厚生委員会速記録第十号

平成十七年九月三十日(金曜日)
第七委員会室
   午後一時四分開議
 出席委員 十四名
委員長藤井  一君
副委員長野島 善司君
副委員長かち佳代子君
理事谷村 孝彦君
理事田代ひろし君
理事初鹿 明博君
松葉多美子君
早坂 義弘君
山口 文江君
山口  拓君
斉藤あつし君
野村 有信君
佐藤 裕彦君
吉田 信夫君

 欠席委員 なし

 出席説明員
福祉保健局局長平井 健一君
次長吉川 和夫君
技監梶山 純一君
理事梶原 康二君
総務部長片岡 貞行君
指導監査室長菅原 眞廣君
医療政策部長丸山 浩一君
保健政策部長杉村 栄一君
生活福祉部長朝比奈照雄君
高齢社会対策部長長谷川 登君
少子社会対策部長都留 佳苗君
障害者施策推進部長吉岡 則重君
健康安全室長八木 憲彦君
企画担当部長野口 宏幸君
連絡調整担当部長狩野 信夫君
参事松井多美雄君
参事高橋  誠君
参事桜山 豊夫君
参事宮垣豊美子君
参事佐藤 恭信君
参事牛島 和美君
参事浅井  葵君
参事大黒  寛君
病院経営本部本部長大塚 孝一君
経営企画部長奥田  匠君
サービス推進部長徳毛  宰君
参事及川 繁巳君

本日の会議に付した事件
 意見書について
 病院経営本部関係
報告事項
・都立豊島病院の板橋区移管に関する基本的方向について(説明)
・荏原病院の公社移管について(質疑)
 福祉保健局関係
報告事項(質疑)
・荏原病院の公社移管について
・都立児童養護施設の民間移譲について
 請願陳情の継続審査について
 特定事件の継続調査について

○藤井委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名ですが、傍聴希望者が定員以上でございますので、さらに二十名を追加したいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。

○藤井委員長 次に、今後の委員会の日程について申し上げます。
 先ほどの理事会において、お手元配布の日程表のとおり申し合わせをいたしました。ご了承願います。
 次に、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり意見書三件を提出したい旨の申し出がありました。
 本件については、本日の理事会において協議した結果、いずれも調整がつかなかった旨、議長に報告すべきであるとの結論になりました。
 それでは、お諮りいたします。
 本件については、理事会の協議結果のとおりとすることにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○藤井委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、病院経営本部関係の報告事項を聴取した後、質疑、福祉保健局関係の報告事項に対する質疑、並びに請願陳情及び特定事件の閉会中の継続審査及び調査の申し出の決定を行います。
 なお、報告事項のうち、過日の委員会において福祉保健局から説明を聴取いたしました荏原病院の公社移管については、内容に病院経営本部関係も含まれておりますので、病院経営本部、福祉保健局それぞれにおいて質疑を行います。
 これより病院経営本部関係に入ります。
 初めに、理事者から、都立豊島病院の板橋区移管に関する基本的方向についての報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○奥田経営企画部長 都立豊島病院の板橋区移管に関する基本的方向につきましてご報告申し上げます。
 お手元に、資料1、「都立豊島病院の板橋区移管に関する基本的方向について-『都立豊島病院の区移管に関する板橋区と東京都との協議会』まとめ-」と、その概要といたしまして資料2をお配りしてございます。
 時間の都合もございますので、資料2に基づきましてご説明させていただきます。
 まず、はじめにで、本まとめの位置づけを記載してございます。
 東京都と板橋区は、都立豊島病院の区移管に関する板橋区からの要望に基づきまして、昨年三月、都立豊島病院の区移管に関する協議会を設置し、さまざまな課題について検討してまいりました。昨年八月には検討状況を中間のまとめとして取りまとめ、ご報告しております。
 今回ご報告いたしますまとめは、中間のまとめ以降検討してまいりました結果を、協議会として最終的に取りまとめたものでございます。
 今回のまとめでは、移管の可否については判断をせず、検討の結果、合意された項目については、その内容を記載し、考え方に乖離がある部分につきましては、双方の主張を併記してございます。
 1、移管に向けた基本的な考え方でございます。
 昨年八月の中間のまとめに記載されている内容から変更はございませんが、板橋区の区立病院に対する方針を運営に反映させ、地域医療機関等との信頼関係の上に、地域医療の充実を図り、区民の医療ニーズにこたえていく。これまで豊島病院が提供してきた地域医療との継続性を確保するよう配慮していく。都区双方の努力により、互いに過度な負担が生じないよう円滑な移管を目指し、東京都としても必要な支援を検討するという考え方を踏まえて検討を行ってまいりました。
 2、区移管後の病院が担うべき医療でございます。
 現在、豊島病院が提供している医療のうち、緩和ケア医療などは、区立病院として確保する医療機能の中で対応することで合意いたしました。
 広域的な医療政策の観点から確保が必要であると考えられる精神科救急医療、周産期医療などについては、区としても、都が担うべき役割を踏まえ、可能な協力をする方向で協議をいたしましたが、区には、精神科救急医療を移管後も提供することにより、地域医療の提供に影響が及ぶことについて懸念があり、区が精神科救急医療、周産期医療を担うことができない場合、東京都は代替策を検討する必要があるという結論になりました。
 補助金の取り扱いにつきましては、板橋区と東京都との間で考え方に相違があり、四角で囲んだ部分にそれぞれの考え方を併記いたしました。
 板橋区は、市町村公立病院運営費補助を希望しておりますが、東京都といたしましては、市町村公立病院運営費補助は市町村を対象としたものであるとの考え方でございます。
 また、板橋区は、精神科救急事業実施の場合には、精神科・神経科全体の運営にかかわる赤字額の補てんが必要であるとの考え方でございますが、東京都は、区立病院への補助は既存の制度に基づいて実施するとの考え方でございます。
 3、運営形態についてでございます。
 昨年の中間のまとめでは、指定管理者制度の活用を視野に入れた運営形態とするとしておりましたが、本まとめでは、区立病院の運営は指定管理者制度の採用を前提とすることで合意いたしました。
 なお、東京都からの要請に基づき行政的医療を実施する場合には、それを担う指定管理者の能力の有無など、指定管理者の選定がより困難になることも想定されるため、指定条件などの詳細については板橋区において検討を行う必要があるという結論でございます。
 4、職員の取り扱いでございます。
 区移管後の病院を指定管理者制度の採用を前提とした場合、都職員の区立病院への派遣は困難であること、区としては、病院運営全般に関する知識やノウハウを有する職員を育成、確保し、指定管理者による病院運営を管理指導する組織を設ける必要があるが、この場合、都としても、区の本庁組織への職員の派遣を含め必要な支援を行うことで合意いたしました。
 5、資産の取り扱いでございます。
 豊島病院が都民の貴重な財産であること、財政事情を踏まえた板橋区の意向があることなどを踏まえ、検討を重ねてまいりましたが、都区双方の主張に大きな乖離があり、双方の考え方を併記しております。
 板橋区は、建物、構築物などについて原則無償譲渡または無償貸付を希望しており、それが難しい場合でも、移管に伴う費用として財政的に負担可能な額は年三億円を上限とするとしております。
 東京都といたしましては、都立病院は企業会計であるため、資産の譲渡に当たっては、現在の資産額による有償譲渡となり、建物、構築物の移管に伴う費用は年約十三億九千万円としております。
 6、移管時期でございます。
 中間のまとめでは、平成十八年度中の移管を目標とするとしておりましたが、現在の状況を踏まえますと、平成十八年度中の移管は困難であるとの認識で板橋区と一致しております。
 以上が都立豊島病院の板橋区移管に関する基本的方向についての報告でございます。
 今後は、このまとめ等をもとに、板橋区、東京都の双方で区移管について総合的に判断し、結論を得てまいりたいと考えております。
 以上、甚だ簡単ではございますが、報告事項の説明を終わらせていただきます。
 よろしくお願い申し上げます。

○藤井委員長 報告は終わりました。
 この際、資料要求のある方は発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 資料要求はなしと認めます。

○藤井委員長 次に、報告事項、荏原病院の公社移管についての病院経営本部に対する質疑を行います。
 本件については、過日の委員会において福祉保健局から説明を聴取しております。
 その際要求しました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○奥田経営企画部長 本日の委員会におきましてご説明させていただきます資料は、去る九月十五日の本委員会におきまして要求のございました厚生委員会要求資料でございます。
 資料は、目次にございますように、1、荏原病院運営協議会準備会が行ったアンケート調査結果から、4、都立病院におけるリニアック、放射線治療医、診断医の配置状況まででございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きいただきたいと存じます。1、荏原病院運営協議会準備会が行ったアンケート調査結果でございます。
 昨年十二月に、荏原病院運営協議会準備会が荏原病院の連携医を対象に、公社移管後に重点的に行う医療などに関して行ったアンケート調査結果について記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、荏原病院におけるSARS疑い患者の受け入れ実績と患者の居住分布(平成十五年度)でございます。
 SARS疑いの受け入れ患者数と、その居住分布について、大田区内とその他に分類して記載してございます。
 三ページをお開き願います。3、公立病院等の勤務医師一人当たりの平均給与月額(平成十五年度)でございます。
 公立病院及び財団法人東京都保健医療公社における平成十五年度の医師一人当たりの平均給与月額について記載してございます。
 なお、公立病院につきましては、総務省自治財政局の地方公営企業年鑑をもとに作成し、財団法人東京都保健医療公社につきましては、平成十五年度決算をもとに作成しております。
 四ページをお開き願います。4、都立病院におけるリニアック、放射線治療医、診断医の配置状況でございます。
 都立十二病院における平成十七年九月一日現在の配置状況について記載したものでございます。注の2にありますとおり、括弧書きは、非常勤職員を別掲とさせていただいております。
 なお、九月十五日の本委員会でもご報告申し上げましたが、荏原病院においては、今年度、リニアックを購入し、設置する予定になっております。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。

○藤井委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○佐藤委員 都立病院の改革マスタープランが発表されて以来、いろんな議会での議論があったところでありますし、また地域においては、特に荏原病院の問題については、どうも、どこのだれが流しているか知りませんが、荏原病院がなくなっちゃうとか、料金が高くなっちゃうとか、愚にもつかぬデマ、宣伝を流している人もいるようでありますが、今回の荏原病院の公社移管ということについて、確認を兼ねて幾つか質問させていただきたいと思います。
 マスタープランの中では、都立病院を広域基幹病院、それからセンター的機能病院、地域病院、この三つに分けた、こういうわけで、そして再編成を進めていくということでありますが、大変初歩的な質問で恐縮なんですが、何で荏原病院を地域病院というカテゴリーにして整備しようとしたのか、それをまず伺わせていただきたい。

○奥田経営企画部長 荏原病院は、大田区、品川区で構成されます区南部保健医療圏からの患者さんが全患者数の八割を占めるという実態がございます。そこで、従来から地域での医療連携を積極的に推進してきたということでございますが、非常に地域性の高い、いわば地域と密着した病院として、これまでも運営されてまいりました。
 一方で、区南部保健医療圏には大学病院が複数存在しているという実情がございまして、あえて全都を対象とした行政的医療を志向するよりも、地域の医療機関との連携を強化して、地域医療支援型の病院として、地域住民の皆様に継続性のある一貫した医療を提供していく方が、限りある医療資源の有効活用につながる、地域全体の医療サービスの向上を図ることになるというふうに判断いたしまして、地域病院としての整備を行うこととしたものでございます。

○佐藤委員 そういった意味では、我が品川区も大変お世話になっているというわけでありますが、地域全体の医療サービスというんでしょうか、その安定、向上というのは、まさに地域住民が求めていることでありますが、そのためには、何よりも地域の医療ニーズを的確に把握していくということが非常に大事だと私は思います。
 私ども自由民主党は従前より、公社化に当たっては、地域住民や、あるいは地域の医療機関等の声を十二分に聞いていただくことを求めてきたところでありますが、今回の荏原病院の公社化に当たっては、この地域の声、要望というんでしょうか、こういったものをどういう形で吸収されてきたのか、把握されてきたのか、それをまず伺いたいと思います。

○奥田経営企画部長 地区の医師会あるいは地元自治体、それから住民代表の方などにご参加いただきまして、荏原病院運営協議会準備会という協議体を設置いたしまして、半年以上にわたりまして、今後の荏原病院の医療機能等についてご議論をいただいてまいりました。
 この間、準備会といたしましても、荏原病院の連携医を対象としたアンケートを実施して、地域の医療ニーズの把握に取り組んでいただいたわけですが、その調査結果等も十分踏まえまして、今回の公社化検討委員会の報告書をまとめたところでございます。
 なお、公社化成りました後も、同様のメンバーによりまして、改めて運営協議会という組織を設置いたしまして、引き続き地域の医療ニーズの把握に努めていくこととしております。

○佐藤委員 かなり丁寧にやってきていただいたと、今のご答弁を解釈させていただきます。
 さて、荏原病院の公社化予定まで半年という時間になったわけですが、円滑な移管が行われるためには、保健医療公社あるいは所管の福祉保健局の入念な受け入れ準備が不可欠だろうと思います。本来だったら、ここに福祉保健局もいてもらって、一緒に質疑をした方が非常に効率がよかったんじゃないか、どこかの党が長々と同じような質問をしなくて済むんじゃないかと私は思ったわけでありますけれども、当然、送り出す側の病院経営本部の取り組みは、それ以上に重要なポイントになることは論をまたないところだろうと思います。
 その送り出す側としての、要するにお嫁に出す側としての病院経営本部が今どのような作業をされているのか、実際のところをお聞かせいただきたいと思います。

○奥田経営企画部長 円滑な公社移管のためには、ご指摘のとおり、送り出す病院経営本部、それから受け入れる福祉保健局、それから保健医療公社が十分な連携を図った上で、必要な準備作業を進める必要があろうというふうに考えております。
 病院経営本部といたしましては、患者さんがご心配されることのないよう、ことしの一月と、それから九月に広報用のリーフレットを作成して、地元で配布させていただいて、地域住民あるいは地域の医療機関への周知を図ってきたところでございます。
 また、医師や看護師など病院職員に対しましても、早い時期から公社化についての説明会を繰り返し開催するなど、きめ細かな対応を行ってきたところでございます。
 一方で、今年度の事業でございますが、脳血管疾患医療の充実を図るため、脳卒中専門病床を改修、整備すると同時に、複数の治療方法を組み合わせて行うという、いわゆる集学的がん医療の実施に向けてリニアックを導入するなど、移管後の重点医療をにらんだ医療機能の充実を図っているところでございます。
 今後も、福祉保健局、それと保健医療公社との連携を密にいたしまして、円滑な公社化に向けた取り組みを進めてまいります。

○佐藤委員 リニアックも買って、持参金もつけたよと、こういうところじゃないかと思うんですが、先ほどもご答弁いただいたように、私どもの地元の品川区は、多くの区民が荏原病院を利用しております。こうした多くの利用者に対する医療サービスをさらに向上させるためにも、円滑な公社化に向けての取り組みを着実に進めていただきたいということを要望いたしますが、中には、一部反対勢力が、ためにする反対もされているようでありまして、都民に無用の不安を与えているのも事実であろうかと思います。
 こういう状況の中で、公社化に向けた新大塚病院経営本部長のご決意を伺うわけでありますが、荏原病院を利用の皆様にという、皆さんがいうリーフレットというのかな、日本語でいうとチラシでしょうな。(発言する者あり)リーフレットというんですよ。まあ、チラシだね。このチラシにちょっと一言文句いいたいんですけど、最初に、荏原病院は平成十八年四月に財団法人東京都保健医療公社荏原病院として新たにスタートしますといい切っちゃっている。これは、ちょっと先走りじゃないかな。(発言する者あり)妙なところで、ちょっと合いの手が入りましたが、これは、スタートする予定でございますぐらいにしていただかないと、我々もちょっと立場がなくなっちゃうんじゃないかな。議会の審議を余り軽視しないように、ひとつご注意いただきたい、これを申し上げておきます。
 本部長お願いします。

○大塚病院経営本部長 まずもって、ただいまのリーフレットの件につきましては、私ども……(「チラシ。日本語はチラシというんだよ」と呼ぶ者あり)チラシでございます。失礼いたしました。チラシにつきましては、誤解を与えかねない表現があったことは十分認識しておりまして、不適切であったと考え、早急に回収、差しかえを行ったところでございます。
 本来の荏原病院の公社化に向けた考え方でございますが、荏原病院は感染症等の行政的医療を担う一方で、地域の医療機関との連携を通じまして、これまで地域医療に重要な役割を果たしてきたところでございます。
 厳しさを増す医療環境の中ではございますが、こうした地域住民の期待には、今まで以上にこたえていく必要があると考えております。医療連携など、地域病院としての経営ノウハウが豊富な公社に来年四月に運営を移管することとした大きな理由の一つは、ここにあるわけでございます。
 地域全体の総体としての医療サービス向上を図るという改革の目的を実現して、これまで以上に地域住民の信頼と期待にこたえられる公社移管となるよう万全の準備を行っていくつもりでございます。

○佐藤委員 万全の準備をしていただく、こういうご決意があったので、私はこれで質問を終わりますけれども、こんなことをいうと、また怒られちゃうかもしれませんが、大久保病院が公社化になったときに、かなり患者さんが減ったりした事実もありました。今はもう皆さんのご努力でしっかりと回復しているようですけれども、そういった轍を踏まないようにしっかりとやっていただきたい、このように要望して、終わります。

○松葉委員 ただいま佐藤委員から、荏原病院の移管に関する質疑がありましたので、重複しない形で質問を行いたいと思います。
 荏原病院の公社移管に関して、病院の運営形態については、東京都が直営で運営すべきであるという意見が一部にあります。直営がよくて、公社化あるいは民営化がいけないという、そういう考え方は、時代が求めている改革の流れに逆行する硬直的な考え方であると思います。一方で、なぜ公社化を図るのか、都民が納得するよう、十分説明する必要があります。
 そこで伺います。公社化の理由について、都民にわかる言葉で説明していただきたいと思います。

○及川参事 荏原病院の公社への移管につきましては、貴重な医療財源を最大限活用しまして、地域医療機関との連携、支援を通じて、地域医療のより一層の充実を図るということが目的でございます。
 具体的に申し上げますと、地域医療機関の医師に荏原病院の登録医となっていただくことによりまして、高度医療機器の利用はもとより、紹介患者さんをかかりつけ医と病院医師とで共同で診療する、そういったことのできる開放型病院としての運営を行ってまいります。
 患者さんにとりましては、身近なかかりつけ医と荏原病院の双方に主治医を持ちまして、在宅へ復帰した後も常に一貫性のある医療を受けられるというふうに考えております。
 こうした取り組みを着実に進めまして、数年以内に地域医療支援病院として地域医療になくてはならない中核病院として整備するために、公社としまして四つの地域病院を現在まで運営してきた実績がございます。
 今後、こういった実績をもとに、柔軟で効率的な運営体質を持つ公社のもとで、地域医療の充実のためのさまざまな取り組みを進めてまいります。

○松葉委員 共同診療ができる開放型病院というような公社化のメリットについてはわかりました。
 繰り返しになりますが、何が何でも直営がいいというのは偏った考え方であると思います。しかし、公社化に際しては、現在、都立荏原病院を利用している方や今後利用される方に対して、提供される医療の水準が低下することはあってはならないと思います。現に稼働している病院であるので、現在、入院や外来で病院を利用している患者さんが引き続き安心して受診することが最も大事だと思います。具体的には、入院や外来の医療がこれまでどおり受けられないのではないかとか、予約がとれないのではないかといった利用者の不安を解消しなければならないと考えます。
 こうした点に関して、どのような対応を考えているのか伺います。

○及川参事 公社移管後の荏原病院では、基本的に現行の診療機能を継続し、診療規模につきましても、入院、外来ともに現行の規模を維持していく予定でございます。
 運営主体がかわりましても、現在の患者さんが移管の際に不便を感じることがないよう、例えば入院患者さんが何の支障もなく継続して医療が受けられるように、また外来につきましても、移管前後で予約がとりにくくなるといったことがないように、これまでの経験を生かしながら周到に準備を進めているところでございます。
 今後も、荏原病院の利用者や地域住民のご期待にこたえるべく、円滑な移管を目指すとともに、より一層の医療サービスの充実を図ってまいります。

○松葉委員 今のご答弁どおりに、荏原病院が現行の医療機能を継続して提供するとともに、医療サービスを一層充実させていくことが、まさに地域住民の皆様が求めていることであると考えます。
 今、公社化のメリットや、利用者が安心して受診できるための取り組みについて伺いましたけれども、こうした点について都民に対して正確に伝え、十分理解してもらわなければならないと考えます。そのためにも、住民や地域の医療機関に対する広報活動は重要です。今後、移管に向けてどのように広報活動を進めていくのか伺います。

○及川参事 委員ご指摘のとおり、地域に対する広報活動は非常に重要でございます。これまでも、都立病院改革につきまして、さまざまな広報媒体を通じて都民の理解を求めてまいりました。今回ご報告した内容につきましては、ただいまのご指摘も十分踏まえ、地域住民の方や地域の医療機関に対するパンフレットを作成しましたり、チラシも作成いたします。説明会等の開催ということなど、広報活動を積極的に行ってまいりたいと思っております。
 その際には、いたずらに不安を招くことがないよう、現行の医療機能が継続されること、また、公社化のメリットを生かすことにより、より充実した医療サービスの提供が可能になることなどを丁寧に説明するよう心がけてまいります。

○松葉委員 ぜひとも広報活動を積極的にお願いしたいと思います。
 さて、私の手元に、荏原病院を都立として存続させる連絡会の、荏原病院は都立のままで、というチラシが届けられました。この中に、早くも移管を見越して荏原病院の看護師の定数を三十人も削減というふうに書いてございますが、これについて事実かどうか伺います。

