平成二十三年度各会計決算特別委員会第三分科会速記録第六号

平成二十四年十月二十四日(水曜日)
第九委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十名
委員長高倉 良生君
副委員長鈴木 隆道君
副委員長西岡真一郎君
小宮あんり君
新井ともはる君
神野 吉弘君
鈴木 勝博君
西崎 光子君
藤井  一君
遠藤  衛君

 欠席委員 なし

 出席説明員
産業労働局局長中西  充君
次長保坂 政彦君
総務部長斎藤 真人君
産業企画担当部長矢田部裕文君
商工部長河内  豊君
金融部長寺崎 久明君
金融監理部長黒沼  靖君
金融支援担当部長片山  謙君
観光部長十河 慎一君
農林水産部長津国 保夫君
安全安心・地産地消推進担当部長武田 直克君
雇用就業部長穂岐山晴彦君
事業推進担当部長戸澤  互君

本日の会議に付した事件
平成二十三年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
産業労働局関係
・平成二十三年度東京都一般会計決算(質疑)
・平成二十三年度東京都中小企業設備導入等資金会計決算(質疑)
・平成二十三年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計決算(質疑)
・平成二十三年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計決算(質疑)

○高倉委員長 ただいまから平成二十三年度各会計決算特別委員会第三分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、産業労働局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより産業労働局関係に入ります。
 初めに、過日の分科会において紹介できませんでした幹部職員について、産業労働局長から紹介があります。

○中西産業労働局長 過日の委員会を欠席いたしました当局の幹部職員を紹介させていただきます。
 次長の保坂政彦でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
   〔理事者あいさつ〕

○高倉委員長 紹介は終わりました。

○高倉委員長 決算の審査を行います。
 平成二十三年度東京都一般会計決算中、産業労働局所管分、平成二十三年度東京都中小企業設備導入等資金会計決算、平成二十三年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計決算及び平成二十三年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計決算を一括して議題といたします。
 本件につきましては、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木(勝)委員 私からは、産業政策について何点か質問いたします。
 十月に発表されました政府の月例経済報告では、景気の基調判断が三カ月連続で下方修正されておりまして、景気が大変後退局面に入ったとの見方が出ております。これについては、中国を初め世界経済の減速などを背景としまして、企業の生産が落ち込んでいることが大きな要因といわれております。
 確かに、現在の日本、さらに東京、活力を失っております。アジアの成長から取り残されて、まあこれだけ、日本はポテンシャルが高い、そういったものを持ちながら、気がついてみたら、頼みの経済のみにおいても二流、三流国になってしまうのではないかと、大きな危機感、焦燥感を持っているところでございます。
 私は、この最大の要因は、よくいわれておりますが、長期間にわたるデフレ状態を国が放置してきたことにあると考えております。消費者物価の下落と国内需要の落ち込みが、結果として国民所得を減少させ、さらなる消費の減退と物価の下落をもたらす、いわゆるデフレスパイラルに陥って、全く脱出できていないのが現状でございます。近年の円高の進行もデフレ圧力に拍車をかけているにもかかわらず、この問題にも対応がおくれております。
 こうした経済の悪循環を断ち切って、グローバル化された市場における公平、公正な競争を促して、経済の好循環、所得の増加を伴う経済成長を実現して、産業の活力を取り戻すことが大変重要と思っております。
 もちろん、政府によりますマクロ的な財政金融政策は急務でございますが、産業が集積しております東京においてこそ、現状を打開するための具体的な産業政策が積極的に講じられていくことが求められていると考えております。
 産業活力の源泉となっております大企業だけではなくて、独自の技術やノウハウを持つ中小企業の存在があってこそ、この活力が戻ると思っております。こうした中小企業の支援策の一つとして、産業活動における血液ともいえます資金繰りへの支援、これについてお伺いします。
 まず、平成二十三年度におきます中小企業を取り巻く資金繰りの状況と、都の金融施策の中で最も大きなウエートを占めている制度融資の実績についてお伺いをいたします。

○寺崎金融部長 平成二十三年度は、依然として厳しい経済情勢が続く中、上半期におきましては、東日本大震災により経営に支障を来しました中小企業を中心に、資金繰り環境が急激に悪化いたしました。
 このため都は、制度融資に災害緊急を創設し、震災による間接的な被害を受けた中小企業の資金需要に対応するとともに、直接被害を受けた中小企業に対しましては、その事業再建を目的とする災害復旧資金融資につきまして、融資実行から一年間に限り都が利子補給を実施するなど、手厚い措置を講じました。こうした震災後の速やかな対応によりまして、上半期は災害緊急を中心に多くの利用がありました。
 しかし、下半期に入りますと、震災に起因する資金ニーズが落ちつきを見せたことに加え、景気の先行き不透明感などにより、事業拡大に伴う前向き資金等を借り控える企業がふえましたことなどから、年度を通しての制度融資の実績は、約十一万五千件、一兆七千百四億円となりました。

○鈴木(勝)委員 中小企業の経営を支える上で、資金ニーズに即した利用しやすい金融施策が重要であろうと思っております。まさに今回の震災対応の緊急融資制度は、タイムリーな融資制度であったと思っております。
 一方、日本経済の元気を取り戻すため欠かせないのが、新たな産業の育成やベンチャー企業への積極的な金融支援だと思っております。
 都はこれまで、ファンドを通じたベンチャー企業への支援を実施してきたと聞いておりますけれども、平成二十三年度に運用を終了しましたベンチャーファンドの実績についてお伺いをいたします。

○寺崎金融部長 都は、平成十二年度に、将来性のあるベンチャー企業に資金を供給いたします二つのファンドを立ち上げ、成長過程にあるベンチャー企業を直接金融の手法で支援してまいりました。
 両ファンドとも、平成二十三年度に運用を終了いたしましたが、この間、創業間もない、いわゆるアーリーステージにある企業を中心に、合計で百十五社に対しまして、資金と経営の両面から支援を継続いたしました結果、売上規模や従業員数の増加など、着実な成長が図られましたほか、十六社が株式市場に上場を果たすなど、ベンチャー企業の成長促進に成果があったものと考えております。

○鈴木(勝)委員 今お話しいただきましたように、それなりのしっかりとした成果が上がったということだと思っております。
 そうはいいましても、景気が今大変低迷しております中で、証券市場におきますベンチャー向けの国内投資、これは大変冷え込んでいる状況でもございます。その影響で、最近は上場するベンチャーの数が随分と減っているということも聞いております。このような経済に活力がないときだからこそ、改めて、創業間もない若い企業の成長への原資が必要になろうかと思っております。
 都は、今年度、新たなベンチャーファンドを立ち上げるということでありますけれども、引き続き、しっかりとベンチャー企業の育成に取り組んでいただきたいと思っております。
 今までお話しさせていただいたように、金融面での支援は、これは産業活力の下支えとして、もちろん重要でございますけれども、何といっても中小企業に借り入れる余力がなければ、せっかくの金融施策も十分に実績が上がってはいかないと思います。
 中小企業へのさまざまな支援策を実効性あるものにしていくためにまず必要なのは、企業の経営体質を強化していくこと、企業の業績を上げていくこと、そういったことが必要だと思います。商売がうまくいかなければ、当然、経営者は借り入れをしようとは思わないと思います。経営体質の強化といっても、これを実行に移そうとしますと、容易なことではないというところでございます。社内の課題を整理し、戦略を立て、これを経営の計画の中に落とし込んで、会社全体で一つ一つ実践していくような地道な作業が必要となりますけれども、中小企業の経営者は一人何役もこなしているわけですから、頭でわかっていても、この厳しい経営環境の中で当座の仕事に追われて、なかなか手がつかないのが現状だと思います。
 中小企業では、ご存じのように、企画部門とか財務部門とか、専門社員を抱えるほどのゆとりは当然ないということでございます。一方、都内には、中小企業診断士や税理士などを初め、経営の戦略や計画の立て方、進め方などの知識やノウハウを持つ経営の専門家やコンサルタントといわれる人材がたくさんいます。こうした専門人材を積極的に活用し、中小企業の経営者と二人三脚で会社の経営体質の強化を進めていく、そういった仕組みを築いていくことが大変重要ではないかと思っております。
 平成二十三年度の都の具体的な取り組みについて、あるいは実績についてお伺いをいたします。

○河内商工部長 中小企業が、経営体質の強化を初めとして経営上の課題を克服するために専門家の相談を受けることは、効果的でございます。
 このため都では、中小企業振興公社内に総合相談窓口を設け、各分野の専門家による無料のアドバイスを実施するとともに、中小企業からの要請に基づき、専門家を会社に派遣し、経営改善等の支援を行う事業を実施しております。
 平成二十三年度は、総合相談において、全体で一万七千四百二十四件の相談に対応し、また、専門家派遣による支援を九百八十三回実施してまいりました。
 今後とも、豊富な専門人材を活用し、中小企業の経営改善を支援してまいります。

○鈴木(勝)委員 非常に厳しい事業環境の中で、中小企業は生き残りをかけた戦いを行っているわけでございますので、ぜひ、経営者に対しまして、でき得る限りの経営サポートを今後も引き続きお願い申し上げたいと思います。
 中小企業の経営改善を進める上では、新たな販路開拓、これはたびたび戦略の中に出てまいりますが、売り上げの拡大を図ることも大変重要になってまいります。
 販路開拓に当たっては、国内需要に加えて、海外の需要を積極的に取り込んでいくことが有効であって、都内の中小企業の中にも、外需をうまく取り込んで順調に業績を伸ばしているケースが見受けられます。私の地元の経営者の中にも、本当に数人でやっている経営者でございますが、高級時計のガラスの研磨をしている会社があります。そこが香港に事業所を出して、中国との取引で大成功したというケースも見られます。
 中小企業の海外展開支援ニーズの高まりを受け、国は、ワンストップ相談支援の強化や情報提供の充実を図っているところでありますが、都としても、中小企業が海外市場で積極的に販路開拓を進めることができるようサポートすることは、今後大変重要だと思っております。
 そこで、中小企業による海外販路の開拓を支援するために、昨年度、都はどのような取り組みを行ったのかお伺いをいたします。

○河内商工部長 都内中小企業に対し、今後の成長が見込まれるアジアなど海外市場における販路開拓の取り組みを支援することは重要でございます。
 平成二十三年度は、海外販路開拓支援事業において、都内中小企業に対し、現地の市場動向等に関する情報提供やアドバイスなどを実施してまいりました。
 具体的には、商社OBなどを海外販路ナビゲーターとして配置し、機械やエレクトロニクスなど八分野において、中小企業のすぐれた商品百二十二件を対象に、販路開拓を支援してきたところでございます。

○鈴木(勝)委員 今お話しいただいたように、海外の販路開拓が十分できているということでございますが、具体的に販路開拓で実際の商売につながったというケースがおありになるかどうかをお伺いいたします。

○河内商工部長 百二十二件の商品について、海外販路ナビゲーターによる支援を行った結果、十九件の成約につながっております。

○鈴木(勝)委員 十九件成約があったということでございますので、海外販路ナビゲーターも、できれば、聞くところによりますと八人の人員でやられているということでございますので、これをもう少しふやせば、中小企業の海外販路の成約にもどんどんつながるのかなと思っております。
 こういう海外販路ナビゲーターによる支援、これは一定の効果を上げているということでございますが、しかし一歩進んで、企業が本格的に海外と商売を始めたいという場合には、当然、それぞれの企業が、独自に海外取引のノウハウを有する専門的な人材を採用、確保して、みずから現地に行って営業活動を展開しなければならないということでございます。企業のこのような取り組みは、高齢者も含めました雇用機会の創出にもつながっていくのではないかと考えておりますので、こういった点もぜひ考えて取り組んでいただければと思っております。
 続きまして、中小企業がアジアなど海外に販路を効果的に開拓していくには、今お話を聞かせていただいた都のこうした支援を利用するほか、進出を予定する国の行政機関や企業と日本の国内で直接交流する中で、販路開拓のきっかけをつかむこと、これも重要ではないかなと思っております。
 そこで、国内の展示会において、海外、特にアジアの企業などと都内の中小企業が交流する機会を確保する支援について、どのようなことが行われたのか、平成二十三年度の取り組み状況についてお伺いをいたします。

○河内商工部長 中小企業が海外の企業と直接意見や情報を交換することを通じて、商談の機会を確保し、販路の開拓に結びつけていくことは有意義であります。
 都は、平成二十二年度より、産業交流展において、アジア大都市ネットワーク21参加都市の企業や団体が出展するゾーンを設置しておりまして、都内中小企業に対し、交流の場及び販路開拓の機会を提供しておるところでございます。
 また、産業交流展の会場内におきまして、海外展開を考える中小企業を対象とするビジネスセミナーを開催しており、平成二十三年度は、ベトナムの政府関係者が現地の投資環境などについて講演いたしました。
 今後とも、こうした取り組みを通じ、都内中小企業が海外企業と交流する場を設け、販路開拓につなげてまいります。

