令和五年度各会計決算特別委員会第二分科会速記録第三号

令和六年十月二十一日(月曜日)
第十委員会室
午後一時開議
出席委員 十名
委員長福島りえこ君
副委員長伊藤こういち君
副委員長林あきひろ君
増山あすか君
こまざき美紀君
清水とし子君
原 のり子君
加藤 雅之君
成清梨沙子君
中村ひろし君

欠席委員 なし

出席説明員
保健医療局局長雲田 孝司君
次長理事兼務谷田  治君
技監感染症危機管理担当部長事務取扱成田 友代君
総務部長船尾  誠君
企画部長DX推進担当部長兼務吉原 宏幸君
保健政策部長小竹 桃子君
医療政策部長新倉 吉和君
都立病院支援部長鈴木 和典君
健康安全部長中川 一典君
感染症対策部長内藤 典子君
政策推進担当部長宮澤 一穂君
地域保健担当部長井上 俊治君
医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務岩井 志奈君
食品医薬品安全担当部長早乙女芳明君
感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長
健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務
西塚  至君
感染症対策調整担当部長松谷いづみ君
感染症対策調整担当部長小原  昌君
感染症対策調整担当部長及川 勝利君

本日の会議に付した事件
令和五年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
保健医療局関係
・令和五年度東京都一般会計決算(質疑)
・令和五年度東京都国民健康保険事業会計決算(質疑)
・令和五年度東京都地方独立行政法人東京都立病院機構貸付等事業会計決算(質疑)

○福島委員長 ただいまから令和五年度各会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、保健医療局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより保健医療局関係に入ります。
 初めに、過日の分科会で紹介できませんでした幹部職員について局長から紹介があります。

○雲田保健医療局長 それでは、説明に先立ちまして、過日の分科会で紹介できませんでした当局の幹部職員を紹介させていただきます。
 医療政策部長の新倉吉和でございます。医療政策担当部長で感染症医療政策担当部長兼務の岩井志奈でございます。感染症対策調整担当部長の及川勝利でございます。
 以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
   〔理事者挨拶〕

○福島委員長 紹介は終わりました。

 決算の審査を行います。
 令和五年度東京都一般会計決算中、保健医療局所管分、令和五年度東京都国民健康保険事業会計決算及び令和五年度東京都地方独立行政法人東京都立病院機構貸付等事業会計決算を一括して議題といたします。
 本件につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○船尾総務部長 去る十月九日の当分科会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の令和五年度各会計決算特別委員会第二分科会要求資料をご覧ください。
 表紙をおめくりいただきまして、目次をご覧ください。当分科会で要求がございました資料は、全部で十九項目となってございます。
 それでは、一ページをお開き願います。1、福祉保健費の予算及び決算の推移でございます。
 福祉保健費の予算現額、決算額、一般会計に占める割合などにつきまして、(1)に、令和元年度から令和五年度までの旧病院経営本部分を除く福祉局及び保健医療局所管分の推移を、(2)に、令和元年度から令和三年度までの旧病院経営本部所管分の推移をそれぞれ記載してございます。
 二ページをご覧ください。2、福祉局・保健医療局の予算・決算額の推移(一般会計)でございます。
 一般会計のうち、表側の予算区分ごとに、令和元年度から令和五年度までの予算現額及び決算額の推移を記載してございます。
 三ページをお開き願います。3、令和五年度における医療保健政策区市町村包括補助事業の補助額でございます。
 区市町村ごとに令和五年度の補助額の実績を記載してございます。
 四ページをご覧ください。4、東京都国民健康保険事業会計決算の歳計剰余金の推移並びに歳計剰余金のうち過年度調整(納付金の過多)の総額、一人当たりに換算した額及び財政安定化基金の取崩しの総額の推移でございます。
 (1)に、令和四年度及び令和五年度における東京都国民健康保険事業会計決算の歳計剰余金を、(2)に、令和四年度における歳計剰余金のうち過年度調整(納付金の過多)の総額及び一人当たりに換算した額を、(3)に、令和三年度から令和五年度までの財政安定化基金の取崩しの総額と、そのうち特例事業の決算額の推移をそれぞれ記載してございます。
 五ページをお開き願います。5、都立・公社病院及び都立病院機構の病院における経営指標の推移でございます。
 入院、外来別に、令和元年度から令和五年度までの各病院における診療収益などの経営指標の推移を記載してございます。
 八ページをお開き願います。6、一般会計繰入金、保健医療公社への運営費補助金、運営費負担金及び運営費交付金の推移(施設整備関連経費を含む)でございます。
 (1)に、令和元年度から令和五年度までの一般会計繰入金、運営費補助金及び運営費負担金と、そのうち施設整備関連経費の決算額の推移を、(2)に、令和四年度及び令和五年度の運営費交付金と、そのうち施設整備関連経費の決算額をそれぞれ記載してございます。
 九ページをお開き願います。7、一般会計繰入金、保健医療公社への運営費補助金、運営費負担金及び運営費交付金の推移(病院別・施設整備関連経費以外)でございます。
 施設整備関連経費以外の経費につきまして、(1)に、令和元年度から令和五年度までの一般会計繰入金、運営費補助金及び運営費負担金の決算額の推移を、(2)に、令和四年度及び令和五年度の運営費交付金の決算額をそれぞれ記載してございます。
 一一ページをお開き願います。8、都立・公社病院及び都立病院機構における医師、看護要員及び医療技術員等の定数及び現員の内訳の推移でございます。
 フルタイム、フルタイム以外などの区分別に令和元年度から令和五年度までの定数及び現員の推移を記載してございます。
 一四ページをお開き願います。9、都立・公社病院及び都立病院機構の病院における医師(診療科別)及び看護要員(病院別)の定数及び現員の内訳の推移でございます。
 (1)、医師につきまして、一四ページから二四ページにかけて、令和三年度から令和五年度までの各病院における人数の推移を、(2)、看護要員につきまして、二五ページから三〇ページにかけて、令和元年度から令和五年度までの各病院における人数の推移をそれぞれ記載してございます。
 三一ページをお開き願います。10、都立・公社病院及び都立病院機構の病院における看護要員の中途退職者数の推移でございます。
 看護要員につきまして、令和元年度から令和五年度までの中途退職者数の推移を記載してございます。
 三二ページをご覧ください。11、都立・公社病院及び都立病院機構の病院における分娩件数の推移及び周産期医療受入件数の推移でございます。
 (1)に、令和三年度から令和五年度までの各病院における分娩件数の推移を、(2)に、同期間の各病院における周産期医療受入れ件数の推移をそれぞれ記載してございます。
 三三ページをお開き願います。12、都立・公社病院及び都立病院機構の病院における薬剤師の定数及び現員の推移(病院別)でございます。
 令和元年度から令和五年度までの各病院における定数及び現員の推移を記載してございます。
 三四ページをご覧ください。13、都立・公社病院及び都立病院機構の病院における個室使用料の収益の推移でございます。
 令和元年度から令和五年度までの各病院における個室使用料の収益の推移を記載してございます。
 三五ページをお開き願います。14、保健医療公社及び都立病院機構における障害者雇用率の推移でございます。
 令和三年度から令和五年度までの保健医療公社及び都立病院機構における障害者雇用率の推移を記載してございます。
 三六ページをご覧ください。15、都立病院機構の病院における新型コロナウイルス感染患者専用病床の確保数と新規患者の受入数の推移(月別)でございます。
 (1)に、令和五年度の各病院における新型コロナウイルス感染患者専用病床の確保数の推移を、一枚おめくりいただきまして、(2)に、令和五年度の各病院における新規患者の受入れ数の推移をそれぞれ記載してございます。
 三八ページをご覧ください。16、都立病院機構における時間外労働が月八十時間を超えた医師・看護要員の人数及び時間外労働の最大時間数(月別)でございます。
 令和五年度の時間外労働が月八十時間を超えた医師、看護要員の人数及び月八十時間を超えた場合の時間外労働の最大時間数について記載してございます。
 三九ページをお開き願います。17、都立・公社病院及び都立病院機構におけるコロナ後遺症相談窓口の相談件数及び相談内容等でございます。
 (1)に、相談件数の推移を、(2)に、相談者が訴える症状を、(3)に、相談者の基本情報をそれぞれ記載してございます。
 四一ページをお開き願います。18、都内の死亡者数と新型コロナウイルス感染症による死亡者数でございます。
 (1)に、令和元年から令和五年までの都内の死亡者数の推移を、(2)に、同期間の新型コロナウイルス感染症による死亡者数の推移をそれぞれ記載してございます。
 四二ページをご覧ください。19、都内の火葬場及び火葬炉数でございます。
 火葬場の名称と火葬炉数をそれぞれ記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、当分科会で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○福島委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に関する質疑を行います。
 発言を願います。

○林委員 自民党の林あきひろでございます。よろしくお願いいたします。
 最初に、都保健所についてお伺いをしたいと思います。
 新型コロナ対応では、感染の急拡大に伴いまして、当初はどの保健所も同様の状況にあったと思いますけれども、私の地元でございます都内最大の都民を抱える多摩府中保健所でも業務が急増して、市民の不安が増大したことはご承知のとおりでございます。
 昨年の五月に新型コロナの位置づけが五類感染症に変更となりまして、現在は保健所の体制も平時に戻ったわけですけれども、いつ次の新興感染症が発生するとも分かりませんから、今回の教訓を生かして、保健所が円滑に対応することができるようにしておく必要があるかと存じます。
 そこで、都は昨年度、新型コロナの対応も踏まえて、都保健所の体制機能の強化を打ち出しましたが、改めて方針決定までの経緯を伺いたいと思います。

○井上地域保健担当部長 都は、今回の新型コロナ対応を受けて、公衆衛生等の学識経験者、医療機関、医師会、市町村の代表等を委員といたしまして、感染症対応を踏まえた都保健所のあり方検討会を設置し、今後の都保健所の組織体制や業務運営等の在り方などについてご議論いただき、令和五年八月末にあり方検討会として報告書を取りまとめました。
 検討会では、新興感染症の発生に備え、平時からの準備が必要であるといったご意見や、都保健所と市町村等との連携強化などが重要とのご意見をいただきました。
 そうした意見等を踏まえまして、感染症予防計画に基づく新興感染症の発生に備えた取組の計画的な推進や、市町村等関係機関との連携を担う市町村連携課の新設など、都といたしましては、都保健所の体制・機能の強化についてを取りまとめ、令和六年一月末に公表いたしました。

○林委員 市町村との連携強化が重要という意見が出たということで、その上で都保健所の体制・機能の強化についてを取りまとめて、昨年度の一月末に公表されたということですね。
 新型コロナ対応では、膨大な患者が発生しましたので、通常の感染症対応を行わない市においても、市民からの相談、一番市役所に声をかけやすいということもあるんでしょうけれども、市民からの相談対応や自宅療養者への食料支援など、保健所と連携した取組が行われまして、市民の安全・安心につながったものというふうに考えていますけれども、次にいつ来るか分からないと申し上げましたけれども、感染症においても、市民、都民の安全・安心のためには、保健所と市町村が連携して対応に当たるということは不可欠でありまして、市町村連携課の新設とか、連携強化に向けた取組を都が打ち出したことについては、まずは一歩前進と評価し、期待したいというふうに思っております。
 そこで、都保健所と市町村の連携強化をどのように進めていくのか伺います。

○井上地域保健担当部長 今年度から多摩地域の都保健所に市町村連携課を新設し、市町村ごとの専任の担当職員等を五保健所で計四十二名配置するなど、組織人員体制を拡充いたしました。
 市町村連携課では、日常的に市町村等との意見交換を行い、地域の状況やニーズをきめ細かく把握するなど、顔の見える関係を強化し、地域保健サービスの推進や災害対策の強化に取り組む市町村を支援しております。
 また、都保健所のあり方検討会において、市町村委員より、平時からの人事交流の要望をいただいたことなどを踏まえ、都保健所と市町村の保健師の人事交流を実施することとし、今年度から取組を開始しております。
 これらの取組を通じて、市町村との連携強化を図ってまいります。

○林委員 市町村ごとの専任の担当職員を五保健所で合計四十二名配置されたということでした。
 市町村連携の取組というものをしっかりと進めていただきたいというふうに思っておりますけれども、都保健所による次なる新興感染症への備えとして、令和六年の第一回定例会における我が党の代表質問に対しまして、都から令和五年度中に都保健所で健康危機対処計画を策定する旨の答弁がございました。
 感染症対応は法律上、保健所が主体となって行うべきものですから、保健所自身が計画的に準備することが必要であります。
 そこで、都保健所における健康危機対処計画の策定状況、そしてその内容について伺います。

○井上地域保健担当部長 都保健所では、感染症予防計画を踏まえ、昨年度末に健康危機対処計画を策定いたしました。
 対処計画では、新興感染症発生時における保健所対策本部の設置など、有事の組織体制や所内の役割分担を規定するとともに、外部人材を含めた人員体制の整備に向けまして、応援職員リストやマニュアルの作成等を行います。
 また、市町村等関係機関との連携強化に向けましては、平時から保健所と管内市町村との間で情報共有を行うための定期的な連絡会を開催するほか、市町村職員を対象とした感染症に関する基本的な知識、技術の習得を目的とした研修を実施いたします。
 さらに、市町村や関係機関等と連携した感染症対応訓練を実施し、効果検証を通じて対処計画の見直しにつなげることとしており、都保健所では対処計画に基づく取組を通じまして、新興感染症への備えを計画的に推進してまいります。

○林委員 ありがとうございました。
 保健所も、市町村も、いずれも都民の命と健康を守ることっていうのは重大な使命だというふうに思います。新型コロナのような感染症が再び発生した場合とか、今後予測されております首都直下型地震などの大規模な災害が起きた場合には、保健所とか、市町村が連携協力を密にして、それぞれの役割を担えるようにすることは極めて重要なことであります。
 先ほども冒頭申し上げましたけれども、私の地元、都内で最も大きい人口規模を有する区域を管轄する多摩府中保健所なんですけれども、六市で約百五万人ということで、感染症対策を行うには規模が大き過ぎるという意見は依然各市にあるのも事実ではございますけれども、まずは今回新設された市町村連携課を中心にして、日頃から市町村をはじめとした地域の関係機関との顔が見える関係を進めていただいて、連携強化に取り組んでいただくようお願いいたしまして、次の質問に移りたいと思います。
 続いて、東京感染症対策センター、東京iCDCについて伺います。
 令和二年一月、都内初の新型コロナ患者の発生以降、都は都民や医療機関とも協力しながら、長きにわたり様々なコロナ対策を実施してまいりました。
 そうした中で令和二年十月に設立した東京iCDCは、幅広い感染症の専門家の知見を活用した都独自の取組でありまして、都が効果的な感染症対策を行う上で重要な役割を果たしたものというふうに認識しています。
 令和五年度を振り返れば、五月には新型コロナが、先ほども申し上げましたけれども、五類感染症となりまして、医療提供体制も平時に向けて段階的に移行して、本年四月一日をもって完全移行したというふうに承知しております。
 まず、令和五年度の東京iCDCの新型コロナへの対応状況について伺わせていただきます。

○松谷感染症対策調整担当部長 東京iCDCは、令和五年五月の新型コロナウイルス感染症の五類移行後も、都のモニタリング分析と併せて、変異株の解析や海外の発生動向の監視など、必要なサーベイランスを継続いたしました。
 また、新型コロナの後遺症について、医療従事者等を対象にしたオンライン研修会を計四回開催したほか、企業向けや保護者向けのリーフレットなどを作成いたしました。
 さらに、後遺症に悩む方が身近な地域で受診できるよう、後遺症に対応する医療機関をホームページで引き続き公表いたしました。
 加えて七月には、新型コロナの五類移行までの東京iCDCの約三年間にわたる取組を取りまとめ、感染症危機への東京発の新たな挑戦として公表いたしました。

○林委員 五類移行後の通常の医療提供体制においても、東京iCDCとして必要な取組を実施されているということは理解いたしましたが、コロナの後遺症については、発表されているように倦怠感とか、息切れとか、嗅覚障害、不安、せき、味覚障害、抑鬱等、現在も悩まれている方が多いというふうに伺っています。
 都では、後遺症ポータルを開設されておられまして、相談先の情報とか、専門家による解説を掲載されておられますけれども、引き続き東京iCDCの専門家の知見を得ながら、取組を進めていくことを要望させていただきます。
 さて、当然ながら、感染症はコロナだけではございません。最近では、マイコプラズマ肺炎が八年ぶりに流行と、九月には基幹定点医療機関当たりの患者報告数が、感染症法が施行された一九九〇年以来、最も高い値となっていると。
 また、手足口病も今年の六月に警報基準を超えて以来、現在に至るまで四か月近くにわたり、警報レベルが継続していると。さらには梅毒の報告も非常に増えているというふうに伺っています。
 東京iCDCとしても、コロナに限らず、様々な感染症に対応することが重要と考えますけれども、令和五年度のコロナ以外の感染症に対する取組を伺います。

