オリンピック・パラリンピック招致特別委員会速記録第九号

平成二十二年五月二十四日(月曜日)
第四委員会室
 午後一時開議
 出席委員 十七名
委員長吉野 利明君
副委員長藤井  一君
副委員長三宅 茂樹君
副委員長泉谷つよし君
理事ともとし春久君
理事こいそ 明君
理事中村 明彦君
くりした善行君
鈴木 隆道君
星 ひろ子君
高橋かずみ君
原田  大君
たぞえ民夫君
大西さとる君
いのつめまさみ君
門脇ふみよし君
木内 良明君

 欠席委員 なし

 出席説明員
知事本局局長秋山 俊行君
理事荒川  満君
総務部長大井 泰弘君
計画調整部長梶原  洋君
継承調整部長細井  優君
調整担当部長武市  敬君
調整担当部長中嶋 正宏君
 委員外の出席者
参考人
東京オリンピック・パラリンビック招致委員会事務総長河野 一郎君
日本オリンピック委員会会長竹田 恆和君
株式会社電通第十営業局長前スポーツ事業局長稲垣  豊君

本日の会議に付した事件
 二〇一六年に開催される第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会の東京招致に関する調査審議及び必要な活動を行う。
報告事項(参考人からの意見聴取)
・二〇一六年東京オリンピック・パラリンピック招致活動報告書について

○吉野委員長 ただいまからオリンピック・パラリンピック招致特別委員会を開会いたします。
 初めに、先般の人事異動に伴い、知事本局長に、秋山俊行君が就任されました。
 秋山知事本局長からあいさつがあります。

○秋山知事本局長 去る五月十六日付の異動で知事本局長を拝命いたしました秋山俊行でございます。
 吉野委員長を初め、委員の皆様のご指導を賜りながら、招致活動で培いました経験やノウハウを生かしてレガシーを継承してまいります。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

○吉野委員長 あいさつは終わりました。

○吉野委員長 これより第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会の東京招致に係る事項について調査を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、報告事項に対する参考人からの意見聴取を行います。
 初めに、参考人招致の詳細について申し上げます。
 過日の委員会で理事会にご一任いただきました参考人招致の詳細につきましては、お手元配布の実施要領のとおり行うことといたしました。ご了承願います。
 報告事項、二〇一六年オリンピック・パラリンピック招致活動報告書についてを議題といたします。
 これより参考人からの意見聴取を行います。
 ご紹介いたします。
 東京オリンピック・パラリンピック招致委員会事務総長の河野一郎さんです。
 本日は、ご多忙のところ、委員会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、お礼を申し上げます。
 これより河野参考人からの意見聴取を行います。
 初めに、河野参考人のご意見をお伺いいたします。発言席にご移動願います。
 なお、河野参考人には、ご着席のままご発言していただきたいと思います。ご了解願います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○河野参考人 ただいまご紹介いただきました河野でございます。
 去る四月十九日に東京都議会議長の田中良様より、本委員会の出席を要請されました。どうもありがとうございます。また、きょうは吉野委員長を初め、いろいろとオリンピック・パラリンピック委員会について、ご意見を賜るということですので、私の方からもいろいろと意見を含めて述べさせていただきたいと思います。
 私は、平成十八年十一月の東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の発足以来、事務総長を務めておりますが、日本オリンピック委員会、JOCの理事であり、日本アンチドーピング機構、JADAの会長も務めております。
 どうぞ本日はよろしくお願い申し上げます。
 二〇一六年のオリンピック・パラリンピックの招致活動は、都議会、田中良議長を初めとして、国、スポーツ界、経済界、都内の区市町村、そして全国の自治体、そして多くの都民の方、そして国民の方から支えられてまいりました。また、こうした支援をいただいたからこそ、熾烈な招致レースを続けることができたと思います。この場をかりまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
 事務総長を受けました背景といたしまして、もちろんきょう、参考人として出席をされております竹田JOC会長より声をかけていただいたこと、そして石原知事よりご指名いただくことがありますが、その背景として、私なりに、オリンピック招致は、もちろんスポーツ界あるいはスポーツの視点からも極めて重要なことであるということはいうまでもございませんが、それ以外に、現在日本は経済面のみならずいろいろな領域においてトップランナーを目指すべき、そういった国という位置づけの方が多いということを背景といたしまして、スポーツ、特に国あるいは首都である東京が、オリンピックを開催することによって、国のプレステージ、首都東京のプレステージ、そして国民の誇りを集結することができることであろうというふうに信じまして、この職を受けた次第でございます。
 このことは、カナダのバンクーバーにおける冬季オリンピックの開催、これが成功に終わりまして、カナダ国民が一体となり、カナダのいわばプレステージが上がったということを見て、ああ、これは確信として間違いなかったなというふうに思っているところでございます。
 大会の招致に当たりましては、活動報告書にも述べさせていただきましたように、約三年に及ぶ活動を行いました。活動の内容も、大会計画の策定から、また国内における招致機運の盛り上げ、そしてIOC委員を初めとするオリンピック委員関係者、あるいは国際競技連盟の関係者等々をターゲットにいたしまして、国際招致活動を広範、そして多岐にわたって展開をしてまいりました。
 大会計画につきましては、ご承知おきのように、招致委員会と東京都が密接に連携をして、招致活動の途中でも幾度となく強調させていただきましたように、コンパクトな会場計画、そして、先進的な環境施策、東京都の強固な財政基盤等を前面に打ち出した計画を策定いたしまして、首都東京都の優位性を訴えました。
 また、招致機運の盛り上げについては、都議会での招致決議をいただき、また招致議連の皆様の力強い応援をいただきまして、内外のメディアを通じた情報発信、あるいは先生方にいろいろとご協力を賜りました署名活動、そして区市町村とのオリンピックムーブメントの共同推進事業、あるいは全国の都道府県にお願いをいたしましたふるさと特使など、特に大会のときの主役でありますアスリートが参加をいたします全国的な招致PRイベント等を展開してまいりました。
 国際招致活動につきましては、石原会長を先頭に、積極的なプロモーション活動を行うとともに、さらに我々としては大変名誉なことと思っておりますけれども、コペンハーゲンでの最終プレゼンテーションには、就任間もない鳩山総理大臣にもご出席をいただき、まさに国の総力を集結して取り組んだ活動でございました。
 招致活動は、いわば国家間の競争でもありますし、招致、開催権の獲得を目指しまして、情報の収集、そしてその解釈、そしてその展開等は現時点で、あるいは現状況下では必要なこととしてできることはすべてやり尽くしてまいったと思ってございます。
 招致は、ご承知おきのようにIOC委員の投票で決まります。今回、第一ラウンドでは、四都市がわずか十票差に入り、百を超える投票数の中で十票差に入るという極めて拮抗した招致でもありましたし、最新の報道によりますと、シカゴの招致委員会も二〇〇九年分の招致経費として約七千万ドル強、日本円で約七十億円を単年度に費やしたと発表いたしました。最後の追い込みの九カ月に、東京の招致委員会をはるかに上回る経費が投入されたということを見ましても、各都市ともいかに熾烈な競争が行われたかがおわかりいただけるのではないかと思います。
 今回、東京は、最終的には残念ながら、南米初を掲げて招致レースの後半に台頭してまいりましたリオデジャネイロに及びませんでしたが、このリオデジャネイロの南米初というインパクトが東京の、あるいはほかの都市の計画、あるいはキャンペーンを上回ったことに加えまして、東京といたしましては、この招致都市が決まります決定の時期が、同じアジアで行われました二〇〇八年の北京オリンピックからまだ日が浅かったことも、アジアに近いのではないかということで、ややネガティブに働いたのではないかなというふうに考えております。
 一方で、今回の招致活動は、さまざまな効果を首都東京、そして日本にもたらすことができたと確信しております。具体的には、先ほども申し上げましたけれども、国による初めてとなるオリンピック開催への、あるいは立候補段階での財政保証、あるいは、これも先ほど申し上げましたけれども、IOC総会への就任間もない総理大臣のご出席など、これまでのオリンピック招致活動の歴史ではなかったことが行われ、招致活動における国の関与が明確化されたこと、これも歴史的には初めてのことというふうに思っております。
 スポーツ界のみならず、こういった大きな国際大会ですとか国際会議の招致は、現在、国としての方向性の一つであると思いますので、非常に意義があったことではないかと考えております。さらに、都民のスポーツ実施率や障害者スポーツの振興など、日本、首都東京のスポーツ振興に大きく貢献することができたと思いますし、皆さん方ご承知おきと思いますけれども、東京都のスポーツ基本計画が世に出されております。これは、国でも同じようにスポーツ振興基本計画を出しておりますが、恐らく他都市と比較いたしまして、東京都のスポーツ基本計画は極めてユニーク、かつ現実的なものになっていると思います。誤解を恐れずにいうならば、他都市とはかなり違った、首都東京の特性を生かしたスポーツ基本計画になっていると思いますので、これも我々の立場からすればオリンピック招致の一つのレガシーではないかなというふうに思っております。
 特にアスリートに我々はフォーカスをいたしましたので、アスリートとの交流を通じまして、青少年との接点を多くふやすことができたこと、これは東京が、なるほど、そういう方向性を向いているのか、なるほど、日本という国は、アスリートと子どもたちのことに目を向けているのかということを発信できたという点で、これも意義のあったことかと思います。
 スポーツ界の方の視点で、今回極めて特筆すべきことと我々が考えておりますのは、オリンピアンとパラリンピアンが一体となった活動に取り組んだことができたということでございます。
 ご記憶の方がおありと思いますけれども、招致委員会が当初スタートしたときは、東京オリンピック招致委員会でございました。その後、やはりオリンピアン、パラリンピアン、特に障害者スポーツのことも含めて、もう時代は、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会とすべきであろうということを提唱させていただき、これが実現したことも、これは一つの実績としてしっかり残るものというふうに誇りに思っております。
 また、招致委員会、あるいは本部、あるいはスポーツ団体ではなかなか横ぐしが刺しにくい活動につきまして、国内外のスポーツの発展ということで、嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターも設立したということも、レガシーの一つというふうに思っております。
 今回の招致活動は、今申し上げましたように、東京都のスポーツ振興や今後の日本の再挑戦につきまして貴重なレガシーであり、貴重な原動力となるものを残すことができたのではないかと思っております。何よりも日本の、そして特にやはり東京が首都であるということが極めてこのような大きな財産を残すことに、大きく貢献をした状況であるというふうに考えている次第でございます。
 さて、招致委員会は、特定非営利活動法人といたしまして、招致活動の中心的役割を担ってまいりました。成功のためにはIOC委員、あるいは国際連盟への効果的な働きかけや、国内機運の盛り上げのための国、競技団体そして経済界といったさまざまな関係機関の全面的な支援が重要でありました。このため東京都、JOC、JPC、日本パラリンピック委員会、競技団体、民間企業などの協力をいただきまして、専門能力を有する人々が結集して、招致活動を戦略的に進めるための組織として、招致委員会が結成されたわけでございます。
 会長には石原知事、副会長には竹田JOC会長及び都の副知事にご就任をいただきました。その他の役員や顧問には、各界の支援のもと、国を挙げて招致を進めていくことができるよう、総理大臣を初め、すべての大臣、地方六団体の代表、スポーツ界や経済界の代表と幅広い分野の方々にご就任をいただきました。
 活動に当たりましては、NPO法人であります特色を生かしまして、柔軟で機動力のある運営を志し、民間団体としての創意工夫をして、効果的で効率的な運営に努めたわけでございます。
 実務面では、招致委員会の運営は、チームリーダーである石原会長のもとに、事務総長である私が中心となってとり行ってまいりました。
 招致活動上の重要な事項につきましては、計画、国際、事業広報の三つの専門委員会を設けまして企画立案を行ってまいりました。さらに、先ほども申し上げましたけれども、現役アスリートを含むオリンピアン、パラリンピアンによりますアスリート委員会を編成いたしまして、計画策定段階からかかわっていただくことは大きな特徴であったというふうに思っております。
 招致委員会は、最終的には約七十名ほどの規模となりましたが、これも我々としては、招致活動がレガシーを残せたなと思っておることでございますけれども、招致委員会のスタッフとして働いてくれた者の中には、招致活動終了後、招致活動で得た経験を生かしまして、国際競技スポーツ団体あるいはそのほかの国際的な機関に転身をいたしまして、もう既に活動を開始しております。
 このようなことは、やはり招致活動があったために、日本のこれらの若者がノウハウを身につけて国外に出ていったということで、これも招致活動のレガシーの一つというふうに考えております。
 私は、国がオリンピック招致や競技力の向上、強化に取り組むことは、冒頭にも申し上げましたけれども、スポーツ、とりわけオリンピック開催が国そして首都東京のプレステージを上げる、国の品格を高めると同時に国民が自信を持っていくということにつながるものと考えております。その意味からも、今回招致活動の終盤で見られました支持率の向上は、いかに多くの都民、日本国民がオリンピック・パラリンピック開催を望んでいるのかを示すものというふうに思っております。
 これは、世界的に知られていることでございますけれども、日本の国民がオリンピックのたびに、オリンピックの視聴率ということが話題になりますが、世界のトップの二本、三本に入っていることも、これをあらわしているというふうに思っております。
 また、この思いは、活動が終わった今でも、都民、国民の皆様の胸に残っているというふうに考えている次第でございます。こうした都民、国民の思いにこたえるためにも、今回の盛り上がりをさらに高めつつ、やがては日本でのオリンピック開催という大きな夢を実現させることができればと思っております。
 今回の経験は、日本にとりまして、まさに貴重な財産であると同時に、首都東京におきましても、大きなレガシーが残ったというふうに考えております。日本が招致に再挑戦する際には、ぜひともこれらの有形無形の財産を最大限に活用することで、ぜひ国の、そして首都東京のプレステージを上げるために、夢の実現を果たしてほしいと考えているところでございます。
 以上でございます。

○吉野委員長 河野参考人の発言は終わりました。
 次に、河野参考人に対する質疑を行います。
 なお、河野参考人に申し上げます。答弁する際は、手を挙げて、委員長の許可を得てから発言していただきますようお願いいたします。
 それでは、発言を願います。

○大西委員 こんにちは。
 本日はお忙しいところ、当委員会にご出席いただきまして本当にありがとうございます。また、オリンピック・パラリンピック招致に対する並々ならぬご努力を尽くされましたことに、心より敬意を表します。
 これからオリンピック招致に対して何点かお伺いをいたしますが、平成十八年十月に、この東京都議会の中にオリンピック招致特別委員会が設置され、本日に至っているわけでございますが、私ども民主党ではございますが、民主党の中で、初めから本日まで所属しているのは私だけでございます。また、一九九六年に開催されたアトランタのオリンピックにおきまして、私は当初お話もしたことはあるんですが、ずっと現地で民間企業の仕事として現地を見ていたという、そんな経験もございますので、このオリンピックに対しましては、本当に何とか東京に招致を成功してもらいたい、そんな気持ちでいたのも事実でございます。それがゆえに、この失敗ということをきちんと総括しなければ、すべてがむだになってしまう、そんな事態だけは絶対に避けなければならない、そういう気持ちでお伺いをさせていただきます。
 今回のオリンピック・パラリンピックの招致、結局のところ、赤字額も当初見込みよりも膨らんだわけでございます。たくさんの血税が使われているわけでございます。そして、先ほど事務総長のスピーチの中には、効果はたくさんうたわれました。しかし残念ながら、その失敗の原因というものが余り述べられていない、そんな感じもいたしました。
 今回のオリンピック招致の代表者として、事務方のトップとして、その立場で、今回の招致失敗を事務総長はどのように分析し、そしてどのように総括をしているのか、お伺いをいたします。

○河野参考人 大西先生、ありがとうございます。冒頭に温かい言葉をいただきまして、大変感謝するところでございます。
 今回の総括でございますけれども、先ほども申し上げましたけれども、オリンピック・パラリンピック招致は、まさに国と国との熾烈な競争でありますし、ファーストラウンドを見ますと、大きく差があいたということでなくて、極めて熾烈な戦いであったということをまず述べさせていただきたいと思います。
 これも先ほど申し上げましたが、現状下で招致を獲得するためのやるべきことはすべてやったというふうに確信をしておりますが、やはり招致は、開催理念、計画、プレゼンテーション等々、そういった目に見える、あるいはカウントしやすい要素だけではなくて、さまざまな要因が働いているというふうに思っております。
 今、大西委員からご指摘のありました総括と、その背景にある点は何かという点でございますけれども、既に招致活動報告書にも、その点について述べているところでございますが、まず第一に、リオが勝った、なぜ勝ったかということですが、やはりリオは南米初という極めて強いインパクトがあるキャッチフレーズを持っていたということでございます。
 招致活動の途中でいつも世界地図を出して、南米だけがオリンピックがないぞというのをいつもいつも出されていくということは、なるほどというふうに思われる方が多く、非常に極めて強いインパクトであったかと思います。
 それから第二に、これはスポーツに限らないことであると思いますし、既に国でも何とか国際会議を多く日本に持ってこようというふうに考えて、あるいはそういう活動はございますが、やはり、好きな言葉ではございませんが、世界地図でいくと、なかなかヨーロッパ、あるいは、特にヨーロッパですね、それから距離的に遠いというようなことから、日常的な活動として国際会議等々を開催しにくいという点がある。このために、開催都市の決定はIOC委員の投票によって行われるわけですから、なかなかIOC委員と接点を持つということが少ない、持ちにくい。距離的、地政学的にですね。そういうことに加えまして、やはり、どうしても出かけていく場合には、数的にも少なくなってくるということから、いわゆる日本の世界におけるプレゼンス、これをどう示していくのかということが、先ほど申し上げたようにスポーツ以外にもありますが、同様にスポーツ界においても、また今回のオリンピック招致においても同様のことが反映されていたのではないかと考えております。
 私も、今回オリンピック競技になりましたラグビーの国際競技連盟の理事をおよそ二十年以上やっておりますけれども、やはり継続をして顔をつないでいくということ、継続をして同じ時間を過ごしていくこと、これが極めて重要と思いますし、やはりそういった人材を日本のスポーツ界においても、各競技団体を含めて送り込んでいくことが必要と思いますし、これが先ほどもおっしゃられた原因の一つというふうに思っております。
 したがいまして、これは決してスポーツ界に限ったことではないと思っておりますけれども、今回のオリンピック招致においても同様のことがあったのではないかと思っております。
 第三に、やはり先ほど招致活動、盛り上がりということ、あるいは支持率ということを申し上げましたけれども、一番我々として、ああなるほど、これが最初からあったなと思ったのは最後の盛り上げ、盛り上げをしていただいた、あのすごさであります。やはりこういう最後のところでの盛り上がりが、国とかスポーツ界、あるいは経済界から最初にああいった盛り上がりあれば、これはもう少し違った形でIOC委員の胸に響いたのではないかなというふうに思っております。
 その背景といたしまして、これは、いろいろなご意見があるというのは承知の上でございますけれども、日本という国がどちらの方向に向かうのかということの議論につきまして、やはり国のプレステージを上げるようなオリンピック開催であるという、その視点についての議論をもう少しできればよかったなというふうに思っております。
 やはり、返す返すもカナダのような状況があるんだよということを前後して訴えることができればなというふうに考えている次第でございまして、それは、逆にいえば東京の開催理念を十分に伝えることができなかったことにつながるのかと思っております。

○大西委員 第一に、リオが南米初というお話がありました。当初、日本としては、仮想敵国はシカゴだったんじゃないんでしょうか。南米から出てきていることは、もう当初からわかっていたのに、しかしターゲットはシカゴであったように私は思います。その点はどのように感じておられますか。ちょっと端的に、時間がないのでお願いします。

