厚生委員会速記録第十六号

平成十九年十一月二十二日(木曜日)
第七委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長野上 純子君
副委員長山加 朱美君
副委員長かち佳代子君
理事くまき美奈子君
理事長橋 桂一君
理事野島 善司君
西崎 光子君
大松  成君
佐藤 広典君
田代ひろし君
石毛しげる君
野村 有信君
佐藤 裕彦君
吉田 信夫君

 欠席委員 なし

 出席説明員
病院経営本部本部長秋山 俊行君
経営企画部長及川 繁巳君
サービス推進部長都留 佳苗君
参事黒田 祥之君

本日の会議に付した事件
 病院経営本部関係
事務事業について(質疑)

○野上委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、今後の委員会日程について申し上げます。
 先ほどの理事会におきまして、お手元配布の日程表のとおり申し合わせをいたしました。ご了承願います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、病院経営本部関係の事務事業に対する質疑を行います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○及川経営企画部長 去る十月十六日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、都立病院の産婦人科及び小児科における医師の定数及び現員から、6、都立病院と主要他府県立病院及び政令指定都市立病院における医師の給与比較(団体別)までの六点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、都立病院の産婦人科及び小児科における医師の定数及び現員でございます。
 都立病院の産婦人科及び小児科の常勤医師の定数と平成十九年十月一日現在の現員について、病院別に記載しております。なお、NICUを有する病院につきましては、当該欄にその旨を記載しております。
 二ページをお開き願います。2、PFI事業にかかわる決算の推移でございます。
 平成十四年度から平成十八年度までのPFI事業にかかわる決算額について、多摩広域基幹病院(仮称)及び小児総合医療センター(仮称)整備等事業など、三つの事業別に記載しております。
 三ページをごらんください。3、公社病院における医師の定数及び現員(診療科別)でございます。
 公社病院の常勤医師の定数と平成十九年十月一日現在の現員について、病院別、診療科別に記載しております。
 四ページをお開き願います。4、公社病院に対する運営費補助金の推移でございます。
 平成十四年度から平成十八年度までの公社病院に対する運営費補助金の推移を病院別に記載しております。
 五ページをごらんください。5、公社病院における看護職員の固有、派遣職員数の推移でございます。
 平成十四年度から平成十八年度までの公社病院における看護職員の四月一日現在の定数及び現員の推移を病院別に記載しております。なお、現員については、固有職員及び派遣職員の内訳を記載しております。
 六ページをお開き願います。6、都立病院と主要他府県立病院及び政令指定都市立病院における医師の給与比較(団体別)でございます。
 総務省作成の平成十七年度地方公営企業年鑑に基づきまして、都、主要他府県及び政令指定都市が運営する病院における医師の平均給与月額について団体別に記載しております。
 簡単ではございますが、以上で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○野上委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田代委員 東京都で今こうやって病院を経営している。これに対して非常に都民の期待も大きいのでありまして、ですから、逆にクレーマーの問題が日常茶飯にマスコミで取り上げられてくる。なかなか現場で働いていらっしゃる方は大変だと思います。特に行政的医療、それから都立病院のあり方というものは、今までとは変わっていかなくちゃいけない大きな転換期にかかっておりまして、今まではただ臨床を、町のお医者さんたちが足りないところを補えばいい、あるいは大学病院に行くほどでなければ、あるいは国立病院に行くほどでなければ、都立病院でちょっと診てもらいましょうと、町にある、地域にある安心してかかれる病院というイメージがあったわけですね。それが国もある意味では望むところであって、都もそれに合わせてきたところがあるわけですけれども、これから十年先を見て、医療というものを取り巻く環境が国の方でも激変してくる中、責任をとるのはすべて東京都の方に回されるわけですから、やはりこれからは独立自尊で物を考えていく、そういう気概を持って対処していただきたい。また、それができるだけの唯一の自治体であるわけですから。
 逆にいうと、都立病院の今からのあり方というのは、東京のような大都市における公的病院というより、医療のあり方の一つの方向性を決める壮大な実験場であり、研究所であるようなものなんですね。どうしても民間の医療機関ではできないような、実験的な、先鋭的な、ちょっと考えると、とても便利なように見えるけれども、やってみないとわからないというようなものは、実は公的なところで取り組んでいただかないと前に進んでいかないわけでありまして、また、零細企業の中でそういう医療システムをどんどんどんどん新しくしていこうという、機械をつくったり、そういうシステムをつくったりしても、買ってくれるところがなきゃ、ここから先に進んでいかないわけですから、そういうものにお金を使うことは、良質な医療を目指すという方向性さえ間違えていなければ、都民は決して反対はしないと思うんですね。それは決して税金のむだ遣いといわれることではないと僕は思っているんです。
 特にその中で幾つか取り上げていかなくてはならないのは、今の医療費の問題。医療費が一般的に高いといわれることは非常におかしいことだということは、今かなり国民の中で理解はされていますけれども、どこがおかしいのかがよくわからないというのが現状だと思いますし、都民の方もわからないところがある。日本の医療はいいという意見もある。アメリカや諸外国に比べると非常に高度に進んでいて、しかも国民皆保険でいいといわれているんですが、逆にいうと、国民健康保険の、トータルすると今、約二千万人ぐらいになるんですかね、徴収を含めて問題がある人たちが。そうすると、逆に考えると、アメリカと日本で人口比率でいうと二対一ですから、せんだってのムーア監督の「シッコ」なんかに出ているように四千万人、アメリカは実はもっと多いんですけれども、四千万人の無資格者がいるといいますけれども、単純計算すると、日本もアメリカも、倍してみれば四千万人じゃないかということになってしまう。果たして世界に誇る国民皆保険が実際できているのかというと、そこの検証が全くできていないわけです。
 しかし、アメリカに比べても、あるいはシンガポールなんかに比べても、半分であったり、六分の一の値段でこういうすばらしい医療を提供している。その中心にある都立病院が、今からどうやって東京都の中で、大都市の、あるいは日本の医療というものの方向性を決めていくかということの答えを出していく責務があると思うんですね。
 ですから、予算の問題はあると思いますが、議会の方も一生懸命皆さん方のお手伝いをして、これからの医療というものをどう決めていくかという実験のお手伝いもさせていただきたいと思っていますので、そういう意味で取り組んでいただきたい。
 特に、先ほど申し上げましたような、東京都における土地の値段、人件費、もろもろのものを入れた医療費、一点十円で果たしていいのかどうか。一点十円の決まり方については、長くなりますから話しませんけれども、いつまでもこれが固定されているものでないことはわかっているわけでありまして、では、どこまでを都市部といって、どこからをそうじゃないというか。これ、難しいことですよね、感情的なこともあるでしょうから。しかし、それを一回見ていかなくちゃいけない。
 それから、やはり都立病院を見ていますと、非常に込んでいます。時々、寄せていただきますけれども、異様に込んでいて、人気のほどは知れるんですけれども、使っている方から見ると使い勝手が悪い。やはり、これは予約システムがしっかり機能していないんですが、予約システムは、私の知っている病院でも、あるいは私の病院でもそうですし、いろいろなところで、診療所でも入れましたけれども、どこも一つもうまくいかないんですよ、残念ながら。やはりマンパワーでやった方が間違いなく進んでいくところがあるので、これをどこかでクリアしなくちゃならないこともありますし、それから、都立病院はすべてカード決済ができるように今なったということをお聞きしたんですけれども、それに対しての苦情とか問題もないのかも一回調べていただきたい。
 それから、何回も申し上げておりますけれども、医師がカルテを書くという--いわゆるコンピューターをさわっていますと、キーボードをさわっていると、患者さんとアイコンタクトをする時間が全くないわけですね。それだけ医師がなれていればいいんですけれども、なかなかそんなにみんなが器用に打てるわけじゃありませんから。年代的なこともありますし、ある程度責任者になってくると、コンピューター世代ではない人たちも含まれてくる。その中ですべてキーボードをさわっていると、アイコンタクトがどんどんどんどんできなくなってくるわけで、これも重ねてお願いしますけれども、都立病院では、やはり医療事務的な、いわゆるカルテ整備士みたいなものを試しに入れていただきたい。これは国の医療法違反にならないことがわかっているわけですから、アメリカ方式でやっていただけると、患者さんの顔を見ながら我々が話ができることになるわけです。そういう医療を取り巻く周りの職員の専門化、多様化というものも考えていただけたらありがたい。
 どこの大学病院でもそうですけれども、外来主任が鉛筆を持つまで、ペンを持つまではみんなフリーズしているわけですね。さあ始めるよと医者がいって、初めてみんなが動いていく。そういうむだにならないように、診療主任が入ってくる前にやるべきことはある程度動いていて、患者さんも何時ぐらいに戻ってくればどうにかなるかというようなことも、これを予約システムを含めて東京都で実験していただかないと、我々私的な病院ではそれを実行することができないわけです。
 しかし、そういうものを解決する中の一番大きな問題の一つに今は医師不足がありまして、医師不足対応というものに東京都はしっかり対応していこうということで、医師アカデミーですか、これをつくっていこうということになったわけですね。
 これはご存じのとおりに、研修医システムという、これも長くなりますから省きますけれども、ある意味があって研修医システムが入って、それが大学医局に入る人たちの数の制限が始まって、それで足りない分だけ大学の方に市中病院から引き揚げがあってと、こう悪い循環が、負の循環が始まったものですから、医師不足がずっと恒久化しているわけですけれども、このときに、やはり東京都の方ではそれに対応していかなくちゃならない。まして、今問題になっている小児科と産科、せんだっても問題になりましたけれども、この対応というのは--せんだって、ある大きな、自治医大の方なんですけれども、産科の研修をする希望者が、二年間の研修が終わると約三分の一になるといっていました。九人来ると三人しか残らない。あとは二年の間に洗脳されちゃうわけではないですが、余りのすごさにもうギブアップしてしまう。最初に来たときには、最終的に二年たったら産科の医局に入りたいといったけれども、入らない。今、こういう状態にあるというんですね。小児科もまさしく同じ、麻酔科もまさしく同じ。
 こういう状況が別のところで続いているわけで、こういう人たちを医師アカデミーできちっと確保していくためには、いろいろなことを考えていかなくちゃいけないんですけれども、まず、入ってからやる気のある状況をつくっていくということが一番。モチベーションですよね。
 このモチベーションの問題で幾つかあるのが、一つは指導者の問題、指導医の問題。指導医を東京都が今までずっとつくり続けてきたということは当然ないと思うんですね。これは、性格上そんなことはある必要もないわけであって、それは大学病院が担っていけばいいことだったわけですけれども、今から、人格的にも人間形成の上でも指導ができるような指導医が一人でもなって、それから将来を見据えて、公的病院の医師として生きていく人生観と、あるいは途中で開業医になる、あるいはまた別に行政の方に入っていく考えを持つようなことそれぞれを指導するような、すばらしい指導医がいなくちゃいけない。
 と同時に、今、専門医制度というのが非常に揺るぎ始めまして、私がもともといたころには、医学博士というのは、よくいわれる、足の裏についた米粒といわれるような比喩だったんですね。戦前はそうじゃなかったんですけれども。当時は専門医を取ることが一つの目的であったわけですけれども、専門医自身も、最近いろいろな事件があって揺らいできて、国自身がもう既に、専門医の必要性は認めるんですけれども、今の専門医制度の是非は、非常に危惧感を持っている。ですから、上級専門医制度というものを今取り組んでいるわけです。
 私自身も、その上級専門医制度の委員会に入ってやっているんですけれども、なかなかこれも、まさしく指導医がいないために、どこでどう取らせていいのかわからない。形だけつくっても、いわゆる本物の専門医をつくるというシステムは、日本はアメリカに比べて大変おくれているものですから、それがない。そうなると、医師アカデミーに入ったときに、本当に専門医が取れるのか。あるいは、大学に籍を置かなくてそういうラインに乗れるのかということもみんな心配だと思うんですね。
 ですから、せっかくたくさんの貴重な症例を見ながら勉強していく中でも、アカデミーに入る人たちのモチベーションをちゃんと保って、何年か行った後に、医師アカデミーで研修が終わった後にきちっと都立病院に勤めたい、しかも我々が求めている診療科目にこぞって入ってきてくれるというようなシステムをつくっていかなくちゃいけないんだと思うんですね。
 先ほどちょっと指導医の話をしましたけれども、指導医をつくっていくというか、医師アカデミーを成功させる大きなポイントの一つになる、優秀な中堅医の人たちの層を厚くしていくための方策、何かあればお聞かせいただきたいと思います。

○及川経営企画部長 中堅医師の確保、定着についてでございますけれども、これまで私どもも、先生ご指摘のような医師不足に対しまして、幾度となく大学の医局の医学部長あるいは主任教授と、派遣についていろいろ協議を重ねてまいりましたけれども、やはりお話のとおり、なかなか難しいと。大学そのものも本当に危機的状況だというようなところが多くて、私どもとしては何とか医師不足に対応したいと思ってお願いをしているんですけれども、なかなか難しい状況が続いてきております。
 こういう厳しい状況にありましても、やはり都立病院がこれまで担ってまいりました行政的医療をきちっと安定的に果たしていくためには、また、お話にありました医師アカデミーを魅力的なものにして体系的に研修を行っていくためにも、お話にある中堅医師の確保、定着が何よりも重要だと私ども認識しておりますし、その取り組みについては喫緊の課題であるというふうに考えております。
 これまで、医師の確保、採用確保の困難性を考慮して手当等の増額などを図ってまいりましたけれども、現下はさらに厳しいということを踏まえまして、実は来年度に向けて、処遇のなお一層の改善とか、中堅の医師が研究、研さんを積むといったことを支援するための、研究研修費といっているんですが、こういったものの増額などについて、現在、関係局と検討を進めておるところでございます。

