防災対策特別委員会速記録第四号

平成二十四年五月十四日(月曜日)
第十二委員会室
 午後零時三十分開議
 出席委員 十七名
委員長大津 浩子君
副委員長橘  正剛君
副委員長服部ゆくお君
副委員長増子 博樹君
理事松葉多美子君
理事いのつめまさみ君
理事吉原  修君
加藤 雅之君
田中  健君
早坂 義弘君
中屋 文孝君
西崎 光子君
中谷 祐二君
神野 吉弘君
興津 秀憲君
吉田 信夫君
三宅 茂樹君

 欠席委員 なし

 出席説明員
総務局局長笠井 謙一君
危機管理監醍醐 勇司君
総務部長山手  斉君
総合防災部長村松 明典君
企画調整担当部長箕輪 泰夫君
特命担当部長榎本 雅人君

 委員外の出席者
参考人
東京大学地震研究所教授 平田  直君

本日の会議に付した事件
 東日本大震災を踏まえ、東京都地域防災計画の見直しに向け、今後、東京で発生が懸念されている大規模地震などへの対策をあらゆる角度から強化することについて調査・検討する。
委員長の互選
報告事項(説明)
・東京都の新たな被害想定について
参考人からの意見聴取
・東日本大震災を踏まえた東京都地域防災計画の見直しについて

○増子副委員長 ただいまから防災対策特別委員会を開会いたします。
 委員会条例第十条に基づき、私が暫時委員長の職務を代行させていただきます。
 初めに、委員の辞任及び選任について申し上げます。
 議長から、去る四月四日付をもって、馬場裕子委員長、たきぐち学委員、しのづか元委員の辞任を許可し、新たに、大津浩子議員、神野吉弘議員、中谷祐二議員を選任した旨通知がありましたので、ご報告いたします。
 この際、新任の委員を紹介いたします。
 大津浩子委員です。

○大津委員 大津浩子です。よろしくお願いします。

○増子副委員長 神野吉弘委員です。

○神野委員 神野でございます。よろしくお願いします。

○増子副委員長 中谷祐二委員です。

○中谷委員 中谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○増子副委員長 紹介は終わりました。

○増子副委員長 次に、馬場裕子委員長の委員辞任に伴い、委員長が欠員となっておりますので、これより委員長の互選を行います。
 互選の方法はいかがいたしましょうか。

○田中委員 委員長の指名推選の方法によるものとし、直ちに指名をしていただきたいと思います。

○増子副委員長 ただいまの動議にご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○増子副委員長 異議なしと認めます。よって、委員長には大津浩子委員をご指名申し上げます。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○増子副委員長 異議なしと認めます。委員長には大津浩子委員が当選されました。
 委員長から就任のごあいさつがあります。
   〔増子副委員長退席、大津委員長着席〕

○大津委員長 ただいま委員長にご承認をいただきました大津浩子でございます。
 東京で今後発生する大規模地震などから都民の命と安全を守るために、東日本大震災を初め過去の大地震から図らずも得た教訓も生かして、防災対策特別委員会で検討をし、高度な防災都市東京を築いてまいりたいと存じます。
 副委員長、理事、委員の皆様の多大なるご尽力とご協力を賜りますよう、お願いを申し上げます。

○大津委員長 次に、議席について申し上げます。
 議席は、ただいまご着席のとおりといたしますので、ご了承願います。

○大津委員長 次に、本委員会の担当書記に交代がありましたので、紹介をいたします。
 議事課の担当書記の大久保偉久真君です。よろしくお願いいたします。
   〔書記あいさつ〕

○大津委員長 この際、議事の都合により、暫時休憩いたします。
   午後零時三十四分休憩

   午後一時開議

○大津委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより、東日本大震災を踏まえ、東京都地域防災計画の見直しに向け、今後、東京で発生が懸念されている大規模地震などへの対策をあらゆる角度から強化することについて調査・検討を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、報告事項の聴取及び参考人からの意見聴取を行います。
 なお、報告事項については、本日は説明を聴取し資料要求をすることにとどめ、質疑は五月二十八日の委員会で行いますので、ご了承願います。
 また、報告事項に対する質疑及び参考人からの意見聴取については、先ほどの理事会において、それぞれお手元配布の実施要領のとおり運営していくことを申し合わせました。ご了承願います。
 初めに、先般の人事異動に伴い、本委員会に出席する幹部職員に交代等がございましたので、総務局長から紹介があります。

○笠井総務局長 四月一日付の人事異動に伴いまして就任いたしました当局の幹部職員をご紹介いたします。
 特命担当部長の榎本雅人でございます。それから、当委員会との連絡等に当たらせていただきます総務課長の梅村拓洋でございます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
   〔理事者あいさつ〕

