オリンピック・パラリンピック招致特別委員会速記録第六号

平成二十二年三月九日(火曜日)
第四委員会室
 午後三時開議
 出席委員 十七名
委員長吉野 利明君
副委員長三宅 茂樹君
副委員長泉谷つよし君
副委員長中嶋 義雄君
理事ともとし春久君
理事こいそ 明君
理事中村 明彦君
くりした善行君
鈴木 隆道君
星 ひろ子君
高橋かずみ君
原田  大君
たぞえ民夫君
大西さとる君
いのつめまさみ君
門脇ふみよし君
木内 良明君

 欠席委員 なし

 出席説明員
東京オリンピック・パラリンピック招致本部本部長荒川  満君
次長並木 一夫君
企画部長細井  優君
参事重田 敏光君
招致推進部長中嶋 正宏君
連絡調整担当部長藤森 教悦君
知事本局局長吉川 和夫君
総務部長大井 泰弘君
計画調整部長梶原  洋君

本日の会議に付した事件
 二〇一六年に開催される第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会の東京招致に関する調査審議及び必要な活動を行う。
報告事項(質疑)
・二〇一六年東京オリンピック・パラリンピック招致活動報告書について

○吉野委員長 ただいまからオリンピック・パラリンピック招致特別委員会を開会いたします。
 これより第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会の東京招致にかかわる事項について調査を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、報告事項に対する質疑を行います。
 報告事項については、既に説明を聴取いたしております。
 その際要求いたしました資料については、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○細井東京オリンピック・パラリンピック招致本部企画部長 去る二月二十六日開催の当委員会におきまして要求のございました資料につきまして、ご説明させていただきます。
 恐れ入りますが、お手元にお配りしてございますオリンピック・パラリンピック招致特別委員会要求資料の表紙をおめくりいただきまして、資料1、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会における株式会社電通との特命随意契約についてをごらんいただきたいと存じます。本資料は、招致委員会と電通との特命随意契約で、都からの分担金が支出されたものの一覧でございます。契約の事項、契約金額、分担金の額と特命理由をお示ししてございます。十九年度十五件、二十年度十五件、二十一年度七件となってございます。
 次に、六ページをお開きください。資料2、都庁内各局の連携によるPR活動の各局別の経費でございますが、各局にはPR活動に関する経費はございません。
 次に、七ページをお開きください。資料3、東京が参加した海外のスポーツ関係国際会議や国際スポーツ大会(東京都支出分経費)でございます。本資料は、東京が参加した海外の会議等を目的別に、その旅費と、知事等が出席いたしました際の周辺旅費、参加費をお示しした一覧でございます。
 次に、八ページをお開きください。資料4、国内における主な盛り上げ活動でございます。本資料は、招致委員会と東京都が平成十八年度から二十一年度に実施した国内における主な盛り上げ活動の事業名、事業概要、実施事業費等をお示しした一覧でございまして、十八年度一件、十九年度三十一件、二十年度五十二件、二十一年度四十件の、合計百二十四件実施いたしております。
 次に、一三ページをお開きください。資料5、国内スポーツ大会等における主な盛り上げ活動でございます。本資料は、国内で実施されたスポーツ大会等を活用してオリンピック・パラリンピックをPRした大会の一覧でございまして、十九年度から二十一年度までで百八十六の大会でPRいたしました。
 次に、一九ページをお開きください。資料6、みんなのオリンピック実施状況でございます。みんなのオリンピックは、オリンピアン、パラリンピアン等が参加し、オリンピックムーブメントを推進するために実施した事業でございます。十九年度から二十一年度で五十八回実施いたしました。
 次に、資料7、東京オリンピック・パラリンピック招致ふるさと特使による主な活動をごらんください。ふるさと特使とは、四十七都道府県ごとに選任したオリンピアンでございまして、出身地にゆかりのある場所を訪問し、スポーツのすばらしさなどを伝えていただきました活動のうち、主なものをお示ししております。
 最後に、二一ページをお開きください。資料8、東京都と区市町村によるオリンピックムーブメント共同推進事業実施一覧でございます。本事業は、二十年度は六十二区市町村百三十九事業、二十一年度は五十七区市町村百十七事業を、東京都と区市町村がオリンピックムーブメントの推進のために実施してまいりました。
 以上、簡単ではございますが、要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○吉野委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○原田委員 今回の二〇一六年のオリンピック・パラリンピックの招致活動でございますけれども、これは招致が失敗に終わった、招致ができなかったということで、まさに第一義的には失敗といえるわけでございます。その理由は多々あろうかと思いますけれども、最も根本的で致命的だったのが、招致の意義、理想、情熱が明確にならなかったということではないかと思うわけであります。かつて、総括の中でも、メッセージがブラジルと比べても伝わらなかったといったこともいわれているわけでございますが、ここで改めて、この招致活動報告書、こちらを読ませていただきまして、最初のころからのことを思い起こしてみました。
 そうしたら、これはそういえば知事もおっしゃっておられたなと思い出したわけでございますけれども、最初の東京オリンピック基本構想懇談会、ここに示されました基本認識という中で、大きな可能性と潜在力を持ちながら世界に存在感を示し得ないこの国をオリンピックによって立ち直らせ、世界にその底力を示すと。この報告書では一五ページの方に書いてありますけれども、こういうことが書かれているわけであります。
 では、改めてこの言葉を見てみますと、そしてまた最後の東京都の総括なども考えてみますと、まさに最初のその既存認識のままの結果になったなということを感じるわけでございます。実際に東京の招致活動においても、例えばホテルの数でありますとか、さまざまなインフラといった、可能性や底力といったような部分というのでしょうか、こういった部分は高く評価されたわけでございますけれども、結局、世界にインパクトある印象を与えられずに終わってしまったと。最初のこの様子というのが、そのまま最後まで引きずられてしまったのかなというふうに改めて感じるところでございます。
 加えて、スポーツの祭典としての性格、オリンピック・パラリンピック、そもそもそういうものだと思いますけれども、最初のうち、これを真正面からとらえていなかったと。実際、報告書の中でも、単なる国際的なスポーツ大会の枠を超えてと。まるで、スポーツ大会であることよりも大事なことがあるといったことが強調されているわけでございますけれども、こういったことではやはり、スポーツ出身の方々の心をとらえるというところまでは至らなかったのではないかというような感じがするわけでございます。実際、議会の方に示されたさまざまなものにおきましても、ホテルや公共交通などのインフラ、それから環境都市だとか、ユニバーサルデザイン都市だとか、そういったことは伝わってきたわけでございますけれども、スポーツやアスリートに十分光が当たっていたかといわれれば、そうではなかったんじゃないかなと思うわけでございます。
 ところが、この報告書を読んでおりますと、途中から急に、スポーツあるいはアスリートに注目するといったようなことが出てきます。具体的なフレーズとしてはセッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズと。これは英語の言葉で今申し上げましたけれども、なぜ申し上げたかといえば、日本でほとんどこの言葉を聞いたことがなかった。国際的なプレゼンテーションの場面ではこういったことをいっていたというのでございますけれども、我々には伝わってこなかったわけでございます。
 しかし、このセッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズというのは、選手、ヒーローたちにステージを提供すると、直訳すればそうなると思うでしょうけれども、スポーツ大会として最低ラインなわけでありまして、その中身は何かといったことが本来重要なわけであります。この中身については報告書についても触れられていないわけでありまして、中身がわからなければ、当然これは浸透するわけがないのであります。
 実際に東京にも、招致の機運が盛り上がらなかったといいますけれども、他都市と比べて少なかったとはいえ、熱心にオリンピックを支持されてきた方、情熱を持って応援されていた方がいらっしゃるわけでございます。そうした方たちに、このセッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズの中身というものをきちっと説明する、あるいは最終盤になってようやくそこにたどり着いたという経緯を説明するということが、その支持者、応援者に正面からこたえることではないのかなというふうに私は考えるわけでございます。
 そこでお伺いいたしますけれども、東京が計画していたというところのアスリート本位の計画、このセッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズ、そしてまた同じく英語のメッセージですけれども、オール・イン・アスリート・フォーカスというのがありましたけれども、これは何を意味していたのかということを改めてお伺いいたします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 まず、今回の招致活動報告書でございますが、これは報告書冒頭でも述べてございますけれども、JOCやアスリート代表を初めとしたスポーツ界のほか、メディアや国との関係、オリンピックムーブメントの推進など、さまざまな分野で招致活動に携わった方々をメーンの構成員といたしまして、そこに東京都のメンバーを加えて設置されました報告書作成委員会のもとに作成されたものでございます。
 その報告書におきまして、ただいまご質問のありましたアスリート本位の計画についても記載がございますが、その意味するところは、選手が競技に集中でき、すべての選手が最高の力を発揮できる大会とするということでございます。
 具体的には、移動時間の少ないコンパクトな会場計画、安全・安心、豊かな水と緑、おいしい食事など、快適に過ごせる選手村などで、選手に競技外でのストレスを感じさせないように配慮した計画といたしました。
 また、ただいまご指摘がありましたオール・イン・アスリート・フォーカスについては、これはアスリート、観客の双方に最高のスポーツ体験を提供することを立候補ファイルで表現するために作成した標語でございます。アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるひのき舞台を都市の中心部に設置するということが最も重要な内容でございますが、こうした計画の策定をアスリートとともに行うということも含んでございました。具体的には、招致委員会にアスリート委員会を設置いたしまして、スポーツ界の声を取り入れた計画策定を行うという点に反映をいたしました。
 また、セッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズ、これはヒーローたちのひのき舞台という訳でございますが、これは報告書の三四六ページにもございますが、大会開催には、競技を行う会場、これはベニューといいますが、それと大会を支える都市、シティー、そして大会を支える人々、ピープルの三つの要素が重要であるとの考え方から誕生した標語でございます。東京の開催ビジョンを端的に示すものとしまして、立候補ファイル提出後、国際プロモーション用に発表したものでございます。
 こうした標語は、招致のステージやアピールする相手に応じて戦略的に使用していくものでございまして、今回もその作戦の一環でございました。この二つの英語の標語につきましては、国内で都民、国民の方に親しんでいただくというよりは、むしろ、主としてIOCにアスリート本位をアピールするために、国際プロモーションの場で使わせていただいたものでございます。

