厚生委員会速記録第十四号

平成二十七年十一月十二日(木曜日)
第七委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長斉藤やすひろ君
副委員長栗山 欽行君
副委員長両角みのる君
理事高倉 良生君
理事早坂 義弘君
理事山加 朱美君
西沢けいた君
和泉なおみ君
中山 信行君
和泉 武彦君
島田 幸成君
畔上三和子君
小宮あんり君
野島 善司君

欠席委員 なし

出席説明員
病院経営本部本部長真田 正義君
経営企画部長中野  透君
サービス推進部長野瀬 達昭君
経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務高野  豪君

本日の会議に付した事件
病院経営本部関係
報告事項(説明・質疑)
・契約の締結について
事務事業について(質疑)

○斉藤委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、病院経営本部関係の事務事業に対する質疑及び報告事項の聴取を行います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 初めに、先般の人事異動に伴い、病院経営本部長から幹部職員の紹介があります。

○真田病院経営本部長 十月二十三日付の人事異動に伴いまして、兼務発令のございました幹部職員を紹介させていただきます。
 経営戦略担当部長でオリンピック・パラリンピック調整担当部長を兼務いたします高野豪でございます。
 どうぞよろしくお願いします。
   〔理事者挨拶〕

○斉藤委員長 紹介は終わりました。

○斉藤委員長 理事者から報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○中野経営企画部長 動産の買い入れ契約につきまして、お手元にお配りしてございます資料、契約締結報告書に基づきましてご報告申し上げます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきまして、総括表をごらんいただきたいと存じます。
 初めに、番号1は、都立松沢病院において使用いたします磁気共鳴断層撮影装置の買い入れでございます。
 契約の相手方は株式会社イノメディックス、契約金額は二億四千八百七万円で、契約の方法は一般競争入札でございます。
 続きまして、番号2は、都立広尾病院において使用いたします血管連続撮影装置の買い入れでございます。
 契約の相手方は株式会社イノメディックス、契約金額は三億九千七百三十九万円で、契約の方法は一般競争入札でございます。
 なお、本契約の概要につきましては、二ページ以降に記載してございますので、後ほどごらんいただきたいと存じます。
 簡単ではございますが、以上で契約締結のご報告を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

○斉藤委員長 報告は終わりました。
 本件に対する質疑につきましては、後ほど事務事業に対する質疑と一括して行いますので、ご了承願います。
 次に、事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○中野経営企画部長 去る十月二十日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、公社病院の病棟休止状況(平成二十七年十月一日現在)から、6、公社病院における看護職員の固有・派遣職員数の推移までの六点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。公社病院の病棟休止状況(二十七年十月一日現在)でございます。
 公社病院における病棟の休止状況について、それぞれ病院別に記載してございます。
 二ページをお開き願います。都立病院及び公社病院におけるがん患者取扱実績(平成二十六年十月十五日ワンデイ調査)でございます。
 昨年実施いたしましたワンデー調査におきますがん患者取扱実績について、(1)は都立病院、(2)は公社病院の実績を、それぞれ病院別に記載してございます。
 三ページをごらんください。3、都立病院及び公社病院における医師の定数及び現員の推移(診療科別)でございます。
 (1)は都立病院につきまして、次の四ページ、(2)は公社病院につきまして、平成二十三年度から二十七年度までの常勤医師の定数と各年度十月一日現在の現員の推移を診療科別に記載してございます。
 恐れ入りますが、五ページをお開き願います。4、都立病院におけるPFI事業に関わる経費の推移でございます。
 平成二十三年度から二十七年度までのPFI事業にかかわる経費につきまして、各事業別に記載してございます。
 恐れ入りますが、六ページをお開き願います。5、公社病院に対する運営費補助金の推移でございます。
 平成二十二年度から二十六年度までの各公社病院に対する運営費補助金の推移を記載してございます。
 七ページをごらんください。6、公社病院における看護職員の固有・派遣職員数の推移でございます。
 平成二十三年度から二十七年度までの各公社病院における看護職員の各年度四月一日現在の定数及び固有、派遣別の現員の推移を記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終了させていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○斉藤委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、事務事業及び報告事項に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○小宮委員 本格的な少子高齢化社会を迎え、東京でも社会構造が大きく変化します。それを受けて、都民の求める医療のあり方というものも確実に変化をしていきます。
 幾つになっても住みなれた家に住み続けたい、いつもの先生に診てほしいといった都民の多様なニーズに、きめ細かく応えていく必要があります。
 他方、担い手の減少は確実に歳入の減少をもたらし、増大する社会保障の経費とバランスをとるためには、都民の命を支える医療の分野とはいえ、都民が本当に必要とする分野に重点化をしていく、そうした必要があります。
 先般の厚生委員会において、病院経営本部は、都立病院の運営と地域病院等を運営する公益財団法人東京都保健医療公社を所管していると事務事業説明がありました。
 これまで大きな成果を上げ、都民から厚い信頼を受けている都立病院、そして公社病院が、そのような社会の変化の中でどのような役割を担っていくべきか、本日は伺ってまいりたいと思います。
 その前提として、まずは民間にできない都立病院、そして公社病院の特色と果たすべき役割についてお答えをください。

○中野経営企画部長 まず、都立病院でございますが、都立病院は、都全域あるいは複数の二次保健医療圏を対象として、感染症医療、救急医療、周産期医療など、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を的確に、適切に、適正に都民に提供し、他の医療機関等との密接な連携を通じて、都における良質な医療サービスの確保を図ることを基本的役割としております。
 一方、公社病院でございますが、二次保健医療圏を中心に、地域の医療機関との連携に基づく地域医療のシステム化を推進することを役割としておりまして、全ての公社病院が、高い紹介率や逆紹介率を達成した施設が指定されます地域医療支援病院に承認されております。
 このため、公社病院では、地域医療支援病院として、医療連携の中でも一般的な紹介、逆紹介に加えまして、白内障手術ですとか内視鏡検査など、地域の連携医と協力して行う共同診療、あるいは、CT、MRIなどの高額医療機器の共同利用などを行うなど、モデル的な医療連携を実施しているところでございます。

○小宮委員 今、例示された行政的医療として取り組む感染症について、まず伺いたいと思います。
 グローバル化に伴い、感染症の危機が高まっている中で、昨年はデング熱、エボラ出血熱といった聞きなれない感染症への対応が求められたところです。感染症対策においては、専用の病室を備えるなど施設面でも特別な対応が必要とされておりますので、行政的医療の最たるものであるといえると思います。
 そこで、都立病院、公社病院における感染症医療への取り組み状況について伺います。

○中野経営企画部長 都内で、エボラ出血熱など一類感染症に対応できる医療機関でございますが、特定感染症指定医療機関でございます独立行政法人国立国際医療研究センターが、まずございます。
 そのほかに、第一種感染症指定医療機関の都立駒込病院、墨東病院及び公社荏原病院の三病院がございます。
 以上の三病院に、公社の豊島病院を加えました四病院では、MERSや鳥インフルエンザなど二類感染症に対応する第二種感染症指定医療機関にも指定されておりまして、都内の第二種感染症指定病床の約七割を担っているところでございます。
 病院経営本部では、新型インフルエンザ等、重大な影響力を持つ感染症への適切な対応を図るため、都立・公社病院感染症対策委員会を、さらに、同委員会のもとに、新型インフルエンザ等対策専門部会及びエボラ出血熱対策専門部会を設置しているところでございます。
 また、実際に患者を受け入れることになった場合には、的確な対応をとるためには初動対応が極めて重要でございます。そのため、各病院で定期的に、個人防護具の着脱訓練を実施するとともに、国の機関や福祉保健局、保健所等関係機関と連携した実践的な患者受け入れ訓練も実施しているところでございます。
 今後とも、関係機関との連携を強化し、感染症対策に万全を期してまいりたいと考えております。

○小宮委員 いつ発生するかわからない感染症への備えは非常に重要であると思いますが、そのための専用の病室の確保ですとか人員の確保、日ごろから、今ご答弁にありましたように、訓練の実施というものには大きな負担がかかると思います。
 ぜひ今後も、行政的医療として着実に取り組んでいっていただきたいと思います。
 さて、少子化社会を支える取り組みとして、都立、公社病院の小児科という医療資源を活用して、病児、病後児保育への取り組みを行うこととしており、来年二月には墨東病院で開設を予定していると聞いています。
 採算が合わないとされる、こうした取り組みも高く評価をするところですが、高年齢の出産に伴うハイリスク分娩が増加をしている現状において、周産期医療の重要性も増していると考えます。
 そこで、都立病院における周産期医療の取り組み状況や総合周産期母子医療センターの実績などについて伺います。

○中野経営企画部長 都では産科、小児科双方から一貫した総合的かつ高度な周産期医療を提供し、リスクの高い母体、新生児搬送の受け入れに対応できる医療機関を周産期母子医療センターとして指定してございます。都立病院では、大塚病院、墨東病院、また、多摩総合医療センター及び小児総合センター、この三施設が総合周産期母子医療センターに指定されているところでございます。
 平成二十六年度における三病院の全分娩数は三千二百三十七件でございまして、このうちハイリスク分娩が千二百二十五件、分娩件数に占める割合は三七・八%でございました。
 また、母体搬送受け入れ件数は五百四十四件、新生児搬送は四百五十七件でございました。
 多摩小児総合医療センターでは、重症な疾患により緊急に母体救命措置が必要な場合には必ず受け入れる母体救命対応総合周産期母子医療センター、いわゆるスーパー総合周産期センターの一つに指定されておりまして、平成二十六年度の母体救命受け入れ件数は二十四件でございました。
 また、墨東病院は、スーパー総合周産期センターには指定されておりませんが、救命救急センターと連携して、母体救命搬送を受け入れておりまして、平成二十六年度の実績は二十件となってございます。
 これらの多摩小児総合医療センター及び墨東病院における母体救命搬送の受け入れ実績は、都内でもトップクラスのものでございます。
 今後も、都における周産期医療提供体制の中核を担い、安心して子供を産み育てることができる環境の実現に努めてまいります。

○小宮委員 母体救命措置が必要な場合に必ず受け入れるというスーパー総合周産期センターは、今ご紹介のあった多摩小児のほかに、民間では、渋谷区にある日赤医療センターですとか板橋にある日大板橋病院、また三鷹市にある杏林大学病院、品川区にある昭和大学病院など四病院、計五病院がこのスーパーに指定されていますけれども、今ご答弁でご紹介があった都立墨東病院においても、そうした五病院に劣らぬ実績を上げているというふうに伺っています。
 地域的に見ても、他の五病院と重なりませんし、東部地域における今後の母子の安心につなげるためにも、ぜひ引き続き、取り組みを期待するところです。
 次に、精神科医療についてお伺いします。
 精神疾患の患者数は、近年大幅に増加をしておりまして、平成二十三年度には全国で三百二十万人を超えて、いわゆる四大疾病、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病よりも多い状況となっています。
 都立病院では、精神科医療の中でも、精神科救急医療、精神科身体合併症医療などを行政的医療と位置づけ、重点的に取り組んでいます。
 そこで、都立公社病院における精神科救急医療の取り組みについて伺います。

○中野経営企画部長 都における精神科救急は、夜間、休日に実施しておりまして、そのうち都立、公社病院は、福祉保健局の委託に基づきまして、主に警察官通報に基づく精神科緊急医療と、精神疾患の患者が身体疾患を併発し、いずれも重い症状の精神科身体合併症医療に取り組んでいるところでございます。
 まず、精神科緊急医療でございますが、墨東病院、松沢病院、多摩総合医療センター及び公社豊島病院の四病院で都内の全域を担っておりまして、平成二十六年度では、合わせて千四百二件の緊急措置診察を行いまして、そのうち千百三件が緊急措置入院となっているところでございます。
 また、先ほどの四病院に広尾病院を加えました五つの病院では、精神疾患による不穏、興奮等の症状により、一般の診療科では、身体疾患の治療に困難を来します精神科身体合併症医療を担っているところでございます。
 さらに、都における精神科医療の拠点として、専門性の高い精神科救急医療を提供する松沢病院では、一般の精神科病院では対応困難な精神科身体合併症における医療ニーズに対応しているところでございます。

○小宮委員 感染症や周産期医療、精神科の救急医療など、それぞれ具体的な分野において都立病院、公社病院でなければできない専門的な役割があるということがわかりました。
 現在、医療介護総合確保推進法、医療法に基づき、都でも地域医療構想の策定が進められています。地域の医療需要に基づき、高度急性期から慢性期までの病床機能の分化が図られていくこととなります。
 その中で、社会構造の大きな変化を受けて、都立病院、公社病院がその役割を踏まえながら、今後、どのような医療提供体制の役割を果たしていくのか伺います。

○中野経営企画部長 将来におきましても、都立病院が、都全域あるいは複数の二次保健医療圏を対象に、主として急性期の患者を対象に、行政的医療を提供するという基本的役割は大きく変わるものではないと考えております。
 また、地域の医療ニーズに即した医療を提供する公社病院の役割も同様に考えております。
 しかしながら、急速な高齢化が進む中で、疾病構造の変化や医療需要の増加に対応するため、病床の機能の分化及び連携、在宅医療を推進し、将来の医療需要に対応した適切な医療提供体制を構築することは急務となっております。
 来年度策定されます都の地域医療構想で示される二〇二五年に目指すべき医療提供体制の実現に向けまして、今後、開催されます地域医療構想調整会議での地域の病院等が担うべき病床機能に関する協議状況を踏まえながら、都立、公社病院としても、新たな役割について検討してまいります。
 今後とも、都立病院、公社病院の医療機能を最大限活用し、都民に安心・安全の医療を提供してまいります。

○小宮委員 冒頭申し上げたとおり、我が国では高齢化が進み、医療ニーズが増大することが予測されるとともに、生産年齢人口が減少する中で、持続可能な社会保障制度の確立を図らなければならないという難題を抱えています。
 東京においては、その進行が他県よりもおくれ、まだ顕在化してはいませんけれども、少子高齢化の波は確実に東京にも及んできます。まちの規模も人口も多いだけに、本格的に少子高齢化が始まったとき、東京が受けるインパクトは他の県とは比べ物にならないと思います。
 そうなってから準備、対応していたのでは遅過ぎます。そういった危機感を持って、私たちは事に当たっていかなければならないと考えます。その意味でも、都立病院、公社病院の果たすべき役割は、きょう伺ったような分野を中心に、しっかりと存在していると思います。
 今後も、そうした役割を自覚し、都民の必要とする医療ニーズに応えていくことを望み、質問を終わります。

○中山委員 私からは、都立病院、公社病院の災害対策、特に大規模水害対策について質問させていただきます。
 本年九月、台風十八号の影響による大雨で鬼怒川の堤防が決壊し、茨城県常総市を中心に著しい浸水被害に見舞われました。改めて自然災害の猛威と水害対策の重要性を思い知ったところであります。
 公明党は、直ちに東京都本部内に、大規模水害対策プロジェクトチームを設置いたしました。ちなみに、竹谷とし子参議院議員が座長でして、江戸川区選出の上野和彦都議会議員が事務局長に、かくいう私も、PT内の荒川、江戸川流域委員会の委員長を務めております。これからも病院経営本部の皆様と、いろいろ災害対策について意見を交わしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 海抜より低い地域が広がる東京の東部低地帯におきましては、被害の未然防止や発生時の対応の周到な準備、災害後の復旧の迅速化を目指した事前準備が重要であります。
 病院経営本部が所管担当する都立病院、公社病院の中でも、墨東病院、東部地域病院は、東部低地帯における災害拠点病院として重要な役割を担っておりまして、まずは、病院内の患者さんやスタッフの皆さんの安全の確保と治療の継続、さらには、救いを求めて身を寄せるであろう都民への適切な対応を行える事前準備が必要であります。
 そこで、都議会公明党は、本年の第二回定例会におきまして、水害時に著しい浸水被害が予想される区東部地域に立地する都立墨東病院と公社東部地域病院の水害対策について質問させていただきました。
 墨東病院は、昨年八月に開設した新棟の建築の際、大規模水害を想定して、新たに非常用発電機を屋上に設置するなど対策を強化した一方、東部地域病院は、防潮板の設置にとどまっているのが現状であります。
 そこで、東部地域病院における水害対策について、今後の取り組みをお伺いいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東部地域病院は、墨東病院と同様に災害拠点病院といたしまして、傷病者を受け入れる役割を担っておりますことから、大規模水害時にも、病院機能を維持できるよう対策を講じることは極めて重要でございます。
 一方、同病院は、開設から二十五年が経過いたしまして老朽化が進んでいることから、都の主要施設の維持更新計画におきまして、今後十カ年の間に大規模な改修を行う予定となっております。
 改修について検討を進めるに当たりましては、区東部地域の地域性を踏まえ、豪雨時の浸水想定や浸水時における病院機能の継続性を十分に考慮してまいります。