○及川参事 荏原病院の看護師の定数に関しましては、過去の入院、それから外来患者実績を踏まえまして、一部の病棟や外来についての見直しを行ったということでございます。
 一方で、院内感染の予防を徹底するために、都立病院として初の専任感染管理看護師というものを配置しました結果、差し引き二十九名の減員となったものでございます。
 本年度の病院運営に当たりましては、直近の患者実績等を勘案しながら、業務に支障を出さないよう、定数以上の看護師を過員配置しますとともに、弾力的な活用が可能な非常勤職員を新たに雇用するなど、必要な人員については確保しております。

○松葉委員 今のご答弁によりますと、移管を見越して削減したという事実はないということですね。

○及川参事 ないということでございます。

○松葉委員 ところで、今回の報告書では、重点医療として、救急医療、脳血管疾患医療、集学的がん医療の三つを掲げています。
 現在の荏原病院は、難病医療やリハビリテーション医療なども含む六つの重点医療課題を掲げていますけれども、公社化後に重点医療が絞られるということが医療サービスの低下につながらないのかという点については、後で福祉保健局に伺うことにします。
 さて、これまでも荏原病院では、脳血管疾患医療に力を入れてきたと思いますが、これまでの取り組みについて伺うとともに、今後、公社移管に向け一層の充実を図るべきと考えますが、そのための取り組みについて伺いたいと思います。

○及川参事 荏原病院では、平成十五年十月に既に脳卒中専門病床を整備いたしまして、脳神経外科と神経内科を中心にしまして、放射線科、リハビリテーション科、看護科、医療ケースワーカーなどの連携のもとで、患者さんに対する総合的な治療やケアを実施しております。
 脳血管疾患医療につきましては、今回、地域のご意見も踏まえまして、公社化後も引き続き重点医療とする予定でございます。このほど脳卒中専門病床を改修いたしまして、専用の病室を整備充実したところでございます。近々、この専用病床を稼働する予定でございますが、脳血管疾患医療に関してのより一層充実しました医療サービスの提供を通じまして、今後とも地域の方々の安心につなげてまいります。

○松葉委員 脳血管疾患医療の一層の充実を求めておきます。
 さらに、今回新たに集学的がん医療を重点医療とするということですが、集学的がん医療という言葉は、一般の方は余り聞きなれない言葉であると思いますが、どのようなもので、患者さんにとってどのようなメリットがあるのか説明していただきたいと思います。

○及川参事 集学的がん医療は、外科医、内科医、放射線科医などが協力いたしまして、複数の治療方法を組み合わせて行うがん医療でございます。
 具体的には、各診療科の緊密な連携のもとで、外科手術、内視鏡手術、化学療法、放射線療法などを患者さんの症状や容体に応じまして使い分けたり、組み合わせたりするというものでございます。患者さんにとりましては、さまざまな治療方法の中から、最も適切で効果的と判断されます治療を受けることができるというメリットがございます。

○松葉委員 集学的がん医療については、ぜひとも重点医療として患者さんが求める医療サービスを提供していただきたいと思います。
 荏原病院では、公社化後の集学的がん医療の実施に向けて、今後どのような準備を進めていくのか伺います。

○及川参事 今回の委員会でも契約案件としてご報告させていただきましたけれども、荏原病院では今年度中にリニアック、これは放射線治療装置でございますが、これを導入する予定でございまして、現在、導入に向け、設置場所の整備などの準備を進めております。
 また、放射線治療の実施に当たりましては、放射線治療医を確保する必要がございますが、来年四月にはこの治療医を採用できるよう努力しているところでございます。

○松葉委員 今のご答弁どおりの取り組みをお願いいたします。
 今回の質疑で、荏原病院の公社化は、現在の医療機能を継続させることにとどまらず、加えて地域全体の医療サービスの向上を可能にするものであるということが理解できました。
 公社化によりあたかも医療サービスの水準が低下するという一部の主張には、全く根拠がありません。地域の住民が誤った扇動に惑わされることがないよう、今お聞きした取り組みを確実に行うことを要望いたしまして、私の質問は終わりといたします。

○かち委員 質問に先立って、先ほど佐藤委員から、どこかのだれか知らないけれども、地域病院になったら高くなってしまってかかりにくくなるとか、不安をあおっているというようなことをおっしゃいましたよね。そのことについては、私もさんざんこの委員会でやりました。
 今度の問題は、病院改革マスタープランに基づいてやってきているわけで……(「どこのだれだか知らないといってるんだから、あなたは自分のことをいっちゃだめじゃない」と呼ぶ者あり)私がいってきたことです、ということをいっているんです。私がいいましたよ。(「いったの認めたんじゃない」と呼ぶ者あり)違いますよ。その問題について、私がここで質疑したということをいっているんであって、この問題は、荏原病院が地域病院になって、そこではとどまらない。将来的には、先ほどもいいましたよね、地域医療支援病院を目指して、その先には民営化を目指すんだということが、ちゃんとこのマスタープランに書いてあるわけで、それにのっとって、今、着々と準備をされているわけでしょう。
 それで、じゃ、地域医療支援病院というのはどういう病院なのかということを聞いたときに、今は紹介状がなくても千三百円でかかれるけれども、今度、地域医療支援病院になれば、加算がついて四千三百円ぐらい取られるんだということで、紹介状がなければかかりにくくなるし、なければ、その分負担もかかるということで、かかりにくい病院になるということを、私はここで明らかにしているわけですから、どこかのだれかという話ではないということを一言いっておきます。(発言する者あり)そのことは重要なんです。
 それで、先ほど佐藤委員からいわれましたけれども、私も荏原病院のインターネットを見ていましたら、九月二十六日付で、この中身ですね、出ていたんです。これはもう直った後なんですけれども、ここに小さく、今後、東京都議会の審議を経て決定する予定ですというのが入ったのが二十八日ぐらいだったと思うんですよね。で、これ、きのう、もう病院の窓口に置いてありました。
 しかし、今はまだ仮定ですよね。決まるのがことしの四定です。四定で審議して決定していく。決定した暁には広報は大いにすべきだと思いますけれども、そのことは、出された医療連携等についての委員会のまとめの中に、広報についてどうするかというのも、都議会の審議後、速やかに行うというふうに書いてあります。それからマスタープランの中にも、広報については、計画でいえば来年一月から三月にかけて広報するというふうに書いてあるんですね。
 そういう意味では、まだ決まってもいないのに、もう広報しているということは、それこそ不安をあおっているということではありませんか。そして、議会で決まる前にこういうことをやることは、議会軽視であるということで、私は大変不適切だということを申し上げておきます。
 それで、一月から三月で短いというのであれば、そういうやり方で進めようとする皆さんのやり方こそを見直すべきだということをいっておきます。
 さて、平成十三年十二月に都立病院改革マスタープランが出されて、十五年一月に改革実行プログラムが発表されました。十六あった都立病院を八つに統廃合するという計画です。これに基づいて今日まで、母子保健院の廃止を皮切りに、都立大久保病院、多摩老人医療センターが次々と公社化され、来年四月から都立荏原病院を公社化するという計画を今、進めようとしているわけですが、公社化検討委員会の報告書に基づいて何点かお聞きします。
 我が党は、この病院再編計画を再検討するように前から求めてきているところですけれども、このマスタープランを見ますと、この中には書いてあるんですけれども、大久保、荏原病院とも、同一医療圏内に大学病院等の特定機能病院が複数存在しており、圏内の高度医療は充足されている、したがって、両病院は、高度専門医療を志向するよりも、地域の医療機関等との連携を強化し継続性のある医療を提供していくことが、医療資源の有効活用につながるというふうに書いてあるんですね。
 このことからして、今回の報告書を見ると、ちょっと違ってきているんじゃないかなというふうに思うんですけれども、まず、そのマスタープランの基本方針と今回の報告書の中身について、全然違っていないのか違っているのか、そこを確認します。

○及川参事 実行プログラムでは、地域病院としての機能を充実させ、地域全体の医療サービスの向上を図るということにしております。そのため、この地域病院の運営につきましては保健医療公社に移管するということで、今回の移管につきましては、この方針どおりというふうに考えております。

○かち委員 そういうことをいっているのではなくて、都立病院というのは高度医療や行政的医療に責任を持つんだと。で、この地域を見れば、大学病院、特定病院があるから、荏原病院、大久保病院はそういう高度専門医療は目指さないで、地域医療連携を目指すようにしようというふうにいっていることについて、違うのか違わないのか、お答えください。

○及川参事 今回の、例えば重点医療として集学的がん医療が入っております、そのことではないかと思うんですけれども、いわゆる今回、公社に移管する際には、地元の意見、それから連携医の皆さんの意見を十分聞きまして、引き続きがん医療を進めてほしいということで、私ども重点医療として進めたものでございまして、当初の方針と変わるものではございません。

○かち委員 マスタープランの当初の方針とは変わっていないということをおっしゃっているわけですけれども、この報告書を見れば、確かに協議会準備会が行ったアンケートの結果から見ても、感染症とか脳血管疾患とか集学的医療をやってほしいという中身が出ているし、そういう要望が強いというのはわかるんです。これはそれなりに高度の専門医療を追求するという中身なんですよね。
 私は、それを否定するのではなくて、そういう高度医療も目指すということは、さっきいった高度医療ではなくて地域医療だということとは明らかにそごがあるではないかということをいっているわけですよ。
 荏原病院は都立病院です、今。都立病院の役割は、高度専門医療も地域医療も両方やるべきだという立場で私は聞いているものなんです。で、今度は、リニアックも入れて、そして脳卒中治療センターも設置していくという、かなり専門、高度化していくという方針を持つわけですよね。だから、そういう意味では、皆さんが立てた計画と、この内容が違ってきているということをいわざるを得ません。準備会の中ではそういう要求が高いし、それにこたえていくという姿勢を持って、都立病院としてこたえていくべきだというふうに思うんです。
 今回の報告では、すべて住民の要望を取り入れる内容になっているわけです。医療技術もさらなるレベルアップをしていく。行政医療も提供する。これはまさに都立病院そのものの内容なんですよね。それに加えて地域医療連携も強化するという、公社病院にとっては大変重い負担をかけるということになるわけです。
 マスタープランには、都立病院の役割として、行政的医療、高度専門医療、二次救急医療を行う、広域的医療に責任を持つと書いてありますけれども、地域医療を抜きにして、こういう医療を展開することはできないわけです。ですから、たとえ都立病院であっても、地域医療を大切にする、連携を大切にするというのは当然のことだというふうに思うんです。だから、大塚病院も荏原と大体同じ規模ですけれども、かなり地域連携を重視してやっていますよね。
 私は、昨年の委員会で、都立病院におけるがん治療のレベルアップや、特に最近注目を集めている放射線治療法の拡充について提案してきたところですけれども、今回、リニアックについての資料をいただきました。これを見ますと、都立病院の普通病院の中にはほとんど入っていたんですけれども、荏原が一番最後ということになりました。
 駒込病院では既にがんを重点医療として取り組んできていて、かなりの実績もあるというふうに聞いているんですけれども、なぜこの病院で集学的医療ということに取り組んでいないのか、またなぜ標榜しないのかということをお聞きします。

○及川参事 ご案内のとおり、駒込病院ではこれまでも、診療各科が有機的に連携いたしまして、それぞれの専門領域を活用したがんの共同治療を行い、また相当な実績を上げてきております。
 今回使います集学的がん医療という言葉でございますが、いわゆるこうした取り組みを表現したというものでございまして、駒込病院においては既に実践しておるということでございます。

○かち委員 そうであれば、がんの権威として集学的医療もやっているということを標榜すればいいと思うんですけれども、それはしない。荏原病院が公社移管直前になって、移管を前にして、その集学的がん医療をやるんだと。
 しかし、この集学的がん医療も、前から概念として定説になっていたわけではないし、今もまだいろいろと議論のあるところだと思うんですね。しかし、私は、この集学的がん医療というのは、内科、外科、放射線科、それぞれの専門分野から患者さんを一方通行で見るのではなくて、患者さんを中心にして、いろいろ専門的な分野から一番最適な治療は何かということを検討して、最小限の診療で負担を少なくして、効果的な医療をどうやるかということを検討していくということは、かなりそれぞれの専門分野が技術を高めるだけではなくて、横の連携をどうやって高めていくかというところが大変重要な課題になっているというふうに思いますし、これからの医療分野における大きな課題でもあると思うんですね。ただリニアックを入れて、放射線を入れるから、専門医を入れるから、だから集学的医療なんだという内容のものではないと思うんです。
 しかし、荏原病院は今まで、がんを重点医療としてはやってきませんでした。だけど、これだけ高い死亡率があるわけで、本当にちまたのだれもかれも、がんだ、がんだといわれているような状況ですから、こういう中でがんの医療にこたえざるを得ない、こたえてきたというのも事実だと思うんです。そのレベルをどうやってこれから高めていくかというのは、まさに研究課題というふうになっていると思うんですね。
 ところが、今、放射線治療医は入る予定だということを聞きましたけれども、治療医だけではなくて、画像診断医だとか、放射線の適量をどうやって計算して的確に与えるかという、物理士というような専門家も必要になってくるわけです。そういう意味ではまだまだ、荏原病院に一人の医師が入っても、現実的には足りないし、がんの専門医というのは荏原病院にはいらっしゃるんですか。

○及川参事 そもそものお話で恐縮なんですけれども、がんそのものの学会の専門医とか認定医というのは今いない。大分動きが出てきているようですけれども、やはり消化器とか呼吸器、内科、外科、そういったものは、学会なり、そういう機関での認定医、専門医が存在するというふうに承知しております。そういう意味では、がんの専門医というのはいらっしゃらないというふうに考えております。

○かち委員 がんの専門って、トータルでいうのはなかなか、いろいろ内科、外科系で議論もあるところだと思うんですけれども、ですから、それぞれの分野のがんの認定医というか、専門医というのはいらっしゃるんですか。

○及川参事 先ほども申し上げたとおり、消化器あるいは呼吸器、消化器の中でも上の方とか下の方とかいろいろ、それは、そういった実績に基づいた経験等により、いわゆる評価なり実力なりということになろうかと思います。

○かち委員 がんの専門医という概念そのものは、これからまとめていかれる状況にあるわけですけれども、がんが死亡率が依然として高い、全疾患の中でも最も高いということについて、国全体でも、それから東京都全体でも、それをどうやって抑えていくかというのは、行政政策的な課題だと思うんですね。
 そういう意味で、荏原で集学的がん医療をやろうというのであれば、そうした専門の能力を持つ医師集団を集めていかなければ、集学的がん医療という言葉だけに終わってしまうと思うので、ぜひ体制的な強化というものもやるべきだということをいっておきます。
 それで、脳卒中医療についても重点強化で行っていくということで、これは前にも質疑しましたけれども、今の脳卒中医療というのは、いかに早く受け入れて、二十四時間体制で検査、画像診断ができて、的確な治療ができるか、そしてリハビリをいかに早くするかということによって、予後を非常に大きく左右する。後遺症をほとんど残さない治療というのも、荏原なんかではかなり進んできているわけですけれども、今、高齢社会の中で、脳卒中に起因する寝たきりになるケースが多いという、こういう状況の中では、この医療分野をかなり高めていく、この分野から全都に発信していくという課題が大変大きい役割を持っているというふうに私は思うんですけれども、荏原病院では、脳卒中医療への今後の取り組みについては、先ほどお話がありましたけれども、今後の方向性、具体的な取り組みについて何か検討されていますか。

○及川参事 先ほどご答弁いたしたとおりでございます。

○かち委員 充実させていくというようなお話であったので、具体的なことをお聞きしたかったんですけれども、具体的なことは答弁いただけませんか。

○及川参事 具体的な取り組みは、これから四月に向けて努力してまいりますが、先ほどとダブってしまいますけれども、病床の整備、それから機器類の整備、そういったものを万全な体制にしております。

○かち委員 荏原病院の事業概要などを見ますと、都立の普通病院の中では、初めて神経内科が独立したということで、確立したということで、都立全体の病院の中でも初めてのケースのようなんですね。
 四十四床に今度八つのSU、集中治療ベッドを持つということになるわけです。そして今後、脳卒中センターとして、都市における脳卒中救急医療のモデルを構築していくというふうな意気込みが書かれているんですけれども、こういうこと、都立病院が拠点拠点にあって、その地域を中心にして医療展開するけれども、それはその地域だけでとどまるものではなくて、共有の財産として東京都の脳卒中治療水準を高めるということに貢献していくのが都立病院の役割だと思うんですね。
 そういう意味で、都立の病院の中でも荏原病院がこのような脳卒中医療に取り組んできたし、これからももっと強化していこうという、この内容は、全都に普及していく必要があると思うんですけれども、その辺のお考えはどうでしょうか。

○及川参事 先ほども若干触れましたけれども、今回の脳卒中の医療要望というのは、地域のご意見を十分踏まえた上でのことでございまして、やはりここは、地域で充実した脳卒中の医療を提供していくということが基本になろうかと思います。

○かち委員 医療というのは、地域、フィールドがなければ展開できないものなんですよね。ですから、当然そこの地域の患者さんが来るのは当たり前のことなんですけれども、東京都立病院として都民の税金で成り立っている病院としては、そこの医療だけやっていればいいということではなくて、そういうレベルアップを全都に広げていく、それで全体の医療レベルをアップするというのが都立病院の役割じゃないんですか。それはどうですか。

○及川参事 この問題に限らず、いろいろな診療科目のいろいろな最新の技術につきましては、都立病院の中でのネットワークがございます。今回、公社も含めて勉強会等は既に行われております。そういう形でのノウハウは共有できるというふうに考えております。

○かち委員 だから、荏原病院は公社にして、もうこれ以上やらなくてもいいよ、地域でやればいいよという、そういう姿勢がよく見えるんですけれども、そうじゃなくて、今までやってきたこと、これからやろうとしていること、この報告書の中身を見ても、かなり重装備でこれからも技術を高めて全体に普及していくという、こういう姿勢があるのに、病院経営本部の姿勢はそういうことが全く感じられないというのが、今のやりとりの中で強く感じているところなんです。
 脳卒中医療に不可欠な診療、放射線科の画像診断を、荏原病院のCT、MRIなど、二十四時間即応体制でやってきたわけですけれども、放射線科では、地域画像診断センターとして発展させて、高度画像診断センターとして地域に還元していきたい、こういう構想も持っているわけですよね。こういうことを実現させていく、本当にさまざまな分野で、かなりレベルの高いことを荏原病院はやってきているわけですよね。CTだって、かなり高度なものを、全国で一台か二台しかないようなものが最近入れられているわけで、それを都民に還元していこうということで頑張っているわけですよ。
 公社化後にどういう医療機能を目指すのかということもわからないうちに、集学的がん治療にしろ、脳卒中センターにしろ、公社にするから荷を軽くするのではなくて、これまで以上に拡充するという内容そのものですね。荏原病院で今までやってきたものの中に、必要のないものというのはないとおっしゃっているわけでしょう。そのままやりますと、やる上に、さらにがんも脳卒中も専門化していきますよということをいっているわけですから、これは受け取った公社側にしてみれば、大変荷が重いということになりますよ。
 それで、先ほど、看護定員三十人減らすという問題、私、この委員会で質疑をいたしました。なぜ、まだ都立病院であるにもかかわらず、ことしの定員から看護定員を三十人減らすのかということをお聞きしましたときに、奥田部長は、公社に移管するからだということをはっきりおっしゃいました。だから、それはおかしいということをいったんですけれども、そういうふうに全体で職員体制は厳しくしながら、内容はこんなに盛りだくさんのことをやろうとしているのが今の計画ですよ。
 荏原病院がこれまで行ってきた、公社化後にどういう医療を展開するのかというのがまだまだ決まっていない段階で、そういう判断をされて削ったということが、そもそも問題だというふうに私は思うんです。(「公社化とは関係ない削減だって、さっき答えていたじゃない」と呼ぶ者あり)その前の委員会では、そういったんです。(「質問しないから答えようがない」と呼ぶ者あり)じゃ、お答えいただけますか。

○奥田経営企画部長 荏原病院の看護師の常勤定員、職員定数の関係について、確かに私の方からご答弁させていただきました。
 そのときの趣旨は、外来の一層の効率化であるとか、あるいは入院患者の実績、それから夜間の業務量等を総合的に勘案して査定がなされたものだと思っているということを申し上げたということでございます。
 ただ、当然のことながら、病院運営に具体的な支障があってはならないので、非常勤なんかを活用しながら、必要な人員については確保していきますというふうにお答えを申し上げました。

○かち委員 当然、日常診療に影響があってはならないわけですよ。それは非常勤で対応するというのは、そもそもの位置づけがおかしいと思うんですね。
 それで、実績に基づいてといいましたけれども、荏原病院の実績は、今度の報告書でも見ますように、今までよりも減らすということは全然書いてないわけですよね。五百六床そのまま、で、千人外来でいくと。全く減らない中身じゃないですか。それにもかかわらず……(「質問をすりかえちゃだめだよ」と呼ぶ者あり)すりかえてませんよ。(「すりかえてるじゃない。公社化とは関係ない削減だって答弁した」と呼ぶ者あり)うるさいですよ、本当に。委員長、ちょっと制止してくださいよ。気が散ります。

○藤井委員長 かち副委員長、理事者側に質問してください。委員に答える必要はありません。

○かち委員 次に、精神科医療のベッド、これは三十床ですけれども、稼働率は一〇〇%を超えるほどに、いつも稼働率高いですよね。荏原病院のような普通病院で、合併症を持った人が救急に入りたい、こういうときに開放ベッドを持っている病院というのは大変貴重な存在だと思うんですけれども、大田、品川といわず、世田谷、目黒、港区、この西南部も含めて、どのぐらいあるんでしょうか。