○田代委員 いろいろご努力いただいているのはよくわかるんですが、先ほど申し上げましたように、行政的医療を当然続けていただかなくちゃなりませんけれども、やはり先駆的なことに対しても東京都は勇気を持って取り組んでいただきたいんですね。
 ある意味では、医師だけ、あるいは病院サイドだけの問題ではなくて、患者さんとの対応があるわけですから、やはり医師と対面したときに患者さんが納得するような状況もつくっていかなくてはならない。それは、ある意味で医師側がアメニティーもよくしていく。例えば、だらしない格好はさせない、白衣をきちっと着せる、のりのきいているもので。形から入る必要はないと僕は思うんですけれども、しかし、ある意味では患者さん方というのは、見た目で安心感があって、あまり不精な、不潔な格好をしている都立病院の先生がいると、がっかりしちゃうと思うんですね。そういうものを医師に全部やれというのはなかなか経済的にも難しいですし、これは一般の大学病院のように、すべて大学で白衣の洗濯をして、ユニホームに着がえると。余り自由にしない。
 一番もめている教育の現場で、余りにもだらしない格好をしている学校の先生たちに教わっている子どもたちがまさしくだらしなくなっていくのと同じことでして、気分的なことがあるので、これはきちっとやっていただきたいんですが、公的病院に勤めている医師が、みんなお給料が上がると喜ぶかというと、実はそうじゃないんですね。
 これはもう何回も申し上げてありますように、この職業、医師という職業はちょっと特殊性があって、経済的なものを全く求めないとはいいませんけれども、求めるのであれば、そういう公的なところにはいないという方法があるわけですから、もしくは、そこにいるとすれば、そこでしっかりとした研修ができて、自分の自己検証を高めていくことができるという、そういう努力すれば入れるというシステムがどこか残っていれば、だれでもがそうやって、例えば海外へ短期留学できるとか、そんな必要は僕はないと思うんですね。本当にそれが必要な医者で、あるいは学会に行って発表することが非常にプラスになるような、本人にとっても医学界にとってもプラスになるような発表をするときには、それをきちっとフォローしてやるシステム。ですから、逆にいうと、お給料の問題ではなくて、ダブルキャストで全部やらせていただきたいんですよ。
 これは定員法もあっていろいろ難しいんでしょうけれども、自分が何か研究に入るときに、きちっとそれに対応できるような医師が、信頼できるもう一人のダブルキャストがあれば安心して仕事に打ち込んでいくことができるし、患者さんも診ることができる。逆にいうと、一人の医師が一診制で見ていくのと、二診制、多診制で診ていくのでは、意見もやはりいろいろ出てきますし、ミスも少なくなるし、しかも後からいい逃れもできない、ほかの医師もチェックしているわけですから。そうなると、安心して休むことができる。
 今、産科の病院での問題というのは、全部といっちゃいけませんけれども、ほとんどが僕が知っている限りはアルバイトの医師が来たときの説明の対応なんですね。それは、相手の方の性格を知っている主治医がその夜いれば、こういうことをいったら、この人はきっと気を悪くするだろうなと思うから別のアプローチをするんですけれども、ぽんと大学から来たお医者さんは科学的なことだけを話してしまう。そうすると、コミュニケートがとれなくて大騒ぎになって、後で事務長が行ったり院長が行って話すとわかるんですけれども、非常にくだらないトラブルになる。ですから、いつも共通した知識をダブルキャストで患者さんに持っている、あるいは診療科目に持っているということが必要で、余りお給料の面だけでということでこれが解決するとは僕は全然思っていないんですね。
 もっとほかの悩みがあって、もっともっと新しいことを知りたいし、それから図書館も欲しい、あるいは共同の医局も欲しい。それも、いつでもインターネットがつながっていて海外の学会の状況が見れるようなものがあれば--逆にそういうところに残れない。そういうものが使えないようなお医者さんであれば辞めていかざるを得ないわけですから、もうちょっとモチベーションをしっかりつくって、インセンティブを上げていくための具体的な、ただお金で釣ろうというのは余り意味がないんじゃないかなと思うんですね。そこのところはお考えいただけたらありがたいと思います。
 もう一つ、産科、先ほどお話ししたあれですけれども、お医者さんが足りない。足りない医師の中で、特に医学部の受験生の変動もあって、我々のときは一割いるかいないかの女性医師が今はもう約半数いらっしゃる。そして、その半数の女性医師の中でも特に産科をしっかりきわめていこうという人もいるわけですけれども、そういう人たちの問題が二つありまして、一つは、本当に第一線で活躍できる状態になったときに、ご自分のお産であるとか保育であるとかというものにぶつかってしまう。
 もっと大きな問題は、一度リタイアすると、今の医学というのは甚だしく進んでいきますから--せんだって発表のあった幹細胞における脳梗塞の治療なんていうのは、昔は想像もできなかったけれども、あんなにすごい結果が出てくるようになったわけですね。もう障害が残らない時代が来るかもしれない。それほど新しい知識は、半年ぐらいでどんどんどんどん治験が出てくるものですから、一年、二年、三年と女性医師がリタイアして戻ってくると、その間全く情報がないということで、非常に戻りづらい。
 ですから、抜けている間でも女性医師がいつでも、あるいは、実は女性医師の問題じゃなくて今から男性医師もそうやって産休をとっていく時代に入ってくるでしょうから、そうなると、それぞれの医師が自分の家庭を見ながらでも戻っていくことができるようにするためには、やっぱり時々顔を出さなくちゃいけないけれども、一時期、安心して家事、育児に専念できるためには、やはりダブルキャストじゃなきゃ無理なわけですね。患者さんも安心できない。今まで説明した先生と今度来た先生がいっていることが全然違いますでは話にならないですけれども、まず最初に東京都は、手本として、女性医師だけではなくて医療従事者の方々、看護師さんも含めてすべての人たちがきちっと最低限人間らしい生活ができるような、保育室であるとか育児に対する最低限のきちっとした対応をしていただきたい。
 これは前々から要望しているわけですけれども、こういう産科医師を中心とした医師の定着というものを図っていくために、東京都はどういうことをお考えになっているかを教えていただきたいと思います。

○及川経営企画部長 お話にございました都立病院におきます深刻な産科医不足についてでございますが、ご指摘のとおり、産科医療の特性や状況を踏まえた対策がやはり必要であるというふうに考えておりまして、例えば、産科医師の絶対数が今足りておりません。全国的にも足りておりませんので、そういった確保するというだけで極めて困難であります現下の状況などを踏まえまして、さらにもう一歩、委員お話のあった給与だけでなく、さまざまな処遇についての改善などについて、現在、関係局とも調整をしながら検討を進めております。
 また、これもお話にありました、産科を含めて増加をしております女性医師の定着対策につきましては、やはり仕事と育児の両立を可能とするような勤務環境、こういった環境の充実が不可欠であるというふうに考えております。
 解決方法といたしまして、お話にもありました二十四時間の院内保育室につきましては、来年度、何とか運営実施に向けて今準備をしているところでございまして、さらに加えまして、育児をしながらでも医療にも従事できるといったような柔軟な勤務の体系といいますか、いわゆる短時間勤務制度といっているんですが、そういった制度の導入につきましても、現在、精力的に関係局と詰めているところでございます。

○田代委員 先ほど申し上げましたように、女性だけではなくて全員に対してそういう対応をしていただきたい。
 特に、休んで復帰した後の復帰の支援システムをちゃんとつくっておかないと大変難しいと思うんですけれども、二十四時間の院内保育室、これいいんですけれども、日本は、今から十七年ぐらい前になりますけれども、イギリスで院内感染ができたときに笑ったんですね。ひどい国だな、相変わらずイギリスってどうしようもないなといったけれども、今、世界一の院内感染--院内感染を起こさない病院はゼロになっちゃったんですね、日本は。どこを探してもMRSAがある。
 ですから、無理に考えなくても、東京都が独自にあれだけしっかりしたものを、認証保育所というのを考えたわけですから、病院の周りに幾つでも、考えればやりようがあると思うんですね。あるいは、都立病院の職員の住居のマップをつくって、どこの病院の人でも、都立病院の関係者であればそこに預けることができるような具体的な工夫をしていただかないと、ただ中につくりましたというだけでは、なかなか利用率が上がらないかもしれません。ですから、具体的にみんなができてよかったと思うような状態にしていただきたいんです。
 それと同時に、全体の医師の不足というのが大きな問題なんですが、医師不足に対して、何せ都立病院、今から医者を集めるぞというだけではなくて、東京の医療全体の手本としてよくしていくためには、国にも物をいっていくし、問題点があるところは問題点も挙げていくぞと。一番踏み込めない一点十円という値段に対しても、九円が正しいのか、十一円が正しいのか、これはいろいろな考え方があると思いますけれども、東京都の現状に即した医療の向上を含んで医師の確保に向けていく都立病院の覚悟というか決意を本部長に伺いたいと思います。

○秋山病院経営本部長 ただいま田代委員から、都立病院を取り巻きます課題につきまして大変貴重なご意見をちょうだいいたしました。
 まず医師の不足でございますけれども、申すまでもなく、私ども病院経営本部は病院という事業を運営するものでございまして、医師不足に関しましても、このような現場の視点から原因を分析して、現場で展開できる地に足のついた効果的な対策を進めていくというのが本筋だろうというふうに思っております。
 昨今の医師不足、さまざまな要因が指摘されておりますけれども、病院を運営する立場から端的に申し上げれば、委員ご指摘のとおり、大学医局の医師派遣能力の低下が直接的な原因ということがいえるかと思います。
 また、現在の医療制度の実情や国の施策の方向性を見ますと、将来にわたりまして医局が従前のような機能を取り戻すというようなことは難しいだろうということを前提にして対策を講ずべきものという基本認識に立っております。
 この点で、都立病院みずからが一体となって医師を育てる、で、それを確保していくという東京医師アカデミーを成功に導くことが、現場において実行可能で、かつ極めて効果的な対策だというふうに思っております。
 既に、来年度の開講に向けまして、約百名の医師アカデミーの第一期生を募集いたしました。約一・八倍の応募がございました。全国的にいわばシニアレジデントの争奪合戦というべき状況が展開されている中で、まずは順調なスタートが切れたものと考えておりますけれども、一方で、委員ご指摘のとおり、多数の研修生の能力向上を図るための指導医層の確保、これが当面の大きな課題となっておりまして、現在、来年度予算で、指導にかかわる医師への対策、処遇等々を一生懸命努力しているところでございます。
 さらに産科医の不足につきましては、人数そのものが、全国でも東京でも急速に減少していると。大変厳しい状況にございます。そこでまずは、給料だけではないというお話もございましたけれども、都立病院の給与水準は極めて低いということも考えまして、医師の不足状況や激務を反映した処遇改善で産科医全体のインセンティブを高めようという取り組みとともに、先ほど部長から説明した、育児を行う女医先生方への対策などを講ずるということで総合的な対策をしていきたいというふうに思っております。
 本部長就任以来、多くの医科大学、医学界の関係者と協議をさせていただいておりますけれども、その中で、これまでのように都立病院の役割とネームバリューをもちまして一生懸命お願いをすれば医師が大学からやってくる、ないしはその引き揚げが食いとめられるというような状況はここ数年で一変しておりまして、本当に深刻な事態にあるというふうに身をもって痛感しております。
 しかしながら、病院経営におきまして、医師が確保できなければ医療サービスはもう不可能、これは自明の理でございますので、都立病院が総合診療基盤に支えられた行政的医療を安定的に提供していくというためにも、本部及び都立病院が一体となって医師の確保に全力を挙げていきたいというふうに思っております。
 また、医師確保対策を初めとしまして、委員ご指摘の予約システムやカード決済の検証というのは患者サービスの向上の側面、それから今、電子カルテを有効に診療に活用するため、フェース・ツー・フェースの問題とか、医療クラーク等専門職の活用などの問題に関しましていろいろご意見を賜りまして、他の医療機関のモデルとなるよう、委員ご指摘の気概を持って全力で取り組んでまいりたいと思っております。

