委員長 | 伊藤こういち君 |
副委員長 | 桐山ひとみ君 |
副委員長 | 和泉なおみ君 |
理事 | 遠藤 守君 |
理事 | 小宮あんり君 |
理事 | 山内 晃君 |
古城まさお君 | |
藤田りょうこ君 | |
龍円あいり君 | |
鳥居こうすけ君 | |
つじの栄作君 | |
舟坂ちかお君 | |
高橋 信博君 | |
岡本こうき君 |
欠席委員 なし
出席説明員福祉保健局 | 局長 | 梶原 洋君 |
次長理事兼務 | 山岸 徳男君 | |
技監 | 笹井 敬子君 | |
総務部長 | 後藤 啓志君 | |
指導監査部長 | 村田 由佳君 | |
医療政策部長 | 西山 智之君 | |
保健政策部長 | 矢内真理子君 | |
生活福祉部長 | 坂本 尚史君 | |
高齢社会対策部長 | 粉川 貴司君 | |
少子社会対策部長 | 松山 祐一君 | |
障害者施策推進部長 | 高原 俊幸君 | |
健康安全部長 | 高橋 博則君 | |
企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 | 奈良部瑞枝君 | |
事業推進担当部長 | 古賀 元浩君 | |
医療改革推進担当部長 | 成田 友代君 | |
医療政策担当部長 | 矢沢 知子君 | |
地域保健担当部長 | 本多由紀子君 | |
生活支援担当部長 | 横手裕三子君 | |
施設調整担当部長 | 稲葉 薫君 | |
子供・子育て施策推進担当部長 | 加藤 みほ君 | |
障害者医療担当部長 | 石黒 雅浩君 | |
食品医薬品安全担当部長 | 仁科 彰則君 | |
感染症危機管理担当部長 | 吉田 道彦君 | |
病院経営本部 | 本部長 | 内藤 淳君 |
経営企画部長 | 児玉英一郎君 | |
サービス推進部長 | 谷田 治君 | |
経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 | 大久保達也君 | |
計画調整担当部長 | 末村 智子君 |
本日の会議に付した事件
病院経営本部関係
報告事項(質疑)
・広尾病院整備基本構想(案)について
・私債権の放棄について
福祉保健局関係
契約議案の調査
・第百四十四号議案 民間社会福祉施設建替促進施設(二十九)新築工事請負契約
・第百四十五号議案 東京都清瀬喜望園・清瀬療護園(二十九)解体工事請負契約
報告事項(質疑)
・私債権の放棄について
・平成二十八年度地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター業務実績評価について
・都立障害者支援施設の民間移譲について
付託議案の審査(質疑)
・第百五十八号議案 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター中期目標について
・第百五十九号議案 備蓄用抗インフルエンザウイルス薬の買入れについて
・第百六十号議案 備蓄用抗インフルエンザウイルス薬の売払いについて
付託議案の審査(説明・質疑)
・議員提出議案第十七号 東京都子どもを受動喫煙から守る条例
○伊藤委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
初めに、契約議案について申し上げます。
契約議案は財政委員会に付託されておりますが、本委員会所管分について、議長から調査依頼がありました。
本件については、調査結果を財政委員長に報告することになっております。
公文の写しはお手元に配布してあります。
朗読は省略いたします。
平成二十九年九月二十七日
東京都議会議長 尾崎 大介
厚生委員長 伊藤こういち殿
契約議案の調査について(依頼)
左記の議案について調査し、財政委員長にご報告願います。
記
1 調査議案
第百四十四号議案 民間社会福祉施設建替促進施設(二十九)新築工事請負契約
第百四十五号議案 東京都清瀬喜望園・清瀬療護園(二十九)解体工事請負契約
2 提出期限 平成二十九年十月二日(月)
○伊藤委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、福祉保健局関係の契約議案の調査及び付託議案の審査並びに病院経営本部及び福祉保健局関係の報告事項に対する質疑を行います。
これより病院経営本部関係に入ります。
報告事項、広尾病院整備基本構想(案)について外一件に対する質疑を一括して行います。
本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
資料について理事者の説明を求めます。
○児玉経営企画部長 去る九月十四日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
恐れ入りますが、一ページをお開きください。1、都立病院における未収金回収に係る弁護士委任の実績(五年間)でございます。
都立病院における未収金回収に係る弁護士委任の委任件数、委任金額、納付合意額及び支払い報酬額について、平成二十四年度から平成二十八年度までの実績を記載しております。
以上、簡単ではございますが、要求のございました資料のご説明を終了いたします。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
○伊藤委員長 説明は終わりました。
ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
発言を願います。
○鳥居委員 広尾病院は、その歴史が語ってきたように、島しょを含む都の災害医療、そして救急医療を牽引する都立病院として、今まで多くの都民を救う生命線として大変重要な役割を担ってきました。また、行政的医療の提供機関としても、都民の期待に応えていく重要な役割を果たしております。
そのような中、先日公表された広尾病院整備基本構想案では、現地で建てかえ整備を行うことと決定しております。大事なことは、広尾病院がこれからも都民の期待に応えていく、そして、建てかえ以前より、一層その使命を発揮できる機能を整えることにあると考えます。
知事は、本年第三回都議会定例会所信表明にて、超高齢社会という取り巻く環境の大きな変化に対し、東京、日本の持続的成長を担う鍵は人であるとおっしゃられました。
私は、民間企業の取締役として経営を担いつつも、物をつくり出す研究所長として人材育成の環境整備を最重要課題として取り組んでまいりました。メーカーの存在意義の一つは、顧客に寄与する新たな価値創造であり、それを担うのは人材以外にはないと、経験に基づく信念からでございます。
今後の広尾病院が目指すべき病院像が鋭意検討されているのは周知のとおりですが、建てかえに際し、これからの広尾病院の持続的な成長や発展を担い、地域に貢献するためにも、重要な人材の確保、育成を中心に質問させていただきます。
基本構想では、現地での建てかえ整備に当たり、看護学校と一体的に整備するなどの整備手法等の工夫により、工事中の診療への影響の緩和が可能となるとともに、安定的な医療人材の確保も可能になると記載があります。
そこで、このような観点から、安定的な医療人材の確保が可能となると考えているのかを伺います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院の当初整備案では、現行の病床規模四百七十八床を維持することや、看護学校の運営に影響を与えずに整備することなどを前提条件としておりました。
この条件のもとで、現地建てかえ整備を行った場合の課題の一つといたしまして、狭隘な敷地のため段階的な整備が必要となり、大幅な診療制限が生じることで、医師を中心とした医療人材が流出するという懸念がありました。
一方、構想当初からこれまでの間における地域医療提供体制の大きな動きを踏まえ、病床規模四百七十八床から四百床へ適正化することや、看護学校との一体的な整備などの工夫により、工事中における診療への影響を減じることが可能となっております。
こうしたことから、工事中を含め、医療人材の流出の懸念が解消され、安定的に人材を確保していくことが可能になったと考えております。
○鳥居委員 広尾病院は、都心部唯一の基幹災害拠点病院であるため、いざというときに速やかに災害医療を展開するためには、人材確保が必要な中で、現地建てかえの整備にあっても、医療人材の確保が可能であるということをお示しいただきました。
一方で、広尾病院は、基幹災害拠点病院として都の災害医療を牽引する重責も担っているため、災害時に必要な医療を円滑に提供するために必要となる専門的な知識や経験等を有する人材の育成による確保は、災害医療を支える重要な要素と考えます。
このような人材の育成のためにどのような取り組みを行うのかを伺います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 災害医療とは、地震、火山の噴火などの自然災害に加えまして、テロ等によるNBC災害の発生によって、平常時の受け入れ能力を超える傷病者が発生した際に行われる医療であります。
こうした災害時においては、被災地に出動し、迅速な救命医療を提供する機能を初め、各医療機関において診療活動を行う機能、テロなどのNBC災害へ対応可能な機能に加え、消防、警察等の関係機関との連携や災害医療に必要となる高度な知識や技術が必要であります。これに加えまして、こうした災害医療等に従事する人材には高い志が不可欠であります。
このように災害医療は特殊な分野であり、日ごろからの人材育成は極めて重要であると認識しております。
人材の育成に当たっては、何よりも、一定の経験や専門知識を有する医師や看護師をリーダーとしながら院内研修や病棟単位のきめ細かな訓練を頻回に重ねるとともに、被災地での医療救護活動等の経験を着実に、そして地道に積み上げていくことが必要であります。
今後も、これらの地道な取り組みとあわせて、日常的な三次救急も含めた高度で実践的なスキルを身につけていくとともに、医師や看護師等が医療活動に専念するための業務調整や医療物資等の供給、情報連絡処理などのロジスティック機能など、災害医療をバックアップする機能を担う人材育成も進めていきます。
このような取り組みにより、いつでも必要な災害医療を展開できる体制を維持するとともに、一人一人の実践力や即応力を高め、広尾病院の総合的な災害対応力の強化にもつなげてまいります。
○鳥居委員 さまざまな人材教育を進めているということで、引き続きこれはお願いしたいと存じますが、基本構想では、災害医療の機能強化に向け、培ってきた災害対応ノウハウを生かし、さらなる機能強化や減災対策に取り組むべく、災害医療人材の育成を行うことが期待されています。
広尾病院は、基幹災害拠点病院として都の災害医療を牽引しており、すぐれた特徴を有しております。それらの技術やノウハウを人材育成にも活用し、さらなる魅力的な病院としての発展を期待したいと思います。
さて、広尾病院が災害医療に関して育成してきた人材は、広尾病院だけではなく地域の財産としても活用していくべきだと考えます。この点、今回の基本構想において、地域災害対応力強化のためのアプローチ型連携が掲げられており、こうした広尾病院や地域の財産である人材を活用しながら取り組みを進めていくものと認識しております。
そこで、このアプローチ型連携によって、災害時に備えた連携をどのように行っていくのか、また、広尾病院の人材をどのように活用していくのかを伺います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院はこれまで、総合防災訓練やNBC災害対応訓練等において、他の医療機関、行政機関等からの見学者を多数受け入れるとともに、都民や医療機関向けの公開講座開催による啓発活動等の取り組みを進めてきたところです。
今後は、こうした院内完結型の訓練や啓発活動にとどまらず、広尾病院がこれまで培ってきた災害ノウハウのもとで育成した人材が直接、地域の関係機関へ出向くアプローチ型連携によって、平時から顔の見える関係を構築し、さらに関係機関の実情に応じた訓練や啓発活動にも取り組んでいきます。
また、平成二十八年度に院内に設置した減災対策支援室の体制を強化し、災害発生時の被害を最小限に抑える対策を推進するための企画活動について、院内のみならず地域の関係機関と連携、協働して進めていくことで、地域の減災対策につなげてまいります。
○鳥居委員 広尾病院や人材の災害医療のノウハウを広く地域に活用していただくことをお示しいただきました。引き続きのご対応をお願いしたいと思います。
他方、広尾病院が平時から担っている高度専門医療については、より強みを生かすことで、変化する医療ニーズに的確に応え、広尾病院の医療技術の底上げにつながると考えております。
そこで、新病院では、高度専門医療についてどのように強化するのかを伺いたいと思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院が有する総合診療基盤の中でも、特に強みとなっている外傷医療については、これまで、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科が診療科別に提供してまいりました。
新病院では、診療科の垣根を越えた連携を促進し、より質の高い医療を提供するため、外傷医療の重点化を図り、新たに外傷センターを設置いたします。
外傷センターの設置によりまして、災害時に多数の発生が想定される多発外傷、クラッシュシンドローム、広範囲熱傷、重症開放骨折等の重傷者にも的確に対応できる医療を、日ごろの救急医療等を通じて提供していきます。
また、患者の高齢化に伴う心疾患、脳血管疾患のさらなる増加が見込まれる中、これまで、循環器科、心臓血管外科、脳神経外科が診療科別に血管内治療を提供してきました。
新病院では、外傷センターと同様に、診療科間で連携しながら、医療を提供する血管内治療センターを設置するとともに、外科と内科が協力しながら、患者の疾患や部位に合わせて外科手術とカテーテル治療を同時に行うハイブリッド手術室の整備についても検討を行い、血管内治療体制を強化してまいります。
○鳥居委員 外傷センター、血管内治療センターなど、広尾病院の強みを生かした診療体制を構築していくとともに、それが災害医療にも役立つことをお示しいただきました。お示しいただいた高度専門医療は、基幹災害拠点病院だからこそ発展してきた医療分野であり、広尾病院の財産の一つであると認識いたします。
新たなセンター強化は、スタッフの士気向上、特徴的技術のさらなる牽引、そして都民への医療貢献を果たし、広尾病院の存在価値を高めることと確信いたします。持続的発展型の取り組みとして、引き続き適切に運営を行うことを期待いたします。
さて、基本構想ではさらに、小児科や産婦人科、精神科など、いわゆる不採算部門といわれる医療機能についても、安定的に提供する体制を維持していくと書いております。
そこで、これらの不採算部門については、地域との役割分担の視点において、診療内容や規模など、どのように検討したのかを伺います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院では、災害医療や三次救急医療に代表される行政的医療を提供するほか、医師の確保が困難な中にあっても、小児医療や産婦人科医療などにおきまして、夜間、休日を問わない救急対応が求められております。
これらの医療は広尾病院だけで確保できるものではなく、小児医療については地域で一次医療を支えているクリニック等との連携のもと、広尾病院は三百六十五日二十四時間体制で小児救急医療を提供するなどの役割分担に基づき、小児医療を提供しております。
一方、産婦人科につきましては、広尾病院は主に通常分娩を担っておりますが、リスクの高い分娩については、総合周産期母子医療センターである日赤医療センターと連携し、地域の周産期医療の一翼を担っております。
こうした地域における医療提供体制の状況や他の医療機関との適切な役割分担などの観点から、今後も広尾病院が小児医療や産婦人科医療を提供していくことが不可欠であると判断いたしました。
また、精神科については、総合病院に精神科病床が併設されているケースが少ないため、高齢化の進行に伴って増加傾向にあります精神科身体合併症救急等については、今後も広尾病院が対応していくことが不可欠であると判断し、引き続き三十床を維持することといたしました。
なお、具体的な規模などにつきましては、地域の医療環境の変化や地域ニーズを踏まえた上で、今後詳細を検討してまいります。
○鳥居委員 不採算部門については、医療提供体制の状況や他の医療機関の実情などを踏まえて検討されていることをお示しいただきました。
私は、将来の展望も見据えた高度専門医療の強化の多角的な取り組みとこの不採算な医療への対応は二律背反することから、経営面に特化したワンウエーの考え方では都立病院の運営は成り立たないと考えてはおりますが、この不採算部門の対応につきましては、対応、対処のみならず本質をしっかりと見据えた根本的解決を意識し、引き続き適切に取り組んでいただきたいとお願いいたします。
今回の新病院整備に当たっては、災害拠点機能の強化や高度専門医療の強化、不採算医療への対応など、さまざまな課題に対応していく一方で、病床規模を四百七十八床から四百床へ適正化することが挙げられております。
四百床の規模は、あくまでも量的なものである一方、新病院の建てかえには相当の期間を要することから、今後の医療需要の動向に合わせた柔軟な対応をお願いいたします。
そして、今後策定される基本計画においては、診療科ごとの医療提供体制等具体的な質の部分についても検討を重ね、しっかりと地域の医療需要に応えることを期待し、私の質問を終わります。
○遠藤委員 では、私からも、本日のテーマであります広尾病院の整備基本構想案並びに私債権の放棄、この二つについて質問させていただきたいと思います。
まず、広尾病院の整備基本構想案についてであります。これについては、これまでさまざまな議論、また紆余曲折があって、今回の基本構想案の発表になったと思います。
そもそも、広尾病院は築三十五年以上経過して老朽化している。それを改めないといけない、この視点がある一方、先ほど来、鳥居委員からもご質問がありましたけれども、災害医療機能をしっかりと強化をしていく、そのためにどうするんだと。さらには、持続可能な病院経営、こういう観点からも、これまでの取り組みをしっかりとおさらいをしないといけないと、こういう観点があるんだと思います。そしてあわせて、今回の整備構想で、いわば、目指し、中核、骨格の一つになるのは、地域医療へのさらなる貢献をどうしていくのか、ここに焦点があるんだろうと私は思ってございます。
こうした観点から、この構想案における地域貢献に絞って私は質問させていただきたいと、このように思ってございます。
先日の、今月十七日に、総務省統計局は、翌日の敬老の日にちなんで、統計からみた我が国の高齢者、こういう調査結果を公表いたしました。それによると、本年九月十五日現在、六十五歳以上の高齢者の人口は推計で三千五百十四万人、総人口に占める割合は二七・七%、この人口並びに割合とも過去最高を更新したと、こういう直近のデータが示されております。
このように急速な高齢化が進む中、医療や介護が必要な人、また認知症の方など、地域の支援を必要とする都民が安心して暮らし続けていけるように、地域の実情に応じて、二十四時間三百六十五日、住みなれた、中学校区が念頭にありますけれども、そこに、医療や介護や住まいや、さまざまなものをトータルとしてサービスを提供する、これが地域包括ケアの概念でありますけれども、それを確立するために、平成二十八年七月に東京都地域医療構想が策定をされたわけであります。
これに基づいて、おおむね二次医療圏でありますけれども、構想区域というものが指定をされ、それぞれの構想地域ごとに地域医療構想調整会議、こういった名称のものが開かれておりまして、そこで、その構想区域における各医療機関が地域において果たす役割、病床機能の再編に向けて、どうその実を効果的にしていくのか、これが議論、また検証されているというのが、置かれている現状なんだと思います。
そこで、おさらいになりますけれども、まず、広尾病院がある区西南部における現在のこの医療環境というものは、客観的にどういう状況になっているのかをご報告いただきたいと思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東京都地域医療構想では、構想区域別に二〇二五年の医療需要推計が示されております。平成二十六年から開始しました病床機能報告制度では、病床機能の見える化が図られているところでございます。
広尾病院の所在する区西南部における現状を示す一つの目安といたしまして、地域医療構想における二〇二五年医療需要推計では、これまで広尾病院が担ってきた高度急性期、急性期機能の必要病床数は、合わせて五千二百二床であります。これに対しまして、平成二十八年度病床機能報告における一般病床の届け出病床数は、合わせて七千三百四十六床であり、大幅な超過の状況にございます。
一方、回復期機能の必要病床数は三千八十床であるのに対し、届け出病床数は三百七十六床と大幅に不足しております。
今後、地域医療構想調整会議を通じまして、病床機能の転換が図られるなど、地域の医療提供体制は大きく変動していくものと認識しております。
○遠藤委員 今答弁がありましたとおり、急性期医療のニーズというのは、特に広尾病院があるこの地域では、減少がある一方、回復期がもう圧倒的に不足していると。これは、二十三区のそれぞれの構想区域は、ほぼ同じようなトレンドだと思うんですけれども、特に広尾病院がある区の西南部においては、これが顕著なんだろうと、ここをどう解決をしているのか。中でも都立病院として、どうその機能を、新しい機能を果たしていくのか、これが大きなポイントなんだと思います。
そうした中、都立病院経営委員会、こういうものがありますけれども、この委員長を務められている大道久先生、日大の名誉教授の先生であります。この方は都立病院経営委員会のトップ、責任者でありますけれども、この方が最近ある小論を書かれております。この中で、大道先生は、こう述べております。都立病院を念頭に、回復期病床をふやす一方で、高齢者を中心とした在宅復帰が困難な患者が、在宅に移行できずに、この回復期病床に滞留するようになると。仮に急性期、高度急性期からベッドを回復期に転換をしたとしても、今のさまざまな状況の中で、回復期病床に患者さんが滞留する一歩先にベッドを整備したとしても、そういう課題がありますよと、内在していますよと、こういう指摘をされております。
この回復期病床に滞留する要因として、大道先生は、例えばということで、独居老人、こういう方が圧倒的に多い、一人じゃなかなか家に帰れない、こういうことであります。さらに、受け入れる家族がおられたとしても、その受け入れる側もご高齢であると、なかなか自宅に帰れない、帰したくても帰れない。また、その受け入れる方が病弱であられる。また、認知症を含む精神疾患等を抱えているという、さまざまな要因があって、帰りたくても帰れない、帰ってきてもらいたいけど、なかなか現実的ではないと。結果的に滞留すると、こういうことであります。ここにどう応えるかであります。いわば在宅復帰困難者の方々をどうサポート、支援するのか、ここに今回の広尾病院の新しいチャレンジングの試みがあるんだろうと、このように私は認識をいたしております。
ところで、都立病院には、先ほど来話がありました行政的医療、さらには広尾の場合には高度急性期ということで、今求められている在宅復帰困難者のサポートというのは、一見すると矛盾する、ノウハウがないように思えるかもしれませんけれども、それは表層的な見方があって、これまで広尾病院が培ってきた入院または退院支援のノウハウというのは十分に貢献、活用できると、このように思ってございます。
これまで都立病院は、高度急性期、繰り返しになりますけれども、さらに、急性期の機能を担ってきたけれども、こうした回復期病床が圧倒的に不足している状況を踏まえるのであれば、ここをぜひ十分に整備すべきなのではないか。こういうニーズが出てくるのは、むしろ当然だと、このように思うわけであります。
そこで、今後、広尾病院があるこの地域におけるこうした医療環境を踏まえて、都立広尾病院としてどんな機能を果たそうと考えているのか、ここを明確にしていただきたいと、このように思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関との適切な役割分担と密接な連携を通じまして、都における良質な医療サービスの確保を図ることを基本的役割としております。
この役割に基づきまして、今後の広尾病院においても、高度急性期、急性期機能を担うことが基本であると考えております。
一方、高齢化の進行に伴い、地域の医療ニーズは変化しております。これに対しまして、地域の医療提供体制も変化することが求められており、現在は、いわば地域医療の変革期を迎えているともいえます。
こうした地域の医療提供体制が整うまでの一定期間、地域医療を支えていくことも都立病院には期待されていると認識しております。
