厚生委員会速記録第七号

平成二十年六月二十日(金曜日)
第七委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十四名
委員長野上 純子君
副委員長山加 朱美君
副委員長かち佳代子君
理事くまき美奈子君
理事長橋 桂一君
理事野島 善司君
西崎 光子君
大松  成君
佐藤 広典君
田代ひろし君
石毛しげる君
野村 有信君
佐藤 裕彦君
吉田 信夫君

 欠席委員 なし

 出席説明員
福祉保健局局長安藤 立美君
次長関  敏樹君
技監梶山 純一君
総務部長杉村 栄一君
指導監査部長鈴木 賢二君
医療政策部長吉井栄一郎君
保健政策部長清宮眞知子君
生活福祉部長永田  元君
高齢社会対策部長狩野 信夫君
少子社会対策部長吉岡 則重君
障害者施策推進部長松浦 和利君
健康安全部長桜山 豊夫君
企画担当部長松井多美雄君
施設調整担当部長宮垣豊美子君
食品医薬品安全担当部長奥澤 康司君
感染症危機管理担当部長月川由紀子君
参事蒲谷 繁夫君
参事大久保さつき君
参事住友眞佐美君
参事芦田 真吾君
参事松原 定雄君
参事菊本 弘次君
参事別宮 浩志君
参事梶原  洋君
病院経営本部本部長秋山 俊行君
経営企画部長及川 繁巳君
サービス推進部長都留 佳苗君
参事黒田 祥之君

本日の会議に付した事件
 意見書について
 病院経営本部関係
報告事項(質疑)
・「精神医療センター(仮称)整備運営事業」に係る落札者の決定について
・財団法人東京都保健医療公社豊島病院(仮称)の医療機能等について
 福祉保健局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百四十号議案 東京都医師奨学金貸与条例
・第百四十一号議案 東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
・第百四十二号議案 東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
・地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した損害賠償請求事件の控訴提起に関する報告及び承認について
付託議案の審査(説明・質疑)
・議員提出議案第十四号 東京都子どもの医療費の助成に関する条例

○野上委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書四件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○野上委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、病院経営本部関係の報告事項に対する質疑並びに福祉保健局関係の付託議案の審査を行います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 初めに、報告事項、精神医療センター(仮称)整備運営事業に係る落札者の決定についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○及川経営企画部長 去る六月五日の本委員会におきまして、要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、過日ご報告させていただきました、精神医療センター(仮称)整備運営事業に係る落札者の決定について並びに財団法人東京都保健医療公社豊島病院(仮称)の医療機能等についての報告事項二件につきまして、要求のございましたものを一冊にまとめさせていただいたものとなっております。
 目次にございますように、資料は十点でございます。資料1から5までは、精神医療センター(仮称)整備運営事業に係る落札者の決定についてに関するもの、資料6から10までは、財団法人東京都保健医療公社豊島病院(仮称)の医療機能等についてに関するものでございます。
 まず、資料の1から5についてご説明をさせていただきます。
 恐れ入りますが、一ページをごらんいただきたいと存じます。1、精神医療センター(仮称)整備運営事業に関するVFM(バリュー・フォー・マネー)の推移でございます。
 (1)は、特定事業選定時のVFMを記載しております。(2)は、落札時のVFM及び都の財政負担縮減額を記載しております。
 二ページをお開き願います。2、精神医療センター(仮称)整備運営事業に関する予定価格及び参考価格でございます。
 (1)は予定価格を、(2)は各費用ごとの参考価格を記載しております。
 三ページをごらんください。3、松沢病院における業務委託の状況(平成二十年度)でございます。
 平成二十年度の松沢病院における業務委託とその内容及び各業務の契約事業者を記載しております。
 四ページをお開き願います。4、日揮株式会社の会社概要及び医療分野における実績でございます。
 (1)は会社概要を、(2)は医療分野における実績を記載しております。
 五ページをごらんください。5、都立病院におけるPFI事業にかかわるアドバイザー経費及び関連経費の推移でございます。
 平成十四年度から二十年度までの三つのPFI事業にかかわる経費を記載しております。
 なお、平成十九年度及び二十年度は予算額を記載しております。
 以上、簡単ではございますが、資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田代委員 先生方もよくご存じだと思うんですけれども、松沢病院というのは大変長い歴史があって、百三十年、特にこのアジア全体で見ても冠たる精神科病院なんです。この中で、ドイツの主流であった精神医学の先駆者であるクレペリンのもとで学んできた日本の精神医学の泰斗であり、精神医学を志す者にとっては一番目標となるというか、お手本となる呉秀三先生が、当時治療の中心でありました農耕ですとか、園芸などという作業療法といわれるものですけれども、やはり入院患者さんにそういうものを治療として行っていくためには、一人当たり約百坪ぐらいの土地が必要だろう、こういうことで大変大きな土地が大正八年に世田谷区の現在の地につくられたんですね。
 それから長い歴史があって、いろいろ変遷を経て、最近は精神科医療というものの考え方も随分変わってきました。特に薬が新しくなった。大体十年から十五年ぐらい前から新しい、精神科の考え方を変えるような、しかも効果のある薬が出てきて、そういう治療方針というものが、今までの作業療法一辺倒ではなく、科学的にエビデンスのある治療をやっていこうということがいわれてきたんです。
 また同時に、現在、心の時代といわれる二十一世紀、この社会環境の激しい変化にさらされて、ストレスなどに冒されている現代人たちの心の病を治していこう、こういうことで最近PTSDという言葉をよく耳にすると思いますけれども、これは一九九五年の阪神・淡路以来いわれていることで、これも最近大変新しい考え方が出てきて、何でもかんでもPTSDでいいのか。まだ記憶が新しいと思いますけれども、秋田県で一昨年起きたあの連続児童殺害事件では、町全体の人たちの約二割弱、一八%の人が診断でPTSDといわれたんです。
 また、これが最近、大変問題になっておりまして、人間というのは嫌な思いをすれば必ず精神的な障害を受けることはもうわかっているわけで、この心的外傷後ストレス障害というのは、それよりもっと重たいものなんですね。それとこれがごっちゃにされている。これが治療として、PTSDの専門医というのがまだしっかりできていませんから、こういうものに取り組んでいくときに、何でもかんでもこの中に入れてしまえばいいという風潮があって、今、大変問題になっているわけです。やはりこういうものを解決していくのは、その一番中心である松沢病院がやっていかなくてはならない。
 実は、栗原の現場に僕、あしたとあさって入るのですけれど、やはりそこで問題になっているのは、避難した人たちの、医療的なこともあるのですが、精神的な医療のケアも大切で、いつ東京都にそういう地震が起きないとはいえない。そのときに、ただただ食糧を与えればいい、水を用意すればいいというだけではなくて、やはりこの精神的なケアというものをやっていかなくちゃいけない。こういうもののガイドラインは、東京都がつくっていく責務があると思うんですね。その中心は松沢病院であって。
 阪神・淡路のときには、避難所にいる人たちがみんなPTSDだといわれたんですけれど、これは実は精神的な障害というよりも、行政の対応が遅くなり過ぎてストレスによってなってくるということが、実は地震直接よりも、そういうものの方が我々の調査では圧倒的に多かったわけです。ですから、実際のPTSDの治療をしていくためにも、きちっとした設備を持っている、しかも最新の考え方でつくられている精神科の病院というものが必要であって、今度の計画というのは非常に重要なことになると思うんですね。全国どこでも起きるそういう地震、災害に対しても、東京都がいろんな意見を発信していく、そのもとになるような病院になっていただくことを心より要望するわけです。
 こういう病院をつくっていくときに、逆に周りの人たちにそういう精神的な圧迫を与えてしまったりするといけないわけですから、そこを地元の方々としっかりと話をしていただいて、対話を通じて理解をいただくという努力を、今までもしていただいているんだと思いますけれども、さらにたゆまぬ努力をしていただいて、地域の方たちの理解を得ていく。そういうことをお願いしたいと思うんですが、その心意気というか、考え方を教えていただいて、質問を終わりたいと思います。

○及川経営企画部長 松沢病院でございますが、委員がお話しのとおり、その百三十年の長きにわたります歴史の中で、民間の精神科病院では対応が困難な専門性の高い医療を提供しておりまして、絶えず日本の精神科医療をリードしてきたものというふうに私どもも認識をしているところでございます。
 こうした中、本事業の再編整備につきましては、三十年あるいは四十年ぶりとなります大規模な改築となるわけでございますが、精神医療センターとして新たにスタートする松沢病院が、引き続き、お話のような精神科医療の拠点として発展していくための礎となるよう、もちろん患者さんのアメニティーなどにも十分配慮しますとともに、将来にわたり高度で専門的な精神科医療を支える施設として整備をしてまいります。
 また、PTSDのお話もございました。こうしたこともございますので、この医療センターが精神科医療を取り巻く環境変化に的確に対応しながら、急性期の精神科医療を中心としました、その医療機能の充実強化も図ってまいる所存でございます。
 その際でございますが、今回、事業者が民間ならではの創意工夫によりまして、その業務を包括的に実施していくというPFIのメリットを最大限に生かしまして、質の高い医療サービスを安定的に提供していきたいというふうに考えております。
 また、最後にお話がございました、こうした施設の整備を行うに当たりましては、地元の協力、理解が不可欠であることは十分認識をしております。これまで近隣五町会を初めといたしました住民の方々に対しまして、説明や情報提供を積極的に行いますとともに、先般、地域連絡協議会を設けまして、町会長さんや商店会長さんといった方々に参加をいただいて、意見交換に努めておるところでございます。
 今後とも、引き続きまして、こうした丁寧かつ、あらゆる機会を通じまして、こうした取り組みを行うことによりまして、地域の方々のご理解、ご協力のもとに本事業を進めてまいりたいというふうに考えております。

○佐藤(広)委員 今回、報告事項となっております精神医療センター整備運営事業について、何点か伺います。
 PFIの手法を使うメリットの一つとして、医療器械の購入の際、同一メーカーの医療器械を取りまとめて値引き交渉をすることで、コスト縮減ができるというメリットが挙げられます。値引き交渉を行った結果として、都との契約金額よりも安く購入ができ、契約差金が発生することも予想されます。
 契約差金が出れば、どういう会計処理になり、その利益はだれに帰属するのでしょうか。

○黒田参事 PFI事業におきます契約差金についてのお尋ねでございますが、PFI事業はそもそも総価契約をとっておりまして、いわゆる一般の物品買い入れ契約とは異なっておりまして、その場合、入札のときに生じます、いわゆる契約差金とか入札差金といったものとPFI事業との差金とは、若干性格を異にするという前提がございます。
 本事業におきましては、医療器械の調達に関しましては、総額、それから値引き率というものがございますが、これは若干詳しく説明させていただきますと、例えばあらかじめ価格が百円だったものを、値引き率を一〇%と設定しますと、九十円ということになるのですが、あらかじめ東京都とSPCで値引き率を一〇%ということになりますと、九十円でその物が入ることになりますと、一〇%の利益が、あらかじめといいますか、契約にのっとって東京都にも利益が確定するというような仕組みになっております。
 そういった値引き率を導入しておりますこのPFIの契約の中で、実際にSPCが医療器械を購入するに当たりまして、この値引き率に基づく都との契約金額、先ほどの例ですと九十円ということなんですが、よりもさらに安く調達することができた場合には、先生から今お話がありました差額、契約差金のようなものが発生するという部分がございます。この差額は、契約差金というべきものは、基本的にはSPCの、例えば営業努力ですとか、価格交渉の成果として生じるものということでございます。
 ご質問のございました契約差金の会計処理、それから、それはだれに帰属するかというところでございますが、この差額、契約差金につきましては、医療器械に関しましては、この医療器械というのが技術が非常に日進月歩しておりまして、都はもとより、SPCですら、当初想定していなかったほどの大きな差額、例えば百円の価格が九十円という割引率だったのが、普通はないのかもしれないけれども、例えば四十円とか五十円になってしまったと、そういう想定できなかったような大きな差額が生じる場合もありますことから、このような場合の取り扱いということも含めまして、今後、都とSPCの協議の中できちんと定めてまいる、そういうことになってございます。

○佐藤(広)委員 ケース・バイ・ケースで差金がだれのものになるのか決めるということでしたら、都民の利益にかかわる事柄でもありますから、どういった内容の差金が生じて、どのような理由で、どういう分配を都とSPCの間で行ったか、差金について詳細な記録を残していただき、検証を行っていただきたいと思います。
 続いて伺いますが、差金の分配方法はSPCの構成メンバーが決めるものなのでしょうか。

○黒田参事 契約におきます差額、差金の分配方法についてでございますが、先ほどもご説明させていただきましたが、差額が生じた場合は都とSPCで協議させていただく、その上で決めるということなんですけれども、その結果として、仮にSPCに帰属する利益が生じた場合でございますが、PFI事業は総価の中で包括的に契約しているという性格もございますので、仮に生じた利益について、SPCは、例えば同じPFI事業における施設整備ですとか、運営だとか、その他の調達などに活用することもできますし、また、SPCとして、いわゆる内部留保をすることもできますし、配当することなども考えられます。
 この具体的な分配方法につきましては、SPCが会社法などの関連法令等に基づき決定することとなっております。

○佐藤(広)委員 今お話しをいただいたように、契約差金が帰属する割合というものは、事例によって異なるのでしょうが、契約差金がSPCのものになるということになれば、SPCはコストをできるだけ抑えようというインセンティブが働きます。
 今回のようにPFIの手法を用いた場合、入札を用いることなく、SPCが医療器械の調達を行っています。医療器械の調達を行う際、コストを抑えればSPCの利益はふえます。しかし、医療サービスの水準を維持するためには、性能を重視した調達も必要です。
 医療器械の調達について、サービス水準を維持するため、どのように取り組まれているのか伺います。

○黒田参事 医療器械の調達におきますサービス水準を維持することについてでございますが、医療器械の調達に当たりましては、都がその性能を十分に調査いたしまして、病院に設けました機種の選定に係る委員会で、みずから選定することによりまして、必要な性能水準を確実に確保していくこととしております。

○佐藤(広)委員 医療器械の調達に限らず、都とSPCとの契約を見ると、先ほど伺いましたように、コストを抑えればSPCの利益になりますから、コストを抑えようとするインセンティブが働くわけです。
 一方、SPCにとってサービスをよくした場合の動機づけは何かあるのでしょうか。病院の収入がふえたとしても、都の収入に入り、SPCの利益がふえるわけではありません。
 SPCに高いサービス水準を維持させるような動機づけはどう考えられているのでしょうか。

○黒田参事 SPCに対しまして高いサービス水準を維持させるような動機づけについてのご質問でございますが、SPCの業務は、医療周辺業務や経営支援業務に限られておりまして、例えば患者数が増加した、そういったことに伴いまして、病院の収入が増加した場合でありましても、SPCの直接の収益には反映しないという仕組みになっております。
 しかしながら、例えばでございますが、実際に患者数が増加した場合に、いわゆる反射的利益というものとしまして、例えばSPCが運営しております食堂とか売店といいました病院の施設の利用者がふえることに起因しまして、その結果としてSPCの利益が増加するということが見込まれますことから、間接的にはSPCのインセンティブになるものと考えております。
 一方、SPCが業務要求水準を逆に満たさない場合というのが想定されますが、都はSPCに対して業務改善報告を求めましたり、また、支払い留保、減額等を行うことによりまして、指導監督することになります。このこともございまして、SPCはサービス水準維持に努めていくものと考えております。

○佐藤(広)委員 契約しているサービス水準を維持できなければ、罰則を与えるということはわかりました。また、SPCにとって間接的なインセンティブがあるということもわかりました。
 ただ、コストを安くすればSPCの利益はふえますが、サービス水準の低下を引き起こします。つまり、SPCの利益を高くしようとするインセンティブと、サービス水準を維持しようとするインセンティブは相反してしまいます。SPCも契約に基づいて利潤を得る経済活動をするわけですから、利潤を最大化するためには、経済合理性から考えても、罰則を受けるぎりぎりのところまでコスト削減を行おうとするのではないでしょうか。
 都が、契約に基づく罰則によってサービス水準を維持しようとしても、それはサービスの下限を食いとめるものでしかなく、サービスをよりよく高めようという動機づけにはなりません。病院経営というものはサービス産業であり、よりよいサービスを追求していかなければなりません。かといって、SPCに対して金銭的なインセンティブを与えてしまえば、PFIを利用して経費縮減を図るという目的が達成されなくなってしまいます。
 これから契約書を交わすわけですが、SPCが自発的にサービスを高めていくよう動機づけするためにも、局としても、いま一度契約のあり方を考慮されるべきではないでしょうか。

○黒田参事 SPCが自発的にサービスを高めていくということについてのご質問でございますが、SPCがサービスを高めていくためには、先ほどもご説明させていただきましたが、経済的なインセンティブのほかにも、SPCの社員や、また、協力企業の社員がみずから進んで本事業に参画して、サービスのレベルをみずから高めていくといった仕組みを取り入れていくことが重要となると考えております。
 このため、本事業では、これらの社員の質を確保することをSPCの統括マネジメント業務に位置づけているところでございまして、今回の事業の落札者でございます日揮株式会社のグループの提案によりますと、SPC社員や協力企業社員にモチベーションを向上させる取り組みといたしまして、社員教育、それから研修の実施、さらには業務改善を行った企業の事例報告会の開催、成果を上げた職員に対する待遇の改善、評価、顕彰などを行う、こういうふうになってございまして、今後、これらの取り組みにつきまして協議していくこととしているところでございます。

○佐藤(広)委員 SPCがサービス向上の取り組みを行っているということは、よくわかりました。
 従業員教育などを重視されるということは、大切なことだと思います。しかしながら、従業員教育は、SPC社内で取り組む一つの要素でしかすぎません。私が申し上げているのは、サービスを提供するためにSPCがどの程度経費を使うのか。そして、PFIの目的である経費縮減とサービス向上の二つの目的を同時に達成できるのかどうかという疑問を持っているのです。
 先ほども申し上げたように、SPCはコストを下げようと考えますので、これから契約を交わすに際して、サービスの低下を引き起こさないためにも、しっかりとした監視体制をつくることが必要です。
 PFIの入札自体は、入札監視委員会の対象となっておりますが、SPCの事業内容は内部監査の対象にはなっておりません。しっかりとしたチェック体制を整備するべきと考えますが、どのようにして費用や運営の事後検証を行うのか、見解を伺います。

○黒田参事 PFIにおきます費用や運営の事後検証についてでございますが、運営に関しましての検証につきましては、SPCは業務要求水準の達成の有無につきまして、協力企業の業務をみずからモニタリングいたしまして、提供されるサービスの内容を確認する仕組みを構築の上、協力企業を指導監督いたします。
 東京都は、SPCが行うモニタリングと並行いたしまして、病院職員による実査、また、モニタリング結果の検討を行いまして、SPCが提供した個別業務の実施状況について監督いたします。
 SPCへの費用の検証につきましては、都からSPCに対して行った支出行為も、通常の契約と同様、監査の対象となっておりまして、チェックを受けることとなります。
 また、このSPCに対する支出行為でございますが、予算、決算の審議によりまして、都議会のチェックをいただいておるところでございます。

○佐藤(広)委員 現在、局では、入札案件については、入札経過調書を公開しております。また、予定価格が二億円以上の入札についてはWTO案件でもあります。まとめて一括で入札をすることで、個別内容のチェックができないということでは問題があります。
 建設が終わった後に、個別の契約案件についても、ホームページなどにおいて契約金額を公開するべきと考えますが、見解を伺います。

○黒田参事 契約金額に対するチェックとその公表についてでございますが、改めて申し上げますと、病院会計は診療報酬による収入を基礎として成り立っておりますが、このうち行政的な医療につきましては、一般会計からの繰入金により運営している部分もございます。そうしたこともございまして、SPCに対する支払いのチェックは当然行うことになります。
 その結果を個別に公表するかどうかということにつきましては、SPCの今後の戦略や協力企業との交渉への影響も考慮することが必要でございまして、その都度慎重に判断していくものでございます。

○佐藤(広)委員 先ほど申し上げた契約差金の把握をするためには、契約内容の検証が欠かせません。都の事業として実施する以上、都にはどのような契約をしたのか説明する義務があります。契約の一つ一つは情報開示の対象でもあり、公開をしていくべきと考えております。
 都が、PFIの手法をとることで情報開示をすることが難しいというのであれば、PFIという手法を使うことが適当であるのかどうか、いま一度考え直す必要があると私は思います。
 個別の契約案件についても、積極的に公開に向けて取り組んでいただくようお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

○大松委員 私からも、都立松沢病院、仮称精神医療センターの整備運営におけるPFI事業について伺います。
 先日、松沢病院を視察してまいりました。先ほど田代先生からもお話がございましたけれども、明治十二年の創立、百三十年の歴史と伝統を誇り、日本の精神医療をリードする病院であります。特に明治三十四年に院長に就任しました呉秀三先生が作業療法を開始し、日本の精神医療の基礎をつくってこられたことは余りにも有名な話であります。現在、この松沢病院は、東京都の重要な行政的医療を担っていただいていることは申し上げるまでもございません。
 その松沢病院では、今、病棟の老朽化が進み、雨漏りまであるなど、この建てかえ、大規模改修が喫緊の課題になっておりまして、このたびの整備運営事業は速やかに行っていかなければなりません。
 そこで、この課題になってまいりますのが、今回の事業で活用されますPFIにつきまして、住民の皆様方にその意義などが余り知られていないことであります。さらに、誤解まで広がっているということでございます。特に都立の駒込病院の整備運営事業をめぐりましては、文京区内の団体が事実をねじ曲げて、誤解を広げるビラを発行し、住民に不安が広がっているわけであります。
 今回の松沢病院における事業につきましても、同様のデマ宣伝が流される可能性がありますので、あらかじめ正しい情報を住民の皆様方に知っておいていただくことが大切でございます。そうした観点から、何点か質問をいたします。
 このビラでございますけれども(資料を示す)守れ、都立駒込病院、駒込病院を存続、充実させと大見出しでありまして、記事には、都立駒込病院の改築、改修とその後二十年間もの運営を三菱商事を中心にした企業グループに丸投げ、駒込病院が三菱商事の金もうけの道具にされてしまいます、これを読んだ人は、どういう印象を持たれることでございましょうか。
 私のところには、駒込病院はなくなるんですか、民間病院になるんですかと、こういう問い合わせが何件も寄せられたわけでありますけれども、これはもう事実とは全く違うわけでございます。
 既に当委員会でも審議をされましたけれども、都立病院におけるPFI事業は、建物の改築、改修、清掃、そして医療品の調達など医療の周辺業務であり、病院運営の本体である診療は従来どおり都の職員である医師、看護師らが行います。都が責任を持って都立病院として行われることには変わりはありません。こうした事実を隠して、いたずらに不安をあおるデマ宣伝には気をつけていかなければならないわけでございます。
 まず初めに、病院運営とPFIとの関係につきまして、改めて確認しておきます。答弁を求めます。

○及川経営企画部長 都の病院PFIでございますが、委員からもお話がございましたとおり、当委員会におきまして、これまで何度もご説明してまいりました。もう一度復習をしますと、診療業務そのものや経営など病院運営の中核部分につきましては、都が責任を持って担い、これまで個別に委託をしてまいりました維持業務や建物管理などの医療周辺業務を特別目的会社、いわゆるSPCが包括的に担うことによりまして、医師、看護師などの医療従事者が診療業務などに専念できる環境を整えまして、医療サービスの向上を図るといったものでございます。
 こうしたPFIの基本的な情報につきまして、都民の方々に正しく理解していただくために、お話のありましたがん・感染症医療センターでは、パンフレットを作成いたしまして、広く配布をいたしました。
 もう一度申し上げますが、そのパンフレットには、PFI事業によって駒込病院は都立病院ではなくなってしまうのでしょうかといった問いに対しまして、改修工事が完了しても、都立病院として都がみずから運営を行いますとの回答も掲載をしております。
 お話にございましたとおり、精神医療センターにおきましても、こうした取り組みと同様に、パンフレットやホームページなどを十分活用しながら、時宜をとらえまして、PFIについての正しい情報提供に努めていきたいと考えております。

