東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○山本委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第三十一号議案まで及び第百四十一号議案を一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る二月二十四日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 こいそ明理事の発言を許します。

○こいそ(明)委員 都議会自民党を代表いたしまして、締めくくり総括質疑をさせていただきたいと思います。大変長い時間になりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 さて、石原知事が折に触れて話をされている言葉の中で、「自ら省みて直くんば、千万人といえども吾往かん」この言葉がございます。孟子の言葉でございますけれども、自分にやましいことがなければ、反対する人が仮に千万人もいても、胸を張って進んでいく、真剣に事に当たろうとすれば、そのくらいの心意気を持って取り組んでいかなきゃいけない、このような言葉であります。
 さて、知事が進めている、東京からこの日本を変えていくという取り組みは、まさにこのような言葉、気概がなくてはとても実現ができない大きな仕事であり、また大きな改革であろうというふうに思っております。
 知事の東京再生、日本の再生への取り組みを見ると、今さらながら私はこの言葉を思い起こさずにはいられません。こうした石原知事の姿勢が、都民だけではなくて、全国民から期待を受けているんだという感じもするわけであります。
 ある方が、大変知事が親しくされておられる方でありまして、これはテレビで私、拝見させていただきましたが、国を思う知事のその言葉は、民族の血の叫びだ、涙だと、こう評され、前後ありましたけれども、私もちょっと感動いたしましたが、まさに祖国日本を思い、真に変えていかなきゃいけないという知事の熱い思いが、人々のそのような心に大きな共感を呼んできているのではないかと思います。
 こうした強い意思を持って東京の再生に取り組んでおられる石原知事に、二期目にも私ども大きな期待をしつつ、平成十五年度予算案に関連して、都政の重要課題について、以下、質問をさせていただきたいと思います。
 さて、ことしは、東京の前身江戸に幕府が開かれてちょうど四百年目の節目の年に当たります。江戸時代からの伝統を引き継ぐ地域を中心に、往時をしのばせるような多彩な行事が企画をされまして、今開催されているわけでございますが、この記念すべき年に当たり、歴史の蓄積と魅力を掘り起こすことも、今後の東京を考える上で有意義なことではないかと思うわけであります。
 この四百年の歴史の中で非常に印象強いものは、明治維新のまさに幕あけとなりました江戸城無血開城であったと思います。勝海舟、西郷隆盛両雄の大局に立った交渉の中で、大した混乱もなく実現をいたしました。その後、江戸は東京となり、維新の改革を通して、我が国の政治、経済、文化等の近代化のもととなったばかりではなくて、近隣諸国の近代化にも大きな影響を与えたわけであります。そのような近隣諸国への影響を例にとりまして、歴史認識といったことをお伺いいたしたいと思います。
 東京は、アジア大都市ネットワーク21などを初めといたしまして、アジア諸国との連携を深めております。ただ、今後、アジア諸国との連携を図るに当たっては、日本とアジア諸国の関係についての正当な歴史認識を持つことが前提になるのではないかというふうにも考えております。
 時間の制約がありますので、一例として挙げるならば、日韓併合に関する歴史的認識において、反目し合う日韓の関係であります。李氏朝鮮の崩壊から日清戦争、日韓併合に至る歴史において、我々が心にとめておくべき親日派の政治家、金玉均が果たした役割についてであります。
 十九世紀末の李朝に危機感を抱いた青年官僚たちは、金玉均を中心に、清国からの影響を排除し、急速な近代化を目指す開化派を結成いたしました。開化派は、近代化への、日本へのあこがれ、日本を手本としたいと、この金玉均らは、福沢諭吉を初めとする当時の日本の政財界のリーダーたちとの親交を深めながら、李朝の政治体制の変革を断行すべく、朝鮮半島版明治維新を目指したのでありました。
 一八八四年、世に甲申政変と呼ばれるクーデターが起きたわけでありますが、清国軍隊の出動、鎮圧により、開化派による新政府はわずか三日で幕を閉じてしまいました。まさに自主独立の夢はついえ去ったわけでありますが、金玉均は、このクーデターの失敗後に日本に逃れてきました。一時小笠原にも暮らすなど、日本に十年間滞在をいたしまして、その後、上海で暗殺をされたわけでありますが、日本滞在中は東京にも大変縁が深いですね。彼の死後、青山墓地、杉並区内の久我山稲荷神社を初めといたしまして、都内各地に碑や墓地が残されているわけであります。
 金玉均のこのクーデターから、その後の日韓併合に至る歴史の流れの中で、日本が朝鮮の近代化に果たしたまさに役割を正確に認識していかなきゃいけないのではないかと思うわけでありまして、私は、まず、朝鮮独立と近代化に命をささげた愛国的な政治家であった金玉均を、埋もれた歴史の中からよみがえらせることが必要ではないのかというふうに感ずるわけであります。
 しかし、こうしたことを伝えるにも、日本の近代史に関する教科書の記述は大変少ないわけでありまして、しかも学校の授業では、古代から順に教えているうちに、近代史の部分については時間切れとなってしまうというようなことが少なくないようであります。
 若い人ももっと、この際、我が国の近代史に対する正当な理解、認識を深めていかなければならないと思うわけでありますけれども、石原知事のこのご認識を、ご見解を伺いたいとまず思います。

○石原知事 近代史を我々の子弟にどうやって教えていくかというご質問ですけれども、近代史というのは、ほとんど私たちのじいさん、ばあさん、ひいじいさん、ひいばあさんの人生の堆積の上にあったわけでありまして、それをいろいろな挿話というものを束ねて知るということは、同じ国家社会、民族の歴史に、どの部分よりも子どもたちが親近感を感じる有効な方法だと私は思います。
 かねがねいっていることでありますけれども、歴史の授業の中に、古代から現代に向かってたどる、逆に現代から近代、近世にたどって、遡行していく歴史の授業もまた当然あって、むしろその方が子どもたちに対する、子どもたちの歴史に対する興味というのをそそるのではないかと思います。
 例えば、今例に挙げられました金玉均という志士の存在も、彼が志向した、彼らが志向した当時の朝鮮の近代化、それを阻んだ清国あるいは帝政ロシアというもののかかわりというものを、我々も知り直すだけじゃなくて、隣の韓国の人たちも、そういう認識の中で、結果としては日韓、日朝合併をしたわけでありますけど、そういう歴史の事実をとらえ直してもらえればなという気がいたします。

○こいそ(明)委員 まさに近代史の、今後の、やはり正確に事実に基づいた近代史のさらなる、それぞれのとらえ方、また学校においても教えていただきたいと要望するわけでありますが、さらに知事のおっしゃるとおりであると思います。
 さらに問題な点は、歴史教科書の中で、特に日本の近代史の中に、ただいま申し上げました金玉均の話以外にも、アジアの関係を中心として、教えられることのない事実が存在をしているわけでありまして、今次の大戦におけるアジア諸国と日本のかかわりで、教科書ではほとんど記述をされてないわけでございますが、私は、昨年でございましたでしょうか、「ムルデカ」という映画が上映されまして、これを見てまいりました。
 これは、インドネシアの独立運動の映画でありまして、それに対して、オランダ--日本が負けて、オランダが再侵略をしたときに、現地に残った日本人を頼りとするんですね。で、彼らは望郷の念もあるし、戦犯として捕らえられるわけですけれども、しかし、彼らはその中で、やっぱりアジア同胞としての非常に強い血というんですかね、思いというんですかね、その中で彼らはともに戦ったんですね。そして、二千とも三千ともいわれるとうとい日本人、日本兵、この命がインドネシアの地で倒れたわけでありますが、独立を達成いたしました。
 それに伴って、日本では、この亡くなった方々は、侵略戦争をした、その戦争過程の中の戦死というんですかね、戦犯戦死も含めて、この扱いでありますけれども、しかしインドネシアは、命がけで、いわゆる三百年のオランダの支配、圧制からともに解放運動をしてくれたこれらの日本兵のために、正確な教科書の記述をしているんですね。インドネシアの教科書、義務教育教科書の中でもですね。日本とこれは違うと思います。命をささげた日本人、インドネシアの独立のまさに英雄として、ジャカルタの英雄墓地に祭られているわけであります。独立記念日には今も、インドネシアの人々が日本兵の服装をして国旗を掲揚するなど、独立を支援してくれた日本、日本人、旧日本兵に対する敬意と感謝のあかしであるわけでありますけれども、このようなことは、先ほども申しましたけれども、日本ではほとんど知られておりませんし、現地では常識なことであります。
 こうした例は枚挙にいとまがないわけでありますけれども、このような日本の役割を含めて、アジア諸国と我が国のかかわり合いについてどのような歴史認識をお持ちか、知事の所見をお伺いできれば幸いであります。よろしくお願いいたします。

○石原知事 アジア諸国と日本の近代史におけるかかわりでありますけれども、もっとさかのぼって眺めますと、日本人という民族として誕生する過程というのは、これは決して自家発生的なものではなくて、この国土にもうはるばる東西南北から多くの民族が集まってきて混血をし、特に徳川三百年の鎖国の中で完全な混血を行ってでき上がったのが日本人であると思います。
 本来、この日本のある国土に最初から居住していたのは、いわゆるアイヌと呼ばれる人たちで、沖縄の人たちも、あるいは台湾におります高砂族の二十何種類かの中の十幾つ部族も、同じ言語形態を持っているというわけでありますが、いずれにしろ、我々のルーツは、本当にこのアジア全域に散らばってあるわけでありまして、そういうかねてからの歴史的な兼ね合いというものが、日本人をまた逆にアジアに出向かせ、いろいろな志のためにアジアに尽くしてきたといえると思います。御朱印船の貿易から、あるいは、タイで活躍してアユタヤ王朝のときに日本人町もつくった山田長政でありますとか、それが、白人によるアジアの植民地支配が始まった近代で、それに対する反発というものが、日本の起こした太平洋戦争の大きな歴史的モメントだったと思いますけれども、結果、私たちはあの戦に敗れましたが、しかしそれが引き金になって、ある人たちにいわせれば第三次世界大戦、それは、再び白人が戻ってきて、このアジアを植民地支配しようとしたときに、それに対する熾烈な抵抗が起こり、インドネシアもそうでありましたし、インドシナもそうでありましたし、多くのアジアの国が独立をいたしました。ということを、インドネシアの、私、じかにお目にかかったスカルノ初代大統領もいっておられましたし、ちょっと離れておりますけど、エジプトのナセル大統領もいっておりましたし、私の親友でありますマレーシアのマハティール首相も同じことをいっております。
 これは、さらにさかのぼって、日露戦争というものを大きな衝撃で迎えたトルコの国父のケマル・パシャが、日本のロシアに対する勝利というものを引き合いに国民を督励して、帝政ロシアの支配のくびきを断った、トルコを独立させたという史実にもあらわれております。
 反面、要らざる戦いを日本は中国大陸に展開もしましたが、しかし、このアジアにおける日本の諸国との近代におけるかかわりというのは、いろいろ複合的、重層的な意味があるわけでありまして、日本が起こした戦争というものが日本の敗戦に終わったがゆえに、すべてそれまでの日本の試み、努力が間違っていたということは、私は決していえないと思います。