○及川参事 五区合計で九病院が開放病棟を運営しております。

○かち委員 九病院がどのぐらいのベッドを開放しているのかわかりませんけれども、とにかくこの地域では大変貴重、この報告書の中にも書いてあるんですけれども、少ないと。開放ベットを持っている病院が少ないと。だから、貴重な役割を果たしているから続けてほしいというのがあって、それを続けるわけですけれども、そういう意味でも、これは行政的な医療なんですよね。
 もう一つは、感染症医療でSARSが発生したときに、荏原病院を含めて都立病院ではどのように取り組んできたんでしょうか。受け入れ患者の状況はどうでしょうか。

○及川参事 東京都では、荏原病院、墨東病院、駒込病院、豊島病院の四つの感染症指定医療機関を中心に、SARSの疑い例患者や疑似症患者について診断、治療を行ってきております。
 なお、大学病院や民間病院などにも協力をいただいておりますと聞いております。

○かち委員 事業概要とか見ますと、SARSなどの一類の受け入れ病院というのは、墨東と荏原しかないわけですけれども、SARSは疑いの段階もいろいろあって、最もたくさんの患者さんを受け入れてきたのは荏原病院だというふうに聞いております。それで百二十何名、問い合わせや自分の判断で来たという人も含めて、そういうふうになっているわけです。このときに、実際には発症はなかったわけですけれども、かなり疑い例として濃い方がここに出されていて、五名いたということで、その中では、区部で、大田区で二名、そのほか三名ということだったわけですけれども、SARSや鳥インフルエンザ、これからの新興感染症、国際的にも大変重要視されているわけですよね。
 こういうSARS、一たん発症したら、大変な陣容で構えなければいけない。一人いたからベッドを一つあければいいということではなくて、荏原ではこのときに三カ月間、二十床のベッドをあけなければならなかったという経過もあるわけですね。
 そういうことを含めれば、やはり感染症医療というのは、行政的に大変責任を持たなければならない医療だと思うんです。だから、東京都内にたくさんの国立病院や大学病院あるけれども、そういう病院でなかなか手が挙がらない。結局、都立病院がこれを受け持っている状況だというふうに思うんですね。
 そういう意味からしても、この荏原病院の感染症医療の役割というのは大変大きいし、期待も高いというふうに出ているわけです。だから、すべての医療は大変重要な医療だし、これからもやってほしいし、さらに、がんも脳卒中も高度にしてほしいというのが、この報告書の要望だというふうに思います。
 都立病院であっても、地域医療との連携強化、地域医療のレベルアップに貢献している例としては、口腔外科、いわゆる歯科領域における医療だと思うんですけれども、病診連携が円滑に行われているモデル地区として、厚生省、科学研究のメンバーにも入っているんですね、荏原病院の歯科の先生は。公社でなければ開放病棟ができないとか共同診療ができないというふうにいわれておりますけれども、そんなことでしょうか。なぜ公社でなければならないのか。
 私は、荏原病院は今までも十分に地域連携、歴史的な経過もあってやってきているので、これからもそれは強化していけると思うんですけれども、しかし、都立病院では限界がある、だから公社にするんだと。その公社に移る原因というのが、開放病棟や共同診療ができないという理由になるんですか。

○及川参事 最初の答弁と重複する部分がありますけれども、現在の荏原病院の地域での利用実態等を十分踏まえまして、地域での中核病院として今後運営していく、その際に公社で弾力的な運営を行うことが地域住民の医療のサービス向上につながる、このように考えております。

○かち委員 公立病院であっても、地域支援病院というふうにやっているところもあるんですよ、全国で見れば。開放病棟を持って、実際にやっているというところもあります。
 共同診療ができないというふうなこともいわれましたけれども、荏原の歯科においては、地域で地域の医師が在宅で診ている患者さんが重症化したり合併症を持っていて、これは入院して診てもらわなきゃいけないというときに、共同診療ということも既にやっているわけですよね。だから、全然できないことはないわけです。(「都立病院で共同診療やってるの」と呼ぶ者あり)やってますよ、これ、事業概要に載っていますので。そういうことをるる私がいっていますように、都立病院でも十分に地域医療には貢献できるということです。
 地域の中核病院として、地域医療のレベルアップに貢献する。それは、都立病院であっても、その役割と姿勢を持つべきだと思うし、現実にやってきたということです。この報告書を見れば見るほど、公社化する理由は成り立たないわけです。
 そもそも高度専門医療と地域医療連携のどちらを選ぶかというマスタープランの発想そのものが、私は間違っているのだというふうに思います。高度専門医療を充実してこそ、地域医療の発展につながります。荏原病院は、都立病院として、これまで行ってきた高度医療と地域医療の充実の医療を都立として発展していくべきだということを申し上げて、質問を終わります。

○山口(文)委員 質問が重複しておりますので、私の方は、ちょっと意見だけ述べさせていただきます。
 私の方も、地域の人たちあるいは患者への広報とか周知徹底ということについてお尋ねしていたんですが、先ほど来出ていました、既に決定したかのようなチラシが配られたとか、それを回収して、新たな議会の議決を経ての移管だ、公社化だということがまた行われているということですけれども、ぜひ慎重に地域の人、また特に患者の人たちには丁寧な広報活動というか、これからの経過についてきちんとした情報公開と、そしてまた当事者の意見を反映する場を確保していただきたいということを要望させていただきます。

○田代委員 今、大変長いこと、かち先生からもお話があったんですけれども、マスタープランがおかしいんじゃないかという話なんですね。これは、どうも病院経営本部と話してもしようがない話が、さっきから随分、次から次へ出ているんで、公社化どうなるこうなる、それは、次に嫁に行っちゃうんだから、わからないわけです。
 何で嫁に行かせちゃうのかということの一番基本、新しい先生方も入られたし、新人の本部長も出て、この経過がわからないわけだから、どなたかはっきりわかる、何でこういうことをしなくちゃいけないんだという病院経営本部の理念というか、いわゆる日本の医療、特に東京都におけるこれからの医療の全体像、グランドデザインがどういうふうにしてあるからこうなるんだということをだれかが説明してくだされば、一番わかりやすいんですね。そうすると一目瞭然で、ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ細かい話が出てこないわけだ。
 そういう中で、奥田さんがいいのか及川さんがいいのか、どちらがいいのか、ベテラン二人いるわけだから、大塚さんじゃ気の毒だから、ちゃんとわかっている人に説明してもらえると、ほかの新人の人にもとてもいいんだよ。それをきちっとグランドデザインをいってくれて、そして、何で病院経営本部というものがわざわざ福祉保健の中に入っていないのか。こうやってまま子扱いで外に出されちゃって、昔の多摩都市整備本部みたいに確実につぶすってわかるような形で外に出されちゃってる理由なんかも、ちょっといえたら、恨み節になるかもしれないけれども、きちっといっておいてもらわないと、こういう話って非常に見えなくなっちゃうんですね。だから、そこをちょっと教えていただけたらありがたいなというのがまず一点です。

○奥田経営企画部長 我が国全体の医療構造であると思いますが、プライマリーと入院が必要な二次医療、それから救命が必要な三次医療という形で、全体的に医療財政が非常に厳しい中で、役割分担をそれぞれ演じながら、最小限のリソースで最大の効果を発揮していこうというのが今の医療の流れであろうと思います。
 都立病院は、高度専門医療を遂行する、その前提というか、基礎として、総合診療基盤も相当程度涵養してまいりました。その総合診療基盤の範囲内で、地域に対しても大いに地域医療という形でもって貢献してきた。で、全体の医療構造の変化の中で、都立病院がいつまでも高度専門、地域を合体して持っているということではなくて、限られたリソースを重点的に投入するという意味合いで、片や行政的医療、片や地域医療という形で展開させていくというのが今の状況であると考えております。
 で、地域医療を展開させる受け皿として、経験とノウハウに富んだ公社の方にこの運営を移管して、地域医療全体の底上げを図る。冒頭で及川参事から、共同診療もしくは機器の共同利用というのもありましたが、地域の先生方に対する勉強の場も提供しながら、全体として地域医療、それから地域医療の底上げを図っていく、こういう形を遂げていきたいというのが、今の分化の方向であろうというふうに考えております。

○田代委員 非常にわかりやすい説明だと思うんですね。
 それで、今お隣から、ちょっと矛盾しているじゃないかというお話があったんだけれども、先ほどからも、谷村先生からもお話があったけれども、地域医療だから低い医療でいい、特化した都立病院だから、さらに高度だという必要はないわけですね。全体を今おっしゃったように底上げしていけばいいわけですから、どこまでやっちゃいけないとか、どこまでやっていいというよりも、いわゆる一番中心となる目線は患者さんなんですよ。患者さんが納得するかしないかということだけを考えていきゃいいんであってね。
 ただ、僕は残念なのは、これは前から持論でいっているんですけれども、限られた財源の中で効率よくするというのは当たり前なんだけれども、余りにもそれを限られた財源の中だけでやっていくべきではなくて、患者さんが求めているものを、少なくとも一〇〇%に近い満足感を与えられるような努力を、この行政的医療を含めた医療というものは担っているんだと思っているんですね。だから、何でも安けりゃいいとか効率がいいというんじゃなくて、実は医療というものはそうじゃなくて、ある程度お金がかかってもみんなが多分納得するだろうし、するような話に行政が持っていかないと、いつまでも萎縮してきちゃう。
 例えば、いつも申し上げているように、EBMという、やけどなら何点、盲腸の手術なら何点、それは、八〇%はその中に入るけれども、残りの二〇%はそこに入らないわけですから、そういうものがあるんだということを、一開業医に、我々医師会にそれをやっていけといったって、これは無理な話であって、東京都の代表である都立病院がそういうもののガイドラインみたいなものを示していただきたい。そういう方向性を持って都立病院というものを運営していかないと、何だかんだいっても公立がいいからじゃなくて、基本的には患者さんなんだという、この基本の目線がずれちゃうと、何かこういう話が少しずつ見えなくなって、枝葉末節な話になっちゃうんで、患者さんのサービスに、公社化するといかにプラスになるんだと。公社化のプラスのメリットは、今おっしゃる必要はない。これは次の段階で聞くべきであって、皆さん方がおっしゃることではないんだけれども、我々はそこじゃないところを専門的なことをやっていくというんだったら、大変問題になっている、来年、放射線科のお医者さんをどこかから用意するというけど、これは我々にとってはとても大きな問題で、どこが抜かれちゃうのかなと怖がっているわけですよ。
 今、放射線の医者と麻酔医、それから産科の専門医というのはほとんどいないんです。うちの病院でもほとんどいなくなってきた。うちは、救命救急とすれば日本最大で、しかも産科とすれば日本一といわれたから、多摩永山病院ができたんだけど、そこでさえも、もう産科の専門医と麻酔科がいないわけですよ。まして放射線の専門医なんて全く日本にいないんですね、つくられてないわけだから。
 それは、我々大学に勤めている医者の責任でもあるかもしれないけど、やはりいつも申し上げているとおりに、研修医制度という、皆さん方が想像もしなかった制度が棚ぼた式に落ちてきたわけだから。今までは都立病院に医者が行くなんてことは想像もできなかったものが、今は都立病院に、何だかよくわからない、東京に行ってみようと。今まで、地方の大学出たら、そこに一生骨を埋めるというのが医者のテーゼだったんだけど、今は東京に来れるようになったわけです。文句がなくなってきたわけ。同窓会の中から出て、地方の医科大学出た者が東京に行ってもおかしくなくなってきた。だから、都立病院はふえているわけです。
 だけれども、都立病院の中で研修医制度をしっかりつくっていくノウハウもなければ、手順もなければ、そんなものは今まで要求されていなかったわけだ。そうすると、そういうものをしっかり医者の中で育成していくという立場、あるいは専門的に高度化していくという中で、学会もやっていく、例えば都立病院の学会もやっていくなんていう話が出ていれば、こういう公社化というのは見やすい。
 まして共同診療というのは、僕も医師会長やっていたときに、第一号で荏原病院で僕が登録医になったけれども、時間もないということがあるかもしれないけれども、行く部屋もなければ何もない。まあ、仲間がみんないるから、話はできるんだけど、一般の会員はなかなか行きづらいですよね。具体的に行ってみなさい。
 それから、皆さん方の問題じゃないけど、多摩南部病院って、僕が、もう一つある医師会の会長が充て職で副院長やっているところなんていうのは、一人も行ったことないね、医師会員は。一回も行ったことない、共同診療したこと。それは、そういうシステムができてないのね。それが悪いといっているんじゃないんですよ。今からどんどんそういうのを進めなくちゃいけないからこそ公社化するんだという熱意が出てくれば、みんな理解できると思うんです。その熱意がちょっと伝わってこないと、こういう枝葉末節な話だけで時間がどんどんどんどんとられてしまう。
 やはり都立病院と公社化病院の、もうちょっと区別というか、差別ではなくて区別がもっとはっきり説明できるととてもいいとは思うんですが、それに向けて都立病院が今からどういうふうにしっかり進めていくのかの決意を、本部長、もしあれでしたらお伺いして終わりたいと思いますが、いかがでしょう。EBMも含めてね。含められなきゃいいですよ。構わないんだけれども、医療費の適正化って非常に大切で、東京の医療と地方の医療と全然違うんですよ。僕は介護のときにもいつも話しするけど、田舎のように山ほど、よく冗談で、北九州市には要介護度五の人のゲートボール大会が開かれるとまでいわれちゃう、それは、施設が多過ぎて年寄りが少ないからですよ。
 東京は、三千人、四千人と、どこでも待っているわけだよね。それと同じことが医療にもあって、東京には医者がごまんといる。地方には、施設も余りないんだけど、医者が何せいないわけですよ、例えば東北大学で手術ができなくなるような事例が麻酔科で出てきたように。
 この研修医制度自身だけを取り上げるのではなくて、都立病院というものが、ある意味ではプライドを持って、日本の厚生労働省に対応する東京の厚生労働省であっていただきたいという思いを持って、最後にお話を伺いたいと思います。

○奥田経営企画部長 マスタープランを策定いたしまして、東京発医療改革というものに福祉保健局ともども取り組んでいるわけですけれども、その中で中心的な役割を都立病院が果たしていきたいといったのは、まさに今、田代先生からご指摘いただいたものとほとんど同じことじゃないかなというふうに私は感じました。
 我々は、非常に厳しい医療財政の中で、患者中心でわかりやすい医療をタイムリーにぜひ提供していきたいと。そのために、都立病院独自で医師の育成システムなんかも構築いたしまして、自立性を高めながら、いつまでも全体の医療を引っ張れるような立場にいたい、そういう意識でもって都立病院を運営していきたいというふうに思っております。
 引き続きご指導をお願いしたいと思います。

○田代委員 大変ありがたいお話で、それを伺いたかったんで、そのためには、やはり都立病院の中で学会をやるとか医学会をやるとか、そういう具体的な取り組みをしていかなくちゃいけないし、そうだとすれば、今うちの医局員も何人か行っていますけど、基本的にはそんな暇、全くないわけですよ。そういう具体的な時間を都立病院の中で見つけて、ちゃんと集積した学術的なものが、今おっしゃられたように発信できるような形、こういうものを目に見える形でつくっていただけたら、都立病院としても、言葉だけではなくて高度医療になっていく。これは間違いないことだと思うんで、これは後で公社化病院の方でもお話ししますけど、都立病院と公社化病院と、もっともっと緊密な連絡をとるような工夫をしながら勉強会を進めていただくことを強く要望して、終わります。

○藤井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する病院経営本部関係の質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認め、報告事項に対する病院経営本部関係の質疑は終了いたしました。
 以上で病院経営本部関係を終わります。

○藤井委員長 これより福祉保健局関係に入ります。
 初めに、報告事項、荏原病院の公社移管についての福祉保健局に対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言をお願いいたします。

○田代委員 ご一緒に質疑をさせていただくのが一番よかったんですけど、そうはいかないんで、まず最初に、都立病院、公社化した方がいいのか悪いのか、それをちょっと教えていただきたいと思います。

○高橋参事 このたびの移管につきましては、先ほど来議論が出ておりますように、地域の医療を全体としてレベルアップするという観点から、移管した方がよいと考えているわけでございます。

○田代委員 ここは、そごがないようで、一致していて、大変ありがたいんですが、公社化したときに、今までの都立病院の中で行っていた仕事と、公社化した病院での仕事の内容、これは大きく変わるんでしょうか。いわゆる患者さんたちが不安になっているという話が今ありましたけれども、全く変わらないのか、変わった上にプラスして、もっといい仕事もやりますというのか。
 前よりも悪くなります、患者さんに対してサービスも悪くなるし、質も悪くなるんですというのか。これがAコースですね。Bコース、今までと全く変わらないんです、全く変わらないから心配しないでくださいというBコースと、Cコース、全く変わらない上に、さらにいいものがつきますというのか、どうなんでしょうか。

○高橋参事 今の先生の分類でいいますと、Cでございます。これまでの医療につきましては、医療機能は引き続き実施するとともに、集学的がん医療等につきまして、新たにリニアックを導入して実施するということでございまして、レベルとしては上がってまいるというふうに考えております。

○田代委員 一年間に診る患者さんの予定、これからふえるか減るかわかりませんけど、その予定と、医者、看護師たち、あるいは事務局の人数の変動はどうなんでしょうか。変わらないのかどうなのか。

○高橋参事 病床数、それから来年度の外来予定数については変更ございません。それから、事務局及び医師の数等についても基本的には変わりませんが、リニアックのものについては、今、私どもとして鋭意、体制強化を図るよう要望しているところでございます。

○田代委員 いわゆる人数は大きくは変わらないと理解してもいいということですよね。

○高橋参事 そのとおりでございます。

○田代委員 いい仕事をして、そして人数も変わらない、こんないいことはないんですね。都庁もこうなってくれるといいんですけど、こんなにたくさんの人が出入りするのに、こんなむだな時間がかかるんで、せめて三分の一ぐらいでいいと思うんだけど、それが効率よくなるのはとてもありがたいんですが、公社化病院、問題になった大久保病院、ちょっと患者さんが減ったといわれてましたけど、これは理由は何ででしょうか。

○高橋参事 大久保病院につきましては、一つは、医師がその後やめまして、そのときにちょうど研修医制度が導入された関係もございまして、補充がすぐできなかったということが一つございます。
 もう一点は、当初、十分な広報ができなかったこともございまして、都立病院が廃止される等の誤った風聞が流されたというようなこともあると考えておるところでございます。

○田代委員 ということは、お医者さんの数が少なくなっちゃって、患者さんをある程度制限しなくちゃいけなくなったということと、それから、行っても、もう病院やっていないんじゃないか、つぶれちゃって消えちゃっているんじゃないかという、そういうデマみたいなものによるものだということでよろしいんでしょうか。

○高橋参事 一点目は、そのとおりでございます。
 二点目につきましては、十分な広報が即座にできなかったという点も反省点として挙げられると考えております。

○田代委員 その医者がやめちゃった理由というのは何でしょうか。

○高橋参事 医師につきましては幾つか理由がございますが、一つは医局の定例的なローテーションでございます。もう一つは、家庭の事情あるいは開業、そういうものによって医師がやめ、その後の補充が、先ほど申し上げたような理由ですぐにはつかなかったということでございます。

○田代委員 家庭の事情なり何なりということ、開業なり、いろいろなことが起きたんでしょうけれども、ちょっと話、横になりますけれども、当然大きさからいうと、皆さん方の方が病院経営本部より大きいわけですから、都立病院のこともお尋ねしたら十分わかると思うんですが、今から、公社化した病院の中で、学術的なスキルアップはどういう方法で具体的に取り上げていくのか。また、そういうことはしないで、都立病院の方に全部丸投げするのか。その点ちょっとお聞かせください。

○丸山医療政策部長 昨年から始まりました義務化されました卒後臨床研修、これも従来から公社病院ではジュニア、そしてまた来年度からはシニアという形で確保していこうと思います。その中で、スタッフに関する学会事業ですとか、そういうことに関しては、基本的には今までどおりというような形で支援していこうかと思います。

○田代委員 具体的にいうと、その今までの支援というのは、都立病院にいたときと同じという形でなさっていくんだと思うんですけれども、都立病院では具体的にどのぐらいそういう支援がされていたんでしょうか。わかればいいです。おおよそでいいです。

○丸山医療政策部長 若干古い記憶で申しわけありません。平成七年まで豊島病院の心臓外科におりました、そのときを申しますと、胸部外科学会ですとか、それから心臓血管外科学会ですとか、そういうところの指導医を採るというようなことも含めまして、学会活動はさせていただいております。
 その後も、都立病院の仲間に聞きますと、ある部分の時間的な制限はある中で、学会活動はしておるというような話は聞いております。

