厚生委員会速記録第十八号

平成十八年十二月十一日(月曜日)
第七委員会室
   午後一時二分開議
 出席委員 十四名
委員長長橋 桂一君
副委員長かち佳代子君
副委員長山加 朱美君
理事谷村 孝彦君
理事野島 善司君
理事増子 博樹君
伊藤 興一君
山口 文江君
田代ひろし君
いのつめまさみ君
野村 有信君
大塚たかあき君
佐藤 裕彦君
吉田 信夫君

 欠席委員 なし

 出席説明員
福祉保健局局長山内 隆夫君
次長吉川 和夫君
技監梶山 純一君
理事片岡 貞行君
総務部長杉村 栄一君
指導監査室長梶原 秀起君
医療政策部長細川えみ子君
保健政策部長清宮眞知子君
生活福祉部長永田  元君
高齢社会対策部長狩野 信夫君
少子社会対策部長都留 佳苗君
障害者施策推進部長吉岡 則重君
健康安全室長八木 憲彦君
企画担当部長松井多美雄君
事業調整担当部長牛島 和美君
医療改革推進担当部長高橋  誠君
連絡調整担当部長松浦 和利君
参事桜山 豊夫君
参事宮垣豊美子君
参事佐藤 恭信君
参事金丸 陽子君
参事奥澤 康司君
参事住友眞佐美君
病院経営本部本部長大塚 孝一君
経営企画部長及川 繁巳君
サービス推進部長鈴木  茂君
参事岸上  隆君

本日の会議に付した事件
 連合審査会開会の申し入れについて
 意見書について
 病院経営本部関係
報告事項(質疑)
・精神医療センター(松沢病院)の整備について
 福祉保健局関係
付託議案の審査(質疑)
・第二百二十七号議案 保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例
・第二百二十八号議案 東京都大気汚染障害者認定審査会条例の一部を改正する条例
・第二百二十九号議案 興行場の構造設備及び衛生措置の基準等に関する条例の一部を改正する条例
・第二百三十号議案 プール等取締条例の一部を改正する条例
・第二百三十一号議案 東京都小規模貯水槽水道等における安全で衛生的な飲料水の確保に関する条例の一部を改正する条例
・第二百三十二号議案 食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
・第二百三十三号議案 食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
・第二百三十五号議案 東京都心身障害者扶養年金条例を廃止する条例
・第二百三十六号議案 東京都心身障害者扶養年金会計条例の一部を改正する条例
・第二百三十七号議案 東京都心身障害者扶養年金基金条例の一部を改正する条例
・第二百三十八号議案 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による任意入院者の症状等の報告に関する条例

○長橋委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、連合審査会の開会の申し入れについてお諮りいたします。
 本委員会に付託されております第二百三十四号議案、東京都認定こども園の認定基準に関する条例につきましては、文教委員会と関連がありますので、連合審査会の開会を申し入れたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○長橋委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
 また、会期中の日程につきましては、お手元配布のとおり変更させていただきますので、ご了承願います。

○長橋委員長 次に、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書四件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○長橋委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○長橋委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、病院経営本部関係の報告事項の質疑並びに福祉保健局関係の付託議案の審査を行います。
 なお、本委員会に付託されております第二百三十四号議案の東京都認定こども園の認定基準に関する条例につきましては、あすの連合審査会の質疑をもってかえますので、本日の議題とはいたしません。ご了承願います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 報告事項、精神医療センター(松沢病院)の整備についてを議題といたします。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○及川経営企画部長 去る十一月二十七日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元にお配りしてございます厚生委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 資料は、目次にございますように、1、医療観察法に基づく病床の要件、対象患者の概要及び整備状況、2、松沢病院における病床閉鎖の推移(社会復帰支援室設置後)、3、松沢病院の整備に関する住民説明会での主な質問事項の三点でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、医療観察法に基づく病床の要件、対象患者の概要及び整備状況でございます。
 (1)、病床の要件につきましては区分と内容を、(2)の対象患者の概要につきましては要件を、(3)、整備状況につきましては国と都道府県別に、それぞれ記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、松沢病院における病床閉鎖の推移(社会復帰支援室設置後)でございます。
 松沢病院の社会復帰支援室につきましては、平成十五年四月に設置いたしました。設置後、平成十五年度から平成十八年度までの過去四年間の閉鎖病床数の推移について記載してございます。
 三ページをごらんください。3、松沢病院の整備に関する住民説明会での主な質問事項でございます。
 松沢病院の整備に関する住民説明会につきましては、去る十月三十日と十一月十六日の二回、松沢病院において開催いたしました。その住民説明会での主な質問事項について、区分ごとに内容を記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○長橋委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田代委員 今ご説明いただきましたように、松沢病院の整備計画が報告されたわけですが、これまでも何回か委員会でも申し上げてまいりましたし、また本会議でも申し上げてまいりましたが、今日に至るまでの精神科疾患に関する歴史を振り返るときに、これからの精神科医療というものもようやく新しい取り組みが出てきた、ある意味では一縷の光が見えるという状態になってきたと思うんですね。
 少し昔にさかのぼりますと、例えばナチスドイツでは、遺伝病子孫予防法という強制的な断種ですね、十九世紀から二十世紀に非常に多くの国で見られたことですけれども、多くの精神科疾患を有する精神障害者の人に対して不妊手術が強制的に行われた。ナチスドイツでは、それだけにとどまらずに、障害者の安楽死計画が実行されて、実に七万人以上もの精神障害者の人が命を奪われた、こういう忌まわしい歴史があるわけです。
 我が国においてはこのような悲惨な出来事はありませんでしたが、しかし、世界じゅうを見渡していると、このように誤った優生学思想のもとに多大な犠牲が強いられており、また、我が国でも差別の被害者の方はたくさんいらっしゃったという歴史があるわけですね。
 このような精神科の患者さん方、障害をお持ちの方々に関しては、いろいろ不幸な歴史があるわけですけれども、最近は、この精神科医療、ある意味で治療方針も変わってきた。理解もある程度出てきた。そして薬に対しても、強制的に抑圧していくだけという薬ではなくて、オランザピンのような副作用の少ない治療薬、こういう向精神薬というものが開発されてきているわけであります。
 しかし、我々が今生きている二十一世紀、物の時代といわれた二十世紀が過ぎて、心の時代といわれる二十一世紀が来ているわけですが、社会環境の激しい変化があって、それによってストレスというものが今、現代の人たちの心を大変むしばんでいるわけです。
 例えば、精神科において大変有名な病気であります統合失調症は、昔の分裂病ですね、約百人に一人がかかるという統計もありますし、うつ病に至っては、非常に厳しいストレスにさらされている現代の人たちは、五人に一人が一生の間に一回は経験するだろうといわれている。こういう状況がわかってきているわけでありまして、逆にいうと、この心の病は、簡単にいうと心の風邪と称されるほど、だれでもかかっておかしくないというような状況であるわけです。
 心の病、精神疾患の多くは、早期に適切な治療をしっかり受ければ改善するわけでありまして、それができずに、症状をさらに悪化させて社会復帰が困難になっている。これが今までの悪循環であったわけですね。受け入れ条件が十分に整わないために入院が長期化する、いわゆる社会的入院についても、精神科疾患だけではないんですが、特に精神科疾患では、今国を挙げて、その解消が求められているわけですね。
 我が国では、ノーマライゼーションがうたわれるようになってから久しいわけですが、この理念を実現して、精神障害者の方が実社会において健常者とともに共生していくというのは、決して簡単にできることではないわけです。
 そこで、きょう議題に上っております都立松沢病院ですが、この歴史をちょっと振り返ってみますと、ニコライ二世でありますアレクセイが訪日するということで、それに対して日本の国をよく見せなくちゃいかぬわけですね。外国からお客様が来るということになったら、それなりの整備をしなくちゃならないわけですから、その当時、上野に養育院というのをつくって、いろいろ外国の人に見せたくない人たちをそこに入れたわけですけれども、明治八年に、狂疾という精神障害者を収容する部屋が設けられて、その後、養育院が移転することによって、明治十二年に東京府癲狂院として創設されているわけです。
 以来、百三十年近い精神科医療の歴史、これは日本で最古に属するものの一つですが、東京帝大の精神科のもとにもなるということで、現代の精神医学を体系化したといわれるクレペリンのもとで学んだ、日本の精神医学の泰斗であります呉秀三が、大正八年に、私の地元であります世田谷の現在の地へ松沢病院を移転してから、これで既に九十年の年月がたっているわけです。この間、専門性の高い精神科医療を提供して日本の精神科医療をリードしてきた、まさに、日本というよりも、アジア全体を見ても冠たる精神科病院であるわけです。
 しかし、その松沢病院も直近の建てかえからもう三十年以上たちまして、病棟がかなり古くなって老朽化して、狭隘化が進んで、患者さんの治療環境の改善というものが、先ほど申し上げましたように非常に変わって、新しい方法になってきたわけですから、やはり喫緊の課題となっているわけですね。医療の提供という点だけではなくて、先ほど申し上げましたように社会復帰の促進という点からも、松沢病院が果たしていく役割というのは、これから大変大きくなっていくものと考えるわけであります。
 そこでお伺いするわけですが、先般公表されました計画では、老朽化した病棟などの整備を図るとされておりますけれども、今後、松沢病院はどのような精神科医療を担っていこうとしているのか、グランドデザインを含め、その将来像をお聞かせいただきたいと思います。

○及川経営企画部長 松沢病院ではこれまでも、急性期の精神科医療、重度の精神科疾患への医療に対応してまいりましたけれども、お話のように、精神科医療が入院医療中心から地域生活中心へと移行していく中で、これまで以上に急性期における早期かつ適切な治療と社会復帰に向けた取り組みが重要となっております。
 また、精神科身体合併症医療や精神科救急医療、精神科特殊医療などの、一般の精神科病院では対応が困難な専門性の高い精神科疾患にも積極的に対応していかなければなりません。さらに、心神喪失者等医療観察法に基づく医療を提供するなど、行政精神科医療についても取り組んでいく必要がございます。
 こうした松沢病院の将来にわたる役割を見据えた上で、松沢キャンパスの豊かな緑を生かし、医療機能の強化を図るなど、患者の療養環境の向上を図るとともに、他の医療機関や保健福祉施設とも連携いたしまして、社会復帰の促進と、入院中心から生活中心への転換を図るなど、引き続き日本の精神科医療の拠点としてさらなる充実を目指してまいります。

○田代委員 今お答えいただきましたように、合併症、これはなかなか、今問題になっておりますね。それから精神科救急、これはかなり東京でも問題になっている。これは早く対応しなくちゃならないということで、地元の医師会も困っているわけです。それから特殊医療。こういう、なかなか一般の精神科の病院ができないことをしっかりやっていただかなくてはならない。
 そういう意味では、今回の整備というのは、松沢病院がこの地に、いわゆる地元世田谷に移転してきて以来の大変大きな事業であるわけでありまして、それを成功させて、ぜひとも今後の精神科医療の発信の地となるように、今まで以上に大きくなるように整備を進めていただきたいと思うんですが、お答えいただきましたように、この整備計画の中では、松沢病院の改築、改修などに加えて、心神喪失者等医療観察法に基づく医療の提供も行っていく。これは国が決めたわけでございますけれども、これをやっていく。
 いわゆるこれまでの触法行為、簡単にいうと法を破って、法に抵触したような行為を行った精神科障害の人たちの対応については、精神科の中での対応というと、精神保健福祉法による措置入院しかなかったわけでありまして、逆にそのことが、これらの精神障害者の方々の早期の社会復帰の妨げになっていた、そこまで手が回っていなかったということがあるわけですね。
 この法律については、国会でさまざまな議論を経て、ようやく昨年施行されて、これに基づく入院施設についても、現在、各地で国の補助金のもと進んでいるわけでありますが、やはりご近所に住んでいる方から見ると大変心配もある。精神的に病を持っていらして、簡単にいうと法に触れるような行為を繰り返ししてきた人たちが急に来るということであると、やはり単純に大変心配であるということがあると思うんですね。
 この松沢病院において医療観察法に基づく医療を提供していく意義について、まずお聞かせいただきたいと思います。

○及川経営企画部長 この法律に基づきます医療の提供は、対象者に対しまして適切な医療を提供し、症状の改善や社会復帰を促進し、ひいては精神科医療全般の充実に資するものでございます。松沢病院のこれまでの専門的な医療を提供してきました実績を踏まえれば、松沢病院におきまして心神喪失者等医療観察法に基づく医療を提供することは必要であるというふうに考えております。
 また、この法律に基づく入院施設の設置は、国や自治体など国公立の病院に限定されておりまして、行政精神科医療の性質を強く有しております。その意味でも、この法律に基づく医療の提供は都の責務であるというふうに考えておるところでございます。
 今後、着実に施設の整備を図りまして、心神喪失者等医療観察法に基づく医療を適切に提供してまいります。