○中山委員 東部地域病院につきましても、今後予定されている改修を機に、水害への備えを充実させていくということをお伺いして安心いたしました。
 特に墨東病院の場合は、新しい病棟で二メートルほどかさ上げしているということだそうですけれども、こうした努力は極めて重要であると思います。少々費用がかさむでありましょうが、やむを得ない適切な対応と考えております。
 しかし、この地域には荒川が流れておりまして、ひとたび氾濫すれば、地域全体が広範囲に浸水することになります。個々の病院で実施できる対策には一定の限界がありますけれども、実際に起こり得る水害でもあります。
 したがいまして、単なる豪雨対策の域を超えて、荒川上流域で決壊した場合に発生し得る大規模水害を意識する必要があります。
 東部低地帯では、水深五メートルに達する洪水に襲われる可能性のある地域もありまして、地下部分だけではなく、一階部分が水没する事態も想定して、BCP、BCMを整える必要があります。
 そこで、荒川の氾濫により、区東部地域が広範囲に浸水した場合、墨東病院及び東部地域病院では、どのように対応していくのか、お伺いをいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 荒川が氾濫し、想定されておりますとおり浸水が三メートル以上になった場合には、個々の病院が単独で、その被害を完全に防ぐことは困難であるというふうに考えております。
 一方、広範囲かつ大規模に浸水する場合でも、徐々に水位が高くなっていくものと考えられますので、その間に必要な対策を講じていくことが重要でございます。
 具体的には、病院内に災害対策本部を設置し、気象庁による大雨洪水情報や河川の氾濫に関する情報を収集しながら、入院患者の安全を確保するとともに、重症患者や迅速な治療が必要な患者につきましては、他の災害拠点病院との連携により、医療圏を超えて広域搬送を行うなど、都内の医療資源を最大限に活用し、対応してまいります。
 なお、墨東病院につきましては、新棟の屋上に設置をいたしました非常用発電機により、救命救急センターや集中治療室などの主要設備に送電することが可能でございまして、一定の医療機能、一定の診療機能は確保されているものと考えております。

○中山委員 防潮板で防げる範囲の溢水、内水氾濫であれば、被害を回避できるかもしれないわけですけれども、それを超える可能性もあるわけであります。
 ことしの鬼怒川の堤防の決壊も、急激に発達した積乱雲が停滞し、特定地域に長時間にわたる集中豪雨をもたらす線状降水帯が栃木県を襲ったことが原因でありました。この線状降水帯が群馬県、特に八ッ場ダムがいまだ建設途上にあります吾妻川上流を襲えば、都内も同じ被害に見舞われる危険性があります。
 東部低地帯全域を襲う洪水となれば、区部西部や多摩部の都立病院や公社病院、民間の災害拠点病院との連携が大切となってまいりますが、墨東病院や東部地域病院自体の患者さんは、自力で守らなければなりません。一階、地下の水没が発生しても、二階以上の病棟フロアでの治療が継続できるようにしておくための万全の準備を行うべきと考えます。
 あわせて、水害発生後の病院機能の迅速な復旧も重要であります。
 特に、一階部分や地下に設置されている先進医療を担う高価な医療機器が水没に見舞われた場合、水が引いた後に、機能回復できるものなのかどうか、あらかじめ見きわめておく必要があります。
 仮に、一たび水没してしまえば機能回復は難しいという判断が固まるとなれば、迅速に発注しても、再整備には一定期間、時間を要するものでありますし、その間の対応を整えておくのもBCPの一環であります。当然、保険措置という手もありますし、可能であれば、二階以上のフロアへの移設も事前に検討しなければならないかもしれません。
 洪水被害後も、疾病やけがに見舞われた都民を救うための両病院の役割は極めて大きい。いかなる状況にあっても、都民の命をつなぐ責務を全うしていただきたいと要望させていただいて、次の質問に移ります。
 次に、人材確保策についてお伺いをいたします。
 都立病院が医療機能を最大限に活用して、医療環境の変化に対応し、安定的かつ継続的に高度で専門性の高い行政的医療を提供していくためには、医療を担う人材の確保が重要であります。
 しかし、医師や看護師等の医療人材の確保は、都立病院だけでなく、全国の病院で大きな課題となっておりまして、大学病院や民間病院でも人材集めに苦労している現状と伺っております。
 そこでまず、都立病院における医師及び看護要員の定数及び現員について、この五年間の推移はどうなっているのか、お伺いをいたします。

○中野経営企画部長 都立病院では、平成二十三年度以降も、駒込病院の大規模改修ですとか墨東病院の新棟開設など再編整備による医療機能強化に対応するため、体制を強化してまいりました。
 その結果、平成二十七年度の定数は、二十三年度と比較いたしますと、医師は三十二人増の九百五十人、看護要員は二百二十一人増の四千五百二十一人でございます。
 また、平成二十七年十月一日現在の現員数でございますが、医師につきましては八百七十五・五人、看護要員につきましては四千五百十一・五人となっております。
 不足する部分につきましては、非常勤職員を配置するほか、診療科ごとの状況に応じた院内の連携体制をとることで体制を確保しているところでございます。

○中山委員 常勤医師につきましては定数を満たしていないとのことですが、医師は全国的に不足の状況と伺っております。
 このため、国も平成二十年度から毎年、医学部の定員をふやすなどの対策をとっておりますが、医師としてひとり立ちができるまでに十年近くの年月がかかるというふうに伺っておりまして、そのことを考えますと、まだまだ不足の状態が今後も続いていくものと思われます。
 もともと都立病院の医師スタッフは公務員という身分上の安定性からして人気が高く、しかも、都内という好立地にもあるため、全国の各地域に比較すると、求人対策上は恵まれた地域にあるというふうにいってもいいのかもしれません。
 その上で、東京都が全国平均を飛び抜けて大きく上回る報酬を提供していくということになりますと、それこそ東京ひとり勝ち論と非難されたり、東京富裕論の標的にもなりかねないのではと危惧する向きも出てきて当然かもしれません。
 日本全体の医師の総数は変わらないわけでありますから、都立病院のような公立病院が人材のかき集めに走ると都市部に医師が集中し、都外の各地域における医師確保に影響することが懸念されます。
 そういったことも念頭に置きながら医師確保に取り組んでいかなければならない、そういう難しさを東京は抱えているということはよく承知しているところであります。
 そこで、都立病院の医師確保のために都はどのような対策を行っているのか、お伺いをいたします。

○中野経営企画部長 都立病院独自の取り組みといたしましては、総合診療能力を備えた専門医を育成する東京医師アカデミーを、平成二十年四月に開講いたしました。毎年約三百名の医師アカデミー生を都立、公社病院で育成するとともに、医師アカデミー修了生のうち百四十名を、都立、公社病院の常勤、非常勤医師として採用したところでございます。
 また、医局との関係強化にも努めておりまして、医師の確保が困難な産科、小児科などを含め、継続的に医局から医師が派遣されているところでございます。

○中山委員 医師のスタッフの賃金報酬については、それが低くて困るというような意見があるというふうには伺っていないということは、私も非公式で伺っておりますけれども、全国平均を大きく上回るというわけにはいきませんけれど、ある程度の平均的なところを目指して、努力をしていただきたいというふうに思っております。
 医師アカデミーの取り組みによりまして、若手医師を確保し、育成が終われば、都立病院で採用するほか、他の修了生は地域病院で活躍するという、まさに都立病院が人材育成機能を発揮していることが今のご答弁でよくわかりました。
 一方、看護師については、女性の方が多いため、結婚や出産を機に離職される方も多いというふうに伺っております。都立病院においても、一定数の離職者の方がいらっしゃって、毎年多くの看護職員を採用されているとのことでありますが、確保には、相当苦労されているんだと思います。
 そこで、看護師や助産師など看護要員の確保のため、都はどのような取り組みを行っているのか、お伺いをいたします。

○中野経営企画部長 これまで就職説明会を開催するなど、積極的なPRはもちろんのことですが、受験生への受験の機会をふやす取り組みを行ってまいりました。
 具体的には、経験者採用の年齢制限の撤廃ですとか、新規採用、経験者採用をあわせて年十回程度の選考を行うなど、年間を通して選考を実施するとともに、地方選考を八都市に拡大して実施するなどの努力を行っているところでございます。
 こうした取り組みもございまして、平成二十六年度には、新規採用の看護要員を三百五十八名、経験者採用の看護要員を九十二名採用し、必要数を確保することができました。

○中山委員 医師、看護師の確保策の取り組み状況についてお伺いをしてまいりました。
 さまざまな取り組みにより確保した医師、看護師の方が、その後も離職することなく、定着するためには、働きやすい職場づくりが不可欠であります。特に看護師は先ほど述べたとおり、結婚や出産を契機に離職したり、キャリアアップを目指して転職する方が多いため、離職率が高く、日本看護協会の調査では、都内の看護師の離職率は約一四%に上っているとお伺いしました。
 また、病院という職場は、看護師を初め、最近は女性医師も増加しており、女性が多い職場でもあります。出産、育児を経て、なお女性が働き続けられる職場環境を確保することが必要であります。
 都立病院におきます働きやすい職場づくりの取り組みの状況についてお伺いをいたします。

○中野経営企画部長 都立病院では、医師、看護要員の定着を図るため、これまで勤務環境整備の取り組みを進めてまいりました。
 その結果、今、議員がご指摘されました看護要員の離職率についてでございますが、都立病院では、二十六年度は九・一%でございまして、東京都全体約一四%を下回っている状況でございます。
 具体的な勤務環境整備の取り組みについて申し上げますと、勤務体制につきまして、医師の長時間労働解消に向けた一直二勤務体制の拡大、また、若手の看護職員にニーズの高い二交代制勤務の拡大を進めてまいりました。
 また、看護要員の約九割、医師の四人に一人、二五%が女性でございまして、女性職員の割合が高いことから、女性の働きやすさという点も踏まえまして、平成二十年七月の育児短時間制度の導入ですとか、平成二十七年一月の子供の看護休暇の対象年齢拡大など、育児と仕事の両立を支援する制度も充実させてまいりました。
 院内保育室におきましては、平成二十年度から順次、二十四時間保育を開始するとともに、利用希望に応じて年度途中でも定員を柔軟にふやすことなどの対応を行っているところでございます。

○中山委員 都内の看護師の方の平均離職率を大きく下回る状況を実績として確保しているということであり、都民の一人として、大変安心したところでもあります。
 都立病院では、医師、看護師の人材確保のために、採用から勤務環境整備まで多様な対策がとられていることがわかりました。今後も都民の健康を守るため、引き続き、優秀な人材の離職防止、定着促進のための取り組みを継続してほしいと要望いたします。
 私はたしか、福井大学附属病院だったと思いますけれども、視察に行かせていただいて、二人で一人組むという看護師さんの体制をとられていて、そのことが職場に復帰しやすい環境を看護師さん側もとられているし、また夜中であっても事故も防げるし、負担も少ない。残業も非常に少なくて済むということで、大変効果を上げていると伺いました。
 さまざまな取り組みを研究されていると思いますので、ぜひ成果を上げていっていただきたいというふうに思います。
 最後に、医療連携についてお伺いしたいと思います。
 地域との医療連携が期待される公社病院における対応について、まず質問させていただきます。
 公社病院は二次医療圏を中心として、地域の医療機関との機能分担と連携を図りながら、地域住民に適正な医療を提供していくことを役割としております。
 そこで、公社病院における医療連携につきまして、これまでの取り組み状況と今後の取り組みについてお伺いをいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 公社病院では、これまでも紹介患者の受け入れや症状が軽快、安定した患者について返送、逆紹介を行うほか、地域の医師との共同診療や高額医療機器の共同利用などを行ってまいりました。
 特に各病院におきまして、医療機関との信頼関係を高めるため、積極的に返送、逆紹介に取り組みました結果、平成二十六年度の返送、逆紹介率は七一・七%となり、二年連続で向上しております。
 今後、超高齢社会の到来を踏まえ、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らしていくためには、在宅医療を支えている開業医との医業連携がますます重要となっております。
 このため、各病院で運営協議会を定期的に開催し、地域医療機関等からのニーズの把握に努めるほか、病院独自の連携便りの発行や医師の診療分野を紹介する医師プロフィールを配布するなど、地域の医療機関との連携をより一層推進してまいります。

○中山委員 都立病院と公社病院を比較しますと、地域的には都立病院が複数の二次医療圏や全東京都を対象としているのに対し、公社病院は主に二次医療圏を対象としているなどの役割の違いがあります。
 住民が求める医療を適切に提供し、地域からの期待に応えていくという点では、都立病院も公社病院も、そうした違いを超えて変わりはありません。この点は極めて重要なんです。基本的には公社病院の中で、都立病院の近くに、例えば同じ自治体内に都立病院と公社病院が立地しているという病院は、確かにないんではないかというふうに思うんですけれども、したがいまして、都民から見た場合の期待感としては、公社病院と都立病院の違いはありません。公社病院も都立病院と同じ役割を果たしてくれると期待されているわけです。
 とりわけ医療機器の取りそろえ方という点では、公社病院は立地地域の病院の中では、不足する機器を備えていくということが、医療連携のあり方として、地域に貢献する姿、道であるとは思います。
 公社病院は地域の医療機関と連携を進めていく役割を担っており、紹介、逆紹介のほか、医療機器の共同利用も実施しているとのことですが、公社が医療機関や住民が求める水準の高額医療機器を整備していくことで、医療連携が一層推進されるという側面もあります。
 そこで、公社病院における医療機器の整備状況と、今後の整備方針をお伺いいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 公社病院は地域の中核病院といたしまして、医療機関との連携を進め、地域医療のシステム化を推進するとともに、住民が必要とする医療を適切に提供していく役割を担っております。
 こうした役割を果たすため、公社病院では、それぞれの地域で、循環器医療、救急医療、がん医療、脳血管疾患医療など、住民が必要とする医療を提供するため、計画的に医療機器を整備しております。
 特に、高齢社会の進行に伴い、循環器疾患や脳血管疾患などの疾患を持つ患者が増加するため、最新のCT等により、患者への負担を軽減して、適切な診療を行う必要がございます。
 このため、東部地域病院におきましては、地域に不足している医療として、循環器医療や救急医療に取り組んでおりますが、平成二十三年度には、心臓血管連続撮影装置を更新し、循環器医療に適切に対応するとともに、平成二十六年度には、最新鋭の三百二十列のCTを整備し、救急医療、循環器医療、がん医療などの提供に役立てております。
 今後も公社病院では、地域の医療需要を踏まえ、医療機器を適切な時期に計画的に導入、更新してまいります。

○中山委員 今、東部地域病院の例を出していただいて、地域の中で不足している医療機器の整備に努めてこられたという話をしていただきました。今後とも、地域の医師会から寄せられる医療機器の整備の要望、そして、ついでに申し上げますと、診療科の開設の要望につきましても、真摯に対応する公社病院であっていただきたいと要望させていただきます。
 続きまして、病院間連携、いわゆる病病連携についてお伺いいたします。
 都立病院や公社病院は、主に急性期の医療に対応する病院であり、直接自宅に退院することができる患者さんもいらっしゃいますけれども、ほかの病院に転院せざるを得ない、そういう必要が生じる場合もあります。
 紹介、逆紹介を通じた診療所との医療連携については、これまでも積極的に対応していただいてきたというふうに認識しておりますけれども、都立病院または公社病院から、地域の病院への転院、いわゆる病病連携の取り組みについてお伺いをいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院、公社病院は、主として急性期の患者の診療を対象としておりまして、患者が急性期を脱した場合や、回復期リハビリテーションが必要な場合につきましては、地域の病院への転院をお願いしております。
 各都立、公社病院では、周辺地域の病院を適宜訪問し、連携協力を依頼するとともに、その病院の機能について情報収集を行い、患者の状態に適した病院への転院ができるよう努めております。
 また、脳卒中や大腿骨頸部骨折の急性期から維持期に至る医療内容を整理した地域連携クリニカルパスを活用した連携も実施しております。
 今後も、地域の病院との役割分担や機能分担を適切に行いながら、質が高く切れ目のない医療提供に積極的に取り組んでまいります。