広尾病院整備基本構想案でございますが、地域医療にさらに貢献する視点から、地域医療機関を支援する機能を持たせた地域貢献病床を新たに確保することとしております。
○遠藤委員 今、地域医療の変革期を迎えていると、こういう答弁がありました。まさにここが転換期で、広尾病院もどう転換するのか、こういうことなんだろうと思います。
ただ、今答弁がありましたけれども、先ほどいった地域の医療提供体制が整うまでの一定期間と、こうして定めてあります。この一定期間というのは、恐らく二〇二五年のここということを念頭に置いているんだと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり圧倒的に回復期病床のニーズが、現在がアンバランスであるということを考えると、ここに到達するまでにしっかりと、他にバトンを渡すということですけれども、これはなかなかしんどいんだと思います。しっかりやっていただきたいと思います。
その上で、先ほど来、今後の病床機能は四百床程度に、これが適正だと、こういう話、また報告であったと思いますけれども、この四百床を適切と判断した理由というか積算を示していただきたいと思います。特に、今回、三十床、地域貢献病床ということで、先ほど来のニーズ、またステージの転換に合わせてとらまえて、地域貢献病床を三十床整備すると、こういうことも報告をされておりますので、そこも含めて四百床の中身を説明してもらいたいと、このように思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 病床規模の設定に当たりましては、限られた医療資源を最大限に活用し、求められる医療を将来にわたり安定的に提供していくため、患者サービスを維持しながら、より効果的、効率的な体制を構築する観点から検討することが重要であります。
そこでまず、地域医療構想で示された二〇二五年の区西南部における高度急性期、急性期機能の推計入院患者数と広尾病院が地域に占める患者シェアから、一日当たり推計入院患者数を三百十八名と試算いたしました。
次に、都立総合病院のうち、最も効率的な医療提供体制を実現している多摩総合医療センターを参考に、病床利用率を九〇%と設定し、必要な一般病床の数は三百四十から三百五十床程度としています。
これに加えまして、先ほど申し上げました地域貢献病床を三十床程度確保するとともに、都心部で身体合併症患者に対応可能であります精神科病床を、現行と同じ規模の三十床を維持することとし、合計四百床程度が適正規模と判断したところでございます。
なお、近年の広尾病院の稼働状況から見ましても、四百床程度が適正であると考えております。このことにつきましては、外部専門家等による検討委員会からの報告においても同様の意見をいただいているところでございます。
○遠藤委員 この地域貢献病床は三十床程度ということであります。これが多かったのか少なかったのか、この議論は別に、また後に、検証を委ねないといけないと思いますけれども、この地域貢献病床は具体的にどう運用するのか答弁を求めたいと思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院の周辺地域は、高度急性期、急性期を担う医療機関が数多く存在し、高齢者患者の増加に伴う救急患者の受け入れ機能を果たしておりますが、急性期治療後の患者が地域に移行するための受け皿確保が必要な状況でございます。
このため、新たに確保する地域貢献病床では、急性期を脱した患者が地域へ移行するに当たり、地域の状況に応じて一定期間患者を受け入れる機能を持たせること等を想定しております。
また、急性期治療後の受け皿確保が困難な島しょ地域の医療ニーズに応えられるよう、地域貢献病床を柔軟に運用することが、島しょの基幹病院としての機能強化につながるものであり、今後さらに具体的な運用方法について検討してまいります。
○遠藤委員 この新たな広尾病院の役割、今回の構想の案の中に、柱は、地域医療へのさらなる貢献ということで、今、種々やりとりをさせていただきました地域貢献病床、これ以外にもさまざまな地域への取り組み、支援、貢献というのがあると思いますけれども、具体的にどんなことを考えられているのか、また、ここに書かれているのか、改めて報告してもらいたいと思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院整備基本構想案でございますが、地域医療へのさらなる貢献を重視し、地域包括ケアシステムの構築を支援することとしております。
例えば、日ごろから病院みずからが積極的に地域包括支援センター等への働きかけをするアプローチ型連携に取り組み、地域における介護現場の状況を把握します。この取り組みにより、在宅患者の症状急変時にも、速やかに医療機関側の受け入れ体制の確保など、医療と介護の連携に向けて広尾病院がサポート役となることで、地域が抱える課題に対応してまいります。
また、広尾病院が提供する急性期医療の実効性を高めるためにも、一日も早くリハビリテーションを実施することが、治療後の寝たきり防止や後遺症を軽減する上で重要でございます。
このように急性期リハビリテーション実施体制を強化することで、地域の回復期リハビリテーション病院等との切れ目のないリハビリテーションサイクルを構築することとしております。
さらに、小児科や産婦人科、精神科など、地域から求められる医療を安定的に提供する体制も維持してまいります。
これまで広尾病院が担ってきた急性期機能だけでなく、こうした地域医療を支援する取り組みや、先ほどの地域貢献病床の柔軟な運用に合わせて取り組むことで、地域から求められる役割に的確に対応してまいります。
○遠藤委員 今のやりとりで、新たな広尾病院が今後地域の医療提供体制にどうかかわってきたか、その姿が明らかになりました。
先ほど来、引用させていただいております大道先生は、論文の中でこのように論を締めくくられております。
いわく、公的病院は、それぞれ歴史的な背景を持ち、立地に応じてさまざまに公的役割を担ってきた。その中で、地域で基幹的な位置づけを得た多くの病院は、高度急性期医療を施行してきており、現段階では、在宅医療や介護保険との隔たりは大きいといえる。現段階ではと。で、先生は、しかしと。しかし、急性期医療であるからこそ、先ほど来答弁がありました地域連携、そして、医療、福祉相談、病床の管理、訪問看護等の機能を一体化した入退院支援部門の一層の強化が求められているということで、都立病院が持つ、また培ってきたポテンシャルは必ず生かせるし、否、生かさなければならない、生かすことが都立病院を初めとする公的病院の役割であると、このように論を締めくくっているわけであります。
ぜひ、こうした立場にとって、きょうは広尾病院、また都立病院の話をしましたけれども、公社病院は、地域医療への貢献を旗印として、既にスタートしているわけでありますので、その一方で、残念ながら、公社病院が地域医療に果たしてきた役割はどうなんだと。本来であれば、まさに時代を先取りして、公社病院が目指していたものがなかなか見えないと、こういう指摘も一方でありますので、そういう意味では、それぞれが協力、協調しながら、また緊密に情報交換をし合いながら、都民が求める回復期、先ほど来繰り返しありましたけれども、在宅復帰困難者、こうした方々が安心して、それぞれのところで支援が受けられるような、こういう体制を築いていっていただきたいと、このように思います。
最後に、最後にというか二つ目に、私債権の放棄、これについて、一言、意見を申し述べさせていただきたいと思います。
これは、今回、私債権の放棄に関連して、都立病院の未収金対策であります。未収金については、それぞれの病院において、専任の職員を配置して、または嘱託職員等とも連携をしながら、電話や書面で催告など、迅速な対応に努めておられるんだろうと思います。そのように理解しております。
さらに、病院だけでは、病院スタッフだけでは対応困難な事例については、先ほど報告がありましたけれども、弁護士事務所に委任を行うなどして、さまざまな手法で回収努力、特に対応困難事例については、法律事務所、弁護士事務所に委任をしていると、こういうことで、先ほど過去五年間のその数値が報告をされたことであります。
しかし、この弁護士委任業務につきましては、さきの本会議で報告をされました定例監査において、委任開始から着手までの期間が一律でなかったり、または、終了報告や資料の返却等に半年以上も要しているケースなど、病院経営本部における進行管理が不適切ではないか、不適切であると、このように監査で指摘をされております。
この弁護士委任自体は、先ほど申し上げましたとおり、病院スタッフ等では回収できない、こういう案件でも、弁護士さんが交渉に入ることによって納付合意に至る、先ほど数字も出ていましたけれども、そういう成果が出ているのは事実なんだろうと思います。
その一方で、監査で指摘をされたように、公金を充てて行っている業務ということには変わらないわけでありますので、その進捗状況については、病院経営本部としてしっかりと管理、掌握をしていく、これは当然のことであろうと、このように思ってございます。決して、委任したから、あとは、弁護士さん云々と、お任せしますということではなくて、監査で指摘をされたこうした案件の着手や、また報告の時期、さらには報告書の内容等々、しっかりと病院経営本部として適宜適切に把握をして、事務の適正を図ることが、都民の貴重な公金をお預かりしている役割であると思いますので、この辺はしっかりとやっていただきたいと、このように意見を申し述べまして、私の質疑は終わらせていただきます。ありがとうございました。
○舟坂委員 広尾病院は、百二十年の長きにわたり、現在の地において、その時代やニーズに対応した医療を提供してきております。現在の広尾病院は、昭和五十五年に竣工し、三十五年以上経過をしております。この間に、災害医療、救急医療、そして島しょ医療を初めとするさまざまな医療ニーズに対応してきております。
とりわけ災害医療に関しては、日常的な研修、訓練に取り組むとともに、東日本大震災、伊豆大島土砂災害、熊本地震といった、都内そして都外を問わない大規模自然災害や、NBC災害の一つである地下鉄サリン事件などに対して、豊富な専門知識や経験を持った職員を派遣するなど人的支援も行ってきております。
さらに、施設面においても、電力供給ルートの複線化や研修室と備蓄倉庫の機能を兼ね備えた災害医療対策施設を整備するなど、名実ともに都心部唯一の基幹災害拠点病院として責務を果たすとともに、都の災害医療水準の向上にも貢献していると認識をしております。
こうした中、先般、広尾病院整備基本構想案が公表され、新病院が果たすべき役割や機能などに関する基本的な考え方に加え、現地建てかえ整備の方針が示されたところでもあります。
我が党は昨年来、幾度となく、広尾病院が担うべき役割をこれまで以上に果たせるようにしていくとともに、将来にわたり都民の期待に応えていくことが何よりも重要であると指摘をしてまいりました。また、このような考えのもと、さきの代表質問において我が党の秋田幹事長が、今回の建てかえ整備によって、今後、広尾病院が担う医療機能について質疑を行ったところでもあります。
そこで、新病院の整備に当たり、これまで以上に首都東京の安心を支える責務を果たしていくために、災害医療の機能強化に当たり、ハード面についてどのような整備を行っていくのか、改めて詳細にお伺いをいたします。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 施設面の整備といたしまして、大地震発生時にも診療機能を継続できるよう、地震の影響を最小限に抑えられる免震構造を採用するとともに、移動設備、非常用発電機、ガスコージェネレーションシステムなど、ライフラインを多重化してまいります。
NBC災害に対しては、汚染水による二次被害防止の観点から、専用貯水槽つきの除染シャワー設備を整備いたします。
また、多くの被災者にも適切な医療を提供するため、平時の二倍程度の入院患者に対応できるスペースを初め、災害対策本部、トリアージ、応援医療チームなどの参集など、災害医療を展開する上で必要となるスペース確保についてもしてまいります。
○舟坂委員 また、災害医療をスムーズに展開していく上では、平時からのソフト面での備えも重要であると考えます。これについてもどのように機能を強化していくのかをお伺いいたします。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 災害時におきまして、地域で迅速かつ的確に災害医療を展開するため、平時から広尾病院みずからが、地元行政機関や医師会、医療機関等へ積極的に働きかけ、緊密な連携関係を構築してまいります。
また、各二次保健医療圏の地域災害拠点中核病院に対する広尾病院の災害対応ノウハウの普及啓発など、災害時における点から面での医療展開を視野に入れた地域ネットワーク機能構築にも取り組んでまいります。
先ほど答弁した施設面での整備とあわせまして、大都市における災害医療のリーディングホスピタルとして、いつでも、どのような状況にも即応するとともに、平時においても、災害時を想定した実践的なオペレーション体制を確立することを目指してまいります。
○舟坂委員 今回の整備によって、ハード、ソフトの両面から機能強化を図っていくことで、広尾病院が引き続き都の災害医療をリードしていく道筋が明らかになったと思います。
また、広尾病院は島しょ医療の基幹病院として、ヘリコプターで搬送される救急患者の受け入れや画像伝送による診療支援などの重要な役割も担っております。こうした取り組みや長年にわたる島民とのかかわりの中で患者との強い信頼関係を築き上げ、広尾病院が島しょ患者にとって、いわばかかりつけ医、または命綱ともいえる存在になってきたなとも実感もいたしております。
そこで、新病院の整備に当たり、島しょ医療について、今後も島民の期待に応えていくために、具体的にどのような取り組みを行うのかをご質問いたします。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院はこれまでも、島しょ医療の基幹病院として、多くの島しょ患者を受け入れてまいりました。地元のご理解、ご協力のもとで運営してきたヘリコプターによる救急患者の二十四時間受け入れや画像伝送による診療支援等については、新病院においても引き続き実施していきます。
また、患者家族の宿泊施設につきましても、利便性を維持する観点から、新病院においても引き続き必要な部屋数を病院敷地内に確保してまいります。
一方、現状においては、島しょ患者が本土から帰島するに際して、本土での治療内容や島での療養に当たって、留意点などの情報が島しょと本土間で十分に共有されていないなどの課題がございます。このため、ICTを活用したウエブ会議の導入により、島しょと本土、それぞれの医療、介護等の関係者において、顔の見える関係を構築するとともに、患者の療養情報の共有を密に行うことで、離島のハンデを感じさせない安心をサポートしてまいります。
○舟坂委員 島民が安心して本土で治療を受け、また、ここからがまた大切なわけですが、帰島した際にも療養上の十分なケアが受けられるよう、ぜひ取り組んで進めてほしいと思います。
さて、三年後には東京オリンピック・パラリンピック大会の開催を控えております。日常診療業務の円滑な運営はもとより、大会を契機に東京都を訪れる国内や海外の観光客等に対して、安定的かつ円滑に必要な医療を提供していくことは、大会を成功に導く重要な要素の一つでもあると考えます。
一方、基本計画に記載されている都立病院の標準的な整備スケジュールによると、基本計画や各種計画の業務に三年程度を要するとされており、さらに、工事を経て竣工に至るまでは相当の期間が必要になると思います。このため、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に伴って必要となる対応は、現在の現病院施設において実施しなければなりません。
そこで、我が党はこの点について二十八年第一回都議会定例会においても質問し、必要な環境整備について取り組んでいく旨の答弁はいただいております。改めて、その整備内容と進捗状況についてお伺いをいたします。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東京オリンピック・パラリンピック大会を迎えるに当たっては、広尾病院が外国人患者受け入れ拠点として必要な役割や機能を十分に果たしていくため、環境整備が必要であると認識しております。
このため、平成二十六年から職員の語学研修に取り組んでおり、平成二十七年度には、外国人向け医療コーディネーターや医療通訳の配置促進を目的といたしました厚生労働省による外国人患者受け入れ環境整備事業でございます医療通訳拠点病院に選定を受けております。
また、本年三月には、外国人に対する診察や看護、検査等が適切であるかに加え、多言語化や異文化への対応を評価いたします外国人患者受け入れ医療機関、JMIPの認証を都立病院として初めて取得したところでございます。
一方、東京オリンピック・パラリンピック大会開催時に、外国人を初めとする多くの患者を円滑に受け入れるため、東京ERを中心とした診療体制を強化することとしており、今年度内に関係する工事が完了する予定でございます。
東京オリンピック・パラリンピック大会に向け、患者受け入れ体制を一層強化してまいります。
○舟坂委員 東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、確実に患者の受け入れ体制を整備していこうという、その確認ができました。
しかしながら、新病院の竣工までには相当の期間が必要であります。この間にも、少子高齢化の進行などによって、医療ニーズは確実に変化もしていくと思われます。
また、新病院の整備に関する基本計画や各種の設計作業に当たっては、こうした医療ニーズの変化や国際化にも十分対応できるものにしていくことを念頭に置きながら、着実に整備を進めていくことを要望して質問を終わります。ありがとうございました。
○和泉委員 都立広尾病院は、舛添知事の時代に移転改築が打ち出され、青山のこどもの城跡地を国から購入し、隣接する青山病院跡地とあわせて、看護学校とともに移転改築するという方針でした。
しかし、首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会での検討を踏まえ、現地建てかえ整備に方針が転換されました。今回は、この検討委員会報告書及び新病院の整備地に関する意見について、これを踏まえて策定された広尾病院整備基本構想案が報告されているわけです。
移転改築が発表されたときに、百十床程度までの大幅な診療制限が必要になること、災害時用の十分なスペースの確保が困難であること、工事中診療が大幅に制限されることから、災害拠点機能の継続性に支障が出ることなどの課題があって、現地整備は困難だということでしたが、基本構想案を見ても、課題がどう具体的に解消されるのか、いま一つ見えてきません。
改めて伺いますが、これらの課題はどのように解消されるんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成二十六年度の検討当初に想定していました現地建てかえに伴う課題に対しては、病床規模を四百床程度とすることに加え、看護学校の敷地も工事に活用することにより、工事中における診療への影響を減じることが可能となっております。
また、看護学校と一体的に整備することや、連携強化、容積率のさらなる活用などにより、災害時に平時の二倍の患者受け入れ能力を確保可能となる工夫も導入してございます。
さらに、工事中の診療の影響を減じることに加え、地域との実践的な相互補完体制を整備することで、工事中も必要な災害拠点機能の維持が可能となり、いずれの課題も解消されていると考えてございます。
○和泉委員 本来、災害拠点病院には、災害時に平時の二倍の入院患者を受け入れられるスペースが必要となっています。現在でも一・二五倍にとどまっているという現状で、工事期間中のスペース確保はどのように対応するんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 工事中の災害拠点機能を維持するためには、工事前から広尾病院を核として、他の災害拠点病院との実践的なオペレーションの確立や地元関係機関との連携を深めるなど、相互補完体制を整備することが重要でございます。地域のネットワーク機能構築により、対応してまいりたいと考えております。
なお、この点につきましては、災害医療の専門家等が加わった検討委員会からも同様の意見をいただいているところでございます。
○和泉委員 地域とのネットワークをつくっていく、これはとても大切だと思います。
ただ、ちょっとよくわからないので、もう少し具体的にご説明いただきたいんですが、例えば、人的な体制や災害時の動線の確保、指揮系統や分担、こういったものは今、答弁があったようなことで対応できると思うんですが、必要なスペースの確保というのはどのようにして行われるんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 今回の整備基本構想策定に当たり、病床規模を四百程度とすることや、看護学校の敷地を工事に活用するなど、当初想定した前提が変わったことから、現地建てかえが可能であると判断しております。
なお、具体的な建物配置などの詳細につきましては、今後、基本計画を策定する中で検討してまいりたいと考えております。
○和泉委員 ということは、今の段階では、まだ災害時に必要な二倍のスペース、これをどうやって確保するのかということが未定だということになるんだと思います。
工事中の診療への影響を減じることが可能だとされていますけれども、稼働病床数、災害時に拡張される際の病床数、あるいは外来患者数、こういったものについて具体的にどの程度影響を想定しているんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 工事中における稼働病床数や災害時の病床数、外来患者数等の詳細につきましては、基本計画を策定する中で検討してまいりたいと考えております。
○和泉委員 これもやはり未定ということだと思います。
では、この構想案に沿った改築についてのシミュレーション、これは行っているんでしょうか、伺います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 これまで実施してまいりました外部委託調査においては、さまざまな前提を置いて整備手法の検討を行ってまいりました。
今回、整備基本構想案でございますけれども、策定に当たりまして、病床規模を四百床程度にすることや看護学校等の敷地を工事に活用するなど、当初想定した前提が変わったことから、現地建てかえが可能になったと判断してございます。
なお、具体的な建物配置などにつきましては、今後検討していきたいと思います。
○和泉委員 そうしますと、外部委託調査、これは新たな条件のもとでの検討はこれからということになるんだと思います。
看護学校の一時移転先は、実習等を考えても、災害時の連携を担保するためにも、近い場所に確保する必要があるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院の整備に当たりましては、工事中の看護専門学校の運営に支障を生じないよう、福祉保健局と必要な調整を図りながら進めていく考えでございます。
○和泉委員 現地で再整備をするためには、看護学校の移転、一時移転というのがどうしても肝になってくるということですので、しっかりと福祉保健局と調整しながら決めていただきたいというふうに思います。
先ほど、ここまでの答弁を通しても、現地再整備についての課題がまだまだこれからの検討にかかっていて、道筋がよく見えてきません。災害時の対応ができるのか、病院の機能を保てるのか、また、直接は福祉保健局の所管なので、答弁は限界があるというふうには思いますが、看護学校の定員や教育条件が守られるのか、こういったことは非常に重要で、きちんと保障される必要があると思います。
先ほど遠藤理事の質疑の中にも出てまいりましたので、改めて私の方から地域貢献病床とはどのようなものか、これを聞くのはやめますけれども、この構想案の中でも、これまでは地域の医療機関との連携、看護学校を含む広尾キャンパスとして災害時を想定した連携、それが十分ではなかったと分析をされています。
平時から地域の医療機関、関係機関との連携を強め、病院みずからが積極的に地域関係機関にアプローチしていく地域連携型訓練などにも取り組むなどで、日常的に頼られる存在になろう、こういう視点は大変重要だと思いますし、評価したいと思っています。さらには期待もしています。
一方で、有料病床のことも大変心配しています。現在、広尾病院の有料病床数は幾つあるんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 現在の広尾病院における有料個室の設置状況につきましては、一人部屋が二十床、二人部屋が十二床、合計三十二床でございます。
