平成二十二年度各会計決算特別委員会第三分科会速記録第四号

平成二十三年十月二十一日(金曜日)
第九委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十名
委員長長橋 桂一君
副委員長三宅 正彦君
副委員長いのつめまさみ君
加藤 雅之君
桜井 浩之君
畔上三和子君
高木 けい君
田の上いくこ君
松下 玲子君
今村 るか君

 欠席委員 なし

 出席説明員
港湾局局長中井 敬三君
技監前田  宏君
総務部長黒田 祥之君
監理団体改革担当部長大朏 秀次君
港湾経営部長小宮 三夫君
港湾経営改革担当部長笹川 文夫君
臨海開発部長石原 清志君
開発調整担当部長大和田 元君
営業担当部長延與  桂君
港湾整備部長石山 明久君
計画調整担当部長大釜 達夫君
離島港湾部長平田 耕二君
島しょ・小笠原空港整備担当部長小幡 和輝君
都市整備局局長技監兼務飯尾  豊君
次長長谷川 明君
技監安井 順一君
理事松井多美雄君
理事藤井 寛行君
総務部長田崎 輝夫君
都市づくり政策部長町田 修二君
住宅政策推進部長鈴木 尚志君
都市基盤部長石川  進君
市街地整備部長遠藤 正宏君
市街地建築部長砂川 俊雄君
都営住宅経営部長瀧本 裕之君
企画担当部長邊見 隆士君
連絡調整担当部長細渕 順一君
景観・プロジェクト担当部長永島 恵子君
住宅政策担当部長香山  幹君
民間住宅施策推進担当部長高田  茂君
航空政策担当部長外かく環状道路担当部長兼務山下 幸俊君
民間開発担当部長藤塚  仁君
多摩ニュータウン事業担当部長五十嵐 誠君
耐震化推進担当部長小野 幹雄君
経営改革担当部長笹沼 正一君
再編利活用推進担当部長上野 雄一君
建設推進担当部長荒川 達夫君
営繕担当部長妹尾 高行君

本日の会議に付した事件
平成二十二年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
港湾局関係
・平成二十二年度東京都一般会計決算(質疑)
都市整備局関係
・平成二十二年度東京都一般会計決算(質疑)
・平成二十二年度東京都都営住宅等事業会計決算(質疑)
・平成二十二年度東京都都営住宅等保証金会計決算(質疑)
・平成二十二年度東京都都市開発資金会計決算(質疑)
・平成二十二年度東京都多摩ニュータウン事業会計決算(質疑)
・平成二十二年度東京都臨海都市基盤整備事業会計決算(質疑)

○長橋委員長 ただいまから平成二十二年度各会計決算特別委員会第三分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、港湾局及び都市整備局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより港湾局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十二年度東京都一般会計決算中、港湾局所管分を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○黒田総務部長 十月十四日開催の当分科会でご要求のございました資料をご説明申し上げます。
 お手元の平成二十二年度各会計決算特別委員会第三分科会要求資料をごらん願います。
 ご要求のございました資料は、表紙をおめくりいただきまして、目次に記載しておりますとおり三項目でございます。
 それでは、一ページをお開き願います。1、東京港における耐震強化岸壁の整備状況でございます。
 首都直下地震等の大規模地震発生時における緊急救援物資等の輸送を行うための岸壁と、首都圏の経済活動を停滞させないよう国際海上コンテナ物流機能を維持するための岸壁とを区分し、おのおのの整備状況を示してございます。詳細はごらんいただければと思います。
 続きまして、二ページをお開き願います。2、港湾局部所別・職種別職員定数の推移でございます。
 平成十四年度から二十三年度までの十年間におけます港湾局の職員定数の推移を部所別にお示ししてございます。また、部所ごとの職種別の内訳といたしまして、事務、技術系、技能系の定数を記載させていただいております。
 続きまして、三ページをお開き願います。3、平成二十二年度海岸保全施設管理事業の委託料でございます。
 水門の遠隔制御機器や排水機場等の海岸保全施設管理事業の委託料につきまして、保守点検等を行う施設管理委託、警備や清掃等を行う建物維持管理委託及びその他委託に区分いたしまして、平成二十二年度の予算現額と支出済額を示してございます。詳細はごらんいただければと存じます。
 以上をもちまして、簡単ではございますが、ご要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○長橋委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田の上委員 「十年後の東京」の改定方針では、都市の活力を取り戻し、アジアのヘッドクオーターとしての地位を確立することが掲げられ、京浜港はその大きな戦略の一つでもあります。停滞している日本経済の安定のために、陸海空の運輸交通ハブ基地になれるかという質問もこれまで議論でされてきたところです。
 今後も継続し展開していくことと認識してはおりますが、二十二年度決算におきましても、関連する項目として、三港連携事業の実施、中央防波堤外側コンテナふ頭整備などが計上されていますので、二十二年度の動きについて、課題を焦点化し、今後につなげるべく何点か質問をしてまいります。
 東京港としてのさらなる発展はもちろんですが、アジア諸国の著しい成長の中、日本の港湾そのものの貨物が減少傾向である中、京浜港としての広域連携事業を推進することが求められます。
 まずは、平成二十二年八月に京浜港が国際コンテナ戦略港湾に選定され、どのような取り組みを行ってきたのか伺います。

○笹川港湾経営改革担当部長 国際コンテナ戦略港湾の計画書では、釜山港等に対抗するため、港湾コストの低減、国内集荷力の強化、サービスの向上などを進めていくこととしており、京浜三港はこれらの取り組みに着手しております。
 具体的には、国内集荷力の強化に向けたポートセールスの実施、地方港との連携協定の締結などを三港共同で行っております。

○田の上委員 これからのこととは思いますが、いろいろ取り組みが始まっているということでございます。
 京浜港としては、国際競争力の強化、特に釜山港との競争が掲げられて取り組まれてきたことと思います。十年ほど前には、釜山港とのコンテナ貨物取扱量の差は、釜山が四割程度多いとされてきました。また、近年の釜山の取扱量もふえていると聞くところでございますが、現状はどのようになっているのか聞かせください。

○笹川港湾経営改革担当部長 平成二十二年におけるコンテナ貨物取扱量は、京浜港の約七百五十万TEUに対して、釜山港が約一千四百万TEUと二倍近くになっております。

○田の上委員 釜山を初めアジアの港の躍進は著しく、依然、釜山港を経由していく貨物量は看過できません。危機感を持って対応していかなければいけないと思っております。
 京浜港連携協議会において策定した京浜港の総合的な計画も先月ちょうだいしましたが、日本が国際競争からおくれることのないよう、三港の強化に向けた取り組みを行っていただきたいと思います。
 平成二十年三月の基本合意を経て、東京、川崎、横浜の三港の連携が強化されました。これまでも三港の連携は多々行われてきましたが、首都圏のみならず、東日本あるいは日本海側をも視野に入れて、国内集荷を強化するべきと考えます。
 貨物集荷力の強化において、事業者に対する働きかけはどのように行ってきたのでしょうか。

○笹川港湾経営改革担当部長 貨物集荷力の強化に当たりましては、船会社や港湾運送事業者との連携を行い、荷主のニーズにこたえていくことが必要と考え、荷主へのマーケティングに力を注いでおります。
 具体的には、京浜三港共同で荷主向け説明会などを実施するとともに、東京港埠頭株式会社におきましては、京浜港の利用を促進するため、荷主への営業体制の強化を図っております。

○田の上委員 地方港から釜山へと流れていた貨物を集約するためにも、工夫を凝らしていただきたいと思います。荷主へのマーケティングにもご努力されているとの答弁がございましたが、ぜひ現実的なニーズを把握し、営業成果を上げていただきたいと期待しております。
 先ほども釜山港との比較を挙げましたが、国際トランシップ貨物など、貨物集荷力を強化するためにもコスト差を小さくすることが必要であり、荷役料、ターミナル費用、船舶関連費用等の港湾コストの縮減が大きな課題でございました。
 そこで、東京港埠頭株式会社では、取扱貨物量に応じてリース料を割り引くインセンティブ制度を導入するなどの取り組みがございましたが、東京港埠頭株式会社の経営努力に関して港湾局はどのように評価をされているのでしょうかお伺いいたします。

○笹川港湾経営改革担当部長 東京港埠頭株式会社は、インセンティブ制度の実施に加え、隣接するバースの岸壁やガントリークレーンの相互融通により荷役効率の向上を図るなど、ターミナルコストの縮減を実現しております。
 都といたしましては、こうした東京港埠頭株式会社の経営努力及びコスト縮減の取り組みについて、順調に成果を上げていると評価しております。

○田の上委員 港湾局が東京港埠頭株式会社の経営努力に対して評価をしているということがわかりましたが、国の強力なバックアップのもとで大胆にターミナルリース料を低減している釜山港など、アジア主要港と対抗していくためには、これだけでは限界があり、利用者に選んでもらうための料金設定というものを目指していかなければなりません。
 さらにコスト削減のために、東京都ではどのような取り組みを行っていくのでしょうかお考えをお伺いいたします。

○笹川港湾経営改革担当部長 都といたしましては、施設整備に係る無利子貸付などの経営支援を引き続き行ってまいりますが、さらなるコスト縮減を実現するためには、国際戦略港湾として、国の集中的かつ重点的な施策展開も得ながら取り組みを推進していく必要がございます。
 具体的には、ターミナル貸付料原価の大幅な圧縮を図るため、ガントリークレーンへの補助制度の創設などを国に対して要望しております。

