厚生委員会速記録第十五号

平成二十四年十一月八日(木曜日)
第七委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長大津 浩子君
副委員長遠藤  守君
副委員長くりした善行君
理事滝沢 景一君
理事早坂 義弘君
理事三原まさつぐ君
加藤 雅之君
しのづか元君
岡田眞理子君
伊藤まさき君
ともとし春久君
三宅 茂樹君
野島 善司君
大山とも子君

 欠席委員 なし

 出席説明員
福祉保健局局長川澄 俊文君
次長梶原  洋君
技監前田 秀雄君
総務部長中川原米俊君
指導監査部長高原 俊幸君
医療政策部長浜 佳葉子君
保健政策部長高橋 郁美君
生活福祉部長小林 秀樹君
高齢社会対策部長中山 政昭君
少子社会対策部長桃原慎一郎君
障害者施策推進部長山岸 徳男君
健康安全部長中谷 肇一君
企画担当部長篠原 敏幸君
事業調整担当部長萱場 明子君
医療改革推進担当部長笹井 敬子君
医療政策担当部長小林 幸男君
地域保健担当部長松浦 慎司君
生活支援担当部長市川郁美子君
施設調整担当部長枦山日出男君
事業推進担当部長廣瀬  豊君
障害者医療担当部長熊谷 直樹君
食品医薬品安全担当部長鈴木 達夫君
感染症危機管理担当部長清古 愛弓君

本日の会議に付した事件
 福祉保健局関係
事務事業について(質疑)

○大津委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、福祉保健局関係の事務事業に対する質疑を行います。
 これより福祉保健局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してございます。
 資料について理事者の説明を求めます。

○中川原総務部長 過日の厚生委員会でご要求のありました資料につきまして、お手元の厚生委員会要求資料にまとめてございますのでご説明申し上げます。
 資料は、目次にございますように、全部で十五項目となってございます。
 初めに、一ページをお開き願います。国民健康保険における加入世帯数並びに被保険者資格証明書及び短期被保険者証の交付件数の推移といたしまして、平成二十二年度から二十四年度までの加入世帯数などについて、区市町村ごとに二ページにかけて記載してございます。
 三ページをごらん願います。国民健康保険料(税)率の推移といたしまして、所得割、資産割、均等割及び平等割に区分し、平成二十一年度から二十四年度までの区市町村ごとの推移を、四ページにかけまして記載してございます。
 五ページをごらん願います。国民健康保険料(税)の減免件数の推移といたしまして、平成二十一年度から二十三年度までの減免件数につきまして、区市町村ごとに記載してございます。
 六ページをお開き願います。国民健康保険における一部負担金減免件数の推移といたしまして、平成二十一年度から二十三年度までの一部負担金減免件数について、区市町村ごとに記載してございます。
 七ページをごらん願います。国民健康保険料(税)の滞納世帯数及び収納率の推移といたしまして、平成十九年度から二十三年度までの対象世帯数、滞納世帯数及び収納率について、区市町村ごとに記載してございます。
 八ページをお開き願います。国民健康保険への東京都支出額といたしまして、特別区及び市町村につきまして、平成十八年度から二十二年度までの支出額を記載してございます。
 九ページをごらん願います。介護保険施設等の定員・病床数及び高齢者人口に対する割合といたしまして、六十五歳以上の高齢者人口、施設ごとの入所定員または病床数及び高齢者人口に対する割合について、都道府県ごとに記載してございます。
 一〇ページをお開き願います。認可保育所の定員、入所児童数及び待機児童数の推移といたしまして、待機児童に関する新定義、旧定義に分け、定員、年齢別の入所児童数及び待機児童数につきまして、区市町村ごとに平成二十二年から二十四年まで、それぞれ四月一日、十月一日現在のものを、一九ページにかけまして記載してございます。
 二〇ページをお開き願います。認可保育所における常勤・非常勤従事者数及び非常勤従事者比率の推移といたしまして、平成十八年度から二十二年度までの常勤従事者数などの推移を記載してございます。
 二一ページをごらん願います。認可保育所における職員の平均経験年数別施設数といたしまして、平成十九年度から二十三年度までの平均経験年数別の施設数を記載してございます。
 二二ページをお開き願います。がん検診において自己負担金を徴収している区市町村数の推移といたしまして、平成二十二年度から二十四年度までの区市町村数の推移について、がん検診ごとに記載してございます。
 二三ページをごらん願います。重症心身障害児(者)施設の状況といたしまして、(1)には看護師の定数及び現員の推移を、(2)には短期入所の運用状況の推移を記載してございます。
 二四ページをお開き願います。都有施設における集団補聴設備等の配置状況等といたしまして、集団補聴設備等の配置対象及び都有施設における配置状況等につきまして、それぞれ記載してございます。
 二五ページをごらん願います。高齢者に対する区市町村別補聴器助成制度の実施状況といたしまして、高齢者に対する補聴器助成事業を実施している区市町村名や事業名、対象者等につきまして記載してございます。
 二六ページをお開き願います。社会福祉施設等及び病院の耐震化状況といたしまして、(1)では社会福祉施設等、(2)では病院につきまして、それぞれ耐震化の状況について記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、ご要求のありました資料につきましてご説明申し上げました。よろしくお願い申し上げます。

○大津委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○岡田委員 よろしくお願いいたします。
 先日、私たち会派の自死・虐待対策プロジェクトチームで、児童相談センターを視察させていただきました。相談部門の事務室では、児童福祉司の方たちが、打ち合わせや電話対応など、大変忙しそうに相談業務に対応されている様子を拝見いたしました。
 近年は虐待件数も増加の一途をたどっており、痛ましいニュースに私たちも目をみはるばかりですが、児童相談所の職員の方は、私たちの想像をはるかに超えて対応に奔走されている日々と拝察いたします。
 そこで、児童相談所の体制について、幾つかお伺いいたします。都内各児童相談所における児童福祉司一人当たりの担当件数はどのぐらいでしょうか、伺います。

○桃原少子社会対策部長 平成二十三年度に、都内十一カ所の児童相談所が電話や来所などにより相談を受けた件数は、合計で二万五千百五十四件となっております。これらの受理した相談につきましては、電話での助言等によりまして、短期間で児童相談所の関与が終了する場合もございますが、児童福祉施設への入所や、児童相談所における定期的な面接などが必要と判断された場合は、児童福祉司が支援を継続しております。
 こうした個別のケースを受け持ち、対応を行っている児童福祉司の担当件数でございますが、一人当たり約七十件となっております。

○岡田委員 一人の児童福祉司の方が多くのケースを抱えていることがわかりました。児童相談所の繁忙さと、求められる適正対応などから、児童福祉司の方たちに重責が多くかかってしまっていると思われます。昨今の事件の多さからは、仕事量もふえているのではないか、過重労働になっているのではないかと心配してしまいますが、子どもたちの命を守るためにも、ぜひとも児童福祉司の数をふやして、児童相談所の体制を強化していただきたいと思います。
 さて、児童相談所に持ち込まれるケースには、最近ではさまざまなケースがあると思われます。その一つ一つに適切に対応していくには専門性が不可欠であります。児童相談所の専門性を支える児童福祉司の資格要件はどうなっているでしょうか。そして、どのような職種の方が児童福祉司になられているのかをお伺いいたします。

○桃原少子社会対策部長 児童福祉司の資格要件は児童福祉法で規定されておりまして、具体的には、社会福祉士や精神保健福祉士などの有資格者、国が指定する養成校の卒業者のほか、大学等で必要な科目を修めた後に、社会福祉施設等で福祉事業に従事した者などとなっております。都では、福祉職のほか、事務職などの職員のうち、こうした資格要件を満たす者を児童福祉司として任用しております。

○岡田委員 一定の知識を持った方が児童福祉司になられることはわかりましたが、福祉職のほかに、一般事務などで採用された職員も任用されているということです。
 先日、新潟県立の養護施設を視察してまいりましたが、児童指導員の中には、福祉の専門を勉強してきた人と、そうでない一般事務職の人がおり、現場に来て対応に苦慮している面も見られると伺ってまいりました。どのような職業でも、経験を重ね、その仕事に必要なスキルを習得することは大事ですが、特に人間を相手にする、子どもの命を守る児童福祉司には、豊かな経験を重ね、相談スキルを習得することが大切だと思われます。
 そこで、児童福祉司で経験年数が三年未満の方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか、お伺いいたします。

○桃原少子社会対策部長 平成二十三年度におけます児童福祉司の経験年数は、一年目の者が二二%、二年目、三年目の者が合わせて二一%となっておりまして、経験年数が三年未満の者が約四割となってございます。また、四年目から六年目の者は二七%、七年目以上の者は三〇%というようになってございます。

○岡田委員 経験年数の浅い児童福祉司も多いようですが、組織として、児童相談所がこれまで培ってきた技術や経験を伝えながら、職員の育成をしっかり図っていく必要があります。学校の教員もそうですが、人間相手の仕事には知識だけでは片づけられない問題が多くあります。そうした意味でも、新任のときからの研修をきちんと身につけさせる機会を重ねることが大事であると考えます。
 さて、先月四日の日経によりますと、児童相談所の不十分な調査で虐待を疑われ、不当に二歳の長男と引き離されたとして、都内の夫婦らが児相を運営する都に二百二十万円の損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が三日、東京地裁であり、都は争う姿勢を示し、請求棄却を求めたという記事がありました。
 この日の弁論で原告側は、児相は長男が通っていた保育園から話を聞くなどの十分な調査を行わず、親子を長期間、不当に引き離したと主張し、都は、児相は適切な調査を行っており、一時保護した当時の判断は合理的だったと反論したということです。
 訴状などによりますと、この長男である男の子は、昨年五月に母親が使用中のヘアアイロンでやけどを負い、診察した病院の通告で児相が一時保護したということです。児相は、この長男を児童福祉施設へ入所させるため審判を申し立てましたが、東京家裁がことし一月に却下し、長男は四月に親元に戻ったということです。
 この件のように、早期対応によって子どもが守られたと思いきや、訴訟に持ち込まれるようなケースがあることを考えますと、初動対応が精査されますし、非常にきめ細やかなところでのデリケートな対応が求められます。もちろん職員一人の判断ではなく、あらゆる方向からいろいろな検討がなされた上での対応だったのだとは思いますが、やはり難しいケースが多いことと推察されます。本当に大変なお仕事ですが、今後も子どもの安全確保のためにご尽力いただきたいと思っております。
 そこで、さまざまなケースへの対応力の向上が重要となってまいります。児童福祉司に対する研修はどのように行われているのでしょうか、伺います。

○桃原少子社会対策部長 新任の児童福祉司に対しましては、一カ月程度をかけまして、関係法令などの基礎知識や、親子への指導方法などを習得させる初期研修を行っております。その後、ベテランの児童福祉司の指導のもと、面接や家庭訪問などの相談援助の実務を経験させております。
 さらに、二年目以降の児童福祉司に対しましても、経験年数に応じまして、法律、心理、医療などの専門家を講師とした、事例検討を内容とする相談支援の対応力を高める研修を行っており、引き続き専門性の高い人材の養成に努めてまいります。

○岡田委員 総務省が、先月二十五日の地方制度調査会の会合で、都区制度の見直し案を示し、急増する児童虐待などの問題に対応するため、児童相談所の設置権限を都から区に移すのが柱であるとのことです。
 現在、都内に十一ある児童相談所は、一カ所当たり平均百二十万人をカバーしている計算で、二十三区に移管することで、虐待の早期発見などの効果も期待されるとのことですが、昨今の児童虐待の増加をかんがみますと、より住民に近い市区町村での対応強化によって防止策がとられることが望ましいと思われます。大切な子どもたちの命と、迷える保護者たちを救う児童相談所の業務が充実することを願いまして、次の質問に入ります。
 障害者施策について質問させていただきます。
 障害のあるお子さんをお持ちの保護者の方から、いろいろとご相談を受けていますが、我が子が生まれた地域の学校に通い、大きくなったら、この地域で働き、そしてこの地域で暮らし続けていけるよう、親としてできる限りのことをやってあげたいんですと、いつもいわれております。
 障害のある方が地域で自立しながら生活していける社会が望ましいわけですが、今、この東京での地域生活移行の現状はどうなっているでしょうか、お伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 都は、障害者自立支援法に基づいて第三期東京都障害福祉計画を策定するに当たりまして、国の基本指針に沿って、基準時点となる平成十七年十月一日以降、平成二十六年度末までの地域生活移行者数の目標を設定しておりまして、その人数は二千二百四人でございます。
 障害者が地域で自立して生活するためには、実施主体である区市町村の取り組みが重要でございます。基準時点以降、平成二十二年度末までの地域生活移行者数は累計で八百四十二人となっておりまして、都は、平成二十六年度末の目標達成に向けて、引き続き区市町村の取り組みを促してまいります。

○岡田委員 私の住んでいる中央区では、レインボーハウスという入所、通所施設がありますが、地元の町会とのつながりも深く、ボランティアの方たちの力が大きいと聞いております。やはり、区市町村の取り組みの大きさを感じているところでございます。
 そこで、地域での生活を希望する障害のある方がその希望をかなえるためには、どのような支援が必要と考えておられるでしょうか、お伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 障害者が地域で自立して生活していくためには、グループホーム等の地域居住の場、通所施設等の日中活動の場など、地域での生活基盤の整備が必要でございます。また、ご家族や地域住民等を含む関係者の理解を得て支援していくことが重要であると考えております。

○岡田委員 障害のある方を持つ保護者の方と話をしておりますと、必ず心配事として出てくる言葉に、親なき後の子どもの生活があります。兄弟がいても、大人になればそれぞれの生活があるので当てにはできない。そのためにも、地域で自立して生活が成り立つようにしてあげたいというのです。
 都は、障害のある方への支援事業の一つ、地域生活への移行促進と地域での居住の安定確保として、障害者の地域移行・安心生活支援三か年プランを今年度から始めていますが、その趣旨と内容についてお伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 都は、第三期計画において、平成二十六年度までに必要と見込んだ障害福祉サービス量の確保に向けて取り組みを推進するため、障害者の地域移行・安心生活支援三か年プランを策定いたしました。
 このプランにおいては、平成二十四年度から平成二十六年度までの三年間、施設整備の際に、設置者負担の二分の一を特別に助成いたしまして、グループホーム、ケアホームの定員の一千六百人増、日中活動の場の定員の三千人増、ショートステイの定員の二百十人増と、地域生活基盤を重点的に整備するなど、障害者の地域生活支援に取り組んでおります。

○岡田委員 障害のある方が地域で自立して生活していくためには、地元自治体の支援はもとより、地域住民の理解と協力が重要であると考えます。
 その地域住民に対しての働きかけはどのようになっているでしょうか。また、実際に地域住民のできることなどをどのようにとらえていらっしゃるか、ご所見をお伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 障害者が地域で生活していくためには、住民に最も身近な区市町村が主体となり、地域住民の理解を得ていくことが必要であると考えております。都は、地域住民が障害者に対する理解を深めるための取り組みや、障害者の地域生活を支える取り組みなど、区市町村独自の取り組みについて支援を行っております。
 また、今年度、障害者地域生活移行普及啓発事業を実施いたしまして、地域生活の先進的事例や取り組み方法等を紹介するセミナーにより、施設職員、障害者ご本人、ご家族等に向けた普及啓発を行うことといたしました。
 こうした取り組みを通じ、障害者の地域生活について具体的な事例等を把握しながら、積極的に取り組んでまいります。

○岡田委員 ありがとうございました。障害のある方が地域で自立して生活していけるよう、これからも各区市町村への支援事業を充実させていっていただきたいと思っております。
 以上で質問を終わります。

○早坂委員 まず、自殺総合対策について伺います。
 自殺は個人に帰属する問題だとする考え方があります。その代表的なものは、恐らくこのようなものでしょう。すなわち、自殺するほどの勇気があるなら大抵のことができるはずだ。死ぬ気でやるという言葉があるが、自殺する人はその努力の方向性が間違っている。生きていく上で、苦しみや困難に直面しない人はだれもいない。それを乗り越えられないのは、その人の努力が足りないせいで、結局は自己責任だという考え方です。
 一方で、自殺は社会全体で取り組むべき問題だとする考え方があります。これは失業者対策に例えるとわかりやすいと思います。すなわち、就職先がないのは、その本人に能力や魅力が欠けるからで、結局は自己責任だという考え方に対し、個人の努力の議論はともかく、多くの失業者がまちにあふれる状態は社会的損失だから、国あるいは東京都などが率先して、社会全体として失業者対策に取り組もうという考え方です。
 では、今日に至る我が国全体、そして東京都での自殺者の推移がどのようなものか伺います。また、全国との比較で、東京都の特徴について伺います。

○高橋保健政策部長 厚生労働省の人口動態統計により全国の自殺者数の長期的な推移を見ますと、昭和四十年代前半の高度経済成長期には一万四千人台前半であったものが、その後、増加傾向となり、五十年以降は二万人前後で推移しております。平成十年に急増して三万人を超えて以降は、今日まで三万人前後の状態が続いております。
 都内の自殺者数につきましても、これまで全国とほぼ同様の傾向で推移してきており、平成十年に急増して以降、二千五百人から二千九百人で横ばいとなってございます。また、全国と比較しますと、自殺者数に占める若年層の割合が高いという特徴が見られます。

○早坂委員 年間三万人もの方がみずから命を絶っている、これは交通事故で亡くなる方の六倍に当たります。また、自殺未遂はその十倍だという現状を見れば、この社会的損失は膨大なものであります。したがって、最初の議論に戻りますが、私は、自殺は個人に帰属する問題としてとらえるのではなく、社会全体として取り組むべき大きな問題だと考えます。
 昭和五十年、一九七五年ごろから、我が国全体の年間自殺者数は二万人台前半で推移してきました。ところが、平成十年に突然三万人を超し、以降、三万人周辺で高どまりしています。
 では、自殺に至る理由はどのようなものだとされているか、また、平成十年、一九九八年に自殺者数がぐんとはね上がったのはどのような理由だとされているのか、伺います。

○高橋保健政策部長 国の自殺総合対策大綱によりますと、自殺の背景には、経済、生活問題、健康問題、家庭問題等の多様かつ複合的な要因があり、このような悩みが原因で心理的に追い込まれてしまうことによるものだとされております。また、平成十年における自殺者数の急増については、平成二十四年の自殺対策白書によれば、バブル崩壊による影響が大きいとされております。

○早坂委員 自殺が全く個人的なものであれば、年間自殺者数にもっと増減があってしかるべきだと考えます。景気の影響で、ある年に自殺者が多かったとしたら、その翌年は少なくなるはずです。なぜなら、失礼ないい方になるかもしれませんが、自殺しそうな人がごそっと死んでしまうからです。
 しかし、平成十年以降、目立った増減はなく、毎年コンスタントに三万人周辺で高どまりしているということは、毎年、それだけの人が自殺せざるを得ない悪い意味での条件が、今日の我が国にはそろっているということになります。これは大変憂うべき状態であります。
 これに対して、東京都が行っている自殺総合対策の内容と、その成果について伺います。

○高橋保健政策部長 都では、平成十九年に、多様な主体による社会的取り組みの推進基盤として、行政機関や自殺防止に取り組む民間団体、有識者等から構成される自殺総合対策東京会議を設置し、普及啓発、教育、早期発見、早期対応、遺族支援を柱に、ゲートキーパーの養成や自殺相談ダイヤルの運営、区市町村や民間団体の活動支援などを行ってまいりました。
 平成二十一年には、東京における自殺総合対策の基本的な取り組み方針を策定し、効果的かつ総合的な自殺対策のさらなる推進に取り組んでおります。
 このような取り組みによりまして、五年間で約三万八千人が、都や区市町村のゲートキーパー養成研修を受講したほか、生活や就労、遺族支援など、さまざまな分野における関係機関のネットワーク構築も進んでおります。
 また、地域自殺対策緊急強化基金を活用し、区市町村や民間団体を支援した結果、普及啓発や相談支援事業など、地域における自殺対策の取り組みが進められたところでございます。

○早坂委員 さまざまな取り組みを行っているということでありますが、この施策のおかげで自殺者が激減したということにはなっていません。つまり、自殺対策に特効薬はないということであります。ですが、一つ一つの取り組みを見ると、成果を上げているものもあります。
 例えば、足立区が実施したハローワークでのワンストップサービスです。何かというと、ハローワークで就労のみならず、生活、法律、心の健康などの各種相談をワンストップ、一カ所で行うというものです。つまり、失業者の中には、収入がないゆえ、きょう、あすの生活に困っている人もいるだろう、そういう人はあちこちから借金を重ねて多重債務に陥っているかもしれない、長期間失業していて生活も苦しく、多重債務も抱えているとなると、精神的に追い詰められて自殺してしまうかもしれない、こう考えるわけです。
 本来なら、ハローワーク、福祉事務所、弁護士、病院の精神科という四つの異なった相談機関に自力でたどり着かなければなりませんが、せっぱ詰まった状態の人にそれを求めるのは現実的ではありません。ハローワークは国、福祉事務所は自治体、弁護士と病院は民間、そういう垣根を乗り越えた、相談者の立場からの支援が効果をもたらすであろうことはいうまでもありません。
 このワンストップサービスで自殺者が何人減ったというような目に見えた成果はありません。しかし、こういった小さい支援を幾つも積み重ねていくことが、結果として自殺者を減らすことにつながっていくのだろうと思います。例えていうなら、自殺を激減させる特効薬はないが、徐々に効いてくる漢方薬ならあるというところでしょうか。
 先ほどのご答弁では、地域の取り組みが重要、また、東京都では若年層の割合が多いとのことでした。詳細に実態を把握し、的確な施策を講じるべきであります。
 そこで、自殺対策における、東京都の今後の取り組みについて伺います。

○高橋保健政策部長 都は、これまでの取り組みや自殺の現状を踏まえ、引き続き関係機関との連携を一層強化し、実効性のある取り組みを推進してまいります。
 特に、自殺未遂者など、自殺リスクの高い者への重点的な対策を進めるとともに、実情に応じた区市町村等の取り組みを支援してまいります。
 また、お話のあった若年層の自殺に関する実態調査についても検討してまいります。

○早坂委員 漢方薬の取り組みについて、もう一つ、荒川区の事例を紹介します。
 自殺を図るリスクが最も高い人は自殺未遂者です。ここに注目した荒川区は、日本医科大学付属病院に救急搬送された荒川区在住の自殺未遂者に対して、保健師を派遣するなどの支援を行っています。これまで病院側では、自殺未遂者が救急で運ばれてきても、患者が退院してしまえば、その人を支援する仕組みがありませんでした。そこで、荒川区と連携し、入院した本人の同意を得た上で病院が区に連絡し、退院後も保健師の派遣といった支援を続けることにしたのです。
 その結果、支援が途切れた人の四五%がその後自殺で死亡したのに対し、継続支援を受けた人の八三%が再び自殺を試みることはありませんでした。日本全国の統計で見ると、自殺者は毎年三万人の高どまり状態にありますが、個々の取り組みでは自殺防止に成功をおさめています。今後も引き続き、地道な努力を積み重ねていくことを祈念してやみません。
 次に、災害医療体制について伺います。
 東京都は、本年四月、首都直下地震の被害想定を発表しました。これによると、最悪の場合、負傷者十五万人、うち重傷者二万人が発生すると見込まれています。
 一方で、東日本大震災の被害を受けて設置された東京都災害医療協議会の報告書が本年九月に発表されました。こうした状況を踏まえ、現在、東京都地域防災計画の修正が進められています。
 大規模災害時に膨大に発生する重傷者に対応するためには、限られた医療資源を有効活用するための調整が必要です。すなわち、トリアージを行い、重症者と軽症者の流れを分けることが大切です。
 これまで東京都は、災害時における医療救護活動の流れについて、すべての負傷者は、まず医療救護所において応急処置を受け、そのうち重傷者などについては、被災を免れた医療機関である後方医療施設に収容するとして、七十病院を災害拠点病院に指定してきました。しかし、けがを負った都民が、まずは医療救護所、それから病院と思うわけはなく、被災を免れた医療機関には、発災直後から重傷、軽傷を問わず、負傷者が殺到すると思われます。
 このため、今回の地域防災計画修正案では、病院の機能を重傷者などの収容、治療が優先だと明確にし、軽傷者は速やかに災害拠点病院などの近接地に設けた救急医療救護所に導き、そこで応急処置を行うこととしています。
 東京都は、すべての医療機関を、災害時における役割ごとに四つに区分しました。すなわち、七十の災害拠点病院、二百四十の災害拠点連携病院、三百三十の災害医療支援病院、そして診療所などの四つですが、それぞれの役割がどのようなものなのか伺います。

○浜医療政策部長 お話のとおり、今回改定いたします地域防災計画の素案では、すべての医療機関につきまして、役割に応じた区分を明確にしております。
 まず、災害拠点病院でございますが、重症患者の収容、治療を担い、救急告示医療機関を中心とした災害拠点連携病院は、主に中等症患者や、災害拠点病院での治療後に容体が安定した患者を受け入れることとしております。そして、その他の病院は、災害医療支援病院として、産科医療や透析医療など、災害時に不足する医療を継続して提供する役割を担うこととしております。また、診療所等のうち、産科、透析などの専門的医療を行う診療所は原則として診療を継続し、それ以外の一般診療所は、区市町村の地域防災計画に定める医療救護活動を行うこととしております。

○早坂委員 災害拠点病院、災害拠点連携病院、災害医療支援病院はどれも重要な役割を担うわけですが、とりわけ重症患者の収容、治療を担う災害拠点病院の機能は重要です。
 昨日公表された福祉保健局の予算見積もり概要を拝見すると、新年度には五病院ふやすことを計画しているようですが、多くの重症者を円滑に受け入れるためには、十分な数の確保が必要です。
 そこで、重症者の受け入れ機能の強化に向けた、災害拠点病院の確保について伺います。

○浜医療政策部長 これまで都は、七十の災害拠点病院を指定いたしまして、応急用資器材の整備、新築、増改築に伴う補強及び既存建物に対する補強、備蓄倉庫、自家発電設備、受水槽の整備を支援してまいりました。
 今回の東京都災害医療協議会の報告では、災害拠点病院の確保について、新たな被害想定に基づき必要数を精査することとなっております。都といたしましては、この協議会の報告を踏まえまして、負傷者と医療機関の需給バランスなどにも配慮しながら、災害拠点病院の拡充について検討し、必要数を確保してまいりたいと考えております。

○早坂委員 災害拠点病院の必要数はどれくらいなのかを精査し、十分な数を確保していただきたいと思います。
 さらに、大規模災害の発災直後には多くの傷病者が発生しますが、一方で、ふだんから透析医療を受けている患者や妊産婦などへの対応も必要になってきます。現在検討中の地域防災計画修正案では、こうした専門的医療は、災害医療支援病院のほか、透析や産婦人科などの専門的医療を行う診療所が担うこととしております。また、救急告示を受けた診療所についても同様に、診療機能を継続することを明記しています。
 これまで東京都は、病院に対して診療機能の継続に必要な支援策を行ってきましたが、より多くの都民の命を守るため、今後はこうした診療所に対する支援、例えば、電力確保なども着実に行うようお願いをいたします。
 次に、受動喫煙防止について伺います。
 平成十四年に公布された健康増進法では、国民は生涯にわたって健康の増進に努めなければならないとされており、その中に受動喫煙防止が定められています。
 東京都では、平成十六年に受動喫煙防止ガイドラインを制定し、昨年、その内容を改定しました。これを踏まえて、東京都の取り組みについて伺います。
 まず、職場における対策について伺います。