○河野参考人 ご指摘のように、当初はシカゴが想定の一番のターゲットでございましたけれども、リーマンショック後にシカゴが、特に財政保証をしているところが保険会社であるというような点から、どんどん求心力を失ってまいりました。しかし、その反面、あの時間帯での放映権という魅力から、それもあって、南米初というものが急にクローズアップをされてまいりました。したがって、我々の招致活動も戦略としては途中で切りかえました。

○大西委員 わかりました。しかし、最初は、シカゴに勝ったときは日本が二十二票をとったわけですね。しかし、その後、その二十二票の内容はわかりませんが、基本的にシカゴに入れた人は、ひょっとしたら日本には一切入ってこなかったわけですね。それどころか、二票失っているわけです。この辺の戦略のミスというのは、どのようにお感じになられますか。

○河野参考人 ミスという表現が当たるかどうかはわかりませんけれども、やはりIOC委員の特にターゲットとしたところの活動が効果がなかったのかとは思います。しかし、例えばアメリカ合衆国でいきますと、国際オリンピック委員会の基準では、アメリカ合衆国は本国のほかに、アメリカ領サモア、グアム、プエルトリコ、アメリカ領のヴァージン島と、いろいろな複雑な背景がございますので、なかなか一概にそこがポイントだったろうということは、今の点に関していうのは難しいかと思っております。

○大西委員 その二十二票に関しては、どこだという確信は大体お持ちなんですか。

○河野参考人 この点は確信ではありますが、これは、こういう公の席で申し上げるほど確信はございません。

○大西委員 ぜひ、そのレガシーを引き継いでいただきたいと思います。
 そしてもう一つ、委員会の中で石原慎太郎都知事が、得るべき情報を得ることができなかった、情報を得ずに戦った、太平洋戦争の末期の日本の軍隊みたいなところがあったと述べております。この話を聞いて、どのように河野事務総長は感じておられますか。それと、ならば、どのようにすべきだったと思いますか。

○河野参考人 私の意見では、必要かつ、そのときに重要な情報はすべて我々で共有したと思っております。今回の、今もおっしゃられた得るべき情報を得ずして戦ったというご発言は、初めてとなる熾烈な国際レースを振り返り、さまざまな要因が働くという知事独特のいい回しで表現をされたものというふうに理解をしております。

○大西委員 私の持ち時間は、もうあっという間になくなってしまいまして、もう少しお伺いしたかったこともあったわけですが、本当にご尽力には心より敬意を表しまして、私の質問を終わらせていただきます。

○三宅委員 東京都議会自由民主党を代表しまして、質問させていただきます。
 本当にお忙しいところ、本委員会の参考人としてご足労いただきまして、本当にありがとうございます。まずは深く御礼申し上げます。
 また、この間の東京招致の実現に向けて全力を注がれた、今、品格というお言葉が出ましたけれども、私どもとしては日本を代表する品格のある事務総長として、本当にたゆまぬご努力に心から敬意を改めて表したいと思います。ありがとうございました。
 東京都議会では平成十八年二月二十二日に、オリンピック・パラリンピック招致議員連盟を結成し、我が党を初め公明党、民主党の一部議員も含め、最終段階では百二名の議員数となり、今回の招致活動を強く推進してきたところでございます。
 招致議連では、総会の場などに河野総長にお越しをいただいて、随時お話をいただいたり、さまざまな機会をとらえて意見交換、情報交換をさせていただくなど、緊密な関係により活動に当たってまいりました。
 本日は、これまでいろいろお話をいただいていたことに加え、確認の意味で幾つかのご意見を拝聴いたしたいと思います。
 まず東京オリンピック・パラリンピック招致委員会は、今回の二〇一六年大会招致の中心組織であったということでございますが、東京都の招致本部との間でどのように役割を分担し、具体的にどのような事業を行ってきたのか。また、事業をどのような体制で進めてきたのか、改めてお伺いいたします。

○河野参考人 三宅先生、ありがとうございます。
 まず役割分担と事業、これにつきまして、我々の報告書の三九六ページにその概要を述べさせていただいておりますが、改めてここでお答えさせていただきたいと思います。
 本部と、それから招致委員会は、極めて、就任当初、私はハイブリッドな組織というふうに思いました。そのハイブリッドな組織というのは、やはり綿密に計画を共有しながらいくことが必要ということで、そう心がけたわけでございますけれども、事業を大きく開催計画、国内招致活動、IOC評価委員会への対応、海外プレゼンテーション、招致プロモーション、このように分けますと、いずれも東京都と招致委員会がハイブリッドな構造ではありながら、しっかりと連携をしながら活動してまいりました。しかしながら、例えば開催計画でありますと、どうしても東京都の、あるいは本部のウエートが高くなります。特に、立候補ファイルを含めまして、保証書の獲得ですとか、そういった面については本部の方が中心になりました。
 また、海外プレゼンテーションにつきましては、この反対の構造でありまして、やはりテクニカルプレゼンテーション、IOC総会、ここはちょっと別にいたしまして、各大陸でのプレゼンテーション等々は、招致委員会の方が若干ウエートがかかるというように、開催計画、国内招致活動、IOCの評価委員会対応、海外プレゼンテーション、そして招致プロモーション自体、これをこの本部と、それから招致委員会が連携をしつつ、事柄にあわせてウエート、時間的な配分等を含めて対応していったというのが我々の役割分担と同時に、まさに今ご質問にありました事業展開でもございました。

○三宅委員 ただいま事務総長ご自身から具体的なお話がお聞きできました。本委員会として、私は今のようなお話をいただくことで、十分な調査ができたものと考えます。
 さて、昨年十月のIOC総会での投票においては、東京は残念ながら四都市による第一回目の投票では残ったものの、三都市で二回目の投票で敗れ、決選投票に進むことができなかったわけであります。
 IOC委員等に対する直接の働きかけ、いわゆるロビー活動などにも中心的に携わりました河野事務総長として、何度もお話は出ておりますけれども、最終段階で招致に至らなかった原因、細かいことはお聞きしません、河野事務総長が思われるその原因について、また、そのことをどのように分析されているのか。そして、主に国際関係の活動というふうな、今ご答弁いただきましたけれども、こういったことについて、ご意見がいただきたいなと思います。
 またあわせて、そういったことを踏まえまして、再びオリンピック招致に挑戦する、私は挑戦をするべきだという立場でございますが、挑戦するに当たってはどのような戦略が必要になると考えておられるのか。河野総長の貴重なご経験から、ぜひご教授を願いたいと思います。

○河野参考人 初めに、至らなかった原因につきましては、先ほど大西先生のご質問に若干答えさせていただきましたが、情報戦略的には、シカゴからリオに変わっていったということについては十分対応できたと思っております。しかし、そのリオも、繰り返しになりますが、南米初というインパクトは極めて大きかったこと。それから第二には、やはりいろいろなことがございますけれども、初回チャレンジであったということがIOC委員との時間的あるいは過ごす時間等を含めて、やや不利な点があったのは否めないだろうというふうに思います。
 やはり初回チャレンジでない他の都市は、最初の段階で既に距離感が縮まっておりましたから、そういった意味で、初回チャレンジであったハンディがあったことは感じておりました。これは、私に品格があるかどうかわかりませんけれども、多くの方が感じたことではないかと思っております。
 第二に、やはり先ほど申し上げましたように、地政学的にどうしてもヨーロッパというところに行くには、距離的なハンディを負っております。そういうことから、日本の社会における構造をスポーツ界でも同じように反映したのではないかと思っております。
 それから、その次に、やはり、これも先ほど申し上げましたけれども、国内の中で国の方向性に対してオリンピック開催というものはどのような効果があるのか、あるいは、ある意味でいえばネガティブなことも含めて影響があるのかということを、国のプレステージを上げるんだと、あるいは首都東京のプレステージを上げるんだという視点から、もう少し議論ができればよかったなというふうに思っております。
 その次に、今後の戦略ですけれども、貴重な体験を多くの方がされましたし、それは俗人的な個人も、何よりも組織でもしたということになります。日本としてもそうだと思います。そういうことから、一番重要なことは、やはり継続をしていくことではないかな、この継続をすることによって、先ほどちょっと申し上げましたけれども、初回チャレンジということは一歩先に進むわけですから、こんなアドバンテージはないんではないかなというふうに思います。
 その上で、国家プロジェクトとしての位置づけを明確にした上で、この席ですからあえて申し上げますと、首都東京を含めて日本がしっかりと見据える、大きな国際戦略の一つと位置づけて先へ進むのが戦略として重要でないかと思っております。

○三宅委員 今、初回チャレンジ、今回はこれまでの日本の招致活動のノウハウが蓄積のない中での戦いだということが、はっきりされたと思います。
 そこで、この次、次回招致に再挑戦するに当たっては、今回の経験、レガシーを生かして相当程度、私はかかった経費も圧縮できるのではないかと考えます。その点について、実務責任者である河野総長の見解をお聞かせください。

○河野参考人 おっしゃるとおりであると思います。やはり今回の経費につきましては、今申し上げたように多くのレガシーを持っております。
 具体的に、例えば計画、あるいは立候補ファイルをつくるということ一つをとりましても、やはり海図のない白いところに航路を書いて進んでいくのと、一回通ったことがあるのでは、どこに時間をかけなければいけないか、またその逆に、どこに時間をかけなくていいか、経費をかけなくていいかということは、かなり明確になったと思います。結論からいえば、経費は圧縮できます。

○三宅委員 ありがとうございました。
 結びとしまして、招致委員会が今回の活動で得た経験を生かし、次回の招致では、今回の招致活動のレガシーを生かして、少ない経費で、少ない経費で一丸となって国のプレステージを高めるという理念から、必ずこの日本で開催をかち取りたいと思います。もちろん、都議会自由民主党としては、東京での開催を最も望んでおります。河野総長には、公の場でいえないような、裏の裏のお話を含めたノウハウなどの引き継ぎをお願いをして、私の質問を終わります。

○藤井委員 私は、都議会公明党を代表いたしまして、河野事務総長にお伺いしたいと思います。
 まず、招致委員会の実務の責任者でありました河野事務総長に、この間の招致活動、本当にご苦労さまというふうに申し上げたいと思います。結果は残念ではありましたけれども、招致委員会会長であります石原知事を支えてこられました河野事務総長の手腕に、心から敬意を表したいと思うわけでございます。
 そこでまず伺いますが、最初に、招致活動に要した経費についてお伺いをしたいと思います。
 今回の招致活動におきましては、招致活動報告書によりますと、招致委員会は七十三億五千万円を支出しております。最終的には寄附金、協賛金が計画どおりに集まらないで、約七億円の収入不足となっております。毎年度の決算や、スポンサー企業からの集まり状況から収入が不足することは事前にわかっていたはずだと考えるわけですけれども、収入にあわせて経費の支出規模を抑制するような内部努力をしてこなかったのかどうか、この点についてお伺いいたします。

○河野参考人 ありがとうございます。
 平成二十年秋の、いわゆる百年に一度といわれます世界的な金融危機、リーマンショックを契機に、日本の社会経済状況も急激な変化に見舞われました。
 招致委員会におきましても、こうした企業業績の急速な悪化につきまして、いろいろな意味で十分認識をしてまいりました。このため、経費の圧縮を図りながら資金調達努力を続けてまいりましたけれども、招致をかち取るために必要不可欠と考えられるものについては、実施せざるを得ませんでした。もちろん、収支の状況につきましては、財務の担当者から逐次報告を受け、事務総長である私が適宜監督を行ってまいりました。
 また、石原会長には私から定期的に報告を行っており、平成二十一年度予算案、二十年度決算見込みの報告時には、めり張りをつけた経費の支出と節減努力、そして収入の最大限の確保について指示を受けました。
 これを受けまして、歳出抑制に努めた結果、当初の予定から一億五千万円ほど節減することができました。しかしながら、依頼をいたしました複数の企業、団体から、当初想定をしておりました額の協力を得られなかったりするなど、結果としては目標としていた民間資金五十億円に到達しなかったことについては、残念ながら状況も踏まえて力不足であったというふうに感じております。

○藤井委員 ありがとうございました。努力はしていたけれども、なかなか難しい部分があったということでございます。
 次に、その招致委員会の収入、支出に対します監査等の第三者によるチェックについてお伺いをいたします。
 この招致委員会に対する外部監査等のチェック体制は、有効に働いていたのかどうか。また、今年度の監査結果についてどうだったのか、お話しできる範囲でお答えをいただきたいと思います。

○河野参考人 招致委員会では、法人の役員として置かれております監事による監査に加えまして、外部の監査法人による会計監査も行ってまいりました。会計事務等に遺漏のないように努めてまいった次第でございます。
 招致委員会の監事による監査につきましては、各年度に実施をいたしまして、いずれも適正な会計処理手続が実施されているとの所見をいただいております。
 外部監査法人につきましては、平成十九年度は助言業務という形態で、決算書の表示方法や適正な会計処理について指導、助言を受けまして、平成二十年度、平成二十一年度は、稟議書、会計伝票、預金通帳などの関係書類を検査していただきまして、その結果、こちらも関係書類の紛失や使途不明金などの不適正な会計処理の問題は一切生じておりません。
 平成二十年度の監査結果につきましては、先日行われた理事会で報告を行い、理事会、総会において、平成二十一年度の決算についての承認を受けております。監査については有効に行われたと思っております。

○藤井委員 ありがとうございました。
 ところで、河野総長は東京のスポーツ振興に当たり、我が党の木内団長と一緒に、東京都スポーツ振興審議会の第二十二期の委員を務めていたとお伺いをしております。東京都のスポーツ振興計画をつくってこられた一人なわけでございますが、この招致活動の責任者としての観点から、東京都のスポーツ振興について、総長のご意見、ご提言などをいただければと思いますが、よろしくお願いいたします。

○河野参考人 繰り返しになりますが、今回の招致活動は、東京都、首都東京のスポーツ振興という点におきまして、大きなインパクトがあったというふうに思っております。
 先ほど申し上げましたけれども、東京都のスポーツ振興基本計画は、極めて、ある意味でポジティブにユニークだと思います。東京都の十年後の計画、八つの政策課題にそれぞれ対応したスポーツの基本計画があるというところは、ほかに見当たらないと思います。なおかつ、そのことが実施に移されている点で、特筆すべき地方自治体だというふうに思っております。
 そういった意味で、この招致がいい影響を与えたということにつきましては、大変うれしい限りでございますが、都民のスポーツ実施率が実際に上がるなどという形でも、エビデンスが残ってきております。
 また、アジアのユースパラゲームスの開催等に見られるように、障害者スポーツの推進も行われておりますし、また、次世代の子どもたちに何よりもかけがえのない心に残る財産を残すことができていると思いますので、まさに東京都のスポーツ振興の方向性というのは特筆すべきであると同時に、極めて将来性があるものと、第三者的な視点ですけれども考えております。
 特に、お伺いするところでは、東京都の組織内にスポーツ振興を所管する局が設置される方向というふうに伺っておりますが、これはまさに国を先駆けて行われる行政的な方向と思いますので、ぜひ、これを大きく進めていただいて、首都東京が日本のモデルになっていただきたいというふうに考えております。

○藤井委員 ありがとうございました。さまざまな示唆に富むお言葉、ありがとうございます。
 さて、今回の招致活動は、多くの有形無形の財産を東京に残したわけですが、当然、招致委員会にも財産を残したというふうに考えております。これらはまさに、招致活動のレガシーというべきものだと思いますけれども、招致委員会として得られた、これらのレガシーを、今後、NPO法人としての活動において積極的に活用していくことが重要と考えますが、この点についていかがでしょうか。

○河野参考人 ご指摘のように、極めて重要だと思います。
 NPO法人、招致委員会のみならず東京都本部におきましても、いろいろなレガシーが残っていることは今申し上げたとおりでございます。
 今後は国との接点、あるいは国外の競技団体、あるいはIOC委員との接点等々を含めまして、そこの接点を極めて密にして先に進めていくことが、レガシーを具体化することに効果的に使うことになろうかと思っております。
 また、招致委員会あるいは本部には会場計画とか運営計画に関する計画策定のノウハウ等々がしっかり残っております。また、これも申し上げましたけれども、政府機関といかに財政保証をとるプロセスがあるか、あるいはいかに総理にお出ましいただくプロセスがあるかということも残っておりますので、まさに、今後の国際スポーツ東京委員会の立ち上げ後に新しいメンバーで検討していただくことになると思いますけれども、こういったことにつきましては大きなレガシーでございますので、首都東京のスポーツ振興のみならず、やはり日本におけるオリンピック開催ということに向けて、ぜひ有効に進めていただきたいと思いますし、またその価値があるものと思っております。

○藤井委員 大変ありがとうございました。以上で終わります。

○たぞえ委員 日本共産党のたぞえ民夫です。
 まず、招致活動報告書の四一九ページで、成熟国家日本においては、招致活動や開催にかかわる経費に関して厳しい目があるとして、反対の理由として、ほかに優先すべき社会問題がある、大会運営に多大な経費がかかるという懸念があると述べております。その上で、仮に東京が施設整備等大会経費にかかる経費についても、財政負担の軽減を図っていく必要があると報告書は述べています。
 ということは、財政負担が大き過ぎたということを認めていることだと思います。全体経費、招致活動費について、それぞれどこに問題があったと考えておられるでしょうか。

○河野参考人 ありがとうございます。
 大会に必要な全体経費と招致活動の経費についてのお尋ねと思いますので、分けてお答えしたいと思います。
 まず開催経費ですけれども、開催経費のうち大会運営費は、今回立候補しておりました他都市の計画と比較いたしましても、妥当な金額を見込んであると思っております。また、この大会運営費は、IOCからの負担金を初めとする民間資金で十分あがなうことができるものでございました。
 施設整備費につきましては、東京都が大会開催のために積み立てておりました四千億円の東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金が充てられまして、新たに整備される施設はオリンピックのレガシーとして、日本、そして東京のスポーツ振興に役立てる計画でございました。
 このように、今回の東京の計画で見込んでおりました開催計画は、決して過大な財政負担を伴うものではないと思っております。
 また、その一方で、招致に反対する理由として、他に優先すべき社会問題があるのではないか、大会運営に多大な経費がかかるという声があったことはもちろん事実ございますが、このため報告書では、こうした都民、国民の不安を払拭するために、仮に東京が再挑戦するならば、施設整備費等大会開催にかかわる経費についても、今回の開催計画を参考にしてさらに精査し、財政負担の軽減を図っていく必要があるとしたものでございますし、先ほども申し上げましたように、初回チャレンジでない次があるとすれば、これは十分に可能なものと考えております。
 次に、招致活動経費についてでありますが、今回の招致活動は、過去の招致経験のノウハウの継承が必ずしも十分でない状況におきまして、招致をかち取るために必要と考えられるものは費用対効果を絶えず勘案しつつ、可能な限り実施してまいりました。招致活動を通して招致委員会と東京都には招致のノウハウ、あるいは国内外のスポーツ界とのネットワーク、もちろん国内にもありますが、いろいろな財産が先ほど来申し上げていますように蓄積されております。
 これらの財産は、将来日本がオリンピック招致に再挑戦する際には、すべて、すべて活用できるものであり、今回の経験を生かせば招致活動経費も相当程度圧縮することが可能となることは、先ほどの三宅委員の質問にお答えしたとおりでございます。
 招致活動にかかった経費は決してむだなものではなく、将来の日本の再挑戦に向けた貴重な投資になると考えております。
 先ほど冒頭にも触れましたけれども、シカゴが単年度で七十億円をかけたという例を見ましても、今申し上げたことにつきましては、問題がなかったものというふうに考えております。