○原田委員 戦略的云々というお話もありましたけれども、要は、確たるメッセージが確立していなかったがために、場面場面によって使い分けていたというような面もあるのではないかというふうに考えるわけでございます。こういったものが実際にアスリートたちに受けていたかどうかというのは、我々よりもアスリートの方々に直接聞いた方がわかるわけでございますが、そこで、団体では、JOCについてお伺いしますけれども、スポーツ界を代表していると。そしてオリンピックムーブメントを代表しているのはやはりJOCでございます。ここ、今回の東京招致に限らず、日本でやる場合にはかかわってくるわけでございますが、戦略やノウハウを持っていたりすると。あるいは、さまざまなIOCとの折衝でありますとか、競技連盟、これは国内、国際的なものを含めて、こういったものとのかかわりも大いにあるわけでございまして、日常的なスポーツ振興の中でもやはり大きな役割を果たしていく。そして、こうしたものを進化させていくには日常活動を進化させていかなければいけないというわけでございます。
 また、今回の招致に関していえば、過去のノウハウというのはJOCは当然持って、それで臨むべきでありましたし、また今後、東京になるかどうかは別としまして、五輪招致活動を日本でやる場合にはJOCが大きく活動すると。この報告書が生かされるかどうかもJOCが大きくかかわってくるということになるかと思います。
 そこでお伺いしますけれども、このJOCがそもそもオリンピック・パラリンピックをどういうふうに考えていたのか。そして、今回の招致活動にその考えがどの程度反映されておりまして、あわせて、JOCはどのように、どの程度の役割を果たしたのか、お伺いいたします。そして、あわせてお伺いしますけれども、東京都はJOCの考え方、活動内容についてどう総括しているのか、お伺いいたします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 今回の招致活動では、報告書の三九四ページにもございますが、東京のとった招致戦略という章がございますけれども、そこにございますように、JOCと招致委員会とは事実上一体的に活動してまいりました。
 JOCからは、会長、副会長、理事などの幹部が招致委員会の理事として参画いたしましたほか、これらのJOCの幹部が、IOC総会を初めとする各種国際会議におけるプレゼンテーションですとか、IOC委員に対する直接プロモーション活動、いわゆるロビー活動などを、国際プロモーションの前面に立って活動してまいりました。
 また、JOCは招致委員会事務局にも職員を派遣いたしまして、JOCの持つIOCやIF、国際競技団体、NF、国内競技団体などの競技団体との人的ネットワークなどが有効に機能する体制をとらせていただきました。
 一方、JOC独自の動きとしましては、JOC内にオリンピック招致推進本部を設けまして、招致委員会の国際プロモーション活動をサポートしていただきました。
 今回、報告書の四〇七ページでは、国際スポーツ界における日本のプレゼンスを向上させるためには、真に国際力のある人材を養成していくことが重要であるということを今後の提言として指摘してございます。これはまさに日本のスポーツ界の問題でございまして、JOCが今後主体となって行っていくことが期待されますし、また求められていくものというふうに考えてございます。
 なお、今回の招致活動におけるJOCの役割につきましては、報告書の四六六ページの資料2のオリンピック・パラリンピック招致活動体制図に具体的に記載してございます。