○鈴木(勝)委員 まさに、今お話をいただいたように、日本の企業と海外の企業がマッチングする、そういう場所を提供していくこと、これは中小企業にとりましては大変大きな販路拡大のチャンスになっていくんだろうと思います。こういう機会を都がどんどん提供して、アジアの国々に日本がどんどん、東京都の中小企業が出かけていくチャンスを与えていただければと思っております。
 国際展示会や見本市などの商談の機会を民間の方々と一緒になってふやすことは、海外、特に旺盛なアジアの需要を取り込む最大の近道になろうかと思います。
 冒頭にも申し上げましたけれども、現在の極端な円高やヨーロッパの債務不安などに、日本の経済の先行きが全く見えない状況下の中で、中小企業を取り巻く経営環境は大変厳しいものがあります。だからこそ、それぞれの企業がそれぞれの成長戦略をしっかりと計画し、実行していくことが、まさに重要になってきております。
 私は、日本の閉塞感を打ち破るには、アジアの旺盛な成長を自分たちの内需として取り込むことが必要であることを再三繰り返し、一般質問の場でも話をしてまいりました。
 新たな成長産業として、環境や医療などの分野をしっかりと育成すること、そして、次の日本の産業を背負うベンチャー企業がまさに東京で育つこと、これが日本の活力を取り戻すことだと確信をいたしております。
 中小企業の元気を取り戻すための万全の対策を、今後とも局の皆様方にはお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

○小宮委員 私からは、金融支援、雇用対策、都市の農業支援について伺ってまいりたいと思います。
 まず初めに、中小企業の資金繰り支援についてお伺いします。
 昨年は、三月に発生した東日本大震災によりまして、多くの都内中小企業が直接被害を受けたり、また、電力不足やサプライチェーンの寸断などで大きな影響がありました。平成二十年秋のリーマンショックから二年が経過し、景気の持ち直しに向けた動きが着実なものになるかと期待されたやさきの出来事であり、日本の産業活動は大きな打撃を受けております。
 一方で、円高についてですが、一時的に、昨日、一ドル八十円台となりましたが、依然として高い水準で推移しており、都内中小企業は、海外との厳しい価格競争にさらされながら、まさにぎりぎりの状況での経営を強いられています。
 こうした苦しい状況にある中小企業の努力にこたえるためにも、その足元を支える金融支援が極めて重要であり、我が党は、震災対策や年末対策を初め、昨年度も都内中小企業の経営安定に向けた対策を繰り返し都に求めてまいりました。
 そこでまず、都では、昨年度における中小企業の経営環境をどのように認識し、都の金融支援の柱であります制度融資ではどのような対応を行ってきたのか伺います。

○寺崎金融部長 昨年度の経営環境は、都内中小企業の業況DIで見ますと、これは業況がよいとした企業の割合から悪いとした企業の割合を差し引いた指標でございますが、震災直後の四月はマイナス五七となっており、震災前のマイナス三五から急激に落ち込み、上半期は非常に厳しい状況でございました。その後、やや改善はしたものの、円高の影響等もあり、年間を通して厳しい状況が続きました。
 このような状況の中、都の制度融資では、従来から実施しておりますセーフティーネット融資を重点的に推進するとともに、震災や円高の危機に直面し、資金繰りに苦しむ中小企業を支援するため、新たな融資メニューを設け、対応を図ってまいりました。
 まず、東日本大震災の対応といたしまして、二十三年五月に災害緊急を創設し、風評被害等により売り上げが減少するなど、震災による間接的な被害を受けた中小企業を幅広く支援してまいりました。この融資メニューでは、都独自の取り組みとして、最優遇金利を適用するとともに、すべての利用者に対して保証料の二分の一を補助するほか、企業債務の借りかえにも適切に対応してまいりました。
 また、直接被害を受けた中小企業の事業再建を目的とする災害復旧資金融資につきましては、融資実行から一年間に限り、都が〇・五%の利子補給を実施する措置を講じまして、受け付け期間を延長して通年で対応いたしました。
 さらに、円高で業況が悪化している中小企業を支援するため、円高対応融資メニューを新設し、すべての利用者に対して保証料の二分の一を補助するとともに、十月から利用要件を緩和するなど、利便性の向上を図りました。
 このように、都独自の手厚い支援を行うことによりまして、震災の影響などに苦しむ中小企業の資金繰りを積極的に支援してまいりました。

○小宮委員 災害や円高など経営環境の激変に対応して、年度途中でも柔軟に中小企業の資金ニーズに即した対応を図ってきたということは、評価できるところであり、速やかに手厚い支援を行うことにより、苦境にあえぐ多くの中小企業の役に立ってきたのではないかと思います。
 それでは、制度融資全体の実績と利用状況はどのようであったか伺います。

○寺崎金融部長 平成二十三年度の制度融資の実績は約十一万五千件、一兆七千百四億円でございます。
 利用状況を見ますと、上半期は、震災の影響により資金需要が急激に高まりましたことから、災害緊急などのメニューを中心に多くの利用があり、融資実績は前年度を超える水準で推移いたしました。
 しかし、こうした資金ニーズが一服した下半期にかけては、依然として厳しい経済情勢が続き、景気の先行きが不透明な中で、企業債務の返済が進まず借り入れ余力のない企業や、事業拡大に伴う前向き資金等を借り控える企業がふえました。
 また、引き続き中小企業金融円滑化法の利用により返済負担が軽減され、手元資金の確保ができる状況などもありましたことから、リーマンショック後の緊急保証制度に基づく融資が大宗を占めておりました二十二年度の二兆二千百九十六億円を下回りました。

○小宮委員 また、都は、制度融資とは別に、地域の金融機関と連携をした新保証つき融資を独自に実施しています。
 我が党は、厳しい経営環境にある都内中小企業にとって、より利用しやすい制度となるように、これまでも取扱金融機関の拡大や借りかえ需要への対応などを要望してまいりました。
 そこで、本制度について、平成二十三年度に都としてどのような対応を行ったのか、またどの程度の資金が供給されたのか、実績について伺っておきます。

○寺崎金融部長 地域の金融機関と連携した新保証つき融資は、都独自のセーフティーネットとして、中小零細企業の資金需要にきめ細かく対応していくことが重要であるとの認識のもと、より一層の利便性の向上を図る取り組みを進めてまいりました。
 具体的には、昨年八月に借りかえ制度を新たに導入し、本制度を利用した中小企業の月々の返済負担の軽減を図れるようにいたしましたほか、個人事業主につきましては、連帯保証人を必要とする条件を撤廃するなど、融資申し込みのための要件を緩和いたしました。さらに、年末から年度末にかけての資金繰りを支援するため、保証料率を引き下げる特別措置を実施いたしました。
 こうした取り組みによりまして、平成二十三年度の保証承諾実績は九百五十六件、約七十三億円となっております。

○小宮委員 昨年度の制度融資と新保証つき融資の利用状況については、よくわかりました。
 確かに、小規模な商店が多い私の地元で事業者の方々の声を聞きますと、消費者の財布のひもがなかなか緩まない中で、経営の先行きに対する不安を感じている方が多く、前向き資金を中心に資金需要が伸びてこない状況は、今年度も継続していると感じています。引き続き厳しい状況の中で、経営に工夫を凝らし、日々頑張っている中小企業の資金ニーズを丁寧に酌み取ることは大変重要であると思います。
 こうした観点から、企業実態に合った、より利用しやすい制度を実施する努力が求められており、それにより新たな資金需要も生まれてくると思いますが、都は今年度どのような取り組みを行ってきたのか伺います。

○寺崎金融部長 都内中小企業にとって厳しい経営環境が続く中、都制度融資におきましては、最優遇金利が適用される都独自のセーフティーネット融資メニューである経営一般につきまして、より幅広い中小企業が利用できるよう資金繰りを支援してまいりました。
 まず、九月には、東京電力の電気料金値上げの影響を受けている企業を新たに利用対象とし、値上げによるコスト増により利益率が悪化した企業にも利用対象を拡大しました。また、十一月からは、最近の売り上げは改善しているものの、リーマンショック前の水準には回復していない企業も広く対象とするため、利用要件を緩和いたします。
 このように、中小企業を取り巻く経営環境の変化に対応し、適宜制度の見直しを行いまして、中小企業の資金ニーズにかなった融資メニューの実施に努めております。

○小宮委員 ここまで金融支援の取り組みについて何点か伺ってまいりました。
 本格的な景気回復が見通せない中で、国はいまだ有効な経済対策を打つことができない状況にあり、東京の産業活力を支える中小企業は、引き続き苦境に追い込まれています。
 こうした状況の中で、国は、一部の業種の業況は改善したとして、十一月からセーフティーネット保証の対象者を絞り込むことを決めました。それにとどまらず、中小企業金融円滑化法については、国のいうところのソフトランディング策が一向に進まない中で、新たに就任した金融担当大臣が、本年度末の終了について改めて発言しており、中小企業の間に不安が広がっています。
 政府の金融施策に先行きが見えない中で、都は、中小企業の資金ニーズを引き続きしっかりと把握した上で、国とは違う、民間とも違う都独自の措置を、効果的な支援策を講じていただきたいと思います。
 今後とも、中小企業の資金繰りに最大限の備えをし、万全を期していただくよう要望いたしまして、次の質問に移ります。
 中小企業の人材確保と職業訓練について伺います。
 完全失業率は依然として高どまりし、厳しい状況が続いています。こうした中にあっても、従業員規模三百人未満の中小企業では、有効求人倍率が三倍以上となっており、依然として人材不足が否めない状況です。
 このように、中小企業は若者を初めとした人材の確保に苦慮していますが、一方では、求める人材がなかなか見つからないといった声も聞かれます。こうしたことから、企業の人材ニーズを的確に把握し、それに合った職業訓練を実施することで、産業界に必要とされている人材を供給することが求められていると思います。
 そこで、都はどのようにして中小企業のニーズを把握して、職業能力開発センターで実施している職業訓練の科目設定に生かしているのか、二十三年度の取り組みを中心に伺います。

○戸澤事業推進担当部長 職業訓練を進めるに当たりましては、産業界の求める人材を育成し、就職に結びつけていくことが重要でございます。
 このため都では、都内四カ所に設置した職業能力開発センターごとに、地元の業界団体等を構成員とした職業能力開発連絡協議会を設け、地域の産業ニーズを把握しております。
 また、既存の訓練科目については、毎年、求人状況や就職率等の観点から評価を実施しております。こういった手順を経た後、訓練を熟知した専門家や事業主などを構成員とする公共職業訓練運営委員会の意見を聞いた上で、必要な科目の再編を行っております。
 こうした仕組みのもと、平成二十三年度には、多摩職業能力開発センターにおきまして、地域の産業ニーズの変化に対応し、部品加工と組み立て、調整の一連の作業が習得できる機械組立技術科や、電気の基本と計測機器の仕組みの両方が学べる計測制御システム科等を新設いたしました。
 また、平成二十三年度に開設準備を進めてきた施工技術に重きを置いた建築設備施工科を、平成二十四年度、城東職業能力開発センターに新たに設置し、これに伴い、設計を重視した建築設備設計科を廃止いたしました。
 今後も、こうした取り組みを通じて、地域の産業ニーズに的確に対応した職業訓練を実施してまいります。

○小宮委員 訓練科目については、地域の産業ニーズを把握した上で、必要に応じて見直しを行っているということは理解できました。
 一方、産業ニーズに即した訓練を実施しても、中小企業は、厳しい経営環境の中で人材確保を行おうとしているわけですから、勢い、訓練生に対しては、技術や技能のレベルに加えて、現場での対応力や対人能力など、採用に当たっての要求水準が高くなる傾向があると思います。
 こうした状況の中で、マッチングを円滑に実現するためには、就職を希望する訓練生の側にも、知識や技能の習得はもちろんのことですが、中小企業の現場の理解や社会人としての基礎力といったものが不可欠であろうかと思います。
 職業訓練を受講した方が、せっかく取得した技術や技能を生かせる企業への就職に至らないというような事態は、本人にとっても、人材不足に悩む中小企業にとっても、大変不幸なことです。
 そこで、こうした観点から、職業能力開発センターでは、どのような取り組みを行っているのか伺います。

