令和元年度各会計決算特別委員会第二分科会速記録第六号

令和二年十月二十六日(月曜日)
第十委員会室
午後一時開議
出席委員 十名
委員長中山 信行君
副委員長桐山ひとみ君
副委員長尾崎あや子君
やまだ加奈子君
伊藤こういち君
小宮あんり君
西沢けいた君
原 のり子君
岡本こうき君
福島りえこ君

欠席委員 なし

出席説明員
教育庁教育長藤田 裕司君
次長松川 桂子君
教育監宇田  剛君
技監矢内真理子君
総務部長安部 典子君
都立学校教育部長谷 理恵子君
地域教育支援部長田中 宏治君
指導部長増田 正弘君
人事部長浅野 直樹君
福利厚生部長小菅 政治君
教育政策担当部長
オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
小原  昌君
企画調整担当部長岩野 恵子君
教育改革推進担当部長藤井 大輔君
特別支援教育推進担当部長高木 敦子君
指導推進担当部長瀧沢 佳宏君
人事企画担当部長黒田 則明君

本日の会議に付した事件
令和元年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
教育庁関係
・令和元年度東京都一般会計決算(質疑)

○中山委員長 ただいまから令和元年度各会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、教育庁関係の決算に対する質疑を行います。
 これより教育庁関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 令和元年度東京都一般会計決算中、教育庁所管分を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○安部総務部長 去る十月十二日の当分科会において要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の令和元年度各会計決算特別委員会第二分科会要求資料の表紙をおめくりいただき、目次をごらん願います。
 今回要求のございました資料は十件でございます。
 それでは、一ページをお開き願います。1、都立高等学校等における高等学校等就学支援金の歳出予算及び決算でございます。
 令和元年度の就学支援金の歳出における予算につきまして受給対象者数と支給額を、決算につきましては受給者数と支給額を、区分別にそれぞれ記載してございます。
 二ページをお開き願います。2、都立高等学校等における奨学のための給付金の給付区分ごとの歳出予算及び決算でございます。
 令和元年度の奨学のための給付金の歳出における予算につきましては給付対象者数と給付額を、決算につきましては給付者数と給付額を、給付区分別にそれぞれ記載してございます。
 三ページをごらんください。3、都立学校等給付型奨学金の給付区分ごとの歳出予算及び決算でございます。
 令和元年度の給付型奨学金の歳出における予算につきまして受給対象者数と予算額を、決算につきましては受給者数と支給額を、区分別にそれぞれ記載してございます。
 また、主な対象事業につきまして記載してございます。
 四ページをお開き願います。4、都立高等学校等の授業料減免の実績でございます。
 平成二十七年度から令和元年度までの間で、授業料を免除または減額した人数について、区分別、課程別、年度別にそれぞれ記載してございます。
 五ページをごらんください。5、都内公立中学校夜間学級在籍者のうち、中学校を卒業している生徒の数でございます。
 平成三十年度から令和二年度までにおける、夜間学級に在籍していて、既に中学校を卒業したことがある生徒の人数、その人数を含む全体の在籍者数をそれぞれ記載してございます。
 六ページをごらんください。6、東京都公立小・中学校の情緒障害等通級指導学級及び特別支援教室設置校数・児童生徒数・教員数・専門員数でございます。
 六ページ及び七ページに、公立小学校における平成二十八年度及び平成二十九年度につきましては従来型の通級指導を含む特別支援教室の、平成三十年度から令和二年度につきましては特別支援教室の、設置校数、児童数、教員数、専門員数について、区市町村別にそれぞれ記載してございます。
 また、八ページ及び九ページには、公立中学校における平成二十八年度から平成三十年度までにつきましては情緒障害等通級指導学級の、令和元年度及び令和二年度につきましては従来型の通級指導を含む特別支援教室の、設置校数、生徒数、教員数、専門員数について、区市町村別にそれぞれ記載してございます。
 一〇ページをごらんください。7、東京都公立小・中学校の自閉症・情緒障害特別支援学級(固定)の設置状況でございます。
 一〇ページに公立小学校における平成二十八年度から令和二年度までの設置校数及び学級数について、区市町村別にそれぞれ記載してございます。
 また、一一ページには、公立中学校につきまして、同内容を記載してございます。
 一二ページをごらんください。8、都立学校「自立支援チーム」の実績とユースアドバイザー、ユースソーシャルワーカー(主任)及びユースソーシャルワーカーの新規採用人数でございます。
 (1)は、都立学校自立支援チームが平成二十八年度から令和元年度までにおいて支援を行った学校数、支援対応生徒数、支援累計回数について、区分ごとにそれぞれ記載してございます。その下、(2)は、ユースアドバイザー等の新規採用人数について、採用年月ごとに職種別にそれぞれ記載してございます。
 一三ページをごらんください。9、都内教育支援センターの区市町村別設置数と不登校特例校一覧でございます。
 (1)は、令和元年五月一日現在における都内教育支援センターの設置数について、区市町村別にそれぞれ記載してございます。その下、(2)は、令和二年四月一日現在における都内不登校特例校の学校名、管理機関、開校年月について、それぞれ記載してございます。
 一四ページをごらんください。10、改築、大規模改修等の工事中又は工事予定のある都立学校でございます。
 令和二年四月一日現在における高等学校等と特別支援学校の状況について、それぞれ記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。どうぞよろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○中山委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○福島委員 まず、歳出のうち災害対策関連で執行率が低い事業について確認をいたします。
 区市町村立小中学校における冷房化支援事業において、執行率が四二・七%と低調です。区市町村の取り組みに対する今後の都の対応についてお伺いいたします。

○田中地域教育支援部長 区市町村立小中学校への冷房化支援事業は、特別教室等及び屋内体育施設を対象として実施しており、特別教室等については、平成三十年度の区市町村への事業実施意向調査に基づき、予算規模を設定しましたが、実際の補助金交付申請が少なかったことから執行率が低調となったものでございます。
 屋内体育施設の主な不用額は、リース補助事業に係るものでありますが、本事業は平成三十年度に発生した災害級の猛暑を受けて、都として早期の整備を推進するために構築した事業であり、事業初年度に十分な予算額を確保したため、結果として執行率が低調となりました。
 今後も区市町村の事業実施意向を精査した必要な予算の確保に努め、令和三年度の事業の終期に向け、区市町村の取り組みを着実に支援してまいります。

○福島委員 では、公立学校施設耐震化支援の執行率も四五・八%と低調にとどまっています。現在の非構造部材の耐震対策実施率と今後の区市町村の取り組みに対する都の対応についてお伺いいたします。

○田中地域教育支援部長 東京都公立学校施設防災機能強化支援事業は、発災時における児童生徒等の安全を確保するため、天井、照明器具、外壁等の非構造部材の耐震対策等を実施する区市町村に対して、東京都がその費用の一部を補助する事業であり、令和二年四月一日時点の屋内運動場等のつり天井等の耐震対策実施率は九六・九%、その他の非構造部材の耐震対策実施率は七一・六%となっております。
 区市町村における非構造部材の耐震対策等の未実施の状況は、都教育委員会として把握をしており、引き続き耐震対策等を着実に実施していくよう働きかけてまいります。

○福島委員 冷房化支援事業については、令和三年度の事業終期に向け、区市町村の取り組みを着実に支援をすること、そして公立学校施設耐震化支援事業については、つり天井等の耐震化実施率は高く、その他非構造部材の耐震化状況についても都として把握しており、着実な実施を区市町村に働きかけることを確認いたしました。
 次に、英語科教員海外派遣事業について伺います。
 生活文化局の私立学校に対する同様の補助事業に対しても、先日決算特別委員会で取り上げました。令和二年度からの小学校の英語の教科化もあり、教師の指導力向上につながる重要な事業であると考えます。
 この英語科教員等の海外派遣研修の実施状況及び執行率が七〇%程度であるその理由を伺います。

○瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、英語の指導力の向上と異文化理解の促進による授業改善を図ることを目的としまして、平成二十六年度に中学校、高等学校英語科教員等を海外の大学に派遣する研修を開始し、平成二十八年度からは対象を小学校教員に拡大して実施をしております。
 昨年度は、小学校教員については四週間、中学校、高等学校教員については十週間、カナダやオーストラリアの大学に派遣をいたしました。
 派遣された教員は、最新の英語教授法を学ぶほか、現地の学校で授業を行うことで、英語の指導力を高めるとともに、現地の大学生等との交流やホームステイを通して、異文化理解を深めました。
 執行率につきましては、総合評価方式により、品質を担保しながら契約額を抑制したことと、募集枠に対し応募が下回ったことが要因でございます。

○福島委員 募集枠に対して応募が下回ったというご答弁がありました。学級担任だったりすると、代替要員確保などに課題があると聞いています。
 そこで、教育現場にICTが導入される中で、これを活用した取り組みも期待されます。現地での研修の事前や事後にオンラインを活用した取り組みも既に実施したと聞いておりますが、その実施状況についてお伺いいたします。

○瀧沢指導推進担当部長 事前には、現地大学でのプログラムの受講に必要となる英語力を習得できるよう、小学校教員を対象とし、ネーティブスピーカーによるオンラインでの英語研修を実施いたしました。
 また、事後には、研修に参加した教員が互いの成果を授業改善に生かすことができるよう、研修中に作成した教材や学習指導案、派遣先の大学教授による助言等をオンライン上で共有をいたしました。

○福島委員 事前、事後のオンライン活用の実績についてご答弁いただきました。テレワークシステムと同様に、ICTの活用は時間と場所の制約を緩和します。既にeラーニングなどは実施されておりますが、教育現場に導入されつつあるICTをさらに積極的に活用し、教員がよりよい教育を受ける機会が担保できるよう工夫されたい、これを要望いたします。
 次に、小学校のプログラミング教育の必修化についてお伺いいたします。
 今年度からの小学校でのプログラミング教育必修化に向けまして、都教育委員会は昨年度までの二年間、プログラミング教育推進校として七十五校を指定し、実践事例報告書を作成したというふうに聞いています。
 これにより、都内の全ての公立小学校で全面実施に向けた体制が構築されたのかを伺います。

○増田指導部長 都教育委員会は、プログラミング教育推進校における研究成果の普及を図るため、本年一月に都内全ての公立小学校から担当教員の参加を求め、プログラミング教育フォーラムを開催いたしました。
 また、各区市町村教育委員会は、推進校が開発した指導事例や教材等を他の学校でも活用できるようにするため、昨年度中に地域の小学校の教員等を集め、推進校の成果報告会を開催いたしました。
 これらの取り組みを踏まえ、教員のプログラミング教育の実践力を高めるため、昨年度末までに都内全ての公立小学校において、校内研修や模擬授業等を実施しており、プログラミング教育の実施に向けた指導体制の基盤が整っております。

○福島委員 コロナ禍での船出とはいえ、令和二年度に都内全小学校での実施体制が準備できたことを評価いたします。
 次は、その中身について伺います。
 文部科学省は、プログラミング教育を指導内容や形態に応じて、A分類からF分類までの六つに分類をしています。
 AやB分類は、学習指導要領で示されている内容の指導と絡めて実施するもの、C分類は、各学校の裁量により学習指導要領とは別に実施をするもの、D、E分類は、クラブ活動など特定の児童を対象にしたり、学校を会場として利用するもの、F分類は、学校以外を会場として実施するものです。
 私は、プログラミング教育でボランティアを二年間務めた経験や当時の同業他社の動向調査など、そして先駆的にプログラミング教育に取り組んでいた小学校の視察などから、小学生が大人顔負けの取り組みを能動的に取り組んでいる姿を多数見てきました。
 また、コンピューターサイエンスを学び、情報を専門とする大学の先生方や、今、IT業界で活躍している人たちからは、プログラミング教育の中身が、先生方ができる範囲に矮小化される危険性がたびたび指摘されてきました。
 プログラミング教育推進校に指定された都内の公立小学校でも、平成三十年度の時点で各教科などの中でプログラミングを実施するA分類やB分類のみでは飽き足らないと感じている児童が少なからずいたというふうに聞いています。
 昨年度、教科学習とは別に学校が工夫して実施するC分類の指導事例の開発は進んだのかを伺います。

○増田指導部長 ご指摘のC分類は、プログラミングの楽しさやおもしろさ、達成感などを味わえる題材などによりプログラミングを体験する内容となっており、各学校において創意工夫して取り組むこととされております。
 プログラミング教育推進校の中には、ロボットを思いどおりに動かすことを通して、プログラミングの楽しさを体験する学習や、信号機の動きを再現することを通して、社会の課題について考える学習など、C分類に該当する指導事例を開発した学校もございます。
 都教育委員会は、こうした実践事例を報告書に掲載し、昨年度末に都内の全ての公立学校に配布いたしました。

○福島委員 一人一台体制の見通しが当時はなかった中で、新学習指導要領を策定するその最後の最後に情報教育を何とか盛り込んではみたものの、教科化できない中での苦肉の策として、A分類、B分類として、ほかの教科と絡ませて実施するとしたことが、プログラミング教育にさまざまなひずみを生じさせました。
 私は文教委員会の委員として、プログラミング教育について何度も質疑で取り上げ、都内先進校や他県の先進的な取り組みについて、教育庁の皆様に視察していただき、子供がどこまでできるのか、現場がA、B分類に縛られずに、どのように子供たちの力を伸ばしているかを体感していただくとともに、現場の先生方のご負担も考え、国が四分の一支援していたICT支援員の配置に都が追加支援することを訴え、いずれも取り組んでいただきました。
 来年度からは、中学校でプログラミング教育が必修化され、その先は高等学校の情報教育が拡充されます。プログラミングに興味を持つ子供たちはますますふえることが予想されます。
 既製のプログラミング教育もありますけれども、多くは高額です。一方、オープンソースと呼ばれる文化があるように、都内に集積しているIT企業やこれに勤めるIT人材、大学の先生方には、無償であっても、子供たちがプログラミングを学べる場を提供したいと考えている人も少なくありません。一部の地域や学校では、これらの都内資源と連携している一方、全くできていない地域や学校もあります。小中学校に一人一台環境が整備され、プログラミング教育もまた大きく変わるはずです。
 今後、家庭環境によらず、その力を伸ばせるよう、都内資源と現場のマッチングを進めるなどの学校外のIT人材の活用も含めて検討いただけるよう要望いたします。
 次に、東京ベーシック・ドリルについてお伺いいたします。
 小学校四年生までに必ず習得するべき基礎的、基本的事項の定着を目的に、平成二十六年に第一版を作成、平成三十一年には新学習指導要領に合わせて改訂したというふうに伺っています。
 東京ベーシック・ドリルについて、前の版の評価と改訂版を作成するに至った経緯をお伺いいたします。

○増田指導部長 都教育委員会は、平成二十六年度に一人一人の学習のつまずきの状況に応じて活用できる東京ベーシック・ドリルを作成し、児童生徒の基礎的、基本的な学力の定着と伸長を図ってまいりました。
 また、平成二十九年度には、パソコンやタブレット等を使って学習できる電子版を開発し、都教育委員会ホームページに掲載いたしました。
 こうした取り組み等を通して、国の学力調査では、小中学校ともにおおむね全国平均正答率を上回る状況となっております。
 さらに、昨年度、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、このベーシック・ドリルを改訂するとともに、児童生徒及び教師が活用しやすいよう、回答や採点の方法を簡易にするなど、電子版の機能の改善を図ってまいりました。今般の学校の臨時休業期間中には、電子版の活用がふえ、昨年度同時期の四十倍を超える約三十五万九千件のアクセスがあり、他県等からの利用希望も寄せられたところでございます。

○福島委員 私も拝見させていただきましたけれども、基礎学力定着のために従来先生方が一人一人取り組んでいた補習目的の問題作成を都教育委員会で集約した内容になっていて、基礎自治体のホームページでも関連する記述が多数見つかるなど、先生方に活用していただけている様子がわかりました。長時間労働解消にも資するよい取り組みだと思います。
 さらに、ICTを活用し、広く活用いただける体制を整備したことで、臨時休業期間中に、都内の学校はもちろん、他県からも多くアクセスがあったということで、その取り組みを評価いたします。
 さきの一般質問の答弁で、初めて都として取り組むとの答弁があったAI教材、これは、どこでつまずいたかに基づいて、その子に応じた出題を出すという仕組みにより、基礎学力定着で効果を上げていますが、いわばベーシック・ドリルに盛り込んだ先生方の知見を、より大量のデータに基づいて実装したといえます。
 このように、教育現場へのICT導入の価値とは、先生がみずからの経験や先人からのアドバイスによって習得していた指導について、多くの学習履歴と理解度のデータでサポートする、つまり全ての学校現場でこれまで起きた全てのことを知っている先生が横でアドバイスをしてくれるようなものです。
 そして、丸つけなどの単純作業を自動化、つまり、疲れを知らないスクールサポートスタッフが一人一人の先生についてくれるようなものです。
 さらには、職員会議や教育委員会などで一部の声の大きい参加者の主観で決まっていた教育政策を、あらゆる客観的データに基づいて決められる。すなわち、断片的な調査項目で負荷ばかりかかるアンケートではなかなか届かなかった、多くの現場を預かる先生方が実感しているその課題を、教育政策に反映できる仕組みでもあります。
 以前より、私は、ベーシック・ドリルの価値を国の学力調査ではかるには、塾の影響などを取り除かなければならないというふうに訴えてまいりましたが、このような指摘に関しても、児童生徒の通塾に関する情報と一元化することができれば、本来は解消します。
 このように、学校現場へのICT導入は、本来教師が児童生徒と向き合う時間を創出し、児童生徒が互いに協力したり、切磋琢磨する時間を生み出し、良質な教育を取り返すための有効な手段であります。引き続き前向きに取り組んでいっていただきたいと思います。
 次に、スタディーアシスト事業について伺います。
 公立中学校の三年生の七〇%が塾に通うなど、希望する進路に進むための家庭の教育費負担は増大をしています。
 家庭の経済力が教育格差につながらないように、学校でも学習塾などの外部人材から指導を受けられる機会を設けることを求めた我が会派の質疑を受けまして、都教育委員会は平成三十年度からスタディーアシスト事業をモデル実施していますが、その成果についてお伺いいたします。

○田中地域教育支援部長 スタディーアシスト事業は、公立中学校三年生を対象に、進路実現に向けた授業外における学習支援として、立川市及び青梅市の二地区で実施しました。
 本事業では、民間教育事業者を活用し、希望のあった全中学校において、放課後等に英語と数学の少人数クラスの学習支援の取り組みを行うことで、受講生全体の八割以上が志望校に合格するなどの実績を上げています。
 このことから、今年度はさらに四地区に規模を拡大して事業を実施しております。

○福島委員 偏差値は、物差しの中の一つであり、これが高い学校に進むのが全てだとは思いませんけれども、進学意欲があり、塾に通いたくても通えない児童生徒にその指導を受けられる機会を選択できるようにして、実績を上げていること、これを評価いたします。
 家庭の経済環境で児童生徒の資質が発揮できないようなことがあってはなりません。意欲ある子供のための取り組みの質の向上と拡大、そして繰り返しになりますけれども、基礎学力定着で一定の効果を上げているAI教材の活用も視野に入れて、検討いただきたいと思います。
 次に、理数教育についてお伺いいたします。
 日本の国力の源は人材です。これまで日本は、資源を加工し、付加価値を生み出して輸出することで利益を得てきましたし、今後もイノベーションの多くはAIやIoT、ビッグデータなどの技術と関連することが多いといわれています。これらの技術開発を支えるデータサイエンティストや統計の素養を持つ理系人材の育成はますます重要になっています。
 一方、一般市民の科学リテラシーが先進諸国と比較して極めて低いことが指摘されており、私は、金融商品への理解不足やDXシフトのおくれなどの諸問題とも深くかかわると考えています。
 文部科学省の調査によれば、高校三年生のうち理系コースで履修する生徒の割合は、文系コースの二分の一にとどまっており、意識して育成する必要があると考えています。
 都教育委員会は、理数リーディング校、理数研究校を指定し、理系人材の育成に取り組んでいますが、その取り組みと成果についてお伺いいたします。

○増田指導部長 都教育委員会は、理数リーディング校を今年度までの三年間の指定で三校、理数研究校を単年度ごとに二十四校指定し、理数に秀でた生徒の能力の伸長や理数に興味を持つ生徒の裾野を拡大する取り組みを進めております。
 理数リーディング校では、大学や研究機関との連携による実験や令和四年度から始まる新科目、理数探究の実施に向けた指導方法の開発等を通して探求活動の充実を図っております。
 これらの取り組みにより、科学技術に対する生徒の興味、関心のさらなる向上や理数、医療系の大学受験者の増加等の成果が報告されております。
 また、理数研究校では、課外活動や科学系部活動を中心に観察や実験を行うとともに、専門知識を有する大学院生からの助言等を通して研究活動の充実を図っております。
 こうした取り組みにより、各種科学系コンテストに参加する生徒が増加し、優秀な成果をおさめるなどの報告を受けております。

○福島委員 理数リーディング校では、理数系、そして医療系の大学受験者数の増加等が報告されているとのことでした。進路選択という重い決断に影響を与えていることから、効果があるといっていいのではないかと思います。
 また、理数研究校では、各種科学系コンテストに参加する生徒が増加しているとのことです。チャレンジした経験は次の跳躍につながる力になります。期待したいと思います。
 繰り返しになりますけれども、私は特に教育分野でEBPM、データに基づいた政策立案、これを推進しています。TOKYOスマート・スクール・プロジェクトで指導履歴と児童生徒の理解度などを集積し、理数教育についても精度を高めていただきたいと考えています。
 また、本年六月に文部科学省は、令和五年度から始まる高校数学の情報Ⅱの教員研修用教材を公開しました。情報Ⅱのカリキュラムは、データサイエンスを盛り込んでおり、IT企業や大学からは情報Ⅱを選択できる環境を整備してほしいという声を多くいただいています。
 国もようやくDXの加速、これを明言し、今月二十一日には、現在の中学二年生が受験する二〇二五年から大学入学共通テストの出題科目や出題科、これを変更して、国語や数学などに並ぶ教科に情報を新設するとの検討案がまとまったとの報道がありました。
 既に文教委員会での質疑を通じて、令和二年度の募集から都立高校の情報教員の副免許要件を外していただいています。大学入試の動向を踏まえつつ、今後開設する理数科における情報教育の充実にタイムリーに対応できるよう、人材確保や育成を進めていただきたいと思います。
 次に、東京イングリッシュ・エンパワーメント・プロジェクト、これについて伺います。
 この東京イングリッシュ・エンパワーメント・プロジェクト、TEEPの取り組み内容と成果についてお伺いいたします。

○瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、JETプログラムにより招致された英語等指導助手、いわゆるJET青年を活用し、平成二十九年度から学校生活の中で生徒が日常的に英語を使う機会を広げることを狙いとして、東京イングリッシュ・エンパワーメント・プロジェクト、TEEPを実施しており、昨年度は五十校をTEEP実施校に指定しております。
 各学校では、身近な話題や時事問題など、生徒の興味、関心が高いテーマに関する映像コンテンツを活用し、授業中や放課後などにJET青年とともにディスカッションやディベートなどを行っております。
 こうした取り組みを通し、生徒がさまざまな話題に対して積極的に英語で意見を述べる能力を身につけるとともに、検定試験の成績が向上するなどの成果を上げております。

○福島委員 英語を使ってディスカッションやディベートをするということで、よい取り組みであるとは思うんですけれども、CNNスチューデントニュースなどが既に無償提供されていることから、都がわざわざ映像教材をつくる意味について、私は現時点では十分理解ができておりません。
 中学校の三年間、高校の三年間の計六年間、英語を勉強しても話せないし、聞き取れないという英語教育は長年の課題です。
 既にお台場に開設されておりますTGG、TOKYO GLOBAL GATEWAYについて、直後のアンケートだけではなく、長期的な効果検証を求め、これに取り組むというご答弁をいただいておりますけれども、今回のTEEP初め、英語教育の取り組み全般について、TOKYOスマート・スクール・プロジェクトで整備される学習履歴や習熟度等のデータを集積、分析する環境を積極的に活用し、EBPMの姿勢で質の向上に取り組んでいただきたいと考えます。
 次に、進学アシスト事業についてお伺いいたします。
 高校受験で実績を上げているスタディーアシスト事業を踏まえ、これも我々の質疑を通じて、平成三十一年度からは、進路多様校といわれる都立高校において、大学進学のための学習をサポートする事業が始まりました。
 都立高校において、令和元年度から実施している進学アシスト事業の成果についてお伺いいたします。

○増田指導部長 都教育委員会は、生徒の進路希望が大学や専門学校、就職など多岐にわたるいわゆる進路多様校のうち、二校を昨年度から進学アシスト校として指定し、大学進学を目指す生徒に対して、放課後や土曜日等に予備校の講師を活用した学習支援を行っております。
 指定校では、対象生徒の日ごろの取り組みに加え、面談や小テストにより把握した学習の定着状況を踏まえ、きめ細やかな指導を行っております。
 これらの取り組みにより、外部模試において成績が向上し、目指す大学に合格するなどの実績が報告されています。
 また、当該校の学校説明会において、中学生やその保護者の本事業への関心が高まっていると聞いております。

○福島委員 外部模試ですけれども、受験に向けて、実力を把握するための手段として確立しており、これで成績が向上したということは実績といってよいと思います。
 継続と改善、加えて偏差値六十までの基礎学力定着に効果があるといわれているAI教材の活用もぜひ検討していただきたいと思います。
 次に、SNSを活用した教育相談についてお伺いいたします。
 子供たちが抱える不安や悩み等について、外部の相談窓口に、より気軽に相談できることは重要です。
 平成三十年の二週間の試行結果を踏まえ、令和元年度から通年実施に移行した、都教育委員会が実施しているSNS教育相談の昨年度の実績についてお伺いをいたします。

○増田指導部長 都教育委員会は、平成三十年度、都立高校の生徒を対象に二週間試行したSNS教育相談を、昨年度からは通年で対象を都内に在学する全ての中学生と高校生に広げて実施いたしました。
 昨年度一年間に寄せられた相談件数の合計は二千七百七十五件で、一日平均七・六件となっております。また、合計相談件数の内訳は、中学生から千四百九十六件、高校生から八百四十五件、その他不明等が四百三十四件となっております。
 なお、通常時は、同時に五人まで相談を受けることができるよう五回線を用意し、夏休み終了前後の期間など、生徒が不安を抱きやすいと考えられる時期には、回線数をふやして、十回線で対応いたしました。

○福島委員 相談対象を高校生のみから中学生まで広げ、相談期間を土日含めた通年とし、繁忙期には回線を拡充するなどした結果、合計二千件を超える相談を受けられたとのことです。
 この相談を受けた次は、SNS教育相談を利用した相談者をできる限り具体的な支援につなぐことができるようにすべきと考えますが、昨年度の取り組みについてお伺いいたします。

○増田指導部長 SNS教育相談は、匿名性が高いため気楽に相談できる一方、文字のみでやりとりを行うことから、相談員は送られてきた文言を通じて、子供の不安や悩みを敏感に感じ取って、適切に返信できるよう、対応力を向上させることが求められております。
 そのため、都教育委員会は昨年度、経験豊富な教育相談センターの心理職等がSNS教育相談における返信内容等について、検証、助言する体制を構築いたしました。
 また、SNS教育相談の相談員が不安や悩みの解消に向けて、子供の心情に寄り添った適切な対応ができるよう、同センターが蓄積してきた相談の手法を相談員の研修に活用するなどしてまいりました。
 さらに、寄せられた相談の中で重篤な内容やSNSのやりとりだけでは解決できない内容については、丁寧な返信を繰り返した上で、学校の教員や保護者などの信頼できる身近な大人や都教育相談センターの電話相談などの相談窓口に直接相談するよう促すなど、具体的な支援につなげられるようにしてまいりました。

○福島委員 ありがとうございます。これまでに実施してきた電話相談等で構築してきた支援、具体的には、信頼できる身近な大人や都教育相談センターの電話相談等につなげてきたことをお伺いしました。
 福祉保健局の決算の質疑でも述べたことなんですけれども、社会にはさまざまな価値観、物差しがあり、一つでもいいから自分に合うものを選び取れれば、人は案外元気に暮らせると考えています。
 核家族化が進み、コミュニティも衰退する中で、ICTを活用し、アクセスしやすい新たな受け皿を実現し、加えて相談者が所属していたコミュニティの外につなぐ取り組みをなされたこと、これを高く評価をいたします。
 次に、いじめ調査について伺います。
 学校が子供に対して行っているいじめに関するアンケートや、都教育委員会が学校に対して行っているいじめに関する調査はどのような方法で実施をしているのかを伺います。

○増田指導部長 各学校が行っている児童生徒を対象としたいじめ発見のためのアンケートにつきましては、アンケート用紙を配布し、回収するなどの方法で実施しております。
 実施に当たっては、子供が気になることや心配なことなどをためらわずに教員に伝えられるよう、二つ折りにして提出したり、家に持ち帰って記載したりするなどの工夫をしております。
 また、都教育委員会によるいじめに関する調査につきましては、各学校が表計算ソフトの様式にプルダウンや自由記述による方式で入力し、メール等により提出する方法で実施しております。

○福島委員 紙の調査が年三回に限られるのに対し、SNS教育相談で報告されたように、ICTを活用すれば、いつでも報告できるという常時性、そして匿名性により相談の敷居を下げることができます。
 一人一台環境も整備されるので、このいじめに関する調査についても、ICTを利活用、これにすぐにでも取り組んでいただくことを要望いたします。
 次に、シニアスクールカウンセラーについてお伺いいたします。
 昨年度から都教育委員会は、都立高校などに配置しているスクールカウンセラーを支援するため、シニアスクールカウンセラーモデル事業を実施しています。昨年度の実績についてお伺いいたします。

○増田指導部長 都教育委員会は、昨年度から三カ所の学校経営支援センターに一人ずつシニアスクールカウンセラーを配置しております。
 シニアスクールカウンセラーの役割は、スクールカウンセラーが抱える困難な事案に関する相談に応じたり、新規に配置されたスクールカウンセラーに助言したりすることなどでございます。
 昨年度一年間で、三人のシニアスクールカウンセラーが百四十三人のスクールカウンセラーに対し、生徒や保護者への相談や教員との連携のあり方等に関して、合計七百二十二件の支援を行ってまいりました。
 また、スクールカウンセラーを対象とした連絡会において、困難な事案に対する具体的な対応例や、高校一年生を対象とした全員面接の効果的な実施方法等について講演を行いました。
 さらに、学校経営支援センターの職員と連携し、校長等に対して、スクールカウンセラーの効果的な活用について助言するなどしてまいりました。
 こうした取り組みを通して、シニアスクールカウンセラーの助言を受けたスクールカウンセラーが不登校の子供に対して継続的な面接を行うことができるようになった事例や、シニアスクールカウンセラーが教職員に性自認について悩む生徒への対応のあり方を助言したことにより、学校としての共通理解を図ることができた事例などが報告されております。

○福島委員 私、先日の一般質問で、変化に前向きな教員を育成する研修について、先駆者に学び、同じ志を持つ仲間でつなげる研修の重要性、これを訴えたところです。
 同様に、各学校に一人だけ配置されているスクールカウンセラーが、経験豊かなシニアスクールカウンセラーに相談できたり、また、事例の積み重ねが浅い性自認の問題に関する対応についてアドバイスをもらえたりすることは、有意義な活動であると考えます。事業を高く評価いたします。
 次に、学びのセーフティーネットについてお伺いいたします。
 以前は勤労学生のための仕組みだった通信制課程も、現代では他の高等学校を退学して転入した生徒や義務教育課程で不登校だった生徒も多くいるというふうに聞いています。
 学びのセーフティーネット事業は、このような都立通信制課程の生徒や不登校で学校復帰を目指す生徒などを対象に、NPO等の外部機関と連携し、個に応じた支援を行う取り組みとして、これも平成三十一年度中に東部、中部、西部の都内三地区で事業を開始したと伺っています。
 本事業への参加者数と、その中で通信制課程に在籍する生徒数についてお伺いいたします。

○田中地域教育支援部長 参加者数は、各地区の定員七十人に対して、東部地区が六十八人、中部地区が六十六人、西部地区は六十一人の計百九十五人でした。
 都立高校通信制課程の生徒は、東部地区で五十一人、中部地区で三十七人、西部地区五十一人の計百三十九人で、全参加者のうち約七割を占めております。

○福島委員 事業計画時に予定していた人数が参加し、かつ通信制課程の生徒が七割を占めるとのご答弁でした。
 どのような方法で通信制課程の生徒へのアプローチを行ったのか、そのアプローチによって本事業への参加に至った生徒の割合について伺います。

○田中地域教育支援部長 都立通信制課程を設置する三校の教員に事業の趣旨を説明し、理解を得た上で、チラシやリーフレットを作成し、通信制課程の生徒へ周知を行っております。
 加えて、スクーリング時に都教育委員会からユースソーシャルワーカーを派遣し、生徒との間で良好な関係をつくりながら、学びのセーフティーネット事業への参加を呼びかけています。
 それらの取り組みを通じて、スクーリングに参加している生徒のうち、約二割の生徒が本事業へ参加している状況であります。

○福島委員 アウトリーチの成果であるものの、参加生徒がまだ二割であることがわかりました。必要な生徒に支援が届くよう取り組んでいただきたいと思います。
 この学びのセーフティーネット事業における都立通信制課程の生徒への支援の成果についてお伺いいたします。

○田中地域教育支援部長 本事業に参加している生徒からは、丁寧な学習支援を受けたことで、レポート作成に前向きに取り組めるようになった、また、NPOスタッフや同じ悩みを抱える生徒との交流をきっかけに、対人コミュニケーションに自信を持つことができ、アルバイトにも取り組み始めたといった感想が寄せられております。
 また、都立通信制課程の教員からは、スクーリング時に生徒からの学習についての相談がふえたこと、レポートの提出率が向上したという報告を受けております。

○福島委員 SNS相談事業のところでも述べましたが、核家族化が進むとともに、コミュニティも衰退し、子供が成長過程で交流できる大人の数が減少していると予想されます。
 従来所属していたコミュニティのほかに、新しいコミュニティに所属することで、多様な価値観、物差しに触れる機会をふやし、一つでもいいので、自分に合うものを選び取ることができるよう、本事業の継続と充実を要望いたします。
 次に、特別支援学校における医療的ケア児のスクールバス利用状況に関してお伺いいたします。
 増加する医療的ケア児の都立特別支援学校への通学を保障するために、平成三十年度に運行を開始した医療的ケア児専用通学車両の運行台数を拡大していくことは重要です。
 しかしながら、乗車する看護師を確保しようにも、医療的ケア児について勉強したことがないという看護師が少なくなく、いざというときに本当に自分が対応できるのかと不安を感じることが多いといわれています。運行台数の拡大に当たっては、専用通学車両内の医療的ケアに当たるために必要な専門的な知識、技術を習得する機会を看護師に付与し、乗車可能な看護師を育成していくことが求められます。
 これまでの看護師の乗車人数と、学校看護師が専用通学車両に不安なく乗車するための取り組みについてお伺いいたします。

○高木特別支援教育推進担当部長 医療的ケア児専用通学車両に乗車する看護師の乗車人数は、事業を開始した平成三十年九月の七人から、令和二年二月には百六十七人に増加いたしました。
 専用通学車両に乗車する看護師は、移動する車内でケアを行うだけでなく、緊急時対応も実施するなど、専門的な知識、技術が必要となっております。
 そこで、令和元年度は従来の校内での研修に加え、専用通学車両に乗車する学校看護師を対象として、医療的ケア指導医による緊急時対応等の集合研修を実施いたしました。
 今後も、各学校の医療的ケア児の障害の状態等に応じた研修を実施するなど、専用通学車両に乗車する学校看護師の資質、能力の向上を図ってまいります。

○福島委員 事業初年度には七人だったこの専用通学車両に乗車する看護師の数、令和二年二月には百六十七名まで増加したということで評価をします。
 加えて、今回乗車に必要な資質、能力の向上のための研修も実施していること、これも高く評価いたします。
 とはいえ、まだ看護師の数が十分でないために、乗車を希望する医療的ケア児の全てが利用できる状況にはなっていません。
 今月二十三日に東京都医療的ケア児者親の会が教育庁に要望書を届けましたが、そこには、人工呼吸器を利用する医療的ケア児の専用通学車両の利用や、看護師に加え代理人の乗車に関する要望も記載されています。
 看護師が圧倒的に量的に不足していることを踏まえまして、国でも医療的ケアの法制化が進んでいます。看護師に加えて、介護士やヘルパーが、医療的ケアを行えるようになるために必要な研修を受けるよう推進するとともに、特別支援学校など複数人で医療的ケアに当たれる環境で経験を積んでいただくなど、医療的ケア児を支える人材の育成に広く取り組んでいただくことを要望いたします。
 次に、免許法認定通信教育について伺います。
 免許法認定通信教育による免許状取得事業の執行率が一〇・四%にとどまっています。本事業はどのような事業かを伺います。

○浅野人事部長 都教育委員会は、都の特別支援学校の教員を対象に、特別支援学校教諭免許状の取得を促進するため、免許法認定通信教育受講者に対する補助事業を実施しております。
 本事業は、大学の通信教育による単位修得後、免許状を取得した者を対象としており、令和元年度は予算規模二十四名に対して四名に補助を行いました。
 また、この事業のほかにも、夏季休業期間中に大学を会場として行う免許法認定講習を実施しており、これらの二つの取り組みにより、特別支援学校教諭免許状の保有率は令和元年五月時点で八二・三%まで高まっております。

○福島委員 特別支援学校に勤める教員が特別支援学校教諭免許状を取得することは大切だと思います。
 本事業の執行率が低迷している状況に鑑み、課題を踏まえて対策をすべきと考えますが、見解を伺います。

○浅野人事部長 都教育委員会では、平成二十七年度から、特別支援学校において当該免許状を持たない全教員について、取得計画を作成し、教員が確実に免許を取得するように取り組んでおります。
 本事業については、受講者の都合による受講中断や応募者不足の状況があることから、令和二年度より自己申告の面接等において、校長と教員が意見交換しながら、受講中断に至った場合の計画の見直しや、夏の認定講習受講の都合がつかない場合に、通信教育も含めた免許取得の検討ができるようにしております。
 今後とも都教育委員会は保有率の向上に努めてまいります。

○福島委員 ありがとうございました。夏季休業期間中に大学を会場として行う免許法認定講習、これであるとしっかりと免許取得まで至るんだけれども、本事業、通信制で最後まで至ることがなかなか難しいということです。
 適切に通信制制度でもって取得していただける、これを望む教員がしっかりと取れるように適切なアドバイス、サポートをしていただければと思います。
 次に、非教員系小学校職員の免許取得事業、これについてお伺いいたします。
 子供たちが多様な価値観とかかわるために、一定の社会経験がある人も学校教育にかかわることはよいことだと思います。その意味で非教員系小学校職員の免許取得支援事業について注目しています。
 都では、教員確保策の一つとして、小学校に勤務するスクールサポートスタッフや事務職員などが小学校教員免許状を取得する場合、費用を補助する事業を実施していますが、この実績についてお伺いいたします。

○浅野人事部長 都教育委員会では、令和元年度から、小学校の実情に通じ、教育への熱意を有する教員以外の公立小学校職員に教職への道を開くため、教員免許状の取得に要した費用を補助する小学校職員の教員免許取得支援事業を実施しております。
 本事業の令和元年度の登録者数は六名であり、うち三名を都の小学校教員に採用いたしました。令和二年度は、三名を引き続き登録しております。

○福島委員 教員のなり手不足という課題が明らかになる中で、一方で、社会経験をした上で、やはり教育にかかわりたいという熱意ある人は少なくありません。
 本事業を、教員を目指す多くの人に活用していただきたいと考えますが、現在の応募者の基準では年齢が三十七歳以下となっています。年齢を問わず、意欲のある人材が教員を目指すことができるよう、応募できる年齢を引き上げることができないか伺います。

○浅野人事部長 本事業の応募条件のうち、年齢については、都の教員として一定期間活躍できるよう、年度末時点で三十七歳以下と定めております。
 今後、都の教員となる意欲を持つ者による小学校教員免許状の取得をさらに促進するため、年齢を含め、事業の見直しを検討してまいります。

○福島委員 都議会議員になって、地域の方と交流する中で、教育にかかわりたいという思いがある人が少なくないことを実感します。一方で、この事業の存在を知っている人はほとんどいません。興味を持った人に情報が届くよう取り組んでいただくことを要望いたします。
 最後に、東京の日本語教育を必要とする児童生徒に関する指導、これに関して取り上げたいと思います。
 東京の日本語教育を考える会が、平成三十年度の文部科学省の調査結果に基づき、日本の学校に在籍する外国人児童生徒数に占める日本語指導が必要な児童生徒数の割合を算出しています。
 これによれば、外国人児童生徒数が最も多い愛知県の小学校で七〇・三%、中学校で六六・七%日本語指導を受けることができているんですけれども、次に外国人児童生徒数が多い神奈川県の小学校であっても五二・三%、中学校では四四・五%がこの教育を受けていますが、三番目に外国人児童生徒数が多い東京都では、小学校で一九・〇%、中学校で三二・八%と、他の道府県に比べて低い値となっています。
 日本語指導が必要な児童生徒数の調査はどのような基準で実施しているのかをお伺いいたします。

○増田指導部長 ご指摘の調査における日本語指導が必要な児童生徒は、日本語で日常会話が十分にできない者または日常会話ができても、学年相当の学習言語能力が不足し、学習活動への参加に支障が生じている者と定義されており、校長が五月一日現在の在籍児童生徒の状況を把握し、報告しております。

○福島委員 平成二十八年には、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律、これが成立し、義務教育段階の教育機会の確保と日本語指導担当教員の基礎定数化がなされました。
 さきの団体は、都内では日本語能力が十分でないまま公立小中学校で過ごす外国人児童生徒が少なくなく、このため十分な教育を受けることができていないと指摘をしており、日本の学校に在籍する外国人児童生徒数に占める日本語指導が必要な児童生徒数の割合が東京都で低いことが、これを裏づけているとしています。
 今後各学校において一層きめ細かに実態を把握して、調査に回答し、指導の充実を図るべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。

○増田指導部長 外国人の児童生徒が、言語の違いを乗り越えて、日本人の児童生徒とともに希望を持って学校生活を送ることができるようにするためには、一人一人の日本語の習得状況に応じた個別の指導を充実させることが重要でございます。
 外国人の児童生徒には、日常生活で日本語をおおむね使いこなせているものの、学習に必要な日本語については十分習得できていないなど、さまざまな状況があることから、今後、都教育委員会は、各学校において個々の現状をより丁寧に確認した上で調査に回答するよう、校長連絡会や区市町村教育委員会の担当者連絡会等を通して、一層の徹底を図ってまいります。
 また、調査の結果から明らかになった実態を踏まえ、今年度作成する日本語指導のための児童生徒用テキストや映像教材のさまざまな活用事例を周知するなど、各学校において、日本語指導が効果的に行われるよう支援してまいります。

○福島委員 文部科学省は、日常会話はできるものの、教科学習に困難を感じている児童生徒を対象に、子供たちの言語能力と必要な学習支援を検討するための対話型アセスメントの開発を進め、日本語の力の段階を総合的かつ多段階的に六段階のステージで記述したJSL評価参照枠を策定しています。
 外国人児童生徒の日本語学習で先行する愛知県豊橋市では、ステージ二の途中の実力が必要であるとし、そのためには学校就学前の十週間、約二百時間の日本語教育が必要であるとの結論に至っています。
 ご答弁にあった日本語指導のための児童生徒用テキストは、合計四十ページです。二百時間かけて取り組む内容ではないと思います。
 次回の日本語指導が必要な児童生徒数の調査をやるに当たっては、それに先立ち愛知県や神奈川県の調査の実例に学ぶとともに、JSL評価参照枠も参照し、調査の精度を高めること、そして愛知県豊橋市の事例も参考に、日本語教育に必要な時数を算出し、来年度予算には改めて、求めた生徒数と必要な授業時間数を踏まえた日本語教育のための予算を要求していただくことを要望して、質疑を終えます。

○やまだ委員 私からは、まず、学校における働き方改革について、その具体的な取り組み、二点について伺ってまいりたいと思います。
 一つ目は、学校マネジメント強化モデル事業についてです。
 教員の長時間労働は、本人の健康だけでなく、教育活動にも深刻な影響を及ぼすことから、学校の働き方改革は大変重要な課題となっています。
 特に副校長には、校務が集中し、過大な負担となっています。業務を軽減し、学校経営により集中できる環境を整備する必要があります。
 そこで、一つは副校長の長時間勤務を解消し、負担を軽減すること、二つ目は教育管理職のなり手不足に対応するため、この二つの目的のために、都は、副校長を直接補佐する非常勤職員を学校に配置し、その効果を検証実施しています。
 この学校マネジメント強化モデル事業について、その実績と成果を伺いたいと思います。

