厚生委員会速記録第十七号

平成十五年十一月十八日(火曜日)
第七委員会室
   午後一時三分開議
 出席委員 十三名
委員長藤井  一君
副委員長山加 朱美君
副委員長大山とも子君
理事鈴木あきまさ君
理事初鹿 明博君
理事野村 有信君
東村 邦浩君
柿沢 未途君
大河原雅子君
河西のぶみ君
田代ひろし君
古賀 俊昭君
佐藤 裕彦君

 欠席委員 一名

 出席説明員
健康局局長平井 健一君
技監長岡 常雄君
総務部長浅井 憲彦君
企画担当部長酒井 洋一君
医療政策部長奥田  匠君
医療サービス部長梶山 純一君
食品医薬品安全部長中井 昌利君
地域保健部長齋藤  進君
事業調整担当部長海老原 繁君
参事桜山 豊夫君
参事木村 豊彦君
参事小松 博久君
参事丸山 浩一君

本日の会議に付した事件
 健康局関係
  事務事業について(質疑)

○藤井委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、健康局関係の事務事業に対する質疑を行います。
 これより健康局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料につきまして理事者の説明を求めます。

○浅井総務部長 去る十月十五日の本委員会におきまして要求のございました資料についてご説明を申し上げます。
 お手元配布の厚生委員会要求資料をごらん願います。
 資料は、目次にございますように、九項目から成ってございます。
 まず、一ページをお開き願います。資料1、都保健所における精神障害者社会復帰促進事業の実施状況でございます。
 精神障害者の社会復帰促進のための事業として、平成十四年度に都保健所で実施いたしましたデイケア及び精神障害者の相談、指導等の事業の市町村移譲に伴いまして平成十五年度から新たに実施しております専門グループワークの実施状況をお示ししてございます。
 なお、注にもございますとおり、専門グループワークの十五年度実績は、本年九月末までの半年間の実績の記載となってございます。
 また、備考欄には、本年度から新たにデイケアを実施した市町村を記載してございます。
 次に、二ページをお開き願います。資料2、精神障害者保健福祉手帳の交付数でございます。
 平成十四年度における精神障害者保健福祉手帳の交付件数を記載してございます。
 次に、三ページをごらん願います。資料3、精神障害者社会復帰施設の設置状況でございます。
 平成十五年三月三十一日現在におけます精神障害者社会復帰施設の設置状況を、施設の種別ごとに区市町村別に記載をしてございます。
 続きまして、四ページをお開き願います。資料4、歯科保健医療関係予算の推移でございます。
 十三年度から十五年度までの歯科保健医療関係の事業にかかわります予算額を、歯科保健対策、障害者等歯科保健対策、歯科保健医療基盤整備等の三つの体系に区分して記載をしてございます。
 次に、五ページをごらん願います。資料5、歯周疾患改善指導事業実績の推移でございます。
 区市町村が地区歯科医師会と協力をし、歯周疾患検診、生活習慣の改善を含めました継続的な指導を行います歯周疾患改善指導事業の平成十二年度から十四年度までの実績を、特別区と市町村に分けて記載をしてございます。
 続きまして、六ページをごらん願います。資料6、インフルエンザ定期予防接種の実績(六十五歳以上)でございます。
 予防接種法の改正によりまして、平成十三年十一月から、高齢者を対象といたしましたインフルエンザ定期予防接種が開始されました。表は、平成十三年度及び十四年度に、都内で六十五歳以上の方を対象としたインフルエンザ定期予防接種の実績を、区市町村からの報告をもとにまとめたものでございます。
 次に、七ページをごらん願います。資料7、重症心身障害児(者)通所施設の通所バス利用者数及び乗車時間でございます。
 平成十五年六月九日に実施をいたしました各施設の登園時の調査に基づきまして、都内各施設において通所バスを利用されている方の数及び利用者の方々がバスに乗車されるおよその時間につきまして記載をしてございます。
 続きまして、八ページをお開き願います。資料8、重症心身障害児(者)通所施設利用者の居住地でございます。
 都内各施設の所在地と施設を利用されている方々の居住地の内訳を、平成十五年四月一日現在で区市町村別に記載をしてございます。
 次に、九ページをごらん願います。資料9、原子爆弾被爆者の実態調査の概要でございます。
 国及び都が行った被爆者の実態調査につきまして、これまでの実施状況と、国及び都の調査実施内容を表にまとめたものを記載してございます。
 なお、注にございますとおり、国の調査は、都道府県市への委託実施の方式で行われ、表の対象者数欄は、都内におけます被爆者健康手帳所持者の数となってございます。
 以上、簡単でございますが、ご要求のありました資料についての説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。

○藤井委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○古賀委員 当委員会には、自民党の野村有信先生、それから田代ひろし先生、医学博士が二人所属しておられます。都議会にとっても大変貴重な知恵袋だというふうに思いますけれども、その医学分野について、それにかかわる質問でありますが、専門的なことはよく私は、医学的な見地は踏まえることはできませんけれども、現状、健康局がかかわって行われております、中学校における性教育のことについてお聞きをしたいというふうに思います。
 ことしの四月に、性教協という団体がございます、もう皆さんご存じだと思いますけれども、“人間と性”教育研究協議会。この季刊誌、第十号というものが発行されました。その中に、東京都の保健所に勤務する保健師が、「性感染症予防 体験学習を取り入れた保健師の授業」という体験談を発表いたしております。
 この内容については既に--義務教育の現場でのことでありますので、内容はこれから少し触れますけれども、あらかじめ東京都教育委員会の見解をまずお知らせしておきます。
 これは中学校、野村先生の地元の中学校二校で行われておりますけれども、この授業について、東京都教育委員会の見解は、中学校で一律に生徒を対象とした、ペニスモデルにコンドームを装着体験させた授業には問題があったということです。そのほかいろいろ資料ごとに説明を聞きましたけれども、要は、問題があったという東京都教育委員会の立場が、これについては既に表明をされております。
 どういうことが行われたかということなんですけれども、余り言葉にするのがちょっとはばかられるような気もいたしますけれども、中学校の三年生の生徒たちに対して、性感染症を予防するということで、実際に保健婦がつくった男性性器の模型にコンドームを装着させる授業を行ったというものであります。
 行われた場所は、平成十三年三月八日、奥多摩町立氷川中学校、これは三年A組三十二名の生徒に対して、府中小金井保健所の保健師、先ほど申し上げましたこの保健師が出張して授業を行ったというものであります。
 それから二つ目は、平成十四年三月十一日、青梅市立第七中学校三年A組におきまして、二十一名の生徒を対象に、同じように性感染症、エイズの予防という授業名で、テキストとか「コンドーム、ペニスモデル、濡れティッシュ」とか、いろいろ書いてありますけれども、そういうものを使って授業を行っております。
 これはもちろん進める立場でこのことが正しいと確信している人たちがいることも承知しておりますけれども、私の見解をまず最初に申し上げておきたいというふうに思います。
 この性教協の季刊誌に書かれている保健師の体験学習報告を読みますと、まず、授業を離れたい、授業をやりたくないという人がいた場合には、無理せずに、別の席に移動してもよいということが指導案の中に書かれています。義務教育で、受けなくてもいい授業を行っているということは、ちょっと考えにくい、信じがたいことで、しかも、このことは評価の対象にならないというようなこともいっているわけです。評価の対象にもしない、受けたくなければ受けなくてもいいというような授業が、果たして義務教育に本来あるのかどうか、この点も一つ問題です。
 本人はかなり気を使って、配慮したつもりでしょうけれども、本来教員免許を持たないこういう外部の講師というのは、とかくこういう、まあしっぽを出してしまうんですね。授業に参加しなくてもいい授業などというものがあるはずはない。しかも、席を離れて、移動してもいいというふうにいっていますけれども、実際は同じ教室の中にいるわけですから、見ることはできるわけですから、そういう生徒に対する配慮が著しく欠けていたという気がいたします。つまり基本的に、授業をやりたくない人はよいという、そういう立場で授業を行うことは間違いであります。外部講師というのはとかくこういう間違いを犯すものでありまして、授業というものを軽々しく考えていたという点が一つ指摘できるというふうに思います。
 それから、やりたくない人は見学していてもいいですよというような授業は、そういう見解で、そういう理解でコンドームの装着練習を子どもにさせる。やらなくてもいい人はそれを認めますということは、私は言語道断だというふうに思います。
 それから、この報告の中にも書いてありますけれども、コンドームを扱いたくない生徒は、性を否定的にとらえているというふうな見方をした節があります。読んでもらえればすぐわかるんですけれども、性を否定的にとらえている生徒がいる場合云々ということが書いてあるんですね。つまり、否定的にとらえている生徒には--例えば羞恥心であるとか良識とかモラルとか、ある、性に対して超えてはならない一線というものを、もしかするとそういう価値観をきちんと持っている生徒かもわからない。それに対して、性を否定的にとらえているという見解は、明らかに授業を担当するいわゆる教師的な立場として洞察力に欠けているというふうに思います。これが東京都の保健師がやっていることです。しかも実際に、嫌な人はいいですよといったとしても、拒否したくても、嫌だといえる生徒は実際は非常に少ないというふうに思います。そういう授業が果たしてまともな授業というふうにいえるのかどうか、この点も指摘せざるを得ません。
 それから、この授業は、いわゆる性感染症、エイズ対策ということで行われているわけでありますけれども、この点についても私は疑問だというふうに思います。実際、中学校の三年生に、エイズに対する正確な情報がどれだけもたらされているのか。コンドームを使うということによって、その恐ろしさとか危機意識というものが果たして育つかということも指摘したいというふうに思います。
 そういった点で、私は、この授業を行うことによって、生徒の性に対する自制心であるとか、いわゆるモラル感覚、そういったものが、場合によっては破壊され、そして性に対する興味だけを助長した結果となったということも十分考えられるわけです。
 それは、本人の書いているレポートの中に、うかがえる点が書かれています。「まじめに聞いていた生徒が一番関心を示してくれたのは」、一番まじめにこの授業に取り組んだと、この外部講師が判断をした生徒はどういう生徒であったか。「iモードで性の情報が得られるんだって、へへへ…」というふうに書いてあるんです。という反応だったということです。「そうです正しい情報が得られます」。iモードで正しい情報が得られます。まじめに受けた生徒というのは、やはりこの「へへへ」という、本人のレポートに書いてありますけれども、こういう理解をしているわけですよ。
 だから、期待した--これは校長も、よくわからない校長だったと思いますけれども、認めた授業ですから、独断で行われた外部講師ないしは担任の授業ではありませんけれども、一番まじめな態度で受けた生徒についてもこういう反応であったということをこの保健師は認めざるを得なかった。しかも、レポートにちゃんとみずから記しているわけです。つまり、理想とはかなりかけ離れた、当初目的としたものとははるかに及ばない授業であったというふうに判断をされるわけです。
 この授業は、その後いろいろなところでも同様のことが行われているわけで、教育委員会、それから健康局、さまざまな都の機関がこれにはかかわるわけでありますので、健康局の見解を私はここで、そんなに期待はしていませんけれども、別にこの保健師さんがまずいことをやったとかいうような見解ではないようですので、答弁に期待していませんけれども、ここで基本的なやりとりを行うことによって、東京都健康局の見解を確認しておきたいというふうに思います。
 このように保健所では、学校から、教育現場から性感染症予防の健康教育を行いたいという依頼があった場合に、その内容や使用する教材はどのように決めているのか。これは保健師さんにお聞きになったと思いますので、お答えください。

○丸山参事 教育内容や教材については、学校の依頼に応じて、まず保健所の担当者である保健師や医師と、学校側の担当者である養護教員等で調整の上、指導案を作成しております。
 なお、保健所においては、その指導案を検討した上で決定しております。

○古賀委員 当たりさわりのない答弁だと思います。指導案を検討して決定する、それは当然そうですね。しかし、教育委員会が少なくとも問題だ、適切さに欠けると判断をした授業を健康局の職員が行ったというのは事実ですからね。他人事のような見解は、私は認めることはできません。
 この性教協という団体、最近よく耳にしますけれども、どういう団体なのかということをちょっと、皆さんご存じだと思いますけれども、説明をしておかなければいけないと思います。この人が得意満面で、この「セクシュアリティ」という性教協の季刊誌に実践報告をしているわけですから--性教協の会員かどうかわかりませんけれども、いろんな人が会員になっているわけですから、しかし、その賛同者であることには間違いない。
 この性教協は、昭和五十七年に、山本直英という人が設立をいたしました。この方は、吉祥女子中学校、高等学校の(「きっしょうと読むんです」と呼ぶ者あり)副校長を務めていた人です。今、いろいろありますけれども、ここに吉祥女子中学校、高等学校が発行した学校案内がありますけれども、それには「きちじょうじょし」と、ちゃんとルビが振ってあります。(「それ、違っています」と呼ぶ者あり)学校が間違っている。こういういいかげんな学校かもわかりませんね。(笑声)学校が出した学校案内が間違っているというんですからね。何と読むのか、私もいろんなものを調べましたけれども、二つほど、私学協会が出したやつにもそう書いてありました。そこは万怠りなくやっているわけです。
 この人は、中学生、高校生が性交渉するのは、生徒の性自己決定権の行使だという主張をしている人です。性教協の関係のいろんな出版物を見ますと、自己決定権というのが、皆さんがしびれそうな言葉ですけれども、よく出てくるわけです。この性教協にかかわる教師並びに助産師--昔の助産婦さん、それからこういう保健師の人たちは必ず、性の自己決定権ということを強調いたします。はっきり子どもたちに、生徒に対して、性行為をしてもいいということをいっておきながら、結果もし妊娠をしたらどうするかという、その辺の最後の責任のとり方は非常にあいまいです。自己決定ですから、最後は責任は君たちにあるんだと突き放すという姿勢だというふうに私は判断をいたします。
 性には、この人たちは、快楽の性、生殖の性、触れ合いの性があるというふうに分類をしています。子どもたちにとってはちょっと難しい、一々こういう分類をして性を考えているということも非常に(「大人にとっても難しいよ」と呼ぶ者あり)難しいことだというふうに思いますけれども、この人たちは大まじめにこういう主張をしているわけです。子どもたちに対して、性行為を、いい方には語弊があるかもわかりませんけれども、しむけておいて、最終的には自分たちが性行為をしろといったのではないという逃げ道があるわけです、自己決定ですから。これはちょっと残酷な気がいたします。
 しかも、性教協の季刊誌を私もちゃんと大体最近のものは読んでいますけれども、非常に政治的な立場が際立っています。有事法制の制定や教育基本法の中への愛国心の盛り込み等の動き、一方で、夫婦別姓の棚上げ、自治体の男女共同参画条例に対する攻撃など云々と、かなり政治的な立場も明確にしている団体です。純粋に何か思春期の子どもたち、あるいは人間と性のかかわりについて研究を行っている団体とはにわかにはいいがたい、そういう主張が非常に多く見られます。
 今回、この性教協の主張をもとにした授業が行われたわけでありますけれども、私は少なくとも、いろんな発達段階、それから父兄の理解、父母の理解、そういうものが当然こういう教育には必要だというふうに思うんですけれども、自己決定権ということの前には、みんな、つい黙ってしまう。今回この立場を大上段に構えた、都内の二つの中学校での体験学習について、私は、発達段階からして中学生には早過ぎるのではないかというふうに思いますけれども、局としてはどうお考えですか。

○丸山参事 厚生労働科学研究の全国調査などによりますと、初めて性交を経験する年齢が急速に低下しており、高校になってから急激に経験率が上がっている傾向にございます。それと同時に、十代の若者の性感染症患者が増加している現状があり、このため、十代の若者に対する性感染症予防の健康教育は極めて重要であると認識しております。
 今後とも、学校側との十分な調整を行い、より一層児童生徒の発達段階に応じた内容として実施してまいります。

○古賀委員 これも、より一層児童生徒の発達段階に応じたということですから、当然ですね。しかし、教育委員会の見解はひとつ忘れないでおいてもらいたいというふうに思うんです。
 今回私が指摘していることについて、肝心の性教協の、これは一番新しい季刊誌ですけれども、ちょっと読んでいましたら、本人たちも余りこういう授業が有効だと信じてないんですね。これが不思議です。
 これはことしの第十三号、「セクシュアリティ」、性教協の季刊誌ですけれども、ここに、医師である北村邦夫という人がレポートを書いています。「子どもたちの性行動と性教育 態度は親から、知識は学校から」というタイトルです。この方は、日本家族計画協会クリニック所長という肩書です。
 この人は、後またこの有効性については質問いたしますけれども、まず先に、向こうの陣営というか、こういうことを得意げにやっている人たちの専門家が、余り有効でないのではないかというふうに書いているんですね。「産婦人科医である僕にとっては、『望まない妊娠をさせない』『性感染症予防を実践させる』というテーマが、長年にわたって性教育を進める上での目標としてきました。しかし、この中絶統計から見ても、」要するに妊娠中絶がふえているという統計を踏まえて、「いっこうに成果が上がらないことに、もどかしさを覚えることもあります。」と書いてあります。つまり、この運動は二十年の歴史があるわけです。しかし、自分で、一向に成果が上がらなかったということを告白しています。
 それから、「コンドームの使い方を教えても、使うのは本人ですし、ピルにしても、飲み方や避妊効果を教えても、飲むのは女性本人です。本人がその必要性をきちんと認められなければ、これらは無用の長物」、こういっています。それから、「実際は、コンドームを配っても若者たちの性感染症やHIV/エイズは一向に減りませんでした。」「手段教育に走り過ぎてはいないでしょうか。」と。何のことはない、先ほどの保健師がやった教育を同じような立場で推進してきた医師は、こういうふうに告白しています。正直な人だと思います。だから、もろ手を挙げて、何か進んだ性教育が行われ、それが感染症の予防につながっていくという判断は早計だと思いますし、後でまたいろいろ示しますけれども、私はその点、懐疑的に見るのが常識ではないかというふうに思うんです。
 感染症の予防にコンドームが有効なのかどうかということが一つ判断されなければいけません。確かに、有効である点もあるということはだれでもわかるわけです。性感染症予防の対策にコンドームの使用を普及啓発することだけで、じゃあ十分といえるのかどうか。これは健康局、専門家の立場でいかがですか。

○梶山医療サービス部長 性感染症の感染経路は性的接触であることから、感染経路を断つためにコンドームを使用することは、これらの疾患を予防する上で極めて有効な方法であるとされております。しかしながら、その保管方法や使用方法が正しくない場合には、感染を予防できない場合もあると考えられております。
 こうした点などを考慮いたしますと、性感染症を予防するためには、コンドームを使用するのみでは必ずしも十分ではなく、性感染症に関するさまざまな知識を知ることとともに、自分や相手の健康を配慮した適切な予防行動がとれるよう、十分に動機づけをしていくことが不可欠であると考えております。
 今後とも、性感染症の予防に関しましては、対象となる児童や生徒の方々の置かれている状況やニーズなどを踏まえ、適切な方法で普及啓発を行っていく必要があると考えております。

○古賀委員 それはあえてお答えいただかなくても、大体常識的に我々もわかることですけれども、その程度のお答えが限度だろうというふうに思います。
 局長は、この保健師の、受けたくなければ受けなくてもいいよというような授業、それから評価には関係ないという、こういう授業を行った職員がいるということに関して、それから自己決定能力を高めるということに関しては、率直にどうお考えになりますか。

○平井健康局長 現時点でまだ、先生の方から伺ったばっかりで、その実態や評価をはっきり確実に申し上げることはできないというのが実情でございます。

○古賀委員 大勢職員がおられますから、実態をすべて把握しておられるとは思いませんけれども、私は、事実、実態を申し上げて、是正すべきだという立場でお話をしていますので、ご自分の所掌の職務でもありますので、そういった使命を、職務を全うしてもらいたいというふうに思うんです。
 先ほどいいましたように、自己決定という言葉には、みんな、そういわれると反論ができないんですよ。この校長も、二つの学校の校長も多分、なかなかこういう教師や保健師は口が達者ですから、とうとうとやられて、ぜひ、じゃあお願いしますというふうな大体流れでいったんじゃないかなという気がするんですよ。大体手にとるようにわかるんですね。後になって教育委員会からまずかったよといわれて、しゅんとしているという、校長も情けない。自己決定ということをいわれたときに、どう反論するか、これは一つ、教育委員会もそうですけれども、健康局も、そういう視点をきちんと持っておくべきだというふうに思うんですよ。
 この人たちが大体持ち出す根拠となっているのは、私もいろんなものを読んでみましたら、J・S・ミルが書いた「自由論」というところにあるんですね。これは翻訳したもので、文章が非常に難しいので、要はどういうことかということを申し上げますと、「自由論」の中の他者加害、ほかの人が害を加える、加害原理というところに出ているんですけれども、要は、他人に迷惑をかけない限りは、自分にかかわる事柄に関しては何をしてもいい。他人がとやかくいうべきではない。まして、権力がそこに介入してそれを制してはならないという学説を唱えているわけです。大体これをみんな援用しているんですね。
 ところが、ミルは、読んでみますと、自己決定の主体から子どもを排除しているんですね。子どもはその対象にはならないということをはっきり書いているんです。ですから、子どもの自己決定を叫ぶ人たちは、この部分は読まなかったのか、あえて省いているのか知りませんけれども、非常に理屈っぽい、いろんな書物を引用して学説を駆使する人は必ずこれを持ってきます。しかし、これは最後のところまでちゃんと読みますと、子どもはその主体に入らないというふうに書いてあるんですね。これは絶対いわないんですね、自己決定をいう人たちは。この点を一つ知識として覚えておいてもらいたい。
 それから、性教育に関して、私たちもいろいろ都内の養護学校や小中学校の問題はもう一年以上前から議会で取り上げてきましたけれども、我々が何を判断するかといえば、適切か不適切か、果たしてこれは妥当か妥当でないのかという場合は、学習指導要領や我々の価値観で判断をしていかなければいけないわけですけれども、こういう法令、条例によって仕事をする公的機関の場合には、法的拘束力を持つもので判断を行っていくということになるわけですね。そこで出てくるのは当然学習指導要領ということになるわけですけれども、これには、児童生徒の発達段階に応じて性教育は行うということが書かれております。健康局がこれにかかわる場合は、性感染症予防のための健康教育を行うに際して、指導基準とか手引、そういうものが何かあるのかどうか、この点はどうでしょうか。

○丸山参事 性感染症予防の健康教育については、どのような内容、方法で、どのような教材を使い、実施するのが効果的なのか、先ほど先生のお話にありましたように、まだ科学的に証明された一定の結論は出ていない現状にございます。こうした中で、健康教育はこれまで、依頼元の学校の意図や、対象となる児童生徒の状況などを考慮して、学校ごとに実施している状況にあります。

