東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○山本委員長 次に、織田拓郎委員の発言を許します。
   〔委員長退席、森田副委員長着席〕

○織田委員 私は、東京の緑化について質問をいたします。
 何年か前に、樹木をこよなく愛した幸田露伴の娘さん、幸田文さんの随筆を読んで印象に残ったことがあります。それは、あるとき、父親の露伴から、孫娘に植木市で何でも好きなものを買ってやれということで、がまぐちを預かって、娘さんと一緒に植木市へ行くんです。娘さんは、その中でフジの木を、鉢植えを選ぶんですね、これがいいと。余りにも立派で値段も張るので、がまぐちの中にはそれだけのお金がなかった。で、幸田文さんは娘を説得して、違う、サンショの木を買い与えたそうであります。家に帰ってきて、そのことを父親に報告したら、おまえは何て浅はかな心の持ち主だ、こうこっぴどくしかられたというんですね。子どもの心の栄養を考えない浅はかな心、こういわれた。フジの花をきっかけに、どの花もいとおしむことを教えてやれば、一生の心の潤いになる。女一代、目の楽しみとなるものを。だから、それから、もみじや松、杉と関心を伸ばせば、その子が財産を持ったのも同じこと、これ以上の価値はない、こういって幸田露伴は幸田文さんをしかるそうであります。
 そのことを見て私も、自然を慈しむという意味で自分がいかほどの財産を持っているかということを考え、我が身を省みると、いかにも乏しいわけでございます。今、日本の緑は減り続けておりますし、保存も訴えられております。しかし、より重要なのは、私は、緑に親しむ心、慈しむ心、そういった心の衰退でないかというふうに自戒をしながら、今回この緑の問題を取り上げたいというふうに思います。
 今、東京は、緑の東京計画というものを策定をいたしました。なかなかによくできた計画だと私は思います。今大事なのは、ただいまも大西委員の方から話がありましたけれども、私は、これまでの緑の施策というのは、やはり緑の保全であるとか、あるいは、失われた緑をその分回復しましょうというようなことで、そこに重点があったように思います。ところが、今私たちが求めなきゃいけないというのは、私は、緑を創出していくこと、つくり出していくこと、こういうことに施策の重点を移していかなければならないというふうに感じるわけであります。
 したがって、その意味で、この平成十二年の緑の東京計画で、新たな緑の創出に向けて、どんな施策を掲げているのか、あるいはまた、それによって現在までの達成状況はどうなのか、まず最初に伺っておきたいと思います。

○小池環境局長 緑の東京計画では、緑が守る都市環境、緑が支える防災都市東京、緑がつくる東京の魅力などの五つの視点から、五十年後の東京の緑の望ましい将来像を描き、平成十三年度から十五年間で取り組むべき施策の方向と緑づくりの目標を定めてございます。
 ご質問のございました、計画において掲げた新たな緑の創出に向けた主な施策といたしまして、十三年度の実績について申し上げますと、屋上緑化では十・四ヘクタール、道路緑化十三・九キロメートル、都立公園の整備九・三ヘクタール、海上公園の整備一・五ヘクタールとなってございます。

