厚生委員会速記録第十九号

平成三十年十二月十四日(金曜日)
第七委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長栗林のり子君
副委員長白石たみお君
副委員長桐山ひとみ君
理事小宮あんり君
理事まつば多美子君
理事岡本こうき君
伊藤しょうこう君
もり  愛君
藤田りょうこ君
伊藤こういち君
清水 孝治君
後藤 なみ君
木下ふみこ君
たきぐち学君

欠席委員 なし

出席説明員
福祉保健局局長内藤  淳君
次長理事兼務松川 桂子君
技監矢内真理子君
総務部長後藤 啓志君
指導監査部長村田 由佳君
医療政策部長矢沢 知子君
保健政策部長成田 友代君
生活福祉部長事業調整担当部長事務取扱坂本 尚史君
高齢社会対策部長粉川 貴司君
少子社会対策部長谷田  治君
障害者施策推進部長松山 祐一君
健康安全部長高橋 博則君
企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務奈良部瑞枝君
事業推進担当部長古賀 元浩君
医療改革推進担当部長田中 敦子君
医療政策担当部長花本 由紀君
地域保健担当部長本多由紀子君
子供・子育て施策推進担当部長加藤 みほ君
障害者医療担当部長石黒 雅浩君
食品医薬品安全担当部長野口 俊久君
感染症危機管理担当部長吉田 道彦君
病院経営本部本部長堤  雅史君
経営企画部長児玉英一郎君
サービス推進部長山口  真君
経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務樋口 隆之君
計画調整担当部長末村 智子君

本日の会議に付した事件
意見書について
病院経営本部関係
報告事項
・松沢病院における医療観察法病棟入院患者の所在不明事故の概要及び再発防止策について(説明・質疑)
・都立病院の現状と課題の検証(中間まとめ)について(質疑)
福祉保健局関係
付託議案の審査
・第二百一号議案 平成三十年度東京都一般会計補正予算(第二号)中、債務負担行為
福祉保健局所管分(質疑)
・第二百十一号議案  東京都児童育成手当に関する条例の一部を改正する条例(質疑)
・第二百十二号議案  東東京都重度心身障害者手当条例の一部を改正する条例(質疑)
・第二百十三号議案  東東京都心身障害者福祉手当に関する条例の一部を改正する条例(質疑)
・第二百十四号議案  東東京都立総合精神保健福祉センター及び東京都立精神保健福祉センター条例の一部を改正する条例(質疑)
・第二百三十六号議案 東京都介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営の基準に関する条例の一部を改正する条例(説明・質疑)
報告事項(質疑)
・平成三十年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書(平成三十年三月発生事例)について
・東京都子供への虐待の防止等に関する条例(仮称)骨子案について

○栗林委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○栗林委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、福祉保健局関係の付託議案の審査、病院経営本部関係及び福祉保健局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 初めに、理事者から、松沢病院における医療観察法病棟入院患者の所在不明事故の概要及び再発防止策について報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○山口サービス推進部長 お手元にお配りしております厚生委員会報告事項に基づきまして、松沢病院における医療観察法病棟入院患者の所在不明事故の概要及び再発防止策についてご報告申し上げます。
 恐れ入りますが、一ページをお開き願います。1、事故の概要でございます。
 平成三十年十月三十一日、職員二名とともに外出中の医療観察法病棟の入院患者が、京成線高砂駅での乗りかえ時に所在不明となりましたが、十一月三日に、福岡県で発見され、保護されたものでございます。
 次に、3、所在不明となった原因でございます。
 乗りかえる電車の行き先表示を付添職員二名がともに確認しようとして、患者からほぼ同時に目を離し、患者を見失ったためでございます。
 4、事故の検証でございます。
 まず、(1)、外出判断でございますが、患者の病状等に基づき、医療観察法の規定等にのっとり策定した外出マニュアルに沿って決定されており、外出判断自体に問題はございませんでした。
 (2)、患者の行動特性に応じた対策でございます。
 まず、アでございますが、患者の行動特性を踏まえ、外出時の留意事項や予定外の事態を想定した具体的対応策を十分に検討し、付添職員が確実に認識する必要がございました。
 恐れ入りますが、二ページ目をごらんください。イとして、当初の外出行程からおくれが生じる中で、患者への留意事項等を付添職員が十分に認識できておらず、それぞれの役割分担も曖昧でございました。
 (3)、事故発生後の対応についてでございます。
 付添職員みずからが患者を連れ戻すことを優先的に考え、結果として、警察への通報がおくれることになりました。
 次に、5、再発防止策でございます。
 (1)、想定される事態を踏まえた具体的対応策の検討及び実施でございます。
 アからウに記載のとおり、患者の行動特性等から、外出時に起こり得る事態を踏まえた具体的対応策の検討、立案を行い、関係者で確実に共有を図るとともに、外出終了後には、実施状況を確認し、次回外出計画策定に役立てるなどの対応を行ってまいります。
 (2)、マニュアルの改訂でございます。
 ア、イに記載のとおり、外出計画書の様式を改定し、付添職員の役割を明確にすることや、患者が所在不明となり発見できない場合は、状況に応じて速やかに警察に連絡することをマニュアルに追記するなどの対応を行ってまいります。
 (3)、マニュアルの周知徹底等についてでございます。
 研修等を行い、改定後のマニュアルを職員に周知徹底してまいります。
 最後に、6、厚生労働省による特別指導監査についてでございます。
 厚生労働省による特別指導監査が平成三十年十一月三十日に実施されており、今後、その結果を踏まえ、さらに必要な改善を図ってまいります。
 今後、改定マニュアルを遵守し、二度とこのようなことがないよう万全を尽くしてまいります。
 簡単ではございますが、以上で事故の概要及び再発防止策についてのご報告を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 次に、報告事項、都立病院の現状と課題の検証(中間まとめ)についてにつきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○児玉経営企画部長 去る十一月三十日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、合計五件でございます。
 恐れ入りますが一ページをお開きください。1、都立病院の福祉系及び医療技術系職種の採用試験・選考に係る実施主体でございます。
 都立病院の福祉系及び医療技術系職種の採用試験、選考について、実施主体別に記載しております。
 二ページをお開きください。2、都立病院における医師の兼業の緩和の状況でございます。
 都立病院における医師の兼業につきまして、これまでの緩和の状況を記載しております。
 三ページをごらんください。3、「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」に定められた職員を派遣することができる団体でございます。
 同法第二条第一項に定められた、職員を派遣することができる団体について、一から四まで記載しております。
 四ページをお開きください。4、「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律第二条第一項第三号の法人を定める政令」に定められた法人でございます。
 同政令に定められた法人につきまして、一から百八までを記載しております。
 恐れ入りますが、七ページをお開きください。5、都立病院と主要府県立病院及び政令指定都市立病院における医師の給与比較(団体別)でございます。
 総務省作成の平成二十八年度地方公営企業年鑑に基づき、都、主要府県及び政令指定都市が運営する病院における医師の平均給与月額について、団体別に記載しております。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより、先ほど説明を聴取いたしました報告事項を含め、報告事項二件に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○もり委員 都立病院経営委員会より、今後の都立病院のあり方についての報告が本年一月に発表されました。報告の中では、現行の病院運営における制度的な課題が指摘をされており、都立病院が安定した経営基盤を確立し、今後も担うべき役割を果たせるようにするためには、その制度的課題に都がどのように取り組んでいくかが問われております。
 そこで、今回示された都立病院の現状と課題の検証中間まとめを踏まえて、都立病院がこれまで行ってきた取り組みや課題、そして制度的性格について質問させていただきます。
 まず、都立病院が担うべき役割について、改めてお伺いいたします。

○樋口経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関等との適切な役割分担と密接な連携を通じて、都における良質な医療サービスの確保を図ることが基本的な役割でございます。
 また、超高齢社会を迎え、今後、医療提供のあり方が病院完結型から地域完結型に転換が図られる中、地域の医療提供体制が確実に整えられていくよう、地域の状況に応じ、地域医療の充実に貢献することも都立病院の役割に位置づけてございます。
 都立病院は、この二つの役割を担いまして、東京の医療の充実に率先して取り組んでまいります。

○もり委員 都立病院は、行政的医療の提供と地域医療の充実への貢献も役割としているとのことであり、どちらも公立病院として一層の取り組みが期待をされます。
 今後、高齢化の進展を支える地域完結型医療への転換が求められる中で、地域の中でどういった医療ニーズが求められるのか、必要な医療体制の確保を図るため、公民の適切な役割分担が求められます。
 都立病院が、地域においてどのような医療ニーズを担うべきかの議論は、病院経営そのものを左右する重要な課題です。
 私の地元大田区にある東京都保健医療公社の荏原病院では、都の委託を受け、重症心身障害児が短期入居するための病床を確保する取り組みを行い、地域から感謝されており、医療と福祉が柔軟に連携していくことは重要です。
 小児在宅医療の充実については、さきの議会でも質問させていただきましたが、今回の都立病院の現状と課題の検証にも記載があることから、まず、小児の在宅医療について質問させていただきます。
 医療の高度化を背景として、近年、医療的ケアを必要とするお子さんは増加をしております。小児在宅医療に対する地域の診療所の状況と課題について、改めてお伺いいたします。

○末村計画調整担当部長 都が行った調査によりますと、訪問診療を実施していると回答した都内の一般診療所千七百四十八施設のうち、小児在宅医療に対応している、または今後対応予定と回答した診療所は約一割でございました。
 また、小児在宅医療への対応は考えていないと回答した診療所の約三割が、対応していない理由として、対応の仕方がわからない、経験、知識がないことを挙げております。
 こうしたことから、医療的ケア児が、住みなれた地域で適切な医療や生活支援を受けながら、安心して生活や通園、通学ができるよう、都立病院が有する小児医療の高度で専門的な知識やノウハウなどを地域の医療機関の医師等と共有するなど、技術面での協力が必要であると認識をしております。

○もり委員 子供たちが、住みなれた地域で安心して家族と過ごせることが大変重要ですが、小児在宅医療に対応している診療所は少ないということです。
 また、区南部医療圏においては、大変、その受け皿も北療育センターの城南分園に限られていることがあり、そこは、先ほども申し上げましたが、荏原病院と隣接しているため、区内のお母さん方からは、大田区内から府中の療育センターまで、遠方まで送り迎えをしなければならないというような課題も伺っておりますので、ぜひ一層の医療と福祉の連携を強く要望させていただきます。
 都立病院新改革実行プラン二〇一八では、医療的ケアを必要とする小児が円滑に在宅に移行できるよう、地域の実情に応じて、医療、福祉、教育など多くの関係職種及び関係機関との連携体制を構築することが必要となります。
 小児医療に限らず、都立病院が有する高い専門性や知見、医療人材などの医療資源を生かし、地域医療の確保、充実に貢献していくことが必要であります。
 このような課題に対して、都立病院が取り組んでいくに当たって、どのような制約があるのかお伺いいたします。

○末村計画調整担当部長 医療提供のあり方が病院完結型から地域完結型へと転換が図られる中、小児医療に限らず、地域医療の充実への貢献に向けて、先ほどご答弁したような地域医療を担う人材の育成支援や、地域医療機関への技術面での協力に加えまして、地域医療を支えるモデルとなる取り組みの発信が求められております。
 そのため、今後、都立病院の専門性やノウハウを生かし、地域医療機関等へ職員を派遣して行う診療応援などの人材交流が必要となりますが、地方公務員法による服務の制約等によりまして、民間医療機関への診療応援等は困難でございます。

○もり委員 地域の求めに応じて、都立病院の豊富な人材を生かし、特色ある専門性を地域に還元していくため、こうした課題を解決するための検討を引き続き進めていただきたいと思います。
 行政的医療の提供や、先ほどの地域医療の充実への貢献を支えていくのは、医療現場にいる職員であり、職員が働きやすい環境をつくることは、医療サービスの充実にもつながります。
 本年第二回定例会では、ライフワークバランスについての質問をさせていただきました。
 今回は、特に女性活躍の視点から、全国的に不足している医師の中でも、女性医師の多様な働き方の実現について質問させていただきます。
 今回の報告において女性医師の例が挙げられており、全国の女性医師の割合は二一・一%なのに対して、東京都においては二九・二%と高い割合となっております。
 都立病院における女性医師の割合と推移をお伺いいたします。

○児玉経営企画部長 都立病院に勤務する女性医師の割合の推移でございますが、各年度十一月一日現在で見ますと、平成二十八年度は二七・七%、平成二十九年度は二八・一%、平成三十年度は二九・〇%となっております。

○もり委員 都立病院における女性医師の割合は約三割と、都内全体と同様に、全国平均よりも高いことがわかりました。女性医師のキャリア形成と、育児、介護などの両立ができるよう環境整備を進めていくことが重要と考えます。
 そこで、女性医師が働きやすい職場環境整備に向けた取り組みについてお伺いいたします。

○児玉経営企画部長 都立病院では、昭和四十四年四月に院内保育室の運用を開始し、平成二十年四月から二十四時間対応にも取り組んでおります。さらに、平成二十年七月からは育児短時間勤務制度を導入するなど、女性が働きやすい職場環境の整備に努めているところでございます。
 なお、平成三十年十一月一日現在、育児短時間勤務制度は八名の女性医師が利用しております。また、院内保育室につきましては、全利用者九十名のうち女性医師が三十七名利用しており、利用者に占める割合は四一・一%となっております。

○もり委員 院内保育室の二十四時間対応や育児短時間勤務制度の導入などに取り組んでいただいていることがわかりました。
 今回の報告において、いまだ課題があるとされております女性医師が働きやすい職場環境整備を一層進めていくに当たって、どのような制約があるのかお伺いいたします。

○末村計画調整担当部長 病院現場からは、育児や介護と仕事の両立ができる多様な勤務時間の設定や、タスクシフトによる負担軽減の推進等を求める声が上がっております。
 このため、専門医を安定的に確保、活用することは、質の高い医療サービスの提供につながっていくということから、育児等との両立など、女性医師の定着に資する、より柔軟な勤務制度の構築が重要でございます。
 しかしながら、勤務時間につきましては、地方公務員法により、国や他の地方公共団体等との均衡が求められているため、病院の実情に合わせた勤務制度を構築することは困難であるといった制約がございます。

○もり委員 医科大における女性減点問題に関して、我が会派としても要望書を提出しました。
 女性医師が働きやすい社会環境を推進することは、都の責務であると考えます。女性医師の活躍の実現に向けた働きやすい環境づくりを念頭に、今後の検討を進めていただきたいと要望させていただきます。
 また、働きやすい環境をつくるためには、ICTを活用した、業務の効率化を図ることも重要です。ICTを活用することで、職員の働きやすさが増すばかりではなく、患者にとってもサービス向上につながっていくと考えます。
 そこで、都立病院におけるICTの活用についてお伺いいたします。

○山口サービス推進部長 都立病院では、平成十五年度から電子カルテシステムを順次導入、更新しておりまして、現在、全ての病院で効率的かつ安定的なシステム運用を行っております。
 電子カルテシステムの導入によりまして、紙カルテやレントゲンフィルムの削減による関連業務の効率化に加え、患者待ち時間の短縮、各種チェック機能による医療の安全性向上など患者サービスの充実や、異なる職種間での必要な診療情報を電子的に共有することによるチーム医療の推進などを図ってまいりました。また、一部の診療科におきまして、問診票の記入にタブレット端末を活用するなど、ICT機器の導入による効率化と利便性向上も図っております。
 さらに、全都立、公社病院の電子カルテシステム等に蓄積されました膨大な診療データを診療や臨床研究への支援等に活用することを目的としまして、平成二十七年度から、外部の有識者等で構成します都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会を設置し、現在、最終報告の取りまとめを行っております。

○もり委員 引き続き、ICTの活用について検討していっていただきたいと考えます。
 また、今回の報告にあったように、診療データ等を分析、活用して、都民に治療の選択肢を見える化することで、患者が主体的に医療に参加できるよう取り組んでいただきたいです。
 これまで、都立病院の運営上の課題などについて伺ってまいりましたが、都立病院経営委員会の報告では、制度的に最も柔軟で今後の都立病院にふさわしい経営形態である一般地方独立行政法人への移行の検討の提言がありました。いかなる経営形態であっても、冒頭の答弁にあったように、都立病院の基本的役割である行政的医療を将来にわたり提供していくことが何よりも重要だと考えます。
 現在、都立病院は、採算を確保することが困難な行政的医療等に係る経費の一部について、一般会計から繰入金約四百億円を受け入れております。
 そこで、仮に地方独立行政法人化された場合、行政的医療への財源措置はどのようになるのかお伺いいたします。

○末村計画調整担当部長 病院事業を実施する場合に適用される公営企業型地方独立行政法人は、現行の都立病院と同様に、採算の確保が困難な医療などに係る経費につきまして、設立団体が経費を負担することが法定されております。
 したがいまして、都立病院が地方独立行政法人に移行した場合にも、行政的医療の提供に係る必要な経費は、引き続き都が負担していくものでございます。

○もり委員 現在の都立病院と同様に、行政的医療に必要な経費について、都が財源を確保する仕組みがあることが確認されました。
 高齢化の進展に伴い、行政的医療の量的、質的変化、高齢者における救急医療のニーズは増加の見込みがあり、一方で、高齢化が進んだ地域ほど入院医療費は伸びにくいと指摘をされており、八十歳以上人口比率が高い地域では、既に入院医療費が減少し始めているところも見られると厚生労働省の医療費の動向調査で指摘をされております。
 このような状況下において、全国の自治体病院の経営状況は悪化傾向にあり、都立病院も同様、都立病院を取り巻く厳しい病院運営に対して、より一層効率的な病院運営が必要であり、経営力向上に向けた、運営上の課題を解決するための検討も進めていっていただきたいと考えます。
 さらに、都立病院が行政的医療や地域医療の充実への貢献などの役割を果たしていくためには、どのような経営形態であったとしても、都と緊密に連携して取り組んでいくことが必要です。
 地方独立行政法人の場合、東京都や都議会の関与はどのようになるものかお伺いいたします。

○末村計画調整担当部長 地方独立行政法人法では、公営企業型地方独立行政法人が達成すべき住民サービスや業務改善等に関する中期目標について、議会の議決を経て、知事が定めることとされております。
 また、法人は、中期目標を達成するため、住民サービス、収支計画、料金などを中期計画として策定し、議会の議決を経て知事の認可を受ける必要がございます。
 さらに、各事業年度及び中期計画終了時に、法人の業務実績につきまして評価委員会の意見を聞いて知事は評価を行い、議会に報告することとされております。
 このほか、都が行政的医療などの経費について行う財源措置につきましても、毎年度議会の予算審議の関与がございます。

○もり委員 ありがとうございます。地方独立行政法人は、さまざまな機会を通じて、議会が関与する仕組みを定めていることがわかりました。地方独立行政法人に対するチェック機能は必要だと考えます。
 さきも申し上げましたが、特に今後、地域完結型医療を目指す上においては、地域の中にどういった医療ニーズがあり、不足している医療ニーズに都立病院がどのように貢献していくことができるか、公民全体を通して地域の医療資源を考える必要があり、また、地域包括ケアシステムの構築に向けても、医療と介護、福祉の連携を一層進めていくことが求められます。
 医療環境が変化する中でも、都立病院がその役割を果たし続けるために、経営形態のあり方を検討していくことは重要です。病院現場の実情に向き合い、日々、医療現場で業務についているスタッフがより働きやすい環境をつくっていくとともに、医療の質の向上や見える化の推進など、都民サービスを充実していくという視点から、引き続き検討を進めていただきますよう申し上げ、全質問を終わります。
 ありがとうございました。

○伊藤(こ)委員 それでは、私からはまず初めに、本日報告のありました松沢病院における医療観察法病棟入院患者の所在不明事故について意見を述べたいと思います。
 まず、このたびの事故については、患者本人の身体事故、そして第三者の方への危害などに至らなかったことが何よりであったと思います。
 しかしながら、付添職員が、患者に係る外出時の留意事項や、予定外の事態を想定した具体的対応策や役割分担が曖昧であったことから、事故につながったものであると思います。
 また、本患者の外出は今回で二十二回目ということで、付添職員のみならず病院全体の中に油断があったものと思います。
 いずれにせよ、二度とこうした事故を起こさないよう、松沢病院全体で、また、病院経営本部を挙げて、再発防止に努めていただきたいことを強く望むものであります。
 次いで、都立病院の現状と課題の検証中間のまとめについて質問をいたします。
 都立病院については、本年一月に外部有識者から成る都立病院経営委員会からの報告がなされて以降、その経営のあり方の検討について、本委員会でも議論がされてきたところであります。
 そうした中、今回、病院経営本部から、都立病院の現状と課題の検証中間のまとめが報告されました。
 そこでまず、都立病院の現状と課題の検証中間のまとめの位置づけについて伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 経営委員会報告では、都立病院が安定した経営基盤を確立し、今後も担うべき役割を持続的に果たしていくためには、現行の病院運営におきまして制度的な課題があり、制度的に最も柔軟な一般地方独立行政法人への移行について検討すべきとの提言がなされました。
 経営委員会報告を受けまして、都立病院新改革実行プラン二〇一八では、医療環境が大きく変化する中でも、都立病院が持続的に役割を果たし、多様化する都民や患者のニーズに一層効果的、効率的に応えるための経営のあり方について、都として検討することといたしました。
 今回の中間のまとめは、こうした検討に当たりまして、都立病院の現状と課題の分析を整理したものでございます。

○伊藤(こ)委員 今回の中間のまとめは、都立病院の現状を踏まえ、将来にわたり持続的に役割を果たし続けていく上での課題を整理したものということでございました。
 都立病院が、都民や患者の医療ニーズに持続的に応たえていくためには、医療提供体制の充実とともに、安定的な経営基盤を確立することも重要であります。
 先月の事務事業質疑におきまして、私は、都立病院が果たしてきた行政的医療など医療提供体制の充実について伺ったところであり、本日は、持続可能な病院経営の観点から質問をしてまいりたいと思います。
 都立病院は、地方公営企業法に基づき、独立採算を原則としており、経営努力をしてもなお採算の確保が困難な行政的医療に係る経費については、一定のルールのもと、一般会計からの繰り入れを受けて経営がなされております。
 そもそも、こうした一般会計からの繰り入れはいつから行われているのか、また、その繰入金はどのように金額が推移しているのか伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 一般会計からの繰り入れにつきましては、昭和三十九年に都立病院が地方公営企業法を適用して以来、実施しております。
 一般会計繰入金の対象につきましては、医療環境の変化等に応じて、随時必要な見直しを行っているところでございます。
 過去十年の推移では、平成二十一年度に多摩総合医療センター、小児総合医療センターの移転開設に伴う診療規模縮小の影響等により、四百六十億六千九百万円の繰入金を計上しました。
 その後は、新入院患者の確保や診療単価の向上など経営改善に努めたことで圧縮を図り、平成二十四年度以降はおおむね三百九十億円前後で推移しております。

○伊藤(こ)委員 一般会計からの繰り入れについては、昭和三十九年から実施されていると。随分長い歴史のある、この一般会計からの繰り入れなんだなというふうに思いますけれども、近年では、おおむね三百九十億円、約四百億円が一般会計から繰り入れされているということでございます。
 また、その対象について、随時必要な見直しを行っているとのことでありますが、一般会計からの繰入金の見直しの具体的な内容について伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 近年における一般会計繰入金の見直しの具体的な例としましては、がん医療につきまして、平成二十三年度から、繰り入れ対象病院を、がん医療を行っている全ての病院から、がん診療連携拠点病院の指定を受けている病院に限定いたしました。
 また、平成二十五年度には、心臓病医療に要する経費につきまして、都内における循環器系を標榜する病院の増加等を受け、繰り入れ対象を小児に対する特殊な医療に限定したほか、リハビリテーション医療につきまして、都内の回復期リハビリテーション病床の増加に伴い、行政的医療から除外したことにより繰り入れ対象医療からも除外いたしました。
 一方、指定難病の拡大により対象患者が増加した難病医療経費など、繰入金額がふえた事項もございます。