○こいそ(明)委員 私、先ほど上映された映画の名前をいいましたが、インドネシア語で独立ということで、共同で制作したようでありますけれども、そこの映画館は若い人が大勢いましたですね。それで、涙をこぼす、出てくる。今まで知らない歴史を、そのような映画でありましたけれども、通して、事実の歴史を知ったということですね。
 ですから、ぜひ、先ほど申し上げましたけれども、あらゆる学校教育の場におきましても、事実を事実として近代史の歴史をぜひこれからも教える、当然必要性がありますし、そのあたりをよろしくお願いしたいと思います。
 次に、こうした歴史認識を持ちながら、現在の東京の都市外交について伺いたいと思います。
 二十一世紀に入りまして、現在は、ますます国境を越えた人、物、情報の交流が盛んになってきている状況の中にあります。特に、アジア大都市ネットワーク21の参加都市である台北を擁する台湾については、長い歴史的な経緯もあり、国交はなくても、実際には日台間の人々の往来、文化、貿易、投資等の交流はますます盛んになってきており、台湾の人々は日本に対して実に熱い視線を送っているわけであります。
 リップン・チェンシン、これは日本精神という言葉でありまして、これはもう何十年有余使われてきている言葉でありますし、今も使われています。この体現者である、そしてまた日本に親愛の情を持って常に国民も指導してきた一政治家の李登輝さんは、いわゆる政権の座からおりました。一民間人になりました。この方は大変紳士的であり、やはりこのようなリップン・チェンシンという精神、これをもととして、日々日々活動されてきたわけでありますけれども、この方が訪日したいというときに、外務省はビザの発給をしない。これだけ親愛の情を送り続けてきて、そしてまさに日本の心を心として生活をし、さまざまな活動をしてきたこういう人を、世界の常識から判断しても全く納得できないことでありますし、私は、これは大変おかしいことだ、非情過ぎるというふうにも思うところであります。
 さて、世界に冠たる国際都市である東京の知事として、我が国と歴史的につながりの深い台北など、またアジアの各都市とさらに積極的に都市間外交を進め、アジア全体の一層の発展を目指していくべきと思いますが、石原知事はどのようにお考えなのか、所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 外交というのは、政府だけが行うものでありませんで、民間の外交もございますし、役所にいない国会議員の外交もありますし、また都市同士の外交も十分あり得るわけでありまして、そういう点で、私は、過去のかかわりから見ても、自由経済圏として、かつては国家の概念でくくられていましたが、今非常に不思議な存在になってしまいましたけど、台湾という国のいわば首都ともいうべき台北の存在感というのは非常にあると思います。いろんな可能性を秘めたすばらしい都市でありまして、そういう点で、イデオロギーを超えて、何といっても首都は首都でありますから、その国を代表するいろいろな機能を持っているその大都市が、国境というものを越えて交流するということは非常に大きな意味があると思って、アジア大都市ネットワーク21なるものを私が提唱して発足いたしました。
 去年はインドに二度目の会合で行きましたが、担当の向こうの大臣が女性でありましたけど、この人が、石原さんごらんなさい、我々で植えた種がここまで育ったわということをいっておられましたが、いろいろ実のある討論をすることができました。今後もこれを充実させていきたいと思っておりますけれども、その台湾を代表する李登輝さんを、一民間人であり、しかも文化講演に訪れるといいながら、これを日本の外務省がビザを発行せず忌避するということは、もうまことに面妖というか、屈辱的なことでありまして、同じことが、実は、私のやっぱり親しいダライ・ラマについてもいえまして、ダライ・ラマは、先般は来日いたしましたが、私に会うことを禁じられて、ついに会うことが--向こうが自発的に遠慮して、私は構いませんよと申し上げたんですけれども、できませんでした。
 そういうイデオロギーというか、政治のあつれきというものを超えた交流というものを大都市こそが果たしていき、それがやがては、妙な部分で対立している国と国の関係も合理化していく一つのすべになると思っております。

○こいそ(明)委員 次へ移らせていただきます。
 先日、知事は記者会見で、北朝鮮の問題について言及されました。北朝鮮については、拉致問題以降、極めて厳しい状況が続いておりますが、そこで、外交機関、外交施設の固定資産税について何点かお伺いしたいと思います。
 まず、国交のある国の大使館や領事館について、都における固定資産税の取り扱いはどのようになっているのか、このあたりをお伺いしたいと思います。

○安間主税局長 お尋ねの大使館や領事館など外交関係の施設につきましては、外交関係に関するウィーン条約によりまして、租税を免除することとされております。
 都においても、固定資産税の課税を免除しております。

○こいそ(明)委員 それでは次に、国交のない国の場合ですね。または類似施設があった場合、都ではどのような取り扱いをされているのか、そのあたりをお願いします。

○安間主税局長 先ほどお答えしましたとおり、国交のある国の大公使館や領事館などにつきましては課税免除しておりますが、国交のない場合は、ウィーン条約に基づく課税免除はできないものでございます。
 しかしながら、国交のない場合でも、実質的に大使館、領事館に準ずる施設であると認められるものにつきましては、個別に調査の上、条例に基づき減免をしております。

○こいそ(明)委員 去る二月の二十日の新聞報道によれば、朝鮮総連の中央本部について課税を検討しているということがございました。朝鮮総連がどういう扱いをされているのか、また、総連関係の他の施設等々を含めて実態はどのようになっているのか、またどのような検討を行っているのか、行うのか、このあたりをお願いします。

○安間主税局長 特定の個人や団体に関する課税状況につきましては、守秘義務に抵触することとなりますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
 なお、固定資産税の減免措置を講じております施設につきましては、適宜、使用実態の調査を行ってきておりますが、今後とも、必要なものについては、調査の上、課税すべきものがあれば適切に対処してまいります。

○こいそ(明)委員 そうすると、朝鮮総連に対してはこれから課税をしていく、検討していくということになろうかと思いますね。
 石原知事にお聞きしたいと思いますが、新聞が二十日でありましたし、前の十九日、記者会見が行われました。北朝鮮系施設への固定資産税の課税を検討するというお話があったわけでございますけれども、再度、知事にこの問題についての見解をお伺いしたいと思います。

○石原知事 昭和四十七年、美濃部知事時代に、二カ所の建物を実質上の外交機関と認定して、今日まで減免を続けております。
 だけではなしに、私の個人事務所の間近に、大阪経済法律大学という北朝鮮系の、大阪にあるようでありますけれども、かなり高層の、十階を超えるようなビルディングがありまして、いまだそこに、学生らしき人だけではなしに、先生らしき人、これが出入りするのを見たことがありません。
 ただ、この建物は、看板は大学という看板を掲げておりますから、これまた学校ならば固定資産税を免除されているのかもしれませんが、こういった問題も含めて、徹底的に調べて、どう考えても外交の特権を付与されていない建物については、当然課税をすべきであるという指導をしております。
 先般も、非常に問題の多い朝銀に国の司直の調べが入りましたときも、これを妨害しようとした朝総連の人たちが、テレビカメラの前で、ここは治外法権だ、ここは一種の領事館だとわめいておりました。
 これは論外な認識といいますか、主張でありまして、そういった過ちというものが他の建物についても繰り返され、持続されているならば、これはやはりきちっと精査して、すべき税務というものを果たしてもらわなければ困ります。

○こいそ(明)委員 大変困難な問題もあり、大変だと思うわけでございますけれども、ぜひ頑張ってやってほしいというふうに思います。
 次に移らせていただきますが、ディーゼル車規制についてお伺いしたいと思います。
 ディーゼル車走行規制まであと七カ月をいよいよ切りました。都内で規制対象となるディーゼル車は二十万二千台に上がると聞いておりますが、現在、その対策として、PM減少装置の装着や車両の買いかえを既に行っている、または行おうと考えている事業者は、対応でき得る力のある事業者だというふうにいわれておりますが、これに対して、既に多くの借金があり、さらに借金をして買いかえることもできない、PM減少装置の補助制度があっても、残りの資金の手当てができないという零細事業者の方が、割合の中で大変多いというふうに私ども聞いております。
 そこで、都として、この経営基盤の弱い零細事業者にどのように支援を行っていくのか、改めて伺いたいと思います。

○小池環境局長 ディーゼル車規制を円滑に進めるためには、経営的に厳しい状況にある中小零細事業者への支援が不可欠だと考えております。
 このため、十五年度予算では、都財政が大変厳しい状況ではありますが、買いかえを支援するため、現行の融資制度を利用できない事業者も利用可能な新たな融資制度を設けますとともに、PM減少装置装着の補助総額を大幅にふやし、全体として支援策の拡充を図りました。
 中小零細事業者が、これらの支援策を活用して規制に適切に対応できるよう、今後、地域別の説明会などを通じまして周知していくとともに、総合相談窓口におきましても、個別の相談にきめ細かく対応してまいります。

○こいそ(明)委員 車の買いかえについて、都は新しい融資の制度をつくられましたけれども、これは中小零細企業にとっては当然朗報であるわけであります。
 しかしながら、これは直近の例でございますけれども、ある運送事業者が、これはちょっと名前は差し控えますけれども、大手の銀行のある支店に、新しい制度ができたけれども、どうなんですかというような事前の相談に行った。ところが、おたくの経営内容は芳しくない、簡単に融資を受けられる状況ではないと、まあいってみれば、すってんぺんに断られちゃったわけですね。
 これはほんの一例でありまして、もしもこのような事態があちこちで発生するようなことになるならば、都がせっかく新しくつくった融資制度はまさに全く意味のないものになってしまうわけでありまして、保証協会の保証なしで融資が受けられるという、中小零細企業者にとってはまさに救いの神的であったものが全く生かされない。
 このようなことのないよう、都は厳しい指導をすべきと思いますが、このあたりのご見解を伺いたいと思います。

○小池環境局長 ただいまお話のありました件につきましては、既に関係金融機関に対しまして、再度、制度の趣旨を窓口に徹底し、きめ細かな対応を行うように指示いたしました。
 今回創設しました新たな融資制度は、事業者に債務超過などの事情がある場合であっても、返済計画が認められれば利用可能な制度としております。また、金融機関側も、融資の実行について積極的な協力を約束しております。
 すべての取扱機関に対しまして、改めて本制度の趣旨を十分に徹底し、事業者の相談に親身に対応するよう強く要請してまいります。

○こいそ(明)委員 きめ細かく徹底して、この制度が有効に活用できるような施策、ぜひ実効が上がるようにお願いしたいと思います。
 さて、次に、厳しい経営状況の中で、ディーゼル車規制に対応しようにも、運賃を切り下げられ、対応が厳しい、また、もはや廃業するしかない、この零細事業者の切実な声を数多く聞くようになってまいりました。
 このような厳しい状況を十分に認識する中で、事業者へのよりきめ細かい支援を、総合窓口センターも開設されたというお話もございましたけれども、支援を強く要望するところであります。
 次に、条例規制への対応についてでありますが、現在市販されているディーゼル車の大部分は長期規制適合車であります。この車は、本年十月の条例規制には適合していますが、平成十七年以降、条例の規制が強化された場合は、初年度登録から七年の猶予期間経過後に、都内を運行できなくなってしまいます。
 聞くところによりますと、メーカーは長期規制車に出荷時から酸化触媒を装着して販売しており、これを買えば、十七年規制もクリアできるんだということをいっておりますが、これに間違いないんでしょうか。

○小池環境局長 環境確保条例によりますディーゼル車規制は、平成十七年には、粒子状物質排出規制値の強化が予定されております。市販されております長期規制車は、もともと国の自動車NOx・PM法に適合しておりまして、酸化触媒を装着することで、ただいま申し上げました条例の十七年規制にも適合し、継続して走行することが可能となります。
 このため、自動車メーカーは、現在、ほとんどの長期規制車につきまして、新車時から酸化触媒を装着して供給する体制を整えております。
 なお、既に販売されました未装着の長期規制車につきましては、酸化触媒を装着することで、十七年規制への対応が可能となります。

○こいそ(明)委員 ぜひこのあたりも、非常にわかりにくい部分がありますので、広報等々をさらに強化しながら、知らしめていただきたいと要望いたします。
 長期規制車であっても、十七年規制をクリアするには酸化触媒の装置が必要であることについて、事業者は十分今理解しておりません。都は、事業者にこのことを周知する必要があると思いますが、見解を伺いたいと思います。

○小池環境局長 都は、これまで事業者に対しまして、条例による十七年規制への対応につきましても説明を行ってきましたけれども、ご指摘のとおり、まだ十分に理解を得られていない点もございますので、さまざまな機会をとらえて、さらに周知していくことが必要だと思っております。
 今後、事業者に対しましては、地域別の説明会等を行う際に、酸化触媒を装着した長期規制車に買いかえることにより、条例の十七年規制にも対応できることを十分周知してまいります。