○織田委員 聞きますと、おおむね順調に進んでいると。十五年間の計画、そしてまたさらに五十年後というものを目指しているということであればそうなのかもしれません。確かに、重点施策等で今年度、多摩の方の森林再生計画が位置づけられるというようなことがございまして、減少する緑を再生、創出しようという、そういう姿勢というものは、私は東京都の中には十分にあるというふうに思います。
 しかしながら、たびたび引用されますように、平成十年までの二十五年間で、山手線の内側に相当する緑がなくなっているという現状では、私は、従来の発想を超えて緑をつくり出すということに本当に取り組んでいく必要があると思います。
 そこで、まず道路緑化。道路緑化というと、非常に私も不思議だなというふうに思うんですけれども、緑の骨格軸というようなものを東京都の事業で進めていこうとするようなことになりますと、幹線道路というのは非常に適した空間であるとは思います。ただ、交通量をさばくのに一生懸命、大変で、なかなか進まないというのも現実であろうと思いますが、緑の東京計画の中では環状七号線、八号線などの幹線道路、こういったところを使って連続した緑を形成するというふうにしております。
 私の地元の板橋区でも、若木地区が今事業を進めております。ここは崖線にちょうどかかるようなところでありますので、約七千平米の緑が失われるというようなことで、第四建設事務所等でも一生懸命努力をしていただいて、今、六千八百か七、八百ぐらいまで緑を回復するというようなことで一生懸命取り組んでいただいております。足らないところについても、適地があれば、それを買収をかけて小さなところでも緑化をするという、そういう本当に努力をしていただいているわけであります。
 失われる緑の一〇〇%とはいかないまでも、のり面の緑化やそうしたことでかなり回復をした。また、交通量を考えながら、当初の予定の車線よりも減らして、そして可能なところにおいては緩衝帯をつくったり、あるいは緑化ということを考えている、そういう地道な努力を続けている、これは私は大いに評価をしてしかるべきであるというふうに思います。道路事業というのは緑化できるスペースを生み出すと、新しい道路であればそうでありますし、今、東京の三環状、そして多摩の南北道路というようなことで導入空間をつくっていく中で、その緑化というものについても可能な限り努力を行うべきであるというふうに思います。
 そこで、道路緑化への今後の取り組み、これについて伺いたいと思います。

○小峰建設局長 道路におきます緑の空間は人々に潤いと安らぎを与え、都市環境や防災性の向上に大きく寄与いたします。これまでも歩道に街路樹や植樹帯を設置するなど、緑化に努めてまいりました。現在、都内の国道や区市町村道も含め街路樹は四十七万本、緑地面積は日比谷公園の二十五倍に相当する四百万平方メートルございます。
 今後も緑の軸の形成を図るため、お話の環八などに加えまして、例えば山手通りでは幅員を四十メートルに拡幅し、車道の整備とともに緑豊かな歩行空間や中央分離帯を、また、調布保谷線では車道の両側に十メートルの環境施設帯を設けるなど、道路緑化を積極的に推進してまいります。

○織田委員 ぜひご努力をしていただきたいというふうに思います。
 さらに外環、これについては知事や関係部局等の努力でようやく動きが出てまいりました。ここもどういった利用形態になるのか、今のところ協議中ということでございますけれども、また、それが実現をしていくまでにまだなお時間がかかるというふうには思いますが、ここの導入空間も緑化の可能性というのは極めて大きい。インターチェンジをどういうふうにつけるかということ、つけたらつけたで緑化の可能性というのは非常にふえてまいります。ぜひこういったところも、各市区でもいろんな計画を立てているようでございますので、市区並びに関係者等とよく協議をして、ぜひ緑化の推進をしてほしいというふうに要望をしておきたいと思っております。
 次に、東京の中で緑というふうにいいますと、とりわけ乏しいのはやはり二十三区だろうと思います。そこで、二十三区の中においては、あるいは町中においては、ぜひ緑化可能な場所を探し出して、そして緑化をするという、そういう意識というものを行政担当者は持っていただくべきだというふうに私は思っています。広域行政を担う東京都としては、緑の軸というような、こういう大規模な、あるいはまた連檐をした一固まりの、こういう緑をつくるということが重点になってくることは、それは理解をできます。
 しかし、二十三区の中でそうした大規模な空間というものが、じゃ、果たして今この連檐した町並みの中で探し得るのかどうかというと、私は非常に限られてくるというふうに思わざるを得ません。緑の東京計画の中では、二十三区のみどり率を十五年間で二九%から三二%まで約三ポイントふやすというふうにしております。であるなら、もっと身近な生活圏域的な、そういう視点にまで目線を下げて緑地の配置計画を立て、そして緑の創出に取り組んでいかなければ追いつかないのではないかというふうに感じられてなりません。
 じゃ、緑の緑化可能な空間というのは一体どこにあるのか。余り見当たらないというのが本当のところだろうというふうに思います。区市の担当者の方に聞いても、緑化したいところはやまやまなんだけれども、一つは予算がない。先ほども議論にありました。先行取得も全部なくなっちゃったというようなことで、ない。じゃ、どうするか。例えば物納された土地というのがあります。じゃ、そういったものを活用できないだろうか。企業の遊休地というものもあります。これも活用できないだろうか。しかし、それにはお金が要る。さまざまなところで、そこら辺で非常に困ってしまうわけでありますけれども、そのあたりのところは、私は工夫次第でかなりスムーズに緑化ができるというふうに思います。
 物納地におきましても、それがそのまま国庫に入って、大体小さな物納地であれば全部売却をされるという形になりますけれども、じゃ、それを区市が買いましょう、購入しましょうというようなことになれば、そこで補助が出たりするわけですけれども、考えてみれば、それを直接区市がいただいて、あるいはまた東京都がいただいて、そしてその分、じゃ、相続税なり何なりというものを何かおまけをしますよとか、いろんな形であれば、それが国庫を通らずしてそのまま公共セクターに移動するというような、こういうような工夫を私はやってしかるべきだと思います。方法論はわかりませんけれども、そうした東京都二十三区内にあるような、あるいはまた、そういう町中にあるような、そういう土地を何とか確保する。そういう民間の遊休地を活用し、公園の緑地を確保していく、こういうことを考えていくべきだと思いますけれども、東京都の見解はいかがでしょうか。