○原田委員 今のお答えでも、基本的にはその組織体系のことばかりで、中身のことは全然伝わってこないわけでございます。先ほどの都市インフラばかりに注目されて中身が伝わってこないと同じようなことなのではないかなと思います。
 あわせてちょっとお伺いしておきますけれども、やはり一番思い入れを持っていたのはアスリートの方たちだと思います。しかし、この報告書はとても官僚的な作文のように見えてしまいまして、思いが伝わってくる部分というのはないわけでございます。
 そこで、改めてお伺いしておきますけれども、今回の招致活動に関しまして、アスリートや競技関係者からどのような思いが、招致本部、そして招致委員会、知事等のもとに寄せられていたのか。都は、このアスリートのかかわり方や思いにこたえてきたかについてどう総括しているのか、お伺いいたします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 ただいまご指摘がありましたとおり、スポーツに焦点を当てた招致活動の展開は非常に重要でございまして、今回も可能な限りの対応を行いました。具体的には、平成二十年六月に、先ほど申し上げました招致委員会にアスリート委員会を設置いたしまして、競技会場や選手村の計画を策定する段階でその意見を反映させました。また、招致委員会理事にも複数のアスリートを起用いたしまして、国際プロモーションの場面で、プレゼンターなど招致活動の前面で活動していただきました。
 こうした取り組みは、IOCの評価委員会の報告書にも、計画段階からのアスリートの参画として評価されてございまして、こうしたアスリートの努力はIOCには十分伝わったものというふうに認識してございます。
 さらに、今回の報告書の作成に当たりましても、先ほど申し上げましたとおり、アスリート委員長やパラリンピアンが作成委員として参画してございます。特にその中でアスリートに関しまして、こうした方々から、アスリートが競技以外でスポーツ界に貢献するというアスリート自身の意識改革に今回の招致活動はつながった、あるいは、アスリートの国際的なプレゼンテーション能力が向上した、また、オリンピアン、パラリンピアンが一体となった招致活動は画期的であるといった意見が報告されました。
 しかし、また一方で、支持率は上がりましたが、どちらかというと受け身レベルの支持で、熱烈な招致応援ではなかったというような、現場での経験に基づく厳しいご指摘もありまして、こうした意見は報告書に反映させていただいてございます。
 このように、今回の招致活動は、計画策定から国際プロモーション活動、そして結果の総括まで、可能な限りアスリートとともに行ってきたものであると考えております。こうしたアスリートの声を踏まえまして、報告書では、今後の日本の招致活動への提言としまして、地域レベルにおけるスポーツ振興によりスポーツ支持層のすそ野を広げていくことが必要、あるいは今後もアスリートなどの自発的な取り組みによりオリンピックムーブメントを継続的に推進していく必要があると総括してございます。

○原田委員 遅きに失したとはいえ、最後の方でようやくスポーツそのもの、アスリートに焦点が当たったということは本当にいいことでありまして、今後のスポーツ振興をしっかりとやっていただきたいと思うわけでございますか、であるがゆえに、そのためにも、今回このような無味乾燥な形でではなくして、JOCの方々でありますとか、実際にスポーツ界側からの生の声、生の情熱といったものを明らかにしない限り、これは総括は総括として受け取れないのではないか、総括といえないのではないかということを最後に申し上げまして、私からの質問を終わりにさせていただきます。

○いのつめ委員 今回の報告書では、四年間、招致という目標に向かい活動してきた汗と涙の記録でありまして、チーム東京が招致という金メダルをねらうものであったと実感いたしました。
 オリンピック・パラリンピックは、アスリートが鍛え抜かれた筋肉と強い精神で競い合うスポーツと平和の祭典、すばらしいイベントであると私も思っています。しかし、私は、招致で都市を競い合わせること、IOCという組織に疑問を持っています。なぜならば、この百数名の組織の中に親子がいるということ、またヨーロッパの委員が多く、公平性が保てるのかどうかというようなことに疑問を持っています。
 報告書の中には、平成二十一年七月、USOCが新たな放映チャンネル計画を発表、これに対しIOCやNBCが強く反発した、また、八月、ブラジルのテレビ局が南米史上最高額でブラジル国内の放映権をIOCから獲得したなど、IOCの利権が招致の影響になるのではと予想をしています。
 また、東京は、申請都市になった段階で十五万米ドル、千七百万ほどですが、立候補都市に選定された段階で五十万米ドル、五千五百万円をIOCに送金していることが、この報告書を見てわかりました。IOCは都市間で競わせることで収入が入ってくる、収入になるわけです。
 七都市から立候補都市の選定がされたときは、東京は総合評価で一位でしたが、最終的には負けてしまいました。四位のドーハが落選した理由は、IOC指定の開催日程七月十六日から八月三十一日でなかったと考えられると記載されています。また、終わった後ですが、広島市、長崎市が手を挙げようとしても、共同開催を認めていないということがございます。
 IOCの高度で多岐にわたる膨大な要求にこたえてきた招致本部、招致委員会は、IOCに対してどのようにお考えになっているのか、見解をお聞かせください。答弁は簡潔にお願いいたします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 オリンピック競技大会の開催都市は、IOC総会において、IOC委員の投票によって決定されます。各立候補都市は、IOCの定めるルールに従いまして招致活動を行うことが、これが大前提になります。その過程の中で、招致活動はまさに国家間の熾烈な競争でございまして、知事もかねがね発言されていますように、この中で複雑なメカニズムが働き、その中でこれまでの開催都市も国の総力を挙げて戦い、勝利してきたものと思います。
 今回も、アメリカの金融破綻に端を発しました世界経済不況ですとか、招致活動後半におけるリオの台頭など、さまざまな条件変化が生じ、報告書にも記載しましたが、それに合わせて東京は招致活動を展開しましたけれども、結果的に選ばれませんでした。であるからこそ、今回の招致活動で得られた経験や教訓を、日本の次なる再挑戦を少しでも有利に導くように、確実に将来に引き継ぐことこそが私どもの責務と考えてございます。