○たぞえ委員 招致経費について、正式な経費だけでも約三倍の百五十億円に膨れ上がりました。この金額自体、他の立候補都市に比べても断トツであります。しかもそのうち都民の税金で賄ったものが百億円、隠れた税金投入を入れますと、百五十億円にもなったのも他都市に比べて異常に大きいものでした。一方、民間からの資金収入は五十億円に過ぎませんでしたが、それでも四十一億六千万円で予定額に至りませんでした。なぜこのようなことになったのですか。
 そもそも招致委員会にかかわる契約については、NPOであることを理由に、どことどのような契約を結んだのか、その全容を明らかにしていません。税金であれ、民間資金であれ、それがどのように使われたのかを明らかにできないというならば、都民や資金を提供した人も納得できるわけがない。そんなことだから民間資金も集まらなかったのではないでしょうか。招致委員会の認識を伺いたい。また、二〇一六年オリンピック招致にかかわる借金はどのように返済するのか、どう決着つけるのか、伺います。

○河野参考人 民間資金が不足したのは、招致活動報告書にも記載してありますとおり、未曾有の金融危機とそれに伴う景気後退の影響により、企業、団体から当初予定されておりました額の協力が得られなかったのが原因と考えておることは、既に申し上げたとおりでございます。
 招致経費につきましては、IOCへのプレゼンテーション経費など、招致活動そのものに係る経費として、ロンドンやパリの事例を参考に五十五億円を予算計上させていただきました。
 実際にかかった経費は、当初予定されていなかったローザンヌでのテクニカルプレゼンテーションなど、IOCが初期に予定をしていない活動を求めてきたことの経費が加わっためで六十五億円になりましたが、三倍に膨らんだという事実はございません。また、他都市に比べても東京の招致経費が過大であるというご指摘は当たらないかと思っております。今申し上げましたように、シカゴは単年度で七十億円を示しているということでございます。
 このほかに、招致機運を盛り上げる経費といたしまして八十四億円を支出いたしましたが、これは都民、国民に対してオリンピック・パラリンピックを日本で開催する意義の理解の促進、あるいはそのこと自体でオリンピズムの普及啓発を行うための経費でございますので、招致活動そのものの経費とは性質が異なりますし、したがって招致経費には入れてございません。海外の専門家にも確認をいたしておりますが、他都市が発表している招致経費の金額にも、盛り上げのための国内イベント経費などは含まれてない事例があるとのことでございます。
 情報開示につきましては、国内外を合わせまして六百四十二回に及びましたプレス発表、ホームページ、招致活動報告書、東京都を通じた本特別委員会の資料提供などを通じまして、特定非営利活動促進法で要求されております、求められております以上の情報を公開をいたしまして、都議会、メディアを初め、広く提供してまいった状況でございます。
 ただ、ライバル都市とさまざまな駆け引きをしながら、IOC委員一人一人に理解を広げていくという活動の性格上、情報開示には一定の限界があることについてはご理解を賜りたいというふうに思います。
 なお、まとまった協力をいただいた企業の方々には、折に触れましてコミュニケーションを足を運んでとっており、活動の内容には十分なご理解をいただいていると認識をしております。情報提供の不足が資金不足を招いたという指摘は私どもの認識とは異なっていることをここで申し上げたいと思います。
 招致に係る借入金につきましては、今後、国際スポーツ東京委員会の事業を行っていく中で寄附金の募集を行っていく予定でございますので、この中から返済をしていく予定でございます。

○たぞえ委員 私どもが再三にわたって招致委員会の経費について、監査、また公開を求めますが、その都度、どことどのような契約を結んだのか、一切これまでも明らかに、NPOということで、されてまいりませんでした。ホームページ等でという今お答えでありましたが、事実は違うんじゃないでしょうか。
 都議会では、招致活動の発注が電通に余りにも偏っていたことが問題になりました。招致活動報告書四三八ページで、招致の根幹にかかわる事業については、特定の代理店、電通のことだと思いますが、特命随意契約を締結したことを認めました。企画提案方式のもとに契約を行った際も、電通の企画提案が他社よりもすぐれていたという事例があったとしています。
 企画提案方式は全体で何件あり、うち電通の提案が他社よりすぐれていたという例が何件あったのか。招致委員会における契約のうち、企画提案方式や見積もり競争などを導入したのは何件で何%だったのか、また電通の受注件数、額を明らかにしていただきたいと思います。

○河野参考人 まず、企画提案方式に関しましては、東京都からの補助金、分担金を充当いたしました契約をベースに申し上げますと、企画提案方式により契約先を選定した案件は全部で六件ございました。このうち、株式会社電通が参加したものは五件でございます。さらに、電通が他社よりすぐれていたもの、つまり受注したものは三件でございました。
 企画提案方式や見積もり競争などを導入した事業は百一件ございまして、これは全体の一八%を超えております。このうち株式会社電通が受注したものは二十二件、金額にいたしますと約三億四千万円でございます。

○星委員 都議会生活ネットワーク・みらいの星ひろ子でございます。
 まずもって河野事務総長にはお忙しい中、お時間を調整していただき、委員会の参考人に応じていただきまして、ありがとうございます。
 それでは、早速質問をさせていただきます。
 まず、招致をかち取るためには、開催立候補都市が決められたメニューを確実にこなすことは大前提ですが、招致活動において勝利への熱意と積極性が必要だというふうに認識しております。しかし、このことはどの国においても同じことがいえますので、特に招致活動の最終局面のあたりでは、石原知事も特別な人脈が必要である、ある種熾烈な裏舞台が存在したかのような発言を、いろいろなところでたびたび発言をされていますが、こういったことに関しては都民、国民には大変わかりにくく、勝利を願い、そのために汗をかき奔走してきた関係者を初め幅広く各層にいらっしゃる応援者、ムーブメントにかかわった市区町村など、敗北のショックとは別の脱力感のようなものを抱かれたのではないかというふうに推察いたします。
 そこで、事務総長にお伺いをいたします。
 ご自身で感じ取られた率直なご感想でよいのですが、東京よりリオが上回った最後のだめ出しというか、プラスアルファの部分は何だというふうにお感じになられたでしょうか。

○河野参考人 ありがとうございます。
 リオが招致を獲得したのは、先ほど来申し上げておりますけれども、南米初というスローガンを強烈に訴えたことに加えまして、一体となった活動を展開したということについては、まさにそう感じております。
 しかし、なぜそういうことが可能になったのかということに関しましては、やはり先ほどもちょっと申し上げましたけれども、リオは初回チャレンジではなく、このようなところで、どういったタイミングで、どのようなことが必要だということをしっかりと皆がわかっていたということはかなり大きくあったのではないかと思っております。
 ということは、逆の目から見れば、リオは、先ほど、今ご指摘にもありましたけれども、人脈等々に関しましては、既に前回あるいは前々回に招致をした、築き上げた人脈をベースに積み上げてきたことがかなり最後の段階に来て有効に働いたのではないかなというふうに思っております。
 特に今回の招致活動におきましては、東京都を初めといたしまして、都民の方、国民の方に積極的な、なおかつ熱意のあるご支援をいただいてまいりましたけれども、今申し上げましたように、やはり率直な感じとしては、初回チャレンジであったという、結果が出た今となっては若干のハンディがあったのではないかなと思います。それだけに、今後この初回チャレンジであったがゆえにわかったいろいろな状況、いろいろなポイント、ポイントでの重要な点、これを生かすことが重要ではないかと考えております。

○星委員 ありがとうございました。
 IOCの調査で、当初支持率が五六%ということで、低いということが明らかになりました。終盤、電話調査などで大変盛り上がってきて、高くなったということはありますけれども、招致委員会の報告書でも、やっぱりこの盛り上げということで課題ということが挙げられております。このことについて、支持率が当初伸び悩んでいた原因はどのようにとらえていらっしゃいましたでしょうか。

○河野参考人 五六%という数字は、IOCが調べた数字でありまして、これを、時期の問題があると思いますが、その詳細が不明でありますので、単純に比較することは難しいかなと思っておりますけれども、我々が把握をしておりました支持率というものとの違いは、やはりその時期等々に関係している。特に恐らくリーマンショックによるいろいろな影響が一番出ている、国内に出ている時期に招致されたのではないかなと思っております。
 招致委員会が実施しました平成二十一年四月の調査では、都内で七三・五%、全国で八〇・九%の高い支持を得ておりますし、この点では民意は盛り上がっていたというふうに考えております。
 また、内閣府が隔年で実施しております調査では、多くの都民、国民から非常にやはり高い支持率を得ておりますので、実はこの支持率は年々高まってきております。そういった意味では、民意の盛り上がりということに関しましては、どの点をとらえて、あるいはどの側面をとらえて考えるのかによって大分見方が変わっているように思います。しかし、この数字があらわれている以上に、最後の局面で我々が感じました民意の盛り上がり、これは数字をはるかに超える勇気を我々に与えてくださいました。
 そういった点で、五六%についてどうかということについては、詳細わからないというのが一つの状況でございますが、肌で感じた点では最後の局面での盛り上がりはすごかったな、感謝することが多かったなというふうに考えております。

○星委員 先ほど、冒頭事務総長のご意見の中にもありましたように、国としての品格、あるいは首都東京としてのプレステージを上げるために、オリンピック開催はやっぱり重要なことであるというご意見をいただきましたけれども、今回の招致活動のレガシーですけれども、東京都は公共団体ですから、その役割として次代にオリンピック精神を継承していくことはもちろんのこと、日常からスポーツを愛し、親しめる環境整備を積極的に進めていくことなどというふうに考えますけれども、NPOでありますその招致委員会のレガシーを生かした今後の活動というところに関しては、どのようにお考えになりますでしょうか。

○河野参考人 NPOのレガシーといたしましては、先ほど来申し上げましたように、具体的に招致活動を通じて得たもの、これが非常に重要だろうというふうに考えております。さらにそれを生かしていくためには、今質問の中でも触れていただきましたけれども、何より若者にとってどういう首都東京であり、どういう国であるか、重要であるかということがポイントの一つだと思っております。
 先ほどプレステージという言葉を使わさせていただきましたけれども、プレステージは多分日本語に直すと尊敬とか称賛とか、そういうことになると思います。したがって、国、あるいは首都東京が称賛、あるいは敬意を払われるような首都東京であるべきであろうというもとに、若者たちも人間育成の点では敬意をされ、そして他から称賛されるような人間の育成というものは重要だろうと思いますので、そういった点で、招致委員会が得た、NPOが得たレガシーを多角的に生かしていくこと、特に人脈でありますとか、そういうことは大きな力になるというふうに考えております。
 それが同時に、やはりオリンピック招致、オリンピック開催ということに関します世間の、先ほどもお話がありましたような支持率の低いといったようなことに関しても、次のステージに上ることができるというふうにも考えております。

○星委員 ありがとうございました。
 きょう初めて事務総長から生の声で、プレステージ、品格というようなことのご意見をお伺いいたしましたけれども、これはそういう考え方もあるんだろうなと思いますし、オリンピックに関していろいろなご意見が、多様なご意見があると思いますので、私はやはり都民合意、あるいは世論形成、非常に重要だというふうに思っておりますので、今後もぜひその招致活動で培ったレガシーをそういうところにも生かしていただきたいというふうに思って、本日の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○吉野委員長 星委員の質問は終わりました。
 お諮りいたします。
 河野参考人からの意見聴取はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉野委員長 異議なしと認め、河野参考人からの意見聴取は終了いたしました。
 河野事務総長、本日は貴重なご意見、まことにありがとうございました。心より厚くお礼申し上げます。
 それでは、どうぞご退室ください。

○吉野委員長 ご紹介いたします。
 日本オリンピック委員会会長の竹田恆和さんです。
 本日は、ご多忙のところを委員会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、お礼を申し上げます。
 これより竹田参考人からの意見聴取を行います。
 初めに、竹田参考人のご意見をお伺いいたします。発言席にご移動願います。
 なお、竹田参考人には、ご着席のままご発言していただきたいと思います。ご了承願います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○竹田参考人 発言させていただきます。
 日本オリンピック委員会の竹田でございます。このような場に出席いたしますのは初めてでございまして、なれない点も多々あろうと存じますが、何とぞご容赦いただきたいと思います。
 まず初めに、今回の二〇一六年東京オリンピック招致活動に際しましては、一方ならぬご尽力を賜りました都議会の先生の皆様方に心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 まず最初に、自己紹介をさせていただきます。
 私は、馬術競技の選手として一九七二年のミュンヘン・オリンピック、一九七六年のモントリオール・オリンピックに日本代表として出場をいたしました。
 その後は日本馬術連盟の役員を務め、現在は副会長、そして国際馬術連盟では理事、副会長を歴任し、現在では終身名誉会長を務めております。
 また、平成十三年の十月より、日本オリンピック委員会、JOCの会長を務めております。
 国際オリンピック委員会、IOCでは、二〇一四年に開催されますソチ冬季オリンピック大会の調整委員会委員を、またアジアオリンピック評議会、OCAでは理事としてアジア大会の調整委員会委員長を務めております。
 今回の東京招致活動に関しましては、平成十八年十一月の招致委員会発足以来、委員会の副会長を務めさせていただいております。
 次に、私どもJOCについてお話を申し上げたいと思います。
 JOCの使命は、我が国のすべての人々にスポーツへの参加を促し、健全な肉体と精神を持つスポーツマンに育て、そしてスポーツの持つ価値、普遍性を社会全体で高めながら、オリンピックムーブメントを力強く推進していくところにございます。
 また、JOCの理念は、オリンピックを通じ人類がともに栄え、文化を高め、世界平和の火を永遠にともし続けることでございます。
 JOCはオリンピック憲章に基づく国内オリンピック委員会として、オリンピック憲章によりオリンピックムーブメントを推進し、オリンピックを通じて世界の平和の維持と国際親善、国際友好親善に貢献するとともに、我が国スポーツ選手の育成、強化を図り、もってスポーツ振興に寄与することを目的として日ごろ活動いたしているところでございます。
 オリンピック競技大会に参加する世界最高のアスリート選手たちによって繰り広げられるその超人的な身体能力やわざ、そして極限状態まで鍛え上げられた躍動感あふれるパフォーマンス、そして人間の持つ可能性が果てしないことを表現し、人々に勇気と感動を与えてくれます。また、戦いが終わった後のアスリートの互いに健闘をたたえ合う、そういった場面に感動し、友情と相互理解のとうとさをいつも教えてくれるところであります。
 これらを目の当たりにし、そして心強く刻まれたかけがえのない思い出は、次代を担う子どもたちに大きな夢と感動を与えてくれます。
 さらに、大会を開催する都市が発信する平和、友好、そして環境保全などのメッセージは、世界の中の日本というグローバルな視点で日本を改めて理解するきっかけともなるわけでございます。オリンピック競技大会と関係するさまざまなすばらしい源泉は、まさにこのような点にあると思っております。
 さて、そのすばらしいオリンピックをこの東京で二〇一六年に開催すべく、我々は招致活動に臨み、スポーツのとうとさ、地球環境の大切さ、そして平和への貢献、これを世界に向けて発信すること、そういったことを訴えて戦ってまいりました。しかしながら、南米初を掲げたリオデジャネイロを超えることができませんでした。東京は七都市の一次選考の際に、その都市力と計画における優位性や開催能力の高さ、こういったものが認められ、総合的に最高の評価をいただきました。
 また、アスリートがみずから参画し、その意見を反映させて策定した選手村の計画、これも大きな支持を得ることができました。しかし、その後、インフラや治安面の評価の低かったリオデジャネイロが国と政府が一丸となって対策を打ち出し、徐々にIOCの評価を高めていきました。
 IOCの評価委員会が昨年の九月に公表した報告書では、開催は可能という結論が示され、南米初というインパクトを追い風に、形勢がリオデジャネイロに一気に傾くことになりました。
 そのような情勢の中IOC総会に臨みましたが、第一回目の投票で最初にシカゴが脱落、これは想定どおりでございました。我々の描いていたシナリオでは、二回目の投票でマドリードが落選し、最後は東京とリオデジャネイロで三回目の決選投票に臨むというものでございました。
 南米初の開催という未知なる夢を求めて、リオデジャネイロに票を投ずるか、それともアスリートにとって最高の舞台が用意された確実な開催が約束されている東京に投じるかという選択肢になれば、勝算はあると我々は踏んでおりました。
 ところが、これまでIOCに大きな貢献をされ、そして信任も厚い、先月ご逝去されたサマランチIOC名誉会長が最後のプレゼンで行われたスピーチに、何名かのIOC委員は感銘を受け、マドリードに投票しており、予想以上の票を伸ばしたということもあり、二回目の投票で東京の望みはついえました。まことに残念でございます。
 最後に、将来のオリンピックの日本招致について申し述べさせていただきたいと思います。
 オリンピック憲章の中に、オリンピズムの根本原則には次のように規定されています。読ませていただきます。
 オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた均衡のとれた総体としての人間を目指すものである、スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的、基本的、倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造である、また、オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある、その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く平和な社会を推進することにあると、このような理念から出発しており、発展を遂げてきたオリンピックは単なるメダル争いではなくて、いわゆる各個人の相互理解に根差した世界平和の実現、これを究極の目的といたしております。
 こうしたオリンピックがもたらすさまざまな価値を日本国民は直接的かつ効果的に享受するためには、自国開催しかあり得ません。日本人はオリンピックに対し非常に高い関心を持っていただいております。国民が自国の誇りを感じ、そして同時に世界の共存共栄を願う機会の創出はオリンピックの開催を置いてほかにはないと思います。
 残念ながら、二〇一六年東京大会の招致はかないませんでした。しかしながら、JOCといたしましては、近い将来、必ずや日本の国内いずれかの都市においてオリンピックを開催させたいという思いを強く持っております。そのためにも、今後、オリンピックムーブメントの推進と選手の育成、強化事業に対しまして、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、国際的な舞台における日本スポーツ界の発言力や組織力、こういったことをもっと高めるためにプロジェクトを立ち上げ、国際機関の要職を担える人材の育成、強化にも努めてまいりたいと考えております。
 以上、本特別委員会の貴重なお時間をいただきまして、私の発言の機会を与えていただきましたことに対しまして、心から御礼を申し上げたいと思います。
 本日はどうぞよろしくお願いいたします。

○吉野委員長 竹田参考人の発言は終わりました。
 次に、竹田参考人に対する質疑を行います。
 なお、竹田参考人に申し上げます。答弁する際には、手を挙げて、委員長の許可を得てから発言していただきますようお願いいたします。
 それでは、発言を願います。