また、有料個室の設置割合は、予算病床四百七十六床に対しまして、六・七%となっております。最も高額な特別入院室料は一万六千円で、これは二室のみ、二床のみとなっております。
また、最も多く病床数を設置している特別入院料の金額は四千五百円で、十二床を設置し、これは二人部屋でございますけれども、十二床を設置してございます。
○和泉委員 社会的な対応が必要な患者なども含め、都民の命と健康を守る最後のとりでとして大きな役割を果たしていますとあることからも、差額ベッドをふやす、あるいは価格帯を上げるということはやるべきではないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 今回の整備では、患者の快適な療養環境を確保するため、患者からの要望が多い個室の充実や、現在六床室の一般病床を四床室にするなど、アメニティーの向上を図ることとしております。
具体的な有料個室料や個室使用料などにつきましては、今後、整備を進める中で検討してまいりたいと考えております。
○和泉委員 都立病院が果たすべき重要な役割の一つは、低所得など社会的な困難を抱える方のセーフティーネットになるということです。有料病床を大幅にふやしたり、価格帯を上げることはするべきではない、このことを重ねて申し述べておきます。
そして最も重要なのは、病床数の削減です。今回の基本構想案では、災害医療機能の強化、地域医療へのさらなる貢献、救急、島しょ医療の継続的な提供、小児医療や産婦人科医療の安定的な提供など、病院機能の強化充実が盛り込まれている一方で、病床数は四百床に削減することとなっています。機能強化と病床削減は両立するんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院の病床数につきましては、区西南部における将来の医療需要推計と現在の広尾病院が地域で占める患者シェアから、一般病床数を三百四十から三百五十程度と試算し、地域医療を支援する地域貢献病床三十床程度や、精神科病床を三十床加えた結果、四百床程度が適正であると判断いたしました。
この点につきましては、外部専門家等による検討委員会からの報告においても同様の意見を頂戴しているところでございます。
重点医療といたしまして、災害、救急、島しょ医療や地域から求められている小児医療、産婦人科医療、精神科医療につきましては、引き続き安定的に提供していく考えでございます。
○和泉委員 病床数を削減しても、病院機能の強化はできると、将来の医療需要推計と現在のシェアから試算した四百という病床数は適正なんだという答弁ですけれども、四百床への削減は、どの診療科でどのくらい削減されるんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 個別な診療科の構成、規模につきましては、今後、詳細について基本計画の中で定めていきたいと考えてございます。
○和泉委員 各診療科の積み上げた病床数ではないということなんだと思います。
実際、一つ一つの診療科について真剣な検討を行うことが、本来必要な病床数を計算する上では必要なのではないでしょうか。三百十八床を現在の四百四十八床、精神科病床を除いて、一般病床四百四十八床に当てはめると、病床利用率は七一%ということになります。
移転までこの低い病床率でいくんでしょうか。現場は病床利用率を上げようと今、必死になって頑張っているんではありませんか。新しい病院では病床を削減するから、今後、利用率が上がっても、今度は新しい病院のスペックに合わせて患者数を減らしていく、そういう心配はないんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 先ほども答弁させていただきましたが、広尾病院の重点医療となっている救急、島しょ医療等につきましては、引き続き行政医療として適切に提供してまいりたいと思います。
そのほか、先ほども答弁いたしましたけれども、救急医療、産婦人科医療、精神科医療については、引き続き対応していきたいというふうに考えてございます。
○和泉委員 基本構想案に記載をされております二〇二五年における区西南部の推計患者数、二〇一五年の広尾病院の区西南部における入院患者シェア、これは病床機能区分ごとに示されていますが、各病床機能区分への分類は、それぞれどのような方法で行われているんでしょうか。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 病床規模の試算における二〇二五年の病床機能区分ごとの一日当たり推計入院患者数は、地域医療構想で示されているものを使用してございます。国が示す計算式により推計されております。
具体的には、平成二十五年、二〇一三年になりますけれども、人口十万人に占める入院患者の割合が二〇二五年も変わらないと仮定し、医療資源投入量に応じて病床機能が区分されております。
また、二〇一五年の広尾病院が地域で占める患者シェアは、病床機能報告に基づく公開データを使用しております。病床機能報告は、平成二十六年六月に改正されました医療法に基づき報告が義務づけられており、報告に当たっては、厚生労働省が策定した報告マニュアルに従い、各医療機関が病棟ごとに病床機能を届け出ることとされております。
○和泉委員 推計患者数は地域医療構想、そして患者シェアは各病院から出された病床機能報告という答弁でしたけれども、この推計入院患者数の計算の仕方ですが、地域医療構想を前提にしたとしても、今の答弁にあったように、二〇二五年の推計患者数を算出する際の各病床機能の分類方法、それから、二〇一五年の患者シェアを算出する際の分類方法は、全く別のものなんです。にもかかわらず、この構想案では、その違いを無視して、前者の推計患者数に後者のシェアを当てはめて計算しているわけです。
このように算出された数字に意味はないんじゃないかというふうに思わざるを得ません。こんな方法で病床を縮小している病院は、ほかにはないのではありませんか。さらに、一日当たりの区西南部の入院患者数を二〇二五年の医療需要推計の数字である八千三百五十人、この数字を使っていますが、二〇四〇年には九千五百四十八人までふえると推計をされているんです。
地域医療構想でさえ、入院患者がふえるとしているのに、なぜ病床を減らすんでしょうか。将来的に病床数が不足する可能性もあるということになるのではないかと思います。
広尾病院の青山への移転改築が発表されたとき、四百七十八床の病床数は維持するとされていました。その後、地域医療構想が発表された、地域医療提供体制の大きな変更があった、整備方法の再検討が必要になったんだということですが、青山の移転が発表された時点で、既に都で、地域医療構想策定部会での検討が開始されていて、変化なるものが仮にあったとしても、その兆しは十分に都としてつかんでいたはずです。そのもとでも四百七十八床を維持すると都はいってきたんです。
構想案が新病院の視点として示しているとおり、都立病院は在宅への移行や転院が容易でない患者、社会的な対応が必要な患者なども含め、都民の命と健康を守る最後のとりでの役割をしっかりと果たし続けるためにも、病床数は減らすべきではないということを強く申し述べて、質問を終わります。
○岡本委員 都立病院の未収金対策に関して質問をさせていただきます。
私は、弁護士の立場から、そうした視点から、都立病院における未収金についての回収努力や発生防止の取り組み、専門家の活用について質問させていただきます。
今回報告がありました債権放棄は、都立病院における医療費の未収金で、回収困難と判断されたものについて放棄を行うものであり、件数は合計八百六十九件、金額にして三千三百七十四万一千三百六十八円とのことでした。
まず初めに、これらの債権はどのようなプロセスで放棄に至ったのか、根拠規定及び手続についてお伺いいたします。
○谷田サービス推進部長 今回ご報告いたしました債権放棄は、平成二十年度に施行されました東京都債権管理条例に基づきまして、最大限の徴収努力を行ってもなお回収不能となった債権について、一定の条件のもと、欠損処理を行ったものでございます。
具体的には、民法で定める消滅時効の期間三年が経過していること、相当程度の徴収努力が行われていること、相手方と連絡がとれないなど実質的に回収が不能であることなどの要件を全て満たしている債権につきまして、財務局及び主税局と協議の上、債権放棄を行ったところでございます。
○岡本委員 債権放棄を行う際に、条例等に基づき、都の統一的なルールのもとで実施されているということを今、お伺いいたしました。
次に、都立病院では、未収金対策としてどのような取り組みを行っているのか、発生防止及び回収努力の双方についてお伺いしたいと存じます。
○谷田サービス推進部長 都立病院においては、未収金の発生防止から回収、債権放棄に至るまで、全病院共通の業務マニュアルを作成いたしまして、早期着手、早期対応に努めております。
まず、発生防止に向けた取り組みといたしましては、クレジットカードによる支払いを導入しているほか、患者支援センターの相談員や病棟の看護師、医事課の職員が緊密に連携をとりまして、経済的問題を抱えた患者を早期に把握し、高額療養費制度や出産育児一時金などの公的助成制度、あるいは生活保護の申請などにつなげております。
また、未収となった医療費等については、各病院に配置された専任の職員が中心となりまして、発生直後から、遅滞なく電話や文書で連絡を行い、患者さん個々の生活状況に配慮しながら、少しずつでも納付していただけるよう、粘り強く交渉を行っております。
一方で、依頼に応じていただけないなど、病院では対応が困難な案件につきましては、弁護士事務所に納付交渉を委任しているほか、特に悪質な案件につきましては、都において支払い督促や強制執行といった法的措置を講じているところでございます。
○岡本委員 高額療養費制度や出産育児一時金等の公的助成制度や生活保護の申請というお話がありました。
資産や収入がない方に関しては、公的助成制度や生活保護の申請を受けるということがあると存じます。他方で、そうした助成や生活保護を受けない、逆にいえば、資産や収入がある方に関しては、未収金が発生するというのは望ましくないと考えております。
もちろん、制度のはざまやタイムラグによって、そうした制度のはざまの方が生じるということは承知しておりますけれど、未収金というものが生じるというのは、決して望ましくないと考えております。
次の質問に入らせていただきます。
ただいま答弁でもいただきましたように、困難案件は弁護士事務所に回収を委任しているということでしたけれども、弁護士の専門知識やノウハウは効果的に活用されているのか、直近の弁護士委任の件数とその成果についてお伺いしたいと存じます。
○谷田サービス推進部長 弁護士委任の直近の実績といたしましては、平成二十七年度に合計二百件、金額にいたしまして、約七千二百二十二万円の未収金回収を委任いたしました。
このうち委任終了時に納付合意に至った金額は、約二千三百九十六万円でございまして、委任金額全体に対する割合、合意率につきましては約三三%でございました。
このように、病院において回収が困難と判断されたものについても一定程度の合意に達していることから、専門家活用の効果があらわれているものと考えております。
○岡本委員 病院で回収できなかった案件で、弁護士が介入することにより、三割以上交渉を成立させるなど、成果があらわれているということが理解できました。
一方で、未収金問題のさらなる解決に向けては、未収金が発生してから弁護士に依頼するのではなく、発生前の段階から活用していくことが有効なのではないかと私は考えております。
例えば成年後見人の選定や相続、それから患者が抱える法律上の問題について、必要に応じて顧問弁護士等に相談を行い、専門的な見地からアドバイスを受けることで、患者さんの生活支援と医療費の担保の双方を実現できるのではないかということも考えられます。
もちろん弁護士の立場からすれば、利益相反の問題もありますので、あくまで病院側の立場でのアドバイスになろうかとは存じますが、二次的な効果として、患者さんのためにもなるということも考えられます。
また、こじれてから相談をするのではなくて、先にあらかじめ弁護士がアドバイスする、これは予防法務という言葉で我々はいっておりますけれども、こじれる前に予防する、そして、この回収に関しても、早期の段階で弁護士が関与する。
例えば、保証人との保証契約の締結、公正証書の作成、あるいは財産の確認や調査、そうした弁護士がとり得る手段も早期に相談をすることによって、より選択肢が広がるということが考えられます。
ぜひとも、この未収金、回収が困難になってから相談するだけではなくて、その前段階で弁護士に相談するという選択肢もご検討いただければと思います。
さまざまな手法を活用して、今後、未収金対策の充実を図られることを要望して、質問を終わらせていただきます。
○龍円委員 私の地元の渋谷区にございます都立広尾病院の整備基本構想案について質問をさせていただきます。
広尾病院はこれまで、災害医療、救急医療、そして島しょ医療などといった都立病院ならではの重要な行政的医療を担ってきました。また、非常に歴史も長く、都立になる前からすると、明治時代から地元の医療を支えてきた病院でもあります。
現地での再整備を望んでこられた地元の方々が多く、この整備基本構想案を見て、胸をなでおろしている方も多くいらっしゃるかと思います。
地域における広尾病院という視点から、幾つか質問させていただきたいと思います。
渋谷区は、世間では若者のまちというようなイメージがあるかもしれないんですが、実際はこの地域に長く住んでおられる方も多くて、平成二十七年度末には六十五歳以上の高齢者が四万三千人を超えておられます。
ご高齢の方々にとっては、当然、住みなれた地元で安心して暮らしていきたいという思いがあります。そのためにも、医療と介護、そして行政の連携というのはとても大切な課題になってくるかと思います。
先日、渋谷区において長年にわたって地域医療を担っておられる民間医療機関の院長と意見交換をさせていただく場がありました。広尾病院に対して、日ごろから地域に貢献してもらっていて大変感謝している、今後さらに地域医療に貢献してほしいとおっしゃっておりました。
地元選出の私としても、この言葉を聞いて大変うれしく感じるとともに、今後、広尾病院が地域へさらに貢献してもらえるよう期待をしたいと思います。
そこでまず、これまで広尾病院が地域の高齢者の皆様に対してどのような医療を提供してこられたのか、教えていただけたらと思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院の平成二十八年度延べ入院患者数は約十一万四千人、延べ外来患者数は約十九万五千人であります。
平成二十八年十月に行いましたワンデー調査によれば、全患者のうち六十五歳以上が占める割合は、入院、外来ともに五〇%強となっております。
このように、広尾病院は幅広い診療科から成る総合診療基盤を活用し、多くの高齢者に医療を提供しております。
また、内閣府が公表しております平成二十九年版の高齢社会白書によれば、高齢者の入院受療は、がんに続いて、脳血管疾患、心疾患が多くなっております。広尾病院で脳血管疾患に対応する脳神経外科における平成二十八年度延べ入院患者数は約七千六百人で、先ほどお話し申し上げましたワンデー調査によれば、六十五歳以上の割合は五〇%強となっております。
同様に心疾患に対応する循環器科における延べ入院患者数は約一万五千人で、六十五歳以上が約八五%となっております。
広尾病院はこれまでも、脳血管疾患医療や心臓病医療を重点医療に掲げており、高齢者の入院受療率が高いこれらの疾患に対応した医療を提供しております。
○龍円委員 二人に一人が高齢者ということで、本当に総合診療という基盤を生かして、これまで多くの高齢者に対応してこられたということがわかりました。
一方で、先ほどの地元の医療関係者によりますと、この地域では、急性期治療が終わった後の高齢者の患者の受け入れ体制が不足していて、地域でどのように受け入れ体制を確保していくのかという課題があるということですね。遠藤さんも少し先ほど触れられておりましたけれども、今回の基本構想案には、地域医療へのさらなる貢献が大きな視点として挙げられているのが印象的なんですが、急性期治療後の地域の高齢者の受け入れについて、どのように貢献していくのかを伺います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院の所在する区西南部における地域医療構想調整会議では、急性期を脱した患者の受け入れや地域移行後に患者家族が入院を希望した際の受け入れに関して課題があるとされております。特に独居高齢者の場合、症状急変時の受け入れ要請が断られるケースが多いことが挙げられるとも聞いております。
こうした課題に対応するため、地域の医療提供体制が整うまでの一定期間が必要であるとも考えております。このため、今回の整備基本構想案でございますが、地域医療にさらに貢献する視点から、地域医療機関を支援する機能を持たせた地域貢献病床を新たに確保することとしました。
急性期治療後の高齢者患者が、住まいの近くで切れ目のない医療が受けられるよう、地域貢献病床を柔軟に運用してまいります。
○龍円委員 地域貢献病床という新たな取り組みによって、ご高齢の患者さんもより安心して地域での医療が受けられることになるかと思います。
こうした取り組みを通して、地域の医療体制がより充実していくことを望みます。
今回の基本構想案の中では、地域包括ケアシステム構築のサポートも掲げられております。地域包括ケアシステムを構築するには、地域における医療人材を育成していくことも重要だと考えます。
そこで、今後の広尾病院は地域包括支援センター等と連携することとしておりますけれども、地域の医療人材を育成するという観点では、具体的にどのように貢献していくのかを教えていただけたらと思います。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 広尾病院では、先ほどもご答弁させていただいておりますが、地域医療にさらに貢献する視点を重視しており、今後、病院みずからが地域包括支援センター等に積極的に働きかけるアプローチ型の連携に取り組んでいきます。
例えば、地域包括ケアシステム構築の中核的な役割を担う地域包括支援センター等の関係者に対しまして、医療人材の研修受け入れや認定看護師を派遣した研修会などを開催してまいります。
こうした取り組みを通じまして、広尾病院が有する知識、ノウハウを提供し、地域の医療人材の育成に貢献してまいります。
○龍円委員 先ほどの地域貢献病床の柔軟な運用ですとか、地域の医療人材の育成という取り組みは、通常の病院ですと診療報酬の観点から採算が見合わないということもあるかと思います。だからこそ、都立病院である広尾病院が地域医療を充実させていくために、こうした民間医療機関には担い切れない役割を果たしていくことは、大変すばらしいことだと思います。ぜひ都立広尾病院に地域医療を牽引していただきたいと思います。
最後に、広尾病院の重要な役割である災害医療への対応について聞きます。
基本構想案では、同じ敷地内にある看護学校と一体的な整備をし、災害時に備えた体制についても看護学校との連携を強化するとあります。
災害医療機能の強化という観点から、看護学校とはどのような点で連携をしていくのか、具体的に教えてください。
○大久保経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 災害発生時に人材や施設、設備を有効に活用し、持ち得る能力を最大限に発揮するためには、同じ敷地内にある看護学校との連携が重要でございます。
このため、病院と看護学校を一体的に整備する考えのもと、ハード面では、看護学校の教室等も活用して、災害時に平時の二倍の病床数を確保できるようにします。
また、ソフト面では、災害時における病院と看護学校との役割分担や情報連絡体制を明確にいたしまして、的確に災害医療を展開できるよう、平時から合同訓練を実施するなどして、災害初動体制を強化してまいります。
これまでの合同訓練では、看護学生は模擬患者として参加し、災害医療の実践を体験していますが、今後は災害に対しまして、効果的な訓練方法などについて、福祉保健局と調整してまいりたいと考えております。
○龍円委員 看護学校との連携を強化することで、広尾病院の災害医療機能もさらに強化していくことがわかりました。
特に看護学校の学生は、通常の看護のスキルを学ぶとともに、合同訓練を通じて災害時に必要なスキルも学ぶことができるようになります。これは将来の災害医療を担う人材育成にもつながっていくはずです。まさに人づくりに着目した地域への貢献になるのではないでしょうか。
今後、新病院が地域とどのようにかかわっていくのかについては、どうぞ地域の関係者や地元住民の意見や声も十分に踏まえながら検討を進めていっていただきたいと思います。ありがとうございました。
○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
以上で病院経営本部関係を終わります。
この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
午後三時八分休憩
午後三時二十五分開議
○伊藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
これより福祉保健局関係に入ります。
初めに、過日の委員会で紹介できませんでした幹部職員について、局長から紹介があります。
○梶原福祉保健局長 過日の厚生委員会におきまして、所用のため欠席いたしておりました当局の幹部職員をご紹介させていただきます。
保健政策部長の矢内真理子でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
〔理事者挨拶〕
○伊藤委員長 紹介は終わりました。
○伊藤委員長 次に、契約議案の調査を行います。
第百四十四号議案及び第百四十五号議案を一括して議題といたします。
本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
発言を願います。
○藤田委員 都内の民間社会福祉法人施設は、築三十年以上の施設が百カ所以上あり、潜在的な需要も多いと思われます。障害者施設、特別養護老人ホームへの十分な周知、情報提供を行ってほしいとの要望がありますが、いかがですか。
○後藤総務部長 今回実施いたします清瀬小児病院跡地を活用いたしました社会福祉施設建てかえ促進のための代替施設整備事業につきましては、東京都社会福祉協議会の高齢者、障害者の各部会を通じまして、特別養護老人ホーム、障害者支援施設、それぞれの事業者の方々に連絡をさせていただきまして、昨年の八月と十月に説明会を開催いたしました。
また、本年四月の公募の開始に当たりまして、築三十年以上となります特別養護老人ホームと障害者支援施設の全ての事業者の方々に対しまして、メールで公募開始をお知らせしたところでございます。
老朽化した社会福祉施設の建てかえが進みますよう、今後とも機会を捉えてこの事業の周知を図っていきたいと思っております。
○藤田委員 ありがとうございます。ぜひ周知をお願いいたします。
また、一時的に引っ越す際、できるだけ備品を貸していただいて、職員と利用者だけが移れるようにしてほしいという要望があります。
具体的にはベッドや業務用の洗濯機などですが、これについては検討はいかがでしょうか。
○後藤総務部長 東京都といたしましても、直接事業者の方々から意見を伺っておりまして、ベッド等の備品に関する要望は承知しているところでございます。
今後、この建てかえ促進のための代替施設を活用いたします事業者の方々が円滑に仮移転できるよう、検討していきたいと思っております。
○藤田委員 ありがとうございます。検討されているということが確認できて、ありがとうございました。
多くの社会福祉法人は、経営が厳しい中で運営されています。建てかえ中の賃料はできるだけ安くしてほしいという要望が出されています。現在、どのような設定を検討されていらっしゃるでしょうか。
○後藤総務部長 建物の貸付料の算出に当たりましては、要しました工事費などの原価から算出する方法でありますとか、近傍の取引事例を参考にする方法などがございますけれども、今回は、都内の社会福祉法人の経営状況を分析いたしまして、平均的な規模の施設を運営する社会福祉法人が負担できる金額として算出いたしました。
その結果、特別養護老人ホームがおおむね年額二千万円、月額にいたしますと百六十七万円、障害者支援施設がおおむね年額一千五百万円、月額にしますと百二十九万円となっておりまして、本年五月の事業者説明会の際に参考価格としてお示ししたところでございます。
今後、建物が竣工いたします二〇一九年一月以降、正式な契約締結に向けまして同様の考え方で評価し直しまして、正式な貸付料を決定してまいります。
○藤田委員 都内の社会福祉法人の経営状況を分析し、平均的な規模の施設を運営する社会福祉法人が負担できる金額として設定とのことでした。正式な金額が決定する際にも、ぜひ事業者に十分配慮して設定していただきたいと思います。
