかわる都民の要望が存在するかについて目を向け、都のなすべき施策の中に取り込むこととしたものです。

質問事項
 一の2 性的マイノリティーに対する人権侵害の実態をどう認識しているのか、伺う。

回答
  性同一性障害のある人々などに対する偏見があり、嫌がらせや侮べつ的な言動、雇用面における制限や差別、性の区分を前提にした社会生活上の制約などの問題があると認識しています。

質問事項
 一の3 同性愛者をはじめ、性的マイノリティーの人権問題を「指針」に位置づけるべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  指針では、国の「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画や多くの県の行動計画ではふれていない性同一性障害のある人々などの人権問題を取り上げています。
  同性愛者については、いろいろな状況が生じていることや都民の意見を参考にして、指針をまとめています。

質問事項
 一の4 各部で行われている人権施策の連携は、具体的にどう進めるのか、伺う。

回答
  これまで施策を講じている課題については、それぞれを所管する局の施策体系のもとで、指針の基本理念を尊重しながら、必要な施策を実施していくことを基本としています。
  課題が複雑に絡み合ったり、これまでの施策や手法等では対応できない新しい問題については、救済・保護、啓発・教育、支援・助成の三つの観点から連携していきます。
  このため、全庁的な人権施策の推進体制を整備する考えです。

質問事項
 一の5 自治法改正の中で、「義務を課し、又は権利を制限」するには、「条例によらなければ」と明確にされた。悪質な差別や排除をなくすためにも、条例制定が必要と考えるが、クリアすべき課題を伺う。

回答
  人権擁護施策推進法では、「人権が侵害された場合における救済に関する施策は国の責務」としています。国の人権擁護推進審議会が、救済に関する施策の充実の基本的事項について調査・審議しているところであり、その動向を見守っていきます。

質問事項
 二 都有地の処分について
  1 一般論として都有地を処分した後に、都有地の中に産業廃棄物や有害化学物質など、除去しなければならない物質が発見された場合、都の責任はあるのか、伺う。

回答
  都有地の売買契約においては、通常、都有地に隠れた瑕疵があっても、都は損害賠償等の責めを負わないという瑕疵担保責任免除特約を付しています。このため、都が都有地に産業廃棄物や有害化学物質が埋められていることを知っていて買主に告げなかった場合を除き、都は損害賠償等の責任を負わないこととなります。

質問事項
 二の2 都有地の中に産業廃棄物や有害化学物質等が発見され、かつその原因者(汚染者)が明白な場合、都がとりうる措置を伺う。

回答
  現在ある都有地の中に産業廃棄物や有害化学物質の存在が発見された場合は、まず事実確認をした上で、原因者との話し合いをし、汚染者負担の原則に従い解決策を協議していくこととなります。

質問事項
 二の3 都が八王子市に売却した、八王子市石川町の現大学病院地は、敷地内に産業廃棄物が発見され、市が除去しようとしている。売却時における、廃棄物の存在の認識の有無と売却の経過を伺う。

回答
  本件土地は、住宅局所管の都営住宅建設予定地でしたが、平成八年十二月十二日、八王子市長から都知事あてに、本件土地を病院用地として使用するため、平成八年度から平成十年度の三カ年に分けて買受けたい旨の申請がありました。
  このため、平成九年三月から平成十一年三月にかけて三回に分けて八王子市に売却したものです。
  なお、八王子市からの申請に基づき、昭和五十二年から昭和五十五年まで当該地の一部を焼却灰など一般廃棄物の最終処分場として使用させた経緯があり、市は、一般廃棄物の最終処分場であったことは当然認識して買収しているものです。

質問事項
 二の4 今回の八王子の件のような事態が、再発しないことが望ましいと考えるが、今後の対策について、伺う。

回答
  都有地の売却に当たっては、過去の土地の利用状況などを踏まえて、買い受け者との間でトラブルが発生しないよう、今後とも最善の注意を払っていく必要があると考えています。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 和田宗春

質問事項
 一 電車内における痴漢対策について
 二 「人権施策推進のための指針」の策定にあたって
一 電車内における痴漢対策について
  近年、電車内のいわゆる痴漢の問題は、益々深刻化している。
  私がいつも乗っている埼京線などは、若い女性の間で「痴漢電車」などと呼ばれているそうである。埼京線に限らず、痴漢被害の件数は年々増加し、平成十一年度の警視庁管内における電車内の卑猥行為は、迷惑防止条例違反検挙件数(いわゆる痴漢行為)千五百五十五件、強制猥褻事件の被害届数(痴漢以上の行為)二百八十一件であった。
  先日、女子高校生と一緒に電車に乗りこんだその父親が痴漢の男を取り押さえ、警察に引き渡したというようなことが報道されていた。高校生の娘は電車内で度々痴漢に遭い、父親に相談していたという。女性に対するアンケート調査などによると、小学生や中学生の頃から痴漢にあっていたという女性も多く、子どもまでが痴漢の対象となっている事がわかる。
  女性に対する痴漢について、状況が益々エスカレートする背景には、被害者が声をあげにくいという状況があると思われる。被害者が声をあげにくい理由として、痴漢は物証に乏しく、立証が難しい上に、痴漢と同性である他の多くの男性乗客の無関心により助けが得られない事、女性の意識として自己主張することへの恥ずかしさ、更には報復の恐怖、などがあげられ、被害が日常化し、あきらめムードが蔓延しているのが実情であると思われる。
  痴漢の横行は、日本社会全体の、女性の人権に対する認識の欠如を表している。人への思いやりの欠如と「ばれなければいい」という無責任な体質、あるいはいきすぎた性の商品化、これら社会の風潮が痴漢行為をのさばらせているといっても過言ではない。
  日常的に被害に遭い、しかし、それを声に出せないで、密かに心を傷つけている無数の女性がいることを放置するような社会であってはならない。行政は常に社会的弱者、この場合、被害者である女性の視点に立って、状況を認識し、対策を講じるべきであると信じる。特に、交通機関の職員はどうしても男性が多く、男性中心の職域になっているため、女性の立場からの配慮に欠けているのではないかと危惧される。痴漢の対策には女性の視点を取り入れた施策の検討が必要であると思うが、以下、何点か伺いたい。
 (野田警視総監に対し)
 1 痴漢行為についての捜査・立件のための立証マニュアルはあるのか。ある場合はその概要、ない場合は今後作成の予定はあるのか、伺う。
 2 迷惑防止条例を性犯罪・痴漢として厳しくするという方向で改正すべきと考えるが、所見を伺う。
 (寺内交通局長に対し)
 3 都営交通の混雑率と痴漢行為の被害件数の関係について、伺う。
 4 交通局の職種別職員数とその内の女性職員の人数について、伺う。
 5 現在、車内の痴漢行為を防止するために、交通局は何か具体的な対策を講じているか、又は今後、その予定はあるか、あればその内容を伺う。
 6 また、局内に痴漢対策のための部署又はプロジェクトチームがあるか、ある場合はその概要とメンバーの中の女性の割合について、伺う。
 7 車内で痴漢被害があった場合、どのように対処しているのか、マニュアルがあれば、その概要について、伺う。
 8 日常的に被害に遭う女性乗客の当面の避難先として、また、世論を喚起するため、ラッシュ時の女性専用車両の導入を試験的に実施する事を検討すべきと考えるが、所見を伺う。
 (横山教育長に対し)
 9 教育庁は、通学途上の小・中・高校女子生徒の痴漢被害状況について、どの程度把握しているのか、また、女子生徒への痴漢防御に関する指導・教育はどのように行われているのか、伺う。
二 「人権施策推進のための指針」の策定にあたって
  私は、平成十年九月の本議会において「人権施策推進のための指針」の速やかな策定をもとめている。
  そこでは、同性愛者の人権を明記し人権を確固たるものとするように求めた。私の質問に当時の青島知事は、「平成十一年度を目途に『指針』を策定する」と答弁している。
  今年に出された「中間のまとめ」において「同性愛者の人権」は明文化されていなかった。しかしながら石原知事は「全庁的論議をして考えたい」と言明している。そこで今秋に報告書が出されるに際して以下の点にわたって石原知事、ならびに関係理事者に質問する。
 1 「人権施策推進のための指針」<骨子>に記載されている「性別や年齢、障害、出身、民族、国籍等」の中に「性的指向」も入れるべきであるがどう考えるか。
 2 東京都の人権に関して現状では同性愛者の人権問題が存在するという認識をもっているのか。
 3 啓発、教育研修等、東京都の人権施策の展開にあたって同性愛者に対する個別的な検討がなされるべきであるが、どう考えるのか。
 4 中間まとめの「指針」の三〇から三一頁に「社会的弱者.少数者」と書かれているが、この用語の定義に同性愛者が含まれると思うがどうか。
 以上

平成十二年第三回都議会定例会
和田宗春議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 電車内における痴漢対策について
  1 痴漢行為についての捜査・立件のための立証マニュアルはあるのか。ある場合はその概要、ない場合は今後作成の予定はあるのか、伺う。

回答(警視総監)
  痴漢行為に対しては、その行為が犯罪構成要件に該当するか否かを的確に判断し、刑事訴訟法をはじめとする各種法令に則った適正な捜査手続を推進すべく、各種の執務資料等を活用しているところであります。

質問事項
 一の2 迷惑防止条例を性犯罪・痴漢として厳しくするという方向で改正すべきと考えるが、所見を伺う。

回答(警視総監)
  痴漢行為につきましては、迷惑防止条例だけではなく、その行為の態様によっては刑法の強制わいせつ罪を適用して、厳格な取締りを実施しているところであります。
  今後とも、この種行為の取締り及び防止対策を強力に推進するとともに、条例改正につきましては、一連の痴漢行為抑止対策の中において、その効果、必要性を十分に勘案した上で検討することといたしたいと考えております。

質問事項
 一の3 都営交通の混雑率と痴漢行為の被害件数の関係について、伺う。

回答
  都営地下鉄の混雑率ですが、平成十一年十一月のおおよそ七時半から八時半までの最混雑区間の混雑率は、浅草線は一四四・一%、三田線は一五三・八%、新宿線は一四八・六%、大江戸線は一三〇・二%となっています。
  痴漢行為の被害件数については、都営地下鉄におけるお客様からの痴漢被害の届出件数では、平成十二年六月から八月までの実績で十五件です。
  また、混雑率と被害件数の関係については、明確になっていません。

質問事項
 一の4 交通局の職種別職員数とその内の女性職員の人数について、伺う。

回答
  平成十一年度末の交通局の職員数は、七千七百六十七人で、このうち女性職員は百六十五人で二・一%の割合です。
  また、鉄道営業職員は、千二十五人で、このうち女性職員は十三人で、一・三%の割合です。

質問事項
 一の5 現在、車内の痴漢行為を防止するために、交通局は何か具体的な対策を講じているか、又は今後、その予定はあるか、あればその内容を伺う。

回答
  都営地下鉄では、車内の痴漢行為を防止するため、駅においては、「痴漢行為防止」のポスターの掲出を行うとともに、電車内及び駅構内においては、特に、夏季期間において、痴漢犯罪予防放送を適宜行っており、快適な運行に努めています。