○田代委員 大変力強いご答弁いただいて、これからの都立病院、明るくなると思うんですけれども、明るくするための実行でございますから、特に大学病院が出せないということについてのいいわけとか理由は、話すとくどくどとなりますが、大変大きな理由があるんですけれども、そういうことも含んで、先ほど申し上げたように、国のかわりに今度は東京都が全体の医療行政というか医療プランをつくっていかなくちゃならない時代にいよいよ入ったわけでありますから、やはり大学病院とのコンタクトも今まで以上に綿密に、しかも、いつも、常時コンタクトがとれるような形が、逆に、医師アカデミーを実行していく上で、指導医というものの専門的な教育をやっていた大学の力もどんどんどんどん利用していくことが必要かなと思います。
 特に都立病院に対しての都民の希望、要望というものは、本当に物すごく大きなものがあるわけですから、やはりそれを一つ一つうまく取り上げていくためには、もっとわかりやすいような、恒久的に簡単に記入できるようなアンケートシステムみたいなものもひとつつくっていただいて、ある意味では、文句がいえれば少しガスが抜けるというところが全然ないわけではありませんから--本当に都立病院へ寄せていただくと、あの混雑の中で患者さんもよくじっと我慢しているなと思います。それでも、ほかの病院に比べればいいところはいっぱいあるんですけれども、それが都立のよさですから、もうちょっとアメニティーを向上するためにはどうしたらいいかということを、きょうは時間がありませんからPFIの話はしませんけれども、新しい形のそういうものも考えながら進めていく。職員がみんなやる気になれば、患者さんも明るくなっていくと思います。
 ということで、次の松沢病院に移らせていただいて終わりたいと思います。
 今、医療観察法病棟の整備についていろいろ問題になっているわけですけれども、松沢病院は、ご存じのとおりに非常に古い歴史、明治十二年ですから、東京府で癲狂院として始まって百三十年、記念式典も行ったわけですけれども、最古の、日本では一番歴史の古い、精神科の公立病院としてはそういう状況を持っているわけですね。現在のいわゆる松沢病院のあの八幡山の土地に移ってから、もう九十年になる。この間、長い地元の皆さん方の協力があって、理解があって--本当に精神科医療というものは、今まで我が国では、国でもどこでも、ある意味では、ちょっとおざなりにするというか、何とかにふたというか、真剣に取り組むという状況がなかったわけです。
 ところが、昨今、人権問題とかいろいろなことが出てきて、しかも精神科疾患というものが科学的に解明されてきて、昔は、何だかわけわからなかったら、どこか閉じ込めておけばいいといったら悪いですけれども、戦前の考え方はそういうところがあったわけですけれども、近年は、薬物によっても随分症状がよくなってくる、しかも高齢化社会になってきて、男性でも女性でも更年期というものがあって、しかも、その中に大きなポイントとして、うつというものがあるんだということも、うつ症状を出すこともわかってきた。ですから、いろいろなケース・バイ・ケースの精神科疾患があることがわかってきたわけですね。一つで一くくりできないようになってきた。
 やっとそうなってきて国の対応も始まって、今度、この医療観察法の病棟ができるわけですけれども、これに関しても今まで二転三転で、やっとこれに落ちついたからこのままいくかどうかはわかりませんが、やはりここで問題になる、犯罪を犯した人の人権というものも考えていかなくてはならない。そして、その人たちの治療というものも、今までのようにただ閉じ込めていくという形ではなくて、積極的に社会復帰も考えていかなくちゃならない、そういう近代社会になってきたわけですね。
 でも反面、もう一つ考えると、今までの長い間、九十年の間、そういう社会の差別と闘ってきて、患者さんたちあるいは病院をある意味では支援して守ってきてくれた地元の人たちの気持ち。急にまた国からぽんといわれたから、確かに東京都が何かをしようとするなら、東京都は国のいわれるとおりに動くしかないわけですけれども、ただいわれたからやるんだという対応で地元の人と話し合っていくのはいかがなものかなという感じがするわけですね。
 この病棟自身、今必要じゃないわけではなく、まだまだ足りない。どうしても今からこういう触法の患者さんたちを社会復帰させていくためには、大きな一つの考え方を持って具体的な病棟運営をしていかなくちゃならないわけですけれども、今、厚生労働省によると、触法の精神障害者の人たちというのは年間約三百人発生するということなんですけれども、特にその中では殺人、放火、大変大きな事件を起こす方もいるわけです。だけど、それぞれの自治体でそれぞれ責任を持って今からやっていく状況ですから、やはり東京都も、五百万人に一カ所という中で、千二百万人いるわけでありまして、先行して開設された国立武蔵ではもう満床状態が続いているわけですね。そうなると、やはり歴史が長くて、東京で一つということは、逆にいえば、我が国でもナンバーワンの、アジアでもナンバーワンのこの精神科の専門病院がこの医療観察病棟を無視して運営していくということはできないだろうと思っています。
 ただ、安全性というものはしっかり確保されていかないと、住民の方たちから--その必然性、必要性は、それはよくわかっていると思うんですよ、地元の方々もね。精神科疾患の人たちをきちっと人間性豊かに扱っていかなくちゃならない、それは当然わかっていることであるんですが、逆に、現実の問題としての安全性というものの説明が行政からしっかりなされないと、それから、将来どうなっていくという一つの精神科医療に対する考え方も行政から説明されれば、当然、一番長いこと地元で苦労なさってきた方々ですからご理解いただけると思うんですけれども、実現するためにはそこの努力が必要だと思うんです。
 医療観察法に基づく病棟の施設面とか運営面の安全性ですね、前にも申し上げましたけれども、しっかり中を見せていただくということも含めて、どういうふうなお考えで進められていくのか、お答えいただきたいと思います。

○及川経営企画部長 医療観察法に基づく病棟でございますが、患者の早期社会復帰を目指しまして、その症状に応じた手厚い専門的な医療を提供するといった施設でございまして、患者の治療や療養環境に配慮した整備を行っていく必要がございます。
 同時に、本病棟の性格上、無断退去や外部からの接触等を防止する必要がございますことから、委員ご指摘のとおり、患者のプライバシーや人権に配慮しながら、一般精神医療の病棟とは異なります高い安全管理の対策が必要というふうに考えております。
 このため、病棟の施設面におきましては、閉鎖病棟としまして、玄関は電気錠によります二重構造とするほか、窓の材質や構造の強化、病棟周辺へのフェンスやセンサーの設置など、安全上の工夫を行ってまいります。
 一方、運営面におきましては、一般の精神科病棟に比べまして、二倍から三倍と手厚く配置をされます職員が十分に見守りを行うほか、専属の警備員を二十四時間体制で配置をしまして、入退室者のチェックや巡回などを行います。
 また、地元関係機関や住民代表で構成をいたします地域連絡会議を設置いたしまして、地域との連携体制のもとで安全管理の対策を推進してまいります。
 また、委員のお話にあった、病棟の開設などに先立ちましては、地域の皆様に見学会を開催いたしまして、住民の方の目で直接病棟の安全対策を確かめていただくなどの機会も設けていきたいというふうに考えております。
 こうした取り組みによりまして、病棟の施設面、運営面での安全対策に万全を期してまいりたいと思っております。

○田代委員 ぜひともその努力を続けていただきたいと思うんですね。やっぱり物を見せるというのはとても重要なことですから。
 住民の方の最大の不安というのは、医療観察法の病棟ができてしまうと、精神障害に由来するものとはいっても、重大な他害行為を行った人たちが自分の身近に来る、これは心配なわけですね。当然その方たちの治療を受ける権利や人権を考えれば、専門病棟をつくって対処するのは当たり前のことであって、普通のことなんですが、しかし逆から見ると、住民の心配も普通である。
 法律ができたから、国が決めたから、こういうことで松沢病院でもやりますというのは、一刀両断で話を進めてしまおうとすると、先ほど申し上げたようにやっぱりうまくいかないわけですから、何回もご努力をいただいて説明会をやっていただいていると思いますけれども、我々の医師のインフォームド・コンセントと同じで、幾ら医師がしゃべっても患者さんに伝わらなければインフォームド・コンセントにならないわけであって、アカウンタビリティーをしっかり果たしていただきたい。
 ただし、この問題が早く解決というか、いい方向にしっかりと話が進んでいきませんと、やはり住民の方との関係の中で、全く関係ないのに政治的な意図を持って動いてくるような、成田闘争じゃありませんけれども、本来とは違うようなことをしようとする動きがないわけではありません。それも、今の自由主義の社会ですから、どんな行動があってもいいわけですけれども、やはり都民の方々、地元の方々の気持ちを逆なでするような、政治闘争にだけ転化していこう、こういうことにならないようにしていただきたいんですね。
 例えば今答弁にあったような病棟の施設面とか運用面の安全についても、もっともっとアピールしていただきたい。逆にいえば、行政が絶対に安全だと太鼓判を押すぐらいにしていただきたいと思うんですが、この病棟の安全対策についてはどのように住民に説明して理解を求めていくのか、伺いたいと思います。

○及川経営企画部長 医療観察法に基づく病棟の安全対策につきましては、これまでも、周辺住民全体に対する説明会を初めといたしまして、町会や地元商店会などを対象としました説明会におきましても、先行いたします国立病院での具体的な例なども示しながら説明をしてきました。
 もちろん、こうした説明だけで住民の方の不安がすべて解消できるとは思ってございません。今後、実際に建設をする病棟の設計が進んだ段階で、再度、住民説明会を開催するなどしまして、病棟の構造やセキュリティーの設備の概要など具体的な安全対策について、よりきめ細かく丁寧に説明をしていくつもりでございます。
 また、先ほどお話もありましたように、見学会等を開きまして、ぜひ実際に見ていただいて、その安全性についても確かめていただきたいというふうに考えておりまして、こうした取り組みによりまして、より多くの地域住民の方からご理解をいただけるようにさらなる努力をしてまいります。

○田代委員 最後に一言申し上げて終わらせていただきたいと思います。
 住民の方々が心配なさっているのは、普通に生活している一般の方々の家から、非常にこの病棟が近いということなんですね。あれだけ広い、広過ぎるとは僕は思っておりませんけれども、前に申し上げたとおり、まだまだあってもいいと思いますけれども、あれだけの広さの中ですから、最初から決めた計画どおりにここじゃなきゃだめだという決め方がいいのか、やはり、もうちょっと住民の方々の考え方をしっかり取り入れて、将来的にも共存共栄して、長いこと精神科医療の専門病院としての松沢病院を見守ってくださっていた地元の方々の考え方にある程度即していくためには、手続がどうだとか、計画だからということだけではなくて、やはり建設予定地を見直す努力をしっかりやっていただきたいと思うんですね。
 時間が大変難しいということはあるんですけれども、やはり今からの長い精神科医療の中では、この病棟を建設する場所も具体的に--もしくは設計どおりにするんだとすれば、もうちょっと考えて、皆さん方の住んでいるところからも少しでも距離があく、そして、周りにある程度公的な病院システムみたいなものがあって、ある意味では二重にも三重にもブロックされているという安心感があるような具体例に進めていかれることを強く要望して、質疑を終わります。

○長橋委員 私からは、先日の福祉保健局の事務事業質疑でも取り上げました発達障害支援について伺いたいと思います。
 ご案内のとおり、発達障害者支援法は平成十七年の四月に施行されました。この中で、特に大塚病院の小児精神科外来の設置については、私も含め我が党は、ことしの予算特別委員会でも、昨年の予算特別委員会でも、その前の予算特別委員会でも、大塚病院の小児精神科外来を取り上げてまいりました。初めて取り上げたときに、都立梅ケ丘病院が移転統合されるに当たって、区部に、大塚病院にもつくる、設置をするという答弁が出て、私は地元でもございますし、また関係者の方からも大変な声がありまして、その声というのは、一日も早くということでもありますし、歓迎もあったわけであります。
 そしてまた昨年では、じゃ、いつ設置をするのかということについては、府中にできます小児総合医療センターの設置に合わせて適切な時期にやりますということでございました。要望を受けてそのように答弁があったわけであります。そして、本年の予特で初めて、この小児総合医療センター、平成二十一年末の開設を視野に入れて、それ以前に運営できるよう万全の準備を整えていきますということで、府中の小児総合医療センターよりも早く、この大塚病院の小児精神科外来は運営をするというふうに答弁が出てきたわけであります。
 私が思うには、三年かかってそういう答弁が出てきた。大変なご努力があるだろうし、今、田代先生から医師不足というお話もありましたが、特に小児精神科外来の医師というのは大変少ないわけでございまして、この確保というのは大変だろうなと思うわけであります。
 そしてまた、平成十七年四月の発達障害者支援法の施行を受けて--それまでは、私自身もそうだったんです、発達障害という言葉を知らなかった。その前、専門家の方たちはもちろん、また理事者の皆さんはご存じだったと思いますけれども、世間的にも認知をされていなかった、そういう状況でありました。それが、この法律が施行されて、あわせてこの発達障害者の児童、いわゆる広汎性発達障害とか、中には知的障害を伴わないアスペルガーとか、そういうことが認知をされてきて、また、それにあわせて児童が急増しているという話もあります。
 梅ケ丘病院にお邪魔したときには、この間もいいましたけれども、診療を受けるのに数カ月も待たされるという話もありましたし、また医師の方も、市川院長に聞きましたら、一日八十人の診察をこなすと。一日八十人といったら、一人何分だろうか、こういうふうにも思ってしまうわけであります。
 今までは、ちょっと変わった子というような認識でしかなかった。親も、自分の子どもはちょっと変わっているなという認識しかなかった。親もわからなければ周りもわからない、そういうのをこの障害であるというふうになったわけです。さんざっぱらやってきましたので、ちょっと変わっているというと、私自身もちょっと当てはまるのかななんて思ったりした場合もあるし、私の周りにも、そういう人はいないでもないなと思うわけでありますが、そういう中で、大塚病院の小児精神科外来、この六月に、いわゆる整備計画が出ました。私はこれを見て、いよいよ目に見えてこの計画が出てきたと、大変うれしく思ったわけであります。
 ちょっと確認なんですが、そこに、この整備計画の考え方というところに、大塚病院小児精神科外来の設置はどういうことかというと、移転統合される梅ケ丘病院の医療機能のうち、小児精神科の外来部門を周産期小児医療センターである大塚病院に一部移転し、区部における小児精神科外来機能を確保するということでありまして、私は、この梅ケ丘病院から府中と大塚、拡充をされるというふうに思っているわけですけれども、これはどうしても、小児精神科の外来部門をそれぞれ、基本的には府中に移すけれども、残りを大塚病院に移転するというような文章に読み取れるというふうに思うわけなんですね。そこら辺どうなのか。
 今度新しく大塚病院に移転する意味、多摩と区部に移転するという意味はわかるんですけれども、ではこの機能はどうなのか、この大塚病院の事業規模を具体的にご答弁をいただきたいと思います。