○伊藤(こ)委員 一般会計からの繰り入れは、その時代その時代において、都立病院が公立病院として求められる役割を果たすために、対象となる病院や医療分野について、適時必要な見直しを図ってきたということでございました。
 つまり、医療環境の変化に応じて、繰入金の対象から除外、あるいは病院を限定してきた一方、公立病院として、新たな医療ニーズへの対応なども行ってきたものと考えます。
 直近の平成二十九年度決算では、一般会計からの繰入金は約三百九十四億円とのことでありますけれども、改めてその使途について伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 平成二十九年度決算における一般会計繰入金の主な内訳につきましては、小児精神医療を含む精神科病院の運営に要する経費が約九十六億円、救急医療に要する経費が約六十五億円、周産期医療、小児医療に要する経費が約七十億円、がん医療に要する経費が約六十億円、難病、膠原病医療に要する経費が約五十二億円、感染症、結核医療に要する経費が約六億円、その他、エイズ医療、障害者歯科等に要する経費が約四十六億円でございます。

○伊藤(こ)委員 小児精神医療を含む精神科病院の運営に要する経費が約九十六億円と、一概にはいえませんけれども、繰入金の約四分の一が充てられております。
 答弁にあった数字からは、採算の確保が難しい医療や一般の医療機関では対応が困難な医療など、いわゆる行政的医療に対して繰り入れが行われているものが多いということでありました。
 一般会計からの繰入金は、単なる赤字補?ではなく、地方公営企業法等に基づき負担しているものであることは理解をしておりますけれども、一方で、納税者である都民から見れば、毎年四百億円が繰り入れられていることに厳しい目が向けられていることも事実であります。
 都立病院経営委員会から出された報告書の中には、持続可能な病院運営の実現に向けた経営意識の改革が求められております。
 都はこれまで、どのような経営改善の取り組みをしてきたのか伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 収益の確保策といたしましては、新たな施設基準の取得、手術件数の増、地域医療機関等との連携強化及び断らない救急の徹底による新入院患者の確保などに取り組んでまいりました。
 一方、費用の節減策といたしましては、後発医薬品への切りかえ促進、医薬品、診療材料の共同購入の推進、機器保守委託や電力供給への複数年契約の導入などを進めてまいりました。
 さらに、本年度新たに、各病院の経営戦略担当副院長を中心とした経営改善推進PTを設置し、外部の医療経営アドバイザーも活用しながら、経営改善の取り組みを強化しているところでございます。

○伊藤(こ)委員 答弁にありました、今年度からは、経営改善推進PTの設置や外部の医療経営アドバイザーの活用など、新たな取り組みも始めているということであります。ぜひとも、その効果を発揮していっていただきたいと思います。
 これまでも、さまざまな経営改善の努力を進めているにもかかわらず、自己収支比率や一般会計からの繰り入れは横ばいで推移をしております。
 さらに、今後は、団塊の世代の方々が一気に七十五歳を超えられる二〇二五年問題も迫っております。高齢化や医療の高度化により、国民の医療費は今後も増大していくことが見込まれるわけであります。
 病院運営を取り巻く環境がますます厳しくなる中で、今後の都立病院の経営状況について、都はどのように認識をしているのか伺いたいと思います。

○児玉経営企画部長 患者の高齢化や医療の高度化に伴い、今後も医療費の増加が見込まれる中、国は、医療費の適正化に向けた診療報酬の見直しを進めております。
 このため、都立病院が行政的医療を提供する上でも重要な収益である診療報酬収入の確保には、一層の努力が必要になると考えております。
 一方、医療の高度化に伴い、高額な医薬品や診療材料等の費用は増加傾向にあり、都立病院の収支は、これまで以上に厳しくなっていくことが見込まれます。
 こうした厳しい経営環境において、さらなる経営改善の取り組みを進める必要がありますが、法令等に基づく予算単年度主義や、契約制度上の制約や手続が求められるため、機動的に人員体制を確保してサービスと収益の向上を図ることや、より柔軟な契約手法により費用の抑制を図ることは困難であるなどの課題があると認識しております。

○伊藤(こ)委員 私のところにも、民間の病院関係者から、経営環境が厳しくなってきているという声も届いております。
 しかしながら、そうした状況の中においても、都立以外のさまざまな経営形態のもとで経営改善に取り組み、実績を上げている病院の事例もあると聞いております。こうした事例の情報収集を図り、都立病院の経営改善の検討に生かしていくことも重要であると考えます。
 都は今後、持続可能な病院経営という観点から検討をどのように進めていくのか伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 病院運営を取り巻く厳しい環境の中でも、さまざまな経営改善の取り組みがなされております。
 例えば、他の府県で既に地方独立行政法人に移行した病院におきましても、柔軟、迅速な人材確保や、予算、契約制度のメリットを生かし、医業収支の改善を図った事例が多く見られます。
 具体的には、職員を柔軟に確保することで救急医療提供体制や手術件数の充実を図るなど、行政的医療の充実と、患者数、収益の増加を図った事例がございます。また、複数年契約を初めとした契約手法の多様化等によりまして費用の圧縮を図った事例もございまして、収支両面からの取り組みが重要と認識してございます。
 こうした先行事例を初めさまざまな経営形態の情報収集を進め、医療サービスの向上と経営基盤の強化の両面からメリット、デメリットを検討するなど、引き続き丁寧に検討を進めてまいります。

○伊藤(こ)委員 病院経営本部は、本部長を中心に不断の経営改善の取り組みを引き続き行うとともに、さまざまな先行事例のいいところ、そして、また悪いところを十分に研究し、都立病院の課題を解決するための検討をさらに進めていただくことを期待し、質問を終わります。

○小宮委員 都立病院経営委員会報告、今後の都立病院のあり方についてが示されてから、間もなく一年となります。
 この間、きょうもそうですけれども、議会でも、都立病院のあり方ですとか経営形態について、さまざまな議論が行われてきたところです。
 都立病院は、公的病院としての責任を果たしつつ、今後は、より効率的かつ効果的な運営、経営といったものはどういうものなのかということを検討することは大切なことだと思います。
 まず初めに、高齢化に伴う医療ニーズの多様化などに対しまして、都立病院に求められているサービスを的確に提供していく上で、どのような取り組みが求められているか、改めて伺います。

○末村計画調整担当部長 高齢化の進展に伴い、人工透析や糖尿病など慢性疾患を抱える患者の増加が見込まれております。
 例えば、日本透析医学会の調査によりますと、全国の慢性透析患者は、平成二十八年末までの十年間で約三割増加して約三十二万人となり、そのうち六十五歳以上の患者は約七割を占めております。
 また、高齢者は、がんや脳卒中などの発症率が高く、人工透析を合併している場合には、各疾患の専門医に加えまして、人工透析設備や、臨床工学技士などの専門スタッフなど、合併症に対応できる総合診療基盤がますます重要となってございます。
 また、高齢世帯の増加が見込まれる中、リハビリテーションを提供する理学療法士に加えまして、地域の医療、介護資源に円滑につなげる医療ソーシャルワーカー、退院支援看護師などのスタッフが、退院後の生活を見据えて、患者本人や家族の意向を踏まえた支援を行うことが必要でございます。
 このように、複数の専門医や医療職が総合的に医療を提供する体制の充実が、これまで以上に求められております。

○小宮委員 高齢化の進展に伴いまして、これまで以上に透析ですとか合併症の患者がふえるということ、また、医療と介護の連携ですとか、専門職とのさらなる連携も必要になってくると。そうした高齢化に伴う医療ニーズへの新たな対応というものも、今後ますます必要になってくるというご答弁でした。
 また、都立病院というのは、誰もが安心して質の高い医療が受けられるように、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられておりまして、それによって行政的医療を適正に都民に提供し続けていくという必要があるわけです。
 こうした都立病院が求められる取り組みを行っていく上で、どのような課題、制約があるのかということを確認します。

○末村計画調整担当部長 例えば、救急患者の増加に柔軟に対応するためには、医師や看護師等の人材を速やかに確保し、患者の受け入れ体制を充実する必要がございますが、職員の定数を定めるに当たりましては、自治体としての定数管理の仕組み等によりまして、統一的な手続を行うことが求められます。
 このため、病院現場の判断で迅速に体制を確保することができないなど機動性に課題があり、人材を確保するまでに一定の時間を要することとなります。

○小宮委員 人材の機動的な、つまり柔軟であったり迅速な確保には課題があるということをご答弁いただきました。これに関しましては、前回の事務事業の質疑のときには、計画的に対応すればいいんじゃないですかというご指摘もあったところです。
 これまでに、都民ニーズの変化に柔軟、迅速に対応できなかったという具体的な事例を挙げていただきたいと思います。

○末村計画調整担当部長 一例でございますが、人工透析を要する救急搬送患者の増加に対応するための透析患者受け入れ体制の充実や、骨髄移植などを要する患者の増加に対応するための細胞検査体制の充実が必要になった際に、直近の人員要求を経て、実際に人員を配置できたのは翌年度となりました。
 また、救急搬送先の選定が困難な患者の受け入れ調整などの仕組みでございます救急医療の東京ルールの中で、一般医療機関では対応が難しい、吐血や下血をしている患者に対しまして緊急に内視鏡治療を提供できる体制の充実が求められた際も、先ほどの事例と同様に、実際に人員を配置できたのは翌年度となった事例がございます。

○小宮委員 つまり、医療ニーズに的確に、かつスピード感を持って対応するには、計画的に人材を配置するだけではなくて、より柔軟に配置ができるということが望ましいということをおっしゃっていると思います。また、それによって、柔軟に迅速に人材を配置することによって、都民に必要な医療環境というものが、今よりもよりよくなるということをおっしゃっているんだと思います。
 それから、今の時代は、昨今は人を確保するだけではなくて、その働き方についても、より自由で柔軟性ある、そういう働き方が選択できる社会であるということも求められています。
 都立病院が都民に質の高い医療を提供するには、限られた医療人材を安定的に確保して、育成と定着を図る、職員一人一人が専門性を発揮できるようにする、そういう職場環境づくりは、誰も否定するところではありません。
 国は、医師の働き方改革に関する検討会を設置しまして検討を進めておりまして、タスクシフティングや女性医師等への支援などを推進しております。
 そこで、現在の都立病院において、働き方改革への取り組みをどのように進めていくのか、また、その課題について伺います。

○末村計画調整担当部長 働き方改革への取り組みといたしましては、都立病院新改革実行プラン二〇一八におきまして、病院現場の特性や業務の状況に応じた柔軟な勤務時間の設定をさらに促進していくことといたしました。
 また、病棟業務を担う薬剤師を各病院に順次配置し、専門性に応じた他職種との役割分担を見直すとともに、医師事務作業補助者や看護補助者の配置につきまして、その効果を検証した上で、各都立病院の状況に応じて導入を促進してまいります。
 しかし、働き方改革に向けて一層柔軟な仕組みを導入する上では、地方公務員法に基づき、勤務時間について国や他の地方公共団体等との均衡が求められるため、例えば育児以外を理由とした短時間勤務制度など、病院の実情に合った柔軟な勤務制度の構築には制約がございます。あわせて、自治体としての定数管理の仕組み等によりまして手続に時間を要し、迅速かつ柔軟な人材の確保が困難となっているなどの課題がございます。

○小宮委員 病棟薬剤師の配置ですとか、医師や看護師の補助者、こういう者を配置することによって仕事の役割分担を見直すなど、現状でできる取り組みはしているというものの、今の制度ではできないこともあると。介護を理由とした時短勤務制度はあっても、例えば育児、この制度はないということなど、多様な働き方を十分に提供するには、今の制度では至っていないというお話でした。
 以前もご紹介しましたけれども、例えば独法化をした山形県の酒田市病院機構では、一週間に三十時間働けば、その働き方は自由に決められるというような好事例もあります。人を確保しやすくすること、働き方を改善しやすくすること、こういうことに異を唱える人はいらっしゃらないと思います。
 そこで、これまで都道府県が設置した地方独立行政法人の病院における職員数の動向、これに関しては、前回もご指摘が出ておりました。例えば、独法化によって職員の採用が抑制されるんじゃないかとか、職員数がどう変化するのかと、こういう不安の声もあるわけですから、そうしたことに関して、この職員数の動向について、他の道府県の独法化を参考に伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 平成二十八年度時点で、都道府県が設置した地方独立行政法人二十法人のうち十八法人が、法人設立時と比較して職員の増員を図っております。
 例えば、大阪府立病院機構では、設立初年度である平成十八年度の三千二十六人から、平成二十八年度には三千七百八十六人と約二五%の増員を行い、小児外科や麻酔科の人員体制を充実して、手術件数の増加を図るなどの取り組みを行いました。
 静岡県立病院機構では、設立初年度である平成二十一年度の千五百九十三人から、平成二十八年度には二千六人と約二六%の増員を行い、循環器病センターの治療体制の充実などの取り組みを行っております。
 また、神奈川県立病院機構や京都市立病院機構では、育児理由に限定しない短時間勤務制度の導入や、神戸市民病院機構では、大学院留学等に係る有給休職制度を整備するなど、人材確保、定着に向けた柔軟な勤務制度等を構築しております。

○小宮委員 独法化した二十法人のうち十八法人が人員をふやし、育児に限定しない時短勤務も導入することができたと。柔軟な勤務制度が実現しているということが述べられました。独法化された法人の多くが、制度のメリットというものを生かして、人材の確保だけでなく、働き方、この多様性というものを実現していることがわかります。
 また、医療環境の変化、こうしたものを踏まえながら、中長期的な視点に基づいて、人材の確保や設備投資、こういった経営判断を行って、その実効性を高めていくという必要もあります。
 今回の報告においても、現行制度では、地方自治法による予算単年度主義によって、中長期的視点に立った財政運営に課題があるというふうに指摘されているところですけれども、この中長期の視点に立った財務運営の課題とは具体的にどういう事例なのか伺います。

○末村計画調整担当部長 現在、都立病院の運営におきましては地方自治法が適用され、予算は会計年度ごとに作成する予算単年度主義を原則としております。
 そのため、中長期的な視点に基づいて医療サービスの向上を目指した事業計画を策定しても、実施に伴い必要となる財政措置や人材確保等については、予算単年度主義のもと、毎年度の自治体における定数管理や予算調整の中で精査して定めることとなります。したがって、数年先の予算や人員の確保を前提とした計画を予定どおり実施できない場合がございます。
 具体的には、平成二十五年三月に策定した都立病院改革推進プランにおきまして、小児の重症患者対応の拡充を図るため、小児特定集中治療室、いわゆるPICUの増床を計画しておりましたが、計画期間中に必要な人員増が実現できなかったという事例がございました。

○小宮委員 都立病院の経営形態が、今の直営から、例えば独立行政法人化されると、果たして何がどう変わるのかということは、都民の皆さんにとってもわかりにくいことだというふうに思いますけれども、こうした議論を重ねていきますと、人と物とお金、これが今よりも柔軟、迅速に決定できるということになるということがわかります。
 また、例えばそこで働く人が公務員から法人の職員、民間になるという変化、違いもあるわけですけれども、超高齢社会が到来する、また、医療の高度化もある、そういう社会環境や医療環境が大きく変化していく中で、今後も行政的医療というものはしっかりと維持をしながら、多様化する都民、患者の要望に的確かつ迅速にしっかり応えていくためには、やはり今よりもよりよい制度が何なのか、今よりもよりよい体制が何なのか、そういうものがあるならば、ぜひ積極的にご検討を引き続きしていっていただきたいというふうに思います。
 以上で質問を終わります。

○白石委員 私からも、都立病院の現状と課題の検証中間まとめについて質問をいたします。
 都立病院経営委員会がことし一月に、都立直営、地方公営企業法一部適用の現在の病院運営には制度面の制約による課題があるとして、都内八つの都立病院を、独立行政法人が制度的にもっとも柔軟として、独立行政法人化を検討すべきと提言がまとめられております。
 先月の事務事業質疑で、制度面からの制約による課題などを取り上げまして質疑を行いましたが、いずれも制約とされた個別の課題については、現在の都立病院の経営形態であっても改善できる、あるいは課題にならないということを明らかにしました。
 しかし、今回報告された都立病院の現状と課題の検証中間まとめは、経営委員会の報告で示されている制度面からの制約をほぼ繰り返すものになっております。そもそも、新しい内容というのはとても少ない。中間まとめというけれども、何をまとめたのだろうかというふうに思ってしまうと思います。
 そこでまず伺いたいと思いますが、都立病院の現状と課題の検証中間まとめを策定するに当たって、特別に会議体を設置して、または病院関係者への聞き取りなどを具体的に行って、そういう調査を行って、課題の検証中間まとめとして取りまとめたのかどうなのか、具体的に伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 今回の中間のまとめの策定のための会議体の設置や、関係者の聞き取りの場の設定などは行っておりません。
 各病院現場との日常的に行う業務上の連絡や打ち合わせ、病院の運営、経営状況に関する意見交換等を通じまして把握した病院現場の課題を取りまとめたものでございます。
 また、これまでのさまざまな事業の計画、経営改善策等の検討の際に行ってきた課題検証、これまで継続して情報収集と分析を行ってまいりました経営形態の見直しを行った自治体病院における経営改善の取り組みや効果なども踏まえまして、検討を行ったところでございます。

○白石委員 いろいろいいわけをつけて答弁されましたが、つまり中間まとめ策定に向けた特別な会議は一度も行われていないと。関係者への具体的な聞き取りの場も、ただの一度も設けずに、中間まとめとして公表したということですね。
 例えば、中間まとめの一四ページにある、民間医療機関への診療応援等は困難であると、このように中間まとめではしております。
 前回の質疑において明らかにしたように、例えば二〇〇九年に産科医療の崩壊を防止するために産科医の制限を緩和して、地域医療体制を維持するために二〇一六年には麻酔科医の制限を緩和してきていると。兼業は制度上できないのではなくて、政策判断の問題だということです。政策判断上、行ってよいものは認めればよいし、行うべきでないものは、それをできるように検討する必要などないということです。
 また、そもそも地域医療への貢献はさまざまなやり方があると思います。兼業ばかりを強調するのはミスリーディングだと思います。
 例えば、松沢病院では、地域の訪問看護ステーションの看護師と一緒に松沢病院の看護師が居宅訪問を行って、体調管理や生活支援を共同で実施をして、技術支援なども提供するなど、民間の医療機関への応援も既に現在行われております。
 これまで皆さんが前向きに対応してきた取り組みは、この中間まとめを見ても、詳細がほとんどない。制約があると強調するばかりのまとめ方は、違和感を感じざるを得ないと改めて強調させていただきたいと思います。
 そのような中間まとめとなっているので、非常に疑問も抱く点が多々あります。例えば、中間まとめの二一ページには、予算単年度主義により、中長期の視点に立った財務運営に課題があると、このように書かれております。
 この中長期の視点とはどういう視点なのか、また、中長期の視点に立った計画とは一体何なのか伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 病院運営におきましては、医療技術の進歩や医療需要の変化に応じまして、患者に最適な医療を提供するための迅速、機動的な経営を実現する視点とともに、医療施設、設備の更新や人材育成など、中長期、計画的な視点の双方が求められております。
 そのため、現下の、また、将来の都民ニーズに沿って医療サービスの計画を策定し、予算、人員、設備投資などの経営判断を中長期の視点に立って計画的に行っていく必要がございます。
 中長期の計画といたしましては、都立病院新改革実行プラン二〇一八を初め、施設整備などの目的に応じた各計画等でございます。
 なお、副委員長の方からご指摘をいただきました兼業についてでございますけれども、職務の公正性の確保や職員の信頼の維持の観点から、民間医療機関等での診療行為などにつきましては、個別に事例ごとの許可判断を行っております。地域のニーズに応じた人材交流に向けたルールづくりにおきましては、迅速に対応ができないという課題があるかと考えてございます。
 また、松沢病院におきましては、退院支援の一環としまして、退院患者に関する訪問診療を出張により行っているということがございますので、申し添えさせていただきました。

○白石委員 今までの、必要なための兼業の緩和であったりとか、今、松沢病院のことも挙げられましたけれども、順次、これまでの課題というふうにされているものを、皆さん真剣に議論をしながら、必要性に応じてやってきているということだと思います。
 そして今、私、質問しましたけれども、中長期の視点に立った計画とは一体何なのかというふうに伺いました。つまり、中長期の視点でつくられたのが都立病院新改革実行プラン二〇一八ということだと思います。
 では、続いて伺いたいと思うんですけれども、中長期の視点に立った財務運営の課題とは具体的にどういう事例を想定しているのか、改めて伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 現在、都立病院の運営におきましては地方自治法が適用され、予算は会計年度ごとに作成する予算単年度主義を原則としてございます。
 そのため、中長期的な視点に基づいて医療サービスの向上を目指した事業計画を策定しても、実施に伴い必要となる財政措置や人材確保等につきましては、予算単年度主義のもと、毎年度、自治体における定数管理や予算調整の中で精査し定められるため、数年先の予算や人員の確保を前提とした計画を予定どおり実施できない場合がございます。
 具体的には、平成二十五年三月に策定した都立病院改革推進プランにおきまして、小児の重症患者対応の拡充を図るため、小児特定集中治療室、いわゆるPICUの増床を計画しておりましたが、計画期間中に必要な人員増が実現できなかったという事例がございました。

○白石委員 今の答弁を端的に述べますと、中長期的な視点で事業を計画したとしても、現在の、単年度ごとに予算や定数が決められている、予算単年度主義と皆さんがいわれている、これから数年先までの確保は保証できないから、中長期の視点でやっていくことができないんだ、困難なんだというようなことだと思います。
 しかし、こんな理屈がまかり通れば、単年度ごとに予算を組んでいる都庁のみならず、全国の自治体のありとあらゆることについて、中長期の視点に立った財務運営ができないということになります。そんな乱暴な議論はないと思います。
 加えて、私が指摘したいのが、東京都予算事務規則の第二条、きょう持ってきましたけれども、皆さんもこれはご存じだと思います。どのように書かれているか。予算は、都民の福祉の増進のため、最少の経費をもって最大の効果をあげるように、総合的かつ長期的な視野に立って編成し、計画的かつ能率的に執行しなければならないとしております。
 長期的な視野で編成をするよう規則で定められていますが、病院についてはこれが当てはまらないというようなことでいいのか、認識を伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 予算要求等に当たりまして、あるいは事業計画等に当たりましても、中長期的な視点を持って計画を策定することはもちろんであると考えております。
 ただ、都では当初予算を年間総合予算として計上し、年間を通じた予算を示すことで、施策の有効性について、都民に対する説明責任を果たしてございます。職員の定数を定める上でも予算の裏づけが必要となることから、当初予算と合わせて定数を定めることが原則とされております。
 自治体の予算編成におきましては、貴重な都民の税金、限られた財源、人材を有効活用するため、新たなサービスや事業の充実に当たりましては、必要な施策全般を都庁全体で調整することが原則とされておりまして、全ての予算、人員要求が実現するとは限らないということもございます。
 こうした自治体の手続が病院現場の実態に合わないということを課題として認識しているところでございます。

○白石委員 中長期的な視野で編成するというのは、それはやるんだと。しかし、毎年度、必要な定数をつけても、なかなかつけられないと。財務局や総務局に切られてしまうということなのかもしれません。
 でも、これを今、中長期的な視野に立って、中長期の実行プランがあって、それを年度ごとにしっかりと予算を編成していく、定数を充実させていくということは、本来皆さんがしっかりとやっていかなければいけないことであって、これが制度的な制約というふうな乱暴な議論をしたら、先ほどもいいましたけれども、全ての自治体において、予算単年度主義ですから、中長期的な視点が持てないと。要求をしたとしても、それが実行できない、担保できないというふうなことになったら、余りにも乱暴な議論だというふうに私はいいたいというふうに思います。きちんとした中長期計画をつくり、それを踏まえて毎年度の予算を決め、人員も確保すれば、問題はないということなんです。
 確かに、都の財政運営で中長期の視点が欠けていると感じることはありますが、それが皆さんのいわれる単年度主義のせいだと思ったことはありません。そうしたことが起きるのは、行政の姿勢に問題があるからなんだと、極めて無理な理屈であると改めて指摘したいというふうに思います。
 続いて、中間まとめ一六ページに記載されている病棟専任薬剤師について伺います。
 ここには、診療報酬の改定に伴って病棟専任薬剤師の人材を確保したいが、時間がかかったように示されております。
 これまで病棟専任薬剤師を段階的に広げてきていますが、病棟専任薬剤師を広げる目的は何か伺いたいと思います。また、いつから配置しているのかもあわせてお答えいただきたいと思います。