○戸澤事業推進担当部長 訓練生が身につけた知識や技能を十分に発揮できる仕事につくことは、本人のモチベーションを維持する上でも、公共職業訓練の趣旨からも、極めて重要でございます。
 このため、職業能力開発センターにおきましては、社会人基礎力を付与する講座を設けるほか、訓練生が実際に企業に訪問し、就業を体験するインターンシップの実施や校外実習において企業見学等を行うなど、企業の現場を身をもって体験できるよう工夫しております。
 また、各職業能力開発センターでは、無料職業紹介に加え、訓練生と地域の企業等とのマッチングを円滑に進めるため、訓練科目と関連のある中小企業を招き、会社説明会や合同面接会を平成二十三年度には七回実施し、百九十七社の企業が参加いたしました。
 さらに、社長が求める人材像を語る講演会の開催に加え、平成二十三年度から、新たに、企業の訓練内容に対する理解を深めるための訓練施設の見学会や、各業界の状況や直面している課題などを伝える業界説明会を行うなど、相互理解の促進を図っております。
 今後も、こうした支援に加え、技術革新に対応した訓練機器の導入や指導員研修等を通じた訓練体制の充実を図るなど、訓練機能を強化することにより、中小企業が求める人材を育成し、企業と訓練生のマッチングにつなげてまいります。

○小宮委員 中小企業は、厳しい経営環境の中にあっても、将来の企業現場を支える優秀な人材を求めています。ただいまの答弁で、職業能力開発センターが地域の産業ニーズに合致した職業訓練をきめ細かく効果的に実施しているということが理解できました。
 今後とも、こうした取り組みの充実強化を図っていただきまして、東京の産業の基盤である中小企業を、人材の育成、確保の面からもしっかりと支えていってもらうことを要望して、次の質問に移ります。
 都市の農業の現状を知るために、私は過日、杉並区の農家に足を運びまして、現場の生の声を聞いてまいりました。
 農家の方々からは、新鮮で安全な、安心な農作物を生産する意気込みが伝わってきましたけれども、同時に、地価の高い東京で農業を営む、そのご苦労が大変尽きないという実態も詳細に伺ってまいりました。このことを踏まえて、都市農業の振興施策について四点ほど質問いたしてまいります。
 まず、都市の農地の保全について。
 東日本大震災以降、都市の農地は、食の安全や防災の観点から、以前にも増してその価値が見直されていますが、特に相続税の負担等から農地を手放す農家は多く、失われた都市の農地は、この十年間で千代田区の面積とほぼ同じ約千二百ヘクタールにも及んでいます。
 貴重な都市の農地が失われないためには、税制など国による制度改正が必要なことはいうまでもありませんが、東京都としても、都市の農業者と地域住民を結びつけるような支援をしていくべきと考えますが、二十三年度、都は、都市の農地の保全に向けた地域の取り組みに対してどのような支援を行ってきたのかまずお尋ねします。

○津国農林水産部長 都市農地を保全するためには、農業、農地の多面的機能をまちづくりの中で発揮するための仕組みづくりを行い、農業者や地域住民等の参画のもとに、実効性のある保全策を講じていく必要がございます。
 このため都は、まず、平成二十年度から毎年二区市ずつ、三カ年にわたり合計六区市に対して、都民の暮らしが潤う東京農業の推進事業により、農業・農地を活かしたまちづくりプランの策定を支援いたしました。現在は、そのプランに基づいて実施する施設整備や地域農業の情報発信などへの支援を行う農業・農地を活かしたまちづくり事業を実施しております。
 二十三年度の具体的な取り組みといたしましては、練馬区、国分寺市、日野市及び西東京市では、プランに掲げた共同直売所や学童のための水田整備のほか、農家との交流会や農作業体験などを実施いたしました。
 また、立川市及び国立市では、二十四年度の本格展開に向けまして、協議会において具体策の検討を行ったところでございます。

○小宮委員 都市の農地の保全は、事業が行われている六区市だけの課題ではなく、都内全域の課題ですので、今後もぜひ多くの地域で事業を行っていただきたいと思います。
 次に、農業経営の改善についてお尋ねをいたします。
 都市の農地を保全していくためには、農業経営を改善していくことも重要で、さきの杉並の農家の中にも、都の補助事業を活用して経営を改善している方もおり、その必要性を話されていらっしゃいました。
 都内には、小規模ながらも、確かな技術により高品質な農産物を生産、販売している農家は多くいますが、生産コストの上昇等により収益性は悪化し、厳しい経営状況が続いているというのが実態であります。このままでは農業に夢が持てず、後継者の確保といった課題も解消できないままとなってしまいます。
 工夫を凝らし、少しでも経営を改善していこうとする意欲ある農業者を支えることが必要ですが、東京都では、都市農業経営パワーアップ事業により、経営改善に向けた支援を行っています。
 そこで、二十三年度の都市農業経営パワーアップ事業の実施状況についてお尋ねします。

○津国農林水産部長 都は、みずからの創意工夫により農業経営の改善を進める認定農業者等を後押しするために、ハード、ソフトの両面から支援する都市農業経営パワーアップ事業を実施しております。
 二十三年度におきましては、まずハード面では、多品目生産を目指した栽培施設や体験農園施設の整備に取り組む十六の生産者団体等に対して支援いたしました。また、ソフト面では、中小企業診断士等の専門家による経営相談や販売戦略作成などへの支援を行いました。
 これまで、本事業を活用した多くの農業者から、農産物の品目や出荷期間の拡大、品質の改善などにより、収益が向上してきているとの声を聞いております。

○小宮委員 最近は、農家が栽培から収穫までを指導する体験農園への期待が高いと伺いました。今後とも、このような生産施設などの整備への支援とともに、農業経営面からの支援も一層推進していただきたいと思います。
 都市の農業を振興していく上では、農業生産ばかりでなくて、農林水産物を都民の皆様に買っていただくことも重要です。
 東京都には、これまで我が党で主張してまいりました地産地消拡大の取り組みを開始していただきましたが、もっと都内産農林水産物のよさを知ってもらうために、PRが必要ではないかと思います。
 ついては、これまでの取り組み及び今後の展開についてお尋ねします。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 都は、地産地消の拡大を図るため、平成二十二年度から、食育活動の推進や消費者への都内農林水産物のPRなど、幅広い取り組みを行っております。
 具体的には、まず、都有地で栽培した農産物を都心の学校給食に提供する、とうきょう元気農場を八王子市内に開設し、平成二十三年度には、都心十七区の百三十八校の学校給食へ農産物を提供いたしました。この農場では農業を体験することもでき、児童や生徒にもとても好評でございました。
 また、都内産農林水産物を積極的に利用する飲食店などを、とうきょう特産食材使用店として登録する制度を創設し、平成二十四年十月一日現在では百九十七店舗が登録されております。平成二十三年度には、登録店を掲載したとうきょう特産食材使用店ガイドを二万部作成し、都民配布をいたしました。これらの取り組みはマスコミにも多く取り上げられ、飲食店や都民の皆様から大きな反響がございました。
 さらに、安全・安心な都内産食材を都民にPRする都内産農林水産物を使用した料理コンクールを開始したところ、平成二十三年度の募集では、アイデアに富んだ七十六作品のレシピの応募がございまして、優秀作品については、調理実演による最終審査会を公開してPRさせていただきました。
 今後とも、これらの取り組みによりPRを進め、地産地消の拡大に努めてまいります。

○小宮委員 都市の農地の保全や農業経営の改善、消費の拡大などの観点から、施策について答弁をいただきましたが、都市の農業を振興していくためには、これら総合的な支援を今後も展開していくことが重要です。
 そこで、最後に、都市の農業の振興に向けて、今後都はどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○津国農林水産部長 都市農業を一層振興していくためには、社会情勢の変化などを踏まえ、さまざまな観点からの施策を総合的に実施していくことが大切であるため、都は、本年三月に東京農業振興プランを改定いたしました。
 このプランでは、東京農業の持つ潜在力を発揮した力強い農業の推進を新たな視点といたしまして、次の三つの柱を立てて施策を展開していくこととしております。
 まず第一に、大都市東京に立地する特色と優位性を生かした経営展開や加工品開発など、東京農業の産業力を強化すること、第二に、減農薬栽培技術の開発など、都民の求める食の安全・安心の確保に取り組むとともに、都内産農産物の生産、販売情報を発信し、地産地消を推進すること、第三に、農業、農地の持つ防災などの多面的機能を発揮したまちづくりを推進して、豊かな都民生活と都市環境の保全に積極的に貢献することでございます。
 こうした取り組みにより、都民生活に密着した産業として、東京の農業の発展に取り組んでまいります。

○小宮委員 私の地元杉並区には、百戸を超える農家の方々がおりまして、丹精込めて育てた農産物を区民の方に提供するなど、杉並の農業を支えています。
 しかしながら、杉並区では、農業経営基盤強化促進法上の基本構想を策定していないために、これらの農家は東京都の認定農業者制度の認定を受けることができず、都の支援施策を受けにくい状況となっています。また一方で、基本構想を策定している区市町村におきましても、経営規模が小さく、認定要件には合わないけれども、一生懸命経営改善に取り組んでいる方々がおられます。
 ぜひ、認定農業者でなくても、このような意欲のある農業者への、都の支援を強くお願いをいたしておきます。
 以上、これまで東京都が取り組んでおります産業振興施策や雇用就業対策について質問をいたしてまいりました。経済雇用情勢は依然として厳しく、中小企業事業者を初めとする都民の方々は、先の見えない不安の中で懸命な努力をしています。こうした状況だからこそ、都内産業を活性化させ、新たな成長軌道に乗せることが極めて重要であると思います。
 都内経済が発展し続け、東京に活力をもたらす産業振興や雇用就業の促進に向けた局長のご決意を最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

○中西産業労働局長 東京には、洗練された巨大な市場や産業を支える豊富な人材、高度に整備された都市インフラが存在しております。また、多様な産業が集積するとともに、消費地に近接する農地を生かして、新鮮で安全・安心な農産物が都民に提供されております。これらは、東京の産業にとって揺るぎのない強みであり、活力の源泉ともいえます。
 経済、雇用情勢は依然として厳しいながらも、こうした東京の強みを最大限に生かすことにより、中小企業支援や農業の振興、さらには、雇用就業の推進などに積極的かつ的確に対応していくことが当局の使命でございます。
 今後とも、経済、雇用情勢に十分留意しながら、東京の経済発展をもたらす産業振興と雇用就業の推進を図るよう、局を挙げて全力を尽くしてまいります。

○藤井委員 まず初めに、中小企業への専門家派遣について伺います。
 円高や需要の落ち込みなど厳しい経済状況が続く中、中小企業の経営者の方は、この困難な難局を乗り越えるために、身を削るような努力を毎日続けられております。こうした企業を行政はしっかりと支えていくことが重要であります。
 特に、業績の悪化で苦しむ中小企業は、何らかの経営課題を抱えております。例えば、販売のための戦略がないことであったり、あるいは新規事業を展開するための社内体制が整っていないことであったり、会社によって事情は違いますが、これらの課題を経営者一人がすべて判断して解決することには限界があるわけであります。そのため、経験豊富な専門家を積極的に活用して、会社訪問により、現場の実情に即した助言あるいは解決に向けた的確なサポートを受けることが効果的であると考えるわけであります。
 こうした考えから、専門家派遣事業の充実が重要であると考えます。中小企業振興公社で実施しておりますこの事業では、最大八回までアドバイスを受けられ、これを活用して、毎月一回、八カ月にわたり専門家のサポートを受けた企業の声を聞くと、改善効果を確かめながら着実に経営改善を進めることができたということで、大変好評であると聞いております。
 そこで、専門家派遣事業の実績について、平成二十三年度の状況についてまず伺いたいと思います。

○河内商工部長 経営課題の解決を図ろうとする中小企業が、豊富な知見やノウハウを持った専門家の助言を受けることは、効果的であると認識しております。
 このため都は、中小企業振興公社において、幅広い分野から専門家約三百名を登録し、企業の要請に応じて継続的に会社を訪問し、課題解決に向けたアドバイスなどを行う専門家派遣事業を実施しておるところでございます。
 平成二十三年度の専門家の派遣実績は九百八十三回となっており、前年度の八百八十七回と比べて大きく伸びております。また、一件につき平均六・五回の派遣を受けており、時間をかけて計画的に課題解決を図ろうとする中小企業に数多く利用いただいております。こうした取り組みにより、中小企業の経営上の課題解決を適切に支援してまいります。

○藤井委員 次に、中小企業向けの電力自給型経営促進支援事業、これについて伺います。
 この事業は、東日本大震災の影響によります原子力発電所の停止に伴う計画停電によって、生産活動に支障を来す中小企業を支援するために創設された制度であります。
 我が党は、昨年、停電等によって、このままでは事業を続けていくことが到底困難であるといった中小企業の悲痛な声にこたえるために、震災後に開会されました平成二十三年第二回定例会の代表質問を皮切りに、支援の必要性を訴えてまいりました。
 そこでまず、平成二十三年度におけるこの事業の普及啓発への取り組みや設備導入支援の実績はどうなっているか伺います。