○田の上委員 日本の輸出入貨物の九九・七%は海上輸送であり、輸出入の玄関口は港湾であります。中でも京浜港は日本で最大のシェアを有するのですから、ぜひ国としても国際戦略の重要な位置づけをしていただき、政策展開をしていっていただきたいというふうに考えております。
 国際戦略として取り組みを強化するためには、ソフト面のみならず、ハードの側面が整っていなければなりません。震災時においても東京港の港湾機能に支障が生じることなく、都民生活や産業に大きな影響を与えないようにしていくことが肝要と考えます。
 ことし三月十一日の東日本大震災では、災害対策の強化の必要性が高まりました。東京港の防災力の強化について何点かお伺いいたします。
 東京港においては、耐震強化岸壁を有する中央防波堤外側コンテナターミナルの整備が進められていると聞いておりますが、国の基準に合わせた耐震強化岸壁として整備をしているのでしょうか。また、東京港での耐震岸壁の整備進捗状況はどうなっているのか伺います。

○石山港湾整備部長 都では、災害時における緊急救援物資などの輸送を確保するため、国の基準に基づき耐震強化岸壁の整備に取り組んできておりまして、既に十三バースの整備が完了しております。
 現在、中央防波堤外側コンテナターミナルや品川ふ頭など、六バースの整備に取り組んでいるところでございます。

○田の上委員 直下型地震も懸念されるところでございますが、物流機能を維持するためにも、引き続きの強化をお願いいたします。
 震災後、原発事故による放射能の影響により、海外から日本への寄港、あるいは日本の船の入港が拒否されるような事例はあったのでしょうかお伺いいたします。

○小宮港湾経営部長 東京港におきましては、震災直後に、一部の外国の船会社や乗組員が放射能汚染を恐れまして寄港を拒否する動きがございました。また、海外の港湾におきまして、日本に寄港した船舶について入港時の検査が強化されるケース、入港そのものが拒否されるケースがございました。
 こうした動向は、都による放射線測定数値の周知や、国を通じた国際海事機関への働きかけなどによりまして、比較的早い段階で鎮静化しております。

○田の上委員 今は鎮静化しているということで、安心はいたしました。ご答弁にもございましたが、コンテナの放射線測定も行っていたかと思います。風評被害を払拭するような継続的な取り組みをお願いしたいと思います。また、情報公開の方もお願いいたします。
 平成二十三年一月から六月の東京港の取扱量は、外貿コンテナで三・四%増とのことでしたが、前述の原発事故もしくは震災による直接的な影響はなかったのでしょうか。

○小宮港湾経営部長 平成二十三年上半期の外貿コンテナ貨物のうち、輸出につきましては、震災で東北地方などの工場が被災したため、自動車部品などの輸出量が減少いたしまして、前年同期比七・四%減少しております。
 一方、輸入につきましては、プレハブ建材などの復興、復旧のための貨物に加えまして、電気、機械、製造、食品などさまざまな品目で増加いたしまして、前年同期比で八・三%増加しております。
 このように、東京港においても、貨物取り扱いの動向に震災などの影響が少なからずあったものと考えております。

○田の上委員 ただいまのご答弁で、震災の影響が多少あるものの、輸入において東京港の取扱量の増加が見られるということでございました。
 震災により、既に外国から到着しているコンテナ貨物の引き取りが滞ったとも聞いておりますが、震災後であっても、効率的な運営のために、今後どのような取り組みが必要とお考えなのか伺います。

○小宮港湾経営部長 東京港におきましては、コンテナ貨物取扱量が右肩上がりに増加する中で、コンテナターミナルの処理能力が限界に近づいておりまして、こうした問題が震災に伴う貨物滞留により顕在化したものと考えております。
 都では、現在、中央防波堤外側埋立地に新たなコンテナターミナルを整備するとともに、大井ふ頭や青海ふ頭など既存のコンテナターミナルを再編、機能強化することを計画しております。こうした東京港の機能強化に向けた取り組みを着実に実施することで、震災時における貨物滞留の問題についても対応可能と考えております。

○田の上委員 震災対応としての取り組みということで、理解をいたしました。
 京浜港として貨物取扱量増加を目指す一方で、東京港でコンテナターミナル処理能力の限界が見えているというのは、今後の課題の一つでもございます。今後、海外からの大型船に対応するためにも、ターミナル整備が必要であります。
 また、搬出入車両の渋滞緩和のための交通対策も貨物滞留の課題の一つだと思いますので、ぜひ今後、道路整備も含めてご対応していただきたく要望とさせていただきます。
 一通り質問をしてまいりましたが、これから東京港を初めとする京浜港が、日本の港湾機能を初め国際物流の重大な役割を担うものと考えております。東京都が先導し、国がさらにバックアップをするような取り組みを期待いたしまして、私からの質問を終わらせていただきます。

○三宅委員 私からは、東京港における津波、高潮対策について伺いたいと思います。
 きのう、私も東北地方に行きましたが、まだまだ大災害のつめ跡が残っておりました。東日本大震災で受けたはかり知れないダメージを見るにつけ、日本の頭脳、心臓である東京の防災力をさらに向上させること、とりわけ首都東京の住民の生命と財産を守るために、津波、高潮対策については一層の強化を図ることが最重要課題であると感じています。
 我が党は、先般、東日本大震災復旧・復興対策推進本部のもとに二つのワーキングチームを設置し、ハード、ソフトの両面から多角的に議論を積み重ねているところであります。今後、高度防災都市づくりに向けて積極的な提言を行うことを予定しております。
 一方、都では、これまでも防潮堤や水門などの海岸保全施設について、整備を計画的に進めていると考えますが、これに関連して幾つか質問したいと思います。
 まず、改めて、東京港における海岸保全施設の整備の意義と、防潮堤及び水門の整備の平成二十二年度の取り組み状況についてお聞きしたいと思います。

○石山港湾整備部長 東京には、首都としての中枢機能や業務・商業等の都市機能が極めて高度に集積しております。一方で、区部東部には満潮面以下のゼロメートル地帯が広がるなど、一たび浸水すれば甚大な被害を及ぼす浸水危険度の高い地域が存在しております。このため、高潮や津波から都民の生命、財産を守り、都民が安全で安心して暮らせるよう、海岸保全施設の整備に取り組んでおります。
 平成二十二年度の取り組み状況でございますが、防潮堤につきましては、豊洲や有明北地区の整備を実施いたしました。水門につきましては、新たに四カ所の耐震対策に着手し、鋭意整備に取り組んでいるところでございます。

○三宅委員 水門等の海岸保全施設の整備は着実に進められているとのことでしたが、これらの施設は、当然のことながら、地震や津波が発生した際の非常時にその機能が十分発揮されなくてはならないものです。また、防潮堤と同様の働きをする陸閘についても、非常時に適切な操作をされることが重要です。この点につきましては、さきの第三回定例会の代表質問におきましても、東京港の防潮堤の役割が重要であるということを指摘させていただきました。
 そこで、三月十一日の震災当日の対応はどうだったのか、また改善すべき点はあったのかお聞きいたしたいと思います。

○石山港湾整備部長 港湾局では、水門につきましては、高潮対策センターからの遠隔操作などにより、震災当日も支障なく全十九水門の閉鎖を完了いたしました。
 陸閘につきましては、地盤高が三メートルから四メートル程度あることや、これまでの想定の津波高が最大で一・二メートルであったこと、さらには当日の潮位の状況などから、水門と同時には閉鎖いたしませんでした。しかしながら、当日は、想定津波高を超える二メートルの津波警報が出されたため、非常事態に備え、十七時十分ごろまでに六カ所の陸閘を閉鎖いたしました。
 東北地方の被災状況や想定を超える一・五メートルの津波が観測されたこと等を踏まえ、陸閘につきましては、十月から即時閉鎖を可能とする人員体制の強化を図るとともに、停電時でも迅速に閉鎖可能な機器を導入するなど、必要な改善策を講じております。
 また、震災当日、電話がつながりにくかった状況を改善するため、通信手段の不通時にも対応できる衛星携帯電話の配備などの対策も講じたところでございます。
 今後も、今月末に実施される総合防災訓練などを通じて、これらの取り組みにさらに磨きをかけ、災害から都民の生命と財産を守るという使命をしっかりと果たしてまいります。

○三宅委員 今回の震災を踏まえ、都が施設操作や通信手段の改善等の対策を強化していることはわかりました。
 一方で、防災対策を強化していくためには、通信の確保などのソフト面での対策改善に加え、ハード面の対策の改善も重要と考えます。
 都は、先般、東日本大震災における東京都の対応と教訓を取りまとめ、取り組むべき課題を整理し、今後取りまとめる東京都防災対応指針でその取り組みの方向性を明らかにするとしていますが、まずインフラ整備など都がやるべきものはしっかりと盛り込み、できるものから精力的に進めていく必要があると思います。
 そこで、東京港の津波、高潮対策としてのハード面の取り組みについてお伺いします。

○石山港湾整備部長 都はこれまでも、国内最大級の伊勢湾台風や想定の大津波高が最も大きい関東地震を対象として、高潮や地震、津波に対する対策を実施してまいりました。
 今回の地震では、津波による被害はございませんでしたが、この震災を教訓として取り組みの強化が必要と考えております。このため、都では、関係局が連携して、地震や津波の専門家等から成る技術検証委員会を設置し、緊急にとるべきハード対策や防災のあり方について検討を行っているところでございます。
 また、国の中央防災会議や関東地方整備局の検討結果などを踏まえ、必要な見直しを行い、防災機能の一層の強化に取り組んでまいります。