○勝田都市計画局長 公園緑地につきましては、緑の東京計画に基づきまして、都と区市町村が協力して適切に配置することにしております。お話がございました国有地につきましては、一部無償貸付が受けられることから、今後とも公園として積極的に活用を図っていきたいと考えます。
 また、民間の樹林地等につきましては、税負担が軽減される市民緑地制度を活用いたしまして、土地所有者から無償で借り受けて緑地として公開するなど、緑の保全、創出を図ってまいります。

○織田委員 答弁ではそうおっしゃいましても、そういった土地が緑地になったケースは、微々たるものではないかというふうに私は思います。先ほど大西委員の方から、大きな公園、どんどん昔はいただけました。今はそんな余裕、私はないと思います。そういうふうに国有地を身近な公園緑地として整備をしていくというにはさまざまな工夫が必要です。
 と同時に、区市町村と緊密な連携のもとに、公園の緑地政策を進めるということがぜひ必要なんです。実際に今、緑を欲しているというのは緑がない空間なんです。二百五十メートルの範囲の中で、公園、近隣の街区公園に行けるという、そういうものを整備しましょうということになると、この緑の東京計画の中では、今後二千四百カ所、そういう街区公園をつくらなきゃいけないというふうに書いてあります。それだけ整備をしなきゃいけないのであれば、これは相当区市町村を督励をするといったら変ですけれども、協力をして進めていかなければならないというふうに思います。そういう意味で、この区市町村との連携をして公園の緑地政策を進めるという観点に関してはどのようにお考えですか。

○勝田都市計画局長 都は、区市町村の公園整備に対しまして、国庫補助金の確保など財政面での支援に努めてきております。また、区市町村との連絡調整会議等の場を活用し、積極的な情報提供と技術的な助言を行っております。
 今後とも、区市町村との連携を一層強化いたしまして、都市における身近な公園緑地の確保に取り組んでまいります。