○古賀委員 だから、健康局には指導基準とか手引のようなものはないということですよね。ないから、こういう教育委員会から好ましくないといわれるようなことを保健師がやってしまうということになるわけで、学校ごとにやるということで、学校に全部預けてしまうということも、健康局の立場とすれば、私は当然そういう答弁が出てくると思いますけれども、ある程度何か--やはり専門家集団ですから、すべて学校にお任せで、学校からいわれたらいわれるままにやりますというのでは、こういう問題が起きてくるわけですから、そういうものを私は考えるべきだということだけ注文をつけておきます。
 そして、このほかにも、この学校で行われていることは、この二つの多摩地域の中学校だけではなくて、都内でいろいろ実施されているんですね。性教協の季刊誌には、これでもか、これでもかと誇らしげにいろいろな実践報告が掲載をされております。
 一昨年の「セクシュアリティ」の第三号に出たものです。これは東京都東久留米市で開業している助産婦、坂本深雪、この助産婦の人が実際に出前授業をやった報告を書いています。これは本物の胎盤を持って、生胎盤を小学生にさわらせるという授業を行っています。まず持っていったものは、ドップラーという心音を聞く機械、それからトラウベという筒型の木でできた心音を聞く道具、それからアーニ・妊婦人形、中には双子を仕掛けてある。それから、助産院で撮った出産ビデオ。調達できれば本物の胎盤を持っていくということですね。それから、紙芝居も、もちろんというか、用意をしていく。こういう授業を行っています。
 この人は、生の胎盤を持っていくという行為は、人間の臓器を持ち出すというのは、果たして法的にどういう問題があるのかないのか。いろいろ聞きましたけれども、きちんとそれに対応して、いい、よくないというような、どちらもないんだそうですね、法律も条例も。しかし、専門医の話を聞きますと、ビニール手袋をして本物の胎盤をさわらせるという行為は、場合によっては手袋が破れたり、子どもですから、何か刃物や鉛筆とかシャープペンとか、いろんなものを持っていて、それをつつくかもわからない。子どもだから、そういうことはむしろあり得ると考えなければいけませんね。そういったときに感染症の危険性もあるのではないかということを私は医師の方から聞きました。本当にそんなことやっているのというふうにもいわれたんですけれども、東京都内の小学校で、子どもたちに本物の胎盤をさわらせている。
 出産ビデオを見た子どもたちはいろんな反応をするわけですけれども、なぜ見せるかといえば、神秘的だなんて的外れの感想をいわないように真剣に出産のしんどさも痛さも喜びも伝える、こういうふうに書いています。「現実は愛だ神秘だではオワラナイノデス」というようなことも書いて、「ハハハ、」なんて書いて、余りまじめなレポートじゃないと思うんですけれども、そういうことが書かれています。生命の誕生というのは、よく我々は、厳粛なものだし、ある面では神秘的という表現をする人がいても不思議ではないと思うんですけれども、この人にすれば、全くそういう反応はおかしいということです。
 私はここで生胎盤のことを、見解をお聞きしようかと思うんですけれども、私、いろいろ調べましたら、法令や条例にはないようなことですので……。しかし、都内でこういう実態があるということは、健康局ですから、知っておく必要がある。
 それともう一つは、これは七生養護学校でもあったんですけれども、七生養護学校の養護教諭の方が杉並区の産院で出産をして、自分が出産をしたときに出てきた胎盤をショウガじょうゆにつけて食べた。この産院は、希望すれば胎盤を食べさせるのが売りなんですね。それを、学内の先生たちが情報交換を行うための学内機関紙のようなものがありますけれども、胎盤を食べさせてくれる産院で今度出産するということを予告編を書いておいて、食べたという報告もそれに書いてあります。これも産婦人科学会の方に聞きました。そうしましたら、医師の立場でいえば考えられないといっていました。しかし、昔からいろいろまじないとか風習があって、胎盤を食べると産後の肥立ちがいいという、迷信ですけれども、そういういい伝えがあって、そういったことが行われているということを聞いても、驚くけれども、ああ、そんなものもあったのかということで、そうなんですかということで驚いておられましたけれども、そういう実態もあります。
 こういうことが、我々の少なくとも感性からすれば本当かなと思うようなことが、そういう常軌を逸した性教育を推進する人たちの中では次々と報告をされ、そしてまたそれが行われて、かなり広がりを見せているという実態があるということです。もし興味がおありでしたら、医師とか専門の方がいらっしゃいますので、どんな味がしたか、どういう食感だったか書いてあります。学校の校内紙に公表されていますので、後でお読みになったらいいというふうに思います。
 先ほど私、性教育の中で行われている感染症予防ということに関して、コンドームの有効性についてお聞きしましたけれども、そのことは必ずしも絶対ではないということはだれでもわかるわけで、しかし、子どもたちは、その授業を受けると、コンドームを使用することによってエイズ等の感染症が予防できるのではないかというふうに判断してしまうんですね。それは現に性教協にかかわっている医師みずからが認めているわけです。
 そういう前提を踏まえて、これからのことをちょっと聞いておきたいというふうに思うんですけれども、学習指導要領にも触れられておりますけれども、今後、健康局として、児童生徒の発達段階を踏まえて、それから保護者の理解も得ながら性教育を進めていくというのは当然ですけれども、私がいろいろ大急ぎで触れたことを踏まえて、今後どういう健康教育というものを、性教育を含む健康教育というものを考えていくのか、取り組んでいくのか、お答えください。

○丸山参事 児童生徒の発達段階に応じた、より適切な健康教育を実施していくために、教育庁が今年度中に改訂を予定している「性教育の手引」などを十分に踏まえ、性感染症予防の観点から、健康局としてガイドラインを作成してまいります。

○古賀委員 健康局としてガイドラインをつくるということですので、早急に着手し、完成させてもらいたいと思います。
 それから、「性教育の手引」を、これも私ども指摘をして、教育庁が今、改訂に取り組んでおりますので、そういったものを踏まえ、よく連携をして--子どもたちにとっては、真っ白な心を持っているわけですから、一度やった教育というのは非常に大きな影響を与えるわけですよ。だから、これから改めますということでは、じゃあ、前にこういう授業を受けた子どもたちはどうなるんだということになるわけですので、とにかく速度を上げて、健全なガイドラインをつくってもらいたいというふうに思います。
 最後に、私の立場、考えも少し明らかにしておきたいと思います。
 まず、性教協という団体の本質をよくつかんでもらいたいと思うんですね。先ほど私、触れましたように、政治的にも非常に偏った主張がありますし、自己決定ということを振り回して、快楽の性だの、触れ合いの性だの、わけのわからない、そういうもっともらしい分類をして、さも学問的な何か背景があるかのような価値を持たせようと、非常に作為的なことが感じられるわけです。そういうものをちゃんと見抜いてもらいたいんです。
 今度私が取り上げました、この二つの学校で配られた教材の中には、感染症、エイズについて考えてみよう、行動しようという、こういうものが子どもたちに配られました。これは読むと一見常識的なことが書いてあるんですけれども、最後に、性やエイズの相談できる場所として、東京都多摩川保健所、それから日本家族計画協会、これはいいですよ。それからエイズ予防財団、この辺はまあ第三者的な、あるいは公的な機関としてわかりますけれども、性教協もちゃんと自分たちの、相談できる場所として書いているんですね。性教協と書くと正体がすぐにばれてしまうものですから、名前をちゃっかり変えているわけですよ。性と生連絡協議会、性と性教育の電話相談となっています。性教協というのはどこにも出てこないんですけれども、電話番号は、何のことはない、性教協の連絡先なんです。自分たちの特定の思想や背景、あるいは考え方を持った団体を教材として紛れ込ませて、何か悩みがあったら、相談できる場所はここですよという中に潜り込ませている。これは非常に悪質ですね。公的機関が三つも並んでいるんですから。こういうことも、この保健師はやっているわけですよ。これは問題です。教材として配られました。
 それと、先ほど、コンドームの有効性について、私もいろいろ、医者じゃありませんので、いろんな人のものを読みますけれども、新聞に最近出たもの、さっさっと気づいたものだけ、もっといっぱいあったんですけれども、散逸してしまって、手元にあったものだけ今持ってきましたけれども、例えばアフリカのウガンダ、サハラ砂漠以南の南部アフリカにある国ですけれども、ここの駐日ウガンダ大使のジェームス・ババという人が、エイズ感染激減への挑戦ということで、新聞のインタビューに答えています。
 この人は、エイズの成人の感染率を三〇%から五・五%に激減させたウガンダの取り組みを紹介しているわけです。大統領は、ムセベニ大統領、この人が意欲的に取り組んだんですね。結果的には、最後は何が有効だったかというと、自己抑制による予防教育を進めたのが成功の要因というふうに語っています。コンドームをさんざん配ったんですよ、ここも。しかし、全く効果がなかった。この「セクシュアリティ」の中に書いている専門の医師と全く同じ見解、結果だったんですね。
 エイズ作戦として、ABC作戦というのをやったと。Aというのは、性に対しては禁欲的であれ、アブステイン。結婚するまではセックスを控えよ。Bは、性に対して注意深くあれ、ビーケアフル。結婚後は、相手は妻、夫だけにせよ。それから、C、三番目に、どうしてもセックスしたいときはコンドームを使いなさいと、三番目に持ってきているんですね、コンドームを。このABC作戦をやった結果、どの家庭でも一人はエイズで死んでいたといわれたウガンダで、エイズ感染者を激減させることができたというインタビューがありました。
 それから、福島学院大学福祉心理学部教授で星野先生という方がいらっしゃいますが、コンドームで安全というのは全くの誤解だというふうに、専門家ですね、いっておられます。主な性的行為感染症(STD)とコンドーム使用による感染リスクの減少ということで、これはもう皆さんいろんな資料をお持ちだと思うんですけれども、こういうコンドーム信仰のような授業が行われることを手をこまねいておられるから、あえて私は念のために申し上げるんですけれども、コンドームを使用することによって感染リスクがどの程度減少するかということを解説してくださっています。HIV、それからAIDS、これは確かに八五%は減少する。しかし、淋病、尿道炎、こういったものは五〇%、半分しか減少しない。それから、子宮がんの原因になるいろいろなウイルスがあるそうですけれども、それは全く効果がないと書いてあります。つまり、セーフセックス、安全な性交渉ということだけでは性感染症は防げないと、はっきりこの専門家の先生はおっしゃっていますね。
 そのほか、エイズが爆発的にふえないのはコンドームが普及しているからではないかという記者の問いに、日本でエイズがふえないというのは--ふえているんですけれども、爆発的にふえないというのは、コンドームが普及しているからではないかという記者の問いかけに、間違っていますと。コンドームを使用すれば、HIVは八五%は防げますが、一五%は失敗します。ヘルペスや淋病、クラミジアも一〇〇%防げるというのは全くの誤解です。コンドーム信仰が余りに強過ぎます。非常に安易で危険です。こう星野教授は語っています。
 それから……(「古賀さん、もういいよ。くどくなってきたよ」と呼ぶ者あり)いやいや、大事なんです。アメリカでは、コンドームによるエイズ予防は失敗しているというのは専門家の指摘するところです。感染症を防ぐために何が必要かということを、これは東京都立駒込病院の臨床検査科医長、エイズ検査室長、この人が、エイズの臨床検査では日本で草分けの人ですけれども、やはり同様の見解を示しています。ですから、子どもたちに誤った印象を与えてしまうのではないかということを私は危惧するわけです。
 アメリカでも今、「ニューズウイーク」にことしの初めに出ましたけれども、結婚するまで性行為しませんという特集記事が出ました。やはり自己抑制的な視点を忘れないで性教育に取り組むということが必要なのでありまして、そういった反省を促す意味で、東京都の保健婦が行った性感染症予防の性教育の授業については大きな問題が潜んでいるということを申し上げて、終わります。

○初鹿委員 同じ感染症でも違う、SARSについて何点か質問をさせていただきます。
 ことしの二月に大流行しまして、七月五日に一応、伝播確認地域の指定を台湾が解除されたことによって、現在は終息しているということですが、この冬にかけてまた再発生、再流行する可能性もあるということで、大変懸念がされております。
 東京都では、SARS対応基本方針を改定して、冬場に向けての対策を充実強化していこうということでありますが、その対策の内容について何点かお伺いをいたします。
 まず、SARSに感染をしたのではないかという心配を持ったときに、どこか医療機関にかからなければいけないなと都民の方が考えたとき、当然ながら、突然病院に行かれたり保健所に直接行ってしまったりすると、万が一本当に感染をしていた場合、感染が広がっていく可能性があるわけで、直接来訪することではなくて、電話の相談というのを基本にしなければならないと思うんですが、この対応についてはどのように考えていますか。

○梶山医療サービス部長 都は、二次感染防止の観点からも、SARSの感染が心配されるような症状がある場合には、まず保健所か、かかりつけ医に必ず電話で相談してほしい旨を「東京都広報」や健康局のホームページなどに掲載し、都民の方々への周知に努めてきております。また、区市町村に対しましても、同様の広報活動を行うよう要請してきているところでございます。
 また、今後、海外で感染地域が指定された場合など、状況の変化に応じまして、いち早くホームページの更新やポスター及びリーフレットを作成することなどにより、都民の方々への周知を強化してまいりたいというふうに考えております。

○初鹿委員 まず都民の方に十分に知っていただかないと、慌てて行ってしまう可能性もあるので、その辺は十分に対応していただきたいと思います。
 今回の基本方針の中で、感染が発見される前の非流行時の警戒システムということで、東京都独自で東京SARSアラートを確立するということですが、この具体的な中身についてお答えください。

○梶山医療サービス部長 今後、新たなSARS患者の発生につきましては、一般的には、まず海外においてと考えられておりますが、国際都市東京で再発の第一例目が発生する可能性も皆無とは断言できません。感染症法では、患者の認定や必要な調査などは感染地域が指定されてからのため、都独自に、感染地域が指定される以前の段階からSARS患者の発生を迅速かつ的確に把握し、日本国内での感染の拡大を防止するために構築したシステムが、東京SARSアラートでございます。
 具体的には、都内約七百の医療機関において、過去の感染地域からの帰国者や院内職員からSARSに似た症状の患者が発生した場合には、直ちに保健所に報告し、都の健康安全研究センターでのウイルス検査及び家族の方々などへの接触者調査を行うこととしており、ウイルス検査により、SARSコロナウイルスが陽性であれば、直ちに患者発生時の対応をとることにしております。

○初鹿委員 つまり、感染地域に指定される前の段階で、東京都は、国ではやらないけれども、独自に調査をしていくということでありますよね。東京に海外から戻ってきた方、また不法入国の方も東京に来る可能性が高いということを考えると、やはりこういった迅速な対応というのは必要ではないかなと思います。
 ところで、今、医療機関や、きょうも地下鉄に乗っていましたら、こういう「インフルエンザの予防接種を受けましょう。」というポスターが張ってありまして、インフルエンザの予防接種を勧奨しておりますけれども、ここに書いてあるんですね。「もし、今年の冬にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した場合には、インフルエンザとの区別が難しくなることが予想されます。」と書いてあります。
 このポスターを見た方が、インフルエンザの予防接種を受けるとSARSにかかりづらくなるのかなと、インフルエンザの予防接種がSARSの予防にも役に立つんじゃないかという誤解をされている方が非常に多いように感じるんですね。実はもう既に私、インフルエンザの予防接種打っているんですが、インフルエンザ打ったよという話をしていたら、じゃあ、SARSにもかからないねなんていうことを何人かの方からいわれておりますから、そういった誤解があると思いますので、都として、まず何でインフルエンザを推奨しているのかということと、どのように誤解がなくなるように対応していくのか、お答えください。

○梶山医療サービス部長 SARSコロナウイルスとインフルエンザウイルスとは全く別の病原体であり、インフルエンザの予防接種ではSARSを予防することができるものではございません。
 しかし、この二つの疾患の初期症状は、せきや突然の高熱を初めとして、筋肉痛や全身倦怠感が見られるなど、極めてよく似ているため、症状から区別することが困難であると考えられております。したがいまして、医療現場において円滑に両者を区別するためには、まずインフルエンザ患者を極力少なくすることが重要となってまいります。
 このため、都では、インフルエンザの流行以前に多くの都民の方々にインフルエンザの予防接種を受けていただくよう、接種の勧奨を行うとともに、予防接種は、SARSとの鑑別を容易にするためのものである旨を、「東京都広報」や健康局のホームページ、駅や公共施設へのポスターの掲示などを通じ、都民の方々への周知を図っているところでございます。

○初鹿委員 誤解がないようにこの辺の周知は徹底していただきたいと思うんですが、インフルエンザでも毎年死亡する方がいますけれども、インフルエンザは予防注射もありますし、治療薬も、タミフルというんでしたっけ、ありまして、かかっても大丈夫だという認識があると思うんです。でも、やっぱり死ぬ人はいるんですよね。そうはいいながらも、大流行したとしても、インフルエンザの場合はそんなにパニックにはなりませんよね。
 じゃあ、SARSはどうなのかというと、治療方法がないということで、仮に大流行したら非常に混乱するのではないかなと思うんですが、WHOの報告によると、致死率というんですか、大体一〇%程度だということですね。先ほど外務省のホームページを見てみましたら、感染した患者の数が八千四百六十二人で、死亡したのが八百四人と出ていましたので、大体一〇%、一割ぐらいだなと思うんですが、やはり治療方法がないということは、一般の方からすると非常に恐ろしいことだなと。あと、感染症の第一類に指定されたということで、一類って、ほかにどんなのがあるのかなと考えると、エボラやラッサ熱、ペストというように、かかってしまったら大変な事態に陥るような病気で、それと同じように区分されているとなると、皆さん非常に不安なんだと思うんですね。
 実際にかかったときに本当にどうなるんだというところが周知されることが必要だと思うんですが、治療方法がないといいながら、じゃあ、どうやって経過を見ていくのか、その対応についてお伺いしたいのと、一〇%の死亡率といいますけれども、死亡された方の年齢構成などはどうなっているのか、お伺いいたします。

○梶山医療サービス部長 現在、WHOが中心となり、全世界の研究機関が協力して、SARSの治療法やワクチンの開発が進められておりますが、いずれもいまだ確立されていないのが現状でございます。そのため、治療法といたしましては、対症療法が中心となり、症状が軽快し、SARSコロナウイルスが陰性であることが確認されれば退院できることとなっております。
 また、SARSの死亡率に関しましては、六十五歳以上の者では約五〇%程度、一方、二十四歳以下の者では一%未満であったことが報告されておりますが、SARS患者全体で見ますと、約九割の方々は、発症しても軽症で済み、一週間程度で回復していることが明らかになっております。

○初鹿委員 今のお話を聞くと、六十五歳以上の高齢者の方は五〇%以上だということですから、かなり不安を感じるんですが、全体として九割の方は非常に軽症で、一週間で回復するということですから、この実態というものを都民にちゃんと普及していくことが、実際に感染者が一名、二名と出てきたときにパニックを起こさない、一番いい、手っ取り早い方法かなと思いますので、意外と軽いんだということを極力発信をしていただきたいなと思います。
 では、実際にSARSの患者が発生をしまして診察をした場合、その診察をした病院は十日間ぐらい閉鎖しなければならないという見解もあると思うんですが、こういう特に疑い例の患者を診察する協力医療機関、実際に閉鎖されると非常に困るわけですよね。こういった協力医療機関への対応はどのようなものでしょう。

○梶山医療サービス部長 今回、海外で見られましたSARS感染事例では、その感染拡大は、多くの場合、院内感染から始まっており、医療機関での院内感染防止対策の徹底は極めて重要であると考えております。このため、都では、SARSが疑われる患者の外来初期診療を行う協力医療機関に対して、簡易陰圧装置や専用外来診察室の整備などに対する補助を行うとともに、医療機関におけるSARS対応マニュアルを改訂し、院内感染の防止に万全を期することとしております。
 また、SARS患者の診療を行った場合でも、各職員が適切な感染防御手段を講じていれば、通常どおり業務に従事しても差し支えはなく、協力医療機関が病院を閉鎖するなどの過剰な対応をとる必要はないものと考えております。

○初鹿委員 きょうの日経新聞ですか、「自治体対策 ハードは着実」という記事が出ていまして、それが今、着実に進んで、都内でも進んできているんだなということを感じますので、この辺は安心なんですが、この記事の中で、病院名を公開するかどうかということで、全部公開するところは六割ぐらいになっているという記事が出ているんですね。東京都内では、協力医療機関の名前の公表に関してはどのようにお考えでしょうか。

○梶山医療サービス部長 SARSの感染が疑われる患者が医療機関を受診するに際しましては、保健所がその患者の病状などを確認し、必要があれば円滑に協力医療機関を受診できるような東京SARS診療ネットワーク体制が既に整えられているところでございます。
 また、ご指摘の協力医療機関の公表につきましては、病院名が公表されることにより、通常の患者からの受診を敬遠されることを危惧する声が多くの協力医療機関から寄せられており、このため、現状においては、病院名の公表は差し控えさせていただくこととしております。

○初鹿委員 やはり協力医療機関あっての対策だと思いますので、医療機関が抵抗を示すようでしたら、公表は控えた方がいいのかなと私も思うわけで、この診療ネットワークをしっかり充実させていって、とにかく疑いがあったらまずは保健所なりに電話をして、そこの中で協力医療機関を紹介してもらって、そこに足を運んで診てもらうという体制をしっかり整えることが大切だと思います。
 そうはいいましても、しっかりやっているとはいっても、患者さんがそれを認識しているかどうかはまた別問題だと思うんですね。仮にSARSの患者さんが直接、協力しているか、していないかはともかくとして、一般の医療機関に来院してしまった場合、その医療機関での対応はどうなるのか。
 それともう一つ、感染をしている、していないというもっと以前の問題で、単なる風邪だなと思って普通に近所のお医者さんに行って、よくよく調べてみたらSARSの患者さんだったとわかった場合どうするのか。近所のお医者さんに風邪かなと思って行った場合には、それこそ待合室で知り合いか何かがいたらおしゃべりもするわけですよね。そうした場合に、接触した別の患者さんにはどういう対応をするのか、これが大切だと思うんですね。対策が必要だと思うんですよ。この点についてはどうでしょう。

○梶山医療サービス部長 SARSの感染が疑われる患者が一般医療機関に直接来院してしまった場合には、速やかに別室に移し、医師が診察を行うとともに、渡航歴やSARS患者との接触歴の有無などを確認し、SARS患者の定義を満たす場合には、直ちに保健所に連絡し、協力医療機関へ転院させることとなっております。
 こうした患者にはマスクを着用させるとともに、接触する職員も必ずマスクや手袋を着用するとともに、十分に手洗いなどを行うことが必要となります。さらに、診察室内の消毒を実施する必要もありますが、こうした適切な対処法につきましては、医療機関におけるSARS対応マニュアルに明記してあり、医療機関に周知徹底を図ってきたところでございます。
 また、SARS患者と気づかずに一般患者がこれらの方々と接触してしまった場合には、保健所が、濃厚な接触をした者に対して、十日間の体温測定などを指示することにより、経過を十分に観察することとなっております。

○初鹿委員 やはり後半の部分ですね、一般の方まで巻き込むような事態になったときにどうするのかということをしっかりとやっていかなければならないと思いますので、その点十分に配慮して行っていただきたいと思います。
 いずれにしても、ワクチンや治療法が確立されていないということですから、一般の方、また医療従事者の皆さんも非常に不安を持っていると思いますので、正しい情報をきちんと伝えていくことが必要だと思うんですね。まだまだ多くの一般の方の中には、空気感染するんじゃないかと誤解している方もいますし、先ほども述べましたとおり、かかったら大変、死んでしまうんじゃないかぐらいに思っている方もいますので、その辺の正確な情報というものを、一般都民、そして医療機関にもしっかりと伝えていくということを行って、万全な体制で臨んでいただきたいと思います。
 続きまして、精神障害者の社会復帰施策について何点かお伺いいたします。
 精神障害者の施策については、今まで入院治療中心であったものから地域におけるケアへと、大きな変革の時期に来ていると思いますが、国も、去年の十二月でしょうか、新障害者プランの中で、社会的入院といわれる七万二千人の入院患者を今後十年かけて退院、そして社会復帰を目指すという方針を打ち出しております。それによってさまざまな取り組みを始めているところでありますが、実際にこの施策を推進していくためには、地域での支援体制というものが非常に重要であるということはいうまでもないわけですね。
 私の事務所にもよく精神障害者の手帳を持っている方が来られるんですよ。私が好かれているのかどうかわからないんですけれども、何人か来られまして、いろいろお話をしていると、そこで一番皆さんが口々にいうのは、仕事がないんだ、働く場所がないんだ、アルバイトでやっと雇ってもらってもすぐにやめさせられてしまうんだということをいうんですね。地域で生活をしてもらおうということを進めるなら、やはり仕事の場というものをしっかり確保していかないと、絵にかいたもちになってしまうのではないかなと思うんです。
 そういう意味で、まず、社会適応訓練事業ということを行っていると思いますが、これについてお伺いいたします。
 社会適応訓練事業、いわゆる職親制度というんでしょうか、これは企業の中で訓練が行われるわけですから、実際の就労に結びつく上では非常に有効だなと思うんですが、まず、この社会適応訓練事業の目的と十四年度における協力事業者数、実訓練者数、そして修了者の中で実際に就労に結びついた人数についてお伺いいたします。

○梶山医療サービス部長 社会適応訓練事業は、自立への動機づけをすることによって社会復帰が可能と考えられる精神障害者が、その社会復帰に理解のある事業所に一定の期間通うことにより、就労への意欲や仕事への集中力、さらには対人関係など、地域社会への適応能力を向上させることを目的として実施しているものでございます。
 平成十四年度の実績でございますが、協力事業所が五十カ所、実訓練者数が百七名、次年度への継続者が六十七名、修了者が四十名でございました。この修了者のうち、実際に就労にまで結びついた者は八名でございました。

○初鹿委員 実際に就労に結びついたのは八名ということですから、百七名訓練を受けて八名、なかなか厳しいのかなというのを感じるんですね。きょういただいた資料でも、手帳を持っている方が約一万三千件いるということで、それを考えると、もう少しどうにかならないのかなと感じるところなんです。社会適応訓練事業や社会復帰施設の訓練などで一般就労に向けた訓練をしているのも重要だと思うんですが、それを具体的な就労に結びつける施策を行うということがまた必要なんだと思うんですね。
 東京都として、就労に向けた取り組み、どのようなことを行っているのか、お伺いいたします。