○高橋保健政策部長 都では、平成十五年度から、職場における受動喫煙防止対策を推進するため、事業所の施設管理者や担当者を対象とした研修会を継続して実施しております。
 また、平成二十二年度には、職場における受動喫煙防止対策の実施状況、課題及び取り組み事例等を把握し、今後の職場における推進方策を検討するため、都内四千事業所を対象に調査を実施したところでございます。
 平成二十三年度には、この調査結果を踏まえ、受動喫煙防止対策の必要性や効果的な進め方、実際の取り組み事例を示した、職場の受動喫煙防止対策ハンドブックを作成いたしまして、職場における対策を推進しております。

○早坂委員 次に、飲食店における対策について伺います。

○高橋保健政策部長 都は、平成二十年度に飲食店の受動喫煙防止対策検討会を設置し、都内四千カ所の飲食店等を対象とした実態調査を実施いたしました。
 この実態調査により明らかとなった、受動喫煙防止対策を実施していない理由や、対策を進めるに当たっての課題を踏まえ、今後の受動喫煙防止対策の進め方を検討し、多様な業種、業態の飲食店、それぞれの自主的な取り組みの推進を支援することが重要であることを確認し、そのまとめを公表いたしました。
 このまとめに基づきまして、飲食店が受動喫煙防止対策を進める際の参考となるよう、具体的な禁煙や分煙の方法を紹介したリーフレットや、利用者の自主的な選択を支援する店頭表示ステッカーを配布し、活用を促進してきたところでございます。

○早坂委員 最後に、今後の取り組みについて伺います。

○高橋保健政策部長 都は、受動喫煙防止対策の推進が重要であると考え、健康推進プラン21やがん対策推進計画におきまして、具体的な取り組みを明記しております。
 また、都民に対し、受動喫煙の健康影響に関する正しい知識について啓発するとともに、事業所や飲食店に対しては、ホームページや研修会等により、効果的な受動喫煙防止方法を周知し、東京都受動喫煙防止ガイドラインに基づく自主的な取り組みが進むよう支援しております。
 今後、現在改定中の両計画にも具体的な取り組みを明記し、受動喫煙防止対策を一層推進してまいります。

○早坂委員 次に、がん対策推進計画について伺います。
 がんは、昭和五十二年以来、都民の死亡原因の第一位であり、現在も年間三万二千人もの方々が、がんで亡くなっています。
 がんは、生活習慣の改善により予防できるとされています。また、定期的に検診を受けることにより早期発見が可能です。そして、適切な治療を受けることで、がんの死亡率を減少させ、また、その苦痛を軽減させることができます。
 このため、東京都は、都民の皆さんが、がんの予防、治療、そして帰宅後の療養生活などが安心して受けられるよう、平成二十年三月に東京都がん対策推進計画を策定しました。今年度は、この推進計画の最終年度に当たりますが、この計画は、国が策定したがん対策基本法及びがん対策推進基本計画をもとにしたものであります。
 この計画では、五年間の間に東京都が取り組んでいくべき具体的な施策を記載しています。健康的な生活習慣の普及、がん検診の受診率の向上、がん診療連携拠点病院などの整備、相談支援センターの拡充、がんと診断されたときからの緩和ケアの重要性、がん登録の拡大などがその内容です。中でも、高度ながん医療の総合的な推進を目指して、東京都は、がん医療提供体制の整備を進めてきました。
 そこで、がん医療体制の整備について、その成果を伺います。

○小林医療政策担当部長 都はこれまで、質の高いがん医療の提供と地域がん医療水準の向上を図るため、国が指定するがん診療連携拠点病院を二十四カ所、また、都独自に、拠点病院と同等の高度な診療機能を有する東京都認定がん診療病院を十カ所、合わせて三十四カ所の整備を進めてまいりました。
 拠点病院、認定病院におきましては、手術療法、放射線療法及び化学療法等の組み合わせによる集学的治療や緩和医療等の専門的医療を提供するとともに、相談支援センターの設置、地域のがん診療に携わる医療従事者に対する研修や、院内がん登録の実施、地域全体のがん医療水準の向上に努めてまいりました。
 さらに、平成二十四年四月に、がんの種類ごとに拠点病院と同等の高度な診療機能を有します協力病院を十五カ所、都独自に認定いたしました。
 今後もこれらの病院が連携して、都のがん医療提供体制のさらなる充実を図ってまいります。

○早坂委員 東京には、多くの大学病院など、すぐれた診療機能を持つ病院が集まるメリットがあります。
 そこで、国が指定する拠点病院と同じ機能を持つ病院を、東京都が独自に、東京都認定がん診療病院、東京都がん診療連携協力病院として認定し、がん医療の質と水準の向上に取り組んできました。その取り組みは着実に成果を上げていますので、引き続き充実させていただくよう要望いたします。
 一方で、東京の高齢化は急速に進んでいます。がんは高齢者に多い病気ですので、都内のがん患者は今後ますますふえていくことが予想されます。病院のベッド数には限りがありますし、がんになったらずっと病院に入院するということが、必ずしも都民の希望ではありません。むしろ自宅に戻って暮らしたいと考える都民の方も多いと思われます。
 自宅で療養生活を続けるためには、地域のかかりつけ医の支えが必要です。がんの場合、ほとんどの患者さんは、がんと診断された後、拠点病院のような大きな病院で手術や放射線治療を受けてから自宅に帰ることになります。したがって、手術をした病院の主治医と地域のかかりつけ医が、患者さんの状態について十分に情報を共有し、治療を継続することが重要です。
 そこで、東京都は、がん患者に対して切れ目のない医療の提供を実現するために、どのような取り組みを進めてきたのか伺います。

○小林医療政策担当部長 都は、拠点病院等と地域の医療機関が治療計画や治療経過等、患者情報を共有するための東京都医療連携手帳を作成し、現在、五十の拠点病院等と二千を超える地域の医療機関におきまして、手帳を活用した医療連携を実施しているところでございます。この手帳を活用することにより、患者さんは、いつ、どこで、どんな診察や検査を受ければよいのかがわかるため、安心して納得できる治療を受けることができます。
 また、患者さんへの説明書や医療機関向けのマニュアルを作成いたしまして、さらに手帳の普及拡大を図っているところでございます。

○早坂委員 患者さんが地域で安心して医療を受け、療養生活を送ることができるよう、引き続き、拠点病院などを中心とした地域の医療連携体制を充実させていただきたいと思います。
 さて、これまで、現在の東京都のがん対策推進計画のまとめとして、医療提供体制について伺ってまいりましたが、現在、次の計画を策定中だと承知をしております。また、同じ時期に東京都保健医療計画や東京都健康推進プラン21も改定し、三つの計画におけるがん対策がそれぞれ連動することになるのだろうと思います。
 東京都には、がん対策を総合的かつ計画的に進めていくという役割があります。すなわち、がんの予防と早期発見の推進、がん医療体制の整備、がんに関する情報提供や普及啓発、相談体制の拡充などであります。また、そのためには、国、区市町村、都民、医療機関、検診実施機関、関係団体などとの連携が必要です。
 そこで、次のがん対策推進計画の策定に当たり、計画の策定方針と重点的に取り組む施策について伺います。

○小林医療政策担当部長 都は、次期がん対策推進計画の目標として、がんによる死亡者の減少や、すべてのがん患者及びその家族の不安の軽減並びに療養生活の質の向上を掲げ、がんになっても自分らしく生活できる社会の構築を目指していくこととしております。
 次期計画では、これまでの施策の成果を踏まえ、患者、家族の意向に応じた切れ目のない緩和ケア提供体制や、拠点病院等と地域の医療機関との専門性を生かした、がん診療連携体制の整備など、超高齢社会を見据えた在宅療養の一層の充実を図ってまいります。
 さらに、小児がん対策や患者、家族が利用しやすい情報資源の整備などの新たな課題についても、重点的に取り組んでいくこととしております。
 現在、素案を取りまとめておりまして、今後、都民の意見を広く求め、年度内に都の特性を踏まえた新たな計画を作成し、がん対策を一層推進してまいります。

○早坂委員 都民の皆さんが、がんの予防、早期発見、そして最善の治療を受けられるようにすること、そして、がんによる苦痛、不安や悩みを解消できるよう、がん患者の療養生活の質の向上を図ることが重要です。そのために、次期がん対策推進計画を充実させ、さまざまな取り組みを積極的に行っていただきたいと要望します。

○加藤委員 初めに、がん検診推進サポーター事業について質問をいたします。
 がん対策にとって重要な早期発見、早期治療へとつなげていく上で、がん検診の受診率向上が必要です。そのためには、地域における検診とともに、職域における検診の両面で検診率を上げていくことが大切です。
 私は以前、本会議の一般質問でもこの問題を取り上げ、都は、がん検診推進サポーター事業を平成二十二年度からスタートさせました。これは、都独自の取り組みとして、がん検診への取り組みに積極的な企業を、がん検診推進サポーターに認定し、従業員への受診勧奨や都民への普及啓発などの活動を支援するものと聞いております。
 そこでまず、このがん検診推進サポーター事業について、どのような取り組みを行ってきたのか伺います。

○高橋保健政策部長 都は、企業と連携して、職域におけるがん検診受診促進の取り組みを進めるため、平成二十二年度から三カ年にわたり、がん検診推進サポーター事業を実施してまいりました。この事業は、がん検診の取り組みに積極的な企業を、がん検診推進サポーターとして認定し、その活動を支援するとともに、認定企業以外の企業にも情報提供を行うなど、広く職域の受診率向上を目指しているものでございます。
 都では、認定企業の活動が円滑に行われるよう、サポーター連絡会や講演会を開催し、専門的助言や最新情報の提供などを行うほか、連絡会では認定企業がそれぞれの活動状況について情報交換や意見交換を行い、従業員向けリーフレットの作成も行いました。講演会や連絡会の内容や、策定したリーフレットの内容をホームページに掲載し、広く都内の企業に周知することにより、職域におけるがん検診の推進を図っております。
 サポーターに認定された企業では、従業員に対する個別受診勧奨の実施や業務時間内の受診促進など受診環境の整備が進められ、都は、こうした認定企業の成果についてホームページ等で紹介するなど、職域におけるがん検診の受診促進を支援しております。

○加藤委員 サポーターとなる会社等を見ますと、有名な企業に多く応援をいただいております。大きな会社であれば健保組合ということもあり、比較的検診環境を整えやすいという点もあろうかと思います。
 しかし、これを今後広げていくには、大企業の検診率向上とともに、中小企業におけるがん検診の取り組みが大事であります。都は、今後どのように支援をしていくのか伺います。

○高橋保健政策部長 職域におけるがん検診は法令等による位置づけが明確ではなく、検診を実施するか否かは企業の判断によるため、中小企業では、がん検診を実施していないところも多くございます。
 しかし、従業員が区市町村の検診を受けることにより受診率向上を図ることが可能であり、そのためには、区市町村の検診利用に関する情報提供や業務時間内の受診促進等の環境整備を進めることが重要と考えます。
 都は、さまざまな機会を通じて、訴求力のある映像作品やリーフレットを活用した情報提供等により経営者層の理解促進を図りながら、中小企業におけるがん検診の取り組みを支援してまいります。

○加藤委員 法令等による位置づけが明確ではないということで、あくまで促進を促すということになるわけですが、このサポーター事業も三年間を経て、今年度が一つの区切りとなるわけですので、来年度に向けて、新たな受診率向上策を検討していただきたいと思います。
 また、中小企業の職域検診というのは難しい面もあると思いますけれども、区市町村と連携して、がん対策推進基本計画で掲げられた、検診の受診率五〇%以上という目標を目指して、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
 次に、この四月の介護保険法改正において新たに創設された介護サービスである、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と複合型サービスについて伺います。
 高齢者が可能な限り住みなれた地域で暮らし続けるためには、高齢者のニーズに応じて、予防、医療、介護、そして住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される包括的な支援、いわゆる地域包括ケアを推進することが重要です。新たに創設されたサービスは、区市町村の判断で整備を進める地域密着型サービスの一つとして位置づけられており、地域包括ケアを進めるための重要な役割を担うものとして、私も大いに期待をしております。
 そこでまず、この二つの新サービスについて、改めてその概要と現況について伺います。

○中山高齢社会対策部長 新たな介護保険サービスであります定期巡回・随時対応型訪問介護看護と複合型サービスは、医療ニーズが高く、重度の要介護状態になりましても在宅生活を継続できるよう創設されたサービスで、今般の介護保険制度改正におきまして、お話しいただきました地域包括ケアを推進するための柱の一つに位置づけられました。
 まず、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日中、夜間を通じた定期的な介助や緊急時の対応など、在宅においても必要な介護と看護のサービスが受けられるものでございます。都内の事業所数は、本年十月一日時点で、十一区二市に十九カ所が指定されております。
 また、複合型サービスは、通い、泊まり、訪問介護を受けることができるサービスであります小規模多機能型居宅介護に訪問看護のサービスを組み合わせることによりまして、同一事業所から介護と看護のサービスを一体的に受けられるものでございます。都内の事業所数は、本年十月一日時点で、一区一カ所の指定となってございます。

○加藤委員 私の地元墨田区にも、この八月に一カ所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業者が指定されましたが、この新サービスは、事業計画を定める区市町村の積極的な取り組みが必要になります。
 しかし、今お聞きした限りでは、まだまだ少ない状況にあると思いますが、今後、都内の必要な地域において新サービスが広く展開されていくためには、現在どのような課題があるのか伺います。

○中山高齢社会対策部長 区市町村は、平成二十四年度から二十六年度までを計画期間といたしました第五期介護保険事業計画を作成しておりまして、これらの新サービスについて三年間の必要量を定めております。都内全体では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は二十一区十三市、複合型サービスは十区十市で実施を予定しておりまして、こうした区市それぞれの計画が着実に実現されていくことが必要でございます。
 今後、新サービスを広く展開していくためには、日中、夜間を通じた適切なサービス提供を行える事業者の参入を促すことや、訪問看護を担う人材の確保が重要な課題であると認識しております。

○加藤委員 新サービスは、看護と介護が連携していくことが重要で、どちらが欠けてもサービスとしては成り立ちません。私は、中でも医療系サービスである訪問看護サービスの確保が必要だと考えています。
 今後、都は、既に実施されている状況を把握しながら、新サービスの充実に向け、訪問看護サービスの供給促進を図っていただきたいと考えますが、所見を伺います。

○中山高齢社会対策部長 区市町村の計画に基づきました新サービスが確実に提供されますよう、都は今後、既にこのサービスを実施している区市や事業者に対しましてアンケートや聞き取り等を行いまして、事業者の経営状況や利用状況などを把握、分析してまいります。
 新サービスの展開に当たりましては、お話のとおり訪問看護サービスの確保が重要なことから、都は引き続き、訪問看護ステーションの開設時経費などを都独自に補助することにより設置を促進するとともに、訪問看護師の確保、育成、定着を支援するための取り組みを進めてまいります。

○加藤委員 ありがとうございます。この地域包括ケアの実現に向けて創設された新サービスの役割には、私も大いに期待を寄せております。新サービスの拡充に向けて、引き続き都の取り組みに期待をいたします。
 それでは、次の質問に移ります。
 子どもの病気は、働く親にとって障壁となっております。乳幼児期の子どもはよく病気になりますが、病気になれば保育所に預けられないという問題があります。子どもが病気のときぐらい仕事を休んではという意見もありますが、勤務シフトの関係で急には休めないとか、その日は大事な商談が入っているなど、休みをとりたくてもとれない事情があります。夫婦共働きなら、どちらかが何とか都合をつけることもできるかもしれません。しかし、ひとり親家庭で近くに頼れる親族もいない場合、本当に困ってしまうのが現実です。
 仕事と子育てを両立するためには、子どもが病気になったときに安心して預けられる人や施設がそばにあること、つまり病児保育、病後児保育の充実が大切だと考えます。
 そこでまず、病児保育、病後児保育の違いについて伺います。

○桃原少子社会対策部長 病児保育は突然の発熱、発病となった児童を、病後児保育は病気の回復期にある児童を対象とし、それぞれ、保育所での集団保育が困難である場合におきまして、医療機関や保育所に併設された専用スペースで保育するものでございます。

○加藤委員 では、病児、病後児保育施設の設置に向けた目標があれば伺います。
 また、現在、都内で病児保育、病後児保育を行う施設は、それぞれどのくらいあるか伺います。

○桃原少子社会対策部長 都は、東京都保育計画におきまして、平成二十六年度までに病児、病後児合わせて計百四十施設の設置を計画しております。
 制度の創設以降、病児、病後児保育が実施いたします、看護師による保育所への巡回サービスや地域の保育所等向けの技術的支援に対する補助など、都独自の支援を行いますとともに、区市町村に対しての積極的な働きかけを行いました結果、二十三年度末時点でございますが、病児保育施設が二十九市で四十七施設、病後児保育施設が三十六区市で六十二施設、合計で百九施設まで整備が進んでおります。

○加藤委員 計画では百四十施設の目標で、現在、病児、病後児合わせて百九施設ということなので、設置は進んでおりますけれども、まだすべての区市町村にあるわけではないということがわかります。
 子どもの病気に地域差はありません。各地域に施設が必要だと思います。私の地元墨田区でも、病後児保育は一カ所あるんですが、病児保育はまだないのが現状であります。
 そこで、病児、病後児保育事業を実施する上での課題があれば伺います。

○桃原少子社会対策部長 病児、病後児保育事業は、利用料や運営費補助などの収入により賄われておりますが、事業者の方からは、利用していた子どもの病状回復により発生するキャンセルにより、利用枠にあきが生じることに加えまして、インフルエンザの流行などにより季節ごとの利用状況の変動も大きいことから、安定した経営が難しいと聞いております。
 また、施設の立地上の利便性により稼働率が異なることから、収入にも差が生じているという実態もございます。

○加藤委員 病児、病後児保育事業の実施に際しては、経営基盤の安定化や利用者の利便性向上を図る取り組みが必要だということがわかりました。
 この病児、病後児保育事業に係る国の補助金の変更で影響が出ているようにも思います。平成二十一年のこのときに改正になりまして、定額の国庫補助から実施施設の利用実績に応じた国庫補助と、このように変更になったとお聞きしておりますけれども、定額から利用実績に変更されると、実施施設の利用状況の変動により補助金額が変動することになるわけですが、安定的な経営、また、児童の受け入れが困難になるおそれが出てくるのではないかということも心配されます。
 今後は、地域における子育て支援の一つとして、病児、病後児保育事業の拡充が必要と考えますが、そうした点を踏まえて、都としてどう取り組んでいるのか伺います。

○桃原少子社会対策部長 先ほどご答弁申し上げました施設の実態や課題などを踏まえまして、病児、病後児保育事業の安定した事業運営が可能となるよう、国に対しましては補助単価を増額するよう要求をしております。
 また、保護者にとっての利便性の向上を図るという観点から、今年度、保護者が送り迎えを行いやすい駅前で施設を設置する場合に要する建物賃借料に対する補助制度や、保護者の迎えが困難なときに保育施設などが病児保育施設に児童を送迎する場合の補助制度を創設いたしております。

○加藤委員 今後、社会保障と税の一体改革では子育て支援の予算が増額される予定ですけれども、こうした支援にもつなげていくことが必要だと考えます。
 病児、病後児保育の拡充は、安心して仕事と子育てができる社会をつくり、働く子育て世代に活力を与えることにつながります。都においては、働く親が身近なところで利用できる病児、病後児保育の一層の拡充に努めていただきたいと要望して、質問を終わります。

○大山委員 私は、難聴者支援、それから、暮らしの困難の解決のために、そして、健康づくりと予防接種の順で質疑していきたいと思っています。
 まず、難聴者支援です。
 難聴者の人口なんですけれども、WHOの算定値によれば全国で約六百万人と推計されていますけれども、実際は二千万人に及ぶのではないかと見られています。都内では六十万人から二百万人の難聴者がいることになるわけです。中でも、七十歳以上の高齢者のおよそ半数は加齢性の難聴と推定されておりまして、高齢化が進む中、今後さらにふえていくことは確実です。
 難聴になりますと、家族の中でも、社会的にも孤立しやすく、人との会話や会う機会が減って、ひきこもりになりがちです。認知症につながることも心配されています。
 ところが、国も都も、難聴者への支援は極めて不十分です。一人一人に合った補聴器を利用できるようにする仕組みも、磁気ループ、ヒアリングループともいわれていますけれども、そういう集団補聴設備の普及も、欧米諸国に比べて大きく立ちおくれています。難聴者支援の拡充強化は、本格的な超高齢社会に対応するための重要かつ緊急の課題だといえます。
 どこへ相談すればよいかもわからずに困っている高齢者や家族がふえています。二〇一五年まで大幅に増加し、急速に高齢化率が上昇する東京都が、それにふさわしい位置づけをして、本格的な難聴者支援に直ちに踏み出して、全国に発信することが求められています。
 最初に、磁気ループの普及についてです。
 騒音のある場所だとか、大勢の人が集まる場所では、補聴器で音声を正確に聞き取ることは困難です。こういうところに磁気ループがあれば、磁気誘導コイルつきの補聴器、これ、Tモードというふうになっているんですけれども、補聴器や人工内耳をTモードなどに切りかえるか、専用受信機を使うことで音声が電気信号として直接届き、目的の音、声だけを聞き取ることができます。磁気ループを体験した難聴者からは、とてもよく聞こえるとか、耳元で話されているように聞こえるなどの感想が寄せられています。
 磁気ループについて余り知られていないために、せっかく設置されていても、ほとんど利用されていない場合も少なくありません。
 高齢者で聞こえが悪くなった方が、磁気ループが設置されているところで津軽三味線を聞いたんです。その後の感想を、自分はもう聞こえないから、もうコンサートには縁がないかなと思っていたけれども、本当によかったです、こううれしそうに話しておられました。
 せっかく設置しているんですから、活用されなければ宝の持ちぐされということになります。磁気ループが設置されていることや補聴器での使い方、それから補聴器を持っていなくても受信機を貸し出していることなどがわかるように、都民に知らせることが必要です。
 ホームページに載せることはもちろんですけれども、聞こえが困難になっていらっしゃる方は高齢者が多いだけに、設置されているところに、例えば、いろんなマーク、二〇〇九年のヒアリングループ国際会議で確認された国際統一マークだとか、ほかのものだとかを表示するとか、それから補聴器をTモードにすることなどを案内することが必要ですけれども、どうでしょうか。

○小林生活福祉部長 磁気ループを設置しています都立施設におきましては、磁気ループ等の設備が利用可能である旨、ホームページや利用案内のパンフレット等で都民に対し情報提供を行うよう、既に関係局に働きかけを行ってございます。
 また、情報提供の具体的な方法につきましても、施設の実情に応じて対応するよう働きかけを行ってございます。

○大山委員 都有施設での磁気ループの設置状況、二四ページの13の資料で出していただきましたけれども、味の素スタジアムだとか、東京芸術劇場だとか、六施設に設置されているわけです。聞いてみました。ホームページも見てみました。
 例えば、味の素スタジアムだと、ホームページで、磁気ループが設置されています、それから、補聴器をTモードにすればいいんですということも、それから、会場内の歓声なども補聴器を通じて快適に聞き取れるようになりますと、こう案内されていました。
 東京芸術劇場に問い合わせしたときには、広報がされていないということを芸術劇場の人も気がついて、今後、ホームページなどを含め、案内することを直ちに工夫するというふうにおっしゃっていました。
 議会議事堂の傍聴席にも設置されているんです。実はこの委員会室にも設置されていたということなんですけれども、使われたことがない。それもそのはずで、存在自体を知らなかったということなんです。せっかく設置しているところの利用が進むように、引き続き働きかけをよろしくお願いします。
 普及する上で、福祉保健局が、まちづくり条例を持っているところですから、率先して取り組むことが重要なわけですが、福祉保健局関連の施設で、ヒアリングループ設置状況、活用状況はどうなっているでしょう。

○小林生活福祉部長 福祉保健局が所管いたします都立施設のうち、磁気ループを設置している施設は、東京都障害者福祉会館、東京都心身障害者福祉センター、この二施設でございます。
 東京都障害者福祉会館におきましては、週に数回以上の利用実績がありまして、東京都心身障害者福祉センターにおきましては、年間数回程度の利用実績があるということでございます。

○大山委員 今おっしゃった二つの施設というのは、施設の性格上、設置していないと困ってしまうというようなところです。
 さらなる普及が必要なわけですけれども、東京工業大学の中村健太郎教授が二〇一〇年に実施しました、難聴者・高齢者・およびその家族へのアンケートというのがあります。その結果によりますと、聞こえの支援が必要な場所の第一が病院なんです。次いで、駅ホーム・駅窓口でした。公民館・集会場・市民ホール、それから電車内等と続いているわけです。
 こうした場所への磁気ループ設置を促進することが必要です。都有施設などへの磁気ループの設置を進めることが重要なわけです。まず、都有施設ということで重要ですけれども、どうなっているでしょうか。

○小林生活福祉部長 都はこれまでも、障害者や高齢者を初め、すべての人があらゆる場面において必要な情報を多様な手段で入手できるよう、情報のバリアフリー化に取り組んでまいりました。東京都まちづくり条例におきましては、劇場などの興行施設等に観覧席、客席を設ける場合に、聴覚障害者への配慮として磁気ループ等の集団補聴設備を設けることなどを整備基準として定め、施設の新設や改修の際に、本基準に基づく整備を図ってございます。
 また、本年三月には、福祉のまちづくり推進協議会におきまして、イベント等を開催する際に留意すべき事項を定めたチェックリストが作成されておりまして、そのチェック項目の中には、聴覚障害者への配慮として会場に磁気ループ等の集団補聴設備を準備することなども記載されてございます。
 都の各局に対しましては、既に本チェックリストについての情報提供を行っているところでございます。

○大山委員 さっきのアンケートでもあるように、聞こえの支援が必要な場所の第一番目は病院となっているわけです。ですから、福祉保健局所管の、例えば健康長寿医療センター、独立行政法人ではありますけれども、重要な設置場所ではないでしょうか。それから、都立や公社病院への設置についても、ぜひ検討していってほしいと思います。
 今ご答弁の中にあったチェックリストというのはこれですね。会場選定編というところでは、会場に集団補聴設備はありますかと、こういう聞き方になっていて、事前準備編というところでは、会場にないときは手話通訳派遣センターで貸し出していることも書いてあります。これは重要な前進だと思っています。ぜひこのチェックリストも広く都民に周知する努力をしていっていただきたいと思います。
 それぞれの自治体では積極的な導入が始まっています。台東区は、区役所の高齢福祉課の窓口にパネル型の磁気ループを設置するとともに、区民施設等を利用する団体への携帯用磁気ループの貸し出しを実施して喜ばれています。
 また、山口県の萩市は、市内を循環するコミュニティバスの車内に磁気ループを導入しました。割とざわざわしているわけで、そういうところでは聞き取りにくいわけです。ですから、バスの中に磁気ループを設置して、難聴の人でもクリアに、次はどこですとか、急な場合の放送だとかも入るわけです。
 プロ野球の広島カープの本拠地、マツダスタジアムにも設置されています。
 長野県は、県のホームページに、県内の磁気ループ設置施設を、貸し出しの実施も含めて紹介しています。
 磁気ループを設置、購入する区市町村、団体、鉄道、バス、タクシーを初めとした事業者等への支援を行うことなど、磁気ループの大幅な普及を図ることが必要ですが、どうでしょうか。