質問事項
 一の6 交通局内に痴漢対策のための部署又はプロジェクトチームがあるか、ある場合はその概要とメンバーの中の女性の割合について、伺う。

回答
  都営地下鉄での担当部署としては、電車部運転課保安係及び営業課旅客係が協同してあたっています。
  メンバーは十五名でそのうち四名が女性です。

質問事項
 一の7 車内で痴漢被害があった場合、どのように対処しているのか。マニュアルがあればその概要について、伺う。

回答
  お客様から、乗務員や駅務員に痴漢被害のお申出があった場合は、警察に通報し、相手が特定できる場合は、警察に引き渡しています。
  マニュアルについては、現在、整備しているところです。

質問事項
 一の8 日常的に被害に遭う女性乗客の当面の避難先として、また、世論を喚起するため、ラッシュ時の女性専用車両の導入を試験的に実施することを検討すべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  女性専用車両についてですが、関東地方では、かつて、国鉄や一部の私鉄において、戦後から昭和四十八年まで婦人子供専用車を運行していた経緯がありますが、利用効率の低下や老人等弱者との均衡から、現在では実施している鉄道会社はありません。
  都営地下鉄における女性専用車の導入については、
 ・車両により空いている車両と混雑している車両が発生し、乗り切れない場合や乗降時間が長くなる場合があり、列車遅延の原因となるため、お客様に迷惑がかかる。
 ・お客様は、乗り降りに、より便利な車両を選ぶ傾向にあり、乗車場所を制限することは困難である。
 ・他社と相互直通運転を行っているため、相直他社との調整が必要となる。
 等の課題が多く、現時点では困難ですが、現状を深刻に受け止め、関係機関と協議しながら痴漢防止に努めていきます。

質問事項
 一の9 教育庁は、通学途上の小・中・高校女子生徒の痴漢被害状況について、どの程度把握しているのか。また、女子生徒への痴漢防御に関する指導・教育はどのように行われているのか、伺う。

回答(教育長)
  児童・生徒が通学途中、電車内や公園等でいたずらや痴漢にあい、学校等に訴えた性被害の状況については、区市町村教育委員会や都立学校からの報告により、具体的な事例として承知しています。
  都教育委員会は、性被害の防止について具体的な対応策を通知するとともに、「性教育の手引」を全公立幼稚園、学校に作成・配布し、子どもの安全を守るための取組を行うよう指導しています。
  各学校では、この「性教育の手引」等を活用し、被害にあわないための対応などについて指導しており、通学途中などで被害にあった場合は、警察官や駅員、地域の人に助けを求めたり、保護者や学校に知らせたりするよう指導をするとともに、児童・生徒等から通報があった場合は、警察署や地域の健全育成団体等へ協力要請し、痴漢被害の防止対策を講じています。
  都教育委員会は今後とも、教育関係者による協議や児童・生徒の安全確保について通知するなどして、性被害への注意を喚起し、学校が家庭や地域等と連携・協力して、一層児童・生徒の性被害防止に努めるよう指導してまいります。

質問事項
 二 「人権施策推進のための指針」の策定にあたって
  1 「人権施策推進のための指針」(骨子)に記載されている「性別や年齢、障害、出身、民族、国籍等」の中に、「性的指向」も入れるべきであるが、伺う。

回答
  「人権施策推進のための指針(骨子)」は、「性別や年齢、障害、出身、民族、国籍等を理由とする不合理な差別や偏見を受けることなく社会に参画し、その個性と能力を十分に発揮できる都市をつくる」ことを基本理念の一つとしています。不合理な差別や偏見の理由はいろいろありますが、ここでは誰でもが理解しやすい性別、年齢、障害、出身、民族、国籍を不合理な差別や偏見の理由として例示したものです。「性的指向」については、さまざまな議論があり、現段階では例とするまでには都民の理解が十分得られていないと考えています。

質問事項
 二の2 東京都の人権に関して、現状では同性愛者の人権問題が存在するという認識をもっているのか、所見を伺う。

回答
  同性愛者をめぐって、いろいろな状況が生じていることは十分に認識しており、啓発等必要な措置は講じています。

質問事項
 二の3 啓発、教育研修等、東京都の人権施策の展開にあたって、同性愛者に対する個別的な検討がなされるべきであるが、所見を伺う。

回答
  同性愛者の問題については、啓発資料で取り上げています。今後も啓発等において適宜対応していきます。

質問事項
 二の4 中間のまとめの「指針」三〇・三一ページに「社会的弱者・少数者」と書かれているが、この用語の定義に同性愛者が含まれると思うが、所見を伺う。

回答
  同性愛者は「社会的弱者・少数者」の中に含まれていると認識しています。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 前沢延浩

質問事項
 一 「東京都保健医療計画」の見直しについて
一 「東京都保健医療計画」の見直しについて
  東久留米市が、いままで七回にわたっておこなってきた「市政世論調査」のなかで、市民の要望のトップは毎回「総合病院」となっています。直近の調査結果が、一昨年の九月に発表されていますが、「あなたは、今の東久留米市に特にどんな施設が必要だと思いますか」という設問に、「総合病院」という回答が六四・四%で、つづく「高齢者福祉施設」(三〇・五%)、市民総合グランド(二四・一%)、警察署(一九・八%)と比べても、総合病院を望む世論がいかに高いかを示しています。市議会はこのような市民要望にこたえ、二回にわたり総合病院の誘致について意見書を採択しています。
  東久留米市の人口は十一万三千人余ですが、入院治療を受けられる病院は三施設でベッド数は百四十八床と極めて少なく、医療過疎といってもよい状況です。市民は、隣接する清瀬、小平、田無の各市さらに新座市や都内にまで足を運ばなければなりません。何度もバスや電車を乗り継ぐか、タクシーを利用し病院に通っています。
  心臓疾患の主婦がたおれ救急車で小平市にある公立昭和病院に運ばれましたがベッドに余裕がないということで入院を断られ、保谷市の病院に搬送されかろうじて一命をとりとめることができたというようなケースが多々あります。手遅れになるケースも少なくありません。
 1 このような現状を解決するため、医療法で定められた「保健医療計画」によるベッド規制を地域の実態にあわせて見直すことが必要になっています。一昨年改定された「東京都保健医療計画」を見ますと、東久留米、田無、保谷、小平、東村山、清瀬の六市で構成する「北多摩北部医療圏」における既存の病床数は五千八百十床、必要病床数は五千七百二十床で九十床過剰とされています。これでは、東久留米市の実情を正確に反映したものとなっておりません。「必要とする保健医療サービスを、だれもが、いつでも、どこでも、必要に応じ適切に受けることができるようにする」とした医療圏設定の意義にも反するのではないでしょうか。答弁を求めます。
 2 北多摩北部医療圏に属する清瀬市には、国立東京療養所、結核予防会付属療養所など長い歴史をもつ結核治療の医療機関が集中していました。疾病構造が著しく変化し、これらの医療機関が国立東京病院のような呼吸器疾患のセンターや都立小児病院のような専門医療の施設となり、民間の病院の多くは特養ホームや老人病院に、さらに介護保険制度にあわせて療養型病床群や老人保健施設に転換しています。二次医療圏域内で病床が集中している清瀬市といえども一般病床はごく少ないのが実情です。このような医療機関の変化をまったくみないで、単純にベッド数をカウントすると、清瀬市内だけで北多摩北部医療圏内のベッド数の五〇%以上を占めることになります。
   「東京都保健医療計画」の改定を一年前倒しして二〇〇二年におこなう予定ときいています。そうなると来年度に本格的な作業がおこなわれることになります。この見直しにあたり、医療機関が集中し、ベッド数が極端に多い清瀬市のような自治体と同一の医療圏にはいった自冶体は、ベッド数が過剰とされ増床が認められないという不合理を解消するよう求めます。
 3 清瀬市のような医療機関の特性を考慮し、国立東京病院、都立小児病院など特定疾患の専門医療機関や療養型病床のベッド数を医療圏のベッド数から除くならば一般病床の増床が可能となり、東久留米市民の切実な要求である病院の増床に道をひらくことができます。あわせて答弁を求めます。

平成十二年第三回都議会定例会
前沢延浩議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 「東京都保健医療計画」の見直しについて
  1 「保健医療計画」における既存の病床数は、「北多摩北部医療圏」では、過剰とされているが、東久留米市の実情を反映したものとなっていない。これは医療圏設定の意義にも反するのではないか、伺う。

回答
  医療圏は、主として病院の病床の整備を図るべき地域的単位として、医療法で定める都道府県の医療計画で設定することとなっています。都では、保健医療資源の適正な配置を図るとともに、保健医療機関相互の機能の分担と連携を推進し、保健医療提供体制の体系化を進めるため、十三の二次保健医療圏を設定しています。
  圏域設定に当たっては、関係機関との協議を経て、圏域内の医療機能等の分布、患者の受療行動、交通手段等を含む医療施設へのアクセスの良さや既存の医療圏域との整合性などを総合的に勘案の上、設定しています。

質問事項
 一の2 「保健医療計画」の改定に伴う見直しでは、医療機関が集中し、ベッド数が極端に多い清瀬市のような自治体と同一医療圏の自治体は、ベッド数が過剰とされ、増床が認められないというような不合理を解消すべきだが、所見を伺う。

回答
  医療圏の設定の目的は、圏域内の保健医療施設間の機能の分担と連携により、不十分な機能の整備や過剰な供給を見直すことで、東京都全体としての医療資源の地域的な偏在を是正することにあります。このため、圏域内の適切な人口規模を確保の上、診療所の一次医療機能を含めた医療施設間の機能連携等により、地域医療をシステム化し、効率的な医療提供体制を整備することとしています。

質問事項
 一の3 清瀬市のような医療機関の特性を考慮し、特定疾患の専門医療機関や療養型病床などの施設のベッド数を医療圏のベッドから除くならば、東久留米市民の要求である病床の増床に道が開けるが、所見を伺う。

回答
  東京都保健医療計画(平成十年度改定)における必要病床数の算定においては、医療法等に定める標準算定方法を基本としつつ、高度・先進医療を担う医療機関が多い東京の実態を踏まえ、特定機能病院の病床数の一定割合を必要病床数に加算するなどの地域特性に応じた調整を行っています。
  また、現在国では第四次医療法改正を予定しており、その中で療養病床と一般病床の新たな病床区分に基づく必要病床数の算定方式の見直しなどが挙げられています。
  これら国の動向等を見極めながら、平成十四年度に予定している保健医療計画の改定に取り組んでいきます。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 たぞえ民夫

