東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後六時五十一分開議

○和田副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 山口文江委員の発言を許します。

○山口委員 通告に従いまして質問をいたします。
 答弁は、簡潔明瞭にお願いいたします。
 まず最初に、地域福祉推進計画についてですが、地域福祉計画は、平成十二年六月の社会福祉事業法等の改正により、社会福祉法に新たに規定された事項であり、市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画から成ります。地域福祉計画の策定は、各地方自治体が主体的に取り組むこととなっております。策定に当たっては、地域住民の意見を十分に反映させながら策定する計画であり、今後の地域福祉を総合的に推進する上で大きな柱になるものです。このため、厚生労働省としては、「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について」を踏まえ、平成十四年四月一日、各都道府県知事あてに、地域福祉計画の策定についての通知が出されていますが、都における取り組み及び市区町村への取り組みをどのように支援したかを伺います。

○川崎福祉局長 都は、昭和六十一年の社会福祉審議会答申を受け、平成三年に、国に先駆けて、東京都地域福祉推進計画を策定いたしました。また、本格的な少子高齢化などの社会情勢の変化に対応するため、平成九年にこの計画の改定を行いました。さらに、平成十二年に東京都福祉改革推進プラン、平成十四年にはTOKYO福祉改革STEP2を策定し、地域での自立を支える新しい福祉を目指して、福祉改革を推進しております。
 ご指摘の地域福祉支援計画につきましては、区市町村の策定状況を踏まえつつ、どのように対応していくかについて検討してまいります。

○山口委員 地域福祉推進には、多様な福祉ニーズにこたえるために、身近な地域において、地域住民、社会福祉協議会、ボランティア等、民間組織の積極的な参画や相互の連携を深め、住民相互で支え合うことのできる仕組みづくりを進めることが重要です。
 都においては、先ほど答弁にありましたように、新たな施策の方向性を示しましたが、今後、NPOやボランティア、地域に根差した多様な活動をどう生かすのか、また、その際、都民参加についての見解を伺います。

○川崎福祉局長 地域で安心して自立した生活を送るためには、地域の多様な供給主体によるきめ細かなサービスが提供されることが大変重要であると考えております。そのため、こうした活動を展開しておりますNPOなど多様な民間団体に対して、都は、区市町村を通じて、地域福祉推進事業により支援をしております。
 また、都における福祉の取り組みを推進するに当たりましては、今後とも、都民からの公募委員や学識経験者などから構成される各種委員会など、さまざまな機会をとらえて都民の意見を求めてまいりたいと考えております。

○山口委員 地域の共助の仕組みづくりには都民の参画が不可欠です。都の支援の充実を求めておきます。
 次に、支援費制度について伺います。
 ことし四月から施行される支援費制度は、介護保険制度と同様に、利用者がサービスを選択する契約制度としてスタートします。ただし、サービスを拡大するために、介護保険制度は税金のほかに社会保険制度として徴収する保険料を財源に加えましたが、支援費制度では、措置時代と同様、すべて税金で賄わなければなりません。
 東京都は、これまで社会福祉施設の充実を図るため、社会福祉法人に対して独自の支援策を講じてきましたが、今、その一つ、サービス推進費補助が見直されようとしています。一方、障害があっても、できる限り地域で自立した生活ができる社会を築くため、その意欲ある人をサポートする仕組みや地域生活移行支援など、さまざまな支援策に取り組んでいくとしています。地域生活移行支援策とサービス推進費補助の再構築というこの二つは、それぞれが独立した問題ではありません。サービス推進費補助の再構築に当たっても、障害者の自立を支援するという視点を持つべきであると考えます。再構築における施設から地域生活への移行を進める取り組みには、インセンティブを与えるような制度にすべきであると考えます。
 そこで、契約によるサービス利用を支える仕組みについて伺います。
 支援費制度が介護保険制度と大きく違うのは、利用者のサービス選択や相談などを行うケアマネジャーが位置づけられていないことです。原則的に、障害を持つ本人によってサービスの選択や利用料の管理をし、支援費支給決定を受けることになります。相談業務などは市町村や保健福祉センターなどの機関が対応し、ケアマネジメントの手法が使われることはあるものの、資格や職業としてのケアマネジャーは存在しません。
 今年度、都がサービスプランの作成などを行う区市町村を支援する支援費制度利用援助モデル事業を独自に創設することは、利用者の選択を保障し、サービスを利用しやすくするための仕組みとして期待しているところです。
 このモデル事業は、障害を持つ人にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか、見解を伺います。