○小林生活福祉部長 区市町村が観覧席、客席等に集団補聴設備等を整備するなど、福祉のまちづくり条例に基づく整備基準に適合するよう、既存の施設の改修を行う場合等には、地域福祉推進区市町村包括補助事業におきまして支援の対象としてございます。
 なお、駅など公共交通施設につきましては、補聴器を使用する方だけではなく、すべての聴覚障害者に対応する設備の設置が求められることから、条例において、案内所での筆談用具の準備や発車時刻など車両の運行情報を文字により表示する案内板を備えること等を整備基準として定め、施設の新設、改修の際に、本基準に基づく整備を図っているところでございます。

○大山委員 鉄道等については、案内所等に筆談用具、それから案内板に車両の運行情報を文字表示する設備の設置を条例の整備基準として規定しているということですけれども、もちろんこれはなくてはいけないものですけれども、イギリスや北欧諸国では、駅や空港やタクシーに磁気ループが設置されており、それを示すマークも表示されています。アメリカでも、地下鉄の窓口だとか、ハンバーガーのお店、博物館などへの設置が進んでいます。ところが、日本では欧米諸国に比べて磁気ループの普及は大きく立ちおくれているということです。
 磁気ループを設置して活用してもらうには、いかに役に立つかを知らせることが重要です。百聞は一見にしかずならぬ、一聞は百見にしかずで、私も体験しましたけれども、本当にびっくりするほど音がクリアに聞こえるんです。都有施設なども活用して、身近な地域で磁気ループ体験コーナーの設置だとか、体験イベントなどを実施する中で体験してもらうことが欠かせないと思いますけれども、どうでしょうか。

○小林生活福祉部長 福祉用具に関する都民からの相談につきましては区市町村において対応しており、お話の磁気ループ体験コーナーの設置や体験イベント等につきましては、各地域の実情を踏まえて、住民に身近な区市町村で必要に応じて実施するものと考えてございます。

○大山委員 もちろん、区市町村で実施するということも必要です。同時に、例えば、東京都が率先してやるということを考えれば、全都レベルの高齢者の集会などのときに携帯用の磁気ループを持っていって、体験コーナーを設置して、高齢者に実際に聞いてもらう。東京のやった集会でこういうのがあったんだよなんて--そうしたら今度は区市町村でまたやるというように、そういう工夫も必要ではないでしょうか。
 あと、どこに磁気ループが設置されているのかがわかれば、聞こえない、聞こえにくい方々の外出の助けになります。都内の磁気ループ設置及び利用状況を調査して、マップを作成して公表するなど、広く都民に情報提供をすること、それから磁気ループに関する知識の普及啓発を行うことが必要だと思いますが、どうですか。

○小林生活福祉部長 バリアフリーマップの作成など、地域の施設におけるバリアフリー化の情報提供につきましては、住民に身近な区市町村等において行うことが効果的であるというふうに考えてございます。
 こうした観点に立ちまして、都は、バリアフリーマップの作成など、地域の身近な施設におけるバリアフリー状況の住民への情報提供につきまして、福祉のまちづくりに関する普及啓発事業といたしまして、包括補助事業により区市町村への支援を行っているところでございます。

○大山委員 各区市町村でバリアフリーマップというのはつくっているんでしょうけれども、磁気ループの設置場所を表示しているマップはどれぐらいあるんでしょうか。既にでき上がっているマップに、例えば都が、磁気ループ設置場所の施設に張れるようにシールをつくって張ってもらうとか、東京都が牽引する役割があるのではないでしょうか。
 二番目ですけれども、補聴器の適切な普及についてです。
 日本では、欧米諸国に比べて補聴器の普及が進んでいません。難聴者のごく一部しか補聴器を使っていない現状にあります。日本補聴器工業会の資料によりますと、人口当たり補聴器の出荷台数、これがアメリカやドイツは日本の二倍強です。イギリスは四倍、比較的少ないといわれているフランスでも日本の二倍弱となっています。
 高額の補聴器を買ったのに相手の話す言葉が聞き取れないとか、雑音が気になって使いづらいなど、高齢者の皆さんの悩みも後を絶ちません。そのことが、補聴器の普及が進まない原因の一つになっています。
 補聴器は、聴力測定や言葉の聞き取りテストを行って、一人一人の聴力や聞こえの状況や生活環境などを専門の医師や技師が十分把握した上で適切な補聴器を選び、きめ細かい調整を行う必要がある医療機器です。購入後も、いろいろな環境での聞こえ方を確かめながら調整を繰り返すことや、補聴器になれるトレーニングを受けることが必要です。
 補聴器は、一台数万円から数十万円もする高額なものです。耐用年数は五年が目安とされており、何度も買いかえる必要がある上、両耳に装用すれば二台必要です。高価格、高機能なものを買えば大丈夫というわけでもありません。難聴者の利益を守る立場から、一人一人に合った適切な補聴器を利用できるようにする仕組みをつくることが重要です。経済的に困難な高齢者や難聴の子どものいる子育て世帯が、お金の心配なく補聴器を使用できるようにすることも切実な課題です。
 補聴器は、軽度から中等度のできるだけ早いうちから使うのが効果的だといわれています。厳し過ぎる日本の公的給付の基準を大幅に緩和することが求められています。欧米諸国では、補聴器は中等度の難聴から公的給付の対象になります。ところが、日本では重度の難聴にならないと身体障害者手帳の対象にならず、公的給付を受けることができません。
 公的給付の対象とならない難聴者への補聴器購入助成を実施する自治体がふえています。秋田県、岩手県、埼玉県、三重県、大阪府、岡山県、高知県、この七府県及び川崎市、千葉市、京都市、広島市、大田区などは、軽中度の子どもたちのための補聴器購入助成を独自事業として実施しています。
 ことし六月の都議会第二回定例会で、日本耳鼻咽喉科学会東京都地方部会から提出された、身体障害者手帳交付に該当しない中等度難聴児に対して、補聴器購入費用等の公的助成制度の創設を求める請願を全会派一致で採択したことを受け、請願の趣旨を踏まえた助成制度の創設に直ちに踏み出すことを求めますけれども、どうなんでしょうか。

○山岸障害者施策推進部長 これまでも既に本会議でお答えをしておりますが、身体障害者手帳交付に該当しない中等度難聴児に対する補聴器購入費用等助成に関する請願が全会派一致で採択されたことを踏まえまして、都は現在、中等度難聴児に対する支援について検討を進めております。

○大山委員 ぜひ来年度には実施できるようにしてほしいと思います。
 高齢者についてですけれども、資料の14、二五ページの資料で出していただきましたけれども、高齢者に対する補聴器助成です。中央区、江東区、葛飾区、江戸川区は六十五歳以上、それから新宿区、大田区は七十歳以上の軽中度の高齢者への補聴器購入助成を、区独自に実施しています。
 都として、高齢者に対する補聴器購入助成制度を創設して、都内全区市町村が実施できるようにすることが自治体間の格差を埋めることになると思いますけれども、どうですか。

○中山高齢社会対策部長 都は、区市町村包括補助事業によりまして、住民に身近な区市町村が主体的に実施するさまざまな高齢者施策への取り組みを支援しております。高齢者に対し、区市町村が補聴器の支給等を行った場合は、本日の資料にもございますが、現在でも包括補助制度の対象としております。

○大山委員 包括補助の対象なんですということなんですけれども、実際やっている自治体と実施していない自治体があるわけです。高齢者は都内のどの自治体に住んでいても、聞こえが困難であることには変わりないわけですから、東京都が率先して実施することが求められています。
 三つ目ですけれども、音バリアフリー、聞こえのバリアフリーを福祉のまちづくりに位置づけることです。
 音バリアフリーという新しい考え方が提唱されています。音にかかわることで、障害者や高齢者の生活に不便な障害を取り除こうという考え方です。
 大学の研究者や日本音響学会、補聴器メーカーなどが連携して、聞こえの支援に向けた音バリアフリーについて調査研究を進めています。聞こえやすい教室など、空間、建築物の設計、駅ホームや電車内のアナウンス音の改善、インターネットに対応したリアルタイム字幕提供システムの研究開発も行われています。携帯電話やスマートフォンを磁気ループの受信機として使えるようにするなど、新しい補聴支援システムの実用化も期待されています。
 高齢化に対応して、新聞や書籍の活字は大きく、読みやすくなってきました。同じように、聞こえやすい環境の整備改善を進めることが求められています。国や自治体、事業者が、音バリアフリー、聞こえのバリアフリーを福祉のまちづくりに位置づけて取り組むことが必要です。都の福祉のまちづくり条例では、難聴者への配慮はどうなっているでしょうか。

○小林生活福祉部長 東京都福祉のまちづくり条例におきましては、ユニバーサルデザインの観点から、難聴者を含む聴覚障害者に配慮した各種の情報バリアフリーに関する規定を設けてございます。
 さらに、建築物等を設計する際の整備基準等を解説した、東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルにおきまして、聴覚障害者に配慮した望ましい整備として、銀行、病院等のカウンターには音声案内のほか、電光掲示板等をあわせて設置すること、筆談用のメモ用紙やホワイトボード等を準備するとともに、見やすくわかりやすい位置に筆談用具がある旨の表示をすることなどの解説を掲載し、事業者に周知しているところでございます。

○大山委員 配慮しているんだということなんですけれども、最新の知見、それから研究開発なども生かしていくことが必要です。そのためには、都として、音バリアフリー、聞こえのバリアフリーを福祉のまちづくりに位置づけていくことが求められているわけですけれども、どうでしょうか。

○小林生活福祉部長 都はこれまでも、障害者や高齢者を初め、すべての人が、あらゆる場面において必要な情報を多様な手段で入手できるよう、音声、文字、絵文字に加え、手話、筆記、IT機器等によるさまざまな情報伝達手段を活用した情報のバリアフリー化を推進してまいりました。
 お尋ねの音のバリアフリー、聞こえのバリアフリーにつきましては、こうした情報のバリアフリーの考え方に包含されるものと考えてございます。

○大山委員 ぜひ最新の研究開発なども、その都度、充実させていっていただきたいと思います。
 東京都福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルでは、観覧席、客席には、磁気ループ、それからFM、赤外線などの集団補聴設備、字幕や文字情報を表示する設備の設置が守るべき基準とされています。
 しかし、集会施設の会議室は、磁気ループなど集団補聴設備の設置も、要約筆記のためのプロジェクターやスクリーンの設置も規定がありません。速やかに改善拡充することが必要です。
 東京都福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルに、集会施設の会議室を初め、より多くの施設への磁気ループなど集団補聴設備、要約筆記のためのプロジェクターやスクリーン等の設置について明記することが求められています。いかがでしょうか。

○小林生活福祉部長 本年七月に国土交通省から示されました、高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準、いわゆるガイドラインの改訂版では、従来規定されていた観覧席、客席のほか、会議室等において磁気ループ等の集団補聴設備等を整備することも有効と記述されました。
 都といたしましては、事業者等が建築物等を設計する際に踏まえるべき福祉のまちづくり条例の整備基準等を解説した施設整備マニュアルにつきまして、既に国のガイドラインに準じた改訂の検討を行っているところでございます。
 また、都の各局に対しましても、ガイドラインの改訂につきまして情報提供を行ってございます。

○大山委員 ぜひ音バリアフリー、聞こえのバリアフリーの観点で改善していっていただきたいと思います。
 それでは、暮らしの困難を解決するためにということです。
 社会保障の切り下げ、それから石原都政のもとで、とりわけ高齢者福祉の根こそぎの切り下げということ、それから雇用の破壊、失業や不安定雇用の増大、介護や障害者児の療育、病気など、さまざまな原因で、今までの暮らしがあっという間に崩れてしまう状況というのは、だれにでもあり得ることです。
 例えば、五年前に妻が、がん検診で卵巣がんが見つかって手術をしました。二年後に再発しました。入退院を繰り返しながらも落ちついて生活していました。ところが、二年前に建築士の夫に体調不良があらわれて、それによって仕事がうまく回らなくなって、一年前に借金を抱えて会社は倒産しました。夫はパーキンソン病と診断されました。そのころ息子もうつ病になって入院、夫が自宅療養となりました。奥さんはお友達と交流していたわけですけれども、その交流も電話のみになって、だんだん疎遠になっていきました。
 妻の年金が八万円、夫の年金は二十万円。しかし、あと一年は月々十一万円の借金返済があります。妻の抗がん剤治療費や夫のパーキンソン病の治療費が月八万円に及んで、家計を圧迫しています。妻の妹夫婦から二百万円の借金もしています。月七万円の家賃なので、引っ越しもした方がいいかと考えるわけですけれども、引っ越し代もないということなんです。高額医療費の還付は時間がかかって、通院のタクシー代がかさむことも考えて、妻は抗がん剤の治療を中断してしまいました。借金、夫婦二人の高額な医療費、頼りの息子の入院など、順調に生活していたであろう家族の生活が、あれよあれよという間に崩れてしまうわけです。
 このケースの夫の年金は月額二十万円ですから、順調に仕事をして暮らしてきた夫婦と思われます。順調に暮らしてきたとしても、病気や倒産で生活の崩壊はだれにでも起こり得ることだといえますが、どう認識していますか。

○篠原企画担当部長 お尋ねの件は複数の分野にまたがる質問でございますので、局の施策を調整する立場からお答えさせていただきます。
 人はだれも日々の生活の中で、あるいは出産、子育てから高齢期までの生涯の各段階におきまして、病気になったり、失業したり、介護が必要になったりなど、何らかの社会的な支援を必要とする場面に遭遇する可能性があると思います。このようなリスクが想定されているからこそ、これに備えるための社会保障制度が整備されております。
 社会保障制度は、国民皆年金、国民皆保険といわれますように、医療保険や介護保険、老後の生活の基礎を支える年金など社会保険方式を基本としながら、すべての国民の医療や介護、年金などをカバーするように制度設計されております。
 こうした公的な社会保障を基本としながら、個々人が、例えば生命保険や貯蓄などを活用しまして、それぞれの努力、判断をもって、人生のさまざまな場面に対応していくものと理解しております。

○大山委員 だれにでも起き得ることなんだということです。もちろん、社会保障も制度は重要です。貯蓄だって、この人たちはあったけれども、もう使い果たしてしまったわけです。
 この夫婦が抱えている問題の一つ一つには、それぞれ専門的にかかわる担当者がいます。しかし、借金、二人の高額な医療費、頼りの息子の入院、周囲との関係が切れて情報が得られないと。そういう中で、家族だけで問題を抱え込めば判断を誤ります。
 問題がのしかかってきたときに、この夫婦は、ともに自分を犠牲にすることがまず浮かんだんでしょう。家族のきずなが強いということなので尊重されるべきではありますけれども、お互いをかばい合う関係が行き過ぎて治療がおくれていたら、家族が崩壊する危険がすぐそこにありました。夫婦の抱えている問題全体を受けとめて、解決への道筋を立て、当事者の気持ちをサポートしつつ、適切な手段を適切な時期に導入できるようにすることが重要だと思いますけれども、どうですか。

○篠原企画担当部長 先ほどもお答えしたとおり、現在の社会保障制度は、介護、医療、失業など、それぞれのリスクに応じまして、社会保険の仕組みが整備されております。さらに、最後のセーフティーネットといたしまして、生活保護制度も用意されております。
 また、東京都では、各区市町村におきまして、福祉事務所、地域包括支援センター、地域活動支援センターなどのほか、都独自のシルバー交番、子ども家庭支援センターなどにおきまして、生活上の課題も含めた相談支援を行ってきております。
 さらに、各区市町村におきます相談支援や見守りなど、地域の実情を踏まえました独自の取り組みに対しても、都は包括補助により支援しているところでございます。

○大山委員 社会保障制度があります、生活保護制度があります、本当にそれだけで大丈夫なのかというのが問題意識です。だからこそ、各地域で、シルバー交番や地域福祉コーディネーター、総合相談窓口が必要だということで、包括補助でやっているわけです。しかし、残念ながら、ごく一部の地域なんです。
 大阪府社会福祉協議会が実施している社会貢献事業というのがありますけれども、概要と成果について、福祉保健局としてどのように把握していますか。

○篠原企画担当部長 お話の社会貢献事業でございますが、大阪府社会福祉協議会の一部門であります老人施設部会が、協議会に加入する施設が拠出しました基金等を財源として、社会福祉法人が果たすべき社会貢献の一環として独自に実施している取り組みでございます。
 この取り組みでは、協議会に加入する特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームが、それぞれ社会福祉協議会の会費に上乗せして資金を拠出しておりまして、それを活用して設置した支援員が、ワーカーでございますが、総合生活相談等を実施している事業でございます。これは、社会福祉法人が社会福祉法人としての役割を果たし、取り組む社会貢献の典型的な事例でございます。
 大阪府社会福祉協議会の資料によりますと、平成二十一年度におきます援助数は七百六世帯でございまして、この事業の支援員が対応する事例は、主に市町村と市町村社会福祉協議会から寄せられているということだそうでございます。まずは、住民に身近な区市町村等において相談を受けた上で、その事例について、区市町村等と連携して支援していく仕組みになっていると理解しております。

○大山委員 大阪府社会福祉協議会と老人施設部会が実施している社会貢献事業です。この特徴というのは、施設に配置されているコミュニティソーシャルワーカーと社会福祉協議会の支援員がセットで生活困窮者のところに出かけていくアウトリーチを基本にしているソーシャルワークと、同時に、経済的援助という手段も持っているということなんです。
 老人施設部会が中心ですけれども、対象は高齢者だけではなく、若い人たちも多くなっています。また、困難をキャッチする場所をより多くする、面的にするということで、老人施設だけじゃなくて、最近は保育園で地域貢献事業を始めることにもなりました。悩んだときは保育園が力になりますというパンフレットなども出ているわけです。
 先ほど答弁された二十一年度の実績が七百六世帯とおっしゃっていましたけれども、これはごく一部の経済的援助の件数です。二十一年度、七百六件、二十二年度も七百六件です。
 社会貢献支援員の相談件数は、平成二十二年度で二千九百三十七件となっています。十九名の支援員と老人福祉施設のコミュニティソーシャルワーカーの人数は六百五十名近くになっているということなんです。早期に対応することで、結果的に医療費や生活保護費など社会保障費も抑えることにもつながっていると。
 私たちは、大阪府の社会福祉協議会に伺って、社会貢献事業について話を聞いてきました。それから、つい今週の月曜日、五日の日には、NHKがこの事業について、あさイチという番組で取り上げていました。それから、こういう社会貢献事業をもとにした「老後の生活破綻」、こういう本も出ています。
 次女と二人暮らしの七十代の父親、無職で無年金です。同居している次女の仕事の収入が唯一の収入だったわけですけれども、次女の仕事が不安定なわけです、収入が不安定なんです。また、今月から次女が体調を崩して、確実な収入が期待できなくなりました。先日、生活保護を申請しましたけれども、そのときの所持金が千円しかなかったんです。既にガスがとめられていました。食材もほとんどなくて、生活保護受給日までの生活費に困窮していました。二人の支援員とコミュニティソーシャルワーカーで、セットでそのお宅に行くわけです。光熱水費や家賃の滞納があるということも考慮して、今後の自立支援という観点から、金銭的支払いがあるものを残さない方が、それから調理能力もあって自炊した方が金銭的負担も軽減できるので、食材費と光熱水費として一万五千九百七十五円を支援しました。
 多くのケースは、今の食費がないというように切迫性があるものです。生保でも、長いと二カ月、早くても一カ月かかるため、今を助けることが必要なんだということなんです。
 大阪府の社会貢献事業で対応するケースでは、生活困窮に陥った背景は、失業、高齢、傷病、障害が多くて、だれに起こってもおかしくないケースだと思われるものが多く見られます。これは大阪府民だけではなくて、東京都民のだれに起こってもおかしくないことだと思いますけれども、どう認識していますか。

○篠原企画担当部長 先ほどもお答えしましたとおり、さまざまなリスクに対応するために、年金、医療、介護などの公的な社会保障が用意されております。
 社会保障制度は、大阪府民だけではなく、当然ながら都民も含めて、居住する地域に暮らすすべての国民に対応するように制度設計されているものでございます。
 なお、東京都では、住居を喪失し、不安定な就労等に従事している人などが、自立し、安定的な生活を送れるよう、生活支援、住居支援、資金貸付及び就労支援を一体的に行うTOKYOチャレンジネットという事業を実施しておりますほか、介護サービスに係る利用者負担の軽減については国制度よりも対象サービスを拡大するなど、都独自の低所得者への支援、配慮も行っているところでございます。

○大山委員 どう認識しているんですかと聞いているんですから、素直に答えてください。今の答弁だったら、まるで今の制度でどんなものにも、どんな問題が起こっても対応できるような答弁ではないですか。
 六月に東京都自身が出した国への要望でも、被保護者の抱える問題が複雑化し、福祉事務所の体制強化が必要だとされており、現状でも不備があることを東京都も認識しているのではないんでしょうか。
 困難を抱えている一人一人が、また幾重にも問題を重複して抱えています。社会貢献事業のコミュニティソーシャルワーカーと支援員の活動の特徴は、困っている方のところをまず訪問して、その生活状態をしっかり把握した上で、この課題を乗り切る方法を模索して、単に次への紹介だけではなくて、寄り添って、一緒に解決に向けて行動を始め、めどがつくまで何度も訪問して、解決に向けてともに歩むこと。どうしてもお金を伴う援助が必要なときには、コミュニティソーシャルワーカーの判断、施設長の決裁で経済的な援助を行っていく活動、つまり、みずから解決の手段を持った相談活動といえます。
 社会貢献事業では、現に生活困窮状態に陥っているかどうかを重視しながら総合生活相談に対応していて、対象者を高齢者とか障害者とか、ひとり親とか子どもとか難病患者だとか、一切限定していません。対象者を限定しないことによる最大の効果は、複合する要因によるさまざまな生活困窮状態に対応できること、つまり、相談支援活動のワンストップ化を実現できることだと述べていました。
 例えば、離婚して、母子家庭となって、失業し、借金を抱え、わずかな年金を受給して暮らす要介護状態の親元に身を寄せて、生活困窮状態に陥って、食事もまともにとることができない世帯であれば、介護事業所、ハローワーク、行政の児童福祉の担当課、それから法テラス、弁護士、司法書士、生活保護担当課、年金事務所など、さまざまな機関と連携、調整を図りながら支援する必要があります。
 しかし、こうした困難な状況で各機関に適切に相談することは困難です。社会貢献事業では、即応性を持って、場合によっては公的制度の枠を超えた柔軟な支援が行われます。また、申請窓口に同行するなど、相談を受けたコミュニティソーシャルワーカーや支援員が最後まで責任を持って対応することによって、生活相談業務の中でしばしば起こる、たらい回しを防ぐことができます、こう話していました。
 東京都民だったら、この家族はどういう経過をたどって生活を立て直していくことが予測されるんでしょうか。

○小林生活福祉部長 生活困窮に至る原因はさまざまでございまして、ご質問のような、仕事、介護、育児、借金など、複数の生活上の課題を有する世帯に対しましては、その内容に応じまして、さまざまな機関が連携して対応しているところでございます。
 お話につきましては、その詳細な内容が不明でございますので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、例えば、その世帯について最も緊急度の高い課題が経済的な困窮であるような場合につきましては、福祉事務所が相談に応じ、生活保護を初め、その世帯が利用可能な制度により当面の対応を行うことになろうかと思います。
 また、子どもや要介護状態の方の状況によりましては、地域包括支援センターや児童福祉の担当部署等が相談先になり、介護サービスや保育、子育て支援サービスの利用について案内を行うことになろうかと存じます。
 このほか、借金等の法律上の問題につきましては、住民相談の弁護士や法テラスなどへの相談を勧めることが考えられます。
 このように、利用可能な制度やサービスを活用して生活の安定化を図りつつ、自立した生活に向け、ハローワーク等により仕事を探すことになるものと想定されるところでございます。

○大山委員 連携してといいますけれども、今答弁されたことだけでも、さまざまな機関があるわけです。母子家庭となって、失業して、借金を抱え、わずかな年金を受給して暮らす要介護状態の親元に身を寄せて、生活困窮状態に陥って、食事もまともにとることができないという世帯ですよ。そうした状況では、相談すること自体が困難なんです。
 社会貢献事業がかかわった、当時の--いろんな方がかかわっているわけですけれども、いろんな方の声が出ていましたが、本人の発言というのがあって、例えば、人間は追い込まれてきたら考えることが全然違う、冷静に判断ができなくなる、そういう声もありました。子どもを抱え、借金を抱え、食事もまともにとることができないと。まず訪問して、その生活状態をしっかり把握した上で、多くの課題を乗り切る方法を一緒に模索して、寄り添って、一緒に解決に向けて行動を始め、めどがつくまで何度も訪問して、解決に向けてともに歩む、社会貢献事業のようなものが重要なのではないのでしょうか。
 社会貢献事業は、福祉保健局でいえば、生活福祉部にも高齢社会対策部にも少子社会対策部にも、それから障害者施策推進部にもかかわる事業です。大阪府社協の方は、地縁といっても、地縁がなくなっている大都市こそ切実に必要ではないですかとおっしゃっていました。神奈川県でも今度始めるんですよ、そうおっしゃっていました。
 社会貢献事業がかかわった当時の生活状況について、本人の発言があります。死ぬか生きるか、死のうかな、生きていてもつまらないというような状態だった、仕方なく絶食して、このまま死んでもええわと思っていた、元旦から五日まで何も食べずに横になっていましたと。お金がなくて、その日食べるものもないわけです。しかし、大阪では、社会貢献事業で、福祉事務所からの連絡もあるし、民生委員さんからの連絡もあるしということで、いろんな経路でかかわることができて、何とか生活を再建していくことができているわけです。社会貢献事業がなかったら、亡くなっていたんじゃないかという方も大勢いるわけです。
 私はこの話を聞いたときに、いつも予算特別委員会のときに毎年出してもらっている東京都監察医務院における検案数のうち、栄養失調による死亡者数、つまり、餓死者の推移を思い出していました。九九年度から見ると、しばらくは年間三十人前後で推移していましたけれども、二〇〇八年度から増加傾向になって、四十三人、五十九人、二〇一〇年度には五十五人、昨年度は六十人になっていました。
 九九年度から二〇一一年度までに、四百七十人もの方が、家にいながら、いわゆる餓死をしている。どういう経路で生活困窮に陥ったかはわかりませんけれども、何も食べるものもなく、亡くなっていく。社会から孤立し、一人で亡くなるわけですが、この事態をどう認識しているんでしょうか。食べるものもなく、社会から孤立して亡くなるなどということは、あってはならないと思いますけれども、福祉保健局はこのような事態をどうなくしていこうと考えているんでしょう。

○小林生活福祉部長 ご質問にありました東京都監察医務院の資料の数値は、栄養失調による死亡者を示したものでございます。死亡に至った要因は、病歴や生活実態など、事例ごとにさまざまなご事情があると思われ、生活困窮に限った数値というわけではございません。
 お話のあった、生活困窮に伴い、社会から孤立した場合への対応についてでございますけれども、都では、地域で孤立した状態にある方を把握し、必要な支援につなげるために、関係局、機関等との連絡連携体制の強化を図るよう、区市町村に働きかけるとともに、ライフライン事業者を含みます関係機関にも広く協力を依頼しているところでございます。

