委員長 | いのつめまさみ君 |
副委員長 | 関口 太一君 |
副委員長 | 高橋 信博君 |
理事 | 淺野 克彦君 |
理事 | 神林 茂君 |
理事 | 吉倉 正美君 |
加藤 雅之君 | |
遠藤 守君 | |
佐藤 由美君 | |
大島よしえ君 | |
滝沢 景一君 | |
遠藤 衛君 | |
林田 武君 | |
大塚たかあき君 |
欠席委員 なし
出席説明員都市整備局 | 東京都技監都市整備局長技監兼務 | 河島 均君 |
次長 | 中西 充君 | |
技監 | 升 貴三男君 | |
理事 | 松井多美雄君 | |
理事都市づくり政策部長事務取扱 | 安井 順一君 | |
総務部長 | 石野 利幸君 | |
住宅政策推進部長 | 鈴木 尚志君 | |
都市基盤部長 | 藤井 寛行君 | |
市街地整備部長 | 遠藤 正宏君 | |
市街地建築部長 | 中島 俊明君 | |
都営住宅経営部長 | 瀧本 裕之君 | |
企画担当部長航空政策担当部長兼務 | 邊見 隆士君 | |
連絡調整担当部長 | 田崎 輝夫君 | |
景観・プロジェクト担当部長 | 石川 進君 | |
住宅政策担当部長 | 香山 幹君 | |
民間住宅施策推進担当部長 | 山口 幹幸君 | |
外かく環状道路担当部長 | 野崎 誠貴君 | |
民間開発担当部長 | 藤塚 仁君 | |
多摩ニュータウン事業担当部長 | 五十嵐 誠君 | |
耐震化推進担当部長 | 町田 修二君 | |
耐震施策担当部長 | 小野 幹雄君 | |
経営改革担当部長 | 岡沢 裕君 | |
再編利活用推進担当部長 | 室木 眞則君 | |
建設推進担当部長 | 荒川 達夫君 | |
営繕担当部長 | 永島 恵子君 |
本日の会議に付した事件
意見書について
都市整備局関係
報告事項(説明・質疑)
・緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた新たな規制誘導策の基本的な考え方(案)について
○いのつめ委員長 ただいまから都市整備委員会を開会いたします。
初めに、意見書について申し上げます。
委員からお手元配布のとおり、意見書一件を提出したい旨の申し出がありました。
本件については、本日の理事会において協議の結果、調整がついた旨、議長に報告すべきであるとの結論になりました。
お諮りいたします。
本件につきましては、理事会の協議結果のとおりとすることにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○いのつめ委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。
なお、案文の朗読は省略いたします。
民間建築物の耐震化施策の充実・強化に関する意見書(案)
首都直下地震の発生の切迫性が指摘されている現在、大地震から都民の生命と財産を守るため、建築物の耐震化を促進することは喫緊の課題となっている。
こうした中、政府は、本年十一月に平成二十二年度補正予算限りの措置として、住宅・建築物の耐震化緊急支援事業を実施した。この事業は、建築物の耐震診断及び耐震改修の費用助成を従来より一定程度強化したものであるが、既に同様の補助制度を整備している地方公共団体は対象から除外される場合があるなど、不十分なものとなっている。
人口や建築物が集積し、政治・経済の中枢として極めて重要な役割を担っている首都東京において、一たび大地震が起これば、その被害は甚大で計り知れない。
よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、民間建築物の耐震化施策を充実・強化するため、住宅・建築物の耐震化緊急支援事業について次の事項を実現するよう強く要請する。
一 当該事業を継続的な制度とすること。
二 既に補助制度を整備している地方公共団体も活用できるような制度に改善すること。
三 震災時の避難や救援活動に及ぼす影響が大きい緊急輸送道路沿道建築物等の耐震化助成について、補助割合を引き上げるなど、財政支援策を拡充・強化すること。
以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
平成二十二年十二月 日
東京都議会議長 和田 宗春
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
国土交通大臣 宛て
○いのつめ委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、都市整備局関係の報告事項の聴取を行います。
理事者から報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。
○小野耐震施策担当部長 先般、公表いたしました緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に向けた新たな規制誘導策の基本的な考え方につきましてご報告させていただきます。
本案でございますが、学識経験者から成る専門家会議の提言を踏まえ、都として、実効性のある取り組みの必要性を提起し、広く都民の意見を伺うため取りまとめたもので、現在、パブリックコメントを実施しております。
お手元に、資料1、資料2、資料3をお配りしておりますが、本日は、この資料1の概要によりましてご説明させていただきます。
資料の左側の上段をごらんください。
緊急輸送道路は、日常は、幹線道路として多くの人や車両が利用するとともに、震災時には、避難、救急、救援、緊急物資の輸送、復旧、復興に利用される動脈として重要な役割を担うことになります。
その沿道には、旧耐震基準で建てられた建築物が多く残されており、平成七年に発生した阪神・淡路大震災では、建築物の倒壊によって道路が閉塞し、交通が混乱したことにより、緊急車両の通行が停滞するなど、救急活動や緊急物資の輸送等に大きな支障を来しました。
一方、南関東で三十年以内にマグニチュード七程度の大地震が発生する確率は七〇%と切迫しております。
しかしながら、耐震改修促進法では、耐震診断、改修とも努力義務にとどまり、その実施は所有者の意思にゆだねております。
緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は、都民の生命や首都東京の機能の確保にかかわる重要な課題で、極めて高い公共性があります。耐震化を促進するためには、所有者の意思にゆだねておくだけではなく、従来よりも一歩踏み込んだ新たな規制誘導策を早急に講ずる必要があると考えております。
次に、基本的な考え方とイメージでございます。
新たな規制誘導策の基本的な考え方として、三点掲げております。
まず、耐震化を促進する上で必要不可欠な耐震診断の実施を沿道建築物の所有者に義務づけること。次に、診断結果をもとに、所有者は耐震改修に向けて主体的な取り組みを行っていくこと。そして、所有者が耐震診断、改修を円滑に実施できるよう、行政は効果的な支援策を講じることでございます。
続いて、新たな規制誘導策のイメージでございます。
対象建築物は、次のすべての要件に該当するものが適当であると考えております。
一つ目が、昭和五十六年以前のいわゆる旧耐震基準で建築されたもの。二つ目は、倒壊した場合に道路への影響を考慮し、道路幅員のおおむね二分の一を超える高さのもの。そして、三つ目でございますが、特定緊急輸送道路と呼んでおりますが、重要な緊急輸送道路の沿道にあるものでございます。
また、対象者でございますが、耐震診断、改修を行う責任と権限のある所有者と考えております。
次に、主な義務でございますが、大きく三点を考えております。
まず、対象建築物が耐震診断や改修を実施しているか否かを把握するため、耐震診断の義務化に先立ち、耐震化状況を報告することを義務づけます。
次に、耐震性能の有無を明らかにするため、耐震性能を把握できていない建築物の所有者に対して耐震診断を義務づけます。耐震診断は、都が定める耐震化指針に従って行い、また、診断実施後に補強設計、耐震改修等に進んでいくことを前提として、原則として、建築士が診断を行うことを考えております。
そして、義務づけによって得られた診断結果をもとに、早期に耐震改修等を促進するため、耐震性能が不十分な建築物の所有者に対して、耐震改修等を実施することを努力義務として定めます。
なお、耐震改修等としていますが、耐震改修のほか、建てかえ、除却、移転を含んでおります。
続きまして、資料の右側、基本的枠組みでございます。
図の左側に新たな規制誘導策の対象者、右側に東京都がございまして、耐震化の促進に向けて相互に協力、連携して、必要な取り組みを行ってまいりたいと考えております。
まず、東京都は、耐震化指針を策定し、特に重要な特定緊急輸送道路を指定いたします。
一方、特定緊急輸送道路の沿道建築物の所有者は、耐震化状況報告書の提出、耐震診断の実施とその報告、耐震性能が不十分な場合には、耐震改修等の実施とその報告を行っていただきます。
こうした所有者の取り組みに対して、都は、必要に応じて指導、助言、また、所有者が耐震診断や改修等を円滑かつ着実に実施できるよう必要な支援策を的確に行ってまいりたいと考えております。
なお、今回の規制誘導策のポイントとなります耐震診断の義務化に関しましては、指導、助言に加えまして、指示という措置、そして指示をしてもなお耐震診断を実施してもらえない場合には、その事実を公表することや行政処分としての命令ができるよう検討したいと考えております。