○川崎福祉局長 都では、障害者が適切にサービスを利用できるよう、独自にケアマネジメントの手法を活用した支援費制度利用援助モデル事業を来年度実施し、サービスプランの作成などを行う区市町村を支援することといたしました。
 このモデル事業の実施により、障害者は、個々のニーズに合った適切なプランに基づいて、サービスを安心して利用できるようになると考えております。

○山口委員 障害を持つ人にとり、このような事業が定着されることにより、利用しやすい支援費制度にしていかなければなりません。今後、さらに多くの区市町村にこの事業を拡大していくことが必要であると考えますが、見解を伺います。

○川崎福祉局長 障害者のサービス利用援助につきまして、適切な仕組みを構築するためには、実践を踏まえた検討が必要であると考えております。支援費制度利用援助モデル事業におきましては、区市町村が、プラン作成の事例を積み重ねる中で、地域の実情に応じた利用援助の仕組みのあり方を検証していくこととしております。
 都は、本事業の成果を広く紹介していくことにより、区市町村における適切な利用援助の仕組みの普及を図ってまいります。

○山口委員 次に、今回、障害者地域生活支援緊急三カ年プランを重点事業として策定し、都独自にサービス整備基盤の計画が出されていますが、計画の達成を期待するところです。しかし、このプランは大変高い目標が設定されていて、目標達成のプロセスに厳しい状況が予想されますが、見解を伺います。

○川崎福祉局長 都は、障害者地域生活支援緊急三カ年プランを策定し、サービス基盤を整備促進するための特別助成を行うとともに、生活寮に対します運営費補助を増額するなど、施策の充実を図ることといたしました。
 今後、プランの内容をきめ細かく周知するなど、実施主体である区市町村や事業者に対して、プランの実現に向けた取り組みを継続的に働きかけてまいります。これらにより、計画の達成に向け、全力を尽くしてまいります。

○山口委員 地域生活を送るためには、施設に比べて生活費の負担が極めて大きく、特に東京という大都会では、地方に比べ、家賃、生活費等多くの社会経済の差異があり、安心して生き、暮らし続けていくためには、とても厳しい現状があります。施設入所から地域生活への移行に当たっては、当事者や実施主体となる区市町村が意欲的に取り組めるようなインセンティブな自立支援策を講じる必要があることを改めて申し上げておきます。
 次に、子育て支援について何点か伺います。
 二十一世紀を迎え、少子化はますます加速して、女性が一生の間に産む子どもの数をあらわす合計特殊出生率は、二〇〇一年度、東京都においては過去最低の一・〇一となってしまいました。国も、一九九四年、仕事と育児の両立支援として創設したファミリー・サポート・センター事業も、二〇〇一年度からは、その対象が専業主婦等子どもを持つすべてに拡大され、子育て支援機能強化を図っています。核家族が定着している中で、子育ての不安感や子育てと仕事を両立していくことへの負担感がますます増大している現状があります。精神的に不安定になる出産期の何らかのサポートも必要ではないでしょうか。
 子ども家庭在宅サービス事業のうちの産後支援ヘルパーに私は注目していますが、平成十三年度の事業実績は二区市町村という、大変取り組みが少ない状況です。その支援内容としての利用時間と料金の関係などや、制度の情報提供のあり方に課題があるのではないでしょうか、見解を伺います。

○川崎福祉局長 産後支援ヘルパー事業については、今年度は六区市が実施しております。来年度は、現時点でさらに四区市が実施を予定しており、今後、着実に増加する見込みでございます。
 本制度の普及促進を図るためには、利用者への一層のPRが必要であり、都はこうした取り組みを行うよう引き続き区市町村に働きかけてまいります。

○山口委員 現在、産後の体調不良のときとなっていますが、妊娠中の体調不良についての支援も対象としていくなど、制度の運用拡大を図る必要があると考えますが、見解を伺います。

○川崎福祉局長 この産後支援ヘルパー制度は、創設後間もないものでございます。今、この制度に必要なことは、まず、制度への理解周知がなされ、多くの区市町村で取り組まれることと考えております。

○山口委員 子育て支援は親を支援するということでもあります。妊娠中も当然支援するべきであると思いますので、今後、制度の運用拡大の検討を要望しておきます。
 今まで子育て支援というと、親代行が目的とされて、親を育てるための支援策が欠けていたのではないでしょうか。育児は育自、つまり、自分も育つともいわれるように、親も親として育つためには、さまざまな過程の中で支援策が必要と考えます。子育て支援に取り組むNPO等の民間団体の活動やネットワークづくりを支援し、その活動の場を子ども家庭支援センターで同じ子を持つ親同士が学び合い、交流することなどが必要であると考えますが、見解を伺います。

