都市・環境委員会速記録第九号

平成十二年五月二十三日(火曜日)
   午後一時五分開議
 出席委員 十三名
委員長尾崎 正一君
副委員長清水ひで子君
副委員長吉野 利明君
理事大西由紀子君
理事森田 安孝君
理事たぞえ民夫君
真鍋よしゆき君
竹下 友康君
かち佳代子君
谷口 卓三君
新藤 義彦君
立石 晴康君
田中 晃三君

 欠席委員 一名

 出席説明員
都市計画局東京都技監都市計画局長兼務成戸 寿彦君
次長安間 謙臣君
技監山下 保博君
理事塩野 忠弘君
総務部長本多 靖男君
総合計画部長高田 茂穗君
開発企画担当部長山崎 俊一君
地域計画部長勝田 三良君
地区計画担当部長森下 尚治君
施設計画部長杉浦  浩君
航空政策担当部長山内 一良君
開発計画部長林 孝二郎君
建築指導部長小林 崇男君
参事河島  均君
参事只腰 憲久君

本日の会議に付した事件
 陳情の取り下げについて
 都市計画局関係
  報告事項(説明・質疑)
  ・「東京都市白書二〇〇〇」について

○尾崎委員長 ただいまから都市・環境委員会を開会いたします。
 初めに、陳情の取り下げについて申し上げます。
 陳情一一第一四九号につきましては、議長から取り下げを許可した旨、通知がありましたので、ご了承を願います。

○尾崎委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市計画局関係の報告事項の聴取を行います。
 これより都市計画局関係に入ります。
 理事者から報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○河島参事 お手元に「東京都市白書二〇〇〇」の冊子と三枚組の概要版を配布させていただいておりますので、この概要版と冊子をもとにご説明をさせていただきます。

 まず、東京都市白書の作成の目的と位置づけでございますが、概要版の冒頭に記載してある部分でございます。
 本白書は、東京の都市づくりの動向を継続的に把握するとともに、今後の施策展開の方向を明らかにすることを目的に、平成三年から隔年で発行してきております。五回目となる今回の「東京都市白書二〇〇〇」は、国際都市東京の魅力に焦点を当てまして、現状分析を行い、都市づくりにおいて取り組むべき課題を整理したものでございます。
 恐れ入りますが、本冊子の四ページをお開きください。四ページの左下に、東京構想との関係等の流れ図が出ております。これをごらんいただきながら、説明をお聞き取りいただきたいと思います。
 都では、現在、都市計画審議会に設置された都市づくり調査特別委員会で、五十年先の東京のあるべき姿を視野に入れました東京の新しい都市づくりビジョンの策定に向けた調査検討を進めているところでございます。本白書は、都市づくりビジョンの策定に至る一連の過程に位置づけられるものでございまして、これからの東京の都市づくりを考えていく上での議論の素材として、都民の方々に広く活用されることをねらいとしておるところでございます。
 次に、今回の都市白書の特徴でございます。
 まず第一に、今後の都市づくりビジョンにつなげていくという本書の性格から、過去四回の都市白書に比べまして、都市づくりの課題について書き込みを厚くしておりまして、いわば問題提起型の報告書を目指したことでございます。
 第二に、国際都市東京の魅力に焦点を当てておりますが、とりわけ、これまでともすれば分野を都市づくりとは異にすると思われていたような産業政策とか観光・文化政策につきましても、都市づくりとの連携の観点から分析を行った点でございます。
 次に、都市白書の構成でございますが、これまでの都市白書と同様に二部構成といたしております。第Ⅰ部は、国際都市東京の魅力を高めるというテーマでございまして、これを特集といたしております。第Ⅲ部は、東京の都市の動向に関するデータを整理分析した部分でございます。
 以下、第Ⅰ部を中心に、ポイントとなるところをページを追ってご説明をいたしたいと存じます。
 まず、なぜ国際都市東京の魅力を高めるというテーマを設定したのかということでございますが、本文の一〇ページ、一一ページをお開きいただきたいと存じます。この両方のページの図表で、日本や東京の国際的な地位が近年低下しているという状況を示しているところでございます。
 日本の総合競争力というのが、一一ページの上の方のグラフでございますが、バブル崩壊以降、経済の低迷と相まって、国際的な競争力が急速に低下しており、九九年で十六位というふうになっております。また、一〇ページの下の表でございますが、働きやすい都市ランキングがございまして、これによりますと、東京は、シンガポールや香港など、アジアの都市にも大きくおくれをとって十位となっております。
 概要の二ページに入らせていただきます。こうした中で、東京の魅力の危機を克服いたしまして、真に国際都市と呼ぶにふさわしい都市を実現するとともに、世界の模範となるべき国際都市を目指す観点から、一つとして、ビジネス環境、二つ目として、産業政策と都市づくり、三つ目として、生活環境、四つ目として、観光・文化政策と都市づくり、さらに五つ目として、これらを支える交通基盤という五つの切り口に即しまして、現状分析、政策レビュー及び課題整理を行うこととしたものでございます。
 第2章からその具体的な分析に入りますが、一四ページから第2章になります。
 まず、ビジネス環境でございます。恐れ入ります、一七ページをお開きいただきたいと思いますが、一七ページの真ん中のグラフでございます。外資系企業が日本で事業展開をする上での問題点として、第一に挙がっているのがビジネスコストの高さということでございます。ビジネスコストに何が含まれるかというのは、そのすぐ下の図に内訳の項目が入っております。
 そして、都心三区におけます一人当たりの事務所床面積というのがこの五年間で約一・三倍に増加をしております。また、インテリジェント対応への要求が高まっておりまして、業務、商業、住宅など多様な機能を有する質の高い大規模複合開発に人気が集まっている状況であります。他方、都心でオフィスビルの老朽化が進むなどの課題を有しておりまして、本格的な国際ビジネスセンターとしての基盤は、いまだ未成熟な状態にございます。
 次に、三〇ページからでございますが、産業政策と都市づくりに関する分析でございます。
 恐れ入ります、三三ページの真ん中のグラフをごらんいただきたいと思いますが、東京では一九八六年以降、事業所の開業率が閉鎖率を下回る状況が続いております。閉鎖する企業の方が多くなってしまっているという状況でございます。こうした企業活動が低迷する中、近年、ゲームソフトやネット企業、インターネットを活用した企業など、国際的にも通用する新しいリーディング産業の集積が東京に見られております。
 これは、次の三四ページをごらんいただきたいと思いますが、山手線沿線などを中心といたしまして、ゲームソフトをつくるような、そういう新しい産業が立地している状況を示しております。
 また、多摩地域におきましては、製造業が着実にシェアを伸ばしております。グラフは、恐れ入ります、戻りまして、三二ページの真ん中の右側のグラフでございます。多摩地域の製造業出荷額は順調に伸びている状況でございます。
 また、環状道路の未整備によって、広域物流交通が一般道路を利用いたしておりまして、多くの貨物車が通過している状況がございます。この状況は三八ページの図面でお示しをいたしております。高速道路と一般道路に分けておりますが、普通貨物車の通過台数の量によって線の太さを分けております。
 こうした分析の上で、活力ある東京を実現する上で、都市づくりの面からも産業を支援していくことが必要であるというふうに考えられます。
 続きまして、生活環境でございますが、四九ページをお開きいただきたいと思います。
 都心三区では、夜間人口の約九倍にも上ります昼間就業者人口を抱えておりまして、ニューヨーク、ロンドン、パリと比較して、著しく職と住のアンバランスな都市となっております。過去十年間の夜間人口の変化を見ましても、東京の減少率が最も大きくなっております。図面の左側の方が、上が昼間就業人口密度、下が夜間人口密度でございまして、東京が一番左側の図ですが、夜間人口の都心部、中心部の量に比べて九倍ぐらいの高さの昼間就業人口がある様子が読み取れるかと思います。
 都内におけます一人当たりの公園面積は、ニューヨークやロンドンの二割程度の水準でございまして、また大規模地震に対して脆弱な都市構造という問題も抱えております。緑やオープンスペースなどを含め、質の高い住環境と都市の安全性を確保していくことが必要でございます。
 次に、観光・文化政策と都市づくりについてでございますが、七三ページをお開きいただきたいと思います。
 東京を訪れます外国人旅行者数は、七三ページのグラフにございますように、年間約二百五十万人と、ロンドンやパリなどと比べると四分の一程度にすぎません。我が国のGDPに占める国際観光収入は、前の七二ページのグラフに出ておりますが、わずか〇・一%にすぎない、諸外国に比べますと非常に観光収入が少ない状況ということがわかります。都市観光の分野での開拓の余地というものが東京の場合非常に大きいことがこれで読み取れるかと思います。
 江戸、東京を通じて、商業、文化を支えてきた水辺に着目をいたしますと、東京臨海地域の水際線の総延長二百四十五キロメートルのうち、自由にアクセスできる水際線はわずか二七%しかございません。この辺の状況は七九ページの図面をごらんいただきたいと思いますが、臨海地域において自由にアクセスできる、そういう水辺というものを赤で表示しています。それを、全体の総延長に対する比率を見たものが左側の円グラフで、二七%というふうになっております。バラエティーに富んだまちは東京の特色でございまして、都市づくりにおいてもそれらを十分に生かしていくことが今後必要というふうに考えております。
 続きまして、交通基盤でございます。八九ページをごらんいただきたいと思います。
 広域的な環状道路の整備は、ロンドン、パリ、ベルリンなどと比べまして、東京は著しくおくれております。この四つの都市の比較で、右下に整備率が書いてございますが、東京は三環状の整備率が約二〇%という状況を示しております。このことが、効率的な人、物の流れを大きく阻害いたしまして、高コスト構造をもたらす要因ともされております。
 また、公共交通につきましては、海外都市と比較して、地下鉄、鉄道等の整備は充実しているものの、乗りかえの利便性とか、運賃、サービスの面で、なお改善の余地があるものというふうになっております。
 アジアの主要都市の空港では、四千メートル級の滑走路が次々とつくられている中で、東京では成田の一本だけという状況であります。
 また、一〇〇ページをごらんいただきたいと思いますが、空港へのアクセスという点につきましても、海外の主要都市と比べ、東京の場合は非常に時間がかかる、そういう状況でございます。この表の中で、都心からの距離六十六キロというのは、他の都市に比べて最大の距離になっているところであります。
 続きまして、第3章でございます。
 第3章では、民間団体や市民・NPO等が最近行いました各種提言などを参考にいたしまして、魅力ある国際都市に求められる要素は一体何かということを探りまして、概要の三ページの下に記載をいたしておりますが、〔1〕から〔7〕までの七点に取りまとめてございます。こういったことが、民間のさまざまな団体等において、これからの東京が目指すべき方向として求められるものというふうにも見てとれるということを分析をしております。
 続いて、第4章でございますが、概要の方は四ページに入らせていただきます。
 第4章では、このような現状分析等を踏まえまして、東京の国際都市としての魅力を高めていく上で、都市づくりがこれから取り組むべき課題を示しております。
 まず、ビジネス環境では、老朽化したオフィスの更新を促進すること、商業、文化、交流など多様な都市機能の導入等によりまして、魅力ある都心の再生を図ること、そして、臨海地域等における複合開発の計画的な誘導、さらには、副都心及び多摩の心の魅力の向上、こういったことが課題になるというふうに考えております。
 産業政策と都市づくりでございますが、リーディング産業や高い技術力を有する製造業など国際競争力のある東京の産業を育成すること、物流の効率化を図っていくこと、低未利用地の都市づくりへの有効利用を図ることなどを課題として取り上げております。
 4-3の生活環境でございますが、東京型都心居住像というべき東京の住まい方のあり方、こういったものを確立して都心居住を推進すること、緑とオープンスペースの確保充実を図ること、震災対策の充実を図ること、こういったことが課題になると考えております。
 4-4は、観光・文化政策と都市づくりでございますが、東京の多様性を生かしたにぎわいのある都市づくりを進めていく必要があるということ、それから海や川の水辺を都市づくりに生かした水辺の都というべき都市空間、都市をつくっていく必要があるということでございます。
 それから、交通基盤でございますけれども、概要では五ページに入ります。世界への玄関口となる国際空港機能等の充実、環状道路の整備を最重点にした広域交通ネットワークの充実、バス交通の改善、LRTの導入などによる都市内、地域内の交通の充実等を課題として取り上げております。
 最後に、情報通信技術、ITと呼ばれておりますが、その進展に対応いたしまして、特に情報化時代と都市づくりという一項目を設けまして、情報化のための基盤整備の促進の必要性であるとか、IT革命と魅力ある東京の都市づくりへの積極的活用、こういった視点が必要であるということを記述しております。
 第5章では、魅力ある国際都市東京を実現するために求められる視点といたしまして、ソフト施策、環境調和、多様な主体の参加と連携、そういったことについて整理をいたしますとともに、そのための方策として、社会資本整備における重点化、効率化、民間部門の積極的な活用、合意形成の仕組みづくり等の必要性を記載いたしております。
 以上が第Ⅰ部の概要でございます。
 第Ⅲ部、東京の都市動向では、今回、特に都心居住について取り上げまして、一九八〇年代半ば以降創設されました都市計画・都市開発諸制度の指定状況と、これに基づいて供給された住宅戸数といったことについて、新たに整理をいたしております。
 具体的には、一五六ページのあたりに、その集計データを掲載させていただいております。
 内容は以上でございますが、本白書は、合計千五百部発行いたしまして、区市町村や図書館に配布をして都民の方々の閲覧に供するほか、大学、学術団体、研究機関などにも配布しております。なお、都民情報ルーム等におきまして、有償販売もしておるところでございます。
 多少長くなりましたが、以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○尾崎委員長 説明は終わりました。
 これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○たぞえ委員 今回の都市白書では、拠点の魅力の危機ですとか産業、物流の危機、潤いの少ない都市の危機、文化戦略の危機、環状道路の整備のおくれの危機、このように、どの分野も危機に陥っているという角度から分析がされています。
 では、その危機とは何か。調べてみましたら、危険で不安のとき、危ない瀬戸際という意味だそうですが、まず、危機である、危険であるという認識がこの二年間の間に急速に登場してきたのは、都市計画局のこれまでの都市行政の手法が危機を招くものであったという認識からなのでしょうか。

○河島参事 危機の認識ということでございますが、社会情勢が非常に大きく変化しております。少子高齢化が進んで、二十一世紀の初頭には人口減少を迎える、そういう時代が参ります。また、グローバル化が非常に進むとか、情報化が急速に進展して、従来とは違った社会の状況が生まれてくる。また、地方分権も進展しているなど、東京を取り巻く社会経済情勢は大きく変化しているわけでございますが、そういう中にあって、都市づくりの分野におきましても、従来のままでいいのかどうかということについて、やはりいろいろと問題が浮かび上がってくる。そういうことを危機として認識するということが今求められているのだというふうに考えております。
 こうした状況を踏まえまして、これからの東京の都市づくりは、目的や目標をより明確にした政策誘導型の都市づくりに転換することが必要だというふうに認識しております。これまでの政策の成果等について、この白書において点検を行い、課題を整理したところでございます。