次に、この地域の方々から出されている声に関連して質問をさせていただきます。
紙を配っていただいても--済みません、ちょっと事前に東京都から示されておりました地図での、道路の表示が十分ないもので、こちらで用意した地図にて説明をさせていただきます。
建物の工事に当たりまして、出入りします工事車両が入ってこられる場所は、都道の反対側に当たる市道一一五号線につきましては、大型貨物自動車と特定中型自動車の交通規制があるために入ることができない状況になっております。
また、志木街道から入ってすぐ左には、日本社会事業大学附属子ども学園という障害児施設があります。さらに、建てかえ促進施設の入り口周辺には、清瀬市立乳児保育園、清瀬市立清瀬第六小学校、清瀬市立清瀬第二中学校があります。
以前、この市道は、午前七時半から八時半までスクールゾーンになっていた道路でしたが、車両の通行量が多いという理由から、現在はスクールゾーンにはなっておりません。午前八時半までは登校、登園の児童や親子が多数往来している道路ということでありました。そして、午後二時以降になりますと下校児童もおりまして、夕方まで、学童からの帰宅児童も含め、自動車の走行自体、大変注意が必要な道路です。
こうした状況について質問があります。
工事車両の出入りは物理的に都道を使わざるを得ないと思うのですが、どのように通行を予定しているでしょうか。
○後藤総務部長 お話のように、今回の工事場所の西側に接しております市道一一五号線は、幅員七・五メートルで大型車両の通行は確かに禁止されております。
このため、大型の工事車両は、工事場所の東側に際しております幅員十二メーターの都道二二六号線を主に利用して出入りすることになります。
○藤田委員 ありがとうございます。工事車両は主に都道を利用するということでした。
仮に、通行許可をとってこの市道を利用することがありました際には、工事に必要なものを搬入する車両が通行される場合においても、誘導員を配置するなど、最大限安全に配慮をしていただきたいと思います。
次に、建てかえ促進施設建設予定地周辺には保育園があります。お昼寝の時間に配慮して出入りしてほしいという要望が出ていますが、この内容についても対応は可能でしょうか。
○後藤総務部長 工事に伴います周辺の保育所等への配慮についてのご要望は伺っておるところでございまして、工事車両の出入り、あるいは工事自体の施工に関しましては、騒音あるいは振動の対策を講ずるよう、工事施工業者をしっかり指導してまいります。
○藤田委員 工事車両の出入り及び工事の施工については、騒音や振動の対策を講じるよう、工事施工者を指導とのことでした。
実は、ご存じだと思いますが、建てかえ促進施設の都道側手前に、工事中の水道局がございます。既に都道を挟んだ反対側にお住まいの方からは、工事中の心配が出されています。今後も住民からの要望にはしっかり対応し、工事施工者を指導していただくよう要望いたします。
そしてもう一つ、この間、移設したアカマツが枯れるという事態が起こりました。清瀬の自然を守る会というところからも、保全に努めてほしいとの要望が出されております。
工事車両の通行でアカマツを守ることへの対応は可能でしょうか。
○後藤総務部長 今回、施設の建設予定地となります箇所に自生しておりましたアカマツ等につきまして、保全に向けたさまざまなご要望を踏まえまして、敷地内で、従前、構内通路等として使用しておりました区域に移植を行ったところでございまして、現在、定期的にアカマツの状況は確認しております。
さらに、工事施工期間中もアカマツの成育に支障が及ぶことがないように配慮したいと思ってございます。
実際、施工工事に当たりましては、敷地の形状から工事車両がこの移植先の区域を通行することは避けられないところでございますけれども、工事車両がアカマツを傷つけることのないよう、通路と移植エリアとの間に工事用バリケードを設けるなど、工事施工業者と調整していきたいと考えてございます。
○藤田委員 ありがとうございます。仕切りなどを設けて傷つけることがないようにと、定期的にアカマツの状況を確認するということでした。
アカマツの状況を確認するのは、専門家の方でしょうか。
○後藤総務部長 移植したアカマツにつきましては、造園の専門業者が定期的に点検を行っているところでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
次に、歩道の通り抜けについてです。
この地域は、もともと歩道だけでなく、散策ができる地域でした。地域の方の要望で、開放された施設にしてほしいという声があります。今までどおり、遊歩道を通る方がそのまま市道の方に抜けられるようにしてほしいという声があり、これは要望として伝えておきたいと思います。
もともと清瀬小児病院のときには、当然、水道局の敷地もなかったために、自然の多い、広い敷地の中に病院があるという形でした。その周辺は、自然の散策ができる場所になっていました。それが、小児病院の統廃合に伴い、病院だけでなく、自然も、散策できる環境も失われてしまうということを地域の方は危惧しております。
現在、小児病院の跡地は、水道局の防音壁などの高さもあり、都道側から見ると建てかえ促進施設は大変奥まっており、これで地域に開かれた施設になるのかという懸念が出されております。
これに関連してですが、施設の周辺はどのようなもので囲まれる予定でしょうか。
○後藤総務部長 今回ご審議いただいております工事契約につきましては、本体の工事契約になってございまして、お話の外構部分につきましては別途発注いたします外構工事の一貫として整備いたしていくつもりでございまして、実際、外構部分につきましては、敷地との間は柵状のフェンスとするなど、見通しのよいつくりとなるようなことを考えてございます。
○藤田委員 最後に一問だけお尋ねいたします。
閉鎖的な建物にならないかという心配が出されていることに対してですが、例えば、月一回地域との交流の場を設けるなどの企画をしてほしいとの要望が出されています。
東京都として、何か考えはございますでしょうか。
○後藤総務部長 東京都特別養護老人ホームの設備及び運営の基準に関する条例におきましては、運営に当たっては、地域住民等との連携協力等により、地域との交流を図らなければならないとされておりまして、今回特別養護老人ホーム等の一階に地域交流スペースを設ける予定でございます。
都といたしましては、今後、決定する運営事業者に対しまして、地元清瀬市の意見も聞きながら、地域に開かれた運営に努めるよう働きかけていく所存でございます。
○藤田委員 ありがとうございます。ぜひともこうしたご要望や、そして施設が開放されるような取り組みについて、しっかりと要望も聞きながら行っていただきたいと思います。
これにて、私の質問は終わらせていただきます。
○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
お諮りいたします。
本案は、いずれも異議のない旨、財政委員長に報告いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
以上で契約議案の調査を終わります。
○伊藤委員長 次に、報告事項、私債権の放棄について外二件に対する質疑を一括して行います。
本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
資料について理事者の説明を求めます。
○後藤総務部長 九月十四日の当委員会で要求のございました資料のご説明を申し上げます。
お手元の厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
表紙の目次にございますように、全部で七項目となっております。以下、順にご説明申し上げます。
まず、一ページをお開き願います。1、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの職種別職員数の推移といたしまして、職種別の職員数につきまして、平成二十五年度から五カ年にわたって記載してございます。
二ページをお開き願います。2、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの診療科別医師数といたしまして、診療科別の医師数につきまして記載してございます。
三ページをごらんください。3、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの経営指標の推移といたしまして、入院及び外来の経営指標につきまして、平成二十四年度から五カ年にわたって記載してございます。
四ページをお開き願います。4、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターのその他医業収益の推移と内訳といたしまして、その他医業収益の決算額とその内訳につきまして、平成二十四年度から五カ年にわたって記載してございます。
隣の五ページをごらんください。5、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターに対する運営費負担金及び運営費交付金の推移といたしまして、運営費負担金と運営費交付金の決算額につきまして、平成二十四年度から五カ年にわたって記載してございます。
六ページをお開き願います。6、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターにおける患者の退院先別人数の推移といたしまして、退院患者数につきまして、退院先別に平成二十四年度から五カ年にわたって記載してございます。
隣の七ページでございます。7、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターにおける個室使用料の推移といたしまして、個室使用料につきまして、個室の区分、金額、室数の推移を記載してございます。
以上、簡単ではございますけれども、要求のございました資料のご説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
○伊藤委員長 説明は終わりました。
ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
発言を願います。
○桐山委員 それでは、平成二十八年度地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター業務実績評価について、一点質問させていただきたいと思います。
これまで重点医療により、一層の充実や救急医療の充実など、医療体制の強化を図るとともに、東京都老人医療センターと東京都老人総合研究所を一体化した法人である利点を発揮し、高齢者の心身の特性に応じた適切な医療の提供、臨床と研究の連携、高齢者のQOLを維持向上させるための研究を通して、高齢者の健康増進、健康長寿の実現を目指し、業務運営の効率化、収入増の取り組み、コスト管理の強化などに一層取り組んでいかなければならないとしてスタートをされました。
評価委員会で出されました報告書によりますと、総評としては、年度計画では順調に実施しており、おおむね着実な業務の進捗状況にあると評価をされております。
このたび、研究事業につきましては、病院と研究所を一体的に運営する中、福山型筋ジストロフィーを含めた糖鎖合成異常症の系統的な解明と新しい糖鎖の発見に対し、日本学士院賞の受賞が決定するなど、難病治療法開発へ期待される成果を出されたことに対しましては敬意を表したいと思っております。
そこで、質問をさせていただきますけれども、評価委員会が第三者機関としての役割だとすれば、都から、財政支援はこれまで病院事業にかかわる費用として都が負担する運営費負担金、研究事業に対します運営費交付金があると伺っております。
平成二十八年度交付額は、運営費負担金が約二十八億五千三百万円、運営費交付金が約十九億九千百万円、合計で約四十八億四千四百万円でございます。
東京都から毎年度、もろもろ補助金を入れましても約五十億円余もの財政負担がある中で、都民への説明責任を果たすべく業務の運営の効率化ですとか、また収入増の取り組み、またコスト管理の強化が挙げられているところでございます。
本日、ご報告をされました資料を見ましても、一期、二期の中間目標を掲げる中で、この財政負担の推移は、おおむね平成二十五年度の新施設の移転時以外は、一定程度の同水準となっているようでございます。
そこで、コスト意識や収入増の取り組みが評価委員会においてどのように評価をされているのか、伺います。
○稲葉施設調整担当部長 平成二十八年度業務実績評価では、病院部門における新入院患者の確保や診療報酬上の新たな施設基準の取得、研究部門における積極的な外部資金獲得などにより収入の確保に努めたことが評価をされました。
また、コストの縮減に向けて後発医薬品の採用促進や、医療材料の物流管理を行う事業者を活用し、効率的な材料管理に努めるなどの取り組みを行ったことが評価されており、今後も経営分析の結果を活用し、さらなる効率化に向けて取り組みが期待されております。
○桐山委員 ご答弁ありがとうございました。経営改善といたしましては、五十億円余もの財政支援ということで負担をしているわけですので、やはり都民としての透明性の担保というものが非常に注目をされるわけでございます。
そうしたところで、ただいまご答弁にありましたように、今回のこの評価書にも書かれております地域医療機関との連携の強化ですとか、積極的な救急患者の受け入れ体制を進める中で、新入院患者数の増加ですとか、そういったところにご努力をされているということです。
また、外部研究資金の積極的な獲得、そして収入の確保というところで、本日資料も出ておりますけれども、年々この医業収益というものは上がってきているんだなということも確認をさせていただきました。
こういったコスト管理にしっかり取り組む中で、都民にしっかりとした説明責任ができるような体制強化を、ぜひ今後とも取り組みを行っていただきたいと要望いたしまして、質問を終わります。
○和泉委員 私からは、東京都清瀬喜望園の民間移譲について質疑をします。
清瀬喜望園は、昭和五十一年四月に結核回復者の社会復帰の一翼を担う生活施設として、国や東京都の支援を受けて、重度呼吸器障害者の授産施設として開設されました。
以後、業務委託から指定管理、現在に至るまで一貫して社会福祉法人アフターケア協会が事業の運営に当たってきました。
二〇一〇年四月からは呼吸器障害だけでなく、心臓機能障害、直腸、膀胱機能障害等を持つ内部障害者全般を受け入れるようになり、さらにことし四月から知的障害者の受け入れも開始しています。
事業者から聞き取りを行ったところ、申し込みから入園までとても丁寧なプロセスを踏んでいます。
入園に当たっては、福祉支援員、生活介護支援員、看護師らが自宅や入院先、通所施設に出向いて面接をし、診断書、胸部レントゲン写真、心電図等をベースにしながら、医療的ケアや介護の状況、行動障害の状況、どのような支援を行えばよいか、入念に検討した上で入園者を決めます。
呼吸器の障害がある方は、障害支援区分が低い方でも高度な医療的ケアが必要で、手厚い支援がなければ命にかかわる、そういう方々です。
そのため、現在の定員は六十人ですが、常勤の医師に加え看護師も九人いて、利用者のことを深く理解した上で手厚い医療支援を行っています。
これだけの丁寧な対応で長年運営を続けてきたのが清瀬喜望園です。このような施設は内部障害者の入所施設としては一つしかありません。
この喜望園が果たしてきた役割を、都はどのように認識していますか。
○高原障害者施策推進部長 今、委員の方からもお話がありましたとおり、東京都清瀬喜望園は、昭和五十一年に重度呼吸器障害者の授産施設として開設をいたしまして、これまで施設入所を必要とする数多くの障害者を支援してまいりました。
現在は、近年の疾病構造の変化や在宅酸素療法の普及等により、呼吸機能障害者に加え心臓機能障害者等の内部障害者全般及び知的障害者を受け入れているところでございます。
○和泉委員 この重要な清瀬喜望園の民間移譲について今回報告がされているわけですが、民間移譲自体はどのような経緯で決まったんでしょうか。
○高原障害者施策推進部長 都立施設につきましては、平成十八年二月の福祉・健康都市東京ビジョンにおける都立施設改革のさらなる展開に基づきまして、民間でできることは民間に委ねるという方針のもと、民間移譲を推進してまいりました。
障害者施設につきましてもこれまで三十四施設を順次民間移譲してきており、今回、東京都清瀬喜望園につきましても民間移譲のための公募を行うものでございます。
○和泉委員 十一年前に定められた方針を具体化したというわけですけれども、この後のスケジュールで、議会にはどの時点でどのような審議が付託されるんでしょうか、伺います。
○高原障害者施策推進部長 本日、ご報告をさせて審議いただいた後は、社会福祉法人等につきまして公募要項を作成後、公募をさせていただき、選考委員会を設置し、公募のありました事業者からの事業計画書等を選考委員会において選考させていただいて、運営法人を選定することとしております。
○和泉委員 済みません、もう一度伺います。議会にはどの時点でどのような審議が付託されるんでしょうか。
○高原障害者施策推進部長 失礼いたしました。先ほど申し上げましたような手続によりまして、本年度末までに公募により運営法人を選定した後、平成三十三年度より新法人に移譲することを前提にしてございますので、平成三十二年度に東京都障害者支援施設等に関する条例の一部改正を提案させていただくことになるかと思います。
○和泉委員 そうしますと、都立施設の設置と管理に関することは条例で定めなければならないとされていて、廃止条例が否決されれば、本来は都立施設として存続させなければならない、そういう状態であるにもかかわらず、条例の提案前にほとんどのことが進んでしまうということになるわけです。そのような民間移譲の進め方はいかがなものかといわざるを得ません。
私たちは、都立施設の民間移譲は都が行政として果たすべき役割を放棄するものであるとして反対の立場です。
同時に、都立施設は大切な都民の財産ですし、利用者、職員、運営事業者の皆さんに大きな影響を及ぼす問題ですから、それを民間に移譲するというときに、個々の施設ごとにしっかりと審議をして議会での議決を経るのが当たり前の姿ではないかと思います。報告だけでどんどん進めてしまうようなやり方は改めるべきだということを意見として申し上げておきます。
次の質問に移ります。
先ほどお話ししたように、清瀬喜望園は全国に例のない極めて重要な役割を果たしている施設です。
喜望園の果たしてきた役割はいささかも後退させることはできないと思いますが、都の見解を伺います。
○高原障害者施策推進部長 今回の東京都清瀬喜望園の運営法人の選定に当たりましては、公募要項におきまして、現在提供しているサービス水準の維持向上を図ること等を条件として示した上で、選定委員会の審査を経て適切な法人を選定することとしております。
○和泉委員 サービス水準の維持向上というふうに、今答弁ありましたけれども、職員の十分な配置がなければ必要な支援はできません。そして、今どの福祉分野でも職員の確保が問題になっていますが、十分な施設収入がなければ必要な職員を雇用することはできません。
しかし、先ほどもお話ししたように、清瀬喜望園に入所している内部障害者は、医療的ケアや医療管理がとても複雑で高度なのに支援区分は低く出てしまう。その大変さに見合う収入になっていないんです。
国単価とサービス推進費だけではほかの障害者施設にも増して民間での運営が困難なことを、都はどのように認識しているでしょうか。
○高原障害者施策推進部長 民間移譲後は、介護給付費等の収入に基づきまして、運営法人の創意工夫のもと、運営されることとなります。
都は、運営法人に対して土地を無償貸与するとともに、現状と同水準のサービスを提供するために必要となる補助金を交付することとしてございます。
○和泉委員 必要となる補助金を交付とおっしゃいましたが、現在の喜望園の収支について、収入の内訳はどのようになっているでしょうか、伺います。
○高原障害者施策推進部長 あくまで現在の施設、事業内容に対するものではございますけれども、平成二十九年度予算におけます指定管理料は約四億七千八百万円でございます。
内訳は、人件費が三億五千九百万円、事業費が七千四百万円、建物維持管理費が四千五百万円となっております。
○和泉委員 これが民間移譲されたらどうなるんでしょうか。移譲後の収入について、都としての試算は行っているんでしょうか。
○高原障害者施策推進部長 民間移譲後の収入でございますが、あくまで現在の事業実績等による推計ではございますけれども、おおむね三億六千八百万円程度でございます。
また、支出の方につきましては、今後応募する法人が、創意工夫や経営努力を生かした事業計画を策定し、提案していただくことになります。
○和泉委員 一億一千万円もの減額になるわけです。創意工夫や経営努力でどうにかするのが困難なのは明らかではないでしょうか。
ことし三月の厚生委員会で、我が党のあぜ上議員が、五年前に民間移譲された清瀬療護園の現状について触れています。療護単位の予算が大幅に減額され、その分を職員の給与の減額で賄っている。ベテランの職員で月七万円、新人でも月一万から二万円の削減だそうです。利用者が楽しみにしていた宿泊旅行も、日帰り旅行さえもなくなりました。
視覚障害者生活支援センターは、ことし四月に民間移譲されましたが、予算で二千万円減って、やはり削ったのは人件費です。人を減らし、賞与も減らしました。
どちらも、運営している法人は、真剣に障害者の福祉の向上に力を尽くしています。しかし、そうした法人であっても、収入が減ればサービスの低下や人件費の削減で賄わざるを得ないというのが障害者施設の実態なんです。
しかも、喜望園における質の低下は利用者の命に直結します。新たに建物についての費用も発生します。
新しい施設の建設費と法人の負担は幾らと見込んでいるでしょうか。
○高原障害者施策推進部長 新施設の建設は、選定された運営法人が今後計画をし、実施することとなります。
都は、運営法人に対しまして、土地を無償で貸与した上で、建物の建設に要する経費の八分の七を補助いたします。
○和泉委員 そうなると、具体的にどのぐらいかはどのような建物を建てるかによるということになると思います。
八分の七の補助というと手厚く感じられますけれども、八億円につき一億円、例えば二十億円かかるとすれば二億五千万円です。最終的に幾らになるかは建設の契約の時点で決まるわけですけれども、億単位のお金を、収入が減るにもかかわらず負担しなければならないんです。
しかも、今のスケジュールでは建設はオリンピック・パラリンピックの前年で、建設費も高い時期と思われます。
土地を無償貸与するといっても、今、地代を払っているわけではないですよね。その上、一億一千万円の減額になると試算されているんです。しかも施設の負担もある。
それで内部障害者の方々が困難になったり、医師や看護師の配置が難しくなったり、働く人たちにしわ寄せがいくというようなことは絶対ないと断言できますか。
○高原障害者施策推進部長 先ほども申し上げましたけれども、現状のサービス水準の維持向上を図ることを公募要項上の条件として提示した上で公募させていただくこととしております。
これもまた、先ほども申し上げましたが、民間移譲後は、その法人の創意工夫や自主性の発揮により、柔軟で効率的な施設運営が可能になるものと考えているところでございまして、具体的には、支出につきましては、自主運営施設である以上、一定の経営努力を行うことはもとよりと考えております。収入につきましても、これまでの民間移譲施設の例に見られるように、新たに通所事業等を実施するなどによって収入を確保していくことが期待もされるわけであります。
また、先ほど答弁いたしました収入見込み、あるいは支出のベースである指定管理料は、あくまで現在の施設及びサービスに基づいたものでございまして、移譲に当たりましては、今後公募を通じて新たな施設を建設することを前提に、そこで提供されるサービス等の事業計画や収支計画を改めて求めていくことになりまして、その上で、都としては、都の無償貸与、施設建設費の法人負担割合を八分の一まで軽減する整備費補助及び運営におけるサービス水準を維持するための補助を行っていくこととしております。
○和泉委員 事業者の創意工夫、経営努力が必要なんだというふうに答弁されましたけれども、それでも、先ほど答弁にあったように、支出の大きな部分を占めるのは人件費なんです。そして、安定した職員の配置こそ充実した支援を支えるかなめです。収入が減れば困難になるのは明らかです。
あくまで試算なんだというような答弁もありましたが、試算として現に答弁なさっているわけです。もちろん前提条件によって金額の増減はあると思いますけれども、大幅な減額になることは変わりがありません。
入園を希望されている方々の実態は本当に切実なんです。二〇一四年に我が党の大山議員が質問したときには、施設が行ったアンケートと合わせると入所希望者は三十八人ということでしたが、現在、入所を待っている方はどのくらいいらっしゃるんでしょうか。