○三宅委員 今回の震災当日の都の対応には特段問題はなく、震災後も改善に向けていろいろな取り組みを既に実施してきたことはよくわかりました。
 しかし一方で、東日本大震災では、水門などの閉鎖に携わって犠牲者となったケースもあるので、こうした事態を招かないよう、水門、陸閘の縮減や、陸閘についても遠隔操作できるシステムを導入するなどの対応をとることも肝要であると思います。
 都においては、陸閘や水門のあり方も含め、首都東京の防災対策を最重要課題として取り組んでいくことを要望して、私からの質問を終わります。

○加藤委員 若干ダブるところもあるかもしれませんが、質問をさせていただきたいと思います。
 海外からの輸入物資のほとんどを港湾に依存している我が国にとって、港は物流の生命線であり、重要なインフラ施設です。
 東京港は、首都圏四千万人の生活と産業を支える物流拠点としての役割を果たしています。
 東京港の整備については、平成十七年に策定された東京港第七次改訂港湾計画に基づき、国際競争力の強化に向けて、ふ頭の拡充強化や再編など着実に機能強化を図ってきたところです。平成二十二年の外貿コンテナ貨物の取扱量が過去最高の三百八十二万TEUを記録したことも、その取り組みの成果の一つと考えます。
 そこで、まず確認のために、第七次改訂港湾計画にかかわる港湾施設の整備や道路ネットワークについて、進捗状況を伺います。

○石山港湾整備部長 まず、外貿コンテナふ頭の整備でございますが、コンテナ船の大型化やアジア貨物の急増に対応するため、中央防波堤外側地区においてコンテナターミナルの整備を進めております。
 また、第一航路につきましては、東京国際空港の新滑走路建設に伴い、船舶及び航空機の双方の安全性が確保できるよう移設するとともに、コンテナ船の大型化や対面交通に対応するため、航路の掘り下げや幅員拡幅を完了いたしました。
 さらに、内貿ふ頭では、内貿貨物のユニット化の進展やモーダルシフトの促進に対応するため、品川ふ頭の再編、改良に取り組んでいるところでございます。
 一方、臨海部の物流の円滑化や湾岸道路等の混雑緩和を図るため、東京港臨海道路Ⅱ期事業や新木場若洲線の整備に取り組み、道路ネットワークの強化を推進しているところでございます。

○加藤委員 ハード面の整備につきましては、第七次改訂港湾計画に基づき順調に進んでいることがわかりました。
 しかし、国際競争力の強化に当たっては、施設を整備するだけでなく、それらを有効に活用した上で、さまざまな施策展開を図っていかなければならないと考えます。ソフト面という部分ですけれども、東京港、川崎港、横浜港の京浜三港では、平成二十年の基本合意以降、コンテナ船の入港料一元化や共同ポートセールス実施など、国際競争力の強化に向けた取り組みを実施してきたところですけれども、昨年八月には国が公募した国際コンテナ戦略港湾に選定されて、新たなステージに入ってまいりました。
 国際コンテナ戦略港湾として国際競争力を強化していくに当たり、東京港の果たす役割と、これまでにどのような取り組みを実施してきたのか伺います。

○笹川港湾経営改革担当部長 国際コンテナ戦略港湾として、京浜港は、国内貨物の集中、北米など基幹航路の拡大、ターミナル競争力の強化などの基本戦略のもと、国際競争力の強化を図っているところでございまして、その中で、東京港は基幹航路とアジア等近海航路の拠点機能としての役割を担ってまいります。
 これまでの具体的な取り組みといたしましては、東日本から貨物集荷策の実施、ターミナル貸付料の低減に向けた国費導入の要望、三港横持ち輸送の円滑化など、国際コンテナ戦略港湾の計画書に掲げた施策に着手したところでございます。
 今後は、三港での連携をさらに強化し、これらの取り組みにおいて着実に成果を上げ、京浜港の国際競争力を高めてまいります。

○加藤委員 京浜港における国際競争力の強化についての取り組みは、理解をいたしました。
 一方で、港は震災時においてもその機能を発揮する必要があります。大規模な地震が発生した際、東京港の岸壁は、被災者の避難や緊急救援物資の輸送拠点として重要な役割を担うことになります。
 今回の東日本大震災では、被災地の港は大きな被害を受けましたが、東京港はその代替港として被災地域の物流に大きく貢献をしました。また、近い将来発生することが指摘されている首都直下型地震においても、東京港の防災機能の強化により、都民の生命と財産を守ることが重要な役割と考えます。
 そこで、東京港の岸壁の耐震化や液状化について、具体的な取り組みを伺います。

○石山港湾整備部長 これまで都は、港湾施設の耐震化や液状化対策に着実に取り組んでまいりました。
 具体的には、災害時における緊急救援物資や国際海上コンテナの輸送などを確保するため、耐震化とともに、液状化対策を実施する耐震強化岸壁を辰巳や芝浦などで整備しておりまして、既に十三バースが完了しております。さらに、現在、有明、品川など六バースの整備を進めるとともに、中央防波堤外側地区の新たなバースの早期事業化を国に強く求めているところでございます。
 また、既存の港湾施設の液状化対策につきましては、青海ふ頭などにおいて、液状化層をセメントで固める工法を用いるなど、岸壁の改修事業等にあわせて対策を進め、ほぼ完了しているところでございます。

○加藤委員 私も仙台港を視察したんですけれども、もう本当に、岸壁に亀裂が入って大きな被害がありました。
 東京港は、国際コンテナ戦略港湾として、日本経済の発展と国民生活を支える上で役割を期待されており、震災等により港湾施設が被災し、荷役に支障が生じると国内、国際物流網に重大な影響を及ぼします。
 都においては、東京港の国際競争力を強化するとともに、防災力の向上に向け着実に取り組むことを要望して、私の質問を終わります。

○畔上委員 まず、資料の作成、ありがとうございました。
 先ほど来、三宅副委員長、また加藤委員からも、高潮、津波対策のご質問がありましたので、そのご答弁を踏まえて質問させていただきたいと思います。
 三月十一日の大震災で、改めて津波の脅威というものを私たちも知ったわけですが、東京港の水門や陸閘は、高潮や津波から都民の生命と財産を守るという大事な役割を果たしているということを痛感いたしました。
 先ほど平成二十二年度の取り組み状況のご説明がありましたが、それでは防災対策の到達点をどのように自己評価されているのかまず伺いたいと思います。

○石山港湾整備部長 平成二十二年度の防災対策の到達点でございますが、平成二十二年度におきましては、新たに汐留川や天王洲水門、豊洲地区の防潮堤整備などに着手し、また内部護岸の整備も実施するなど、着実に事業を推進しているところでございます。

○畔上委員 なかなか、今のご答弁では、教訓に照らして、どういう到達点で、どのような課題があるかという評価は余りはっきりしていないと思ったんですけれども、そこで伺いますが、新聞報道で、東日本の大震災が発生した三月十一日に、東京湾でも津波警報が発令された際、東京都が管理する陸閘の計四基が閉鎖できず、津波の第一波到達に間に合わなかったことがわかったという報道がありました。
 先ほど、東京都の管理する水門と陸閘はどうだったのかということで、当日の状況のご説明がありました。その中で、陸閘は地盤高が三、四メートルほどあること、想定津波が最大で一・二メートルであったから、当日の潮位の状況から水門と同時に閉鎖しなかったんだけれども、二メートルの津波警報が出たので、江東区、港区の陸閘六カ所を閉鎖しましたよというご説明だったと思うんですが、そのご答弁によりますと、つまり、地盤高が三、四メーターあるので大丈夫だけれど、二メートルの津波警報が出たので閉じましたよとのご説明だと、閉じる必要がないのに閉じたんだということになってしまうわけです。
 それでは、いつ津波警報が出て、何時までに閉じる判断をして、何時に閉じたのか、そのことをお答えください。

○石山港湾整備部長 今、ちょっと手元に正確な数字がないんですけれども、十六時八分に二メートルの津波警報が出されました。それを受けまして、港湾局としては十七時十分ごろまでに六カ所の陸閘を閉鎖したものでございまして、当日の潮位の状況から見ても、閉鎖がおくれたということではないと思っております。

○畔上委員 何時に判断したんでしょうか。

○石山港湾整備部長 十六時八分に二メートルの津波警報が出て、十六時二十五分に指令を出しました。

○畔上委員 つまり一部とはいえ陸閘の閉鎖が、津波の第一波十六時四十分の到達時間には間に合わなかったということなわけですね。私はそのことは大変重大だと思いますが、その点どう認識されているんでしょうか。

○石山港湾整備部長 気象庁から十六時八分に二メートルの津波警報が出されて、十七時十分に六カ所の水門を閉めたということでございます。
 ただ、気象庁の発表の第一波の到達時点は、津波高は〇・八メートル、天文潮位を加えたそのときの想定水位は、APで約一・五メートルでございました。
 したがいまして、地盤高が三メートルから四メートルある陸閘におきましては、当日の対応は問題なかったと考えております。