さらに、都民への情報提供としまして、主要な区間ごとの耐震化状況を公表していくことを検討したいと考えております。
最後に、今後の展開に向けてでございます。
耐震診断の義務づけなど、都民に対して新たに義務を課すことから、条例を制定することが必要となります。首都直下地震の切迫性が指摘される中、都民の生命と首都東京の機能を確保するため、できるだけ早期に条例を制定することが必要と考えております。
また、耐震化を円滑に進めるため、区市町村や関係団体との連携を十分図ってまいりたいと考えております。
以上が概要でございます。
なお、本案につきましては、十二月一日から二十一日まで三週間の期間をとりまして、都民の皆様のご意見を募集しておりまして、その結果等も踏まえ、年明けには最終的な取りまとめを行いたいと考えております。
説明は以上でございます。
○いのつめ委員長 報告は終わりました。
これより本件に対する質疑を行います。
発言を願います。
○淺野委員 ただいまご報告がありました緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた新たな規制誘導策、この基本的な考え方について、数点ご確認をさせていただきたいと思います。
さきの本会議場での都技監の答弁などからも、この建物を所有されている方が、特に緊急輸送道路、その中でも重要なものについて、自分の生命だけではなくて、公に対する責任というものがあるんだということを明確に述べられておりました。私はこれについて非常にそのとおりだと評価をしたいと思います。
まさに、これからの時代は、個人の権利、権益を守ることも大変重要なことではありますけれども、一方で、公に対する国民の協力、こういったものをしっかりと理解していただいた上で仰いでいかなければいけない、そういった強い姿勢や意思を示すこともやはりこれからの行政には必要だと思いますので、こういったことは大切なことだと思います。
ですが、細かいところでまず一点目、確認させていただきたいんですが、とはいっても、この基本的な考え方を進めるに当たって、この緊急輸送道路、この沿道の建物というものは、やはり所有形態だったり、建物の状況だったり、さまざまなものがあると思うんですけれども、それは大体どういったものが占めているのかということは結構大切なポイントにはなってくると思います。この建物種別ごとの割合、例えば自社ビルであったりとか、分譲マンションであったりとか、そういったものの割合というのがどうなっているのか、まず初めに確認させていただきたいと思います。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路沿道建築物のうち、昭和五十六年五月以前に建築され、倒壊した場合に道路を閉塞するおそれのある、高さが道路幅員の二分の一を超える建築物は、約一万二千棟となっております。
これらの建築物の所有者に対して、都が平成二十一年度に実施した緊急輸送道路沿道建物の実態と耐震改修に関する調査によりますと、建物種別の割合は、複数回答になりますが、多い順から、自社ビルが五二%、テナントビルが二〇%、複合用途ビルが一八%、分譲マンションが一二%、賃貸マンションが一〇%となっております。
○淺野委員 今伺った話のとおり、結局、そこの所有者とか利用者とか、さまざまな方がいらっしゃいますが、絡んでくる方、関係者という位置づけでいけば、かなりたくさんの方がかかわってくるという中では、実は今までのやり方の話では、なかなかその意思を統一することが難しいといったような話もあったやに聞いております。
実際問題、自社ビルであれば、当然、自分の所有、五二%の方は自社で所有しているわけですから、意思決定は自分のところができればいいということもあるんでしょうが、逆にいうと、残り四八%はさまざまな方が所有しているところもある、それが大部分を占めているということが今の答弁からわかったわけでありますが、とすると、この人たちに対して、今回この基本的な考え方に従って誘導策というものを打つことによって耐震化が促進されていくということが大切なわけでありますが、一方、報告書の方を見せていただきますと、本件の資料3の報告書の一〇ページの方を見てみますと、専門家会議の中で、耐震化が進まない要因というのが大きく五つ上げられております。
一番最初に大きく出てくるのが法の隘路、つまり努力義務にとどまっているがためになかなか促進されない。それから、二番目に多額の費用負担、そして三番目にテナント、区分所有者の合意形成が困難であること。資産価値への低下の懸念。そして、耐震化の公共性に関する意識の希薄さといった項目が出ているわけですが、義務化するというこの方向性に従っていきますと、一番のところは大もとこれに対する解決策として見ていいのかなと。
それから、さきの本会議の都技監の答弁にもありました支援策を充実していきます、それを検討していきますというところで、この充実が本当にちゃんと図られていけば、二番の多額の費用負担等といったところも一つの解決が見えてくるのかなと思いますが、残り三つ、テナント、つまり合意形成がなかなか困難だよ、資産価値の低下に懸念があります、それから最終的に意識の希薄さというものがありますといって、この三つの専門家会議が出している要因について、今回の基本的な考え方の中でどのように改善をさせていこうと考えているのかお伺いしたいと思います。
○小野耐震施策担当部長 テナント、区分所有者の合意が得にくいことにつきましては、緊急輸送道路沿道建築物のうち、特にテナント、区分所有者が多い建築物の合意形成を図るため、今年度から耐震アドバイザー派遣事業を創設しており、この事業の活用を図ってまいります。
また、マンションの方から一度話を聞いたことがありますが、法的な位置づけができることによって合意形成がしやすいといった声を聞いておりますので、このような新たな規制誘導策をつくることによって合意形成に資するものと考えております。
続きまして、資産価値の低下への懸念につきましては、診断の義務化により建築物の耐震性能が明らかになり、適切な評価が行われる状況をつくり出すとともに、所有者が適切に対応することにより地震時の安全性が確保され、資産価値の保全につながるものと考えております。
続きまして、耐震化の公共性に関する意識の低さにつきましては、耐震キャンペーンの実施等による都民の意識啓発や社会的機運の醸成に加え、緊急輸送道路沿道建築物の所有者に対する個別訪問等をさらに取り組んでいくことにより、所有者の耐震化に対する意識の向上を図ってまいりたいと考えております。
都としましては、こうした所有者の抱える不安や耐震化の課題に対して、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。
○淺野委員 今お答えいただいた、まさにそのテナント、つまりたくさんの方が合意形成をしなきゃいけない場所については、まさにこういった義務化といったものが出てくれば、より進みやすくなるということは非常に理解できます。そして、資産価値の低下、あるいは意識の低さといったところに対しても一定の効果はあるだろうと思いますけれども、やはりただ義務化するというだけで、先ほどの資産価値あるいは意識の低さに対する解決策は十分にはなかなかいかないのではないかなと。
そういったところで、私から一つご提案をさせていただきたいのは、資産価値の低下は支援策の充実等にもかかわってくるんでしょうけれども、少し逆の見方をして、つまり義務化することで、いい方はちょっと厳しいですが、無理やり診断させて、それによって出た結果で耐震化を促進させていくという方向性だけではなくて、逆に、率先して協力してくれる、つまり積極的に耐震化に対して協力をしてくれるといった都民の方々、所有者の方々については、逆にプラスのインセンティブというか、発想のものが入ってもいいんじゃないかなと。
例えていうんでしたら、積極的に耐震診断や改修を実施してくれた方々に対して、例えば建物にプレートを張るなどして、見える形で、この方は耐震化あるいは公共性というものに対して非常に理解があって協力してくれているんですよということを、地域の方々、広く都民の方々に見える形にしてあげることによって促進をさらに促していくといったような、そういうプラスの方での取り組みというのもこれからしていくべきなんではないかなと思うんですけれども、そういった耐震化の促進についての見解を伺いたいと思います。
○小野耐震施策担当部長 耐震診断や改修が行われた建築物について、都民にわかりやすく適切に情報提供することは重要であると認識しております。
お話の表示制度などにつきましては、他の事例なども参考にしながら、さまざまな角度からそのあり方を検討してまいりたいと考えております。
○淺野委員 ぜひ、そういった義務化を進めていくという中で、支援の充実といったお話もありましたが、さらに、協力してくれた方々が協力してよかったと思えるような取り組みをあわせて検討していただくことを私から要望させていただきまして、私からの質問を終わりたいと思います。
○神林委員 私からも、新たな規制誘導策の基本的な考え方案についてお伺いいたします。
我が党は、これまで緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進するため、一刻も早く思い切った施策を講じるべきだと主張してまいりました。