○河内商工部長 都では、平成二十三年六月の補正予算により、自家発電設備の整備に必要となる経費の助成を行う中小企業向け電力自給型経営促進支援事業を平成二十三年八月に立ち上げ、支援を行ってまいりました。
 本事業では、平成二十三年度末までに、節電や電力確保に関する普及啓発を図る中小企業向けのセミナーを五回開催するとともに、専門家を延べ七十三回派遣いたしました。
 また、設備の導入支援につきましては、自家発電設備等の導入に対して二十四件の助成を実施してまいりました。

○藤井委員 この事業は、自家発電設備等の整備に必要な経費の三分の二を助成するというものでございますが、中小企業に迅速な対応を求める観点から、この措置は平成二十三年度限りというふうにしておりまして、平成二十四年度からは助成率が二分の一に下がる予定であるというふうに聞いておりました。
 しかし、本年の予算特別委員会で我が党の代表質問において、設備の導入に多額の資金を要する事業者に対する手厚い支援を継続すべきと求めたわけですけれども、これに対して、都は引き続き助成率を三分の二とすることといたしました。
 そこで、こうした措置を受けて申請数がどのように変化したか、その効果についてお伺いをいたします。

○河内商工部長 中小企業の電力確保の取り組みを効果的に支援することが重要でありますことから、都は自家発電設備等の導入促進に向けて、平成二十三年度末までの申請に適用することとしていた助成割合を三分の二とする措置を延長することといたしました。
 その結果、自家発電設備と蓄電池については、月当たりの申請数で比較しますと平成二十三年度に比べて本年度は約三倍の申請がなされており、中小企業の設備導入に向けた取り組みを後押しすることができた、このように考えております。

○藤井委員 昨年度に比べて本年度は三倍の申請があったということは、この事業が中小企業にとって大変役に立つ、また必要な事業であるというふうに思います。ぜひ今後とも、さらなる支援をお願いしたいと思います。
 次に、若者の雇用就業について質問をいたします。
 若年者の就業環境は依然として厳しい状況にあります。文科省の学校基本調査によると、大卒者のほぼ四人に一人が安定した仕事につけないというふうにいわれているわけでございます。若者の大企業志向というのは今依然として強いといわれております。一方、都内の中小企業は、採用意欲がありながら大変この人材確保に苦慮してるということで、若者と中小企業のミスマッチの解消というものが大きな課題となっております。
 東京にはすぐれた中小企業が多数存在いたしますが、若者がこうした中小企業について十分に理解していないというのが現状でありまして、ミスマッチを解消するためには若者の中小企業に対する理解をさらに促進することが必要不可欠であると考えます。
 平成二十三年二月の予算特別委員会におきまして、我が党は若者と中小企業とのミスマッチを解消するために、個別担当制キャリアカウンセリングを特徴の一つといたしますしごとセンター事業について多様な支援を行うべきであるという提言を行いました。
 この提言を受けまして、産業労働局長は、二十三年度から就活ノウハウセミナーと面接対策セミナーさらに合同企業説明会を実施していくという答弁をされたわけでございます。
 依然として根強いこの大企業志向にあります若者の目を、都内の中小企業に向けていくためには、まず実践的な支援を行うことで若者を後押しすることが重要であると考えます。
 このため、二十三年度に新たに実施しました事業がどのように若者の就職活動を後押ししたかという観点から伺います。
 まず、就活ノウハウセミナーそれから面接対策セミナー、この事業の二十三年度の実績と、それに参加した参加者の反応についてお伺いをいたします。

○穂岐山雇用就業部長 まず、就活ノウハウセミナーの平成二十三年度の実績でございますが、東京しごとセンターでは延べ十回開催し、三百八十七人が参加いたしました。東京しごとセンター多摩では延べ四回開催し、七十人が参加しました。全体では延べ十四回開催し、参加者数は四百五十七名でございました。
 次に、面接対策セミナーの平成二十三年度の実績でございますが、東京しごとセンターでは、延べ十四回開催し、四百七十三人が参加しました。東京しごとセンター多摩では延べ五回開催し、百人が参加いたしました。全体では延べ十九回開催し、参加者数は五百七十三人でございました。
 また、就活ノウハウセミナーと面接対策セミナーの参加者の声の一例といたしましては、企業の求めるポイントなどがわかり、大変ためになった、自分の課題、目標が明確になったので参加してよかった、模擬面接を通じて自分を客観的に見ることができ自信にもなったなどの感想が寄せられてございます。

○藤井委員 ただいま就活ノウハウセミナー、面接対策セミナーともに実績が上がっていると、利用者からも大変好評であるという答弁がありました。こうした実践的な支援策は、厳しい就職環境に直面している若者にとりまして、極めて効果的な事業であると考えます。これからも、引き続き若者のニーズをとらえたきめ細かな支援を行っていただきたいと思います。
 さて、しごとセンターにおいては実践的な支援とあわせて、二十三年度から合同企業説明会というのを実施しております。この合同企業説明会は、しごとセンター事業における多様な支援を担うものであり、若者の就職活動における選択肢を大きく広げる役割も期待されているというふうに聞いておりますが、そこで、事業の実施状況を確認したいと思います。
 この合同企業説明会の二十三年度実績について伺うとともに、若者及び参加企業からどのような評価の声が上がっているのかあわせて伺います。

○穂岐山雇用就業部長 合同企業説明会の平成二十三年度の実績でございますが、東京しごとセンターでは延べ八回実施いたしまして、参加者数は一千二百十八人、参加企業数は百六十社でございます。東京しごとセンター多摩では延べ四回実施いたしまして、参加者数は七百三十五人、参加企業数は八十二社でございます。全体では延べ十二回実施いたしまして、参加者数は一千九百五十三人、参加企業数は二百四十二社でございます。
 合同企業説明会の参加者の声の一例といたしましては、今まで知らなかった企業の話を聞くことができ、今後の就職活動での視野を広げることができた、さまざまな選択肢があるということを実感できたなど、中小企業をみずからの進路の選択肢として考えることができたという趣旨の感想が寄せられてございます。
 また、参加企業からも一般に学生は知名度の高い企業に集中しがちである、中小企業にとって、多くの学生と出会える場は有効であるなど、若者と中小企業のミスマッチ解消にも効果的であるという趣旨の意見が寄せられてございます。

○藤井委員 若者の目を中小企業に向けるために、このしごとセンターにおいて、こうした多様な支援を実施していくことは大変重要なことであります。また同時に、若者が実際に中小企業の現場に行って、企業の職場環境あるいは職場の雰囲気など求人票だけではわからないことを理解することは、ミスマッチ解消を促進する上で極めて効果的であると考えます。
 都が昨年度末から開始をいたしました企業ツアー、この企業ツアーは、東京しごとセンターの新卒特別応援窓口の利用者を対象に都内企業を少人数で訪問する事業でございますが、この企業ツアーについて、我が党は、ことし三月の予算特別委員会において、課題や問題点を整理しながら、より効果的に実施すべきであるという提言を行いました。
 そこで、この企業ツアーの効果向上のための取り組み状況とこれまでの実績についてお伺いをいたします。

○穂岐山雇用就業部長 都は、若者に求人企業や仕事内容の具体的なイメージを持ってもらい就職につなげていくため、しごとセンターの新卒特別応援窓口利用者を対象に、昨年度末から今年度のおおむね六月にかけまして企業ツアーを実施してまいりました。
 まず、企業ツアーの課題の検証と改善措置の取り組み状況についてでございますが、本事業を実施していく上で新卒者の企業研究が不十分である事例もございましたことから、事前カウンセリングを通じ、企業研究について指導を行ってまいりました。
 また、訪問先の企業からは、若者と密に会話でき本音に近い話ができたなどの感想が寄せられました一方で、せっかくの機会なので、若者にはもっと積極的に自分をアピールしてほしかったなどの意見もございました。
 このため、企業ツアー参加者を対象としたガイダンスを実施し、自己PRやビジネスマナーなどについて指導いたしました。
 このように、必要な改善措置を的確に講じていくことにより、事業効果の向上を図ってまいりました。
 最後に、企業ツアー実績についてでございますが、参加者数は延べ百二十一人で、受け入れ企業数は十八社となってございます。

○藤井委員 百聞は一見にしかずといわれますけれども、若者が企業ツアーに参加して、中小企業の具体的なイメージをつくっていくことは大変有意義であるというふうに考えます。
 こうした実効性のある若年者就業支援は、東京はもとより、日本の活力を創造するという点において極めて重要であります。
 我が党は、今後とも現場主義に立ちながら、若年者雇用就業行政をしっかりと応援していきたいと思います。
 次に移ります。ものづくりの人材育成と技能承継について何点か伺います。
 熟練技能者の持っている技術、技能を次の世代を担う若手技能者に受け継がなければ、長年培ってきた東京のものづくりの産業技術力が失われてしまうということになるわけです。私の地元であります大田区の町工場などにおいても、高度熟練技能者の高齢化の進展が著しいのが現状です。
 東京のものづくり産業においては、熟練技能者の持っている技能を若手職人に円滑に継承することが緊急の課題であると思います。
 こうした課題について、ことし三月の第一回定例会において、我が党は遅きに失することがないようしっかりと対応を図るべきと提言したところでございます。
 こうしたことを受けまして、東京都が技能者の人材育成、技能継承について、平成二十三年度に行った取り組みについてまず伺います。

○戸澤事業推進担当部長 熟練技能者の高齢化が進展する中、若手技能者への円滑な技能承継は重要な課題であると認識しております。このため都は、ものづくり現場の技能者の育成や技能継承を支援するため、中小企業の従業員の技能、技術の向上を図る在職者訓練を東京都立産業技術研究センターとも連携の上、実施しております。
 また、企業の要望に応じ、講師を企業現場に派遣する現場訓練支援事業を実施し、中小企業がみずから行う訓練を支援しております。
 さらに、高度熟練技能の継承をねらいとして中堅青年技能者を対象に、東京ものづくり名工塾を実施しております。

○藤井委員 ただいまご答弁ありましたように、東京都として、さまざま、この技能者の人材育成、技能継承について支援をしてるということでございますが、町工場の経営者の方とよく話をいたしますが、若手技能者の人材育成に当たって、非常に鋭敏な現場感覚や技術、技能の進展にも即応できる知識、あるいは技術を伝えることが不可欠であるといったことをよく耳にいたします。
 こうしたことからも、企業の第一線の現場で活躍をしておりますベテランの技能者や経験豊富な熟練技能者などを講師として招いて、人材の育成あるいは技能継承に活用することも大変効果的と思いますが、この点についてのご見解を伺います。

○戸澤事業推進担当部長 技能者の育成においては、お話しのように、鋭敏な現場感覚や技術、技能の進展にも即応できる能力を身につけさせることが重要でございます。このため、現場感覚を持った指導者を活用することが効果的でございます。
 都では、企業現場の第一線で活躍するベテランや経験豊富な技能者の中から、一定水準以上の資格や専門知識、技能を持った技能者を講師として招き、在職者訓練や現場訓練支援事業で活用しております。
 今後も、こうした取り組みを通じまして、中小企業の人材育成を支援してまいります。

○藤井委員 若年の技能者一人一人の毎日の訓練、精進というのは、これは当然必要ですけれども、一朝一夕でこういった技術とかは、なし遂げるわけではございませんので、こうした取り組みを習熟レベルに応じて段階的に支援していくことが重要であると考えます。
 東京都では、中小企業における熟練技能の継承を支援するために、東京ものづくり名工塾を実施していますが、その東京ものづくり名工塾の取り組みの内容について伺います。

○戸澤事業推進担当部長 東京ものづくり名工塾は、青年技能者を対象に、民間の高度熟練技能者等の指導により、機械加工等のさまざまな熟練技能を段階的に習得できるよう実施しております。
 平成二十三年度は、大田校を初めとした都内五カ所で汎用旋盤、汎用フライス盤などのコースを設定いたしました。入塾者三十三名が修了し、このうち、優秀な成績で修了した二十三名を東京ものづくり若匠に認定しております。
 加えまして、さらに高度な技能者を目指すスーパー名工塾を実施するほか、基礎コースとなるプレ名工塾を平成二十四年度より実施しております。

○藤井委員 この熟練技能者の高齢化が進展している一方、若者のものづくり離れというのも進んでいるというふうに聞いております。若者に、ものづくりのすばらしさをアピールして、また技能尊重の機運を醸成していくことが重要であると考えます。
 私の地元大田区では、大田の工匠百人という事業がございまして、区内の優秀な技能者を表彰しております。現在九十五名を表彰して、今年度、百名になると思います。東京都も東京マイスターという制度で、同様に優秀な技能者を認定するとともに、さまざまな場面で活用しているというふうに聞いております。
 多くの若者にたくみのわざを通じて、ものづくりのすばらしさ、あるいは奥の深さに触れることによって関心を持ってもらうためにも、この東京マイスターを一層広く都民に周知徹底するべきと考えますが、この件について見解を伺います。