○田代委員 なかなかおっしゃりづらいと思うんですね。丸山先生からおっしゃるのは、非常にいいづらいと思うんですが、僕の耳に入ってくるのは、非常に学会活動の制約を受けて、なかなか論文を書いたり、あるいは海外で投稿して発表するということはできない。
 これはもう、ある意味では当たり前といえば当たり前かもしれないんですけれども、医療の質を高めていくということであれば、都立病院もしっかりやっていかなくちゃいけないと同時に、もしくはそれを都立病院に全部丸投げしてしまうんだったら、公社化病院はわざわざそういうことをする必要はないんであって、公社化病院の中で連絡会なり学会などをつくって、勉強会、医学会をつくって、都立病院とジョイントしてやっていくのか。また後でちょっとお話、出てくると思いますけれども、地域の、例えば佐藤先生の地元、大変数多くの高度先進医療を行っている施設があるから、公社化病院でいいんだという話なんですけど、逆にいえば、医療というもの全体を見ていくと、そういう集積しているところにさらに集積させていった方がいいという理論も当然あるわけですわね。
 ですから、そこにこそ、今度はみんな一点集中式に力を合わせていくという必要も、僕はあると思うんですよ。ただ経済効率だけで、さっきちょっと申し上げたんですけど、患者さんが求めているのは経済効率じゃないんですよ。今の我々医師に対する不満というのは、納得できないことが多過ぎる、説明が足りない、待たされる、そして一日がかりの診療になってしまう。医療費が高いなんて、実際のこというと思ってるのは議員だけなんです。役人だけなんですよね。
 実際、患者さんから見れば、医療の値段の高さと受けるサービスが余りにも乖離があるから、高いと感じちゃうんですよ。それがどうしても自分の命に対してとか、あるいは理屈が通るような手術を受けるというんであれば、これはもう、どこかから補助を、例えば公的な補助を出したって構わないわけだけど、その補助を出すにも、まだまだ医師会の中にもメスを入れなくちゃいけないことがいっぱいあるし、不正請求の問題も、これは介護保険の方が圧倒的にひどいですけれども、医療の中でもないわけじゃない。
 こういうものがしっかり出てこないと、みんなが安心して医療にかかって納得していくというわけにいかないんですね。ただ安くすりゃいいというのは、これは全くの選挙のためだけのある政党の考え方であって、患者さんのほとんどの人はそんなことは思っていないんです。高くたって、ちゃんと納得できて、いいものであって、結果が出るんであれば、ある程度納得はするんですよ。それは、ばか高いものはだめですよ。だけど、それがちゃんとできる都立病院というものが、一つのガイドラインとしてEBMをつくっていって、ある病気、中耳炎なら中耳炎が東京ではどのぐらいが正しい値段であるとか、盲腸の手術はどのぐらいが正しい値段であるとか、待ち時間はどうしてこれだけかかるんだというようなことがちゃんと患者さんに伝えられれば、それでいいわけですよね。
 それを、都立病院の方は今からやって、そこで受けたものを全部公社化病院でやっていくのか。それとも、公社化病院は、同じように仕事をやる上に、さらにプラスするということは、逆に公社化病院が都立病院の指導的な立場になって仕事をしていくのか。これは、学問的な集積というのはちょっと別に置いてですよ。
 それは、高度先進医療の許可を得ている病院だって、最近大変問題になっているところもあるわけですから、専門医のあり方一つにしても、我々、とても今、悩んでいるところではあるんですね。上級専門医というのをつくろうという話が、もう我々、学会でも出ているわけですから、屋上屋を重ねる専門医になるのか、本当に意味のあるアメリカ式の専門医になるのか、これは難しいところがありますけれども、ただ、地域医療をスキルアップしていくためにということであれば、これは答えは求めませんけれども、決まっているといっちゃ、また怒られちゃうかもしれないけれども、周りにあるんだからいいんだという考えよりも、僕は、そこに集積していった方が余計、情報としてはいいと思うんです。都立病院より、先ほどのお話に重なって申しわけないけど、さらにいい病院をやっていくんであれば、学術的なスキルアップはどういうふうに具体的にやっていくのか、何かそういうビジョンみたいなものがあるんでしょうか、が一つ。
 それから、先ほどから何回もいわれていますけど、共同診療の問題。町の医者が来て、我々医師会の医者が来て、そこで一緒に診療していくというパターン。これは南部病院では、残念ながらほとんどされていないんですね。これは医師会にも問題があります、はっきりいって。我々にも問題がないわけではない。忙しいということもあるし、それから、我々大学の医者と開業医の先生たちで、共通のキーワードが余りないわけですね。そこで非常に来づらいというのがあるのかもしれない。
 でも、それ以上に、もっともっと開業医の先生たちが来れる、それは結果として患者さんが安心できる。そこに行ったら、おらが主治医がいたぜというだけでも、随分安心ができるんだとすれば、そういうことを具体的にやっていくために公社化しなきゃだめなんだという、どこの条例にひっかかるのか、それは詳しくは聞かないけど、多分何かひっかかるわけでしょう、都立病院がそれやっちゃうと。
 それとともに、外での病院、いつも申し上げているとおりに、開業医というのは、そこに行っちゃうと自分のうちがあいちゃうわけですよ。今、日本ができていないのは、そのときに、どうせ公社化の病院の人でも、都立病院の人でも、いつか開業しなくちゃいけないということがあるんだとすれば、勉強にもなる、地域の実情を知るために。特に、この公社化病院が地域医療をやるんだとすれば、地域の実情を見ていただきたいんですね。ここは工場が多いんだとか、主婦が多いんだとか、お子さんが多いんだとか、見ててほしい、開業医と。
 そうすると、そこである程度方向性が出ているらしいんですけれども、アルバイトも、アルバイトという言葉は変な話ですけれども、派遣みたいな形で行くことができるようになるのか、そのところを答えられる限りで教えていただけたら大変ありがたいと思います。

○丸山医療政策部長 先生の二点の前段の学術ということに関しましては、ことしの三月に東京都保健医療公社病院経営中期計画というものが出されました、その四つのビジョンの中の三番目に、志の高い医療人を育成するということを銘打ってございます。何とかそれを中身あるものにしたいと思います。
 それから、もう一点、地域の医療とのかかわりということでは、多分、田代先生もご存じだと思いますけれども、今現在行われている荏原病院の歯科医療、これは大田、品川のみならず、目黒、世田谷まで、ある意味では地区医師会と連携している。在宅で、例えば抜歯をしなくてはいけない、なおかつ全身管理が必要だというような方を、荏原病院、今、三人スタッフおりますけれども、そこに入院して抜歯をした後は、またその診療所の歯科の先生にお返しする。これは家族にとっても、そういう意味では非常に助かると。
 こういうことが、その後の共同診療ということになれば、いろいろな形で、多分もっと具体的に推進できるのではないかというような気がいたします。

○田代委員 ですから、その共同診療をさらに充実したものにしていくためには、今できている、できていないということよりも、これからもっともっと形を整備していくためには、やはり公社化しないといろいろなそごを来すというわけですよね。
 今できているからどうだ、今できていないからどうだということよりも、今からもっともっとそれを充実させていかなくちゃいけない。だから、それをやっていくというのはわかるんですが、最初におっしゃられた、ある意欲、意思を持っている人たちのインセンティブ、モチベーションを上げていくための努力をするという、そこの具体的な方策をしっかり示していただくと、最初の話にちょっと戻るんですけど、家庭の事情が出てこないんですよ。そして、何かわけのわからない、開業だか、どこかに都落ちしちゃったのかな。都落ちというのは申しわけない、東京がいいわけじゃないけど、東京じゃないところに行っちゃう。それは、我々のところに山ほど来る話なんですね。同業者ですから、いっぱい、うちの医局員もそういう相談に来たし。
 それは、いろいろなまやかしの、つぶれちゃうんだ、なくなっちゃうんだという話に惑わされる人もいるし、僕も、最初のイメージでは、公社化病院というのは、最後に売っちゃうために一度整理しているんだというイメージが今でもないわけじゃないんですよ。だけど、せっかくいいものをつくるというんだったら、さっきおっしゃった--いや、前とは悪いものにするんです、なぜかというと、余っちゃっているから、民間の病院にチェーン店化して売っちゃうんですと。それだったらそれで、話はすごくすっきりで、一番見えていた道だから、それでいいと思うんですよ。
 でも、そうじゃなくて、都民のための、みんなの社会資源だから、そんなむだはしません、一部の力のある医療法人グループにだけ安くたたき売って、利権を与えるようなことはしませんという話ですから、そうだとすれば、やはり今から残ろうという気持ちにさせていただきたいんですが、時間も最後ですから、一つだけ、僕はこれが大変気になってしようがないんで、これは自民党としてとかどうというより、一職業人としてのプライドとしてクエスチョンマークなんだけど、同じ仕事をして、さらにいいことをして、志が高い医者、公社化病院の医者と、都立病院の医者と、どっちが給料高いんですか。

○高橋参事 給与自体は、現在では基本的に同一でございます。ただ、公社化した場合に、医師の努力が一層反映されるような給与体系あるいは制度にしていくよう、今、公社では検討中でございます。

○田代委員 公社化された病院でいいですよ。例えば、私のところの会長が副院長やっている南部病院でもいいです。あるいは大久保病院でもいいです。平均的、全く同じ私立を、あるいは国立を出て、専門医を持っている持っていない、同じグレードで見たときに、どっちが高いんですか。全く同じなんですか。僕は資料持ってるから、そこはうそはいわないでくださいね。

○高橋参事 それは同じでございます。公社と都立病院ということでいえば、同じでございます。

○田代委員 僕の認識では、後でまた資料を出してもいいんですけど、値段が違うんですよね。でも、同じでいいんですか。もう一度、再度伺います。
 文書、残っちゃうけど、同じでいいですね。都立病院の医者と、全く同じ卒業年次で同じキャリアを持っている人、公社化された公社病院と地域病院、南部病院でも何でもいいです、そこと、全く待遇が同じでいいんですね。もう入っちゃってるけど。高いか、安いか、そういうことなんですよ。今、同じとおっしゃったから、それでいいんですかって、再度。

○丸山医療政策部長 十五年度、公立病院等勤務医一人当たりの平均給与月額、出典は地方公営企業年鑑第五十一集、平成十五年四月から平成十六年三月によるというところで、都道府県の数字が百二十一万九千二百八十九円、この数字と、それから、そのところには公社病院は載ってございません。そのときの、ですから年齢比較ですとか経歴ですとか、その辺で単純比較はできない数字ということでご理解いただきたいんですけれども、百八万一千三百九十七円。

○田代委員 それで間違いないんですよ。僕は何でさっきそう申し上げたかというと、僕は公社化するときに大変反対したんですね。反対した理由というのは、非常に待遇が変わってしまうという、当時のですよ、当時の話を伺ったもので、待遇が変わってしまうんだったらしようがないんじゃないかということで、うちの医局にも、それはもうしようがない、やめるしかないねということだったんですけど、それが今、変わっているならいいんですよ。元通りになって、都立病院にいようと、公社化病院にいようと、全く今はもう同じなんですと。当時は、でも、そういう説明だったんですね。後でゆっくり話してください。
 それがもし同じだとしても、全国平均との乖離というのがあるんであって、その全国平均との乖離、先ほどから申し上げていますように、東京都というのはある意味ではかなり先進的な、しかも先導役として進んでいかなくちゃならないわけだから、その中で、もう少し医者が人間らしく生きていける最低限の保障、これが高い安いというのは、非常に難しいところがあるかもしれないけれども、少なくとも二十四時間の仕事なんですね。
 僕は、きのう実は、ある医者と夜中の二時ぐらいまで、ちょっと将来どうするかと学会のことで話してて、きょうは大丈夫です、きょうは大丈夫ですっていってたけど、二時にはもう呼び返されて病院に吹っ飛んで帰っちゃったんです、変化が起きたというんで。いつもがそうだとはいわないけど、きのうは、その医者はかなり安定していると読んでて、来ても、そういうことになっちゃうわけです。
 そういう意味では、公社化病院は九時-五時でいいんです、おなか切ってても、五時一分になったら、共産党の国みたいに帰っちゃっていいんですということにならないんだとすれば、もうちょっと常識のある、しかもほかとバランスがとれるような給与というものをお願いしたいと思うんですが、ご意見あるんだったら、おっしゃってください。

○高橋参事 これは繰り返しになりますが、今、公社では、先生おっしゃるように、努力した医師が報われるような仕組み、それから、業績が給与にもっと端的に反映されるような仕組み、そういうものにしていきたいということで検討しているところでございます。

○田代委員 というのは、さっきの全く同じですというのは、なしでいいんですかな。全く同じです、はどうするんですか。

○高橋参事 基本的な給与自体は、都立病院と公社病院は同じでございます。ただ、それについての業績の評価の度合いが、都の職員たる都立病院の医師と公社職員の医師とでは、今後異なってくる可能性があるということを申し上げた次第でございます。

○田代委員 だから、前からいってるとおり、僕はそれを覚えているんだからあれなんだけど、うちにも資料あるんだけど、何しろ下げる、三割ぐらい減になるということをおっしゃられたんで、それはここでごちゃごちゃいってもしようがないけど、じゃ、今までと同じことを、都立病院の医者と同じことを公社化病院の医者がやっていたら給料が変わらないかといったら、変わっちゃうわけですよ。同じ仕事、今まで十個の仕事をやっていたものが十一個になれば、能力給で上がるかもしれないけど、どこかで差をつけていくということになるわけだ。全体のボリュームは変わらないわけだから、どこかだけかさ上げして、あとは変えないというわけにいかない。やはりめり張りをつけていくわけでしょう。
 そうすると、その内容が、今までと同じような仕事で、同じようなお給料ならまだともかく、それがさらにいいものをします、努力しますと、僕が思っていたのとは全然違う。公社化病院は都立病院よりもいい病院になるわけだから、いい病院になるものがお給料が同じということすらおかしいけれども、どうも、もともとあったものよりも非常に下げられるというイメージが強過ぎたんで、みんな医局員、やめちゃったわけですよ。そこが違うんだと。
 いや、下がったっていいんですよ、ある意味では。もっとあえていえば、いつも申し上げているとおりに、きちっと学会に出してもらえて、医者としての仕事を、研修ができるんであれば、別に公社化病院で金もうけようなんて思ってる医者は一人もいないんですよ。都立病院で何か変なわけわからない下品なのが、とんでもないのがいて、医者としてはもう言語道断。あんなの懲役刑以上ですけど、ああいうばかなやつもいるけど、これは中にはおかしいのがいるんで、しようがないけれども、実際問題は、みんな一生懸命、都民の医療を守っていきたいと思って仕事してるわけだから、それに対してある程度見える形、お給料が下がるんでも、例えば週に二回は学会出張を認めるとか、論文を研究する費用、そんな遊んでちゃだめですよ、それはちゃんと裏づけ調査もしなくちゃいけないけど、ちゃんと患者さんにフィードバックできるようなものが、あるいはせめて一日患者さんと話し合える日があると、とても我々は楽なんですね。
 毎日毎日、手術で、毎日毎日、カルテ整備してて、患者さんの家族と話すといっても、五分、十分刻みで話さなくちゃいけない。やはり相手に理解していただけないということがあるんで、そういうものを考えると、やはり公社化病院がよくなるんであれば、目に見えたものがしっかり出てきてほしいと僕は思うんです。最後にそこのところ、これ以上あれしてもしようがないですけれども、公社化病院は都立病院よりいいものになるのかならないのかを教えていただきたいと思います。医者の待遇も含めてね。給料ということじゃないよ。患者さんがまず第一、次に医者に対して。当然、職員、看護師に対しても。

○高橋参事 今いろいろご質問ございましたけれども、最初の質問の答えと同一になりますけれども、全体として、地域の中で、より地域連携を高めた患者本位の病院にしていきたいというふうに考えているところでございます。

○田代委員 共同診療を一生懸命進めていただきたい。開業医が積極的に行って、自分の大切な患者さんと一緒に病院で、患者さんが安心して意見がいえる。いわゆるセカンドオピニオンですよ。そういうものがあるような形にしていただきたいのと同時に、都立病院が公社化病院になって、最後に、田代のいっていたとおり、どこかに安く売られちゃったということがないように強く要望いたしまして、質問を終わります。

○斉藤委員 先ほど佐藤先生、そして田代先生から大久保病院の話が若干出ました。新人、今回の委員のメンバーにおりますので、ちょっと過去の議論なんかで、ひょっとしたら多少出ていたとは思いますが、初めての人もおりますので、この大久保病院について若干先例として伺いたいと思います。
 この大久保病院の移管前後の入院、そして外来の患者数について確認したいと思います。よろしくお願いします。

○高橋参事 大久保病院の公社移管前後の平成十五年度と十六年度の患者数を比較いたしますと、平成十五年度の一日当たりの入院患者数は二百四十二・二人、十六年度の一日当たりの入院患者数は二百二十九・五人でございまして、十二・七人の減員となっています。また外来患者数の比較では、平成十五年度は一日当たり五百七十・二人、平成十六年度は一日当たり四百十五・五人でございます。百五十四・七人の減員となっています。
 入院患者、外来患者とも、平成十六年度公社移管時に減少したのは事実でございますが、十七年度におきましては徐々に回復しております。

○斉藤委員 先ほど田代先生の方から、ドクターの方が大分欠員、減ったというようなこともあって、若干、大久保病院については先ほどの話の中でもわかるところがあったんですが、ここで改めて、十六年度、実績が、今この数字を見る限りでは落ち込んでいるわけです。この移管当初、この患者の落ち込みを回復するためにどのような取り組みを行ったのか伺いたいと思います。

○高橋参事 まず、医師の欠員補充のために、各大学の医局を訪問いたしまして医師派遣要請を行うなど、医師の確保に努めてまいりました。また、多様化する患者ニーズ、地域ニーズへの対応を図るため、紹介状を持たない患者や、原因がはっきりしないで受診する科がわからない患者さんのための総合外来の新設、あるいは在宅復帰支援機能を有し、効率的かつ密度の高い医療を提供する亜急性期病床を設置いたしました。あわせまして、地域医師を対象とした病院見学会や登録医説明会を実施し、紹介患者を確実かつ迅速に診療するなどの努力を行い、登録医数を増加させたところでございます。

○斉藤委員 話の中で、なかなかいいづらいところですけれども、患者数の落ち込みについてはかなり明確に答弁していただいたので、その辺は、今後の対策を立てる上で、はっきりいっていただいたことについて評価いたします。そういった現況の認識というものがなければ、なかなか次の打つ手を選択するのにとっかかりがありませんから、今の答弁については、大変そういった意味では評価いたします。
 それを受けて、今後も非常に誠意ある答弁をお願いしたいんですけれども、荏原病院の公社移管においては、大久保病院の経験を踏まえて、今回の公社化を円滑に行うためにどのような取り組みをしているか。これまでの質問の中でも、幾つかそういうのは出てきましたが、改めて伺いたいと思います。

○高橋参事 大久保病院移管時の準備不足が指摘されていることを踏まえまして、医師等の人材確保に万全を期していくとともに、病院経営本部及び保健医療公社等と連携し、早期から病院職員への周知と理解促進を初め地元住民への広報や説明会の開催、地区医師会や地元自治体への協力依頼などに努めているところでございます。
 また、広報紙やホームページ等、さまざまな手段を活用し、円滑な移管に向けた準備を行ってまいります。

○斉藤委員 二つ質問します。
 公社病院の医療スタッフについては、移管後、都の職員の派遣を徐々に解消して、固有職員化していくことになっているというふうに聞いております。東京都からの派遣職員については、都と公社との間で派遣協定が結ばれて、その期間はいわゆる派遣法に基づいて三年間というふうにされていると聞いております。
 逆に、このために、わずか三年で派遣が解消されてしまうのか、そんなふうにおしりを決めて移行していっても、病院という性格上、そんなふうに上手にできるのかというふうな動揺が現場の一部職員の間に広がっているということは聞いております。
 荏原病院移管後、どのように安定的に人材確保を図っていくのか、そういった視点でぜひともお答えいただきたいというのが一点でございます。
 もう一点、先ほどちょっと田代先生の方からも多摩南部地域病院の話、出ました。人材確保に関してですけれども、多摩南部地域病院では、医師の不足から小児科の入院診療については休止をしているというふうに聞いております。これについては、理由は何か、また今後の見通し、改善策ということですね、その辺について確認したいと思います。

○高橋参事 二点のお尋ねでございます。
 まず、一点目の点でございますが、既に公社に移管した病院につきましては、病院運営の安定性、医療の継続性を確保する観点から、公社移管後も当分の間は、都職員である医療スタッフを派遣して体制を確保しているところでございます。
 移管後の荏原病院においても、現行の病院スタッフの派遣を行いつつ、公社固有職員の採用を実施し、段階的に派遣解消を図ってまいります。派遣された職員に対しては、病院運営の必要に応じ、再度派遣を行うことが可能であるとの説明を早期に行い、不安を払拭するとともに、安定的な人材確保に努めてまいります。
 二点目の多摩南部病院のお話でございますが、多摩南部地域病院におきましては、平成十六年四月に導入された臨床研修医制度に伴いまして、全国的な小児科医師の不足の影響を受け、平成十六年十二月末をもって大学医局からの派遣が打ち切られております。このため、翌平成十七年一月から小児科の入院診療は休止し、外来診療のみ実施しているところでございます。
 地域からも入院診療の早期再開の要望があることは認識しておりまして、医師確保のため、大学医局に小児科医師の派遣をお願いしておりますが、まだ確保に至っていないのが現状でございます。引き続き、小児科医師の早期確保に向け最大限努力してまいります。

○斉藤委員 派遣の方については、今お話では、三年間というふうに法律ではなっていますけれども、再派遣というような形で、三年で終わるというようなことではなくて、実際にはもう少し延長が可能であるし、また必要に応じては延長していくというふうなことで、解釈でいいかなというふうに思います。
 また、今の小児科の方の入院診療を休止していることについては、今、田代先生のお話の中では、小児科ばかりでなくて、ほかの医師の方も大変減っているのは、どこも状況が同じということでありますので、そういう点では非常に努力を今後とも続けていただきたいというふうに思います。
 最後に、先ほどちょっと都立と公社の部分の違いなんかの話も出ましたし、広報の話も出ましたけれども、都立のブランドというものが、公社への移管がなされて、なくなってしまうと、病院としての信頼の低下が心配されるわけなんですけれども、大丈夫なのか。
 実際には、うちの地元でも、八市がやっている公立病院があるんですが、公立病院といいますと、やはり地元の住民の見方は違ってきます。ですから、そういった点では都立というブランドは、お金に換算するものじゃないですけれども、非常に見えないところでいろいろな仕事をしやすくしている部分もあるかと思います。ぜひとも、このあたり、信頼低下を防ぐためにも、心配する部分、一つの方策を示していただいて、大丈夫だといってほしいところなんですが、いかがでございましょうか。