○たぞえ委員 この白書で一番、私は問われていると思いますのは、都民にとって魅力ある都市、人間が最も大事にされている都市であるかどうかということだというふうに思うんです。
 私は、この点から、都が重大な危機だといっています環状道路の危機について具体的に伺いますけれども、白書の八九ページに世界の環状道路の例が取り上げられておりまして、パリ、ベルリン、ロンドン、整備率が九九%から七四%だと、このように比較をして、東京の環状道路は二〇%でおくれているから危機だというふうに取り上げられています。
 ドイツのベルリンを例にして伺いますが、このベルリンには二つの環状道路が描かれています。九六%も整備できているというふうにいっていますが、実際のベルリン市は八百九キロ平方メートル。東京区部の面積の一・三倍です。そのベルリン市とは、この四角い図の中ではどの位置にあるのでしょうか。

○河島参事 大変、口頭で申し上げるのは申し上げにくいんですが、ベルリンの内側の環状道路を取り巻くように、おおむね区部と同じような大きさで記載したものがあるんですが、この内側の環状道路の赤く塗られている長い方の辺を二倍ぐらいにした、その正方形で囲まれるあたりが、おおむね面積としては区部に相当するような面積、ベルリン市内の面積であるというふうになっています。

○たぞえ委員 中心の環状道路を取り巻く部分とおっしゃいましたので、私は、その部分を拡大して持ってきました。(資料を示す)これがベルリンの環状道路の図を拡大したものですが、今、参事がいわれたベルリン市というのは、ピンクに塗った四角い部分が市なんです。ところが、この白書では、ベルリンの環状道路ということで全体を網羅している。ですから、この道路の外側の黒い線、本書では赤い線になっておりますが、これはベルリン市に入っていない地域をベルリン市の環状道路として見ているわけです。
 それで九六%の整備率だと。これは、比べるのがどだい無理なんですよね。ベルリン市の人口は三百四十七万人で、東京区部の人口は八百四万ですから、約四割程度なんです。自動車台数でも、ベルリンは百四十一万台で、東京二十三区は二百九十七万台ですから、約四七%、半分なんですね。そういう人口も車の量も違うのに、同じように描かれて、ベルリンは整備率が高い、東京は低いと。このように描かれてしまっているわけです。
 本当に比較検討するならば、そういう都市の自治体の面積や人口、自動車台数を前提にして、そのベルリンが必要としてきた道路事情を、やっぱり事実を描かなきゃいけないというふうに思います。そういうことがきちんと行われずに、ただベルリンは進んでいる、それで東京はおくれていると、大変だといって危機をあおるのは、自治体としての客観性や公平性に欠けるといわざるを得ません。
 それから、東京の環状道路が描かれていますが、この図で、東京区部の部分はどこなのか。それから、一番外側の環状道路計画である圏央道部分のうち東京都にかかわる部分は、距離で全体の何キロで、何%ですか。

○杉浦施設計画部長 東京におきます環状道路と区部の位置の関係でございますが、お手元の図面でいいます東京の三つの環状道路が、それぞれ実線、破線で示されてございますが、真ん中の環状道路が外郭環状道路でございます。若干出入りがございますが、おおむねこの外郭環状道路の内側と考えていただければ結構と存じます。
 それで、一番外側の圏央道でございますが、圏央道は全延長三百キロでございまして、そのうち都内部分が二十四・六キロ。三百キロに占める割合は八・二%でございます。

○たぞえ委員 外側の円周の圏央道のうち、東京都部分は実に八・二%。ですから、ここの図の中に千葉、茨城、埼玉、東京、神奈川という首都東京圏全体を描いて東京の環状道路が足らない、こういうふうに描かれてしまっているわけです。東京都の固有の課題とは別のこの首都圏を描くのは、非常に都民にとっては作為的じゃないでしょうか。建設省がつくったと書いてありますが、こういう客観性のない比較図をそのまま都民に白書で示すのは再検討するべきです。このことを強く申しておきたいと思います。
 私は、整備が進んでいる今のような都市の交通政策について勉強してみました。ドイツではこれまで、経済発展というこの至上命令に都市計画が振り回されてきたそうです。道路の舗装率を高めたり、道路拡幅を行って市内にガードレールをつくったり、これまではすべて車のため、すなわち経済発展のための都市計画で、ここでは人々のための都市の快適性といった観点は重視をされてきませんでした。
 その結果、車は歩行者を脅かして、まちの中に車が入れば、その分だけ人間は締め出されていく。まちは車に占領されて、人は道路の隅に身を縮めて、通る車に騒音と排気ガスを浴びせられ、ゆっくりまちを散歩したり、道路で人と話す、そういう空間はいつの間にか消え去ったと、最近発行されました、ドイツのまちづくりという中で、ドイツの道路分析が行われていました。
 最近では、こういう教訓から、新しい道路はつくらないと。道路を狭くしたり、三十キロ制限にしたり、一方通行をふやしているのがドイツの特徴だというふうにも述べています。そして、車を使いにくくする、使わないためのノーカーデーなどの心理作戦や、また、ほかの公共機関を優先したまちづくりを進める、こういうことが政府によって取り組まれているという内容でした。
 イギリスですけれども、九〇年代に、自動車利用や郊外開発抑制という政策を展開しているんですね。きょうは、そのイギリスから取り寄せました現物を持ってきたんですが、イングランドの交通と土地利用に関する計画、政策指針という、訳した日本語の冊子になっているんですが、この中では、道路建設が交通量を増加させていると、このように政府が地方計画庁に文書で指示した内容なんです。中心的な政策展開の内容は、交通需要の増大の対応は、専ら道路建設によって行うのではなくて、公共交通への転換、総合的な方法で対応するという内容であります。
 アメリカの交通政策も、九〇年代に大きな変化を見せておりまして、九八年に成立をした二十一世紀に向けた交通均等法、この法律では、自動車公害を根本的に解決するには、車の使用自体を抑制していくことが不可欠だとして、大型トラック依存から海上、鉄道輸送への重点移行を出しています。
 つい先日発表されました東京都環境局の環境白書二〇〇〇というのが届きました。これを見てみましたら、この中でも、交通需要の増大に道路の整備だけで対応する時代は、世界的に見ても終わりつつあるというふうに、ここで冒頭述べているわけです。そういう結論を出しているんですね。
 これは動かすことのできない事実ですけれども、そういう認識を都市計画局はお持ちなのでしょうか。

○杉浦施設計画部長 イギリスを初めとする諸外国のいわば道路交通渋滞対策につきましては、もちろん学ぶべき点が多いと考えてございますが、基本的には、やはり自動車交通の歴史を持つ諸外国が、それなりに道路のインフラストックをある一定水準まで整備しているのに比べ、我が東京都は、道路率でいっても、あるいは先ほどの環状道路の整備についても、まだ極めて劣悪な状態だと思っております。
 したがいまして、道路整備は今後もやらなければいけないという考えではありますが、しかし、もう一方、やはり需要調整というものにつきましては、それなりに合わせて進めていく必要があろうかと思っております。
 そういうことをあわせて道路渋滞の緩和に努め、環境改善などの都市のひずみに対応していくべきだと考えております。

○たぞえ委員 学ぶべき点は多いとおっしゃいましたけれども、今の自動車依存型を脱却しようという世界の流れから見れば、今の都政が掲げている政策は、やはり道路整備を、半分しかいっていないからもっと進めると、自動車総量抑制という点までには到達をしていない、そういう流れの中で、今回、白書が出てきているわけですよね。
 整備率が低いから危機だという、こういうおどかすような表現は、本当に安心して住めるまちづくりということを望んでいる多くの都民にとってみたら、この危機という言葉が本物なのかどうかということが改めて問われてしまうのではないかなというふうに思います。
 この白書の中で、渋滞が起こる原因として、都民のアンケートで一番多い答えを一つだけ挙げてください。

○河島参事 白書の九一ページに、交通に関する世論調査の結果をグラフで示しております。
 交通混雑の原因は何かという問いに対して、一番多い回答が、自動車の交通量が多いという回答になっております。

○たぞえ委員 まさにそのことが都民からも指摘をされているわけです。ですから、自動車量が非常に多いと。例えば、今の東京の車を一列に並べたら、東京の道路からあふれてしまう。車庫に入れているおかげで何とか走れるわけで、総量はこれよりも多いというのが、この困難に陥っている原因であるというふうに思います。
 そこで、八一年に、東京都が計画的な都市計画道路の事業を促進するという理由で、現在の道路計画のベースを立てました。九一年には第二次道路計画を作成したわけですが、その二回の計画で、いわばどれだけの将来交通量が予測されたのか。どう見込んでいたのでしょうか。

○杉浦施設計画部長 自動車交通量の予測につきましては、第一次の事業化計画、一九八一年でございますが、それを策定しました当時、あわせまして都市計画道路の再検討というものを全面的に行っておりまして、その中では、昭和七十五年、すなわち二〇〇〇年でございますが、東京に起終点を持つ自動車交通量は約八百八十万トリップになると見込んでございます。その次の第二次事業化計画、これは一九九一年でございますが、この時点では自動車交通量の将来見込みの再予測は行っておりません。

○たぞえ委員 十九年前の一九八一年には、当時三百九万台の車が将来八百八万台、約五百万台でしょうか、ふえると。そういう試算で道路計画がつくられたといわれました。
 六年後の八七年には、実績は三百五十万台と、四十万台しか伸びませんでした。第二次計画策定時の九一年は四百十万台で、伸びて六十万台、こういう実態ですよ。以降九年間はずっと、東京の車の台数は四百十万台の水準を維持しているわけです。とても八百万台には及ばない。十年前の水準に、今の東京の自動車量はあります。首都高速道路の交通量も、この白書の中に出てきますが、八九年には一日平均で八十七万七千台の走行量でしたが、十年間、ほとんど量は変わっていません。
 東京の道路距離が、二万三千八百四十六キロ道路がありますが、そのうち二千百キロ区間について、渋滞の調査を行いました。渋滞箇所というのは、一日平均して、二十キロメートル未満の区間が三百十三キロで、これは二千百キロ区間の一五%なんですね。全体の一割五分ですよ。二万三千八百四十六キロで見ても、ほんの一部しか、渋滞地点というのはないわけです。
 今度の白書の冒頭に、石原知事がーーこの方は、飛行機から東京を眺めるのが好きなんでしょうか。東京を上空から眺めると、渋滞した道路が延々と広がっている、このように述べられていまして、東京じゅうどこでも渋滞だと、こういう印象を与えるあいさつなんですね。これは、事実と違う政策誘導だというふうに思います。こういう事実を事実として見ないで、危機だといって整備の促進を図るという手法は、少し乱暴ではないかなというふうに思います。
 この白書では、都市計画道路の整備率が五〇%でおくれているというふうにいっていますが、現在の自動車保有台数の推移は、ほとんど変化していないもとでは、二十年前の道路計画のベース、これは過大な見積もりだと思います。軌道修正をするべきだと思いますが、どうでしょうか。

○杉浦施設計画部長 先ほど私がお答えした数字を、委員の今のご説明の中で、あるいは誤解なさっているかもしれませんので確認させていただきますが、一九八一年当時の八百八十万という数字はトリップ数でございまして、所有台数の四百万台は、確かにおっしゃるとおり、最近はほぼ横ばい、やや微増という状況でございます。八百八十万トリップと、それから四百数十万の所有台数とは、一概には対比できない話でございます。
 最近の交通事情でございますが、首都高速が、例えば渋滞台数が減ったとはいえ、それは経済状況に極めて左右される有料道路でございます。一般道路では渋滞状況はさほど減っておらないわけでございますので、やはり一つの、白書における危機という認識は、私ども持っているわけでございます。

○たぞえ委員 軌道修正はしないというお話なんですけれども、この白書の中で、今後の自動車保有台数の予測や交通量の推移というのはーー残った整備率を高めるというふうに、数字でも示しているんですか。

○河島参事 今回の白書におきましては、白書としての推計は行ってございません。今後の計画の中で検討すべきものというふうに考えております。
 危機の認識につきましては、現在の渋滞等の交通状況が、効率的な人、物の流れを大きく阻害し、高コスト構造をもたらし、ひいては国際都市としての活力や競争力を低下させていることをとらえて、危機に瀕している、そういう認識を持ちながら白書の分析を行っているところでございます。

○たぞえ委員 後ろの方はよく聞こえませんでしたけれども、要するに、この白書の中では、将来の自動車が東京ではどうなるのかという予測は持っていないままで、とにかく整備がおくれているから危機だと。こういうスタンスというのは、客観的に事実に裏づけられた、そういうものがベースになった道路計画ではないなというふうに、改めて強く思いましたし、指摘をしていきたいと思います。
 東京の道路計画は、八一年以降で、もう約二十年たつわけです。この間、社会経済情勢も大きく変化しているわけですが、道路計画のあり方について、総合的に検討する課題があるんではないかと思いますが、どうでしょうか。

○杉浦施設計画部長 道路計画が、現在の、例えば第二次事業計画も、一応目標年次が平成十二年ということですし、策定から十年たっているわけで、その間の社会情勢等の変化を踏まえまして、これからどうするべきかということは、当然のことながら検討していかなければいけないということであろうかと思っております。
 私どもは、そういう意味での問題意識は持っておりまして、さまざまな面での下作業をしておりますが、まだこれからどうするという明確な方向性を打ち出すまでには至っていない状況でございます。