○黒田参事 大塚病院におけます小児精神科外来についてのご質問でございますが、最近十年間の、お話がございました梅ケ丘病院の患者動向を見ますと、初診の患者数が一・六倍というふうになっておりまして、増加傾向にある中にございます。
 一方、梅ケ丘病院の施設の老朽化が進んでおりまして、今後求められます心と体の総合的な医療を提供することが難しい状況でありまして、移転統合いたしまして小児総合医療センターを整備いたしますとともに、先生、今お話がございました大塚病院にも小児精神科外来を設けるものでございます。
 その場合の双方の関係につきましては、基本的に、現在の梅ケ丘病院の規模は、府中病院、府中キャンパスにできます小児総合医療センターに引き継いでまいります。それに加えまして、それにさらにプラスする形になりまして、大塚病院では小児精神科外来に取り組んでいくものでございまして、お尋ねのございました具体的な規模につきましては、外来診療では一日当たり三十人程度を想定しております。また、デイケア、これも非常に重要な機能なのでございますが、五十人程度の登録人員を想定しております。

○長橋委員 今、明確にご答弁をいただきまして、現在の梅ケ丘病院の機能はそのまま小児総合医療センターに引き継ぐ、さらに、それに加えて大塚病院で拡充を図る、こういうことでございまして、そういう説明が書いていない。ぜひそういった説明をきちっとしていただきたい。
 ご案内のとおり、私のところにも来ています、梅ケ丘病院の存続を求める、こういう方々もいらっしゃるわけでございまして、拡充をする、さらに、府中においては発達障害だけではなくて総合的に連携を図っていくということでもあろうかと思うわけであります。
 そこで、特にこういう児童の障害であります小児精神科でございますので、今お話のあった、外来診療とデイケアを行うと。それぞれ、外来診療では一日当たり三十人、デイケアでは五十人の登録人員を想定しているということでありますが、そういう子どもは、じっと診察を待っていられなかったり、また、デイケアということで、まさに療育の分野ではさまざまな配慮が必要でなかろうかと思うわけでありますが、そうした外来、デイケア、発達障害者のための環境整備をどういうふうに進めていくのか、施設の概要を含めてお尋ねをいたします。

○黒田参事 大塚病院の小児精神科外来棟でございますが、こちらの設計を進めるに当たりましては、小児精神という専門的な医療を提供する観点ですとか、利用者の特性等、子どもさんという特性を踏まえたものとする必要があるというふうに認識しておるところでございます。
 まず外来部門におきましては、診察、検査、相談などに必要なそれぞれの部屋を整備することはもちろんでございますが、先生からもお話のございました落ちついた待合室の整備にも配慮することで、子どもさん、患者さんが安心して受診できる環境を整えてまいりたいと考えております。
 デイケア部門につきましては、現在の梅ケ丘病院のデイケアプログラムを基本に考えております。遊びですとか学習、さらには運動など、それぞれの機能別に部屋を整備してまいりたいと考えております。
 こうした考え方で設計を進めることによりまして、利用者、患者さんに配慮した使い勝手のよい施設としてまいります。

○長橋委員 今お話がありました障害を抱える児童だけではなくて、私は保護者の皆さんの負担というのが大変であると思っております。そういう子どもが自分の子どもで、障害があると、なかなか社会の中で認められなかった。また、支援法ができるまではそういう支援もなかなかなかった。本当に、周りからも認められない中で自分の子どもを育てる、どこに頼っていいのか、こんな話も私は何人にも聞きましたし、中には、そういう子どもを持ったがゆえに働くことも難しくなったり、こういう子どもたちは睡眠障害というのもありまして、夜一睡もしないで仕事に行く。ストレスが保護者にもたまって大変な状況になるということでございますので、この大塚病院に来ると、当然保護者も一緒に来るんだろうと思います。保護者の方が本当に安心して任せられる、そういう環境を整備していただきたい、心からお願いを申し上げます。
 また、この大塚病院については、最後に、この整備計画の中に小児精神科外来をどこに設置するのかというのが出ています。私は大塚病院に設置をするということで聞いておりましたので、本館のどこに来るんだろうなと思っておりましたら、この整備計画は、本館の中ではなくて--私は、地元、大塚病院でよくわかるんですけれども、大塚病院の本館の前は駐車場がある。駐車場の一部につくる。別棟をつくるということでありまして、私は、これもまた新たに費用もかかるのになと思いながら、意欲を知ったわけであります。
 大塚病院は、正門があって、正門から入ってまずは駐車場があって、本館の正面入り口に着くわけであります。今この計画では、その予定地が、一番この正門に近いところ。一番正門に近いところということは、本館の方とはちょっと距離があるということなんですね。そう考えますと、いざこの病棟が別棟として設置をされると、いわゆる別棟だけですべての診療が済まない場合もあるかと思います。本館に行って診てもらわなきゃいけない。そういったことで、行ったり来たりという状況も生じるかと思うんですけれども、そういう子どもですから、例えばLDとかADHDで、お母さんの手を、保護者の手を振りほどいてどこかへ走っていっちゃう子どももいるわけです。
 そういう中で、駐車場の中につくるというのはちょっと心配があるわけでありまして、そういった本館と小児精神科外来の別棟の動線については当然考えていらっしゃるかと思うんですけれども、そこら辺の安全、どのように考えているのか。できれば、もう少し場所についても配慮するようなことも含めていかがと思うんですが、ご答弁をお願いします。

○黒田参事 小児精神科外来棟の設計におきましては、建物配置につきましては、ただいまご指摘がございましたとおり、小児精神科外来を行う新たな建物と病院本館との動線に、ご指摘がございました安全性等を含めて十分配慮しなければならないと認識しております。
 新たに整備する建物の位置としましては、当初、できるだけ本館の近くにと考えておりましたが、現在、敷地内には、例えば液体酸素のタンクなどさまざまな既存の構造物がございます。これらの関係から、整備計画の中では、今お話がございました正門の入り口のわきに予定しているものでございます。
 しかしながら、今後、設計作業を進める中で、さまざまな条件をさらに精査しながら、引き続き患者動線について検討してまいります。

○長橋委員 区部の皆さん方も含めて大変に期待をされているわけでありまして、万全の準備、環境整備も含めて、開設に向けてご努力をいただきたいと思っております。
 また当然、今お話のあったとおり、外来とデイケアがありますので、入院については、府中の小児総合医療センターと連携をとって、そういったことにも配慮していくという答弁もいただいているわけであります。
 何よりも心配なのは医師の確保でございます。これについては、きょうもありましたし、今までも医師不足という中にあって、その確保に向けては、今、梅ケ丘病院の人材を供給していくということもあると思いますけれども、やはりこういった、いわゆる小児精神科外来、私もこの問題を取り上げたときに、民間ではどれくらいあるのか、どこにあるのか、こういうことを調べたんですけれども、明確にこれが治療できる--まだ確立していないそうなんですけれども、梅ケ丘病院だけではなくてここでもできるよというようなことを、そういうこともご案内できたらどうかといったら、それもなかなか難しいという状況であります。
 本当にそこに行けば発達障害を診てくれるかというと、なかなかそうでなかったりする場合もある。そういった意味では、府中とあわせてこの大塚病院の小児精神科外来、ここに行けばこの障害が少しでもよくなる、こういうことを期待しているわけでありまして、これは都立病院の担うべき大きな使命の一つだと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 あわせて、早期に開設するということでございます。平成二十一年度末の府中の小児総合医療センター前ということですので、今度お尋ねするときには、いつぐらいにできるというくらいまではご答弁をいただきたいなと思うわけでございますが、よろしくお願いいたします。
 次に、がん医療対策について伺いたいと思います。
 がん対策、我が公明党は、国においても、そしてまた都議会におきましてもたびたび取り上げてまいりました。そして、本年四月にがん対策基本法が施行されました。この目的の中に、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている、そして、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び医師等の責務を明らかにしていくということでございます。
 そこで、東京都におけるがんの死亡者数、これはもう毎年増加をしているわけであります。平成十七年度のがんによる死亡者数というのは、ご案内のとおり全体の三割、約三万人いるということでありまして、常に昭和五十年代から死亡原因のトップはがんであります。
 そういう中で、今、がん対策基本法が施行されまして、それぞれがん対策推進計画を今年度中に作成をするということになっているわけであります。そして、その中で駒込病院をPFI手法、これについてはまた議論あるかと思いますけれども、活用して、がん・感染症医療センターとして整備をする。既に整備事業者も決まっているということであります。
 そこで、都民のがん医療対策を何としても向上させていかなければならないと思うわけでありますが、新たに整備をされます、がん・感染症医療センターの整備を通じて、がん医療の充実をどのように展開していくのか、ご答弁をいただきたいと思います。

○黒田参事 駒込病院は、老朽化の進む設備を刷新いたしまして、最先端のがん、感染症医療を都民の方に提供させていただくために、お話がございましたPFI手法を活用いたしまして、仮称がん・感染症医療センターとして整備することとしております。現在、年内の事業契約締結に向けまして事業者との調整を進めているところでございます。
 整備に当たりましては、通院しながら化学療法や抗がん剤治療が受けられる外来治療センターを拡充するとともに、治療の初期段階からがんの痛みをとりまして、心理面のケアなども行う緩和ケアの専門病棟も整備いたします。
 また、放射線治療時の患者のわずかな動きにも対応しまして、がんの患部を自動的に補正し正確に放射線を照射できるサイバーナイフという最先端の機械がございますが、こういった最先端の放射線機器も導入することとしております。
 これによりまして、難治がん、治療がなかなか難しいがんなどの困難な症例にも対応できる、高度で専門性の高いがん医療を提供してまいります。

○長橋委員 がん医療対策について、今、一生懸命やっている同僚もおります。お伺いをしますと、また私も駒込に行ってまいりましたけれども、例えば駒込病院では、キャンサーボードと呼ばれる制度によって、複数の医師が自由濶達に意見を交わしてがん治療にすばらしい成果を出している、こんなようなことも聞きまして、やはり最先端、日本一のがん医療センター、がんの病院にしていただきたいと思うわけであります。
 昨年の二月に、厚生労働省が健康局長名で各都道府県知事に対して指針を示しました。いわゆる診療連携拠点病院の整備に関するものであります。この中で、従来の二次医療圏ごとの地域拠点病院に加え、その上に、新たに都道府県ごとにおおむね一カ所、広域的な拠点病院を整備するということが厚生労働省から示されたわけであります。
 現在、駒込病院は、二次医療圏において地域がん診療連携拠点病院に指定をされているわけでありますけれども、いわゆる医療圏での中心拠点であるということでありますけれども、その果たしている役割、そしてまた、今後、連携拠点病院としての機能強化についてはどのように取り組むのか伺います。

○黒田参事 駒込病院は、ただいまお話がございました地域がん診療連携拠点病院に指定されておりまして、地域のがん診療水準の向上のためにがんの専門医療を提供するとともに、地域の医師に対する研修会の実施ですとか医療情報の提供、さらには医療相談など患者への相談支援体制を充実してまいりました。
 こうした機能をさらに充実強化していくために、平成十八年度に、地区の医師会の皆様、さらには近隣の大学病院等で構成しましたがん診療連携地域連絡会というものを設置いたしました。緩和医療の提供の体制ですとか地域との連携体制、医療従事者の皆様への研修体系、さらには相談支援体制などについて、現在、協議を行っているところでございます。

○長橋委員 この地域連絡会ですか、がん診療連携地域連絡会を設置しているということで、私も地元の医師会等にもお話を聞きますと、駒込病院に行く機会もあって、さまざまな意見交換といいますか、やっていますということで、駒込病院はそういったところにも力を入れているというふうにも聞いております。ぜひそうした医療圏の中にあって、民間の医師会、病院ともさらに密接な連携を図っていただきたいと思います。
 先ほど申し上げました都道府県のがん診療連携拠点病院、厚生労働省は、今年度中に東京都における拠点を指定するというふうに聞いておりまして、聞きますと、本年一月末現在で、もう既に三十一府県ではこの広域的な拠点病院は整備をされているということでございます。この駒込病院が、今、種々お答えをいただいた最先端のがん医療に取り組んでいるということでございますので、他の医療機関への支援を強化することによって、都のがんセンターとなるような国の指定する拠点病院の指定をぜひとも目指していただきたいと思うわけでございます。
 また、何カ所指定されるかわかりませんけれども、駒込病院、この指定されるということを目指すのであれば、やはり臨床だけではなくて、がん治療についてはさまざまな治療があるわけであります。粒子線治療だとか陽子線治療とか、我が会派の同僚も、全国のそういった最先端の技術を見に行っているわけで、私も一緒に行ったところもありますし、そうした研究との連携も必要ではなかろうかなと思うわけであります。
 ぜひこうした臨床と研究、こういった連携も含めまして、最後に本部長に、このがん医療の充実に取り組む決意、取り組み、ぜひ力強くご答弁をいただきたいと思います。