○大山委員 ライフラインの事業者との連携というのも、それは必要、重要です。
 どういう状況であるかというのは、監察医務院にも確認しましたけれども、調査はしていないんです。どういう状況であったのかとか、水道やガスや電気がとまっていたかとか、そういうことは調査はしていないんです。その要因に応じて、各種制度によって対応しているとおっしゃっていましたけれども、機能していたら餓死などしなくてもよかったんじゃないんでしょうか。
 社会貢献事業は、大阪府内全域の老人福祉施設が取り組んでいますから、府内すべての区市町村で生活支援対応が可能です。経済的援助についても、これまでにすべての市区町村での実績があります。市区町村エリアを超えた組織である都道府県社協だからこそ、より専門的かつ広域的な生活困難者支援活動を実践することが可能であると考えられます、こう考察しているんです。
 大阪府社会福祉協議会が二〇一一年に出した報告書では、DVや虐待で避難が必要な場合には、自治体の枠を超えた対応が必要であり、精神的に不安定な状態にある当事者を継続的に支える必要があるということの意義を述べているわけです。
 広域自治体としての東京都の役割は共通しているわけですから、都でもこうした取り組みを行うことが必要だと思いますけれども、どうですか。

○篠原企画担当部長 お話の社会貢献事業でございますけれども、これは社会福祉法人でございます大阪府社会福祉協議会の老人施設部会が、加入する施設が拠出した基金等を財源として、社会福祉法人が果たすべき社会貢献の一環として行われているものでございます。大阪府の事業とは別に、独自に実施している取り組みでございまして、そのことから、必ずしも自治体が担う役割ということにはならないと認識しております。
 都民のさまざまな相談には、各区市町村におきまして、福祉事務所、地域包括支援センター、地域活動支援センター等で対応しておりますほか、都独自のシルバー交番、子ども家庭支援センターなどで対応できるよう、都として支援しております。
 また、繰り返しになりますが、各区市町村における独自の相談支援や見守りなどにつきましては、都の包括補助事業により支援しているところでございます。

○大山委員 まるで府は全く関係していないと、社会福祉協議会が勝手にやっているんだ、そんな答弁じゃないですか。だから東京都も関係ない、そんないい方ですよね。
 しかし、大阪府社会福祉協議会の六十周年記念誌というのが出ていまして、この社会貢献事業、福祉の生活レスキュー事業が始まるという項目で、大阪府とも協議を重ね、平成十六年度に創設したとの記述があります。その大阪府との協議というのは何かと--大阪府の社会福祉審議会で審議を重ね、答申を出したんです。その答申をもとにして、大阪府地域福祉支援計画として行政計画になりました。
 また、コミュニティソーシャルワーカーは市町村と社会福祉施設に配置されて、支援員は社会福祉協議会に配置されました。橋下知事になるまでは、支援員は十分の十、市町村のコミュニティソーシャルワーカーは二分の一を府が補助していました。
 重要だと思うのは、特に、社会的孤立や経済問題を抱える生活困窮者支援を進めていくためには、市区町村内での身近な生活支援のネットワークをベースとしつつ、市区町村だけではカバーし切れない問題に対して、都道府県域でのセーフティーネットを重層的に張りめぐらすことが極めて重要ということなんです。
 このように、総合的な対応ができるのは、府の地域福祉支援計画があり、市町村地域福祉計画がきちんとあるからではないでしょうか。既に四十の道府県が策定しています。
 社会福祉法によって、市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画を策定することになっています。二〇一〇年八月には、高齢者の所在不明問題が発生したことを受けて、改めて厚労省は、地域福祉支援計画の策定及び実施について通知を出して促進を促しています。都は、それでも地域福祉支援計画をつくろうとしませんが、どうして策定しないんでしょうか。

○梶原次長 今までのお話は、大阪における事業をご紹介しながら、いろいろご主張、ご意見をいって、やりとりをしてまいりました。
 これを私なりに解説といいますか、解釈をいたしますと、現在の社会保障制度というのが、例えば介護だとか医療だとか、それぞれの障害者だとか高齢者だとか子どもだとか、そういうふうにいろいろ分かれていると。ただ、困窮している人、あるいは困っている人というのは、その問題を複層的に抱えている。それをどこが対応するのか。ワンストップで受けるのか、それとも別の仕組みでやるのか。これはいろんなやり方があるんだというふうに思っています。
 東京都が今進めているというのは、区市町村を中心とした、そういう区市町村の福祉事務所、あるいは区市町村の中には障害のセクションもあれば、子どものセクションもある。したがって、一義的に区市町村が相談窓口になることによって総体的なサービスを進めていこうと、こういう考え方でやっていると。それを、先ほどから、どういうふうに、実際に生活に困窮している、あるいは真に福祉サービスが必要な人たちに必要なものにつなげるかという考え方だというふうに思っています。
 それから、じゃ、東京都における社会福祉協議会が、同じような考え方なり、同じようなことをやっていないのかということになれば、例えば福祉サービス利用援助事業であるとか、あるいは地域福祉コーディネーターという形でそれぞれの区がやっている。これは単一の仕方で、例えば東京都と大阪が全く同じやり方をやる必要はない。いかにその利用者なり必要としている人たちにサービスを届けるか、その手法の違いが一つあるというふうに思います。それをもって、地域福祉支援計画をつくっていないからそういうことができないんだというのが、今のご質問だというふうに思います。
 社会福祉法でこの地域福祉支援計画という規定が盛り込まれたのは、ちょうど国が社会福祉基礎構造改革ということを進めていた平成十二年の六月であります。このときに地域福祉支援計画ができたわけですけれども、その前から、都は、昭和六十一年に社会福祉審議会から答申を受けて、地域福祉推進計画というのをつくってまいりました。それで、策定することが必要であると六十一年に受けて、平成三年一月にこの計画を策定し、平成九年四月にはその改定を行いました。国がこの計画をつくる前から、既にこの地域福祉推進計画をつくってきたわけです。
 じゃ、なぜその後、国の法律ができたからつくらなかったと。これこそ国の縦割りであって、この後、国は、介護保険法に基づく高齢者保健福祉計画をつくりなさい、それから障害者自立支援法、障害者総合支援法では障害者の計画をつくりなさい、次世代育成支援計画では子どもの計画をつくりなさい、それから、これは社会・援護局の地域福祉課ですが、地域福祉支援計画をつくりなさいと。いっぱい計画をつくれば、本当に真に必要な計画となるのかということが、私どもの考えが根っこにあります。
 その上で我々は、平成十二年十二月に、社会福祉基礎構造改革に沿った福祉改革推進プラン、あるいは十四年二月に、TOKYO福祉改革STEP2を策定し、十八年二月には、福祉・健康都市東京ビジョンをつくったわけです。それから、その後にも、先ほどいいました高齢者保健福祉計画、障害者計画、障害福祉計画、それから次世代育成支援計画、保育計画、ひとり親家庭自立支援計画、それぞれの分野においてつくっています。
 これがまた縦割りだといわれるかもしれませんが、この計画それぞれに共通しているのは、区市町村への支援、あるいは民間団体との協働、地域福祉、こうした考え方はすべてこの考え方に盛り込まれておりまして、私ども、地域福祉支援計画を改めて策定していないということでございます。

○大山委員 長々と答弁していただきましたけれども、大阪--今、いみじくもおっしゃったように縦割りだと。その分野ごとにきちんと深めていくことは重要ですよ。各分野がしっかりしていること、それから、あとは、今、住民が抱えている問題が一つのところで完結するわけじゃなくて、複雑に重層的に重複して抱えている人たちに対してどうアプローチするか、それから、どう解決していくかということなんです。それは東京都だけでできることでもないし、区市町村だけでできることでもないわけです。
 大阪のように、そのままやりなさいとだれがいっていますか。謙虚にこういう実践を学ぶことが必要じゃないんでしょうか。東京都の社会福祉協議会だって、社会福祉コーディネーターを養成したりしていますよ。それは重要なことです。
 東京都の社会福祉協議会にも聞きました。この大阪府社協の事業どうですかと。評価できます、そうおっしゃっていました。
 だから、やはりきちんと学ぶことが必要なんじゃないかということです。さっきおっしゃった計画、それぞれ、東京都福祉改革推進プランは二〇〇〇年ですよね。TOKYO福祉改革STEP2は二〇〇二年、それから福祉・健康都市東京ビジョンは二〇〇六年です。これらは福祉や保健医療の各計画を策定、推進する基本方針です。地域福祉支援計画とは、そもそも性質が違うものです。二〇〇六年の計画では今の状況に対応、対処できないということです。
 国が二〇一〇年の八月に通知を出したわけですけれども、国がいっているように、二〇一〇年八月の高齢者の所在不明問題は東京都内でのことです。それを受けて、見直しはしたんでしょうか。福祉・健康都市東京ビジョンには、孤立死対策などはまともに触れられてはいません。ことしに入って、三月の厚生委員会で、立川市で、二月には障害児とお母さんが、それから三月には高齢のお母さんと娘さんが亡くなっているのが、死後一、二カ月たってから発見されるという事例を挙げて、一つの家族が抱えている問題は一つではなくて、同じような状況で家族や近親者が介護、看護、療育しているケースが多くて、高齢、障害などの分野で切り分けるのではなくて、総合的な対応を求められていることを求めましたけれども、そのときも、今あるそれぞれの事業を答弁するだけでした。
 それなら伺いますけれども、立川のケースなど、東京都は市と協力して、これらのケースについて調査検討したんでしょうか。そして、調査検討したというんだったら、どのような教訓を引き出したんですか。やっていないならやっていないといってください。

○梶原次長 立川の事件というのもありました。他県でも同様に、自宅の中で亡くなっていたことが発見されたと。それに基づいて、今、委員おっしゃったように、国の方は地域福祉の計画に基づいて新たにという通知を出したのも、私どもは知っています。
 もちろんそれぞれの事情という部分については、どういうことが必要であったか、立川の件であるならば、立川市の検証、それから、あれはたしか住宅供給公社の事例だったと思いますけれども、そういうのも含めて検討がなされ、我々としては、そうした検討を踏まえて、見守りの強化であるとか、具体的な施策の強化、それから区市町村の包括を使った、高齢者だけではない見守りの支援の強化策というのを練ってきているということでございます。

○大山委員 やはりきちんと一つ一つの事件といいますか、孤立して亡くなってしまう、この最悪のケースというのは、氷山の一角だと見るべきじゃないんでしょうか。その一角に出てきたケースの背景に、やはり多くの同じようなケースというのがあるわけです。ですから、やはりきちんと、その一角に出てきたケースについて調査して、検討して、そして教訓を引き出す、これが重要なんじゃないんでしょうか。それもせずに、見直しもしない、今の計画で十分だなどというのは傲慢ではないかと思います。
 質疑してきたように、それぞれの担当があっても、困難を抱えた家族の全体像を把握して、その困難を一緒に解きほぐしていくことが必要だし、人材育成を含めて東京都の役割です。高齢、障害、子ども、難病、貧困、ひとり親など、分野を分けた計画はもちろん必要ですけれども、それだけでは不十分で、とりわけ生活の困難を重複して抱えてしまうケースにどう対応するか。総合的な対応ができるように、地域でどう孤立させずに支えることができるか。東京都の役割を明確にして、区市町村と協力していくためには、東京都の地域福祉支援計画をまずは策定することが求められていると思っています。
 続いて、健康づくりです。時間がない。あと八分ぐらいね。じゃ、予防接種いきましょうか。予防接種について質疑します。
 予防接種をすることによって、健康を守ることができたり、流行を抑えたりすることができるわけですけれども、それだけに安全が第一でなければならないと思っています。
 第一は、予防接種の自治体間の相互乗り入れについてです。
 予防接種は、子どものふだんの様子を知っているかかりつけの小児科医で受けることが勧められていますけれども、それはアレルギーや持病のある子どもは当然のことですが、健康なお子さんでも、安全面から見ても、かかりつけの小児科で接種してもらうことは重要だと思いますけれども、どうですか。

○清古感染症危機管理担当部長 健康な子どもの場合も、ふだんから、接種を受ける子どもの健康状態等をよく知っているかかりつけ医で接種を受けることが望ましいと考えます。

○大山委員 隣の区や市と隣接している地域ですと、かかりつけ医は自治体が違うことも多いわけです。隣の市だとか隣の区だとか。現在、定期予防接種や高齢者のインフルエンザなどだと、自治体間での相互乗り入れが進んではいますけれども、他の自治体では接種できないところもあります。全国的には、二〇一〇年の日本小児科医会の調査では、四十七都道府県中二十九県で広域化ができていることがわかっていますけれども、東京は一部できているという自治体に入っています。
 二〇〇三年の第四回定例会の我が党の文書質問に、住民が居住区域外でも接種を受けることができる都内全域での広域的なシステムの構築については、都としても、住民の利便性への配慮や区市町村の意向も踏まえ、検討課題としていきます、こう答弁していますけれども、その後どうなったでしょうか。

○清古感染症危機管理担当部長 定期予防接種は、予防接種法上、区市町村の自治事務とされておりまして、近隣自治体との間で相互に接種を受けられるようにする取り決めは、自治体間の調整によるものと考えます。
 二十三区のほか、多摩地域においても、既に幾つもの自治体間で居住地以外の地域でも相互に接種が受けられるようになっております。
 都は、区市町村の意向を前提として、協議、検討に加わることとしておりますが、現在のところ、区市町村から、都内全域において相互に接種を可能としたいという意向は寄せられておりません。

○大山委員 平成二十年の厚労省所管の第二回麻しん対策推進会議でも、東京都の代表の人は、ぜひ麻疹も含めて、少なくとも都道府県内での相互乗り入れを推進することが、接種環境を整えるには大事だと思っていると発言しているぐらいですから、東京都も率先して呼びかけていっていただきたいと思います。
 費用負担についてです。
 二〇一〇年の報告ですけれども、経済的な困難と、それから予防接種の率というのが、予防接種にも経済的な陰があるということなんですが、任意接種のヒブワクチン、それから小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん予防ワクチンなどの助成が始まっていますけれども、子宮頸がん、ヒブ、小児用肺炎球菌の対象者一人当たりの接種回数と助成内容を見ると、全額助成している自治体で、一人当たりの接種回数が多い傾向が見られます。接種するとかしないとかは保護者の判断ですけれども、接種したいけれども経済的な理由で接種できないというようなことがあってはならないと思っていますが、どう認識していますか。

○清古感染症危機管理担当部長 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業は、現在、国の臨時特例交付金を原資として基金を設置し、国の要綱に基づいて、区市町村を実施主体として実施されております。
 費用負担の割合は、公費でカバーする範囲を九割とし、国と区市町村がそれぞれ二分の一ずつを負担するものとされ、実費徴収することも可能とされております。保護者の費用負担を求めるかどうかは、実施主体である各区市町村の判断によるものと考えます。

○大山委員 経済的な困難で、受けたいけれども受けられないということがあってはならないですよねという認識を聞いたわけですけれども、まともに答えてもらいたいと思いましたけれども、もう時間もありませんので。
 国の要綱で九割が公費負担、それで国が二分の一、区市町村が二分の一です。あと一割分を東京都が出せば無料で受けられる、無料で接種できるわけです。肺炎球菌ワクチンでいえば、東京都以外の千四百十一自治体、つまり東京以外の道府県では約九割の自治体が自己負担なしということなんです。東京都内の無料化率は二一%です。経済的な理由で、接種しようとする人が接種できないことがないように、都として責任を持つべきだと思っています。
 ちょうど、きょう来ていた保険医新聞ですけれども、やはり接種率の向上においては、隣接自治体との接種事業相互乗り入れや接種勧奨方法など、さまざまな要因があるが、各ワクチンの規定接種回数を満たすためには全額助成が大きく寄与しているといえる、そういうデータに基づく記事です。ですから、ぜひ東京都もきちんと責任を果たしてもらいたいということを申し述べて、終わりにします。

○大津委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十三分休憩

   午後三時四十分開議

○大津委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○くりした委員 私からは、まず、自殺者対策について伺います。
 日本は世界第二位の自殺大国でありまして、先ほど質疑の中でもございましたけれども、都内でも例年約二千五百人から二千九百人の方々が、命をみずから絶っているという現状がございます。交通事故の六倍という数でありますが、これは極めて深刻な状態であり、自治体としても、この対策に力を入れていかなくてはいけないことは、だれもが認めることであると考えます。
 総合対策については既に質疑がございましたので、その中で比較的新たな取り組みとして、自殺相談ダイヤルについて、私からはお伺いをしたいと思います。
 自殺相談ダイヤルは、東京都が特定非営利法人メンタルケア協議会に委託をして行っている、自殺に関する総合相談窓口であり、平成二十二年度から事業を行っていただいているわけでございますけれども、この自殺相談ダイヤルについて、平成二十三年度の実績について、まずお伺いをいたします。

○高橋保健政策部長 都では、平成二十二年四月より、相談者の悩みを受けとめ、問題に応じ必要な相談機関へつなぐなど、自殺に関する総合相談窓口として、自殺専門の電話相談を設置しております。
 平成二十三年度においては一万二千五百六十二件の相談があり、このうち四二%が自殺したいと考えている方からでございました。

○くりした委員 都では、ほかにもさまざまな電話相談窓口をやっておりますけれども、一年間で約一万二千件というこの数字は、そういった窓口事業と比べても、かなり多い数じゃないかと思います。
 また、その中の約四二%が自殺をしたいと考えているという方でありまして、こういった、自殺に至るような深刻な悩みのはけ口というニーズは、そもそも潜在的に非常に多かったんじゃないかというふうに感じております。
 お話を伺うと、実際に、自殺直前にこの窓口にお電話をかけてくるケースもあるということで、窓口の対応が、その後、その方の行動に大きく影響することもあるのではないかと思います。
 対応が非常に大切なわけでありますが、東京都自殺相談ダイヤルでは、自殺したいと考えているという相談者に対してどのような対応をしているのか、お伺いをいたします。

○高橋保健政策部長 まずは、相談者の自殺したい気持ちを受けとめて話を聞くことで、自殺を思いとどまっていただくよう努めます。
 その上で、医療機関や保健所、福祉事務所等の専門機関を紹介いたします。
 さらに、必要に応じまして、本人の了解を得て専門相談機関等へ連絡をとり、仲介を行っております。
 また、生命の危険が心配される緊急の場合には、自殺を食いとめるため、相談者の連絡先等を尋ねて、警察や消防署等へ通報も行っております。

○くりした委員 この自殺相談ダイヤル以外にも、自殺の相談窓口というのは幾つかあるわけでありますけれども、そういったサービスに比べて、どういった問題に対してはどういった対応策があります、どういった機関と連携をすれば、その方の悩みに応じることができるかということを、判断を正確に行うことができるということが、やはり多くの機関と強固なつながりを持つ、この東京都の仕組みとしての強みではないかというふうに感じております。
 相談員の方々には、やはり高度な判断力が求められるわけでありますが、その強みを生かすために、高度な専門性を持つ相談員の方々の育成に力を入れていただきたいというふうに思っております。
 先ほど、早坂理事から質疑の中でございましたけれども、自殺対策に特効薬はないと、私もそのように思います。そして、その理由の一つとしては、やはり自殺を潜在的に考えている方々にリーチすることがなかなか難しいと。手を挙げていただけるわけでもないし、そういった対策を、いかにそういった方々に効果的に届けていくかということが、私は一つの大きな課題であるというふうに思っております。
 また、そういった方々は人間関係から隔絶をされた環境に追い詰められていたり、あるいは、近くに人がたくさんいても、なかなか打ち明けられないというケースも多いというふうに聞いております。
 ゆえに、そういった方々に対するよりどころとなり得る当事業については、とりわけ私は大きな期待をしております。今後さらに充実をさせていただけるようお願いして、次の質問に移ります。
 次に、低所得者支援施策についてお伺いをいたします。
 長引く経済の停滞もあり、低所得者の数は増加の一途をたどっております。生活保護の受給者も記録を更新しているという、大変、残念な状況でありますけれども、本当に支援を必要としている生活困窮者の方々に対する施策が大切であるということについては、やはり疑いの余地はないと思いますけれども、やはり国や自治体の財政環境が悪化をしてくる、これに伴って、低所得者支援のあり方について、今、大きな注目が集まっているという現状があると思います。
 最近では、その代表であります生活保護をめぐる事件も数々発生し、法制度のあり方についてもさまざまな議論がなされているということは、皆様ご承知のとおりであると思います。
 国も制度の見直しについて社会保障審議会で検討しているとおり、制度本体の見直しに関しては、やはり国が責任を持って行うものであると思っておりますので、今回は、東京都がそれに加えて実施をしている、生活保護受給者に対する独自の事業に関してお伺いをいたします。
 現在、都では、国の生活保護制度とは別に、独自の被保護者自立促進事業を実施しているということでありますが、主な事業のメニューと平成二十三年度の実績についてお伺いをいたします。

○小林生活福祉部長 被保護者自立促進事業は、区市等が実施主体となりまして、被保護者の自立に向けた支援を行う際に必要となる経費のうち、生活保護制度やその他の法律、施策の対象とならないものにつきまして、東京都が補助するものでございます。
 主な項目といたしましては、就労支援、社会参加活動支援、次世代育成支援などがございます。さらに、各区市が創意工夫により実施する事業も対象としてございます。
 平成二十三年度は、都内の全区市におきまして、この事業を活用した取り組みが実施されてございます。
 平成二十三年度の実績額は、合計約五億三千八百万円となってございます。

○くりした委員 私もメニューの詳細というのを拝見させていただいたんですけれども、本当にたくさんのメニューがあります。
 例えば、就職活動に必要なスーツを支給する、そういったメニューもありまして、それは昨年度でいうと約九百人の方が活用されていると。低所得者の方々の目線に立っていえば、それらの方々に本当に必要な支出を網羅的にサポートする形になっていて、本当にありがたい制度だというふうに思っております。
 これについては、他の自治体と比べても、かなり優遇されているんじゃないかというふうに思っておりますけれども、東京都がこういったことを実施するとした経緯について、次はお伺いをいたします。

○小林生活福祉部長 本事業は、平成十七年度から生活保護制度に自立支援プログラムが導入されたことに合わせまして、昭和三十四年から続いてきた生活保護世帯への見舞金支給事業につきまして抜本的に見直しをいたしまして、被保護者の自立支援機能をより重視した制度となるよう再構築したものでございます。
 また、平成二十四年度からは、区市等が地域の実情により柔軟に活用できる制度となるよう、この事業を地域福祉推進区市町村包括補助事業に統合いたしました。

○くりした委員 かつては見舞金という形で、かなり大ざっぱにお金を出していたのを、やはりそれらの目的に分けて、ちゃんと、きちんとチェックをして支出するようになったということでありますので、これは非常に評価できるんじゃないかというふうに私は思っておりますけれども、この生活保護関連については、もちろん、それを本当に必要としている人たちにそれが配られるということは、これはだれしも認めるところであるとは思うんですけれども、やはりポイントは、その人が、本当にそれが必要な人なのかどうかというチェックは国や各自治体もしっかりと気にして、制度構築、そしてチェックを行っていかなくてはいけないというふうに思っております。
 これらのメニューについては、東京都が独自に行っているということでありますので、責任を持って、とりわけ注意深く行っていただきたい。そういうふうな徹底についてお願いをして、次の質問に移らせていただきます。
 低所得者対策の一環であります受験生チャレンジ支援貸付事業についてお伺いをいたします。
 低所得者世帯の世代間における格差の連鎖、これを防ぐという視点で、この取り組みを行っていただいているというふうに認識をしておりますが、この事業の概要と平成二十三年度の貸付実績についてお伺いをいたします。

○市川生活支援担当部長 受験生チャレンジ支援貸付事業は、将来の自立に向け、意欲的に学習に取り組む低所得世帯の子どもたちが、高校や大学の受験にチャレンジする機会が得られるよう支援することを目的としております。
 具体的には、高校三年生、中学三年生がいらっしゃる一定の所得以下の世帯を対象に、子どもたちの学習塾の受講料や、高校、大学の受験料の無利子貸付を行っているものでございます。
 平成二十三年度の貸付実績といたしましては、合計で七千六百七十五件でございます。

○くりした委員 約七千六百件という、これはお聞きをするに延べと、同じ方がさまざまなメニューを使うと、それも何件かとしてカウントされる、そういう形で数えていただいているということでありますが、それを差し引いても、かなりの数の方々に、この制度を使っていただいているかと思います。
 平成二十年度から始めた事業ということでありますので、まだ新しい事業でありますが、かなりの勢いで浸透してきているのではないかと思いますけれども、既に四年間ということで、多くの学生にこの支援を行ってきたと思います。
 この事業のこれまでの効果として、都は、どのようなものがあったと認識をしているのか、次にお伺いをいたします。

○市川生活支援担当部長 この事業は平成二十年度から開始しておりますが、年々利用実績が伸びてきておりまして、平成二十三年までの間に一万九千件を超える貸し付けを実施しているところでございます。
 貸付事業により支援を受けた子どもたちの約九割が高校、大学等への進学を果たしておりまして、また、この事業を利用したことで、子どもの学習意欲が向上した、成績がよくなったとの声も寄せられているところでございます。

○くりした委員 今、お答えをいただいたように、多くの学生たちがこの制度に助けられて、そして、進学していったのではないかというふうに私も思っております。
 この事業がとりわけ好評となっている理由の一つとして、学校に入学できた場合等には、貸し付けられた費用の返済が全額免除されるというふうになっていることが挙げられると思います。
 入学した場合に償還が免除される仕組み、この償還免除の実績について、次はお伺いをいたします。

○市川生活支援担当部長 本事業におきましては、希望した学校に入学を果たすなど一定の要件を満たす場合には、貸付金の償還を免除する仕組みといたしております。
 これは、低所得世帯の子どもたちが、高校や大学への進学という目標に向かって、より一層意欲的に取り組むことを促すものでございまして、事業を利用した方の約九割が償還免除を受けております。

○くりした委員 約九割の方々のケースにおいて償還が免除になっているということでありますけれども、免除については、入学、進学が認められた場合のほかにも、進学に対する努力が認められた場合ということも含まれると、その対象になるというふうに伺っております。
 償還免除に関しては、インセンティブとしても働く一方、やはりこの審査をしっかりとやらないと、生活保護と同じく、制度対象外の都民の方々からの批判を受けかねないというふうに、私は危惧をしております。やはり、この償還の対象の線引きについては、客観的な指標をもって免除するか否かということを判断していかなくてはいけないのではないか、私はこのように思っております。
 ぜひ、その点についても気をつけて取り組んでいただけるようお願いをして、次の質問に移ります。
 同じく低所得者対策の一環として行っている、理容師資格取得促進事業についてお伺いをいたします。
 この事業は、一定所得以下の世帯の方への就労支援の一環ということでやっていただいているということでありますが、この理容師資格取得促進事業の概要と今年度の予算額についてお伺いをいたします。

○市川生活支援担当部長 この理容師資格取得促進事業は、意欲がありながらも低所得から抜け出せない世帯の方々が、将来に向けて安定した生活を営むことができるよう支援をすることを目的としてございます。
 自立した生活に向けましては、資格を取得し、これを活用することが有効でありますことから、東京都では、これ以外にも、介護ヘルパーなどの資格取得の支援も行ってきてございます。
 また、理容師は学歴を問わないということもございまして、意欲があれば取得可能な資格であり、資格の取得が着実に就職につながっております。
 こうしたことから、本事業では、理容師の資格取得に必要な授業料や教材費等の費用の支援を行っておりまして、二十四年度の予算額といたしましては、五千二百六十四万一千円となってございます。