○たぞえ委員 もう二十年も経過したわけですから、実際に道路を必要とする部分もあるし、実態に合わない状況になった場合には、やっぱり見直しをして、一たん立ちどまって、後ろを振り向くという習慣を、我々は持たなきゃいけないと思うんですね。一度決めたから、それでもう何が何でもいくと、こういうご時世ではないと思うんですよ。これだけ住宅地が密集して、今や住宅は上に伸びていく、空に向かって伸びていく時代の中で、あと五〇%も広げなきゃいけないといったら、一体都民はどこに住むんでしょうか。
 二〇〇〇年という年に出した白書でありますから、やっぱり将来の東京の交通、道路、これをどうするのかという方向も打ち出していただかないと、危機だ、危機だといって、本当に深刻な事態であることだけが先走って方向が見えてこないということでは、都民も納得できないと思います。
 環境白書の石原知事のごあいさつの部分を読みまして、なるほどなと思ったんでが、環境白書の冒頭、知事がーー別に知事を褒めているわけじゃないんですけれども、環境白書では、環境問題への認識を深める上で大いに活用してほしいというふうに、都民に投げかけています。
 しかし、都市白書の場合にはそういうスタンスではなくて、議論の素材として、また、都市づくりを考えていく上で活用してほしいと。ですから、一歩踏み込んで、都市づくりについて提案型の白書なんですね。白書というのは事実を伝えるということが中心ですから、そういう点では、これまでの二年おきに出てきた白書とは少し体質が違ってきたというふうに思います。
 そういうことならば、白書じゃなくて、都市政策という名前に切りかえるべきですよ。しかも、先ほどいいましたように千五百部ですからね。一千二百万の都民の千五百部といったら、ほとんどの都民は見ることができない。こういう大事な内容が、都民にも十分広がる場所も機会もないのに、方針までもここに打ち出されていくというのは、果たして白書という性格を帯びるものなのかどうか、大変危惧をするわけです。
 次期白書をつくる場合には、やっぱり白書は白書という性格を持っているわけですから、そういうスタンスでつくるべきであるというふうに考えます。

○森田委員 私も、この都市白書に関して少しお伺いしたいと思います。
 この都市白書の位置づけですけれども、これは皆さん方、大変なご苦労をされてつくった白書で、位置づけでいうと、この四ページのフローチャートで見ますと、この都市白書から都市構想の中間のまとめになって、東京構想二〇〇〇の基礎資料になるというようなとらえ方ではないかなというふうに思います。そういうんでは、単に事実関係を書いただけではなくて、いろいろさまざまな、これからの東京都としての考え方が網羅されているというふうに、つくる上では非常にご苦労されたんではないかなというふうに思います。
 この中で、知事が、五十年先を見通してということをいっています。先ほども、参事の説明で五十年先といっていましたけれども、今の時代に五十年先を見通すというのは、ちょっと現実には不可能じゃないか。今、これだけ激しい時代で、十年先の予測もなかなかわからない、こういう時代ですので、五十年先は少しいい過ぎかなというふうに思います。
 そういう中で、私が気になるのは、外国の都市と至るところで比較をされているんですけれども、東京の将来は、この外国の都市からおくれた部分をーー先進都市、ここでいっているパリとか、ロンドンとか、さまざまな都市に追いつくことが東京の目的なのかどうか。この辺はどう考えていらっしゃるんでしょうか。

○河島参事 諸外国と比較することの意味でございますけれども、必ずしも諸外国の整備水準に追いつくということを目的として分析をしているわけではございません。諸外国が、それぞれの都市の置かれた条件の中で、地域特性を反映しながら、その都市の繁栄を図っている。その努力の課程の中で、さまざまな都市づくりの取り組みが、それぞれの文化の中で行われているわけです。その取り組みについて、東京は東京の、やはり独自の文化、独自の立地条件を持っているわけでございまして、そのまますべてが横引きできるようなものばかりではないのは、当然でございます。
 ただ、諸外国がいろいろこれまで取り組んできた、いろいろな都市づくりの成果というものが、また、その取り組みの方法というものが、参考になるものがあれば、これを積極的に取り入れる、こういう努力は必要なのではないか。そういう意味で、諸外国のいろいろな都市づくりの取り組みの状況というものをきちんと把握するということは、やはり東京のこれからの都市づくりを進めていく上では必要なことではないかというふうに考えているところでございます。

○森田委員 私も、ほかの都市に、いろんな道路だとか、環境、さまざまなところで追いつくのが東京都の目的ではなくて、都は、都なりの特徴を持ったまちづくり、これをしていかなくてはならないんではないかな。そういう観点からすると、果たしてこの白書、これから都市構想でそれが出てくるのかもしれないけれども、この白書では、なかなかその部分が見えないんではないか。外国との比較はしているんだけれども、じゃあ東京都はどういうまちにしていくんだろう、ここがなかなか見えてこないんですね。
 私も、全部じっくりと読んだわけではないんですけれども、何となく外国との比較が多くて、じゃあ東京都はどういうまちにするんだろう。一言ではいえませんけれども、パリは、あるいはロンドンは、ニューヨークは、いろいろやっぱり特徴がありますよね。そういう中で、東京が、その平均的なまちではなくて、今度は東京は東京としての二十一世紀、五十年先といっていますけれども、十年先、二十年先に東京というまちはこういうまちなんだという特徴を持ったまちづくりをしていくべきではないか。これが表現されるのは、これではなくて、東京構想なんですか。

○河島参事 先ほどの四ページの流れ図をごらんいただきたいと思いますが、ただいまの森田理事のご質問にございました、諸外国との比較などの分析をして、これからどういう東京の都市づくりを進めていくか、それを具体化させる作業としては、下の方の流れ、都市づくりビジョンの策定作業、これをもってそれに対処していこうというふうに考えているところでございます。
 現在、都市計画地方審議会に対しまして、社会経済情勢の変化を踏まえた今後の東京の新しい都市づくりのあり方はいかなるものであるかという諮問がなされまして、それに対する審議が、都市計画審議会、そして、そこで設置された特別委員会の中で行われているところでございます。
 今月末の都市計画審議会に、特別委員会の方から中間のまとめが報告される予定になっておりまして、これがその下の流れ図の中間のまとめと書いてあるものでございます。
 今回の都市白書は、そういった検討作業の課程の中で、東京が抱えている課題を整理いたしまして、その検討に反映をさせていく、検討の材料としていく、そういう趣旨を含めております。
 こちらの都市づくりビジョンの都市づくりの考え方というものにつきまして、都政全体の総合的な計画、構想でございます東京構想への反映、これがこの流れ図の上の方に行く矢印でございまして、都市像とか都市構造の、その基本的な考え方については、都市づくりビジョンの策定作業の成果を生かしながら東京構想に反映していく、それによりまして、ソフトとハードと連携のとれた東京の全体的な都市運営をやっていく、こういう構図でございます。

○森田委員 何かよくわからないんですけれども、この都市づくりビジョンで反映すると。これだけの都市づくりをするには、これは東京都も投資をしなくてはできませんよね。そういう経済的な予算面とか、そういうのは、どの段階で、どこに出てくるんですか。

○河島参事 ただいま申し上げました、今後の東京構想、それから東京構想の部分としてつくられるかもしれませんが、一定の、当面の期間を絞った実施計画、そういったものの検討の中で、財政との関係の中で、どこまで都市づくりに対して財政的な支出が可能であるか、そういう中で、東京都全体の調整が図られるというふうに考えております。

○森田委員 まちづくりをする以上、少なくともここに出ている内容を見ても、お金をかけなければできない、それは事実ですよね。で、その予算的裏づけというのは、何もこの白書の段階で必要ないかと思うんですけれども、具体的な必要額、こういうものはどこかにあらわさなければ、これは絵にかいたもちになっちゃう。理想だけいって現実にお金がついてこなければできないわけですから、その予算額というのはどの段階でつくのですかということを聞いているんです。

○河島参事 現段階では、東京構想の方での財政フレーム等まだ、どのような形で形づけられるかということが定まっておりません。都市づくりの分野の方で果たしてそういったものとの整合性をどのようにこれからとっていくかというのは、現在の東京都の財政事情の中で非常に大きな課題であろうかと思います。そういう意味で、現段階では、まだ具体的に、いつの時点でそういう財政的なフレームと整合した形での都市づくりの、お金の面も含めた計画ができるのかということについては、大変申しわけないんですが、明言はできない段階です。
 なお、この都市づくりの話がすべて行政側の財政支出で行われるものではない、やはりこれからの都市づくりというのは、都民、企業、NPO等々、いろいろな方々の参加と連携のもとで進められるものでありまして、そういう役割分担をどうするのかということ、これは当然自治体の中でも区市町村とか、あるいは国との役割分担、こういうことも含めて、都市づくり全体をどう役割分担しながらやっていくかということも整理を図りながら、東京都としてどれだけの経費支出をして都市づくりを進めていくか、そういう考え方に整理を図っていく必要性があるのかというふうに考えております。残念ながら、今の段階では時期について明言することはできません。

○森田委員 東京都だけがお金を出せと私はいっているんじゃなくて、しかし、東京都は、これだけの構想をやっていくんだから、これだけのお金が必要だし、この分出しますよというのが出なければ、これは構想にも計画にもならないと思うんです。今の財政状況の厳しさというのは私も理解しますけれども、要するに、東京のまちをこうしていこうという五十年先を見てまちづくりをするんであれば、五十年間でこれだけの投資額が必要だというぐらいは当然出さなくちゃいけないし、これは少なくとも都市づくりビジョンまでにはある程度の額、概数でもいいから、こういうものを出さなくちゃいけないというふうに思っています。
 それからもう一つ、ここで気になるのは、国際化とか国際都市ということが随分いわれているんですが、国際化とか国際都市というのは、もう一歩深く考えるというか、どういうことをいうんでしょうか。

○河島参事 国際化ないし国際都市というものの意味でございますが、今の社会の動きというのが、情報化の進展などによって、経済的にも、あるいは生活のいろいろな局面においても、一国の国内だけで情報の流れがとどまるわけではなくて、全世界と密接に絡んだ動きの中で、国のありようとかあるいは都市の活動というものが規定されてくる、そういう状況になっているのだろうと思います。
 そういう諸外国との関係の中で、さまざまな都市活動が行われていく、そういう状況が一つの国際化の状況なのではないか。そこでは、いろいろな金の動きとか人の動きとか物の動き、そういったものが諸外国との間で非常に頻繁に行われるような状況があって、そういう意味で、日本は特に島国であるために、従来は、国際的なつながりというのが余り市民生活の中で意識されないことが多かったかもしれませんが、これからは、やはり非常に海外に対して開かれた、そういった都市の活動というものが不可欠であるわけでございます。そういうような意味合いでの国際化が必要であって、そういう国際化がなされている都市、海外に対して開かれて、いろいろな人、物、金、そういったものの交流がなされる都市、それが国際都市ではないかというふうに理解をしております。

○森田委員 もう少し目に見える形でいってほしいんですけれども、どうなったら東京は国際都市になるんですか。例えば外国人が行き来するんだったらーー国際化あるいは国際都市ということを、こういういろいろ難しいことをいっているけれども、私は、例えば羽田空港を国際化、国際路線を持ってくる、あるいはそれが足りなければ、第三の国際空港をつくる、このほうが国際化は具体的じゃないですか。あるいは、外国人が東京のまちでいっぱい働くようになる、それが国際化というのであれは、これはもう国の問題ですけれども、法務省の外国人の労働者にもっと門戸を開く、こういう政策を国がとれば東京は国際化というのは簡単にできちゃう。どういうふうになったら東京は国際都市といえるんですか。どういう状況、目に見える状況でいってほしいんです。

○河島参事 ある一つの事柄だけで全部はいい切れないだろうと思うんですけれども、今、理事ご指摘のように、海外からのお客さんが非常に多くなるということ、これ自体はやはり国際化だろうと思います。それから、それは観光客だけではなくて、ビジネスのお客さんが来る、あるいはそこで海外との商取引が行われる、そういうこともやはり国際化かなと。それから、さらに文化の交流というようなこと、そういったことが頻繁に行われて海外の文化に都民が親しむことができる、逆にまた都民が海外に行く機会が多くて、海外に行くことによって国際化がなされていくというようなこともあるかと思います。
 なお、東京自体がもう既に国際都市であるということはこれはもう明らかだろうと思います。今回の白書の視点というのは、その国際都市である東京というものがいかにその魅力を高めていくか、国際都市東京がいかにその魅力を高めていくべきなのかというあたりについて焦点を絞って分析したところでございます。

○森田委員 何でそういうことを聞くかというと、これを読んでも、東京をどういうまちにしようかというのがなかなかぴんとこない。国際化というと何か耳ざわりが非常にいいですよ、ああ国際都市を目指すんだな、国際化を目指すんだなというけれども、じゃあ、具体的にどうするのか、その辺のところが、読み方が悪いのかもしれないけれども、なかなか見えない。
 ちょっと話をかえますと、これから、明年から二十一世紀、そして、これは五十年後を目指している、そこでの目指すキーワードというか、それはどういうものを置いていますか。

○河島参事 先ほどご説明申し上げましたとおり、この白書は課題整理編でございまして、計画の作業というものを現在都市計画審議会の方にお願いをしている、そういう段階でございます。つい先ごろ、先ほどご説明申し上げましたが、五月三十一日の都市計画審議会に報告する、その原案の内容というものが調査特別委員会で検討されておりまして、そこでキーワードになっておりますのは、魅力、にぎわい、活力、こういったような言葉でございます。
 ですから、五十年後をずっと展望いたしまして、これからの東京のあり方というものについて、この白書でもテーマといたしておりますが、そういう魅力を高める、魅力ということはかなり大きなキーワードになるのではないかというふうに考えております。

○森田委員 にぎわい、魅力、活力ーー何かこれはかつての一極集中の時代のものを目指しているような感じを受けますよね。僕は、二十一世紀、これはいろいろ疑義があると思いますけれども、東京のキーワードというのは一つは少子化だと思います。もう一つはIT革命。それから環境。この三つぐらいにキーワードを置いて都市づくりというのをやっていくべきではないかなと。そういう何かはっきりしたポイント、僕がいったこの三つをやれというんじゃないんですけれども、東京としては、ここがキーポイントだというところを決めて都市づくりをやっていかないと、何か本当に東京は魅力ある都市はできないんじゃないか。にぎわいとか活力とか、そんなことじゃなくて、もっと今東京が抱えている課題、少子化がこれ以上進んだら大変な時代になる、こういう観点に考え方を置いて都市づくりをやっていく。
 IT革命、IT革命というのは、ソニーの前社長の出井さんがニューヨークで講演したんでは、六千五百年前に地球に隕石がぶつかった、これは地球にとって大変な出来事で、恐竜はそこで絶滅して、新たな哺乳動物ができて今の地球がある、こういう講演をやって、これに相当するのが、今のIT革命だと。これはビル・ゲイツの講演よりもこの出井さんの講演の方が非常に反響があった。時代の流れはそういう方向に行っている。
 あるいは、環境、これはいうまでもないですね。私たちの健康を守り、そのためにはやはり環境ということが非常に欠かせない。そういう何か、キーワードというか、目標をしっかり持って都市づくりをやっていかないといけないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、その辺はいかがですか。