○松谷感染症対策調整担当部長 東京iCDCは、新型コロナウイルスの五類移行を契機とし、新型コロナを含むあらゆる感染症を対象として、適時適切に施策への支援を行っております。
 具体的には、都内において近年患者が増加している梅毒について、その分野に精通する専門家が参画するタスクフォースを三回開催し、女性が検査しやすい体制の整備など、都の梅毒対策について助言を行いました。
 また、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の急激な増加を受け、今後の対応に関する意見交換会を開催し、感染の傾向等を分析するとともに、医療機関への情報提供の在り方についても助言を行いました。
 引き続き、あらゆる感染症に対し、流行状況等を踏まえながら、東京iCDCの専門家のネットワークを活用し、適切な対応を行ってまいります。

○林委員 五類移行後、東京iCDCの活動がさらに充実されて、都の様々な感染症施策に活用されていることは理解いたしましたけれども、コロナの経験を踏まえた上で今後に目を向けますと、やはり大切なことは、いつ起こるとも限らない次なるパンデミックへの備えであることはいうまでもございません。
 都としても今年三月に感染症予防計画を改定されて、医療機関等との協定締結など取組を推進していると承知しておりますけれども、このコロナのレガシーの一つともいえる東京iCDCも都と一体となって役割を発揮していくことが期待されています。
 次なるパンデミックに向けた東京iCDCの取組について伺わせてください。

○松谷感染症対策調整担当部長 今後起こり得る感染症危機に備えるため、東京iCDCは、国内外の研究機関との定期的な情報交換や学会等での情報発信など、調査分析機能のさらなる強化を図っております。
 また、保健所からの依頼に応じて、感染管理の専門知識を有する医師や看護師が研修訓練の講師を行うなど、感染症に対応可能な専門人材の育成支援も行っております。
 さらに、都民が日頃から感染症の流行に備え、予防に向けた適切な行動を取ることができるよう、東京iCDCフォーラムの開催などにより、感染症に関する知識を分かりやすく普及する取組も行っております。
 未知の感染症にも揺るがない都市東京の実現に向け、東京iCDCの専門家の英知を結集し、都の感染症対策の強化はもとより、社会全体の感染症対応力の向上を図ってまいります。

○林委員 ありがとうございます。
 次の感染症危機はいつ起こるか分からないわけでございますけれども、先ほどもご答弁されていましたけれども、七月に公表された感染症危機への東京発の新たな挑戦では、感染症に強い都市東京の実現に向けて、一つには、調査分析体制やネットワークの拡充を図り、インテリジェンス機能を強化すること、二つには、新型コロナから感染症全般に広げて、都の効果的な感染症対策の実施を支援すること、三つとして、社会全体における感染症対応力の向上を図り、持続可能な都市の形成に寄与するというこの三つの柱を立てて推進されていくこととされています。
 平時の今だからこそ、都と東京iCDCが一体となって、都民の命と健康を守るために必要な取組を進めていただくことを求めて、次の質問に移ります。
 続いて、保健医療局のDX推進について伺います。
 二〇一九年以降、東京都は、都民や都政に関わるデジタルトランスフォーメーションを推進してこられました。
 デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出して、都民が質の高い生活を送ることができるスマート東京の実現に向けた施策を、都庁の横断的に推進されておられますけれども、保健医療分野におけるDXの取組について伺っていきたいと思うんですけれども、新型コロナの発生当初、都の保健所では、電話対応とか、紙、ファクスといったアナログ対応が主というか、それが目立っていたわけでして、非常に業務が逼迫しておりました。
 その後、感染症業務におけるDXを推し進めて、都保健所のコロナ対応業務が大幅に改善、効率化されたというふうに伺っておりますけれども、こうしたコロナ禍を契機としたDXの例なども参考にして、保健医療分野のDXを進めることは非常に重要だと考えておりますけれども、見解を伺いたいと思います。

○吉原企画部長DX推進担当部長兼務 都民サービスの質の向上やスピードアップを実現し、保健医療施策の効果をさらに高めるためには、DXの取組を推進することが重要でございます。
 コロナ禍においては、円滑なワクチン接種が可能となる予約システムや、都保健所における電話業務への音声マイニングシステムなど、積極的にDXの導入を図り、都民サービスの向上や業務の効率化を進めてまいりました。
 こうしたコロナとの闘いを通じて得た英知を生かしていくとともに、一段と進んだ少子高齢化など社会状況の変化や都民ニーズにきめ細かく対応することが求められており、DXの取組の加速化が必要であると考えております。

○林委員 DXの取組が重要だと、加速化が必要だという都の認識については、共有し、確認をさせていただきましたけれども、では、保健医療分野におけるDXの取組を進めるためには、都は昨年度どのように取り組んでこられたのか伺います。

○吉原企画部長DX推進担当部長兼務 都は、コロナ禍の経験を踏まえ、豊洲市場の水産物等衛生監視業務のデジタル化や、動物愛護相談センターの相談記録のオンライン化など、他分野のDXも進めてまいりました。
 こうした取組をさらに加速させていくため、昨年度、DXによって目指すべき二〇三〇年の到達点とその実現に向けた二〇二五年までの具体的な取組を定めた福祉・保健医療分野DX推進計画を福祉局と連携して策定をいたしました。
 計画には、保健医療分野で新規事業を含め四十のDXの取組を記載し、特に力を入れる十一の取組を重点事業に位置づけております。
 このうち昨年度は、食品関係事業者の営業許可に係る申請から手数料支払いまでの手続を、都保健所へ訪問しないで、オンラインで完結できるシステムの構築や、医療法等に基づく一連の検査業務をクラウド上で管理できるシステムにより、ペーパーレス化する立入検査DXの導入に向けて企画検討などを行いました。

○林委員 DX推進計画の中でも紹介されているんですけれども、これですね、このDX推進計画、私も拝見させていただきましたけれども、豊洲市場の水産物等衛生監視業務のデジタル化ですか、載っていますけれども、都政の現場で職員の創意工夫により優れた取組を表彰する都庁DXアワードの大賞を受賞したという取組であり、非常に皆さん頑張っていらっしゃるなというふうに思いました。
 こういったコロナ禍を契機に、こうしたほかの分野でも先進的な取組が生まれて、そして昨年度は局全体のDX加速化に向けて、DX計画も策定したということで、職員の方々の改革に向けた気持ちというか、マインドといいますか、そういうものが大きく向上しているなということがよく分かったところでございます。
 そこで、何より重要なのは、策定した計画に基づいて、取組を着実に推進することでありまして、質の高いサービス提供に向けてどのように取り組んでいるのか伺いたいと思います。

○吉原企画部長DX推進担当部長兼務 計画に基づく取組を着実に進めるため、重点事業などについて、開発工程の各段階でICT職など専門人材によるサポート体制を構築するとともに、運用開始前のユーザーテストの徹底により、品質の高いサービスを提供できるシステムの構築に取り組んでおります。
 また、既に構築を運用しているDXの取組について、より実効性を高めるため、利用者等への満足度調査を実施していくこととしております。
 引き続き、都民の利便性向上や事業者の負担軽減につながるよう、本計画に基づき、DXの取組をさらに進めてまいります。

○林委員 ありがとうございます。
 保健医療分野における都民の利便性向上や事業者の負担軽減につながるこのDXの取組というものが確実に進んでこられていることは確認ができたところですけれども、DX推進計画の位置づけでの加速化方針に示されているように、二〇三〇年の到達点として、都民、事業者の利便性が飛躍的に向上すると、民間事業者の負担が軽減されると、そして都政の構造改革にもつながるという、いわゆる昔の言葉でいう三方よし的な変革に向けて、これからもDX推進を着実に進めていただくことを要望させていただいて、次の質問に移ってまいりたいと思います。
 最後の質問になりますけれども、都立病院について伺いたいと思います。
 令和五年度は、地方独立行政法人化、いわゆる独法化後、通年で初めての決算でございました。
 都立病院は、新型コロナの影響で、患者数が減少した後、患者数が戻らず、厳しい経営状況と伺っておりますけれども、令和五年度の当期純損失が百八十三億円となった理由について、まず伺います。

○鈴木都立病院支援部長 令和五年度決算は、収入の総額が二千三百七十七億六千七百万円で、前年度比で二百二十四億円の減少となりました。
 収入のうち、医業収益は一千六百九十九億七千四百万円、運営費負担金収益は四百九十三億六千四百万円、運営費交付金収益は三十三億一千万円、補助金を含んだその他の収益は百五十一億一千八百万円であり、前年度比では、コロナ五類移行に伴い、コロナ関係補助金等が二百六十六億円減少した影響が大きくなっております。
 また、支出の総額は二千五百六十億六千二百万円、前年度比で五十二億円の増加となりました。支出のうち、給与費や材料費、経費等を含む医業費用は二千四百二十三億九千六百万円であり、前年度比では、物価高騰の影響により、材料費が三十二億円増加した影響が大きくなっております。
 これらの結果、当期純損失は百八十三億円となったところでございます。

○林委員 最終損益が百八十三億円の赤字だということでございました。
 前の経緯を見ますと、間違っていたら後でご指摘いただきたいんですけど、九十億円を超える黒字となっておりまして、独法化となった令和四年以前を含めると、四期ぶりの赤字ということのようでございました。
 新型コロナ関係の補助金の終了に加えて、材料費等経費の上昇も響いたということで、都立病院の経営形態の在り方というものは、平成十二年の都庁改革アクションプラン以来、長年検討されてきておりますけれども、その後の地方独立行政法人法施行以降は、独法を経営形態の一つとして検討を進めてきたという経緯は承知しておりますけれども、そもそも独法化が必要だった理由について改めて伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院は、医療環境が大きく変わる中にあっても、安定的かつ柔軟な医療人材の確保や機動的な運営によって、行政的医療をはじめとする質の高い医療を提供する役割を将来にわたり果たしていかなければなりません。
 独法化前の都立病院では、地方自治法をはじめとした関係法令等に基づき、予算及び人員につきましては、毎年度の要求、調整等を経て、次年度の予算、定数が決定されておりました。
 独法化により、人材の機動的な確保による新たな医療ニーズへの対応や、柔軟な契約制度の導入などによるさらなるコスト削減を行うことにより、行政的医療を一層充実させることができることから、令和四年七月に地方独立行政法人に移行いたしました。

○林委員 都立病院は、常に都民が求める、今もご答弁でございましたけれども、行政的医療をはじめとする質の高い医療を提供する役割を将来にわたって果たしていかなければならないということでございまして、機動的な人材の確保というものは質の高い医療の提供にもつながる、独法化の大きなメリットの一つだというお話でございますけれども、実際の医療従事者の採用について、職種別の職員確保の状況を伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院機構では、病院長の裁量で医師や看護師等の一部職種を随時採用できる権限を付与するなど、独法化のメリットを生かし、新たな医療ニーズなど、現場の課題に迅速、柔軟に対応できる採用制度を構築しており、柔軟な選考の実施が可能となったところでございます。
 令和五年度の採用活動の結果、令和六年四月一日付の採用者数は、医師が二百三十三名、看護要員が五百七十名、コメディカルは百六十名であり、令和五年四月一日付の採用者数と比べ、医師及び看護要員はおおむね同数、コメディカルは六十一名増加しております。

○林委員 医師及び看護要員はおおむね同数ということですけれども、コメディカル、診療を支援する部門のスタッフの方々は六十一名増加したという点は、医師、看護師との連携の下に進められている診療、治療がより充実していくものであれば、患者さんのために大きなプラスといえるのではないかというふうに考えております。
 また、必要な人材を確保して、職員のお一人お一人が働きがいを持って職に当たることで、より質の高い医療を提供することができるのではないかと思いますけれども、こうした頑張りというものが報われるような人事給与制度になっているのか伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院機構では、職員が能力を最大限に発揮し、組織が活性化するような人事給与制度を構築しております。
 職員の専門的知識、能力や業績をきめ細かく評価に反映するため、例えば看護師は、患者、家族等の要望に合ったケアの適切な実践等、いわゆる看護力の実践力を評価項目とするなど、医療現場に即した人事考課制度といたしました。
 また、看護師等が夜勤を行う際に支給する手当を、回数に応じた支給に見直すとともに、特殊な技術や知識を有する職員や確保困難な職種の職員等に支給する手当を創設したほか、看護要員やコメディカルにつきまして、対象の資格を活用して業務に従事する職員に対する資格手当の支給を開始するなど、きめ細かな処遇を行うことが可能となったところでございます。

○林委員 独法化に対しては様々な意見があったことは私も承知しているんですけれども、独法化による大きなメリットとしては、多様な契約手法が可能となるために、質を高めつつ、コストの削減と経済性を発揮することができることが挙げられるというふうにいわれておりますけれども、この独法化のメリットを生かした契約手法について伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院では、独法化のメリットを生かし、共同購入や価格交渉、多様な契約手法の活用に取り組んでおります。
 診療材料の調達では、三病院分の診療材料につきまして、コンサルティング会社を活用した価格交渉を行い、令和五年度契約と比較して、令和六年度の契約金額は約三千万円の削減を見込んでおります。
 価格交渉の取組といたしましては、全国九百施設のデータから人員と他病院との価格比較を行います民間事業者が提供するベンチマークシステムを、令和五年一月に十病院に一括導入し、適正な価格の把握に努めております。
 新たな契約手法といたしましては、これまで都立病院では事例のなかった初期費用の抑制と、短期間での新型機種への変更が可能な残価設定型リース契約を導入し、手術支援ロボットを四病院に設置して、体への負担が少なく、より安全な手術の実施に取り組んでいるところでございます。
 今後とも独法化のメリットを生かした柔軟な契約手法やスケールメリットを生かした調達により、コスト削減や機動的な病院運営を行ってまいります。

○林委員 共同購入や多様な契約手法の活用に取り組まれるということで、高い水準の医療を提供しつつも、支出の抑制を図っていることは理解いたしましたけれども、こうした取組は独法化したことによるメリットの一つであるというふうに思っておりますが、都立病院の基本的な役割であります行政的医療を持続可能かつ継続的に都民に提供していくためには、病院の経営基盤の確立というものが重要であります。
 独法は、都が一〇〇%出資して設立する法人でありまして、都民の税金が投入されている以上、最少の経費で最大のサービスを提供することを念頭に置いて、支出を抑制する工夫や取組を絶え間なく進め、経営改善に向けて努力を重ねていただきたいと思います。
 一方で、独法化によって、機動的な人材確保など、独法化のメリットを生かし、行政的医療をはじめとする医療機能の強化を図るとしていましたけれども、その取組状況について伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院では、行政的医療等の一層の充実と地域医療の充実への貢献、この二つの柱を基本として、各病院の特徴に応じた機能強化を図っております。
 具体的な取組といたしましては、例えば大塚病院では、令和五年に医師を一名増員し、放射線機器も更新することで、急性期病院の脳神経外科として体制強化を図りました。血栓溶解療法、いわゆるtPA療法も可能となり、急性期リハビリテーションを早期から開始するなど、脳卒中医療の一層の充実を図っております。
 また、駒込病院では、都内に三施設のみである造血幹細胞移植推進拠点病院といたしまして、令和四年度には独法化後に新設した造血細胞移植コーディネーターを配置し、令和五年度に医師を増員するなど、造血幹細胞移植医療の体制強化を図るとともに、移植に携わる地域の医療従事者の人材育成にも積極に取り組んでいるところでございます。
 今後とも各病院の強みを発揮しながら、医療環境の変化にも迅速的確に対応し、都民の生命と健康を守ってまいります。

○林委員 都立病院は、ご案内のとおり、明治初期に伝染病や精神疾患への対応から始まっているわけでございまして、その後、戦前戦後と幾多の混乱期や結核の対応等、常に都民の医療ニーズにしっかりと対応してこられています。
 これからも将来にわたって、都民の誰もが質の高い医療を受けられて、安心して暮らせる東京を支えていかなくてはならないのが都立病院だというふうに考えています。
 改めて、なぜ都立病院が必要なのか、都はどう捉えているのか、認識を伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関等との適切な役割分担と密接な連携を通じて、都における良質な医療サービスの確保を図ることを基本としております。
 都立病院は、明治初期の伝染病専門病院や精神科病院の創設から始まり、その時代ごとの社会状況や医療需給の変化等に応じ、東京のセーフティーネットとして、都民が直面する医療課題に積極的に取り組んでまいりました。
 長年にわたり培ってきました行政的医療に精通した医師や看護師等の専門人材や、地域医療機関や行政との連携体制等を基に、独法化のメリットも生かしながら、引き続きニーズに応じた行政的医療の提供や、都の医療政策への貢献などという役割を果たしていかなければならないと認識してございます。