○大松委員 この駒込病院に関するビラの内容が、デマであることがはっきりといたしました。
 そもそも心身両面にわたって静穏な環境が求められるべき病院を舞台に、こうした悪質なデマ宣伝を行うということは、まさに患者利用であり、余りにも非人道的である。住民や患者の皆様方に安心をしていただけますように、都として引き続き丁寧な対応をお願い申し上げます。
 さて、このたび松沢病院の事業を落札いたしましたのは、日揮株式会社でございます。医療分野における実績も多々あるとは聞いておりますけれども、本病院PFI事業に対して役割を果たしていけるのかどうか、その能力について伺います。

○及川経営企画部長 日揮株式会社は、医療分野で見ますと、病院の医療機能など基本構想の策定から運営施設、資金管理などといった基本計画の策定、その後の設計や建設工事、医療機器の調達、情報システムの構築といった事業につきまして、幅広く受注をしております。
 一例といたしまして、埼玉県の北里研究所メディカルセンター病院におきましては、基本構想、基本計画の策定、施設の設計や施工、医療機器の調達を行っているほか、兵庫県の神戸市先端医療センターや東京都の北里研究所病院でも、基本構想、計画の策定や設計を行い、また千葉県の旭中央病院の開設準備を行っているなど、先ほど資料でご説明をしましたけれども、医療分野での豊富な実績がございます。
 同社は、本事業におきますSPCを設立しまして、事業全体を統括してマネジメントする業務を担ってまいりますが、この際にもエンジニアリング会社ならではのマネジメント手法を生かしながら、この業務を円滑に実施していくとしておりまして、審査委員会でも高い評価を受けたところでございます。
 したがいまして、日揮株式会社は、本事業におきます役割を十分果たしていけるものというふうに認識をしております。

○大松委員 数多くの実績、ノウハウの蓄積があることがわかりまして、安心をいたしました。
 そもそもこのPFIは、民間の資金と知恵を生かしまして、サービスを向上させ、財政負担も低減させるのがねらいです。入札では、従来と違いまして、この金額だけではなく、むしろこの事業内容を入札者が提案をし、それらを総合的に評価する仕組みであります。
 このたびは日揮株式会社に決定されたわけでありますけれども、提案のどのような点がすぐれているとされたのか、具体的に伺います。

○及川経営企画部長 提案内容は、統括マネジメント業務から施設整備、運営業務まで多岐にわたるものでございますが、審査委員会で特にすぐれていると評価された点につきましては、まず、施設整備におきまして、精神科病院の特性への十分な理解のもと、個室的な雰囲気のある多床室など、アメニティーとプライバシー、安全性に十分配慮した治療空間を提案するとともに、ワンフロア四病棟とする病棟配置として、リネン庫などこれまで病棟ごとに設置した作業場所を、フロア中央に集約化することなどで、病棟空間の有効活用と業務の効率化を図っております。
 次に、統括マネジメント業務については、エンジニアリングを専門とする日揮株式会社の企画力、計画管理力を生かしまして、個々の業務を効率的に実施管理できるよう再編をしていくワークパッケージという手法によりまして、例えば手術部門と消毒滅菌部門など関連業務の実施場所を隣接して配置する設計としたり、さまざまな物品の搬送業務を同一のスタッフが行うことで効率化するなど、各業務が有機的に連携する体制を構築することで、業務の効率化と質の高いサービスの確保を図っております。
 このように精神医療センターの運営理念や基本方針、SPCに求められる役割を的確に理解した上で、提案を実現するための具体的な実施策が多数提示されているといった点で高い評価を得たものでございます。

○大松委員 今回、入札資格確認時点では、日揮株式会社を含む二者の応募がありましたけれども、その後、一者が辞退したために、入札は一者だけになりました。
 一者入札となった今回の契約手続の中でも、競争性が担保されているといえるのかどうか、伺います。

○及川経営企画部長 経過について申し上げます。
 本事業では、昨年十月三十一日までに入札参加資格確認を行いまして、日揮株式会社グループと三菱商事株式会社グループの計二者が参加したところでございます。その後、本年三月十八日の開札日まで参加者が何者であるのか、辞退したものがいるかなどにつきましては、契約手続の競争性、公正性の観点から一切公表はしておりません。
 また、入札資格確認後の契約手続といたしまして、現場説明会や建物調査に加えまして、参加者の提案素案について対面式の質問回答会なども実施をしてまいりましたが、この間、最終的に辞退をいたしました三菱商事株式会社のグループも、これらすべての手続には参加をしておりました。
 したがいまして、最終的には一者の入札となりましたが、一連の入札手続におきましては、競争的環境のもとで適正な入札が行われたものというふうに認識をしております。
 なお、本事業の入札方法は、総合評価一般競争入札でございまして、先ほど申し上げたとおり、十分高い評価を得た結果となっております。

○大松委員 次に、バリュー・フォー・マネー、VFMについて伺います。
 PFIを活用することで、行政が直接実施する場合と比べてどれだけ財政負担を縮減できるのかを示す指標がVFMです。日揮株式会社の提案では、VFMは四・五%、一定の財政縮減効果は発揮されると評価できますけれども、その金額の内訳、算定根拠が明らかにされていないわけでございます。
 この点につきまして、共産党が総務省の政策評価や内閣府のVFMに関するガイドラインを持ち出して、これらを公表すべきだと、あたかも都の対応が不十分である、このようないい方をしているわけでありますけれども、都の見解を伺います。

○及川経営企画部長 PFI事業契約でございますが、ご案内のとおり、建物の設計、施工から運営、維持管理に至るまで、さまざまな業務を包括して事業者に行わせまして、都がそのサービスの対価を支払うといったことを内容とする総価契約でございます。
 また、業務ごとの内訳金額を固定しないことで、医療環境の変化や技術革新などについて柔軟に対応するとともに、事業者側に経営努力や工夫の余地を与えることがPFIのメリットの一つとなっております。
 このため、VFMの算定根拠等を明らかにすることは、都が今後、SPCと事業契約を締結するに当たりまして、具体的な交渉を進める上で支障を来すおそれがありますとともに、事業者側にとっても、今後の戦略や協力企業との交渉などにも支障を来すおそれがあるというふうに考えております。
 こうしたことから、現時点におきましては、VFMの算定根拠や落札金額の内訳は公表していないといったものでございます。
 次に、総務省の内閣府に対する勧告でございますが、申し上げますと、VFMの算出過程や算出方法を公表することについて、当面、VFMガイドライン等の趣旨の普及啓発を図ること等、所要の措置を講ずることと述べております。
 また、内閣府の作成しましたものはVFMに関するガイドラインでございますが、申し上げますと、このガイドラインでは、入札等において正当な競争が阻害されるおそれがある場合においては、その差または比により、VFMの程度のみを示すこととしても差し支えない旨、明記をされております。
 こうしたことから、本事業では、VFMを四・五%、約二十六億七千八百万円といった財政縮減が期待されるということで、この比と差を明示しておりまして、このガイドライン等を踏まえた公表を行っているというふうに考えております。

○大松委員 大変明快な答弁でございます。共産党がいうような不十分な対応ではないということが、明らかになったわけでございます。むしろこのガイドライン等に照らせば、都の対応は極めて妥当であり、透明性を確保する努力が十分に行われていると私は評価をするものでございます。
 ところで、高知医療センターや近江八幡市のPFIではさまざまな問題が発生をいたしまして、近江八幡市ではその原因として、行政側から事業者へのチェックが不十分であったことなどが指摘をされております。こうした先行事例における課題を踏まえまして、都が工夫をしていらっしゃることは、再三にわたり委員会で確認をされているわけでございますけれども、改めて確認する意味でお伺いいたします。
 本事業では、SPCが業務要求水準を適正に達成しているかを都がチェックする仕組みや、協力企業の業務が適正に行われているかをSPCがチェックする仕組みはどうなっているのか、お伺いいたします。

○及川経営企画部長 都の病院PFI事業では、個々の業務を行う協力企業を指導監督するマネジメント機能をSPCの業務として明確に位置づけることで、SPC自身が個別業務の全体について業務要求水準を適正に達成しているかをチェックすることや、必要な措置を講じること、都への報告など、いわゆるセルフモニタリングの実施をSPCに求めております。
 具体的には、各業務の詳細なマニュアルとチェックリストをつくりまして、日常的にチェックしていくこととなりますが、この結果、仮に協力企業の業務が要求水準を達成していないような場合には、協力企業に対します改善指示や、必要に応じて協力企業の交代といった措置を講じることとなっております。
 一方、都は、このSPCのマネジメント機能が適切に行われているかをチェックすることといたしておりまして、SPCのマネジメント機能そのものや個別業務に対する監視、都としてのモニタリングを実施することとしております。この際、必要に応じまして、業務の改善報告を求めることや、サービス対価の支払い留保、さらには減額などの措置を行うことで、このチェックの実効性を確保してまいります。
 このような重層的なモニタリングの仕組みによりまして、各業務に要求した水準を維持確保しながら、質の高い医療サービスを提供していくこととしております。

○大松委員 先日、松沢病院を視察して感じましたことは、患者さんの高齢化が大変進んでいらっしゃいまして、身体の疾病の合併症も大変ふえておりまして、精神科病棟で体調が急変した場合に、患者さんを内科、外科等の病棟に搬送しなければならないことがよくあるということでございます。
 しかしながら、この搬送の際に、本当に簡単な雨よけ程度しかない渡り廊下をストレッチャーでガタガタガタッと走るというようなことがありまして、緊急事態への対応が課題になっておりました。幸い、今回のこの事業では、精神科と他の診療科の合同の病棟ができることになっておりまして、現場のスタッフの皆さんは大変喜んでいらっしゃいまして、ぜひ早く事業を実施していただきたい、こんな声も聞いてきたわけでございます。
 そして、本年度中に事業契約を締結していく予定と伺っておりますけれども、ぜひこの現場で奮闘されていらっしゃいます職員の皆様方の意見を十分に取り入れていただきまして、真に患者サービスの向上につながるように、そしてそのために職員の皆様方が力を発揮していただけるように、この日揮株式会社の提案をさらに詳細な業務実施計画へと磨き上げていくことが必要になります。
 この点につきまして、都の取り組みを伺います。

○及川経営企画部長 現在、本年中の事業契約の締結に向けまして、日揮株式会社グループと契約協議を始めたところでございまして、提案内容の明確化、詳細化を図る中で、例えば救急病棟、急性期病棟を何階に置くのかといったような病棟の配置や、階段の位置などといったフロアごとの基本的なゾーニングにつきまして協議を行っているところでございます。
 また、各業務の実施方法などにつきましても、順次、協議を進めていくことになりますけれども、この際、病棟、外来、施設整備など業務単位ごとにワーキンググループを設けまして、医師や看護など部門の代表者が参加をすることで病院現場の意見を十分反映しながら、提案の細部を詰めていきたいと考えております。
 また、契約締結後も、例えば設計の段階での協議などを継続して行っていくことで、患者さんにとっても、医療スタッフにとっても、使い勝手のよい病院としていきたいというふうに考えております。
 こうした取り組みによりまして、具体的かつより安全で機能的な業務実施計画としてブラッシュアップをしていきまして、SPCとのパートナーシップのもとで精神医療センターの整備運営を円滑に進めてまいります。

○大松委員 日本の精神科医療をリードしていらっしゃいましたこの松沢病院、精神科を取り巻く医療環境が大きく変化する中で、この松沢病院、そして精神医療センターの整備は、都民にとりまして急務の課題でございます。今後、答弁にありましたような取り組みにも努めまして、そして日揮株式会社のグループと良好なパートナーシップを構築し、精神医療センター整備運営事業を円滑に進められることを期待するものでございます。
 最後に、今回、視察で行ってまいりまして、医師、看護師、このスタッフの皆さんは、本当に老朽化した、手狭になりました施設の中で、患者サービスに全力で奉仕に取り組んでいらっしゃるわけでございますけれども、その環境は大変厳しい中で仕事をされていらっしゃるということを実感してきたわけでございます。
 これは、国の精神医療に対する取り組みが大きな原因になっているわけでありますけれども、現場を預かる都として、改革すべきは改革するよう国に要望するとともに、都でできることはどんどん行っていただきたい、このように要望をいたしまして、私の質問を終わります。

○吉田委員 私も報告事項、精神医療センター整備事業に係る落札者の決定について、何点か質問をさせていただきます。
 我が党は、これまでも現府中病院、多摩総合医療センター、さらに現駒込病院、がん・感染症医療センターへのPFI導入とその落札、あるいは契約問題について、問題点をただしてまいりました。今回の報告についても、落札者の決定、さらにPFIで事業化すること自身について、改めて疑問が浮かんだ点がありますので、この機会にただしたいと思います。
 まず第一に、今もお話がありましたけれども、結果的には、競争入札にならずに、一者入札になったということは、やはり見過ごすことができないことだと思います。
 先ほどの答弁の中では、競争的環境があったんだということをもってよしとするご答弁がありました。確かに入札をする直前までの説明会その他の中で三菱商事グループが参加をしていたということは、私も公表によって確認をすることができます。
 しかし、途中経過の中で競争的環境があったとしても、PFIの場合には、提案されている内容、先ほども話がありました。さらに価格などについて、絶対評価と同時に、出されたものについて相対比較をするということが、PFI事業にとって一つの特徴としてあると思います。
 私は、例えば日揮一者のみというのが確定したのは、入札の一月十八日前に辞退届があったというふうに公表で伝えられておりますけれども、そういう場合には入札を再度検討するということは、やはり選択肢としてあるのではないかというふうに思うんですが、その判断はいかがだったのでしょうか。

○黒田参事 PFIの契約におきまして、一者とわかった時点で再検討するべきではなかったのかというご質問についてでございますが、一者とわかった時点で再検討することは、この一者の入札参加者に対しまして著しく不利益を与えるものでございます。
 また、手続の途中で新たに参加者を募集することも、公平性を欠くものとなると考えております。
 なお、入札参加した者が入札辞退した場合であっても、入札する者が一者でもあれば、契約制度上は有効な入札となっております。

○吉田委員 これは、以前にも紹介したことがあると思うんですが、内閣府が発表しているPFI事業導入の手引という極めて基礎的、オーソドックスな解説文がありますが、そこでVFMにかかわって、先行事例ヒアリングよりという欄があります。どういう先行事例が紹介されているかといえば、東京都の区部ユース・プラザのPFI事業です。これは、当初、一グループのみの入札という結果となったことに対して、次のように紹介しているわけです。多数の民間事業者の参加を受け、事業者間の競争原理をより一層働かせることが大変重要であると考えたため、運営期間を十年とするなどなるべく多くの事業者が参加できるように工夫を行い、その結果、一グループではなくて、五グループの入札参加を得て、落札者の提案では一〇%を超えるVFMが示されましたという事例が、内閣府によって、しかも東京都の事例として紹介をされているわけですよ。したがって、私は、こういう場合には再度の入札ということも検討することは当然の選択肢だと思うんですね。
 それで、何ら問題ないということなんでしょうけれども、私は、例えば一者のみの入札という弊害は、具体的にいろんな意味であらわれていると思います。その一つが、この審査講評によると、価格点は三百点満点をこの日揮が得たということになっていますよね。全体で総合評価の満点は千点、うち性能評価点の満点は七百点、価格評価点の満点は三百点と。どのような計算でこの日揮株式会社が三百点になったのか、この計算方法をご説明ください。

○黒田参事 価格点についてのご質問でございますが、価格点算定のための計算式というものがございます。計算式でございますので、若干複雑で恐縮でございますが、価格点は、全体が千点満点のうち三百点ということになっておりますが、まず入札金額、これから最低の入札金額、ある会社が入札した金額と、また、ある会社が入札した実際最低の価格となったこの入札金額の差、これに係数でありますところの十の九乗分の五十というものを掛けます。これを三百から引くことによりまして、価格点を算定するということになっております。
 今回の場合は、入札者が一者でございましたので、冒頭ご説明しました入札金額と最低入札金額が同額になったために、三百引くゼロということになりまして、三百点満点となった、そういう計算式でございます。

○吉田委員 ですから、そこだけを取り出していえば、一者入札の場合には、こういう計算方法をとる限り、どの企業であったとしても、その入札価格が三百点の価格点満点を得ることができるという仕組みになるわけですよ。私は、そういう結果の評価をすること自身が問題だと思いますし、このような価格点の計算方法、すなわち入札金額から入札したグループの中の一番低い入札価格を出した金額を引いて、十の九乗分の五十で計算をすると、これは明らかに一者入札は想定しないで、複数入札を想定して計算方式を固めているわけですね。
 そういうことから見ても、一者入札というのは極めてイレギュラーなものだと思うんですが、いかがですか。

○黒田参事 一者入札となった場合の、価格点が満点になった場合についてのご質問でございますが、まず、先ほどもご答弁させていただきましたが、一者入札でありましても、本事業の入札では競争性が担保されております。また、契約制度上も有効な入札となっております。
 なお、PFI事業につきましては、総合評価一般競争入札で実施しております。この特徴としましては、価格面のみならず、提案内容の評価も重視しているところが特徴となっております。
 このことから、本事業におきましては、先ほども算定の中で申し上げましたが、千点という満点を設定しております。この千点満点のうち、三百点が価格点なのでございますが、七百点が性能評価点と私どもが呼んでいるものでございます。この性能評価点というのは、まさにその提案内容に対する評価でございますが、この性能評価点を七百点というふうにウエートをつけまして重視しておりまして、実際の審査委員会におきましても、提案内容の性能評価が七百点中六百四点と高く評価されているところでございます。

○吉田委員 私は、価格点に限定して、そもそも価格点の設定が複数入札を前提とした設計になっているにもかかわらず、一者入札のために、このような価格だけを注目すれば、どんな価格であったとしても三百点満点をとることができるということに限定的に問題提起をしているわけですよ。
 しかも、これはその前に行われたがん・感染症のPFI事業においても、結果的に三菱商事一者のみで、同じように価格点は三百点をとるということについて、私はこの委員会でも、こうしたやり方自身の不適切さを指摘したつもりです。明らかに一者入札の場合には、このような評価の方法は、価格点に限ればふさわしくないというふうにいわざるを得ないと思うんですね。
 さらに、一者入札から来る極めて不自然な印象を持たざるを得ないことがあります。それは、都が示した予定価格と落札者が提示をした落札価格、その落札率の問題ですが、今回、予定価格と入札価格、落札率はいかがだったんでしょうか。

○黒田参事 入札金額、予定価格、落札率についてのお尋ねでございますが、入札金額は七百三十五億二千六百二十五万円、予定価格は七百三十五億三千六百七十七万円、落札率は約九九・九%となっております。

○吉田委員 競争的環境にあったということが繰り返し説明されたんですけれども、もし一者単独だということがわかっていれば、安心してほぼ予定価格と同額を示すことができるわけですね。これは一般論でいいますけれども、今回がそうだというふうに断定することはできませんが。
 明らかに今ご答弁のあった予定価格と入札価格は、七百三十五億円はもうぴったり合うわけですね。率にしても、九九・九%といわれましたが、私の計算では九九・九九%になるわけです。これは、常識的には極めて不自然な印象を持たざるを得ないのですけれども、そうした点についてどのような認識をされていますか。

○黒田参事 今回の契約につきまして、その経緯につきましては、先ほど来から何度かご答弁申し上げているところでございますが、改めて申し上げますと、今回の事業におきましては、本年三月十八日の開札日までは、参加者が何者であるのか、辞退した者がいるのかなどについて、契約手続の競争性、公正性の観点から一切公表しておりません。
 また、昨年十月三十一日までに入札参加資格を行いまして、その後、入札資格確認後の契約手続としまして、現場説明会、また建物調査、それから参加者の提案素案について、これは初めての試みだったんですけれども、対面式の質問回答会を実施いたしましたが、この間、最終的に辞退した三菱商事グループも、すべての手続に同様に参加しておりました。
 このように最終的には一者の入札となりましたが、一連の入札手続におきまして、競争的環境のもとで適正な入札が行われたものと認識しております。

○吉田委員 病院経営本部としては、そういうご努力はされたんでしょうけれども、結果として予定価格と入札価格がほぼ同額、九九・九%というのは、やはり都民が見て極めて不自然な印象を持つことは、私は常識だと思うんですね。しかも、強調したいことは、今回だけではないからなんです。
 これは、私、前にもいいましたから、質問しないで自分でいいますけれども、がん・感染症医療センターの場合も、間違いがあったら訂正していただきたいんですが、予定価格一千八百六十一億余円、それに対して三菱商事の入札価格一千八百六十一億余円、これも落札率は九九・九九%なんですよ。間違いがあったら指摘してほしいんですが、このように二回連続一者入札になっただけではなく、落札率が九九・九九%が続く事態というのは、どう考えても都民的には、これで公平公正な競争が真に行われたのかということについては疑問を抱かざるを得ないということを重ねて指摘しておきたいと思うんです。
 そもそもPFIは、競争によってコストとサービスを競い合うと、概略的ないい方をすれば、そういう特徴があると思うんですよ。
 先ほども引きましたけれども、内閣府のPFI事業導入の手引の中で、高いVFMを達成するためにはどうすればいいのでしょうかという問いに対して、応募者が多数ある事業は競争が働きコストダウンにつながるといえますというふうに強調しています。もちろん私どもは、単純に、大勢立候補して安ければよしということにくみするものではありませんが、PFI事業を導入するということのメリットがこれであるということで進めてきたとすれば、実際の事態はそういうことになっていないというのが、例えば、この点を見ても浮き彫りになっていると思うんですよね。
 次に、VFMについても、先ほどからちょっと議論がありますが、VFMの透明性についてさっきお話がありましたが、私どもがこだわるのは、PFI事業の導入の適否を判断する上で、VFMというものが、ある面決定的な要素を持っているわけですよね。それで、皆さん方もVFMが何%ですということを、導入の可能性の結論として強調されてきました。
 また、近江八幡の場合には、コンサルタントがVFMを設定したんですけれども、それが適切か否かということについて十分検証し得なかったのではないかという問題が指摘をされているわけですね。したがって、当然、都議会として可否を判断する上では、このVFMの数値というものが適切か否かということについて、コンサルタント任せではなく判断することが問われていると思うんですよ。そういう立場に立って検討しようとしたときに、今の示されている資料では、余りにもそういう判断をすることができないということで取り組んできたということを、まず述べておきたいと思うんです。
 それで、今回の精神医療センターの場合、いわゆる東京都が導入の可能性を検討する際の、シミュレーション時のVFMは四・六%、今回の落札時のVFMは四・五%で、二十六億余円のコスト縮減になるということが報告をされております。
 それで、落札者がどのようにしてコスト縮減、VFMを生んでいるのかということは、今後の契約上の理由で公表できないということを繰り返しいわれていますが、それだったら、東京都がシミュレーション時に四・六%というVFMの値を出したときに、なぜ都の事業でやる場合とPFIでやる場合とで四・六%のVFMが出てくるのかということは、我々に説明できることだと思うんですが、いかがですか。

○黒田参事 本事業を特定事業として選定した際のVFMの算出についてのお尋ねでございますが、都が直接実施する場合では、改築、改修に関する施設整備費は、都の積算単価を基準といたしました。
 また、材料費、人件費、委託料などの運営費については、現在の松沢病院の経費をもとに算出しております。
 一方、PFIによる場合の算出につきましては、施設整備費、運営費ともに、先行する多摩広域基幹病院、小児総合医療センターなど、他のPFI案件の実績をもとに算出しております。この算出の考え方につきましては、東京都の病院経営本部のホームページにも公表しているところでございます。
 このように算出した都直営による事業費、PFIによる事業費のそれぞれについて、事業期間が十五年にわたることから、その間の事業費を現在の貨幣価値に換算して比較したものでございます。その結果として、事業費全体として都が直接実施した場合よりも四・六%程度の事業費の縮減、VFM四・六%という算出でございます。