○大津委員長 紹介は終わりました。

○大津委員長 次に、理事者から報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○箕輪総務局企画調整担当部長 東京都の新たな被害想定につきましてご説明申し上げます。
 去る四月十八日に東京都防災会議が開催され、地震部会が取りまとめた首都直下地震等による東京の被害想定報告書が承認されました。
 この報告書は、お手元配布の資料第2号のとおりでございますが、本日は資料第1号の概要版で説明させていただきます。
 それでは、恐れ入りますが、資料第1号、東京都の新たな被害想定について-首都直下地震等による東京の被害想定をごらんください。
 まず、今回の被害想定の見直しの背景でございます。
 昨年三月十一日に発生しました東日本大震災の教訓を踏まえまして、いつ発生するかわからない首都直下地震など、東京を襲う大規模地震に対して万全の備えを講じておく必要があることから、このたび、平成十八年に公表した都の被害想定を見直したところでございます。
 新たな被害想定では、客観的なデータや科学的な裏づけに基づき、より実態に即した想定となるよう、地震モデルや火災の想定手法など、全面的な見直しを図ったところでございます。
 次に、想定対象の地震でございます。
 まず、首都直下地震として東京湾北部地震と多摩直下地震を選定し、いずれもマグニチュード七・三で検証しました。
 この二つの地震は、平成十八年の被害想定でも対象としておりましたが、今回は、国の首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの研究成果を取り入れまして、フィリピン海プレート上面の深度が従来の想定より十キロメートル程度浅いという最新の知見に基づいてモデルを設定し、再検証を行ったところでございます。
 また、今回は、首都直下地震に加え、相模トラフに震源を有する大規模海溝型地震である元禄型関東地震についても想定地震といたしました。
 東日本大震災の教訓を踏まえ、一たび発生すると大きな被害を及ぼすおそれがあるものについては検討を行っておく必要性があるとの考え方に立ち、想定地震として選定したものでございます。
 マグニチュードは、同地震に対する研究成果などに基づき、八・二といたしました。
 さらに、活断層で発生する地震として、立川断層帯地震を想定地震といたしました。
 マグニチュードは、同地震に関する研究成果などに基づき、七・四といたしました。
 今回の被害想定では、フィリピン海プレート上面の深度が従来の想定より浅いという最新の知見を反映させた結果、首都直下地震では震源が浅くなり、従来の想定よりも震度が大きくなってございます。
 また、大津波により甚大な被害が引き起こされた東日本大震災を踏まえ、津波による被害想定を実施することとしまして、過去の記録等で、都内に最も大きな津波をもたらしたとされる一七〇三年の元禄関東地震をモデルとして検証を行ったところでございます。
 続きまして、今回の想定結果の特徴についてご説明申し上げます。
 一枚おめくりください。二ページでございます。
 今回、想定地震としました四つの地震につきまして、それぞれの震度分布を示したものでございます。
 赤い部分が震度七、オレンジ色の部分が震度六強の地域でございます。
 いずれの地震においても、震度七の地域が生じるとともに、震度六強の地域が広範囲にわたって生じる結果となっております。
 東京湾北部地震では、震度六強以上の強い揺れの地域が区部の約七割を占めております。
 多摩直下地震では、震度六強以上の地域が市部を中心に分布し、多摩の約四割を占めております。
 元禄型関東地震では、区部南東部や多摩南部などに震度六強以上の地域が分布しております。
 立川断層帯地震では、市部に震度七や震度六強の地域が分布しております。
 次に、津波の被害想定についてご説明申し上げます。
 一枚おめくりください。お手元の資料の左側が、各区における最大津波高とその場所を示したものでございます。
 津波につきましては、先ほど申し上げた元禄型関東地震で検証しましたところ、東京湾沿岸部の津波高は、満潮時で最大TP二・六一メートルとなりました。TPとは、東京湾平均海面を基準とした高さを示しております。
 今回の検証では、津波発生時、最大で、東京湾の水位は、平均海面の高さより二・六一メートル高くなるという結果になっております。
 また、地震に伴い地盤が沈下いたしますと、その分、高い津波が来るのと同じ効果となりますが、今回の検証で示した津波高は、地盤の沈下量を上乗せした高さとしております。
 したがいまして、この津波高が現況の堤防等の高さよりも高くなる場合に浸水が生じるということになります。
 東京湾の防潮堤は、TP三・五メートル以上であり、最大津波高TP二・六一メートルと比較しても、これを防御できる高さが確保されております。
 資料の右側が、水門を閉鎖した場合の浸水想定図でございます。浸水が生じる部分を赤で囲って示してございます。
 ごらんのように、水門が閉鎖されていれば、河川敷等で一部浸水が生じる箇所はございますが、大きな被害は生じないという結果になっております。
 次に、人的被害、物的被害などの想定結果についてご説明申し上げます。
 一枚おめくりください。被害の概要といたしまして、冬の夕方十八時、風速が毎秒八メートルの設定で、各想定地震における人的被害、物的被害などの数値をお示ししたものでございます。
 今回、想定地震とした四つの地震の中では、東京湾北部地震の死者数が最大で約九千七百人という結果になっております。その内訳をごらんいただきますと、揺れを原因とする死者が約五千六百人、火災を原因とする死者が約四千百人となっております。
 このほか、同地震では、約十四万七千六百人の負傷者が発生し、物的被害については、建物被害が約三十万四千三百棟となっております。
 多摩直下地震につきましては、死者約四千七百人、負傷者約十万一千百人、建物被害約十三万九千五百棟となっております。
 元禄型関東地震につきましては、死者約五千九百人、負傷者約十万八千三百人、建物被害約十八万四千六百棟と、東京湾北部地震に次ぐ被害となっております。
 立川断層帯地震では、死者約二千六百人、負傷者約三万一千七百人、建物被害約八万五千七百棟と、四つの地震の中では、最も被害の規模が小さくなっております。
 また、避難者の発生につきましては、東京湾北部地震が最大で、ピークとなる一日後におきまして約三百三十九万人となっております。
 さらに、帰宅困難者につきましては、自宅までの距離に応じて推計した結果、約五百十七万人の発生が想定されております。
 もう一枚おめくりください。今回の想定による建築物の被害状況につきまして、東京湾北部地震の例でお示ししたものでございます。
 資料の上の図が、揺れなどによる被害の分布図、下の図が火災による焼失被害の分布図になっております。
 赤、オレンジ、黄色の順に被害が大きい箇所となっていますが、揺れなどによる建物被害につきましては、区部東部などの木造住宅密集地域の被害が大きくなっております。
 また、火災による焼失につきましては、区部東部、西部などの木造住宅密集地域の被害が大きくなっております。
 このように、首都直下地震などが発生すると、区部の木造住宅密集地域で、建物倒壊や焼失などによる大きな被害が生じることが懸念されるところでございます。
 今後は、この被害想定の結果を踏まえまして、東京都地域防災計画の修正素案を九月までに取りまとめてまいります。
 最後に、もう一枚おめくりください。参考資料でございますが、都の防災対策の取り組み状況をお示ししたものでございます。
 都はこれまでも、首都直下地震などに備えた防災対策を進めるとともに、東日本大震災を踏まえた防災力の強化にも取り組んでまいりました。
 今回の被害想定では震度六強以上のエリアが広がる中、被害の拡大を防いでいるのは、耐震化、不燃化など、これまでの防災対策の成果であると考えております。
 引き続き、こうした対策を推進するとともに、自助、共助の取り組みの強化を図り、さらなる減災を進めてまいります。
 本資料では、都の防災力を強化する上で重要な四つの項目に関して、現状と主な対策について記載しております。
 まず、耐震化の推進についてでございます。
 今回の被害想定では震度六強以上の地域が広範囲にわたっており、建築物の耐震化の重要性が示されております。
 都はこれまで、普及啓発や情報提供、区市町村や関係団体との連携、助成等の施策により耐震化を促進してまいりましたが、本年三月に改定した耐震改修促進計画に基づきまして、住宅の耐震化率や、大規模な百貨店、ホテル等の耐震化率の改善を図るとともに、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率を一〇〇%にするなど、耐震化の一層の促進を図ってまいります。
 次に、木造住宅密集地域の整備についてでございます。
 今回の被害想定では、木造住宅密集地域で建物倒壊や焼失などによる大きな被害が生じる結果となっており、こうした被害を防ぐことが重要でございます。
 現状では、山手線外周部から環状七号線沿いに老朽化した木造住宅が密集しており、都はこれまで、木造住宅密集地域約一万六千ヘクタールのうち約七千ヘクタールを整備地域として、その中の約二千四百ヘクタールを重点整備地域として定め、不燃化、耐震化を推進してまいりましたが、さらなる取り組みが必要となっております。
 そこで、主な対策といたしまして、木密地域不燃化十年プロジェクトを推進してまいります。木造住宅密集地域の整備地域において、従来よりも踏み込んだ取り組みを行う区に対して特別の支援を行う不燃化特区制度を新たに構築し、市街地の不燃化を促進するとともに、早期に延焼遮断帯を形成する必要のある主要な都市計画道路の路線を指定して、関係権利者の生活再建等のための特別の支援を行う新たな制度を構築するなど、整備を加速してまいります。
 次に、津波対策についてでございます。
 今回の被害想定の結果では、津波による大きな被害は生じないと想定されますが、万が一の事態にも備えておくことが必要でございます。
 都はこれまで、東京湾の沿岸部や低地帯において、伊勢湾台風級の高潮に対応する防潮堤等を整備してまいりましたが、これらはTP三・五メートル以上の高さを確保しており、津波、高潮を防御することが可能であると考えられます。
 また、既に、津波、高潮などの発災時に遠隔操作等により水門を開閉できる仕組みを構築しております。
 今後、水門、排水機場等の耐震、耐水対策を推進するとともに、河川、海岸の堤防等の耐震化を推進してまいります。
 また、高潮対策センターの二拠点化により相互のバックアップを図るなど、発災時における水門の操作機能を強化してまいります。
 最後に、自助、共助の強化についてでございます。
 被害を最小限に抑えるためには、公助の取り組みに加え、自助、共助の取り組みが必要となってまいります。
 都内には、町会、自治会等を基礎とした約六千七百の防災市民組織が存在しますが、構成員の平均年齢が六十歳以上の組織が全体の約半数を占めるなど、活動が停滞しているという実態がございます。
 こうしたことから、自助、共助を強化するための取り組みとして、防災隣組を構築してまいります。
 また、帰宅困難者対策につきましては、本年三月に制定した条例に基づき、企業等の備蓄の確保を促進するとともに、国、自治体、事業者等から成る協議会において、発災時における一斉帰宅抑制のための基本方針を策定し、普及啓発を図ってまいります。
 都といたしましては、今回の被害想定の結果を踏まえ、引き続き必要な対策を強力に推進し、都民の安全・安心を確保してまいります。
 首都直下地震等による東京の被害想定についての説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○大津委員長 報告は終わりました。
 この際、資料要求のある方は発言を願います。

○吉田委員 それでは、資料要求の項目について要求させていただきます。
 まず、前回の想定では報告されていたと思うんですけれども、区市町村別の想定地震別の地震の震度分布及び区市町村別、想定地震別の出火件数、さらに、区市町村別、想定地震別の液状化予測分布図についてです。
 次に、区市町村別の住宅の耐震化、不燃化率について。
 次に、堤防、水門等、湾岸、河川施設別の耐震強度別施設数について。
 さらに、湾岸部等の堤外地に設置されている住宅、業務等の施設の状況について。
 さらに、護岸施設、港湾施設地域で液状化対策がされていない箇所について、図面でお示し願いたいと思います。
 次に、都道に係る橋梁の耐震強度別の状況について。
 次に、市町村別ですけれども、水道管の耐震化率、下水道施設のマンホールと管接合部の耐震化率について。
 次に、前回の想定は、風速十五メートルの想定がありましたけれども、今回の想定で、風速十五メートルを想定した場合の火災被害がどの程度になるのかをお示し願いたいと思います。
 最後に、過去の大規模地震における焼失棟数と火災による死者数の事例をお示しいただきたいと思います。
 以上です。

○大津委員長 ただいま吉田委員から資料要求がありましたが、これを委員会の資料要求とすることにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大津委員長 異議なしと認めます。理事者におかれましては、要求された委員と調整の上、ご提出願います。