○原田委員 都議会民主党の原田大でございます。
 本日は、ご多用のところ、また足元悪い中、当特別委員会までお越しをいただきまして、ありがとうございます。また、この間の招致活動に対するご尽力、そして日ごろの日本のスポーツ振興に対するご努力に心から敬意を表したいと思います。
 早速、質問に入らせていただきたいと思いますけれども、我々都議会民主党では、今回の招致の結果、残念ながらこの招致そのものは失敗に終わりましたけれども、この検証をきちんとすること、これが大変重要なことだと考えております。これまで日本では、ともするとやりっ放しというのがあったわけでございますけれども、百五十億円もの税金、そして国民の皆様からの寄附金をいただいた以上、これをきちんと成果を検証することは大変大切でありまして、次のことを考えるのであれば、なおさらこれが大切なことになってくるのではないかと思うのであります。
 これまでこの失敗の原因究明というものは、ともすると責任追及というものを恐れる余り、本当に次に生かしていくための知恵を生み出すことなく、終えてしまった、そういったことも多々あるんじゃないかなと思うわけでございますけれども、例えば畑村洋太郎東大名誉教授も日本で失敗学というのをやりまして、失敗のデータベースをつくられたりといったようなこともございます。こうした前向きな失敗をきちんと検証していく動きというもの、まさにこの議会の中にあって、これから本当にやっていかなければいけないことなのではないかなと思っている次第でございます。
 そうした中におきまして、先般この分厚い招致活動報告書を招致委員会の方で出していただいたわけでございますけれども、竹田JOC会長も委員会の副委員長でございますが、きょうはJOC会長という立場で、スポーツ界を代表する立場でお伺いをしていきたいと思うのでございますけれども、この中でやはり、先ほどありましたような思いの部分、竹田会長が今おっしゃっていただいたスポーツ選手が限りなく自分自身を、そしてお互いを高めていく中での果てしない可能性でありますとか、あるいはお互いの健闘をたたえ合うそのすばらしさでありますとか、こうしたスポーツ本来が持つすばらしさというものがなかなかこの報告書の中を見てみてもあらわれてなかったんじゃないかなと思うのが率直な私の感想なのであります。
 例えば、この東京都が発表するものといえば、例えば環境共生都市でありますとか、あるいは平和の都市だとか、あるいは利便性の高い都市だとか、こうした都市づくりの部分にばかりメッセージが来てしまいまして、このスポーツの持つ本当のすばらしさというのが国民に、あるいは都民になかなか伝わっていなかった。これが招致機運が思ったよりも高まらなかったというところの一つの原因になってしまっているのではないかなと思うわけであります。
 先ほど河野事務総長、いらっしゃったときに、主に国内向けは都庁の本部の方で、あるいは国際的なプレゼンテーションは委員会でといったような役割分担がというようなお話もされておりましたけれども、その中で、確かにこの報告書を見てみても、外国向けにはセッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズと、ヒーローたちのひのき舞台をつくるんだといったようなものがあるんですけれども、国内向けにはそういうスポーツに関するメッセージというのはなかなかないといったようなことがこの間の活動を見ていますと、あったやに私は感じるわけでございます。
 そうしたところを改めていくこと、本当のこのスポーツのすばらしさというものを都民に、国民に伝えていくということがこれからこの機運を盛り上げていくために、あるいはスポーツそのものの機運を盛り上げていくために大切なことだと感じるわけでございますけれども、竹田会長、この間のこのメッセージの部分について、招致活動の中でどのように扱われてきたのか、十分に届いたというふうに感じていらっしゃるのか、あるいはもっとこういうような訴え方ができたんじゃないか、そのあたりをお聞かせ願えればと思います。

○竹田参考人 ありがとうございます。
 今回、政府、そして財界、スポーツ界、そして自治体、東京都の皆様方、国民、本当に大勢の方々にこの東京二〇一六年のオリンピック招致を獲得するためにご協力をいただきました。我々としてもスポーツ界の全体の意志を固める上でも、我々の使命でありますオリンピックムーブメント、これをまず推進していく、理解いただくことが最も大事なことだろうということで我々も活動してまいりました。
 オリンピックムーブメントと申しますのは、一言で申し上げれば、スポーツを通じた世界平和運動だというふうに思います。一人でも多くの方にスポーツを知っていただき、そのすばらしさを知っていただき、そしてスポーツへの参加を促していくと。そして、参加していただくことによって相互理解を深めて、そして国際親善を尽くし、明るく豊かな社会を形成し、ひいては世界の平和構築に協力していくというものだというふうに思います。先ほど申し上げたとおりでございます。
 そのための運動を我々はどういう形であらわしていくか、一番それが効果的であるかということは、やはりオリンピックを体現したオリンピアン、パラリンピアンにみずからの経験を多くの方に語ってもらい、そして次代を担う子どもたち、そして国民の皆様方に、スポーツのすばらしさを実際経験してきたオリンピアン、パラリンピアンに触れて感じることによって、スポーツのすばらしさ、あるいはチャレンジするその大切さ、そして夢をもらう。そうしたものにつなげていければということで、我々は協力をさせていただいてきたものだというふうに思っております。
 それから、このオリンピックの招致をかち取るには、いわゆる質の高い開催計画とか、あるいはスポーツに対する理解、情熱だけでは勝てません。もろもろの多くの要素を秘めていると思います。
 そういった中で、いろいろな、その場その場で活動のステージに合わせたいわゆるアピール、あるいはアスリート本位の計画で都市の総合力にまさるさまざまなメッセージ、そういったものを発信してまいりましたが、その場で対応できる一番その理解を得られるようなメッセージ、そういったものを発信してきたというふうに思います。
 もちろん国内と海外ではメッセージの方法も違います。国民の皆さんには、スポーツのすばらしさを知っていただき、そしてオリンピックをもう一回日本に誘致しようよというご理解を願うための努力であります。
 国際的ないわゆる活動は、IOC委員に対して日本でオリンピックを開催することがすばらしいオリンピックが世界に提供できるんだということをいかに説明するのかが海外でのいわゆる招致活動だと思います。それはもちろん優秀なレベルの高い、質の高い計画とともに、日本がどういうことを考え、どういうオリンピックを開催しようとしているのか、そういうことを示すのが海外へのアピールだというふうには思っております。
 そういうことで、国際、国内での招致活動の内容は変わってきているんじゃないかというふうに感じます。

○原田委員 国内向けのアピールという点では、例えば今スポーツの機運が盛り上がっているけど、でもその場所がないといったようなこともあります。例えば、皇居の周りで走っているランナーの方たくさんいらっしゃるわけでございますけれども、ほかに走る場所がないというところで、皇居の周りに集中しているというような話もあるわけでございまして、同じお金をかけるのであれば、そして日本の、東京の底力を高めるのであれば、広告宣伝、一過性のイベントに対する支出ではなく、しっかりとJOCが全体のスポーツ振興のビジョンを描いて、そこに向かってそれぞれの主体が協力をしていくといったようなことも大切なのではないかと思いますので、この辺のその活動にかける、特にこの具体的な面でいえば予算配分といったところ、それからそれに向けてのJOCの計画といったものについても、きちんと今後も努力をされてつくられていただければ大変ありがたいなと思う次第でございます。
 もう一点お伺いをしておきたいと思うわけでございますけれども、オリンピック・パラリンピックの招致ノウハウの継承についてでございます。
 過去のノウハウが十分生かされてこなかったと、手探りで一からやってきたというような声も聞こえるわけでございますけれども、本当にこの東京都の方にJOCから情報提供が不十分だったというふうにまずとらえていらっしゃるのか、あるいは名古屋や大阪でも過去招致活動があったわけでございますけれども、こういった過去の招致活動のノウハウというものは、JOC内にどのように継承されていたのか、あるいはいなかったのか。そして、今回の東京二〇一六招致活動のノウハウというものをどういうふうに継承していくのかといったことについて、お伺いをしたいと思います。
 特に立候補都市は毎回同じとは限らないわけでございますので、そうした中にあって、各都市も役割を担うところはあるかと思いますが、JOCがオールジャパンとして果たすべき役割というのが当然あると思いますので、その点についてお答えいただければと思います。

○竹田参考人 これまでの、近年のオリンピックを振り返ってみますと、一九六四年の冬季オリンピック、当時の報告書はもちろんございます。ただ、当時携わっていた方々がもう非常に少なくなっておられるということで、当時のことを直接伺うことは非常に難しかったというふうに思います。
 また、一九九八年の長野で開催されました冬季オリンピック、それからその前、一九八八年、名古屋が招致をいたしましてソウルに負けた招致活動、一九九八年の長野冬季大会、これは招致に成功いたしました。それから、二〇〇八年の大会を目指しました大阪市、この東京、一九六四年を除けばこの三つがあるわけでありますが、それぞれの報告書、こういったものは我々もよく内容は存じております。そして、当時の携わっていた者もまだおりますので、そういった意見も聞きながら、今回の招致には参考にさせてもらいました。
 ただ、これらの招致活動を通じて得られるノウハウなんですが、網羅的、あるいはかつ体系的にすべてを継承するというのは非常に難しいことであります。IOCもどんどん変わっていきます。毎年変わってまいります。それから、招致活動のルールも毎回変わっていきます。
 ですから、そういうものに対応していかなきゃいけないということで、前回のものがそのまま使えるかというと、非常にその辺は限定されてくるということがいえるというふうに思います。しかしながら、基本的な事項については継承されてきたと考えております。
 それから、今後もより一層我々JOCと加盟競技団体において、今回の招致活動の内容をきちっと継承して今後に伝えていきたいというふうに考えております。

○原田委員 さまざまなノウハウの中には、こうした招致報告書には書き切れない、あるいは例えば戦略上のことですとか、性質上書けないものもあるかと思いますので、そうしたものも含めてJOCの方できちんと対応していただければと思います。
 都議会の方でもこうして今検証しているわけでございますけれども、失敗を次に生かしていくためにはきちんとその中身を分析し、次に生かしていける形にして残していかなければいけないと思いますので、JOCにおける検討体制、検証体制というものをとっていただきますようにお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○竹田参考人 今後の検証の中で、今、原田議員がおっしゃられたように、当然報告書の中に書けない部分もいろいろたくさんございます。
 私どもJOCといたしましても、組織の中にオリンピック招致戦略本部を立ち上げました。今回の二〇一六年の内容を分析しております。もちろんその中には、外に出せない性質のもの、そういったものも全部含めて、我々はきちっと残しておりますので、その部分も次回に継承していきたいというふうに考えております。

○鈴木委員 それでは、私から質問をさせていただきます。
 本日は、竹田会長におかれましては、大変ご多忙の中、参考人意見聴取にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。スポーツ界を代表する竹田会長に改めてご意見をまたお伺いをしたいと思います。
 最初に、オリンピック招致の意義に関してお伺いをしたいと思うんですが、都議会自民党として、今まで石原慎太郎知事とともにオリンピックの招致に向けて全力で取り組んできたということは、我々も自負しているところであります。また、その意義の中で、実は東京招致ということの意味の中に、実は世界の中で東京がスポーツを通して貢献をしていくと。
 先ほど竹田会長が究極の目的は世界平和でありますとおっしゃいました。もう一つ、また二つ加えるとすれば、実はお互いの国、また都市の経済交流であり、それから文化の交流であり、そうした社会貢献が実はこの意義の中に大きな意味を秘めているというふうに私は考えているところでもあります。
 このことを特に思ったのは、コペンハーゲンの方に最終的に私自身が行かせていただいて、向こうで六日間過ごしてくる中で、現状を見させていただく中で、ヨーロッパの方々、または世界じゅうの方々、それから立候補した都市の方々から感じられるそのものというのは、それぞれの国が世界に対してどのように貢献をしていこうかということをまさにそれを映し出した場であったような気がしています。
 先ほど竹田会長がおっしゃったサマランチ会長の言葉は、私も、もしかしたら違ったらお直しをいただきたいんですが、オリンピックというすばらしい世界の祭典を我が国、スペイン、マドリードにその最高の栄誉として、名誉として我が国の方に皆様のお力でご推挙いただきたいと、その栄誉を与えていただきたいというような言葉をたしかサマランチ会長は最後にいわれたというふうに思うんですね。
 私も後で聞いて、やはりこの言葉の重みというのは、本来のオリンピックの招致の意味、その根幹にあるものなのかなと思いました。それほど崇高なオリンピックはスピリッツを持っていると。そういう精神をやはり酌んでいく中で、やはりオリンピックというようなものを東京が考えていくべきであったというようなところも実は私の反省点であったわけでありますが、そういうことを通して、やはり招致に関して立候補できるということが本当にすばらしいことであって、また立候補できる国、または都市を持っているということにむしろ日本人として誇りを持たねばならないということが私は現実ではないかなということを向こうで感じました。
 ですから、オリンピックに対して反対する人はいないと思うんですが、やはりオリンピックを立候補できたということのすばらしさをもう一度考えさせてもらって、そしてその意義を我々はもう一度検証し、そして来るべきこの日本の将来に向けて、若者たちに夢と希望を与えられるような国家にするための努力をしていくべきであろうと思いますので、意義に関して改めてお伺いをしたいというふうに思います。

○竹田参考人 ありがとうございます。
 今回、東京が二〇一六年のオリンピックを目指して手を挙げ、そして開催のための活動を行ってきたわけですが、私は大変大きな意義があったというふうに信じております。JOCとしてもこの活動にいろいろ協力をしてまいりましたけれども、私個人としてもこのことを強く感じているところであります。
 今日の東京では、充実したインフラあるいは世界に誇る世界最先端の技術、あるいは環境技術、あるいは治安のよい安定性、こういったものを、高い都市力を東京は備えているわけでありますけれども、その東京のスポーツに対する熱心な取り組みもあわせて世界に十分示すことができたんじゃないかというふうに思います。
 今回の開催の計画の策定に当たりまして、その世界に誇るべきこの東京の姿を世界に再確認できたということは大変大きな意義があったと私は信じておりますし、この招致の国際プロモーションを行った折に、世界の人々に新たな東京をアピールできたということは、確信したところであります。
 こういった成熟した東京を世界にアピールする中で、世界が直面した新たな危機というものにちょうど遭遇したわけでありますけれども、そのオリンピックの開催によってこれを克服しようという、そういった姿勢を示すことも東京はできたんじゃないかというふうに思っております。世界に認識された東京、そういった意味でも大変意義があったというふうに思います。
 今、鈴木議員からもお話がありましたとおり、このオリンピックの意義というのは、もちろん世界平和を非常に大きな要素にしておりますが、国同士の交流、あるいはその社会貢献、文化の交流、そういったことはもちろん重要なことでありますし、オリンピックを開催することによって、それは大きく影響を受けてくるものというふうに信じております。
 ありがとうございます。

○鈴木委員 そういう点からも簡単にお伺いしたいんですが、その招致活動の成果の中で、招致活動によって残ったレガシー、あえてレガシーという言葉を使わせてもらいますが、これに関してはどのようなご意見をお持ちでしょうか、お伺いをしたいと思います。

○竹田参考人 この二〇一六年の招致活動で、大変大きな成果があったというふうに私は信じております。
 一つは、JOCがこれまで永続的に行っておりますオリンピックムーブメントの推進に、この招致で取り上げて取り組んできたということが大きく挙げられます。
 これは都内だけでなく全国の規模で展開をしてきました。私が伺っているところでは二百五十件でしょうか、七百三十万、三百七十万でしたか、失礼しました。ちょっと数は忘れましたが、大変多くの方々がこのオリンピックムーブメントに対する事業に参加されたというふうに聞いております。
 そのほかに、東京都の、都内の小中高校生に対して、オリンピック教育のテキスト、これを配布をすることによって、オリンピック教育の場を設けていただいたということは、大変意義深いことだったというふうに私は信じております。
 こういったことで、オリンピズムの理解をその東京都の子どもたちを核として日本全国の子どもたちに広げていく、その結果として日本のスポーツの振興が図られて、子どもたちの健康づくりや、あるいはその感動体験など、スポーツを楽しむすばらしさを知ってもらえたのじゃないかというふうに信じているところであります。
 もう一つ、二つ目に、開催計画に高い評価が得られたということは、非常に大きな意義であったというふうにも思います。東京のアスリートを第一に考えた計画は、世界じゅうのオリンピアン、そしてパラリンピアンから支持されているということを受けたわけであります。IOCでも国際競技連盟などに認められたこの日本のプレゼンスというものを確実に押し上げることができたんじゃないかというふうに感じます。
 それから、三つ目でありますけれども、招致活動を通じてそのアスリート本人が意識の変化を持ったことではないかというふうに思います。この四年間にわたる招致活動で多くのアスリート、オリンピアン、あるいはパラリンピアンがイベントあるいは招致活動に参加してもらったわけですけれども、そのアスリート自身に大きな意識の変革が起きたというふうに私は思っております。
 そのスポーツのすばらしさやオリンピックがもたらす大きな感動、あるいはさらに逆境に立ち向かうその勇気、そういったものの大切さ、あるいは夢に向かって努力する、そういったとうとさなど、こういったものをオリンピアンがみずから体現して子どもたちに話す、そういったことが自分たちに課せられた義務であるということをよく認識したということだというふうに思います。
 こういうことを今後さらにオリンピアンが自発的に、頼まれてやるんではなくて、自発的にオリンピアンが今後その大切さを説いていってくれるものと私は信じております。

○鈴木委員 今いろいろなご意見をいただいて、またほかの議員からもいろいろ意見があったわけでありますが、実は自民党と公明党は議員立法によってスポーツ基本法案を第百七十一回の国会に提出をしました。残念ながら審議されないまま衆議院が解散され、廃案となりました。
 一方で、東京都は実はこの国のスポーツ省構想に先駆けて、スポーツ振興局の設置の動きがございます。東京に倣い私は都道府県全部が、四十七都道府県がスポーツ局をつくり、そしてスポーツの振興を各都道府県が協力をして、やはり本来のスポーツのすばらしさを国民全体が享受できるように、そして世界にスポーツ立国として発信できるような素地を私は地方自治体みずからがつくっていくべきだというようなことを思っているわけでありますが、そしてそういうことが動きとして出た後に、ぜひ国においてはスポーツ省を早急につくってもらいたいということも要望をしたいところでありますが、こういうスポーツを通して世界に貢献する国家となるべきであろうと、これは実は先ほど来皆さんが議論しているオリンピックを招致するためではなくして、教育として、また文化として、また我々が人類の中で平和を希求する民族として、やはりこのことを我々は望んでいくべきであろうというようなことを私は思います。
 そういうことを冠して、今後の日本招致の展望をもしできれば、大きな話になるかもしれませんが、竹田会長にお話をちょうだいしたいと思います。

○竹田参考人 我々としては、今回二〇一六年のオリンピック招致に敗れたわけですが、二〇二〇年の大会招致、継続して日本国内のいずれかの都市で立候補ができるよう名乗りを上げたいというふうに思っておりますし、これは大変意義のあることだというふうに思います。
 現在、お話にございましたように、昨年スポーツ基本法を国会に上程して、そして近い将来スポーツ省ということで、スポーツ立国を立ち上げていただけるものと期待をしておりましたが、残念ながら今回は廃案ということで、また今後の国会に私どもも期待をしているところでございます。
 我々としては、スポーツが国として、国策としてスポーツのすそ野を広げる普及振興、そして競技力の向上もあわせて、国策としてこれを取り扱っていただくことが必要だろうというふうに私どもも信じておりますし、ことごとくそのような会議には出席して、JOCの考えを述べさせていただいているところでございます。
 そういった中で、やはり今回二〇一六年のオリンピック招致は残念でありましたが、さらにこれを継続することによって、そしてスポーツの意義、あるいはスポーツの大切さ、オリンピックの意義というものを今後日本の国策として立ち上げるスポーツ立国にぜひともつなげていくべきだと思いますし、そうあってもらいたいというふうに思っているところであります。
 先ほど、冒頭申し上げましたけれども、国際的な発言力強化、そういったものは招致にも必要なわけですけれども、しっかりとした戦略、そして体制を整えながら、次回には臨みたいというふうに思っているところであります。
 それから、最初にも申し上げましたけれども、オリンピック招致が国家プロジェクトとして、そして国の強力な支援のもと、各界、国民が一体となって招致に臨むことが不可欠でありますし、今後招致に向かっていくためにも、二〇一八年の冬のオリンピック、あるいは二〇二〇年に向けたアフリカの動き、こういったものがことしのFIFAのワールドカップ等に非常に影響してくるものであります。
 そういうものを見据えて、今後オリンピックの開催が可能である限り、我々はこれに向けて挑戦してまいりたいというふうに思っているところであります。