○畔上委員 陸閘の閉鎖は、閉鎖を決定してから四十五分もかかったのに、問題はなかったというご答弁なんですが、それはたまたま潮位が、今ご説明あったように低かったから結果オーライで、時間がかかり過ぎたのに、それを問題だと感じないところに私は問題を感じるんです。
 そもそもこれだけの大きな地震があったのに、最初の三時三十分の警報で万全な出動準備の体制をとるべきだったんじゃないでしょうか。
 国土交通省は、大規模な液状化が起こると二メートルの地盤沈下がある可能性があるというふうに認めているわけです。それなのにそんな認識でいいんでしょうか。
 例えば、私の地元の区にあります東雲の陸閘、これは今回閉鎖がおくれた陸閘なんですけれども、どういうところにあるかといいますと、陸閘の目の前に同じ高さでマンションがあるんです。十メートルぐらいしか離れていないんです。陸閘とマンションの高さが同じくらいで、先日の台風のときも水位が上がって陸閘は閉じられました。津波の高さが、三・一一のときは、先ほどのお話では、内湾に観測所がないから晴海の観測になっていたわけですけれども、結果的には一・三メートルということで、もっと大きな津波で、陸閘の閉鎖が間に合っていなかったら大変なことになっていたわけです。
 しかも、その土地、陸閘周辺では、私が地震の後すぐに見に行ったんですけれども、液状化を起こしておりました。そういう意味では、もし国土交通省が認めた二メートルの地盤沈下があったら、第一波でもマンションに水が到達していたということもあり得るわけです。だから私は、結果オーライで済まされない、そういう問題なんだというふうに思います。
 先ほどのご説明では、委託業者との通信手段、それを衛星電話に変えたんだというふうなご説明がありました。ということは、通信手段を改善されたということは、おくれた原因は連絡がつかなかったということでよろしいんでしょうか。交通手段の方は大丈夫だったんでしょうか。そして、最終的には一体だれが陸閘を閉めたんでしょうか。

○長橋委員長 ちょっと待ってください。二十二年度決算委員会の質疑でございますので……(「だって二十二年度ですよ、三月十一日は」と呼ぶ者あり)ですが、その後の対応等ありますので、踏まえて質問をお願いします。

○石山港湾整備部長 先ほどのご質問ですけれども、陸閘につきましては、一定の地盤高があることから、従来の水門ほどの即時体制はしておりませんでした。しかしながら、今回の場合は想定を超える大きな津波があったことを踏まえまして、十月からは即時閉鎖が可能になる人員体制の強化を図ったところでございます。
 また一方、業者との連絡でございますけれども、これにつきましては、優先電話等で連絡はとれました。それで、職員と委託業者、両方が陸閘の方に向かうという対応をとりまして、閉めたものでございます。
 そういうような対応の中で、今回の反省点も踏まえて、既に十月までに衛星電話の導入、それから陸閘の即時閉鎖の対応等の対応を図ったところでございます。

○畔上委員 ただいまのご答弁だと、民間業者と職員が一緒にやったというふうにお答えなんですが、報道によりますと、都が管理する防潮扉は都の職員が操作を代行して、約三十分後に閉鎖したというふうにマスコミ報道では出ているんですが、都の職員だけではなくてやったということですか。どういうことですか。もう少し説明してください。

○石山港湾整備部長 水門につきましては、職員が先に着いて職員がしたところもございますし、委託業者が来て、それと一緒にやったところもあるということでございます。

○畔上委員 一緒にやったところもあるけれども、職員がやったところもあると。つまり、委託業者だけでは間に合わないから職員がやったということだと思います。
 たまたまあの日、その三つの陸閘が、潮位との関係で、津波第一波到達前に閉鎖しなくても災害にならなかった。しかし、だからといって、おくれたという事実は重く受けとめるべきだというふうに私は思うんです。津波が大潮のときにもっと早く襲ってくることもあり得るわけです。しかも、今のご説明のように、委託業者は到着しないところもあって、職員の手によって陸閘が閉じられているところもあると。つまり委託そのものが機能しなかったということなわけです。
 同じ東京湾に面して、隣り合わせになっております千葉県ではどうだったのかといいますと、報道によりますと、東京湾にある千葉県の水門八基が、東日本大震災の際、交通渋滞などで担当者の現地到着がおくれ、津波の到着までに閉鎖されなかったことが、十月七日の県への取材でわかったと。千葉市内の床下浸水などの被害につながったと見られ、県港湾課は非常時の連絡手段の確保や対応策を検討しているというふうに書かれておりました。
 東雲の場合、陸閘の隣には水門もあるわけです。しかし、水門の管理と陸閘の管理、素人考えでいえば、一緒にやればできたんじゃないかなというふうに私は思ったんですが、しかし東雲水門というのは遠隔操作でやるという、先ほど水門は遠隔操作だというお話がありました。そうすると、陸閘はどういう形での閉鎖の仕方になっているんですか。陸閘の開閉を委託や協定によってやっているものは幾つあるのか、その相手方はどのようなところなのか、委託はいつから行われているのかお願いいたします。

○石山港湾整備部長 陸閘につきましては、現在四十六カ所ございます。二十五カ所が委託で、二十一カ所が協定により開閉操作を行っております。委託につきましては、平成十四年度から行っております。
 先ほどから出ております津波の高さが高かったら危なかったんじゃないかというお話ですけれども、東雲の陸閘の地盤高というのは四メートル近くございまして、また、そのときの潮位等も判断して、陸閘を閉める判断をしているということでございますので、特に問題なかったのではないかと思っております。

○畔上委員 そういう認識が問題じゃないかというふうに私はいっているんです。
 陸閘業務の民間委託については、二〇〇一年秋に港湾局から打ち出されたときに、職員からは強い反対があったと聞いていますが、二〇〇二年から、高潮防災の一部民間委託化と十人の設備管理職の定数削減が強行されたわけです。当時、職員組合からは、委託や人員削減に対しては、地震、津波、高潮への対応についての検討がされていないじゃないかと、そういう指摘をされていたわけですが、まさにこの心配が的中してしまったわけです。
 今回のことから、どのような教訓があるというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。先ほど、四メーターあるから大丈夫だったんだというふうにおっしゃったけれど、さっきいったように、国土交通省が液状化による地盤沈下も、二メートルは可能性があるといっているわけですから、そういうところを加味した教訓をどういうふうに考えていらっしゃるのかお答えいただきたいと思います。

○石山港湾整備部長 先ほどもご答弁申し上げましたが、陸閘につきましては、従来、水門ほどの即時体制はしておりませんでしたので、今回の地震を受けまして、十月からは即時閉鎖が可能になる人員体制の強化を図るなど、そういう改善をもう既に図ってきたところでございます。こういうことで、ソフト的な対策については既に実施したところでございます。
 また、専門家等から成る技術検証委員会を設置し、都では、防災のあり方等について検討も行っているところでございます。また、国の中央防災会議等の検討結果なども踏まえて、必要な見直しをしていくこととしております。

○畔上委員 今のご答弁では、ソフト面はもう図ってきたんだというふうにおっしゃっていたんですが、国土交通省は、外部に委託している水門、それから陸閘、この操作については、今後は津波警報の発令直後速やかに閉鎖できるよう、外部業者だけでなく同省の職員なども操作を行うようにするなど、運用方法を見直すというふうにしています。ということは、先ほど技術検証委員会の中で今後検討していくというお話がありましたが、都も同様に見直すということでしょうか。

○石山港湾整備部長 陸閘の閉鎖体制のソフトな面に関しましては、既に即時閉鎖が可能になる人員体制の強化を図っております。したがいまして、今、技術検証委員会の方で実施しております検討は、どちらかというとハードの方の設備の対応を検討しているということでございます。

○畔上委員 私は、見直しをする際に、やはり職員の体制についても抜本的に拡充をすべきだというふうに思います。都民の安全は、もちろんハードの部分も非常に大事です。防災施設とそれをきちんと支えていく人たち、その両方によって守られるんだと思います。
 津波を市民に知らせるために、防災無線のマイクを最後まで放さなかった公務員の方のこと、私たちの胸に深く刻まれているわけですけれども、公務員の皆さんは、本当に身を挺して住民を守るお仕事をしていらっしゃるわけです。こういう大事な都民の生命を守る職員を、この間、二〇〇二年度以降も毎年のように、退職者不補充という形で定員削減を推し進めてきたわけです。やっぱり私はこれは、災害に強い東京港をつくるということとは逆行するものだというふうに思います。このような人員体制の弱体化、これはやっぱり抜本的に見直すべきだということを強く求めまして、改善すべきだということを求めまして、質問を終わりたいと思います。

○長橋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○長橋委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で港湾局関係を終わります。

○長橋委員長 これより都市整備局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十二年度東京都一般会計決算中、都市整備局所管分、平成二十二年度東京都都営住宅等事業会計決算、平成二十二年度東京都都営住宅等保証金会計決算、平成二十二年度東京都都市開発資金会計決算、平成二十二年度東京都多摩ニュータウン事業会計決算及び平成二十二年度東京都臨海都市基盤整備事業会計決算を一括して議題といたします。
 本件につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○田崎総務部長 十月十四日の当分科会でご要求のございました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 お手元に配布してございます当局の平成二十二年度各会計決算特別委員会第三分科会資料の表紙をおめくりいただき、目次をごらんください。
 資料は、1の平成二十二年度東京都の耐震診断・耐震改修助成実績の一件でございます。
 一ページをお開き願います。(1)の木造住宅でございますが、都が行う助成事業につきまして、地方公共団体別に耐震診断件数、耐震改修件数を記載してございます。
 二ページには、マンションにつきまして木造住宅と同様に記載してございます。
 以上で資料説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○長橋委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○松下委員 私は、大きく六項目について順次ご質問したいと思います。
 まず初めに、屋外広告物について伺います。
 屋外広告物は、まちの良好な景観を形成し、風致を維持し、公衆に対する危害を防止する目的から、適切に規制される必要があるとの考えのもと、東京都では、東京都屋外広告物条例等により屋外広告物の規制を行っています。例えば、商店街に掲出されているフラッグ等の屋外広告物は、これまでは商店街のお知らせ等自家用広告物に限って認められてきましたが、広告料を徴収する広告は認められてはいませんでした。
 商店街の振興、道路利用の適正化、地域の景観向上を図ることを目的に、都内の商店街からモデル商店街を選定し、広告物の許可については、新たなスキームを導入することを目的として、平成二十一年度に東京都広告物活用型商店街活性化モデル事業が実施をされています。
 このモデル事業の開始に当たり、広告物の内容審査、自主審査の取り組み等事業の枠組みをどのような理念のもとに築いたのかをお伺いいたします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 屋外広告物を活用した商店街活性化モデル事業につきましては、屋外広告物の規制緩和を行いつつ、広告デザインの質を高めることを主眼に、事業の枠組みを構築いたしました。
 そのため、あらかじめ都が作成したガイドラインに基づき、実施主体が広告表示に関する審査基準をつくり、自主審査を行う機関を設置するなど、事業者の自主性を尊重しつつ広告の質を高める工夫を行いました。

