厚生委員会速記録第十六号

令和元年十二月十三日(金曜日)
第七委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長斉藤やすひろ君
副委員長菅原 直志君
副委員長白石たみお君
理事小林 健二君
理事小松 大祐君
理事木下ふみこ君
後藤 なみ君
斉藤れいな君
藤田りょうこ君
伊藤こういち君
たきぐち学君
岡本こうき君
大場やすのぶ君
小宮あんり君

欠席委員 なし

出席説明員
福祉保健局局長内藤  淳君
次長松川 桂子君
技監矢内真理子君
理事後藤 啓志君
総務部長雲田 孝司君
指導監査部長本多由紀子君
医療政策部長矢沢 知子君
保健政策部長成田 友代君
生活福祉部長坂本 尚史君
高齢社会対策部長村田 由佳君
少子社会対策部長谷田  治君
障害者施策推進部長松山 祐一君
健康安全部長高橋 博則君
企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長高齢者施策推進担当部長兼務奈良部瑞枝君
事業推進担当部長池上 晶子君
医療改革推進担当部長田中 敦子君
医療政策担当部長櫻井 幸枝君
地域保健担当部長上田 貴之君
事業調整担当部長藤井麻里子君
子供・子育て施策推進担当部長遠藤 善也君
障害者医療担当部長石黒 雅浩君
食品医薬品安全担当部長花本 由紀君
感染症危機管理担当部長吉田 道彦君
病院経営本部本部長堤  雅史君
経営企画部長児玉英一郎君
サービス推進部長西川 泰永君
経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務樋口 隆之君
計画調整担当部長船尾  誠君

本日の会議に付した事件
病院経営本部関係
付託議案の審査(質疑)
・第百八十五号議案 令和元年度東京都病院会計補正予算(第一号)
報告事項(質疑)
・都立病院PFI事業の検証について
福祉保健局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百八十四号議案 令和元年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、繰越明許費 福祉保健局所管分
・第二百五号議案  東京都無料低額宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例
・第二百六号議案 東京都児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
・第二百七号議案 東京都認定こども園の認定要件に関する条例の一部を改正する条例
・第二百八号議案 東京都幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
・第二百九号議案 東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
・第二百十号議案 東京都指定障害児通所支援の事業等の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
・第二百十一号議案 東京都指定障害児入所施設の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
・第二百十二号議案 東京都心身障害者扶養共済制度条例の一部を改正する条例
・第二百十三号議案 東京都ふぐの取扱い規制条例の一部を改正する条例
・第二百十四号議案 東京都動物の愛護及び管理に関する条例の一部を改正する条例
・第二百二十七号議案 東京都石神井学園の指定管理者の指定について
・第二百二十八号議案 東京都小山児童学園の指定管理者の指定について
・第二百二十九号議案 東京都立東部療育センターの指定管理者の指定について

○斉藤(や)委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、病院経営本部及び福祉保健局関係の付託議案の審査並びに病院経営本部関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百八十五号議案、令和元年度東京都病院会計補正予算(第一号)を議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○斉藤(や)委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○斉藤(や)委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○斉藤(や)委員長 次に、報告事項、都立病院PFI事業の検証についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○西川サービス推進部長 去る十一月二十九日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明を申し上げます。
 お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。資料は、目次にございますように、合計二件でございます。
 恐れ入りますが、一ページ目をお開きください。1、PFI事業を導入している各都立病院におけるリネンサプライの各年度の支払想定額及び実支払額でございます。
 PFI事業を導入している各都立病院のリネンサプライ事業につきまして、各年度の支払い想定額及び実支払い額を、一ページから四ページまで、病院別に記載をしております。
 恐れ入りますが、五ページをごらんください。2、PFI事業を導入している各都立病院における診療材料等の調達に係る各年度の支払想定額及び実支払額でございます。
 PFI事業を導入している各都立病院の診療材料等の調達につきまして、各年度の支払い想定額及び実支払い額を、五ページから八ページまで、病院別に記載しております。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○斉藤(や)委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○木下委員 それでは、都立病院PFI事業検証報告書についてお伺いをいたします。
 現在、多摩総合医療センター、小児総合医療センター、駒込病院、そして松沢病院の四病院においてPFI事業が実施されており、今回その検証結果が本委員会に報告されたところでございます。
 PFIは、イギリス発の公共事業推進の手法で、公共施設の整備や改修に際し、民間のノウハウを活用し、財政面及びマネジメント面での効果を狙うものです。日本では、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、これPFI法でございますが、平成十一年七月に制定され、平成十二年に基本方針が定められ、そしてPFI推進委員会の議論を経て、内閣総理大臣によって策定され、PFI事業の枠組みが設けられました。
 その後、平成二十二年、骨太の方針の中で、インフラの老朽化が急速に進展する中、民間の資金、ノウハウを活用し、インフラ運営の更新等の効率化、サービスの質的向上、そして、財政負担の軽減が図られる事業についてはPPP、PFIを積極的に活用すると打ち出され、また、平成二十五年の骨太の方針では、PPP、PFIアクションプランを推進し、平成二十五年から平成三十四年度までの十年間で二十一兆円規模の事業規模目標を達成としています。内閣府の発表によりますと、平成三十年度末までのPFI事業の累計は七百四十件に上っているということでございます。
 このような国の流れの中、東京都でも約十年前から、施設の老朽化を迎えていた四つの都立病院についてPFIが導入されたわけでございますが、まず、確認の意味で、これら四病院にPFI事業を導入した経緯についてお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 病院経営本部では、平成十三年十二月に策定いたしました都立病院改革マスタープランにおきまして、都立病院の再編整備の手法としてPFIの導入を検討することとし、十五年一月策定の都立病院改革実行プログラムにおきまして、再編整備はPFI手法を前提とすることといたしました。
 その後、都が直接実施する場合と比較して財政負担の縮減が見込まれること、また施設の建設、維持管理及び運営の一体的な発注による効率化やサービス水準の向上が期待できることから、平成十六年に多摩総合医療センター及び小児総合医療センター、十七年度に駒込病院、十九年度に松沢病院につきまして、それぞれPFI事業として実施することを決定いたしました。
 その後、それぞれにつきまして、総合評価一般競争入札により事業者を選定し、駒込病院は平成二十一年四月、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターは二十二年三月、松沢病院は二十四年二月に運営を開始して、現在に至っております。

○木下委員 ありがとうございました。
 次に、今回こういった検証報告書が報告されているわけですが、この検証の位置づけと検証方法についてお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 今回の検証は、各病院が運営を開始してからおおむね十年となる中、医療を取り巻く環境が大きく変化していることを踏まえまして、残りの事業期間における医療サービスのさらなる向上に資することを目的に実施をいたしました。
 都がPFI事業の導入により期待した効果は、都の財政負担の縮減、施設の設計、施工及び病院運営の一体的発注による効率化や、都とPFI事業を実施するために設立された特別目的会社、いわゆるSPCとの役割分担による医療サービス水準の向上でございます。
 このため、定量的な評価として、各PFI事業における都からSPCへの支払い額の妥当性を検証するため、事業開始から平成二十九年度末までの累計額につきまして、実際の支払い額と事業者が事業開始当初に提案した支払い想定額とを比較分析しております。
 また、定性的な評価といたしまして、SPCの具体的な取り組みにおいて、PFIの特徴である性能発注、包括発注及び長期契約のメリットが生かされているのかを確認しております。

○木下委員 ありがとうございました。事業期間中でありながらも、各病院のPFI事業の実施状況について、今ご説明のあったように、定量的及び定性的に評価を行った点については、事業の透明性を確保する観点からも重要であると考えます。
 今回の報告においては、施設整備や運営、調達などの切り口ごとに四つの病院を評価しています。このような捉え方も重要であると思いますが、これらの四病院は、それぞれ提供する医療内容が異なっているため、SPC、特別目的会社に求められる能力や業務にも病院ごとに特色があると考えられます。
 報告書でもSPCが実施している具体的な事例が挙げられていますが、それ以外にもSPCはさまざまな取り組みを行っていると思うところでございます。
 そこで、病院の機能や役割に応じたSPCの取り組みと、それに対する病院経営本部としての評価をお伺いしたいと思います。
 まず、二つの病院を一体的にSPCが業務を担っている多摩総合医療センターと小児総合医療センターについてお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 多摩総合医療センターは、救急医療、がん医療、周産期医療、精神科救急などを中心とした重症度の高い急性期医療を提供しております。さらに、三百六十五日二十四時間体制の東京ERによって総合的な救急医療を提供するとともに、救急救命センターを運営しております。
 また、小児総合医療センターは、他の医療機関では救命医療が困難な患者を受け入れるこども救命センターや、多摩総合医療センターと一体となった総合周産期母子医療センターなど、都における小児医療の拠点として役割を果たしております。
 このため、SPCは、施設整備においては建物の三階に多摩総合医療センターのMF-ICUと小児総合医療センターのNICUを渡り廊下で連携させることで、総合周産期母子医療センターの機能を十分に発揮できるような設計とするなど、一体的な整備により医療の質の向上を図っております。
 また、病院の運営につきましては、SPCが担う医療周辺業務におきまして、夜間等に医療従事者が診療業務等に専念できる工夫が求められます。
 例えば、夜間、休日においては、医療作業が不在となりますが、SPCが協力企業間の業務調整を行い、リネンサプライ業務が、リネン類の準備に加えてベッドメーキングを行うこととし、患者の緊急入院への対応を支援しております。さらに、夜間救急診療での出血や嘔吐などによる診察室や廊下の汚れの処理につきまして、SPCが夜間の緊急清掃を導入し、看護師が本来の業務に専念できるよう対応しております。
 こうした取り組みから、SPCは、これらの病院の医療機能を理解し、求められる役割をおおむね果たしていると考えております。

○木下委員 施設整備の面、それから病院の運営の面でも、非常に有意義な役割を果たしているということが確認されました。
 それでは次に、専門的な医療を提供している駒込病院、そして松沢病院でのSPCの取り組みに対する病院経営本部の評価はどのようなものか見解をお伺いしたいと思います。

○西川サービス推進部長 駒込病院は、都道府県がん診療連携拠点病院といたしまして、高度で専門的ながん医療を提供するなど、都におけるがん医療のネットワークの中心としての役割を担っております。
 駒込病院は、がんを中心に多くの手術を実施しておりまして、SPCは、手術時の安全性を確保するため、中央滅菌材料室を滅菌材料の主たる供給先である手術室の直下に配置するとともに、二台の専用エレベーターにより、滅菌済みの機材と使用済みの機材の動線を明確に分離いたしました。
 また、都における精神科医療の拠点である松沢病院では、SPCからの提案を踏まえまして、新病棟において、ベッドのレイアウトの工夫や間仕切りの設置などにより、四床室でのプライバシーを確保するとともに、スタッフステーションからあえて死角をつくり、患者がくつろげる空間を提供するなど、患者に配慮した療養環境を整備しております。
 先ほどご答弁申し上げました多摩総合医療センター及び小児総合医療センターを含めまして、いずれの事業におきましても、SPCは、病院の医療機能が十分に発揮されるよう施設整備や業務運営に当たってさまざまな工夫を行っており、病院経営本部といたしましても、こうした取り組みをおおむね妥当と評価しているところでございます。

○木下委員 ありがとうございました。
 次に、検証報告書を読ませていただきますと、事業の開始から平成二十九年度までの都の支払い額は、三つのPFI事業のいずれにおいても、当初の支払い想定額を超えていることが見てとれます。この点を鑑みまして、病院の経営状況についても確認しておきたいと考えます。
 そこで、PFI事業を導入した都立四病院について、PFI事業を導入する前とPFI事業による病院運営が行われている現在とでは、収益と支出の関係はどのように変化をしているのかお伺いをしたいと思います。

○西川サービス推進部長 病院の収益と支出の関係を見る上では、医療サービスの提供に必要な経費は収益にも連動いたしますことから、両者の比率を把握することが重要でございます。
 そこで、今回の検証におきましては、PFI事業を導入したことに伴い、人件費の一部及び材料費は委託料、つまり経費として支出されておりますことから、人件費、材料費及び経費の三項目の合計額を費用として捉えまして、この費用と医業収益の関係を分析いたしました。
 その結果、費用を医業収益で割り返した比率につきまして、PFI事業導入前の平成十八年度と導入から約十年が経過した平成二十九年度の二つの時点を比較いたしましたところ、PFIに係る四病院のいずれにおきましても、この比率は減少しております。
 具体的には、多摩総合医療センターでは一〇三・二%から一〇〇・六%、小児総合医療センターでは一三九・〇%から一二八・五%、駒込病院では一一六・三%から一〇八・七%、松沢病院では一五九・七%から一五七・一%と低下しており、いずれも数値は改善をしております。

○木下委員 ありがとうございました。今までの質疑を通しまして、各病院のSPCはおのおのその役割を果たしていることや、PFI事業を導入した病院においては、費用が増加していても、収益に占める費用の割合が増加しているわけではないことがわかりました。
 しかしながら、ご答弁にありましたとおり、縮減はしているものの、小児総合医療センターでは一三九・〇%から、その結果一二八・五%、松沢病院では一五九・七%から減って一五七・一%と、そもそも費用対医業収益の比率はかなり高いといわざるを得ません。
 両病院が担う小児科医療や精神医療は、民間病院などでは収益を圧迫されるため取り組みがたい分野であることから、行政的医療の提供として、都立病院が都民に提供する分野であり、収益がとりにくいことは承知していますけれども、行政的医療に幾ら都税を投入すべきかについては、今後、議論が進む都立病院、公社病院の独立行政法人化においても、その根拠づけが都民の納得のいくものになっていなければならないと考えます。この点、しっかりと検討されることをここでお願いをしておきたいと思います。
 次に、事業を進める上でPFI手法における課題もあるのではないかと考えます。
 病院経営本部が今持っているPFI手法に関する課題認識についてもお伺いしておきたいと思います。

○西川サービス推進部長 本報告書におきましては、都立病院のPFI事業は、現時点では、おおむねその目的を達成しているものと評価をいたしました。
 しかしながら、コストの面では、今回の検証で明らかになりましたように、高額医薬品の増加など、医療の高度化はPFI事業費の変動要因となっております。
 したがいまして、各事業の残る事業期間につきましても、費用のより一層の縮減を図りながら、質の高い医療サービスを効率的に提供していく不断の取り組みが必要でございます。
 また、運営面におきましては、PFI事業開始後、一定期間が経過し、SPCによるサービスレベルが安定する一方、新たな業務への対応については時間を要するなど、SPCの協力企業に対する調整が困難な場合がございます。
 さらに、病院の管理運営をアウトソーシングしたことに伴いまして、病院の事務職員においては、調達に関する知識やノウハウを習得する機会が限られる面がございます。

○木下委員 ありがとうございました。幾つかの課題もご認識があるということで、今後、事業継続に当たりましては、この点の改善も引き続き見ていっていただきたいというふうにお願いいたします。
 そして、さきにも触れましたけれども、知事は、十二月三日の本会議での所信表明において、都立病院と公社病院について、地方独立行政法人への一体的な移行に向けた準備を開始することを明らかにされました。
 また、十二月十日、十一日に行われました我が会派、都民ファーストの会の代表質問及び一般質問に対しても、堤病院経営本部長より言及があったところでございます。
 そこで、今回お話をしておりますPFI事業を導入している都立病院が、地方独立行政法人に移行する場合にはどのようになるのかお伺いをしておきたいと思います。

○西川サービス推進部長 地方独立行政法人法によれば、設立団体が有する権利及び義務は、原則的には地方独立行政法人に継承されることとなります。
 都立病院の地方独立行政法人化に関しましては、移行に向けた準備を開始することとした段階でございまして、現在PFI事業を行っている四つの都立病院について、今後準備を進める中で、承継に関する手続などを具体的に検討してまいります。

○木下委員 ありがとうございます。ただいまのご答弁によりますと、設立団体である都が有する権利と義務は、独法化後は独法に承継されるというお話でございました。独法化がいつ達成できるかはこれからのことでございますが、PFI事業の実施期間が残っていても、そのまま契約を継続することで大きな混乱はなさそうだと確認をいたしました。
 都は、都立病院新改革実行プラン二〇一八において、都立病院の役割を、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を提供すること、その安定的かつ継続的な提供と地域医療への充実への貢献と定めています。
 現在都立病院に、行政的医療の提供のためということで、年間約四百億円の一般会計からの繰り入れがなされています。この金額が妥当であるのか、先ほども申し上げましたけれども、今後の独法化への議論の中においては、なおさら都民の納得のいく説明が必要であることを改めて申し述べさせていただきまして、私の質問を終わります。

○小林委員 都立病院に初めてPFI事業が導入されてから既に十五年が経過をしておりますが、今回、都立病院のPFI事業の検証報告書が本委員会に報告をされました。
 私からは、主にコストの面から何点かお伺いをさせていただきたいと思います。
 いうまでもなく、PFIは、民間のノウハウなどを活用することで、行政が直接実施するよりも効率的、効果的に事業を進める手法でありますが、都は、都立病院にPFI事業の導入を決定した際、コスト面では具体的にどのような効果を期待していたのかお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 都は平成十六年度以降、順次、多摩総合医療センター、小児総合医療センター、駒込病院及び松沢病院にPFI手法を導入し、施設整備、施設の維持管理、医療事務などの医療周辺業務を、PFI事業を実施することを目的に設立された特別目的会社、いわゆるSPCに委託をしております。
 PFI手法を導入するに当たりまして、都がコスト面で期待したことは、長期包括的に民間に委託することにより、都が直接実施する場合と比べて財政縮減効果が得られることでございます。
 具体的には、約十八年に及ぶ事業期間全体につきまして、都が直接実施した場合とPFI手法を導入した場合の財政負担を比較いたしまして、どの程度縮減しているかを定量的にあらわしたVFM、いわゆるバリュー・フォー・マネーを算定しております。
 事業者選定時のVFMは、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターで六・七%、駒込病院は四・三%、松沢病院は四・五%でございました。

○小林委員 今ご答弁にもありましたが、PFIを導入した三事業のいずれも、VFM、バリュー・フォー・マネーはプラス、つまり都が直接実施するより、PFIを導入する方が少ない財政負担で事業を実施することができるという結果を得ていたということでございます。
 今のご答弁によれば、事業者の選定時において、財政負担の縮減効果を示すVFMを算定したということでありますが、今回の検証報告書では、現時点でのVFMを算定しておりませんが、その理由についてお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 PFI事業を導入する時点で算定したVFMは、当時、都が従来手法により運営していた都立病院の実績や決算等をもとに算定をしております。
 一方、事業開始から現在に至るまで、SPCは、従来、都が個別に実施していた業務を見直して実施をしております。事業期間中である現時点でのVFMを算定しようとする場合、これらの業務を都の従来の個別契約における仕様に置きかえて財政負担を算定することが必要となります。
 しかしながら、そのためには、現在SPCが行っている業務を都がどのように実施するかについて多くの仮定を重ねざるを得ず、現時点でのVFMを算定することは困難と判断をいたしました。
 なお、国が定めているVFMに関するガイドラインにおいても、PFI導入を決定した時点、また事業者を選定した時点でVFMを算定、公表することとしており、その考え方も示しておりますが、事業開始後の算定については言及をされておりません。

○小林委員 国のガイドラインにおいても特段の言及をされていないということは、やはり技術的な課題があるということだと思いますが、では、今回の検証報告書では、各PFI事業の実支払い額が、契約締結時に事業者が提案した支払い想定額の範囲内か否かという定量的な評価をどのように行っているのかお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 今回の検証におきましては、定量的な検証といたしまして、PFIを導入している四病院のそれぞれの事業について、事業開始から平成二十九年度までの間について、都からSPCへの実支払い額が契約締結時の事業者による支払い想定額の範囲内におさまっているかどうかを確認しております。
 さらに、実支払い額が支払い想定額を超過している場合には、その理由が妥当であるかという観点から評価をしています。
 これは、約十八年という長期間にわたりまして、施設整備から運営等を包括的に委託する契約においては、当初の想定額からの乖離を把握し、分析することが事業を定量的に評価する上で有効と考えたためでございます。

○小林委員 報告書を見ますと、特に医薬品や診療材料などの調達において、都からSPCへの実支払い額が支払い想定額を大きく超えております。その超過額は、多摩総合医療センター、小児総合医療センターで二百五億円、駒込病院で二百五十四億円となっております。
 確かに、医薬品や診療材料などの費用は、医療を提供する上で必要なコストだと思いますが、ここまで乖離が広がっている理由は何なのかということをお伺いしたいと思いますが、初めに、医薬品についてご答弁をお願いしたいと思います。