○木内委員 竹田会長にはご多忙のところ、こうしてお越しいただきましてありがとうございます。
 先ほど会長の率直な意見のご開陳に触れまして、感動を新たにいたしました。僭越を省みず申し上げれば、ミスターオリンピックといわれる竹田会長が生涯を賭してかけておられるこのオリンピックの誘致、スポーツの振興に対する率直で真摯な心情が吐露されたわけでございまして、超人的身体能力とわざ、これによるパフォーマンスと可能性、そして友情と相互理解を深める。これはいわば私は言語なき対話である、こういうふうに実は受けとめたわけでございまして、会長のご意見は長く私の恐らく肺腑に残るものと、こんなふうに思っておりまして、重ねて御礼を申し上げます。
 さて、私も、鈴木委員、ご一緒させていただいて、コペンハーゲンに参りまして、六日間、結論が出るまでまんじりともしない日を重ねて、結果的には実は残念なことに終わったわけでございます。
 私は、真正面からの議論、それからオーソドックスなご努力と一方であるけれども、もう一方で、アダム・スミスではないけれども、見えざる手というのが実はこのオリンピックの招致活動には存在をしていて、この部分をしっかりえぐり取って理解をして、今後に教訓として残さなければならないという懸念を本当に持っていたわけでありますが、先ほど同僚委員の質疑に対しまして、表現は違いますが、公表できない、明文化できない事実経過と教訓というものもしっかりレガシーとして残していきたいという貴重な実はご答弁がありましたので、これを多としたいと思うわけでございます。
 同時に、先ほど来の議論の中で一つございましたのが、この日本オリンピック委員会としてのお立場で、今オリンピック招致を初めとしてスポーツ振興に対するスタイルというものは旧来とは変わってきている、こういうお話のニュアンスがございました。
 私は、今後のオリンピック招致を初めとしてさまざまな国際環境の中での運動を展開する際に必要なものは、やはり、ダーウィンの言葉を思い出すんです、生き残るものは、力の強いものでもなければ体の大きなものでもない、変化に対応する力である。これを持ったものが残るんだといわれているわけでありますけれども、日本オリンピック委員会としてのお立場で、竹田会長からごらんになった日本の国としての取り組み姿勢や日本のスポーツの将来についてかくあるべしというご見解がおありならば、お聞かせをいただきたいと思います。

○竹田参考人 JOCは先ほどお話し申し上げた二つの大きな事業を柱として活動をしておりますが、その立場でお答えを申し上げたいと思います。
 まず、私どもが手がけておる競技力の向上、これは多くの国民の皆様がオリンピック等で大きな期待を寄せておられるところだというふうに思います。近年のオリンピックにつきましても、日本の選手の成績というのは、いろいろな意見があるというふうに理解をしております。
 同じアジアにおいても、成長著しい中国や韓国の例を見ますと、スポーツを国策として位置づけております。関連予算をふやして、トレーニングセンターの充実、あるいは強化費のみならず合宿中の費用、生活費もすべて支給する。トップアスリートの育成に力を入れているのが現状であります。
 片や我が国におきましては、昨年行われた政府の事業仕分けにおきまして、十分なご理解を得られず、JOCへの補助金は前年と比べ四%削減されることになりました。このような状況を背景として、国にも動きがございました。文部科学省が進めているスポーツ立国戦略づくりであります。
 先日も関係する会議にJOCから出席させていただき、スポーツ振興に関する提案等を述べさせていただいているところでございますが、こうした動きの中でスポーツ庁あるいはスポーツ省、そういったものの設置、スポーツ基本法の制定などが実現できれば、日本におけるスポーツの地位が一層向上してくるものだというふうに期待しているところであります。

○木内委員 本当に大事だと思うんですね。
 この事業仕分け、どこの党がやっておられるかわからないけれども、四%JOC予算を削るという、変化に対応してさらに国際社会に通用する国家づくりの基本となるスポーツ振興をふたをしてしまうことにならなければいいがということで、きょうは良識ある、またその党の委員の方もおいでですから、いずれこれはまた上に上がっていくご意見のまた本流になると、こう思いますけれども、確かに中国や韓国、国家的ないわば生活の保障、あるいはその生涯の担保なんかというところまでつながる措置を講じているようでございまして、私どもは公明党でございますけれども、全国三千人以上の地方議員、国会議員を擁するネットワーク政党でありますので、きょうのご意見をしっかり党首に伝えてまいりたいと、国会での運動においてもご支援を申し上げたいと、こう思うわけでありまして、民主党さんにもぜひ同じルートでひとつご理解、ご支援をいただければと、こんなふうに思うわけであります。

○竹田参考人 一つ、ただしつけ加えておかなきゃいけないことがございます。今回の政府からスポーツ関連予算、総予算としては前年よりプラスにしていただいたということはつけ加えさせていただきたいと思います。それに関しては大変ありがたく、感謝をしております。

○木内委員 一長一短で本当によかったです。このまま今のお話がなければ、皆さんもご心配--中村さん、よかったね。いつもご熱心だから。
 それで、アスリートの皆さんの招致活動への参画ということについてお尋ねをします。
 今回の二〇一六年の招致活動を振り返ってみますと、みんなのオリンピックですとか、あるいは都内区市町村とのオリンピックムーブメント、共同推進事業など、この運動を盛り上げるための経費がかかり過ぎたのではないかという指摘が一部であるわけです。
 このムーブメント推進の中心的存在であるJOCとして、効率的で効果的な取り組みに寄与できることはないのかということもぜひ確認をしたいし、また、将来、東京を含めて日本のどこかの都市が招致活動に乗り出す場合、アスリートの支援は不可欠である、こう考えるわけでございますけれども、この際、アスリートにご協力いただける際、JOCとしては主導的に取り組んでいかれることを私ども大いに期待するんですが、その辺はいかがでしょうか。
 誤解のないように申し上げれば、東京がまた招致に取り組むということはまだ何も決まっていないわけでありますが、一般論として、日本のどこかの都市でということを想定してお答えいただければと思います。

○竹田参考人 ご指摘のとおり、アスリート、オリンピアンあるいはパラリンピアンが招致活動にかかわることは非常に大きな役割を果たすことになるというふうに思いますし、今回も多くのオリンピアンにこの招致活動に協力をしていただいたところでございます。
 各オリンピアンあるいはパラリンピアンにどのくらい費用がかかったものか、あるいはボランティアで活動してくれたものか、私はJOCで仲介したわけではないので現状よくわかりませんが、やはり、ともかく各スポーツ界、各競技団体を含めた、アスリートも含めたスポーツ界がまずはオリンピック招致を一番願っているというふうに思いますし、そういった中で、やはりアスリートがボランティア的な立場で今後オリンピック招致活動に協力していくことは大事だというふうに思います。
 私どもも、これから二〇二〇年に向けてオリンピックを招致する都市が出てきて、そして実現するときには、JOCとしてボランティアに対して、いわゆるオリンピアン、パラリンピアンに対して協力をいただけるよう最大限努力してまいりたいというふうに思います。

○木内委員 先ほどの会長の意見開陳の掉尾といいますか、末尾の部分にこういうところがございました。国内いずれかの都市においてオリンピックの開催が行われること、開催を願っている。これはまさにご意見のポイントだというふうに聞いたわけでありますが、しこうして、申し上げたように、東京が二〇二〇年大会に手を挙げるのかどうか、現時点ではわかりませんけれども、少なくとも日本でオリンピック・パラリンピックを開催して目の前で見ることが、私も含め、多くの都民、国民の願い、望みではないか、そのように思うわけでありますが、そうした状況の中で、広島市がこの招致の可能性について検討を始めたというニュースを仄聞をしているわけでございます。
 一方、国内の情勢でありますけれども、広島市が長崎市との共同開催にはならなかったものの、二〇二〇年招致を検討をしていて作業を進めている、こういうことであります。
 私は東京の一員として、一方、同じオリンピック・パラリンピック開催を目指す日本の都市同士として、一緒になって世界と戦いたいなど、正直複雑な気持ちも仄聞するたびに思うわけでございます。
 ついては、日本における都市を決定するお立場にあるJOC、そしてその会長としての広島市の二〇二〇年オリンピック競技大会開催都市への立候補に向けた動向への現状認識と、それからもう一点、これはきょうの私のお尋ねするポイントなんですけれども、前回のように、福岡市と東京都の争いがございましたが、こうしたシーンは二度と現出をさせたくない。実は私もあの会場に行ったんです。プレゼンテーションを聞きました。福岡側と東京側で、どっちのだれと、個人名、固有名詞はあえていいませんけれども、同じ国内のプレゼンテーションでありながら、会長もお聞きになっていると思いますが、余りにも、もう口にするのも恥ずかしいような、他の相手の都市をばりざんぼうのきわみでそしるような、こういうプレゼンがありました。本当に情けないことでありました。東京が福岡にいったのか、福岡が東京に対して発言したか、これはあえていいませんけれども、あしざまに他を非難して、都民性なり県民性なりというものを基本から否定するような、こういうような議論というものはもう二度と私は実は耳にしたくもないわけでありますけれども、こうした福岡市と東京都のような争いとはならないような、またそれなりの配慮がJOCとしてお願いをできるかどうか、ご見解を承りたいと思います。
 ただ、申し上げたように、これはJOCのお立場の責任ではないわけで、両方の熱意があり余った末での言動だったと思うんです。いかがでしょうか。

○竹田参考人 まず、最初にお話ございました広島市が次のオリンピックに対して検討を始めたという点でありますが、我々としては、いわゆるオリンピックの大会を開催するに興味を示していただいた都市が出てきたということでは大変歓迎しておりますし、今後どういった計画を策定されていくのか、非常に興味を持って見ているところでございます。
 昨年十月に広島市は、賛同する自治体とともに二〇二〇年のオリンピック招致検討委員会を立ち上げられました。開催理念は、平和の祭典や核兵器のない世界を掲げて、広島市ならではの歴史的経緯を考慮した全世界へのメッセージ、これはアピール度も高く、意義のあることだというふうに考えております。
 ただ、開催の計画の骨格となる基本計画は現在策定されているところでありまして、ことしの夏ごろにはつくり上げられるというふうに聞いております。最終的に、その結果、名乗りを上げられるかどうかということはまだ決定されてないように伺っております。
 いずれにしろ、JOCとしては引き続き広島市の計画策定に支援するとともに、その動向を見守っていきたいというふうに思っております。
 先ほど、最後にお話ございました今後の東京オリンピック招致都市の決定プロセスでありますが、ご指摘のとおり、前回の福岡市と東京都の招致決定の方法としては、まさに国際オリンピックがとっている同じ方法を採用させていただきました。一番オープンで、そしてフェアな形ということを我々は信じ、そのプロセスをとらせていただきましたが、今、木内議員からお話のありましたとおり、相手を要するに罵倒する、あるいは批判するというようなことがあったのは記憶しております。これは、IOCのルールでは、招致期間中、招致都市になった以上、一切相手のことを誹謗しても批判してもいけない。これが非常に大きなルールになっております。
 これはマスコミを通じても、あるいはどこにいてもその関係者は相手の都市あるいは計画に対して批判めいたことはいってはならない。それがもしIOCに知れたときには大きなペナルティーになることになっております。
 ですから、そういうルールも事前にお伝えしていたと思うんですが、残念ながらそういう発言があったということは記憶しております。
 そして、今後の選考方法につきましては、前回のプロセスとは変わった方法で選定を行いたいと考えておりますが、最終的な、決定した選考方法についてはまだ模索中でありまして、一番いい方法をとりたいというふうに考えております。
 今、議員のご発言のことも参考にさせていただきながら、今後、決定方法については決めてまいりたいというふうに思います。

○木内委員 大分長くなってしまいまして、端的にお聞きをいたします。
 非常に今明快なお話がございましたので、私も安堵いたしましたし、一方で友情と相互理解のオリンピックという標榜がありながら、一方でそういうことがあってはならないと、明快にそういう明文化されているわけですね、相手を批判しないというか。ありがとうございました。
 さて、最後にお尋ねをするわけでございますが、仮に二〇二〇年大会招致に日本のどこかの都市が望んだ場合、勝機はありますでしょうか。いかがでございますか。一言だけお答えをいただければと思います。

○竹田参考人 正直、今感じていることを申し上げますと、今回の招致決定がなされた後に、多くのIOC委員が我々に意見を唱えてくれました。東京の計画はすばらしかったと。一番確実な質の高い計画だったと多くのIOC委員が話していただきました。また、当然次回はチャレンジするんだろうという話もいただいております。
 ロゲ会長とその後お会いしたときに、東京の招致計画は非常に質の高いものであったと。幾つかの評価委員会の意見を参考にして、今後さらに内容を高くすることによってすばらしいオリンピックが開催できるだろうと。東京であってもどこの都市であっても、日本から招致されることは大歓迎であるという話も伺いました。
 私は、次回、これは当然どういう結果が出るかやってみなきゃわかりませんけれども、次回、日本は東京が立候補するのは二度目になります。今回のマドリードは三回、ブラジルとしては四回目のチャレンジでありました。やはり今、一度目でオリンピック招致を獲得するということは大変に難しいことでありますし、我々もこのチャレンジを始めたときに、非常に厳しいチャレンジに我々は向かうということを覚悟でやってきたつもりであります。
 福岡、そして東京の国内立候補のときに、あるJOC委員が、一回で決まらなかった場合に東京は二度目の招致をいたしますかという発言をいたしました。そのときに石原知事は、二回目は東京は必ず立ちますという発言をいただいております。そういったことで、我々は負けることもある。ただし、もし負けたときに次のオリンピックに対して東京都は立候補するという、そういったお考えも事前にいただいてきております。
 ただ、これはそのときからいろいろ状況は変わっておりますので、再度東京都でお考えいただくことだと思いますが、私としてはぜひ再度東京都がチャレンジされることを心から願っているところであります。
 以上です。

○たぞえ委員 日本共産党のたぞえ民夫です。よろしくお願いいたします。
 スポーツは、国民の健康で幸福な生活に欠かせないというふうに思います。しかし、雇用の不安や長時間労働、さらに低い賃金、多くの国民がこのスポーツから遠ざからされている。そういう意味では、国民の生活安定を図って、スポーツに親しむ諸条件を整えていくことは国の重要な役割だというふうに思います。
 私ども日本共産党は、スポーツを国民の基本的な権利として、スポーツの多面的な発展を図ることが大事だというふうに考えています。今、プロゴルフ界で女子選手に注目が寄せられ、世界的なレベルに到達をしていますのは、例えば午後二時以降はジュニアにコースを無料で開放する、そういうゴルフ場がふえるなど、ジュニアがゴルフに親しめる環境がつくられていることが大きな要因になっているというふうに思っています。
 一方で、スケート場やスキー場などの閉鎖で、一流選手すら練習条件に恵まれないなど、全体としてスポーツ施設不足が大きな問題になっています。
 そこで、初めに伺いますのは、スポーツ振興にとっても、だれもが低料金で利用できる草の根のスポーツ施設の整備、そして、自主的なスポーツ団体や地域のスポーツクラブ及びジュニアに対するコーチなど、指導体制の確立を含め総合的な支援が今ほど求められているときはないというふうに思います。
 そこで、国や自治体、とりわけ東京都にはどのようなことをJOC会長としてしてもらいたいのかお伺いしたいと思います。

○竹田参考人 ありがとうございます。
 我々JOCといたしましては、国そして都の皆様方にオリンピックムーブメントの推進に積極的に取り組んでいただいて、国民あるいは都民のだれもがスポーツを楽しめるような、そういった環境が広がっていくことを期待しているところであります。
 先ほど申し上げましたけれども、JOCの使命は、すべての人々にスポーツへの参加を促し、健全な肉体と精神を持つスポーツマンを育て、オリンピックムーブメントを力強く推進するところにあります。ですから、本当にすべての人が身近で気軽にスポーツができる環境、そしてスポーツをする権利、これは当然必要でありますし、そのような状況を我々は期待しております。新しいスポーツ基本法でもそのことはきちっと組み込まれていると聞いております。
 そのためには、ハード、ソフト、その両面において国民のだれもがスポーツに取り組める環境整備、これが重要なわけでありまして、JOCとしてもその充実に向けて関係機関にこれまでもお願いし働きをかけてきているところでございます。
 例えば一つの例といたしまして、中長期的な視点を踏まえて、トレーニングの環境やその安定的な財源基盤の確立、あるいは指導者の育成、ネットワークの構築、こういったものを初めとする諸施策を国を挙げて行ってまいりましたその総合的な施策、これに展開していく必要性、こういったことを文部科学省にお願いし、訴えてきているところであります。
 東京都に対しましても、国に先駆けた積極的な先鋭的な取り組みの実現を心より願っているところでございます。また、ぜひJOC、我々と連携をとっていただいて、日本のモデルケースとなるようなスポーツ政策を考えていただければと願っております。

○たぞえ委員 ありがとうございます。
 オリンピックやワールドカップなどでの日本選手の活躍が大変期待されておりますけれども、プロ、アマを問わず、選手としての人権を尊重して、競技力向上に向けた、選手、コーチや競技団体の取り組みを公的に支援をするということが、私は今、会長のお話からも重要だというふうに思いました。選手の安定生活を図るための保障や制度の確立がその上で欠かせません。
 JOCは、国や自治体、とりわけ東京都に対して選手への支援についてはどのようなことを望んでいらっしゃるのか伺いたいと思います。

○竹田参考人 JOCといたしましては、都行政の皆様方に対して、アスリートが安心していわゆるトレーニングができる、競技生活に専念できる、そういった選手側の視点に立った環境整備、こういったものを考え、取り組んでいっていただきたいというふうに思います。
 我が国におきましても、スポーツ振興の象徴的存在であります日本スポーツ界をリードするトップアスリート、いわゆるオリンピアン、パラリンピアンのそういった意義や存在価値が十分に理解されていくことを願っております。
 また、活動の根幹となる国からJOCへの補助金のことも先ほど申し上げましたけれども、こういったことで我々も一部危機感を持っておりますが、ぜひともスポーツの大切さ、重要さをご理解いただきながら、今後のスポーツ振興にご協力いただければというふうに思います。
 このため、JOCにおきましては、国のスポーツ振興に関する提言の中で幾つかの具体的な案を行っています。その一つでありますが、まずその提言といたしまして、ナショナルトレーニングセンターの施設利用料の無料化であります。この施設が完成したことには大変感謝をいたしてきているところでありますが、トップアスリート専用のトレーニング施設にもかかわらず高額な利用料が設置されているということから、その利用が制限される、そういう状況にあります。これは先ほど申し上げました中国、韓国、あるいはスポーツ大国、経済大国はすべてナショナルトレセンは国が管理して、国の費用で賄われているところでございます。
 さらに、選手が競技力の強化に専念できる環境を整備するために、コーチそしてスタッフ、この指導者たちの充実も欠かすことはできません。これらの方々の社会的な地位の向上、これを図るために、選任コーチ、あるいは強化コーチ、スタッフがJOCとの契約に基づいた雇用関係により活動できるよう制度の改善を要望しているところであります。
 東京都への皆様方の期待でありますが、オリンピック招致活動にも取り組まれ、あるいは国体開催も三年後に控えておられます。スポーツ振興を都政の中心的な施策として位置づけられている東京都に対しましては、JOCのパートナー都市協定に基づき、都立施設の運営面における工夫など、また各選手が持てる能力を最大限発揮できるよう、選手や競技団体を取り巻くあらゆる面での環境改善に一層のご支援、ご協力をお願いしたいと考えます。
 さらに、トップアスリートやオリンピアン、パラリンピアンが、都民あるいは子どもたちへ還元できる、そういった場を多くつくっていただきたく、我々はまたオリンピアンをボランティア等で派遣をしたいというふうに希望しているところであります。