○梶山医療サービス部長 健康局では、精神障害者の方々の就労を支援する取り組みとして、所管しております中部及び多摩総合精神保健福祉センターが、精神障害者に実践的な就労活動のノウハウを提供する国のジョブガイダンス事業に協力しているほか、精神障害者の雇用対策を推進していくために、国の機関である東京労働局や都の産業労働局、福祉局などから構成される東京障害者雇用連絡協議会に参加し、各関係機関との連携を図っているところでございます。

○初鹿委員 就労ということになると、皆さん方の所管からちょっと外れてしまうのかなと思いますので、ほかの局との連携というのが必要になってくるんだと思います。
 いずれにしても、障害者の就労を進めていくためには、やはり事業者の方の協力というものも必要だと思うんですね。ただ事業者の善意の協力だけに頼っているのは非常に無理があるのかなと思います。特に精神障害者の場合は、身体や知的の障害者では、障害者の雇用促進等に関する法律に基づいて法定雇用率というものがありますけれども、精神障害者はそこには加えられておりませんよね。私は精神障害者も設定するべきだと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

○梶山医療サービス部長 委員ご指摘のとおり、法定雇用率を精神障害者の方々に対しても設定することは、就労対策を進める上で重要なことであると考えております。このため、引き続き国に対しまして、精神障害者に対しても法定雇用率を設定するよう提案、要望してまいりたいと考えております。

○初鹿委員 やはりこの点が非常に重要なのかなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 就労ということも必要だと思うんですが、それと同時に、地域の中で生活をするということになると、生活の場の確保というのも非常に重要だと思うんですね。例えば民間の賃貸住宅や公営住宅に入居するといったときに、身寄りのないひとり暮らし、一人の精神障害を持っている方ですと、保証人の確保が難しい、大きな課題になっているというふうに伺っております。それがネックになってなかなか住む場所が見つからないということなんですが、円滑な入居を進めていくためには、公的保証制度というものを創設していくことも必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

○梶山医療サービス部長 公的保証制度につきましては、精神障害者が生活の場を確保し、社会復帰を促進する上で、やはり重要なことであると考えております。
 福祉サービスの一つであります公的保証制度は、既に世田谷区において実施されており、今後とも、精神障害者にとって身近な区市町村が実施主体になるべきものと考えております。
 また、都営住宅での保証人につきましては、今後、関係する部局と協議を続けてまいりたいと考えております。

○初鹿委員 基本的には区市町村が実施すべきだということで、私もそうかなと思うので、都として区市町村に、世田谷で実際にやっている自治体があるわけですから、ほかの自治体でも取り組むような働きかけを行っていただきたいと思います。
 それと、都営住宅に関しては、同じ東京都の中の組織なわけですから、住宅局に、これはできるのかどうか、積極的に働きかけを行っていただきたいと思います。
 就労の問題、また住居の問題などをいろいろ考えていきますと、ほかの二つの障害との格差というものを感じるんですね。特に精神障害者の施策というのは、保健医療を中心に行われてきたために、なかなかほかの障害と比較すると格差が残っているのではないかなと思います。やっと平成七年に精神保健法が精神保健福祉法というふうに改正されて、精神障害者も福祉施策の法的な位置づけがされたところで、まだまだ格差の是正まで至っていないのではないかなと思います。
 この中で一つ挙げられるとすれば、公共交通機関に対する格差があると思います。平成十二年に、都は、都営交通の乗車証制度を発足させて、都営交通についてはほかの障害と同様の扱いになっておりますけれども、ほかのJRや私鉄、バスなどについてはまだ割引制度が適用になっていません。精神障害者の施設がどこに多いかというと、多摩の方にかなり多いわけですね。そうすると、都営地下鉄の乗車証を持っていても全く使えない地域に住んでいる方が多いわけですから、やはり早急にJRや私鉄などについても、ほかの障害者と同様の扱いをするように取り組んでいかなければならないと考えるわけですけれども、いかがでしょうか。

○梶山医療サービス部長 JRや私鉄などの運賃割引につきましても、精神障害者の自立と社会復帰をより一層推進するためには、身体障害者や知的障害者と同様の取り扱いがなされることが必要であると考えております。このため、都は、国や関係機関に対し、他の障害者と同様に交通機関の優遇措置が受けられるよう、引き続き提案、要望してまいりたいと考えております。

○初鹿委員 ぜひともこの問題については、障害者の団体からも皆さんのところにも要望が毎年出されていると思いますので、できるだけ早期に実現できるように取り組んでいただきたいと思います。
 続いて、もう一つ、格差ということで考えますと、精神障害者の社会復帰施設とほかの障害者施設との補助金の額の格差も挙げられると思うんですね。いろいろ関係団体の方から聞きますと、精神障害者の通所授産施設と知的障害者の通所授産施設については、人員の配置に差があって、補助額に大きな違いがあるということでありますけれども、東京都として、この格差の是正について取り組みを行うべきだと考えるわけですけれども、いかがでしょうか。

○梶山医療サービス部長 健康局では、社会復帰施設の一つである通所授産施設への補助につきましては、精神障害者の特性を踏まえ、都独自に交通費や昼食費の加算を行い、補助内容の充実に努めてまいりましたが、補助額の格差是正につきましては、引き続き国に対して提案、要望してまいりたいと考えております。

○初鹿委員 小さい、力のないところが母体になってやっている施設が多いので、ぜひこの点は充実するように、よろしくお願いいたします。
 金額のことも問題なんですけれども、それと同時に、金額だけではなくて、東京都から実際に運営費の補助を受けている、その交付の時期が遅いということで、各施設、大変困っているというお話を毎年のように聞くんですね。恐らく皆さんのところにも毎年のように、何とか補助金の交付を早くできないのかというご要望が上がっていると思います。東京都が補助金の交付をする時期、去年、ことしと、いつになっていたか、まずお答えください。

○梶山医療サービス部長 都では、通所授産施設に対しまして、昨年は八月九日に、ことしは七月三十日に補助金を交付しております。

○初鹿委員 施設を運営しているほとんどの社会法人は非常に財政基盤が脆弱で、ほとんど一〇〇%といってもいいぐらい都の補助金に頼っているわけで、昨年は八月の九日、十日早くなってことしは七月の三十日ということですけれども、四月から七月いっぱい、四カ月間、職員の給料も払えないぐらいにやりくりに困っているということなんですね。その間いろいろ資金を銀行や金融機関から借入金で賄ったりして何とかやりくりしているということなんですが、この補助金の時期をもう少し早くできるように検討はできないのかなと思うんですけれども、いかがですか。

○梶山医療サービス部長 都はこれまでも、補助金の早期交付に向け、さまざまに取り組んでまいりましたが、国が補助基準額を改定する時期が毎年異なっているなどの理由から、必ずしも要望にこたえられていない面もあったものと考えております。精神障害者の社会復帰施設が安定的に事業運営をしていくためにも、運営補助金の早期交付が可能となるよう検討してまいりたいと考えております。

○初鹿委員 ぜひ来年度からは早期交付というのが実現するように、よろしくお願いいたします。まず、いわゆる社会復帰が重要だと片っ方でいいながら、社会復帰施設の運営に支障を来すような補助金の交付方法を続けているようでは一向に進みませんので、その辺を十分に考えていただきたいと思います。
 いずれにしても、精神障害者の施設をつくったり、地域で暮らしてもらおうということを進めていく上で一番重要になってくるのは、地域の理解だと思うんですね。東京都も、東京構想二〇〇〇の推進プラン三カ年計画や保健医療計画で具体的な整備計画を進めていますけれども、計画どおりに着実に進展させていくためには、やはり地域の理解をいかに得ていくかだと思います。そういう意味では、まだまだ一般の世の中の精神障害者に対する誤解や偏見というのは厳しいものがあるのではないかなというふうに感じているところでありますから、都民に対してしっかりとこの辺を理解させていく努力というものを東京都として取り組んでいただきたいなと思います。
 最後に、この普及啓発に向けて現在どのような取り組みをしているのか、また今後どのように考えているのかをお伺いしまして、質問を終わらせていただきます。

○梶山医療サービス部長 都では、全都的な普及啓発事業といたしまして、東京都精神保健福祉協議会や関係する民間団体などに、精神保健福祉に関する各種刊行物の発行や講演会の開催を委託しております。また、保健所や精神保健福祉センターでは、都民向けに「こころの健康だより」などのリーフレットを定期的に発行するとともに、精神障害者への理解の促進と都民の心の健康の保持、増進を図るための講演会などを開催しているところでございます。今後とも、これらの施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

○東村委員 それでは、まず小児医療について伺いたいと思います。
 地域で小児救急医療を実施する際に最大の課題となるのは、小児科医の確保であります。医師の確保については、基本的には国の課題ですが、都としても積極的に取り組んでいく必要があると思います。そこで、今回は、小児科医の確保にポイントを絞って何点か伺います。
 多摩地域では、区部に比較して小児科医師数が少なく、小児初期救急医療事業に取り組む市町村も少ないのが現状です。その中で、都では、主に初期救急医療の担い手を確保することを目的に、開業医小児医療研修事業を平成十四年度から開始いたしました。しかし、昨年度の実績では、受講者三十九名のうち、多摩地域の受講者は六名だけだったと聞いております。このことについては、ことしの第一回定例会でもお尋ねしましたが、その際には、多摩地域の研修参加者の拡大に向けて働きかけるとのことでありました。
 そこで、今年度の多摩地域からの参加状況はどうなっているのか。特に八王子市では、この十月から独自に小児救急医療事業を開始しましたが、八王子地区からの参加はあったのか、あわせて伺いたいと思います。

○海老原事業調整担当部長 今年度の多摩地域における参加は、五地区から十一名ということで、昨年度の二地区、六名からすると、ほぼ倍増の状況にございます。
 八王子地区からの受講者でございますけれども、昨年度は一名もいないような状況でございましたが、今年度は五名の方に参加をしていただいている状況でございます。

○東村委員 やはり八王子市の例でもおわかりのとおり、地域で小児初期救急医療に取り組むことになれば、開業医の先生方も、研修を受けて、事業に参加しようという意識が高くなるのは当然だと思います。
 今後、小児救急医療に取り組む区市町村はふえてくると思われますが、小児初期救急医療の小児科医の確保策としては、研修受け入れ人数が四十名では少ないのではないか、このように考えます。
 そこで、開業医小児医療研修事業の実施規模を拡大する必要があるんじゃないか、こう考えますが、いかがでしょうか。

○海老原事業調整担当部長 昨年度から実施しております本事業の効果について見ますと、小児初期救急事業実施地区から参加いたしました医師のうち、約六割が初期救急事業に参画しているという現状を踏まえますと、小児救急医療の担い手を確保する手だてといたしまして、内科医等の開業医に対する研修は大変有効であるというふうに考えております。このため、平成十六年度におきましては、開業医小児研修事業の実施規模の拡大を図ることを検討してまいります。

○東村委員 ぜひとも実施規模の拡大を図っていただきたいと思うんです。
 また、その上で、研修事業の充実のためには、研修を受け入れる医療機関の確保も重要な課題であります。開業医の先生方は、診療の傍ら、みずからの時間を割いて研修を受講するわけですから、余り遠い医療機関では受講ができないんですね。その一方で、研修修了後に救急医療にすぐ携わることを考えれば、きちんとした指導が行える医療機関で研修を受けることが必要なわけです。
 そこで、多摩地域で小児医療を担う中核的な医療機関に対して、研修受講者の受け入れを行うよう、都としても積極的に働きかけていくべきであると考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

○海老原事業調整担当部長 開業医小児医療研修事業は、原則といたしまして、小児二次救急医療事業を実施している病院のうちから、一定の要件を備えた臨床研修指定病院で実施をしているところでございます。研修受講者のご希望あるいは利便性を考慮するとともに、その後の医療機関との連携などをも視野に入れまして、多摩地域において中心的に小児医療を担う医療機関に対して、受講生の受け入れを働きかけてまいります。

○東村委員 ぜひともこれは積極的に働きかけていただきたいと思います。
 その上で、私は、小児科医のマンパワーの確保策としては、何といっても女性医師が働きやすい環境を整備することが必要であると考えております。近年、女性医師が増加しており、医師の国家試験の合格者で見ますと、二〇〇三年の合格者七千七百二十一名のうち、女性の合格者は二千六百七名で、女性の占める割合は三三・八%となっております。特に小児科医師の女性の割合は、他科と比較すると高いものと思われます。今後の東京の小児医療を支えるためには、女性医師のパワーを最大限に引き出す必要があると考えます。
 しかしながら、女性医師は、出産や子育ての期間はどうしても職を引くことが多いのが現状でございます。一定の期間離職した後、働く意欲はあっても、いざ再就職をしようとしても、復帰に向けて最新の医療技術を勉強する機会がなければ、スムーズに復帰できることが望めないわけでございます。
 そこで、都として、離職した医師の復帰支援のための研修をできるだけ早い時期にスタートさせるべきであると考えますが、見解を伺いたいと思います。

○海老原事業調整担当部長 離職いたしました小児科医師が現場復帰するに当たりましては、最新の小児医療の知見や診療技術等を習得する必要がございます。そのための研修は大変重要であると考えております。このため、都といたしましては、離職小児科医の再就職に向けた研修の実施に向けて、具体的に検討を進めてまいります。

○東村委員 ぜひ早い時期の実現を望みたいと思います。
 さらに、離職した医師の再就職のためには、再就職先の情報が必要になってまいります。勤務地や勤務時間、勤務内容など、医療機関からの求人情報と医師の求職希望に関する情報を収集、提供する必要があると考えます。その際、一般の医療機関だけの情報ではなく、例えば区市町村が実施する夜間の小児初期救急医療事業も含めて情報を集約することが望まれるわけでございます。
 そこで、医師の再就職を円滑にするために、求人、求職情報を効果的に収集、提供できる人材バンクのようなシステムを構築すべきではないかと考えますが、都の見解を伺いたいと思います。

○海老原事業調整担当部長 離職をいたしました小児科医師が円滑に再就職できるようにするためには、地域の医療機関からの小児科医師に対する求人情報と、就職を希望する小児科医師の情報を収集、提供する仕組みづくりが大切というふうに考えますので、今後は、そうした仕組みづくりに取り組めるように検討してまいります。

○東村委員 先ほどから、検討してまいりますという前向きな答弁があるんですけれども、これから小児科医師のマンパワーの確保の上では、女性医師、特に離職をした女性医師を、どう速やかに職場に復帰してもらうか、そのためのいろんな施策、今いった人材バンクをぜひとも立ち上げていってもらいたいなと思っております。
 一方で、小児科専門医を育成していくことが、確かに何といっても重要な課題になってまいります。冒頭でも述べましたけれども、本来、小児科専門医の育成は国の責務であります。しかしながら、都もみずから専門医を育成して、地域の医療機関で働く小児科専門医の確保に努めるべきではないでしょうか。平成十六年度からは、医学部卒業後二年間の臨床研修が義務化されました。専門医を目指す教育研修はその後にスタートすることになります。
 先般出された、多摩地域における小児医療体制検討会の報告書にも、後期臨床研修の指導環境の確保を検討するとありました。そこで、後期臨床研修の指導環境の確保、これはどのような方向で検討が進められているのか、都の考え方を伺いたいと思います。

○海老原事業調整担当部長 今、委員ご指摘のように、平成十六年度から、医師法等の改正によりまして、医学部卒業後二年間の臨床研修が義務化をされたところでございます。この研修は、内科、外科、小児科等の主要な診療科で研修することにより、医師として、患者を全人的に診ることができる基本的な診療能力を習得し、医師の資質の向上を図ることを目的としております。
 都では、小児専門医を確保するため、この二年間の臨床研修の後に、小児科を目指す医師が三年程度の専門研修を受けるに当たりまして、指導環境を確保するための支援策を具体的に検討してまいります。

○東村委員 ぜひとも都としても、小児科専門医の育成に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 何といっても、小児科医の確保が、これからの東京における小児医療を充実させていく一番の課題であると考えております。ただ、その際に、東京都は、都立病院という大きな医療資源をお持ちです。ぜひとも、小児科専門医の育成に積極的に取り組む際には、都立小児病院を活用して後期臨床研修を実施することを私は提案いたしたい、このように思います。
 現在の八王子小児病院や清瀬小児病院は、高度な小児医療を担っておりまして、両病院が連携することで質の高い研修が行えるはずです。また、さらに将来的には、府中に小児総合医療センターが開設されれば、より総合的な専門研修が行えるようになる、このように考えるわけでございます。レベルの高い研修を行うことは、診療のレベルも高くなる効果が期待できるとともに、単に医師を育成するためだけではなくて、医療機関を利用する都民にとっても大きなメリットがあるのではないかと考えます。研修のためのマンパワーの確保も含めて、ぜひ前向きに検討するよう強く要望して、小児医療に関する質問を終わりたいと思います。
 次に、患者本位の医療連携についてお伺いしたいと思います。
 平成十三年三月に、医療法改正によって、病院の病床は、結核、精神、感染症を除いて、一般病床と療養病床に区分され、本年八月まで届け出ることになっていますが、まず、届け出ている状況について、都内の状況を伺いたいと思います。

○桜山参事 都内の届け出状況についてでございますが、本年九月一日現在で、一般病床が八万二千六百四十三床、療養病床が一万九千二百三十八床となっております。

○東村委員 都内の一般病床が八万床、療養病床が二万床ほどとのことですけれども、病床区分の選択については、今後、流動的な要素が多々あるだろうと考えますけれども、いずれにしても、大事なのは、急性期の治療が終了した患者さんが、その病状に応じてスムーズに長期療養に移れるよう、転院に当たっては患者さんへの配慮がますます必要になると考えます。
 今回この問題を取り上げた一つの原因になっているんですけれども、病院に入院している患者さんの中には、治療が終了すると直ちに退院を求められて、ご本人やご家族が苦労をして転院先を探している、こういう状況にしばしば私も接するわけでございます。確かに、診療報酬の関係で、三カ月を過ぎると、どうしても病院側はどんどん出そうという、こういう考え方もわからないわけではないんですけれども、長期療養が必要な患者さんがスムーズな転院を行うためにも、医療連携、特に病院間の連携が今まで以上に重要になると思います。
 そこで、都のこれまでの取り組みについてまず伺いたいと思います。

○桜山参事 だれもが身近なところで、症状に応じた適切な医療を受けられる仕組みづくりといたしまして、かかりつけ医の確保や在宅ケアの推進を図る区市町村に補助をいたしますかかりつけ医機能推進事業や、病院、診療所がそれぞれの機能を分担しながら技術や機器を利用し合うことにより、効率的な医療提供体制づくりを目指します医療機能連携推進事業をこれまで実施してまいりました。
 平成十二年度からは、これらの事業の成果の上に、二次保健医療圏単位で地域医療全体のシステム化について協議し、救急や在宅医療など地域の医療課題への取り組みを推進する地域医療システム化推進事業を実施しております。

○東村委員 確かに、都が医療機能連携推進事業などによって連携の仕組みづくりに取り組んできた、このような状況はわかるんですけれども、患者さんやご家族にとって重要なのは、実際の退院時に可能な限りご自宅やご家族の近くに転院できる仕組みがやっぱり必要なのではないでしょうか。実際に入院している病院から転院先として紹介される病院は、自宅からかなり遠かったり、また数も非常に少なく、患者さんにとっては選択する余地がないというのが現状でございます。これはそれぞれの病院が地域での医療機関の情報をお互いに十分に把握していない、これが一つの原因ではないでしょうか。
 都は、このような状況のもと、医療機関に対してどのような情報提供を行っているのか、伺いたいと思います。

○桜山参事 医療機関情報については、これまで、医療機関案内などで利用しておりました東京都保健医療情報システム、通称「ひまわり」を医療機関相互の連携にも活用できるよう再構築いたしまして、本年四月から新たな情報システムの運用を開始いたしました。
 新システムでは、都内各医療機関に関する地図情報を初めとして、診療領域ごとに対応可能な疾病、実施している手術、検査、保有する設備、機器、リハビリテーションや介護保険サービスの機能、在宅医療への対応力など、医療連携に必要な専門情報を大幅に充実した医療機関向けサイトも開設いたしまして、インターネットを通じて、いつでも容易にアクセスできるようにしております。

○東村委員 確かに、新しい医療機関情報システムでは医療機関向けのサイトを開発しているんですね。ところが、これは、一番ここに情報が集まっているんですけれども、一般の人は見れない、医療機関しか見れないというのが実情でございます。したがって、医療機関がこの情報を活用しなければ、結局患者さんにその情報が伝わらないというのが現状なんですね。このサイトを知っている医療機関は非常に少なく、実際の医療の現場では必ずしも活用が進んでいるとはいえないんじゃないか、このように思うわけでございます。
 せっかくこのようにすばらしい情報を充実して新しいシステムとしたのに、利用する医療機関が少ないのではもったいない話でありまして、特に病院では、患者さんが退院をする際に、家族との間に入って実際に病院の紹介やあっせんをするのは、主治医や院長ではないんですね。現場での医療ソーシャルワーカーでございます。都は、こうした医療機関の実態をよく理解して、効率的なシステムの運用を図るべきだと私は考えるわけであります。現場の医療ソーシャルワーカーがこの情報を知らなければ、結局、相談に行ってもそこで抱えている情報はほんのわずか。で、紹介する先は遠いところだったり、数少ない状況だったという、これで結構皆さん、今一番苦労されているんです。ここが、さまざまな診療報酬の問題とも絡めて、次に行く先がないということで必ず相談にいらっしゃる大きな悩みの一つであります。
 私は、この情報内容自体はかなり活用できる、すばらしいものだと思いますので、問題は、PRの方法、特に現場の医療ソーシャルワーカーまでこの情報がきちっと届くように東京都はすべきじゃないかと。こうしたことを踏まえて、今後、「ひまわり」の医療機関向けサイトをどのように普及していくのか、これについて伺いたいと思います。

○桜山参事 医療機関向けサイトは、本年の新システムの開始に当たり新設したものでございまして、まだ十分に活用されていないことは、ご指摘のとおりでございます。きめ細かな医療連携を行うためには、医療機関向けサイトを理解し、利用していただくことが重要であると認識しております。
 このため、これまでも医師会や区市町村などを通じて、このサイトの利用促進の働きかけを行ってまいりましたが、今後はさらに、実際に退院される患者さんに接する医療ソーシャルワーカーや看護師などの団体への周知を図り、あるいは電子メールを利用して医療機関に直接働きかけるなど、より一層の普及に向けた取り組みを行ってまいります。

○東村委員 くどいようですけれども、幾らすばらしい情報があっても、それを病院が利用しなければ何の意味もないわけでございます。このシステムの利用が促進されて、特に医療機関の中の現場の医療ソーシャルワーカーや看護師の皆さんまで伝達されるような、このような周知をぜひともお願いをしたいと思います。
 医療の情報化というのは、まさに東京都が進められています医療改革を進める上で非常に重要な部分を占めているんじゃないかと思います。ITの活用によって医療機関の情報の共有化を進めて、まさに東京都が目指している患者本位の医療連携を一層強化されることを強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 最後に、先ほど質疑でもありましたが、重複をしないように、SARS対策について何点か伺いたいと思います。
 ことし前半にアジアを中心に大流行しました重症急性呼吸器症候群、通称SARSについては、七月に台湾が最後にWHOによる伝播確認地域から解除され、一応の終息は迎えました。今のところ、九月にシンガポールで、実験室において感染があった以外、患者の報告はありません。幸い、日本国内の患者の発生はありませんでしたが、ことしの冬場に向け、再流行も大いに懸念されているところであります。国も十月に感染症法を改正して、SARSを一類感染症に位置づけ、対策を強化していくとしており、東京都もさらに対策の充実強化を図っていく必要があります。
 現在まで、全世界で感染者約八千百人、死者七百七十四人という猛威を振るってきたのがSARSでありまして、ただ、このSARSに対しては、先ほども話が出ておりましたが、誤った認識も根強くあります。
 そこで、確認の意味で、SARSの感染力について伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 これまでの患者データを分析したWHOからの報告によりますと、感染経路は、患者の分泌物などを介した飛沫感染や接触感染が主であり、空気感染であるとされた事例は、これまでにございません。また、潜伏期間や無症状の時期に感染が起こることはないと考えられており、感染が周囲に広がりやすいのは、SARSコロナウイルスの排出量が最も多くなる、発症後十日目前後から始まる肺炎症状が見られる時期とされております。
 感染した事例の多くは、マスクや手袋などを適切に使用していなかった医療従事者や、患者と濃厚に接触した家族などであり、身近にSARS患者がいなければ過度に心配する必要はなく、発症した患者も、その約九〇%は一週間程度で軽快しております。