○織田委員 続いて、東京港の中防内側の海の森事業、これについて伺いたいというふうに思います。
 先般、港湾局が新たな海上公園、これへの方針を、取り組みといいますか、それを発表いたしました。これを読みますと、私は大変評価をいたします。本当に公園の利用から規制、規制から利用へというようなことや、あるいは保全から緑の再生というようなことや、あるいは管理をするということから、それをまたいわゆる都民協働でつくり出していこうという、五つ転換をすべきということで挙げられております。一々もっともであります。ぜひ進めていただきたいし、大変期待をしております。
 特にそういう中で、これは海上公園全体の問題ですが、私が期待しているのは中防内側の海の森公園でございます。ここは千二百万トンのごみで埋め立てられた土地でありますが、本当にここを緑化していくということについては、もろ手を挙げて賛成をしたいわけであります。適地がない中で、唯一残された土地なのかなというような気がいたしております。
 しかし、ただ、せっかくつくるのであれば、より多くの付加価値をつけていかなきゃならないというふうに私は思うんです。都民と協働で森をつくるというようなことから考えますと、ぜひこれは子どもたちに、この海の森公園というものを開放するといったらなんですけれども、森づくりに参画をさせていただきたいというふうに思うわけです。
 先ほど冒頭に述べましたように、森なり緑なりに親しむ心というものをつくり上げていくためには、一番いいのは私は自分で森をつくっていくことだろうと思います。ですから、そういった意味では、学校の校地で何かそこあたりに育つような適切な、例えばドングリであるとか、そういったものを学校の中で育てて、それを海の森公園に持ち込んで、それで植樹をしていく。この新しい海上公園の中には、何か株にして苗木まで育てて、そいつをまた移植をするということができるというようなことも書いてありました。
 自分の身近な学校でそういう樹木を育てて、それがまたあるところで大きく育っていくというようなこと、それは確かに十年、二十年、三十年とかかりますけれども、そういったものが一つでき上がるということによって、例えばもう三十年たてば親です。親になったときに、この森を私がつくったんだよと、こういえる。どこかの宣伝ではありませんけれども、そういったことがいえるということ、そしてそれが伝わっていくということは、これは僕は非常にすばらしいことだと思います。そういったことを東京都が提供して、そして森をつくり上げていく、これは私はもう近ごろにない大ヒットだというふうに思っているわけでございます。
 そればかりではありません。いろんなことが考えられます。夢のある公園になるでしょう。例えばさっきナショナルトラストという話がありました。一つの区域を、これを丸ごとどこかに貸してもいいんです。そしてその中で、じゃ本当に緑化というものをやってごらんなさい。そこにボランティアを入れてもいいんです。企業が請け負ってもいいんです。企業がグリーンボランティアということで集めていただいて、そこを整備していってもいいんです。いろんなことがとにかく考えられます。逆に海の森でつくった樹木を、先ほども申しました身近な街区公園などに移植をするというようなことも考えてもいいんです。行ったり来たり、ここを十分に活用して東京の緑の淵源地にしていただかなきゃならないなというふうに思っております。
 お伺いをしますと、ことし、構想予算がつきました。構想して、恐らく途中で中間のまとめを入れて、パブリックコメントをとって、そして実施をするという形になろうかと思いますが、ぜひこの中防内側の海の森公園、この整備に際して都民が自分たちの森であると実感できるような、そして将来ともに自慢できるような、そういう取り組みをするべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○高橋港湾局長 中央防波堤内側における森を初めとした海上公園の整備は、長期間にわたる自然再生という特徴を持ち、また、整備段階での幅広い都民との継続的な協働を考えております。
 その一つとして、ご提案がありました子どもたちがみずから植樹を行うことは、自然に親しみ、自然を愛する心を育てる観点からも大切であり、極めて有効な手法だと思っております。また、苗木のほか、これにつきましては知事が一握の土、一本の苗木を持ち寄るというお話を既にされておりますが、こうした苗木のほか、公園施設の寄附、あるいは資金面での協力、それから公園を育てるボランティアの受け入れなどを通じて、都民にとって公園がより身近なものになると考えております。来年度から行う基本構想策定の中で、整備段階での都民との協働の仕組みづくりなどを検討し、実施に向けて努力してまいります。