○いのつめ委員 IOCの姿勢一つで努力が水の泡になることもある、結果を左右されるわけでございますが、都民は、百五十億円の高額な招致経費とともに、IOCの高慢な姿勢にストレスを感じていると私は思います。
 招致委員会と広告会社は民間同士であり、契約の内容の詳細を明らかにできないと。分担金として公費が十八億円も投入されています。これでは都民は納得できません。NPOである招致委員会が情報を公開してはいけない規則があるのでしょうか。招致委員会の情報はオープンにすべきと考えますが、いかがでしょうか。

○細井東京オリンピック・パラリンピック招致本部企画部長 特定非営利活動法人である招致委員会と民間企業との間で結ばれた契約の詳細につきましては、民間と民間の間の契約であること、契約の相手方などの関係する第三者が契約に当たってその内容の公表を前提としていないこと、公表により招致活動の詳細が他都市に知られることとなり、今後の我が国の招致活動に支障を及ぼすおそれがあることなどの理由によりまして、公表にはなじまないものでございます。
 このように、本来は公表の対象でないものの、招致推進活動経費については都民の関心の高い事項であり、かつ都の分担金、補助金等が充当されているものもあることから、一般財源が充当されているものにつきましては、招致委員会の契約であっても、契約の相手方の了解をとりまして、可能な範囲でその内容をお示ししているところでございます。

○いのつめ委員 そして、この招致のときに七種類の招致ポスターが制作されました。デザイン料は一千百万円と伺っていますが、そのデザインは、ロゴの管理ということで電通への特命随意契約でした。しかし、電通の下請会社のホームページによりますと、ワークスのページにこのポスターが掲載されていました。これで果たして招致マークを適切に管理したといえるのでしょうか、お聞かせください。

○重田東京オリンピック・パラリンピック招致本部参事 お話の会社は、電通がデザインしました七種のアスリートポスターをデータに落とし込む作業を請け負っていた下請会社でございます。ポスターが掲載されていたのは、ホームページの中で自社の実務実績を、業務実績を紹介していたページでございまして、招致委員会及び電通の事前の承諾なしに掲載をしていたものでございます。同社に対しましては速やかな削除を依頼し、既にホームページから削除されております。
 なお、電通が行うロゴの管理業務は、変形の禁止などIOCによるデザイン上の規定を遵守し、適切に管理をしていくことを主たる目的としております。

○いのつめ委員 招致ロゴは招致委員会の知的財産で、不正使用やデザインの改変の防止に努めたと報告書にはなっています。改変の防止に努めさせるはずだったができなかったと、事実を記載してほしいものです。
 民間広告会社の協力で、全国三十四地域、六百枚の水引のポスターが、バスの広告つき停留所に掲載をされました。このポスターの印刷は、この民間広告会社が一枚二千円、百二十万円で行いました。ロゴの管理は適正でした。電通でないと適正に管理できないというこれまでの特命随意契約の理由と矛盾をしています。特命でないとできないといい続けている根拠がなくなりました。招致ロゴの管理を招致委員会で行うことはできなかったのでしょうか、お伺いいたします。

○重田東京オリンピック・パラリンピック招致本部参事 全国バス停への広告掲出は、招致委員会がバス停広告を管理する広告会社の協力を得て実施したものでございまして、円滑、効率的な事業実施のためには、広告の印刷と掲出を同社で一体的に実施する必要がございました。
 広告に使用いたしましたデザインは、白地にエンブレムとスローガンのみを配置した極めてシンプルなものでございまして、IOCから禁止されている招致マークの変形等のおそれがない事例でございました。このため、ロゴを管理する電通から、デザインのデータを変形しないことを前提に当該広告会社に貸与いたしまして、広告会社で印刷のみを行ったものでございます。デザイン自体は実質的には電通が管理をしていたものでございます。
 ロゴにつきましては、IOCから、変更、変形の禁止、五輪デザインの再現性の確保や大きさの制限、商業利用の禁止など、さまざまな規制を課せられておりまして、これを遵守しながら適切に管理していく必要がございました。このため、招致委員会は、規定に従ったロゴの管理、ロゴを活用した統一性のある応用デザインの開発と管理、商業利用と誤解されるようなロゴ利用の排除、これらの目的を達成するためのさまざまな情報収集などの管理業務を電通に委託しております。これらの業務は、デザインに関する専門性や広範なネットワークが求められる業務でございまして、招致委員会が直接行うことは困難でございました。

○いのつめ委員 都内の広告つきのバス停にポスターが掲載されたときには、電通は、縦と横の比率を変えるだけで九十万、また、「ゆりかもめ」の中の車内に掲載するときにも七十万と、それぞれデザインの変更料を取っています。やはりこういうところで、細かいことになりますけれども、どんどんどんどん積み重なった数字というのが大きくなってきているということがあります。
 そして、知事は、招致委員会を新年度も継続させると。また、招致推進活動経費は、不足の六億九千万円を民間からの借り入れとすることとしておりますが、返済方法は今後詰めると報道されています。民間とは電通のことだということでございますが、返済方法はどのように考えているのか、お聞かせください。

○細井東京オリンピック・パラリンピック招致本部企画部長 招致委員会では、世界的な金融危機とそれに伴う景気後退の影響を受けまして、民間からの寄附金、協賛金収入が当初の目標に到達しなかったため、経費の肩がわりや値引きなどの協力を受けた上で、なお不足する六億九千万円の資金を株式会社電通から借り入れることといたしました。
 招致委員会は、蓄積された多くの財産を活用して、今後とも東京、日本のスポーツ振興のための事業を行っていくことを現在検討しておりまして、こうした活動に賛同する企業、団体からの寄附金収入や事業収入により、借入金を返済していく予定でございます。最終的な法人の意思は、今後開催されます招致委員会理事会の中で決定される予定でございます。
 なお、借入金返済のために東京都が公費の投入を行うことはございません。

○いのつめ委員 これまで対等であった関係だとしても、お金を借りた瞬間に対等でなくなる場合もあります。公費はもう投入しないということをきちんと約束していただいて、また、これまでの関係もきちんと守っていただきたいと思っています。
 質問を終わります。