質問事項
 一 小田急線沿線のまちづくりについて
一 小田急線沿線のまちづくりについて
  二十一世紀を目前にして、東京の公共鉄道が、利用者や住民にとって、安全性と利便性が最大限に保障され、あわせて、住みよい快適な町が整備されていくかは、きわめて重要な課題であります。
  小田急沿線の郊外の宅地開発による人口の増加は、世田谷区内においては列車本数の増加、列車の長編成化が、朝夕のラッシュ時に、深刻な開かずの踏切時間を延長させ、これによって周辺住民の通行の自由が遮断されるという、都市の活動への大きな弊害を生んでいました。踏切の解消、立体化は、長年にわたる住民の切実な願いです。
  小田急線の世田谷区内については、国と東京都の補助のもとに、喜多見から成城学園区間を掘割地下式、成城学園から梅ヶ丘間を高架方式とする連続立体複々線事業が進行しています。
  ところが、建設省と東京都は連続立体交差事業の際に、駅前広場の整備や、駅またはその周辺に、市街地再開発事業、都市計画道路など導入することを基本とした、まちづくりをおこなうことを条件としました。
  これにもとづいて、一九九六年、世田谷区が提案した、小田急線六駅周辺街づくり構想(案)」の骨格は、各駅周辺を高度化させ、超高層ビルなどの大型の業務・商業施設を誘致し、あわせて、住宅地の中心に幅員二十メートルもの都市計画道路八本を建設するという内容でありました。
 1 この計画について、説明会では、「上からの計画をおしつけるな」「抜本的な見直しを」と、住民から反発の意見が続出したことは、いかに、住民不在の計画であったかを物語っています。住民の意志が反映しないままに、行政が一方的にしめしたまちづくり案と、鉄道構造のあり方は沿線住民に大きな混乱をもたらしました。このような鉄道道路、再開発などバブル時代の計画をひきずった開発を推進するために、住民の声も生かさずに、計画をおしつけることは許されません。そのおおもとを、今後も続けるのかが東京都には根本から問われています。
   都が本当に立体化事業の一日も早い実現を願っているというのなら、地元住民をも含め、最もその近道となる方法、すなわち、まちづくりはまちづくりで進め、立体化は立体化で進める方法をとることが、住民の要望に沿う賢明な判断と思いますが、いかがですか。答弁を求めます。
 2 また、まちづくりのあり方、すすめ方は、住民自身の参加によって、合意形成の実績を積み上げ、住民のまちづくり参加を促進させることが大事であると考えますが、見解を求めます。
 3 まちづくりと深く関わってくるのは、小田急線の連続立体交差事業のあり方です。梅ヶ丘以西については、高架式としたために、あらたな複線部の用地や、関連側道の用地買収と施工工事などに、莫大な事業費を投入せざるをえませんでした。そのため、事業期間の延長などによって、駅の利用が不便になったなど、さまざまな住民負担を与えています。
   梅ヶ丘以東の鉄道構造のあり方で都民が求めているのは、騒音も少なく、あらたな複線部分の用地買収については負担が軽減され、事業期間も短縮できる地下式構造であります。その構造は、既存の軌道の下につくられるものであり、地上空間を利用したまちづくりの上からも貴重な方法です。小田急線梅ヶ丘駅以東の複々線構造形式については、地下式でおこなうべきだと考えますが、答弁を求めます。
 4 都の連続立体交差事業に関するとりくみで、都民が関心をよせているのは、計画検討の状況です。現在、構造形式や施工方法などに関する調査、設計はどこまですすんでいるのか、また、建設省とのあいだで行われていると聞いている事業採択にむけての進捗状況について、あわせて見解を求めます。
 5 同時に、連続立体交差事業については、都として来年度以降も事業化を強力に推進できるための、必要な予算を計上するよう求めますが、見解を求めます。
 6 小田急線梅ヶ丘以西の立体化とあわせて、今、駅周辺のまちづくりにとって、最大で共通の悩みごとは放置自転車対策です。今でも、駅前には、放置自転車があふれ、工事中の高架下に収納できるのか、不安の声が出されています。鉄道を利用する利用者の自転車が駐輪できるかは、まちづくりの根幹の問題です。需要に見合った駐輪場の整備こそ事業者の責任ではないでしょうか。
   連続立体交差事業の中で、高架下や、掘割の上などを利用した、駐輪場設置の道が開かれました。利用者は、駅改札口近くに、十分な駐輪場が設置されることを望んでいます。
   現在、高架下利用については、東京都、小田急電鉄、世田谷区の三者による高架下検討委員会で話し合われていますが、高架下を最大限利用することは、放置自転車問題解決の絶好のチャンスです。高架下利用の協議の中で、鉄道事業者に駅改札口付近に十分な駐輪場を設置するよう求めるべきだと考えます。また、事業完成前についても、工事に支障がない範囲で、臨時的な駐輪場を設置するよう求めるべきです。あわせて見解を求めます。
 7 また、新設される各駅舎の施設が、駅利用者の声が生かされ、とりわけお年よりや、障害者などに、安全と快適さを配慮した駅施設の整備を、最優先に行うべきであると考えます。都として、鉄道事業者に、エレベーターやエスカレーター、諸施設への点字ブロック、案内標識、誘導など、お年よりや障害者の声を生かして、駅施設に設置させるべきです。また、駐輪場や駅施設については、設計・施工のそれぞれの段階で、利用者、住民の要望や意見を聞く機会をもうけるべきだと考えますが、あわせて見解を求めます。
 8 まちづくり構想については、住民の話合いがすすみ、住民の協力でプランが練られています。
   ところが、行政が提案したまちづくり構想には、数十年前に計画した都市計画道路が鉄道や商業施設、駅前広場などと同列にそのまま加えられています。計画中の都市計画道路は、その多くが戦後の復興期から高度成長期にかけて、東京が急速に都市化する中で、計画されたものであり、これを実行すれば、すでに形成された商店街や住宅などを追い出し、町の分断や環境破壊の元凶になることをふまえ、未着手の路線は計画をいらたん凍結し見直しするべきです。
   また、あたらしい町にふさわしい、人を優先にした道づくりへの検討こそおこなうべきです。見解を求め私の文書質問とします。

平成十二年第三回都議会定例会
たぞえ民夫議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 小田急線沿線のまちづくりについて
  1 連続立体交差事業の際に、併せて予定されている「小田急線六駅周辺まちづくり構想(案)」は、行政が一方的に示した住民不在の計画である。まちづくりはまちづくり、立体化は立体化で進める方が、住民の要望に沿う賢明な判断だが、所見を伺う。

回答
  連続立体交差事業は、交通渋滞や地域分断を解消し、安全で快適なまちづくりに寄与するものであります。したがって、その事業効果を高めるためには、沿線のまちづくりと一体的、総合的に進めることが重要であります。

質問事項
 一の2 まちづくりのあり方、進め方は、住民自身の参加によって合意形成の実績を積み上げ、住民のまちづくり参加を促進させることが大事だが、見解を伺う。

回答
  小田急線の六駅周辺のまちづくりは、地元住民が主体となり街づくり協議会等の中で意見交換を行うなど、住民の参加のもとに進められていると認識しております。

質問事項
 一の3 小田急線梅ヶ丘駅以東の構造形式については、地下式で行うべきだが、所見を伺う。

回答
  梅ヶ丘駅以東から東北沢駅付近まで(下北沢駅付近)の構造形式については、関係者で構成する検討会に、線増部分は地下方式で整備する案を、また、在来線については線増線計画を勘案しながら立体化する計画案を提案し、現在、検討を進めているところです。

質問事項
 一の4 連続立体交差事業に関する計画検討の状況について
    都の連続立体交差事業の取組みで、構造形式や施工方法などに関する調査、設計はどこまで進んでいるのか、また、事業採択に向けての進捗状況を、併せて伺う。

回答
  小田急線下北沢駅付近の連続立体交差事業については、現在、構造形式や施工方法などに関する調査、設計を進めております。
  今後とも、地元区と連携を図りながら、まちづくりを促進し、事業化に向けて取り組んでまいります。

質問事項
 一の5 事業化を強力に推進するための予算計上について
    連続立体交差事業は、都として来年度以降も事業化を強力に推進できるよう必要な予算を計上すべきだが、所見を伺う。

回答
  本事業の着実な推進を図るため、地元区など関係機関との連携を深めつつ必要な予算の確保に努めております。

質問事項
 一の6 高架下の駐輪場の設置について
    高架下利用検討委員会の中で鉄道事業者に駅改札口付近に十分な駐輪場を設置するよう求めるべきだが、所見を伺う。
    また、工事中の臨時駐輪場の設置も求めるべきであるが、併せて見解を伺う。

回答
  駐輪場の設置については、工事中の臨時駐輪場も含め、高架下利用検討委員会で協議しております。

質問事項
 一の7 各駅施設について
    新設される各駅舎は、駅利用者の声が活かされ、とりわけお年寄りや障害者などに、安全と快適さを配慮した駅施設として整備されるのが最優先と考えるが、所見を伺う。
    また、駐輪場や駅施設については、設計・施工の段階で利用者、住民の要望や意見を聞く機会を設けるべきと考えるが、併せて見解を伺う。

回答
  新設される各駅舎は、東京都福祉のまちづくり条例等の趣旨に基づき、設計・施工しております。
  また、駐輪場や駅施設については、地元住民からなる街づくり協議会等から、要望や意見がすでに出されており、関係機関で調整しております。

質問事項
 一の8 行政が提案したまちづくり構想は、数十年前に計画された都市計画道路が、そのまま加えられており、これを実行すれば、街の分断や環境破壊の元凶となる。未着手の路線は、計画を凍結し、人を優先した道づくりの検討を行うべきだが、所見を伺う。

回答
  小田急線(梅ヶ丘から成城学園)の沿線地域では、都市計画道路が未整備であり、駅へのアクセス道路や安全で快適な歩行者空間が不足しております。
  このため、連続立体交差事業を契機に、まちづくりの骨格となる都市計画道路の着実な整備を進めることが必要であり、今後とも、社会経済情勢の変化や財政状況を踏まえながら、計画的、効率的な事業の推進に努めていきます。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 松村友昭