○戸澤事業推進担当部長 長年の研さん、経験により蓄積された職人わざは、東京のものづくり産業の基盤でございます。このため都は、技能尊重機運を醸成し、技能者の社会的地位の向上を図るため、都内の事業所等に勤務する優秀な技能者に対しまして、東京マイスターとして認定し表彰しております。
 また、東京マイスターを区市町村や関係団体等に周知するとともに、ホームページや広報紙を通じて都民にPRしております。
 さらに、匠の技フェアや技能祭などのイベントで、すぐれたわざを披露してもらうなど、さまざまな場面で活用しております。
 今後も、引き続き、東京マイスターを一層周知することにより、技能尊重機運を盛り上げてまいります。

○藤井委員 東京のものづくり産業が引き続き活力を維持して発展していくためには、長年の研さん、経験により蓄積をされた職人わざを次の世代に確実に引き継いでいくことが何よりも重要であると考えます。
 しかし、今、東京の産業を支えるものづくりが熟練技能者の高齢化の進展、あるいは若者のものづくり離れなどによって、持続的に発展ができるか否かの岐路に立たされているといっても過言ではないと思います。
 そこで、最後に東京のものづくり人材の育成や技能の継承への取り組みについて、局長の決意を伺い、質問を終わります。

○中西産業労働局長 国際競争の激化や歴史的な円高など、東京のものづくり産業を取り巻く環境は極めて厳しい状況にございます。
 ものづくりは人づくりといわれますように、こうした厳しい状況であればこそ、次代を担う技能者を育成し、現場に息づく熟練技能が途切れることなく確実に継承されることが重要であり、このことがものづくり産業の持続的な発展を図る上で不可欠であると認識しております。
 このため都では、在職者訓練、現場訓練支援事業、東京ものづくり名工塾など、産業動向や企業の要望を踏まえ、中小企業現場のニーズに合わせた支援を、その内容を拡充しながら実施してまいりました。
 今後も、ものづくり現場の切実な声にこたえながら、さらに創意工夫を加え、ものづくり人材の育成や技能継承が円滑になされるよう、中小企業を力強く支援してまいります。

○西崎委員 私からは、まず初めにワークライフバランスの推進について伺います。
 今、サラリーマンのランチ代は、平均一日五百円。これは三十年前の水準で、この二十年で年収が二百万円ダウンし、不況の出口は見えません。これは、先日NHKで放映されましたクローズアップ現代、「女性が日本を救う?」のタイトルの出だしの言葉です。現状を打破するには何が必要なのか。海外から一つの提言が突きつけられました。それがIMF緊急レポート「女性は日本を救えるか?」です。つまり、女性の社会参加をふやすことが日本の経済を成長させるかぎだということです。
 実は今女性の社会参加が、世界各国で成長の起爆剤になっており、韓国では、企業の幹部に女性を登用し、国家戦略で国際競争力を高めようとしています。
 オランダでは、日本とは異なる新たなパートタイムで働くことで奇跡といわれるまでの経済成長を実現してまいりました。
 働く女性がふえることによって、税収や社会保障の担い手が多くなり、フランスのように出生率も高くなる傾向が見られます。
 一方、日本では、政府や経済界が女性の登用の数値目標を掲げていましても、実現にはほど遠い現状です。これまでの男性中心の社会や組織のあり方では、新たな発想や価値観が生まれにくく、激しい変化に柔軟に対応し、予測不可能なリスクに強くなるためには、多様な人材が活躍できるようになることが重要です。
 今後の日本において、少子高齢化が進展し、労働人口が減少していく中、今回のIMF緊急レポートの提言にもありますように、女性がいきいきと働き続けられる社会を実現することは、日本の活力の維持向上にもつながると考えられます。
 都としてもワークライフバランスを推進し、仕事と生活との調和が図られ、女性が働き続けられる社会の実現に向けて、積極的な取り組みを行うべきという立場から何点か質問をいたします。
 まず初めに、都は昨年度、男女雇用平等参画状況調査を実施いたしまして、育児・介護休業法への対応などの実態調査をしたと聞いておりますけれども、この調査結果の概要についてお聞かせください。

○穂岐山雇用就業部長 都では、平成十二年度より職場における男女平等の推進の実態と課題を把握するため、東京都男女雇用平等参画状況調査を実施しています。
 平成二十三年度は、育児休業、介護休業制度の実施状況や仕事と生活の両立に向けた雇用管理の整備状況や従業員の意識等を調査いたしました。
 調査結果の概要は、育児休業取得率は女性が九四・二%、男性が一・八%であり、ともに上昇傾向にございます。また、介護休業取得者がいた事業所は一一・二%であり、過去四年間の傾向は横ばいとなってございます。
 企業において働き方の見直しを推進するために重要なことは、事業所、従業員ともに上位三項目は、制度を利用しやすい雰囲気、風土の醸成、企業トップの意識、管理職への理解、周知徹底としてございます。

○西崎委員 ただいま答弁の中で、企業において働き方の見直しを積極的に推進するためには、制度を利用しやすい雰囲気、風土の醸成や企業のトップの意識が重要とのことでありました。まさしくワークライフバランスを推進するためには、企業への普及啓発を積極的に行い、企業のトップの理解を深めることが重要です。
 都は、さまざまな企業向けの普及啓発の取り組みを実施していますが、その内容について伺います。

○穂岐山雇用就業部長 都は、中小企業の両立支援に関するすぐれた取り組みを認定し、表彰するとともに、その取り組み内容をワークライフバランスフェスタで紹介するほか、都のホームページや新聞広告を通じて広く社会に発信し、普及啓発を図っております。
 また、企業の経営者向けにワークライフバランスの進め方などをテーマにしたセミナーの開催や普及啓発の冊子を作成し配布することで、広く企業経営者の理解促進を図っているところでございます。
 加えまして、両立支援アドバイザーを労働相談情報センターに配置し、育児と仕事の両立支援に取り組む企業への助言等を実施しております。

○西崎委員 都がワークライフバランスフェスタなどイベントを通じまして、ワークライフバランスの機運の醸成を図っていることは評価しております。しかし、中小企業の経営者の中には、女性の活用が会社の経営にプラスになるとは考えていない経営者もおり、まだまだワークライフバランスへの理解が不足している方が多いとも聞いております。
 今後は、都として中小企業経営者層への働きかけを強めていくことを要望しておきます。
 厚生労働省の調査によりますと、女性の就業率を年齢区分に見ますと、いまだM字型になっており、就業率と潜在的労働力の差は大きく、最も格差があるのが三十五歳から三十九歳です。働く意欲があっても就業に結びついていないものが多く存在しています。
 女性が結婚して第一子を産むときに、六割以上の人が仕事をやめてしまい、出産後も継続して就業するのは依然として厳しい状況です。その理由としては、保育園等の施設や長時間労働など、子育て中の男性の労働環境が整備されていないことなどが挙げられております。
 女性が第一子の出産前後に離職することは、これまで積み上げてきたキャリア形成を中断することになり、企業にとっても大きな損失です。このため、女性が働きやすい職場環境づくり、ワークライフバランスの推進などが一層重要になってきますが、同時にM字カーブを解消するためには、一たん離職しても、できるだけ早く仕事に復帰して働きたいという女性に対して、きめ細やかな支援を行うことが必要です。
 しごとセンターにおいて実施しています女性再就職サポートプログラムは、再就職を希望する女性にとって大変重要な事業であると考えますけれども、事業内容を改めて確認するとともに、その実績についてお聞かせください。

○穂岐山雇用就業部長 女性再就職サポートプログラムにつきましては、平成十九年度に開始したもので、具体的な支援内容といたしましては、就職活動のノウハウに関するセミナーや求職者のニーズの高い経理事務や営業事務などのスキルアップ講習、企業における職場体験を全部で十日間のカリキュラムで実施しております。さらに、プログラム修了後も就職支援アドバイザーがキャリアカウンセリングを行い、就職に至るまで継続的に支援しております。
 平成二十三年度の実績といたしましては、募集定員に対し二倍以上の応募をいただき、またプログラム修了者二百八十八名の就職率は九月末時点で六五%となるなど、就職実績も高く、効果的な対策となっていると考えてございます。
 今後とも、こうした取り組みなどを通じまして、出産や育児で離職された女性の再就職を支援してまいります。

○西崎委員 先ほど、厚生労働省の報告にもありますように、三十代の女性の就職率と潜在的な労働力ですか、非常に就職を求める、その格差が大きいということがありました。今後も女性の再就職を支援するとともに、子育てをしながらも若い世代が働ける社会環境の整備に向けての取り組みを要望します。
 次に、ソーシャルビジネス支援について伺います。
 社会的な課題を解決するソーシャルビジネスや地域のニーズや問題に対応するコミュニティビジネスが広がりを見せております。子どもの育ちや教育支援、福祉、環境問題、国際協力など、さまざまな課題にビジネスとして取り組むものです。事業を起こす主体は株式会社であったりNPOであったりしますが、地域の課題を解決するための仕事づくりが各地で進められています。
 ソーシャルビジネスの起業を支援する東京都ソーシャルベンチャーセンターの事業は、平成二十三年度末で終了いたしましたけれども、この事業の果たした役割とその実績について伺います。

○河内商工部長 ソーシャルビジネスは、社会的課題の解決に資するとともに、新事業の創出につながることから、都は、平成二十一年十月より、社会的事業の相談窓口であるソーシャルベンチャーセンターを設置し、ソーシャルビジネスの起業に関心を持つ起業予定者を対象としたセミナーや個別の相談等を行ってまいりました。
 また、同センターでは、ソーシャルビジネスの事業者と起業予定者との交流会などを開催し、パートナーシップの構築も進めてまいりました。平成二十三年度には百四十六件の相談に対応するとともに、二十八回のセミナー、交流会を開催し、延べ一千四十四人が参加しております。
 こうした起業予定者や事業者に対する普及啓発や情報提供などの取り組みにより、これまで認知度が低かったソーシャルビジネスのすそ野を拡大し、担い手の確保や立ち上げ環境の整備などに一定の役割を果たしてきたと考えております。

○西崎委員 この夏に、私は、韓国の企業組合とか社会的事業所で地域を支えておりますソンミサンマウルというところを視察してまいりました。ここでは、住民の人たちが生活に必要な事業を自分たちの力で展開しておりました。まちが大変活性化しており、利益だけを追求している企業とは違い、地域の課題解決をするための社会貢献を果たす役割は大変大きいのではないかと思いました。
 平成二十三年度で終了していますソーシャルベンチャーセンター事業は、国の事業ということもありまして、三年間で終了いたしましたけれども、今後はこのようなビジネスが、地域では求められてくると考えまして、引き続き普及啓発などに取り組むことを要望いたします。
 都では、ソーシャルビジネスを支援して、場所の提供を行うために、平成二十三年七月にはソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAを開設しました。開設後の実績とその効果についてお聞かせください。

○河内商工部長 都は、ソーシャルビジネスの創業を支援するため、平成二十三年七月にソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAを開設いたしました。平成二十三年度末時点で、NPO法人や株式会社など、十二団体の入居を決定しており、経営のノウハウを提供するためのインキュベーションマネジャーを配置し、支援を行っているところでございます。
 入居者のうち、さきのソーシャルベンチャーセンターを利用した後に、本施設に入居が決定する事例もございまして、ソーシャルビジネスをスタートさせた事業者のステップアップを図るための支援施設として効果を上げたところでございます。

○西崎委員 ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAは、ソーシャルビジネスの立ち上げを支援する場として、オフィススペースを三年間まで借りることができ、セミナーや相談の支援を受けることができます。SUMIDAは、事業主体が株式会社でもNPOでも対象にしていますけれども、経営のノウハウは共通点と相違点があります。産業労働局は企業への支援を得意分野としており、一方、NPO支援は、東京都の社協の東京ボランティア市民活動センターが行っています。
 今後はソーシャルビジネスが育つように、東社協と連携して進めていっていただくことを要望します。
 次に、地産地消の取り組みについて伺います。
 東京の地産地消の取り組みは、地域で個々の農家が行っている庭先販売や共同直売所、スーパーマーケットの連携、さらには学校給食に地場農産物を使うなど、JAと各自治体が協力するなどして実施しております。
 ことし一月、東京都は、とうきょう特産食材使用店ガイドを発行いたしました。大変人気があるそうですけれども、農林水産業の振興と地域の店舗を活性化する取り組みとして注目されるところです。このガイド発行に至った経緯と効果について伺います。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 都では、都内産農林水産物をPRし、消費及び生産の拡大を図るため、都内産農林水産物を積極的に使用している飲食店等を紹介するとうきょう特産食材使用店制度を、平成二十二年度に創設いたしました。この制度では、飲食店のPRのために、登録証と多摩産の木材を使用した看板をお渡しするとともに、都のウエブサイトでも公表するなど、飲食店のインセンティブとなるような取り組みを行っております。
 さらに、消費者に広くお知らせしてPR効果を高めるため、平成二十三年度にとうきょう特産食材使用店ガイドを二万部作成し、都営地下鉄の駅やイベント会場などで配布いたしました。このガイドブックはマスコミにも多く取り上げられ、都民の皆様から大変好評を得ております。