○松下委員 広告の規制緩和と事業者の自主性の尊重、広告デザインの質を高める工夫のもとに、仕組みがつくられたということがわかりました。
 このモデル事業は、都内四カ所、二十三区は港区で二カ所、多摩地域では立川市と私の地元武蔵野市の吉祥寺平和通り商店会協同組合で実施されています。期間は平成二十一年七月十三日から三十一日の十九日間、日本宝くじ協会のサマージャンボ宝くじ発売の周知広告が掲出されました。
 このモデル事業を終えた後、二十二年度にはどのような検証を行ったのかお伺いいたします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 モデル事業の検証につきましては、まず来街者へのアンケート、広告デザインの自主審査関係者へのインタビュー、商店街所属者へのヒアリングなどを事業の実施主体が行いました。
 その報告をもとに、東京都広告物審議会において検証を行った結果、フラッグ広告に対する市民の好感度は高く、幅広い広告効果があることが認められました。
 また、広告料による収益が有効に使われたことが検証されるなど、多くの効果がある事業と受けとめております。

○松下委員 二十一年度のモデル事業、そして二十二年度に事業の検証、さらに二十三年四月に立川で再びモデル事業を実施した後に、二十三年度のことし六月から新たな事業の仕組みができ、商店街の街路灯やアーチのフラッグに有料広告をつけることが実際に可能になっています。
 モデル事業を経て事業の仕組みを見直している、こういう検証を経て事業の仕組みを見直しているようですが、モデル事業の検証を踏まえてどのように見直しをしたのかお伺いいたします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 モデル事業を検証した際、広告デザインの自主審査に関し事務改善の余地があるという指摘がございました。
 そのため、より地域の特性を反映できるよう、地域から選出された委員の数をふやすとともに、一定の条件のもとで東京都広告物審議会での一件ごとの審議を省略する仕組みをつくるなど、本事業をより利用しやすくすることを主眼に事業を見直しました。

○松下委員 東京の都市づくりビジョンには、広告収入の一部を道路清掃、放置自転車対策など公共的な取り組みに充当する場合に、その掲出を可能にするとして、この屋外広告物を活用した商店街活性化の支援というものが位置づけられています。
 今回の新たな事業で得られる広告料の取り扱いはどうするのか、どのような商店街の事業に充当できるのかお伺いをいたします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 本事業による広告収入は、公益的な事業に充当するものと位置づけられております。
 具体的には、街路灯の設置及び維持管理費用、道路及び沿道の環境改善に係る費用、道路の交通安全に係る費用、その他、地域の活性化やまちづくりのための費用に充てることとなっております。

○松下委員 高い広告料収入が取れるような都心の一部の商店街もあれば、多摩地域の商店街、広告一枚当たり手数料が設定されておりますので、支払うと、広告料収入を充当しても幾らも収入にならないのではないかと考えられる商店街もあるかと存じます。
 東京都は屋外広告物条例が他県に比べて厳しいとの声も伺います。今後、この新たな事業を実施し、運用を重ねるに当たり、利用者の声をよく聞いた上で、より商店街振興に資する取り組みにしていただきたいと要望して、次にホームドアについてお伺いをいたします。
 JRなど民間鉄道事業者のホームにおける安全対策は、残念ながら進んでいません。これまで、一刻も早く転落防止の抜本的対策としてホームドアの整備に取り組むべきであると私は何度も質問してきました。
 平成二十二年度、ホームドアに関してどのような課題があると整理し、どのような取り組みを行ったのかお伺いをいたします。

○石川都市基盤部長 駅ホームからの転落等の防止策につきましては、本来、鉄道の安全な運行確保の責任を負う鉄道事業者がみずから取り組むことが基本でございますが、既存駅へのホームドア等の整備に当たっては、車両扉の位置の異なる列車への対応や、ホーム幅の減少、停車時間の増大による輸送力の低下、さらには膨大な投資費用など、さまざまな課題がございます。
 都では、整備に慎重な鉄道事業者の積極的な取り組みを促すために、今年度から三年間で、小田急線新宿駅などの三駅でホームドア等の設置費に対する補助を試行的に実施し、整備を進める上での課題を検討することとしました。
 また、これまでも、鉄道事業者などが集まる連絡会議などにおいて、必要性の高い駅からホームドア等の整備を積極的に推進するよう働きかけてきました。
 引き続き、さまざまな機会をとらえて、国や地元自治体とも連携しながら、鉄道事業者に対する働きかけを行ってまいります。

○松下委員 今から五年半前の平成十八年度、予算特別委員会で、私がホームドアに関して質問した際には、鉄道の安全確保については、鉄道事業法により国が監督することというのが前提であり、民間の鉄道事業者とは、ホームの安全対策に関して協議の場すら当時は持っておりませんでしたので、昨年度、今ご答弁の中で、連絡会議などにおいて、ホームドアの整備を積極的に推進するよう働きかけてこられたとのことは、当時から考えると大きな進歩であると考えます。
 しかし、この間も、ホームからの転落により命を落とされる方というのは後を絶ちません。一刻も早い都内のすべての駅ホームの安全対策を実現するために、都内各駅のホームドア整備の優先度を定めるべきと考えます。
 国土交通省は、一日乗降客数十万人以上の駅において、ホームドア等または内方線つき点状ブロックの整備による転落防止対策を優先的に速やかに整備するという方針を固めているようでありますが、対象駅は、地下鉄とJR、私鉄で都内に何駅あるのかお伺いをいたします。

○石川都市基盤部長 平成二十二年度の実績では、都内で対象となる一日乗降客数十万人以上の駅は、都営地下鉄及び東京地下鉄では、総駅数二百三十一駅のうち四十二駅、JR東日本及び私鉄では、総駅数四百八十七駅のうち八十二駅でございます。

○松下委員 乗降客数を十万人で区切るということがいいかどうかは、もちろん議論はあるかと存じます。十万人以上の駅という区切りをする整備の優先度も、また逆に必要ではないかとも考えます。
 しかし、連続する、例えばJR中央線の各駅には、十万人を超す駅とそうでない駅があり、駅の乗降客数十万人で転落防止対策を優先的に行うことには、線としてとらえたときの一貫性はなく、無理もあるのではないかと考えます。
 今ご答弁いただいた、二百三十一のうちの四十二、四百八十七のうちの八十二という駅に特化しつつ、線としてもぜひ考えていただきたいというふうに考えます。駅の乗降客数を考慮して、JRが山手線に優先的に整備を行っているように、線としての優先整備度を今後定めることを要望いたします。
 「十年後の東京」では、二〇一六年までに、ホームドアまたはホームさく、転落検知マット等を都内すべての駅に設置し、ホームからの転落による事故を防止するとなっていますが、地下鉄とJR、私鉄における二十二年度の進捗状況についてお伺いをいたします。

○石川都市基盤部長 都内で、ホームドアまたはホームさく、転落検知マット、非常用停止押しボタンのいずれかが設置されている駅は、平成二十三年九月末現在で、都営地下鉄及び東京地下鉄では全駅に設置され、設置率一〇〇%となっております。
 また、JR東日本及び私鉄では、総駅数四百八十七駅のうち四百五十七駅に設置され、設置率は約九四%でございます。

○松下委員 目標を達成するために努力をすること、達成するということは重要であると考えますが、そもそもの目的は安全対策のはずであります。
 今のご答弁だと、達成率は非常に高い数字とはなっておりますが、ホームからの転落を防ぐための対策でありますので、転落検知マット等には非常用ベルも実際には含まれているとのことですが、この設置率が幾ら高くても、実際には安全対策にはつながっていないという現状、目標の見直しやホームドア設置率を高める努力を継続して行い、目標を見直すことも考えていただきたいと要望いたします。
 ホームの安全対策として非常に有効であると認識されていながら、ホームドア設置がなかなか進まない現状があります。ホームドア設置の壁となる課題を解決していかなければならないと考えます。
 ホームドア設置の壁となる課題克服になるかと思われる新技術、技術的な進歩についてどのような調査、把握をしているのかお伺いをいたします。

○石川都市基盤部長 都において把握している技術開発としては、まず、国では本年二月に設置した鉄道事業者などから成るホームドアの整備促進等に関する検討会において、コスト低減等の課題に対応可能な新たなホームドア等の開発について検討しております。
 また、財団法人鉄道総合技術研究所では、昨年度から、国内の企業や鉄道事業者から成る勉強会で、共通仕様化への可能性などの技術的検討を行っており、さらに民間でも、コストダウンが可能な簡易な可動式ホームさくなどの開発を行っていると聞いております。
 都としては、こうした国や民間などの動向を見きわめながら、試行的事業における課題の検討を行うとともに、国に対し、整備促進につながる技術開発の支援等を行うことを要望するなど、引き続きホームドア等の整備の促進に取り組んでまいります。