○丸山医療政策部長 大久保病院に続きまして、ことし四月、公社に移管された多摩北部医療センターについても、救急患者さんの増加や紹介、逆紹介の伸びなど、移管後の実績も良好で、地域の中核病院としてさらに信頼を得ております。
 荏原病院におきましても、公社病院となった後も引き続き大学医局の協力を得、医療スタッフの確保や質の高い医療サービスの維持向上に努め、地域医療の充実を図ってまいります。荏原病院はこれまでも地区医師会と連携が進められ、紹介、逆紹介など実績もあり、地元からの信頼も厚い病院でございます。移管後も、荏原病院運営協議会の場などを活用し、地域住民の信頼の維持、確保に努めてまいります。

○藤井委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時六分休憩

   午後三時二十分開議

○藤井委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○松葉委員 田代理事、斉藤委員からのご質問がございましたので、重複しない形でご質問したいと思います。
 荏原病院は、大久保病院、多摩北部医療センターに続く三番目の公社移管になります。先ほど来、大久保病院の話は出ておりましたので、二番目の公社移管であった多摩北部医療センターの入院患者数や外来患者数はどうであったか伺います。

○高橋参事 多摩北部医療センターの公社移管前の平成十六年度の実績と、公社移管後の平成十七年四月から七月までを比較いたしますと、十六年度の一日当たり入院患者数は二百七十五・〇人、平成十七年の一日当たり入院患者数は二百九十二・三人となっております。
 外来患者数は、平成十六年度は一日当たり五百二十三・一人、平成十七年は一日当たり四百三十七・二人でございます。八十六人の減少でございますが、これは、隣接する東村山老人ホーム内に診療所を設置したため、老人ホームの患者が減少したものでございます。

○松葉委員 多摩北部医療センターは、公社病院になってから入院患者数が増加したことを聞き、安心いたしました。
 それでは、大久保病院、多摩北部医療センターの共同医療の取り組みについて伺います。
 現在、登録医や共同診療の状況など、地域連携の取り組みは、大久保病院、多摩北部医療センター、いかがでしょうか、伺います。

○高橋参事 大久保病院や多摩北部医療センターの登録医や共同診療の状況でございますが、大久保病院の登録医数は、平成十六年度、六百三十名でございまして、平成十七年度七月までは六百九十三名と、四カ月で六十三名の増加となっております。
 多摩北部医療センターの登録医数は、平成十七年四月、公社移管後四カ月で四百三十名の登録医数となっております。病院の医師と地域のかかりつけ医が共同で診断、治療に当たる共同診療も着実に増加しており、今後とも積極的な取り組みを進めてまいります。

○松葉委員 地域医療の充実に向けた取り組みが、ひいては病床利用率の向上、患者サービスの向上につながっていくと思います。
 では、この三番目の移管になります都立荏原病院の重点医療課題について伺います。
 重点医療課題が現在、難病医療、リハビリテーション医療などを含め六項目ほどありましたけれども、今回の報告書では、重点医療は三項目となっています。診療科目は現行どおりといいながら、これはサービスの低下につながらないかどうか伺います。

○丸山医療政策部長 公社病院移管後は、地域に不足する医療または地域でニーズの高い医療に数を絞って重点医療と設定しているところでございます。
 荏原病院の場合、現在、我が国の疾病構造や荏原病院運営協議会準備会における議論など、地域の医療ニーズを踏まえながら、増加傾向にある救急医療、脳卒中専門病床、CT、MRIなど高度の設備、人的資源及び診療科を生かした脳血管医療、MRI、CT、現在整備中のリニアックなどの最新鋭の設備と診療科の連携を生かせる集学的がん医療としたところでございます。
 なお、リハビリテーション医療につきましては、重点医療の項目に挙がっていないものの、脳血管疾患医療との連携を強め、充実をしていくこととしております。
 このように、基本的には診療機能は継続していくとともに、今まで行ってきた難病医療等の重点医療課題にも引き続き取り組んでいく所存でございます。医療サービスの低下にはつながらないということでございます。

○松葉委員 重点医療の項目の減少が医療サービスの低下につながらないということがわかりました。しかし、今までの重点医療課題も行う、さらには重点医療の中に新たな集学的がん医療を加えるなど、実質的には重点医療がふえることになります。それによって、医師や看護師、コメディカルにとっては、人員が確保されない限り業務が増加することになり、結果的にはかえって患者さんにとってサービスの低下につながるのではないかと、そのようなご指摘もありますが、その辺について伺います。

○高橋参事 公社移管後、医療機能を充実、維持するためには、提供する診療規模や医療機能に必要な人員確保に最大限努めてまいる所存でございます。

○松葉委員 必要な人員についても確保していただけるということで安心をいたしました。
 さて、荏原病院は感染症指定医療機関となっております。公社病院となった後の荏原病院が、不採算の行政医療である感染症医療を引き続き行っていけるのか疑問なしとはいえません。荏原病院は公社移管後も責任を持って感染症指定医療機関としての行政医療を実施していくのでしょうか、伺います。

○高橋参事 荏原病院はこれまで、第一種、第二種の感染症医療機関としての指定を受け、感染症予防法に基づく患者の受け入れや診断確定前の不明感染症患者の全都的な受け入れに対応するなど、感染症医療に多くの実績がございます。
 特に一種につきまして、都内で病床を有するのは荏原病院と墨東病院の二病院でございます。また、羽田空港に近い立地条件のため、空港検疫所からの患者紹介のほか、海外の感染症発生時を想定した患者搬送訓練を要請されるなど、平常時から関係機関との連携体制が確立されております。
 さらに、地域からの診療継続の要望も強いため、公社移管後も引き続き感染症医療を実施してまいります。
 なお、感染症医療等の行政医療につきましては、都からの適切な財政支援を行って実施していくこととしております。

○松葉委員 SARSや鳥インフルエンザなどの新興感染症への対応が求められる中、感染症医療のかなめといえる荏原病院が担ってきた役割も大変重要だと考えます。今後も、行政医療を適切な財政支援のもと引き続き実施していただけるように要望いたします。
 さて、さきの病院経営本部の質疑のときにも取り上げましたが、私の手元に、荏原病院を都立として存続させる連絡会の、荏原病院は都立のままで、というチラシが届けられました。この中に、経営優先で患者負担がふえること、紹介状がなければ診てもらえない敷居の高い病院になることなど、地域医療にとって大変な問題を抱えていますと、このように記載されておりますけれども、これは事実でしょうか、伺います。

○高橋参事 荏原病院は現在も原則として紹介予約制をとっておりますが、公社移管後も、医療を必要とする患者さんにつきましては、たとえ紹介状がなくとも今までどおり診療してまいります。その際、紹介状がない場合の初診料千三百円の加算や特別室料等につきましては、都立病院のときと変更ございません。

○松葉委員 今のご答弁によりますと、紹介状がなければ診てもらえないとか、患者負担がふえるということはないということでよろしいでしょうか。

○高橋参事 そのとおりでございます。

○松葉委員 今のお話を伺いますと、医療機能は継続をし、さらには行政医療も継続していく、重点医療に対するための診療科の充実や地域連携も充実をするということで、患者さんにとって何ら不安を与えるものではないと確信をいたしました。
 事実と異なる風評によって、一部の方々がいまだに誤解をされているのではないかということを大変に懸念しております。病院としては、地域病院としての機能を充実させていくのと同時に、正しい情報を提供していく努力を積極的に続ける必要があるのではないかというふうに申し上げておきます。
 最後に、医療の質を継続、さらには充実し、都民の信頼を確保するためには、何といっても、その医療を担う医師や看護師の確保が重要です。そこで、医療スタッフの確保はどうするのか、お尋ねいたします。

○高橋参事 荏原病院は現在でも稼働している病院でございます。公社移管後も病院運営の安定性、医療の継続性を確保する観点から、当分の間は、医師、看護師等、現在の医療スタッフを都職員として派遣するとともに、大学の医局や看護学校などへも積極的に働きかけ、医師を初めとしたスタッフの充実に最大限努めていくこととしておりまして、提供する診療規模や医療機能に必要な人員を適切に確保してまいります。

○松葉委員 荏原病院を公社に移管後も、地域住民のための病院として、信頼確保に一層努めていくことを希望いたします。
 最後に、同性である女性医師がきめ細やかな診療を行う女性専門外来は、女性特有の疾病や健康問題に適切に対応していく上で大変有益であると考えます。将来、女性専門外来を設置されるように要望いたしまして、質問を終わります。

○かち委員 先ほども病院経営本部に質問したんですけれども、荏原病院、マスタープランに基づいてやっているということなんですけれども、マスタープランに基づいていくならば、荏原病院は公社移管後、地域医療支援病院を目指し、将来民営化するという方向性を持っているわけですよね。そういう意味で、荏原病院が公社に移管して地域医療支援病院になった場合の外来加算は幾らでしょうか。

○高橋参事 先ほどもお答えいたしましたように、外来診療加算は千三百円でございます。将来的なことにつきましては、その後の医療の需要等によって検討する課題であると考えております。

○かち委員 ちゃんと答えていただきたいんですけれども、地域医療支援病院になった場合って聞いているんですよ。地域病院じゃないですよ。地域医療支援病院になった場合の初診料外来加算は幾らですか。

○高橋参事 お答えいたします。
 今申し上げましたとおり、そのときの医療のニーズ、状況等を踏まえながら検討する課題であると考えております。

○かち委員 お答えにならないというのは、大変私は遺憾です。ちゃんとしたことを聞いているのに、そんなことは資料を見ればすぐわかることじゃないですか。なぜそれを答えられないんですか。(「ちゃんと答えているよ」と呼ぶ者あり)答えていないんですよ。
 それで、先ほどからいろいろ議論がありまして、公社に移っても、行政的医療もやります、今までやっていた重点医療はすべてやります、そしてその上に放射線治療も加え、集学的がん治療もやります、脳血管疾患のセンターもやっていきます、すごい高度な医療もやります、そして地域連携もやりますと。これはさっきから皆さんの共通認識だと思うんですけれども、これを公社になったらできるんだ、だから公社はすばらしいんだというふうにいっておりますけれども、本当に公社病院がそんなにうまくいっているのかどうかという観点から少し質問したいと思うんです。
 都立病院再編の中で公社病院は急速に倍加して、今は四病院ですね。そこへさらに荏原病院を加えることを前提にした今度の報告書ですけれども、今、公社病院の現状はどうなっているかという点ですけれども、研修制度も始まったと。どこの病院でも医師不足というのが深刻な状況になっているのは全国的な状況でもあるわけですけれども、この公社四病院での医師の充足状況。そうですね、ある時点で見てみたいと思うんですけれども、昨年の四月一日とことしの四月一日を比較しますと、どういう状況になっているでしょうか。(「数字が必要なときはあらかじめいっておかないと」と呼ぶ者あり)過不足状況でいいんですけどね--事前にちょっとお聞きしたんですけれども、東部地域病院では今現在六人不足ですね。多摩南部地域病院では、これも六人。大久保病院では二人。多摩北部センターでは今五人ですか。こういう不足状況というのがありますよね。で、非常に厳しい状況だということをいわざるを得ないと思うんです。
 今、公社病院、先ほど、多摩南部の小児科がいまだに入院の治療のめどがついていないという状況もありました。皮膚科も入院ができない状況ですね。
 大久保病院では、都立の時代に先駆的に取り組んできたチーム医療、NSTをやってきたんですけれども、これも、言語療法士が非常勤になってしまった。それから、褥瘡でもかなり先駆的にやってきたんですけれども、皮膚科の先生が非常勤になってしまって、このチーム医療が大変困難になっているという現場の声を聞いております。
 公社に移ってバラ色に描かれたけれども、実態としては大変いろんな問題が、やっぱり人員不足というのは最大の大きな問題だと思うんですけれども、このような状況をどのように打開していこうとしているのかをお聞きします。

○高橋参事 医師の確保につきましては、先ほど来お答えしておりますように、医局等の臨床研修医の制度の導入がございまして、全国的な問題となっているわけでございます。私ども、必要な医療サービスを実施するために、最大限の努力を今しているところでございます。
 なお、先ほどのご質問の中でちょっと誤解がございまして、失礼いたしました。地域支援病院になった場合の初診料の加算は九百点でございまして、九千円でございます。

○かち委員 ちょっと違うかな。加算は九千円じゃないんじゃないのかなとは思うんですけれども、いずれにしても、今の紹介がなくて外来にかかった場合よりも数千円高くなるというのは事実ですね。ですから、これが敷居の高い病院になると。で、原則は紹介を導入するということになるわけです。
 それで、荏原病院は十年前の再開時期に、開設したときに、地域の皆さんに約束をしているんですよね。紹介状がなくてもいつでも来てくださいということで、紹介状がなくてもかかれる病院として今も地域の皆さんは認識しておりますので、そういう意味で、大変敷居が高くなるといっているわけです。
 先ほど、田代理事の質問の中にありました、都立の医師と公社の医師の待遇はどうなんだということで、しつこくやりとりがあったんですけれども、(発言する者あり)しつこくじゃなくて、かなり激しくあったんですけれども、いただきました資料の3にもあります。先ほど説明がありましたけれども、単純に比較はできないということを前提にしても、やはり公社の医師一人当たりの給与というのが低いということは歴然としているわけですよ。そのほかにいろいろな待遇とかさまざまな問題があるわけで、しかも、高度医療もやりながら、そして地域医療もやる。
 私、東部病院に見学に行って、当時の院長先生にいろいろお話を聞いてきたんですけれども、地域支援病院としてやっていくためには、やっぱり入院と外来というのはとんとんぐらいでないとやれないと。結局何かといえば、地域連携だとか、学術研究会だとか、学習会ですね、それから共同診療とか開放病棟とか、一般の医療以外にそういうことが具体的に入ってくるわけです。
 それで、アンケートの中にもありましたけれども、紹介や報告というのはもっとスムーズにやってほしいというのが地域の先生方の要望ですよね。そういう意味では、とにかくまめに報告書を書かなければならない。物理的な問題が相当数入ってくるんですよね。口では両方やりますといっても、具体的にはそういう物理的な問題が出てくる。やることによっていろいろ点数がつくという問題もあるわけですけれども、しかし身は一つです。高度医療ですごく技術も高めなければいけない課題を抱えながら、地域医療の連携を強化するために、そちらにも時間を割かなければならない。これは一人の人間としてはとても限界があるわけですよ。
 都立病院がなぜ地域医療としてこういうスタイルができないかといえば、やはり高度医療に力を置いているからだというふうに思うんですよね。そういう意味で、やっぱり二足のわらじ、三足のわらじ、こういうふうに何でもかんでも、いいですよ、何でもやりますよといっても、現実的にそれにこたえられていないから、今のような人員不足、いろんな問題が出ているんじゃないかというふうに思います。
 公社としても、先ほどありましたけれども、みずから人材を確保していかなければならない。専門医も育てていかなければならないという方針を持ったということは、それはすばらしいというか、これからの課題だと思うし、大いにやってもらいたいというふうに思うんですけれども、荏原病院でも、インターネットを見ますと、シニアレジデント、後期研修の募集をしていました。これを見ますと、給与待遇は既に公社基準となっていると書いてあるんですね。
 まだ議決もしていない。公社になるというのは決まっていないんだけれども、もう実態はどんどんそういうふうに進んでいるという点でも、やはり問題はあると思うんですけれども、とにかく荏原は、専門医を育てようという意思で、そういう募集も出している。十月二十二日ぐらいが締め切りなんですけれども、やっているわけですけれども、それでは、今まで公社病院で、今までの四つの病院で、後期研修医師の受け入れ、研修医の受け入れというのはどのようにやってきたんでしょうか。

○高橋参事 卒後二年間のジュニアの臨床研修医につきましては、今年度は多摩南部地域病院が八名、大久保病院が八名、多摩北部医療センターが四名となっております。
 受け入れ開始年度は、多摩南部地域病院が平成十二年度、大久保病院が平成九年度、多摩北部医療センターが平成十六年度でございます。東部地域病院につきましては、来年度から受け入れるべく公募しているところでございます。
 また、ジュニア終了後三年間のシニアの臨床研修医につきましては、大久保病院が今年度一名受け入れております。

○かち委員 多摩南部も東部病院ももう既に十年以上の実績があるわけですから、そういう意味では専門医を育てていくという課題に既に取り組んでいてよかったと思うんですけれども、いまだに、それにはまだ着手できていないわけですよね。都立から移った大久保でやっと一名、後期研修を受け入れるというような状況であるわけです。しかし、後期研修、専門医を育てていくという点では、やっぱり指導医がきちんといなければ、そういうこともかなわないわけで、そういう意味での中堅クラスの医師をきちんと確保していないとできないわけです。
 だからこそ、東京都として人的にも予算的にも支援をしないと、公社はやっぱりできないんじゃないか。公社はやっぱり、先ほどからいろいろいわれていますけれども、独立採算です。不足になった分だけもらうということで、大変運営上は厳しいのはもう明らかなわけですよね。そういう中でみずから研修をし、育てていくと。これも東京都が支援しなければ育っていかないわけですから、そのことには本格的に取り組んでいただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。

○高橋参事 都立病院としての人材育成でございますが、公社では今後、荏原病院移管に伴いまして病院の規模が拡大いたすわけでございますが、拡大する公社病院のスケールメリットを生かしまして、シニア臨床研修医制度を充実することによって、独自の医師確保を目指しているところでございます。

○かち委員 荏原病院だけではなくて、公社病院についてぜひ支援をしていっていただきたいというふうに思います。
 それで、ことしの九月ですね、今月の初めに、アジア大都市感染症対策プロジェクト会議というのが開かれて、新興感染症など次々と発生してくる中で、アジア地域における感染症に対する情報交換をもっとダイレクトにやろうということで、今までは国連を通したり国を通したりしてしか入ってこなかった情報を、直接的に発生状況、対策、その後というようなことを都市間でもっと情報を交流して、新興感染症対策の力を高めていこうというようなことが語られたというか、検討されたというふうに「都政新報」にも書いてあるんですけれども、これは福祉保健局としての行政政策的にも大変重要な課題だというふうに思うんですね。こういうことを進めていくという立場に立ったときに、感染症、しかも一類対応の非常に高度な技術を要する対応を持っているのが、今は墨東病院と荏原病院、都立病院の二つしかないわけですよね。
 だからこそ、いつ来てもおかしくないこういう状況の中で、都立として感染症医療についてフィールドを持ちながら発信していく、こういう位置づけこそが必要だと思うんですけれども、どう考えますか。

○高橋参事 ご指摘のとおり、荏原病院はこれまでも、一種、二種の感染症医療機関として東京都の指定を受け、感染症予防法に基づく患者の受け入れや、診断確定前の不明感染症について全都的な受け入れ体制を整えるなど、感染症医療に診療実績がございまして、スタッフや設備も完備しております。また、羽田空港に近い立地条件にございまして、平常時からの連携体制も確立されております。
 このことから、公社化後におきましても、これまでの診療実績やノウハウを生かしまして、都からの要請に基づき引き続き感染症医療を実施してまいります。

○かち委員 先ほどからいっているように、公社は財政基盤が脆弱なんだと。医師の待遇だって、これは一つの象徴になると思うんですよね。医師だけが低いわけじゃない。コメディカルスタッフもすべてこういう割合で、都立並みにはいかないという状況。しかも、採用する人も、これからは常勤雇用だけではない。パートやアルバイトや契約やいろんなスタイルの人が入ってくるという状況の中で、今まで積み重ねてきた技術の継承、それから安全性確保という点でも、皆さんが確保してやっていきます、やっていきますといっていますけれども、その保障がないということを私はいっているわけです。
 行政的医療が都立の役割だと、このマスタープランでもいっているわけですから、行政医療をやっている荏原病院は、行政病院、都立病院としてそれを継続していくのが当然のことだという結論になると思うんですよ。そういうことを私は再度いいまして、質問を終わります。

○山口(文)委員 都立病院は、第一期の都立病院改革に続いて、二〇〇一年の十二月、都立病院改革マスタープランを策定しています。十五の都立病院を、広域基幹病院とセンター的機能病院、地域病院の三つに類型して、地域病院については、地域の中核的病院として弾力的な運営を行うため財団法人東京都保健医療公社に運営を移管するとして、まず二〇〇四年度には大久保病院、本年には多摩の北部医療センターの公社化を進めてきました。
 そこで、少し現状を伺いたいんですが、大久保病院につきましては、先ほど既に質問が出ておりますので、多摩の北部医療センターの移管後の医師の退職の状況や入院、外来患者数の推移などについて伺います。

○高橋参事 多摩北部医療センターでは、移管後の医師の数に変動はございません。患者実績では、隣接する東村山老人ホーム内に診療所を設置したことから、ことし四月から七月までの一日当たり外来患者数は四百三十七名で、昨年同時期に比べ九十五人減少しております。しかし、入院患者数は一日当たり二百九十二名で増加しているところでございます。
   〔「もう質問しているよ」と呼ぶ者あり〕

○山口(文)委員 失礼しました。
 公社移管後に、現在の荏原病院の基本的な医療機能については十分引き継がれるということですけれども、感染症についても、先ほどその答弁ありましたが、ちょっと一つだけ確認させていただきます。
 羽田空港に近いという立地条件から、感染症の疑いのある入国者の隔離病院としての機能も引き継がれるのでしょうか。

○高橋参事 先ほどもお答えいたしましたが、都立荏原病院はこれまでも、第一種、二種の感染症医療機関としての指定を受けて、感染症予防法に基づく患者の受け入れや診断確定前の不明感染症について全都的な受け入れに対応するなど、感染症医療に多くの診療実績がございます。
 さらに、地域からの診療要望も強うございまして、引き続き感染症医療を実施してまいります。

○山口(文)委員 そこで東京都は、医療の機能も引き継がれるし、さらに重点医療についても行っていくということですけど、公社移管後も当然、都民が安心してより満足度の高い医療が受けられるよう、医療サービスの質の向上を図ることが求められるのは当然のことだと思います。
 そこで、東京都は病院機能評価事業の積極的な受審を促していますが、荏原病院ではこうした第三者の評価を受けた実績があるのでしょうか。そしてまた、移管後、こうした姿勢をもきちんと引き継がれるのかどうか伺います。

