平成二十三年度各会計決算特別委員会第一分科会速記録第四号

平成二十四年十月十九日(金曜日)
第十一委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十名
委員長泉谷つよし君
副委員長早坂 義弘君
副委員長吉田 信夫君
菅  東一君
くりした善行君
しのづか元君
宇田川聡史君
吉倉 正美君
野上 純子君
原田  大君

 欠席委員 なし

 出席説明員
監査事務局局長松井多美雄君
監査担当部長仁田山芳範君
人事委員会事務局局長真田 正義君
任用公平部長石井  玲君
試験部長芦田 真吾君
審査担当部長小澤 達郎君
主税局局長新田 洋平君
総務部長田倉 英明君
税制部長宗田 友子君
税制調査担当部長小山 明子君
調整担当部長安藤 敏朗君
課税部長木村 芳生君
資産税部長阿南 威彦君
徴収部長西海 哲洋君
特別滞納整理担当部長藤井  朗君

本日の会議に付した事件
平成二十三年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
監査事務局関係
・平成二十三年度東京都一般会計決算(質疑)
人事委員会事務局関係
・平成二十三年度東京都一般会計決算(質疑)
主税局関係
・平成二十三年度東京都一般会計決算(質疑)
・平成二十三年度東京都地方消費税清算会計決算(質疑)

○泉谷委員長 ただいまから平成二十三年度各会計決算特別委員会第一分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、監査事務局、人事委員会事務局及び主税局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより監査事務局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十三年度東京都一般会計決算中、監査事務局所管分を議題といたします。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言をお願いします。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○泉谷委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○泉谷委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で監査事務局関係を終わります。

○泉谷委員長 これより人事委員会事務局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十三年度東京都一般会計決算中、人事委員会事務局所管分を議題といたします。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○泉谷委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○泉谷委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で人事委員会事務局関係を終わります。

○泉谷委員長 これより主税局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十三年度東京都一般会計決算中、主税局所管分及び平成二十三年度東京都地方消費税清算会計決算を一括して議題とします。
 本件については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○原田委員 平成二十三年度の都税収入は、四年連続の減となっておりまして、そうした中で適切に施策を実行していくためには、税収の確保を進めていくことが欠かせないところでございます。
 そうした中で、新たな財源という話も出てきますけれども、その前に、まず、今ある環境の中できちっと納めていただくということも大事なことであろうと。すなわち、滞納分について、きちんとした取り組みをさらに進めていくということも大切なことであろうと思っております。
 そこで、お伺いしますけれども、都税の滞納のうち、収入へと結びつけた額につきまして、直近の推移についてお伺いいたします。

○西海徴収部長 滞納になりました都税に係る収入、これを整理収入額と称しておりますけれども、区市町村が賦課徴収している個人都民税を除いた都税一般分で申し上げますと、その金額は、平成二十年度は前年度を九十四億円上回る五百七十六億円でした。その後、二十一年度は五百十億円、二十二年度は四百九十一億円、さらに二十三年度は四百三十五億円と、この四年間、減少を続けております。

○原田委員 減少しているということ自体は、それだけ見ると望ましいことではないですけれども、あわせて純滞納繰越額を見てみましても、こちらの方も平成二十年度には五百八十九億円だったものが、平成二十三年度には三百二十六億円ということで、二百六十三億円減っておりますので、そういった意味では、分母の部分が小さくなっている分というふうに受けとめられなくもないかなとは思っております。そうした中にあっては、いかにむだなコストをかけずに、効率よくこれを行っていくかといったことも、今後重要になってくるのではないかなと思っております。
 そこで、お伺いいたしますけれども、滞納整理による収入の状況というのは、今お話しいただいたとおりかと思いますけれども、都税の滞納整理に従事する職員の数及び一人当たりの収入額の直近の状況について、同じくお伺いいたします。

○西海徴収部長 滞納整理に直接かかわる職員の定数及び一人当たりの整理収入額でございますが、平成二十年度は五百四十四名で一人当たり一億百二十一万円、二十一年度は五百四十一人、九千二十八万円、二十二年度は五百三十七人、八千六百七十七万円、二十三年度は五百三十七人、一人当たり七千六百九十八万円と、職員数はほぼ横ばいでございますが、一人当たりの整理収入額は、滞納額の縮小などに伴いまして減少傾向にございます。

○原田委員 一人当たりの収入額も減少傾向と。その背景には、滞納繰越額自体は減っているわけでございますけれども、その中で職員数は同じ水準でやっていると。これは、新たな滞納を発生させないだとか、いろんな観点もございますので、一概に、職員数が同じだということについて現段階でとやかく申し上げることはありませんけれども、なお一層の、職員数だけがコストの要因じゃございませんけれども、厳しいコスト管理にはまた努めていただきたいなと思う次第でございます。
 それで、そういった背景で見てみますと、単に純滞納繰越額が減っているだけならばいいんですけれども、気になる数字もございます。
 都税徴収率が、一時期と比べて最近上がってきてはいるわけでございますけれども、直近ということでいいますと、また下がってきていると。都税徴収率ということでいいますと、平成十九年度が直近のピークになっておりまして、九七・九%までいきましたけれども、平成二十年度にはそれを〇・五ポイント下回りまして九七・四%、二十一年度にはさらに〇・六ポイント下がっていると。二十二年度は同率ということで歯どめがかかっていて、二十三年度には〇・二ポイント上回って九七・〇%まで回復はしたわけでございますけれども、十九年度の水準までは、まだ至っていないわけでございます。
 そこでお伺いしますけれども、徴収率が平成十九年度をピークに低下傾向を示していると。そして、歯どめはかかって、その後、二十三年度は三年ぶりに九七%台に回復しているわけでございますけれども、その間の低下要因及び回復傾向に転じた要因をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いをいたします。