今回公表した緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に向けた新たな規制誘導策に関する基本的な考え方で、現行法令では、耐震化は建物所有者の意思にゆだねられていることから取り組みには限界があり、こうした状況を打開するためには、条例化も視野に入れた耐震診断の義務化などが必要であるとしています。
そこで、耐震診断の義務化という強い規制を伴う新たな規制誘導策を導入する意義そして目的について、この件の概要につきましては、当然、本会議で我が党の高橋かずみ議員が質問しておりますが改めて伺います。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路の沿道建築物が倒壊した場合、震災時の広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈としての機能を大きく低下させることから、その耐震化は極めて重要でございます。
しかし、現行法では、耐震診断、改修とも努力義務にとどまり、その実施を所有者の意思にゆだねていることが大きな壁となっております。
都としましては、震災時において広域的な道路ネットワークを確保するため、緊急輸送道路のうち、特に重要な道路沿道の建物所有者に対して耐震診断を義務づけることが必要だと考えております。
建物の耐震性能が明確になることで、耐震改修に向けた所有者の自覚と行動が促せるとともに、行政としましても、個々の所有者に対して具体的な指導や助言等を行うことが可能となります。
また、診断の義務づけにあわせて、必要な支援を的確に行うことで、耐震診断、改修を早期に着実に進めてまいりたいと考えております。
○神林委員 今、ちょっと私の方で質問させていただきましたとおり、やはり耐震診断の義務化という強い規制を伴うわけですから、それなりにしっかり我々も心して整備していかなきゃいけないということだと思います。
次に、都民の生命と財産を守り、首都東京の機能を確保するためには、地震時に建築物の倒壊による緊急輸送道路の閉鎖を未然に防ぎ、震災直後に不可欠な救急車や消防車の通行とともに、救援のために必要となる人員や物資の輸送ルートを確保する必要があります。そのためには、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化が絶対条件でございます。
新たな規制誘導策は、これまでの施策と違い、建物所有者に耐震診断の義務化という強い規制をかけるものであり、いかに実効性を高めていくかということが問題となります。そのため、一番重要なことは、やはり建築所有者の費用負担の軽減を図ることだと考えております。
現在、東京都では、所有者に直接助成するのではなく、耐震診断、改修費用に対する区市町村の助成事業に対して支援を行っています。しかし、市区町村の助成制度の現状を見ると、助成制度がないとかあるいは制度はあっても内容が異なっているため、所有者が公的支援を受けられないあるいは受け取る金額が異なるという状況にございます。
例えば、私の地元の大田区ですと、緊急輸送道路沿道建築物に対する耐震診断の助成率が五分の四と、東京都と同様に手厚くなっておりますが、他の区を見ますと、三分の二とか二分の一というような区も多いのが現状でございます。補助率の割合だけではなく、補助の上限額も区によって異なっております。
新たな規制誘導策を早期に着実に進めるためには、建築所有者にとってできる限り不公平が生じないような支援策が必要だと考えますが所見を伺います。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は、路線全体で一体的に進めていくことが重要でございます。建築物の立地する区市町村によって、助成制度の違いから所有者の負担額が大きく異なってしまっては、新たな規制誘導策に対する十分な理解も得られず、路線全体としての耐震化の進捗が困難となると認識しております。
このため、耐震診断の義務づけに当たっては、義務が課される所有者の間でできる限り不公平が生じないという観点で支援策を検討してまいりたいと考えております。
○神林委員 市区町村が別に区別されているわけじゃありませんし、道路もちゃんとつながっているんですから、当たり前のことなんですけれどもね、ともかく不公平のないような形をぜひこれからもしっかりと検討していただきたいと思います。
次に、平成十六年に政府地震調査委員会が発表したとおり、南関東で三十年以内にマグニチュード七程度の大地震が発生する確率は、ここにも書いてございますが、七〇%とされており、いつ地震が来てもおかしくない状況でございます。まさに耐震化施策は待ったなしでやっていかなければならない施策でございます。
そこで、今回の新たな規制誘導策のポイントは耐震診断の義務化でありますが、耐震診断をすることが最終の目的ではございません。地震時に建物の倒壊を防ぐことにいかに結びつけていくかいうことが本来の目的であるわけでございます。本来の目的に向けて、今後の具体的な施策展開をどのように考えているのかお伺いいたします。
○小野耐震施策担当部長 耐震診断の実施により、個々の建築物の正確な耐震診断結果が得られることで、必要な補強の程度、適切な改修工法、それに要する費用等を明らかにすることができ、所有者は耐震改修の実施に向けて具体的な検討が行えるようになると考えております。
都としましても、診断結果を活用することにより、建築物の状態に合わせた効果的な改修方法など、具体的できめ細かい助言等が可能となると考えております。
さらに、情報提供や相談への対応等の技術的支援、費用に関する所有者の負担軽減策など、さまざまな施策を重層的に取り組んでいくことで、耐震診断、改修が促進されていくものと考えております。
○神林委員 実は、私が一番心配していますのは、先ほど質問がありましたのであえて質問いたしません。重複しますのでしませんけれども、この報告書の一〇ページにあります耐震化が進まない要因と、先ほどありましたので繰り返しになりますけれども、法の隘路それから多額の費用負担、テナント、区分所有者の合意形成が困難、資産価値の低下への懸念、それから耐震化の公共性に関する意識の希薄さとありますけれども、私も実は、ある友人でこの建築の所有者の対象になる方とたまたま話す機会を得たんです。そのときに何をいったかといいますと、耐震診断すると自分のビルの資産価値が落ちるんだよなとかなり深刻な顔をしてお話ししておりました。
そういう意味で、やはり実効性を上げていくためには、こういった課題をしっかりクリアしていかないと上がっていかないわけですね。ですからやはり現場ですとか、それから対象者の立場を十分考慮した支援策も必要でしょうし、指導も必要でしょうし、そういうものをつくっていかないとなかなか実効力が上がっていかないと思いますので、この辺は大きなポイントですので、重複するかもしれませんけれども、ここであえて私の方では要望させていただきたいと思います。
ぜひしっかりとこの辺に対する、今いったように、現場、それから対象者ですから、しっかりその立場を考慮していただいてお願いしたいと思います。
それでは、次の質問でございますけれども、先ほど、民間建築物の耐震化施策の充実・強化に関する意見書、これを全会派一致でみんなやっていこうということで、国に対して出していくわけでございますけれども、現在、緊急耐震化が必要な建築物などについて、耐震化の促進及び経済対策として、関連投資の活性化を図るため、建築物の所有者が実施する耐震診断などに対して、国が事業に要する費用の一部を助成する住宅・建築物耐震化緊急支援事業の募集を国交省が実施しているということでございます。
国でもこのように事業を進めておるわけですから、国との連携を図って、さらに実効性を高めていくべきではないかと当然のことですが考えるわけでございまして、見解を伺いたいと存じます。
○小野耐震施策担当部長 お話の住宅・建築物耐震化緊急支援事業は、緊急輸送道路沿道建築物等に対して、国が診断費用の定額助成や改修費用の定率助成などの支援を行うもので、従来の制度よりも強化された内容となっております。一方、二十二年度限りの時限措置であることや、既に助成制度を整備している区市町村が対象にならない場合があることなどさらに改善すべき点もございます。
都としましては、実効性を高めていくために、区市町村に対しまして、国の支援事業の内容や運用に関する情報を適切に情報提供するとともに、国に対して、制度改善を求めてまいりたいと考えております。
○神林委員 冒頭からお話ししていますとおり、義務化ということで、強い意思を持って施策を進めたいということでございますので、逆にその裏の部分があって、それを実施するためには、しっかり、いろいろ現場の立場だとか、さっきいったように、さまざまな、それを実現、実効力を上げていくための当然裏返しの部分の対応策が必要なわけでございまして、そのことを十分勘案していただいて、一緒に頑張っていきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
○吉倉委員 私からも、耐震化促進に向けた新たな規制誘導策について、重複を避けて何点か質問します。