○くりした委員 年間約五千万円の予算で、二学年、通信、通学を合わせると八十名の方々に対して費用免除を行っているというふうなお話も、私、お聞きしましたけれども、規模としてはそれなりのものになっているのではないかというふうに思っております。
 ご答弁にありましたとおり、手に職をつける、就職をするという意味では、理容師の育成をサポートするということの意味合いも理解できないわけではありませんけれども、同様の目的で、それ以外の資格取得に対する支援を望む低所得者の方々もたくさんおられるんじゃないかというふうに思っております。
 かつて、東京都が理容学校を経営していて、現在、それを経営する理容関連の組合とも、やはり連携がしやすいというふうなお話も聞いておりますけれども、それ以外の資格取得に対するニーズも勘案して、資格取得全体の支援施策全体のバランスをとっていただけるようお願いをして、次の質問に移ります。
 次に、障害者支援施策についてお伺いをいたします。
 東京都においては、障害を持っておられる方々に対してのさまざまな支援を行っていただいていると思いますが、その中でも特に、そういった方々が健全な生活を送るために必要なのが雇用条件の整備だというふうに私は思っております。
 都内の福祉施設においては多くの障害者の方々が勤めていると思いますが、作業に従事をして、そして得られる工賃は決して高くはないというふうに聞いております。地域での自立生活や将来の設計を展望するためには、福祉施設での工賃水準の向上に向けた取り組みが大変重要であるというふうに思っております。
 そこで、まず、都内福祉施設における障害者の工賃の現状についてお伺いをいたします。

○山岸障害者施策推進部長 都内の福祉施設の利用者に支払います一人当たり平均工賃月額について、平成二十二年度の実績は一万四千二百八十五円で、二十一年度実績の一万三千九百五十円に比べ、二・四%向上いたしました。
 なお、全国平均は、二十二年度が一万三千七十九円、二十一年度が一万二千六百九十五円で、いずれも都の実績の方が高くなっております。

○くりした委員 都は、ほかの自治体に比べても比較的高いということではありますけれども、やはり月に一万円余りということであれば、我々のふだんの生活に照らし合わせてみても、自立生活は極めて難しい上に、よりよく働いて、そして、よりよく稼ぐというインセンティブを感じるという意味では、道のりは大変険しいんじゃないかなというふうに思っております。
 実際に国においても、この問題について、工賃倍増五か年計画という形で、平成十九年度からこれを大幅に引き上げていくという方針を出したわけでありますけれども、これはなかなか結果を出せていないというのが現状であります。
 自治体においても、この問題については大きな課題として取り組んでいかなくてはいけないというふうに思いますが、都においては、やはり生活をするに当たっての物価水準も高く、他の自治体と比較をしても非常に重要な問題なのではないかというふうに思っております。
 実際に、障害者の工賃アップに向けて、都は従前から問題意識を持ってきていただいているとは思いますけれども、どのような取り組みを行っているかお伺いをいたします。

○山岸障害者施策推進部長 都は、本年六月に東京都工賃向上計画を策定いたしまして、福祉施設の経営努力、創意工夫を促し、工賃アップに向けた取り組みを行っております。
 今月から六回にわたって開催いたします工賃アップセミナーでは、工賃アップの成功事例の紹介、自主製品販売や軽作業等、業務の特性に応じたきめ細かな取り組み手法に関する業態別の研修等を実施いたします。
 また、生産性の向上に取り組む福祉施設の設備整備に対し補助を行うとともに、販路拡大のために共同受注等を進める区市町村の取り組みを、包括補助を通じて支援しております。
 今後とも、区市町村と連携しながらこうした取り組みを進め、福祉施設の工賃アップを支援してまいります。

○くりした委員 障害者の方々の工賃アップと一口にいいますが、最終的にそれを行っていくためには、やはり、そのプロセスとして、福祉施設がおのおの効率化を進めて、そして、より多くの作業を受注することが必要になってくるというふうに思っております。それを後押しするという目線で、今おっしゃっていただいたような施策に取り組んでいただいているんだというふうに思っておりますけれども、福祉施設を利用する障害者が、働くことの喜びや達成感を得ながら地域で自立した生活ができるように、ぜひ今後も力を入れて取り組んでいただきたいと要望して、次の質問に移ります。
 最後に、医薬品等の広告に対する監視指導についてお伺いをいたします。
 健康志向の高まりの中で、テレビやインターネットといったさまざまな媒体を通じて医薬的な効能、効果をうたう健康食品等の広告があふれております。この中には、実際に根拠のない効能、効果をうたう不適切なものも数多く見受けられます。
 事業概要にあるように、都においては、こういった医薬品の広告について監視指導の取り組みを行っていただいているというわけでありますけれども、どのように行っていただいているのか、お伺いをいたします。

○鈴木食品医薬品安全担当部長 医薬品等の広告に対する通常の監視指導といたしましては、製造業者や広告代理店からの事前相談と、具体的な違反事例に対する改善指導を行っております。
 事前相談では、広告の掲載前に、あらかじめ広告の内容や表現について薬事法に違反しないよう指導をしております。
 違反広告については、消費者からの苦情や他の道府県からの通報等をもとに調査を行った上で事業者を来庁させまして、窓口で直接、改善指導を行っております。
 こうした通常の監視指導に加えまして、テレビ、月刊誌、週刊誌、新聞の広告媒体を対象に、期間を定めまして、集中的に違反広告を取り締まる一斉監視指導を行っております。
 また、インターネット上の広告につきましては、他の道府県からも情報の提供を受けまして、違反事例のあった製品について、プロバイダーの協力を得まして、広告主に対して注意喚起のメールを送付し、改善を促しております。

○くりした委員 大変丁寧にご答弁をいただきまして、漏れのないように多種多様な切り口から取り組みを行っていただいているように感じております。
 とりわけインターネット上は、情報量が極めて多い上に、誤った情報も増殖をしていく、そして、そのあり方も日々刻々と変わっていっている、特に難しい領域なのではないかというふうに思っております。
 このインターネット上の広告については、全国の自治体にかわって都が管轄をして、そして取り組んでいるというのは大変であるというふうに思いますけれども、同時に責任の重たい事業であるというふうに思っております。
 しかし、繰り返しになりますけれども、情報量が多いこの分野において作業が膨大になりますので、それが重荷になってきているのではないかというふうに思っておりますけれども、平成二十三年度に実施した医薬品等広告監視指導の実績についてお伺いをいたします。

○鈴木食品医薬品安全担当部長 二十三年度には、医薬品等の広告に関する事前相談は二千三百五十九件でございました。
 消費者からの苦情等をもとに改善指導を行ったものは百六十五件でございました。
 テレビ等の広告媒体を対象とした一斉監視指導では六千四百七十四件の広告を調査しまして、そのうち八百四十六件に対して改善指導を行っております。
 インターネット上の広告につきましては、四千四百二十五件に対して注意喚起メールを送付し、改善を促しております。

○くりした委員 数千件にわたる監視指導を行っていただいているところで、これは簡単にイメージしても、本当に膨大な作業を行っていただいていると思います。これだけ行うことによって効果も着実に出てきているのではないかと思いますけれども、しかし、我々が生活する中においても、そういったものをいまだに目にする機会は決して少なくないというふうに、私は自分の生活に照らし合わせて、そのように思っております。
 この膨大なインターネットを都が一手に引き受けてやるということ自体、なかなか難しいことなのかもしれませんけれども、これについては、さらに力を入れて取り組んでいかなくちゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。
 たかが宣伝文句といわれるかもしれませんけれども、中には全く根拠のない、そういったものも存在をしておりまして、そういった詐欺のような製品を実際に都民の方が摂取されて、そして健康被害を訴えるということも実際に起こっております。これらの情報を公正に保っていくということは、やはり都民の生活を健全に保っていくという上でも、非常に大切な仕事なんじゃないかなというふうに思っております。
 こういったインターネットについては日々変貌を遂げていますので、こういったメディアについて目を凝らして、すべて対応していくということは気の遠くなるような作業かもしれませんけれども、ぜひこれからも力を入れて取り組んでいただきたいと、最後にお願い申し上げて、私からの質問を終わります。

○伊藤委員 私からは、病床の活用と認証保育所についてお伺いをしたいと思います。
 まず、病床の活用についてお伺いをしてまいります。
 都は、三百六十五日二十四時間、都民が安心して安全に受けられる医療サービス提供体制と患者中心の医療の実現を目指し、東京都保健医療計画に基づくさまざまな施策を実施しておられます。
 この計画は、保健医療施策の方向性を明らかにする基本的かつ総合的な計画と位置づけられており、都民が症状に合った適切な医療サービスを受けられ、かつ、みずからが主体的に医療に参加できるようにするための地域医療システムの構築、救急医療の充実、在宅療養の充実等に取り組んでいると伺っております。
 都は、平成元年二月に策定した東京都保健医療計画において、地域の保健医療ニーズに対して適切にサービスを提供していく上での圏域として、一次、二次及び三次保健医療圏を設定しております。このうち、二次保健医療圏を一般の医療ニーズに対応する区域とし、これを単位に病院の病床及び診療所の病床整備を図っております。
 現在、都内には療養病床及び一般病床が約十万四千床あり、その整備の基準となっているのが基準病床数であります。
 そこで、まず、国が定めている基準病床数制度の内容についてお伺いをいたします。

○浜医療政策部長 基準病床数は、病床の適正配置の促進と適切な入院医療の確保を目的に、医療法の規定に基づき、病床の種類ごとに定めることとされております。
 病床数の算定に当たっては、年齢階級別人口や病床利用率等から計算する全国一律の算定式が用いられ、既存病床数が基準病床数を上回る圏域におきましては、病院及び有床診療所の新規開設や増床は原則としてできないこととされております。

○伊藤委員 全国一律で国が算定方法を定めているということでありますけれども、ご答弁のように、病床過剰地域では病院の開設、増床を許可しないという仕組みでは、都内のほとんどの地域が病床過剰地域であることからすれば、新規に病院が参入することは極めて困難であります。
 少子高齢化など、医療を取り巻く環境は急速に変化をしておりまして、医療ニーズは地域によってさまざまであり、また、医療資源の状況も全国一律ではありません。
 国の基準病床数制度には問題があると考えておりますけれども、地域特性を踏まえた病床配備が必要であると考えますけれども、都の所見を伺います。

○浜医療政策部長 現行の基準病床数制度は全国一律の算定方式で、都道府県が地域の医療ニーズを反映できる仕組みとはなっておりません。
 例えば、都の特性として、特定機能病院などの高度医療を行う病院に全国から患者が流入する状況や、高齢者人口が今後急速に増加し、医療需要の増大が見込まれる状況などについて、基準病床数に反映させることができないものになっております。
 こうしたことから、都はこれまで、都道府県が地域の実情を踏まえて基準病床数を設定できるよう、国に対し繰り返し提案要求を行っており、引き続き制度の見直しを強く求めてまいります。

○伊藤委員 毎年、都は定期的に国に申し入れをしていただいているようでありますし、ことしも六月十八日に、緊急提案ということで、当時、小宮山厚労大臣でありましたけれども、制度を申し入れしていただいているということであります。
 病床は、医療資源の中でも最も重要な資源であり、入院医療を必要とする都民が必要かつ適正な入院医療を受けることができるよう、既にある病床を効果的かつ適切に活用する必要があります。
 私の地元の葛飾区では、平成二十三年十月現在、人口が約四十四万人であり、病床は約二千二百床あります。人口十万人当たりで見ますと、都内平均が約七百八十床、区部では約八百床であり、それと比較をすると、葛飾区の人口十万人当たりの病床は五百床と非常に少なく、区民にとって病床は大変貴重な資源であり、有効に活用することが求められております。
 しかし、医師不足、看護師不足など、さまざまな理由から病床をフルに活用できない、空床を埋められない病院があるとお聞きをいたしております。民間のある調査会社の調査によりますと、一般病床、許可病床と実際の稼働病床の差は、葛飾区でマイナス百四十床、区東北部医療圏全体では千三百二十二床、これは活用されていない可能性があるという調査結果も出ておりますし、これは国の平成二十一年の調査でありますけれども、東京は、人口十万人に対する医療施設数は、病院数、病床数とも全国平均を下回っておりますし、病床利用率も全国平均を下回っております。
 病床が少ない中で、現在の病床が十分に活用されるべきだというふうに考えます。そこで、都内の病床利用について、都はどのように把握をされているんでしょうか。また、その実績と対応状況をお伺いいたします。

○浜医療政策部長 都では、都内全病院を対象に、定期的に立入検査を実施しております。
 その際、病床の利用状況や、他の用途で利用されていないかなどについても検査項目として確認をしております。
 病床利用率が著しく低い、または他の用途で利用されていた場合は、病院管理者に対して、病床利用率の向上、または用途変更、病床転換などについて検討し、改善策を講じるよう助言、指導をしております。
 平成二十三年度は、二百八の病院の定例立入検査を実施いたしまして、十六病院について、病床利用に関する助言、指導を行いました。また、そのうち四病院に対しては改善報告書の提出を求め、改善を確認しているところでございます。

○伊藤委員 都では、空き病床が放置されないように、病院に定期的に働きかけをしていただいているということでありまして、引き続き、これには取り組んでいただきたいというふうに思います。
 一方、都は急速に高齢化が進み、三年後には六十五歳以上の高齢者が三百十万人を超え、そのうち七十五歳以上の高齢者が約半数を占めることになります。循環器系の疾患やがんなどにおいて、七十五歳以上を中心に患者が増加することが想定され、医療療養病床の必要性が今後ますます高まってきていると思います。
 現場の医師にお話を伺いますと、療養病床が圧倒的に少なく、一般病床が療養病床のかわりに使用されていることも少なくないということでありました。現に全国平均では、人口十万人に対し、療養病床が二百六十三・七床であるのに対し、区部では百二十三・七床と半数に満ちておりません。
 一般病床の空き病床を医療療養病床として活用することができれば、そうした需要に対応することができると考えますが、収益の問題など、病院の経営者にとっては難しい選択を強いられることになります。
 こうした状況を踏まえ、都は、民間病院が一般病床から医療療養病床へ転換する際の支援に関する事業を実施していると伺っております。
 そこで、医療療養病床への転換を検討している医療機関に対し、どのような支援事業を実施しているんでしょうか。

○小林医療政策担当部長 一般病床から医療療養病床への転換を促進するためには、病室等を改築、改修するための経費の負担軽減や、転換後の経営上の不安解消を図る必要がございます。
 そのため都は、改築、改修経費の負担軽減策としまして、平成二十年度から都独自に施設整備費補助を行ってまいりました。
 また、医療療養病床へ転換後の経営上の不安解消策として、転換を検討している医療機関に対し、転換後の収支シミュレーションの提示など、経営コンサルティングの専門家による支援を平成二十三年度から実施しているところでございます。

○伊藤委員 ソフト面、ハード面できめ細かく対応していただいていることがわかりました。
 国では、現在、療養病床の再編成を進めていると聞いております。これは、医療の必要性の高い方に対しては、引き続き医療療養病床で必要な医療サービスを提供するとともに、医療の必要性の少ない、低い方に対しては、介護保険施設等において必要な介護サービスを提供することとしたものであるようだが、今後も医療療養病床を安定的に確保するとともに、その機能を十分に発揮させるためには、現に医療療養病床を運営している医療機関に対する支援も重要と考えます。
 そこで、現に医療療養病床を運営している医療機関に対しては、どのような支援事業を実施しているのか、お伺いをいたします。

○小林医療政策担当部長 医療療養病床を運営している医療機関が、急性期を脱した患者さんや、ご家族の多様なニーズにこたえるためには、質の高い医療サービスを提供する病院スタッフの育成と、安定的なサービス提供を支える経営面での支援が必要でございます。
 そのため都は、平成二十一年度から、医師や看護師等の病院スタッフを対象に、在宅医療や、がんの緩和ケアをテーマとする研修を実施し、患者の受け入れ範囲の拡大など、機能強化のための支援を行っております。
 また、平成二十三年度からは、医療機関の経営者向けに、経営研修会や各施設の経営状況等に合わせた個別相談会も実施しているところでございます。

○伊藤委員 先ほどの答弁にもありましたように、医療の世界というのは、国がかなり法律でがんじがらめに、しっかり制度を構築しているのかもしれませんけれども、都道府県が、そこに主体的な役割を発揮して、政策的な展開がなかなかできにくい制度になっているというふうにお聞きをいたしております。
 引き続き、国に対しては制度要求をしっかりとしていただいた上で、都独自のいろんな仕組みでこの現状を何とかしようという対応をしていただいているということはよくわかりましたので、引き続き医療サービスの質の向上を図り、都民が満足度の高い医療を受けられるように、さまざまな取り組みを進めていただきますようお願いをいたしまして、次の質問に移ります。
 認証保育所についてお伺いをいたします。
 大都市特有の保育ニーズにこたえるため、都が独自に創設をした認証保育所は、ことしで十一年目を迎えました。ゼロ歳児保育や十三時間開所を義務づけるなど、大都市特有の保育ニーズに的確に対応した本制度は、この十年間、順調に拡大を続けております。
 そこで、認証保育所の現在の整備状況と、喫緊の課題である待機児童の解消に向け、どのような役割を果たしているのか、お伺いをいたします。

○桃原少子社会対策部長 認証保育所の定員は、本年四月一日現在、二万二千三十六人でございまして、認可保育所の約八分の一となっております。このうち、ゼロ歳から二歳までの定員は一万七千三百七十九人でございまして、認可保育所の約四分の一となってございます。
 都内では、待機児童の九割をゼロ歳から二歳までの児童が占めておりますことから、これらの児童を積極的に受け入れている認証保育所は、待機児童対策としても重要な役割を果たしているものと認識しております。

○伊藤委員 待機児童の特に多いゼロ歳児から二歳児では、認可保育所の四分の一、かなり大きい役割を果たしているということであります。
 認証保育所は待機児童対策としても重要であるということでありますが、一方で、利用されている方からは、認可保育所に比べて保育料の負担が大きいと聞いております。
 認証保育所の保育料は、どのように設定をされているんでしょうか。

○桃原少子社会対策部長 認証保育所制度は、多様な事業者の参入と、利用者との直接契約により適正な競い合いを促すことで、利用者本位のサービスの提供を実現しているものと考えております。
 保育料につきましては、国が示しております認可保育所の保育料徴収金基準額を踏まえまして、都の要綱におきまして、三歳未満児が八万円、三歳以上児が七万七千円を上限とする基準を定めまして、この範囲内で事業者が自由に設定する仕組みとしております。

○伊藤委員 国の基準を引っ張ってきて、それを上限として業者が自由に設定できるということであります。
 しかし、聞いてみると、所得によってこれは違うとは思いますけれども、月に三万円程度違うということも聞いたことがあります。パートのお母さんが三万円稼ぐのはかなり大変なことでありまして、負担感が大きいのではないかと思います。
 そこで、私の地元葛飾区では、ことし四月に認証保育所を利用する方への保育料補助事業を開始し、負担軽減を図っております。
 そこで、区市町村における保護者負担軽減の取り組み状況と、都の考え方をお伺いいたします。

○桃原少子社会対策部長 本年四月現在、三十九の区市町が、保護者の所得に応じた補助などの保護者負担軽減策を実施しております。
 保育事業は、その実施主体でございます区市町村が地域の実情に応じて実施するものでございまして、認証保育所の保育料の保護者負担の軽減につきましても、それぞれの区市町村が判断すべきものと考えております。

○伊藤委員 確かに保育事業は区市町村が主体的にやる事業であります。そして、この負担軽減措置も、三十九の区市町が実施をしているということであります。これにもかなりばらつきがあるわけでありますけれども、ちなみに葛飾区では、ゼロ歳児で一万二千円、一、二歳児で一万円、三歳児以上で八千円ということで、今年度スタートいたしました。
 その結果どうなったかというと、平成二十三年度四月一日現在での待機児童は百四十五名だったものが、本年度の四月一日現在では七十四名と半分に減ったんです。非常に効果があったものというふうに思いますし、この認証保育所も、区サイドでいうと、設備費も、または運営費も、都が半分、区が半分と、結局、財調で全部見ていただけるということで、区にとっては非常にインセンティブの高い、自主財源を使わなくても環境整備をすることのできる事業ですので、恐らく十年間でここまで実績を上げることができたんだろうというふうに思います。
 しかし、じゃあ、この葛飾区で今どういうことが起きているかというと、補助を入れましたけれども、事業者がその分値上げをしてしまって、結局、利用者の負担が変わらないという状況が、実は一部なんですけれども起きているんです。
 上限を決めて、その中で自由に設定できますので、直ちにそれがいけないことだというふうには思いません。恐らくサービスの中身を充実していただいたものと、私は前向きに受け取っているわけですけれども、やはり、区と都がうまく連携をして待機児童を減らそうということで一生懸命やっていただいている一方で、ふやせばふやすほど需要がふえてしまうという悩みもあるというふうに聞いております。
 今後も、市区町村--限られた財源の中、東京都も当然でありますけれども、やりくりをしていただいているところであります。保育サービスを充実し、待機児童の解消を図るためには、保育の実施主体である市区町村の主体的な取り組みが基本であることはもちろんですが、都としても、市区町村の取り組みが円滑に行えるように必要な支援をいただきますよう要望いたしまして、質問を終わります。

○三原委員 それでは、大きく二つの点でお伺いをしたいと思います。
 最初に、脱法ドラッグについてお尋ねします。
 三月のこの委員会でも脱法ドラッグのことをお尋ねしたりしましたし、局の方も少し辟易しておられるかと思いますけど、実は三月に質問をした後に、六月議会で、都議会として厚生労働省に意見書を突きつけることができて、また、それによる動きもあったという感じもいたしますし、その後また、その後というのは三月議会以降、今は脱法ドラッグといわずに脱法ハーブというようですけど、非常に事件がたくさん起きていて、新聞報道を見るたびに、これは大変だなという思いが非常に強いものですから、あえてきょうも取り上げさせていただいたわけでございます。
 私が一番ショックに思ったのは、これは五月二十八日の新聞ですけど、脱法ハーブによる救急搬送が昨年の二十倍と。昨年、これは一月から五月までの間で二十倍と換算しているんですけど、二十三年の一年間は、いわゆる脱法ドラッグによる患者さんの搬送というようなのは月に一人ぐらいだったということなんですけど、一月から五月でもう九十人を超えるほど搬送する事態が起きたということで、私も非常にショックを受けました。
 もっと皆さん方はよく読んでおられるからご承知かもしれませんけど、十月ごろに続けて報道されましたけど、一つは、高校生の男の子が、お友達の中学生の女の子にお金をあげて、その中学生の子どもが脱法ハーブを買ってきて吸ったというか、遊んだというか、それを女の子の男の友達が聞いて、その金を渡した高校生はとんでもないやつだというので、確かにとんでもないんでしょうけど、みんなでもってそのお金を渡した高校生に対して傷害を働いた、つまり大けがをさせたということです。
 それから、これは練馬で起きたんですけど、脱法ハーブを吸って、ちょっと異様な行動があったので、だれかがとめようとしたか--そうしたら垣根を乗り越えて近くの小学校の校庭に飛び込んでいって、その男の人は上半身裸で、校庭にいた子どもに抱きついて、一瞬で大変な事件になりそうだったんですけど、幸いに先生などが取り押さえて大事に至らなかったと、こういうことのようですけれども、こういうことを考えると、これはもっと本気で脱法ドラッグのことについて対応していかないと、大事件が起きて大問題になるのではないかなという気がしてならないんです。
 ちょっと日時はわかりませんけど、これは愛知県の例だったと思いますけど、脱法ハーブを吸って運転していて、妄想に取りつかれて、よくわからなくて、高校生か何かをはねて死亡させてしまったと。結局、最終的に検察は危険運転の致死罪ということで送検するというような、今まで脱法ハーブで危険致死罪というようなのはなかったんだと思いますけど、初めてそういうケースも出てきたということで、とにかく脱法ハーブを使っていろんな事件が起きてきているというのを見ると、これはもっと積極的にといいますか、本気で取り組んでいかないと大変なことになるなという気がします。
 三月に厚生労働省が発表した脱法ドラッグの販売店というのは三百八十九軒だそうで、都内は九十四軒といっています。また、局の方に伺いましたら、この十月の時点で、都内の店舗数で把握しているのは七十九軒、インターネットで販売しているのが十軒と、こういうことでございました。
 ただ、こういうお店は、何かちょっと取り締まりの雰囲気を感じたりするとぱっと畳んで、それで場所を変えると。何か最近は都内よりもさいたま市の方へ行っているのが多いと聞いているんですけど、とにかく販売する方も移動する。そしてまた、それを聞きつけて買いに行くという人たちも、先ほど申し上げたように、中学生の女の子が買いに行って、それを吸引するというか、飲むというか、食べるというか、そういう事態が起きているというのは、我々がちょっと珍しいお菓子があるから買いに行って食べてみようかとか、新しい飲み物が出たから、ちょっとおもしろそうだから飲んでみようよという感覚に、もうなっているんじゃないかと思うんですね。
 そうすると、これはもう私どもが考えているよりも、そういう青少年の感覚はずっとずれていて、これは真剣に考えていかないと大変なことになるというふうに思ったので、重ねてきょうお尋ねしたいなと、こう思っているわけでございます。
 そこで、国は、とにかく薬事法上の指定薬物か、東京都につくってもらった平成十七年の条例に、指定薬物になっていなければ、それ以外は大麻とか麻薬とかと規定されていますからいいんですけど、捕まえるとか、そういうことができないわけですので、そこで、国の方の指定薬物が今どれぐらいあるのか。そしてまた、今までの指定薬物でも麻薬や何かに格上げをしていったというのもあるようですから、その数ですね。それから、東京都の知事が指定することもできる指定薬物というのがありますけど、これが現在幾つあるのか。また、それは国の方との絡みでどうなっていくのか。その辺をまず教えてください。

○鈴木食品医薬品安全担当部長 平成十九年に薬事法が改正されまして、指定薬物制度が導入されましてから、現在までに八十薬物が薬事法の指定薬物として指定されております。このうち七薬物が麻薬に指定されておりまして、薬事法の指定薬物としては、これら七薬物については麻薬に指定された関係で削除されております。現在、薬事法の指定薬物は七十三薬物となっております。今月十六日には、新たに十七薬物が薬事法の指定薬物に追加される予定でございます。
 また、都条例に基づく知事指定薬物については、現在、五薬物が指定されております。これらの薬物につきましては、国に情報提供しておりますので、この十七薬物の中に含まれておりまして、今後は薬事法に基づく指定薬物に指定され、全国で規制されるという形になります。

○三原委員 次々指定していかなきゃいけないと。また、指定するにも、例えば実際に東京都の係の方が入手されて、分析をして、審議会にかけて、国に進達し、また、国の方も審議会にかけてというようなことで、時間が非常にかかるというような事情もあるんでしょうから、国に出せば余計時間がかかりますから、東京都の知事指定でどんどん進めていくのがいいと私は思っているんです。それにしても、次々新しいのが出るからご担当の人も大変だとは思いますけど。
 六月の都議会で意見書を出した中身は、海外で流行しているものを先に取り入れて指定したらどうだと、こういうことが一つ。
 それからもう一つは、私も専門的でないから正しい表現かどうかわかりませんけど、薬物の基本になるような構造式というのがあるはずで、その構造式、成分等が基本になるものがあれば、それを指定薬物にして、それから枝葉に分かれた形でいろんなのができるはずだから、包括規制で基本になるものを規制しようと。
 そういうことをやってくれと厚生労働省、国に対して求めたわけでございますが、海外から輸入する、あるいはまた海外で既にはやっているものを先行取得して、先に指定しておくというような作戦、それから包括規制、これらのことについてどうなっていますでしょうか。

○鈴木食品医薬品安全担当部長 都では、海外で流行している薬物が都内に流通した際にいち早く規制ができるように、今年度に入りまして十二薬物を選定いたしまして、データベース化のための情報収集及び生体影響試験等を開始したところでございます。また、国に対しましては、海外での使用実態等を踏まえた事前規制の導入を提案要求してまいりました。
 こうした提案要求ですとか、委員のお話にありました都議会での意見書、これらを受けまして、国では八月から海外流行薬物の事前規制を開始しておりまして、今月十六日に新規指定される十七薬物のうち五薬物が、この事前規制によるものでございます。
 包括規制の導入につきましても国に提案要求をしておりまして、十一月末の国の審議会では具体的な規制手法が検討される予定でございます。都といたしましては、国の動向を注視してまいります。