○川崎福祉局長 子ども家庭支援センターは、地域における子育て支援のネットワーク拠点として、子育てグループ等への活動支援、ボランティアに関する情報提供や育成などの取り組みを行っております。都としては、その取り組みの中で、お話の子育て中の親同士が交流する場が一層充実されるよう区市町村に働きかけてまいります。

○山口委員 また、子育て支援は地域の母子保健事業においても重要な役割があります。地域をフィールドにした活動に取り組む保健師の仕事や役割について、何をしているの、と疑問や説明を時々求められることがあります。公衆衛生活動は、人間がより人間らしく生きるためのものであり、いいかえると、基本的人権を保障する活動ともいえるのではないでしょうか。
 保健師として、命と暮らしを見詰めた取り組みを進めていくことが重要であると思います。核家族化、少子化など社会的な問題に対応するため、乳幼児期からの子育て対策として自助グループの果たす役割にやっと着目した厚生労働省が、四年前より、子どもの心の健康づくり対策事業を創設しました。その中に、子育てグループリーダー育成活動支援事業がありますが、この事業内容は、区市町村が地域での母子保健活動を行う子育てグループリーダーに対する研修の実施や、子育てグループリーダーが地域において子育てグループ活動を行うことに対して支援するものです。
 保健師も母親たちも、ともに話し合い、工夫しながら活動を進め、その結果を蓄積し、乳幼児期の子育ての活動に終わらせず、その後も、地域で暮らす仲間として、教育問題や、さらに介護問題へも広げて地域づくりに取り組んでいくことができる事業ではないかと思います。そして、将来的には、子どもたちは思春期に、親は、年を重ね高齢者となったときの悩みを本音で話せる相手として、保健師があってほしいと願っています。
 今後、さらに母子保健事業の実施主体である区市町村の保健師の役割は重要であると考えますが、見解を伺います。

○長尾健康局長 核家族化の進行等の社会状況を背景としまして、子育てに不安を持つ親が増加していることなどから、地域の母子保健活動を推進している区市町村の保健師の役割は極めて重要であると認識しております。都は、育児不安や児童虐待など、母子保健分野の新しい課題にも対応した専門的研修を実施するなど、保健師等に対する支援を行っております。
 今後とも、保健師等の資質の向上を図るとともに、関係機関との緊密な連携を推進し、母子保健事業の充実に努めてまいります。

○山口委員 自治体だけでなく、企業も少子化対策を迫られています。横浜市のランドマークタワーには、企業二百六十七社が入居し、約一万人が働いていますが、希望が多かった託児所をつくったとのニュースがありました。
 また、厚生労働省は、国、自治体、企業がもう一段の対策を推進することが必要として、今国会に次世代育成支援対策推進法案を提出し、二〇一五年度末までの時限立法で、成立すれば地方公共団体と事業主に行動計画を義務づけられます。
 都では、子どもが輝くまち東京プランにより、平成八年から平成十七年度を目標年次として十カ年計画を立てています。また、TOKYO福祉改革STEP2を打ち出し、新たな施策の方向性を示していますが、今後、子育ての不安感が高まる中で、子育て支援策を幅広い視野から検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。

○川崎福祉局長 都は、これまで保育サービスの充実など、子育てと仕事の両立支援を中心とした取り組みを進めてまいりましたが、これに加え、地域において安心して子育てを行うための支援のあり方などについて、幅広い視点から検討していくことが必要と考えております。
 このため、子育て支援に関して、有識者による検討の場を早期に設けていきたいと考えております。

○山口委員 子育て中の親の働き方、これは当然父親も同じことですけれども、産休、育休がどれだけ使うことができるのか、子育て中の働く環境を整えることも含めて幅広い検討を期待いたします。
 最後の項目になりますが、生活者ネットワークの原点ともいえます食品安全対策について伺います。
 消費生活条例八条に、知事への申し出制度があります。この八条申し出制度から始まった各種の食品の調査によって、食品のリスクコミュニケーション、評価、マネジメントの仕組みを実態として都は国に先行して実施してきました。都では都民参加の観点で、すぐれた制度を実績として残してきたといえます。
 このようなことを踏まえ、今後、都として、食品の安全確保を図るために都民意見をどのように施策に反映させていこうとしているのか、見解を伺います。