○たぞえ委員 大変貴重なご提言だというふうに思っております。私どもは、オリンピックや国民体育大会など大型イベントについてはできるだけ簡素化して、むだと浪費をなくす必要があるという立場と考えを示してきました。その点で、東京都は二〇一六年開催に向けて、招致関連経費だけで二百億円以上使うだけではなく、四千億円の基金を積み立てることを初め、オリンピック招致の名でインフラ整備を含めれば数兆円規模のお金を使うということを、私は、また私ども党としてもこの特別委員会や議会全体でも批判をし、指摘をしてきました。
 今ご承知のとおり、雇用の破壊、社会保障の切り下げに加え、不況のもとで都民の暮らしが困窮して、多くの都民の尊厳が著しく脅かされております。オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重みを置き平和な社会を推進する、このことにあるはずであります。この立場から、都民生活の困窮の中で、金に飽かした招致計画を進めることは重大問題があると考えておりますが、どのようにお考えか。
 また、近年、スポーツビジネスの光と影が取りざたされておりますが、この問題についても会長からの見解も伺いたいと思います。

○竹田参考人 まず、オリンピック招致に向けた戦略、戦術というものは、勝利への方程式というものはないと思います。我々、世界情勢の変化や、あるいはその時々の必要に応じた方法、あるいはその内容で招致活動を展開してきましたし、その必要があるというふうに思います。
 それらに要した活動経費はそれぞれに意味があったものと思います。これまで招致委員会では目的にかなった支出に努めてきたものと認識しております。また、開催計画で示した競技施設の設備などに要する経費につきましても、IOCや国際競技団体が要求する非常に高い水準、こういったものを満たした内容で反映されております。
 このため、金に飽かした招致活動が進められてきたということではなくて、戦いに勝つために、勝ち抜いていくために必要な経費であったというふうに、その支出があったと我々は理解しております。
 そういうことと、もう一つ今ご質問ございましたスポーツビジネスについてでありますが、JOCにおいてマーケティング活動もみずから行っております。これはスポーツ団体が自活していく上でどうしても必要なことでありますし、国だけの現在の助成金ではとても選手を養成あるいは強化をサポートするのには足りません。また、アスリート自身も、競技生活を続けていく上でさまざまな活動、努力をそれぞれしておりますが、これに対しても理解をしております。
 JOCとしては、アスリートの立場を尊重するとともに、健全なスポーツビジネスに展開することを期待しております。
 以上です。

○たぞえ委員 今回の招致にかかわって、都民の支持が高くならない、このことについてはこの報告書の中でも指摘がされていますように、ほかに優先すべき課題があるのではないかと、率直な都民からの声です。しかも、さまざまなイベントにかかわった経費が膨大なものであって、これももっと節減すべきだと、これは都民の率直な思いでありました。
 今、会長がいわれたように、勝ち抜くための経費ということでありますが、しかし一方で、税を負担して、その税が全く生活に還元されずに招致活動にそれが投入されるというだけのものであるとしたら、今後も都民の支持は得られていかないだろうというふうに思います。もちろん、会長がいわれたように、国を挙げて、また地方自治体を挙げてスポーツ団体や選手、さまざまな競技イベントに力を尽くしていくということがまず大前提であって、そこが、本来やるべき根幹がきちんとなく、ただ民間に、都民に負担をお願いするというだけでは、この東京招致というのは前に進んでいかないのではないかと私どもは考えています。
 今回の二〇一六年の招致についてはさまざまな問題がありました。知事は、これを海図として二〇二〇ということをいっておりますけれども、私どもは、この招致に失敗した中身について掘り下げた総括をきちんと行い、都民にもこれを明らかにして、そして都民参加のもとでオリンピック招致というスタートラインに立つことが大変重要だというふうに思っております。
 この点でJOCの持っているノウハウを大いに東京のスポーツ施策の振興に力を注ぎ、使わせていただきたいというふうにお願いして、私の質問を終わります。

○星委員 竹田会長、本日はご出席をいただきましてありがとうございます。生活者ネットワーク・みらいの星ひろ子と申します。
 時間が限られておりますので、早速二点ほど質問させていただきたいと思います。
 勝利をかち取るためには人脈がかぎであるということが最終局面ではいわれました。具体的にどういう人脈なのか、またどういう場面で有効なんでしょうか。このことは、IOCと日ごろからおつき合いのある竹田会長のお立場から見てどうお考えになりますでしょうか。そしてまた、会長ご自身ではこのことでどのような役割を果たされたのか教えていただければと思います。

○竹田参考人 やはりオリンピック招致をかち取るためには、投票権を有するIOC委員への働きかけはとても重要であります。各都市がどういうオリンピックを開催しようとしているのか、それが世界のスポーツの今後の普及あるいは発展にどう影響しているのかというさまざまな立場からIOC委員はそれを検討されます。
 そういった意味で、IOC委員だけでなく、国際競技連盟の役員あるいは各国のオリンピック委員会の関係者、そういった世界じゅうのスポーツをリードしている関係者の皆様方に、これをオリンピックファミリーとも称しますが、アピールして、東京がどういうオリンピックを、まず招致しようとしているかということをよく理解してもらうことが必要であります。そういった意味で、やはり国際的な人脈というものは必要になってくるというふうに思います。
 具体的には、今回の招致活動では、多くの国際スポーツ会議や、あるいは国際競技大会の機会をとらえまして関係者に招致への支援を訴えてまいりました。私も五大陸で行われたオリンピック委員会連合の総会にも出席し、そして東京の招致の内容、そして大会の確実性、そういったものを訴えてきたところであります。
 今回は一回目の投票で二十二票ということで、残念ながら招致をかち取ることはできませんでしたが、二十二名のIOC委員は何しろ東京が一番いいというふうに思ってくれた方がここにおられるということは、我々の活動による票だというふうには思っております。ただ、かち取るためには、まだまだ我々の努力が足りなかったというふうに反省もしておるところであります。
 最初に冒頭に申し上げたとおり、国際的な舞台における日本スポーツ界の発言力をもっと高めるために、国際機関の要職を担えるような人材の育成、こういったものに現在我々努めているところでありますし、既に国際人養成のためのプロジェクトも立ち上げて現在実行しているところであります。
 国際力の強化を図るためには、人材の育成とともに、組織の強化、そして国や政府、さらに国際機関との連携が必要であります。その働きかけも現在我々JOCはもう既にスタートをしておるところでありますが、さらに昨年十一月には、JOCのオリンピック招致戦略本部を設営し、また、さきのバンクーバー・オリンピック、このとき、あるいはその後の国際会議で、二〇二〇年においても我々が目指した取り組みを展開してきているところであります。

○星委員 ありがとうございました。
 今、この経験を生かして人材を育成するプロジェクトも立ち上げたというお答えをいただきました。大変私はこれは重要なことだと思いますけれども、一朝一夕ではなくて実績を積み上げていくのは非常に時間がかかるものではないかなというふうに感じます。
 次にお伺いしますけれども、今回の失敗、そして多額の経費がかかったということ、あるいは都市間の開催であるにもかかわらず、結果的にはやっぱり国と国との熾烈な国家間の競争というようなことも報じられて、こういったいろいろな事実が明らかになるにつけ、スポーツは愛しているんだけれども、オリンピックは好きなんだけれども、招致レースというものが非常に生臭いというか、血生臭いというか、負のイメージというのか、そういうような暗いイメージを持つ都民も率直にいって出てきているんではないかなというふうに、レースに関してなんですが、そういうことは私は今の状況はやむを得ないことだというふうに感じるんですけれども、冒頭もご意見をいわれておりましたけれども、近い将来、必ず国内のどこかで開催をしたいという会長のご意思もありますけれども、やはり世論の後押しというものが非常に必要だ、重要なことだというふうに私は考えております。
 JOC会長のお立場で、そういった招致に勝ち抜くためにこの間繰り広げられてきたいろいろなさまざまな熾烈な競争、あるいは、レガシーの中の一つでしょうけれども、これは公では発表できないようなところの部分もあるんだというようなことも取りざたされる中で、やはりそのオリンピック精神、オリンピックの開催はとてもすばらしいことなんだよということを改めて都民、国民にお訴えになるとしたら、今、会長のお立場でのメッセージ、ご発言があるとしたらばぜひお願いをしたいんですけれども。

○竹田参考人 やはり、先ほど来申し上げていますとおり、オリンピックの意義、スポーツのすばらしさ、そしてそのスポーツの大切さ、こういったものをやはり都民の多くの方々がもっともっと理解ができるように我々も努力していかなきゃいけないというふうに思います。
 今ちょっとご発言ございました、熾烈な戦い、そして国と国が争いをしているようなご発言がありましたが、我々はスポーツ界の者であります。各オリンピック委員会あるいは都市も、自分の立ち上げた、あるいは開催を目指したオリンピックがすばらしいものである、我々のところへ来れば、将来的にスポーツの普及あるいは振興に大きくつながる、世界のスポーツのためになるんだということを、それぞれ各都市がその利点を述べてきたところでありますが、これが国と国の、悪い、負のイメージでとらえられるとしたら、私は非常に残念だというふうに思います。
 例えば今回、ブラジルとも、そしてマドリードとも、招致をかち取る意味では熾烈な戦いを行ってきましたが、非常に友好的ないい関係を現在も保っております。むしろ、今度のブラジル・リオデジャネイロが招致、二〇一六年のオリンピックをかち取った上で、我々はブラジルで決まったということを非常に率直に現在喜んでおりますし、むしろ日本人が非常に多くいるブラジルの中で、日本人の協力を今オリンピック委員会は非常に我々に求めてきているところもあります。
 我々は、このブラジルのオリンピック招致と、招致合戦はしましたけれども、このオリンピックが何とか成功するように我々にできることは全面的に出して協力するつもりでおります。これがオリンピックの招致活動だということをまずご理解いただきたいと思います。これをもってブラジルのオリンピック委員会、日本のオリンピック委員会が非常に立場上やりにくい環境になるようなことは全くありませんし、スポーツ関係、スポーツ交流はまさしくこれから密接になってくると思います。
 ブラジルのオリンピック委員会の会長のヌズマン氏は、八月に我々JOCとスポーツの交友関係を結ぶことになっておりますし、そういった点では、負のイメージを持たれたということは、我々も今後そうでないということを皆さんによくわかるようにやはり説明をしていく必要があるなということを感じて、説明に伺わせていただきました。

○星委員 ありがとうございました。

○吉野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 竹田参考人からの意見聴取はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉野委員長 異議なしと認め、竹田参考人からの意見聴取は終了いたしました。
 竹田会長、本日は貴重なご意見、まことにありがとうございました。心より厚くお礼を申し上げます。
 それでは、どうぞご退室ください。
 この際、議事の都合によりおおむね十五分間休憩いたします。
 午後三時二十八分休憩

   午後三時四十四分開議

○吉野委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 参考人からの意見聴取を続行いたします。
 ご紹介いたします。
 株式会社電通第十営業局長で、前スポーツ事業局長の稲垣豊さんです。
 本日は、ご多忙のところ、委員会にご出席いただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表いたしましてお礼を申し上げます。
 これより稲垣参考人からの意見聴取を行います。
 初めに、稲垣参考人のご意見をお伺いいたします。発言席にご移動願います。
 なお、稲垣参考人には、ご着席のままご発言していただきたいと思います。ご了承願います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○稲垣参考人 ただいまご紹介にあずかりました電通の第十営業局長、前スポーツ事業局長の稲垣でございます。私は、スポーツ事業局長として、JOC初め国内外のスポーツ団体を担当しておりました。また、営業担当といたしまして、東京都招致本部、招致委員会の受注業務の責任者でもございました。本来であれば、社長の高嶋がご招致におこたえするべきところでございますが、スケジュールの調整がご要望に合わず、かわって私が参上させていただきました。何とぞよろしくお願いいたします。
 私がスポーツにかかわるようになってから約十五年になります。以前は放送業の担当として放送局が主催するスポーツイベントに携わってまいりました。また、直近の四年間はスポーツ事業局長として国内外の競技団体を担当し、オリンピックなど国際的なスポーツイベントにも携わってまいりました。本日は、この経験から社長にかわって出席させていただくことになりました。
 私ども電通は、今回、東京オリンピック・パラリンピック招致活動に携わらせていただいたことを大変光栄に思っております。また、今までの国内外のスポーツへのかかわりをご評価いただき、招致活動の多くの業務をお手伝いさせていただいたことをこの場をおかりして改めて御礼申し上げます。
 弊社はこの招致活動が大変に意義のあることとして考えております。北京やバンクーバーで活躍した選手の中には、長野五輪で感動した人たちも少なくありません。国外で開催される大会に比べ、国内での大会は、距離や時間だけの違いではなく、比較にならないほど多くの国民を感動させる力があると考えております。しかしながら、オリンピックの開催は他都市にとっても、また他国にとりましても、国の発展の一つの象徴としてとらえられており、近年、その招致活動はますます熾烈になっております。招致活動全体を通しまして、一瞬も気が抜けないということはいうまでもございません。
 弊社といたしましては、当初よりオリンピック招致という国家的な活動に携われることの意義を重く受けとめまして、できる限りの協力を惜しまないという姿勢で取り組んでまいりました。したがいまして、招致委員会、招致本部から受注させていただいた業務につきましては、その資金が都民の貴重な血税であること、またスポンサーあるいは個人からの貴重な民間資金であることを十分に認識いたしまして、コスト意識を持って、その上で質量ともに弊社としてできる限り最高のものをご提供したものと思っております。
 東京の招致活動は、最終プレゼンテーションを初め、全体としてIOC委員や海外メディアから非常に高い評価を得ながらも、最終的に招致に至らなかったことはまことに残念であります。しかし、この活動を通じて、弊社及び招致関係の方々には多くの経験と知見が残りました。今後はこの成果を日本のスポーツ振興へ生かせるよう、弊社といたしましても積極的に活動していく所存でございます。
 私に発言の機会を与えていただきました本特別委員会に感謝申し上げ、私の発言とさせていただきます。ありがとうございました。

○吉野委員長 稲垣参考人の発言は終わりました。
 次に、稲垣参考人に対する質疑を行います。
 なお、稲垣参考人に申し上げます。答弁する際は、手を挙げて、委員長の許可を得てから発言していただきますようお願いいたします。
 それでは、発言を願います。

○くりした委員 本日は、お忙しいところをお越しいただきましてありがとうございます。都議会民主党のくりした善行でございます。
 それでは、時間の関係もございますので、早速質疑の内容に移らせていただきます。
 昨年十月まで行われましたオリンピック招致レースの中において、御社は大変大きな役割を担い、多くの事業を受注し、そして実施をされてきたと思います。招致レースに使われた費用総額約百五十億円のうち、六十七億円の事業が御社を相手に契約されたものと聞いています。そして、そのうちの多くが特命随意契約という、入札を行わない、通常は価格競争性を阻害するためにできる限り避けられる方式の契約形式がとられたと、そのように聞いております。その結果、こちらの東京都監査委員が出しております平成二十二年随時監査報告書の中では、特別の事情があったことは認められるが、結果的に高額な特命随意契約の相手方が特定の業者に集中している状況となっていることから、本部は事業者の選定に当たり、契約の公正性、競争性及び経済性を確保するという観点から、事業者の選定方法等について、より一層慎重に検討することが求められると、そういった指摘がされております。
 個別の契約について、特命随意契約になった理由を一つずつ見てみますと、実は電通さんしかできないわけではなくて、電通さんがやった方が便宜上都合がいいためといった趣旨のものも多く見受けられました。例えば、オリンピック招致機運を盛り上げるためののぼり旗であるとかうちわ等の数多くのグッズが、招致マークの厳格な管理とデザインの再現性が強く求められるためという、そういった特命理由で御社に発注をされておりますけれども、あらかじめロゴデザインを固定することができれば、その印刷や物品の調達は他社でも十分に可能であったのではないでしょうか。
 例えば、以前、東京都職員の名刺には招致のロゴマークが記載をされておりましたが、これらは御社に発注されたわけではないというふうに聞いております。実際にお仕事をされた御社から見て、特命随意契約に付されたものはすべて電通さんにしか、御社にしかできなかったとお感じなんでしょうか、まずお伺いします。

○稲垣参考人 お答えいたします。
 特命随意契約につきましては、私どもの方といたしましては、特命随意契約になるかどうかは招致委員会あるいは東京都のご判断というふうに考えております。当社といたしましては当然のことながら営業努力をいたしますが、結果、特命随意契約になるかどうかは当社で決めさせていただいているわけではございませんので、今の回答には、ちょっとお答えづらいところがございます。

○くりした委員 それについては都が決めているということで、同様、これらの契約については、一つの企業が広く受け持った方が効率的になるのではないか、そういった考えでよろしいでしょうか。

○稲垣参考人 私ども以外の企業が広く受け持った方がよいかというお尋ねでございましょうか、申しわけございません、再度ご確認させていただきます。

○くりした委員 一つの企業が今回のように多くの事業を受け持った方が効率的になるのではないかというふうに感じておられるのでしょうかというふうな質問になります。

○稲垣参考人 このオリンピックの招致活動という非常に特殊な事情がございます場合、当然のことながら、このオリンピックの招致活動をお手伝いする企業というものにつきましては、オリンピックに知見のある企業が選ばれたものと私どもは思っております。通常ですと、通常例えば私どもは、広告活動などを通じてやらせていただく場合には、当然のことながら、一社の企業である程度全体を統括する方が効率的であるということは申し上げられると思いますが、このような特に都民の血税を使うような場合にこういったようなお答えが適切かどうかは私にはわかりかねますが、当然のことながらオリンピックにつきましても、その知見や何かを評価されて、私どもが多くの受注をさせていただいたと、かように考えております。

○くりした委員 二〇二〇年オリンピック招致をもしするのであれば、どういった形でやるのが効率的であるのか、どうお考えであるのかということが聞きたくてお伺いをしました。
 次に、御社の契約の中で、価格の妥当性が担保されていたか否かについて質問をさせていただきます。
 先ほどお話に上ったとおり、御社と多くの随意契約が結ばれる中で、各党の調査で、一般的な相場よりかなり高い価格で契約をされたのではないかという案件が散見をされました。私が過日指摘をさせていただきましたコペンハーゲンでの最終プレゼンテーションのPR映像費用、十分間で五億円というものがありました。ほかにも非常にシンプルなアイテムとして、ローザンヌにおけるIOC委員への事前ブリーフィングの際に使われました麻生前総理のインタビュー映像、これに関しては、一分間三十秒の間、A4用紙半分の原稿、実際これがそれになると思いますけれども、(資料を示す)こういったものをカメラに向かって話しかけるだけの非常にシンプルな内容で、元総理への報酬はなし、場所も首相官邸ということでしたけれども、機材費と人件費で四百十万円かかったというふうに聞いております。どれだけの機材を使って、そしてどれだけの人材をつぎ込めば一分間半のインタビュー映像を撮るのにこれだけ費用がかかるのか、大変イメージがつきづらいように感じております。私だけでなく、これらの件について幾人かの映像業界の方とお話をしましたけれども、すべての方が、これらの価格は相場を大幅に上回っているのではないかと、そういった見解でございました。これらの価格が高いのではという世論の指摘に対して御社としてはどうお感じになっているのか、お伺いをしたいと思います。

○稲垣参考人 価格の件につきましては、さまざまなご意見が出ていることは当社としても承知しております。今たまたま事例に出ました二つの件について、特に今回お答えさせていただきたいと思います。
 最終プレゼンテーションの映像制作費の五億円につきましては、もともとこの価格は、招致委員会が海外コンサルタントなどから得たロンドン、パリの招致活動の情報から算出し、弊社に伝えられたものでございます。このご発注について、弊社といたしましては、十分にコスト意識を持ちつつ、他候補都市にまさる良質の作品とするべく取り組ませていただいたものでございます。
 制作費の妥当性につきましては、この映像の制作費はその品質によって大きく異なるものでございまして、決してその長さのみによって論じられるものではございません。映画の制作費が同じ長さの映像であるにもかかわらず大きく異なることは、特に映画の場合は制作費が報道されることも多いのでご存じの方も多いのではないかというふうに考えております。最終プレゼンテーションの映像制作に当たりましては、石原知事初め招致委員会、海外コンサルタントからもその都度ご意見をちょうだいし進めてまいりましたが、その成果として、東京の最終プレゼンテーションはIOC委員や海外メディアからも高い評価を得たものと考えております。制作費が高いというご指摘があるというお話ですが、その大半が金額と長さ、つまり分数の比較のみによって行われていることは私どもにとって大変残念に思う次第でございます。どうか映像の品質の高さも評価に加えていただきたいというふうに考える次第でございます。
 もう一点、先ほど、四百十万円の首相のインタビューについてでございますけれども、今も申し上げたように、プレゼンテーションの内容はほとんどがハイビジョン以上のクオリティーで撮影し、これをプレゼンテーションに使用することになっております。首相官邸には残念ながら高度なスタジオ並みの施設がございません。したがって、すべてそれと同様の施設を持ち込んだ結果、四百十万円という金額になりました。
 以上お答え申し上げました。