○田代委員 先ほども申し上げましたように、触法行為を繰り返す精神科障害の方々に対する今までの対応というのは、もう社会復帰というものを考えないで、まず閉じ込めておこうという考え方、抑えておこうという考え方だけできたわけですね。それが全面的にすべて間違っているというわけではないわけですけれども、二十一世紀になって、人権の問題も考えなくちゃならない、そういう中で、当然、患者さん方の社会復帰を見据えた、そういうことをやっていかなくちゃならないということになると、この松沢病院、まさしく東京の中で政策医療、行政医療の担い手にふさわしく、ほかの病院に先駆けて真っ先に手を挙げて、これはよかったんだろうと思いますね。また、ほかのところでやれといわれても、やりようがないかもしれません。
 ですから、そういうところは仕方がないと思うんですが、当然、そうであれば、医療観察法に基づく病棟を整備して、手厚い医療スタッフのもと、専門的な治療をしっかり行って、社会復帰ができる方は、社会復帰に向けてちゃんとした治療をして、結果どうなるかというのを見ていかなくちゃいけないわけですが、先ほど申し上げましたように、病棟の整備や通院医療を提供していくには、周りに住んでいらっしゃる方たちの不安というものを取り除いていかなくちゃならない。そして理解をいただかなくちゃならないわけです。
 過日行われました厚生委員会の事務事業説明において、精神医療センターの整備計画については住民の方々の理解と協力が欠かせないというご答弁をいただいたわけでありますが、整備計画の公表後開催された説明会においては、これは地元で行われたわけですが、住民からさまざまな意見、こちらにも出ていますけれども、出てきたという現実があるわけですね。
 やはり不安を持つというのは仕方がないことで、しっかりした説明を住民にしていかないと、ただ、こういうことで国で決まりましたからもうやりますよと一刀両断で話をすると、うまくいくべきこともいかなくなってしまう。長い歴史の中で住民と松沢病院は共存共栄してきたわけですから、住民の方を信じていただいて--当然、こういう問題になると、非常に政治的に、何せ物をでかくして選挙のときに使おうなんというのがいないわけじゃありません。そういうやからは当然出てくる可能性はあるわけですけれども、真の住民として、生活者として心配をしている人たちもいるわけですから、そこのところはしっかり話し合いをしていただきたい。
 その一番心配している医療観察法に基づく病棟の構造、さらにその運営、そして通院医療の提供、こういうものはどうなっているのか、また、どうしていこうかというお考えを伺いたいと思います。

○及川経営企画部長 まず、この法律に基づきます病棟の構造でございますが、無断退去などを防止するため、玄関の二重化を図りますとともに、必要に応じてフェンスを設置するなど、安全管理体制に万全を期した構造にしてまいります。
 また、この病棟の運営に当たりましては、専属の警備員を配置しまして、運営面でも安全管理に配慮するとともに、地元自治体の関係部門や地域代表から構成されます地域連絡会議を設置いたしまして、医療観察法に基づく病棟の運営状況に関する情報提供を行うなど、地域との連携体制を構築してまいります。
 さらに、通院医療に関しましては、継続的に医療が提供できるよう、法務省の社会復帰調整官や地元自治体の保健福祉部門とも密接な連携を図ってまいります。
 今後とも、地域住民の方々のご理解、ご協力をいただきながら、適切に施設の整備、運営を行ってまいります。

○田代委員 最後にちょっと申し上げておきたいと思うんですけれども、最近の外国映画なんかだと、いたずらに、そういう人たちが施設を破って出ていく映画だとかいろいろあって、必要以上に住民の方々が心配なさるという嫌いが全くないとはいえないんですが、やはり触法行為を行った方々ですから、そこをしっかりわきまえて、周りの方に通報システムも緊急にできる、決して情報を閉ざすようなことがないように。そして通院の場合も、どこまでが通院が可能かどうかという責任、だれがとるかというところもなかなか難しいところがあるわけですね、人権の問題も出てきますし。
 しかし、一つ何かそういう事件がありますと、一生懸命職員の方がなさっているのに、その一つのために多くの事業がとんざしてしまうということになると大変困ります。そういう意味では、この病棟には確実性が非常に必要なことですので、それについてはまた委員会でもしっかりとした報告をいただき、委員会の理解も得ると同時に、周りの方にしっかり理解していただきたい。
 繰り返しになりますけれども、こういった施設の整備を進めていくに当たっては地域住民の理解が何せ大切であって、これまで二回にわたって住民説明会を開催して、計画の全体像を説明したということですけれども、これで終わってしまうわけではなくて、施設の設計や着工など事業の進捗に合わせて、その都度、地元世田谷区や近隣町会ともきめ細かく調整を行っていただいて、何か騒ぎにするという人たちを相手にする必要は全くないわけですけれども、地域住民への説明は十分行って十分な理解を得ていく。そして、そのこと自身が精神科医療全般に対するさらなる地域住民の理解を深めて、結果としては、先ほど申し上げましたように、二十一世紀の一番取り組んでいかなくちゃならない医療の一つでありますこの事業の推進につながるわけでありますから、ぜひとも地域と共生していただきたい。
 そして、東京都における精神科医療の拠点として、であるということは日本で中心になる、であるということはアジアに冠たる精神科医療機関として、これからも精神科医療をリードし続けていくものだと考えますので、ぜひとも、住民との理解のもと、細かく、そして着実に進めていただきたいということを申し上げて、質疑を終わります。

○伊藤委員 私の方からも、精神医療センターの整備について何点か質問させていただきます。
 東京都の健康推進プラン21後期五か年戦略、福祉保健局が出しているこの冊子の中に、都内の労働相談情報センターにおける労働相談の状況を見ると、メンタルヘルス関連の相談の件数が近年急激に増加をしてきております。また、全国の六割を超える労働者が強い不安や悩み、ストレスを感じているなど、心の健康が大きな問題となってきております。
 こうした課題が迫る中、企業におけるメンタルへルスを理由とする休職者の増加や、全国で毎年三万人を超える自殺者の発生などに見られるように、精神科医療への需要が高まる中で、日本の精神科医療を代表する松沢病院の整備は急を要するものと考えます。
 これまで松沢病院においては、百三十年に及ぶその長い歴史の中で、多くの精神科疾患への対応を行ってきたところであります。この整備計画にもありますけれども、改めて確認の意味も踏まえ、今回、精神医療センターとして整備することの意義について伺います。

○岸上参事 まず施設面では、現在の松沢病院は老朽化、狭隘化が著しくなっておりまして、加えて、施設の配置が低層分散方式になっているために、患者の利便性、サービス供給部門の効率性が損なわれております。そこで、老朽化した病棟などを集約立体化して機能性や効率性の向上を図り、患者の療養環境を改善していくものでございます。
 また、医療機能面においては、急性期精神科医療を中心とした、一般の精神科病院では対応が困難な精神科疾患を有する患者さんへの医療を提供するなど、今後の精神科医療のニーズに的確に対応していくものでございます。

○伊藤委員 精神科医療に関しては、この整備計画の中にあるように、発症後の症状が激しい段階での対応、いわゆる急性期における治療への取り組みが、症状の重度化の防止や、あるいは早期の社会復帰の観点からも重要であると思います。
 一方で、精神科疾患については、その予防への取り組みも重要であると思います。ストレス社会といわれる今日、メンタルヘルスに関する記事を目にしない日はありませんけれども、一般都民の方々の精神科医療や精神科疾患に関する知識や理解はまだまだ十分であるとはいえないと思います。
 そこで、精神医療センターとして、精神科疾患の予防への取り組みについて伺います。

○岸上参事 松沢病院では、これまでの長い歴史の中で多くの臨床例を経験しておりまして、精神疾患に関する情報や治療実績を有しております。そこで、こうした豊富な経験や実績を生かし、松沢病院において精神疾患に関する公開講座を開くなど、予防に関する知識の普及啓発に努めてまいります。
 また、松沢キャンパスには、松沢病院のほかに、中部総合精神保健福祉センター、精神医学総合研究所がありまして、精神科医療の大きな拠点となっております。これらの機関と連携を図り、松沢キャンパスにおける医療、福祉、研究の集積のメリットを最大限に生かしながら、精神科疾患の予防について研究を進めるとともに、都民に対する知識の普及啓発に努めてまいります。

○伊藤委員 ぜひともそういった専門的な見地から予防にも取り組んでいただきたいということを要望させていただきます。
 次に、社会復帰支援についてでありますけれども、精神科医療の潮流が入院医療中心から地域生活中心へと変わりつつある中で、精神科医療をリードする松沢病院はその先頭に立っていかなければならないと思います。精神科疾患を有する患者への対応については、疾患そのものが治癒しただけでなく、日常生活を支障なく過ごすことができるようになって初めて完全な社会復帰が実現されるものと思いますけれども、現実にはさまざまな課題があって、その実現には難しい現状があると思います。
 社会復帰支援に関しては、精神医療センターの整備計画においても、長期入院患者の退院促進などを図っていくとされております。
 そこで、整備計画の中では、保健福祉施設などと連携して社会復帰を促進するシステムづくりに積極的に取り組むというふうにありますけれども、具体的にはどのような方策を考えているのか伺います。

○岸上参事 入院中心から地域生活中心へと精神科医療の転換を図っていくため、精神医療センターにおける医療的ケアを終了した患者さんにつきましては、社会復帰支援室を窓口としまして、医療連携機能、医療相談機能、デイケア機能、訪問看護機能などを発揮しまして、保健福祉施設などと緊密な連携を図りまして、退院や他の精神科病院、精神保健福祉施設などへの転院、入所を勧めるなど、早期の社会復帰を促進してまいります。

○伊藤委員 ご答弁の中の社会復帰支援の窓口、これがとても大事な部署だというふうに私は思っております。
 私が以前かかわった方で、松沢病院で治療を受けた患者さんのケースでございますけれども、一たんは症状が軽くなって退院となりました。しかし、その患者さんは病状に波がありまして、入院が必要と考えられるような状態になるときが多々ありました。現行の精神保健福祉法では、自傷他害のおそれがあるとされるような場合には、警察官の通報による措置入院の対応が可能でありますけれども、私が受けたこの相談の場合は、そこまでは至っておらず、それでいて患者さんご本人に病識がないため、私は病気じゃないといい張るため、医療機関にはうまくつなげることができなくて、ご家族の方も大変な悩みを抱えておられました。
 このように、精神科疾患を有する患者さんの退院後の支援については、本人だけでなく、ご家族、また親族も含めて、松沢病院に期待するところが極めて大きいものがあります。
 そこで、退院後の患者やご家族、親族などの相談などに対する支援について精神医療センターではどのように取り組んでいくのか伺います。

○岸上参事 精神医療センターにおきまして、入院中心から地域生活、すなわち外来中心に移行していくためには、退院後のケアが極めて重要でございます。
 そこで、精神医療センターにおきましては、社会復帰支援室において、患者、ご家族などの相談に対応するほか、訪問看護や多職種によるチームでの訪問など、いわゆるアウトリーチ型のサービスを充実させまして、退院後の病状の変化に対応するなど、患者さんやご家族が地域で安心して生活していくための取り組みを行ってまいります。

○伊藤委員 ぜひ社会復帰支援のために頑張っていただきたいと思います。
 続きまして、精神疾患を有する患者さんの社会復帰に当たっての就労の支援について伺います。
 精神疾患を有する患者さんが、たとえ病気が軽快し、退院が可能となっても、就労、つまり働き口がなければ生活に困窮し、再び病気が悪化することにもなりかねません。そういう点では、就労支援も大きな意味での社会復帰支援の一つではないかと思います。松沢病院という一つの医療機関に社会復帰支援のすべてをゆだねるというわけではありませんけれども、真の意味での社会復帰支援を行っていくためには、就労支援を含めた幅広いサポートが必要であると考えます。
 そこで、社会復帰支援の一つとして、患者さんの就労支援についてどのようにかかわっていくのか伺います。

○岸上参事 患者さんの社会復帰を実現するに当たりまして、就労支援は大変重要なことであるというふうに認識しております。精神医療センター整備後も、社会復帰支援室において、患者の就労支援に係る相談、就労先の紹介などにつきまして積極的に対応しまして、社会復帰支援に努めてまいります。

○伊藤委員 最後に、精神医療センターの災害拠点病院としての機能強化について伺います。
 松沢病院は既に災害時の拠点病院に指定されておりますけれども、現在の施設の状況では十分にその役割を果たすことができないのではないかと思います。その点でも整備はできる限り早く行っていくべきと考えます。
 このたびの整備計画においては、例えば大規模災害時において対応できる緊急用のヘリコプターの離発着場の整備や、あるいは周辺地域の救護の拠点としての施設設備に関する充実の方針が示されております。
 そこで、精神医療センターの整備において、大規模災害発生時においてどのように地域への協力を行っていくのか伺います。