○西崎委員 JAでは、江戸東京野菜について商標登録をしまして、地域認証に向けた取り組みを進めていると聞いております。伝統野菜は、京都を初めとする日本のあちこちで見直されまして、付加価値をつけて復活しているところがあります。東京でも江戸期から始まる伝統野菜を認証し直し、継承していくものとして、栽培と販売がうまくマッチすると、活性化が期待されるところです。
 江戸東京野菜の取り組みについて、状況を伺います。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 伝統的に栽培されてきた農産物を維持し、普及することは、東京の農業振興につながることから、重要であると考えております。このため都では、かつて東京周辺で栽培されていた野菜の種をストックして、定期的に更新を行ってまいりました。
 さらに、独特の味と香りなどから脚光を浴びるようになってからは、地域の要望もあり、その利活用及び生産性の向上を目的に栽培試験に取り組むとともに、栽培技術の指導、支援などを行ってまいりました。
 また、JA東京グループでは、ブランド野菜として確立するため、江戸東京野菜推進委員会を立ち上げ、都も協力して、江戸東京野菜の定義を定め、品目選定に取り組んでおります。この取り組みにより、現在、練馬大根や東京ウドなど三十品目が江戸東京野菜として選定されております。

○西崎委員 私も地元が世田谷なんですけれども、世田谷の農家に一日だけお手伝いに伺ったことがあります。手伝ったお礼に、車いっぱいのネギとコマツナをいただきましたけれども、とても土のにおいがしていて、野菜の香りと甘みというのを改めて感じ取って、地場でとれる野菜のすばらしさを感じました。
 農地の減少を食いとめることが難しい現状におきまして、産業としての農業を活性化することで減少を食いとめたいという思いは、多くの都民に共通するものだと思います。生産現場と販売や飲食店をつなぐ取り組みは、東京産の野菜や畜産物、乳製品などがあることを広く都民に知ってもらうことにもなると思います。
 都としても、今後も普及に努めていただくよう要望いたしまして、私からの質問を終わります。

○神野委員 私からは、東京都がやっております高度化資金貸付制度についてお伺いをいたします。
 都は、中小企業が設立する協同組合そして商店街などに対して、施設整備の資金を直接に貸し付ける中小企業高度化資金貸付制度を実施しておりますけれども、この点について何点か伺います。
 まず初めに、この制度の概要がどのようなものであるのか、確認の意味でお伺いいたします。

○寺崎金融部長 中小企業高度化資金貸付制度は、国の法律に基づくもので、中小企業者が経営基盤の強化を図るために組合等を設立して共同で取り組む事業に対しまして、地方独立行政法人中小企業基盤整備機構と連携して、資金及びアドバイスの両面から支援を行う制度でございます。
 支援の対象となりますのは、市街地に散在する工場を工場団地に集約する事業や商店街のアーケード整備など、中小企業の経営基盤の強化に加えまして、公害対策や地域振興に資する政策性の高い事業でございます。
 支援の内容といたしましては、実施主体となる協同組合等に対しまして、事業計画、資金計画について専門家による助言を実施するとともに、長期にわたって低利かつ固定利率で資金を貸し付けるものでございます。

○神野委員 パンフレットを見ると、今、ご説明があったように、工場団地や卸センターをつくったり、あと商店街の立体駐車場ですとか、こういった非常に大きな事業に対して、貸付期間二十年以内、一応これいただいた資料ですと、貸付金利が一・〇五%ということで、非常に有利な条件で貸し付けをすることになっております。
 それでは、これまでの貸付実績や近年の貸し付けの状況がどのようになっているのか伺います。

○寺崎金融部長 本制度は昭和四十一年度の事業開始以来、累計で五百六十二件、一千六百億円を超える資金を協同組合等に貸し付けてまいりました。近年の貸付実行件数は年間二から三件程度で推移しており、平成二十三年度末の貸付残高は、三十一組合、約百三十九億円となっております。

○神野委員 貸付実行件数は、ここ最近年間数件であるとはいえ、昨年度末で百四十億円近い多額の貸付残高があって、単純に割り返してみても、一組合当たりの貸付残高は大変高額であります。
 この制度は、一応国の制度ということでございまして、全国の自治体で行われております。この質問に当たって他県の状況を調べてみたんですが、他県では、この制度で多額の不良債権を出しているところもあると聞いておりまして、既往の貸付先に対して的確な債権管理を行っていくことが必要であると私は考えます。
 そこで、東京都が貸し付けや回収を行っているこの高度化資金の返済状況、これがどのようになっているかを伺いたいと思います。

○寺崎金融部長 高度化資金貸付につきましては、貸付対象施設が複数の都県にまたがる広域事業の場合は、中小企業基盤整備機構が直接貸し付けを行い、都内のみに所在する場合は都が貸し付けを行っております。このうち、都の貸し付け分に係る平成二十三年度中の返済額は約十一億八千万円であり、年度末の残高は二十七組合で約百三十七億円となっております。この中には条件変更債権も含まれておりますが、こうした債権につきましても、条件変更後の約定どおり返済がなされております。

○神野委員 貸付案件の中で、条件変更債権があると。ただ、変更後の約定どおり返済がなされているとのご答弁でございますけれども、個々のこの条件変更先の状況を伺ってみると、楽観できない状況の案件が散見されるわけです。
 例えば、この条件変更によって、最終償還期限を二年または三年と延長しているわけなんですが、延長して全額が返済できるわけじゃなくて、貸付残高を今年度、その条件変更債権の返済額で割り算をすると、完済までにまだまだ三十年とか四十年かかるような案件を見ることができるわけなんです。つまり、今回行った条件変更は、この借り主、協同組合さんたちが、いわゆる返せる金額を約定返済額として、当面の延滞を防ぐために行ったものであって、今いったように、次の償還期限で全額が返済できるような、そういう性質の条件変更ではないということがわかります。
 つまり、今のご説明の中で、現時点での滞納はないといっても、それは要するに滞納が起きないように条件変更を行っているだけで、こうした案件というのは、今後条件変更というものを延々と繰り返して、滞納が起こらないような処理を続けていかなければならないわけです。
 こうした処理を、今後も三十年、四十年と続けていくつもりなのか、貸付先に対してどのように対応しているのかを伺いたいと思います。

○寺崎金融部長 厳しい経営状況にある貸付先に対しましては、経営や資金繰りの状況を十分に精査しながら、返済期限を延長するなど、条件変更を適宜弾力的に実施しております。
 条件変更に当たりましては、経営改善計画の作成を求めた上で、これに基づき中小企業診断士による年一回の運営診断を行い、組合及び組合員の経営状況の分析を実施しております。また、分析結果に基づく指導、助言を行い、組合からこれに対する対処方針の報告を求めるなど、きめ細かい支援を行っております。
 こうした取り組みなどにより、経営状況が好転した場合には、返済額の増額により早期の返済を促すなど、適正な債権管理に努めているところでございます。

○神野委員 経営状況が好転して返済額が増額するような状況になれば、それは非常にハッピーなんですけれども、この高度化事業の事業の性質、先ほどいったように、生産業の方々の工場団地ですとか、いってみればあと工場アパートですとか、そういったような施設が資金使途としては多く使われておりまして、今の状況を見ると、そのアパートなり工場団地、そのいわゆる生産業、製造業を廃業して歯抜けになってしまっているようなところが結構見受けられるという状況を考えると、そうそう簡単にですね、経営状況が今後も好転していくということは、非常に難しいんじゃないかなという気はいたします。
 さらに、今、返済期間、ほうっておくと三十年、四十年という、そういった案件があると申しましたが、こういった案件は貸付残高に対するいわゆる担保ですね。担保の評価額が、例えばその貸付残高に対して約三〇%ですとか四六%ですとか、大きく担保割れを起こしている案件がございます。またほかにも、条件変更債権の中には、これは大型案件なんですが、貸付残高に対する担保評価が約六九%しかない案件もあって、今後長期にわたって返済を求めるべき貸付案件の担保価値というものが、大きく毀損をしているわけですね。
 先ほどの答弁で、平成二十三年度末の貸付残高は二十七組合、約百三十七億円あるとのことでしたが、そのうち大きな担保割れを起こしている貸付先は三組合、でも、この三組合で残高ベースでは全体の約三割あって、これは大変な問題じゃないかと思うんです。
 そこで、こうした案件について、当然、金融機関ならば追加担保の徴求ですとか、連帯保証人の資力調査というものを求めるんですが、こういったものは、果たして厳密に行っていらっしゃるのか。また、こうした案件を産業労働局としては、どのような体制で管理をされていらっしゃるのか伺いたいと思います。

○寺崎金融部長 高度化資金の貸付時には、原則として貸付額相当の担保を徴求するほか、参加組合員等事業関係者全員を当初から連帯保証人としております。
 また、条件変更は、先ほどご説明した運営診断により組合の財務状況を把握した上で実施するほか、毎年度、担保物件の調査に加え、連帯保証人全員に対し、所得などの状況や必要に応じて不動産の保有状況について調査を実施するなどして、債権の保全を図っているところでございます。
 条件変更時に地価の下落等により担保が不足する場合には、追加担保等を検討することになりますが、通常、組合所有の不動産には既に担保設定がされており、担保の追加徴求は難しい状況でございます。こうした場合には、運営診断に加えて、中小企業診断士による年二回の特別指導を実施し、さらにきめ細かく経営状況の把握に努めるなど、債権の適切な保全に資する取り組みを行っております。
 なお、本制度の実施に当たりましては、担当部署に専任の職員を配置しているほか、運営診断や特別指導の際には、公益財団法人東京都中小企業振興公社の企業現場に精通した職員や中小企業診断士等の外部の専門家も活用するなど、手厚い支援と適切な債権管理を行う体制を整えております。

○神野委員 組合所有の不動産には既に担保が設定されておりというお話ですが、通常、条件変更を実施するに当たっては、いわゆる追い担といって、担保の追加だとか、それから連帯保証人の追加というのは、これは当然なんですね。担保追加しなければとか、連帯保証人をもっと出さなければ条件変更もしないよという形で条件交渉を行うのが、通常の形なんです。
 例えば、条件変更実施をする局面において、都の方も担当者なり担当部署を変えるとか、そういった取り組みもお考えになられたらいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、この高度化資金貸付制度は中小企業支援、支援という政策目的のために行われている貸付事業ですから、そこには都としても、当然困っている中小企業を助ける、困っている方を助ける、これは情がどうしてもかかわってくるんです。
 ただ、一方、都の直接貸し付け、こういう側面から見ると、貸した金はこれは何としても返してもらわなければならない。なぜかというと、貸付金の原資は税金だからであります。返済が滞ったり事情変更があれば、それこそ血も涙もなく、追加担保を徴求したり、時には整理を振りかざしてでも保全を図っていかなければ、これは当然、都民だって納得しないわけであります。
 中小企業支援という大義名分のもとで、今申し上げた情を先行させて滞納が起きないよう、条件変更を繰り返して問題を先送りする。先ほど挙げた案件でも、当初二十年で返してもらうべきものが、五十年、六十年かかる。まさに問題を先送りしていれば、破局が来れば、一気に都民の税金を毀損してしまうわけですから、情をとるのか、非情に徹して回収に邁進するのか、その判断というのは大変困難を伴うものであると思います。
 そこで、こうした中小企業支援という情の部分と、貸付金回収という非情さとのバランスを、都政の運営においてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

○寺崎金融部長 中小企業支援に当たりまして、金融を通じて政策目的を達成しようとする場合、金融機関や保証協会との協調により融資を実施する制度融資のような制度であれ、本制度のような都が直接貸し付けを行う事業であれ、一定のリスクが存在いたします。
 本制度は、経営基盤の脆弱な中小企業の組合を資金面で支援するということにとどまらず、企業の移転や集約化による地域環境の改善、商店街の施設整備による地域の活性化に資するなど、大きな政策的意義があることから、都としてもこれまで継続的に事業を実施してきたものでございます。
 しかしながら、事業推進に当たりまして、リスクを放置せず、貸付時に事業計画や資金計画の実現可能性を慎重に検証することはもちろんのこと、貸し付け後も、担保や連帯保証人の確保、貸付先に対する診断、助言などの債権保全に向けた措置を着実に実行し、適正に管理していくのは当然のことであり、今後とも適切な債権管理に努めてまいります。