○東村委員 今お話がございましたように、空気感染の事例はなくて、新たな患者も出ていないという現状で、過度に神経質になる必要はないと思われますけれども、冬に向けて、専門家などからは、再流行するとの見解も出されているわけでございます。マスコミなんかも、いろんなコメンテーターが出て、好き勝手なことをいっている人がいるんですけれども、実際には再発生の可能性はいかがなものなのか、これについて都の見解を伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 SARSコロナウイルスは、気温が低下すると活発化するとされており、中国広東省や香港などで昨年暮れからことし前半にかけて見られた流行が、この冬場にも再流行することが懸念されております。しかしながら、今回の流行以後、流行の見られた各国はもとより、多くの国々で十分な対応策が講じられてきていることが報告されており、再発生が起きた場合でも小規模で済むとの専門家の見解もございますが、明確な予測は困難であると考えております。
 このため、都といたしましては、いかなる場合にも速やかに対応できる体制を構築していく必要があり、本年十月には、SARS対応基本指針を改定し、SARS対策の充実強化を図っていくこととしております。

○東村委員 明確に予測はできないということでありますが、国は、関西での台湾人医師の事例の教訓などもあって、冬場に向けて速やかに対応していくために、急遽、感染症法を改正し、SARSを指定感染症から一類感染症に位置づけられました。
 そこで、まず、今回の法改正の趣旨について伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 感染症法は平成十一年四月から施行されておりますが、五年後の見直しが附則で定められていたことから、平成十六年四月にはその改正が予定されておりました。しかしながら、今回のSARSの大規模な流行を踏まえ、ことしの冬場に向けてのSARSなどへの対応をより迅速かつ適切に行うことにより、国民の生命や健康を守るための健康危機管理の向上を図る必要が生じてきたことから、現行法では対応が不十分な感染動向の把握や蔓延防止策、さらには水際対策などについて必要な措置を定めることとしたものでございます。
 なお、この改正は、本年十月の臨時国会で成立し、去る十一月五日から施行されております。
 また、指定感染症としてのSARSは、政令において、一年間の時限に限り指定されるものであり、今回、一類感染症に位置づけられましたことから、SARSは法律上明確に規定されることとなりました。
 法的な対応は、医師からの患者発生届け出があった後に、患者への入院の勧告、指定医療機関への移送、積極的疫学調査の実施、建物への立ち入り制限や封鎖などができることとされており、指定感染症と大きく変わる点はございません。

○東村委員 対応策で指定感染症と大きく変わる点はないけれども、時限的な措置から、明確に法に位置づけたというお話がありました。
 その中で、感染動向の把握、蔓延防止策、水際対策など、非常にこれは大事なところなんですけれども、現行法では対応が不十分であった事項が新たに規定された、このことを今おっしゃいました。
 そこで、この主な改正の内容について伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 今回の法改正の主な点でございますが、まず第一に、国の権限を強化し、緊急時には都道府県に対して必要な指示を行うことができるようにしたこと。第二に、SARSと天然痘を一類感染症として追加するなど、感染症法の対象疾患及び疾病分類を見直したこと。第三に、感染症を感染させるおそれのある動物に対する輸入届け出の創設など、蔓延防止のための対策を強化したことなどが主なものとして挙げられます。
 また、検疫法もあわせて改正され、検疫感染症に感染したおそれのある入国者には、潜伏期間中の健康状態を検疫所に報告することが義務づけられたことから、万一異常があった場合には、検疫所からの連絡を受けた都道府県は、感染症法に基づき、直ちに必要な調査や入院などの措置がとれるようになるなど、水際対策が強化されました。

○東村委員 今お話のあった中で、水際対策というのは非常に大事だと思うんですね。入り口できっちり対策が練られなければ、これが広がってしまった後は、追跡調査するというのは恐らく難しいだろう。特に、意図的に不法入国しようとした人たちについては、それが目的ですから、なかなかいろんな意味で追跡するのは難しいだろうと私は思います。
 その中で、検疫法で、検疫所が、潜伏期間中の健康状態の報告を義務づけた、このようなことなんですが、SARSというのは十日間潜伏期間があると先ほどおっしゃいました。その間、入国者が、今いったように所在が不明になって報告を怠った場合、都としてはどのような対応をしていくのか、これについて伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 検疫感染症に感染したおそれのある入国者が、十日間の潜伏期間中の体温やその他の健康状態についての検疫所への報告を怠ったり、虚偽の報告を行った場合には、検疫法の罰則規定により、六カ月以下の懲役または五十万円以下の罰金に処せられることになっております。このため、検疫所が警察に告発の手続をとることとなっております。

○東村委員 ここは大事なところでありまして、しっかり、義務づけたから必ず報告するだろうと、これは善意の解釈でありまして、中には、不法入国、不法滞在を--検疫所から入るのは不法入国じゃありませんね、不法滞在ですね、不法滞在を目的としようとしている人も中にはあると思うんです。そういう意味で、確かに人権等の問題もあると思うんですけれども、広がるということを考えれば、的確に告発の手続を怠らないようにしていただきたいと思います。
 また、先ほどの部長の答弁で、特に国は、緊急時において都道府県に対して必要な指示を行うなど権限を強化した、このようにありました。そこで、この権限強化の内容について伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 緊急時の国の権限強化についてでございますが、国は、緊急時においては、感染動向を把握するために、患者の発生状況などの調査に関して都道府県に対して必要な指示を行うとともに、国も専門家を現地に派遣して、都道府県と共同で調査を行うことができることとなりました。
 また、同じく緊急時においては、疾病の蔓延防止を図るため、国の責任において、患者の入院や消毒などの措置について必要な指示を行い、さらに必要に応じて専門家を派遣し、支援を行うことができることとされております。

○東村委員 国の権限強化とはいえ、都道府県での対応が困難になった場合や広域的な対応が必要な場合の支援が、恐らく国の場合は主体となるんじゃないでしょうか。まずは一義的に対応する東京都が万全の対策を講じていくことが重要であると考えます。
 そこで、今後、冬場に向けての都の対策について、これだけは都としてきちっとやっていきますよということについて何点か伺いたいと思います。

○梶山医療サービス部長 ことしの冬場に向けての対応についてでございますが、都は、去る十月にSARS対応基本指針を改定し、これまでの四つの柱である、情報の収集及び把握、相談及び普及啓発、医療体制の確保、検査及び防疫体制を基本としつつ、その対策を充実強化していくこととしております。
 その中で新たな対策といたしまして、非流行時においても、旧感染地域からの帰国者などからSARSに似た患者が発生した場合には、直ちにウイルス検査を行うことにより国内での患者発生を迅速かつ適切に把握し、いち早く警鐘を鳴らすためのシステムとして、東京SARSアラートを実施することといたしております。
 また、患者発生時に備えては、外来患者に的確に対応するための協力医療機関を、二次医療圏を基本としておおむね三十カ所程度確保するとともに、これらの医療機関の診療体制を充実させることにより、蔓延の防止を図っていくこととしております。
 さらに、ウイルス検査をより迅速に行うために、東京都健康安全研究センターに高精度の検査機器一台を追加して配備し、検査に要する時間を六時間程度に短縮することができるようにいたしました。
 今後とも、SARSの発生状況に応じて、医療専門職による夜間や休日の相談体制をさらに強化するとともに、適切に都民への情報提供を行い、都民の方々の不安の解消に努めてまいりたいと考えております。万が一にも都内でSARS患者が発生した場合には、速やかに感染拡大を防止する措置を実施し、都民の安全と安心の確保に努めてまいります。

○東村委員 今、答弁があった中で、万が一発生した場合でも速やかに感染拡大を防止すると。先ほど、ウイルス検査を迅速に行うために検査時間を六時間程度に短縮したと、これは非常に東京都は努力をされたなと思っています。やっぱり時間との勝負だと思うんですね。早く発見して対応しなければ、そのおくれた分だけ、時間が延びた分だけ感染が広がるというのがこの怖さだと思いますので、さらに時間の短縮と速やかな対応を東京都に求めまして、万全の体制でこの冬に臨んでもらいたい、これをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

○大山委員 私は、保健所について、それから重症心身障害者の通所訓練施設について、透析患者への災害対策について、そして高次脳機能障害についてという四点で質疑をしたいというふうに思っています。
 まず保健所についてなんですけれども、平成九年に、多くの反対がありながら保健所を統廃合して、わずか三年しかたっていない平成十二年の八月に、都はさらに保健所を再編するということを発表され、十三年の十月には、十二保健所を二次医療圏に一カ所の保健所にするという統廃合計画を市町村に提案したわけですね。それから二年、ここにありますけれども、十五年十月二十七日付で、多摩地域の都保健所の再編整備についてという報告が出されています。これには、市長会全体会において、保健所再編について、やむを得ないものとするとの協議結果がまとめられましたというふうになっています。
 市長会は、昨年の四月二十六日付で、多摩地域の保健所再編に関する重ねての要望というのを出しておられるんですね。これに何が書いてあるかというと、保健医療及び社会福祉の各施設の有機的連携を図るという地域保健法における保健所の設置趣旨、さらには特別区の区域における保健所数と照らし合わせても、多摩地域の現行十二保健所は適正配置であると考えられる。したがって、都の保健所再編整備案について、早急に関連要因を分析の上、改めて再検討されたいという、重ねての要請というのが出されているわけです。多摩地域の現行の十二保健所は適正配置だというふうにいっているわけですね。
 昨年の八月までで、二十六の多摩の市のうち二十四の市議会から、保健所再編整備案に断固反対、撤回を求めるということや、また廃止反対、存続という、非常に強い調子で書かれております意見書が出されているわけです。市長会、町村会が、やむを得ないものとするということで報告が出されましたが、市長会、町村会はどういう返事をしたというか、どういうやむを得ないという内容になったんですか。

○齋藤地域保健部長 どうして市長会がやむを得ないということになったのかということでございますけれども、ただいま大山委員からるる経過等ご説明いただきましたことを背景にしまして、昨年の六月に、私ども都と市町村の部課長級から成る多摩地域保健サービス検討会というものを、市長会あるいは町村会との協議に基づいて設置し、一年余にわたりまして精力的に検討してきたところでございます。その意見交換あるいは検討の結果を踏まえまして、東京都といたしましては、多摩地域の都保健所を、二次保健医療圏を基本的な所管区域として再編整備し、市町村支援機能ですとか、あるいは健康危機管理機能などの専門的な機能を強化する。また、全市町村を対象にいたしました地域保健サービス総合支援制度を構築します。また三点目として、再編にかかわる市町村の地域特性を勘案した措置を講ずることとし、具体的には、今後、該当する市町村と十分に協議するという、再編に当たっての三点から成る考え方を市長会、町村会にお示しし、ご説明したところでございます。
 それを踏まえまして、市長会、町村会におきましては、都の考え方につきまして慎重に協議、検討されました結果、ただいま委員おっしゃいましたように、保健所再編について、やむを得ないものとするとの結論が得られたものと理解しているところでございます。

○大山委員 今もご答弁ありましたように、あくまで市長会、町村会、やむを得ないものというものであるわけですね。最後まで、多摩を軽視しているのではないかとか、財政支援をするといっても東京都はすぐ打ち切るようなことでは困るとか、本当に厳しい意見が相次いだというふうに聞いていますし、今回の再編が、多摩地域の保健サービス充実に寄与するものだなどという積極的賛成の意見は皆無といっていいというふうに考えています。
 具体的に聞いていきますけれども、保健所の統廃合で非常に切実な方たちというのは、精神障害者の本人やご家族の皆さんがいるわけですね。まず聞きますけれども、資料でも一ページに出していただきました精神障害者社会復帰促進事業の実施状況、このデイケア、十四年度までやっていたわけですが、保健師さんに伺いましたら、精神障害者のデイケアというのは、本人の変わっていく状況を把握して評価し、どうつなげていくのかという、アセスメントしながら進めることができる事業で、週一回なら週一回のデイケアで本人は変化していく、それに責任を持てる事業なんだというふうにおっしゃっているわけです。
 デイケアは、ここの注にも書いてありますけれども、結局、東京都の保健所ではもうやらなくなった、全くやらないということなんですか。

○梶山医療サービス部長 保健所のデイケアについてでございますが、その対象者や内容を精査して、今後は、薬物や思春期など困難な課題を抱えた方々を支援するために、専門グループワークとして再構築したものでございます。

○大山委員 再構築ということですけれども、デイケアで今まで通っていた方々と、それから今度専門グループワークというのは、薬物やアルコールや思春期等にかかわることということですから、対象も違うということですから、全く別の事業なわけですね。しかし、デイケアは、全く違う事業だけれども、やらなくなったということなんですが、なぜやらなくなったんでしょう。

○梶山医療サービス部長 これまで保健所は、デイケアなどに取り組むことにより、精神障害者の自立と社会参加の促進に取り組んでまいりましたが、より身近な地域において社会復帰施設などの整備が進んできたことや、地方分権の推進により、都の保健所には広域的、専門的、技術的拠点としての役割を強化することが求められるようになってきたことなどから、先ほどもご答弁申し上げましたように、平成十五年度の一般健康相談の市町村への事務移譲を契機に、専門的な分野を担う専門グループワークとして、デイケアを再構築したものでございます。

○大山委員 より身近な自治体で実施できるというのも、それもいいですし、それから、より専門的な機能を保健所が担うというのも、これも重要なことだというふうに思うんです。しかし、資料の3で出していただきましたけれども、今、精神障害者社会復帰施設がそれぞれの自治体でも整ってきたということですけれども、実際資料で出していただいたものは、生活訓練施設、福祉ホーム、通所授産、それから小規模授産、そして地域生活支援センターという種類がありますが、本当に空欄が目立つわけですよね。箇所数だって、一カ所、二カ所というようなところが圧倒的に多いわけです。少しふえましたということで持ってきていただきましたけれども、空欄が埋まったのはほんの数えるほどというところなんです。
 しかも、デイサービスに似たものといったら地域生活支援センターなわけですけれども、この地域生活支援センターはいわゆるたまり場的なことでありまして、相談の機能ももちろんありますけれども、保健所でのデイケアのように、その人に対して最後まで責任を持って対応するということはできないわけですね。
 それぞれの自治体でどうか、受け皿というか、デイケアができているかといったら、一ページの資料を見れば、自治体でデイケアを始めているのは日野市と立川市だけだということなんですね。社会復帰施設も全くないところも、後で加えてもらったのを見ても、狛江市は何にもないとか、東大和市は生活支援センターは一つありますけれども、羽村市も何にもないとか、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、一つの種類としてないわけです。武蔵野市もないわけですね。
 当事者団体からは、ことし六月十三日付の要望書にも、就学経験や就労経験のない精神障害者にはデイケアは不可欠である、保健所デイケアの日数をふやすべきという、廃止どころか、ふやしてほしいという要望書が出ているわけですね。
 精神障害者の家族会では、デイケアは廃止ですけれども、事務移管の実態調査を行って、行ってみて実感しているのは、保健所の対応が遅くなってしまったということや、訪問回数が減ったこと、それから市町村格差があるということが実感だったというんです。精神障害者と家族にとって、いかに保健所が必要なものであり、頼りにしているものなのかということだと思うんですね。
 家族会では七月十四日に、それから本人の団体は六月十三日に、そして家族会や共同ホーム連絡会、当事者団体、生活支援センター連絡会、職親会という精神障害者の関連の団体でつくっている連絡協議会は七月八日に、統廃合を見直してほしいというふうに改めて要望を出しているわけですね。
 市町村との協議は行ってきたというわけですけれども、こういう切実な、例えば精神障害者の方や難病患者さんたちなどを初め、当事者や家族の皆さんの意見はどう反映させるんでしょう。

○齋藤地域保健部長 多摩地域の保健サービスの再構築、特に保健所の再編につきましては、再三議会等でもお答え申し上げておりますとおり、市町村の理解を得ながら、最終的には都議会でご審議、ご賛同を得て着実に推進していくと。組織改正といいましょうか、保健所自体の執行体制の見直しの問題でございますので、そういう観点から取り組んできたところでございます。
 なお、昨年もやはり厚生委員会で、そういう団体の方からの請願がございまして、十分ご審議をいただいたところでもございますし、また、要請行動等も私ども受けた経緯もございます。また、いろいろなチラシというんでしょうか、パンフレットでしょうか、そういったものも拝見している中でいろいろ検討してきたという状況でございます。

○大山委員 話を聞くだけでは行政には生きないと思うんですよ。
 いろいろご答弁されましたけれども、つい先日、十六日に、多摩地域の公衆衛生を守る市民集会というのが、多摩地域の十二保健所を守る会というのが主催で行われて、百名を超える参加があったんです。その中でも、精神障害者の家族会の方が発言をされました。どういう発言をしたかといいますと、国は七万二千人の精神障害者を退院させるといっているが、地域の受け皿をどうするのか。生活支援センターなど少しずつできてはいるが遅い。保健所の事業が市町村に移管されたが、市町村はほとんど相談だけ。福祉会で調査をした。どうして精神障害者が地域で生活できる仕組みをつくらないのか。家族にばかりしわ寄せが来る。家族は地獄のような日々だ。あしたにでも死にたいという人がたくさんいる。私は何人も知っている。でも、精神障害の子どもが残って、迷惑をかけるからと、死ぬこともできない。精神障害者を責任を持って生涯見てくれるところはない。親が死んだらどうなるのか、それが心配で心配でならない。その中で命綱の保健所が地域から撤退するのは許せない。余りの無責任さに腹が立ってしようがない。保健所と保健師さんが命綱だ、そういう発言をしているんですよ。保健所と保健師さんが命綱だと。本当に切実だと思うんですね。こういう声を、それから実態をどうして生かせないのか、そういうふうに私は思いますよ。幾ら聞いたといっても、生かさなかったら聞いたことにはならないというふうに思っています。
 ところで、保健所が行ってきた仕事ですけれども、新たに市町村に移譲する事業について市町村と協議しているということですが、協議している事業というのはどんな事業ですか。

○酒井企画担当部長 事務移譲を提案している事務についてでございますが、平成十四年四月、未熟児養育指導、難病患者等にかかわる医療費助成申請書の受理経由事務、原子爆弾被爆者からの認定申請書の受理経由事務等十事業の移譲を提案し、このうち、精神保健福祉相談の一般相談につきましては、平成十五年四月一日に市町村へ移譲いたしました。したがいまして、その他の九事業につきまして、現在、市町村と協議をしているところでございます。

○大山委員 一事業は協議ができて、あと九事業が協議中だということなんですね。その中身は、申請書の受理だとかということですが、対象が未熟児だとか被爆者だとか難病患者や重症心身障害者児、それから大気汚染被害者だとか精神障害者の方たちからの申請なわけですね。
 ですから、医療の給付だとか認定などの申請でも、今は保健師さんがきちんと話を聞いて、その人に必要な支援をしているわけですね。必要なら訪問もするというような状況になっているわけです。決して事務的に、体裁が整っているから受理するというだけではないわけですね。今みたいなきちんと、どういう支援が必要だとか、訪問するとかというきめ細かな対応が必要な分野なんですね。これを市町村と協議しているということですけれども、局としては、いつごろから移譲したいというふうに考えているんですか。

○酒井企画担当部長 事務移譲の実施時期についてでございますが、来年の一月下旬までに市町村側との協議が調いましたらば、第一回定例都議会における事務処理特例条例の改正の審議を経て、平成十六年四月一日に移譲したいというふうに考えているところでございます。

○大山委員 きちんとやらなければいけない事業ですし、それから協議ですけれども、保健所は統廃合、それから事務は移管ということなんですね。当事者の団体の皆さんの意見などは聞いていらっしゃるんでしょうか。

○酒井企画担当部長 患者団体等関係団体や利用者への周知あるいは意見収集につきましては、特に利用者への、制度が変わることの周知につきましては、市町村との協議が調い次第行ってまいりたいというふうに考えております。

○大山委員 やはり都民が主人公だし、それから、実際に利用していらっしゃる方にも、例えば一月下旬に協議が調ったら、その後お話をして、四月一日からなんだということですから、本当に寝耳に水というような状況になってしまうということでは、受ける方にとっては乱暴な話だというふうに思っています。
 統廃合のことですけれども、東京都は、二次医療圏ごとの設置を基本にしているわけですね。しかし、全国的にはそうではないということを示したいと思うんですが、医療圏の数と保健所数を比較してみますと、北海道は、医療圏は二十一あります。保健所は三十です。近くですと、埼玉県は、九の医療圏があって、保健所は二十二です。千葉県は、八医療圏で十六保健所。神奈川県は、十一医療圏で三十八保健所です。二十三区は、七医療圏で二十三保健所ですね。多摩は、五医療圏で、結局七保健所にするということなわけです。
 都の保健所数はというと、県のレベルで比べてみますとやはり少ないんです。他の道府県というのは、県の保健所が中心になっています。例えば東京都は、現在、多摩地域の十二保健所と島の保健所一カ所で合計十三カ所を、今度は五保健所と島の一保健所ですから、六保健所が都の保健所ということになるわけですね。保健所数六カ所というのは、県の保健所が六カ所というのは、青森県、福島県、福井県、徳島県、沖縄県です。五カ所は、栃木、奈良、佐賀とか、四カ所というのが一番少なくて、山形、富山、石川、鳥取、香川。六カ所というのは、下から数えて九番目なんですよ。首都東京、東京都の保健所は、全国的に見れば下から九番目のレベルだと。
 保健所というのは全国で五百八十二カ所ありますけれども、そのうち四百四十八カ所が県の保健所です。政令市があるところでも、例えば神奈川は、三十八のうち十一が県の保健所。愛知は、三十二のうち十四が県。兵庫は、二十九のうち二十五が県の保健所です。圧倒的に県の保健所が多いということなんですね。二次医療圏に一カ所ということも、今示しましたように、全国的に見れば、他県は必要な数を確保しているんですね。二次医療圏に一つだなんていうところではないわけです。
 これは十五年の五月、厚生労働省から出ている地域保健対策の推進に関する基本的な指針ですけれども、(1)の保健所の整備という中で何て書いてあるかというと、「都道府県の保健所の所管区域については、二次医療圏又は介護保険事業支援計画に規定する区域とおおむね一致することを原則とし、平均的な二次医療圏の人口又は面積を著しく超える場合には複数の保健所の設置を考慮」する、このように書いてあります。
 市長会の要望書では、多摩地域の現行十二保健所は適正配置といっているわけです。ですから、やはり状況なんかを考えれば、まさにそういうふうに私も思うわけですけれども、どうですか。

○齋藤地域保健部長 先生ただいま、都道府県保健所の他県との比較をされましたけれども、東京の場合には、二十三区というのがございます。そこに二十三あるという残りの多摩地域あるいは島しょ地域の中での数だということでご理解いただけるかと思いますけれども、東京都、私どもの考え方は、現在、この間、母子保健事務ですとか、あるいは精神保健事務等の対人保健サービスの市町村への移譲が進むなど、大変地方分権の流れが大きく進んでいるところでございまして、都の保健所はそうした中で、市町村との適切な役割分担のもとに、より一層、健康危機管理機能ですとか、あるいは市町村支援機能を含みます広域的な、専門的な、技術的な拠点として、都としての保健施策、サービスを推進する役割を担うものと考えております。
 現在、多くの保健医療施策が二次保健医療圏を基本単位として都において展開され、また定着しつつあること、さらに、それらを育てていくという観点も踏まえまして、二次保健医療圏を基本単位として再構築していくことが適当であると考えたところでございます。
 いろいろな地域保健をめぐる環境変化等を踏まえますと、これまでの保健衛生サービスの直接的な実施主体ということから、二次保健医療圏単位の総合的な保健医療戦略の地域拠点へと活動の軸足を移していくという都としての政策的な判断に基づくものでございます。

○大山委員 政策的判断だということですけれども、今最初の方で、二十三区は二十三区がやっているんだから抜かしてということですけれども、例えば二十三区と多摩の地域を比較したって、二十三区は七医療圏ですよ。七医療圏に二十三の保健所があるんです。で、多摩は五医療圏で七保健所にするということですから、全国で比べなくたって、区部と多摩の地域を比べたって、これだけの配慮の差があるというふうにいわざるを得ないと。
 全国的には、一医療圏当たりの人口は三十五万人ですね。一保健所当たりの人口は平均すると二十一万八千人です。大都市を持つ県を見てみますと、一保健所当たり神奈川は二十二万、埼玉三十一万、千葉三十七万、愛知二十二万、京都十一万、兵庫十九万などなどです。多摩の地域はといえば、一保健所当たり西多摩は三十九万八千人、南多摩は三十八万九千人、北多摩西部は六十万九千人、北多摩南部は九十四万四千人、北多摩北部は六十九万一千人と、膨大な人数を抱えることになるわけです。
 聞きますけれども、このような全国的な比較ができるような資料というのは、市長会や町村会には示しているんでしょうか。