○くりした委員 時間も押しておりますので、まず、質疑ではなく、意見表明から入らせていただきます。
 前回の委員会開催時に私から資料の要求をいたしましたけれども、お願いどおりの内容が届いておりません。電通との間に結ばれた契約の費用、内訳、及び招致委員会がどのような形で積算を行い、価格の妥当性を検証したのか、そういった資料について出すことはできないという回答をいただきました。出さない理由については、既にいのつめ議員の質問にもお答えいただきましたけれども、そのどれもが、出せないわけではなくて、出さない、そういった性質の理由であると私は理解をしております。
 二月中旬に、私たちも独自に電通に質問書を提出してきましたが、契約の内容に関する事項は一切回答できないと、そういう情報開示に非常に消極的な姿勢でありました。確かに法律的には問題はないのかもしれません。しかし、多額の都税が費用に含まれている以上、それが適正な額であったかどうかというのは、いわば顧客、株主である都民に説明をしていくのは、これは道義的責任は十二分にあるといえると思います。それができないのであれば、今後、東京都とのビジネスは考えるべきではない、そのように思います。
 しかし、東京都の姿勢も同様に消極的であります。先日質問させていただいたコペンハーゲンの最終プレゼンテーションの関連事業の妥当性についても、この報告書には、このように妥当に見積もった、そういった記述があるだけで、そのほかは、その根拠については何一つ新しい情報はありませんでした。
 私は、都が都民の信託を得るために、都みずからはもちろん、電通に対しても積極的に情報開示するよう働きかけをしていくべきだと考えます。知事も記者会見で、電通が議会に来て説明をする責任がある、どうして高くなったのか説明がなければ、都民も議会も、そして私だって納得できない、このようにきっぱりいっておられるわけです。
 私は、電通だけではなく、東京都にも十分責任がある、そのように考えていますが、それ以外のところは知事と同意見であります。参考人として電通の方に来ていただくことに限らず、今後、価格の妥当性を検証するために十分な情報をいただけるようお願いをいたしまして、質疑に入りたいと思います。
 先日から要求をした資料の中で、これもさんざんしつこくお願いをした結果ではありますが、昨日の夕方、やっと、昨年の六月にローザンヌで行われたIOC委員へのプレゼンテーションの概要の資料をいただきましたので、これについて質問をさせていただきます。
 報告書の中にもありますが、同プレゼンテーションは、昨年六月に九十二名のIOC委員を対象に東京都の魅力をアピールする機会として、四十五分間のプレゼンテーションにかけられた、そういった費用であります。総額は約二億五百万円です。この案件も電通と特命随意契約が結ばれました。なお、費用負担は、一〇〇%都民の税金であります。
 費用内訳は、プレゼンテーションの映像作成費用の一部として、映像全体企画関係費千三百万円。東京都の都市の魅力の紹介映像、そういった映像を作成する費用として、これは三分二十七秒の映像でありますが、五千七百十五万円。スポーツに取り組む日本の人々の姿、こういった映像、二分十二秒の映像でありますが、これをつくるのに四千四百七十七万円。競技会場の紹介映像、これもプレゼンテーション映像になりますが、四分十七秒で、これは加工ということになっておりますが、百万円。そして、映像の最後に、麻生前総理のメッセージビデオ映像というのが一分三十三秒のものがありました。これが四百十万円の費用がかかっております。
 そのほかには、スライド作成費用が八百万円。クリエーティブ関係アドバイザー費用という名目で千三百七十五万円。そして、配布物制作費が千百四十六万円。記者会見関係費が千七百九十八万円。
 合計約一億八千万円に、一〇%の事務管理費、そして消費税がついて、この計、報告書に載っております二億四百七十五万円となるわけですが、まず、これらの費用に対して、招致委員会がこの費用内訳を妥当と認める際に、だれがどのように積算根拠を積み上げ、価格の妥当性を検証したのか、お伺いをいたします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 昨年六月のテクニカルプレゼンテーションは、ただいまお話にございましたように、二〇一六年の招致過程で新しく設けられたものでございまして、立候補都市がIOC委員に対して直接大会計画を説明できる極めて重要な機会でございました。そのため、東京は、効果的なプレゼンテーションとするために、ただいまお話にございましたが、三つの映像、具体的にはベニュー編、シティー編、ピープル編の三本を作成し、また麻生総理大臣のメッセージビデオも作成いたしました。
 その経費の積算につきましては、民間企業における広報活動経験が豊富なスタッフがおります招致委員会において、専門的な見地から適切に行いました。また、あわせて招致本部におきましても、評価委員会での映像制作などの事例や、過去の東京都での映像制作事例などを踏まえまして、例えば現場撮影の経費や人件費などにつきまして、積算の確認を行いました。

○くりした委員 大変丁寧な答弁をありがとうございました。しかし、招致委員会にいる民間企業の広報活動経験が豊富なスタッフが専門的な見地から行った見積もりというのは、これは十分に信頼できる内容でありますでしょうか。招致委員会には電通から五人の出向社員が含まれていたわけでありますが、まさかその方たちのことではないことを信じておりますが、他社からの見積もりと物的証拠の残るような形で、これは見積もりをやるべきであります。
 次の質問に移ります。
 まず、プレゼンテーション映像のこの制作費でありますが、CGの含まれる映像に関しては、私も昨日拝見しただけですので、改めて検証させていただくことにしまして、一つ、麻生前総理のビデオメッセージについては、これは私も拝見いたしましたが、一分半、元総理がカメラに向かってスピーチをするだけの内容でありました。CGといえるものも使われておらず、人件費もかかるとは思えません。
 そこで、質問する前に簡単な意識調査をさせていただきたいと思いますけれども、例えば芸能人がメッセージビデオを三分間スタジオでつくってもらうと、これは大体幾らかと、思ったままをお答えいただければと思います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 映像をつくる場合には、今回もそうですけれども、さまざまな条件がございまして、例えば一回で映像が撮れる場合と、そうでない場合など、いろいろな条件がございますので、一概に幾らということは答えられません。