○河島参事 ちょっと意味を取り違えていたために違ったご答弁をしてしまったのかもしれませんが、どういうあるべき方向に進めていくのかというキーワードというふうにちょっと思ってしまったものですから、先ほど魅力などのキーワードがあるのではないかというふうにお答え申し上げました。
 今、理事ご指摘のように、これからのそういう、五十年先を見据えるような都市づくりの考え方を整理する上で、ご指摘の三点、IT革命、少子高齢化、環境、そういったことはやはり非常に重要な基本的な事項であるという認識は持っております。そういったものに対してどういう都市としての対処の仕方をしていくのか、そういうことをきちんと整理して都市づくりのあり方を考えていくべきだというふうに考えております。

○森田委員 それにしては、この白書は、国際化国際化で、多少はITのこととか出ていますけれども、国際化が非常にメーンになっちゃっている。これは今後の検討の中では、もう一度、そういう東京のまちづくりについて再検討していくという考えはありますか。

○河島参事 今回の都市白書につきましては、国際的な都市間競争が非常に激化する中で、東京の地位が低下して、非常にそういう面での、我々の方では危機意識といっておるわけですが、そういったものを今持ちながら対処すべきだと、こういう視点で取りまとめておりますので、テーマを国際都市東京の魅力を高めるということで分析を進めております。
 現在、都市計画審議会の方でお願いしております今後の東京の新しい都市づくりのあり方、この議論の中では、まさに森田理事がご指摘の少子高齢化による大きな社会状況の変化、特に二十一世紀には、今までの人口が増加して都市に集中していく、こういう時代から、人口が減少に向かって、都市が拡大するような状況ではなくなってくるという点、それから環境との共生、これをいかに図っていくか、環境との共生を図るということは、都市づくりの中でも仕事の場所、そして働く場所、こういったものをどううまく配置していくか、あるいは交通の問題に対してどう対処していくのか、そういったことも含めてやはり環境との共生で考えなければならない。
 さらに、IT革命、情報化について、これはなかなかまだ将来に向けてどういうふうに都市の中で生かしていくのかということは解明し尽くされているとはいえないかと思いますけれども、非常に大きな社会の根本からあり方を変えてしまう可能性があるものと。そういう意識を持ちながら都市づくりのさまざまな分野でどう情報化を受けとめ、うまくこれを活用していくべきなのか。こういったような視点は、それぞれ、現在検討をしていただいております都市づくりビジョンの作業の中では非常に重要な視点としてとらえておりますので、理事ご指摘のように、そういった考え方に基づく都市づくりのあり方を構想することが可能ではないかというふうに考えております。

○森田委員 もう長くなりますからあれですけれども、ここに最初に書かれているように、五十年、百年に一度ともいうべき転換期に差しかかっている、こういう時代的背景はそのとおりだと思うんですよ。五十年、百年、もしかしたらもっと大きな転換期に今来ているかもしれない。したがって、今までの連続の上に少し上乗せする、こういうのではいけないんではないか、これはもう時代に合わないんじゃないか。もう皆さん方もご存じのように、企業は今猛烈に変わりつつあるわけですよ。今までの企業形態ではもうだめだと。新しい企業形態をとらなければだめだということで、さまざまな企業が物すごい変革を遂げてきている。一つ一つはいいませんけれども、私もびっくりするぐらいに変わってきています。
 しかし、そういう中で、行政だけが相変わらず過去の積み重ねだけでいっていると、これは行政だけ置いてきぼりを食ってしまうんじゃないか、これがこのIT革命を中心とした大きな社会転換の時期に今来ているんじゃないかな。そういう意味では、行政もやはり本格的に改革をやっていかなくちゃいけない。石原知事はそのつもりでいると思いますけれども、ぜひそういう思いでこれからの都市づくりをやっていただきたい。
 五十年先を目指すといっていますけれども、今いわれているのは、これからはドッグイヤーだ、犬というのは人間の一年間に七歳年とっちゃう、一年間に七年分とっちゃう、十年たったら過去の七十年分の時間がたってしまう。こういう時代に都市づくりというのは大変に僕は重要なことだと思いますし、この都市づくりに、これから都市構想をつくり、ビジョンをつくっていくわけですから、ぜひ、そういう視点を持ってやっていただきたいというふうに思います。
 最後に局長に、この都市づくりに関しての考え方をお伺いしたいと思います。

○成戸東京都技監 ただいまいろいろと時代の転換期に立った東京の都市づくりのあり方、こういうお話を承っていたわけでありますけれども、確かに先ほど理事の方からもご指摘がありました三つの点、その中でも特に人口の減少、少子高齢化というのは人口がふえないというわけでありますから、これからの東京の都市づくり、二十一世紀の東京の都市づくりにとっては非常に大きな課題だろうと思います。
 そういう中で、東京が、人口が減少していく中で活力を持っていくためには、やはり都市というものが魅力を持っていないといけないだろうという観点から、この都市白書は書かれているわけでありまして、そのキーワードの一つになりますのは、交流人口ではなかろうかというふうに私は考えておりまして、交流人口と申しますのは、やはり外国あるいはほかの都市から東京に人がやってくる、夜間人口あるいは働く人口だけではなくて、訪問しているビジターとしての人口が東京に常に存在する、そういうことが一つの活力の源になるのではないかというふうに考えております。
 それが都市の魅力ということになるわけでありまして、都市に魅力がないと交流人口というのは訪れない、都市の魅力のバロメーターに交流人口というのはなるのではないかというふうに思います。
 そういった視点から、都市の魅力の一つの大きな要素になるのがインテリジェント革命ではなかろうかと思います。ビルもインテリジェント化していくように、やはり都市もこれからインテリジェント化していきませんと、魅力というものが薄れてしまう、これはご指摘のとおりだろうと思います。
 都市白書の中でいろいろ指摘をいたしております課題、そういったようなものを展望しながら、これから二十一世紀に向かって、知事も、五十年先をも見据えた東京の都市づくりということで、五十年先にも通用するような、こういうような意味合いであるというふうにおっしゃっているわけでありますけれども、そういった東京の都市づくりに向けて、ちょうど私どもが、その都市づくりを担う立場に今立っているわけでありますので、これは、そういう時代にめぐり会えたことを私どもは非常に誇りに思っております。
 そういうような時期に、不退転の決意で、二十一世紀、五十年先にも通用するような都市づくりビジョンの策定に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○大西委員 私も、タイトルが国際都市東京とあるのが非常に気にかかるのですけれども、これは鈴木都政時代に世界都市東京という言葉が、それに対比するにあるわけですけれども、この世界都市東京という言葉にあおられたかのように、外資系の企業のオフィス需要を当て込んだオフィスビル開発などがバブル経済の引き金になりました。そしてその後、都ばかりではなく、そのことをきっかけにして、国などでもこの言葉は余り使われなくなったという経緯があるとも聞いております。
 しかし、今回このような、あえて国際都市東京という言葉を使ったということを考えたときに、鈴木都政の時代に使われていた世界都市東京と、どのような意味合いを持たせているのか。私から見れば、この流れからいったときに、先ほどの、たぞえ委員の質問の中でも説明がありましたように、これまでの社会経済現象が変化したということもおっしゃっていましたけれども、そういうことを考えたときに、何かまたバックしたような、そういう意味にもとりかねないのですけれども、この世界都市東京と国際都市東京という意味での違い、本文の中で説明してあるのか、その辺をちょっとお聞かせください。

○河島参事 かつて世界都市東京という言葉が使われていた時代と今日では、経済のグローバル化あるいは情報化などが著しく進んでおりまして、時代の背景というものは大きく異なっているというふうに考えております。今回の白書では、東京が一体どのような国際都市を目指すべきなのかということを改めて検討し、それを本文の一二ページの上の表に、四つの切り口でございますが、明確に示して、抽象的に国際都市というようないい方だけに済ますのではなくて、その内実として、こういった要素をきちんと備えた、そういう国際都市を東京は目指していくべきである。経済の活力・影響力、生活・環境、交流・連携、象徴性・ガバナンス、こういったものをきちんと備えた国際都市、これを目指すべきであるというふうに整理をいたしておるところでございます。

○大西委員 それであるならば、この二四ページから数ページにわたって、政策レビューが書かれてあります。読んでみますと、単なる政策史の整理になっているわけで、過去の政策のどこがすぐれており、どこが間違っていたか、その後の事実による検証を経て分析するという白書が持つ意味合いですか、そういう意味での内容にほど遠いのじゃないかと感じられるのです。
 そこで、世界都市東京論ということがまた浮かんでくるのですけれども、世界都市東京論はどのような形で政策化され、そしてどのような問題を引き起こしたのか、そして、それを現在どのように評価して、この今回の白書になった国際都市東京というものを導いてきたのか、その辺を説明してください。

○河島参事 世界都市東京という言葉が使われておりますのは、都政において平成二年に策定されました第三次東京都長期計画の中で位置づけられ、使われております。当時は一九八〇年代後半から、国際金融センターとして東京がニューヨークやロンドンと並ぶ世界を代表する都市の一つになると、そういう時代でございまして、いわゆる世界都市として世界からも注目され、大きな役割を担う、そういう都市へ発展していくことが期待されていた時代であったかと思います。
 その後、バブル経済の崩壊を経まして、現在ではシンガポール、ソウル、上海など、台頭するアジアの諸都市と東京は都市間の競争をしていかなければならない、そういう時代になっております。こうした中で東京の国際競争力が衰退してしまうと、東京が、これまでの繁栄というものが失われて、ローカルな都市というようなことにも転落しかねない、国際的な地位も大きく低下することにもなりかねない、そういう時代に今はなっているのではないかというふうに考えております。
 こうした認識を踏まえまして、東京の魅力を高め、活力あふれる都市としていくためには一体何が課題かということを、国際都市東京の魅力を高めるという、そういう焦点を絞りまして分析したのが今回の白書でございます。

○大西委員 今回の国際都市東京の魅力を高める、だれにとって魅力なのかということが、いつもこれを読んでいて疑問に感じるところであります。
 三三ページから三五ページ、これは東京の産業論で、情報産業に期待が寄せられているということが、この中で述べられております。それを考えたとき、確かにそうだと思います。しかし、情報産業ということを考えたときには、いわばネットワーク上の産業でありますので、世界が同一の市場で競っているといえると思います。ここの中で、書いてありまして、今、ビットバレーのことも盛り込まれてありますけれども、賃料の問題がありますよね、オフィスビルの平均賃貸料は四十万から五十万円以上ということもあります。世界的に考えなければいけないということを考えたときに、これはニューヨークのシリコンアレーを意識して書いてあるのかなと思っているのですけれども、そういうニューヨークあたりでは、本当に古いビルを改造してインテリジェントビル化したということで、そこでの賃料というのは、坪五千円ぐらいからスタートしたとも聞いております。
 そういうことを考えたときに、国際都市東京でオフィスビル等の需要とか、そういう意味でも非常に必要だということはわかるのですけれども、果たして国際的なそういう市場で戦っていけるのかどうか、その辺はどういうふうに考えていらっしゃいましょうか。

○河島参事 今、ビットバレーを例にとりまして、そういう新しい産業が本当にうまく育っていけるような都市にできるのかというようなご質問かと存じます。
 東京の最近の動きといたしまして、この都市白書にもございますが、情報産業の中心をなすネット企業は、港区や渋谷区に六三%集積しているような状況になっております。特に、今ご指摘のビットバレー、渋谷の周辺の集積をそのように呼んでいるようでございますが、そういう企業コミュニティの立地するような場所の賃貸料は、ご指摘のように平均で月額四十万円以上するというような調査結果もございます。情報通信産業は二十代、三十代の若い世代が中心になるにもかかわらず、このような賃貸料の高さが、そういう若い世代の起業、事業を起こしていくということについて足かせになるのではということが危惧されるわけでございます。
 これからの時代は、そういう都市の中にあって成長が期待される、そして東京の魅力を高めていくのに役立つ、そういう情報通信等のリーディング産業を積極的に支援していくことが求められているのではないかというふうに考えております。
 こうしたことを具体化するためには、区市町村などとも協力しながら、立地に関して土地利用の誘導などを行う、そういう都市づくりの新たな政策展開や、あるいは産業振興の側面から既に一部で対処がなされておりますが、インキュベーターオフィスの提供であるとか、資金調達の支援だとか、そういうソフト施策を合わせた総合的な育成策の仕組みを検討していくことが、今後の課題であるというふうに考えております。

○大西委員 これは今のお答えを聞いても、本当に世界的な市場の中で、こういう賃料で戦っていけるのかという不安がぬぐわれたわけではありませんけれども、次に行きたいと思います。
 四八ページ以降、居住問題に焦点を当てて書いてあります。もちろん、かつては現在をはるかに上回る人たちが都心部に住んでいたのでしょうけれども、この部分を読んで一言でいえば、オフィスが追われるようにして郊外へ移っていったと思われます。そんな中、今、都心部での居住者の減少が問題であると、よくいわれておりますけれども、オフィスの拡大を許してきた都市政策に反省を加えなければならないのではないかと思います。事実、東京の都市計画では都市周辺部に汎用的な用途地域である旧住居地域や第二種住居専用地域、それから準工地域などが指定されて、容易に住宅がオフィスに変わっていったという経緯があるわけですけれども、これは都の政策の失敗じゃないかと思うのですけれども、その辺はどうでしょうか。

○勝田地域計画部長 お話にございました地価高騰等を背景といたしまして、都心周辺部等の住宅地への事務所の進出といった状況に対しましては、都といたしましても、かねてから課題の一つととらえてきたところでございます。コミュニティを維持しつつ、居住機能の保全と回復を図ることができる制度につきまして、国に積極的に働きかけてきた結果、平成四年の都市計画法及び建築基準法の改正によりまして、住居系用途地域が細分化されました。この改正によりまして、これらの地域におきましては、事務所等の建築が相当程度規制されることとなりました。これを受けまして、平成八年に住居系用途地域をきめ細かく指定いたしました。
 都心居住の推進を積極的に図るために、例えば、従来の第二種住居専用地域を、事務所が建てられなくなります第一種中高層住居専用地域に原則的に移行いたしました。さらに、住宅割り増しを行う地区計画などや都市開発諸制度の積極的な活用によりまして、居住機能の保全と回復を図りつつ、コミュニティの形成など都心居住の推進に引き続き努力してきているところでございます。

○大西委員 今、平成四年の都市計画法及び建築基準法の改正によって、非常に改善されたというお答えをいただきましたけれども、これは今後の都市ビジョンとか都市づくりに非常に重要なポイントだと思っております。そういう意味では、こうした新たな制度の活用状況について、一部、六〇ページで扱っているだけで、制度全体の評価や、その改善点にかかわる示唆などが見られないと思うのです。分析が不十分ではないかなと思うのですけれども、その辺はどうなんでしょうか。