○織田委員 緑の問題の最後に、知事にお伺いをしたいというふうに思います。
 諸外国の首都あるいは大都市、本当に緑に覆われております。それはそれだけ努力をしてきたし、意識を持ってきたということなんだろうというふうに私は理解をいたしますけれども、東京はそうではない、日本はそうではない。これは、やはりDNAが関係しているのかなというふうに思います。日本は本当に山野に出れば緑豊かで、何も無理をしなくたって緑に接することができた。
 ところが、都市というものは、そういったすべて緑も含めて、食糧も含めて自給自足ができるようなところからみんな集まってきて、そして公共的なものというのは全部皆さんで持ち寄って供給をしてくるというのが都市の基本的な構造であります。そこに公共の概念というのが非常に強く出てくるわけであります。
 ところが、日本の場合は、事緑に関しては余りにも身近であります。したがって、木造の家に住み、箱庭をつくって盆栽をやりということで、実は緑というものが完全にプライベートな視点でエンクロージャーされているといってもいいような気がいたします。それは裏を返せば、公共の緑というものについて、いささか関心が薄かったのではないかというふうに思うんです。
 そうしたマインドを反映してか、例えば国は東京が首都であるということを考えたならば、やはり日本の首都として風格のあるまち、その整備をしていかなきゃならないというようなことで、本当ならば首都が緑豊かなまち、風格のあるまちになるために、こうこうこういうことを東京都さん、やりましょうよというふうに持ってくるのが僕は本当は筋だと思うんです。
 そういう意味からいうと、首都移転論議なんていうのも、実はそういったものについて関心が薄いということの裏返しでしかないというふうに私は感じているんです。それはともかくとして、都市は人工的な構造物でありますし、公的な緑を確保するという特段の努力が必要です。その意味で国がやらなきゃ東京がやるしかないわけでありますから、日本の首都東京、日本を代表する都市、都が取り組むべき緑の創出について、国に対して知事らしくどんどん要求し、攻め込んでいただきたい、積極的に協力を求めていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、ご見解を伺いたいと思います。

○石原知事 そうはおっしゃいましても、国は今あっぷあっぷしておりますから、とても緑どころではないということでしょうけれども、先般、この都庁舎の屋上を緑化しました。あれだけの面積をしてもどうかなと思ったら、都議会にいらっしゃる方は自分の頭の上ですから気がつかれないでしょうけれども、私の執務室から見ますと、やっぱり全然印象が一変したんですね。これでまたいろんな花が咲いたりしますと、随分印象が違うと思うんですけれども、私は改めてやっぱり屋上の緑化を含めて、緑化というのはこの都市の中でこれだけ大事なものかなという感じを新たにいたしました。
 おっしゃるとおり、まさに東京は日本の首都でありますが、それにやっぱり玄関口である、核であるこの東京、外来者にも魅力のあるまちにすべく、緑化という視点でもこれから一生懸命努力したいと思います。国にも、やっぱり重点的に国費を集中的に投入するなども要請していきたいと思いますが、私はさしずめ、私も長くいましたけれども、国会の前庭なんか半分緑化したらいいんですよ、あれ。ただコンクリートを敷いてあるだけですから殺風景なものでして、そういうことも折に触れて提言していきたいと思っております。

○織田委員 ぜひお願いをしたいと思います。
 続きまして、豊島病院の問題について若干伺っておきたいというふうに思います。
 先般の本会議において、豊島病院の区立病院化に向けた板橋区の動きに関する質疑がございました。病院改革マスタープラン、これにおきましては、豊島病院は福祉局所管の老人医療センターと統合した上で民営化をするというふうにいわれています。それを発表されてから板橋区内におきまして、民営化するというぐらいなら区立病院にしたい、こういう声が出てまいりました。かなり精力的に今議論をされているように伺っているわけであります。
 今回の都立病院改革実行プログラム、これによりますと、この板橋区の動きを受けて、そして板橋区の方でこれについては区立化を検討していますよという文言が、この実行プログラムの中に盛り込まれたというか、書き込まれました。そこでお伺いをするということなんですけれども、今は、そうすると統合民営化路線と、それから区立病院化路線と両様を検討しているというような形になるわけです。
 最初に伺いますが、豊島病院の区移管が統合民営化に変わりますよということになると、都の方もいろいろ後の処理が大変だろうというようなことを感じます。率直に板橋区はいつまでに豊島病院の区移管について明確な意思表示をすれば間に合うのか、お伺いをしておきたいと思います。

○櫻井病院経営本部長 豊島病院と老人医療センターとの統合民営化につきましては、現在残されたさまざまな課題につきまして、関係局との間で検討を進めているところでございます。
 一方、今、先生お話をいただいた板橋区との関係ですけれども、板橋区との関係につきましては、区側の協議を継続したいとの意向を尊重しまして、さらに今後具体的検討を進めていくこととしております。
 このため、現段階ではいつまでにと明確に期限を定めることは困難でございますけれども、統合民営化のスケジュールを前提に考えますと、政策判断に必要な調整期間もあるため、できれば板橋区としての明確な意思表示を、年内のできるだけ早い時期にもしていただくことが望ましい、このように考えております。