○こいそ(明)委員 規制に対応するために、事業者は、あすの仕事があるかどうかの不安を抱えながらも、DPF装置装着、酸化触媒の装着か、また新車の買いかえか、本当に深刻な悩みに直面をしております。
 事業者は、装着の値段が高い、新車の値引きが不十分だと思えば、ディーゼル車メーカー等がこの規制に便乗して暴利をむさぼっているのではないか、行政からも、条例の周知のためとはいえ、規制、規制といわれると、事業者だけが過大な負担を押しつけられていると受けとってしまうわけであります、現実受け取っておりますけれども。
 今回、十五年度予算では、事業者の切迫した経営状況を背景とした我が党の要請にこたえ、新しい融資制度の創設、DPF装置などの装着に関する補助総額の大幅な増額を行っております。
 都としては、メーカー等に対して、不当な値上げを行わないよう、強い態度で臨むべきと考えますが、ディーゼル車規制をまさに提唱されてきた石原知事の所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 商売をしている人は、だれでも、どこででも、何かに応じて、少しでももうけようというたぐいが、すべてとはいいませんが、往々にしてございますけれども、これは何といっても人間の健康、人命に関係のあることですし、また、けしからぬとされる製造当事者も同じ空気を吸っているわけであります。
 ただ、今日の深刻な大気汚染を招いた根本的な原因は、あくまで国の自動車排出ガス規制の怠慢でありまして、一時は引きずられて進むかと思ったら、逆に、今度戻っちゃった。これに対抗して、東京なり首都圏を構成する限られた県なり都市が同じ歩調で歩んでも、しょせん日本の一部でありまして、ざるで水をすくう徒労感がないでもありませんが、しかし、やはりこれはあえて行うことで、世間も、国民も、この事態を認識してくれるものと思います。
 その中で、こういう歴史的な動きの中で、そこで利益というものをむさぼろうとするような立場の人間があるとするなら、社会がそれを許さないという形で、それを代表する都なり--本当なら、国家がこういったものに強い姿勢で臨むべきだと私は思っております。
 今後、ある種の公開質問というようなものを設けて、その返答といいましょうか、その辺の反応いかんでは、これは皆さんにまたお諮りしますけれども、国に対するストライキのようなものまで何か考えて、やっぱり動かない国に国民が報復するということも考えなくてはならないかなという気がいたしております。
 いずれにしろ、東京がやっていることを横目で眺めているだけの環境省なり経産省ですか、これを強引にでも動かして、ご指摘のような許せない事実というものを社会的に淘汰していくことが肝要だと、その努力をするつもりです。

○こいそ(明)委員 ぜひよろしくひとつお願いしたいと思います。
 ただいま知事からご答弁をいただきましたが、実はDPF装置の関係につきまして、これはご答弁をいただかなくても結構なんですが、タンクローリー、トレーラー、レントゲンの検査車、これが実はDPF装置が着装できない。厳密にいえば、構造を変えて装着はできるそうであります。ところが、大変なこれは見積もりといいますか、金額になってしまう現状があるんですね。
 ですから、このような特殊車両、DPF装置を装着するにも大変難しいという現実の壁があるところに対して、今後ともしっかりとした検討を加えていただきたいなと。これは要望でありますけれども、もしご感想等ございましたら、ご答弁いただければありがたいと思いますが。

○小池環境局長 ただいまご指摘がありましたように、特殊車両につきましては、それなりの改造を伴うものというものが結構ございます。そこらあたりにつきまして、PM減少装置の開発を含めまして、引き続き検討してまいりたいと思います。

○こいそ(明)委員 それでは、次に移らせていただきます。
 次に、財政再建について伺います。
 本会議と本予算特別委員会におけるこれまでの質疑を通じまして、財政再建の取り組みを検証してまいりましたが、この四年間、着実に成果を上げてきたと評価できるところであります。
 今日、我が国経済はデフレが進行する中、東京の経済を支える中小企業の経営はますます厳しくなっているなど、東京の活力の一日も早い再生は都民共通の願いとなっております。こうした課題に取り組んでいくことが、今後の都政になお一層求められておりますが、そのためには、新たな施策を可能とする財政基盤の確立が重要であろうと思います。
 知事は、新たな財政再建のプラン策定が必要なことをお話しされました。そして、予算特別委員会での我が党の星野理事の質疑において、都税収入は六十二年度の水準まで低下しているのに対して、歳出水準は依然として高くなっている。今後とも税収の伸びに期待できない中にあって、歳出基準を身の丈に合ったものとしていく必要性があるとの議論がなされたところであります。
 十五年度予算案では、徹底した歳出の削減を図ったにもかかわらず、なお二千五百億円の財源不足が残り、厳しい状況が続いています。
 そこで伺いますが、今後の財政収支をどのように見ておられるのか、このあたりをお願いしたいと思います。

○田原財務局長 財政再建推進プランに基づきまして、都が独力で対応可能な取り組みにつきましては、目標額をすべて確保いたしました。都財政を取り巻く環境はさらに厳しさを増しておりまして、都税収入がプラン策定時の見込みを約三千三百億円下回っておることなどから、十五年度予算案では、今お話しのとおり、なお二千五百億円にも上る財源対策を講じることになりました。
 こうした状況に加えまして、国から地方への税源移譲も一向に進んでおりません。都財政の再建はまだ道半ばというような表現をしております。
 今後の財政収支の見込みでございますけれども、低成長が続く中で、都税収入につきましては、今後もその伸びを期待することはできない。そういう一方、歳出面では、高齢化に伴います社会福祉関係の増加、さらには公債費の増加などが見込まれておりまして、このまま手をこまねいていれば、毎年度三千億から四千億円もの財源不足が生じるおそれがあると考えております。

○こいそ(明)委員 財政再建のための新規のプランでありますが、当然これまでのプラン以上に、さらに取り組みを進めていかなければならないわけであり、大変な努力が求められると思います。
 そこでまず、一般会計の歳出を財政再建推進プラン取り組み前の十一年度に比べると、十五年度は総額で五千七百億円の減少となっております。こうした減は、福祉改革による新たな取り組みなど、必要な施策の実施を図った上でのものですから、この四年間の見直しはさらに大きかったものと考えますが、いかがでございましょうか。

○田原財務局長 この四年間、財政再建推進プランに基づきまして、職員定数の削減など内部努力の徹底や、聖域のない施策の見直し、再構築に取り組みまして、大幅な歳出削減を図ってまいりましたけれども、一方で、認証保育所ですとか効果満点道路事業、さらには都独自のディーゼル車対策などの新規事業を含めまして、都市再生や都民の安心、安全を確保するための施策については積極的に推進をしてまいったつもりでございます。
 その意味では、四年間の歳出額の減、今お話がありました五千七百億円は、こうした施策の実施によります増額を含んでの結果であります。そういうことから、内部努力や施策の見直しなどによる歳出削減の努力は、ご指摘のとおり、実質的にはこれを上回るものであったということができます。

○こいそ(明)委員 当たり前の話でありますけれども、これからも都市再生の推進や産業の活性化などの重要課題に取り組んでいかなければならないと思います。というわけで、その財源を捻出しつつ、財政再建を進めるには、これまで以上の内部努力や施策の見直しがなければならないと思うわけでありますけれども、そこで、経費の構造から見てみたいと思いますが、主な性質別経費について、十一年度と十五年度の予算額と増減を示していただきたいと思います。

○田原財務局長 まず給与関係費は、十一年度、一兆八千七百七億円、十五年度には一兆七千三百三十一億円でありまして、一千三百七十六億円、七・四%の減となっております。
 この間、都区制度改革がありまして、清掃移管にかかわる人件費分が減少額に大きく影響しております。このため、これを除いて比較をいたしますと、六百十億円、三・四%の減となっております。
 また、各種の補助金などを含めます補助費等は、十一年度、七千五百八十八億円、十五年度、七千四百八十一億円でありまして、百六億円、一・四%の減にとどまっております。
 ただいま申し上げました給与関係費と補助費等の減少幅につきましては、歳出額全体がこの間で九・〇%減となっておりますので、これと比較をして小さくなっている状況にございます。
 次に、物件費でございますが、十一年度、三千七百三十八億円、十五年度、二千七百五十八億円でありまして、九百八十億円、二六・二%の減でございます。
 投資的経費につきましては、十一年度九千七十四億円、十五年度は六千二百六十五億円でありまして、二千八百九億円、三一・〇%の減となっております。それぞれ大幅に減少しております。
 また、公債費につきましては、十一年度、四千二百八十八億円、十五年度、四千八百二億円でございまして、五百十四億円、一二・〇%の増といった状況になってございます。

○こいそ(明)委員 投資的経費などは大きく下がっておりますけれども、この四年間のプランの取り組みを行っても、給与関係費や補助費等、公債費といったところはなかなか減っておりません。次のプランでは、これに対する取り組みは当然課題になると思います。
 社会経済情勢の変化に応じて補助費等の見直しに取り組むことはもちろんですが、義務的経費である給与関係費、公債費についても、今後、踏み込んでいかざるを得ないと考えます。
 次に、公債費ですが、元利償還金、手数料とともに減債基金積立金を内容としており、十五年度予算案でも、財源対策として基金積み立ての一部見送りを行っているところですが、この減債基金の積み立てはどのようなルールとなっているのか伺いたいと思います。

○田原財務局長 都債のうち主要な公募債、公募十年債については、平成三年度までは、元金につきまして三年を据え置いた後、半年ごとに一定額を償還してまいります、定時償還方式といわれますけれども、こういう方式がとられておりました。しかし、この方法では、満期前に元金の償還が行われるなど、投資家にとって安定した運用が困難なものとなっておりました。
 このため、都債を含むすべての公募地方債につきましては、平成四年度からでありますが、元金を十年後の満期到来時に一括して償還をいたします満期一括償還方式に変更して、これまで実施をしてきております。減債基金につきましては、この満期一括償還に備えるために、満期償還時の負担を平準化いたしまして、将来の償還財源を安定的に確保するため、積み立てを行うものであります。
 満期一括償還方式に切りかわった際に、国の通達が出されました。元金部分につきまして三年据え置いた後、四年目から七年間、毎年六%ずつ基金に積み立てる、こういうルールが定められました。都におきましては、この国のルールに基づきまして、これまで積み立てを行ってきてまいったところでございます。

○こいそ(明)委員 将来の都債の償還に備える減債基金積み立ての重要性はいうまでもありませんが、国の定めた一律のルールについては、償還方法は既に満期一括償還に全国的に切りかわったことと、十八年度の地方債の許可制度の廃止をにらめば議論の余地があり、世代間の負担の公平を配慮して、基金の取り崩し額と残高のバランスをにらみながら、都の実情に合った方法を考えてもよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○田原財務局長 お話のように、十八年度には地方債許可制度が廃止をされます。地方分権の流れが進む中で、地方債の発行については、今後は、各自治体が自己責任に基づきまして、みずからの信用力で市場から資金調達を行うことが必要となってまいりました。
 減債基金につきましては、これまで、償還時の財政負担を平準化する重要な役割を担ってきました。ただ、厳しい都財政の状況が続く中で、今後とも、都債の償還を安定的、計画的に進めていくことが不可欠であります。
 このため、都の実情に即した基金積み立ての方法などについて考えることは、財政健全化を進める上でも大変意義があると思います。今後、十分検討してまいりたいと思います。

○こいそ(明)委員 また、給与関係費については、これまでも定数削減や職員給与の臨時的な削減などの努力をされていることは、当然承知をしているわけでありますが、今後とも総額の抑制を図り、内部努力をより徹底することが必要だと思います。
 新たなプランの策定に当たっては、ただいま述べましたように、給与関係費や補助費等などの経費について、これまで以上に、内部努力を初め見直しや工夫を行うなど、徹底した姿勢で臨む必要があると思いますが、知事のお考えをお伺いいたしたいと思います。

○石原知事 現況の経済動向を眺めますと、財政再建推進プランをまたさらに新規に構えなくてはならないのは、言をまたないことだと思います。ただ、このデフレスパイラルというのは非常に厄介でありまして、都庁の周辺に多いホームレスの方々を眺めても、非常に痛みを感じ、危機に陥っていられる方々はお気の毒ですが、これはごく限られておりまして、失業は確かに史上最悪のものになっておりますが、ならば、そういうピンチに立たない人たちはどうかというと、これ、案外財政的な危機感がない。物価が下がり、ということで、相対的に賃金が上がったに等しいような状況の方も多くて、社会的に危機感が、財政的な危機感が、むしろ深刻さに比べて薄いという、非常に皮肉な現象が起こっています。
 そういう中で、当然都民、国民としては、これもやれ、あれもやるべきだという需要があるのはうなずけますけれども、しかし、それを賄うべき都なり国が、実は非常に、特に国は大変でしょうけれども、ピンチに近いところにあるという認識が、なかなか国民、都民に持っていただけない。そういう状況の中で、財政再建の取り組みをさらにステップアップして進めるためには、地方税財政制度の改革をせっかくいい出しているんですから、国に強く求めるとともに、我々自身の歳出の水準を身の丈に合ったものにするために、さらにぜい肉をそぎ落として、歳出構造を一層スリムなものにしていかなければならぬと思っております。
 都市再生や都民の安心、安全の確保などに積極的に対応しながら、こうした取り組みを思い切って進めるには、補助費等などの経常的な経費をどれだけ見直すことができるかというのが、今まで以上にポイントとなると思います。
 したがって、これまで以上に厳しい内部努力や聖域のない施策の見直し、再構築を徹底することによって、これらの経費を含め、より一層の歳出の抑制を図っていく必要があると考えております。