○西川サービス推進部長 今回の定量的な検証では、都からSPCへの支払いを施設整備、建物管理や医事業務などの運営、医薬品等の調達の三つの業務に分類して分析をしておりますが、特に調達において支払い想定額を大きく超過してございます。
 医薬品につきましては、特に多摩総合医療センター及び駒込病院の二病院での超過額が大きく、両者を合わせると二百九十八億円に達します。
 その主な要因といたしましては、がんの分子標的薬などの高額医薬品の保険収載やがんの外来化学療法の患者数の増加など、PFI事業開始当時は予想できなかった医療の高度化や診療実績の増加でございます。
 例えば、がん医療関連の医薬品調達費は、駒込病院では、平成二十一年度の二十億四千二百万円から二十九年度の三十四億三千九百万円へと六八%増加し、また、多摩総合医療センターでは、平成二十三年度の十六億一千三百万円から二十九年度の二十五億八千五百万円へと六〇%増加しております。

○小林委員 次に、診療材料についてですが、診療材料というのは非常に多岐にわたるかと思いますけれども、そもそも診療材料とはどのようなものなのか改めてご説明の上、乖離した理由のご答弁をお願いしたいと思います。

○西川サービス推進部長 診療材料には、日常的に使用する医療用のマスクや手袋、注射器などから、一個当たり数十万円の人工股関節や数百万円もするペースメーカーまで、病院で使用する材料は数千品目に及んでおります。
 医療技術の進展によりまして、患者のQOLの向上が期待される高度で精密な診療材料が登場しておりまして、これらの高額な診療材料を使用する循環器科や整形外科などの手術件数の増加などが費用増の主な要因でございます。
 例えば、整形外科の手術件数は、駒込病院では、平成二十一年度の三百四十八件から二十九年度の七百九十件へと一二七%増加し、また、多摩総合医療センターでは、平成二十二年度の七百八十五件から二十九年度の一千百五十七件へと四七%増加しております。
 このほか、小児総合医療センターにおきましても、運営開始以降、手術件数が六四%増加していることも要因の一つになっていると考えております。
 なお、先ほどお答えした医薬品や診療材料の一部である特定保険医療材料を使用することは、費用を発生させるとともに、収益の増加にも寄与するものであり、その費用と収益はおおむね連動して伸びております。

○小林委員 比較的最近開発をされました、例えばオプジーボなどの高額ながん治療薬が登場しましたけれども、都立病院にPFI事業を導入した当時は予想できなかったことであると思います。また、診療実績の増加は、がんの治療などにおいて都立病院の医療機能が強化されていることのあらわれだとも考えられます。
 患者さんのことを考えれば、よりよい医薬品や診療材料を用いて治療をするのは当然でありますし、先ほどご答弁にあったように、こうした費用の伸びと収益の伸びは連動していると思います。
 医薬品や診療材料の調達に関する費用が増加していることには合理的な理由があると思いますが、それでは、そもそも都が想定していた医薬品、診療材料などの支払い想定額はどのように積算されたのか具体的な例をもとにご説明をお願いしたいと思います。

○西川サービス推進部長 例えば、多摩総合医療センター、小児総合医療センターにつきましては、都は、旧府中病院及び小児三病院が当時購入していた医薬品や診療材料等を参考に、新たな病院で使用が想定される品目及び数量を検討いたしました。
 都は、平成十七年三月にPFI事業に係る事業者の募集要項等を公表し、その公表後、事業者に対しまして、医薬品や診療材料等の購入予定品目及び予定数量を提示いたしました。事業者は、都の提示に基づき、支払い想定額を積算した上で提案したものでございます。
 その後、平成十八年一月、事業者を決定いたしまして、施設整備等の開設準備期間を経て、二十二年三月からPFIによる病院業務を開始しております。
 なお、駒込病院、松沢病院につきましても、同様にSPCは支払い想定額を積算しております。

○小林委員 医薬品、診療材料については、事業者はPFIによる業務開始直前における都立病院の診療実績に基づき、支払い想定額を積算したとのことでありますけれども、その後、高額な医薬品などの登場など医療環境の変化があったため、都の実支払い額と支払い想定額との間に乖離が生じていったということは理解し得ることだと思います。
 病院経営本部は、検証報告書において、こうした医療環境の変化がPFI事業費の変動要因となっているとの認識を示しておりまして、都立病院が患者に適切な医療を提供する上では必要な費用であると思いますが、当然のことながら、都としては事業費を縮減する取り組みも求められてくると思います。
 支払い額の規模が高額になっておりますけれども、医薬品などの調達費用を縮減するために、都としてSPCとはどのような協議を行っているのか確認をいたします。

○西川サービス推進部長 適切な医薬品や診療材料を使用することは、都立病院が都民や患者から求められる医療を提供する上で不可欠でございます。
 一方、その費用の縮減は、病院の経営改善に当たり重要な課題の一つであると認識をしております。
 各PFI事業は、病院の運営期間が約十五年の長期に及びますことから、医療環境や市場の変化、病院の医療機能の変更など、提案時には予測できなかった状況にも対応するため、SPCとの事業契約に基づきまして、五年ごとにSPCと協議を行うことと定めております。
 例えば、分子標的薬など値引き率の低い新薬の購入は増加傾向にあるものの、この五年ごとの協議に際しまして、PFIを導入している四病院全てでSPCとの調整により、医薬品の値引き率を当初の案よりも引き上げております。

○小林委員 費用の縮減は、病院の経営改善に当たり重要な課題との認識で、病院経営本部としても、薬品の調達費用の縮減に取り組んでいるとのことですので、引き続きの取り組みをお願いしたいと思います。
 報告書において、SPCに期待した役割が果たされているかどうかという定性的評価においては、SPCのマネジメント業務の一つに経営支援の取り組みが挙げられております。
 費用縮減に向けて、SPCの経営支援により、一層の取り組みを促進することが重要であると考えますが、SPCの経営支援の取り組みの内容を具体的にお伺いをいたします。

○西川サービス推進部長 各病院のPFI事業では、SPCによるマネジメント業務の一つに経営支援を位置づけまして、病院の経営会議への参加や経営方針に沿ったコンサルテーションなどの実施を求めております。
 収益向上に向けた経営支援といたしましては、SPCは、院長など病院幹部の指示のもと、病院の診療ニーズ、地域特性等を把握した上で、病院の企画部門と連携しながら、経営指標による分析や収益向上のためのシミュレーションを行い、具体的な経営改善の提案を実施しております。
 また、ご指摘の費用縮減に向けた取り組みといたしましては、例えば、DPC分析に基づく後発医薬品への切りかえや、ベンチマーク分析によるコスト比較に基づいた診療材料の低価格同等品への切りかえなど、改善の提案を実施しております。
 引き続き、SPCの提案を活用いたしまして、経営改善や業務効率化の取り組みを一層推進してまいります。

○小林委員 ありがとうございます。
 いうまでもなく、病院にとって最も大切なことは、患者中心の医療を提供することが根本の使命であると思います。
 先ほどの木下理事の質疑の中での今後のPFI事業の課題認識でもご答弁がありましたが、報告書の評価のまとめにおいて、各病院が今後の事業期間についても質の高い医療サービスを効率的に提供していく必要があるとの認識で、今後必要となるPFI事業の費用を精査し、必要な対応を進めていくと締めくくられておりました。
 今後も、患者第一の事業の取り組みとなるよう強く要望いたしまして、質問を終わります。

○大場委員 都議会自民党の大場でございます。
 都立病院にて実施されておりますPFI事業に関する検証結果につきまして、本厚生委員会に報告がございました。
 私からは、その報告書に関連しまして、PFI事業について何点か質問させていただきたいと思います。
 私の理解では、拙い理解でまことに恐縮でございますが、公的病院におけるPFI事業導入は、民間への単なる業務委託にとどまるものではなく、民間事業者の有するノウハウを生かしまして、提供する医療サービスの向上を図ることを目的として用いられる手法の一つであると認識してございます。
 都立病院におきましては現在、小児総合医療センターを初め、四つの病院でPFI事業が導入されていまして、施設整備や病院運営、具体的には医療に直接かかわらない維持管理業務や医療周辺業務、調達業務などを包括的に民間事業者に委託しているところであります。
 まず初めに、都立四病院におきまして導入されておりますPFI事業にはどのような特徴があるのかを確認させていただきます。

○西川サービス推進部長 PFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の経営能力、技術力等を活用して行う事業手法でございます。
 従来、都立病院の整備や運営におきましては、工事請負や業務委託は個別の業務ごとに都が仕様を定めて契約を締結する、いわゆる仕様発注が行われてまいりました。
 一方、PFI事業では、当該事業を実施するために設立される特別目的会社、いわゆるSPCに対しまして、施設の設計、建設から維持管理、運営までを包括的に担わせるものでございまして、いわゆる性能発注の手法が用いられます。
 性能発注におきましては、都が求める要求水準をSPCに提示し、SPCはその要求水準を満足するように都と協議を重ねて施設や業務の具体的な仕様を定め、実施に移していくこととなります。
 また、都立病院のPFI事業は約十八年に及ぶ長期契約であり、運営業務の安定性を確保するとともに、業務を担う協力企業を含めたSPCが長期的な視点で業務に取り組むことを可能としております。

○大場委員 ただいまのご答弁で、都立病院におけるPFI事業の特徴といたしまして、あらかじめ仕様を定めた上で発注する仕様発注ではなくて、事業者みずからが都が示す要求水準を満たすように、具体的な仕様を定める性能発注があることが明確になりました。
 その性能発注に関しましては、報告書を読ませていただいたところ、施設整備面において効果的であったとの検証がなされているようでございました。
 そこで、都立病院の施設整備における性能発注とは具体的にどのようなものであるのかお伺いいたします。

○西川サービス推進部長 施設整備における性能発注では、都が病院施設に求められる性能を要求水準として示し、SPCはその要求水準を満たす設計を行い、施設を建設いたします。
 具体的には、病院の施設整備においては、敷地の条件、施設の規模や構造、また各診療部門、病棟などの機能や病床数など、医療機能の提供に必要な施設の性能に関する情報を要求水準といった形で、都があらかじめ提示をいたします。
 事業者であるSPCは、その要求水準を満たした上で、さらに創意工夫を重ね、病院として最適と考えられる設計案を提案し、施工段階においても、病院現場の要望をできる限り反映できるよう工夫を図っております。
 したがいまして、PFI手法では、都が要求する水準が実現されるだけにとどまらず、そこに民間の創意工夫が加わることによって、さらにすぐれた施設の整備がなされるものと考えております。

○大場委員 一般的な仕様発注と比べますと、事業者の創意工夫が可能となる範囲が広いことなどから、都立病院のPFI事業の特徴でございます性能発注の場合は、SPCから--これはそれぞれのPFI事業の主体となる民間事業者の集合体による特別目的会社のことと理解しておりますが、施設整備に係るすぐれた提案が示される可能性が高くなると私は受けとめております。
 その一方で、それぞれの病院で提供されている、あるいは提供されるべき医療サービスのことも最も深く理解しているのは、病院現場の医療従事者の方々にほかならないと考えます。そのため、実際の施設整備に当たりましては、医師、看護師、そしてコメディカルと呼ばれる方々など、医療従事者の方々の意見を反映することは欠かせません。
 私の地元世田谷区にございます都立松沢病院は、精神医療の専門病院でありまして、かつては広い敷地内に多くの病棟が点在しておりました。平成二十四年の改築によりまして、病棟が集約されて、景観や建物が一新されたところでございます。
 そこで、松沢病院におきましては、PFI事業導入に当たりまして、医療従事者の意見が施設整備にどのように反映されたのかをお伺いいたします。

○西川サービス推進部長 施設整備の設計は、その後の円滑な病院運営にも大きな影響を及ぼすことから、医療従事者の意見を設計に反映することは重要でございます。
 松沢病院を例にとりますと、都とSPCが提案内容の細部を確定していく過程におきまして、例えば、精神科救急病棟、急性期病棟を何階に設置するかといった病棟の配置など、病院の基本的な考えをSPCが集約し、病院の職員と検討を重ねました。
 また、SPCは、病棟、外来などの部門ごとに、医師や看護師など部門代表者が参加するワーキンググループを設け、医療現場の意見を把握し、設計に反映させました。
 その結果、これまで低層分散化していた施設を集約立体化し、救急、急性期、合併症などの各病棟を一つのフロアにまとめるなど、機能性と利便性の向上を図りました。

○大場委員 松沢病院では、医療サービス提供の第一線で働いていらっしゃる現場の医療従事者の方々からの意見をしっかりと聞いた上で詳細を詰めて、PFI事業が開始されたとのことが確認できました。
 それでは、松沢病院では、医療従事者からの意見を集約し、実際に反映したことによりまして、具体的に患者さんにとってどのような効果があったのかお伺いいたします。

○西川サービス推進部長 SPCの当初の提案では、改築前と同様に、病棟のスタッフステーションとスタッフステーションの前のデイルームの間をガラス張りのカウンターで仕切りをしていました。
 しかし、病院職員の意見を反映いたしまして、全病棟のスタッフステーションの受付をオープンカウンターにすることで、患者とスタッフを隔てる壁をなくし、患者が職員に声をかけやすい開放的な病棟をつくることにつながりました。
 また、デイルームや廊下に設けたデイコーナーには、ところどころにソファーや椅子を配置し、患者が思い思いにくつろげる空間を提供しております。
 病院職員の意見の反映と民間の発想を生かした療養環境の整備によって、患者同士の交流など、病室以外で過ごす時間が多くなるという効果もあらわれております。

○大場委員 松沢病院における施設整備の例によりまして、都立病院の特徴である性能発注導入は、大きな効果が得られ、評価されていることがわかりました。
 さて、報告書では、都立病院のPFI事業に関しまして、施設整備だけではなく、病院運営の面につきましても、性能発注により実施されていることが指摘されております。
 実際の病院運営に当たりましては、各SPCは、施設の維持管理、清掃、医療業務、滅菌消毒、入院患者への食事の提供など、広範に及ぶ業務を担ってございます。各SPCのこれらの日々の業務が都の要求水準を十分に満たしているかどうかを確認し、良質な医療サービスを継続的に確保していくことは極めて重要であると考えます。
 そこで、やはり松沢病院を例といたしまして、SPCによる業務が都が求める要求水準に達して行われていることがどのようにして確認されているのかお伺いいたします。

○西川サービス推進部長 都とSPCは、PFIの事業契約に基づきまして、SPCが提供するサービスレベルを確認するため、二段階のモニタリングの仕組みを設けております。
 まず、SPCがみずからの業務の問題点や課題を把握し、サービスの維持改善につなげていくためのセルフモニタリングを行い、次に、SPCのセルフモニタリングをもとにして、都が業務の履行状況を確認、評価するモニタリングを実施しております。
 このモニタリングを毎月実施することにより、SPCが提供するサービスレベルをチェックし、要求水準を満たしていない場合には、都はSPCに対して、改善計画の提出や改善状況の報告を要求することで、運営業務の質の維持と向上を図っております。
 都のSPCに対するモニタリングは、AからEまでの五段階評価で実施しており、評価B以上が都が求める業務水準が維持されている状態を示すものとなってございます。
 松沢病院における平成二十七年度から二十九年度までの三年間のモニタリング結果では、評価項目全体に対しまして、要求水準が維持されているB以上と評価された項目が九割を超えております。

○大場委員 松沢病院を初めとする四病院におきましては、年間延べ七千件に及ぶ項目に関する確認が実施されており、この網羅的なモニタリングの仕組みは、PFI事業の質を確保するための大変重要なツールであることが報告書からもわかります。引き続き、確認にしっかり取り組んでいただきたいと理事者の皆様に要望させていただきます。
 さて、近年頻回に発生し、日本列島全土に大きな被害をもたらしております自然災害に対する行政の対応も、今回の定例会の議論の焦点の一つとなってございます。
 一たび自然災害が発生した場合に、東京の基幹的インフラである都立病院の機能を維持し、かつ非常事態であっても効果的に発揮するためには、申し上げるまでもなく、病院職員のみならず、各SPCの対応が非常に重要となります。PFI事業を検証するに当たりましては、このような観点も必要だと考えます。
 そこで、平成二十三年三月に発生した東日本大震災に際して、当時の各SPCがどのような対応をとったのかをお伺いいたします。

○西川サービス推進部長 東日本大震災が発生いたしました平成二十三年三月において、PFIによる運営が開始されていた病院は、多摩総合医療センター、小児総合医療センター及び駒込病院でございました。
 震災当時、運営開始から一年が経過していた多摩総合医療センター及び小児総合医療センターでは、多摩地区で実施された計画停電に際しまして、SPCは、施設の設計、建設から維持管理までを一体的に担っているメリットを生かして対応いたしました。具体的には、SPCと病院が緊密に連携し、病院内の電力供給を適切にコントロールして、診療や手術への影響を最小限に抑えることで大きな混乱を回避いたしております。
 また、震災当時、駒込病院は、SPCが施設改修を進めながら運営している段階でございました。地震発生後、直ちにSPCは人的被害や、地震による病院施設や工事現場への影響を調査し、大きな被害がないことを確認いたしました。
 業務運営におきましても、首都圏の公共交通機関が一斉にとまったため、SPCが協力企業と迅速に調整を行い、前日の調理スタッフに業務を継続してもらうことで、翌日、患者への朝食を滞りなく提供することができました。

○大場委員 東日本大震災という未曽有の大災害時におきまして、それぞれの都立病院のSPCが病院運営、病院機能の継続を図るために大変尽力したことが理解できました。
 最近では、本年九月九日に関東地方に上陸した台風十五号が大きな被害をもたらしました。お隣の千葉県内では、七十一もの病院で停電が発生したとの報道がございました。さらに、十五号の後に関東地方を襲った台風十九号では、世田谷区初め、都内の病院でも大きな被害を受けたところでございます。
 台風などの自然災害に備えまして、各都立病院の各SPCはどのような対策を講じているのか、そして、今回の台風に際して各SPCはどのように対応したのか具体的にお伺いいたします。

○西川サービス推進部長 各SPCは、災害への対応といたしまして、災害時における事業継続計画、いわゆるBCPを作成するとともに、協力企業も含めた従業員の非常食の備蓄や非常時の参集連絡体制の整備、安否確認訓練の実施など、災害時においても業務に支障を来さないよう、自主的な取り組みを行っております。
 例えば、松沢病院では、SPCと協力企業が連携をいたしまして、地震、大雪、台風などによりライフラインが遮断された場合を想定したマニュアルを整備し、安否確認システムの導入など、発災時にも協力企業も含めた人員の確保を図る取り組みを行っております。
 本年九月の台風十五号や十月の台風十九号のために鉄道などの計画運休が実施された際にも、マニュアル等に基づきまして、SPCが事前に各協力企業と出勤体制を調整することで、病院運営に支障を来すことを回避しております。

○大場委員 ありがとうございました。
 今後も、各病院はそれぞれのSPCと緊密な連携を図り、災害発生時においても安定的な病院運営と適切な医療サービスの提供に努めていただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終えたいと思います。

○白石委員 日本共産党の白石たみおです。
 都立病院PFI事業の検証報告について質問をいたします。
 その前に、まず初めに、都立病院を独法化すると、突然、小池知事が十二月の三日、表明をいたしました。この質疑では独法化の直接の議論というのはできませんけれども、改めて申し上げておきたいと思いますが、都立病院の役割や都民への安定的な医療提供を切り下げる、この道を切り開くものであって、我が党は断固反対するとともに、この小池知事の方針の撤回を求めて、今後も、議会の中でも、そして都民の皆さんとも連携をしていきたいと改めて決意を述べさせていただきます。
 それでは、都立病院でPFIが導入されてから十年近くになりますが、都はこれまで、検証することなく、相次いで都立病院にPFIを導入してきました。
 まず初めに伺いますけれども、そもそも十年近くもの間検証しなかった、その理由を具体的にお答えいただきたいと思います。

○西川サービス推進部長 まず、検証という観点で申しますと、今回、検証報告書をご報告させていただいているわけですけれども、先ほどもちょっとご答弁いたしましたが、病院の運営については、モニタリングを毎月行い、検証しているところでございます。
 その上で、十年目ということでございまして、PFI事業による病院の運営開始後、駒込病院で十年、多摩総合医療センター、小児総合医療センターで約九年、松沢病院では七年が経過しております。
 運営開始後の十年の間、医療を取り巻く環境は、医療技術の進歩に伴う高額医薬品の登場など大きく変化し、各病院が提供する医療も変化してまいりました。
 そこで、こうした変化を踏まえて、各病院の運営状況を分析することを通じまして、残りの事業期間における医療サービスのさらなる向上に資することを目的といたしまして、今回、都立病院のPFI事業の検証を行いました。

○白石委員 質問は、なぜ検証しなかったのかと。毎年いろいろやっていますといいますけれども、四病院、PFIが始まって十年間、病院経営本部としては検証をしてこなかった、その理由を聞いているので、具体的に、端的にお答えいただきたいと思います。

○西川サービス推進部長 副委員長おっしゃる検証のイメージですけれども、検証という点で申しますと、先ほどご答弁いたしましたモニタリング、これはSPCの業務運営を毎月約五百項目にわたって病院側がチェックするものでございます。そういった意味では、日々の検証、日々といいますか、定期的な検証は行ってきたというふうに考えております。
 そして、十年目を迎えたことし、報告書としてお示しした検証を行い、こちらにご報告をさせていただいている次第でございます。