○河島参事 ご指摘の六〇ページ、六一ページの部分に、都心居住に関する都市計画手法等を活用した進捗の状況を記載すると同時に、今回、第Ⅲ部の方の少し重点を入れた分析といたしましても、一五六ページ及び一五七ページで、都心居住がそれぞれのエリアにおいて近年どのように進展しているかということを、今回特に集計をいたしておるところでございます。
 この一五六ページのデータに基づきますと、各都市計画とか都市開発諸制度の適用による住宅供給の実績は、一九八三年から一九九八年まで、環状六号線と荒川に挟まれたその内側で着工された住宅全体で約五十万戸あるようでございますが、そのうち、約六万七千戸が、こういった各種制度の適用によるものとなっておりまして、制度の適用の成果が、そこで一割以上の割合で出てきたというふうに考えているところでございます
 これら各制度によります一定の成果を踏まえまして、より一層都心居住を推進するために、今後も運用方法の改善、各制度の再編合理化、さらには、より効果の高い新たな制度の開発など、検討を引き続きしていく必要性があるというふうに白書で記述したところでございます。

○大西委員 こうした都心居住の現象というのは、東京だけでなく、世界的な都市でも問題になってはおります。しかし、外国なんかを考えたときには、治安が悪くなったとか、一定規模、狭い土地に住んでいた人たちが、子どもができるので郊外へ移っていこうとか、そういう積極的な中で移っていき、そしてその後がスラム化したとか、そういう問題がいろいろあるわけですけれども、東京ではそれではなくて、先ほどいいましたように、オフィス開発によって追われるようにして郊外へ行ったということで、そういうインナーシティー問題というのですか、そういうことは見られないと指摘されています。いわば繁栄の中の居住者の減少と私はとらえているのですけれども、そういうことを考えたときには、やはり他の地域と違うわけで、東京都固有の問題じゃないかと思っております。
 それに対処するためには、東京独自にそれを防ぐためのルールが必要ではないかと考えているのですけれども、そうした提言の根拠となるような分析があるのかどうか教えてください。

○河島参事 平成六年の業務商業施設マスタープラン、それから平成九年の区部中心部整備指針、こういった業務・商業施設の適切な立地を図る、そういう考え方、あるいは都心の住宅地というものをきちんと守っていく、そういったことを整理したレポートがございます。そういったマスタープランなり指針によりまして、都心への過度の業務機能集中と周辺への拡大というものを抑制するとともに、都心居住を積極的に推進するためのルールを東京都独自に定め、現在まで運用してきているところでございます。
 本書では、これらを踏まえまして、都心部オフィスの機能更新に当たっては、単に業務のみならず、商業、文化、居住など多様な機能を備えた、にぎわいのある空間として整備していくということの必要性も指摘しておりまして、国際都市東京の魅力を高めるために重要な課題である、そのような認識を持ちながら必要な分析を行っているところでございます。

○大西委員 この都市白書、ざっと読んだだけですけれども、私はこの中に、国際都市東京の魅力というよりも、何だかこれ以上にまだ疲れる息苦しい東京ができ上がるのかなという、そういう不安の方が先に立ちます。そういう意味で、先ほどもおっしゃっていましたけれども、これからの重要な課題としましては、少子高齢化に対応するまちづくり、そして分権化のもとでの住民参加のまちづくりが進んでいくということが、先ほどのお答えにもありました。そういう中で、都や区、市及びNPOや市民組織の新たな役割や相応の分担など、本当に緊急に課題があるわけで、それが特集されてなかったのは、今回の白書、ちょっとピント外れじゃないかなと私は思っております。そういう意味では今回の白書は、やや期待外れと感じております。
 そういうふうに感想を持ったわけですけれども、今後の白書に期待するということで、二つほどちょっと述べさせていただきます。
 一つは、先ほどいいました少子高齢化の先進国である北欧が体験した女性の社会参加、バリアフリー社会の構築とまちづくりとの関係、そういうものがもっともっと盛られるべきなんじゃないかと思います。この白書では相変わらずアメリカ、英国、フランス、ドイツ、そしてシンガポール、イタリア、香港などが、一言ずつという感じで盛られていて、二十一世紀に対するまちづくりを考えたときに、いかにもウオッチしている範囲が狭いのじゃないかという気がします。
 もう一つは、住民に近い基礎自治体に権限を移す分権化をさらに進め、住民参加のまちづくりを進めるという観点から、こうした住民参加がどのように進み、さらに都から権限移譲を受けるーー今後どのようにそれを進めるべきか、分権社会における都の役割をもっともっと浮き彫りにさせるような考察もこの中に盛り込まれるべきじゃないかと考えております。
 この二つを今後に期待するということで、意見とさせていただいて、終わります。

○立石委員 既に各委員さんからお話も出ているので、ダブる部分もありますけれども、私も幾つか質問したいと思います。
 十年くらい前に、友人の区会議員さんがおりまして、そのご主人は東京都の某局長を経験された方で、お住まいは港区だった。東京都の職員さんが云々ということではありませんが、昭和の終戦直後の時代には、東京都の職員さんが十分都心に居住することが可能であった。やがて昨今の、局長さんに限りませんけれども、東京都の職員さんのお住まいをと聞くと、多摩ニュータウンのそばだったりして、それが別にいいとか悪いとかということではもちろんありませんし、時間的な距離も大分縮められた昨今のことであります。
 しかし、四年ほど前に私が描いていたーー東青梅という町を訪ねたときにびっくりしたのは、これは都心と少しも変わらないということを実感しました。つまり何をいいたいのかというと、本当に東京に都市計画はあるんだろうかと。さんざんぼろくそに、長いこと私も思い、かついってきたのでありますが、今度の白書を見て非常に高い評価を私はしているんです。それは、やはり国際社会における競争に負けてはしようがないし、されど一体だれのための東京になったんだということであってもーー先ほどの大西先生のお話の中にもありましたけれども、それじゃ何のためだ、こういうことになるわけであります。
 しかし、やはり競争には比較する上で勝っていかなければならない。そういう範疇から思いをいたしながら、この白書によると、東京の都心の三区の人口は回帰してきたという状況で、それぞれ基礎的な自治体というか、区とか市、この場合は都心ですから区ですけれども、区の皆さんが大変ご苦労なすって、いろいろなハードなルールがある中で、ルールを超えてーールールを超えてというのは、法を超えてという意味じゃなくて、編み出して、いろいろな手法を考えて、もちろん東京都の都市計画もそうですけれども、人口が都心に回帰してきたということの、区の特筆するというか、大きな変化ですね、人口が回帰する一つの契機となった考え方、努力といったらいいか、そういったものを皆さんなりに都市計画局として評価される手法もありました。ここに書いてありますけれども、改めて質問しておきたいと思います。

○山崎開発企画担当部長 地元各区におきます人口対策でございますけれども、先生ご案内のとおり、都心三区で人口回帰の傾向が見られております。こういう政策を図るため、各区におきましては、これまで、附置義務住宅制度ですとか家賃の補助ですとか、そういうことを初め、住宅基本条例の制定、それから住宅マスタープランというようなことで取り組むとともに、都市計画諸制度の積極的な活用を図ってきております。
 特に、白書でも触れておりますとおり、人口回復現象、特に中央区では連続二十五カ月人口増加傾向が続いているということでございますけれども、こういう取り組みの一つの大きな成果ではないだろうかというふうに考えております。

○立石委員 今、部長ご答弁の中に、住宅の附置義務とか家賃の補助とか、いろいろな手法を講じた結果ーー東京都の都市計画局の功績ももちろん大きいわけですけれども、長いこと私の方でも、本会議あるいは委員会でさんざんいってきました。やじの範疇になりますけれども、ご質問の趣旨に沿って前向きに検討して国に要望していきたいと、さんざんいってきたのを、もういいかげんにせんかいと、何十回いったかわからないくらいいってきた。しかし、ひとえに、先ほど述べましたが、東青梅、実は私が初めて訪ねたところなんです。青梅というと、川合玉堂とか、そういう文化の潤いのある、すばらしい郊外の住宅地だというイメージを長いこと描いていた、行ったことないものですから。
 失礼ながら、そういうところももちろんあるでしょうけれども、東青梅の駅前におりて、びっくりした。これは何だと。これは東京の都心のごみごみしたところと少しも変わらないじゃないか。こんなことじゃ情けないことだと。やはり人々が暮らして、すばらしい町だと、もちろん郊外型もあるし、都心型もあるし、周辺部の環境もあるし、それは世界の大都市の中でも、暮らし方、いろいろあると思いますけれども、そういうことを頭に置きながら、やはり附置義務住宅の成果はあったと。しかし、附置義務住宅のイメージをーー批判でなくて、どんなイメージでこの白書の中で思いを描いておられるか。私は、自分が住んでいるところですから、よく知っておりますけれども、皆さんの認識と私の認識がどのくらい近いのかなという意味で質問したいんですけれども、ご答弁ください。

○河島参事 白書の中で、附置義務住宅だけを取り上げて分析した部分はございませんので、ストレートなお答えにはならないかもしれませんが、今後の都心居住を進める考え方として、課題認識としまして、一二〇ページに、東京型都心居住像といったような呼び方をしていますが、都心に近い部分に住む場合に、単に住めるということではなくて、非常に生活を楽しんでいけるような、そういう住まい方ができる必要性がある。量的に人口を回復する、住宅を建設するということの重要性は当然あるわけですが、単に量的な拡大だけを目指すのではなくて、質的に生活環境の非常に高い、そういう住宅づくりを、都心住宅の推進をやっていく必要性がある。
 ですから、今委員ご指摘の、例えば附置義務住宅のつくり方といったようなものについても、今後はそういう観点から、どのような質の高い、都心型の、東京における都心居住像というものをつくり出していくか、これを探っていくことが課題であり、それを実現していかなければならないのではないかというふうに考えております。

○立石委員 今ご答弁いただいたんですけれども、我々が考えていた、附置義務住宅に対するイメージと、現実はかなり違ってきている。だからといって、考えた人たちに対して批判がましいことをいうんじゃなくて、それはあの時代にやむを得なかった措置だろうと思いますが、その後、これから東京ビジョンですか、に具体的に政策の方向を見出すとするならば、皆さんの、白書の中で理想像というものを挙げておられますから、ぜひそういう考え方の中で、白書の中で現実を素材としていながら、それは悪かったのだという否定的な言葉ではなくて、附置義務住宅をさらに発展させる手法に切りかえていくべきではないか。
 近所なもので、よく見ますけれども、やはり家賃が高かったり、ホームオフィスが、やがてホームオフィスじゃなくてオフィス化してしまうようなこと。規制をするということよりも、もっと、部長がおっしゃったように、一二〇ページでしたか、東京型都心居住像の確立というイメージの中に描かれているけれども、それと実態との乖離を是正していく方向で施策を誘導してほしい、そういうふうに思います。
 自分も住んでいるものですから、よくわかるのでありますが、人口は確かに回復してきた。されど、一遍にできるわけじゃありませんけれども、例えば買い物一つとっても、非常に区民館はーーこれは批判じゃありませんが、区民館も大事なんですけれども、区民館よりも魚屋さん、肉屋さん、八百屋さんが必要なんだ、家庭の主婦は。これがほとんどなくなっている。都心ですからね、ないわけですね。そうすると、自分自身もそうですけれども、東京駅の地下の、名前をいっちゃいけませんけれども、某デパートの総菜売り場へ行って買うとか、これは本当の話なんですね。そういうようなところも都市計画局当局としてイメージしておられるかどうか、その辺質問したいと思います。

○山崎開発企画担当部長 商業を含みます居住をいろいろ支える生活支援機能の整備、そういうことも十分考えなきゃいけないんじゃないかというご指摘だと思います。
 確かに、生活の中核となります商業施設、その整備、あるいは既存の商店街の活性化をどう図っていくか、あるいは既にある既存の生活支援施設ーーコミュニティ施設とおっしゃいましたけれども、そういうものまで含めまして総合的にそういう施設を図っていくということが非常に重要だと考えてございます。
 基本的には、地元区の取り組みとともに、東京都としての必要な役割を果たしていく、こういうことが大事だと認識しております。

○立石委員 都心にももちろん地元商店街はあるわけでありますけれども、土、日に閉まってしまう。家族でやっているような状況ですから、閉めるということはある意味では当然だと思うのですけれども、そういうところの工夫と、二十四時間オープンされるコンビニとの、そういうところも東京都の政策としてーーコンビニが悪いというわけではありません、両方いいわけですけれども、混在する中に、まさに共生できるような仕組みも東京都の都市計画局としては考えていくべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○山崎開発企画担当部長 地域の商店街の振興といいますか、活性化といいますのは、商店街のつくり方、あるいは商店街の人たちのそれなりの自己努力といいますか、そういうことに加えまして、地域が地元の商店街を育てるんだという、地域と地元と商店街と一体となった取り組みが基本かというふうに考えております。
 地元の商店街のそういう支援については、単に都市計画的な手法だけでなくて、労働経済政策的ないろいろな支援もありますので、そういう総合的な行政の中で支援していく必要があろうかというふうに考えております。

○立石委員 都心に人口が帰ってきて大変喜ばしい、それはありがたいことでありますけれども、そこでいろいろな、矛盾というほどの大げさなものではありませんけれども、これがあれば、あれがあればということがありますね。マンションとか団地なんかを見ると、容積率との関係で、極端なことをいうと、自転車置き場も乳母車を置くところも車いすを置くところも、容積にカウントされてしまうような状況は、これからの都市政策といいますか、都市計画という中で、先ほどどなたか委員さんおっしゃいましたけれども、人々の幸せのために都市計画があるのであって、そういう点では、マンション開発とかそういうところに容積が食われると、消費者に単価といいますか、値段として返ってくる。だから、それは省略されるというようなことで、これからは、東京ビジョンを考える上で配慮していくべきではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。

○河島参事 今の容積率のカウントの仕方が、地域の必要な施設をうまく立地させる方向に向いていない部分があるのではないか、そういうことも含めて改善の余地があるのではないか、こういうご指摘がございました。
 法律に基づく縛りの中でやっていかなければならない部分はございますけれども、東京都は東京都なりに、幅広く検討すべき部分があるのではないかというふうには思います。
 一つは、自転車置き場の部分につきまして、明確に自転車置き場ということであれば、今の法律上も自動車の駐車場と同様に容積からはカウントされないような規定もあるはずでございまして、うまく建築計画を立てることによって、そういったことを盛り込んだ住宅づくり、マンションづくりということも可能なのではないかというふうに考えます。
 いずれにしましても、これからのあるべき都心居住を進める上で、従来の法律の縛りは縛りとして、どういうことが可能性として考えられるか、そういうことにつきましては、余り枠をはめることなく、幅広に考えていく視点は、社会の大きな変化の中で必要だ、こういう認識は持っておりますので、そういう姿勢で取り組んでまいりたいと思います。