○西海徴収部長 徴収率の低下要因、平成十九年度以降ですけれども、ここでは滞納の大幅な増加ということが挙げられます。
 平成二十年秋のリーマンショック以降、世界的な景気後退がございまして、このことによりまして、不動産、金融関連企業を中心に著しい業績の不振ということがございました。東京都でも、平成二十年度には、倒産件数、負債額ともに前年度を大幅に増加したものでございます。
 このような背景のもと、滞納額でございますが、二十年度には前年度から約二百三十億円増加、二十一年度は滞納額は減少いたしましたが、滞納件数はさらに増加いたしました。また、個人都民税の徴収環境につきましても厳しさを増しまして、これらによりまして、徴収率は、今お話があったとおり、平成二十年度、平成二十一年度と二年連続で低下いたしました。
 そこで、主税局では、平成二十年十二月に主税局緊急税収確保対策推進本部を設置いたしまして、徴収部門のみならず、各部門間、都税事務所間の連携をさらに強化いたしまして、都税収入の確保に努めました。徴収部門では、進行管理を徹底いたしまして、納付の喚起に向けた文書や電話による催告を強化するとともに、スピード感を持った財産調査や差し押さえなど、流れに沿った滞納整理に取り組んでまいりました。
 これらによりまして、厳しい経済環境の中ではございますが、平成二十三年度には、三年ぶりに九七%台の徴収率を確保できたものでございます。

○原田委員 いろんな取り組みを進めていただいているということで、当然、主税局だけでできない部分、つまり、社会環境、経済環境に左右される部分もあるかと思いますけれども、そうした中でも、絶えず取り組みを続けていただきたいなと思う次第でございます。
 数字の低下ということを見てみますと、さらに気になる部分がございまして、それが個人都民税の部分でございます。
 先ほどのご答弁の中にも、実際の直接の事務は区市町村が行っているということではございましたけれども、平成二十三年度で見てみますと、徴収率が九一・八%ということで、全体の徴収率の九七%と比べましても、五・二ポイントの開きということになっております。また、直近の状況を見ておりましても、徴収率の下落幅というものは、全体の下落幅を上回る大きな下げ幅を見せているわけでございまして、こうした部分についても、きちんと手当てをしていくということも必要になってこようかなというふうに考えるわけでございます。
 そこで、お伺いいたしますけれども、個人都民税の徴収率が低い要因がどこにあって、その向上のためにどのような取り組みを行われているのか、お伺いいたします。

○藤井特別滞納整理担当部長 平成二十三年度の個人都民税の徴収率は九一・八%であり、都税全体の徴収率の九七・〇%と比べますと五・二ポイントの開きがあります。これは、個人都民税を個人区市町村民税とあわせて賦課徴収している区市町村において、税務に精通した職員を育成しにくく、滞納整理のノウハウが蓄積されにくい状況があると考えられます。
 そのため、都では、区市町村へのノウハウ浸透として、区市町村職員向け研修の実施や実務研修生の受け入れなど、積極的に取り組みを行っているところであります。
 平成二十三年度の具体的な取り組みといたしましては、区市町村の抱えている課題についてきめ細かな対応を行うため、都職員が区市町村を訪問し、幅広くアドバイスを行う巡回相談や、情報共有の取り組みとして、区市町村が創意工夫した督促文書の展示会などを新たに開始いたしました。
 このように、区市町村の横の連携をさらに進めるため、都が触媒となり、できることから着実に対応しているところであります。

○原田委員 いろいろと横の連携をというようなお話もございました。
 実際に暮らしている人の立場から見れば、都であっても、国であっても、あるいは区市町村であっても、行政は行政ということになってきます。あるいは、社会保障の部分も含めた負担という意味でいえば、同じような負担ということでございまして、こうしたところがより一層連携して、公平公正な、そしてまた血の通った仕組みになっていくということは、大変重要なことではないかなというふうに思うわけでございます。
 昨今、社会保障と税の一体改革といったものが始まってきておりまして、また、実務面でもマイナンバーといったものが検討されているなど、税環境、税を取り巻く環境というのが大きく変化をしております。
 また、社会構造の変化ですとか、あるいは経済環境の中でも、東京都の場合、大幅な財政出動を伴うような対策というのは、なかなか難しいところもございますので、そうした中で、社会の変化、発展を促していくために、税政の担う役割ということも大きくなってきているのであろうというふうに思うわけでございます。
 そうした観点も踏まえまして、税というのは、納税の義務というのは国民の三大義務の一つでもございますし、また、都政を支える本当に基幹的な業務でございますので、なお一層効率よく、そしてまた実際に都の発展に--そして都に暮らす人たちが、公平に扱われているんだと、安心して自分はこの社会の中で生きていけるんだという感覚を持てる取り組みになっていきますように願いまして、私からの質問を終わらせていただきます。