○白石委員 病院経営本部としては、検証はされていないのですね。
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

○斉藤(や)委員長 傍聴者、ちょっとお静かにお願いします。あの……(傍聴席にて発言する者あり)どうぞ、続けてください。続けてください。

○白石委員 じゃ、マイクで、近づけて……。

○斉藤(や)委員長 続けてください。

○白石委員 今いわれたのは、病院側が定期的にやっているから、それが検証なんだというふうにいいますけれども、病院経営本部としては、この四病院についての検証というのは今回初めてになります。
 今回、議会に出されたのは初めてだと思いますし、合わせて数千億円もの税金が使われている事業がPFIであるにもかかわらず、十年間、検証が病院経営本部としてされてこなかったことには大変疑問を抱かざるを得ないというふうに思います。
 この間の質疑では、皆さんに対して検証すべきだと我が党は申し上げてきましたので、やっと今回初めてPFI事業の検証を病院経営本部が取りまとめたので、この報告書を踏まえて、これから質問していきたいというふうに思います。
 報告書には、PFI事業は、おおむねその目的を達成していると結論づけられています。その結論が十分に検証されたものなのか、行うべき分析が行われているのか、検証の妥当性を精査する必要があるというふうに思います。
 PFI事業において、VFM、バリュー・フォー・マネーはどのような位置づけとなっているのかご説明願いたいと思います。

○西川サービス推進部長 先ほどのご答弁と一部ダブりますけれども……

○斉藤(や)委員長 マイクに近づけて。

○西川サービス推進部長 はい。
 バリュー・フォー・マネーは、公共事業を行政がやった場合に要する費用全体と民間がやった場合に要する費用全体、この両者を比較いたしまして、後者の方が安い場合に、いわゆるバリュー・フォー・マネーがあるというような評価をいたします。
 位置づけといたしましては、内閣府が定めているガイドラインにおきまして、特定事業の選定時--これは行政がこの事業はPFI事業で実施すると意思決定をする時期でございます、この時期と、具体的にその事業を行う業者を選定する時期、この業者さんに委託しますと選定する、この二つの時期においてバリュー・フォー・マネーを算定するように、そのガイドラインには定められております。
 位置づけは以上でございます。

○白石委員 今答弁あったとおり、PFIにおけるVFMについての内閣府のホームページ、私も見ました。ここに何と書いてあるか。VFMは、PFI事業における最も重要な概念の一つで、従来方式と比べてPFIの方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合なんだと、先ほどご答弁あったとおりだというふうに思います。つまり、PFI事業の評価をする際に、VFMというのは欠かせない指標であるということです。
 ところが、今回の報告書、私も見ましたけれども、VFMについては全く記載がされておりません。先ほども答弁では、選定時にやればいいんだ、ガイドラインに定められているから示さなくていいんだ、しかも、PFIが開始をされたらVFMの算定は困難になるというような答弁までされております。
 VFMは、事業の全体に対して算出されるものと、これは先ほどご答弁ありました。私もちょっといろいろ過去答弁も調べましたけれども、病院経営本部も二〇〇八年三月に厚生委員会で、業務ごとの内訳を比較して算出するものではございませんと、VFMについては明言をされております。
 よって、この報告書の中を見ても、例えば施設整備費の比較がありますけれども、これがあるからといって、VFMが当然分析をされているということはいえないというのも当たり前だと思います。
 そこで伺いたいんですけれども、VFMの評価の検証がなぜ報告書には一切記載がされていないのか理由を伺いたいと思います。

○西川サービス推進部長 今回の報告書は、定量的評価と定性的評価の両方がございまして、定量的評価といたしましては、三つの切り口で分けたそれぞれの業務、施設整備、運営、調達について、当初、事業者が提案した金額と実際の支払い額を比較してございます。
 バリュー・フォー・マネーに関しましては、先ほどご答弁申し上げましたとおり、事業を開始した後のバリュー・フォー・マネーの計算につきましては、多くの仮定を重ねざるを得ず、その結果、実際計算することは困難というふうな結論に至りまして、それでバリュー・フォー・マネーについては計算をしていない、算定をしていないということでございます。

○白石委員 算定が困難だと。私も調べました。病院経営本部は、VFMについて何も分析をされていないのかというと、そうでもないんですね。例えば、私たちが開示請求した文書によれば、日本経済研究所に委託して、数年前からVFMの分析がここでされております。先ほど、算出は難しいという答弁していますけれども、皆さん、病院経営本部が開示した資料の中には、実際に算定がされている項目があるんです。だから、困難ということには、まあまずならないということ、はっきりと申し述べておきたいと思います。
 例えば、昨年三月に提出された調査報告書には、業務内容の記載の中に、平成二十九年度に算定した、平成二十八年度までのPFI各契約におけるVFM等の算定結果を踏まえた資料の収集及び作成とするというふうに記されております。つまり、簡単にいうと、実際に一七年度には、それぞれのPFI事業のVFMが調査をされているんです。
 ところが、そのVFMは、まさにノリ弁状態になっている。きょう、ちょっと持ってきましたけれども、こちらになります。私たちも、どうなっているのか、VFMというのが算定がどうなっているのかというのを見ましたけれども、全部黒塗りです。ノリ弁で、全くわからないという状況です。
 PFI事業を始めるときには、都立病院でも、先ほど来からあるように、VFMがあり、効果があると盛んに宣伝されてきましたが、いざ始まったら、十年間もPFIは検証されず、やっと検証したと思ったら、肝心かなめのVFMについては一切記述しないというのが、この報告書のそもそもの重大な欠陥だといわざるを得ません。
 PFI事業を始めるときも、VFMは示されましたけれども、その根拠についても、ほとんど説明がなかったんです。私、そもそもこのVFMについては懐疑的ですけれども、皆さんの側がVFMがあるといって始めた以上は検証する責任があると思いますが、いかがでしょうか。

○西川サービス推進部長 繰り返しになりますが、国のガイドラインにおきましては、事業期間中のVFMについては特に言及がございません。
 それが一つと、副委員長ご指摘のその報告書ですけれども、その報告書、最終的にはバリュー・フォー・マネーの積算を試みたものの、結果的には難しいという結論に至っております。
 その結果、今回、委員会の方にご報告いたしました実際の支払い額と、そして想定額、この比較する方法が妥当であるという結論に至っております。

○白石委員 いや、これは実際に黒塗りの部分がある、これですね。私たちは見えませんので、ただ、項目はしっかりあるんですね、算定したという項目がある。今、部長がおっしゃられたのは、これを試みたんだけれども、実際は困難だという結果になったということです。
 だとするなら、この黒塗りとなっている部分、それぞれVFMの評価を、やっぱりこれ開示してもらわないと、今の部長の答弁が本当なのかどうなのかもわからないということになると思いますが、まず、そうしたら、この黒塗りのVFMの算定の部分、開示をしていただきたいと思いますが、いかがですか。

○西川サービス推進部長 副委員長が今お示しになられた文書は、その部分は非開示ということで情報公開に対応させていただいております。
 そのとき理由もお示ししているかと思いますけれども、その中には、SPCについて分析をしていますけれども、SPCの業務に関するノウハウなどが含まれておりまして、その部分は開示できないといったような理由で非開示とさせていただいたものでございます。

○白石委員 いや、それは通用しないんですよ。だって、今も答弁で、算定が困難だというふうになっているんだとはっきりとおっしゃったんだから、議会側がチェックできないんですから、しっかり開示してもらわなければいけないと思います。病院経営本部長、これどうですか。

○西川サービス推進部長 繰り返しのご答弁になり恐縮でございますけれども、そこには、SPCの個々の業務の進め方であるとか、PFI事業に対する考え方であるとか、個別の技術的なこと、そういったことが含まれておりまして、それを開示した場合には、SPC側の利益を害することになってしまいますので、開示は差し控えさせていただいております。

○白石委員 本当に驚きですね。最初はVFMがあるといって開始をして、十年間何の検証もなく、そして、この期に及んで検証がされたと思ったらVFMが載っていない。それで、どうなのかというふうに要求して、資料も出してください、この黒塗りのところを開示してくださいといっても、それをブラックボックスとして、このままを続けようとする。
 じゃあどうやって検証すればいいのかということになるんです。こういう報告書では、検証の名に値しないと、これはいわざるを得ません。
 例えば、府中療育センターの改築時にも、PFIの導入が検討をされております。福祉保健局に開示請求をかけたら、このVFMの算定は、黒塗りではなく、しっかりと開示がされました。
 福祉保健局では開示はされるけれども、病院経営本部ではノリ弁となるというのは非常に疑問なんですけれど、その点の見解はいかがでしょうか。

○西川サービス推進部長 一つには、今、副委員長がお示しになられた療育センターの事例は、たしかPFIによる事業化には至らなかった事例というふうに記憶をしてございます。つまり、事業化に至らなかった事例でございます。
 私ども都立病院のPFI事業は事業化した後、副委員長のお話は、今の時点でのバリュー・フォー・マネーがそもそもどうなっているのかということですので、ステージというか立ち位置が異なるものでございます。
 それが一点と、PFI事業は、一つ一つが個別にPFI事業でやるということを意思決定する。特定事業の選定は個別個別に行います。したがいまして、バリュー・フォー・マネーの計算の仕方も、それぞれの事業によって異なるものでございます。

○白石委員 今の答弁でわかるとおり、最初の段階では、VFMがありますよというのは皆さんに、都民にも示すけれども、事業が開始されたらどうなっているかはわからないというのが、これの大きな問題点なんです。ここが、今、本当に明らかになったと思います。
 困難だというんだったら、開示してくれればいいんですよ。だって、最初は、その発端は、VFMがあるからだといっているんですから。それなのにもかかわらず、検証しようと思ったら、そこはわかりません、困難です、こういう状況でPFIを評価しろなんていわれても、誰もできるわけないじゃないですか。これ、私は厳しく指摘をしたいというふうに思います。
 VFMがないということは、直営の場合との比較がないということにもなるんですね。先ほども紹介しましたけれども、内閣府は、従来方式と比べてPFI手法の方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合がVFMと、このようにしております。従来方式、つまり直営で行った場合の算定がなければ、そもそも本当にPFIの手法の方が効果的であったのかということは評価できないというふうに思うんです。
 これらのことからわかるように、今回のPFIの検証報告書、見ましたけれども、基本のキが抜け落ちた検証になっていると指摘せざるを得ません。
 なぜ従来方式との比較がここの報告書には一切載っていないのか、そこら辺の説明もお願いします。

○西川サービス推進部長 先ほどもご答弁させていただきましたが、事業が始まった後、今の時点でバリュー・フォー・マネーを測定しようとした場合、最も困難な部分、既に過ぎ去った事業期間の部分についてはSPCが業務を行っています。この業務の行い方は、都が直営でやるのとは違うやり方を当然しています。
 過去を振り返って、仮に同じことを都がやったとしたらば幾らかかったかという部分の計測をしなければなりません。しかし、これは一つ一つの業務を拾い上げて、制度もやり方も違う東京都がやったら幾らかかったかという部分を計測しなければならないのは非常に困難であります。したがいまして、現時点でのバリュー・フォー・マネーの計測は困難というふうに申し上げました。
 それともう一点申し上げますと、平成十九年七月二日に内閣府が、バリュー・フォー・マネーに関するガイドラインの一部改定及びその解説という文書を出しています。
 この中で、このように書いてあります。運営段階における事後評価、ポストアプレイザルについても今後検討していく価値はあろう、ただ、この場合、要求水準未達であれば債務不履行となるものであり、何を基準として事後評価を行うかにつき検討する必要があると書いてあります。これが平成十九年七月二日でございます。
 そして、その後、国においては、事後評価としてのバリュー・フォー・マネーについては、特にガイドラインに示しておりません。このことも、やはりこの問題の困難さを示していると思います。
 以上でございます。

○白石委員 つまりは、最初の段階でのVFMは算定できるけれども、始まったら、もうよくわからない、従来方式とも比較できないんだということになるんです。だから、ここにPFIの本質的な問題が私はあるというふうに思っております。
 初めにもいいましたけれども、このPFIの総事業費というのは数千億円かかるんです。これだけの巨額なお金が動くといったときに、最初は、VFMがあって効果的だと宣伝をしておきながら、いざ始まったら、それは比較できません、困難なんですといってごまかしを始める。検証が一切できないということが、今、明らかになったと強く申し上げたいというふうに思います。
 では次に、報告書は、定量的評価として、事業開始から二〇一七年度までの分について、契約時の支払い想定額と実支払い額との差を示して分析がされております。現在のまま支払いが続けば、実に三事業合わせて契約額は合計千数百億円を上回る支払い額、こういう見通しになると思いますけれども、いかがでしょうか。

○西川サービス推進部長 今後の経費につきましては、現在、その経費の縮減に努めながら、今後必要となるPFI事業の費用を精査しているところでございます。

○白石委員 単純計算しても、千数百億円上回っていくんですね。こういう見通しになっている。非常に、これだけ契約額が上回ってくるということ自体に疑問を抱かざるを得ないというふうに思います。
 そこで伺いたいと思いますけれども、とりわけ想定以上の支払い額が生じているのはどの分野ですか。

○西川サービス推進部長 今回、定量的分析は、施設整備、それと運営、調達の大きく三つの区分で定量的評価をしております。
 このうち、支払い想定額を最も大きく超過している分野は調達でございます。

○白石委員 主に、検体検査、エネルギー、医薬品、医療材料の調達、先ほどご答弁あったとおりです。この分野が想定額を大きく上回っているということになります。
 とりわけ当初の想定と最も乖離が大きいのが、医薬品や診療材料等の調達ということになります。そこで伺いたいんですが、想定を超えた主な理由をご説明いただきたいと思います。

○西川サービス推進部長 調達の分野につきまして大きく想定額を超えている、その理由といいますのは、大きく申しますと、先ほどもご答弁いたしましたが、医薬品につきましては、PFI事業開始当初、予想できなかった高額な医薬品、例えば分子標的薬であるとか、そういった医薬品が登場したことと、あともう一つは、外来の化学療法の患者さんがふえた、特に駒込病院と多摩総合医療センターでふえております。つまり、医療機能の強化ということでございます。これが医薬品でございます。
 もう一つは、診療材料でございますけれども、こちらについては、ペースメーカーであるとか、あるいはカテーテルとか高額な診療材料を使う、そういった手術件数がふえているというようなことが主な原因というふうに把握しております。

○白石委員 今ご説明あったとおり、簡単にいえば医療の高度化など、変化によって上がっていった。確かにそういう面はあると思います。
 医療の高度化に伴って、高額医薬品の増加など、費用は増加傾向であるというふうには思いますけれども、そのふえ方がPFIであることによって抑えられているのかということが、やっぱり問題になるかなというふうに思うんです。
 調達には、約束値引き率を設定して、定価よりも安く仕入れるような仕組みが記載をされております。どのような仕組みなのかご説明を端的にいただきたいと思います。

○西川サービス推進部長 今、副委員長からお話のありました約束値引き率でございますけれども、SPCと東京都の間で値引き率を約束しておりまして、この値引き率を達成できなかった、その分高く買った場合には、SPCがその分を負担いたします。値引き率よりも安く買った場合には、その利益の部分を東京都とSPCとで折半をいたします。
 こうしたことによって、SPC側に値引きのインセンティブを与える、そういう仕組みでございます。

○白石委員 今、端的にご説明をいただきました。
 皆さんにもこの報告書、配られていると思いますけれども、二三ページにも記載がされています。
 今ご答弁があった、つまり調達は、約束値引き率をあらかじめまず設定をして、調達額が設定した水準を超えた場合というのは、その超えた分はSPCが負担をいたしますよ、逆にこの設定よりも低く仕入れることができた場合というのは、差額分の半分をSPCの利益と、そして残りの半分は都の分け前になるという、こういう仕組みが書かれております。
 これによって値引き率も設定をされて、SPCはそれよりも安く購入するというインセンティブが働くというふうな仕組みがここにはあるんだというふうに書かれております。しかし、じゃあ実際どうなったのかというのは書かれておりません。
 このインセンティブが、これ、本当に働くのかと私はちょっと疑問があります。例えば、調達の相手の卸業者がSPCを構成する企業の関連企業の場合、こうしたインセンティブが機能するのか、ちょっと私、本当に疑問なんです。
 なぜかといえば、設定した額より安く仕入れても、差額分の半分はSPCの利益になる。SPCの関連企業及び卸業者の収入は、差額分が全て減るということになるんです。
 ちょっとわかりにくいと思うんですけれども、具体的にいいますと、例えば三菱商事の場合、二〇〇五年に株式会社メディパルホールディングスと包括的な業務提携を行うことで合意をされております。駒込病院のSPCというのは、三菱が中心というふうになっております。
 SPCのホームページを見ました。そしたら、医薬品調達の協力企業に、このメディパルホールディングスの医薬品卸業を引き継いだ株式会社メディセオというのが協力会社で入っているんです。要するに、三菱の関連企業の協力企業がメディセオですね、これが入っている。
 さらに、診療材料等調達の協力企業は、三菱商事のグループ企業のエム・シー・ヘルスケアという株式会社、どちらも三菱商事の関連企業ということになります。こういうところに調達をSPCが依頼したりとかしていくと、わからないですけれどもね。
 先ほどいったインセンティブというのは、値引き率よりも低い場合というのは、これはSPCには半分、その差額分というのは入る。もう半分は都に行っちゃうので、関連企業からしてみれば、SPCからもしてみれば、実際その半分というのは減収になってしまうんです。
 こういうところで本当にインセンティブが働くのかなというのは、正直、私、疑問なところです。ただ、これはわからないんですね、実は。
 私ちょっと聞きたいんですけれども、値引き率というのはどういう議論によって決められているのか。また、具体的な値引き率もあわせて伺いたいと思います。

○西川サービス推進部長 まず、値引き率については、最初にSPCと私どもが契約をするときに、SPC側から提案をされますと申しますか、総合評価一般競争入札をするときにその値引き率も提示されて、それが技術点を評価するときの一部になります。その後は、五年ごとに協議をして見直すというような格好になります。
 次に、その値引き率そのものの数値ですけれども、これは公表を差し控えさせていただきます。と申しますのは、この情報が表へ出てしまいますと、SPCが卸売業者と交渉するときに不利になります。それは結局、東京都にとっての不利益になりますので、値引き率については公表いたしておりません。

○白石委員 今の理由は一定わかるんです。だけれども、この値引き率がわからないと、実際、本当にインセンティブも働いているのかよくわからない。先ほど、SPC側と最初に協議をして、五年ごとに見直していきますよというふうなお話でした。やっぱり詳細がわからないんです、これ。値引き率がわからず、また、SPCと卸の間でどういうやり方で調達もされているのかというのも実際わかりません。
 従来の直営であれば、購入額の決め方というのは、競争入札で透明性が確保をされています。しかし、PFIで、まさにこの調達をしようとすると、先ほどのご答弁のとおり、この値引き率とか、ほかで知られたら、やっぱりこれが一つはひとり歩きをしてどんどんどんどん悪い方向へ行ってしまう、都が損をしてしまうような状況にもなりかねないということで、簡単にいえば、直営でいけば競争入札で都民の誰から見ても価格競争でやれるけれども、PFIでは、まさにここがブラックボックスになってしまいますということだと思います。
 しかも、十数年間もの長期間、これがブラックボックスとなります。当初の想定よりも一番乖離している分野が、今いったこの調達です。その乖離している分野がまさにブラックボックス化され、議会も含めて、チェック機能が十分に働かないという仕組みにこそ問題があるというふうに思っています。
 なので、誤解がないようにいっておきますけれども、値引き率が公表できないのは一定理解はできます。しかし、ここで一番大事なのは、公立や公的な行政が行う場合に、どのような場合においても、都民への説明責任というのがしっかりと果たされなければならない。しかし、ここではよくわからない。
 一方で、都立の直営で行えば、これは競争入札として、やっぱり都民の目からも明らかな透明性が確保される。
 こういう点から見ても、私、このPFIというのは非常にブラックボックス化、よくわからない、議会もチェックできないというような状況がやはり生まれるということを改めて申し上げたいと思います。
 次に、定性的評価として、モニタリングの結果について記載がされております。
 このモニタリングは、事業契約に定められた要求水準が満たされているかどうかを監視するという仕組みになっております。
 そういうふうなところで、ちょっと伺いたいんですけれども、モニタリングの評価というのは、それぞれ三年分しかここでは集計されておりません。そもそも、PFI開始時からのモニタリング結果は保存されているのかどうか伺いたいと思います。