○中山委員 一般的な比較の仕方なので、必ずしも正確ではないかもしれませんけれども、都立病院と公社病院と、民間病院を比較しますと、大学病院や医学部との特定的な、人間的な連携というのが薄いというのが、公的な性格が強い都立病院や公社病院のある意味での特色として--薄くて当然なのかもしれないですね、でもそのことが、事病病連携に関していうと、なかなか退院後の病院を見つけにくいという面にあらわれても不思議ではない面があるわけであります。
 したがいまして、都立病院や公社病院のMSW、医療ソーシャルワーカーという方々は、今も真剣に、本当によく頑張っていただいているとは思うんですけれども、もしかしたら、民間のMSWが担うより、大きな機能を個人的に担って頑張っているという状況にあるといっても差し支えないのかもしれないと思います。
 当然、都立病院や公社病院のMSWは、人間的には、人材の質としては、民間病院に比べても恥ずかしくないほど優秀な人が多くて、実際にも極めて勤勉に働いている人が多いと思いますけれども、都立病院や公社病院からの順調な転院を、今後も高いレベルで安定して確保していくためには、さらに頑張っていただかなければなりません。
 しかし、真田本部長に最後お伺いしたいんですけれど、病院内における相談対応などのきめ細やかな実施は当然のことですけれども、転院をMSWが効果的に紹介していけるためには、病院外での人脈の拡大というものも個人的に頑張らなくてはいけないわけですね。
 その点で、大学病院や大学の医学部との連携が比較的厚い民間病院に比べると、MSWが担わなければならない負荷というのが大きいわけであります。
 インターネットやパンフレットによる都立病院や公社病院の紹介情報、これをふやしていくということを取り組まれていらっしゃいますが、そのことは極めて大事であります。
 しかし、知っている、知らない、特によく知っているMSWからの話なんだということで、選択、反応の仕方といいますか、そういうものも連携先の病院の対応が変わってくる可能性も多いと思います。
 都立病院や公社病院のMSWが積極的に、ほかの病院との連携を深めていくためには、それこそ積極的に病院を飛び出していける人員の層の厚さというものも必要でありますし、同時に、ただ人数だけを多くすればいいというわけではないと思うんですね。お互いに仕事を押しつけ合って、責任をなすりつけ合うような関係になってしまったんでは、それは意味がありません。
 一人一人のMSWの意欲を高めるとともに、意欲を高めやすい職場環境も整えていくと、そういう高度な取り組みが必要、簡単にいえば、質も量もともに大切という難しいガバナンスが求められているわけであります。
 ですから、このMSWの方々の意欲をどういうふうに引き出していくか、真田病院経営本部長の手腕が本当に期待されているところだと思いますけれども、人間味あふれる真田病院経営本部長のご見解をお伺いしたいと思います。

○真田病院経営本部長 患者の年齢構成を見てみますと、高齢化が確実に進んでいる。あるいは、患者さんの重症化、合併症の増加など疾病構造も多様化している。一方で、病院、病床の機能が高度急性期、急性期あるいは回復期、慢性期というふうに大きく分化している中、病院間の転院が必要なケースがますます増加し、かつ転院に必要な条件も複雑化してくるものと考えております。
 そうした中で、医療資源は限られておりますので、それを有効に活用していくことがますます大事になってくるわけでありますけれども、そういうことをするためには、各医療機関の特性を生かしながら相互に連携していく必要がございまして、お話がありました都立、公社間の連携はもちろんのこと、地域における病院、診療所との連携強化、これをしていくことがますます重要になってまいります。
 都立病院としてもこれまで病病連携、あるいは幹部職員、幹部医師による積極的な病院への働きかけなど、さまざまな連携協力関係の構築に努め、転院先の確保に努めてきたところでありますが、今お話がありましたように、病院の医師、看護師さんだけの努力ではあれですので、病院の総力を挙げて、特にMSWの力が大事になってまいります。
 そういったMSWの方の質、量ともにというお話もございましたけれども、そういったことも含めまして、やっぱり病院の総力を挙げて、今後どういうふうに病院間の連携強化を図ったらいいのかということについて、病院経営本部も一生懸命これから考えさせていただきまして、患者さんが、より求めている医療ニーズに応えられるような、そういうような病院連携、病診連携をより強めていけるような対応が都立病院において、今後ますます必要になってくるのはおっしゃるとおりであります。
 そういう方向で、ぜひ都立病院あるいは公社病院総力で臨んでいけるように、今お話ありましたことも十分参考にしながら、特にMSWの方の活用方法等につきまして、あるいは意識の啓発等につきまして、私の方としても一生懸命これから検討させていただいて、努力していきたいと思います。

○中山委員 本部長、唐突なお尋ねによくお答えいただいて、ありがとうございました。
 都立病院や公社病院のMSWの方のモチベーションを一層高めていただいて、それをもって、都民利益の向上により一層努めていただきますようお願いをして、私の質問を終わります。

○和泉(な)委員 私からはまず、都立病院改革推進プランについて伺います。
 この間のさまざまな委員会質疑を通じて、都立病院の責務は行政的医療を提供することであるとの答弁が繰り返しなされてまいりました。同時に、都立病院改革に当たっては、患者中心の医療ということも据えられています。また、都立病院の患者権利憲章の前文には、都立病院が都民の命と健康を守ることを使命としていることが掲げられています。
 行政的医療も、患者中心の医療も、都民の命と健康を守るという使命を果たすためのものであると考えます。
 まず、この点について確認したいと思いますが、いかがでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 都立病院の使命でございますが、患者中心の医療を推進しつつ、行政的医療を適切に提供し、都民の命と健康を守ることであると認識しております。

○和泉(な)委員 都立病院の運営や改革に当たっては、常に都民の命と健康を守る、そういう観点が底流に貫かれているべきものである、この点は共有しているという前提に立って質問いたします。
 第二次都立病院改革実行プログラムでは、ソフト面にも重点を置いた都立病院改革を推進するとなっており、その核となるのは人であるとして、四つの視点、七つの戦略のどちらにも、最初に医療人材の育成を掲げています。
 私も、この点で資質の向上を図り人材を確保する、働き続けられる環境を整備するためにどんな施策を講じてきたのか、あるいは、どんな成果が上がったのか聞く予定でおりましたが、先ほど中山委員の質問と重複しますので、答弁は求めません。
 ただ、先ほどの答弁の中で、二交代制勤務が若手看護要員にニーズが高いと、それが職場環境の改善だという答弁がありました。
 しかし、なぜ二交代の希望が多いか、これは調査しているんでしょうか。私が話を聞いた何人かの看護師さん、あるいは元看護師さんたちは、二交代は一回の勤務時間は長いけれども、勤務と勤務の間隔があくので、自由な時間を確保しやすいということでした。
 日本看護協会が、二〇一〇年に行った病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査によれば、三交代制勤務は勤務の間隔が短いシフトがあると、体を休めることができず、慢性的な睡眠不足、これを自覚しているという人が二八・一%に上ります。このようなシフトの中で夜勤九回以上を行う人の場合になると、慢性的な睡眠不足の自覚は三五・三%まで上がります。
 さらに、一カ月間に、ヒヤリ・ハットを起こした人の割合は六割です。日常生活にゆとりがないと答えた人も七割近くに上ります。その結果、離職を考える人が五一・五%となっています。
 これが看護師さんたちの離職する大きな要因の一つとなっていることは間違いありません。そのために、比較的自由な時間を確保しやすい二交代を希望する人が多いということになっているのが実態だと思います。
 けれども、二交代はどうしても夜間の拘束時間、長くなります。拘束時間十二時間未満と以上では、腰痛を自覚する人が五五・五%から六二・五%にまでふえます。その上、仮眠時間が二時間未満だと、ヒヤリ・ハットも五〇・七%に上ります。さらに、疾病の自覚症状数が五項目以上あると答えた人は七割に上っています。
 幾らニーズが高いといっても、実際には、リスクも高くなるというのが二交代制だと思うんです。決して、職場環境の改善策とはいえないんじゃないでしょうか。
 都立病院改革推進プランでは、人材不足は充足しつつあるとしながらも、安定的な病院運営のためには、継続的な人材確保が必要であるとしています。要求資料を見ても、脳神経外科、小児科などで、医師は二桁の不足、全体では七十四・五人の常勤医師が不足しています。
 都立病院の医師不足は、いまだ深刻な状況を脱し切れていないと思いますが、都の見解を伺います。

○中野経営企画部長 都立病院では、平成二十三年度以降も、再編整備による医療機能強化に対応するため、体制を強化してまいりました。
 定数に比べまして現員が不足する部分でございますが、非常勤職員を配置することにより体制を補強するほか、診療科ごとの状況に応じた院内の連携体制をとることで、必要な体制を確保しておりまして、深刻な状況ではないというふうに認識しております。

○和泉(な)委員 足りない分は非常勤医師で体制を強化したと、院内の中での連携で深刻な状況ではないという答弁ですけれども、果たしてそれは体制強化といっていいんでしょうか。
 確かに深刻な医師不足というのは国の政策の誤りだと私も思います。慌てて医学部の定員をふやしても医師の数がすぐにふえるわけじゃありません。医師や医療機関、病床をふやさない、そうして医療を提供する側から医療費の抑制を図ろうとしてきた結果が、今の深刻な医師不足を招いたんだというふうに思います。
 しかし、定数というのは必要な常勤医師の数ですから、常勤医師の不足を非常勤で補うことは根本的な解決にはなりません。常勤の医師を確保する取り組みの強化を求めておきます。
 院内保育園での二十四時間保育の実施や育児短時間制度の導入など、働きやすい職場づくりを推進した結果、医療人材の確保、定着につながったとのことですが、推進プランの実施計画では、コメディカル職員については、一部に採用選考の中断があり、年齢構成のバランスが崩れ、技術の継承が課題であると記載されています。
 今後について、医師だけでなく看護師、コメディカルも含めて、人材の育成や確保にどう取り組んでいくのか伺います。

○中野経営企画部長 今後とも質の高い医療サービスを安定的に提供していくためには、継続して人材を確保していくとともに、資質の向上に取り組んでいく必要がございます。
 このため、看護要員につきましては、東京看護アカデミーの安定的な運用によりまして、看護実践能力の向上を図るほか、認定看護師資格の取得等により専門性を高めるなど、育成を図っております。
 また、コメディカル職員でございますが、学会認定資格の取得を支援するなど、医療の高度化、専門化に対応した人材の育成を図っております。
 なお、コメディカル職員でございますが、職員の年齢分布がアンバランスな面もございまして、平成二十四年度以降、新規採用者を確保し、技術継承を行いながら育成するとともに、職種によりましては、欠員状況に応じて経験者採用を行うことなどによりまして、年齢分布のアンバランス解消に努めているところでございます。

○和泉(な)委員 これは医療に限ったことではなく、福祉の現場は全てそうだと思うんですが、人対人の分野です。採用選考の中断が医療の現場を支える人と、その技術の世代継承を分断してしまった、この反省は、全ての職種で教訓にして今後に生かしていただきたいというふうに思います。
 続いて、未収金回収の強化について伺います。
 未収金特別徴収担当職員の配置が、経営力強化の取り組みの一つとして挙げられています。
 専任の非常勤職員を配置して、未収金の回収の強化を行っているとのことですが、職員数、非常勤職員数など、人的体制はどのようになっているんでしょうか。また、非常勤職員に係る費用についても、あわせてお答えください。

○野瀬サービス推進部長 本部及び各都立病院に収納業務を担当する職員を配置するとともに、収納業務専任の非常勤職員を、ER病院の広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センターには二名ずつ、それ以外の五病院と本部には一名ずつ、それぞれ配置しております。
 非常勤職員に係る費用は、二十七年度予算で約三千六百万円となっております。

○和泉(な)委員 今、答弁のあった職員の体制だけでなく、各病院で回収困難だった事例については、本部に債権管理を引き継いで、さらに一定の条件のものは、弁護士に委任して債権整理及び回収業務を行っているということですけれども、弁護士に委任している納付相談、必要な調査、法的対応とは具体的にどのようなものを指すんでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 納付相談とは、委任を受けた弁護士が未納者と納付方法や支払い計画などに関する相談を行うことでございます。
 必要な調査とは、未納者本人、あるいはその関係者の確実な連絡先などの解消業務の遂行に必要な情報を、住民票や戸籍などにより把握することでございます。
 また、法的対応とは、簡易裁判所に申し立てて支払いを督促する文書の送付を求めるなど、法的措置を実施することでございます。

○和泉(な)委員 弁護士への報酬、それから、弁護士によって回収された未収金額についてもお伺いいたします。

○野瀬サービス推進部長 平成二十五年度の実績で申し上げますと、弁護士報酬は約六百七十六万円で、回収済み金額は約千百六十万円でございます。

○和泉(な)委員 弁護士が職権で住民票や戸籍等の調査を行うということは、本人が払えなければ、家族や親類縁者から払ってもらおうということも含めて、納付相談が行われているということなんでしょうか。
 都の説明によれば、弁護士に委任する事案は、実際に職員が行った電話や訪問活動を通じて、払える条件があるのに払わないと思われる人を対象にしているということでしたけれども、それにしても、相手は患者さんです。ぐあいが悪くて受診した方たちです。また、経済的に困窮し、保険証がないなどの理由で払いたくても払えない方もたくさんいます。
 未収金回収が不要だとは思いませんし、本当に悪質な場合は、専門家の力をかりるという選択肢もあるでしょう。しかし、体調への配慮や悪質なものかどうかの見きわめなど、生活を圧迫するものとならないようにする必要があると思いますが、この点、都の見解を伺います。

○野瀬サービス推進部長 弁護士による納付相談や日々の対応を通じて得られた患者さんの経済的な事情に配慮しつつ、病院の健全な経営と利用者の費用負担の公平性の観点から、引き続き適切な収納管理を行ってまいります。

○和泉(な)委員 先ほどの答弁だと弁護士報酬が六百七十六万円で、回収金額は千百六十万円ということですから、弁護士が回収した金額の六割近くが報酬に回っているということになります。
 また、非常勤職員に係る費用も三千六百万ということでしたが、経営力の強化としての未収金対策が優先されて、患者さんの事情が後景に追いやられるということのないよう、くれぐれもお願いしたいと思います。
 続けて、職員の労働環境について伺います。
 第一回定例議会要求資料の平成二十五年年次有給休暇平均取得日数を見ると、病院によってばらつきはあるものの、都立病院全体の平均は、十一日四時間というふうになっています。
 しかし、病院によってばらつきがあるのと同じように、人や職種によってもばらつきがあると思います。昨年度一年間の年次有給休暇取得日数がゼロ日、一日あるいは二日となっている職員数、職種の傾向は把握しているかどうか伺います。

○中野経営企画部長 都では、年次有給休暇を取得する際には、職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規程に基づきまして、休暇職免等処理簿により、所属長が承認する手続をとっております。
 個々の職員の勤怠状況は所属長が適切に把握しておりまして、休暇取得が少ない職員等には業務の調整など、できるだけ計画的に取得できるような環境となるよう努めているところでございます。

○和泉(な)委員 そうすると、有休がとれる環境が整っているかどうか、その管理は所属長に任されていて、本部としての、あるいは病院としての把握、検証、分析がなされていないということになるんでしょうか。
 例えば、定数が少ない職種の職員の有給休暇取得や負担軽減について、何らかの対策がとられているかどうか伺います。

○中野経営企画部長 一つの病院で定数の設定が少ない職種につきましては、必要に応じて非常勤職員もあわせて配置いたしまして、常勤職員及び非常勤職員による複数体制とするなど、負担を集中させない体制づくりを行っているところでございます。

○和泉(な)委員 極端に有休がとれていない人、職種について把握して調査や分析を行い、とりたくてもとれない、あるいはとれる状況ではないということがあれば、個人の問題にするのではなくて、定数増も含めた職場環境の改善が必要だと思います。
 細かいことですが、休暇職免等処理簿により、所属長が有給休暇を承認するとありましたが、有給休暇の請求権というのは届け出だけでいいはずなんです。承認を必要としないはずです。
 そういった点も含めて、有給休暇がとりやすい環境、所属長に対する教育なども必要ではないかというふうに思っています。
 さらに、以前にも看護師の夜勤体制については質問しましたが、新人や育児短時間等で夜勤に入れない人の数と夜勤に入れる人の数、その比率についてはどうなっているか伺います。

○中野経営企画部長 新規採用者でございますが、採用から三カ月間は臨床研修期間のため、夜勤ローテーションには入れておりません。また、出産や育児等により、夜勤に入れない職員の人数でございますが、平成二十七年十月一日現在、三百十七人でございまして、率にして約八%でございます。