○児玉経営企画部長 薬剤師の病棟常駐につきましては、病棟に専任の薬剤師を配置することにより、服薬指導等によって治療効果や安全性が向上するほか、医師や看護師からのタスクシフティングの推進を図ることを目的に配置しております。
 病棟常駐の実施時期でございますが、平成二十二年度に小児総合医療センターの一部の病棟から順次試行を開始いたしました。現在、本格実施している病院は、平成二十八年度からの駒込病院、平成三十年度からの多摩総合医療センターの二病院でございます。
 なお、平成三十年度に既に定数措置されております広尾病院と墨東病院につきましては、現員の配置ができないため、一年先の平成三十一年度からの実施予定となっております。

○白石委員 病棟専任薬剤師の診療報酬の新設がなされたのが二〇一二年ですが、医師や看護師の負担を軽減することや、薬物療法の有効性、安全性の向上にも効果があるとの認識から、診療報酬が新設される以前から病棟薬剤師配置は検討していたと、このように、当時の経営企画部長が二〇一三年三月に、我が党の大山都議の質問に対して答弁をしております。当時、五病棟で試行していたそうです。
 中間のまとめの図を見ると、診療報酬改定を機に病棟薬剤師の配置が検討され、二年後に各病院で配置されたような印象を受けるという方もいるかもしれませんけれども、そうではないということです。
 報酬改定も要因としてないわけではありませんけれども、診療報酬改定にかかわらず、基本的には都民のニーズや医療の向上に必要な人材であれば確保しようと、このようにしているというのがこれまでの経過だと思います。
 逆に、まだ本格導入は、先ほどの答弁にあったように、二病院にとどまっているということだと思いますので、これも中間のまとめの図を見ると、説明がよくわからないという状況になります。病棟薬剤師の配置は私たちもとてもいいことだというふうに思いますので、さらなる拡大を求めておきたいと思います。
 中間まとめの八ページには、患者に最適な医療を提供するための複数診療科、多職種チーム医療の充実が必要であるとして、職種の例が示されております。
 遺伝カウンセラーやホスピタル・プレー・スペシャリストは、どこの病院に何人配置されているのか、配置されていなければ、有資格者が何人いるのか、それぞれ伺いたいと思います。

○末村計画調整担当部長 遺伝カウンセラーは、平成三十年度、駒込病院に非常勤が一名配置されております。ホスピタル・プレー・スペシャリストとして配置されている職員はおりません。
 また、有資格者数につきましては把握してございません。

○白石委員 遺伝子や遺伝のメカニズムが関与する疾患や体質について、医療情報をわかりやすく説明をしたり、心理社会的なサポートを行って患者などの理解と納得を支える遺伝カウンセラーや、子供の年齢や発達段階に合わせた方法で検査や手術などについてわかりやすく説明する、子供の心の準備のサポートを行うなど小児患者の治療への理解と負担軽減を図るホスピタル・プレー・スペシャリストなどは、患者に最適な医療を提供するためにも拡充が必要だというふうに思います。
 これらの職種の採用が制度的な課題でなかなかつけることができないというようなこともいわれるわけですけれども、これまで採用しなかった例えば遺伝カウンセラーは、今年度から配置されることになりました。ホスピタル・プレー・スペシャリストは、病院にいるのもわからないというふうな、今答弁でした。確保が難しいということも根拠がないということなんですね。
 やはり都民のニーズや、そして今、医療がどんどん変化している中で、必要性のあるもの、重要性のあるものというのはしっかりとつけていくと、こういうことはしっかりやっていくべきだということを改めて申し上げたいと思います。
 ちなみに、私たちも以前から、このホスピタル・プレー・スペシャリストは導入を求めておりました。課題などという前に、ホスピタル・プレー・スペシャリストなどの重要性をきちんと評価して、確保の努力をしていただきたいですし、もし有資格者が既に病院にいらっしゃるのなら、大いに力を発揮できるようにしてあげてほしいというふうに思います。
 今年度、都立病院の経営のあり方を検討するために、委託調査費一億六千万円が計上されております。この調査は来年三月末までかかるとされておりますが、既に来年度の予算要求に、同様と思われる調査費が要求されております。
 そこで伺いたいと思いますが、調査費は幾ら要求され、調査の目的及び調査内容をどのように考えているのか、説明をしていただきたいと思います。

○末村計画調整担当部長 来年度の調査費用は一億六千万円を要求しております。
 今年度に引き続き、都立病院の経営力向上、経営のあり方の検討に当たりまして、技術的、専門的な支援を受けることを目的として、今年度把握した課題などを踏まえまして、具体的な改善策などの検討を行う上での支援を受けることを予定しております。

○白石委員 答弁で、来年度予算要求の中にも一億六千万円の調査費用を要求しているということが明らかになりました。
 そもそも、今すべきことというのは、経営形態のあり方を検討するのではなく、これまでもいってきたように、今の制度からの制約だとか、それから赤字だ赤字だと、このような論調で独法化を推進するような議論も盛んにいわれていますけれども、実際に、先月の十一月一日の事務事業質疑において、課題だ課題だといわれていた、この課題については、この間、皆さんもいろんな努力をして改善をしようと、そういう努力をしてきているわけです。
 しかし、今回の中間まとめには、そういう努力もほとんど書いていない、課題を列挙して、あたかも今の経営形態がだめなんだと、このような印象を与えて、独法化を進めようと。このようなことは絶対にあってはならない。
 さらに、一般会計繰入金約四百億円については、多くの都民から、この四百億円というのは妥当だという声は多くあります。さらに、決算の質疑においても、診療所からも都立直営として維持してほしいと、このような声も出ております。こういう都民の声や、そして診療所の声を踏まえずに、今回、中間のまとめという形で、これまで調査もせず、特別な会議を持たず、この経営委員会の報告と横並びのような、このようなことをして、やっていくということは、やはり断じて認められない。
 独法ありきで進めることは断じて許されないということを改めて強調いたしまして、質問を終わりたいと思います。

○岡本委員 私からは、松沢病院における医療観察法病棟入院患者の所在不明事故について質疑をさせていただきたいと思います。
 まず、医療観察法という、この略称だけ聞くと、少しイメージが湧きにくい法律かと思います。
 厚生労働省のホームページでは、心神喪失者等医療観察法という略称が使われています。正式名称は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律という名称でして、刑事事件と密接に関連する法律です。平成十五年に公布され、平成十七年、すなわち二〇〇五年から施行された法律です。
 私は、二〇〇四年に司法試験に合格しまして、二〇〇五年から二〇〇六年にかけて司法修習に行きました。司法修習というのは、弁護士、裁判官、検察官の卵が一緒に研修をするという制度であります。その司法修習の修習先において、まだ当時、施行間もなかった医療観察法が適用された事案に複数接しまして、その当事者の方とも直接お話しした経験があります。
 まず、医療観察法病棟の概要についてお伺いいたします。

○山口サービス推進部長 医療観察法は、心神喪失または心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者を対象としまして、社会復帰を継続的に支援促進することを目的としております。
 医療観察法病棟とは、この法律に基づきまして、入院医療の提供を行う専門病棟でございます。
 松沢病院は、同法に基づく指定入院医療機関として指定を受けており、精神科の医療法病床数八百八床のうち三十三床を医療観察法に基づく病床として運営をしております。

○岡本委員 この法律の対象者は、心神喪失または心神耗弱の状態、すなわち精神障害のために善悪の区別がつかないなど刑事責任を問えない状態、あるいは刑事責任を減刑される状態で殺人や放火や傷害などを行った人が対象となり得ます。刑事責任を問えない精神状態というのは、統合失調症などがこれに当たります。
 松沢病院の精神科の病床数は八百八のうち、医療観察法の病床は三十三ということですので、全体に占める割合は比較的小さいということがわかりました。
 次に、松沢病院の医療観察法病棟における院外外出の対象人数、頻度、すなわち延べ件数についてお伺いいたします。

○山口サービス推進部長 厚生労働省の定めた医療観察法のガイドラインであります指定入院医療機関運営ガイドライン及び入院処遇ガイドラインにおきましては、入院治療は、急性期、回復期、社会復帰期という三つの段階に分かれております。
 このうち、回復期及び社会復帰期の入院患者が院外外出の対象となっておりまして、外出許可の判断に当たりましては、慎重な病状評価を実施した上で、指定入院医療機関の管理者の責任におきまして、医学的管理下により行われることとされております。
 平成三十年三月三十一日現在の松沢病院の医療観察法病棟の入院患者は三十二名でございまして、このうち二十六名が回復期及び社会復帰期の患者でございます。
 平成二十九年度におけます医療観察法病棟の院外外出件数でございますが、延べ百八十九件でございます。

○岡本委員 年間百八十九件の院外外出ということですので、日常的に院外外出があるのだということがわかりました。
 先ほど、公明党の伊藤こういち委員からも、外出について油断があったのではないかというご指摘がありました。これだけの頻度で行われているということですので、日常的にある院外外出について、油断をしないように、しっかりと対策を講じていただきたいと思います。
 今回の所在不明事故では、事故検証の結果を受けて、マニュアルの改定を掲げています。その改定の具体的な内容についてお伺いいたします。

○山口サービス推進部長 松沢病院における医療観察法病棟の入院患者の外出マニュアルにおきましては、院外外出時の付添職員の役割分担や、事故発生時の連絡方法等に関する記載が不十分でありましたことから、今回の事故を受けまして、必要な改定を行いました。
 具体的には、まず、マニュアルに定める外出計画書の様式を改定し、外出中、患者を常時観察する職員名のほか、患者の行動特性等を踏まえた付添人数やふさわしい職員の選任理由を記載し、それを職員間で共有するなど、運用を見直すこととしております。
 また、外出時に事故が発生した際に、患者を発見できない場合におきましても、状況に応じて速やかに病院所在地を所轄する警察署及び所在不明となった現場を管轄する警察署に連絡することを追記するなど、事故発生後の関係機関との連携体制を見直すこととしております。

○岡本委員 しっかりと再発防止策を講じていただきまして、今後こうした事故が起きないようお願いをいたしまして、私の質疑を終わります。

○栗林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたします。
 以上で病院経営本部関係を終わります。

○栗林委員長 これより福祉保健局関係に入ります。
 初めに、理事者の欠席について申し上げます。
 福祉保健局の横手事業調整担当部長は、病気療養のため、本日の委員会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 付託議案の審査を行います。
 第二百一号議案、平成三十年度東京都一般会計補正予算(第二号)中、債務負担行為、福祉保健局所管分、第二百十一号議案から第二百十四号議案まで及び第二百三十六号議案を一括して議題といたします。
 本案のうち、第二百三十六号議案について理事者の説明を求めます。

○内藤福祉保健局長 平成三十年第四回東京都議会定例会に提出しております福祉保健局関係の議案につきましてご説明申し上げます。
 お手元資料の平成三十年第四回東京都議会定例会条例案の概要をごらんいただきたいと存じます。
 一ページをお開き願いたいと存じます。整理番号1、東京都介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営の基準に関する条例の一部を改正する条例でございます。
 十一月三十日の当委員会でご説明申し上げましたように、厚生労働省令の改正によります介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準の改正に伴いまして、介護医療院から業務を委託された衛生検査所が行う検体検査の精度確保に関する基準につきまして、準用する規定を改めるものでございます。
 この条例の施行日は、公布の日を予定しております。
 以上により、先日ご説明申し上げました条例案四件に加えまして、本定例会でご審議いただきます条例案は、合計五件となります。
 簡単ではございますが、提出議案の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 なお、その他の議案については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○栗林委員長 次に、報告事項、平成三十年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書(平成三十年三月発生事例)について外一件に対する質疑を一括して行います。
 本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○後藤総務部長 去る十一月三十日の当委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明を申し上げます。
 お手元の厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料の表紙にございますように、資料は全部で二項目でございます。
 以下、順にご説明を申し上げます。
 それでは、まず一ページをお開き願います。1、都内の児童虐待死件数の推移といたしまして、資料が確認できました平成二十六年度から二十九年度までの四年にわたりまして、各年度、都内で発生いたしました児童虐待死の件数の総数と、そのうち、虐待により亡くなった児童の月齢が一カ月に満たない月齢ゼロカ月の件数、さらにそのうち、日齢が一日に満たない日齢ゼロ日の件数の推移を記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、都内における二十歳未満で人工妊娠中絶を行った件数の推移といたしまして、国の統計資料に基づきまして、平成二十年度から二十九年度までの十年にわたりまして、二十歳未満の各年齢ごとの人工妊娠中絶を行った件数を記載してございます。
 以上、簡単ではございますけれども、要求のございました資料のご説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○栗林委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○後藤委員 私からは、東京都子供への虐待防止等に関する条例の骨子案についてご質問をさせていただきます。
 今回の骨子案では、児童虐待の対応だけでなく、発生予防から被虐待児童の自立支援、そして保護者の回復支援から社会的養護、児童相談所での人材育成まで、総合的施策として提起をされております。
 特に、今回の骨子案では、保護者等の責務として体罰の禁止を掲げていることは、非常に高く評価するものでございます。
 それでは、まず本条例の定義について、改めて確認をさせていただきます。
 今回条例案となっている骨子のテーマである虐待について、虐待とはどのような状態を指しているのか、改めて都としての見解を伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 この骨子案におけます虐待とは、児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定いたします児童虐待をいうものでございます。
 具体的には、身体に外傷が生じる暴行、児童へのわいせつな行為、児童の心身の正常な発達を妨げるような長時間の放置、児童に対する著しい暴言などでございます。

○後藤委員 ありがとうございます。ただいまのご答弁では、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の四つが定義をされておりましたが、その四つの主体が保護者によるものというふうに定義がされております。この根拠を伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 児童虐待防止法第二条では、保護者につきまして、親権を行う者、未成年後見人など児童を現に監護する者としております。
 そのため、親権者や未成年後見人であっても、子供の養育を他人に委ねている場合は保護者ではございません。
 また、現に監護するとは、必ずしも子供と同居していなくてもよいが、少なくとも子供の所在、動静を知り、客観的にその監護の状態が継続していると認められ、また、保護者となるべき者が監護を行う意思があると認められるものをいうものでございます。

○後藤委員 ただいま保護者の定義ということについてご答弁をいただきましたけれども、虐待児童を保護者による行為として限定して定義をするというのは児童福祉法以来、日本の慣習でございますけれども、これは国際的に見ると異例なことでございます。
 例えば、アメリカやイギリス、さらに日本より後に法律を定めた韓国でも、そして、その他多くの国でも、保護者によるとする児童虐待の定義はなされていません。
 事実、子供は家庭の外でも虐待をされております。日本の法律の定義に当てはめると、こうした児童たち、保育所や学童、塾、クラブなどでも身体的虐待や性的虐待、ネグレクト、暴言などを受けており、このケースが虐待とはみなされないということにも受け取られかねません。
 また、児童虐待防止法では、何人も児童に対して虐待をしてはならないというふうに明記をしているのですから、保護者に限定された定義というのは矛盾を起こしているともいえるのではないでしょうか。
 ぜひ、虐待の主体を、保護者のみならず、都民全体というふうに対象を広げていただくこともご検討いただきたいということを要望して、次の質問に参ります。
 次に、骨子案の基本理念について伺います。
 骨子案では、基本理念として、子供の安全及び安心並びに最善の利益を最優先するというふうな形で定義をしております。
 そこで、この理念に基づいた考え方について伺います。

○谷田少子社会対策部長 都はこれまで、子供の最善の利益を最優先にして、虐待防止に取り組んでまいりました。
 平成二十八年の児童福祉法の改正により、児童の権利条約の基本理念でございます子供の最善の利益が、他の要素よりも優先して考慮されることが明確化されました。
 これも踏まえながら、骨子案では、虐待防止に係る全ての取り組みにおいて、子供の最善の利益を最優先することについて明確化いたしました。

○後藤委員 ありがとうございます。今回の条例において、子供の安全・安心と最善の利益がしっかりと明記されたということは大変重要なことであるというふうに思います。ぜひ、この条例の理念が形骸化されることなく、子供にかかわる都民一人一人にしっかりと浸透するように啓発をいただきたいと思います。
 特に、児童相談所などの関係機関については、具体的にどのような行動が子供の権利を最優先とした対応になるのか、今後、行動指針なども策定をいただき、子供と接する全ての職員がひとしく子供の最善の利益を中心に置いた支援がなされるようにすることも重要だと考えます。
 特に、児童相談所の現場においては、日々、本当に難しい判断が迫られる中で、子供よりも親の権利や安全管理が優先されるケースも多いというふうにお聞きをしています。一時保護所などで保護された子供たちが保護されてよかったと思えるような、子供の権利がきちんと守られる仕組みを早急につくるべきだと考えます。
 現在、国では、都道府県社会的養育推進計画において、当事者である子供たちからの意見聴取や意見を酌み取る方策、そして、子供の権利を代弁する方策について、各都道府県の実情に応じた取り組みを進めることを求めています。
 こうした国の動きとも連動しながら、ぜひアドボカシー制度なども導入をご検討いただくことを要望して、次の質問に参ります。
 次に、都の責務として定められた虐待防止や自立の理解促進と広報という部分につきましてご質問をいたします。
 骨子案では、都の責務として、虐待防止並びに虐待を受けた子供の成長及び自立に対する理解に資する広報及び普及活動について実施するというふうに明記をしています。
 そこで、この広報と普及活動というのは、具体的にどのようなものを想定しているのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 都はこれまで、児童虐待防止推進月間の十一月を中心に、都民から児童虐待防止への取り組みに対する深い関心と理解を得ることができるよう、区市町村や関係団体と連携したキャンペーンの実施や、交通機関や駅構内における広告掲示など、さまざまな普及啓発活動に取り組んでまいりました。
 また、通告の手順や通告先、虐待に気づくためのチェックリストも掲載したリーフレットなども作成いたしまして、各局を通じて関係者や関係団体に配布するなど、幅広く周知を行っております。
 児童虐待防止のためには、行政、都民、関係機関が一体となって取り組む必要があり、今後とも、児童虐待防止などについて、多様な媒体を使いながら、積極的な普及啓発を実施してまいります。

○後藤委員 今ご答弁の中で、行政、都民、関係機関が一体となって取り組む必要があるというお話がありましたが、まさにそのとおりだというふうに思っておりまして、普及啓発に当たっては、社会全体で虐待を防止していくのだというムーブメントを醸成できるような取り組みを期待したいというふうに思います。
 特に、体罰に関しては、セーブ・ザ・チルドレンという団体が行った調査では、現状、体罰を容認する人が約六割にも上るという調査結果が出ております。
 自分自身が子供に対して体罰などを行いたくないと考えていても、家族や周囲の大人が容認しているために、体罰等によらない子供の子育ての実践が難しいと感じる親や養育者の声もあります。
 私自身も、先日、子供と電車に乗って移動する際にも、周囲の方から、子供が泣いてしまってうるさいと、だまらせろというふうにいわれた経験もありまして、やはり社会全体でどなったりたたいたりしない子育てというものを認知していく必要があるのではないかというふうに感じています。
 子供に対する体罰を子育ての過程や一個人としての問題と捉えるのではなく、あらゆる人が子供に対するこうした虐待や体罰等をしなくなるための啓発活動が強化されることは非常に重要だと考えています。
 今回、厚労省では、パンフレットを使って、子供を健やかに育むための愛の鞭ゼロ作戦というものがありまして、私もきょう持ってきているんですけれども、こうしたツール等々も活用しながら、親や養育者のみならず、子育て家族や地域住民にも、子供に対する体罰は決して用いるべきではないという啓発活動を、幼稚園や保育所、地域の子育て支援団体、そして学校に近い企業等々にも連携して推進していくことを求めます。
 次に、未然防止策についてお伺いします。
 骨子案では、虐待の未然防止において、妊娠、出産及び子育てについて相談しやすい環境の整備について行うことを明記しています。
 虐待の未然防止という観点では、保護者の社会的な孤立にアプローチするということがとても重要です。
 こどもみらい財団が行ったアンケート調査の結果では、妊娠中または二歳以下の子育てをしている母親で、社会全体が妊娠や子育てに無関心や冷たいと感じる割合が四四%、そして、社会から隔絶され、自分が孤立しているように感じるという方が四八・八%もいるという統計が出ています。
 こうした社会的疎外感や孤立感が虐待につながるケースも多々あり、子育てに不安を感じる保護者が、必要に応じて社会的支援につながることのできる体制づくりが重要です。
 そこで、妊娠、出産及び子育てにおいて相談しやすい環境というものは、具体的にどんなものを想定しているのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 区市町村は、妊娠届け出時の面接等、さまざまな機会を通じ、悩みを抱える妊婦を把握し、支援につなげる取り組みを実施するとともに、保健師等による家庭訪問や乳幼児健診、子供家庭支援センターや子育て広場等において子育てに関する相談等も実施しており、都は、こうした取り組みを支援しております。
 また、都は、妊娠や出産に関する専用の相談窓口として、妊娠相談ほっとラインを実施しており、妊娠や出産に関する相談などに看護師等の専門職が電話やメールで対応しております。
 先月には、子供や保護者になじみのあるLINEを活用した相談窓口を二週間、試行的に開設し、保護者からは、子供の行動にいらいらするなどの相談がございました。
 今後、実施状況を検証し、来年度から本格的に実施する予定でございます。

○後藤委員 ありがとうございました。妊娠中に関しては、不安や悩みを抱える妊婦には支援策をいろいろ講じているというご答弁がございました。この妊娠中という点においては、私からは、妊娠中から知識不足による虐待案件というものを減らすための啓発も、あわせて要望をしておきたいと思います。
 これは、子育てに対して不安は感じていなくても、子供はたたいてしつけするものと考えている保護者が多いのかなと思っています。
 また、乳幼児揺さぶり症候群などは、予防啓発活動を徹底することで、発生件数を大幅に抑えることができるタイプの虐待になります。ぜひ、保健所や病院、産婦人科の待ち時間に、例えば啓発ビデオを流すであるとか、母親、両親学級等々で取り上げるなど、積極的に普及啓発に当たっていただきたいと思います。
 また、産後鬱発症のハイリスク期間と呼ばれる産後二週間から半年の期間というのは、虐待のハイリスク期間でもあると考えます。保護者への継続的なケアについても、あわせて支援を強化いただきたいと思います。
 今回、私たち都民ファーストの会東京都議団からの要望によって、LINEの相談窓口、今ご答弁でも触れていただきましたけれども、こうしたものが創設されたことは、育児に対して不安を抱える保護者たちが関係機関に相談するハードルを大きく下げるという意味で、大変意味のあるものだというふうに考えています。
 ご答弁の中でも、子供の事例として、子供の行動にいらいらしてしまうという相談があったというふうにしていただいていますが、こういった重篤なケースでなくても相談をしてもいいんだというようなものだということも、これから本格的に実施される予定というふうにありますので、あわせて、ぜひアピールをしていただきたいというふうに思います。
 次に、未受診妊婦への支援について伺います。
 若年で予期せぬ妊娠をした女性は、そもそも医療や福祉のサービスにつながりにくいという課題があります。誰にも相談できないまま、産科に行かず、ハイリスク出産を迎えるケースも少なくありません。
 こうしたことから、虐待防止の観点からも、未受診妊婦の対策に触れることは非常に重要であり、項目に入れていただいていることを評価するところでございます。
 そこで、未受診妊婦を必要な支援につなぐための普及啓発というものはどのようなものを想定しているのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 区市町村では、妊婦に対する健康診査の受診勧奨や、妊娠や出産に関する相談、指導を実施しております。
 都は、妊娠相談ほっとラインで、未受診妊婦の相談などに看護師等の専門職が電話やメールで対応しております。
 このほっとラインを周知するため、大学等でリーフレットを配布するとともに、今年度は新たに、渋谷の街頭ビジョンで動画を放映しており、今後、普及啓発用のポスターを電車内に掲出する予定でございます。

○後藤委員 ありがとうございます。今、普及啓発活動について多くの施策をご紹介いただきましたけれども、普及啓発というものにおいては、今現在、数多くの支援があるということがわかりました。今後は、未受診妊婦がこうした取り組みを認知した後に、実際に健診受診につながる行動につながるような取り組みをさらに期待したいというふうに思います。
 特に、国では、来年度以降、未受診妊婦の医療機関における妊娠判定費用を全額補助する方向を打ち出しております。本人が同意した場合は、保健師らが一緒に医療機関に同行する予定ということもありまして、こうした対面設定の機会から必要な社会的支援につながる可能性も非常に高いと考えており、こうした国の動きをしっかりと捉えて、都も未受診妊婦への妊娠判定費用の助成というものもぜひ行っていただきたいということを要望し、次の質問に参ります。
 次に、関係機関との連携、情報共有について伺います。
 児童相談所は、虐待の早期発見、早期対応並びに虐待を受けた子供や保護者への支援のため、要対協を活用し、必要な情報の共有や連携をするとしています。
 そこで、実際に要対協に諮られるのはどのようなケースになるのか、具体的にお伺いをいたします。