○西川サービス推進部長 文書で当然保存されますけれども、文書の保存期間の関係上、過去三年分の保存にとどまっております。

○白石委員 三年しか保存をされないということなんです。
 これ、報告書を見ても、松沢病院というのは一五年度から一七年度までの三年間分以外は廃棄もされているし、今のご答弁では、全てのところの病院が、PFIの場合には、このモニタリングは三年分しか--それ以前は廃棄をしている、保存はしておりませんという理解でよろしいかというふうに思います。
 私、ここで疑問なのが、契約期間というのは十数年あります。この契約期間中に、契約に関係する資料が廃棄されるというのは問題ではないのかというふうに思うんですけれども、見解を伺いたいと思います。

○西川サービス推進部長 契約に関する書類の範囲にもよるかと思うんですけれども、当然、契約書そのものは現在もきちんと保管をしております。
 モニタリングの結果につきましては、そのモニタリングの目的というものが、日々の業務運営をきちんとSPCにやっていただくということでございますので、モニタリングの結果が悪かった場合には改善計画書を出させて、その後きちんと仕事をさせるというような仕組みになってございます。
 そういったこともございまして、その改善に要する期間等も考えまして、三年で廃棄というようなことでございます。

○白石委員 PFIというのは、十数年にわたった長期の契約になって、これを一回振り返ろうと思ったら、もう振り返られるようなものがないんです。このモニタリングも同じなんです。やっぱりこういうところにも、私は本当に--振り返ったり、教訓を引き出したり、検証しようと思っても、ここの資料でも三年分しかないということなんです。
 例えば、駒込病院では、清掃が行き届かない、物品の不足、洗濯物、リネンの補充のおくれなどの問題があって、議会でも話題になりました。駒込の文書の保存状況は、今いったように廃棄したということでした。
 いずれにせよ、開院当初のこれらの問題は、今回の検証には含まれないというふうなことになるんです。十年たって、今やっと検証報告書というのが出されましたけれども、開始当時からのモニタリングの結果というのは、実際もう誰もわからないという状況なんです。
 松沢病院を見てみますと、いずれもC評価が一%を超えていると報告書には書いてあります。一五年度は八・九%に上っています。そうすると、その前はどうだったのかということも、当然疑問になると思うんです。だけど、資料は既にない、保存期間が過ぎているからということになります。
 さらにいうと、報告書自体にも、事業期間経過に伴って、業務内容が安定化するとありますが、ますます直近三年分の資料でよいのかというふうに思わざるを得ないんです。やっぱりこれ、最初から見ていかないと、推移といえばいいのか、この経過を具体的に評価をしていくと、議会側も含めて、都民も含めてどうなのかということを評価したときに、正当に評価できないんです。やっぱりここにも大きな問題点があるといわざるを得ません。
 総括では、業務要求水準が維持されているB評価の割合が最も大きくと書かれておりますが、これは契約どおりに仕事をしているということで、当たり前のことなんです。当然やってもらわなきゃ困るんです。B評価が多いから、それが評価できるかというと、そんなことはありません。
 この三年分のデータをもとに問題がないんだということは、到底、理屈上も成り立たない。やっぱり最初から、いかにどうなってきたのかというのを具体的に見なければわからないということを、改めて厳しく指摘したいというふうに思います。
 今、都立病院の経営形態を、直営から独立行政法人化する方針を小池知事が突然出すなど、これまでの都立としての役割が切り下げられようとしております。加えて、PFIでも、病院の業務を民間に丸投げして、その検証には重大な欠陥があることも今回の質疑で明らかになったと思います。
 このような都立としての公共性を切り下げ続けることは、断じて許すわけにはいきません。そのことを強く主張いたしまして、質問を終わりたいというふうに思います。

○斉藤(れ)委員 私からも、検証報告について伺わせていただきます。
 検証は、定量的評価と定性的評価に分かれていましたけれども、定量的評価の中では、支払い想定額と実支払い額の差が生じるということについて、今後やや課題と捉まえる必要性は感じたところでありますが、技術の進歩が目覚ましく、また国の診療報酬改定の影響も受ける医療施設において、ある程度は生じることは仕方がないと思うところもありまして、逆にこういった部分は単純に支払いコストがふえるということを問題視すべきではなく、例えば具体的に高度かつ専門的ながんのゲノム検査やマーカー検査を受けられる方がどれだけふえたか、また、そのふえたことによって、どうがん対策が充実してきたかというような光の部分に焦点を当てながら、総じて評価を進めていくべきであると考えています。
 その意味で、私からは、特に都立四病院において、PFI事業手法により、この病院にどのような変化が生じているのか、提供されるサービスの質を評価する定性的評価の中から質疑を行わせていただきます。
 報告書で取り上げられているPFI事業における特定目的会社、SPCの取り組み事例をもとに伺います。
 先ほど小林理事からもお話が少しあったんですけれども、SPCによるマネジメント業務の一つに経営支援が位置づけられておりまして、SPCから病院に対してさまざまな提案が行われております。
 そこで、SPCからの提案を病院ではどのように活用しているか伺います。

○西川サービス推進部長 現在、急性期医療を担う多くの病院では、急性期入院医療を対象といたしまして、病名などから一日当たりの定額で診療報酬を算定する支払い制度、いわゆるDPC制度を導入しております。
 このDPCによるデータは、ベンチマークシステムを利用して、病名ごとに、在院日数、画像診断や検査の実施状況、診療報酬の加算算定状況などをほかの病院と比較することが可能でございます。
 SPCは、システムから得られた他の病院のデータとの比較分析を行い、その結果に基づく提案を病院に提供いたします。
 病院におきましては、それらの提案をもとに、病院幹部が各診療科とミーティングを行い、患者の治療計画の改善、効率化や、行った医療行為による診療報酬の加算を確実に算定するなど、経営改善に役立てております。
 また、SPCは協力会社と連携いたしまして、病院が採用している診療材料と同種同様の効果がある、より安価な診療材料の情報の提供や切りかえの提案も行っております。
 病院では、SPCからの情報や提案により、院内の委員会で製品の安全性などを審議した上で採用する診療材料を切りかえ、費用の縮減を図っているところでございます。

○斉藤(れ)委員 病院という場所は、さまざまな医療分野での専門家がもともとたくさん働いていらっしゃる場所でございます。そのスペシャリストたちの集まりにおいて、第三者目線での経営改善や、他病院と比較した分析から新たな手法を取り入れていく視点というのは、本来なかなか持ちにくかった点であるとも思います。
 こういった提案を行っていくために、SPCの方でも専門的な人材、診療情報管理士やシステムエンジニアなどの確保と育成が行われているということが、こちらの報告書の方にも書かれておりました。これはSPCという合同会社が日々成長していることをあらわすとも考えています。
 いわば、SPCという会社も、施設整備に加え、維持管理、運営を行っていく中で、異業種同士の働きかけ合いを繰り返して成長を続けていく、これが医療の質の向上にも貢献をしているというふうに思います。
 ぜひ今後、この取り組み事例から具体的な数値としてあらわれてくる部分をさらに捉えて検証を進めていただきたいと思います。
 PFIでは、医療の質の向上の観点から、SPCの知識、ノウハウを生かして、幅広く業務改善の取り組みが進められているということもこちらに載っておりました。多摩総合医療センターでは、病院とSPCが協力して診療に関するシステムを構築している例が示されておりますが、その内容と期待される効果を具体的に伺います。

○西川サービス推進部長 都立病院のPFI事業では、システム運用の支援もSPCを担うマネジメント業務の一つに位置づけております。
 委員ご指摘の多摩総合医療センターの例では、院内感染の防止を図る観点から、感染症専門医などで構成する感染症対策室と診療データの管理を担うSPCが連携いたしまして、感染症サーベイランスシステムを開発いたしました。
 サーベイランスとは、感染症などの疾病の発生状況や変化を継続的に監視して、またデータを収集、分析するものでございまして、その実施には膨大な時間と労力を要するものでございます。
 システムの開発には、システムエンジニアの経験を有するSPCの職員の知識を活用いたしました。このシステムは、院内の別々のシステムに保存されている患者の入院日数、発熱データ、抗菌薬の使用状況などの情報を集約し、それを患者IDと結びつけて一覧表示するものでございます。これによりまして、院内感染に対する医師の対応の正確性や迅速性の向上が図られ、また職員の負担も軽減されております。
 なお、多摩総合医療センターでのこうした医療の質の向上の取り組みは、病院職員及びSPC職員により、日本環境感染学会において発表されているところでございます。

○斉藤(れ)委員 少し専門的な言葉も多く含んだご答弁をいただきました。ありがとうございます。
 サーベイランスというのは、実施に膨大な時間と労力がかかる感染症の監視システムということでしたけれども、こちらを構築するのは、病院医師だけでもできないものが、システムエンジニアのSPC職員とチームとして取り組んだことで実現できたという事例の紹介であったと思います。
 大変地味でわかりにくく思われるかもしれない、こういった事例、実績を一つ一つ重ねていただくことで、提供される医療の質の向上に貢献する社会的企業にとって、よき先例をふやしていっていただくことを要望いたします。
 最後に、意見を申し上げます。
 PFIの運営期間は、多摩、小児、松沢で十五年、駒込で十七年となっております。全国を見ると、都立病院のように、いわばうまくいっている例ばかりではない中で、都立病院のPFI事業は、それぞれのSPCが努力と成長を果たしてきてこそ、きょうの評価につながったと思っていますが、運営の期間が十五年、十七年というのは、果たしてこれは長いのか短いのか。例えば、これほどの事業を担うことは、一般企業にとっては容易ではないと思いますので、事業スタートまでに必要な準備期間や業務の準備も大きくなってくるはずです。
 都立病院は、特に行政的医療を提供する重要な事業でもあり、この運営期間が最適なものかどうか検証を重ねていただきたいと考えます。
 また、本日、委員の方からも指摘がありますけれども、都立病院が、もし今後、独立行政法人化がされる場合に、PFIの理念として、都とSPCのパートナーシップを守っていくということがあると思いますけれども、独法化をした後は、そのパートナーシップの主体が、都とSPCではなくて、独立行政法人とSPCとなる可能性もありまして、そこに東京都がどうかかわっていけるのかという点を重視して、今後の検討を進めていただきたいと要望します。
 場合によっては、二者間のパートナーシップではなく、都も交えた三者間のパートナーシップを築いていくという手法も探りながら、あくまでもPFI事業や病院経営のあり方というのは、医療サービスの質の向上を図るためのものであるということをその都度確認していくべきだと申し上げて、私の質問を終わります。

○斉藤(や)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○斉藤(や)委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。

○斉藤(や)委員長 これより福祉保健局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百八十四号議案、令和元年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、繰越明許費、福祉保健局所管分及び第二百五号議案から第二百十四号議案まで並びに第二百二十七号議案から第二百二十九号議案までを一括して議題といたします。
 付託議案については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 要求資料について理事者の説明を求めます。

○雲田総務部長 十一月二十九日の当委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の厚生委員会要求資料をごらんください。
 資料は、目次にございますように、全部で四項目となっております。
 目次をおめくりいただきまして、一ページをごらんください。1、東京都無料低額宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例の概要と国基準との相違点といたしまして、(1)、事業範囲の明確化を初めとした条例の概要と、(2)、国基準との相違点につきまして記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、全国児童相談所設置自治体における児童相談所一所当たりの平均管轄人口といたしまして、児童相談所を設置している自治体ごとに、人口と一所当たりの平均管轄人口を記載してございます。
 三ページをごらんください。3、東京都児童相談所の管轄地域の人口といたしまして、各児童相談所の本年一月一日現在の管轄人口と条例改正案が成立、施行された場合の管轄人口を記載してございます。
 四ページをお開き願います。4、特別区が児童相談所を設置した場合に当該区を対象としない都単独事業等の一覧といたしまして、特別区が児童相談所を設置した場合に当該区を対象としない都の単独事業及び継ぎ足し事業を五ページにかけて記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、要求資料のご説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○斉藤(や)委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本案に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○たきぐち委員 それでは、私から、東京都児童相談所条例の一部を改正する条例外五件の関連条例の改正に関して伺いたいと思います。
 本条例改正案は、私の地元である荒川区、世田谷区、江戸川区の三区における児童相談所開設に伴うものであります。
 これまでも本委員会等で児相にかかわる議論は交わされているところでありますけれども、条例改正案の付託に合わせて、改めて確認をしてまいりたいと思います。
 まず、児童相談所の設置に伴い、児童相談所の運営だけではなく、児童福祉施設等の事務が移譲されることになるわけでありますが、なぜこうした権限が移譲されるのかその趣旨について伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所を設置する区につきましては、子育て支援から要保護児童対策まで一貫した児童福祉施策の実施が可能となるよう、児童相談所における相談業務のみならず、児童福祉法上、都道府県が処理することとされている事務等を担うことになるものでございます。
 具体的には、保育所や児童養護施設等の認可、児童福祉審議会の設置に関する事務、認可外保育施設に関する事務、里親に関する事務、小児慢性特定疾病の医療の給付に関する事務、療育手帳に係る判定事務などがございます。

○たきぐち委員 児童相談所設置市区は、児童相談所に直接かかわる業務だけではなくて、保育施策や社会的養護施策にかかわるものなど、児童福祉法で規定された事務を担わなければならないわけであります。
 こうした事務は多岐にわたるわけでありますけれども、関連する補助事業等はどれくらいあるのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 令和元年九月十九日に開催されました特別区福祉主管部長会におきまして、都が示した児童相談所設置市が処理する事務に関する補助事業等は、全体で百二十九事業でございまして、その令和元年度当初予算額は、市町村も含め、都全体で一千五百四億円でございます。
 主な内訳といたしましては、保育サービスが五十事業で九百六十一億円、社会的養護が四十五事業で三百十三億円でございます。

○たきぐち委員 対象事業数は百二十九に及んで、予算規模は約一千五百億円ということでありました。
 事業の全てを法令の規定どおりに児相開設区が単独で対応するには負担が大きいわけであります。とりわけ保育に関するものについては、今ご答弁がありましたけれども、五十事業九百六十一億円ということでありましたけれども、保育所等の賃借料の補助や保育士等キャリアアップ補助、認可外保育支援や病児保育事業など、待機児童対策や子育て支援を推進する上で不可欠な事業でありまして、都の継続した支援が必要だと考えます。
 保育サービスに関する補助金の取り扱いについてはどうなったのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所設置市が処理いたします事務に関する補助金等の取り扱いについては、保育サービスや社会的養護など、分野ごとにサービス利用に係る児童相談所の関与の有無等を踏まえ、整理を行ったところでございます。
 保育サービスにつきましては、その利用に当たって、児童相談所の直接的な関与がないことから、現行どおり都が補助を継続する取り扱いといたしました。

○たきぐち委員 児童相談所の関与の有無によって考え方を整理したということでありました。
 つまり、児童相談所にかかわる事務事業は、従前の都にかわって区が負担をする、直接児相にかかわらないものについては、都が継続して支援をするということで評価をしたいと思います。
 そもそも児童相談所を区で開設することについては、昭和六十一年の都区制度改革の基本的方向の中で事務移管が示されたことにさかのぼるわけでありまして、以来、さまざまな議論、経緯を経て、平成二十八年の法律改正となりました。
 都議会におきましては、七年前、平成二十四年の厚生委員会事務事業質疑で初めて移管の必要性に関する言及があったところでありまして、その背景には、痛ましい虐待事案が増加していることがあったかと思います。
 ちょうどその二年前に、江戸川区で小学校一年生の男の子が両親の暴行を受けて死亡する事件があったほか、食事を与えられずに段ボールを食べながら餓死した男の子の事件については、私も当時、胸が潰れる思いをしたことを覚えているところであります。
 こうした痛ましい数々の事件を背景に、児相の強化が進められてきたと認識をしているところであります。
 ただ、区児相の開設に当たっての大きな課題は、財源と人材確保、さらには事務事業の増加だと思います。
 付随する事務事業に対する都の支援については、今ご回答をいただいたとおりでありますけれども、児相本体の運営に関する財源については、都区財政調整協議が行われているさなかでありまして、区側から基準財政需要額への算定と特別交付金の算定方法の変更が提案されたということで、昨日も協議が行われたというところかと思います。
 本来、総務省の地方交付税で措置されるもので、四月に設置された明石市においては、兵庫県に含まれていた地方交付税がつけかえられたと聞いております。
 都は、地方交付税の不交付団体であると同時に、手挙げ方式による措置という面では、清掃事業の事務移管とは状況が異なるわけでありますけれども、虐待対応がこれだけ社会問題化している中で、児相の安定的な運営のためには、何かしらの財源措置は必要ではないかということを申し述べておきたいと思います。
 また、人材確保については、虐待通告件数が増加を続ける中で、専門職、とりわけ児童福祉司や児童心理司が不足していることは、これまでも指摘され続けてきたところであります。
 本委員会におきましても、児童福祉司と児童心理司の配置状況については、たびたびやりとりがなされているところでありまして、昨年の緊急対策も含めて、都は今年度までの四年間で百六名の増員が図られている状況は認識しているところであります。
 昨年の質疑の中で、三区で必要とされる児童福祉司は、荒川区八名、世田谷区三十一名、江戸川区二十三名、三区合計で六十二名でありまして、都と区で人材の奪い合いにならないかと申し上げたところでありますけれども、実際、児童福祉司の争奪戦といった見出しの記事も目にするところであります。
 こうした中で、改めて、都における児童福祉司及び児童心理司の配置について、現状と三区開設後の方針について伺います。

○谷田少子社会対策部長 都の児童相談所の児童福祉司の定数は現在三百十五人でございまして、児童心理司につきましては百四十一人でございます。
 児童福祉司の配置基準は現在、管轄人口四万人につき一人配置することが標準とされておりまして、令和四年度には三万人に一人の配置に引き上げられる予定でございます。また、児童心理司につきましては、児童福祉司二人につき一人以上を配置することとされております。
 令和四年度に適用される基準を用いまして、都の児童相談所における必要な児童福祉司数を試算した場合、三区の人口を除いても四百九十一人の配置が必要となりまして、現在の定数から百七十六人の増員が必要になるものでございます。同様に、児童心理司について試算いたしますと、基準上、二百四十八人の配置が必要となりまして、現在の定数から百七人の増員が必要になります。
 今後、国の基準等を踏まえまして、児童福祉司や児童心理司のさらなる増員を図ってまいります。

○たきぐち委員 これまで増員を図ってきた結果、現在、児童福祉司三百十五名、児童心理司百四十一名が十一カ所の児童相談所に配置されているということであります。
 区児相の開設によって、都としての定数は下がるわけでありますが、これまでの四万人に一人の基準であれば、不足数は五十三名ということで、その不足幅は小さくなるわけでありますけれども、三万人に一人という新たな基準では百七十六名足りないという、依然と厳しい状況は理解をいたしました。
 絶対的なマンパワー不足による多忙な業務に加えて、保護者とのやりとりなど心理的負担から精神疾患で休職するケースも多いと聞いております。休職、離職を防ぐためには、処遇改善という課題もありますが、さらなる増員によって負担軽減を図ると同時に、採用した人材をいかに育成していくかが極めて重要だと考えます。
 困難な虐待事例に対応できるようになるためには、十年の経験が必要だともいわれており、指導、教育を担うスーパーバイザーとなるには、児童福祉司、児童心理司とも十年程度の経験が求められるわけであります。
 しかし、都における現状は、経験二年以下が半数を超え、五二・五%、五年以上の児童福祉司は三割強、三二・四%というのが実態であります。
 こうしたことからも、人材育成は重要でありまして、都が職員研修の機会を提供することや、中長期的には広域的な人材交流の仕組みをつくることで、人材育成が促進をされ、質の底上げを図ることにつながると考えますが、見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 特別区が児童相談所を設置する場合は、それぞれの区で児童福祉司や児童心理司などの専門人材を確保、育成することが必要でございます。
 都は、特別区の求めに応じまして、特別区職員の研修派遣について、平成二十九年度は三十五名受け入れ、三十年度は六十六名、令和元年度は七十六名に拡大をしてまいりました。
 また、児童相談所の運営について理解が深まるよう、虐待相談や非行相談、一時保護等に関する勉強会等を開催し、人材育成を支援しております。
 本年五月からは、都と区市町村との合同検討会を立ち上げ、都と区市町村の連携強化に向けた検討を進めており、人材育成についても検討をしているところでございます。
 今後、こうした検討も踏まえ、区市町村の派遣職員の受け入れ枠のさらなる拡大や短期の実習の受け入れ、区市町村職員との合同研修の充実等に取り組んでまいります。