○大津委員長 次に、参考人からの意見聴取を行います。
 本日は、東日本大震災を踏まえた東京都地域防災計画の見直しについて、東京大学地震研究所教授の平田直さんから意見を聴取いたします。
 参考人をご紹介いたします。
 東京大学地震研究所教授、地震予知研究センター、センター長の平田直さんです。
 本日は、ご多忙のところ、委員会にご出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。
 東日本大震災を踏まえた東京都地域防災計画の見直しについて、これに関連して、特に首都直下地震に関する最新の知見について、ご専門の立場からご意見をお伺いしたいと存じます。
 なお、平田参考人には、ご着席のまま発言していただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○平田参考人 きょうは貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。着席してご説明させていただきます。
 それでは、お手元に、A3のこういう資料が皆様に配布されていると思いますので、これに基づいてご説明をさせていただきます。
 まず、そもそも地震はどうして起きるのかという、学校の授業みたいで恐縮でございますが、そこからさせていただきます。
 地震というのは、いろんな種類の地震がございますけれども、基本的には、我が国の地震は、いわゆるプレートと呼ばれる地球上を覆う十数枚の大きな岩盤の相対的な運動によって発生いたします。そういう観点から申し上げますと、日本は、東の方に太平洋プレートという世界で最も大きいプレートがございまして、南の方にはフィリピン海プレートという、やはり海洋のプレートがございます。それらのプレートが日本列島の方に、大洋プレートは、西方に一年間に約十センチメートルぐらいの速さ、髪の毛の伸びるぐらいの速さでじわじわと、しかし確実に、一億年から二億年ぐらいの間、動き続けている。それから、南の方のフィリピン海プレートは、やはり一年間に五センチメートルぐらいの速さで北北西、大体、北に向かって押し寄せて来る。この二つの大きなプレートが日本列島を押しているということが、地震を起こす基本的な原因でございます。
 基本的なといったのは、その大きな動きが具体的に、それぞれの地域でどうして地震につながるのかということについては、ここは、さまざまな複雑な要素がございまして、必ずしも地震学はすべてを理解しているわけではございません。
 しかし、例えば昨年の三月十一日に東北地方太平洋沖で発生したマグニチュード九の巨大な地震というのは、太平洋プレートが、東北、日本の下に一年間に十センチメートルぐらい、じわじわ沈み込んでいって、その動きが陸側のプレートを押しておりまして、東北地方は、一年間に一センチから二センチメートル東西に縮んでいる状態が、多分、数百年続いておりました。これが、数百年の後に一気に東の方に、牡鹿半島は五メートル動いた。ふだんは東西にじわじわ縮んでいたものが、去年の三月十一日十四時四十六分、約三分の間に、一気に東日本は東西に三メートルから四メートル伸びた、そういう動きをしました。
 これは、海底のプレート境界、太平洋プレートと陸側のプレートの境界の動きに引き直すと、最大で五十メートルという物すごい大きな量の動きがあって、それでマグニチュード九の巨大な地震が発生したということは、地震学はよく理解しております。
 なぜ去年の三月十一日に宮城県沖の海底で地震が起きたかということに明確に答えられれば、去年の三月十一日に地震が起きるということを事前に予見することができたわけでございますが、残念ながら、全体として大平洋プレートが日本の方に押し寄せてきた、それから、そのエネルギーが開放されることによって地震が起きるということは理解しておりますが、具体的に、どの場所で、いつ、どれだけの力が加わっているかということについては、まだまだ理解していないことがございます。
 それで、同じことは首都圏を襲う地震についても、大略は理解されておりますけれども、細かいことについては、つまり具体的な、定量的な予測をするということについては、まだまだ不明なところがございます。
 しかし、防災的な観点からは、過去、繰り返し地震が日本では発生してきておりますので、過去に起きた地震が、将来にもやはり起こると考えることが妥当なことでございますので、地震学は、まずそこからいろいろなことを始めております。
 南関東というのは、ご存じのとおり、過去、繰り返し大きな地震の被害を受けてきております。この中で、一番皆さんがよくご存じなのは、大正、一九二三年に関東地方を襲いました関東地震です。いわゆる関東大震災を引き起こした地震でございます。この地震のときには十万人以上の方が亡くなったというふうに記録が残ってございますが、その八割から九割は焼死、火災で亡くなった方でございます。そういうこともありまして、日本では、地震があると火を消せということが、私の子どものころからいわれていたことでございますけれども、これは基本的に、関東大震災のときに多くの方が火事で亡くなったということに基づいております。
 しかし、昨年の東北地方太平洋沖地震では、九割の方が津波で溺死したわけでございますので、地震の種類によって、どういう災害が起きるかということは、それぞれの地震に特徴的なことがございますので、どういった被害が起きるかということをよく考え、よく検討しておくということは、地震による災害を軽減化するという観点からは非常に重要でございます。
 それで、ちょっと話が脱線してしまいましたが、この一枚目の(2)のところで、首都圏における地震の発生という題の図がございますが、ここには、一九二三年の関東地震と一七〇三年の元禄の関東地震というのが、上の方に二つ書いてございます。これらは、いずれも、いわゆる海溝型の巨大地震、マグニチュード八クラスの地震ということでここに示しましたが、関東地震のときも大きな被害がございましたが、江戸時代の元禄の地震のときにも、相模、武蔵、上総、安房などで死者が多く出てございます。
 この二つの地震は、いわゆるマグニチュード八クラスの巨大地震でございますが、その下に書いてございます一八五五年の安政の江戸地震、一八九四年の明治東京地震というのはマグニチュード七の、つまり一回り小さい地震が発生して、このときでも、例えば安政の江戸地震のときでは、江戸を中心に七千人の方が亡くなるという大きな被害が出てございます。
 さらに、房総半島に行きますと、海岸段丘というのを観察することができまして、これは、過去に大きな地震が起きると、地層がはね上がることによって、こういうテラス状の段丘ができるわけでございますが、ここの写真には四つ示してありますけれども、繰り返し南関東では大きな地震が発生しているということの一つの証拠でございます。
 この左下の図を用いてご説明いたしますが、こうした地震というのは、過去に繰り返し起きてきましたが、起き方には、大きな地震と中小の地震等には一定の法則がございます。
 マグニチュード八の地震というのは、南関東で知られている最大級の地震でございますが、これは例えば、この図にございますような一六〇〇年あるいは一五〇〇年から今までの間に、大正の関東地震と元禄の関東地震という二つしか知られてございません。一般に地震というのは、大きな地震はまれにしか起きずに、小さな地震は頻繁に起きるということが、世界じゅうのあらゆる地震の一般的な法則でございます。
 首都圏あるいは南関東で繰り返し地震が起きているといっても、マグニチュード八クラスは、ここ数百年の間に二回しか起きておりません。もっと地質時代までさかのぼれば、この房総半島の海岸段丘などを見て、たくさん起きているということはいえますけれども、マグニチュード八クラスは、一九二三年、それから一七〇三年しか起きておりません。例えば、鎌倉時代に同様な地震もあったという、そういう新しい研究の成果も少し出てきておりますが、この程度です。
 しかし、ここの図の黄色く示してございますようなマグニチュード七クラスの地震というのは、マグニチュード八クラスの十倍ぐらいの頻度で地震は発生しております。つまり、大正の関東地震、元禄の関東地震というのは、ここでは約二百二十年間隔で起きると書いてございますけれども、およそ二百年間隔で起きる地震で、一つ前は、今から九十年前ぐらいでしか起きていませんから、あと百年ぐらいは、しばらく起きないだろうと考えるのが普通の考えでございます。普通のというのは、そういう考えはもう少し見直した方がいいという、そういう議論も当然ございますけれども、しかし、この赤いマグニチュード八クラスの地震はそれほどは起きないだろうということが、これまでの経験からいうことができます。
 ところが、マグニチュード七クラスの地震は、ここに書いてございますように、八の地震の間でたびたび起きております。
 我が国では、明治から、地震計を使った近代的な、機械を使った観測というのができるようになりましたが、機械で計測できるようになった最も古い地震が一八九四年の明治東京地震でございます。明治東京地震以降、マグニチュード七程度の地震が、南関東--南関東というのは、この右の下の図にかいてある影をつけた領域でございますが、南北百五十キロ、東西百五十キロメートルぐらいのおよそ首都圏です。およそ首都圏というのは、首都圏整備法でいう首都圏と、ここでいっている首都圏とは、そうぴったりは一致しておりませんが、大体、南関東のこのぐらいの領域で、明治以降約百年の間に五回のマグニチュード七の地震が発生していたというのが過去の観測事実でございます。
 百年にマグニチュード七程度の地震が五回も起きるということは、これは、地球上全体から見ると、極めて高い頻度で地震が起きているということでございますので、これをある種の統計、具体的にはポアソン過程という統計を使うと、何年以内に地震の発生する確率は何%ということを計算することができます。
 これは、文部科学省にございます地震調査研究推進本部の地震調査委員会が公表しているデータによると、南関東で発生する、つまり、この影をかけた領域ですけれども、ここで発生するマグニチュード七程度の地震が今後三十年以内に発生する確率は七〇%であるということが計算によって求まります。これは、過去百年に五回起きたということを統計学を使っていいかえただけでございますので、つまり、過去百年に大体五回起きたということは、今後百年にも五回ぐらいは起きるということを統計学を使っていいかえたということでございます。
 ここで注意していただきたいのは、百年に五回起きるということは、二十年ごとに起きたというわけではないということです。現に、この地震は、一八九四年に明治東京地震が起きて、その次の年、九五年に茨城県の南部で起きて、それからしばらくたって一九二一年に起きて、二二年に起きて、それから、しばらくして一九八七年に起きていると。つまり、これは時間的に不規則に起きる、そういうタイプの地震であるという認識が重要でございます。
 つまり、一つ前が一九八七年だから、もうそろそろ三十年たつから地震があるという話ではなくて、大体百年に五回ぐらい起きる、つまり、こういう地理的な状況、地殻的な状況が南関東であるということをご理解いただきたいと思います。
 さて、そうはいっても、南関東のどこで地震が起きるかということは、今の議論ではよくわかりません。そこで、文部科学省では、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトというプロジェクトを発足して、これは五カ年の計画でございまして、この三月に終了した計画でございましたが、そこで首都圏地震観測網というものをつくりました。これは文部科学省の仕事でございますが、東京大学地震研究所が受託をして研究を進めてまいりました。
 このプロジェクトでいろいろなことをやりましたが、重要なことは、首都圏に約三百カ所、正確にいうと二百九十六カ所の新規の地震観測網をつくりまして、いってみれば、人間ドックで皆さんがCT画像を撮るというような、それに近い手法を使って地下の様子を画像にして、どこにプレートの上面があるか、どの深さにあるのか、それから、地震の起きやすい場所はどこかというようなことを画像で判断するという、そういう手法で研究を進めました。
 一般に都市で地震の観測をするということは、社会活動に伴って、いろいろな振動によるノイズ、それから電気的なノイズが高いので、一般には都市の真ん中で地震の観測をすることは非常に難しいのでございますけれども、首都圏の地震の発生の可能性についての研究をするために、あえて都会で地震の観測をいたしました。
 この二枚目の紙の右の上の方に、地震波トモグラフィーという題のついた図がございますが、この図は、湘南からつくばにかけての、AからBと書いてあるところの地下の断面図、地表から五、六十キロメートルぐらいの深いところまでの断面図を示してあります。
