東京都議会予算特別委員会速記録第三号

   〔委員長退席、宮崎副委員長着席〕

○宮崎副委員長 小美濃安弘委員の発言を許します。

○小美濃委員 自由民主党の小美濃でございます。きょうは、おおむね四点の質問をさせていただきたいと存じております。
 まず、私学の偏向教育についてお伺いをいたします。
 先日、私と文教委員会を中心とした我が党の議員が、ある私立学校、ここは名前を挙げればだれでも知っているような大変有名な伝統校でありますが、そこにお子さんを通わせている保護者の方、そしてそこの学校の理事者の方とお会いし、大変大きな事実を突きつけられました。その親御さんたちは、その学校で想像を超える偏向教育が行われているということを、たくさんの証拠を一つ一つ出されて、涙ながらに訴えられたわけであります。これぐらいの厚い資料でございまして、ぜひ後に知事にも見ていただきたいと思いますが。もちろん特定の学校の問題を一般化することはできないかもしれませんが、事は重大であります。また、その要因を探り、除去していかなければ、そうしたあしき傾向が他の学校に広がっていかないとも限らないわけであります。
 そこで、あらかじめお断りをしておきますが、私は、私立学校における教育については、私立学校法という法律によって、非常に自主性や自律性が重んじられており、行政がその領域に介入していくことにかなりの制約がある、こういったことは承知をしております。私も、私立学校の自主性は尊重されるべきであり、これによって私学が発展してと思っておりますが、これからご紹介する事態は、とても看過できないわけであります。したがって、これは行政の問題というより、法律の問題、政治の問題であり、党として取り上げ、考えていかなければならないと思っているわけであります。
 そのためにも、まず、現在の行政としての限界性をここでしっかりと明らかにしながら、最後に石原知事に、こうした現実をどうお考えになるか、お伺いをしたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
 まず、一般論として、私立学校でいわゆる偏向教育が行われている場合、都は何を、どこまで是正指導できるかということであります。私立学校法第六条には、「教育の調査、統計その他に関し必要な報告書の提出を求めることができる。」こうあるわけであります。この規定によって、学校の教育内容を調べることができるので、それをもとに指導ができるのではないかと考えられるわけでありますが、いかがでしょうか。

○三宅生活文化局長 委員ご指摘のとおり、私立学校法第六条におきまして、広く学校教育上必要とされる事項の調査については、報告書の提出を求めることができるとなっております。
 しかし一方で、同法において、私立学校の教育内容が各学校の自己責任に任されておりますので、学校教育法に規定されております学校の設備や授業等の変更命令権は、私立学校法の規定によれば、私立学校には適用しないこととされておりますし、そのほか、学校への強制立入調査も認められておりません。
 このため、報告内容に重大かつ明白な法令違反がない限り、学校の教育内容に立ち入ることは困難であると思われます。

○小美濃委員 それでは、具体例を挙げて質問させていただきます。時間がないので、ここに書かれているすべてをご紹介するわけにいかないんですが、例えば、この学校では道徳の時間を三十五時間と定めているはずなんですが、実際は行われておりません。ゼロであります。また、平和教育という名のもとに、イデオロギー教育を行っているという指摘がございます。また、社会科では、教科書が実際にありながら、それとは別の資料の、かなり偏向した内容の資料を配り、教育をしていると聞いております。学校が定めているカリキュラム自体が守られていないとしたら、それこそ問題だと思っております。これについても是正指導はできないんでしょうか。

○三宅生活文化局長 私立学校におきましては、その独自性を発揮するために、さまざまな工夫がされておりますが、学校教育法上、私立学校も基本的には学習指導要領に基づくカリキュラム編成をし、それに基づく教育が行われなければならないとされております。このため、私立学校にはその届け出が義務づけられておりまして、その際、所轄庁である東京都や区市は、その都度内容のチェックを行っておりまして、そのみずから定めたカリキュラムどおりに授業が行われていないなど、これを逸脱するような場合があれば、これはどうするかといいますと、先ほどもお答えいたしましたとおり、法令上、学校への強制的な権限はないんでございますが、都としては、行政指導により適正を期していくことになります。