○三原委員 ありがとうございます。都議会の意見書が効いたかどうか、それはわかりませんけど、でもタイミングよく、都議会としてああいう意見書を出すことができて非常によかったと思いますし、それに期を合わせるように国の方も動いてくれているということは、非常にありがたいことだと思います。
 特に、今のお話だと十一月ないしは十二月ごろ結論が出るんでしょうけど、包括規制ができればかなり効果があるのかなという気が私はしていますので、非常に期待をしたいと、こう思っております。
 先ほど申し上げたように、全国にたくさん店舗があって、真実の情報かどうかわかりませんけど、だんだん東京の周辺にお店を構えたりするようになってきているということで、全国的に脱法ドラッグについては危機感を持ってきてもらっているということは、私はありがたいと思います。
 十年前に私がこの問題を取り上げて発言したときには、石原知事ですら、初めて聞いてよく知らなかったとおっしゃったぐらいですから、よその県ではきっと余り関心がないのかもしれませんが、福祉保健局が頑張ってくださったおかげで条例ができ、そういうことがだんだんに全国に知れて、私の知る限りでは、愛知県、大阪府、こういったところが条例を制定いたしました。
 まだ検討している県もあるように聞いていますから、それも教えてもらいたいと思いますけれども、先ほど大阪府のやっているのを見習えというご質問がありましたが、この薬物乱用規制の条例は、東京都が大阪府に指導してあげたはずなんで、大阪は東京を見習ってやったんだと思います。したがって、とにかくそういった条例が他府県にどんどん波及していくということが、青少年の健全育成などに大きく寄与するわけでございますので、そういった他県の動きをちょっと教えてください。

○鈴木食品医薬品安全担当部長 都では、今お話のございました三原理事のご提案を受け、検討いたしまして、平成十七年度に、国に先駆けまして東京都薬物の濫用防止に関する条例を制定して、違法脱法ドラッグ対策に取り組んでおります。
 最近の脱法ハーブにかかわる事件の多発を受けまして、全国の自治体から都条例に関する問い合わせが急増しましたことから、都は、七月に都道府県違法ドラッグ対策連絡会を主催いたしまして、愛知県、大阪府を初め三十七道府県及び国が参加いたしました。会議では、都条例についての説明と、違法脱法ドラッグ対策の現状について情報交換を行っております。
 こうした中、幾つかの自治体では、都に倣いまして条例を制定する動きがあります。愛知県では十月に、大阪府では十一月に薬物の濫用防止に関する条例を制定し、公布いたしました。また、和歌山県、徳島県、鳥取県にも条例制定の動きがございます。
 条例による知事指定薬物の指定のためには、生体影響試験を初めとした健康影響を判断するための科学的なデータが必要でございます。そのため都では、これまで健康安全研究センターが全国でも先進的な試験検査を行い、健康影響のデータを蓄積し、知事指定薬物の指定に役立ててまいりました。
 今後、愛知県、大阪府を初め、同様に条例を制定した自治体に対しまして、知事指定薬物の指定に必要なデータを提供するとともに、全国の自治体に対しましては、連絡会等を通じまして情報を提供していく等、連携、協力を強化してまいります。

○三原委員 大変結構なことで、せっかく東京が先駆的な行為をやっているわけですから、何もこれは東京だけだと隠し立てするものじゃありませんので、ぜひ全国の自治体に協力してあげて、そういう条例ができて、取り締まり効果がより上がるようにしてもらいたいと、こう思います。
 私も、局の方からいただいて、大阪府の条例を読ませてもらいました。内容は本当に東京都とそっくりでございますので、東京都の方がご指導なさったなというのが目に見えるような気がいたしましたけれども、ただ、そこの中で一つだけ、東京の条例でいうと、指定薬物をみだりに使用し、あるいはみだりに使用する目的で所持している、あるいはみだりに使用するとわかっていて場所を提供するとか、あっせんするとか、そういうのを東京都の条例では罰則をかけていないんですね。大阪のは罰則五十万円となっています。
 それはどう違ってどうなんだというのは法律論ですから、ここでやってもしようがないと思いますけど、ただ、素人で考えても、指定薬物ですから、前段の方の条文のところで研究用とか医療用に使うものは除くというようなこともちゃんと書いてありますから、そこと絡めて、みだりに使用するって、どういうふうにしたらみだりに使用するんだというのは判定のしようがないので、大阪のように使用もしくは使用目的で所持というように明確にした方がいいので、みだりというのがなまじっかあるから取り締まりに二の足を踏んじゃうんじゃないかなという気がしてならないんです。
 しかも、都条例の場合は罰金がないということになっています。ですから、せっかくの条例で、取り締まろうという目的もありますから、この際、こういう非常に危険な社会情勢になっていますので、少し条例を変えて、改正して、取り締まりがより効果が上がるように、もっと罰則規定も強くしていいのではないかなと、私は法律の専門家ではありませんから、わかりませんけれども、そういうことを非常に感じます。
 ただ、例えば、よくわからないですけど、麻薬とか何とかいうのは現場で簡易判定ができるんですね。この間、コカインを持っているとかいうので簡易判定をやって捕まえたけれども、後で調べたらコカインじゃなかったというのですぐ釈放したとかいう新聞報道がありましたけど、そういうふうに簡易判定が知事指定薬物なんかはできませんでしょうから、そこが非常に取り締まりの難しいところだとは思うんですけど、旧来の指定薬物も当然並べて売っているはずですから、そういうことも含めて、もうちょっと罰則強化をする、そのためには条例の文言を少し直していくというのが必要なんじゃないかなと。
 あるいは、条例の中でも、警告して、それでいうことを聞かなきゃ命令を出して、命令に反すれば罰則をかけますと、こういう三段構えみたいになっているんですね。それは条例の形としてそういうのが適切であることはわかっていますけど、また、緊急の場合はそういう手順も抜いていいようには書いてありますけど、もうちょっとその辺もダイレクトに取り締まるような策はないのかなということを非常に感じます。
 皆さん方も法律の専門家というわけではないし、また、取り締まる専門である警察側がどういうふうに考えているかも、私、まだよくわかっていませんけれども、ただ、もうちょっと罰則を強くしていくことが抑止力というか、乱用を、乱用というか、これは使用しちゃだめなんですから、使用をとめる効果が出てくるのではないかと、こう思いますが、その辺はどうでしょうか。

○鈴木食品医薬品安全担当部長 都条例では、知事指定薬物に対して、みだりに使用、所持等をしてはならないとの規定を設けておりますが、これは、知事指定薬物が医療用、研究用、工業用等の正当な理由により使用される場合もあることから、こうした場合を除外するために、みだりにという文言を使用しております。
 製造販売等につきましては、警告を行った上で販売中止等の命令を行うことと定めておりますが、健康被害が発生している場合等、緊急を要する場合で警告を発するいとまがないとき及び違反者が過去に警告を受けたことがあるときは、警告を経ずに販売中止等の命令を行うこととしております。また、死亡等の重大な事故が発生している場合等には直ちに告発し、懲役または罰金を科すこととしております。
 使用等の禁止につきましては、大麻及び向精神薬を使用することが法令上処罰の対象とされていないなど、他法令との整合性を図る必要があること、知事指定薬物を使用したことを実務的に証明することが困難であることなどの理由から、警告を発することはできるものの、罰則規定を設けず、訓示的な規定にしております。
 実際のところ、麻薬や覚せい剤であれば、簡易検査によってその場で判定し、所持や使用の現行犯で逮捕することができます。しかし、知事指定薬物については簡易検査法がないため、検査機関で分析し、知事指定薬物であると確定する必要がございます。このため、取り締まりの現場において所持、使用等の立証ができず、たとえ罰則を設けたとしても、実際に逮捕、立件することは困難でございます。
 こうしたことから、都は、違法脱法ドラッグの乱用防止に向けて、条例での罰則規定ではなく、警視庁と連携した取り締まりや普及啓発等を強化するなど、より実効性のある対策に取り組んでおります。

○三原委員 お説はよくわかります。行政側としては精いっぱいの条例だと、罰則条例だと、こういうことだろうと思いますので理解はいたしますけれども、現実に、冒頭申し上げたように、中学生の女の子あたりが脱法ハーブを買ってきて吸うとか、そういう状況があるということ、それが本当に日本じゅうでたった一つの特異な例とは思えませんので、じゃ、どうしたらいいのかということを、ひとつ、よく皆さん方で考えていただき、取り締まる側に立っている警視庁の人なども入れて、どうしたらいいんだろうということをもっともっと詰めてみてもらいたいと思います。本当は我々がそれをやらなきゃいけないんでしょうけど、もっと専門的である皆さん方の方がいいと思いますから。
 同時に、お話もあったように、そういう中学生、高校生などにはしっかり啓発をしていくということが重要なことだと思います。そういうご努力もしておられるのもよく承知をしております。しかし、そういうご努力があっても現実には起きておりますし、現実に販売され、買われているということを考えると、やはり少し厳しく対応していくにはどうしたらいいかという姿勢がないといけないのではないかなと、こう考えますが、ぜひひとつ、これからもさらに本気で取り組んでいくという姿勢を局長から聞きたいと思いますが、いかがでしょう。

○川澄福祉保健局長 都は、三原理事の問題提起を受けまして、国に先駆け条例を施行し、積極的に違法脱法ドラッグ対策に取り組んでまいりました。
 具体的には、違法脱法ドラッグを排除するため、若者向けの普及啓発に取り組むとともに、警視庁と連携し、販売店の取り締まりを行うなどの対策を強化しております。
 また、都の先駆的な取り組みとして、新たな未規制薬物が都内に流入した際に速やかに規制できるよう、海外での流行が確認されている薬物のデータベース化にも取り組んでおります。
 国に対しましては、こうした海外での流行薬物の事前規制と包括規制の導入を提案要求してまいりました。その結果として、事前規制が開始され、包括規制の具体的な規制手法も検討される予定でございます。
 全国の自治体に対しましても、条例制定のための情報交換や知事指定薬物指定に必須な試験データの提供など最大限の協力をしてまいります。
 いろいろと理事ご指摘のように、違法脱法ドラッグにつきましては非常に厳しい状況であるということを十分認識いたしまして、違法脱法ドラッグ対策のより一層の推進に、局を挙げて全力で取り組んでまいります。

○三原委員 ぜひ、局長を初めご担当の皆さん、そして取り締まりの警視庁、そういうところと連携を密にして、しっかり頑張っていただきたいと思います。
 次に、二つ目で、認知症対策についてお伺いしたいと思います。
 この委員会で私が最高齢なものですから、最も認知症問題に近いなと、こう思いまして、(野島委員「若年性もいるから」と呼ぶ)それは今いいますが--一番近いです。今、野島委員からお話があったように、若年性痴呆症の問題だと三人ぐらい対象者がおられますけど、それは別として、いわゆる認知症のことについてお伺いしたいと思います。
 先ほど来から、高齢化社会になって、高齢者の医療問題、あるいはまた、がん対策等々、適切なご質問がございました。たまたま認知症について触れた方がおられませんでしたので、ここで聞かせていただきたいなと、こう思います。
 いただいたデータなどで見ると、平成二十三年の時点で、高齢者、六十五歳以上ですけど、二百五十九万人、したがって人口の二〇%ぐらい。これは都内でございますけど、十四、五年後には三百四十三万人で、人口の二六%ぐらいが高齢者になると。さらにその十年後というんですから、今から二十三、四年後ぐらいになると三百九十万人から四百万人ぐらい、三〇%を超えるというんですから、三人に一人が高齢者ということになるのはご承知のとおりでございます。
 今まで、高齢者の病気というのは、脳血管症、それから心臓病、そして悪性腫瘍、つまりがん、それから高齢者特有の糖尿病というようなのが四大疾患といわれておりましたけれども、最近、新聞報道を見ましたら、がんの治療などは、行政の皆さんの努力、そしてまた医学の飛躍的な進歩、そういうものによって、がんの手術後の五年以上の生存率が七〇%、八〇%、九〇%と。
 病院とかデータのとり方も若干ありますから、駒込病院などは大腸がんだと七〇%、乳がんだと九〇%以上が五年生存だと、こういうんですから、がんに対する危機感みたいなものは少し薄れてきたというと大げさですけど、とにかく病院に行けば大丈夫というイメージになってきていると思うんです。問題なのは認知症の方で、これは、まず認知症になっている本人が認知症と思っていないですからね。私もそうですけど。
 したがって、そこが一番問題なわけで、高齢者の数はわかりますけど、一体認知症といわれる人は今どれぐらいおられるんだろうかというのが、なかなか難しいところですね。ですけれども、医学的には判定のついた方もおられるんでしょうから、そういった数字をまず出してくださいますか。

○中山高齢社会対策部長 都は、平成二十三年一月に要介護者数・認知症高齢者数等の分布調査という調査をやりましたけれども、これによりますと、要介護あるいは要支援認定を受けている高齢者のうち、何らかの認知症の症状を有する人は約三十二万人いらっしゃいました。当時の高齢者人口約二百五十九万人の一二・五%に上っております。
 この調査結果をもとに将来推計をいたしまして、平成三十七年には何らかの認知症の症状を有する高齢者は約五十二万人に達し、高齢者人口三百四十三万人の約一五%を占めると推計しております。

○三原委員 そうすると、十三、四年で二十万人ふえるというんですから、そのふえ方はすごいというふうに考えなきゃいけないと思いますけれども、潜在的な認知症、初期の認知症の方はもっとおられるんだろうなという気がいたします。
 そこで、私は医学的な知識は何もありませんので、その専門的な議論はちょっとのけて、ごくごく、まちの、都民の皆さんが感じておられる感覚でご質問したいと思うんですけど、最初に、私なんかの世代になってくると、認知症という言葉自体が、いま一つぴんとこない部分がありますね。言葉は適切でないかもしれませんが、我々が若いころは、つまり若い議員さんのころは、ぼけ、健忘症、あるいは痴呆症と、こういういい方でいったので非常にわかりやすかったんですけど、認知症という表現になってしまいました。
 これは物の本をよくよく読んでみると、平成十六年に厚生労働省が認知症という用語に統一したようでございますが、それで安心する方もあるだろうし、かえって、ぼけとか痴呆だとかという感覚がなくなって、対応がおくれてしまうんではないかなということを非常に感じます。
 認知症の初期の人を、とにかく、まだ、この人は認知症か、あるいはそうじゃないのかな、でも最近ちょっと物忘れがひどいなとか、ちょっと認知行動がおかしいなとかいうときに、いかに早く初期の診断、対応をするか。実はこういうのが一番重要なのではないかと。いろんな本を読んでみますと、初期であれば、今の医学で治すことはできないけれども、進行を抑えるようなことはできるというようなことも書いてあります。
 そこで、認知症の方の初期症状を早く専門医療機関につなぐために、今まで行政、あるいは医師会等も含んでですけど、大変ご努力をしていただいていて、普通のお医者さんが認知症をわかるようにするとか、もうちょっと専門的にサポートするとか、いろんな段階で対応をとってきておられますので、その具体的な数字をいっていただければと思います。

○中山高齢社会対策部長 都内の認知症医療に係る、いわゆる医療資源の数字を申し上げます。
 まず、地域のかかりつけ医に対しまして、都は、平成十八年度から平成二十一年度まで、認知症対応力向上研修というものを実施いたしました。この四年間で二千五百五十六名の方の受講実績がございました。
 次に、かかりつけ医への支援を行い、地域包括支援センター等との連携の推進役となります認知症サポート医の養成研修というのが実施されておりますけれども、都内では、平成十七年度から現在まで、四百三十三名が受講されております。
 また、平成十九年度に都が実施しました東京都認知症専門医療機関実態調査によれば、都内で実際に認知症の診断、治療を行っている医療機関は三百三十八カ所でございました。
 最後に、東京都認知症疾患医療センターを、この四月から指定しておりますけれども、原則二次医療圏に一カ所指定することとしておりまして、西多摩圏域と北多摩北部圏域を除く十の圏域におきまして、現在十病院が指定されているという状況にございます。

○三原委員 ありがとうございます。なかなか我々の目につかないところで、行政、あるいは医師会さん、さらには個々のお医者さんに大変ご努力をしていただいているということがよくわかりました。かかりつけ医の方、つまり我々がいつも、ちょっと風邪を引いたから見てくださいという感じで行っているお医者さんが、認知症についての診断がうまくできるように、そういう知識を向上させる研修を受けていただいているというので、非常にありがたいし、そのかかりつけのお医者さんが、サポートしてくれるもっと専門なお医者さんと連携がとれるようになっているというのも大変いいことだと思います。
 素人でよくわかりませんけど、例えば、目が悪くて眼科のお医者さんに行って、認知症の判断というわけにいかないんだと思いますけど、通常かかっている内科のお医者さんなどが、そういうことについて研修を受けていただいていれば大変力強いと、こう思いますので、そういうことが、研修を受けておられるというのがわかるようにでもなっているといいのかなという気がします。別にそれは家族なり本人が、認知症について、先生、ちょっと判断してくださいよといえばいいのかもしれませんけど、申し上げたように、眼科とか、あるいは耳鼻科の先生がそういう研修を受けておられるかなという疑問もしますから、そういう診察向上力の研修を受けた先生とか、サポート医の先生とかがわかるといいなと思います。私の勝手な判断ですから、ご研究いただければいいと、こう思いますけれども、そういうところへ我々が行って、少し専門的に診てくださいということをお願いすることは非常に重要だと思います。
 ただ、一番的確なのは、多分精神科へ行って診断を受けるということなんだろうと思いますけれども、--(九十九字削除)--二の足を踏みますね。したがって、今のように認知症ということなどをずっと認識して、今から三十年、四十年たたれる若い議員さん方はそんなことはないんだと思いますけど、我々はそうじゃない事情で来てますから、どうも精神科というのは敷居が高い。
 しかし、早期診断にはどうしてもそういう専門のところに行かなきゃいけませんので--最近耳にするのは、物忘れ外来というのがあるやに聞いているんですね。これは非常に、我々が聞いても余り抵抗がないんです。精神科というほど抵抗がない。日常会話の中でも、物忘れ科に行って診てもらったらいいよと笑いながらいえるような感じがします。--(三十九字削除)--したがって、何かそういうのを少し考えた方がいいのではないか。そういうことによって、認知症に対する理解がふえる、あるいは早期診断につながっていくというような、一番、取っかかりではないかという気がしますが、どうでしょうか。

○中山高齢社会対策部長 現在、標榜できる診療科名は医療法上で定められております。そのため、医療機関が精神科という診療科名を変更することはできませんけれども、診療科名に加えて、例えば、認知症の治療を行います等の表現を用いて広告することは可能となっております。
 実際に、精神科の診療科名に併記しまして、物忘れ外来、メンタルクリニック、メモリークリニックといった名称を院内での案内等で用いて、認知症専門外来を実施しているところがふえております。
 都としても、医療機関のこのような取り組みは、診療内容が都民にとってわかりやすくなっているものと考えております。

○三原委員 とにかく、かかりつけ医からサポート医のご協力を得て、認知症医療専門機関につないでもらうと。その中でも、地域の中核的な認知症の疾患医療を担うところとして、先ほどお話がありましたけど、認知症疾患医療センターというのが、今、十カ所指定されているそうでございますが、二次医療圏に一カ所ずつということなので、もう二カ所ぐらい指定があるはずなんだと思うんですけど、そのことについてもお伺いをしたいと思います。あわせて、センターの中には医療相談室というようなのがあって、かなり、専門家の方が、地域とどういうふうに認知症の方と対応していけばいいかというようなことをご指導くださるんだそうで、そこへ行くことが、これから先に認知症の患者さんがどう地域で生活していくかというものの、一番、案内役になるんではないかという気がしていますから、医療相談室の業務といいますか、内容を教えていただきたいと思います。
 また、もう一つ、認知症疾患医療センターだけがやっているわけではないと思いますけれども、最終的に、この人はどういう形の、どういう種類の、どういう症状の認知症だというのを鑑別診断するということになるようでございますけど、今それが非常に時間がかかって、先ほど申し上げた、かかりつけ医からサポート医のサポートを受けて、例えば専門機関、あるいはセンターに認知症患者が判定を受けるために行こうと思っても、予約して初診を受けるまでがえらいかかる。また、その専門機関で初診が始まっても、知能テストみたいなのをやったり、さらにはMRIとかCTスキャンとか、いろいろ器材を使って診察をしていって答えが出るまでにまた時間がかかると、こういうことのようなんですけれども、もちろん、急いで判定しなきゃいけないという、一カ月や二カ月で悪くなっていくという病気じゃないから、ある程度は仕方がないのかもしれませんけど、でも、やっぱりそういうふうになって待たされるというのは、患者さんとしては非常に不安ですよね。ですから、できるだけそれを短くしていくということが重要だと思うんですけれども、その辺の対応策はありますか。

○中山高齢社会対策部長 先ほど認知症疾患医療センターの未指定のご答弁をさせていただきましたが、認知症疾患医療センターを中心としました地域連携のネットワークづくりは大変重要なものと認識しております。未指定となっております西多摩と北多摩北部の圏域につきましては、本年八月に公募を行いまして、現在早期の指定に向けて準備を進めております。
 次に、認知症疾患医療センターの医療相談室の役割のご質問でございますが、各センターが設置しております医療相談室には、認知症に関する専門知識を有する精神保健福祉士等が配置され、専門医療機関や地域包括支援センターとの連絡調整、退院時の調整等を行う地域連携のコーディネーター役としての重要な役割を担っていただいております。
 次に、認知症の診断に係る予約から初診までの期間のお尋ねでございますが、現在、センターによりまして、待機がないところから最大三カ月待ちまで、さまざまな状況にございます。待機期間の長いセンターでは初診枠をふやす等の対応をとり、待機期間の短縮に努めております。
 今後ますます増大します認知症の初期診断等を円滑に行っていくためには、センターが推進する地域連携ネットワークの中で適切に対応できる仕組みをつくっていくことが重要であります。センター以外の、地域の主要な医療機関の鑑別診断への積極的取り組みを促す等の対応によりまして、待機期間の短縮を図ってまいりたいと考えております。

○三原委員 センターの追加を二カ所ということで、ありがとうございます。できるだけ早く指定されるように--今は、たしか八王子と立川であると思いましたけれども、多摩地域が二つというのは、それは足らないですから、多摩地域でもう二カ所の指定があるんだと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 そこで、今、オール東京で話をしましたけど、ちょっと数字が大きいので、まことに恐縮なんですけど、私と、今、ともとし委員さんがいないんですけど、二人は足立ですし、伊藤先生は葛飾ですから、あと荒川区を入れて区東北部医療圏ということになっていて、足立区の大内病院というのがセンターに指定されているんでございますけど、かかりつけ医とか、サポート医とか、専門医療機関とか、そういったことについて、さらには高齢者と、それから認知症の患者さんがどれぐらいおられるのか。そういった数字を、恐縮ですが参考に出してみてくれますか。

○中山高齢社会対策部長 お尋ねの区東北部圏域の医療資源について順次申し上げます。
 一点目の、かかりつけ医の認知症対応力向上研修修了者数でございますが、先ほどと同じように、平成十八年度から二十一年度までの四年間で二百五十九人でございます。
 次に、認知症サポート医の養成数は、現在に至るまで三十九名、それから、認知症の診断、治療を行っている医療機関は、当時の調査で三十二カ所でございました。
 それから、平成二十三年一月時点で、高齢者数は約二十八万人でございます。そのうち、何らかの認知症の症状を有する要介護、要支援認定者は約三万七千人でございまして、高齢者人口の一三・二%を占めているという状況でございました。

○三原委員 済みません、細かくありがとうございました。
 かかりつけ医で対応力向上研修を受けておられる方が二百五十九人と、こういうことなんで、それが足立、葛飾、荒川の区域で多いのか少ないのかは、いま一つよくわかりません。ただ、たしか足立区は、病院勤務の方も入れてですけど、お医者さんが千人ぐらいおられるんですね。葛飾もきっとそれに近い数ですよね。荒川はその半分とか三分の一とかになるかもしれませんけど。
 そういうことを考えますと、対応力向上研修を受けていただいている先生がもっと多く出てくるといいなと、こう思います。これはなかなか、先ほど申し上げたように、眼科の先生が認知症の対応力向上研修を受けても効果があるのかといわれると、私、素人でわかりませんが、いかがなものかなという気もしますしね。
 ですから、内部事情はいろいろあると思いますけど、できるだけかかりつけ医あるいはサポート医といった方の研修を都がバックアップしてやってもらえればと思いますし、先ほど申し上げたように、ちょっとわかるように何か、認証でも張っておいてもらうといいかなという気が非常にいたします。さらにそういう努力をお願いしたいと、こう思います。
 ちょっと話が飛びますけど、認知症というふうに判定されれば、地域の皆さん方の支えで、地域の支援ネットワークというようなものに支えられて、地域で生活ができるというのが理想でございますけれども、それでも、なかなか個人の家庭で生活をしていくというのには問題の多い方もあって、グループホーム事業に東京都は力を入れているわけでございますけど、それの実情についてお伺いいたします。

○中山高齢社会対策部長 認知症高齢者グループホームは、少人数で共同生活を送る住まいであり、地域における認知症ケアの重要な拠点として、都は重点的に整備を促進しております。本年十月一日現在の施設数及び定員数は、四百六十施設で定員七千四百二十名となっております。
 今後の整備目標でございますが、第五期東京都高齢者保健福祉計画で定めておりまして、平成二十四年度からの三年間で認知症高齢者グループホームを約三千人分ふやしまして、定員一万人を整備することとしております。
 都はこれまでも、認知症高齢者グループホームの整備を促進するために、国に先駆けて民間企業等を整備費の補助対象とするとともに、土地所有者がみずから建設し、事業者に貸し付ける場合の補助や、整備状況が十分でない地域の補助単価を一・五倍に加算するなど、独自の取り組みを行っております。
 今後とも、引き続き区市町村の介護ニーズを踏まえながら、認知症高齢者グループホームの整備を着実に進めてまいります。

○三原委員 今、先ほどのご提示で認知症患者が約三十二万人ぐらいと、こういうことですから、グループホームが向こう二、三年のうちに一万人分になりますから、そのときには認知症が三十五万人ぐらいになっているんでしょうかね。三十五万人でグループホームの定員が一万人というのは、果たして適切かどうかという判断が非常に微妙だなという気がいたします。
 ただ、できるだけそういう施設に入らずに家庭で生活できれば一番いいと思いますけど、なかなかそうはいかないので、これからも認知症対応のグループホームというものにさらに力を入れていただかないといけないのではないかなということを、お聞きしながら非常に感じたわけでございますけれども、とはいいながら、東京都は国よりもかなり先駆けて、高齢者対策、とりわけ認知症対策については、推進会議というようなものをつくられて先駆的にやってこられたというふうに認識をしています。それは大変すばらしいことで、国より先駆けてやることは、何も遠慮することはないわけですから、どんどん進めてもらいたいと、こう思います。
 最近、国の方もオレンジプランとかいう五カ年計画を出したはずでございます。こういうものと照らし合わせながら、東京都も施策を推進されていくんだと思いますけれども、先ほど来から申し上げているように、認知症というのは今の医学ではすぐ治るというのではないようですけれども、東京都も長寿医療センターか何かで、あるいは研究所でしたか、そういうところで認知症についてかなり研究を進めておられるので、いい成果が出るのかもしれませんから、そういうところの研究成果が東京都から出れば、もっともっとすばらしいと思います。認知症で東京都からノーベル賞が出るかもしれませんからね。
 期待はしておりますけど、今の時点でいえば、治療して完治するというのではなくて、進行を抑えていくということが可能なようでございますので、そういうことも考えれば、とにかく認知症に関しては初期の段階で早く専門医にかかるということだろうと思いますので、そういう策をどんどん積み上げていっていただかなきゃいけないと、こう思います。ぜひひとつ局長にそういう決意を持ってもらいたいと思いますが、最後にお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。