 この緑とか水色で示した断面図は、上の絵は、このプロジェクトの始まる前の観測網のデータ、下の図は、メソネットという首都圏地震観測網ができた後のデータでつくった画像でございます。ここの色は地震波の伝わる速さで、ここではP波の伝わる速さを示してありまして、濃い色のところは地震波の伝わる速さが速いところで、薄い緑とか黄色っぽいところは、地震波の伝わる速さの遅いところでございます。
 一般に、地震の波が速く伝わるというのは、岩がかたい岩石のところでは地震の波が速く伝わりますので、この画像は、いってみれば、地下の岩、岩石がかたいところとやわらかいところがどこに分布するかということを示しています。これは、ちょうど人体のCTを撮ると、骨と内蔵とでパターンが出てくるように、これを見ると、プレートがどこの深さにあるかというようなことを診断することができます。
 画像をなるべく鮮明にするためには、例えばアナログのテレビからデジタルのハイビジョンにすると画像がくっきりすると同じように、なるべくたくさんのセンサーがあると、こういう画像はくっきりとします。
 それで、従来、我が国では、国土を二十キロメートル間隔で一様に地震計が覆うという、世界で最も地震計がたくさん配置されている国ではございますけれども、それでも首都圏では数カ所しかございません。特に都心では観測点をつくることが難しい。ここで、このメソネットという観測網を新しくつくることによって、センサーの数をふやす。従来は二十キロメートルであったものを、細かいところでは二、三キロメートル間隔に地震計を配置することによって、こういう鮮明な画像を得ることができました。鮮明なというのは、私から見ると鮮明で、皆さんから見ると、それほど鮮明でないかもしれませんが、これでも、かつては二十キロメートル間隔で絵ができていたものが、数キロ、二、三キロメートルでこういった絵が出て、フィリピン海プレートがどこにあるかということを読み取ることができるようになりました。
 海のプレートが陸のプレートの下に沈み込むと、海のプレートの上面の近くのところに、海洋地殻という、地震波の伝わる速さの遅い、そういう物質がございます。これが陸の地下に沈み込むことによって、低速度層、遅い層としてイメージングされます。つまり、この絵で薄い水色、黄緑で見えているのが地震波の伝わる速さが遅くて、つまりやわらかい岩石ですけれども、これがフィリピン海プレートが陸の下に沈み込んでいるということを示してございます。
 こういった地震波トモグラフィーという手法は、一九八〇年代から、もう既に地震学では採用している、非常に枯れた技術といっては語弊がありますが、確立された手法でございますけれども、センサーをたくさん、地震計をたくさん置いて、深さ五十キロメートル、六十キロメートルまで、このような明瞭な図を都市部で得るということは、これまでできませんでした。この研究によって初めてできたことです。
 こういったことをするためには、地震計をたくさん置くということが本質的に重要でございますが、都市部では、なかなか地震観測に適した場所がございません。そこで私たちは、多くの地震計を、小学校であるとか中学校の校庭に置かせていただきました。
 これが、このページの左下の図の概念図でございますが、校庭に約二十メートルの、我々から見ると浅い井戸です。電柱を設置する程度の工事でできる浅い井戸を掘って、その校庭の井戸の底に地震計を設置いたしました。地震計からは、デジタルにした信号を電話回線で地震研の方に送り込む。それから、この機械を動かすために、電灯線を引き入れて電力を供給するというような、そういう仕組みをつくりました。
 私たちは、たくさんの地震計を都心に設置するために校庭を使わせていただくという、そういう観点で始めたわけですが、実際、小学校というのは地域の防災拠点になっておりまして、そこには、先生方あるいは地域の方が、防災に対して大変関心の高い、ご理解のいただける方がいらっしゃいますので、大変ご協力をいただいて、私たちのプロジェクトに協力をしていただきました。せっかくですから、児童の皆さんには、地震計というものはこういうものだということをお見せして、それのデータを理科の教材に使っていただいたりとか、防災教育にも使っていただくようなことをいたしました。
 多くは小中学校の校庭ですが、一部は公共の公園などにも設置させていただきましたし、それから、東京湾の中では、アクアラインの海ほたる等の人工の島、それから、ここには第二海堡の例を示してございますが、こういったところにも地震計を設置いたしました。第二海堡というのは、電力も通信回線もございませんので、太陽パネルを使って無線でデータを飛ばすというような、そういう仕組みもつくりました。我が国では、携帯電話であるとか、無線のLANの設備が、現在、非常に有効に使えるようになってございますので、いろいろ工夫をいたしましたが、観測がうまくできることになりました。
 そういった仕組みを使いますと、結局、地震というのは、実は毎日たくさん起きているわけですけれども、こういったものを使って、地下のプレートの形がどうなっているか、一番重要なのはフィリピン海プレートの深さでございます。
 次のページをごらんになってください。
 人間ドックで人のCT画像を撮るのと同じで、これは地下の三次元的な地震波の伝わる速さ、岩石のかたさの分布を得ることができます。ですので、これは、いろんな任意の断面をつくり出して地下の様子を調べることができます。
 これはちょっとわかりにくい図ですけれども、南関東を地下三十キロメートルぐらいに潜って、南東側から見た図を示しております。こうすると、東から西に向かって太平洋プレートが沈み込んでいる様子と、それから、南側から北側に向かってフィリピン海プレートが沈み込んでいる様子というのが見えます。
 ここで薄く示してありますのが、それぞれのプレートの上面を示しておりまして、プレート自体は、厚さが、場所によって違いますけれども、五十キロメートルから百キロメートルという非常に厚いものですので、ここで示してあるのは上面を示してあります。
 というわけで、フィリピン海プレートは、実は地下数十キロメートルのところで太平洋プレートにぶつかっているということがわかります。南関東で地震が多い一つの理由は、この二つの海洋プレートが衝突しているということによって、そのプレートとプレートの力の相互作用、力を及ぼすことによって地震が起きるということが重要なことでございます。
 この(5)、フィリピン海プレートの深さと書いてある図で、白く丸がプロットしてありますけれども、これが地震の位置です。震源であります。南関東では、大体マグニチュード三ぐらいの地震というのは、これまでは三日に一遍ぐらいは起きていました、三月十一日以前はですが。現在では、それが、一日に一回ぐらいか二日に一遍、一日か二日に一遍ぐらいは、このマグニチュード三ぐらいの地震は起きている状態が続いております。
 もちろん、この五年のプロジェクトの間で、東北地方太平洋沖地震、東日本大震災が発生するということは、我々は予想していなかったわけでございますけれども、結果的に、去年の三月十一日に大きな地震が起きて、一部関東では停電もございましたが、この観測網は現地にバッテリーを持っていて、現地にデータを蓄積するバッファーの機能を持ってございますので、すべての本震から余震の記録をとることができました。
 こういったデータは、例えば、建築基準を考えるグループであるとか、設計をする人たちにも提供させていただいて、都市の耐震化に貢献できたというふうに思っております。
 こういう画像を得て、一番重要なことは何かというと、フィリピン海プレートの形状、深さ分布がどうなっているかということが最も重要なことでございます。
 それで、この三枚目の右の上の図で、二〇〇五年の中央防災会議の想定震源断層モデルと本研究による新しいモデルを比較した絵のご説明をさせていただきます。
 ご存じのとおり、二〇〇五年、平成十七年に、中央防災会議は、首都圏で十八の地震の起こるケースを想定して被害想定を行いました。十八の断層というのは、めったに起きない、確実に起きないものを除いて、起きそうなものはすべて検討したわけでございますけれども、その中で最も首都機能に大きな影響を及ぼす、つまり被害が大きい地震は、東京湾北部でマグニチュード七・三の地震が起きたときに、死者一万一千人、経済損失百十二兆円であると、そういうような被害想定が出されました。
 この東京湾北部地震が起こる可能性については、例えば三十年以内に何%であるというような評価はこれまで出ておりませんけれども、国の中央防災会議は、被害が最も大きくなる場合はどういうことかと、そういう観点から東京湾北部地震を取り上げたわけでございます。
 同じ考えは、東京都の防災会議もそういう考えで、東京都に最も被害が大きい地震という観点から東京湾北部地震を取り上げたわけでございますけれども、この想定は、フィリピン海プレートの上面の東京湾の北部あたりで地震が起きたときに、どういう地表の揺れが起きるかということを調べたわけでございます。ということは、フィリピン海プレートの位置が変わってしまうと、この想定自体が変わる、検討する必要があるということでございます。
 メソネットという首都圏の地震観測網を使ってフィリピン海プレートの位置を推定しますと、およそ十キロメートル、従来の推定よりも浅くなったということがわかってまいりました。もちろん、これは平行移動して浅くなったわけではなくて、場所によって五キロメートルのところもあれば、十五キロメートルの差があるところもございますけれども、東京湾北部の平均的な差というのは、大体十キロメートルということでございます。
 十キロ浅くなるということは、つまり地表に近づくということでありますから、地震の波というのは、震源ソースで同じエネルギーが出たとしても、近いところではたくさん揺れて、遠いところでは揺れは小さくなります。こういったものを考えると、東京湾北部でフィリピン海プレートがおよそ十キロ浅くなるということは、その真上の地表、東京での揺れは大きくなるということが予想されます。
 既にご説明があったと思いますけれども、この新しいモデルを使って、東京湾北部、それから多摩直下の地震について揺れの計算をいたしまして、被害想定を都の防災会議ではいたしました。それが(6)の最後のご説明でございます。
 これまでというのは、平成十七年の中央防災会議では、首都地域では、関東大震災を起こした関東地震クラスの地震というのは二百年から三百年の間隔で起きていたので、そういった地震が今後百年の間に起きるという可能性は低いと判断いたしました。これは先ほどの、関東地震と元禄地震が二百年間隔で、大正の関東地震から九十年しかたっていないというこの話です。
 ですけれども、このマグニチュード八の地震の間でマグニチュード七クラスの地震が数回発生しているということから、マグニチュード七程度の地震は南関東で発生する蓋然性が高いという判断から、この評価をいたしました。これは、国の中央防災会議は十八の断層について評価いたしましたが、東京都は、この中で最も重要な東京湾北部地震、多摩直下地震についての評価をいたしております。
 それで、昨年の東日本大震災を受け、国の中央防災会議も、相模トラフ沿いの規模の大きな地震、つまり、これは大正の関東地震と元禄の関東地震のそういう地震ですけども、こういった地震についても、いわゆる想定外の地震が起きてはいけないので、これについても検討を加えるという、そういう方針を出しております。
 東京都としては、従来の東京湾北部地震、多摩直下地震に加え、津波を起こす地震の典型的な例として、海溝型地震ですが、元禄の関東地震、マグニチュード八・二を想定して被害の推定を行いました。
 さらに、立川断層帯地震というのは、マグニチュード七・四の地震が起きるというのが、国の地震調査研究推進本部によって評価されておる地震ですが、これは、東日本大震災を受けて、国は、約百ある日本じゅうの主な活断層の地震の発生の仕方を調べまして、昨年の東北地方太平洋沖地震、東日本大震災を起こした地震によって活断層で地震が起きやすくなった地震というのがあるかどうかを検討した結果、立川断層帯地震を含む四つの断層が地震が起きやすくなったということを評価しました。
 残念ながら、確率として何%高くなったかということについては、国は評価しませんでしたというか、評価できませんでしたが、定性的にいうと、立川断層は、東日本大震災のときに、地震がより起きやすいような力のバランスに今はなっていると、そういうことが評価されております。
 そういうことと、もう一つは、地表付近の大きな活断層でございますから、もし、地震が実際に起きたときには、どういった災害が起きる可能性があるかを評価することは非常に重要なことでございますので、東京都の防災会議としては、東京湾北部地震、多摩直下地震に加えて、元禄型の関東地震と、活断層で発生する立川断層の四つを選んで被害想定をいたしました。
 被害想定そのものについては、もう既にご説明があると思いますので、私からは、現在の地震についての地震学の考え方と、東京都の防災会議がこの四つの地震を選んだ理由についてご説明をさせていただきました。
 以上でございます。