○小美濃委員 公立でこんなことがあったら、本当に大問題なわけですよね。しかし私学ならば、行政指導という形で適正を期するということしかできないと。本当にこれでいいのかなと、大変残念なわけでありますが、もう一つ事例を挙げます。
 この学校では、東京の高校生平和のつどいという会の勧誘ポスターを、中学校の三年生、義務教育の三年生の各教室の前後の黒板に張り出して勧誘をしているということであります。この集いは、某政党系の青年組織と極めて、極めて深い関係にありまして、政治集会といわれております。これは義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法、いわゆる中確法に明らかに違反をしているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○三宅生活文化局長 ご指摘のような行事のポスターを張り出すことは、同法で規定しております「特定の政党を支持させる等の教育の教唆及びせん動の禁止」という項目に抵触する活動であるかどうかということですが、これも必ずしも断定できませんで、直ちに法律違反になると認めることは難しいといわれております。

○小美濃委員 特定の政党だけじゃないんですよ。ここに書かれているのは、特定の政党、その他の政治団体と書いてあるわけでありまして、この青年組織というのは、実際に日本共産党の綱領を広く学ぶことを目的としているんですよ。民青、ホームページに書いてあるんだから。その民青が、この集会に、この集いに積極的に参加し、運動を広げようと、こうホームページに書いてあるわけですよ。ここまで書いてあって、これは集会に平和が入っているというだけで、また政党の名前が入っていないというだけで、何やってもいいというわけじゃないと思うんですよね。
 実際にとことん探っていくと、この平和教育という名のもとで、本当に厳しい厳しい状況が見えてくるわけであります。一体どうして義務教育の学校でこういうことが起きてしまうのか、不思議でならないわけであります。
 実は、この学校は教職員の組合がやりたい放題の学校になってしまっておりまして、学校法人の理事会そのものが機能できなくなっている。これは理事者の方がおっしゃっているんだから、確かだと思います。(発言する者あり)そういう話もあるかもしれませんが。しかし、実際に、先生がまた組合の先生を引っ張ってきちゃうということで、本当にこの理事会自体が機能できなくなっているということを、保護者の方や理事の方は訴えているわけであります。
 こういう学校法人における労使の問題についても、行政としてどうするのか、伺いたいと思っておりましたが、時間もありませんし、恐らく先ほどと同様、私学法の趣旨から考えて、行政として立ち入りはできないというような、本来の答弁になってくると思われますので、特にお聞きをいたしませんけれども、やはりこれは何とかしなきゃいけないんじゃないのかなと。実はこの学校では、実際にこういった状況がずっと行われておりまして、生徒もかなり荒れ果ててきております。
 実は、これはまた別の方からいただいたお手紙なんですが、この学校を紹介するお手紙です。この先、学校や先生のことを書くと気が重くなるので、生徒の様子を書きます。まず、エレベーターのボタンは足で押します。天井には故意に穴をあけます。食堂のガラスケースの中の見本のカレーとミカンは試食されております。売店の見本のオーバーは、試着したまま着て帰ります。トイレにはたばこの吸い殻が置かれています。バスの座席には積極的に自主性をもって座り、お年寄りが来ても立たずに、てめえら税金で食ってんだろと暴言を発します。そして、下級生が食堂に置いたパンは、当然上級生が食っちゃいます。以上、ごく一部ですと。こういう状態が行われているわけであります。
 以上、幾つか事例を申し上げましたけれども、こうした学校があることは事実でありまして、これはかなり行き過ぎていると思いますが、大なり小なりこういった問題を抱えた私学は、ほかにも何校かあるということは実際に聞いております。しかし、実際には、児童や生徒、保護者にとって、学校を選択する際に、その学校の教育の内容が偏向的かどうか、ほとんどわからないといっていい状態であります。入ってから、入学してから、こんなはずじゃなかったということになるのでは、これは詐欺と同様であります。
 そうならないように、教育内容については、児童生徒の学校選択の際に、保護者などに対し、学校側がもっと積極的に周知するよう働きかけるべきと考えますが、いかがでしょうか。