○谷田少子社会対策部長 区市町村が設置する要保護児童対策地域協議会では、児童相談所や子供家庭支援センターを初めとして、地域の関係機関の間で情報共有を図りながら、援助方針等を確認し、児童や家庭への支援を実施しております。
 要保護児童対策地域協議会の支援対象者は、要保護児童、要支援児童、または特定妊婦とされており、虐待を受けた児童に限らず、非行児童等も含まれるものでございます。

○後藤委員 ありがとうございます。
 それでは、要対協には該当しない要注意ケースについても伺いたいのですが、特に子供に日々接する保育所や幼稚園、学校から児童相談所に相談が上がるケースも多いというふうにお聞きをしています。
 幼稚園や保育所等々、そうした場所は、子供の様子を毎日見ることができ、最も早く必要な支援、そして必要な家庭にアクセスできる窓口でもあるというふうに考えています。
 家庭のリスクに気づき、早い段階で支援するための取り組みが必要であるということは皆さんにもいうまでもないというふうに考えていますが、要対協に諮られることのない要注意ケースというものにおいて、関係機関に支援共有内容が共有をされているのでしょうか、現状について伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所が関与するケースについては、要保護児童対策地域協議会において実務者会議や個別ケース検討会議を開催いたしまして、進行管理や援助方針の確認等を行っております。
 これらの会議に諮られないケースにつきましても、必要に応じて、児童相談所と関係機関が直接電話などで支援の状況等について情報共有を行っております。

○後藤委員 今ご答弁の中では、日常的に電話などで支援の状況を共有しているというお話がありました。
 私も幾つか関係機関の方々からお話を伺いましたけれども、その後の情報共有がなく不安に感じるとの声もたまに伺うことがあります。虐待が起こってからではなく、そのシグナルが上がったタイミングで、関係機関ともしっかりタッグを組んで、虐待から子供を守る取り組みを一層進めていただきたいと思います。
 次に、虐待を受けた保護者への支援について伺います。
 今回、関係者の方々からヒアリングをしたお話では、虐待をする親自身も、うまくいかない育児や家族との関係で悩んだり苦しんだりということがあり、親自身の育成歴にも大きな問題を抱えていることが多いとのお話をお聞きしました。
 子供を育てるという行為自体が、それまで忘れていた過去の親とのつらかった経験を想起させ、自分が子供のころはこの子のように笑うこともできなかったと思うとうらやましくて、許せない気持ちにもなるというように、激しい怒りを子供にぶつけてしまい、自分を責めながらもやめられない状態になるというようなお声も聞いています。
 また、虐待が早期発見されても、虐待をする親の対応スキルがないために深刻な事態に至ってしまう事例が後を絶ちません。
 そこで、虐待を行った親への支援状況は現状どのようになっているのか、支援策について伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所は、児童虐待を行った保護者に対しまして、家族機能の回復を図ることを目的に、児童福祉司や児童心理司等による家庭訪問や面接指導のほか、精神科医によるカウンセリングなどを実施しております。
 また、児童相談センターでは、虐待を受けて児童養護施設に入所している子供や、養育家庭に委託されている子供、その保護者に対しまして、家族合同でのグループ心理療法や親のグループカウンセリング、家族カウンセリングなど、家族再統合のためのさまざまな援助を行っております。
 親みずからが虐待に至った要因に気づき、愛情を持って子供と向き合うための支援を行い、親子関係の再構築ができるよう、保護者への指導やカウンセリングを強化してまいります。

○後藤委員 ありがとうございました。現状は、カウンセリングを通じた支援などを行われているということでしたが、現場では、児童相談所のマンパワー等々の関係もあり、親のケアがどうしても手薄になっているというお話もお聞きをしています。親への心理的再統合に向けた支援というふうな意味では、さまざまな支援プログラムをご活用もいただいているとは思いますが、こうしたものの活用をより一層進めていただきながら、保護者のケア体制は厚みを持ってやっていただきたいというふうに思っています。
 こうしたプログラムは、本当に手間はかかるのですが、効果が高いことも検証されておりますので、活用できる体制づくりというものも踏まえてご検討いただくことを要望し、次の質問に参ります。
 次に、骨子案には里親等への委託の推進というのもございますが、新生児、乳幼児に関する里親委託についてお聞きをいたします。
 東京都には、何らかの理由で保護者のもとで暮らすことのできない要保護児童が約四千人存在しており、そのほとんどが施設での集団生活を余儀なくされております。
 特に、予期せぬ妊娠などで生まれてしまった赤ちゃんの虐待死は、ゼロ歳、ゼロカ月が最も多く、新生児の時期から、いかに支援に入り、早期に里親や養子縁組家庭とマッチングするかというのは、最重要課題の一つでもあります。
 さらに、最新の研究では、成長や愛着関係の形成には生後六カ月の間が最も重要だとされており、新生児の里親制度の推進はさらに進めていくべきだと考えています。
 都は昨年度から、新生児里親制度をスタートしており、これを高く評価するものであります。
 そこで、新生児委託事業の取り組み状況と委託件数について伺います。

○谷田少子社会対策部長 都は昨年度から、乳児院と児童相談所に専任の職員を配置し、養子縁組が最善と判断した場合に、できる限り新生児のうちに委託する新生児委託推進事業を開始いたしました。
 本事業では、委託を希望する里親にいつでも交流が開始できるよう、乳児院において沐浴や体調管理など新生児の養育に関する実践的な研修を実施し、交流開始後は、助言や里親子関係のアセスメントを集中的に行いまして、早期に委託につなげております。
 事業開始から平成三十年十一月末までに、十五家庭が研修を受講しておりまして、六名の乳児を委託しております。

○後藤委員 重ねてになりますが、成長や愛着関係の形成においては、生後六カ月が最も重要でございます。委託される乳児にとっても、養育をする里親にとっても、早期に家庭で育つチャンスを紡いでいくということは大変重要であり、昨年度から始まって六名もの乳児が委託されているということは、大変意義が大きいことだというふうに思っています。
 今後は、予期せぬ妊娠などで悩んでいる女性などにいかにこの制度を伝え、理解し、そして、つなげていくことだというふうに思っています。どうしても養育が難しいということであれば、新生児の里親委託も選択肢の一つとして、まずは認識をしてもらうように、相談機関とも連携するなど、ぜひ今後、普及啓発をお願いしたいというふうに思います。
 次に、養護施設を出た子供たちへの支援について伺います。
 今回の骨子案では、社会的養護を卒業した後の支援についても行うことが明記をされています。
 そこで、養護施設等を出た後の支援についてどのようなものがあるか伺います。

○谷田少子社会対策部長 都は、児童養護施設を退所した児童が自立し安定した生活を送ることができるよう、施設に自立支援コーディネーターを配置しております。
 自立援助ホームにおいて入居している児童及び退去した児童の自立を支援するため、自立援助ホームにジョブトレーナーを配置しております。
 また、養育家庭等への委託が満年齢により解除された元里子に対し、養育家庭等が生活相談等の支援を行った場合、その費用の一部を補助しております。
 さらに、児童養護施設退所児童等に対しまして、専任のスタッフが生活や就労上の悩みや相談にも応える、ふらっとホーム事業や、施設退所者等が働きやすい職場の開拓や就職後の職場訪問等を行う就業支援事業を実施しております。
 里親等への委託や児童養護施設等への入所措置を受けていた児童のうち、二十歳に達しまして措置が解除された後も施設等での自立支援を継続して行うことが適当な場合、二十二歳に達する年度末まで必要な支援を実施するため、社会的養護自立支援事業を昨年度から開始したところでございます。

○後藤委員 ありがとうございました。養護施設を出た後の支援について、東京都がさまざまな支援をしているということがわかりました。特に、施設等での自立支援を継続して行うことが適当な場合、二十二歳まで年齢を延ばすという事業に関しては、現場からも非常にありがたいという声が出ておりまして、これも引き続き継続をしていただきたいというふうに思いますし、今取り組みの中で挙げていただきました自立支援コーディネーター、ここが社会的養護を出た後の子供たちにとって非常にキーになるものだというふうに考えております。
 二〇一七年度に発表された東京都の児童養護施設等退所者の実態調査結果では、退所者の五四%がこうした自立支援コーディネーターやジョブトレーナーを認知していなかったという結果も出ておりまして、とても重要な制度でありますので、こうしたコーディネーターをさらにふやしていただきたいということとともに、退所時の普及啓発も含めて、さらに対応を求めたいというふうに思います。
 次に、骨子案、児童相談所の運営体制の部分でお聞きをいたします。
 骨子案には、児童相談所の運営体制を適切に確保するというふうにしておりますが、急激にふえ続ける虐待件数に対応するためには、職員の人材の質向上が極めて重要になります。
 都では今後、児童福祉司や児童心理司を急激に採用していくという方向も固めておりますが、現在の児童心理司や児童福祉司の経験年数について伺います。

○谷田少子社会対策部長 平成三十年四月一日現在ですが、経験年数が三年以下の児童福祉司は全体の六〇%、児童心理司は全体の六三%でございます。

○後藤委員 ありがとうございました。
 他県の児童相談所では、虐待対応には、少なくとも五年の経験が必要とされているというところもあります。件数がふえているということもあり、経験年数の若い方がふえていくというものもありますが、専門性が求められる対応を経験年数の短い職員が常に適切な判断を行うということは、なかなか簡単なことでないというふうに考えています。
 そこで、業務負荷の軽減という意味で、事務的な補佐を行うサポートスタッフについても積極的に活用を進めていくべきだというふうに考えますが、見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 都の児童相談所では、児童福祉司や児童心理司、一時保護所職員の業務負担を軽減するため、相談部門と一時保護所それぞれに、業務を補佐する事務員を配置しております。
 具体的には、相談部門の事務員は児童記録の作成補助や関係機関からの照会に係る事務などを行っておりまして、一時保護所の事務員は行事の運営や、玩具、衣類等の物品管理など、保護所内の業務を行っております。
 平成三十年十二月一日現在、相談部門の事務員の設定数は三十七人、一時保護所の事務員の設定数は十三人となっております。

○後藤委員 今のご答弁の中で、既に事務員の配置をスタートしているというお話がありましたが、こうしたサポートスタッフは、医療分野では医療クラークという形で一般的なものとなっていると思います。ぜひ、児童相談所におかれましても、子供をケアする専門職の方々もしっかりケアをするという観点で、業務負荷軽減の措置を講じていただきたいというふうに思います。
 最後に、東京都を初めとして、全国で虐待件数はふえ続けており、こうした現状の中で、児童相談所だけで児童虐待の対応をするというのは、もう限界があるのではないかなというふうに感じています。子供の問題といえば、すぐに児相に話が来る児相一極集中状態というものは、今後、てこを入れていかなければいけないというふうに感じています。
 そうした意味からは、児童相談所を離れて、幅広く地域における子供家庭支援のあり方という観点で、校区単位での支援ネットワークをこれからしっかりとつくっていくということが、最も重要な課題であるというふうに考えています。
 例えば、福岡市では、先進的な取り組みとして、スクールソーシャルワーカーと社協のコミュニティソーシャルワーカーが共同して、居場所づくりやネットワークづくりというものにも取り組んでいます。地域の子供たちや保護者たちは、フォーマルな支援だけではなく、こうしたインフォーマルな支援というのももっと必要としているのではないでしょうか。
 子供の成長、発達を保障していくためには、児童相談所だけがどんなに頑張っても限界があります。子供や家族を孤立させない、社会全体が寄り添う制度づくりを東京都はぜひつくっていただきたいということを期待し、私の質問を終わります。

○栗林委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二分休憩

   午後三時十九分開議

○栗林委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○まつば委員 東京都子供への虐待の防止等に関する条例骨子案でございますけれども、まずこの条例骨子案の取りまとめに当たっての検討経過についてお伺いをいたします。

○谷田少子社会対策部長 条例案の検討に当たりましては、専門家の意見を聞くため、ことし七月から、児童福祉審議会の審議を開始いたしました。その中では、区市町村の子供家庭支援センターや、虐待を受けた子供を支援するNPO法人へのヒアリングも行いました。
 九月には、条例の基本的な考え方を取りまとめ、パブリックコメントを実施したところでございます。
 続く十月には、区市町村と意見交換を実施するとともに、児童養護施設の施設長や民生児童委員の代表者などから意見を聞いたところでございます。
 パブリックコメントの結果や、さまざまな関係者から伺った意見も踏まえ、十一月に改めて、児童福祉審議会の専門部会や都民公募委員も出席する全体会議において審議を行ったところでございます。
 その上で、今回の条例骨子案を取りまとめいたしました。

○まつば委員 この条例骨子案の検討経過でいただいた意見というのは、どのように反映されたのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 条例の基本的な考え方でお示しした、社会全体で子供と家庭を見守り、支えていくことについて、パブリックコメントにおいても重要との意見が寄せられており、条例骨子案では、その考え方を基本理念に盛り込んでおります。
 保護者による体罰につきましては、児童福祉審議会では明確に禁止すべきとの意見がある一方、適切なしつけが困難になると誤解し、子育てが萎縮するおそれがあるとの意見もございました。
 また、現場で支援を行う区市町村や児童相談所からは、しつけと体罰を混同する保護者もおり、禁止すべきとの意見をいただき、パブリックコメントにおいても同様の意見が寄せられました。
 これらも踏まえまして、体罰等の禁止を盛り込んでおります。
 保護者が各種健康診査の受診勧奨に応じるよう努めること、それから、虐待通告は家庭への支援にもつながること、児童相談所から一般事業者に対し情報提供を依頼することにつきましては、児童福祉審議会、区市町村及び児童相談所からの意見も踏まえ盛り込んだものでございます。

○まつば委員 今ご答弁いただきまして、さまざま検討を進められてきたということを確認させていただきました。
 この骨子案の中で、定義のところなんですけれども、関係機関等とありますけれど、これは具体的にどのような機関を指しているのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 関係機関等は、子供の福祉に業務上関係する機関や職務上関係する関係者といたしまして、具体的には、学校、児童福祉施設、病院、保健機関、学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士等を想定しているところでございます。

○まつば委員 この定義の中で、関係機関等ということで、どのような機関なのかということを質問させていただきまして、今ご答弁いただいたわけなんですけれども、この骨子案の中には、関係機関等の協力とか関係機関等と連携というところが何カ所かあるわけでございます。
 確認ですけれども、これは全て、今ご答弁いただいた機関であるということでよろしいでしょうか。

○谷田少子社会対策部長 ただいまお話ありましたように、条例骨子案におきまして関係機関等の文言を使用している項目では、全て同じ機関等をあらわしております。

○まつば委員 今、その関係機関等に入っている機関を確認させていただきましたので、その中には警察というのが入っていないということを理解いたしました。
 この条例の基本的な考え方に対するパブリックコメントの中では、子供の迅速な安全確認や関係機関の連携について、警察との協力体制を望むと、こういう意見もありました。
 また、今回の委員会の報告事項でございます平成三十年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書、この中の提言1の中に、こういうふうにあります。
 児童の安全確認を最優先に考え対応することという中で、児童相談所は、警視庁と締結した児童虐待対応の連携強化に関する協定書に基づき、警視庁との情報共有を徹底するとともに、警察官の協力が必要と認めるときは警察署長に対して援助要請を行うことと、こうあるわけなんですけれども、特にこの情報共有について、条例の骨子案にどう反映されているのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 都は現在、児童相談所が対応した事案のうち、虐待に該当しないケースや助言指導で終了したケースなどを除きまして、リスクが高いと考えられる全てのケースを共有しております。
 条例骨子案には、児童相談所が要保護児童対策地域協議会を活用し、子供と家庭に関する必要な情報を共有することが盛り込まれておりまして、その構成メンバーには警察が含まれております。

○まつば委員 今のご答弁で、要保護児童対策地域協議会、この中には警察が含まれていると、こういうことでございました。
 それでは、この項目の中に子供の安全確認という項目がありますけれども、現状、警視庁との連携において、具体的に子供の安全確認をどう図っているのか、これをお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所は、児童虐待の相談や通告があった場合、緊急受理会議を速やかに開催し、調査の対応方針や一時保護の要否等について協議した上で、原則として四十八時間以内に児童の安全確認を行っており、必要があるときは、警察と同行して訪問しております。警察から通告を受けた事案につきましては、その後の児童相談所での対応状況を警察に報告いたしまして、情報の共有を図っております。
 こうした対応をさらに強化するため、児童の迅速かつ確実な安全確認を徹底することを目的といたしまして、安全確認の手法や、出頭要求、立入調査を行う判断基準等について定めた都独自の安全確認行動指針を策定いたしまして、本年十月一日から、その運用を開始しております。

○まつば委員 子供の安全確認ということで、都の児童相談所と区市町村の子供家庭支援センターとの連携において、特にこの安全確認というのをどのように行っているのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所及び区市町村の子供家庭支援センターは、どちらも虐待通告の窓口となっておりまして、虐待通告を受理した後は、それぞれの機関が児童の安全確認を行っております。
 児童相談所の安全確認は、児童相談所職員または児童相談所職員が依頼した者により、子供を直接目視することによりまして行うことが基本とされており、必要な場合には子供家庭支援センターなどの地域の関係機関に依頼を行うなど、連携を図っております。
 また、児童相談所と子供家庭支援センターでは、虐待対応等における連絡調整に関する都独自のルールを定めておりまして、これに基づき、ケースの内容や緊急度に応じて、両機関が連携、協働を図りながら、適切な安全確認を行っております。

○まつば委員 私、先日、八丈島を訪問いたしました。八丈島の子供家庭支援センターを訪問させていただきまして、児童相談所との連携についてお伺いをさせていただきました。
 その際には、子供家庭支援センターの職員の方は、児童相談所、新宿の児童相談センターから年に二回、八丈島にお越しいただいて大変助かっていると、こういうお話があったわけでございます。
 この八丈島だけではなくて、三宅島や小笠原諸島、父島、母島、また大島とありますけれども、こうした島しょ地域と児童相談所との連携はどういうふうに行っているのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 児童相談センターは、大島、三宅、八丈、小笠原、それぞれの支庁管内への巡回相談を年に一、二回実施しているところでございます。
 巡回相談では、児童福祉司や児童心理司、医師などが数日間、島を訪問いたしまして、子供の養育や、子供の性格や行動などさまざまな相談を受け、助言指導を行っております。
 また、継続的な支援が必要な家庭に対しましては、子供家庭支援センターなどの関係機関と協力し、その家庭への見守りや相談体制を構築しております。

○まつば委員 今、幾つか確認させていただいてまいりましたけれども、島しょ地域における子供の安全確認、これについてはどのように取り組まれているのかをお伺いいたします。
 この骨子案の安全確認という項目に、こうした島しょ地域等を含めて、児童相談所から四十八時間以内に島の児童相談所の職員の方が安全確認というのは、島しょ等はなかなか難しいであろうということなのかなと考えるわけですけれど、そうした地域等のことも踏まえて、この安全確認の項目が考えられているのかということも含めて、ご答弁をお願いしたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 島しょ地域で虐待通告があった場合、今お話ありました四十八時間以内に児童の安全が確認できるよう、児童相談所は、子供家庭支援センターや警察に家庭訪問を依頼し、対応しております。
 また、保護が必要な場合には、児童相談所が島内の里親への一時保護委託を実施するほか、児童を一時保護所に移送するなど、児童の安全を適切に確保しております。
 条例骨子案には、虐待通告を受けたときは、速やかに子供の安全確認を行うための措置を実施することを盛り込んでおりまして、引き続き、島しょの子供家庭支援センターなど関係機関と連携いたしまして、迅速かつ的確に対応してまいります。

○まつば委員 子供の命を守るためには、児童相談所が中心となって、あらゆる関係機関、関係者が連携して力を結集していくことが私は大事だというふうに思っております。
 先ほど質問させていただきましたが、現状は警視庁と連携をしながら子供の安全確認を図っていらっしゃるということもございましたし、また、島しょ地域においては、警察の方に家庭訪問を依頼して対応しているというような現状もあるわけでございます。
 そうしたことから考えますと、私は、この条例案の安全確認という項目については、警察の協力という内容の反映も考える必要があるのではないかと、このように思っております。
 今後、骨子案を条例案へとステップを進めていくわけですけれども、どういうステップを踏んで取りまとめていくのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 今回取りまとめました骨子案については、児童福祉施設、養育家庭、民生児童委員、医師会、学校、弁護士会、虐待防止に取り組む民間団体などの関係機関等で構成いたします協議会において意見を聞いたところでございます。
 また、現在、改めてパブリックコメントを実施しております。
 さらに、今月中には、区市町村との意見交換も改めて実施する予定でございます。
 今後、いただいた意見も踏まえまして、条例案を検討してまいります。

○まつば委員 都議会公明党は、児童虐待防止に向けまして、条例の制定とともに、全庁横断的なプロジェクトチームを立ち上げて取り組むことを要望してまいりました。
 都は、これを受けまして、全庁横断的なプロジェクトチームにおいて児童相談体制の強化に向けた緊急対策を打ち出し、取り組まれていることを評価させていただきます。
 今、今後の骨子案から条例案へのステップでございますけれど、関係機関とか、また、パブリックコメントだとか、区市町村との意見交換ということのお答えがございましたけれども、やはりここに全庁横断的なプロジェクトチームを立ち上げていただいたわけですので、そことも調整をしていただくということが私は大事であると思っておりますので、このことを要望いたしまして、質問を終わります。

○清水委員 それでは、よろしくお願いいたします。私からは、検証部会の報告書について何点か伺いたいと思います。
 報告書、目を通させていただきました。事例の経緯のページを時系列で拝読させていただいたときに、本当に日に日に被害者の児童が危険な状態にさらされていく姿が書かれておりまして、これは委員の皆さんも同じ思いだと思いますが、胸が裂けるような思いで私は見させていただきました。この段階で手を差し伸べれば大丈夫だったんじゃないか、助けることができたんじゃないかと思った時点が何回かございました。
 ぜひとも、この報告書によって、二度とそのような児童の虐待死が起こらないようになることを願ってやみません。
 今回もこの児童虐待の防止等に関する報告の中で、国と地方公共団体の責務ということで検証がなされております。十月には、国の報告書が出されました。そして、十一月には、東京都、また香川県でも検証がなされたというふうに伺っています。
 同一のこの事案でございますが、国、東京都と二つの報告がなされているわけでありまして、これを比べてみて、共通する部分もあるかと思いますし、また、国と東京都の見立ての違い、あるいは深掘りの違いというところもあろうかと思いますので、その辺、報告書の記載で指摘された部分で共通している部分と、そうでない部分のところを、まずお聞かせいただければなと思います。

○谷田少子社会対策部長 国と都の報告書で共通して指摘された課題といたしましては、児童相談所間の不十分な情報伝達や、都児童相談所によります安全確認の未実施、関係機関との連携不足などが挙げられております。
 十月に公表された国の検証結果報告書では、個別の対応に関する部分の検証は都に委ねるとしておりまして、都は、国の報告書の内容も踏まえて詳細な検証を行っております。
 例えば、都の報告書では、ケースの引き継ぎ状況等の課題といたしまして、国の報告書で指摘された児童相談所間の不十分な情報伝達等に加えまして、児童相談所間の認識の相違があったことも指摘されているところでございます。