○秋山病院経営本部長 先ほど長橋理事よりご指摘ございましたとおり、がんは都民の死亡原因の第一位でございまして、今後ますます高齢化が進むということにかんがみますと、今後とも増加していくということが推測されます。
 今や、がんは、国民病、ないしは我々都の立場からいえば都民病と呼んでも過言ではないというような状況になっております。都立病院におきましては、これまでも、駒込病院を中心にいたしまして、難治性あるいは合併症併発のがん治療を行政的医療と位置づけまして、重点的に取り組んでまいりました。また、医療の世界はまさに日進月歩でございまして、医師、看護師を初めとする都立病院の医療従事者は、常に最新の技術の習得や情報の収集に努めてきたところでございます。
 がんを完全に克服するというのは、現時点では大変に困難ではございますけれども、一人でも多くのがんの患者さんの命を救うということは、都民の皆様の安心につながるものというふうに認識しております。
 したがいまして、病院経営本部といたしましては、駒込病院の整備に当たりまして、最先端の治療機器の導入はもとより、お話の臨床と研究との連携の仕組みづくりに取り組むとともに、他医療機関への支援体制、患者の相談支援体制などを強化することによりまして、都のがん医療の中心的な役割を果たせるよう整備をしていく考えでございます。
 また、センター的機能を強化した駒込病院を中核といたしまして、各都立病院とも密接に連携を図り、都立病院全体でがんに対する医療提供体制の強化を図ってまいります。

○かち委員 私からも、まず患者医療サービス向上、そして患者中心の医療について何点かお聞きします。
 今もお話がありましたように、日本人の死亡原因の第一位を更新し続けるがんの克服は、国を挙げての重要課題となっています。この間、がん患者当事者の皆さん、また家族や遺族の方々の悲痛な訴えや運動が世論を動かし、ようやく本年四月にがん対策基本法が施行されました。
 都立駒込病院では、早くから地域がん診療拠点病院として、院内登録を初め、多職種によるチーム医療に先進的にも取り組んでまいりました。日進月歩の医療技術の進歩の中で、がん医療も、より全人的アプローチが求められています。がん医療の均てん化ともいわれておりますが、どこの病院で治療をしても同じようなレベルの医療が受けられる、これが今の課題となっています。そのためにさまざまな取り組みが進められているところですけれども、その一つとして、多職種によるチーム医療の力量アップが求められています。
 都立駒込病院では、こうしたことにも取り組んでいるわけですが、今もお話がありましたように、都道府県がん診療連携拠点病院として申請をしているところでもあり、都内のがん医療の先端的役割を担っています。都内の他の病院での人材育成の拠点としても、その力が期待されているところです。
 そこで、現在、駒込病院では、医師以外の職種の研修受け入れ状況はどのようになっているでしょうか。

○黒田参事 駒込病院ではこれまで、東京女子医大看護学部、さらには千葉大看護学部などから、認定看護師の資格取得カリキュラムの一環としまして研修を受け入れておりますほか、公開講座の開催や各種講演に講師を派遣するなどの啓発活動につきましても積極的に行ってきておりまして、引き続き実施してまいります。

○かち委員 看護師に対する専門研修を受け入れていらっしゃるということでありましたけれども、私、実は最近、多職種のコメディカルのスタッフの皆さんのがん専門レジデント制を来年からスタートさせるという静岡の県立がんセンターに行ってまいりました。がん患者を中心に、がん専門の高度な医療従事者を養成するため、全国的にも先駆的な取り組みとして、看護師や薬剤師や、各種技師からMSWや心理療法士など、十一種類の専門職の医療従事者を対象とした職種別の研修制度を創設したということです。二年コースで十八人程度を予定しているとのことでしたけれども、それぞれの職種が研修プログラムを立てて臨床で体験研修をしながら、二年間研修を積み重ねていくというもので、チームコンファレンスなども活発に行われているとのことでした。
 今後、患者中心のがん医療を進めていく上でも、このような多職種による研修制度というものも必要であると考えますが、都立駒込病院でもこのような研修制度を視野に入れた研修のあり方を検討することを、まず求めておきます。
 次に、私の友人が、もともと糖尿病があったんですけれども、子宮がんを発見され、ついては、最も信頼できると思われる有明の癌研に行き、断られました。がんセンターにも行きましたが、断られました。なぜかといいますと、いずれの病院も、がん医療については権威なのですけれども、持病を持っている人はだめなんだということなんですね。驚きました。
 しかし、人間である以上、何らかの持病を持っているということは大いにあり得ることであります。それで、だめだといわれて大変ショックを受けたんですけれども、友人は別の大学病院で無事に手術を終えることができました。
 駒込病院ががん・感染症医療センターとして今後再整備されるということになっておりますけれども、こうした患者さんにもこたえ得る、総合診療基盤の上に成り立つ病院であるべきで、両輪で進めるべき課題であるというふうに思いますけれども、その辺を確認したいと思います。

○黒田参事 がんに関しまして、専門医療と総合診療基盤についてでございますが、駒込病院では、都立病院改革実行プログラム及びがん・感染症医療センターの整備計画の中で明らかにしておりますように、今後とも、総合診療基盤に支えられた現在の機能を活用しつつ、より専門性を高め、都におけるがん・感染症医療センターとしての役割を果たすという基本方針のとおりでございます。

○かち委員 確認しました。
 都は、患者中心の医療を目指すといいまして、患者の権利章典も掲げています。私は静岡のがんセンターで、その具体化として、徹底した患者の声に耳を傾ける、そして、苦痛や要望など一人一人の声にこたえていく姿勢を見てまいりました。特にがん医療などでは、一層、患者さん、家族の不安や悩みが集中する病院でもあります。
 これまで私は本委員会で、そうした方々のための相談室や患者図書館の必要性を訴えてきまして、駒込病院でも、二年前に相談室「こまどり」が実現し、大変うれしく思っております。また、本年十月からは、患者さん同士によるピアカウンセリングにも取り組まれているとのことです。
 そこで、駒込病院での相談室の活用、実際のやり方はどのようになっているのか、実績などについてもお伺いします。

○都留サービス推進部長 駒込病院におきましては、がんの症状や治療法につきまして情報を求めておられます患者さんや家族の方に対しましては、医療情報相談室、愛称「こまどり」でございますけれども、そこにおきまして、主に司書が情報提供を行いますとともに、がん看護専門の看護師が相談に応じております。十八年度の相談件数は七百六十九件でございます。
 また、病気に対する不安やさまざまな悩み、精神的な悩みを抱えていらっしゃいます患者さんやご家族に対しましては、臨床心理士が各診療科などの依頼で相談を行いますほか、院内に設置しております「こころの相談室」におきまして、患者さんから直接予約を受け、相談に当たっております。「こころの相談室」におきます十八年度の直接の相談件数は、六十一件でございます。
 さらに、そのほかの生活全般や経済的な相談につきましては医療相談室で対応するなど、患者さんのさまざまな要望に対応できる体制を整えております。

○かち委員 今、がん医療などを中心に、相談室の充実というのは全国各地で取り組まれるようになってまいりましたけれども、そのきっかけとなったのが、静岡での実験調査報告、七千八百八十五人のがんと向き合った皆さんの声を集めたものだったと思うんですね。
 ここではどういうふうに患者さんの声を受け入れてやっているかということなんですけれども、がんセンターでは、外来にはよろず相談室というのがあるんですが、入院の病棟が二つずつあるんですけれども、そのフロアごとにパソコンのコーナーがあって、投書箱があり、それから、毎回どんな要望が出されて、それにどうこたえたかということが全部ファイルにされていたんですね。すべて患者さんの声を聞きますよ、そして、聞いたものはすべてお返ししますという姿勢がよくわかったんですけれども、毎日投書箱をあけて、それに回答するということを、リスクマネジャーなど数名の管理職が行っているということでした。
 (冊子を示す)そういうものがまとめられたものが、こういうすごい冊子になって、よろず相談室に、ご自由にお持ちくださいということで置かれているんですね。いろいろな患者さんの悩みや問題を、その場だけの対応ではなくて、フィードバックして、また新たな患者さんや共通する悩みを解消していく。
 患者さん自身がそういうものを解決しやすい状況をつくっていくという点でも、大変モデル的な事業ではないかなというふうに思ったんですけれども、駒込病院でも、このようなフィードバックをするような活動というか、やり方が重要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○都留サービス推進部長 駒込病院におきましても、もちろん、先ほどの「こまどり」には、パソコンですとか資料をたくさん用意してございまして、ご自由にごらんいただけるようになっております。
 また、これまでに受けました相談内容も生かしながら、患者さんお一人お一人の個別の状態に合った、いわばオーダーメードの情報の提供や相談を行っております。
 今後、こうした取り組みをさらに充実させることで、患者サービスの向上に努めてまいります。

○かち委員 これから本当に、隣の何人もががんになっていくという状況があり得るわけで、そうした患者さんたちが同じような悩みを同じように繰り返すのではなくて、一定そういうものの知識を積み重ねていくという状況をつくっていく、その役割を拠点病院の役割として、ぜひフィードバックについてもご検討いただきたいと思います。
 それから、以前にも提案してきましたけれども、全国的には、小児医療を提供する病院ではチャイルドライフ・スペシャリストなど専門職を配置することが今、広がっています。希少な職種ではありますけれども、私が見てきた病院では、宮城県のこども病院、大阪の母子保健総合医療センター、静岡のがんセンターなどで採用が進んでいました。
 子どもの特性に合わせた心理的アプローチや工夫が、むだな労力を使わずに、子どもにとっても要らぬ苦痛に耐えることなく、スムーズに効率的に医療が進むという点でも、また、子どもを全人格的にとらえるという医療のあり方の上からしても、こういうアプローチの仕方は非常に有効だというふうに思いますけれども、ぜひ都立病院でもこのような取り組みを試みていい時期ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○黒田参事 子どもの患者さんへのサポートについてでございますが、現在の都立病院におきましても、看護師、一部の病院では保育士が、病院生活を送る子どもの患者に対しまして、精神的負担を軽減し、ゆったりと安心して治療が受けられるように、これまでも取り組んできております。
 お話のございましたチャイルドライフ・スペシャリストにつきましては、アメリカなど海外に留学して資格を取得しなければならないなど、日本におきましてはまだ確立されていない資格でございまして、現時点において職員として採用していく予定はございません。

○かち委員 すぐに職員として採用ということではなくて、世界的にもこういう取り組みが広がっている、日本の中でも広がっているわけです。先ほどもお話がありましたけれども、都立病院というのは、そういう実験的、先進的な医療に取り組む立場にあるわけですから、子どもの医療についても、もちろん保育士とか、そういう職種はありますけれども、その上に立つ専門的なアプローチをする職種ですので、ぜひ取り組むという姿勢に立っていただきたいと思います。
 それで、いよいよ昨年公社化された荏原病院の問題についてです。
 資料を出していただきまして、三ページに公社病院の医師体制が出ています。これを見ますと、大学病院も厳しい、都立病院も厳しいといわれますが、それ以上に公社病院の医師体制は厳しいというものが見てとれるのではないかと思います。
 昨年移管された荏原病院は、公社病院の中で唯一、産科を持つ病院ですけれども、そこの医師が、定員五名に対して、現在、三名欠員という状況になっています。それで、現在、どうなっているかといいますと、八月から看護師不足のために一病棟閉鎖、十月から産科の休診状態というふうになっているんですね。
 大田区での年間出生数は約五千五百件です。そのうちの約千件を荏原病院で受け持っていたということなんですけれども、それが今後受け入れられないということになりますと、若い妊婦さんやご家族の皆さん、今、本当に大きな不安と混乱が生じています。
 荏原病院では、十月以降の百名近い出産予定者について、他の病院に振り分けたというか、紹介したといっておりますけれども、他の病院といいますと、NTTとか東芝とか民間病院あるいは大学病院、こういうふうになるわけで、そうしますと経済的にも大変負担が重くなるんです。荏原病院、公立病院だったら約三十五万円ぐらいで産むことができますけれども、民間や大学病院だと六十万、七十万、高いところでは百万、二百万というところもあるんですけれども、それにしても、民間病院、大学病院ではなかなか産めないというのが、今の若いお父さん、お母さんの実態です。
 人口六十五万人の大田区では、産科のある病院が七つありました。しかし、そのうち、荏原病院も含めて、既に三つの病院が産科をやめました。これは大変大きな影響をもたらしています。
 ちなみに、昨年の分娩数では、荏原病院が何と千二百六十三件こなしていたんですね。最も多い数でした。次いで東邦医大が九百七十六件。五つの病院で三千三百九十七件生まれたんですけれども、その約三七%、四割近くを荏原病院で受け持っていたということなんです。
 今、これで受けられなくなりますと、当然、残るあとの病院に集中します。最近、東邦医大でも、妊娠三カ月以降の妊婦さんの分娩は、既にいっぱいですので断られます。それから、大森日赤でも、近隣の病院での産科休止により、出産予定が集中しているので、これ以上緊急入院は受けられない、こういう通知が各病院に配布されたと聞いております。
 荏原病院のこの事態は、区内の医療機関にも大きな影響をもたらしています。特に、産科の危機的な状況を招いています。
 荏原病院の公社移管に当たっては、本委員会でも繰り返し議論してきたところでありますが、病院経営本部としては、これも繰り返し、今のレベルを落とさない、今までと何ら変わらない、さらに充実させるとご答弁されてきたわけです。ところが、移管後二年もたたないうちに、このような危機的な状況を招いているわけであります。
 病院経営本部として、今の事態を招いたことに対し、どう認識しているのか、まずお聞きします。