○吉田委員 私が聞きたいのは、都の算出はわかるんですけれども、PFI事業にしてSPCがやった場合に四・六%下がりますよということについて、なぜなのかということをお聞きしたかったんです。
 それで、続けて質問をいたしますけれども、今回の落札時のVFM四・五%ですか、二十六億円余ですけれども、例えばその前のがん・感染症医療センターの落札時VFMは四・三%です。四%台という点では一緒です。これは、いいかどうかは別にして、極めてVFMの推計としては低いものだという印象を私は持たざるを得ません。
 先ほどから引用している内閣府のPFI事業導入の手引では、何%以上できればよいという決まりはないとしつつも、VFMの実績は一〇%台が多いというふうに紹介されています。
 それで、ちょっとお聞きしたいんですけれども、落札時のVFMで、今回のような数百億単位ということは全国的には余り例がないようなんですが、例えば百億円以上の事業で一〇%未満、あるいは四%程度のVFMというのは事例的には多分少ないんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○黒田参事 全国で実施されておりますPFI事業のVFMについてのお尋ねでございますが、今の先生からもご指摘がございましたように、現在の東京都が実施しておりますPFIの三事業、百億、千億という単位のPFI事業は、全国でも極めて例が少ないということでございます。
 今ご紹介のありました総務省の行政評価局の資料によりますと、PFI事業選定時の事業規模も、これも先生からお話がありましたが、二十億未満というのが最低のレベルでございまして、最高のレベルも百億以上ということになっておることから、今回の東京都のPFI事業が極めて例のないものであるということがいえるかと思います。
 ご質問がありましたPFI事業選定時のVFMの分布状況でございますが、例えば一〇%未満という部分について申し上げますと、百億円以上という中では二十三の事業がこれに該当するというふうに総務省の資料はなっております。

○吉田委員 二十三というのは、シミュレーション時のVFMじゃないですか。私が承知をしているのでは、間違いがあったら訂正してほしいのですが、いわゆる落札時VFMで、百億円以上というのは、一〇%未満は、全国で件数でいえば三件しかないというふうに私は承知しております。間違いがあったら訂正していただきたいのですが。
 資料的にはここしかなくて、もっと細かく精査をすれば、より正確に何%ということがあると思うんですが、四%程度のVFMというのは、そもそも一〇%未満が少ない上に、非常に少ないんじゃないかというふうに思うんです。
 なぜ私がそのことにこだわるかといえば、例えば四%、五%程度のコスト縮減ということならば、あえてPFIを導入しなくても、通常の事業で競争入札をすることによって、五%あるいは一〇%程度のコスト縮減というのはもう既に常態化していることじゃないですか。東京都においても、そういう例は多数あるんじゃないですか。そういう点はどのようなご認識なんでしょうか。

○黒田参事 VFMとPFI事業についてのご質問でございますが、まずVFMについてでございますが、PFIの手法は病院事業のみならず、さまざまな分野にも適用されておりまして、先ほどご紹介がありました、東京都ではユース・プラザですとか神宮前の再開発、さまざまな分野に適用されておりまして、それぞれの事業内容、規模、期間等が異なっております。このため、それぞれの事業の条件によりましてVFMも算定している、算出しているということでございますので、病院事業のPFIのVFMとそれ以外のさまざまな、例えば再開発ですとか施設の建設の事業のVFMを一概に比較することは難しいというふうに考えております。
 また、PFI事業についてでございますが、先ほど来よりご答弁申し上げておりますが、PFI事業のメリットとしましては、財政面とかコスト面だけではなくて、民間の持つノウハウとか、専門知識ですとか、技術ですとか、そういったものを活用、そのことによりまして患者サービスを向上させていくというのが目的でございまして、東京都の病院事業におきましては、PFI事業を三事業進めているところでございます。

○吉田委員 PFI全体のことを私は聞いているのではなくて、具体的に、VFMを皆さん方が強調するから、それについて私なりの問題提起をさせていただいているわけです。
 例えば、最近の事例で数百億円規模の建築工事というのは例がないんですよ。それで、比較的それに近い東京都の入札事例を調べましたけれども、例えば西新井警察署改築工事の落札率は七九・八%です。約二〇%減ですよね、予定価格よりも落札価格が。同じく多摩西警察署新築工事、これは八六%、十数%です。こうしたこと一つをとってみても、私は四%程度のVFMをもって、価格という側面で見れば、PFI導入の適切性というのは判断できないというふうに思います。
 さらに、今は施設の建設にかかわる点について触れましたが、実際にそれ以外の分野でも、この間質疑をしてきましたが、都立病院のPFI事業、がん・感染症医療センターにしても、多摩総合医療センターにしても、落札時の、いや、契約時になりますかね、PFIと東京都直でやったものを比較した場合、分野によってはPFIの方が東京都よりも高く経費が見積もられたということもあると思うんですが、いかがですか。

○黒田参事 東京都が見積もった場合と実際のPFI事業者が算出した場合の数字についてでございますが、そもそもPFI事業といいますのは、総価で契約するものでございます。それぞれの分野、それぞれの事項、それぞれの業務を個別に比較して、その増減といいますか、多い少ないというところで比較するものではなくて、トータルとしてどれだけコスト縮減効果があるのかということを求めるのがPFI事業でございます。
 そのことから、分野ごとに個別に比較することは、私どもは考えておりませんで、事業をトータルとしてどれだけメリットがあるのか、コスト縮減効果があるのか、サービスが向上するのかということについて着目して事業を進めているところでございます。

○吉田委員 これは以前に説明していただいたり、答弁していただいた数字を改めてこの機会に報告しておきますが、例えばがん・感染症医療センターの場合には、管理運営委託費は、都直の場合には六百二十億円、SPCの計算では六百八十億円、多摩総合医療センターでは薬品材料委託、都の直の場合には千九百三十二億円、SPCの場合には千九百八十九億円という金額が示された経過があると思うんですね。したがって、建設コストだけではなく、こういう分野でも、必ずしもSPCで行った場合がコスト縮減になるとはいいがたいということも指摘をしておきたいと思います。
 次に、アドバイザリー委託費の問題についてただしておきたいと思うんですが、PFIを導入することによって、逆に本来かからない費用が新たにかかるということは幾つかあると思います。内閣府の資料、その他日総研などの資料を見ても、そういう整理の仕方がありますが、その一つとして、PFI事業を進める場合には、導入可能性の調査時点から、あるいは先行の、いわばバックアップ的な事業から、さらに契約から今後の実際の事業に至る将来にわたってアドバイザーに委託をするということがされてきましたし、される予定となっております。
 本委員会にこれまでの事業三つについての決算及び予算を紹介していただきましたが、精神医療センターの場合には、導入可能性調査、さらにアドバイザー経費として五年間で三億二千二百九十九万円というふうに計算をすることができます。これは、これまでですから、さらに将来も当然継続されると思うんですが、将来の継続の可能性と、その場合どの程度の費用負担がコンサルタントへのアドバイザー費用として支出が求められるのかということをご説明ください。

○黒田参事 アドバイザー契約についてのお尋ねでございますが、PFI事業におきましては、入札手続ですとか契約協議における中で、設計、法務、医療などに詳しい専門家集団である、いわゆるアドバイザーから適宜適切な助言や支援を受けながら進めていく必要がございます。
 今回の精神医療センター整備運営事業では、今後、事業契約の締結、建設工事、運営開始という段階を経てまいりますが、運営開始後もモニタリングの実効性の確認などにおいて、専門的な知識に基づく支援が必要であることから、当面の間アドバイザーを活用する予定でございます。
 また、今後のアドバイザー経費に係る費用についてでございますが、アドバイザー業務の内容は、先ほども説明させていただきましたが、各段階において異なるため、変わってくるため、その都度業務内容に応じた費用を計上していくこととなっておりまして、現時点ではこの積算は行っていないところでございます。

○吉田委員 私の勝手な試算ですけれども、この間のアドバイザー経費は年平均で約六千六百五十万円ということになりますが、これを十五年間継続したというふうに計算すると、約十億円なんですよ。今までも含めれば、それだけで十三億新たなコスト増というふうになります。二十六億円の半分ということになります。
 さらに、これに関連して調べて非常に疑問だと思ったのは、導入可能性調査は競争入札でコンサルタントを、落札業者を決めますね。ところが、それ以降は、導入可能性調査で落札した企業が、その後のアドバイザーは随意契約で継続して指名するということが行われているようなんですが、なぜ随意で継続をするのか、疑問なんですが。

○黒田参事 アドバイザー契約を随意契約とした理由についてでございますが、アドバイザー業務は極めて高度な専門的な判断が要求されますことから、その事業の内容について熟知しているものを契約相手とする必要がまずございます。
 第二に、PFI事業は、事業内容の検討から事業開始後までの各段階におきまして一連の検討を継続して行っておりまして、例えば業務要求水準について見ますと、案の作成、その案に対する質問回答、さらにはそれに基づく業務要求水準に基づく提案書の審査、そしてモニタリング方法の検討、そして実際の実施といったものが一連の業務としてございまして、継続性というのが極めて重要でございます。
 このように導入可能性調査委託以降のアドバイザー業務委託は、競争性以上に業務の継続によるメリットが大きいと判断しまして、特命随意契約としているところでございます。
 なお、このアドバイザー業務契約に関しましては、委託等随意契約業者選定委員会の審議を経ておりまして、公正に行われておりまして、また、履行に関しても適正に検査確認しておりますことから、特命随意契約による弊害はないということも、あわせて申し上げたいと思います。

○吉田委員 私、非常に不思議だと思うのは、一番最初入札をするのは、導入可能性調査の委託業者を入札するわけですね。その業者の方は、導入可能性を公平にアドバイスしなければならないわけですよね。これはうがった見方の場合のことですけれども、その後、導入可能性調査でPFIが導入適切だという回答を出せば、その業者が継続的にアドバイザーとして事業を継続し、それによって一定費用を得ることができる、将来にわたって一定期間ということになるわけですよね。ですから、とにかく、まず導入可能性調査を受託する。そして、そこでオーケーを出せば、オーケーを出した事業者が将来にわたってアドバイザーになり続けることができるということから見て、こうしたことは私は疑問を生ぜざるを得ないわけです。
 それで、あわせて聞くのですが、例えばこの精神医療センターの導入可能性調査の入札のときは、一者ではなくて多数入札だったようですが、入札状況はどうだったんでしょうか。入札価格をそれぞれ説明してください。

○黒田参事 今回の精神医療センター整備運営事業におきます導入可能性調査の入札状況についてのお尋ねでございますが、入札に参加いたしましたのは四者でございます。株式会社日本総合研究所、財団法人日本経済研究所、パシフィックコンサルタンツ株式会社、プライスウォーターハウスクーパース・フィナンシャル・アドバイザリー・サービスの四者でございます。
 それぞれの入札価格は、これは公表されているものでございますが、日本総合研究所は三百十一万九千円でございます。日本経済研究所は六百八十万四千円でございます。パシフィックコンサルタンツは九百三万円でございます。プライスウォーターハウスクーパース・フィナンシャル・アドバイザリー・サービスは一千九百七十万九千円。

○吉田委員 余りにも入札金額が違うんですよ。一番高い一千九百万をちょっと除外して考えたとしても、最終的に受注し、今でもアドバイザーとして将来にわたって受託をしようとする日本総研は、次に高い日経研の二分の一、パシフィックコンサルタンツの三分の一。具体的に内容を精査することはちょっとできませんけれども、印象的には超低価格入札という印象すら持つわけですよ。それで、導入可能性調査を受託し、PFI導入が適切であるという回答を出せば、その業者が継続的にアドバイザーとして一定収益を得ることができる、数億円か、あるいは十数億円か。そういう仕組みそのものが、結果的にPFI事業によるコスト高をつくり出すということも含めて、改めてこうした点についても私は非常に疑問であり、ぜひ再検討していただきたいというふうに思います。
 ほかにも、例えばPFIを導入することによって逆にコスト増になるということは、中核企業でありますSPCを立ち上げ、それに伴う税負担の問題等々ありますが、それは具体的に推計できませんので、問題提起にとどめておきます。
 最後に、先ほどもお話がありましたが、ちょっと落札者のことについて一、二触れておきたいと思うんですが、資料で、日揮株式会社について会社概要と病院経営にかかわる概要について出していただきました。数的にはすごい件数だなという印象を持つんですが、そして医療分野でも、北里という名称の医療機関の例が先ほど紹介されました。
 ただ、そういう設計とか建設とかコンサル的なことは、相当の量をこなしていらっしゃることはわかるんですが、二点お聞きしたいんですけれども、実際に、例えば日揮あるいは日揮系の企業で、企業では経営できないんですが、日揮系の団体で病院経営に当たったというふうな経験、ノウハウはあるのか。また、日揮は国内でPFI事業を受託実施した経験があるのか。あわせて三つ目に、日揮以外SPCを、たしか三者具体的に挙がっていると思うんですが、特定協力企業というんですか、これらのSPCを構成する資本出資する企業で、病院経営なり、そうしたノウハウを持っている企業があるのかも、あわせてご答弁をお願いいたします。

○黒田参事 三点のご質問についてお答えいたします。
 日揮株式会社及びその関連会社が病院事業の経験があるかどうかということでございますが、まず一点目につきましてはございません。また、日揮株式会社が国内におけるPFIの実績があるかということですが、こちらもございません。三点目のこのグループ内の企業において病院の経営を経験している企業があるかということについては、東電、尾瀬林業がこれに当たるわけですが、ございません。
 なお、お話の中にもございましたが、ご案内のとおり、医療法に基づきまして、民間企業が病院を経営するということは、特区ですとか一部の例外を除いて認められていないという事実もあわせて申し上げます。

○吉田委員 例えば、がん・感染症医療センターの場合には、麻生という、医療法人でしたか、SPCの中に参加をするということをもって病院経営ということについてのノウハウなり人材なりが強調されたかと思いますが、もちろん株式会社ですから、病院経営に直接参画することはもともとできないわけですけれども、その他のSPC構成企業を初め、具体的に病院経営に何らかの形で携わるという、あるいはそうしたことの人材という点では極めて疑問を持たざるを得ない。
 私は、周辺業務を担うんだというふうにいっても、東京都はこれまで、SPCが、あるいはPFI事業は東京都とパートナーシップのもとで行う、あるいは事業によっては経営そのものにまでアドバイスを受けるんだというような位置づけをSPCに対して持ってきたと思うんですけれども、そうした点から見れば、極めて疑問に思わざるを得ないということを指摘しておきます。
 最後に、委託業者のかかわりで二点確かめておきたいというか、疑問を申し上げますが、SPCが直接この委託業者を選定するということに伴って、例えばこれまでの委託事業の継続性という点で不安がないのかということと、さらに、今、委託企業から派遣された形で病院で働いている人たちが雇用の継続を求めたときに、そうしたことが配慮をされるというふうなことについて、東京都と日揮との関係で何らかの協議なり話し合いがあるのかということについてご説明をお願いいたします。

○黒田参事 PFI事業におきまして協力企業等が行う個々の業務についてでございますが、詳細な業務要求水準を定めるとともに、SPCの統括マネジメント機能として行うセルフモニタリング、また、都のモニタリングを実施することによりまして、この業務要求水準達成を確保しまして、医療サービスの質を監視する仕組みとなっております。
 こうしたことから、本事業におきましては、継続的、安定的に質の高いサービスを提供していけるというふうに考えております。
 また、企業の選択についてでございますが、この事業を円滑に行うためにSPCがどの企業を協力企業等として選択するのかということについては、SPCが判断して決めるということになっております。
 このため、都と委託契約を結んでいる者が、この企業になるかどうかというご質問でございましたが、都とSPCの協議の対象にはなってございません。

○吉田委員 限られた時間、幾つかの問題に絞って質疑をさせていただきました。私は私なりに問題点、疑問点を提起させていただきましたけれども、今もモニタリングというお話がありましたが、私は東京都自身がPFI事業についてやはりモニタリングをぜひしていただきたいと思うんですね。入札、落札のあり方、評価のあり方、あるいはアドバイザーの選定のあり方等々、それに当たるだけの問題点を私は提起したつもりですけれども、ぜひそうした点について再検討していただきたいということを述べて、私の質問を終わります。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩をいたします。
   午後二時四十一分休憩

   午後二時五十三分開議

○野上委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 報告事項、財団法人東京都保健医療公社豊島病院(仮称)の医療機能等についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際、要求いたしました資料はお手元に配布しております。
 資料について理事者の説明を求めます。

○及川経営企画部長 それでは、ご質疑に当たりまして、先ほどの厚生委員会要求資料の6から10につきましてご説明をさせていただきます。
 恐れ入りますが、資料の六ページをお開きいただきたいと存じます。6、豊島病院運営協議会準備会における主な意見でございます。
 準備会において出されました主な意見について、医療機能と医療連携に分けて記載しております。
 七ページをごらんください。7、豊島病院の医師、看護要員及び医療技術員等の定数及び現員の推移でございます。
 平成十六年度から二十年度までの豊島病院の職種別職員定数及び現員を記載しております。
 八ページをお開き願います。8、豊島病院における経営指標の推移でございます。
 平成十四年度から十八年度までの豊島病院の経営指標について、入院、外来別に記載しております。
 九ページをごらんください。9、豊島病院(緩和ケア科)取扱患者数実績(延患者数)でございます。
 平成十四年度から十八年度までの豊島病院緩和ケア科の取扱患者数について、入院、外来別に記載しております。
 一〇ページをお開き願います。10、豊島病院(NICU)取扱患者数実績(延患者数)でございます。
 平成十四年度から十八年度までの取扱患者数について記載しております。
 以上、簡単ではございますが、資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○山加委員 豊島病院の公社化について、手短に何点かお伺いをさせていただきます。
 私の地元は練馬区なんですが、この練馬区は区の西北部保健医療圏でありまして、練馬区民もこれまで豊島病院には大変お世話になっております。このために、私も豊島病院のあり方については大変注目をしてきたわけでございます。
 この病院についてはさまざまな検討がありましたが、平成十九年一月、今後の豊島病院のあり方についてにおいて公社化の方向性が定められ、また、今回、運営移管後の医療機能等が明らかになったわけであります。
 今後、公社病院として住民が身近な地域で安心して暮らせるように、地域の核となってこれまで以上に地域ニーズを踏まえた運営を行っていくことが必要であることは、今さらいうまでもないことであります。
 そこで、我が党は従前より、公社化に当たっては地元の自治体と役割分担を十分に踏まえた上で、地元の住民、また地域の医療機関の声を十二分に聞いていただくように要望してまいりました。
 今回の豊島病院公社化の検討に当たりまして、先ほど豊島病院運営協議会準備会における主な意見ということで資料等でもございましたけれども、改めて、地域の声や要望にはどのようなものがあって、また、それらを医療機能等にどのように反映をさせたのか、お伺いをいたします。

○及川経営企画部長 豊島病院公社化の検討に当たりましては、地区医師会や地元自治体、住民代表等から構成されます豊島病院運営協議会準備会を設置いたしまして、医療機能等について議論しますとともに、各地区医師会会員等を対象としましたアンケートを実施しまして、地域の医療ニーズ把握に取り組んできたところでございます。
 準備会では、地元の意見を反映した病院の名称とすること、新たに脳血管疾患医療や、がん医療を重点医療として取り組みを強化すること、地域医療支援病院の承認を目指していくこと等、具体的にさまざまな意見やご要望をいただいております。
 また、アンケート調査では、この移管後の重点医療につきまして、救急医療につきましては九八%の方々から、また、脳血管疾患医療は九五%、がん医療は八八%と多くの方々から実施すべきであるとのご意見をちょうだいしております。
 こうした意見やアンケート調査を踏まえまして、豊島病院の名称を残すことや、救急医療など三つの医療を重点医療とするとともに、原則として現在の診療科及び診療機能を継続することとしたものでございます。
 さらに、地元板橋区とは、公社化いたします豊島病院が地域に果たす役割という観点から、基礎的自治体である板橋区が医療面でどういったかかわり方をするのか、具体的な方策として何ができるのかなど、現在さまざまな面から意見交換をしているところでございます。

○山加委員 地域の医師会等からのアンケート調査、また、住民代表を交えた準備会での議論などによって地域の要望がきちんと反映をされ、さらに現行の診療科及び診療機能が継続されることが確認できたわけでありますが、しかし、今回の報告書を見ますと、診療規模、いわゆる入院病床数、外来規模が明確にはなっておりません。
 また、この豊島病院は平成十二年度の第二次開設以降、依然として三次開設が見送られたままとなっているわけでありますが、こうした移管後の診療規模がどうなるのか、また、未開棟となっている病棟をどうするのかをお伺いいたします。

○及川経営企画部長 豊島病院は、医療法上の許可病床は四百七十八床でございますが、段階的な立ち上げによりまして円滑な病院運営を行うために、平成十一年度に新病院といたしまして、最初二百六十七床で開設をいたしておりまして、翌十二年度には三百六十床の病院規模とする第二次開設を行ってまいりました。
 その後、都立病院の役割と医療機能を再検討する都立病院改革を進める中で、当面第三次開設を見送っておりまして、現在に至っております。
 この間、三百六十床という規模で運営を行ってまいりましたが、最近の産科や小児科などにおきます医師の不足や患者実績等を勘案いたしまして、平成二十年度は三百四十八床の病床規模としたところでございます。
 公社移管後の診療規模につきましては、現在、病院現場や移管先となる保健医療公社とともに検討しているところでございますが、地域の中核病院としての役割を担っていくために、医療スタッフの確保状況や患者実績等も勘案しながら、より適切な診療規模を設定していきたいというふうに考えてございます。
 なお、豊島病院が持つ人材あるいは施設設備など、こうした医療資源を最大限活用することによりまして、地域のニーズにこたえていくため、将来的には全病棟の開棟を目指してまいります。

○山加委員 ぜひとも適正な診療規模を設定していただくとともに、より効率的な病院運営を行っていただきたいと思います。
 さて、これまで都立病院から移管してきた病院の中では、多摩北部医療センター、また荏原病院の状況を見ますと、看護師の確保が大変厳しく、一部の病棟が閉鎖をされているわけであります。最近の看護師不足は、公社病院でも大変苦労されていると思いますが、これは全国的な流れでありまして、こうした事態をあたかも公社化したことが原因であるかのようなマイナスイメージで主張する一部の会派もあるようでございますけれども、これは全国的な流れであります。
 そこで、確認のために伺いますけれども、これまで公社化した病院における看護師不足の理由は何か、また、具体的な対策についてお伺いをいたします。

○及川経営企画部長 看護師の不足の原因といたしましては、ただいま副委員長のお話のように、七対一の新看護基準導入による全国的な看護師不足の影響を受けておりますほか、医療が高度化、多様化をいたしまして、患者のニーズが増大する中で、新人看護師の看護実践能力と医療現場で求められる能力とのギャップによりまして、主に新人看護師が早期に離職をするといった傾向があるというふうに考えております。
 公社病院では、このような比較的離職率の高い新人看護師の離職防止対策といたしまして、三カ月間指導者をつけて、さまざまな病棟、手術室などを回りまして多様な業務を経験させる、いわゆるグローアップ研修と呼んでおりますが、こうした研修を実施いたしますとともに、中堅職員のスキルアップのため認定看護師の資格支援など、定着対策にも努めております。
 また、公社事務局での毎月採用の実施や、病院での随時採用の拡大などに加えまして、経験者の採用試験を面接のみにするなどの工夫を凝らし、採用にも努力をしております。
 さらに、一部の病棟では、現在三交代で行われている勤務について、夜間を分割しない二交代制の施行などを開始いたしまして、勤務体制の多様化も図っております。
 こうした取り組みに加えまして、現在、公社職員の人事給与制度の見直しを検討しているところでございまして、こうした考え得るさまざまな対策を行うことによりまして、引き続き看護師の確保に努めてまいります。