○和泉(な)委員 ほかにもさまざまな事情を抱えていて夜勤に入れない人というのは一定数いるんだろうというふうに思いますし、そのような方たちの事情は当然配慮しなければ、働き続ける環境は保障できません。
 だからこそ、夜勤のローテーションを組むときに、夜勤に入れない人が常時一定数いることを想定して、その数を除いて夜勤が八回以内におさまるよう、第一回定例会のときにも要望しました。夜勤が八回を超える人たちの負担を軽減するためには、現在、夜勤に入っていない人たちに入ってもらうしかないんだと、そもそも夜勤の回数については労働基準法に規定がないと、都はそのときに答弁しましたが、労基法は最低基準です。しかも、それぞれの職種ごとに、労働条件の最低基準を定めたものではありません。
 看護という仕事の性質上、持続して緊張が強いられる職種において、違法でなければいいという理屈は成り立ちません。疲れ果て、ぎりぎりの状態で働いていたのでは、医療事故を招きかねません。医療人材の資質の向上、医療の質の向上は、労働の質の向上をさせることなしには実現しないと思います。
 すぐれた人材を育成しても、その力が現場で遺憾なく発揮されて、長く働き続けられるようにするためには、職場環境、労働環境、勤務実態が適正で、何より心と体の健康が保たれることが必要です。
 残業が多くなっていないか、勤務実態が勤怠に正しく反映されているか、休憩が確保できているか、有給休暇は適時取得できているか、それぞれ検証する必要があります。
 このような検証を現場任せにせず、本部として行っているのでしょうか。伺います。

○中野経営企画部長 病院経営本部では、各病院に対しまして、適切な労務管理の徹底につきまして、繰り返し周知を図っております。
 各病院には、管理監督職を対象とする労務管理研修の実施等を求めておりまして、超過勤務の事前命令、事後確認の徹底や、勤務時間設定の見直しなどを随時図ることで、適正な労務管理に努めているところでございます。

○和泉(な)委員 例えば、有給休暇請求権というのは法律が労働者に与えているものです。先ほどもいいましたが、取得の申請に理由を問うことは認められていません。許可や承認を要するものでもありません。残業についても、事業主に命じられて行うものではありますが、現に働いていれば、命令がなくても割り増し賃金の支払いは必要です。
 病院の交代制勤務の中で、所属長が自分の業務をこなしながら、職員の労務管理を行うことは、実際にはかなり難しいのではないでしょうか。その点にも、都の支援を強めていただきたいと思います。
 最後に、小児甲状腺がんの治療体制について質問します。
 都立病院における小児甲状腺がんの平成二十六年度患者数について伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成二十六年度の都立病院における小児甲状腺がんの患者数についてでございますが、入院、外来ともに患者実績はございません。

○和泉(な)委員 私は昨年の第一回定例会のときにも、この問題を取り上げました。そのときには小児甲状腺がんの患者さんが一名いましたが、小児総合医療センターで手術ができず、多摩総合医療センターで手術を行い、その後、多摩総合と連携をとりながら、小児総合で治療を行ったという答弁でした。
 そのときに、福島で甲状腺がんが見つかっていたのは三十三人でしたが、八月三十一日の健康管理調査検討委員会、先行検査の確定結果が発表され、悪性または悪性の疑いと診断された百十三人のうち、手術した人が九十九人、そのうち乳頭がん、低分化がん、合わせて九十八人と三倍にふえています。北茨城でも三名が発症しています。
 関東子ども健康調査支援基金が行った検査では、四十二人に精密検査が必要という結果が出ています。原発事故が原因かどうかにかかわらず、これまで蓄積のなかった小児甲状腺がんの手術、治療が必要に迫られています。
 今後、都として、受け入れの体制をつくっていくべきではないでしょうか。また、診察、手術、治療ができる医師を養成する必要があると思いますが、あわせて都の認識を伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院における小児がん医療につきましては、小児がん拠点病院でございます小児総合医療センターが中核的な役割を担い、重症合併症や難治性腫瘍患者に対応し、都内はもとより都外からも多くの患者を受け入れております。
 小児総合医療センターでは、小児甲状腺がんの患者は、耳鼻咽喉科及び外科で診察し、手術や化学療法に対応するとともに、放射線治療が必要な場合など、必要に応じて多摩総合医療センターの医師等と連携し、治療に当たっていくこととなります。

○和泉(な)委員 小児総合医療センターで、小児甲状腺がんの手術、化学療法ができるようになったことは重要です。先ほど紹介した関東子ども健康調査支援基金では、広島と北海道から専門医に来てもらい、検査体制をとっています。
 それと同時に、周辺の医師の協力を得て、検査のたびに、研修のために地域の医師に参加してもらっているとのことでした。このような研修も含めて、甲状腺がんを診察、手術、治療できる小児科医あるいは内科医、この養成に都が積極的に取り組むことを求めておきます。
 昨日、広尾病院の百二十周年記念祝賀会が開催され、私も参加させていただきました。舛添知事も参加されていましたが、これからも都民の方に向かって、誰もが安心してかかれる病院をという趣旨の挨拶をされました。
 私からも、その点を重ねて要望し、私の質問を終わります。

○西沢委員 私からは、アレルギーについてお伺いをしたいと思います。
 きょうも委員会の質疑の中で、都立病院の役割であります行政的医療という言葉が何度も出てまいりました。行政的医療ということで、社会的要請の高い、対策を講じなければならない医療ということで、都立病院の役割であります安全・安心の医療の提供ということでございます。
 特に、災害医療であったり、僻地の医療、周産期医療、小児医療などということがございますが、アレルギーについて、私は確認をしたいと思います。
 これは、平成二十四年、調布市で発生しました学校給食でのアレルギーの死亡事故がございましたが、さきの第三回定例会でも代表質問としても取り上げられました。
 学校での食物アレルギー対策というものには限界があると、課題というものがわかったわけでございますが、特に子供の食物アレルギーという部分について、都立病院はアレルギー疾患医療というものを行政的医療に位置づけておりますが、子供の食物アレルギーに対してどのような取り組みをされているのかお伺いをいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院におきましては、アレルギー疾患医療を行政的医療に位置づけており、内科や小児科を中心にぜんそくや食物アレルギーなどを持つ患者の診察を行っております。
 子供の食物アレルギーにつきましては、広尾病院、大塚病院、小児総合医療センターに専門外来を設置し、専門医による診断を実施しており、原因となる食物アレルゲンを特定するために、短期入院や日帰りによる食物経口負荷試験を実施しております。
 また、患者や家族に対し、アドレナリン自己注射薬、いわゆるエピペンの使い方を看護師が指導したり、アレルギー原因食物の特徴を踏まえた最小限の除去を行いながら、バランスのよい食事をとるための調理方法や代替食材の活用法など、栄養指導も行っております。

○西沢委員 食物アレルギー対策についてお伺いしていますが、これは行政的医療に位置づけているというような答弁でございました。
 つまり都立病院がやらなくてはいけない、そうした対策の一つであるということがわかったわけでございます。
 さきの代表質問の中で、この問題を取り上げておりますが、教育庁と、それから福祉保健局長から答弁をもらっています。
 どういった質問かというと、これはホットラインの設置などをするべきではないのかと、こうした議論をさせていただいたわけであります。というのも、これは、特に学校現場にいらっしゃる養護教諭の話でございますが、いざ現場で、そうしたことになったときに、その場でどういった対応をしていいのかがわかる人もいれば、わからない人もいると。逆に、その方の現場での感覚はわからない方も多いと。
 特にいわゆる保健の先生の中においては、文系ですし、その方はたまたま看護師の資格はお持ちだったということで、そういった専門知識を持ち合わせた、なので、そういったことはわかると。でもそうじゃない学校の先生、保健の先生も多くいらっしゃいますよという中で、ホットラインですぐ電話ができるような、そうした対応がありがたいと。
 その話の中で、一一九番の、いわゆるシャープ七一一九とありますね。救急車を呼べばいいのかどうかというときの中で悩んだときに相談をする。ああいったイメージで、この場合どうすればいいのかと、アレルギーについて知識がない、だけれども対策をしなければいけないときに、そうしたホットラインがあれば大変助かると、こんな話をいただいたところでございます。
 事件のあった調布市などでは、慈恵第三病院と協定を結んで、それから、小平市や小金井市では昭和病院と、杉並区ではことしの四月から河北総合病院と、そうしたホットラインを実施して、市区町村などは実施している。
 教育長の答弁の中では、地域の実情に応じた医療連携を進めてきているということを前に置いた上で、区市町村教育委員会を支援してまいります、こうした答弁もありました。
 さらに、福祉保健局長の答弁では、主治医や嘱託医との連携を進めるよう周知徹底を図っていますということで、特に情報共有だとか連携という言葉を、するという答弁をもらったところでございます。
 そうした中で、私は子供の食物アレルギーという問題について、都立病院においても、学校現場や地域の診療所などとの連携というものを積極的に行っていくべきではないかというように考えますが、見解をお伺いいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 食物アレルギーを持つ子供に適切に対応するためには、子供を預かる学校、幼稚園、保育施設などの職員がアレルギーに関する知識や対処方法について理解を深めることが重要であると認識しております。
 そのため、学校や教育委員会が主催する研修会におきまして、都立病院の医師が講師を務め、給食や家庭科の授業のように、特に子供への配慮や管理が必要となる学校活動とアレルギー疾患の関連について説明を行うなど、関係者の理解の促進に努めております。
 また、緊急性が高いアレルギー症状があらわれた場合の対処方法について解説し、本物のエピペンを使用した実習を行うなど、より現場に即した実践的な指導も行っております。
 さらに、地域の医療関係者向けにも、子供のアレルギー疾患の診断や治療法についての講習を行うなど情報の共有に努めております。
 今後とも、このような普及啓発活動を通じまして、教育機関や地域の医療機関との連携を図ってまいります。

○西沢委員 今後も連携を図っていくという答弁で、ぜひ進めていただきたいというように思います。今の答弁の中では、学校や教育委員会、研修会であったりとか実習を行ったりであったりとか講習を行うと、どうしても答弁は、座学的な印象ばかりを持ちました。
 さらに、私はもう一歩、もう二歩も進んだ対策を求めまして、質問を終わらせていただきたいというように思います。

○両角委員 私からは、何点かにわたって質問させていただきたいと思いますが、さきに群馬大学の附属病院で腹腔鏡手術で八人の患者さんが亡くなっていたということで、世間が非常に驚いたわけでもございます。
 あるいは昨年の二月に、東京女子医大で二歳児のお子さんの手術の後に、そのお子さんが亡くなってしまったというようなことがございまして、要は、まず一点目に、こういった、いわゆる医療事故、あってはならないことですけれど、しかしながら、最善を尽くしても、あるいは何かの過誤でこういうことが起こってしまうこともあり得るということで、医療事故とその対応について、まずは伺いたいと思います。
 まず初めに、確認をさせていただきたいんですけれど、今、都立病院及び公社病院において、訴訟案件となっている事案というのがどれくらいあるのか、確認をさせていただきたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 平成二十六年度に提起された医療関係訴訟の件数でございますが、都立病院が六件、公社病院はゼロとなってございます。

○両角委員 都立病院六件で、公社病院はありませんよということでありまして、これは所管の方にも伺ったんですけれど、中身については、どういう性質のものかということは、個人的な情報が含まれるということでお聞きできなかったんですけれど、訴訟があるということは何か争いが当然あるわけですから、患者さんサイドから、何ら、不服があるのかなということで伺ったわけでありますけれど、都立病院においては、もう、ここ十年以上にわたって重篤な死亡事故というのは起きていないわけであります。しかし、平成十一年に、不幸にして都立広尾病院で医療事故が起きているわけであります。
 このことを教訓にして、その後、都立病院あるいは公社病院では、どのような対策を講じて、その対策がいかなる効果を上げたのか伺いたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 平成十一年に、都立広尾病院で起きた死亡事故を受け、都立病院では、インシデント・アクシデント・レポート制度の活用、医療事故予防マニュアルの整備や専任リスクマネジャーの配置などを行い、組織として医療安全対策に取り組んでまいりました。
 公社病院につきましても、都立病院に準じる形で医療安全対策に取り組んでおります。
 また、効果の点でございますが、副委員長ご指摘のとおり、広尾病院で起きた事故以降、明らかな過失による死亡事故は発生しておりません。

○両角委員 大変ショッキングな事故でありましたから、これをもとに報告書も出されておりますし、対策を、今おっしゃったようなことを組織として対応していると。結果として、それ以降、事故が起きていないということで、大変それはありがたいことだと思いますので、さらにそういう対策を徹底していっていただきたいと思いますが、今お話がございましたけれど、インシデント・アクシデント・レポートの活用というお話がございました。
 そこで、医療事故に至らないような事案であっても、インシデントやアクシデントの状況がどのようなものがあって、いかなる対策をとっているのか伺いたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 平成二十六年度におけるインシデント・アクシデント・レポートの報告件数でございますが、都立病院では二万三千三百九十一件、公社病院では一万一千四百八十四件となっております。
 インシデント・アクシデント・レポートの主な事由でございますが、都立、公社病院とも薬剤、転倒、転落及び点滴等が抜けた事象でございました。
 都立病院及び公社病院におきましては、提出されたインシデント・アクシデント・レポートの検証、分析を、各病院に配置された専任リスクマネジャーが中心となって行い、再発防止策を講じております。

○両角委員 件数は、ふえたり減ったりということでありますけれど、こういったヒヤリ・ハットに対する日々の対応というのが重大な事故防止につながると思いますので、しっかり対応していただきたいと思います。
 それで、こういった中で、昨年六月、医療法の改正が行われまして、この中で、医療事故調査制度というものが創設をされたわけであります。
 本年、つい先月、十月一日からこの制度がスタートしているわけでありますけれど、この制度については、例えば新聞、これは東京新聞でありますけれど、運用が非常に重要である、あるいはルールが曖昧である、医療機関みずからが調査主体となる点も課題が多いと、そのような指摘もなされているわけでありますけれど、この制度スタートに当たって、都立病院及び公社病院では、この医療事故調査制度への対応をどのようにとっているのか伺いたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 都立病院におきましては、医療事故調査制度に適切に対応するため、平成二十七年九月に医療事故予防マニュアルを改定し、制度施行前に各病院への周知を図っております。
 公社病院におきましても、医療事故調査制度を踏まえたマニュアルの整備を鋭意進めているところでございます。

○両角委員 都立病院については、もうマニュアルを改定していると。百ページ以上の大変分厚いマニュアルで、各病院に周知を図っているというお話でございました。
 一方で、公社病院は、今のご答弁ですと、マニュアル整備を鋭意進めているというご答弁だったんですが、もともと十月一日から法改正を踏まえて、この制度はスタートをするということが決まっていたわけでありまして、ご答弁は結構でございますけれど、公社病院についても、この制度を公社全体でどんなふうに運用するかということを、合意をマニュアルなりの形にして、制度がスタートする十月一日には、そのことが周知をされているという状況が望ましいことではなかったかなというふうにも思いますので、そこら辺については、今、鋭意進めているということをスピードアップをして、この制度の対応をしっかりとしたものにしていただくように要望したいと思います。
 それで、この事故調査制度につきましては、いろんなことがいわれておりますけれど、曖昧さがあるということでございます。お医者さんサイドからすると、これが訴訟に使われてしまうんではないかということを恐れているということがある。まさにこの制度によって、お医者さんが萎縮をしてしまってもいけないだろうと思いますし、一方で、患者さんからすると、予期せぬ事故というのが、これは予期せぬ事故ではありませんよというくくりになれば、調査は必要ないということになってしまいますので、きちっと調査をしてくれるのかという、そういう不安もあるということであります。
 そこで、医療事故が万が一あった場合、この制度では、医療機関がまず院内調査をすると。で、遺族に調査結果を報告するということになっているわけでありますけれど、万が一、このような事故が起きた場合には、調査を誠実に実施することが医療機関としての信頼回復に不可欠だと思うわけであります。
 そこで、そのための調査の対象、まさに予期せぬ事故というのはどのように考えていけばいいのか。あるいは、調査委員会への第三者の参加。群馬大学の場合は、顧問弁護士の方が第三者として入られていたというような話も伺っておりますので、第三者、客観性がどこまで担保されていくのか。さらには具体的に、もし万が一、そういう事故が起こった場合に当然、改善策というのが示されますから、その改善策の実行を確認するそういった手だてについて、具体的にどのように考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 医療事故調査制度での調査対象でございますが、医療機関が提供した医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産であって、当該医療機関の管理者が当該死亡を予期しなかったものとされております。
 よって、都立病院及び公社病院におきましては、法令通知に基づき、管理者である各病院長が医療事故調査制度の対象であるか否かを適切に判断すべきものと考えております。
 医療事故調査制度の施行以前から、都立病院及び公社病院では、患者さんやご家族との信頼関係を構築するため、院内での調査を行い、誠意ある説明を行うことに努めてまいりました。
 ご質問の第三者の調査への参画についてでございますが、医療事故調査制度では、法令で義務とはされておりませんが、私たちの制度施行以前でございますが、客観性の担保に有用と病院が判断し、外部委員を入れた調査を行った事例がございまして、今後も必要に応じて、同様の対応を検討することとなると思われます。
 また、調査から得た再発防止策は、医療安全管理委員会や専任リスクマネジャーを中心とした活動などにより確認し、徹底を図ってまいります。