○川澄福祉保健局長 急速な高齢化が進む中で、地域で暮らす認知症の人の確実な増加が予測されることから、東京都では、平成十九年度に認知症対策推進会議を設置いたしまして、地域で認知症の人と家族を支える仕組みづくりや若年性認知症総合支援センターの開設等、これまでも国に先駆けて認知症施策を実施してまいりました。
 本年四月からは認知症疾患医療センターの運営を開始し、認知症専門医療の提供や医療、介護の連携を進めるとともに、医療従事者、介護従事者、地域包括支援センターの職員等、地域連携を支える人材の育成に取り組んでおります。
 認知症の人とその家族が住みなれた地域で安心して生活を続けるためには、お話のように認知症を早期に発見し、状態に応じて、医療、介護の連携のもと、早期に適切な支援をしていくことが大変重要でございます。
 都は、今後とも国の動向を踏まえながら、早期発見や早期支援、また、大都市東京の実態に即した認知症対策のさらなる強化に向けて全力で取り組んでまいります。

○三原委員 よろしくお願いします。

○遠藤委員 私からは、がん対策の充実、在宅療養について、そして三点目に散骨について、この三テーマについて質問をさせていただきたいと思います。
 初めに、がん対策であります。
 現在、東京都は、次期がん対策推進計画の策定に向けて、その作業が佳境を迎えているころだと思います。こうした中、ことしの第一回定例会におきまして、がん対策推進条例が議員提案で上程され、この厚生委員会の場でも、さまざまな突っ込んだやりとりが交わされました。
 私も、がん患者、そして現在は、がんで身内を亡くした遺族の一人として、さらには、日ごろ地域を回っておりますと、私たちの支援者の方にも、がんと闘っている方はたくさんいらっしゃいます。こうした方々を代弁するという立場から、この条例案の質疑では、やりとりに立たせていただいたわけであります。
 新聞等では、このがん条例をめぐりまして、我が党公明党及び自由民主党の反対により、がん条例が否決されたと、このような報道がありました。私たち公明党は、決してがん対策に後ろ向きではありません。そういう意味では非常に心外であります。このがん条例の内容が稚拙であったがために、我々は反対をしたわけであります。都議会の中で、最もがん対策の充実を訴えてきたのは都議会公明党である、このように自負をいたしております。
 都にがん条例がないからといって、がん対策がおくれている、またはおくれる、こういうわけでは決してないと思います。来年には新しい知事のもとで予算審議が始まるわけでありますけれども、このがん条例を否決したからといって、がん対策予算を削減するなどということはなく、どなたが知事になられたとしても、私たち公明党は今後もより一層がん対策を訴え続けていく、こういう所存であります。こうした観点に立って、これまで我が党が提案してきました事項について、現在の状況をお聞きしたいと、このように思っております。
 初めに、緩和ケアについてであります。
 我が党は、がん患者や家族の苦痛軽減を図る緩和ケアの提供体制の整備が特に必要である、こうした観点から、都のがん対策推進計画の策定に先立って、緩和ケアの重要性を議会で取り上げてまいりました。その後、計画策定後も、患者または家族への講演会、そして医療従事者への研修などについて、たび重ねて質疑を行い、緩和ケア提供体制の推進に向けた取り組みを強く後押ししてまいりました。また、要望もしてまいりました。
 患者本人の療養生活の質を高めて、家族の精神的な負担を軽減する意味でも、必要かつ十分な緩和ケアを、がんと診断されたときから提供する、その体制を整備しなければならない、こういうわけであります。
 この緩和ケアの研修につきましては、国における自公政権時代に、当時の自由民主党の安倍総裁、当時は総理大臣だったと思いますけれども、我が党の太田代表、当時でありますけれども、この両者で、ぜひ緩和ケアの研修を全国規模で、しかもなるべく短時間でやろうじゃないかと、こういう合意があって、国を挙げて取り組んできた。そこに都も呼応していた。こういうことだと思います。
 都においても、私たち公明党の提案を受けて、計画最終年度の本年度末までに、がん医療に携わる都内の全医師に対して緩和ケア研修を実施すると、こういう規定であったと思います。
 そこで、この医師緩和ケア研修の実績、そしてこの実績を踏まえた、今後の取り組みについて、まずお伺いしたいと思います。

○小林医療政策担当部長 医師緩和ケア研修は、平成二十年度からことし十月までの間に百七十一回開催し、医師の受講者は合わせて三千七百三十三人でございまして、今年度末までに、おおむね目標である三千八百人に対しまして研修を終了する見込みでございます。
 本研修では、がん性疼痛に対する緩和ケアのほか、精神症状に対する緩和ケアや、がん医療におけるコミュニケーション技術等のさまざまなプログラムについて、二日間で十二時間以上学ぶこととなっております。
 今後は、がん診療連携協議会研修部会におきまして、研修の開催方法などについて検討を行い、より多くの医師が緩和ケアの基本的な知識を習得できるよう、継続して実施してまいります。

○遠藤委員 医師の研修については、今の答弁で、かねがね目標を達成すると、できると、こういうことでありました。今後の取り組みについても答弁いただきましたけれども、質また量の充実をぜひ期待したいと、このように思います。
 東京都は、平成二十二年の十月に実施した緩和ケアに関する実態調査を踏まえて、その一層の推進を図るために、昨年度、東京都がん対策推進協議会の中に緩和ケアのあり方検討部会を設置して、大きな柱として三つ、今後の対策ということで挙げておられます。
 一つは、在宅緩和ケアにおける地域での連携、二つ目は、緩和ケアに携わる人材の確保、そしてその育成、三つ目は、緩和ケアに関する都民の意識啓発、こうした、主に三つの課題について、それを検証して、また、対応策を検討すると。その結果を受けて、今年度から緩和ケア推進事業を新たに実施していると、このように聞いております。
 そこで、今年度からスタートした緩和ケア推進事業の概要、そして、まだ半年ぐらいでありますけれども、進捗状況について答弁を求めたいと思います。

○小林医療政策担当部長 地域における緩和ケアの水準向上や切れ目のない緩和ケアを提供できる体制整備を図るため、地域の医療機関や関係団体等の協力を得て、緩和ケア推進会議を設置いたしました。
 この推進会議では、二次保健医療圏ごとに、地域がん診療連携拠点病院が中心となり、研修会の企画実施や医療従事者に対する相談支援、地域連携の推進に向けた取り組み等を行ってまいります。
 今年度は、新宿区、中野区、杉並区の三区から成る区西部と、武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、小金井市、狛江市の六市から成る北多摩南部の二地区において推進会議を立ち上げたところでございます。
 今後、この事業を他の圏域にも展開し、都内全域での地域緩和ケアの充実、拡大に取り組んでまいります。

○遠藤委員 入院して行う緩和ケア、これも重要なことだと思いますけれども、やはり急速な高齢化の進展に伴って、がんの患者の方がますます増加していくということは疑いの余地はないわけであります。
 また、緩和ケアは、がんと診断されたときから、治療の過程のさまざまな場面で切れ目なく提供されるものであると、これはWHO規定でありますけれども、そうしたことからも、すべての患者さんが入院した医療機関で緩和ケアを受けられるということは、非常に困難、現実的にはかなり厳しいと、このように思わざるを得ません。
 こうしたことから考えても、地域において、地域が連携して取り組んでいくということは非常に重要な取り組みであり、ぜひ次期がん対策推進計画の中にもこのテーマを盛り込んで、着実に進めていただきたいと、このように思うわけであります。
 次いで、このがん対策の充実に関する二点目であります小児がんであります。
 私たち公明党は、平成二十一年の第三回定例会で、小児がん患者への支援について、より重層的な取り組みが必要である、そして、それについて、都の次期推進計画の中に、現計画では明記がない、この小児がんの対策を明記すべきであると、このようにいち早く訴えをして提案させていただいたわけであります。
 ご案内のとおり、小児がんは十五歳未満の子どもの病死原因の第一位であります。そして、小児から思春期、若年成人まで幅広い年齢で発症するというわけであります。年間患者の数は全国で二千人から二千五百人と少ない一方で、小児がんを扱う施設は約二百施設であると、このように推定をされております。医療機関によっては、少ない経験の中で医療が行われている可能性があるわけであります。
 こうした状況を改善するために、国は基本計画の中で、小児がん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられるような環境の整備を目指して、五年以内に小児がん拠点病院を整備すると、このように定めているようであります。
 国が整備しようとしているこの拠点病院、都内の医療機関がその一翼を担うことは間違いないと思われます。したがって、国の動きをただ待つことなく、都の体制をいち早く整備する必要があると考えますけれども、見解をお伺いしたいと思います。

○小林医療政策担当部長 国は、患者さんやご家族が安心して適切な小児がん医療や支援を受けられるような体制整備を目指し、小児がん拠点病院の整備を進めているところでございます。
 一方、都におきましては、さまざまな部位から発生する多種多様な小児がんについて、それぞれを専門とし、高度な医療を提供している医療機関が多く存在するという特性がございます。
 このため都は、この強みを最大限に活用し、小児がんの診療ネットワークを構築して、小児がんの診療に携わる医療機関が連携することにより、迅速かつ適切に小児がん患者が医療を受けられるよう体制整備を進めてまいります。ネットワークの中では、各診療機能の情報共有や小児がん登録の実施、研修の実施体制、相談支援体制や長期フォローアップ体制等について検討をしてまいります。
 今後、こうした取り組みを進め、都の特性を踏まえた小児がん医療対策を総合的に推進してまいります。

○遠藤委員 偶然でありますけれども、先日、四日の読売新聞に、都のがん対策推進協議会の座長であり、日本対がん協会会長の垣添忠生先生の論文が掲載されておりました。この中で先生は、小児がん対策または小児がんそのものの特性について、このように述べられております。
 一つは、小児がんの患者は、かかった病院や担当した医師によって、その後の運命が変わってしまう、または、成長発達期に治療を受けたことによって起きる問題に留意しなければならない、そしてもう一つ、約七割は治癒が期待され、教育、就職、結婚など、その子どもの治療後の人生にも目配りをする必要がある、このようなことを指摘されております。
 これらは、我が党がこれまで繰り返し訴えてきたことにも通ずる、同じことが書かれていると、このように思います。現在策定中の推進計画には、ぜひこうした点が盛り込まれることを期待しております。
 そして、がん対策、とりわけこの新たな推進計画の策定に当たっては、もう一つ注文をさせていただきたいと思います。
 二十四年、ことしの二定の代表質問で、たばこの対策にも取り組みました。すなわち、成人の喫煙率の減少と受動喫煙の防止に関する目標を、この新たな推進計画の中に定めるべきである、こういう主張をいたしました。当時の杉村局長は、今後、東京都がん対策推進協議会で喫煙率や受動喫煙防止の目標を検討し、次期の推進計画に盛り込んでまいりますと、このように明言をしておりますので、これはしっかりやっていただきたいと注文をしておきます。
 このがん対策で最も重要なことは、患者家族の立場に立って対策を考えること、これは非常に当たり前でありますけれども、私自身もそれは当人として実感をいたしております。患者さん一人一人の立場に立って、いたずらに理念を掲げるだけではなくて、今、何が本当に必要なのか、これを親身になって考えることが重要であります。家族や患者さん本人の生の声、切実な声を聞いて、それを行政に訴えて、計画や予算を通じて具現化を図り、患者や家族に将来の希望を持っていただくことこそが、私たち政治家の役割である。このように、さきのがん条例の議論を通じて、改めて強く思いをはせたわけであります。
 それでは、次のテーマに移らせていただきたいと思います。在宅の療養支援についてであります。
 都は、平成二十二年十月に、在宅療養を推進するための会議を立ち上げました。そこで、区市町村で実施されている事業や、または都の先進モデル事業など先進事例を検証の上、在宅療養をさらに進めるために、そこでの課題、また、方向性について検討し、昨年五月にはすばらしい報告書をつくられ、取りまとめられました。
 この報告書、私もよく読ませていただきましたけれども、都民に最も身近な行政機関である区市町村を、在宅療養の実施主体、このように位置づけ、都は、区市町村が主体的な取り組みを実施するよう働きかけて支援を行う役割を担うと、このように区市町村と東京都の役割を明確に立て分け、位置づけているわけであります。
 このような考え方に基づいて、都は、大きな柱として三つ、区市町村の取り組みを支援するということであります。
 一つは、医療や介護の関係者など多職種による協議会を設置する取り組みを進めるということであります。そして二つ目は、病院から在宅療養への円滑な移行と、在宅療養の継続を調整するための窓口を設置していく、また、促す。そして三つ目、在宅において患者の方の病状が急変した場合、しっかりとバックアップをする、こういう地域の協力病院による後方支援、そのための病床をしっかりと確保していくと。この三つを行う区市町村をしっかりとサポート、支援していくのが都の役割であるという立て分けであろうと思います。
 今年度、都の包括補助事業による支援を受けて、これらに取り組む区市町村の数は、まず第一点目の協議会の設置が十一カ所から十四カ所、そして二点目の窓口の設置が十カ所から十四カ所、そして三点目の後方支援のための病床の確保が六カ所から九カ所と、昨年度と比較して増加していると聞いております。これは、都がしっかりとバックアップをしている大きな成果であると、このように受けとめております。
 第一回定例会の厚生委員会において私は、この区市町村に対するより一層の積極的な支援を要望いたしましたけれども、本日はその進捗状況についてお伺いをしたいと思います。
 まず、今、お話ししましたけれども、三つの取り組み、これらを進めるためにも、やはり東京都と区市町村との連携を密にする、こういう観点に立って事務連絡会議を設置して、ここを通じてこうした取り組みをやっていこうということが大事だという、一定の厚生委員会でのやりとりがありました。この事務連絡会議について、今年度の開催状況について、まず答弁を求めたいと思います。

○笹井医療改革推進担当部長 お話の区市町村との連絡会でございますが、在宅療養の取り組みを広げていくためには、各区市町村の状況を把握するとともに、適切に情報を発信していくことが重要であることから行っているもので、本年七月、第一回目の連絡会を開催したところでございます。
 本連絡会は、医療政策を担当している私どもの部署と、高齢社会対策を担当する部署が共同で開催しており、各区市町村からは、保健衛生主管部署と高齢福祉、介護保険主幹部署それぞれから担当者が出席しているところでございます。
 第一回目の連絡会では、都の在宅療養に関する事業内容の報告や、先行して取り組みを進めてきた区市町村からの窓口設置等に関する事例発表など、区市町村が主体的な取り組みを進めるに当たり有用な情報提供を行うとともに意見交換をいたしました。
 在宅療養支援窓口の設置など、大変重要であると認識しております。今後も引き続き連絡会を開催し、区市町村と課題を共有し、解決策を検討する一方、個別に区市町村への働きかけを行うなど、在宅療養推進に向けた区市町村への支援を行ってまいります。

○遠藤委員 在宅で療養生活を送る高齢者にとって、医療サービス、介護サービス、この二つは決して切り離すことができない。これは当然であります。行政においても、それぞれを担当する組織が、縦割りではなくて連携して対応することが重要であります。
 そういった意味で、今回の連絡会は、区市町村の医療部門の担当者、そして介護部門の担当者それぞれが密接な連携を図るきっかけになるものとして、大変地味でありますけれども、評価をいたしたいし、力を入れていきたいと、このように思っております。
 また、都は区市町村への支援を引き続き行っていくと、このような答弁でありますけれども、区市町村の取り組みがこの先もさらに進むかどうか、これは都の支援のあり方に深くかかわっているといっても過言ではないと思いますので、ぜひ大いに力を入れて取り組みを進めていただきたいと、このようにお願いをしたいと思います。
 ところで、我々議員のもとには、都民からさまざまなご意見、ご要望、相談が寄せられるわけであります。そんな中に、例えば、入院三カ月で転院を迫られてしまうと。病院から病院への転院に関する相談、いわゆる転院三カ月問題、私が勝手にこういっているんですけれども、こういうものがあります。
 入院中の医療機関からも、複数の病院の紹介、次に転院する転院先の紹介を受けるけれども、本人、そして家族にとっては、紹介された病院が、金銭的な問題であったり、または地理的な要因によって、その病院への転院が難しいと。であるにもかかわらず、いついつまでにこの病院は出てくださいねと。このように、困った家族から、何とかならないでしょうかという相談があります。
 恐らく、ここにいる委員の皆さんの中にも、こうした要望、相談を受けられる方、いらっしゃるんだと思います。その際、何とか個人的に縁のある病院にお願いをすることもありますし、または皆さん方、福祉保健局の皆さんにご相談をして、適切な病院をご紹介したというケースもあります。
 今議論をしているのは--病院から在宅へと、こういう大きな動きの中で、今回質問を、やりとりをさせていただいております。区市町村に在宅療養支援窓口を設置して、病院から在宅療養への円滑な転院調整を図る。これはもちろん大事だと思いますけれども、その一方で、今私が指摘をいたしました転院に関する相談対応や、情報提供を担当する人員の配置なり、病院から病院へと患者をつなぐための仕組みづくりも、あわせて重要であると、このように思っております。
 そこで、まず第一に、今、都が区市町村に対して支援をしている在宅療養支援窓口の設置の促進とともに、今私がお話ししましたけれども、こうした、病院から病院へと患者をつなぐための仕組みづくりについて、どう認識をして、そして今後どういう取り組みをしていこうと考えているのか、お伺いをしたいと思います。

○笹井医療改革推進担当部長 現在、区市町村に対し、在宅療養への取り組み状況に関するアンケート調査を行うなど、在宅療養支援窓口の設置などの現状と課題の把握を進めており、今後、区市町村連絡会において、その結果を踏まえ、窓口設置をさらに進めるための方策について検討してまいります。
 また、病院から在宅療養への円滑な移行を図るためには、窓口の設置の促進とともに、急性期を脱した後も入院医療を必要とする患者さんがほかの医療機関に転院する際の支援も重要と認識しております。
 このため、病院から転院する際の実態について、在宅療養推進会議の委員の意見を聞くなど状況把握に努め、こうした取り組みを通じ、病院から病院への転院や在宅療養への移行の円滑化を図るための方策について検討を進めてまいります。

○遠藤委員 先ほど民主党の伊藤委員から、非常に重要な指摘、有意義な質問がありました。すなわち、ベッド数、東京の実情に応じて基準病床数を突破して、東京ならではの実情に応じて、それは何とかしろと、それを国に働きかけていけと、こういうことであります。
 こうした取り組みも非常に重要であると同時に、それがなかなかできないという中においては、先ほど伊藤先生の方から、ベッドはあるところにはあると、空床があると、こういうような有意義なデータを示していただきましたけれども、まさに、片やそういう一方で転院先が見つからないという状況があるわけであります。
 今、部長さん、いい答弁をされたと思います。ただ、しかしながら私の理解と部長の理解に乖離があってはいけませんので、もう一回確認のため、私がこうすべきだといっているのは、ある患者さんが入院しておられる。この方が転院をする際に、病院が持っている情報、またはそこにおられるMSWの方が持っている情報、情報やネットワークというのは限られているわけであります。したがって、こうした病院やそこに勤めるMSWさんにただ単に任せる、ゆだねるのではなくて、そこを、病院から病院をつなぐリエゾン機能を、公的な仕組みなり何なりを東京都としてつくるように検討すべきだという私の提案に対して、その検討を始めると、こういうように答弁されたと思いますけれども、その理解でよろしいですか。

○笹井医療改革推進担当部長 お話のように、急性期を脱した後も入院医療を必要とされる患者さんがほかの医療機関に転院される際の支援は、とても重要だと認識しております。病院から病院への転院の円滑化を図るための方策について、しっかりと検討を進めてまいります。

○遠藤委員 明言いただきました。ぜひその取り組み、仕組みづくりを早急に進めていただきたいと思います。時間との勝負という側面もあると思いますので、我々もぜひ全面的に応援したいと思いますので、やっていただきたいと、このように思います。
 一方、地域において在宅療養を推進する基盤をつくることも重要であります。基盤、すなわち受け皿となる在宅医の先生方は、在宅医療を担っていただく社会資源といっても過言ではないと思います。
 都は、今年度から、こうした在宅医または在宅医療を担う社会資源を確保するために新しい事業を展開しているということでありますけれども、その新事業の進捗状況についてご報告をしていただきたいと思います。

○笹井医療改革推進担当部長 在宅療養環境を整備するには、地域で在宅医療に携わられる医師をふやしていく必要がありますので、都は、複数の在宅医や訪問看護ステーションがチームを組むことで在宅医の負担軽減を図る、在宅医等相互支援体制構築事業を今年度から実施しております。
 本事業は、チームによる二十四時間の訪問診療の仕組みを構築するための地区医師会の取り組みを支援するものでございます。今年度は、都内の四十五の地区医師会のうち十五地区から申請がございまして、各地区で輪番による当番医体制などの診療体制の構築に向けた取り組みが始まっているところでございます。
 また、東京都医師会と都の連携により、地区の医師会と区市町村の担当者の連絡会も開催されるなど、本事業を契機に連携の強化も進んでおり、都もこうした取り組みを引き続き支援してまいります。

○遠藤委員 都の包括補助事業による支援や今年度からの新たな事業を通じて、在宅療養の推進の取り組みが区市町村で、また、地域で始まっているということは理解できました。これらの取り組みを点で終わらせることなく、面として、全都的に、そして速やかに広げていくことが重要であると思います。都内のすべての区市町村において在宅療養に係る取り組みが進むように、重ねて、今後とも区市町村の主体的な取り組みに対する都の積極的な支援を求めたいと思います。
 ところで、今年度は、先ほど来の質疑にもありますとおり、保健医療計画の改定が予定されております。今回の改定では、精神疾患医療の充実及び災害医療体制の強化等とともに、医療と介護の連携による在宅療養の推進を、重点的に取り組む課題、このように位置づけておられます。
 都はこれまで、平成二十年のこの保健医療計画に基づいて、四疾病五事業を中心に医療提供体制の整備に努めてこられました。例えば、がん医療や脳卒中医療等の推進に当たっては、急性期の医療機関を退院した後の在宅における療養生活の支援が大変重要になっております。さらに加えていえば、高齢化が進む中、先ほどの議論になっておりました認知症高齢者を初め、地域において生活支援を必要とする高齢者の増加も見込まれており、その支援も重要性は増す一方であります。
 これまでも、保健医療計画の中に地域における在宅医療ネットワークの推進を掲げて、高齢者が地域の中で生活を継続できる地域ケア体制の構築など、保健、医療、福祉が連携した取り組みを進めてきたところでありますけれども、このような状況を踏まえて、在宅療養の推進は今後ますます重要性を増すと、このように思います。
 そこで、この項の最後に、保健医療計画の改定における在宅療養の推進の方向性について見解を求めたいと思います。

○浜医療政策部長 高齢化が急速に進展する中、都民が住みなれた地域で安心して生活を続けるためには、医療と介護が一体となって療養生活の継続を支える体制の構築と、入院医療が必要になっても、病院から在宅療養へと円滑に移行できる仕組みづくりが重要でございます。このような観点から、新たな保健医療計画におきましては、在宅療養の推進を最重要課題の一つと位置づけております。
 そして、区市町村の主体的取り組みの支援や、他職種連携による二十四時間安心な在宅療養体制の整備、退院支援や、先ほど来お話がございましたとおり、病院間、また、病院と診療所間の地域連携強化による在宅療養生活への円滑な移行支援、人材の育成確保等を施策の方向性として掲げ、取り組んでまいります。

○遠藤委員 最後に、趣を全く異にしますけれども、散骨についてお伺いしたいと思います。
 自然志向の慰霊法が広がりを見せる中、山や海などに遺灰を散布する、いわゆる散骨への認知度も高まってきております。この散骨は、日本では古く万葉集にも歌われ、世界の著名人の中では、皆さんもご存じの周恩来さん、ネールさん、アインシュタインさん、マリア・カラスさん、ジャン・ギャバンさん、ジャック・マイヨールさんらが、遺族らの手によって自然に帰ったわけであります。
 世界ではこのように広く行われている散骨でありますけれども、我が国においては、現在、それに関する法律がなく、事実上、まく側、まく者のモラルと自主ルールに任されているようであります。
 そこで、改めて聞きますけれども、現在、この散骨に関する法規定はどのようになっておられますでしょうか。

○中谷健康安全部長 いわゆる散骨につきまして、国は、墓地、埋葬等に関する法律において、これを禁止した規定はない、この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要があると考えているとの見解を示しております。
 先ほど遠藤副委員長からお話がございましたが、現在、散骨の具体的な方法等につきましては、散骨を行う人の判断にゆだねられている状況でございます。

○遠藤委員 そうなんですね。もう本当に法規定が、禁止規定がないということで、散骨を行う業者なりNPOなり個人なりの判断にゆだねられていると、こういうわけであります。そんな中でホームページ等々を見ますと、こうした業者やNPOが、ぜひ私のもとにゆだねていただければしますよと、こういうようなこともかなり見受けられるわけであります。
 ただ、このように禁止規定がない--現時点では大きなこの問題をめぐるトラブル等々は報道されておりませんけれども、こうした状況が続いていくというのは、社会通念上、国民の感情を損なうという懸念もあります。さらにそれがトラブルにつながるというおそれもあるわけであります。
 その一方で、高齢化の進展や家族形態の変化、墓地に対する考え方の多様化などを踏まえて、やはりこの散骨について、都として広域的な視点から検討すべきであると、このように思います。といいますのも、東京都には広大な海域があり、そして山もたくさんあるわけであります。都会だけではないですね。やはり都として、何らかの広域的な視点に立って、このあり方について検討すべきであると、このように思いますけれども、どうでしょうか。

○中谷健康安全部長 都はこれまで、他の道府県などとともに、国に対しまして、散骨への対応のガイドラインを示すように要望しております。引き続き国に対し要望していくとともに、都民からの問い合わせに適切に対応するため、散骨に関する留意事項等につきまして新たにホームページに掲載するとともに、区市町村などの関係機関にも情報を提供してまいります。