○三宅生活文化局長 お話のとおり、児童や生徒あるいは保護者が学校を選択する際に、各学校の教育内容ができる限り具体的に公表されることが望ましいと思っております。
 東京都といたしましても、これまでも機会をとらえて私学側に要望をしてきているところでございますが、今後とも、私学協会の理事長・校長会などの機会に、情報を積極的に保護者に公表、周知していくよう要請してまいります。

○小美濃委員 知事、今までの流れをよくお聞きになっていただいたと思うんですが、やはり現行法上、相当に私学に対する行政の権限が限られておりまして、不適切な偏向教育が行われていても、直ちにこれをやめさせる強制力がないわけであります。この学校の理事の方も、このまま放置していたら学校はつぶれてしまう、座して死を待つより相談したいということで、実は我々のところに来たわけであります。
 公立の場合は、行政の指導や、また我々議会も積極的に介入することができますので、大分公立学校は是正されてきたと思っております。しかし、その分、公立学校で今まで政治的暴力を振るっていた運動家が、今、私学にその目を向けているといっても過言ではないわけでありまして、それを是正させるためには、やはり行政だけではなかなか難しく、法律の改正や政治の力が必要になってくると思います。
 都は、私学助成という形で莫大な税金を私学に助成をしているわけでありまして、やはり一定の監督権限は持つべきではないのかな、そんなふうに思っているわけであります。
 このような状況に対して、石原知事はどのようにお考えになっていられるのかなと、実は、この私学の保護者や理事者の方、多くの方が知事の積極的なご答弁を望んでおりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

○石原知事 あなたのご不安、ご懸念は非常によくわかりますが、これは基本的に、国家の私学に関して定める法律の問題だと思います。ただ、私学といえども、国公立と同様に公の教育を担っているのでありまして、最低限守るべきものはあると思いますし、ルールは守ってもらわなきゃならないと思います。
 ただ私立学校は、本来、創立者の建学の精神と申しましょうか、価値観といいましょうか、独自の校風がその持ち味でありまして、多くの生徒、保護者もそれを望んでといいましょうか、それを知って選択しているわけであります。その結果が今のような現況にあらわれているとしても、公が余り介入すべきではないという意見もございます。
 ただ、やっぱりこれは、もっと広範囲に基本的に議論される余地もあると思います。
 ただ、これ、ちょっといささか教科書の問題にも似ておりますが、教科書をつくる会社も私企業でありまして、これが多種あるということで、結局、それをユーザーといいますか、使う生徒の代表である、本来は教育委員会が選択するはずでしたが、非常に曲げられた形になっておりましたけれども、昨今、それが是正されてきました。
 同じように、やっぱりこの私学のそうした荒廃の問題というのは、ご指摘のように理事者の責任であると思いますし、同時にまた、そこに、親としてその学校を選んで子どもを送り込んだ保護者の責任でもあると思います。ここで競争原理が働けばよろしいのでありまして、理事者が、このままだったら学校がつぶれてしまうと。つぶれたらよろしいんです、そういう学校は。そうすることで、私はやっぱり、教育における私学というものの競争原理というのが働いてきた結果になると思います。
 いずれにしろ、これはあくまでも、まず理事会を形成している理事者、経営者、そして、それを選んで、どういう選択をしたか知りませんが、そこに子どもを送り込んだ保護者の責任であると思います。

○小美濃委員 なかなか厳しいご答弁をちょうだいをいたしまして……。
 しかし、今度高校の進学率の話になりますが、高校の進学率が都内で九六%、そのうち六割が公立、四割が私立に依存をしているわけであります。また、依存しなければ成り立っていかないわけでありまして、私学が、今はまだ数校でしか顕在化をしておりませんので、こういった問題になるかもしれませんけれども、この先、こういった問題があっちからもこっちからも、ぼこぼこぼこぼこ出てきてしまって、私学の経営状態が成り立たなくなってしまったら、東京の公教育自体がおかしくなってしまうのかな、そんなふうにも思っているわけでありまして、私どもは、やはりこの問題は看過できないと実は思っているわけであります。知事におかれましては、ぜひともその辺もご理解をいただきまして、今後、ご支援をいただきたいなと実は思うわけであります。
 それでは次の質問に移ります。
 先ほども申し上げましたが、現在、高校の進学率が九七%になりました。都立高校に学ぶ生徒の能力、適性、興味、関心、進路希望が多様化する中で、都立高校の個性化、特色化を進める改革を着実に推進していくことを期待しているところであります。
 ところで、学校経営の確立を目指し、校長の裁量権限を拡大をする、こういったことがきょうも新聞にも出ておりましたが、その趣旨はどのようなものなのか、まずお伺いをしたいと思います。