○高橋参事 荏原病院では、平成十一年二月に日本医療機能評価機構の認定を受けておりまして、平成十六年二月に更新したところでございます。
 移管により今般、開設が変更になりますので、今後新たな認定に向け具体的に検討してまいります。

○山口(文)委員 ぜひこうした第三者評価をきちっと受けられて、今後も、公社化によって医療の質の低下が起こることのないようにしていただきたいと思います。
 それからもう一つ、都立病院では、患者の権利を守る患者の権利章典がつくられ、病院内においても周知が図られていますが、医療公社における患者の権利の保障について、どのように取り組まれるのでしょうか。

○丸山医療政策部長 公社では、医療提供者と患者さんが相互に協力しながら患者中心の医療を推進するとともに、患者さんに信頼される病院を目指していくための倫理的な規範として、患者さんの権利と責務を明確にしました地域病院の患者権利憲章を平成十四年の一月に制定し、各病院に周知しております。
 公社病院では、地域病院の患者権利憲章を病院内のわかりやすい場所に提示したり、リーフレットを作成するなどして、病院の運営姿勢を明らかにするとともに、患者さんに理解していただくため努力しております。
 移管後の荏原病院におきましても、地域病院の患者権利憲章の実現に向けて努力してまいります。

○山口(文)委員 では、都がこれまで行ってきた、患者や家族のさまざまな相談に対応するための患者の相談窓口を設置してきていますが、こうした取り組みについてはどのようになるのでしょうか。

○高橋参事 荏原病院では平成十五年四月に患者の声相談窓口を設置し、患者さんや家族の皆様からのご意見、苦情、相談等について、適切な対応部門へ引き継ぐなど、迅速かつ適切な対応に努めております。
 移管後も引き続き相談窓口を設置し、寄せられた情報を院内で分析、検討し、患者サービスの向上を図ってまいります。

○山口(文)委員 こうした移管後につきましても、東京都が目指しています患者中心の医療、そして開かれた医療というものがより充実するように要望して、質問を終わります。

○藤井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。

○藤井委員長 次に、報告事項、都立児童養護施設の民間移譲について質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○片岡総務部長 過日の厚生委員会でご要求のありました都立児童養護施設の民間移譲にかかわる資料につきまして、お手元の厚生委員会要求資料にまとめてございますので、ご説明申し上げます。
 資料は、目次にございますように、全部で五項目となっております。
 それでは、順を追って説明をさせていただきます。
 まず一ページをお開き願います。
 伊豆長岡学園及び中井児童学園の職員配置状況でございます。両学園の職員につきまして、各職種ごとに、常勤、非常勤別で配置人数を記載してございます。
 二ページをお開き願います。
 伊豆長岡学園の学年層別児童数として、本年九月一日現在の児童数について記載をいたしてございます。
 三ページをごらんください。
 伊豆長岡学園の入所理由別児童数の推移でございます。平成十二年度から十六年度までの入所児童数につきまして、養育困難、被虐待等に区分し記載してございます。
 四ページをお開き願います。
 中井児童学園の入所及び退所児童の状況でございます。平成十六年度中に入退所した児童につきまして、(1)では、入所前の状況を家庭や施設などにより区分いたしまして、(2)では、退所時の状況を就労先等により区分いたしまして、それぞれ記載してございます。
 最後に五ページをごらんください。
 都内の自立援助ホームの状況といたしまして、運営主体ごとに、ホーム名、所在地及び定員について記載してございます。
 以上、甚だ簡単ではございますが、ご要求のありました資料につきましてご説明申し上げました。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○藤井委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田代委員 これまで東京都が取り組んできました福祉改革の重要な考え方の一つが、地域、すなわち、お年寄りとか障害者の方あるいは子どもさんたち、仮に福祉サービスが必要な状態になっても、できるだけ自分たちが住み慣れてきたその地域で安心して暮らし続けることができる、そういう社会をつくるということが必要なことであるわけです。
 そのために、東京都としては、これまで行政の立場として、従前の施設偏重の施策体系というものを少し変えていこう、いわゆるグループホームなどの地域の住まいを重視した、ある意味では対応が非常にきめ細やかにできる福祉施策を進めていこうという方向性を示されてきたわけです。いわゆる施設から在宅へ進めていこう、こういう方針にある部分転換していかなくちゃ、全部転換するというわけにはいきませんけれども、ある部分これは時代の流れとして変えていこうというわけですね。
 しかし、その一方で、施設による福祉サービスも当然、今申し上げたように必要なわけでありまして、ある一定の数の方たちは、お年寄り、障害者の方、子どもさんたち、いつの時代でも、ある一定の方はこれが絶対必要である。これは普遍的なニーズでありますから、この人たちにもしっかりとした、きめ細やかな対応が行われなくちゃならないわけであります。
 しかし、このきめ細やかな対応というのも、ある場合は時代によって、そのときそのときに合った、適した、そういう適切な方法が行われなくてはならない。費用対効果、当然、納税者の立場からいうと、自分たちの納めた税金が効率よく、しかし不足のあるようなことでは困るわけですけれども、しっかりと十分でありながら、できるだけコストはむだのない形で行ってほしい。これは当然の希望であるわけです。
 そして、都立施設の民間移譲ということは、今、選挙でも大きな争点になりましたけれども、官から民へという行政改革という側面と、福祉という、非常に生き物のようにきめ細やかに一人一人によってそれぞれ対応が違う可能性のある、こういう仕事、これを効率的に進めていく。経済的にもプラスになるし、そして実効あるものにしなくちゃならない。こういうことで官から民へ進めていく必要が出てきた。
 これは、ただ単純に官から民へ、官から民へという流れの中だけでやっていけばいいものではなくて、やはり、民間移譲してよかった、さっきの話じゃないですけれども、公社化してよかったじゃないんですけれども、民間移譲してとてもよかったなという感じが出てこなくちゃならない。これがわかりやすくなくちゃいけないわけですね。そして、早急に標榜したことだけを進めるのではなくて、官から民への流れが、間違いのない、遅滞があっては困りますけれども、スムーズであることは必要ですが、しっかりとじっくりとある部分は取り組んでいっていただきたいと思うわけです。
 これまでの我が国の福祉サービスというのは、戦後の復興期につくられました措置制度によって、行政がともするとみずからが直営する、あるいは行政から委託を受けるというような形で、社会福祉法人などが福祉サービスを提供するという形態できたわけです。平成十四年の六月に公表されました都立の福祉施設改革推進委員会報告書にもそのことがずっと書いてあるわけですが、さらに、以前、戦前においては養育院ですとか、今ほとんど言葉としては死語になっておりますけれども、終戦直後は当然、戦災孤児や浮浪児の収容のために児童養護施設の開設、そしてさらに経済発展がどんどんどんどん進んで、時代が下がるにつれて、障害者の方々の施設が整備され、だんだんだんだん変革してきたわけです。
 こうした歴史の中で、民間施設が昔は不十分であったために、当然、直ちに対応するために、都全体のニーズに対して迅速に対応しなくちゃならないということで、行政がしっかりとした機能を果たさなくちゃいけない時代であったわけですから、当時はこれが必要だったわけです。
 しかし、近年のように都市化の進展や社会経済がある部分で大変成熟してきて、しかも少子高齢化の中で高齢化が大変進んできた。福祉という形が非常に変わってきたわけですね。その中で介護保険制度が出てきて、また支援費制度など措置制度にかわるシステムが導入されてきたわけですから、これまでのいわゆる行政が民間の足りない分をその場ですぐ補わなくちゃならないという対応システム、いわゆる行政主導のシステムというのは、ある意味では転換期を迎えてきている可能性があるというわけです。
 これは当然、今までの、お仕着せとはいいませんけれども、限られた資源の中でつくられたもので、利用者個々人の人たちの生活スタイルにしっかり合っている、あるいは利用するご本人が納得して、あるいはご家族の方が納得するような福祉が必ずしも提供されてきたとは、この国の経済の中でもなかったわけですね。
 ところが、今からはそうじゃなくて、非常にその人たちに合った利用者本位の考え方でやっていかなくちゃならない。こういうことで、効果的にも効率的にも進めていかなくちゃならないという現実が今来ているわけです。
 大変申し上げにくいことですけれども、やはりこういうもの、きめ細やかな対応をしていくというのは、公務員の方々による行政主導というシステムの中だけでは全部生かされ切れない。これが大変大きな問題で、実は、本当は公務員の方がやった方がいいんだという形にしなくちゃ実際はいけないんですよ。実際はいけないんだけども、それができないというところが、非常に東京都行政の大問題ではあるんですが、これはおいといて、これが実情なわけです。
 この実情の中で、私は、平成十五年の十二月の厚生委員会ですけれども、都立の老人ホームの民間移譲を行うという条例の提案があったときに、民間にできるものは民間に任せる、そういう時代であるし、利用者本位の福祉を実現するということはとても大切なことだということで幾つか質問したんですが、今から考えますと、あれが、あのあたりが一番こういうものの、いわゆる都立の福祉施設の民間移譲のターニングポイントになったのかなと。一つの実行点になって、そこからそういう方向性が出てきたんだと思うんですが、そういう中で、効果もしっかり認められるものも幾つか出てきて、それが障害者施設にも広がってきて、児童養護施設にも今こういう問題になってきたんだと思うんです。
 都立施設の民間移譲の取り組みというのは、先ほどから申し上げているように、利用者本位の福祉を実現する、これ、大切なことなんですね。いわゆる都立福祉施設の改革の一環として進めていかなくちゃいけないものなんですけれども、このような改革がいかに今、時代として必要なのであるということの局としての認識、お考えですね。それから、これまでどのような施設を民間に移譲してきたのか、あわせて質問させていただきたいと思います。

○松井参事 お答え申し上げます。
 田代理事ご指摘のとおり、都立福祉施設改革の目指すところは、これまでの福祉の仕組みを転換し、利用者本位の福祉を実現することであり、そのための民間移譲であると認識しております。
 都立福祉施設の民間移譲の実績でございますが、平成十七年九月現在で、大森老人ホーム、吉祥寺老人ホーム、調布福祉園及び調布福祉作業所の四施設を既に移譲いたしました。
 また、町田福祉園、日の出福祉園、練馬福祉園、府中、東村山、町田、昭島の各生活実習所及び立川福祉作業所の八施設を平成十八年度以降に移譲するという予定で、現在手続を進めているところでございます。

○田代委員 幾つか進んでいるわけですけれども、しかし、都民の皆さん方の立場から見ますと、簡単にいうと、民間移譲するとどういうことがいいのか、メリット、デメリットみたいなものですね、やはりもっとわかりやすい言葉で説明してほしいという意見は当然あるわけです。
 移譲が済んでいる施設で、具体的なメリットですね、成果が上がっているもの、こういうところが改善されましたということがあるのであれば、教えていただきたいと思います。

○松井参事 民間移譲のメリットでございますけれども、端的に申し上げますと、より柔軟で効率的な運営が可能になり、サービスはよくなり、コスト面での節減が図られるということでございます。
 平成十六年十月に民間移譲いたしました調布福祉園の例をご紹介させていただきたいと思います。
 ここはもともと社会福祉法人に運営を委託しておりましたが、民間移譲後は、その法人による自主運営となった施設でございます。ここでは、地域の障害者に対する支援として、短期入所や日帰りショートステイを行っておりますが、移譲前、移譲後で比較いたしますと、短期入所の利用率が一層向上いたしました。移譲前八四%であったものが移譲後は九七・五%というふうになっております。さらに、日帰りショートステイの定員は二名から五名に拡大いたしました。また利用時間帯も、夕方から夜だったものが朝から夜までというふうに利用が可能になりました。
 人員配置で申し上げますと、非常勤職員の活用やパート制度の導入などによりまして、処遇に当たる職員数を弾力的に増強しつつも、経費的には節減に努めているところでございます。
 このように、民間にできるものは民間に任せるということで、利用者本位の福祉を実現しつつ、都は、福祉サービスの提供のためのインフラ整備や利用者保護のシステムの普及などに力を注ぐことで、東京全体の福祉水準の一層の向上に努めてまいります。

○田代委員 これも社会福祉法人にお願いしていて、かえたらとてもよくなったというのは、理屈はわかるんですけれども、ちょっとがっかりしたことですわね。本当はそうじゃなくて、もっともっとそういうところが改善されていくのも、社会福祉法人がだめだって切り捨てちゃうのは、さっき申し上げたように歴史もあるわけですから、そういう実績もあって、そこをどうにか改善するという方法も、あるいはそれを改善しなくてもですよ、そこに任せないで民間移譲しても、やはりノウハウというものをちゃんとつくっておかなくちゃいけないわけです。かえたとき、こういうところがよくなったんだと、具体的なことを行政のほうは把握しておかないと、後でちょっと質問でも触れますけれども、どこを民間で決めるかというときのキーポイント、ただ民間ならいいということではないわけですから、そういうところをしっかりと突っ込んどいていただきたいなと思うんですね。
 やはり民間の潜在能力というものは社会福祉の世界でも十分活用できるということが、幾つか事例としてもわかっているわけですから、民間の力を引き出すような、本当に移してよかったと、先ほど申し上げたように成功例が続くように、着実に進めていっていただきたいわけです。
 さて、今回、中井児童学園と伊豆長岡学園の二つの児童養護施設を民間移譲するということになっているわけですけれども、民間移譲の対象となっていない都立の福祉施設については、今後行政としてはどのように取り組んでいくのか、方針を伺いたいと思います。

○松井参事 平成十四年七月に策定いたしました「福祉サービス提供主体の改革への取組について」に基づきまして、今後、移譲に向けた条件整備に努め、準備の整った施設から順次民間移譲を進めてまいります。

○田代委員 民間移譲の移譲先を選定するプロセスの中では、当然、受ける方は中長期的な事業計画と収支の見通しもなくちゃいけない。それから、施設の有効活用の方法についても新しい創意工夫がなくちゃいけないわけでありまして、これは第三者による審査も受けるわけですから、このときに行政もしっかりこれに対応していただかなくてはならないわけですね。
 いわゆる優良な事業所を選定するためには、当然、透明性をまず第一にして、広く公募を行って、第三者が審査にしっかりとかかわることで、手続の透明性も必要ですし、それから中身、サービスの質、コストの問題も、しっかりと意義のあるもの。ただ安ければいいというわけではありません。やはり、ある程度の費用がかかるのは当たり前ですけれども、それが費用対効果でむだになっていない、そういうことをちゃんとしっかり見ていかなくちゃならないわけですね。
 ですから、優良な経営と、そして利用者の方々が満足するサービスの質というもの、これを両立していかなくちゃならない。こういう時代が来ているわけですから、これからもいろいろな施設で民間移譲の成果が出てきましたという報告を受けられるように、このようにうまくいっていますというようなご報告が出てくることを期待しているわけですが、先ほど申し上げましたように、やはり今まで蓄積されたノウハウというものをしっかり行政も我が物として、この審査のときに役立てていただきたいし、また、社会福祉法人に民間の経営権を移譲するときには、選定するときの能力が行政になくてはならないわけであります。いろんな事業者が応募してくると思いますけれども、正しい競い合い、だれが見ても透明性のある競い合いを当然第一にすべきですけれども、それを選択していく目というものは、今から大変重要な時代を迎えていくわけですから、一層の研さんに励まれることを期待して、質問を終わります。

○初鹿委員 私も児童養護施設の民間移譲について、重複しないように幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 先ほどの荏原病院の公社化の問題や、また、過去民間移譲した都立の施設の質疑などを聞いていると、私も疑問というか、つくづく不思議だなと思うんですけれども、この問題を取り上げると、大体、都立がやっている、公がやっているものが安心で信用できるんだという議論が出てくるんですね。その一方で、今、世の中全体を見ていると、公務員の皆さんにいうのも失礼かもしれませんけれども、公務員の皆さんに対する信頼というのは非常に薄れていて、両方が何か矛盾しているような感じがしておりまして、そうした中で、この民間移譲の問題をどう考えるかといったときに、私は、行政のやる仕事というのは何なのかという視点でやっぱり物は考えないといけないのではないかなと思っております。
 戦後六十年たつわけですけれども、日本の行政というのは、戦後の混乱の中でやはりやらなければならなかった部分というのは多かったのかもしれませんけれども、本来、行政がやる必要のない部分までかなり肥大化してきている。それが今この国でさまざまな問題が生じてきている原因だと思います。
 我々民主党は、官から民へというのが一番主たる主張なんですけれども、その官から民へという流れを考えたときに、民間ができることは民間に任せる、官はあくまでも民間のできない部分を補完する役割を担う、そういうことで仕切りをしていくべきだなと。そう考えたときに、今回に限らず、これまで民間移譲を進めてきているわけですけれども、民間でできるところをどんどん民間に任せていく方向というのは、私は、今の流れに沿っておりますし、本来、行政の仕事ということを考えたときに適切な方向だと思います。
 そこで幾つか質問をさせていただきたいんですけれども、まず民間移譲をすることによって、先ほども田代理事からの発言の中でもありましたけれども、メリットが幾つかあるだろうと。公務員がやっている場合、人事面で硬直化しているということや、何か物事を決めるにも段取りがさまざま複雑で、すぐに新しいことに取りかかれないということがあると思います。そういう意味では、民間がやることによって弾力的で柔軟な運営ができるということは、確かにそうだなと思います。
 また、その一方で、市場原理ではないですけれども、それぞれの民間の事業者が競争することによってサービスの向上も図れる。それぞれ特色を出して、いいサービスができるという面もあるんだと思います。
 しかし、このサービスの向上ということを考えたときに、それは市場原理で競い合いが行われる場合でしたら、サービスを向上させる競い合いが実際行われるんでしょうけれども、競い合う必要のない場合は果たしてそうなるのかなと。独占禁止法という法律が世の中にはあるわけで、簡単にいえば、市場原理が働かないような分野だと必ずしもサービスが向上するわけではないという面もあるわけですね。
 今回の児童養護施設というものを考えてみますと、児童養護施設というのは基本的に措置により入所する施設なわけですね。利用者が選択するわけではないわけで、ともすると、これを民間移譲した場合に、一生懸命サービス向上する必要がない。サービス向上しなくても子どもはちゃんと入ってくるわけですね。
 つまり、運営事業者を選ぶときに、相当使命感をしっかり持って、やはり社会的な使命を持ってこの仕事に取りかかるのだという意識の高い事業者を選ばないと、ともすると民間に移譲した結果、今までよりも質が悪くなってしまう可能性もなきにしもあらずだということをまず頭に入れておいていただきたいなと。
 それと同時に、障害者の施設、高齢者の施設と異なって、児童養護施設というのは、お子さんたち、しかも問題を抱えているお子さんたちで、対応が非常に難しい施設だと思います。そういう意味では、今まで実際に運営をしてきたノウハウとか経験、知識などを豊富に持っているような事業所でないと、なかなか簡単に運営はできないのではないかなと思うんですね。ここに来て初めてやりますよと手を挙げて簡単にできるものではないのかなと思うわけです。
 そういったことを考えたときに、公募によって事業者を選定するということですけれども、公募によって適切な事業者を確保することができるのかどうか、どのように考えているのか、お伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 児童養護施設は、情緒面や行動面などでさまざまな問題を抱える子どもが多くなっております。このため、都立、民間ともに、心理職を配置し、心のケアを重視した支援を行っております。また、多くの民間施設では、地域で少人数の子どもと職員が生活するグループホームを運営し、家庭的な環境のもとで子ども一人一人の状況に応じた支援を行っております。
 現在、児童養護施設を経営する多くの社会福祉法人は、こうした実践を通じて得た豊富な知識、経験を有しておりまして、適切な事業者の確保は可能であると考えております。

○初鹿委員 適切な事業者確保は可能であるというお答えなんですが、二つのうちの特に中井児童学園の場合は、義務教育が終わった後の子どもたちが入所しておりまして、就労による自立を目指してさまざまな支援を行っているという特色があるわけですね。この特色というのは、児童養護施設の中でも貴重な施設だと思うんですね。この今までやってきたような特色を移譲後もきちんと引き継ぐことができるのかどうか、その点もお伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 現在、運営事業者の公募要項を検討しているところですが、これまで中井児童学園が行ってきた特色ある運営を今後とも生かせるような内容としていきたいと考えております。

○初鹿委員 次にお伺いしたいのは、児童養護施設というのは、建物が立派だとか、プールがあったり体育館があったりとか、新しいとか古いとかそういうことではなくて、そこで生活するのはさまざまな問題を抱えたお子さんたちなわけですよね。虐待に遭ったり、家庭で養育できないような状況で入ってくる。心に傷があるわけですよ。そういった子どもたちが安心して生活をしていくためには、そこで働く方々と信頼関係がきちんと結べているかどうかというのが重要なんだと思います。そこが信頼関係が結べていないと、やはり子どもたちも安心できる場にならないと思うんですね。
 そういう意味では、これまで職員の方と信頼関係が築かれてきて今に至っているんだと思うんですが、それが新しい事業者の方とかわっていくわけですから、そこで、今まで信頼していた職員の方がいなくなってしまうということで、恐らく子どもたち非常に不安になると思うんですね。その辺をどうやって円滑に移行していこうと思っているのか、その点をお伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 新たな事業者への引き継ぎは、子どもたちが安心して生活し続けられるよう、十分配慮しながら行う必要がございます。
 このため、入所している子どもたちの年齢や状況に応じた引き継ぎ期間を施設ごとに設定いたしまして、新たな事業者と現在の事業者、双方の職員がチームを組んで支援するなど、引き継ぎに当たりましては、子どもたちとの信頼関係の構築に力を尽くしてまいります。