○菅委員 私の方からも、徴収部門の取り組みについて幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。
 平成二十三年度の都税収入、これは、東日本大震災の影響や海外経済の減速等により、前年度決算額対比で初めて四年連続の減となったと、こういう状況であります。今後も税収の大幅な増が見込めない中で、今もお話ありましたけれども、滞納整理を促進する、このことが都税収入を確保する上でも大変重要だと、こういうふうに思います。
 きょうは、滞納整理について幾つかお尋ねをします。
 近年、経済環境が悪化している中で、都税の徴収率及び滞納繰越額はどのように推移をしたのか。先ほども議論がありましたけれども、改めてお伺いをさせていただきます。

○西海徴収部長 都税の徴収率でございますが、バブル崩壊後低下いたしまして、平成七年度には九〇・二%にまで落ち込みました。そのため、主税局では、組織の再構築や業務運営の抜本的改革といった構造改革を進めた結果、その後、徴収率はほぼ右肩上がりに推移いたしまして、平成十九年度には九七・九%にまで上昇いたしました。
 その後、リーマンショックなど世界的な景気後退が影響しまして、二十年度は前年度を〇・五ポイント下回る九七・四%、二十一年度はさらに〇・六ポイント下回る九六・八%と、二年連続して低下いたしました。二十二年度は、前年度と同率の九六・八%と低下に歯どめがかかりまして、昨年度、二十三年度は、依然厳しい経済環境の中ではございますが、九七・〇%に回復したところでございます。
 一方、平成六年度に二千四百七十八億円に膨れ上がった滞納繰越額は、その後、徐々に圧縮をいたしまして、二十三年度には、ピーク時の七分の一以下となる三百二十六億円にまで減少いたしました。
 こうした実績を上げてきた理由といたしましては、第一に、納期内納税を推進するための環境整備、第二に、現年課税分への早期着手、第三に、翌年度以降へ繰り越しになった滞納事案への重点的な取り組みなどが考えられるところでございます。

○菅委員 この間の海外経済の減速等の影響もあって、極めて都税の徴税環境は厳しい状況が続いたのだろうと思います。
 そうした中で、滞納繰越額を過去最少とすることは大変であったと、こういうふうに推察いたしますが、実績を上げた理由として、納期内納税を促進するための環境整備というお話がありました。具体的にどのような取り組みがなされたのか、この点についても伺います。

○西海徴収部長 都はこれまでも、口座振替など、納税者が納期内に納付しやすい多様な方法を導入してきたところでございます。中でも、平成十六年度、東京都が全国に先駆けて導入いたしましたコンビニ収納につきましては、現在、四十七すべての都道府県と五百九十一の区市町村へと拡大しております。
 平成二十三年度は、自動車税を対象に、場所を問わず二十四時間納付可能なクレジットカード収納を開始いたしました。昨年度は、五月末までに納期限を迎える自動車税の調定額は約十六億円減少いたしましたけれども、逆に、納期内収入額は約十八億円増加いたしまして、納期内収入の割合も七七・七%と、前年度に比べて二・六ポイント上昇いたしました。

○菅委員 納税者の利便性向上に向けた取り組みについては理解をいたしました。
 それでも滞納ということは発生するわけでありますが、翌年度以降へ繰り越した滞納の圧縮には、平成二十三年度はどのように取り組んでこられたのか、この点についてもお尋ねさせていただきます。

○西海徴収部長 滞納繰越額につきましては、今申し上げましたように、バブル崩壊後の平成六年度と比較いたしまして七分の一以下に縮小いたしました。それに対しまして、滞納者数、内部的には純滞納繰越人員と称しておりますけれども、これは、一人当たりの滞納額が小口化したこともございまして、そこまでの減少には至っておりません。こうした状況の中で、納期内納税者との税負担の均衡を図るためには、一人でも多くの滞納者を減らしていくことが重要であるというふうに考えております。
 こうしたことから、平成二十三年度、主税局として初めて、滞納者数の圧縮を部門の最大の目標に掲げました。事案の進行管理を徹底するなど、組織一丸となった取り組みを積み重ねたこともございまして、昨年度末の滞納者数は初めて十万人を下回ったところでございます。

○菅委員 平成二十三年度の滞納整理を行うに当たっては、昨年三月に発生した東日本大震災の影響も多分大きかったと思うのでありますが、この点についてお尋ねをしたいと思います。