○大津委員長 ありがとうございました。
 平田参考人の発言は終わりました。
 次に、平田参考人に対する質疑を行います。
 なお、平田参考人に申し上げます。答弁する際は、手を挙げて、委員長の許可を得てから発言していただきますようお願い申し上げます。
 それでは発言を願います。

○増子委員 先生、民主党の増子博樹と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私ども、きょうもお話がありましたけれども、国の首都直下地震防災・減災特別プロジェクトにも、これまで関心を持ってまいりましたし、その最終報告会にも、うちのメンバーがお邪魔したりさせていただいておりますが、きょうは直接お話が伺えたということで本当に光栄なことだと思っております。
 それで、一つお伺いしたいなと思っておりますのは、今回、東日本大震災をめぐって、想定外という言葉が随分たくさん使われたなというふうに感じておりまして、今後、私どもが地域防災計画を立てていく中で、やはり都民の皆さんが安心をしていただけるようなポイントの一つとして、この想定外をつくらないといったことが非常に重要なのかなと思っておりまして、そういった意味で、今回の被害想定が、専門の先生方の知見を盛り込んで、可能な限り想定外という事態をなくしたものとなっているというふうに考えてよろしいのか、ぜひ教えていただければと思います。

○平田参考人 東北地方太平洋沖地震、東日本大震災を起こした地震がマグニチュード九ということが、ある意味想定外でございます。それは、これまでに東北地方太平洋沖では、マグニチュード九の地震が起きたという明確な科学的なデータが乏しかった、そういうことを主張された研究者がいたんですけれども、学会のコンセンサスになるような明確なデータがなかったということが大きな理由でございます。
 現在、そういった地震が実際に起きてしまったということを踏まえれば、我が国のプレート境界の地震、海溝型の地震としてマグニチュード九の地震を考慮するということは重要なことでございます。ですが、これは起きてしまったからそれを考慮するというのでも、もはや想定の中に入ってしまったわけですから、科学として考えたときには、ある場所で過去にどのぐらいの大きさの地震があったかということだけにとらわれていると、やはりどうしても、我々の考えたこと、つまり想定を上回るような災害が起きる可能性がございます。
 ということは、地球上全体で見るならば、あるいは、少なくとも日本の地学的な、地球科学的な環境に類似の世界のほかの地域を見れば、やはり、例えばマグニチュード九の地震は起きていたわけでございますから、そういった空間的にほかの地域の例、それから、もっと地質時代の古いデータを考えて、そういった想定外をなくすという努力が必要だと思います。
 しかし、それでも科学というのは、基本的には地震学も地質学と同じで、過去にあったことが将来も起きるという、そういう前提でやっている以上、過去のデータが完全に復元できないということは、やはりある程度の限界がある。
 科学に限界があるということと、防災的な意味の想定が外れるということは少し違うことだと私は思いますので、科学的な知見に基づいて最善の努力をして想定はいたしますけれども、それでも、それを超えるような災害が来たときに、いわゆるソフト的にそれに対応することができるかというようなことが重要です。
 それで、例えば、元禄の関東地震を今回想定に入れましたけれども、これは再来間隔が二千年以上だと思われている、極めて低頻度の巨大地震です。ですから、こういったものは、必ずしも確率は高くないけれども、一たん起きれば大きな災害、特に東京都の場合には、津波について、このような非常に大きなものを想定して、実際に、どのような津波があるかということを検討するという意味で、想定外にならないような努力はしてきました。

○増子委員 ありがとうございます。
 それともう一つお伺いしたいのですが、今回も、東日本大震災の教訓を踏まえて、地震学そのものというのでしょうか、その基本的な考え方ですとか、あるいはその想定の手法ですとか、知見そのものにもし大きな変化があったのだとすれば、どういった変化が生じていて、また、今回の被害想定にそれがどういった形で反映されているのかというのを、もし教えていただければありがたいと思います。

○平田参考人 地震学は、これまでもそうですが、大きな地震が起きると、そのとうとい犠牲のもとに、いろいろな科学が進歩してきたという歴史がございます。
 一つ前は、一九九五年の阪神・淡路大震災のときに大変な犠牲が生じて、活断層についての研究が重要である、そういう観点から、いろいろな調査が進められました。
 今回の地震は、いわゆる海溝型の大きな地震で、津波による被害がたくさん出ましたので、海溝型の地震として非常に大きな地震が、どのぐらいの大きな地震が起きるかということについての知見がふえました。
 地震学がその基本的な考え方として修正を加えたというのは、これまでも東北地方の太平洋沖では、マグニチュード七からマグニチュード八の地震が繰り返し起きて津波の被害があったわけですけれども、そういった地震より、はるかに大きな、その数十倍、場合によっては百倍、千倍の地震が起きたわけですから、そういった非常に大きな地震がなぜ起きるかということについて、これまでの地震学では十分に検討できなかったということが大きく反省すべきことでございました。そこで、ある地域の最大の地震はどういうメカニズムで起きるかという、そういった観点から、現在、検討が進められております。
 東京都の被害想定の場合では、特に元禄型の地震を取り上げたというのは、現在の科学的な知見では、元禄型の地震がすぐに起きるとは思っていないわけですけれども、しかし、これは地震学がそう思っているだけで、実際には起きてしまう可能性があるという、そういう反省点もございまして、新しいプレートのモデルも反映した形で、元禄型の地震、つまり相模トラフ沿いの大きな滑りがあったときにどういう津波が出るか、そういうことを検討いたしました。
 さらに、立川断層についても、これも、大体一万年に一遍起きるような非常に低頻度の活動でございますけれども、しかし、こういったものが本当に起きるのか起きないのかということについては、やはり十分に検討する必要がある。科学として起きるか起きないかを検討しているでは、実際に起きてしまったときに手おくれでございますので、起きたというふうにまさに想定をしたときに、地表の揺れがどうなるかということについて検討を加えるということで、昨年の東日本大震災のそういった教訓を生かした被害想定になっているというふうに考えております。

○増子委員 ちょっとだけ時間がありますので、あと一つだけお聞きしたいと思いますが、先ほど来お話のある防災・減災特別プロジェクトの方でも震度分布が公表されていると思うんですけれども、そちらの方を拝見すると、都心部でも震度七の部分が結構広がっているかと思うのですが、今回の都の被害想定との差異というのがあるのであれば、その辺のことをちょっとお伺いしたいと思います。

○平田参考人 実際に差があると思います。
 それで、プロジェクトの方は、プレートの形を出して新しい断層モデルを出すということが主たる目的でございまして、実際に、例えば十キロ浅くなったらばどうなるかということを検討するという観点から試算をしました。ですから、例えば、地表の揺れの強さをあらわすために、プロジェクトの方では、一キロメートルのメッシュで計算をいたしました。
 しかし、これは防災的観点からはもっと検討する必要がございますので、東京都の防災会議の地震部会の計算では、区部では五十メートルメッシュを使って、市部では、一部二百五十メートルメッシュも使ってございますが、よりきめの細かい計算をして検討しました。
 それから、断層が浅くなっているということで、距離によって地震の波は減衰する、小さくなるのですけれども、それの係数についても、より現実的な手法を取り入れましたので、東京都の想定の方が震度七の面積は小さくなってございますけれども、これがより現実に近いものというふうに思っております。

○吉原委員 自民党の吉原でございます。
 きょうは、先生には、ご多忙のところ委員会にご出席をいただきまして、本当にありがとうございました。また、都の防災会議の地震部会の部会長としても大変なご活躍をいただいているところでもございまして、今後の地域防災計画の見直しに向けて大変なご尽力をいただいていることに、心から感謝を申し上げたいと思います。
 何点かお尋ねをさせていただきたいと思いますけれども、まず一点目につきましては、それぞれの地震の特徴についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 直下型地震が二つあるということで、東京湾北部地震、そしてまた多摩直下地震ということが挙げられているわけでございますけれども、加えて、元禄型関東地震、そして立川断層帯地震、この四つの地震というのが取り上げられているわけでございますけれども、それぞれの地震は、一体どんな特徴を持っておられるのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。
 もう一つは、首都直下型地震の発生率は、先ほどお話がございましたように、三十年で七〇%程度だ、こういうお話もいただきました。元禄型関東地震や立川断層帯地震も同様に、かなりの確率で発生が見込まれるものなのかどうなのか。先ほど来、そうでもないというお話も若干承ったような気はいたしましたけれども、それぞれの地震をどのようにとらえて今後備えていけばいいのか、お教えいただければと思います。

