厚生委員会速記録第十八号

平成十九年十二月十四日(金曜日)
第七委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十三名
委員長野上 純子君
副委員長山加 朱美君
副委員長かち佳代子君
理事くまき美奈子君
理事長橋 桂一君
理事野島 善司君
西崎 光子君
大松  成君
佐藤 広典君
田代ひろし君
石毛しげる君
佐藤 裕彦君
吉田 信夫君

 欠席委員 一名

 出席説明員
福祉保健局局長安藤 立美君
次長関  敏樹君
技監梶山 純一君
総務部長杉村 栄一君
指導監査部長梶原 秀起君
医療政策部長細川えみ子君
保健政策部長清宮眞知子君
生活福祉部長永田  元君
高齢社会対策部長狩野 信夫君
少子社会対策部長吉岡 則重君
障害者施策推進部長松浦 和利君
健康安全室長桜山 豊夫君
企画担当部長松井多美雄君
施設調整担当部長宮垣豊美子君
参事蒲谷 繁夫君
参事吉井栄一郎君
参事住友眞佐美君
参事芦田 真吾君
参事松原 定雄君
参事菊本 弘次君
参事金丸 陽子君
参事奥澤 康司君
参事月川由紀子君
病院経営本部本部長秋山 俊行君
経営企画部長及川 繁巳君
サービス推進部長都留 佳苗君
参事黒田 祥之君

本日の会議に付した事件
 意見書について
 福祉保健局関係
契約議案の調査
・第二百七号議案 東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)I期新築電気設備工事請負契約
・第二百八号議案 東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)I期新築空調設備工事請負契約
付託議案の審査(質疑)
・第百九十八号議案 東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
・第百九十九号議案 東京都心身障害者扶養共済制度条例
・第二百号議案 大気汚染に係る健康障害者に対する医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
 病院経営本部関係
報告事項(質疑)
・都立病院経営委員会報告について
陳情の審査
(1)一九第五五号 都立病院の地方独立行政法人化などをやめ安心してかかれる公的医療の充実に関する陳情

○野上委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書三件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件につきましては、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○野上委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、福祉保健局関係の契約議案の調査及び付託議案の審査、並びに病院経営本部関係の報告事項に対する質疑及び陳情の審査を行います。
 契約議案について申し上げます。
 契約議案は財政委員会に付託されておりますが、本委員会所管分につきまして、議長から調査依頼がありました。
 本件につきましては、調査結果を財政委員長に報告することになっております。
 公文の写しはお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

平成十九年十二月十二日
東京都議会議長 比留間敏夫
厚生委員長 野上 純子殿
契約議案の調査について(依頼)
 左記の議案について調査し、財政委員長にご報告願います。
     記
1 調査議案
第二百七号議案 東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)I期新築電気設備工事請負契約
第二百八号議案 東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)I期新築空調設備工事請負契約
2 提出期限 平成十九年十二月十四日(金)

○野上委員長 これより福祉保健局関係に入ります。
 初めに、契約議案の調査を行います。
 第二百七号議案及び第二百八号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議はありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 この際、本案に対して意見のある方は発言を願います。

○かち委員 第二百七号議案及び第二百八号議案について意見を述べます。
 両議案は、いずれも東京都医学系総合研究所(仮称)平成十九年Ⅰ期新築工事に伴う電気設備工事と空調設備工事請負契約であります。
 我が党は、三定議会での当委員会で、本体である医学系総合研究所新築工事は、臨床医学総合研究所、精神医学総合研究所、神経科学総合研究所の移転統合計画は、当該の研究者、関係者による検討が不十分なまま決定されたものであることを指摘し、とりわけ、三研究所の統合移転によって、都立病院、臨床現場から研究所が切り離されてしまうデメリットや、統合によって研究室の面積も縮小される中で不安定な有期雇用の研究員を重視するものであり、研究機能の強化という建前からも逆行するものであるという観点から反対をいたしました。
 よって、それに付随する今回提案された二件の工事請負契約については反対であることを表明いたします。
 以上です。

○野上委員長 発言は終わりました。
 お諮りいたします。
 本案については、ただいまの意見を含め、委員長において取りまとめの上、財政委員長に報告したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。
 以上で契約議案の調査を終わります。

○野上委員長 次に、付託議案の審査を行います。
 第百九十八号議案から第二百号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際、要求いたしました資料はお手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○杉村総務部長 過日の厚生委員会でご要求のありました資料につきまして、お手元の厚生委員会要求資料にまとめてございますので、ご説明申し上げます。
 資料は、目次にございますように、全部で三項目となっております。
 それでは、順を追って説明させていただきます。
 まず、一ページをお開き願います。川崎市における成人ぜんそく患者に対する医療費助成制度の概要といたしまして、目的、対象疾病、対象者などの内容を記載してございます。
 二ページをお開き願います。東京都大気汚染医療費助成制度の概要といたしまして、目的、対象疾病及び対象年齢などの区分ごとに、現行と改正案の内容をそれぞれ記載してございます。
 三ページをごらん願います。心身障害者扶養共済制度(全国制度)の保険料といたしまして、加入時の年齢ごとに、平成二十年三月までと平成二十年四月以降の保険料月額について、それぞれ記載をしてございます。
 以上、簡単ではございますが、ご要求のありました資料につきましてご説明申し上げました。よろしくお願いを申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより付託議案に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○田代委員 大気汚染の医療費助成の条例の一部改正について質問したいと思います。
 平成八年に第一次訴訟が提訴されてから、足かけ十一年にわたって東京大気汚染訴訟、これが去る八月八日に和解したわけですけども、平成十四年の一審判決の際に、知事は、国の自動車の排出ガス規制責任を認めないなど、判決の内容が、あるいは論理は承服できない、こういう意見だったわけですが、何といっても健康被害者の救済と自動車の排出ガスの対策の強化を早急に実施しなくちゃならない、これが行政の使命であるということで控訴しないことを決定して、我が党は強くそれを支持したわけであります。
 その後、原告並びに道路管理責任が認められた国、そして首都公団は控訴しましたけども、昨年の第三回定例会における我が党の質問に対して、知事は、被害者の救済を最優先して、社会全体の課題として取り組むことをしたいという答弁をいただいて、我が党はこれを高く評価したわけであります。
 これを契機に和解交渉が急速に進展していきましたが、この和解の大きな柱となっているのが、東京都が提案した医療費助成制度というわけであります。
 そこで、まず初めに、東京大気汚染訴訟の所管は、これは知事本局というのが一番、第一義で、知事本局がやらなくてはならないわけですけども、ここは厚生委員会ですから、そこの点ではなくて、医療費助成制度を所管する福祉保健局として、今度の制度創設の意義をどう認識しているのかということを伺いたいと思います。

○金丸参事 今回、東京大気汚染訴訟の和解に基づき実施することとなった気管支ぜんそくを対象とする医療費助成制度は、過去の大気汚染訴訟の和解では、被害者救済のための財政負担を行ったことのない国や首都高速道路株式会社、さらには平成十四年の一審判決に勝訴した自動車メーカーも、その社会的責任に基づき財政負担に応ずることによって創設されるものでございます。
 本制度の意義は、こうした関係当事者の総意により、大気汚染による健康被害を受けた都民の一日も早い救済を図るものであると認識しております。

○田代委員 こういう被害者の方々、疾病を受けていらっしゃる方々を助成するということは、一番大切だということですよね。何といってもこれを第一義にしなくちゃならないわけですけど、こうした医療費助成制度というのは、国民の生命を守る国がその責任において構築すべきものと考えているわけですけども、東京都においては知事と議会が両輪となって、過去の公害訴訟の先例にとらわれない、そういう動きの遅い国をも巻き込んで東京都がリーダーシップを発揮して和解に至った。これは、大変、都市型の環境問題を考える上で大きな意義があると考えます。
 私も、この委員会では、随分アレルギーと大気汚染の話をしてきましたけども、大気汚染の問題については、平成十三年になりますけども、予算特別委員会で、山崎孝明、今の江東区長が、自動車メーカーの社会的責任として新しい自動車税の創設を提案するなど、我が党も、社会的責任、この解決を訴えてまいりました。そういう意味で今回の新たな医療費助成制度は、私どもの主張と大変合致するものと考えております。
 また、自動車排気ガスによる大気汚染問題の難しさというのは、都民の一人一人が被害者であると同時に、またある意味では、同時に加害者にもなり得るということで、財政的な問題も考えずに、ただやみくもに医療費助成の範囲を拡大することだけで解決が図られるわけではないわけです。
 そもそも、この四疾病を助成対象とした現行条例が制定された昭和四十七年度当時の大気汚染の原因物質というのは、工場などの固定された発生源から排出される硫黄酸化物が中心でありました。しかし、その後、固定された、決まった場所の、発生する場所による大気汚染というものは逆に改善されていって、現在では、今度は移動する、固定していない、自動車などの移動発生源から排出される窒素酸化物や浮遊粒子状物質などが問題になっている。花粉症なんかもそうですね。
 自動車から排出されるガスによって健康被害、これが平成八年に、今回の訴訟の発端となる第一次の提訴が行われたわけであります。そして、先ほど申し上げた平成十四年度の一審判決では、気管支ぜんそくの発症、増悪と自動車排出ガスとの因果関係が一部認められたわけであります。
 制度改正に当たっては、このような状況変化を踏まえた対応も当然必要でありますし、この点については、改正条例案では、大気汚染の影響があると推定される疾病の範囲を基本的には気管支ぜんそくとして、次に十八歳未満の方々について、現行の慢性気管支炎、ぜんそく性気管支炎、肺気腫の三疾病についても助成対象としているわけです。
 今回のこの改正条例案の対象となった疾病の基本を気管支ぜんそくとしたその考え方を教えていただきたいと思います。

○金丸参事 今回の条例改正は、八月に合意された和解条項を受けて、現行四疾病のうち気管支ぜんそくについて、助成対象を全年齢に拡大するために行うものでございますが、ご指摘の大気汚染の状況変化や、平成十四年の一審判決において気管支ぜんそくの発症、増悪と自動車排出ガスとの因果関係が一部認められたことを踏まえまして、公費による医療助成の範囲として、対象疾病を気管支ぜんそく及びその続発症としたものでございます。
 その上で、十八歳未満については、三十年余にわたって現行の制度を実施してきた経緯や、現に、少数ながらぜんそく性気管支炎と慢性気管支炎の認定患者が存在することを考慮いたしまして、引き続き、気管支ぜんそく以外の三疾病についても助成対象としているものでございます。

○田代委員 この認定は大変な作業だと思いますけども、しっかりとサポートしていただきたいと思います。
 そして、今回の条例改正のもう一つのポイントというのは、五年後の見直しについて規定されているわけですけども、成人の方の気管支ぜんそくの多くは慢性疾患でありまして、さっと治ってしまうというのはなかなかないわけですね、難しい病気です。そのために、五年後の制度廃止を危惧する声、こういうのが出ているわけですけど、まさか病気がその五年でさっと治るなんていうことはあり得ないので、制度廃止なんていうことはあり得ないと思いますが、そういう心配をなさる方もいらっしゃるわけで、この条例の附則に、施行後五年を経過した時点で、その条例の施行状況の検証を行い、その結果に基づいて見直しを行うと。見直しもいろんな見直しがあると思うんですね、前向きな見直し、いろんなのがあると思いますけども、五年後の制度廃止なんていうことは到底あり得ないと思いますが、この点について伺いたいと思います。

○金丸参事 改正条例案の附則もまた、本年八月に合意されました和解条項を受けたものでございまして、五年を経過した時点で医療費助成の実施状況等を検証し、あわせて、都内の大気汚染の改善状況や現在国が進めております大規模疫学調査を初めとする各種調査研究の結果、さらには、医療保険制度等の社会経済の動向等を総合的に勘案いたしまして制度のあり方を見直していくというものでございます。五年後の制度廃止を前提としたものではございません。

○田代委員 安心しました。中には、五年でこれが終わっちゃうなんてわけのわからない話になっているところもあるみたいですけれども、そういうことがないように、やっぱりこれは説明をしっかり徹底していくということだと思うんですね。
 今現在、この大気汚染、大きな問題になっているわけです、環境問題として。それで、これが健康に対していろいろな影響がある。しかし、これがエビデンスをもって解明されているわけじゃない。そういう中で一刻も早く苦しんでいる人たちを救済しようという、そういう新しい制度を創設するわけですから、やみくもにお金を突っ込めばいいということではなくて、やはり費用対効果をしっかり見ていただかなくてはならない。当然見直しということはしなくちゃならないことですから、これは実行していただきたい。
 そして、この制度を所管する福祉保健局としては、こういう検証を国の疫学的調査に任せるだけではなくて、東京都も引き続きこういうものに取り組んで、治験の積み上げに一層進んでいただきたいと思います。
 知事は、さきの所信表明で、新しい医療費助成の開始を来年八月、なかなか、待っている人はたくさんいて、早くやっていただきたいということはありますけど、こういうものを始めるとなると、認定から新たな作業、我々が考えても膨大な作業量になると思うんですが、果たして本当に八月に間に合うのかどうか。ただただ急ピッチでやって変なものができては困るわけでありまして、かといってゆっくりされては困るということで、かなり思い切った早目の実現に向けてのお話をいただいているわけですけど、この点について最後にお尋ねしたいと思います。