質問事項
 一 自転車交通を公共交通手段として位置づけ、都政の重要課題として取りくむことについて
一 自転車交通を公共交通手段として位置づけ、都政の重要課題として取りくむことについて
 1 自転車問題に関しての都の基本認識と積極的な役割について
   健康的で環境にも優しい自転車を二十一世紀の都市交通の柱の一つにしようという運動や世論が高まっています。
   いま、都民は、自動車排気ガスによる深刻な大気汚染によって健康が脅かされ、慢性的な渋滞や通勤混雑に悩まされ、そのうえ都内で交通事故による死傷者の急増など、かってない危機的事態に直面し、ここからの脱出を強く求めています。そのため、都は、ディーゼル車規制、交通需要マネジメント(TDM)の推進、安心して通行できる道づくりの推進などを課題としていますが、自転車問題の取り組みの然るべき位置づけはありません。まず身近な交通手段としての自転車利用にこそもっと目を向けるべきではないでしょうか。
   自転車は大気汚染も出さず、利用しやすい環境整備によっては、他の交通手段に比較しても優位性が発揮され、TDMの役割の一端を担い得るものであるからです。
   自転車問題は、この間、区市町村を中心にさまざまな取り組みが行われてきました。私の住む練馬区では、放置自転車問題の解消に端を発し、試行錯誤の取り組みを行った結論として、自転車問題を交通問題または都市問題として捉えて、自転車交通を公共交通手段として積極的に位置づけるということでした。そして区独自にレンタサイクルシステムを導入するなどによって、一定の成果をあげるまでにいたっています。さらに自転車を都民の重要な交通手段として高度利用を図っていくために都の役割の発揮が必要となってきています。
  ア そこで、自転車問題での都の抜本的な取り組みを求めるものでありますが、そのためにも、まず、都は、自転車交通を公共交通手段として都政の課題に位置づけることが重要です。
  イ そして、都市交通としての総合的な「自転車利用基本計画」を策定すべきです。それぞれ見解を伺います。
 2 レンタサイクルシステムへの支援について
  ア 自転車を都市交通として位置づける中で、いま、注目をあびているのが、レンタサイクルシステムです。レンタサイクルとは、駅周辺に設置された駐輪場と自宅や会社・学校等とをつなぐ交通手段として貸し自転車を利用する制度ですが、私が乗降する練馬区大泉学園駅付近にある施設は六百五十台の共用可能台数は満杯で一三〇%の利用状況とのことです。練馬区はレンタサイクルを現在六駅六施設に設置していますが、さらに八駅九施設に整備する計画です。さらに利用者からの「目的地で乗り捨てることが出来たら」との強い要望にも応え、利用者がレンタサイクル施設間で自由に利用と乗り捨てが出来るように、相互利用のネットワーク化を図って、自転車の高度利用を実現しようとしています。都はこういう積極的な自治体を支援すべきではありませんか。
  イ 近い将来、このネットワークが一つの行政区にとらわれず、周辺自治体への普及と連携が図られ、都内全域に広がれば、文字どおり都内の主要交通手段にもなりえます。そのためには、コンピューターによる搬送システムの確立などの技術的問題、財源問題や周辺自治体との協力体制を図るなど都のバックアップが欠かせません。ぜひ積極的な支援を検討すべきではありませんか。それぞれ見解を求めます。
 3 走行環境の整備について
   自転車利用にとって、大きなネックとなっているのが、走行環境の整備が不十分な状況にあることです。また、自転車の関係した交通事故死傷者が多発している原因ともなっています。この解決は緊急課題となっていますが、この点でも都市計画道路の整備など都の果たす役割は重大です。
  ア 建設省は昨年五月に、自動車中心の道路政策を見直し、車や歩行者から分離された自転車道路網を全国の主要な都市に整備していく方針を打ち出しました。さらに同省は今秋にも道路設計基準である道路構造令を三十年ぶりに抜本改正し、市街地に新設する道路には原則として歩道と自転車道を設置することを、国や地方自治体に義務づける方針を決め、二〇〇一年度からの適用を目指すとしています。
    そこで、都としてこの具体化をどう図っていく考えですか。
  イ 練馬区では環状八号道路が事業化に入りますが、区内南北の主要道路です。ここに住民とも協議して、自転車専用道路を設けるべきだと思いますが、いかがですか。
  ウ また、既存道路についても車道を変更し、自転車専用道路を可能な限り造っていく考えについて、それぞれ伺います。
  エ 「自転車道路網整備」を促進するため、建設省はモデル都市を選定し、練馬区もモデル都市の指定を受けました。さっそく、練馬区では、西武池袋線石神井公園駅と西武新宿線上石神井駅間で「快適な自転車走行空間のモデルづくり」を行おうと、道路の機能の見直し、交通規制、速度規制などを盛り込んだ実施計画案を策定し、一日も早い実現を図ろうとしています。交通管理者、練馬区、東京都を含めた検討が必要と聞いておりますが、今後の見通しを伺います。
  オ 最近、自転車による交通事故が増加してきています。自転車が安全に走れる走行環境の整備を進めることや、自転車利用のルールの徹底、マナーの向上を図ることなどは、各自治体がバラバラでは効果が上がりません。都がイニシアチブを発揮すべき課題と考えますが、所見を伺います。
 4 自転車駐車場の整備について
  ア 自転車駐車場の整備は、自転車利用者の利便性の向上や良好な都市環境の確保を図る点からもひきつづき重要な課題となっています。とりわけ、東京都は、地方自治体として、さらに道路管理者と鉄道事業者の三者の立場にあることからして、駐輪場設置に積極的役割を果たすことは自転車法に定められた責任からいって当然です。
    とくに、都市計画道路の整備等、駅周辺での事業の実施にあたっては、計画の段階から都自ら自転車駐車場を整備することが求められます。いま、練馬区内の放射三五号道路の事業化を東京都はすすめようとしていますが、この道路が通る地下鉄平和台駅には、道路予定地内に区の自転車駐車場があり、このままでは約二千台の自転車がいき場を失ってしまいます。この付近の道路は立体構造になることからして、道路管理者として道路の付属物として駐車場を設置するか、もしくはそれに変わる方策をとって、現状の駐輪場を確保すべきです。見解を伺います。
  イ また、都が所有する未利用地には練馬区を含め、駐輪場として活用が出来る土地が多数見受けられます。一層の利用促進を図られるよう、改善を図るべきです。見解を求めます。
 5 自転車利用について都民の意見を
   最後に、自転車利用について都民の意見を直接聞くことの重要性です。
   東京都政策報道室は「交通に関する世論調査」を一九九八年二月に行っていますが、この調査は自動車利用が主としての交通安全に関する調査でありました。
   自転車問題ほど多様な問題を内包しているものはありません。交通需要マネジメントの推進、都民の環境意識の問題、交通事故に対する問題意識、自転車利用のマナーやルールの徹底などのためにも都民の自転車利用の意識調査をやる必要があるのではないでしょうか。
   区市町村とも連携し、都民ニーズの的確な把握を早急に実施すべきと思いますが、見解を伺い質問を終わります。

平成十二年第三回都議会定例会
松村友昭議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 自転車交通を公共交通手段として位置づけ、都政の重要課題として取りくむことについて
  1 自転車問題に関しての都の基本認識と積極的な役割について
   ア 自転車問題での都の抜本的な取り組みを求めるものであるが、そのためにも、まず、自転車交通を公共交通手段として都政の課題に位置づけることが重要であるが、所見を伺う。

回答
  手軽で身近な乗り物である自転車は、都市鉄道の端末交通手段、あるいは近接地域内の交通手段として重要であると考えています。しかし、自転車問題については、地域によって自転車利用の課題・特性も異なるため、基本的には地元区市町村が対応すべきものと考えております。
  都としては、都市交通における自転車の役割を評価し、都市計画道路の整備を進める中で、自転車・歩行者道の設置に努めるとともに、区市町村の行う自転車駐車場や自転車道等の整備に対して支援を行っております。

質問事項
 一の1のイ 都市交通としての総合的な「自転車利用基本計画」を策定すべきであるが、所見を伺う。

回答
  お尋ねの「自転車利用基本計画」策定については、身近なまちづくり主体である地元区市町村が、それぞれの地域の実情に応じて策定するのが適当と考えております。

質問事項
 一の2 レンタサイクルシステムへの支援について
    ア 都は、自転車の高度利用を実現しようとしている練馬区のような積極的な自治体に対し、支援すべきだが、所見を伺う。

回答
  レンタサイクルシステムの導入に当たっては、自転車駐車場の整備や街路の拡幅など、自転車の走行環境の充実がまず必要であります。
  都としては、同システムに取り組む区市町村が、導入対象区域の街路等の整備を行う際、関連する国庫補助事業を活用できるよう努めてまいります。

質問事項
 一の2のイ 自転車相互利用のネットワークが都内全域に広がり、主要交通手段にもなりえる。それには、搬送システムの確立、財源問題、周辺自治体との協力体制を図るなど、都の積極的な支援が必要だが、所見を伺う。

回答
  レンタサイクルシステムを含め、自転車対策については、基本的に区市町村が積極的に取り組む事業でありますが、都としても引き続き可能な支援を行ってまいります。

質問事項
 一の3 走行環境の整備について
    ア 建設省は、今秋にも道路構造令を改正し、市街地に新設する道路に、歩道と自転車道の設置を国や地方自治体に義務づける方針だが、都としてこの具体化をどう図っていくのか伺う。

回答
  道路構造令の改正内容については、現段階において、承知しておりません。
  都としては区部の環状道路、多摩の南北道路をはじめとする道路整備を進める中で、歩行者及び自転車の通行空間の確保に努めております。

質問事項
 一の3のイ 練馬区においては、区内南北の主要道路である環状八号道路が事業化に入るが、住民と協議し、自転車専用道路を設置すべきだが、所見を伺う。

回答
  事業中の環状八号線については、歩行者及び自転車の通行が可能な歩道を設置してまいります。

質問事項
 一の3のウ 既存道路について、車道を変更し、自転車専用道路を可能な限り造っていくべきだが、所見を伺う。

回答
  東京都では、既設道路を利用した安全かつ円滑な自転車道網と良好な自転車走行環境の整備を進めるため、建設省、警視庁及び関係各区からなる検討会を設置しています。
  このなかで、歩道部を利用した自転車道の整備のほか、車道部の活用についても、検討しています。

質問事項
 一の3のエ 都は、モデル都市に選定された練馬区の実施計画案に対し、検討が必要だが、見通しを伺う。

回答
  練馬区では、平成十二年六月に「練馬区自転車利用環境整備基本計画」を決定し、現在、実施計画を策定中です。都は、今後とも、練馬区の実施計画策定に向け、支援を行っていきます。

質問事項
 一の3のオ 自転車が安全に走れる走行環境の整備や、自転車利用のルールの徹底、マナーの向上を図ることは、都がイニシアチブを発揮すべき課題と考えるが、所見を伺う。

回答
  自転車の安全な利用を図るためには、自転車利用者の交通ルールの遵守やマナーの向上とともに、走行環境の整備を図ることが必要です。都は、現在、自転車利用者に対する啓発用チラシ等を作成し、区市町村や警察署等と連携しながら、自転車の安全利用について普及啓発を図っています。
  今後、普及啓発の充実に一層努めるとともに、自転車道のモデル事業の推進により、安全な走行環境の整備を進めるなど、自転車による事故の防止に努めてまいります。

質問事項
 一の4 自転車駐車場の整備について
    ア 放射三五号線道路の事業化により、地下鉄平和台駅の道路予定地にある区の自転車駐車場を利用する二千台の自転車が行き場を失う。
      道路管理者として駐車場を設置するか、もしくはそれに変わる方策をとって、現状の駐輪場を確保すべきだが、所見を伺う。