○平田参考人 それでは、四つの地震の特徴について、まずご説明いたします。
 いわゆる直下型地震として取り上げた東京湾北部地震と多摩直下地震というのは、相模トラフから北に向けて沈み込んでいるフィリピン海プレートの上面の割と深いところで起きる地震でございます。
 これは、浅いところで起きると関東地震、大正の関東地震や元禄の地震になって、マグニチュード八クラスのいわゆる巨大地震になりますけれども、巨大地震の発生確率が低いといっても、それよりも少し深いところでは、つまり、東京湾の下あたり、あるいは多摩の下あたりのフィリピン海プレートの上面でマグニチュード七クラスの地震が起きる可能性がある、そう考えておるので、これを取り上げました。
 特にこれは、揺れの強いところが、区部あるいは市部の多摩、東京都の人口密度の高いところで大きな揺れになりますので、こういった地震が起きると被害が非常に大きくなるという観点から、防災的観点からも考える必要のある地震でございます。
 それに対して元禄型関東地震というのは、いわゆる本当の元禄型関東地震というのは、元禄、一七〇三年に起きた地震しか我々は知らないわけですけれども、これがもっと古い地質時代には似たような地震があったとしても、大体、発生間隔は数千年、地震調査研究推進本部の調査委員会は二千三百年と評価しておりますが、つまり、非常にまれにしか起きない地震でございます。
 非常にまれにしか起きない地震ですけれども、これが、例えば、東日本大震災を受けて、日本の地殻の力のバランスが変わったような状態で万が一起きたときに、津波がどういうふうに発生するかというようなことを検討する必要があるという観点から、元禄型の関東地震というのを取り上げました。
 立川断層帯地震というのは、いわゆる活断層のそばで起きる地震というものの一つでございますが、日本では活断層はたくさんあります。数千あるんですけれども、このうち、国は、約百の主要な活断層というのを選んで、この地震の発生の履歴を調べて発生確率を評価しているわけでございますが、その中でも比較的高い部類に入るのが立川断層です。
 先ほど申し上げましたように、さらに東日本大震災、東北地方太平洋沖地震が発生したことによって、その百の地震のうちの四つが、より動きやすいように力のバランスが変わったと申し上げましたが、そのうちの一つが立川断層でございますので、確率が何%と--確率は、大体一万年から一万五千年に一回ずつ起きるという断層ですので、それで、一つ前が大体一万年から二万年の間に起きたといわれている、そういう話ですので、確率にしてしまうと〇・五から二%という、非常に低いです。低いけれども、これは日本全体の活断層から見ると高い方という分類にも入っている。そうはいっても、せいぜい二%です。ですが、二%だからといって決して忘れていいわけではなくて、実際に起きたらどうなったかという観点から調べると。
 東京都として見ると立川断層だけですけれども、南関東として考えると、例えば三浦半島断層帯地震というのが、やはり国の選んだ百の主要な断層で、かつ東日本大震災以降、発生の可能性が高くなった断層に含まれておりますけれども、都としては、立川断層帯の地震について調べる必要があるということです。
 それで、こういった地震の個別の発生確率というのは評価されておりますけれども、東京湾北部地震の確率というのは評価されていません。それはどうしてかというと、国が評価しているのは、相模トラフ沿いの大正タイプの関東地震の確率が、これはもうほとんどゼロから二%ぐらいで、元禄のタイプに至っては、ほとんどゼロ%です、三十年で発生する確率。ですけれども、南関東全体のどこかで起きるマグニチュード七程度の地震の発生確率が三十年で七〇%といっているのであって、決してそれが、東京湾北部地震の発生確率が三十年で七〇%というわけではございません。
 ですので、これは安心材料ですけれども、しかし、南関東のどこかで起きるということの一つの可能性としては、やはり東京湾北部とか多摩直下で起きるということもありますので、防災的観点からは、このことについて十分な検討を加えておくということは意味があることだというふうに思っております。

○吉原委員 ありがとうございました。
 先ほど、フィリピン海のプレートの想定が十キロメートル程度浅くなった、こういうお話をいただきました。そのことによって、地表の揺れが、また、地域も少し幅広く広がってくるのではないか、こういうお話をいただいたわけでございますけれども、我々東京の防災対策の一つの大きな課題に木造住宅密集地の問題がございます。当然のことながら、建物の倒壊や火災の延焼が広がる、このことが大変心配されているわけでございますけれども、被害を防ぐために、耐震化の推進、そして初期消火の強化、これが大変必要でありまして、都も、これまで着実に対策を講じてはきたところでございますけれども、こうした取り組みは、被害想定の算定の際に反映されるのかどうなのかお尋ねしたいと思います。

○平田参考人 ご指摘のように、フィリピン海プレートが浅くなったことを受けて、震度六強の領域が、従来の想定よりも西側に広がりました。ということは、つまり、従来は区部の下町の方だけだったものが、山の手の方にも強い揺れ、六強が広がりました。六強になりますと、六弱と六強だと、耐震化されていない家屋の倒壊がかなり大きくなります。ということは、いわゆる環六と環七の間の木密地域と、区部の西の方の領域で、強い揺れの領域がふえてまいります。
 単純に考えると、そうすると、木造家屋の倒壊数がふえるということでございますけれども、実際には、今回の被害想定では、平成十七年に行いましたときに比べて、昭和五十八年、一九八一年よりも古い木造家屋の棟数が減っていることによって、全倒、全壊する家屋が約三十五万棟減っているというのが今回の被害想定でわかったことです。これはつまり、耐震化が進んでいることによって、同じ揺れの場合には被害が減るというセンスです。
 実際には、揺れの領域が広くなってしまいましたので、被害が大きくなるという要素と、都市が耐震化されたということの兼ね合いによって、東京湾北部地震の場合には、揺れによる全壊家屋の数は減っております。
 ただ、多摩直下地震については、強い揺れの領域がふえたために、それから、木造の耐震化されていないものの数が減ったというのとの兼ね合いによって、全体として倒壊家屋はふえてございます。
 そういうわけで、耐震化する、不燃化するというようなことは、この被害想定の中に適切に反映されていると思っております。
 それから、火災についても、消防署や消防団による消火能力というものが向上してまいりましたので、そういったものを延焼防止のパラメーターに使っておりますので、被害の見積もりに、そういった都のこれまでの対策が生かされているというふうに思っております。
 以上です。

○吉原委員 どうもいろいろ教えていただきましてありがとうございました。
 もう一問ありましたけれども、時間が参ったようでございますので、終了させていただきます。

○橘委員 公明党の橘でございます。
 本日は、最先端の研究の貴重なお話を伺い、感謝申し上げます。
 私の方からは、首都直下地震の発生確率について、確認という形になろうかと思いますけれども、お聞きしたいと思います。
 私はどうしても、マスコミとか、さまざまな説明の中で、ことしに入って特にそうなんですけれども、発生確率がかなりいろいろな数字が出ておりまして、混乱した部分がございます。今のお話を伺っていますと、首都直下地震の発生確率、南関東で大体三十年以内に七〇%程度というお話でございましたけれども、どうも東京湾北部地震が三十年以内に七〇%の確率と思い込んでいた節が私自身もございますし、都民の皆さんも結構そういう考えを、受けとめ方をしている方が多いのではないかと思います。
 そこで、もう一度確認でございますけれども、これは今回の被害想定を行った東京湾北部地震が七〇%の確率で起きるというのではないということだと思いますけれども、その確認と、それから、ほかの地震も含めての確率なのか、これ以外にもさまざまあると思いますけれども、それを含めての確率なのか、その辺を教えていただきたいと思います。

○平田参考人 ご指摘のように、時々、東京湾北部地震の発生する確率が三十年以内に七〇%であると、そういうふうに思われる方がいらっしゃるんですけれども、それは違います。
 国の地震調査委員会が公表しているのは、相模トラフ沿いの、その他の南関東で起きる地震といっていて、先ほどご説明しましたように、北は茨城県のつくばあたりから、南は房総半島の南端、東は銚子、西は神奈川県、南北百五十キロ、東西百五十キロぐらいの領域のどこかで起きるマグニチュード七クラスの地震が三十年以内に発生する確率が七〇%ということでございまして、東京湾北部地震というものに限定した発生確率は、現時点では評価されていません。
 それから、この三十年の確率七〇%で起きる地震というのは、機械ではかることのできた一番古い地震である明治東京地震、一八九四年が一番古くて、それから百二十年ぐらいですけれども、約百年の間に五回起きたということをもとにして確率を計算しておりますので、その中には、東京湾北部地震に相当するようなフィリピン海プレートの上面で起きた地震は一度も起きておりません。一度も起きていないから、東京湾北部地震は架空の地震であるということは決してなくて、例えば、一つ前の、一八五五年の安政の江戸地震は、東京湾北部地震として想定しているものに非常に近い可能性はございますが、現在の地震学の知識では断定することはできません。
 というわけで、これはあくまで、起きたときにどういった被害が起きるかを検討する対象として東京湾北部地震というのを中央防災会議が想定して、東京都の防災会議もそれを使ったということでございますので、決して三十年以内に起きる確率が七〇%であるわけではございません。