○林委員 ありがとうございました。
 これまでの質疑で、都立病院では、独法化のメリットも生かしながら、人材の確保などを図り、行政的医療を着実に提供していくべく進められているということは確認をさせていただいたところですけれども、ただ独法化の際の様々な意見の中で、反対意見を代表するものとして、行政的医療の役割を果たすために必要とされる税金投入を抑えると、そのために経済性と採算を過度に重視した効率的な運営を優先することによって、これまで築いてきた地域医療の要としての役割とか、感染症、災害対応など都民が求める医療サービスの確保がおろそかになるんではないかという、そういったご意見がありましたけど、そういった懸念は引き続き丁寧に説明して、払拭していかなければならないし、また患者さんにも不利益があってはならないということだけは申し上げておきたいと思います。
 むしろ医療サービス提供の質向上のためにも、独法化は有効であるということを病院の現場から証明していただきたいと思います。
 一方、都内全体に目を向ければ、令和五年度の都内医療機関の新入院患者数は、新型コロナの影響を大きく受けた令和二年度を底に緩やかな回復傾向にはありますけれども、コロナ禍前までには戻っておらず、厳しい経営状況にある病院が多いというふうに聞いております。
 都内医療機関の約九割は民間病院でありまして、都内の医療提供体制を考えていく上で、やはり民間病院が不可欠であることはいうまでもございません。
 東京のセーフティーネットとしての役割を有する都立病院は、その時代ごとに社会状況や医療需給の変化等に応じて、必要とされる医療提供を行ってきたとのことでございますけれども、コロナ後の医療環境や患者の受療動向等を踏まえて、都として改めて民間病院等への支援協力も含めて、役割分担を考えていく時期に来ているというふうに私は考えております。
 都立病院と民間病院がそれぞれの強みを生かして、都民に必要な最善の医療を提供し続けていくことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○成清委員 まず初めに、ワイズスペンディングについて伺います。
 我が会派が知事と共に強力に進めてきた東京大改革の主な柱の一つがワイズスペンディングです。事業評価の取組を通じて、この八年間で約八千百億円の財源確保につなげ、新たな施策の構築などを実現してきました。
 昨年行った令和六年度予算編成においては、過去最大となる千五百十五件、千二百六十六億円の財源確保につなげることができたとのことです。
 財務局の方で公表している資料を基に私の方で独自に集計をしたところ、千五百十五件のうち百四十八件が保健医療局の所管事業となっています。事業評価を行っている局や庁が全部で二十九あることを考えると、保健医療局一局で百四十八件というのは、比較的評価件数は行っているものと評価をしております。
 ワイズスペンディングにおいては、予算編成上のものに加えて、執行上のワイズスペンディングも重要です。令和五年度に行った保健医療局における執行上のワイズスペンディングを具体的に伺います。

○吉原企画部長DX推進担当部長兼務 令和五年度予算の執行に当たっては、実績を踏まえた経費の精査を進めるとともに、取組内容の工夫により、効果的、効率的に施策を展開してまいりました。
 例えば新型コロナ後遺症に関する保護者向けリーフレットの印刷に当たっては、原則として紙での配布からデータでの提供に変更することで、保護者へ直接情報を届けられるようにするとともに経費の縮減も図りました。

○成清委員 効率的、効果的な施策展開の具体例について確認させていただきました。
 こういった事例をどんどん増やしていただきたいと思いますが、ワイズスペンディングについて、局としての今後の方向性について伺います。

○吉原企画部長DX推進担当部長兼務 今後ともワイズスペンディングの観点から、各施策の成果等を踏まえて見直しを徹底し、好事例を横展開するなど、効率性、実効性の高い施策展開を図ってまいります。

○成清委員 事業評価は、財務局が主体で行っているものではありますが、各局での取組が一番重要と思いますので、引き続きの自律改革の取組をよろしくお願いいたします。
 次に、感染症対策について伺います。
 昨年五月に新型コロナウイルスが感染症法上の五類に移行しました。医療従事者、都庁職員、都民、事業者全ての皆様との連携により、未知なる感染症に対して総力を挙げてこられましたが、これからも新型コロナ対策で培った経験を風化させず、将来必ず発生するといわれる未知なる感染症に対しての備えを平時から強化することの必要性も痛感しております。
 そこで、昨年度、感染症に強い東京の実現に向けた平時からの備えという事業について、どのような取組を行い、成果を得たのか伺います。

○内藤感染症対策部長 都は、新型コロナが五類に移行する中、新たな感染症危機に備えるため、医療機関や施設に対して感染症対応力向上の取組を支援してまいりました。
 具体的には、より多くの医療機関で感染症患者を受け入れられるよう、病室の個室化や患者の安全な動線確保のための施設改修、簡易陰圧装置等の設備整備に要する経費を支援いたしました。
 また、病院等における感染対策のリーダーを養成いたしますとともに、医療従事者等を対象に東京iCDCの専門家による感染対策の講習会を開催いたしました。
 さらに、高齢者施設等に対しまして、医師や看護師等を派遣し、保健所と連携して、感染対策の指導助言や感染症予防に関する研修を実施いたしました。
 今後とも感染症に強い東京の実現に向けて着実に取り組んでまいります。

○成清委員 平時からの取組で備えていくということが大変重要ですので、感染症から都民の命と財産を守るための取組をお願いいたします。
 コロナ禍の中で重要性が改めて認識されたのが往診です。また、私たちは住み慣れた地で暮らし続けるための地域包括ケアにつながる、在宅で二十四時間体制で医療を受けられる環境整備についても求めてまいりました。
 これを受けて、都が令和五年度に在宅医療推進強化事業を新規に予算化したことを歓迎していたものですが、都が地区医師会と連携して実施している在宅医療推進強化事業の昨年度の実績について伺います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 都は、区市町村への支援や人材育成などにより推進してまいりました在宅療養をさらに加速するため、地区医師会を通じた二十四時間診療体制の構築への取組を支援する東京都在宅医療推進強化事業を令和五年度から開始いたしました。
 令和五年度は、二十六地区医師会に補助を行いました。具体的には、地区医師会において、主治医が患者からの往診依頼に対応できない場合に、副主治医により往診を代行する体制を整備する取組や、往診の対応が困難な夜間や休日等において、往診を専門に行っている事業者と連携した体制を構築する取組などを支援しております。

○成清委員 比較的多くの地区医師会で活用いただいたことが分かりました。
 在宅療養を推進するためには、往診を含めた二十四時間診療体制を確保することが重要と考えますが、都としてどのように取り組んでいくのか伺います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 都は昨年度、都内全ての地区医師会を集めた連絡会で事業の周知を図るとともに、本事業の積極的な活用を働きかけました。
 今年度は、取組の好事例を共有することにより、本事業を活用する地区医師会のさらなる拡大に取り組んでおり、三十二地区医師会に補助を行う予定でございます。
 引き続き、在宅医療の担い手である地区医師会と連携し、地域における在宅医療体制の充実を図ってまいります。

○成清委員 今年度はさらに対象を拡大し事業を進めていただいているということです。
 在宅診療、オンライン診療や服薬など新しい医療サービスを普及させていくためには、医療機関への働きかけと同時に、都民にもその意義を知っていただき、さらには気軽にアクセスできるようにしていく必要があります。総合的な対策の強化を求めておきます。
 続いて、都立病院の独立行政法人化について伺います。
 都立病院の独立行政法人化については、様々な議論がございました。独立行政法人化の狙いが達成されているのか、懸念事項はないか、長期的な視点で毎年見ていく必要があると認識をしております。
 令和五年度の運営費負担金の決算額は四百九十四億円でした。令和四年七月に都立病院と公社病院を一体として独法化を行いましたが、その前後で行政的医療に係る公費負担額はどのように推移してきているのか伺います。

○鈴木都立病院支援部長 周産期医療、精神科医療、難病医療等、採算の確保が困難な行政的医療の提供に必要な経費につきましては、地方独立行政法人化以前には、地方公営企業法等に基づいて、一定のルールの下、一般会計繰入金及び運営費補助金として都が負担しておりました。
 地方独立行政法人法におきましては、以前の一般会計繰入金等と同様に、設立団体が運営費負担金として負担するものとされております。
 一般会計繰入金等及び運営費負担金の推移ですが、予算額では、独法化前の令和三年度が約四百九十八億円、独法化した令和四年度は約四百九十四億円、令和五年度は約四百九十四億円、決算額では、令和三年度は約四百四十三億円、令和四年度は約四百八十一億円、令和五年度は、お話にございましたとおり、約四百九十四億円でございます。

○成清委員 独法化の前後で予算額、決算額ともに大きな増減はなく、行政的医療について財源的な裏づけが確保されていることを確認いたしました。
 次に、独法化のメリットとして様々な点が挙げられていましたが、それらについて一朝一夕に実現するものではありませんが、どのような成果が見えているのかを確認したいと思います。
 まず、人事給与面について質問する予定でしたが、先ほども質疑がございましたので、こちらについては割愛をさせていただきます。人事給与制度は、人材確保において、独法化したからこそ可能となる工夫を行い、医療人材確保に努めてきたということでございました。
 次に、予算の単年度主義がなくなり、事業面の機動性、弾力性が向上するというメリットについて、令和五年度の取組を伺います。

○鈴木都立病院支援部長 独法化前の都立病院では、地方自治法をはじめ関係法令等に基づき、予算につきましては、毎年度の要求、調整を経た上で、次年度予算が決定されておりましたが、独法化後は柔軟な対応が可能となりました。
 具体的には、独法化前の都立病院では、地方自治法に基づき、単年度で完結することが原則でございましたが、独法化後は、契約は当年度に行い、納品や支払いは翌年度に行うというような年度をまたいだ契約も行っております。例えば設備改修などの工事におきまして、年度内の工事完了に縛られず、発注することができ、工事が必要なときに機動的に対応することが可能となってございます。
 また、長期継続契約につきましては、独法化前の都立病院では、事例のなかった未収金回収業務を令和五年度より対象に加えました。長期契約による価格の低減だけでなく、患者に対し同じ事業者が継続的に対応することが可能となったところでございます。

○成清委員 続いて、多様な契約手法、経済性の発揮というところも取り上げる予定でしたが、先ほど質問がありましたので、割愛をさせていただきます。
 独法化しなければできなかったことを着実に進めてきているという点について確認をさせていただきました。
 先ほど予算、決算額の推移について、行政的医療の財源的な裏づけを確認しましたが、中身についてより具体的に、行政的医療の確保について、令和五年度の取組を伺います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院では、各病院の医療機能に応じまして、行政的医療を適正に提供すべく取り組んだところでございます。
 例えば島しょ医療につきまして、令和五年度には広尾病院を中心に都立病院が島しょ救急搬送患者の約九六%を受け入れたほか、島しょ地域における看護師等の育成に貢献するため、ウェブを活用して、医療機関への研修や、島しょの保健所等との情報交換会を実施いたしました。
 小児医療につきましては、令和五年度、小児総合医療センターで受け入れた救急患者数は、入院、外来合わせて三万九千八百十六名で、コロナ前の令和元年度の三万四千八百八十四名の受入れ実績と比べ、一一四・一%となったところでございます。
 また、同センターは、都内四か所のうち、多摩地域で唯一指定されたこども救命センターでありまして、令和五年度は都内の三五%に当たる二百九十五名の患者を受け入れたところでございます。引き続き、行政的医療の充実に向けて取り組んでまいります。

○成清委員 小児科医は全国的にも大変不足していますが、子供は夜に体調が急変し、夜間や救急にかからなければならないことも少なくありません。そのような中で小児医療総合医療センターでも積極的に受入れを行っているとのことです。
 引き続き、子供たちの命のとりでとして、そして行政的医療の提供という使命を果たしていただけるよう、よろしくお願いをいたします。
 次に、懸念されていたような人件費の切下げなどは起きているのか、職員の給与費の推移など、状況について伺います。

○鈴木都立病院支援部長 給与費のうち、職員に支給される給料、手当、賞与等の推移は、コロナ対応等に係る特殊勤務手当を除き、独法化前の令和三年度は一千百十三億円、独法化した令和四年度は一千百三十一億円、令和五年度は約一千百五十二億円でございました。
 なお、独法化後は、職員が能力を最大限に発揮し、組織が活性化する人事給与制度を構築しておりまして、職員の基本給につきましては、独法化前後で制度が異なるため、単純な比較はできませんが、同水準を維持しているところでございます。

○成清委員 決算数値から見ても、人件費の切下げといった事態は読み取れないことを確認させていただきました。
 続いて、病床数について伺います。
 病棟休止について懸念の声もありますが、どのような理由によるものなのか。また、今後、新たな感染症の発生など病床拡大のニーズがあることも想定されますが、どのように備えているのか伺います。

○鈴木都立病院支援部長 現在、都立病院では、患者の受入れ体制を整備しているものの、コロナ禍以前の水準まで患者が戻っておらず、患者動向に応じた病棟運営を行っているところでございます。
 例えば新型コロナ病棟への看護師の応援等により、病棟を休止し、現在も休止を継続している病院では、稼働している病棟で、より手厚い看護を提供しております。
 一方で、多摩総合医療センターでは、病床利用率の上昇等に伴い、本年八月に休止病棟を再開するなど、病院の状況によって様々なところでございます。
 感染症の蔓延や大規模災害発生等により、さらなる病床を必要とする事態が起こった場合には、速やかに休止病棟を再開するなどして、都立病院の役割である感染症医療や災害医療などの行政的医療の提供を着実に図っていくこととしております。

○成清委員 受診抑制、患者数が戻らない、物価、人件費、エネルギー費の上昇などにより、多くの自治体病院では、コロナ禍前の経営状況には戻っていないと聞いております。
 患者数が戻らない中で、病床は適正規模に見直すことは当然の経営の選択です。次なる感染症や災害の可能性も踏まえながら、患者ニーズに応じて、都立病院でないと提供できない行政的医療の内容や規模については不断の見直しを行いながら、行政的医療の確保をお願いいたします。
 次に、財務状況についてです。
 持続可能な行政的医療の提供には、健全な財務体制も不可欠です。令和五年度業務実績評価等の中で、ほとんど全ての項目がS、A、Bの評価と良好な状況でありますが、財務状況のみCとなっております。どのように改善していくのか伺います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院では、コロナ禍でコロナ患者対応に注力した結果、患者数の減少に至りました。
 現在、救急患者の積極的な受入れ等に取り組んでおり、救急車搬送件数は、コロナ前を上回るなど、患者数の回復に努めているところでございます。
 このような収入確保の取組や、共同購入等費用の抑制に向けた取組を行っているものの、各経営指標が目標を下回り、計画値を大きく上回る純損失を計上することとなったことから、引き続き改善に向けた取組が必要であり、C評価となったものでございます。
 なお、災害医療等、行政的医療の評価項目では、おおむね年度計画を上回って実施しており、全体として着実な業務の進捗状況にあるとしております。
 都立病院では、今後もスケールメリットを生かした費用削減など、さらなる経営努力を行いながら、行政的医療を安定的かつ継続的に提供してまいります。

○成清委員 引き続き経営改善に努めていただくようお願いいたします。
 私たちは、これまでに都立病院の独立行政法人化に合わせて患者満足度の向上を求めてきました。
 具体的にはWi-Fi設置、オンライン診療、待ち時間短縮や未収金防止にもつながる後払いサービスといった取組を求めてきましたが、利用状況と今後の方向性について伺います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院では、暫定措置としまして、令和四年度までに全病院で簡易Wi-Fi等を設置いたしましたが、令和五年度には多摩総合医療センター、小児総合医療センター、駒込病院の三病院につきまして、全館Wi-Fi整備を完了いたしました。
 オンライン診療につきましては、小児総合医療センターにおきまして、患者から提供される主治医の検査結果等を基に、診断や治療についての意見を提供するセカンドオピニオン外来を開設しているほか、駒込病院では、造血幹細胞移植後の長期フォローアップ専門外来に対応しているところでございます。
 診療費の後払いサービスにつきましては、駒込病院、墨東病院、多摩総合医療センターにおきまして、専用アプリでクレジットカード情報を事前登録することにより、診療終了後、当日の会計を不要としているところでございます。
 今後もサービスの改善、向上に向けた取組を推進いたしまして、患者満足度の向上を目指してまいります。

○成清委員 患者満足度の高い病院を目指していただきたいと思います。
 次に、雑収入について伺います。
 今年度の決算書で目を引くのが収入未済の雑収入約百億円です。うち、PCR等検査無料化事業補助金返還が九十八億円となっています。本件は今年度に入り、訴訟も行っていると認識しておりますが、この九十八億円は収入未済であり、しっかりと回収する必要があります。
 事業開始以来、不正検査の総額は幾らで、そのうち回収済みは幾らであるのか伺います。

○及川感染症対策調整担当部長 都が令和五年度までに交付決定の取消し等を行い、返還命令を行った無料検査事業補助金の総額は約百二億円でございます。このうち、令和五年度末までに約四億円を回収し、約九十八億円が収入未済となっております。

○成清委員 これから多くを回収していかなければならないという状況ですが、もし仮に法人が支払い拒否をしたり、法人に支払い能力が既にない場合、どのような対応が取られるのか伺います。

○及川感染症対策調整担当部長 補助金の返還が行われない事業者に対しましては、債権回収手続に沿って、督促、催告等を行い、返還意思がないことが明確になった場合には訴訟を提起しております。本案に係る訴訟の確定判決後に強制執行が行われた場合、事業者の保有する資産の中から回収を図ってまいります。

○成清委員 今回、早急に都民にPCR検査を提供するために補助金支給のスピードを重視した制度設計でありました。早期に事業を実施することは大事ですが、補助金の適切な執行の確保も重要です。
 今後、同様の事業を行うに当たっては再発防止を検討すべきと考えますが、所見を伺います。