○織田委員 板橋区がなかなか決断できないというのはさまざま理由がありまして、東京都との間に勉強会を今設置して協議をさせていただいているところだと伺っていますが、区側は昨年九月の中間報告を取りまとめた段階では、土地、建物等の財産の取り扱い、これをどういうふうにするのか。起債がまだ二百八十億円残っているというものも含めて、それをどういう形で移譲するのかというようなことがはっきりしないというようなことなんでございます。
 板橋区がこの土地、建物等の財産の取り扱い、具体的に一番課題になっている、検討が必要といっているのか、ここのところをちょっと詳しくお伺いしたいと思います。

○櫻井病院経営本部長 板橋区が具体的な検討が必要としている主な課題としましては四点ございまして、土地、建物等財産の取り扱いに関する方式や諸手続、二点目が企業債の残債の取り扱い、三点目に医療スタッフの確保策を含めた職員の取り扱い、四点目が区立病院の運営方式、こういうことなどについて検討が必要、こういうふうなことでございます。

○織田委員 時間がありませんので淡々といきますが、それでは豊島病院の区移管、前向きに取り組んでいるわけですけれども、やっぱり踏み切れないのは病院経営できるのかどうかというところだろうと思うんです。
 そこで、現在、区市町村が病院を運営する場合の補助制度としてはどのようなものがあるのか伺いたいと思います。

○長尾健康局長 現在、多摩及び島しょ地区におきまして、市町村が設置管理する公立病院に対しましては、地域医療の確保と向上を目的とした運営費補助制度がございます。

○織田委員 運営費補助制度があるということですが、これは具体的に内容はどういうふうになっているんでしょうか。

○長尾健康局長 市町村公立病院運営費補助事業では、現在、一床当たり百二十二万円を基準とした運営費の補助と、がん診療、リハビリなどの特殊診療部門の運営に対する補助を行っております。

○織田委員 これはもう全部市町村が補助の対象になっている、こういうことでございます。私は、二十三区が病院経営をしましょう、医療提供しましょうということであるならば、少なくとも市町村並みのそういった補助をやっていただきたい、そういう補助制度を設けるべきであるというふうに思っております。ぜひとも検討していただきたいというふうに思うわけでございます。
 さらに、移管の際の初期投資、これも莫大なものがあります。板橋区ではSPCを使ったり、いろんなことを考えているわけでありますけれども、私どもも無償譲渡とはいかないまでも、やっぱり都の支援というものをしっかりお願いをしたいなというふうに思っておりますし、そしてその無償譲渡に至ることを乗り越えて、区立でそういう自治体病院をつくりたいという、そういう板橋区の試み、私はぜひ成功させたいというふうに思っております。こういった姿勢について、東京都としてはどんな評価をしていますか、お伺いします。

○櫻井病院経営本部長 区民のために地域医療を提供しようとする板橋区の姿勢は、基礎的自治体である区が地域の特性を考慮しながら、住民に身近な地域医療の確保に積極的に取り組もうとするものでありまして、都と区市町村がそれぞれの役割に応じた責任を果たしつつ、東京の実情に即した医療提供体制を構築していく上で極めて有意義と考えております。また、住民に身近なサービスは、基礎的自治体である区市町村が責任を持って取り組むべきとする地方分権の流れにも合致するものであり、高く評価しております。

○織田委員 ぜひ応援をしていただきたいというふうに思います。高く評価するということであれば、今度はそれを超えて、より一層の態度できちっと示していただきたい。評価をするのであれば、そういった面で、態度できちっと示していただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。
 次に、交通バリアフリー法が十二年に施行されまして、エスカレーターやエレベーターの設置を初め、そういった措置が随分進んできております。後からやりますけれども、交通拠点はともかくとして、地域一体としてバリアフリーをしていくという拠点整備、それには基本構想を策定してこうやるということになっているわけですが、その基本構想の策定状況、それから、これはなかなか進んでいないということですが、その基本構想策定がなぜ進まないのか、その理由、この二点について、まずお伺いをします。