○立石委員 今、たまたま自転車といってしまったんですが、自転車は容積に入らないんですか
ーー何をいいたかったかというと、たまたま大きなマンションや団地に住んでいると、隣に住む人が全くわからないんですね。この白書の中にも書いてあったけれども、大都心の匿名性が、またある意味で心の自由みたいなものもある。それはもちろん魅力の一つだと思うんですけれども、逆に、ノイローゼになったりするような人たちにとっては、やっぱりフェース・ツー・フェースとかコミュニケーションというのは大事だと思うんですね。そういうものをーー乳母車、自転車といいましたけれども、やっぱり生活に必要なんですね、井戸端だと思うんですね。井戸端というと語弊がありますけれども、江戸時代の話でいえば井戸端会議という、いい意味で私はいっているんですが、やはりおしゃべりをしたり、談論風発というか、寄り合ってあいさつし得るような、人間性豊かな、そういう空間をもしつくったとしたらば、それは容積から除外されるんですか。
 ここでやりとりする必要はありませんけれども、コミュニティを充実してほしいと。都心居住の中でコミュニティを充実するためには、もちろん自転車も自動車も必要でしょうけれども、集会というか、そういうものが必要なのではないかという思いがあります。
 過日、新聞の広告を見ていたら、最近のマンションの変わりよう、普通のものをつくったんじゃなかなか売れないけれども、あれはたしか浦安か舞浜の方だったと思いますが、お茶のおけいこだとか文化的なサークルができるような集会室をつくると、結構人気があるなんという話を聞いたんです。皆さんもお読みになったかもしれませんけれども。そういう中で、今後東京の都心居住のありようとして、地勢との関係の中でどういうふうに考えておられるか、もう一度答弁をお願いしたいと思います。

○小林建築指導部長 お答えになっているかどうかちょっとわかりませんけれども、マンション等の共同住宅の特に供用部分について、例えば井戸端会議ができるような供用スペースについて容積率の緩和ができるかどうか、これは非常に微妙な部分でございまして、廊下ですとか、あるいはエレベーターですとか、そういった供用部分については、現行制度の中でも緩和といいますか、容積不算入ということになっています。集会室という形で、部屋として確保する部分については、当然それは容積率の中に算入されますけれども、廊下の部分が一部拡大をしてホール的に使われる、そういった部分については、解釈によっては容積不算入ということになりますので、そういった制度についての活用を図っていきたいというふうに思います。

○立石委員 やっぱり小林さんの答弁を聞いて思いますことは、当たり前なんでしょうけれども、建築基準法とか都市計画法とか、それを皆さん熟知されておられますから、いつの間にかそれに拘束をされている。今私がいいますように、井戸端会議という表現は庶民的というか、こういうところでいうべきことじゃないのかもしれませんが、近代的にいえばコミュニティを醸成するような環境ということになるんでしょうけれども、ざっくばらんに下町的にいえば、まさに井戸端会議ができてあいさつをし合う、そういう、IT革命の、バーチャルの仮想の人間関係から、リアルな人間関係に変えていくような意味からもーー変えていくというか、あるべき形がないとおかしな形になっていくんじゃないか。
 そういう意味において、これからの東京ビジョンの中で魅力ある東京の一つとしてーーかつてさんざん苦労してきたわけ、何十年もね。容積率が悪くて、何も好きこのんで狭いところに住みたいなんてだれも思っていないわけですから、七十五平米だとか百平米なんという数字を挙げると、偉そうに聞こえるけれども、別に人間性から考えたらそんなの大した面積じゃないですよね、郊外の方でそんな方はいらっしゃらないわけでしょうから。しかし大げさに東京都の都市計画局も七十五平米とか百平米とか考えなきゃならないし、しかしそういうことではなくて、これからの五十年を考えた場合に、もっと人間的な都心居住のあり方の中にぜひ入れていただきたいな、そういう考え方にしてほしいということを、これはまあ要望ということにしておきます。
 「東京都市白書二〇〇〇」、国際都市東京の魅力を高めるということで、まず絵に広重の日本橋を書かれておりまして、大変うれしく思うわけでありますけれども、それぞれの町には、当然のことながらかけがえのない文化とか歴史が残っているわけです。新幹線に乗ると、レディース・アンド・ジェントルマン、L&Gですか、という雑誌があって、たまたまこの間、四月に乗ったときには、近江八幡市のまちづくりが書いてあった。五家荘というんでしょうか、興味を持ってこの間ちょっと見てきたんでありますけれども、すばらしい景観が保存されていて、地方は地方なりに頑張っているなというのがよく見えたんです。
 東京も大都心で、大東京だけれども、やはりそれぞれに歴史的な町が、日本橋ばかりをいうわけでありませんけれども、日本橋も高速道路で覆いかぶされてーー土佐の高知の播磨屋橋なんというのは、すごい橋かと思って行ってみたら、赤いただのこういうのがあるだけで、これは橋かなんて思ったんです。それと同じように、やゆられたんですが、日本橋ってどこなのか、こう聞かれるわけですね。先ほど、各委員さんからもお話がありましたが、私は、むしろ五十年ぐらいじゃとてもだめだと、百年、二百年やるべきだ、見通して考えるべきだと。いまだに、大正十二年九月の関東大震災の都市復興の中の昭和通りを挙げるまでもなく、大変な都市計画の大きな成果として私は残っているというふうに評価しています。
 高速道路ができて、あの首都高速ができたのはオリンピックですから、どのぐらいたちますか、かれこれ四十年近くになりますでしょうか。鉄とコンクリートでできているわけですから、耐用年数、当然ある。やがてかけかえるべきときが来るだろう。そのかけかえるときに、また同じように、あの日本橋の上にふたをするなら、別に過去の技術に対して評価しないわけじゃない、それはそれなりに評価して、大勢の人が利便を、効果があったわけでありますから、それは評価するけれども、されど何十年後か、十年後か知りませんけれども、耐用年数が来たときに、また同じ、日本橋の橋の上に同じ形でやるのかどうか。
 この間、ボストンのローガン空港から、一九四五年に高速道路をつくって、改築しつつある、その技術は日本の土木工学であり、建築工学である。僕は、現場を見に行って大変感心したんですけれども、東京の高速道路も部分的にはそういう形でもできるんではないかな。都市白書の二〇〇〇ということでありますので、この東京の日本橋の、それこそ東京のある意味のシンボルともいえる高速道路に対して、東京都は何かお考えがありますれば、この際ちょっとお聞きしておきたいと思います。

○杉浦施設計画部長 東京の都市高速道路は、おっしゃいますとおり、オリンピックという一つの目的のもとに短期間でつくらなければいけない、そういう使命のもとでつくった結果、例えば、日本橋の上にかぶさっている、そういう状況になっており、それが、今振り返ってみますと、町の景観あるいは環境、もろもろの面で問題として浮かび上がっていると、そういう状況は私どもも十分承知してございます。
 ただ、一方では、都市高速道路は、それなりに東京あるいは近郊の社会活動を支えていることも間違いない事実でございます。都市高速道路、もちろん耐用年数がございます。何年か先には、やはり更新あるいは大規模改修、そういったようなことを考えなければいけないと思っております。そういったときには、何を重要視すべきかという観点の検討を、やはりその時点の価値観でしなければいけないと思っておりまして、当然のことながら、貴重である日本橋のような文化遺産を好ましい形で残していくという、そういった要因も、その検討の中の極めて大きい一つの要因だと思っております。そういう観点を踏まえまして、都市高速道路につきましても、今後のあり方を検討していきたいと思っております。

○立石委員 ぜひ東京のまちづくりの中で、先ほど挙げましたけれども、近江八幡市とか、日本じゅうにいっぱいありますね。地方分権で、例えば山形県へ行けば最上藩のまちづくりとか、弘前に行けば南部藩のまちづくりとか、厳然と、歴史的に、東京ももちろんありますけれども、すばらしいものが残っています。そういう点を考えても、これからもよく歴史とか文化とかということを考えて、この都市白書を素材として東京ビジョンに反映してほしいなと、これは要望しておきます。
 先ほど局長が、交流人口ということについて、都市の魅力のバロメーターは交流人口だということでございますが、私は浅学でよくわかりませんが、日本から海外へ旅行される方が一千二百万人を超える、しかし、我が国を訪ねられる方はビジネスマンを含んでも三百万だ、こういうようなことをちょっと読んだことがあります。
 さて、東京の交流人口、そういうビジターを意味していることかどうかわかりませんけれども、わかりましたら、ちょっと読んでないんで、この白書に出ていましたら教えていただきたいと思います。

○河島参事 白書の七三ページをごらんいただきたいと思いますが、都市別に、これは各都市を訪れた外国人の旅行者の数というものを集計した表が出ております。上の本文にも書いておりますが、二百四十九万人、約二百五十万人の方々が、一九九六年の集計で、東京を訪れている。これは、ロンドンやパリなどに比べますと、一千万を超えておりますので、その四分の一ぐらいになってしまう、そのような状況でございます。

○立石委員 しかられるかもしれませんけれども、何も来訪される方ばかりが都市のバロメーターではないのかもしれませんけれども、しかし、訪問される方が多いということは、やはり都市の大きな魅力であるし、それは住んでいても楽しいことであるし、もちろん職場としても快適な楽しい職場だと、私は一般論としてはいえると思うんですね。ですから、局長が先ほどご答弁あったように、大きなバロメーターの一つである、私もこの認識をいたしたいと思います。
 この間、テレビを見ておりましたら、東京湾首都圏第三空港、湾奥空港ということで、ちょっと話が出ていました。必ずしもよく見てたわけではありませんけれども、聞くところによると、滑走路をセパレートにして、海流だとか、あるいは生態、生物学者とか、いろんな方が入られて、既にある羽田のターミナルを有効利用しながら五分ぐらいでアクセスするということで、これは非常に国際都市東京の魅力の一つだなと思いますが、局としてはどういう評価をされておられるか、最後にお尋ねをしたいと思います。

○山内航空政策担当部長 民間の構想による湾奥新空港は、東京湾奥の海上にありますことから、新たな騒音問題の発生でありますとか、羽田空港との空域の調整の問題など、調整すべき多くの課題があるというふうに考えております。今後、国の新しい空港構想に対する検討を見定める必要がありますが、都としては、羽田空港の国際化を積極的に進めておりまして、この構想が羽田空港の機能を著しく阻害することになるのであれば適当ではないと考えております。

○立石委員 それはそれで、私とちょっと認識が違うということなんですが、どこかに遠慮してしゃべっているような気がしないでもないんですが、理事、いかがですか、あなたの考え方は。

○塩野理事 ただいま先生のお話のございましたのはーーそれにとらわれず第三空港の必要性ということで、大きくとらえますと、国際都市東京の魅力を高めて、経済の活性化を図るためには、どうしても首都圏の新たな空港整備が不可欠でございます。こういった面で、国の積極的な取り組みが必要だというふうに私ども認識しております。
 したがいまして、都といたしましては、二十一世紀を通じまして、首都圏の航空需要に対応できる新しい空港の整備につきまして、関係自治体とも十分連携を図りながら、それらが早期に整備されるように、国に強く働きかけてまいりたいと思っております。
 なお、成田空港が、暫定滑走路でございますが、既に着工したという状況を見定めますと、まさにそういった議論をすべき時期が到来しているということを考えておりますので、ご理解賜りたいと思います。

○清水委員 重なることは省かせていただきます。
 自治体の白書というのが、直近の実態を把握して分析し、それを示して全体の施策に生かしていくというのが、白書が持っている本来の役割ではないかと思うんですけれども、今回の白書全体を見ますと、先に結論があって、都のそれぞれの局が出した資料をその中から選択をし、そして経済界などの資料、提言をその中から抽出して、そして結論づけていくという方向に大変強くなっているということを感じます。
 現在、都は、都市づくりビジョン策定に向けてさまざまな取り組みを行っていますけれども、少なくとも都市計画局というのは、これまでも確かに都全体の政策実現のために、都市白書などで方向というのが示されてきていましたけれども、都市計画局としての専門的な立場から、日々都市計画、都市づくりに携わっている立場から、こうした白書なども提案してきたというふうに思うんですね。それが証拠に、これまでの白書では、前書きの部分には局長のごあいさつが、いい悪いは別にして、掲載をされておりましたが、今回は、局長のあいさつが、いい悪いは別にして、ありません。それで、局としての、そういう今までの独自の立場というのを白書の中で示してきたのかどうかということなんです。
 そこで、二つお伺いしたいんですけれども、局独自としてのデータの分析とか調査の分析はあるのかどうなのか、あるならば何カ所、どこにあるのか。
 それから、局長のあいさつが今回は載っておりませんが、それはどういう理由があるのかということを伺います。

○河島参事 分析におきまして、今回、オリジナルでつくったものがないのではないかというようなご指摘がございました。決してそういうことではございませんで、例えば、三八ページの都内を通過する普通貨物車の交通量というものは、もともとのデータは建設省のデータでございますが、こういうように集計して表示するというのは初めてでございまして、いかにこういった都内を貨物車が多く通っているかというようなことが目に見えるようになってきているというふうに思っております。それからまた、五四ページの公園・運動場等の近接性といったような、こういう図面もオリジナルでつくっておりますし、また先ほど来出ております、都心居住の合計で、エリアを区切って六万七千戸といったような政策効果が上がっているといったような分析、こういったことも含めて、その他にもございますが、今回の白書で分析をしたものでございます。
 それから、あいさつが従来都市計画局長名でなされているものが、今回、東京都知事名になっているということでございますが、それだけ石原知事の五十年先を見据えた東京の都市づくりに対する意気込みのあらわれというふうにご理解をいただきたいと思います。