○神野委員 他県の状況をちょっと調べてみたんですけれども、他県はもっとひどい状況なんですよね。例えば完済までに、全部返すまでに千年かかるとか、こういう案件も、いまだに条件変更を繰り返しながらまだ支えている。そういった状況が指摘されております。
 先ほどから申し上げているように、貸し付けているお金というのは、これは税金でございますので、都民への説明責任というものも、やはり考えて処理を行っていかなければいけない。ただ一方、中小企業の支援という政策目的というものもあるわけでありますから、非常にそこのところは悩ましい判断をしていただかなければいけないんだと思います。
 この事業は、昭和四十一年度から始まった事業であります。この高度化貸し付けは、自治体と国の機構が貸付当事者となることから、貸付金の予算措置に時間がかかってしまうという問題だったり、またその償還期間も十五年から二十年、長期にわたってしまうため、自治体としてもこの債権管理コストの問題や自治体が直接貸し付けを行う中で、償還期間が、どうしても今いったように長期になってしまっている実質延滞債権とでもいうべき案件があることをかんがみても、制度の見直しを考える時期に来ているんじゃないかと思いますし、こういった融資に関しては、制度融資でも十分対応できるんじゃないかと考えるわけであります。
 都として、国に対して、この制度の見直しを含めて要求をすべきと考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

○寺崎金融部長 本制度におきましては、事業の性格上、長期にわたる適正な債権管理が必要となりますが、地方公共団体からの直接貸し付けでなければ実施が困難な長期かつ固定金利による資金貸し付けや税制上の優遇、さらに診断、助言の実施等の手厚い支援といった措置を講じることによりまして、現在でも中小企業の経営基盤の強化に一定の役割を果たしていると考えております。
 本制度の見直しにつきましては、その利用実態や政策効果などを踏まえ、制度を所管する国の責任において判断すべきものであると認識しております。

○神野委員 確かに、必要としている協同組合等もまだまだあるということでありますから、議論の余地はあるのだと思うんですが、私はこの質問をするに当たって、毎度毎度いうことなんですけれども、都がいわゆる直接に貸し付けるというその事業について疑問といいますか、非常に問題意識というものを実は持っている。新銀行東京の特別委員会でも再三申し上げてきました。新銀行の場合には、都が出資をしているとはいっても独立をした法人でありますから、あのときはいつも情と利というんですかね、新銀行は株式会社ですから、当然利益を求めなければいけないと。ただ、都が出資をするそういったその性格でありますから、どうしても中小企業支援をする、助けるという、この利と情の背反するそういった意識というものを持った会社経営というのは、やはりなかなか難しいということを常日ごろから申し上げているんですが、この都の直接貸付事業も、これは利じゃないんですが、情と非情さですよね。中小企業を助けるというこの大義名分、そのためにお金を貸すわけでありますけれども、当然それが滞れば、やはり税金を原資としているわけですから、非情をもって血も涙もなく回収する、そのバランスをしっかりとつけていかなければいけないわけです。
 きょう見てきたこの高度化貸付制度についても、まだまだ完済まで三十年、四十年、その間、事情変更があればもっと伸びてくるような案件があります。こうした案件の現状の分析そして回収に踏み切らなければいけない一つのタイミング、その判断をしっかりとつけて、この事業の運営を今後とも行っていただかなければいけないし、場合によっては、その判断をつけるに当たっては、委員会なり議会なりに諮って、その判断の透明性というもの、都民への説明責任というものをしっかりと果たすべく事業の運営をしていっていただくことをお願いして、質問を終わります。

○鈴木(隆)委員 決算委員会の第三分科会の最後の質問になるみたいですが、実は中小企業振興策で質問をするという予定でありましたが、かなり、鈴木先生と藤井先生と重複しておりまして、通告の内容とかなり変わることをあらかじめ、申しわけないですが、ご了承いただいて、私もこれはほとんど文章を読まないで、自分の考え方で質問していきますので、ご了解をいただければと思います。
 実は、最初に相談体制に対してお伺いをしようと思っておりましたが、鈴木先生の方から私が聞きたいところをかなり聞いていただいて、答弁もいただいております。そういう中であっても、やはり中小企業が今一番大変な思いをしているのは、情報がない、それから、そういう情報力を持っている方々の意見を聞いて、自分の事業または経営がどういう時点にいるのかということを的確にみずからが判断できる状況が必要ということで、経営相談が必要だというふうに、私も中小企業をやっている人間としてそう思います。都もいろいろやってきたこと、部長から、専門家派遣事業等々ですね、中小企業のそういうような事業をいろいろやってきたと。
 藤井先生からも、マイスター制度の点なんかもありましたが、例えばこういうマイスター制度も、藤井先生もちょっといわれていましたが、新たな都のマイスター制度を考えても、僕はもういい時期に来ていると思っています。まさに藤井先生もそれをいわれたんだと思います。例えば、海外支援をこれからいいますけれども、江戸前のおすしがありますでしょ、あれは世界じゅうに行くと、恐らくここにいる皆さんも食べたことがあると思いますが、江戸前ずしがほかの国に行くと江戸前ずしじゃないんですよね。だから、私はね、東京都で新たな認定マイスター制度でもつくって、江戸前ずしはこうだということを世界に発信してもいいと思います。なぜかといえば、おすしというのはもう世界じゅうに、要するに世界じゅうの人が、健康食でもあるし、おすしというようなものを通して非常に日本というものを理解している、そういう方々が世界じゅうに今ふえつつありますね。これはアニメもそうですが、食文化としてそういうようなものを東京から発信する。新たなマイスター制度、また名称を変えてでもいいというようなことをやっていくというようなことをしてもいい時代に来ているような気がします。
 藤井先生も、恐らくそういうお気持ちで先ほどいわれたんだと思いますが、何しろそういうようなことを踏まえて、やはり今、経営者の方々というのは、いろいろな相談、それから自分たちがこれからやっていく企業の発展、または自分の企業を伸ばしていこう、またほかとのことも考えて努力しているということを思っているわけでありますから、もう答弁にもありましたとおり、中小企業をしっかり守っていくためには、その経営上の解決に取り組む企業に対して、適切な支援をしていくということが非常に大切であるということでありますので、これに関して、もしつけ加える答弁があるならば、部長からの答弁を求めます。

○河内商工部長 中小企業が厳しい経営環境を克服して安定的な経営を図っていくためには、直面するさまざまな経営の課題を早期に解決することが必要であり、そのために豊富な知見やノウハウを持った専門家から適切な助言を受ける体制を整備することが重要でございます。
 このため、都は中小企業振興公社におきまして、ワンストップの総合相談窓口を設け、中小企業診断士や税理士、弁護士、ITコーディネーターなど、各分野の専門家が無料でアドバイスを行い、中小企業のさまざまな分野の課題解決のニーズに対応しております。本相談窓口における平成二十三年度の相談件数は、全体で一万七千四百二十四件となっておりまして、前年の一万七千四十七件と比較しまして、約四百件増加しておるところでございます。
 また、中小企業からの求めに応じて専門家を企業の現場に派遣してきめ細かな支援を行う専門家派遣事業を実施しておりまして、平成二十三年度の派遣実績は九百八十三回で、前年の八百八十七回から百回近く増加しております。
 窓口相談を利用した企業からは、相談員のアドバイスを受けて立ち上げたホームページによって販売先が確保できた、また相談員から進められた公社の販路開拓支援事業を活用して、売り上げを順調に伸ばすことができたなどの報告を受けておりまして、着実に成果を上げておるところでございます。
 こうした取り組みを通じまして、経営上の課題解決に取り組む中小企業を適切に支援してまいりたいと思っております。

○鈴木(隆)委員 先ほどと重複した答弁ですが、今いったように中小企業の方々というのは、余りお上の世話になりたくないと思っている人がやはり多いんですよ。実際に、自分たちの努力で社員たちと、または社員の家族と一緒になって自分の事業を守っていく、やめるときはやめていく、事業を変えていくときには変えていくという努力をやはりしてきているわけで、長くなればなるほど、また親から子へつながっていってやっていくということもあるわけですから、そういう中で苦渋の決断をしているときがありますから、ぜひ、先ほどもいったように、しっかりと守る、中小企業を守る、それが東京都の使命だという使命感を持ってぜひやっていただきたいことをお願いしておきたいと思います。
 続いて、中小企業は、やはりどうしても、ある程度、企業を拡大したり、または事業展開をしていくというときに、海外に目を向けざるを得ないというのが日本の現状であります。内需だけではなくして、内需をとろうとするときには、やはり海外と連携し、または連携している企業とともに海外に行くというようなことを当然考えなければいけないというときに、今、なってきているわけでありまして、そうなるとアジア市場というのは非常に魅力ある市場になってきます。裏返しにすれば、アジアと日本の企業が組んだときに、日本の市場もアジアにとって非常に魅力ある市場である、相互関係があるということでございまして、そういうようなところにするためには、アジアヘッドクオーター構想も大事であろうし、それからまた、今までやってきた中小企業展とか、そういうようなことも大事ですし、それから海外販路に関して、最初、聞くことにしていたんですが、この海外販路ももちろんその中の一つであるということだというふうに思います。
 海外販路の方の答えは、もうほとんど鈴木先生の質問に出ておりますので、むしろそれも含めてアジアとの、これから都市の時代といわれている中での都市外交に関して、少し持論を述べさせてもらいながら質問したいというふうに思います。
 今、都市の時代といわれている中で、やはり交流という言葉から、恐らく協力という言葉にそれぞれの都市間が変わってきているというふうに思います。特に、石原知事が提唱したアジア大都市ネットワーク、十二年目、十三年目を迎えるわけですが、これがやはりアジアに、非常に大きな東京という都市の信頼を得たことになっているというのは間違いない事実でありまして、これは日本のマスコミの人がいたら、聞いていてもらいたいのですが、マスコミが非常に過小評価しておりますが、アジアの首都では非常に高い評価です。
 私も先般、ウランバートルに行って、ウランバートルの市長さんに直接、アジア大都市ネットワークに加盟するようにということの説得をして、同志と一緒に行って、私はみずからやったわけでありますが、非常にそのときに、やはりモンゴルの国も挙げて、またはモンゴル大使館の方も、もうぜひ参加したいと、ぜひ東京との連携をとりたいということを向こうが申し出て、実はこの六月ですか、シンガポールで行われたアジア大都市ネットワークでウランバートルが加盟したという経緯があるわけです。三年にわたって、都議会自民党で数回にわたってモンゴルに行って、そういうような結果になり、それが成果を結んで、行政側との連携もとれて、現在に至って大都市ネットワークに入ってきた。アジアの諸都市が、それぞれ今、東京ともっともっと深い関係をつくりたいというのが、その願望の一番のことでありまして、それに対して、では実際に東京がどうこたえていくかということが、実は今いった都市外交に対しての一番基軸になければならないというふうに思います。
 ですから、そういう面では、いろいろ東京が努力してきて商談会をやったり、展示会、または交流展でもやりました。これも私が予算委員会で二年前に、知事に、皆さん覚えていると思いますが、トップセールスをやるのかという質問をして、やると。これは、日本では画期的なことなんですね。国も今まで、英米の場合ですけれども、大統領とか首相が企業を連れて、世界に企業を紹介して歩いて仕事をとりに行くんですよ、海外は。日本だけは、それをやると癒着といわれましてね、ですから日本の政治家が企業を連れて海外へ行って商談に入ってやるということは、日本ではとてもできない国なんですな、これは。世界で日本だけですよ、こんなことをやっている国は。
 ですから、そういうことを考えても、実は都市の裏には、特に首都の裏にはすべて国がついています。日本だけですね、東京の裏に国がついていないのは。でも、そのくらい、東京というのは、独立した東京という都市として非常に多くの期待を寄せられているという現実があります。
 そういう中で、実際に、では、アジア大都市ネットワークもそうでありますが、東京が今いった経営交流、または、僕は最後は貢献までいくべきだというふうに思っていますが、お互いがウイン・ウインになるような関係をつくっていくときに、では、東京がこれから果たしていく役割は何なのかということを、やはり本来は考えていくときにもう来ているというふうに思いますし、むしろそれにこたえていかなければならないというふうに思って、都も、我々議会も、大いに世界に出てもらって、海外視察もどんどん公費で行って、議員も職員も大いに行って、向こうとどんどんそういうきずなを深める、人間関係を深めていくということをすべきだというふうに思います。
 というのは、そもそも日本が世界にこれだけの信頼とメード・イン・ジャパンの安心、信頼性を得たというのは、我々の父親とか皆さんのおじいちゃんが、坂本龍馬の意志を継いだかどうかは別にしても、世界じゅうに出て、世界じゅうの人たちと長いつき合いをして、日本人の勤勉さと努力等が認められて、世界から日本人に対する信頼、すばらしい信用というのを得てきたというのが事実だと思いますね。私も、父親がやはり四十数年、海外との会社をやってきたわけですから、世界じゅう百二十カ国ぐらいに父親の親友といわれる人がいますけれども、やっぱりそういう人たちがいたんだと思いますよ。政治家ではない、やっぱり一人一人の日本人が世界に行って、本当に血のにじむような努力をしてきてつくり上げてきた信頼、信用のもとに今の日本があると、私はそういうふうに思っています。その後を、実は継ぐ日本の若者たちが出ていないという現状を非常に苦慮しているところがありますから、大いに東京はみずから世界に出ていってもらって、職員の人が向こうの人と大いに交流をして、または向こうの人と心を結んで、そういうようなつながりを持ってもらう中から都市としての本当の交流というか、または協力体制ができていく、または企業も結ばれていくと。お互いにいい関係になっていくというふうに思っています。
 そういうことを踏まえて一つ質問を、今いったことでどうお考えなのかをお聞きしたいというふうに思います。