○くりした委員 いろいろお答えいただきましたので、一つ一つまた私からもご質問をしたいんですけれども、まず価格を決める上で、最初の価格というのは、オリンピック招致委員会の方からまず提示をされて、この中でつくってくれというふうにいわれたというのは事実でしょうか。私が聞いていたお話でありますと、それらの価格は明かさないで、電通さんの方から見積もりをいただいたというふうに聞いておりましたもので、確認をさせていただきたいと思います。

○稲垣参考人 ただいまのが、先ほど私がご説明いたしました最終プレゼンテーションの映像に関することでございますれば、基本的には、招致委員会がロンドン、パリの情報を得て、私どもの方におおよその価格を提示されました。それに対して私どもの方から見積もりを出させていただいて、数度のやりとりの後に五億円という価格が決まったものでございます。

○くりした委員 ありがとうございました。その点については理解をいたしました。
 そして、四百十万円の映像の件についてですけれども、ハイビジョン映像を使わなければいけなかったから、車を持ち込まなければいけなかったから、費用が多くかかったというふうなご説明をいただきましたが、私もそういったインタビュー映像、すごくクオリティーの高いものをつくると幾らになるのかというのを大手の映像プロダクションに見積もりを依頼しまして、その回答によれば、最高の機材、私は条件としてビル・ゲイツのインタビューをとるという例でやりましたけれども、機材と、あとは人件費も、予定がとれないかもしれないので、三日間撮影の人間を押さえて、それだけかけても、ぜいを尽くしても二百万円余りの金額でありました。一体どういった機材を持ち込まれて、そしてどれだけの人間をつぎ込まれたのか、もしご存じであればお聞かせ願いたいと思います。

○稲垣参考人 本日は今ご質問にありました首相官邸のときの機材の内訳について資料をお持ちしておりませんので、もしよろしければ後ほどお届けしたいと思います。
 ただ、私どもといたしましては、与えられた条件の中で、最適かつ最良の手段で制作をさせていただいたと思っております。質的、量的、時間的な条件を勘案すれば、私どもといたしましては、同業他社でこれ以上安く請け負うことは困難というふうに考えております。また、同業他社のお見積もりにつきましては、どのような条件で提示されたのかは存じ上げませんので、比較についての見解は控えさせていただきたいと存じます。

○くりした委員 ありがとうございました。
 オリンピック招致関連事業のすべては都民の税金もしくは企業の寄附から賄われております。ゆえに、これらの事業の費用対効果については、先ほど稲垣さんはおっしゃいましたけれども、都民に向けて十分な説明責任が果たされるべきではないでしょうか。もしこれらについて、先ほどおっしゃられたように、妥当な価格であるというふうにおっしゃるのならば、こういった本当にいただいている大まかな資料に限らずに、もっと詳しく費用の妥当性が検証できる資料をご提供いただきたいと思いますが、どうでしょうか。無論、こういった妥当性の説明責任というのは東京都及び招致委員会にあるとは考えますけれども、先日、私が東京都に対して、御社と一緒に説明責任を果たす努力をしているのかと質問したところ、回答としては、個別の契約情報の開示については、契約の性質、内容、守秘義務や個人情報の保護などを十分に考慮の上、最終的には各企業が自主的に判断すべきものである、招致委員会と民間企業の間の契約情報の開示については一定の制約が存在するものであるが、都民の関心の高い事項でもあり、契約の相手方である電通に対して働きかけを行い、今回の提出資料などをお示ししたというふうにお答えいただきました。これを聞くと、まるで電通さんが資料を出さないから、そういった情報がなかなか出てこないというふうな受けとめ方もできると思いますけれども、そういった資料の開示についてのお考えを伺いたいと思います。

○稲垣参考人 ただいま招致委員会からのご回答というのを伺いまして、私どもはちょっとそれを存じ上げないので、それに対するコメントは控えさせていただきますが、通常、私どもは社会的責任のございます上場企業でございます。したがって、発注先ないしは発注元との守秘義務契約というのがございます。ただいま招致委員会様の方にご提出している資料は、その守秘義務契約に抵触しない範囲で十分な資料をご提出させていただいているものというふうに認識しております。

○くりした委員 それでは、発注元であるオリンピック招致委員会もしくはオリンピック招致本部がオーケーというふうにいえば、そういった資料の提出はできるということでしょうか、伺います。

○稲垣参考人 発注元である招致委員会様の方から我が社に対して、資料を提出せえというお話であれば、招致委員会様の方にご提出するという形をとるかと思います。
 ただし、その場合に、先ほども申し上げたように、当社からの発注先との守秘義務契約もございますので、こちらの方に抵触しない範囲で提出させていただくという形になるかと思います。

○くりした委員 発注元との守秘義務契約というふうに伺いましたけれども、何分そちらの知識がないもので、具体的にどういうふうな契約がなされているのか、概略、できる限りのところだけでもお聞かせ願えればと思います。

○稲垣参考人 今、ちょっと誤解がございましたら大変申しわけございません。私どもにとりましての発注元というのは招致委員会でございます。あるいは招致本部という形になります。そして私どもの発注先というのは、この業務を請け負っていただいた各種制作会社であったりというところが発注先という形になります。
 したがって、私どもは発注元及び発注先、両方と守秘義務契約がございます。したがって、発注元のみのご了解だけでは情報開示できないケースがございます。このようにご説明させていただきました。

○くりした委員 お時間がないということなので、まとめに入らせていただきますけれども、たとえオリンピック等の公共事業を支持して、都民でありますとか国民がお金を、税金としてでも寄附としてでも払ったとしても、自分の払ったお金がうやむやになっていたら、これはその事業に対する支持に関しても大きな影響を与えることは、これは明白でございます。ゆえに、こういったオリンピックを初めとする大規模な公共事業を請け負う企業様は、積極的に情報公開、そして公正であるという証明を都民に向けて、国民に向けて、行う努力をすべきであると考えますが、それについていかがお思いでしょうか。

○稲垣参考人 先ほども申し上げましたように、おっしゃるとおりかと思います。ただし、先ほども、また繰り返しになりますが、私どもといたしましては、社会的責任のある上場企業といたしまして、開示できる情報につきましてはすべて開示していくつもりでございます。
 以上、お答え申し上げました。

○くりした委員 本日、二〇一六年東京招致の総括について、議会で初めて、都以外の関係者の皆様からお話を聞くことができました。四年間にわたる東京の招致活動と、IOC総会でのリオデジャネイロ市選出についてお話を聞きましたが、都民、国民の皆様が支援してくださったことに対して、しっかりと今回の参考人質疑の結果を伝えていくことが重要と考えております。また、二〇一六年の招致の総括として、招致報告書に語られていないこともあることから、我々議会としてもそれらの検証をしていくことを確認して、本日の質疑を終わります。ありがとうございました。

○高橋委員 東京都議会自由民主党の高橋かずみであります。本日はご多忙の中、意見聴取にご協力をいただきましてありがとうございます。
 それでは、電通の稲垣局長にご意見をお尋ねしたいと思います。割り当て時間は十分程度ということでございますので、効率的にお伺いさせていただきます。
 まず、二〇一六年オリンピック・パラリンピックの招致は残念な結果に終わりましたが、今回の招致活動においては、国内的にも国際的にも、スポーツ関係で極めて豊富な実績を持ち、高い専門性を持たれている電通が果たした役割は大きかったと私どもは思います。その点について、まず、今回、電通でなければできなかったという電通の優位性について、改めて具体的かつ詳細にお話をいただきたいと思います。

○稲垣参考人 高橋先生、ありがとうございます。
 まずは、弊社のスポーツにおける今までの実績をご評価いただき、今回の招致活動の専任代理店として選んでいただきましたことに、重ねて御礼を申し上げたいと思います。
 弊社のスポーツへの取り組みは一九七〇年代に始まります。当初は国内の主にゴルフトーナメントの企画運営、選手の招聘などに始まりまして、八〇年代に入りますと、テニス、サッカーの国際大会の誘致を行いました。現在のFIFAクラブワールドチャンピオンシップ、その前身のトヨタカップサッカーもこのころに始まり、深く関与させていただいております。
 また、オリンピックのテレビ放送の民放番組のスポンサーセールスも、一九八四年のロサンゼルス・オリンピックに始まり、現在まで弊社で担当させていただいております。
 一九九〇年代後半から二〇〇〇年代に入りますと、国際陸上連盟、国際水泳連盟、アジア大会、ワールドベースボールクラシックなどの国際的なスポーツ団体及びイベントのワールドワイドのマーケティング権を取得いたしました。このことによりまして、国際スポーツ界の主要メンバーとの関係を構築することができました。
 国際大会の招致につきましては、オリンピックにおいては、長野、大阪について、程度の差はございますが、かかわらせていただきましたし、二〇〇一年の世界水泳の福岡大会、二〇〇二年の日韓共催サッカーのワールドカップ、二〇〇七年の世界陸上大阪大会、また二〇一九年のワールドカップラグビーの招致にも携わらせていただいております。
 とはいえ、残念ながら、二〇〇九年の世界水泳、あるいは二〇一五年のワールドカップのラグビーのように、招致に失敗したケースにも携わらせていただいておりまして、成功も失敗も経験しております。それゆえに、国内でこれだけの実績と経験を持つ企業は、同業他社も含めていないだろうというふうに考えております。

○高橋委員 ありがとうございました。オリンピックを初めとする大規模国際スポーツ大会の招致に当たっては多くの経験があり、総合的な広告代理店である電通の力が必要ということがわかりました。
 次に、稲垣局長さんは、現在の第十営業局長になられる前、電通においてスポーツ関係の部署に長年かかわっており、スポーツ事業局長という専門的かつ責任あるお立場でございましたので、今回の東京の招致活動を振り返りまして、その経験と深いご見識から、率直な感想として、活動において不足した点と、次の招致をかち取るためには、なすべきことについてアドバイスをいただきたいと思います。

○稲垣参考人 今、高橋先生より過分なお言葉をちょうだいしたと思っております。
 今回の招致活動に不足していた点と次回のアドバイスというお話でございますが、先ほど来、河野総長あるいは竹田会長を初め、敗因の分析や次回へのアドバイスなどをおっしゃられておりましたので、私どもは、大変僣越でございますので、ちょっと視点を変えて、思うところを述べさせていただければというふうに考えております。
 今回、招致できなかった原因につきましては、招致委員会の報告書にも記載されているとおりであると思いますが、オリンピックの招致につきまして、やはり最大の課題の一つは、投票する委員の数の多さにあるというふうに思われます。数の多さ、それがすなわち投票動機の多様さにつながります。異なる考えの委員のニーズにこたえていくという熾烈な招致レースとなっております。その熾烈さは、過去の投票結果を見ても明らかだと思います。
 今回の最終投票は三十四票という、近年では大きな差がつきましたが、先ほど河野総長からもお話があったように、第一回目の投票では、わずか十票の中に四都市がひしめくという状況でございました。また、直近のソチと平昌、またその前のロンドンとパリ、これはいずれも最終投票で四票差でございます。ことし冬季五輪の開催地でありましたバンクーバーは、平昌に三票差で勝っております。百人の委員のうちたったお二人の委員の方が逆に投票していれば、結果は全く逆になっていた、あるいは逆になっていた可能性があったということでございます。
 このように、オリンピックの招致がほんの僅差の票数によって争われていることは、お一人の票を獲得することが大変難しいということと、多くの委員のうちのお一人の票をも失えないという大変厳しい戦いである。このことをご理解いただければというふうに思います。
 竹田会長、河野総長のお話にもありましたが、全力ででき得る限りのことをして、一瞬たりとも気を許すことのない活動が実を結ぶものと考えておる次第でございます。ありがとうございました。

○高橋委員 ありがとうございました。今後の参考になると考えます。
 次に、招致活動において、電通と招致委員会や東京都との契約に当たりまして、例えば、都議会でも話題になりました映像制作など、その金額について高いのではないかという声も聞こえております。そこでお伺いいたしますが、高いという意見に対しどのように考えておられるか。また、ロンドンやパリの招致における最終プレゼンテーションでの映像制作費用の情報やコマーシャルフイルムなど、何か他の参考になる情報事例をお教えいただければありがたいと思います。

○稲垣参考人 多少お答えが重複する部分があるかと思いますので、お許しいただきたいと思います。
 先ほども申し上げましたように、最終プレゼンテーションにおける映像制作費の五億円につきましては、もともと招致委員会が海外コンサルタントなどから得たロンドン、パリの招致活動の情報から算出し、弊社の方に伝えられ、またさまざまな見積もりなどやりとりをしながら、五億円という形で発注をちょうだいしたものでございます。弊社といたしましては、十分にコスト意識を持ちつつ、他候補都市にまさる良質の作品とするべく取り組ませていただきました。
 制作費の妥当性について、コマーシャルフイルムの事例も含めて説明せよとご質問でありましたが、先ほども申し上げたように、映像の制作費というのはその品質によって大きく異なるものでございまして、制作費が、同じ長さの映像であるにもかかわらず、コマーシャルフイルム、また先ほど申し上げましたように、映画などはかなり大きな格差が出ております。私ども専門でございますので、コマーシャルフイルムの事例をとれば、一番最低のレベルから最高のレベルまでは、数倍から、下手をすると数十倍という違いがございます。このくらいの大きな差が、同じ三十秒ないしは十五秒というコマーシャルの中でもできているというのが映像の世界であると、かように考えております。
 最終プレゼンテーションの映像制作に当たりましては、招致委員会、石原知事を初め、海外コンサルタントからもご意見をちょうだいして進めてまいりました。先ほども申し上げましたが、その成果として、IOC委員あるいは海外メディアからも高い評価を得ております。私どもとしては、これは残念でございますが、先ほども申し上げましたけれども、その大半、高いとの批判の大半が分数と金額のみの比較によっているもの、これは重ねて申し上げますが、本当に大変残念なことでございます。その品質の高さも再度ご評価いただければというふうに考えている次第でございます。

○高橋委員 ありがとうございました。よくわかりました。
 最後になりますが、東京都や招致委員会には、招致活動によりさまざまなレガシーが残されました。同じ招致活動を推進してきた電通にもプラスの面でレガシーが残されたと考えますが、どのようなものがあったのか伺います。

○稲垣参考人 今回の招致活動を通じまして、弊社にもレガシーが残ったと思われます。応援してくださる都民の方々の期待を現場で感じた弊社のスタッフは、スポーツ、特にオリンピックに対する思いを強くし、その力を確信したと思っております。また、招致委員会や東京都との業務を通じ、一体感や信頼感の大切さ、複数の意見を取りまとめて一つの制作物を完成させ、一定の評価を得る喜びなど、オリンピック招致活動ならではの財産も残ったものと思っております。
 今回の招致活動は非常に残念な結果に終わりましたが、もし再び挑戦なさることになった場合には、弊社としても再び専任代理店に選んでいただき、ぜひご一緒にこの熾烈な招致活動を戦いたいとの思いでございます。ありがとうございました。

○高橋委員 ありがとうございました。
 以上で私の発言を終わります。

○ともとし委員 参考人におかれましては、大変お忙しいところにご出席いただきまして、大変ありがとうございました。私も休憩前のお二人の主張、答弁、そして今までの参考人の答弁を聞かせていただきました。
 特に今のご答弁等を聞いておりまして、私は質問する側に問題があるのかなというふうに思っております。それは、自分がどこの会社のだれにどういう見積書をもらったのか全然開示をしないで、参考人のところの会社のものだけ開示しろと、どこで比較対照するんですか。我々にすらできないです、それは。大事なのは、自分が持っている情報、それをまず明らかにすればいいじゃないですか。自分はこういう会社から、こういう正規な見積書をもらって、そしてこの電通から出たところの見積書あるいは実際にかかった価格と比較対照したらこれだけ違うと。それならばわかりやすいんです。みずからのものは全然情報公開せず、相手側の情報公開だけを求めるというのは、私はちょっといただけないなと、そう思っておりました。
 それは、この都議会の中の本会議あるいは各種委員会の中での質問の内容等を見ていても、全くそのとおりなんです。国際的に非礼にもなるような、そういう出来事で、それこそそこの会社にみずからの身分も明らかにせず、全く違った意味合いの中での見積書のとり方をして、それをこのオリンピックの内容と比較対照としてやられているという、こういう手法は、これは我々としてはあり得ないです。
 そういう意味合いの中では、私は質問されている電通さんはかわいそうだなと、そんなふうにも、今感じておりました。やはり間違った情報の中で都民の皆様がそうしたニュースを見れば、間違ったそういう印象を与えられてしまう、やはり情報というものは正しいものでなければならない、それが私たちの思いでもあります。
 しかも、今聞いておりますと、スポーツ関連の業務については、日本のそうした業界において他者に引けをとらない、それ以上のもののそうしたものをきちっと経験として持たれていると。その上で今回は五億円という、そういう金額の中で映像を請け負ったり、あるいはまたさまざまな業務も請け負って仕事をやられたのかなというふうに思います。
 そういう意味では、我々、この招致にかかわった議員として、本当によくやっていただきましたと、そう申し上げておきたいというふうに思います。
 しかも、私もあの招致の最終決定をするときには、この都庁の中のあの、都民が集まってのそういう会場にいさせていただきましたけれども、確かに残念なことは残念だったです。しかし、非常に感動的な映像であり、感動的なそういう出来事でもありました。これは私としても一生忘れないような、そういう内容かというふうにも思っております。
 そうした中で、こういうような結果として、参考人として今招致されているわけですけれども、一連のこういう議論を見て、その当事者になります参考人はどういう見解をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。

○稲垣参考人 弊社は、招致委員会及び東京都からの受注業務に対しまして、定められたルールにのっとり、十分なコスト意識を持って取り組ませていただいてまいりました。ただいま、ともとし先生がご指摘されたような議論があることは大変遺憾であるというふうに感じております。
 しかしながら、本日、このような場を与えていただき、契約の透明性や価格の妥当性を説明する機会をちょうだいしたことに改めて感謝を申し上げるとともに、十分にご理解が得られるものというふうに考えております。