○横山教育長 都民に信頼されて魅力ある都立高校を実現するためには、すべての学校が主体的、自律的に改革を進めまして、教育の質的向上を図る必要がございます。
 こうした自律的な改革を進めるためには、校長が学校の経営者としてリーダーシップを発揮し、教職員の力を結集できるよう、校長の裁量権限の拡大が必要でございます。
 このため、都立高校改革推進計画におきましては、教員の定期異動要綱の見直しの検討や自律経営推進予算の導入など、人事面、予算面で校長裁量権限拡大の施策を盛り込んだところでございます。

○小美濃委員 校長先生の裁量権限を拡大をしたということでございますが、学校現場では、実はいろいろな問題があると伺っているわけであります。
 例えば、土曜日に補習を行いたい。しかし、教員が協力してくれない。また、親子面談をやっている。いろいろな面談の相談がありますから、五時を過ぎてしまう場合もありますよね。しかし、ぴたっと五時になると帰ってしまう。こういった教員がいるなどなどの事例があるわけであります。
 行政や民間では、必要があれば超過勤務を命令して、手当を支給することによって超過勤務をさせることができますが、教員に対しては、超過勤務命令を発することにかなりの制限があると聞いているわけであります。
 これでは、校長先生に幾ら自由な予算をつけたり、自由な学校経営をしろといっても、いろいろな意味で妨げられているわけでありまして、教員の超過勤務命令について、まずどのような規定があるのか、お伺いをいたします。

○横山教育長 これはもとの根拠は法律でございますが、法律及びこれに基づく条例によりまして、都の公立学校におきましては、校長が教員に超過勤務を命ずることが可能な業務は四点ございまして、生徒の実習に関する業務、学校行事に関する業務、職員会議に関する業務及び非常災害等やむを得ない場合に必要な業務、こうした業務に従事する場合で、臨時または緊急やむを得ない必要があるときに限るものと規定されております。

○小美濃委員 教員の超過勤務についてでありますけれども、学校行事に関する業務については超過勤務が命令できると規定していることは、これは国も都も実は同じでありまして、この本にも、「学校職員のための勤務時間等の手引」にも書いてあるんですけれども、この中に、都では学校行事として教員に超過勤務を命じられるのは、修学旅行などの宿泊を伴うものだけに限定をされているわけであります。
 学校行事といいますと、いろいろありますよね。文化祭ですとか体育祭ですとか。こういった文化祭や体育祭などの準備のための、時間外に例えば業務を行ってほしい、こういった場合でも、校長は、今の東京都の規定ですと超過勤務を命ずることができないわけでありまして、現実は、今五時以降の文化祭の準備や体育祭の準備は、すべて教員の自己判断で行われているわけであります。
 少なくとも、超過勤務を命ずることができる内容を国以上に制限すべきではないのではないかと思うわけでありますが、いかがでしょうか。

○横山教育長 ご指摘のとおり、教員に超過勤務命令ができる項目のうち、学校行事に関する業務を修学旅行に限定しておりますが、今後、学校運営を円滑に行っていくため、この取り扱いにつきましては、職員団体と協議の上、早急に改めてまいります。

○小美濃委員 ぜひ早急に改善をしていただくことを強く求めるものであります。
 教員が超過勤務をした場合、その手当にかわるものとして教職調整額が支給をされていると聞いております。その趣旨はどういうものか、お伺いをいたします。

○横山教育長 教職調整額は法律に支給根拠がございますが、教員の職務と勤務態様の特殊性から、勤務時間内外の教育活動を包括的に評価をしまして、超過勤務手当及び休日給の制度を適用せず、これにかえて給料月額の四%を支給しているものでございます。