○くりした委員 そういったお答えをいただきましたけれども、芸能人が、例えば矢沢永吉さんなんかがつくるようなメッセージビデオでも、大体、作業費の相場は三分間で十万円、マックスでも二十万円といわれているんです。これ以上かかることはあり得ないと、そういったコメントをいただきました。
 映像を見た立場からいっても、なぜこれだけのお金がかかるのかというのは全くわからなかったんですが、どのような理由をもって、招致委員会はこの四百十万円の経費を適正と判断したのでしょうか。また、まさかとは思いますが、前総理への報酬が含まれていたか否かについてもお伺いいたします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 麻生太郎前内閣総理大臣のビデオレターの映像の作成に当たりましては、招致委員会におきまして、首相官邸の撮影に必要なスタッフの数ですとか撮影機材、こういったものについて適切に積算を行い、招致本部でも確認を行った上で契約をいたしました。
 なお、麻生前総理大臣に対する報酬は、一切支払ってございません。

○くりした委員 総理官邸ということであれば、これは場所の費用もかからないわけであります。さらに費用は下がるのではないでしょうか。一分半の撮影に、常識的に考えたら、長くかかっても一時間か二時間だというのが常識的だと思います。これが四百万円になるというのは、どれだけの機材と人件費をつぎ込めばそういった費用になるのでしょうか。全く不可解なままでありますけれども、内容がわかりませんので、これ以上の情報については答えられないということなので、引き続き詳細をお知らせ願えるようお願いして、次の質問に移ります。
 次に、映像全体企画関係費千三百万円、そういった費用が出ておりますが、率直にこれは内容がわからないのですけれども、これは具体的にどのように使われた費用なのか、お伺いします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 IOCが各立候補都市に対しまして、テクニカルプレゼンテーションを平成二十一年の六月に開催するという正式な通知を行いましたのは、その四カ月前の二月でございました。招致委員会及び招致本部はその重要性にかんがみまして、四月に予定されておりました評価委員会の訪問対応と並行して、鋭意この準備を進めてまいりました。
 テクニカルプレゼンテーションで使用する映像につきましては、日本の映像制作会社のプロデューサーを制作作業の総合企画に充てて制作を進めました。
 ただいまお尋ねの映像全体企画関係費とは、その映像プロデューサーを初めとする準備、企画に当たるスタッフの人件費が主なものでございまして、具体的には、招致委員会において決定された全体的なコンセプトですとかその方向性に基づきまして、映像化全体の企画、進行管理を行うプロデューサーですとか、現場を統括するプロダクションマネジャー、制作準備や資料の作成などの関連業務を担う者などが含まれてございます。

○くりした委員 これもお伺いしていると、人件費が主だということでありますが、人件費の場合、働いていた人数だとか、あと、どれぐらいの労働時間であったのだとか、そういったことがわからない限り、妥当性については全く検証することができません。これも引き続き情報提供をお願いいたします。
 この報告書の中にも、当日の参加者は、九十二名のIOC委員以外の参加は認められなかったと書いてあります。そんな中、配布物作成費に千百万円以上が使われておりますが、これ、何をどれだけ配られたのでしょうか、お伺いします。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 配布物制作のお尋ねでございますが、少し長くなりますけれども、説明させていただきます。(発言する者あり)はい。
 IOCの公式行事であるテクニカルプレゼンテーションにつきましては、極めて重要な意味を持ちますので、今回、IOC委員及び海外メディア向けに四種類の配布物を、すべて英語及びフランス語の併記により新たに作成して臨みました。
 一つは、大会計画を初め東京のプレゼンテーションの内容を簡潔にまとめたA4の横型の説明資料でございまして、これを五百部作成し、配布いたしました。
 二つ目は、先ほどお話がございましたセッティング・ザ・ステージ・フォア・ヒーローズ、このタイトルの英語版のサイズ、一三ページの小冊子をつくりました。この冊子は、競技会場などの配置図のほか、東京の都市の魅力などを紹介したものでございます。また、さらには、日本の強みでございますアニメ、これも紹介してございます。この冊子は基本的な事項を網羅していることから、その後の国際プロモーション活動でも広く活用することを見込みまして、千部作成いたしました。
 三つ目は、ベニューインフォメーションというタイトルのA4サイズ一一六ページの冊子でございまして、三百部を作成し、配布いたしました。これはすべての競技会場及び選手村、メディアセンターにつきまして、観客の動線など詳細を記しました会場計画図のほか、各施設の特徴について説明してございます。
 最後に四つ目ですけれども、これはベニューインフォメーション東京スポーティングレガシーというタイトルでございまして、いわゆるオリンピックの大会後のレガシー、これがどういうものかということについてわかりやすく作成した資料でございます。これはA4サイズ六ページの冊子で、三百部を作成し、配布いたしました。

○くりした委員 四種類の資料がまざっているということですので、平均するのは難しいんですけれども、大体一部五千円以上と。まぜて計算するとそういうことになりますので、かなり割高なんじゃないかなという感覚を持ちました。これについても、実際に実物を見せていただいて、これからも検証させていただきたいと思います。
 ほかにも質問をしたかったんですけれども、お時間が押しておりますので、最後に意見表明だけさせていただきますけれども、冒頭申し上げたとおり、この招致報告書、何をやったか、何ができたかということについては非常によく書かれております。しかし、どのような課題があったか、それを検証する点においては、これは都民の信託を得られる、その誠実さは足りないと私は思っております。
 よって、我々どもから補完する形で、総括を行う上でのワンステップとして参考人招致を実現させていきたい。そして、事業を行った電通だけではなく、それに対してゴーサインを出した招致委員会、石原会長にもぜひ来ていただいてご説明をいただきたい。そのように意見を表明させていただきまして、質疑を終わります。