○岸上参事 精神医療センターの整備に当たりまして、大規模災害時に対応できる拠点病院として、緊急ヘリコプターの離発着場を整備するほか、傷病者の受け入れ及び治療、災害時の一時避難場所の確保など、周辺地域の救護機能を充実してまいります。
 今後、地元世田谷区とも調整を行いまして、災害拠点病院としての機能強化を図ってまいります。

○伊藤委員 大規模災害時において、医療を周辺の地域住民へ提供していくということは、大きな安心につながると思います。ぜひ地元からも頼られる病院としての整備を図ってほしいと要望いたします。
 さて、大規模災害時においては、整備計画にありますように、災害拠点病院としての役割を担うこととされております。
 そこで、こういった有事の場合、精神科病院としての機能はそのまま存続させていくのか、災害拠点病院としての機能に純化していくのか、確認のため伺います。

○岸上参事 大規模災害の発生時におきまして、被害の状況などにもよりますが、精神科病院として診療の継続に全力を尽くしますとともに、できるだけ多くの傷病者を受け入れ、必要な医療を提供し、災害拠点病院としての役割を果たしてまいります。

○伊藤委員 冒頭にも申し上げましたけれども、社会環境や精神科医療を取り巻く状況が大きく変化する中、精神科医療に対する多種多様なニーズがございます。その一つ一つが一朝一夕に解決するようなことではございませんけれども、今後とも、松沢病院を精神医療センターとして整備することによって、ぜひとも今後の精神科医療の充実を図り、精神科疾患を有する患者さん、そしてご家族などへの支援の強化につながることを望み、私の質問を終わります。

○かち委員 私からも、精神医療センター整備計画について何点かお聞きします。
 先日、松沢病院を見学させていただきました。十九万平方メートルという大変広大な敷地の中に、歴史的にも八十数年という歴史があるわけで、巨木もありまして、精神医療を提供する環境としては大変すばらしいものがあるなというふうに思いました。
 一方、現存する施設が大変老朽化しているということも実感したわけです。今なお畳の部屋があるということもありまして、これは改築の必要性は当然だというふうに考えます。
 しかしながら、今回の計画では病床削減やPFIの導入などが含まれており、疑問に思うことが幾つかありますので、質問させていただきます。
 先ほど来いわれているように、精神科医療を取り巻く環境は近年大きく変化しつつあります。国は、入院医療中心から地域生活へと施策の転換を打ち出しました。都においても、本年六月、精神保健福祉施策の構造変革についてという答申が審議会から出されております。精神患者さんの退院後の地域生活まで視野に入れた広義の退院促進を実現するための、都が早急に取り組むべき諸問題が明らかにされたところです。こうした取り組みと一体的に、松沢病院は精神医療センターとしてその機能を発揮することが求められているというふうに思います。
 先ほど、田代委員からるる日本における精神医療の歴史がお話しされましたけれども、私、見学したときに、あそこに資料館があるんですが、その中を見ましたら、おっしゃったとおり、当時は本当に治療方法もなくて、水責めだとか手かせ足かせというようなものが、実際のものがそのまま残されているということで、大変貴重な資料がありました。
 松沢病院は、現存する日本最古の精神病院といわれておりまして、当初から古いカルテも保存されているというふうに聞いております。日本の精神医療の貴重な歴史が蓄積されている建物の一部も保存するとともに、現在の資料館を拡充し、精神医療博物館として整備することに大変意義があると思いますけれども、ご所見を伺います。

○岸上参事 現在、松沢病院の資料館には、これまで松沢病院において提供してまいりました医療に関する資料を展示しまして、多くの医療関係者などが来訪しているところでございます。都としては、精神科医療の歴史を物語る貴重な財産として保存していきたいと考えておりますが、具体的な整備のあり方については今後検討してまいります。

○かち委員 ぜひ残していただきたいと思います。
 さて、二〇〇三年から松沢病院では、長期入院患者の転院、退院の促進を進めてきております。資料にもありますけれども、千百五十二床あったベッドを順次廃止して、百四十七床既に削り、現在千五床ということになっております。それをさらに百十五床削減し、八百九十床にするとの計画です。しかし、転院、退院促進といっても、まず受け入れ条件が整っていなければ、本人の病状的問題あるいは家族の調整、経済的問題、社会資源の整備など、さまざまな課題があります。
 こうした状況を背景にして、今、松沢病院に入院されている患者さんの現況を少しお聞きしたいと思いますが、医療保険の種類別、長期入院患者さん、一年以上の方々の人数、平均在院日数や最長日数などはどうなっているでしょうか。

○岸上参事 費用負担別の患者実績につきましては、平成十七年度三月末現在で、入院患者八百二十五人のうち、国民健康保険が三百七十人、四四・九%、生活保護が二百三十人、二七・九%、老人保健が百三十一人、一五・九%などとなっております。
 平成十七年度における平均在院日数は、一人当たり百二十五日となっております。
 また、平成十七年度末現在で一年以上入院の長期入院患者は三百四十人で、最も長い患者さんの入院期間は五十九年となっております。

○かち委員 今お答えいただきましたように、入院されている患者さんの中で生活保護受給者は二七・九%、老人医療費、ですから七十歳以上の方が一六%、長期入院患者が三百四十人、全入院患者の約三三%を占めるわけですね。
 こういう長期になる方々についてはそれなりの理由があると思うんですが、この計画では、この三百四十人を、改築、オープンまでの六年間に二百人に減らすということになります。百四十人を転・退院促進ということになりますと、退院率は四一%ということになるわけです。国が示した精神保健福祉の改革ビジョンというものの中には、こうした退院率促進ということも含めて書かれているんですが、その中でも、今後十年間で都道府県の長期入院患者の退院率を二九%以上にすると目標を定めているわけです。その二九%と比較しても、四一%というのははるかに上回るものです。長期になるにはそれなりの状況があるというふうに思われるわけです。このように急速なベッド縮小は、患者さんにとってもさまざまな無理が生じるのではないかと思われますけれども、その辺はいかが考えておられるでしょうか。

○岸上参事 先ほどの入院患者さんの件でございますけれども、この数字を設定するに当たりましては、全入院患者さんの実態を把握いたしまして、そこから社会復帰が可能な方の数を推計しまして、実態に基づいてこの数字を出しております。
 そして、松沢病院におきましては、平成十五年四月に、長期入院の解消を目指しまして、退院促進を図るため、多職種から構成されます社会復帰支援室を設置いたしまして、以来、自治体や医療関係機関、保健福祉施設と連携しまして社会復帰の促進に取り組んでまいりました。
 こうしたことから、この実現は十分可能なものというふうに考えております。

○かち委員 社会復帰支援室を立ち上げて精力的に取り組んでいるということですけれども、私も実際現場の方の状況を見まして、確かに、ドクター一名、ケースワーカーが八名ですかね、看護師、保健師が十二名とかいうことで、大変重装備で、多職種が構えて退院促進に当たられているという状況を見ました。
 しかし、内部努力、松沢病院の中だけの努力では解決しない問題もあるわけです。例えば、社会復帰するためには受け入れ条件が必要です。そのための社会資源の充足状況がどうかといえば、都の社会施設の整備状況はまだまだ道半ばという状況です。
 例えば、昨年度の時点で、生活訓練施設、目標が四十二カ所に対し十七カ所、福祉ホームは四十二カ所に対し二十一カ所、グループホームは三百八十一カ所に対し百四十四カ所、通所授産施設百五十カ所に対したった三十カ所です。精神科患者を受け入れる訪問看護ステーション、これも絶対数が足りません。松沢病院で訪問看護にも行っております。しかし、これも長期に対応するには限界があります。いつかは地域の訪問看護ステーションや福祉事務所などに引き渡していかなければならないわけですが、その絶対数も足りないし、その方々のスキルアップ、精神科患者さんに対応するという点では、かなりの専門的な対応の仕方というものを身につけなければなりませんし、そういう意味でも、今はとてもまだその途上だというふうに思うんですね。こういう状況を勘案しながら退院促進も進めるべきだというふうに思うんです。
 もう一つ、今回の整備計画では、心神喪失者等医療観察法に基づく病棟を整備するとされていますが、その病床数の根拠、整備計画における位置づけ、整備経費及び運営費の負担についてお聞きします。

○岸上参事 いわゆる心神喪失者等医療観察法に基づく病床数につきましては、国の方針で、人口五百万人当たり一カ所、三十床の病棟を整備することとされております。現在、東京都内には、小平市にあります国立精神・神経センター武蔵病院に、同法に基づく病棟が三十床ございまして、人口約千二百万人の東京都においては、さらに一カ所、三十床が必要となります。そこで、松沢病院に三十床の医療観察法に基づく病棟を整備することとしております。
 整備計画におきましては、精神医療センターにおけるセンター的医療機能のうち、精神科特殊医療の一つとしまして、この心神喪失者等医療観察法に基づく医療を位置づけております。心神喪失者等医療観察法に基づく病棟の整備につきましては、国庫負担金の対象経費となり、整備に要した費用の全額が国庫から支出されます。また、人件費などの運営費につきましては診療報酬によって賄われます。

○かち委員 今ご説明がありましたけれども、国の制度として三十床の必要がある。確保の必要がある。そして、東京都でいえば、精神科医療のセンターとして、リーダーとしての役割を果たす松沢病院に設置するのが適当であろうということは私も理解しますし、また、こうした病気からいろいろな事件を起こしてしまったというような患者さんについては、きちんと治療とリハビリでコントロールされていくことが必要であると思いますし、必要な事業だというふうに認識しております。
 しかし、今お話がありましたように、整備費についても、また人件費についても国の負担で行うということなんですね。この計画の中に一応入ってはおりますけれども、医療観察法に基づく施設としては、全体の松沢病院の改革計画、整備計画との関係ではちょっと別の扱いではないかというふうに思うわけです。
 そうしますと、今、八百九十床というふうに計画で出されておりますけれども、実際的には八百六十床ということになると思うんです。ベッドがこのように削減するわけですけれども、今日、重篤な精神症状を伴う認知症の高齢者の入院医療、本当にベッドが足りなくて困っているというのが実態です。この中にも三十六床というのは入っておりますけれども、これらの医療要求にこたえるためにも、ベッドはもう少しふやすべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○岸上参事 先ほども申し上げましたけれども、今回の整備計画におきます病床数の算定に当たりましては、これまでの入院、退院状況の実績を調査しまして、精神医療センターとして必要とされます病床数を医療機能に応じて算出しております。
 現在の病床数から整備後の病床数へ減少する分につきましては、長期入院患者の転・退院などによって十分対応が可能でございまして、これは、現在の世界的な潮流であります、入院生活中心から地域生活中心へという、その流れを実現するものでございます。

○かち委員 十九万平方メートルの広大な敷地の中にあるわけであって、また、今日の精神医療の増加や社会資源整備のおくれなどを総合的に判断されて、東京の医療センターとしての役割を果たすべく、病床確保を強く求めておきます。
 それから、整備計画の公表後に二回の住民説明会が開かれております。資料にも出されていますけれども、松沢の精神医療センターが、開かれた病院として、また、国のビジョンの中にもありますけれども、今日の精神医療に対する国民の認識度を高めていく必要がある。ノーマライゼーションの話もありましたけれども、もっともっと、いつでもだれでもかかり得る病気である、そして、きちんと治療すればきちんとコントロールできるので、社会復帰できるんだということをもっと都民的に理解を深めていく必要があって、その役割を果たす機能も松沢の医療センターは持っているというふうに思うんですね。
 そういう意味でも、開かれた病院として、また歴史的に見れば、患者さんたちがつくったといわれるあの将軍池、大変立派なものでした。こうした自然をもっと地域の方に開放するというようなことや、また、隣接する歩道が大変狭いという問題も、私も通ってみてわかりました。後ろから自転車が来たら、よけなければ歩けないという状況があります。こういうことを、地域の皆さんの要望にもこたえるということで、やる必要があると思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。

○岸上参事 提出した資料にございますとおり、先ほどお話のございました住民説明会におきまして、さまざまなご質問、ご要望が地域の住民の方から出されております。
 要望事項のうちで、施設の安全性の確保につきましては、ハード、ソフト両面から万全を期してまいります。
 また、周辺道路の整備、歩道整備などにつきましては、世田谷区と協議して、できる限り協力していきたいというふうに考えております。
 さらに、将軍池の開放につきましては、全面的な開放につきましては、療養環境の保持の観点から無理だというふうに考えておりますけれども、時間等を限定した一部開放につきまして、世田谷区とも協議をして検討してまいりたいというふうに考えております。
 ただ、敷地内を東西に横断する道路の整備につきましては、患者さんの療養環境に支障を生ずる可能性が高いことなどから、これは不可能だというふうに考えております。