○金丸参事 本制度改正では、制度の対象が数万人規模に及ぶこともありまして、実施に当たっては区市町村や医師会等の関係機関の協力が不可欠でございますが、これらの機関との調整や必要な事務手続などには、どうしても一定の時間が必要となります。
 また、各種システムの改修や、都民及び医療機関に対する周知にも十分な時間を確保する必要がありますので、当初から制度開始までには相当の時間を要するものと想定しておりました。
 その一方で、一日も早い助成開始を待っている方々の期待に何とかこたえられないかと、施行までの時間短縮を模索してまいりましたところ、今後、準備をさらに加速させることによって来年八月の施行が可能な状況になってまいりましたので、助成開始目途を八月としております。
 また、制度の導入直後は多くの申請が予想されますので、施行三カ月前の五月から事前申請を受け付け、認定審査を集中的に行うなどして、制度の円滑な実施に努めてまいりたいと存じます。

○田代委員 そうなんですね。一刻も早く進めていただきたい、だけどミスは困るということで、なかなかこれは難しい注文をしているわけですけども、精力的に取り組んでいただきたいと思います。
 助成開始三カ月前の五月から事前申請を受け付ける、そういうお話でしたが、だとすると、実質的には来年度早々のスタートと変わらないわけですよね。この短い時間の中でどんどんどんどん進めていかなくちゃならない。しかし、こういう新しい制度の導入期というのは、申請の集中なんかによって窓口が大変混雑したり、あるいはなかなかご理解がいただけなくて、心配の余りいろんなトラブルになってしまう。こういうことがないように円滑に導入していくためには、やはり皆様方の努力というものがただ一つ必要なわけですから、ぜひとも精力的に取り組んで、早期の、しかも万全の体制をつくっていただくことを強く要望して、質疑を終わります。

○大松委員 私からも、気管支ぜんそく患者の医療費助成制度について伺います。
 このたび議案になっております新たな医療費助成制度は、現在、十八歳未満の気管支ぜんそく患者に行われております助成の対象を、都内に住む十八歳以上のすべての成人患者に広げるという大変画期的なものでございます。改めて申し上げるまでもなく、この制度は、八月八日に成立いたしました東京大気汚染訴訟の和解条項に盛り込まれたものでございます。
 そして、この制度の基本的な考え方というものは、和解に先立ちまして東京高裁が出しましたこの勧告に示されているわけでございますけれども、自動車の排気ガスが大気を汚染し、人の健康や生活環境に影響を及ぼしているとして、自動車メーカー、国、道路管理者、さらに車社会の恩恵を受けている国民一般も社会的責任を受けとめるべきである、こうした考え方に基づくものでございまして、それぞれが財源を拠出する助成制度が示されているわけでございます。
 こうした新しい制度の創設は、十一年間にも及びます原告団の皆様方の闘争によって生み出されてきたものでございまして、原告団の皆様方のこの闘争に、私は深い敬意を表するものでございます。
 また、この和解の成立に向けまして、新しい制度を提案されました石原知事のリーダーシップを高く評価するものでございます。
 そこで、本日は、この歴史的な和解によりまして創設をされます新制度の円滑な実施に向け、何点か質問をいたします。
 まず、この新しい制度の周知の徹底が大切でございます。東京都の推計によれば、この制度の対象者は七万七千人にもなります。大変多い数になるわけでございますけれども、この認定を受けるべき人が、混乱なく、一人も漏れなく認定を受けられるように、きめ細かい対応が必要になってまいります。
 この認定の手続も、主治医が診断報告書を書いて、患者さんが申請をして医療券が発行されるということになるわけでございますので、特に医療機関には制度の仕組みをよく知っておいていただかなければなりません。
 そして、現在、治療を受けておられる方には、医療機関を通しましてお知らせをする、こういう周知の徹底方法になると思うわけでございますけれども、一方、この症状が安定をして、病院から遠ざかっている方も多くいらっしゃるわけでございます。中には経済的な理由などで受診を抑制している方もいらっしゃるわけでございまして、ぜんそくといいますのは、いつ発症し、悪化をするかわかりません。むしろこうした方にこそ、この新しい制度の周知の徹底が必要になるわけでございます。
 また、ぜんそく患者の四人に一人は六十五歳以上という統計がございます。高齢者には情報を入手する機会が少ない方が多く、こうした高齢者の皆様方にどう伝えていくかということも重要になるわけでございます。
 そこで、この制度の実施に当たりましては、都民及び医療機関に対して十分な周知徹底を図るべきであります。東京都の見解を伺います。

○金丸参事 申請主義をとる制度を実施する場合は、十分な事前広報を行うことが前提になるものと考えております。そのため、本制度実施に当たっては、「東京都広報」やホームページを初めとして、テレビやラジオの東京都提供番組での周知など、都の持つ広報媒体を活用して事前周知を行ってまいります。
 あわせて、ポスターや、見やすくわかりやすいリーフレットを作成して、医療機関や公共機関などでの掲示、配布を行いますとともに、区市町村の広報紙への掲載依頼や、マスコミへの積極的な情報提供にも努めてまいります。
 また、医師向けには、手引書を作成して都内の医療機関に配布することを予定しておりまして、可能な手段を駆使して都民や医療機関への制度周知を図ってまいります。

○大松委員 さらに、この現行の制度で既に助成を受けていらっしゃる十八歳未満の患者さんへの周知につきましても大切でございます。十八歳になると助成が受けられない、このように思い込んだまま申請漏れにならないよう、この現行の制度から新しい制度へ移行されることになる患者さんには個別にお知らせを出すなど、万全の対応が行われるべきでございます。都の所見を伺います。

○金丸参事 新たな制度の実施に当たっては、ご指摘のとおり、現行制度の認定患者が必要に応じて確実に新制度を利用できるよう配慮することも重要だと考えております。
 そのため、今回の制度拡大に際しては、認定期間が二年間であることを考慮いたしまして、十六歳以上の認定患者全員に対して個別に制度改正に関するリーフレットを送付するなど、新制度への移行が円滑に進むよう、きめ細かく対応してまいります。

○大松委員 今回の制度が創設をされれば、ぜんそくの医療費助成が成人にまで拡大されるわけでございますので、このことによりまして適正な受診が行われることにより、重症化の防止につながるものと期待をするものでございます。
 その上で、今回のこの制度の創設にあわせまして、ぜひやっていただきたい、やらねばならないことがございます。それは、ぜんそくの発生を少しでも抑えて、そしてぜんそくに関する知識や予防方法について都民に理解を広げる保健対策でございます。ぜんそくは大変つらい疾病、病気でございます。
 私は二十年間、環状七号線沿いの北区内に住んでおりますけれども、やはり近所にぜんそくの友人が何人かいらっしゃいました。以前、その友人がぜんそくであることを知らずに、電車に間に合うようにということで、駅まで一緒に走ったことがございました。そうしましたら、駅に着いてから吸引器を吸い始める姿を見まして、大変申しわけなく思ったことがございました。また、転地療養のために沖縄県に移り住んだ別の友人もいたわけでございます。
 実は、私も四十代になりましてから、ぜんそくになったわけでございます。以前から疲れると息苦しくなる、こういう症状が出ていたわけでありますけれども、子どものころからのアレルギー性鼻炎の延長ではないかと、こんなことで放置をしておりまして、その後風邪をこじらせましたときに、余りの苦しさに病院に駆け込んだところ、ぜんそくですと、このように診断をされて驚いたわけでございます。幸い治癒したと診断はいただきまして、以来、症状は落ちついておりますけれども、大変危険な病気なので自己管理を怠らないよう、医師から注意もいただいているわけでございます。
 ぜんそくという病気は、自覚症状がなくとも、気道で炎症が続いている慢性の病気であります。普段から定期的な治療と自己管理を続けることが不可欠であります。
 そこで、成人の気管支ぜんそく患者への保健対策を強化していかなければならないわけでございます。このことにつきまして、東京都の所見を伺います。

○金丸参事 気管支ぜんそくを適切にコントロールし、重症化を防止するには、患者さん自身の適正な受診と自己管理の重要性への理解が必要なことから、都はこれまでも、気管支ぜんそくに罹患した方々に対して、講演会やホームページなどを通じて正しい知識の普及に努めてきたところでございます。
 こうした取り組みに加えまして、今後、喫煙の問題や疾病コントロールの方法を紹介した成人向けのリーフレットを作成して、区市町村の協力を得て、医療費助成の申請機会を利用して配布するなど、今般の制度拡大にあわせて普及啓発を強化していく考えでございます。
 また、本制度を利用する方々の自己管理状況を把握するためのアンケートを行って、その結果を活用した効果的な事業を実施するなど、成人の気管支ぜんそく患者に対する保健対策の充実に向けて、引き続き努力してまいります。

○大松委員 最後にもう一問伺います。今回の制度では七万七千人を対象といたしまして、東京都、国、首都高、自動車メーカーが五年間で二百億円を拠出することになっておりますけれども、都内のぜんそく患者はふえる傾向にございます。認定患者が七万七千人を超えるということも考えられるわけでありますけれども、その場合、拠出金がなくなったから認定は打ち切る、こういうことがないようにぜひしていただきたいわけでございます。この点につきまして東京都の見解を伺います。

○金丸参事 お話の二百億円は、都が和解に向け医療費助成制度を提案した際に、十八歳以上の気管支ぜんそく患者への医療費助成額として五年間に要する費用を試算したものですが、今後、保健医療に係る制度改正による影響や、急激な申請者の増加などによりまして、万が一、五年の間に医療費助成に要する費用が試算を上回ることになりました場合でも、和解条項を踏まえ、制度を維持してまいる考えでございます。

○大松委員 石原知事は、今回の和解の際のコメントで、これですべてが終わるわけではないといたしまして、社会全体で大気改善に向けた決意を新たにすることが必要だと訴えておられます。
 石原知事は、既にディーゼル規制など画期的な施策を実現してこられました。このたびの医療費助成に加えまして、局の所管は違いますけれども、エコカーの開発促進など、さらなる取り組みを進められるよう要望いたしまして、私の質問を終わります。

○かち委員 私からも、二つの条例について質疑をさせていただきます。
 最初に、第二百号議案、大気汚染に係る健康障害者に対する医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例、ただいま二人の方から質疑がありまして、私、ほとんどダブりますので、質問は省かせていただきますけれども、意見を述べさせていただきます。
 深刻な排ガス汚染により、ぜんそくなどの被害をこうむった被害者、患者の皆さんが原告となり、裁判に訴えてから今日、和解解決に至るまで、実に十一年に及ぶ長く苦しい闘いでした。原告の中には、途中で力尽きて亡くなられた方々も数多くおられます。
 この大気汚染裁判は、千葉から始まり、西淀、川崎、倉敷、尼崎、名古屋南部と続いて、東京は総仕上げ的な裁判でした。
 今回の和解によって医療費の救済制度が実現できたのは、川崎市に次ぐものでありますが、既定の制度とも合わせると、都内全域、全年齢のぜんそく患者の医療費の個人負担を全額助成する仕組みであること、この救済を国、首都高速道路会社、自動車メーカーにも財政措置を求めた上で実現できたことは画期的であり、公害裁判史上でも大きな一歩を築いたものであり、本条例案には賛成の立場です。
 今度の医療費助成制度の対象者は七万七千人とのことですが、今回の制度は、これまでの十八歳未満の医療費助成制度はそのまま継続し、新たに十八歳以上を対象とするということになるわけですが、資料にもありますように、十八歳未満については、気管支ぜんそくのほか、ぜんそく性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫などが対象疾患になっているのですが、新制度においては気管支ぜんそくのみということになっております。その考え方については、先ほどお答えがありました。
 なぜこのようになってしまうかといえば、これまでの公害健康被害補償法が、一九八八年に国が新規認定を打ち切りにした結果ともいえるものですが、現実問題としては、十八歳以下の世代よりも、むしろ大気汚染の複合汚染などで成人の慢性気管支炎や肺気腫が年々増加しているとも聞いております。実態に見合った補償制度の充実という点でも、今後これらの疾患についても加えられるよう要望しておきます。
 さて、本制度を五年後に見直しをするということですけれども、その判断材料としては、先ほどお聞きしました疫学調査の結果などで、大気もきれいになり、ぜんそく患者も減って、本制度の必要性がなくなることが最も望ましく、期待するところでありますけれども、今、ぜんそく等で苦しんでおられる方々は、十年、二十年以上、将来にわたって治療を余儀なくされ、完治するということはほとんどないといっても過言ではありません。制度施行後五年目でその施行状況を検証、点検することは重要ではありますけれども、よもや打ち切るようなことは、せっかくの制度創設の意義が失われかねません。五年後も継続されることを強く要望しておきます。
 さらに、この制度の施行は交付の日から一年以内となっており、知事の所信表明でも、八月までには施行したいと述べられましたが、十一年もの長きにわたって待ち続けてきた原告患者の方々の状況は、一日でも早く施行してほしいというのが切なる願いです。その意にこたえ、施行されることを改めて求めて、この項の質問を終わります。
 次に、第百九十九号議案、東京都心身障害者扶養共済制度条例について伺います。
 私は、これまでこの委員会でも、都の障害者扶養年金制度が廃止されるに当たって、さまざまな問題点を指摘してきました。実際、昨年、制度の廃止が決まってから、ことしの夏に至るまで、大変な混乱と怒りの声が寄せられたのも事実であります。東京都は最大限の努力をしたといっておりますが、実際にはいろんな被害を受けているということもわかりました。
 私が伺った方では、障害者本人が受け取る場合、給与所得が基準の五百五十万円をわずかに超えているということで、清算金の所得加算で従来の障害者年金支給額を喪失するという事態となり、清算金受領が実質デメリットになってしまった方、また、加入者、親御さんが受領した場合、清算金が一時所得となり、少額の厚生年金からの税負担、所得税や住民税、国民健康保険料や介護保険料の増額に連動し、日常生活に大きな負担を強いることになったなどとも聞いております。
 それにかわる代替制度の一つとして全国制度があったわけですけれども、東京都はこれまで独自制度をとってきたので、全国制度には加入していませんでした。本来なら、少なくとも都制度廃止の前に国制度へ引き継げるような手だてを尽くすこともなく、今回改めて全国制度に加入するということでの条例案であります。
 心身障害者の生活の安定と福祉の増進に資するとともに、心身障害者の将来に対し不安を解消するための扶養共済制度であり、選択肢の一つとして当制度に加入することに基本的には賛成ですけれども、これまでの経過を踏まえて何点かお聞きします。
 今回、加入する全国制度についての概要はどのようなものでしょうか。