○浅野人事部長 都教育委員会は、副校長を補佐する非常勤職員を学校に配置する学校マネジメント強化モデル事業を平成二十九年度から実施しており、令和元年度は小中学校百十七校、都立学校十四校に配置いたしました。
 これまでの検証では、副校長の一週間の勤務時間が平均で六時間三十分短縮され、また、学校経営や人材育成など、本来業務を行う時間がふえることで、副校長のやりがいにつながるとの評価も得ております。

○やまだ委員 令和元年度実施校が小中学校で百十七校、高校は令和元年度からということで十四校、この二十九年度のモデル実施から着実に進んでいるんだと思います。
 とはいえ、平成三十年度と比較して、特に八十時間以上の過労死ライン相当の教員の割合が大きく減少するなど、時間外労働の状況は一定の改善は見られるものの、やはり国の定める上限時間、月四十五時間を超える教員も依然多く存在しており、これまでの成果等を踏まえ、さらなる取り組みの強化を図る必要があると思います。
 副校長の仕事の負担が大きい状態が続き、やりがいにつながらなければ、教員が副校長の仕事に魅力を感じず、管理職を目指さなくなり、深刻な管理職不足になります。
 本事業は、教育管理職のなり手不足に対応し、管理職を確保するためにも、本事業により副校長の負担が減り、学校経営や人材育成に集中できる様子を広く教員に伝えるべきと考えますが、その取り組みについて伺いたいと思います。

○浅野人事部長 副校長の負担を軽減し、生き生きと活躍する副校長の姿を教員に伝え、職の魅力を向上させることは、管理職を確保していく上でも重要でございます。
 これまでも、教員に配布する管理職選考受験啓発リーフレットにおいて、本事業の内容及び効果を記載し、周知を図ってまいりました。
 今後は、さらに本事業の効果の実例として、授業観察の時間がふえ、教員への指導が充実した、新たな地域連携事業を行うことができたといった現役の副校長の声についても教員に広く紹介することにより、管理職の確保に努めてまいります。

○やまだ委員 副校長の勤務時間が減っていく、さらに強化をしつつ、実際に六時間三十分と、一週間で削減されている、この成果もしっかりと伝えていくこと、この間もこういったリーフレットですね、ご案内をされているということでご答弁にもいただきましたが、私も拝見しました。最後のページの一部にこのモデル事業をやっていますという内容になっています。
 こういった事業の成果が、このようなパンフレットの中にも明確に示されて、さらに教員の先生方も、そして副校長の当事者の皆さんも、やりがいを感じて、さらに努力していただく、そんな環境づくりが求められると思います。
 そのような周知方法にも今後配慮いただきながら進めていただければと思います。さらなる時間削減の努力と、そして周知の工夫について求めて、この質問を終わりたいと思います。
 もう一点は、部活動指導員についてであります。
 教員の負担を減らしながら、活動の質を高める目的で導入された部活動指導員制度、この部活動指導員制度の令和元年度における配置状況と成果について伺いたいと思います。

○瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、部活動指導員の配置促進に取り組んでおり、令和元年度、都立学校百六十三校に六百十二名を配置し、中学校には国の補助事業を活用して、二百二十四校四百十三名の部活動指導員の配置を支援いたしました。
 その結果、学校からは、生徒の技能や意欲が向上した、教員が教材研究の時間を確保できるようになったなどの効果が報告されております。

○やまだ委員 百六十三校に六百十二名、中学校では二百二十四校四百十三名、私も地元の中学校で、毎年部活動がなくなる、ぜひどうにかしてほしい、そういったご要望を毎年受けてまいりました。
 この部活動指導員制度ができたことで、子供たちが望み、そして、学校として、先生の負担を減らしながら、部活動の教育ができる、このことは本当に大きな、地域としては喜ばれている制度であります。
 着実に活用が進み、部活動指導員の先生方がふえ、配置がふえ、活用が多くなる点について、あわせて人材の質の向上も取り組まなければならないと思います。
 部活動指導員は、部活動の顧問として、技術的な指導を行うだけではなく、日常的な生徒指導を行うことが求められてきます。
 学校教員は、指導内容だけではなく、生徒の様子や事故が起きた場合の対応などについても、頻繁に情報交換を行い、関係機関とも十分な連携を図ることが求められていることから、部活動指導員の資質向上が求められますが、部活動指導員の具体的な資質向上に向けた取り組みの内容について伺いたいと思います。

○瀧沢指導推進担当部長 学校が部活動指導員を効果的に活用できるようにするためには、その資質向上を図るとともに、教職員と適切に連携し、指導できるようにすることが重要であります。
 そのため、都教育委員会は、部活動の教育的意義や教職員との共同体制の構築、部活動のあり方に関する方針等についての総合的なガイドラインを全ての部活動指導員に配布し、周知をしております。
 また、部活動指導員を対象とした研修会を年二回実施し、職務上守るべき法令に関する内容、安全の確保や事故発生時の対応、体罰の防止及び人権感覚等について学ぶ機会を設けまして、学校職員としての自覚を促すとともに、質の担保を図っております。

○やまだ委員 資質向上の取り組みとして、適切な教職員との連携、また、ガイドラインを配布していただく、研修を年二回行い、学校職員としての自覚、質の担保を図られているということでありました。
 都立学校とともに、中学校においては区市町村ごとの人材導入であります。その導入方法は、それぞれの区市町村で違います。
 例えば、体育協会を通した各種連盟からの派遣や学校ごとの直接の雇用、また、人材バンクからの派遣など、それぞれの活用の仕方があります。それだけいろいろな方が部活動指導員としてかかわることになります。
 このようなさまざまな方々を事故のない安心した環境の中で活動できるように、東京都としても今ご答弁いただきましたガイドラインの配布、そして研修をさらに強化していただきたいと思います。
 教員の負担を減らしながら、子供たちが望めば、安全に学校で部活動ができる環境を、ぜひ都としても区市町村と十分連携をとっていただきたいと思います。
 部活動において、これまでも指導者による懲戒処分や文書勧告、口頭注意の措置を行ったケースなどは、この間、二十八年からまだ続いております。このようなこともしっかりと見ていただきながら、安全で、そして教職員の方々の負担を減らしながら授業が行われよう、さらなる連携の強化をお願いしたいと思います。
 続きまして、スクールソーシャルワーカーの配置支援について伺いたいと思います。
 子供たちを取り巻く環境が複雑化、多様化する中、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待など、子供たちの生活指導上の課題に対応するため、スクールソーシャルワーカーは教育分野に関する知識に加えて、社会福祉等の専門的な知識や技術を用いて、子供たちが抱えている問題の解決に向けて、置かれたさまざまな環境へ働きかけたり、関係機関とのネットワークを活用するなど、支援を行っています。
 このスクールソーシャルワーカーの小中学校における活用に向けた昨年度の都教育委員会の取り組み実績とその成果について伺いたいと思います。

○増田指導部長 都教育委員会は、平成二十一年度から区市町村教育委員会のスクールソーシャルワーカーの配置計画に沿って、その経費を補助しており、昨年度は四十九の自治体における配置を支援いたしました。
 また、スクールソーシャルワーカーの対応力の向上を図るため、昨年八月に開催した連絡会において、社会福祉の実務経験が豊富な学識経験者による講演を設定するとともに、スクールソーシャルワーカー同士が協議を通して、学校や関係機関との連携のあり方等について情報を共有できるようにいたしました。
 こうした取り組みの成果として、スクールソーシャルワーカーが不登校の児童生徒の家庭を繰り返し訪問し、家庭環境の改善を図ったことにより、登校できるようになった事例や、児童虐待の通告後、スクールソーシャルワーカーが子供家庭支援センターと連携して、保護者への支援を行ったことにより、虐待が解消された事例などが報告されております。

○やまだ委員 四十九の自治体で配置を支援され、対応力向上のための連絡会や協議会によって、家庭環境の改善を図ったり、保護者への支援が行われるなど、スクールソーシャルワーカーの活用でさまざまな成果が上がっていることはわかりました。
 一方で、スクールソーシャルワーカーの活用状況は、区市町村によって差が見られます。各自治体が学校に対しスクールソーシャルワーカーをどのように派遣をしているのか伺います。

○増田指導部長 スクールソーシャルワーカーの派遣の方法は、自治体ごとに異なっております。
 例えば、区市町村教育委員会に配置されたスクールソーシャルワーカーが、学校の要請に応じて訪問する方法や、拠点となる学校に配置されたスクールソーシャルワーカーが、あらかじめ定められた日程で近隣の学校を巡回する方法などがございます。

○やまだ委員 派遣の仕方は自治体ごとに違う。また、区市町村での派遣の中でも、やはり学校ごとに、もっといえば学校長ごとにその取り組み方法がかなり異なっています。
 熱心に取り組むところ、また、違った形で活用が少し控え目なところ、区市町村だけではなく、学校ごとにそのような取り組みの差異がある。
 先ほどの一つ目の質問の中でご答弁、スクールソーシャルワーカー同士が協議を通じて情報共有して、さまざまな取り組みとして派遣をしている、そのようなご答弁ありましたが、やはりここはスクールソーシャルワーカーだけでなく、学校ごとの取り組みの交流、情報共有も含めたさらなる取り組みの強化を、東京都として、都として、ぜひ進めていただきたいと感じています。
 教育の現場、学校においても、安心して勉強ができる、学校生活が送れるのは、やはり心の安定や家庭環境が安定してこそ、初めて勉強が行えます。学校から家庭に入って、それぞれの家庭を解決するスクールソーシャルワーカーの存在は、今大きな役割を担っています。
 国では、スクールソーシャルワーカーの配置について、平成三十一年度までに中学校区に一名の配置を目標として、国基準として定めました。
 東京都、そして区市町村とともに情報共有しながら、中学校区一名を目指して、積極的な取り組みを進めていただきたいことを要望しておきたいと思います。
 続いて、都立高校における不登校、中途退学対策について伺いたいと思います。
 都立高校においては、入学の段階で生徒の能力、適性、趣味、関心などに合った学校で生徒を受け入れていくことが、その後の不登校や中途退学を未然に防止する上での第一歩になっていくと考えています。
 その点では、都では生徒の能力、適性、趣味、関心、希望進路など、多様化に対応するため、普通科目から専門科目まで幅広く学べる総合学科高校、学習時間帯を午前、午後、夜間の三部から選択して入学する昼夜間定時制高校など、多様なタイプの都立学校の設置が進められており、さまざまなニーズを持つ生徒を受け入れる体制は整えてこられていると思います。
 ソフト面では、自立支援チームが連携の中心となり、本人と学校や関係機関をつなぎ、不登校、中途退学対策を行っています。
 ここで、都立高校における不登校、中途退学対策については、未然に防いでいくという観点が重要だと考えますが、改めて都教委が実施している都立学校自立支援チーム派遣事業の目的と実施方法について伺いたいと思います。

○田中地域教育支援部長 都立学校自立支援チーム派遣事業は、中途退学の未然防止、不登校生徒への支援、生徒及びその家族が抱える課題への福祉的支援、都立高校中途退学者への就労、再就学支援を通じて、若者の社会的、職業的自立を目指しております。
 就労や福祉の専門的知識や技術を持つユースソーシャルワーカーから成る自立支援チームは、都立高校や地域の関係機関との連携関係を構築しつつ、生徒が置かれている状況を把握し、ケース会議や面談等において、専門性を生かした助言を通じて、一人一人の状況に応じた課題の解決に取り組んでおります。

○やまだ委員 一人一人の状況に応じた課題の解決に取り組んでいる。ユースソーシャルワーカーとは、若者の自立を支援するユースワーカーの役割と、ソーシャルワーカー、若者を取り巻く生活、家族等のさまざまな問題の解決と軽減の役割を合わせて一体化したものと、青年期のこの世代、時代に特化したメンバーでの対応、自立支援、高校の復帰であったり、就職への進路を決めたり、また高校卒業の資格を取得するなど、それぞれの個人に合った道を一緒に取り組んでいく、それぞれの連携ができる体制だとわかりました。
 都立学校自立支援チーム派遣事業の実績と成果をここで改めて伺いたいと思います。

○田中地域教育支援部長 令和元年度の支援実績は、生徒等に対する相談情報提供や就労、福祉、医療等の関係機関との関係づくりを進めるなどの支援を三千二十人の生徒に対し累計一万二千二百二十八回実施しております。
 ユースソーシャルワーカーによる就労や福祉の支援を通じて、都立職業能力開発センターと連携し、生徒を進路決定に導いた事例や、児童相談所と連携し、生徒の生活の不安を解消して、登校できるようになったなどの事例を積み重ねております。
 また、都立高校の校長からは、課題を抱えた生徒へのきめ細かな対応に対する教員の意識が高まったなどの評価がございます。

○やまだ委員 それぞれの取り組みの中で累計一万二千二百二十八回実施されている。この取り組みでかかわった生徒がその後どのような形で道を歩んでいくことになったのか、そういった実績や内容についてもぜひ今後フィードバックをしてもらいながら、その結果を今度は次の取り組みにつなげていただくような、そんな取り組みを行っていただきたいと思います。取り組みの決定率ですね、どちらの道に進んだのか、その決定率についても今後調べていただきたいと思います。
 自立支援チームの活動には、保護者と、そして情報共有、交換が重要になる、学校との連携が最も重要です。生徒たちの不登校、また、中途退学などを未然に防いでいくためには、早い段階から生徒の変化に学校が気づき、そして親が気づき、自立支援チームにつなげていけるよう、その体制づくりの強化が求められると思います。ここは学校との意識共有、連携強化を求めておきたいと思います。
 最後に、教育電話相談、電子メール相談について伺いたいと思います。
 幼児から高校生相当年齢までの子供を対象として、子供や保護者や学校関係者から寄せられる教育に関するものなど、都教育委員会ではさまざまな相談に対応できるよう教育相談事業を実施していますが、昨年度の電話相談やメール相談の実績について伺いたいと思います。

○増田指導部長 都教育相談センターでは、年間を通じ、夜間休日等も含めた二十四時間体制で児童生徒本人やその保護者等からの相談に対応しております。
 昨年度の相談回数は、電話による教育相談が一万五千三百五十九回、メールによる相談が二百五十七回でございました。電話相談の内容の主な内訳は、家族関係が千七百七十五回、いじめが千三百六十六回、友人関係が千二百八十二回などとなっております。また、メール相談の内容の主な内訳は、学校や教師への苦情が六十七回、いじめが二十八回などとなっております。

○やまだ委員 電話による教育相談一万五千三百五十九件、この内訳を拝見いたしました。保護者の方からの割合が半分以上を占めているということで、子供から、また保護者まで幅広く活用されている。そんな中で、平成十九年から年間を通じた夜間休日等も含め二十四時間体制へ拡大、また専用回線を開設するなど対応も柔軟に、そして拡大されていると思います。
 このような体制の中でやはり求められるのは、相談員の方のスキルアップ、対応能力についてであります。教育相談センターでは、電話相談やメール相談など、どのように充実させてきたのか伺いたいと思います。

○増田指導部長 教育相談におきましては、児童生徒がみずから解決に向かう力を引き出すことが重要であり、都教育相談センターでは相談員が相談者の気持ちに寄り添いながら丁寧に対応するよう努めております。一方で、法律を根拠とした助言を行ったり、適切な関係機関につないだりすることができるよう対応力を高めていくことが必要でございます。
 そのため、昨年度、相談員対象の研修会を十一回開催するなどし、いじめ防止対策推進法や児童虐待の防止等に関する法律等についての理解を深めるとともに、自殺をほのめかす内容の相談があった場合の児童相談所や警察との連携のあり方等について学ぶことを通して、相談員の対応力向上を図ってまいりました。

○やまだ委員 相談者に寄り添うこと、また、法律を根拠とした助言を行ったりなど、新しい対応力を高めていく、そんな取り組みがされているというご答弁でした。
 電話相談、匿名で誰でもかけやすい、もちろん、SNSによる相談も敷居が低く、今の時代、相談しやすい環境であると思います。一方で、すぐに誰かに声を聞いてほしい、話を聞いてほしい、反応をしてほしい、そういった意味では、電話相談の位置づけもまだまだ大きな役割があると思っています。まず、一人で抱えず誰かに話してみること、そのような声を上げやすい環境をどのようにつくっていくのか、現在のように二十四時間対応など整えながら、相談員の方のスキルでさらに相談者のお気持ちが和らぐ、また、次の行動を思いとどまってもらうような取り組みにつなげていただきたいと思います。
 先ほどもお話をいたしましたが、相談者の六二%は保護者からであります。大人の場合、他の関係機関の紹介など、匿名であっても次の段階に進めることがしやすい環境でないかと思います。ぜひ、この電話相談にとどまらず、次の関係機関につなぐための連携についても強化を求めたいと思います。
 そして最後に、いじめについての相談も多く上げられています。子供たちのいじめだけでなく、大人も含めて、いじめについて、リーフレットや見やすいカード式のものも、周知のチラシをつくられていますが、その中には、自分のいじめに対する思いを電話相談でするだけではなくて、お友達がいじめを受けている、嫌がらせを受けている、そういったものも受け付けるよという内容をぜひ入れていただけたらなと思います。自分では声を上げられなくても、他者から声を上げて未然に防止していくこと、被害を少なくしていくことが可能だと思います。
 さまざまな角度からそれぞれの相談者に寄り添った、そんな取り組みを求めて、質問を終わりたいと思います。

○伊藤委員 一月末に、日本における初めての新型コロナウイルス感染患者の発生から始まり、二月から三月と、年度末を迎える子供たちや保護者にとって、また先生方を初め学校関係者にも不安と、そしてまた、恐怖が広がったわけであります。また、教育現場においてもクラスターが発生するなど、感染を拡大させないために、そして何よりも子供たちのかけがえのない命を守るためにも、学校の一斉臨時休業はいたし方がなかったというふうに思います。
 一方、突然の学校休業という対処に不安と戸惑いの声が都議会公明党にも多く寄せられたところであります。その際、都教育委員会は、年度末に臨時休業に向かう中、各学校が間近に迫る卒業式や学年末の学習評価、そしてまた、春季休業中の教育活動等が混乱しないよう、どのように適切な対応方法を学校に示してきたのか、都教委の取り組みを伺いたいと思います。

○増田指導部長 都教育委員会は、都立学校に対して、二月二十六日付で学校における感染症予防の徹底や教育活動に関する基本的な対応方針を、また、二月二十八日付で国の休業要請に基づく学校の対応について通知いたしました。
 なお、区市町村教育委員会にはこれらの通知の内容を周知し、適切な対応を求めてまいりました。
 これらの通知の中で、卒業式については、参列者の制限や時間の短縮などの感染症予防対策を講じた上での実施方針を示すとともに、学年末の学習評価の考え方や休業中の自宅学習のあり方等を示しました。
 なお、自宅学習の実施に当たりましては、オンライン学習など積極的にICT機器を活用するように促してまいりました。
 また、新学期に向けては、三月二十六日付で国の学校再開ガイドラインを踏まえた都立学校版感染症予防ガイドラインを通知し、各学校における感染症予防対策や教育活動上の留意点等を示したところでございます。

○伊藤委員 今ご答弁いただいた中に、学校休業中、自宅学習の実施に当たっては、積極的にICT機器を活用するよう促したという答弁がございました。
 そもそもICT機器の整備は、区市町村や学校によってかなりの格差があって、コロナ禍で現場の先生方が大変にご苦労されたと聞いております。ある地域では、ICT機器の整備が進んでおらず、先生が手づくりで課題を作成して子供たちや保護者とのやりとりをしたというふうにも聞いております。
 このたびの新型コロナウイルスによって日本全体のICT化、デジタル化がおくれていることが浮き彫りとなったわけでありますけれども、世界に向けて次の時代を切り開いていく人材を育んでいく教育現場においては、その対策は喫緊の課題であります。
 そこでまず、都立学校及び都内公立小中学校の令和元年度までの端末整備状況について伺いたいと思います。

○岩野企画調整担当部長 令和二年三月時点の端末一台当たりの児童生徒数は、都立高校及び特別支援学校等では三・九人、区市町村立小中学校では四・八人となっております。

○伊藤委員 都立高校及び特別支援学校等では三・九人に一台、区市町村立小中学校では四・八人に一台ということでありまして、教育現場でのICT環境の整備は急がなければならないと考えます。
 都議会公明党は、この課題について、本会議の代表質問、また一般質問、そしてまた委員会等でたびたび取り上げてくる中、都は、都内公立小中学校におけるICT利活用モデル検証事業に取り組んでいるということでありますが、その成果について伺いたいと思います。

○岩野企画調整担当部長 都教育委員会は、令和元年度から二年間、区市町村教育委員会と連携し、ICT機器の活用及び効果等について研究するICT利活用モデル検証事業に取り組んでおります。
 この事業では、通信機能を備えた一人一台の端末とクラウドサービスを活用し、授業中にクラス全員の考えを一斉に共有することにより、子供同士が対話しながら自分の意見をまとめるなど、主体的な学習の取り組みが見られております。また、グループ発表をまとめる際、クラウドのコメント機能を活用し、助言し合い、即時に資料を改善するなど、子供たちがみずから課題を追求し、よりよい解決策をグループ内で議論できるようになっております。
 本実証研究から、ICTを活用することで子供たちが必要な情報や課題を判断し、それをもとに自分の考えをつくったり決めたりする自立した学びや、対話的な学びの実現が確認できているところでございます。

○伊藤委員 令和元年度から二年間のモデル事業ということでございまして、もう既にその成果が、今答弁いただいたように明らかになっているというふうに私は思います。
 ただ、このモデル事業なんですが、お聞きすると、小学校でオール東京で二校、中学校で一校ということで合計三校ということでありましたけれども、それでは、このICT利活用モデル検証事業実施校において、コロナ禍における昨年度末三月の学校休業期間中に端末を活用して家庭学習を行うことができたのかどうか伺いたいと思います。

○岩野企画調整担当部長 新型コロナウイルス感染症による令和二年三月上旬からの休業期間中、ICT利活用モデル検証事業対象校のうち、中学校三年生を対象に端末の家庭への持ち帰りを行った学校がございました。
 生徒は、休校中でも家庭で教員がクラウドサービスを活用して配信する小テストや課題に取り組み、回答結果から、できない問題を反復して実施するなど、一人一人の理解や習熟の程度に応じ学習することで知識の定着を図っていました。
 また、教員は、クラウドから生徒の家庭での学習履歴を把握することができておりました。