○及川感染症対策調整担当部長 補助金の不正受給を防止するとともに、不正受給された補助金の返還を徹底することは重要でございます。
 無料検査事業は、国の新型コロナウイルス感染症対策に係る基本的対処方針に基づきまして、都道府県が要綱を定め、実施してまいりましたが、新たな感染症が発生した場合におきましても、同様の補助事業を緊急的に実施することが想定されます。
 このため、都は国に対して、今後、類似の事業を展開するに際して、不正受給防止の制度設計等をあらかじめ検討するよう先般要望したところでございます。

○成清委員 都民からも不正に対しては厳しい対応を求められていると思いますので、毅然とした対応をお願いいたします。
 最後のテーマとして、アレルギーについて伺います。
 アレルギー疾患は、慢性的な疾患として、日々の生活に大きな影響を与えており、国民の二人に一人がアレルギー疾患を抱えているといわれております。一部の重篤な症状を除けば、アレルギーというのは命に関わる病気ではありませんが、生活の質、QOLを著しく下げるものです。
 まず、アレルギー疾患に対して、都はこれまでどのような取組を実施してきたのか伺います。

○中川健康安全部長 都は、平成十年にアレルギー疾患対策検討委員会を設置し、予防に関する普及啓発や相談に係る人材の育成などを行ってまいりました。
 アレルギー疾患は、国民生活に多大な影響を及ぼすことや、多様かつ複合的な要因によって発生し、重症化することを踏まえ、国は平成二十六年にアレルギー疾患対策基本法を制定いたしました。
 都は、基本法に基づき、東京都アレルギー疾患対策推進計画を策定し、自己管理のための各種情報の提供、花粉症対策の推進、食品に関する対策、医療従事者の資質向上や医療提供体制の整備など、アレルギー疾患対策を総合的に推進してまいりました。

○成清委員 一般会計決算書によると、アレルギー性疾患対策の執行率は七四・四%となっておりますが、執行状況について伺います。

○中川健康安全部長 令和五年度のアレルギー疾患対策に関する支出額は、予算現額七千五百九十九万円に対して、五千六百五十六万四千円であり、執行率は七四・四%であります。
 アレルギー疾患対策の予算には、ホームページの運営に関する経費のほか、医師や医療従事者を対象とした資質向上や医療連携に向けた研修、保育所、幼稚園、区市町村の職員等を対象とした相談実務や緊急時対応に関する研修などを計上しております。
 令和五年度は、新型コロナ感染症の五類移行後も実技を伴わない研修をウェブで実施したことなどにより、不用額が生じました。ウェブで実施した研修は、受講者が当初予定の二倍を超えるなど、参加機会の促進が図られました。

○成清委員 日本学校保健会の調査では、子供の食物アレルギーは二十年間に数倍に増えているといわれております。また、都の三歳児全都調査でも、三歳までに何らかのアレルギー疾患があると医師に診断された子供は約四割との結果です。
 都として、子供のアレルギー予防に力を入れていくべきと考えますが、見解を伺います。

○中川健康安全部長 子供のアレルギー疾患については、湿疹やアトピー性皮膚炎がある子供の方が、ない子供に比べて、食物アレルギーやぜんそく、アレルギー性鼻炎といった他の疾患を発症する確率が高いことが知られております。
 このため、子供の皮膚を清潔に保ち保湿するスキンケアを小まめに行うとともに、湿疹が出た場合は早期に治療することが重要でございます。
 都は、アレルギー疾患に関する様々な情報を掲載したポータルサイト、東京都アレルギー情報navi.で、妊婦や乳幼児の保護者等を対象に、乳幼児期からのアレルギー疾患の予防対策などを分かりやすく情報提供しており、サイトを紹介したシールを母子手帳の交付時に配布して、個別に周知を図っております。

○成清委員 アレルギーには様々ありますが、一番身近なアレルギーは花粉症かもしれません。学校等の場を通じて、子供の花粉症の現状、治療法等に関する正確な情報を伝え、子供の花粉症対策を後押しすべきと考えますが、取組を伺います。

○中川健康安全部長 アレルギー情報navi.では、都民が花粉症対策を適切に行えるよう、花粉の飛散開始時期や日々の飛散数等の情報を公表するほか、花粉症の基礎知識やセルフケアの方法、根治も期待できる舌下免疫療法など、様々な情報を提供しております。
 また、花粉症の予防治療に関する資料として、小冊子「花粉症一口メモ」を毎年度策定しており、保健所や医療機関で配布するとともに、保育園児、幼稚園児、小中学生の保護者や職員等に本冊子を知っていただくよう、発行時に区市町村に対して、保護者、職員等への周知を依頼しております。

○成清委員 次に、外食について伺いたいと思います。
 花粉症に加えて、多くの人が悩まされているのが食品アレルギーです。そういった中で食品アレルギー当事者が困る現場として多く挙げられているのが外食です。
 外食のアレルギー対応について、都の見解を伺います。

○早乙女食品医薬品安全担当部長 食物アレルギーのある方が安心して飲食店を利用するためには、利用客がアレルギーの原因となる食品の種類を店舗側に伝え、店舗側は実施可能な対応を利用客にお知らせするなど、食物アレルギーに関する情報を相互に共有することが重要でございます。
 このため都は、飲食店事業者と利用客との間でアレルギー情報を共有するため、ピクトグラムを活用したアレルギーコミュニケーションシートを作成し、飲食店に配布しております。
 また、毎年、飲食店向け講習会を開催し、コミュニケーションシートの活用方法をはじめ、専門医による食物アレルギーの解説や、外食企業におけるアレルギー対応事例など、様々な情報を提供しております。
 今後とも、より多くの飲食店が食物アレルギーについて理解を深め、アレルギー対応に取り組めるよう支援を行ってまいります。

○成清委員 アレルギーを発症した場合、アレルギー疾患の治療については、まずかかりつけ医を受診し、必要に応じて、重症、難治性のアレルギー疾患患者の診療を行う拠点病院や専門病院に紹介する地域医療連携の推進が必要です。
 そのためには、医師や医療機関での診療技能の標準化と均てん化が求められているともいわれていますが、医療提供体制の整備について、都の見解を伺います。

○中川健康安全部長 アレルギー疾患は、種類や病態が多様であり、患者の状態に応じた適切な医療を提供するためには、日常的なアレルギー疾患医療を担う地域の医療機関が標準的治療を行うとともに、標準的治療では病態が安定しない患者等を専門的な医療を提供する拠点病院等に円滑につなげられる連携体制を整備することが必要でございます。
 このため都は、医師及び医療従事者を対象に、標準的治療などを内容とした研修を実施するほか、令和五年度からは地域の医療機関と拠点病院等との関係を構築し、連携を強化するための取組を開始いたしました。

○成清委員 これまでの質疑で様々な取組を行っていることが分かりました。しかしながら、アレルギー増加の要因として、環境が衛生的になり過ぎて免疫が崩れたですとか、逆に大気汚染など環境の悪化によりアレルギーが増えているだとか、農薬や食品添加物が原因であるとか、様々な説がちまたにあふれております。
 都民に正しい情報を伝え、適切な対応をしていただくためにどのような取組を行っているのか伺います。

○中川健康安全部長 東京都アレルギー情報navi.では、患者やそのご家族に向けて、疾患に関する基礎知識や発症予防、症状軽減のための自己管理、生活環境の改善方法、医療機関に関する情報など、アレルギー疾患に関する様々な情報を総合的に提供しております。
 また、都民がアレルギー疾患について理解を深めるきっかけとなるよう、毎年二月を東京都アレルギー疾患対策推進強化月間と位置づけ、集中的に広報啓発活動を行っております。
 今後も都民がアレルギー疾患に関する正しい情報を知り、適切な自己管理や、発症、重症化の予防、症状の軽減につながるよう、専門的知見に基づく正確な情報を分かりやすく提供してまいります。

○成清委員 行政だからこそできる、都民に寄り添った正しい情報発信をお願いして、終わります。ありがとうございました。

○伊藤委員 では、私からは、まず都立病院機構について質問してまいりたいと思います。
 高齢化のさらなる進展等、医療環境が大きく変化していく中にあっても、都立病院が行政的医療の安定的な提供や地域医療の充実への貢献等の役割を将来にわたって果たし続けるため、都は令和四年七月一日に地方独立行政法人東京都立病院機構を設立しまして、二年が経過をいたしました。
 知事が評価委員会の意見を聴取して行った令和五年度地方独立行政法人東京都立病院機構業務実績評価書の全体評価を見ると、改善、充実を求める事項もありますけれども、東京都の医療政策として求められる行政的医療の安定的かつ継続的な提供をはじめ、都民の健康を守り、その増進に寄与することなど、役割を果たしていることを高く評価するとありました。
 また、私もこれまで厚生委員会などで繰り返し述べてまいりましたけれども、独法化に向かう中、また独法化されたさなかにあっても、新型コロナウイルスとの闘いにおいて、都民のかけがえのない命を守った都立病院の果たした役割の大きさと、病院関係者の活躍に改めて心から感謝をしたいというふうに思います。
 都立病院の経営状況は、新型コロナの影響で患者数が減少した後、患者数が戻らず、厳しい経営状況と聞いております。
 そこで、令和五年度に都立病院で受け入れた入院患者、また外来患者の数について、コロナ前と比較すると、令和五年度の決算の状況についても伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院全体の入院患者数は、令和五年度、延べ百五十九万一千三百七十五人で、コロナ前の令和元年度の百九十三万一千四百二十七人と比較すると、約三十四万人の減となっております。
 また、外来患者数は、令和五年度、延べ二百四十万百二十七人で、令和元年度の二百七十二万八千七百三十人と比較いたしますと、約三十三万人の減となっております。
 一方、都立病院機構の令和五年度決算は、収入の総額が二千三百七十七億六千七百万円、支出の総額は二千五百六十億六千二百万円、この結果、当期純損失は百八十二億九千五百万円となったところでございます。
 これは新型コロナの影響で患者数が減少した後、患者数が戻らず、医業収益が伸びていないこと、コロナ五類移行に伴い、コロナ関係補助金が大幅に減少したこと、物価高騰の影響により、材料費等が増加したことなどが主な要因となっているところでございます。

○伊藤委員 患者数が戻らず、非常に厳しい経営状況であるということを踏まえて、その課題克服に向けてどのような取組を行ったのか、令和五年度の収入確保と適切な支出の徹底に向けた具体的な取組について伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 収入確保の取組では、コロナ後の患者数減少を踏まえまして、断らない救急の徹底、初診患者の受入れ体制強化、地域との連携強化の三つの重点項目の取組を推進しております。
 また、令和四年度の診療報酬改定に対する各病院の取得状況の比較を行い、医療の質を高める新規、上位の施設基準を取得いたしました。
 例えば広尾病院及び荏原病院におきまして、総合的かつ専門的な急性期医療を二十四時間提供できる体制の確保を評価する総合入院体制加算を取得したことで、約八千八百万円の増収につながりました。
 適切な支出の徹底に向けた取組では、コンサルティング会社を活用した価格交渉を行っております。例えば十病院分の検体検査委託につきましては、価格交渉の結果、令和五年度契約と比較して、令和六年度は約千七百万円の削減となる見込みとなってございます。

○伊藤委員 これまでの議会の議論の中で、独法化することで、必要なときに必要な人材や医療器材の確保ができるということでありましたけれども、実際にどのようなメリットがあったのか伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 医療の高度化や専門化が進む中、都立病院が質の高い医療を提供していくためには、専門性の高い職員の育成が不可欠であり、令和五年度に独法化のメリットを生かした柔軟な採用選考や働きやすい環境づくり等を進め、令和六年四月一日付のコメディカルの現員数は約一千六百六十六名で、前年度比で百十七名増加しております。
 例えば多摩総合医療センター及び小児総合医療センターでは、PFI事業のうち、検体検査業務につきまして、病院職員が自ら実施することが専門性の高い人材育成等の観点からも有効であるとして、令和七年四月から事業の対象外としておりまして、両病院では円滑な事業の実施に向け、令和六年四月一日付の臨床検査技師の現員数を前年度比で約十八名増やしているところでございます。
 また、高額医療機器の購入に当たりましては、十四病院一施設のスケールメリットを生かし、三病院分の四台の放射線機器を保守費用を含めて一括契約を行いました。
 加えて、競争入札により交渉の相手方を選定して、契約締結前に減額交渉を行う交渉権入札方式を採用することにより、最低価格入札額に対し、さらに減価交渉を実施する取組を行い、約二千九百万円の費用削減を実現いたしました。
 交渉権入札方式につきましては、他の入札でも採用しておりまして、令和五年度は百九件で実施し、入札価格と比較して、合計で約三千八百万円の削減効果がございました。

○伊藤委員 答弁にあったように独法化したことで、人的にも、また器材的にもメリットがあったということでありましたけれども、これまでの議論の中で、行政的医療についても、機構に移行した後もしっかりと引き継がれていくという議論をしてきたというふうに思います。
 令和五年度についても着実に実施ができたのかどうか伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院機構では、独法化後も行政的医療を適正に提供するために、様々な取組を進めているところでございます。
 一例ですが、行政的医療の一つである精神科医療につきまして、都内の精神科患者に対し、迅速かつ適正な身体医療の確保を目的とする精神科患者身体合併症医療事業におきまして、都立病院は令和五年度、夜間及び休日に身体疾患を併発した方の約九九%に当たる百名を、また主に単科の精神科病院の入院患者で迅速な対応が必要な身体疾患を併発し、転院が必要となった方の五三%に当たる二百三十九名を受け入れるなど、着実に取り組んでおります。
 また、災害医療につきましては、大規模災害等の発災に備え、都立病院の職員を対象に日本DMATや東京DMAT、災害派遣精神医療チームであるDPATの隊員養成を進めるとともに、東京DMATとして要請に応じて計四十三回出動いたしました。
 また、能登半島地震では、医師や看護師等延べ百十一名派遣し、その際には都立病院独自の取組といたしまして、派遣者の移動や宿泊に係る負担軽減や、チーム交代時の円滑な引継ぎを目的といたしまして、富山市内に活動拠点を設置し、切れ目のない支援を行いました。
 今後も東京のセーフティーネットとして、行政的医療を着実に提供し、都民の安心・安全を支えてまいります。

○伊藤委員 答弁の中に能登地震の被災地への医療支援も行ったということで、大変に敬意を表したいというふうに思います。
 東日本大震災のときにも、たしか都立病院から派遣をされていらっしゃると思いますけれども、今後、首都直下地震や豪雨災害等の被害にも、その経験をぜひ生かせるよう、また備えていっていただきたいというふうに求めておきたいと思います。
 次に、がん患者へのアピアランスケア支援事業について伺ってまいりたいと思います。
 都は、都議会公明党の求めに応え、がん治療に伴う脱毛や乳房切除など、外見の変化を補うアピアランスケアとして、ウイッグや人工乳房等の購入助成に取り組む区市町村に対して、令和五年度から包括補助で支援を開始いたしました。
 そこで、都が行ったアピアランスケア支援事業の昨年度の実績について伺うとともに、今年度実施予定の区市町村数についても伺いたいと思います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 都は令和五年度から、がん患者へのウイッグや人工乳房等の購入費用の助成に取り組む区市町村を包括補助により支援しております。
 これにより、都内でアピアランスケア支援に取り組む自治体の数は、包括補助実施前の令和四年度の十三自治体から、令和五年度は二十七自治体まで拡大しております。
 令和五年度の本事業による総助成件数は三千四百五十二件となっており、内訳は、ウイッグが二千九百九十件、補整下着が三百六十一件、人工乳房などその他が百一件となっております。
 本年度、包括補助を活用して、アピアランスケア支援事業に取り組む自治体は四十二まで拡大する予定でございます。

○伊藤委員 これまでは区市町村が独自でこのアピアランスケア事業を展開していたところが、都が包括補助で支援をするということになって、格段に取り組む自治体が増えてきたということが答弁で明らかになりました。
 また、都議会公明党は昨年、令和五年の第二回定例会代表質問で、都民の中に事故や病気、あるいは先天性などで体の一部を失った方もおり、外見の変化に伴って、健常者と障害者のはざまに置かれ、精神的な苦痛を感じながら生活をしている方々も少なくないということを指摘させていただきました。
 そこで、がん以外の病気等を原因とする外見の変化についても、アピアランスケア支援事業の対象とすることが重要と考えますけれども、都としてどのように取り組んでいくのか伺いたいと思います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 都は今年度、アピアランスケアの実態を把握するため、アピアランスケア支援を実施している区市町村への調査を実施いたしました。調査では、がん以外の病気等も補助対象とすることや、目や指などのエピテーゼへの支援を求める意見がございました。
 こうした調査も踏まえながら、外見が変化しても、その人らしく生活を送れるよう取組を推進してまいります。