○松浦障害者施策推進部長 全国制度でございます心身障害者扶養共済制度の概要でございますけれども、国が制度の枠組みを用意しまして、地方公共団体が条例に基づきまして実施する制度でございます。
 まず、東京都と加入者が扶養共済契約を締結しまして、東京都が徴収しました加入者の掛金は、独立行政法人でございます福祉医療機構を経由しまして、保険料として生命保険会社に納められます。加入者が死亡等の場合に、その福祉医療機構が生命保険会社から一時金としまして保険金を受け取りまして、その保険金を信託銀行において運用しながら障害者に年金を支払うという仕組みでございます。
 このように、これまでの都制度と制度の仕組みが異なりますが、障害者の保護者の相互扶助の精神に基づきまして、保護者が生存中、掛金を納付することによりまして、保護者が死亡した場合などに障害者に終身年金を支給するという任意加入の制度という点では、都制度と同様でございます。

○かち委員 仕組みは都の制度と異なりますけれども、保護者の亡き後に終身年金を支給する制度であるということで、趣旨は同じであるわけですけれども、その年金は、都制度では月三万円でしたけれども、国制度では月二万円ということになるわけですね。
 昭和四十五年にできた全国制度は、現在加入者が六万七千人余りですけれども、平成七年度以降、加入者は減少傾向にあるとのことです。平成八年には保険料の引き上げが行われ、国と道府県、指定都市が二分の一ずつ負担をする措置を講じられてきました。しかし、その後も厳しい運営状況が続き、平成十七年には、独立行政法人福祉医療機構において三百八十八億円の繰越欠損が発生するという状況から、新たな見直しということになったわけですけれども、今回の共済制度の見直しの経緯について伺います。

○松浦障害者施策推進部長 国につきましては、経済情勢の変化等による運用金利の低下等で、運営については財政的にいろいろやらなくちゃならないということで、その全国制度を安定的に運営し、将来の年金給付を確実に実施するため、本年三月下旬に外部の有識者や障害者団体の代表が参加しました検討委員会を立ち上げまして、制度の見直しを検討しました。四回の検討会の開催を経まして、九月に検討会報告を取りまとめたところでございます。
 国は検討会報告を受けまして、都道府県、政令指定都市に対しまして、準備期間を考慮したということで十月に説明会を開催しまして、平成二十年四月一日から適用する条例の準則を示したところでございます。

○かち委員 検討委員会では、制度の存亡も含めて検討した結果、長期にわたって安定的に持続可能な制度への見直し、積立不足への対応とともに、新たな積立不足を発生させないための措置を講ずるべきであるとの結論に達し、年金給付の水準としては現行の二万円を維持するという内容のようです。
 今お話しのように、ことし九月に見直しの取りまとめを行い、来年四月から新制度のスタートということになっているわけです。そこで、資料を出していただきましたけれども、その内容は、新旧対照表で掛金、保険金の見直しの前後比較表が出ていますけれども、これを見ますと、非常に高くなるという印象です。とりわけ東京都のようにこれから加入する場合は、年齢別で見ますと、加入者、保護者が三十五歳以下で三千五百円が九千三百円になるわけで、二・七倍ですね。親御さんが六十五歳以上になりますと、一万三千三百円が二万三千三百円ということで、一・八倍になります。これでは、年金が月二万円支給のところ、保険料が二万三千三百円ということで、受け取る年金を上回ってしまうという点でも大変厳しい内容だと思います。
 しかも、都制度では、給付年金が月三万円だったのが二万円に下がるという点でも、国制度への加入者がこれまで以上にふえるとは、大変心もとない限りです。そういう意味でも、都制度の結論を出すのは、全国制度の見直しの結果が出てからでもよかったのではないかと思います。
 国制度になった場合、都の財政負担はどれくらいになるのか。また、他の道府県の公費負担はどうなっているのでしょうか。

○松浦障害者施策推進部長 先ほど申しましたように、全国制度は、これまで経済情勢の変化等による運用金の低下等により積立不足が生じております。その不足分に対しましては、年間九十二億円を国が二分の一、それから、これまで全国制度に参加しています道府県と政令指定都市が二分の一を負担してまいりました。この公費負担の期間を延長しまして、しかも継続するということにしております。
 道府県と政令指定都市の負担総額は年間四十六億円になりますけれども、これは改正時点の平成十九年度末におきますこれまでの制度加入者数と年金受給者数の延べ人数等による案分で、それぞれ各団体が負担いたします。
 したがいまして、平成十九年度末に参加していない都におきましては、二十年四月の全国制度参加に当たっては公費負担は生じません。
 今後につきましては、全国制度の扶養共済制度は五年ごとに見直すことになっておりまして、その際には、先ほど申し上げました延べ人数等による案分で各団体の負担も見直されるということになっておりますけれども、平成二十年度以降の新規加入者については算定されないというふうに聞いております。
 ただ、他府県におきまして、全国制度に既に加入している方が引っ越し等で都に転入する場合もございますので、その分につきましては、今後、都の公費負担が生ずることもあり得るというふうに考えております。

○かち委員 今回の見直しで都の負担はないということですけれども、来年度以降、全体では九十二億円、都道府県、案分で四十六億円の負担については、今回新規加入ということで、今まで住んでいた都民との関係では、都の負担はしばらくは発生しないということですけれども、将来的には出てくる可能性もあるということですね。
 いろいろお聞きしてきましたけれども、今後この制度の将来性、見通しというものに対し、都はどのように認識しているでしょうか。

○松浦障害者施策推進部長 先ほども申し上げましたとおり、国の方はきちんとした財政とし、また、保険数理に基づいた適正な保険料に改定するということで、今後、制度を安定的に運営し、将来の年金給付を確実に行うための制度設計がなされたというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、全国制度は、心身障害者の生活の安定と福祉の増進に資するとともに、障害者の将来に対し保護者の方々が抱く不安の軽減を図るという目的を安定的に果たしていくものというふうに考えております。

○かち委員 障害者の方々の将来、親亡き後の生活の安定のために、こうした年金あるいは保険制度というものが関係者の皆さんの総意として生まれたものであり、将来にわたって継続、維持させなければならないものだと考えます。しかし、制度が始まっても、都制度のように行き詰まった、廃止だということになると、当事者、関係者の方々の生活設計に大きな影響をもたらすことになるので、そうしたことは最大限回避しなければなりません。制度維持のために、国や都道府県が基盤を十分支える仕組みを確保することを強く求めて、質問を終わります。

○山加委員 私は、第百九十九号議案、東京都心身障害者扶養共済制度条例について伺わせていただきます。
 当時、昭和四十四年、都の国に先んじた画期的な制度であったこの扶養年金制度は、本年三月をもって廃止されたわけであります。しかしながら、私は、人間は過去の反省をしながら常に未来を見詰めてよりよい制度をつくり上げていく、それが人間の知恵であると思っております。
 本年六月の厚生委員会でも、私は、従前の都の扶養年金制度とこの全国制度である扶養共済制度について質問をさせていただきました。その際、東京都は、全国制度に参加という可能性があったからこそ、従前の都制度を廃止できたわけであります。今後は、この全国制度に期待をつなぐ多くの障害者のために、責任を持ってこの制度へ参加できるよう制度をぜひとも再構築していただきたいと要望いたしました。
 今回、その全国制度であります扶養共済制度条例が提案をされています。そこで、確認の意味で、東京都がこの全国制度に参加する意義についてお伺いをいたします。

○松浦障害者施策推進部長 都が全国制度に参加する意義でございますけれども、この全国制度は、これまでの都の扶養年金制度と仕組みは異なりますけれども、都制度と同様に、障害者の保護者の相互扶助の精神に基づきまして、保護者が生存中、掛金を納付することによりまして、保護者が死亡した場合などにつきまして、障害者に終身年金を支給する任意加入の制度でございます。
 この全国制度に参加することは、先ほど山加副委員長がおっしゃいましたとおり、都の扶養年金制度廃止に係る代替制度として、都制度に加入した方にとって、引き続き保護者亡き後の障害者の生活の不安の軽減を図りたいという、そういう保護者の方の期待にこたえられるとともに、都はこれまでの制度運営の責任を果たすことになるというふうに考えております。

○山加委員 今、部長にお答えいただいたことは、加入者が最も確認をしたいことの一つであると思います。
 私は、よく障害児をお持ちの親御さんとお話しをする機会が多いのですが、親御さんは、私はこの子よりも一日でいい、長生きをしたいと必ずおっしゃいます。昔から、親より先に旅立つ子どもは一番の親不孝であるといわれております。ですから、そのようなお話で、親御さんの、一日でもいいからこの子より長生きをしたい、そんなお話を伺うときに、いつも胸が締めつけられるような思いがいたします。ぜひともこの全国制度に参加することで、親亡き後の親御さんの不安が軽減できるということは、私は都の障害者福祉施策を推進する上で大きな意義があると思います。
 ところで、国はことし三月、検討会を立ち上げて、関係団体の意見も聞きながら全国制度の見直しを検討してきたという、先ほどもご答弁がございましたが、全国制度はどのように見直されたのか、お伺いをいたします。

○松浦障害者施策推進部長 見直しにつきましては大きく二点ございますが、一点目は、全国制度はこれまで運用金利の低下等によりまして積立不足が生じておりましたが、この不足分に対しまして、年間九十二億円を国が二分の一、それと、これまで全国制度に参加している道府県と政令指定都市が二分の一というふうに負担してきましたけれども、この公費負担の期間を延長して継続するということが一点目でございます。また二点目は、保険料につきましては、任意加入の制度であること、それから月額二万円という現行の年金給付水準を維持することを前提としまして、保険数理に基づいて現時点の諸条件に見合った適正な水準に改正したものでございます。
 これらの見直しによりまして、全国制度を安定的に運営し、将来にわたる年金給付を確実に行える新たな制度設計がなされたものと考えております。

○山加委員 保護者の方にとっては、年金のように一定額が支給される制度があるということがとても重要であります。制度の安定的な運営のための見直しが実施されたと思います。
 この制度は、枠組みは国が用意するということでしたが、都が独自に対応するということはあるのでしょうか。

○松浦障害者施策推進部長 山加副委員長の都独自の対応というご質問は、都独自に低所得者の方に配慮しないのかというご指摘と受けとめさせていただきますけれども、東京都といたしましては、新しい扶養共済制度におきましても、加入する保護者の方が生活保護を受給している場合や住民税非課税の場合は、保険料の減額をしてまいります。

○山加委員 東京都は、新しい扶養共済制度におきましても、独自に低所得者に対する減額制度を設けるように検討されているという、今お話をお伺いしまして、大変安心をいたしました。
 次に、新たな全国制度に加入できる方はいいのですけれども、条件に合わずに加入できない方も当然いらっしゃると思います。東京都心身障害者扶養年金審議会の最終答申でも指摘されていたように、保護者が既に六十五歳以上となっている方、身体障害者四級の方など、新たな全国制度には入れない方に対しても、私は、保護者亡き後、障害者へ年金的にお金を残したいという要望にこたえることが必要であると思います。
 最後に、もう一つお伺いをいたしますが、これら全国制度に加入できない方にどのように対応していくのか、お伺いをいたします。

○松浦障害者施策推進部長 ご指摘のとおり、保護者が既に六十五歳以上となっている方や、身体障害者四級の方などは全国制度に加入できないことになります。
 民間金融商品の中には、この扶養共済制度に類似する、すなわち障害者が定期的に金銭を受給できるものといたしまして、生命保険会社が扱う年金特約つき生命保険とか、信託銀行が扱う特定贈与信託、特約つき金銭信託などがございます。これらの金融商品を活用することによりまして、保護者亡き後の障害者の生活の不安の軽減を図りたいという保護者の方の希望をかなえる選択肢の一つとなるよう、これらの金融商品の内容を紹介するわかりやすいパンフレットを作成するなど、全国制度に加入できない方に丁寧にご案内していく所存でございます。