○山加委員 公社を所管する病院経営本部におきましては、公社が創意工夫と努力を行って、どうか職員確保に向けたより有効な対策を打ち出せるようにご指導をお願いしたいと思います。
 私は、先日、知人が平成十六年度に公社化した大久保病院に入院、手術をしたものですから、訪れる機会がありまして、この公社化された大久保病院、以前も知っているのですけれども、大変活気づいたといいますか、病院内が明るくなって、てきぱきとしているというか、そんな雰囲気を感じまして、ちょっとお話も伺ってきたんです。
 確かに移管直後はさまざまな風評被害も若干影響して、この病床利用率も下がったけれども、その後、やはりいろいろな工夫を凝らして、ご苦労も大変あったと聞いておりますけれども、現在はメタボリックシンドロームの週末短期入院、そしてまた、アンチエイジング外来を開始するなど公社病院ならではの特色ある医療を提供して、大変活気を呈しておりました。
 やはり豊島病院においても、この公社化病院としてさまざまな知恵を出していただいて、サービスの向上に努力するようにお願いをしたいと思います。
 ところで、本会議における我が党の代表質問に対して、豊島病院においては地域の医療機関との役割分担を踏まえて、帝王切開が必要となるなどのリスク管理が求められる分娩に対応できるように、この秋を目途に準備を進めているという答弁がございました。
 そこで、何点か確認をさせていただきたいのですが、まず、分娩に関しまして、この地域の医療機関との役割分担を踏まえ、リスク管理が求められる分娩に対応できるようというのは、具体的にはどういうことなのか、お伺いいたします。

○及川経営企画部長 豊島病院は、産科医の確保が困難となりましたことから、平成十八年九月より分娩を休止しておりますが、分娩の再開につきましては地域からの要望も強く、その中でも特に帝王切開や合併症を持つ妊婦さんの分娩に対応してほしいという、こういった声を準備会でも聞いております。
 この間、議会のお力添えをいただきながら、医師の処遇改善などさまざまな取り組みによりまして医師確保に努めました結果、現在、常勤の産科医を四名確保したところでございます。
 チーム医療を行っていく上で、まだまだ十分な体制とはいえませんけれども、地域のニーズにこたえるために、診療所や個人病院など地域の医療機関との役割分担のもとに、この秋を目途に、母体や胎児の異常、あるいは多胎児出産に伴う帝王切開などのリスク管理が求められる分娩を中心に段階的に対応していく予定でございます。
 また、豊島病院では対応が困難な低出生体重児出産などのハイリスク分娩に関しましては、周産期医療センターの機能を持つ大塚病院や墨東病院を初め、近隣の大学病院等と連携をいたしまして適切に対応してまいります。

○山加委員 都立病院が高度な周産期医療の集約化を図り、また、地域医療の核となる豊島病院においては、診療所や個人病院などの医療機関や大学病院との連携を行って、帝王切開などの分娩に対応する、こうした機能に応じた役割分担を図るということについては理解をいたします。
 それでは、分娩再開に向けて、この秋を目途に準備を進めているということでありますけれども、今後、具体的にどのように準備を進めていくのか、お伺いをいたします。

○及川経営企画部長 分娩の再開に当たりましては、母体や胎児の異常などによりリスク管理が必要となる妊婦を中心にすると申し上げておりますが、これは、分娩がまた再開したことによって、過度に集中をすることによりまして、また産科医が疲弊をし、再び離職するといったような事態にならないようという理由がございまして、引き続き、産科医や助産師等の確保にも努力をいたしまして、その状況を踏まえますとともに、地区医師会や地域の医療機関等とも十分に連携を図りながら、段階的に受け入れ対象や件数を拡大していくとしたものでございます。
 また、再開に向けましては、母体だけではなくて、生まれてくる子どもにも一定の対応が可能となるよう新生児の専門医の確保にも努めますとともに、産科医と看護要員がチームとして実践的な分娩のトレーニングを行いながら、十分連携を図ることによりまして、この秋を目途に安全な受け入れができる体制を整えてまいります。

○山加委員 総合的な医師確保対策が目に見える効果としてあらわれ、また産科医の確保、リスク管理が求められる分娩の再開へとつながったことは、それを強力に支援してきた我が党としては、大いに評価をさせていただきたいと思います。
 公社化することによって、あたかも現在行われている医療サービスが低下するということを宣伝、また吹聴する、そしていたずらに都民の不安をあおってしまう、そんな一部の会派もありますけれども、決してそのようなことではなくて、これまでの質疑を通して、産科医を確保するとともに、生活習慣に密接に関係し、患者数も多いがん医療、また脳血管疾患医療などを重点医療として、その機能充実が図られることが大変確認できました。
 今後も豊島病院は、公社医療としての医療サービスを維持向上させ、また、公社移管後も引き続き地域に密着した質の高い医療を提供していただくことを要望いたします。
 そして、最後に、豊島病院の公社化に向けまして、病院経営本部長の決意を伺っておきたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 決意を伺って、質問を終わらせていただきます。

○秋山病院経営本部長 ただいま山加副委員長から、豊島病院の公社化に当たりまして、多面的なご質問をいただきました。
 公社化に当たった運営協議会の準備会で、地元の皆様からさまざまなご意見をちょうだいした、これを聞くにつけて、地域医療を豊島病院が担っていくということへの地元の強い期待とともに、我々病院経営本部、それから来年この経営を担っていく公社、これらの重い責任を改めて痛感したところでございます。
 公社化に当たって当面の最大の課題が産科医の不足、分娩の休止でございまして、これは先ほど部長からもご答弁したとおり、常勤医四人、必ずしも十分ではございませんけれども、産科医の総数が減少する中で、また、都内においてもまだまだ病院の分娩休止が発生しているという状況の中では、荏原病院で産科医の確保のめどが立ったこととあわせまして、比較的大きな成果が出たんじゃないかというふうに思っております。
 その成果が出た要因は、先ほどお話がございましたとおり、医師の処遇の改善、給与の改善だけではなくて、女性医師対策なども入れたことによりまして、その総合的な対策が医療界の中で評価をされたということがございますけれども、実は、とりわけ何といいましても、都民を代表する都議会の場で医師不足の現状が議論をされ、その上で対策が打ち出されたということに対する評価が高うございます。
 日本産科婦人科学会の幹部からは、医師不足や産科の現状を理解し、議会などできちんとした都民的議論が行われた上で対策が示された東京都には支援をしていくという話が私にも直接ございました。こういう言葉が、そのことをあらわしているというふうに思っております。
 大変僣越でございますけれども、厚生委員会の先生を初め都議会にてご支援を賜りました先生方に、厚く御礼を申し上げたいと思っております。
 ただいまの質疑でも議論されましたが、公社化に当たりまして、まだまだ課題もございます。地域連携のさらなる強化、それから重点医療の充実ですね、これは、大きく三つ、救急、脳血管、がんと掲げておりますけれども、それから、さらなる医療スタッフの確保、そういったものを総合した診療規模等、解決すべき課題がある。
 こうした課題をとらえてかどうかわかりませんが、現在、公社化するとこれまでの医療やサービスは守れないといった、やや誤解を招きかねないスローガンを記載したビラが地元で配布されるなどの動きがあるということは承知をしております。
 しかしながら、これらの課題は、公社化によって新たに地域医療サービスを充実するためにつくり上げていく医療機能であったり、また、病院の経営形態とは関係なく現在の激変する厳しい医療環境に影響を受けている課題にほかなりません。したがって、現状の的確かつ冷静な分析の上に具体的で総合的な対策が極めて大きな効果を発揮した医師確保と同様、都議会の先生方のご支援、ご協力をいただき、ひいては多数の都民の皆様の理解を基盤といたしまして、現下の厳しい医療環境に対しました、地域に密着したサービスの向上に具体的に結びつく万全の準備を進めながら、平成二十一年四月からの公社化を着実に推進してまいるとともに、引き続き公社化後の支援にも努めてまいる所存でございます。

○長橋委員 私からも、豊島病院の公社化につきまして質疑をさせていただきます。
 病院の公社化ということについては、私の認識は、いわゆる都立病院から公社化するということでありますが、都立病院の本来の役目、また方向性として、東京都全域にわたって不採算の医療である行政的医療をきちっと担っていこう、あわせて地域から最もニーズが高い、または不足している救急など地域医療、いわゆる二次医療をきちっと担っていく、これが公社病院の目的でもあろうかと思います。
 そういう中で、この豊島病院はさまざまな経緯がありまして、今後の豊島病院のあり方について、昨年の二月ですか、公社化の方針が打ち出されたわけであります。今回はその機能等について質疑をするわけでありますけれども、いわゆる都立病院のそれぞれの歴史的な経緯もありますし、また、その病院独特の特徴もあろうかと思います。公社化に当たっては、それぞれの病院が独自の課題を抱えて、それを時間をかけて、また努力をして克服した経緯もあろうかと思います。
 豊島病院は、一時は老人医療センターと統合という話もありましたし、地元の板橋区へ移管という話もありましたけれども、そういう中で、そういう話がまとまらず、公社化ということであります。
 山加副委員長がいっておられましたが、同じ医療圏でありますし、私も東京都で唯一のがん治療にある緩和ケア医療も視察に行ったことがございます。ぜひこういった大事な資産を引き続き継続をしてもらいたい、こういう思いで質問をさせていただきます。
 まずは、都立病院が今まで、平成十六年の大久保病院、十七年の多摩北部医療センター、そして十八年度の荏原病院、この三つが先行して公社化をしてきたわけであります。今回、豊島病院が四つ目になるということでありますので、それぞれこの三つの都立病院の公社化に当たって、今、若干お話もありましたけれども、さまざまな課題もあったと思いますし、また、その課題の中で、それを克服するための取り組みも行われてきたと思います。
 そういったことを参考にしなければならないわけでありますけれども、先行して行った三つの病院のそれぞれの課題と、そしてその病院の取り組みについてお伺いをしたいと思います。

○及川経営企画部長 都立病院の公社化は、限りある医療資源を最大限有効に活用しまして、地域医療を効果的かつ効率的に提供するために都立病院改革の一環として取り組んでまいりました。
 まず、大久保病院でございますが、都立病院から公社化する最初の事例でございました。したがいまして、いかに特色ある運営を行い、地域から信頼される病院としていくか、どう紹介予約制の理解を得ていくかなどの課題がございました。
 公社化当初は、医師の欠員もありまして、移管初年度である十六年度の決算では、病床利用率が約七七%、患者実績も落ち込んだ時期がございましたけれども、先ほど副委員長のお話にもございました、重点医療でございます生活習慣病あるいはアンチエイジング、こういった公社病院としての特色を出すことによりまして、平成二十年の最新のこの四月時点では、病床利用率八九・四%となるなど、患者実績も回復をしてきております。
 また、紹介予約制につきましても、都の広報媒体のみならず、関係各区の区報や地元医師会の広報紙等の活用など、幅広い広報活動を行うことによりまして、地域から理解を得られるようになってきております。
 次に、多摩北部医療センターは、高齢者専門の病院でございました。近隣に療養型病院や精神科病院が多く、急性期を行っている医療機関が少ないといったことから、これまで培ってきた高齢者医療にかかわるノウハウを継承しつつ、診療対象を小児科、一般成人まで拡大することとして運営することが課題でございました。
 このため、救急医療やがん医療への取り組みを強化しますとともに、地域の小児医療の確保を図っていくために、小児科の設置や小児の二次救急を開始するなどの取り組みを行っているところでございます。
 最後に、荏原病院ですが、これまで移管をしてまいりました病院の中で最も大きな五百床という病院でございます。大久保病院と同様に、地域ニーズを踏まえた特色ある医療サービスを提供していくという必要がございました。
 このため、重点医療に掲げてございます脳血管疾患医療とがん医療について、脳卒中センターの設置やリニアックを導入しまして、放射線治療を開始するなどの取り組みを行ってきております。
 こうした取り組みによりまして、各病院とも地域医療の充実を図り、積極的に医療サービスの向上に努めているところでございます。

○長橋委員 今、改めて三つの病院の取り組みについてお伺いをしたわけであります。それぞれ特徴を生かしながら、今、時代の流れとともに救急医療、小児医療、また、利用者の回復等を含めて課題を乗り越えてきたことがわかりました。
 そういう中でありますけれども、この三つの病院の公社化に当たっては、集めましたら、たびたび請願陳情が繰り返されているわけであります。公社化の目的というのが、今それぞれの病院でありましたけれども、やはり救急医療、小児医療、また、いわゆる二次医療をきちっと手当てをしていくということであるにもかかわらず、今までの請願陳情の中には、公社化すると公的責任の放棄につながるというようなことが陳情にあったり、公社病院だと医師、看護師が少なくなる。公社病院だけ医師、看護師が少なくなるわけではない。もちろん一時的に身分の問題とかあって、そういう課題が出てきたのだろうと思いますけれども、こういうふうに断定的に話があったり、また、不採算医療を続けられなくなるとか、それから、いわゆるその病院が持っている重点医療の水準も下がってしまうのではないかとか、さまざまな陳情を繰り返してきたわけであります。
 また、この豊島病院を公社化、いよいよ来年の四月からするということでありますけれども、もちろん豊島病院の特徴を生かしつつ公社化をしていきますけれども、改めて、豊島病院を公社化にする、これについて今いったようなことも含めてご答弁をいただきたいと思います。

○及川経営企画部長 先ほど理事からもお話がございました役割でございますが、都立病院が都全域あるいは複数の二次保健医療圏を対象としまして、救命救急などの三次医療、専門性の高い医療及び行政的医療を提供する役割を担う一方で、公社病院は、地域の医療機関との紹介、返送、逆紹介などの医療連携によりまして、地域医療のシステム化を推進することをその目的にしており、救急を含めまして地域に必要な二次医療を提供する役割を担うものでございます。
 したがいまして、豊島病院の公社化は、地域医療機関との連携、支援を通じまして、地域医療のより一層の充実を図るということが目的でございます。豊島病院は、これまでも医療機能連携を積極的に進めております。地元板橋区からの患者が入院で五割、外来で六割となっており、また区西北部保健医療圏全体で見ますと、入院、外来とも八割以上となっているなど、地域医療の充実に貢献をしてまいりました。
 また、豊島病院が属する保健医療圏には二つの大学病院があるほか、周産期、リューマチ、膠原病医療のセンター的機能を担う都立大塚病院もございます。こうした三次医療や専門的な医療機関として、それぞれ役割を果たしてきております。
 こうしたことから、豊島病院は、地域で不足する二次医療機関としまして、地域の医療機関等との連携を一層強化し、継続性のある一貫した医療を提供していくことで、地域全体の医療サービスの一層の充実に貢献することが求められております。
 こうした理由から、豊島病院につきましては、地域医療支援病院となりまして、地域病院として機能を充実させ、地域医療をより効果的、効率的に提供していくため、保健医療公社に運営を移管することとしたものでございます。

○長橋委員 改めて公社化にする意義といいますか、また、この西北部保健医療圏、まさにお話のとおり、二つの大学病院、そして都立大塚病院、また老人医療センターとあるわけで、行政的医療、それから地域医療、これをきちっと立て分けていくことが大事であろうかと思います。
 今、部長の最後の答弁といいますか、お話の中に、地域医療支援病院となっていくというお話がございました。この報告事項の中にも、公社への運営移管後には、まず開放型病院として診療を開始し、地域医療支援病院の承認を目指す、そして着実に実績を積むことが必要である、こういうふうに書いてありますが、公社化後、この開放型病院として診療を開始し、その後、地域医療支援病院の承認を目指す。それぞれ承認を目指す、また開放型病院の基準、こういうことがあろうかと思いますけれども、そこら辺、ちょっと具体的に教えていただきたいと思います。

○及川経営企画部長 地域医療連携を推進します公社病院では、地域医療機関の医師が連携医となりまして、入院患者につきまして、病院施設を開放して連携医と病院の医師とが共同して診療を行っていくことで、地域医療の充実を目指すこととしております。
 このため、開放型病院として病床の運営を行いまして、例えば大久保病院におきましては整形外科、東部地域病院では眼科において、入院が必要な手術を共同で行う。あるいは術後の経過チェックを共同で行っていくなど共同診療に取り組んでおりまして、公社化後は豊島病院においてもこうした取り組みを行ってまいります。
 さらに、紹介、逆紹介の取り組みを進める、あるいは研修会等を開催して、地域の医療従事者に対する教育を行うなどの取り組みを一年間実績として積むことにより、一定の基準をクリアした上で地域医療支援病院の承認を得ることができるようになります。
 豊島病院では、地域医療支援病院の承認が得られるまでの期間は、五床程度の開放病床を設置いたしまして共同診療を促進していく予定としております。
 このように地域医療支援病院は、地域の医療機関と共同診療を行うことによりまして、かかりつけ医である連携医と病院の医師が身近な地域において診察、処置から入院、退院、そして退院後の健康管理まで、いわば二人の主治医のもとで一貫性のある医療を継続して受けられるようになるという大きなメリットがございます。
 また、地域の医療機関にとっても、在宅患者のための緊急入院ベッドの確保や相談窓口機能の体制整備など、地域のニーズを踏まえた運営によりまして、地域全体の医療サービスの向上が図られるというメリットがございます。
 なお、現在、公社病院では、東部地域病院、多摩南部地域病院と公社化した多摩北部医療センターの三病院が、この地域医療支援病院の承認を受けております。

○長橋委員 開放型病院ということも、私もよくわからなかったわけでありますけれども、お話を聞くと、地域の医療機関と共同診療ということであります。豊島病院は、五床程度の開放病床を設置するということでありますし、それを受けて、実績を積んで地域医療支援病院の承認を得ていこうということでありますから、既に公社化している病院、そして新たに公社化になった病院では--新たになったところでは多摩北部医療センターのみが地域医療支援病院になっているわけであります。私の認識がもし間違っていなければなんですが、公社化した病院は、地域医療支援病院を豊島病院も目指すのですけれども、大久保病院も荏原病院も目指しているのでしょうか。
 そのためには、大久保病院、荏原病院は既に開設して年月がたっているんですけれども、なっていない、こういうことなんですけれども、ちょっと質問ではあれですけれども、大久保病院、荏原病院、この地域医療支援病院にいつごろなるのか、また、もうすぐなるのかどうか、そこら辺ちょっと教えていただけますか。

○及川経営企画部長 一定の基準がございまして、紹介率六〇%以上とか、逆紹介率何%以上という基準、すべての基準を満たさなければいけないので、今その努力をしておる途中なんですが、まだ若干満たしていないということで、引き続き努力をしているというところで……

○長橋委員 目指しているの。

○及川経営企画部長 はい、目指しております。

○長橋委員 地域医療支援病院ということを目指して、豊島病院だけではなくて、大久保病院は新宿の歌舞伎町の繁華街にあるわけですから、また、地域特性もあるかと思いますけれども、大久保病院は、先ほどの答弁があったとおり、最初は医師に欠員が出たり、利用率も下がった中を努力して、山加先生もさっきいったように、大変活気が出てきたということもありますので、それぞれなくてはならない地域病院だと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 それでは、きょうは医療機能についてということの質疑でございますので、若干確認をさせていただきますが、今回の報告書を見ますと、公社化後の豊島病院は三つの重点医療に取り組んでいくということでございます。
 それまで豊島病院が担ってきた医療機能、これはもっと総合病院としてさまざまな機能を担ってきたわけでありますけれども、あえて公社化後の重点医療として救急医療、それから脳血管疾患医療、がん治療を選定した、こういうことでございますけれども、この重点医療を絞り込んだというふうにもなると思いますけれども、そこら辺の理由についてお伺いをいたします。

○及川経営企画部長 豊島病院は、これまで多くの重点医療を担ってまいりました。すべて挙げさせていただきますと、まず、緩和ケア医療、精神科医療、周産期医療、救急医療、感染症医療、リハビリテーション医療、糖尿病医療、アレルギー医療、障害者歯科医療、この九つを重点医療として運営を行ってきております。
 こうした中、公社化に当たりましては、これまで担ってまいりましたこうした医療機能を踏まえまして、地区医師会や地元自治体、住民代表等から構成される豊島病院運営協議会準備会を設置いたしまして、医療機能についてご意見を伺ってまいりました。また、アンケート等も実施するなど、地域の医療ニーズの把握を進めてきております。
 こうした意見や要望を踏まえた上で、まずは地域医療支援病院の要件でもございます救急医療を選択し、それから地域医療機関からのご要望、そしてニーズが強い、さらに現在の豊島病院においても患者数の多い脳血管疾患医療とがん医療を加えて、この三つを重点医療としたものでございます。

○長橋委員 アンケートをとって、また私もそのとおりだと。九つの重点医療、これを全部重点医療としてやるには大変な人材の確保も必要かと思います。豊島病院の特徴として、やはり地域支援病院を目指すということであれば、いわゆる救急医療、なくてはならない医療でありますし、それにあわせて脳血管疾患医療とがん医療を選定したということであります。
 そういう中で、いわゆる都立病院の担う役割と公社病院の担う役割を、先ほどお話をお伺いしましたけれども、ちょっとよくわからないのは、重点医療とあわせて、いわゆる行政的医療、これはどうしていくのかということでありますけれども、今、九つの重点医療を挙げていただきましたけれども、去年の、今後の豊島病院のあり方については、現在の重点医療課題となっている精神科、救急医療、緩和ケア、周産期医療、感染症等については、都立病院で順次していくことが基本としつつも、引き続き重点医療として提供していくことを妨げないと書いてあるわけですね。
 そして、今回の報告には、適正な財政支出のもとに引き続き必要な医療を提供していく、行政的医療を提供していくということでありまして、三つに絞ったという意味はよくわかるわけでありますけれども、やはり地域の中では、その三つに絞り込めないということもあるわけであります。いわゆる公社化に当たって行政医療がなくなるというような、そういうような意見をいう人も出てくるわけであります。
 そういった意味では、今いった公社化移管後の行政的医療の取り扱いはどうなるのか。全くなくなってしまうというような感じになるのか、それとも、こういうふうに適正な財政支出のもとにとか、それからまた、提供していくことを妨げないという、ちょっとわかりにくい表現、苦しい表現だと思いますけれども、部長、どうでしょうか。

○及川経営企画部長 先ほどご答弁申し上げましたけれども、行政的医療というのは、まず、都立病院がしっかりと受けとめてやっていくということが中心でございます。ただし、いわゆる公社病院でもやってはいけないとか、やれないとかということではなくて、これまでの経緯も踏まえた上で、しかも医療需要と供給体制、そういったものも十分勘案しながら、引き続き行政的医療を継続する場合には、きちっとした財政的な支援のもとに、それを東京都としてお願いをしながら継続していただくというふうに考えております。
 これまで、例えば豊島病院の行政的医療としましては、第二種の感染症指定医療機関としまして、感染症専用の病床も有しております。また、こういった法に基づく患者の受け入れなども行ってまいりました。
 また、精神科救急につきましては、現在、都内全域を四ブロック体制に分けまして、精神科夜間休日救急事業に対応しておりますけれども、豊島病院がその一角を担うなど、これまで多くの行政的医療を都民に提供してまいりました。
 こうした医療につきましては、行政側からも継続の要請がございますし、先ほど来申し上げているとおり、地域からの医療ニーズもあるといったことから、適正な財政支援のもとに、これら行政的医療を引き続き提供していく予定としております。

○長橋委員 まさに都立病院の改革実行プログラムで、今後の都立病院のあり方、これは、ひいては公社化をする病院も含まれているわけで、東京都全体でその行政的医療というのを考えていかなければいけない。そういう中で、やはりまだその行政的医療について方向性が示されているわけでありますので、公社化移管後も引き続き必要なものはきちっと継続していくというご答弁であったかと思うわけであります。
 この後、NICU、周産期医療についてご質問しようと思いましたけれども、先ほど山加先生から詳しくありましたので、このNICUは墨東、大塚に移転をするわけでありますけれども、秋から再開する分娩については、ぜひきちっと地元の方に説明をしていただきたいと思うわけであります。
 また、医師、看護師不足につきましても、公社化すると必ず医師、看護師不足になると、こういう喧伝も出てくるかと思いますので、きちっと対応してもらいたいと思うわけであります。
 そういう中で、最後に、今回、この第二回定例会で、豊島病院の公社化について質疑をしたわけであります。来年の四月からスタートするということであります。そう考えると、残り十カ月程度ということになろうかと思います。そういった意味では、今まで繰り返しされてきた請願陳情の経験も踏まえて、またお伺いをすると、公社化の議論については、今まで過去の病院につきましては、三定であったり、四定であったりというようなこともあったようであります。
 今回、こういう中で、公社化になっても医療サービスは引き続き継続をしつつ、さらに地域医療の中核病院として担っていく、そういったことをきちっと都民の方々に説明をする。また、地域の医療機関にきちっと説明をして、万全の体制で四月から公社化後の診療を開始いただきたいと思いますけれども、そういった地域の方々、また不安を持っている方々に対して、きちっと説明していくべきだと思います。
 今後の取り組みについてお伺いをして、質問を終わります。