○齋藤地域保健部長 まず最初に、先生今二十三区のお話をされましたけれども、二十三区は、地域保健法によりまして、各特別区で保健所を設置するというふうになってございますので、二十三を減らすということにはなっていないということで、医療圏との関係、ご理解いただきたいと思います。
 それから、保健所の所管区域についての資料のお話でございますけれども、検討会の中では、所管区域ということは非常に重要であるということで、いろいろな角度から検討いたしました。市町村におきます保健福祉センターの整備状況ですとか、保健師さんの充足の状況あるいは健康危機管理機能等、東京都が担うべき役割は増大しているということ、それから、先ほど申し上げましたように、二次保健医療圏というものの中で、都の保健医療施策がそれを基本的な地域単位として進められているということ、あるいは国の指針の中でも、基本的には二次保健医療圏に一カ所という指針が示されていること等々、意見交換する中で決まったところでございます。

○大山委員 全国的な、今みたいな比較ができる資料を示したんですかということなんですけれども。

○齋藤地域保健部長 検討会の中では、意見交換の素材として、お出しいたしました。

○大山委員 市長会や町村会には出していないということですよね。自分たちの都合のいい数だけ示して、客観的に判断できるような資料も示さないで、ただ二次医療圏が基本なんだとか法律に基づくということでは、フェアではないというふうにいわざるを得ません。
 もう一ついっておきますけれども、全国の保健センターの数、これは二千三百六十四カ所のうち、東京は七十八カ所です。保健センター一カ所当たりの人口は、全国平均五万三千七百人、東京は十五万四千七百人、三倍近い人口を持っています。保健所でも保健センターでも、こういう状況だということですね。
 ちょっと確認しておきたいんですけれども、了承されたという事項の中に、再編に係る市町村の地域特性を勘案した措置を実施というふうにあって、圏域の状況に応じた分室的機能の存置というふうになっていますけれども、この分室というのはどういうことなんでしょう。

○齋藤地域保健部長 分室的機能についてのご質問でございますけれども、先ほどの多摩地域保健サービス検討会の最終報告におきまして、保健所再編にかかわる市町村の地域特性等を勘案した措置の例示といたしまして、圏域の状況に応じた分室的機能を存置するということが示され、市長会等に説明を行ったところでございます。
 この措置につきましては、今後、該当する市町村と個別に誠意を持って十分に協議していくこととされており、お尋ねの点については現時点では未定でございます。

○大山委員 まだこれから協議をしていくんだと、組織的な位置づけもどうなるのかというのはよくわからないわけですよね。非常にあいまいなものだといわざるを得ないことですね。
 それで、こういう状況なわけですが、保健所の機能強化が今日ほど求められているときはないというふうに思うんです。
 まず一つは、食品の安全の問題です。食品の安全を脅かす事件は後を絶たないわけで、ちょっと挙げただけでも、O157だとか、雪印乳業の食中毒事件、BSEの発生だとか、それから最近は、BSEは新型のものも発見されていますね。輸入牛肉を国産と偽装表示したり、大手の食品会社でも偽装表示があったり、それから、中国産のゆでた冷凍のホウレンソウからは神経系に影響を与えるクロルピリホスを検出したりということですから、食品監視員の問題というのは--昨年の事務事業で私質疑しましたけれども、加工食品の大量生産だとか広域流通の関係で、食品製造現場は複雑化、高度化していますし、これらを適切に監視指導する食品監視員の増配置は求められているわけですね。
 東京都は食品安全条例を制定しようということで、第一回定例会には用意しているということですけれども、その一方で、保健所を減らしてしまうというのは逆行だというふうに思います。
 感染症というのが、さっきSARSも出ていましたし、エイズというのも出ていましたけれども、感染症はどうかといったら、SARSだとか、西ナイル熱だとかの新感染症、それから結核などの再興感染症が増加しているというのは事実としてあるわけですね。SARSはさっきみたいにインフルエンザの流行のときに再燃する可能性があるわけです。
 SARSの対応ということで、保健師さんに流行した時期にお話を伺ったら、診察などの協力関係についても、協力してもらうにも、保健所の保健師さんと地域の医療機関のドクターとの人間と人間の信頼関係がやはり基本になっているんだということなんですね。これは、保健所が地域に密着していてこそ、信頼関係が築けることだというふうに思います。
 そのほかにも、水の安全だとか、シックハウスだとか、障害者施設の七割のところが保健所の歯科健診を利用しているとか、自殺者が三万人とか、引きこもりとか、アルコールだとか薬物の依存症、それから精神科の未治療者への対応だとか、乳幼児の虐待の予防を視点に置いた母子保健活動の体制整備だとか、これだってごく一部ですよね。
 いろいろ挙げたけれども、いずれにしても、地域に密着した仕事を通してこそ実現されることだということばかりですね。ですから、保健所の役割というのはますます大きくなっているというふうに思うんですけれども、どうですか。

○齋藤地域保健部長 先生ご評価いただきましたように、保健所の役割というのは、これだけいろいろな健康危機あるいは地域保健をめぐる状況がある中で、大変だと思っています。
 ですがゆえに、区市町村との連携ですとか、ここだけがすべて保健専門機関でございませんので、児童相談所ですとか、医療機関ですとか、あるいは精神保健福祉センターとか、さまざまな機関とより平常時からコーディネートといいましょうか、調整あるいは協力関係を強くしておいて、さらに市町村との支援連携策を強固にしておいてこそ、さまざまな新しい課題にも対応できていく、かように考えているところでございます。

○大山委員 本当に大変ですよというのが率直なところだと思うんです。連携をきちんととってもらうというのは、これはもちろんのことで、市町村との連携というのは十分とってもらいたいと思います。
 さっきばたばたしゃべりましたけれども、地域保健対策の推進に関する基本的な指針を、平成六年のと十二年のと十五年のを読み比べてみました。そうしたらば、例えば、六年になかったけれども、十二年のときには、介護保険の円滑な実施のための取り組みというものが加えられ、それから十五年のものには次世代育成、支援対策の総合的かつ計画的な推進というのが加えられています。
 これは、都道府県で行動計画をつくることになっているわけですけれども、その中で、保健所の仕事というふうにされているのは、母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進の中では、保健所等都道府県において子育て支援の拠点となるべき基盤が適切に整備され、母子保健事業の推進に必要な保健師、管理栄養士等の人材が確保されることが必要であるということで、たくさん書いてあるんです。ア、イ、ウ、エ、オ、カというふうに、子どもや母親の健康の確保、食育の推進だとか、思春期保健対策の充実だとか、小児医療の充実だとか、小児慢性特定疾患治療研究事業の推進とか、不妊治療対策の充実だとか、こんなに仕事があるわけですね。大変だという上に、まだ仕事があるわけです。
 直接保健所ということだけではなくて、この中には、児童虐待防止対策の充実というところでは、福祉関係のみならず、医療、保健、教育ということで、保健所の役割が重要だというふうに述べているわけですよ。
 最近、七月から八月にかけて、保健所の組合の役員さんたちが、多摩地域の自治体を訪問して、要請しています。そして、懇談しています。七月から八月ですから、つい最近ですね。
 市の人たちは何といっているかというと、財政的にも市の持ち出しはふえているとか、市長もとんでもない話だと一貫して発言しているとか、市長会の要請を都はなかなか聞こうとしないとか、市長会も保健所統廃合に関しては基本的に反対、その意味では皆さん方の要請書は市長会の意向を代弁しているとか、保健所が身近にあることは重要で、統廃合には反対、そういうことなど、市長会はつい最近まで統廃合反対という立場を貫いてきたわけですね。
 そんな中で、十月に、やむを得ないというのは、決して納得しているわけではないということですから、無理して第四回定例会に条例を提案するんじゃなくて、まあ引っ込めてみることだというふうにいっておきます。
 次ですけれども、重症心身障害児者の通所訓練施設についてです。
 やはり資料で、重症心身障害児(者)通所施設の通所バス利用者乗車時間について、資料を出していただいています。これは七ページですね。
 ここにもありますように、通所バスの乗車時間が六十一分以上という人が依然としているわけです。障害が重い上に重複していて、しかも、気管切開などしていらっしゃる方も大勢いらっしゃるわけですから、吸引なども必要となるわけですね。不自由な体の上に、大きな負担がかかる。養護学校でも、やはり片道六十分というのが大まかな目安になっているわけです。
 これも、片道六十分というのは決して短いわけではないというふうに思いますけれども、この六十分を超える乗車時間というのは大きな負担になっているというふうに思いますが、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 通所バスの時間についてでございますけれども、重症心身障害児は常に医療的ケアを必要とする方も多いことから、通所者の個々の心身の状況などを勘案いたしまして、通所バスの乗車時間が過度な負担とならないよう十分に配慮をしているところでございます。
 例えばバスの運行ルートに十分に配慮することにより乗車時間の短縮を図っているほか、行きと帰りではバスの運行ルートを変えるなどして、特定の方の乗車時間が長くならないような工夫をしているところでございます。

○大山委員 いろいろ工夫されているということですけれども、少しでも乗車時間を短くするためには、根本的な解決にならないにしても、バスの増車というのは求められているんですが、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 バスの増車についてでございます。
 通所バスの乗車時間が長い、そういう方は自宅から施設までの距離が遠い場合が多く、こうした方については、通所バスをふやすことにより直ちに通所時間の短縮が図られるとは限らないような状況でございます。通所バスは施設利用に当たっての重要な要素でございますので、今後とも、利用者の状況に応じて、適切に配備をしてまいりたいと考えております。

○大山委員 根本的な解決にならないというのはそのとおりなんですよね。それにしても、バスがふえれば、一台に乗車していた人が六人だったけれども、五人になれば、ちょっと走行距離が減少するというわけですから、部分的には改善するというふうにいえると思うんです。
 それにしても根本的な解決にならないというのは今ご答弁されたとおりで、例えば島田療育センターには、八王子からだとか町田からだとかというふうに、非常に遠いところから通所している方がいらっしゃるわけですね。バスの乗車時間を短縮するためにも、それから、根本的な解決には、施設の増設というのは、これは不可欠だというふうに考えています。
 しかも、養護学校で重度重複学級がふえているんですね。そんなことを考えれば、重症心身障害児者の通所施設というのは、卒業後の進路としては求められているというのは明らかです。養護学校を卒業してから、社会参加を促進するとか、生活の質を向上させるということから考えても、卒業後、どこにも行くところがない、通うところがないという方を出さないようにするというのは重要なことだと思いますが、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 養護学校卒業後の生活についてでございますけれども、重症心身障害児者通所事業でございます。在宅の重症心身障害児者に対しまして、日常生活動作あるいは運動機能訓練、指導等、必要な療育を行うことによりまして、運動機能の低下を防止するなど、在宅重症心身障害児者の福祉の増進を図ることを目的としております。
 こうした点からいたしますと、養護学校卒業後に通所施設に通所するということは、在宅療養の向上を図り、家族とともに地域社会の中で生活できるようにする上で大変重要であると考えております。

○大山委員 大変重要だということですから、重症心身障害者児の通所施設、現在十二カ所設置されているわけですけれども、ざっと資料を見ていただいても、地域的にも偏りがあるということがわかると思います。
 特に通所の重心の施設というのは、どこでも定員をオーバーして受け入れているわけですね。そのために、もう満員になってしまって、重心の通所施設を希望しても利用できないとか、本人にとって明らかに適切ではないとわかっていても、地域の作業所などに通所せざるを得ないという場合や、在宅を余儀なくされているという例があるわけです。
 重症心身障害児者で、どこにも行くところがなくて、在宅で過ごさざるを得ない人というのは把握されていますか。

○海老原事業調整担当部長 重症心身障害児でございますけれども、都内にはおおむね三千人程度の重症心身障害児がいるというふうに推測をされているところでございます。そのうち約千名が施設に入所している、残りの二千名が在宅でいるというような状況でございます。
 その二千名の内訳でございますけれども、養護学校に通っていたり、通所施設に通っていたり、あるいは病院に入院していたりと、それぞれの生活状態でございますけれども、私どもとしては正確に情報は把握しておりません。

○大山委員 人数は正確には把握できないということなんですけれども、これは東京都障害児学校教職員組合の先生たちの記録ですけれども、本当に進路先に困っているんですね。
 例えば、医療ケア三名を含め重度の生徒が多くて、進路先の確保に苦慮したとか、本校の場合は重症児の受け入れは事実上杉の実というところしかなくて、そこもほぼ定員いっぱいだったけれども、やっと入れたんだとかというケースがたくさん報告されています。
 さっきも、通所するのに、定員を超えて受け入れている通所施設がほとんどだといいましたけれども、結局週に五日間通えないで、あなたは三日ですとか、あなたは一日ですとか、二日ですというふうに通所するケースがあるわけですけれども、一日、二日という方、三日しか通ってないという方、どれぐらいいらっしゃいますか。

○海老原事業調整担当部長 通所の日数についてでございます。
 重症心身障害児は、先ほども申し上げましたけれども、心身の状況から見まして、毎日通所することが困難な方も非常に多く、一人一人の状況に応じて通所日数を決めているところでございます。
 通所施設の利用者でございますけれども、平成十五年十月三十一日現在で三百二十七人登録されているところでございますけれども、週五日の方が六十一人、週四日の方が百六人、週三日の方が百四人、週二日の方が四十八人、週一日の方が八人となっている状況でございます。

○大山委員 そうやってやりくりをしながらしているわけですけれども、週に一日だとか二日だとかという場合は、結局五日ないし六日間は在宅だということなんですよね。ですから、ほとんど在宅みたいなものですし、特に一日や二日という人は、体調を整えるのが難しい方ですから、決まったその日が体調が悪くて通えないということになると、週に二日と決まっていても、結局ずっと行けないというような事態も生まれてしまうわけですね。
 そういうふうにやりくりしながら施設は受け入れてくれているんですけれども、それでもやっぱりこの重症心身障害児施設の通所を待機していて、時々緊急一時で入所して、対応しているというご家族なんかもあるわけなんですよ。
 ですから、重症な人こそ、一日や二日と決まっているんじゃなくて、一週間のうちどこでも来ていいですよというふうに保証してあげないと、なかなか通所ができないし、それから、本当に苦労しながら在宅で待っていらっしゃる方というのも何人かいるということなんですね。
 重心の通所の施設の建設は、本当に皆さんから待たれている東部の療育センターが今工事中だ、建設中だということと、それから来年の四月からは、秋川高校の跡地で、一カ所西多摩にできるということで、本当に待たれているわけです。
 しかし、この二つの施設が開所してもまだ、五十人以上の重症心身障害児者が在宅で残されたままだということなんですね。例えば、養護学校を卒業して、その年に在宅になっている方は何人いるかということなんですけれども、さっきの都障教組の方たちの統計では、二〇〇一年度は十六人、二年度が十三人、二〇〇三年度は五人いるんですね。
 養護学校を卒業する人数は把握できるわけです。しかも、卒業後の進路というのは大体予測がつくわけですね。ですから、重心の通所施設を地域的にも適切に増配置するという計画をきちんと立てるということが必要だと思いますけれども、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 都といたしましては、東部療育センター、仮称でございますけれども、ただいま建設中のものに全精力を注ぎ込んで建設をしているところでございます。今先生ご指摘の点につきましては、その後の状況を見ながらの課題であるというふうに考えております。

○大山委員 ぜひ進めていってもらいたいというふうに思っています。検討してほしいというふうに思います。
 この問題の最後に確認しておきたいんですけれども、さっきの秋川高校の跡地にできる西多摩の通所施設ですけれども、通所バスの配置というのは十分にされるわけですよね。

○海老原事業調整担当部長 西多摩療育センターの通所バスでございますけれども、重症心身障害児の通所事業には送迎が必要でございます。したがいまして、西多摩療育センターについても通所バスを配備する予定でございます。

○大山委員 ぜひ十分に配備してほしいというふうに思います。
 それでは、次ですけれども、透析患者への災害対策です。
 震災対策というのはもちろんいろんな面で必要なんですけれども、たとえ地震があったとしても、定期的に透析を継続しなければ命の維持ができないという透析患者の震災対策について幾つか質問したいというふうに思います。
 透析患者というのは都内に二万三千人いるというふうにいわれているわけですが、透析する際の必需品として、電気や水、それから透析機、生理食塩水やヘパリン等の抗凝固剤というんですか、そして、なくてはならないのがマンパワーなわけですね。
 震災のときには、普通に、透析患者の人以外にも、挫滅症候群、クラッシュシンドロームということで、急性の腎不全になる方もいるということで、通常のときよりも透析を必要とする人がふえるということが、これは阪神大震災のときも経験としてあるわけですね。
 透析患者さんの心配というのは、地震などが起こった場合、いつも受けている透析施設で透析が受けられるのか、それから、受けられない場合はどこに行ったらよいのかということなんです。
 病院などでは、災害時の自家発電だとか水の用意などもされているというところが多いわけですけれども、最近、透析の場合は、病院ではなくて、ビルの中なども含めたクリニックで受けていらっしゃる方が大変多くなっています。このクリニックなどでは自家発電などがないというところが多いわけですから、いつも受けているところで受けられない状況のときには、自分はどこに行ったら受けられるかということがわかるように、透析施設間のネットワークをつくってもらうことだとか、緊急時の透析医療体制を確立してほしいというのが透析患者さんたちの願いなわけですね。
 まず伺いたいんですけれども、震災などのときに透析患者が困らないように、多摩地域では三多摩地区ネットワークというのができていて、二次医療圏を中心に、病院とクリニックの連携がつくられていて、震災時、どこで透析を受けることができるかなどの情報が集約される仕組みができているんですね。災害訓練も毎年行われていて、災害訓練を行って教訓を引き出して、次に生かすというふうになっています。
 残念ながら、区部ではそのようなネットワークはできていないんですね。三多摩はネットワークがあるので、区部が被災したら、多摩の地域で何とか区部の人たちは対応してもらえるということなんですって。しかし、区部にはネットワークがないから、三多摩の地域が震災を受けたときには、区部で速やかに受け入れるというのはなかなか無理だというふうにいわれています。
 区部にも多摩の地域と同じようなネットワークの仕組みをつくって、機能させる必要があるというふうに思いますけれども、どうですか。

○梶山医療サービス部長 災害時の透析患者への対応についてでございますが、都は、平成九年三月に初版を作成し、その後、平成十三年三月に内容を改訂いたしました、災害時における透析医療活動マニュアルの中で、各透析医療機関が災害時の対応マニュアルを作成し、災害時にも透析患者への適切な対応がとれるよう働きかけてまいりました。
 また、日本透析医会におきましては、二十三区及び多摩地域を含めた全国的な災害時情報ネットワークが構築されており、毎年必要な訓練も実施されていると聞いております。

○大山委員 災害時のマニュアルがある、東京都とドクターなど関係者でつくったというのは知っています。しかし、今のご答弁ですと、いかにも二十三区にも多摩と同じようなシステムがある、仕組みがあるというようなご答弁ですけれども、私、東京の透析医会にお邪魔して、直接、震災対策の責任者をされているドクターから話を伺いました。
 多摩では、マニュアルに基づいて、杏林大学病院を本部としたネットワークが構築されているけれども、区部には核となる大学病院が多くて、その調整がかえって難しいんだというんですね。ネットワークの構築ができていない、これからの課題だというふうなお話を聞いてきているわけです。
 ですから、その現状を踏まえた対応が東京都に求められているというふうに思うわけです。今のご答弁ですと、区部と多摩に同じような仕組みがあるという認識なんですか。

○梶山医療サービス部長 区部における情報ネットワークの構築についてでございますが、都は、透析医療の専門家なども構成員となっております東京都特殊疾病対策協議会を設置しておりますので、こうした場などにおきまして、先ほどの日本透析医会が構築しております災害時情報ネットワークとの連携のあり方などを検討することも考慮してまいりたいというふうに考えております。

○大山委員 ぜひ、きちんと区部にも早急にネットワークをつくるべきだというふうに思うんです。透析医会の震災対策の責任者のドクターも、区部には核となるような大学病院なども多いので、やはり東京都が区部に大学病院などの調整役をやることが重要なんですよということもおっしゃっているわけですね。ですから、ぜひ積極的に東京都が調整役として取り組んでもらいたいというふうに思いますが、どうですか。

○梶山医療サービス部長 ただいまご答弁いたしましたように、東京都は東京都特殊疾病対策協議会を設置しており、この中には透析医療の専門家も構成員となっておりますので、ご指摘の点については、こうした場などにおいて検討することを考慮してまいりたいというふうに考えております。

○大山委員 ぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 心配なことのもう一つですけれども、透析をしているときに地震が起こったらどうするのかということなんですね。最近は昼間だけじゃなくて、仕事が終わってから、夜間に透析ができますというところが結構ふえていますから、それだけ透析中に地震が起こるという可能性、確率も高くなってきているというふうにいえると思うんですね。
 透析というのは、自分の血液を体の外に出して、人工的な腎臓を使ってまた戻すということですから、きちんと処理しないと血だらけになってしまうということで、管を押さえて、自分で切って張るというような、きちんと処理できるキットといいますか、セットがあるんですね。一人一人のベッドの下なり横なりに、きちんと一人一つずつそのキットが配備されていないとまずいわけですね。
 ですから、それが必要だということと、それから、自家発電がないようなクリニックがふえているということですから、医療機器が停電になってすぐ停止してしまうんじゃなくて、三十分ぐらいはバッテリーで持続できるような、バッテリーがついているものもあるということなんです。ですから、透析中に起きたときのために、患者の避難用のキット、それと透析機械のバッテリー、どういうふうな配備状況になっているのかという実態をまず把握することが必要だというふうに思いますが、どうですか。

○梶山医療サービス部長 透析患者の方々のための避難用キットや透析機器の非常用バッテリーの配備につきましては、基本的には患者さんの安全を確保する責任を有している各透析実施医療機関が行うべき性質のものであると考えております。
 これらの機材などの配備につきましては、今後、災害時における透析医療活動マニュアルの改訂を行う際などに、各透析実施医療機関に対して、より一層の周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

○大山委員 医療機関、そこが責任を持つというのはもちろんそうなんですけれども、やはり都民の安全という点からいっても、実態がどうなっているかという把握はするべきだというふうに思っています。
 震災が、地震が起こったりなんかして、必需品が不足したりする場合がありますね。患者を輸送して、他の地域で透析を受けるという必要が出てくる場合があります。実際に、阪神大震災のときには、対応し切れない人たちを大阪や岡山に送って、透析を受けてもらったという経験があるということなんですね。患者さんも家族と離れたくないという気持ちももちろんあるでしょうし、しかし、避難生活の中では、食事の配慮といってもなかなか大変なことですね。ですから、家族も困難な中ですから、落ちつくまで、透析の必需品がなければ、患者さんに移動してもらうということも検討する余地があるというふうに思いますが、そういう移送というか輸送も、患者さんの移動ということも含めて相談しておくというか、検討しておくことが必要だと思いますが、どうでしょう。

○梶山医療サービス部長 災害時におきます透析患者さんの他県などへの移動等につきましては、先ほどご答弁いたしました日本透析医会において構築されております全国的な災害時情報ネットワークなどを活用して対応してまいりたいというふうに考えております。

○大山委員 いろいろと課題がありますので、検討してください、積極的に。
 それで、透析の患者さんが、地震があって、自分がいつも行っている医療機関ではないところで透析を受けなきゃいけないというときは、その患者さんがどういう透析を受けているのかという個人の患者データが必要だということですね。多摩地域の透析患者さんたちは、さっき申し上げましたネットワークができていますので、患者データ、自分のデータを携帯できるように、半年には一回書きかえるということも含めて、ネットワークできちんと患者さんに配られているということなんです。
 東京都の腎臓病患者会も同じような透析カードを会員さんには配布をして、冊子になっているんですけれども、同じようにデータを書き込んで、いつも携帯しているということなんです。
 しかし、多摩の地域の方ではなく、それから患者会にも入っていない方というのは、そういうデータというのは持ってないわけですね。ですから、透析患者さんがふだん通っている透析施設以外でも透析を受けなければならない場合に役に立つように、患者自身の透析情報を書き込むことができる透析カードを、都として全透析患者が持てるようにすることが求められていますけれども、どうですか。