○高原障害者施策推進部長 平成二十九年八月末現在の待機者は六十四人でございます。
○和泉委員 建てかえ工事を理由として長らく入園が停止されていましたから、希望している人がふえているわけです。多くの方が入園を待っている状態です。
ようやく入園を再開したわけですが、民間移譲の影響についての先ほどの質問への答弁は、清瀬喜望園が果たしてきた役割が守れるのか全く不確かで、不安を抱かざるを得ません。
そもそも先ほど紹介された福祉・健康都市東京ビジョンでは、民間移譲を進める理由として、民間施設の整備が進んだ、重度の障害者の受け入れが進んでいるとされていますが、喜望園のような施設はほかにはありません。
一方、今、都立であることに困っていることは何もありません。
民間移譲を中止して、都として内部障害者を守る責任を果たすべきと意見を申し述べ、質問を終わります。
○龍円委員 私の四歳の長男の話なんですけれども、ダウン症という障害があります。知的な発達や成長におくれがありまして、愛の手帳を所有する、いわゆる障害者です。
私は、この障害という言葉を私生活では決して使わないようにしています。なぜなら、障害者に障害があると決めているのは健常者から見た偏った価値感によるものだからです。
息子が生まれ育ったアメリカでは、障害者という意味であるディセーブルドパーソンというような表現は、もはや使われておりません。そのかわりに、特別な支援を必要とするという意味で、スペシャルニーズという言葉が使われておりました。日本でも障害者という言葉が必要なくなる日が来ることを祈っております。
将来、支援施設で生活する可能性がある子の親としての視点を交えて、東京都清瀬喜望園の民間移譲について伺わせていただきます。
喜望園は、昭和五十一年に開設されて、呼吸器や心臓機能などの内部障害のある方や知的障害のある方の受け入れと支援を行ってきた歴史のある施設です。
和泉副委員長への答弁の中にも説明があったかと思いますが、改めまして、そもそもなぜ民間移譲をするのか、またそれによってどのような効果が期待できるのか、教えてください。
○高原障害者施策推進部長 都立施設につきましては、十八年二月の福祉・健康都市東京ビジョンにおきまして、都立施設改革のさらなる展開を策定いたしまして、民間でできることは民間に委ねるという方針のもと、民間移譲を実施し、障害施設につきましても、これまで三十四施設を順次民間移譲してきたところであります。
この民間移譲により、運営法人が創意工夫を凝らし自主性を発揮することで、柔軟で効率的な施設運営を行うことが可能となることから、サービス水準の維持向上を図れるものというふうに考えております。
具体的には、例えば法人の自主運営となることで、現在の指定管理者制度と比較し、より柔軟な予算配分が可能となり、専門性の高い人材の活用による日中活動の充実や、機能回復維持訓練の強化などによるサービス向上が期待をできます。
また、長期的な視点での施設運営が可能となるとともに、地域との連携が深まり、周辺住民と利用者との交流が促進されるなど、地域に根差した施設運営も可能となるというふうに考えております。
○龍円委員 期待される効果が実際に実現されるかどうかが重要になるかと思います。
これまでに民間移譲した三十四の施設において、検証しているのでしょうか。また、サービスが実際に向上した具体的な事例があったら教えてください。
○高原障害者施策推進部長 都は、民間移譲を実施した一年後に、当該施設の利用者を対象として、移譲後の運営状況に関するアンケート調査を実施いたしますとともに、建物を貸し付けしている施設につきましては、五年ごとに運営状況評価を実施し、運営状況を検証してございます。
移譲後の施設では、民間ならではの、柔軟で個々の施設、利用者の状況に応じたサービスを提供してございます。
具体的には、重度の知的障害者入所施設等におきまして、重症心身障害者の通所事業を開始するなど、通所事業や短期入所の新設や定員拡大のほか、知的障害者の福祉作業所におきましては、パン工房やカフェを活用した就労支援事業を実施するなど、創意工夫に富んだ取り組みを行っております。
○龍円委員 民間に移譲することで、サービスが向上することや、地域で生活するスペシャルニーズのある方たちも、日常の日中活動に参加したりですとか、短期入所を活用できるようになるのであるとすれば、非常に意義のあるものだと思います。
あわせて、今まで以上に地域に開かれた施設となっていくことを願っています。
スペシャルニーズのある方々、特に知的なハンデがある方たちにとっては、環境の変化が、私たちが想像する以上に苦痛となることがあります。
例えば、ダウン症のある青年期の方だと、環境の変化についていけず精神疾患を発症したりですとか、急性退行という症状を引き起こすことがあります。
民間に移譲するに当たって、入所者の皆さんに不安を感じさせないよう、十分に慎重に引き継ぎ等をしていただきたいと思いますが、その点について、東京都としてフォローしていただけるのでしょうか、教えてください。
○高原障害者施策推進部長 運営法人の公募に当たりましては、公募要項におきまして、自主運営開始前に開設準備、引き継ぎ期間を設けること、引き継ぎの期間、方法、内容等について、都及び新旧の運営法人間で協議を行うこと、引き継ぎ期間中は、職員を派遣して施設運営のノウハウの引き継ぎを受けることを条件として提示しておりまして、移譲に当たっては、利用者が引き続き安心して施設を利用することができるよう、円滑に引き継ぎを行ってまいります。
○龍円委員 引き継ぎはきちんとしていただけるということですが、型どおりのものではなくて、個々の利用者の状況をしっかりと把握しながら引き継ぎをしていただけるよう改めてお願いいたします。
そして、民間移譲を通して、利用者が施設での生活を通じて、さらに自分が存在する肯定感や生きる喜びを感じて、心豊かに過ごせる場所となることを心から望みます。ありがとうございました。
○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
○伊藤委員長 次に、付託議案のうち知事提出議案の審査を行います。
第百五十八号議案から第百六十号議案までを一括して議題といたします。
本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
発言を願います。
○桐山委員 それでは、第百五十八号議案、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター中期目標について、三点質問をさせていただきます。
まず最初に、平成二十八年度健康長寿医療センター業務実績、先ほどもありましたけれども、業務実績評価を見ますと、S評価は一項目あり、先進的な老化研究の展開、老年学研究におけるリーダーシップの発揮を評価され、年度計画を大幅に上回って実施をされているとのことでありました。
毎年度、地方独立行政法人評価委員会の評価を受けているとのことでございますけれども、平成三十年度から始まりますこの第三期中期目標を見据えまして、この第二期中期目標期間中の業務実績を都としてどのように捉えているのか、伺います。
○稲葉施設調整担当部長 平成二十八年度は五年間の第二期中期目標期間における四回目の評価となりましたが、評価委員会からは、各年度とも全体としておおむね着実な業務の進捗状況にあると評価をされてございます。
具体的には、病院部門においては、高齢者医療の充実を図り、平成二十五年度の新施設移転に伴って整備した最新の機器や設備を活用し、難易度の高い鑑別診断や患者の負担の少ない低侵襲な治療を提供するなど、医療提供体制を一層強化したこと、研究部門におきましては、老化メカニズムや高齢者に特有な疾患、高齢者の社会参加など、多様な分野にわたる研究を推進し、高齢者を取り巻く課題に総合的に取り組んだことが評価されてございます。
○桐山委員 評価をされているということがわかりました。
続きまして、研究チームといたしましては、研究成果の施策というものを反映したり、都民に普及、還元をされた研究成果はこれまでどのようなものがあったのか、伺いたいと思います。
○稲葉施設調整担当部長 研究事業については、病院と研究所を一体的に運営する法人の特徴を生かした研究を進め、臨床応用や実用化につながってございます。
主な研究成果の例としましては、これまで悪性度の判定が困難であった膵臓がんの症例に対して、テロメアという染色体の末端部にある構造の長さを測定する技術を利用して悪性度を判別できる診断方法を確立したこと、乳がんホルモン療法を選択すべき症例か否かについて新たな判定基準を確立したこと、自記式認知症チェックリストを開発し、都の普及啓発用パンフレットに掲載されたことなどが挙げられます。
○桐山委員 ありがとうございました。これまでこういった普及、還元ということで、こういった研究チームと一体となってさまざまな研究がなされているわけです。もちろん研究費ということでも財政負担をしている中で、やはりこれを都民にしっかりと還元させていくということが大変重要かなと思っております。
今後も高齢者施策におきましては、この研究結果を、ただいまご紹介いただきましたようにさまざまな、特に認知症のチェックリストなんかも非常に高齢者施策の中で取り組んでいかれているということでございますので、こういったこともぜひ普及啓発にしっかりと取り組みを行って政策に生かしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
最後ですけれども、特に高齢者社会におきましては、健康長寿の延伸は重要な課題であります。高齢者医療研究拠点としては、医療の提供のみならず、介護予防につながる研究とその成果が強く求められます。
都は、健康長寿に対しましてはどのような取り組みを求めるのか、第三期中期目標について伺っておきます。
○稲葉施設調整担当部長 二〇二五年に向けて高齢者を取り巻くさまざまな課題に対応するためには、高齢者の疾病、介護予防から医療、介護それぞれの段階において病院と研究所を一体的に運営する法人の強みを一層発揮することが求められております。
第三期中期目標期間におきましては、高齢者が心身の健康を維持し、地域での生活を継続できるようにするため、病院、研究所で培った知見、ノウハウを生かした介護予防の推進及び健康の維持増進に向けた取り組みを強化しまして、都の介護予防施策への貢献を求めることを法人の目標としております。
○桐山委員 ありがとうございました。三期中期目標ということで、都側として目標を定めていかれるということで今回ご提案をされておりますけれども、これからこの医療センターの方からしっかりとした計画がなされていくことだと思います。
先ほども申し上げましたとおり、研究結果をしっかりと--このデータを蓄積される中で、二〇二五年問題の中でやはり認知症予防ということが、これまで代表質問とか一般質問等の中でも大変重要な課題だという認識を持っていらっしゃるというご答弁をいただいております。
そういったところを、介護にならないための予防施策というところを重要視していただきまして、こういった研究成果をぜひフレイル予防ですとか認知症予防というところでしっかりと連携をとれた内容を進めていっていただけることを要望いたしまして、質問を終わります。
○古城委員 私からは、第百五十九号議案、第百六十号議案につき、備蓄用の抗インフルエンザウイルス薬の買い入れ及び売り払いに関して質問させていただきます。
抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は、新型インフルエンザ等対策政府行動計画等に基づいて、国及び都道府県が行っています。
都では、東京都新型インフルエンザ等対策行動計画を策定し、計画的に抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を進めているところでありますが、平成二十八年に国が有識者会議の意見を踏まえ、備蓄方針の変更を行ったことを受け、都の備蓄計画も見直しが行われていると聞き及びます。
新型インフルエンザが発生したときに備えて、引き続き適切な量を確実に備蓄することが必要であると考えます。
そこで、改めて、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄の必要性についてお伺いいたします。
○吉田感染症危機管理担当部長 新型インフルエンザが流行した場合には、抗インフルエンザウイルス薬の需要が高まり、市場流通量のみでは必要量を賄い切れない可能性がございます。
また、抗インフルエンザウイルス薬を新たに製造し、供給するには一定の時間が必要となります。
新型インフルエンザの流行により市場流通量が不足した場合でも、医療機関に必要量を速やかに供給できるよう、あらかじめ抗インフルエンザウイルス薬を備蓄する必要があるとされているところでございます。
○古城委員 ありがとうございます。ご説明いただいたとおり、新型インフルエンザの発生に備え、抗インフルエンザウイルス薬を備蓄しておくことが大変重要であります。
ただし、この薬剤は高価であることから、都民の皆様の理解を得るためにも、可能な限り購入費用を抑えることも大切な視点ではないでしょうか。
そこで、第百五十九号議案に関連して具体的にお伺いいたします。
今年度の買い入れについて、小児を中心に使用されているタミフルドライシロップを約五億六千万円で購入予定とありますが、このタミフルドライシロップを一瓶当たり幾らで購入するのか、また、重症患者等に使用することが想定されるラピアクタを約一億四千五百万円で購入したと聞いておりますが、このラピアクタを一本当たり幾らで購入したのか、あわせてお伺いいたします。
○吉田感染症危機管理担当部長 今年度のタミフルドライシロップの買い入れ価格は、一瓶当たり税抜き四千四百四十円を予定してございます。
また、ラピアクタにつきましては、一本当たり一千一・四円でございました。
○古城委員 ありがとうございます。ご答弁いただいたとおり、タミフルドライシロップは一瓶当たり税抜きで四千四百四十円、ラピアクタは一本当たり一千一・四円とのことでございますけれども、それぞれの買い入れ価格は市場価格と比べてどうでしょうか。
また、これらの買い入れ価格はどのように決定されているのでしょうか。あわせてお伺いいたします。
○吉田感染症危機管理担当部長 パンデミック期に使用が限定されております行政備蓄用タミフルドライシロップは薬価の約六〇%、同様にラピアクタにつきましては約三〇%の価格で購入しているところでございます。
また、これらの買い入れ価格につきましては、国の買い入れ価格を踏まえて決定したものでございます。
○古城委員 ありがとうございます。先ほど備蓄の必要性をご答弁いただいたとおり、新型インフルエンザ発生時には高まる抗インフルエンザウイルス薬の需要に対して、市場に流通する薬剤とともに備蓄薬も活用し、対応することになります。
また、ただいまのご答弁により、備蓄用の抗インフルエンザウイルス薬の買い入れは、国の価格を踏まえて市場価格よりも安価で行われていることがわかりました。
次に、第百六十号議案、売り払いについてですが、予定価格は約十二億円とございますけれども、この価格はどのように設定されているのか、お伺いいたします。
○仁科食品医薬品安全担当部長 売り払い時の予定価格は、タミフルドライシロップ、ラピアクタ、それぞれ薬価から医薬品卸売販売業者の流通に係る経費を差し引いた額に設定しております。
この価格設定は、国が備蓄用抗インフルエンザウイルス薬を売り払う際の考え方に準じたものでございます。
○古城委員 ありがとうございます。あらかじめ医薬品卸売業者と売り払いの契約を結んでおくということは、備蓄用の抗インフルエンザウイルス薬を速やかに医療機関等に供給するためであると理解するところでございます。
では、売り払いの契約の相手方はどのように選定されているのか、お伺いいたします。
○仁科食品医薬品安全担当部長 都は、新型インフルエンザの拡大防止に向けて、備蓄用抗インフルエンザウイルス薬を医療機関等に円滑に供給するため、一般社団法人東京医薬品卸業協会と備蓄用抗インフルエンザウイルス薬の医療機関等への供給に関する協定を締結しております。
この協定で、協会の会員である医薬品卸売販売業者のうち、抗インフルエンザウイルス薬の取扱実績があること、主に医療用医薬品を取り扱っていることの二つの条件を満たすものに備蓄用抗インフルエンザウイルス薬を売り払うこととなっております。
○古城委員 ありがとうございます。今後も都民の皆様の安心・安全を確保するため、可能な限り費用を抑制しつつ、着実に抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を進めるとともに、新型インフルエンザが発生したときに都民の皆様が適切に薬剤を使用できるよう、引き続き備蓄薬を迅速に供給するための体制整備を推進していくべきであると申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○高橋委員 それでは、百五十八号議案、健康長寿医療センターの第三期中期目標について質問させていただきます。
近年、高齢化が急速に進展いたしまして、二〇三〇年には都民の四人に一人が高齢者となる時代が迫ってきております。
日本の平均寿命を見ると、平成二十九年七月に厚生労働省が公表した調査では、女性が八十七・一四歳、男性が八十・九八歳と、いずれも過去最高を更新いたしました。
また、先日の九月十八日の敬老の日の総務省の発表によりますと、九月十五日現在、八十歳以上の方が一千七十四万人、九十歳以上の方が二百万人、そして百歳以上の高齢者の総数は全国で六万七千八百二十四人に上り、都内には、全国でも最も多い五千八百三十五人の百歳以上の方々が暮らしております。
全国で百歳以上が六万七千八百二十四人、今や八十歳、九十歳が当たり前の時代となりました。
しかし、人生の最期まで元気に生活するということを考えると、より重要なことは健康上の問題がない状態で日常生活を送ることができる期間、いわゆる健康寿命をいかに伸ばすかということであります。
ある程度の年齢になれば、体のどこかに疾患を抱えることは多くなるし、二〇二五年には認知症高齢者の数が五十六万人になるという推計もございます。健康寿命を平均寿命に近づけることが大変重要であると思います。
東京で暮らす高齢者が安心して生活することができる社会を実現するためには、健康長寿医療センターのように高齢者医療と老年学研究とが一体的に展開され、学士院賞のように国際的にも評価されるような新たな治療法の開発に結びつくような研究を行うことは、とても意義のあることであります。
また、複数の疾患を抱えることになっても、高齢者の特性を踏まえた医療や介護の充実によって、自分なりの人生を楽しむ時間を少しでも長く持ちたいと願っている都民は大変多いです。
先日、我が党は、健康長寿医療センターを視察いたしました。
新しいセンターは、高齢者医療と研究の拠点として、第二期中期目標期間がスタートした平成二十五年度に新設をされました施設であるが、最新の医療設備や機器を備えているというだけではなく、高齢者の不安が和らぐよう、検査室の壁なども真っ白な圧迫感のあるつくりではなく、雲を浮かべた空やきれいな模様が描かれているなど、随所にきめ細かい工夫がされている様子が実感できました。
また、研究所と病院は廊下でつながれ、床面が色分けをされるなどしてわかりやすい環境になっておりました。
そこで、改めて現在のセンターの施設の特色について伺います。
○稲葉施設調整担当部長 平成二十五年に開設した新施設は、病院と研究所を一体的に整備した複合施設であり、各研究チーム間、また病院と研究所の間の連携、討議、共同作業がより進むことを意図した設計となってございます。
病院では、高齢者の負担の少ない多様な手術ができるハイブリッド手術室や、最新のMRIなどを導入するとともに、研究所でも、PET-CTや超解像顕微鏡など最新の機器を導入してございます。
また、わかりやすい診療科表示や温かみのある内装など、外来患者が安心して利用し、入院患者がくつろげる施設となってございます。
○高橋委員 高齢者医療の病院機能と認知症の研究、介護予防の研究など、病院と研究所との連携はすばらしいことだと思います。
今後、この先進的な取り組みをますます充実発展させていただきたいと思っております。
さて、先般の委員会で健康長寿医療センターの平成二十八年度の業務実績評価の報告がありましたが、外部有識者で構成される評価委員会からも、これまでのところおおむね順調に事業を進めているとの評価を得ているとのことでありました。
また、今回は、こうしたこれまでの実績も踏まえつつ、来年度から次なる五年間の第三期中期目標(案)が議案として提出されております。
既に高齢者医療や研究の分野では実績がある法人ではありますが、これまでの取り組みに対する評価委員会からの意見などを踏まえ、次期中期目標期間において、東京都としてこれまで以上に法人に取り組んでもらいたいということは何か、何を取り組んでもらいたいのか、伺います。
○稲葉施設調整担当部長 評価委員会からは、第二期中期目標期間の法人の業務実績評価について、高齢者を取り巻くさまざまな課題に取り組んだことを評価した上で、今後も都における高齢者医療研究の拠点として、さらにその成果の普及、還元を強力に推し進めるとともに、医療研究の知見を踏まえて高齢者の医療と介護を支える人材の育成をすることを求める意見をいただきました。
これらの意見及び都の高齢者福祉保健の課題も踏まえまして、都として、平成三十年度から始まる第三期中期目標期間においては、これまでに培った技術、知見、病院と研究所が一体化した法人である強みを生かし、高齢者が安心して暮らし続けることができる大都市東京にふさわしい地域包括ケアシステムの構築に寄与すること、また、法人の経営基盤をより一層強化していくことを求めることとしております。
○高橋委員 かつてないスピードで高齢化が進む中、高齢者医療や老年学の研究を担うセンターの役割はますます重要になるものと認識しております。
評価委員会の意見にもあったように、センターが直接的に提供する医療や、実施する研究の成果の都民への還元はもちろんのこと、これから先の高齢社会を支える人材の育成はとても重要な課題であります。
これまでの長い時間をかけて積み上げてきた実績や研究成果を十分に活用し、東京の全ての高齢者の生活の質の向上にさまざまな形で貢献していただくことを期待して、議案に賛意を示し、質問を終わります。
○藤田委員 私からは、百五十八号議案、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター中期目標に対しましての質問をさせていただきます。
今定例会には地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの二〇一六年度の業務実績報告があり、第三期の中期目標が議案として提出されました。
健康長寿医療センターは、第二期の五年間、医療制度や診療報酬改定などの影響を受けながらさまざまなことに対して対応してきた時期ともいえます。
地方独立行政法人となり十年、新病院に移転してからは丸三年がたち、本当に激動の中、現場の職員が、医療と看護の質を維持する取り組みや経営改善の取り組みなど多くの点で並々ならぬご努力をされていることに、医療センターに対しまして心から敬意を表したいと思います。
健康長寿医療センターがこれからも高齢者の健康の維持及び増進と東京都の福祉増進のために貢献されることを願って、十点質問をさせていただきます。
現在、格差と貧困が進む中、生活保護を受ける被保護世帯全体に占める高齢者世帯の割合も上昇し、二年前には高齢者世帯の割合は四八・五%でしたのが、二〇一六年三月には五〇%を超え、ことし三月には五二・一%に達し、高齢者の貧困も社会問題になっています。経済的な問題は健康にも影響があるとして、健康格差の研究も行われています。
そこでお聞きします。
健康長寿医療センター研究所と東京都の連携から、都として、社会経済状況などによる健康格差の縮小にどのように貢献していこうとお考えでしょうか。
○稲葉施設調整担当部長 健康長寿医療センターの研究所は、都内の高齢者の健康の維持及び増進に寄与することを目的として、老化、老年病などに関する基礎科学、医学的研究や社会科学的研究を総合的に推進してございます。
社会科学的研究を行う、社会参加と地域保健研究チームにおきましては、社会参加、社会貢献の促進等をテーマに、高齢者のウエルビーイング、幸福を促進、阻害する社会的要因の解明や社会的孤立の予防に向けた重層的地域包括ケアシステムの開発などを行ってございます。
○藤田委員 高齢者の健康長寿と生活の質の向上を目指す研究に今後とも取り組む、現在も取り組んでいらっしゃるということでした。
この具体策の一つとしまして、健康長寿医療センター研究所の社会参加と地域保健研究チームの中で、社会的に孤立しがちな高齢者を地域で重層的にケアする地域包括システムを構築し、プロダクティビティーの促進と健康格差の縮小に貢献しますと記載されています。ぜひ東京都としても健康格差の縮小のために、政策にも生かしていただきたいと思います。