○河内商工部長 都内の中小企業が、成長著しいアジアなどの海外の企業と直接意見や情報を交換することを通じまして、商談の機会を確保し、販路の開拓に結びつけていくことが重要であると考えております。都は、都市外交の柱として、アジア大都市ネットワーク21におきまして、アジアの大都市と連携を強化し、アジア地域の発展のための産業振興など、共通の課題に取り組んでおるところでございます。
 これを踏まえまして、都は産業交流展において、アジア大都市ネットワーク21参加都市の企業、団体が出店するアジアゾーンを平成二十二年度より設置いたしまして、東京の企業とアジアの企業の交流を促進するとともに、取引機会の拡大を図っております。平成二十三年度、同ゾーンには前回より一カ国ふえた六カ国から三十四の出展者が参加いたしまして、今後の商取引の展開に向けた貴重な機会を創出いたしました。
 また、開催期間中、アジア市場への進出や販路開拓を考える企業のため、ベトナムの政府関係者が現地の投資環境などについて解説するビジネスセミナーを開催し、中小企業の海外展開のためのノウハウを提供いたしました。
 一方で、海外の展示会において、アジア大都市ネットワーク21がアジアゾーンを設置する場合に、都内の中小企業のブースを確保いたしまして、製品技術のPRと企業同士の交流促進を図っておるところでございます。
 今後も、産業交流展でアジアゾーンを設けるなどの取り組みを通じまして、都内中小企業と海外企業との交流を促進し、中小企業の販路開拓への支援を強化してまいります。

○鈴木(隆)委員 実は、なぜそこまで申し上げたかというと、オリンピックですよ。やっぱりアジアの票をとるためには、今いったような都市間がお互いに産業または経済交流、または文化、スポーツとか、それから音楽などの交流を大いにして、お互いがそれで豊かになっていく、ウイン・ウインの関係をつくっていくということがまさにあるので、実は一局の問題ではなくして、知事本局から東京都、オール東京で、これはやっていかなければいけないものだというふうに思いますが、やはり今いったように経済交流である程度ウイン・ウインの関係ができないと、スポーツだ、音楽だ、文化にはいかないんですね。しかし、文化とか、そういうようなものを通して、やはりお互いが心をつないでいくことが、オリンピックでもまた見ていただいてわかるように、ああいう感動だとか勇気、そして我々に夢と希望を与えてくれるし、子どもたちに財産として残すものがあるというようなことは、知事もおっしゃっているわけでありますので、どうかその辺もご理解いただいて、気合いを入れて、特に産労局にはこのことをお願いしたいと思います。
 続きまして、電力の自給型の経営促進事業の実績ということでお聞きをしようと思っていたんですが、これも藤井先生がすべて聞かれて、私からは、むしろ中小企業が自家発電設備を導入する際に助成を行う事業をスタートした、それが導入されて、二十三年から二十四年に延長され、そして、電力の確保を真に必要とする企業が節電の取り組みを進めるとともに、こうした事業を適切に利用することができるような、都はしっかりとした普及啓発を行うということを求めておきたいということで、この答弁は結構であります。要望として申し上げたいと思います。
 続きまして、電力の自給型の経営促進事業についてであります。
 電力需給の状況というのは、火力発電所の増強などの取り組みによって危機的な状況は回避されましたが、その一方で、本年一月に自由化部門における電気料金の値上げが発表されたことによって、生産コストへの影響が懸念されています。特に、電力を多く使用する中小製造業では、節電の取り組みを進めることで電気料金の値上げに対応していく必要に迫られました。
 我が党は、こうした実情を踏まえてさらなる支援の必要性を要望したところ、都は助成率を維持するとともに、助成対象の拡大を図ることとしましたが、そうした対応の効果について改めてお伺いをしたいと思います。

○河内商工部長 ご指摘のとおり、電力の確保はもとより、電気料金の値上げにも対応することができるよう、中小企業が電力の使用量を効果的に減らす節電の取り組みは重要でございます。
 このため、自家発電設備や蓄電池の導入に対する支援に加えまして、電力の使用量を随時監視することで、電気の効率的な利用を進めることができるデマンド監視装置につきましても助成の対象とすることといたしました。この装置を設置することにより、最大電力使用量に応じて基本料金を抑えることができ、電力を多く使用する中小企業にとって節電の効果を高めることができるものと認識しております。
 こうした効果を背景といたしまして、制度改正以降、この装置を含めて本事業の利用を希望する企業が着実に増加しておるところでございます。

○鈴木(隆)委員 電力需給の状況については、その動向を注意深く把握していくことが引き続き重要でありますが、加えて電気料金の値上げといった事態に対応するためには、電気を効率的に使用していく取り組みが重要であると考えています。
 さきの第三回定例会の我が会派の代表質問に対して、産業労働局長は、中小企業が節電の取り組みを一層効果的に進めることができるよう、今後の支援のあり方について検討していくと答弁をされました。平成二十三年度の実績を踏まえたしっかりとした支援を行っていくべきであることを改めて要望して、次の質問に移りたいと思います。
 BCPの件であります。特に、中小企業の防災対策についてお伺いをしたいと思います。
 さきの東日本大震災においても、事業継続計画、いわゆるBCPは、中小企業の事業の継続と早期の復旧に役立ったとの報告もあり、BCP策定の有効性は高く評価されたと伺っています。都内の企業のほとんどは、中小企業であり、東京だけでなく、我が国の産業、経済を牽引するとともに、都民の重要な雇用の場となっています。
 そうした中小企業が、地震等の災害発生時にその被害を最小限にし、事業を継続するためには、日ごろからの備えをしっかりしておかなければなりません。
 東京都は、平成二十年からBCPの普及啓発を開始し、震災に先立つ平成二十二年四月からは、BCP策定支援事業に取り組んでおります。震災を契機に、従来にも増して事業所による自助、共助の強化が求められる現在、BCPは中小企業に、より広く普及されるべきと考えます。
 そこで、平成二十三年度のBCPの策定支援事業について、その実績を伺います。

○河内商工部長 中小企業が震災などの災害を乗り越え、事業の継続や早期の復旧を図るためには、BCPの策定は非常に重要でございます。都は中小企業のBCP策定を支援するとともに、その取り組み成果を広く紹介することで、都内中小企業へのBCP策定の普及を図るBCP策定支援事業を実施してまいりました。
 平成二十三年度には、本事業により七十の企業と五団体のBCP策定を支援しており、支援を受けた企業からは、リスク回避に向けトップと従業員の相互理解が深まった、あるいは金融保険会社からの評価も上がり、結果として受注増につながっているなどの声をいただいております。また、これらBCP策定の重要性を中小企業に効果的に普及するため、本事業で策定を支援した企業のすぐれた取り組みの発表や表彰などを実施するBCP策定推進フォーラムを二回開催し、各回三百人近い参加を得ております。さらに、BCP策定のきっかけづくりとするため、BCPの仕組みを一日で理解できるワンデーセミナーや区市町村と連携した講座を開催するとともに、東京発チーム事業継続と銘打ったホームページに策定支援をした企業の事例を掲載するなど、BCPの普及啓発を図っております。
 今後もこうした取り組みを通じまして、中小企業のBCPの策定を促進してまいります。

○鈴木(隆)委員 今後も、都内中小企業のBCPの普及に一層努めていただきたいと思います。
 BCPを初めとする防災対策については、中小企業が自助、共助のあり方について考え、それを実行に移すことが、自社のみならず従業員や取引先、地域社会のためにも必要不可欠と考えます。
 現在、東日本大震災を教訓に、都ではさまざまな防災対策の見直しに取り組んでおります。特に、帰宅困難者対策の取り組みなどでは、都民に加えて民間企業の協力が不可欠であります。
 こうした中、先日の第一分科会の質疑でも、我が党の宇田川聡史議員が指摘をしたように、都内企業の大多数を占める中小企業について、帰宅困難者対策に関する十分な理解を得られるよう、努力を積み重ねることが大切であります。
 そのため、中小企業施策を所管とする産業労働局において、中小企業のBCP対策を後押しすることに加えて、防災に関する普及啓発やその具体的な対応への支援について、前向きな検討を改めて求めておきます。
 次に、最後でありますが、中小企業振興策について、総論としての質問をさせていただきたいと思います。
 平成二十三年度における中小企業振興施策について伺ってまいりました。答弁をいただいたとおり、販路開拓支援や相談への対応などの経営支援施策により中小企業の取り組みを着実にサポートすることに加え、平成二十三年三月に発生した東日本大震災を契機に、中小企業の防災対策や電力確保への対応などの緊急対策に積極的に取り組んできたことは大変評価をいたしたいと思います。
 しかしながら、長期化する円高や新興国の経済発展などによる国際競争の激化といった大変厳しい経営環境が続く中で、必死に事業に取り組む都内中小企業に対する支援を、これからもしっかりと進めていくべきであるというふうに思います。特に、先ほど申しましたが、中小企業全体の、または中小企業が連携して、ある程度、企業協力し、海外との協力もできていく、今、もう世界は狭いわけですから、日本だけで企業協力していく必要はないので、もっと大きく世界に飛ばして、ともに企業に協力していくことができるような時代を迎えていかなければいけない。日本だとか韓国、台湾だとか中国というような枠を越えても、もういいような時代が、恐らくこれから十年か二十年先に来るでしょう。そういうようなことを踏まえて、ある程度、先見性を持って日本が、目先のことだけではなくして、長期展望を持った国際交流、国際貢献、協力への道をやっぱり探していくべきだなというような思いがあります。
 実は、それが先ほどもいったように、繰り返しますが、オリンピック招致にとって非常に大きな力になります。また、各国にはスポーツ省があって、スポーツ省の要するに大臣会議が行われているわけでありまして、IOCの委員はアジアには大体五人、今いったASEANに入っている下には四カ国か五カ国にIOC委員がいますが、そうではない国のスポーツ大臣たちが日本がいいよといってくれれば、やはりある程度そういうような風向きというのができてくるわけでございますので、そのためにはやはり国だとか東京都は、お互いに貢献をしていくと。また、貢献していることをお互いに認められるような関係をつくっていくということが非常に大事であり、それの礎になるのは大企業ではなくて、やっぱり中小企業がきちっとお互いの技術力を持ってお互いが結んでいくということが、これからのアジアの発展には、僕は欠かせないことだというふうに思っておりますので、そのことができるのは、東京しかない、日本では東京しかない、そのことを、誇りを持って我々は進めるべきだということを思っております。
 だから、そういう中で中小企業の振興に関して、改めて局長の決意を伺い、見解を伺って、質問を終わります。

○中西産業労働局長 我が国の経済は、長期化する円高や世界経済の減速などを背景といたしまして、依然として厳しく、今後も予断を許さない状況が続いております。
 このような社会経済状況を打開するためには、多種多様な産業が存在し、情報発信、流通の中心地でございます東京の強みを十分に生かすことによって、日本の経済を牽引していかなければならないと考えます。
 申し上げるまでもなく、東京には高度ですぐれた技術を有する中小企業が数多く集積しており、これらの持続的な発展なくしては、東京の産業力を高めることはできません。
 こうしたことから、平成二十三年度は、中小企業振興にかかわるこれまでの取り組みを着実に実施するとともに、東日本大震災による影響に対処するためのさまざまな施策を展開いたしまして、都内中小企業の事業活動の継続や東京の産業の活性化に向けた取り組みを進めてまいりました。
 お話をいただきました中小企業支援にかかわるさまざまな視点、また本日の分科会でのご審議の内容、こうしたものを十分に踏まえながら、今後とも、新製品や新技術の開発に積極的に取り組む中小企業や厳しい経営環境の中で喫緊の課題に対応すべく経営力の向上を目指している中小企業、こうした中小企業を守るという強い使命感を持って全力で支援し、そのさらなる発展に向け取り組んでまいります。

○高倉委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○高倉委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 以上をもちまして第三分科会における決算の審査は終了いたしました。
 なお、本分科会の審査報告書につきましては、分科会委員長において取りまとめの上、委員会委員長に提出いたしますので、ご了承願います。
 これをもちまして第三分科会を閉会いたします。
   午後三時二十五分散会

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