○たきぐち委員 三重県では、虐待児を一時保護するかどうかの判断に人工知能、AIを活用して、児童福祉司の業務を助ける実証実験を行っていると話を聞きました。命にかかわる虐待事案に対して、AIを活用するというその是非については、軽々に今論じることはできないと思いますが、それだけ現場では状況が逼迫している証左だろうと思っております。
 特別区の職員受け入れについて、今後さらなる受け入れ枠の拡大と短期実習の受け入れを実施するということでありました。
 現在、荒川区からも開設に向けて、北児相だけではなく、ほかの都児相や都外の児相などで研修を行っていると聞いているところでありますが、開設後の区児相の職員が合同研修などに参加できるような機会の提供を求めておきたいと思います。
 さらに、中長期的には、定期的な人事異動において、都児相や他区の児相との広域的な人事ローテーションが組めるような仕組みを構築すること、つまり都の場合、例えば福祉職員として、自立支援施設であったり、障害児施設であったり、教護院であったり、こうしたところに異動していくようなケースがあるのかと思いますけれども、区になりますと、その異動先は限定されるわけであります。
 広域的な仕組みをつくることによって、五年、十年という経験者が育成されてくるのではないかと考えますので、あわせて要望しておきたいと思います。
 また、ご答弁のありました合同検討会では、人事交流や育成、情報共有や東京ルールの見直しなどを検討しているということであります。区児相開設後も定期的な情報共有会議などの機会を提供していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 区の児童相談所開設後は、児童相談所長や児童福祉司のスーパーバイザーなどの実務者会議の共同実施、地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワークであるLGWAN等の活用などによりまして、都区の児童相談所間で情報共有を実施していく予定でございます。
 また、都の児童相談所では、警視庁や家庭裁判所、児童養護施設など、さまざまな関係機関との代表者会議を開催しておりまして、こうした関係機関との会議への区の児童相談所の参加につきましても検討しているところでございます。

○たきぐち委員 開設後も都区間での情報共有や関係機関との会議を実施、検討していくということでありました。
 地域性が異なれば、対象となる家庭や案件の傾向も異なるわけでありまして、例えば、親子分離施設への入所であったり、親権に入り込むような法的な権限を行使するケースなどは頻繁に発生するわけではなく、もちろんこれはないにこしたことはありませんけれども、さまざまなケースの情報を共有することで、人としても組織としても経験値を積むこと、知見を蓄積していくことが重要だというふうに思いますので、こうした場の提供については、ぜひお願いをしておきたいと思います。
 厚労省は、里親に委託する割合を就学前で七五%以上、就学後で五〇%以上とする目標を掲げました。現状、一三%という状況から考えますと、極めて高い数値だと思いますが、都は、社会的養育推進計画の案で、十年後の里親委託率の目標を新たに設定するとされております。児童福祉審議会の専門部会の中では、三七・四%程度という現実的な数字を示されているところでもあります。
 里親やファミリーホームなど、家庭養護の推進には区と都の連携が不可欠であることはいうまでもありません。家庭養護の推進に向けて、区児相と都児相が取り組むべき役割は何か、里親委託率の向上に向けた方策について伺います。

○谷田少子社会対策部長 里親制度の運営に関しまして、都と児童相談所設置区は、LGWANの活用などによりまして、情報を共有し、都内全域で里親と子供のマッチングが行える仕組みを構築することとしております。
 里親等委託を推進するためには、児童相談所設置区におきまして、みずから普及啓発等を行うことが必要でございます。
 都はこれまで、十月、十一月の里親月間を中心に、区市町村と連携しまして、養育家庭体験発表会を実施しているほか、新宿駅でのデジタルサイネージの掲出、都営地下鉄全駅等へのフリーペーパーの配布、ウエブサイト、Tokyo里親ナビの開設等を行っております。
 今年度は、里親制度を周知する動画を作成し、都営地下鉄の車内やインターネットで配信するなど、新たな取り組みを実施しておりまして、引き続き広く都民を対象といたしました普及啓発を初めとした里親委託推進に向けた取り組みを行ってまいります。

○たきぐち委員 区児相の開設に向けて、荒川区でも里親制度の普及啓発に向けた講演会等々を開催するなど取り組んでいるところでありますが、現実的に里親のなり手を見つけることは容易ではなく、時間を要するところであります。人と人とのマッチングは難しく、必要とされる件数の二倍から三倍の登録が必要だということもいわれているところであります。
 先日の代表質問で、フォスタリング機関のモデルケースを実施していく旨の答弁がありましたが、今LGWANの活用等によって、都内全域で里親と子供のマッチングを行える仕組みについてのご答弁がありましたが、極めて重要だというふうに思っております。
 あるファミリーホームでは、入所している子供たち全員が知的障害や発達障害児であって、障害のある子供が虐待を受け、その受け皿が圧倒的に足りないという声も聞いているところであります。
 潜在的に意識のある人を里親にどのように導いていくのか、今ご答弁をいただいたような普及啓発につきましても、広域的かつ効果的な取り組みを実施していただきたいと思います。
 昨年の委員会質疑で、区児相開設時の引き継ぎに関して、文書や関係資料による引き継ぎだけではなくて、双方の児童相談所職員が当該家庭に同行訪問を実施することや、児童相談所などで同席面接をするなど、対面による引き継ぎが必要だとの認識をご答弁いただきました。
 開設が目前に迫る中で、引き継ぎをどのように実施するのか改めて確認をいたします。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所開設に向けた引き継ぎにつきましては、昨年十一月から、都と三区の代表者による引き継ぎに係る連絡会議を開始したほか、三区と都の所管児童相談所におきましても、個別に引き継ぎに係る打ち合わせを実施しております。
 本年十一月から、世田谷区及び江戸川区より引き継ぎのための派遣職員を所管児童相談所で受け入れておりまして、都の担当者と区の派遣職員等の間で個別の相談事務等について同行訪問や同席面接等を行いまして、綿密な引き継ぎを開始しているところでございます。

○たきぐち委員 昨年から連絡会議を開始しているということでありますが、世田谷と江戸川については、個別の具体的な引き継ぎ作業に着手をしているということでありました。
 荒川区についても、恐らく四月ぐらいからそういった作業に着手するのではないかと推察をするところでありますけれども、引き継ぎには家庭との信頼関係の調整も求められるところでもあります。
 先日提言された児童福祉審議会の児童虐待死亡事例等検証部会においても、自治体間をまたがる事例についての情報共有、連携不足が指摘されているところであります。
 昨年、開設後の都の職員の出向や一定期間の派遣なども求めたところでありますけれども、とりわけ立ち上げ支援については、じっくりと綿密に行っていただきたいと思いますし、また、事案に応じては、引き継ぎ後も連携を図れるような体制をしいていただくことを求めておきたいと思います。
 これまでの過程から、区児相開設に向けた取り組みというのは、自治権拡充の議論と捉えられがちでありますが、都区の自治権争いの話ではないと思います。虐待対応は社会的要請であって、児童相談所に求められる中核的な役割も、戦後の戦災孤児への対応から非行対応、そして虐待対応へと変化してきているものと考えます。
 私自身、区議会議員だった十一、二年前から、子家センや児相などの関係者からいろいろと状況を聞いてまいりましたけれども、法的に一時保護の権限を有する児相と、その権限を有しない子家センという虐待通告に対応する二元体制によって生じている課題、弊害を解消、克服することが最悪の事態を防ぐことにつながると私自身もそういった認識を持っております。
 現実的に一時保護所に余裕がなくて、担当者も案件を多数抱える中で、緊急性に対する区と都の見立ての違い、見解の相違が生じることはやむを得ない面もあるんだろうと思います。
 ただ、目黒区の結愛ちゃんも、野田市の心愛ちゃんも、居住地と管轄する児童相談所の所在地が隣接する自治体にあったことは、偶然の一致ではないのではないかと思います。
 緊急対応が求められる際の物理的、心理的距離感の近さが予防的対応力の強さに結びつく側面もあるんだろうと考えております。
 例えば、自宅に帰りたくないという子供のSOSを学校から伝達を受けた場合に、その後の対応に時間を要すれば要するほど、子供の思い、決意が変化をしてきて、保護する機会を逸してしまうというようなこともあるわけであります。
 そういった意味では、学校であったり、民生児童委員であったり、そうした協力体制のある関係機関との近さが生かされるケースがあるんだというふうに思っております。
 ただ、先ほど来申し上げているとおり、財政負担や広域的な里親委託、専門人材の確保、育成、人事ローテーションなどのほか、支援と介入を分離することや権限行使に慎重になるおそれなど、都児相と比較した区児相の抱える課題、困難性も想定されるわけであります。こうした課題、困難性をいかに都と区の連携強化によって克服できるかに注力すべきだというふうに考えております。
 子供を虐待から守るため、都児相、区児相、子供家庭支援センターが一体となって取り組んでいくことが必要だと考えます。局長の考えを伺います。

○内藤福祉保健局長 児童虐待に迅速かつ的確に対応するために、都はこれまで、児童相談所の体制強化に取り組むとともに、区市町村の虐待対応力の向上を支援してまいりました。
 昨年度の虐待死亡事件の検証報告書では、関係機関の連携不足などの課題が指摘されており、その解決には、都の児童相談所と区の児童相談所、地域の身近な相談窓口である子供家庭支援センターとがそれぞれの強みを生かし、連携を強化していくことが必要でございます。
 このため、都は、本年五月に区市町村と合同で児童相談体制に係る検討会を立ち上げました。この検討会の最大のポイントは、都から区市町村への例えば一方的な説明ですとか、区市町村から都に寄せる要望とか、そういう片方から片方への流れではなくて、オール東京で、まさに児童相談行政に携わる実務を担う方たちが一堂に会して、実際に自分たちがどうしていくのかということを考えるために立ち上げた検討会でございます。
 具体的には、人材の活用策や虐待リスクに対する評価方法、児童相談所と子供家庭支援センターとの新たな連携モデルなど、実効性の高い方策を幅広く議論しておりまして、四月に予定されております三区の状況も全体で共有しながら、都と区市町村がこれまで以上に緊密に連携し、東京全体の児童相談体制の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

○たきぐち委員 ご答弁ありがとうございます。
 これまでも児童虐待や児相機能強化に関する局長の思いや考えは、さまざまな場で確認をしているところでありまして、虐待死を防いでいく、痛ましい事件を二度と起こさないという決意は感じているところであります。
 ただ、私も、都や区、あるいはまだ具体的計画の示されていない区であったり、あるいは行政以外の関係者ともいろいろと意見交換をする中で、都は区児相の開設に前向きではないんじゃないかと感じている関係者の声を時折聞くことがあるのも事実であります。
 制度が変わることに対する逡巡や抵抗があるのは当然だと思いますが、今ご答弁改めていただきましたとおり、さらなる機能強化を図りながら、四月に世田谷と江戸川、そして荒川区では七月に開設を予定しているところであります。
 都のノウハウを共有して、区児相との連携を強めて、今ご答弁がありましたとおり、オール東京でこの問題に取り組みを進めていただきますことを強く要望いたしまして、質問を終わります。

○斉藤(や)委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十分休憩

   午後三時二十五分開議

○斉藤(や)委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○伊藤委員 それでは、私からは、まず本委員会に付託されました条例案のうち、児童相談所関連の条例改正案について質問をしてまいります。
 これまでも当委員会の中で、私は、児童相談所の区設置に向けて、専門的人材の確保やそれぞれのケースの引き継ぎなどが円滑に行われているのかなど、さまざまに質問をしてまいりました。
 こうした準備の一方で、法的な手続の整備も着実に行わなければならないわけであります。このたびの都条例改正案の整理番号2、東京都児童相談所条例の一部を改正する条例によりまして、来年度に児童相談所が区設置となる世田谷区、荒川区、江戸川区を都の所管区域から除くことによって、さまざまな事務が都から設置区に移ることになるわけであります。
 そこでまず、区が児童相談所を設置することに関連して、都から区に移る事務はどのようなものがあるのか、また、条例改正との関連について伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所設置市の事務は、児童福祉法等において、都道府県が処理することとされている事務でございまして、その範囲は地方自治法に定める政令指定都市が行うこととしている事務と同様のものでございます。
 具体的には、保育所や児童養護施設等の認可、児童福祉審議会の設置に関する事務、認可外保育施設に関する事務、里親に関する事務、小児慢性特定疾病の医療の給付に関する事務、療育手帳に係る判定事務などがございます。
 これらの事務につきましては、国の法令や通知、都の条例、規則等に基づいて実施されておりまして、特別区が児童相談所を設置する場合は、区において条例、規則などを整備することになります。
 そのため、今回の条例改正につきましては、児童相談所設置市が処理する事務等に関連する五つの条例につきまして、都条例の適用区域から児童相談所設置市を除くものでございます。

○伊藤委員 都の条例から先行する三区が除かれることによって、その設置区が担うことになる事務は多岐にわたっていくわけであります。
 これまでも申し上げてまいりましたけれども、児童相談業務は、児童虐待対応だけでなく、さまざまな業務を担っているわけでありまして、どの事業も子供の生活や命に直結する重要な業務であります。その業務を支えているのが事務であり、都から区へ移された後に設置区が円滑に事務を行えるように、万全な準備が進められなければなりません。
 こうした関連事務について、都はどのように区に引き継ぎを実施しているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都は、本年二月に児童相談所設置市が処理する事務に係る都区の担当者の一覧を作成いたしまして、その後、都区の各部署において、事務の実務的な引き継ぎを実施しております。
 引き継ぎにつきましては、必要に応じて区の担当者に向けた業務説明会を実施するほか、業務マニュアルや関係規定等の提供、都の研修への区の職員の参加、三区と関係機関との打ち合わせの実施などによりまして、児童相談所設置市が処理する事務の引き継ぎを的確に行っているところでございます。
 また、児童養護施設等の認可や里親に関する事務、小児慢性特定疾病医療費助成に関する事務など、児童相談所設置市が処理する事務に関する勉強会も実施しているところでございます。

○伊藤委員 研修会、また勉強会のほか、実務的な引き継ぎも着実に行っているということでありました。
 その中で、愛の手帳の判定に係る事務についても都から区に移るということでありますけれども、手帳の判定は知的障害の判定を行うことであって、専門性が非常に高い事務と思われます。
 愛の手帳の判定について、都は区への引き継ぎをどのように行っているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 愛の手帳の判定につきましては、十八歳未満の方の場合、児童相談所の児童心理司が知能検査を実施するとともに、発達歴や問題行動、てんかん等の合併症、治療状況など、生活全般を把握した上で障害の程度を判断しております。
 特別区が児童相談所を設置した場合、こうした事務を区の児童相談所の児童心理司が担うことになります。都は、特別区の求めに応じまして、平成二十九年度から児童心理司の派遣研修職員を受け入れており、派遣研修職員に対しましては、年間を通じて、児童の発育や心理の基礎知識など、多岐にわたる研修を実施するとともに、OJTによりまして、愛の手帳の判定事務も習得をしていただいているところでございます。
 今後、区の実務担当者を対象に、愛の手帳の判定等に係る勉強会を開催する予定でございまして、判定事務を適切に引き継いでまいります。

○伊藤委員 ご答弁いただきましたけれども、愛の手帳は支援が必要な子供の療育にかかわる重要なものでありまして、その判定、また手帳の発行など、円滑に行えるよう強く求めておきたいと思います。
 いずれにせよ、児童相談所の設置に向けて着々と準備が進められているということが確認できましたけれども、今後もどうか区は区、都は都ではなくて、都と区がしっかりと連携しながら、未来ある子供たちに関する相談事業を確実に行っていただきたいと要望し、次の質問に移りたいと思います。
 甚大な被害をもたらした台風十五号から立ち直る間もなく、引き続き大きな被害を残した台風十九号から昨日、十二日で二カ月になりました。関東甲信越では、いまだ五十六世帯百四人の方が避難所での生活を余儀なくされているという報道も昨日あったところであります。
 都内でも、台風被害によって、いまだに家の補修や仕事、生活に困難を抱えている方々がたくさんいらっしゃいます。私が災害直後からかかわってきた方々の中に、屋根の一部が飛んでしまいまして、そこから入り込んだ雨水によって、家中がカビだらけになってしまって、その中で毎日高齢者の方が途方に暮れて暮らしている、こんな世帯もありました。
 また、修繕する蓄えもなく、頼る親族もいない方など、行政が手を差し伸べる必要を痛感して、都議会公明党は小池都知事に直接、多岐にわたる支援策を要望し、このたびの補正予算の随所に反映をされているところであります。
 そこで、福祉保健局からの補正予算案は、国の被災者生活再建支援制度に関連しての支援策となるわけでありますけれども、そこでまず、確認のため、国の被災者生活再建支援制度の目的及び対象と支給額について伺いたいと思います。

○坂本生活福祉部長 被災者生活再建支援制度でございますが、平成七年の阪神・淡路大震災を契機といたしまして、平成十年に被災者生活再建支援法が制定されまして、同法に基づき、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用し、地震や台風など、自然災害により、その生活基盤に著しい被害を受けた方に対しまして支給金を支給いたしまして、生活再建を支援することにより、住民生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としております。
 本制度の対象となる自然災害でございますが、同法の施行令に規定されている要件に該当するものでございまして、本年ですと、九月の台風十五号の災害では、都内、大島町と新島村の二つの自治体でございますが該当しておりまして、同じく十月の台風第十九号の災害でございますが、現在、大田区、八王子市、あきる野市、日の出町、檜原村の五つの自治体が同法の適用となっているところでございます。
 また、法の適用対象となる被災世帯でございますが、住宅の損害割合が五〇%以上である全壊世帯及び四〇%以上五〇%未満であります大規模半壊世帯となっております。
 支給額でございます。住宅の被害程度に応じまして支給する基礎支援金及び住宅の再建方法に応じて支給する加算支援金の合計額ということになりまして、例えば全壊世帯の場合ですと、最大で三百万円となっております。

○伊藤委員 被災者生活再建支援法は、そもそも国の制度でありまして、災害救助法に該当するなどの被害の状況によって、制度が適用になる自治体と適用にならない自治体があるわけであります。
 また、国の制度では、大規模損壊以上が対象でありまして、損壊割合が二〇%以上四〇%未満の半壊の世帯は対象外となっております。
 こうした国制度から対象外となってしまう世帯について、都はこれまで、どのように取り組んできたのか事例を挙げて説明をいただきたいと思います。

○坂本生活福祉部長 都はこれまでも、法の適用とならない区市町村におけます全壊及び大規模半壊世帯に対しまして、国と同じ水準の支援金を支給する区市町村に対しまして都独自に補助を行ってまいりました。
 また、加えまして、法の支援対象とならない損壊割合が二〇%以上四〇%未満の半壊世帯に対しましても、最大二百万円の支給金を支給する区市町村に対しまして、都独自に補助をしております。
 直近では、平成二十三年の東日本大震災でございますとか、平成二十五年の台風二十六号によります大島町の土砂災害に対して実施しております。

○伊藤委員 平成二十五年の伊豆大島での大規模な土砂災害のときは、都議会公明党は災害当日から、また私も翌日に現地入りをし、さまざまに都へ支援要請を行ったところであります。その際、救出救援から復旧、復興へと向かう島民の生活再建に都が尽力されたことが思い起こされます。
 このたびの台風災害では、法の適用とならない区市町村に対して都独自の補助や、法の支援対象とならない損壊割合が二〇%以上四〇%未満の半壊世帯に対しても都独自に補助を行うということでありました。
 そこで、改めて、被災者の生活再建のための今回の補正予算の規模及び内訳について伺いたいと思います。

○坂本生活福祉部長 今回の補正予算案におきます福祉保健局関連の被災者の生活支援等に係る合計額でございますが、約三十五億五千万円となっておりまして、本補正予算案では、令和元年台風第十五号及び第十九号の災害に対する国制度の実施に必要な経費に加えまして、都独自の支援に必要な経費を含めて計上しております。
 その内訳でございますが、災害により負傷または住居、家財に被害を受けた方に対する災害援護資金の貸付資金が二十四億七千四百六十万円、都独自の被災者生活再建支援事業の経費が十億六千六百万円などとなっております。

○伊藤委員 冒頭で申し上げた、屋根が一部吹き飛んでしまって家がカビだらけの中、途方に暮れていらっしゃる高齢者のお話をしましたけれども、その方がとられた罹災証明書に記載された被害状況は一部損壊でありました。
 現行の制度のもとでは、一部損壊では支援策がほとんど適用外となることから、都議会公明党は、一部損壊であっても住宅支援や補修支援が行われるよう都に要請をして、住宅政策本部で一部損壊への支援が行われるという運びとなりました。
 このたびの福祉保健局の補正予算による生活再建支援事業、そして、今申し上げた住宅政策本部による住宅被害対策支援事業と、被災者にとって少しわかりづらいものがあるわけであります。
 被災した住民への最前線での対応の窓口は区市町村であります。国及び都の複数の支援制度の周知を含め、事業内容を区市町村に丁寧に説明していただくべきであり、そして、何よりも被災者のもとに確実に支援策の内容、方法が届くことが重要であると考えますけれども、見解を伺います。

○坂本生活福祉部長 委員お話しのとおり、被災した方への支援を着実に実施していくためには、都といたしましても、区市町村に対しまして支援制度の内容につきまして説明いたしまして、被災者への速やかな周知を図ることが重要と考えております。
 今回の一連の台風災害につきましても、被災者への支援策の内容とその周知などにつきまして、本年十二月六日に福祉保健局、総務局、住宅政策本部の合同によります区市町村の担当者向けの説明会を開催したところでございます。
 被災した方に対する支援の速やかな実施に向けまして、引き続き庁内関連部署の間での連携を密にいたしまして、被災した区市町村に対し、丁寧に対応してまいります。