○清水委員 ありがとうございます。今回の場合、自治体間の引き継ぎというふうなことでございました。これは全国ルールというものが存在するというふうなわけでございます。したがって、ルールがあるのに、この事件が起きてしまったというのは、やはり、その時々の人の判断、あるいは対応ということに何らかの問題もあったのかなといわざるを得ないと思います。
 結局、こういったルールがあって起こるミスは、まさに人為的なミス、ヒューマンエラーなんて呼ばれていますが、このヒューマンエラーが起こる原因というのも大分明らかになってまいりまして、そもそもそのルール、マニュアルですとか手順に不備があったということと、やはり、あともう一つは、先ほど来、課題として示されております激務のため人間が疲れてしまっていると、そういったことに起因するということも、このヒューマンエラーの起こる要因だといわれているわけでございます。
 今回のこの報告書を読ませていただきますと、直接的には、人員不足ですとか、あるいは激務が理由でこのようなことが起こったというふうな表現はされておりません。しかしながら、報告書の提言の一つとして、児童相談所の体制の強化ということが挙げられております。
 こういった事件、事故を二度と起こさないように、先ほど来、出ておりますように、業務負荷の軽減ですとか、あるいは児童相談所の強化に向けて何とかしなければいけないと思いますので、ちょっとその辺を踏まえましてお伺いをしたいと思うわけでございますが、昨今、人口減少の話も伝わっておりますが、子供の数というのは、まあ、東京の場合は横ばいなのではないかなというふうな思いもあります。
 子供の数が急激にふえていって、虐待の認知の件数、あるいは相談件数というのがふえていくと、これは何となく相関が出てきそうな感じがありますが、実際、今どのような、児童の数と虐待の数というのが置かれているのかというのを、ちょっとお聞かせいただきたいと思いますが、平成二十四年と二十九年を比較しまして、各年度の東京都におきます児童人口と虐待件数の増加率というのもお示しいただければなと思います。

○谷田少子社会対策部長 都の児童人口でございますけれども、平成二十四年度が百八十万六千四百七十三人、二十九年度が百八十五万六千四百五十四人でございまして、その増加率は三%でございます。
 また、都の虐待相談対応件数ですが、平成二十四年度が四千七百八十八件、二十九年度が一万三千七百七件でございまして、その増加率は一八六%でございます。

○清水委員 ありがとうございました。三%と一八六%です。
 この五年間での児童の増加率三%は、ほぼ横ばいといっていいでしょう。ところが、子供の数が変わらないのに、虐待対応件数が急激に伸びているというふうなところが大きな問題の一つなのかなと思います。
 近年、虐待対応件数が急増している、これはなぜ急増しているのか、その要因について伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 近年の虐待相談対応件数の増加でございますけれども、都民の虐待に対する意識の高まりのほか、子供の前での配偶者に対する暴行を心理的虐待として、警察が児童相談所に通告する事例がふえたことなどが要因であると認識しております。

○清水委員 ありがとうございました。理由についてはよくわかりました。
 こうした件数がふえる中で、これに対応するには、やはり職員の体制の強化というのが必要なのは論をまたないわけであります。
 そこで、相談対応のかなめとなる児童福祉司、平成二十四年度と二十九年度を比較して、各年度の定数と、その増加率についてもお示しをいただければなと思います。

○谷田少子社会対策部長 都の児童福祉司の定数ですが、平成二十四年度が百八十三人、二十九年度が二百五十人でございまして、その増加率は三七%でございます。

○清水委員 ありがとうございます。
 個々の虐待の内容というのはさまざまあろうかと思います。したがって、単純に比較をするのはちょっと難しいのかなと思いますが、しかしながら、この五年間の児童虐待対応件数の増加率が一八六%、対応のかなめである児童福祉司の皆さんの増加率が三七%という、この数字の乖離だけを見ても、容易にさまざまな課題があるんだろうなという部分が想像できるわけでございまして、やはりさらなる体制強化というのが必要ではないかと思います。
 東京都は、九月に発表しました緊急対策におきまして、年度内に児童福祉司を十三名増員を図るというふうなことだそうでございます。これによって、現在の児童福祉司の定数は何人になったのか、そしてまた、現在、国の配置基準というものがございますが、それに照らし合わせて、どのくらいの、国の水準となっているのかということをお聞きしたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 平成三十年十二月一日現在の児童福祉司の定数は、四月一日時点の二百七十三人から十三人増加いたしまして、二百八十六人でございます。
 児童福祉司の配置基準は、これまで人口おおむね四万人から七万人までに対して一人とされておりましたが、平成二十八年の政令改正によりまして、平成三十一年四月以降は、各児童相談所の管轄人口四万人に対して一人が標準とされ、これに人口当たりの虐待対応件数に応じた人数を上乗せすることとされました。
 そのため、必要な児童福祉司数は毎年変動いたしますが、仮に平成二十七年の国勢調査の人口と、平成二十九年度の虐待相談対応件数を用いて算出いたしますと、必要となる児童福祉司は三百七十二人となり、現在の定数で比較すると、八十六人が不足することになります。
 都は、平成三十一年度以降も、児童福祉司の増員等、さらなる体制強化を図ってまいります。

○清水委員 ありがとうございます。国の基準に合わせると八十六名が不足になってしまうというふうなことだと思います。これはかなり深刻な状況に置かれているのかなと思いますし、ぜひとも計画的な増員をお願いしたいと思います。
 国におきましても、いわゆる新プランというものが出されまして、児童福祉司、これは全国でということなんでしょうけど、二千名増員を図るというふうなことで、そういったことも含めた、さらなる基準を上げていくというふうなことを伺っております。したがって、東京都におきましても、計画的には当然のことなんですが、迅速にぜひとも増員を図っていただければなと思います。
 しかしながら、児童相談所のさらなる体制強化には、数をふやせば解決するわけではございません。我が党の代表質問でも、重要なところは専門職員の確保だけではなく、育成も最重要なところなんだというふうな旨の指摘をさせていただきました。非常に困難な事案に的確に対応するためには、量の拡充だけではなく、質の向上というものが必要だと思います。
 今でも、現場の方は一生懸命やられているというのはよくわかるんでありますが、そこでちょっとお伺いしたいんですが、児童相談所職員の専門性の向上につきまして、これまでやられてきた取り組みと、今回の検証報告書の提言を踏まえて、今後どのようにさらに取り組みを進めていくのかというところをお聞かせいただければなと思います。

○谷田少子社会対策部長 都はこれまで、毎年度、人材育成等を担う児童福祉司の専門課長が中心になりまして策定いたします研修計画に基づき、新任、二年目、三年目、四年目以上など、職員の経験等に応じ、幅広い内容の研修を行ってまいりました。
 特に、新任の児童福祉司に対しましては、四月に集中的に研修を実施するほか、平成二十九年度からは、児童福祉法の改正に伴うフォローアップのための研修も実施しておりまして、年間を通じて児童福祉司として必要な知識や技術の習得を図っております。
 さらに、今回の検証結果を踏まえまして、現場職員のアセスメント力や実践力の向上を図るため、来年度には、関係機関と合同による事例検討や演習型研修を充実させるとともに、関係機関の機能について相互理解を深めるための研修を実施する予定でございます。

○清水委員 ありがとうございました。
 今回のこの検証報告書を作成するに当たりまして、ヒアリング等が行われまして、現場の方も大分大変だったろうなと、こういう表現にとどめさせていただきますが、思いもしてなりません。
 報告書の方ではさまざまな提言がなされておりまして、直接的な人為的なミスではないというふうな形であろうかと思います。しかしながら、その前提には、ちゃんとした制度がしっかりとつくられているということが前提でありますが、まだまだ、例えば支援と介入の、どうしたらいいのかというふうな判断というのもなかなか難しさもあると聞いております。さまざまな改善点があるのかなと思いますが、ぜひとも、もう二度とこのような事故、事件を起こさないような体制のために、また皆さんでご努力を続けていっていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。

○藤田委員 子供への虐待の防止等に関する条例骨子案について質問をいたします。
 基本理念の中には、虐待の防止に当たっては、子供の成長、年齢等に応じた意見を尊重すると記載されています。子どもの権利条約には、自由に自己の意見を表明する権利を有するとされています。この権利は、差別の禁止に対する権利、生命及び発達に対する権利、子供の最善の利益の第一義的考慮と並んで、四つの一般原則の一つに位置づけられています。
 子供の意見は、虐待の未然防止のための子育て支援、虐待の判断、一時保護の実施の判断など、多くの場面で重要です。児童虐待防止においても、子供の意見表明権を位置づけることが大切であると考えますが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 条例骨子案では、子供の権利利益の擁護などを目的とし、虐待の防止に当たっては、子供の成長、年齢等に応じた意見を尊重することや、子供の最善の利益を最優先することを理念としており、児童の権利に関する条約の精神も踏まえたものでございます。

○藤田委員 二〇一〇年に起きた江戸川区の小学生虐待死事件では、検証委員会報告が指摘した問題点として、児童本人から話を聞いていなかったとしています。具体的には、子供家庭支援センター、児童相談所、小学校では子供に話を聞くことができなかったということでした。
 提言には、本事例においては唯一、虐待通告を行った医療機関だけが本人から虐待の事実を聞き取ることができた、各機関においては、虐待を受けている児童の気持ちに寄り添い、まず、児童本人から話を聞くこととしています。
 子供が意見表明権を持ち、意見を尊重されるべき存在だという意識が浸透していれば、こうした提言も生かされやすいのではないかと思います。子どもの権利条約の精神に合致しているという答弁ですが、年齢に応じた意見を尊重というだけだと、年齢に応じて割り引いてもよいともとられる可能性もあります。そうならないためにも、意見表明権を明記することが重要だと思います。
 保護者等の責務についてです。
 事務事業質疑でも発言いたしましたが、保護者は子供の養育にかかわる一義的な責任を負っているとしていることについて、子どもの権利条約を政府が訳した際の一義的といういい方になっていることには疑問があります。
 児童福祉審議会の資料でも、子育ての悩みを相談できる人がいるとの問いに、二〇〇二年から二〇一四年にかけて、父親で八%低下して一一%、母親では三〇%低下して四三・八%です。
 相談できる人がいない親の方が多くなった時代において、親が一義的責任を負っているとすることは、さらに育児の負担を強めることにつながる可能性があります。
 一義的責任という表現が、子育てに困難を抱える保護者が助けを求めるのをためらわせるおそれがあるため、児童虐待防止の観点から適当ではないと考えますが、いかがですか。また、助けを求められる環境が育児をする上でとても重要になると考えますが、都の見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 条例骨子案では、虐待は子供への重大な権利侵害であり、子供の健やかな成長を阻害するものであるとの認識のもと、社会全体で防止することを基本理念としております。
 また、都は、妊娠、出産、子育てについて相談しやすい環境の整備など、区市町村が実施する母子保健や子育て支援に関する施策について、都として支援を実施することを盛り込んでおります。
 子供の養育に係る保護者の一義的責任につきましては、児童福祉法や児童虐待防止法において規定されており、保護者が子供に対して負っている責任の大きさや、虐待が子供に与える影響の重大性を踏まえまして、条例骨子案に盛り込んだところでございます。

○藤田委員 責任が大きいことや、影響の重大性はそのとおりです。
 条例は、第一義的責任と明記していないと責任がなくなってしまうということではないと思います。条文に、保護者などの責務として一義的責任と位置づけられることは、育児を頑張っている親にとって負い目を感じるのではないかと、やはり心配になるところです。
 厚生労働省の子ども虐待対応の手引きでは、親だから愛情を持って育てなければならないとか、よい子に育てなければいけないというような常識にとらわれ、義務感に縛られた子育てが虐待に至ってしまう場合もあると書かれています。
 また、児童虐待による死亡事件について取材をされているルポライターの杉山春さんは、著書の中で、取材してきた保護者に共通する点として、過剰な生真面目さがある、自分自身の苦しさやつらさを感じ、そこから主体的に助けを求めるのではなく、社会の規範に過剰なまでに身を沿わせようとして力尽きてしまう痛ましい姿だと書かれています。
 誤解のないようにいっておくと、児童福祉審議会の議事録を読みましたが、委員の方々が保護者ばかりに責任を負わせようとしているとは決して思いません。恐らく、福祉保健局としてもそうした意図はないと思います。しかし、保護者の責任を強調する言葉を入れることが、結果的に虐待対策にプラスになるかどうかという点は、よく考える必要があると思うのです。
 いずれにせよ、子育てをしていく上での行政の支援は不可欠です。親が育児の全てを担うことは難しいことから、親が子育てに関する責任を果たすことができるよう、行政における支援の充実が求められると思うのですが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 支援が必要な家庭等を適切なサービスにつなげるためには、住民に身近な区市町村が訪問や相談等を通じてきめ細かな支援を行うことが重要でございます。
 このため、都は、区市町村が実施する保健師等による家庭訪問、子育て広場や子供家庭支援センターでの育児相談のほか、育児支援ヘルパーの派遣など、在宅子育て家庭を支えるさまざまな取り組みを支援しており、条例骨子案におきましても、都として区市町村の子育て支援策等を支援することを明記しております。

○藤田委員 身近な地域でも気軽に行くことができる地域の子育て支援策は大変重要です。条例の書き方についても、子どもの権利条約にあるように、保護者が責任を果たせるよう、自治体は必要な支援を講じなければならないという趣旨の文章が含まれるようにしていただけるよう要望いたします。
 児童虐待死亡事例等検証部会に報告された事例について、昨年度発生したものから、ゼロ歳児や心中も含めて全件を検証するに至ったようですが、きっかけはどのようなことからですか、また、検証結果について、どのように役立てようと考えているのですか。

○谷田少子社会対策部長 これまで検証部会に報告された事例のうち、都または区市町村が関与していた虐待による死亡事例及びそれ以外で、問題の重大性に鑑み、検証の必要性があると判断される児童虐待の事例が検証対象でございました。
 国通知であります児童相談所運営指針におきまして、虐待による死亡事例全てが検証対象とされたことから、検証部会の委員の意見等も踏まえまして、今年度、検証部会に報告する事例から全件を検証することといたしました。
 これにより、児童相談所が関与していない事例であっても、何らかのかかわりの可能性はなかったか、相談支援体制はどうであったか、改めて見直すことで再発防止につなげることができるものでございます。
 検証結果については、これまで同様、報告書に取りまとめた上で、関係機関にも周知し、児童虐待の再発防止、未然防止に生かしてまいります。

○藤田委員 全件検証となったことは大変重要だと思います。国の子ども虐待対応の手引きや、子ども虐待による死亡事例等の検証結果第八次報告書を引用しています。それによると、死亡事例の中で、十代の若年妊娠が四割を占めています。これは、出生総数に占める十代の母親が一・三%であるのに比べて非常に高いと、虐待対応の手引きでも述べられています。
 二〇一六年の大阪府産婦人科医会の未受診や飛び込みによる出産等実態調査報告書によると、十代の妊娠では、妊娠に気づかなかったという知識の欠如から未受診妊婦になり、飛び込み出産になっているということが明らかになっています。
 また、未受診による出産から直後に虐待死に至るケースは、都または区市町村の関与が困難な状態にあることから、関与のない事例について検証する意義は高いと思います。
 従来の予期しない妊娠を減らすためには、妊娠を避けるための知識を持つことと、避妊を実行する技術と行動力を身につけることであり、具体的には、どこからどこまでが妊娠のリスクを伴う行動であるかを知り、みずから避妊行動がとれるようにすることが望ましいと考えます。
 委員会資料にもあるように、都内の十三歳未満、十四歳、十五歳の人工妊娠中絶数は近年横ばいです。また、十代全体でも件数は横ばいで、中絶率も、資料では十年ですが、二十年にさかのぼっても大きく数は変わっていません。
 全国で十代の中絶率が高かった秋田県では、二〇〇四年から中学校でも性教育を始めたことにより、十代の中絶率は低下し、四十七都道府県中、二〇〇三年度の十一位から二〇一四年度には三十六位になりました。
 一方、東京都は、同じ期間の間に全国四十二位から十四位まで高くなっており、現在のあり方を見直す必要もあると感じます。ぜひとも性教育の重要性についても条例に盛り込む方向で検討いただきたいと思います。
 次は、未然防止の部分です。
 予期しない妊娠や未受診妊婦、飛び込み出産は虐待のハイリスク要因とされています。妊娠期からの切れ目ない支援につながるためにも、健診が重要であると考えます。妊婦や保護者は、区市町村が行う健診にかかわる受診勧奨に応じることを努力義務としていますが、それはどのような背景からですか。

○谷田少子社会対策部長 妊産婦及び乳幼児の健康診査は、その健康を確保するために必要であるとともに、妊産婦の出産、育児に対する不安や課題を早期に見つけ、必要な支援を行うための重要な機会でございます。
 その考えを踏まえ、条例骨子案では、妊娠した者及び乳幼児の保護者の責務として、健康診査の受診勧奨に応じるよう努めることを盛り込んでおります。

○藤田委員 妊娠期からの切れ目のない支援を行うことが虐待の未然防止にもつながります。妊婦健診や乳幼児健診は、支援の必要な母親、家庭との接点をつくる大切な場にもなります。受診の重要性を周知していくことを要望いたします。
 厚生労働省の虐待の手引きに掲載されている大阪府産婦人科医会の未受診や飛び込みによる出産等実態調査報告書二〇一二年三月によると、飛び込み出産では、死産は全国平均の三倍、低出生体重児が同時に二倍以上です。近年、二〇一六年の調査では、妊婦健診を受けなかった理由は経済的問題が最も多く二七%、知識の欠如が二一%でした。
 大阪府では産婦人科医会と連携して調査を行い、健診を受診するために必要な対策の検討を行っています。
 私の地元大田区では、区内の大学病院に飛び込み出産などの情報提供を依頼し、子供家庭支援センターや保健所から職員が病院に出向いて面談を行い、必要な支援につなげているとのことでした。多くの自治体が同様の対応を行っていると思われます。
 厚生労働省の子ども虐待対応の手引きでも、医療機関を訪問し、アセスメントを行うとされています。ぜひとも東京都としての調査を行うよう求めます。
 さらに、条例骨子案では、予期しない妊娠に至らないための啓発や情報提供を実施としています。こう記載したのはどのような考えからですか。

○谷田少子社会対策部長 国の子ども虐待による死亡事例等の検証結果等についてにおきまして、心中以外の虐待死における実母の抱える問題のうち、予期しない妊娠の占める割合が高いことが指摘されております。また、子供が妊娠、出産することは、母体にとって健康上のリスクも伴います。
 そのため、条例骨子案では、子供等に対し、予期しない妊娠に至らないための啓発及び情報提供を行うことについて盛り込んでおります。

○藤田委員 子ども虐待対策の手引きには、児童虐待死亡事例では、望まない妊娠から出産直後に子供を殺害する事例も珍しくないので、従来からの緊急対応を中心としたモデルだけでは十分ではない、そのため思春期からの性教育や望まない妊娠に対する関係機関の情報共有など、積極的な予防的活動が重要であるとしています。改めて、児童虐待防止条例に性教育について盛り込むよう求めます。
 また、未然防止については、子供自身が守られるべき存在であることを子供に啓発するとしていますが、子供が大人の従属物であるというような考えが虐待へと発展してきた背景を見ると、守られるべき存在というよりも、もっと主体的な権利を有している存在であると啓発することが大切ではないかと感じますが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉法第一条では、全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、福祉を等しく保障される権利を有するとされておりまして、子供は権利の主体でございます。
 条例骨子案では、子供の権利利益の擁護と健やかな成長を図ることや、虐待の防止に当たっては、子供の成長や年齢等に応じた意見を尊重すること、子供の最善の利益を最優先することを盛り込んでおります。
 今後、条例の制定に合わせて普及啓発に取り組んでまいります。

○藤田委員 子供が権利の主体であるということを子供自身が理解できるようにすることが大切だと思うので、普及啓発についても理解しやすいものになることを望みます。
 また、未然防止のための情報提供や啓発を行うに当たり、外国人や、子供や障害児への伝え方についても配慮が必要だと思いますが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 都の児童相談所は、外国籍の児童や保護者等に対して、児童虐待防止に対する理解を深めるため、複数の言語で普及啓発用のパンフレットを作成しております。
 また、児童に対しては、虐待やいじめの悩みについて、フリーダイヤルの電話相談を実施しており、毎年、都内の小学四年生、中学一年生、高校一年生を対象に、電話相談PR用カードを配布しております。
 さらに、障害のある方に対しても、個々の状況に合わせた相談対応を行っておりまして、例えば、子供に関するさまざまな相談に対応する四一五二電話相談では、聴覚言語障害者向けにファクスで対応するなどの取り組みを行っております。
 今後とも、誰もが容易に情報が得られるようなさまざまな工夫をしながら、普及啓発に努めてまいります。

○藤田委員 とても大切なことだと思います。聴覚障害のある子供への対応が答弁にありましたが、知的障害なども含め、あらゆる子供に必要な情報が行き届くよう、重ねて求めておきます。
 次に、情報提供についてです。
 コンビニやスーパーの防犯カメラなどの映像等について、児童虐待防止の調査のための情報提供を必要とする場合、児童相談所はどのように依頼するのですか伺います。

○谷田少子社会対策部長 現在、都では、民間の機関や事業者、団体などに対しまして、児童相談所への調査に協力する場合、法律に基づき、個人情報の提供が可能であることを周知しております。
 児童相談所は、虐待調査を行う中で、必要に応じ、地域の関係機関などに対して書面で情報提供を依頼しており、そこで得られた情報をケースワークに活用しております。

○藤田委員 条例制定と周知によって、児童相談所のケースワークが今よりも行いやすくなることを期待いたします。
 体罰の禁止について伺います。
 体罰は、子供の発達に悪影響を及ぼし、さまざまな心の病気になるリスクを高めることが明らかなことから、都の児童虐待防止条例骨子案において体罰等を禁止するとしていることは大変重要です。
 一方、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査では、回答者の約六割が体罰を容認しており、しつけのために必要という認識もいまだに根強く残っています。さらに、しつけのために子供をたたいたりどなったりしないで育児をしたいが、実践は難しい、あるいはそのような子育て方法がわからないという思いもあります。
 体罰等の禁止を条例に明記するとともに、啓発していくことは極めて重要であると考えます。体罰や暴言、面前DVなどの不適切な養育や環境が子供の脳に与える影響を広く伝えること、たたかない、どならないで育児をすることが重要であること、また、その方法について、保護者だけでなく、都民全体で認識を共有し、理解を深めることが大切であると考えますが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 国は、体罰によらない子育てを推進するため、啓発用リーフレット、愛の鞭ゼロ作戦を作成いたしました。
 都は、区市町村に対し、このリーフレットを活用して、妊娠届け出時の面談や、妊産婦や乳幼児の健康診査、両親学級、育児相談等のさまざまな機会を捉えて、体罰によらない子育てについて啓発を行うよう周知を行ったところでございます。
 今後とも、体罰によらない子育ての重要性につきまして、啓発を行ってまいります。

○藤田委員 体罰等を禁止するには、保護者などへの支援も必要です。児童虐待はハイリスク家庭だけで起こるものではありません。育児による環境などの変化は誰にでも生じるものであり、どの家庭、保護者でも支援が受けられることが重要です。
 フィンランドでは、母子保健サービスの利用率はほぼ一〇〇%です。この対象となるのは、妊娠中から子供が七歳になるまでの間であり、全ての家庭に担当者がつき、妊娠中には平均十四回、子供が一歳になるまでに十回、一歳以降は年に数回、担当者により健診や予防接種、情緒支援など、多岐にわたる育児サービスを提供しています。
 区市町村が必要とする母子保健サービスが着実に実施されるための支援を、さらに積極的に行うよう要望いたします。
 次に、表記のことについてです。
 子供の供を漢字で書く場合の字は大人の附属物を連想させるものです。子供への虐待防止に関する条例については、大人の附属物ではなく権利の主体であるとする考え方に立脚するためにも、子供の供を平仮名表記とすべきと考えますが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 子供の表記につきましては、平成二十一年度に常用漢字表で定められた漢字を徹底することとし、現在の表記となっております。

○藤田委員 今回の児童虐待防止条例については、まさに子供は大人の附属物ではないということをしっかりと発信すべき条例であると思います。パブリックコメントにも同様の意見が都民から寄せられています。児童福祉審議会の専門部会でも意見が出ています。ぜひ積極的に議論していただき、平仮名表記にしていただきますよう強く要望いたします。
 次に、社会的養護についてです。
 当然、子供の最善の利益を最優先する必要があり、一人一人の子供の実態を踏まえて行っていく必要があります。そのためには、当事者の意見を聞くことが重要です。
 社会的養護を進めるに当たっては、社会的養護経験者、児童養護施設、里親など、関係者の意見を尊重することが大切と考えますが、見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 都は、日常的に児童養護施設の施設長や養育家庭の会等と意見交換を行いまして、支援に係る課題の把握に努めるとともに、重点的に取り組むべき課題についても共有しているところでございます。
 また、来年度予定しております東京都社会的養護施策推進計画の見直しを行う際には、児童養護施設や養育家庭の会などのほか、施設出身者等の社会的養護経験者からも意見を伺う予定でございます。