○橘委員 よくわかりました。整理できました。ありがとうございます。
 次に、津波の想定についてお伺いしたいと思います。
 先ほど、想定外がないようにという話の流れの中で、津波の被害想定も今回されたということでございましたけれども、これは、元禄型の関東地震で都内に、東京に起こる津波というのは、島しょ部を除くと最大で二・六一メートルとのことであります。
 それから、隣の県の神奈川県でございますが、これも被害想定を出しておりまして、これは慶長型の地震が発生した場合に、鎌倉に約十四・五メートル、それから横浜に約四・九メートルの津波が来ると想定しております。
 この数値と比較しますと、東京の津波の想定の数値は少し小さくなっているような気がいたします。その理由としては、例えば、東京の津波が大きくならないというのは、地形的な特徴があるのか。その原因として、地形的な特徴によるものなのか、または、想定の前提が違うために生じた違いなのか、東京に起こる津波について見解をお聞かせいただければと思います。

○平田参考人 まず、東京湾というものの形が重要でございます。東京湾の内湾というのは、観音崎から富津岬を結んだところから内側、北の方だと思うと、これは、入り口が狭く、約六キロメートルといわれていますけれども、それより北の方に行くと広がってくる。そういう形があると、津波のエネルギーは、湾の中に入って行ったときに、分散して津波高が小さくなるという傾向があります。
 これと反対に、いわゆるリアス式の海岸で、奥に行くほど狭くなってくる、そういう入江、湾であると、津波の高さがだんだんに高くなるということがありますが、東京湾は幸いなことに、中に行くほど広くなっているということで、津波が小さくなってまいります。例えば、神奈川県の想定でも、鎌倉で十四メートルですけれども、東京湾の中に入ってくると、横浜では五メートルになるというのは、そういう影響でございます。
 それから、もう一つは、神奈川県と東京都で結果が違うように見えますけれども、実際に神奈川県がどういった震源断層の想定をしたか、ちょっと私は詳細には存じ上げておりませんけれども、少なくとも東京都の場合には、過去に起きた最大級の元禄地震の震源断層モデルを使っても、東京湾の中には、大きな津波、二・六一メートルですか、その程度の津波しか来ないということが確認されています。
 もちろんこれは、例えば、房総半島の外房では大変高い津波になることは容易に想像できますから、決して元禄型の地震で津波が小さいということはございませんけれども、幸いなことに、東京湾の中は、そういう地形的な影響によって小さくなるという、そういうふうに理解しております。

○橘委員 今の津波に関連しますけれども、二・六一メートルという津波というのは、それだけでは防潮堤を超えることはまずないかと思います。そういうふうにいわれております。例えば、津波の襲来時に、高潮が同時に発生した場合というのがあるかと思いますけれども、高さが増して、相乗効果で防潮堤を超えて浸水被害が生じるということも想定されるのではないかと思います。
 こういった想定外ということがないようにするためには、こうした場合も想定いたしまして定量的な被害想定を出すというのは、これは今の科学の研究の最先端の立場から難しいかどうか、この辺のご意見をお聞かせいただければと思います。

○平田参考人 ご指摘の点ですけれども、科学的には大変難しいです。と申し上げますのは、津波は、どういうメカニズムで起きるかということはわかっていますし、それから、高潮も、どのぐらいの風が吹けば高潮がどうなるかということは計算できると思いますが、実際に台風が、その地震が起きたときにどういう経路で来るかということを見積もることは全く不可能でございます。
 ですから、今回の被害想定では、津波の津波高については、科学的な知見に基づいて定量的な評価をいたしましたけれども、津波と高潮が同時に起きるということは、複合災害の一つとして、定性的なシナリオのところに記載させていただきましたけれども、それが何メートルの越流になるかというようなことについては、現時点では評価することができませんでした。ただ、そういったことが起きるということは十分に考える必要がございますので、たとえ定量的な想定ができなくても、定性的な被害シナリオということで検討するということが必要だと思っております。

○吉田委員 共産党の吉田と申します。私から質問させていただきます。
 地震学の専門の立場からのご努力と同時に、地震部会の部会長としてまとめられたご努力に対して、心から敬意を表したいというふうに思います。
 それで、重なる点は省きまして、私が聞きたい点、まず二問ちょっとさせていただきます。
 一つは、被害想定の末尾の中でも、限られた時間の中で実施されてきたという制約がある中で、一層被害想定の精度の向上を図っていきたいということで幾つかの課題を設定されておりますけれども、先生としては、この被害想定の精度をさらに向上させていくという点で、どういう課題について、より調査研究を深めていく必要があると考えているのか、そういうことについてお聞かせ願いたい。
 それと若干重なる話なんですけれども、津波という点では、国の中央防災会議は、防災基本計画の見直しに当たって、最大の津波を想定するということの関連で津波堆積物の調査ということを具体的に挙げていますが、こういう調査は、東京都としては、あるいは今回の被害想定ではされていないと思うんですが、千葉、神奈川は、実施あるいは実施しようとしています。こういう点についての必要性などについても、先生のご見解をまずお教えいただきたいと思います。

○平田参考人 まず、精度の向上はどういう点が必要かということについてお答えいたします。
 被害想定というのは、地震の大きさ、場所の想定から始まって、それによってどういう揺れの強さ、あるいは津波が来るか、その揺れの強さに対して建物がどれだけ倒壊するか、被害が出るかと、それを複合して考えることでございます。つまり、それらが、理学的な検討、工学的な検討あるいは社会科学的な検討が十分にうまく協力し合って初めて成り立つことでございまして、理学的な精度がよくなればそれで済むということではございません。
 今回の検討でも、プレートの構造が従来の推定とは変わるということが大きな要素ではございますけれども、そのほかに、例えば避難、帰宅困難者の問題についても、いろいろ社会科学的な検討も踏まえた上で想定を出してまいりました。
 そういう観点から申し上げますと、従来の被害、建物倒壊率であるとか、あるいは損傷については、実際に過去の被害の例を調べて、それに対して、フラジリティカーブというのですけれども、どのぐらいの強い揺れだと何%の倒壊がある、それは非常に古い家と中ぐらいのと新しい家ではどうかと、そういうカーブをつくって決めるわけですけども、これは基本的に過去の被害例をもとにしておりますので、一定のデータがたくさん蓄積されてくるとよくなるわけですが、一方、都市の構造はどんどん変わっていますので、そういったところでは、今後、被害の想定をする観点から、もう少し研究が進む必要があるというふうに思っております。それが一例でございます。
 それから、津波のことでございますが、確かに津波高というのは、過去の大きな津波を発生させた地震が、実際にいつ起きたのかということと、どのぐらいの大きさの津波があったかということを評価することは非常に重要なことでございまして、東北地方太平洋沖地震でも、仙台平野のデータというのが再評価のときに非常に重要でした。
 それで、南関東で発生する大きな海溝型の地震についても、例えば小網代湾といって、三浦半島では津波の調査を、これは私どものプロジェクトの中でもいたしました。
 それで、東京にとって重要なのは、東京湾で過去の津波の痕跡がどうかということを直接調べるということは重要かとは思いますが、実際、東京湾というのは、例えば江戸時代から考えても、非常に人工的に改変されているところが多くて、なかなか自然の意味の、津波によって運ばれた砂が堆積して、それを地質調査して調べるということに適している場所が、現時点では非常に少ないです。ですから、例えば房総半島の外房であるとか、三浦半島の神奈川県というか湘南の側というところは、ある程度はあると思いますが、なかなか東京湾の内湾の方をやるのは難しいかなというのが、現在の私の印象でございます。

○吉田委員 続いて、立川断層帯地震についてお伺いしたいんですけれども、被害想定の中でも、発生時には、断層面で生ずる変位が地表面付近まで達する、そのことによる交通インフラの影響について危惧する指摘がありますけれども、これは、他の地震とこの点が違うのかなという印象を持つのですが、そういう地表面での変位というのは具体的にどのようなことが考えられるのか、その影響というのはどういうことを考慮する必要があるのかについてご説明をお願いしたいと思います。

○平田参考人 大きな地震が発生いたしますと、地表に強い揺れが発生します。これは、基本的には地震の波が伝わってきて地表が揺れます。一方、地震というのは、そもそも地下の岩石がずれるように破壊されて発生しますから、普通は、そのずれというのは、深さは、どんな浅いといっても、二キロメートルとか三キロメートルぐらいのところで大きなずれがあります。
 しかし、大きな地震の場合には、地表地震断層といわれる、地表でのずれが発生いたします。例えば、阪神・淡路大震災のときの淡路島の野島断層では、地表で一メートルから二メートル近い、一メートルぐらいのずれが発生いたしましたから、例えば、そのずれの直上に家屋や構造物があると、普通の地震の揺れによる揺れとは別な被害が出る可能性があります。
 例えば、一九九九年の台湾のチチ地震、集集地震では、地表に非常に大きなずれが発生いたしまして、その上に橋があると、橋げたの上に乗っている道路が、一部、大きなずれによって崩落する、壊れるというようなことも報告されています。外国ではそういった例が幾つか、トルコの地震とかございまして、我が国でも、大きな地表のずれの直上に構造物があるとその影響があります。例えば原子力発電所などは、法律によって、活断層の直上につくってはいけないということになっておりますから、危険であるということは間違いありません。
 我が国では、そういう意味で、活断層がたくさんございますので、そのすべての活断層の上に家を建ててはいけないという法律は今のところありませんが、例えば外国では、カリフォルニアであるとかニュージーランドでも、そういったことを規制する法律がございます。
 お尋ねの立川断層がそういったものに対応するかどうかということでございますが、立川断層は、訪れてみるとおわかりになると思いますけれども、現在は非常に緩い坂がところどころにありまして、そこはかつての断層が変位した、ずれた跡になっているわけですが、それがもし地表で、そういった二メートル、三メートルの大きなずれが発生して、その上に大きな構造物があると、大きな被害を及ぼすということがあります。
 それで、工学的に、そういった大きな地表のずれを吸収できるような工法があるかというと、これはなかなか難しくて、一般には、その上に普通の家が建っていたらば、それは壊れてしまいますけれども、実際には、例えば水道管であるとかライフラインもそこを通っていることがございますので、それは、ある程度の大きな変位があったときでも、そのずれを吸収できるようなやわらかい構造にしておくというような、そういう工夫が最近、だんだんにできるようになってくると聞いております。
 じゃ、その立川断層帯の地震が発生したときに、地表でどれだけの変位があるかということを見積もるのは、実は、立川断層というのは全体で三十キロメートルぐらいの領域、長さのある断層だということはわかっているんですけれども、そのどこで実際に大きなずれがあるかということについては、何しろ一万年前の出来事なので、とても現在の地形あるいは地質の調査だけでは調べることが難しいということで、そこで結局は、部会の報告としては、定量的な評価はできなくて、定性的な、そういったことがあったときにはライフライン等については十分に注意する必要があるというような、そういう記述にとどめてございます。
 ご質問に、ちょっと的確に答えていないかもしれませんが、そういったことはあるということは認識されていますけれども、それを完全にどうやって防げばいいかということは、必ずしも、世界的にもコンセンサスは得られていない状況だと思います。