○西海徴収部長 ただいまご指摘いただいたように、平成二十三年度、東日本大震災の被災地へ、主税局といたしまして、一週間程度の短期派遣では延べ四百三十八人、三カ月または八カ月の長期派遣では十人の職員を派遣いたしました。このことによりまして、特に年度の前半では、滞納整理の行動に制約があったことも事実でございます。
 しかし、その後、進行管理を徹底いたしまして、最終的には、納付喚起のための滞納者宅訪問でいいますと、前年度より約四千件、それから、債権の差し押さえでいいますと、前年度よりおよそ千二百件余り、それぞれ増加いたしました。さらに、それでも滞納解消に至らない事案につきましては捜索を実行し、その回数は過去最高となる三百四十六回に達したところでございます。
 その一方で、震災後の経済環境の変化から、失業であるとか、あるいは企業経営の悪化、こういった理由によりまして、一度に全額を納付することが困難である方に対しましては、状況をよくお聞きした上で、徴収を一定期間猶予する制度を適用するなど、実情に応じたきめ細やかな対応に努めてまいりました。

○菅委員 今ご説明があったように、震災による影響が少なからずあった中で、きめ細やかな対応をした上で高い成果を上げたと、こういうことは十分に理解をいたしました。
 一方、それだけの力量を有しているのであれば、都の持つ力を都内区市町村に対してもぜひ注いでいただきたい、こう思うんですが、区市町村にはどのような方向で取り組んでいるのか、この点についてもお尋ねをいたします。

○藤井特別滞納整理担当部長 主税局は、これまでも、区市町村に対し多様な支援を行うとともに、連携に努めてまいりました。
 中でも個人都民税は、区市町村が個人区市町村民税とあわせて賦課徴収しているもので、全国的な傾向と同様、徴収率が低い状況になっております。また、平成十九年の所得税から住民税への税源移譲により、個人都民税のウエートは一層高まっており、基幹税目として、都、区市町村ともに重要な財源であると認識しております。
 都では、税源移譲を見据えて、平成十六年度に個人都民税対策室を設置し、区市町村からの困難事案の引き受けや実務研修生の受け入れ、都職員の派遣等、徴収率向上のため、さまざまな対策を開始いたしました。
 平成二十三年度には、区市町村から四百六十四件の困難な滞納事案の引き受けを行いました。また、一年間、実際に実務に当たっていただく研修生は、前年度の倍以上の九名を受け入れるなど、取り組みの充実強化を図ってまいりました。
 今年度は、区市町村との関係をさらにステップアップさせるため、五月に区市町村とともに個人住民税徴収対策会議を立ち上げ、課題の共有などを検討しております。今後、年内に広報活動などを含めた徴収対策を区市町村と共同で実施する予定であります。
 都では、今後も区市町村との連携を積極的に進め、各自治体の人材育成や、区市町村が組織的に滞納整理を推進していく力を高めてまいりたいと考えております。

○菅委員 都は、今の説明、ご答弁にありますように、区市町村との連携も含め、歳入確保のため今後どうしていくのか、最後に決意を伺って、質問を終わります。

○新田主税局長 主税局は、歳入所管局といたしまして、都の歳入の約七割を占めます都税収入を着実に確保し、都の財政基盤を支えていくことが最大の使命でございます。
 平成二十年のリーマンショック以降、世界的に景気が低迷していることに加えまして、お話にもございましたが、平成二十三年度は欧州債務危機による海外経済の減速や東日本大震災の影響などもありまして、都税収入が初めて四年連続の減となるなど、都税を取り巻く環境は極めて厳しい状況が続いております。
 しかし、こうした厳しいときだからこそ、歳入所管局としての主税局の真価が問われているものと認識しており、その使命の達成に向け、局職員一丸となって創意工夫を凝らし、日々、税収確保に邁進してきたところでございます。
 その結果、平成二十三年度におきましては、三年ぶりに徴収率を九七%台に回復することができましたが、とりわけ、都が直接徴収しております一般分につきましては、徴収率が九八・三%となり、過去最高を記録した平成十九年度の九八・四%に肉薄するまでになりました。
 今後、都税全体としての徴収率をさらに高めていくためには、区市町村に徴収をお願いしております個人都民税の徴収率を、現在の九一・八%と低迷している状態からいかに引き上げていくかが最重要の課題であると考えております。
 おかげさまで、平成十六年度から取り組んでまいりました区市町村との連携により、現在、大変緊密で良好な関係づくりが進んできていると思っておりますが、さらにこの関係を進化させ、区市町村の徴税力の向上、ひいては都と区市町村を通じた徴収率の向上に向けまして、都としてできる限りの支援を行い、一層の連携強化に努めてまいる所存でございます。

○吉田委員 私からは、アジアヘッドクオーター特区等の優遇税制及び滞納者に対する差し押さえの対応について、この機会にお伺いをいたします。
 昨年度、東京都は、アジアヘッドクオーター特区の指定と一体で、特定都市再生緊急整備地域の指定を受けました。これは、大企業や多国籍企業に対する優遇税制が盛り込まれており、税制のあり方や減税の影響など、主税局にとっても極めて無視できない重大問題だと私は思います。そこで、準備、検討されている優遇税制の実態について、この機会にお伺いをいたします。
 初めに、昨年度受けた二つの指定、アジアヘッドクオーター特区及び特定都市再生緊急整備地域において準備をされている都税の優遇策の概要、全体像について、ご説明をお願いいたします。