○伊藤委員 新型コロナの影響による学校の臨時休業が長期化すれば、懸念されることの大きな一つが、環境によって学習のおくれ、そしてまたもう一つは、理解、習熟度などの格差が生じることであります。
 今後、コロナの第三波やその先も見通して、何度もいいますけれども、ICT環境整備は早急に取り組まなければならない都としての重要課題であります。
 都議会公明党は、都立学校における一人一台のモバイル端末の整備や、学校の高速通信環境、つまりWi-Fiの早急の整備を求めてまいりました。これに応え、都はBYODに取り組むということにしておりますけれども、BYOD研究校事業の取り組みと成果について伺いたいと思います。

○岩野企画調整担当部長 都教育委員会は平成三十年度から二年間、都立学校十校をBYOD研究校として指定し、校内にWi-Fi環境を整備し、生徒が所有するスマートフォン等を活用して学習を行うBYOD研究事業を実施いたしました。
 令和元年度は、生徒一人一台の端末を常時接続した状態でクラウドを活用した学習支援を行い、その有効性や導入時の課題等について検証を行いました。
 具体的に、生徒は、教員が配信した学習動画やウエブドリルで学んだり、取り組んだ課題を教員にウエブで提出し、教員からコメント等で返答を受け、自分のペースに合わせた学習に取り組むことができておりました。また、教員は、個々の生徒の学習の進度を容易に把握できるようになりました。探求的な学習では、課題に対し、調査内容の情報共有やそれに基づく意見交換、また、生徒が協働し調査結果をまとめ発表するなど、一人一台の端末やクラウドを活用した取り組みが各校で行われました。
 これらの取り組みから、本事業の成果として、生徒一人一台、常時接続下での授業では、生徒一人一人の習熟度に応じた学びが見られるとともに、場所や時間を問わず、生徒の協働した主体的、対話的な学びが見られるなど、意欲的な事業が行われていることが確認できたところでございます。

○伊藤委員 BYOD、この横文字が、アルファベットが並ぶわけですけれども、ブリング・ユア・オウン・デバイスという、つまり、あなたが持っているスマホを学校に持ってきて授業で使ってくださいねと、こういう取り組みであるわけですよね。しかし、教室にWi-Fi環境がなければ通信料は生徒側の負担になってしまう。また、経済的理由でスマートフォンを持たせられない家庭もある。また、家庭の方針としてスマートフォンはまだ持たせたくない、こういう家庭もあるというふうに聞いています。
 今後、都は、都立学校において一人一台のモバイル端末の整備や学校の高速通信環境、Wi-Fiの整備を早急に取り組んでいただきたいと要望しておきたいと思います。
 次に、学校体育館のエアコン設置について伺いたいと思います。
 近年では、毎年のように大型台風や豪雨によって河川の氾濫等が発生をして、そのたびに五十年に一度、百年に一度の災害といわれるようになっております。そして、被災された方々が避難する避難所では、不自由な生活を余儀なくされることが課題となる中、避難所となる体育館に空調設備を整えておくことの重要性を都議会公明党は繰り返し強く都に求めてまいりました。
 この要請に応え、都は学校体育館等への空調整備について、区市町村では都独自の補助制度を活用して、平成三十一年度から本格的に整備に取り組んでおります。
 そこで、現状における整備状況と今後の整備見込みについて、そしてまた区市町村立小中学校と都立高校のそれぞれ確認をさせていただきたいとともに、小中学校の整備について、コロナ禍においての影響はどうだったのか、その認識もあわせて伺いたいと思います。

○田中地域教育支援部長 都内区市町村立小中学校の整備率については、文部科学省の令和二年九月一日現在の調査において五一・二%となっております。また、東京都公立学校屋内体育施設空調設置支援事業の最終年度である令和三年度末の整備率は、本年五月に都が実施した区市町村の意向調査によると、約八五%となる見込みでございます。
 都立高校については、令和二年九月一日現在、百八十九校中、六四・六%に当たる百二十二校の整備を完了しており、改築工事中の高校を除き全ての都立高校について令和三年度末までの整備に向けて計画的に取り組んでいるところでございます。
 小中学校の整備におけるコロナ禍の影響について問い合わせをしたところ、本年度、一地区一室について工期が確保できないために本年度の工事を見合わせた事案がありましたが、令和三年度での実施を予定していると聞いており、現時点では大きな影響は生じていないと見込んでおります。

○伊藤委員 次に、医ケア児のスクールバスについて伺いたいと思います。
 医療的ケア児専用通学車両の実績と看護師確保に向けた取り組みについて伺いたいと思います。
 平成三十年第一回都議会定例会における都議会公明党の提案、要望を受け、都教委は、平成三十年度に医療的ケア児専用通学車両の運行を開始し、看護師を同乗させることで医療的ケア児の学ぶ機会の拡充及び保護者の負担を軽減してきたということについて高く評価をしたいと思います。
 医療的ケア児専用通学車両で通学できる子供たちがふえ、保護者から大変にありがたいという喜びの声が届いております。一方で、一部の車両にはいまだ保護者が乗車していると聞いております。
 今後も専用通学車両の運行台数を一層拡充していくことが重要でありますが、拡充に当たっては、同時に看護師を確保していくことが求められるわけであります。
 そこで、医療的ケア児専用通学車両のこれまでの実績と、看護師確保に向けた都の取り組みについて伺いたいと思います。

○高木特別支援教育推進担当部長 医療的ケア児専用通学車両の運行実績は、事業を開始した平成三十年九月の八校、十四コースから、約一年半後の令和二年二月には、専用通学車両での通学が必要な子供の在籍する全ての肢体不自由特別支援学校、十七校、五十四コースに増加いたしました。これに伴い、専用通学車両に乗車する子供は平成三十年九月の二十四人から、令和二年二月には九十六人に増加をいたしました。
 また、専用通学車両に乗車する看護師の確保につきましては、校舎外壁等への看護師募集の横断幕設置や人材紹介会社の活用、職能団体との連携などにより積極的に取り組んでおります。
 この結果、看護師数は、平成三十年九月の七人から、令和二年二月には百六十七人に増加いたしました。これにより保護者同乗の割合は三七・七%まで低減しております。
 今後も保護者の同乗を解消するため、看護師の確保に努めてまいります。

○伊藤委員 保護者同乗の割合は、親御さんが一緒に乗っている割合は三七・七%まで低減したということでありました。短期間でここまで台数を確保してコースを拡充して、対象児童がふえたことについては評価をいたします。
 しかし、保護者同乗の割合が三七・七%ということは、いまだ医療的ケア児の学ぶ機会の確保や保護者の負担軽減に残念ながら及んでいない実態があることも事実であります。今後も看護師の確保について全力を上げていっていただきたいと要望しておきます。
 次に、都議会公明党はこれまで、英語教育を充実させ、使える英語を身につけて世界に羽ばたく人材の育成を目指し、東京都版英語村の創設を提案し、平成三十年九月に江東区青海にTOKYO GLOBAL GATEWAYが開設されました。その利用者からの声は大変に好評で、繰り返し利用したいという声が寄せられております。
 ことしの九月で開設より丸二年を迎えたわけでありますが、昨年度のTGGの利用者数と特徴的な取り組みについて伺いたいと思います。

○瀧沢指導推進担当部長 昨年度は、新型コロナウイルスの感染拡大によりまして、三月の利用予約がほぼ全てキャンセルされるなどの影響を受けたものの、約八万人の児童生徒が利用をいたしました。
 TGGでは、海外を想定した疑似空間の中で、身近な話題に関するミッションに挑戦するプログラムや、さまざまなテーマに関する内容を英語で学びディスカッションするプログラムなどを英語の習熟度に応じた内容で提供しております。各プログラムには、四十以上の国や地域を出身地とする多様な外国人スピーカーが付き添いまして、子供たちの発話を促し、英語が通じたという成功体験を得られるよう工夫しております。

○伊藤委員 このTGGの利用について、私は以前から、島しょの児童生徒にも利用してもらえるよう求めてまいりましたけれども、島しょの児童生徒の利用状況や利用者の反応について伺いたいと思います。

○瀧沢指導推進担当部長 昨年度は、島しょ地域から小学校四校、中学校六校、高等学校四校が利用をいたしました。
 児童生徒からは、一日でこれほどたくさんの英語を話したことはなかった、新鮮な体験であった、自分から英語で発言するのはとても楽しかったなどの声が聞かれました。
 引率した教員からは、生徒の表情が生き生きとしていた、利用後、英語の授業で積極的に発言するようになったなどの意見が寄せられております。

○伊藤委員 都議会公明党は、このTGG、視察をさせていただきましたけれど、本当に異次元の空間というか、東京にいながら外国にいるような気分を味わえるすばらしいところであります。ましてや、この島しょ地域の子供たちにとってはかけがえのない経験になるというふうに私は思います。
 島しょ地域は陸続きではありません。交通機関も船や航空機が必要であることから、交通費だけでも相当な負担になるというふうに思います。今後はTGGの利用料金について、島しょの子供たちには特別な配慮が必要だというふうに思いますが、本日は要望にとどめておきたいと思います。
 あと四カ月余りで東日本大震災から十年を迎えます。都議会公明党は一貫して、三・一一を忘れない、そして被災地を風化させないことを都政のあらゆる場面で求めてまいりました。
 そのうちの一つに、被災地との連携によるパラスポーツの交流事業があります。この事業は、修学旅行等で東京を訪れる被災地の中学生と東京の中学生がパラスポーツを一緒に体験するなどの交流を通して、他者を尊重し、ともに認め合う心を培う事業として実施をされているわけでありますが、これまでの取り組み状況と成果について伺いたいと思います。

○瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、オリンピック・パラリンピック教育において、平成三十年度から、都内の子供たちと修学旅行等で東京を訪れる被災地等の子供たちがパラスポーツを一緒に体験するなどの交流の機会を提供してまいりました。
 平成三十年度は、世田谷区立東深沢中学校が宮城県石巻市立山下中学校と交流を実施いたしました。令和元年度は交流校を拡充し、品川区立豊葉の杜学園と宮城県石巻市立河北中学校が交流を実施したほか、都内中学校二校が宮城県の公立中学校二校と交流を行いました。
 各実施校では、事前にお互いの都市や震災について調べた学習の成果をビデオで交換した上で、当日はボッチャによる交流を行い、後日、交流の感想を手紙にして送るなどの活動を行いました。
 交流した生徒からは、ボッチャは障害の有無に関係なく仲間と協力することができるスポーツだと思った、震災はたくさんの被害をもたらすことがわかった、震災に遭った人たちの思いも一緒に心に刻んでいきたい、東京都の中学生と交流する機会はなかなかないので貴重な体験だったとの感想が聞かれるなど、生徒たちの障害者への理解が促進されるとともに、互いに認め合う心など、共生社会の実現に必要な資質、能力を育むことができました。

○伊藤委員 都議会公明党は、三・一一、あの災害が発生してから何度も現地に行き、現地の声を聞いてまいりました。その中で、被災地の町長あるいは村長から、本事業のことについて、こういうことを東京がやってくれたら子供たちの一生の財産として残してあげることができる、こういう現地からの声を私たちは提案をさせていただいたものでございます。
 私は、平成三十年度には、世田谷区立東深沢中学校と宮城県石巻市立山下中学校の交流を、そしてまた令和元年度は、品川区立豊葉の杜学園と宮城県石巻市立河北中学校の交流を視察させていただきました。
 どちらも、ただ当日に交流するだけではなく、今答弁をしていただいたように、事前からの学習として、東京の中学生は、宮城県の石巻が震災によってどのような被害に遭ったのか、そして今どのように力強く復興に立ち上がってきているのか、これを学んでいました。そして、石巻の生徒たちは、東京の地域特性や二〇二〇大会に向けてオリンピック・パラリンピック教育を学んで、お互いに事前にビデオ交流を行いながら当日を迎えておりました。
 そして当日は、東京の中学校を訪れた石巻の生徒たちを学校を挙げて大歓迎で迎えて、一緒にお昼ご飯を食べたり、ともにボッチャを通して交流をしておりました。私は、不思議だなと思ったのは、出会って数時間しかたっていない、初めて会う、またそして、違う制服を着た中学生同士がお互いに肩を組んで笑顔でボッチャを楽しんでいる姿に心から感動しました。
 現在は、新型コロナの影響でこうした事業が実施できていない状況があるわけでありますが、今後、そしてまた来年の二〇二〇大会後も、ぜひともこうしたすばらしい交流事業を継続していただき、同じ時代をともに生きていく若い人材たちに共生、共助社会の大切さを学ぶ機会をつくっていただきたいと申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○尾崎委員 私の方からは、最初、エアコン設置について幾つか質問をしたいと思います。
 私は、多摩地域の小中学校にエアコンをつけてほしいと市民の皆さんと署名運動に取り組み、財政的に厳しい多摩地域でもエアコンを設置できるよう、都の財政支援が必要だと運動してきました。都の財政支援が決まり、一気に多摩地域の普通教室にエアコンが設置され、その後、特別教室にも都の支援が広がり、多くの人に喜ばれました。
 そして、日本共産党都議団は、都の独自補助を条例提案もして求めてきました。都が二〇一八年九月に財政支援を表明し、十二月に都は小中学校体育館のエアコン設置についても国の支援に上乗せを決めたことは大変重要です。
 そこで、区市町村の小中学校体育館のエアコン設置について、二〇一九年度までに補助金の交付決定した自治体数と学校数について伺います。

○田中地域教育支援部長 平成三十年度十二月補正による東京都公立学校屋内体育施設空調設置支援事業の補助開始から令和元年度末までの間に交付決定をした自治体数は三十七、学校数は五百八十五校でございます。

○尾崎委員 二〇一九年度末までに交付決定した自治体は三十七、学校数は五百八十五校ということがわかりました。
 区市町村の小中学校体育館エアコンの設置率はどうなっていますか。

○田中地域教育支援部長 文部科学省が令和二年九月一日現在で行った調査では、都内公立小中学校は五一・二%となってございます。

○尾崎委員 小中学校体育館のエアコン設置状況を詳しく見ますと、二十三区内の設置率は六九・一%でした。多摩地域の設置率はわずか一八・九%になっています。今後の設置計画もあると思いますが、現状では多摩地域がなかなか進んでいないということになります。
 また、設置率が一〇〇%になっている自治体は、千代田区、中央区などの八区、多摩地域は立川市、福生市の二市です。私の住んでいる東大和市でも二〇二〇年度に実施していますので、今後に期待するものです。
 多摩地域の方からは、小中学校のエアコン設置は最初は無理だと思ったが、市民の運動が広がり、東京都の財政支援もあり実現したことはうれしい、何かあった場合に避難所としての役割がある学校体育館、国と都の財政支援ができて体育館にもエアコン設置が進んでよかったとの声が私のところにもたくさん寄せられています。
 東京都の東京都公立学校屋内体育施設空調設置支援事業は、二〇二一年度までの事業です。市民の方からは、市は体育館のエアコン設置の調査を行っているため、二〇二一年度の申請に間に合うのだろうか、支援事業の延長をお願いしたいの要望も上げられています。
 今から検討は難しいと思いますが、二〇二一年の実績と自治体の状況などを早目に把握して、必要であれば事業の延期も含めて検討していただくよう要望するものです。
 次に、特別支援学校についてです。
 特別支援学校では、教室不足が全国的に二十年近くも大問題になっています。生徒数が年々ふえていますが、それに見合う学校の新設が行われず特別支援学校が不足をしているのが大きな要因です。都は、東京都特別支援教育推進計画をつくり、計画的に増改修や新設に取り組んでいます。
 そこで、特別支援学校の施設整備費について、過去三年間の決算額の推移について伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 特別支援学校の施設整備費に係る決算額は、平成二十九年度は百五十一億二千四百十万四百六十五円、平成三十年度は二百十四億四千九百二十九万三千三百二十四円、令和元年度は百八十一億四千三百九十三万七百七円でございます。

○尾崎委員 私は、少し前になりますけれども、知的障害の小中高等部の子供たちが通う羽村特別支援学校を見学し、学校の校長先生からお話を伺ったことがあります。
 入学を希望する生徒児童がふえており、改築したけれども教室が不足している状況だ、当時考えていたよりも生徒数が大幅にふえていますということでした。そして、今後も特別支援学校の入学希望者は増加していくだろうと話してくださいました。
 特別支援学校の教室が不足しているため、カーテン等で仕切って使っていたり、特別教室を活用している状況もありますが、不足している教室はどのくらいありますか。

○高木特別支援教育推進担当部長 令和元年五月一日時点におきまして、普通教室の間仕切り教室の数は百九十六教室、転用教室の数は三百九十教室でございます。
 こうした中、都教育委員会は、学校の新設や校舎の増改築を初めとして、多様な方法を用いて迅速かつ効果的な教育環境の改善を図ってまいります。

○尾崎委員 昨年度五月の時点で、間仕切り教室は百九十六教室、転用教室は三百九十教室ということですから、合わせると五百八十六教室が不足しているということになります。学校の新設や増改築など多様な方法を用いて教育現場の改善を図っているということで努力していただいていますが、まだまだ不十分だといわなければなりません。
 カーテンなどで間仕切りした教室では、カーテン越しで隣の教室の話し声や、時には大きな叫び声などが聞こえ、落ちついて授業に集中できる環境ではないと思います。また、転用教室ということでしたが、転用ということは、音楽室や図書室などを潰しているということになります。特別教室を本来の使い方ができないようにして教室にするということですから、音楽室や図書室など、生徒児童の教育に必要な役割が果たせないということです。
 いつまでもこのような状況が続いてはいけないと思います。やはり都内にもっと特別支援学校が必要だということになると思います。近くに特別支援学校ができると通学も楽になります。
 私は、二〇一七年第三回定例会に文書質問で特別支援学校の教室不足について取り上げました。私の住んでいる東大和市から羽村特別支援学校にお子さんを通わせているという保護者の方に話を聞くと、学校に通うのが大変、スクールバスの中でじっとしていることが困難なんだということでした。
 北多摩地区の知的障害の特別支援学校は少なく、私の地元東大和市の皆さんは、都立羽村特別支援学校に通うのにスクールバスは一時間以上かかるといいます。改善が必要ですが、いかがですか。

○高木特別支援教育推進担当部長 特別支援学校のスクールバスの平均乗車時間は、運行コースの設定の工夫や増車などにより、平成二十一年度の六十七分から令和元年度には五十六分と短縮してまいりました。また、令和元年度からGPSによる運行情報を保護者へ提供するなど、サービスの向上も図っております。
 東大和市から羽村特別支援学校まで運行しているスクールバスは二コースあり、令和元年度の乗車時間は両コースとも六十分でございます。
 今後とも、スクールバスの運行につきましては適切に対応してまいります。

○尾崎委員 スクールバスのコースの見直しや、バスをふやすなどして時間の短縮に努力していただいていることは重要です。しかし、今ご答弁いただいたのは平均乗車時間ですから、ごく単純に考えて、約半数の子供たちは一時間以上バスに乗っていることになります。しかも、都立知的障害特別支援学校全体の平均もほぼ一時間ということですから、都内全体の児童生徒の約半数が一時間以上乗っていると推測されます。雨や道路の渋滞などによって予定よりも時間がかかることがあります。
 毎年見直しをしているとのことですが、そもそも、スクールバスの平均乗車時間が二〇一九年に五十六分に短縮したということですけれども、もう小手先の見直しではこれ以上短くすることは難しいのではないでしょうか。大人であっても六十分間バスに乗っているのは苦痛です。教室不足と同時に、スクールバスの乗車時間についても、まずは現在決まっている都立特別支援学校の増設を急いでいただくこと、さらに、新しい増設も行っていくことが解決につながると思いますので、強く要望するものです。
 それでは、東京都は、東京都特別支援教育推進計画(第二期)を策定し、第一次実施計画に増改修等が三校、新設校が四校とあります。進捗状況について伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画に基づき増改修等を行う三校のうち、都立あきる野学園及び都立練馬特別支援学校は実施設計に着手しており、都立墨田特別支援学校は仮設校舎の基本設計に着手しております。
 また、本計画に基づく新設校は四校であり、都立八王子西特別支援学校は本年四月に開校いたしました。
 その他の三校のうち、仮称ではありますが、都立南多摩地区特別支援学校は実施設計に着手しており、仮称都立墨田地区第二特別支援学校及び仮称都立北多摩地区特別支援学校は、昨年度、基礎調査を実施したところでございます。

○尾崎委員 今年度、都立八王子西特別支援学校が開校し、ほかのところでも進んでいることがわかりました。
 都立北多摩地区特別支援学校(仮称)ですけれども、二〇一九年に基礎調査を実施ということです。私の住んでいる東大和市内の都営住宅建てかえにかかわり空地になっている都有地を活用しての建設計画に東大和市も承諾したと聞いています。市内に特別支援学校ができることで、障害のある方に優しいまちにしていきたいと、市民からも歓迎されています。羽村特別支援学校に通っている保護者の方たちからも、東大和市内にできると通学が楽になる、早く実現してほしいとの声も出ています。一日でも早い実現を要望するものです。
 肢体不自由校の都立村山特別支援学校が老朽化していることなどについて、私は、二〇一八年第一回定例会で建てかえ問題について文書質問し、その当時、仮設校舎の建設を予定していた都有地の側道が狭く危険ではないかなど質問しました。
 そこで、武蔵村山市内にある都立村山特別支援学校の建てかえ計画について、進捗状況について伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 村山特別支援学校の既存校舎の改築につきましては、昨年度より基本設計に着手しております。
 なお、都営村山団地の跡地に整備する予定の仮設校舎につきましては、本年九月より基本設計に着手しております。

○尾崎委員 既存校舎の改築は二〇一九年から基本設計に、仮設校舎については二〇二〇年九月から基本設計に着手しているということがわかりました。また、仮設校舎については、当初の都有地ではなく、別の、村山団地の都有地を活用することがわかりました。
 村山特別支援学校は身体に障害のある生徒児童が通うところですので、安全がきちんと確保されることを何よりも優先していただくよう要望しておきます。
 特別支援学校の増改修、新設については要望も強く関心も高いので、改めて確認しておきたいと思いますが、特別支援学校の整備の流れ、必要な期間について伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 特別支援学校の新設及び改築に当たりましては、基礎調査、基本設計、実施設計、建築工事の手順を踏む必要があり、基礎調査の着手から開校まで八年程度の期間が必要となります。
 なお、既存校舎の解体や地盤の改変など、それぞれの建築現場の状況に応じて、さらに工事期間が必要となる場合がございます。