○山加委員 ぜひとも全国制度の加入対象とならない方についても、金融機関等と連携をし、民間の金融商品についてわかりやすく丁寧に説明していただくことをお願いしたいと思います。
 これまでの質疑で、従前の扶養年金制度の廃止に係る制度運営者としての責任を東京都が大変重く受けとめ、審議会の最終答申である代替制度についても着実に実施していることを、私は強く確認できました。
 今後、全国制度の立ち上げに当たっては、従前の都制度に加入していた方に対して、この新制度を紹介するお知らせを郵送したり、また、新制度に加入を希望する方に対して説明会を開催するなど、十分に対応いただけるものと思っております。
 また、新制度の周知に当たっては、ぜひとも団体等からご要望のある点字対応も実施していただけると期待をしております。
 ぜひ、全国制度への加入はもちろんでありますが、全国制度の代替商品の紹介なども含めまして、都民のさまざまな選択について丁寧な対応、そしてまた支援に努めていただきたいと思います。
 都は、障害者の親亡き後の生活の安定と福祉の向上に向けて施策を確実に実施し、総合的に障害者福祉施策を推進することを要望いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議はありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉保健局関係を終わります。

○野上委員長 これより病院経営本部関係に入ります。
 報告事項、都立病院経営委員会報告についてに対する質疑及び陳情の審査を行います。
 本件については、いずれも関連がありますので、質疑をあわせて行いたいと思います。ご了承願います。
 報告事項については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○及川経営企画部長 去る十一月二十九日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます資料1、厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は目次にございますように、1、都立病院における共同購入実績から8、地方独立行政法人法案に対する衆議院及び参議院における附帯決議までの八点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、都立病院における共同購入実績でございます。
 共同購入とは、これまで各病院で購入していた診療材料と検査試薬を病院経営本部で一括して購入する方法でございまして、平成十八年度から開始いたしました。この実績につきまして、対象品目数や実施による費用削減額などの区分により記載しております。
 二ページをお開き願います。2、都立病院における業務委託に係る契約金額の推移でございます。
 平成十四年度から平成十八年度までの契約金額の推移について記載しております。
 三ページをごらんください。3、都立病院における主な業務委託に係る契約金額の推移でございます。
 平成十四年度から平成十八年度までの主な業務委託について、業務別に契約金額の推移を記載しております。
 四ページをお開き願います。4、都立病院における主な業務委託の契約相手方と契約金額の推移でございます。
 平成十六年度から平成十八年度までの主な業務委託の契約相手方について、業務別に契約金額の上位三者を記載しております。
 五ページをごらんください。5、他の地方公共団体の病院事業における地方独立行政法人導入事例でございます。
 他の地方公共団体の病院事業において地方独立行政法人を導入している事例について、都道府県、市町村別に記載しております。また、地方独立行政法人導入後にPFI手法を活用している事例についても、あわせて記載しております。
 六ページをお開き願います。6、地方独立行政法人大阪府立病院機構における職員給与制度及び利用者負担例でございます。
 地方独立行政法人大阪府立病院機構における職員給与制度の概要と利用者負担例については、法人移行前後の状況を記載しております。
 七ページをごらんください。7、独立行政法人国立病院機構に対する運営費交付金の推移でございます。
 独立行政法人国立病院機構年度計画に基づきまして、同機構に対する運営費交付金について、予算額の推移を平成十六年度から平成十九年度まで記載しております。
 八ページをお開き願います。8、地方独立行政法人法案に対する衆議院及び参議院における附帯決議でございます。
 地方独立行政法人法案に対する衆議院及び参議院における附帯決議の内容について、それぞれ記載しております。
 簡単ではございますが、以上で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 次に、陳情一九第五五号を議題といたします。
 理事者の説明を求めます。

○及川経営企画部長 それでは、お手元配布の資料2、厚生委員会付託、請願・陳情審査説明表に沿ってご説明させていただきます。
 一ページをお開き願います。整理番号1、陳情一九第五五号についてご説明申し上げます。
 この陳情は、新宿区の東京の保健・衛生・医療の充実を求める連絡会代表、四谷信子さん外四万二千百二十二名から提出されたものでございます。
 陳情の要旨についてでございますが、都立病院の地方独立行政法人化、公社化、公社病院の民営化、小児病院の統廃合計画をやめ、だれでも安心してかかれる公的医療の充実を実現していただきたいというものでございます。
 現在の状況についてでございますが、都立病院の経営形態については、有識者等による都立病院経営委員会において、自治体病院のさまざまな経営形態について検討を行い、同委員会から報告を受けたところでございます。さらに、この報告を踏まえて、平成二十年一月に第二次都立病院改革実行プログラムを策定する予定でございます。
 また、公社病院につきましては、今後とも都立病院との役割分担のもとに、経営の自立化を促進するとともに、地域の医療機関と緊密に連携し、適切な医療サービスを提供してまいります。
 小児病院の移転統合については、小児医療に関して、心から体に至る総合的で高度専門的な医療を提供することとしておりまして、高度な小児救急医療、障害児医療への対応など、都における小児医療の拠点として整備を進めることにより、その充実を図ってまいります。
 簡単ではございますが、以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより報告事項及び陳情に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○野島委員 この都立病院経営委員会報告に関しまして、何点かお伺いいたしたいと思います。
 都立病院の経営形態については、先般の我が党の代表質問で、課題を抱えたままでの拙速な経営形態の変更は病院現場に混乱を招き、医療サービスの低下につながりますよと、こういうご指摘を申し上げたところであります。その際、病院経営本部長からは、拙速に結論を出さずに十分検討を行う必要がある、こういうご答弁をちょうだいしております。この質疑、答弁、こんなところを踏まえて何点か伺っていきたいというふうに思っております。
 さて、この都立病院の経営形態に関しましては、昨年七月に策定されました行財政改革実行プログラム、この中で、将来にわたり都民に対して安定的かつ継続的な行政的医療が提供できるよう、地方独立行政法人化などを視野に入れ、経営形態の検討を行う、こういうことが示されておりまして、これを端緒に今回の検討が始められた、このように私は承知をいたしております。
 将来にわたって確実に行政的医療を提供するという点に関しましては、都立病院そのものの存在意義の根幹でもありまして、議論を挟む余地はないわけでありますが、本報告もそれを前提にしているものと、こんなふうに認識をいたしております。しからば、なぜ今、経営形態の検討を行う必要があるのか、こういうことに相なろうかというふうに思っております。
 一つの施策を進めていくときに、その執行体制をどうする、運営形態をどうするというのは、大変根幹にかかわる問題でありますけれども、一方、そういう制度論とか何とかというのは、正直なところ、私も議会に籍を置いておりますけれど、見えにくい、わかりにくい、あるいはそれを都民の皆さんが説明を受けたところで、ある種、無味乾燥なんですね、こういう組織論というのは。そんなところもありますけれども、ぜひ十分な説明をしていっていただきたいというふうに思っております。
 一方、きょう、陳情も一緒に審査することになっておりますけれども、こういったふうなことで、この陳情の方は何が何でも都の直営だと、こういう趣旨だろうと思っておりますので、私どもとはいささか見解を異にしているところがあるわけでありますが、まず最初に、なぜ都立病院の経営形態を検討しなければならないのか、どんな背景があるのか、こんなところを冒頭お伺いしておきたいと思います。

○及川経営企画部長 現在、医療制度改革を初めといたしまして、国の医療政策が大きく変化をし、刻々と医療環境が変化していく中で、高齢化の進行によります医療需要の増大、あるいは医師不足の深刻化といったような影響によりまして、これから医療を取り巻く環境もますます厳しさを増していくということが考えられます。
 都立病院におきましても、医療サービスの対価でございます診療報酬、これが数年来マイナス改定が続いておりまして、こういったことによる影響で厳しい経営状況が続いているということ。それに加えまして、平成十六年に義務化されました医師の臨床研修、これなどを理由とした大学医局による派遣医師の引き揚げといったような問題がございまして、産科、小児科など特定の診療科において医師不足が顕在をしております。
 このため、今後の病院運営に当たりましては、健全な財政基盤のもとで優秀な医療人材を確保、育成することによりまして、行政的医療を適正に都民に提供するとともに、医療の質をより一層向上させまして、安定した医療サービスを継続的に提供していくことが、委員ご指摘のとおり、大変重要になってまいります。
 こうしたことから、病院運営においては、こうした変化に適合した合理的で迅速な対応が可能な体制づくりといったものが必要になってきておりまして、今般、都立病院にふさわしい経営形態についての検討を行ったというものでございます。

○野島委員 検討の必要性についてはわかりました。医療を取り巻く環境がいろんな面で大きく変わってきている、そういう中において、しからば、どういったふうなものが一番適切な経営形態なのか、こんなことでというふうに理解をいたします。
 次に、中身について幾つか伺っていきたいと思います。
 この検討委員会報告の中では、るるいろいろ、プラスマイナス検討いたしながら、今回の一定の方向といいましょうか、この委員会報告の方向ですよ、一般地方独立行政法人、いわゆる非公務員型の地方独立行政法人が最も柔軟な制度だと、こんなふうな結論をこの委員会としてはつけているわけでありますね。
 そこで、この管理者の権限だとか人事、給与を含む、あるいは財政、そういったふううなものについては、現行の経営形態と比べますと、裁量権が拡大されて弾力的な対応が可能である、こういうふうな述べ方をされているわけであります。
 そこで、経営ですから、人、物、金あるいは全体としての制度論、こういうことに相なろうかと思いますので、現在の直営の経営形態と比べて、どういったふうな場合にどう柔軟になるのか、そんなところをちょっと具体的にお答えいただければありがたいなと思っております。

○及川経営企画部長 例えば、組織や定数に関しまして、現行の経営形態では条例等で定められておりまして、先ほど来申し上げたような医療環境に応じて柔軟に対応するといったことに関しては困難性を伴っております。
 一方、地方独立行政法人では、原則として理事長がみずからの裁量で決定することができるため、随時必要な組織を設置したり、業務量に応じて人員を配置するといったことが可能となるということでございます。
 具体的に申し上げますと、例えば七対一看護のような制度が新設された際に、必要な人員を適宜採用して迅速に対応することにより、医療サービスの向上を図るといったことができるようになるのではないかというふうに考えております。
 また、給与などの勤務条件に関しましても、現在は人事委員会勧告に基づきまして条例等で定められているため、職員の処遇がある程度画一的にならざるを得ないといった部分がございます。
 地方独立行政法人では、病院ごとの特徴に応じた独自の勤務条件などを定めることが可能となるため、必要な医療人材を確保しやすくなるといったような、そういった給与体系を導入することも可能となるのではないかというふうに考えております。
 さらに、予算に関しましては、現在、地方自治法による予算単年度主義などの制約がございますために、新たな医療課題に対して機動的な対応が困難となっている部分がございます。
 地方独立行政法人では、患者さんのニーズに応じまして、例えば新たな医療機器などを年度の枠にとらわれずに購入することができるということでございます。
 このように、医療の環境は、制度の変化に迅速に対応して患者サービスの向上を図ることができるといったことに加えまして、診療報酬の増加を見込むこともできるといった経営上のメリットが多いために、最も柔軟な制度であるというふうに報告されているものと認識をしております。

○野島委員 ありがとうございました。具体的にプラス面を挙げていただいたわけであります。今、地公法とか条例とか、あるいは予算単年度主義とか、こういうところで直営型の部分との、ある種、制約というのかな、そんなところがまさしくそのとおりであるというふうに思ってございます。
 世の中には、いいという部分と、一方、それではマイナスになるのではないか、こういう部分もあろうかと思いますので、今いろいろ挙げていただいたわけでありますが、特に都立病院改革で、いわゆるPFI事業を導入して、三つが大きなプロジェクトとして進行しているということで、現場の対応あるいは病院経営本部においても大変事業量も多いというふうに思っておりますし、私どもは、これをしっかりと仕上げる、成功させるんだ、こういうことが今一番大切なことだろうというふうに、今までのPFI事業でも質疑を通じて申し上げてきたところでございますが、こういったものの中で、地方独立行政法人になることでどんな影響が出てくるのか、こんなことも大きな課題だろうというふうに思っております。
 この報告でも、都立病院の当面の運用面での課題として挙げられておるわけでありますし、先ほどこの資料の中で、独立行政法人化した自治体病院というのが幾つか示されておりますけど、そんなに多くないようですね。
 そこで、こういったことで、地方独立行政法人化した場合には、PFI事業との関係はどのようになるのか、何らかの支障が生ずる可能性があるのかどうか、こんなところをお伺いしておきたいと思います。

○及川経営企画部長 地方独立行政法人法では、設立団体が有する権利及び義務は、原則的には地方独立行政法人に承継されるといったことになっております。したがいまして、都とPFI事業者である特別目的会社SPCとの契約関係に関しましても、地方独立行政法人が引き継ぐといったことになるため、PFI事業は引き続き法人が実施をするということになります。
 一方で、同法は、債権者、この場合はSPCでございますが、この債権者が異議を申し立てることができるといった規定も設けてございます。したがいまして、基本的には、債権者であるSPCにとって不利益な扱いがなければ異議の申し立てはなく、事業の遂行においては影響がないというふうに想定されますけれども、理事がご指摘されたように、前例がないといったこともございますし、また、東京都が直接の契約の当事者ではなくなるといったようなことから、今後慎重な対応が必要であろうかというふうに考えております。

