厚生委員会速記録第十二号

平成十四年十月三日(木曜日)
第七委員会室
   午後一時三分開議
 出席委員 十四名
委員長曽雌 久義君
副委員長野田 和男君
副委員長吉田 信夫君
理事河西のぶみ君
理事古賀 俊昭君
理事佐藤 裕彦君
東村 邦浩君
山加 朱美君
柿沢 未途君
萩生田光一君
山口 文江君
小松 恭子君
樋口ゆうこ君
野村 有信君

 欠席委員 なし

 出席説明員
福祉局局長川崎 裕康君
総務部長吉川 和夫君
健康局局長長尾 至浩君
総務部長浅井 憲彦君
病院経営本部本部長櫻井  巖君
経営企画部長押元  洋君

本日の会議に付した事件
 意見書について
 付託議案の審査(決定)
 ・第二百一号議案 東京都立老人医療センター条例の一部を改正する条例
 ・第二百四号議案 東京都看護師等修学資金貸与条例の一部を改正する条例
 ・第二百五号議案 東京都リハビリテーション病院条例の一部を改正する条例
 ・第二百六号議案 東京都立母子保健院条例を廃止する条例
 ・第二百七号議案 東京都立病院条例の一部を改正する条例
 ・第二百八号議案 東京都立小児病院条例の一部を改正する条例
 請願陳情の継続審査について
 特定事件の継続調査について

○曽雌委員長 ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 さきに理事会にご一任いただきました意見書中、里親制度の充実に関する意見書につきましては、お手元配布の案文のとおり調整いたしました。
 案文の朗読は省略いたします。

里親制度の充実に関する意見書(案)
 虐待など様々な理由によって親と一緒に暮らせない子どもたちが、家庭的な雰囲気の中で温かい愛情に包まれ、伸び伸びと養育されていくことは、その子どもたちの健やかな成長・発達にとって極めて大切なことである。
 里親制度はこうした家庭的な環境の中での養育の重要性にかんがみ創設された。しかし、我が国においてはこうした子どもたちに対する処遇は、これまでそのほとんどを施設が担ってきたのが実情であり、里親制度は一向に普及せず、むしろ里親の登録数は減少傾向をたどっている状況にある。
 このため、都は、家庭的養護を強力に推進すべく今年度から広報普及活動の強化、年齢基準の緩和、児童相談所の体制強化など抜本的な見直しを図ったところである。
 一方、国も、近年の児童虐待の急激な増加などを背景に、改めて里親制度の重要性を認識し、今般、その大幅な充実強化に向け、抜本的な制度見直しを打ち出した。
 里親には、常に子どもと向き合いながら養育をしていかなければならないという精神的負担や、国で認められたメニュー以外の養育に係る経済的負担が重くのしかかっている。しかし、我が国における社会風土の影響もあって、まだまだ里親への認知度は低く、更なる制度の充実に向け、国の強力な支援が不可欠である。
 また、社会的養護の円滑な推進を図っていくためには、施設による養護と里親制度による家庭的養護とが緊密な連携・役割分担を図りつつ、地域に根差した社会的養護システムを構築していく必要がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、里親制度の充実に向けて、次の対策を講じることを強く要請する。
一 社会経済状況の変化に即応した社会的養護のこれからの在り方について、地域に根差した仕組みへの転換など今後の全体像を明確にし、そのための具体的道筋を示すこと。
二 子どもを里親に委託するに当たっての親権者等の同意を得る際に、里親と施設の区別なく包括的な同意を得ることができるようにするなど、法的制約を緩和すること。
三 里親手当の増額を図るとともに、教育費などの一般生活費等について、基準単価の増額とメニューの充実を図ること。
四 里親に対するレスパイトケアの充実を図るなど、里親を支える仕組みの充実を図ること。
五 里親制度に対する国民の理解促進を図るため、積極的に広報・啓発活動を実施すること。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十四年 月 日
         東京都議会議長 三田 敏哉
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
厚生労働大臣 あて

○曽雌委員長 本件は、議長あて提出の手続をとりたいと思いますので、ご了承願います。
 なお、その他の意見書につきましては、調整がつかなかった旨、議長に報告すべきであるとの結論になりましたので、ご了承願います。

○曽雌委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、付託議案の審査及び請願陳情並びに特定事件の閉会中の継続審査及び調査の申し出の決定を行います。
 これより付託議案の審査を行います。
 第二百一号議案及び第二百四号議案から第二百八号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に質疑を終了いたしております。
 この際、本案に対し発言の申し出がありますので、これを許します。