○清水委員 知事は日ごろ、職員の全体の意見をいろいろな立場から聞くなどということをいわれていますけれども、一番の専門家である都市計画局の職員がーー今、独自の資料はあるといいましたけれども、探せばあるということで、本当に全体を貫いて、都市計画局が自信を持って今の東京の実態を把握し分析したかというと、そうではないというふうに思うんですね。それをする担当だと思うんですよ、都市計画局が。それを、知事なり政策をつくる部門に提出していくというのが役割なわけですから、そういう点では、だれがあいさつを書いたかどうかは別として、この白書全体がそういう形で、まず都市づくりビジョンの中に深く組み込まれていってしまっているというふうに感じます。
 中身の問題ですけれども、今、触れましたけれども、本章を取りまとめるに当たり参考にした提言ということで、一一二ページに出されているのを見ますと、経団連、それから東京商工会議所、東京建設業協会、日本プロジェクト産業協会など、業界が、昨年来、二月に出された経済戦略会議の後に、それぞれが提言ですとかさまざまな政策をつくっているようですけれども、それらが深くこの中に盛り込まれていると思うんですね。
 使いました資料を見ましても、これまでの何回かの資料、昨年のをちょっと見ても、確かに国の出版物などを使っていることはありますけれども、しかし、区市町村のさまざまな資料を使うとか、それから他県の資料を使うとか、もっと幅広い情報を使いながらまとめられてきたと思うんですけれども、今回、そういうものを探しましたら、そこしかないんですよね、参考にした提言というのは。やはりこういう方向で、その中の東京都のいろいろな局の資料を使い、そして、少し都市計画局が分析したものを使ってつくっているというふうに実感せざるを得ないわけなんです。
 それで、先ほどから何人かの委員が質問されていますけれども、昨年、首相が諮問機関をつくって経済戦略会議を進めてきて、最終報告を二月に出したわけですけれども、その考え方というのは、二〇〇〇年度までに金融を安定させて、二〇〇一年から二〇〇二年まで成長軌道で、二〇〇三年から二〇〇八年までには構造改革だというわけですね。ですから、二〇〇一年から二〇〇二年は成長軌道への復帰と経済健全化期間だということで、先ほどから、今大事なのは少子化だとか環境だとか、東京都が何か今の実態と余りそぐわないものをつくっているんじゃないかというふうにいわれる委員もいましたけれども、しかし、こういうふうなものを参考にすれば、当然のことながら、今後、二年後ぐらいには二%強の成長力が回復するんだということで、この経済戦略会議は今の経済の状況を定義づけているわけです。
 この白書も、経済の成長の問題として、そうした認識にあるのかどうか、それはどうなのでしょうか。

○河島参事 第3章を取りまとめるのに当たりまして参考にした提言については一一二ページに列挙してあるとおりでございますが、こういった提言を参考にいたしましたのは、あくまでも、今回の白書のテーマでございます国際都市東京の魅力を高めていく上で、どんな方向を目指すべきと民間の諸団体あるいはNPOの方々は考えておられるのか、こういったことを知るために、そういった提言等を参考にさせていただいて、その中でどういうことがいわれているかということを、さっきの概要にも〔1〕から〔7〕まで記述しておりますが、取りまとめたものでございます。
 直接、他の章についてストレートに反映するとかそういうことは、今回の作業の中ではしておらないわけでございまして、この第3章の取りまとめに当たって使った提言であるというふうにご理解をいただきたいと思います。全体については、やはり分析を踏まえて東京都の立場で検討し、この白書の分析を行い、記述をしているというふうな状態でございます。
 それから、質問の中で、経済の見通しということがございました。この白書の中で、あくまでも現状について、国際都市東京の魅力を高めるという観点に立ってどういう課題があるのかということを今回分析しているものでございまして、この白書の段階で経済の見通しということは特にやっておりません。

○清水委員 しかし、それぞれの団体の考え方というのは、そういう政府の経済の成長の見込みの上に立った、それぞれの提言を出しているわけですよね。ですから、ここにあります総合政策研究会は、日本再生のために国際競争力ある東京圏づくりの提言と。この中で、都心居住を推進しろ、首都にはもっと公共投資を、都心部の容積率は大幅にふやせ、財源確保に知恵を絞れとかいっておりますし、経団連なんかの提言も、産・学・官共同プロジェクト構想の推進、そして物流効率化の推進に関する提言その一番では、インフラ整備としての環状道路の早期整備、JAPICは防災都市づくりに向けた提言、不動産協会は新たな住宅ビジョン、建設業界は東京の活性化を目指して安全で豊かなまちづくり、こういうふうにいっていますけれども、中身は、私たちが日ごろ繰り返しいっております新たな大規模な開発を、これまでは多心型の都市づくりですとか一極集中是正とかいわれてきましたけれども、今回、環境をよくするために道路をつくるんだとか、防災を推進するために物流を高めるとか、そういう装いを変えてーーこれまでのさまざまないろいろな問題をどうやって根本的に打開するかというのではなくて、装いを変えて、経済の成長率を見越して新たな大きな開発に向かっていくという方向が、これには本当に色濃く出ているというふうに思うんですね。
 それで、この都市白書の研究会のメンバーと検討経過についてお伺いしたいと思います。

○河島参事 今回の白書の分析を進めるに当たりまして、学識経験者の方々から専門的な見地からの助言をいただきたいと考えまして、学識経験者の方、それから東京都の職員研修所、都市計画局、この三者といいますか、学識経験者は複数おりますが、三つのジャンルの者が集まりまして白書研究会を職員研修所内に設置いたしております。
 職員研修所を使っているといいますのは、職員研修所の調査研究機能を活用して今回の都市白書の作成を行った、そういうことがございますので、職員研修所内に学識経験者を含む白書研究会を設置して検討を進めたということでございます。
 学識経験者のメンバーにつきましては、座長として明治大学政治経済学部の市川宏雄教授、東京大学工学部の大方潤一郎教授、西武文理大学の柏木孝之教授、東京農業大学地球環境科学部の蓑茂寿太郎教授の四名の先生にご協力をいただいたものでございます。
 研究会の開催につきましては、平成十一年一月より本年二月までの間、計五回開催しておりまして、この研究会において、白書における分析の視点であるとか、あるいは具体的な分析の内容等をご指導いただき、検討してきたものでございます。

○清水委員 座長の明治大学の市川教授は、富士総合研究所客員主席研究員ですよね。そして、都市づくり調査特別委員会の専門委員もやっておられるというふうに思うんですね。それで、都市白書にもかかわっていると。
 調査特別委員会の専門委員もやられている、しかも、富士総合研究所の研究員という一業界の仕事をしている方が、分析をする方向でもーー分析をしているかどうかは別としても、それから新しいビジョンをつくる中にも入って、都市白書では座長だということになっているんですけれども、どういう考えでこういう方向を進められているのですか。

○河島参事 それぞれの先生方の専門領域がございますけれども、今回の白書を検討するに当たりまして適切なご指導をいただけると、こういう判断のもとにお願いをしているものでございます。

○清水委員 そんなのだったら、何万人だっているんじゃないですか。特別委員になってやっている、それから白書の作成委員にもなっていると。もし幅広い意見を聞くということであるならば、そういうこともいえると思うんですが、今、都市づくり調査特別委員会の他の委員を見ても、かつて東京都の都市計画局長であった人が二人もいらっしゃるし、経済界、国の運輸、都市計画、建築などの仕事に携わっている人が、現実に都市づくりのビジョンの作成のために進めているわけです。従来型の公共事業を進めてきた人たちであるというふうに感じるわけなんですね、今、この都市づくりビジョンの策定の方向の委員を見ても。都市白書もそういう流れ、この方がまず代表になっている、座長になったということによって、やはりそういう考えが強くあらわれているということを実感します。
 そこで、その座長の市川教授が、「成熟都市東京のゆくえ」という著書を出しておられます。その「はじめに」では、一九八八年にアメリカの公共事業改善全国協議会が大統領と議会に提出した最終報告を取り上げて、その主たる目的は、公共施設の老朽化にいかに取り組むべきかであるとし、高速道路の橋梁の落下や水道管破裂による道路の閉鎖や水の汚染などが頻繁に起こって、老朽化したインフラストラクチャー、基礎的な基盤施設の維持管理が緊急な課題になっていたというふうに、この「はじめに」のところで書いているわけです。
 そして、我が国、日本は、これからの基盤施設の整備の課題は、施設整備のレベルアップがどこまでできるのか、必要なのかという自問自答である、しかも、その自問に加えて、既に整備された基盤施設の老朽化が進行していくのは紛れもない事実であり、それに対して、その維持管理に困難を来すのではないかという課題にも答えなければならないと書いているわけなんです。
 この考えがどういう主張かというのは、ここに書いてあることでしか読み取るわけにはいきませんけれども、白書には、少なくとも座長であるこの市川教授の、こういう主張する視点というのは見ることができないと思うんですよ。
 それで、この教授の意見というのは、主張が変わったのか、それともこの中には取り入れてはいないのか、そのことについて伺いたいと思います。

○河島参事 今回の白書は、国際都市東京の魅力を高めるというテーマに焦点を当てて分析したものでございまして、ご指摘のような施設の維持管理についても、今後の課題としての認識は持ってございます。
 そういったものに対して、多様な主体の参加あるいは事業の効率性の発揮、施設の長寿命化、そういったことに関して、この白書の中にも記述をいたしているところでございます。

○清水委員 そういうふうにいわれますけれども、しかし、全体を通していえることは、先ほどから繰り返し述べていますように、政府の景気対策による公共事業の拡大という方向に強く動いていっていると思うし、当初は、この教授の考え方の中にも、今紹介したような考え方が出ていたんだと思います。しかし、昨年のそういう政府の景気動向などの、方策の変化などがされている中で、これは私の予測ですけれども、こういう研究者などの主張にも、それらが強く反映されていったと。現在では、こうした都市づくりの専門委員として、都市白書の専門委員として、新たな国際都市という名前で大きな事業をさらに進めるという結論の方向に誘導するような白書の作成に当たっているというふうに実感せざるを得ないわけです。
 それで、この中に書いてありますように、例えば、ニューヨークのケースがそのまま当てはまるわけではない。それを対岸の火事として見過ごすのか、他山の石として今後の警笛とするのかは判断は分かれるが、東京が経験してきた大都市問題、そして、それに対する政策の策定に当たっては、ニューヨークを初めとして常に先進国の各都市を見習ってきた都市の老朽化と基盤整備というテーマについても、それを免れることはできないはずであると。
 この教授が現在でもこういう考えを持っているかどうかはわかりませんけれども、しかし、その本の中にはこういうふうに書いてあって、東京が国際都市として他の都市を見習うというのならば、やはりホテルの数ですとか環状道路の比率、空港のアクセスだとか、そういう部分だけを抽出して比べるのではなくてーーそれら大都市が、東京よりも十年、二十年前に一つの頂点があったというふうにいわれています。ですから、東京の頂点は、これから十年後にあるのではないかといわれています。その維持、更新にどれだけの財源がかかるのかという視点から都市計画局で調査したり、分析するということなしに、新しい課題にどうやって進んでいくかというだけを白書の中に盛り込むということについて、大変疑問に感ずるわけなんですけれども、そういう考え方についてはどのように感じますか。

○河島参事 先ほどもお答えを申し上げましたが、当然のことながら、都市の中に社会資本を整備していけば、それの維持管理ということは大きなテーマになりますし、限られた財政の中でどのようにそういった維持管理をうまく適切にやっていくことで財源を効率的に生かしていくかということに当然つながるわけでございます。そういう問題意識というのは当然のことながらございまして、第5章の中に、そういったような社会資本整備における今後の取り組みのありようというようなことでの考え方を示しているつもりでございます。
 それにしましても、今回の白書の分析の視点は国際都市東京の魅力を高める、こういう視点で、課題は何かということでやっておりますので、今ご指摘のようなことについては、それはまたそういう機会にきちんと整理をすべきものではないかというふうに考えております。

○清水委員 今回の白書で感じることについては幾つか質問してきたんですけれども、先ほども他の委員が触れましたけれども、知事のあいさつの中には、東京を上空から眺められて感じたことを最初に書かれました。今本当に都民の実態とか生活に基づいた都市づくりということが求められているのに、上空から眺めたらどういうことになるかということは、局長が副知事と一緒に最近出されましたご本がありますね、「都心活性化地図」ということで、四月に出された本の中にあるんですけれども、これは特に立川や福生や瑞穂や八王子や昭島などがこれを聞いたら本当に怒るわけなんですけれども、こう書いてあるんです。前段は除きますけれども、横田だって四千メートル近い滑走路があるのに、年間一万数千回しか、離発着していません、羽田は二十四万回、成田は十二万回、民間機にも開放すべきです、国際化、情報化時代の多摩の発展にもこれが不可欠です、というふうに局長と副知事のご本の中には書いてありました。
 今まで横田基地を民間機に開放するという問題も、返還の前段とかいろいろいわれてきましたけれども、こういうふうに著書に記載をされているというのは、これがもう一番の目的で、一万数千回の離発着のもとで、どれだけ瑞穂や福生や昭島や八王子の住民が日々の生活を苦しめられているかという視点というのは全くこれには含まれていないということを感ずるわけです。
 ですから、東京を上空で眺めるんじゃなくて、生活の視点からやはり都市づくりというのはとらえなければ、最後に来るのはこういう考えではないかということを指摘して質問を終わります。

○かち委員 最後ですので、具体的なことを二、三お聞きします。先ほどの説明にもあったんですけれども、今度の白書の中には、産業を都市づくりの中に位置づけたという点で、私はこれは重要なポイントではないかというふうに思うんですね。文章の中にも、都市は産業とともに成立するものであり、本来産業政策と都市づくりは一体的に考えられるべきであるとか、技術立国である我が国においては、世界に通用する高い技術力を備えた製造業が果たす役割は極めて大きい、このように記されております。
 こういう産業育成と都市づくりとどう両立させていくのかというのが今後の課題だと思うんですけれども、現実的には、今は時代の変遷や産業構造の変化ということで、製造業は衰退の一途をたどっているわけです。金属加工業では都内シェアの一〇%を占める、工場数でも全都で一位という大田区でも、かつては九千件あった工場数が現在では六千件を切るという状況です。東京に立地している工場は、従業員が二十人未満が九割を超え、中でも三人から一人の工場が半数を占めるなど、区部における小規模零細工場の比率が高いのが特徴です。
 こうした工場の今の悩みは、今の仕事が維持できるかどうかという経済的な問題、コストの問題いろいろありますけれども、この先、全体的に高齢化している中でこの仕事を受け継いでくれる後継者がいない、こういうことが切実になっているわけですけれども、こういうことを含めて、産業育成と都市づくりの観点から、この白書として、今後どのように具体的な対策をとろうとされているのか、お聞きします。

○河島参事 今回の白書におけます産業と都市づくりの関係の分析でございますが、冒頭の説明でも申し上げましたとおり、従来の都市づくりでは、ややもしますと、産業といったソフト施策の部分というものが十分に連携がとれてない部分があったのではないかと、そういう反省に立ちながらソフト政策との連携の一環として産業と都市づくりのかかわりを分析をして見ているところでございます。
 この白書の中に記載をしておりますが、工業等制限法という法律によりまして、東京の特に中心部におけます工場の立地というものは非常にしにくい状態に置かれていて、それの政令改正が昨年三月に行われ、一部地域が規制地域から除外されております。しかしながら、まだほとんどの地域が規制地域から除外されておりませんで、そういった地域についてもこの産業のあり方自体が大きく変わってきている面もございますので、産業政策と連携した都市づくりを進める観点から、規制地域から除外するよう国に要望していく必要があるのではないか、そんなことを一つ記載をいたしております。
 また、意欲ある中小製造業などの育成に向けまして、地元の区市などとも連携して、都市づくりの面も含めました新たな育成策について検討する必要性もあるのではないか、産業政策と都市づくりの連携による中小製造業の意欲ある人たちの育成ということを図っていく必要性があるのではないか、こういうことを記載しております。
 こういったことを踏まえて、今後は産業政策と都市づくりの連携を図りながら住工共存の土地利用を適切に東京の中で誘導していく必要性があるというふうに考えているところでございます。