○都留サービス推進部長 荏原病院の医師による分娩の取り扱いの休止、また一部の病棟の休止につきましては、東京都保健医療公社からそれぞれの状況報告は受けております。
 これらの原因につきましては、先ほどからるる申し上げておりますとおり、全国的な産科医不足、大学等への引き揚げ等、それから看護師につきましては、昨年四月の診療報酬の改定で、これまで最高の基準でありました、一日平均いたしまして看護師一人が患者十人を受け持つ十対一看護に対して、看護師一人が患者七人を受け持つ七対一という看護基準が新設されまして、診療報酬も大幅に増額されました。これに伴いまして、全国的に看護師の争奪戦というような現象も起きております。大病院によります看護師の大量採用も生じておりますため、その影響により採用が非常に困難になった、そのように認識をいたしております。
 なお、現在、公社におきましては、医師、看護師の確保に向け、全力を挙げて取り組んでいると聞いております。

○かち委員 いろんなところで議論もありまして、全国的な状況というのは私たちも重々承知しているわけですけれども、そういう一般的な見解ではなくて、公社移管後一年たって、二年もたたないうちに医療そのものが維持できなくなってきてしまっている、こういう事態に、病院経営本部として何ら責任をお感じにならないのか、そのことを伺っているわけです。
 荏原病院の産科医師は、五名プラス非常勤二名で引き継いだものですが、現在では部長と医長の二名になってしまいました。五名の医師の退職理由はどういうものでしょうか。

○都留サービス推進部長 荏原病院の産婦人科医師の退職理由でございますけれども、二名が、産婦人科医師を派遣しております大学医局の医師の引き揚げによるものでございまして、一名が自己都合による退職であるというふうに聞いております。

○かち委員 今のお話は、常勤医についてのみのお話でしたけれども、非常勤二名についても大学に引き戻されたということで、今、二人だけになってしまったということなんですね。
 今のお答えで、一般的にいわれているのは大学医局への引き揚げだといわれていますけれども、荏原病院よりも一回り小規模な区内の日赤病院でも、五名プラス非常勤二名という体制です。荏原と同じ大学から派遣されている医師で運営している状況を見れば、なぜ荏原病院だけ集中して引き揚げられたのか、その辺での調整はできなかったのかと思います。
 また、今からでも調整依頼すべきではないかと思いますけれども、病院経営本部としてどのように対応されるのでしょうか。

○都留サービス推進部長 公社におきましては、産科医師の確保に向けまして、これまで荏原病院に産科医師を派遣してまいりました大学医局に対し、幾度も医師派遣の交渉を行ってまいりました。さらに、他の大学医局にも医師の派遣を継続的に働きかけております。
 また、緊急的な対策といたしましては、夜勤のパート医師三名を確保し、中期的には、来年度から開始いたします東京医師アカデミーに公社病院が参加することによりまして、若手医師の育成と確保に努めてまいります。
 なお、今後も公社におきまして医師派遣の調整は精力的に行ってまいりますが、先ほどもお答えしましたとおり、産科医不足は全国的また構造的な問題でございまして、都立病院や民間病院も含め、現状では大変厳しい状況でございます。

○かち委員 厳しいことは重々承知の上で私も聞いているんです。そして、公社が努力しているのは当然の話なんです。既に公社の問題だから公社がやるべきだというのは、余りにも冷たい態度ではないでしょうか。もともと組織編成をされたときに、公社病院の管理は、病院経営のノウハウのある経営本部によって支援、協力した方が有効性があるということで移ったわけですよね。この間の経緯でも、公社が求めて荏原を公社化したわけではありません。東京都が病院改革の名のもとに、次々と公社に送り込んだものです。
 都立病院として都民、住民の医療の期待に大きくこたえてきた荏原病院が、公社に移った直後にこのようなことになっては、東京都に対する信頼も損ねかねません。調整ができないなら、産科医師確保のために何らかの手だてを東京都としてとるべきではありませんか。
 現在、医師の初期臨床研修が始まって二年を過ぎましたけれども、新研修制度のひずみが大きく浮き彫りになっています。先ほど来のお話です。それで、現在、都立、公社病院では二年間の初期研修を行っていますけれども、規定では、一年目が内科、外科、救急、麻酔というような基本のコースとなっていますが、産科、小児科関係学会から、これでは産科、小児科に回ってくる機会が、そのモチベーションが後退してしまうということで、産科、小児科を一年目に回してはどうかというような提言が出されていまして、最近、厚労省は、制度は変えないけれども、前倒しで一年目に入れてもいいというような報道がありました。そして、横浜市の市立市民病院などでは、既にそういう取り組みもしているようです。
 一つの試みとして、このような研修のあり方についても検討に値すると思いますけれども、いかがでしょうか。

○及川経営企画部長 国の制度でございます初期臨床研修医制度につきましては、厚生労働大臣の諮問機関でございます医道審議会の研修部会において検討が進められ、さまざまな意見があるという中でございますが、現時点におきましては、部会としての最終意見には至っていないというふうに承知しております。

○かち委員 この医師を育てる、専門医を育てていくということについても、全国的にいろんな取り組みがされているわけですから、様子を見るだけではなくて、都としても、どういうあり方がいいのかというのを具体的にぜひ検討していただきたいと思います。
 荏原病院では看護師不足も深刻です。公社移管時には減らした定員ではありましたけれども、過員で引き継いだものでした。この夏には、その定員をも三十名近く下回って、一病棟閉鎖せざるを得ない事態となっています。
 八月ごろから四十三床の病棟を閉鎖していると聞いていますけれども、今現在、何名の看護職員の不足が生まれているのでしょうか。また、ことし四月一日の欠員状況と、何名の入職があって、中途退職があったのでしょうか。

○都留サービス推進部長 十九年十一月一日におきます荏原病院の看護職員の欠員は、三十四名でございます。四月一日の欠員は十八名でございました。
 また、四月から九月末までの採用でございますけれども、二十五名、退職者は十五名でございました。そのほかにも、育児休業入りで現員のカウントから外れている職員も何名かいるというふうに考えております。

○かち委員 荏原病院が公社移管が検討される前に、定員の減というのがありまして、それが二十四名となっています。そこから見れば、今の三十四名減ということで、五十八名の欠員ということもできるわけです。医療規模そのものは全然変わっていないわけですから、これだけの欠員が生じては到底維持することはできない。結果的に病棟閉鎖に追い込まれたわけです。
 今までは、少なくともこういう事態はなかったわけですから、なぜこうなってしまったのか、経営本部としてどのように分析されているでしょうか。

○都留サービス推進部長 先ほどの質問にも関連いたしますけれども、移管前の定数から現在の定数になったことにつきましては、公社病院の役割としての医療機能や看護体制に見合ったものとしたものでございます。
 それに対しまして現在の職員数がどうかということは、また別のことでございまして、定員減と欠員というものを一緒にお話しされるということにつきましては、混乱を招くものと考えております。
 なお、現在の荏原病院の看護職員の欠員につきましては、先ほども申し上げましたように、昨年、十八年度の七対一看護基準の新設によりまして、大病院等を中心に看護師の大量採用が生じ、全国的に看護師不足が起きまして、その影響を受けたものだと考えております。

○かち委員 荏原病院が公社病院に移る議論の中では、これからは地域医療支援のための病院だ、地域の病院だというようなことはおっしゃっていたんですけれども、じゃ、実際にどうだったかといえば、そういう病院どころかといいますか、今までの公社病院は大体三百床クラスですよね。大久保のように、かなり精査して科目も減らしたところもありますけれども、荏原の場合には、科目を減らすどころか、さらに充実させるということで、SU病棟の拡充だとか、リニアックを入れて集学的がん医療をやるんだとか、いろんなことをいって、五百床そのものをかなり充実させた形で送り出したわけですよね。だから、いっていることとやっていらっしゃることは違うんじゃないかと思うんです。
 七対一看護基準の影響というのは、荏原病院だけではなくて、どこの病院でも同様の影響は受けているわけです。この五百床クラスの総合病院が一病棟閉鎖するということは、近隣の民間病院についても大変大きな影響、入院させたくてもベッドがないというようなことが生じておりまして、結局、地域医療を支援するどころか、地域医療が壊れかけているというのが今の実態です。
 少なくとも原状回復の手だてをとるべきですが、都としてどのような支援策を考えているのか。移管してまだ二年もたっていません。都として追加派遣を行うなどの具体的な支援が必要と思いますけれども、いかがでしょうか。

○都留サービス推進部長 産科につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、一部病棟の休止は全体を調整して行っておりまして、病院を利用される方への影響は最小限にとどめているというふうに聞いております。
 また、監理団体への職員の派遣につきましては、東京都の行財政改革実行プログラムに基づきまして順次、縮減をすることが東京都全体の方針となっております。公社病院における看護師の確保につきましては、公社がみずからの努力により採用することが基本でございまして、公社ではきめ細かな採用や定着対策に取り組んでいると聞いております。
 都から公社への派遣職員につきましては、公社における固有職員の確保状況や、各年度の事業計画等を総合的に勘案しながら、段階的に派遣解消することとしておりまして、追加派遣は考えておりません。

○かち委員 今おっしゃっていることは、実行プログラムそのものが--計画的に進めるといわれておりますけれども、そのことが順調に展開していればこその話だと思うんですね。公社がきめ細かく現地での採用をやっていますといったって、入ってこないという事態があるわけです。だから、こういう状況が生まれているわけです。
 このような事態になっていることに対して、公社の努力だなどといって突き放しても、公社の力が足りないんですから、こうなっている場合には、所管の本部が具体的支援をするのは当然ではないのでしょうか。やらないというのは余りにも無責任に聞こえます。
 こういう状況の中にあって、豊島病院の公社移管が進められようとしています。今、豊島病院の産科医、小児科医とも、この資料にもありますけれども、大幅な欠員状況になっておりますけれども、今の医療現場での実態はどのようになっているでしょうか。

○黒田参事 豊島病院の産婦人科につきましては、平成十八年九月以降、医師の確保が困難な状況となったことから、当面の間、分娩及び手術の受け入れを休止することといたしました。ただし、婦人科の手術につきましては、平成十九年四月より再開しております。
 また、小児科のうち、NICU、新生児集中治療室につきましても、平成十九年十月以降、医師の確保が困難な状況となったことから、当面の間、NICUの受け入れを休止することといたしました。
 なお、一般の小児科につきましては、通常どおり診療を行っております。

○かち委員 都立病院の中でも、地域周産期医療を支える豊島病院がNICUを持っているということは、大変重要な役割を果たしてきたわけです。そこが閉鎖するということになると、周産期医療にとって重要な影響をもたらすことは、この間の福祉保健局の委員会でも申し上げたところです。
 先日も厚生委員会で質疑をしましたけれども、ただでさえ不足しているNICUベッドが六床減るということであり、大変な状況です。ここでは産科医不足ということですが、産科、NICUそれぞれの再開の見通しはどうなっているでしょうか。

○黒田参事 産科、NICUについてでございますが、先ほど本部長、経営企画部長、サービス推進部長も答弁の中で申し上げておりましたが、産科や小児科の医師確保は、公立病院、民間病院を問わず全国的に厳しい状況ではありますが、できる限り早期に医師を確保できるよう、引き続き努力してまいります。

○かち委員 今、必要なことは、本当に、全力を挙げて一日も早く都立病院としての必要な人員配置を確保して、標榜する医療を再開することです。よもや、見通しがないというようなことで、産科、NICUを廃止したまま公社移管などということはなさらないと思いますけれども、確認したいと思います。

○黒田参事 先ほどもご答弁申し上げましたが、産科医、小児科の医師確保は大変厳しい状況ではございますが、できる限り早期に医師を確保できるように、引き続き努力してまいります。

○かち委員 今求めたご答弁にはなっていなかったんですけれども、今までのご答弁を聞いていると、医療の現場あるいは地域医療がどうあれ、計画した都立病院改革は着々と進めるんだというふうに聞こえますけれども、都の病院改革も第一次が終了しようとしている今、いろいろな問題も出てきております。今、立ちどまって、これまでを検証すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

○西崎委員 都立病院の患者権利章典について伺います。
 事業概要を開いてみますと、まず初めに、都立病院の患者権利章典と都立病院の子ども患者権利章典が掲載されています。これまで、都立病院が患者さんの視点に立って医療サービスを提供することの重要性を訴えてきましたが、そうした観点からも、権利章典というものは非常に大切なものであると考えます。
 都立病院の患者権利章典が制定されましたのは平成十三年七月ですが、当時としては非常に先駆的な取り組みであり、ほかの病院にも大きな影響を与えるものではなかったかと思います。
 そこで、まず初めに、都立病院の患者権利章典は、どのような背景で、またどのような趣旨で制定されたのか、改めて伺います。