○松下委員 コストももちろん課題だと私も考えておりますので、コスト低減、コストダウン等の課題を解決するための研究開発が行われているとのご説明だったかと思います。
 コスト以外にも、車両扉の位置の異なる列車への対応というのも実は非常に大きな課題であると考えます。車両の数やドアの位置が異なる場合にも対応できる新たな技術も研究されている、これは業界紙にも掲載がされておりました。研究されているようです。
 ぜひこうした動向を見きわめながら、二十三年度からスタートした試行的事業の課題の検討を今後行い、早く試行的という試行的の部分をとり、本格的な都事業としてホームドア整備促進を位置づけていただきたいと要望いたします。
 加えて、ホームからの転落事故、自殺、人身事故を防ぐための人的な取り組みについても、今後検討するべきであると提案をいたします。
 駅のホームに安全対策員を配置するなど新たな取り組みも可能となるよう、鉄道事業者と引き続き継続して、東京の公共交通の安全対策、ホームの安全対策にともに取り組んでいただきたいと要望し、次に外環ノ2についてお伺いをいたします。
 外かく環状道路地上部街路、通称外環ノ2に関して、私は、廃止も含めて検討すべきとの強い思いで、これまで何度も質問し、その都度、外環ノ2について都の方針はまだ決まっておらず、検討段階にあると確認をしてまいりました。
 各区市における話し合いの会の開催状況について、まず初めにお伺いをいたします。

○山下航空政策担当部長外かく環状道路担当部長兼務 外環ノ2の沿線区市における話し合いの会の開催状況でございますが、平成二十二年度につきましては、武蔵野市及び練馬区においてそれぞれ四回開催しております。
 平成二十三年度につきましては、これまで、武蔵野市で一回、練馬区で二回、杉並区において一回開催するとともに、三鷹市において開催に向けた調整を進めているところでございます。

○松下委員 武蔵野市、一番最初に話し合いの会が開催されました。引き続いて練馬区、杉並区の話し合いの会が立ち上がり、話し合いを進めてきたことかと思いますが、この話し合いの会においては、話し合いのために必要なデータについて明らかにして進めていくことが前提となるはずです。
 私の地元の武蔵野市においても、女子大通りや生活道路への通過交通の流入などの現状や、外環ノ2ができた場合や周辺の概成道路の整備がされた場合などによる影響をしっかりと議論すべきと考えます。
 平成二十二年度はどのような委託調査を行い、それをどのように今後生かしていくのかお伺いをいたします。

○山下航空政策担当部長外かく環状道路担当部長兼務 外環ノ2につきましては、環境、交通、防災、暮らしという四つの視点で、道路の必要性やあり方などについて検討を進めており、この検討や地元の話し合いに必要なデータを作成するため調査を行ってございます。
 平成二十二年度の調査におきましては、外環ノ2周辺の女子大通りや細街路について、現状における課題抽出並びに外環ノ2を整備した場合の効果や影響の検証などを行ってございます。
 調査結果につきましては、沿線区市において開催する話し合いの会などを通じて、地元の方々にデータとして提供し、意見交換に活用してまいります。

○松下委員 二十二年度に行った調査結果やそのもとになるデータ等について、これはできるだけ早く地元の話し合いの会等にぜひ情報を提供していただきたいというふうに考えております。
 外環ノ2について、私の地元の地域の住民の方は、本線が地下化したのに、寝耳に水である、地域が分断される、なぜ本線が地下なのに地上に都道をつくる必要があるのかといった疑問を多く持っていらっしゃいます。
 平成二十二年十二月には、武蔵野市議会で外環及び外環ノ2に関する意見書が全会一致で可決をされています。こういった声をしっかりと受けとめて方針を策定を行っていくことを強く要望いたします。
 今後、外環ノ2の検討についてどのように進めていくのか伺います。

○山下航空政策担当部長外かく環状道路担当部長兼務 外環ノ2につきまして、都はこれまで、現在の都市計画の区域を活用して緑豊かな道路として整備する、都市計画の区域を縮小して車道と歩道を整備する、代替機能を確保して都市計画を廃止するという三つの基本的な考え方をお示しし、話し合いを進めてまいりました。
 引き続き、沿線区市において話し合いの会を開催するなど、必要性やあり方などについて広く意見を聞きながら検討を進め、都市計画に関する都の方針を取りまとめてまいります。

○松下委員 必要性やあり方などについて広く意見を聞きながら検討とのお答えですが、必要性の中には、必要なのか不必要なのかということ、両方入っていると私は考えます。必要か不必要かを含め広く意見を聞きながら検討を進め、まだ現段階で明確にはなっていない都としての都市計画の方針を今後取りまとめていただきたいと考えます。
 今のご答弁では、都はこれまで三つの基本的な考え方を示し、話し合いを進めてきたとのことですが、三つの考え方が示される以前、外環道路の計画のたたき台が平成十三年四月に発表された時点では、外環ノ2に関しては、地上部の利用として、大きく分けて三つ、細かく分けると五つの案が示されました。そのうち外環ノ2の廃止を意味する案は、現状の市街地を維持することができますと明確に示されています。
 その後、平成十七年一月に発表された外環の地上部街路についてでは、外環ノ2として三案が示された後、代替機能を確保して外環ノ2の都市計画を廃止するということが唐突に示された、こうした事実があるということをお伝えしておきます。
 外環の本線が地下化となり、地上部には道路はできないものだと思っていた地元の人たちは、この十七年の発表を見て非常に驚きました。今のお答えですと、平成十七年に都が示した三つの考え方のみがこれまで都としての考えのようなご説明でしたが、それ以前、都が発表した平成十三年の資料には、現状の市街地を維持することができると明確に示されていて、その後、三つの案に絞られた過程で地元との意見交換や説明などはなく、どういう経緯で三つに絞ってきたのかが明らかになっていないこともお伝えをいたします。
 現状の市街地を維持することができると東京都の正式な発表資料に明記されているのを見れば、地上部に道路はできないという選択肢もあるのだと地域住民が思うのは至極当然のことであり、こうした経緯が、東京都に対し地域住民が不信感を持ってしまう一因でもあると考えます。
 私は、平成二十二年度予算特別委員会の質疑の中で、代替機能を確保して都市計画を廃止するという都の考え方には、つまり、代替機能を確保しなければ都市計画を廃止することができないかのように都が説明していることには、法的な根拠がないことを確認してきました。
 都の方針を定める上での検討に当たっては、代替機能を確保してという都の考え方は見直していただくか、新たに都市計画を廃止するという選択肢を加えていただくよう強く強く申し上げて、次の質問に移ります。
 八ッ場ダムについてお伺いをいたします。
 さきの第三回定例会一般質問でも、八ッ場ダムについて質問いたしました。これまでも計六回質問をしてきています。一般質問とは異なり、決算として幾つか確認をしたいと存じます。
 平成二十二年度当初予算における八ッ場ダム事業の実施内容と平成二十二年度末の整備状況について、工程表と突き合わせておくれはないのか詳細にお伺いをいたします。

○町田都市づくり政策部長 八ッ場ダム建設事業におきます国の平成二十二年度の当初予算につきましては、百四十億九千六百万円を計上しております。二十二年度末時点での執行率は約九三%でございます。ほぼ予定どおり執行されていると聞いております。
 また、進捗率につきましては、つけかえ国道、つけかえ県道では約九三%、つけかえ鉄道で約九〇%、家屋移転では同じく約九〇%の進捗でございます。
 八ッ場ダム建設事業は、国と共同事業者でございます一都五県の間で定めました八ッ場ダム建設に関する基本計画において、平成二十七年度に完成することとなっております。しかしながら、政権交代後、国が具体的な理由を示すことなく一方的にダム本体工事の建設中止をしたことによりまして、既に少なくとも二年おくれております。

○松下委員 進捗率で、つけかえ国道、県道、つけかえ鉄道、家屋移転でも約九割、一割まだ残している。本体工事以外の部分でも一割残っているという部分で、移転予定地の安全性、地すべりの危険性等、これまでも私は指摘をしてきておりますので、この一割積み残しになった部分は、きちんと精査をしていただきたいというふうには考えます。
 去る九月十三日、八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場において、八ッ場ダム建設事業の総合的な評価案が発表されました。この検討の過程において関係一都五県に意見が求められています。
 この国土交通省関東地方整備局の検証に際して都が意見を求められた内容と、それにどのように答えたのかお伺いをいたします。

○町田都市づくり政策部長 政府の方針によりまして国が定めた検証の手続、手順に基づき、国は、利水参画者である都に対しまして利水対策案について意見を求めてまいりました。
 これに対し、都は本年七月に回答しております。具体的には、代替案は膨大な費用と時間が必要であることや八ッ場ダムは既に八割近く進捗をし、首都圏の利水、治水の両面から、最少費用で迅速かつ確実に効果を上げる事業であることなどの意見を述べております。
 また、本年九月に開催されました八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場では、八ッ場ダム建設が最も有利であるとの検証結果を踏まえ直ちに決断すること。さらに、平成二十四年度予算での対応を待つことなく、今年度可能な措置を速やかに実施し、直ちにダム本体工事に着手するとともに、基本計画どおり平成二十七年度までに八ッ場ダムを完成させることとの意見を述べたところでございます。
 今後、国は、利水対策案だけでなく、今回の検証全体に対して、検証の手順に従い知事の意見を求めることとなっております。その際には検討の場と同様の意見を表明することを考えております。