○宗田税制部長 まず、アジアヘッドクオーター特区でございますが、総合特別区域法における国際戦略総合特区として国の指定を受けた地域でございまして、成長分野を中心とした産業の国際競争力強化のため、規制の特例措置に加え、税制、金融上の支援措置を集中的に行うものでございます。
 税制につきましては、国の法人税の軽減に加え、統括拠点または研究開発拠点として多国籍企業が特区地域等に新たに設立した子法人に対し、都独自に法人事業税、不動産取得税、固定資産税等を最大五年間、全額減免するものでございます。
 また、特定都市再生緊急整備地域は、都市再生緊急整備地域のうち、国際競争力強化の観点から特に緊急かつ重点的に都市整備を進めるべき地域として指定を受けたものでございまして、地方税法の規定により、国の認定を受けた民間事業者に対し、不動産取得税に加え、公共交通機関との連絡通路など都市利便施設に係る固定資産税等を五年間、二分の一に軽減する措置が設けられているところでございます。

○吉田委員 私は、驚くべきほどの全面的な優遇措置だといわざるを得ません。しかも、進出をする多国籍企業のための優遇措置とあわせて、ビル建設等の大手ディベロッパーに対しても、従前は不動産取得税の軽減はたしか五分の一だったと思いますが、今度、特定ということで、これを二分の一にさらに引き上げると、二重に支援をするというもので、私は到底見過ごすことはできません。
 特定都市再生緊急整備地域における減税策についてですが、これは都制度ではなく、あくまでも国が決めた制度で、東京都がこの指定を受けたがゆえに、主税局としては減税措置をとらざるを得ないという関係ですから、皆さんに直接責任があるわけではないということは承知の上でお伺いするわけですが、まず、これまでの実績を確認したいと思います。
 特定という新たな地域指定の以前から都市再生緊急整備地域の指定があり、先ほどいいましたけれども、不動産取得税は五分の一、固定資産税は、すべてではありませんけれども、一定の要件に対しては二分の一という軽減が行われてきました。その結果、何棟でどれだけの減額が実施をされたのか、具体的にご答弁をお願いいたします。

○宗田税制部長 都市再生緊急整備地域での不動産取得税の特例の実績でございますが、過去五年間で十棟について適用があり、軽減税額の合計は約十二億八千万円でございます。また、固定資産税、都市計画税の軽減税額は、合計で約七億九千万円でございます。

○吉田委員 今の十棟についての過去の実績で割り返しますと、不動産取得税は一棟当たり一億二千八百万円軽減されたということになるかと--これは単純ですよね、十棟ですから--ということになりますし、十棟の不動産取得税と固定資産税を合わせると二十億七千万円、一棟当たりで単純に割り返すと約二億円余という軽減策が行われたと。
 ところが、これは従前の不動産取得税の軽減でいえば五分の一、二〇%の軽減ということですから、昨年指定を受けた特定都市再生緊急整備地域の場合には二分の一、五〇%、半分の軽減ということになりますと、例えば、これまでの実績で推計いたしますと一棟当たり三億二千万円と。これに固定資産税の軽減を合わせれば、あくまでも推計ですけれども、一棟当たり四億円近いということができるというふうに思います。実に大きな軽減策が、これまでだけではなく、今後さらに拡大されていくという問題は見ておく必要があると思います。
 そこで、新たな特定都市再生緊急整備地域によって、今後五年間でどの程度の減税総額になるかということは、どうしても関心が起きる点ですけれども、対象地域の面積及び、推定でも結構ですが、どの程度が見込まれるのか、もしわかるとしたらお答えをお願いいたします。

○宗田税制部長 都内における都市再生緊急整備地域の対象面積は二千七百六十ヘクタールであり、このうち、特定都市再生緊急整備地域として二千五百三十四ヘクタールが指定されております。
 なお、今後の減税件数及び減税額でございますが、特定都市再生緊急整備地域は、あくまでエリアの指定であり、今後どれだけの数、規模の事業認定が行われるか不明であること等から、減税額等については、現時点で見込むことは困難でございます。