○黒田参事 都立病院の患者権利章典についてでございますが、当時の日本の医療におきましては、相次ぐ医療事故の発生や、患者さんへの情報提供の不足などによりまして、医療に対する信頼が大きく揺らいでいた時期でございました。このため、患者との信頼関係をより一層緊密にし、患者、家族と病院職員が相互に協力しながら、よりよい医療をつくり上げていくことが求められておりました。
 このような背景から、患者の基本的な権利と責務を明確にし、病院職員のさらなる意識改革を図るとともに、患者が医療に主体的に参加していけるように支援することを目的といたしまして、都立病院の患者権利章典を制定することとなりました。

○西崎委員 生活者ネットワークは、子どもの患者の権利についても十分尊重するために、都立病院が子どもの患者向けの権利章典を制定することに注目してまいりました。本年、病院経営本部では、都立病院の子ども患者権利章典を制定しまして、現在、各都立病院で権利章典が掲示されているというふうに伺っています。
 そこで、今回の都立病院の子ども患者権利章典はどのような検討を経て制定されたのか、伺います。

○黒田参事 都立病院の子ども患者権利章典につきましては、患者中心の医療を推進する観点から、平成十七年七月に都立病院倫理委員会に検討を依頼いたしました。検討に当たりましては、専門委員会を設置いたしまして、平成十七年十一月から五回の専門委員会の開催と小児三病院の視察を行いまして、鋭意検討していただきました。
 専門委員会での検討終了後、都立病院倫理委員会に検討結果の報告が行われまして、了承が得られましたことから、本年六月に都立病院の子ども患者権利章典として報告書がまとめられまして、病院経営本部長に提出されたものでございます。

○西崎委員 今のお話を伺いますと、子どもの患者権利章典が十分な検討を経て制定されたことはわかりましたが、子どもの患者はまだ心身の発達段階にあり、大人とはさまざまな面で異なっており、医療サービスの提供に当たっても、子どもならではの対応が必要であると考えます。
 子ども患者権利章典には、この権利章典は、都立病院の患者権利章典を基本に、小児医療の特性に配慮し、策定したものですという注意書きもされています。そこで、この権利章典では、策定に当たってどのような点に留意したのか、また、子どもの患者の特性にどのように配慮しているのか伺います。

○黒田参事 都立病院の子ども患者権利章典におきましては、都立病院の患者権利章典の基本理念を踏まえつつ、学習する権利ですとか遊ぶ権利など、子どもならではの権利を掲げております。また、小学校低学年程度の子どもでも十分理解できる言葉で表現しております。
 さらに、特性といたしましては、大人と異なりまして、診療方針等について自分ですべてを決定することが難しいことなどに配慮するとともに、子どもの患者に対する医療では、患者を支える家族と医療従事者との協力が不可欠でありますことから、家族の方にも医療に積極的に参加してもらうためのお願いを掲げてございます。

○西崎委員 今のお話を伺って、子どもの患者の特性に配慮されていることはわかりました。しかし、どんな立派な権利章典を制定されても、患者さんやその家族に理解してもらわなければ、権利章典の趣旨は病院現場で生かされないと思います。また、病院で働く医師や看護師などの職員が十分趣旨を理解していることも不可欠です。
 都立病院では、子どもの患者やその家族に対して、権利章典をどのように周知し、内容を理解してもらうように努めているのか、また、職員への周知徹底をどのように図ったのか伺います。

○黒田参事 都立病院の子ども患者権利章典の制定後、各病院におきましては、病棟、外来への掲示を行いますとともに、病院窓口で患者、家族の方にパンフレットを配布しております。
 また、職員に対しましては、各病院におきまして、パンフレットの配布のほか、院内LAN、これは病院の中の情報システムネットワークでございますが、こちらへの掲示などによりまして全職員に周知徹底を図っております。
 さらに、今後は、患者満足度アンケートを実施いたします際に、権利章典に関する質問を加えるなど、周知や理解が浸透しているかを定期的に検証してまいります。

○西崎委員 最後に、意見になりますけれども、今後も引き続き、患者やその家族の視点を重視した小児医療の提供に努めていただきたいと思います。
 それから、今、検証されるということでしたけれども、これから子どもの患者の権利を実現していくための方策をどのように担保していくのか、それが重要なことだと思いますので、ぜひこういったことに努力されることを要望しておきます。
 そして、都立病院でのこうした取り組みが、ぜひほかの医療機関にも広がることを期待いたしまして、私の質問を終わります。

○野島委員 質問する私自身が、またかいなという感がしないでもないんです。そんなことで多くの皆さんの時間を制約するのは大変申しわけなく思っておりますが、事務事業質疑ということでございまして、恐らくは執行側も、ここでの議論や質疑を通じてこれから事務事業を進めていく、こういうことだろうというふうに思いますので、二十五分という時間を申告してございますので、その範囲内で、お手数を煩わせますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 二点ございまして、まず最初に、都立病院のPFI事業についてお伺いしたいと思っております。
 現在、都立病院のPFI事業、多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターが、既にこの七月に着工された、がん・感染症医療センターについては年内に契約締結を予定されておりまして、松沢病院を改築、改修する精神医療センターは事業者選定を進めている、こんなふうに承知をいたしております。
 三つの大きな事業がそれぞれ進んでいくわけでありまして、恐らく全国的にも例がないだろうと思いますし、病院経営本部にも大変なご苦労をおかけしているのかなというふうには思っておりますが、こういう大きなプロジェクトを緊張感を持って取り組んでいくところに、私はしっかりした事業執行ができるもの、こんなふうに思っておりますので、事の重大性と重さをしっかり受けとめて執行していただきたい、こんなふうに冒頭お願いを申し上げておきます。
 このPFI事業は、都立病院の将来にとっても多大な影響を及ぼすものであろう、こんなことで、我が党も機会をとらえながら、さまざまな場面で質疑を繰り返してまいりましたし、去年も申し上げたかな、私自身も高知の医療センターに視察に出向いて、いろいろ意見交換もしてまいりました。
 そんな中で、高知医療センターに関しまして、PFIによる病院運営は失敗であるかのような記事が東京新聞に掲載されました。病院長の汚職、こういう話については、当然のことながら、とんでもない話でございまして、その中で、病院赤字でも運営企業は黒字、こういうふうな報道がなされているんですね。実は私、この記事だけじゃなくて、高知の医療センターに対する、ずっと追っかけの記事があったんですね、構想段階から。これをずっと読んで、なおかつ、この記事を読んだものですから、突出した形の議論というのは、いささか全体像をとらえていないだろうというふうには思っておりますが、公立病院の経営では行政的医療、先ほどかち副委員長も取り上げていましたけれども、都が取り組む行政的医療、こういったふうなことが求められる以上、不採算なことは、当然のことながら出てくるだろうと思っております。
 企業が黒字になることが、病院、こっちが赤字でこっちに吸い上げているよというふうな認識でありますけれども、企業が提供するサービスで利潤が上がらなければ、逆にサービスの質が落ちちゃうわけでありますから、正直なところ、企業というのは利潤がインセンティブでありますから、適正利潤を求めつつ業務を執行していくのは当たり前の話でございまして、それは切り分けて考えないといけないことだろうというふうに思っております。
 これは何もPFIでSPCがやるからということじゃなくて、それぞれ今でも単体でいろいろ業務委託しているわけですから、その場合でも全く同様であると思っております。
 ただ、こういうことで、新聞というのは影響力が大きいものですから、さきの公営企業決算委員会分科会でも何点か質問をいたしました。
 私はその中で、いわゆる診療業務そのものなど病院運営の中核の部分や病院経営については都が責任を持って行います、医事業務や建物管理など、いわば医療周辺業務については、民間が創意工夫を図って、包括的に特別目的会社、SPCが担う、こういう答弁をいただきました。
 ただ、こういう制度論というのは、なかなか理解されにくいところがございまして、あるいは、あえて理解をしないという向きもあろうかというふうには思っておりますが、先般の共産党さんの機関紙「赤旗」に、府中病院は都直営でということで、共産党の要請にこたえ、国立の関口市長がコメントを寄せているんですね。かち副委員長は大変ご苦労さまでございました。
 このコメント、私は、政党機関紙ですけれども、一応、新聞報道ということになれば、その中のコメントを--多分、いろいろな話をしていると思うんですね。だから、その中の括弧書きだけを取り出していろいろ申し上げるのは、私、体質的に合わないところがあるんですよ。しかしながら、そういうことであっては困るわけでありますし、この事業スキームをしっかりと都民に理解をいただく、あるいは現場で働いている職員にもしっかり理解いただいて、不必要な動揺や混乱を招くことがあってはいけないと思っているんですね。
 特に市長さんということになりますと、これは一次医療を担う首長さん、大きな責任を持っているわけでありますから、こういう方にもしっかり理解をしていただかないと、PFI事業、ひいては都立病院改革、いわば一次医療、二次医療あるいは東京都が担う広域的な行政的医療、それから国の役割、こういうものがごちゃまぜにされて、ともかく必要な医療に対して、国でもいいや、都でもいいや、市町村でもいいや、こういう提供体制をつくっていったら、有限な医療資源なんて有効に活用できないわけですから、私はこのコメントは--必ずしも、このコメントだけというふうに拘泥しているわけじゃないですよ、私自身が。しかし、その根幹にあるところを首長さんにも理解してもらいませんと、これは日本の医療全体にとってのマイナスだろうというふうに私は思っているんですよ。
 そんなところで、前回の公決の分科会でもお聞きをしたところでありますが、きょうは事務事業質疑ということでございます。あえてもう一度、病院の経営とPFI事業との関係についてお伺いをしておきたいと思ってございます。よろしくお願いします。

○及川経営企画部長 今回の私どものPFI事業でございますが、理事お話のとおり、診療業務そのものとか、まさに病院の経営など病院運営の根幹にかかわるものにつきましては、これまでどおり都が責任を持って行います。
 また、これまでも個別に委託してまいりました、お話の医事業務とか建物管理、加えまして、清掃、洗濯、消毒など多数の医療周辺業務につきましては、特別目的会社、いわゆるSPCの方で、民間ならではの自由な発想や創意工夫を行いながら包括的に担うというシステムでございます。
 これによります効果の一例としまして、例えば、これまで手術室においては、空調とか清掃、消毒、滅菌、こういった業務が手術に関連して発生いたしますが、それぞれの受託者に対しまして、医師や看護師あるいはコメディカル等、医療従事者から個別の指示を必要としておりました。今回のPFI事業では、SPCに一括して指示をすれば、包括的に一括管理して手術環境の整備を行うため、医師、看護師など医療従事者は診療業務に専念できることとなりまして、医療サービスの向上が図れるものというふうに考えております。
 また、今回のPFIにおきましては、SPCに対しまして、コスト管理など民間が持つ経営ノウハウや業務プロセスの改善に関する助言、協力など、病院経営につきましても支援するという業務を担わせておりまして、病院の健全経営に貢献をさせることとしております。

○野島委員 今の答弁で、診療業務そのものなどの病院運営のコア部分、こういった病院経営の根幹の部分は、PFIということの事業でやっても民間にゆだねられるわけではない、あくまでも都が責任を持って担っていくということを改めて確認を申し上げたところであります。ぜひそういう割り振りというのかな、役割分担というのか、その役割分担であっても都はちゃんとやっていきますよ、こういうことを広く都民にPRをしていただきたいと思うのです。
 これがPFIがどうだとか、これが直営だからどうだというのは、正直なところ、じゃ、それによってどういう効果があるんですかというよりも、自分が必要なときに必要な医療を受けられれば、それもなお近いところで、これは気持ちとして当たり前なんです。当たり前なんですが、それを行政として、あるいは体制としてどうやっていくかということをしっかりと構築しない限り、新しい医療需要にこたえていくとかいうことはなかなかできないわけですよね。結局、最後は国民負担にかかってきますから、そこのところは、やっぱり執行する側がしっかりと責任を持って、どんなに苦しい場面があろうとも、都民の理解を得ていく。それも、なるべくわかりやすくこれから広報していただきたいと思うのです。
 どうも皆さんは、かたい話になりかねないというところがありますので、ああ、なるほど、こういうふうによくなるのかというふうなところをしっかりとPRをこれからも、今までしているのかどうかわかりませんが、これからぜひそういうところにウエートを置きながら、「赤旗」に書いてあったから白旗を出せというわけじゃなくて、しっかり進めていただきたいというふうに思っております。
 この高知医療センターについて、新聞報道などで見ますと、例えば、SPCが契約上定められていた材料費で医薬品、診療材料等の調達ができず、行政側の追加支出がなされた、当初の約束と違って多く金を払わなければいけないんじゃないか。あるいは、診療請求の請求漏れ等が急激に増加したにもかかわらず、業務を直接行っている協力企業に対し、SPCが的確な指導、是正を迅速にできなかった。いわば仕事を頼んだけれども、その到達点なり効果を、発注側が十分に機能できなかった、こんなことでご苦労もなさっているやに見受けられます。
 それと、さきの公決の分科会で共産党のたぞえ委員が質問しておりまして、別にそのことをとやかくいう立場にありませんが、発言をとらえた私の認識ですよ、本人がこういっていたんじゃなく、私の認識。
 それによりますと、SPCであたかもすべての業務を丸投げし、全く行政側のチェックが働かない--今もちょっと申し上げましたけれども、いわば頼んだ側の、発注側の目指すべき成果品とその対費用効果が、発注側において明確に認識されなかった。したがって、当初の財源縮減効果が生じなかったのみならず、むしろ費用増になってしまった。こういうふうなことで、SPC、PFI、とりわけSPCの失敗だからPFIをやめろみたいな、そういう質疑であったというふうに思っているんですが、そういうことだと思うんですね。
 そういういろんなシステムを組み上げていく中では、いろいろな問題がありますよ。問題がないことなんてあり得ないんだ、世の中。したがって、これから、高知の医療センターよりも東京都は後に事業をスタートすることになるわけでありますから、ぜひその辺を、先行事例を生かすようなことを考えていかなきゃいけないだろう。また、そういう立場にも、ある意味ではメリットという部分もあろうかと思います。
 それで、今、そういうふうな新聞報道で私が推測申し上げ、たぞえ委員の発言から推測申し上げた、こんなふうなことをクリアしていくといいましょうか、防止していくために、都のPFI事業の仕組みとしてどんなところを工夫されていかれるのか、こんなところをお伺いしておきたいと思います。