○梶山医療サービス部長 災害時に備えて、透析を受けている各患者がみずからの透析医療に関する情報を記録し、保有しておくことは極めて重要なことと考えております。
 このため、都では、災害時における透析医療活動マニュアルの中で記入内容の見本を示しており、健康局のホームページにも掲載して、透析患者や各透析実施医療機関への周知に努めてきているところでございます。
 また、東京都腎臓病患者連絡協議会においては緊急時透析患者手帳が作成されており、各会員に配布されているとも聞いております。
 今後とも、各透析実施医療機関に対しましては、こうしたカードなどを作成するよう要請していくとともに、透析患者に対しましても、みずからの透析に関する情報を記録することの必要性について、機会あるごとに周知してまいりたいと考えております。

○大山委員 実際、多摩の地域では透析カードをつくっているわけですし、患者会でもつくっているわけですから、それを同じようなことで窓口に置いておくとかということを含めて、東京都としても積極的に進めていってほしいというふうに思います。
 最後ですけれども、高次脳機能障害について少し伺いたいと思います。
 高次脳機能障害ですけれども、パンフレットが、本当はもっときれいなパンフレットですけれども、これが出ているわけですね。このパンフレットを見ますと、引き起こす主な疾患というのでも、頭部外傷、脳血管障害、感染症、自己免疫疾患、中毒疾患などで、本当にたくさんあるんです。それから、高次脳障害が疑われるときというのも、主な症状だけでもこんなにたくさんありまして、失語症から、注意障害から、記憶障害から、行動と感情の障害だとかというふうに、原因も症状も多様だというのが非常にあるわけですね。
 私の知り合いの息子さんが事故で高次脳障害になってしまって、話のつじつまが合わなかったり、迷子になってしまったりしていたんですね。体はもう大きいし、元気だし、普通にしゃべることはできますから、それだけに周りの人が理解できないというのが大きいんですね。本人も家族も大変な思いをしていました。
 まだ余り知られていない障害だけにということなんですけれども、東京都健康局は高次脳機能障害対策についてこれまでも取り組んで、こういうのもつくってきたわけですけれども、これまでの取り組みと今後の取り組みについて、少し教えてください。

○海老原事業調整担当部長 高次脳機能障害のこれまでと今後の取り組みについてでございます。
 都は全国に先駆けまして、平成十一年度に高次脳機能障害者実態調査を実施しましたが、その結果を踏まえまして、平成十三年度には、高次脳機能障害の診断リハビリテーションマニュアルを作成するとともに、患者や家族、一般都民向けにパンフレットを発行するなど、高次脳機能障害に対する普及啓発に取り組んできたところでございます。
 現在は、これまでの取り組みをさらに一歩進め、平成十四年度からおおむね三カ年の予定でございますけれども、高次脳機能障害者の社会復帰支援にかかわる関係者向けのマニュアル策定に取り組んでいるところでございます。

○大山委員 これからも、社会復帰支援にかかわる関係者向けマニュアルの策定事業を実施していくということですけれども、このパンフレットは結構好評なんですね。同時に、もっと改善をと思うんですけれども、最後のページの方に、リハビリテーション実施医療機関というのがあります。高次脳機能障害の方にとって、リハビリというのは本当に重要なわけですけれども、何が知りたいかというと、高次脳機能障害の特別のコースがあるかどうか、それが重要なんだということなんですね。
 しかし、いっぱい、一覧表があるんですけれども、ここに問い合わせをしたら、高次脳機能障害の特別な訓練プログラムをしているというところはほとんどなかったということなんですよ。ですから、より役立つようにした方がいいわけで、特別の訓練をやっているかどうかだとか、それから外来で訓練ができるのかとか、入院でどうなのかとか、症状が多様なだけに、それから必要なことが明確であるだけに、より詳細な内容を調査して、一覧表を改善してほしいと思いますけれども、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 患者の利用しやすい情報提供についてということでございます。
 高次脳機能障害に対応可能な医療機関については、現在、リハビリテーション医療実施医療機関に対しまして調査を実施しているところでございます。この調査結果を踏まえまして、各医療機関が高次脳機能障害者のどのような症状に対応可能なのかなど、より詳細な調査を行いまして、公表していきたいと考えております。

○大山委員 ぜひよろしくお願いします。
 社会復帰というのは本人にとっては本当に切実なことで、しかし、専門的な訓練ができるスタッフというのが少ないんだということなんですね。この分野での現任者へのリハビリテーション技術の向上を目的とした研修を、都としても取り組むことが求められていると思いますが、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 現在も研修を行っておりまして、さらに、その研修については、充実方策について検討していきたいと思っております。

○大山委員 ぜひ積極的に進めていっていただきたいというふうに思っています。
 最後なんですけれども、東京都のホームページからリハビリのできる病院の一覧を探すと、PDFのファイルになっているんですね。ですから、例えば高次脳機能障害とか地域とかというので検索ができた方が使いやすいんですけれども、かなり大量な資料が、最初からずっと追っていかないとわからないんですね。ですから、地域だとか受診内容で検索できるようにした方が、より患者さんが活用しやすいんじゃないかというふうに思うんですが、どうですか。

○海老原事業調整担当部長 使いやすい情報提供システムについてでございます。
 高次脳機能障害に関しまして、都民からアクセスしやすく、またわかりやすく、かつ利用しやすい情報提供に努めることは大変重要なことと考えております。情報システムの進展に対応した情報提供のあり方について、引き続き検討してまいります。

○藤井委員長 それでは、長時間にわたりましたので、この際、議事の都合によりおおむね十五分間休憩いたします。
   午後四時二十五分休憩

   午後四時四十三分開議

○藤井委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○大河原委員 よろしくお願いいたします。医療サービスの向上について何点か伺います。
 医療サービスの質の向上に向けた取り組みとして、平成十五年度から、インシデント・アクシデント・リポートを始めておりますけれども、医療現場でミスを起こしかけて、ひやりとしたり、はっとした、そんな事例も数多く報告されることと思いますが、次のミスや重大な事故を防止するという意味で、大変役に立つというふうにいわれております。始まったばかりの取り組みでございますけれども、状況はいかがでしょうか。

○桜山参事 都では、平成十五年九月から、医療安全対策を向上させるため、三カ年計画で、医療安全推進事業を開始いたしました。
 本事業では、都内の全病院に参加を募り、参加病院からインシデント、アクシデントの事例を毎月収集し、全事例について点検チェックリストを作成して、当該病院にタイムリーに提供すると同時に、事例のパターンや傾向を分析した年報をまとめ、参加病院に提供することにしております。
 これまで百九十二病院が参加し、九月分の報告として提出された二千件の事例について、現在、学識経験者や法律家等から成る評価委員会で内容を分析し、点検チェックリストの作成を行っております。

○大河原委員 九月のご報告なので、二千件という数字が多いのか少ないのか、ちょっと判断しかねるところですが、まあ一医療機関十件、これが制度のスタート時ですから、まじめに報告したというふうにとって、これ以降もそれがふえていくのか、あるいはだんだん実は手抜きになって減っていくのか、注目をしていきたいというふうに思いますけれども、まあ新しい試みでございますよね。
 それで、看護師さんは小さなことでもインシデントレポートとして報告していると聞いておりますけれども、看護師以外のスタッフ、この方々があまり報告していない現状があるんじゃないか、こういうふうにも聞いているわけなんです。
 病院の安全対策は、医師を初めあらゆるスタッフが参加する必要があるわけですが、今回の事業は、病院の全スタッフがレポートを集約するということで、安全対策の推進につながる事業というふうに位置づければ、もっと徹底したレポートの収集をお願いしたいと思います。
 そして、もちろんこの収集の結果をわかりやすく、そして都内全病院のレベルアップを図るために、この事業の中で、各病院が取り組んだ事例やその分析、予防対策、こういったものを、参加してない病院にもフィードバックすることが必要であるというふうに思うんですが、この共有策についてどのようにお考えでしょうか。

○桜山参事 三年間にわたって収集した注目事例の分析結果や予防策については、平成十七年度に医療安全マニュアルとして集大成し、都内全病院に配布いたしますとともに、病院から毎月提出された事例の分析から得られたノウハウを立入検査の際に活用し、本事業に参加していない病院も含めた、都内全病院のレベルアップを図ってまいります。

○大河原委員 今のところ、このレポートの結果なども医療関係者間でのやりとりということになるそうですが、行く行くは都民に向けてもわかりやすい形で、こうした試みがあること、こういう取り組みによって安全性が向上していくということ、お知らせをいただきたいというふうに思います。
 そして、都民がよい病院を選択する際の基準にできる病院機能評価制度、これについて伺いたいと思いますが、財団法人日本医療機能評価機構が病院のさまざまな医療機能について第三者の立場から評価を行うものと聞いております。都としては、平成十二年度から、適切で質の高い医療の確保、向上の努力を促すことを目的として、この病院機能評価の受審促進のための助成を実施しております。
 この事業の充実に努めるべきであるというふうに思いますけれども、これまでの実績と今後の取り組みについて、これも確認させていただきたいと思います。

○桜山参事 都は、都民に質の高い医療を提供していくため、平成十二年度から、全国に先駆け、病院機能評価の受審促進に向けた病院への補助事業を実施しております。
 この事業では、平成十四年度までに五十二病院が受審を完了し、平成十五年度も十八病院が受審する予定でございます。こうした取り組みの結果、今年度中には都内で約百病院が財団法人日本医療機能評価機構の認定を受ける状況となっております。今後も引き続き、質の高い医療提供の確保に向けて取り組みを進めていきたいと考えております。

○大河原委員 都民がよい病院を選択する、安心してかかれる病院を選ぶというところでは、こうした機能評価、これは、あらゆる分野で第三者評価制度、進んでおりますけれども、わかりやすく、都民のための患者中心の医療の実現ということで、ぜひ取り組みを丁寧に進めていただきたいと思います。
 次に、患者中心医療の実現について伺います。
 セカンドオピニオンというのは、日本では、ニーズがありながら、まだまだ普及しているというふうにはいえないのではないでしょうか。最初の主治医のお見立てを、データをもとに、そのお見立てが正しいのかどうか、ほかのお医者様の意見を聞くということは、もともとの主治医に失礼になるんじゃないかという気持ちが多分にございます。
 しかし、インフォームドコンセントということを十分承知していらっしゃる主治医であれば、こういう患者や家族の不安を解消するために、その治療法がほかから見ても妥当適切であるという、そういう評価をご自分が受けるということに対しても、十分認識していらっしゃるはずというふうに思うわけなんです。
 ただ、医師からさまざまな説明を受けても、何分情報も知識も持ち合わせない患者や家族にとっては、治療方法を決定するということは非常に困難な、不安を覚える場合もあります。当然知識を持っている専門医に相談したい、意見を聞きたいということになるわけです。
 がんや心臓病のように治療方法が日進月歩している領域では、特にセカンドオピニオンを求める、この必要性はより高まるというふうに思います。最新の医療情報を持っている専門医に相談に乗ってもらい、意見を聞きたい、こういう声が日々高まっておりまして、きょうも、産経新聞の朝刊に、広がるセカンドオピニオン外来、適切な治療を求めるという記事が出ておりましたけれども、こういった他の方の意見を聞くということで、インフォームドコンセントが浸透したアメリカなどでは、このインフォームドコンセントからインフォームドチョイス、選ぶというようなことがもう既に目標になっているというふうに聞いております。
 東京都として、健康局、セカンドオピニオンについての取り組みを始めようというところですが、この取り組みについてどのような見解をお持ちなんでしょうか。

○桜山参事 都は、医療のよりよい関係を考える会での議論を踏まえ、昨年七月から、セカンドオピニオンのあり方について、都内の特定機能病院や学識経験者などで構成する協議会で、五回にわたる協議を行ってまいりました。
 この協議会では、セカンドオピニオンの提供に向けた共通認識を深めるとともに、本年十月、セカンドオピニオンをテーマとして、都民などを対象としたシンポジウムを開催し、医療機関の取り組みを紹介いたしました。

○大河原委員 くどくど申し上げますけれども、セカンドオピニオンは患者のニーズでありまして、医療の質を高めるということにも必要なものでありながら、診療報酬としてまだ認められておりません。健康保険の対象になっていないということで、自費診療ですね。ですから、少々割高でございます。
 それらの課題があるわけですけれども、患者が納得できる最適な治療法を選ぶために情報を得るということでは、不可欠の手法というふうに思います。
 今、セカンドオピニオンに関するシンポジウムを開催したということですけれども、セカンドオピニオンへの理解が十分とはまだまだいえない現状において、シンポジウムがあった、そこで、参加できる方には限りがございます。このシンポジウムに参加できなかった都民に向けても、広く内容を発信する必要があると思いますが、どのようなご見解をお持ちでしょうか。

○桜山参事 シンポジウムでは医療の専門家による講演や都民との質疑応答を行い、その中で、適切なセカンドオピニオンを進めるためには、まず主治医と患者さんとの信頼関係を確保することが重要であることなど、セカンドオピニオンのあり方に関して、多くの貴重な意見が出されました。今後、シンポジウムの記録を局のホームページに掲載するなど、セカンドオピニオンの普及に活用していきたいと考えております。

○大河原委員 医療法の規制緩和で、民間病院、既にこのセカンドオピニオン外来なども始めておりまして、大変な人気と聞いております。予約でいっぱいということです。
 また、東京都もいよいよ始めるわけですけれども、今答弁にございましたように、やはりセカンドオピニオンの成功のかぎというのも、まず最初の主治医との十分なコミュニケーション、これはやはり外せないと思います。東京都が始めるセカンドオピニオン外来、ここに向けても、セカンドオピニオンの誤解のないように、そして、何よりもこれが普及するように、ご努力をお願いいたします。
 次に、ターミナルケア対策について伺います。
 東京都でも、がんで死亡する方、大変多くなっておりますけれども、一般的にがんの診断、治療というのは、多く大病院で行われております。そして、よほど理解のある病院でないと、死の直前までの在宅での療養、これを選択するという方向性にはなりません。
 治癒を目的とした医療が有効でなくなったがんなどの末期患者とその家族を対象に、身体的、精神的、社会的側面からサポートして、人生の残された時間を尊厳を持って充実した生活を送ることができるようにするターミナルケア、在宅ホスピス、こうした推進を求める声が高まっております。
 既に東京都は、平成五年から、ターミナルケアのあり方を検討した検討委員会の最終報告をもとにして、民間病院の緩和ケア病棟の整備、これに補助を行ってきております。この十年、東京都の事業、行ってきたわけですが、この十年の成果と都内の整備状況はどのようになったんでしょうか。

○海老原事業調整担当部長 この十年間の事業の成果と整備状況についてでございますけれども、都は、東京都ターミナルケア検討委員会の報告を踏まえまして、平成五年度から、緩和ケア病床施設設備整備費補助事業を開始したところでございます。
 平成十四年度までに、七病院に対して補助を実施してまいりました。平成十四年度末現在でございますけれども、都の補助事業に加えまして、病院が独自に整備した病床を合わせまして、都内の緩和ケア病棟は十三施設、二百六十八床となっております。
 また、診療所についても、緩和ケア病床施設設備整備費補助事業を実施しており、これまでに二診療所で、合計四床に対して補助を実施しております。

○大河原委員 この十年の成果というところで、都の補助事業としては七病院ということですよね。そして、都内の緩和ケア病棟、十三施設で二百六十八、この一千二百万都市の東京に、考えると、まだまだこれは整備の必要があるわけです。
 そして、十年でこの成果というのは、やはり何か大きな障害がたくさんあるんだなということは想像できるわけですけれども、整備が進まない原因、これがどんなものになっているのか、ご紹介ください。

○海老原事業調整担当部長 整備が進まない原因についてでございます。
 緩和ケア病棟整備につきましては、緩和ケア病棟として保険適用を受けるための施設基準をクリアする必要がございますが、この基準が、ハードルがかなり高いこともありまして、整備の進まない原因の一つになっているものと思われます。
 例えば、一・五対一という看護基準、あるいはまた専任医師の常勤配置、あるいは患者一人当たりの診療環境、これは面積のことでございますけれども、さらに、患者家族の控室、専用台所、面談室、談話室等の配置が必要であるほか、新たに平成十四年度からは、日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受け、認定されていることが要件とされていること等がその原因と考えられます。

○大河原委員 入院をしていらっしゃる患者さんのための緩和ケア病棟の整備というのは、今ご報告いただきましたように、基準がかなりハードルが高いということなんですけれども、また一方で、都民の多くは、最期のときを自分の自宅で過ごしたいんだという方々も大変多いわけです。
 平成十三年三月に東京都医療機能等実態調査報告書というのが出ておりまして、都内の診療所のうち、在宅ターミナルケアに対応できるというふうに回答したものは一一・四%と、非常に少ない状況だと思います。
 地域医療連携システム推進事業において、地域医療システム化推進協議会、これを設置して、ターミナルケアなどを推進してきております。しかし、在宅ターミナルケアに関する開業医、要するに往診してくださる開業医との連携を深めていく、進めていくということが大きな課題となっております。
 そこで、十年間の実績のある人材の育成事業、東京都のこの育成事業では、例えば受講生の後追い調査、講習のレベルアップを図る必要があると思いますけれども、見解はいかがでしょうか。

○海老原事業調整担当部長 人材育成事業のレベルアップについてでございますけれども、平成六年度から実施している人材育成事業につきましては、受講者アンケート等を参考にいたしまして、研修テーマや講師の選定等を行っております。
 例えば病院でのターミナルケアの実践例に加えまして、在宅でのターミナルケアの取り組み事例を紹介するなど、講習内容等に工夫を凝らしているところでございます。
 なお、受講者のその後のターミナルケアへのかかわり方や今後の研修内容のレベルアップに関しては、受講者のアンケート調査の分析を踏まえまして、今後とも充実方策を検討していきたいと考えております。

○大河原委員 ターミナルケア人材の育成事業の実績というのを見せていただきましたが、施設ケアと在宅ケア、両方対応できるように、講演会なども研修の内容も両方入っているわけなんですが、やはりそこで育成された人たちにこうしたターミナルケアの仕事についていっていただきたいというふうに思うわけで、この研修された方々がその後こういう仕事にきちんとつかれているかどうか、そういう実態調査もぜひしていただきたいというふうに思います。受講者のアンケート調査を分析するということなので、ぜひ充実する方向でお願いをいたします。
 そして、退院後は、おおむね外来で治療を受けながら経過を見るのが患者の生活になります。そして、必要に応じて、紹介元の医師に治療を依頼したり、また往診が可能な地域の医師や訪問看護師等、また個々の紹介を行うという、コーディネートというか、対応が不可欠なわけです。在宅を望む患者への体制整備に向け、往診可能な開業医をふやすことが必要であるというふうに思いますが、見解を伺います。

○海老原事業調整担当部長 ターミナルケアにつきましては、病院等での末期医療に加えまして、在宅でのターミナルケアの体制整備が重要な課題であると認識しております。今後、在宅ターミナルケアに取り組んでいる開業医の実践事例などを参考に、地域におけるこれからのよりよいターミナルケアのあり方を検討してまいります。

○大河原委員 在宅ターミナルケアでホームページを引いてみますと、データベースがありまして、私がおります世田谷区などは、かなり個人の医師がこうしたターミナルケアを始めているということがわかりますが、東京都がこうした施設のターミナルケアを中心に、またその地域で在宅ケアをサポートできる、そういう仕組みを早期につくっていくよう、支援をお願いしたいと思います。
 特に在宅ターミナルケアにおいては、中核施設としての緩和病棟、そして一時的な入院の機能にこたえる理解のある病院、また訪問看護ステーション、ボランティアの団体、高齢者在宅サービスセンターなどの福祉施設、またもちろん区市町村、保健所、こうした保健、医療、福祉、これらにわたる連携が必要でございますし、これを総合的にコーディネートする、このことがぜひ必要です。こうした人材の育成、ぜひとも東京都が大きく進めていただきますよう求めさせていただきます。
 次に、乳がん検診について伺います。
 乳がんにかかる女性は胃がんを抜いてトップであるというふうに聞きます。都内においては、市町村における乳がん検診を実施しておりますけれども、この実施状況及び都内の患者数、そしてまたあわせて、今度検診の方式が変わって、マンモグラフィーの検診というものが出てくるようになります。現況について、あわせて伺いたいと思います。

○小松参事 都内の区市町村における乳がん検診の実施状況についてでございますが、平成十四年度の地域保健・老人保健事業報告によりますと、受診者数はおよそ二十五万六千人、受診率はおよそ九%でございます。
 また、平成十五年度にマンモグラフィーによる乳がん検診を実施しているのは十五区市であり、受診予定者数は合計でおよそ一万八千人となっております。
 次に、乳がんの患者数についてでございますが、平成十一年度に実施されました国の患者調査によりますと、都民の女性のがん患者数は六万三千人で、そのうち乳がんの患者数はおよそその三〇%の一万八千人と推計されております。

○大河原委員 先日も、乳がん撲滅のためのピンクリボン運動というのが大々的に行われ、多くの都民の関心を高めたというふうに思います。
 厚生労働省は、来年度から、乳がん検診にエックス線撮影の全面導入を予定しているわけですが、乳房撮影にたけた診療放射線技師や画像を分析する読影能力のある医師の養成が検討課題とされております。乳がん検診の先進県である茨城県では、二〇〇一年、視触診検診を廃止して、エックス線撮影、マンモグラフィーか超音波検診、エコーを併用する指針をつくっております。エックス線撮影の読影は二人以上で行う、そしてまた、そのうちの一人は、日本乳がん学会などでつくるマンモグラフィー検診制度管理中央委員会が読影能力が高いと認定する、B級以上の資格者であることを求めております。
 そこで、このような中で、東京都としての役割はどのようになっているでしょうか、見解を伺います。

○小松参事 都では、国の動向やマンモグラフィー設置医療機関などについて、区市町村に情報の提供を行っているところでございます。引き続き国の検討状況の把握、迅速な情報提供に努めてまいります。
 また、マンモグラフィーによる乳がん検診を円滑に実施するためには、医療機関等において検診に従事する者の資質の向上を図ることが必要であります。このことから、読影を行う医師等を対象とした専門的な研修事業の実施を検討しております。

○大河原委員 機器が高いことと、こうした読影能力、非常に高い水準が求められているということがあると思いますが、ぜひこの人材育成、こうした東京都の役割を踏まえたご努力をお願いいたします。
 最後に、食品衛生に関する監視指導について伺います。
 食品衛生法の改正によって、新たに規定されました食品衛生監視指導計画、これを策定することになりますが、東京都の取り組みはどのようになっているんでしょうか。

○中井食品医薬品安全部長 ご指摘のように、食品衛生法の改正によりまして、都道府県知事や特別区の区長は、国が示す指針に基づき、食品衛生監視指導計画を定めなければならないこととなりました。
 この国の指針によりますと、都道府県や特別区は、その区域における食品の生産、製造、流通等の状況を分析、評価し、監視指導の実施体制を含めた実行可能性も考慮の上、近隣の自治体とも連携を図りながら、地域の実情を勘案した監視指導計画を作成することとされております。現在、この指針に基づき、特別区とも調整を図りながら、策定に向け、検討を行っているところでございます。

○大河原委員 食品安全、食品衛生監視指導、これは一歩も二歩も進むというふうに私たちは期待をしたいところなんですが、指針ができて、まだ具体的な中身が出てこないということでは、来年の四月からの計画を年明けからつくるということになりますよね。今検討中ということですけれども、ぜひ他の自治体とも連携してつくっていただきたいというふうに思います。
 この監視指導計画の策定に際して、都民意見の反映というものが重要かと思いますが、この都民意見の反映については、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

○中井食品医薬品安全部長 国が示しました指針によりますと、監視指導計画の策定に当たっては、意見交換会の実施、ホームページ、広報紙等を通じた意見募集など、地域の実情に応じた手段により、住民や事業者の意見を広く求めることとされております。現在、この指針に沿って、具体的な方法について鋭意検討しているところでございます。

○大河原委員 食品安全条例、都条例をつくろうということでございますから、都民の関心もますます高くなっておりますし、これまでも国に先駆けて食品安全行政を進めてきた東京都のこの監視指導計画については、より厳しいというんでしょうか、より安全性が確認できる、そういう計画が求められていると思います。
 また、都民の意見反映という点でも、ぜひとも活発に意見交換ができる場を提供すること、それからまたわかりやすいホームページ、双方向のやりとりができるようなもの、こうしたものもぜひご検討いただきたい、工夫をしていただきたいというふうに思います。
 以上で質問を終わります。