健康格差についての要望として、一つお話ししたいことがあります。
厚生労働省の統計によりますと、年間に熱中症で亡くなられる方は六百名から千五百名いらっしゃいます。熱中症と経済的な問題にどういう共通点があるのかという興味深い調査結果があるので、ご報告いたします。
大阪民主医療機関連合会が昨年、千百二十一人の方の屋内データを集めて分析いたしました。訪問したお宅の室温が三十度以上は四百八十件で四割を超え、二十九度以上では六百十三件と五割を超えました。
環境省によりますと、暑さ指数といたしまして、二十五度以上では警戒、二十八度以上では厳重警戒、三十一度以上では危険指数とされております。
また、経済的な理由でエアコンを設置していない、あるいは二時間未満と、ほとんど動かしていない方を調べると九・二%、百四件でありました。
認知症自立度Ⅱa以上が三割と、熱中症予防のためにエアコン使用を呼びかけても理解が困難な方が多いこともわかりました。
日常生活自立度で準寝たきり、これは介助がなければ屋外に出られないという方が四割に上るために、行政が呼びかけるような冷房のきいたまち中のシェルターへの避難には特別な手だてが必要で、多くの方にとって有効な方法とはいえないということがわかりました。
身体や認知機能の変化から高齢者がより熱中症になりやすく、さらに経済的な理由が病状の悪化につながるわかりやすい研究だと思います。
そしてもう一つ、東京都健康長寿医療センターにおきましても、こうした孤立しがちな高齢者への研究が行われていることがありました。行政のサービスや支援から漏れてしまっている高齢者に関するセンターの調査研究は、千代田区との共同によりまして、要介護や要支援の認定を受けていない区内在住の六十五歳以上の高齢者三千人に対しての郵送による調査を行ったと報告にありました。
調査票が返送されてきた高齢者につきましては、その内容に対してアドバイスなどを行ったということでしたけれども、その、調査票が返送されてこなかった約四百人の七十五歳以上の高齢者について、こうした人こそフォローしなければならないという観点から、訪問看護師による訪問調査を実施したという報告がありました。
これは大変私としても重要なものだと思っておりまして、ぜひこうした調査とそれを分析した政策への活用を心から願いたいと思います。
また、先ほどの熱中症のお話でも、ぜひヒートアイランド東京での熱中症による死亡者数減少のために、健康格差の縮小にも貢献する取り組みを期待したいと思います。
次の質問です。
全人的、包括的医療という文言が、一期、二期中期目標にはありませんでしたが、今回の案には入っています。
また、これまで記載されてこなかった、治し支える医療という言葉も繰り返し使われてありました。
これにはどのような背景があったのでしょうか。
○稲葉施設調整担当部長 高齢者医療を担う健康長寿医療センターは、従来から全人的、包括的医療の提供を病院の運営方針に掲げてまいりましたが、より明確に位置づけるため目標に記載をしてございます。
二〇三〇年には約四人に一人が高齢者となる中で、高齢者が地域で安心して生活するための支援が重要となってきておりまして、求められる高齢者医療、医学のあり方についても、これまでの臓器機能の維持回復を目指した治す医療から生活機能の維持回復も目指した治し支える医療へと変化してきているために、新たに治し支える医療を目標に位置づけてございます。
○藤田委員 ありがとうございます。従来から運営方針には掲げて取り組んでいたものであると、そして改めて、より明確に位置づけるために載っけたということでした。
そして、急速に進む高齢化によって、高齢者が複数疾患を抱える、そして求められる医療のあり方も、維持回復を目指す治す医療から生活機能の維持回復を目指した治し支える医療へと変化しているということでした。
そうはいっても、高齢者が現在ほど多くなかった時代においても、生活環境を整えるような支える医療はずっとあったように思います。法人の評価委員会でも、経済力なども含め、生活全体を見た上での医療体制が必要だという意見がありましたが、全人的、包括的医療、治し支える医療というのであれば、ぜひ広く、福祉分野の取り組みも含めて、養育院時代から引き継がれた医療、福祉、研究の三位一体の取り組みも重視して、これからも行ってほしいと思います。
次の質問に移ります。
医療センターは独立行政法人化されたとはいえ、外来患者数をふやしたり、救急患者数も積極的に受け入れたりと、経営面でも大変努力されている病院だと感じました。
その中で、入院患者の平均年齢がほかの病院に比べて十歳高いというセンターでは、退院のめどが立たない方が多いのではないかと思われました。
そこで質問です。
平均在院日数の短縮のためには、どのような取り組みがなされているでしょうか。
○稲葉施設調整担当部長 健康長寿医療センターでは、入院時に患者のADL、認知機能、栄養、薬剤などについて総合的に評価を行い、入院時から退院を視野に入れた治療の提供と適切な退院支援を実施してございます。
また、長期入院患者の方については、多職種が協働して状況の把握を行いますとともに、地域の関係機関と連携し、患者の方が円滑に転院や在宅療養への移行ができるよう支援を行ってございます。
こうした患者の状況に応じた適切な支援を行うことで、平均在院日数の短縮につながったものでございます。
○藤田委員 総合的な評価を行い、先を見越した医療と、また多職種によるかかわりによって在院日数の短縮を行っているというご報告でした。
高齢であると、どうしても入院期間が長くなります。とりわけ社会資源の活用が欠かせないといった方が多くなりますが、医療センターでは、その仕事、そのことを行う医療ソーシャルワーカーは何人配置されていらっしゃいますでしょうか。
○稲葉施設調整担当部長 健康長寿医療センターでは、平成二十九年四月一日現在、医療ソーシャルワーカーとして十一人の常勤職員が配置されてございます。
○藤田委員 十一人は、恐らく病院の規模からしますと、かなり手厚く配置がされているのではないかなと思います。
在院日数の短縮は、当然、入院患者さんも人数が多くなるということで、一回の勤務で何人もの入院を受けなければならないという、大変、過密労働にもつながる状況です。働き続けられる職場づくりが重要だと考えます。
それでは、看護師の離職率は何%でしょうか。
○稲葉施設調整担当部長 平成二十八年度の看護師の離職率は、平均職員数に対する当該年度中の離職者をもとに算出しましたところ、九・三%でございます。
○藤田委員 ありがとうございます。看護部長さんのご努力もあって、看護師さんの退職希望が多いときがあったこともありましたが、そのときにもかなりご努力をされて、退職しないように配慮してきたということも伺いました。
日本医療労働組合連合会がまとめた看護職員の労働実態調査の報告書によりますと、仕事をやめたいといつも思う看護師は全体の約二〇%、時々思うという看護師は約五六%で、全体では七六%が看護師をやめたいと思っているという状況です。看護師が四人いれば、三人が看護の仕事をやめたいと思っているということです。そして、仕事をやめたいという割合は、時間外労働が多いほど多くなる傾向にあります。
こうした、入院をたくさん受ける、ベッド回転を上げるということは、書類の量もふえ、過重労働につながり、時間外労働も多くなるという傾向があります。
同じ職員体制のまま入退院の促進を進めると、労働強化につながり、離職希望者が多くなり、看護師不足に陥るという状況が、ほかの病院でもたくさん生まれています。十分な看護師配置が必要であることを指摘しておきたいと思います。
次に、医療センターでの聞き取りによりますと、昨年度、看護師の採用を強化する目的で看護師紹介会社を利用したということでした。
そのとき採用した看護師は何人いらっしゃいましたか。
○稲葉施設調整担当部長 平成二十八年度は年間八十名の看護師を採用してございますが、そのうち看護師紹介会社からの採用は十六名でございます。
○藤田委員 十六名というご報告でした。
それでは、紹介会社へ支払った紹介料は幾らかかりましたか。
○稲葉施設調整担当部長 平成二十八年度の看護師紹介会社への支払い額は、十六名分で約一千五百万円でございます。
○藤田委員 紹介会社へは一千五百万円くらい支払っているということでした。
紹介会社から紹介された看護師は今も働き続けているでしょうか。
○稲葉施設調整担当部長 紹介会社からの紹介で採用しました看護師十六名のうち、現在十五名が在職をしております。
○藤田委員 十六名中十五名ということで、お一人はおやめになったということでした。
看護師の確保は、どこの病院でもかなり困難な状況です。この長寿医療センターにおきましては、看護師の確保はどのように行っていらっしゃいますか。
○稲葉施設調整担当部長 健康長寿医療センターにおきます職員の採用は、民間事業者や看護学校主催の説明会へ積極的に参加したり、法人のホームページでの募集案内、紹介会社の活用など、年間を通じてさまざまな方法で行ってございます。
○藤田委員 ご報告ですと、一般企業並みに説明会やホームページの活用を行われているということがわかりました。
七対一入院基本料看護基準をとらなければ収益が上げられない。そして長期入院を減らさなければ基本料が下がってしまう。ベッドをあけておくと、それだけで収入が減少する。
入退院をふやせば、七対一看護維持のために、より多くの看護師、実際は労働時間が基礎になりますので、人数よりも労働時間が長くなるという状況になります。入院が多くなると、書類作成などでの超過勤務が増加するし、疲れて退職希望もふえる悪循環に陥ります。
今の医療制度では、急性期医療に特化してベッドを高回転で回し、看護師も疲れてやめて採用してを繰り返すのか、それとも看護師が集まらないから諦めて十対一看護に戻すのか、倒産するかという、病院の経営は本当にせっぱ詰まった状態です。
その上、健康長寿医療センターの場合では、派遣職員の解消を進めなければならない。多くの看護師をそのために採用しなければならず、入れかわりも多くなると思われます。
昨年度の当初は欠員もあったと聞いています。そうした状態で、紹介会社にお金を払ってまで派遣解消を急ぐ必要はないかと思います。
最後に、差額ベッド代についての質問です。
現在、差額ベッド代を徴収している割合は約二六%です。都立病院の差額ベッド占有率は二割以内となっていますが、医療センターについての占有率はそれより高くなっています。
東京都として、この差額ベッド代はどのように考えていますか。
○稲葉施設調整担当部長 健康長寿医療センターにおきましては、患者の療養環境向上のため有料個室を設定してございます。
有料個室の利用は本人の同意が前提でございまして、救急患者や術後患者等、医師による治療上の必要があると判断した場合には個室使用料を徴収してございません。
○藤田委員 ありがとうございます。どこの病院でも、差額ベッド代を取らないと経営状況が悪化してしまうという状況があります。これは本当にせつない状況があると思います。
東京都の独立行政法人化にしてメリットを生かすという考え方もあるようですけれども、病院は経営と効率化のために動かなければならなくなります。差額ベッド代を取るということもその一つになっています。
百四十年以上になる養育院の歴史をしっかり引き継ぎ、広く都民に還元される医療、福祉、研究を行っていただきたい。そのためには、やはり健康長寿医療センターは都立直営に戻すべきであるとの意見表明をいたしまして、私の質問を終わります。
○つじの委員 世界有数の国際大都市である東京は、常に海外からの感染症の拡大のリスクにさらされていますが、現時点まで東京都がその対策に取り組んできたことは評価できると思います。
近年、全世界的な航空網のさらなる発達に伴う人々の長距離移動に伴い、短期間で世界各地に感染症が拡大しやすい状況になっております。
今後、二〇二〇東京大会を控え、海外から東京を訪れる方々が一層増加した際には、これまで以上に感染症が海外から東京に持ち込まれることが危惧されると考えられます。
そこで、新型インフルエンザについては、平成二十一年のパンデミック以降発生はありませんが、主に中国において、鳥インフルエンザH7N9の人への感染例や死亡した例も確認されております。
今後もウイルスの変異による新型インフルエンザの発生のリスクは引き続きあり、東京都におけるパンデミックに備えた対策を着実に行うことが重要であると考えます。
そこで、東京都では、新型インフルエンザのパンデミックに備え、具体的にどのような抗インフルエンザウイルス薬を備蓄することになっているのでしょうか。
また、備蓄薬の構成はどのような根拠があって決定されるのか、教えていただきたいと思います。
備蓄を開始した平成十七年以降の具体的な備蓄薬の構成の変容をわかりやすく教えていただきたいと思います。
○吉田感染症危機管理担当部長 都は、平成十七年度からタミフルの備蓄を、その二年後からはリレンザの備蓄を開始してございます。
また、平成二十七年度に、国は、備蓄薬といたしまして、既存のカプセル剤でございますタミフル及び吸入剤でございますリレンザの二剤に加えまして、吸入剤であるイナビル、主に小児に用いられるタミフルドライシロップ、重症者用に点滴で用いられるラピアクタを指定するとともに、都道府県へこの旨を通知してございます。
都は、この国の通知に基づきまして、平成二十八年度からはタミフルドライシロップ、またラピアクタの備蓄を行っており、今後、既存の備蓄薬の使用期限を勘案しながら、イナビルの備蓄を開始する予定でございます。
○つじの委員 抗インフルエンザウイルス薬の多様化が図られており、子供に使用することを想定した、罹患者の年齢や症状の重症度を勘案、適合した形状の薬剤を購入していることは理解できました。
備蓄している薬剤はおのおの使用期限が定められており、一般的に期限が切れた薬剤は使用できないため、定期的な薬剤の買いかえが必要であると認識しております。
そこで、現時点で備蓄薬として指定されている抗インフルエンザウイルス薬五剤の使用期限を、それぞれお知らせいただければと思います。
○吉田感染症危機管理担当部長 現時点におきまして備蓄薬に指定されてございます五剤の使用期限といたしまして、タミフル、リレンザ、タミフルドライシロップにつきましては十年間、イナビルにつきましては八年間、ラピアクタにつきましては四年間とされているところでございます。
○つじの委員 結果的にパンデミックが発生せず、薬剤を使用期限内に使用しなかった場合、期限切れの薬剤が多量に発生してしまうことになります。
使用期限を過ぎた多量の備蓄されている薬剤は、東京都としてはどのように取り扱われるのでしょうか、教えていただければと思います。
○吉田感染症危機管理担当部長 使用期限が過ぎました抗インフルエンザウイルス薬につきましては、廃棄をしているところでございます。
○つじの委員 当然ですが、薬剤の購入や備蓄のコストなどは都民の税金から出されているものであります。安心・安全のためのコストとはいえ、ワイズスペンディングの視点も考慮しなくてはいけません。
備蓄薬を使用期限まで備蓄するのではなく、使用期限前に市場に放出するなど、無駄にせず有効に使用し切る工夫はできるものでしょうか。
○吉田感染症危機管理担当部長 行政備蓄用として備蓄してございますタミフル等の抗インフルエンザウイルス薬は、パンデミック時に使用することを条件といたしまして、市場価格よりも安価に購入してございます。
このため、行政備蓄用の医薬品の使用には制約があり、期限が切れる前にほかの目的で使用することは、残念ながらできない仕組みとなってございます。
○つじの委員 行政備蓄用の抗インフルエンザウイルス薬はあくまで危機管理を目的としたものであり、現時点では、使用期限前に備蓄薬を有効活用するのは困難であることは理解できました。
しかし、今後、例えば備蓄薬購入の際の契約の見直しなどによって、無駄がないように工夫する余地はあると考えます。
東京都においては、備蓄薬を使用期限到来前までに放出できるよう条件緩和の検討を求めるなど、従前より国に対して提案要求をしておりますが、これを引き続き、働きかけを行っていただきたいと思います。
パンデミック発生に備え、都民の健康、生命を守るために、多様な薬剤を計画的かつ安定的に備蓄することが重要であると認識しております。
備蓄薬の種類、量などは、計画的に、かつ、その時々の医学的知見を踏まえた国の動向を考慮し、必要な薬剤の備蓄を継続して、万が一に備えていただきたいと思います。
本日は質問に答えていただき、どうもありがとうございました。
○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 異議なしと認め、知事提出議案に対する質疑は終了いたしました。
この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
午後五時一分休憩
午後五時二十六分開議
○伊藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
次に、付託議案のうち議員提出議案の審査を行います。
議員提出議案第十七号を議題といたします。
本案について提出者の説明を求めます。
○岡本委員 改めまして、都民ファーストの会、岡本こうきと申します。
都民ファーストの会東京都議団、都議会公明党及び都議会民進党の提出者を代表いたしまして、本条例案の趣旨と提案理由を説明させていただきます。
まず、背景にある医学的な及び科学的な知見から確認させていただきます。
受動喫煙が健康に悪影響を与えることは科学的に明らかにされており、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群などのリスクを高めるとされています。
平成二十八年国立がん研究センター発表及び厚生労働省より公表された喫煙の健康影響に関する検討会報告書、平成二十八年八月、通称たばこ白書によれば、我が国の受動喫煙による年間の超過死亡数は少なくとも一万五千人と推計されています。
現在、世界百八十一カ国が締約しているたばこ規制枠組み条約を我が国は当初から批准し、平成十七年二月に発効しました。
この条約は、たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されているとの認識を前文で掲げ、たばこの使用、たばこの消費を減少させること、たばこの煙にさらされることを減少させることを目的としています。
また、WHOとIOCは二〇一〇年に、たばこのないオリンピックを内容とする合意をしており、近年のオリンピック・パラリンピック開催都市では、法律や条例で屋内の公共の場所を全面禁煙とし、罰則を伴う受動喫煙防止対策を講じています。
こうした認識及び状況のもと、厚生労働省においても、また二〇二〇年大会のホストシティーである東京都においても、受動喫煙防止の法律や条例の制定が検討されています。
もっとも、国や地方自治体のこれまでの検討は、主として職場や公共の場所での喫煙に関するものが中心でした。これまで、子供の生活空間における受動喫煙防止の法制はほとんど議論されず、手つかずの状態でした。
たばこ白書によれば、子供の受動喫煙と乳幼児突然死症候群、SIDS、ぜんそくの既往との関連について、科学的証拠は因果関係を推定するのに十分であるレベルワンと判定されています。
また、ぜんそくの重症化、ぜんそく発症、肺機能低下、学童期のせき、たん、喘鳴、息切れ、中耳疾患、齲蝕、虫歯との関連について、因果関係を示唆、レベルツーと判定されています。
さらに、我が国の厚生省心身障害研究において、父母ともに習慣的喫煙ありは、父母ともに習慣的喫煙なしに比して、約四・七倍程度、乳幼児突然死症候群のリスクが高まることが示されています。
また、別の研究で、三歳児のぜんそく様気管支炎は、家庭内喫煙がない場合に比べ、母親が喫煙する場合には三倍に増加することが示されています。
このように、子供は、受動喫煙によって重篤な健康被害を引き起こすおそれがあります。その上、子供はみずからの意思で受動喫煙を避けることが困難であり、受動喫煙からの保護の必要性が特に高い存在です。
非常に重要であるにもかかわらず、これまでの法制化の議論から抜け落ちてきた問題であり、我々議員による提案として、子供の受動喫煙防止に特化した条例の制定を提案するものです。
本条例案が想定する対象場所としては、子供が長時間継続的に過ごすであろう家庭内、保護者に同伴されていく可能性のある喫煙施設、非常に狭い空間で濃厚な受動喫煙を受ける自動車内、屋外で子供たちが日常的に日々利用する公園や学校周辺や小児医療施設周辺などにおいて、子供の受動喫煙からの保護が特に図られるべきです。
本条例案は、罰則を設けず、まず啓発を進めていくものです。
次に、具体的な条文の内容について、要点を絞ってご説明申し上げます。
二条四号、子供、五号、保護者の定義は、児童虐待防止法を引用しています。
これは、先ほど述べました、子供はみずからの意思で受動喫煙を避けることが困難という点、生命の侵害や重篤な健康被害が生じるなどの点において、児童虐待との共通性があると考えているためです。
次に、重要な点として、第六条、家庭内について。
この点、本条例案への反対意見として、家庭内を対象とすることへの抵抗感を述べる意見も見受けられました。
かつては、法は家庭に入らずなどという言葉がありました。しかしながら、現代においては、家庭内における虐待や暴力については児童虐待防止法やDV防止法が制定され、積極的に法が関与すべきとされています。
本条例案は、子供の生命、健康の権利を守る条例であり、そうした考え方に合致します。
また、本条例案は、罰則は設けず、啓発条例としての性格が強く、反対意見にも配慮した、バランスのとれた内容といえます。
次に、二条三号の受動喫煙の定義のうち、残留するたばこの臭気について、いわゆるサードハンドスモークの有害性について。
この点については、医学的、科学的な知見が現在集積しつつあります。人の細胞への毒性、損傷が判明した、マウスの健康への悪影響も確認された、こうした知見も踏まえて、本条例の対象にすべきと考えます。
最後に、二条二号の喫煙の定義のうち、加熱式たばこについて。
本条例案は加熱式たばこも対象にしており、三号の煙は、加熱式たばこから発生する蒸気も含むと解釈しています。
加熱式たばこについては、まだ研究が少なく、知見が確立していませんが、周囲への有害性の疑いがあるものと考えており、本条例における啓発の対象にすべきと考えています。
なお、本条例案の前文と第一条には、子供が安心して暮らせる環境、子供の心身、心の健やかな成長、都民の健康で快適な生活との文言があるように、健康の観点のみならず、快適な生活の維持という観点も保護の対象としています。
以上、ご説明申し上げました。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
○伊藤委員長 説明は終わりました。
これより本案に対する質疑を行います。
発言を願います。
○小宮委員 今、東京都におきましては、たばこの受動喫煙防止について二つの条例案があります。ほとんどの都民は、この二つあるということを知らないか、あるいは知っていても、この二つの条例案の違いがわかっておられないことというふうに思います。
条例案の一つが、今回、議員提出として出された、都民ファーストの会、また公明党の皆さんから出されているこの条例です。
また、もう一つは、東京都が現在、九月八日から十月六日までパブリックコメント、意見公募を実施しておりまして、来年には条例化を目指している、東京都の受動喫煙防止条例です。
我が党は、さきの都議選の公約において、原則屋内全面禁煙とする罰則規定のある受動喫煙防止条例の制定を公約として掲げています。ですから、効果的な条例を制定するために、今後しっかりと都民や事業者からさまざまな意見をお聞きしていきたいというふうに考えています。
さて、先ほども申し上げたように、都民には、今回の議員提出条例の意味、そして東京都が準備をしている条例との違いというものが定かではないというふうに思います。
東京都は、包括的で罰則を伴う実効性の高い条例案についてのパブリックコメントを実施中ですが、これは今年度中に条例案が出されて、二〇一九年の施行を目指すというものです。
こういうふうな予定となっておりますけれども、そうした中で、あえて先んじて今回の条例案を提出される意味について、まず伺います。
○岡本委員 現在、条例が二本検討されているという点、そして、都条例に先んじてこちらの条例を提案したことについての意味をご質問いただきました。
先ほどの説明においても述べましたとおり、この子供に関する条例につきましては、これまで議論が抜け落ちてきた問題だと認識しております。
特に厚生労働省においても、この点は議論が、法案という形では抜けてきました。そして、東京都においても、これまで検討はなされてきておりませんでした。
しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、子供の受動喫煙防止というのは非常に必要性が高い。にもかかわらず、十分な法的な検討が進んでこなかった。