○伊藤委員 繰り返しになりますけれども、せっかくこういう支援制度があっても、被災をされた方々に届かなければ意味がないわけであります。
 大変申しわけないいい方ですけれども、よく行政の方がおっしゃるのは、こうしたことについて、ホームページに掲載しますと、これで終わることがよくありますけれども、最前線の区市町村に行って、そういうことがないように、確実に被災された方々にこの情報が届くように、都はしっかりと取り組んでいただきたいというふうに改めて申し上げたいと思います。
 台風被害による被災者の生活再建を支援する重要な補正予算について質疑をしてまいりましたけれども、本会議で可決した後は、即座に事業執行がなされるよう強く求め、質問を終わります。

○小松委員 私の方からは、児童相談所に関連して質問をさせていただきたいと思います。
 荒川区、江戸川区、世田谷区と先行三区で児童相談所の運営が来年からスタートをするわけであります。
 このことは、児童相談所施策という特定の分野、特定の事業での役割が東京都から区の方にかわるというわけでありますが、東京都は、ご存じのとおり、都区制度、都区財調などの独自のスキームで運用されておりますことから、我が会派では、このこと自体を、区への児童相談所の設置ということだけで捉えているのではなくて、東京都の役割、そして区市町村の役割は、本来どうあるべきで、また、この児童相談所というのは、どういう体制、どういう仕組みこそが本当に望ましいあり方なのかということについて、長年、議論、研究を続けてきたわけであります。
 そうしたことを踏まえながら、本日も幾つか質問させていただきたいというふうに思います。
 季節柄、夜にマイクを握ることが多くてちょっと声がかすれておりますが、その辺、お許しをいただければというふうに思います。
 児童福祉法における区市町村と東京都の役割分担、このことについて、まずはどのようになっているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉法におきまして、区市町村は基礎的な地方公共団体として、児童の身近な場所における児童の福祉に関する支援等に係る業務を適切に行うことと規定されております。
 例えば、施設入所等の措置をとるに至らなかった児童への在宅支援を中心となって行うなど、身近な場所で児童や保護者を継続的に支援し、児童虐待の発生予防等を図ることなどが挙げられます。
 都におきましては、区市町村に対する必要な助言及び適切な援助を行うとともに、専門的な知識や技術、各区市町村の区域を超えた広域的な対応が必要な業務を適切に行うことと規定されております。
 例えば、一時保護や施設入所等、行政処分としての措置等を行うことなどが挙げられます。

○小松委員 ただいまのご説明で、役割分担、都の認識を確認することができました。
 これまで我が会派に、この件についての勉強会等々で足を運んでいただき、またご説明をしていただきました。その際にもいろいろとやりとりをさせていただいたわけですが、やっぱり気になるのは、福祉法の改正によって、区でも児童相談所を設置することが可能になった、これは事実、そういうわけなんですけれども、ゆえに、意欲のある区がみずから手を挙げた以上は、そう対応せざる得ないんですよというような説明を受けてきたという認識を持っています。
 これは、立場上、また役割上、そういわざるを得なかったのかどうかわかりませんけど、果たしてそれでいいのかなというふうに思うわけであります。
 区にある、そしてそれがきめ細かな支援ができる、だからこそ、さまざまな法整備をして、しっかりと円滑に運営を区の方に進めていくんだ、そういう意思を持って、ぜひこのことを取り組んでいただかなくては意味がないんじゃないかなというふうに思うわけであります。
 これは十年先、二十年先、区に移設を--あのとき汗をかいてよかったなと思えるようになるのか、それとも、もともと東京都のやっていた、やはり広域的な仕組みこそがあるべき姿だったんじゃないかと二十年後反省しなければいけないのか、その大きな岐路に今立っているということを踏まえて、我々はこのことを進めていかなければいけなくて、都でなければいけない、また区でなければいけないということではなしに、どっちが本当にいいんだろうかということを常々検証しながら、このことを進めていただきたいというふうに思っています。
 そんな思いを踏まえまして確認しますが、身近な地域で支援業務を担う、このことが区の役割ということでありましたが、こうした特性を踏まえまして、区市が新たに児童相談所を設置することの利点、そして逆に課題、このことについて伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 区市が児童相談所を設置することの利点といたしましては、子育て支援から要保護児童施策まで一貫した児童福祉施策の実施が可能であることや、保育所、学校、保健センター等、地域の関係機関との連携が図りやすいことなどが挙げられます。
 一方、課題といたしましては、専門人材の確保、育成が難しいことや、一時保護や施設入所、里親委託などの広域的な調整を区市が単独で対応することが困難であることなどが挙げられます。

○小松委員 住民に身近という基礎自治体の特性から来る課題や、新たにゼロから立ち上げるという点での課題があると考えるわけです。実際、新宿区などは延期を表明したわけであります。
 ただいま答弁のあった課題、またデメリットの点を解消していく必要があるわけですが、都はどのように区と連携や支援を行うのか、また、他会派さんにもご答弁されていましたけど、改めて伺っておきたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 特別区が児童相談所を設置する場合は、児童福祉司や児童心理司などの専門人材をみずから確保、育成することが必要でございまして、都は、特別区の求めに応じ、派遣研修職員を受け入れるほか、虐待相談等に関する勉強会を開催するなど、人材育成を支援しているところでございます。
 また、都区がそれぞれ所管する児童養護施設や一時保護所等については、虐待をした保護者からの連れ戻し防止や非行児童の入所施設の分散、感染症の拡大防止などを図るため、広域で利用する予定でございます。
 例えば、児童養護施設の広域利用に当たりましては、都において施設の入所状況の一覧表を作成し、これをもとに都区の児童相談所が施設と入所調整を行うこととしております。

○小松委員 人材育成を支援されていくということでありました。
 相談業務における最も重要な点も、この専門人材の確保だということでありまして、このことが課題で新宿区は延期をされたというふうに伺っておりますので、大変重要な問題だというふうに思っております。
 事件とか事故が起きるたびに児童相談所が批判の標的になるケースが大変多くあります。また、虐待を受けて、心身に大変大きな傷を受けた子供たちをしっかり受けとめる、その責務も児童相談所、中でもこの専門人材の方にその責務があり、大変重要な点だというふうに思っております。
 この配置については、先ほどたきぐち委員の方から質問がありましたので、質問は私の方からはさせていただきませんが、この重要性について確認をさせていただきたいというふうに思います。
 そして、一部報道では、今年度、特別区が実施をした児童相談所職員の経験者採用の選考において、申込者が少なくて、十分な合格者が確保できなかったという報道がありました。
 人材確保は、東京都においても大変大きな問題でありますが、先ほどのご答弁によりますと、遠く国の基準には及んでいないということが確認できたと思います。
 そうした中、児童福祉司の配置基準というのは、今後の引き上げが予定されているわけでありまして、東京都としては、国の配置基準に対する、この不足の状況、また今後の対応ということが大変強く問われてくるところだと思います。
 このことも、先ほど大変厳しい状況であることが確認されましたので、意見だけ述べさせていただきたいと思うんですが、人員を充足させていくということはもちろん重要でありますが、問われるのは専門人材なわけですから、当然質のことだと思います。もちろん質ということは人の能力ですから、可視化、数値化することは簡単ではありませんが、その一つの例が、先ほども取り上げられてはおりましたけど、経験年数だと思います。
 その経験年数でいっても、三年未満といわれるキャリアの浅い方が大半である現状の中で、いかにこの増員とあわせて、経験者、また専門人材の早期育成であったりですとか、質の高い方をどう確保していくのか、この点も十分に考慮していきながら取り組まなければ、困るのは現場だと思うんですね。三区がスタートしました、さまざまな専門の方を入れたといったって、初めてチームをつくったメンバーで行くわけですから、経験者の方にとってもこれまでと勝手が違う部分たくさんあると思います。
 こうした点も踏まえながら、その方々は現場のリーダーとしてしっかりと回しながら、また、若手の、なったばかりの方々の面倒も見ながら、これはどの職場でもそうかもしれませんけれども、中間管理職としての板挟みというのは想像すれば大変なことだというふうに思いますので、こうした点も考慮しながら、この人材のことについては取り扱っていただきたいと、これは意見として述べさせていただきたいと思います。
 もう一つ、区の方からは、東京都に人的支援の要請があると伺っています。これもほかの方の答弁でもありましたけれども、支援にも当然限界というのがおのずとあると思うんですね。そうした中でも、子供の安全を守るためには、東京都の児童相談所が持つ機能、また専門性を生かして、区の児童相談所を支援する方法というのも可能だというふうに思いますが、この見解を伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所では、虐待や非行など、あらゆる相談に対応するとともに、一時保護や施設入所等の法的対応、虐待で傷つき、情緒的な問題を抱えた子供たちへのケア、親子関係を修復し、家庭へ復帰させる取り組みなどを行っておりまして、困難事案に対応できる専門性が不可欠でございます。
 都は、特別区の児童相談所がさまざまな相談に適切に対応できるよう、区から困難事案の対応等について相談があれば、児童福祉や児童心理の専門課長等が助言や指導を行うこととしております。
 また、児童相談センターでは、医師や心理職により、虐待による心の傷、不登校、家庭内暴力など、情緒的課題を抱える子供等に対して、宿泊や通所による治療活動等を実施しておりまして、特別区の児童相談所が対応する家庭につきましても、支援の対象とすることとしております。

○小松委員 東京都と各区が連携する上で、当然、情報共有の仕組み、これも重要だと思います。
 実際、この児童相談所のケースでいけば、これは他県でもありましたけれど、こうした引っ越しのことも含めて、他県との連携という点で不十分であったことが重大な事件、事故につながったというケースは記憶に新しいものと思います。
 そうした意味でも、この情報共有の仕組みというのは大変重要だということを確認させていただきたいと思います。会議や打ち合わせなど対面での情報共有ということは当然あると思うんですが、必要な情報を迅速に共有していくためには、いわゆるICTの活用も大変有効だと思いますが、この取り組みについて確認をしたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都の専門課長等が区の児童相談所に助言等を行う場合や、区が都の児童相談センターで実施されている治療指導活動を利用する場合など、都の児童相談所と区の児童相談所との間で相談事案に係る情報共有が必要になる場合がございます。
 都区で情報共有を行う場合、電話やファクスなどに加えまして、地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワークでございますLGWANによる電子メールや電子掲示板等を活用する予定でございます。
 また、現在、国におきましては、全国の児童相談所及び区市町村間の情報共有システムの構築が検討されております。本年五月に立ち上げました区市町村との合同検討会では、都と区市町村間の情報共有方策につきましても検討事項の一つとしておりまして、国の動向も注視しながら、適切に情報共有を図ってまいります。

○小松委員 この合同検討会で情報共有の方策についても区市町村間と緊密に連携をされる、検討される事項の一個に上がっているということだというふうに思っておりますが、やっぱり懸念されるのは、まずは三区ですけど、設置されてくる区がこれからまたふえてくる可能性があるわけであります。それだけ、主体者として児童相談所を運営される運営者、いわゆる主体的なプレーヤーがふえればふえるほど、同時に、コミュニケーションも情報共有や伝達する先というのも大変複雑化、多様化するわけであります。
 まず、この先行三区がスタートするところで、どのようにしっかりと仕組みをつくっておくのかということを、きめ細かく丁寧にしっかりと検討を進めていただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。
 次に、区がみずから児童相談所を設置する以上、当然、自立的な運営が大前提であるということを改めて強調しておきたいというふうに思います。ただ、重大な事故が発生しないよう、東京都として必要な支援、また連携についても、当然のことながら図っていただくことも重要だと思います。
 来年度は、まず三区ということですが、児童虐待対策は東京都全体の課題であると思います。他区もさまざま今検討を行っていると伺っています。三区以外の二十区の細かな状況について伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 特別区においては、二十二区で児童相談所の設置意向がありまして、現在、令和三年度の設置を計画している港区と中野区につきまして、児童相談所設置計画案の確認を行っております。
 その他の区につきましては、計画を示している区や設置時期を見直す区、未定の区、子供家庭支援センターと都の児童相談所の連携強化を検討する区など、その状況はさまざまでございます。
 新宿区につきましては、人材確保の困難性から、令和三年度に予定していた児童相談所の開設を三年以上延期することとしておりまして、都は新宿区から、区が建設中の一時保護所の活用につきまして提案を受けているところでございます。
 また、練馬区からは、子供家庭支援センター内に都の児童相談所のサテライトオフィスを設置することについて提案があり、令和二年度からのモデル事業として現在検討を進めているところでございます。

○小松委員 港区や中野区での設置の動きが具体化しているということで、今後も同様の趣旨で、都の児童相談所の条例の改正というのが予見されるわけであります。
 今回、世田谷児相については、世田谷区が抜けるということでありますから、狛江市の所管を多摩児相に移すわけであります。このまま区の児童相談所の設置がますます進んでいきますと、新宿にある中央児童相談所も含めて、区部における東京都の児童相談所は一体どうなるんだろう、なくなってしまうのか、そんなことを疑問に思うわけですが、どういう東京都の見解なのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 特別区が児童相談所を設置した場合、その区の行政区域は、都の児童相談所の管轄区域から外れることとなります。
 今後、区が児童相談所を設置した場合の都の児童相談所の管轄区域の変更等につきましては、都の児童相談所の地理的状況や人口、交通事情、相談件数、職員配置、国の施策の動向など、さまざまな状況を踏まえ、検討することが必要と考えております。
 お話のございました中央児童相談所であります児童相談センターは、都内の児童相談所間の連絡調整や専門的知識が求められる相談対応への支援、職員の人材育成などを担っておりまして、こうした機能は、今後、特別区において児童相談所の設置が進んだ場合にも必要と考えているところでございます。

○小松委員 最後に伺いたいと思います。
 区での児童相談所の設置や東京都と区市町村の連携強化など、さまざまな取り組みが確認をされました。
 こうした取り組みが進む中、どのような児童相談所体制を東京都として目指していくのか伺いたいと思うんですが、なぜこのことを確認したいかというと、誰とは申しませんけれど、設置をされる区の議員の方に、何で区は児童相談所を設置したいんですかといったら、自治権の拡充って答えたんですよ。
 おかしな話だなと思っていまして、そんなことを考えている委員はここにはいないと思いますけど、自治権を区に拡充させるために、まずは児童相談所の設置が進むのかということではなくて、やはり子供たちの安心・安全のため、命を守るため、どういう児童相談所の体制であるべきかということから考えたときに、東京都としてのスキーム、また区市町村との連携のスキーム、そうしたことを将来にわたって検討していくことが大事なはずなのに、なぜそういう程度の認識の区が進めていくのかなと。
 これは区の進め方の問題なのか、その区議会議員の認識不足なのかはわかりませんけれど、こういうことをしっかりと伝えていくことも大事だなというふうに思っていまして、これも一番初め、冒頭にも伺いましたけど、東京都としては、どういう児童相談所の体制ということを目指し、また、どうあるべきだと考えているのかを最後に伺っておきたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 子供を虐待から守るためには、住民に身近な支援を行う子供家庭支援センターの機能を担う部門と、専門的知識や技術が必要となるケースに対応する児童相談所とが連携、協働することが重要でございます。
 そのあり方につきましては、子供家庭支援センターと都の児童相談所のさらなる連携強化や、都の児童相談所と区の児童相談所の異なる設置者間における連携など、さまざまであると考えております。
 また、本年六月に改正されました児童福祉法では、児童相談所の設置促進を図るため、国が政令において、児童相談所の管轄区域の参酌基準を定めることとしているほか、中核市や特別区の児童相談所の設置支援を行うこととしております。
 今後、こうした国の動向も注視しながら、本年五月に立ち上げました区市町村との合同検討会において、都と区市町村の新たな連携方策を検討するとともに、三区の状況も全体で共有し、東京全体の児童相談体制の強化に取り組んでまいります。

○小松委員 最後に意見だけ述べさせていただきたいと思いますが、これまでも幾度となく法律や制度の改正というものを行いながら、この児童虐待というテーマについて、もう何十年も国も含めて取り組んできたわけですが、現実としては、この児童虐待というのはとまらないどころか、ふえているわけであります。
 行政のさまざまな支援、これは二十年前から比べたら、よりきめ細かくなったと思うんですけれども、それでも十分に届き切れていないのが現実、現状なんだと思います。
 また、埋もれている虐待死というキーワードもありますけれど、実際には、虐待が原因として亡くなった子供たち、これは潜在のものを入れると三倍から五倍だというふうなデータもあるようでございます。
 こうしたケースもあるということを考えますと、この法改正ということが理由で議論するのではなくて、ぜひとも、今、部長に述べていただきましたけれど、東京都として、また行政として、どういうような体制で取り組むことが、この問題を少しでも改善に向けて導くことができるんだろうかということから、逆に、あるべき姿を描き、また準備、検討を進め、そして議会や区市町村といったさまざまな関係者と連携を緊密にして、五年先、十年先のときには、あのときより間違いなく改善できていると自負をできるように一緒に頑張っていきたいということを述べさせていただいて、質問を終わります。

○藤田委員 日本共産党の藤田りょうこです。
 私からは、まず、無料低額宿泊所条例について伺います。
 無料低額宿泊所は、生計困難者のために無料または低額な料金で簡易住宅を貸し付け、または宿泊所その他の施設を利用させる事業となっています。
 しかし、この間、生活保護費を狙った貧困ビジネスによる被害が深刻となったことなどにより、法改正が行われ、東京都としても無料低額宿泊所の基準を条例によって定めようというのが目的だと思います。
 この中で入居者の人権をどう守ることができるかが問われていると思います。ここでは、どうやって人権を守ることができる条例にしていくのかという立場から質問をいたします。
 初めに、今回、無料低額宿泊所について、基準を条例で定めるということですが、その意義について東京都はどう認識していますか。

○藤井事業調整担当部長 都はこれまで、宿泊所の適正な運営を図るために、宿泊所のガイドラインを制定しまして、運営事業者に対して必要な指導を実施してまいりました。
 今回、社会福祉法が改正され、無料低額宿泊所の入居者に提供するサービス内容及び利用料等を定めた運営規程の整備、利用契約の文書による締結などの最低基準に関する事項を条例で定めるものとされました。
 本条例の制定によりまして、利用者の自立を助長する適切な支援環境が確保されるとともに、条例の規定に基づく運営指導や最低基準に違反した事業者に対する改善命令等を行うことができるなど、貧困ビジネス対策が強化されることによりまして、事業運営のより一層の適正化が図られるものと認識しております。

○藤田委員 この条例によって、貧困ビジネス対策が強化される、事業運営の一層の適正化が図られるということでした。条例によって権限が強化されること自体は大事だと思います。
 それでは、居室面積について伺いたいと思います。
 条例案で規則に委ねるとされている居室面積の基準では、経過措置の期限はどのようにしようと考えていますか。

○藤井事業調整担当部長 社会福祉法によりまして、都道府県等が定める条例の基準となる厚生労働省令では、省令施行前の届け出施設のうち、平成二十七年六月三十日において、事業の用に供していた建物の居室につきまして、一の居室の床面積が三・三平米以上四・九五平米未満の場合は、改善計画の策定等、一定の条件を満たした場合に限りまして、当分の間、利用に供することができるとされております。
 都では、国の基準省令に従い、当分の間とする予定でございます。

○藤田委員 国が基準を定めるために設置した検討会には、東京都の方も参加されており、私も議事録を読ませていただきましたけれども、東京都としては、居室の面積基準の経過措置に期限がないことについて強い懸念を持っているということを表明されています。
 しかし、先ほどの答弁では、東京都条例、規則に基づく居室面積の基準では、経過措置に期限を設けない予定になっているということです。その理由は何ですか。また、面積基準を下回る居室について、都内には何施設に何室あり、都はどのように解消に取り組んでいくのですか。

○藤井事業調整担当部長 本年十一月一日時点におきまして、中核市である八王子市を除く都内では、面積基準を下回る施設が四施設十室ございます。
 国は、この基準省令を策定するに当たりまして、これらの施設に利用者がいることを勘案して、当分の間、存続を認めることとしており、都もそれに従って規定しております。
 ただし、存続に当たりましては、事業者が策定する改善計画について、都と協議することとなっておりまして、その中で事業者に対し、改善を求めてまいります。
 改善計画の内容も含めて、都と協議する事項につきましては、年度末までに定めていく予定でございます。