○伊藤委員 区市町村への調査では、がん以外の病気等も補助対象とすることや、目や指などのエピテーゼへの支援を求める意見があったということでありました。
 今後は、がん患者以外にもアピアランスケア支援事業の対象を広げ、エピテーゼや義眼なども対象とできるように、実施自治体の拡大とともに、支援内容の充実を一層図っていただきたいということを求めておきたいと思います。
 次に、在宅人工呼吸器使用者療養支援事業について伺ってまいりたいと思います。
 都議会公明党は、これまで人工呼吸器や胃ろうなどを使用して、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な子供や、あるいは成人とご家族などへの在宅療養支援について、様々に都の施策拡充を求めてきたところであります。
 私も、前職の児童センター指導員時代に医療的ケア児に関わったり、当事者のご自宅を訪問して、その家族から様々にご苦労や要望を聞いてまいりました。その際、どのご家庭も共通して不安を抱いていたことは、災害や停電によって、生命維持のための機器が機能しなくなってしまうということでありました。
 都は在宅人工呼吸器使用者療養支援事業を行っておりますけれども、本事業について、取組内容とこれまでの変遷を伺いたいと思います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 都は平成二十五年度から、災害時に備え、在宅で人工呼吸器を使用する方に自家発電装置、吸引器及び無停電電源装置を無償で貸与、給付する区市町村を包括補助で支援しております。
 令和三年度からは、過去に台風や大雪などによる被害を受けた他の道府県の状況や、在宅医療に関わる専門家からの意見等を踏まえ、屋内で安全に電源が確保できる蓄電池を対象品目に追加いたしました。
 また、災害時の個別支援計画の作成を補助条件としていましたが、区市町村が事前に設備を整備し、必要な方に必要な物品を迅速に給付できるよう、その条件を撤廃し、原則、人口二万五千人当たり一台を基準とした補助に変更いたしました。あわせて、区市町村が作成する使用者リスト等により、必要性が確認できれば、基準を超えた台数の補助も可能といたしました。

○伊藤委員 二〇一一年には東日本大震災が発生をいたしました。また、五年前の二〇一九年の九月九日、台風十五号は、暴風域を伴って千葉県に上陸をして、房総半島は大きな被害に見舞われました。このとき千葉県内は大停電に見舞われ、最大で六十四万戸余りが停電をし、長いところでその停電が二週間続いて、熱中症によって命を落とされる方もいらっしゃいました。
 こうした事態は、在宅療養しているご家族にとっては、こうした災害や停電などは、我が事として危機感を覚えたことというふうに思います。
 都議会公明党のたかく則男議員が令和三年十二月の第四回定例会一般質問において、在宅人工呼吸器使用者療養支援事業に蓄電池を対象品目に加えるよう求めました。そして、都は早速、その同月に蓄電池も支援対象とし、事業を拡充したことを評価したいと思います。
 そこで、在宅人工呼吸器使用者療養支援事業について、令和三年度から令和五年度までの補助実績を伺いたいと思います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 令和三年度は四自治体に対し、自家発電装置二十七台、無停電電源装置一台、蓄電池十四台の合計四十二台、令和四年度は十自治体に対し、自家発電装置二十台、吸引器十五台、蓄電池七十四台の合計百九台、令和五年度は十四自治体に対し、自家発電装置十一台、吸引器二台、蓄電池百十二台の合計百二十五台を補助しており、実績は着実に増加しております。

○伊藤委員 答弁にあったように蓄電池だけを見ても三年間で二百台が配備されたということは、私は大きな実績であったというふうに思います。
 一方で、当事者のご家族からは、災害は自宅にいるときにだけ発生するわけではなくて、外出時など、いつどこで遭遇するか分からない、その際に備えて持ち運びができるポータブル蓄電池も備えておきたいという声が届いております。
 本事業について、人工呼吸器を使用している方が外出時に災害に遭った場合にも利用できるようなポータブル蓄電池は支援事業の対象となっているのか伺いたいと思います。あわせて、小中学校などの避難所に設置する自家発電装置等についても補助の対象となるのか伺いたいと思います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 本事業では、容易に使用及び運搬可能なポータブル蓄電池や、停電時等に使用する人工呼吸器専用の外付けバッテリーを補助対象としております。
 また、補助対象となる自家発電装置等を避難所等に設置する場合は、運営に当たる職員に対して研修等を通じて、安全に使用できるようにすることを条件に補助の対象としております。

○伊藤委員 ケアが必要な子供にとっても、また成人にとっても、在宅療養しているご家族にとって、機器の安定した機能、これは生命維持に直結する重要なことだというふうに思います。今後もこの支援事業が必要な方に確実に届くように努めていただきたいというふうに思います。
 最後に、帯状疱疹ワクチンについて質問をいたします。
 都議会公明党は令和四年第二回定例会、そして第四回定例会で、帯状疱疹ワクチンへの費用助成について提案をし、それを受けて、都は令和五年度から、実施する区市町村への補助を開始したことを高く評価したいと思います。
 そこで、令和五年度から開始している帯状疱疹ワクチン任意接種補助事業について、初年度の利用自治体数と補助対象となっている生ワクチンと不活化ワクチンの二種類の接種割合について伺いたいと思います。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 都は令和五年度、帯状疱疹ワクチンが定期接種化されるまでの措置として、接種費用の助成を行う区市町村に対し、区市町村の経費の二分の一を支援する事業を開始いたしました。令和五年度は六十自治体に対し補助を実施したところです。
 ワクチンの接種割合ですが、一回接種で効果が五年程度持続する生ワクチンが約四万六千人で二割程度、二回接種で効果が九年以上持続する不活化ワクチンが約二十三万人で八割程度でございます。

○伊藤委員 答弁にあったように、生ワクチンと不活化ワクチンの両者を比較すると、費用が高くても持続効果が高い不活化ワクチンをより多くの都民が選択しているということが分かりました。
 また、国は来年度から定期接種化を検討しているとも聞いております。現在導入している自治体では、対象年齢が一律ではなく、定期接種化によって、対象年齢がどうなるのかが大変に気になるところではあります。
 必要とされる方が接種を受けられるよう、都としても引き続き注視をして、対策を行っていただきたいと要望し、質問を終わりたいと思います。

○福島委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時四十四分休憩

   午後三時開議

○福島委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○原委員 日本共産党の原のり子です。二つのテーマで質問します。
 まず、コロナ対策についてです。
 今年三月に、東京iCDCリスクコミュニケーションチームによる都民一万人アンケート調査結果が発表されました。この調査の目的を改めて伺います。

○松谷感染症対策調整担当部長 都民一万人アンケートは、都民の新型コロナウイルス感染症等に対する意識や行動、取組状況を把握するため、インターネットを通じて実施したもので、今年三月に四回目となる調査結果を公表いたしました。

○原委員 取組状況を把握するため実施をされたということですけれども、把握したことは、東京都の対策にきちんと生かしていくことが重要だと思います。調査結果では、コロナは収束していないと答えた人が四三・五%、収束したと答えた人は一〇・四%でした。収束していないと考えている理由は、まだ通常の薬で治せないから、自分の周りで感染している人がいるからという回答が多かったという結果です。
 五類に移行してもこうした声が多かったことについて、どのように受け止め、その後の施策に生かしたのか伺います。

○内藤感染症対策部長 都は、より多くの医療機関が新型コロナに対応できる体制を構築するため、新型コロナの五類移行後も、医療機関向けの研修や設備整備支援等を行ってまいりました。本年四月に通常の医療提供体制に完全移行した後も、新たな変異株の発生を監視するためのゲノム解析や、施設等への感染対策支援チームの派遣など、必要な取組を継続しております。

○原委員 しかし、コロナ対策のほとんどは、三月末までで終了してしまいました。調査結果がきちんと生かされたとはいえないのではないかと思います。重症化率が以前より低くなった下でも、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同様の感染症だとはいえない理由の一つが、後遺症の問題です。コロナ後遺症についても、八五%の人が、日常生活への支障が非常にあった、ややあったと回答しています。これを受け、どのように施策の充実につなげたのでしょうか。

○松谷感染症対策調整担当部長 令和五年度は、医療従事者等を対象にしたオンライン研修会を計四回開催し、後遺症研究の最新情報や、診療に関する留意点等の情報提供を行いました。
 また、後遺症に悩む方が身近な地域で受診できるよう、ホームページにおいて、後遺症に対応する医療機関の公表を引き続き実施いたしました。

○原委員 このアンケートでは、さらにその困り事や影響の内容について問うと、そのトップが、どこに相談すればよいか分からなかったということでした。それなのに、なぜ都立病院で実施をしていた後遺症相談窓口をやめてしまったのでしょうか。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院のコロナ後遺症相談窓口は、新型コロナに係る医療提供体制につきまして、本年四月以降、通常の医療提供体制とするという国の方針を踏まえまして、三月末で終了いたしましたが、後遺症診療につきましては、地域医療機関との役割分担に基づきながら、全ての都立病院が通常の医療提供体制の中で適切に対応しております。
 なお、都では、今年度新たに新型コロナ後遺症ポータルを開設し、後遺症に対応する医療機関につきまして、所在地や症状などで検索できる機能を追加したほか、都民向け、医療機関向け別に、これまで蓄積してきた情報を体系的に提供しております。

○原委員 都立病院が受診をされた方に対応する、もちろん大事なことだと思います。ただ、それは相談窓口の役割とは違うものです。
 後遺症に関してのホームページは、充実の努力が重ねられてきていること、これもとても大事だと思っています。以前も質問しましたけれども、紹介されている医療機関に当たったけれども、見てくれる医療機関がなかなか見つからずつらい思いをした、こういう声も寄せられていましたので、今お話にあったように、症状などで検索できるようにしたことなどは大事な改善だと思います。
 しかし、だからといって、相談窓口はなくてよいのか疑問です。都立病院での後遺症相談窓口の役割については、どういうことだったのか、まず伺いたいと思います。

○鈴木都立病院支援部長 旧都立、旧公社病院では、令和三年三月から順次コロナ後遺症相談窓口を設置し、令和六年三月末に終了するまでの間、後遺症に悩む方の相談に応じるとともに、相談者の症状に応じて受診する診療科の助言のほか、症状が重い場合には、院内の適切な診療科の外来受診につなげるなどの支援を行いました。
 また、相談窓口における相談実績をまとめた資料を都立病院機構のホームページ上で公表し、後遺症の存在を都民に周知したところでございます。

○原委員 非常に大切な役割を果たしていたわけです。ですから、資料も出していただきましたけれども、相談件数も、この窓口を閉めるというその今年三月も百件あったわけですよね。
 先ほど質問しましたけれども、一万人アンケートでも、日常生活においてどのような困り事や影響があったかという質問では、どこに相談すればよいか分からなかったというのがトップです。今年度、ホームページの充実も図られていますけれども、それらの効果がどのぐらいあるかの評価もできないうちに、相談窓口はなくなってしまったわけです。さらに、経済的な問題、就労、教育についての問題など、困り事は多岐にわたっていて、相談窓口は充実することこそ求められていたと思います。
 やはり、相談窓口は、今からでも必要ではないでしょうか。後遺症について、ようやく社会的に認知されるようにはなってきましたけれども、職場や学校での理解という点では、まだまだ課題もあります。そして、後遺症かどうかという判断は非常に難しいですから、ちょっと相談してみようというときに、窓口があれば本当に助かります。今後、設置していくべきと思います。
 この都立病院でやっていた窓口ですけれども、この窓口を実施するために、都はどのような支援を行ってきたのでしょうか。

○松谷感染症対策調整担当部長 後遺症相談窓口を設置する都立病院を含め、後遺症に対応する医療機関の医療従事者等を対象に、後遺症研究の最新情報や、診療に関する留意点等を提供するオンライン研修会を計四回開催いたしました。

○原委員 研修会もとても重要だと思います。ですが、要するに財政的な支援などはないわけですね。窓口を設けるということは、業務が増えるわけですから、現場にとっては大変なことです。本来であれば、財政支援も行って実施をしてもらうことが必要だと思いますけれども、そういうことは特にない中でも、都立病院では、今年の三月まで継続されてきたわけです。
 私は、東京都として、改めて何らかの形で、相談窓口を復活することを再検討することを求めたいと思います。コロナは終わっていません。後遺症の問題は、これからも続いていく問題です。しかも、資料にもあるとおり、後遺症相談窓口に相談している方々の圧倒的多くが、コロナ自体は軽症以下だったという結果になっています。コロナは、重症化リスクの高い方たちにとって命に関わる問題ですが、それだけではなくて、特に持病もなく軽症だった、あるいは無症状だった方たちにとっても、後遺症という形で大変な思いをされている、そういう方々がたくさんいらっしゃるわけですね。そういう意味では、本当に厄介な感染症だと思います。軽く見ることは、今もできないと思います。誰もがいつでも気兼ねなく相談できるように、都として、相談窓口を改めて設置すべきと強く求めておきます。
 それで、コロナは終わっていないという点においては、基本的な感染対策を今後も適切に発信して、感染拡大を防止することが大切だと思っています。五類になって以降の基本的な感染対策については、どのように発信してきましたか。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 感染状況や医療提供体制の負荷を踏まえ、専門家のご意見をいただきながら、場面に応じたマスク着用、手洗い、換気等の基本的な感染防止対策について、適時適切に注意喚起を行ってまいりました。

○原委員 一点だけ確認させていただきたいのですが、マスク着用の考え方などについては、三月十三日以降の考え方が発信されて、それ以降は、ホームページで更新は特にないんですけれども、そのときに示された内容が、現在も基本的な感染対策ということでよろしいんでしょうか。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 基本的な感染防止対策については、感染状況や医療提供体制の負荷なども踏まえまして、適時適切に、マスク着用も含めて注意喚起を行っております。

○原委員 ごめんなさい。そうだと思うんですけれども、ホームページで、三月十三日以降はこうしますよというのが出されているんですね。それが、その後は更新されていないんです、特に。そのままになっているんですけれども、ですので、それが今の方針だということで間違いないですよねということを確認したいのですが、いかがですか。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 三月十三日以降は、マスク着用について、個人の判断に委ねられるところとなっているところでございますが、基本的な感染防止対策について、都では、感染状況、医療提供体制の負荷などを踏まえて、適時適切に注意喚起を行っております。

○原委員 ちょっと私も時間があるので、もう聞きませんけれども、三月十三日以降の考え方というのがホームページに示されていて、それ以降は更新がないということは、その考え方が今も生きているということでよろしいわけですよね。
 そうすると、これを改めて見ますと、マスク着用は、今おっしゃられたとおり、個人の判断ということになっています。その上で、外出時にはマスクを携帯し、以下の場面では着用しましょうということで、重症化リスクの高い方がいる場面での配慮として、高齢者施設等の訪問時、医療機関の受診時、通勤ラッシュのときや、混雑した電車やバスに乗車するときなどが挙げられています。重症化リスクの高い方々は、今も常に緊張しながら過ごされています。その方たちだけが気をつければいいというのではなくて、お互いに気をつけていくということが、このホームページ上でも紹介をされているというふうに受け止めています。
 ある高齢者施設では、この間、クラスターがあって、持病を持っている方たちが入院になっているんですね。また、重症心身障害児の保護者の皆さんからは、重度の障害児者を受け入れてくれる病院を確保しておいてほしい、これからもそのことをお願いしたいという要望も出ています。命に関わることだからです。
 先週の東京都の感染情報を見ますと、新規の感染者数はようやく下がってきているという状況ではありますが、入院は、前の週よりも少し増えているという状況でもありました。また、これはあくまで定点医療機関等の情報ですから、それ以外に相当数の感染者がいると思われます。これまでの経験から、この後、冬にまた感染が増える可能性は十分あると分かっているわけですから、改めて基本的な感染対策を発信していくことを求めたいと思います。
 また、今日は質問しませんけれども、福祉施設での定期的検査が実施できるようにすることや、換気対策への支援なども必要だと思います。次の感染の波を新たに何の対策も取らずに迎えることのないように、強く求めておきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 都立病院機構について質問します。
 先日、共産党都議団では、都立松沢病院を視察させていただきました。いうまでもなく、東京都の精神科医療の拠点として、重要な役割を果たしている病院です。今年度から、摂食障害治療の拠点病院ともなって、相談窓口も設置をされているということです。
 まず聞きたいんですけれども、都立松沢病院で行われている外来看護相談ふらっとは、予約も要らず、気軽に立ち寄ることができ、大切な役割を担っています。昨年度の件数や相談の特徴はどういうものでしょうか。また、相談件数の年ごとの推移はどのようになっているか伺います。

○鈴木都立病院支援部長 松沢病院では、外来看護相談といたしまして、事前の予約を必要とせずに、専門看護師や認定看護師が心と体の健康や病気と向き合い方、自宅での療養等に関する相談に対応しております。
 相談件数は、令和三年度が七百九十二件、令和四年度、九百十件、令和五年度、八百七十五件でございました。

○原委員 毎年、かなりの相談があるということが分かりました。昨年度、この相談から受診につなげているケースはどのぐらいありますか。

○鈴木都立病院支援部長 外来看護相談の相談者の大半が、相談の前後で松沢病院に受診しております。

○原委員 大半が受診につながっているということは、大切だと思います。松沢病院は、薬物、アルコール依存症の専門医療も行っていますけれども、松沢病院で受けている依存症患者入院人数と、その依存症の種類別、また特徴を、昨年度の状況で伺います。

○鈴木都立病院支援部長 松沢病院における令和五年度の依存症の入院患者数は二百七十名でありまして、うち、アルコール依存症が百九十六名、薬物依存症が七十三名で、そのほとんどを占めております。令和四年度と比較いたしますと、アルコール依存症が二十五名の減少、薬物依存症は三十一名の増加でございました。