○遠藤委員 新たに、この散骨に関する留意事項等を都のホームページで公開していく、これは一歩前進だと思います。といいますのも、何でこんな問題に私が興味、関心を持ったかといいますと、この夏、地域を回っていますと、ある婦人の方から、私の田舎は秋田県なんだと。秋田県で、お墓の問題でいろんなやりとりがある中で、できれば先祖が埋葬されているお墓の周辺に散骨したいんだけれども、こんなのできるのかね、遠藤さんと、私のもとに問い合わせがありましたので、福祉保健局の方を通じて秋田県にも照会をかけていただいたところ、このような法規定はなく、実情、まく側のモラル等に任せられていると、こういったことが私も新たな知見としてわかりましたので、今回、この散骨の問題について取り上げさせていただいた次第であります。
 さきの一般質問でも、この散骨、私の中では関連をして、都立霊園における樹林墓地の拡大の話を取り上げました。現在、小平霊園で一部行われている取り組みをすべての都立霊園でも拡大すべきであると、このような提案をさせていただきました。
 この話を地域に持って帰って、いろんな話、やりとりをいたしますと、自然葬に対する都民の皆さんの関心というのは非常に強いなと。極端な話、この都立霊園で行われている樹林墓地というのは、遠藤さん、木を植えて、そのもとにご遺骨をまいていいんですかと、こういうような認識を持っている都民の皆さんもかなり多かったわけであります。
 そんな意味で、これから高齢化社会の進展の中、または核家族の進展の中、さらに墓地事業は、首都圏において大都会である東京都ならではの隠れたテーマだと思いますので、これを契機に、都民の理解が深まるようにしっかりと努めていただきたい、このことを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○しのづか委員 先ほど伊藤委員から認証保育所について質疑がありましたが、私からは、認可園に対する都の補助制度についてと、義務教育就学児医療費助成の課題について、そして福祉施設の運営安定化に向けた取り組みについて、この三点について質疑をいたします。
 まず、保育についてなのですが、本年八月に子ども・子育て関連三法が、民主、自民、公明三党の合意によって可決、成立いたしました。早ければ平成二十七年四月から本格施行されることになっています。新たな制度により、幼児期の学校教育、保育、地域の子育て支援が総合的に推進されることになります。
 子ども・子育て支援法において、保育所に対する財政支援の仕組みについては、当面の間、現行どおり委託費として支払うことになっていますが、どのような内容になるのかは、いまだ明らかにされておりません。
 これまで都は、独自にサービス推進費や施設整備に係る補助を行っていますが、こうした状況において、私の地元多摩市、稲城市の保育所関係者からも、この都の補助制度にどのような影響を及ぼすのか関心が高まっています。
 そこで、保育所の運営費や施設整備費に関する都の補助制度について、何点かお伺いをいたします。
 都は、独自に民間社会福祉サービス推進費補助を行っておりますが、保育所におけるサービス推進費補助金の内容と現在の実績についてお伺いをいたします。

○桃原少子社会対策部長 都は、民間の認可保育所に対しまして、国が定める保育所運営費に加えまして、独自にサービス推進費による補助を行っております。
 サービス推進費には、基本補助と努力・実績加算がございますが、基本補助は都として望ましい保育水準を確保するため、保育所の児童数に応じた補助を、努力・実績加算は都民の多様な保育ニーズに対応できるよう、アレルギー児対応や障害児保育などの実績に応じた補助をそれぞれ行っているものでございます。
 平成二十三年度の実績でございますが、七百六十六施設に対しまして、合計約百億円の補助を行っております。

○しのづか委員 ただいまご答弁いただきましたように、このサービス推進費はアレルギー児への対応など、きめ細やかに項目が設定されておりまして、多様な保育ニーズに即したサービスの提供を促す仕組みになっています。
 このことで、東京における認可保育所のサービス向上に寄与しているサービス推進費ですが、新制度が施行されると、どのような影響があるのか、お伺いをいたします。

○桃原少子社会対策部長 新たな制度におきましては、民間の認可保育所に対する委託費の内容や額などが明らかにされておらず、サービス推進費を含めまして、既存の制度に対する影響につきましては、現在のところ不明な状況でございます。
 新たな制度の詳細につきましては、来年度、国が設置をいたします子ども・子育て会議におきまして検討がなされることになっておりまして、都としては国の検討状況を注視してまいります。

○しのづか委員 今のお答えによりますと、まだ法の中身がわかっていないので、国の状況を注視しながら制度設計していくということだったんですが、やはりこのサービス推進費によって、私の地元なんかは公立園が二園しかなく、ほとんど民間園で、多摩ニュータウンとともにこの子育て支援というのを行ってきたわけなんですが、結構、民間園が公立園を引っ張ってきた実績もあります。中身についてですね。
 やはりこのサービス推進費というのは、民間の保育所経営者にとっては非常に大事な資源でして、ぜひとも今後も保育所が適切な水準で運営され、利用者のサービス向上を図っていけるよう、都として必要な支援策を講じていくことを要望して、次に移ります。
 さて、本年四月における都の待機児童数は七千二百五十七人と、二年連続で減少していますが、減少数は五百九十八人にとどまっています。都としても保育サービス拡充に向けて積極的な取り組みを講じているとのことですが、認可保育所の施設整備に関する支援策の内容と実績についてお伺いいたします。

○桃原少子社会対策部長 都は、民間の認可保育所の施設整備を進めるため、国の安心こども基金を活用いたしまして、認可保育所の新設や改築等に係る工事費や、空き店舗等の賃貸物件を活用した施設整備における改修費等に補助を行っております。
 さらに、都独自に、区市町村や施設整備を行う事業者の負担を軽減する取り組みもあわせて実施をしております。
 これらの補助の活用によりまして、平成二十三年度には認可保育所の定員を約四千人分整備いたしております。

○しのづか委員 就学前児童人口の増加や景気低迷の影響などにより、保育ニーズの増加が今、続いております。しかし、待機児童の解消に向けては、保育ニーズの増加を上回るサービス拡充が必要だと考えます。
 新制度が本格施行された後も、地域の保育ニーズに応じて認可保育所の整備を進めていかなければなりませんが、どのような補助の枠組みになるのかお伺いをいたします。

○桃原少子社会対策部長 新たな制度におきましては、民間の認可保育所に支払われる委託費に、整備費用と減価償却費を勘案して設定する額が組み込まれることになっておりまして、長期にわたって平準化した形で施設整備を支援する、そういった仕組みになることとされております。
 また、当面増加する保育事業に対応するための施設の新築や増改築、施設の耐震化などにつきましては、緊急対策として別途交付金による支援を行うこととされております。
 これらの支援策の詳細につきましても、今後の子ども・子育て会議における検討にゆだねられておりまして、都としては国の検討状況を注視してまいります。

○しのづか委員 その法案の中身がまだ具体的になっていないところなんですが、この時点でちょっと意見として申し上げておきたいなということで、質疑をさせていただきました。
 都は、今、保育計画において、潜在的な保育ニーズ量を就学前児童人口の四四%と推計しておりますが、本年四月現在、保育サービスを利用している児童の割合は三四・六%でありまして、まだまだ一〇%程度の乖離があります。新たな制度においても、引き続き保育サービスの拡充を図っていく必要があると考えます。
 新制度の詳細は今後検討されていくとのことですので、都として情報収集に努めるのはもちろん、新制度においても、都がこれまで培ってきた保育サービスの質を確保し、量の拡充が図れるよう、必要な支援策を検討していただきたいと要望いたしまして、次の質問に移ります。
 義務教育就学児医療費助成の課題についてです。
 東京都では、平成十九年四月から、それまでは未就学児のみだった医療費助成を、義務教育就学児にも対象を拡大して実施しております。発育段階で人間形成の核となる重要な時期である小中学校の学齢期の児童における疾病の早期発見と、その治療が容易に受けられるよう、保険診療自己負担分の一部を助成することを目的とし、制度開始当初は、保険適用の医療費のうち自己負担額の一割を助成しておりましたが、平成二十一年十月からは、通院一回につき上限二百円の自己負担となりました。
 制度の目的については理解するものの、制度開始から五年が経過し、特に市町村においてはさまざまな課題も生じてきていると思います。そこで、この義務教育就学児医療費助成について何点かお伺いいたします。
 まずは、この義務教育就学児医療費助成制度の目的と内容についてお伺いいたします。あわせて、自己負担が二割から二百円となった理由についてもお伺いいたします。

○高橋保健政策部長 義務教育就学児医療費助成事業は、小中学生の医療費を助成することにより、児童の保健の向上と健全な育成を図り、もって子育て支援に資することを目的として平成十九年十月に開始し、事業の実施主体である市町村に対し補助を行っているものでございます。子育てを支援する福祉施策の一環であることから、都は所得制限を設けており、その基準は国の児童手当に準拠してございます。
 また、平成二十一年十月から、少子化対策を一層推進するとともに、適切な医療を提供できる体制を確保する観点から助成内容の拡大を図り、保険診療の自己負担分について、入院はその全額を助成し、通院は一回の受診につき二百円の一部負担金を除いた額を助成することといたしました。

○しのづか委員 内容についてお答えいただきましたが、制度開始から五年が経過しまして、この制度の周知も図られ、受給者数もふえております。この制度は、発育段階で人間形成の核となる重要な時期の学齢期の医療保障の役割を十分に担っていると評価をいたします。
 しかしながら、今もお答えにありましたように、所得制限により医療費助成を受けることができないという子もいることも事実であります。区部及び一部の市においては、都制度をさらに拡充させ、区や市の財政基盤により所得制限の撤廃や自己負担の軽減を図っているとお聞きしております。
 そこで、現在、都内で区市町村が自主的に撤廃をしている状況についてどのように把握しているのか、お伺いをいたします。

○高橋保健政策部長 平成二十四年十月一日現在で、所得制限を撤廃しているのは、特別区の全区と十三市町村でございます。一部負担金を撤廃しているのは、特別区の全区と十二市町村でございます。

○しのづか委員 今、ひっくるめて十三市町村、十二市町村とお答えいただいたんですが、私の聞いたところによると、この所得制限の撤廃をしている市町村は、武蔵野、府中、青梅、福生、羽村、西東京、ここからが町なんですけど、日の出、奥多摩、大島、その後が村、檜原、利島、新島、御蔵島の六市三町四村。一部負担金の撤廃は、武蔵野、府中、そして町が、日の出、奥多摩、大島、八丈、村が、檜原、利島、新島、神津島、三宅、御蔵島の二市四町六村とのことです。いまだ二十市一町二村が、所得制限も一部負担金も撤廃できていないということになります。
 このように、同じ都内において、財政基盤の違いによって医療費助成の格差が生じているということは改善すべき課題であると考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○高橋保健政策部長 一部負担金や所得制限の取り扱いにつきましては、事業の実施主体である区市町村が、それぞれの地域の実情を勘案しながら、独自の判断で対応しているものと理解してございます。

○しのづか委員 なかなか冷たいご答弁なんですが、最初の答弁にもあったように、二十一年十月から、いわゆる少子化対策をより一層推進するために垣根を下げたんだというのがありましたよね。その辺で、お聞きをしたところ、一回二百円というのは、初診料に相当する分でというふうなお話があったんですが、結局は、これも私の考えなんですが、新たないわゆる多摩格差につながっちゃっているのかなというふうに思います。
 一例を挙げると、私の地元である多摩市では、平成二十一年十月の自己負担額の軽減により、医療費助成額が、その制度開始前の二十年度から二十三年度、これを比較すると約三・五倍にも増加しています。
 先ほど申し上げたように、利用者目線で考えれば、自己負担の軽減がされたことによって受診しやすくなっております。しかし、逆に安易な受診を生じさせているという、いわゆるコンビニ受診というものもふえているというふうなこともお伺いをいたします。
 逆に、サービス提供者である自治体目線で見ると、この制度開始前に区の負担で既に制度が存在をしていた特別区と、しかもこれは東京都特有の財政的な事情があって、都区財調できちんとそれを手当てできている特別区と、市町村の場合は市町村に補助を出しているという、この制度については仕組みだとお伺いをしておりますが、もともとなかったことで、都制度で義務教育、小中学生まで枠を拡大したことによって、財政的な格差というものが以前より拡大してしまっていると、そういう一面もあります。
 十九年から二十一年で、より一層推進するための制度の改善というものを行ってきたわけですから、今後もし改善されることがあったら、その点もご配慮いただいてご検討いただければと、その点を申し上げて、次の質問に移ります。
 福祉施設の運営安定化に向けた取り組みについてです。
 現在、都内では、障害者の日中活動の場、働く場として、小規模作業所など、多くの通所施設が運営されております。障害者自立支援法の施行に伴い、これらの小規模作業所などは法内施設への移行が求められています。
 しかしながら、これまで、利用者数が定員基準を満たさない、施設基準を満たさない、職員の配置基準を満たさない、利用者負担が発生する、法人格取得が難しい、利用者の出席率が低い、移行後の事務作業への対応に不安がある、障害程度区分が出ない利用者を対象にしているなど、さまざまな理由により新体系に移行できていない団体も多いと聞きます。
 これは少し古いデータなんですが、厚生労働省の資料によると、平成二十二年四月現在で新体系に移行できた団体は、これ、全国の中で東京都は都道府県別で何と四十七位、最下位の四一・三%と、全国平均である七四・七%を大きく下回る結果となっております。現在はそこから二年たっておりますから、この数字ではないと承知をしているところなんですが、そこで、法内化を通じたこれら福祉施設の運営安定化に向けた取り組みについて、何点かお伺いいたします。
 都では、平成十九年度から五年間、福祉施設の法内化への円滑な移行に向けて、小規模作業所等法内化促進事業を展開して、今年度はそれを一年延長した形で小規模作業所法内化推進事業が行われております。そこで、今年度行われている小規模作業所法内化推進事業の個別相談支援の実績と主な相談内容についてお伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 この事業は、小規模作業所を運営する任意団体やNPO法人等に対し、計画的かつ着実な法内化を推進して事業を安定的に運営できるよう、個別具体的な相談支援を実施する取り組みでございます。
 ことし四月から九月までの相談件数の実績は百八件でございまして、主な相談内容は、NPO法人設立支援十五件、NPO法人設立後の運営支援二十八件、法内化後の収支のシミュレーション等の作成支援四十四件、指定申請書類の作成支援十一件などでございます。

○しのづか委員 今お聞きをしたのが、今年度の取り組みについてなんですが、過去五年間やっているわけなので、もっと多くの数の相談が寄せられていると思います。
 先ほどもいいましたけれども、東京都には、さまざまな事情によりこの新体系へ移行できていない団体も、いまだ多く存在していると聞いております。そこで、いまだに法内化できていない事業所に対する今年度の今後の支援についてお伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 都は、小規模作業所について、先ほどお答えいたしました小規模作業所法内化総合推進事業や、法内化に必要な施設改修、備品購入経費の助成等の支援策により、法内化を促進しております。
 また、所在する区市町村に対するヒアリング等を通して、各作業所の法内化に向けた取り組み状況を確認し、個別の状況に即して計画的な法内化支援に取り組んでおります。
 法人格の取得等、法内化に際し課題を有すると考えられる作業所には、区市町村と連携して積極的に訪問をいたしまして、継続的な法内化支援につなげる出張相談を行うなど、各作業所の実情に応じた、きめ細かな対策を図っているところでございます。
 先ほど、都の二十二年四月の移行率のお話がございましたけれども、他県に比べまして数多くの作業所を抱える中で、時間をかけて丁寧に法内化を進めている証左でもございまして、今後とも、ただいま申し上げたような取り組みを通して、今年度内の着実な法内化を進めてまいります。

○しのづか委員 今お答えにありましたように、積極的に訪問をして相談を受けるというような取り組みは非常にいいと思います。各作業所とも、人も非常にいっぱいいっぱいな状況でやっておりまして、相談とはいえ、なかなかそういう時間がつくれないというような実情もあるやに聞いております。だから、事業はあっても、なかなか相談に来ないとか、その新体系に移ることをためらっているというような状況もあると思いますので、ぜひ今年度、あと半年ですが、積極的な取り組みをお願いいたします。
 今回の質問に当たって、私の地元で法内化した作業所と、そうでない、まだいまだ踏み切れていないところと、幾つかの団体にヒアリングをしました。その中で多かったのは、やはり法内化後の運営面での不安でありました。
 そこで、法内化後の福祉施設に対する支援策についてお伺いいたします。

○山岸障害者施策推進部長 都は、ホームページで、法定サービスを提供する福祉施設が遵守すべき基準や、制度改正等の情報を適宜提供しております。
 また、就労継続支援等を行う施設の工賃アップに向けた区市町村の取り組みに対し、障害者施策推進区市町村包括補助事業の作業所等経営ネットワーク支援事業や、経営コンサルタント派遣事業により支援を行っております。
 法内化後も、施設の安定的な運営と利用者サービスの向上のため、支援を行ってまいります。

○しのづか委員 今お答えいただきましたが、私が聞いてきたことと--ちょっとそこには答えが返ってきていないというのが現実でして、これは意見にします。
 意見でやっぱり多くあったのが、作業所のいわゆる施設のレベルアップとか、法内化に向けたいろんなものということで、固定経費に対する懸念が非常にあるということと、やはり運営面での相談支援を継続してほしいというような要望がありました。
 運営の安定については、例えば、私の地元の多摩市などは、積極的な法内化を進めるために、そういう声があったからだと思うんですが、今は上限を決めて、家賃の三分の二を補助しております。それを三分の一にして、やがてはゼロにするんですが、やはり円滑な移行ということで、団体の声を聞いて、そういった補助制度というものを持っております。
 そして、出席の日数に応じて補助金が変わるということで、欠席加算、これの対象日数を拡充してほしいというような声もございました。それと、事業所の運営についてあった声では、やはり事業所の運営についてのマニュアルのようなものがないだろうかという話もありました。
 現在は指導監査基準というものしかなくて、なかなか雲をつかむような形で不十分ではないかということと、先ほどもあったように、今、行われている法内化推進事業のように、これは人材開発機構というところに東京都が委託をして行っている事業だと思うんですが、やはり運営面においてもさまざまなことで相談しやすい、いわゆるプロに相談ができるということで、これは非常に喜ばれております。
 だからこそ、伺ったところ、法内化後三カ月までは無料で相談してくれるらしいんですが、それを過ぎると一気に有料になっちゃうらしいんですよね。いろんな事業もそうなんですが、運営が切りかわるとき、大体、決算期ぐらいまでは、事務的なさまざまな実情というものを相談できる体制というのが、できればあった方がいいのかなと。例えば、法内化後一年間ぐらいは、そういう個別の事情に対する相談というものも受けてあげられたら本当にいいんだろうなと思っております。
 それと、もう一つあったのが、サービス管理責任者というのが、団体というか法内化施設には必ずいることになっているんですが、このサービス管理責任者の仕事全般についての、例えば講習会のようなものを東京都で開催してもらえると、いわゆる運営の安定ということに対しては非常に心強いというような意見もございました。
 いろいろ羅列をしましたが、これは意見として要望しておきますので、ぜひ今後のこういった事業のご検討に、多分まだ--今年度中に全部が移行すればいいですが、移行できないような状況があったときに、きちんと現場の意見として、新たな今度の支援策につなげていただきたい、このことを要望して、質疑を終わらせていただきます。

○滝沢委員 私からは、周産期医療の充実についてお伺いをしてまいりたいと思います。
 私の住んでいる八王子市は、平成二十四年九月現在、人口約五十六万四千五百人、そのうちゼロ歳から十四歳までの人口が約七万三千人で、全体の約一三%を占めています。
 市内には比較的多くの病院があるものの、小児科を標榜する病院は三病院、産科を標榜する病院も三病院しかなく、新生児集中治療管理室、いわゆるNICUを備えた病院はありません。
 八王子市は、地域医療を確保するために、西部地域に東京医大八王子医療センターを、また、東部地域には東海大学八王子病院を誘致いたしました。両病院は、先ほどの小児科、産科を標榜する三病院のうちの二病院で、この二つの病院が圏域内の民間医療機関と連携し、一次、二次ばかりではなく、三次医療を含めた医療体系を維持しています。これに伴い、八王子市は両病院に各五へクタールの土地を無償提供し、百億円近い多額の建設費及び救急医療等運営費助成などを行っています。
 こうした市の負担は大きく、公立病院の代替施設として大学病院等と協定を結び、誘致、運営をしている場合は、公立病院と同等の支援をしていただきたいというところでございますが、小児の休日・全夜間診療事業のほか、小児総合医療センターからの医師の派遣など、都としても支援を行っていただいていることは、そのこと自体は十分理解しております。しかし、周産期医療については、いまだ未整備のまま進まない状況であり、東京医大八王子医療センターと東海大学八王子病院にはぜひ取り組んでいただきたいですし、それに向け、都としての体制整備の支援をぜひお願いしたいところであります。
 お聞きしたところによりますと、周産期母子医療センターは、周産期に産科、小児科双方からの一貫した総合的な医療を提供できる施設であり、母体胎児集中治療管理室、いわゆるM-FICUとNICUを備えた総合周産期母子医療センター、NICUを備えた地域周産期母子医療センターの二つのセンターがあり、そのほか、周産期医療を行う医療機関として、都が指定して支援している周産期連携病院があるとのことでありました。
 そこで、周産期連携病院とはどのような機能の病院なのか、お伺いをしたいと思います。

○浜医療政策部長 周産期連携病院は、都が独自に指定するもので、周産期母子医療センターとは異なって、必ずしもNICUを備えることが要件となってはおりません。地域の産科医院等の正常分娩施設と、ハイリスク分娩に対応する周産期母子医療センターとの中間に位置づけられる、ミドルリスクの妊産婦に対応する二次救急指定医療機関でございます。
 具体的には、地域の産科医院等からの紹介や、周産期母子医療センターからの逆紹介を受けて、帝王切開等の産科手術や内科合併症のある妊産婦の母体管理、重症でない新生児の診療等が可能な施設でございます。
 周産期連携病院は、現在、都内全域で十一病院、うち多摩地域では四病院を指定しております。

○滝沢委員 今、ご答弁いただいた中で、周産期連携病院であれば、必ずしもNICUを備えることが要件でもないということで、重症でない新生児の診療が可能であるということなどがわかりました。
 NICUを整備するには、人員体制や施設整備の厳しい基準がございます。診療報酬や補助金があっても、運営するにはハードルが高い状態です。NICUの整備を望むものでありますが、いきなりNICUの整備を求めるものではなく、まずは東京医大八王子医療センターと東海大学八王子病院が周産期連携病院の指定を受けて、少しずつ体制整備を進めていくことができればと考えています。
 そこで、両病院に対し、周産期連携病院として地域の医療を担えるよう、都からも働きかけを行い、支援もしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

○浜医療政策部長 都はこれまでも、八王子市と小児医療に関する協議を行ってきておりまして、将来的に両病院がNICUを整備する際には必要な支援を行うことについて検討していくということにしております。また、両病院とも、周産期医療の確保について意見交換を行ってきております。
 平成二十一年から周産期連携病院の指定を開始しておりますことから、八王子地域における周産期連携病院の確保に向けて八王子市と情報交換を行うとともに、両病院の意向を伺いながら、引き続き働きかけを行っていきたいと考えております。

○滝沢委員 ぜひ両病院が周産期の医療体制が充実できますよう積極的に働きかけ、都としての支援もお願いしたいと思います。
 次の質問に移りたいと思います。
 社会福祉法人東京都社会福祉事業団の運営する施設についてお伺いをしていきたいと思います。
 社会福祉事業団は、都の監理団体として、都から指定管理者の指定を受けて都立施設の運営をしていますが、どのような施設を幾つ運営し、その運営状況の評価はいかがか、お伺いをしたいと思います。

○萱場事業調整担当部長 現在、東京都社会福祉事業団は、障害児者施設を五施設、児童養護施設を六施設、計十一施設について、都から指定管理者の指定を受けて運営しております。
 これらの施設の運営状況については、学識経験者の外部委員などによる指定管理者評価委員会において審査いたしましたが、すべての施設について管理運営は良好との評価を得て、この九月に発表したところでございます。

○滝沢委員 今ご答弁いただいた中で、すべての施設について管理の運営が良好だということでの評価をいただいているということで、この各施設が各地域にとっては必要不可欠な施設で、しっかりと根づいた中で運営がされているという中でのお話であるというふうに思います。
 そこで、お伺いをしていきたいと思うんですけれども、八王子福祉園について、適正規模への分割も含めた民間移譲の手法等を検討していくこととしておりますけれども、現在の入所者は、最優先で入所できるのでしょうか。

○山岸障害者施策推進部長 都立障害者施設の民間移譲に当たっては、移譲後の利用者サービスを維持向上し、利用者やご家族の安心感を確保することが必要であると認識しております。
 民間移譲の際には、利用者やご家族が不安に陥ることがないよう、利用者の継続利用を条件として運営法人を公募することとしております。

○滝沢委員 先ほど外部委員などの指定管理者の委員会においては良好だという評価をいただいているようでございますけれども、利用者や地域の声もぜひ聞いて、運営や支援に生かしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○山岸障害者施策推進部長 現在、八王子福祉園においては、利用者やご家族の要望を踏まえ、利用者個々の状況に応じた個別支援計画を作成し、利用者の意思を尊重した支援を実施しております。
 また、地域の在宅障害者のニーズに的確に対応するため、短期入所事業や通所事業を実施いたしまして、地域の関係機関と連携して生活医療相談にも取り組んでおります。
 そのほか、温水プールなどの園の施設設備の一部も地域に開放しております。
 民間移譲を実施する場合には、運営法人を公募する前に、利用者やご家族に対して、継続してご利用いただけることを含め、説明や意見聴取の場を設定し、ご理解を得ることを前提にいたしております。
 また、民間移譲後も、一定期間経過した後に利用者やご家族に対してアンケートを実施いたしまして、サービス水準の維持が確保されていくことを確認してまいります。

○滝沢委員 運営状況は良好という中での評価、引き続き、運営の中でのチェックをしていただきたいと思います。
 次の質問に移りたいと思います。
 DVの被害者支援についてお伺いをしていきたいと思います。
 DV防止の取り組み強化への強い社会要請を受けて、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の平成二十年一月十一日の改正により市町村の役割が強化されました。市町村においても、配偶者暴力相談支援センター機能の整備や、配偶者暴力対策に関する基本計画の策定が努力義務となっています。
 八王子市においては、平成二十一年三月に基本計画を策定し、今後、配偶者暴力相談支援センター機能の整備等について検討していく予定であります。事業実施については、必要となる経費について、その一部が特別交付税により措置されているものの、多くの市町村が負担をしているのが現状であります。
 そこで、配偶者暴力等の被害による保護や支援を必要とする女性に対する都の支援策についてお伺いいたします。

○廣瀬事業推進担当部長 都におきましては、配偶者暴力等被害者からの相談について、東京都女性相談センター及びウィメンズプラザが連携しながら対応しているところでございます。
 このうち、緊急に保護が必要な被害者に対しましては、女性相談センターで一時保護を行うほか、被害者の状況に応じまして、民間の婦人保護施設やシェルターを活用して二週間程度の保護を行い、身体や生命の安全の確保を図っているところでございます。
 さらに、おおむね二カ月以上の保護を必要とする被害者に対しましては、婦人保護施設に入所させ、生活の安定を図るとともに、その自立に向けまして、施設におきまして入所者への心理相談や就労支援などを行っているところでございます。

○滝沢委員 今、ご答弁いただきましたけれども、DV被害に対する支援は、本来であれば、国、東京都が主体的になって行っていく広域的な要素の強い事業でもあると思います。市町村で行う配偶者暴力相談支援センター機能の整備など、DV被害の支援に対し、都としても実態の検証をしつつ、相談や保護の連携強化に努めていただきたいというふうに思います。
 そこで、配偶者暴力等被害者に対しては、身近な地域で相談支援を適切に行うことが必要であると考えますけれども、八王子市など多摩地域の支援についてお伺いをしたいと思います。

○廣瀬事業推進担当部長 配偶者暴力等被害者の方が、身近な地域において適切に支援を受けられるよう、市においては婦人相談員がさまざまな相談に応じ、必要な援助を行っているところでございます。
 都は、これらの市の婦人相談員が配偶者暴力等の被害者に対して適切に相談支援を行えるよう専門研修を実施し、資質の向上を図るとともに、困難な事例への対応などについて助言を行っているところでございます。

○滝沢委員 さまざまな相談があると思いますけれども、さらに強化を進めていただきたいと思いますし、配偶者暴力の被害者からの相談対応のさらなる充実をお願いいたしまして、私の質問を終わります。

○大津委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大津委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉保健局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時四十六分散会

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