○こいそ(明)委員 それでは、次に移らせていただきますが、次は、江戸開府四百年の事業に関連して伺いたいと思います。
 江戸の町は、都市施設から風俗、習慣、文化に至るまで、今日の東京の源流になっていると思うわけであります。特に、人口百万を超える、当時世界最大の都市であった江戸のにぎわいは、近代日本を形成するもととなったものでありますし、歴史学の観点からも、近年、大きく見直されているところでもあります。江戸開府四百年事業は、こうした歴史的な基礎をベースにしつつ、東京、そして首都圏の再生のための起爆剤とする、極めて意義深い事業であろうと思います。
 ところで、この意義を多くの人たちと分かち合うには、関係する方々が連携を密にするとともに、その役割に応じた積極的な取り組みが必要であると思います。現在、東京都のほかに、東京商工会議所、東京都商工会議所連合会など二十二の団体がメンバーとなっている江戸開府四百年事業推進協議会がつくられています。
 事業の推進に取り組んでいると聞いておるわけでありますが、そこでまず、現在、この四百年事業はどのような形で進んでいるのか。また、ことし一年間、東京を四百年事業で盛り上げていくには、どのような進め方を考えておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。

○三宅生活文化局長 江戸開府四百年事業推進協議会では、イベントカレンダーやホームページなどによる共同の広報を行うとともに、地域や企業に働きかけて、四百事業を目標に、事業の掘り起こしに努めております。現在、四百年事業全体では、三百三十を超える事業数となっております。
 推進協議会では、今後一年を通して江戸開府四百年事業を盛り上げるために、四季折々に節目を設けて事業を集中させ、めり張りのある事業展開を行ってまいります。

○こいそ(明)委員 江戸開府四百年事業は、東京再生の起爆剤となる極めて意義深い事業であります。とりわけ、この秋に開催される史上最大商店街祭りは、東京の商店街振興のシンボルとなるばかりではなくて、環境、情報、ボランティア、また国際化の四つをテーマに据えて、二十一世紀の東京のまさに商店街のあり方を全世界に発信するという点で、四百年事業の中にあって、極めて重要な位置を占めているものであると考えるわけであります。この事業に対してどのような支援を行うか、このあたりをお伺いしたいと思います。

○有手産業労働局長 史上最大商店街祭りは、江戸開府四百年事業の一環としまして、東京都商店街連合会及び東京都商店街振興組合連合会が主催し、先駆的な商店街の取り組みを示すなど、商店街の魅力と発展の可能性を広くアピールする意欲的な催しでありまして、都内各地の商店街の活性化に資するものであると考えております。
 したがいまして、この催しがより高い効果を発揮するように、参加する商店街に対し、新・元気を出せ商店街事業によって支援するなど、局事業を挙げて積極的に活用してまいりたいと考えております。

○こいそ(明)委員 史上最大商店街祭りは、秋の節目とする時期に開催される事業であります。東京の抱える課題を幅広く扱い、数多くの団体と都民の皆さんの参加によって催されることなどから、この事業を、産業労働局に限らず、広く関係局を取り込んで、江戸開府四百年事業の中核と位置づけるべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。

○三宅生活文化局長 江戸開府四百年事業は、三つのテーマのもとに事業を推進しております。お話の、商店街が広く参加して実施される史上最大商店街祭りは、テーマの一つでございます、文化の花開く祝祭都市に位置づけられておりまして、四百年事業の中でも中核的な事業であると認識しております。
 東京都といたしましても、この事業が成功裏に開催されるよう、推進協議会の中でも十分話し合っていきたいと思っております。

○こいそ(明)委員 江戸開府四百年事業は、東京を語り、考える上からも千載一遇の機会だと思うわけであります。この史上最大商店街祭りこそは、その中核となるものとまさに考えるわけでありまして、もっと積極的な支援の姿勢は示せないのかと、このように思うわけでありますが、知事のご所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 知事の私が、今ここで愚痴をいってもしようがないんですけれども、私、ことしが江戸開府四百年だというのは、去年の、そうですね、正月過ぎぐらいにやっと知らされまして、それまで、全然私の念頭にございませんでした。ことしが、せっかくそれだけの由緒のある年ならば、もうちょっと前からいろいろ案を出し合って、準備をしたらよかったのになという感じがつくづくするんです。
 この商店街の史上最大商店街祭りといったって、史上最大かどうかわからぬし、これが果たして中核なのかどうかわかりませんし、大西委員の不規則発言のお怒りのとおりがよくわかるんですが、本当にもう少し早く持ちかけられれば、いろんなアイデアを、私、民間ともはかって、世界じゅうから人の集まるイベンドができたと思うんですけれども、今じゃ本当にせんないことで、時間が足りない、間に合わないという感じがいたします。
 次の五百年のときには頑張るつもりでございますけれども(笑声)いずれにしろ、この商店街祭り、商店街が大同団結して、その振興を通して東京を再生していこうとする意義の深い事業であります。商店街も疲弊しております。これが一つの大きなてこになればと思いまして、余り時間もございませんし、まだ策も出そろっておりませんが、都としても、精いっぱい応援していきたいと思っております。

○こいそ(明)委員 秋の開催ということでありますし、若干時間もございますし、また、知事から非常に積極的なご答弁もいただいております。どうぞ全庁挙げて、この史上最大商店街祭りをぜひ盛り上げていただきたい、強く要望いたしまして、このあたりはここで終わらせていただきたいと思います。
 次に、中小企業制度融資について伺います。
 制度融資は、都の中小企業金融の中心として極めて重要な役割を果たしておりますが、その仕組みは、都が信用保証協会を通して金融機関に原資を預託し、これによって金融機関の資金調達コストの低減を図り、円滑な融資を図るというものであります。十五年度予算案では、二千二百十億円に及ぶ預託金が計上されております。
 しかし、創設以来既に長期間が経過をし、その間、社会経済状況が大きく変化しており、とりわけ金融情勢は、近年、急速に変わっております。こうした中で、中小企業に対する中心的施策である制度融資を今後とも効果的に行っていくためにも、都の方法が現状このままでよいのか、見直すべき時期に来ているのではないかと思うわけでございますが、そもそも制度融資は、間接金融として金融機関の手をかりて行うという仕組みであり、金融機関にとっても、信用保証がつきますので、何らリスクを負うものではありません。
 しかも、公定歩合が〇・一〇%という現下の超低金利のもとで、金融機関の資金調達コスト自体が著しく低下をしているわけであります。こうした状況の中で、制度融資の預託金の仕組みが今のままでよいのか、見直すべきではないのかと思うわけでありますが、認識をお伺いいたしたいと思います。

○有手産業労働局長 金融機関の資金調達コストは、公定歩合や預金金利などに調達事務経費等を加えたもので、銀行の一・二四%から信用組合の二・一六%まで、業態によって差がございます。融資をする場合は、この調達コストに貸出事務経費などを上乗せして金利を設定しているところでございます。このため、一〇%近い金利が適用された例もあると伺っております。
 一方、制度融資の場合は、都が預託をすることにより調達コストが引き下げられ、セーフティーネット型融資のように、一・五%等の低い利率を政策的に設定することが可能でございます。預託金の機能、金融機関の資金調達コストの相違等に着目し、効率的な制度運営に向けて、今後、さらに検討を行ってまいります。

○こいそ(明)委員 次に、現在、預託については、中小企業の利用を図るため、都市銀行、地方銀行と信用金庫、信用組合などの地域の金融機関に行われております。都市銀行、地方銀行には八百七十億円の預託金が振り向けられております。しかし、都市銀行については、資金の調達に困るどころか、その運用に苦労する状況であり、国債投資などを積極的に行っていると伝えられております。
 一方、地域金融機関は、預金の確保にも苦労をしているというところであります。しかも、金融再編の加速や大手銀行への公的資金の注入等により、都市銀行と地域金融機関の体力差は、本当に広がる一方であります。
 そこで、預託先の金融機関ですが、こうした状況のもとで、地域金融機関に引き続き資金供給することは必要でありますが、都市銀行に対しては、都が資金をわざわざ供給する預託の必要性自体を含めて、抜本的な見直しを検討すべきと考えますが、お考えを伺います。

○有手産業労働局長 制度融資におきましては、都が預託することにより資金調達コストが引き下げられ、政策的な低利融資が実現されております。特に、政策金利を設定しておりますセーフティーネット型の経営安定支援資金融資や新技術開発及び創業関連融資などのいわゆる政策誘導型融資におきましては、いずれも銀行が七割を占めております。
 今後、預託のメリットにも留意しつつ、ご指摘の点も踏まえ、効果的な預託のあり方を検討してまいります。

○こいそ(明)委員 ぜひ効果的な預託のあり方を検討し、また、そのような方向に進めていただきたいと思う次第であります。
 次に、都市農業の育成について伺います。
 私は、先日、あのマイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツの言葉を聞きました。この世紀はまさに農業の時代になる、農業というのは近未来産業であるというような観点からの話をされておりました。食糧自給率が一二〇%の食糧輸出大国アメリカにおいてさえも、さらに自給率を向上させるべきだと、こんなことをいっております。
 将来の世界の食糧需給は、多くの不安要因を抱えながらも、膨大な人口を抱える中国は、今や世界の食糧輸入国となっております。また、多くの開発途上国でも、今後、大幅な消費の増大が見込まれ、長期的には世界の需給バランスが崩れ、食糧の逼迫する懸念が出てきております。
 一方、我が国の食糧自給率を見ますと、昭和四十年度の七三%から、何と平成十二年度の四〇%へと、大幅に低下をしております。主要先進国の中では、まさに最も最低水準となっており、多くの国民がこうした状況に不安を抱いております。
 この背景には、私たちのライフスタイルの変化に伴うファーストフード等の外食化や調理食品の購入の増加などに見られる食の外部化の進行も、一要因として挙げられると思います。
 私は、将来の我が国の農業を考えたとき、消費者と生産者がもっとコミュニケーションを深めるとともに、未来を担う子どもたちが、食や農について体験し、学ぶ必要性があるのではないかと思うわけであります。
 このような中で、東京の農業、とりわけ都市農業を見ると、現状、どうでしょうか。都市農業は、都民の食卓に新鮮な農産物を届けるとともに、緑豊かな農地は、私たちの生活環境に潤い、安らぎを与えるなど、大変重要な役割を果たしております。また、千二百万の都民の身近で営まれていることから、いわば我が国の農業のショーウインドーともいえるのではないかと思います。
 こうしたことから、都市農業が都民と一緒になって食と農について考える場となることは、大変意義のあることではないかと思うわけであります。また、私は、都市農業の意義を再評価し、新たな農業の展開に向けて、農業者を支援しながら、都民とともに大切に育てていくべきであると考えます。
 そこで、こうした観点から幾つか伺いたいと思いますが、まず初めに、都市農業の現状と農政の取り組み状況についてお伺いしたいと思います。

○有手産業労働局長 都市農業は、農地の減少や担い手の高齢化などの問題を抱えながらも、大消費地に立地するメリットを生かし、新鮮で多様な農産物を提供しております。特に最近は、農業者が創意工夫を発揮いたしまして、共同直売所での販売や、観光農園、体験農園などの開設、特産品の開発など、都民ニーズにこたえようとする意欲的な経営がふえております。
 都といたしましては、こうした新しい芽を大切に育て、都民の暮らしに積極的に貢献する農業、収益性の高い農業を目標として農政を展開しているところでございます。