○かち委員 さて、今度この計画なんですけれども、計画はどのような検討経緯で作成されたのか、また、ここにかかわる関係者としては一番深い病院職員というのはどのようにかかわってきたのでしょうか。

○岸上参事 精神医療センター整備計画につきましては、平成十三年十二月に発表されました都立病院改革マスタープランを受けまして、平成十四年一月に、当時の衛生局内に技監を委員長とする松沢キャンパス整備検討委員会を設置し、以来検討を行ってまいりました。また、精神医療センターにおける運営方針や病床規模などの専門的事項を検討するため、同年同月、松沢キャンパス整備検討委員会内に精神医療センター部会を設置しまして検討を行ってまいりました。平成十五年七月には、整備計画についてより詳細な検討を行うため、本部及び病院職員から構成される精神医療センターの整備検討に関するワーキンググループを設置し、その後、平成十八年九月までの間に計十六回の検討を行いました。さらに、これらの検討組織に加えまして、松沢病院内において、各職種から構成されるPT組織を設置しまして、病院職員も参加して検討を行ってまいりました。
 こうした委員会等での検討を経まして、その検討結果をもとに、病院経営本部において事業計画を策定したものでございます。

○かち委員 今回の整備計画に当たっては、PFI手法を目指すということがあります。この間、可能性等の調査について行ったというふうに聞いておりますけれども、それはいつで、また、調査及びアドバイザーの業務の委託にかかった費用と委託先はどういうふうになっていますか。

○岸上参事 PFIの導入可能性等調査につきましては、平成十六年度において行われております。この調査の委託先は株式会社日本総合研究所でございまして、契約金額は三百十一万九千円となっております。

○かち委員 十六年度に導入可能性の調査を行ったということですけれども、その後も予算はついているわけですよね。お聞きしましたところ、三年間で締めて一億五千三百十八万五千円かかっているということなんです。調査は終了したというわけですけれども、では、その調査の結果はどうだったのか、そしてこれからどのように進めていくのか、お聞きします。

○岸上参事 調査の結果につきましては、PFIを導入した場合に、患者サービス面、財政面で一定の効果があることが確認されました。今後、都として、年度内にPFI事業としての選定に係る審議、いわゆる特定事業選定の審議を受ける予定でございます。特定事業として選定されますと、その後、特定事業選定の公表、入札説明書等の公表を行う予定でございます。

○かち委員 調査の結果は、一定のサービス面、そして収益面で、収益性があるというふうに結論を出されたわけですよね。そういう結果を出された根拠というものを、なぜこの委員会に示されないのでしょうか。PFIは検討する、ここにも検討すると書いてあるんですけれども、PFIを導入することを決めたのかどうか。決めたというふうになかなかおっしゃらないんですけれども、来年の三月までには業者選定を行うといっているので、ちょっとその辺の状況の関係がよくわからないんですけれども、教えてください。

○岸上参事 この導入を決定したのかどうかにつきましては、先ほど申し上げましたけれども、特定事業としての選定が行われますと正式に決定ということになりまして、それは年を越した来年の二月ごろになろうかと思います。
 それから、現時点ではあくまでまだ検討中ということでございまして、PFIの導入可能性調査の結果、一定の効果があるということが示されたことにとどまっておりまして、これを踏まえまして現在検討を進めているということでございます。
 また、このPFI導入可能性調査の中身につきましては、精神医療センターに関するPFI導入の可能性あるいは民間の意向などに関するものでございます。この結果を踏まえまして、今後、PFIの導入に向けて、施設整備計画や事業の枠組み等についてより詳細に検討を行っていくということにしております。
 その意味で、報告書は、仮に設定をした情報が含まれるなど、検討途上の情報でございまして、これを明らかにすると、確定した情報と誤解されて都民の間に混乱を生じさせるおそれがあります。また、事業者の選定や事業費の積算等において特定の業者に利益を与え、もしくは不利益を及ぼすおそれがございます。さらに、今後の契約や交渉において都の利益を害するおそれがあるなど、事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがございます。また、民間事業者に対して都が最初に情報提供するのは実施方針というふうにPFI法で定められておりまして、内容が変更になる可能性がある情報を提供することは、都への信頼性の観点からも問題があるということでございます。
 そうしたことから、現時点では公表はいたしません。

○かち委員 公共の建物を改築するということになれば、当然、税金を使って調査などをやっているわけで、その結果はやっぱり都民や議会に明らかにすべきだと思うんですね。
 大阪でも、精神病院の大阪府立精神医療センター再編整備のPFI導入可能性検討結果というのをちゃんとインターネットで出しているわけですよね。どうして東京だけが出せないのかという点では、幾らお聞きしても理解に苦しみます。
 今年度中には特定事業の選定審議をするということですけれども、全く経過が不透明です。これまでのやり方もそうですけれども、都のPFIのやり方は、とにかく情報が、経過がわからない。結果だけ示されるという点では、経過の情報提供という点でも考え直していただきたいというふうに思います。
 このPFIについては、とりわけ重い精神科の患者を対象としている松沢病院のように、もともと不採算医療で、最も重要な行政的医療を担っている病院に、民間機能の採算性を重視せざるを得ないPFIを導入することは大変無理があるというふうに思います。
 先日の事務事業質疑で吉田委員も質問いたしましたけれども、高知の経験からしても、民間事業者には病院運営のノウハウがなく、結果的に医療材料費で大変大きな損失金を出してしまっているという実態も問題提起しました。そしてまた、精神病院の特性を踏まえたノウハウ、経験というのはもっと厳しいわけです。
 あの敷地内には、共同作業所の事業として売店や喫茶店が運営されておりますけれども、収益性重視という、このような間接部門に当たる事業については、今後、高い場所代を取ることにもなりかねません。都立精神医療センターとして整備していくに当たり、一つ一つ経過を明らかにして、今後も、患者さんや家族、地域の住民の皆さん、病院職員の意見を十分に聞いて、その意見を尊重して進めていくことを強く求めて、質問を終わります。

○山口委員 私の方からは、精神医療センターの整備計画について意見だけを申し述べさせていただきます。
 今回の報告を受けて、生活者ネットワークも松沢病院の視察を実施させていただきました。京王線の車窓からも緑豊かな病院の一角が望まれ、約二十万平米の広大敷地に入りますと、なお一層その緑の豊かさを実感しました。
 作業療法の一環としてつくられたということですが、敷地内にある将軍池と加藤山は、今や自然の風景に溶け込み、周辺の緑と一体になり、憩いの空間をつくり出しています。運営理念には、精神障害者の人権を尊重するとともに、心がいやされる療養環境に配慮しながら、患者中心の医療を提供するとありますが、心の病をいやし、健康を取り戻していくには、こうした環境に十分配慮することが不可欠です。
 そこで、第一点目として、緑の多い環境の保全についてです。
 さきの住民説明会でも、松沢キャンパス内の敷地の利活用について幾つかの要望が出されたとのことですが、十分住民の理解を得て、患者に必要な療養環境でもある現在の環境を保全しつつ整備を進めていくことを求めます。
 第二点目としては、新館などの建築物の高さについてです。
 さきにも府中病院の例などもありますが、PFI手法の導入も検討されているということですが、新たな建築設計に当たっては、建築基準法などの法令に沿って整備されることはもとより、景観を含む地域のまちづくりにも配慮して整備を進めていただきたいと思います。
 第三点目は、患者のプライバシー保護についてです。
 女性の長期入院患者病棟と、触法行為などに該当される大変ハードな患者さんの長期入院病棟を見せていただきましたが、老朽化とともに狭隘化も進み、六人部屋、三人部屋という、入院生活を送る上では大変厳しい環境にあると感じました。建物周辺の環境とは打って変わった病棟の環境ですので、整備に当たっては、個室化を図るなど、患者のプライバシーに十分配慮することを強く求めておきます。
 最後に、都立病院は患者の権利章典を策定しています。精神医療は日本ではなかなかおくれをとっているといわれておりますが、ぜひ精神科病院の患者の権利章典の策定をしていただいて、専門医療の拡充に努めていただくことを意見として申し述べておきます。

○長橋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○長橋委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。

○長橋委員長 これより福祉保健局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第二百二十七号議案から第二百三十三号議案まで及び第二百三十五号議案から第二百三十八号議案までを一括して議題といたします。
 付託議案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 要求資料について理事者の説明を求めます。

○杉村総務部長 過日の厚生委員会でご要求のありました資料につきまして、お手元の厚生委員会要求資料にまとめてございますので、ご説明申し上げます。
 資料は、目次にございますように、全部で三項目となっております。
 それでは、順を追って説明させていただきます。
 まず、一ページをお開き願います。東京都心身障害者扶養年金会計への一般会計繰入金の推移といたしまして、一般会計繰入金の額を、減免費、軽減費及び基金補てんの性質別に年度ごとに記載してございます。
 二ページをお開き願います。東京都心身障害者扶養年金基金の運用利率等の推移といたしまして、運用利率及び制度設計利率を年度ごとに記載してございます。
 最後になりますが、三ページをごらんください。東京都心身障害者扶養年金審議会中間のまとめに対する公募意見の概要といたしまして、平成十八年八月八日から同年九月八日までを受け付け期間として行った意見公募に、郵送、ファクシミリ、電子メール、電話等により寄せられた意見について、意見の内容別に件数を記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、ご要求のありました資料につきましてご説明申し上げました。よろしくお願い申し上げます。

○長橋委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより付託議案に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○山加委員 私からは、扶養年金制度について伺います。
 扶養年金制度を廃止する条例が提出されておりますけれども、この扶養年金制度は、障害者施策がまだ充実していなかった中で、保護者亡き後の障害者の将来を心配する関係者の願いにこたえる制度として、昭和四十四年、まさに東京都が国に先んじて創設したと聞いております。
 まず、この扶養年金制度の意義について伺いたいと思います。

○吉岡障害者施策推進部長 心身障害者扶養年金制度は、保護者亡き後の障害者の生活の安定と福祉の向上を図るため、昭和四十四年に、任意加入の私的保険の仕組みを基本とし、低所得者に対する福祉的措置を伴った東京都独自の制度として創設されました。昭和四十四年当時、月額二万円の給付を保障する本制度は、当時の生活扶助費の月額が一万四千二百四十五円であったことと比べても画期的な制度でございました。
 その後、昭和六十一年度に障害基礎年金や特別障害者手当が創設され、障害者に対する所得保障の水準が向上したことに加え、障害者施策が質、量ともに充実し、地域生活基盤が格段に整備されたこともございまして、扶養年金制度の果たす役割は、制度創設当時に比べれば相対的に変わってきているというふうに考えてございます。

○山加委員 昭和四十四年制度発足から三十七年を経過いたしまして、この間に、昭和五十六年、国際障害者年、そしてその後、それに続いて国連の障害者の十年がありました。障害者に対するサービスの充実が図られ、グループホーム、また地域自立生活支援センターの整備など、障害者が地域で自立できるような環境整備も進んでまいりました。障害者を取り巻く環境が制度発足当時と比べて格段に改善されてきていることは、私も承知しておりますので、今ご答弁いただいたように、扶養年金制度の果たしている役割が年金の創設当時と比べて相対的に変わってきていることは理解できます。
 しかし、確認の意味で、今回、扶養年金制度の廃止を提案するに至った理由について伺わせてください。

○吉岡障害者施策推進部長 扶養年金制度は、平成五年から扶養年金基金の取り崩しが始まっており、平成二十三年度には基金が枯渇することが見込まれ、財政的に行き詰まっている状況です。都は、平成十八年五月に扶養年金審議会を立ち上げ、扶養年金制度をどのように立て直すかという問題意識から審議を始め、制度のあり方の抜本的な議論を行いました。
 扶養年金制度を維持するためには、掛金の値上げか公費投入の二つの方法が考えられます。しかし、加入者の負担能力を超える大幅な掛金の値上げは実際上困難です。また、扶養年金制度は任意加入であり、年金給付に要する費用は加入者の掛金で賄うことを原則とするため、継続的な多額の公費投入は不適切でございます。このため、扶養年金審議会は本年十月、制度の廃止を提言いたしました。
 都としても、審議会答申を踏まえ、慎重に検討した上で、扶養年金制度の廃止はやむを得ないと判断し、廃止条例を提案いたしました。

○山加委員 制度を立て直そうといろいろ議論をしたけれども、現行制度を立て直す方法はないので、やむを得ず廃止せざるを得ないと判断されたわけですね。
 財政的に立ち行かなくなり、廃止条例を提出されたわけですけれども、この扶養年金制度の財政が破綻に至った要因について伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 扶養年金制度が財政的に破綻した要因でございますが、扶養年金制度につきましては、今までに四回の制度改正を行ってきておりますけれども、直近の平成十年度に、掛金の引き上げにより財政基盤の立て直しを図りました。しかし、バブル経済崩壊後の低金利状態が現在に至るまで長く続いたため、扶養年金基金の運用収入が激減していること、掛金の引き上げにより新規加入者が減少したことなどにより掛金収入が減少してしまったこと、そして、制度が成熟化したことにより年金受給者が増加し、給付額が年々増加していること、これらの要因により扶養年金基金の取り崩しがとまらず、平成二十三年度には基金が枯渇する状況に立ち至ったものでございます。