○藤田委員 十室ということは、おおよそ十人の方が面積基準を満たしていない居室に入居しているということです。
 条例に基づく規則での居室の床面積については、七・四三平方メートル以上、地域の実情によっては四・九五平方メートル以上とする予定だと聞いています。重大なのは、これに対する経過措置の期限が、先ほどの答弁のとおり、当分の間というふうになっていて、具体的期限がないということです。
 現行の都の宿泊所設置運営指導指針では、基準の面積を満たしていない場合について、来年三月までに基準を満たすように求めています。
 しかし、今回の条例では、具体的な期限がないということだと、内容としては現在のものよりも後退であるといわざるを得ません。国省令制定に際し、東京都も経過措置に期限がないことについて懸念があったのであれば、独自に期限を設けた基準とするべきです。
 それに加えて懸念があるのが、サテライト型住居です。サテライト型住居は、本体施設よりも規模が小さくなって、東京都もサテライト型住居については、事業者の安易な新規参入を招かないかという懸念を示していました。
 そのため、東京都としては、サテライト型住居の導入は見送るよう求めていましたが、条例案はサテライト型住居を含めたものになっています。それはなぜですか。

○藤井事業調整担当部長 都は、ことしの五月、国に対しまして、関東の八都県市でサテライト型住居についての緊急提案を行いました。その趣旨は、居宅移行に向けた準備や訓練を行う仕組みについては十分に意義あるものと認めた上で、一人の施設長が最大四カ所を毎日巡回するなど制度の実現性に懸念があるとして、十分な検討及び制度導入の先送りを認めたものでございます。
 その結果、国は制度導入を令和四年四月に先送りするとともに、施行前に検証事業の実施、検討及び必要な措置を講ずるとの方針を示しております。
 そこで、条例案の附則におきまして、国の施策の状況を勘案し、検討及び所要の措置を講ずると明記した上で、サテライト型住居について、国の基準省令に従い条例案に規定したところでございます。

○藤田委員 一定の対応がされたので省令どおりにしたということですが、懸念がなくなったわけではありません。
 サテライト型住居に関する懸念について、東京都は今後どのように取り組んでいこうと考えているのですか。

○藤井事業調整担当部長 都は、居宅移行に向けた準備や訓練を行う仕組みについては十分に意義あるものと考えておりまして、実効性のある形で実施すべきというふうに考えております。
 都としても、実効性のある制度となるよう、国の検証事業の内容も含めまして、引き続き国に対して働きかけてまいります。

○藤田委員 国への働きかけだけでなく、都の条例の規定を変える必要がないかということも含めて対応を求めたいと思います。
 ほかにも、入居者の権利が保障されない懸念のあるものについて伺いたいと思います。
 まず、入浴回数についてです。
 条例案では、無料低額宿泊所は一日に一回の頻度で、入居者に入浴の機会を提供しなければならないとしながらも、やむを得ない事情があれば、一週間に三回以上の頻度でもよいとしています。
 入浴の機会は最低でも一日に一回は提供されるべきではないでしょうか。

○藤井事業調整担当部長 国の基準省令におきまして、一日一回は入居者に入浴の機会を提供しなければならない、ただし、入浴に際して、介助等の支援が必要な場合などやむを得ない事情がある場合は、あらかじめ入居者に対し説明を行うことにより、一週間に三回以上の頻度とすることができると規定しておりまして、都においても同様に条例で規定しているところです。
 入浴機会の提供状況につきましては、指導検査等で確認してまいります。

○藤田委員 条例自体は、やむを得ない事情の具体的な内容は規定されておりません。週三回でよいということにならないかということは心配されます。居宅生活では自分の望むときに入浴できるわけで、毎日入れるようにすべきだと思います。
 条例案の第二十三条では、本人が希望した場合、施設が一定の条件のもとに金銭管理を行うことも認めています。金銭管理について、施設が行うことは避けるべきだと考えますが、都の見解を伺います。

○藤井事業調整担当部長 入居者の金銭管理につきましては、入居者本人が行うことが原則でございます。
 しかし、金銭の適切な管理に支障がある者につきまして、本人の安定した生活の維持や金銭の自己管理に向けた訓練等のために必要がある場合には、一定の要件を設けた上で、無料低額宿泊所の職員が金銭管理を行うことを妨げるものではないということを条例に規定しているところです。
 また、職員が金銭管理を行うことについて、金銭の適切な管理に支障がある入居者本人が金銭の管理を希望する場合に限定したものとすることを予定しております。
 さらに、金銭管理を行う場合には、金銭管理の具体的な方法等を定めた管理規定を定め、都に届け出るとともに、管理規定の内容について入居者に十分説明を行った上で金銭管理契約を締結する必要があり、金銭管理の透明化を図ることとしたいと考えております。

○藤田委員 本人の同意が前提とはいえ、医師や裁判所などの専門家、組織の判断を得ずに金銭管理を行うのは、人権という観点から大きな問題があります。
 もちろん、中には金銭管理が自分で難しく、第三者の助けを得たいと考える人もいるでしょう。しかし、その場合であっても、医師や法律の専門家と相談の上で、施設運営者とは独立した第三者に依頼するのがよいことだと思います。
 貧困ビジネスで大きく問題なことは、どのような目的で利用料が徴収されているのかが明確になっていないことです。条例では、これが明確になる必要があると思います。無料低額宿泊所が提供するとされているサービスは、具体的にどのような内容のものですか。

○藤井事業調整担当部長 国の基準省令におきましては、無料低額宿泊所は、居室の利用、入浴の提供、食事や日用品費の提供、退去への支援など、入居者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、サービスを適切かつ効果的に行うものと規定されておりまして、都においても同様に規定しているところです。
 また、無料低額宿泊所は、施設の運営規程を初め、都道府県等に届け出ることになっており、運営規程の中には、入居者に提供するサービスの内容及び利用料を定めることとしております。

○藤田委員 居宅の利用などということですが、提供しているサービスが妥当なものであるかどうかは、具体的にどのように判断するのですか。

○藤井事業調整担当部長 施設の運営規程に定める入居者に提供するサービスの内容につきましては、居室の面積、設備の状況、食事提供の有無並びに提供回数及びその内容、日用品等の提供内容などとなっております。
 国の基準省令において、入居者に提供するサービスの状況に関する記録を整備することと規定しておりまして、都においても同様に規定しているところです。
 都では、定期的に指導検査を実施しておりまして、これらの記録をもとに妥当性を判断し、必要に応じて指導を行ってまいります。

○藤田委員 運営規程自体の確認は、施設からの届け出がされる際に東京都が行うということになっているようですけれども、これらのサービスに対して利用料を受領できることになっているということで、しかし、金額の妥当性の判断ができるモデル的な規定は、国の基準省令でも細かくは示されてはおりません。介護保険であれば、この内容に対してこれは幾らだとしたような基準がありますが、そうしたものがないということです。特に、基本的サービスは曖昧だと思います。
 基本サービス費の額が妥当であるかどうかは、具体的にどのようにして判断をするのですか。

○藤井事業調整担当部長 国の基準省令におきまして、基本サービス費は、入居者の状況の把握等の業務に係る人件費、事務費等に相当する金額であると規定しており、都においても同様に規定しております。
 基本サービス費は、入居者の状況の把握、軽微な生活上の相談等を行うために配置する職員の人件費及び当該業務に要する事務費等に要する費用をもとにして、合理的に算定するものであると考えております。
 その金額につきましては、開設の届け出等の際に確認してまいります。

○藤田委員 人件費や事務費などの実費徴収ということですが、今も様子を見るだけのような施設もあれば、通院の同行など丁寧な対応をしているというところもあります。基本サービスの内容が曖昧では、実費に相当しているかどうかについて判断することも難しく、施設の求めに応じて入居者は支払わざるを得なくなる懸念もあると思います。今の答弁だけでは、そうした点で、無料低額宿泊所が提供するサービスとは何なのか明確にはならないと思います。
 居宅で生活している場合では、こうした基本サービス料は発生しません。基本サービス料等を取るのであれば、どのようなサービスがなぜ必要で、そのためにかかる費用はどれだけなのか、きちんとした根拠を持って明確にさせる必要があります。また、その費用が生活を圧迫しないようにする必要があるとも思います。
 次に、鍵についてです。
 居室は鍵のかかるものにすべきと考えますが、いかがですか。

○藤井事業調整担当部長 国の基準省令におきましては、無料低額宿泊所の運営は入居者のプライバシーの確保に配慮して行わなければならないと規定しておりまして、都においても同様に規定しておるところです。
 これは、施錠等も含めた個人の居住スペースの確保を求める趣旨であり、都としてもこの趣旨にのっとり指導を行ってまいります。

○藤田委員 より明確に定められた方がいいとは思いますが、鍵で施錠できることも含まれているということだったので、しっかり守られるよう指導することを求めます。
 プライバシーの確保という点では、第二十条で、一日一回以上、居室への訪問等の方法によって入居者の状況を把握しなければならないとしていることも心配されます。入居者からの求めがないのに居室の訪問を行うことは避けるべきだと考えますが、いかがですか。

○藤井事業調整担当部長 国の基準省令におきましては、無料低額宿泊所は、原則として一日一回以上、入居者の状況を把握しなければならないと規定しておりまして、都においても同様に規定しているところです。
 入居者の状況把握につきましては、心身の状況などに変化がないか、生活上の問題等を抱えていないか等、入居者が安定した生活を送るための支援の観点から行うものとしておりまして、その方法は、居室への訪問のほか、共用室での面談などを想定しております。
 ただし、状況把握の方法や頻度等につきましては、入居者との合意の上で決定されるべきものであると考えております。

○藤田委員 入居者との合意の上とのことですが、入居者は引っ越すことが難しい場合、弱い立場になります。プライバシーの侵害にならないようにする必要があると思います。
 次に、この条例の参考となっている国の基準省令はどのような立場の方が検討したのか、そこには生計困難者という立場の方の意見が反映される仕組みであったかが重要です。
 基準を検討した国の検討会には、無料低額宿泊所の利用者や生活保護受給者の立場の委員は入っていましたか。

○藤井事業調整担当部長 国の検討会の委員の人選につきましては国が行っておりますが、無料低額宿泊所の利用者や生活保護受給者などの方は委員には入っておりませんでした。

○藤田委員 自分たちのことを自分たち抜きに決めないでというのは障害者権利条約のスローガンですが、生活困窮者支援でも当事者の意見を踏まえて進めるべきだと思います。ほかの立場の方が当事者の立場に立った内容の意見をいうこともありますが、それが当事者参加のかわりになるわけではありません。
 国の検討会の構成は国の責任ですが、都の条例案は国の省令とほぼ同じですから、国の基準の問題点は基本的に引き継がれることになります。東京都がこうした生活困難者のための施設の基準を設けようとするならば、当事者の意見が聞ける場を設けるべきです。
 最後に、全体の考えの前提として、生活保護は居宅での保護が原則であること、無料低額宿泊所での生活は一時的なものであることについて、都の立場を確認しておきたいと思います。

○藤井事業調整担当部長 生活保護法第三十条に、生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとし、これによっては保護の目的を達しがたいときなどは、救護施設などに入所させることができると定められております。
 無料低額宿泊所は、国の基準省令において一時的な居住の場であると示しており、都でも今回の条例案において、原則として一時的な居住の場ということを基本方針で明記するとともに、利用者の契約期間は一年以内と定めております。

○藤田委員 条例では、入居者の半分以上は生活保護受給者であることなどが無料低額宿泊所の定義の中にありますが、生活保護法三十条一項において、生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとするとあるように、アパート等の居宅での保護を原則としています。いわゆる施設での保護は、居宅での生活が難しい場合、本人が希望した場合など、限定的なものとされています。
 無料低額宿泊所での生活が前提となってしまって、居宅保護の原則が後退してしまってはなりません。居宅生活ができるよう支援することを基本として保護行政を行うことを強く求め、次の議案である児童相談所条例の一部を改正する条例について伺います。
 区立児童相談所の設置に伴い、都の児童相談所が管轄する自治体が減ることによる条例改正ですが、その際、都の児童相談所がどういった考え方に基づいて再構築されるかを確認したいと思います。
 世田谷区が児童相談所を設置することについて、都が認識したのはいつですか。

○谷田少子社会対策部長 平成二十八年五月に児童福祉法が改正されまして、特別区も個別に政令の指定を受け、児童相談所を設置できるようになったところでございます。
 その後、平成二十九年三月に特別区長会から、児童相談所設置計画案の確認作業をモデル的に実施する区として、世田谷区を含む三区の提示があり、平成二十九年六月から、三区について計画案の確認作業を開始したものでございます。

○藤田委員 都の児童相談所のあり方について検討できる期間は、少なくとも二年以上はあったということです。
 世田谷区が児童相談所を設置するに当たり、東京都世田谷児童相談所をどうするかということについて、どのような検討を行ってきたのですか。また、多摩地域に児童相談所をふやすことの検討は行ってきたのですか。

○谷田少子社会対策部長 特別区が児童相談所を設置した場合、その区の行政区域は、都の児童相談所の管轄区域から外れることとなります。
 世田谷児童相談所が管轄する区域は、現在、世田谷区と狛江市であるため、世田谷区が都の児童相談所の管轄から外れると、狛江市のみが世田谷児童相談所の管轄に残ることとなります。狛江市の相談件数や必要となる職員数を踏まえ、組織運営や人材活用、費用面等から総合的に検討を行い、狛江市の管轄を多摩児童相談所に変更し、世田谷児童相談所を廃止することにいたしました。
 都の児童相談所数をふやすか否かの検討、つまり児童相談所の管轄に係る検討は、今後、国が定める管轄基準に関する政令や地理的状況、相談件数の動向、人材確保の状況など、児童相談所を取り巻くさまざまな状況を踏まえ検討することが必要でございまして、今回の世田谷児童相談所の取り扱いとは別に検討すべき事項でございます。
 そのため、お尋ねのございました世田谷児童相談所の取り扱いの検討において、多摩地域に児童相談所をふやす検討は行っておりません。

○藤田委員 これまでの質疑では、町田市から東京都に対して、都の児童相談所設置を求める意見書などが上げられており、児童相談所の管轄する面積の広さなどについて検討することが求められていました。また、改正児童福祉法案の参考人質疑でも、車で一時間以内で管内に行けるようなところじゃないと大変難しいという意見が出されていました。
 国の法改正でも児童相談所をふやしていく方向性になっているし、特別区でふえていくのなら、多摩地域での都の児童相談所のあり方についてどうしていくか、ふやしていくという方向性の議論があってしかるべきだと思います。しかし、多摩地域に児童相談所を新たにつくることについては議論がなされていないということでした。
 本日配布された資料にもあるように、都の児童相談所一カ所当たりの人口は全国的にも多くなっています。区立児童相談所の設置が進む際に、管轄がなくなるから廃止して別の場所にふやさないという考え方では充実することができません。
 多摩地域にふやすなどして、都の児童相談所を充実させていくべきであると申し上げて、議案に対する質疑を終わります。

○斉藤(れ)委員 私からも、まず、無料低額宿泊所条例について伺わせていただきます。
 こちらの条例新設は、先ほど藤田委員からも丁寧な質疑が行われておりましたけれども、そもそも国の方で貧困ビジネス対策として規制強化を図るため、社会福祉法を改正し、法令上の規制を強化することに伴い、東京都でその基準を定めるものと認識しています。
 無料低額宿泊所は、全国では平成二十七年時点で五百三十七施設あったそうで、実態としては、利用者の大半が生活保護の受給者であり、うち八六%の施設で被保護者本人の手元に残る保護費が三万円未満という現状があったことが国の資料にも記されています。
 そこで、この対象となる施設は都内には一体幾つあり、この条例が制定されることによってどのような影響があるか伺います。

○藤井事業調整担当部長 条例の対象となる無料低額宿泊所は、本条例が適用されない中核市の八王子市内の施設を除き、令和元年十一月一日時点で百五十一カ所でございます。
 都はこれまで、宿泊所の適正な運営を図るため、宿泊所設置運営指導指針、いわゆるガイドラインを制定しまして、運営事業者に対して必要な指導を実施してまいりました。
 今回、社会福祉法が改正され、無料低額宿泊所の入居者に提供するサービス内容及び利用料等を定めた運営規程の整備、利用契約の文書による締結などの最低基準に関する事項を条例で定めるものとされました。
 本条例の制定によりまして、条例の規定に基づく運営指導や最低基準に違反した事業者に対する改善命令等を行うことができるなど、事業運営のより一層の適正化が図られるものと考えております。

○斉藤(れ)委員 ありがとうございます。都内だけで百五十一カ所あるということで、全国の施設の三割近くが都内にあるということがわかりました。
 この法改正と条例制定によって、今、民間のNPOなどが運営をされている無料低額宿泊所等の事前届け出が必要と法に定められることになりまして、東京都が定める最低基準が創設されて、この基準を満たさない事業所に対しては調査または改善命令を行っていくことができるようになるということで、結果として、この条例制定が劣悪な宿泊所の業務改善へとつながっていくことを期待するものです。
 そして、これら施設を利用される利用者についてですけれども、中には認知症や精神疾患等により居宅生活が困難な方もいるというふうに思われます。このような方々を多く受け入れる施設では、生活支援などに大変力を入れる必要がありますけれども、このような宿泊所に対し、都として行っている支援はあるか伺います。

○藤井事業調整担当部長 都では、平成二十六年度から、見守りが必要な低所得の高齢者等が、本来的な居場所を確保するまでの間も安心して居住できる中間的な居場所の提供を目的としまして、生活支援のための職員を配置するなど、一定の条件を満たした無料低額宿泊所を支援する区市に対しまして、寄りそい型宿泊所事業として、開設準備経費などの初期費用や運営経費について補助をしております。
 また、今回の社会福祉法等の改正に伴いまして、国は、高齢者、障害者等で日常生活上の支援が必要な方が利用できるよう、一定の条件を満たした無料低額宿泊所を生活保護法上の日常生活支援住居施設として規定し、来年度から必要な支援を行うこととしております。
 現在、国において具体的な規定内容について検討中であることから、都としても、今後の動向を注視し対応してまいります。

○斉藤(れ)委員 東京都では、平成二十六年度から、寄りそい型宿泊所事業として、一定の条件を満たした初期費用や運営経費の補助を行われているというご答弁でした。
 一方、国では、今回の法改正に伴い、日常生活支援住居施設として来年度から支援を開始するということで、これはそれぞれに、もしかしたら必要とされる条件が同等のものであるならば、現在の寄りそい型宿泊所事業を既に独自に開始をされている東京都だからこそ、国の動向を注視するとともに、現在支援されている寄り添い型宿泊所の現状の課題などをお聞き取りいただきまして、例えば支援する福祉専門人材のさらなる配置が必要であれば、国の事業に上乗せをして、都型日常生活支援住居施設モデルを構築していただけるように議論、検討をお願いいたします。
 そもそも、日常生活上の支援を必要とする利用者が一体どれほどいるのかといった実態も、現在まだ定かになっていない部分がございます。実態を把握し、適切な支援体制の構築をお願いいたします。
 これらの条例により、弱い立場にある方々が不当に搾取をされている状況をなくしていこうとされていることは大切なことだと考えますけれども、この条例の新設される背景を知るほどに、この無料低額宿泊所に入居されている方たちは、ここにたどり着くまでに何か適切な支援を受けてきたことはあったのかという点が大変悔やまれる点でございます。貧困ビジネスがこの方たちを囲い込むようになる前に、行政や地域でできる支援はほかになかったんだろうかとも感じています。
 東京都では、例えば現時点では、生活保護受給をされていないホームレスを対象とした路上生活者自立支援センターを都内五カ所で運営されておりまして、自立支援事業にも取り組まれております。
 その段階での就労支援や地域居住支援、また医療相談等にも積極的に取り組まれることで、まだまだご自身の力で自立を目指すことができるという方をさらにお支えをしていっていただきたい、また福祉保健局におかれましては、さまざまな困り事を持つ方たちの困難をさらに悪化させないための施策、各分野の予防事業に重点的に取り組んでいただきたいということを要望し、次の質問に移ります。
 ここからは、児童相談所を区が設置することに関連した条例改正について伺わせていただきます。
 先行三区の一つである世田谷区にあります世田谷児相に行き、意見交換と視察を行う中で、都児相から区児相への業務の引き継ぎや人的支援、体制支援に東京都が果たす役割の大きさを痛感した次第です。
 人的支援については、先ほどほかの委員からも質問がありましたので、質問はちょっと省かせていただきます。
 児童福祉法の第三条では、都道府県と区市町村の役割分担が定義をされておりますが、区児相設置に伴い、児相を設置する特別区においては役割分担にどのような変化が生じることになるか、また、都児相、区児相、児相未設置区、市町村とさまざまな相談機関がある中で、子供たちを虐待から守るために重要なことは何か伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉法では、区市町村は、児童の身近な場所における支援業務を行うものとされ、都道府県は、専門的、広域的な対応が必要な業務を行うものとされております。
 特別区が児童相談所を設置した場合、現在、都道府県の児童相談所が担っている専門的、広域的な対応が必要な業務も担うことになります。
 区の児童相談所や子供家庭支援センターなど、さまざまな相談機関がある中、子供たちを虐待から守るためには、相談機関の設置主体のいかんを問わず、住民に身近な支援を行う子供家庭支援センターの機能を担う部門と、専門的知識や技術が必要となるケースに対応する児童相談所が密接に連携、協働していくことが重要と認識しております。