○藤田委員 ぜひ関係者の意見を踏まえた社会的養護の推進を図っていただきたいと思います。
 次に、虐待死亡事故検証報告について質問いたします。
 死亡事故検証報告の提言には、児童相談所、子供家庭支援センター及び保健機関等関係機関の連携、協働を一層進めるとともに、さらなる虐待防止に努めることとしています。
 子供家庭支援センター職員の増員や専門性向上のための支援への充実を求めますが、いかがですか。

○谷田少子社会対策部長 都は、子供家庭支援センターにおける虐待対策ワーカーや虐待対策コーディネーターの配置を進めるとともに、センター職員を対象とした専門的な研修を実施することで、区市町村の虐待対応力の強化を支援しております。
 条例骨子案におきましても、区市町村及び関係機関等の人材育成を図るための研修等の実施について盛り込んでいるところでございます。

○藤田委員 未然防止のための子育て支援という点でも子供家庭支援センターの役割は重要ですが、自治体によって体制に差があるのも事実だと思います。底上げのための支援の充実を改めて求めておきます。
 児童相談所が行うリスク評価についても、引き継ぎについても、慎重なケースワークの実施についても、人材確保と育成が欠かせません。とりわけ、児童虐待の防止のためには、一つ一つのケースを職員が丁寧にかかわれる環境が大切であり、児童虐待対応相談件数の急増する状況においては、児童相談所の体制整備は引き続き重要課題です。
 国の配置基準の引き上げも検討されており、児童福祉司の増員が急がれていますが、一方で、経験年数の短い職員が多く、急速に増員していくためには、職員の養成も課題になります。キャリア活用採用選考などにより、児童相談所での実績、経験のある方の採用、登用をさらに広げていくことが重要だと考えますが、いかがですか。また、弁護士の常勤配置についても見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 都は、専門的知識、スキル、経験へのニーズが高い分野で、民間経験者等を採用いたしますキャリア活用採用選考を実施しており、平成二十二年度から児童福祉司の採用に活用しております。
 児童福祉司等には高い専門性が求められるため、採用後も経験年数等に応じて丁寧に人材育成していくことが重要であり、こうしたことを踏まえ、育成にも十分配慮し、人材を確保してまいります。
 また、現在、全ての児童相談所に非常勤弁護士を一名ずつ配置するとともに、副担当となる協力弁護士を、ベテランと若手とを組み合わせて原則二人ずつ登録し、総勢四十五名となっております。
 この体制で、保護者の意に反した施設入所など法的手続への対応を行うほか、児童相談所の求めに応じて、速やかに公的な見地からの助言を行っているところでございます。

○藤田委員 児童福祉司の確保については、さまざまな採用方法を効果的に運用し、速やかな増員が図られるよう要望いたします。
 最後の質問です。
 死亡事例等検証部会報告書のおわりに、関係機関は、職員への心理的支援を、組織的に取り組むなどの対応をお願いしたいと述べられていますが、今後、どのように職員支援の強化を図られるのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 職員のメンタルヘルスの保持のためには、日ごろから職員の心身の健康に気を配ることが重要でございます。
 心の不調が疑われる場合には、職員に、こころの健康相談室での相談や外部の医療機関等の受診を勧奨するとともに、必要に応じて業務軽減等を行っており、引き続き、こうした取り組みを実施してまいります。

○藤田委員 ケースワークを担当する職員は、子供の命と安全を守るために必死に働かれていることと思います。しかし、ことしも多くの職員が、子供の最善の利益のために、子供の幸せのために必死に働いていながらも、虐待によって子供の命が失われてしまいました。本当に胸が締めつけられる思いです。
 保護者が安心して子供を育てられ、気軽に相談できる社会になり、こうした悲惨な事件がなくなることを願ってやみません。
 また、品川児童相談所の職員は、とりわけ心理的負担は大きいことと思われます。児童虐待にかかわる職員がゆとりを持ってケースワークできる環境整備が東京都に求められています。
 児童虐待に携わる職員が心身ともに健全に働ける環境の整備なしには、子供の命は守れません。ぜひとも体制整備と職員の心のケアを重視していただくよう要望いたしまして、質問を終わります。

○岡本委員 私からは、まず先に、死亡事例等検証部会報告書についてお伺いをして、その後、条例の骨子案についてお伺いをしたいと思います。
 死亡事例の検証部会報告書を読ませていただきました。私の率直な印象は、刑事事件の時系列が不明であるということを感じました。これは私の職業柄に由来するものなのかもしれませんが、例えば二月九日から三月二日の間にこの家庭の中でどういう暴行があったのか、あるいはどのようなものだったのか、そうした家庭の中の事情が具体的にわからないということを、この報告書を読んで感じました。いつ、どのような暴行がなされたのか、それが家庭訪問時には、二月九日に家庭訪問しているわけですけど、二月九日は実際会えなかった。このときに暴行があったのかなかったのか。そのときの具体的な状況等が、家庭の中のことが、この検証報告書ではわからないということがあります。
 それは、刑事事件を今後、判決や報道等によって調査しなければわからないということだと思います。この検証報告書の目的というか位置づけというのは、あくまで行政が当時取得できた情報、そしてまた、行政側の視点に基づいて作成されたものであって、また、検証の内容としては、児童相談所側の指針やルールに照らして、そのときの行動がどうだったのかという観点でつくられたものというふうに理解をしております。
 そうした検証はもちろん重要です。あくまで行政のルールに基づいてどうだったのかということを検証するという意味では、この報告書は非常に重要だというふうに思いますが、これはこれで重要なんですが、あわせて、今後、刑事事件で具体的な事案の中身が明らかになった場合には、それも踏まえて検討してはどうかというふうに思います。
 今後、刑事裁判等の中で事実関係がより明らかになった場合に、新たに解明された事実等が発覚した場合に、都としてはどのように対応するのか、都の見解についてお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 都は、児童虐待による死亡等の未然防止策、再発防止策を早急に実施する必要があるため、司法の判断を待つ前に、東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会におきまして検証を進めているところでございます。
 一方、裁判の過程で新たな事実が明らかになる場合もあるため、都は、検証報告書が出された後も、事件の経過や判決内容の把握に努めるとともに、必要に応じて検証部会への報告を行うこととしております。
 今後、本事例について新たな事実関係が明らかになった場合には、検証部会への報告を行い、委員からの意見を踏まえ、現場におけるケースワークに生かしてまいります。

○岡本委員 ありがとうございます。刑事裁判に関しては、判決文は恐らく公表されると思います。また、報道等でも具体的な時系列が明らかになると思います。また、過去には刑事裁判の傍聴等もされていたということも伺っておりますので、傍聴によって明らかになると思いますし、刑事事件の事件記録を閲覧するということも可能だと思いますので、そうしたことに基づいて事実関係の情報を明らかにしていただきたいと思います。
 児童虐待の死亡事例について、全てにおいてそれをすべきだということを申し上げているのではありません。児童相談所が必ずしもかかわっていないような事案においては、そこまでする必要があるのかというところもあるかと思います。
 ただ、本件の事案に関しては、特に二月九日、家庭訪問をした際に拒否的な対応をされたと。これはなぜ拒否的な対応をしたのかという動機とか、このときの具体的な児童の状況はどうだったのか、仮に何かあったとすれば、児童相談所としては、この家庭訪問のときに具体的にどういう対応をすべきだったのか。五分程度で訪問を終えたということですけれど、そのときの親との対応、保護者との対応に関して、どう対応すべきだったのかというような検討をする上で、当時の具体的な家庭の中の状況ということも、事後的な検証としてはやるべきなのではないかというふうに思います。
 必ずしも、通常は刑事事件にならなければ明らかにならない事実ですので、一般的に児童相談所が常に把握できる事実ではありませんので、あくまでそれは事後的にどうだったかという個別の具体的な検討になると思います。
 この報告書は、もちろん、先ほども申し上げましたように、行政側が定めている指針やルールに基づいてどう対応すべきだったかという点で、まずもって重要なわけですけれど、あわせて二つの検証があってもいいのかなというふうに私は思っておりますので、ぜひご検討いただきたいと思います。
 刑事事件の具体的な中身を踏まえた報告書を作成すべきなのかどうなのか、それは必ずしもそうとは限らないと思いますが、先ほどもご答弁いただきましたように、現場におけるケースワークの活用という点は非常に重要だと思いますので、個別の具体的な事実関係に基づいて、そのときどういう対応をすべきだったのかという点を、ぜひケースワークに生かしていただきたいなというふうに思います。
 では、次に、具体的な時系列について質問に入らせていただきたいと思います。幾つかこの中でターニングポイントとなるべきところがあるかなというふうに思いますので、そこについてそれぞれお伺いをしたいと思います。
 平成三十年の二月一日に、C区の子供家庭支援センターが家庭訪問予定であるということを児童相談所に伝えたと。そうしたところ、都の児童相談所は訪問を待つように伝えたということですが、ここで、都の児童相談所は子供家庭支援センターに訪問を待つように伝えたのはなぜかお伺いしたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都の児童相談所は、本事例を転居元児童相談所から継続的な見守りが必要なケースとして引き継いでおり、保護者との関係づくりを優先しながら児童相談所が関与するケースと認識しておりました。
 転居元児童相談所が、本児の保護者に対し、転居先の都児童相談所がかかわることを伝えていなかったため、都児童相談所としては、保護者に連絡するよう依頼し、連絡を待っているところでございました。連絡がとれ次第、まずは都児童相談所が家庭訪問を行う予定であり、子供家庭支援センターに訪問を待つように伝えたものでございます。

○岡本委員 その点についての評価はいろいろあり得るかとは思いますが、次のターニングポイントのところについて質問をしたいと思います。
 平成三十年二月九日に都の児童相談所が家庭訪問をしたと。そのときに母親が児童相談所の訪問に拒否的であったために、五分程度で訪問を終えたということです。そこから三月二日の死亡の連絡まで、外形的に見ると、失礼ないい方であれば申しわけありませんが、都の児童相談所はこの間何をやっていたのかと、三週間放置していたのかというふうな疑問も湧いてくるところでございます。
 ですので、この二月九日から三月二日について、都の児童相談所はどのようなことを考えていたのかというところをお伺いしたいと思います。その過程で、まず、二月九日から二月二十日の小学校の説明会のところまでの間に関して、都の児童相談所はどのような対応を行っていたのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 都の児童相談所は、転居元児童相談所からの引き継ぎ資料に、けが自体は軽微という記載があったことや、児童福祉司指導措置が解除されていたことから、虐待として受理した当初から、緊急性に乏しく、保護者との関係づくりを優先するという方針でございました。
 平成三十年二月九日に家庭訪問を実施いたしましたが、実母が拒否的な対応を示したことから、これ以上強い接触を試みると、保護者との関係づくりに支障が出ると考え、本児の確認に至りませんでした。
 その後、直ちに所内協議を実施し、二月二十日の小学校説明会で子供家庭支援センターによる本児の安全確認を行うことといたしました。
 二月二十日の小学校説明会において、子供家庭支援センターが本児の安全確認を試みておりますが、確認ができなかったというものでございます。

○岡本委員 都の児童相談所の判断としては、けが自体は軽微だという情報に基づいて、親との関係づくりの方を重視していたということだと伺いました。
 では、次に、二月二十日に小学校の説明会にこの子供が出席せず、実母のみの出席で児童を確認できなかったというところから、三月二日にこの児童が亡くなったという連絡が入るまでの間、都の児童相談所はどのような対応を行っていたのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 二月二十日の小学校説明会において本児を確認できなかった以降も、都児童相談所は、保護者との関係づくりを優先するという方針を継続いたしました。
 引き続き、本児の安全確認の方法を検討していたところ、二月二十一日に転居元自治体にございます医療機関から当該家庭に係る情報提供をしたい旨の連絡があったため、この医療機関から送付される情報等も踏まえ、今後の対応を判断することといたしました。

○岡本委員 ということで、こういう経緯からしても、当時、実際に家庭の中ではどういうことが起きていたのかということを踏まえて検証することがやはり重要なんじゃないかというふうに思っております。
 この検証報告書の情報、この中で判断できる情報の話に戻りたいと思いますけれど、都が新たに策定した、ことし十月から実施されるようになった安全確認行動指針はこの事件を受けて実際に運用されるようになったわけですけれど、この安全確認行動指針がこの事件において適用されていたとしたら、結果がどうだったのか、結果が変わったのかどうかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 都は、今回の事件を受けまして、都内全ての児童相談所で児童の安全確認をより適切に行えるよう、安全確認の手法や立入調査を行う判断基準等を定めました安全確認行動指針を策定し、十月からその運用を開始しております。
 この指針では、通告後四十八時間以内に児童の安全確認ができなかった場合には、児童が特定できないケースを除き、所長が緊急安全確認会議を速やかに開催し、立入調査の実施を決定の上、警察への援助要請を行うこととしております。
 今回の事例に当てはめますと、一月三十日に都児童相談所がみずからの判断として虐待で受理した後、四十八時間以内に児童の安全確認ができなかった場合は、本指針に基づき、緊急安全確認会議を開催し、立入調査の実施など必要な法的対応の検討が行われたと考えられるところでございます。

○岡本委員 ということですので、この安全確認行動指針が新たに策定されて運用されているということは非常に重要な意義があると考えます。本件事案については、二月九日の家庭訪問ではなく、もっと前の一月三十日にさかのぼるということだと思います。
 そうすると、先ほどの二月一日に子供家庭支援センターが家庭訪問するのを待ってもらったというところに関しては、この安全確認行動指針が適用されていた場合には、異なる対応を行われていたのではないかというふうに思います。一月三十日から四十八時間以内には安全確認をするということだというふうに理解をいたしました。
 この四十八時間ルールというものに関しては、基本的には通告後とありますが、本件のように通告がない事案に関しては、児相みずからの判断で受理をした、この時点が起点になるということを、今、確認させていただきました。四十八時間の指揮は、通告、あるいは通告がない場合には児相判断による受理ということで理解をいたしました。
 次に、二月九日についてもお伺いをしたいと思います。
 児童相談は、二月九日に家庭訪問をして、保護者と本件の亡くなった子供のきょうだいに会うことはできたけれど、本件のお子さんの安全は確認できなかったと。二月九日については、既に先ほどの四十八時間ルールは過ぎているわけですけれど、もしこのときに安全確認行動指針が適用されていた場合には、この家庭訪問のときの対応というのはどのように対応していたのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 都児童相談所は、二月九日の家庭訪問で本児の安全が確認できなかったことから、訪問後、安全確認行動指針に基づきまして、速やかに緊急安全確認会議を開催し、立入調査の実施など、必要な法的対応の検討が行われたと考えられるところでございます。

○岡本委員 やはり四十八時間というルール、そして、緊急安全確認会議の開催や法的対応等、非常に重要な意義があると考えております。
 次に、警察の全件共有についても少しお伺いをしたいと思います。
 警察からの虐待案件に関しては、全て児童相談所に共有されるわけですけれど、児童相談所から警察に全ての案件を情報共有すべきなのかどうなのかというところについて議論がございます。ごく一部の都議会議員がそうした全件共有、児童相談所からの軽微な案件も含めての警察への全件共有を主張している方がごく少数いますが、それに関して質問したいと思います。
 この本件の事案において、都の児童相談所は軽微なけがだというふうに判断をしていたわけですけど、こうした事案も含めて警察に情報共有していた場合に、何か対応があったのかどうかという観点でお聞きしたいんですけれど、本件の事案に関しては警察に情報共有していなかったということが課題であったのかどうかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 本事例では、自治体をまたがる児童相談所間の引き継ぎ時の認識の相違や、転居後の児童相談所による四十八時間以内の安全確認の未実施、関係機関との連携不足などが課題として挙げられているところでございます。

○岡本委員 ということですので、私としては、この事案に関して、仮に警察に情報が共有されていたとしても、都の児童相談所のそもそもの認識の点は課題としてあるとしても、軽微な事案として児相が認識しているものを警察が単独で家庭訪問するのかといえば、それは甚だ疑問であろうというふうに思います。
 むしろ警察が行動するというよりも、やはり児童相談所が丁寧な対応を行っていくことの方が重要であろうというふうに考えます。
 全件共有に関しては、陳情がこの委員会にもかかっており、継続審議になっておりますけれど、そろそろ結論を出してもよい、出すべき時期に来ているのではないかというふうに私は思いますが、これについては、本日の時点ではこれぐらいにとどめたいと思います。
 次に、最後の質問ですが、今回の児童虐待死亡事例の検証結果を踏まえて、今後の都の取り組みについてお伺いをいたします。

○谷田少子社会対策部長 今回の報告書では、さまざまな課題のご指摘とともに、改善に向けた提言をいただいたところでございます。
 都は、今回の事件を受けまして、児童相談体制の強化に向けた緊急対策といたしまして、児童福祉司や児童心理司のさらなる増員を図るとともに、独自の安全確認行動指針を新たに策定して、全ての児童相談所でその運用を開始しております。
 また、検証結果を踏まえ、現場職員のアセスメント力や実践力の向上を図るため、来年度には、関係機関との合同による事例検討や演習型研修を充実させるとともに、ロールプレーなどにより、関係機関の機能について相互理解を深めるための研修を実施する予定でございます。
 都といたしましては、検証の結果を重く受けとめており、これを踏まえまして、子供を虐待から守るための条例案を策定し、来年の第一回定例会に提案する考えでございます。

○岡本委員 ぜひ、この検証結果を踏まえて、今後の取り組みや施策、また課題の解決に取り組んでいただきたいと思います。
 そして、条例案に、この内容も踏まえてということですので、次に、条例の骨子について質問に入らせていただきたいと思います。
 本年六月十九日の第二回定例会の本会議において、我々都民ファーストの会東京都議団は、荒木ちはる議員の代表質問において、都においても条例化を含め、児童虐待問題を幅広い視点で、子供の福祉にかかわるあらゆる機関が一丸となって取り組むべきということを述べました。それを受けて、知事から、都独自の条例を新たに策定をしていくとの答弁があり、条例の検討が開始されました。
 九月十四日から十月十三日まで一回目のパブリックコメントが行われ、十一月一日にその結果が発表されました。また、東京都児童福祉審議会において、七月三十一日の第三回本委員会で議論がなされ、八月九日、九月十二日、十一月一日の三回にわたって専門部会が開催されました。特に、十一月一日の専門部会の議事録については私としても拝読させていただきましたので、本日はその内容を踏まえて、さらに深掘りするような質疑をさせていただければと考えております。
 一部、前後するところはありますが、基本的にはこの骨子案記載の順番に沿って、逐条的に議論をしたいと思います。
 まず、一つ目の項目で、目的のところにおいて、子供の権利利益の擁護とあり、それから、その下の基本理念のところに、虐待は子供への重大な権利侵害とあります。子供の権利主体性が明確化されていることについては、専門部会の委員の先生と同様、私も評価したいと考えます。
 また、児童福祉法二条一項に類似する規定として、子供の意見の尊重と最善の利益を最優先ということを基本理念に掲げる点についても、私も評価をしたいと存じます。先ほど後藤委員の質問でも触れた点であります。
 次に、体罰の点について議論を深めたいと存じます。この条例骨子案において特に注目すべき点の一つだと思います。
 学校教育法十一条は、校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童生徒及び学生に懲戒を加えることができる、ただし、体罰を加えることはできないと規定しています。
 他方、民法八百二十二条においては、親権を行う者は、八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる、以上となっており、民法の方にはただし書きがありません。ただし、体罰を加えることはできないというただし書きはありません。
 これを比較すると、学校教育法の懲戒では体罰は禁止されているけれど、民法の親権者の懲戒では体罰は禁止されていないというふうに読めます。この点、民法の親権者の懲戒権は体罰を認めているのか、そのように読むのか、あるいは禁止も肯定もしていないと読むのかによって条例制定に大きな影響を及ぼすと考えられます。
 前者のように、民法の懲戒権は体罰を認めているというふうに解釈をすると、条例で禁止すると、法律と抵触する可能性があるということになり得ますし、他方で、後者のように禁止も肯定もしていないということであれば、他の法律や条例で禁止することが可能だという解釈になると思います。
 この点につきまして、平成十二年四月十三日の衆議院の青少年問題に関する特別委員会における田中甲議員の質疑に対して、法務省民事局長は、この民法の懲戒には体罰も場合によっては含まれると答弁していました。
 これを前提にすると、民法の懲戒権は体罰を認めていて、条例で体罰を禁止すると、法律と条例が矛盾抵触するということになりかねません。法律論として極めて重要な検討項目ですので、この点についてお伺いをしておかなければならないと思います。
 この保護者等の責務におきまして、保護者は、体罰その他の品位を傷つける形態による罰を子供に与えてはならないについて、この体罰の禁止は、民法八百二十二条の懲戒権と抵触しないのか、都の見解を伺います。

○谷田少子社会対策部長 体罰と、民法第八百二十二条による親権者の懲戒権との関係については、平成二十九年五月の衆議院厚生労働委員会において、法務副大臣が、体罰について法律上の定義、規定があるわけではない、懲戒権の行使として体罰が許容される場合があるかどうかは、体罰の定義をどのように捉えるかによることになるため、両者の関係を一概にいうのは困難と答弁しております。
 また、その一年前、平成二十八年五月の同委員会において、外務大臣政務官は、我が国の民法は、親権者が子の監護等に必要な範囲内で子を懲戒することができるものとしているが、これは国連の児童の権利委員会から指摘されているような体罰とは異なる概念であると答弁しております。
 今回の条例骨子案に盛り込んだ体罰の禁止は、子供を虐待から守り、権利利益の擁護を図る観点から解釈されるものであり、民法の懲戒権に抵触しない範囲のものと考えております。