○山加委員 この制度を廃止しない限り、基金が底をついてなくなってしまう。そうなると、その後は、掛金を大幅に値上げするか、公費で穴埋めをするしかないということになりますが、加入者の負担能力を超える大幅な掛金値上げの実現というのは不可能であります。そうなると、残るは、公費を投入して制度を存続させるしかないわけであります。
 この条例案の対応策を実施すると一千五百億の経費が必要だそうですが、現行制度を廃止しないで存続させた場合、必要となる公費の投入額がどのくらいの金額になるのか、聞かせてください。

○吉岡障害者施策推進部長 現在のまま制度を継続し、新規加入者も現在とほぼ同数で推移すると仮定した場合、平成二十三年度には三十三億円、翌年度以降、毎年四十億円以上の公費投入が必要となります。その後、受給者が年々増大するため、公費投入額はさらに年々増大してまいります。
 現行制度を廃止すると仮定した場合に、現行制度を収束するまでに約六十年間所要すると考えられますので、それと同じ期間、六十年間、現行制度を見直ししないで継続すると仮定した場合には、累計で約三千億円の公費投入が必要となる見込みでございます。

○山加委員 将来的に六十年間継続して、累計で約三千億もの公費投入が必要となる制度、やはり将来の世代に負担を残すことを考えた場合、これは絶対に避けるべきであり、存続させることはできません。そうなりますと、制度は当然廃止せざるを得ません。
 扶養年金制度が財政的に破綻するに至ったことについて、制度を運営する都の責任を指摘せざるを得ません。東京都心身障害者扶養年金審議会中間のまとめに対する公募意見でも、制度廃止に至った都の責任は重いという意見が大変多くを占めております。加入者は東京都を信頼して加入したわけでありますから、制度に期待していた方々に対し、制度廃止に至った責任を都はどのような形で果たしていくつもりか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 制度廃止に伴い、条例案で示したとおり、加入者に十分配慮した措置を確実に実施していくことが責任を果たすことになると考えております。
 具体的には、受給者に対しては今後とも現行どおり給付を続けるとともに、未受給者に対しては、全国制度に準じて算出した清算額を支払うことや、分割払いも選択できるようにすることなどにより、加入者が制度に対して期待していたものや制度廃止に伴う要望に可能な限りこたえて、制度運営を担う者としての責任を果たしてまいります。
 また、新たな全国制度への参加を国と調整するとともに、民間の生命保険や信託制度などを紹介することにより、保護者亡き後、年金的に障害者にお金を残したいという保護者の希望にこたえてまいります。
 さらに、制度廃止後も、問い合わせや相談に丁寧に応じながら、加入者を適切にサポートしてまいります。

○山加委員 受給者に対しては現行どおり給付を続けるとのことでありますので、今後、かなり長期にわたって年金支給の事務が続くことになると思います。
 年金の支給事務は定型的な事務でありますから、必ずしも都が直接執行する必要はないわけですが、ぜひ都としては効率的な執行体制をとるべきではないかと思います。
 そこで、将来的な年金の支給事務の執行体制に対する考え方を伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 ご指摘のとおり、年金支給事務はおおむね定型的な事務でございますので、事務執行の確実性や正確性、加入者に対する適切な相談体制の確保、個人情報の保護等に十分に留意した上で、民間委託等を含め、効率的な執行体制について検討してまいります。

○山加委員 ぜひとも加入者の方へ、制度が廃止となったこと、また制度の廃止時期、そして制度廃止後の清算金の支給方法などを含めまして、その後の対応を丁寧に説明していただきまして、加入者の皆様に対して適切な選択をサポートしていただくことを強くお願いいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○伊藤委員 私からも、心身障害者扶養年金制度についてお伺いいたします。
 本制度は、障害者の方に対する公的保障制度が十分に整備されず、家族による扶養または施設保護が中心であった昭和四十四年に、都独自の相互扶助による保険制度として国に先駆けて創設され、昭和四十五年二月に全国制度が発足した後も独自に運営され、三十七年が経過いたしました。この間、親亡き後の障害者の方の生活の安定を図るという目的のもと、月額三万円の給付を保証する本制度は、生活費や医療費など生活の基礎的部分に活用され、大きな役割を果たしてきたと思います。
 しかし、一方では、障害基礎年金や各種手当の創設及び給付水準の向上、障害者施策の充実などにより、本制度の社会的役割や障害者の方の経済面に占める比重が変化していることも背景にある中で、三十七年の長きにわたって運営されてきた本制度でございますけれども、制度発足から今日に至るまで、制度の見直しについてはどのように行われてきたのか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 扶養年金制度の改正の経緯でございますけれども、現在に至るまで、全国制度と同等にするなどの四回の制度改正を行ってきております。
 直近の四回目の改正は平成十年十月でございまして、扶養年金財政を立て直し、制度の安定的運営を図るため、適正な掛金負担とするよう、掛金の引き上げ、掛金の減免制度を改正し免除制度を廃止するというような改正を行っております。

○伊藤委員 ご答弁いただいたとおり、過去四回の制度の見直しが行われて、特に平成十年度の改正では、年金財政を立て直し、将来に向けた制度の安定的運営を図るために、掛金を適正掛金へ引き上げるなどの抜本的な見直しを行ったにもかかわらず、今回の扶養年金条例の廃止を提案するに至ったわけでございますけれども、前回の制度改正後わずか八年で廃止を提案せざるを得ない、その理由は何なのか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 ご指摘のとおり、平成十年度の改正で制度の財政的立て直しを図ったところですが、その後も、扶養年金基金の運用収入や掛金収入の減少、年金受給者が増加し給付額が年々増加していることにより、毎年度、基金の取り崩しにより対応している状況でございまして、このまま推移すれば平成二十三年度に基金が枯渇する事態に立ち至りました。
 扶養年金制度を維持していくためには、掛金の値上げか公費投入の二つの方法が考えられます。しかし、加入者の負担能力を超える大幅な掛金の値上げは実際上困難です。また、扶養年金制度は任意加入であり、年金給付に要する費用は加入者の掛金で賄うことを原則とするため、継続的な多額の公費投入は不適切です。このため、現行制度を維持することはもはや困難であると判断し、廃止条例を提案いたしました。

○伊藤委員 制度を廃止せざるを得ないという厳しい状況はわかりましたけれども、しかし、制度が廃止となりますと、加入者の方々へ大きな影響を及ぼすと思います。現在の扶養年金の加入者数及び障害者手帳所持者に対する加入者の割合はどのぐらいか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 扶養年金制度の加入者についてでございますが、平成十七年度末の制度加入者は二万九千七百三十七人でございます。このうち年金受給者が一万百九十七人、二十年間の掛金納付期間を終えた掛金納付完了者が一万一千百七人、掛金を納めている掛金納付者が八千四百三十三人となっております。
 平成十七年度における加入者の障害者手帳所持者に対する割合は、愛の手帳所持者の三〇・一%、身体障害者手帳所持者の二・一%、精神障害者保健福祉手帳所持者の五・一%となっております。全障害者手帳所持者に対する扶養年金制度加入者の割合は五・五%となっております。

○伊藤委員 今回提案されている制度廃止に伴う対応を見ると、既に受給されている受給者の方へは現在と同じ三万円の給付が継続され、未受給者の方へは、全国制度並みの月額二万円を計算基礎として算出した清算金を支払うということになっております。受給者と未受給者の間で大きく対応が違っており、不公平ではないかとの声も一部には聞こえてまいります。受給者と未受給者とで対応が異なっている理由について伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 制度廃止に伴う対応についてでございますが、まず扶養年金制度は、年金という言葉を使っておりますけれども、本質は、障害者の保護者が掛金を保険料として支払い、保護者が亡くなると障害者に年金という形の保険金が給付される生命保険の仕組みでございます。
 受給者は、保護者が既に亡くなり、既に扶養年金が給付されておりますので、引き続き現在と同様の給付を行うことといたしました。一方、未受給者は、保護者が健在であるため、いまだ生命保険金の支給要件を満たしておりません。ただ、保護者が亡くなれば保険金を受給できる立場にあることへの配慮が必要ですので、掛金を上回る清算金を支払うことといたしたものでございます。

○伊藤委員 受給者と未受給者、それぞれへの対応について、よく検討された上で提案されているということについてはわかりました。つきましては、加入者の方々にも十分にその違いを理解していただけるよう、今後とも努力をしていただきたいと思います。
 さて、今回の扶養年金制度の見直しに当たっては、学識経験者や制度を利用している方々の代表で構成する扶養年金審議会において、さまざまな議論が行われてきたところでございます。また、八月に審議会としての考え方を中間のまとめとして公表し、これに対して多数のさまざまなご意見が寄せられております。寄せられたご意見の概要については、きょうの本委員会に提出された資料にもまとめられておりますけれども、どれを見ても切実な内容であり、声であると思います。
 この中の主な意見と、その意見に対して審議会においてはどのような議論がなされたのかを二点ほど伺いたいと思います。
 まず、制度の総論に関しては、現状のまま制度を存続させてほしい、あるいは、掛金の引き上げや給付減額をしても存続させてほしいという意見が多かったようでございますけれども、この点についてどのような議論が行われたのか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 制度を継続してほしいという意見が多数寄せられましたことは、審議会においても重く受けとめられました。しかし、掛金の大幅な引き上げか多額の公費投入しか制度存続の道がない以上、制度廃止はやむを得ないとの結論に至りました。
 その上で、全国制度に加入できる道を開くことで、掛金を上げたり給付金を引き下げても制度を継続してほしいという意見にこたえていくべきであるという審議会のご意見でございました。

○伊藤委員 次に、制度の各論に関するものとしては、制度廃止に至った都の責任は重く、責任をとるべきであるとの意見が最も多く寄せられておるようでございます。また、制度廃止なら掛金を返してほしいとの意見も相当数寄せられております。こうした点についてはどういう議論が行われたのか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 都の責任が重いという点につきましては、制度廃止後の対応策を実施するためには都に多大な負担を課すことになるが、それを確実に実施することが都としての責任を果たすことになるというのが、審議会委員の一致したご意見でございました。
 また、掛金を返してほしいという声に対しましては、掛金額を上回る清算金を支払うという考え方を示すとともに、このことについて、都として加入者に丁寧にわかりやすく説明してほしいという意見がございました。

○伊藤委員 今回の制度廃止に伴って提案されているように、受給者及び未受給者に対して適切な対応をとるためには、都に大きな負担を課すことになると思われます。一方で、廃止に伴う対応に多額の公費を投入するのであれば、その分の公費を当面の制度存続のために投入して、制度廃止にするか否かの結論を先延ばしにするという考え方もできるかと思います。なぜ今、制度を廃止せざるを得ないのか、その理由を伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 先ほどもご答弁申し上げましたが、現行制度をこのまま継続いたしますと、将来、三千億円以上もの公費負担となることが見込まれますので、制度を継続することは不適切であると考えております。
 現行制度の維持が困難な状況で結論を先延ばしすることは妥当ではありません。都財政を支えていただいているのは一般の都民の方々であり、障害者を含む将来の都民に過重な負担を負わせないためには、ここで制度を廃止せざるを得ないと判断し、制度廃止の条例案を提出いたしました。

○伊藤委員 将来の世代に過重な負担を負わせることのないよう、この時期に制度を廃止せざるを得ないということはわかりました。
 しかしながら、加入者の方々の間には、制度廃止という通知を受けて不安と動揺が広がっており、また、東京都に対する不信の声も多く聞かれるのも事実でございます。都は扶養年金制度を廃止する方向ですけれども、保護者亡き後、障害者へ年金的に残したいという保護者の希望にどのような形でこたえていくのかを伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 都の扶養年金制度を廃止したといたしましても、互助、自助の精神に基づく制度により、自分たちの力で子どもに年金を残していきたいという保護者の要望は最大限尊重していくべきであるというふうに認識しております。新たな全国制度への参加を調整するとともに、民間の生命保険や信託制度などを紹介することにより、こうした保護者の方々の要望にこたえてまいります。