○及川経営企画部長 ただいま理事からお話がございましたとおり、これまでの都立病院の公社化につきましては、九月の第三回定例会に、公社化検討委員会の今回行いました報告を行いまして、十二月の第四回定例会で都立病院条例の改正についてご審議をいただいてまいりました。
 今回の豊島病院の公社化に当たりましては、これまでの取り扱いよりもさらに三カ月ほど準備を早めまして、この六月に委員会で報告させていただきまして、都民の方に十分周知ができるよう、期間を設けているものでございます。
 また、豊島病院の公社化が条例上決定した際には、患者さんや地域の方々の安心が得られますよう、豊島病院が持つ医療機能や医療連携の仕組みなどにつきまして、わかりやすく説明したパンフレットを作成するなど、公社化に向けた広報活動を進めますとともに、地域の医療機関に対しましては、医療機能連携をさらに推進していくために、公社化後の都立病院が有していく医療機能、医療機器、スタッフなどの情報を積極的に提供していくことで、さらなるご理解を得た上で、移管に関しまして準備を万全に整えていきたいというふうに考えております。

○かち委員 私からも、都立豊島病院の公社移管について、公社化検討委員会の報告に触れながら、規模や内容について書かれておりますので、そういうところについてお聞きしたいと思います。
 今までにも議論がありましたし、私も何度かこの委員会で取り上げてはきましたけれども、都立豊島病院は、第一次実行プログラムの中で民営化という計画があったんですけれども、その後、いろいろな展開の中で、一たん白紙に戻ったものですけれども、第二次実行プログラムが出る前に、来年の四月をめどに公社移管ということが出されまして、今、それが前提で検討が進められているところでございます。
 これまでの都立病院の公社化の段取りと同様、移管後の機能について、豊島病院運営協議会準備会などをつくって、地域の皆さんの要望を取り入れて、検討委員会のまとめとして出されたものですけれども、豊島病院も公社に移管されると、もともと二つの病院であった公社が、この数年間に三倍の病院を管理する団体になります。都の監理団体の中でも最も大きな団体になるわけですけれども、この公社の運営動向は、都政にとっても大きな影響をもたらすことになると思います。
 しかし、今日、社会保障費の切り下げや、診療報酬の改定、医師、看護師不足などにより、医療環境をめぐる情勢は極めて厳しいものがあります。こうした中で、公社病院の経営や人材確保で大変苦労されているのが実態だと思います。
 そこで伺いますが、昨年度は、医師、とりわけ看護師不足のために、公社の病院でも複数の病院で病棟休止状態にあると聞いておりますけれども、具体的にはどこの病院で、どのような実態になっていたのでしょうか。

○黒田参事 公社病院の病床の状況についてでございますが、病棟の看護師が不足しておりますことから、多摩南部地域病院では四十五床、多摩北部医療センターでは四十一床、荏原病院では四十三床が休止しているところでございます。

○かち委員 五つの病院のうち、三つの病院で、一病棟単位で休止状態にあるということですけれども、今現在も休止状態が続いているわけで、再開のめども立っていないというのが現状です。
 公社五つ病院の決算報告を見ましたら、昨年の各病院の病床稼働率は、東部で八七・九%、多摩南部で七五・五%、大久保では八四%、多摩北部で八二・八%、荏原病院では七六・一%ということで、五つのうち、三つの病院では極めて厳しい状況にあると思います。
 人材確保も厳しい、経営実態としても厳しい状況ですけれども、もともと公社は経営基盤が弱い状況にある中で、こうした公社に次々と都立病院を送り込んでいくことによって、病院機能を維持、継続できるのか、私は大変危惧を覚えるものです。病院経営本部として、このことに対してはどのような認識を持っておられるのでしょうか。

○黒田参事 公社病院の病床利用率についてでございますが、病床利用率は病院によって差がございます。先ほどの答弁の中で、病床利用率が低い病院で病床を休止しているというご説明をさせていただきましたが、病棟の看護師が不足していることが原因でございまして、安全上の配慮から病床運用を休止しているということでございます。逆に、病床運用を休止していない東部地域病院では、先ほど先生から十九年度の実績のご紹介もございましたが、直近の数字、平成二十年四月時点における病床利用率を申し上げますと、九二%、同様に大久保病院では八九・四%と、比較的高い水準となっております。
 なお、病床利用率が低い原因の一つ、大きな原因となっております看護師の確保につきましては、先ほどもご答弁させていただいておりますが、採用の工夫、勤務体制の多様化、人事給与制度の見直しなどにより、全力で取り組んでいるところでございます。
 看護師を早急に確保いたしまして、休止している病床を再開することに、引き続き公社では努力しているというふうに聞いてございます。

○かち委員 五つの公社病院のうち、三つが病棟を閉鎖しなければいけないような、休止しなければいけないような状況自身が、大変厳しい状況だと思うんですね。もちろん、看護師不足の折から、無理してやったら医療過誤にもなりかねない、そういう意味で休止されているという判断も十分あると思いますけれども、これはやっぱり厳しいのですよね。
 都立だって厳しいといわれますけれども、都立よりも公社の方がもっと厳しいわけですよ。昨年の決算などを見ますと、公社では、百名規模の看護師が足りないという状況にもなっているわけです。荏原病院だって、開設して(「百名も」と呼ぶ者あり)全体でですよ。開設して三年目を迎えますけれども、依然として公募をしても募集がなかなか集まっていないというのが現状なんですよ。かつて都立の場合はそういうことがなかったんですけれども、これがやっぱり今の公社の一つの姿だというふうに思うんですね。
 こういう中で、さらにもう一つふやしていくことがどうなのかと思うんですが、さて、豊島病院の移管後の医療機能の報告で、先ほど規模の問題がありました。医療規模について、この書かれている内容を見れば、四百七十八床を前提に、全病棟開棟を目指していくということであって、全部オープンしていくんだよというふうにとらえられるわけです。先ほどの質疑の中で、十一年に開設して、今九年目になるんですが、一次、二次までは来たけれども、三次開設ができていないということで、今年度、二十年度は三百六十床から三百四十八床に減らしているわけですよね、実績に合わせてということなんですけれども。こうした状況の中で、豊島病院は四百七十八床を目指すということなんです。
 これは資料を出していただきまして、七ページに、看護要員のところが、定員と現員というふうに、十六年からずっと出ておりますけれども、定員が二十年度で二百七十八名に減っています。二十名減っているんですよね。これが病棟を減らしたという状況にあるわけですけれども、こういう状況の中で、公社に移して四百七十八床、百二十床以上増床していくというめどがあるのかどうかということなんですよ。
 今、都立病院の段階でも、いろいろな医療環境の状況を見ながらということで、なかなか三次開設までできなかった。これについては、地域住民の皆さんからも、病棟があるのに何で開いてくれないんだ、こういう声は出ていたわけですけれども、そういう中で、公社に移ったら百二十床充足できる条件というか、保証というのか、そういうのはどのように見込んでいるのでしょうか。

○黒田参事 豊島病院の病床規模についてでございますが、平成二十年度の病床規模は、産科や小児科などにおきます医師の不足や患者実績等を勘案して三百四十八床としているところでございます。
 公社移管後の診療規模につきましては、現在、病院現場や移管先となる保健医療公社とともに検討しているところでございますが、地域の中核病院としての役割を担っていくとともに、医療スタッフの確保状況や患者実績等も勘案しながら、より適切な診療規模を設定していくという考えでございます。
 豊島病院が持つ人材や施設設備など、医療資源を最大限活用することで、地域のニーズにこたえていくために、将来的には全病棟開棟を目指していくというものでございます。
 なお、全病棟開棟へのめどというお話もございましたが、平成十七年度当時の患者実績を申し上げますと、病床利用率も約九割、九〇%台。また、今後、重点医療を中心に機能をさらに充実するということを先ほど来ご答弁させていただいておりますが、例えば、脳血管疾患医療を重点医療としますが、いわゆるtPAを使用した血栓溶解療法ですとか、SCUを整備しまして、高度専門的な脳血管疾患医療を提供するなど、新たな医療ニーズに対応した医療機能の充実を図ることとしております。
 また、地域病院としまして、これまで以上に地域医療連携を推進していくことから、十分可能性はあるというふうに考えております。

○かち委員 十分可能性がありますと力強いご答弁でしたけれども、荏原の実態を見れば、何をもっていえるのかと私はいわざるを得ません。
 先日、板橋区議会の健康福祉委員会で、豊島病院の都の直営を求めるものと、全病棟をオープンしてほしいということと、NICU、産科等の早期開設などを求めた意見書を上げるように区民から陳情が出されまして、審議の結果、直営については継続審議になったものの、その他については全会派一致で採択されたとのことです。
 これは区民の意思であり、尊重すべきものだと思います。しかし、これまでも七五%の開設で何とかといいますが、先ほどは九〇%だというから、三百六十床は運営してきたのかもしれませんけれども、今の公社病院の現状からしても、公社移管して百二十床も急激にふえる条件が切り開けるとは到底思えません。なぜ人が--人が大事です、医師も看護師もいれば、私は可能だと思いますけれども、今の状況からすると、大変厳しいというふうに思います。
 もし東京都が公社に移管するというのであれば、今の状況で持てる資源をフル稼働させて、豊島病院を、こんなに稼働できる病院であるから、だから公社でどうぞやってくださいというのならわかりますけれども、行った後でしっかりやってくれると思いますよといっても、それは東京都のやはり責任が問われると思いますよ。
 また、外来規模についても、平成二十年度予算規模で一日六百四十人というふうに明記されまして、この報告書に書いてありますけれども、わざわざ示して、これらを踏まえながらというふうに書かれています。しかし、現在の豊島病院の実績はどうでしょうか。
 資料を出していただきまして、資料を見ますと、八ページに経営指標の推移が出ていまして、外来の規模も年間で書かれています。この外来の患者さんの推移を見ますと、これを一日当たりで割り返してみますと、平成十四年のときには六百十六人です。しかし、だんだん減ってきて、平成十八年には四百七十一人、こういう状況になっているわけです。
 こういうことからしても、一日六百四十人を目指すといっても、非常に乖離があると思うんですけれども、どのような根拠で六百四十人規模を前提とするというように書かれたのか、根拠をお聞きしたいと思います。

○黒田参事 豊島病院の外来患者数の規模についてでございますが、豊島病院の外来患者数は、平成十三年度におきましては一日当たり六百三十一人、平成十四年度におきましては一日当たり六百二十九人という水準でございましたが、平成十八年度以降は、医師の不足などにより、外来患者は大きく減少しているところでございます。
 しかし、現在、さまざまな工夫により医師の確保に努めておりまして、まず整形外科におきましても、新たな医師の確保ができたところでございます。
 また、今回、本会議におきましても、また本日の厚生委員会におきましてもご説明させていただいておりますが、実際に、豊島病院の産科におきまして、新たに医師を四名確保するなどの成果が出てきております。
 今後も引き続き、医師の採用に努めるなど、必要な医療人材を確保するとともに、豊島病院の持つ医療資源を最大限活用することで、地域のニーズにこたえて、この外来規模を目指していきたいというふうに考えてございます。

○かち委員 入院のベッドの稼働率と同じように、外来の患者が減ってくれば、入院のベッド稼働率もやっぱり減るんですよね。だから、外来というのは非常に重要なポジションだというふうに思います。しかし、今、豊島病院が目指しているのは、地域医療支援病院ということで、紹介患者さんを中心に診るという状況でありますと、やっぱり外来は抑制されますよね。
 今まで、当初からやっていた東部病院であれ、南部病院であれ、そういうシステムででき上がってきたものです。途中で診療報酬の改定とかいろいろあって、今はちょっとごちゃごちゃになってしまって、なかなかそれが全面的な機能にはなっていないのですけれども、都立病院の機能を最大限生かして、地域でこうやってやればできるんだということを示した上で、ぜひ送り出していただきたいと思うんですけれども、今の段階では全然確証になるものはないということなんですね。
 出していただいた報告書の八ページのところに、公社移管後における診療科構成の考え方というのが出ていますけれども、荏原のときも、多摩北部医療センターのときも、住民の皆さんからいろいろご意見を伺いました。皆さんの要望はすべておこたえいたしますということで、ここにもあるように、先ほど行政医療、重点医療をどうするかという話がありましたけれども、今までやっていた医療は基本的にすべて継続しますということですよね。
 今までの重点医療であったものもやるんですよ、さらに、がん、救急、脳卒中を重点医療でやるんですよということで、かなりな重装備の高度医療とともに、地域ニーズに合った地域病院を目指すんだということで、これも公社に行く豊島病院にしてみれば、大変重い課題を担わされるという状況になっていって、本当にそれが実現できるのかという点でも、甚だ疑問を感ずるところです。
 それで、区議会の意思でもありまして、また準備会からも資料で出していただきましたけれども、NICUについてはやっぱり残してほしいという意見が大変多いわけですね。今まで、資料にありますように、豊島病院でNICUの実績はどうかといえば、年間千八百前後のハイリスクの新生児を扱ってきているという、大変すばらしい実績を持っているわけです。だから、これが今ないということは、大塚や墨東病院にすごいしわ寄せが行っているのが実態だと思うんです。
 今、NICUは全国的な問題になっていて、大変不足をしている。東京都の医療計画の中でも、不足をしている多摩地域につくるのはもちろんだけれども、二十三区の中でもきちんと整備をしていくんだということをいっている中で、豊島病院のNICUは、医師確保が難しいということで、大塚と墨東にそれぞれ分散して、総数は変わらないというわけですけれども、やっぱり、この豊島で果たしてきたNICUの機能を生かす必要があると思うんですよね。
 今、整備はもうあるわけですから、医師、看護師、助産婦、そういう人材の確保さえあれば、それに十分にこたえることができると思うんですけれども、だから、なくすことはないと思うんですよ。要求にこたえるために、すぐに体制を整えることは難しいということはあるかもしれませんけれども、ここは、近い将来NICUを再開するんだということで、当面はそれぞれに分散して機能を図っていくということであればわかるんですけれども、移管に伴ってNICUを豊島からなくすという方向ですよね。これは、私は、全体の状況の中でも、住民の皆さんからも強い要望ですし、納得できない問題だと思うんですけれども、その辺のお考えはどうでしょうか。

○黒田参事 NICUについてでございますが、全国的な医師不足でございますが、特に新生児科は不足しているということがいわれておりまして、実際に都立病院、公社病院でも新生児の医師確保に懸命の努力をしているところでございます。
 しかしながら、医師確保の見通しが立たない中で、今後もただただ休止状態を続けていくことでは、都民の周産期医療のニーズにこたえることはできないことから、都立病院全体でNICUをカバーしまして、病院間相互の連携を強化しながら機能を維持していくこととしまして、機能の集約化を図ったものでございます。
 豊島病院では、この秋に、多胎児出産に伴う帝王切開などリスク管理が求められる分娩を中心に分娩を再開する予定であるということは、何度かご説明させていただきましたが、さらに再開に向けては、母体だけではなく、生まれてくる子どもにも一定の対応が可能となるよう、新生児専門医の確保に努めていくこととしております。
 さらに、低出生体重児出産などのハイリスク分娩に関しましては、豊島病院から約五キロという近隣にあります、将来、総合周産期母子医療センターを目指していきます大塚病院などと連携し、対応することといたしております。

○かち委員 新生児対応医師の確保が難しいから、二つの病院に分散して、全体として診ていくんだというご答弁ではありましたけれども、当面はそれでもいいと思うんですけれども、今ある機能を全面展開で生かしていくんだというのであれば、人材確保、医師確保を目指しつつ、将来的にはNICUにもこたえていくということを、私はぜひやっていただきたいというふうに思います。
 緩和ケアも、精神科救急も、NICUも、感染症も、いずれも行政的医療であり、都立豊島病院として果たしてきた役割はかけがえのないものです。そして、これからも継続して提供するというのであれば、公社化ではなくて、都立病院として継続すればいいことだと思うんですよね。都立病院として行政的な医療をやるというのは当たり前のことだと思うんですけれども、そのことはできないのでしょうか。

○黒田参事 行政的医療についてでございますが、まず、豊島病院の公社化は、限りある医療資源を最大限活用しまして、地域医療機関との連携、支援を通じて、地域医療のより一層の充実を図るために行うものでございます。
 また、これまでも豊島病院は、地域に密着した医療を行ってきましたことから、地域医療をより効果的、効率的に提供していくため、保健医療公社に運営を移管するものでございます。
 移管後の豊島病院の行政的医療への取り組みについてでございますが、豊島病院は、これまで担ってきた行政的医療について、行政からの要請や地域の医療ニーズもあることから、適正な財政支援のもと引き続き行政的医療を提供し、適切に対応していくこととしております。

○かち委員 これまでにも幾つも都立病院を公社に移管してきたわけですけれども、公社病院は地域医療支援病院だ、地域のニーズにこたえるんだといいつつも、行政的医療もやるんだということで、結局、みんな機能は移転しているわけですよね。本来、都立病院として果たすべく、また果たしてきた役割を、都立直営から切り離しながらも行政的医療をやらせているという点では、都立病院の役割は何だというときに、やっぱり行政的医療ということが薄れてくるんじゃないかなというふうに思います。
 高度医療と行政的医療を提供することが都立病院の役割ですから、それらを懸命に提供してきた病院をわざわざ公社に移管し、行政的医療も引き続き提供するんだとは、都の都合というか、行革の一環としかいいようがありません。改めて、都民のための大切な病院、だれでも安心してかかれる病院としての都立豊島病院は直営で継続することを申し上げて、質問を終わります。

○西崎委員 財団法人東京都保健医療公社豊島病院の医療機能等について何点か伺います。
 豊島病院は、もう既にお話が出ていますが、地域住民の人たちにとって古くから身近な病院として、多くの利用者の生命と健康を支え、地域医療の担い手としての役割を果たしてきていると思います。
 豊島病院では、感染症医療、精神科救急医療などの行政的医療に取り組むとともに、リハビリテーション医療、糖尿病医療など、豊島病院の特色を生かした医療も提供してきています。
 このたび、都立病院から、来年度、財団法人東京都保健医療公社へ運営を移管するという報告がありましたが、公社後の医療機能の方針については、地域の医療機関との連携を一層推進するとともに、医療の継続性を確保して地域住民に適切な医療を提供すると述べられており、これまで以上に住民に親しまれる病院として、地域医療に貢献していくことが重要だと思います。
 そのためには、報告書で述べられていますように、医療の継続性を確保するために、現在の豊島病院が担っている医療機能を公社後も引き続き提供していくことが、地域住民が最も期待していることではないかと思います。
 そこで、公社後の豊島病院の運営に地元の声や地域の医師会の意見を反映するために、準備会を立ち上げ、議論してきたと聞いていますけれども、地域の要望にどのようにこたえていくのか、地域医療の観点から改めて伺います。

○黒田参事 公社化後の豊島病院の医療機能についてでございますが、先生からもお話がございました豊島病院運営協議会準備会での議論、またアンケートの実施などによりまして、地域の医療ニーズ把握に取り組んできたところでございます。これらのニーズを踏まえまして、豊島病院では、公社化後も現行の診療科及び診療機能を継続しまして、各科において特色ある医療を提供することとしております。
 また、救急医療、脳血管疾患医療やがん医療を重点医療として取り組むほか、感染症医療、精神科救急医療などの行政的医療についても、地域のニーズを踏まえるなどしまして、適正な財政支援のもとに必要な医療を提供することとしております。
 さらに、地域で一貫性のある医療を継続して提供するため、開放型病院として運営し、さらに地域医療の充実を図るため、地域医療支援病院の早期承認を目指した運営を行うこととしております。

○西崎委員 今後も、運営に当たっては、医療機能に関してさまざまな課題が生じてくるものもあると思いますけれども、病院運営に当たっては、十分地域の声を反映させるよう要望しておきます。
 先ほどの答弁の中にもありましたが、公社後の豊島病院の大きな課題は、地域医療支援病院の承認を目指すことだと思います。私はかねてから地域医療というものに強い関心を持っておりましたので、平成九年の医療法改正により創設されました地域医療支援病院制度には高い関心を持ち、また期待してきたところです。
 地域医療支援病院は、先ほどもお話がありましたが、現在、都内には六病院あり、その中で東部地域病院、多摩南部地域病院、多摩北部医療センターと、保健医療公社の病院が半分を占めておりまして、地域医療の確保の点で重要な役割を担っていると思います。
 豊島病院が公社後に地域医療支援病院に早期に承認されるためにはどのような課題があるのか、お聞かせください。

○黒田参事 地域医療支援病院へ承認されるための課題についてでございますが、この承認のためには具体的に大きく五つの条件がございます。一点目としまして、紹介患者中心の医療を提供して、一定割合以上の紹介率、逆紹介率の実績があること。二点目としましては、救急医療を提供していること。三点目といたしましては、建物、設備、機器等を活用した共同診療を行っていること。四点目としましては、地域医療従事者に対する教育を行っていること。五点目としましては、原則として二百床以上の病床及び地域医療支援病院にふさわしい施設を有している。以上の五つが条件となっておりまして、この五つの条件を満たすことによりまして都道府県知事が個別に承認する、そういう仕組みになってございます。
 現在の豊島病院は、地域に密着した運営を行っていることから、紹介率、逆紹介率につきましては高い水準にございます。また、二次救急医療を提供しているなど、地域医療支援病院のための多くの条件を満たしていくことは可能と考えております。
 しかしながら、いわゆる三点目の課題にありました共同診療につきましては、現在の豊島病院では行っておりません。このことから、公社化後は、この共同診療を行う体制を早期に整備していくことが最大の課題であるというふうに考えております。
 こうした体制を整備した後、一年間の実績を積みまして、すべての条件を満たすことによりまして、地域医療支援病院として承認されることができるため、既に地域医療支援病院として承認されております、先ほど先生の方からお話がございました東部地域病院、多摩南部地域病院、多摩北部医療センター、こういった公社病院がこれまで培ったノウハウを活用しながら、早期承認に向けた取り組みを進めてまいります。

○西崎委員 地域における医療提供体制を考えますと、地域の医療支援病院の役割は大変重要であり、ぜひ早期に承認を目指していただきたいと思います。
 次に、公社後の豊島病院が提供する医療機能について伺います。
 最初の質問に対する答弁の中で、現行の診療科及び診療機能を継続するとともに、各科において特色ある医療を提供していくということが述べられていますけれども、豊島病院が公社後も医療機能を一層充実していくためには、豊島病院の特色を生かした医療を提供することが大変重要になってくると思います。
 先行して公社化された大久保病院などにおきましても、お話に出ていますが、それぞれの特色を生かした医療を提供しているようでありますので、豊島病院においても、救急医療、脳血管疾患医療、がん医療などの重点医療に加えて、豊島病院ならではの特色を生かした医療を提供していく必要があると思いますが、この点についての見解についてお聞かせください。

○黒田参事 公社移管後の豊島病院の特色を生かした医療についてでございますが、公社移管後、豊島病院が特色を生かして医療を提供することにつきましては、まず、これまでも、総合リハビリテーション施設を設置しまして、リハビリテーション医療に積極的に取り組んできたところであることから、このリハビリテーション医療については、公社化後の重点医療として取り組んでいくことになっております脳血管疾患医療と一体となって手厚いケアを提供することで、早期に社会復帰を目指すことが可能であるということでございますので、リハビリテーション医療について、こちらの、今回報告させていただいております公社化検討委員会のまとめにも記載がございますが、リハビリテーション医療の体制を強化することによりまして、急性期から回復期までの幅広いリハビリテーション医療に取り組んでいくことを検討しております。
 また、リハビリテーション医療とも密接に関係ある医療としまして、整形外科医療がございます。この整形外科医療につきましては、スポーツ整形外科の専門医を採用するなど、体制の強化を行ってきたところでございますが、これも今回の報告にございましたまとめの中に記載もございますが、今後は、スポーツ整形外科に加えまして、ひざ関節外科、肩関節外科、脊椎外科、リューマチなど、幅広い領域の整形外科医療に取り組んでまいります。
 公社化後の豊島病院は、救急医療、脳血管疾患医療や、がん医療の三つの重点医療に加え、こうした特色を生かした医療を提供していくことにより、地域の皆様に喜ばれる病院を目指してまいります。