○小美濃委員 今からご紹介する話は、ある校長先生から聞いた話でありますが、例えば音楽会の準備など、朝から放課後まで児童生徒のために一生懸命頑張っている教員がいる一方で、一分たりとも超過勤務をせずに早々と帰ってしまう、絶対に意地でも超過勤務をしないという、そういう教員がいるのも実態であります。
 教職調整額の支給についての問題点は、一体どのように認識をしているのか、お伺いをいたしたいと思います。

○横山教育長 教職調整額につきましては、お話のとおり、休職中の教員や指導力不足教員にも支給されること、また時間外勤務を行わなくても支給されること、こういった問題点があると認識しております。

○小美濃委員 超過勤務手当にかわるものと位置づけられているのにもかかわらず、休職中の教員や指導力不足などの教員にも支給され、時間外勤務を一分も行わなくても支給される、こういった制度はやっぱりおかしいですよね。
 これは法律で規定されているということですけれども、この教職調整額四%は超過勤務に対するものであるという認識をしている教員が何人いるかということなんですよ。恐らく、ほとんどの教員が本給だと思っているのではないかと思います。
 大体、この法律自体が、超勤を命ずることができる業務が四項目しかなくて、しかも、どれも臨時または緊急やむを得ない場合、これに限られているわけでありまして、こんな超過勤務なんていうのは、日常ではほとんどないのではないかと私は思っているわけであります。
 これでは、必要なときに校長が超過勤務を命じることがほとんどできないわけでありまして、五時以降の教員の学校業務は、校長先生が、済みません、お願いしますと頭をぺこぺこ下げなければ、教員は動いてくれないということなわけですよ。これはやはり、幾ら校長の権限を拡大する、制度でやりますよ、予算つけますよといっても、これを改善しない限り、これはなかなか解決できない、こう思っているわけであります。私は、この制度自体の抜本的な見直しを求めなきゃいけないなと、そう思っております。
 さて、教員はこのような状態であるのに対して、教頭の仕事は実は大変であります。よりよい学校経営を進めるためには、校長だけでなくて、教頭も管理職として手腕を発揮することが求められております。
 教頭の仕事は、教員への指導はもとより、開かれた学校の推進に当たり、地域との連携を図り、その中心的な役割を果たすなど、朝早くから夜遅くまで、時には土日も出勤をして学校内外の幅広い業務をこなしており、大変な激務ですよね。それにもかかわらず、教員と教頭の給与には余り格差がないんじゃないか、こう聞いているわけであります。
 一つの例として、全日制高校の教頭と、多くの手当が支給されている定時制工業高校の教員の給与水準はどうなっているのか、お伺いをいたします。

○横山教育長 これはモデル計算ですが、四十五歳で配偶者と子ども二人を扶養する教員をモデルとしまして、現在適用の給料表で試算した場合、全日制高校の教頭の年収は約一千五十八万円、定時制工業高校の教諭の場合は約一千十四万円となりまして、その年収差は約四十四万円でございます。

○小美濃委員 今のご答弁をお伺いしますと、管理職である教頭と一般教員の給与に大した差はないですよね。これでは、管理職になりたいと思う人はなかなか出てこないんじゃないですかね。
 失業率が今、過去最高となって、企業倒産や自殺者がどんどん出てきている、この厳しい厳しい時代にあって、一律に高い給与を支給するのはいかがなものかと考えるわけであります。頑張っても頑張らなくても、また、教頭になってもならなくても給与に大した差がないということは、進んで苦労して子どものために頑張ろうという、こういった教員は少なくなり、ひいては全体の教育力の低下につながるものと考えているわけであります。
 先ほどから聞いている限り、教員の勤務時間制度や給与制度には問題点が山積をしているわけでありまして、その原因の多くは、地域の実情を顧みず、国が制度を一律に規定をしていることにあると考えるわけであります。国に対して積極的に制度改革の働きかけを行うべきではないかと思っておりますが、ご見解をお伺いいたします。