○伊藤委員 都は、加入者の方々の不安を払拭するため、今までご答弁いただいた内容を加入者の方に丁寧に説明すべきであります。また、制度廃止に伴う未受給者への対応の中で示されている、清算金を障害者が年金的に分割して受け取ることが選択できること、そして、平成二十年三月三十一日まで経過措置期間があること、この二つについては、特に加入者の方にとって非常に重要な事項であると思います。扶養年金の加入者の方は高齢の方々が大変に多い中でございます。そうした方々にとってもわかりやすいお知らせを作成していただきたいと要望したいと思います。
 また、経過措置期間終了後も引き続き年金を受給される方や、清算金を分割して受給される方がいらっしゃいます。こうした方々への対応についても、相談窓口を設けるなど万全を期す必要があると考えます。都は、加入者の方に制度廃止について誠意を尽くして説明し、今後のことを適切に判断していただけるよう、しっかりとサポートすべきと考えますが、所見を伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 ご指摘のとおり、今回の制度廃止とそれに伴うさまざまな対応につきまして、加入者の方々に十分理解していただけるよう、誠意を持って説明していくことが大事であると考えております。
 これまで、扶養年金審議会の答申内容などに関する情報につきましては、「加入者だより」を加入者全員に個別にお送りしてまいりましたが、今回の条例につきましても、同様に加入者全員に周知を図ってまいります。また、「広報東京都」や福祉保健局のホームページに掲載するとともに、視覚障害者には点字版「加入者だより」を配布し、また、必要に応じて障害者団体へも説明してまいります。さらには、経過措置期間終了後も、受給者、清算金を分割受給する方については、引き続き窓口で相談できるようにしてまいります。

○伊藤委員 ご答弁いただいたように、ぜひとも加入者の方々へわかりやすいお知らせを出していただきたいと思います。私の手元にも、今回の定例会でかかるという内容の、これをいただきましたけれども、ぱっと見て、やはり字ばかり、数字ばかりで、よくわからない。特に加入者の方々は高齢者の方々が多いですので、しっかり、字を大きくするとかカットを入れるとか、わかりやすい形で「加入者だより」を作成していただきたいということを要望したいと思います。
 制度運営が行き詰まって、扶養年金制度は廃止せざるを得ないということは、これまでのさまざまな議論から、やむを得ないというふうに思いますけれども、制度の目的であった、保護者亡き後の不安の軽減と障害者の福祉の向上という大目的は、依然として重要な課題であると思います。
 最後に、保護者亡き後の不安解消を図るために、グループホームやショートステイなどの地域における生活基盤の推進を進めていくべきと考えますけれども、所見を伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 障害者が保護者亡き後も地域で自立した生活をしていくためには、ご指摘のとおり、グループホームやショートステイ等の地域における生活基盤の整備が極めて重要です。
 都では現在、障害者地域生活支援・就労促進三か年プランに基づき、グループホーム等の整備を進めているところですが、そのプランをさらに発展させ、居住の場の整備や、障害者施設から地域生活への移行などを柱とする障害福祉計画を今年度中に策定する予定でございます。今後は、この計画に基づき、生活基盤の総合的な整備を進めてまいります。

○伊藤委員 私は、学生から初めて社会に出たときに、地元の品川区の心身障害者福祉会館というところで働きました。そのときに、大きな体をした息子さんを車いすに乗せて毎日送迎してくる、体の小さい年老いたお母さんがいっていたことは、私が元気なうちはいいのよ、動けなくなって死んだ後に、この子のことが心配で心配でということを、毎日口癖のようにいっていたのが、今でも耳に、またそして自分の命に、その声が残っているような気がいたします。
 障害者が地域の中で自立して生活できるよう、社会全体で支援していけるよう、そして保護者の方々が自身亡き後を心配しないで済むような社会の実現に向けて、今後も福祉保健局が中心となって尽力されることを要望して、質問を終わります。
 ありがとうございました。

○長橋委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時三十九分休憩

   午後二時五十五分開議

○長橋委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 ただいま文教委員会から連絡がありました。
 あすの連合審査会の申し入れについて、同意することを決定したとのことであります。よろしくお願いいたします。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○かち委員 私からも、心身障害者扶養年金制度の廃止条例に対して何点かお聞きします。
 この制度は、親亡き後の障害者の生活の安定と福祉の向上を図るために創設されたものであります。創設、発足以来三十七年間を経過しておりますが、今日の状況に至った背景として、国のバブル経済崩壊後の長期にわたる超低金利政策が大きく影響しているということも免れません。
 このたび、心身障害者扶養年金審議会の答申を受け、制度を廃止するということですけれども、答申を公表されてから、六百二十四通のパブリックコメントが寄せられています。私のところにも、何とか制度を残してほしいとか、公的機関が将来の約束をして行ってきたものをなくしてしまうのはひどい話だ、親も若い時代だったから、保険料を払うのは非常に大変な中、親亡き後のことを考えて一生懸命掛金を掛けてきた、それを今になって廃止しては困るなど、切々とした困惑と怒りの声が多数寄せられています。
 答申では、扶養年金制度が破綻に至ったことについて、制度を運営する都の責任は非常に重いものがあると指摘をしておりますけれども、改めて都はこれをどのように受けとめ、責任を果たすつもりなのか、お聞きします。

○吉岡障害者施策推進部長 制度を運営する東京都の責任に関してでございますけれども、制度廃止に伴い、条例案で示したとおり、加入者へ十分配慮した措置を確実に実施していくことが責任を果たすことになるというふうに考えております。
 具体的には、受給者に対しては今後とも現行どおり給付を続けるとともに、未受給者に対しては、全国制度に準じて算出した清算金を支払うことや、分割払いも選択できるようにすることなどにより、制度運営を担う者としての責任を果たしてまいります。
 新たな全国制度への参加を国と調整するとともに、民間の生命保険や信託制度などを紹介することにより、保護者亡き後、年金的に障害者にお金を残したいという保護者の希望にこたえてまいります。
 また、制度廃止後も、問い合わせや相談に丁寧に応じながら、加入者の方を適切にサポートしてまいります。

○かち委員 具体的な点については後ほど伺います。
 それで、何点か重複するところは省かせていただきますけれども、答申では、諸制度が充実してきたとはいえ、保護者亡き後の不安の軽減と福祉の向上を図るという制度の目的は依然として重要な課題であるとして、都が総合的施策の展開に積極的に取り組むことを強く求めています。
 答申に対して多くの公募意見が寄せられていますけれども、このうち、六百二十四通のうち五百九十一通、九四%が、切実な残してほしいという要望あるいは責任を果たせという厳しい意見であるということです。この背景には、障害者をめぐる環境は、本年四月からの自立支援法の施行以来、新たな負担増の中で、現実の厳しさと将来への不安を募らせているという実態があるわけです。都としては、この制度を進めてきた者として、その不安を具体的に解消する責任があると思います。
 そこで、先ほど、この制度を現行制度のまま存続した場合、公費はどれぐらいになるのかという質問に対し、六十年間続ければ三千億円かかるという説明がありました。そして、この条例案に対する対応策を実施した場合、公費負担はどのぐらいになるのかという点では、清算をすれば千五百億円ということでした。六十年間とまでいわなくても、千五百億円あれば、毎年四十億円ずつ現行制度で対応しても三十年間続けることができるということなんですね。そういうことを考えれば、今なぜ清算しなければならないのかというのは出てくるわけです。どちらにしても投入額は変わらないわけですから、それで加入している障害者の不安を取り除けるなら、今すぐ廃止する必要はないのではないでしょうか。
 運用基金の状況を出していただきました資料がありますけれども、このところ景気の回復傾向がいわれているわけですけれども、基金金利も急速に改善しているという状況です。今年度の上四半期の金利の伸びは、これは財務局の資料ですけれども、昨年度に比べると三倍から四倍近く金利が上がっているわけですね。ですから、もうだめだ、破綻だというのではなくて、こういう経済環境もやはり勘案しながら状況判断をすべきだというふうに思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○吉岡障害者施策推進部長 扶養年金制度の社会的役割が変化してきていることもございまして、制度創設当時と比較して新規加入者は大幅に減少しております。このため、都単独で保険事業としての適正規模を維持することが困難になってきております。また、高度成長期のような高金利が長期的に持続すると仮定しなければ、加入者の負担能力を超える掛金の大幅値上げが必要となりますので、制度の維持は困難だと考えております。

○かち委員 私が直接聞いた訴えの中に、先ほどもありましたけれども、制度を廃止するとして、受給者と掛金完了者との対応になぜ違いがあるのかということなんですね。現在の受給者と同じように二十年間掛金の義務を果たしてきたのに、制度を廃止するからということでなぜ差がつくのか。これはやはり非常に大きな声になっているんですけれども、もう少し理解できる説明をしていただきたいと思います。(発言する者あり)理解できないから、もう一回聞きます。

○吉岡障害者施策推進部長 扶養年金制度は、先ほどもご答弁申し上げましたとおり、障害者の保護者が掛金を保険料として支払い、保護者が亡くなると、障害者に年金という形の保険金が給付される生命保険でございます。
 受給者は、保護者が亡くなり、既に保険金として扶養年金が給付されておりますので、引き続き現在と同様の給付を行うことといたしました。
 他方、未受給者は、掛金納付が完了しているとしても、保護者がご健在であるため、まだ生命保険金の支給要件を満たしてはおりません。ただし、保護者が亡くなれば保険金を受給できる立場にあることへの配慮が必要ですので、掛金を上回る清算金を支払うことといたしたものでございます。

○かち委員 制度が継続しているのであれば、受給者と掛金完了者の差があるということで、完了者とまだ掛金途中の人とは同じ分類だということはわかるんですけれども、都の都合でここで廃止するというときに、完了の義務を果たした人が、まだ途中であるという分類に入るのは、やはり理解できないことだというふうに思うんです。(発言する者あり)いや、それは本当に掛けてきた方々の切実な訴えなんですよ。都の責任を果たすとか都の責任でやるというのであれば、やはりそのことをちゃんと、安心できる状況をつくり出してあげることこそ都の責任だというふうに思うんです。
 答申では、依然として扶養年金制度への加入希望者はあるという状況です。都制度を廃止するなら、全国制度への参加について国と調整をするなど、親亡き後に年金給付が行える仕組みを利用できるよう、要望にこたえてほしいと強く要求されていますけれども、その辺の見通しと、全国制度に加入する場合、都制度での加入期間は全国制度に通算されるのでしょうか。

○吉岡障害者施策推進部長 先ほども申し上げましたとおり、全国制度への参加を国と調整しているところでございまして、先般、国に対して、国制度の早期見直しを求める要望書を提出したところでございます。
 加入期間の通算に関するお尋ねでございますけれども、都制度と全国制度は別の制度でございまして、加入期間を引き継ぐことはできません。しかし、都制度に加入していた期間の取り扱いにつきましては、その期間に見合った清算金をお支払いすることとしております。

○かち委員 結局、国の制度にそのまま継続はできないということなんですね。
 それで、国の制度としても、来年度中にはこの制度を見直しをするというふうに聞いております。国が見直しをするときは大体拡充よりも削減していくということが経験的にあるわけですけれども、そういう状況の中で、この制度、今、国がどういうふうになっていくかもわからない、国とまだ交渉中という中で廃止してしまうというのは、余りにも不安が募るものではないでしょうか。
 清算金については、税制上の扱いとして課税所得に算入される問題や、生活保護の収入認定の対象になってしまう問題が提起されていますけれども、どのようなご見解でしょうか。

○吉岡障害者施策推進部長 清算金の受給に当たりまして、所得税との関係についてお答えいたします。
 一括受給の場合には一時所得として、また、分割受給を選んでいただいた場合には雑所得として課税される見込みでございます。この取り扱いにつきましては、現在、正確を期すために国税当局に文書照会をしているところでございます。ただし、障害者の年間所得額が基礎控除の三十八万円以内であれば課税されませんので、分割受給を選択された場合、課税されない場合が多いというふうに考えております。
 また、生活保護との関係でございますけれども、一時金として支払われたものが生活保護との関係でどのようになるかについては、現在、厚生労働省と調整中でございます。

○かち委員 結局、国の制度もどうなるかわからない。税制関係も今、交渉中。本当に不透明な中で制度だけは廃止されていくという状況であるわけです。自立支援法で負担増で大変な時期だからこそ、障害者の所得保障、経済的支援を拡充すべきなんです。少なくとも今後の対応に見通しの持てる状況になるまで現行制度を継続することが、これまで条例によって給付を約束してきた都の責任を果たすことです。
 よって、本条例には反対です。
 以上です。

○山口委員 私の方からも、心身障害者扶養年金条例に関する条例の廃止また一部改正について何点か伺います。
 東京都独自の心身障害者扶養年金が、このままでは二〇一一年に破綻するとして、制度のあり方を議論してきた審議会が、中間のまとめとして廃止の方向を打ち出したのが八月八日。これに対してのパブリックコメントには、六百二十四件の意見が寄せられたと聞いています。そして、十月二十七日、制度の廃止の最終答申案が出されましたが、答申案また条例案でパブリックコメントを受けて盛り込んだ内容があれば、伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 パブリックコメントを受けて条例案に反映した内容でございますが、高齢の保護者の方を中心に、清算金を障害者へ年金のように定期的に支払ってほしいとの意見が多数寄せられました。それを踏まえ、条例では、清算金の受け取り方法について、二十年間までの分割払いを加入者の方が選択できるようにしております。また、平成二十年三月三十一日までを保険期間とみなす経過措置期間を設けることといたしました。