○西崎委員 これから超高齢社会の到来が予測される中で、こういったリハビリテーション医療とか整形外科医療に対する需要もふえてくるのではないかと思います。私も近所の整形外科の病院の前を通りますと、朝からお年寄りの方がいっぱいあふれているという状況をよく目にすることがありますけれども、今後、豊島病院の特色を生かした医療の充実に取り組んでいただきたいと思います。
 最後に、これは要望なんですが、医師や看護師などの職員の確保についてです。各議員の方からお話が出ていますけれども、現在、都立病院においても、公社病院においても、医師や看護師などの医療スタッフの確保については大変苦労していると聞いております。来年の四月、公社化への移行を予定していますけれども、移管日までの日数が少ない状況の中で、職員の流動などに十分対応できるのかどうか、地域住民の人たちには大変心配される点ではないかと思います。公社の特徴を生かしたさまざまな取り組みや創意工夫により、医療スタッフの確保に積極的に取り組むとともに、今後も豊島病院がこれまで担ってきた医療機能を継続させ、豊島病院が将来にわたって地域住民の期待にこたえていくことを要望しまして、質問を終わります。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。

○野上委員長 これより福祉保健局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百四十号議案から第百四十二号議案まで及び地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した損害賠償請求事件の控訴提起に関する報告及び承認についてを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際、要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 要求資料について理事者の説明を求めます。

○杉村総務部長 過日の厚生委員会でご要求のありました資料につきまして、お手元の厚生委員会要求資料にまとめてございますので、ご説明申し上げます。
 資料は、目次にございますように、全部で二項目でございます。
 まず、一ページをお開き願います。緊急医師確保対策に基づく医師奨学金制度の平成二十年度における実施状況といたしまして、事業実施をしている道府県ごとに、奨学金の内容、大学名及び定員増数を記載してございます。
 二ページをお開き願います。都道府県における介護サービス情報の公表制度に係る手数料額の状況といたしまして、都道府県ごとの公表手数料と調査手数料について、平成十九年度と二十年度の額を記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、ご要求のありました資料につきましてご説明申し上げました。よろしくお願いを申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○山加委員 私は、本定例会に提案されております第百四十一号議案、東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例について、何点か伺わせていただきます。
 今回の条例案は、福祉保健局の定める手数料のうち、介護保険法に規定されている介護サービス情報の公表制度に関するものでありますが、改正の概要は二点、一つが、新たに公表の対象となるサービスが追加されることにより、その手数料に関する規定を設けること。そしてもう一つが、制度が施行されて二年間の事業運営状況を踏まえ、手数料の額を改定するというものであります。
 さて、介護サービス情報の公表制度は、平成十八年の介護保険法改正に伴い創設されたものでありますが、十八年度に訪問介護など九つのサービスでスタートし、翌十九年度、三つのサービスが追加され、そして今回の改正は、介護予防サービス、地域密着型サービスなど、一挙に十八の新たなサービスが追加され、合計で三十種類のサービスを制度の対象とするというものであります。
 ところで、この制度では、個々のサービスごとに報告、調査、公表が義務づけられておりますので、単純に考えますと、既に公表の対象となっているサービスを提供している事業者が、今回の改正により新たに対象となるサービスをあわせて提供している場合、サービスが乗じられて、つまり、掛け算されることになりますから、二倍、三倍と事務的、経済的な負担が増加するというようにも考えられるわけであります。
 そこでまず、こうした点について今回の改正案ではどのような配慮がなされたのか、最初に伺いたいと思います。

○狩野高齢社会対策部長 お話のとおり、仮に従来の実施方法であれば、例えば既に公表制度の対象となっております訪問介護を提供している事業者が、今回新たに対象となる介護予防訪問介護をあわせて提供している場合、二回の報告と調査を行い、事業者の方には二回分の手数料を負担していただくこととなり、事務的にも経済的にも負担が増加することになります。
 このため、報告及び調査を効率的に実施する観点から、これまでの報告、調査の実施方法を変更し、公表の対象となっているサービスと同じ類型の新たなサービスについては、一つの類型とみなすことといたしました。先ほどの例で申しますと、訪問介護と介護予防訪問介護を同類型のサービスとして一回で報告、調査を実施できる仕組みとしたところでございます。

○山加委員 ただいまのご答弁によりまして、今回新たに十八のサービスが追加されても、事業者には新たな負担がかかることなく、負担を抑えるための仕組みを講じたということは、事業者の立場からすれば高く評価できるものと考えます。
 私ども自由民主党は、本年第一定例会におきまして、介護サービス情報の公表制度は、事業者にとって、事務的にも経済的にも過重な負担の一つとなっていることから、都として、良好なサービスを確保しつつ、事業者の負担を軽減するような方策を講じるべきであると主張したところであります。今回の改正も、私どもの自由民主党の意見を反映していただいたものであると認識しております。
 さて、次に、介護サービス情報の公表制度の手数料額の改定についてお伺いをいたします。
 先ほどと同様でありますが、さきの定例会で我が党の質問に対しまして、安藤局長から、事業者が負担する公表や調査に要する手数料については、制度導入後二年を経過することから、その運用実態を踏まえ、適切に見直すとの答弁をいただいたところであります。
 そこで、こうした本会議での質疑を踏まえ、今回の改正案では手数料について具体的にどのような見直しを行ったのか、伺います。

○狩野高齢社会対策部長 手数料の見直しについてでございますが、調査手数料につきましては平均で約三〇%、公表手数料につきましては約一〇%、それぞれ引き下げを行うことといたしました。
 調査手数料につきましては、国は、手数料算定指針で、調査に必要な人数を二人、日数を二日、延べ四人・日としていたものを、都ではこれまで、独自に日数を一日とし、延べ二人・日と積算しておりました。今回は、これに加え、調査事務の効率化が図られている実態を踏まえ、延べ一・五人・日とし、公表手数料につきましても、事業所から報告された情報の入力事務などの効率化が図られたことから、見直しを行ったものでございます。

○山加委員 これまで、介護サービス情報の公表制度について、事業者の立場から質疑をさせていただきまして、新たに追加されるサービスがあっても、調査事務の効率化の観点から、サービスを類型化し、また手数料についても引き下げを行うとのことですので、答弁を伺いまして、事業者にとりましては、文字どおり、事務的にも経済的にも負担は軽減されることになるということがわかりました。
 しかし、一方で、本制度は、介護サービスの利用者、つまり、都民が適切に介護サービス事業者を選択するためにも重要な制度であるということを忘れてはならないと思います。利用者の視点に立った制度の活用は、制度本来の目的を果たす上で欠くことのできないものだと考えております。
 私は、昨年六月の厚生委員会におきまして、実際にインターネットで検索してみると、情報量が多くてなかなか欲しい情報に行き当たらず、大変に歯がゆい思いを持ったとの感想を述べまして、この制度の利用などについて私なりの意見を述べさせていただきました。
 そこで、昨年からちょうど一年が経過したわけでありますが、この一年間、本制度のシステムの画面構成や操作方法についてどのような改善が図られているのか、また利用者の活用状況や利用者選択のための活用の実践例としてどのようなものがあるのか、あわせてお伺いいたします。

○狩野高齢社会対策部長 ご指摘のシステムの画面構成や操作方法につきましては、これは国が公表システムを設計していることから、都として改善要望を行い、必要な情報項目を素早く閲覧できるようになるなど、利用者が操作しやすい環境になりつつありますが、引き続き国に対してシステムの改善を求めてまいります。
 活用の状況といたしましては、公表システムへのアクセス数では、平成十八年度は月平均で一万四千五百六十件、平成十九年度は月平均二万四百六十件と、約四割増加しております。
 また、本制度の活用についてでございますが、自治体の中には、例えば有料老人ホームの選択に際し、入居一時金の有無や償却方法などの情報を活用する取り組みが進んできております。
 今後とも、公表制度が幅広く活用されるよう、区市町村や地域包括支援センターあるいは介護支援専門員などに対し、パンフレットの送付や研修機会での周知など、さまざまな手法で普及啓発に努めてまいります。

○山加委員 ぜひとも、本制度の普及啓発また利活用のため、自治体が主体的に行っている取り組みにつきましては、都として今後も積極的に区市町村に広めていただきたいと思います。
 さて、これも昨年の本委員会での質疑だったと思いますけれども、この制度に関する事業者からの意見として多いものが、訪問調査の頻度また手数料についての意見であったと記憶しているわけでありますが、現在の制度では、毎年行うこととされている報告について、インターネットなどITを利用して提出できる環境にないとも伺っております。また、個々のサービスごとに手数料を定めているわけでありますが、実態としては、多くの事業者が同一の所在地で複数のサービスを提供しているのがほとんどであると思いますね。こうしたことが事業者の事務的、経済的な負担感を助長しているのではないかと思うわけでありますが、もちろん、この公表制度は、国が定めた全国一律の制度でありますから、これを払拭するためには、国が制度の骨格を変更して、抜本的な見直しを行う必要があるわけであります。
 そこで、これまでの都の提案に対し、どのような見直しが実現され、また、今後、国に対してどのように都は制度の見直しを提案していくのか、伺いたいと思います。

○狩野高齢社会対策部長 都は、国に対して、事業者負担の軽減の観点から、事業者が毎年行う報告方法について、新たな書類の提出を求めることなく、前年度の報告内容を更新する仕組みを採用することを求め、今年度から、紙媒体または磁気媒体による報告からインターネット上での報告方法を導入するなど、事務の簡素化を図るところでございます。
 また、ご指摘の、同一所在地で複数のサービスを提供している事業者に対しては、サービス単位ごとに個別に手数料を徴収するのではなく、事業所単位に改めることなどの提案要求もしてまいりました。
 今後とも、介護サービスの利用者がより適切に事業者を選択できるよう、国に対し、制度の見直しを求めてまいります。

○山加委員 ぜひとも、この制度が介護サービスの質の確保、また向上につながるとともに、利用者であります都民がサービスを選択する上で利用しやすいものとなるように、制度をしっかりと普及、定着させ、事業者、そしてまた都民双方にとってよりよい仕組みとなることを切に希望いたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

○大松委員 私からも、東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例について伺います。
 急速に進む高齢化社会を支えていただきますのは、やはり介護サービス事業者でございます。この事業者の経営が大変厳しいということも、これまで審議をしてきたわけでございますけれども、こうした中にありまして、介護サービス情報の公表制度の手数料につきまして、事業の効果に比して手数料の負担が大きいであるとか、また、同じ事業者にありまして複数のサービスを行っている場合に、対象サービスがふえると、この手数料負担がふえるのではないかといったような、さまざまな要望の声を私どもも聞いておったところでございます。
 公明党も、こうした声を受けまして、これまで本会議等で負担の減を求めてきたところでございます。そして、このたび手数料の引き下げ、グループ化等の配慮をなされたことに対しまして、私どもも高く評価するところでございます。
 しかしながら、また今後も調査対象サービスの拡大も予定されているということでございまして、介護サービス事業者にとっての経済的負担を考えれば、今後とも負担軽減の配慮が必要でございます。さきの私ども公明党の代表質問でも、このことを求めさせていただきまして、福祉保健局長から、より一層効果的かつ効率的に実地調査や公表事務を行うよう、調査機関等を指導していくとの答弁もいただいたところでございます。
 そこで、代表質問でも触れさせていただきました、今後予定されている調査対象サービスの拡大につきまして、二年前の制度導入時には九サービス、昨年度は三サービスふえて十二サービス、今回は十八サービスふえて三十サービスとなっているわけでございますけれども、来年度以降はどうなっていくのかにつきまして、お伺いをいたします。

○狩野高齢社会対策部長 介護保険法では、居宅サービスや施設サービスなど三十八の介護サービスが定められております。お話のとおり、今年度は、そのうち三十サービスが公表の対象となります。
 なお、現在、公表対象となっていないサービスには、認知症対応型共同生活介護、いわゆる認知症高齢者のグループホーム、小規模多機能型居宅介護などがあり、今後、これらのサービスについては、国は、調査手法及び調査内容などの検証を行うためのモデル調査を実施した後、順次実施していく予定でございます。

○大松委員 今後、対象サービスは拡大するとのことでございますけれども、その場合であっても、事業者の事務的、経済的負担が増大することがないようにすべきでございます。本会議の答弁にもありましたけれども、同一所在地で他の複数のサービスを提供している場合は、公表の対象をサービスの種類ごとではなく事務所ごとに改めるなど、都は、国に対し、制度そのものの見直しについて強く求めることを要望いたしまして、質問を終わります。

○かち委員 私からも、百四十一号と百四十号についてお聞きしますけれども、百四十一号議案の福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例については、今、お二人から質疑がありまして、質問のほとんどがダブりますので、あえて繰り返した質問はしませんけれども、この内容は、介護サービス情報制度における対象事業の拡大と情報調査手数料の引き下げを要するものであります。
 私は、二年前にこの制度がスタートするときから、手数料料金設定の考え方が事業者の負担であることに異議を呈し、また、都道府県の裁量である料金設定が高過ぎることなどについて、再三、当委員会でも料金を引き下げることを求めてきました。このたび、対象事業の拡大とともに、手数料についても一定の引き下げをするということであり、賛成するものですけれども、一点だけはお聞きしたいんです。
 今、るる対象事業がこれからかなり拡大していくことだとか、事業者ごとの方が合理的だという点については、本当にそうだと思いますし、国にも局としても要望しているということなので、そのことの実現を期待しているところです。
 それで、情報公開制度というのは、介護保険に続いて、医療機関と薬局情報が公表化されるようになりました。しかし、これらの制度は公費で行うことになっているんですけれども、片や公費、片や事業者負担、この違いを局としてはどのように解釈しているでしょうか。

○狩野高齢社会対策部長 お話の医療機関及び薬局の公表制度は、医療機関や薬局の利用者が適切な選択を行うために必要な情報について、医療機関等が都道府県知事に報告し、公表するものでございます。
 一方、介護サービス情報の公表制度は、介護サービスの利用者が適切に介護サービスを選択、利用するために必要な情報について、介護サービス事業者が都道府県知事に報告するものでございます。その上で、都が指定する調査機関が、報告された情報のうち、サービス向上の取り組み状況など確認が必要な項目について訪問調査を行い、公表することとされている点が、医療機関や薬局の公表制度と大きく異なっております。
 なお、介護サービス情報の公表制度における手数料負担の考え方でございますが、ご案内のように、地方自治法では、地方公共団体の事務で特定の者のためにするものについて手数料を徴収することができるとしてございます。さらに、介護保険法では、都道府県は、介護サービス事業者への便宜を供与するために必要な調査及び公平な情報の公表の機会を提供する事務を行うものであり、介護サービス事業者から手数料を徴収できるものとしております。
 こうしたことから、本制度を運営する費用につきましては、介護サービス事業者から徴収することができる手数料を充てることが適当であるとしており、すべての都道府県におきまして条例で手数料を定めているところでございます。

○かち委員 今の説明では、どちらも報告義務があって、介護サービスについては調査という負荷がかかるわけです。しかし、その手数料はできる規定であり、徴収の義務はないわけです。局としても、国に介護保険の公表も公費で行うべきだと要求されてきた経緯もあります。事業者が使用料を負担するということは、介護保険サービスから得た収入から支払いをすることであり、介護保険原資を使用することになるわけです。しかし、この原資である介護保険や利用料は、介護サービスのみに使用されるものであって、このサービスが円滑に行われるために必要とされる公表制度は行政サービスであり、この原資を使うことは本来できないものではないかというふうに思います。
 いずれにしても、三者の合理性が図られるよう、今後も改善を求めていくことを申し上げて、この議案についての質疑は終わります。
 次に、第百四十号、東京都医師奨学金貸与条例についてお聞きします。
 厚生労働省は、医師不足について、これまで、偏在しているだけであり、基本的に医師は充足しているという立場を固持してきました。しかし、現場の医師不足は長年にわたって指摘されてきたところです。都内でも、公立、民間を問わず、病院の閉鎖や、産科、小児科の休止あるいは麻酔科医がいないので手術ができないなど、深刻な事態となっています。
 将来の医療のあり方を検討していた厚生労働省は、六月十八日、そのまとめの中で、八二年以降初めて、医師総数が不足していることを認め、医師養成数の抑制方針を転換し、長中期的にふやす方針を打ち出したとの報道があります。気づくのが遅過ぎたという感を否めません。
 こうした中で、今回、東京都の医師奨学金貸与条例が提案されました。我が党は、二〇〇三年の第一回定例会における本会議質問で、清水ひで子都議が小児科医育成奨学金の創設を提案して以来、小児科、産科などの医師確保に向けた奨学金制度を繰り返し提案してきました。今年度の予算特別委員会に我が党が提案した予算組み替え案においても、小児科、産科、地域医療などを志望する医学生に対する奨学金制度の創設を提案してきたところです。したがって、本条例案によって都がようやく第一歩を踏み出すことを歓迎するものですが、実施に当たって何点かお聞きします。
 本条例が出されてきた背景、根拠について、まずお聞きします。

○吉井医療政策部長 医師奨学金制定の背景、意義等についてのお尋ねでございますけれども、都内におきましては、小児、周産期などの医療を担う医師の養成が急務でございます。このため、国の緊急医師確保対策を活用いたしまして、都が指定をいたしました大学医学部の定員枠を拡大するとともに、奨学金制度を創設して、医師を養成することとしたところでございます。
 こうした取り組みによりまして、地域で不足する医療を担う医師を着実に確保してまいります。

○かち委員 今回の条例は、国の緊急医師確保対策に基づく制度であるということですね。二〇〇九年から九年間という期限つきで、奨学金貸与とセットで、各自治体において年間五名の枠を拡大することができるということなんです。九年間で四十五名ということですけれども、今の絶対不足数からすると、とても間に合わないというのが実感です。
 条文の中で、奨学金貸与を受ける要件として、知事が必要と認める地域や診療科等と書いてありますけれども、それはどういうところを指しているのでしょうか。また、指定期間九年以上とすることの根拠は何でしょうか。

○吉井医療政策部長 知事が必要と認める地域や診療科等というのは、小児、周産期、救急、僻地医療の分野を指してございます。
 また、指定期間につきましては、奨学金支給期間の一・五倍以上の期間であると、国の緊急医師確保対策で示されているところでございます。

○かち委員 いずれも、国の制度の規定に基づいて決めたものだということなんですけれども、都が独自に五年生とか六年生を対象に、現在の在学生に同様の奨学金貸与をすれば、卒業が早まるわけですし、もっと早くに効果を得ることができるんじゃないかと思います。そして、それが、都が独自策をとることも可能だと思うんですが、その辺のお考えはないでしょうか。

○吉井医療政策部長 ただいまございました、五年生、六年生ということでの早期というお話は、ちょっと理解が、よくわかりませんけれども、ただ私どもといたしましては、奨学金の拡充について、今回の奨学金の取り組みだとか、医師の確保状況を踏まえながら、今後検討していくべき課題であるというふうに認識してございます。
 こうしたことにつきましては、本定例会の自民党服部議員の代表質問におきまして、奨学金制度のさらなる拡充の強い要望をいただいたこととあわせまして、公明党の東村議員の代表質問でお答えをしたものでございます。

○かち委員 いずれも、拡充を求めるというのは、会派を問わずに、やっぱり議会の皆さんの要望だと思うので、その辺のやり方、工夫というのはいろいろあると思うんですよ。一年生から何も六年間ずっと最初からやらなければいけないということではなく、都道府県の中では、他の自治体では、幾つもそういう柔軟な対応をとっているところもあるので、ぜひ検討していただきたいと思います。
 次に、指定期間の勤務ができなくなった場合、原則一括払い、返還金の利率は一〇%、延滞金は一四・六%ということです。六年間で二千万円以上の奨学金を得るわけですけれども、それを一括払いというのはなかなかきつい話だと思うんですね。高い利率ということもあって、敬遠されがちではないのかなというふうに思います。これを決められた規定の根拠というのはどういうことでしょうか。

○吉井医療政策部長 返還利子につきましては、自治医科大学においての奨学金制度、この返還利子一〇%を参考といたしました。
 それから、返還の状況に至った場合の、原則一括返還としたところでございますけれども、本制度は、都内の必要な地域や診療科に医師を確保することということでございまして、指定期間以上指定勤務がなされれば、奨学金の返還は免除されます。制度から離れることを抑制することの仕組みとして設定したものでございます。

○かち委員 医師確保のためにつくった奨学金制度ではあるということは理解できるのですけれども、医学生は学生として学ぶ権利があるわけで、それを保障するという役割も自治体としてはあると思うんですね。
 京都のように無利子で返還を求めているところもあります。示していただいた先行の自治体の中でお聞きしたところ、京都府は、できなかった場合は無利子だということでありました。それから、都の看護学校の就学資金は無利子でありますので、もっと就学奨励の立場に立ってもいいのではないか。その辺の拡充をぜひ検討していただきたいと思います。
 資料として、緊急医師確保対策に基づいて行っている他の自治体の状況を示していただきましたけれども、これは既に二〇〇八年度から実施している自治体の分ですね。他の自治体でも、大方のところ、今の説明に沿ったやり方ではあるようですけれども、京都の場合はそうだということで、私が調べた中でも、七県、宮城、新潟、岐阜、鳥取、愛媛、長崎、沖縄県などでも、奨学金制度、独自に県の制度としてもう既に取り組んでおりまして、毎年申し込みを受け付けていて、二年でも三年でもそのときから奨学金が受けられるということであれば、義務勤務しなければならない期間も、九年間拘束ということにはならなくて、受けやすい状況も出てくると思うんです。そういう中で、六年後にまた医師として生まれてくるというか、成長してくる人たちが補っていけるような状況を、いろいろ工夫していただきたいと思います。
 年利一〇%という高い利率は、ちょっと見直しをして引き下げ、できる限り無利子にすることを求めたいと思います。そして、将来にわたって必要な医師確保のために、都としてさらなる対象拡大や条件緩和に努める必要があると思いますけれども、その辺の展望はいかがでしょうか。

○吉井医療政策部長 先ほどもちょっとお話を申し上げましたけれども、奨学金の返還利子の部分につきましては、本制度の趣旨が都内の必要な地域や診療科に医師を確保するということで、指定期間以上指定勤務がなされた場合、奨学金の返還を免除する、こうしたようなシステムでございます。したがいまして、利子等についてはこの方向で対応していきたいというふうに考えております。
 さらに申し上げれば、奨学金の拡充ということでは、先ほどもお話を申し上げましたが、今回の奨学金の取り組み状況、それから医師の確保状況を踏まえながら、今後検討していくべき課題であると認識しております。

○かち委員 医師養成の促進という意味で、他県では、大学医学部に地域医療などの寄附講座を設置するとか、県の職員として医師を雇用して不足地域に派遣するドクタープール制度、あるいは県独自のドクターバンク、女性医師バンクなどの取り組みも進めています。こうした新しい取り組みも含め、医師確保対策のさらなる拡充を求めて、私の質問を終わります。