○初鹿委員 ぜひこの点を力を入れていただきたいと思います。これは本当に、公務員であるかとか、民間の職員であるかとか、身分がどうだという問題じゃなくて、職員の一人一人の資質等によるものだと思いますので、その辺を徹底してやっていただいて、子どもたちが不安にならないように、そして健やかに育っていけるように、その辺は十分に配慮していただきたいと思います。
 次に、最近は、児童虐待防止法ができて以来、児童虐待によって児童養護施設に入所するようになってきている子どもたちがふえていると思います。最近ふえているというよりも、明らかになってきたケースが多いということの方が適切なのかもしれませんけれども、明らかに今後、こういった社会的養護が必要な児童の数がふえることはあっても減ることはないんじゃないかなと思うんですね。
 そういう中で、今後、子どもたちを十分に社会の中で養護していく必要があると思います。特に、現在、少子化ということがいわれておりまして、普通に我々のように家族の中で育った人間の中にも、大人になって家庭を持とうという人たちが減ってきている。そうした状況の中で、家庭に恵まれない状況の中で育った子どもたちが、将来、自分たちは、そうはいっても子どもを持って家庭をつくりたいなと思えるような、そういう支援をぜひ行ってもらいたいと思うんですね。そういう意味で、今後、社会的養護の必要な子どもたちに対して都としてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 少子化が進行しているにもかかわらず、児童相談所への虐待相談件数の増加などに伴いまして、社会的な養護需要は高水準で推移しております。これらの子どもたちの自立支援が重要な課題となっております。
 都はこれまでも、子どもの状況に応じたきめ細かな支援を行うため、養育家庭やグループホームによる家庭的養護の推進に取り組んでまいりました。引き続き、本年四月に作成した次世代育成支援東京都行動計画において、家庭的養護の拡充を重点的に取り組む事業の一つと位置づけており、社会的養護に占める家庭的養護の割合を三割にすることを目標として、養育家庭への支援の強化やグループホームの拡大に取り組んでまいります。

○初鹿委員 ぜひ養育家庭やグループホームを充実させていくということは取り組んでいただきたいと思うんですが、先ほど田代理事も発言しておりましたけれども、そうはいってもやはり施設での養護が必要な子どもたちというのもいるんですよね。いるわけですよ。
 ともすると、今の発言を聞いていると、家庭的養護を推進するんだということに力点が置かれ過ぎているために、それでまた、現在の児童養護施設を民間移譲していく流れがあるということからすると、施設はだんだんなくしていってもいいんじゃないかというような、そういう錯覚をしかねないと思うんですね。
 そうではないと皆さん方は思っているんだと思うんですけれども、やはり施設の中で手厚いケアが必要な子どもたちというのが必ず存在するわけですから、施設か家庭か二者択一ということにはまずならないと思いますし、やはり施設での養護を充実していくということも非常に重要だと思うんです。この施設における養護の充実ということを図っていくべきだと考えますけれども、ご見解を伺います。

○都留少子社会対策部長 お話しのように、家庭的養護では対応困難な情緒障害の程度の重い子どもですとか、さまざまな行動上の問題を起こす子どももふえており、施設での援助についても充実していく必要があると考えております。
 このため、都はこれまでも施設に対し、心理職の配置や援助を担当する職員の増配置などを行う都独自の加算を実施してまいりました。加えて今年度から、施設に精神科医と指導員を配置し、手厚いケアの必要な子どもを積極的に受け入れて支援を行うモデル事業を開始いたしました。
 今後とも、このモデル事業の実施状況も踏まえながら、施設における養護の充実にも努めてまいります。

○初鹿委員 社会的養護の問題を考えていると、多分皆さん方も一番痛感しているんだと思いますけれども、児童福祉法で十八歳という年齢で措置が解除されてしまうわけですね。十八歳という年齢で、はっきりいってしまえば、施設から出ていって自立をして、自分で生活をしていかなければならない。家庭に戻ることができない子の場合はそういうことになるわけですよね。ところが、今、世の中全体を見ていて、十八歳で親元を離れて自活して生活をしている方がどれだけいるかなというと、本当ごくごくわずか頑張っている方はいるでしょうけれども、非常に少数だと思います。
 特に、頑張っている方でも親の経済的な援助があったり、経済的な援助はなくても精神的な援助があったりしてできるんだと思うんですね。そういうものに恵まれない子どもたちが、本当に十八歳で果たしてきちんと社会に出て生活できるかというと、多分皆さん方もそこが一番課題だと思っているんだと思いますけれども、やはり私も非常に問題というか、大きな課題だと思っております。
 そういう意味でも、やはり十八歳以降も継続してフォローしていけるような支援策というものも充実していく必要があると思いますけれども、見解をお伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 都はこれまで、施設を退所した子どもが社会で自立して暮らしていけるよう、施設の職員が職場や住まいを訪問して指導、援助を行うアフターケアの充実や、大学等への進学に要する経費を支給するなどの支援を行ってきました。
 今後、本年八月の児童福祉審議会における中間のまとめ、社会的養護のもとに暮らす子どもたちの自立支援について、での提言も踏まえ、施設入所、里親委託時から自立に至るまで切れ目のない支援体制の整備について十分検討してまいります。

○初鹿理事 この部分が恐らく一番重要なんだと私は思いますので、ぜひしっかりとした制度というものをつくっていただきたいと要望いたしておきます。
 最後に、ちょっと皆さんにとって耳の痛い話をさせていただきますが、今月の二十二日に都立の児童自立支援施設の誠明学園で、職員の方がお子さんのアルバイト代を横領するという事件がありましたね。本当は子どもを守っていく立場の職員がそういう事件を起こしてしまう。特に、そこに入っている子どもたちは、恐らく大人に対する不信感を持っているような子どもたちが多いわけで、それを助長してしまうような行動をとってしまったことは、私も本当に残念でなりません。恐らく皆さん方も同じ気持ちだと思います。
 今回、施設の種類は違うわけですけれども、児童養護施設でも、十八歳未満であっても高校生になってれば、アルバイトしたりしている子どもたちもたくさんいると思うんですね。こういう子どもたちのお金の管理ということも施設の中でされているんだと思います。場合によっては、具体的に、実際にそういうケースがあるかどうかわかりませんけれども、例えば両親が亡くなってしまって相続で財産を持っているようなお子さんだっているかもしれないですよね。そういった子どもたちのお金の管理というものをやはり適切に、そういう不正の入る余地がないようにしていかないとならないと思うんですね。
 これは本当に、公務員だからとか民間の職員だからどうだということではなくて、やはりだれしもが出来心で最初は手を出してしまうんだと思うんですよ、職員で採用する時点で、そういうことをする人かどうかなんてわからないわけですから。ただ、制度としてそういう余地が入らないような仕組みをつくっておけば防げると思いますので、お金の管理体制がしっかりと行われるような仕組みをつくっていただきたいと思うんですけれども、その見解をお伺いします。

○都留少子社会対策部長 今回の事故は絶対にあってはならないものであり、被害に遭われた子どもたちはもちろんのこと、都民の皆様の信頼を裏切る行為であり、大変遺憾に思っております。改めて心からおわび申し上げます。
 再発防止に向け、預貯金を出し入れするときは、それを子どもに確認させる、複数の職員によりチェックするなどの管理体制を強化するとともに、所管する児童福祉施設の全職員に事故防止の徹底を図りました。
 今回の事故を受け、都立施設はもとより、民間の施設長や児童相談所長などを加えて事故防止委員会を早々に設置し、金銭管理体制の再点検とチェック体制の整備に取り組むことといたしております。
 今後このような事故が二度と起こらないよう、適切な金銭管理体制の整備に万全を期す所存でございます。

○初鹿委員 ぜひしっかりやっていただきたいと思います。今後、こういう児童養護施設も民間移譲を進めていくと思いますけれども、今いった点もそうですけれども、子どもに対する影響ができるだけ少ないように配慮をしながら今後も進めていっていただきますように要望しまして、質問を終わります。

○谷村委員 都立福祉施設あるいは都立児童養護施設などの民間移譲につきましては、今までの議論を伺っておりますと、民間移譲の基本方針というものは、民間でできるものは民間に任せるということであります。私も賛成であります。
 さきの衆議院選挙におきましても、郵政民営化の議論を初め、こうした改革、民間にできるものは民間に任せる、この改革の姿勢について有権者の民意が問われ、この議論を避けた政党は大幅に議席を減らしました。改革だけではなく、何でもかんでも反対することしか、みずからの存在意義を見出すことのできない政党もありますけれども、本会議代表質問の議論なんかを聞いていますと、この政党は、東京オリンピックの開催なんかもいずれ反対されるんでしょうけれども、民間でできるものは民間に任せる、こうした改革の方向性には、国民の意思、都民の明確なる意思というものが、賛成であるとはっきりと示されたものであると理解をいたしております。
 そこで私としては、民間移譲をするとサービスがよくなり、コストは節減される、このメリットにつきまして少し突っ込んでお伺いいたしたいと思います。
 民間移譲は積極的に進めるべきでありますけれども、民間イコール低コスト、高サービスとなると、それはそれでよいと思いますけれども、民間移譲を始めたばかりの現状では、都立のままの福祉施設も多く残るわけでございまして、民間に移譲されたものは低コスト、高サービスになるという裏腹として、都立の施設のままだと高コスト、低サービスであるんだという免罪符が与えられるようなことがあってはならないわけでございます。田代先生もちらっと先ほどその点をご指摘なされたと思いますけれども、都立施設につきましても、しっかりとしたコスト意識を持って、可能な限りのたゆみない施設内改革に取り組んでいただきたいと思います。
 そこで率直にお伺いいたします。なぜ施設運営については都立のままではだめなのか。民間移譲の真意をお伺いしたいと思います。

○松井参事 都立福祉施設は、かつて民間施設が不十分だった時代には重要な役割を果たしておりましたが、時代とともに民間施設の整備が進み、また、そこで提供されるサービスも充実してまいりました。これらを踏まえまして、民間でできるものは民間に任せるということを基本に、都の役割を整理し、都立施設の抜本的な改革を進めているところでございます。

○谷村委員 都立福祉施設の民間移譲については、まず時代状況の変化として、都としての役割を見直すという側面もあるということだと思います。また、私は逆に、コストが高いイコール、サービスの質がよいとは一概にはいえないとも思っているわけでございまして、コスト節減はもちろん大事なことでありますけれども、サービスを受ける側からしてみれば、サービスのその中身こそ重要であります。
 一定のサービス水準が確保されるのであれば、コスト的には安い方がよいに決まっているわけです。また、マンパワーとしても、例えば常勤職員十人で提供するサービスと、常勤職員八人、非常勤職員四人で提供するサービスを比較して、両方とも利用者がそれぞれ満足されているのであれば、後者の方、常勤職員八人、非常勤職員四人という方が評価されるべきでありまして、お伺いしますと、コスト的にも、この非常勤職員四人にしてトータル二人ふやした方が低いそうでございますけれども、民間ではそういう工夫をしておられるわけでございます。
 また、コストについてでありますけれども、例えば昨年度民間移譲した養護老人ホーム、吉祥寺老人ホームの例でいいますと、移譲前の十五年度と移譲後の十六年度で、これは通常の運営費の決算で比較した場合ですけれども、支出ベースで約三%、約一千万円程度の費用節減効果が出たというふうに伺っております。
 ただし、費用節減効果、コスト縮減効果があったからといって、その面だけをもって民間移譲がよいといえるものでもありません。費用節減が評価されるのはあくまでサービスの質が維持され、あるいは向上していることが大前提になると思います。費用節減した結果、安かろう悪かろうというサービスになるということは絶対に許されないからであります。
 そこで、サービスの質の面について確認をさせていただきたいと思います。サービスの質を推しはかる一つの基準として、いろいろ指標があると思いますけれども、施設サービスというものが個別的な対人サービスであるという点から考えますと、人員配置もその一つの目安になるわけであります。先ほど田代先生の方で調布福祉園の方のお話、状況がお尋ねがございましたので、私の方では吉祥寺老人ホームの場合でお伺いしたいと思います。
 移譲前の平成十五年度と移譲後の平成十六年度を比較して、人員配置にどういう変化があり、その上でサービスの質はどうなったのかということについてお伺いいたします。

○松井参事 吉祥寺老人ホームの人員配置でございますけれども、平成十五年度と平成十六年度の人員配置は変わりません。必要な人員は十分確保されております。
 また、サービス面でございますけれども、移譲後、転倒防止体操あるいは気功というような、利用者の参加するグループ活動が徐々にふえてきております。そして、より多様な利用者ニーズにこたえているということでございます。
 また、民間移譲した施設からは、役所から委託料をもらって運営する場合と、自主事業の充実などみずから収入増の努力をしながら運営していく場合とでは、職員の意識も随分と違ってくるものだというふうな声もいただいております。
 こうした職員の意識改革や努力はサービスの向上につながり、利用者の方々にも喜ばれているところと考えております。

○谷村委員 昨年民間移譲された吉祥寺老人ホームの場合は、サービスの質を低下させることなく費用を節減しているというご説明だったと思います。同じ人員配置でサービスもわずかながら向上もしている。民間移譲の成果が着実にあったと評価できると思います。
 もう一つ気になるので、確認のためお伺いいたします。民間移譲する施設の財産の取り扱いについてでありますけれども、先日の事前説明では、民間移譲先の法人に建物及び工作物については当面無償貸付することを予定しており、将来的に無償譲渡について検討するとのことでございましたけれども、なぜ貴重な都民の財産である施設の建物を当面無償貸与とするのか、この点についてお伺いいたします。

○松井参事 民間移譲する施設の建物等につきましては、移譲する前に、公有財産管理運用委員会で審査を受け、普通財産化した上で、当面は無償貸付をするという方向で対応しております。
 社会福祉法人による施設運営は、措置費等に建物の賃借料相当の経費は含まれておりません。こういうために、有償貸付といたしますと、施設運営の安定性、継続性が阻害され,利用者サービスに影響が生ずる恐れがあります。
 なお、社会福祉法人は、社会福祉という公共性の高い事業を行う法人でありまして、国や自治体からの公費による運営を基本としているために、一般的に都立施設のような建物を取得するための財政力に乏しいという事情もございます。このために、当面、無償貸付というふうにしているところでございます。

○谷村委員 それでは、今回の都立児童養護施設の民間移譲について具体的にお伺いいたします。
 まず、都立児童養護施設は都内に五カ所、都外に五カ所の計十カ所あります。今回は、都外にある伊豆長岡学園と都内にある中井児童学園の二カ所を移譲するとしておりますけれども、なぜこの二カ所を移譲するのか、その理由についてお伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 中井児童学園は、中学生以上の高年齢児を対象として就労支援を行っている施設でございます。平成十四年七月に策定いたしました「福祉サービス提供主体の改革への取組について」において、民間移譲等を進めるとの方針が出されており、また、児童定員が二十人と小規模で民間法人が引き受けやすいことから、今回移譲を行うことといたしました。
 伊豆長岡学園につきましては、施設が所在いたします静岡県東部地域の養護需要がそれほど高くなく、移譲後も引き続き都の措置児童が専ら利用できる施設であること、加えて、児童定員四十八人の施設規模で、民間施設に比較的近い規模であり、民間法人が引き受けやすいことから移譲を行うことといたしました。

○谷村理事 それでは、今回この二つの施設の運営事業者を公募するに当たり、利用者のサービス向上や適切な施設運営の観点から、どういう条件を設定して公募をされるのか、お伺いいたします。

○都留少子社会対策部長 運営事業者の公募条件につきましては、現在まさに検討しているところでございますが、利用者サービスの面では、まず現在の事業内容の継続性が確保されていること、また、運営事業者の実績や創意工夫を生かした利用者支援計画が適切に作成されていることなどを考えております。また、施設の管理運営の面では、防災や事故対応に関する各種マニュアルが整備されていることなどを条件として設定することを考えております。

○谷村理事 それでは次に、中井児童学園が規模の小さい施設であり、伊豆長岡学園が民間施設に比較的近い規模であるといっても、一般の民間施設と比べれば都立施設は立派な建物が多く、民間施設と同様の基準により支払われる経費だけでは、光熱水費など建物の維持管理に要する経費を賄い切れない場合があると思われます。
 そこで、都から移譲先法人に対して一定程度の財政的支援も考えるべきだと思いますが、どうでしょうか。

○都留少子社会対策部長 民間法人に対しましては、移譲後は他の民間施設と同様の基準により経費を支払うのが原則となっておりますが、谷村理事ご指摘の点を踏まえ、建物維持管理経費につきましては、法人の経営努力を前提としながら、合理的な範囲で支援を行ってまいりたいと考えております。

○谷村委員 ぜひ合理的な範囲というものを線引きして、ご検討いただきたいと思います。
 次に、民間移譲後に、その施設に対して都の関与が全くなくなった場合に、都立時代のサービス水準が確保できなくなることも危惧されるわけでございますが、民間に移譲した結果、サービス水準が低下したのでは、元も子もなくなる話なわけでございます。
 児童養護施設の民間移譲は今回が初めてでありますので、リーディングケースとしての意味合いもありますので、入所している子どもたちから民間移譲してよかったと感じてもらえるようにしていくことが、今後の民間移譲促進にもつながると思います。この点は引き続き都がしっかり関与し、サービス水準を確保していくべきと考えますが、いかがでしょうか。

○都留少子社会対策部長 子どもたちが安心して暮らしていけるようにするためには、移譲後もサービス水準の維持向上を図っていくことが極めて大切であると考えております。
 こうした考えのもとに、都立児童養護施設としては今回の二施設が初めての民間移譲となりますので、谷村理事がご指摘の趣旨も十分踏まえ、定期的な指導、検査の実施や第三者サービス評価受審の働きかけに加え、移譲後もきめ細かな運営指導を行うことなどにより、サービス水準の確保、向上に努めてまいります。

○谷村委員 ぜひともよろしくお願いを申し上げます。
 改めて申し上げる必要もございませんけれども、子どもたちの可能性はどこまでも無限大であります。少子社会に突入し、我が国の人口減少時代を目前に控えた今、子どもは社会にとってもますます大事な宝であります。社会的養護を必要とする子どもも含め、すべての子どもが毎日安心して幸せに暮らせるような東京にしなくてはならない。私どももできる限りの努力をしていかなければならないと痛感いたしております。
 この社会的養護を必要とする子どもたちというのは、父母と死別したり、父母に遺棄されたり、父母が長期にわたり心身に障害がある、現に保護者の監護を受けられない児童、あるいは保護者が仮にいても虐待されている児童が入っているわけでございまして、委員会要求資料に提出された資料では、養育困難児よりも被虐待児の方がここ数年多いような傾向であるようでございますが、こうした子どもたちにとっても、児童養護施設はまさしく人間形成の上で最も重要な幼少期、思春期の生活のよりどころであります。今の境遇がどうあれ、この子たちの可能性も無限大に広がっているわけでございます。
 児童養護施設においては、子どもたちに十分な愛情を注ぎながら、生きる力をはぐくむことを基本理念にして、ぜひ実践していただきたいと思います。そのために、民間社会福祉法人の自由で創意工夫に富んだ提案に大いに期待をしたいと思いますし、よりよい法人を公募で選んでいただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○吉田委員 それでは、私も都立児童養護施設二つの民間移譲について質疑をさせていただきます。
 話がありましたけれども、児童養護施設は、多くの場合には民間の福祉法人の皆さんのご努力によって支えられてきたという面と、同時に、より民間では困難な事例などを積極的に東京都の都立施設がその責任を担うという役割分担がされてきましたし、かつ、家庭的養護あるいはグループホーム、そして施設という多様な形で行われてきた。私は、こうした枠組みというものは引き続き尊重されるべきではないかと考えております。
 民間移譲については、その目的で、社会福祉法人の自主性や創意工夫を生かした弾力的かつ効率的な施設運営により利用者サービスの向上を図っていくということがうたわれております。しかし、実際に入所している子どもたちにとって、今回の民間移譲がどのような具体的な影響を及ぼすのか、私はやはり実態に即して検討されていくべきではないかと思いますし、児童養護施設が民間移譲されるというのは、先ほども話がありましたが、初めてのケースという点では、慎重な検討が我々に求められているというふうに感じます。
 それで、まず第一に、利用者の立場で考えるということで確認をしておきたいんですが、伊豆長岡の児童養護施設の入所者の特徴ですね。それは資料でも数的には示していただいているんですが、概要についてまずご答弁をお願いいたします。

○都留少子社会対策部長 伊豆長岡学園の特色ということでございますけれども、民間も含めました他の児童養護施設と同様に、虐待を受けた子どもの入所割合が増加をしております。平成十六年度では七七%となっております。
 また、資料にもございますとおりに、幼児から高年齢児まで入っているということがございます。

○吉田委員 児童虐待を受けた子どもたちが多く、また増加をしている。しかも幼児から高年齢児というふうに説明がありましたけれども、資料によれば、就労三名、高校生八名、中学生十名、合計二十一名というお子さんたちなわけですよね。ある面でいえば、知的にも、あるいは非常に人間的にも自覚を形成しつつある子どもたちであり、また、その子どもたちが親の虐待を受けるという、我々自身では想像つかないような非常な痛みを持っている子どもたちだということにふさわしいような対応が求められ、検討されるべきだと私は思うんです。
 その点で、やはり施設のあり方を考える上で、それだけに、子どもと職員との人間的な信頼関係ということが何よりも継続されていくということが考えられるべきだと思うんですが、そうした人間的信頼関係の必要性についてどのような基本的認識を持っていらっしゃるのか、お願いいたします。

○都留少子社会対策部長 新たな事業者への引き継ぎは、先ほども申し上げましたように、子どもたちが安心して生活を続けられるよう十分配慮しながら行う必要があると考えております。
 このため、入所している子どもの年齢ですとか状況に応じた引き継ぎ期間を施設ごとに設定いたしまして、新たな事業者と現在の事業者双方の職員がチームを組んで支援をするなど、子どもたちとの信頼関係を築くことに力を注いでまいります。