○両角委員 それでは、続きまして、都立病院における緊急搬送の受け入れということで伺いたいと思います。
 今、救急救命センターというのが、都内には二十六病院が指定をされているということでございますけれど、そのうちの三つの病院が都立の病院であるということであります。
 そこで、この都立病院の救急救命センターでの最近の緊急搬送の応需率はどのようになっているのか、伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 救命救急センターは、生命の危機を伴う重篤患者に対応する医療機関でございまして、都立病院では、広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センターに設置をしております。
 広尾病院におけます応需率は、平成二十五年度が九二・二%、平成二十六年度が九三・六%、墨東病院における応需率は、平成二十五年度が七〇・四%、平成二十六年度が七三・九%でございます。多摩総合医療センターにおける応需率は、平成二十五年度が八二・〇%、平成二十六年度が九六・〇%でございました。

○両角委員 今、ご答弁をいただきまして、数字を挙げていただきました。
 墨東病院の緊急搬送の応需率が、二十五年度については約七〇%、二十六年度は約七四%ということでございまして、他の二つの救急救命センターに比べて低いという形になっているんですが、この応需率が低い原因はどのようなことなのか、伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 応需率とは、最終的に当該救命救急センターで受け入れた年間救急搬送人員を消防機関からの電話による搬送受け入れ要請の年間件数で除した割合でございます。
 墨東病院は、区東部保健医療圏唯一の救命救急センターでございまして、近隣に救命救急センターがないという立地から、他の二つの都立病院、広尾病院、多摩総合医療センターの救命救急センターに比べ、搬送受け入れ要請件数が多く、結果として応需率が低くなっております。
 なお、墨東病院の救命救急センターが受け入れた救急搬送人数は、平成二十六年度で千九百六十四人でございまして、広尾病院、多摩総合医療センターの受け入れ人数を大幅に上回っております。

○両角委員 確かに救急救命センターの配置を図面上に落としたものを見ると、墨東病院というのは、墨田、江東、江戸川を所管する医療圏の中で、そこ一つだけという形です。
 今お話しのように千九百六十四人の救急搬送があって、ただ、結果として、その三割の方についてはお断りをしているという実態があるわけです。三割の方が墨東はちょっと受け入れられませんよということで、司令室にいっているわけです。そうすると、救急車は現場で待っていて、墨東はだめだと。じゃあ、次はどこが受け入れてくれるのかということで、病院を探すわけです。
 私は、この質問のやりとりの事前の調整をする中で、じゃあ、三割いらっしゃるけど、どうなのといったお話をしたときに、結果としてそこで受けられなかったけれど、他の救急救命センターなりにきちっと受け入れてもらっているということでありました。では、実際に救急車が現場に行って、墨東病院は三割ぐらいの断られている方は、そこから何分後に救急車が発車できて、何分後に救急車がその病院に行けたのかということをしっかり把握していなきゃ僕はいけないと思うんです。
 そうしないと、じゃあ、結果としてそれはどこかに行っているんだということであっても、例えばくも膜下みたいな、一分、何秒を争うような例でいえば、救急車が現場に行って、墨東病院に受け入れ依頼をしたけど断られた。ほかに当たったと--すぐ行って、すぐ入れたら問題ないです。しかし、そういった事例が、なかなか出発までに時間がかかった事例や、あるいは実際に救急救命センターまで行けたのに時間がかかったような事例が相当数あるというようなことが仮にあれば、それは、この救急救命センターの配置、医療資源の配置が多分アンバランスがあるとか、あるいは墨東病院にもう少しスタッフを厚くしなくてはいけないんだろうということになろうと思うんです。
 そのことを担当の課長さんにお話ししましたら、それは病院経営本部の話ではありませんと、福祉保健局の話ですと。先ほど、福祉保健局の方に、そこは裏をとった方がいいですよというお話をしたら、それは搬送の話で消防の話です。まさにこれじゃ、たらい回しなんですね。
 私は、ですからこの件については、福祉保健局の事務事業で確認をしたいと思いますが、ただやはり、都立病院の救急救命センターとして指定をされているところは、救急搬送を確実に受け入れられるような、そんな手だてをとっていくべきだと思いますけれど、その取り組みについて伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 救急患者の確実な受け入れは、各救急医療機関が役割に基づき最善を尽くすとともに、相互の連携と協力で成り立つものと考えております。
 都における救急医療体制は、入院を必要としない軽症患者に対する初期救急医療機関、入院を要する中等症患者に対する二次救急医療機関、生命の危機を伴う重篤患者に対応する三次救急医療機関、救命救急センターを基本に構成されており、三次救急は民間病院も含め、都内二十六カ所の救命救急センターが担っております。
 また、都では、救急隊の医療機関選定で搬送先が決定しない場合に、並行して、二次保健医療圏内の救急医療機関の連携により受け入れ先の調整を行う、救急医療の東京ルールを平成二十一年度に策定し、救急患者の迅速な受け入れを図っております。
 このような二次救急のシステムが三次救急の役割を支えておりまして、救命救急センターへの搬送を真に必要とする患者の確実な受け入れにつながっているというふうに考えております。

○両角委員 そうあってほしいわけですね。確実につながっているということでありますので、これは局間で連携をして、本当に確実につながっているのかということを、ぜひ、実態を確認していただきたいということを、この場でいってもしようがないんですけれど、そんなふうに思っております。
 次に、ICT化の推進ということで伺いたいと思いますが、事務事業の概要でも、病院経営本部の経営理念の一つとして、ITの活用を積極的に推進するということがうたわれているわけでありますけれど、都立病院、公社病院において、ICT化の進捗状況と効果を伺います。

○野瀬サービス推進部長 電子カルテシステムについてでございますが、平成十五年度の旧府中病院を皮切りに、順次導入を進め、本年度十一月の公社東部地域病院をもって、都立、公社全病院への導入を完了いたしました。
 システムの導入により、予約患者の診療待ち時間は一時間から二十分程度に、また、会計待ち時間についても、一時間から十五分程度と大きく改善されております。
 さらに、診療面については、レントゲンや心電図、血液検査などの検査結果が電子カルテ画面上に表示され、医師と患者さんが同じ画面を見ながら、検査結果について患者さんにわかりやすく説明することが可能となりました。
 また、医師や看護師が入力した電子カルテ上の情報を栄養部門や薬剤部門など、院内の他部門も速やかに共有できることにより、チーム医療の充実に寄与してございます。

○両角委員 効果についてご答弁いただきまして、待ち時間が一時間程度から二十分程度に大幅に削減と。会計についても、一時間から十五分程度と、まさに、こういったITを活用すると、患者さんについても、非常に待ち時間が少なくなったりできるわけです。
 あるいは、今、チーム医療が充実したというお話がございましたけれど、患者さんメリットが上がるような、いろんな医療の関係の職の方が一緒に情報共有して、物を動かせるということで、仕事の進め方も変わるということだと思います。
 ですから、ICTの導入については、効率ということがやはりいわれるわけですけれど、一つは、やっぱり医療の質の充実にどれだけつながるか、患者の負担軽減にどれだけつながるか、あるいは、さらには、業務の効率化がどれだけ図れるか、そういうことを常に意識していただきたいと思うんです。
 もちろん、ICT導入には莫大なお金もかかるわけですから、費用対効果ということをしっかり考えて、常にそういった数字を意識しながら、このICT化を推進していただきたいと、このように思います。
 そこで、今度、カルテなどの患者情報について伺いたいんですが、この患者情報については、他の医療機関と共有をすることで、患者に対するより適切な処置が可能になるのかなというふうにも思うわけでありますけれど、一方で、情報セキュリティー面でのリスクも伴うであろうと、このように考えます。
 そこで、都では、患者情報の共有化について、どのような見解をお持ちになっていて、取り組みをしているのか、伺います。

○野瀬サービス推進部長 現在、他の医療機関との患者情報の共有については、診療情報提供書や画像データなどが入力されたCD-ROMなどを用いております。電子カルテシステムを患者情報共有化のツールとして活用することは、技術的には可能でございます。ただし、電子カルテは個人情報を取り扱うため、情報管理に細心の注意を払い、セキュリティーの保全確保に万全を期す必要がございます。
 また、情報共有化のための設備を他の医療機関でも用意する必要があることや、ソフト面での標準化を図るなど、関係機関などとも調整が必要であると考えております。

○両角委員 ICT化を推進していくということは、先ほどお話ししましたように、仕事の質も上がっていくことが可能であるし、効率を上げることにもつながると思います。
 一方で、個人情報の漏えい、あるいは病院ネットワークへの外部からの攻撃にさらされるなどのリスクを伴うことでもあります。
 そこで伺いますけれど、これまでに個人情報の漏えいや病院ネットワークへの攻撃の実態というのはどのようなものがあったのか、伺います。あわせて、これらへの対応をどのようにとってきたのか、お聞きいたします。

○野瀬サービス推進部長 電子カルテシステムは、インターネットなど、外部との接続のない閉鎖されたシステムのため、直接的な情報漏えいや外部からの攻撃にさらされることはございませんが、万一に備え、ウイルス対策システムを導入し、セキュリティーについて万全を期しております。
 しかしながら、過去において、医療従事者がUSBメモリーを利用して、個人情報を紛失する事故が発生しており、都立、公社病院では、USBメモリーの使用を原則禁止としております。
 さらに、個人情報の管理や情報セキュリティー対策をより一層徹底するため、全職員を対象とした研修を初め、自己点検、本部職員による巡回点検、外部の専門機関によるセキュリティー点検などを継続的に実施しております。

○両角委員 ご答弁いただきまして、特に外部専門機関によるセキュリティー点検などは大変よいことだなというふうに思います。
 ただ、ICTの世界は技術進歩が日進月歩でありますから、そういった進歩にあわせて、対策もアップデートをしていただきたいと思いますし、特に、対策を完璧にしても、人が扱うということでありますから、悪意がある人が情報を持ち出したりしてしまったらどうしようもないということですから、システムも含めて、人に対する対策をしっかりやっていただくように要望したいと思います。
 最後になりますけれど、未収金の対策、他の委員の先生から先ほどご質問もありましたが、切り口が違いますので、このまま続けさせていただきたいと思います。
 ここ数年の都立病院の未収金を拝見させていただくと、毎年十億円から十一億円ということで推移をされております。その中で私債権の放棄額というのが、昨年度が約四千二百万円ということであります。
 まず、この未収金の発生の原因というのをしっかり分析することが大切なんではないかというふうに私は思いますが、未収金の発生の原因をどのように分析しているのか、伺います。

○野瀬サービス推進部長 診療費が未収金となる主な理由としては、持ち合わせがなく救急を受診した場合、死亡退院などで直ちに診療費の計算ができず、後日請求となった場合や、保険未加入の外国人の受診、交通事故による自賠責保険や労働者災害補償保険などの申請中のため、その場で直ちに診療費を請求できない場合などでございます。

○両角委員 幾つかの例を挙げていただきました。それぞれどのぐらいのボリュームがあるのかということを調べていただいて、その上で、それぞれに対して、例えばお金がない方には、どういう形をとればお金が回収しやすいのかとか、あるいは外国人の方に対しては、どういう周知をしていくといいのかとか、現状に応じた対策をとっていただくようにお願いしたいと思います。
 続いて、この未収金の回収なんですが、都立病院や公社病院という病院は、医療機関は全てそうですけれど、けがなり病気で来られた方を診療拒否というのは基本できませんから、そういう性質のものだと思います。
 しかしながら一方で、お金はしっかり払っていただいて、経営をしっかりしていくということももちろん大切なわけでありますが、そこで、都の未収金回収の基本方針というのがどのようなものか伺いたいと思います。
 さらに、あわせて、都立病院での直近三カ年の未収金の回収の実績というものをお示しいただきたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 未収金については、病院の健全な経営と利用者の費用負担の公平性の観点から、適切な収納管理を行っております。
 具体的には、未収金が発生した場合の迅速な対応、回収可能性が高いものに優先順位を付すなどのめり張りのある回収、未収金回収に関する交渉経過記録の適正な管理などを行っております。
 また、現年度と過年度を合わせた未収金の回収額の実績でございますが、平成二十四年度は約二億九千万円、二十五年度は約三億二千万円、二十六年度は約三億八千万円となっております。

○両角委員 未収金回収対策というのは、今、七千五百万円余りの予算が組まれているわけでありますけれど、この中身と効果について伺いたいと思います。あわせて、かけただけのコストの回収効果ができていると評価をしているのか伺います。

○野瀬サービス推進部長 未収金対策の強化に関する平成二十七年度の予算額は、七千五百八十二万円でございました。その内訳は、非常勤職員の配置に関する経費として三千五百六十四万円、回収業務の委任や納付相談やその他法律相談に係る弁護士等の活用に関する経費として千八百八十七万円、個人未収金管理システムなどの運用に関する経費として二千百三十一万円となっております。
 先ほど答弁をさせていただきましたように、現年度と過年度分を合わせた未収金の回収額は、平成二十六年度が約三億八千万円となっております。
 また、未収金の発生額は、平成二十六年度が約三億三千万円であり、前年度と比較して三千六百万円、率にして約一〇%縮減しており、未収金対策の成果が出ていると考えております。

○両角委員 お話を伺っていますと、分割払いとかクレジットを導入したり、あるいは相談業務をきめ細かくやられていたりという状況もあるみたいですので、さらにきめ細かく、この問題も、東京都は未収金回収を余りしませんよという態度を見せてはいけないんだと思うんです。
 しかしながら、まさに、悪意の方と悪意じゃない方もいらっしゃると思いますので、そこら辺も柔軟に対応しながら、この対応をしていただくようにお願いをいたしまして、質問を終わります。

○早坂委員 入院期間の短縮について伺います。
 平成二十四年に国が発表した医療費適正化に関する基本方針では、後発医薬品の使用とともに、入院期間の短縮を都道府県が目標に定めるよう示されました。
 また、診療報酬制度の中でも、在院日数を短縮する方向での点数づけがなされ、入院期間の短縮に向けたさまざまな政策誘導が行われています。
 医療費削減の観点からだけでなく、患者にとっては、クオリティー・オブ・ライフ、生活の質の観点から、入院期間はできる限り短い方が望ましいのはいうまでもありません。
 また、病院にとっても、患者ごとの入院期間が短くなれば、より多くの患者を受け入れていくことができるので、病院施設の活用という面からも有効であります。
 病院という限られた資源を最大限に活用し、患者が少しでも早く社会に復帰できるようにするため、患者の健康を損なわない限りという大前提を確認した上で、入院期間の短縮は重要な課題です。
 都立病院では、これまでも入院期間の短縮に取り組んできたと思います。
 まず、都立病院の平均入院期間、在院日数は十年前と比較してどのようになっているか伺います。

○野瀬サービス推進部長 専門病院でございます松沢病院、神経病院、小児総合医療センターを除く、総合的な機能を有する都立五病院の平成二十六年度における平均在院日数でございますが、十四・一日でございました。
 平成十六年度における総合的な病院の平均在院日数は十七・三日でありましたので、この十年間で三・二日間短縮したことになります。

○早坂委員 都立病院としての、ここ十年間の傾向がわかりました。
 では、現時点で、他の急性期病院と比較しての在院日数はいかがでしょうか。

○野瀬サービス推進部長 さきの五つの都立病院と共通の診療データ分析ソフトを使用している五百床以上の急性期の大規模病院と比較いたしますと、例えば、肺がんでは、都立病院が十三・一日、他の病院が十四・九日で、都立病院の方が一・八日短く、肺炎や急性気管支炎では、都立病院が十一・六日、他の病院が十二・二日で、都立病院の方が〇・六日短くなっております。

○早坂委員 他の急性期病院と比較しても短くなっているということでありました。
 では、具体的にどのような方法で入院期間の短縮に取り組まれてきたのか、伺います。

○野瀬サービス推進部長 在院日数短縮に向けた取り組みについてでございますが、例えば、入院前にできる検査は外来時に実施したり、入院前に手術に関する説明や患者さんが服薬中の薬の確認を行っております。
 また、治療内容を時系列に整理したクリニカルパスを作成し、治療内容の標準化を図ることにより、入院中の投薬、検査、措置などを遅滞なく円滑に実施できるようになっております。
 さらに、栄養士の積極的な関与により、栄養状態の改善を図るなど、実施手順の工夫や効果的な治療に努めることで、在院日数の適正化に取り組んでまいりました。