○こいそ委員 我々議会に籍を置く者として、やはり事の問題点を調査して徹底的にただしていくということは、これはとても大切だと思いますし、またそれには、みずからの責任、当然にして、公人である我々は、しっかりとした調査に基づいた、また、さまざまな議場、委員会等においての発言をしっかりとすべきではないか、そういうようなことの観点も含めて質問をさせていただきたいと思います。
 昨年の第四回定例本会議で、IOC総会における最終プレゼンテーションに使用した映像について、ただいま質問もされておられましたけれども、民主党のくりした議員より質問がなされました。その模様は、新聞、テレビにも大きく取り上げられて、我々のもとにも、各都民の方々から多くの意見が寄せられてまいりました。真偽はどうなんだということを含めてのさまざまな意見があったわけであります。くりした議員の質問内容から、プレゼンの映像が、ロンドン招致の三倍もの経費がかかっているかのような認識なのでしょうか。すべての経費の価格にも、その妥当性に対してのこのようなやりとりの中で、私は、都民の信頼が結果的に失いかけ、それとともに、多くの方々の都民の注目も、この点についても高まってきたのではないか。
 都議会自由民主党としても独自に、このような中で情報収集と検証を、やはり必要ではないかという観点から進めてまいりました。改めてプレゼンテーションの映像についてただしたいと思います。
 くりした議員は、本会議での質問で、ロンドン・オリンピック招致の際に映像を作成したロンドンの企業に直接問い合わせてみましたけれどもと、これ議事録に載っていますね。そして、同社が二〇一二年ロンドン・オリンピックのプレゼンテーション映像を作成している事実はホームページでも大々的に載っているとしております。
 ホームページなど公になっている二〇一二年ロンドン・オリンピックのプレゼンテーション映像を作成した企業は、実際何社あったのか、そして何という企業だったのか、教えていただきたいと思います。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 ロンドンの最終プレゼンテーションの映像制作会社については、ロンドン大会の組織委員会の公式ホームページや英国放送協会BBCのホームページで確認できます。
 そこで確認できたのは一社でございまして、英国ロンドンにあるニュー・ムーン社という会社でございます。

○こいそ委員 今のご答弁で、二〇一二年ロンドン・オリンピック招致委員会のプレゼンテーション映像を制作した企業名が公になっているのは、ニュー・ムーン社だけとなっているわけですね。となりますと、くりした議員が本会議で、問い合わせれば親切に答えてくれますと、議場にいる理事者や私ども議員、マスコミの関係者の方々、そして傍聴している人々に呼びかけたわけでありますから、当然に公になっている企業を指しているわけで、その企業名はニュー・ムーン社となるわけだと思うんですね。ほかに考えられますでしょうか。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 繰り返しになりますが、ロンドン大会組織委員会の公式ホームページやBBCのホームページで確認できますのは、ニュー・ムーン社一社でございます。

○こいそ委員 そうしますと、質問内容と、ホームページなどで公になっている事柄から、くりした議員が問い合わせをした企業はニュー・ムーン社以外にないわけだと思うんですね。
 それでは、招致本部は、ニュー・ムーン社に問い合わせを今までされたのか。例えば、ロンドン二〇一二年のためのプレゼン映像の作成をしたか否か、その映像は何分ぐらいで、どのような内容であったのか、契約金額は幾らだったのかなどを問い合わせをしたならば、お答えをいただきたいと思います。

○中嶋東京オリンピック・パラリンピック招致本部招致推進部長 ニュー・ムーン社は、十月のIOC総会における東京の最終プレゼンテーションの映像制作の一部を担当しておりました。そのため、私どもとしましては、今回の招致活動の総括に当たりまして、映像制作経費の妥当性について情報収集するため、ロンドンの二〇一二年大会招致の最終プレゼンテーションの映像制作経費について、同社に問い合わせを行いました。
 その結果、ロンドンの最終プレゼンテーションにおいて活用された映像は約十四分間で、そのうちニュー・ムーン社が制作に携わったのは、スポーツを目指す子どもたちを情感豊かに訴えたインスピレーションと呼ばれる約五分間の映像であったことを確認いたしました。
 しかしながら、その映像制作に係る契約金額につきましては、ロンドン招致委員会との守秘義務があるという理由から、ニュー・ムーン社から回答は得られませんでした。