○横山教育長 ご指摘のように、現行の年功、一律的な給与制度を見直しまして、能力、業績に応じた給与制度の構築がぜひとも必要でございます。
 教員の勤務時間制度、給与制度につきましては、法律により国に準拠するという制約がある中では、都独自の弾力的な運用にも限界がございますが、実は、平成十六年四月の国立学校の独立行政法人化に伴いまして、給与につきましては、国準拠の制約が基本的にはなくなると思われますことから、現在、庁内に給与制度検討委員会を設けまして検討を行っております。
 この中で、教員のモラールアップを図り、学校の教育力を高めるという視点から、能力、業績に応じた給与制度への移行と、これに関連して、教員の勤務時間のあり方についても検討しまして、強く国に提言してまいります。

○小美濃委員 今、教育長から力強いご答弁があったわけでございますが、知事にもお伺いをしたいと存じます。
 石原知事は、東京から日本を変えると、こうふだんからおっしゃっておられるわけでありまして、今、私がご説明をさせていただきました給与体系について、所見を、もしありましたらお答えをいただきたいと思うんです。

○石原知事 給与体系そのものは、教員の能力というものを踏まえての体系になっていないところに、私はいろいろ問題があると思います。
 年をとり、年数を重ねれば自動的に収入がふえていくというのは、スペシャリストとして実は恥ずかしいことでありまして、そういう点からも、教員の能力というものの査定を、このごろ、逆に生徒がするような例も出てまいりましたけれども、そういう方法も取り入れて、私はやっぱり、教員の間にも競争原理というものが働き、自分を励まさない限り能力者と認められないというような、そういうシステムというものが構築されていくことが、教育というものを活発化し、健全にしていく一つのよすがであるとも思っております。

○小美濃委員 ありがとうございました。
 東京から日本の教育を変えるという気概を持って、ぜひ頑張っていただきたい。知事も積極的なバックアップを切にお願いをする次第であります。
 実は、教頭に関する問題はこれだけではございません。学校教育法二十八条には、校長、教頭の業務が書いてあるんですが、「校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。」こういう文言があるわけであります。
 実はこれを逆手にとりまして、教員が楽をしたいために、教頭に授業を受け持たせているといった例があるわけであります。例えば、教職員組合がとても強い学校は、あらかじめカリキュラムの中の理科の専科を教頭に持たせて授業を行わせているという、そういった例も実は聞いてあるわけでありまして、教頭に授業を押しつけるなど、これは本当に論外であると私は考えるわけであります。本来、教頭が授業を持つのは、教員が病気になったときの代役、本当にやむを得ない場合だけに限定するべきであります。
 そもそも教頭は、校長を助け、校長と一体となってリーダーシップを発揮し、学校経営を担っていく実質的なナンバーツーとしての重要な役割を負っているわけであります。また、この四月から主幹制度が導入をされて学校運営組織が強化されることで、学校経営者としての教頭の役割は、さらにさらに重要性を増してくるものと思われます。
 都教委といたしましては、主幹制度導入を機に、このような教頭をナンバーツーとしてふさわしい処遇とするべきであります。
 また、教頭自身のモラールアップのために、都のすべての公立学校で、これはご提案ですけれども、教頭の名称を副校長とすることもぜひご検討いただきたい、こう申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。
 屋外広告物について質問をさせていただきます。
 東京都では、今後の屋外広告物規制のあり方につきまして、広告物審議会へ諮問し、このたびその中間答申を受けたところであります。中間答申の中では、地域ごとの広告物規制の導入やタクシーの車体利用広告、民間資金の活用による公益的施設、物件の整備などが具体的な施策として挙げられているわけであります。
 地域の景観に応じた広告物規制を導入することは、個性ある町並みをつくっていく上でも意義のあることだと思っております。また、タクシー車体利用広告の緩和は、停滞した経済活動を活性化するためにも早急に実施するべきであります。
 そこで、中間答申を受けて、東京都は具体的にどのような施策を展開していくのか、お伺いをいたします。
 まず、タクシーの車体利用広告はどのような内容を考えているのでしょうか。そして、実施時期についてはいつごろになるのでしょうか、お伺いをいたします。