○岡本委員 民法の懲戒権と抵触しないということをご答弁いただきました。
 先ほど私が指摘しました平成十二年の国会答弁の後、先ほどのご回答のとおり、平成二十九年五月二十六日の衆議院厚生労働委員会では、初鹿明博議員の質疑に対して、盛山正仁法務副大臣が非常に歯切れの悪い難解な答弁をしています。先ほどご答弁いただいたとおりであります。
 法務副大臣は、先ほど述べた平成十二年の法務省民事局長答弁を撤回や変更はせずに、答弁としては引き継いでいます。その上で、有形力の行使が懲戒として許容される範囲は、社会と時代の健全な社会常識により判断されることになるものと考えられております、児童虐待が社会問題として深刻化している現状や、懲戒権の範囲を明確化した平成二十三年民法改正の趣旨を踏まえると、その範囲は相当限定されることになると答弁をしております。
 ただ、ここで注意しなければならないのは、有形力の行使は相当限定されるというふうに述べているわけではありますけれど、ゼロではないというのが気にしなければならない点かと思います。
 要するに、社会と時代の健全な社会常識によって、民法の懲戒権が体罰を含むかどうかというのは、変動し得るということだと思います。そして、先ほどご答弁いただいたように、体罰の定義をどう解釈するかによっても、民法の懲戒権との関係は変動し得るということだと思います。
 平成十二年の法務省民事局長答弁でも、これは傷の方の傷害ですけど、傷害を負わせるような行為は懲戒権として許容されないことは明言されておりまして、その点は、条例で禁止することが可能ということで異論がないと思います。
 他方、傷を負わせるわけではない比較的軽微な体罰はどうなのか、それは民法の懲戒権として認められて条例で禁止できないのか、それとも、条例で禁止することができるのかといったことが法理論上問題となり得るわけで、法律論から考えると、なかなか奥の深い問題だというふうに思っております。
 児童審議会におきましても、弁護士を含む委員の先生方が、体罰や有形力の行使や、痛みを与えるとか、苦痛などといった規定の方法について、さまざまに悩みながら意見を述べておられます。
 その中で、弁護士である磯谷部会長の解釈で、学校教育法の中での体罰と、条例でいう体罰が必ずしも一致をしなくても、それぞれ、条例なり法律なりの目的によって解釈をしていけば足りるという発言をしておられる点が、私はなるほどなと思いました。第三回の専門部会の議事録の一七ページであります。
 これは確かにそのとおりで、全く同じ法律用語、文言が使われていても、目的に応じて定義や解釈は異なり得るというものは、多くの法律でよく見られる現象です。例えば、労働者という文言は、労働基準法と労働組合法で違ったように解釈されるということは、これは同じ労働者の用語であっても違うことがあるというのは、よく見られる現象であります。こうした言葉の定義の相対性を正面から認めるというのはなるほどなというふうに思うところです。
 もし、法務省のように、民法の懲戒権が一部の有形力の行使を認めていると解釈をしたとしても、東京都の条例の体罰がそれと重なるというもので、法律と抵触すると解釈すべき必然性はなく、あくまで東京都の条例の体罰はそれと異なる解釈だということも、とり得るものだということがいえます。
 また、もし民法の懲戒権が時代の流れによって一切の体罰はもはや含まないと解釈した場合には、東京都の条例は、堂々と体罰もそれと同じく一切のものだと解釈することも可能となり、このように柔軟な解釈で対応すべきだということに私も賛同いたします。
 委員の山下弁護士も、懲戒権の考え方だって時代に応じて変わってくるように、体罰というのは何だろうというのを、そのたび、そのたびに状況の変化、時代の変化に応じて柔軟に対応できるようにしておくという方法もあり得る旨、発言しておられるというのも、同様の理解だと思います。これも第三回専門部会議事録の一八ページであります。
 少し長くなってしまって申しわけありませんが、憲法学においては、合憲限定解釈という手法があります。これは、最高裁でも採用されているものです。法律や条例の規定を文字どおりに解釈すれば憲法に反する疑いがある場合に、憲法に適合するように限定して解釈するというものです。
 これも類似の側面があると思います。もし法務省のように民法の懲戒権が一部の有形力の行使を認めていると解釈したとしても、東京都の条例の体罰は上位規範である民法に適合するように、体罰の定義や範囲を限定解釈するということが可能だと思います。
 ただ、もっとも、そもそも民法の懲戒権自体が、子供の人権という憲法規範に照らして合憲限定解釈されるべきかもしれません。社会と時代の健全な社会常識に照らせば、逆に民法の懲戒権や、体罰の概念や定義や、法務省の解釈の方が、今後は修正されるべきなのかもしれません。
 先ほどご答弁いただきましたように、法務副大臣が体罰の定義との関係で、両者の関係を一概にいうのは困難という点は、こうした議論にも通じるものであり、条例上の体罰の定義をあえて固定化しないことで、法律と本条例とが矛盾抵触しないものと解釈できると考えます。
 では、この条例において、体罰の禁止を定めることはどういった目的なのかという点を次に確認しておきたいと思います。
 先ほど、まつば委員の質疑でもご説明があったかと思います。この点、専門部会の磯谷弁護士は、メッセージ性なのだということをいっておられます。何かペナルティーがつくわけでもないしということからすると、本当にこれはメッセージ性に尽きるといっておられます。他の委員の方々も、体罰禁止を条例に書き込むことのメッセージ性の高さというものを強調しておられます。
 山下弁護士の発言ですが、保護者の方から、これは虐待じゃない、しつけですといっている保護者に対して、そうではないですよ、しつけというのは、ちゃんと言葉とか議論とか、そういうものを通してやっていくことであって、そこでたたくというのはだめですよ、虐待ですよというメッセージを一番伝えたいというふうにおっしゃっております。第三回専門部会議事録の一六ページです。
 私も、このメッセージ性という点が非常に重要だと考え、結論として賛成いたします。ただ、一点、磯谷弁護士がおっしゃるような、この条項がメッセージ性だけというのは、法理論上賛同しないということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。
 条例で禁止規定を設ける以上、それはメッセージ性だけではなく、やはり、実体法に影響し得るものだと私は考えています。体罰禁止規定があるということは、それは刑法の暴行罪や傷害罪の解釈において、しつけとして正当行為だといった主張やいい逃れを許さないという意味があると思いますし、場合によっては民法の親権停止などにも影響し得る条項だと思います。
 もちろん、だからといって、親が体罰したから即逮捕とか、即親権停止ということは実務上あり得ないわけで、数多くの虐待事案の中で、実際に刑事事件になっているのはごくわずか、死亡に至るような事案しか実際には実務上刑事事件にはなっていないわけで、磯谷弁護士がおっしゃるように、刑事実務上の影響としてはほとんど影響はないかとは思いますが、理論上はやはり条例という法である以上、単なるメッセージ性にとどまらない、法的な効力を持つものだと私は考えています。
 細かい点での意見の相違はありますけれど、いずれにしても、メッセージ性というものが最も重要であるということについては私も納得するところであり、また、結論として、この条例が民法と抵触しないという結論について、私も理解し、納得し、支持するものであります。
 重要な点なので長くなりましたが、おせっかいな意見もあったかもしれませんが、次の質問からなるべく一問一答を心がけたいと思います。
 次に、体罰禁止と同様に禁止規定が設けられている、その他の品位を傷つける形態による罰について、このその他の品位を傷つける形態による罰とは、体罰以外はどのようなものを想定しているのか、具体的にお伺いします。

○谷田少子社会対策部長 子供に対する暴言など、体罰と同様に、恐怖により子供をコントロールしているだけで、子供は意味を理解できておらず、虐待にエスカレートする可能性もあるものを想定しているところでございます。

○岡本委員 ありがとうございます。
 では、次に、同じ一項目めなんですが、少し戻って、都の責務のところについてお伺いしたいと思います。
 先ほど保護者等の責務において、体罰の禁止を規定することを前提としまして、さらに、これに加えて、都の責務の項目の中に、体罰によらない子育てについて啓発することを盛り込むべきではないかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 体罰等は、恐怖により子供をコントロールしているだけで、子供は意味を理解できておらず、虐待にエスカレートする可能性もございます。また、医学的にも子供の脳に深刻な影響を及ぼすともいわれております。
 このため、条例骨子案では、子供の健やかな成長や権利利益の擁護を最優先に考え、体罰禁止について広く都民に向けて発信するため、項目を盛り込んだものでございます。
 今後、都民、区市町村等の意見も踏まえ、条例案を検討してまいります。

○岡本委員 ぜひ、この点は前向きに検討いただきたいと思います。もともと第三回専門部会の資料6、別紙には両方が例示され比較検討されていました。その過程で、より強い規定である保護者等の責務における体罰の禁止が採用された結果、都の責務の方の啓発についてはうやむやとなってしまったように思います。
 ただ、これは第三回専門部会議事録の一二ページにもあるように、両立し得る、両方とも併記というのは論理的にあり得るものだと私も考えます。その上で、保護者と都とで主体がやはり異なる以上、都の責務にも規定をすべきだと考えます。
 先ほど、これまでのご答弁の中でも、体罰によらない子育てということについて、既にもう啓発も行われているということですし、今後も行っていくということではありますけれど、やはり、禁止規定だけではなく啓発規定も重要で、両方が不可欠だというふうに思います。
 条例の規定がなくとも当然啓発はするわけですけれど、もし、啓発をしなければ禁止規定だけということになりかねません。
 うがった見方をすれば、保護者だけに責務や責任が加重されたかのように受け取られかねません。それは誤ったメッセージとして誤解されかねないものであり、都の啓発についても、ぜひ規定をしていただきまして、保護者と都と両方の規定で、体罰によらない子育てについて、規定をしっかりとしていただきたいということを強く要望いたします。
 この点は、国の法律では附帯決議になっているわけですけれど、やはり、しっかりと法的根拠を持たせるという意味で、条例に明記をしていただきたいと思います。
 では、次の質問に移ります。
 保護者等の責務の中で、妊娠した者及び乳幼児の保護者は、区市町村が行う妊産婦健診及び乳幼児健診に係る受診勧奨に応じるよう努めることについてという内容が含まれております。
 ある団体や、また、パブコメの意見には、これは努力義務ではなく端的に義務規定にすべきだといった意見も見られます。健診に来ないということは、それ自体が子供を心身ともに健やかに育成することの責任を果たしていないのではないかということも考え得るところであり、これは義務化すべきようにも思えるわけです。
 そこでお聞きしますが、この努力義務をもう一段階強めて、義務規定とすることは行き過ぎかどうか、都の見解をお伺いします。

○谷田少子社会対策部長 区市町村では、乳幼児健康診査の未受診児がいた場合には、電話や書面に加え、状況に応じて家庭訪問により保護者に受診勧奨を行っております。受診勧奨は、健診の受診につなげて子供の健康を保持するだけでなく、家庭にアプローチすることで保護者の育児不安や課題を早期に発見し、支援につなげるものでございます。こうした取り組みは、保護者の理解と協力を得ながら進めることが重要でございます。
 そのため、条例骨子案では、現場の取り組みを後押しする観点から、保護者が健康診査の受診勧奨に応じることを努力義務として盛り込んでいるところでございます。

○岡本委員 保護者との関係性や理解と協力が重要ということでした。仕事が忙しいから子供を健診に連れていかないというのは、いいわけとしてどうなのかなというふうに私は思いますが、他方で、保護者が心身の病気、例えば鬱病等の場合もあるわけで、そうした場合を考えると、義務化というのはちょっと行き過ぎではないかということも考えられます。まずは努力義務としてスタートするということは妥当なところであろうと私も考えまして、結論としてこれに賛同いたします。
 その上で、健診に来なかった家庭へのフォローは丁寧に区市町村で既に行っていただいていると伺っておりますが、引き続き、健診に来なかった家庭の丁寧なフォローや関係構築をお願いしたいと存じます。
 次の質問です。
 この保護者等の責務の対象となる健康診査は、母子保健法十二条に規定されている一歳六カ月児健診と三歳児健診に限るのか、それとも、十三条によって、区市町村が必要に応じて実施する他の健康診査も対象と考えているのか、対象の範囲についてお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 妊産婦及び乳幼児の健康診査は、その健康を確保するために必要であるとともに、妊産婦の出産、育児に対する不安や課題、不適切な養育、虐待のサインを把握し、必要な助言や支援を行う上で重要な機会でございます。
 その考えを踏まえ、条例骨子案では、保護者の責務として健康診査の受診勧奨に応じることを盛り込んでおりまして、お話の区市町村が実施する母子保健法第十三条に規定いたします妊産婦及び乳幼児の健康診査も対象と考えております。

○岡本委員 そうしますと、妊産婦の健康診査は全て十三条の方ですので、これは対象になると。また、乳幼児健診として、三、四カ月児健診、六から七カ月児健診、九から十カ月児健診も対象になると、都内の全区市町村で行われているこれらも全て対象ということを確認させていただきました。
 さらには、発達障害に関する五歳児健診というものは、六つの区市町村しか行われていないわけですけれど、それについても実施されている区市町村においては、この条例により受診勧奨に応じる努力義務が導入されるということで理解をいたしました。
 この点に関しては、ちなみに横浜市では、妊産婦健診だけが努力義務として規定されておりますが、このたび、東京都が実施されている乳幼児健診全てに関して努力義務を導入するというのは大変重要で、かつ意義が深いものだというふうに考えております。これに賛同いたします。
 次に、骨子案の2の未然防止に関してお伺いをいたします。
 予期しない妊娠に至らないための啓発というものが、虐待の未然防止の中に含まれております。これが一つの施策として含まれるのはなぜか、どういう意味で虐待の未然防止につながるのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 国の子ども虐待による死亡事例等の検証結果等についてにおきまして、予期しない妊娠は、妊娠を継続することや子供を産み育てることを前向きに受けとめられず、支援を必要とする状況や状態にあることとされております。
 また、心中以外の虐待死における実母の抱える問題のうち、予期しない妊娠の占める割合が高く、虐待による死亡事例等を防ぐためのリスクとして留意すべきポイントであることが指摘されております。
 そのため、子供や若年の男女に対し、予期しない妊娠に至らないための啓発を行うことは、将来の虐待の発生予防に資するものと考えております。

○岡本委員 大変重要な視点であり、この点も評価したいと思います。
 次に、子育て支援全般や貧困対策を進めることも、虐待の未然防止として重要と考えますが、この貧困対策の点について、都の見解をお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 虐待を未然に防止するためには、妊娠、出産から子育てに至るまで切れ目ない支援が重要でございます。
 そのため、条例骨子案では、都として、区市町村が実施する母子保健や子育て支援に関する施策について必要な支援を行うことを明記しております。その中には子供の貧困対策も含むものと考えております。

○岡本委員 一昨日の十二月十二日の本会議一般質問において、我が会派の菅原直志議員から、子供の貧困問題について、〔1〕、経済的な貧困、〔2〕、社会関係性の貧困、〔3〕、文化の貧困といった要素の指摘があったところです。
 虐待に関しても、経済的な問題、社会との関係性の希薄化や孤立化、教育や文化的な背景というのも密接に関係しているものと思います。虐待の未然防止として、貧困対策は非常に重要と考えます。今回の条例を所管している子供・子育て計画担当課が貧困問題についても所管しているということは意義深いことだと思っております。ぜひとも、さらなる貧困対策の施策展開を要望いたします。
 次の質問に入ります。
 未然防止の項目の中に、学校、放課後の活動場所等において、子供に対し、自身が守られるべき存在であることを認識するための啓発というのがありますが、この点は、先ほど藤田委員の質問とやや重複いたしますが、重要な点ですので、その具体的な方法や内容について、どのようなものを想定しているのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 都は現在、子供の権利擁護専門相談事業を実施しておりまして、子供や保護者からの悩みや訴えを相談員が電話で直接受けるとともに、深刻な相談には弁護士などの専門員が学校や関係機関を訪問して調査を行うなど、迅速かつ適切な支援を行っております。
 また、教育委員会や学校等の協力を得て、都内の小学四年生、中学一年生、高校一年生の全員を対象に電話相談PR用カードを毎年配布するとともに、学校や児童館などには、子供は一人の人として大切にされる権利があることを記載したリーフレットを配布しております。
 先月、試行的に実施したLINE相談窓口の開設に当たっては、都内各区市町村を通じまして、児童館や学童クラブなどへチラシの配布やポスターの掲示を依頼しました。
 こうした取り組みなどによりまして、子供に対する普及啓発を行ってまいります。

○岡本委員 この子供自身の認識という点に関連するものとして、もう一つ質問させていただきます。
 骨子案、3の早期発見及び早期対応についての中の通告しやすい環境づくりについて、虐待を受けた子供がみずから相談しやすい環境及び体制とありますが、これについては具体的にどのようなものを想定しているのかお伺いします。

○谷田少子社会対策部長 平成二十七年七月から児童相談所全国共通ダイヤル一八九の運用が開始され、都においても、通告相談窓口の体制を整備いたしました。
 また、子供の権利擁護専門相談事業では、携帯電話からもアクセスできるフリーダイヤルによる相談窓口や、子供からの声や意見などを二十四時間自由に入れられるメッセージダイヤルを設置しております。
 先月、児童虐待防止推進月間に合わせて、子供や保護者になじみのあるLINEを活用した相談窓口を二週間試行実施いたしました。
 今後、その状況を検証し、相談体制や児童相談所等との連携体制を整備した上で、来年度から本格的に実施する予定でございます。

○岡本委員 ありがとうございます。子供がみずからLINEを使って相談しやすいようにという環境の整備をするという点は大変重要だと思います。
 次に、この通告しやすい環境づくりの中で、通告が家庭への支援の契機でもあるということが明記されたという点に関して、私も評価をしたいと存じます。
 虐待通告は、子供を守ることのみならず、子育ての困難さを抱える家庭、保護者への支援の契機となるものという趣旨が記述されており、通告の義務だけでなく、通告が支援の契機であると明記されたことについて専門部会で評価されていますが、私もこの点を評価したいと存じます。
 次に、3の項目の早期発見及び早期対応の中の児童相談所の調査についてお伺いします。
 通告については、発見者に通告義務があります。児童虐待防止法六条や児童福祉法二十五条、また、三十三条の十二というところに通告義務があります。
 他方、児童相談所の調査の項目に、情報提供の依頼に応じて情報提供をする場合は、義務とは規定されていません。そうした場合も情報提供をすることは法令上認められるのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 個人情報保護法では、人の生命、身体等の保護のために必要がある場合で、本人の同意を得ることが困難であるときなどには、第三者に個人情報を提供できるとされております。
 しかし、一般事業者はその解釈に迷うため、児童相談所が情報の提供を求めても協力を得られないことが多いところでございます。
 また、同法では、法令に基づく場合も個人情報を提供できることが規定されております。この規定の法令には条例も含まれるとともに、情報提供そのものが義務づけられていない場合も適用されます。
 したがいまして、条例において児童相談所の調査について規定することは、一般事業者が児童相談所からの依頼に応じて情報提供できることを、より明確にするものでございます。

○岡本委員 ありがとうございます。結論として、情報提供して大丈夫なんだということを一般の方々に広く知っていただく必要があると思いますので、ぜひ、その点の周知もお願いいたします。
 ご回答いただいた内容は、個人情報保護法を参考にした法解釈を通じてだと思いますが、私としては、もっとわかりやすい形にするには、通告者及び情報提供者は、仮に保護者から訴えられたとしても責任を免れるといった免責規定、悪意や故意や、誤認させる目的などでない限りは免責されるといったような規定を端的に設けておけば、通告者や情報提供者にとって、より一層明瞭で、ちゅうちょや不安が減るのではと考えます。
 ただ、この点は民法七百九条の不法行為との関係で、民法の解釈の範疇として条例制定でできるのか、それとも、民法の権利義務を変動させるものとして条例で制定するのは難しくて、法律レベルでないと制定できないのか、これは検討する必要があるかもしれません。
 先ほど触れました平成十二年の国会の青少年特別委員会での議論におきましては、この点に関する議員立法についても議論された形跡がありますので、触れておきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 社会的養護に関して、養護施設を出た子供たちへの支援に関しては、先ほど後藤なみ委員からの質問でお伺いいたしました。この養護施設を出た子供たちの支援に関しては、私も大変重要であると考えておりますので、私からも重ねて、さらなる支援を要望いたします。
 次に、六番目の人材育成等に関して、児童相談所の運営体制を適切に確保とありますが、その適切な人数はどのように考えているのかお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉司の配置基準は、これまで人口おおむね四万人から七万人までに対して一人とされていたものが、平成二十八年の政令改正によりまして、平成三十一年四月以降は、各児童相談所の管轄人口四万人に対して一人が標準とされ、これに人口当たりの虐待相談対応件数に応じた人数を上乗せすることとされました。
 そのため、必要な児童福祉司数は毎年変動いたしますが、仮に平成二十七年の国勢調査の人口、それから、二十九年度の児童相談対応件数等を用いて算出いたしますと、児童福祉司の必要人数は三百七十二人でございます。
 児童福祉司には高い専門性が求められるため、必要な人材確保はもとより、計画的に人材育成していくことも重要でございます。
 今後とも、こうしたことも踏まえまして、児童福祉司の確保と育成を図ってまいります。

○岡本委員 よろしくお願いいたします。
 皆様お疲れかと思いますが、最後の質問に入ります。
 条例の名称についてです。
 先行して子供の虐待に関して条例制定している他の県市では、多くが子供を虐待から守る条例という名称をとっております。千葉県、愛知県、岡山県、大阪府、和歌山県、横浜市、いずれも子供を虐待から守ると、守るという名称の条例となっております。
 私が草案を書きました東京都子どもを受動喫煙から守る条例も、もともとこれらの他の県市の子供を虐待から守る条例を参考に検討、研究し、それらをベースにしていたという経緯から、受動喫煙から守るという条例の名称になったという経緯があります。
 この点、専門部会におきましては、子供は守る対象だけではなく、子供が権利の主体だということ、それから、子供を守るだけじゃなく、家庭も守るなどの意見が出て、子供を虐待から守る条例というよりも、子供への虐待の防止等に関する条例という名称の方が是とされたという経緯であります。この守るというメッセージよりも客観的、中立的な表現が是とされたものと考えられます。私としては、この専門部会の意見を尊重したいと結論としては考えております。
 なお、東京都子どもを受動喫煙から守る条例に関していえば、今も子供の受動喫煙防止条例というニュートラルな名称よりも、やはり、子供を受動喫煙から守るというメッセージ性の強い条例名称の方がよいと思っておりますので、念のためここで表明させていただきます。
 次に、条例の名称の子供の漢字の表記に関してでありますが、子供を漢字表記と、子を漢字で書いて供を平仮名で書くという表記がありますが、先ほど申し上げました五つの府県で平仮名まじりの記載がなされております。そして、横浜市だけが子供を漢字で表記しております。
 東京都も、以前は公文書や組織名称で平仮名まじりの子どもと表記していたと伺っておりますが、漢字に変更した時期及び考え方について、改めてお伺いいたします。

○谷田少子社会対策部長 子供の表記につきましては、平成二十一年度に常用漢字表で定められた漢字を徹底することといたしまして、現在の表記となっているものでございます。

○岡本委員 先ほど藤田委員は、供は平仮名にすべきだと強く要望されましたが、私としては特にこだわりはございません。ただ、既に制定してある子どもを受動喫煙から守る条例におきましては、今の平仮名のままで、特に変更すべき必要はないと考えております。(「平仮名がいい」「何で平仮名」と呼ぶ者あり)それはほかの委員の皆さん、ご議論いただいても結構ですが、私としては特に……。
 最後に、意見を述べたいと思います。
 この条例に関しましては、二度のパブコメを実施されるということですし、また、骨子段階でこのように委員会質疑を経ているなど、他の条例よりも審議や検討のプロセスを経ているということにつきまして、深く感謝を申し上げます。
 そして、この条例につきまして検討を重ねておられる都の職員の方々、また、児童福祉審議会の専門の委員の先生方、また、パブコメ等で意見を寄せられた多くの方々に敬意を表しまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○伊藤(こ)委員 それでは、私からはまず、十一月十四日に公表され、本委員会に報告をされました平成三十年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書について質問をしたいと思います。
 本報告書のはじめにの冒頭のところには、平成三十年三月二日、香川県から東京都に転居してきた五歳女児が、保護者からの虐待により死亡する事件が発生した、県都をまたがる転居ケースであり、それぞれの児童相談所及び関係機関が関与していたにもかかわらず、児童の命を守ることができなかったと、こうはじめにに書かれております。
 そしてまた、この検証報告書の最後にも同じように、おわりにのところには、今回の事例では、児童相談所及び地域の複数の関係機関がかかわっていたにもかかわらず、子供からのSOSを受けとめることができずに、尊い命が奪われた、このことを重く受けとめ、子供の命は社会全体で守るということを改めて肝に銘じなければならない、こうおわりにに書かれております。
 私は、検証報告書を読ませていただいて、改めて、本日も亡くなられた船戸結愛ちゃんのご冥福を祈るとともに、二度と同じ過ちを繰り返さないために--同じ過ちというのは、今読み上げたはじめにとおわりにの中にある、さまざまな関係機関がかかわっていたにもかかわらず守れなかったと、これが過ちだというふうに思います。これを繰り返さないために、本検証報告書にある未然防止策、そして、再発防止策を早急に具現化していかなければならないと思います。
 都議会公明党はこれまで、都が制定する児童虐待防止条例について、単なる理念条例ではなく、検証報告の内容を生かした実効性のある条例にすべきだということを訴えてまいりました。
 そこでまず伺いますけれども、本虐待死亡事件は転居ケースに当たるわけでありますけれども、転居ケースにおける全国ルールの位置づけとその内容、また、今回のケースでは、この全国ルールのどの部分にそごが生じたのか、改めて伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 全国ルールとは、他自治体の児童相談所へのケース移管及び情報提供等について、平成十九年に全国児童相談所長会において申し合わせた全国統一のルールでございまして、国通知である児童相談所運営指針においても、この全国ルールを踏まえ対応することとされております。
 全国ルールにおいてケース移管を行うのは、援助方針が決定していない場合を除き、児童福祉司指導、または継続指導中のケースと定められておりまして、移管の完了後、少なくとも一カ月間は、移管元の児童相談所の援助方針を継続することとなっております。
 報告書にもありますとおり、A県児童相談所は転居に伴い児童福祉司指導措置を解除し、引き続きの継続指導としていたため、移管として処理しておりました。
 一方、都の児童相談所は、引き継ぎの資料に継続指導との記載がなく口頭での補足もなかったため、継続指導中のケースであると認識することができず、情報提供として受けとめたところでございます。
 その結果、児童相談所間の認識にずれが生じたものでございます。