○尾崎委員 基礎調査の着手から開校まで八年程度の期間が必要だということがわかりました。
 今後、ますます特別支援学校の役割が大きくなると思います。生徒数も増加を続け、今後、想定以上の生徒数がふえる可能性もあります。長期計画はもちろん必要ですが、実態に応じて、計画をもっと前に進めるための検討や見直しを求めておきます。
 次に、教員の働き方についてです。
 教員の長時間労働が問題となり、二〇一七年度に都内公立学校教員の勤務時間実態調査の結果、教員の長時間労働の実態が明らかになりました。
 都教育委員会は、二〇一八年二月に学校における働き方改革推進プランを策定し、教員の長時間労働の改善に取り組んでいます。二〇二〇年一月には、東京都教育委員会が学校における働き方改革の成果と今後の展開を発表しました。
 しかし、授業の準備はもちろんですが、プリントの作成とテストの採点、学級ニュースの作成など仕事量が多い、おまけにクラブ活動もあり日曜も出勤、上司との人間関係にも悩み、鬱状態になっている、定年まで体も心も頑張れないということを聞きます。精神的に病んでいる人がふえているということもたくさん寄せられます。
 そこで、二〇一九年度の教員数について、病気などによって定年退職を待たずに退職した教員は何人いますか。

○浅野人事部長 令和元年度の教員の普通退職者数は九百三十八人であり、校種別では、小学校五百七十三人、中学校二百人、高等学校八十九人、特別支援学校七十六人でございます。

○尾崎委員 ただいまのご答弁で、病気などによって定年退職を待たず退職した教員は九百三十八人、その中で小学校の教員が五百七十三人ということです。全体の六一%になり、多いということに改めて私も驚きました。
 小学校、中学校、高等学校の教員の状況はそれぞれ違いがあると思いますが、忙し過ぎて教職員同士がコミュニケーションをとる時間がなく、ぎすぎすした雰囲気の職場もふえ、校長や上司からのパワハラも深刻な問題になっています。そんな中で、精神疾患による退職者がふえ、退職する教職員もふえています。
 では、都立学校、区市町村立の小学校、中学校の教員不足の状況、定員を満たしていないことについてどうなっていますか。

○浅野人事部長 都教育委員会は、教員が年度途中で退職した場合には、原則として期限つき任用教員を配置しております。
 なお、区市町村教育委員会や学校とも調整の上、時間講師を配置することもございます。

○尾崎委員 病気で急に退職したり休職する事例もありますけれども、すぐにかわりの教員が見つからず、その部分を副校長がやっていて、副校長の負担が大きくなっているということも私たちのところに届いています。中には、学級担任が急に退職したので、それを補うために非常勤教員が学級担任を任されたという異常な事態も起きています。
 元気で仕事を続けるためには、長時間労働をなくすことです。特に教員は、生徒児童に生きる力、学ぶ楽しさなどを教える重要な役割もある大事な仕事です。その教員が長時間労働によって体調を崩し疲弊していたら、それは大きな損害になります。
 そこで伺いますが、働き方改革の都教委の目的はどうなっていますか。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 学校における働き方改革の目的は、教員一人一人の心身の健康保持の実現と、誇りとやりがいを持って職務に従事できる環境を整備することにより、学校教育の質の維持向上を図ることでございます。

○尾崎委員 働き方改革の目的に向かって具体的に何を改善していくのかということが一番大事なことだと思います。教員自身の要望の声を施策に生かしていくことが今求められていると思います。
 それでは、都立学校の時間外労働の上限についてどのようになっているのか伺います。

○黒田人事企画担当部長 都教育委員会は、国の指針を踏まえて令和元年度に条例等の改正を行い、都立学校の教育職員の時間外在校等時間の上限を原則月四十五時間、年間三百六十時間と規定しております。

○尾崎委員 本来、勤務時間内に仕事が終えられるようにするのが大原則なわけですが、第一歩として、国の指針を踏まえて都立学校の時間外労働時間の上限時間を変更したことは前進だと思います。時間外労働の上限を原則月四十五時間、年間三百六十時間と決めても、今までの延長線上では到底実現できない、教員の長時間労働はなくならないと思います。
 学校では、カードシステム、タイムカードを導入したところがふえていますが、自宅に持ち帰った仕事をしている時間までは把握できない状況です。
 ことし一月にまとめた学校における働き方改革の成果と今後の展開の中で、教員の一カ月当たりの時間外労働について、二〇一八年十月と二〇一九年十月を比較していますが、大幅に改善されているとはまだいえない状況です。大事なのは、仕事をどう減らしていくかの本格的な見直し、改善が必要です。一人一人が努力しても、教員の仕事量が減らない限り、学校全体での改善ができない限り、長時間労働はなくならないと私は思います。
 多摩地域の教職員組合が、教員の残業時間がどうなっているのか実態調査のアンケートを行いました。そのアンケートで、月八十時間以上、百時間以上、中には百二十時間を超えて残業しているという教員の実態がわかりました。
 教員の長時間労働の原因についてどう考えていますか。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 教員は、日々授業や授業準備だけでなく、いじめや不登校への対応、部活動指導など広範な役割を担っており、こうしたことが教員の長時間労働の要因と考えております。
 そこで、都教育委員会は、教員の勤務実態を踏まえ、その対策として、副校長を補佐する非常勤職員を配置する学校マネジメント強化モデル事業や、スクールサポートスタッフ、部活動指導員の配置など多様な外部人材の活用を進めております。
 また、TOKYOスマート・スクール・プロジェクトの一環といたしまして、ICT機器等の整備を推進し、統合型校務支援システムや庶務事務システムの導入に向けた開発にも着手いたしております。

○尾崎委員 教員の仕事は、授業や授業準備だけでなく、いじめや不登校への対応、部活動指導など広範な役割を担っている、こうしたことが長時間労働の要因だということです。
 我が党はこれまでも、教育委員会などからの調査や書類作成を減らすことや、二学級三展開という複雑で打ち合わせに手間のかかる少人数指導をやめて、一学級二展開にすることなどを提案してきました。ずっと廃止を求めてきた都の学力テストは来年度から廃止、今年度はコロナ対策で中止になり、体力テストもコロナ対策で中止になりました。
 教員の働き方改革で一番効果があるのは、教員をふやして少人数学級を実現することだと思います。区市町村の教育委員会から、今のままでは時間外労働四十五時間など到底できない、教員をふやしてほしいの声も寄せられています。
 二〇一八年十月にまとめられた厚労省過労死白書でも、過重労働防止に必要な取り組みはの質問に、教職員の回答は、教員の増員が一番でした。次いで、行事の見直し、教員のコミュニケーション、会議の短縮、管理職からの声かけなどとなっています。ぜひ教員をふやすことに踏み出していただくよう強く要望するものです。
 国と自治体の教育予算のGDP比は、OECDの中で日本は世界最下位です。教育予算の日本のGDPの割合は二・九%、OECDの平均は四・二%ですから、東京都として国に教育予算の拡充を求めるとともに、都の教育予算の拡充をすることを求めたいと思います。ぜひ教員をふやすことに踏み出していただくよう強く要望するものです。
 国は、公立学校の教員を一年単位の変形労働時間制で働かせることを可能にする法改正を二〇一九年の臨時国会で強行しました。変形労働時間制は、一日八時間労働の原則を破り、勤務時間を延長する制度です。そのかわり、夏休みに休日をまとめどりできるようにするといいますが、教員は夏休み期間に仕事がないわけではありません。国会では、法改定を提案した文部科学大臣が、変形労働時間制の導入自体が教員の業務や勤務時間を縮減するものではないと答弁しています。
 平日の時間外労働を減らす効果はなく、むしろ個々の教員に、意に沿わない長時間労働を押しつける変形労働時間制は導入すべきではないと意見を述べて、質問を終わります。

○中山委員長 この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時二十分休憩

   午後三時三十九分開議

○中山委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○西沢委員 私からは、まず最初に、ICT化についてお伺いをしていきたいというように思います。
 整備状況をお伺いするんですが、先ほどちょっと議論がございましたので重複は避けまして、先ほど状況については、区市町村立学校では、端末の整備状況一台当たり四・八人と、特別支援学校を含めた都立学校で三・九という話がございましたが、私の方からは、都立高等学校の令和元年度の端末の整備状況についてお伺いをいたします。

○岩野企画調整担当部長 令和二年三月時点の都立高等学校における端末一台当たりの生徒数は四・三人となっております。

○西沢委員 先ほども議論がございましたけれども、現状のこのコロナ禍においては、加速度的に進んでいるということは必要でありますし、わかります。大変厳しい状況でありますけれども、これを機と捉えて整備を進めていただきたいというようなことを申し上げておきたいと思います。
 そして、これもちょっと議論がありましたけれども、ICTパイロット校事業とBYOD研究校事業の取り組みがございましたが、私の方からは、これをあわせてその取り組みと成果についてお伺いをいたします。

○岩野企画調整担当部長 ICTパイロット校事業は、平成二十八年度から四年間、都立高校等二校を指定し、通信機能を備えたLTEモデルのタブレット端末を教員と生徒に配布し、その活用の成果を検証する事業でございます。
 また、BYOD研究校事業は、平成三十年度から二年間、都立高校十校を指定し、校内にWi-Fi環境を整備して、生徒が所有するスマートフォン等を活用して学習を行い、その成果を検証する事業でございます。
 どちらの事業も、令和元年度は生徒一人一台常時接続した状態で学習支援クラウドサービスを活用し、その有効性や導入時の課題等について検証を行いました。
 具体的に、生徒は、教員が配信した学習動画やウエブドリルで学び、取り組んだ課題を教員にウエブで提出するなど、自分のペースに合わせた学習に取り組むことができました。また、教員は、個々の生徒の学習の進度を容易に把握できるようになりました。探求的な学習では、課題に対し、調査内容の情報共有や生徒が協働し調査結果をまとめ発表するなど、一人一台の端末やクラウドを活用した取り組みが各校で行われました。
 本事業の成果といたしまして、生徒一人一台常時接続下での授業では、生徒一人一人の習熟度に応じた学びや主体的、対話的な学びが見られるなど、意欲的な授業が行われていることが確認できたところでございます。

○西沢委員 さまざまな成果があったというようなことでございましたが、生徒にとっても、それから教員にとってもメリットがあるというような話でございます。
 その中で、教員も、メリットの中では、個々の生徒の学習の進度を容易に把握できるようになったというような話もございました。確かに、ウエブで行うとその場ですぐわかるというようなメリットなんかもあります。紙で課題などの提出などやりますと、どうしても後日という形になりますが、それが瞬時にわかるというのは、やっぱりIT化、ICT化の一つのメリットだとも思います。
 ですが、中には、紙の方がやっぱりいいんじゃないかとか、一部の中でIT化に対してアレルギーを持つというような方がいらっしゃるのも確かでございますので、ここでもう少し掘り下げて、ウエブで行った課題等の配信や提出、紙でもできるということでもありますが、それらをあえてウエブで行うことの利点についてお伺いをいたします。

○岩野企画調整担当部長 課題等の配信や提出をウエブで行うことの主な利点は、生徒への配信、回収、採点、集計等の業務を瞬時に行えるようになることや、教員が端末上で生徒一人一人の学習状況を簡単に把握できるようになることなどです。このことが、一時間の授業の中で、教員と生徒のドリルや課題のやりとりの回数をふやしたり、生徒の弱点を早期に発見したりするなど、教員の授業改善に効果を上げております。
 また、ウエブで行うことで紙への印刷業務がなくなることとともに、配信、回収、採点、集計業務の効率化が図られ、教員の負担軽減が進み、授業の準備に充てる時間等がふえたとの報告を受けております。

○西沢委員 時間の短縮ということでいえば、今答弁があったように、かなりの効果があるんだろうというようにも思いますし、教員の皆さんからも、そういう授業改善の効果の声があったということも承知をいたしました。
 今答弁にありませんでしたけれども、時間が短縮できるということは、生徒と向き合う時間もふえるというようなことだと思いますから、もちろん教員の皆さんの多忙化の解消ということ、これも大事でございますが、加えて、そうした時間を生徒さんと向き合う時間に充てていただければというようなことを申し上げておきたいというように思います。
 次に、都立高校における不登校、中途退学対策についてお伺いをいたします。
 こちらも先ほど議論がちょっとございましたが、私の方からは、民間団体との連携について、一問お伺いをさせていただきたいというように思います。
 おととし、平成三十年の九月二十六日の代表質問で我が会派の方で、NPOなどの団体のことを取り上げまして、民間団体とより積極的に連携を図っていくべきだと考えるが、見解を問うというような質問をさせていただきました。
 その中で、当時の中井教育長の方からは、民間団体等との連携による多面的な支援を行うことは必要だというようなことに加えまして、民間団体等との連携を一層密にし、支援のさらなる充実に努めてまいりますというような答弁がございました。これが平成三十年でございますが、これを受けまして、昨年、令和元年度の取り組みをお伺いいたします。

○田中地域教育支援部長 都教育委員会は、平成二十八年度から平成三十年度まで、都立高校の不登校生徒や中途退学者に対して、NPO等の民間団体と連携し、学習支援や生徒同士が交流できる機会を提供することにより、学校への復帰や再就学、高等学校卒業程度認定試験の受験に向けた支援などを行ってまいりました。
 令和元年度は、支援対象を都立高校通信制課程の生徒にも拡大し、学習支援や生徒同士が交流できる機会の提供とともに、新たに就労に向けた支援、進路相談、生活相談の機能を加えた、NPO等と連携した学びのセーフティーネット事業を実施いたしました。

○西沢委員 NPO等と連携した学びのセーフティーネット事業を実施したということでございます。ことしの予算も増額をしているというようなことでありまして、効果もあるんだろうというふうに思います。引き続き、こうした民間団体との連携をより進めていただきたいというようにお願いしたいというように思います。
 続いて、オンラインゲームの長時間化防止の取り組みについてをお伺いしたいというように思います。
 オンラインゲーム、私も学生のときにはまったことがございまして、めちゃめちゃおもしろくて、授業をサボってしまうというようなことが--大学ですよ、大学。まあ大学だからいいというわけじゃないんですけれども、そういったことがありました。それだけ、やっぱり社会問題になるというようなこと、各国もそうですし、依存症という形でゲーム依存も社会問題として取り沙汰されるというようなこととなっているところでございます。
 そうした中で、子供たちが長時間オンラインゲームをし過ぎることについて、防止をしていくことが東京都教育委員会の中で必要だというようにも思うわけでありますが、改めて防止について、都教育委員会の認識と昨年度の取り組みをお伺いいたします。

○増田指導部長 児童生徒が長時間オンラインゲームをすることにより、日常生活や学習に影響を及ぼすことがないようにするためには、児童生徒自身がゲームで遊ぶ時間の上限等について主体的に考え、行動できるようにすることが大切でございます。
 都教育委員会は、平成二十七年度に、児童生徒がインターネットを適切に活用できるようにすることなどを目的として、SNS東京ルールを策定するとともに、このルールを踏まえ、各学校において児童生徒の話し合い等を通して学校ルールを定める取り組みなどを推進してまいりました。
 その後、児童生徒のインターネットの利用時間が年々長くなっている傾向等が明らかになったことから、昨年度、SNS東京ルールを改定し、スマホやゲームの一日の合計利用時間、使わない時間帯、場所を決めようを一つの指針といたしました。
 また、SNS東京ルールをもとに情報モラルについて学ぶことができるようにするために、都内全ての公立学校の児童生徒に配布している補助教材、SNS東京ノートに、ゲームのし過ぎについて、具体的な場面を想定しながら話し合って考える事例などを掲載し、学校における活用を促してまいりました。

○西沢委員 私の考えは、ゲームについて、一律的に教育行政側が規制を行うということは反対であります。既に他の県であったりとか、他の県の市であったりで、オンラインゲーム一日何時間だとか何分だとかというようなことをする動きが出ているところでございますが、私自身は、そういったことを規制するというようなことが逆効果を生むようなこともありますし、科学的根拠に基づいていないのではないかというような思いがございます。
 そうした中で、東京都、今答弁がございましたけれども、SNS東京ルールであったりとか、それから学校ルールを定めたりというようなことで、また、いろいろと話し合いをする機会、事例なんかを掲載して活用を促していくということで、さまざまな事業をやっているということがわかりました。
 さらには、主体的に考え行動できるようにすることが大切であるという重要な答弁いただきました。これは、教育行政の側で何か規制をするというよりは、自分たちで考えて、自分たちで決めるというような認識でいいというようなことですかね。--はい、今そういった、指導部長がうなずいてもいただきましたので、さらにお伺いいたしませんけれども、今後この問題について、さらに問題は出てくると思いますけれども、ぜひこうした行き過ぎた規制というものにならないようにお願いをしたいというように思います。
 続いて、次世代リーダー育成道場についてお伺いをいたします。
 この次世代リーダー育成道場、私も、文教委員会、もう十年ほど前に、当時そういう名前では当然ありませんでしたけれども、高校生、若い人が海外に留学するというようなことの大切さというものを要望しました。特段、若者の海外志向が最近は減ってきているといわれている時代、今もそういった傾向がございますけれども、そうした中、幅広い経験をしてもらうということは大事だというようなこともありました。
 私自身がそういった経験があるわけではなくて、私は留学経験がなくて、逆にこうしたことをやってもらっていたら、さらに、私は都立学校出身でもないんですけれども、そういった機会が若いころにあったらいいなという反面教師的な思いから、この事業をやるべきだというようなことをいって、そして実現をしまして、こうして今進んでいるのが次世代リーダー育成道場でございます。
 その際にも、提案をしたときにも申し上げたんですが、単純に生徒さんに留学していい経験をしてもらうということ、このこと自体も大切なんですが、やはり一つの、都民にとってどれだけの還元があるのか、都民の皆様のいってみればお金を使って海外に留学してもらう。だからこそ、還元というものが必要だろうと思います。
 そこで、改めて次世代リーダー育成道場の成果、還元の状況についてお伺いをいたします。

○瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、グローバル化が進展する社会において、世界を舞台に活躍できる人材を育成するために、平成二十四年度から都立高校生等を対象に、次世代リーダー育成道場を開設しております。修了生は、帰国後、在籍校での学校説明会や文化祭などで留学中の体験に関するプレゼンテーションを行うなど、留学を考えている在校生等にその意義を伝えております。
 また、毎年四月に、東京都教育委員会が海外留学にチャレンジする高校生を支援するために開催しております高校生留学フェアなどにおいて、個人研究の成果発表や異文化理解に関するパネルディスカッションを行い、留学体験から学んだことを発信し、高校生の留学に対する機運を高めております。

○西沢委員 さまざまな形で在校生への学校説明会での体験であったり、それからフェアなど等を通じてということで、いってみれば後輩に対して、その意義というものを伝えてもらっているというような話がございました。
 先ほどもちょっといったんですけれども、広く都民の方に還元するというようなことがやっぱりあっていいと思うんですね。例えばこの状況の中、コロナ禍において、多くの方が、この次世代リーダー育成道場を経験をした方々、そのつながりというものが大事だと思うんです。いざとなったときに、例えば、もちろん今都民じゃない方もいらっしゃるでしょうし、違うところに引っ越してしまった方もいるかもしれませんが、東京都のOBとして、東京都で例えばこうした学生さん、生徒さん、高校生ないし大学生、若者に意見を聞きたいなというときであったり、留学経験のある方との意思疎通というものは、これから東京都自身の財産に私はなるんだと思うんですね。
 なので、次世代リーダー育成道場、このつながりというものをもっともっと強めていく必要があると思うんですが、道場の修了生と東京都教育委員会とのつながりについてお伺いをいたします。

○瀧沢指導推進担当部長 都教育委員会は、次世代リーダー育成道場修了生の同窓会組織であります次世代の会と連携を図りまして、留学を控えた道場研修生の事前研修に修了生が参加する場を設定しております。
 具体的には、修了生と研修生が留学を生かしたキャリア形成についてのグループディスカッションを行い、研修生が留学の意義や目的を新たな視点で考える機会としております。

○西沢委員 同窓会組織と連携を図りということでございました。この同窓会組織は、聞くところによると二年前ぐらいにできたというようなことでございます。まだまだこれからですね、ぜひこうした接点というものを持っていただいて、いってみれば、もちろん彼らとのつながりだけじゃなく、何度もいいますけれども、広く都民の利益になるような形でということが大事なのかなというようにも思います。
 残念ながら、このコロナ禍において本年の留学というものは中止となってしまいましたし、来年以降もどうなるのか当然わからないということでありますが、ぜひ来年度以降、事業については当然実施していただきたいとも思いますし、コロナ禍においてどのようになるかわかりませんが、ぜひ、ぎりぎりでもそういった経験を生かせるような場をつくってもらいたいというようなことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

○桐山委員 それでは、私からは、小中学校における不登校対策についてお伺いしていきたいと思います。
 都内公立小中学校におけます不登校の児童生徒が年々増加しておりまして、看過できない状況でございます。不登校の原因も大変多様化をしておりまして、特に繊細な面が大変多く、それをしっかりと柔軟かつ丁寧な対応が求められているかと思います。
 先日、十月二十二日に公表されました令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査というものを行われておりました。その結果が公表されたわけでございますが、その中を見てみますと、小中学校における長期欠席者のうち、不登校児童生徒数は、小学校五千二百十七人、中学校一万八百五十一人であり、前年度より小学校で八百九十九人、中学校で九百八十一人増加したと公表されておりました。
 不登校出現率は、小学校が〇・八八%、中学校四・七六%であり、またそちらも上昇していると。そしてまた、学校復帰率というものも、小学校で二一・一%、中学校は一五%であって、小中学校とも学校に復帰している率も下がっていると、調査結果が出てきたわけでございます。
 そこで、都教育委員会は昨年度まで、不登校児童生徒のために市区町村が設置をしている教育支援センター機能、いわゆる適応指導教室というものがありましたが、そのセンター機能を強化するモデル事業を実施されてこられました。その目的と内容についてお伺いいたします。

○増田指導部長 ご指摘の事業は、不登校児童生徒の学力の定着やコミュニケーション能力の向上など、教育支援センターにおける学校復帰や社会的自立に向けた支援の一層の充実を図るため、平成二十九年度から昨年度までの三年間、十一の自治体を対象に実施してきたものでございます。
 具体的には、教育支援センターにおける人材の配置、職員の指導力向上、施設設備や学習環境の充実等の複数のメニューの中から、対象の自治体が希望する事業に対して予算の範囲内で経費を補助してまいりました。

○桐山委員 ありがとうございます。昨年度までは、この三年間ですけれども、十一の自治体を対象にモデル実施をされてこられたということで、人材の配置、あるいは学習環境の整備など、自治体の創意工夫による独自の対策のため、さまざま用意をされているメニューの中から選択をしていただきながら、経費の補助をされてきたということがわかりました。
 この三年間のモデル事業の具体的な成果はどういったことがありますでしょうか、お伺いいたします。

○増田指導部長 モデル地区における不登校児童生徒数に占める教育支援センターで指導、相談を受けた児童生徒数の割合は、モデル事業実施前の平成二十八年度と昨年度を比較すると、二〇・〇%から二一・九%に増加しております。この増加率は、都内全体より高い結果となっております。