○早坂委員 今お話のありましたクリニカルパスとは、診療のスケジュール表のことです。すなわち、それぞれの医師がそれぞれの手順で診療に臨むのではなく、疾病ごとに標準化されたスケジュール表を用いて、最短、最適な診察を行うものです。
 また、入院期間の短縮という目標を達成するためには、入院前にできる説明や検査は入院前に済ませておくということは、理にかなったことです。
 さて、入院した患者が入院中に肺炎を併発すると、当然のことながら、入院期間が延びます。武蔵野赤十字病院の道脇幸博先生の調べによると、武蔵野赤十字病院でのここ四年間の統計では、全症例での平均在院日数は十五日間であるのに対し、入院後に肺炎を併発した患者の平均在院日数は四十三日間と、実に三倍にふえます。
 高齢者には肺炎が大変しばしば起こります。平成二十六年の人口動態調査によると、高齢者の死亡原因の一位はがん、二位は心疾患で、三位が肺炎です。また、肺炎で亡くなる方の九五%が六十五歳以上です。
 高齢者の肺炎は、いわゆる風邪が悪化したものではなく、誤嚥性肺炎がかなりを占めます。この耳なれない誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液など、本来、口を通って食道に入るべきものが、飲み込む力、すなわち、嚥下機能の低下が原因で誤って気道に入ってしまい、それが肺炎を引き起こすというものです。
 食事をしてむせるのは、まさにこの誤嚥によるものでありますが、むせているうちは、まだ元気がある証拠です。厄介なのは、夜寝ている間に、もともと口の中にある細菌が唾液や胃液とともに、知らないうちに気道に入るむせない誤嚥、不顕性誤嚥です。高齢者に特有の症状であるため、このむせない不顕性の誤嚥性肺炎は、老人性肺炎ともいわれています。
 この不顕性誤嚥を防ぐには、口腔ケアが有効です。すなわち、口の中の環境をよくすることで細菌が減り、たとえ知らないうちに誤嚥しても、雑菌が少なく、肺炎になりにくいわけです。
 したがって、適切な口腔ケアを行えば、入院中に肺炎を併発するリスクが減り、結果として、画期的に在院日数を短縮することができるという、大変理にかなったお話であります。
 そこで、都立病院での入院患者に対する口腔ケアについて伺います。

○野瀬サービス推進部長 口腔ケアに関するご質問のお答えでございますが、入院患者に対して、医師や病棟看護師が誤嚥性肺炎のリスクなどを評価し、口腔ケアが必要な患者を抽出いたします。また、手術を行う患者の場合は、麻酔科医がリスクなどの評価を行っております。そして、歯科衛生士が適切なブラッシングはもちろん、歯垢や舌に付着した食べかす、細菌の除去、薬液による消毒、口腔内マッサージなどを行っております。
 また、病棟看護師も簡単な口腔ケアを実施できるよう、歯科医師や歯科衛生士から看護師への教育も行っております。

○早坂委員 この道脇先生に入院時の高齢患者の口腔内の写真を幾つも見せてもらいました。その多くが歯垢だらけで、見ているだけで気持ちが悪くなるようなものでした。だからこそ、入院前、そして、入院中にも適切な口腔ケアを行うことで、画期的な在院日数短縮効果が発揮されるわけです。
 都立病院では、入院後に肺炎を併発した患者の在院日数統計をとっていないということですので、これを機会に、ぜひ、このような統計をとっていただきたいと思います。
 東京都歯科医師会の先生方からは、口腔ケアの充実が患者のクオリティー・オブ・ライフを高め、医療費削減につながると声高な主張、解説がなされています。エビデンスの積み重ねこそが重要だと思いますので、都立病院においても、さまざまな方面でご協力をお願いしたいと思います。
 入院期間の短縮は、医療費削減、患者のQOL向上、病院という限られた資源という活 用の観点から重要なものです。都内にある病院のモデルとなるよう、この入院期間の短縮という課題における口腔ケアの充実を初めとして、都立病院は常に新しい取り組みにチャレンジしていただきたいと思います。

○斉藤委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後三時六分休憩

   午後三時二十分開議

○斉藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○高倉委員 先日、私ども都議会公明党の医療政策プロジェクトチームメンバーで都立駒込病院を視察いたしまして、これからのがん医療について意見交換をする機会を得ました。
 超高齢社会を背景にいたしまして、複数の合併症を持っている高齢のがん患者はますますふえるであろうといったようなお話を伺ったわけでございます。
 この視察では、高精度放射線治療装置と緩和ケア病棟を見せていただきまして、最近の取り組みについて、詳しい説明をいただいたところでございます。
 そこで、駒込病院の緩和ケアの取り組みについて、まずお聞きしたいと思います。
 国は、平成二十四年度から平成二十八年度の五年間を対象としたがん対策推進基本計画の中で、がんと診断されたときからの緩和ケアの推進を掲げ、精神、心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアの提供体制を充実させるというふうにしているわけであります。
 都道府県がん診療連携拠点病院の都立駒込病院では、平成二十年四月に緩和ケア科を設置いたしまして、平成二十三年のリニューアル時には緩和ケア病棟を開設するなど、緩和ケアを提供してきているところでございます。
 そこで、駒込病院がこれまで行ってきた緩和ケアの取り組みと実績について、まずお伺いしたいと思います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 がんと診断をされました患者さんとそのご家族が、可能な限り質の高い生活を送るためには、身体的症状の緩和や、精神、心理的な問題への援助が重要でございます。
 そのため、駒込病院では緩和ケア科を設置しており、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士などの多職種で構成した緩和ケアチームが主治医からの依頼を受け、一般病棟に入院中の患者を往診し、主治医等をサポートするコンサルテーション活動を実施しております。
 平成二十六年度に、緩和ケアチームが、がんに関するコンサルテーションを実施した人数は延べ三百十八人でございまして、主な依頼理由は、疼痛、呼吸困難や不安などによるものでございました。
 また、がんという疾患そのものに対する積極的な治療が困難となった患者さんに対しましては、二十二床の緩和ケア病棟で専門的な緩和治療及び緩和ケアを提供しております。
 平成二十六年度の緩和ケア病棟の延べ入院患者数は六千八百三十九人、一日当たり十八・七人で、本格稼働いたしました平成二十四年度と比較いたしまして二・七%の増、病床利用率は八五・二%でございました。

○高倉委員 今、取り組みと実績についてのご説明をいただきました。
 国においては、平成二十六年一月に、がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針を定めておりまして、その中で、都道府県がん診療連携拠点病院に緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病棟を有機的に統合した院内組織としまして、緩和ケアセンターを平成二十八年三月までに整備する方針を打ち出しております。
 そこで、駒込病院の緩和ケアセンターの取り組みについて、お伺いをしたいと思います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 駒込病院におきましては、医師を含む多くの職種と部門のさまざまな緩和ケアに関する情報を集約し、質の高い緩和ケアを提供することを初めといたしまして、地域医療連携、人材育成などを有機的かつ効率的に行うことを目指し、これまでの緩和ケア活動を発展させ、本年四月に緩和ケアセンターを開設いたしました。
 緩和ケアセンターでは、全てのがん患者に対して、外来時と入院時に体のつらさ、心のつらさを尋ねる苦痛症状のスクリーニングを実施しており、高リスクとなった患者さんに対し、看護による外来相談や緩和ケアチームによる支援につなげる体制を整備しております。
 また、本年八月より、東京都緩和ケア連携手帳を活用して、在宅療養に関する情報を在宅医等と共有するなど、円滑な地域医療連携を図っております。
 今後も緩和ケアセンターを中心に、地域の医療機関との連携を深めながら、質の高い緩和ケア活動を推進してまいります。

○高倉委員 患者及び家族においては、がんと診断されたときから、身体的だけではなく心理的にもさまざまな苦痛に向き合うことになるわけであります。病気に伴う心と体の痛みを和らげる緩和ケアの一層の充実を期待しておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、病院の利用者に対する配慮についてお伺いをいたしたいと思います。
 病院は、健康上のさまざまな問題を抱えた多くの住民が利用する重要な機関でございます。利用者は乳幼児から高齢者まで、あらゆる年齢層に及んでおります。これは当然のことでありますが、さらに、そうした中には障害のある方々、あるいは外国人といった方も含まれているわけでございます。
 治療に関する書類を初めとしまして、多様な情報がやりとりされる病院の窓口においては、多くの利用者に対して必要な配慮がなされていくことが重要であるというふうに思います。
 特に障害のある方々や外国人にとりましては、窓口でのコミュニケーションそのものがバリアになっておりまして、これについて十分な対応が必要であるというふうに考えております。
 そこで、まず、病院の利用者が窓口で受け取る書面にはどういうものがあるのかについて、確認をさせていただきたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 患者さんが病院から書面を受け取る場面としては、初診の受け付け時において病院の利用案内をもらう場合、診療前の問診票の作成、検査を実施する際の同意書の記入、診療終了時の院外処方箋の受け取り、院内で薬をもらう際のお薬説明書の受け取り、料金精算の際の領収書、金額の明細書の受け取りなど、さまざまな場面がございます。

○高倉委員 今、いろいろな書面についてご答弁をいただいたわけであります。それぞれ利用者にとりましては非常に大事な情報が含まれている、そうした書面でございます。
 これに対して、例えば聴覚や視覚に障害のある利用者の場合に、その情報を直接得ることができない、そういった状況も、当然ながら想定されるわけであります。
 こうしたコミュニケーションにバリアのある方々に対しまして、情報を伝達していくために、病院ではこれまでどのような対応をとってきたのかについて、お伺いをしたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 病院では、さまざまな場面で病院職員とのコミュニケーションが必要となります。例えば電話による予約、初診の受け付け、診察の際の自分の症状の説明、治療についての質問などであります。
 病院では、患者さんの障害の内容に応じて対応してございますが、例えば聴覚障害の患者さんには、筆談をするためのコミュニケーションボードを使用しております。また、視覚障害の患者さんには、職員が口頭で説明を行ったり、ボランティアによる診察室などへのご案内、案内板への点字表示などの対応を行っております。

○高倉委員 今、障害の内容に応じて対応しているということで、さまざまな対応が既に行われているというような答弁があったわけでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、病院の利用者が病院から受け取る書面というものはいろいろとあるわけでありますが、特に、視覚障害のある方々の場合には、書面から本人が直接情報を得ることはできないわけであります。
 そうした中で、都立病院においては、視覚障害者のために音声コードというものがありまして、これを書面に添付をして、そして、その情報を視覚障害の方に音声で伝えていく、いわばシステムといっていいと思いますけれども、これを導入していると。専用の読み取り機が置かれているというふうに承知しておりますけれども、こういう取り組みをされております。こういったものを、今、たくさんの書面があるというご答弁をいただきましたけれども、さらに広げていく必要があるのではないかというふうに思っているわけであります。
 この音声コードは、例えば書面の右下の方に、四角い形の小さな模様といっていいようなものですけれども、そこの中にこの情報が入っているわけですが、これを印刷して、以前は専用の読み取り機でもってそれを読み取って音声にして聞くということでありました。
 最近はスマートフォンとかタブレットが急速に発達をしておりまして、そこの中に専用の読み取りの、アプリといいますけれども、そういうソフトをみずから簡単に入れることによって、この音声コードを自分で、しかも自分が持っている携帯の端末でもって聞くことができると。
 そして、この音声コードも非常に簡単につけることができる。こういったものを開発している事業者の方々が、最近では、特に公的な機関で使う場合には、無料でどうぞと、こういったような形にもしているというふうに聞いているわけでありまして、大分いろんな意味で進んできているというふうに思います。
 先ごろ東京都は、この「東京防災」を発行して、大変評判がいいです、私もいろんな方に聞いてみました。都内の全ての方々に配布をしたわけであります。
 私が手に持っている小さい方が各家庭に行っているものでありますけれども、実はこれは大きなバージョンがあるんですね。これは何が違うかといいますと、こちらの方には、ちょっと見づらいと思いますけれども、右下の方に、全ページに音声コードが入っている。しかも、この位置に入っていますよということで、これは切り欠きといいますけれども、手でさわるとわかるものがついているわけでありまして、私たち都議会公明党では、この重要な「東京防災」を発行するに当たって、やはりこの文字情報にアクセスする、できない方が当然いるわけで、ここに音声コードをつけるべきであるというようなことを、ことしの第二回定例会だったと思いますけれども、代表質問で提案をしたわけであります。そして、特別なバージョンとしてこういったものがつくられたわけです。
 ただ、こういう情報に接する機会を、いわば障害がある方々にもしっかりと提供していくためには、こういう、いわば特別な対応ではなくて、一般に都民に配られているこの中に、標準的に、本当は音声コードをつけていかなきゃならないと。
 私は、役所から都民に対して配布されるような全ての書面については、いわば特別な対応ではなくて、標準的にこうした音声コードをつけていく必要があるというふうに考えているわけであります。
 したがいまして、利用者が病院から受け取る書面につきましては、音声コードの添付ということについて標準化をしていくべきであると、その対象も、できれば全体に広げていくべきであるというふうに考えているわけであります。
 病院における音声コードの活用拡大につきまして、ご見解をお伺いしたいと思います。

○野瀬サービス推進部長 理事ご指摘のとおり、都立病院では、平成二十年度にお薬の説明書に音声コードを添付するシステムを導入した経緯がございます。
 音声コードは、徐々に活用する対象も拡大されるようになってはございますけれども、病院としての活用につきましては、患者さんからのご要望、病院内の医事会計システムとの整合性、導入に要する経費など、さまざまな要素を総合的に勘案して判断してまいりたいと思っております。

○高倉委員 ぜひ積極的にご検討をお願いしたいと思っております。
 最後に、このことにもちょっと関連をしますけれども、外国人への対応についてお伺いをしておきたいと思います。
 コミュニケーションに当たってのバリアということについては、外国人が病院を受診する際にも、言葉の壁によりまして意思疎通が難しいケースといったものがあるわけであります。
 今後、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催を控えまして、日本を訪れる外国人や在留外国人はますますふえていくものというふうに思われます。
 昨日の広尾病院の百二十周年の開業記念式典にも舛添都知事がご参加されておりまして、挨拶の中で、病院において、外国人に対するしっかりとした配慮をしていくということは、ある意味おもてなしにもつながっていくといったような趣旨で、重要な対応であるというようなことで、このことについてお述べになっていらっしゃいました。
 そこで、都立病院での外国人患者の受診における対応状況につきまして、お伺いをいたしたいと思います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 外国人患者も安心して医療を受けることができるよう、多言語での診療体制を整備することは重要でございます。
 このため、外来や病棟におきまして、患者と英語でコミュニケーションがとれるよう、平成二十六年度から広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センターにおいて、病院職員の語学研修を開始しており、今年度からは全ての都立病院で研修を実施しております。
 また、全ての病院のホームページの英語版を作成したほか、診療に当たって必要となる問診票などの書類の翻訳を進めております。
 さらに、タブレット端末に多言語翻訳アプリ等を搭載した言語サポートツールの導入を検討しているほか、今後は病院内の案内表示につきましても、現在の日本語、英語表記に加え、必要に応じ他の言語も表記することなどを検討してまいります。
 これらの取り組みを進めまして、外国人患者の受け入れ体制の充実を図ってまいります。

○高倉委員 今、答弁の中に、タブレット端末に多言語翻訳アプリ等を搭載した言語サポートツールを導入して、活用していくといったようなことについて検討しているお話がありましたけれども、こういったものは非常に有効であるというふうに思います。
 タブレット、あるいはこういう携帯の端末を通して、まさに通訳のようにやりとりができてしまう、本当にそういう時代に、今、入ってきていると思いますので、ぜひご検討いただきたいと思いますし、最近は医療通訳の存在の重要性といったことも指摘されておりまして、国においても、こうした医療通訳についてどう対応していこうかということで、動き出しているというようなことも耳にしております。
 都立の広尾病院においては、現在、中国語のできる方が二人、それから英語のできる方が二人と、非常勤として既に配置をされているというふうに聞いておりますけれども、こうした医療通訳の今後の活用といったことについても、これからの重要な対応として、ぜひともご検討をよろしくお願いいたしたいと思います。
 以上で終わります。