首都直下地震の切迫性が指摘されている中で、耐震化の促進は喫緊の課題であることは明白であります。阪神・淡路大震災では、建物倒壊による道路閉塞のため、交通が混乱し、甚大な被害が発生しました。政治経済の中枢である首都東京で大地震が起き、建物倒壊により被害が拡大した場合、その影響は国内だけでなく世界にも影響が出てまいります。まさに、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は、首都東京の喫緊の課題であり、一刻も早く実現させなければならない、このように考えております。
その意味で、今回示された都の新たな規制誘導策は、現行制度と所有者の意思だけにゆだねられていた現状を打開するために、一歩踏み込んだ内容となっていることを評価しております。すなわち、沿道建築物の耐震診断を義務づけ、耐震化状況を把握した上で、診断結果をもとに指導、助言を行うとしております。
さらに、危険性の高い建物等には耐震改修を勧告するとしておりますが、しかし、実際にはどこまで実効性が担保できるか甚だ心配しております。
建物所有者にとって改修を促進させるに足る魅力ある助成制度、支援策でなければ、耐震改修まで踏み込むことは難しいのではないか、このようにも考えております。
そこで、耐震診断の義務化、改修の努力義務化に伴う支援策の内容について、現在の検討状況を明らかにしていただきたい、このように思います。
○小野耐震施策担当部長 耐震診断を早期に着実に進めていくためには、診断の義務づけにあわせて、必要な支援を的確に行っていくことが重要であると認識しております。このため、建物所有者が安心して診断に取り組めるよう、診断方法に関する情報提供や相談への対応、診断技術者の紹介など、技術的な支援を実施してまいります。
また、費用負担につきましては、耐震診断の義務づけの対象となる緊急輸送道路の重要な機能を確保することの公共性や緊急性の観点を踏まえるとともに、耐震化に向けた所有者の取り組みがより一層促進されるよう、支援策の充実について検討してまいります。
○吉倉委員 今回の新たな規制誘導策は、耐震診断の義務化が一番のポイントであると考えております。まずは耐震診断の義務化という強い規制を早期に着実に実施していくことが必要となりますが、最終目的は、耐震改修や建てかえ等を実施し、建物が地震時に倒れないようにすることであります。耐震診断を実施して、その診断の結果、耐震性能が不十分な建物をいかに耐震補強をさせていくか、そこをクリアしなければ、この制度は中途半端な制度になりかねません。
先ほどもお話が出ておりましたけれども、実際に建物所有者の側に立てば、耐震診断、改修の実施には相当の費用がかかることから、金銭的な理由で実施にちゅうちょするケースが少なくないと聞いております。改修を促進させる助成制度、支援策に魅力がなければ、あるいはメリットがなければ自発的に取り組むことはしないのではないか、このように危惧しております。
この規制誘導策のスキームで診断の実効性をどこまで高められるのか、また耐震改修にどのようにつなげていくのか改めて伺います。
○小野耐震施策担当部長 耐震診断の実施により、個々の建築物の正確な診断結果が得られることで、必要な補強の程度、適切な改修工法、それに要する費用等を明らかにすることができ、所有者は、耐震改修の実施に向けて具体的な検討が行えるようになると考えております。
都としましても、診断結果を活用することにより、建築物の状態に合わせた効果的な改修方法など、具体的できめ細かい助言等が可能になると考えております。
さらに、情報提供や相談への対応等の技術的支援、費用に関する所有者の負担軽減策など、さまざまな施策を重層的に取り組んでいくことで耐震診断、改修等が促進され、実効性のある制度となるものと考えております。
○吉倉委員 専門家会議でも指摘されたように、先ほども話がありましたとおりですが、耐震化が進まない要因として、建物所有者は、自社ビル、分譲マンション、テナントビルなど、形態や権利関係もさまざまであり、耐震化に対する考え方も異なり、合意が成立しにくいことが上げられております。また、先ほどのお話のとおり、耐震診断の結果、建物が耐震性を有していない場合に、不動産取引の際に資産価値の低下が懸念されることも要因といわれております。
そこで、新たな規制誘導策を着実に早期に進めていくためには、これらの建物所有者を初め都民に対して十分に説明をし、理解と協力を得ながら進めていくべきだと考えますが見解を伺います。
○小野耐震施策担当部長 新たな規制誘導策を着実に進めていくためには、建物所有者を初めとする都民の理解と協力が不可欠でございます。このため、制度化に当たりましては、広く都民の意見を聞くために、現在パブリックコメントを実施しております。また、これにあわせて、建物を所有、管理している不動産団体や耐震診断を担う建築関係団体とも意見交換を現在精力的に実施しているところでございます。
さらに、緊急輸送道路沿道建築物の所有者約一万人に対し、パブリックコメントの内容を郵送で案内するとともに、個別訪問などのあらゆる機会をとらえ、新たな規制誘導策の必要性や内容について説明し、理解と協力を求めております。
都としましては、このような取り組みをきめ細かく丁寧に実施することにより、社会的な合意形成に努めながら、条例化の検討を進め、実効性のある規制誘導策を早期に具体化していく考えでございます。
○吉倉委員 ご答弁のとおり、緊急輸送道路沿道建築物の所有者約一万人の方々に対して、パブリックコメントの内容を郵送で案内するというふうに聞きました。ぜひ実効性の伴う規制誘導策を実施していただきたい、このことをお願いして質問を終わります。
○大島委員 私からも、この耐震化のための規制誘導策の問題についてお聞きします。
東京都は、二〇〇六年度に決定した東京都耐震改修促進計画と、それから「十年後の東京」の計画で、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化率を二〇一五年度までに一〇〇%にするという高い目標を掲げています。私たちも、この耐震化率を本当にアップするということについては必要なことだと思います。
ただ、沿道の建築物だけではなくて、やっぱり東京都全体の建物の耐震化率を高めるということが本当の意味で必要なことだというふうに思っております。
その点で、先ほどの質問にもありましたが、この緊急輸送道路の沿道建築物というのは、およそ一万二千棟、昭和五十六年五月以前の建物があるというお話でしたが、今回の対象になる建築物というのは大体何棟ぐらいあるのか、そのうちオフィスビルとマンションはそれぞれ何棟あるのかお聞きします。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路沿道建築物のうち、昭和五十六年五月以前に建築され、倒壊した場合に道路を閉塞するおそれがある、高さが道路幅員の二分の一を超える建築物は約一万二千棟でございます。これらの建築物につきまして、登記簿を調査した結果、事務所は約四千六百棟、共同住宅は約二千百棟となっております。
○大島委員 そうすると、大体合わせて六千七百棟ぐらいになりますから、この緊急輸送道路沿道建築物のおよそ半分以上というのが耐震化の対象になる建物かなというふうに思います。
平成十七年度末の耐震化率というのがこの資料で七〇%というふうに書いてありましたが、その後の進捗状況をお聞きしましたら、何か今、国土交通省の方でまとめているとかいうお話だったので、今年度末にならないとわからない、こういうお話でした。
ただ、これまでの取り組みとして、この沿道建築物の所有者に対して二〇〇九年度は約一千棟、今年度は約三千棟に個別訪問による働きかけをしてきたと。努力をなさっているんですけれども、どのような働きかけを行ってきたのか、また所有者からの反応はどのようなものだったのか、具体的な声などを伺いたいのですが。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路沿道建築物に対する個別訪問、いわゆるローラー作戦は、都と地元区市町村が連携し、所有者に直接、普及啓発や働きかけを行うことで、耐震化に向けた取り組みを促していくものでございます。
平成二十一年度は十四区、約百キロ、約千棟に対して行っております。平成二十二年度につきましては三十三区市に拡大し、約四百五十キロ、約三千棟を予定しております。
また、できる限り多くの所有者に説明する機会を設けるため、個別訪問に加えまして説明会も開催するなど、きめ細かい対応を行っております。所有者からは、耐震化の必要性を理解できた、助成制度を詳しく知りたいなどの意見に加え、行政の耐震化への熱意を感じたという声もいただいております。
○大島委員 助成制度についてわかっていない方などもたくさんいて、そういう情報不足を補えばかなり進むという感触も得たんでしょう。そして、ただ、この耐震化促進施策に関する専門家会議の報告では、先ほどもありましたけれども、耐震化が進まない要因として、法の隘路だけではなくて、多額の費用負担とか、それからテナント、区分所有者の合意形成が困難、資産価値の低下への懸念、耐震化の公共性に関する意識の希薄さなどが上げられています。
今回のこの基本的な考え方の中では、この法の隘路をどう変えるかという点について、かなり重点的に検討がされてきたような結果が見えるんですけれども、そのほかの四つの点については、今後のこの規制誘導策の中ではどのように位置づけていくんでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 耐震化が進まない要因への対応につきましては、法制度でしか対応できないものと法制度によらず行政の取り組み等によって対応できるものに分かれます。