○桐山委員 ありがとうございます。モデル実施校におきましては、生徒割合も少しずつ上がってきているということがわかりました。
 こういった具体的な成果として、ただいまちょっと数字でしかもらっていないんですけれども、具体的な何か、内容はどんなものがあったのかということ、答弁漏れじゃないかなと思うんですけど、ぜひお聞かせいただければと思います。

○増田指導部長 具体的には、学習環境の整備でタブレット端末を活用して教育支援センターと学校、それから家庭との連絡がスムーズにいき、学校復帰を促したという例がございます。

○桐山委員 ありがとうございます。以前からもお伺いしていたんですけれども、この三年間のモデル事業の実施経過の中で、ただいまご答弁にあったように、家庭とセンターとの、しっかりとその支援員が連携がとれているということ、これが大変重要かというふうに思います。また、こういった学習をしっかりと繰り返すことによって、進学につながったという例も聞いているところでございます。それらのモデル事業の成果については理解をさせていただきました。
 一方で、都内全体では、この教育支援センターに通っている子供たちは、現状では多いとはいえない状況にあるのではないかというふうに考えております。昨年度までのモデル事業の成果を踏まえた今年度の取り組みについてもお伺いしておきます。

○増田指導部長 モデル事業で成果が得られた効果的な取り組みが他の自治体でも実践されるよう、今年度から教育支援センター機能強化補助事業を実施しております。この事業は、希望する全ての自治体を対象に、教育支援センターにおける人材の配置、フリースクール等との連携による体験活動等の充実、施設やICT環境等の整備に係る経費の一部を補助するものでございます。
 また、自宅から施設までの距離が離れている、定員が限られているなどの事情で教育支援センターに通えない児童生徒もいることを踏まえ、教育支援センターを新規に設置する自治体に対してもこの事業を活用し、補助を行っております。
 なお、本年度は十七の自治体がこの事業を活用しております。

○桐山委員 ありがとうございます。この教育支援センターなんですけれども、かなり学習支援ということで強化をされていると思うんですけれども、実際この教育支援センターというものは、不登校の子供が、やっぱりみずからの意思で通うことが求められているというところが多いかと思います。
 実際に聞く話によりますと、もちろんそこまで出向くまでに、先ほど答弁でもらっていたように、自宅から距離が離れていたりとか非常に問題もあるんですけれども、実際、じゃあ、行った子供たちは、みずからの意思なので、学校にこれから復帰することを前提にここに通ってこなければならないというような話も聞いているところでございます。
 もちろん、保護者からのご要望の中では、やはりセンターまでの距離が離れているということで、特に、そもそも小学生がそこに通うという数は非常に少なくて、やはり中学校の受験、三年生に上がるときに、次の進路のことを考えたときに急に動き出すケースというのが多いというふうにも聞いていますが、実際のところ、例えば小学生がここに通うとなると、場所とか地理的な問題とかも含めて、やっぱり親が仕事をお休みして、そこまで連れていかなければならないとか、非常にその辺のハードルも高いということも聞いているところでございますので、そういったことも十分考慮をしていただくような、各区市町村に指導していただければいいなというふうに思いますし、そういった問題解決も、ともに考えていただければと思います。
 それから、支援員さん、多分いろんなケースがあると思うんですけれども、支援員さんがとても話をよく聞いてくださっていたり、あるいは本当に親身になって学習支援とか、そういったプログラムをしっかりつくってくださる支援員の方々もたくさんいらっしゃいます。
 また、特にやっぱり不登校児って引きこもっているケースが多いので、そういった、どっちかというとお迎えして待っているケースが多いんですが、やっぱり訪問して、訪ねていくというような形もぜひ取り組んでいただければ、少しそういった子供たちの心の動きというのもキャッチできるようになるのではないかな。もちろん、なかなか行っても会えない子供たちもいるんですけれども、そういったこともぜひ、せっかくアプローチして、教育支援センターに一度は行っている子たちに対しては、そういった取り組みも行っていただきたいと思います。
 もう一つが、不登校で一番重要なのは、私は親支援だと思っていて、先ほどもやまだ委員からもありましたけれども、教育相談はやっていらっしゃると思いますし、もちろんスクールカウンセラーも各小中学校にも配置をしていただいて、でもスクールカウンセラーはまだ週一回だと思うんです。いじめの問題とかもあって、全員面談とかが週一回、例えば小学校だったら五年生とかですね。対象者が決められていて、非常にそのスクールカウンセラーの相談とか面談もふえて、非常に忙しい。忙しくされている現場もよく聞いてます。
 そういったところで、親が、もし自分の子供が不登校になったときに、学校にまず相談するところもなく、スクールカウンセラーさんがいらっしゃるので、スクールカウンセラーのところに話を持っていこうと思っても、やっぱり日にちが、なかなかすぐに対応してもらえなかったり週一回しか来なかったりとかでできない。あるいは教育相談につないでもらって、教育相談に行ったけれども、機械的に、余り私の話を聞いてくれないとか、学校復帰することが前提でどんどん誘導されちゃうとか、そういったいろんなことを保護者から聞くこともあります。
 そういったところで、やはりしっかり寄り添った形で、先ほども話が出ていましたように、しっかり親の話をまず寄り添って聞いてあげられるような、もちろん不登校対策のネットワークが自治体にあるところもあると思うんですけれども、そういったところの、私は親支援というのが非常に欠けているのではないかなというふうに思っているので、そこのところについては、しっかりと今後検討していただければなというふうに要望しておきたいと思います。済みません、ちょっと長く意見となりました。
 次は、不登校については、早期に子供の状況を把握し、学校や教室に戻れるように支援することも大事であるとも考えておりますが、各小中学校におけます不登校児童生徒に対する早期支援の充実に向けた都教育委員会の昨年度の取り組みについてお伺いしておきます。

○増田指導部長 都教育委員会は、教員が不登校の要因や背景を正しく理解し、児童生徒の豊かな学校生活の実現や社会的自立に向けた支援ができるようにすることを目的として、児童・生徒を支援するためのガイドブックを作成し、平成三十一年三月に都内全ての公立小中学校に配布いたしました。
 昨年度は、各学校において不登校児童生徒一人一人の状況に応じた早期の支援が適切に行われるよう、都教育委員会の指導主事等が区市町村教育委員会や学校主催の研修会を訪問し、このガイドブックの効果的な活用について指導助言を行うなどしてまいりました。
 研修を受けた教員からは、ガイドブックに掲載されている支援シートを活用したアセスメントの方法と一人一人の実態に応じた早期支援の具体例について学ぶことができた、教職員間の情報共有による継続的な支援のあり方について理解が深まったなどの感想が寄せられました。

○桐山委員 不登校児童生徒に対するアセスメントということで、それぞれ支援シートを活用されていると思います。それに基づく組織的な支援が大変重要かと思います。
 この支援シートの活用は、大変有効であると考えておりますが、都内公立学校におけます支援シートの活用状況について、昨年度の取り組み実績と課題をお伺いしておきます。

○増田指導部長 昨年十一月に実施した調査の結果によると、都内公立小中学校のうち、何らかの形で支援シートを作成していると回答した学校の割合は、小学校が九九・五%、中学校が九九・二%となっております。
 一方で、作成した支援シートを組織的に活用していると回答した学校の割合は、小学校で五八・五%、中学校で四二・九%にとどまっていることにつきましては、課題であると捉えております。

○桐山委員 余りその支援シートを活用されていないということが課題だというふうに今ご答弁いただきましたけれども、大切な取り組みであると思っています。
 一方で、何らかの形で支援シートを作成しているという回答をされた学校も高く出ているということで、それぞれ多分学校独自の支援シート、いわゆる支援シートというのは、その子の引き継ぎカードみたいなものなんですけれども、今どういう状況で学校を何日休んで、今どういう状況かと聞き取られている、そういうシートなんですけれども、この支援シートが全ての学校で今の段階では活用されてなく、低い割合という形でただいまご答弁いただきましたが、この不登校の子供たち一人一人の状況に応じた支援が組織的に行われるようになることが私は大切だというふうに考えております。その推進に向けた都教育委員会の取り組みを伺っておきます。

○増田指導部長 都教育委員会は、今年度中に支援シートの重要性等について教員が一層理解を深めることができる研修キットを開発することとしております。来年度以降、全ての学校で支援シートが効果的に活用され、組織的な支援が適切に行われるよう、区市町村教育委員会や学校における活用を促すなどの取り組みを強化してまいります。

○桐山委員 ありがとうございます。支援シート、組織的にというのは、やはり大変重要だと思います。担任の先生が、自分の生徒が学校に来なくなった、もちろん学校の先生は真剣にいろいろと動いていただくと思うんですけれども、子供って気まぐれで、本当に不登校になって、いきなり学校に行きたいって思って、ぽこって行くことがあるかと思います。そういったときに、学校の体制が何も準備をされていなくて、何にも引き継ぎもされていなくて、えっ、どうしたの、こんな時間に来ちゃってみたいな、で、自分の居場所がないという疎外感に襲われて、じゃあ、帰ろうといって、せっかくのチャンスを逃してしまうこともあるかと思います。
 そういったところで、しっかりと組織的に、いじめもそうなんですけれども、今取り組まれているように、しっかりとこういった、せっかく東京都が支援シートを、ガイドブックもそうですけれども、研修キットを開発されて、これから教員、学校にしっかりとおろしていただくような形をとっていただくと思うので、その支援シートをしっかり活用して、小学校からまた中学校に上がるとき、中学校から今度高校に上がるときに、そういったシートがしっかりと活用されて、その子の今の状況が把握できるような形で残っていくような支援シートとなるようにしていただければなというふうに思います。
 それから、不登校は、福島委員もいってましたけれども、やはりICT活用、一人一台タブレット端末も今後導入されます。不登校児童生徒がなかなか家から引きこもって出られない環境があります。そういったところでの、本当に有効で大変重要な機材といいますか、なってくると思いますので、そういった取り組みもぜひ後押しをしていただけますようによろしくお願いを申し上げます。不登校については終わります。
 次に、特別支援教室の適正な運営についてお伺いしていきたいと思います。
 都は、公立小中学校における発達障害のある児童生徒のための通級による指導を平成二十八年度から順次、従前の情緒障害等通級指導学級から、在籍する学校で指導が受けられる特別支援教室に転換を図っており、この特別支援教室は、小学校は平成三十年度に全校設置が完了し、中学校は令和三年度に全校設置が完了する予定と聞いております。
 そこで、都内の小中学校において、五年前の平成二十七年度に情緒障害等通級指導学級で指導を受けた児童生徒数と、令和元年度に特別支援教室で指導を受けた児童生徒数についてお伺いしたいと思います。

○高木特別支援教育推進担当部長 小学校につきましては、平成二十七年度に情緒障害等通級指導学級で指導を受けた児童は七千百九十人だったのに対し、令和元年度に特別支援教室で指導を受けた児童は、約二・七倍の一万九千五百三十九人でございます。
 中学校につきましては、平成二十七年度に情緒障害等通級指導学級の指導を受けた生徒は千八百四十一人だったのに対し、令和元年度に特別支援教室で指導を受けた生徒は、約一・八倍の三千三百六十八人でございます。

○桐山委員 ありがとうございます。本日資料にも出ておりましたように、五年前から見ましても、小学校で令和元年度ベースでも二・七倍、今答弁ありましたように中学校でも一・八倍ということで、かなりの数で増加傾向が見られます。今までは在籍校ではない他校に通級することがハードルになっていた子供たちが、自分の学校で指導を受けられるようになり、児童生徒数がふえた一方で、通常の学級で少し手がかかるというだけで、本来は特別な支援が必要がない子供たちを安易に特別支援教室に入れているという現状があると聞いております。
 また、一度入室したら入室したままで、なかなか退室できない生徒もいるというふうにも聞いております。現状どのようになっているのか見解をお伺いいたしたいと思います。

○高木特別支援教育推進担当部長 特別支援教室は、原則長期間利用する場所ではなく、一定期間の一部時間に特別な指導を受けることにより、障害による困難さへの対処方法などを習得し、最終的には指導開始時に設定した目標を達成し、全ての期間、在籍学級で授業を受けることができるようにすることを目的としております。
 特別支援教室の指導開始に当たりましては、発達障害のある当該児童生徒にとって、特別支援教室における指導が必要であるか否かについて、通常の学級での指導の工夫や一人一人の子供たちの状態を専門家も交えながら適切に把握し、通常の授業を一部受けられなくなることも考慮し、慎重に検討することが必要でございます。
 また、特別支援教室入室後は、指導の終了を見据えて適切な目標を設定し、その目標を達成して退室できるよう、特別支援教室を担当する教員はもとより、本人、保護者、学級担任などが密接に連携を図りながら、指導、支援していくことが重要でございます。

○桐山委員 特別支援教室は、発達障害のある子供たちを初めとした個別の教育的ニーズに対応して、より適切で効果的な指導を行うための一つの指導の形態だと思います。今本当にさまざまな子供たちが在籍をしている中で、この特別支援教室ができて、やはり個別のニーズのある子供たちが本当にたくさんいる中で、そのニーズにしっかりと早期に気づいて適切な教育をし、また、先ほど答弁にもありましたように、通常学級にちゃんと、在籍している学級にしっかりとまた戻っていくということが目的かと思います。
 ですので、しっかりと--あ、もう一個ありましたね、通級とちょっと違うのは、在籍している学級のクラスの子供たちも、発達障害についての理解を深めることができるという、インクルーシブ教育という、一方でありますけれども、なかなかそこの境目って非常に難しいと思うんですが、本来はインクルーシブ教育という考え方のもとで、またこういった特別支援教室のあり方というものを導入していく中で、しっかり個別のニーズに合った取り組みを進めていっていただきたいというふうに思います。
 特別支援教室で指導を受けることが真に必要な児童生徒が、特別支援教室で指導を受けた後、できる限り速やかに退室できるよう、都として各学校に対し、特別支援教室の適正な運営を徹底すべきと考えますが、見解を求めます。

○高木特別支援教育推進担当部長 都はこれまでも、特別支援教室での指導を開始するに当たりましては、保護者と合意形成を図りながら、学校及び区市町村教育委員会で組織的に検討した上で、特別支援教室の指導を受ける児童生徒を決定すること、また、指導開始後は定期的に評価を行い、設定した目標を達成した場合には退出させることなど、適正な運営について、特別支援教室の導入ガイドラインなどにより、区市町村教育委員会や小中学校に周知してまいりました。
 令和二年度には新たに特別支援教室巡回運営指導員を設置し、各学校の運営実態を把握し、改善につながる助言などを行う巡回指導を開始いたしました。
 今後も特別支援教室の適正な運営と指導の充実を図るため、小中学校を支援してまいります。

○桐山委員 ありがとうございました。やはり特別支援教室に移動してくる子供たちという数が非常にふえてきているという現状がある中で、やはり担任が、この子はちょっと手に負えないっていっただけで、すぐに支援教室に移動させるようなことがあってはならないというふうに思っております。もちろん、長くいさせてもだめなので、しっかりと、そういった指導、目標が達成された後は、しっかりと戻していただけるような取り組み、大変重要かと思いますので、区市町村教育委員会にしっかりと周知をしていただきたいと思います。
 また、今年度からは、特別支援教室巡回運営指導員というものも配置をされて、こういった運営実態をしっかりと把握していただきながら、しっかり助言をしていただくということでございますので、そういった取り組みも強化をしていただいて、より適切な教育が受けられる環境整備、整えていただけますように要望いたしまして、質問を終わります。

○小宮委員 都立高校におきましては、平成十七年四月の高校の無償化などの影響もありまして、応募倍率がこの五年間で、一・五倍から一・四倍へと低下傾向にあります。また、多数の都立高校で定員割れが生じておりまして、欠員のあった都立高校は、平成二十八年には一校でしたけれども、今年度は百七十一校中二十二校ということで、その数が大変ふえているということがわかります。
 もちろん、都立の中でも進学校においては倍率が上がっているなど、都立高校の中で二極化をしているというふうにいわれているわけですけれども、決算質疑の前に当たりまして、この都立高校の今置かれている状況について、課題認識について、都としてどのように認識しているのか、伺います。

○藤井教育改革推進担当部長 現在、グローバル化の進展やICT技術の進歩など、教育をめぐる社会状況はさまざま変化しております。また、都内の中学校三年生の数は減少しておりますが、令和四年度以降の高校への入学者数は再び増加傾向が見込まれる状況にございます。さらに、奨学金制度の拡充等がなされる中で、私立学校との切磋琢磨もより強く求められてきております。
 こうした中で、時代の要請によりよく応え、生徒を真に社会人として自立した人間に育成していくことが都立高校に対して期待されており、我々の責務であると考えております。
 こうしたことを踏まえ、それぞれの都立高校の特色化を強力に推進し、魅力を向上させるとともに、そのPRに努めていく必要があると認識しております。

○小宮委員 生徒を真に社会人として自立した人間に育てていくということが大切であるというご答弁もございましたが、都立高校の現状把握に関する調査というものが五年に一回行われておりまして、その中でも望まれることとして、社会の変化に対応できる能力を身につけてほしいということが前回の調査から最も増加しております。
 学力や進学の実績で成果を上げている一部の学校はともかくとして、その他の都立高校が今後どのような教育を実施するべきか、また、求められているのか、やはり私学とは違う、私学にはない都立の役割や、また、魅力というものを改めて考えなければならない、そんなときにあろうかというふうに思います。
 そこで、都立の中でもより専門的な知識や技能を身につける教育課程というものが大切になってくると思いますけれども、昨年度から産業高校において、伝統工芸に関する新しい類型の設置の検討というものを始めたと伺いました。まずは、その必要性と背景について伺います。

○藤井教育改革推進担当部長 東京にはさまざまな伝統的な工芸やたくみのわざなど、数多くの魅力があり、その魅力や価値を広く伝えていく必要がございます。
 また、長い歴史の中で大切に守られてきたすぐれたわざを持ちながら、後継者の確保に悩みを抱える事業者も少なくございません。そのため、伝統工芸やたくみのわざなどに対する興味、関心を高めるような取り組みを充実させ、伝統を守り育てていく人材を育成する必要がございます。
 都はこれまで、地域や社会での産業人として活躍できる人材の育成を目指す産業高校を二校設置しており、伝統工芸を取り巻く状況を踏まえ、そのうちの一校である都立橘高校において、伝統工芸について学ぶ新しい類型を設置することといたしました。

○小宮委員 人口減少ですとか、価値観がさまざま多様化する中で、いろいろな分野において、事業承継や後継者の育成が大きな課題ということは社会的に問題となっていますけれども、東京の伝統や文化を伝えるそうした人材の育成や確保ということも重要です。
 昨年度、この新類型の設置に向けて、今ご答弁のあった産業高校において、どのような取り組みがあったのか伺います。

○藤井教育改革推進担当部長 橘高校において、伝統工芸を学んでいる他府県の学校での取り組み事例等を参考にしながら、効果的な教育カリキュラムや取り扱う内容について検討を行ってまいりました。
 具体的には、全ての生徒に対し、陶芸やガラス工芸、染色等の伝統工芸に関する学習の機会を設けるとともに、生徒の興味、関心に応じて、発展的内容を系統的に学習できるようにするなどの教育課程の工夫、改善に令和元年度から取り組んでおります。
 今後も、教育課程の実現に向け、学校内の施設設備の整備を進めるとともに、伝統工芸を専門的に教えることのできる外部人材の活用方法などについても検討、調整を重ねるなど、着実に準備を進めてまいります。

○小宮委員 ものづくりの基礎や技術を身につけるだけでなく、そのことが社会に出て生かせるような総合的な教育課程となることを期待いたします。
 それから、都立の農業系の高校というものもありまして、全校でGAP、グッド・アグリカルチュラル・プラクティスということで、よい農業の実践、農業における安全な生産工程管理の認証、この取得に都立の農業系高校は全校で取り組んだというふうに伺っておりますけれども、まず、この都立農業系高校において、GAPの取得を推進する意義とこれまでの取り組みについて確認します。

○藤井教育改革推進担当部長 農業においては、食品安全、環境保全、労働安全等を確保するための適切な農業生産工程管理を行い、安心・安全な農作物を提供していくことが重要でございます。
 こうした考えのもと、都立農業系高校では、GAPに関する取り組みを通じて、効率的な農作業の実践や評価、継続的な改善といった一連の生産工程管理を学習し、持続可能な東京の都市農業を担う人材を育成することを目指しております。
 各農業系高校では、学習の一環として、平成三十年度からGAPの認証取得に取り組み、令和二年三月末までに、全八校で東京都GAPまたはJGAPの認証を取得しております。

○小宮委員 東京都版のGAPというのは、農地と住宅街が密集している都市農業ならではの課題であります土ぼこりだとか、機械の騒音だとか、農薬の散布などに際して、周辺環境に配慮しているかという項目を、東京都として加えたものであると伺いました。次代の都市農業を担う人材への教育内容として大変ふさわしいものであると思います。
 産業労働局でも、都市の農業を支援する施策が展開されておりまして、東京二〇二〇大会などを機会にしまして、東京都版GAPの認証を農家に対して推奨しているわけですけれども、やはり生産工程をあえて一から見直すということは大変なことであったり、GAPの価値やメリットというものがなかなかまだ浸透していない、実感しにくいようで、実績は残念ながらまだ一万人の農業者に対してやっと百件というふうに伺っております。
 今後、こうしたGAPに対する都民の理解というものが必要だというふうに感じますが、GAPを取得した生徒が生産した農産物の販売や成果発表の場などを通じまして、都民に対してGAPの意義や重要性を啓発しながら、農業系高校におけるこのすぐれた取り組みをPRすべきと考えますが、見解を伺います。

○藤井教育改革推進担当部長 都立農業系高校では、公益財団法人東京都農林水産振興財団と連携して、GAPの認証を取得した生産品を、GAPに関する情報とともに都民の方に提供するなど、全校でGAPの認知度向上に寄与する取り組みを行っております。
 今後もこうした活動を続けていくほか、各校の生産品販売所においてGAPに取り組んでいることを掲示するなど、GAPに関する広報活動を通じて、農業系高校における質の高い教育の成果を発信してまいります。