○吉田委員 主税局として推考することはできないかもしれませんけれども、まず面積でいっても、今のご答弁だと二千五百三十四ヘクタールと。しかも、従前の都市再生緊急整備がほとんど、多くは特定都市再生緊急整備地域ということになりましたから、非常に幅広い地域の中で対象となる開発やビル建設を行えば、不動産取得税は二分の一になり、固定資産税は、ある要件は、対象を限定されますけれども、これも二分の一になるということです。
 ただ、もちろん推計は容易でないかもしれませんが、最近、これは知事本局の方から出ている資料ですけれども、アジアヘッドクオーター特区区域内ビジョンというものが出されて、そこでかなり、今後竣工する地域内のプロジェクトの竣工年月及び建物の高さ、延べ床面積等が示されています。
 相当数のものがありますが、その中で大きなものだけを一、二紹介しますと、例えば、二〇一四年九月竣工予定で、環状二号線新橋・虎ノ門地区再開発事業で、高さ二百四十七メートル、五十二階、延べ床面積二十四万四千平米だとか、同じく二〇一四年四月竣工予定で、大手町1-6計画、二百メートル、三十八階、延べ床面積が十九万八千平米等々のプログラムが既に示されています。
 当然、これがもう既に実施に入っているのかもしれませんが、そういうものを全部推計いたしますと、従前を超える巨額な優遇策が大手ディベロッパーに行われると。一体何のために特定地域の大規模ビル開発に対して不動産取得税を半分にまで軽減するのかということは、極めて疑問です。
 例えば、大手ディベロッパーは、そういうビルを建てて一定の財政投入をしたとしても、それはテナント収入や売却によって回収することができるわけです。にもかかわらず、あえてこうした優遇策をとるのか。優遇するとなれば、その必要性や公共的な意味合いがあるかどうかということが当然問われると思いますけれども、私の認識では、あくまでも大手開発者優遇にすぎないというふうに指摘せざるを得ません。
 次に、アジアヘッドクオーター特区の優遇税制について、これは準備中でありますけれども、お伺いをしたいと思います。
 知事本局が国、内閣府に申請をし、指定を受ける過程で、当然、優遇税制について、主税局に対して協議なり相談があったと思うんですが、どうであったのか。また、主税局としてどのように対応してきたのか、ご答弁をお願いいたします。

○宗田税制部長 政策税制は、都の重要な施策を推進するため、主たる施策に加え、税制面からも支援するものでございまして、事業所管局と十分に連携した上で、その活用を図っていくものでございます。
 アジアヘッドクオーター特区は、多国籍企業の統括拠点や研究開発拠点を東京に誘致するプロジェクトとして、「二〇二〇年の東京」計画にも掲げられている都の重点施策の一つでございます。
 この間、プロジェクト所管局である知事本局から適宜相談を受け、主税局としても検討を行ってきたところでございます。今後も、引き続き連携してまいりたいと考えております。

○吉田委員 仕組み上、連携せざるを得ないと思うんですけれども、しかし、やはり税制にかかわる独自の判断というのは、主税局としてきちんと行って対応していくことが必要だと思うんですけれども、そういう点で、優遇税制について、主税局としてどういうスタンスで臨んできたのか、臨むのかということをお伺いいたします。

○宗田税制部長 政策税制は、都の重要な施策を推進するため、主たる施策に加え、税制面からも支援するものでございます。公平、中立、簡素という租税原則の例外であることから、その効果や税負担の公平性、政策手段としてふさわしいかなどを十分に検討し、実施しているものでございます。

○吉田委員 ちなみに、特定の企業に対して五年間、法人事業税を全額免除するということは、東京都としてこれまで行ったことは、そういう事例はあるんでしょうか。

○宗田税制部長 都においては、そういう実績はございません。
 なお、他の地方団体でございますが、地域における企業立地を促進する観点等から、青森県や佐賀県などにおいて、五年間の法人事業税の全額免除等を実施しているところでございます。また、大阪府においては、国際戦略総合特区における産業集積の促進及び産業の国際競争力の強化を図るため、法人事業税を当初五年間は全額免除し、その後の五年間は二分の一軽減する等の特例を実施するとしております。

○吉田委員 東京都としては、五年間、法人事業税を全額免除するというのは全く初めての、異例ともいえる対応だと思うんです。
 今、東京だけでないよと、青森もありますよ、大阪もありますよという旨のご答弁がありました。しかし、こういう形で企業誘致のために優遇税制、しかも全額免除、無料にするということを競い出したら、税の公平性、経済活動における中立性が阻害されるということで、ご承知のとおり、OECDでは国際的な問題として正していくという事態が起きているわけです。私は、これは、ほかでもやっているということをもってこれを是とするということも、改めて検討されるべきではないかなと。
 しかも、政策税制だというお話がありましたけれども、これは、例えば災害時だとか、特別に政策的に減税するということは大いにあり得ることだと思うんです。そういう場合であっても、都民や他の事業者が納得し得る公共性があるということが前提ではないのかなと。そういう立場に立って、私はやっぱり、こうした優遇税制についてもきちんと、税の公平性、中立性をつかさどる局として対応していくべきではないのかということを改めて述べさせていただきたいと思います。
 次に、都は、多国籍企業が誘致されれば、東京の雇用や経済が改善されるというような旨を強調されていますが、私は率直にいって、これは幻想になりかねないというふうに思います。特に、自社の利益優先で常に行動する多国籍企業は、状況によっては素早く撤退するということもあり得るわけで、優遇税制をとったけれども、五年を待たずに撤退するということはあり得ないことではないと思います。あるいは、五年たったら直ちに撤退するということだって、状況次第によってはあり得ることだと思うんですが、例えば、こういう途中撤退であったとしても、その間の優遇税策というのは、措置というのは、回収されるということはしないんでしょうか。

○宗田税制部長 現在、税制面での詳細な制度設計は検討中でございまして、具体的な内容についてお答えできる段階にはございませんが、本事業を所管する知事本局による対象法人の認定においては事業計画等を精査することとしており、基本的には五年以内に撤退するということは想定してございません。