○及川経営企画部長 お話の先行事例におきましては、例えば個々の業務を行う協力企業を指導監督し、業務全体を統括する機能、いわゆるマネジメント機能と呼んでいるんですが、この機能を、SPCの業務として明確に位置づけていなかったというようなことがございます。また、お話にあった医薬品や診療材料の購入などにおきましても、契約上、業務ごとに委託金額を固定していたというふうに聞いております。こうしたことによりまして、新聞報道などで、先ほど理事からもお話があったような問題点が指摘されているのかなというふうに考えております。
 今回、私どものPFIでは、このマネジメント機能をSPCの機能として明確に位置づけておりまして、業務が適切になされているかどうかをチェックいたします、いわゆるモニタリングの対象としております。例えば、このチェックが通らなければ、SPCに対しまして業務の改善勧告をする、あるいは委託料の支払いを留保する、さらには減額をするといった措置も、今回、この仕組みの中に私ども採用しております。
 また、私どもは、業務ごとに内訳金額を固定しておりませんで、包括的な総価による契約方法としております。そのため、さまざまな与条件に対しまして弾力的な業務執行を可能としたものというふうに考えております。
 こうした仕組みを通じまして、PFIのメリットをより生かした病院運営を目指しているところでございます。

○野島委員 わかりました。
 今、そういういろいろな業務設計をしていく中で、価格を固定しちゃっているとか、いろいろな課題があって、今度は包括で都の場合にはやっていきますよと。恐らく、その辺、いろいろ見ていくと、おもしろいと思うんですよ。そうすると、SPCといっていながら、実はSPCの利点を生かし切れないような制度設計を--高知県のことですから、私、余計なことをいう必要はないですが、しちゃったのではないかななんて疑問を持つわけ。そうすると、今度、東京都の場合は、そうじゃなくて、ちゃんとそういう柔軟性が発揮できるような制度にしていこうということですから--さっきいったように、まだ今後も課題がいろいろ出てこようかと思います。
 直営でやるべきだ、これは民間のSPCでとんでもないと、僕は、そういう対立概念じゃないんです、この仕事はというふうに思っているんですね。いわゆる都立病院の運営、その責任は全部東京都ですから、それをより有効、適切にやっていくために、SPCという手法を使うことによって経費の圧縮をしていく、あるいは患者サービスの向上を図っていくという、いわば共同作業だというように私は理解しているんですよ。したがって、直営でなければいけない、PFIでやるから医療が崩壊していく、そういう概念を持ちますと、根本のところで違ってきちゃうと思うんですね。したがって、これからもそういう理解をしっかりとしていただくように、先ほども申し上げましたけれども、広く広報等で進めていただきたいと思っております。
 それから、重要な視点は、診療報酬制度がマイナス改定あるいは医療技術の進歩など、環境が目まぐるしく変わっていくわけでありまして、そういうことに柔軟に対応しながら病院運営を行って患者サービスを向上していくことが、今、一番大事なところだと思うんですね。硬直化した中でやっていきますと、当然ながら、コスト高あるいは創意工夫が出ない、こういうことがありますから、ぜひそういう利点も生かしていただきたいというふうに思っております。
 この前の公決での質疑でも、事業契約の中には、患者ニーズの変化に応じて委託業務内容を見直すといったことや、物価の上がり下がり、あるいは薬価改定、医薬品や材料費等の大幅な変動という場合には、支払い額を見直すなどの仕組みを組み込んでいきます、将来の医療環境の変化にも柔軟に対応できるようになっている、こういう答弁もいただいておるわけでございまして、ぜひそんなことも踏まえつつ、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思ってございます。
 せっかくこれだけの仕事に取り組んでいくわけでありますから、東京から病院PFI事業の成功事例を発信していただきまして、そういうことが、例えば高知県のそういう事業に、ある意味、改善のいい影響を与えるということも、私は東京に課せられた、いわゆる地方自治のトップランナーとしての責任だろう、こんなふうに思っておりますので、ひとつ格段の取り組みをお願いしていきたいと思ってございます。
 次に、清瀬小児、定点観測みたいな話で恐縮なんですが、あと五分しかないのでもうやめますが、移転するということは承知しております。しかし、移転をされますと、多摩地域の小児医療の拡充の請願というのは、福祉保健局の審査にゆだねられているんですが、この議論もあります。いわば現場の心配も、都民の心配、市民の心配も当然あるわけであります。
 そこで、府中に小児総合医療センターが整備されていく、じゃ、その後の地域医療をどうするんだ、こんなことで実は私も思い悩んで取り組んでまいりました。その結果、清瀬市と東京都あるいは関係の皆さんが協議を重ねまして、ことしの二月に一定程度の取りまとめがなされたというふうに承知しております。
 今、四市五医師会で実施していただいております平日夜間の小児初期救急事業の段階的な拡充を目指していきたいということと、十七年四月公社化と同時に小児科を設置した多摩北部医療センターの小児科を、清瀬小児移転の一年前、いわばソフトランディングというとおかしいですけれども、ちゃんとつないでいきますよ、こういうことの合意、一つの結論に至ったというふうに思っております。
 清瀬の所在地である市長さんも苦渋の選択だろうというふうに思っておりましたけれども、それだけに、確認された充実策を着実に実行していっていただきたいと思っております。
 十三年に都議選がありまして、そのときはこの課題はありませんでした、都議選が終わったら都立病院改革が出てきましたから。十七年の都議選のときはこれが争点になりました。幸いにして当選を果たすことができましたけれども、この次は二十一年となりますと、ちょうどその時期なんですね。だから、充実をしっかりして--私もいろいろ努力してまいりました、地元の医師会とか、両市の市長さんとか関係の市長さんとね。私、別にいいんですけれども、ぜひそういう、私の努力が実るような充実策にひとつ心がけていただきたいというふうに思っております。
 そこで、今後のそういったふうなところ、初期救急事業が取り組みされてきたわけでありますが、今後どんな方向を目指していくのか、そんなところをお聞かせいただきたいと思います。

○及川経営企画部長 本事業につきましては、北多摩北部地域の五市の医師会と東村山市、清瀬市、東久留米市、西東京市の四市が協力して実施に至ったものでございます。
 平成十七年六月から、公社病院である多摩北部医療センターを使いまして、週二日間、火曜日、金曜日、十九時半から二十二時半の時間帯で開始をいたしております。その後、地域の方々が話し合いを重ねる場に都も加わりながら、ことし七月より、多摩北部医療センターでの実施日数を週三日間、火、木、金とする拡充を図りました。また、同じくことし七月より、西東京市内の佐々総合病院でも、週二日間、月、水の初期救急事業を始めました。これにより、二カ所合わせて、月曜日から金曜日までの週五日間の初期救急事業を確保することとなりました。
 今後、地域では、清瀬小児病院の移転までの間に、二つの拠点それぞれで週五日間ずつ実施することを目指していると伺っております。

○野島委員 そういうことで、開始して二年たって、拡充への第一歩を踏み出すことができまして、当局初め、関係者の皆さんに心から敬意を表したいと思っております。
 先ほどの話に戻りますが、ただ単に、今まで便利に使っていた病院がなくなると困る、それは当たり前な話として、気持ちとしてはよくわかります。しかし、医療総体の中で、市町村が担う役割、広域自治体としての都が担う役割、それも有限な医療資源あるいは国民負担においてという中で、清瀬の市長さんも苦渋の選択をしていただいたわけでありまして、そういう意味では、一次医療を私たちはしっかり充実していかなければいけないという方向性も出ているわけでありますから、ぜひ積極的な後押しをしていただきたいというふうに思っております。
 そこで、最後に一つだけお伺いしたいんです。実は跡地の問題がございまして、大変大きな面積なんですね。前にも申し上げましたが、清瀬市というのは、医療、福祉、そういう資源がたくさんありまして、あるいは、それだけにその周辺の緑というのが大変多いんですね。あそこは清瀬市松山ですかな。隣は竹丘というんです。その隣に行くと梅園というんですね。松竹梅なんです。非常に緑の多いところで、これを何とかしていかなければいけない、こういう思いもあるんですね。
 ただ、どうしていくかということは、これからの課題でもありますけれども、実はそこに大変大きな関心が集まっているんですね。この帰趨が清瀬の顔をどう変えていってしまうのか。今まで清瀬が売り込んできたといいましょうか、清瀬の特徴であったものがどう失われてしまうのか、こういう大変大きな課題でもあるんです、この跡地の問題は。
 そこで、清瀬小児病院の跡地に対する考え方についてお伺いをしておきたいと思います。

○及川経営企画部長 清瀬小児病院が移転した後の跡地につきましては、都民の貴重な財産でございます。また、公営企業会計で経理をいたしております私ども都立病院全体にとりましても、貴重な財産だというふうにとらえております。
 その扱いにつきましては、先生からもお話があったように、地元清瀬市のお話も伺いながら進めていくことが重要であると考えておりまして、引き続き市と協議を行う中で検討していきたいと考えております。

○野島委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。
 所管が恐らく分かれてくるというか、またがってくると思うんですね。僕もいろんな提案を、清瀬の市長さん初め関係者には申し上げているんですよ。都市計画法上の課題をどうクリアしていくのか、あるいは、そうなった場合でも事業主体をどうするのか。それから、今、経理する立場という、貴重な財産だと、こういうお話もございました。その経理するというのがどういう重みを持っているのか、いささか私の耳には届きませんが、財源の問題も大変大きな課題でございますが、いずれにいたしましても、しっかりした協議を積み重ねて、清瀬のまちづくりに、立つ鳥跡を濁さず、こんな立場で病院経営本部からもしっかりと応援していただきたいというふうに思っております。
 ここまで、PFI事業に関する課題と、移転に伴う地域の医療課題への対応についてお伺いをしてまいりました。病院経営本部では、平成十三年十二月に都立病院改革マスタープランを発表して以来、さまざまな病院改革に取り組んできているわけでありますが、今回取り上げましたPFI手法により進められている三つの事業が本格化するなど、これからますます坂道もきつくなりますけれども、いわばこれからの医療にとっての正念場であるというふうに思っております。この事業の成功が、私は都立病院の将来を明るくするものになるだろうと信じてやまないところであります。
 そこで、最後に、PFI事業等による再編整備を初めとする、都立病院改革を推進していくに当たっての本部長の考え方をお伺いしておきたいというふうに思ってございます。

○秋山病院経営本部長 これから本格化いたしますPFIによる三つの事業につきましては、対象病院の施設設備の更新、医療機能の高度化とともに、官民の適切な役割分担のもとに質の高い医療サービスを提供していくというものでございまして、再編整備の大きな柱というふうに考えてございます。ご指摘のとおり、着実に進めていかなければならないという認識に立っております。
 また、このようなPFI事業を含みます都立病院全体の再編整備事業を推進していくことが、行政的医療を適正かつ効率的に提供いたしまして都民の皆様への医療サービスを向上させていくという、都立病院の本来の使命を果たしていくことにほかならないというふうに考えております。
 ただいま野島理事よりご指摘がございましたけれども、再編整備に伴う移転統合に当たりましては、対象病院がこれまで地域で提供してきました初期医療等の医療機能につきまして、地元自治体や地域の医療機関等の役割分担を踏まえながら、地域住民の皆様が安心して身近な地域で適切な医療が受けられる、そのように都としても可能な限り支援を行ってまいります。
 また、足元に目を転じてみれば、まず全国的に不足している医師、看護師などの医療人材の確保でございます。先ほど議論がございましたけれども、これまでも、本部としても、また公社としても最大限の努力をしてまいりましたし、また無責任とのご感想もございましたけれども、不足の原因を何度も簡潔に答弁させていただきましたのは、原因を過たずに、的を射た対策を実施したいとの考え方でございます。このような人材不足のほかに、相次ぐ医療制度の改革や診療報酬のマイナス改定への適切な対応など、多くの課題がございまして、これらにも早急に対処していく必要がございます。
 こうした認識のもとで、これまでお尋ねのあった困難な課題にも一つ一つ対応しながら、都立病院に寄せられた都民の皆様の期待にこたえ、安全・安心を支える患者中心の医療を実現する都立病院改革を着実に実施していくよう、職員一丸となって全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。

○野上委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 事務事業に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○野上委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時三十一分散会

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