多額な費用負担、テナント、区分所有者の合意形成が困難、資産価値の低下を懸念、耐震化の公共性に関する意識の希薄さにつきましては、現在の枠組みでも取り組みが可能でございまして、普及啓発や信頼できる診断者に関する情報提供、耐震診断、改修に要する費用負担の軽減など、都のこれまでの支援策をさらに充実していくことが重要と考えております。
一方、現行法では、耐震診断、改修とも努力義務にとどまり、その実施は所有者の意思にゆだねられていることから、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を緊急に図るには限界がございます。このことが法の隘路となっており、条例化など新たな法制度に基づく対応により解決を図っていくことが必要であると考えております。
○大島委員 法の隘路以外ついては、今行っている行政の枠組みの中での支援策である程度対応できるということなので、その一つ一つについては、今回の基本的な考え方の中には書いていない、こういうことだというふうに思うんですけれども、私も、この耐震化が進まないことの要因、これを一つ一つ取り除くという検討が非常に重要だというふうに思っています。そのために、まず義務づけるとか、法的にその規制をかけていくんだということだけを先に結論として導くという検討ではいけないんじゃないかなというふうに思ってこれを見たわけなんですが、今回、この東京都の緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業の実績というのが書いてありますが、これを見ますと、耐震診断、補強設計では、二〇〇八年度で四件、二〇〇九年度で二十五件で合わせて二十九件、それから耐震改修工事助成が二〇〇九年度は三件と非常にその実績が少ないというふうに思うんです。
隘路になっている現行法制ということについては指摘されているんですけれども、専門家会議の報告書を読みますと、耐震改修促進法では、行政は、物品販売を営む店舗、それから飲食店等で二千平米以上のものなど一定の建築物に対して耐震化に関して必要な指示をすることができる、また、指示に従わない場合にはその旨を公表することができるとなっています。
また、建築基準法の定期報告において、都の場合、対象床面積二千平米以上の事務所、それから一千平米以上の共同住宅については、定期的に専門の技術者が調査、検査を行って、その結果を報告することを義務づけています。
こうした対象建築物に関する指示とか公表などは行われているんでしょうか。また、これらの対象物件のうち、耐震診断の実施状況などはどのようになっているのでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 耐震改修促進法に基づく指導、助言でございますが、これまでに十九件行っております。このうち指示、公表に至った例はございません。
耐震改修促進法でございますが、耐震診断、改修とも所有者の努力義務にとどまっております。また、行政庁は、一定規模以上の店舗や飲食店等に対して指示や指示に従わない場合に公表することができますが、緊急輸送道路沿道建築物に対しましては、そういった規定がございません。また、診断が進まない結果、耐震性能が把握できず、個々の建築物の所有者に対して耐震改修を実施するよう具体的な指導、助言を行うことが難しい状況にあります。
建築基準法に基づく定期報告につきましては、耐震診断の実施の有無等については確認できますが、正確な耐震性能を把握するためには、一件ごとに対象を特定して報告を求めていく必要があるなど、運用が大変難しくなっております。
こうしたことから、耐震化状況報告や耐震診断の実施について、新たに義務づけることが必要だと考えております。
なお、耐震診断の実施状況でございますが、東京都が特定行政庁として所管している建築物で定期報告対象としているもののうち、耐震診断を実施していると回答しているものが約五〇%、実施していないと回答しているものが約五〇%となっております。
○大島委員 私も、この報告書というのはどんなものなのかということで見せていただきました。定期調査報告書の中には、耐震診断及び耐震改修の調査状況というのがあって、それで、耐震診断の実施の有無、耐震性の有無というのがちゃんと報告するようになっているんですね。それを見て今五〇%というふうにいわれたのかなというふうに思いますが、そうした義務とか、それに対する指導、助言というのはできることになっていますし、緊急輸送道路の沿道というふうに限って見れば、それはそうなっていないといわれるかもしれませんが、全体の建築物の中ではそういうことができるというふうになっています。
平成十七年六月一日に建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法の一部を改正する法律というのができまして、これには、既存不適格建築物に係る勧告、是正命令制度、これによりまして、定期報告制度などを通じて、不適格事項や劣化状況、これを認識させ、勧告制度によらずとも自主的な改善が図られるように誘導することなどの留意点も示されています。特に危険性が大きく緊急対応を要するときには、立入調査もできるとして、耐震性についての危険性が高いと判断される建物についても例示がされているんです。こうした今ある法律や制度の徹底そして活用についても考えていくべきではないかというふうに思います。
今回のこの基本的な考え方では、緊急輸送道路のうち、特に沿道建築物の耐震化を図る必要があると認められるものについては、特定緊急輸送道路として指定をして、新たな規制誘導策の対象とするといっています。しかし、この緊急輸送道路は、輸送の目的ごとに三分類されていまして、この基準をどう考えるのかも問われてきます。
今後、どのようなプロセスを経てこの特定緊急輸送道路を決定しようとしているのか、また、その際、こうした指定を受ける道路沿線の住民や建物所有者の意見などはどのように反映されるのか伺います。
○小野耐震施策担当部長 耐震診断の義務化の対象となる特定緊急輸送道路の指定に当たりましては、区市町村の地域防災計画や耐震化施策との整合を図ることが重要でございます。
また、特定緊急輸送道路の指定に当たっては、沿道建築物の所有者に新たな義務が発生することから、あらかじめ関係者の意見を聞く必要があると考えております。関係者の意見を聞く仕組みにつきましては、今後、条例の内容を具体化していく中で検討してまいります。
○大島委員 今後、条例をつくっていく中で考えていくということなんですけれども、今回の案では、この特定緊急輸送道路として指定された沿道の建物の所有者は、おおむね新たな規制誘導策の対象者となるわけです。耐震診断の重要性というのは理解いたしますが、この実効性を確保するために、新たな規制誘導策として、建物所有者に罰則や制裁としての公表まで検討して義務づけるというのは、所有者との連携とか協力どころか、相当の強制力をもって対応することになってしまいます。
建物の耐震化というのは、自助、共助、公助の原則に基づくというふうに書いてありましたが、所有者の経済状況により義務履行の可能性に差が出ないようにすることが必要だということも基本的な考え方の中に書いてあります。それでいえば、この耐震診断というのは、公助で行うということを考えていく必要があるんではないかと思いますがいかがでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 高度に都市化した東京では、建物所有者はみずからの生命と財産を守るだけではなく、周囲への被害を与えないようその耐震性能を確保することが社会的責務と考えております。
緊急輸送道路沿道建築物が震災により倒壊した場合、広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈としての機能を大きく低下させることから、その耐震化は極めて重要であり、高い公共性を備えております。
また、首都直下地震の切迫性が指摘される中、都民の生命の安全と首都東京の機能の継続性を確保するためには、一刻も早く緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を進めていくことが必要でございます。
このため、都としましては、所有者の意思にゆだねておくだけではなく、所有者に耐震診断の実施など一定の義務を果たしてもらうとともに、耐震化がより一層促進されるよう、公共的な立場から支援策の充実を検討するものでございます。
○大島委員 高い公共性を持っているものなんだと。そして、お話を伺いましたら、その沿道にある建物が一棟倒れてしまっても、その輸送に影響が出てくる。だから、ここの耐震化を早くするんだということが書かれてあったんですね。でも、先ほどもいいましたように、所有者の経済状況でこの義務履行の可能性に差が出ないようにしなきゃいけないということももう一方で書いてあるんです。
そうしますと、しかも、耐震診断と耐震改修というのは別扱いになっていて、診断についてはかなり義務化するということで、手厚い内容をということも書かれているんですけど、どの程度手厚くするのかはまだわからないということなんですが、耐震改修の方は努力義務にそのままあるわけです。こうなると、実際に高い公共性と一刻も早くというところでかなりの矛盾が出てしまうんじゃないかなというふうに私は感じました。