○西崎委員 都議会生活者ネットワークの西崎と申します。
 五人目の質問者になるので、多少、前の質問と重なっている部分があるかと思いますが、その点ちょっとご容赦いただきたいと思います。
 これまでも、今、吉田委員からも立川断層帯についてのお話が出ておりますけれども、東日本大震災以降、関心が非常に高まってきていると思います。そこで、もう一度、端的にいって、プレートがはね上がって起こる地震と活断層で起きる地震との違いというのですか、活断層のメカニズムについて教えていただければと思います。
 また、日本にはかなり多くの活断層がある中で、四つの活断層帯が地震の発生確率が上がっているという先生のお話がございましたけれども、力のバランスがそういうふうになっているというようなお話ですが、どのようなメカニズムでそのようなことが起こっていくのか、教えていただければと思います。

○平田参考人 まず、プレートの境界で起きる地震と活断層の地震の違いでございますが、地震としてみれば、プレートの境界で起きる地震と活断層で起きる地震というのは、大した区別はありません。世界で最も大きな活断層はプレート境界です。ここがちょっと皆さん誤解があると思うので、プレート境界というのは、AA級といって、最も活動的な活断層がプレート境界なんですね。
 じゃ違いがないかというと、そんなことはなくて、やはり非常に違うのは、プレート境界というのは最も地球上で活発な活断層ですから、例えば、百年に一遍マグニチュード八クラスの地震が起きるような活動です。それに対して、日本の活断層というのは、プレートの中で起きる地震がほとんどですから、これは、例えば千年に一遍とか、立川断層のように一万年に一遍起きる地震です。
 プレートの境界というのは、最初にご説明したように、地震というのはプレート同士の力のやりとり、押したり引っ張ったりすることで地震が起きますから、そのプレートとプレートの境界で最も力が加わっている、そこで起きるのがプレートの境界地震だから、一番大きな地震が頻繁に起きるのがプレートの境界です。ですけれども、プレートの境界ですべてそういった力が解消されるわけではなくて、おつりみたいなもので、少しずつプレートの中にひずみが蓄積されてきて、それが千年とか一万年に一遍、蓄えられてきて起きるのが活断層で起きる地震です。
 それで、活断層というのは、活きている断層と書きますけれども、世の中には、いわゆる死んでいる断層というか、地質断層というのと活断層という二つがあります。
 地質断層というのは、過去には、過去というのは、例えば一億年前とか、物すごくかかっていて、そういうときには動いたのですけれども、この数百年の間には一度も動いた証拠がない。これは地質断層といって、地震を起こす能力のない断層というふうに思われています。
 活断層というのは、プレート境界に比べれば、たまにしか起きませんけれども、地質的な年代、日本列島ができてから一千五百万年たっていますけれども、一千五百万年に比べれば、例えば三百万年とか十万年とかといったそういう時間のスケールで動いた可能性、証拠があって、動くということは繰り返して動きますから、地質あるいは地形ですね、地形に活断層地形という非常に特徴的な地形が残りますので、それを地形学者が見ると、これは活断層であるというふうに認定できる。そういう意味で立川断層も活断層でございます。
 ですから、最初に違いはないといっておきながら、違いがあるという結論ですけれども、本質的には違いがないんですけれども、地震の発生する頻度であるとか大きさであるとかという観点からいうと、プレート境界が一番大きくて一番頻度が高いけれども、活断層というのは、プレート境界に比べれば小さくて、発生する頻度も少ない。ただ、日本の場合の活断層というのは陸上にありますから、それがたまたま人がたくさん住んでいるところ、日本はほとんどの場所に人がたくさん住んでいますから、そういうところで起きると、マグニチュード七程度の地震でも大きな地震災害になりますので、これは十分に注意する必要がある、そういう地震でございます。
 それで、四つの地震が何で確率が高くなったかということですが、地震というのは断層がずれるように破壊される現象です。ですから、断層と断層をぎゅっと押しつけていると断層はずれにくくなります。一方、押しつける力が弱くなるか、あるいはずらす力を強くすると断層はずれやすくなります。それで、クーロン応力というんですけれども、押しつける力とずらす力を、係数をちょっとつけて、足し算みたいなものが、その応力が、東北地方太平洋沖地震の三分間で五十メートル動いた、その動きによって日本列島の地殻の力が変わるんですけども、それを計算して、〇・五バール以上、断層が動きやすくなるような力が加わった断層が四つあったというので、地震調査研究推進本部は公表しております。
 以上です。

○西崎委員 今回行われました立川断層帯地震の被害想定では、三十キロ以上に及ぶ断層帯なので、破壊開始点、つまり、震源が北であった場合と南であった場合と二種類の想定を行っています。このうち、震源が南であった場合に、多摩地域で震度七の地域が広がる、発生するということですけれども、活断層における地震の発生は、このように活断層のどこで起こるのかによって影響が違うというか、それは当然のことなんですけれども、どこまで断層がずれるのか、場合によって異なるというふうに認識してよろしいのでしょうか。
 また、断層が動くというのは、具体的にどのくらいのキロに、例えば、地表が数キロにわたって上下に何メートルぐらい動くのかという具体的な数字がもしありましたら、教えていただければと思います。

○平田参考人 まず、今回の想定でも、二つのケースで、北側から破壊が始まった場合と南側から破壊が始まった場合で考えましたが、それは典型的な例として二つの場合を考えました。それで、実際に次に起きる地震が北側なのか南側なのかというのは、現在の地震学の知見ではわかりません。
 例えば、アメリカのサンアンドレス断層のパークフィールドというところで、過去五回、ほぼ同じ地震が起きていて、そのときは北側から南に地震が、波が伝わったのですけれども、一番最後の最近のは、南側から破壊が始まって北に行ったということもあります。ですから、これは、ある意味、自然現象なので、確率的にどこかで起きるということしかいえません。
 被害想定を考えるときには、具体的にどこで破壊が始まるかというのを仮定しないと計算できませんから、それは仮定するんですけれども、その結果出てきた震度分布というのは、まさに最初にどこで破壊が始まるかというその仮定に依存しています。ですので、今回は、南側から破壊させた方が震度分布が広がりましたけれども、実際には、本当に南側なのか北側なのか、あるいはそれ以外の真ん中なのかということもありますので、実際に出てきた赤い震度七のところが、自分のところは震度七になっていないからといって安心してはいけなくて、破壊の開始点の仮定を変えれば、それは違うところに出てくるということは幾らでもあります。これは全体として見て、マグニチュード七程度の地震で立川断層程度の浅い地震だったらば、震度七の領域はどのぐらい広がるかということを理解するには、あの計算は意味がありますけれども、一つ一つの場所が、うちは震度六で、うちは七で、うちは五だといって、それで一喜一憂するようなものではないと思います。
 何度もいいますけれども、その仮定を変えると場所は変わってしまいます。ですけれども、おおよそ全体として震度七の領域がどのぐらい広がるかということについては、この計算によって理解できますから、マクロに見たときの対策を考えるときには役に立ちます。
 それで、じゃ、どのぐらいに実際になったかということは、次にどうなるかということはわかりません。わかりませんが、それではしょうがないので、過去に何があったかということは一生懸命調べました。それによると、これは地震調査本部の公表されたレポートですけれども、北東側が相対的に二メートルから三メートルたわむということがあります。それは行ってみて、そうなっているわけです。二メートル、三メートルの非常になだらかな坂がいっぱいありますから、そういったことは、過去に北東側が二メートル、三メートルぐらいは地震のときに変位した、隆起したということをあらわしていますので、次に地震が起きればそういうことが起きるだろうと。
 それで、それがどのぐらいの長さにわたってあるかというご質問ですが、それはちょっと今すぐにはお答えできないんですが、調査本部の公表資料として、ホームページにはそれが一番載っています。ただ、それはもう古いデータなので、今調査を、また国はやり直しているということですので、最新の知見をもう少し待っていただきたいと思います。

○大津委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 平田参考人からの意見聴取はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大津委員長 異議なしと認め、平田参考人からの意見聴取は終了いたしました。
 平田教授、本日は、大変お忙しい中、貴重なご意見をいただき、まことにありがとうございました。心より厚く御礼申し上げます。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時四十四分散会

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