○吉田委員 この八月三十一日に東京都児童福祉審議会から「社会的養護の下に育つ子どもたちへの自立支援のあり方」中間まとめが出されました。
 私も一通り読んでみましたけれども、その中で、虐待を受けた子どもたちの多くは大人に対する信頼感を著しく損ねており、精神的にも不安定である。こうした子どもたちへの育ちの支援は、いわばマイナスからのスタートともいえるものであり、何よりも大人との信頼関係を取り戻し、心の安定を確保していかなければならないという指摘があります。まさにこういうことだと思うんですが、ただ、先ほど、そうしたことを配慮して引き継ぎ期間を設けるんだというご答弁がありましたが、事前に受けた説明では、引き継ぎ期間は一年間。その一年の間に、今の職員の方は三分の一残る。すなわち三分の二の方は、新たな民間移譲先が職員として担う。しかもそれが一年間だというふうに認識しているんですが、それでは、子どもたちからすれば、三分の二の職員が突然入れかわる。しかも、経過措置があるとしても、わずか一年間。これはやはり人間的な信頼関係ということから見ても、子どもたちにとって逆に見放されたというふうなマイナスの影響を及ぼす。あるいは、施設運営そのものも非常に困難になる危険性がないのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○都留少子社会対策部長 お答えいたします。
 現状でも、職員の異動ですとか退職というのがございます。その場合も引き継ぎをきちんとやっているわけでございますので、一年間という期間は十分だというふうに考えております。

○吉田委員 もちろん、職員の方の異動というのは公でも民間でもあり得ることですけれども、私の認識では、伊豆長岡の職員の方々は地元に住んで暮らしている方も多くて、管理職を除けば継続をしているケースが多い。しかも、一人二人の職員がかわっただけでも、子どもたちは、なぜあの人はいなくなってしまったのかという声が上がるというのが現状だというんですね。そうしたことから見れば、わずか経過措置が一年間、かつ三分の二の人が丸々、直接親がわりが、親がかわるといっても過言ではない事態が生まれるわけですよね。その点では、他の福祉施設とは本質的に違う問題が発生すると思いますし、一年余裕を持てば、三分の一の人を残せば、混乱は起きない、問題はないということは、他の事例などでいえるんでしょうか。

○都留少子社会対策部長 今回が児童養護施設では初めてのケースとなりますので、子どもの施設としては過去の例がございませんけれども、ご心配のないように適切に対処してまいります。

○吉田委員 私、そういう事例が果たしてないのかどうかということで、いろいろ関係者あるいは専門の先生からもお聞きしたんですが、例えば三重県の四日市で公立の児童養護施設を民間に丸々移譲するという同様な例がありまして、そのこと自身もいろいろ議論があって、何年も議論をした上で行われたんですけれども、やはり一年以上にわたって子どもたちからさまざまな意見、苦情が出て、中には、そのために別な施設に移らざるを得ないお子さんまで生まれたんだと、大変な混乱が生まれたというのが、これは日本福祉大学でこの問題に携わった先生から、私、きょう直接聞いたんですけれどもね。
 一年なら大丈夫だというふうにいうことは、そういう一つの事例から見ても、また、これまでの、たった一人二人の先生がかわるだけでも、親がわりがいなくなるわけですから、私はやはり子どもに与える--親から見放され、そして施設に入ったら、今度は運営主体がかわりました、先生が基本的に丸々かわりますよということは、非常にマイナスの影響を及ぼすものではないかということを痛感せざるを得ません。これは認識の違いですから、そういうことを指摘として申し上げておきます。
 それと、この問題を、こうした子どもたちにどう理解してもらうかというのは、極めて困難な、それこそ都としては初めてのケースなんですが、お子さんたちにはどういうふうに対処するつもりですか。あるいは、してきていたら、その経過を。

○都留少子社会対策部長 先ほども申し上げましたように、募集要項を公開しました後、子どもたちには丁寧に説明をしていくということにしております。

○吉田委員 そうしますと、募集要項を今後発表しようということだと思うんですが、もう期間的にも非常に短いわけですよね。しかも、東京都としてはこういうことをすることに決めましたからわかってくださいということだと思うんですが、ここに「子どもの権利ノート」、これは高学年用ですかね、中学生以上の入所者を対象とした「子どもの権利ノート」というのがありまして、施設の中では子どもたちにきちんと、こうした権利を持っているんだということを徹底する努力をしていて、そのことは第三者評価でも非常に評価をされているんですね。
 その中で、あなたは施設での生活や自分自身のことについて自分の意見や希望を何でもいうことができます、あなたが自分の意見や考えを持つことはとても大切なことです、職員はできるだけあなたの意見や考えを聞く機会をつくり、その意見や考えを大切にしますというふうに書いてあるわけですよ。
 そのときに、子どもたちが、いや困る、先生、残ってくださいという事態だって当然あり得るわけですよ。また、それが大切だというふうにこれで教えているわけです。
 もし、そのことと、私たちはあなたの意見を大切にしますよということと、それが相反することを、強行といったらちょっと言葉はきついかもしれませんけれども、もうこれは東京都として決めたことですから私たちはやるんですというふうになったときに、子どもたちは、何だ、権利ノートで教えていることと違うじゃないかということにも、現実問題としてなり得ると思うんですよ。その点はどうお考えでしょうか。

○都留少子社会対策部長 子どもたちには、高圧的に、決めたことですからということではなくて、丁寧に、わかってもらえるように、粘り強く説明をしていくようにいたします。

○吉田委員 当然のことではありますけれども、先ほど冒頭述べたように、既に働いている人あるいは高校生、中学生、もう明確な意識を持ったお子さんたちがいるわけですよ。それがたとえ効率的でサービスがよくなるんだといったって、今まででいいことしてくれたじゃないかと。子どもたちが、先生方もう、全然サービス悪いからかわってくれという声が上がっているのならともかく、そうでないときに、いや、これからは効率的なサービスをするんですから基本的にみんなかわりますということが、果たしてどれだけ理解されるでしょうか。しかも、こういう権利ノートで教えているという経過があるわけですから、私は、やはりこれ自身も一つの大きな民間移譲の問題点だというふうに指摘せざるを得ません。
 次に、三つ目に、アフターケアの問題についてなんですが、第三者評価も、改めて私も伊豆長岡学園について見させてもらいましたけれども、この限りでは、職員が硬直的でサービスが不十分だなどということは基本的に書かれていなかったと思います。逆に評価をする点が多いんですが、その中でも、アフターサービスに非常に力を入れているというふうに書かれていて、例えば職員の方の宿泊施設の中に空き部屋があって、卒業した子どもたちがそこに自由に泊まりに来ることもできる。それを、たとえ勤務外であったとしても職員は迎えるような努力をしているんだという旨のことが書かれてあって、本当に、そういう時間内とか時間外を超えての努力があるんだなということを感じたんですけれども、この伊豆長岡学園で行われているアフターケアというのはどのようなことがされているのか、ちょっと紹介していただけますか。

○都留少子社会対策部長 施設を退所した子どもに対しましては、施設において、住まいや職場を訪問し、相談、援助を行うなどのアフターケアの事業の実施をしております。地域での自立支援生活が速やかに定着するよう、ほかの施設でもこれは実施いたしております。

○吉田委員 就労した方々を職員の方が訪問をするだとか、あるいは退所した後もいつでも施設に来ることができる。それは、施設があるからじゃなくて、そこに自分を育ててくれた、いわば職員の方、親がわりの人がいるから訪ねてくるんだと思うんですよね、ただ建物があるからだけではなくて。それが今回のように丸々かわるということになれば、それこそアフターケアといっても、これが継続できないで、新たなスタートを切らざるを得ないというふうな事態に現実問題としてなると思うんですよね。
 そうしたことからも、やはりこうした児童養護施設、いわば職員は親がわりということの重さというものを改めて考えていかない限り、単純に民間ならば効率という理屈だけでは通らない問題があるということを指摘しておきたいと思うんです。
 さらに、先ほどから議論の中で、民間になっても人員配置は変わらないんだ、したがってサービスは変わらない、あるいはよくなるということがこれまでの事例でいわれましたけれども、例えばこの伊豆長岡学園を例示したときに、今のお子さんたちの年齢構成などで、職員の配置状況が、民間になった場合には数及び配置の職種などでどんな変化が起きるのか、ご説明をお願いいたします。

○都留少子社会対策部長 お答えいたします。
 民間移譲後の職員配置につきましては、他の民間施設と同様、国と都の定めた職員配置基準により配置することになります。
 現行の都立施設の職員配置基準と民間施設に対する都基準とは、係長職ですとか、入所児童を直接担当する職員などについて異なる部分がございますために、平成十六年度の年齢別入所児童の実績をもとに算出いたしますと、非常勤職員を含め、伊豆長岡学園につきましては、現行三十一名、移譲後は二十九人となります。
 なお、伊豆長岡学園につきましては事務職が二人減となるということでございまして、直接処遇を担当する職員は、非常勤職員を含め、現行、移譲後とも十八人で変更はございません。

○吉田委員 事前に伺った説明では、伊豆長岡、現在が三十四名、それが民間基準では二十九名に減るという説明を受けていたんですけれども、数が減るという問題とあわせて、看護師の配置なんですが、これは現在は常勤で配置されますが、民間の場合には非常勤も含めて看護師の配置はなくなるというふうに認識しているんですが、間違いないでしょうか。

○都留少子社会対策部長 確かに現状は看護師一名がおりますけれども、配置基準としてはなくなるということは事実でございます。

○吉田委員 あるから、あった方がいいという話ではないと思うんです。
 実は、先ほど紹介した中間まとめの中でも、虐待を受けたという子どもたちが増加している中、心理的なケアあるいは医療的なケア、そういう点で専門職をやっぱり配置する必要があると。これは別に、もちろん都立だけではないと思うんですけれど、そういうことが指摘をされているんですね。
 しかも、実態としてはわかりにくいかもしれませんが、やはり被虐待というお子さんたちというものは、精神的なものだけではなくて、さまざまな形で身体そのものにも影響を及ぼしておりますし、事前にお聞きしたお話では、通院をしているお子さんたち、あるいは定期的に投薬をしているお子さんたちが少なからず全体の中で占めている。したがって一般の職員の方々も、看護師さんがいるから、そういうお子さんの健康状態をきちんと定期的に管理することができる、そういう安心感があるということをいっているんです。看護師の配置がなくなってしまうということは、残った方で頑張れよということなのかもしれませんが、明らかに、こうした中間まとめの方向から見ても後退というふうにいわざるを得ないと思うんですが、いかがでしょうか。

○都留少子社会対策部長 現在、看護師が行っております、例えば通院への付き添いなどは、看護職でなければできないという仕事でもございませんので、他の職種の職員の協力で十分カバーできるというふうに考えております。

○吉田委員 今置かれていて、かつ、中間まとめそのものが、そうした専門職をもっと置くべきだということを児福審の報告としても示されており、かつ、入っているお子さんたちというのは、一般の家庭などと比べてみても医療的ケアを必要とするお子さんの比重がはるかに高いわけですよね。それだったら、利用者サービスは後退させないというならば、やはりそういうことが継続されるか否かということが、私は一つの大きな問題だというふうに指摘せざるを得ません。
 さらに、いろんな指摘せざるを得ないことがあるんですけれども、もう一つは地元自治体との関係なんですよね。この間、非常に困難なお子さんたちを、施設で頑張るだけではなくて、学校その他、地域や、地域の学校の皆さんも理解と協力を示して支えてくださってきたということがあり、そのことはこれからも非常に大切にしていかなければならないことだと思うんですが、地元の自治体あるいは学校の皆さんに対して、伊豆長岡の場合ですが、都立を廃止し民間に移譲しますということは、既に伝えたり、理解は得られているんでしょうか。

○都留少子社会対策部長 伊豆長岡学園は、学園行事への地元住民の招待や体育館の開放、学園児童の地元行事への参加、学校との連絡会の開催などを通じまして協力関係が構築されております。移管後もこの関係が維持されるよう、運営事業者の公募開始以降、適切な時期に地元の市や学校、地元住民の方々に十分な説明を行い、一層の理解と協力を得てまいります。

○吉田委員 まだ地元の方にはそういう意向も含めて伝えられていない、これからということですよね。どういうふうな反応を地元の自治体の方や学校関係者の方が示されるかわかりませんが、やはり都立であるからこそという安心感と、民間になることに対する不安と懸念というものが生まれてくる可能性というのはあると思うんですよね。そういうことから見ても、決定してから突然通告をするということが果たして妥当か否かということは問われなければならないと思うんです。
 問題点が多過ぎるぞというご意見もありますけれども、私は、現実に今のお子さんたちの置かれた状況から見たら、今、民間移譲を進めるということになれば、これ以上まだあるかもしれませんが、今考えられる点で、こういうような点はあるし、そしてやはり、本当に置かれた子どもたちの立場に立って、本当にプラスになり得るのかどうなのか。子どもたち、虐待という痛みを受けた子どもたちに対して、新たな親が放棄するような誤解を受けないようなことがきちんとできるのかどうか。子どもたちがそのことについて本当に理解をしてくれるのかどうか。そのことをしっかりと、一般論じゃなくて、やはり検証することが必要だし、ぜひこれは委員会としても、きょうの議論で終わるわけじゃ決してないと思いますから、これは委員長なり理事会に検討をお願いしたいんですが、ぜひ委員会としてもこうした施設に行って、子どもたちや職員の皆さんや関係自治体の皆さんの声を聞いて、それをさらに今後の議論に生かしていくということが必要ではないかということを、意見、要望を述べさせていただきます。
 最後に中井児童学園についてなんですけれども、既に話がありましたが、中井児童学園は養護施設の中でも極めて、他の養護施設と違う高年齢あるいは自立支援的な役割を果たすという点では非常に貴重だと思うんですね。
 私、中井に以前にもお邪魔をし、近くの民間の施設にもお邪魔しましたけれども、やはり民間の側からも、公が自分たちと同じようなものを一つの先駆的な姿として示すことについて、非常に高く評価をされておりました。
 この児福審の中間まとめの中でも、そうした高年齢の児童に対する施設の重要性について指摘をしていると思うんですが、これから、そうした年齢の高いお子さんたちの自立支援ということが大きな社会的養護の中で求められているときに、その唯一貴重な都立の施設が先駆的なパイオニア的意味で存続していくことというのは非常に意味があることではないかというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

○都留少子社会対策部長 中井児童学園につきましては、中学校卒業ですとか、高校を中退した子どもで自立の困難な者を受け入れておりまして、自立生活の指導や就労支援を行い、就労による自立を目指しております。
 都内にはたくさんの児童養護施設がございますけれども、定員で申し上げますと、全二千九百二十一人の中の八〇%以上が民間の養護施設でございます。ですから、十分、民間の養護施設でやっていっていただけるものと思っております。

○吉田委員 読み上げますけれども、高年齢の子どもたちを中心に受け入れる施設づくりを進める必要があるということを児福審の答申でもいっているわけです。その中で先駆的役割を果たす都立というものは、たった一カ所ですからね。大いに進めていく必要があるという意見を述べて、私の質疑を終わります。

○山口(文)委員 大分質問が重なっていますので、二、三、確認をさせていただきますが、今回公募をするということですけれども、選定基準といいますか、公募に際して、そういった基準については当然公開される旨が、今お話の中でわかりましたけれども、この選定委員会のメンバーですとか、それから、特に事業者を決定に至る経過というもの、選定経過というものも情報公開すべきだと考えますが、その点一つだけ確認いたします。

○都留少子社会対策部長 既に他の施設においても同様に実施されているところでございますが、運営事業者の選定の公平性を確保する観点から、評価項目等の選定基準ですとか、公募期間、選定時期などの選定手順は公募の際に公表いたします。選定委員会のメンバーにつきましては、委員の個人名は公表はいたしません。選定経過につきましては、運営事業者の選定後に、選定された事業者の名称、選定理由及び提案内容の概要とあわせて公表いたします。

○山口(文)委員 選定委員会の構成といいますか、おおむねの、例えば学識経験者何人とか、そういったことは公表されるんですか。個人名は公表しないけれども、構成の人員というんですか、そういったものは公表されると考えてよろしいでしょうか。

○都留少子社会対策部長 構成等、それは公表いたします。

○山口(文)委員 子どもたちの人権が保障される仕組みとして、オンブズの設置や、あと「子どもの権利ノート」、先ほど出されていました、その配布が行われていると聞いていますが、その現状と、移管後はどう対応されているのか伺います。

○都留少子社会対策部長 都は、第三者委員が参画した苦情等解決のための委員会の設置を働きかけており、都立及び民間のすべての児童養護施設では既にこの委員会が設置されております。
 施設入所児童を対象とした「子どもの権利ノート」も、小学生用と中学生以上用の二種類を作成いたしまして、小学生以上のすべての入所児童に対し、内容を説明した上で手渡しております。
 苦情等解決のための委員会の設置や「子どもの権利ノート」の児童への配布は、移譲後の施設においても行われます。

○山口(文)委員 東京都は、福祉改革STEP2の中でも、養護の必要な子ども、社会的養護の必要な子どもたちにもできるだけ家庭的な施設で育つようにということで、グループホームとか養育家庭制度の充実を掲げていますけど、なかなか日本の文化の中では養育家庭というものが育ちにくい状況があるかと思いますし、現実にはそう簡単には、啓発に努めていらっしゃるとはいえ、ふえていかないという事実があると思っています。
 グループホームの方も、この間の報告にもあったように、なかなか物件を探すのに苦労しているというような状況の中で、先ほど来出ているこうした施設というものもやはり一定程度は確保していかなければならない。ただ、東京都としては、今後は民間に移譲していくという方針を多く打ち出していますけれども、では東京都としてはこういった施設に対してどのような役割を果たしていくのか、一度少し確認をさせていただきたい。吉川次長が、きょうはお仕事がないということですが……。(笑声)
   〔「トリだね、大トリ」と呼ぶ者あり〕

○吉川次長 いやいや、そういうわけじゃないです。(笑声)答弁の機会をいただいて、ありがとうございます。
 ずっと、きょうの委員会の質疑を聞かせていただいていて、改めて私は、何というんでしょうか、先生方の福祉改革に対する、都立施設改革に対するご理解を賜ったんだなというふうに感動しております。
 今、東京都としての責務というお話なんですが、平成十四年の七月に先生方に公表しました福祉サービスの提供主体の改革への取組、先ほどいろいろご論議ありましたけれども、あそこで申し上げたことを、あえて山口先生のご質問に答えればいいかなと思いますが、都立施設については民間移譲等を原則としてやっていく、ところが、もう一点大事な点がございまして、社会福祉法人改革も行っていくということを申し上げました。
 そういう意味で、例えば二年前ぐらいにさかのぼりますが、サービス推進費のあれだけの再構築というようなことで、先生方にご理解いただいて、既に本格実施しております。ですから東京都としては、みずからが都立施設を担うのではなくて、もちろん真に必要なものは、また法律で決められているものは、都立はやり続けますけれども、基本的には民間移譲等を進め、基本的には民間施設に対しましては指導もしくは支援をしていく。その支援の中で、先ほどいった法人改革ではありませんが、先ほど来、吉田委員からはアフターケアの問題についてご指摘があって、いかにも都立でないとできないようなお話がありましたが、そのサービス推進費の改革の中で、努力加算項目でアフターケア加算は足してあります。ですから、都立でやっていることは民間になっても努力さえすればちゃんと出す仕掛けは、あの改革でできたんです。ですから、私どもからいわせれば、ここまで、やっと児童養護施設まで来たということでありますので、何としても多くの利用者の方々が真に安心して生活というか、そこで居住し続けられて、福祉のメリットが受けられるよう、局としては総力を挙げて、何としても今後、福祉改革もしくは都立施設改革を仕上げていきたいというふうに思っております。

○山口(文)委員 先ほど出ていましたサービスの質の低下というのがやっぱり一番問題なわけですし、今の子どもの人権が守られることなど、第三者のサービス評価をやはりきちっと、こういった特殊な施設についてのサービス評価というのはまだまだ不十分かと思いますので、また、特に子どもたち、実際にそこで生活している子どもたちへの聞き取り調査みたいなことも含めて、ぜひそういったところは東京都が率先して取り組んでいただきたいということと、先ほど出ていた人間関係、信頼関係を築くということでは、やっぱり人的サービスとしては人材育成ということが非常に重要かと思いますので、あわせて。
 実は、公共広告機構というところが今出しているPR、ご存じでしょうか。
 命は大切だ、命を大切に、そんなことを何千何万回いわれるより、あなたが大切だとだれかにいわれたら、それだけで生きていけるという、大江戸線にもあるんですけれども……。ちょっとごめんなさい。
 ぜひ、そういった視点を持った職業人を東京都は育てていただきたいと思います。

○藤井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、ご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉保健局関係を終わります。

○藤井委員長 次に、請願陳情及び特定事件についてお諮りいたします。
 本日までに決定を見ていない請願陳情並びにお手元配布の特定事件調査事項については、それぞれ閉会中の継続審査及び調査の申し出をいたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○藤井委員長 この際、所管局を代表いたしまして、平井福祉保健局長から発言を求められておりますので、これを許します。

○平井福祉保健局長 お許しをいただきまして、当委員会所管両局を代表いたしまして、一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本定例会で提案を申し上げました条例案及びご報告の事項につきまして、大変熱心なご審議を賜りまして、まことにありがとうございました。
 ご審議の過程でちょうだいいたしました貴重なご意見、ご指摘等につきましては、十分に尊重させていただきまして、今後の行政運営に反映させてまいりたいと存じます。
 今後とも、病院経営本部ともさらに連携を強めまして、施策の充実に努めてまいる所存でございます。
 引き続き、藤井委員長初め委員の皆様方のご指導、ご鞭撻のほどをお願い申し上げまして、甚だ簡単ではございますが、御礼のごあいさつとさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○藤井委員長 発言は終わりました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時三十三分散会