○原委員 依存症で入院している方の大半は、アルコールと薬物ということです。松沢病院のデイケアでは、思春期の子供、若者を受け入れていますけれども、昨年度の人数と特徴はどういうものでしょうか。その中で、依存症、アディクションを抱えているケースはどのぐらいあるか伺います。

○鈴木都立病院支援部長 主に十三歳から三十歳未満の患者を対象としたプログラムを提供しているデイケアには、様々な疾患を抱える患者が参加しており、令和五年度の延べ参加者数は三千百九十六名でございましたが、この中には、依存症の患者はおりませんでした。
 また、アルコールやゲームへの衝動からの回復を目指す患者を対象としたデイケアでは、三十歳未満の延べ参加者数は三名でございました。

○原委員 子供や若者の依存症の方々は、ほぼいないということでしたけれども、それでは、都立大塚病院での児童・思春期精神科外来も、昨年度、非常に増えていますけれども、都立病院全体で何人受け入れ、その特徴はどういうものでしょうか。

○鈴木都立病院支援部長 児童・思春期精神科外来の令和五年度の延べ患者数は、大塚病院が五千三百八十八名、小児総合医療センターが二万五千七百九名であり、いずれも自閉症スペクトラム障害や、注意欠如、多動症などの発達障害が多い傾向にございます。
 また、松沢病院の思春期・青年期外来の延べ患者数は二千五十六名で、こちらも発達障害が多い傾向にございます。

○原委員 発達障害の子供さんが多いということです。
 では、都立病院では、子供、若者の依存症、アディクションの対応はどうなのか。ギャンブル依存、とりわけオンラインカジノに依存する子供、若者が増えていることが大きな社会問題になっていますけれども、都立病院では、どのような対応を取っていますか。

○鈴木都立病院支援部長 松沢病院では、通常の精神科外来で対応しており、患者がより専門的な治療を希望する場合には、ギャンブル等依存症の専門医療機関を紹介しております。

○原委員 現在の対応については分かりました。ギャンブル依存症問題を考える会の調査でも、昨年度の相談件数四百七十九件、そのうち当事者の年齢が二十代、三十代が七八%で、若い人が特に増えていて、賭博の種別では、オンラインカジノが二〇・三%にもなっているという報告を出されています。
 都立病院の役割として、行政的医療の提供として、新たな医療課題も挙げられています。そういう点では、他の医療機関との連携、精神保健福祉センターとの連携を強めて、子供、若者の依存症、アディクションについての対応を強化していただけるように要望をしたいと思います。
 あわせて、確認をしておきたいのですけれども、小児総合医療センターの児童・思春期精神科の外来の予約が取りにくいことが大きな問題になっていましたが、その後の対応を伺います。

○鈴木都立病院支援部長 小児総合医療センターの児童・思春期精神科は、原則として、かかりつけ医からの紹介に基づき、地域の医療機関では対応が困難な重症患者を中心に治療を行っておりまして、初診までの待ち日数も、緊急度や重症度により異なります。症状に応じ、地域医療機関との役割分担を図っておりまして、小児総合医療センターのホームページでは、現在、児童・思春期精神科の初診までの待ち時間の目安としまして、依頼を受けてから一か月程度とご案内しております。
 なお、緊急度の高いケースは、おおむね一週間以内に診察しているほか、急性精神病や拒食、希死念慮などの症状や状態にあるとかかりつけ医が判断した場合は、即日から数日以内に入院受入れを行っております。

○原委員 昨年は、早期に入院を要するような緊急度、重症度の高い方で一か月程度、中程度の方で二か月程度、他の方と比べて相対的に緊急度の低い方では三か月程度という案内でしたので、ある程度改善がされたということになると思います。
 ただ、子供の成長は早いですから、子供にとって必要なときに受診できているのかどうかということは、別途考えていく必要があると思います。また、重い患者、入院を必要とする患者に重点的に対応していますけれども、より幅広い患者を診てほしいという意見も、地域の医療関係者から出されています。職員体制を強化して、小児総合医療センターの精神科医療の充実強化を進めることを改めて求めておきたいと思います。
 子供、若者の精神疾患や、依存症対策の必要性がますます高まっている中、都立病院の果たすべき役割はさらに大きくなっていることが、昨年度の実績からも分かります。他の課題も含め、コロナ対応をはじめ、不採算な行政的医療に取り組んできているにもかかわらず、知事は、昨年度の業務実績評価の中で、財政面での業務実績評価をC評価にして、先日の厚生委員会質疑では、部長からは、病院のせいだけではないという発言がありました。
 行政的医療を展開し、特にコロナ対応に力を入れていたことの影響が大きく、さらに、物価高騰や診療報酬の問題が重なっていることを考えれば、基本的に病院の責任ではないと考えますが、見解を伺います。

○鈴木都立病院支援部長 業務実績評価は、項目別評価と全体評価で実施しております。このうち、項目別評価は、行政的医療等の安定的かつ継続的な提供などの分野における二十一項目につきまして、事業の進捗状況、成果を五段階で評価いたしました。
 財務内容の改善に関する目標を達成するため、取るべき措置に関する評価項目は、都立病院がその役割を将来にわたって果たすため、財務内容の改善に着実に取り組んでいるかを評価するものでございます。
 令和五年度は、主に、新型コロナ後の患者数が戻らず医業収益が伸びていないこと、コロナ関係補助金の大幅な減少、物価高騰の影響による材料費等の増加等により、結果として、経常収支比率等の各経営指標が目標値を下回り、年度計画を大きく上回る純損失を計上したことから、引き続き改善に向けた取組が必要な状況であり、C評価といたしました。
 なお、災害医療等、行政的医療の評価項目では、おおむね年度計画を上回って実施しており、大半がA評価となってございます。全体評価としては、着実な業務の進捗状況にあると評価しております。

○原委員 そもそも、行政的医療は不採算分野です。そこを担うことを都立病院の使命として位置づけているのに、独立行政法人にして経営が安定するということ自体に、無理があったということが分かると思います。災害医療等の行政的医療は、大きな役割を果たしていると、都は認めているわけです。
 私たちとしても、不採算な行政的医療で後退している面もありますけれども、今も大きな部分を担っていると思います。そのことが、経営が困難なことの土台にあって、その上、コロナ医療に力を入れていたことの影響が大きいわけです。さらに物価高騰など、外的な影響も受けています。
 それなのに、C評価というふうにするべきではありません。ましてや、経営努力を強めなければならないといって、行政的医療の後退や、職員の労働条件の引下げ、患者の負担増などにつなげることは、あってはなりません。評価を下げるのではなく、そこをカバーするだけの東京都の支援こそ必要であるということを指摘して、質問を終わります。

○中村委員 それでは、令和五年度の保健医療局の決算について質問します。
 初めに、新型コロナ対策と保健所について伺います。
 新型コロナを振り返ってみれば、まさか医療が発達したこの時代に、世界中で猛威を振るい、命への危機が高まり、社会経済が大きく停滞することになるとは予想すらしていませんでした。当初、オリンピックを開くはずだった二〇二〇年に感染が拡大し、三年もの長い年月を経て、決算年度の二〇二三年五月にようやく二類から五類になり、まだ感染はあるものの、一定の区切りを迎えました。
 昨年五月にコロナが五類になりましたが、決算年度では、コロナ対策に相当の予算が計上されましたが、執行率が低い事業も多く見られます。例えば、医療提供体制の確保は執行率が六二・五%と低く、不用額は二百二十億円と巨額です。主な原因は何でしょうか、伺います。

○小原感染症対策調整担当部長 都は、新型コロナの五類移行後、感染拡大時に、入院患者の受入れ定員の促進などが必要となった場合への備えとして、医療機関等に対する支援を機動的に行うための体制を確保してまいりました。こうした支援につきましては、専門家によるモニタリング項目の分析結果のほか、数値の増加スピードや医療現場の実態などを踏まえ、医療提供体制への負荷の状況を総合的に勘案し、必要性を判断することといたしておりました。
 昨年度は、夏と冬に一定の感染拡大が見られましたが、幅広い医療機関での患者の受入れが進みましたことや、専門家との意見交換におきましても、医療現場が逼迫しているという意見は示されませんでしたことから、都による機動的な支援策は実施いたしませんでした。

○中村委員 年度で見ると、この決算年度は、およそ四月の一か月のみがコロナ期間で、五月からの十一か月はいわゆるコロナ後になります。予算を組んでいた段階はまだコロナ期間でしたから、予算を組んでも病院が対応しなかったことが背景にあったようです。
 ただ、コロナ期間の三年間を見通せば、さらに膨大な予算が計上されました。私は、決算の視点からも検証する必要があると思います。振り返ってみると、知事のロックダウン発言や、パチンコなど特定の産業に批判を集中させたことなど、混乱したこともありました。ただ、未知の感染症で分からなかったものも多かったので、仕方がない面もあったとは思います。だからこそ、決算だけでなく、施策全般をしっかりと検証する必要があります。
 都として、様々な取組をしたことを記載するだけではなく、なぜそうした判断に至り、結果はどうだったのかを含めて、後世の人たちの命を守るため、今の世代の責任として、ぜひとも検証し、記録を残すことが重要です。既に時間が経過し始めていますが、何度も知事には繰り返し述べても、コロナ対策について決して検証するという言葉を使いませんが、改めてこの決算の場でも、コロナ対策を検証するよう強く求めます。
 さて、コロナ対策の課題の一つに、多摩地域の保健所の統廃合の影響があります。これは様々ある三多摩格差の一つであり、かねてから問題視していただけに、コロナで影響が出てしまったのが悔やまれます。
 二十三区では、保健所が区に一つずつあり、多摩地域では、人口規模の大きい八王子市、町田市を除き、東京都の保健所が管轄をしています。過去、構造改革として大幅に統廃合され、その規模の大きさ、裏を返せば地域との距離が懸念される中で、コロナが直撃をしました。二十三区では最前線でコロナの対応をしたのは区長の下にある保健所であり、都が実際に担当したのは多摩・島しょの地域でした。
 私の地元の三鷹市を管轄する多摩府中保健所は、六市、百万人を超える人口を管轄し、区で最大の世田谷区の人口を超え、都内最大の人口を担当する保健所です。保健所の方々も一生懸命コロナ対策に取り組んでいただきましたが、六市とやり取りするため、必ずしも十分に連携できなかった部分がありました。多摩地域では、都の保健所が統廃合されましたが、コロナ対応が十分できていたのか伺います。

○井上地域保健担当部長 住民に身近な保健サービスは、市町村の保健センター等が行い、都道府県の保健所は、より専門的なサービスを実施するという地域保健法の考え方に基づき、多摩地域の都保健所につきましては、二次保健医療圏に一か所設置しており、広域的、専門的、技術的拠点として、地域の感染症対策の重要な役割を担っております。
 都は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、保健師の増員、応援職員の配置、会計年度任用職員の活用、業務の委託化など、都保健所の体制強化や負担軽減に取り組み、感染状況に応じた体制を確保してまいりました。

○中村委員 二十三区では、コロナの対応を、区長の下に保健所があって、区として総力を挙げて取り組みました。多摩・島しょの大部分では、都の保健所が担当するため、縦割りになってしまい、市町村との連携が必ずしもうまくいっていたとはいえませんでした。
 当初から組織の壁を越えて連携して取り組めばよかったのですが、市町村には自らの住民のコロナの感染状況について都から情報が来ず、医療が逼迫し在宅療養にならざるを得なくなった際に、ようやく市町村から食料を届けるとの申出があり、ようやく情報も市町村に出されました。これは、都と市町村との連携の一つですが、こうしたことも一つの保健所が管轄する自治体の数や人口規模が小さければ、もっとスムーズに連携できたと考えられます。
 都は、保健所を統廃合した際に、規模を大きくすることで専門性を持てるとの説明でしたが、二十三区で最も人口が少ない千代田区は人口が六万七千人ですが、一つの保健所があります。また、二次医療圏には一か所との原則を述べますが、二十三区では一つの二次医療圏内に複数の区があるため、複数の保健所が存在していることになります。二十三区は一か所ずつ保健所がありますが、都は、規模による専門性を高めることと、二次医療圏に一か所あればいいという説明をしますが、二十三区ではどちらも違っています。
 多摩地域での保健所を再配置すべきですが、見解を伺います。

○井上地域保健担当部長 地域保健法において保健所は、都道府県、政令指定都市、中核市、保健所政令市または特別区が設置することとされております。また、住民に身近な保健サービスは市町村の保健センター等が行い、都道府県の保健所は、より専門的なサービスを実施するという地域保健法の考え方に基づき、多摩地域の都保健所については、二次保健医療圏に一か所設置しております。
 都は、新型コロナ対応で得られた知見や、都保健所のあり方検討会における市町村等との連携強化などが重要との意見などを加えまして、本年四月、多摩地域の都保健所に市町村連携課を新設するなど、体制、機能の強化を図っているところでございます。

○中村委員 体制や機能を強化することはしていただきたいと思いますが、抜本的に改善するには、再配置が必要と考えます。今後も、コロナだけではなく、未知なる感染症が現れる可能性もあります。また、精神保健医療など感染症以外の分野でも、地域が広く、都の対応が薄くなったとの声も聞かれます。先ほど検証といいましたが、保健所についても、しっかりと検証すべきということを改めて要望します。
 次に、看護職員の確保について伺います。
 少子高齢化が進展する中、多くの分野での人材不足がいわれますが、看護師についても不足がいわれます。コロナ禍での激務の中で、深刻さが増しています。都としても、看護人材不足に対応していただいていますが、決算上の数値を見ると、十分取り組まれたのか疑問になる事業もあります。
 施策の中で、看護職員再就業支援事業が三八・五%と、執行率が大変低くなっています。看護職員再就職支援事業について、昨年度の就業定着奨励金の支給実績を伺います。

○新倉医療政策部長 都は令和四年一月から、東京都ナースプラザの情報発信等強化と、就業定着奨励金の支給を内容といたします看護職員再就業支援事業を実施しております。このうち就業定着奨励金は、再就業支援研修などの対象研修受講後に、就業して六か月経過した方に五万円、二年間経過した方に十五万円、合計で最大二十万円を支給するものでございます。令和五年度の支給実績は、就業後六か月経過した方が百九十四人、二年間経過した方が五人でございます。

○中村委員 看護師の資格を持った方に再び働いていただくために、再就業支援は重要です。より制度が活用される最就業が促進されることを求めます。
 様々な事業がある中で、執行率の低かった事業について質問していますが、看護師不足への対応は今後も重要です。資格を持った方の再就業だけではなく、そもそも新規に看護師になる方を養成することが重要です。また、人の命に向き合う大変なお仕事でもあり、激務でもありますから、定着していただくためにも、それに見合った待遇を改善しなければなりません。
 看護師不足を指摘する声は多くあります。都として、看護職員の確保対策にどのように取り組むのか伺います。

○新倉医療政策部長 都は現在、養成、定着、再就業、この三つを柱に総合的な看護職員確保対策を実施しております。
 まず、養成対策といたしましては、都立看護専門学校を七校設置し、七校全体で一学年六百名を養成するほか、看護職員の確保と質の向上のため、都内で看護業務に従事しようとする学生に対する修学資金の貸与などを行っております。
 また、定着対策としては、現に就業している看護職員の勤務環境の改善や、新人職員研修への支援などを行っております。
 さらに、再就業対策としては、東京都ナースプラザにおける無料職業紹介や、定年退職前後のキャリア継続等の支援などに取り組んでいるところでございます。

○中村委員 様々取り組まれていることは分かりましたが、今後、ますます少子高齢化の進展により、生産年齢人口の減少により人材確保が困難になります。都民の命と健康を守るためにも、看護職員の確保は大変重要な施策です。とりわけ大変なお仕事ですから、それに見合うだけの待遇改善が重要です。今後も、より一層の取組をされることを求めます。
 次に、がん対策について伺います。
 五大疾病であり、死亡原因のトップであるがんへの対策は重要です。早期に発見されれば治る病気ともいわれていますが、多くの方ががんで亡くなっているため、より一層の対応が必要です。
 患者さんにとっても治療に際しては、生活のためにも仕事を続けながら行う場合もあります。治療のため仕事を失ってしまうと、その後の生活に不安が残ります。がんに対する施策は様々ありますが、治療と仕事の両立について取り組んでいることは重要です。
 しかし、がん患者の治療と仕事の両立支援事業について、執行率が二九・二%と低くなっています。その主な原因を伺います。併せて、今年度の取組内容も伺います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 がん患者の治療と仕事の両立支援事業では、事業者向けの両立支援サポートブックや、研修用教材の作成など、毎年度、様々な取組を実施しております。
 令和五年度は、企業向けセミナーを開催し、専門家による講演や、中小企業等の取組事例、がん経験者の経験談の紹介に加え、これらの登壇者によるパネルディスカッションを行いました。
 本事業は、民間事業者に委託して実施しており、当初の見込額より契約額が下回りました。今年度は、企業向けセミナー開催時に、社会保険労務士による相談会を実施することに加え、がん診断直後等の離職防止のための動画を作成いたします。