回答
  地下鉄平和台駅周辺の放射第三五号線道路予定地については、練馬区長の要請を受け、事業化までの期間、自転車駐車場として暫定的にその使用を許可しています。
  自転車駐車場の設置等については、都としては、専ら地域住民の利用に供するものであることから、練馬区が主体となって整備することが適当であると認識しております。

質問事項
 一の4のイ 都が所有する未利用地には、駐輪場として活用できる土地が多数見受けられる。一層の利用促進を図るよう改善すべきだが、所見を伺う。

回答
  都財政の状況が一段と深刻になっている現状にあっては、これまで以上に都有財産の有効活用を図り、歳入確保に寄与しなければならないと考えています。
  そのため、都が所有する未利用地のうち、利用予定がないものについては、地元自治体の利用希望を適切に把握して有償による貸付等の活用を図っているほか、民間等に積極的に売却を行ってきたところです。
  今後も、これまで以上に売却等を含めた有効活用を図れるよう努めてまいります。

質問事項
 一の5 自転車利用に都民の声を
    自転車利用について、区市町村とも連携し、都民ニーズの的確な把握を早急に実施すべきだが、所見を伺う。

回答
  都は、御指摘の平成十年二月の「交通に関する世論調査」において、自転車の使用状況と行政への要望について調査を行っております。
  自転車問題は、基本的には住民に身近な区市町村が対応すべきものと考えておりますが、今後、都の事業を進める上で必要が生じた場合には、調査を行ってまいります。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 花川与惣太

質問事項
 一 北区における東京都関連の主要事業と課題について
  1 十条地区のまちづくりについて
  2 西ケ原の東京外国語大学移転跡地の利用について
  3 新交通システム「エイトライナー」及び「メトロセブン」の促進について
  4 首都高速道路王子線の建設に伴う高架下利用について
  5 旧赤羽警察署跡地の利用について
  6 都営住宅のバリアフリー化について
  7 都市計画道路の整備について
  8 補助八三号線の整備について
  9 JR王子駅(ホームの大改造)並びに駅舎の改造、整備について
  10 JR王子駅中央口「山の下架道橋」の整備について
  11 田端駅周辺地区の再開発事業について
一 北区における東京都関連の主要事業と課題について
  石原知事は、昨年就任以来、財政再建のため厳しい内部努力と大胆な都政改革を推進していることは高く評価するが、同時に千二百万都民が安心していきいきと生活できる「まちづくり」も極めて重要である。
  こうした観点から、これまで本会議や文書等で、そのつど質問し、要望してきたところであるが、あらためて新しい提言も含めて理事者各位の積極的な対応と、今後の見通しについてお伺いするものである。
 1 十条地区のまちづくりについて
   東京都は阪神・淡路大震災の貴重な教訓を踏まえ、東京を災害に強いまちにするため、平成九年三月に「防災都市づくり推進計画・整備計画」を策定した。
   この中で、北区では十条地区九十五ヘクタールが「重点地区」に指定され、さらに、平成十一年五月には「防災生活圏促進事業」の承認を受けた。
   北区としては現在「北区まちづくり公社」等を活用して、十条地区の新しい防災都市づくりに向けて、住民説明会や現地調査等、鋭意努力しているところである。しかし、区としての取り組には限界もあり、早期なまちづくりの推進にあたっては、東京都の積極的な関与と支援が不可欠である。
   以下、十条地区のまちづくりについてお伺いしたい。
  ア 埼京線の立体交差化について
    十条地区のまちづくりを推進するには、市街地の分断、慢性的な交通渋滞を誘発し、非常時の避難、消防、救援活動に大きな障害になっているJR埼京線の立体交差化が最大の懸案である。
    平成九年十一月に東京都が策定した「生活都市東京の創造重点計画」の中で、JR埼京線の立体交差化について「事業準備中路線」に位置づけられているが、その後、JR・北区・東京都三者間で、どのような話し合いがされているのか。今後の取組を含めて現況を問う。
  イ JR埼京線十条駅西口地区の「再開発事業」について
    北区議会は平成八年度に東京都再開発部から「再開発事業実施のための調査に入る」旨の説明を受け、これを了承した。東京都が地元の調査に入って早五年目になるが、未だその結果が公表されず、都市計画の時期についても確定されていない。
    東京都財政再建プランでは、新たな「再開発事業」は、凍結するとされている。しかし、十条駅西口地区の「再開発事業」は、JR埼京線立体交差化事業の採択条件として欠かせないものと考える。近況について伺うものである。
  ウ 道路ネットワークとしての都市計画道路の整備について
    地区内の都市計画道路は、補助七三号線、補助八三号線、補助八七号線がある。
    現在、区施工中の補助八七号線を除き、他の二路線はいずれも未着工である。道路ネットワーク及び非常時の避難、消防、救助支援活動等、防災的観点、さらにまちづくりの根幹である都市施設として、早急に整備完成を目指す必要がある。現況の取り組みについて問う。
  エ 避難遮断帯及び避難道路の整備について
    環状七号線の沿道整備事業及び都市防災不燃化促進事業は、建築物の耐震化・不燃化をはかり、延焼遮断帯としての機能を強化し、避難路の確保のためにも、一層の推進をはかるべきと考えるが、伺いたい。
 2 西ケ原の東京外国語大学移転跡地の利用について
   同大学のほとんどの施設は、すでに府中市に移転しており、現在残っている「アジア・アフリカ言語研究所」も平成十四年には新キャンパスに移転完了する。
   同跡地(約四・五ヘクタール)の地元利用は、北区民の永年の念願であり、都及び区側の検討結果を注意深く見つめているところである。
   本年一月、北区は同跡地周辺住民を対象に、同跡地の利用についてアンケート調査を行い、その結果を見ると「避難地となる大規模な公園」を望むのが五三・二%「日常的公園広場」が四九・〇%にのぼっていた。
   先般、一部の新聞に同跡地の利用に関し「都市計画公園整備云々」と報道されていたが、現在、都区間の協議がどこまで進んでいるのか。もし、未だ具体化していないとすれば、いつを目標に利用計画を策定するのか。
 3 新交通システム「エイトライナー」及び「メトロセブン」の促進について
   羽田空港から環状八号線沿いに北区の赤羽駅に至る「エイトライナー」と、江戸川区の葛西臨海公園から環状七号線沿いに赤羽駅に至る「メトロセブン」構想の実現は、二十一世紀の東京を支える重要な区部周辺環状交通システムとして、関係九区、五百万区民の切なる願いである。
   本年一月運輸政策審議会から「今後整備について検討すべき路線」と位置づけられ、それを受けて「エイトライナー・メトロセブン両促進協議会」は去る八月三十日、九段会館において合同促進大会を開き、決議文を関係区長が森田運輸大臣に提出したところである。
   この新交通システムの早期実現には関係九区の衆参両院議員、都議会議員、区議会議員及び区民が大同団結して運動を推進しており、都はその先頭に立って、さらなる取り組みを強く望むものである。
 4 首都高速道路王子線の建設に伴う高架下利用について
   首都高速王子線は、昭和四十五年の首都圏整備計画で位置づけられた首都高速中央環状線の一部を形成する道路として事業が進められている。
   昭和六十一年、首都高速王子線の東京都市計画道路の都市計画決定及び環境アセスメント手続きにあたって、知事の意見照会に対し、北区長は、地域の環境と住民生活を守るため、次のような基本的な五項目の要望を行ってきた。
  (1) 関係地域の環境保全のため、万全の措置を講じること。
  (2) 沿道地域のまちづくりを積極的に推進すること。
  (3) 関係する権利者に対しては、適正な補償を誠意をもって実施し、生活再建に万全を期すこと。
  (4) 事業に関連する都市計画施設等の整備を促進すること。
  (5) 沿道の地域地区については、建設する道路と整合を図ること。
   これにより王子線は昭和六十一年の事業認可を受け、工事着手後、現在まで事業がすすめられている。
  ア そこで先ず、事業全体についての進捗状況を伺う。
  イ 次に、高架下については、公共空間として有効利用の観点から、昭和六十一年二月、王子線の建設にあたり、北区長は二十一項目の区要望書を都知事あて提出しているが、その中で「高架下及びトンネル覆蓋部の利用については、緑地、広場、駐車場等公共施設を優先すること」を要望しており、都知事からは、「要望に沿って優先する」と回答を得ている。
    このような経緯を踏まえて、高架下利用について、東京都は北区と調整し、有効活用に積極的に取り組むべきと考える。
   a 高架下利用について、現在、北区や関係住民との間で課題となっている事項及びその解決に向けての状況はどうなっているか伺う。
   b 王子駅南口覆蓋部と高速道路関連街路及び石神井川の流路変更部についての計画とりまとめはどうなっているか。経過と今後の見通しについて伺う。
 5 旧赤羽警察署跡地の利用について
   北区赤羽二丁目の旧赤羽警察署跡地については、すでに下水道シールド基地工事が進められ、同跡地約千三百三十平方メートルの利用が地元住民の関心の的となっている。
   同地一帯は、商業地域、住宅地域、近年は中高層建築物が増加する中、木造家屋も混在し、水利も悪く、必ずしも地震や災害に強い街ではない。加えて緑の大変少ない地域であることは一目瞭然である。
   さらに、同地域の広域避難場所は荒川河川敷だが、一次避難場所として岩淵中学校、赤羽小学校があるが、荒川河川敷とは逆方向であり、荒川河川敷までの一次避難地すら確保できない状況にある。
   このため、地元自治会は本年九月、北区長に対し、「私どもは、これまで防災訓練の公園もなく、不自由してきた。そこで警察署跡地を防災の拠点、緑の確保と、高齢者や心身障害者も憩いの出来る二十一世紀にふさわしい公園の設置場所にしてほしい」旨の要望書を提出したのである。
   同跡地は都有地であり、地域の実情と住民の要望を強く受けとめ、防災拠点を含めた公園に開放されるよう重ねて要望するものである。
 6 都営住宅のバリアフリー化について
   戦時中、北区内における軍用地は約二百六万平方メートルに及び、戦後その大部分は公共住宅や公園などに開放された。公共住宅は、都営住宅、公団住宅、住宅供給公社、公務員宿舎などだが、なかでも都営住宅は昭和二十二年に桐ケ丘に建設された木造低家賃住宅を皮切りに昭和五十年初めまでに約一万三千戸の住宅が建設された。
   この中で、大団地を形成している桐ケ丘については、都は平成八年度から「再生計画」のもとに、大がかりな工事に着手しているが、その一方、北区内にはいまだ昭和二十三年建築の袋台第二団地(北区赤羽北二丁目)をはじめ建築年数三十年以上経過の都営住宅が相当数にのぼり、住民たちはエレベータ設備のない老朽住宅(約四千戸)に不便な日常生活を送っているのである。
   北区の調べによると北区内における六十五歳以上の老人人口約六万二千人で、全体の一九・七%を占めており、その多くは老朽化した都営住宅の居住者である。
   最近、住宅のバリアフリー化が強く叫ばれている中、高齢化が急ピッチで進んでいる北区の都営住宅居住者及び障害者の健康、安全、福祉充実の観点から、エレベータの設置等を強く要望するものである。
 7 都市計画道路の整備について
   都市計画道路は、便利で快適な生活環境を確保するとともに、災害時の安全確保などの観点からも重要な役割を担う都市基盤施設である。
   しかし、北区における都市計画道路の整備率は、未だに五〇%弱であり、二十三区の平均に比べても低い水準にある。
   とりわけ、補助七三号線など、以下の都市計画道路は役割を果たすもので、整備促進が望まれており、現況の取り組みなどについて伺う。
  ア 補助七三号線(幅員二十メートル、延長約〇・六キロメートル)について
    計画区間のうち、赤羽西一丁目から同二丁目(赤羽駅西口から七三号線と八三号線の分岐点)の間については、交通量が非常に多いところにもかかわらず、現道の幅員が八メートル程度しかなく、歩行者など交通弱者は常に交通事故の危険にさらされていることから、かねてより整備促進を要望してきたところである。
    このたび、十数年来の要望がようやく実を結び、昨年度は住民説明会を開催するとともに現況測量も実施されたことに、先ず感謝の意を表したい。
    本年三月には、北区の長年の懸案であり、地域住民の悲願であった「赤羽駅付近連続立体交差化事業」にあわせて、補助八六号線をはじめとする六カ所の踏切が解消されたことなどから、補助七三号線の整備促進がますます急がれている状況である。
    また、事業の重要性に鑑み、地元では事業に積極的に協力する気運が生まれており、団地を譲渡するに当たり、生活再建について相談をされる権利者もおられる状況である。こうした住民の期待に応えるためにも、引き続き事業の推進に取り組むべきと考えるが、今後の予定について伺う。
  イ 補助八八号線について
    本路線は、豊島団地の住民をはじめ、地元の多数の方々が利用するバス路線になっているが、現道の幅員が狭く、慢性的な交通渋滞となっている。特に朝夕は通勤通学のため、バスの本数も多いことから、沿道の環境悪化等を含め早急に整備が求められている。
    また、足立区新田地区の再開発事業も進捗し、新たな道路が豊島地区に結節することになっている。さらに、首都高速王子線の完成も間近になり、広域道路ネットワーク上からも本路線の整備は緊急課題である。
    こうした中、本路線についても昨年、地元説明会が開催され、現況測量が実施されたことに感謝を申し上げ、本路線の今後の取り組みについて近況を伺うものである。
  ウ 補助九一号線について
    北区の堀船地区においては、旧キリンビール東京工場の移転に伴い、株式会社読売新聞、株式会社日刊スポーツ印刷社、日本製紙株式会社が進出する大規模な再開発計画が具体的に進出している。
    また、隣接する荒川区側ではリクルートの大規模マンションが建設された。
    こうした大規模事業により工事中はもとより、完成後の企業活動等に伴い膨大な交通量が発生することになる。
    しかし、当該地区の道路事情は著しく悪く、こうした交通量に対応することは困難な状況である。したがって、現状では、前述のキリンビール東京工場跡地K21プロジェクトに関する質問の中で、北区長や荒川区長が危惧している生活環境の悪化を招くことは必定であり、地元住民は大変心配している。
    こうした状況を解決するには、補助九一号線の足立区宮城一丁目から、北区西ケ原二丁目の本郷通りまでの間、約一・六キロメートルについての整備促進がのぞまれる。
    特に、足立区側では隣接する江北橋付近の補助九一号線の整備が進捗しており、また、環状五号の二(明治通り)の交差点付近では接続する補助九〇号線の事業も進捗していることから、右記路線のうち足立区宮城一、二丁目から環状五号の二(明治通り)付近までを整備する事により、道路ネットワークの形成が進展し非常に大きな効果が期待出来る。
    この機会に進出企業の計画と併せて本路線を早期に整備すべきと考え、取り組みについて伺う。
  エ 補助八九号線について
    本路線のうち、赤羽二、三丁目付近については、昭和三十九年に区画整理により整備されたところであるが、他の区間についてはその後、未整備のままになっている。
    このうち赤羽南一丁目付近から環状七号線にかけては、バス路線になっているうえ、周辺には工場が多いために大型車両が多数通行し、道路が急に狭くなっていることもあり、非常に渋滞する状況となっている。
    また、歩道が非常に狭いために、自転車はもとより、歩行者も車道にはみ出している状況である。
    周辺には学校、病院なども多く、地元の方々はじめ、多数の歩行者の方々が危険な状況にさらされており、交通事故を心配するとともに、地域の防災性向上なども考え、本路線の早期整備を要望している。
    こうした地元住民の要望に応え、本路線を早急に整備すべきと考え、今後の取り組みについて伺う。
 8 補助八三号線の整備について
   都市計画道路の整備に関する要望は別掲のとおりだが、特に補助八三号線の整備は早急に事業化すべき重要路線である。
   北区赤羽西一丁目の補助七三号線分岐点から中十条一丁目南橋に至る補助八三号線は、昭和二十一年に都市計画決定されて以来、五十年を経過しているが、いまだに未整備であり、特に十条高台地区約九十五ヘクタールは防災都市づくり《推進計画》では「重点地区」に位置づけられたものの、財政再建推進プランの中では都施行による新規地区での面的整備については当面見送ることとなった。
   これについて、地元住民は次第に要望が強くなりつつあり、少なくとも補助八三号線の早期事業着手を要望する声が極めて高いが、都の取り組みはどうか、伺うものである。
 9 JR王子駅(ホームの大改造)並びに駅舎の改造、整備について
  ア JR京浜東北線王子駅は、都内唯一残る路面電車(都電)、地下鉄南北線バス各路線が連結し、地区交通要路の拠点として益々利用度を高めている。
    また、南北線の延長計画(埼玉、目黒)も着々と進められ、今後は更に幅広く、効率的な発展が期待されている。しかしながら、その中心拠点となる王子駅は旧来のままであり、特に中央口、南口の環境は極めて暗い状態にある。
    駅舎、ホーム全体の構造についても、身障者や高齢者のための設備はいまだ不十分であり、通勤・通学者や弱者に対する配慮は劣悪ともいえる状況にある。
    戦後、王子地区は大工場の町から住宅地へ、また、飛鳥山公園、石神井川親水公園、飛鳥山博物館、緑の博物館、渋沢史料館や北とぴあの建設により自然あふれる歴史と文化・教育の町へと変貌してきている。
    付近には学校が多く駅のホームは朝夕は大混雑しており、(桜丘女子高等学校・成徳学園・順天高校・武蔵野高校・飛鳥高校・駿台学園・阿部学園・滝野川女子学園・聖学園)等このような状況からもJR王子駅の駅舎、ホーム及び諸施設等の改造は急務である。
    また、間もなく首都高速王子線も、飛鳥山地下から石神井川上部中心に運行される。
  イ なお、北区の南玄関口、田端駅の改築整備も推進されたい。
    以上につき、関係各位の見解・関連計画等につき伺いたい。
 10 JR王子駅中央口「山の下架道橋」の整備について
   JR王子駅中央口前を横切る明治通りは、自転車や都電「荒川線」の走る極めて交通量の多い、幹線道路だが、京浜東北線に架かる「山の下架道橋」(延長約五十メートル)は、日中でも薄暗く、両側の壁は黒く汚れ、通行人に大きな不快感を与えており、事件・事故の発生も憂慮されている。
   まちの美観と活性化、さらに駅利用者の快適な通行を保つためにも、早急に整備されることを望むものである。
 11 田端駅周辺地区の再開発事業について
   JRは、昭和六十二年以降、田端駅周辺地区の再開発事業を進めてきているが、開発にあたって地域住民の意向をよく汲んでないため、特に、東側地区の駅利用者は大変な不便をきたしている。
   そこでお伺いしますが。
   この事業は、JR東日本とJR貨物とが地域住民の意向を十分汲み取って進めるということでのスタートではなかったのか。
   また、今後、事業を進めるにあたって、地域住民の意向をどのように反映させていくつもりなのか、伺う。