○山口委員 清算金を年金的に分割して受け取れる、また平成二十年三月三十一日まで経過措置期間があるということは、加入者の選択にとって必要なことだと思います。
 これらを加入者に正確に伝えていることが重要だと思いますが、そのための方法としては、先ほど答弁がありました「加入者だより」、それから点字版の「加入者だより」も出していくということですし、その後の相談にも丁寧に対応していくということですので、これについては割愛をさせていただきます。
 それで、受給者の人は、受給者が亡くなれば年金の支払いは終了になりますね。清算金の受け取りについて、障害者が分割払いを選択した場合に、分割払い受給期間中に障害者がもし亡くなった場合、残りの清算金はどのようになるのか、確認のため伺っておきます。

○吉岡障害者施策推進部長 清算金の取り扱いでございますけれども、本条例案が可決成立させていただいたという仮定でございますけれども、廃止条例が施行されます平成十九年三月一日をもちまして、額の確定を行います。それで、清算金を分割払いといたしまして、その受給期間中に障害者本人が亡くなられた場合には、残りの清算金は、その相続人の方へお支払いいたします。

○山口委員 では、清算開始の時期と経過措置の期間の関係について伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 清算につきましては、廃止条例施行日の平成十九年三月一日以降、加入者の方から申し出があった場合に行うこととしております。ただし、平成二十年三月三十一日までの経過措置期間を設けておりまして、加入者から清算の申し出のない場合は経過措置期間が適用されます。この期間中は都制度の保険期間とみなされ、加入者が亡くなられた場合には、現行制度と同様の扶養年金が給付されます。経過措置期間の終了時点で、残されたすべての方に対して清算を行います。

○山口委員 現在の加入者の中には新たな全国制度に加入できない人がいますが、そのような人にはどのような対応をとられるのか伺います。

○吉岡障害者施策推進部長 現在都制度に加入されている方のうち、六十五歳以上の方と、身体障害者のうち障害程度四級の方は、全国制度の加入要件に該当しておりません。これらの方につきましては、清算金を活用して民間の生命保険や信託制度に加入することができます。全国制度へ加入できない方に対しましては、選択肢の一つとして、これら民間制度を紹介する機会を設けていく予定でおります。

○山口委員 いずれにしても、四回の見直しをしながらも、結果としてはここに至ったということは、やはり再々いわれているように都の責任は重大であったといわざるを得ませんし、今後も誠意を持って対応されることを申し上げて、質問を終わります。

○野島委員 二点にわたって何件か質問をいたします。
 最初に心身障害者扶養年金についてです。
 既に質疑も出尽くしておりますけれども、質疑をお伺いしておりまして、この際、制度的な破綻を来すのであれば、手を打って、しっかりと後のフォローをしつつ、福祉施策全体の向上を図ってくれ、こういう意味合いと、あとは、今廃止する、とんでもない、金利の乱高下もあるのだから、将来にわたってなくなるまでやったらどうだとか、あるいは、その後公費を投入すれば維持できるのじゃないか、したがって反対という否定的な意見もあったように聞いております。
 私、難しいのは、この年金制度が、この答申にもあるように、基本的に互助、自助の精神に基づく制度によって運営している、こういうことだと思うんですね。それで、財政上立ち行かなくなったということは、都の財政上立ち行かなくなったということではないだろうと思うんですね。年間四十億、五十億入れることが不可能だとは思いませんが、いわば年金制度というものを運営する根幹の財政のあり方として、この制度は立ち行かなくなった、こういうふうに私は理解をしておるんです。
 そこで、もう三十七年経過いたしまして、今回思い切ってこういうふうな条例が提案されたわけでありますけれども、今後どうするかという視点から何点かお伺いしたいと思うんです。
 それにつけても、三十七年間という長い間役割を果たしてきた。それが、今申し上げましたような年金制度という財政を入れて--財政というのは年金財政ですよ。いわばここにある互助、自助の精神に基づく、こういうもので転がしていくことが立ち行かなくなったから廃止するというふうに私は認識しているんですよ。そんなことを考えながら、この制度が今まで果たしてきた役割というものを、既に答弁は出ておりますが、今後の展開も含めて私は質疑したいと思うので、改めてひとつご回答いただきたいと思います。

○吉岡障害者施策推進部長 心身障害者扶養年金制度は、保護者亡き後の障害者の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的に創設された制度でございます。
 制度発足後三十七年が経過し、その間、障害基礎年金や特別障害者手当の創設、国際障害者年やそれに続く国連障害者の十年によりまして、さらに障害者施策が質、量ともに充実されてきたことなどにより、経済面で障害者の生活を支えるという扶養年金制度の役割は、制度発足当時に比べれば相対的に変わってきていると考えております。
 とは申せ、扶養年金制度の役割である互助、自助の精神に基づく制度により、自分たちの力で子どもに年金を残していきたいという障害者の保護者の希望は、今後とも最大限尊重されるべきであるというふうに認識をしております。

○野島委員 私は、さっき冒頭申し上げましたように、公費を限りなくすべてにわたって出していこう、こういうことであれば、これはもう年金制度じゃなくて、ほかの制度に衣がえしない限り、納税者の理解は得られないというふうに思うんです。そんな前提に立っていて、その制度の役割を今お話しいただきました。と同時に、互助、自助の精神に基づくこういうことの希望にこたえていくということは引き続き重要な役割だ、こういうご答弁をいただきました。
 そこで、何としてももってかわる制度、代替制度が必要だというふうに思っているんですね。都のこの部分は、条例が通れば廃止されるわけでありますけれども、全国制度、こんなこともあるやに聞いております。都民だけが全国制度を利用できない、こういうことでは全く代替制度が閉ざされてしまうわけでありますから、そんなことがあってはならないだろうと思っております。
 同時に、審議会答申にも、これは大変ご苦労いただきまして、資料も十分添付していただきまして、見てきたところなんですけれども、ほかの道府県あるいは政令市、こんなところと協力して、互助、自助の精神に基づく制度により、自分たちの力で子どもに年金を残していきたい、こういう保護者の希望にこたえていくことを、この審議会としても強く要望しているということでございます。
 そこで、全国制度の状況と、加入に関する国との調整をどのように進めてきたのか、進めていくのか、こんなところをお伺いしたいと思います。

○吉岡障害者施策推進部長 全国制度として実施されている心身障害者扶養保険制度でございますけれども、国におきましては、関係省庁、関係団体との調整を行いながら、現下の社会経済状況を踏まえて、これに適合するように制度のあり方を検討する予定というふうに聞いております。その検討結果を踏まえ、国において見直し案を提示し、道府県、指定都市の条例改正を経た上で、平成十九年度中の制度の見直しを目指しておるというふうに聞いております。
 都も、条例制定の上、見直し後の新たな全国制度へ加入するために、既に国に対し、早期に制度見直しをするよう要望書を提出したところでございます。

○野島委員 ありがとうございました。
 先ほどのかち副委員長のお話の中で、それがぐにゃぐにゃして、ぐにゃぐにゃなんて悪いですね、不確定要素があるのに、なぜ廃止するんだ、こういう意見もありました。
 しかし、私は考えるんだけれども、財政的などうのこうのの年金制度が破綻しちゃっているのに、それをそのまま、ともかく公費を幾ら突っ込んでもやっていけみたいな話をこっちに置いておいて、全国制度に対して都が要望したって、そんなのは迫力も何にもないですよ。やはりその辺はきちっと、現状の年金制度を評価して、これは行き詰まった、したがって国の中でどうやっていくか。
 都も行く行くはこれに加入されるというふうに今答弁をいただきました。加入されるということは、当然財政支出もある程度は出てくるのかな、将来的に都のね。だから、そういうことを考えながらやっていかなきゃいけないし、仮に制度設計をしていって、既裁定者分や、あるいは期待可能性を持っている対象者がどうしても国制度からこぼれ落ちてしまうというふうになったらば、それはそれでしかるべき対応をしていかなきゃいけないだろうということも、私は可能性としてはあり得ると思うんですよ。それを、不確定要素が多いからぐずぐずやっていったら、これは十九年の制度改正に乗れなくなっちゃいます。
 そういう意味で、私は、ちゃんと整理をして、要望すべきはしかと要望して、対象者に不安のないようにしていく。同時に、制度ができたときにそれを再検証して、こぼれるところがある--こぼれるなんて言葉は失礼に当たりますが、救えないところがあったら、それにどういうふうに対応していくか。こういう二段構えでいかなければ、制度の改正なんか絶対にできっこないですから、ぜひ国に対していろいろな働きかけをしていただきたい。私ども自民党としても、国レベルでも、佐藤政策委員長を中心に働きかけをしていきたいと思っております。
 そこで、廃止後の加入者への対応、先ほどお話も伺いました。いわば既裁定者というのかな、要するに既に受けている方、これはもう権利ですから、それは当然やっていかなきゃいけない。そのことは継続するということで、大変安心をしております。
 それから、清算する、こういう方もいらっしゃるわけですね。それで今、支払い金以上のものをちゃんとお返しするとか、そういうふうなことでいろいろ、所得税の問題とかなんとかもこれから詰めていくわけでしょう。そんなふうなことを聞いておりますけれども、未受給者、この方たちが一番不安になるわけですよね。その方に対する清算についてどんなふうなことをお考えなのか、伺っておきたいと思います。

○吉岡障害者施策推進部長 未受給者に対する清算の方法についてでございますけれども、まず、未受給者に対する清算額は、全国制度と同程度の水準を確保しておりまして、それは、納めていただいた掛金の総額以上のものとなっております。
 また、清算方法につきましても、障害者本人に対し二十年間までの分割払いでお支払いできるようにいたしまして、本人へ年金のように定期的に支払ってほしいという保護者の要望にこたえているところでございます。

○野島委員 未受給者への対応ということで、一番不安な部分ですから、そのことはしかと進めていただきたいと思っております。
 いわば、さっき冒頭申し上げましたが、扶養年金制度なんですね。こういったことで、審議会のあれにもある互助、自助の精神、こういったふうなものをぎりぎり追求しながら、かつ、これは廃止したところで、公費の投入というのはずっと続くわけですよね。互助で、皆さんから入ったお金で、次の世代に渡していくのではなくて、公費も入っていくわけですから。そんなことを考えると、ここにある、都の責任というのは、僕はそういう意味だと思っているんです。年金を、東京都が今までこの制度を持っていた、これを廃止する都の責任じゃなくして、それらも含めて、トータル的に都がここの制度にかかわってきた責任を、利用者、加入者の立場に立ち、あるいは納税者の立場に立ち、あるいはほかの福祉施策との整合性、国制度とのかかわり、こういう中の重きを都は認識して制度設計に取り組んでくれ、こういうことだというふうに私は理解しているんです。
 それは答弁は要りません。それぞれ理解が違うかもしれませんから、改めて答弁は要りませんが、そういう意味で、廃止に向けて条例が出された、いわばそれぞれのバランスの問題、こんなことも考えていかなきゃいけないだろう、こんなふうに思います。だから受給者なり受給期待可能者はどうでもいいや、そんなことはいっていないですよ。そこは一番大事にしなきゃいけない。当たり前の話なんです。
 そこで、今ほど何人かの質疑の中で、それぞれ見直す時期があったんじゃないか、こういうことであります。部長の答弁によれば、平成六十一年に一つ契機があったということですわな。それから、平成十年に利用者負担、いわゆる利用者の年金保険料というのかな、支払い、こういったものも経済動向に合わせて見直しをした、こういうことがあると思うんですね。そんなことで、いろいろな部分の見直しも当然、その時期、時期に応じてやっていかなきゃいけないだろうというふうに思っております。
 とりわけ、国制度ができた段階でも、それがずっとそのまま来ていたという経過があるんですね。そのことを、過去のことをとやかくいったところでしようがないと僕は思うんです。だから、そういうふうなことで、これからどうすると。一定の役割を果たした政策、制度、そういったものであっても、時代の変化の中で、ほかのさまざまな要件と十分比較考量し、制度を見直していくということは、当然やっていかなきゃいけないと思うんです。
 特に、こういう制度の場合に、障害施策といいましょうか、親亡き後の生活をどうする、こういう不安に駆られる皆さんのいわば経済的給付事業を見直していくというのは、僕は大変な勇気が必要だと思うんですね。これは並大抵じゃないですよ。行政というのは、店開きするときは行け行けどんどんなんです。店を閉じるときや店の看板をかえようといったときは、対象者が一人でも二人でも残っている限り、これは大変困難なことだろうと思うんです。そういう意味で、私は、今回この条例の廃止を提案したこと、それから、審議会が真摯に、今までの経過も踏まえ、今後のあり方を答申されたことに高い評価をしたいというふうに思っております。
 そこで、今後ともさらなる都民福祉のニーズにこたえていかなければならないわけであります。本件とて、国とのかかわり、あるいはほかの障害者、とりわけ自立支援法もありました。先ほど、地域生活をどういうふうにこれから保障していくかという、これはさまざまな政策があります。一点だけ、ここに照準を合わせたら、何でそんなかわいそうなことをするんだと。あるいは、ここに実は年金という、自助、共助の世界だけれども、これだけの財政、都の金が入っているということを切って、出口ベース、障害者の受け取りベースで考えたら、その程度のことがなぜやれないという気持ちになるんです。議論じゃなくて気持ち。これは、我々とて同じであります。しかし、私たちは将来に向けて、あるいは都の財政との関係、総合的な判断で物事を判断していかなければならないだろうし、結論を導いていかなきゃいけないだろう、こんな立場に立っております。
 そこで、これは廃止になるわけですが、制度の目的でございますところの保護者亡き後の不安の軽減、これは当然必要であります。それと障害者の福祉の向上は、申すまでもなく大変重要な課題でもあるわけであります。
 そこで最後に、保護者亡き後の不安の軽減と障害者の福祉向上のため、都が障害者施策の総合的な展開に取り組むことについて審議会答申でも触れられておりますが、局長の決意を伺っておきたいと思っております。