○田代委員 委員長のご希望もありますので、二点に絞って、手短にやりたいと思います。
 一点は、都民の健康サービスに関して、もう一点は東部地域病院について伺いたいと思います。
 私の診療所に、時々お母さんが、手の腱鞘炎ですとか、おでこに擦過傷があったりして、いらっしゃる方があるんですけれども、話をよく聞いてみますと、バスの中で、子どもを抱えているときに、守っていて、いろんなものにぶつかってしまった、こういうことで腱鞘炎を起こしてしまったり、擦過傷を起こしてしまったり、なかなか子どもを連れて外に出かけるのが難しいという話が出てきているんですね。
 実際、心の東京革命の中でも、基本的には母親は子どもと一緒にいよう、これが基本となって、これからの子育てをしていこう。時々悪口をいわれますけれども、保育等を頼んだときに、パチンコをやりにいくために保育所に預けている人がいるみたいな悪口をいわれるようなことがあるので、まあ全部が全部じゃないことは当たり前のことですけれども、どうしてもお母さんが子どもと一緒に外に出られないということになると、非常に窮屈な形になりますし、これから少子高齢化社会にとっては、子育ての世代の外出の支援というものをしっかり考えていかなくちゃならない。
 当然健康保険というのは健康を守るための保険なんですけれども、残念ながら、前に申し上げましたように疾病保険でありまして、病気になってから使うという形があるので、国保の今からの財政の危機を考えても、なるべく余分な出費は避けていきたい。
 そのためには、お母さんたちがいつでも安全に外出ができて、仕事に子どもと一緒に出ることができる。あるいは外出ができて、しかも病気というか、けがから予防されるような状態をつくっていきたいというのが私の希望でもあるんですが、実は、もうご存じだと思うんですが、横浜市は今月の十二日に、来年の一月からベビーカーを利用したまま市営バスに乗車できるようにするという発表をしているんですね。安全性の高い乗車方法としては、車内の手すり二カ所にベルトで後ろ向きに固定する、こういう形で基本ルールを定めて、利用者に呼びかけているわけです。
 そして、横浜市は市内を走る民間のバス事業者にも同じように対応してほしいということを求めているわけですが、東京都は当然、今まで統一ルールで、ベビーカーに子どもを乗せた保護者は、ベビーカーを畳んで、子どもを抱えてバスに乗るということになっているわけですけれども、先ほど申し上げたように、お母さんが身重で、しかもベビーカーを持っていて、荷物を持っていて、さあ、それを抱えてバスの中に乗っていけというのは、これはなかなか難しいところがあるんですね。
 途中でブレーキをかけたり、いろいろ曲がったりするときに、非常に不安定な状態になる。当然お母さんは子どもを守るために無理な体勢をとる。そういうところで腱鞘炎を起こしたり、いろんなことが起きてくるわけですけれども、そういう意味で、横浜市の方では、検討委員会から提言を受けまして、その提言というのは、基本ルールとして、ベビーカーに子どもを乗せたまま市営バスに乗車できるようにする。利用者が自己責任で安全な利用方法を選ぶ。安全性の高い乗車方法はベビーカーをベルトで後ろ向きに固定する。こういうことを提言を出しております。そして、降車用、いわゆるおりる方の扉からの乗車や車いすスペースの利用もまた、時間帯にもよると思うんですけれども、認めていこうと。
 例外としては、当然多数のベビーカーが一遍に乗った場合には、物理的に難しいことになりますから、これはある程度運転手さんがジャッジするようなことになるんでしょう。それから、車いすの利用者が乗車しているときには、いろんなトラブルもあるでしょうから、これもちょっと避けていただきたい。あるいはラッシュ時、これは難しいことですね。それから高速道路での走行、こういうときには、いろんな安全性から、畳んで乗車する方がいいんじゃないか、こういうことを提言しているわけです。
 これを一月までに、運転手さんの研修をしたり、あるいは市民の人たちにPRを努めて、理解していただく。そうしないと、理解を得てこういうものを進めていきませんと、非常に大きな混乱にもなりますので、その理解のため一月までの時間をとる。
 ことしの六月に、横浜市だけで調べましたら、一日平均で約二百人の人がベビーカーを使っているというんですね。ですから、それを東京に倍数をしてみれば、そこそこの人数、何百人から一千人近くになるだろうと思われます。しかも、その中で一割の方が、いろんなことをいわれるんですけれども、ベビーカーを畳まないで、そのまま乗せちゃっているという現実があるということなんですね。
 ですから、そういう意味で、これからの都民の健康サービスということを健康局が進めていく中で、それから、いわゆる疾病保険にならないような健康保険として利用していくためにも、東京都の交通局とも話をしていただいて、しっかりとその方策、方向性を考えていただきたいと思うんですが、それに対してどういうお考えだか、教えていただきたいと思います。

○酒井企画担当部長 交通局は、都バスにつきましては、ベビーカーを使用したお子様連れのお客様に対し、急ブレーキなど非常時の安全性を確保するため、車内ではベビーカーを折り畳んで乗車するようお願いしているというふうに聞いております。
 また、福祉局では、子育て支援と福祉のまちづくりの観点から、子育て支援環境の整備を促進するため、福祉のまちづくりの整備基準を改正し、子ども連れでの移動を安全で円滑に行えるよう、取り組みを推進していると聞いております。
 先生ご指摘のとおり、乳幼児をベビーカーに乗せたままバスに乗車ができるようにすることは、子育て支援策の一つとして有効なものと考えますので、今後、関係局と情報交換をしてまいりたいと考えております。

○田代委員 次に、東部地域病院の小児科の腸閉塞患者死亡例のその後の病院の取り組みについてお尋ねしたいと思いますけれども、七月の第二回の定例会、厚生委員会で、私は、救急外来の一端を担っている一医師としての立場から、それからもう一つ、医療を受ける一都民として、かいつまんで次のようなことを申し上げました。
 まず、医療はいわば究極のサービス業であって、経過も結果もともに非常に大切であるということ、そして、そのためには医療スタッフ間のチームワークとコミュニケーションが重要である。東部地域病院において医療事故の再発防止を図り、地域の信頼を回復するために、救急体制の確保や引き継ぎ方法の確立などを初めとする院内体制の再構築など、病院のシステムそのものを改善する必要があるということを申し上げました。
 これらについて、病院と公社が一体となってしっかりと取り組んでこそ、安心してかかることができる東部地域病院となることができるわけですけれども、その後、病院と公社はこうした点について真摯に取り組んできたものと思いますけれども、確認のために、幾つか質問したいと思いますが、事件後、公社及び東部地域病院では、医療の安全確保と信頼回復に向けて、どのような取り組みを行ってきたかをお聞かせいただきたいと思います。

○奥田医療政策部長 ご指摘のとおり、医療の安全確保と信頼回復に向けては、良好なチームワークの実現や引き継ぎの徹底など、院内体制を改善いたしまして、充実強化していくことが大変重要でございます。
 このため、東部地域病院では、チーム医療の推進、患者中心の医療の実現、医療安全管理体制の強化など、事故調査委員会報告書で掲げました七つの改善項目につきまして、年度内を期限とする具体的な実施計画を策定したところでございます。
 既に、当直医間のダブルチェックなど引き継ぎ方法を定め、徹底いたしましたほか、患者の急変時における職員参集訓練や救急蘇生研修、また、全職員を対象としたチーム医療研修を六回にわたり実施いたしました。
 今月中には、医療安全管理委員会に外部委員を導入する予定であるほか、年度末を目途に、医療安全管理マニュアルの見直しを進めるなど、病院を挙げて取り組んでいくこととなっております。
 一方で、公社といたしましては、所管二病院について、健康局が作成いたしました安全管理のための病院自主管理チェックリストに基づく総点検を実施いたしまして、使用薬剤の統一等の改善を行ったほか、患者の満足度向上や安心と信頼性確保のため、このほど患者中心の医療推進五カ年計画を策定いたしました。現在、この計画に基づきまして、クリニカルパスの充実拡大やリスクマネジャーによるインシデント・アクシデント・リポートの分析と点検、住民向けの医療公開講座の開催など、医療の質と患者サービスの向上に向けた取り組みを推進しているところでございます。

○田代委員 病院自主管理チェックリストですか、その内容を見せていただきたいと思います。それから、クリニカルパスの考え方も、これはいろいろあるものですから、どういう形で東京都が、あるいは公社が考えているか、これは詳しく教えていただきたいと思いますけれども、そうやっていろいろ取り組んでいただいている、病院と公社が一体となって、事故の再発防止、それから信頼回復に向けて全力を尽くして取り組んでいこう、それはわかりました。
 しかし、病院や公社がどれだけ熱心にそういうものに取り組んでも、それがしっかりと表に出て、住民の方々に、あるいは都民の方々に東部地域病院がどのように変わろうとしているのか見えてこないと、結果としては安心が得られないわけですね。地域の信頼回復というよりも、これは東京都全体の信頼回復にもなると思うんですね、あれはかなり大きなインパクトのある事件となりましたので。
 どのような形で地域医療機関、そして都民の皆さん方に周知をしていくのか、この信頼回復の過程ですね、どのようにということがあれば、教えていただきたいと思います。

○奥田医療政策部長 改善実施計画やその取り組み状況につきましては、地域の医師会や地元行政が参画しております運営協議会で報告いたしますことはもちろん、病院便りを通じて住民あるいは医療機関に周知するほか、東部地域病院のホームページにも掲載するなど、幅広く広報を行ってまいります。
 また、患者中心の医療推進五カ年計画につきましても、同様にホームページに掲載いたしまして、公社と病院とが一体となって、住民の信頼回復に向けた取り組みを行ってまいります。

○田代委員 どういうふうに変わっていくかということも必要なんですけれども、例えばその中で、問題になった医師あるいは看護師、あるいは事務局が、どのようなことがマイナスであったのかということも、明かしていかなくちゃならないことはたくさんあると思うんですね。変えていきます、変えていきますということで、一番基本的なことを隠ぺいしてしまっては、医療というものは明るくならないわけですから、医療の中身すべてがいいわけではなくて、医師に関しても、看護師に関しても、事務局に関しても、良質なものを提供しようとする人もいれば、逆にマイナスを与えるような医師もいる、看護師もいるわけですから、そういうところの原因究明ということもしっかりやっていただきたいと思うんですね。
 ところで、今東京都では、重点事業として、情報開示・地域医療連携推進モデル事業というのを進めていますけれども、この事業は、診療所における電子カルテ導入を推進し、中核病院とのネットワーク化を図ることで、異なる医療機関の間での患者さんの情報の共有化を進めようとするわけですね。この事業を進めることにより、患者さんが自分の診療情報を入手することができるようにもなるわけですし、それから、医療連携も格段にスムーズになることが期待できるわけです。
 私自身、診療に当たっているときに、初めて患者さんを診察するときに、他の医療機関においてどういうことを受けてきたのか、あるいは今までの経過がどうであったのか、初めて診察させていただく患者さんの情報というものが、ネットワークを通じて、病歴を含んでわかることができれば、医療事故の防止に大変大きく役に立つと思うんです。
 ただ、この電子カルテというものはまだまだ言葉の遊びでしかないのでありまして、実際、じゃ、電子カルテを構築するときに、だれが経済的な負担をどうやって出していくのか、幾らかかるのか、どこまでやったらいいのか、そして、情報というものに対しての守秘義務はだれがどこまで持って、どういう責任をとるかということは全く話し合いが我が国ではされていないんですね。
 ですから、電子カルテという言葉だけはいつも歩いているんですけれども、実際としてはあり得ない架空の話。お金が全く、予算がゼロである事業などということは考えられないわけですけれども、この予算に関しては、どこでも、東京都もそうですけれども、国でも話し合いが全くされていない。これは棚上げされたままに進んでいることなので、そうなりますと、やはり患者さんの情報というものが--どこの診療所に行っても同じように血をとられる、どこに行っても同じようにレントゲンを撮られる、どこに行っても同じような薬が同じようにかぶって出てくるということがいつまでたっても変わらないので、そういうところをしっかりどうやれば電子カルテというものが導入できるのか。
 それから、特に今問題なのは、医師が開業するときに、何科でも標榜できる。例えば私自身が形成外科、皮膚科というのを専門でやっているわけですけれども、あしたから急に婦人科をやることも、小児科をやることもできる。こういうことはどうも患者さんに対しての情報不足という以前の医師の資質の問題にもかかわると思うんですけれども、これは余りいうと、医師会に怒られちゃうかもしれないけれども、やはり患者さんが安心して医者にかかることができるような情報をしっかり出していくことも、このネットワークの中に入っていかなくてはならない。
 特に今問題になっている精神科の患者さんの問題なんというのは、精神科のクリニックというのは今物すごく雨後のタケノコのようにたくさん出ていますけれども、それは患者さんがふえてきたからであって、じゃ、もともとその先生たちが精神科の研修をしっかり受けているかどうか、まだわからないということもあるわけですね。
 そういうものを考えて、東京都がまだまだ取り組んでいかなくちゃならない、そういうものの姿勢の基本となるようなことを、この病院の事件を通じて改善して、発表していただけたら、大変ありがたいと思います。
 以上で終わります。

○河西委員 もう七番目になりましたので、私も重複部分を避けまして、簡潔に二つの問題についてお尋ねします。
 今、医療サービスの質の向上につきましては、大河原議員、田代議員も触れられました。医療技術の進歩は非常に目覚ましくて、医療の高度化が進んでおりますけれども、一方では、医療事故の報道が後を絶ちません。そんな中で、都民の医療に対する信頼は揺らいでいる、こういうご認識は東京都もお持ちだろうと思っております。
 そこで、患者さんが安全、安心、治療を受けられるためには、医療従事者の質の向上が絶対必要であります。特に患者さんのそばにいる看護職の資質の向上が重要だと思います。看護職の看護師さんの研修等について、何点かお尋ねをさせていただきます。
 まず、中小規模病院における看護師の研修の促進についてでございます。安全、安心な医療を推進するためには、医療従事者の研修が重要であることはいうまでもございませんが、中小規模の医療機関においては、個々の病院の中で研修を行うということも困難でありますし、少人数の小規模の病院では、院外の研修を受けるということも容易ではないというのが実情ではないかと思います。
 このような中小規模の病院における看護師の研修について、東京都はどのように取り組んでいらっしゃるのか、まずお伺いいたします。

○奥田医療政策部長 都では、職能団体とも連携いたしまして、東京都ナースプラザにおきまして、中小規模の病院事業者を対象に、感染や褥瘡防止といった看護技術の研修を実施しておりまして、多数が受講しております。
 研修の実施に当たりましては、都内医療機関等の看護管理者で構成いたします看護管理者連絡会議を通じて研修の周知を行いますとともに、受講しやすい環境づくりの必要性について理解を求めてまいりました。今後も、研修内容の改善や受講しやすい研修日の設定などを工夫して、研修の充実に努めてまいります。

○河西委員 今ご答弁いただきましたように、東京都はナースプラザを開設いたしまして、運営については看護協会に委託をして、研修を実施している。十四年度のナースプラザの研修の実績を拝見しまして、中小規模の医療機関でどのくらいの受講者があるのか、全体の中のどんな割合になっているのかなということで、数字を拝見いたしました。
 中小規模というと、二十床以上二百床以下ということで数字が挙げられておりますけれども、この幅の広いその中で、それじゃ、二百床に近いところはどうで、二十床に近いところ、あるいは、常時有床じゃなくて、もっと小さい診療所などのナースはどうなのか等々の中身については、残念ながら数字もつかんでないということでございますので、もう少し実態を把握されて、本当に受けたくても受けられない、そういう中小規模の医療機関のナースの研修の促進ということについて、引き続き工夫をするなり、環境の整備をお願いしたいというふうに思います。
 次に、認定看護師についてお伺いをしたいのですが、安全な医療提供のためには、看護職個々の十分な対応はいうまでもございませんけれども、感染あるいは事故防止等に見られるように、専任かつ専門的な指導人材の配置が必要であろうかと思います。
 このためには、水準の高い看護を実践できる認定看護師が必要と考えますが、現在の養成の状況についてお聞かせをください。

○奥田医療政策部長 今ご指摘の認定看護師の教育機関といたしましては、全国で四つの機関がございまして、そのうち二つが都内にございます。現在認定をされ、実際に教育が行われている看護分野は、感染管理、救急看護、ホスピスケア、がん化学療法看護など九分野でございまして、認定看護師登録者数は全国で約千名、東京都で登録されているのは約百九十名でございます。

○河西委員 全国で千名、そのうち都内で約百九十名しかいないという、少ないなという実感です。さらに今後養成が必要だというふうに思いますけれども、今後の取り組みについてお知らせをいただきたいと思います。

○奥田医療政策部長 都といたしましても、病院において水準の高い専門的な実践指導者が配置されることが望ましいというふうに考えております。現在、認定看護師の養成の拡大に向けまして、関係団体と協議を進めているところでございます。

○河西委員 ぜひ関係団体との協議をきちんとやっていただきたいなというふうに思います。
 それから、次は准看、准看護師の通信制についてお尋ねをしたいと思います。
 医療の現場では、患者さんのケアを行う看護職の中で、准看護師の占める割合が多いわけですが、こうした准看護師の資質向上も大切であるかと思います。現在准看護師が全国及び都内でどのくらい従事していらっしゃるのか、その実態についてお知らせください。

○奥田医療政策部長 現在、全国の准看護師従事者数は約四十二万人でございまして、都内では約一万九千人となっております。都内においては、看護職員全体の中で准看護師が占める割合は、約四分の一ということになります。

○河西委員 経験を積みました准看護師が働きながら看護師の資格を取得できるようにということで、このたび、十年以上勤務している准看護師を対象にした、新通信制と呼んでいるようですけれども、通信制の看護師の養成所、二年課程制度が創設されたと聞いております。
 国は、開設する養成所への補助事業として、十六年度に、関東甲信地区など八つのブロックに分けて、ブロックごとに一校という規模で予算措置をしていると聞いております。実際はどの程度の開設が予定されているのでしょうか、お伺いします。

○奥田医療政策部長 現在、全国で四校の民間養成所が開設を申請している。このうち関東では、栃木県の学校が申請をしているということでございます。

○河西委員 全国で四校、都内では今のところ開設の予定がないということだと思いますが、今後開設しようという養成所が出てきた場合に、都としてはどのように対応されるのか、お伺いします。

○奥田医療政策部長 十七年度以降の開設に向けまして、既に幾つかの都内養成所から相談を受けている状況でございます。これらの施設につきましては、都からも情報を提供いたしまして、相談に応じるなど、その実現に向けて支援をしてまいります。

○河西委員 ぜひ都の支援をお願いしておきたいと思います。
 准看から正看へという、この流れは、平成十一年でしょうか、国がまとめた准看護婦の--これは師ですけれども、移行教育に関する検討会の報告がございまして、将来は准看をなくして正看へ移行していくんだということで、方針化されて、具体的には、旧の通信制があったわけですけれども、教育時間数などを短縮して、移行教育を提唱したと。だけれども、環境が整わずに、移行教育そのものが今とんざしているといっていいんでしょうか、消えてしまったのか、あれなんですけれども、私ども、予算要望などを関係団体、職能団体から受けておりまして、一たん出した国のこの方針が、いつをもって准看の養成をストップされるのか、時期の明示もはっきりさせていただきたいというご要望もいただいているところです。
 これは職能団体の看護協会等々、あるいは医師会との絡みもあるのかもしれませんが、そこら辺のまた国との交渉、接触の中で、方向性が見えたら、お知らせをいただきたいということを申し上げて、この看護師の問題については終わります。
 もう一点は、保健所の再編と地域保健サービスについてです。
 先ほどご質問が既にありました。私も一昨年、厚生委員会のメンバーで、多摩地域の保健所の再編については、幾つか心配している点、あるいは検討をお願いしたい点を指摘させていただいたんですが、この一年間で検討が進みました。ことしの四月から再編計画が実施に移る予定でしたが、必ずしもことしの四月実施はしなくてもという方針転換があって、来年の四月からこの再編が実施をされていくということになりました。
 このたび、先ほどもありましたけれども、市長会、町村会で承認されて、今の十二保健所が七カ所に再編整備される方向になった。このことを踏まえて、多摩地域の保健所再編について、数点お伺いをしたいと思います。
 この再編についての市長会、町村会の了承は得られましたけれども、今後の見通しはどうなっていくのか、まずお伺いをいたします。

○齋藤地域保健部長 今後の見通しについてのお尋ねでございますけれども、なるべく早い時期の都議会におきまして、保健所の設置等に関する条例など、関係する条例改正につきましてご審議をいただき、平成十六年四月に保健所再編を実施してまいりたいと考えているところでございます。

○河西委員 今回の保健所の再編を進めるに当たりまして、昨年六月に、都と市町村の部課長級から成る多摩地域保健サービス検討会を設置されて、多摩地域の保健サービスのあり方等について意見交換、検討を進め、ことし七月に、検討結果として最終報告が取りまとめられた。その冊子をいただいているところですけれども、市長会、町村会では、都と市町村の実務者の意見交換、検討の結果であるこの最終報告を議論の材料として、保健所再編についての検討が行われたと聞いております。
 私も、保健所の危機管理的な機能というのは、昨今の保健衛生に関連する新たな機能だという認識を持っておりますし、この再編が必ずしも保健医療サービスの低下になるとは思っておりませんが、統廃合されて、特に私は、調布、狛江という地元でございまして、平成九年にも法改正に伴う再編があって、狛江市の保健相談所は廃止をされ、調布と合併をした。今度また、狛江調布保健所は再統合されるという中で、本当に身近なところで対人サービスなどを市町村に移譲されて、そこできちんとしたサービスが提供できれば、それがベストだというふうには思っています。
 その上で、新たな保健所機能がきちんと確立されていく、そこの連携がきちんととれていれば、それがベストだと思いますが、今の多摩地域の各市町村の財政状況なりを踏まえて考えてみますと、人的支援、それから技術的支援、財政的支援というのを伴わないでやってしまうと、結局は住民、都民にとってサービス低下につながるんじゃないか、こういう危機感を持っていまして、人、物、金はちゃんと手当てしてくださいよということで、この間の推移を見守ってきたわけですけれども、多摩地域の保健サービス検討会の最終報告では、今後の地域保健サービスの推進の仕組みとして、都から市町村への人的、技術的な支援策について検討され、その結果が盛り込まれております。
 この中で検討された人的支援及び技術的支援の具体的な内容はどのようなものか、お伺いをさせていただきます。

○齋藤地域保健部長 市町村への人的あるいは技術的支援の具体的内容についてでございますけれども、今先生おっしゃられましたように、本年四月には、精神保健福祉の一般相談が市町村へ事務移譲されたところでございまして、今日では、母子保健あるいは成人保健を含めまして、直接的な対人保健サービスの多くは既に身近な市町村を中心として進められてきており、また、その整備も整いつつあるというふうに考えています。
 そういう状況のもとで、この検討会では、人的支援あるいは技術的支援を検討したわけでございますけれども、このうち人的支援は、都の保健所が有する専門的な知識、技術を積極的に移転し、市町村の事務の円滑な実施を図るとともに、市町村への事務移譲などに当たりまして、市町村のご要請に基づき、支援を実施していくものでございます。
 その具体的内容といたしましては、都職員の地方自治法上の派遣ですとか、あるいは相互の人材育成を目的にした研修交流ですとか、都職員が出張によりまして市町村業務を支援する事業協力などが検討されたところでございます。
 また一方、技術的支援でございますけれども、都保健所の役割といたしまして、市町村の実務的、専門的能力や技術力の向上を支援するものでございます。具体的な内容といたしましては、これまでの都保健所と市町村とのさまざまな連携の実績も踏まえまして、職員研修の実施あるいは連絡会、事例検討会の開催あるいは新たな健康課題への共同検討などが最終報告に盛り込まれたところでございます。

○河西委員 また、その最終報告では、市町村が行う保健サービスへの財政的支援として、包括的な補助制度の考え方が盛り込まれております。検討会において検討されました包括的補助制度、この中身は、内容はどんなものでしょうか。

○齋藤地域保健部長 検討会におきましては、身近な地域保健サービスの推進主体でございます市町村が、その地域の実情に合わせて、自主的あるいは主体的に事業を展開することができますよう、包括的な補助制度による財政的な支援策を構築すべきとの考え方が検討されたところでございます。
 これは、市町村が対象事業から事業を選択し、実施する、いわゆるメニュー補助方式でございまして、検討会の議論の中では、例えば地域の実情を踏まえた保健サービスの充実などを目的として選択する事業あるいは新たな健康課題等の解決に独自に取り組むなど、他の市町村を先導する事業、さらには他の市町村と共同で取り組み、圏域における連携を促進する事業などが想定されたところでございます。
 今後、対象となる事業メニュー等につきまして、市町村の意向を聴取しながら、制度化を図ってまいりたいと考えているところでございます。