平成十二年第三回都議会定例会
花川与惣太議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 北区における東京都関連の主要事業と課題について
  1 十条地区のまちづくりについて
   ア 埼京線の立体交差化について
     平成九年十一月、都が策定した「生活都市東京の創造重点計画」の中で、JR埼京線の立体交差化について、「事業準備中路線」に位置づけられているが、その後、JR・北区・東京都の三者間でどのような話し合いがされているのか、今後の取組みを含めて、伺う。

回答
  JR埼京線十条駅付近の立体交差化は、交通渋滞の解消、交通安全の確保及び分断されているまちの一体化を図るとともに、非常時の避難道路の確保、救援活動の円滑化などの防災都市づくりに寄与します。
  都としては、周辺のまちづくりの進捗や都財政の状況など、種々の課題を踏まえながら、立体交差化について総合的に検討してまいります。

質問事項
 一の1のイ JR埼京線十条駅西口地区の「再開発事業」について
     都が、地元の調査に入り五年目となるが、結果の公表も都市計画の時期も確定されていない。十条駅西口地区の「再開発事業」は、JR埼京線立体交差化事業の採択要件として、欠かせないものと考えるが、近況を伺う。

回答
  十条駅西口地区については、補助第七三号線の整備とともに、駅周辺の土地の高度利用や防災性の向上を図ることなどが重要であると認識しています。
  現在、まちづくりの進め方などについて、地元区が住民の方々と話合いをしており、都としても、関連事業との調整や都財政の状況など種々の課題を踏まえながら、今後とも、区と緊密に連携し、災害に強いまちづくりに取り組んでまいります。

質問事項
 一の1のウ 道路ネットワークとしての都市計画道路整備について
     地区内の都市計画道路(補助七三号線、補助八三号線、補助八七号線)のうち、区施行中の補助八七号線を除く路線は、未着工である。
     道路ネットワーク及び防災的観点、まちづくりの根幹である都市施設として、早急に整備完成を目指す必要がある。現況の取り組みを伺う。

回答
  これらの都市計画道路は、都市機能の確保、都市防災の強化及び地域環境の保全等の見地から重要な役割を担うものであり、防災都市づくり推進計画<整備計画>においても、避難、救援、延焼遮断等、防災的観点から、事業推進を図るものとして位置付けられております。
  今後、御指摘の路線については、都区が連携して十条地区の防災まちづくりを進める中で、整備を図ってまいります。

質問事項
 一の1のエ 避難遮断帯及び避難道路の整備について
     環状七号線の沿道整備事業及び都市防災不燃化促進事業は、建築物の耐震化・不燃化を図り、延焼遮断帯としての機能を強化し、避難路の確保のため、一層の推進を図るべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  十条地区を含む北区内の環状七号線については、平成元年四月に北区が沿道地区計画を定めました。この計画を受け、都は耐火構造の緩衝建築物の建築費等の一部負担など沿道整備事業を行っております。
  また、この沿道地区においては延焼遮断機能の強化、避難路の安全性の確保を図るため、平成元年度から都市防災不燃化促進事業を実施しており、不燃化率七〇パーセントの目標達成に向け、平成十五年度まで事業を延伸したところです。
  今後とも、沿道整備事業及び都市防災不燃化促進事業の一層の推進に努めてまいります。