○松下委員 利水対策案についてのみ意見を求められたということ、それに答えた。利水についてのみ求められていますが、治水の両面からも効果を上げることができると答えているということが今答弁でありました。
 私も議事録をいろいろ調べてみまして、関係地方公共団体からなる検討の場、幹事会の開催状況の平成二十二年十一月、これは第二回幹事会の中で、利水参画継続の意思及び開発量についてという内容がありましたので、利水についてのみこれまで照会があったということをこちらでも確認ができました。治水については、照会はこれまではないということもわかりました。
 客観的なデータに基づいて必要性の有無に関して議論をすべきです。事業費についても、地すべりの懸念等増額要素が多々ある中で、あらゆるリスクを想定して正確な費用対効果を求めるべきと考えるがいかがでしょうか。

○町田都市づくり政策部長 八ッ場ダムの費用対効果についてでございますけれども、今回の検証の中で、国は、治水事業の経済性を評価する指針としております治水経済調査マニュアル(案)に基づきまして、最新のデータを用いた分析を行っております。
 この結果によりますと、八ッ場ダムの便益は、洪水調節による家屋や農作物などの被害軽減額などといたしまして、約二兆二千百億円を総便益として算出しております。総便益を総費用で割った投資効果をあらわします、いわゆるBバイCが一・〇を上回っていれば、一般的には事業効果があるとされております。八ッ場ダムにつきましては、このBバイCが約六・三という算定結果でございます。こうした効果の試算につきましては、マニュアルに基づきまして適正に算定しているものと認識をしております。

○松下委員 私は、このBバイCの六・三というのは大きな疑問があると感じます。総事業費の中に、東京電力に対する水力発電、今現に行われている水力発電の減電補償費、一体幾らであるのかということは一向に明らかにされておりませんし、地すべり対策、さらに追加費用がかかった場合には、こうしたBバイCというものも変化の可能性があるということを指摘させていただきます。
 さきにも述べました関係地方公共団体からなる検討の場、第三回幹事会の中で、総事業数、工期の点検、中間報告が議題として取り上げられています。当時の都市整備局長、河島技監も出席をされ、意見を述べられていますが、議事録で確認をしておりますが、その中で、国から事業費の増額、工期の延長が実は示されており、それについて、河島技監も異議といいますか、おかしいというようなことを議事録で述べていらっしゃいました。それに対して国は、検証のためのあくまでも試算という非常にわかりにくい、事業費を増額、工期も延長しておきながら、検証のためのあくまでも試算だという説明をして、納得させているようなんですけれども、こうした国交省の対応もあったということも指摘をしておきます。
 八ッ場ダムによる治水効果を発揮することが確認されていると、さきの一般質問で答弁がありました。実際にはどの程度効果量があるのかお伺いをいたします。

○町田都市づくり政策部長 まず、ただいま委員のお話しの中に、第三回幹事会で事業費の増額と工期の延長が示されているというお話がございました。これは、国が代替案と比較するための物差しといたしまして、仮の事業費と工期として算定したものでございます。第三回幹事会の場でも繰り返し国に伝えておりますけれども、この場で示されたものは基本計画にかかわるものではなく、一都五県が容認したものでもございません。確認のためお話をさせていただきます。
 続きまして、実際の効果量でございます。本年九月の参議院の予算委員会で、前田国土交通大臣も同様の趣旨で答弁をされておりますけれども、利根川上流域におきましては、この流域の東側、奥利根流域と、それから烏川、神流川という流域の二つについては多くのダムがあります。これにもかかわらず、西側にございます吾妻川流域には洪水調整機能を持つダムがなく、八ッ場ダムは吾妻川流域に初めて建設される施設でございます。このダムが完成すれば、利根川上流の三流域すべてにダムが整備されることになり、既存ダム群と相まって洪水調節を効果的に行うことが可能となります。
 具体的な効果につきましては、国が、日本学術会議が妥当と判断いたしました計算モデルを用いて流出計算を行っております。その結果、洪水ごとに、八ッ場ダムによる八斗島地点の洪水調節効果量は異なりますけれども、平成十年九月の洪水の場合を例にとりますと、最大で毎秒千八百二十トンの大きな洪水調節効果が見込まれると試算をしております。

○松下委員 今、基本計画の変更について、先ほど私が意見を述べました第三回幹事会でのお話がございましたが、基本計画の変更は議会での議決を経ているものですので、それと違った内容のことが示されるというのは、これは甚だ遺憾であるともっと抗議をすべきであったと私は思いますし、仮に、試算だと、他の案と比較するための試算だからねといわれても、ああそうですかとはならないはずだと思うんです、事業費がふえて工期が延びているんですから。そのあたり、受け入れていないということを議事録でも確認しておりますし、都技監は、それは都としてもほかの関係都県としても受け入れられないというのは私も確認はしていますけれども、現実とは全く異なる試算のための数字だということで、今回の評価案がなされていることに、私は大きな疑問を感じます。
 これは質問はしておりませんので、次に、今のご答弁、今後八ッ場ダムによる水位の低減効果、具体的に何センチ低減効果があるのかといったことを詳細に明らかにするべきであると考えます。
 また、ダムの洪水調節効果は河道貯留効果といわれているように、下流に行くほど小さくなるとの指摘もあります。ダムに頼らずに、都内の河道整備、具体的には堤防整備、河床掘削、堤防強化等を行い、地域住民の安全を守ることができる現実的な治水対策を早急に進めるべきと要望いたします。
 基本計画変更の際にも確認をしていますが、本体工事終了後、供用開始に至るまでは、試験湛水を経なければなりません。この最後の試験湛水期間はたった半年しか予定に組まれてはおりません。本当に試験湛水期間は半年で終わるのかお伺いをいたします。

○町田都市づくり政策部長 試験湛水時の安全性や工程管理は、そもそも事業者でございます国の責任において確保するべきものでございます。
 今回の検証では、八ッ場ダム建設事業に関する基本計画と同様に、八ッ場ダムの試験湛水の期間は約六カ月間行うと報告をされております。
 国からは、平成六年度から十五年度までの十年間における吾妻川の半年の流量実績をもとに、適切に試験湛水期間を設定しており、地盤の安定に関する調査検討や必要な対策等を施し、万全を期するというふうに聞いております。

○松下委員 本当に半年が適切なのかどうか、今まで何度も、私、ご質問等していますが、事業に参画をしている都としても、独自で実際に調査をしていた方がいいかという思いを私は持っております。
 九月十三日に発表された八ッ場ダム建設事業の検証にかかわる検討の経緯の中で、総事業費及び工期の点検では、残事業費が約千三百億円、工期は約八十七カ月、七年以上かかることが明記されていることも指摘をしておきます。
 また、八ッ場ダム検証に際して分科会委員を務めていた方から、検証内容に疑問を感じていることも明らかになっておりますし、八ッ場ダム検証の抜本的なやり直しを求める科学者の方々が国に対して声明文を出すことも明らかになっていることをお伝えして、次に総合治水対策についてお伺いいたします。
 豪雨対策を効果的に進めるには、外水対策としての河川整備だけではなく、内水対策としての下水道整備、流域対策の取り組みが重要です。
 ゲリラ豪雨とも呼ばれる近年の局地的豪雨による被害として、都市の内部で水があふれる内水はんらんも頻発しており、平成二十年八月には、都内豊島区の下水道工事現場で五人が流され、死亡した事故もあり、内水はんらんによって死者が出る重大な事態も発生をしています。こうした都内における豪雨への対応には、下水道による内水対策が重要であり、都は、内水はんらんを防ぐ下水道整備の推進に積極的に取り組んでいただきたいと要望しておきます。
 また、内水対策のもう一つの柱である流域対策については、雨水の流出を抑制するため、雨水浸透ます等の設置をさらに推進していかなければならないと考えます。
 そこで、都が平成十九年に策定した豪雨対策基本方針における流域対策の基本的な考え方、十年間の整備目標及び平成二十二年度の取り組み状況についてお伺いいたします。

○石川都市基盤部長 流域対策の基本的な考え方は、重点的に取り組みを進める対策促進エリアを設定し、貯留浸透施設の設置を促進することにより、雨水が一気に河川及び下水道へ流出することを効果的、効率的に抑制することでございます。
 平成十九年から十年間の整備目標は、対策促進エリアとして設定した神田川など七流域において、時間五ミリ降雨相当の流出抑制を実現することでございます。
 平成二十二年度の取り組み状況は、七流域において、個人住宅の雨水浸透施設の設置費用を助成している区市を対象に補助を行っております。
 また、昨年七月の豪雨被害を受けて、十一月には緊急豪雨対策を策定し、公共施設活用の強化策として、都営住宅の建てかえにあわせた一時貯留施設等の整備の方針を打ち出しました。

○松下委員 昨年の十一月に策定した緊急豪雨対策では、都営住宅等の公共施設を活用した一時貯留施設等の設置を促進すると明記をされているとのお答えでした。一時貯留施設等の設置、これは各家庭での雨水浸透ます等の設置促進以上のスピードで、公の責務として公共施設を活用した一時貯留施設等の設置、急ピッチで進めていただき、豪雨や洪水から人命を守る取り組みを行っていただきたいと要望いたします。
 私の地元の武蔵野市でも、既に学校の校庭を利用して一時貯留施設等の設置を行っています。平成十七年九月の集中豪雨の被害が特に大きかった地域の小学校に、平成十八年度には豪雨対策の一環として市の費用で雨水浸透施設を整備しています。さらに、国の補助制度である下水道総合浸水緊急対策事業を活用して、平成十九年度から五カ年で市内の小中学校十一カ所に雨水浸透施設の整備を行っています。こうした先進的な取り組みを紹介しつつ、ぜひ都内全体の安全度を高めていただきたいと要望し、最後に都営住宅についてお伺いをいたします。
 平成二十二年度の都営住宅建てかえ事業に伴う創出用地の規模とその活用の現状について、まず初めにお伺いをいたします。