○河西委員 そうしますと、現時点では、包括的補助制度は、その方向性について示された段階だというふうに認識をしてよろしいのでしょうか。具体的な内容については、今後制度化される中で、事業メニュー等も含めて明らかになっていくということだろうと受けとめました。
 都財政と同様に、市町村の財政状況も大変厳しくて、経常収支比率など、私が住んでいるところは一〇〇%を超えているような、大変硬直化した財政状況の中にある多摩地域の幾つかの自治体もございます。
 そんな中で、保健所の機能を強化するとともに、市町村の保健サービスを本当にバックアップする支援策をきちんと構築していただきたいなということを申し上げておきたいと思います。
 さらに、この最終報告では、都と市町村の間の連携、支援策に加えて、保健所再編にかかわる市町村の地域特性を勘案した措置を講ずるということが盛り込まれました。この地域特性を勘案した措置というのは具体的にはどんなものがあるのか、どうお考えなのか、お伺いします。

○齋藤地域保健部長 最終報告におきましては、保健所再編にかかわります市町村の地域特性等を勘案した措置の例示といたしまして、圏域の状況に応じた分室的機能を存置、あるいは市の要望がある場合の廃止保健所の土地建物の譲渡が示されたところでございます。
 これらの措置の内容につきましては、今後、該当する市町村と個別に十分に協議していくこととされているところでございます。

○河西委員 ただいまご答弁のありました分室的機能の存置ですとか、廃止保健所の土地建物の譲渡ですとか、こういった中身は、現実問題として、方向性が大筋が決まった段階で、市町村の関心も非常に高いです。理事者側とともに、住民からのさまざまな要求もいただいているところです。それぞれの地域特性をきちんと精査されて、該当する市町村の要望を十分に聞いて、誠意を持って対応していただきたいというふうに思っています。
 私ども、例えば今回、申請等の事務に加えて相談事業も移譲された精神障害者団体などからも、もう方向は出てしまったと。そうすると、自分の住んでいるところで足りない社会的施設をどうつくるのかということで、今、ないから、それじゃ、次の目標はそっちだといって、頑張ろうというようなお声も幾つか聞いているところです。
 そういうこともあわせて、地域特性の精査の中で、今おっしゃった分室的機能と廃止保健所の土地建物の譲渡ということに加えて、そのほかのおくれている施設整備等々についても、ぜひご配慮いただいて、地元市町村との合意形成にご努力いただきたいというふうに思います。
 最後になりますけれども、今回、市町村との間で整備されました保健所の再編計画、現在の十三カ所の保健所を、二次保健医療圏に一カ所ずつということで五カ所、プラス八王子保健所と町田保健所、計七カ所に再編するということです。保健政令市のこの二市の保健所の再編の問題も、一昨年ご質問させていただいたんですけれども、当面存続するという考え方が示されておりますけれども、今後はどのような見通しなのかをお聞かせください。

○齋藤地域保健部長 平成十三年十月に策定いたしました二十一世紀の東京都保健所におきまして、東京都は、人口三十万人以上である八王子市また町田市につきましては、保健所政令市制度を活用した権限移譲の促進についてご提案したところでございます。
 今般、保健所再編につきまして、市町村との整理がなされた状況を踏まえまして、両市の保健所政令市への移行に向けた具体的な検討、協議を働きかけてまいります。

○河西委員 ありがとうございます。住民に身近な市町村による保健と福祉の一体的サービスの提供といった、地方分権や保健所政令市制度の趣旨は理解をしているところです。両市の行財政運営の実情等も踏まえて、八王子、町田、両市民の保健サービスの向上といいますか、充実強化につながるように、ぜひご検討、ご協議いただくように申し述べまして、質問を終わります。

○鈴木委員 まず、健康管理体制の充実について、生活習慣病対策を中心に質問します。
 ことしの五月に、健康増進法が施行されました。健康増進法は、国民の健康づくり運動である健康日本21に法的な根拠を与えたものであると聞いています。また、初めて健康に焦点を当て、国民自身を含めた各関係者が健康づくりにどう取り組んでいくか描いた法律でもあるわけです。
 健康づくりは、確かに国民、都民一人一人が行うものです。しかし、法がいうように、個人の努力を国や地方公共団体、健康増進機関が支えてこそ健康づくりの成果があって、健康な人々による健康な社会ができ上がり、ひいては医療費の低減をもたらします。経済産業省では、健康増進活動を推進した場合に、二〇一〇年には、現状のまま推移した場合より、約四兆円の医療費抑制効果が得られるというふうに推計をしているということです。
 さらに、健康寿命が伸びることによって、生き生きと働く世代が増加して、ひいては少子化を支える社会の仕組みづくりにもつながるというふうに考えます。少子高齢化が進展し、疾病の構造の変化が進む中で、都民が生涯を通じて健康に生き生きと暮らすための社会の環境整備がますます重要になってきていると思います。
 そこで伺いたいんですが、このような動きの中で、都では、健康づくり施策としてどのような目標を立てて挑んでいるというか、確認をする意味で、まずお伺いをしたいと思います。

○小松参事 都では、平成十三年十月に策定いたしました東京都健康推進プラン21を、健康増進法に規定された都道府県健康増進計画と位置づけております。このプラン21では、健康寿命の延伸と主観的健康感の向上実現のために、生活習慣病及び寝たきりの予防を目標として取り組んでおります。

○鈴木委員 都は、この東京都健康推進プラン21のもと、健康づくり施策を行っているわけですが、法では、都道府県の責務として、健康増進計画の策定のほかにも、健康増進に関する知識普及、情報収集、整理であるとか、人材養成、資質の向上、関係者への援助を行うとしておりますが、健康づくりは基本的に個人が取り組み、具体的な住民サービスは基礎的自治体である区市町村が行う中にあって、都はどのような役割を担っていくつもりなのか、伺います。

○小松参事 都の役割といたしましては、区市町村を包含する広域自治体といたしまして、第一に、区市町村の地方計画策定の支援とともに、プラン21の達成状況を把握し、科学的な評価に基づいた健康づくり対策の企画、立案、第二に、研修等による人材育成や情報収集、提供、調査研究等による関係者への技術的支援、第三に、関係者が自主的に取り組み、連携するための仕組みづくりを行っていくこととしております。

○鈴木委員 今三点にわたって、都の担うべき役割ということをお話しいただいたんですが、よりきめ細かなこれからの施策展開というものも望まれるわけでございます。
 プラン21では、生活習慣病の予防が目標の一つであるわけです。平成八年に国の公衆衛生審議会が成人病を生活習慣病というふうに--私もちょっと前までは成人病というふうに呼んでいたかなと思うんですが、このように生活習慣病というふうに呼ぶようになりまして、生活習慣の改善を重視した予防対策を推進することが必要だと提言をいたしました。健康日本21にせよ、健康増進法にせよ、生活習慣の改善を中心とした、一次予防重視の流れの中にあります。
 それでは、生活習慣病と呼び方を変えて、疾病予防への意識を変えてから、生活習慣病の実態はどのようになっているかというと、国が八月に発表した調査では、昨年の国の糖尿病の患者数は、いわゆる予備軍というものを含めて、一千五百万人を超えるというふうに推計されて、何と成人の六人に一人という割合ということです。国がこの生活習慣病対策の第一歩として糖尿病実態調査を初めて行った平成九年の数字と比べて、二百五十万人も増加をしているわけです。
 しかも、患者はさほどふえていないのに、予備軍の人が三割もふえている。糖尿病は放置しておくと、網膜症や腎症、神経障害などの重大な合併症をもたらすことがいわれております。糖尿病は世間でよく知られている疾病であるにもかかわらず、予備軍がふえている、ここが大きな問題だと思うんですね。ここをどうしていかなきゃいけないのか。
 糖尿病は一つの例ですけれども、生活習慣病全体の実態を正確に把握して、的確な対策をとることが急務だと考えるわけです。そこで、都内には、糖尿病、高血圧、高脂血症といった三大生活習慣病といわれているものですが、生活習慣病の患者はどれぐらいいるのか、伺います。

○小松参事 平成十一年の国の患者調査によりますと、都内の糖尿病の患者数はおよそ十九万人、高血圧症疾患およそ五十九万人と推計されております。
 なお、高脂血症につきましては、患者調査において、高脂血症のみの患者数が推計されていないため、平成十三年度の地域保健・老人保健事業報告で見てみますと、基本健康診査の受診者数およそ百三十九万人のうち、総コレステロールについて要医療とされた者はおよそ十八万人でございます。

○鈴木委員 それぞれ大変な数字なわけでして、特に、静かな悪魔とか最近はよく聞くようになりましたけれども、高脂血症ですね、コレステロールや中性脂肪、燐脂肪といった血清中の脂肪分が異常に増加している状態でいいんでしょうか、ドクターにお聞きしたいですけれども、こういう高脂血症に対する実態を把握する調査を、なかなか難しいというふうに聞いておりますけれども、この調査をすべきだというふうに考えております。
 いうまでもなく、生活習慣病については、当事者、本人が気がつかないうちに--まあ気がつかないのでといった方がいいのかもしれないんですが、気がつかないので、治療をしない例、されない例が多々あると思います。
 生活習慣病が怖いのは、本人の自覚症状がないままに症状が進行してしまうところです。この意味では、各自が日ごろ生活習慣に気をつけるということと同時に、先ほども申し上げましたように、生活習慣病の予備軍の人をいかに早く発見して、そしてどういう方向に、よい方向に導いていくかということが特に重要だと考えます。
 都では、生活習慣病の予備軍に対してどのような施策を現在行っているのか、伺いたいと思います。

○小松参事 都におきましては、生活習慣病予防対策を強化するために、区市町村が実施する基本健康診査の結果、要指導と判定された者を対象に、かかりつけの医師が六カ月にわたって栄養指導等の事後指導を行っております。この事業は、生活習慣改善指導推進事業、平成十二年度から実施している事業でございます。
 都民向けの情報提供といたしましては、糖尿病や高脂血症などの症状や予防のポイントなどを解説した都民向けのリーフレットを作成しているほか、健康局のホームページにおいても、食生活や運動、休養などの生活習慣を自分で確認できるようなチェックシートを掲載するなど、工夫した情報提供を行ってございます。
 また、検診に従事する医師等の資質の向上のため、研修事業を実施し、区市町村の検診実施体制の充実にも努めております。

○鈴木委員 平成十二年度から実施している生活習慣改善指導推進事業、これなんですけれども、栄養指導の後に事後指導を行うというんですけれども、やっぱり食事指導とか、どういう--事後指導というのをもうちょっと詳しく教えてもらえませんか。

○小松参事 基本健康診査の結果、要指導と判定された者について、かかりつけ医のお医者さんが、六カ月の間、三回にわたりまして、個別の生活指導を行います。そのときに、栄養士さん等も二回目ぐらいにかかわり合いまして、いろいろな栄養指導等も行うというようなことを行っております。

○鈴木委員 それをどう実行できるか、ここが大事になってくるわけですけれども、今後とも、病気になる前に、それぞれ各自が生活習慣に対する自覚を持てる機会として、今お話をいただいたような事業をぜひ充実していただきたい、こういうふうに要望します。
 今までの答弁、お話の中で、今、生活習慣の改善のために栄養指導等を行っているということですが、健康増進法ができる前は、栄養改善法という法律があったということです。これは戦後の食糧難の時代に、国民に栄養価の高いものをとらせようという趣旨のものであったわけで、それに対して、現在は、健康という観点から、食事情に合わせて栄養対策のあり方などを総合的に見直したもの、それが健康増進法なわけですが、生活習慣病を予防するという点において、健康的な食生活の実践は最も基本的で重要であると考えます。食事をとらない人はいないわけですが、よい食事が健康をつくり、健康だから、毎日おいしく食べられる、当たり前のことですけれども、そういうことだと思います。
 昨今は、テレビでも雑誌でも、特に食事と健康に関する情報とか健康食とか、店に行けば、健康機能をうたう食品も大変並んでおります。食生活における健康指向、これはどんどん高まっているわけで、反面、食生活の乱れが非常に指摘されていて、特に最近の若い人たち、ストレスによる食べ過ぎであるとか、むしろ食べ過ぎによる栄養過多が生活習慣病の低年齢化をまさにもたらしている過食、特に若い世代が食事を抜くことで栄養が不足する欠食、特に子どもや高齢者が一人で食事をとり、栄養が偏ってしまう個食といった問題は、まさに現代の食生活の裏の面でもあると思います。
 食生活の変化は全国的な趨勢かもしれませんけれども、特にライフスタイルの変化をいち早く反映する東京の食事情はどのようになっているかというのは、非常に気になるところです。
 そこで、都民の栄養摂取の現状について、どのような問題があるのか、伺います。

○小松参事 平成十四年東京都民の栄養状況によりますと、栄養素では、カルシウムや鉄が不足し、脂肪や食塩はとり過ぎている状況にございます。また、都民の食生活の傾向といたしましては、若い世代での朝食の欠食が多く、さらに、全国に比しまして、男女とも外食率が高い傾向にございます。

○鈴木委員 ここに東京都民の栄養状況という資料をいただいておりますけれども、やっぱり朝食をとらないケースが多い。朝食をとらないと十四種類の栄養素が不足するという、朝食が本当に大事だなと思いますけれども、この栄養状況の調査結果を参考に、国民一人一人がみずから食生活改善に取り組むための具体的な食生活の目標である食生活指針づくり、これを進めることが非常に大切だと思うわけです。
 ホームページのあなたの生活習慣チェック、さっきもチェックシートというのが答弁の中にありましたけれども、これはありますけれども、私の食生活指針といった、目標や達成度というものを書き込めるカードとか、そういうような表を、せっかくこういういいパンフレットができているわけですから、同時にというか、挟み込んで、個々に目標を達成できるように、やはり工夫をしていくべきではないかというふうに思うわけです。
 今申し上げましたような朝食の欠食や外食率が高い傾向によるビタミン類の摂取量不足、こういった問題に対して、都はこれまでどのような対策をとってきたんでしょうか、伺います。

○小松参事 都民に対する栄養相談や指導は区市町村が実施しております。都は、区市町村の取り組みが円滑に進められるよう、栄養状況の調査を行うとともに、研修等の支援を行っております。
 また、特に都民の外食率が高い現状を踏まえ、都は外食関連産業等に呼びかけ、平成十四年七月、関連団体、有識者、都民代表等から成る栄養成分表示推進協議会を設置し、外食メニューに栄養成分を事業者みずから表示する運動に取り組んでいるところでございます。

○鈴木委員 都民が健康的な食生活を実践するためには、外食を上手に利用することが大切だと思います。確かに最近、店で、何カロリーというのかな、あと塩分の成分を表示したメニューというのは見かけるようになりました、ファミリーレストランであるとかですね。
 栄養成分表示推進協議会では、具体的にどのような取り組みを行っているんでしょうか、伺います。

○小松参事 協議会では、具体的には、都民が利用しやすく、事業者にも表示が容易で、かつ正確な栄養成分表示のあり方について議論を重ね、平成十五年三月に、東京都における外食料理栄養成分表示ガイドラインとして策定するとともに、栄養成分表示を推進し、都民の健康づくりを支援することを協議会として共同宣言いたしました。
 現在、各業界独自の方策で、栄養成分表示の実施に取り組むとともに、都としては、外食業界及び都民向けのシンポジウム等により、表示の普及を積極的に図っているところでございます。

○鈴木委員 東京都における外食料理栄養成分表示ガイドラインを作成して、また、共同宣言を出したということですが、ガイドラインをいただきましたけれども、この東京都におけるガイドラインに基づいた栄養成分表示が、ファミリーレストランというような大きなレストランだけではなくて、広く食事を提供する食堂といわれるようなものまでも、きちっとこういうようなものが行われるように取り組んでいただきたい、こういうふうに思うわけです。
 外食市場が大きくなって、消費者の多い東京におきまして、こうした事業者の取り組みが活発に行われることは、都民の食環境の向上という点で大変意義があると思います。さらに、東京に本社や本部機能がある企業がこういうような取り組みを行うことで、まさに東京から地方へという、全国へ波及効果も期待できると思います。
 栄養成分の表示推進協議会の今後の活動に大いに期待したいと思いますし、都においても、ほかの運動や休養といった分野においても、事業者との仕組みづくりに今後ますます取り組まれますよう要望しておきたいと思います。
 健康づくりというのは、食事のとり方にしても、喫煙にしても、一人一人の自由な意思決定に基づいて進められなければならないというふうに私は考えています。目標の達成に期待感こそあれ、現実、それを実現する、そういうことは非常に容易じゃないと思っております。一人一人の健康づくりに対して、社会全体が支援していくことが不可欠であるわけです。
 都民の生活習慣病の予防というものを進めて、都民の健康を増進することも、私は東京発都市革命を推進する上で重要な政策課題だというふうに考えております。東京都がまさに文明病ともいえる困難な課題に取り組み、広域的自治体として、事業者や区市町村、さらには都民の健康づくりを支援する取り組みや一体となった取り組み、今後さらに展開をされますよう、政策強化、予算措置をきちっとしていただきたい、このように申し上げて、この質問を終わりたいと思います。
 次に、食品の安全確保におけるリスクコミュニケーションについて伺いたいと思います。
 ここに、平成十五年八月十五日に示されました東京都食品安全基本条例--これはまだ仮称でございますが--制定に向けた基本的な考え方、現在検討中でございますけれども、その第四の情報の共有と交流、その考え方ですね。そして、具体的な内容としても、その一として、情報の共有と交流の推進、都民、事業者との情報の共有と交流を進めるために必要な措置を講じる、こういうようなことが、今検討中の、条例案というふうにいってもいいと思いますけれども、うたわれているわけでございまして、このリスクコミュニケーションという問題は非常に重要な課題だと考えております。
 この問題につきましては、先日、決算特別委員会において、自民党の、我が党の山田議員から、その取り組み状況について質問をしておりますけれども、再度整理をして、若干三点ほど質問させていただきたいと思っております。
 これまで私たちは、日常自分たちが食べているものは安全だと、半ば当然のように今までは考えてきたと思いますけれども、一昨年のBSE問題に端を発する一連の事件を通して、私たちはとにかく食品の安全性に疑問を持ち始めている、都民もそういう傾向じゃないかな。何げなく感じているとかじゃなくて、もう疑い始めている、そういう状況だと私は思うんです。
 今日、私たちの文明がもたらしてきた科学技術の進歩によって、さまざまな生活様式に合わせて食生活の利便性が増す一方で、新たな化学物質が生み出されてきたり、あるいは、今まで感知することができなかった、ほんのわずかな量の微生物や化学物質が食品から検出されるようになっているのも事実でございます。
 こういった状況下にあって、食品の安全を確保するためには、常に最新の科学的知見に基づいて安全性を評価して、その結果に基づき、起こり得るリスクを最小限に抑えよう、そういう取り組みが不可欠であると思います。
 しかし、こうした取り組みだけでは、都民が食品の安全を享受して、安心して食生活を送ることはできないと考えます。BSE問題が象徴するように、行政が一方的に発信する情報だけでは、都民の不安や不信を解消することはできません。食品の安全に関する情報を正確に理解できない限り、漠然とした不安は私たちは消えることはないし、BSEのあの問題、事件が起こったときのようなパニックが繰り返される、そういうおそれがあるといわざるを得ません。
 最近、先ほども申し上げましたように、リスクコミュニケーションという言葉を、ようやくというか、よく耳にするようになってきましたけれども、このリスクコミュニケーションこそが、都民が安心して食生活を送るためのキーワードだとも考えます。
 そこで、三点ほどお伺いしたいんですが、まず、食品の安全確保対策を進めるに当たって、東京都はリスクコミュニケーションの重要性をどのように認識しているのか、まず伺いたいと思います。

○中井食品医薬品安全部長 食品の安全確保には、都民、事業者、行政など、食品の安全にかかわる関係者が協力し合っていくことが必要であります。そのためにも、一方向からの情報提供や普及啓発だけではなく、最新の知見に基づいて行政が行った安全性に関する評価の結果や供給者である事業者が持っている情報、さらには都民が食品の安全性に対して漠然と感じている疑問や不安といった情報が関係者の間で共有され、これに基づいて相互に意見の交流を図り、相互理解を深めていくリスクコミュニケーションという過程は欠かせないものと考えております。

○鈴木委員 情報の共有や意見交換を通しての相互理解を深めるというリスクコミュニケーション、非常に重要になってきている、まさに今ご答弁いただいた点でございます。
 リスクコミュニケーションが重要なことはもちろんですけれども、その具体的な方法となると、社会全般を見渡しても、食品の問題において見本となるような適切な事例を見つけるのは難しいんじゃないかと思うんです。
 そうした中で、東京都では、今年度、このリスクコミュニケーション推進のための具体策として、インターネット上で関係者が意見を交換することができる食品安全ネットフォーラムというものを開設しましたね。先進的な取り組みだと評価をいたしますけれども、どういうような意見が交わされているのか、伺いたいと思います。

○中井食品医薬品安全部長 本年八月から九月まで、第一回フォーラムといたしまして、食品への信頼を回復するにはをテーマに、昨今の一連の事件、事故に関する情報を提示し、それらに関しまして意見交換が行われました。
 この中で、行政に関する意見では、正確な情報提供や表示の適正化など、食品を選択する際の目安の提示を求める声がございました。また、事業者に関しましては、利益、効率優先の排除、消費者に関しましては、自分で情報を見きわめるなどの力を持つべきといったような、さまざまな意見が取り交わされました。
 現在は、健康被害の発生や誇大広告などの問題がございます健康食品をテーマとして取り上げまして、意見交換を行っているところでございます。

○鈴木委員 ここにプリントアウトしてきましたけれども、テーマへのご意見は、平成十五年十一月二十八日、午後五時まで投稿できますと。討論終了後、総括を行い、ホームページ上で公開しますというふうに書いてありました。ぜひまた楽しみに読ませていただきたい、こんなふうに考えております。
 それで、最後の質問になりますけれども、これまでの説明で、東京都はリスクコミュニケーションの重要性を認識し、また、本年度からさらにその取り組みを充実していることが、今伺って、わかりました。
 ところで、行政がさまざまなリスクコミュニケーションの場を設定して、リスクコミュニケーションを推進していくということはもちろん大切なことであると思いますけれども、そのような特別な場を設けて行うという手法にも限りがあると思うんですね。また、都民も参加の機会を設けることを求めるだけではなくて、リスクコミュニケーションの輪に、自分からというんですか、主体的に参加していくことが期待をされているわけです。
 今後、東京都は、こうした課題を踏まえて、リスクコミュニケーション、これをどのように推進していこうと思っているのか、伺いたいと思います。

○中井食品医薬品安全部長 リスクコミュニケーションを推進していくためには、多くの関係者が参加できる場を設けるだけでなく、日常から相互に交流する中で、共通認識を持てるようにすることが重要でございます。
 また、都民が主体的にかかわることができるようにするために、事業者や行政が都民の不安や疑問にこたえるよう、適切かつわかりやすい情報提供を行うことはもちろんのこと、都民自身も食品の安全について正しい知識を身につけ、主体的に食品を選択することが望まれます。
 このため、ネットフォーラムのような場を今後も充実させていくとともに、保健所等への問い合わせや都からの情報発信をリスクコミュニケーションの機会ととらえまして、食品の安全について関係者が共通の認識を持つことができるようにしてまいりたいと考えております。

○鈴木委員 いうまでもなく、食品の安全を確保することは、都民が健康で豊かな生活を送るためには欠かせない問題であり、都民が安全な食品を求めるのは当然のことであると思います。こうした都民の期待にこたえるためにも、ただいま答弁がありましたように、行政、事業者、そして都民も、それぞれの役割を主体的に果たしながら、相互理解を深めることが不可欠だと思います。
 リスクコミュニケーションは共通認識に向けた地道な取り組みの積み重ねだというふうに認識しておりますが、今後も、食品の安全性確保に向け、都の積極的な取り組みに期待をしていきたいと思います。
 ところで、冒頭申し上げましたように、この食品の安全確保について、東京都は現在、独自の条例を検討中であり、条例の考え方について諮問を受けた東京都食品衛生調査会は、答申に向けて、今審議の大詰めを迎えているというふうに聞いております。年明けには条例案として都議会に提案されるというふうになると思いますけれども、単なる理念規定にとどまらない、東京の実態を踏まえた対策を盛り込んだ、実効性のある条例になるようお願いをしたい、こういうふうに申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。

○藤井委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 事務事業に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○藤井委員長 異議なしと認めまして、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で健康局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時二十六分散会

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