○こいそ(明)委員 今、観光農園がふえているというお話もありましたが、私の地元でも、ナシ、ブドウなどの生産も盛んで、観光農園も大変頑張っております。知事も、ぜひ一度訪れていただきたいと思うわけでございますけれども、また、最近は、ブルーベリー、そしてまたリンゴなどの生産に取り組む農家もふえてきております。観光農園は、収穫体験などを通じて子どもから大人まで楽しめるレクリエーションの場として、都市の中の貴重な空間であり、また、地域における観光資源などとして、地場産業全体の発展に向けても重要な産業であると考えるわけであります。
 そこで、こうした都民の交流型農業ともいうべき観光農園にもっと光を当てて、都として、今後どのように農家を支援していくのか、伺いたいと思います。

○有手産業労働局長 近年、花の摘み取り農園や果樹のもぎ取り農園などの農業者のアイデアあふれる観光農園が開設されまして、多くの都民の方が訪れ、にぎわいを見せているところでございます。
 都は、これまでも、農業との触れ合いの場となる観光農園の整備を、都の独自施策である活力ある農業経営育成事業を通じて促進してまいりました。
 今後、都民との交流に意欲的に取り組む農業者を支援し、多くの都民に潤いと安らぎをもたらす観光農園など交流型農業を積極的に推進してまいります。

○こいそ(明)委員 観光農園における農業との触れ合いの次に、とりわけ子どもと農業との触れ合いについて伺いたいと思います。
 私は、次代を担う子どもたちの農業体験学習は、食料や農業について学ぶこととあわせて、豊かな心をはぐくむなど、人間形成にとっても大きな効果があると考えております。
 土に触れて自然の息吹を感じ、大地の恵みを感謝して味わう、食べ物を生産する過程を学びながら食べ物の大切さを感じる。こうしたことは、子どもたちにとって大変意義深く、貴重な体験といえるのではないでしょうか。
 そこで、都は、都市農業を振興する観点からも、子どもたちの農業体験学習についてどのように取り組むのか、伺いたいと思います。

○有手産業労働局長 都では、子どもたちの農業体験学習を積極的に推進するため、今年度から、都民参加の東京農業推進事業を実施しております。
 今年度は、教育委員会と連携いたしまして、小学校十校を選定し、農家の畑での野菜栽培や豚の飼育への取り組みなど、特色あるモデル学童農園を設置いたしました。
 これらの学校では、種まきや収穫などの農業体験とあわせて、収穫した農産物をみずから料理して味わうなどの、食と農の体験学習を実施しております。
 十五年度は、新たに十の小学校においてモデル学童農園の設置を進めていく予定であります。

○こいそ(明)委員 さて、目を我が国の社会経済状況に転じますと、一向に先行きの見えない経済状況やリストラなどで、私たちの暮らしは日々の生活に追われ、経済的にも精神的にも余裕がなくなってきております。
 こうした中で、今世間では、スローライフ、スローフードという言葉が聞かれるようになってまいりました。これまでの生活を見直して、もっとゆったりとした、精神的に豊かな生活を送ろうとするものであります。食生活の面では、地域の食材や食文化など、食の多様性を見直そうとするものであります。
 都市農業における観光農園や子どもたちの農業体験学習、地域特産物の開発、育成などは、まさにこうしたスローライフ、スローフードにも対応し、私たちに、いやしや潤いを与えてくれるものであります。
 私は、都市農業こそ、こうしたさまざまな都民のニーズにこたえてくれる、実に魅力ある産業であると考えております。今後も、新たな分野を積極的に開拓して、その活力を全国に発信していくべきだと思います。
 そこで、最後に知事に、これからの都市農業の振興方向について所見を伺いたいと思います。

○石原知事 ご質問のついでにお説教をするつもりもございませんが、冒頭、日本の農業の自給率について申されましたけれども、私は、この日本の自給率が非常に低いということ、経産省ですか今、通産省とか、農水省は、いつも国家の安危にかかわるというとらえ方しかしていませんでしたが、これは外交の観点から見ると、日本が多量の農産物を入れているというのは、日本の一つの力なんですね。これはカードにもなるんですね。それが、どうも今まで意識されずに来たという気がしまして。例えば、日本に多大な農産物を輸出しなければ立っていかない農業を持っている国、たくさんあるわけですね。かといって、私は、自給率が低いままでいい、日本の、自国の農業が今のままでいいというつもりはございません。
 この東京の都市農業を見ますと、他県などにない非常にユニークな、何というのか、製品がたくさんありまして、例えば「TOKYO X」の豚肉とか、東京シャモとか、あるいは、非常に珍しいナシとか、ついでに申しますと、なかなか他県にない地酒とか、そういったものを私たちやっぱり、嗜好の非常に進んだ、うるさい、東京という大都市、大消費地の中で、そういう需要にかなう新しい製品を他県に先んじて東京こそはつくっていくということは非常に、東京の将来にとっても日本の農業にとっても非常に示唆的であると思います。
 今後も、こうした東京の特性を生かしながら、都市農業を、東京にとっても重要な魅力のある産業として育成するために、農業者の創意工夫をもとに、区市町村と連携して取り組んでいきたいと思います。

○こいそ(明)委員 それでは、時間の関係がありますので、次に移らせていただきます。
 次に、福祉改革について伺います。
 今回の予算特別委員会では、福祉改革をめぐるいろんな議論がありました。このうち、私は、共産党の大山委員の認証保育所に対する主張を聞いておりまして、大変に、要するに、毎回いわれておりますので、うんざりといいますか、そのような気持ちになったわけでありますけれども。
 というのも、相も変わらず、営利企業が行う認証保育所は保育サービスの質の面で問題があるので、認可保育所中心の整備こそ進めるべきだという、一見利用者のことを考えているようでありますけれども、実は認可保育所の保育士たちの既得権擁護に奔走し、最も大切にすべき利用者のことなど全く考えていないということであります。
 そこで、事実の確認を含めまして、私から改めてこの認証保育所について何点かお伺いいたしたいと思います。
 まず、この認証保育制度は、平成十三年五月に創設をされたわけでありますが、そもそもこの制度をつくるに至った理由なり背景は何であったのか、改めて伺いたいと思います。

○川崎福祉局長 認証保育所は、女性の社会進出が進み、就労形態が多様化する中で、民間企業の参入を促進し、利用者の選択の幅を広げることにより、これまで認可保育所が十分対応し切れなかった大都市特有のさまざまな保育ニーズに柔軟かつ的確にこたえようと、都独自の制度として創設したものでございます。
 認可保育所と比較いたしまして、駅前での設置、全施設でのゼロ歳児保育の実施、十三時間以上の開所、保育所と利用者との直接契約制などを主な特徴としており、利用者本位の質の高いサービスを効率的に提供し、都の保育サービス全体のレベルアップを図るものでございます。

○こいそ(明)委員 要は、認可保育所は、親御さんにとって最も切実なニーズにこたえることは--認可保育所は、親御さんにとって最も切実なニーズにこたえることができていない。つまり、利用者本位のサービスが提供されていないということであり、こうした状況を打破するために認証保育制度をつくったということで受けとめさせていただきました。
 それでは次に、サービスの違いについて、具体的な数字で伺います。
 認可保育所と認証保育所、それぞれのゼロ歳児保育と延長保育の実施状況はどうなっているのか、認可保育所については、公立、私立の別に教えていただきたいと思います。

○川崎福祉局長 先ほどお答えしたように、認証保育所はすべてにゼロ歳児保育が義務づけをされており、また、開所時間は十三時間開所、すなわち、認可保育所でいう二時間延長が必須の条件となっております。
 これに対して、認可保育所におきますゼロ歳児保育については、平成十四年度当初で全体で七三%、公立保育所では六六%、私立保育所では八六%の実施率となっております。
 また、延長保育については、全体では五四%、公立では四五%、私立では七〇%の実施率でございます。
 しかも、これはほとんどが一時間延長であり、認証保育所の開所時間の基本でございます十三時間に相当する二時間延長を実施している認可保育所は、約千六百カ所あるうちわずか二十九カ所、一・八%と極めて低く、しかも実施しているのは十二区市のみであり、公立での実施は四区にすぎないのが実態でございます。

○こいそ(明)委員 共産党は、認証保育所が認可保育所に比べてサービスの質の面で問題があると盛んに主張していましたが、事実は全く逆なのです。
 共産党はまた、よく、こういう声もある、ああいう声もあるというように一部の方の意見を引き合いに出しまして、それをさも一般的なものとして普遍化し、主張なさる……(発言する者あり)聞いたよ。主張なさるのがお得意のようですが、私もこの認証保育所については多くの方からのご意見を聞いています。
 そこで、親御さんからのご意見をご紹介いたしましょう。
 最初は、公立の認可保育園が一番安心だろうと思い、希望どおりに公立に入れました。お迎えのときに子どもの一日の様子を聞きたいが、こちらが尋ねないと話してくれません。もっと話をしてほしいとお願いしたら、連絡帳に細かく書いてあると冷たくいわれたのであります。大いに不安を抱えているときに、駅のそばの便利な場所に認可保育所がオープンをしました(発言する者あり)認証保育所がオープンをしました。重要なところですから。期待半分、まさに不安半分で転園いたしましたが、ここでは園長先生が、朝からお迎えのときにはほとんどおられる、必ず声をかけてくれる、コミュニケーションができるわけですね、担当の先生も、きょう頑張ったことなど、必ず話してくれるというわけであります。若い先生が多いし、優しい園長先生のもと、ひたむきに取り組んでいる感じがひしひしと伝わってくる。認証保育所でできることが、公立保育園ではなぜできないのか、という声であります。
 また、認証保育所では、スイミング、それから書道、茶道など、それぞれの専任講師を非常勤として採用して、児童の発達段階に応じた幼児のいわゆる教育プログラムの実践をきめ細かくしております。子どもを預かってもらえるだけでも助かるのに、この認証保育所は児童教育に非常に力を入れているので、選んで本当によかったという声であります。実際の声であります。
 なぜこのような違いが生じてくるのでしょうか。
 まず、サービス水準を示すもう一つの事例として、共産党がよくいう職員の配置について伺います。朝夕という人手が手薄になる時間帯に、認可保育所、認証保育所では職員の配置をどのようにしているのでしょうか。実態を教えていただきたいと思います。

○川崎福祉局長 朝夕の職員配置の態様はさまざまであり、一概にはいえませんが、認可保育所、特に公立では、通常の昼間の時間帯、いわゆる九時-五時の時間帯を中心に常勤職員の勤務ローテーションが組み立てられております。その結果として、人手が手薄となる朝夕の時間帯は主にパート保育士に頼っているというのが実態でございます。
 これに対し、認証保育所では、通常、その開所時間全般を通じて職員の勤務ローテーションを組み立て、送り迎えなど人手のかかる時間帯には手厚い職員配置を行っております。
 これは一つの例でありますが、同規模程度の認可保育所と認証保育所におけるお迎えでの人手のかかる夕方五時半ごろの職員配置を比較いたしますと、認可保育所が常勤職員三名、非常勤職員二名の五名体制に対して、認証保育所は常勤職員五名、非常勤職員一名の六名体制で臨んでいるケースがございます。また、親の不規則な勤務などにより送り迎えの時間が日々異なる児童の情報をあらかじめ集約し、それに合わせて弾力的に勤務ローテーションを組みかえるなど、非常勤職員を柔軟に活用しながら利用者のニーズにきめ細かく対応しております。

○こいそ(明)委員 よくわかりました。
 認可保育所は、基本的にフルタイマーの常勤職員を日中に配置しているため、朝夕に人手が不足して、短時間のパート職員で補わなければならないのに対して、認証保育所は一日を通して非常勤職員を柔軟に活用しているため、朝夕については認可保育所より手厚い対応がなされていることがうかがえました。
 次に、保育所の運営についての公的負担についてお尋ねいたします。
 今、認可保育所にはどのくらいの公的負担をしているんでしょうか。

○川崎福祉局長 子ども一人当たりの経費でいいますと、最も経費のかかるゼロ歳児の場合、年間約三百五十六万円になります。このうち、保護者が負担すべき額約五十四万円を除いた約三百二万円、八五%が公費負担となっております。
 これは、私立で二十三区内にある定員百人の保育所をモデルとして、都基準に基づいて試算したものでございます。実際には、これに加えて、各区市町村は独自の加算、保育料の肩がわりを行っております。
 さらに、財務省の調査によれば、都内のある自治体の例でございますが、国が定める基準で計算した運営費と比較すると、認証保育所が一・〇倍であるのに対して、認可保育所は人件費が高額であることなどにより、私立は一・八倍、公立は二・五倍の経費がかかっているとされております。