○野島委員 基本的には承継される、こういうふうなこととお伺いをいたしました。しかしながら、今いったように、東京都が直接の当事者ではなくなるんですよと、当然、地方独立行政法人が事業の主体になるわけですから。そういったふうなことで、制度設計でどうなっていくのかというのは、正直なところ、僕らにも見えないです、正直なところね。
 そこで、そんな不確定要素もあるということについては私は理解をいたしました。特にこれからいよいよPFIが本格化しまして、この数年の間に新たな病棟が相次いで開設されるわけでございますから、事業が円滑に進むように十分配慮していただきたいと思います。
 そして、さらに今回の報告書では、運用面のもう一つの課題として医師不足の問題がご指摘されているわけであります。これは何も、医師不足は都立病院だけに限った話ではありませんが、産科医や小児科医が極めて全国的に不足している。医師を確保する上で、経営形態の変更がどのような影響を与えていくのか、こんなところも心配になるわけであります。
 それでこの報告書は、この課題に対して、まずは現行の制度のもとで可能な限りの方策を講じることが重要である、こんなふうにしているわけでありますね。私どもも、さきの代表質問で、都立病院が率先して医師確保、定着の総合的対策を講じるべきだと、こんなご指摘を申し上げまして、知事から前向きな答弁もいただいているわけでありますし、これらについて、具体的にいろいろこの委員会でも議論をしてきたという経過は承知をしております。
 先ほど、現在の制度は地方独立行政法人に比べると柔軟さに欠けると、その反対がメリットですよと、こういうことだろうと思うんですが、この医師確保の問題について、病院経営本部では、現行の経営形態のもとで具体的にどのような対策を考えていかれるのか、こんなところを伺っておきたいと思います。

○及川経営企画部長 都立病院の医師確保対策につきましては、まず第一に、診療の中核を担います中堅の医師や、それから今は、現在不足をしております産科医師の確保、定着を図るために、自治体病院の中でも非常に低い水準でございます現在の東京都の医師の給与について、まずは改善を図るとともに、指導医業務手当や異常分娩手当を新設することによりまして大幅な処遇の見直しを行いたいというふうに考えております。
 また、増加する女性医師が仕事と育児を両立できる勤務環境を実現するために、二十四時間院内保育室の来年度からの運営実施を検討しておりますほか、柔軟かつ多様な勤務が可能な制度、いわゆる短時間勤務制度につきましても、来年度の実施に向けまして関係局と協議を進めております。
 さらに、医師が診療に専念できるよう、医療クラークを導入するなど、医師の負担軽減策についても検討を行っております。
 こうしたことに加えまして、来年度開講いたします東京医師アカデミーでは、魅力ある研修を体系的に実施し、都立病院の将来を担う若手医師を計画的に育成、確保してまいります。

○野島委員 今の医師の確保、育成、こんなことで、現行の経営形態においてもさまざまに対応しながら、喫緊の課題に精力的に取り組みます、こういうことだというふうに思っております。ぜひ全力を挙げて進めていただきたいと思っております。
 それで、今まで都立病院の現状を踏まえた観点から何点かお聞きしたわけでありましたが、改めていろいろな方面からの慎重な検討が必要だろうというふうに思ってございます。
 そこで、これからの時系列ですと、この報告書を踏まえて第二次都立病院改革プログラムを策定する、こういうことになっているわけであります。この経営形態の検討に関しては十分な時間をかけつつ、経営委員会報告の検討に当たっての前提条件でありますが、冒頭申し上げましたが、都立病院の使命である行政的医療を将来にわたって確実に実施していく、こういうことを強く要望しておきたいというふうに思ってございます。
 一方で、冒頭、いろいろな医療を取り巻く課題も列挙をされました。制度のプラス、マイナスもいわれました。そういった中、医療資源というのは、最後はすべからく国民負担でございますので、また、医師をふやしていく、そういうことがあっても、医療資源というのは当然のことながら有限であることは論をまたないわけでありますから、これらを最大限活用しながら患者サービスを向上していく、このためには不断の改革が不可欠であろう、こんなふうに思っております。
 世の中変わっても、今までどおり、今までどおりというのは実は一番楽なんですが、それが全体として世の中を疲弊させていってしまうということは、何も病院経営のみならず、さまざまな分野でいわれているわけであります。だからこそ改革の必要性がいわれている。そして具体的にやっていく中では、いろいろな摩擦もあるし、しかし、それを乗り越えていくことによって新しい地平が切り開けるというのが、私は、現在の地方行政あるいは国の行政を取り巻く課題であろうというふうに思っております。したがって、PFIを初めとして、あらゆる手法を駆使しながら、都民からの貴重な税が投入されている都立病院を効率的に運用していく、こういう視点が一番重要だろうというふうに思います。
 そこで最後に、経営形態の検討も含めまして、都立病院改革に取り組む病院経営本部長の決意を伺っておきたいと思います。

○秋山病院経営本部長 都立病院は、明治初期の伝染病の流行に伴う駒込、大久保、本所の各いわゆる避病院、この開設や、精神疾患対策としての東京府癲狂院の開設以来、長い歴史の中で経営形態を大きく変えることなく、その時々の都民の皆様の期待にこたえて適正な医療サービスを提供してきたものというふうに考えてございます。
 しかしながら、先ほど経営企画部長からご説明したとおり、医療環境そのものが大変激変しているということでございますが、それだけではなくて、中身もさることながら、そのスピードにおいても、物すごいスピードで変化が訪れているということが大きな特徴かと思います。
 都立病院の影響にも極めて甚大な影響を与えているということでございまして、日々病院の運営に我々当たっているわけでございますけれども、将来にわたって都立病院の使命でございます総合診療基盤に支えられた行政的医療、これを安定的に提供していくというためには、やはり医療環境の素早い、大幅な変化に対して迅速かつ的確に対応するということが不可欠だというのは、正直実感としても持っております。
 こんなことを背景といたしまして、外部の有識者等から成る都立病院経営委員会に、都立病院の経営形態のあり方につきまして検討を依頼したというのも、これも先ほどご説明したとおりでございますが、そういった背景がございます。
 今般、検討結果を受けまして、来年の一月に策定を予定しております第二次都立病院改革実行プログラム、その中で都としての考え方を明らかにしていこうという予定ではございますけれども、経営委員会の報告、これは課題も出ておりますので、それも含めまして踏まえますとともに、都議会自民党代表質問でのご指摘に加えまして、ただいま野島理事からも、慎重かつ十分に時間をかけて経営形態の検討を行うべしというご意見を賜りまして、そういったものも受けとめて対応していきたいというふうに思っております。
 経営形態のあり方は極めて重要な課題ではございますけれども、しかし、その目指すところは、いかに都民医療の向上のためにさまざまな施策やサービスを着実に実施するかということにございますので、このことを肝に銘じまして、不断の都立病院改革を積極的に推進してまいります。

○野島委員 ありがとうございました。終わります。

○長橋委員 私からも、報告事項であります今後の都立病院の経営のあり方、並びに関連して陳情も出されておりますので、質疑を行わせていただきます。
 陳情については、四万名以上の方の陳情でありますけれども、独法化の反対だけではなくて、小児病院の移転統合等についても述べられているわけでありますが、小児病院については前回質疑をしたところでありますし、また独法化については、今、野島理事がお話しした、拙速な独法化ではなくて慎重に対応していくべきだということでございますが、私も同じ立場に立っているところでございまして、なるべくダブらないように質問をさせていただきたいと思いますが、関連して質問をさせていただきます。
 今お話がありました都立病院の経営委員会、これが平成十四年の六月に設置をされたということでございます。そして、今までこの経営委員会では、医療サービスの向上と評価、人材の育成、活用などについて議論を進めてきた。今回、都立病院の経営形態に関する検討をこの経営委員会にお願いしたということでございます。
 お伺いをしますと、今までの経営委員会の議論を踏まえて参考にしてきた、また、それを踏まえてやってきたということでございますが、きちっとこういう報告を求めての検討依頼は初めてであるというふうにも聞いておりますし、また、なぜこの時期に--今、本部長が社会の変化のスピードというようなお話もございましたけれども、そういうこともあろうかと思いますが、改めて、この経営委員会に経営形態に関する検討をどのような観点で依頼したのか、なぜこの時期に依頼したのか、あわせてご答弁をお願いします。

○黒田参事 経営委員会への検討依頼についてでございますが、都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられました行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関との密接な連携を通じまして、都における良質な医療サービスの確保を図ること、このことを基本的な役割としております。将来にわたりましてこの行政的医療を安定的かつ継続的に提供していくという考え方は、今後とも堅持していかなければならないと考えておりますが、高齢化の進行による医療需要の増大や医師不足の深刻化など、今後、医療を取り巻く環境は一層厳しさを増すことが見込まれます。
 このような状況の中で、医療の質、患者サービスの向上を通じて都民の皆さんからの医療に対する期待にこたえていくため、変化に適合した合理的で迅速な対応が可能な病院経営が必要となってきております。こうした観点から、今回、都立病院の経営形態のあり方について検討を依頼したものでございます。

○長橋委員 今お話がありました、前のご答弁でも同じように、いわゆる高齢化の進行、そして医師不足の深刻化。医師不足の深刻化については今ご質疑があったわけでございますけれども、いわゆる高齢化の進行というのは大変な課題であろうかと思います。知事も今定例会の所信表明で、十年後の東京において超高齢社会を迎える、高齢者が全国で群を抜いて三百万人を超えるということでございますし、この高齢者対策については、我が党も代表質問で取り上げたところでございまして、現在の高齢者二百二十九万が十年後には三百十五万人になる。都民の四人に一人が高齢者になる。団塊の世代の方々が六十万人、その仲間入りをするということであります。当然、元気な高齢者、活躍をできる高齢者もいるわけでありますけれども、まさに医療的な需要というのは大きな課題であろうかと思います。そういった意味で、今までの都立病院がこのままでいいとは私も思わないわけでありまして、時代の変化に合わせて、経営形態も含めて検討していかなければいけないというのは当然であろうかと思います。
 ただし、都立病院が担う医療というのは何かといえば、ここに書いてあるとおり、行政的な医療であります。行政医療、いわゆる都立病院が経営的にも、また財政的にも厳しくても取り組まなきゃいけない、民間ではなかなか取り組めない、そういうことであろうかと思いますけれども、行政的医療、これも私は時代の変化とともに変わってくるんだろうと思うんですね。前期のこの厚生委員会で、今議論している独立行政法人、岡山の精神科医療センターにお邪魔させていただきまして、その内容については、理事者の皆さんとも一緒に行かせていただきましたし、あわせてハンセン病の施設も行きました。これも行政的医療であるわけでありますけれども、まさに時代とともに行政医療も変わってくるわけであります。
 そこで、都立病院が担う行政医療とは何なのかということであろうかと思います。この経営報告書に、具体的といいますか、どういうものが求められるかということが書いてあります。法令等に基づき対応が求められる医療、社会的要請から特に対策を講じなければならない医療、それから、新たな医療課題に対して先導的に取り組む必要がある医療、こういうことでありますけれども、これについて、現時点でのこの行政的医療、具体的にどういうものがあるのか、ご答弁をお願いします。

○黒田参事 行政的医療についてでございますが、具体的な医療課題ごとに何点か例を挙げますと、まず、法令等に基づき対応が求められる医療につきましては、先生からもお話がございました精神科救急医療やまた感染症医療がございます。次に、社会的要請から特に対策を講じなければならない医療につきましては、難治性のがんや合併症を併発しているがんなどへの医療や、周産期の母子医療などがございます。そして、新たな医療課題に対して先導的に取り組む必要がある医療、これには小児精神医療やエイズ医療などが挙げられております。

○長橋委員 まさに今、具体的に、私も取り組んできた小児精神医療だとかエイズ対策とか、または、今回代表質問でも取り上げましたけれども、感染症対策も、今インフルエンザが猛威を振るっている中にあって、この体制整備もこれからの課題であろうかと思いますし、そういうことを考えると、まさに都立病院の担う役割というのは大変重要な意味がありますし、そのための経営形態を考えるということは、大きく都立病院のあり方を、存在自体を問われることであろうかと思うわけであります。
 そういう中で、今回、都立病院については、お話のあったとおり、経営面、制度面におけるメリット、デメリットを比較考量した結果、地方独立行政法人非公務員型がいいのではないかということがこの報告に指摘をされているわけであります。今お話のあった、メリット、デメリットを比較考量した、こういうふうに書かれているわけであります。
 今、野島理事のお話で、メリットについては具体的にお話がありました。それでは、デメリットは何があるのかということなのであります。やはり現在の都立病院でも、当然、どんな組織でもメリット、デメリットというのはあるわけでありまして、独立行政法人が、この報告でも、最高ではなくて、一番柔軟だということでありますけれども、当然そこには今の都立病院と比べてもデメリットはあるわけであります。
 そういう中で、この報告では、例えば、今、国がもう独法化を進めていますから、国が交付金を一律削減したという事実もあるし、また、経費の基本的な考え方が、財政状況によっては影響を受けるということもありますし、また、資金調達についてもちょっと心配があるのではないか、こういうようなことが懸念をされるわけでありますけれども、こういったことについて、デメリットはどういうものがあるのか、改めてお伺いします。