○畔上委員 それでは、私の方からは、都民の期待に応えた医療の充実を求める立場から、ダブりは省いて、何点か伺いたいと思います。
 まず第一に、都立病院における摂食障害治療について伺いたいと思います。
 私も以前、摂食障害で苦しむ小学生のお子さんの相談に乗りまして、ご家族を含めて、本当に長い目で治療を続けることが大事なんだなということを実感したことがあるんですが、いざ治療を受けようと病院を探してみますと、患者へのカウンセリング、それから患者の家族への支援、それから栄養療法や栄養管理など、一体的に行う医療機関が必ずしも多くはないというのが現状だということがわかりました。
 さらに、摂食障害は、その疾病の特性上、身体合併症状があって、生命の危機を伴うことがあるために、総合的な救急医療体制が必要となると伺っております。
 現在、都立病院では、松沢病院と小児総合医療センターで診療を行っているということでありますが、そこでまず伺いたいのですが、都立病院での摂食障害治療の実績、松沢と小児総合、それぞれ年間どのぐらいのケースを受けていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成二十六年度における松沢病院の摂食障害の患者数でございますが、新入院患者数が九十七人、新規の外来患者数が六十一人でございました。
 小児総合医療センターにおける摂食障害の患者数は、新入院患者数が四十一人、新規の外来患者数が四十五人でございました。

○畔上委員 松沢と小児総合の場合は、年によって変動があるようですけれども、厚生労働省の研究班の調査では、摂食障害全体は一九八〇年からの二十年間に約十倍の増加が見られ、特に一九九〇年代後半の五年間だけでも、神経性過食症で四・七倍と急増しているということです。
 厚労省は、医療機関を進んで訪れるのは一部であるために、実際はもっと多いと推定されるとしておりました。
 また、年齢層で見ますと、神経性の拒食症は十代、それから神経性の過食症は二十代が多く、推定発症年齢を見ますと、十代の占める割合が年々増加をし、若年発症の傾向を示し、既に十歳から発症する例もまれではなくなっているとしております。
 私が受けた相談のときは、数年ほど前だったんですが、小学生ということで、クリニックなどではとても対応が難しいということで、かなりご本人も、それから、ご家族も本当にしんどい状況であったわけなんですけれども、小児総合で予約から診察に至るまで相当の時間を要するということになりまして、大変心配したところでございます。
 そこで伺いたいんですが、現在は松沢病院、それから小児総合センターで摂食障害診療は、それぞれ予約から診療までどの程度の時間を要するのでしょうか。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 摂食障害のうち、栄養障害が強い場合は身体管理が必要となるため、精神科と内科や小児科をあわせ持つ医療機関での治療が必要となります。
 このため、松沢病院や小児総合医療センターにおいて、他の医療機関での受け入れが困難で入院等の緊急な治療が必要となる重篤な患者に対し、緊急受診で受け付け、速やかな入院治療を行っております。

○畔上委員 ご答弁のケースのような栄養障害が強い場合は、精神科と内科、小児科をあわせ持つ医療機関でないと対応できないということで、とりわけ子供の場合は小児総合に集中するために、重篤と判断されない限り受診を速やかに受け付けてもらえる状況ではなく、私が相談を受けた方も三カ月以上待つことになったのが現状であります。
 都立病院として、摂食障害治療を拡充すべきじゃないでしょうか。摂食障害の治療の現状と拡充の必要性に対する認識をお伺いしたいと思います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 摂食障害は、身体的要因と精神的要因が密接に関連して形成された食行動の異常と考えられております。そのため、摂食障害の治療は、精神科医による心理カウンセリングや認知行動療法など心理的治療と、内科、小児科などによる身体的治療をあわせて行うことが必要でございます。
 摂食障害は増加傾向にございますが、大学病院や民間クリニックなど、対応する医療機関もふえてきております。今後とも、都立松沢病院及び小児総合医療センターでは、他の医療機関での対応が困難で、入院治療が必要な重症の摂食障害治療のニーズに適切に対応してまいります。

○畔上委員 今、ふえてきていますよと、だから重症に対応するんですよということなんですけれども、摂食障害に限定ではありませんでしたけれども、小児総合の小児精神の場合、重症であっても、現状では初診まで、当日からすぐに入れる方もいらっしゃるんですが、二カ月はかかると、病院自身のホームページにも書かれてあるんです。
 厚労省は、摂食障害がふえているにもかかわらず治療体制がおくれていることから、昨年度から、精神科または心療内科外来を有する救急医療体制が整備された総合病院のうち、五カ所を摂食障害治療支援センターとして指定して、急性期における摂食障害患者への適切な対応や、専門的な相談事業などを試行的に実施して、摂食障害についての知見を集積するんだということといたしました。
 しかし、実態は、昨年度からの募集にもかかわらず、ことしの九月の時点で、ようやく静岡と福岡と宮城の三県の総合病院が拠点病院として始動したばかりだということも報道されておりました。
 都立松沢と、それから小児総合が、やはり都内の摂食障害の治療の拠点病院としての役割を果たせるように、そして、ご答弁のような重症対応だということであるならば、せめて二カ月も待つということがないように、職員体制の拡充、体制整備を行っていただきたいと、そのことを強く求めておきたいと思います。
 次に、NICUとGCUの新生児の授乳について伺いたいと思います。
 NICU、GCUの新生児の場合は、お母さんが母乳を搾乳して、そして冷凍して持参をし、それを飲んでいるわけなんですが、お母さんの母乳が出ない、そういうお子さんの場合は、ミルクを飲んでいるわけですね。
 日本は、残念ながら衛生管理がしっかりとした母乳バンクの制度が今は確立されておりませんので、ミルクを飲むということになっているわけです。私は本当にびっくりしたんですが、そのミルク代が病院の食事代と同じだということなんです。
 母乳の場合でも、栄養分の補給として母乳強化パウダーを利用した場合には、一カ月丸々入院した場合だったら、二万三千四百円ということになるわけです。
 私は、ミルク代と母乳強化パウダーについては負担軽減を図るべきだと思うんですけれども、いかがですか。

○中野経営企画部長 まず、健常な新生児でございますが、患者という取り扱いはしておりませんので、ミルク代の徴収は行っておりません。
 一方、治療が必要な新生児の方につきましては、一人の患者としての取り扱いがなされるため、食事療養費としてミルク代を徴収しているところでございます。
 ただし、母乳利用により、病院でミルクを提供していない場合は徴収しておりません。
 今後とも、保険医療機関及び保険医療養担当規則にのっとりまして、適切に対応してまいります。

○畔上委員 健常な赤ちゃんだったら、病院でミルクを飲んだとしても、そのミルク代は無料ですよと、しかし、NICUやGCUの子供たちは有料ですよと、それは、今、ご説明があった食事療養費だからですよということなんですけれども、しかし、同じNICUやGCUに入ったお子さんでも、母乳の出るお母さんの子供の場合は無料なんですね。
 母乳が出ないお母さんのお子さんの場合と、それから、母乳強化パウダーで、母乳は飲めるけれども栄養補給を受けなければならない、そういう子供たちは有料だということで、食事療養費の積算は一食二百六十円で、ミルクの場合、三時間置きとか四時間置きとか、そういうふうになりますけれども、幾ら上限額が一カ月二万三千四百円だと、こういうふうになっていたとしても、非常に負担は大きくて納得できるものではないと思います。
 出産後のお母さんたちは、やっぱりホルモンバランスの乱れで不安定になりやすい、そういう上に、母乳が出なければ、そのこと自体で悩むお母さんもいらっしゃると思うんです。その上、経済的負担もかかるということでは、さらにストレスが大きくなってしまうんじゃないでしょうか。
 粉ミルクだったら、一カ月、普通二缶ぐらいですよね。そうすると、高いミルク缶だって二千五百円ぐらいですから、五千円でできるわけですよ。それが入院の食事療養費という規定になれば二万三千四百円になってしまうと。
 しかも、ことし五月の改正医療法では、この患者負担、二〇一六年から一食当たり百円引き上げて、三百六十円になると。二〇一八年、再来年からは四百六十円に引き上げて、一カ月四万一千四百円になると。
 この問題は別途やらなきゃいけない問題なんですけれども、ミルク代も今は同じ金額という設定になっているわけですから、NICU、GCUの新生児、本当に小さな小さな赤ちゃんのミルク代も、一カ月四万一千四百円にもなるということになるわけです。母乳が出れば必要のないお金だったのにと、お母さん自身がご自分を責めることにもつながってしまうわけです。
 都立病院の周産期部内で衛生管理された母乳バンクを設置するとか、それから福祉保健局に対して、NICUとGCUの新生児のミルク代の負担を軽減する補助を求めるとか、そういう対策を考えることを強く求めておきたいと思います。
 最後は、都立病院での不妊治療の提案です。
 不妊治療の助成制度の拡充や周知徹底については、本当に多くの皆さんから、この間、質疑がございました--これは福保の方なんですけれども。私の周りにも不妊治療中という方がいまして、職場の理解、それから協力があって、本当にそのことが大前提で、初めて不妊治療ができるんだよというお話も伺ってきました。
 本当に多くのプレッシャー、さまざまな困難の中で不妊治療をされているんだなということを痛感しています。何とか財政的な支援の拡充はもちろんのことなんですけれども、本当に治療を受けやすい、そういう環境をつくることができないだろうかということを強く感じているところなんです。
 助成制度の問題はまた別途、福保の方でやらないといけないと思っていますが、本日は都立病院として、また公社病院として、不妊治療を実施、拡充してほしいという立場から質問したいと思うんです。
 現在は、都立病院では不妊治療は実施されておりません。なぜ都立病院で不妊治療を実施していないのか、まずお伺いしたいと思います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院で提供しております周産期医療は、ハイリスク分娩への対応を中心としており、原則として健康保険法に基づく医療を提供しております。必要に応じまして、不妊の原因を調べるための不妊検査など、健康保険が適用される診療には対応が可能でございますが、人工受精や体外受精などの生殖補助医療は健康保険の適用外となるため、都立病院では実施をしておりません。

○畔上委員 不妊検査だけでなく、保険適用の治療になっておりますタイミング療法はできるはずです。また、不妊治療にも、都も補助を行っているわけですから、一般の保険外治療とは違うと思うんです。
 公社豊島病院では現に不妊治療を行っております。公社の豊島病院で不妊治療を実施しているのは、それではなぜなんでしょうか。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 豊島病院におきましては、不妊治療に関する専門的な知識や技術を持った医師が確保されたことから、不妊外来を平成二十五年度から実施をしておりますが、その内容は不妊に関する相談や検査を受けるケースが多数で、人工受精にまで至る場合はごくまれとなっております。

○畔上委員 今のご説明では、豊島病院で二〇一三年度から実施されているというご説明でした。
 私も豊島病院に伺ってみたんですが、昨年度は実績として五百五十件あったと。今年度はどうかというと、四月から七月の四カ月間で五百五十六件あったという実績でした。評判が大変いいと伺っております。
 先ほど、ご答弁の中で、人工受精はごくまれだというふうにご答弁されたんですが、ということは、保険適用のタイミング療法中心でも患者は多いということじゃないでしょうか。公社の豊島病院の場合は、検査を行って不妊以外の病名がついた場合は保険適用ですが、不妊のカテゴリーの場合はエコーが実費の五千三百円だと、それから人工受精が二万円だというふうに伺いました。
 不妊治療の実績件数、ほかの病院と比べてどうなのかなというふうに思いまして、いろいろ調べてみましたけれども、都内のある国立病院よりも豊島病院の方が実績があるということも調べてわかりました。
 公社病院で、この不妊治療を拡充する予定はないのでしょうか。伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 公社病院におきましては、豊島病院のほかに荏原病院が産婦人科を設置しておりますが、荏原病院には、不妊治療に関する専門的な知識や技術を持った医師がおらず、不妊外来を拡充する予定はございません。

○畔上委員 不妊治療に関する知識や技術を持った医者がいないからというご答弁なんですけれども、医者がいないからじゃなくて、そういうお医者さんを確保すると、そういう努力をしていただきたいと思うんです。
 自由診療の中で、民間の大変高額な不妊治療には踏み切れない、そして諦めざるを得ない、こういう人たちもいらっしゃるんですね。都立や公社病院で実施することによって、本当に不妊治療を諦めた方たちの一助になっていくんではないでしょうか。
 また、不妊治療に対する基本的な考え方の基準がないために、病院によっては本当に強刺激の治療になったりして、本当に我が子が欲しいと、そういう思いが強いだけに、さまざまな病院の方針に翻弄されて苦しんでいる、そういう不妊治療を続けられている方が、私も伺って結構いらっしゃるんだなということがわかりました。
 不妊治療に関して、正確な情報を的確に提供し、それを前提とした、本当にさまざまな相談に対応できる体制をつくるべきだと思うんですけれども、見解を伺います。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 不妊治療に関しましては、福祉保健局が不妊・不育ホットラインを開設し、不妊や不育に関して情報提供を行うとともに、専門の研修を受けたピアカウンセラーや医師が相談に応じております。
 豊島病院におきましては、ホームページ上に不妊外来のページを設け、検査や治療の進め方などを広く都民に向けて情報を提供するとともに、患者には担当医師が直接対応し、事前にインフォームド・コンセントを行い十分な理解を得た上で、検査、治療を進めております。

○畔上委員 福保でやっている不妊・不育ホットライン、これも大事な事業だと思います。同時に、やはり電話だけじゃなくて、直接相談して治療に結びつけられる、そういう医療体制も非常に重要だというふうに考えています。
 私がお話を伺った方のある一人の方は、ご夫婦二人の所得が所得制限、いわゆる医療費の、不妊治療の助成の所得制限である七百三十万を超えるために、満額自己負担で治療されているんですが、その不妊治療だけで年間三百万円かかっていると、一回の不妊治療で十日間の連続した通院が必要で、仕事との調整に大変な神経を使っていると、そして、不安とストレスを抱え、これを一カ月置きに繰り返していますというんですね。
 このようなやり方で何年も続けて、お金もなくなってきちゃったんですけれども、本当にこんなやり方でいいのかというふうにご本人は悩みまして、ご自分で不妊治療をやめる年齢を決めて、自分は何歳になったらもうやめようというふうに決めて、今はタイミング療法にその方は切りかえたというふうにおっしゃっていました。
 本当に安心して不妊治療が受けられる、こういう公的な病院があれば、多くの不妊治療を望む方々の支えになるというふうに思うわけです。ぜひとも前向きに拡充の方向で検討していただきたいと、そのことを求めまして、私の質問を終わりたいと思います。

○栗山委員 都立病院が基本的役割とします行政的医療の中で、最も都民に身近な救急医療についてお伺いをいたします。
 私は、先月の十月二十二日から二十九日の日程で、都議会自民党の海外調査でオーストラリア、ニュージーランドに赴き、シドニー大学のロイヤル・ノースショア・ホスピタルと、NSW、ニューサウスウェールズ・アンビュランス・サービスにおけるヘリコプター、航空機等を活用した救命救急などの視察を行ってまいりました。
 広大な国土面積を持ちますオーストラリア、日本の約二倍の行政面積を持ちますニューサウスウェールズ州の取り組みは、先ほど質疑がありました救急搬送についても、この制度設計は違うものの、地域特性を生かした大変興味深いものであり、参考にすべき点が多々ございました。
 翻って、この東京は、ニューサウスウェールズ州で最も人口が多いシドニー市の人口、約四百六十万人を大きく上回る一千三百万人を超える人口を抱えております。いつでも、どこでも、誰でも、そして、さまざまな救急ニーズに対応し、確実に応えていくことは、都の重要な医療課題であることに論をまちません。
 そして、都内二十六カ所にある救命医療センターと、三百カ所余りの救急告示医療機関があるように、救急医療は都立病院だけでなく、民間病院も含めた医療機関との連携協力により成り立つものと、こう認識をいたしております。
 その中で、救急医療を行政的医療に位置づけて取り組んでいる都立病院では、どのような救急医療を提供しているのか、取り組み内容と救急患者の受け入れ実績についてお伺いをいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院におきましては、一般の救急医療とともに精神科救急医療、小児を対象とした子供救命救急、また、救命救急センターと連携して母体救命措置を行う周産期医療など、さまざまな救急医療ニーズに対応しております。
 都立病院における平成二十六年度の精神科救急等を含めた救急患者の総数は、十六万一千二百六十八人、そのうち救急車による救急患者数は、三万一千五百九十人でございました。
 また、平成二十六年度の救急搬送患者のうち、入院となった割合は四四・〇%で、五年前の平成二十二年度の三九・一%と比較し約五ポイント上昇しており、重症化の傾向が見られます。
 また、重症、重篤な患者を受け入れる広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センターの救命救急センターにおける平成二十六年度の応需率は、いずれも前年度と比較して向上しておりまして、都立病院に期待されております役割に応えているものと考えております。