東京都には、かつて震災予防条例がありまして、これは今、条例改正になっているんですけれども、その前文には、地震は自然現象だが、地震による災害の多くは人災といえる。したがって、人間の英知と技術と努力により、地震による災害を未然に防止し、被害を最小限に食いとめることができると書かれていました。
東京における地震災害というのは、都市特有の社会的な性格を持っておりますし、それを未然に防ぐための防災都市づくり、これが行われてきました。しかし、今、石原知事になってから、自分の命は自分で守るという、この自己責任論を第一に掲げるようになり、まず自助、そして地域の中で助け合う共助があって、最後が公助だと。ようやくそこで行政の出番だというこんな順番になってしまいました。
しかし、今回、罰則を伴う義務を課そうというのだったら、都の責任も非常に重大です。所有者の経済状況によって義務履行の可能性に差が出ないようにする、これが必要だということであれば、当然都の責任でやらなければならないことは非常に多いと思います。
耐震診断の義務化は大変費用が重いといわれておりますけれども、どのくらいの費用なら負担できるのかなどということを沿道建築物の所有者から調査したことはあったんでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 建築物の所有者は、みずからの生命と財産を守るだけでなく、隣地などへの被害を生じさせないよう建築物の耐震性能を確保する社会的責務を有しております。
所有者がどのくらいの費用なら負担できるかどうかにつきましては、その時々の所有者の経済状況や建築物の状態また所有者の価値観や考え方によってさまざまであり、お話のような調査は実施しておりません。
○大島委員 さまざまな状況はあるけれども、今、都が考えているのは、沿道建築物を一〇〇%耐震化しないと一棟でも倒れてしまったら輸送ができなくなるのでというのが前提にあるわけですよね。だから、そういうところは本当に考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
例えば業務ビルとか商業ビルなんかについては、改修中に営業休止をしなきゃいけないとか、それからマンションの居住者は移転しなきゃならないとか、そういうことも起こり得ると思うんですけれども、こういう問題はどのように解決しようとしているんでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 基本的な考え方の繰り返しになってしまいますが、建築物の所有者は、みずからの生命と財産を守るだけではなく、周辺への被害を生じさせないよう建築物の耐震性能を確保する社会的義務がございます。個人の所有する財産では、みずからの責任と判断において管理、処分することが原則でありまして、お話の改修中の営業休止への補償や移転補償などは建築物の所有者がみずから対応するものと認識しております。
○大島委員 そういう状況だと、やはりなかなか進まないのかなという感じがしちゃうんですね。技術的な支援ももちろん重要なんですけれども、マンション居住者とか、ビルの所有者が一番心配しているのが経済的支援なんですね。それで、この四二ページの参考資料2-5というところにアンケートの調査があります。
ここでは、実際のこのアンケート調査を見てみますと、耐震化は必要であるという考え方が九三%で、皆さんやはり思っているんですよ、耐震化は必要だと。条件によっては耐震診断を実施したいというのが八〇・五%。それなのに、診断しても耐震改修工事ができないと答えている人が六一・二%、耐震改修を実施したのは一五・八%しかいないんです。耐震改修に当たって苦慮したことは何かという質問では、工事費の費用負担が八〇・四%と圧倒的に高い割合を占めまして、それからテナント、借家人への対応も三八・五%を占めています。
こうしたアンケートに示された都民の意向を尊重し、丁寧な対応が求められていると思います。こうした声を無視して、耐震診断を実施しないときは公表することや行政処分として命令するなどということは許されないと思います。
耐震診断とか改修の実施について、社会全体として所有者を支援し耐震化を進めていくことは不可欠だ、こう書いてあるんですね。この立場で考えれば、耐震診断と耐震改修への補助限度額とか補助率の抜本的な引き上げが必要だと思いますけども、都の考え方を伺います。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路の沿道建築物が震災により倒壊した場合、広域的な救急活動や復旧、復興の大動脈としての機能を大きく低下させることから、その耐震化は極めて重要でございます。また、首都直下地震の切迫性が指摘される中、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は緊急に取り組むべき課題でございます。
費用負担につきましては、耐震診断の義務づけの対象となる緊急輸送道路の重要な機能を確保することの公共性や緊急性の観点を踏まえるとともに、耐震化に向けた所有者の取り組みがより一層促進されるよう、支援策の充実について現在検討しているところでございます。
○大島委員 ぜひ充実に努力していただきたいと思います。
区市が今実施している耐震診断にかかわっている建築士さんからお話を聞いてきました。この耐震診断とか改修を行う場合、最大の困難の一つが建物の図面とか、構造計算書とか、建築確認申請書、検査済み証などを建物所有者が保管していない場合が多いというんですね。こういう書類を保有しているかしていないかで耐震診断の費用も数百万から一千万も違ってくるんだと。こうした書類の保管の有無については調査したことはあるんでしょうか。また、多額の費用負担などへの対応策なんていうのは考えておるんでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 設計図書は、大規模修繕や日常の管理においても必要不可欠なものであり、建築物を適正に維持管理するため、設計図書を保管することは所有者の責務でございます。仮に設計図書がない場合でも、建築物を設計、施工した設計事務所や建設会社に問い合わせるなど、所有者として、できる限りの対応に努めていただきたいと考えております。
なお、国が行いました平成二十年度マンション総合調査では、旧耐震基準の建築物のうち、設計図書を持っていないと回答された方が三・七%となっております。
○大島委員 所有者と住民との合意形成をつくるというのも最大の困難の一つだとこの建築士の方も話していたんです。住民の合意形成を図るためにも、専門的知識と経験を持って親身に相談に乗ってもらえるアドバイザーの存在というのが非常に重要です。
昨年度から、分譲マンションに対して都が耐震アドバイザー制度を発足させ、また今年度から緊急輸送道路沿道建築物についてもアドバイザー制度を発足させたということは評価いたします。
現在、マンションやオフィスについてアドバイザーを派遣できる区市町村はどのくらいあるのか、また特定緊急輸送道路に含まれる自治体すべてに耐震アドバイザー制度を実施してもらう予定はあるのかお伺いいたします。
○小野耐震施策担当部長 現在、緊急輸送道路沿道建築物の所有者に対する耐震アドバイザー派遣事業を行っているのは、分譲マンションと同様の十八区三市となっております。
都としましては、区市町村との連絡協議などの場を通じ、緊急輸送道路沿道建築物の所有者に対する耐震アドバイザー派遣事業の創設を働きかけてまいります。
○大島委員 ぜひよろしくお願いします。
耐震化促進というのは、緊急輸送道路建築物に限ったことではなくて、人命救助を最優先した総合的な対策が必要だと考えています。
参考資料として、都政モニターアンケートというのが添付されておりますが、この中では、都が優先して耐震化を促すべきものとして緊急輸送道路沿道建築物が一四・二%、住宅が一三・八%となっているんです。ところが、このアンケートのもとになっている平成二十一年度の第五回インターネット都政モニターアンケート結果というのを見ましたら、都が最も優先して耐震化を促すべきものでは、緊急輸送道路沿道建物が一二・六%、日常の多くの時間を過ごす住宅が一八・三%と逆転しているんですね。
お聞きしましたら、これは、最も優先するものと次に優先するものを足して、その平均値を載せたんだとこういっておりましたけれども、何か住宅の耐震化よりも、緊急輸送道路の耐震化の方を優先させることを都民は望んでいるというふうなことを意図的に示しているのかなというふうに感じました。
特に都の調査でも、地震とか最大の被害を呼び起こすのは、木造住宅の倒壊による圧死と出火による火災の死亡だとされています。木造住宅の耐震化と木造密集地域の不燃化も急務の課題です。木造住宅の耐震化の目標達成のためにも、専門家会議を持ち、特別の計画や体制をつくり、助成制度を拡充するなどして進める考えはないでしょうか。
○小野耐震施策担当部長 都は、平成十九年三月に耐震改修促進計画を策定し、区市町村等と連携して建物所有者への普及啓発や相談体制の整備、耐震改修等に要する費用負担の軽減など、木造住宅、分譲マンション、緊急輸送道路沿道建築物などの耐震化施策を総合的に進めております。
緊急輸送道路沿道建築物の耐震化につきましては、多くの都民の生命、財産を守るとともに、首都東京の機能を維持するために極めて重要であり、緊急に耐震化を図る必要があることから、従来よりも一歩踏み込んだ新たな規制誘導策を検討するため、専門会議を設置し、早急に具体的な施策を講じるべきと考えているものでございます。