○黒田参事 独立行政法人化の課題やデメリットについてでございますが、資金調達の問題につきましては、設立団体からの長期借入金は可能となっておりますことから、事実上の問題は少ないと考えております。しかしながら、みずから迅速な資金調達ができないことによりまして、病院設備の整備や医療機器の更新などへの迅速な対応に支障が出る可能性も否定できないというふうに考えております。
 また、不採算性が高いといわれております行政的医療を適正に提供するためには、一般会計からの繰出金は不可欠でございますが、この点につきましても、地方独立行政法人法では、病院事業等の公営企業型につきまして、地方公営企業法と同様に、経費の負担の原則に基づく運営費負担金が規定されております。行政的医療を継続して提供していくという上で、一律的な運営費交付金の削減や設立団体の財政状況による負担金の削減は行うべきではないというふうに考えておりますが、お話のございました国の独立行政法人など、先行事例を十分検証する必要があると考えております。

○長橋委員 今お話があったとおり、デメリット、心配をされる点、課題があるということでありますし、こういう問題は、やはりメリット、デメリット、これは机上での話であります。大事なのは、現場を見ないとわからないということだと私は思います。後で述べますけれども、まだ地方の自治体の病院は独法化した病院が少ないわけでありまして、その検証をするにも、検証もまだできない状態であろうかと思いますし、やはり現場を見なければわからないということも指摘をしておきたいと思います。
 そういう中で、都立病院、大変に経営状況についてはご苦労をされてきておることは今までもたびたびお伺いをしてまいりましたし、そういう中で、近年、診療報酬のマイナス改定が続いていたりということで、非常に影響を受けてきたんだろうと思いますし、また、医師不足、そういったことを含めて都立病院に対する不安というのも、今多くの方から、陳情等も含めて聞かれているわけであります。
 そこで、この都立病院、現時点での経営手法の一つとして、一般会計からの繰入金を除いて、みずからの収益と費用、これで算出された自己収支比率、こういうのがありますけれども、その推移についてお伺いをしたいと思います。特に、大枠に病院ごとに、都立病院も今はそれぞれの特性を持って病院をやっていますけれども、その特性も含めて、病院ごとにどうなっているのかお伺いをいたします。

○黒田参事 都立病院の自己収支比率についてでございますが、平成に入りましてからのここ十数年間の推移を見ますと、平成二年度には都立病院全体で六〇・三%となっております。このうち、総合病院全体では六四・四%となっております。その後の経営改善の取り組みによりまして、平成十七年度には、都立病院全体では七三・〇%、総合病院全体では七五・四%と、一〇ポイント以上の改善が図られております。
 また、近年では、平成十四年、十六年、十八年度と、三度にわたりまして診療報酬のマイナス改定がございましたが、この影響によりまして、それぞれの改定年度には自己収支比率は一時的に低下するものの、また翌年度には回復するという傾向が続いております。
 また、先生からお話のございました医療の特性からの特徴としましては、小児病院、それからまた精神科病院につきましては、総合病院と比較して自己収支比率は低い傾向にございます。

○長橋委員 今お話があったとおり、六〇ポイントから七〇ポイントと、一〇%向上したということであります。たび重なる診療報酬の改定の中にあって努力をしてきた。こう考えると、都立病院のままでいいんじゃないかというようにも思うわけでありますけれども、今、分野別に聞くと、小児医療であるとか精神医療については厳しい状況にあるということでありますし、それは医師不足だけの問題ではなくて、社会的なこの時代の変化の中での要請でもあろうかと思うわけであります。
 そういったことも考えますと、ちょっと読ませていただきましたけれども、指定入院医療機関は地方独立行政法人の非公務員型では運営ができないというふうになっているわけでありますが、都立病院もこういう分野を担っているわけでありますけれども、これは独法化できないということになるのではなかろうかと思いますが、なぜこういった指定入院医療機関が独法化、非公務員型はできないのか教えていただきたいと思います。

○黒田参事 医療観察法に基づきます指定入院医療機関についてでございますが、この法律、すなわち心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律では、お話のございました指定入院医療機関の指定につきましては、この法律の十六条で限定されておるところでございますが、その中には公務員型の独立行政法人は含まれておりますが、非公務員型の独立行政法人は除外されております。
 最高裁判所の事務総局に照会をしましたところ、指定入院医療機関を公務員型の独立行政法人に限定した理由について二点の説明がございまして、まず第一に、この法律に基づきまして入院による医療が行われるわけですが、この入院医療は対象者の意思に反しても行い得るものであるということを踏まえたものであるという見解がございました。
 続きまして、この指定入院医療機関に入院中の対象者が無断で退去してしまった場合には、その者を連れ戻すことが可能であるということも踏まえたものであるという見解も最高裁判所の事務総局から示されているところでございます。
 なお、現在、指定入院医療機関を運営しております国立の精神・神経センターは、平成二十二年度に非公務員型の独立行政法人になることが既に決定されております。このため、指定入院医療機関としての取り扱いがどのようになるのかということにつきまして、鋭意情報を収集しているところでございます。

○長橋委員 今お話があったとおり、いわゆる独法化に当たっても、この病院事業についてはまだまだ未整備な点があるわけでありまして、国もまだ検討しているということでありますし、そういう中で拙速に独法化をするべきじゃないということは繰り返していっているわけでありますけれども、もちろん経営形態について検討していく、よりよい方向に検討していくことが大事であるかと思いますけれども、それ以上に、私は、今、病院経営本部が抱えている課題はたくさんあろうかと思います。
 前の委員会で質疑をいたしました小児三病院の移転統合、これもさまざま議論をさせていただきましたし、また、私が質問しました大塚病院での小児精神科外来の開設、これもしっかりと進めていただきたいと思うわけであります。また、駒込病院の改修、また駒込病院のがん診療拠点病院、これを目指すということもありますし、そういう中で、今抱えている課題はきちっと詰めていかなければ困る。これがおくれることがあってはならないし、これをまさに整備していくということが今の病院経営本部の課題ではなかろうかと僕は思うわけでありますけれども、こういった大変重要な事業を推進するに当たって、この独法化というものがかえって影響を与えてしまうと私は困るといいますか、皆さんも困るわけでありまして、その辺についてはどういうふうに考えているのかお伺いをいたします。

○黒田参事 独立行政法人化によります重要事業への影響についてでございますが、先生からもお話がございました、現在都立病院が進めております各事業につきましては、仮に地方独立行政法人化した場合にありましても、これらの事業は何ら変更することなく継続していくものと考えております。
 一方で、仮に地方独立行政法人化した場合には、組織、人員、予算など、病院運営の根幹となる運営システムが変更となり、病院の現場にも大きな影響を与える可能性がありますことから、移行する場合には十分な準備が必要になるというふうに考えております。
 このため、今後、経営形態の検討を進めるに当たりましては、こうした点も十分に踏まえていく必要があるというふうに考えております。

○長橋委員 ちょっとご答弁に、仮に地方独立行政法人化しても何ら変更することない、しっかりやっていくということでありますけれども、何かすぐに移行するようなニュアンスもなきにしもあらずで、やはりきちっと検討していただきたい、こう思うわけであります。
 最後に、この報告の中に、国における公立病院改革というところがございます。これを読みますと、総務省は平成十九年内、今年ですね、十九年内に各自治体にガイドラインを示し、経営指標に関する数値目標を設定した改革プランを策定するよう促すということでありますけれども、総務省において、有識者による公立病院改革懇談会を平成十九年の七月に設置をされた。まだ設置されたばかりですね。そこで、公立病院改革ガイドライン策定に向け、現在、経営効率化、再編ネットワーク化、経営形態の見直しについて検討を行っているということであります。
 それに対してこの報告があるわけでありますけれども、あわせて病院経営本部は、今年度中に、来年の早々だと思いますけれども、第二次都立病院改革実行プログラムを策定するといっているわけであります。国がこのガイドラインをまだ策定している最中に--普通は、私は前のほかの委員会にいたときに、地域防災計画とか、そういったものを東京都がつくると、それに倣って区市町村がつくる、一年かけてつくる、こういうことであります。国が今そういうガイドラインをつくっている中にあって、今年度中、来年早々にはこの第二次都立病院改革実行プログラムがもうできるということであります。もちろん、こういった経営委員会の意見も踏まえて、きょうの委員会等の質疑も踏まえてつくられるということだと思いますけれども、ちょっと余りにも早くできてしまうのではなかろうか、こういうふうにも思うわけであります。
 いわゆる先行事例、きょうの資料にあります。先行事例が四例あるということでありますが、この委員会でも岡山県の病院には行きました。これは公務員型であります。今この報告書で一番柔軟な経営形態は独立行政法人の非公務員型だ、こういっているわけでありますけれども、非公務員型は宮城の県立こども病院、そして長崎県の町立病院、この二つしかないわけであります。町立の病院と県立の病院でありますから、我が党は早速、大阪の病院も公務員型でやっているわけですけれども、大阪と宮城に視察に行ってまいりました。大変参考になった。
 そこでの一番の感想は、やはり現場を見なきゃわからない、現場を見て検証しなきゃわからない、こういうことでありますけれども、なおかつ、宮城の県立病院は、ここのホームページを見たら、院長先生があいさつしているんですけれども、もともと宮城県立こども病院は公設民営の病院であった。運営を財団法人厚生会に委託をしていましたが、平成十五年の地方自治法の改正その他の諸般の事情により、平成十八年度から、厚生会から自立して地方独立行政法人としてスタートしたということですから、もともと公設民営ですから、ある意味では非公務員の独法化にしては、今いろいろな課題にあっては、移行がしやすかった。課題もあったと思いますけれども、移行がかなり条件が当てはまっていたというふうに思うわけでありまして、県立病院では非公務員型はここ一カ所しかないわけです、あとは町立ですから。
 ここを参考にするといっても、検証するといっても、まだ検証する状態に僕はないと思うわけでありまして、ぜひ、もちろんこの委員会の報告は尊重もするわけでありますけれども、この独法化については、非公務員化については、検証とともに時間をかけていただきたいというふうに思うわけであります。ぜひそういったことを含めて、この経営委員会の報告、また、先ほどの国のガイドラインの話もしましたけれども、そこら辺を含めて、今後どのように対応していくのか、最後に本部長にお伺いをしたいと思います。

○秋山病院経営本部長 都立病院はこれまでも、患者中心の効果的で効率的な医療体制の実現に向けまして、全国に先駆けて都立病院改革に取り組んできたというふうに考えております。
 ご指摘の国の公立病院改革ガイドラインでございますが、この動向につきましては我々としても注視をしておりますけれども、これまでもこのような国の取り組みに先駆けまして都立病院改革に取り組んできたということでもございまして、今年度中に第二次都立病院改革実行プログラムを策定し、今後とも都立病院改革を着実に推進していくということは、この国の動きとも合致するものだというふうには考えてございます。
 また、国のガイドラインにおきましても、経営形態のあり方として、これが重要な一つの課題という形で掲げられておりますけれども、経営委員会報告でも指摘されておりますとおり、さまざまな課題の解決に向けて十分な検討が必要であるという認識につきましては、もう長橋理事のご指摘のとおりだというふうに思っております。
 特に現段階では、自治体病院の地方独立行政法人化の事例が極めて少ないというのもただいまご指摘を受けました。実例に基づく詳細な検討がなかなか難しいということもございまして、今後、国や他の自治体の動向、これもしっかり見きわめていかなければいけないだろうというふうに考えております。
 ただいま参事の答弁で、仮に独法化した場合という答弁がございまして、直ちに選択肢として考えているんじゃないかというご意見がございましたが、そういうことではございませんで、経営形態のあり方につきましては病院の根幹にかかわると。ただ、先ほど申し上げたとおり、迅速な対応、弾力的な対応をするための経営形態の検討はやはりしていく必要があるだろうというふうには思ってございますけれども、経営委員会の報告、これは課題も含めて、それとともに、ただいまの長橋理事からのご指摘も踏まえまして、都としての考え方を今年度中に作成するプログラムの中で明らかにしていきたいというふうに考えております。
 また、これもご指摘がございましたけれども、足元にはさまざまな課題が山積しているというのはもうそのとおりでございまして、そういった地に足の着いた喫緊の課題、こういったものにきちんと対応していくことが何よりもまず大事なことだろうというふうに考えておりまして、都民の皆様の医療サービスの向上に向けて全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。

○長橋委員 本部長からお話、またご説明をいただきまして、決して私もすぐに独法化になるなんて思っているわけじゃないし、病院経営本部がそういうふうに考えていないことは十分わかっているわけでありまして、また、今回の経営形態の見直しについては、もちろんそんなことはないと思いますけれども、拙速な変更はかえってこの課題解決につながらないし、間違えると、これはかえって逆の方向に行ってしまうわけでございます。
 今年度、病院改革実行プログラム、これを策定するに当たっては、慎重かつ十分な検討をぜひとも行っていただきたい、お願いをいたしまして、質問を終わります。