○中村委員 執行率の低かった原因を答弁いただきましたが、両立支援は重要であり、今後、より一層の取組を求めます。
 さて、幾つか事業がある中、もう一つ執行率が低かったのは、緩和ケア推進事業です。がんに対する支援は様々な場面がありますが、緩和ケアも重要です。終末期を迎えるときだけではなく、治療に際しても痛みを和らげ、精神的な安寧をもたらすことは重要です。
 しかし、緩和ケア推進事業についても、執行率が二七・八%と低くなっていますが、その主な要因を伺います。併せて、今年度の取組状況を伺います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 緩和ケア推進事業では、薬剤師や相談職などの多職種向け緩和ケア研修会や、地域の中小病院を対象に、緩和ケアに関する専門看護師等の資格取得を支援する取組等を実施しております。
 令和五年度は、専門看護師等資格取得支援の補助につきまして、看護師の不足等を理由に申請する病院がございませんでした。今年度は、専門看護師等資格取得支援の補助について、対象病院に対して、複数回の事業案内や電話による説明など、さらなる働きかけを行っております。
 また、新たに各病院が実施する医師、歯科医師向け緩和ケア研修会の開催経費に対し、補助を行うこととしております。

○中村委員 中小病院に緩和ケアに取り組んでいただくことは重要ですが、そもそもの看護師不足もあり、取組が十分ではなかったようです。既に今年度で改善を行っているようですが、ますますの注力をお願いします。
 今回、がん対策について決算ということで、執行率の低かった事業について質問しましたが、がん対策は重要であり、今後さらなる施策の拡充を求めます。そのためにも、東京都でがん対策条例をつくることで施策の強化を図ることができると考えます。以前、私たちの会派から、都議会で議員立法として提案したことがあるんですが、そのときは残念ながら賛成少数で、可決には至りませんでした。都のがん対策をさらに拡充するため、都として、がん対策条例を制定することを求めます。
 次に、帯状疱疹ワクチンについて伺います。
 昨今、帯状疱疹について広報もされ、大変な痛みを伴うこともあり、都民の認識も高まっています。多くの方にとって罹患する可能性があります。しかし、高齢者の病気という印象もあり、若い方の関心は低いともいえます。ストレスなどの原因により、若い方も罹患する可能性はありますが、知識がないと、放置しておいてかなり痛みが広がってから気づく場合もあります。
 帯状疱疹は若い人でも発病するため、早期の診断を広報すべきですが、都の対応を伺います。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 帯状疱疹は、子供の頃にかかった水痘帯状疱疹ウイルスが原因で発症するもので、成人のほとんどがウイルスを保有しており、誰もが帯状疱疹を発症するリスクがあります。
 発症した場合の治療には、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の早期投与が効果的です。
 都は、ホームページ等で帯状疱疹と帯状疱疹ワクチンについて周知を行っております。

○中村委員 早く分かればそれほど痛みもなく、薬を飲めばそれほど重症化することなく治る病気です。しかし、そういう病気があることを知らないと、放置をして重症化してしまいます。知ってさえすればよいので、ぜひとも広報をお願いします。
 さて、高齢者については、若い方より発症率が高いので、ワクチンで予防することが重要です。昨年度から、接種促進に向けて新規事業を始めたとのことです。
 この帯状疱疹ワクチンの任意接種補助事業について、令和五年度から実施をしていますが、接種状況について伺います。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 都は令和五年度、帯状疱疹ワクチンが定期接種化されるまでの措置として、接種費用の助成を行う区市町村に対し、区市町村の経費の二分の一を支援する事業を開始しております。令和五年度は、六十自治体に対し補助を実施いたしております。
 ワクチンの接種実績は、一回接種で効果が五年程度持続する生ワクチンが約四万六千人、二回接種で効果が九年以上持続する不活化ワクチンが約二十三万人となっております。

○中村委員 かなり多くの方が接種をされたとのことです。これ、年度当初の予算は七億円で決算は三十二億円と、執行率一〇〇%ということです。予算を上回っての状況で、高齢者の関心は高いといえます。
 毎年接種が必要ではないようなので、今年度の接種状況がどうなるかは見通せないようですが、今年度の状況をよく分析し、接種を希望する方が接種できるだけの予算を確保する必要があれば対応していただきまして、今後予算の拡充をしていただきたいと思います。
 次に、都立病院の経営について伺います。
 都立病院は二〇二二年七月に独立行政法人化しました。そのため、決算年度の二〇二三年度が年間を通じての決算という点では初めてになります。都の直営ではなくなったので、機構として決算の公表を行うことになりました。
 独立行政法人化するに際して懸念としていわれたのが、独立採算になると採算重視になり、民間ではできない困難事例、いわゆる行政的医療が従来どおり行われるかとの課題がありました。また、職員の待遇面で、医師については改善が図られる反面、それ以外の看護師や職員については待遇が悪化しないのかの懸念もありました。導入する際に議論されたメリット、デメリットを、実際に実行されたので改めて検証する必要があります。
 都立病院が独立行政法人化しましたが、その成果と課題について伺います。

○鈴木都立病院支援部長 都立病院では、独法化のメリットである安定的かつ柔軟な医療人材の確保や機動的な運営によって医療提供体制を整備しておりまして、新型コロナ対応をはじめとした感染症医療や周産期医療、災害医療など行政的医療を着実に提供しているところでございます。
 なお、都立病院では、一般診療を制限してコロナ患者対応に注力した結果、コロナ以外の疾患の救急受入れや地域医療機関からの紹介が減少したことから、新規入院患者の受入れ強化に努めております。
 令和五年度の救急搬送による入院患者数は前年度比一二一・八%で、コロナ前の実績を超えたほか、患者の多くを占める紹介患者数は前年度比一〇一・八%と増加しております。

○中村委員 コロナ禍という状況もあったので、コロナ患者に注力した結果、少し通常とは違ったという状況だったようです。だからこそ、通常の状況ではないということだったので、これがよかったかどうかということを含めて、少し、コロナ禍という異常な時期に予定どおり独法化すべきだったかどうかは慎重に判断すべきであったかと思います。
 都立病院は百八十三億円の赤字となりましたが、原因は何だったのでしょうか。赤字はどのように埋めるのでしょうか。改善策はどうなっているか伺います。

○鈴木都立病院支援部長 百八十三億円の純損失につきましては、新型コロナの影響で患者数が減少した後、患者数が戻らず医業収益が伸びていないこと、コロナ五類移行に伴いコロナ関係補助金が大幅に減少したこと、物価高騰の影響により材料費が増加したことなどが主な要因となってございます。
 行政的医療の提供など、法人の役割を将来にわたり果たすためには、安定的な経営基盤の構築が重要でありまして、都立病院では、初診患者の受入れ体制強化等による収入確保や、独法化のメリットを生かした多様な契約手法による費用削減に取り組んでいるところでございます。

○中村委員 コロナ禍の影響により、都立病院だけではなく民間病院も赤字の病院が多くあるとは報じられています。そのことは、必要な医療が受けられず医療控えになっていないのか、状況を見極める必要があります。独法化したとはいえ、都政の重要な医療を担っていますので、簡単に採算重視というわけにはいきません。もちろんいきません。都として民間が行わない行政的医療については引き続き財政的な支援を行うことが必要です。
 独法化については今後もしっかり検証し、必要であれば改善し、何より都民にとって必要な医療を提供することを求めて、質問を終わります。

○加藤委員 初めに、都立病院機構に関して質問をいたします。
 都立病院は、令和四年七月に、地方独立行政法人東京都立病院機構に移行しました。行政的医療の安定的な提供や地域医療充実の貢献等を将来にわたって果たし続けるとともに、民間の経営手法も生かしながら、都民に必要で良質な医療を提供していることと思います。
 しかし、建物が年数とともに経過していくと建て替えが必要となり、莫大な費用が発生することは避けられず、都としての支援が今までどおり必要となります。地域によっては、都立病院機構の病院がなくてはならない基幹的な貴重な医療資源となっております。したがって、将来の建て替えを見据えて目標や計画を立てていくに当たっては、地域の実情をしっかりと踏まえた将来構想を考えていく必要があります。
 そこで、都立病院機構では、中期目標、中期計画に基づき、広尾病院などで施設整備を進めているものと認識していますが、他の病院も含め、それぞれの整備事業について、進捗について伺います。

○鈴木都立病院支援部長 広尾病院の整備につきましては、都立病院機構におきまして、PFI法に基づき入札事務を進めてまいりましたが、建築資材や労務費の高騰等の影響を受け、令和四年度に実施した入札が不調となりました。
 そのため、事業者が一層の経費削減や工期短縮に向け、創意工夫をした提案を行えるよう、令和五年度に整備基本計画を修正するとともに、実施方針を改定の上、入札公告を行い、落札者を決定いたしました。
 また、多摩メディカルキャンパスの整備につきましては、平成三十一年三月に策定した整備基本計画に基づきまして、がん検診センターの精密検査部門を統合し、令和七年四月に多摩総合医療センターの別館として新設する工事のほか、神経病院を敷地内で移転、改築し整備する難病医療施設の設計等を進めているところでございます。
 加えて、多摩北部医療センターにつきましては、令和五年三月に策定した整備基本構想に基づき、外来や病棟などの各部門における整備内容など、設計の諸条件等をまとめる基本計画の検討を進めております。
 今後も、各病院における改築、改修等の施設整備につきまして、計画的かつ効率的に進めてまいります。

○加藤委員 基本構想、基本計画の策定に当たっては、議会側としっかりと連携を取りながら進めていくことを求めておきます。
 次に、東京都リハビリテーション病院について伺います。
 昨年十二月の厚生委員会で、公明党の北口議員から東京都リハビリテーション病院の指定管理に関して質問をいたしました。その中で、第三者評価としても、地域に向けて医療に関する教育、啓発活動を行っていることなどについて高い評価を受けているとの答弁がありました。
 そこで、東京都リハビリテーション病院が行っている地域のリハビリテーション人材の育成支援のための取組について、昨年度の実施状況について伺います。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 東京都リハビリテーション病院では、令和五年度、高次脳機能障害者の就労移行支援などをテーマに、墨田区、江東区、江戸川区の医療福祉職等を対象としたセミナーを十四回開催するとともに、機器を使用した実践的な研修会などを実施いたしました。
 また、リハビリテーションが必要な患者に対するADLの回復や自立に向けたサポートなど、専門性の高い看護を行う看護師を育成するための院内研修におきまして、地域の病院からも研修生を受け入れており、十一病院から十一名が参加しました。さらに、若手の理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士の実務研修の受入れを行いました。
 引き続き、こうした取組を進め、地域のリハビリテーション人材の育成に取り組んでまいります。

○加藤委員 昨日、地元墨田で障害者のスポーツレクリエーション大会が開かれ、参加してきました。成清先生も出席されたんですけれども、その中で、東京都リハビリテーション病院もブースを設けまして、障害者の特性に応じた運動、スポーツをどのようにしていけばいいかという相談を行っておりました。これによって少しでも障害者のスポーツ参加人口を増やすとともに、健康で生き生きとした生活を送っていけるようになればすばらしいことだと思います。地域に大きく貢献していると思います。
 また、かねてから公明党が主張してきました東京都リハビリテーション病院の医療救護活動の強化を進めていくことについても、大きくは地域全体への貢献になっていくと思いますので、引き続き都の支援をお願いしたいと要望しておきます。
 次に、コロナ感染症対策について質問をいたします。
 新型コロナウイルス感染症については、令和五年五月八日に感染症法上の位置づけが五類に移行となり、世の中的には猛威を振るったコロナも落ち着いた状態になったと思います。
 資料、18で、都内の死亡者数も減少しており、またコロナの感染症による死亡者数では、五類移行までのデータとなりますが、大幅に減少しています。
 そこでまず、五類移行前と後で、都としてのコロナ対策の取組として、実績ベースで何がどう変化したのか伺います。

○内藤感染症対策部長 昨年五月に新型コロナの感染症法上の位置づけが五類に変更されたことに伴いまして、宿泊療養、自宅療養体制の確保等に係る事業は終了いたしました。
 都は、五類への移行後も、ハイリスク層を守るため、高齢者等医療支援型施設の運営等を継続しますとともに、多くの医療機関が新型コロナ患者に対応できますよう、病院、診療所等に対して、感染対策の研修や院内感染を防ぐための設備整備への支援等を実施いたしました。
 こうした状況や国の方針を踏まえまして、本年四月から通常の医療提供体制による対応に完全移行いたしました。

○加藤委員 次に、この新型コロナが猛威を振るったときには、都は感染症を防止する納体袋を葬儀事業者等にも支給したと思いますけれども、実績について伺います。

○小原感染症対策調整担当部長 都は、新型インフルエンザ等の発生に備え、医療従事者向けの個人防護具や遺体収納袋等の医療物資を備蓄しているほか、令和二年度に新型コロナ対応のため、新たに遺体収納袋等を購入いたしました。
 遺体収納袋につきましては、令和二年三月から令和六年一月までに個人防護具と併せて、要望に応じ、医療機関や葬儀関係団体等に対して約二万枚配付いたしました。

○加藤委員 次に、感染者も減ったことから火葬場での受入れも通常に戻ったと考えますが、資料によりますと、令和五年は、五類になるまでの短期間に一千七十名の方がこの新型コロナでお亡くなりになっております。この各火葬場での受入れ数について資料も求めたんですけれども、都にはないということでございました。
 先週の福祉局の質疑でも、葬祭扶助制度があるので、減額で火葬を行った火葬場と件数を把握していないんですかと質問したところ、区市町村はこの葬祭扶助については扶養義務者か葬祭事業者に金銭支給を行うだけで、そこから先は把握していないということでありました。
 しかし、火葬場は当然、受入れをしているわけですから、一般の火葬か、減額の火葬か、また火葬許可証には死因欄に一般か一類感染症等のどちらかに丸をする箇所がありますので、感染症の有無、コロナも含めた一類感染症等の把握はしていると思います。
 資料のとおり、令和四年まではコロナにより多くの方が死亡しています。そして、火葬場におけるコロナ感染のご遺体受入れ問題で困っている、一週間ぐらい火葬待ちが発生しているということを私たちは聞いておりまして、議会で度々取り上げてきたわけでございます。
 今年の第一回定例会厚生委員会では、公明党の斉藤議員が質疑をし、都が把握していないというので、私どもは独自に各区議会議員に依頼をしまして、区内各火葬場の新型コロナに感染したご遺体の受入れを調査いたしました。
 そうしましたら、多くの火葬場を持つ民間火葬場が圧倒的に少ないことが分かりました。四年度までの調査で、公営や他の民間が一炉当たり百件以上受け入れているのに対しまして、約二十一件しか受け入れていないことが分かりました。これは非常に驚きです。火葬場を所管する区市町村であれば、当然聞けば把握できます。そして単純に、区市町村に都が聞けば状況を把握できると思います。
 もし一類感染症なら二十四時間以内の火葬が必要と思われますが、なぜ確認しなかったのでしょうか。質問をいたします。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 区市町村は、新型コロナウイルス感染症等で亡くなられた方、新型コロナ感染症、ウイルス感染症で亡くなられた方について、医療機関に確認の上で、二次感染の防止等のため、二十四時間以内に火葬する必要があると認めるとき等に、火葬許可証の死因欄の一類感染症等に丸を付すこととされております。
 そのため、新型コロナウイルス感染症で亡くなった方全てが必ずしも一類感染症等に分類されているものではないと認識しております。

○加藤委員 非常に大事な答弁だと思うんですけれども、この区市町村がコロナで亡くなった方等で、医療機関に確認の上、二十四時間以内に火葬する必要があれば、火葬許可証の死因欄に一類感染症等に丸をすると。そうすると、多くのコロナ感染症によるご遺体の火葬待ちが発生していたわけですけれども、この一類感染症等に丸がついていなかった可能性があるということになるんでしょうか。

○西塚感染症対策調整担当部長医療改革推進担当部長健康安全研究センター健康情報解析担当部長兼務 国のガイドラインにおいて、新型コロナウイルスで亡くなられた方のご遺体からの感染リスクは低いこと及び二十四時間以内に火葬することは必須ではないことが記載されております。
 そのため、新型コロナウイルスによるご遺体については、火葬許可証の死因欄の区分、一類感染症等に丸が付されないことがあったと聞いております。

○加藤委員 これは大変重要なことで、葬儀業者が火葬許可証を受け取って、火葬場にファクスを送るんですけれども、一般の方に丸がついていないと民間の火葬場は受入れ制限をしたというふうに聞いております。役所と火葬事業所に認識の差があったということではないでしょうか。二十四時間以内に火葬する必要がないということであれば、どこの火葬場でも受入れをすればいいのに、なぜ制限する必要があったのかと、このように思います。
 昨年の決算でも取り上げましたが、都は民間火葬場に対しても受入れ要請をしたのに、応じていない時期があります。これは認識の差の問題なんでしょうか。
 昨年の第三回定例会代表質問で、火葬に関する現状と今後の在り方などについて議論する検討会の設置を求めました。これに対して都は、火葬に関する情報や課題を共有していく必要があると答弁し、区と情報共有や火葬場の実態把握など、関係者間で意見交換等を始めると述べましたが、これまでにどう取り組んできたのか答弁を求めます。