○小松委員 議案第二百一号及び第二百四号から二百八号に反対の立場から意見表明いたします。
 今議会の最大の焦点は、第二百六号議案、都立母子保健院の廃止条例案です。昨年の都立病院改革マスタープランで、ことし十二月の廃止が発表されて以来今日まで、地元世田谷区民を初め多くの都民から「廃止しないで」の大きな運動が広がり、今でも存続を求める署名が寄せられ、その数も九万筆を超えています。
 特に世田谷区では、区長を先頭に存続を求め、区議会も意見書を全会一致で提出するなど、区ぐるみの廃止反対運動が展開されております。母子保健院の廃止は、母と子の命に直結する問題です。さらに、地域医療、少子化対策の上からも慎重な検討が求められる課題であり、まずは関係者の合意が不可欠です。にもかかわらず、世田谷区長からの要請書も、区議会からの意見書も、いまだ撤回されていないことが確認されました。
 明確な合意がないだけではありません。成育医療センターの開設で、母子保健院の機能は代替できるとする答弁がありましたが、質疑でも明らかなように、総合的機能においても、外来の対応や電話相談、さらには出産件数を見ても、母子保健院はまさに母と子の安心センター、安心のよりどころです。本質的に、国のナショナルセンターという性格から、母子保健院の代替としては無理があることは明白です。
 小児救急についても、国立が地域に存在するからには、その地域での役割を一定担うことは当然ですが、成育医療センターも開設してまだ半年、ナショナルセンターとして軌道に乗ると、救急の対応に限界が出てくることも予想されます。
 都の要請に対する文書による回答はなく、休日・全夜間への参加は難しいと答弁されています。だからこそ、世田谷区では小児初期救急医療施設を開設しようとしているのではありませんか。世田谷区が母子保健院の近くに、少なくとも救急医療施設が必要だとしているのは当然です。第一、協定もなく、本来二次救急の役割を果たすべき都が撤退して、あとはよろしくというのは、無責任といわれても仕方ありません。小児救急の一層の拡充が求められているとき、なぜ廃止か、少子化に逆行の声は、区民の声です。
 もともと、母子保健院と国立小児、大蔵病院が地域的にもバランスよく小児医療を担っていました。ここで母子保健院が廃止され、国立成育医療センターのみになれば、世田谷など三区で構成される二次医療圏の中央部が空白になります。このことは、空白の杉並などにも影響が及ぶことは必至です。だから、廃止による医療機能への後退への不安が上がるのは当然です。少子化対策の重要性がいわれているときに、母子保健院を廃止して、なぜ小児医療が充実するといえるのでしょうか。
 さらに、母子保健院は都立として唯一、小児医療と福祉保健の結合した施設です。すなわち、都立の乳児院として唯一なだけでなく、産科、小児科と乳児院が一体となった施設としても唯一です。東京都社会福祉協議会の乳児部会も、公立乳児院の機能が全く失われることは極めて憂慮するところと、要望書を提出されております。
 廊下伝いの乳児院に第一子を預けながら第二子を出産できる、保育園では対応できない病後児保育もしてくれる、乳児のことなら、病気のことから心の病、子育てまで何でもきめ細やかな対応をしてくれる、こんな大切な都立施設は、拡充こそすれ、廃止など理屈にも実態にも合いません。だからこそ地元住民は、大きな不安、怒りから反対運動に立ち上がったのです。
 九万もの署名に見られるように、都民、区民の広い不安、しかも、区長は不安が増していると意見書でも述べています。成育医療センター開始後の、七月の存続を求める集会では、区も集会の後援者となり、区長はメッセージ、区議会からも多くの会派が連帯のあいさつをされております。
 母子保健院廃止は、清瀬、八王子小児病院の廃止とともに、地域医療からの撤退を打ち出した、都立病院改革マスタープランの最初の具体化にほかなりません。改めて、母子保健院は存続し、都立病院と民間医療機関、区市町村との連携も含めた小児医療、小児救急の総合的な拡充策を求めて、意見表明とします。