○長橋委員 私からも、第百四十号議案、東京都医師奨学金貸与条例について質疑をさせていただきます。
 今、吉井部長からもありましたとおり、さきの代表質問におきまして、現在の都内の小児科、産科医の不足の現状を考えると、今回提案された五人の医学部の定員増だけではまだ足らないのではないか、ぜひとも都独自の奨学金貸与の仕組みを検討すべきだ、こういう質問をいたしまして、今、部長から答弁があったとおり、検討する課題としてということでございました。ぜひ前向きにご検討をいただきたいと思います。
 今回の条例案につきましては、ことしの二月に、いわゆる東京都の地域医療対策協議会が、医師の確保に向けた提言を取りまとめて公表したところでございます。この提言の中で、医師確保をめぐる問題を、まさに今ここにある危機という認識で、都が都民にとって適正な医療を提供できるよう実効性ある対策を行うべきである、こういう提言を取りまとめたところでありまして、私も、今回の質問に当たって読ませていただきました。まさに私も同感でございますし、今はまさに医療の崩壊、危機といった状況であると考えるわけであります。
 その最大の要因が、やはり医師不足による問題。ここにはあと、病院勤務医の過重労働による疲弊、女性医師の出産等による離職、こういうことがありますけれども、まさに医師不足、人間の命を預かる医療が危機的状況にあるということにつきまして、まず、なぜ医師不足になったか、この要因を改めてお伺いをしたいと思います。

○吉井医療政策部長 今日の医師不足の要因といたしましては、平成十六年度の新医師臨床研修制度の導入によりまして、臨床研修医みずからが進路を決められるようになった反面、大学病院では研修医の確保が難しくなり、関連病院に派遣していた医師を引き揚げざるを得ない状況となったこと、これが医師不足を顕在化させたものと考えております。
 さらには、夜間、休日における病院への患者集中などがありまして、病院勤務医師、とりわけ産科、小児科、救急部門等の医師が長時間の勤務に及ぶなど、医師の負担が過重になってきております。また、訴訟リスクの増大や女性医師の出産、育児による離職の増加など、さまざまな要因が絡み合って、今日の医師の不足という事態になったものと考えております。

○長橋委員 今ご答弁があったとおり、さまざまな要因が絡み合ってのことであると。
 資料によりますと、医師は、平成八年から比べると、二万九千人から三万三千人ですから、ふえているわけです。一五%ふえている。しかしながら、診療科によって大きくひずみが出ている。その顕著な例が、産科、婦人科が千五百七十人が千四百十人になっている、小児科は四千二百人が三千八百人と、それぞれ一割も減っているということがあるわけでありまして、医師を養成しても、どうしてもリスクの高い小児科、また周産期産科にはなかなか人材が行かない、こういう状況であろうかと思うわけでありまして、今回の条例については、そうしたところをきちっと対策をとっていこう、こういうことであろうかと思います。
 しかしながら、平成八年からこういった状況はだんだんと顕著になってきたわけでありまして、そういった意味では、今お話のあった平成十六年の臨床研修制度の導入によって拍車がかかったというわけでありますけれども、その間、東京都も、小児医療、産科医療の確保策については取り組んできたと思うわけであります。その周産期医療、小児科医療の確保をどのように都として取り組んできたのか、まず伺います。

○吉井医療政策部長 周産期医療につきましては、都内二十二カ所の周産期母子医療センターを整備しているほか、今年度からは、地域における周産期医療ネットワークグループを立ち上げまして、限られた医療資源の中ではございますけれども、安全・安心のお産の確保に取り組んでいるところでございます。
 また、小児救急でございますけれども、二十四時間三百六十五日、小児科医師が対応できる体制を都内四十七病院において整備してございます。さらに、小児初期救急医療事業といたしまして、十八区十三市に対し、支援を行っているところでございます。
 さらに、この六月からでございますけれども、多数の来院患者の中から緊急性の高い重症患者を優先して医療提供を行う、小児救急トリアージ普及事業をモデル的に事業として実施しているところでございます。

○長橋委員 今ご答弁があったとおり、我が党もこういったことについては、たびたび小児医療、救急医療等について取り上げたところでありますし、周産期につきましては、まさに今大きな話題としてたらい回しの事件もあった、そういったことで整備をしてきた。こういう中で、小児救急については、二十四時間三百六十五日、こうした整備をしたのが十八区十三市にわたっている。そういった産科、小児科の体制については整備が進んでいるわけでありますけれども、それに伴って、医師不足がさらに拍車をかけているというふうになるわけであります。
 また、資料を見ますと、後ろの方に、救急搬送人員も大変に増加をしてきています。逆に、休日・全夜間診療事業も取扱患者実績もふえてきている。そういう中で、今こそそうしたセーフティーネットを引くことが必要であるわけでありまして、特に救急医療体制、これだけ各区市町村も、そして東京都も努力していますけれども、根幹の医師が、また看護師も含めてそうでしょうけれども、いなければできないわけでありまして、ここら辺について、もう一度再点検が必要ではないかと思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。

○吉井医療政策部長 救急医療の現場におきましては、都民の命を守るため、医師等を初め、日夜奮闘しているところでございます。ただ、昨今の救急患者の増加でございますとか、複数の診療科にわたるような複雑困難ケースへの対応、さらには、今、先生ご指摘のございましたように、医師不足の影響などにより厳しい状況になってございます。
 このため、都民の救急医療に対する安心と信頼を確保するため、本年二月から救急医療対策協議会を開催いたしまして、救急医療を提供する医療機関、搬送を担う消防機関、医療を受ける立場の都民などが一堂に会しまして、都の救急医療体制の改善に向け、検討を行っているところでございます。

○長橋委員 今ご答弁がありました救急医療対策協議会の開催については、ぜひ精力的に、救急医療の体制について、喫緊の課題でございますので、進めてもらいたいと思います。
 先週でありましたけれども、私の知り合いが救急車を呼んだ。土曜、日曜だったものですから、どうしようかということになりまして、救急車を呼びまして、すぐ救急車は来てくれたのでありますけれども、それから搬送先に二時間もかかってしまって、そういった話を聞いてはおりましたけれども、私も目の当たりにして、受け入れ先というのが大変な困難をきわめている。幾らこれだけ整備しても、やはり医師をきちっと確保しなければ限界があるわけであります。
 先日、国は、安心と希望の医療確保ビジョンを発表した。六月十八日ですから、つい先日、今お話があったとおり、新聞にも載ったわけでありまして、その中には、従来の閣議決定にかえて、医師養成数を増加させる。従来の閣議決定を撤回する、こういうことでありまして、まさに医師の確保に向けた提言、この内容が、国も東京都の提言を受けて盛り込まれたのではないかな、こういうふうにも思うわけでありますので、ぜひ東京都が先駆的に医師確保策について取り組んでいただきたいと思うわけであります。
 もう一度戻りますが、医師確保に向けた提言の大きな柱として、喫緊に取り組む短期的に成果をもたらすものと、中長期的な視点での人材養成を確保していく、この大きな二つの視点から取り組んでいく必要があるということでございます。
 医師奨学金というのは、中長期的な人材養成という角度でありますから、それを待っていたのでは、今の医療の課題についてはいけないわけでありまして、あわせて、二十年度新たに実施をいたします医師勤務環境改善事業については、即効性を主眼に置いた施策であるかと思いますけれども、その内容についてお伺いをいたします。

○吉井医療政策部長 医師勤務環境改善事業でございますけれども、病院勤務医師の離職防止と定着、女性医師などの復職支援を図るため、病院が実施いたします短時間勤務の導入でございますとか当直体制の見直しなど、こうした取り組み、さらには職場を離れた医師の再就業を支援する研修などの取り組み、さらには施設面での環境整備、こうしたことに対して、東京都として経費の補助を行うものでございます。

○長橋委員 経費の補助ということでありますから、病院がこの補助制度を活用して、さまざまな環境改善に取り組んでいくということで、ぜひ期待したいと思うわけでありますけれども、私の地元にも、百床以下のいわゆる中小病院、こういったところも大変にご苦労をされております。どうしても、医師の確保、あわせて看護師の確保も、大きい病院から先に行ってしまうという状況があって、経営的には大変なご苦労をされているわけでありまして、そういう中でも、救急医療に取り組んでいる中小病院がたくさんあるわけでありまして、こうした病院にもぜひ配慮していただきたいと思うわけであります。
 今、お話のありましたこうした病院は、喫緊の課題である周産期や小児科を行う病院が対象になるのか、また医師勤務環境改善事業の対象病院はどういう病院なのか、お伺いをしたいと思います。

○吉井医療政策部長 医師勤務環境改善事業の対象となる病院でございますけれども、小児救急、さらに周産期医療を担う中核的な病院、そして救命救急センター、こうしたことを補助対象としております。

○長橋委員 ぜひ将来的に、補助事業でありますから、こうした事業補助については、中小病院、まさに地域医療の中核を担う民間病院についても今後検討していただきたいと強く要望しておきたいと思います。
 また、奨学金制度が、将来、地域医療に大変な貢献をしていくことを期待するわけでありますけれども、あわせて制度の中身が重要であります。この奨学金制度を使って人材を養成していくわけでありますけれども、あわせてキャリアアップ、スキルアップしていく、こうしたことをきちっとやっていかなければ、この制度が成り立たないと思うわけでありますけれども、そうした奨学金制度を使ったキャリアアップについて、どう都は認識しているのか、伺います。

○吉井医療政策部長 キャリアアップの関係でございますけれども、大学医学部の六年間では、地域医療プログラムによりまして、都内における小児医療等の現状、課題、こうした理解を深め、地域医療に進んで従事する意識を身につけた医師を養成してまいります。
 それから、医師免許取得後の九年間におきましては、その二分の一以上を小児、周産期等の地域医療に貢献し、その他の期間は、その後の本人のキャリアアップを考慮し、高度な医学知識、臨床的実力を身につけることが可能な医療機関を選定してまいります。
 これらによりまして、将来にわたり地域に貢献する質の高い医師を育成していきたいと考えております。

○長橋委員 では、最後に、今ご答弁がありましたキャリアアップにつきましては、医師免許取得後の九年間だけではなくて、その前にも、こうした小児、周産期、救急、僻地に対して、学生さんといいますか、認識をして、こうした分野に引き続き取り組んでいこうということをきちっと、大事な使命があるというようなことを含めて、取り組んでいただきたいなと思うわけであります。
 単なる奨学金制度、九年間そういった指定した病院に行けば、あと返済しなくてもいい、その後変わってしまうということはないと思いますけれども、そういう学生さんが出れば、この意味はなくなってしまうと思うわけであります。初年度が大事であろうかと思います。ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 以上、医師不足の件についてお話を聞いてまいりました。この医師確保に向けた提言の内容については、今後、福祉保健局だけではなくて、東京都として取り組む課題の大きな一つであろうかと思うわけであります。有識者も含めて二十何名の方々が議論を重ねてきたわけであります。こうした難しい課題でもあろうかと思いますけれども、大きな成果として取りまとめたものであります。
 お伺いしますと、地域医療対策協議会の座長は梶山技監ということでございます。ぜひこの提言の実現に向けた決意をしっかりと述べていただきたいと思うわけであります。よろしくお願いします。

○梶山技監 東京都における医師確保を初めとした今後の地域医療に対する取り組みへの決意のお尋ねでございます。
 今日、我が国において、医療の危機あるいは医療の崩壊ともいわれている事態を招くに至った要因としては、さまざまな事柄が複雑に絡み合っていると認識しております。このため、都は、医師等の医療従事者の安定的な確保を図るための取り組みの一つとして、昨年六月に、学識経験者、大学病院等の院長、医師会などの関係団体、そして医療の受け手である地域住民の代表など、二十六名の委員で構成される東京都地域医療対策協議会を設置し、精力的な検討を開始いたしました。そして、都合六回にわたる検討の末、本年二月に、先生お話しの医師確保に向けた提言を取りまとめ、公表したところでございます。
 この提言では、喫緊に取り組むべき課題として、病院勤務医師の勤務環境の改善や、女性医師などの再就業のための環境の確保、都民の方々への医療制度などに関する普及啓発など、また中長期的に取り組むべき課題といたしまして、都民ニーズの高い小児科や産科などの専門医の確保、そして医学部の定員の増加など、さらに国への提案といたしましては、医師の養成、確保にかかわる制度の設計者としての総合的な取り組み、あるいは診療科による偏在を是正するための実効性のある措置の検討などを取りまとめたところでございます。
 この提言に盛り込まれました中の幾つかの事項につきましては、今年度から都の新規事業として取り組まれておりますし、都がこうした提言を速やかに行ったことは、お話しのように、国が医療政策を見直すに当たっても、少なからず影響を与えたものと自負をしているところでございます。
 今回、協議会としての提言を取りまとめる検討の中で、座長として非常に強く印象に残っておりますことは、参加されました各委員お一人お一人の発言からは、今日の医療の現場の状況を踏まえながら、都民の方々の切実な要求にこたえていくことができるよう、東京の医療をよりよいものとしていこうという、大変に熱い思いが感じられたところでございます。
 今後は、こうした熱い思いを語られた多くの関係者の方々、そして何よりも都民の方々の期待に一日も早く的確にこたえることが求められております。
 ただいまのご質疑の中でも、さまざまご指摘の点がありましたことを十分に考慮しながら、また、病院経営本部や医療関係団体などともこれまで以上に緊密な連携をとりながら、この大きな課題の解決に向けて、福祉保健局の総力を挙げて取り組んでまいります。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。

○野上委員長 次に、議員提出議案第十四号を議題といたします。
 本案について提出者の説明を求めます。

○かち委員 それでは、議員提出議案第十四号、東京都子どもの医療費の助成に関する条例の提案理由の説明をさせていただきます。
 日本共産党、行革一一〇番、自治市民’ 93、市民の党の四会派が共同提案した議員提出議案第十四号、東京都子どもの医療費の助成に関する条例についての提案理由です。
 石原知事は、昨年の知事選で、中学三年生までの医療費無料化を公約し、都内各地でお子さんが中学校を卒業するまで医療費の面倒は見ますと演説して、支持を訴えました。さらに、知事選後のマスコミのインタビューに、中学生卒業までの医療費も、裕福な家庭を除き都が負担すると答えています。
 ところが、その後一年以上もたつのに、いまだに具体化されていません。
 先日の本会議で、実施方法や実施時期などについて区市町村と協議し、具体的な内容について検討を進めていくとの答弁があったことは一歩前進ですが、都の財政負担をどうするのかという一番肝心の問題について明らかにされていません。知事の公約なのですから、市町村の負担増なしに中学三年生までの医療費無料化を実施することを明確にしない限り、市町村との協議が実りあるものにならないことは明白です。
 この四月から、二十三区では、全区で中学校三年生までの医療費無料化が実現しましたが、多摩二十六市では、一割助成で自己負担二割という都制度の範囲にとどまっています。同じ都民なのですから、多摩でも中学生まで無料にしてほしいという声が高まっています。多摩の市町村が踏み出せない最大の理由は、区部との大きな財政力格差です。
 こうしたもとで、本条例案は、乳幼児及び義務教育就学児に対する医療費助成の費用負担割合を、現行の東京都二分の一、市町村二分の一から、東京都三分の二、市町村三分の一と改め、都の負担割合を引き上げることにより、市町村の負担増なしに知事の公約である中学三年生までの医療費無料化を実施するものです。
 また、所得制限については、都民と市町村の切実な要望にこたえるとともに、知事が所得制限をつけて中学三年生までの医療費を無料化すると発言していることにも配慮し、第一歩として就学前まで撤廃します。これにより乳幼児の約二割の五万七千人が新たな対象になります。
 入院食事代については、乳幼児から中学卒業まで助成の対象としています。
 本条例により、都として新たに必要となる経費は約六十一億円です。
 なお、二十三区については、補助制度から都区財政調整制度に移行し、既に昨年度から各区の自主事業として実施されているため、本条例は市町村のみを対象としています。
 実施時期は、準備のため、必要な事項についての市町村との協議や周知に必要な期間を見込んで、来年四月一日です。
 我が党は、六月三日の議会運営委員会に本条例案を提出し、すべての会派に共同提案を呼びかけ、四会派の共同提案となりました。中学三年生までの医療費無料化は、都民と市町村の切実な要望です。提案者になっていただけなかった会派の皆さんも、ぜひともご賛同いただきますようお願い申し上げまして、提案理由の説明とさせていただきます。
 ありがとうございました。

○野上委員長 説明は終わりました。
 これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○野島委員 せっかく舞台もできたところだし、提案理由の説明も伺いましたので、何も聞かないというのも大変失礼でございますから、質疑を通じてなるほどと思ったら、私もぜひ賛成したい、こう思っておりますので、真摯に、かつ、数字の問題は実証的ですから、実証的なご答弁をいただければと思っております。
 今回、子ども医療費助成条例ということで子どもを定めて、しかし、ここまでは児童ですよ、トータルとして子どもですよ、こういうことだろうと思うんですね。この乳幼児医療費、それから今回の義務教育就学児医療費助成は、トータル的に、実は平成十八年の一定から二年間ぐらいの本会議や委員会の質疑を全部読んでみたんです、答弁も。特に、助成内容の拡大ということについては前進をしてきているなというふうに、私もこの質疑、答弁、それからその後の執行の中で確認をしているんですね。
 今回も、定例会において、我が自由民主党の服部総務会長の代表質問、それから公明党さんも質問されました。共産党さんも質問されたわけであります。
 私どもと公明党さんに対する答弁は、福祉保健局長から、実施方法や実施時期などについて区市町村と協議し、具体的な内容について検討を進めています、こういう答弁なんですね。これはやってみればいろいろ課題がありますから、具体的にかかわりのあるところ、区市町村とも十分協議しなければいけない、具体的にという話なんですね。
 加えて、共産党さんには知事が答弁しているんですよ。僕らには福祉保健局長、安藤局長。共産党には知事なんですね。やはり重たいですよ、それは。だから、あえて質問したいと思うんですね。
 ところで、こういう動向があるわけですね、その中で、今回、この共産党さんの条例提案、先駆けてお出しになった。決して抜け駆け的になんて私は申しません。そういう失礼なことをいっちゃいけない。先駆けてお出しになったわけでございますし、とりわけ、将来的には所得制限なしにしていくんだ、しかし、実現性を考えた場合に所得制限を入れていく、こういう話ですね、今の提案理由の説明で。
 私は原理主義者といつもいっているんですが、どうも共産党さんの福祉とか社会保障施策の中で、こういうふうな所得制限を入れていくという発想、将来はなくすけれども、それはそれでいいんだという柔軟な姿勢に感動しているんですよ。高く感動している。評価しているとかなんとかじゃないんです。感動しているんですね。共産党らしくないなと、こんな思いも強くしております。
 ただ、目指す方向は、私は、一緒といいますと賛成という意味合いにとられちゃいますから、そういう意味ではなくて、目指す方向は共有すべき部分もある、あるいは共感すべき部分もある、こういう立場に立って、以下、何点かお伺いをしていきたいと思っております。
 まず最初に、今も提案理由の説明を受けました。前回提案された条例では、所得の制限に関する規定はなかったというふうに記憶しております。今回の提案では、第五条で、児童、小中学生にかかわる医療費の助成についてはと、こういうふうに規定をしているわけですね。したがって、乳幼児については所得制限がないけれども、小中学生は所得制限があるようになっているんですね。今、提案説明でもありました。
 どこで線を引くかというのはなかなか難しくて、なぜ七十五歳で後期高齢者だ、こういうことです。乳幼児の場合は、就学時前だと、まだ体力的にもということで、やっぱりそれは一定の合理性があるというふうに私は思っているんです。七十五歳も一定の合理性があるんですよ。何か騒ぎばっかりやっているけれども、そういう実証をちゃんとしていかなければいけないと思っているんです。
 そんなことはどうでもいいんですが、今回の条例では所得制限もかけるということはなぜなのか。先ほど提案もいただいたんですが、改めてお聞かせいただきたいと思います。

○吉田委員 ご質問をいただきましたこと、まず心からお礼を申し上げたいと思います。
 こうした場で議論をするということは、回数としては多くありませんけれども、大いに議論をして、施策の前進にお互いに力を尽くすことができればというふうに思っております。
 今、所得制限をなぜ撤廃しないで提案したのかということかと思いますけれども、既に、かち副委員長の説明でも述べておりますが、石原知事が中学三年生までの医療費無料化を公約する一方で、所得制限についてはつけるということをいってきたことに留意して提案をしたものであります。
 もちろん、我々の原則的立場は、野島理事から既にいわれているとおりでありますけれども、野島理事からもお話があったように、共有という観点に立ったときに、一定の留意ということも必要ではないかという判断を行いました。
 同時に、多摩の市の関係者の方々ともお会いしたり、また資料なども目を通しましたが、市長会、町村会、そういう方々については、所得制限の撤廃ということを強く要望されていることも現実であります。そういう中でいろいろな意見を伺う中で、一番弱い乳幼児の所得制限撤廃への要望が市町村ではとりわけ強いということも改めて確認できましたので、留意すべきことは留意いたしますけれども、乳幼児については、やはり所得制限をなくすということで提案をいたしました。
 先ほど述べましたが、我が党としては、将来的には義務教育就学児についても所得制限をなくすのが望ましいということで、働きかけを進めていきたいと考えているところであります。

○野島委員 ありがとうございました。
 さっきの提案理由とあわせて、確かに、平成十九年六月十九日の第二回定例会の共産党さんの渡辺議員さんの代表質問に対して、知事が、所得制限は当然に設けます、こういう発言をしていますから、それを受けての現実的なご判断だろう。随分共産党さんも柔軟性を持っているなというふうに思いましたので、そのことはぜひ、この施策だけじゃなくて、これからも全体にわたってひとつそういうものを発揮していただきたいと思っています。
 そこで、私は、医療に限らず、福祉施策もそうでありますが、ある種の社会保障政策、こういった部分における国民負担は、例えば私どもは保険料を納めますよ。所得に応じて保険料が違いますよね。あるいは給付を受けますよ。そうすると、所得に応じて違いますよね。私はそれは当然だと思うんですよ。それがなかったら成り立たないんですよ。成り立たないと同時に、所得が多かろうが少なかろうが受けられるのならば、ある段階全部セーフティーネットを国が張ってくれたらば、何の苦労も要らないんです。それは国づくりにとって決してプラスじゃない。したがって、私はそれは当然だと思うんです。
 ただ、それを超えるような緊急性や経済情勢が出たときには、それは政治判断としてあり得るものと思っておりますので、立場の違いはそこでございまして、共産党さんが、発想というのか、考え方の大転換をしたのかなというふうに思ったんですが、お話、提案理由、今の答弁を聞いている限りでは、そうでないということに大変失望を感じたことを申し述べておきたいと思います。
 次に、先ほどのお話で、市町村の負担はふやさない。私も東久留米市というところに住んでいまして、大変ありがたい。どういうマジックでやるのかなと。マジックじゃないんでしょう、これ。ちゃんとふえないんですよね、本当に。市町村の負担はふやさないですよといっているんですよね。
 それで、現行は所得制限をつけてやっていまして、それを外しますから、当然対象者はふえますね。対象者の増はあるんですが、補助率を変更しますから、それによって市町村は減ります、都はふえます、こういうことであります。そうすると、恐らく、対象者増があっても、トータルとしては、その部分は確かに市町村は減るのかなと思っているんです。
 ただ、この条例は子どもが入っているんです。乳幼児だけじゃなくて、その先十五歳まで。トータルで考えて、またいいところだけ、まさかつまみ食いして、ニュースリリースしているんじゃないというふうに私は信じて疑っていませんけれども、果たしてそうなるんですか。
 だって、義務教育就学児は所得制限あり、それはそのまま所得制限をやっていくわけでしょう。どういう所得制限をしますよということは、委任されちゃっているからわからないんです。わからないんですが、ほぼ丸抱えで所得制限のラインをうんと上げちゃって軽減していくとなれば、負担はふえちゃいますね。逆に、所得制限はかけて、減免するところをぐっと圧縮しちゃって、見かけ上所得制限をかけていますよということと、実質かけちゃいますよということじゃ、行って来いですから、それは違ってきちゃうんですね。
 ただ、委任されているから、どういう規則を想定しているんですかみたいなところまで、実は私は規則の案でも出してほしいと思っている。ただ、きょうは提案理由、初めて説明を受けましたから、そんなことをいうのも失礼ですから。
 本当に下がるんですか。私の計算だと、現行、自己負担分がありますよね。そのうちの三分の一を都と市で半々で持っていますよ、こういうことですな。今度は自己負担分をなくすわけですから、それを都と市が三分の二、三分の一で持ちますよということでやって、私はどうして負担増にならないのかなというのが不思議でならないんです。
 マジックがあるとすれば、規則の中で形式上の所得制限をかけて、実質的には骨抜きにすれば、でっかくなっちゃうんです。所得制限をかけて、実質的な所得軽減策をがんと圧縮しちゃえば、負担増にはならないんです。
 どういう選択をなさって、事実なのか、本当にそうなるのかどうか。それから、どういうふうにすればそうなるというふうになっているのか、ちょっとその辺だけお答えください。