○長尾健康局長 食品の安全確保は、都民、事業者、行政が互いに情報交換を行い、理解し、協力することにより推進される必要がございます。このため、都はこれまでも食品保健懇話会などを通じ、都民や事業者と食品の安全に関する情報交換に努めてまいりました。平成十五年度は、インターネットを活用して、広く都民が意見を交換する場を設置するとともに、食品保健懇話会を改組し、より開かれた意見交換を行うなど、都民意見の反映に努めてまいります。

○山口委員 食品表示は、従来の専門家しかわからないものから、正しい消費者の選択を確保していくわかりやすいものへ、施策もいわゆる消費者保護ではなく、自己決定を応援していく方向です。こうした点で、遺伝子組みかえ食品の都独自のマークは高く評価されるべきであると思います。
 これまで、商品選択のための表示のあり方については、消費生活対策審議会の表示部会が開催され、都民の一定参加型で行われてきました。今後、こうした食品の表示施策にかかわる検討をどのように行っていくのか、伺います。

○三宅生活文化局長 食品の表示は、消費者が食品の安全性や品質、価格等を確認し、適切に商品を選択、使用していくための重要な情報源でございます。
 都は、JAS法や食品衛生法に加え、消費生活条例に基づいて独自に単位価格表示等を義務づけるとともに、景品表示法に基づく不当表示の排除に取り組んでおります。
 今後は、食品にかかわるさまざまな表示について、消費生活対策審議会など、各局それぞれの場における審議や都民意見を踏まえ、適切に対処してまいります。

○山口委員 食品の安全のためには、無論、基準に満たない食品を市場からなくすということはいうまでもありませんが、良好な食品を市場にふやすことも重要です。この点で、現在検討されている食品安全条例に大いに期待しているところです。
 都民の食品の安全を確保する意味でも、都内で生産された農産物の徹底した安全対策が重要です。都は、これまでも有機農業のモデル生産団地を育成するとともに、国に先駆けた形で有機農産物などの認証制度に取り組んできました。こうした農産物における安全性の向上のための政策誘導は不可欠であると考えます。今後も、安全に配慮した有機農業を積極的に推進すべきであると考えます。
 また、さきに私たちは、監視の側面で広域的な連携を提案してきましたが、都内に流通する農産物の多くが他県で生産されていることなどから、生産面における各県との広域連携も必要であると考えます。今後、都民に安全な農産物を提供するため、有機農業の推進と生産段階における広域連携について都はどのようにお考えでしょうか、見解を伺います。

○有手産業労働局長 都内で生産される農産物の安全を確保するために、都はこれまで、都独自の施策といたしまして、有機農業モデル生産団地や有機農産物等認証制度を実施し、農薬や化学肥料をできる限り減らした有機農業を推進してまいりました。しかしながら、お話のように、都民の食卓に上る生産物は、首都圏を中心とした多くの生産地から供給されております。
 そこで、都といたしましては、今後、生産段階における安全をさらに確保するため、有機農業を一層推進するとともに、関係都県による広域的な取り組みについて協議してまいります。

○山口委員 最後に、少し時間に余裕がございますので、知事にお伺いしたいと思います。
 農地は、新鮮な野菜を供給するだけではなく、緑地空間や地下水の保全、災害時にはオープンスペースとなるなど多面的な機能を持っています。また、学童農園の設置により、子どもたちが農業に触れ、農業や食べ物について関心を持つことは、日本の農業を振興し、食糧自給率を高める点からも非常に重要であると考えますが、東京都の農業についての知事の見解を伺って、質問を終わります。

○石原知事 おっしゃるとおり、今日になればなるほど、農業というのはいろいろな意味合いを持つわけでございます。特に、大都会にあっての農業というのは、非常にシェアというか、ポーションは少ないんでしょうけども、それなりに、逆に、非常に大きな意味合い、今おっしゃったような深い、広い意味を持つものだと思います。
 東京がこれからどういうふうに変化していきますか、わからない部分がございますけれども、既存の東京における農業というのは、いろいろなすばらしい製品、作品というものをつくっておりますし、これを維持し、さらに、農地をいかにふやすということはなかなかいかないでしょうけども、健全にそれが育っていくような努力をしたいと思っております。

○山口委員 どうもありがとうございました。(拍手)

○和田副委員長 山口文江委員の発言は終わりました。

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