これまで、厚生労働省や東京都は、やはりオリンピック・パラリンピックを意識して、職場や公共の場についての議論が先行してきたという点があります。
しかしながら、子供については、健康被害も非常に重篤である。そして、子供は、何よりも自分の意思でこれを避けることは困難という状況がありますので、この条例の制定の必要性が高いわけですけれども、そうした厚生労働省や都の条例とは別に、こうした条例を我々議員の手で提案をしていく必要があるということで、このたび提案をさせていただいております。
時期についてなんですが、東京都の条例においても、また、この議員提案の子供の条例につきましても、どちらもスピード感を持って進めていく必要があると、そのように考えております。どちらもなるべく早く、できるだけ早く制定をし、そして十分な啓発を進めていくべきだと考えております。
本条例案につきましては、来年の四月一日を施行予定と考えております。子供の受動喫煙を早急に防止するために、ますますの啓発を高めていく必要があると考えております。
先ほど、ご質問の中に、二つの条例が同時に並行していることを都民の皆さんがまだ十分に認識していないのではないかというご指摘もありました。
そうした点に関しましても、しっかりと啓発を図って、この条例を制定する意味、そして公共の場や職場とはまた別に、この条例、子供を守る必要性が特に高いんだということをしっかりと啓発をしていく必要があると、そのように考えております。
以上です。
○小宮委員 それでは、この条例を策定されるに当たりまして、どの程度の期間、パブリックコメントを皆さんはとられたんでしょうか。
また、その得られた件数ですとか賛否など、内容についてお教えをいただきたいと思います。
○岡本委員 都民ファーストの会と公明党と、それぞれ別々に意見公募を行っておりますので、別々に回答を申し上げたいと存じます。
まず、通常の行政機関に適用されるパブリックコメントの定義とはまた異なりますので、私どもの意見公募という呼び方で進めさせていただきたいと思います。
この意見公募は、八月三十日から九月八日にかけて、インターネットを通じて行いました。
全体の件数は、都民ファーストの会に寄せられた件数は四百七十件、複数の人が重複して投稿しているものも見受けられましたので、そうしたものを数で整理すると四百六十人の方から頂戴したと、そのように考えております。おおむね賛成意見が四割、反対意見が約四割、どちらとも判別がしづらいものが二割という認識でございます。
意見の概略につきまして、賛成意見の中には、罰則を導入すべきだとする意見が多数見られました。
また、今回の条例の対象に含まれておりませんが、妊婦や胎児の受動喫煙保護を求める声も複数見られました。
また、この条例によってベランダ喫煙がふえて、隣家、隣の家、隣の住居等のたばこの煙の害がふえる可能性を危惧する意見も見られました。そうした意見は、この条例に賛成し、今後そうしたベランダ喫煙等の隣家についても条例として取り上げてほしいという意見も見られましたし、他方で、そうしたベランダ喫煙等がふえるのでこの条例に反対するという意見も両方見受けられました。
また、路上喫煙等について、今回の意見公募、本条例案とは直接関係のない意見ですが、路上喫煙を東京都で取り締まってほしいというような要望も非常に多く見られました。
反対意見につきましては、この条例が罰則つきであると誤解しているものや、家庭内の喫煙を一律に禁止し取り締まると誤解しているもの、家庭内の監視と捉えるもの、それから受動喫煙の科学的な有害性については知らないといっているものや否定するものなど、誤解や理解不足に基づくものが反対意見としてはほとんどでありました。
また、反対と書きながら啓発には賛成という、この条例が啓発条例であるということを正しく理解していただけていないものも見受けられました。
また、子供の前でたばこを吸わないことは当然のこと過ぎて条例の制定の必要がないという意見も見られました。
いずれの反対意見も、総じて余り説得力があるものとはいえませんでした。
親の監護権やプライバシー権を理由とする意見も、いずれも情緒的で、詳しい理由の説明などはなく、親の権利がなぜ子供の健康や生命の権利に優先するのかといったところまで言及した反対意見は皆無でありました。
結論として、合理性の認められる意見については条文の修正に生かさせていただきました。
以上で意見公募のまとめを報告させていただきます。
○遠藤委員 それでは、我々都議会公明党も、都民ファーストの会と同時期にパブコメを行わせていただきましたので、その結果についてご報告を申し上げたいと思います。
期間につきましては、八月三十日から九月八日にかけて、都議会公明党のインターネット上に窓口を設け、意見公募を行わせていただきました。
うち賛成意見は全体の約五四%、反対意見は二七%、その他が一九%でございました。
賛成意見のうち、主なものは、未来ある子供を守るための条例としてぜひ賛成をしたい、こういう大きな意味を持った条例であるという、こういう意見が大半でございました。
その上で、歩きたばこや路上喫煙などの関連する規制を求める、さらに強化をする、こういう意見がございました。
あわせて、今回は努力義務ということで、それぞれ条例内において求めておりますけれども、さらに、努力義務ではなく、しっかりと罰則も含めて、より強く規制をすべきだ、こういう声もございました。
一方、反対意見についてでありますけれども、私的領域、これは家庭であると思いますけれども、ここに介入するおそれについて懸念をする意見もございました。
あわせて、子供に対する有害物質というのは、たばこのみならず、ほかのものもあるのではないか、たばこだけ規制するのはいかがなものか、このような意見がございました。
以上でございます。
○小宮委員 今ご説明いただきました意見公募で得られたさまざまなご意見、賛否に関して、今、私は初めて知りましたけれども、こうした今の結果というものを、皆さんは何らかの方法で公表されていたんでしょうか。
○岡本委員 今、回答いたしました意見公募の結果につきましては、マスコミ等の記者の方から個別に受けた取材に関しては回答いたしております。特にインターネット等で公開はしておりません。
いただいた意見公募の内容をそのまま公開するということは予定しておりませんが、今まとめた内容につきまして、今後何らかの形で公表するということについては検討してまいりたいと、そのように考えております。
○遠藤委員 このインターネットによる意見公募でありますけれども、そもそも公開を前提とする意見公募ではございませんでした。
それは、大きいトレンドとして、都民の皆さんの意向が、この条例案について、どこにあるのかということをしっかりとまず掌握することが第一義的であるという考えに基づいたものであります。
その上で、これまでオープンにしてこなかったのかどうかと、こういうお話でございますけれども、先ほど岡本委員からもございましたとおり、マスコミの方からの取材に対しては個別具体にお答えを申し上げた次第であります。
今後については、先ほど小宮委員からもございました、今後の都条例の策定に向けて、いろんな議論も出てくると思いますので、そうした中で、議会質問等を通じて、しっかりとここでいただいた声については反映をしていきたい、このように思ってございます。
○小宮委員 今の、今回の条例案に対する意見公募の期間というのは十日間であったというお話がございました。現在実施をしている東京都の方の条例案に対するパブリックコメント、これは公募期間が一カ月というふうになっておりまして、現在、公募三週間目で約二千件の意見が出てきているそうです。これと比べても、やはり期間も大変短いなというふうに感じます。
またさらに、寄せられた意見の内容というのが、私もマスコミで皆さんがコメントされた程度しか存じ上げませんでしたので、これがやはり、今後ということが大事だと思いますけれども、公表がされていなかったということはちょっと残念に思うところです。
条例案を提出される側として、説明不足というのは否めないんじゃないかなというふうにも思いますし、情報公開の必要性であるとか都政の透明性、こういうことを訴えてこられた御党に当たりましては、現実の対応とちょっとかけ離れているような印象も受けたんですけれども、この対応について見解を伺います。
○岡本委員 説明不足とのご指摘をいただきました。
私どもとしましては、繰り返しテレビや新聞等で取り上げられたことからも、この件についてはかなり、ある程度集中的に報道もなされ、説明や啓発がある程度都民に伝わったと、そのように認識をしていたところではございますが、もっと、説明が足りないということでございますので、引き続き啓発をしっかりと図ってまいりたいと、そのように考えております。
○小宮委員 子供の受動喫煙防止に反対する人はいません。
私自身もたばこは吸いませんし、公共の場において禁煙の推進というのは大賛成です。もちろん、子供を受動喫煙の被害から守るということにも全面的に賛成をいたします。
ただし、今回の条例については異論があります。やはり家庭内のことということを条例で定めることには慎重であるべきだというふうに考えています。
家庭というのは社会の最小の単位です。そこにはさまざまな人間関係があって、子供たちはその中でそれぞれ育っていきます。両親との関係に悩む子供もいれば、両親や家族と大変仲のいい、そういう子供もいるわけです。
しつけという形でルールを学んで、家族の習慣や伝統というものに触れていく。そんな親密な大切な空間を条例という形で規制するということが望ましいことと私はちょっと思えないところです。
繰り返しますけれども、子供の受動喫煙防止に反対する人はいないと思います。私も大賛成です。
今回の条例案で問題なのは、家庭や私的空間、これを条例で規制することの是非だというふうに思っております。
家庭内の子供の受動喫煙を防止するために、果たして条例が必要なのか、条例が最良の手段なのか、条例を定めることで実効性が期待できるのか。いいかえれば、条例によって家庭内の子供の受動喫煙がちゃんと防止をされるのかということです。
罰則規定のない条例、これを啓発のための条例であるというふうに、まずは強調しておっしゃっておられますけれども、啓発が目的ならば、条例ではなく、もっとほかのやり方もあるのではないでしょうか。
知人の法律家に伺いますと、法律の世界では、法は家庭に入らずというふうにいわれております。家庭の問題というのは、法によるしゃくし定規な解決になじまない、むしろ家庭内の話し合いで解決した方がいいという意味です。また、犯罪を防止するにも、その方がいいという考えです。だからこそ、法が家庭に入るに当たっては、その介入方法や内容には慎重な議論が必要ではないでしょうか。
あえて条例で子供だけ切り分けて、家庭の中を規制する条例を制定するからには、家庭内での子供の受動喫煙というものが極めて深刻な状況にあるということが当然の前提というふうに考えます。
家庭内での子供の受動喫煙の被害やその実態について調査をし、そしてまた把握をされているのか、伺います。
○岡本委員 ご回答申し上げます。
まず、先ほど私の説明でも申し上げました、法は家庭に入らずという古代ローマの格言、これがあるということは承知をしております。
これは現代の刑法においても、親族間の窃盗や詐欺、横領等の財産犯について、刑を免除する、または親告罪とする、そうした規定が見られます。
しかしながら、家庭内における虐待や暴力については、近年、児童虐待防止法やDV防止法、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律が制定されており、そうしたかつての法格言を超えて、積極的に法が関与すべきとされております。財産犯と身体、生命とは価値が異なるというところをまず認識をしていただきたいと思います。
それから、条例で規制をすることの是非ということをおっしゃいました。
先ほども申し上げましたとおり、この条例には罰則がございません。努力義務の規定と啓発を目的とした条例であります。
条例を制定せずに、ただ単に啓発をするという手段も考えられるところではございます。
しかしながら、先ほど、意見公募の中にも述べましたとおり、一部の意見においては、子供の前でたばこを吸わないことは、子供の目の前で、あるいは子供と同室の空間でたばこを吸わないことは、もはや当然だという、喫煙者の方でもそのようにおっしゃる方がいらっしゃる。
他方で、その反面、自分の家では、おじいさんが決めれば、あるいは親が決めれば、それで喫煙をするのが当たり前なんだという、そういう価値観の家庭もあります。
そうした家庭においては、子供の発言というのは非常に認められにくい。そうした立場において、この条例の前文にも書いておりますとおり、社会全体の責務として子供の受動喫煙の防止を図っていくためには、子供と同じ空間で喫煙をするということはよくないことなんだという規範をしっかりと定立する必要がございます。そうした価値観や規範をしっかりと定立するために、この条例の制定をすることの意義があると、そのように考えております。
条例を制定しない場合の啓発以上に、さらに規範をしっかりと示した上で啓発を進めていく、これが子供の受動喫煙を防止していく重要な手段になっていくと、そのように考えております。
子供の健康被害の重篤性につきましては、先ほど説明で申し上げたとおりでございます。
子供がどれぐらいの数、被害を受けているのかということに関しましては、これは全国的に調査をした件数はございません。私の方では認識しておりません。
また、東京都においても、こうした調査をしているものではないと、そのように理解しております。
しかしながら、条例を制定するために、こうした件数を把握する必要があるのかという点につきましては、社会実態として、受動喫煙の被害を受けている子供たちが現にいる以上、そうした調査の件数をとるかどうかによって、条例の制定をおくらせるべきではないと、そのように考えております。
実際、これまでに小児科の医師の方々からも多数意見を頂戴しておりますけれど、小児科医において、特にぜんそくを診察しておられる小児科医の先生方において、非常に、両親の喫煙、あるいは母親の喫煙、そうしたことを受けながらぜんそくで通院をしておられる子供たちが多数いるということも伺っておりますし、社会の実態としてそうした事実が現に存在していると認識しております。
もちろん医師から、ぜんそくの子供の前で喫煙することはよくないことだということを、啓発をしておられるということではありますが、そこにやはり東京都としても、そして条例としても、そうした規範をしっかりと打ち立ててほしいと、そのような意見をいただいております。
いろいろな関係機関が協力し合って、しっかりと啓発を進めていくことが、この条例の実効性を高めることであると、そのように理解をしております。
しっかりと子供の受動喫煙の被害を防止していくために、関係機関とともに啓発を進めていくべきと、そのように考えております。
以上です。
○伊藤委員長 申告時間を大分使っておりますので、提出者の方の答弁の方も簡潔に、明瞭に、お願いできればと思います。
○小宮委員 ありがとうございました。
急いでいるということで、調査をして件数をとるということではなくてという、お医者様からのいろいろな知見、見識等々に基づいてというお話だったというふうに思います。
今、片や東京都というのは、条例を制定するに当たりまして、今後、一番議論となってくる飲食店、ここに対してしっかりと調査を行っているんですね。
これ、飲食店に関しては、今回の条例案からすっぽり抜けちゃっているわけですけれども、飲食店、これ、東京都は平成二十年と、それから二十五年、二十七年、そしてまた現在に至って調査をしてきています。今現在、全体で十六万件の飲食店があるわけですけれども、そのうちの二万件に対して調査をしっかりと行っているところであると伺っています。
やはり条例を制定するのであれば、そうした調査、準備といったものをしっかりとするべきではないかというふうに思いますし、罰則がないから調査までは要らないのかというような意見では、やはり家庭という私的空間にも入る、影響する、及ぶものですから、都内で十八歳未満のいる一般世帯の数というのは、平成二十七年の国勢調査によると百十五万四千九十五世帯にも上っているわけです。
そうした家庭の実態調査というものを一切しないというのは、やはりちょっと急ぎ過ぎの感もあるんじゃないかなというふうに思います。
さまざまな意見が、都民の中、家庭の中にはあると思います。広く都民に対して実態の調査をすべきですし、そうした取り組みを通じてこそ、これもまた啓発活動の一つになるんではないかというふうに考えております。
これまで東京都は、国の健康増進法にある、多数の者が利用する施設を管理する者は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないという努力義務に基づきまして、喫煙の健康影響に関する普及啓発や飲食店等に対する禁煙、分煙店頭表示ステッカーの張りつけなどの取り組みを関係者の理解と協力を得ながら進めてきました。
また、平成二十六年十月から翌五月にかけて行われた東京都の受動喫煙防止対策検討会におきましては、医師や法律家、経済界などの学識経験者が、東京都医師会や東京都飲食業生活衛生同業組合、また東京都たばこ商業協同組合連合会など関係十団体からのヒアリングを実施しておりまして、二〇一八年までに条例化について検討を行うことなどの提言をまとめてきたわけです。
そうしたこれまでの長い取り組みに基づいて、今、東京都受動喫煙防止条例の基本的な考え方についてパブリックコメントが行われているところです。
罰則も含め、実効性のある条例、これは東京都だけではできないんですよね、やはり区市町村の理解、あるいは保健所の協力がないとできません。
法的に拘束力のある、意味のある受動喫煙防止条例というものを、今、東京都として、いよいよこれから策定していく、そういう段階にある中で、子供はもちろんです、お子さんはもちろんですけれども、例えば妊婦の方、病人の方、そういう配慮を要するさまざまな人たちの健康被害というものを防止する、そういう必要もあるんではないかなというふうに思います。
子供だけの条例というものを別途制定するのではなく、包括的で実効性の期待できる都条例の中に、そうした視点、対象といったものを入れ込んでいくという方法もあるんではないかと思いますが、見解を伺います。
○遠藤委員 今の、小宮委員から十分に調査するようにと、こういうご発言は尊重させていただきたいと、このように思っております。
その上で、子供をめぐる受動喫煙の危険性、またそれに対処する緊急性というのは、これは何もここ一、二年で騒がれていたわけではなく、しばらくこうした指摘があったわけであります。
都においても、受動喫煙防止条例の策定は何度か模索をされておりました。しかし、さまざまな意見があり、それが頓挫をした、こういう背景もあります。
先ほど来岡本委員からも、なぜ今なのか、なぜ子供に絞ってなのかと、これはもう改めて私から申すまでもないわけであります。緊急性、そして実効性を速やかに担保する、その上で、今回制定させていただいた後には、都条例、またこれまでの都の事業との関連をしっかりと捉えながら、また先ほど来申し上げております、パブコメでいただいたご意見等もしっかりと反映をしていきたいと思います。
先ほど、エビデンス、調査が不十分ではなかったのかと、こういう指摘がございました。
昨年公表されましたたばこ白書によれば、二十一世紀出生児縦断調査、これによりますと、乳児、これは〇・五歳児でありますけれども、この乳児の両親の一〇・九%が喫煙を家庭内でしていた、これ、二〇〇一年でありますけれども、一〇・九%。そして両親のいずれかが室内で喫煙をしている割合は三六・八%、合わせると四七・七%が室内で、二〇〇一年時点ですけれども、子供の前で(小宮委員「前……」と呼ぶ)室内で。そういったことが十分に想定されておりますので、こうした点も、こうしたたばこ白書の中身も加味しながら、我々は必要であると、このような考えに至ったわけであります。
○小宮委員 子供の受動喫煙の防止に反対する人はとにかく誰もいないわけです。
ただ、そもそも訓示条例とはいえ、家庭内、私的空間を含む、今回この内容となっているわけです。
今回の条例案というのは子供を受動喫煙から守ろうとする啓発目的によって、家庭内や私的空間というプライベートに行政が踏み込むことになる、これを疑問視する声が上がっています。私的空間を対象とすることの是非です。
改めて、法は家庭に入らずという考え方についてどう思われているか、伺います。
○岡本委員 法は家庭に入らずについては、繰り返し先ほど申し述べさせていただいたとおりでございます。子供の健康や生命の権利が非常に重要であると、そのように考えております。
もとより憲法十三条幸福追求権には、公共の福祉に反しない限り幸福の追求権、こうした権利が認められると書いてあります。この公共の福祉が、当然、行政的な秩序、そうしたもの、行政権の濫用的なものと解釈されてはならないということは当然でございます。
公共の福祉という中身は何か。これはあくまで、人権と人権の調整の規定である、他の権利との調整であると、そのように解釈されております。
子供の条例に関しまして、親の権利、監護権、プライバシー権といわれるようなことがありますけれど、こうした権利も無制約に、無制限に認められるものではなく、公共の福祉、この条例でいえば、あくまで子供の生命、子供の健康、そうした権利との関係で喫煙をする自由が制限をされるという考え方に基づくものであります。
親の権利を行政が規制している、縛っているという見方は正しくありません。条例は、あくまで権利と権利を調整する役割にございます。親の喫煙の自由と子供の生命、健康、そうした権利と権利を調整する条例であるということをご理解いただきたいと存じます。
あと、先ほどの、ちょっともう一点つけ足させていただきます。
二〇〇三年、国が健康増進法を制定いたしました。健康増進法、努力義務の法律としてスタートいたしました。
その後、罰則をつけるに当たって非常に慎重な議論がなされているということでございます。罰則をつける場合と努力義務としてスタートする場合とで、調査についても、その程度については差があるであろうと考えております。
啓発条例を制定することによって、さらに実態調査も進められやすくなると、そのように考えております。
○小宮委員 家庭であっても権利と権利の調整に行政が入るというお話でした。
岡本委員、これまでこの条例の制定に大変熱心でいらっしゃって、さまざまなご発言を私も耳に、目にしているところです。
中でも、子供の前での喫煙は児童虐待であるとか、冒頭のご説明にもありましたけれども、DVだとか児童虐待が問題になってからは、法も家庭に介入していく、そういう流れになっているというご発言があったというふうに思っております。
児童虐待防止法というのは、確かに法が家庭に入った例というふうにいえます。しかし、その内容というのをよく見ると、今回の条例とは随分違うように思うわけです。
児童虐待の防止等に関する法律第一条の目的では、児童虐待を、児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与える、こういうものと定義しているわけです。
家庭内など私的区間における子供の受動喫煙の被害というものは、現在このような状態にあるというふうにお考えなんでしょうか。
○岡本委員 まず、整理をさせていただきますが、児童虐待防止法における定義、この児童虐待に受動喫煙が入るかどうかにつきましては、現時点においては、児童虐待の定義には、法律上の定義には該当しないと、そのように理解しております。これは当然のことで、児童虐待に該当するのであれば、それはもう法律が適用される話になりますが、そのようにはなっていないし、法律上の定義には該当しないという前提で考えております。
ただ、先ほど来も繰り返し述べさせていただいたとおり、子供の健康被害、そして生命にも影響し得る、また、子供が自分の意思でこれを避けることが困難という点におきまして、児童虐待に近いものだと、類似するものだと、そうした発想を持っていくべきだと、そのように考えております。
同じではないけれど類似したものとして議論をし、そうしたものとして今後社会として捉えていくべきだと、そのように考えております。
○小宮委員 子供の健康や生命を守るということを否定するところではありません。
また、児童虐待防止法の中では、虐待防止のために地方公共団体の責務を規定するとともに、児童虐待を受けた児童の保護であるとか、自立のための支援のための措置など定めております。
家庭内の出来事というのは外に漏れにくい、だからこそ児童相談所や警察が関係して、早期の発見、そしてまた通報体制というものが規定されているところです。
また、虐待が子供の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるからこそ、単に虐待をとめるだけでなく、子供や家族のアフターケアというものも規定されています。その上で罰則が設けられている。
今回の条例案には、そのような手だてはとられているんでしょうか。
○岡本委員 先ほども申し上げましたとおり、児童虐待の定義に該当するものではございません。