○中川健康安全部長 都は、火葬場への指導権限を有する区と情報共有等を図るため、令和五年度は十月以降三回にわたり、特別区保健所生活衛生課長会の場で、公営火葬場の増炉等の計画など火葬を取り巻く状況について情報共有を行ってまいりました。
 また、個別に区の課長会の幹事等と情報交換を行い、民間火葬場に対する区の立入検査等の状況について把握してまいりました。
 今月十八日にも、課長会において、直近の火葬を取り巻く状況について情報共有を行っており、今後とも状況に応じて適切に対応してまいります。

○加藤委員 関係者間で意見交換していくという中に葬祭事業者の組合が入っているんでしょうか。都の各種施策を進めるのに、都は各事業者団体からもヒアリングを現在行っておりますけれども、ご遺族と直接接触してご遺体を取り扱う事業者団体からも、もっと情報収集、意見交換を行って対策を取っていれば、このコロナでお亡くなりになったご遺族の負担を少しでも和らげられたのではないかと、そのように思います。
 新型インフルエンザ等対策行動計画によれば、各段階の都の取組が書かれています。その中で、都内発生期では、遺体に対する適切な対応を取るため、死亡者に対する備えとして、可能な限り火葬炉を稼働し、火葬する準備を行う、併せて事業者に対しても火葬炉の稼働を要請するとあります。
 先ほど申し上げましたが、残念ながら民間の火葬場では十分な対応が取れなかったことは申し上げました。都は十分でなかったとは考えていないようですけれども、この調査も把握もできていない。なぜ十分といえるのか、私には疑問でございます。
 このコロナが落ち着いているこの時期に各種コロナ対策を振り返り、同じことが繰り返されないようにしなければならないと考えます。
 資料、19で、都内の火葬場は二十六か所、トータルの炉数が百八十六炉になります。多死社会を迎えて死亡者数も増加していますし、瑞江葬儀所、そして臨海斎場も火葬数の増加に対応しようとしています。
 広域行政を担う都として、都内全体の今後の需要予測を立てていかないと、通常の火葬でも火葬待ちが多く発生し、結局、都民が困ることを心配しています。
 さらに、新たな新型インフルエンザが今後発生すれば、より火葬が困難になることは想像に難くありません。担当者の話では、都内の火葬能力は年間二十万件あるので足りないことはないと、このように伺いました。
 この調査も把握もしていないのに、この数字はどこから出てくるんでしょうか。その根拠と、最近の都内の火葬実績について伺います。

○中川健康安全部長 直近で把握しております令和四年度の都内の火葬許可証の発行件数は約十四万件でございます。
 火葬可能数につきましては、大規模災害時等の広域的な火葬に資するよう、国が全国の火葬場のデータベースを平成十九年度に作成し、令和元年度にデータを更新いたしました。
 調査時点から都内の火葬場の状況に大きな変化がないため、このデータに基づけば、都内の火葬場における一日当たりの可能火葬数は七百六十五件となりまして、年間の稼働日数を仮に三百日とした場合、年間火葬能力は二十二万九千五百件となります。
 大規模災害時等における最大火葬可能数は一日当たり八百五十六件であり、年間で二十五万六千八百件となります。

○加藤委員 五年度の数字がないので、この四年度の火葬許可証発行件数と死亡者数はほぼ一致していると思います。年間火葬能力二十二万九千五百件より圧倒的にこの死亡者が少ないのに火葬待ちが多く発生していると。要するに、火葬能力があっても、今までのようなミスマッチがあっては意味がないというふうに思います。
 また、もう一つの問題として、二十三区と市町村で比較すると、区部の火葬炉数は、資料から、百九に対して、市町村は七十七、人口は区部が九百八十五万人に対し、市町村が四百三十二万人、人口十万人当たりの炉の数は区部が一・一に対し市町村は一・七八と、区部が少ないことになります。しかも、市町村の火葬料は無料のところが多く、逆に区部は圧倒的に高いと。料金の安い区部の公営火葬場は数が少なく予約が集中するのではないでしょうか。これでは火葬待ちが発生するのも無理ないというふうに思います。
 全国の政令指定都市の火葬炉数は、人口十万人当たり平均二・四七だそうです。ちょっと一七年のデータで古いんですけれども、それからすると二十三区は圧倒的に少ないというふうになります。
 先ほども述べましたが、将来、エボラ出血熱のような一類感染症が発生することも想定して、危機管理に備えなければなりません。
 一類感染症により死亡した患者のご遺体の火葬の実施に関する国のガイドラインによると、都道府県は、特別区を包括する広域の地方公共団体として、火葬場の担当部局と特定感染症指定医療機関または第一種感染症指定医療機関の担当部局とで連携し、管内の感染症指定医療機関において、死亡したご遺体の搬送を行う搬送事業者及び火葬を行う火葬場を特別区と連携してあらかじめ定めておくことや、搬送事業者及び火葬場とあらかじめ必要な調整をしておくことが望ましいとあります。
 火葬の実施主体は区市町村でも、全て基礎自治体に任せるのではなく、広域的な観点や感染症対策などの危機管理の上からも、都が調整機能を果たせるよう、実態を把握する根拠等を今後つくって対応すべきと考えますが、最後に局長の見解を求めます。

○雲田保健医療局長 墓地、埋葬等に関する法律、いわゆる墓埋法でございますが、埋葬等が国民の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われることが求められていると認識しております。
 今後、高齢化による死亡者数の増加が予測される中、都民の火葬についての不安を払拭し、地域の実情に応じて、将来にわたる安定した火葬体制を確保することは重要でございます。
 さらに、今回の新型コロナ対応の経験を生かし、今後の火葬体制を確保する、これも重要でございます。
 先ほど委員からお話のございました新たに整備をいたします瑞江葬儀所の新施設でございますが、現在一日二十五件の火葬可能件数を三十件にするとともに、年間の稼働日数を三百日から三百五十日に増やしてまいります。これにより年間の火葬可能件数は七千五百件から約一万件に拡大することとしております。
 また、港区、品川区、目黒区、大田区及び世田谷区の五区の一部事務組合により平成十六年に開設いたしました臨海斎場でございますが、五区の要請に応じまして、当時、都有地の減額売却や財政支援を実施して設置されておりまして、現在は増炉により火葬可能数を増やすことが予定をされております。
 今後とも、こうした動きをはじめといたしまして、都内の火葬を取り巻く状況を適切に把握してまいりますとともに、指導権限を有する区との連携を一層密にしながら、火葬に関する様々な情報の共有や意見交換などを丁寧に行っていくほか、次の感染症危機におきましても、区市町村や事業者等と連携し火葬体制を確保するなど、適切に対応してまいります。

○加藤委員 局長から決意のこもった前向きな答弁をいただきました。
 都議会公明党は、かねてから火葬に関する検討会の設置を求めていますが、それまでの間、ぜひ区と連携を一層密にして、情報共有や意見交換を丁寧に行い、都民が安心して生涯を過ごせるように取り組んでいくよう求めて、質問を終わります。ありがとうございました。

○清水委員 日本共産党の清水とし子でございます。
 公立病院への支援についてお伺いします。
 日野市立病院をはじめとする多摩地域の公立病院は、コロナ禍で中核的な役割を果たし、感染症拡大時の対応における公立病院の果たす役割の重要性が改めて認識されました。
 一方、日野市立病院では、コロナ禍で病院にかからなくなってしまった、コロナ対応で空床を確保したことに伴って一般の患者さんを受け入れることができなくなったために一般の患者さんが民間病院に流れた。こうしたことの影響によって、コロナ後も患者数は回復しておらず、コロナ前には七九・四%だった占床率は、昨年度は六一・九%にとどまっています。昨年度の赤字は約十五億円、前年比約十二億五千万円も赤字が増えています。この状態が恒常的に継続したら厳しい、日野市長が議会で答弁されました。
 また、占床率が回復しない背景には、医師不足もあります。
 日野市立病院では、現在五十八名の医師がいますが、理想的な医師数には二十人足りないということです。例えば脳神経外科の医師が一人しかいないんですが、そうなると対応できる手術が限られてしまうということになるそうです。
 市民への医療提供の充実のために医師の増員が必要ですし、そのことが経営の改善にもつながります。
 医師の採用は、主に医局の人事、東京都地域医療支援ドクター事業、そして人材紹介の三つと伺いました。医局人事が最も中心で一般的な方法ですけれども、大学病院も医師不足に悩んでいます。東京都地域医療支援ドクター事業は、多くの場合、一年で終了して、先につながらない。人材紹介は一社、年間約百万円、二三年度は二百人にオファーをかけて、面談まで行ったのは六人、そして採用ができたのは二人。採用できた場合には、さらに年収の二〇%を支払わなければいけない、こういうことだそうです。
 最初に、医師の確保の問題について伺いますが、東京都地域医療支援ドクター事業の概要について説明を求めます。

○新倉医療政策部長 東京都地域医療支援ドクター事業は、医師の確保が困難な多摩・島しょの公立病院等に小児、周産期、救急、僻地医療の分野に従事する医師を一定期間派遣し、地域の医療体制の確保を支援するものでございます。
 地域医療支援ドクターの勤務期間は原則六年間でございまして、そのうち多摩・島しょの公立病院等における支援勤務は原則通算二年以上、一か所の勤務は原則一年間以上としてございます。支援勤務における派遣先は、医療機関からの派遣要請や医師の希望等を踏まえ、毎年度決定してございます。
 支援勤務以外の期間は、専門知識や技術向上に資することを目的に、都立施設等においてキャリアアップのための専門研修として勤務することとしております。

○清水委員 次に、東京都地域医療支援ドクター事業について、派遣を希望した医療機関と医師の数、実際に派遣された医師の数の推移について伺います。

○新倉医療政策部長 派遣対象の十九医療機関からの派遣要請等の状況についてでございますが、令和元年度は十一医療機関から二十四人の希望があり七人を派遣、二年度は十医療機関から二十二人の希望があり八人を派遣、三年度は十医療機関から二十六人の希望があり六人を派遣、四年度は九医療機関から二十三人の希望があり七人を派遣、五年度は十医療機関から二十四人の希望があり五人を派遣いたしました。
 なお、僻地の公立医療機関からの派遣要請に対しましては、別途、自治医科大学卒業医の派遣も活用しながら対応しております。

○清水委員 派遣対象の医療機関は十九、毎年二十数名の派遣希望があって、そのうち派遣できるのは数名という状況がずっと続いているということです。僻地の場合には、自治医科大学卒業医の派遣もあるということで、昨年度の実績は全体で八名でした。それを含めても、地域の医療機関からの要請に、希望には沿えないこと、それが少なくないという状況がずっと続いています。
 採用活動を強化して、派遣医師を増員することが必要と考えますが、いかがですか。

○新倉医療政策部長 地域医療支援ドクターの募集につきましては、都のホームページやSNSなどで広く周知するほか、各都立病院や、都内の専門研修基幹施設等に対しましても、専門研修を修了する予定の医師等への周知について協力を依頼するなど、様々な媒体や手段を用いまして採用活動に鋭意取り組んでいるところでございます。

○清水委員 あらゆるところに周知を行っているということですが、例えば昨年は、一次募集、二次募集、三次募集とかけて、応募者は二名、うち一名は面接実施前に辞退をされてしまって、内定者は一名という状況です。
 今、来年度に向けた募集を行っていて、採用予定数は五名ということですが、より多くの方に応募していただくための対応が必要です。地域医療に携わりたい、専門研修を受けたい、こういうこの制度の対象、この制度が求めている医師の要望をよくつかんでいただいて、それに応える内容にしていただくとともに、採用活動を強化して派遣医師を増員していただくよう要望いたします。
 次に、東京都地域医療支援ドクター事業の支援勤務期間についてお伺いします。
 東京都地域医療支援ドクター事業は、一年で終了して先につながらないという声が上がっています。市長会の東京都予算編成に対する要望書でも、派遣される医師が実績としては単年度の在籍が多いことから、支援勤務期間を複数年、同一病院に在籍することを求めています。
 支援勤務期間を複数年、同一病院に在籍するよう改善すべきと考えますが、いかがですか。

○新倉医療政策部長 地域医療支援ドクターの勤務期間は原則六年間であり、そのうち支援勤務は原則として通算二年以上としてございます。
 支援勤務における派遣先は、医療機関からの派遣要請や医師の希望などを踏まえ、毎年度決定しているところでございます。

○清水委員 支援勤務における派遣先は、医療機関からの派遣要請や医師の希望などを踏まえて毎年度決定しているということですが、地域医療支援ドクターの派遣、研修先を見ると、やはり単年度の場合が多くなっています。地域医療機関の要望をよく聞いていただいて、改善を図っていただくよう要望します。
 次に、市長会の予算編成に対する要望書には、派遣対象診療科目に、特に医師が不足する麻酔科医などを追加することなどの改善を講じることも挙げられています。
 派遣対象診療科目について、特に医師が不足する麻酔科などを追加するべきと考えますが、いかがですか。

○新倉医療政策部長 東京都地域医療支援ドクター事業は、医師の確保が困難な多摩・島しょの公立病院等に小児、周産期、救急、僻地医療の分野に従事する医師を一定期間派遣し、地域の医療体制の確保を支援するものでございます。
 そのうち救急分野では、派遣先医療機関における当直に従事することを想定し、専門診療科の制限は行っておらず、内科、外科のほか、麻酔科、脳神経外科なども可能としております。

○清水委員 専門診療科の制限はしていない、麻酔科医や脳神経外科の方が応募してくれれば採用可能だということなんですけれども、今ホームページに出されている募集要項を見ても、麻酔科医と明示されているわけではありません。
 市長会の要望は、特に医師が不足している麻酔科医などは、それ自体を標榜して意識的に募ってほしいということだと思うんです。来たら採用するではなく、積極的に募集していただくようにお願いいたします。
 日野市立病院では、医師確保は、医局の人事、都の派遣制度、そして人材紹介会社などの三つで行っているということでしたが、有料の人材紹介会社一社に年間約百万円かかって、二三年度は二百人にオファーをかけて、面談までこぎ着けたのが六人、そのうち採用は二人、採用できた場合には年収の二〇%を別途払わなければならないということで、かなりの金額になります。
 そこで伺いますが、有料人材紹介会社や求人情報掲載などによる医師、看護師等の確保に係る経費が病院経営にとって重い負担になっている、こういう認識を東京都はお持ちですか。

○新倉医療政策部長 東京都市長会からの令和七年度の予算編成に対する要望事項におけます公立病院の運営に関する項目の中に、医師や看護師等の確保について、有料人材紹介会社や求人情報掲載等を行っており、その費用が病院経営の負担となっているとの記載があることは承知しております。

○清水委員 これは病院だけの話ではなくて、介護や福祉の分野などでも有料人材紹介会社などを使って人員確保が行われています。近年、紹介料は高騰していて、診療報酬や介護報酬など公定価格で成り立つ分野では、本来賃金に回すべきものが回らない、こんな事態にも起きています。手数料の上限の規制やハローワークの機能強化、適正認定事業者の基準の見直しが必要です。現場に近い東京都からも国に意見を出していただくよう求めます。
 次に、多摩地域は地理的要因によって医師確保が難しいことから、多摩地域の公立病院における内科、産科、小児科、麻酔科、心臓血管外科、救急科など、医師確保や育成が求められていますが、都の取組についてお伺いします。

○新倉医療政策部長 都は、先ほど来お話ししている地域医療支援ドクターの派遣のほか、小児、周産期、救急、僻地医療に従事する医師を確保するための医師奨学金制度など、医師確保に向けた様々な取組を実施しております。

○清水委員 東京都はいろんな取組をされているんですけれども、それでもまだなお多摩地域の公立病院は医師確保に大変苦労している状態が続いています。さらなる対策の強化を求めます。
 最後に、公立病院の経営支援についてお伺いします。
 公立病院の経営は、医師や看護師の確保の困難、物価高騰などの影響により大変厳しい状況にあります。
 市長会からも公立病院運営事業補助制度の充実を求める要望が出されており、これに応えるべきと考えますが、いかがですか。

○岩井医療政策担当部長感染症医療政策担当部長兼務 都は、公立病院の安定的な運営を支援するため、病床数などに応じて運営費を補助しております。
 補助額の算出に当たりましては、病院の経営努力を反映するため、経営評価指数として、前年度の自己収支比率及び病床利用率を使用しております。
 令和三年度以降、新型コロナウイルスの影響による病床利用率の低下などを踏まえ、経営評価指数につきましては、コロナ禍前となる令和元年度の数値を用いる特例措置を実施しております。
 また、運営費の補助に加えまして、医師を派遣する取組や、物価高騰の負担を軽減するための支援金を支給するなど、病院の運営を支援しております。

○清水委員 公立病院は、都立病院と同様、コロナ禍で中核的な役割を果たし、感染症拡大の対応における公立病院の果たす役割の重要性が改めて認識されました。
 ところが、コロナ禍で減った患者は戻らない、コロナ対策の補助金も終了したことによって、多摩地域の公立病院の経営は軒並み悪化しています。
 日野市立病院では、昨年度、十五億円の赤字となって、前年比約十二億五千万円も赤字が増えました。この状況が恒常的に続くと厳しいと日野市長は議会で答弁されました。市の努力で支えるにも限界があります。
 都によるしっかりとした財政的な支援を行うよう強く求めて、私の質問を終わります。

○福島委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に関する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これに異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○福島委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で保健医療局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後四時三十一分散会