○吉田委員 お答えいたします。
 多少入り組んだ説明が必要なことで、うまくいえるかどうか自信がありませんが、まず、もちろん、基本的には市町村に新たな負担がふえないということで設計をいたしました。ただ、個々の市町村等によっては若干の数字的な違いがありますから、私どもは、それは文字どおり、市町村との協議の中で個別的に対応すべきことについては個別的な対応をする。例えば、市町村総合交付金等を部分的に対応しなければならない場合は充てるとかという選択肢はあると思うんです。
 ただ、基本設計について説明をさせていただきますけれども、乳幼児については、ご承知のとおり、無料で二分の一、二分の一負担というふうになっております。中学三年生までについては、一割助成で、それを半分ずつ持つというふうになっております。
 例えば、中学生までの部分を、今、市町村は六分の一を持っているわけですよね。三分の一の半分を持っています。その残りを全部東京都が持ちますよというふうに説明すれば、非常にわかりやすいわけですけれども、乳幼児と中学生までとのトータルで考えたときに、今の乳幼児は二分の一負担という現状も考慮して、あわせて東京都が三分の二負担ということにすることによって、私どもの数的な計算では、ほぼ新たな負担が基本的には生まれることはないであろうというふうに計算をいたしました。
 もちろん、乳幼児の所得制限を撤廃することに伴って、対象は増加いたしますが、ただ、所得制限の対象になっている方の数というのは、全体の二割ちょっとということになりますし、しかも、その部分についても、二分の一負担ではなくて、東京都が三分の二を持つというふうな計算をしますと、先ほど申しましたように、総額で六十一億程度の東京都の負担になりますし、市町村の側の計算をしますと、トータルで見れば、現状よりそう負担増にならないという判断をしたところであります。

○野島委員 答弁の中で、いろいろ市町村で跛行性があるから、財政力が違いますから、その辺は交付税でというふうな話もございました。これは所管局がここの条例なんですね。出口ベースで、銭金の話を入り口ベースでしても、何の意味もないんです。いわんや、交付税、市町村の総合交付金は一般財源で、市町村は当てにしているんですよ。ただし、都からの依存財源ですよ。そこまで踏み込んで、だからという制度設計というのは全くナンセンス。全くナンセンス、おれにいわせると。
 ただ、増額の問題はちょっと僕もよくわからない。おれ、計算に弱いんです。足し算と引き算しかできないから、掛け算があったり、何分の一というとだめなんです。だから、執行側で、その辺の数字が正直どうなるのかということだけはちょっとお聞かせいただけるかな。それを聞くだけでいいです。どっちが正しいとか正しくないとか、ここでそろばん勘定をやったってしようがないんだから、それだけでいいです。

○清宮保健政策部長 では、私どもで、二十年度予算ベースで簡単な試算をしたところでございますが、乳幼児医療費助成事業については、おおむね四億五千万円ぐらい減るのではないか。市町村負担分のことでございます。一方で、義務教育就学児医療費助成事業につきましては、現在に比べ、十二億弱ぐらい市町村負担がふえるのではないかということで試算してございます。

○野島委員 いいです、やりとりは私しません。さっきの答弁も別に否定しているわけじゃないんですよ、いいんですよ。いいんですが、問題は、総合交付金を当てにされているような、出口ベースで、実施ベースで。それは条例としては説明がつかない。だから負担はふえませんという説明がつかないんです、どう考えたって。多分、政治判断としてはあり得ますよ。だけど、条例を制定するときに、そういうものがあるからと説明の中でして、負担がふえません、そういうロジックは条例の提案理由にはそぐわない、このことだけを感想として申し上げておきます。
 そこで次に、都条例をつくるわけですね。そうすると、市町村条例も当然あるわけですね。その関係についてお伺いしたいんですね。
 今回の条例では、現在実施されている都の要綱による補助率を二分の一から三分の二に引き上げる、さっきいったように、財政負担の軽減をしていこう、こういう配慮がなされております。第三条の規定で、市町村が条例を制定して行う子どもの医療費助成事業について、その経費の三分の二を東京都が負担しますよ、こういうことですよね。そういうふうにうたってあるんですね。
 そこでご確認をいたしますが、いわばこの条例案で規定している子どもの医療費助成事業の実施主体は、あくまでも市町村だというふうにご理解してよろしいのかどうか、お願いいたします。

○吉田委員 実施主体は、当然のこと、市町村でございます。

○野島委員 そういうことで、この条例案は、現に市町村がやっている条例がありますよね。それに対して医療費の助成を実施していると、これ、改めて都条例をかけますよという、こういう条例になるわけですね。いわばかぶせ条例なんですね。市町村が持っている条例に都条例をかぶせるんです。
 実は、かぶせ条例というのは大変難しいんですよ。ありていの話をしますと、私が帽子をかぶりたいと思う。(「かつらじゃないの」と呼ぶ者あり)かつらじゃないです。私が帽子をかぶる主体なのね。市町村だとすると、主体なんですよ。これに東京都さんが帽子を用意してくれるよ、ほかの人が、こうなるわけね。
 そうすると、こういうものは整合性がとれていないとだめなんですよ。私の頭の上に、私が持っている条例の上に、都がちょこんと条例を乗せて、いわんや、これは広域機能を発揮しなさいという条例でしょう。ちょこんと乗せて、広域機能を発揮しますというのはないんですよ。あるいは逆に、私の実施主体が小さいのに、都がばかでかい帽子を持ってきて、だからお前のところも一部出せよという条例をかけちゃったらば、それは帽子をかぶっていて、みっともなくてしようがない。要するに合わないんですよ。
 かぶせ条例というのは、実はそこが一番難しいと思うんですね。いわば市町村との条例の調整や整合性を働かせないと、形が整わないんです。それがひいては執行体制にも及びますし、財源にも及ぶんですよ。あるいはもっというと、各市町村の自主的な福祉や医療行政にも影響を及ぼす、こういう形になっちゃうんですよ。だから、かぶせ条例は、その辺、よく注意した方がいいですよ、お出しになるときは。念のため申し上げておきます。
 そこで、時間が長くなっちゃって申しわけないんですけれども、都条例を仮にやったとして、やっぱり適用に当たっては調整が必要だ。調整がつかなければ、都から補助金を受け取れない可能性があるんじゃないかと僕は思っているんですよ。
 どういうことをいっているかというと、今の、調整がつかなければ都からの補助金を受けられない可能性というのは、こういうことなんですね。今の乳幼児医療費制度は、保険八、都が一、市が一、所得制限あり、こういう枠組みでやっているわけです。これは条例じゃないですよ、要綱で。
 例えば私の住んでいる東久留米、私も含めて大変所得が多くないんです、市そのものも。そこではどういうふうにやっているかというと、東久留米市の乳幼児医療費助成制度というのは、今現在、五歳未満児までは所得制限をかけていないんですよ。ところが、五歳から六歳はかけているんです。なぜだということは、明確な理由は僕にもわかりません。恐らく区市町村で東久留米だけじゃないかな。まあいいや、それはそれで。要するに、そういう状態なんです。
 したがって、都からの要綱で受け取れるお金というのは、医療費自己負担分の二分の一の所得制限をかけた分なんですね。市が出さなければいけないのは、当然のことながら、その都の補助裏と、所得制限を市が独自に外しちゃった市の判断の部分を持っているわけですね。
 この条例は、乳幼児の部分、児童というのかな、要するに就学時前の人たちの医療費助成については、所得制限なしで都が三分の二、市が三分の一を負担します、そういう枠組みですよね。そうですよね。そうすると、そういうことで条例をつくりますから、条例の立法の趣旨は、そういう制度を想定しているわけです。いわば一から六までは所得制限なしでやりなさいよと。
 ところが、東久留米市の条例は、その部分が都の条例の枠組みよりも落ち込んでいるわけですね、六歳の分というのは。そうしますと、この条例を素直に僕、曲がった性格、嫌いなものだから、素直に解釈するんです。解釈しますと、今持っている東久留米市の助成条例が全部否定されちゃう可能性があるんです。素直に読んでいくと、全部否定されちゃう可能性があるんです。するとはいっていませんよ、可能性があるんです。その辺、どういうふうにご解釈をなされていますか。

○吉田委員 先ほど局の方が数字を挙げたことについては、ちょっと確認することができませんので、コメントは控えさせていただきます。
 ただ、市町村総合交付金のことについては、一言だけ説明させていただきますが、義務教育就学児医療費助成の創設に伴い、市町村総合交付金が復活で約十億、これを経費に充ててよいというようなことがあったということも一応聞いておりますので、述べさせていただきます。
 さて、かなり微妙な問題についてご質問をしていただきました。我が党は、実は今回条例提案をするに当たって、もちろん、行政ではありませんから、市町村との協議の主体にはなり得ません。ただ、当然のこととして、前市長会会長、現市長会会長にもごあいさつに行ってまいりましたし、さらに、ここに要約を持ってまいりましたけれども、二十六市全市に対して、中学三年生までの医療費無料化を行う場合の、例えば負担のあり方や所得制限のあり方などについても、かなり詳細に現場の意向を聞かせていただいたという点では、基本的なフレームとしては、私は、確かに条例提案ではありますけれども、市町村の方々の要望に基本的に沿う努力をしたということを述べさせていただきます。
 そのアンケートの中で、地域格差は解消されるのが望ましいだとか、統一した行政サービスの実施が必要だとか、やっぱり広域行政としてこれは対応すべきだということが寄せられておりますので、そういう意味で、条例において、広域行政としての責任から、こうした条例を提案させていただきました。
 しかも、要綱を条例にという問題は確かにあるんですけれども、これだけ対象人数が大きくて、いわばかなり基本的なサービスにかかわることについて、やはり要綱ではなくて、条例ということの方が、私は行政のあり方としては求められているのではないのかなというふうに考えております。
 ただ、本条例は、あくまでも都として助成をする上限を定めたものであって、その枠内で、例えば、いや、うちはちょっとここまでにさせてほしいというふうなことであったとしても、それは基本的にその枠内で対応できることではないかな。詳細については、いろいろ協議をしていかなきゃならない問題が出てくることはあり得るとは思うんですけれども、その大枠を条例として示させていただいたということです。

○野島委員 お聞きしたことについてはさらっとお答えいただきまして、背景について長々とご説明いただきまして、ありがとうございました。
 私も、こういう立法の絡みの枠組みというのは余り存じ上げていないので、懸念があるといっているんですね。だめだとはいっていない。ただ、かなりの懸念があるなという部分が正直なところですよ。
 直すのは簡単なんですよ。そんなに頭を使わないで直っちゃうんです。それは受ける側の市の条例を変えちゃってもらえばいいんです。これを丸々受けられるように、かぶる側の市の条例を変えちゃえばいい。
 ただ、当然のことながら負担を伴うわけですね。それから、共産党さんのおっしゃる自治権の侵害ですよ、変えろというのは。結果として変えるかどうかは別にして、条例ができちゃって、それに合わせるためにといったら、受けるためには変えざるを得ない、その懸念があるということです。
 それから、さっき聞いたけれども、これは市の事業なわけですね。その市の事業を受けて、丸々と書いちゃうからだめなんです。一部を助成することができるでいいんです。その際、都は、その条例の範囲内において出すことができるというと、吉田委員の答弁と合ってくるんです。最後にいったでしょう。都は持っているけれども、市はここまでだから、この範囲内で助成してくれればというテクニックもあるんじゃないですか。
 だけど、この条例からは出てこない、その答えは。天下の東京都の条例がそういうことでやったら、地方自治体の雄が笑われちゃうということをご指摘を申し上げておきたい。
 一般的に今のことでいうと、都の条例があり、これを受ける市の条例との間で、市の条例があり、上乗せをする、横出しをする、これはいいんですよ。今の議論と逆で、都は条例の責任を果たせば、それ以上積むかどうかは自治体の判断の問題だから、それはそれでいいんです。その逆の場合、うちのさっきいった逆の場合、これは本当に悩ましい。
 この条例を素直に読んでいくと、都が用意したフルラインでやらない限り難しいんじゃないのか、素直に読んでいくと。補助裏の額の問題もありますね。さっき負担増の問題があった。そうすると、例えば、収入が少ない層は、大体一般的に、賃金カーブと年齢とかでお子さんの数とかやっていくと、出てきますよね。どの辺に一番バイアスをかけて負担軽減をしたらいいか。それは知恵を出さなければいけないと思うのね。一律にカーブですっとやるのもあるけれども、いや、この部分は、我が市は実は大変対象者も多くて、その人たちは収入も少ないし、医療費も含めて子育て費用も大変だ、だったら、そこを思い切ってカーブを上げてやろうじゃないか、負担軽減をと。あり得るんですよ。
 かつて銀行の給与体系というのはそうなっていた。金を扱っている仕事ですから、最初は給料が安いんです。子育てのときにぼんと上げてやって、悪いことをしないような給料にして、子育てが終わったら並ばすんです。そのことで職員のモラールを上げていったんです。だから、市町村においても、インセンティブのある制度をやるなら、それも考えた方がいいんです、正直なところ。
 それからあとは、例えば、疾病率の高い病気というのがあると思うんだよね。腹が痛いとか、胃が重たいとか、子どもだから二日酔いだからというのはないと思うけれども、(「血圧もないだろう」と呼ぶ者あり)最近は、血圧はあるらしいんですよ。それから、感染していく病気とか、いろいろあると思うんです。じゃ、そっちだけは何とか全額持っちゃおう。だけど普通の腹が痛いとかなんとかは堪忍してくれ、これも制度としてあり得るんです。ただ、そこまで制度設計をやったらこれは大変だ。大変だけれども、そういう創意工夫やきめ細かな制度設計を制約してしまうんです、この条例はね。私はそこを懸念しているんです。
 そこで、各市町村では、厳しい財政状況の中でどこにどう金を使っているか。さっき交付金の話があったけれども、施策の優先順位をどうするのか。要するに、選択と集中をどうしていくのか、財源の確保に悩みながらやってきているわけですよ。
 そういう状況で、この子ども医療費についていえば、既に先行している自治体が、区市町村が存在していた。その施策と整合性を図りつつ、これが大事なんですよ、図りつつ東京都が広域行政として市町村を支援するために、昨年十月に要綱を制定して補助を行ったもの、こういうふうな流れというふうに私は理解しているんです。
 今、そういうことをるる申し上げました、懸念されること、財政のこと、あるいはトータルとしての財政のこと、それから、やっていくんであれば、インセンティブのきいた制度はむしろ市町村の自主性に任せるべきじゃないのか。それから、かぶせ条例のことも申し上げました。
 こういうことをやっていきますと、この条例を制定すると、実は十八年三定の段階でも聞いたんですけれども、各区市町村に縛りをかけるんじゃないか。そのとき、答弁は、いや、これはすることができることだから、相手がやらなければ、それはそれでいいんじゃないですか。ただ、そういう努力をしていただきたいという意味も込めていったようなお話を伺ったんですが、これは実質的に強制することにならないですかね。その辺だけお聞かせください。

○吉田委員 結論的に申せば、条例によって義務的に拘束するというものでは当然ありません。ただ、我が党が行ったアンケートの中で、先ほど述べましたけれども、統一的な行政サービスとして都として対応すべきだということは共通して出されていたわけですから、そうした趣旨で条例提案をしたものであり、しかも、冒頭書いているように、東京都と市町村が一体となってというのが条例提案の趣旨でございます。

○野島委員 わかりました。確かに、受ける側がやらなければ、それはそれで一つの判断ですから、あり得るんですね。ただ、背景としてお話ししました財源とか格差の問題、それから、都の広域的な機能を果たせといっておきながら、さっきいったような、落ちた分は取れなくなっちゃうよとか、全体が否定されちゃうんじゃないかとか、こういう話をいたしました。ふたをあけてみたら、各市町村それぞれ、受ける側はいいですよといっているんだから、受けないところも財政力で出てくるかもしれないんですよね。三分の一の自己財源が工面できなくて。広域行政としての機能を発揮するためにこの条例をつくった、ふたをあけてみたらばらばらだったと、東京都政が笑われますよ。
 本当ですよ。だって、地域のいろんなアンケートをとったり、市長会の会長にも会ったりして、こういう制度が望ましいと。しかし、これでやっていくと、今いったような懸念があるから、おれはばらつきが出ちゃうんじゃないかと。吉田委員の方は、広域性を発揮するんだ。ふたをあけてみたら広域性がどこかにすっ飛んじゃったという、こういうことが必ずこれでやったら出てくると僕は思うんですね。だから、そんなことも心配したらいかがでしょうかということです。別に吉田委員が執行じゃないから、あえて重たく受けとめてもらわなくても結構だけれども。
 最後に、今までの質疑を勝手に整理しますと、既に市町村が条例を制定して医療費の助成を実施しているところに、改めて都条例を制定することになるわけですね。この条例は、やっぱり市町村と調整を図らなければだめですよ。だって、いろいろ懸念を申し上げたでしょう。それから、補助裏を、総合交付金を使えるかどうかという、この条例とは別建ての、全体の都の、市町村との財政調整制度にも目配りしなきゃいけないわけです。そういうことが必要ですね。
 それから、今いったようなさっきのかぶせ条例。正直いって、私の見解が正しいかどうかわからないです、僕にも。素直に読みましたから。そうしますと、解決策も、私が勝手に、こんな解決策があるんじゃないかな、こういう話はいたしました。ぜひその辺も市町村との十分な協議の上で解決をしていきませんと、よしと思ってやったことが、結果として信頼関係を失っていくということは、広域行政たる都と基礎自治体である市町村との信頼関係を著しく損なうことにつながりかねないという危険性を指摘しておきたいというふうに思います。
 この医療費助成に限らず、それぞれの地域でいろいろな実情を踏まえて、いろいろな条例を制定して実施しているわけですよね。そういう場合には、都が条例を制定する場合、自主性を尊重することは当然でありますし、財政的な負担についても十分検討した上で協議をし、制度を整えていかなければ、市町村は、行政的にも財政的にも、ましてや政治的にもたないですよ。
 都にやれやれやれといっている限りは、これは気楽な話ですよ。しかし、あなた方の負担もありますよ、事務経費も発生しますよ、じゃ、どこまで持ってくれるんですか、こういうさまざまなものについて、政治的アピールとしては簡単ですが、政治的には極めて重たいと思っています。
 そこで、(資料を示す)これは東久留米市議会で意見書を上げようということで、共産党さんが提案者だそうです。提案理由は僕は聞いていません。文書だけいただきました。ここにも吉田委員のいうように、財政力の格差、それから、東京都民であるにもかかわらず、居住地が違うということで医療費負担が違うというのは全く問題だ。ご意見にもあったとおり。そこで、東京都が広域自治体としての役割を果たすべきだ。その医療費無料化を中学三年まで早急に実施するよう強く求めるという意見書を、共産党さんが主導して出すんだそうです。
 いいんですよ、それは。東久留米市議会が決めることだから、おれがとやかくいう話じゃないから。だけども、今、るるやってきますと、政治的というのは、こういう政治的なぶち上げをしたところにどうやって責任を持っていけるんですかという。僕はこれは否定しろといったんです。何もこういう意見書に同調することはない、こういう課題があって、それをクリアできないのに、政治的なパフォーマンスに乗るな、それが自民党のよさだろう、こういってちゃんと否決するように話をしたんです。でも、可決されるかどうか、そんなことは僕はどうでもいいんだ。
 これを解決するには一つしかないんですよ。さっきいった市町村事業をやめちゃうじゃないんだ。都の事業にしちゃえばいいんですよ。ただ、共産党さんはあくまでも市町村事業だというふうにいったんです、答弁で。解決するには、都の制度として、助成率、東京都の金を一〇〇%出しちゃう。市町村なんかもう相手にしない。だって、市町村を相手にして、出せるところと出せないところがあったら、またもとに戻っちゃうもの、格差に。住所が違うから医療費の負担が違っちゃうんですから、これしかないと思うんですね。
 そこで、例えば所得制限についても、行く行くはやめていきたい、所得制限なしでやっていきたい、附則をつくって、五年先に見直しし、なお一層の所得制限の撤廃を含めた負担軽減策について所要の措置を講ずるとか、そういうのを入れたらいいじゃないですか。そうすると、都の方も縛りがかかるんですよ。
 そんなこともいろいろありますが、百歩譲って、議会がこれを、私もいろいろ共有する、共感するところもありますので、仮に賛成しても、東京都の団体意思の決定というのは恐らく、局長さんここにいるけれども、しないと思うんですよ。だって、それだけ問題があるんだもん、おれが指摘して。僕自身がすとんと落ちないんですよ、その制度論の中で。
 ですから、冒頭申し上げましたように、都の方もいろいろきょう、具体的な内容で協議していくんだ、こういうことでありますし、今いったような懸念、かぶせ条例の関係、市町村の行政運営、それから、この意見書をそっくり生かすのであれば、これを丸のみでやるとしたならば、この制度ではとてもそれは生きないというふうなことがありますから、こういう未成熟なんて失礼なことはいいません、粗づくりのという表現がいいと思うんですが、ぜひ共産党さん、撤回をしていただいて、どうですか、私どもと一緒にいい制度をつくりませんか。この条例案の撤回についてご見解をお伺いいたします。

○吉田委員 いろいろご指摘をいただきましたけれども、やはりこれは先ほど紹介いたしました私どもが行った市に対するアンケートの結果、行政である市から寄せられた回答の中でも、区市町村間で転居してきた都民から、中学三年生まで無料でないということに不満の声が上がっていますと。医療という基本的サービスに対する費用負担は、広域的な制度を確立することが必要ではないかということがいわれています。私どもは、そうした行政や都民の皆さんの要望に、しかも、二十三区の場合には既に実施されているという事態に当たって、議会としてとるべき態度というふうに判断して条例提案をさせていただきました。
 趣旨説明の中でも述べましたけれども、東京都は、今になってようやくといったら失礼かもしれませんけれども、協議ということを打ち出しました。しかし、市町村の基本的要望、意見は明確なわけで、要は、無料化のために市の負担増なしでやってほしい。そのことを明確に打ち出さない限り、さあ、どうしますかということで協議しても、これでは速やかな実現の道は開かないのではないかという思いで、私たちは条例提案を行ったわけであります。
 いろんな点についてご指摘がありましたけれども、もちろん、所得制限の問題にしても、また財政負担のあり方にしても、いろんなご議論はあると思います。ただ、我々は、やはり現時点で大枠の一致点で共有し得る到達点というものを考えたときに、部分的に所得制限が残されているという点や、あるいは丸々東京都が持つのではなく、この間の医療費助成制度の歴史的な経過で区市町村が一定額を負担してきたという経過の上に立って、こうした負担のあり方ということも提案したつもりであります。
 粗削りというようなお話がありましたが、条例ですから、基本点を定めるというふうにならざるを得ないという制約はありますけれども、私どもとしては、かなり慎重な検討の上に提案したものであり、ぜひご賛同を求めたいということを述べさせていただきます。

○野島委員 賛同を求めるということは、撤回する気はありませんよというふうに受けとめていいわけですね。よくわかりました。
 今、いみじくも最後におっしゃったように、基本的な大枠を定めた条例だと。僕は宣言条例なら、それはそれであり得ると思うんです。ところが、市町村や都の負担まで縛り込んで、これだけ細かく入れた条例を、大枠の中での気持ちをあらわしているという条例ですというのは全く違う。要は、これを機関意思として議会で決めて、執行側がどうするか知りませんよ。団体意思になって、できますかといったときの懸念を解消してもらわないと、それは私もちょっと賛成いたしかねる。
 大変共有、共感をしている部分もなしとはしなかったわけでありますが、やっぱりちょっと無理かな、こんなことを申し上げて、質疑を終わります。
 長い間ありがとうございました。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これに異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉保健局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時五分散会

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