○勝田都市計画局長 タクシーの車体利用広告につきましては、広告物審議会において景観面や交通安全面等に関しまして検討した結果、ドア部分と屋根上部に限って広告掲出を認めること、また、台数制限やデザイン審査は自主規制により取り組むべきであるとの答申が出されました。
 都といたしましては、この答申の内容を尊重した上で、年度内を目途に規制改正等の規定整備を行ってまいります。

○小美濃委員 次に、公益上必要なもの、例えば災害時、地震が起こったときなどの避難誘導看板、こういったものの普及促進のために、広告収入を活用することは有効な手段と考えているわけでありますが、これらについてはどのように取り組んでいかれるのか、お伺いをいたします。

○勝田都市計画局長 ただいまもご説明申し上げました中間答申では、公益上必要な施設に第三者の広告表示を認め、その設置費及び維持管理費の一部を捻出する方策について取り組む方向が示されました。
 今後、バリアフリーのためのエレベーターや観光案内標識など、対象とする施設や規格についての検討を進めてまいります。

○小美濃委員 今までも、バスは先にラッピングバスなどでやられました。バスはよくてタクシーはだめということに対しては、私は個人的には整合性がとれないなと思っていたわけでありますが、ただいまの答弁で一定の方向性が出されましたので、早急によろしくお願い申し上げたいなと思います。
 また、公益上必要な、例えば先ほどご紹介いたしました災害時の避難誘導看板などなど、実際に行政がつけたいなと、各自治体がつけたいなと思っても、なかなか財政的には無理な場合がありまして、こういったときに広告収入によって、設置、維持管理、こういったことができてくれば、これは都民にとっても喜ばしいことだと思っておりますので、積極的に考えていただきたいと思っております。
 次の質問に移ります。
 次の質問は、観光資源としての玉川上水の活用についてであります。
 玉川上水につきましては、我が党の山田議員、また先日は星野理事が一般質問をいたしまして、史跡認定についての質問をいたしました。私は、ことし一月三十日に都から国へ史跡指定の申請が出された玉川上水について、指定されれば貴重な貴重な土木遺産として、文化的価値が一層高まると思っております。三百五十年前の人間の英知の結集が、江戸開府四百年を迎えた今日まで豊かな自然とともに残されているわけでありまして、私はこの施設のコア部分、上水のコア部分だけ見ると、まさしく世界遺産にも匹敵するんではなかろうかと、そういう価値があるんではないかと思っているわけであります。
 また、玉川上水というのは、私も多摩の人間でございますので、小学校のころには玉川兄弟物語というのを、実は習うわけでありまして、兄弟愛のすばらしさ、また二度工事に失敗しているわけでありますが、それにもめげない、初志貫徹をするという、人間の努力をするという大切さ、また現在最も重要だといわれております奉仕の精神などなど、こういったものがぎっしりと詰まった物語でありまして、現在まで長く語り継がれているわけであります。また、学校によっては小学校の学芸会の題材にも使われておりまして、我々にとっては大変有名な物語であります。
 こういった物語性を持った玉川上水は、羽村から武蔵野市まで、多摩地域をずっと横断しているわけでありまして、多摩地域共通の財産といえるわけであります。
 また、玉川上水の周辺には、立川また吉祥寺など、本当に大きな商業地もありますし、また小金井公園や小金井桜、これも史跡指定でありますが、こういった魅力ある観光資源、また私の地元であります武蔵野市を中心とした三鷹、杉並等々、行き着く先は、実はアニメ産業もあるわけであります。区部でいうところの上野や浅草と並び称されて、東京が本当に誇れるような観光資源として積極的に利用していくためには、こうした周辺の観光資源と組み合わせて活用することが必要だと考えております。
 そこで知事にお伺いをしたいわけでありますが、玉川上水の周辺には、このように多くの観光資源があります。こうした観光資源を生かして玉川上水を積極的に売り出し、もっと観光客を誘致してはどうかと考えるわけでありますが、ご所見をお伺いをいたします。