○こいそ委員 今、ニュー・ムーン社が作成したのは五分だけだというお答えだったと思います。しかも、その契約金の額は、守秘義務があるからともお答えが今あったと思いますね。とするならば、くりした議員の質問内容は、まさに極めて、どうなんでしょう。事実と異なることになってしまうのではないでしょうか。
 くりした議員が本会議でいったのは、ロンドンの企業に直接問い合わせをしてみましたけれども、約十四分の映像では、計百二十八万ユーロ、つまり一億七千万円の価格で契約をされたそうですといっていますよね。そういたしますと、十四分間で一億七千万という金額は、まさに正確ではない。創作とみなされても、この今のさまざまなご答弁をいただいた中でなるわけであります。
 そこでもう一度確認をいたしますけれども、実は、私どもも都議会自由民主党といたしましても、ニュー・ムーン社に問い合わせをいたしました。その中で、同社の財務・商務担当ディレクター、リチャード・アンフィールド氏が、正式に文書で返事を、同氏から返事をいただきました。ここで、こういう事実関係をしっかりしていかなきゃならないと思いますので、読み上げさせていただきたいと思いますけれども、これは、当然英文でこうやって来ております。ムーン社からです。今申し上げた方から参りました。
 これは少し訳も我々しましたけれども、ちょっと読み上げさせていただきたいと思うんですが、それではと書いてあるんですね、ここに。ここにありますけれども、ご質問に対して、できる限り明快なご答弁をさせていただきますと。議員の方が行った発言には事実誤認があります、ニュー・ムーン社は、東京都議会の昨年十二月の定例会に先立って、ロンドン二〇一二年のため制作した映像に関しては、日本の政治家あるいは地方自治体関係者から、いかなる問い合わせも受けておりませんと返答がされております。ニュー・ムーン社は、二〇〇五年七月のシンガポールでのIOC総会に対するロンドン二〇一二年のプレゼンテーションで使用されたインスピレーションと名づけられた映像を作成しましたと。このことを述べることは、守秘義務協定には抵触しないということでありますけれども、インスピレーションは、十四分間ではなく、長さは五分間の映像であり、コンピューターグラフィック技術は、ほんのわずかしか使用しておりませんと返答があります。
 ロンドン二〇一二年は、シンガポールにおける当該プレゼンテーションにおいて、オリンピック大会を開催するために建設される競技場を初め関連施設をあらわすコンピューターグラフィック技術を活用した映像を使用しております。それらの映像は、ニュー・ムーン社によって制作されたものではありませんとの返答があります。
 ニュー・ムーン社がコンピューターグラフィック技術に執着しているのは、一番金額と手間と技術が必要だからであります。
 そして、このニュー・ムーン社がロンドン二〇一二年のために制作をした映像に関して、その制作費用を初めとするすべての情報は、ロンドン組織委員会からの書面による事前承認がない限り、東京都及び他の第三者に対して、守秘義務ですよね、守秘義務によって公開することはできませんとあります。同様に、もし東京から、ニュー・ムーン社がロンドン二〇一二年のために制作したものと同様の映像を制作するための費用を尋ねられても、当社は回答できませんとあります。これはどういうことなのでしょうか。
 また、この文書のやりとりだけではありません。日本の--これは、はっきりはちょっと申し上げられない。文書のやりとりじゃございませんから。日本のあるスポーツ団体の名で、世界大会を計画しているので、ニュー・ムーン社の制作したものと同様な映像をつくるとしたら、およそいかほどの金額がかかるのかと。いわゆる日本--先ほどいいましたね、議会ではない、地方自治体の職員じゃないということですよ。そして、日本のスポーツ団体、世界大会を計画しているので、ニュー・ムーン社の制作したものと同様の映像をつくりますよと、こういう、そのいい方ですね。おおよそいかほどの価格、金額になるのかという意味合いの問い合わせは一件だけあったということなんですよ。
 これについては、まあ我々の、これはいろんな推測等もありますけれども、守秘義務違反について、まさに先ほどいいましたけれども、抵触するおそれがあるかもしれないので、文書ではない回答になったと。これはまさにそう思われます、推測の域でありますけれども。このようにニュー・ムーン社からの、先ほどいいましたけれども、回答をいただいているところであります。
 とすると、どうでしょう。事実を事実として基づいて、私どもは今調査をし発言をさせていただいておりますけれども、これ、一つ一つ今お聞きをいただいて、どうでしょう。これは大変な問題じゃないですか。
 こういう中でくりした議員が、何というんですか、つくり上げられたような、創作されたような、この点についての物語というか、ストーリーというか、こういうようなことを本会議でお話しをされたわけでありますけれども、これをやはり多くの都民が、いわゆる報道等を通じながらもそうでありますけれども、本当にそうなのか、これは事実なのか、おかしいじゃないか等々、いろいろあったと思うんですね、抱いてしまった。これはまさに、マスコミの方々も、一面、私は被害者だと思うんですよ、これ。事実を事実として、事実であると思って報道されたわけでしょう。だから、私どもはそういうとらえ方をしますよ。
 その中でも、こういうような報道がありましたよね。質問に立った民主党のくりした議員は、一二年五輪招致に成功したロンドンが用意したPR映像は、十四分の映像で一億七千万だと指摘をいたしましたということですね。それとか、やはり同じくでありますけれども、同議員でありますけれども、十分間で五億円。これは違うけれども、十分で五億円ですね、そういわれたわけですから。いわゆるくりした議員によると、ロンドンの映像制作費は十四分間で一億七千万であった、一億七千万。東京は、それに比べて圧倒的に高い。書いてありましたね。まさに今、私がるる申し上げた、もうそれまでにいたしますけれども、これはもうご案内のとおり、報じられたところでございます。
 公になっている制作会社はまさにニュー・ムーン社だけとなると、くりした議員が同社に問い合わせた以外に、だれがしたのか。以外にどうであったのか。ニュー・ムーン社は、地方政治家や、先ほどいいましたけれども、議員、政治家、地方自治体関係者からは一切問い合わせはありませんでした、スポーツ団体から一件だけありましたといっているわけであります。これはどのような事実関係を含めてのことなのでしょうか。
 くりした議員は身分を偽ってかどうかは、これはまあ、あれですけれども、仮にそのようなことの中で見ると、偽るようなことを……(発言する者あり)いやいや、だから、いったじゃない。よく聞かなきゃだめだよ、あなた。

○吉野委員長 質問をどうぞ。

○こいそ委員 偽るようなと。偽るような、さまざまなことを絡めて、このニュー・ムーン社に守秘義務さえ犯しかねないことをやらせてしまったのではないか。また、そのスポーツ団体の名誉にかかわるとともに、都議会の--先ほど冒頭申し上げたけれども、我々都議会議員、公職にある者であります。責任を責任として、発言をしっかりしなきゃいけない。ましてや本会議場じゃありませんか。こういうようなことで、さまざま我々だって情報収集等はいたしますけれども、これは私は問題だと思います。
 そしてまた、これはイギリスの映像制作会社、国際的な信頼関係、国際的な問題にも私はなりかねないんじゃないかと、場合によっては。仮にニュー・ムーン社に問い合わせがあった一件が、でないとするならば、どうなるのか。まさにくりした議員がどこに連絡をし、問い合わせをされたのか。だって、はっきり数字をいわれているじゃないですか。正確に議事録がございますけれども、ここも。それで、全く問い合わせしなかったというならば、どうであったのか。本会議場での、私は申し上げたけれども、まさにこの重み、こういうことは本当に、これはもう我々、自戒、自重していかなければなりませんけれども、非常に重いわけであります。
 これらのことを、るる私は今、我々は我々としてもやはり調査をしたということをいいました。直接的に、このようなことで今申し上げたけれども、問い合わせをさせていただき、しっかりとしたご返答をいたしましょうということでいただきましたことを、先ほども読み上げさせていただきました。
 まさに都民やマスコミ関係者にさえ、先ほどから話をしておりますけれども、このような話があの議場でされたということ、これはやはり、私は都政に対する信頼を大きく必衰されるような重大なことだと思うわけであります。ご本人にですね、ご本人に私は直接確認をしたい。
 また、要するに判明--要するに参考人にするか、委員会でぜひ、このような事実関係を私はるる申し上げているんだから、早速休憩とってくださいよ、委員長。

○吉野委員長 それは動議ですか。

○こいそ委員 動議です。

○吉野委員長 休憩の動議が出ましたので、委員会を休憩いたします。
 午後四時八分休憩

   午後十一時三十一分開議

○吉野委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 理事会におきまして、先ほどの質疑内容についての協議をしました結果、難しい問題でありますので、当委員会としては処理をすることができませんので、議会運営委員会に、こういう課題がありましたという報告をさせていただきたいということになりました。ご了承を願います。
 ただいま質疑の途中でございますが、本日の質疑はこの程度にとどめ、次回の委員会日は三月二十三日ですけれども、その委員会で改めて本件に対する質疑を続行いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○吉野委員長 異議なしと認め、本日の質疑は終了いたしました。

○中村委員 先ほど理事会の席において、委員長から、この課題については当委員会では処理できないという、そういうお話がございました。しかし、私ども民主党は、泉谷副委員長と私は、当委員会のその課題については、議会運営委員会で協議するということには反対を申し述べさせていただきます。
 以上。

○吉野委員長 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
 午後十一時三十三分散会

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