○吉田委員 もちろん、それは想定のときに、初めから五年以内で撤退するということはしないでしょうけれども、そういう事態というのは、私は否定することはできないと思うんです。そういう場合であったとしても、実質的には、その期間については支援が行われて、かつそれを回収することはできないということになれば、改めてこの問題というのは問われるし、もちろん、五年か否かという問題はありますけれども、そういう事例が国内では生まれているということはご承知のとおりだと思います。
 この問題の最後に、今後、これがどの程度の減税額になるのかということについてお伺いをしておきたいというふうに思います。
 ご承知のとおり、都は、五十社のアジア統括本社及び研究所を想定しています。これを前提とした場合に、法人事業税の全面減額の見込み額はどの程度と推考されているのか。少なくとも知事本局では推計していると思うんですが、主税局としてはどう認識しているか、ご答弁をお願いいたします。

○宗田税制部長 知事本局の試算によれば、五十社を誘致した場合の法人事業税の減収額は、最大で年間約八十億円としております。

○吉田委員 これは、法人事業税の全額免除だけで年間八十億円ですから、その他、不動産取得税、固定資産税等々を合わせれば、最大、マックスではもっと膨らむという推計になると思います。八十億で計算しても、五年間で見れば四百億ということになります。
 先ほどから、いかに税収を確保するのかということの議論がありましたけれども、そういう中で、極めて巨額な税収減ということになると思います。先ほどの都市再生のディベロッパーに対する一棟当たりの優遇税策だって四億円余にもなりかねないということとあわせれば、こうした多国籍企業あるいはディベロッパーに対する優遇税制は行うべきではないということを、意見として強く申し述べておきます。
 次に、差し押さえへの対応についてお伺いいたします。
 都税滞納者に対する差し押さえに関してですけれども、悪質な滞納者への対応と、経済環境によって、努力しているにもかかわらず滞納せざるを得ないという事態への対応というのは、おのずと区別が求められるものだと思います。また、差し押さえを実施するに当たっても、生活が成り立たないと、日々の生活費まで差し押さえを行うということは、あってはならないことだと思います。そういう思いから若干の質問をさせていただきます。
 初めに、差し押さえの件数と差し押さえ額のこの五年間の推移について、ご答弁をお願いいたします。

○西海徴収部長 都税の滞納整理における直近五年間の差し押さえ件数、これは一年間に差し押さえを行った件数で、個人都民税を除いたものでございますが、平成十九年度には二万一千九百二十六件、二十年度、二万三千六十二件、二十一年度、二万三千二百十九件、二十二年度、二万五千百五十四件、二十三年度、二万六千百四十五件となっております。
 また、差し押さえ額、これは差し押さえた財産を、取り立てたり、あるいは公売したことによって滞納税に充当した本税ベースの金額で申し上げますと、十九年度が約二十二億九千五百万円、二十年度が二十一億五千七百万円、二十一年度が三十三億五千七百万円、二十二年度が四十億六千八百万円、二十三年度は二十一億六百万円となっております。

○吉田委員 五年間の推移を示していただきました。件数は、今のご答弁のとおり、年々増加をしております。差し押さえ額で充当した金額は、昨年を除けば二倍近く増加をしているという経過が、状況として明らかになりました。
 差し押さえに当たって、当然、慎重な対応をされているとは思うんですけれども、どのように留意し、配慮して対応しているのか。また、そうした内容をまとめた教材的な文書としてはどのようなものがあるのか、ご答弁をお願いいたします。

○西海徴収部長 都税事務所における一般的な滞納で申し上げますと、まず、滞納発生から二カ月間は、徴収部納税推進課におきまして、集中的に電話催告や文書によって催告を行って、その後、都税事務所へ行くわけなんですけれども、結果として、ここで約七割の方にご納税いただいております。
 納税に至らなかったものは、都税事務所に引き継がれまして、再度、文書による催告を複数回行い、場合によっては電話や自宅訪問も行っております。その上で納税していただけない場合は、給与、賃料、売掛金などの収入や、預貯金、不動産、自動車などの財産を調査し、納税資力を把握した上で差し押さえを行っております。
 もう一点、職員が日々仕事を行う上で参考としている図書というお尋ねでございますが、地方税法総則逐条解説、国税徴収法精解、国税徴収関係基本通達集、国税徴収法基本通達逐条解説などがございます。
 なお、比較的経験の浅い職員向けの滞納整理全般の基本書といたしまして、公益財団法人東京税務協会が発行しております、滞納整理事務の手引を活用しているところでございます。

○吉田委員 次に、差し押さえに当たって、地方税法及び国税徴収法等では、生計費についてどのように扱うことになっているのか、ご答弁をお願いいたします。

○西海徴収部長 国税徴収法第七十六条では、給料等の差し押さえ禁止の範囲を定めております。ここでは、給与等による収入は、一般の給与生活者の生計に占める重要性にかんがみまして、最低生活の維持などに充てられるべき金額に相当する部分を差し押さえ禁止としております。
 具体的に申し上げますと、給与支給額のうち、まず第一に、所得税、住民税に相当する金額、第二に、社会保険料に相当する金額、第三に、国税徴収法施行令第三十四条で定めておりますが、生活の維持などに充てられるべき金額として、ご本人十万円、ほかにご家族がいらっしゃれば、ご家族一人当たり四万五千円、この金額が差し押さえ禁止となります。さらに、給与支給金額から、今申し上げた三つの金額を差し引いた残りのうちの二割につきましても、差し押さえが禁止となっております。