○こいそ(明)委員 さきの委員会で我が党の大西理事からも指摘がありましたが、例えば、ゼロ歳児を認可保育所で預かる場合、一人当たり年三百二万ですね、八五%もの公的負担がありますが、在宅で育児をする場合は、公的補助は基本的には当然ありません。私は、もっと、在宅で育児を頑張り続けている親に対しての公的支援を強化すべきじゃないかと思うわけであります。あわせて親も、安易に保育所に頼るのではなくて、できるだけ親みずからが責任を持って育てていくという気概を持つべきだと思います。その上で、真に保育を必要とする、困っている方のお子さんを柔軟に保育所で預かるという方向にすべきだと思います。
 これだけの公的負担を受けながら、認可保育のサービス水準は、先ほどの答弁でありましたように、圧倒的に低いのであります。大山委員は、ゼロ歳児保育、延長保育ができないのは建物のせいだというような苦しいいいわけをしているようでありましたが、実際には、サービスを向上しようとすると、勤務条件の話が常に出てきて、労働組合との関係でできないというのが実態という声も多く聞かれるわけであります。
 多額の公的負担は、サービスの充実に結びつかない形で職員の処遇に使われているのが実態ではないでしょうか。その結果、延長保育もなかなか実施されず、たとえ実施されたといたしましても人手が薄い現状を生み出しているといわざるを得ません。
 私は、現在、認可保育所がこのような状況にあるのは、これまでの共産党の姿勢にそもそもの原因があると思うわけであります。共産党は、厚生委員会の意見開陳でも、延長保育などを推進するために実態に見合った運営費補助、助成を行えと主張しています。何をかいわんやであります、これだけ公的資金を受けていて。
 冒頭にも申し上げましたように、手厚い補助と規制に守られた、ぬるま湯的な体質である認可保育所という既存の枠組みと、保育士たちの既得権益擁護を共産党が声高に叫び、認可保育所の改革そのものを阻止してきたからであります。
 また、この共産党の姿勢は、女性の社会的進出がこれまで進み、また勤務時間も多様化しているなど、大都市特有の状況を全く考慮せず、全国一律の補助と民間企業の参入を実質的に阻む規制によって社会福祉法人を擁護している現在の国の姿勢とも相通ずるものがあります。いつもは国を攻撃している共産党が、この点では厚生労働省と同じ立場に立っているのはまことに奇妙なことだなというふうに感ずるわけでありますが、現在の保育が抱えている最大の問題は、多額の公的負担を投入しているのにもかかわらず、特に公立の認可保育所が、本来担うべきゼロ歳児保育や延長保育などの大都市特有の保育ニーズに十分対応できていないことであります。
 これらのことを解決するために、都の職員が知恵を絞ってつくり上げた認証保育制度であり、今見直すべきは、公立の認可保育所なのであります。今後とも、認証保育所をもっとたくさんつくっていただきたい。そして同時に、認可保育所を都市型保育サービスが担えるものに改革していくべきと考えますが、知事のご所見をお願いいたします。

○石原知事 東京の保育の最大の問題は、先ほど局長が答弁しましたように、認可保育所の延長保育など都民ニーズにほとんどこたえられないという点にございます。
 都が国の画一的な規制を打破して新規に認証保育所を創設したのは、まさにそうした満たされない都民のニーズにこたえるためにほかなりません。第一号開設以来、わずか一年半余りで認証保育所が既に百二十八カ所に増大しまして、他の自治体にも波及しつつあるという事実こそ、この制度が東京都の利用者に広く受け入れられている証左であると思います。
 お話のように、一部にあるサービス水準や保育料についてのご批判は、ためにするものでありまして、都としては、今後とも認証保育所の一層の拡大に全力を挙げるつもりでございます。
 同時に、認可保育所についても、競い合いの中で、利用者本位のサービスを行うものとなるよう、改革を進めたいと思っております。
 先ほど局長も申しましたように、第一には、認証保育所はサービスが手厚い、二には、認証保育所は職員配置も大切な時間帯にはむしろ手厚い、第三には、認証保育所の方が保育料も二重保育と比べて大幅に安いという点を、やっぱり都民が評価していると思います。
 ゆえに、私は、共産党も含めて、何で--とにかく、特に共産党がそれほど認可保育所に固執するならば、都民に、要するに、非常に利用されているこの認証保育所もまた認可されて、従来と同じように、認可保育所と同じように国庫の補助を受けるような運動をされたらいかがですか。いずれにしろ、そうすれば、もし都が新設した、東京都というローカリティーに合った新しい保育の制度というものが、国が認めて認可になるならば、東京が出している補助というのは必要なくなって国から五千万の金が来るわけでありますから、その努力をされたらいかがでしょうか。

○こいそ(明)委員 まさに都民が求めている保育を、さらに進めていただきたいと思います。
 それでは次に、大学改革について質問いたします。
 都立の大学に限ったことではありませんが、我が国の大学は、閉鎖的な教授会自治のもと、教育と研究の両面で、社会が求める対応と努力を怠ってきたのではないでしょうか。例えば、都立の大学は都民や東京にどのような貢献をしてきたのか。教員にとっての興味は、論文とこれに基づく学術学会の評価しかありません。最も大事な学生からの評価の仕組みがないわけであります。これでは講義に工夫がなく、大学として学生教育に対する姿勢が不十分であるのは論をまたないところであります。
 また、研究の面でも、今年度から始まった、すぐれた研究拠点である大学に競争的資金が配分される二十一世紀COEプログラム、いわゆるトップ三十大学に公立大学では四大学が採択されましたが、都立の大学は一つも採択されておりません。学部として、大学全体として何を重点的にするのか、目標も持ち合わせてないためなのではないでしょうか。
 私は、この中で、新たな時代の要請、都立大学としての原点に立ち返った抜本的な改革を進めてもらいたいと思います。
 都立の大学の改革については、平成十三年十一月に東京都大学改革大綱が策定され、現在、これに基づきいろいろな改革が進められていると聞いておりますが、平成十七年の新大学開設に向けた改革作業は今どのような状況にあるのか伺いたいと思います。

○鎌形大学管理本部長 大学改革の進捗状況についてでございますが、一つは、次代をリードする人材育成のための教育研究の改革、二つ目は、産業や都民など社会に貢献する大学に、そして、経営感覚を持ち社会の変化に柔軟に対応できる大学運営の三つの柱で改革を進めております。
 具体的には、教育の面では、現在の画一的偏差値重視の入試から、学生の個性や能力を評価する多様な入試に転換し、基礎教養教育の徹底を図ることを目指しております。
 また、社会貢献の面では、大学の研究成果を産業活性化に役立てる産学公連携の強化、社会人を対象としたビジネス・スクールや法科大学院など、高度専門職業人の養成などを進めております。
 そして運営の面では、抜本的な改革を目指しまして、大学の独立行政法人化を実現するとともに、任期制など新しい教員の人事制度や、目標を定めてその実現度を評価する制度の導入などの具体的な検討を進めております。

○こいそ(明)委員 三本の柱で改革を進めておられるその中で、三つ目の柱である大学運営の仕組みでありますが、大学が社会から断絶したものであっては、時代の要請にこたえる明確な人材の育成の目標もなく、都民への貢献もありません。ぜひとも閉鎖的な大学運営の壁を破っていただきたいと考えております。
 大学改革にとってもう一つ重要なのが、教育研究の内容、いわゆる大学の中身の問題であります。現在の都立の大学は、教育研究の面でもその存在意義が問われております。首都東京が持つ公立大学として、東京だけではなく、日本さらには世界に貢献する特色のある教育研究が求められていると考えます。
 そこで、この改革を機に、都立の大学はどのような特色化を図ろうとしているのか伺いたいと思います。

○鎌形大学管理本部長 東京は日本の首都として、また有数の国際都市として、産業、環境、防災、健康、福祉など、さまざまな面で象徴的な課題を抱えております。
 大学改革大綱では、こうした視点を踏まえまして、都市の生活や文化を支え、環境、防災など東京の都市問題解決へ向けての取り組み、それから、新産業の創出や技術開発に寄与するなど、東京の産業活力の向上への取り組み、そして都民の健康、保健、医療、福祉の向上への取り組みなど、都民、産業、そして都政に貢献する教育研究を重点的に行っていくとしておりますが、さらに将来展望を踏まえまして、教育研究の特色化を図っていく必要がございまして、鋭意検討を進めているところでございます。

○こいそ(明)委員 今のお答えで、新大学では、都市の環境についての研究などを重点の一つにしていくとのことでありますが、新聞報道でも、現在、都立大学が行っているヒートアイランド現象とその諸要因の解析や、バイオを応用した乾燥耐性植物の開発など、すぐれた研究も紹介をされています。
 しかし、私は、環境問題に取り組むための研究分野は、文科系、理科系という枠組みを超えて、経済、歴史など人文・社会科学系から自然科学系まで多分野にまたがるものだと考えます。これらの研究を総合して初めて力のあるものとなるのだと思っております。
 本来、国もこれを二十一世紀の国家施策の最重点課題とすべきだと思いますが、都は、知事のリーダーシップのもとに、国に先駆けて、東京都が率先する環境重視の都市づくりを推進しているわけでありますけれども、私は、そうしたことからも、都立の新大学では、環境に対する総合的かつ高度な教育研究に取り組む姿勢をより明確にするため、環境学部を新設することなども、売りの一つになるのではないかと考えているところであります。
 私は、今、環境問題を一つの例に挙げましたが、知事はさきに、大学改革を行うに当たって、新しい時代の大学モデルを東京から全国に発信すると表明をされました。そのためには、都立の大学がどのように生まれ変わるのか、教育研究、社会貢献、運営の面も含めまして、都民を初め全国に向けてはっきりわかるような具体像、いいかえれば、新しい大学の全体像をきちんと示す必要があると思いますが、知事のご所見を伺いたいと思います。

○石原知事 予告した新大学開校の期限はどんどん迫ってきているんですけれども、正直なところ、いまだ暗中模索が続いておりまして、幾つか改革案が出てきますが、私としては、とてもまだまだ期待の持てるようなものにはなっておりません。
 その前に、大学運営の方式を変える、法人化する、経営に対する最高責任者は理事長ですから、それを置く、一方では学長を置く。この理事長、学長にまず人を得ませんと、なかなか事は思ったとおり進みませんので、これと並行して今努力しているわけでありますけれども、いずれにしろ、四つの大学を統合して一つにします。中にはすばらしい大学があります。例えば科学技術大学などだって、非常に小ぶりでありますけど、なかなか充実したいい学校だなと思っておりましたが、そういうものが一つ核として座って、理科だけではなくて文科においても、やっぱり従来なかった大学と、いうのは易しいけれども、具体的にそれをどう造形していくかというのは、まだまだ、ともかく今、暗中模索の段階であります。
 まず、とにかく従来の大学の欠陥の最大の原因でありました旧態依然とした運営方針というものを変えまして、法人化するというわけでありますけれども、それに相まって、都民、国民にも、なるほど、おもしろい期待できる大学ができたなといわれるものをつくるべく、今努力をしておりますので、もう少しお時間をいただきたいと思います。