質問事項
 一の2 北区西ケ原の東京外国語大学移転跡地の利用について
    現在、跡地の利用については、都区間の協議がどこまで進んでいるのか。
    また、未だ具体化していないとすれば、いつを目標に利用計画を策定するのか、伺う。

回答
  東京外国語大学移転跡地については、北区が平成十一年度に「東京外国語大学移転跡地土地利用転換調査」を行い、本年七月その結果を公表しました。
  今後は、調査結果を踏まえ、北区が主体となって平成十二年度内に移転跡地の利用方針、平成十三年度に土地利用計画をまとめていく予定です。

質問事項
 一の3 新公共交通システム「エイトライナー」及び「メトロセブン」の促進について
    この新交通システムの早期実現に向け、都のさらなる取り組みを強く望むが、所見を伺う。

回答
  本路線は、本年一月の運輸政策審議会答申「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(答申第十八号)」において「今後整備について検討すべき路線」と位置付けられており、事業主体の確立、膨大な事業費の確保、事業採算性の向上、沿線まちづくりとの整合など、多くの克服すべき課題があります。
  したがって、本路線の整備に当たっては、国の支援をはじめ、関係区等の積極的な取組が不可欠であります。
  このため、本年八月に都と関係区の部長級で構成される区部周辺部環状公共交通都区連絡会を設立しました。今後、この連絡会を通じて、関係区との協議、調整を進めてまいりたいと考えています。

質問事項
 一の4 首都高速道路王子線の建設に伴う高架下利用について
    ア 事業全体についての進捗状況を伺う。

回答
  首都高速道路王子線は、首都高速道路公団において平成十四年度の供用開始を目指して事業を進めております。用地買収については、平成十一年度末現在、約九九パーセントが終了しており、工事については約八一パーセントの進捗率となっております。
  都としては、引き続き、早期完成に向け、首都高速道路公団とともに鋭意努力してまいります。

質問事項
 一の4のイ 高架下及びトンネル覆蓋部の利用について
      a 高架下利用について、現在、北区や関係住民との間で課題となっている事項及びその解決に向けての状況はどうなっているか、伺う。

回答
  高架下の利用については、北区や地元住民から、首都高速道路公団に対して、葬祭場の建設等の要望がなされており、現在、設置する施設の規模や管理等について、首都高速道路公団が北区や地元住民と調整中であります。
  都としては、首都高速道路公団に対して、引き続き、地域の要望に配慮しながら、北区や地元住民と調整を行うよう要請してまいります。

質問事項
 一の4のイのb 王子駅南口覆蓋部と高速道路関連街路及び石神井川の流路変更部についての計画のとりまとめはどうなっているのか。経過と今後の見通しについて、伺う。

回答
  王子駅南口覆蓋部については、北区より首都高速道路公団に対して、覆蓋上部を利用して、駅前広場を整備したいとの要望が出されております。首都高速道路公団では、要望内容について北区と調整を図りながら、当該箇所の工事を進めていく予定です。
  また、石神井川の流路変更工事についても、当該箇所の工事と調整を図りつつ、首都高速道路公団が進めているところであります。

質問事項
 一の5 旧赤羽警察署跡地の利用について
    同跡地は、都有地であり、地域の実情と住民の要望を強く受け止め、防災拠点を含めた公園に開放されるよう要望するが、見解を伺う。

回答
  旧赤羽警察署跡地の利用については、下水道局「神谷幹線シールド工事」作業用地として本年度末まで利用予定でしたが、当初予定を早めて平成十二年九月三十日に返還してきたところです。
  跡地の利用については、現在未定であり、有効活用に向け検討を始めたところです。

質問事項
 一の6 都営住宅のバリアフリー化について
    高齢化が急ピッチで進む北区の都営住宅居住者及び障害者の健康、安全、福祉充実の観点から、エレベーターの設置等を要望するが、見解を伺う。

回答
  都営住宅へのエレベーター設置などのバリアフリー化については、建替事業、住宅改善事業及びスーパーリフォーム事業を通じて実施していますが、平成三年度から、住宅営繕事業においても居住者の高齢化等に対応するため、「既設中層住宅へのエレベーター設置事業」を実施しております。
  住宅改善事業、スーパーリフォーム事業及び住宅営繕事業において、北区内の都営住宅では、平成十一年度までに十九団地・二十三基のエレベーターを設置しており、十二年度についても五団地・六基の設置を計画しております。
  なお、その他建設年度の古い住宅については、建替えの際にエレベーターを設置しております。
  今後も、高齢者や障害者が安心して住める暮らしやすい住宅を確保するため、設置可能な団地については、できるだけ早期のエレベーター設置に努めてまいります。

質問事項
 一の7 都市計画道路の整備について
    ア 補助七三号線については、「赤羽駅付近連続立体交差事業」に併せて、六カ所の踏切が解消されたことなどから、その整備が急がれており、引き続き取り組むべきと考えるが、今後の取り組みについて伺う。

回答
  補助第七三号線の赤羽駅付近から補助第八三号線までの約〇・六キロメートルについては、昨年度の現況測量に引き続き、今年度、用地測量を実施いたします。
  今後、関係住民の理解と協力を得ながら、事業化に向けて努めてまいります。

質問事項
 一の7のイ 補助第八八号線は、広域道路ネットワーク上からも、その整備は緊急課題である。本路線の今後の取り組みについて伺う。

回答
  補助第八八号線のうち補助第八五号線から補助第九三号線までの約〇・八キロメートルについては、昨年度の現況測量に引き続き、今年度、用地測量を実施いたします。
  今後、関係住民の理解と協力を得ながら、事業化に向けて努めてまいります。

質問事項
 一の7のウ 補助九一号線は、堀船地区の大規模な再開発に伴う大手企業の進出、マンションの建設などに伴い、工事中はもとより、完成後の企業活動等により、膨大な交通量が見込まれている。こうした状況を解決するため、進出企業の計画と併せて、本路線を早急に整備すべきだが、取り組みについて伺う。

回答
  補助第九一号線、延長約一・六キロメートルのうち、環状五の二号線(明治通り)から足立区境までの〇・七キロメートルの区間については、地元区と連携し、事業化に向けて関係住民の理解と協力を得るよう努力してまいります。
  また、環状五の二号線から放射第一〇号線(本郷通り)までの区間については、鉄道との交差や地域道路へのアクセス等の構造的な課題があることから、環状五の二号線から足立区境までの区間の進捗状況を踏まえ、JR東日本と調整を図ってまいります。

質問事項
 一の7のエ 補助八九号線は一部区間を除き、道路幅が狭くバス路線となっていることによる渋滞や、歩道が狭く歩行者が危険な状況のため、本路線の早期整備が望まれている。こうした地元住民の要望に応え、本路線を早急に整備すべきだが、今後の取り組みについて伺う。

回答
  区部における都市計画道路につきましては、計画的、効率的に整備を進めるため「区部における都市計画道路の第二次事業化計画」を策定し優先的に着手または完成する路線を選定し、整備を積極的に推進してきていますが、補助第八九号線はこの事業化計画には位置付けられておりません。
  しかし、補助第八九号線は地域の交通体系の改善に資する重要な道路であることから、その整備については、今後、周辺地域のまちづくりや道路整備の動向等を踏まえ、財政状況や区との役割分担等を勘案し検討を行ってまいります。

質問事項
 一の8 補助八三号線の整備について
    本路線は、昭和二十一年に都市計画決定されて以来いまだに未整備であり、防災都市づくりを進めるに当たって、早急に事業化すべき重要な路線であり、地元住民からの要望も次第に強くなりつつある。都の取り組みはどうか、所見を伺う。

回答
  補助第八三号線は、防災都市づくり推進計画<整備計画>において避難、救援、延焼遮断等、防災的観点から、事業推進を図るものとして位置付けられております。
  今後、都区連携して十条地区の防災まちづくりを進める中で、整備を図ってまいります。

質問事項
 一の9 JR王子駅(ホームの大改造)並びに駅舎の改造、整備について
    ア JR王子駅は、地区交通要路の拠点として、その利用度は高いが、駅中央口・南口の環境や駅舎・ホーム全体の構造は、通勤・通学者や弱者に対する配慮がなく、劣悪な状況にある。また、付近には公園や学校等が多く、駅舎・ホーム及び諸施設等の改造は急務であるが、如何か。

回答
  JR王子駅について、今のところJR東日本では、大規模改良に関する計画を持っていませんが、いわゆる交通バリアフリー法が成立するなど、高齢者や障害者を含む利用者の安全かつ円滑な移動の確保は不可欠であると考えます。
  当面、JR東日本では、平成十三年度にエスカレーターを整備する予定であると聞いています。
  今後、駅の安全性や乗り換えなどの利便性の向上が、さらに図られるよう、都としても、まちづくりの主体である地元区と連携を図り、駅周辺のまちづくりの動向を踏まえ、機会をとらえて鉄道事業者に働きかけていきます。

質問事項
 一の9のイ 北区の南玄関口、田端駅の改築整備も推進されたいが、如何か。

回答
  JR田端駅についても、王子駅と同様な状況にありますが、今後、駅の安全性や乗り換えなどの利便性の向上が、さらに図られるよう、都としても、まちづくりの主体である地元区と連携を図り、駅周辺のまちづくりの動向を踏まえ、機会をとらえて鉄道事業者に働きかけていきます。

質問事項
 一の10 JR王子駅中央口「山の下架道橋」の整備について
    京浜東北線に架かる「山の下架道橋」は、日中でも薄暗く、事件・事故の発生も憂慮されている。まちの美観と活性化、さらに駅利用者の快適な通行を保つため、早急に整備すべきだが、所見を伺う。

回答
  「山の下架道橋」下の空間における美観・防犯などの問題については、基本的には地元区及び架道橋を管理しているJR東日本など関係者が協力して、対応すべきものであると考えております。
  都としても、これらの課題解決が図られるよう、機会をとらえて、地元区及び鉄道事業者など関係者に働きかけていきます。

質問事項
 一の11 田端駅周辺地区の再開発事業について
    JRが進める田端駅周辺地区の再開発事業は、地域住民の意向をよく汲んでいないため、特に駅東側地区の利用者が、不便を強いられている。
    この事業は、JR東日本とJR貨物が、地域住民の意向を十分くみ取って進めるということでのスタートではなかったのか。所見を伺う。
    また、今後事業を進めるにあたり、地域住民の意向を反映させていくつもりか、併せて伺う。

回答
  御指摘の地区においては、『JR貨物が、「商業施設の建築計画について」地元住民に説明した。』と地元北区から聞いています。
  田端駅周辺地区のまちづくりについては、地元北区が主体となって対応すべきと考えるが、都としては、区の動向を見ながら、都区の役割分担を踏まえ必要な対応を図ってまいります。