○小宮委員 それから、東京都としては、支援が必要な児童や生徒に対して、よりよい教育環境を提供すること、これが大変重要な役割となっていますので、特別支援教育の推進について伺います。
 先ほど、桐山副委員長からもお話がありましたけれども、平成二十八年の国の法改正によりまして、高校においても、平成三十年から通級による指導、通常の学級に在籍していながら必要な際には個別な支援を別途受ける指導、こういったものが可能となっております。
 義務教育に対しましては、平成五年からこの通級による指導が実施されておりまして、現在小学校では約四%、中学校で約二%程度の児童生徒が通級による指導を受けていると伺いました。
 都立高校においても、この法改正を受けまして、まずは、平成三十年度から令和二年度までの三カ年の計画で、あきる野市にある秋留台高校において、通級による指導を行うパイロット事業を実施しております。
 秋留台高校はエンカレッジスクールとして、これまで生徒一人一人に対してきめ細かい指導を行うために二人の学級担任を配置する、こうした制度の導入や、人数や時間割、それから、習熟度に応じた工夫というものをして、個々に応じた指導に取り組んできた学校です。
 まず、これまで秋留台高校で通級による指導を受けた生徒数と、その人数をどう受けとめているかという点に関して伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 秋留台高校において特別の教育課程を編成して行う通級による指導を受けた生徒は、平成三十年度は三十四人、令和元年度は四十人でございます。
 この実績は、障害による学習上または生活上の困難さを改善、克服するという通級による指導の趣旨を踏まえ、専門家の意見も聞きながら、校長、特別支援教育コーディネーター、通級を担当する教員などで構成される校内の判定委員会において組織的に検討した上で、通級による指導を真に必要とする生徒を適正に決定したものでございます。

○小宮委員 本人の希望に応じて通級の生徒を決めるというのではなくて、専門家の意見なども伺いながら、通級による指導が真に必要な生徒を決定するということの難しさなどがあったんだろうというふうに思いますけれども、このパイロット事業の成果と課題をどのように捉えているか、伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 発達障害等のある生徒が自校で一人一人に応じたきめ細かい通級による指導を受けることによって、自分の障害の特性を理解し、対処方法を身につけ、就労につながったなど、障害による学習上、生活上の困難さの改善が図られました。
 また、校内での通級による指導を行うことによって、教員の発達障害等に対する理解が深まり、通常の学級での指導におきましても、適切な声かけをするなど、学校全体で一貫性のある指導ができました。
 一方で、進学先での支援を望む中学生の声に応えるためには、どの都立高校に進学しても特別の指導を受けられる環境を整えることが必要であるとの課題も明らかになりました。

○小宮委員 発達障害は、自閉症やアスペルガー症候群、学習障害、多動性障害などのほか、これに類する脳機能障害として、一人一人にとってさまざまな症状、特徴があるというふうに伺っています。発達障害のある人というのは、しかしながらその特性に応じた支援を受けることができれば、十分にその能力や力を発揮できる可能性があるということも聞いています。
 ただ、これまではその理解や支援体制が十分ではなかったとされている中で、今回のこのパイロット校での実践を踏まえて、どの都立高校に進学しても特別の指導を受けられる環境が必要というご答弁もいただきましたけれども、今後の展望について確認します。

○高木特別支援教育推進担当部長 小中学校では特別支援教室で指導を受ける発達障害等のある児童生徒がふえている中、都立高校にも発達障害等のある生徒が入学してきております。
 高校生が障害による困難さを改善、克服するための特別の指導を受ける場合、進級や卒業に必要な単位修得の観点から、通常の授業を抜けにくいという課題がございます。また、パイロット校での検証期間中に実施した生徒や学校への聞き取りでは、在籍校でなら指導を受けたいという生徒のニーズがあることも確認できました。
 そこで、令和三年度から、発達障害等により支援が必要な生徒がいる場合、どの都立高校に進学しても学校内で障害に応じた特別の指導を受けられる新たな仕組みを都立高校に導入いたします。

○小宮委員 どの都立高校に進学しても障害に応じた特別の指導を学校内で受けられる新たなこの仕組みの導入というものに期待をするところです。
 さて、昨年度は、在宅訪問教育を受ける生徒の学習機会の確保や、学校行事等への参加のための分身ロボットをモデル配備するという事業を実施されています。
 そこで、この在宅訪問教育における分身ロボットの活用について、取り組み状況を伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 在宅訪問教育における分身ロボットの活用につきましては、昨年度から、肢体不自由特別支援学校二校において、二年間のモデル事業を実施しております。
 具体的には、自宅にいる児童生徒がタブレット端末を用いて、在籍する学校に置かれた分身ロボットを操作し、音楽や家庭科の授業、外国語活動などに参加しております。

○小宮委員 その分身ロボットの活用について、まだモデル事業の実施中ですけれども、現状の成果や課題について伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 分身ロボットを活用して授業等に参加した児童生徒からは、自宅ではできないことが体験できて楽しかった、分身ロボットを通して友達と会話することができてよかったなどの声がありました。
 一方、在宅訪問教育を受ける児童生徒の障害の程度や状態により、在籍する学校の児童生徒と学習の進度が異なる場合には、教科指導に工夫が必要となるなど、在宅訪問教育における活用には課題があることも明らかになりました。
 今後、本モデル事業の成果や課題を検証し、在宅訪問教育を受ける児童生徒に対して、在籍する学校の児童生徒との学び合いや交流の機会を確保するため、ICT機器の活用を図っていきたいと考えております。

○小宮委員 まだ整理しなければならない課題もあるとのことでしたけれども、身体的、また、精神的な理由で学校に通えない、そういう児童や生徒も分身ロボットによって教室で友達と机を並べることができるということは大変すばらしいことだと思います。
 ICT機器もいろいろあります。タブレットだけでなく、こうした障害の特性や状態に応じて、さまざまな機器を活用することによって、これまではできなかった子供たちにとっての喜びや思い出というものを教育現場の中でもぜひつくっていっていただきたいと思います。
 冒頭の質問で申し上げました都立の課題認識について、私学との切磋琢磨が必要であるという話もありましたけれども、ぜひ、都立学校として、私学にはできなくて、将来の東京に必要な人材を育成する、そういう教育というものを、ぜひ大胆に考えていただいて、都立の魅力や社会的役割、また、社会的な価値、そういったものを高めていっていただきたいと思います。
 来年度、北区の西が丘に開設する保育や介護人材の育成に取り組む赤羽北桜高校などにも大いに期待いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○原委員 それでは、質問したいと思います。テーマ的には、前の委員の皆さんと重なっているところもありますが、重複しないように質問をしていきたいと思います。
 最初に、不登校の子供たちへの支援について伺います。
 不登校の子供たちは、先ほど来お話にあるとおり、昨年度、小学校五千二百十七人、中学校一万八百五十一人で、その前の年に比べて、小学校で八百九十九人、中学校で九百八十一人ふえています。増加傾向は何年も変わっていません。
 不登校になった子供たちは、学校に行けない自分を責め、また、保護者も育て方が間違ったのかと悩み、苦しみます。不登校は誰にも起こり得ることなのに、その子供の弱さや親の育て方の問題だとする無理解や偏見がまだまだ社会に根強く存在しています。そのために、適切な相談や支援に結びつくのに時間がかかるケースも少なくありません。そうした中、どのような支援をしていくのかが重要です。
 まず、不登校の子供たちや家族に対する支援について、都教育委員会の昨年度の取り組みと実績を伺います。

○増田指導部長 都教育委員会は、昨年度までの三年間、教育支援センターにおける不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向けた支援の充実を図るため、教育支援センター機能強化モデル事業を実施してまいりました。
 具体的には、モデル地区に指定した十一の自治体に対して、人材の配置や学習環境の充実等のメニューの中から、希望するメニューに要する経費を補助してまいりました。
 モデル地区の教育支援センターからは、タブレット端末を家庭学習や担任との連絡に活用したことで、学習意欲の向上や担任との関係の構築につながった事例や、フリースクールと連携して、保護者向け講演会を開催したことにより、保護者同士で不安や悩みを共有できるようになった事例などが報告されております。

○原委員 今お話にあったような取り組みも踏まえて、昨年度、教育委員会及び学校と民間施設・団体との連携検討委員会による報告書がまとめられています。
 五回の検討委員会が開かれて取りまとめられていますけれども、検討委員会の委員には、不登校の子供の保護者や親の会の方はいないようです。そうした方々の声は反映されているのでしょうか。

○増田指導部長 ご指摘の検討委員会は、学識経験者、区市町村教育委員会の関係者に加え、日常的に不登校児童生徒及びその保護者とかかわっている都内公立学校の校長や、フリースクール等の代表者等、十人の委員で構成いたしました。
 検討委員会における協議の中では、保護者の意見も取り上げられており、報告書はそうした協議を踏まえて作成されたものでございます。

○原委員 保護者の意見が取り上げられているというのは、あくまで委員の方々からの発言の中でということだと思います。
 もちろん、日ごろから不登校の子供たちや保護者とかかわっているフリースクールなどの方々から大事な現場の声が出されているということは認識をしています。同時に、フリースクール等には行かず休んでいる子供たちの思いや、不登校の親の会で交流している内容なども踏まえることは、不登校支援には欠かせません。
 民間施設、団体との連携を進めていくとされていますが、親の会や地域にある不登校の子供たちの居場所なども対象としているのでしょうか。

○増田指導部長 都教育委員会は、昨年度行われた教育委員会及び学校と民間施設・団体との連携検討委員会における検討を踏まえ、今年度新たに東京都学校・フリースクール等協議会を設置いたしました。
 この協議会は、学校や教育委員会と、フリースクール等、民間施設、団体が連携して、不登校児童生徒の社会的自立に向けた支援を行うことができるようにすることを目的に設置した組織でございます。
 連携の対象となるのは、都内に設置されているか、都内の学校に在籍する児童生徒が通っている施設等の中で、本協議会の目的に賛同する全ての施設等でございます。
 したがいまして、不登校児童生徒の保護者による組織や不登校児童生徒の居場所としての機能を果たしている施設等も対象に含まれております。

○原委員 不登校児童生徒の保護者による組織や不登校児童生徒の居場所としての機能を果たしている施設も対象に含まれているということは重要だというふうに思います。地域の親の会や子供たちの居場所などにも漏れなく声がかかって、連携できるように進めていただきたいというふうに思います。
 そして、進めていく上で大事なのは、支援の視点です。これは昨年度検討委員会の中でも議論をされてきていますが、都教育委員会として、不登校の捉え方、支援の視点はどのように整理をしていますか。

○増田指導部長 不登校は、特定の子供に特有の問題があることによって起こるのではなく、どの子供にも起こり得ることであり、その行為を問題行動として判断してはならないと捉えております。
 また、不登校児童生徒への支援は、個々の状況に応じて行う必要があり、登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒がみずからの進路を主体的に捉えて、社会的に自立できるようにすることを目指して行われるべきと考えております。

○原委員 大変重要な視点だというふうに思います。その視点からすると、やはり親の会は重要なのではないかと改めて聞いていて思いました。
 もちろんいうまでもなく、フリースクールなどは、学校が息苦しくなった子供たちに寄り添って、自分を取り戻して成長する場として大事な役割を果たしています。ただ、心配なのは、東京都学校・フリースクール等協議会という名称からすると、学校に行けなければフリースクールに行くなど、とにかくどこかに所属して欠席扱いにならないようにするということが優先されないかということを心配をしています。学校を欠席して家でゆっくり休むということが安心してできなくならないかということを心配しているんです。
 これは、教育機会確保法の国会審議のときもポイントの一つになった部分です。子供たちが不登校になったとき、学校に行けないからといって、もう道がないわけでは全くなくて、ほかのやり方もあると。選択肢をふやすということはとても大事ですが、同時に、多くの子供たちは学校を休むことで自分を守っています。しっかり休んでエネルギーをためながら、自分の進み方を自分で考えていきます。そこをせかさずに見守ること、そして、その時間は必要な時間であるということを共有することが重要だと思っています。親の会などでは、信じて任せて待つということをよく話されますが、そのことを学校と家庭で共有して、子供自身の歩みをじっくり見守る、支えるということが保障される必要があると考えています。
 また、不登校の原因はさまざまだといわれていますけれども、根本に、誰もが通いたい学校かどうかという問題があると思っています。不登校の要因の調査結果で、不登校の要因のトップが本人の無気力や不安となっていますが、しかし、もとから無気力だったり、不安があったわけではないわけです。無気力になった、不安が強くなったということだと思います。
 ある小学校六年生で不登校になったお子さんは、いじめなどがあったわけではなく、勉強も好きで学校に行っていましたが、ある日突然、学校にいると息が苦しくなると訴えて不登校になりました。病気ではありません。
 国連子どもの権利委員会からは、日本の学校環境について繰り返し勧告が出されています。昨年二月に出された勧告は、ストレスの多い学校環境、括弧して過度に競争的なシステムを含むと書いてありますが、この学校環境から子供を解放するための措置を強化することと述べられています。こうした状況を変えていくための都教育委員会の認識と取り組みについて伺います。

○増田指導部長 学校は、全ての児童生徒にとって安心でき、自己存在感や充実感を感じられる場であるとともに、児童生徒が主体となり、日々の授業や行事等で全員が活躍し、互いを認めあえる魅力ある場でなければならないと捉えております。
 都教育委員会は、こうした魅力ある学校づくりを通して不登校対策の充実が図られるよう、都教育委員会の指導主事等が区市町村教育委員会や学校主催の研修会を訪問し、平成三十一年三月に都内全公立小中学校に配布した児童・生徒を支援するためのガイドブックの活用を促すなどしております。

○原委員 神戸大学の名誉教授広木克行氏は、東京近隣の登校拒否・不登校を考える親の会の案内のパンフレット、なやんでゆれてというものがありますが、その中で次のように書いています。
 全国一斉学力テストのための勉強や、受験の偏差値を上げるための教育は、子供の人格の発達を促す教育とは本質的に違います、何十万人という子供たちの感性が、その教育との矛盾に苦しみ、その苦痛と痛みから自分の心と体を守るために家庭に助けを求めている姿、それが不登校の本当の意味なのですと書かれています。
 国連の勧告は、まさに人格の発達を促す教育を進める大切さを示しています。不登校について、誰にも起こり得るという捉え方に前進をしている、これはとても大事ですが、それでも個々の子供の問題としての対策だけになってしまい、学校自体が変わるということがなかなかテーマにならなかったのがこれまでだったというふうに思っています。
 先ほどご答弁で、魅力ある学校づくりを進めていくということもいわれました。学校を変えていくために最も大事なのは、子供自身が意見をいえて、それによって改善していくということだと思います。
 昨年度、都教育委員会として、その子供自身の声を聞いていくという取り組みについて、どのようなことを実施してきているか伺います。

○増田指導部長 ただいま申し上げました児童・生徒を支援するためのガイドブックには、児童生徒が学校を魅力ある場所と感じられるようにする取り組みの視点として、教職員による居場所づくりと、児童生徒自身によるきずなづくりの重要性を指摘しております。
 具体的には、児童生徒主体のきずなづくりができるような場や機会を設定し、自発的な思いや行動が湧き上がるような取り組みを行うことが重要であると記載しております。
 都教育委員会の指導主事等が区市町村教育委員会や学校主催の研修会を訪問し、指導助言を通して、このガイドブックの学校での活用を促すなど、魅力ある学校づくりを支援しております。

○原委員 子供の意見表明権を本当に大事にする取り組みを、ぜひ工夫してやっていっていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 また、今ご答弁の中に、ガイドブックの話も出てきました。先生方への支援も、とても重要だと思います。ガイドブックの活用の手引を読みますと、不登校が生じない魅力ある学校づくりというふうに書かれているのですが、不登校の子供がいたら教師の力量不足のような見方をされないかということを、私は少し心配しています。大事なのは、信じて任せて待つを学校現場でも大事に共有して、子供がいつでも戻れる、何度でも安心してチャレンジできる環境を学校でつくっていくということだと思います。そういう点で、ガイドブックや手引も、常に必要な改善などもしていただきたいと要望しておきたいと思います。
 次に、特別支援教育について伺います。
 まず、発達障害教育についてです。
 東京都は、二〇一六年二月に発達障害教育推進計画を策定しました。都内公立小中学校の情緒障害等通級指導学級での指導を在籍校で受けられるようにして、これまでより多くの発達障害の児童生徒が必要な指導を受けられるようにするとのことで、特別支援教室の設置を進めてきました。既に、先ほど来お話にあるとおり、小学校は設置が完了しているということです。
 そこで伺いたいんですけれども、公立中学校への特別支援教室の現在の導入状況と、昨年度の中学校特別支援教室の環境整備に伴う補助金の活用実績について伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 現在、都内公立中学校六百十二校中、五百二十四校に特別支援教室が導入されております。令和元年度の中学校特別支援教室の環境整備に伴う補助金の実績は、物品購入に要する経費につきましては百七十校で四千七百七十五万六千円、簡易工事相当の経費につきましては百八校で六千三百五十六万一千円でございます。
 主な整備内容といたしましては、教材を初め収納棚やホワイトボードなどの備品の購入、個別スペースを設けるための間仕切りの設置や照明の増設など、教室環境の整備に要する簡易工事でございます。

○原委員 わかりました。その中学校の特別支援教室についてですけれども、楽しく行っているという声もある一方で、こういう声も聞かれます。
 英語と数学の時間に特別支援教室に行っているため、勉強がおくれてしまい、高校に行けるかどうか心配しているなどという声、また、支援教室でやらなければならないことや宿題が多くてつらいなどの声もあります。
 きめ細かく子供たちの相談に乗り、通常級の先生との連携を強めて、子供たちを支えていくことが大切だと考えますが、見解を伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 特別支援教室で指導を受ける児童生徒は、ほとんどの時間を通常の学級で過ごしております。そのため、学級担任や教科担任と特別支援教室を担当する教員が連携、情報共有することにより、児童生徒の在籍学級における困難を把握し、その困難に応じた指導を行うことが重要でございます。
 都はこれまでも、研修などを通して、特別支援教室の授業と通常の学級の授業の関連を深められるよう、それぞれの教員が共同して個別指導計画を作成するなど、連携の図り方について指導助言を行ってまいりました。
 今後とも、学校における連携が十分図られるよう、指導を徹底してまいります。

○原委員 通常学級の担任の先生と特別支援教室の先生と保護者の三者面談ができ、本当によかったという、そういう感想なども聞かれています。連携がうまくいっているケースだというふうに思います。
 ただ、やはり課題もありまして、取り出し授業だけでは足りなくて、もう少し時間をかけてじっくり勉強や活動が特別支援教室でできたらいいというお子さんもいらっしゃいます。そういうお子さんの場合は、以前のような情緒障害等通級指導学級であれば、週に一日は通級で過ごすと決め、朝から帰りまでじっくり活動することができます。こういうことができなくなったということは、非常に残念に思っています。
 また、小集団活動も支援教室で保障するというふうになっていましたけれども、学校によっては人数が少なく、実際にはできないということも指摘をされています。ぜひ、こうした現場の声を十分に踏まえて、都が推進した特別支援教室ですから、必要な支援を強化していただきたいと思います。とりわけ、教員の配置については、現在の十対一から後退させることなく、むしろ拡充することを求めておきたいと思います。
 発達障害の固定学級についても非常に重要です。小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級、固定学級で学んでいた児童が、中学校には固定学級がないために進路選択に苦労して、不登校になっている事例もあります。
 区市町村が自閉症・情緒障害特別支援学級、固定学級を設置する際に、東京都に財政的な支援を含めて支援を強めていただきたいと思いますが、いかがですか。

○高木特別支援教育推進担当部長 公立小中学校の特別支援学級は、設置者である区市町村教育委員会が児童生徒の状態や数の変化などを考慮し、地域の実情に応じて主体的に学級を編成し、設置しております。
 公立小中学校に係る経費につきましては、原則として設置者である区市町村教育委員会が負担することとされており、特別支援学級設置に当たっての教室環境整備につきましても、各区市町村教育委員会がそれぞれの判断により実施しております。
 なお、都教育委員会は、区市町村教育委員会が届け出た学級数に基づき、必要な教員を配置しております。

○原委員 資料も出していただきましたが、それによると固定学級は、小学校も中学校もふえてきています。町村については、奥多摩町が小学校、三宅村が小中学校で設置をしているんですが、それ以外、二十三区二十六市では、小学校、中学校とも設置をしているのが江東、葛飾、青梅、昭島、国分寺、国立、福生、清瀬、多摩、西東京の二区八市です。小学校だけ設置しているのが五区五市、中学校だけ設置が三区四市です。
 いずれも地域の実情に応じて設置しているので、これによいとか悪いとかという問題ではないのですが、例えば東久留米市では、小学校の固定学級での状況を調査研究しながら、小学校への新たな設置や中学校の設置について検討を行うという方針を持っているんですが、この方針のもと、小学校は設置校をふやしています。
 しかし、まだ、今、中学校はないために、中学校をどうするかと悩まれる方が非常にふえています。小学校からの連続性を考えて、中学校にも設置をしてほしいという声が切実なものになっています。
 また、こういう声も寄せられています。ある自治体の保護者の声です。
 息子は現在中学一年生です、今春から中学校の知的の固定学級に通っています、就学相談では通常級判定が出ましたが、どうしても大人数の集団が苦手との本人の希望で、固定学級を選びました、少人数なのはいいですが、どうしても知的の固定学級なので勉強が物足りなく、塾に行って勉強面でのサポートをしています、期末考査では、塾に通っている数学と英語の教科だけ、通常級と同じ内容のテストを受けられました、なかなか本人の特性上、通常級との交流も難しいです、情緒の固定学級があれば、もう少し学習面のフォローができるのにと思います、また、小学校の情緒の固定学級の子は、中学校になったら通常級に進学するというのが標準になっているので、中学校で不登校になっている卒業生もいます、こういうようなこともお話がありました。
 どの子供も自分に合った選択ができるようにするために、固定学級をふやすと自治体が判断をしたら、東京都の支援も積極的に行っていただきたいと強く要望しておきたいと思います。特に、発達障害教育推進計画で、東京都自身が固定学級設置について区市町村を支援すると位置づけていることを踏まえて、その対応を求めておきたいと思います。
 また、発達障害の固定学級だけではなく、特別支援学級の人数がふえて教室が足りないという事態も起きています。ある自治体の例では、楽器を保管する場所もなくなって廊下に置いている、こんな実情も訴えがありました。部屋をふやそうにも、もうないということです。臨時的にプレハブを建てようというふうに思っても、そこへの支援は特にありませんから、なかなか財政が厳しいと大変だという声もあります。
 教室をふやそうと思っても足りないという状況で、さらにこの特別支援教室での場所の確保等も重なっていますので、やっぱりここは東京都として、必要な支援を検討していただきたいということを私は求めておきたいと思います。
 最後に、特別支援学校について一点だけ伺います。
 資料も提出していただきました。特別支援学校の校舎を建てかえる際、仮校舎を建設して、そこで子供たちが過ごすケースがあります。その場合にも、できる限り教育環境を後退させないことが大事だと考えています。これまで、仮校舎の整備に当たり、どのような配慮がされてきたか伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 特別支援学校の改築等に伴い、仮設校舎を設置するに当たりましては、必要な教育活動を行うことができるよう、施設整備において工夫を図っております。
 具体的には、児童生徒が集会や運動の場所として共用できるプレールームの設置、空きスペースを有効活用した体育的活動ができる場所の整備など、さまざまな工夫を行っております。さらに、近隣の体育施設などを借用し、運動場所を確保するなど、適切な教育環境の確保に努めております。