○勝田都市計画局長 交通バリアフリー法では、区市町村が駅及びその周辺地区につきまして基本構想を策定し、それに従って各事業者は事業を実施することとなっております。都内においては、荒川区、北区、羽村市が策定済みでございまして、四区四市が現在取り組みを進めております。
 基本構想策定の取り組みが進まない原因といたしましては、作成のノウハウを有していないこと、策定に当たって協議すべき関係者が多く、調整に時間がかかることなどが考えられます。

○織田委員 確かに調整に時間がかかろうというふうに思います。一体的に整備をするということになれば、それぞれ道路管理者、交通管理者も含めて、あるいはまた地域住民、障害者団体、全部含めてこなさなければならないということでありますから、大変なことはよくわかります。しかし、これまで三つの自治体で進み、今板橋区も含めて検討しているということでありますけれども、それでは、これまでの支援のあり方、それから今後どういう取り組みをされていくのか、これだけ進んでいないんだから、より推進しなきゃならないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○勝田都市計画局長 基本構想は、区市町村が主体的に取り組むべきものでございまして、都としては、必要に応じて個別に技術的な支援や助言を行ってまいりました。現在、これまでの実績をもとに基本構想策定のための手引の作成を進めておりまして、近くこれを公表いたしまして、区市町村の取り組みを一層促してまいります。

○織田委員 ぜひ至るところでバリアフリー化が進んでいかれるように応援をお願いしたいと思うんです。
 時間もありませんので、最後の質問になろうかと思いますけれども、今、都内の地下鉄の駅におけるバリアフリー化、かなり進んでまいりました。多くの駅でワンルートが確保されつつあるようになっております。エレベーターもエスカレーターもつくようになっております。しかしながら、私たちが地元で聞くのは、上りのエスカレーターはいいんです、だけれども、下りの方がつらいんですという言葉をよく聞きます。
 そこで、こんな提案があったんです。今までずっと上りにエスカレーターをやっているんですけれども、これを下りに変えてもらえませんか。通常、上り方向に動かしているエスカレーターを、高齢者や障害者などから連絡を受けて、駅員が駆けつけて利用してもらう、こうした対応が可能かどうか、手短にお願いします。

○松尾交通局長 都営地下鉄におきましては、これまでも車いすのお客様から申し出があった場合には、駅係員がエスカレーターの運転方向を一時的に下りに転換させてご利用いただくなどの対応を行っております。しかしながら、この対応を広くほかのお客様にも拡大することにつきましては、上りを利用されるお客様に不便を強いるという点や、駅の人員配置の問題等がございまして困難でございます。体の不自由なお客様に限定するなど、その運用についての検討が必要と考えております。

○織田委員 もちろん、のべつ幕なしにやるということはなかなか難しいだろうと思います。安全上の問題もあろうかと思います。
 板橋区で、駅のエスカレーターがある場所で、連絡用のインターホンを設置するための費用を十五年度予算に盛り込みました。あとは運用してくれるところを探すということなんですね。今交通局長に述べていただいたように、確かに今までずっと下りになっていたところを上りに変える、途中のものはどうするんだ、電車が着いたらどうするんだ、あるいはいろんなものがあると思いますけれども、今のバリアフリー化の状況を考えてみますと、交通バリアフリー法で二十二年目途というふうになっています。どこも二十二年。二十二年まで待てないという人がいっぱいあります。当面の措置を考えなきゃいけません。
 そういう意味で、このバリアフリー化が完成しないのであれば、顧客サービスの上からこういったエスカレーターの運用についてご検討をいただきたい。ぜひ都営交通でも導入をしていただきたいというふうに思うんですけれども、見解を伺いまして、質問を終わりたいというふうに思います。

○松尾交通局長 お客様の利用実態を把握するとともに、区の意向も勘案しながら、実施の可能性につきまして積極的に検討してまいります。

○織田委員 終わります。(拍手)

○森田副委員長 織田拓郎委員の発言は終わりました。

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