○こいそ(明)委員 ぜひ知事の力強い大学改革によって、全国に新時代の大学像というものを発信していただきたいと思います。
 大学は、教職員の私物では当然ありません。特に東京都の設置する大学は、大切な都民の税金によって運営をされています。次代の人材を育成し、将来の人類的課題に対応する研究があってこそ、都民の負託にこたえるものでありましょう。ぜひともこの改革で、そうした大学改革の理念を具体化してほしいと、ぜひ具体化してほしいとお願いいたしまして、次の質問に移ります。
 環境教育と不登校対策ということで何点か伺います。
 現代社会は、高度情報の社会であり、利便性が高い社会であります。その利便性の反面、人間の心が病み、豊かな心が失われつつあることも、多くの場面で指摘をされています。
 それは、学校教育においても同様であります。今、学校ではさまざまな課題が内在し、学校の中に閉塞感が漂っていると感じます。学校教育の課題として具体的にあらわれている現象面は、例えば、不登校、いじめ、暴力、それ以外にたくさんの子どもたちの学習意欲の減退などが挙げられると思います。これらも、子どもたちの心の部分に起因するのではないかと思います。
 しかし、現在の教育は、現象面だけの解決に終始しがちではないでしょうか。もっと根本的な部分に目をやり、その解決を目指す必要性があります。なぜ不登校が起きるのか、なぜいじめが起きるのか、その根本を考えなくてはなりません。それは、教育の内容と方法が、一人一人の児童生徒の命の道に合っていないことが起きているのではないでしょうか。
 そこで私は、人と自然とのかかわりに目を向けてみたいと考えます。
 自然には人間を包み込む優しさがあります。そして、自然には人間の力でははかり切れない厳しさがあります。人間は、その優しさ、厳しさに触れることにより、自分自身を高めることができます。また、自然の中には自然治癒力があります。この自然治癒力は、現代社会に生きる人間にとっては大変重要です。健康で安らぎのある社会づくりも、自然のかかわりから生まれてくるでしょう。
 今後、私たちは、自然と共生することを実現していかなければなりません。そのために、このかけがえのない地球環境を次世代に引き継ぐために、そして子どもたちに豊かな心をはぐくんでいくために、環境教育を進めていかなくてはなりません。心の成長を育てることをせず、環境の大切さを説いても、言葉は届きません。
 そこで、教育長に伺います。
 環境教育が児童生徒の人間形成に果たす役割をどのようにとらえているのか伺います。

○横山教育長 環境教育は、児童生徒が自然や環境問題に関心を持って、進んで自然保護や環境保全に参加する態度を身につけることを目指しておりまして、生命尊重や自然を大切にする心を育てる上で極めて重要でございます。
 都教育委員会としましては、副読本の作成や環境学習発表会などを通しまして環境教育を推進しておりますが、お話のように、環境教育は、主体的に生きる責任ある人間を育てる上で重要でありますことから、今後とも、豊かな自然体験に基づく環境教育を一層推進してまいります。

○こいそ(明)委員 自然には、美しさ、優しさばかりではなくて、厳しさがあります。そこには自然の持つ教育力があり、自然体験は、子どもたちに豊かでたくましい心を育てていくものであると考えています。
 これからの社会を主体的に生きる責任ある人間を育てていくためには、豊かな自然体験に基づく環境教育が重要であろうとのことですが、学校では具体的にどのように進められているのか伺いたいと思います。
   〔委員長退席、宮崎副委員長着席〕

○横山教育長 学校では、生活科やあるいは総合的な学習の時間などにおきまして、動物の飼育や植物の栽培、地域の川や森などでの自然体験活動を行っておりますし、林間学校や移動教室等では、農作業や自然観察などを行いまして、豊かな自然に親しむ教育活動を行っております。
 こうした体験学習を通しまして、児童生徒に、自然の美しさやすばらしさ、厳しさに気づかせ、自然に対する畏敬の念をはぐくんでおります。

○こいそ(明)委員 環境教育を進めながら人の心を育てている民間での実践があります。民間のフリースクールでは、児童生徒の生命の道に沿ったカリキュラムをつくり、不登校児童や学習障害、注意欠陥多動性障害と診断された子どもたちとともに、例えば苗づくりから脱穀、わらの利用に至るまでのすべての米づくりを丁寧に体験させ、自然とかかわり、豊かな心を育てています。
 現在、国では、構造改革特区として、不登校や学習障害、注意欠陥多動性障害などの教育ニーズのある子どもを対象にした学校設置に、一定の資産や教育実績のあるNPOの学校設立を認めるとしております。
 これらのフリースクールである、東京都内にあるNPO法人東京賢治の学校や東京シュタイナーシューレなどでは、独自の教育観と人間観に基づくカリキュラムを作成して、不登校の改善にも取り組みながら、一人一人の心を豊かにしていく丁寧な取り組みを実践しています。ここでは、公教育では今まで行ってこなかった効果的な環境教育の実践もあり、学ぶべき点も多いと考えますが、その認識と、学校教育にどう生かしていくのかについて伺います。

○横山教育長 学校における教育活動を通して自然の優しさや厳しさに触れることは、お話のとおり、不登校への対応にも効果があるものと認識をいたしております。
 区市町村が設置している適応指導教室等において、不登校児童生徒の学校復帰を目指しまして自然体験プログラムを実施しておりますが、お話のように、フリースクール等においても、自然とかかわり豊かな心を育てる実践が行われております。
 今後とも、都教育委員会としましては、フリースクール等で行われている自然体験等の実践事例を区市町村に紹介するなど、不登校の改善のための取り組みを支援してまいります。

○こいそ(明)委員 子どもはやはり自分たちが生活している地域で育ちます。そういう面から、地域の自然や人とのかかわりを深めながら、子どもたちに、環境を守り大切にしていこうとする力を育てていくことが大切だと思います。
 そこで、知事に伺います。
 子どもたちに、環境を守り大切にしていこうとする力を育てるとともに、東京をふるさととして感じられるようにしていく必要性があると考えますが、いかがでございましょうか。所見をお伺いしたいと思います。
   〔宮崎副委員長退席、委員長着席〕

○石原知事 東京を子どもたちがふるさととして懐かしがる、そういう情操をはぐくむというのは非常に、いうは易しく難しい問題でありまして、ふるさとといえば、ふるさとの山川という自然との結びつきで考えられますし、ヤマトタケルの望郷の歌の、やまとはまほろばと、あれにも、たたなづく緑というものが歌われていますが、東京二十三区に住んでいて、銀座の泰明小学校にまだ通っている子どもがいますけれど、あの子どもたちが自然をどういうふうにとらえるかというのは大変難しいと思います。
 ただ、やはり、このごろは、ちょっとした旅行も便利になりました。そういうものの経験を踏まえながら、かつやっぱり里山、里の小川のないような地域の子どもたちにも、極めて都会的な生活でありましょうが、それを通じてやはり自然へ対する懐かしさというものをはぐくむような、そういう教育をいろいろ手だてを講じて行っていきたいものだと思います。

○こいそ(明)委員 それでは、次に移らせていただきますが、今後の都市づくりの戦略について何点か伺います。
 現下の厳しい経済状況の中、石原知事提唱の都市再生が国の重要な政策課題となっています。東京はこれまで、日本の首都として、政治、経済、文化等、幅広い都市活動を展開する場を提供しており、日本の再生は、まさに東京の再生が不可欠であります。そのためには、三環状道路の整備や空港及び空港アクセスの強化などのインフラ整備を進めるとともに、民間事業者や地権者などの意欲を喚起して、都市づくりに向けた民間投資を引き出していくことが極めて重要であります。
 このため、昨年来、都市再生特別措置法を初めといたしまして、従来の制度や枠組みにとどまらない、民間の力を生かす新たな政策が種々打ち出されてきました。東京の活力と魅力を底上げする実効性ある都市再生の施策を、都市全体の調和を図りつつ推進するため、こうした新たな政策をどのように展開し東京の都市再生を進めていくのかという都市づくり戦略を明確にしていかなければなりません。
 都は、都市再生特別地区の制度を初めとする民間開発を促進する施策を今後どのように活用し、東京の再生を総合的に進めようとしているのか、大きな枠組みについて伺いたいと思います。

○勝田都市計画局長 都心部や臨海部などを中心に指定されました都市再生緊急整備地域におきましては、大規模優良民間プロジェクトを誘導して、東京の国際的なビジネスセンターとしての活力や魅力を高めてまいります。
 また、センター・コアからその周辺を含めての密集市街地における、防災にも配慮した美しい街並みの形成や、多摩の核都市の育成整備、区部周辺部から多摩地域に至る市街地における、ゆとりある住宅地の形成なども重要な課題と認識しております。
 そうした都市再生緊急整備地域以外のエリアにおける身近な都市再生を推進するため、本定例会に、東京のしゃれた街並みづくり推進条例を提案させていただいております。それぞれの地域の特性に応じた都市づくりの手法を的確に活用することによりまして、土地所有者や民間事業者等の意欲や創意工夫を十分に生かして、東京の都市再生を総合的に推進してまいります。

○こいそ(明)委員 都市再生は、都内全域で強力に推進をされるべきものでありますが、多摩地域において、自然環境を生かしつつ豊かで快適な生活を実現するためのまちづくりに重点を置いて都市の再生に取り組む際に、都独自の地区計画制度として新たに創設された環境形成型地区計画制度を積極的に活用する必要性があります。
 具体的には、どのようなまちづくりを目指し、どのような地域への適用を考えているのか、土地利用上の緩和策は考えているのか、その点、伺いたいと思います。

○勝田都市計画局長 環境形成型の地区計画でございますが、例えば、道路から門や塀などを後退させた部分に樹木を植栽するなど、道路沿いの緑を連続的につなげていこうとするものでございます。
 また、計画策定にあわせまして、容積率等の見直しを行うこととしておりまして、二世帯住宅などへの建てかえが容易となり、緑豊かでゆとりある住宅地の形成を図るものでございます。
 この地区計画を適用する地域といたしましては、低層の戸建て住宅地や中高層住宅地の良好な環境を保全する地域等が考えられます。

○こいそ(明)委員 ところで、大規模優良民間プロジェクトを重点的に誘導するため、都市再生緊急整備地域が指定されました。こうした政策により大規模プロジェクトを誘導していくことで、オフィス床が供給過剰となることを憂慮する声があります。
 予特資料第52号には、センター・コア内の主な開発計画により供給される床面積が示されており、この資料の床面積を単純に足し合わせますと、約千ヘクタールになります。先般の予特で、共産党は、これがすべてオフィスになるかのようなことをいっておりましたが、それは本当なんでしょうか。

○勝田都市計画局長 予算特別委員会要求資料第52号は、センター・コア内の容積緩和を活用した都市開発諸制度による主な開発計画を示したものでございますが、それを集計いたしますと、床面積が約九百四十ヘクタールとなります。これはすべての用途を含んだものでございまして、このうち、住宅、店舗などを除きまして、今後供給されるオフィスの用途だけを抽出いたしますと、約三百四十ヘクタールとなります。

○こいそ(明)委員 オフィスの床は三百四十ヘクタールとのことでありますが、このうち二〇〇三年に完成するものはどのくらいなのか。また、二〇〇四年以降に完成するものはどのくらいあるのでしょうか。
 さらに、これが新たな不良債権の発生の要因となることを憂慮する声もありますが、これについての見解を伺います。

○勝田都市計画局長 二〇〇三年に完成予定のオフィス床は約百五十二ヘクタールでございます。その後、二〇〇四年は六十ヘクタール、二〇〇五年は四十五ヘクタール、二〇〇六年は三十四ヘクタールとなります。
 二〇〇三年は、汐留・品川駅東口などの国鉄清算事業団跡地プロジェクトが完了するために、大規模ビルの供給が集中をいたしますが、その後の供給見込みを勘案いたしますと、基本的には大規模ビルの需給バランスはとれておりますので、新たな不良債権の発生の要因とはならないと考えております。
 いずれにいたしましても、東京の活性化のためには、都市再生を一刻も早く進めることが何より重要であります。

○こいそ(明)委員 都市再生を推進していく上で、大規模プロジェクトとあわせて、三環状道路などインフラ整備を推進することが極めて重要でありますが、予特において、これも共産党は、三環状道路の完成で減少する分を大幅に上回る自動車交通量が、センター・コア内の開発計画により発生するとの指摘をしましたが、これは、この指摘はどうなんでしょうか。

○勝田都市計画局長 首都圏メガロポリス構想では、三環状など基本的インフラの整備による効果の一つといたしまして、区部の通過交通が約三割減少すると試算しておりまして、これは約十万台に相当いたします。
 また、予特資料第52号の、センター・コア内の主な開発計画における自動車発生集中交通量を単純に加えますと約二十四万台となりますが、これは、オフィスだけでなく住宅、店舗などすべての用途に関連するものを含んでおります。
 この開発区域には、従前から存在する交通量もございますので、この二十四万台がそのまま交通量の純増となるものではございません。
 さらに、自動車から公共交通機関への転換などによりまして、建物床面積の増加がそのまま自動車交通量の増加につながるわけでなく、その例といたしまして、平成二年から平成十一年までに二十三区の建物床面積が約二五%増加したのに対しまして、区部における自動車の発生集中交通量は約六%程度の増加にとどまっております。