○原委員 仮校舎といっても、子供たちにとっては、その期間は一度きりのかけがえのない時間です。とりわけ障害のある子供たちの発達保障を考えれば、間に合わせというわけにはいかないと思います。今、さまざまな工夫をして、これまでもやってきているというご答弁がありましたが、ぜひ保護者の意見も聞いて、設計に盛り込めるようにしていただきたいというふうに思います。
 私の活動している地域では、清瀬特別支援学校が建てかえになるということで資料にも出されていますが、先日学校を訪問しましたが、まず、高等部が東久留米特別支援学校に移るので、その分スペースも広くなるわけです。教室を半分で使っているところの改善や、子供たちがクールダウンできる部屋の確保など、大きな改善になるのではないかというふうに思いました。この清瀬特支に限らず、建てかえについては、保護者への説明を十分に行って進めていただきたいというふうに思います。今後とも、他の学校についても、必要な改修、改築が順次進むよう要望しておきたいと思います。
 また、現在、特別支援学校の教室不足が深刻な中、国においてようやく設置基準の議論が進められていますが、子供たちの教育環境改善のために役立つ基準になるように、東京都からも必要な意見は上げていただきたいということをあわせて要望して、質問を終わります。

○岡本委員 都民ファーストの会の岡本こうきです。よろしくお願いします。
 三月二日からの一斉休校は、令和元年度決算に与えた財政的な影響は必ずしも大きくはないと聞いておりますが、その社会的な影響、学校に通う児童生徒など、その保護者などへの影響は極めて大きいものでした。
 そこで、三月二日からの一斉休校について質問させていただきます。
 二月二十八日付文部科学事務次官からの学校における一斉臨時休業の通知は、お願いであって強制ではありません。学校を休業するかどうかは学校設置者が判断するところ、都立学校の学校設置者は、教育長と五人の委員により組織される都教育委員会です。
 本来であれば、都立学校を一斉臨時休業にするかは、都教育委員会の合議により判断され、決定されるべきですが、緊急の対応ということで、都教育委員会を招集せずに、教育長が臨時代理により判断し、決定したということです。
 そもそも臨時代理とはどのような制度で、臨時代理により処理した理由について伺います。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 教育長の臨時代理は、東京都教育委員会の権限委任等に関する規則に定められた制度でございます。
 具体的には、教育長が委任を受けた事務以外の事務について緊急に処理しなければならない事由が生じ、かつ、教育委員会が招集されるいとまがないときまたはその事務の処理についてあらかじめ教育委員会の指示を受けたときは、これを臨時に代理することができるとされているものでございます。
 三月二日からの都立学校の臨時休業につきましては、学校保健安全法第二十条に基づき、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、二月二十八日に都立学校の臨時休業を教育長が臨時代理で処理いたしました。
 臨時代理で処理した理由でございますが、国より二月二十八日付の通知において、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、三月二日から春季休業の開始日までの間、新型コロナウイルスの感染の拡大を防止するための臨時休業を行うよう要請があったこと、通知があった二月二十八日は金曜日でございまして、児童生徒等が下校する前に全校に周知する必要があったことから、教育委員会を招集するいとまがなかったことでございます。

○岡本委員 令和二年三月五日に開催された令和二年第五回東京都教育委員会定例会の議事録を拝見いたしました。この中で、臨時代理で処理したことについて、事後的に議案として議論をされております。
 これについて一部の委員からは、いとまがないという理由は心外だなと思う、株式会社などでは取締役会などで持ち回り決議をやる、こういう重要な案件の場合には、何らかの形で意思決定をすることが望ましいのではないかという意見や、特別支援学校は休業措置を除く決断ができなかったのかという意見も見られました。
 この点については、都立学校教育部長から、二月二十八日の前日、総理大臣からコメントが出たけれども、文部科学省からの通知が、詳細な部分が当日なかなか届かない中で混乱した部分があったという説明と、今後については、情報化の時代なので、いろいろな方法が考えられるとの説明があり、教育長からも、今後はいろいろな手段を使ってきちんとご判断をいただけるようにしたいとの説明があって、結論として、臨時代理による処理が全委員異議なく承認をされたということで、議事録を拝見いたしました。
 臨時代理の手続について今伺いましたが、次に、その内容、中身の点について改めて確認をしたいと思います。
 都教育委員会では、このように臨時代理により、教育長が二月二十八日、国からの通知の同日に都立学校の一斉臨時休業を決定し、各学校長に通知したわけでありますが、他方で、例えば島根県では、その時点では一斉臨時休業にしないことを教育委員会で決定しております。結局島根県では、四月十五日から松江市内の県立高校を休業にし、緊急事態宣言後の四月二十日から全ての県立学校を休業にしました。
 また他方、埼玉県では、二月二十八日に、特別支援学校については当面学校教育活動を継続するとして、臨時休業にしない決定をしました。また、報道によれば、このほか全国で二十市町村立の小中学校三百十六校が休校しなかったということです。
 このように、他県では異なる選択肢も見られますし、一斉休校に疑問を呈する意見や反対する意見も当初からさまざま見られたところでありますが、教育長が都立学校の一斉臨時休業を決定した理由について伺います。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 国からの臨時休業の要請におきましては、今が感染の流行を早期に終息させるために重要な時期であることから、子供たちの健康、安全を第一に考え、多くの子供や教職員が日常的に長時間集まることによる感染リスクに備えるという観点と、臨時休業期間中の保護者の負担等が生じないよう、政府として責任を持って対応する旨の方針が示されていました。
 こうした点を踏まえ、都教育委員会としましては、学校における教育課程の取り扱い、卒業式や入学選抜等の行事、障害のある児童生徒に関することなど、臨時休業による影響と対応について関係各部署で検討を行ったところでございます。それらを総合的に勘案し、都立学校につきましては、三月二日から春季休業までの間、臨時休業とすることを判断したものでございます。

○岡本委員 先ほど触れた都教育委員会の議事録には、内閣総理大臣からの話の前から、東京都としては、学年末考査が終わったらそこから休みに入るということも議論されていたという記述があります。
 都教育委員会は、国からの一斉臨時休業に係る要請に先立ち、都独自の対応を検討していたということであります。結果として、この都独自の対応は実施されなかったわけでありますが、具体的な検討内容を伺います。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 今ご質問いただきました、都独自の対応は日の目を見なかったわけであるがということでございますけれども、二月二十六日に通知自体はいたしておりますので、日の目を見なかったというより、二月二十六日の内容につきまして、検討内容ということでご説明申し上げます。
 都教育委員会におきましては、国からの要請の前に、国内における新型ウイルスの感染状況や国の取り組み状況等を踏まえまして、都内での感染拡大を防ぐ取り組みを強化するため、都立学校における当面の対応を定め、二月二十六日に都立学校へ通知していたものでございます。
 主な内容といたしましては、感染症予防策の徹底に関する取り組みや卒業式等の教育活動における対応、混雑を避けるための時差通学の実施、事実上の春休みの前倒しのほか、学校において感染者が出た場合の対応などについての方針を定めたものでございました。

○岡本委員 二月二十六日付の東京都教育委員会教育長作成の各都立学校長などに宛てた通知、新型コロナウイルス感染症に関する学校における対応についてという通知には、学年末考査等終了から修了式まで原則自宅学習ということが書かれてあります。都としては、三月の学年末考査が終わってから春休みを前倒しするということを考えていたのに対して、国の要請では、多くの都立高校で三月の学年末考査が実施できなかったという違いがあったということで伺っております。
 このような、都としては春休みの前倒しの通知をしていたということや、先ほどご答弁いただきました政府として責任を持って対応する旨の方針が書かれていたことなどからすれば、臨時代理としての教育長が都立学校の一斉臨時休業を二月二十八日に決定し、都教育委員会が三月五日にこれを承認したということは、当時のその時点の判断としては自然なことであったんだろうということがわかりました。
 もっともここでは、事後的な振り返りとしては、異なる考え方や選択肢もあり得たのではないかということも検討しておきたいと思います。
 つい先日、新型コロナ対応・民間臨時調査会、調査・検証報告書が出版されました。それによりますと、そもそも政府専門家会議関係者は、僕らは反対だったんです、コンセンサスとしては、今の時点では学校閉鎖は余り意味がないという話はしていた、エビデンスから考えると、今回のウイルスは子供は感染源にほとんどなっていない、一斉休校は疫学的にほとんど意味がなかったと述べています。
 また、安倍首相官邸と萩生田文科大臣、文科省の思惑も合致していなかったということであります。二月二十七日の午前十一時八分に安倍首相が全国一斉休校の要請の考えを文部科学事務次官に突如伝え、十三時二十九分に萩生田文科大臣が安倍首相に対して、文科省としては一斉休校の必要はないと考えている旨や、感染が出た学校だけをやむを得ず閉める方向を申し入れたということであります。
 しかし、安倍首相及び官邸は一斉休校実施に向けて進め、同日の十八時二十一分の政府対策本部で、安倍首相は臨時休業の要請を発表したということであります。萩生田文科大臣は、春休みの前倒しであって、本来の春休み期間である三月二十日からは学校を再開し、授業を行うことができると理解していたということです。
 この当時、私も専門家の見解や疫学的なデータを調べておりました。二月十八日に英語と日本語で配信されたBBCのニュースでは、中国疾病管理予防センター、チャイナCDCの大規模調査の結果が解説されていました。
 四十歳未満の致死率は〇・二%、感染者の八〇・九%は軽度に分類される、致死率が最も高かったのは八十歳以上で一四・八%、九歳までの子供に死者はいない、三十九歳までの致死率は〇・二%と低い、既往症別の危険度では、心臓病が一位で、糖尿病、慢性呼吸疾患、高血圧が続く。現在既に一般的に認識されているCOVID-19のこうした病態は、二月時点でも既に明らかになっていました。
 二月二十六日に配信された記事、政府専門家会議のメンバーの押谷仁教授のヤフーニュースのインタビュー記事には、次のように書いてあります。
 新型コロナウイルスは、現在致死率は二・三%程度ですが、もっと低い可能性が高いと思います、感染性が非常に高く、むしろ重症者が少ないことが感染連鎖を見えにくくしています、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです、一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからすると余り意味がない、子供が流行の大きな原因になることは少ないことがわかっているからです。
 二月二十四日に出されたレポートオブザWHOチャイナジョイントミッション、WHOと中国が合同で調査した報告書にも、同様の内容が報告されていました。
 このNHKによる解説によれば、子供の感染例は少なく、症状も比較的軽いということで、十九歳以下の感染者は全体の二・四%にとどまっていて、重症化する人はごくわずか、子供の感染について、報告書では、主に家庭内で大人から感染していて、子供から大人への感染例は調査をした中では確認されていないと指摘しています。子供の感染について、報告書では、多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとした上で、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子供から大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。
 このことは、一斉休校の直後においても、発信力の高いフローレンスの駒崎弘樹さんのSNSにも取り上げられ、なぜ対策を打つのに大人の九七・六%の部分からではなく、感染の二・四%、子供の方から打つのか、全くエビデンスに基づいているといえません、エビデンスに欠けた一斉休校を軌道修正させていくべきと論じられています。
 また、日本医師会は五月十五日に、日本医師会COVID-19有識者会議のサイトに次の内容を掲載しています。
 学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しく、逆にCOVID-19死亡率を高める可能性が推定されている、医療従事者も子供の世話のために仕事を休まざるを得なくなる事から、医療資源の損失と推定されている、教育、保育、療育、医療福祉施設などの閉鎖が子供の心身を脅かしており、小児に関しては、COVID-19関連健康被害の方が問題と思われる、学校閉鎖は、単に子供たちの教育の機会を奪うだけではなく、屋外活動や社会的交流が減少することも相まって、子供を抑鬱傾向に陥らせている、子供は多くの場合、親から感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症である。
 四月十八日の日本感染症学会のCOVID-19シンポジウムにおける押谷仁教授の発表では、三月二十三日のランセットの論文に基づいて、ウイルス排出量は、重症度ではなく年齢に依存、高年齢ほど多いという内容が発表されていました。
 高齢者の場合、感染性が高く、他方、子供は、感染、発症してもウイルス放出量も少ないということが四月中旬の段階で指摘されていました。
 こうしたものも含めて、私なりの意見をまとめておきますと、二月二十八日付の文部科学事務次官からの学校における一斉臨時休業の通知には、保護者の負担などが生じないよう、政府として責任を持って対応する旨明記されており、これを前提とすれば、休業要請に反対する理由をあらかじめ埋められていたということもいえて、教育委員会が政府の要請と異なる方針をとることは難しかったと思います。
 また、政府の強い姿勢や、マスクや消毒液の不足、都内の感染拡大の傾向などからすれば、教育長が都立学校の一斉臨時休業を決定したということは、その時点ではやむを得ない判断だったと思います。
 しかし、そもそも政府の方針には大いに問題があったと考えます。
 私は、三月十八日の厚生委員会において、この政府の方針は、科学的な根拠を欠くのみならず、科学的な妥当性も欠く、効果が小さく不利益が大きい、そして、その不利益のしわ寄せが非常にアンバランスであるということで、私は反対の立場であるということを表明していたとおりであります。現時点では、このことが一層裏づけられています。
 安倍総理は、疫学的にほとんど意味がない、ただし、多くの人々に心理的な影響を与える、意識を変えるという意味はあったかもしれませんが、そのために子供や保護者に過度な負担を強いる政策決定をしたと、そのようにいえると思います。
 改めて、後の知見や情報、実際の休校後の状況や社会的な影響、得られた効果、及ぼした不利益、デメリットなどを事後的に総合的に振り返って、政府や教育委員会の判断の妥当性を検証することは必要なことだと考えます。
 一斉休校という方策よりも、私の対案としては、疾患があってリスクが高い子供、高齢者や基礎疾患がある人と同居、濃厚接触する子供、そうした子供に優先的にオンライン学習やリモート学習の環境を整備するといった方針で対処すべきだというふうに考えています。
 また、同様にハイリスクを抱える教職員の方々、ご自身がリスクが高い場合、あるいは高齢者や基礎疾患のある人と同居、濃厚接触する教職員の方々への配慮など、そうした配慮の対策をとりながら、新型コロナに対処すべきだという考えを私としては持っております。
 さて、次の質問に移ります。
 二月二十八日は金曜日でしたが、都議会では一般質問が行われた日でした。我が会派の菅原直志議員から、大きな混乱を引き起こす唐突な政府の政策決定にどう対応していくのか、小池知事に質問しました。小池知事から、全都立学校の休校に加えて、特別支援学校の柔軟な対応、区市町村に対する小中学校低学年の子供たちへの対応の特段の依頼、保育所や学童クラブの開所の要請、国への緊急要望などについて答弁がありました。
 都は、特別支援学校については休業にした上で、必要な場合は学校で過ごすことができるように配慮するとしました。他方、先ほども述べたように埼玉県では、特別支援学校は休業しないという決定をしました。一見同じようにも思えるのですが、子供たちにとって、ふだんの学校生活でどのような違いが生じたのか伺います。

○高木特別支援教育推進担当部長 都立特別支援学校では、新型コロナウイルスの感染の拡大を防止するため、臨時休業といたしましたが、日中の子供たちの居場所を確保するよう配慮いたしました。
 なお、この間、家庭などで過ごせる子供たちは登校していないことから、通常の授業は行いませんでした。そのため、各学校では、家庭などで過ごしていた子供たちに定期的に連絡をとり、健康状態を確認するなど、心のケアを行っておりました。
 また、学校で過ごした子供たちは、ふだんの担任やクラスメートとは違う教員、児童生徒などと一緒に生活リズムを保つため、時間を区切って適度な運動や読書など、さまざまな活動を行っておりました。

○岡本委員 ありがとうございました。
 次の質問に行きます。
 都教育委員会教育長は、二月二十八日付区市町村教育委員会教育長宛ての通知で、学校施設を弾力的に活用した子供たちの居場所の提供などについて配慮をお願いしました。この配慮をお願いした理由を伺います。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 臨時休業の実施に当たりましては、保護者の事情などにより、家庭で過ごすことが難しい児童生徒の居場所を確保することが必要となります。
 そのため、都立特別支援学校におきましては、障害のある児童生徒が安心して学校で過ごすことができますよう、スクールバスの運行や医療的ケアの実施などの対応を行いました。
 同様に、小学校低学年の児童などについても配慮が必要となることから、区市町村教育委員会に対し、児童生徒の日中の居場所の確保について、首長部局と連携した対応や、学校施設を活用した居場所の提供等を依頼したところでございます。

○岡本委員 ありがとうございました。限られた時間の中で、こうしたお願いを二月二十八日当日に明記して送ったということは評価すべきだと考えております。また、あわせて同日、知事から国に対して放課後児童クラブ、いわゆる学童や保護者の負担などに関する支援を緊急要望したことも評価すべきだと考えております。
 小学校低学年の児童は高校生と異なり、居場所確保の要請が一層高いことや、小学校は近距離の通学が多く、公共交通機関を利用しない児童が多いことから、高校の場合よりも、小学校において子供の居場所とする意義は大きいというふうにいえます。都が区市町村に子供たちの居場所の提供を要請したことは、重く受け取られるべきものです。その結果はどうであったのか。
 文科省が発表した公立学校における学習指導等の取り組み状況についてと題する四月十六日時点の調査結果の取りまとめによれば、次のような結果が示されています。
 校庭を活用して子供の居場所確保に取り組んだ学校は四一%、教室を活用して子供の居場所確保に取り組んだ学校は五六%、昼食を提供した学校はわずかに四%ということでした。
 これは全国の数字であって、都内の数字について都教育委員会に問い合わせたところ、把握はしているが、集計はしていないということでありました。把握した情報を一覧に集計するなど、振り返りやすい状況を整えておくように求めます。都からの要請が一〇〇%達成されるべきだったと考えております。この点も、後にしっかり検証されるべきであると考えております。
 本日は決算委員会ですので、質疑の対象は、基本的に三月末までを対象に限定いたしましたが、その後、臨時休校の延長、四月七日緊急事態宣言、五月七日からその緊急事態宣言の延長、五月二十五日にその解除、五月二十六日から段階的な分散登校、六月二十九日から全面再開という経緯をたどりました。当初は春休みの前倒しと思われ、文部科学大臣においてすら、三月二十日から学校を再開すると思っていたということでありました。
 都教育委員会においても、四月六日から新学期の始業を前提に考えられていました。三月二十六日の教育委員会の議事録には、それを前提にした議論がなされておりました。
 しかし、実際には、その後休校は延長され、長期の休校となりました。二月二十九日に配信された感染症内科医の高山義浩医師のハフポストの記事においては、休校のまま流行がくすぶり続け、再開のめどが立てられなくなるという問題が当初から指摘されていました。結局、全面再開は六月二十九日になったということであります。
 教育委員会の議事録でも、メディアでも、これまで休校の弊害はさまざま論じられてきました。
 子供の学習権、保護者の負担増はもちろんのこと、小中学校低学年の居場所、学童保育がむしろ学校生活よりも密になったという問題、学童の人手不足、高校生の場合は、休業中のカラオケボックスに行って満杯になっていた。原宿など繁華街に出歩いていた高校生もいた。また、学年を問わず、塾予備校での密集、公園が満杯になっていた。学校の方がむしろ安全な居場所で、かつ感染経路の特定もしやすいという指摘。それから、家庭環境による学習の格差拡大、子供の運動面、体力面の低下、精神面、ストレス、心のケア、友人との関係づくりや友達との接し方の変化、新型コロナ対応策に関する子供の納得感の低さや大人、政策への不信感、家庭内の児童虐待、また、中学生、高校生の自殺増ということも報道されています。
 私岡本も、五月から今月末まで、弁護士有志及び弁護士会による子供の悩み事LINE相談の相談担当者として、子供たちの悩みをLINEで直接聞いてきました。
 この間、休校特有の影響も感じたところであります。都及び区市町村教育委員会、そして学校現場も、これまで経験したことのないさまざまな対応に追われ、現在においてもコロナ対策に尽力されており、大変感謝するところであります。
 こうした経緯について、時系列や各判断の過程や理由を整理し、議事録や通知なども新型コロナに関するものを整理してまとめるなど、新型コロナ終息後に事後的に振り返って検証できるよう対応しておくべきと考えますが、見解を伺います。

○小原教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 各学校では、現在におきましても、徹底した感染症対策と学校運営との両立に取り組んでいる最中でございます。
 都教育委員会は、学校における感染症への対応や、学習活動の工夫などの状況を把握し、全都立学校ではそのノウハウを共有して、各学校における日々の運営に活用しているところでございます。
 都教育委員会といたしましては、教職員、児童生徒等、保護者、学校関係者などの協力を得て行ったさまざまな感染症対策などにつきまして、将来的に新たなウイルスが発生した場合に有益な記録として活用できるよう対応してまいりたいと思っております。

○岡本委員 ありがとうございます。ぜひ、事後的な検証のための記録の整理や集計などの取りまとめをお願いいたします。
 また、各時点における判断の妥当性や、事後的、総合的に振り返ってみたときの妥当性なども、都において、あるいは民間において、あるいは研究者において検証されるべきことだと考えます。そうしたことは歴史的に見ても、また後世において、全く同じ問題は起きないかもしれませんが、類似の課題が生じた場合に、参考とすべき貴重な資料になると考えます。重要な価値や意義があると考えます。
 安倍前総理が行った、安倍政権が行った一斉休校は、元文部官僚の寺脇研氏から、世紀の愚策、歴史に残る愚策と痛烈に批判されているものでもあります。
 現場の混乱と苦労、また、都教育委員会及び都として、休校の弊害をできるだけ低減するために行ってきた工夫や尽力を後世のためにしっかり残すべきであると考えます。
 以上、私の意見を述べて、質疑を終わります。どうもありがとうございました。

○中山委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中山委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で教育庁関係を終わります。
 以上をもちまして第二分科会における決算の審査は終了いたしました。
 なお、本分科会の審査報告書につきましては、分科会委員長において取りまとめの上、委員会委員長に提出いたしますので、ご了承願います。
 これをもちまして第二分科会を閉会いたします。
   午後五時四十五分散会

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