○山口委員 私は、都議会生活者ネットワークを代表し、本委員会に付託された第二百六号議案、東京都立母子保健院条例を廃止する条例に反対、他の全議案に賛成の立場から意見を述べます。
 六十年の歴史を持つ都立母子保健院は、新生児ICUを保有する地域周産期母子医療センターとして高度な周産期医療を担うとともに、貴重な小児救急や夜間診療を行ってきた重要な医療機関です。小児専門医が二十四時間常駐し、電話での相談や夜間の救急診療を行う小児救急医療の重要性はいうまでもなく、ハイリスクな分娩、極小未熟児などにも対応する産科医療への信頼は、年間約千件を超える出産を引き受けてきた実績からも明らかです。
 この母子保健院を廃止しようというのですから、都民の理解を得るために特段に丁寧な対応が求められていたことはいうまでもありません。都立病院改革が地域の医療環境に及ぼすマイナス影響は、基本的に東京都が解決すべき課題であり、都民の声をしっかりと受けとめ、都民の疑問や不安にこたえることは当然のことであり、さらに、都はみずからの責任を果たして、影響を受ける自治体への最大限の支援を行うべきです。
 第一の問題点は、国立成育医療センターの開設を、あたかも母子保健院の代替施設が開設したかのように廃止理由に挙げている点です。既に多くの区民の利用があり、国には地域医療に貢献していただいているとの認識を示していますが、都が母子保健院の廃止に際して、改めて地域医療への参加を、協定などの形で明白に先の保障が担保されているとはいえない状況です。果たして、代替となり得るのかが疑問です。
 第二の問題点は、東京都と世田谷区が合意したとしていることです。来年四月より、小児準夜間初期救急医療・病後児保育事業を開始することになったのは、区が廃止に合意したからではなく、都が進める廃止方針に対して、区民への小児救急を確保するため、区がやむなく対応した結果です。都民には公開されない協議会の内容についても、大きな疑問を感じます。廃止を強引に進めて情報も出さず、地域住民の声を反映させる機会も設けなかった都の姿勢は問題です。
 第三の問題点は、地域住民の医療ニーズに沿った、地域における医療提供体制づくりに対する支援策が十分図られたとはいえない点です。この少子化の社会状況において、地域で安心して子どもを産み育てていくためには、医療体制の整備は不可欠です。子どもが少なくなっている以上に、対応できる小児医療基盤が弱体化しているわけですから、これを補う対応が急務です。
 小児救急医療は、休日及び夜間の小児科医の確保や小児救急医療支援体制の充実が必須であり、区市町村が実施主体とされている初期救急医療体制が十分に確保されていない現状であることから、都は、効果的な小児の初期救急医療を身近な場所に確保できるよう整備を図るべきです。大病院との連携はもとより、地域における小児医療機関とのネットワークの充実及び強化が必要です。
 都立病院改革は、都立病院の新たな役割を定め、再編整備、各都立病院間のネットワークの充実や強化等を図るための改革案として示されましたが、改革は、あくまで都民のためのものでなくてはなりません。今回の母子保健院の廃止提案に見られるように、改革の影響を一番受ける都民、地元自治体への配慮を欠き、十分な議論もないままの廃止には、都民の納得は得られません。
 生活者ネットワークは、今回の母子保健院の廃止条例には反対を表明し、都議会生活者ネットワークとしての意見とさせていただきます。

○曽雌委員長 発言は終わりました。
 これより採決を行います。
 初めに、第二百六号議案を採決いたします。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の方はご起立を願います。
   〔賛成者起立〕

○曽雌委員長 起立多数と認めます。よって、第二百六号議案は原案のとおり決定いたしました。
 次に、第二百一号議案、第二百四号議案、第二百五号議案、第二百七号議案及び第二百八号議案を一括して採決いたします。
 本案は、起立により採決をいたします。
 本案は、いずれも原案のとおり決定することに賛成の方はご起立を願います。
   〔賛成者起立〕

○曽雌委員長 起立多数と認めます。よって、第二百一号議案、第二百四号議案、第二百五号議案、第二百七号議案及び第二百八号議案は、いずれも原案のとおり決定いたしました。
 以上で付託議案の審査を終わります。

○曽雌委員長 次に、請願陳情及び特定事件についてお諮りいたします。
 本日まで決定を見ていない請願陳情並びにお手元配布の特定事件調査事項につきましては、それぞれ閉会中の継続審査及び調査の申し出をいたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○曽雌委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
 また、閉会中に会議規則第六十条の規定に基づく委員の派遣が必要となった場合につきましては、その取り扱いを委員長にご一任いただきたいと思います。ご了承願います。

○曽雌委員長 この際、所管三局を代表して、櫻井病院経営本部長から発言を求められておりますので、これを許します。

○櫻井病院経営本部長 お許しをいただきまして、当委員会所管三局を代表して、一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本定例会にご提案申し上げました議案につきまして、ただいまご決定を賜り、まことにありがとうございました。
 ご審議の過程でちょうだいいたしました貴重なご意見、ご指摘等につきましては、十分に尊重させていただき、三局で連携協力し、今後の福祉・保健・医療行政並びに病院事業における事務執行に反映させていく所存でございます。
 今後とも、よろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げまして、お礼の言葉にかえさせていただきます。ありがとうございました。

○曽雌委員長 発言は終わりました。
 この際、私からも一言ごあいさつを申し上げます。
 昨年の八月八日、皆様のご推挙をいただきまして、委員長の任を務めさせていただくことになりましてから、本日まで約一年二カ月、無我夢中の日々でありました。
 当厚生委員会は、都民生活にとって最も密着をしている福祉、医療、保健の問題を中心に、大変重要な委員会であり、それゆえに、副委員長、理事、委員の皆さんの活発なご議論のもと、実りある委員会質疑を展開していただきまして、大きな成果を得ることができましたことに、心から感謝を申し上げる次第でございます。
 また、福祉局長、健康局長、病院経営本部長を初め理事者の皆さん、そして議会局の担当職員の皆さんにも大変にお世話になりまして、本当にありがとうございました。
 今、福祉改革、医療改革、そして都民の健康増進問題など、当委員会に課せられました課題が山積いたしております。これらの一つ一つを都民の側に立って、さらなる議論を展開し、都民の負託にこたえていくことが求められていると思っております。
 今後ともそれぞれの分野で、都民の幸せのため、ともどもに活動することを誓い合いたいと思っております。
 簡単でございますが、私のあいさつ並びに皆様への御礼とさせていただきます。大変にありがとうございました。(拍手)
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後一時十八分散会

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