○石原知事 おっしゃるとおりでありまして、私も先般、ジブリ美術館ですか、ちょっと行ってまいりましたが、いろいろなものが周辺にもございます。しかし、どうもそれが複合的にうまく情報として整理されて、それによって多くのビジターを呼び寄せるような形としては、まだ活用されていないような気がいたします。
 このため、都は、江戸時代からの土木遺産として、その価値の非常に高いこの上水の史跡申請を機に、地元の自治体などと協力してさまざまな観光資源の活用を図り、多摩の魅力を引き出して、国内外の観光客を誘致したいと思っております。
 ただ、あそこをずっと沿って車で走りますと、部分的には流れの両側に遊歩道があったりなかったり、その幅も違ったり、そこら辺が一貫性がなくて、情緒がもう一つ阻害された感じもいたしますし、この間も、私の友人の被害者の会の主宰者であります岡村という有名な弁護士があの近くに住んでおりまして、彼はある部分しか散策しないようですけれども、その周辺に公衆トイレがないという指摘を受けまして、探してみますと幾つかのところにあるんですけれども、その部分は長く、何というんでしょうか、かなりのスパンでそういうものがない。こういうものも、やはり地方自治体と協力して整備して、将来できればたっぷり側道をとって、車を気にせずに遊歩できるような整備をしたいなと思っております。

○小美濃委員 大変前向きなご答弁でありがとうございました。
 また、国内外の旅行者、私は特に外国人を誘致をしたいなと思っているわけでありますが、そのためには積極的にこの玉川上水の魅力についてPRしていくことが重要であると考えているわけであります。都として具体的にどのようにPRをしていくのか、お伺いをしたいと思います。

○有手産業労働局長 今、知事が申されましたけれども、玉川上水だけをとらえて今すぐということには、なかなか厳しいものがありますけれども、この玉川上水の近傍を見ますと、北村西望先生だとか、川合玉堂先生だとか、吉川英治さん、国木田独歩さんとかということで、かなり著名な文化人の記念館、美術館もありますし、そういったものを含めまして、国内外に魅力的な観光資源として、ぜひPRしたいと思っています。
 具体的な手段としましては、私ども都のホームページ「東京の観光」、これは既にアクセス件数が一日一万件を超えてふえ続けています。それから、昨年十月にオープンした観光情報センターも四カ月で十四万を超える利用があるんですけれども、みずから持っているこういったツールを最大限活用するとともに、ガイドブックや旅行雑誌への情報提供など、さまざまな機会を通じてPRに努めたいと考えております。

○小美濃委員 PRにつきましても、積極的に行っていただきたいなと思っておりますし、また先ほど知事もご答弁の中にありましたが、今後、玉川上水を訪れる国内外の旅行者の方々が、安心して気軽に散策できるような方策が絶対に必要になってくると思っておりますが、具体的にどのように対応をされていくのか、お伺いをしたいと思います。

○有手産業労働局長 国内外の旅行者が安心して気軽に訪れることが非常に大事だと思っております。それで、都といたしましては、地元自治体などと協力連携しまして、例えばですけれども、玉川上水を起点といたしまして、江戸東京たてもの園や井の頭自然文化園など、周辺の観光資源を結ぶ広域的な観光ルートの開発に取り組んでいきたいと思っております。そして、そのときあわせて、一人でも気軽に歩けるように、外国語を併記した観光案内板などの整備も考えております。

○小美濃委員 先ほどもお話をさせていただきましたけれども、この玉川上水、実は世界遺産について調べたんですが、世界遺産はどういうふうに選ばれるかといいますと、文化遺産、すぐれた普遍的な価値を有している記念工作物であったり、自然遺産、鑑賞上、学術上、保存上、顕著な普遍的価値を有している地形や生物、また複合遺産、文化と自然の両方の要素を重ね合わせたもの。まさしく、このコア部分だけ見れば、玉川上水は十七世紀に百メートルの高低差であれだけの水道をつくった。私は、まさしく本当に世界遺産にも匹敵するようなものだと思っておりますし、また、こういったものは積極的に国内外にPRをしていくべきだと思っております。
 ぜひとも、東京の大切な大切な観光資源として玉川上水をクローズアップしていただくことを、ここに切にお願いを申し上げ、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

○宮崎副委員長 以上で小美濃安弘委員の発言は終わりました。

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