平成十二年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 木村陽治

質問事項
 一 渡良瀬貯水池における開発事業について
一 渡良瀬貯水池における開発事業について
  渡良瀬遊水地は、群馬・栃木・埼玉・茨城四県にまたがるわが国最大の遊水地である。足尾銅山の鉱毒を沈殿させるために明治政府が谷中村を廃村にして造り、以来、長い年月がはぐくんできたヨシ原がひろがる自然の宝庫となった。
  かけがえのない自然と、公害の原点としての重い歴史を持つ渡良瀬遊水地に、「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画」(いわゆる第四次フルプラン)による水資源開発施設として、渡良瀬貯水池が完成したのが一九九〇年(平成二年)三月である。
  ところが貯水池の運用を開始して、わずか二ヶ月後、五月には江戸川流域の住民は水道水のひどいカビ臭に悩まされ、カビ臭の発生源をたどっていくと渡良瀬貯水池にたどりついたのである。
  貯水池の水面は青いペンキをぶちまけたようにアオコにおおわれ、この藻類が生産するカビ臭が利根川を経て江戸川に流れ込んでいたのである。
  この時の水質障害は五月から九月まで続き、金町浄水場及び、三郷浄水場での活性炭注入日数は延べ百三十九日におよんだ。カビ臭の発生は翌、一九九一、九二年とつづき、九二年は金町、三郷両浄水場での活性炭投入日数は延べ百六十一日となった。
  かくして渡良瀬貯水池は、渇水期の水源施設としては用をなさないことが明らかとなったのである。
  この事態を受けて都が「国の計画にしたがって水源開発に協力し、カネを出したらかえって都の水道水の水質が悪くなった。これでは困る」と国に水質浄化対策を講ずるよう要望したことは当然である。
  そこで国は、事業費二百四十億円をかけて、貯水池の水をヨシ原のなかを循環させ、窒素・リンなどを群生するヨシに吸収させる水質浄化事業を開始、都はこのうち二十六億円を負担することとなった。
  水質浄化事業は一九九五年に着手され、九七年(平成十年)に一部完成、稼動を開始した。しかし「渡良瀬遊水地を守る利根川流域住民協議会」など住民団体が、貯水池からヨシ原に流入する地点と、ヨシ原から再び貯水池に還流する地点の水質を調べたところ、水質の改善には全く役に立っていないことが明らかになったのである。
  それどころか貯水池の汚れた水を大量に、人為的に流し込んだために、ヨシ群落のなかで生育する貴重な水生植物が絶滅し、ヨシそのものも過栄養化とヘドロの堆積で、背丈は大きくなるが肉厚が薄く、ガランドウのヨシとなり六月ごろから倒れ枯れ始めるというヨシ原の自然の破壊がすすんでいるという事態を指摘されるに至ったのである。
  現在、住民団体と建設省との間では水質浄化事業のこれ以上の継続・拡張の是非をめぐって論戦がつづいており「無駄な公共事業を見直すべきだ」という大きな国民世論が起きている今日、なおも事業拡大にこだわる建設省の姿勢にたいして、住民団体からのきびしい批判がつきつけられている。
  問題はこうした事態にたいして都が、この事業の評価について国のいいぶんをうのみにして、自らの責任で判断し対応しようとしていないことである。
  そのことは水質浄化事業の評価について、渡良瀬遊水地を守る利根川流域住民協議会から出された知事あての公開質問書にたいし、都水道局が作成した回答書なるものが、住民からのすべての質問事項にたいして「……と国から説明をうけております」「……と報告をうけています」「……と聞いております」が連発されていることでも明らかなのである。
  これは都が自ら国に対策を要望し、二十六億円もの負担をおこなう事業にたいして、責任ある態度とはいえない。
  そこであらためて伺いたい。
 1 都はこの水質浄化事業の効果についてどう認識しているのか。
 2 渡良瀬貯水池の水質を改善するには、水道原水としての環境基準を十倍も超えている窒素・リンの濃度を大幅に削減することが不可欠であることはいうまでもない。なぜなら、これらを栄養源として藻類が発生するからである。
   ところが昨年の住民協議会の調査でも、また建設省が行った調査でも、ヨシ原浄化池の窒素・リンの除去率は二〇%以下なのである。
   建設省と住民協議会では調査手法に若干のちがいがあるので、調査結果は月によって、建設省の除去率が高いときもあり、またその逆もあるというようにばらつきはあるものの、年間通しては同じ結果となっている。
   このため、さすがの建設省も窒素・リンの除去効果がないことは認めざるを得ない。そこで水質浄化効果の唯一の根拠として建設省は、藻類の指標とされるクロロフィルaは、よくとれているということを主張しているのが現状である。
   しかし、これも二重に誤った主張といわざるを得ない。
   第一に、藻類は窒素・リンの濃度が高ければいつでも増殖するものであって、たとえクロロフィルaがヨシ原で除去されたとしてもその元が除かれず、高濃度のまま貯水池に流れ込めば意味をなさないのである。
   第二に昨年の住民団体と建設省、双方の調査結果によればクロロフィルaの除去率が高くなるのは年間通じて五月下旬から六月中旬にかけての約一ヵ月だけであって、あとは水質が最も問題となる夏季も含めて除去率はきわめて低いままである。皮肉にも建設省の調査のほうが結果はきびしく、除去率がマイナス三〇%つまりクロロフィルaがかえって増殖する時期さえあるのである。
   つまり建設省の主張は、建設省自身の調査によって否定されているのである。
   ところが都は、こうした事実を自らの責任で検証することもなく、去る七月、住民団体への回答では「国からは、……カビ臭発生の原因となる藻類の除去には効果があるとの説明をうけております」と述べているのみである。
   こうした対応でなく、都としての責任ある認識をしめすべきではないか。答弁を求める。
 3 もう一つの問題は、今年二月にまとめられた「水道水源開発施設整備事業の評価」報告書の問題である。報告書は高橋裕東大名誉教授を委員長とする「東京都水道局事業評価委員会」の意見・助言を得るために作成されたものであるが、そのなかでの渡良瀬貯水池水質浄化事業についての評価は、事業評価委員会の「事業継続は適切」との結論をひき出すためにつくられた恣意的なもの、といわざるを得ない。
   水質浄化事業は総事業費二百四十億円、うち都負担は二十六億円であることはさきに述べたとおりだが、報告書はこの費用対効果を分析するにあたって、水質浄化事業の効果を、渡良瀬遊水地の開発水を取水する金町および三郷浄水場において高度浄水施設が整備されるまでの間、粉末活性炭の使用に要する費用に相当するとして、年平均使用実績四・四億円の十年分、つまり四十四億円と計算している。
   その四十四億円を水質浄化事業の都負担分二十六億円で割れば一・七となり費用対効果は高い、と結論づけているのである。
   しかし、金町浄水場、三郷浄水場で粉末活性炭を使用しなければならない原因となる水道水の汚れは、渡良瀬貯水池からの流入水だけではないということは、あまりにも自明ではないのか。
   渡良瀬貯水池以東の利根川、江戸川に流れこむ下水道未普及地域の中小河川、家庭雑排水をすべて無視して、粉末活性炭総使用量にかかる費用をすべて渡良瀬貯水池の水質浄化事業の効果とすることは、効果がないと指摘されている公共事業に支出される都負担を小さくみせるための作為としか思えないがどうか。答えていただきたい。
 4 今日、無駄な公共事業の見直しは、国民の声である。政府・自民党でさえ公共事業見直しをかかげるにいたっているのである。
   住民団体の具体的な調査と、建設省の調査とが一致して効果が疑われる結果となった渡良瀬貯水池水質浄化事業はまさに、見直し、中止の対象とする典型的具体例といえよう。
   そのようなとき、都が何ら独自の判断もせず、国のいいなりとなっていることは許されるものではない。
   事業の中止を国にもとめ、都の負担金支出は中止すべきである。お答えいただきたい。
 以上

平成十二年第三回都議会定例会
木村陽治議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 渡良瀬貯水池における開発事業について
  1 都は、渡良瀬貯水池の水質浄化事業の効果について、どう認識しているのか、伺う。

回答
  渡良瀬遊水地の水質浄化事業は、カビ臭を抑制し、東京都を含む下流域での浄水場の取水に影響を与えないことを主目的としております。このカビ臭物質の抑制には、ヨシ原浄化施設によるカビ臭物質の発生原因となる植物プランクトンの除去対策や、流入汚濁河川のバイパス施設の整備による窒素・リンの軽減対策など、いくつかの対策を組み合わせながら事業が行われております。
  ヨシ原浄化施設では、植物プランクトン発生の指標となるクロロフィルaの除去に一定の効果をあげています。また、汚濁流入河川のバイパス施設整備は、窒素・リンの渡良瀬貯水池への流入が抑制されることから、効果を期待できるものと考えております。

質問事項
 一の2 都は、水質浄化事業の効果を自ら検証することもなく、国からの調査説明をそのまま住民団体への回答とするなどしているが、このような対応ではなく、都として責任のある認識を示すべきだが、所見を伺う。

回答
  都の水道事業が係わる国の事業については、定期的に説明を受けるだけでなく、その内容について確認が必要な場合には、現地調査を行うとともにより詳細な説明を求めております。渡良瀬貯水池の水質浄化事業については、カビ臭物質が多く発生する時期にクロロフィルaや2-MIBの除去が認められることから、水道原水の水質改善に効果があるものと考えております。

質問事項
 一の3 「水道水源開発施設整備事業の評価」報告書では、水質浄化事業の費用対効果が高く、「事業継続は適切」とされているが、これは、金町、三郷両浄水場の粉末活性炭総使用量にかかる費用を、水質浄化事業の効果とし、都負担を小さく見せるための作為としか思えない。所見を伺う。

回答
  事業評価における水質浄化事業の費用対効果の検討では、水質改善事業がカビ臭の抑制を主目的としていること等を勘案し、カビ臭対策として一般的な活性炭の使用を評価対象としました。
  渡良瀬貯水池からのカビ臭の影響のみを限定することが困難であること、また、渡良瀬貯水池からの通常の状況下での放流量が特定できないことなどを考慮し、包括的に過去五年間の活性炭使用量を用いて費用の算出を行ったものです。なお、水質浄化事業は、事業の進捗により新たな知見が得られたことから、コスト縮減を含めた関連事業の内容について見直しが検討されていると聞いております。

質問事項
 一の4 効果が疑われる水質浄化事業は、無駄な公共事業見直しの典型的具体例である。事業の中止を国に求め、都の負担金支出は中止すべきだが、所見を伺う。

回答
  渡良瀬遊水地の水質浄化事業については、カビ臭対策について一定の効果が発揮されていると認識しており、事業の継続は必要であると考えています。
  なお、より一層効率的な手法の検討などについても国に対して働きかけているところであります。

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