○こいそ(明)委員 だんだん明らかになってまいりましたが、知事の施策は、福祉を切り捨て、大規模開発優先だということをいう人がおりますが、都市の再生というのは、そのようなものではないと考えます。
 例えば、先日、民間都市再生事業の第一号に認定された南青山一丁目プロジェクトは、単なる超高層の業務ビルを建てるのではなくて、都営住宅の建てかえに伴って、民間住宅や福祉施設など、複合的な機能が組み合わされております。
 都営住宅の建てかえを契機といたしまして、所管する住宅局だけでなく、都市計画局や福祉局などが連携して初めて、このプロジェクトが日の目を見るものと考えます。
 東京のまちづくりにおいて、地域の実情を考慮しながら、スピード感を持って取り組んだ事例であり、各局を総合的に調整された知事本部に、このプロジェクトの内容と基本的な考え方は何なのか。また、一方で、都市再生は基盤整備中心の政策であるといった偏った見方をされているようにも思いますが、都市再生の全体像についての見解をあわせて伺います。

○前川知事本部長 ただいまご質問がありましたプロジェクトは、現在、我々が取り組んでいる都市再生をいわば象徴する事例であると考えております。
 この団地の建てかえに当たりましては、都営住宅の戸数を百五十戸と、ほぼ維持するだけではなく、民間賃貸住宅約三百三十戸を新たに供給し、また痴呆性高齢者グループホームを新たに整備する、さらに、保育園、図書館等を整備すると、民間事業者によって一体的に整備を進めるわけであります。
 これが象徴いたしますように、都市再生は豊かで快適な都民生活を実現するためにこそ推進しているものであります。
 すなわち、都市再生は大きく次の三点が柱と考えております。
 一つは、IT化に対応した高度なオフィスの供給などによる経済の活性化、二つ目は、三環状道路等の整備による交通渋滞の解消や大気汚染の軽減、三つ目は、まちづくりと連携した良質な住宅の供給、都心部での福祉施設の供給、さらには防災性の向上などであります。
 ただいまお話もありましたが、都市再生の取り組みと住民福祉とを単純に対立させるとしたら、それは誤りであり、住民福祉の向上のためにこそ、都市再生が必要であると確信いたしております。

○こいそ(明)委員 期待される都市再生の効果の大きさはよくわかりました。
 今後の都市再生について、改めて知事のお考えを伺いたいと思います。

○石原知事 都市の再生というのは、決して一元的なものではないと思います。あくまでも、そこに住む市民、都民が安穏に、そして快適に暮らせる状況の実現こそが再生といえると思います。
 先ほど例に挙がりました青山一丁目の都営住宅の建てかえですけれども、最初持ってきた案は、建設省が決めている既存の容積率に沿ったもので、非常に効率が悪いものでして、私がこれはおかしいと。これを民間主導でやるならば、民間のディベロッパーに、こういう場所ならば何十階までの建物を建てても十分採算とれるという、そういうつまり投資効果というのを計算し直させよと。国が決めている容積率、気にする必要はない。後は、私がかけ合うからといって、二つ案をつくりました。
 結果、建設省が折れまして、こういう時代ですから、よくわかりましたということで、今回の案ができたわけですけれども、それで初めて、あそこに余計なスペースができて、福祉につながる、そういった施設も造成されたわけであります。
 私はやはり、都市の再生というのは、単に土地を流動化するだけではなくて、そこで発想を変えて施設をつくることで、都に住む都民が必要としているさまざまなニーズに、一つなら一つの施設というものが多様に適用できる、そういうことこそ肝要に心がけて、これからもいわゆる都市の再生に努めていきたいと思っております。

○こいそ(明)委員 わかりました。
 次に、多摩地域の振興について伺います。
 昨年十一月、知事は、都政の構造改革を推進するための戦略、戦術として、重要施策及び平成十五年度重点事業を発表されました。
 その中には、多摩に直接関連する施策は、産学公連携など、わずかに数項目の記述しかなく、今回の予算案でも、多摩に関しては、調整交付金はふえたものの、目新しい施策が見当たりません。そのため、多摩の住民には、知事の多摩への思いやメッセージといったものが伝わってきません。
 そもそも多摩地域は、ポテンシャルの非常に高い地域で、都心に近い地理的条件などを生かして、多数の先端技術や研究開発、ソフト開発を行う企業、製品開発型中小企業などが集積しております。
 また、八十校近い大学と短大が立地し、その数は隣の神奈川県や京都府のおよそ一・六倍に相当いたします。
 今後、多摩地域の振興については、こうした豊富な知的資産を産業振興に活用していくことが重要であると思いますが、そこで、こうした知的資源を活用した多摩の産業振興の取り組みについて伺います。

○有手産業労働局長 都は、今年度、多摩地域の中小企業の方々から熱望されておりました多摩中小企業振興センターを十四年四月に設置いたしまして、十月下旬から本格的に稼働させました。
 これまでに、経営と技術に関する約三千件の相談や七百件の依頼試験に応じるとともに、産学公マッチング交流会や産業セミナーを開催し、好評を博しております。
 また、中小企業が持つすぐれた技術や製品を一堂に集め紹介する、たま工業交流展を、中小企業団体や地元自治体と共同で開催いたしました。
 今後、多摩中小企業振興センター内に開設されます知的所有権センターや産学公連携のための体制整備などを通じ、お話の知的資源が豊富な多摩地域の特性を生かした産業振興を、従来にも増して推進してまいりたいと考えております。

○こいそ(明)委員 さて、多摩振興を図るには、首都圏全体を視野に入れて取り組む必要性があります。
 多摩地域は、首都東京の一翼を担うとともに、広く目を転じれば、区部をぐるりと取り巻く環状メガロポリスの都市軸の、まさにかなめに位置しています。その広域的な連携の拠点となるのが、八王子、立川、多摩などの核都市であります。
 昨年、都は、八王子、立川、多摩業務核都市基本構想を新たに策定いたしましたが、これは核都市の育成のてこになるものと期待しております。
 しかしながら、この基本構想に位置づけられるインテリジェントビルや交通施設などの中核的民間施設に対して、国の法律に基づく税制上の特例措置が用意されておりません。必ずしも十分なものとはなっていないわけであります。
 そこで、まず都として、これまでどのように対応してきたのか。また、都としての独自の工夫を含め、業務核都市の育成に資するよう制度の改善を図っていくべきだと考えますが、ご所見を伺います。

○勝田都市計画局長 業務核都市の育成、整備につきましては、七都県市で連携いたしまして国に要望してまいりましたが、その結果、税制上の特例措置の適用期限を延長することや、対象となる中核的民間施設の整備主体を第三セクターに限るという、いわゆる三セク要件を一部撤廃することなどが認められました。
 引き続き、さらなる制度の改善が図られるよう、国に強く求めてまいります。
 また、都といたしましても、都市計画制度の面から、例えば総合設計制度などが業務施設集積地区において適切に適用できるよう運用を見直すなど、鋭意取り組んでまいります。

○こいそ(明)委員 次に、多摩ニュータウンについてであります。
 多摩ニュータウンは、八王子市、町田市、多摩市、稲城市の四市にまたがる三千ヘクタールの広大な地域に建設された、現在二十万人という、渋谷区や調布市に匹敵する人口の都市を形成しています。これまでに多大な資金、人材、最先端の技術が投入され、首都圏メガロポリスの重要な拠点として成長してまいりました。
 よくオールドタウンとやゆする人もいますが、全体的に見ると、これは大きな間違いで、高齢化率九・一%と、都内でも最も若いまちであります。人的資源も豊かな、大変ポテンシャルが高い地域であります。
 しかし、都は、現在残された土地を売るために躍起になっておりますが、ただ売れればよいというものではなく、水準の高い都市基盤等を生かして、核都市としての機能向上はもとより、首都圏の広域連携を促進していくことが必要であります。
 今後は、すぐれた都市環境に磨きをかけて、将来を見据えたまちづくりを展開すべきだと思いますが、ご所見を伺います。

○小峰建設局長 多摩ニュータウンは、すぐれた居住環境と水準の高い都市基盤が整備されており、核都市の一つとして多摩地域全体の発展と首都圏都市連携の強化に寄与することが期待されております。
 このため、昨年十一月に地元四市、都市基盤整備公団とともに、目指すべき将来像や対応の方向を示す多摩ニュータウンの新しいまちづくり方針を策定いたしました。
 この方針は、職住近接に向けた土地の複合利用、産業立地や地域活性化策との連携、さらには住みかえを容易にする住宅地の整備等、時代の要請にこたえたまちづくりを進めていこうとするものでございます。
 今後は、この方針を基本として、都心では得られないゆとりと魅力にあふれたまちづくりを進めるとともに、広域幹線道路などの整備に努め、人、物、情報が集まる複合拠点としての機能を一層充実してまいります。

○こいそ(明)委員 知事が目指す東京再生、首都圏再生は、多摩地域の振興なくしては実現は不可能ではないかと思うところであります。
 各局の取り組みはもとより、知事みずからが先頭に立っていただく中で多摩振興を推し進めていただき、都市再生という大きな石を動かす原動力になるものと確信するところであります。
 最後に、知事は、多摩地域について、今後どのようなエリアとして整備していくお考えなのでしょうか。多摩地域に向けた力強いメッセージをいただきたいと思います。

○石原知事 たびたび申してきましたが、私は多摩というのは本当にいろいろな可能性を秘めた、まだまだ新しい発展の予約された地域だと思います。
 何といっても自然の面影がまだ随所に残っていて、非常に二十三区とは比べものにならない生活空間というものが保障されている。
 いずれにしろ、こういう特性を生かして、都としては環状方向の道路を初めとする都市基盤の整備をきちっとしました上で、とにかくそれに並行して、観光資源の活発利用とか、その他多摩地域のポテンシャルを強力に開花させていきたいと思っております。

○こいそ(明)委員 よろしくお願いいたします。
 次に、救急救命士の救命処置範囲の拡大について伺います。
 東京消防庁では、救急車二百七台を消防署等に配置し、サイレンが鳴らない日がないぐらい都内を走り回っております。救急車には、国家試験に合格した救急救命士を乗車させ、危機に瀕した患者さんなどに救命処置を施すなど、救急隊が全力を挙げて救急活動に従事しています。
 救急救命士については、平成三年の救急救命士制度創設から十二年を迎えようとしておりますが、この間、気管内挿管など、救急救命士の救命処置範囲拡大については、その重要性を指摘されたものの、時期尚早とされています。
 しかし、一部の地域において、救急救命士の資格を有する救急隊員が救急救命士法上、救急救命士の業務とされていない気管内挿管などの行為を行っていたとのことから、国会で議論され、救急救命士の救命処置範囲の拡大が加速しております。
 昨年第二回定例会において、我が党の三原議員が救急救命士の救命処置拡大問題をただしたところ、知事は、早期実現に向けて国に働きかけていくとの積極的な答弁をなされました。
 現在、国において、救急救命士の救命処置拡大に関して、どのような検討がなされているのか、伺います。

○杉村消防総監 救急救命士の処置範囲の拡大に関する国の検討についてですが、平成十四年四月に厚生労働省と総務省消防庁が合同で設置した救急救命士業務のあり方に関する検討会において、医師等の専門家による検討が行われ、昨年末に報告書が取りまとめられました。
 その内容は、救急救命士の処置範囲の拡大について、救急救命士等が行う応急処置の質を医学的に保障する、いわゆるメディカルコントロール体制の整備を前提としつつ、除細動については、必要な講習の実施を前提に、医師の指示なしで、本年四月を目途に実施を認めるべきであること、気管挿管については、適応症例を限り、必要な教育、実習などを条件に、平成十六年七月を目途に実施を認めるべきであること、薬剤投与については、薬剤の有効性と安全性に関し、平成十五年中を目途に、ドクターカー等による研究、検証を行い、実施の可否を判断することとされています。
 厚生労働省においては、この報告書に基づき、医師の指示なし除細動の実施に向けた法令改正などの準備と、気管挿管及び薬剤投与に関する細部事項について検討していると聞いております。

○こいそ(明)委員 どうもありがとうございました。(拍手)

○山本委員長 こいそ明理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十三分休憩

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