○大島委員 私がいったのは、そういう緊急輸送道路を、一〇〇%の目標を達成しようという本当に意気高い取り組みというのは評価しているんですよ。でも、一般の木造の住宅なんかも同じように耐震化率を高めなきゃいけないというところでももうちょっと積極的に専門家会議なんかを開いてもらえないかなという、そういう思いでちょっと聞いたんですね。
今回の専門家会議の意見にあるのは、先ほどもいいましたけれども、他の委員さんもいっていましたが、法の隘路だけで耐震化が進まないんじゃないんだと。多額の費用負担やテナント、区分所有者の合意形成が困難なこと、そして資産価値の低下への懸念、それから耐震化の公共性に対する意識の希薄さなどだということなんですね。
こういう問題の解決策、これも同時に示していかなければ、緊急輸送道路の沿道にある建物所有者とか、マンションに住む住民に指導、助言、指示にとどまらず公表や行政処分としての命令、さらには、過料や罰金を科すということまで検討している条例を制定するという強権的なやり方では、住民合意は得られないというふうに思っています。住民合意で耐震化を進めるためにも、法による規制の強化の前に、今ある法の規制の活用や施策の充実などを優先すべきです。
その意味で、こうした耐震診断の義務化や罰則まで盛り込んだ条例制定というのは時期尚早だということを述べまして質問を終わります。
○佐藤委員 これまでも新たな規制がかかるということ、また実効性の部分についてさまざまな議論をされてこられております。
私自身もかなり重複する問題意識のところもありますけれども、これまでの所有者の意思に基づいた耐震化に向けての誘導策には限界があるということで、耐震診断を義務化するという今回の緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に対しての基本的な考え方が示されているところです。
そこでまずは、これまでの東京都の取り組み実績、そして要因について改めて確認をさせてください。
○小野耐震施策担当部長 都は、建築物の耐震化を促進するため、耐震キャンペーンの実施、パンフレットの配布等による都民の意識啓発や社会的機運の醸成、耐震化総合相談窓口の設置など、耐震化に取り組みやすい環境の整備、所有者の費用負担の軽減等の取り組みを実施してまいりました。
特に、緊急輸送道路沿道建築物につきましては、診断費用のうち最大で五分の四を補助する助成事業や耐震改修費用に対する低利融資制度を整備するなど手厚い支援を講じてまいりました。
また、沿道建築物の所有者に対して個別訪問を行い、直接耐震化の早期実施を働きかけてまいりました。耐震診断、補強設計の実績は二十九件、耐震改修の実績は三件となっております。
耐震化が進まない理由としましては、耐震改修促進法において、耐震診断、改修とも所有者の努力義務にとどまり、その実施が所有者の意思にゆだねられていることや区分所有者の合意形成が困難なこと、建物所有者の耐震化の公共性に関する意識の希薄さなどがあると考えております。
○佐藤委員 今ご答弁をいただいたように、さまざまな費用に関しての支援であったりとか、個別のローラーの働きかけ、そうした取り組みをしてきたにもかかわらず、対象の建物が一万二千棟ある中で、実績としては改修したのは三件、診断も二十九件というようなこれまでの状況があると。それを打開するために、今回のこの規制誘導策について提案をされているところではございます。
改めて、この緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に向けた新たな規制誘導策の目的及びその制度の概要について確認をさせてください。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路の沿道建築物が倒壊した場合、震災時の広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈としての機能を大きく低下させることから、その耐震化は極めて重要でございます。
しかし、現行法では、耐震診断、改修とも努力義務にとどまり、その実施を所有者の意思にゆだねていることが大きな壁となっております。
都としましては、震災時においても、緊急物資の輸送や救援活動を安全に行うことができる広域的な道路ネットワークを確保するため、緊急輸送道路のうち、特に重要な道路沿道の建物所有者に対して耐震診断を義務づけることが必要だと考えております。
建物の耐震性能が明確になることで、耐震改修に向けた所有者の自覚と行動が促されるとともに、行政としましても、個々の所有者に対して具体的な指導や助言等を行うことが可能となると考えております。
制度の概要でございますが、三点ございまして、まず、耐震化を促進する上で必要不可欠な耐震診断の実施を特に重要な沿道建築物の所有者に義務づけること、次に、診断結果をもとに、所有者は耐震改修に向けて主体的な取り組みを行うこと、そして、所有者が耐震診断、改修を円滑に実施できるよう、行政は効果的な支援策を講じることでございます。
○佐藤委員 専門家会議の報告書では、耐震診断の結果、建物が耐震性を有していない場合に、不動産取引の際に資産価値が低下するのではないかと懸念して診断を実施しないことも耐震化が進まない要因として上がっています。そうした中で、一部の緊急輸送道路沿道の建物所有者だけが義務を課されることを受忍しなければならない理由についてどう考えているか所見を伺います。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路沿道建築物が震災により倒壊した場合、広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈としての機能を大きく低下させることから、その耐震化は極めて重要であり、高い公共性を備えております。
また、首都直下地震の切迫性が指摘される中、都民の生命の安全と首都東京の機能の継続性を確保するためには、一刻も早く緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を進めていくことが必要でございます。
沿道建築物の耐震化は、都民の生命と首都東京の機能の確保に直結する極めて高い公共性と緊急性を有していることから、耐震診断、改修の実施について、所有者に一定の義務を果たしてもらうことが必要であると考えております。
○佐藤委員 今ご答弁いただいた中で、なるほど建物の倒壊によって直接に都民の生命を守るために耐震化を進めるという目的よりも、むしろ今回の施策は震災時の緊急輸送道路の機能を確保することに重点が置かれていることがわかりました。
そうであれば、今回の義務化される対象の建築物についてとして、緊急輸送道路をふさぐ可能性のある建物を対象に、そして耐震診断を義務化して報告義務を課すという手段とは整合性が図られていると考えております。また、そうであれば、なおさら緊急輸送道路の機能を確保することについては、道路が寸断されることで分断される地域がこの東京都の中であってはならない、何としてもないように施策を進められなければならないと考えます。
そうした観点から、今回のこの耐震診断の義務化なんですけれども、耐震診断をしたとしても、耐震改修が進まなければ耐震化という目的は達成できない、それはこれまでの議論の中でもさまざまな方からのご指摘があったところでございます。耐震化の入り口である耐震診断から改修へどのようにつなげていくか所見を伺います。
○小野耐震施策担当部長 耐震診断の実施により、個々の建築物の正確な診断結果が得られることで、必要な補強の程度、適切な改修工法、それに要する費用等を明らかにすることができ、所有者は耐震改修の実施に向けて具体的な検討が行えるようになると考えております。
都としましても、診断結果を活用することにより、建築物の状態に合わせた効果的な改修方法など、具体的できめ細かい助言等が可能となると考えております。
さらに、情報提供や相談への対応等の技術的支援、費用に関する所有者の負担軽減策など、さまざまな施策を重層的に取り組んでいくことで、耐震診断、改修が促進されるものと考えております。
○佐藤委員 その耐震診断の結果を踏まえて、個々に対応、指導をしていくと。また、方向のこの考え方にもあるように、Is値が〇・三未満であれば改修を勧告していく、そうした丁寧な対応をしていくことで耐震化を進めていく、改修につなげていくというのが基本的な考えであるということはわかりました。
そういう意味では、今までもさまざまな議員から指摘がされているように、診断イコール改修にはならないというところを考えたときに、改めて、今回のこの施策の考え、耐震診断の義務化は、確かに耐震化の入り口ではありますけれども、それだけでは耐震化が完了するわけではないと。では今回のこの施策の直接的な効果はどういったところにあるのだろうかというふうに考えたときに、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の現況を、今は推計で何%あるという中で、実際にどういう状況かというように実態調査ができる、そうしたところに大きな意味合いがあると考えます。