○ともとし委員 こうした機会の中で、御社のそうしたお気持ち、そしてまたその当事者であった参考人のお気持ち、そういったものを正確にやはり都民の皆さんに聞いていただくということは大事かなというふうに思いまして、あえて自分自身の質問項目と違った形の中で、今質問をさせていただきましたけれども、私はそういう見解を持たせていただいております。
 先ほど来いろんな質問がありましたけれども、この最終プレゼンテーションの映像の制作経費、これは制作を請け負った電通として、我々素人みたいな者にももっとわかりやすいように説明をしていただきたいなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○稲垣参考人 それではご説明をさせていただきたいと思います。
 通常ですと、個別の案件のご質問、お問い合わせには守秘義務がございまして、なかなかお答えできかねるのでございますが、この件につきましては各種報道もなされ、都民の関心も高いと判断いたしまして、発注先、受注先、両方のご了解をいただいて、できる限り詳しく説明をさせていただきたいと存じます。
 最終プレゼンテーションの映像制作費につきましては、先ほどから申し上げておりますが、招致委員会が海外コンサルタントなどから得た情報をもとに精査した上で発注されたものでございます。弊社としては、ご予算の中で、他候補都市にまさる品質の映像制作を目指し、制作に臨ませていただきました。
 では、その映像制作の中身について説明させていただきます。
 最終プレゼンテーションでは、過去の事例と海外コンサルタントの意見から、先ほども申し上げましたが、わずか数票で勝敗が決することも予想されます。したがって、IOCの委員の心情に訴える、エモーショナルで質の高い映像が必要というご指示でございました。それにこたえるために、英国、米国、日本の制作会社から成る国際的なクリエイティブチームを編成し、海外で活躍する、スポーツにも造詣の深い撮影監督を起用いたしました。それに伴い、当然ながら外国スタッフとのやりとりも含め、語学及びコミュニケーションの部分でも通常とは異なる体制になるため、海外の制作スタッフに対応した制作体制も整えました。
 また、最終プレゼンテーションの開催地でもあるコペンハーゲン、あるいは欧州を初めとする海外撮影場所での映像信号の違いがございますので、それらを統一するための対応も必要でございました。
 また、撮影機材に関しましては、スポーツシーンを美しく撮影するなど、まずはクオリティーを重視した背景から、ハイスピードカメラで数十時間に及ぶ撮影をいたしました。すべてにおいてハイビジョン以上のクオリティーの撮影機材を使用しております。
 非常にタイトなスケジュールも背景としてございましたので、四本の映像を同時並行して制作し、監督、スタッフは極めて厳しい時間的な制約の中で制作に従事してもらうことになりました。また、天候にも左右されたことも含め、数回に及ぶ空撮も実施しております。
 撮影期間、場所につきましては、多様な世界の人々に登場してもらうというねらいから、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南米を初めとしまして、合計七カ国、延べ百カ所の撮影場所、延べ日数として五十日間を超える撮影期間でございました。
 このコペンハーゲンにおける最終プレゼンテーション映像の総撮影時間としては四十時間に及びます。招致委員会からのご指示で、ご承知のとおり、それらを凝縮させて十分間という映像に完成させたことによりまして、非常に高品質な作品となったというわけでございます。
 撮影以外の部分においても、日本の技術の高さをアピールするために、写真と見違えるようなコンピューターグラフィックスの実写合成をいたしましたし、延べ千人を超えるエキストラを起用し、音楽もエモーションに訴えるためにオリジナルで制作するなど、最終的な目標である勝利のために、十全な体制を組んで作成いたしました。
 最後になりましたが、今回の映像制作に当たり、特に過去の競技映像の使用に関して、テレビの東京キー各局初め、多くの方々にご協力をいただきました。この場をかりて御礼を申し上げるとともに、そのご協力も含めて、弊社としてもコスト削減に極力努めたということを最後に申し上げ、説明とさせていただきたいと存じます。

○ともとし委員 今、ご説明を聞いて、相当大変な尽力、また時間、また世界的なそうしたレベルの中でこうした一つのものをつくり上げたと。しかも四十時間の撮ったフイルムを、それを十分間に切り詰めなければいけない。この切り詰めなければいけないというそこのところだけでも大変なご苦労があったのではないかなと。そうした高いレベルのそうした映像づくりをするためにかかった費用であると、そういうふうに解釈ができるのかなというふうに思います。
 ただ、それが高いか安いかというのは、これは個々的に感じるその内容が違うわけですから、しかし、御社がご努力の中で、これだけの対価の中でつくり上げたということについては感謝を申し上げたいなというふうに思います。
 そうした中で、招致委員会の収入面についてお伺いしておきたいと思うんですが、今回の場合は招致委員会の活動経費七十五億のうち、五十億を民間から資金調達をするという、こういう内容になっておりました。取り扱い専任代理店が電通を通じて契約がされているわけなんですが、これらの協賛金の契約総額については幾らであったのか。そしてまた、電通として協賛金収入額は率直にいって満足しているのかどうか、この辺についてお伺いしたいと思います。

○稲垣参考人 お答えいたします。
 民間資金の調達につきましては、招致委員会を中心に、幾つかの団体、企業などによって、共同で行ってまいりました。弊社は、オリンピック関連スポンサーを中心に資金調達を行ったものでございます。
 協賛金の総額につきましては、弊社の担当した部分しか存じ上げませんので、総額につきましては回答できる立場にはございません。
 当初の予算を下回る結果になった最大の要因は、先ほど来、河野総長もおっしゃっておりましたが、二〇〇八年九月に起こったリーマンショックが最も大きな要因というふうに認識しております。しかしながら、この百年に一度の大不況の中で資金を拠出してくださったスポンサー及び個人の皆様方には、この場をかりて御礼を申し上げたいというふうに思います。また、民間資金が不足したとのご評価であることはまことに残念であり、内心じくじたる思いがございますというふうに申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。

○ともとし委員 私どもが調査した内容でいくと、招致委員会にとって電通さんからお借りしているところの借入金、六億九千万というふうに聞いているんですが、これについては間違いありませんか。

○稲垣参考人 間違いございません。

○ともとし委員 この招致活動について、さきのお二人の参考人もおっしゃっておりましたけれども、この財産というのは大変なものがあると。招致委員会はもとより、東京都もそうです。あらゆる面でこの招致の、失敗はしたかもしれないけれども、その財産たるものは大変なものがあるというふうにも聞いております。
 そうであるとするならば、電通さんも当然のごとく、その財産を蓄積したんじゃないかなというふうに思うんですよ。いろんな意味合いの中の、この招致活動をするにおいて、失敗はしたけれども、いろんな面で今後のためになるような、そういったことが蓄積されたんじゃないかなというふうに思うんですが、そういうことであるならば、この六億九千万というのは減額してはいかがですかね。いかがでしょうか。

○稲垣参考人 弊社の招致委員会への貸付金は、招致委員会からのご要請に応じたものでございます。招致委員会が今後事業を行い、返済に充てるということから、返済可能と判断し、貸し付けさせていただきました。
 今、ともとし先生より大変厳しいご指摘を受けたというふうに思っております。しかしながら、弊社は招致委員会設立当初より寄附を行いまして、出向者の人件費、施設提供、広報費の一部負担などのご協力をさせていただきました。
 また、招致活動の受注業務におきましては、活動の意義を重く受けとめ、また、都民の血税が大きな部分を占める貴重な資金であると認識しまして、コスト意識を持って取り組んでまいりました。社会的責任のある上場企業として、でき得る限りの協力をさせていただいたというふうに思っておりまして、このことをどうかご理解賜りますようお願い申し上げます。

○ともとし委員 参考人のお立場もあると思います。また、今回の招致活動にともに我が東京都のパートナーとして一生懸命やっていただいたと。今後のスポーツ都市東京の発展という、そうしたためにも、電通さんにはいま一歩ご努力をお願い申し上げて、私の質問といたします。
 ありがとうございました。

○たぞえ委員 日本共産党のたぞえ民夫です。
 今、スポーツビジネスは成長産業だといわれています。最近発売された「週刊東洋経済」、スポーツビジネス徹底解明と、こういう表題で売り出されていますが、世界のスポーツイベントの商業化を電通が黒子として支えてきた、こういう記事もこの中に掲載され、数百億円を稼ぎ出す電通のワールドカップビジネス、こういうページもありまして、大変興味深く読みました。
 そこで幾つか伺いますが、電通は今回の東京招致をめぐって、高額な契約を東京都及び招致委員会と結びましたが、その多くが当初見積もりを大きく上回る結果となっております。
 そこで、四点まとめて伺いますけれども、第一に、開催立候補ファイル作成に当たっても当初の予算額をはるかにオーバーして、実に七億円も使われたことを、都議会のこのオリンピック・パラリンピック招致特別委員会で我が党が指摘をしました。なぜこのようにオーバーしたのか、これについてどう責任を思われているんでしょうか。

○稲垣参考人 ただいま、立候補ファイルについて当初予算を上回ったとのご指摘でございますが、招致本部とご相談した上で弊社より提出させていただきましたお見積もりに即して作成いたしまして、お見積もりの範囲内で完了できたというふうに、当社としては認識しております。
 立候補ファイルの作成につきましては、招致委員会、招致本部と十分にご相談しながら進めさせていただきました。弊社の経験からご進言した部分もございますが、インフラの整備など、都市計画に関する部分は招致本部、招致のコンセプトなどに関する部分は招致委員会、あるいは海外コンサルタントなど、多くの意見を集合して作成されたものでございます。おのおのが専門性を生かしまして、コスト意識を持って作成した計画案を弊社が取りまとめたというものでございます。他都市に負けない立候補ファイルとなっておりまして、IOCの評価も十分に得られたことからも、価格は適正であったというふうに判断しております。

○たぞえ委員 この特別委員会や都議会に対して、招致本部が示した当初の立候補ファイル価格は、この七億円をはるかに下回る金額で提示され、議決されています。しかし、国際スポーツ大会の招致ができないというもとでのその額の不用額が発生したことによって、その額を立候補ファイルに転用する、流用するという処置が行われたということを、当時、招致本部が議会に説明をしています。
 当初の予定価格であるならば、予定価格内の企画内容で見積もりがされているはずであるのに、これが七億に引き上がるということは、意図的な企画内容への変更をどちらが示したか、こういう問題をいわざるを得ないというふうに思っています。
 これに関連して、IOC評価委員会の訪問についても、前年にリハーサルでホテルでの夕食会に五億円というリハーサルが実施されました。そして、本番では国の施設を使ったために、政府主催で夕食そのものの経費の負担はなかったわけですが、同額の経費が支出されています、食事がないのに。あるのに、同額のリハーサルの本番経費が支出されたと。これはついてはどういうことになっていたのか、見解を伺いたいと思います。

○稲垣参考人 ただいまご指摘がありましたIOC評価委員会の対応費でございますが、これも招致委員会、招致本部とご相談の上、準備にかかわる費用の中で前年度中に納品をしたもの、完了したものにつきましては、前年度にご請求を申し上げ、適正に処理されたものというふうに認識しております。

○たぞえ委員 招致本部、招致委員会が発注をしたこれらのイベントが、当初見積額を超えるものが多々あったということが、マスコミからも指摘され、この委員会でも私どもも指摘をしてきました。全体として電通が、ほぼ、先ほどお答えがあったように、六十数%業務を独占しているわけですが、企画内容の変更に都側が何もいえない状況になっていた。多くの事業が電通のいわれるままになっていたというふうにいわれています。これについてはどのような認識を持っておられるのか、伺いたいと思います。

○稲垣参考人 ただいま、たぞえ先生より、弊社が業務をほぼ独占していたことによりまして、都側が何もいえなかったとのご指摘でございますが、全くそのようなことはございませんでした。各種制作物につきましては、招致委員会及び都側と十分ご相談しながらお見積もりを提出し、お見積もりの範囲内で作成いたしました。
 また、制作物の内容に関してでございますが、ご存じのように、本来、弊社が専門としている映像制作についてさえ、何度か記者会見でもおっしゃっておられましたが、石原知事初め、招致委員会、海外コンサルタントの方々から、非常に厳しいご指示をちょうだいいたしておりまして、ご指摘のように何もいえなかったという状況でなかったことは申し上げるまでもないかと思います。
 以上、お答えいたしました。

○たぞえ委員 それではもう一つ、次に伺いますが、民間資金の不足についてです。
 オフィシャルパートナーによる協賛金を初め、民間資金確保についても最も重要な役割を果たしたのが電通だったと思います。その民間資金が計画どおり集まらなかった責任についてはどう認識されているのか。電通は招致活動の大半を、独占したと私がいうとまたご意見あると思いますけれども、六割以上、業務をとっているわけですから、不足分を補うのは当然だというふうに、意見が各地から、また各界からも出ています。これについてはどのようにお考えでしょうか。

○稲垣参考人 先ほどと重複する部分もございますが、民間資金の調達の不足の最大の原因は、招致委員会の報告、あるいは先ほどの河野総長のお話にもあるように、二〇〇八年九月のリーマンショックであるというふうには考えております。しかしながらも、この百年に一度の大不況の中で資金を拠出してくださった各スポンサー、個人の方々に感謝するとともに、民間資金が不足したとのご評価であることはまことに残念かとは思っております。
 先ほども申し上げましたが、こうした状況の中で、弊社といたしましては、招致委員会へ設立当初より寄附及び人件費、施設提供、広報費の一部負担などを協力させていただきました。また、受注業務におきましては、コスト削減などさまざまな企業努力を積み重ねてまいりました。重ねてご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

○たぞえ委員 前局長おっしゃるとおり、確かに深刻な経済危機ということが、協賛金や寄附金の集まらない理由かもしれません。しかし、確かに企業にとってみたら、このオリンピックへの投資によって、日本経済の振興発展に大きな、その一つのステップになり得るというふうに踏んでいなかったのが大多数であり、都民から見てみましても、都民からの寄附金というものが幾らだったかは、一切NPO法人からは明らかにされていませんけれども、低迷な支持率のもとで、全体としてなぜオリンピックなのかということが、この招致活動の中では明らかにされてこなかったのではないかと私は思います。
 しかし、その一方で、電通さんがこうした民間資金の確保の、文字どおりかなめ役として業務に携わってきた。しかし集まらなかった。その不足額を補うということでありますが、この問題については、やはり次の何かの機会のときにでも、民間資金の調達の方法、そしてこれを民間企業が行うというやり方について、やはり改めた議論が必要ではないかというふうに私は考えています。
 以上です。

○星委員 稲垣電通局長、お忙しい中ありがとうございます。生活者ネットワーク・みらいの星ひろ子です。質問をさせていただきます。
 電通が国際的なビッグイベントに対しまして、国内においては世界に通用する唯一の企業だということで、東京都は契約をしてまいりました。御社のスポーツイベントの実績についてはほかの委員からも質問も出ましたので、重複を避けた質問をしたいと思います。
 招致活動、勝利をかち取るためには、世論の後押しというのが非常に重要だというふうに思いますけれども、東京都や招致委員会のいわゆる発注側の立場ではなくて、受注者として、あるいは大手広告代理店として、まさにこういった世論というものには非常に業務上敏感な立場ではないかというふうに思われるんですけれども、先ほどお二人の参考人、竹田会長あるいは河野事務総長からも、明確なメッセージがとても伝わりにくかったと。南米初だというリオということだとか、あるいは首都である東京やこの国のプレステージを上げていくというような、こういう思いやメッセージがなかなか伝わらなかったというようなご意見も出ました。
 そういった中で、節目節目で支持率調査などもあったわけですけれども、世論の喚起や盛り上げについて、御社といたしましてはアイデアや戦略について、どういうふうにプロのノウハウを生かされてきたのでしょうか。

○稲垣参考人 ただいま星先生より、盛り上がりに欠けたというご指摘がございました。さきの河野総長あるいは竹田会長のお話でも出ましたように、招致機運は盛り上がったのではないかというふうには思います。また、都民を初め、多くの国民の間にオリンピックに対する関心が高まったことも非常に有意義なことであったというふうに考えております。
 盛り上がらなかったという、今、星先生のご指摘が、IOCが実施した調査の支持率を初め、各種支持率のことをおっしゃっているのだとすれば、また見解を述べさせていただきたいと思います。
 招致委員会は、弊社が受注いたしましたテレビ、新聞などのマスメディアだけでなく、市民イベントへの協賛など、あらゆる機会で招致支持をアピールしてきたと思っております。特に、国民の多くがオリンピックへの関心を高める北京オリンピック、二〇〇八年の八月でございますが、については、大会期間中及び終了後に、新聞、テレビでかなり大きなキャンペーンを展開いたしましたので、ごらんになった方も多いかとは思います。
 しかし、まことに残念ながら、この直後に、また引き合いに出して大変申しわけございません、リーマンショックが起こりました。このリーマンショックの後、世間の話題が企業業績あるいは雇用環境の悪化という非常に暗い方向へ進んでいったということは、支持率にとっても非常に大きな影響を与えたというふうに考えております。
 この最悪の状況の中で、IOCによる調査が行われたわけでございます。しかしながら、私どもは、招致に勝つにはもちろん十分はといえないまでも、あの非常に厳しい経済不況の中、五〇%を超える支持率がIOCのフラットな調査によってもあったということ、またその後行われました、四月にIOCの評価委員会が来日後の調査で、八〇%という高支持率を獲得できたということは、弊社だけでなく、招致委員会、東京都の地道な活動によって、多少おしかりを覚悟で申し上げれば、上積みこそできませんでしたが、少なくとも下支えはできたというふうに考えております。したがって、今後に大きな期待が持てるというふうにも考えている次第でございます。

○星委員 ありがとうございました。経済状況が最悪の中でのIOCの調査、あるいはその後、終盤になって盛り上がっていったというような、その事実は私も認めたいと思いますけれども、数字上あらわれなくても、やはり市区町村のムーブメントにおける、まだこれは勝負がつかないうちでもかなり批判の、ばらまきではないかという声もありましたし、私はやはり世論は冷静だったというふうに思っています。これは私の意見ですが、先ほど、長いご経験の中で成功もあったし失敗もあったという、こういうお答えがありました。例えば八年前の大阪の招致活動を、これも手がけたというふうにお伺いしております。このときの失敗のレガシーというか、教訓は、今回の東京の招致活動ではどういうふうに生かされたのでしょうか。

○稲垣参考人 大阪の招致活動につきましては、実は今回とかかわり方が非常に大きく異なっておりました。招致資金の調達には全く関与しておりませんでしたし、出向社員、委員会への出向者も一人も派遣しておりませんでした。
 また、受注業務につきましても、東京に比べて極端に少なく、大阪の招致活動では幾つかの具体的事例に関して経験が残りましたが、なかなか弊社に次に応用するだけの経験が残ったかというと、非常に疑問の余地があるかと思います。
 また、先ほど竹田会長からもお話がありましたように、IOC側のルールも日々刻々と変わっております。毎回、オリンピックの招致レースのたびにさまざまなルールの変更もございまして、なかなか大阪の招致活動での負けた経験というのを、弊社として今回の東京招致に生かし切れたかといいますと、先ほど申し上げた理由も含めて、なかなか生かし切れていないというふうには考えております。
 ただし、弊社といたしましては、先ほど申し上げたように、大阪へのかかわり方が非常に乏しかった。したがって弊社にもそれほどの経験が残らなかったという反省点を含めまして、今回の東京招致には委員会設立当初より積極的にご提案し、かかわらせていただきましたし、活動させていただいたというふうに認識しております。

○星委員 それでは、最後になりますが、大阪とのかかわり方と今回のかかわり方は全く違うと。むしろ今回は本当に招致委員会や東京都と一体となってやられたんだというようなお答えをいただきました。
 だからこそというわけではないですけれども、やはり企業としての受注側というところのお立場もありますでしょうけれども、やはり一方で企業としての社会的使命とか責任とかというところの中の部分で、今後ともぜひぜひ今回の失敗の教訓を生かしていただいて、さらにスポーツ振興、あるいは文化というところの中の部分で、いろいろなことを発信をしていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

○吉野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 稲垣参考人からの意見聴取はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉野委員長 異議なしと認め、稲垣参考人からの意見聴取は終了いたしました。
 稲垣さん、本日は貴重なご意見をまことにありがとうございました。心より厚く御礼を申し上げます。
 それでは、どうぞご退室ください。
 お諮りいたします。
 報告事項、二〇一六年オリンピック・パラリンピック招致活動報告書についてに対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。

○吉野委員長 次に、今後の委員会日程について申し上げます。
 先ほどの理事会におきまして、お手元配布の日程のとおり申し合わせしました。ご了承願います。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
 午後四時五十五分散会

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