○野上委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時五十八分休憩

   午後三時十二分開議

○野上委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○吉田委員 私も、報告、今後の都立病院の経営形態のあり方について及び陳情、都立病院の地方独立行政法人化などをやめ安心してかかれる公的医療の充実に関する陳情について質疑をし、意見を述べたいと思います。
 報告は、制度面での課題や当面の課題などを挙げ、十分な検討を行うべきとの指摘をしながらも、一般地方独立行政法人(非公務員型)が制度的にも最も柔軟な経営形態であるという結論を下しています。
 しかし、都立病院が真に行政医療を担うという点でも、また、その支えとなる総合診療基盤を確保し、都民、患者の医療ニーズにもこたえていくというためにも、また、経済的にも貧困が拡大する中で都民が安心してかかることのできる命綱としての役割を発揮するためにも、私は都立直営で拡充することこそ求められていると思います。
 先ほど来、根幹にかかわる問題であり、慎重に、あるいは時間をかけて検討するということがいわれました。手続的には当然のことでありますけれども、私は、実行プログラムの策定に当たっては、非公務員型地方独立行政法人の導入を盛り込むことなく、都立直営の継続と拡充、そして、報告でも示されていました当面の諸課題解決のために全力を尽くすべきだと思います。
 以下、その理由について質疑しつつ、意見を述べたいと思います。
 まず第一の問題は、今回の検討と報告をまとめることになった経過及び背景に関してです。
 既に議論がありましたけれども、検討の引き金になったのは、昨年七月に発表された行財政改革実行プログラムが、都立病院などの新たな経営形態の検討を掲げ、そこでより効率的、効果的に事業を推進していくため、地方独立行政法人などを視野に検討を実施計画に入れたということが出発点だと思います。これまで病院経営本部などの文書の中には、具体的に地方独立行政法人化などの検討という文言が見当たらなかっただけに、私どもとして大変驚かされたことを思い出しますけれども、この行革実行プログラムは、なぜ、どのような理由で地方独立行政法人化などを視野にというふうに指定し、効率化の観点から検討を求めたものなのでしょうか。

○黒田参事 地方独立行政法人化を視野に入れた検討についてでございますが、公立病院を取り巻く全国的な流れの中で、国立病院が独立行政法人化されるなど、独立行政法人が病院事業においても新たな経営形態のあり方とされていたことなどから、検討の選択肢の一つとして例示され、視野に入れて検討するということになったというふうに考えてございます。

○吉田委員 あくまでも検討の一つだということをご主張されると思いますけれども、実行プログラムでは、あえて具体例として地方独立行政法人化ということを例示したわけですね。しかも、こうした実行プログラムは、その趣旨にあるとおり、都立病院のあり方が、真に都民ニーズにこたえるためという視点よりは、あくまでも行政改革、行政のスリム化ということが中心的な背景として検討が求められているということも着目せざるを得ないと思います。
 なぜこのことをいうかといいますと、実は、先ほど国絡みの話もありましたけれども、こうした背景に国の動きがあるということも私は改めて着目せざるを得ないと思います。例えば国の行政改革推進法がありますけれども、その第五十五条の五項では、抜粋を読み上げますが、地方公共団体は、公立の大学及び地方公営企業について、一般地方独立行政法人その他の法人への移行を推進するものということが明記をされております。
 全体は、今国は公務員の削減、財政削減という方向で動いておりますけれども、こうした中で行革実行プログラムがあえて地方独立行政法人を例示して検討を求め、今回の経営委員会の報告でもこれが最適だというふうに示されましたけれども、私は、やはり病院の経営形態を考えるときには、単純にスリム化、行革あるいは職員の削減という視点ではなく、真に今求められている都立病院の役割から検討すべきだということをまず述べておきたいと思います。
 次にお伺いしたいんですけれども、このように、そもそも国が地方独立行政法人化あるいは非公務員型の地方独立行政法人化への移行を促進しているということの背景あるいはねらい、意図というものはどういうところにあると認識をしているのか、ご答弁をお願いいたします。

○黒田参事 独立行政法人、特に非公務員型についてでございますが、経営委員会の報告の中でも述べられておりますが、非公務員型の独立行政法人の特徴の一つとしまして、職員定数枠がないため、環境の変化に応じた柔軟な人員配置が可能であること、特に非公務員型の場合には、公務員型と異なりまして、常勤職員数を毎年度設立団体に報告する必要がないことが一つの大きな特徴となっておりまして、この理由の一つではないかというふうに考えております。

○吉田委員 そうした個々の問題とともに強調したい点なんですけれども、平成十五年七月に、この法の施行に関連して、総務省行政局長など連名で各都道府県知事あて通知文書、すなわち地方独立行政法人法及び地方独立行政法人法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の公布についてという通知文書が出されております。そこを見ますと、もちろん地方独立行政法人などの判断は地方公共団体の自主的な判断としつつ、今日の厳しい経済状況のもと、各地方公共団体における行政改革をより一層適切に推進していくための新たな手法として位置づけられるものだというふうにこの地方独法化を強調しているわけですよね。しかも、さらにそれに続けて、行政機能の減量化が強く求められている現状にかんがみれば、まず、対象となる事務事業について、その廃止や民間移譲の可能性について十分な検討を行うことが必要ですと。その上で、効率的、効果的に行政サービスを提供できると判断された場合に地方独法が適当であるという旨のことが書かれております。
 このような国、政府の行政機能の減量化、徹底した行政コストの削減ということが大きな背景にあるということも着目をしておく必要があると思います。もちろん、個々の分析に入る前提として意見を述べさせていただいております。
 そうしたことの具体的な例として、きょうも委員会資料に出していただきましたけれども、先行的に実施が行われ、五年近くがたとうとしております独立行政法人国立病院機構の場合ですけれども、国からの運営交付金が、この間、毎年一定率で減額をされております。〇四年五百二十億余だったものが、直近で四百九十八億円余、約五%近い減額となっておりますけれども、こうした国立病院機構では、運営交付金の削減がどのような計画のもとで削減をされているのか、また、そうした結果の影響などについては把握していらっしゃるのでしょうか。

○黒田参事 独立行政法人国立病院機構におきます運営費の削減についてでございますが、経営形態の検討に当たりまして、国立病院機構につきましても調査を行ったところでございます。運営交付金の推移につきましては、今回の厚生委員会要求資料で提出させていただいたところでございますが、運営費に関しまして、その具体的な評価を行う立場にはないというふうに考えております。

○吉田委員 先ほど来、情勢にかみ合った柔軟な運営ができるというようなことがメリットとして強調されていたと思うんですが、私の認識では、この国立病院機構の運営費はもう初めから毎年一%削減と、五年間、毎年毎年。こういうことが効率化係数によって定められている。だから、どんなことがあっても、これから五年間は運営交付金は一%ずつ削減されるということが、初めから枠がかぶさるわけですよね。
 そういう中で、果たして適切な、状況に応じた、財政的にフレームがかかる中で運営ができるのかということが、例えば国立病院機構の例を見たときに考えることができますし、また、それは国立だけではなく、先行的に行われている首都大学の場合はどうかというふうに見ますと、これはもっと削減率が大きくて、毎年二・五%の減額ということが定められているわけですよね。
 こうして財政フレームがある程度、交付金が定められている中で、どんなに努力をしたとしても、一定の制約が生まれることは明らかですし、報告書でも、国の独立行政法人化の運営を見ると、運営交付金の一律削減が課せられているなど、国の財政面からの効率化が前面に出ている例もあるというふうに報告書自身も認めざるを得ませんでした。そして設立団体が負担する経費の基本的な考え方は、現行の一般会計繰出金と変わらないが、都の財政状況によっては影響を受けるおそれがあるというふうに指摘をしております。
 こうしたように、たとえ病院経営本部としては、こういう仕組みができたとしても、必要な運営交付金を出したいんだという意図があったとしても、一たん独立行政法人化のレールに入れば、そうした視点であらゆるものが点検されるということになるわけですから、実際上、運営上大きなマイナスを及ぼしかねないと思います。
 先ほど大阪の例がありました。私ども大阪に行ってまいりましたけれども、大阪の場合も、五カ年の目標、計画の中で、五年間で約六十六億円の不良債権を解消するということが目標として定められておるわけであります。
 さらに、私、まだまだ勉強が足らない点ありますが、驚いたことは、国立病院機構は、来年度で五年間の中期目標、中期計画が終わるわけですよね。それに向けてどういうことが検討されているかといえば、ことし発表されたいわゆる骨太方針二〇〇七において、すべての独立行政法人について民営化や民間委託の是非を検討し、独立行政法人整理合理化計画を策定するということで、たしか今年中にこの整理合理化計画を策定しているところだと思います、出ているのかもしれませんけれども。
 このように、一たん独立行政法人に移行したとしても、こうした五年ごとの中で民営化や廃止を含めて検討するんだという仕組みになっていることも、私はこの際見ておく必要があると思うんです。そうすると、地方独法であったとしても、このように五カ年間なりの中期計画が終了時点で、事業を継続していくのか、廃止をするのか、民営化するのか、そういう検討が求められるということになると思うんですが、いかがでしょうか。

○黒田参事 独立行政法人とその後の経営形態についてでございますが、都の場合について申し上げますと、地方独立行政法人化が決まっているという状況にはございませんで、先ほど来答弁していますとおり、経営形態について現在検討をしているところでございます。来年、今年度中に策定いたします第二次プログラムの中で明らかにしてまいります。
 したがいまして、地方独立行政法人化の後の経営形態がどうなるかということについては、現時点ではご答弁することは極めて困難であるというふうに考えておりますが、私どもは、東京都といたしましては、行政的医療という都立病院の基本的役割に関しては今後とも堅持していくということを先ほどご答弁させていただきましたが、行政的医療については今後とも堅持していくという考えでございます。

○吉田委員 私も、何も今の時点で独断的に東京都がこうするだろうという意味で発言したものではありません。現在の法の仕組みについて、この機会に確かめたかったわけであります。
 そこで改めてお伺いしますが、地方独立行政法人法第三十一条では、中期目標の期間の終了時の検討についてどのように規定しているのでしょうか。

○黒田参事 地方独立行政法人法についてでございますが、この法律の第三十一条におきましては、設立団体の長は、地方独立行政法人の中期目標の期間の終了時におきまして、当該地方独立行政法人の業務を継続させる必要性、組織のあり方その他その組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき所要の措置を講ずるものとする、このように規定しているところでございます。

○吉田委員 これも一般論ですけれども、ぎょうせいという出版社から出ている「逐条解説地方独立行政法人法」の解説を読みますと、例えばその具体的な解説として、行政主体が担う必要性が乏しくなった事務事業を廃止あるいは民営化し、また、時宜に応じた事業運営の方法に改めるなど、機動的、弾力的な業務運営が行われることとなると。こういうものが一般論としての地方独法の仕組みだということについても、私は見ておかなければならないなというふうに思いました。
 次にお伺いしたいのは、経営委員会の検討の経過についてなんですけれども、先ほども根幹にかかわるというお話がありましたけれども、そういう極めて重大な問題にかかわる問題であります。そのことについて、私も公表されている議事録は一通り読ませていただきました。経営委員会はたしか五回開かれております。ただ、私の読む限りでは、五回の経営委員会がどういうテーマで一回ずつ議論を深めてきたのかということについては、非常に大ざっぱな印象を率直に持たざるを得ませんでしたし、同時に、検討するからには、まだ時期的には短いですけれども、国はもう五年がたとうとしておりますし、大阪は一年が経過をいたしましたけれども、そうしたことについてもきちんと経営委員会の中で報告をして、そうした先進といいますか、既に行われた事例について検討するということが必要だと思うんですが、議事録を読む限り、そうしたことが行われたことが見当たらないんですが、いかがですか。

○黒田参事 経営委員会におきます検討状況、また検討課題についてでございますが、経営委員会の開催に当たりましては、それぞれの開催時に必要なテーマを提示した上で検討をしていただきました。また、この経営形態の検討に当たりまして、国立病院機構、大阪府立病院機構の先行事例につきまして、病院経営本部として調査を行いました。その結果について検討委員会での検討に反映いたしました。

○吉田委員 私の議事録の読み方が不十分だったかもしれませんけれども、国立や大阪の事例などについて踏み込んだ報告及びその質疑というものは、私自身は読み取ることができませんでした。言葉として大阪とか国立とかといったことはもちろんあるでしょうけれども、踏み込んで調査結果が報告をされ、それに基づいて質疑をされたとは到底受けとめることはできませんでした。
 そうした中で、あえて最も柔軟なものとして、非公務員型地方独法最適というふうな結論が導き出されたのは、余りにも拙速ではないかというふうに思いますし、ましてや非公務員型地方独法は、先ほど話がありましたけれども、規模的に全く小規模の、しかも、もともと都立、公立病院から独法化へではなくて、医師会委託や、あるいは法人からの変更という点で参考になるものではないと思います。
 さらに、非公務員型の場合には、当然職員との合意ということが非常に大きな問題となると思うんですけれども、こうした点についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

○黒田参事 非公務員型の独立行政法人と職員との関係についてでございますが、まず、自治体病院での非公務員型の地方独立行政法人の導入事例は極めて少なく、経営委員会報告が指摘しておりますように、今後、国や他の地方公共団体の動向などを十分に見きわめる必要があるというふうに認識しております。
 また、職員に関してでございますが、経営委員会報告では、設立団体の職員は、別に辞令を発せられなければ自動的に地方独立行政法人へ引き継がれることになり、地方公共団体の職員ではなくなるため、十分な説明が必要であり、特に非公務員型の場合、公務員でなくなるため十分な調整が必要である、このように述べられております。