建物の倒壊による、直接に都民の生命を守るために耐震化を進めるというよりも、繰り返しになりますけれども、緊急輸送道路の機能を確保することが大きな目的で、その現況を把握すると。すなわち震災時に安全かつ迅速な輸送ルートをあらかじめ検討するなどといった、そういった震災の施策に対しての貴重な情報を把握する、そうしたところに今回の誘導策の直接的な効果があるのではないかなというふうに考えます。
そうしたときに、こうした義務化をして得られた結果を都施策に反映をさせていく、こうした公共性の高い施策であるという意味では、この費用については、これまでの自己所有建物の耐震化を建物所有者の意思にゆだねて、その耐震化を誘導するためのさまざまな費用についての助成をしていくというような位置づけではなくて、義務化というような転換を行った時点で、緊急輸送道路機能、首都機能を確保するために、都は現況を把握するための調査、そういうふうな位置づけが大きくなっていく以上、この費用については東京都が全額負担するのが妥当と考えますが所見を伺います。
○小野耐震施策担当部長 まず初めに、耐震診断の効果でございますけれども、耐震診断を行うことによりまして三点の効果があると思っております。
一点目は、まず所有者の自発的な行動を促すということでございます。現在、建物所有者は、自分のビルの耐震性能を把握しておりません。義務化によってこの耐震性能を知ってもらうことで、具体的な行動につながっていくと考えております。
二点目でございますが、不動産取引の重要事項説明というのがございます。こういった中で、耐震診断をやった場合には、売り主は買い手に対しまして、この重要事項説明の中で耐震性能をきちんと説明する義務が生じます。こうしたことから、こういった建物を買うあるいは借りる際にも、耐震性能を的確に評価して、都民が安心して購入なり、借りることができると考えています。そういった中で耐震化もおのずと進んでいくものと考えております。
また、三点目でございますが、行政庁も、現在、個々の建物の耐震性能を把握しておりません。そうしたことから、耐震診断によって結果が得られれば具体的な指導、助言が可能になっていくと思います。
基本的な考え方になりますが、やはり民間建築物の耐震化は、自助、共助、公助の原則に基づき、所有者みずからがその必要性を理解、認識し、主体的に取り組むことが重要でございます。
高度に都市化した東京では、建物の所有者はみずからの生命と財産を守るだけではなく、周囲に被害を与えないよう、その耐震性能を確保する社会的責務がございます。
緊急輸送道路沿道建築物が震災により倒壊した場合、広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈としての機能を大きく低下させることから、その耐震化は極めて重要であり、高い公共性を備えていると考えております。
また、首都直下地震の切迫性が指摘される中、都民の生命の安全と首都東京の機能の継続性を確保するためには、一刻も早く緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を進めていく必要がございます。
このため、都としましては、所有者に耐震診断の義務づけなどの一定の義務を果たしてもらうとともに、耐震化がより一層促進されるよう支援策の充実の検討を行っているところでございます。
○佐藤委員 最後に一言なんですけれども、すごく難しいなというのは、その個人の所有の建物のある中で、その公共性をどういうふうに確保していくのかというのがすごく難しいなというところはすごく思っていますし、これから条例を制定していくに向けて、義務を課すということはどういうことなのか、予防接種であったりとか、義務を課す、つまり予防接種が自己の健康を増進していくというばかりでなくて、社会防衛というところで、費用については、強制をかけるところについては、公共の方、公費負担で全額賄っている性質とかもあるというような、そうした考え方、どういうふうにこれを考えていくのか、費用の負担をだれが負っていくのが公共性の確保とするのかというところを、またその条例制定までにも私自身も考えていきたいと思います。ありがとうございました。
○加藤委員 私からも何点か確認しながら質問をしたいと思います。
まず、新たな規制誘導策の対象建築物は三つの要件に該当する建築物であるとして、一つが旧耐震基準で建築されたもの、二つが道路幅員のおおむね二分の一を超える高さのもの、三つ目が特定緊急輸送道路の沿道にあるものとなっています。
そして、この三つ目の緊急輸送道路のうち、特に沿道建築物の耐震化を図る必要があると認めるものを特定緊急輸送道路として指定していくとありますが、先ほども少しお話がありましたが、この特定緊急輸送道路はどのような考え方で指定するのか伺います。
○小野耐震施策担当部長 首都直下地震の切迫性が指摘される中、震災時でも安全に利用できる広域的な道路ネットワークを一刻も早く確保することが防災対策上求められております。
このため、すべての緊急輸送道路沿道の建築物を新たな規制誘導策の対象とするのでなく、路線ごとの防災対策上の優先度を考慮し重点化して施策を講じるなど、効率的、効果的な取り組みを行っていくことが重要であると考えております。
そこで、主要な防災拠点、空港、港湾、他県との連絡を図る骨格となる特に重要な幹線道路などを特定緊急輸送道路として指定する考えでございます。
また、指定に当たりましては、警視庁が震災時に交通規制を実施する緊急交通路や区市町村の地域防災計画等との整合を図ってまいります。
○加藤委員 緊急交通路や緊急道路障害物除去路線、区市町村の地域防災計画との整合性を図る必要があるとともに、何よりも所有者がそのことを認識する必要があります。
緊急輸送道路の中でも、特定緊急輸送道路に指定され、義務化の対象路線と知ることが大事になるわけですけれども、そのためには周知ということが大切になってきます。その点の対応をよろしくお願いしたいというふうに思います。
次に、特定緊急輸送道路の沿道には、民間の救急医療施設や小中学校等が存在します。耐震化を促進していくためには、これらの耐震化を所管する部署との連携が重要というふうに考えますけれども、今後の取り組みを伺います。
○小野耐震施策担当部長 緊急輸送道路の沿道には、オフィスビルやマンションのほか、ご指摘のとおり、民間の救急医療施設や小中学校等も立地しており、その耐震化を進めるためには、それらの建築物を所管する部署との連携が重要であると認識しております。
そのため、既に設置しています庁内の連絡調整会議などを活用するなど、今後とも庁内の連携を緊密に図り、沿道建築物の耐震化に総合的に取り組んでまいります。
○加藤委員 この平成二十一年十月二十三日から二十九日に行われました都政モニター調査でも、都が優先して耐震化を促すべきものとして、救急医療機関が一位、小中学校が二位となっていますので、関係部署が連携して、特に都市整備局が力を入れて進めていただきたいというふうに思います。
次に、都は、緊急輸送道路沿道建築物のうち、昭和五十六年以前に建築した倒壊により道路を閉塞するおそれのある耐震化が必要な対象建築物一万二千棟に対して、昨年度より、所有者への個別訪問、いわゆるローラー作戦を地元区市の職員と都の職員が連携し実施していますけれども、このことは、耐震化を所有者へ促すための重要な取り組みであると認識しています。現在までに実施した棟数及び来年度以降の取り組みについて伺います。
○小野耐震施策担当部長 いわゆるローラー作戦でございますが、都と区市が連携して、緊急輸送道路沿道建築物に対して個別訪問を実施するものでございます。
昨年度は沿道建築物約一千八十棟を対象に実施し、今年度は約三千棟を予定しており、これまでに約二千六百棟を対象に実施したところでございます。
来年度につきましても、区市町村と連携し、新たな規制誘導策の周知等建物所有者の理解と協力を得る取り組みを実施してまいりたいと考えております。
○加藤委員 次に、都は、金融機関と連携し、平成二十一年度より耐震改修費用への低利融資を実施しています。所有者にとっての支援策として有効な施策と考えますが、現在の参加金融機関の数と来年度以降の取り組みについて伺います。
○小野耐震施策担当部長 都が実施しています低利融資制度は、緊急輸送道路沿道建築物を所有する中小企業や個人に対して、耐震改修工事に係る費用の負担を軽減することを目的として、平成二十一年度に創設したものでございます。制度創設時は一金融機関でスタートいたしましたが、今年度は五つの金融機関に増加し、建物所有者がより使いやすい制度となっております。
来年度以降につきましても、実施金融機関をふやしていくとともに、沿道の建物所有者に対し、こうした制度の周知に努めてまいりたいと考えております。
○加藤委員 平成二十七年度末に耐震化率一〇〇%に向けて、今回の誘導策があるわけですけれども、それを可能としていくためにも、先ほどから、耐震化を促すための支援策として所有者負担軽減を整備、拡充すべきという意見も出ています。診断して、補強設計、耐震改修というところに結びつけるには、やはりこの背中を押すことが必要ですので、公的支援のメニューをさらに充実させていくことを要望して質問を終わります。
○いのつめ委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○いのつめ委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
午後二時二十八分散会
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