○吉田委員 生活を維持する上で最小限のものについては、差し押さえはしないということだと思いますが、これは、今述べられた国税徴収法とあわせて、地方税法の第十五条の七の中で、こうした生活を著しく窮迫させるおそれがあるものは執行停止することができる等々の規定があると思うんですが、これについてもご説明をお願いいたします。

○西海徴収部長 滞納処分の執行停止についてのお尋ねでございますけれども、滞納処分の執行停止とは、滞納者に一定の事由がある場合に、差し押さえなどの強制徴収の手続を停止するものでございます。
 今、副委員長おっしゃいました地方税法第十五条の七に、停止に関する規定がございまして、この趣旨でございますが、まず一つは、滞納処分することができる財産がないときでございまして、差し押さえ可能な預貯金、不動産、自動車などの財産や、給与、賃料、売掛金などの収入がない場合でございます。
 二つ目が、滞納処分をすることによって、その生活を著しく窮迫させるおそれがあるときでございまして、滞納処分を執行することによりまして、おおむね生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できなくなる程度の状態になると、こういうおそれがある場合をいいます。
 第三に、滞納者の所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるときということでございまして、滞納者の居どころが不明で、かつ滞納者の財産を発見できない場合をいいます。

○吉田委員 そこで、私が相談を受けた事例についてちょっと紹介して、見解をご答弁願いたいんですけれども、先ほどの国税徴収法第七十六条では、賃金、給与等については、明確に、差し押さえてはならないという規定があります。ところが、私が相談を受けた方は個人事業者でした。一人で仕事をしている方ですが、残念ながら滞納ということになって、本人としては支払う意思はあったというふうに述べているんですけれども、結果的に支払い先からの振り込みが差し押さえられると。
 しかし、その本人にとってみれば、支払い先からの、仕事先からの振り込みが事実上の賃金、給与に当たるわけです。一般のサラリーマンの方は、給与は差し押さえできないという規定がありながら、個人事業者で、事実上の自分の賃金に相当するものについては差し押さえられてしまったと。
 しかも、今の地方税法のお話で見れば、第十五条の七は、別に給与等の限定はないわけです。あくまでも一般的に、生活が著しく窮迫することがあってはならないと、その場合にはとめることができるということになっているんですけれども、こういう個人事業者の場合の基本的対応というのは、どのようになっているんでしょうか。

○西海徴収部長 先ほど申し上げました差し押さえ禁止の規定は、これはあくまでも給与に係る債権についてのものでございます。
 お尋ねの個人事業主の方の売上金には、この条項は適用にはなりませんが、一般の差し押さえ禁止財産として、例えば生活必需品であるとか、事業に欠くことができない器具などについての差し押さえ禁止規定がございます。
 それで、もう一つ、地方税法第十五条の五には、財産を換価することにより生活の維持が困難になるおそれがある場合で、納税について誠実な意思が認められるときは、財産の換価を猶予する旨の規定があります。もっと簡単にいいますと、差し押さえをしても、それを取り立てないということができる規定がございます。
 東京都では、この規定に基づきまして、差し押さえた財産のほかに財産や収入が全くなく、その財産を換価することによりまして生活の維持が困難になるという判断をした上で、なおかつ、その滞納者の方に納税について誠実な意思が認められる場合には、換価の猶予や差し押さえ解除などの対応を行うことがございます。
 今後とも、私どもは、納税者の資産や生活状況などを十分調査するとともに、他の納税者との均衡にも配慮いたしまして、適切な滞納整理を進めてまいりたいと存じます。

○吉田委員 状況を見ながら、生活が本当に行き詰まるようなことはしないということかと思いますけれども、給与等については無条件で差し押さえてはならないということになっているわけです。しかし、個人事業主の場合には、その人の納税に対する意思とか対応とか、そういう状況を見ながらというふうな印象を持つわけですけれども、私は、そういう点で見れば、税制における公平性が欠けるんではないのかなと。もし、給与等は無条件で差し押さえしない、もちろん最低限度の生活費に係るところですけれども、それだったら個人事業者に対しても、あれこれの条件をつけるのではなくて、明確な対応をするというのが筋ではないかなということを思います。
 これは私自身も不勉強な点もありますけれども、私は、その点は極めて疑問であると。そしてやはり、もちろん納税義務を果たすよう努力を、皆さん方、されているんでしょうけれども、先ほども議論がありましたけれども、さまざまな経済状況の中で、なかなかそれ自身も困難に追い込まれているのも現実の状況だと思います。そういう中で、生活費等まで差し押さえが行われるということについては、やはり十分注意を払っていただきたいということを述べて、私の質問を終わります。

○泉谷委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○泉谷委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後二時一分散会

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