○吉田委員 十分な合意が必要であるというのは当然のことなんですけれども、地方独法化した場合、職員のやりがいが発揮されるかのような記述が示されております。その方が働きがいが発揮されるのではないかというようなことがありますけれども、そもそも現時点でも職員団体からは、こうした非公務員型地方独法化の検討に対して厳しい批判の声が上げられているわけですよね。もともと公務員で就職した人が非公務員になって、それでやりがいを発揮しなさいというふうに仮定すること自身が極めて私は困難なことだというふうに考えております。
 次に、地方独法のメリットということについて具体的なお話がありました。議事録などを読むと、驚くべきことに、都立病院直営という形態では、何かもう制度的に限界だと、あるいは経営形態の激変が不可欠だというふうに強調されていますけれども、これは余りにも短絡的な、自分たち自身が行ってきたことを限界だというふうにいわれること自身が私としては理解ができないわけですけれども、抽象的な議論ではなく、なるべく具体的に議論をしたいと思うんですが、例えば独法のメリットの一つとして挙げている医療人材の確保についてなんですけれども、都立直営よりも非公務員型の独法化の方が医療人材の確保はしやすいんだというふうな判断ができるのでしょうか。

○黒田参事 地方独立行政法人と人材確保についてでございますが、都立病院経営委員会報告では、地方独立行政法人は、理事長がみずからの裁量で病院の実情に合った適切な人員配置を行うことができ、経営状況や職員の業績を反映させた給与体系の設定が可能であることなど、制度的には人材確保に当たって柔軟な対応が可能であると述べられております。

○吉田委員 一般論で述べられておりますけれども、具体的な根拠は今の範囲ではわからないわけですよね。しかも、これはまだ公式の議事録が出されておりませんが、第四回経営委員会を傍聴された方のメモを読ませていただきましたら、要するに医師確保について、経営形態が変わった場合の問題点について第四回で議論があったと思います。そのときに、高橋職員課長は、経営形態で医師確保が変わるとは思われない旨のご発言をされ、大道委員長がそれを引き取って、変化ないとのお答えだという旨のお話をされていると。
 また、第三回経営委員会、これは議事録が既に出ておりますが、大道委員長は、医師確保において給与だけが条件ではなく、勤務形態だとか勤務地、診療領域などの要因で、仕事をするかどうかを決めるのは当然だと。都立病院で医師として働けるというのは、別の意味で大きなモチベーションになってやっていることも事実であるということを委員長は発言されていますよね。そういう点では、もちろん給与を上げていかなきゃならないんですけれども、都立病院で医師として働くということ自身が、医師確保にとって、医師のやりがいにとって大きなモチベーションなんだというふうに強調していることは、私は非常に重要な指摘だというふうに思います。
 それで、先ほどの話とちょっとダブりますけれども、例えば国立病院機構やあるいは大阪府立病院の独法化で、職員の離職率が改善されたり、医師などの人材確保が向上したというふうなことはいえるのでしょうか。

○黒田参事 大阪府立病院機構と人材確保についてでございますが、大阪府立病院機構につきましては、経営形態の検討に当たりましてさまざまな観点から調査を行っております。しかし、人材確保の点についての資料は特に公表されていないことから、人材確保の状況については私どもとしては存じ上げていないところでございます。

○吉田委員 私どもは、十月に大阪府、そして独立行政法人病院機構、さらに、その一つの病院であります母子医療センターを訪問して話を聞いてまいりました。昨年度、初年度になりますけれども、予想を超える黒字化を果たすことができたと。その中でも、母子医療センターがたしか九億円だと思いますが、最も稼ぎ頭だったわけですけれども、しかし、結果的には、黒字目標達成のために頑張り過ぎて、医師、助産師が燃え尽きてしまうというふうな状況になって、医師では九名中四名が退職し五名になり、助産師では七十名のうち二十五名が退職をした。そして、総長を含めて関係者の皆さんに聞いたんですけれども、コスト意識と効率性ばかりにとらえられると、医療スタッフのやる気が失われるというふうな言葉を聞いたことは非常に印象的でした。
 大阪府立病院機構は、初年度、予想を上回る黒字を達成いたしましたけれども、しかし、それは収益面では目標は下がったんですよね。何で黒字になったかというと、収益は上がらなかったんだけれども、費用面で給与費を中心に大幅に目標を上回る削減をすることができたというのが十三億円の黒字化の原因だというふうに報告書の中でも書かれております。こうしたことで真に人材確保が改善することができるのかというふうに指摘せざるを得ません。
 次に、PFI事業との関係も、実は以前、私、PFIに関連してお聞きいたしましたけれども、これは既に先ほどお話がありました。東京都のようにまずPFI事業が先行して、東京都とSPCが契約をしておきながら、その契約相手が東京都から独立行政法人にかわるというふうな例は、多分これから本格的なことだと思います。したがって、SPCからすれば、東京都だと思って安心して契約したのに、突如として東京都から、幾ら継承できるといっても、独立行政法人にかわるということに異議が唱えられる可能性というのは十分あると思うんですよね。
 そうしたこと自身一つをとってみてもさまざまな問題がありますし、また、第四回経営委員会の中で、わずかですが、PFIの問題の議論がされているように受けとめましたけれども、三人ほどの委員及び委員長から、前例がない、不安を持っている、独法となった場合いろいろ問題がある、独法化したとき、PFIと併存できないなどの旨の発言がされているということは、やはり改めて受けとめておくべきことだと思います。
 次にお伺いしたいのは、議会のチェックが、今の都立直営の形態から非公務員型の地方独法になった場合にどういうふうになるのか、このことについてお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。

○黒田参事 都議会との関係についてでございますが、現在の都立病院は都の一組織でございまして、組織定数は議会の議決を経まして条例等で定められております。また、毎年度の議会による予算の議決、決算の認定などが行われております。
 一方、地方独立行政法人では、設立に当たって議会の議決を経て定款が定められるほか、三年から五年の中期目標について、さらには病院事業などの公営企業型の場合には、この中期目標に基づいて作成される中期計画につきまして議会の議決が必要とされております。
 このほか、評価委員会による各事業年度及び中期目標に係る評価結果を長から議会に報告することとされております。

○吉田委員 明らかに現在の場合には、毎年の予算、決算がそれぞれ都議会に報告をされ、採決がされるということや、また、一定額以上の契約なども議会に報告をされ、財政委員会も含めて議会の同意が求められますし、さらに事務事業質疑では、都立病院の全般的な状況について質疑をするということになります。
 しかし、今度といいますか、非公務員型の地方独法の場合には、東京都の側の組織は残るでしょうけれども、直接的には、いわゆる独立行政法人が運営をするということになり、三から五年の目標や計画については議会に諮られますけれども、運営費を除けば、個々の予算執行などについては、今までと比べれば大幅に議会としてのチェックの対象が縮小されていくということは明らかだと思うんですね。
 最後に、都議会に提出をされた、この独法化ではなく都立病院の継続拡充を求め、また、小児病院の統廃合ではなくて存続を求める、継続を求めるという署名は、お示しされている資料にあるとおり四万二千百二十二名の方から寄せられております。また、東京の保健・衛生・医療の充実を求める連絡会のアンケートはがきには、約五千名の都民の方から回答が寄せられたと聞いており、大多数、九割の方が直営を求めているという回答があったと聞いております。
 私もこのアンケート、一冊の本になっていたので読ませていただきましたけれども、例えば多摩地域四十代の女性は、清瀬病院--清瀬小児病院だと思いますが--にずっとお世話になっています、長期入院し、本当によく診ていただきました、経営難から減少しつつある小児科をどうか公立で支えていっていただきたいという声が寄せられておりましたし、区部の六十代の男性は、年金暮らしの都民にとって、私立病院の高額な医療費は負担が大きく、将来において不安です、ぜひ都立病院を存続してほしいという声を上げておりましたし、多摩の六十代の男性は、ことし六月に狭心症のため府中病院に入院しました、主治医の先生、病棟内の多くの看護師さんたちの心温まる看護に感謝の気持ちでいっぱいです、このような病院の体制が末永く存続されることを望んでいますと。一部だけを紹介しましたけれども、こういう声が寄せられております。
 こうした署名に示された都民の声をどのように受けとめるのでしょうか。

○黒田参事 署名をどう受けとめるのかということについてでございますが、四万人余の署名は受けとめておりますが、私ども行政の執行機関といたしましては、当然、都民の代表である都議会の議決や決議に従うとともに、本会議や本委員会における質疑、ご意見の趨勢を行政施策に反映させていくものでございます。
 都立病院は、行政的医療を安定的に提供していくという使命を担っておりまして、この都立病院にとりましてどのような経営形態がふさわしいのかということにつきまして、今後、慎重かつ十分な検討を行うことにつきましては、先ほど来ご答弁申し上げているとおりでございます。

○吉田委員 きょうも委員会でいろいろな方から意見がありましたけれども、私の意見も含めて、ぜひ本委員会の質疑、意見を受けとめていただきたいと思いますし、また、検討に当たっては、当然、直接当事者となる職員団体の皆さんなどの意見をきちんと受けとめるということを要望としておきます。
 最後に、都立病院改革マスタープランの発表から六年が経過をいたしました。八王子、清瀬、梅ケ丘の小児病院存続という点では、今でも多くの区民、市民の皆さんが署名活動などを求めて運動を続けております。また、代替措置として、清瀬小児病院の場合には多摩北部医療センターが挙げられておりますけれども、小児科医師がわずか二名ということで、実際上の対応が困難になる。また、公社病院に移管した荏原病院を初め他の公社病院においても、医師や看護師不足によって病棟閉鎖などを含めた事態が生まれるという状況があります。豊島病院は、当初、老人医療センターとの統合、民営化ということがマスタープランでは打ち出されましたけれども、結果的には公社化ということが今打ち出され、老人医療センターは民営化ではなく独法化ということで、計画の大きな変更も余儀なくされております。
 私は、こうした現時点に立って、都立病院の経営形態以前の問題として、こうしたマスタープランそのものを現時点で改めて再検討すべきだというふうに思いますし、また、先ほどから話がありました、医師不足を初めとする、当面喫緊の解決すべき課題に全力で取り組むべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○黒田参事 都立病院改革マスタープランについてでございますが、このプランは平成十三年の十二月に、都立病院から二十一世紀の医療の創造ということで策定したものでございます。医療環境が目まぐるしく変化する中では、都民の皆さんに適切な医療を提供するという中で不断の改革を継続していくことが重要であるというふうに考えております。
 また、本マスタープランの前文には、安全・安心を支える質の高い患者中心の医療の実現と都民の皆さんに対する総体としての医療サービスの向上を図る具体的な道筋を明らかにするためにこのマスタープランを策定したということが述べられております。この患者中心の医療、都民の皆さんへの患者サービスの向上、こういった考え方は変わるものではございませんで、引き続き東京都、都立病院としましては、都民の皆さんにとってふさわしい都立病院経営を心がけていくつもりでございます。

○吉田委員 以上、質疑をし、意見を述べさせていただきましたけれども、最後に、陳情一九第五五号については採択を求めるものです。
 以上。

○西崎委員 都立病院経営委員会報告に関しましては、ほかの委員からもう多くの質疑が出ていますので、意見だけ述べさせていただきます。
 これまでの厚生委員会におきまして議論されてきましたように、都立病院に限ったことではありませんが、日本の医療において、医師不足、看護師不足は深刻な問題です。また、診療報酬のマイナス改定の影響などによりまして、病院経営は一層厳しくなっています。こうした状況を打開することが都立病院の喫緊の課題であると思います。
 都議会生活者ネットワークは、生活者の視点に立った医療、患者中心の医療の実現が重要であると考えまして、先日の事務事業質疑の際にも、都立病院の子ども患者権利章典を取り上げ、こうした取り組みを一層推進していただくことを要望してまいりました。
 今回の経営形態の検討に関しましても、経営形態を変更することにより、都立病院がいかに医療サービスを向上させていくことができ、どのように患者中心の医療を行うのかということが重要なポイントになると思います。今回の報告では、非公務員型の地方独立行政法人が制度的に最も柔軟であると提言している一方で、本日の質疑でも取り上げられましたように、さまざまな課題があり、仮に地方独立行政法人化を目指すのであれば、こうした課題をまず解決すべきではないかと思います。特に、先ほども質疑がありましたが、ほかの自治体での地方独立行政法人の導入事例を見ますと、非公務員型は極めて少なく、移行後の期間も短いため、現段階では十分な検証がされていません。
 経営形態を変更することは都立病院の将来を左右する重要なことですので、十分に時間をかけ検討を進めていくことを要望いたしまして、意見とさせていただきます。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 報告事項及び陳情に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、報告事項及び陳情に対する質疑は終了いたしました。
 これより陳情の採決を行います。
 陳情一九第五五号についてお諮りいたします。
 本件は、起立により採決いたします。
 本件は、採択とすることに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○野上委員長 起立少数と認めます。よって、陳情一九第五五号は不採択と決定をいたしました。
 陳情の審査を終わります。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時五十九分散会

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