○山内福祉保健局長 障害者が保護者亡き後も地域において自立した生活をしていくためには、グループホームなどの地域生活基盤の整備、企業等への就労支援の充実が極めて重要であります。
 現在、東京都では、さきにも部長がお答えしたとおり、障害者地域生活支援・就労促進三か年プランに基づきまして、障害者施策の着実な推進に努めているところでございますけれども、今年度、このプランをさらに発展させた障害福祉計画を策定する予定でございます。
 心身障害者扶養年金制度の廃止に当たりましても、今後、東京都はこの計画に基づきまして、障害者が保護者亡き後も地域の中で自立し、安心して暮らせるよう、障害者福祉のより一層の向上を目指しまして、障害者福祉を総合的かつ計画的に推進してまいりたいと考えております。また、そのための基盤整備をきちっと進めていきたいというふうに考えております。

○野島委員 ありがとうございました。
 一つのこういう制度改正だと、それがザッツ・オールで考えられますと、いろいろな立場もありますし、それぞれ関係者もあります。しかし、今、局長からお答えいただきましたように、これからいろいろプランも策定されるというふうに伺っておりますので、今、局長のお話にありましたようにワン・オブ・ゼム、全体の中の一つということでしっかりしたものを築き上げていただきたい、このことを要望して、これについては終わりたいと思っております。
 次に、保健所の関係で伺います。
 八王子の保健所がなくなる。なくなるというと語弊がありますが、八王子市へ移行される、こういうことのようでございます。本件については、我が党からも、八王子から串田、石森両議員が選出されておりますので、彼らにも伺ってきました。既に本年二月に、東京都と八王子市の間で、来年四月から移行する、こういうふうな基本的な合意を得まして、現在さまざまな準備を、都と協力をいただきながら、あるいは都が協力しながら進めているというふうに伺っております。
 これが実現しますと、都側から見ますと、平成十二年八月に東京都が作成いたしました第二次東京都地方分権推進計画、この中に書かれております保健所政令市制度を活用した市への事務、権限の移譲が実現する、こうなるわけでありますね。
 一方、受ける側の八王子からしますと、母子保健なんかは既に実施されているわけです。政令市に移行しない東久留米市、政令市に移行する要件がないんだけれども、母子保健は既に市独自の事業として実施しておりますけれども、それに加えて、精神保健福祉の専門相談など、都が今実施しております保健サービスを八王子は一元的に行うこと、こうなるわけであります。
 住民に身近な保健所業務を八王子市がみずからの手で実施していくということは、住民にとっても、サービス提供の一元化あるいは切れ目のない保健行政、こんなことで、地方分権の趣旨にものっとって、大変いいことだろうというふうに理念的には思っております。
 そこで、今回、関連して七つの条例案が改正すべく上程されているわけであります。私ども住む者にとっては、公共サービスというのは、市でやってくれても都でやってくれても、どっちでもいいんです、極論すると。適切なサービス提供にこたえてくれれば、それは市がやろうが東京都がやろうがね。ただ、行政、あるいは行政システム、あるいは役割、あるいは行政の持つ力量はそれぞれ違いますから、そういう意味で、いろいろな機能分担論であるとか広域性であるとか専門性であるとか、こういう切り口の中から、さまざまな行政分担が出てくるんだろうというふうに思っております。
 そこで、来年四月の保健所政令市への移行が近づいてきているわけでありますけれども、移行に向けた準備作業の進捗状況について、まずお伺いしたいと思います。

○清宮保健政策部長 本年九月、地域保健法施行令が改正され、八王子市が平成十九年四月に保健所政令市に指定されることとなりました。これに伴い都から八王子市へ移譲される事務は、八王子保健所の事務のほか、芝浦食肉衛生検査所八王子支所の事務、動物愛護相談センター多摩支所及び環境局多摩環境事務所の事務の一部などでございます。
 都は、移行後の保健所等の事務が円滑かつ適切に行われるよう、保健所業務に関するシステムの開発支援や事務マニュアルの整備などを進めるとともに、八王子市との協力体制についても市と調整しているところでございます。また、移行に向けた着実な準備を進めるため、本年十月から八王子保健所等におきまして、来年四月から保健所で勤務する予定の八王子市の保健師、薬剤師等の職員の方に対し研修を実施しているところでございます。

○野島委員 要するに、移譲事務が食肉衛生検査所などさまざまなものも含めてなされるという答弁であります。こういった事務というのは結構専門職によって実施されている、こういうケースがあると思いますし、お医者さんであるとか衛生監視員とか、今、八王子市にはない専門職、こういったものもある。さりとて、新しくあしたから来てくださいといっても、これはもう無理ですし、やはりある程度の経験の集積だとか、そういうものもあると思うし、それを動かしていく行政システムもやっていかなきゃいけないし、その場でずっと一生やってくださいじゃなくて、人材の有効活用ということで、ほかの八王子市役所のところのシフトも考えていかないといけないというふうなさまざまな課題もあると思うんですね。
 実は、かつて私ども東久留米市にも保健所というのがありました。かつては田無保健所がありまして、その管轄内でした。それで、東久留米市も保健所を、当然のことながら都の保健所をつくっていただいたというふうになったわけです。母子保健業務、これが市町村に移管になりましたよね。あのときに保健所は、私どもの市からは消えちゃいました。隣の東村山の保健所で東久留米市の精神衛生等の保健業務はやりますよ、こういうことでした。しばらくたったら、それもなくなっちゃいました。多摩小平保健所の管轄ですよ。
 いわば地方分権の中で、冒頭申し上げました、それぞれの持つ役割あるいは機能を発揮していく。基本的には、住民に直接かかわるサービスというのは市がやるべきだろう、こういう前提で基礎自治体がね。僕はそれは大いに結構だろうと思う。
 ただ、専門的なこういう部分になりますと、さっきの人事の話じゃないけれども、一定程度の行政体じゃないと、仮に東久留米がそれを受けたら、人事が硬直化しちゃって新しい施策展開に知恵が回らないとか、そうなっちゃうんです。そうすると、ある程度の規模でやっていかなければ、専門性とかそういうものは発揮できないという部分があるということになりますと、保健所政令市、そういったことでやっていかなきゃいけないと思うんですね。
 我々も母子保健を受けたときに、いないわけです、今までやっていない事業だから。それで、どうするのという話になったわけ。そのときは、東京都の方が派遣という形で来ていただいた。それで、東久留米市も当然ある程度の人材を採って、なじむ--なじむというとおかしいですね。育成をしてもらった。たしか、僕の記憶に間違いがなければ、そのまま東久留米市に奉職していただいた方もいるというふうに記憶しております。
 一方、施設は大変お安くお譲りいただきまして、大体、半値八掛け二割引きぐらいでいただいたような記憶をしておりますが、そんなことで、こういうふうな地方分権の中で、それぞれの自治体が取り組むべき、あるいは都が広域的に取り組むべきということが、保健所の事業でも整備されてきているのかなと思っております。
 そこで、今申し上げましたような施設であるとか、その事業を担っていく人材であるとか、あるいは財政。このときも議論になったんです。東久留米市さんに母子保健事業が行きますよと。だけど、これが母子保健事業の必要なお金だからといって別に入ってきてないんです。たしか基準財政需要額には見たけれども、交付団体ですから少しは来ているんでしょうけれども、いわばそういうことであったわけでありますが、私は、そういうことで進めていくにつけても、専門職の人員確保あるいは育成、こういった都の支援が重要というふうに思っております。
 また、八王子は、あそこは不交付団体、ちょっと記憶にないんだけれども、基準財政需要額とかいろいろな……(発言する者あり)交付団体。まあいいです。それはそれとして、財政負担がふえるというのは当然ですよね、今まで都がやってきた事業を八王子市がやるわけだから。そんなところの軽減のために東京都はどんな支援策を考えていかれるのか、こんなところをお伺いしておきたいと思います。

○清宮保健政策部長 ご指摘のとおり、保健所等の事務は、医師、保健師、食品衛生監視員、環境衛生監視員、薬剤師など多くの専門職によって実施されてございます。これらの専門職は、保健施策の推進のために重要な役割を担っているところでございます。このため、本年度の研修だけでなく、移行後五年間、専門職を中心とした都職員を八王子市に派遣し、専門職の確保を支援するとともに、都のノウハウを引き継ぎ、市職員の育成を図ってまいります。
 財政負担への支援につきましては、八王子保健所の土地建物等につきまして、二十年間の用途指定を付しまして無償譲渡を行うとともに、移行に伴う激変緩和措置として、五年間の財政支援を行う予定でございます。

○野島委員 ありがとうございました。
 無償譲渡。うちの方は半値八掛け二割引きぐらいだったんです。それはぜひ財政支援もしっかりやってほしいと思います。
 そういうことで、八王子市が、福祉施策と連携しつつ、総合的な保健施策、あるいは地域の実情に即した食品、環境衛生等の施策を展開できるようになる、こんな効果が期待されるわけですし、八王子市の保健衛生行政の向上もなされるのかなというふうに思っています。
 いろいろ事業も、サービス的な要素と権限的な要素ってあると思うんですね、行政事務の中で。食品衛生の監視とかなんとかというのは、最後は判こを持っているのがあるわけですから、それは権限行政だと僕は思っているんです。一方、いろいろな、母子保健事業にしても精神衛生事業にしても、ある種サービス的にやっていかなきゃいけない反面、その二つを切り分けても、極めて専門性の高い、こういった部分もあると思うんですね。したがって、移行に当たっては、そういうさまざまな業務を総合的に勘案しつつ、都が持っていた今までの保健所業務のノウハウをしっかりと引き継ぐという立場で、人、物、金でしっかり支援をしていただきたい、こんなふうに思っております。
 そこで、この保健所政令市移行、こんなことですと、この後、町田市といったところも、あれはまだ人口規模とかいろいろあるんですよね、最初いったように。何が何でも、東久留米市なんか持ってこられても、とてもじゃないけど、人事シフトとかなんとか将来的に、とてもとてもそんな硬直化した仕事はできないというふうになっちゃうと思うんですが、町田市についても取り組んでいるというふうに伺っております。
 今回のこういった八王子市の保健所政令市移行が、多摩地域の福祉保健サービスの向上に有効になるというふうに私は思っておりますので、今、そんな方向での質疑をやりとりしたんでありますが、最後に局長の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

○山内福祉保健局長 八王子市の保健所政令市移行については、今まで本当にいろいろな経緯があったわけでございますけれども、来年四月に八王子市の方で保健所政令市に移行するということについてご了解いただいたわけでございます。これは、東京都がこれまで取り組んできました、住民に身近な行政は住民に身近な地方自治体の判断と責任のもとで決めていくという地方分権の理念の実現としては、大変重要なことだと考えております。
 東京都としては、移譲に当たっては、八王子市が地域の実情に応じた一元的、総合的保健サービスを推進し、福祉施策とともに十分連携した政策展開が実現できますように、万全の支援をしてまいる所存でございます。
 また、お話がありました町田市の保健所政令市移行につきましても、現在、市と検討を進めているところでございますが、都としては早期の実現に向けて働きかけてまいりたいというふうに考えております。
 また、福祉保健行政につきましては、先ほどの野島理事のお話にもございましたように、国、区市町村、都がそれぞれの役割と責任のもとに総合的に推進するものであるというふうに考えておりますが、今後とも、区市町村とも十分連携を図りながら、東京都全体の福祉、保健、医療サービスの充実に向けまして積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○野島委員 ありがとうございました。終わります。

○長橋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 付託議案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○長橋委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉保健局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時四十五分散会

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