○斉藤(れ)委員 法にのっとって、虐待の重篤度が高く生命危機の状態にある児童の保護等は児童相談所が、身近な場所での支援については区市町村の子供家庭支援センターが担うという大前提は変わらずに、ただし、今後児相を設置する区は、原則としては区の児相と子供家庭支援センターで連携を行うことになって、未設置区や市町村は、都と各地域の子供家庭支援センターで連携をしていくという整理になると思います。
 この役割分担については、地域により、例えば児相へ引き継ぎをする、もしくは子供家庭支援センターへ引き継ぎをするレベルが違うというようなお話を伺ったりだとか、あと、多忙がゆえに、連携の合間に危険な状況にある児童の安全が阻害されるような見落としが起きる可能性も児童福祉関係者から指摘をされているところです。
 事故を防ぐためのあらゆる働きかけを児相設置区にも行うとともに、児相未設置区と市町村については、都児相との連携に当たり、先般の東京ルールの改定により生じたさまざまな影響をその都度検証し、新たな課題等が生じるような場合には、必ず改めてルールの見直しを行っていただきたいと要望いたします。
 児童の措置については広域的業務とされ、特に虐待や非行で保護された児童は、もともとの居住地域とは離れた地域の施設に措置される必要がある場合も多いといわれます。
 特別区が児相を設置した後も、児童養護施設や里親は東京全体で利用することが必要と考えますが、どのように利用調整を行っていくか伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所では、虐待をした保護者からの児童の連れ戻し防止や非行児童の入所施設の分散、感染症の拡大防止などを図るため、一時保護所や児童養護施設等の入所に当たっては、広域での調整を行っております。
 特別区が児童相談所を設置した場合、施設や里親等の偏在や地理的状況等から、こうした対応を区が単独で行うことは困難と思われるため、一時保護所や児童養護施設、児童自立支援施設、里親等については、行政区域にかかわらず、広域で利用することとしております。
 施設の広域利用に当たりましては、都において施設の入所状況の一覧表を作成し、これをもとに都区の児童相談所が施設と入所調整を行うこととしているほか、里親につきましては、地方自治体を相互に接続する行政専用のネットワークでございますLGWANの電子掲示板等を活用し、委託する家庭を調整することとしております。

○斉藤(れ)委員 東京都の培ってこられた児童養護施設の情報やつながりを区児相にも共有いただけるように進められていることや、また、里親登録家庭を一元的に紹介することができるLGWANなどのシステムを今後区児相でも活用いただけることがわかりました。
 児童養護施設は乳児院とは違い、定員のあきが大変少ない状況であるとも伺っておりまして、現在、社会的養育の大きな流れは里親委託推進に向けて東京都も一丸となって進んでおられると思いますけれども、里親登録家庭の数はまだまだ目標にははるか遠く、実際に保護を必要とされている児童が里親委託もされず、施設委託もされずというような事態が起きないように、十分な養育体制がとられているのか、常に子供側の目線に立って現状把握と施策展開を行っていただきたいと要望いたします。
 今現在、児童福祉司一人が百件以上を担当しているともいわれる東京都児童相談所ですが、現時点で国基準の人材配置と都定数の差はどれほどか伺います。また、国基準の配置を行った際に、想定される一人当たりの担当件数はどの程度減ると予想されているか見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉司の配置基準は政令で定められておりまして、現在、管轄人口四万人につき一人配置することが標準とされております。
 この基準を用いまして、都の児童相談所における必要な児童福祉司を試算した場合、平成三十一年四月一日現在で三百七十二人の児童福祉司が必要でございます。都の児童福祉司の定数は現在三百十五人でございまして、差し引き五十七人不足していることになります。
 平成三十年度の都児童相談所の総相談件数は三万二千百七十八件でございまして、これを現在の都の児童福祉司の定数で除算、割り算いたしますと、児童福祉司一人当たりの平均相談件数は百二件となります。
 同様に、国の基準による試算人数で除算、割り算いたしますと八十七件となりまして、児童福祉司一人当たりの平均相談件数は、現在と比べ十五件減ることとなります。

○斉藤(れ)委員 国基準に合わせて、今、三百十五人の都の定数を五十七人増員をされたとしても、まだ一人当たり八十七件の相談担当件数を持つということで、新プラン、こちらの方でもちょっと計算をしてみたんですけれども、三万人に一人ということで五百人で計算をしてみたところ、こちらでも一人当たり六十四件の相談対応件数がまだあるということで、国基準の方を満たしてもまだまだ都の方では不十分かもしれないという、非常に、児童福祉司が置かれている苛酷な状況が数字の上でも顕著になっているところだと感じています。
 児童福祉司の人材はどこの自治体も足りずに奪い合いが起きているような報道もあります。先日、一般質問でも取り上げましたが、本来は、児童福祉司の持つ専門性がしっかりと育成されるとともに、評価される仕組みを創設し、今後の処遇の改善へとつなげていくことで人材を集め、人材を育てていくことが何より重要と考えます。
 また、今ご答弁でも触れられました児童心理司や児童相談業務にかかわる専門性ある職員全てがその働きを常に正当に評価され、スキルを磨きながら、長きにわたり子供たちを守る業務に従事をしていっていただくことを望むものです。
 次に、多摩児相について伺います。
 児童相談所条例の改正によって、多摩児相の方に狛江市が組み込まれることから、多摩児相の業務量の増加と、純粋に広範囲に及ぶ業務の職員負担が懸念をされているところです。
 多摩児相の体制を強化すべきと考えますが、見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉司の配置基準は、先ほどお答えしたとおり、管轄人口四万人につき一人配置することが標準とされております。また、児童心理司につきましては、児童福祉司二人につき一人以上を配置することとされております。
 この基準によりまして、狛江市の人口で試算いたしますと、児童福祉司三人、児童心理司二人が必要になります。
 来年度の多摩児童相談所の体制につきましては、狛江市担当として必要となる児童福祉司、児童心理司の配置も含めまして検討をしているところでございます。

○斉藤(れ)委員 ありがとうございます。
 これについては、以前、多摩児相の方に視察に伺った際に、現場からも既にそのとき、人が足りないので増配置を要望しているという声も伺っていましたけれども、人をふやすことに加えて施設設備の老朽化も進みつつありまして、例えば研修の方を受け入れるための新しい机を入れるスペースもない中でやっておられるということも伺ってまいりました。
 業務遂行に当たり、十分な施設整備も検討していただきたいということや、多摩児相、先ほども申し上げましたけれども、人口の面のみならず、非常に広範囲にわたっている距離の面での児相職員の負担が非常に大きいということがございます。十分な人員配置を行っていただきたいと要望し、次の質問に移ります。
 最後に、児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例の改正に当たり、東京都の保育所指導基準や監査体制の児相設置区への引き継ぎについてどのように行うか伺います。

○本多指導監査部長 保育所に対する指導検査は、児童福祉法に基づき都が実施する指導検査に加え、平成二十七年度からは子ども・子育て支援法に基づき区市町村も実施しております。
 都は、区市町村が指導検査のノウハウを習得できるよう、指導検査の合同実施、派遣研修生の受け入れ、また区市町村職員向け研修等を実施しており、区市町村は指導検査に関するノウハウを着実に習得し、指導検査の実績を伸ばしております。
 児童相談所設置予定の三区に対しましては、検査の現場で活用しているマニュアルやチェックリストを提供するとともに、実務者レベルの勉強会を実施するなどの支援を行っております。

○斉藤(れ)委員 ありがとうございます。今現在行われていることをご説明いただきました。実務者レベルの勉強会等もされているということで、必要な準備を進めていただいているということでした。
 今回は初めてのことが多いかと思いますけれども、今後、移管を考えている区への効果的な引き継ぎのあり方についても、この機会にノウハウを蓄積し、進めていただきたいと要望して、私の質問を終わります。ありがとうございます。

○後藤委員 私からは、成年被後見人等の権利にかかわる制限の見直しに伴う条例改正ということで、第二百十二号議案、第二百十三号議案、第二百十四号議案について質問をさせていただきます。
 本条例の改正は、さきの通常国会で成立をいたしました成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律と申しまして、いわゆる一括整備法といいますが、成年被後見人等を資格や職種、そして業務から一律に排除する規定、いわゆる欠格条項については、設けている各制度について、心身の故障など状況を個別、実質的に審査を行うということで、各制度ごとに必要な能力の有無を判断する規定に適正化を図られたというものでございます。
 これに伴いまして、所要の手続を整備し、約百八十の法律を改正したというものでございます。
 厚生委員会に付託されているものに関しては三点ありまして、一つ目は東京都動物の愛護及び管理に関する条例、そして二つ目は東京都ふぐの取扱い規制条例、そして三つ目が東京都心身障害者扶養共済制度条例、この三点が欠格事由にかかわる改正案ということで付託をされているところでございます。
 そこで、一括整備法制定の趣旨、そしてそれぞれの条例についてどのような改正を行うのか伺いたいと思います。

○高橋健康安全部長 先生お話しの一括整備法についてでございますが、国によりますと、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく措置といたしまして、成年被後見人及び被保佐人の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等にかかわる欠格条項その他の権利の制限にかかわる措置の適正化等を図るための措置を講ずるために整備されたものでございます。
 東京都動物の愛護及び管理に関する条例についてございますが、法の趣旨を踏まえまして、ワニなどの特定動物の飼養等の許可申請の欠格条項といたしまして、第十九条一号のイに規定されております成年被後見人の文言を削除いたしまして、かわって、精神の機能の障害により特定動物の飼養または保管を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者に改正するものでございます。

○花本食品医薬品安全担当部長 東京都ふぐの取扱い規制条例についてでございますが、法の趣旨を踏まえまして、フグ調理師免許の欠格条項として、第六条第三号に規定されていた成年被後見人の文言を削除し、かわって、精神の機能の障害によりフグの処理を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者に改正する予定でございます。

○松山障害者施策推進部長 東京都心身障害者扶養共済制度条例についてでございますが、法の趣旨を踏まえ、年金管理者の欠格事項として、第十二条第三項第一号に規定されていた成年被後見人、被保佐人または被補助人の文言を削除し、かわって、精神の機能の障害により年金の受領及び管理を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適正に行うことができない者に改正するものでございます。

○後藤委員 ありがとうございました。
 どれも被後見人になったから一律に資格を奪うということではなく、職務遂行可能かを個別具体に判断をすることで、人権尊重と差別を防止するということが今回の一括整備法の背景にあったというようなご答弁がありました。
 そして、ここで今ご答弁いただいたこの一括整備法の大もととなっている成年後見制度についても一言申し上げたいと思います。
 成年後見制度につきましては、認知症や精神障害、知的障害など、判断が十分にできない人にかわり、財産管理や対外的な契約を代行するものであります。
 成年後見制度は、高齢化が進み、認知症高齢者が増加する中で必要性が高まっている一方で、利用率が伸び悩んでいるという課題があり、平成三十年度時点で東京都における高齢者人口に占める後見人制度の申し立て件数の割合は〇・一六%となっておりまして、もちろん高齢者の全ての方々が成年後見制度を利用する必要があるというわけではありませんけれども、やはりこの割合を見ても、余りにも少ない割合になっているのではないかなと思います。
 こうした制度の伸び悩みに関する課題の一つとして挙げられるのが、多様な後見人の育成にかかわる課題であると考えます。
 成年後見制度に関しては、費用の負担能力がないであったり、信頼できる親族がいないなどの理由によって、適切な後見人を見つけることができないという人たちは少なくない現状があります。
 現在、後見人の担い手は、親族や弁護士、司法書士、社会福祉士や行政書士等の専門職が多くを占めておりまして、それ以外の選択肢がほとんど見当たらないという現状があります。
 いわゆる市民後見人制度の拡充、拡大が望まれるところではございますけれども、都では、こうした現状を打破するために、平成十七年度から、成年後見制度の趣旨と内容を理解して後見業務を望む熱意ある都民を対象に、講習というのを実施しておりまして、新たな後見人の受け皿となるような社会貢献型後見人等候補者と呼ばれる事業を行っております。
 この制度自体はとても有益な事業だと思っているんですが、その一方で、本制度の実施状況、基礎講習修了生選任状況というものを見てみますと、直近三年度でいくと、平成二十八年度に二十五件、二十九年度に二十件、そして平成三十年度は三件と、そもそもの修了生の数そのものが少ないということに加えて、その数自体も減少傾向にあるという状況にあります。
 今後は、本制度については、より利用促進を促すための施策検討とともに、積極的な普及啓発を求め、私の質問を終わります。

○岡本委員 私からも、無料低額宿泊所の基準条例についてお伺いをさせていただきます。
 私も、貧困ビジネス対策という観点からお伺いをしたいと思います。
 まず、前提としてお伺いします。そもそも、無料低額宿泊所というのはどのようなものなのか制度趣旨も含めてお伺いをいたします。

○藤井事業調整担当部長 無料低額宿泊所とは、社会福祉法に規定される第二種社会福祉事業であり、生計困難者のために無料または低額な料金で簡易住宅を貸し付け、または宿泊所その他の施設を利用させる事業の用に供される施設でございます。
 現社会福祉法は、昭和二十六年に社会福祉事業法として制定され、無料低額宿泊事業も含め、生計困難者に対して無料または低額な料金で行われる一定の事業については、国民の福祉の増進に特に重要な意味を持つものであることから、社会福祉事業として特定し、所要の規制を行うものとして同法に位置づけられたものでございます。
 現在は、主に居所のない生活保護受給者がアパート等に移るまでの一時的な滞在場所として利用されており、多くの宿泊所が居室の提供だけでなく食事などの付加サービスを提供しております。
 また、法上、本事業の設置主体は社会福祉法人等に限定されていないため、NPO法人が八割近くを占めているほか、株式会社など営利企業も設置しております。

○岡本委員 無料低額宿泊所についてはこれまで、生活困窮者や住居喪失者など、社会的弱者である貧困層の弱みを利用して不当な利益を得る貧困ビジネスの温床となり、これまで国や都が対策を講じてきたということで伺っております。
 例えば、新宿や上野などの路上生活者に声をかけて生活保護の窓口に連れていき、同行して申請をする。そして、受給の日には施設から施設利用者を乗せてマイクロバスで役所に乗りつけて、そこで生活保護を一括して受け取る、あるいは口座を勝手につくる、生活保護の受給証明書を利用して、本人の知らないところで銀行口座を勝手につくるというようなことも報道されているところであります。
 また、そうして生活保護の現金、あるいは口座の金額を全額、一旦徴収した上で、本人には一日五百円しか渡さないとか、月に一万円から二万円渡すだけといったことをしている事業者もいるというふうに報道で拝見しております。
 また、食事に関しては、米だけの支給であったり、あるいはカップ麺やレトルトの食品だけであったりというような、非常にバランスの悪い食生活、劣悪な環境や食生活も事業としてなされているというところも報道で出ているところです。
 そして、この名称自体は、無料または低額の宿泊所という名称であるにもかかわらず、相場より高い賃料を取っていたり、高い光熱費を取っていたり、バス代やベッド代、テレビ代、冷蔵庫代、いろいろな名目をつけて利用料、サービス料を取っているといった事業者もあるというふうに伺っております。
 住居を押さえられている利用者からすると、そうした強い支配力を受けて、無抵抗で、嫌だと思っても抵抗ができないといった実情があるということで認識をしております。
 このような報道があるところですけれど、今回の条例制定を行うに至る経緯についてお伺いいたします。

○藤井事業調整担当部長 平成十年ごろから、主に居所のないホームレスが利用する無料低額宿泊所が増加し始めたことから、都では、全国に先駆け、平成十一年十一月に施設長を置くなどの宿泊所ガイドラインを定め、一定の規制を行うことといたしました。その後、国は平成十五年に運営指導指針を定め、都も平成十五年に居室面積の基準などの設定、平成二十六年には利用契約と食事提供等の付加サービス契約の分離など、必要な見直しを行ってまいりました。
 一方で、ガイドラインは法的な拘束力がなく、劣悪な宿泊所に対する事業の改善命令ができないなど、設置者に対する指導については課題がございました。
 そこで国は、平成三十年に社会福祉法を改正し、都道府県等に対し、令和二年四月までに国の省令の規定に基づき最低基準等について定めた条例の制定を求めるとともに、改善命令などの行政処分について法令上明記するなど、規制の強化を図ることとしたところです。

○岡本委員 ありがとうございます。
 では、今回の条例の主な内容についてお伺いをいたします。

○藤井事業調整担当部長 今回の条例では、無料低額宿泊所の入居対象者を生計困難者に限定または生活保護受給者が定員のおおむね五割以上など明確化するとともに、食事の提供などのサービス内容や利用料金等の運営規程を整備、公開し、都への届け出を義務づけるなど、運営の透明化を図っております。
 また、利用者との利用契約については必ず文書により締結するとともに、利用者の金銭管理を行う場合には別途契約を締結することとしております。
 さらに、建築基準法や消防法の遵守など、宿泊所として使用する建物の安全性についても規定しているところです。

○岡本委員 この無料低額宿泊所において、火災による死亡事故なども報道されているところであります。こうした施設の基準というのは非常に重要なものだと考えております。
 では、条例の基準に違反した場合はどうなるのかお伺いいたします。

○藤井事業調整担当部長 無料低額宿泊所に対する指導検査などにより、条例で定めた基準に適合しないと認められるに至ったときは、都は事業者に対し指導を行い、それでも事業者が応じない場合は法に基づく改善命令を行います。
 改善命令に違反した場合は、事業者に対し、法に基づく事業の制限、停止を命ずることができます。また、改善命令に違反して事業を経営した者は、六月以下の懲役または五十万円以下の罰金に処せられるとともに、法人に対しても五十万円以下の罰金が科せられることとなります。

○岡本委員 これまではガイドラインで法的な拘束力は必ずしもなかった点に関して、指導、改善命令、さらには事業の制限、停止、さらには刑事罰も科されることになるということですので、今回の改正というのは非常に重要な意味を持っているというふうに思います。
 先ほど、さまざまな名目で不当な金銭請求をされる、金銭を天引きされること、そういう事例があるということを申し上げました。また、先ほど藤田委員からも金銭管理に関する質問がありました。
 こうした文書による利用契約の締結をすること、あるいは金銭管理を行う場合は別途契約をする必要があるということに関しまして、条例化によりどのような規制強化が図られるのか伺います。

○藤井事業調整担当部長 宿泊所の利用申込者との利用契約締結に当たりましては、事前に運営規程等文書を交付して、利用条件やサービス内容等について説明することとなるとともに、居室使用料や食費等、利用者から受領する費用は、本条例に基づき都が規則で定める基準の範囲内で設定することとなります。
 また、金銭管理に支障がある場合は、利用者の希望に基づき金銭管理契約を締結することとし、その際には、管理規定や帳簿の整理、収支の記録、都への報告等、金銭管理の透明化について定めております。
 本条例の施行によりまして、最低基準の明確化や規定に違反した事業者に対する改善命令の行政処分が行えることから、都としては本条例の制定を契機に、より一層の事業運営の適正化を図ってまいります。

○岡本委員 規制が強化され、また基準も策定されるということなんですが、先ほど藤田委員からもありましたように、金銭管理をそもそも認めてしまったこと自体を批判する論者もあります。また、金額の妥当性というのを判断するのはなかなか難しいという点も指摘があります。
 こうした基準の範囲内であっても、必ずしもよい事業者、悪い業者というのを見分けるのが難しいといったことがいわれています。基準の範囲内でよい事業者もあれば、また悪い事業者もある。
 どういう事業者がよくて、悪いのかというのは、一概に基準をつくるのは非常に難しい面があると思いますが、一つ、この条例の十七条にはサービス提供の方針とありまして、無料低額宿泊所は、入居者の健康保持に努めるほか、当該入居者が安心して生き生きと明るく生活できるよう、その心身の状況や希望に応じたサービスの提供を行うとともに、生きがいを持って生活できるようにするための機会を適切に提供しなければならないといった、こうした抽象的な方針、理念はあるわけですけれど、なかなかそれを基準に落とし込むというのは難しいところであります。
 貧困ビジネスへの対策に長年かかわっておられる湯浅誠さんという方がいらっしゃいますが、湯浅さんは、この貧困ビジネスの定義として、貧困から脱却することに資さない、あるいは貧困を固定化する、こうしたものが悪いビジネスであるといった指摘をしております。
 先ほどもありましたように、本来、生活保護は居宅保護が原則となっていて、こうした無料低額宿泊所に固定化されるというのは決して望ましくないし、都においても一年以内を原則としているということでありました。
 今後、実際の条例制定、また規則制定後に実情や実態を慎重に見きわめた上で、指導や改善命令に当たっていただきたいと思いますし、また、必要な場合には、将来的には、規則の変更や国以上の上乗せ等についても実情に合わせて検討していただきたいと思います。
 私からの発言は以上です。

○斉藤(や)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○斉藤(や)委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉保健局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時十一分散会

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