○伊藤(こ)委員 答弁いただきましたけれども、手元に、多分、議員の皆さんはみんな児童相談所のしおりを持っていらっしゃると思います。この中に、児童相談の流れという一覧があります。この中に今答弁いただいた児童福祉司指導というのが、どういう流れでそれがなされているのか、いわゆる行政指導の一部になると思いますけれども、そして、お話にもあった継続指導というのもあります。
 香川県では、この児童福祉司指導--行政処分ですね、これが解除されたイコール即座にこれは継続指導になると、こういう流れになっている。ところが東京都の場合は、児童福祉司指導が解除されると、一旦それはそれで終わりで、そして、継続指導にするのかどうかをもう一回協議すると。つまり、都県をまたいでここのルールがきちんと共通認識されていなかったところに、私はそごが生じたのではないか、このように思います。
 こうした観点から、厚労省がこの全国ルールを徹底する通知を出したということでありますけれども、私は、これは基本中の基本だと思います。最も重要な部分で、こっちの県ではこう思っていた、都ではこう思っていた、こんなことがあってはならないというふうに申し上げておきたいと思います。
 今回の転居ケースについてでありますけれども、この全国ルールが生かされなかったという教訓、これが都の条例骨子案にはどのように反映しているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 検証報告では、転居は、家族がそれまでの社会資源から切れ、新たな社会資源を必要とする点、家族が地域で孤立する、あるいは家族関係が悪化する可能性がある点などを考慮して、ケースのリスクを判断することが必要と指摘されております。
 こうした指摘を踏まえまして、条例骨子案では、転居時の適切な対応を徹底するため、他の児童相談所から事案の移管を受け、または他の児童相談所に対し事案の移管を行う場合、緊急性や重症度に応じ的確な引き継ぎを実施することを盛り込んでおります。

○伊藤(こ)委員 この守られなかったというか、そごがあった全国ルール、絶対にこうしたことがないようにしていただきたい、このように思います。
 この検証報告の中には、C区、つまり目黒区でありますけど--の子供家庭支援センターは、受理した当時、本児の安全確認を優先すべきという認識で対応していたけれども、先に児童相談所が家庭訪問を行うので、子供家庭支援センターの家庭訪問は待つようにとの方針を受けて、それ以降は児童相談所の判断待ちになってしまったとありました。
 この時点で、児童相談所よりも子供家庭支援センターの方が危機感が強かった、危機感が高かった、この検証報告で私はそのように判断をいたします。
 今回のケースにおいて、児童相談所と子供家庭支援センターとの間でどのような課題があったのか、また、児童相談所と子供家庭支援センターとの間に、大変申しわけないいい方だけれども、児相が上、子家センが下、こういう上下関係があったため連携がとりにくいという状況があったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○谷田少子社会対策部長 都児童相談所は、子供家庭支援センターから家庭訪問予定との連絡を受けた際、報告書にありますA県児童相談所に、保護者への連絡を依頼中であり、連絡がつき次第、まずは都児童相談所が家庭訪問を行うので少し待つように伝えたものでございます。
 その際、都の児童相談所は、子供家庭支援センターが家庭訪問を急ぐ理由を確認しませんでした。また、子供家庭支援センターは、児童相談所が主担当との認識から、それ以降、お話ありましたように、都児童相談所の判断待ちになったというものでございます。

○伊藤(こ)委員 そのすれ違いというか、判断の違いというかはわかりましたけれども、先ほど申し上げたとおり、都の児童相談所が上、区の子家センは下という、この関係があってはならないと私は思いますが、私も現場にいてたびたびこの経験はしました、正直に申し上げると。
 この児童相談所と子供家庭支援センターとの間に上下関係など連携をとりにくい状況があったこと、これは事実だと思います。
 こうした教訓がこの条例骨子案にどのように反映しているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 条例骨子案では、東京の児童相談体制において、児童相談所と子供家庭支援センターは車の両輪を成しているという考えに立ちまして、子供家庭支援センターについて定義いたしますとともに、子供家庭支援センターと児童相談所とが密接に連携、協働するということを盛り込んでいるところでございます。

○伊藤(こ)委員 子供の命を守る、先ほど申し上げたとおり、このはじめに、そしてまた、おわりにに書いてあったとおりであります。どっちが上とか、どっちが下とかないと思います。危機感が一番高いところ、危機感を一番強く持っているところ、私は、その意見を、そして考えをしっかりと取り上げていく、こうした姿勢をつくっていっていただきたい、このように思います。
 次いで、東京都子供への虐待の防止等に関する条例骨子案について質問をいたします。
 都議会公明党は、本会議質問、そしてまた本委員会質問において、一貫して都に求めてきたことは、一つまず、折あるごとに、子供本人、子供全員に会う全件面談を徹底すること、二つ目に、在宅で子育てをしている家庭が社会から孤立することがないよう、在宅子育て支援を充実すること、三つ目に、児童相談全般にかかわる専門的知識と経験を備えた人材の育成と確保をしっかりとやること、そして、四つ目に、関係機関同士の連携の強化を図ること、まだまだいっぱいありますけれども、こうしたことを主に求めてまいりました。こうしたことが、本条例骨子案にどのように反映されているのか、確認を含めて質問をいたします。
 まず、改めて、なぜこの条例をつくるのか、その意義について、都の考えを伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都内の虐待相談対応件数は年々増加しておりまして、ことし三月には死亡に至る痛ましい事例も発生したところでございます。虐待は子供への重大な権利侵害であり、防止しなければなりません。防止のためには、行政、都民、関係機関等が一体となり、虐待防止の認識を共有し、社会全体で取り組みを一層進めることが必要でございます。
 こうしたことから、核家族化や近隣関係の希薄化等、都の実情を踏まえまして、法の規定を具体化し、その趣旨をより浸透させるとともに、虐待防止に向けた取り組みを広く都民に向けて発信し、現場の支援活動を後押しする新たな条例制定に向け検討を行っているものでございます。
 これらを踏まえまして、条例骨子案には、都民が虐待通告をためらわないよう、通告は家庭への支援にもつながるという趣旨を周知すること、児童相談所からコンビニエンスストアや集合住宅の管理会社等の一般事業者に対して、情報提供の依頼を行うことなどを盛り込んでいるところでございます。

○伊藤(こ)委員 都議会公明党はこれまでも、都議会公明党として視察をした明石市の取り組みや、また、私の地元の品川区の取り組みを取り上げながら、子供本人と全件面談することの重要性について訴えてまいりましたけれども、この条例案の中には、その件についてどのように反映されているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 区市町村では、母子保健法に基づき乳幼児健康診査を実施しており、未受診児がいた場合には、電話や書面に加え、状況に応じて家庭訪問によりまして保護者に対し受診を勧奨しております。
 こうした取り組みは、お話の全件面談と同様、全ての健診対象者等にアプローチし、子供の健康を保持するとともに、保護者の育児不安や課題を早期に発見し、支援につなげ、虐待の未然防止を図るものでございます。
 条例骨子案では、保護者は区市町村が行う健康診査に係る受診勧奨に応じるよう努めることを盛り込んでいるところでございます。

○伊藤(こ)委員 どうか、都はこれまで以上に、この全件面談の重要性を発信していただきたいし、これを第一義的に最前線で行うのは区市町村でありますので、区市町村への支援を強化していただきたい、このように要望させていただきます。
 健診の受診勧奨と全件面談、これは重要だと申し上げましたけれども、これはどうしても節々であります。なので、合間があくわけであります。この合間の期間も大変に重要であります。
 少し前に調べてみたところ、実は待機児童の問題もありますけれども、ゼロ、一歳児で保育園、この保育を利用している子供さんというのは、約ですけれども、四割、つまり、ゼロ、一歳で見ると六割の子供たちは在宅子育ての世帯であります。
 この在宅子育ての世帯で、今申し上げたように、この健診の合間合間、ここが大事であって、この在宅子育ての世帯でどこにも属していない母子、あるいは父子、どこにも属していない世帯、これが私は大事なんだということで申し上げたわけであります。
 そこで、繰り返し伺いますけれども、在宅子育て支援の充実について、この条例の中にどのように反映されているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都は、区市町村が実施いたします子育て広場や子供家庭支援センターでの育児相談のほか、育児支援ヘルパーの派遣など、在宅子育て家庭を支えるさまざまな取り組みを支援しております。
 また、今年度から、育児負担の大きい一歳未満の子供を在宅で育てる家庭を対象にいたしまして、区市町村を通じて家事支援サービスの利用を支援する在宅子育てサポート事業を実施するとともに、必要なときにショートステイが利用できるよう、当日受け入れが可能な体制を整備する区市町村への支援も開始しております。
 条例骨子案では、都として、区市町村の子育て支援策等を支援することを明記したところでございます。

○伊藤(こ)委員 先ほどの健診と同じように、最前線で在宅子育て支援を行うのは区市町村であります。都として、これまで以上に全力で在宅子育て支援、これを応援していただきたい、このように要望をしておきます。
 続きまして、児童相談業務は本当に高い専門性と経験が必要であります。
 都は、現状でも児童福祉司や児童心理司が足りないという人員体制でありますけれども、計画的な確保と育成を条例に盛り込むように都議会公明党は本会議で求めてきたところですけれども、この条例骨子案には、どのようにこの件について反映されているのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都はこれまで、児童福祉司や児童心理司の増員、人材育成等を担う専門課長や児童福祉司のOBの配置等、児童相談所の体制を強化しておりまして、九月の緊急対策では、児童福祉司や児童心理司のさらなる増員を図ったところでございます。
 また、児童福祉司等には高い専門性が求められるため、採用後も経験年数等に応じて計画的に人材育成を行っております。
 さらに、子供家庭支援センターへの虐待対策ワーカーや虐待対策コーディネーターの配置を進めるとともに、センター職員を対象とした専門的な研修を実施することで、区市町村の虐待対応力の強化を支援しております。
 条例骨子案では、専門的な知識及び技術を有する職員を育成し、児童相談所の運営体制を適切に確保することや、区市町村及び関係機関等の人材育成を図るための研修等の実施につきまして盛り込んでいるところでございます。

○伊藤(こ)委員 このたびの事件を受け、都は、九月に児童相談所の体制の強化、そして、安全確認行動指針の策定や、全庁一丸となった虐待防止対策の推進等が盛り込まれた緊急対策を発表するなど、さまざまな対応を行っているところであります。
 こうした取り組みは、関係機関だけでなくて広く都民にも、都としてこういう取り組みをするんだと、しているんだということを、もっと積極的にわかりやすく周知すべきであると考えますけれども、都の見解を伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 都は、九月に緊急対策を発表いたしまして、ホームページ等を通じて児童相談所の人員増、LINE相談のトライアル実施などを周知してまいりました。
 また、通告の手順や通告先、虐待に気づくためのチェックリストを掲載いたしましたリーフレットを作成し、各局を通じて関係者や関係団体に配布するなど、全庁一丸となった周知を行っております。
 児童虐待防止のためには、行政、都民、関係機関が一体となって取り組む必要があり、今後とも、児童相談体制の強化に向けた総合的な取り組みについて、多様な媒体を使いながら積極的な普及啓発を実施してまいります。

○伊藤(こ)委員 条例骨子案の中には保護者等の責務、これがうたわれております。保護者は、体罰を子供に与えてはならないというふうに書いてあるわけでありますけれども、この保護者の体罰禁止は、家庭への過度な介入ではないかという意見も聞こえてきます。
 この点について、都の見解を伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 体罰等は、恐怖により子供をコントロールしているだけで、子供は意味を理解できておらず、虐待にエスカレートする可能性もございます。また、医学的にも子供の脳に深刻な影響を及ぼすともいわれております。
 また、児童福祉審議会の審議やパブリックコメントにおきまして、虐待の未然防止に向け体罰禁止を明記すべきとのご意見もいただきました。
 ことし三月に発生した虐待死亡事例の検証報告におきましても、体罰によらない子育ての重要性について広く啓発に努めることとの提言もいただきました。
 こうしたことを踏まえまして、条例骨子案では、何よりも子供の健やかな成長や権利利益の擁護を最優先に考え、保護者による体罰禁止を盛り込んだところでございます。

○伊藤(こ)委員 知事も発言の中で、体罰によらない子育て、このフレーズを何度もお使いになられます。これまでの議論の中でも触れてまいりましたけれども、どこまでがしつけで、どこまでが体罰で、どこからが虐待になるのか、これは定義づけをするのは非常に難しいことだろうと思いますけれども、条例として制定していくに当たっては、都として、これはきちんと整理をしなきゃならないことだろうというふうに申し上げたいと思います。
 しつけ、体罰、そして、それがエスカレートして虐待、私は、その背景をちょっと考えてみたいと思います。
 この虐待、体罰を行ってしまう保護者、大人、まず考えられるのは、その背景にあるものは育成歴が一つはあるんだろうなと。その親御さんもそのように育てられてこられた、そのように叱られてきた、そのようにぶたれてきた、そういう育成歴もあると思います。
 また、保護者のご自身の感情のコントロール、これが非常に難しいという側面を持った方なのかな、そんな背景もあるのかなとも思います。
 三つ目に考えられるのは、そもそも体罰によらない子育てってどうしていいのかわからない、こういう方も私はいると思います。
 先日の事務事業のときにも、元児童センター指導員時代の話をさせていただきましたけれども、在宅子育て支援の一環として、幼児クラブというのをやっております。ゼロ歳から幼稚園に上がる前のお子さんと一緒に幼児クラブをやるんですけど、私は二歳、三歳のクラスの子供たちと一緒に運動会を企画して、そして、あえて土曜日にその運動会をやりました。なぜならば、お父さんがもしお仕事がお休みであれば出てきてくれて、その幼児クラブで頑張っている子供の様子や、何よりもそこに頑張って連れてきているお母さんのことを見てほしくて、土曜日にこの運動会をやりました。
 運動会ですので、いろんな運動をしたり、こう踊ったりするわけですけど、ある場面で、二歳半ぐらいの男の子でしたけど、転んで膝をすりむいて泣き始めました。痛い、痛いと泣くんですね。で、お父さんは一緒に来てくれていまして、そのお父さんは、その子の手をぎゅうっと握って、痛くない、痛くないと。でも、子供は痛いと泣いているんです。お父さんは痛くない、男だろうって、こうやっているんですね。でも、よくある光景です、これは。
 私は、お父さんにちょっと待ってといって、しゃがんで子供と同じ目線にして、その子が痛いと泣いているものですから、痛いねといって、泣き顔ですけどね、痛いね、ほんとに痛いねっていいました。それを何十秒かやっていたら、その子はぴたっと泣くのをやめました。そのやりとりを見ていたお父さんが、そうかって、そういえばいいのか、わかったっていったんです。それ以降は、強く手を握って、泣くな、泣くなってやらなかったです。ちゃんとティッシュで拭いてあげて、ばんそうこうをもらいにいって、やっておりました。
 このお父さんがやっていたことは決して体罰や虐待、暴言ではないと思いますけれども、この虐待によらない子育て、これは大事なことだと思いますけど、今まで、都として、このことについてどのように発信をしてきたのか、また、条例の制定後どのように実行していくのか伺いたいと思います。

○谷田少子社会対策部長 国は、体罰によらない子育てを推進するために、啓発用のリーフレットで愛の鞭ゼロ作戦を作成いたしました。
 都は、区市町村に対しまして、このリーフレットを活用して、妊娠届け出時の面談や、妊産婦や乳幼児の健康診査、両親学級、育児相談等のさまざまな機会を捉えまして、体罰によらない子育てについて啓発を行うよう周知を行っております。
 今後とも、体罰によらない子育ての重要性につきまして、啓発を行っていくところでございます。

○伊藤(こ)委員 最後、私から要望させていただきますけれども、今答弁の中にあった、国が啓発用のリーフレットとして配っている愛の鞭ゼロ作戦、これを読ませていただきました。子育てに体罰や暴言を使わない、使うとどういう影響があるのかということが書いてあります。それから、子供が親に恐怖を持つとSOSを伝えられない子供になっちゃうよ、それはどうしてそうなのかということが書いてあります。私は、これからはこういうことも大事なんだろうと思います。
 だけれども、体罰によらない子育てというのはどういう方法があるのか、これは学校でも教えてくれません。誰も教えてくれません。子育てについて、体罰によらない子育て、例えば子供たちは発達年齢、発達段階の中で、ゼロ、一歳のときにはこういう特徴があるよ、だから、こういう行動をしたとき、さっきも転んで膝をすりむいた話をしましたけれども、こういうときにはこういうふうに話しかけるといいよ、こういうふうにやるといいよというようなことを、発達年齢、発達段階ごとにその特性を例示しながら、体罰によらない子育てについて、私は、都にぜひとも工夫して、こうしたことを発信していただきたい、このことを申し上げて質問を終わります。

○伊藤(し)委員 それでは、私から、児童虐待防止条例骨子案について伺います。
 都内の児童虐待への対応件数は年々増加し、平成二十九年度は一万三千七百七件と、十年前の四倍になっており、また、ことし三月には、目黒区内の五歳女児が虐待により死亡する事件が発生いたしました。
 都も、児童相談所を中心に関係機関とも連携しながら、児童虐待の防止に取り組んでおりますが、二度と痛ましい事件が起きないよう、虐待防止に向けて全力で取り組まなければならないと思っております。
 そこでまず、条例制定に向けたこれまでの経過や今後の流れを確認のため伺います。

○谷田少子社会対策部長 条例案の検討に当たりまして、ことし七月から児童福祉審議会におきまして審議を開始し、十一月までに全体会を二回、専門部会を三回、それぞれ開催いたしました。
 九月には、条例の基本的な考え方をまとめ、パブリックコメントを実施し、その結果、三百三十五件の意見が寄せられました。また、これと並行いたしまして、区市町村との意見交換等も実施いたしました。十一月には、いただいた意見等を踏まえ、条例骨子案を取りまとめたところでございます。
 骨子案については、児童福祉関係者、保健医療関係者、教育関係者、弁護士会、虐待防止に取り組む民間団体など、さまざまな関係機関で構成される協議会で意見を聞いたところでございます。
 現在、改めてパブリックコメントを実施しております。
 今月中には、区市町村との意見交換も実施いたします。
 今後、いただいた意見も踏まえまして、条例案を検討いたしまして、平成三十一年第一回都議会定例会に条例案を提出する予定でございます。

○伊藤(し)委員 条例制定に向けたこれまでの経過や今後の流れを確認いたしました。都民の関心も極めて高い条例となりますので、さまざまな角度からの検討が大事であると思っております。
 ご答弁によりますと、児童福祉審議会での審議は、全体会と条例検討部会で合計五回、条例の基本的な考え方の時点で一回目の都民意見の募集、また、現場で実際に対応するパートナーでもある市区町村との意見交換も行ってきたとのことであります。
 それでは、児童福祉審議会の審議の論点や、条例の基本的な考え方に対する都民の意見、また、区市町村との意見交換の結果について、どのようなものがあったのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童福祉審議会の審議では、健康診査の未受診者に保健所等がアプローチしやすくするため、妊産婦や乳幼児健診の受診に係る規定が必要であること、保護者の体罰について禁止すべきとする一方、誤解により子育てが萎縮するおそれがあることなどの意見がございました。
 また、条例の基本的な考え方に係るパブリックコメントでは、妊産婦や保護者が孤立しないよう子育て支援が重要であること、あるいは都民が虐待通告をためらわないような工夫や、民間事業者が児童相談所に情報提供しやすくなる規定が必要などの意見がございました。
 区市町村との意見交換でございますが、体罰によらない子育てを徹底すべき、未然防止の観点から母子保健施策の推進が重要、通告をためらわないことにつながる規定が必要などの意見がございました。
 こうした意見も踏まえまして、都として骨子案を取りまとめたものでございます。

○伊藤(し)委員 条例骨子案の作成までの意見等について確認をいたしました。それをもとに骨子案ができたということでありますので、具体的に内容について何点か伺います。
 まず、早期発見、早期対応、虐待通告について伺います。
 都民のためらいを緩和し、虐待通告を促進するため、通告は子供を守ることのみならず、家庭への支援にもつながるものであることを発信するため、虐待通告の趣旨を踏まえた通告義務の履行を明記しました。これも必要なことと理解できますが、都民の立場からすれば、どこにどのように通告すればいいのかわからない方も多いと思います。
 条例上は通告の義務となるようですが、実際にわかりやすく一般都民にどのように周知するのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 都はこれまで、児童虐待防止推進月間の十一月を中心に、都民から児童虐待防止への取り組みに対する深い関心と理解を得ることができるよう、区市町村や関係団体と連携したキャンペーンの実施や、交通機関や駅構内における広告掲示など、児童虐待防止に対する認知度の向上を図ってまいりました。
 また、通告の手順や通告先、虐待に気づくためのチェックリストを掲載したリーフレットなどを作成しまして、各局を通じて関係者や関係団体に配布するなど、幅広く周知を行っております。
 あわせて、児童相談所全国共通ダイヤル一八九をより多くの都民に知ってもらい、より活用していただくため、どのようなときに一八九を使うべきか等をわかりやすく発信する特設ホームページも開設いたしました。
 児童虐待防止のためには、行政、都民、関係機関が一体となって取り組む必要があり、誰もが迷わずに通告や相談できるよう、通告先や方法などを含め、今後とも、積極的に普及啓発に努めてまいります。

○伊藤(し)委員 虐待通告は子供を守ることであり、家庭への支援の契機でもあることを踏まえと骨子案にもありますが、今ご答弁にあったような内容も含めて、着実に周知に努めていただきたいと思います。
 次に、児童相談所の情報提供依頼、調査の円滑化について伺います。
 福祉などの関係機関以外のスーパー、コンビニ、鉄道会社、集合住宅の管理会社など、民間事業者も適切に情報提供できるよう児童相談所の情報提供依頼を明記しました。
 これはどのような理由で盛り込んだのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所は、虐待の早期発見、早期対応や、家庭への支援を進めるに当たりまして、子供や保護者等の状況を的確に把握することが重要でございます。
 児童虐待防止法では、子供や保護者等の状況等に関する情報について、区市町村の機関や、子供の医療、福祉、または教育に関係する機関は、児童相談所からの求めに応じて、必要な限度で提供できることが規定されております。
 これらの機関以外の一般事業者も、子供や保護者等に関する情報を保有しており、これまでも児童相談所は情報提供を求めることがございますが、個人情報であることを理由に協力を得られないことも多いのが実情でございます。
 こうしたことを踏まえまして、条例骨子案では、一般事業者が児童相談所からの求めに応じて適切に情報提供できるよう、児童相談所の調査に関する項目を盛り込んだものでございます。

○伊藤(し)委員 個人情報保護に対する意識が以前と比べて格段に高くなっています。まして、個人や家庭などプライバシーに関する情報提供は、極めて皆さんも抵抗というか、壁があるんだろうと思います。
 虐待防止や問題のある家庭の早期支援につながる旨の周知をしっかりして、対応していくべきと考えております。
 条例骨子案の最後に、人材育成等について伺います。
 先ほどいろんな方からの質疑や答弁にもありましたが、今、児童相談所の児童福祉司や児童心理司の増員を図って、虐待対策班の設置や、児童相談所の体制の強化を行っているというのは聞いておりますが、さらなる児童相談所の人材育成と確保が必要と考えております。
 条例骨子案に、あえてこの内容を盛り込んだ意図は何なのか伺います。

○谷田少子社会対策部長 児童相談所は、深刻化する虐待への対応を初め、里親等委託の推進、児童養護施設等に入所した子供への継続的な支援等を適切に行わなければならないものでございます。
 そのため、相談支援に係る専門的な知識や技術を持った職員を育成し、児童相談所の運営体制を適切に確保することについて、条例骨子案に盛り込んだものでございます。

○伊藤(し)委員 それでは、最後に条例の実効性について伺います。
 今後、骨子案の意見募集を行い、並行して市区町村との意見交換も行い、骨子案を条例案に固めていくことになります。
 今後、条例の実効性を担保するため、施策や仕組みをまたつくり上げていくことになると思いますが、どのように取り組むのか最後に伺い、質問を終わります。

○谷田少子社会対策部長 条例骨子案では、基本理念といたしまして、虐待は子供への重大な権利侵害であり、心身の健やかな成長を阻害するとの認識のもと、これを社会全体で防止することを掲げております。
 この基本理念にのっとり、体罰禁止など、都独自に広く都民に発信する項目や、児童相談所から一般事業者に対する情報提供の依頼など、現場の支援活動を後押しする項目を盛り込みました。
 また、都の責務として、虐待の防止に関する施策を実施するとともに、必要な体制を整備することを明記したものでございます。
 さらに、条例の実効性を高めるためには、社会全体に広く普及啓発し、関係者との共通認識を図っていくことが重要でありまして、今後、都民や区市町村等の意見を聞きながら条例案を取りまとめていくところでございます。

○栗林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○栗林委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたします。
 以上で福祉保健局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時五十八分散会

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