○栗山委員 救急搬送においても、六十五歳以上の高齢者の数がふえているというふうに仄聞をいたしております。
 東京都でも、今後ますます高齢化が進んでいくことなどから、救急医療の充実が求められていることはいうまでもございません。
 救急患者の増加や、高齢化による合併症の患者や重症患者の増加に対し、どのように対処していくのか、都立病院で取り組みを行っている東京ERの現状及び今後の取り組みについて、お伺いいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都立病院におきましては、医療環境の変化に適切に対応するため、東京ERの機能強化に取り組んでおります。
 具体的には、墨東病院におきまして、昨年五月に新棟を開設し、特定集中治療室ICUを増床するとともに、心臓冠動脈疾患集中治療管理室や、脳卒中集中治療室を新たに設置いたしました。
 さらに、CT検査と血管撮影が同室で行えるⅣR-CTシステムや高気圧酸素治療装置を導入し、重症患者への対応力の強化を図っております。
 小児総合医療センターでは、昨年度、ER病棟十床を開設しており、今後はこども救命センターとして重症患者をさらに円滑に受け入れるため、小児患者のICU、PICUの機能の拡充を検討してまいります。
 また、多摩総合医療センターでは、心臓疾患の合併症患者や重症患者に対応する心臓冠動脈疾患集中治療管理室の設置に向けた検討も行ってまいります。
 さらに、救急を取り扱う全ての都立病院におきまして、トリアージ機能と円滑な転退院を支援する体制の充実を図ってまいります。

○栗山委員 ぜひともさまざまな形で変化する救急事象に対応していっていただきたいと思います。
 今、ご答弁の中でトリアージというお言葉がございました。先ほど、私、ニューサウスウェールズ州の救急制度のあり方、これが違うというふうに申し上げましたけど、トリアージの根本的な考え方が違っているということでございます。
 さて、私の地元に最も近い多摩総合医療センターは、多摩地域を広域的にカバーする基幹的病院でございまして、住民の期待も大変高く、また、その実績を着実に重ねているものというふうに確信をいたしております。
 そこで、多摩総合医療センターにおける救急医療の取り組みにつきまして、お伺いをいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 多摩総合医療センターは、がん医療、周産期医療とともに救急医療を三本柱の一つとして位置づけ、三次救急を初め、精神科救急を含む救急医療に重点的に取り組んでおります。
 地域の救急需要に応えるため、重症の救急搬送患者も含め、可能な限り断らないことを徹底しており、平成二十六年度の救急車による救急患者受け入れ実績は七千九百十八人と、全国有数のものとなっております。
 さらに、本年一月には、地域の救急医療機関が協力連携して救急患者を受け入れる東京ルールの、北多摩南部保健医療圏における地域救急医療センターの指定を受け、搬送先がなかなか決まらない搬送先選定困難患者の受け入れ調整を担うなど、地域の救急医療において、積極的に役割を果たしております。
 今後も、東京ER・多摩総合として、小児の救急医療を担う小児総合医療センターと緊密に連携しながら、質の高い救急医療を提供してまいります。

○栗山委員 次に、多摩メディカルキャンパスのあり方についてお伺いをいたします。
 さきの第三回定例会で、我が党の代表質問において、都内最大となる集積メリットをこれまで以上に活用しキャンパス総体の潜在能力を引き出していく、こういうご答弁がございました。
 多摩地域においても、今後、これまでに経験したことのない超高齢化の局面を迎え、多摩キャンパスは新たな医療課題に対しても、持てる力を最大限に発揮していくことが重要であると考えます。
 発病に至る前の軽い症状からの段階から、かかりつけ医が把握をして、治療が必要になった場合には、高度な医療機関における早期診断、早期治療につなげていく、予防から治療まで一体となった新たな医療体制の構築が重要であると考えます。
 多摩キャンパスには、東京都がん検診センターと多摩総合医療センターが立地をいたしまして、がんの予防から治療までの対応が可能な環境がございます。両施設が行うがん治療の取り組みについてお伺いいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 多摩総合医療センターにおきましては、地域がん診療連携拠点病院として高度で専門的ながん医療を、東京都がん検診センターでは、がんの早期発見を目指し集団検診や精密検診などを実施しております。
 がん検診センターでは、精密検診等において、がんと診断がついた患者の約六割を多摩総合医療センターに紹介し早期治療につなげるなど、連携体制を構築しております。
 また、消化器系疾患で手術が必要な場合、がん検診センターと多摩総合医療センターが合同で手術方法や切除範囲についてのカンファレンスを行い、早期診断から早期治療への円滑な移行に取り組んでおります。
 今後とも、キャンパスが有するがんに関する医療機能のさらなる強化を図るとともに、これらを有機的に連携させ、精密検診においてがんと診断されてから、その後の治療に至るまで、高度で専門的な医療を提供してまいります。

○栗山委員 さて、多摩地域の医療供給体制から見てみますと、特定機能病院が一施設しかない、こうした課題、また、高度な医療を提供する拠点病院が区部と比べて少ない状況ということは否めないというふうに思います。
 高度な医療機能が集積をいたします多摩キャンパスは、各施設が相互に連携し、集積メリットを高め地域医療との好循環を創出するなど、多摩地域の医療を充実していく、こういう必要があると思います。
 そこで、多摩キャンパスの機能強化について、基本的な考え方についてお伺いいたします。

○高野経営戦略担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 多摩メディカルキャンパスは、救急医療やがん医療、小児、周産期医療、難病医療など、さまざまな医療課題において、多摩地域の医療拠点としての役割を果たしております。
 キャンパスにおきましては、今後の医療環境の変化を踏まえ、がんや脳卒中など高齢化の進行により医療ニーズの増大が見込まれる医療について、さらなる機能強化を図るとともに、難病等の希少疾患についても、集積メリットを生かし、先進的かつ高度な医療機能を充実してまいります。
 また、地域医療構想の検討状況を踏まえ、急性期を脱した患者さんの円滑な地域移行など、地域の医療機能等との連携を強化してまいります。
 キャンパスの各施設の連携を推進するとともに、高度で専門的な機能を高め、多摩地域最大の医療集積群として、さらなる充実を図ってまいります。

○栗山委員 今後、ますます多摩キャンパスの役割というのは重要となっていくというふうに思っております。
 多摩キャンパスの将来像は、現在、検討中であるというふうに認識をいたしますけれども、地域の医療機関と切れ目のない連携体制を築き、多摩地域全体の医療の水準の向上を図っていただきたい、こうお願いを申し上げまして、質疑を終わります。

○和泉(武)委員 私は、都立病院、病院の中で大変重要な役割、課題の一つである地域との連携について、とりわけ医療と介護の連携について、状況についてのお伺いをさせていただきたいと思います。
 国は、平成二十六年度に成立した医療介護総合確保推進法に基づいて、地域包括ケアシステムの構築や、高度急性期、急性期、回復期、慢性期という病床区分を基礎にした地域医療構想の策定を制度化しております。
 そうした状況の中で、医療の分野においては病病連携、また、その後に行わなきゃいけない病診連携、これがますます重要となっておりまして、現在では急速に連携をとれるようになってきております。
 そこで、都立病院でも以前から医療連携というものを進めてきているというふうに思いますが、これまで、とりわけ病診連携について、どのように取り組みを行って、どのような実績を上げてきたのかをお伺いいたします。

○野瀬サービス推進部長 都立病院では、地域の医療機関からの患者さんの紹介、返送、救急患者の地域医療機関への逆紹介などを基本に診療を行っております。
 こうした医療連携に基づく診療を推進するため、病院職員の医療機関訪問、連携医の登録制度、医療連携ニュースの発行、都立病院医師の専門分野のわかる医師プロフィールの配布、症例検討会の開催など、さまざまな活動を行い、他の医療機関との顔の見える連携を目指して取り組んでまいりました。また、地域の医療機関からの依頼に基づいて、高額医療機器を使用した検査なども実施しております。
 こうした取り組みを継続した結果、平成二十一年度に六〇・四%であった都立の総合的な病院の紹介率は、平成二十六年度に七五・一%となり、一四・七ポイント上昇いたしました。
 また、返送、逆紹介率は、平成二十一年度に三〇・二%だったものが三七・三%となり、七・一ポイント上昇しております。

○和泉(武)委員 ちなみに、地域医療支援病院の非常に厳しい紹介、逆紹介というものに照らし合わせると、紹介が六五%以上であり、逆紹介が四〇%以上、もしくは紹介が八〇%以上ということを考えると、都立病院の医療連携というものは一定のレベルに達しているというふうに考えられます。
 しかし、医療連携というのは、現在までは医師同士の医療情報提供のやりとりのみで対応しているのが現状であって、診療情報提供書での点数づけとか、あるいは自己負担金の設定とか、そういった、例えば紹介状を少しでも書けば医療連携ができるというような状況がずっと繰り返されたわけでしたけれども、これからは在宅療養が必要な患者さん、もしくは施設入所が必要な患者さんの場合はそれだけではなくて、患者さんの生活の状況、これがいかに情報の提供ができるか、踏み込んだ対応ができるかということが必要になってくるということで、医師だけではなくて、ほかの地域包括支援センターもしくはケアマネジャーやその他介護の方々の力というものをかりながら、連携しながら対応をしていかなければならないということで、そういった介護の情報のやりとりというものが、これからますます重要で、増加してくるというふうに考えられます。
 これは、都立病院においても、このような急性期病院においても、やはり同じようなことでありまして、病院と病院の連携だけではなくて、直接これから地域に返すということも重要な役割を都立病院が担っていかなければならないということであります。
 介護マネジメントというものは非常に時間のかかるものであって、入院直後から介護のマネジメントというものを始めていかなければならない。その中で、入院直後から、場合によっては入院前から介護のサポートというものを、退院時を見据えて行っていかなければならないと思われますけれども、このような中で、院内で介護面のサポートについて、都立病院はどのように対応しているのかを伺います。

○野瀬サービス推進部長 在宅医療や介護が必要な患者さんの場合は、主にMSWや退院調整看護師などが対応しております。
 こうした患者さんの場合、身体的な状況はもちろんのこと、家族の状況や経済的な状況も個々の患者さんによって異なっており、それに対して、それぞれオーダーメードできめ細かく対応していかなければなりません。
 都立病院では、例えば高齢者の単身世帯で家族の支援が期待できないようなケースでも、入院直後からかかわり、地元の連携医、地域のケアマネジャーや地域包括センター、訪問看護ステーションなど、地域の関係者などと調整しながら、在宅療養に向けた支援に取り組んでおります。

○和泉(武)委員 このような患者さんごとの対応というものを円滑に行うためには、地域のさまざまな患者さん方には、さまざまな方々が担当されているわけであって、そのような介護関係機関とか、例えば特養とか老健、グループホーム、老人ホーム、ケアマネジャー、地域包括、訪問看護師、こういった方々や職員同士の連携という関係を形づくっていく必要があります。
 都立病院では、介護分野の施設や職員との連携について、現状、どのように取り組んでいるのかを伺います。

○野瀬サービス推進部長 病院により取り組みはさまざまでございますけれども、例えば地域の病院、老人保健施設、訪問看護ステーションなどの職員を対象にした床ずれなどの褥瘡や感染症に関する認定看護師による学習会の開催、福祉職のためのターミナルケア研修の実施、小児の在宅医療に関する講演会の開催など、都立病院の医師や看護師などの専門性を生かした取り組みを行うほか、地域の施設などからの依頼により、適宜、講師を地域に派遣しております。
 こうした活動やケアマネジャー、訪問看護ステーションの看護師などとの意見交換会の開催などを通じて、顔の見える連携関係を築き、協力関係を形づくってきております。

○和泉(武)委員 このような顔の見える連携というのは大変重要な取り組みであって、しかしながら、なぜ今までこれがうまくいっていなかったかというと、それぞれの例えば医療機関が介護に対する理解度、あるいは介護事業者さんたちの医療に対する理解度、この理解度というものがお互い全くかみ合っていないというか、情報がしっかりと共有できていない大きな原因になっているというふうに考えられます。
 こういった理解の程度というものが、やはり医療機関と介護の事業者さんたちでは異なるため、こういったものに対する連携とか協力というのは、一筋縄ではいかないというふうには考えておりますけれども、これはもう、一つ一つ地道に活動を積み重ねていくしかないというふうに考えておりまして、現在でも、各事業所や各医療機関が、それぞれ歩み寄りをするための努力というものをやっております。
 また、これからの問題としては、今までは在宅の方にできるだけ責任をお願いして、受け入れる側の努力というものを強調されてきた面もありますけれども、これからは、こちらからお願いする、都立病院からお願いする側の、病院の中の医師とか、あるいはコメディカルの方々の職員の理解というものが不可欠であり、これが重要になってくるというふうに思います。
 院内の医師とかコメディカルワーカーの方々に対しての在宅医療とか介護への理解を進めるために、どのような取り組みを行っているかを伺います。

○野瀬サービス推進部長 各都立病院に設置したMSWや退院調整看護師、医療連携担当などの職員が所属する患者支援センターを中心に、院内の医師や看護師に対し、各病棟での勉強会、診療科説明会などを行い、在宅医療などに関する理解を深めております。
 また、地域のケアマネジャーや訪問看護師などがかかわっている入院患者さんの場合、病棟看護師が直接退院調整を行っているケースもあり、医師や病棟看護師にも在宅医療などへの認識が浸透しつつあります。

○和泉(武)委員 このような在宅医療とか介護にかかわっている方々は、MSW、退院調整看護師というのは、病院の中でもごく一部の人たちだけだというふうな状況であります。
 しかも、MSWとか退院調整看護師の、いってみれば、個人の差配によって状況が大きく変わってくると。逆にいうと、彼らがやめてしまった場合には、またそれを継続的にしっかりと連携をするシステムというものがまだまだ確立されてないという中で、医師とかコメディカルとか、あと、ほかの職員というのが在宅の医療に十分に理解を深めるというのが、患者の地域とか在宅への円滑な移行につながっていくんじゃないかというふうに考えます。
 しかしながら、問題は病院の医師とか、あるいは職員、看護師の中には、まだまだ患者さんを病院から返せばいいと。とにかく退院を、医療的なケアだけやって退院をさせればいいという考え方という者もいる可能性が十分にあると。
 もちろん、入院中に関しては一番重要なのは医療なわけであって、治療することが病院の目的ですから、それはある程度やむを得ない面はあるんですけれども、しかしながら、実際は、患者さんというのは、その後に療養生活を送っていかなきゃいけないと。その療養生活を送っていく中で、患者さんの生活の面までをどのようにサポートしていくかということを考えながらの医療の提供というものが望まれるわけであって、そこは、医師や看護師というのは医療をやっぱり優先して病院の中で考えるとしても、MSWがその大きな役割を担っていっていただかなければならないだろうというふうに思います。
 このような患者さんというのは、今後ますます増加していくということが考えられて、そして、病院もそれを的確に対応していかなければならないというふうに思っておりますけれども、今後、病院における医療の提供だけではなくて、増加する介護とか、あるいは在宅医療のニーズに対応するために、都立病院がどのように対応していくかということを、本部長の基本的な考え方を伺いたいと思います。

○真田病院経営本部長 超高齢社会がすぐ目前に迫っておりまして、高齢者の介護ですとか、あるいは在宅療養を可能とする地域包括ケアシステムの早期の構築が求められております。
 都立病院は行政的な医療を適正に都民に提供し、他の医療機関との密接な連携を通じて、東京都における良質な医療サービスの確保を図ることが基本的な役割でありまして、その役割を果たす上においても、地域包括ケアにかかわっていく必要があると考えております。
 そのため、全都立病院に設置した患者支援センターを活用し、地元自治体や地域の医師会等の意向や役割分担を踏まえつつ、病床機能の分化あるいは地域ニーズに即した事業展開を推し進め、介護や在宅医療等の確保に向けた地域包括ケアシステムの構築に向け、支援を行ってまいります。
 その中で、ただいまお話がありました病院における各職員の理解を深めることが大事である、あるいは介護関係者との関係を構築していくことが大事であるなどなど、きょうはいろいろご示唆に富むお話をいただきましたので、ぜひそういうことも含めまして、都立病院全体として、この問題にどうかかわっていくかというのを、今後、真剣に考えていきたいと考えております。

○和泉(武)委員 一番重要なのは、病気を診るのではなくて、病人を診ることというのがやはり重要だと思うんですね。ですから、都立病院の基本的な考え方としても、都の全体の病院のオピニオンリーダーとなっていただいて、そして、病気を診るのではなくて、病気だけではない、病人を診ていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

○斉藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○斉藤委員長 異議なしと認め、事務事業及び報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時三十分散会

ページ先頭に戻る

ページ先頭に戻る