したがいまして、こうした児童虐待防止の法律の条項が適用されるものではございません。
そうした観点で、この条例に関しまして罰則はございませんし、そのほか児童虐待防止に類する規定そのものは設けてございません。
○小宮委員 法律上、児童虐待には該当しないということを今おっしゃいましたけれども、これまでの発言の中で、子供の前での喫煙は児童虐待であるというお話をされておりましたので、やはりこの確認はしておきたいと思っているんですけれども、やはり児童虐待というのは、今、目の前にある子供の生命にかかわる重大な危機のことだというふうに思います。家族だけでは解決できない、子供の命に直結する事態を指していると思います。
そのような危険な状態にある子供を一刻も早く見つけ、救い、その将来をフォローしていく、その実効性を上げるためにいろいろな手だてが講じられているのが児童虐待防止法だというふうに思います。
別のいい方をすれば、家庭に法が入らざるを得ないような状況、都はそのくらいの深刻で緊急な状況だということです。その状況を解決するのに単なる啓発などで済むはずもないというふうにも思います。
改めて伺いますけれども、家庭内の受動喫煙は児童虐待と同等のものとして、条例で規制するにはなじまないと考えますが、いかがでしょうか。
○岡本委員 私も同等のものとは考えてございません。
○小宮委員 昨年、神奈川県で受動喫煙防止条例の見直し検討部会長を務めた東海大学の玉巻弘光名誉教授は、条例案の理念というのは間違っていない、しかしながら、自宅など私的空間に行政が法令で規制を課すのはハードルが高い、法は家庭に入らずという原則もある、条例の必要性、内容の合理性、将来の罰則規定について批判にも耳を傾けながら、十分な審議が必要であるというふうに述べられています。
たばこを子供の前で吸わない、妊婦の前で吸わない、病人の前で吸わない、親として、人として、こんな常識のことは当然のことだと思います。
東京がそんな常識の通用しない社会になってしまっていて、子供の受動喫煙の被害が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるような、そんな状況にあるというなら、それを発見するための手だてや体制をちゃんと整備して、罰則を設け、健康を害した子供のアフターケアまで考えられた実効性のある条例を設けるべきと考えます。
しかし、私はまだ東京がそんな悲しい社会になっているとは思えません。条例で決まっているからたばこを吸うな、我慢できないなら警察に連絡する、そんなことを家族がいい合う社会を私は望みません。
小池知事もよくおっしゃっていますね、お母様が肺がんの末期で、そして病院だと大好きなたばこを吸えない、自宅に帰って家で思う存分たばこを吸いたいといって、最後そういい残しながら、一服ふかして、あの世に旅立ったんですというふうに知事も、この話になると、たびたびおっしゃっていると思いますけれども、自宅とか家庭とか家族というのは、そういう場所であるというふうに思います。
福祉保健局長の梶原局長も喫煙者であるというふうに思っております。そして、大切なお子さん、かわいいお子さんがいらっしゃるわけですよね。その目の前で、家で受動喫煙するということはないと思っておりますけれども、この際、局長から現状を伺えたらというふうに思いますが、よろしくお願いします。
○梶原福祉保健局長 私は家庭では一切たばこは吸いません。
私の子供は、たばこという言葉も、たばこという形も見たことはございません。
○小宮委員 ありがとうございました。
なぜたばこが吸いたいか、たばこが体に与える害とは何か、たばこを吸ってもいいときと吸ってはいけないときとはどんなときか、吸ってよい場所、いけない場所はどこか、そんなことを夫婦で、親子で話し合って約束して、それをお互いに守る、そんな話し合いを通じて家族のきずなが深まっていく、私はそんな家庭を、社会をつくっていくことが大事であると思います。
今後、まずは学校や保健所、自治体などの現場で啓発活動を強化して、都民の理解を促していくことが大切と思いますが、いかがでしょうか。
○岡本委員 先ほども局長からのご答弁もありましたし、先ほど私も申し上げました。喫煙者の中でも、子供の前でたばこを吸わないのは当たり前だとおっしゃる方もいらっしゃる。
他方で、五月十五日、御党の国の方の厚生労働部会において衆議院議員の方が、がん患者はという文脈で、働かなければいいんだよという発言をした、その同じ部会におきまして、この方、江戸川区選出の方ですけれども、私はもう五十年たばこを吸い続けています、そして我が家でも自由にたばこを吸い続けておりまして、子供が四人、孫が六人、一切誰も不満はいいませんし、みんな元気に頑張っております。党内から複数のやじで、いえないんだよ。
こうした家庭もあることも事実でございます。こうした議員の方、特に衆議院議員の方、そして都議会も経験された方が公然とこうした発言をされる、こうした価値観について、きちんと規範を東京都で示していくことは大切なことだと、そのように考えております。
○小宮委員 いろんな家庭、いろんな考え方、議員でもさまざまあるわけでございます。
また、本条例案の第二条で受動喫煙において加熱式たばこを規制対象としていますけれども、加熱式たばこの周囲への健康影響等については、厚労省も今後さらなる検討が必要としておりまして、国も慎重な判断を行っています。
国と都の考えに相違があるということで、今後都民や事業者が混乱しないよう慎重な検討が必要です。
何度も申し上げますけれども、公共の場における禁煙の推進には賛成なんです。子供を受動喫煙の被害から守ることにも全面的に賛成します。
でも、だからこそ本当の意味で、子供に限らず妊婦や病人といった弱い立場の人たちを受動喫煙の被害から守るために、どのような手だてが、ルールが必要か、それを議論して定めていくことが私たち議会の仕事に期待されているはずです。
私は、今回の条例案がそのようなものとは残念ながら思えません。何度も申し上げますけれども、家庭の中を条例で規制するのは、見過ごせないような深刻な状況があって、それを見つけ、防止する方法があって、条例を定めることによって具体的な改善が期待できる、そのような場合に限るべきです。
今回の条例はそのようなものとは到底思えません。幾ら子供の受動喫煙の防止が急務であるといっても、そんな状況で条例を定めることには賛成できません。目的が幾ら正しくとも条例化するにはなじみません。
実効性を持つ条例をつくるには都民を巻き込んだ議論が必要です。パブコメの内容も、意見公募の内容も明らかにされていない。
また、条例化の必要性、家庭内介入の問題、将来的な罰則導入の可能性など議論すべき点は多々あります。改めて拙速過ぎる提案といわざるを得ない。
本条例案について、継続して審査すべきと考えますがいかがでしょうか。
○岡本委員 そこにつきましては、見解の相違だと認識いたします。
これまで受動喫煙の問題に関しまして、飲食店につきましても、さまざまな議論がなされ、結局何度も頓挫をしてきたという経緯がございます。
受動喫煙について、既に健康被害、そうしたことが明らかになっているにもかかわらず、さまざまな議論、特に御党の議論によって条例化がこれまで進んでこなかったということを認識しております。(傍聴席にて発言する者あり)
こうしたことに対して、都民ファーストの会として、また公明党といたしまして、そして小池都知事もスピード感を持って改革を行っていくと、そのような所存で考えております。
しっかりと、この啓発の条例をスタートいたしまして、この条例を早期に制定することを提案者として望みます。
以上です。
○小宮委員 さまざまな意見をもっと聞いていただきたいなというふうに思っております。
実態の把握も十分でなく、都民の意見も十分に聞かず、実効性も期待できない、そのような条例案には賛成できかねます。
都議会自民党は、来年条例化を目指す東京都受動喫煙防止条例に対して、今後、多くの都民の意見を反映させ、実効性あるものにしていくことを申し述べ、そして本条例案は継続審査することを述べて質問を終わります。
時間がオーバーして済みませんでした。失礼しました。
○伊藤委員長 委員長から一言申し上げます。
傍聴人の方に申し上げます。傍聴人の席からは発言、やじ等はご遠慮願いたく思いますので、よろしくお願いいたします。
○和泉委員 私の方からも質問をさせていただきます。
本条例案は、罰則がないとはいえ、家庭内まで努力義務に踏み込んだものとなっています。条文を読んだだけでは対象がわからないものや、全体の合理性、整合性、各条文間の調整などについても、しっかりと審議し、そしゃくした上で賛否を決定することが審査を付託された厚生委員会の責任だというふうに思いますので、この立場から確認を含め、質問をさせていただきます。
この条例文にある努力義務ですけれども、子供の受動喫煙防止に努めなければならない、こういう表現と、喫煙をしないように努めなければならない、この二種類の表現があります。
この二つの努力義務の違いは何でしょうか。
○岡本委員 喫煙と受動喫煙の定義につきましては、二条二号と二条三号に規定がされてございます。二条三号、受動喫煙に関しましては、残留するたばこの臭気や、先ほど申し上げました加熱式の蒸気を含むものとして規定をしております。
そして、先ほどご指摘の点は六条一項と二項の違いかと思いますけれど、六条一項につきましては、保護者は子供の受動喫煙防止、すなわち残留するたばこの臭気についても、これを子供に吸わせることを避けるように努めるという内容でございます。
他方、二項につきましては、これは、子供と同室の空間でとありますように、これは子供がまさにその場にいる場合を想定しております。そうした場合に、これは保護者ではなく喫煙者、一般の方の規定ですけれど、そうした場合には、子供がまさにいる場合には、喫煙をしないように努めなければならないと、そのような内容でございます。
○和泉委員 済みません、喫煙と受動喫煙の定義をお伺いしたのではなくて、条文によって、子供の受動喫煙防止に努めなければいけないという表現を用いる場合と、喫煙をしないよう努めなければならないという表現を用いる場合の違いについてお伺いしました。
済みません、もう一度お願いいたします。
○岡本委員 六条二項及び八条につきまして、喫煙をしないよう努めなければならないという文言が使われております。
この条項につきましては、いずれもまさに子供と同室の空間で、そして、子供が同乗している自動車とありますように、子供がまさにその場にいる場面を想定しております。
以上です。
○伊藤委員長 今の答弁でよろしいですか。
○和泉委員 はい。そうすると、喫煙をしようとする者は、第九条でいうところの公園や児童遊園または広場等において、子供の受動喫煙防止に努めなければならないという場合には、その場に子供がいなくても対象になるということになるんでしょうか。
これは、例えば九条の場合ということですが、お伺いします。
○岡本委員 九条は、ほかの条項もそうですけれど、子供の受動喫煙防止ですので、あくまで子供がたばこの煙を吸うことを想定しております。
ですので、九条もそれ以外の条項においても、当然子供がそこに、特に九条、十条、十一条に関しましては子供がそこにいる、ただ、その場所は、同室の空間や自動車などの閉ざされた空間ではなく、屋外であるということになります。
○和泉委員 ありがとうございました。
第九条ですけれども、先ほど私申し上げましたが、喫煙をしようとする者は、公園、児童遊園または広場等においてという文言がありますが、広場等の定義は何になっているんでしょうか。
○岡本委員 この広場ということについては、特に定義規定を設けてございません。
これにつきましては、子供が遊ぶ場としての広場を想定しております。
そして、先ほども申し上げましたように、子供の受動喫煙防止ですので、あくまで子供がそこにいて、子供がたばこの煙を吸うということを防止するものでございます。
○和泉委員 そうしますと、第十条は、喫煙をしようとする者は、学校、児童福祉施設その他これらに準ずるものの周辺の路上において、子供の受動喫煙防止に努めなければならないというふうになっているわけですけれども、恐らくこれも同じような条項、条文ということになるかと思うんですが、周辺の路上をどの程度まで想定しているでしょうか。
○岡本委員 ここにつきましては類似の条例がございまして、北海道美唄市におきまして、学校の校門から百メートルの路上において、子供の受動喫煙防止に努めるという条例が存在しております。
それをもとにして、本条例においても検討したわけでございますが、これ、ただ百メートルという限定を設けることが妥当なのかどうなのかということを検討して、結論としてこういう形にさせていただきました。
校門の百メートルを超えて子供たちが存在している場合もございますし、他方で百メートル以内であっても子供が存在しない場合もございます。
そうした観点で、特にこれを明示的に何メートルから何メートルということで規制するのは妥当ではなく、むしろ子供の受動喫煙防止、この観点で子供が存在しているかどうかという点で、この条項を規定すべきであろうと、そのように考えた次第でございます。
○和泉委員 さらに第二条です。
定義の中で、九号、関係機関等、学校、児童福祉施設、医療機関その他これらに準ずるもので子供の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、弁護士その他これらに準ずる者とあるわけですけれども、これ、場所と人と両方ありますが、それに加えて第十条、第十一条も、その他これらに準ずるものというふうにあります。
これは、具体的には何を想定しているんでしょうか。それぞれお願いします。
○岡本委員 まず、二条九号の最初のこれらに準ずるものについてご回答申し上げます。
学校という場合に、これは七号の方に学校の規定がございますが、幼稚園、小学校、中学校等の規定がございますが、ここにはインターナショナルスクール等が含まれておりません。そうしたものがこれらに準ずるというところに含まれると考えております。
また、児童福祉施設、これは保育所が含まれるわけですけれども、認可外の保育所については、これらに準ずるものに含めて考えるべきだと、そのように考えております。
九号につきまして、その他これらに準ずる者というのは、特に明示的な検討をしているわけではございませんが、こうした学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、弁護士、こうしたものに準ずる者があれば、ここに含めて解釈するということになります。
以上、ご回答申し上げ、あ、もう一点ございますか。
〔和泉委員「十条、十一条ですね」と呼ぶ〕
○伊藤委員長 一度ちょっと戻っていただいて。
○和泉委員 済みません、いろいろばあっといっちゃったものですから、わかりにくかったかもしれません。
第十条、第十一条。第十条については、喫煙をしようとする者は、学校、児童福祉施設その他これらに準ずるもの、第十一条については、小児科または小児歯科の病院または診療所その他これらに準ずるもの、これについて、それぞれどのようなことを想定しているか、お願いいたします。
○岡本委員 十条につきましては、先ほど申し上げたものと同様でございます、学校、児童福祉施設に準ずるものとしまして、インターナショナルスクールや認可外の保育所を想定しております。
十一条につきましては、小児の病院または診療所その他これらに準ずるものとしましては、助産所等を想定しております。
○和泉委員 ありがとうございます。子供、それから喫煙をしようとする者、保護者、これは条例案文全体を通して、都民に限定していないわけですけれども、都民以外も含まれるということでいいんでしょうか。
都民でない者の都外においての行動については条例の対象外だと思いますが、都民の都外での行動についてはどうなんでしょうか。
○岡本委員 第三条は、都民という言葉が主語となっております。都民は、受動喫煙による健康への悪影響に関する理解を深めるとともに、いかなる場所においても、子供に受動喫煙をさせることのないよう努めなければならない、この都民につきましては、都民が東京都外に出た場合においても適用があるものとして、属人的な規定と考えております。
都内において、都内に在住する都民が東京から一歩出た途端に、車の中等でたばこを吸ってもいいということにはならないわけでございまして、あくまで、東京都外においても、こうした受動喫煙防止の努力義務については、引き続き、都民の方に責務として努めていただきたいと、そのように考えております。
他方、六条から十一条につきましては、これは都民という言葉は主語になっておりません。こちらは属地主義的な考え方でありまして、東京都内において、そのような受動喫煙を防止するということを考えております。
東京都内において、都内を通行する者あるいは旅行する者が、学校等の周辺あるいは公園等において、あるいは小児科病院の周辺において、自分は都民ではないから受動喫煙をさせてもいいんだということにはならないわけでございまして、そうした場合にも、受動喫煙を防止すべきであり、また、東京都においては、そうした場合においても受動喫煙を防止する啓発をしていくべきだと、そのように考えております。
○和泉委員 わかりました。
それでは、東京都がやらなければいけないというか、東京都がやるようにしなければいけないことについていろいろ伺いますが、第四条、子供の受動喫煙を防止するための環境の整備に関する総合的な施策を策定し、及び実施する、この都の責務とは具体的にどのようなものでしょうか。
同様に、第五条、都は、都民、区市町村及び関係機関等と連携し、及び協力して、子供の受動喫煙の防止に関する必要な施策を推進するための体制を整備するものとすると。
そのほかにも、第十二条一項、二項、第十三条にも都というのが出てきます。それぞれお答えいただけますでしょうか。
○岡本委員 具体的な内容としましては十二条、啓発、そして十三条、教育として規定している内容を具体的に想定しております。
こうした内容をしっかりと体制を整えて、また関係機関と連携をして、啓発、教育を進めていただきたいと、そのように考えております。
さらに、これ以上のことを東京都の裁量においてやっていただくことも、ぜひとも進めていただきたいと考えております。
○和泉委員 第六条ですけれども、家庭内における受動喫煙防止です。
一項は、保護者は、家庭等において、子供の受動喫煙防止に努めなければならないというふうになっています。家庭等とは、子供が継続して居住する場所というふうに定義をされています。
二項は、喫煙をしようとする者は、家庭等において、子供と同室の空間で喫煙しないよう努めなければならないとなっています。
保護者だけでなく、喫煙者も子供と同室の空間では喫煙しないようにしましょうということかなというふうに思ったんですが、個人の住宅であっても、子供が継続して居住している場所でなければ、この条文上は家庭等ということにならないかというふうに思いますので、例えば子供の住んでいない親戚の家などは家庭等の定義から外れてしまうということになるんじゃないでしょうか。
そうすると、受動喫煙防止の対象にはならないということになるんでしょうか。
○岡本委員 ご指摘のとおり、家庭等という条文の定義からしますと、その場合は、この条項には対象として該当しないということになります。
ただ、第三条におきまして、一般的な、いかなる場所においても、子供に受動喫煙をさせることのないよう努めなければならないという条項がございますので、こちらによって対象となる場合も、これによって規定されるということも考えております。
○和泉委員 そうしますと、第三条は、都民はということです。第二項に該当するような場合、都民でなければ、やはり適用から外れてしまうということになるんじゃないかなというふうに思います。
第七条についてですけれども、受動喫煙が起こり得る場所に、保護者が子供を連れていかないよう求めるという内容のものでしょうか。それとも、子供がそうした場所にみずから行こうとすることをとめるように保護者に求める、このことも含んでいるということなんでしょうか。
この条例の方が都の条例よりも先に施行されるということを考えますと、医療機関、学校、児童福祉施設などが自主的に受動喫煙防止の措置を行っていない場合は、そこに立ち入らせない努力義務が保護者に生じるということにはならないでしょうか。
第七条について、この二点伺いたいと思います。
○岡本委員 子供を立ち入らせないよう努めなければならないということは、同伴する場合のみならず、子供が行くことを防止するということも含まれております。
受動喫煙を防止する措置が講じられていない施設というのは、基本的に、分煙であれば喫煙されているスペース、喫煙する場所として利用されている施設を想定しております。
禁煙と喫煙というふうに分かれているような場合の禁煙となっている場所は、この施設には含まれません。
○和泉委員 自主的に受動喫煙防止の措置を行っていない場合、自主的に受動喫煙防止の措置が講じられているかどうかを、あらかじめ保護者はよく理解しておかなければいけない、知っておかなければいけないということになってしまうんでしょうか。
○岡本委員 これは、ほかの条項もそうですけれど、努めなければならないということで努力の義務であります。一律に禁止をするものではございません。できる限り努力をしていただきたいと思います。
また、不可能を強いるものでもございません。
○和泉委員 それでは、先ほど都の責務、あるいは都が行わなければいけない施策についていろいろお伺いしましたが、こういったものを都がやる上において、予算というのはどの程度を見込んでいらっしゃるんでしょうか。
○遠藤委員 条例制定後の施策の推進に関して予算はどうなのかと、こういうご質問だったと思います。
委員ご案内のとおり、平成二十九年度予算では、福祉保健局において受動喫煙防止対策の推進に係る調査経費等の予算として約一億円が計上されているところであります。
その内容については、都が現在制定を目指す条例化に向けた調査検討、さらには受動喫煙に関する都民の意識調査、飲食店における受動喫煙防止対策の実態調査等々が、平成二十六年、七年、八年等とさまざまな事業が実施をされているわけであります。
本条例の制定後につきましては、これまで都が実施をしてきましたこうした事業の成果等も十分に勘案しながら、今後、この条例制定後の来年度予算の編成に向けて、こうしたこれまでの都の取り組み等も精査をしながら、子供の受動喫煙防止対策が進むように提言をしていきたいと、このように思ってございます。
○和泉委員 家庭内というプライベートな空間での喫煙に対する法規制は、先ほど小宮委員からもありましたが、慎重にすることが求められると思います。
その点で、法律で禁止されている児童虐待と法律で禁止されていない喫煙を同列に扱うことはできません。したがって、今回の条例案に罰則規定や豊島区条例にあるような通報義務のようなもの、これが盛り込まれていないことは、私は適切だというふうに思います。
しかし、同時に受動喫煙が子供の健康に害を及ぼすことは明白となっています。児童虐待もDVも家庭内の問題だから行政は手を出せないと、長年にわたってずっといわれてきました。しかし、深刻な事例が相次ぎ、社会問題化する中で、いずれもようやく防止法が制定されたという経緯があります。
受動喫煙から子供たちを守ることは社会全体で取り組むべき大事な課題であり、家庭内での喫煙も含めて、自治体の条例で適切な形で規制することに私たちは反対するものではありません。要は、規制の内容や方法が適切かどうかということです。
また、この条例の実効性は広く都民の理解と合意、協力をもって担保されるものだというふうに思います。そうであるなら、私は広く議論を深め、都民的な議論の中で都民合意をつくっていくことが必要ではないかと思います。
参考人招致や公聴会の開催もできればいいというふうに思っておりましたが、時間的、物理的な制約のために実現しなかったことは残念に思っています。
条例を読んでも対象範囲が明確にわからなくてよいのかなど疑問が残る点もありました。しかし、努力義務にとどまっているので、禁止内容がわからずに処罰を受けるということはありません。
子供の受動喫煙防止は、いうまでもなく大変重要です。前文にもあるように、命や健康に影響を及ぼすことが明らかであるにもかかわらずみずからの意思で受動喫煙を避けることが困難な子供を受動喫煙から守るのは、まさに大人である私たちの責任だというふうに思います。
恐らく全ての委員の皆さんと共有できるであろう、この立場からいろいろと質問させていただきました。丁寧に答えていただいてありがとうございました。
以上で私の質問を終わります。
○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 異議なしと認め、議員提出議案に対する質疑は終了いたしました。
以上で福祉保健局関係を終わります。
これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
午後六時五十分散会
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