○かち委員 確かに経過してくる中で、公害問題だとか人口の集中ということで、それを排除する意味から工場等制限法というのがしかれてどんどん大きな工場は郊外に去っていった。そういう中で、改めて、産業をどう築いていくかという問題に突き当たっていると思うんですけれども、そういう意味では、今現在頑張っている中小の製造業が、環境整備を整えて後継者を受け入れようとしてもなかなかできにくい状況があるという問題もありまして、そういう意味でも、この工場等制限法の緩和あるいは撤廃をすることが非常に今重要な課題になっているというふうに思います。
 この白書の中には、そういうことを進めながら、また、意欲ある、将来性のある企業に対しては、いろいろな支援策をとっていこうというふうなことが書かれているわけですが、これまで、日本の経済、あるいは世界にも通用する技術を持って、その経済の基盤となる産業を支えてきた金属加工製造業、こういうものが今本当に衰退をしていこうとしているわけですけれども、そういうものをどう見ていくのか。これから起業しようというものではなくて今ある企業をこのままほうっておけばもう消えていってしまいかねない、そういう状況にあるわけですけれども、そういうものは時代の趨勢だから仕方がないというふうに見ていくのか、それとも、本当に基盤産業としてこの東京で支えていくんだという、そういう考えにあるのか、そのところをお聞きしたいんです。

○河島参事 なかなか企業自体を、意欲があるものかどうかというのを判断するのは非常に難しい部分があろうかと思います。基本的に東京の製造業は、個別の企業が単独で成立しているわけではなくて、それぞれが密接なかかわりを持ちながら全体として産業活動を担っているという部分があるのではないかというふうに考えております。
 そういう中で、東京都のこの都市づくりを進めていく立場からすれば、産業自体もそれぞれ一人一人の企業を経営されている方々含めまして、皆元気になっていただきたい、元気になっていただくために、都市づくりのサイドから応援をしていく、そのことが東京の産業を活性化していくということに役立つのであれば、そういう工夫をこれからしていかなければならないのではないかというふうに考えております。

○かち委員 都市計画局という立場から、なかなか踏み込んだ工業育成政策というのには言及できないんだろうと思いますけれども、今の中小企業の皆さんのコスト割れ、どんどん海外にその拠点が移っていくというような状況の中では、本当に維持していくことすら難しい状況なんですよ。そういう企業をつぶしてしまっていいというのであれば別ですけれども、そういう企業をやはり守り、育成、発展させていくという立場に立つなら、そこを保護していく、支援していく政策をぜひ都市づくりの中で見続けていただきたいというふうに思います。
 そして、後継者づくりも、当面の技術研修などというのももちろん必要ですけれども、そればかりではなくて、そういう企業を受け継ぐ人材育成、教育面からも含めて行っていく必要があるのではないかなというふうに思います。最近、埼玉県では国と一緒になって物づくり工業大学を設置するというような動きも見られております。改めて今、製造業というものに光を当てて、これからの日本の国、東京の将来を考えていく必要があるのではないかというふうに思います。そういう意味で、教育政策も含めて、物づくり、都市計画に反映させていただきたいというふうに思います。
 それから、多摩の産業ですけれども、多摩地域では、白書によれば順調に製造業が伸びている状況にありますよね。市内シェアが四割、とりわけ電気や自動車関連の産業は八割となっている。こういうふうに発展をしているわけですけれども、あえて多摩の産業育成ということで、圏央道などに、広域的な幹線道路の周辺において工業立地を計画的に誘導する必要があるのでしょうか。その辺はいかがでしょうか。

○河島参事 産業の分析の中で、三二ページで多摩地域の製造業の出荷額の推移であるとか都内製造品出荷額における多摩地域のシェア、こういったもののデータをお示しいたしております。こういうことで、多摩地域の産業というものは成長をしておりまして、都内におけるシェアも機械関係の出荷額などを中心に高いものがあるわけです。また、多摩地域には、居住地が広がっておりまして、そういう仕事を産業の分野でお持ちになる方の住まいという面でもメリットがある、さらに大学とか各種の研究施設の立地も進んでいる、そういうような意味合いでは、産業と、そういう大学などの連携、そういうことが非常にしやすい好立地の条件を持っている、そういうようなことがございますので、多摩地域における製造業というのは大きな可能性をそういう面では持っているのではないか。
 今後、いろいろ情報化などがまた進みますと、スモールオフィス、ホームオフィスといわれているような新しい就業形態なども出てきて、多摩地域においても必ずしも都心部に通勤をしないで仕事をするというような人も多く出てくるのではないだろうか、また、多摩地域の産業との関連においてそういう小さなビジネスが育っていくということも十分あるのではないか、そういうような意味合いで、多摩地域における産業とかビジネスの立地を促進するということは今後の大きな課題であり、重要な事柄であるというふうに認識しているところでございます。

○かち委員 経済効率的な側面から見れば、そこは非常に可能性のある地域というふうに見えるかもしれませんけれども、東京の中で唯一自然が残されている地域である東京の環境を守るという立場からすれば、これ以上の開発は考え直すべきではないかということを一言申し上げておきます。
 次に、先ほども出ておりましたけれども、都市づくりと商店街の問題ですけれども、都心に居住をということになると、どうしてもいろいろ規制の中で非常に高い超高層の住まいに住まわざるを得ないような状況も、これから可能性として出てくるわけですが、そうした中で、ことしの六月には大店立地法が施行され、いよいよ大きなお店がどんどん進出してくることが可能になるという状況になっているわけですね。こうしたときに、本当に東京が魅力ある、人の触れ合いのあるまちづくりという点からはほど遠くなっていく可能性が見えてくるわけですけれども、今までの地域のなりわいを受け継いできた商店街の果たした役割というのは非常に大きいものがあるわけですが、その商店街をどう育成していくのか、そういう視点から見たときに、この大型店の進出というものに対して、全く野放しに、見ているだけで本当に東京のまちづくりが発展するのかどうか、そういう点でのお考えはいかがでしょうか。

○河島参事 商業をめぐる環境が大きく変化をする中で、都市づくりにおきまして個性豊かでにぎわいのある魅力的な市街地を形成するということで、商店街の活性化にこたえていく、そういうことが課題というふうに認識しております。白書の一一七ページの右側の方に、これからの商業をめぐる環境変化の中で新たな時代にふさわしい商業、サービス機能の立地のあり方を探りながら都市づくり政策と連携を強化していく、こういうことの必要性ということを記載しているところでございます。
 また、特に公共交通が便利な形である、そういうところにつきましては、駅を中心にさまざまな機能を導入した、歩いて暮らせるようなまち、そういったことを実現していくことがこれから必要であるというふうに考えておりまして、商店街の活性化ということは、その中でもまた重要な要素になるのではないかということも考えているところでございます。

○かち委員 規制緩和の中で東京、神奈川だけでも二十万店も小売店が消えていっているという状況があるわけです。魅力ある商店街づくりといっても、個々の商店、商店街だけの努力だけではとても太刀打ちできない大型店の進出というものに対して、何らかの対策をとるべきだと思うんです。国際都市東京ということで先ほどからいろいろいわれていますが、国際的な比較をして見るならば、ドイツだとかフランスやイタリア、ベルギーなどでは、大型店の進出に対して許可制あるいは届け出をしなければならない、歴史的な町並みを守っていくという点でドイツでも厳しい規制がかかっている、こういう状況もあるわけですから、そういうことも見習って、東京の本当に魅力ある都市づくり、商店街をつくっていく上での大型店に対する規制あるいは全体的な規制緩和に対しても見直しをする必要があるんではないかというふうに思うわけですけれども、地方分権の時代でもあります、東京都として、この大型店問題についてどう考えていこうとされているのか。国の法律だから仕方がないというふうに考えているのか、その辺はいかがですか。

○河島参事 大店立地法の施行の際に都市計画法もあわせて改正になりまして、特別用途地区の制度というものが、区市町村で従来以上に活用できるようになっております。そういう特別用途地区の制度を活用しながら、新しい時代の大店法に対する枠組みの中で地域の考え方に応じた対処をする、こういうのが今の仕組みになっているのではないかなというふうに考えております。
 一概に、大規模店がその地域にとってマイナスばかりを生じさせるものでは必ずしもなくて、消費者のニーズに合うということも一方であるわけでございまして、大規模店であるから、一律都市づくりでどうこうというような対処というのは、余り性急にやるべきものではない。十分に地域の状況を見ながら、地域の主体性を持ちながら対処していくべきものではないかというふうに考えております。

○かち委員 地域の主体性を見て、そういう中で検討していく仕組みになっているといえども、この大店法は決して規制にはなっていないわけですね。出てくるものは仕方がない、その枠の中で何とかやっていこうというものであって、東京のまちづくりとの関係で、こうしたものが本当にその地域にふさわしいものかどうかというものも、東京都として検討していく権限を持っていくような、そういう考え方にぜひ立っていただきたいというふうに思います。
 最後に、羽田空港の跡地利用について、この中にも若干触れられているのです。一行だけなんですけれども、この跡地利用というのは歴史的な経過もありますけれども、今後の都市づくりにおいても、非常に重要な臨海地域に面している地域です。羽田空港の沖合展開完了、ことしの三月には展開が完了しておりますので、跡地については当然もう確定できるはずにもかかわらず、いまだ何ら動きが見えない。一体これはどういうことなのかと思うのですが、都が取得する時期と方法については別途検討するということで、三者協で検討されてきていると思うのですけれども、その進捗状況はどうなっていますでしょうか。

○山内航空政策担当部長 跡地利用の検討状況でございますが、都は平成九年度から、国や地元大田区とともに跡地利用計画の検討を進めております。しかしながら、まだ国で跡地の範囲が提示されていないということでございますが、羽田空港は一方で、本年七月より処理容量が拡大されるほか、国際チャーター便等の国際空港需要への対応につきまして検討が開始されているなど、羽田空港をめぐる新たな課題が浮上してきているという状況にございます。
 このような状況のもとで、現在国においては、拡大される処理容量でありますとか、将来の空港機能に見合った施設計画を踏まえて、空港の範囲をどのようにすべきかという検討を進めているというふうに承知しております。

○かち委員 平成六年に羽田空港跡地共同調査に関する連絡会議というのが設置されて、以来検討されてきているわけですよね。そして、おおむね二百ヘクタールというものも決まっていて、あとはどの施設をどう残すかということを決めるだけだと思うのです。だから、国際化に向けて新たな需要が増しているというのは新しい国際空港の状況であって、跡地について、それをまた組み込んで、また総合的に考え直すのだというのは、ちょっと最初の約束と違うのではないかと思うのです。
 そういう意味で、この連絡会は一体どのように機能しているのか、昨年は一体何回開かれたのでしょうか、そして、今後の跡地利用についての見通しというのはどうなっているのでしょうか。

○山内航空政策担当部長 まず、跡地の範囲でございますが、先生おっしゃったような数字というのは、実はその後、先ほど申し上げましたけれども、この七月から、国内線だけですけれども、国内線の処理容量も拡大されるということになっております。現在、一日六百四十回という定期便の発着枠がございますが、これが一日当たり六十二回ふえまして、七百二回に増加するということになっております。このような発着枠の拡大に伴いまして、スポットでありますとか、そういうような施設も必要になるということでございます。
 また、東京都では国の方に、ご承知のとおり、国際化というのをお願いしておりますが、この国際化が実現いたしますと、その国際便のためのスポットでありますとか、国際関係の施設でありますとかというものが必要になってくるということで、これらの動きを踏まえて現在国が検討しているという状況でございまして、跡地の範囲がどれだけあるかというのは、まだ国の方から出されておりません。現在、それを待っているところでございます。
 それから、羽田空港跡地共同調査に関する連絡会議、平成六年の十月から実施されておりますが、これが平成十一年の八月に第二十三回が開かれまして、そのときから以降、この連絡会議自体は開かれておりません。
 それから、そのほかに羽田空港移転問題協議会というのが、五十二年から、羽田の移転問題全般につきまして、運輸省と我々東京都と、そのほか地元の大田区、品川区を入れまして、俗に三者協と申しまして開催しております。こちらにつきましては、適宜、意見交換をやっておりまして、最近では本年の三月に第四十二回の会議を開きまして、この羽田空港の処理容量の関係の意見交換などをやっております。

○かち委員 結局、その調査連絡会をつくってやってきたけれども、国が次々と空港の需要を拡大していくから、なかなかめどがつかない。本来だったら昨年中に二百ヘクタールの確定をするということになっていたはずなのに、それももうやらないというのが実態だと思うのですね。この二百ヘクタールについては、都が取得をするというのは、五十六年第十五回の三者協の中で明らかにされているわけですけれども、今のご説明だと、都としてその二百ヘクタールを取得するという意思すら全く見当たらない。国がなかなか決めてくれないから、しようがないんだ、しようがないんだといっているふうにしか聞こえないのですよね。本当に東京都はこの二百ヘクタールを取得する気があるのでしょうか。もう成り行きまかせでやるしかないのだというふうに考えていらっしゃるのか、そこはどうなんですか。

○山内航空政策担当部長 先ほども申し上げました羽田空港の跡地をめぐる状況の大きな変化を踏まえまして、また、跡地が東京のみならず日本全体にとりましても貴重な都市空間であるということから、空港跡地の範囲の提示を待ちまして、関係者と協力し合いまして、よりよい利用計画を定めてまいりたいと考えておりまして、その段階で種々の条件などにも配慮しながら検討を積極的に進めてまいりたいと考えております。

○かち委員 この二百ヘクタールというのは、東京都だけの問題ではなくて、大田区の土地でもあったわけですよね。空港をつくるというために、四十八時間以内に強制退去された住民の皆さんへの配慮というものもずっとあって、こういう約束がされてきたと思うのです。当該の大田区でも、この二百ヘクタールの跡地利用の構想なども描いて、今後の産業活性化のために生かしていきたいという願いも込められているわけですが、今のような状況の中では、二百ヘクタール問題というのは全く前へ進まないという、そういう現状にあると思うのですね。
 ぜひ、この二百ヘクタールの有効活用ということについては、東京都が国と大田区ということで協議会をつくっているわけですけれども、都がそのリーダーシップを発揮して、きちんと対応していただきたい。そのことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

○尾崎委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○尾崎委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で都市計画局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時十分散会

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