○上野再編利活用推進担当部長 創出用地につきましては、都の施策推進等のために活用を図っておるところでございまして、平成二十二年度は、老朽化した都営住宅の建てかえを進める中で、四団地におきまして計約一・一ヘクタールを創出いたしました。
 このうち、二団地、約〇・三ヘクタールにつきましては、鉄道の連続立体交差事業への活用などが見込まれております。
 他の二団地、約〇・八ヘクタールにつきましては、引き続き、関係部局とともに地元区の意向も踏まえながら活用について検討してまいります。

○松下委員 平成二十二年度の創出用地、〇・八ヘクタール部分については活用について現在検討中とのお答えでした。
 都営住宅の建てかえは、住宅の高度化により用地が創出されています。私の地元の武蔵野市でも、現在、緑町で建てかえ事業が行われている真っ最中であります。建てかえ終了時には一万平米、一ヘクタールの創出用地が生まれ、地元の関心も非常に高くなっています。この創出用地を公園用地にしてほしい、引き続き都有地としての利用をと求める声もありますが、ぜひ地元の意向も踏まえながら、活用について検討していただきたいと要望いたします。
 次に、都営住宅の高齢者住宅であるシルバーピアの目的についてお伺いをいたします。
 平成二十二年度のシルバーピアの新規戸数及び都営住宅全体の中でのシルバーピアの占める割合をお伺いいたします。

○荒川建設推進担当部長 シルバーピアは、ひとり暮らし等の高齢者が安心して生活できるよう、住宅施策と福祉施策が連携し、バリアフリー化された住宅と安否確認等の日常生活支援サービスの提供をあわせて行うものでございます。
 都営住宅では、事業の実施主体である区市との協議に基づきまして、平成二十二年度には二十戸を供給しておりまして、これまでの供給戸数は四千三百六十三戸でございます。都営住宅全体に占めるシルバーピアの割合は約一・七%でございます。

○松下委員 平成二十二年度には二十戸を供給とのお答えでした。
 私の地元の武蔵野市で、新規にシルバーピアが二十二年度に入居がされていますので、武蔵野のみの数字であると考えられますが、都営住宅全体としての割合が一・七%、これはちょっと低いのではないかと考えます。もっと高めていただきたい。高まらない、なぜ高まらないかといった原因についても分析をしていただきたいと要望いたします。
 シルバーピアの平成二十二年度の申し込み倍率についてお伺いをいたします。

○笹沼経営改革担当部長 二十二年度は、シルバーピアの入居者の募集を二回実施しておりまして、八月募集では、募集戸数六十三戸に対しまして五千二十一人の申込者があり、平均倍率は約八十倍でございました。
 また、二十三年二月募集では、四十八戸の募集に対しまして四千四十三人の申込者があり、平均倍率は約八十四倍でございました。

○松下委員 八十倍、八十四倍というのは、これはやはり非常に倍率は高いというふうに考えられます。シルバーピアに入居を希望する都民の方が非常に多いあらわれかと思います。一般の都営住宅の募集倍率、公表されているもの、一般では約三十倍、一般の中の単身者向けでは六十から七十というような数字もございますので、ぜひこうした高い倍率であるという現状も今後勘案していただきたいというふうに考えます。
 シルバーピアは、見守りのサービスというものが非常に充実をしておりますが、シルバーピア以外の独居高齢者というのも課題であると考えます。
 都営住宅において、孤独死をどう防ぐかは大きな課題であり、だれにも気づかれずに都営住宅で亡くなった人数についてお伺いをいたします。

○笹沼経営改革担当部長 いわゆる孤独死についての明確な定義はございませんけれども、居室内でだれにもみとられずに亡くなった単身者ということでとらえますと、都営住宅における六十五歳以上の高齢者につきましては、過去三年間、毎年四百人前後で推移しております。

○松下委員 過去三年間、毎年四百人前後ということで、居室内でだれにもみとられずに亡くなった単身者の物件というのは、事故物件という形で、一般の都営住宅の募集とは別での募集が行われることになると思うんですが、ぜひできるだけ少なくする、防ぐ努力をしていただきたいと思います。
 シルバーピアとそうではない都営住宅、どちらであっても、独居高齢者の見守りは非常に重要な課題と考えます。
 シルバーピアの絶対数が少ない中で、都営住宅の高齢者の見守りについてどのように取り組んでいるのかお伺いをいたします。

○笹沼経営改革担当部長 見守りサービスや介護サービスなどの福祉的な対応は、基本的には地元の区市町村が実施するものであると考えてございます。
 都営住宅におきましては、都は、住宅管理者として高齢者世帯等を対象に巡回管理人による支援を行っておりまして、六十五歳以上の高齢者世帯等で希望のある世帯に対しまして、定期的に戸別訪問を行い、書類の取り次ぎやさまざまな相談に応じております。
 また、居住者の高齢化等を踏まえまして、今年度から、触れ合いの場づくりなど自治会のコミュニティ活動を支援するモデル事業を実施しております。都の福祉保健行政におきましても、町内会、民生委員、ボランティアなどが連携したネットワークによる見守りなど、行政と住民の協働による地域の実情に応じた取り組みに対しまして、包括補助を通じ区市町村を支援しております。

○松下委員 新たなモデル事業も実施とのお答えですが、やはり都営住宅でありますので、もちろん各地元の市によっての対応、自治体ごとに対応等異なるとは思いますが、ぜひ各区市町村と連携をして、高齢者の見守り、孤独死を防ぐ取り組みというのを積極的に行っていただきたいと考えます。
 都営住宅の最後に、住宅の不正利用についてお伺いをいたします。
 私も地元で、都営住宅に入居している方から幾たびか、同じ住宅内に、使用しているとは思えない、本来は住んでいるはずなのに、どうやら他の場所に住んでいて、倉庫がわりに利用しているんじゃないかというようなご意見も、都営住宅の入居者からいただき、その都度、局にはお伝えをして、対応していただいておりますが、こうした不正利用というものは決してあってはいけない。住宅困窮者がいて、何度も何度も応募しても実際に当たらずに困っている人がいる現状、不正利用の実態を明らかにした上で、ぜひ是正をしていただきたいと思います。
 平成二十二年度に不正利用が明らかになった件数、そして是正件数についてお伺いをいたします。

○笹沼経営改革担当部長 都営住宅における不正利用として、不正入居、不正同居、長期不在、無断退去について見ますと、平成二十二年度は、新規発生件数が六百十二件、前年度からの繰り越しが三百八十一件、合わせて九百九十三件の不正利用がありまして、このうち、指導により是正した件数は六百二十八件でございます。

○松下委員 是正した件数を繰り越しと発生利用した件数から引きますと、二十二年度で三百六十五件、まだ是正ができていない件数があるということがわかりました。
 入居者からの告発や相談等を初め、ごみ出しの実態や自治会費の集金状況などから、不正利用の兆候というのはうかがえると考えますが、不正利用の実態把握をどのように行っているかお伺いいたします。

○笹沼経営改革担当部長 不正利用につきまして、その実態の把握は、居住者などから通報等があった場合、現地確認や居住者へのヒアリング等によって行っております。
 また、収入報告書を提出しない世帯などを対象といたしまして、毎年、居住実態の調査を実施しており、不正入居等の把握に努めております。
 通報や調査により不正入居等が把握された場合には、その都度、是正指導を行っており、それでも是正指導に応じない者につきましては、住宅の明け渡し請求等の法的措置により対処しております。

○松下委員 不正利用は、これは件数ゼロにしていただく努力を引き続き行っていただきたいと存じます。適正利用のさらなる促進と、本当に困っている人に住宅が行き渡るように努力をすべきと考えます。
 窓口の相談体制と不正利用を未然に防ぐための新たな試みについても、今後検討し、是正できていない件数を早急に是正するよう強く求めて私の質問を終わります。

○高木委員 都市整備局の課題というのは非常に多岐にわたっていると思います。それで、決算審議、予算審議を通じて非常に感じるのは、東京の都市整備の問題、都市づくりの問題、まちづくりの問題というのは、ある意味では国がやっていることの縮図のようなことだなというふうに、私は常々そう感じているんです。
 それで、先ほど来、東京外環道のお話がございましたが、外環道については私たち都議会にも議連がありまして、どう考えても、今回の震災だとか防災対策とかということを考えても、道路というものは一本につながっていることが必要なわけでして、緊急輸送道路の問題もそうなんですが、できるだけ東京都全体のことを考えた上で、東京外環道は、しっかりと事業を一日も早く進めていくという方針が私は必要なんだろうと思っているんです。
 ですから、私どもの議連も、民主党の先生が議連幹事長をお務めになられて、国に対しても陳情を繰り返しているわけです。これをぜひ一日も早くやるべきである、そしてその予算もしっかりとつけてほしい、そういうことをいっているわけですから、ぜひ担当の皆さんは、そういうことも含めて一日も早く外環を完成させるべく努力をしていただきたいなと思います。
 それから、防災対策という関係でもう一つ申し上げておきたいのは、八ッ場ダムの問題も、不当な国の圧力というか、国のころころ変わる方針に惑わされずに、私は一都五県というのは被害者だというふうに思っているんです。政権交代以来、とにかくコンクリートから人へという一つのスローガンの中で、八ッ場ダムというのがある意味ではターゲットにされて、血祭りに上げられたような形になっているわけです。
 一方で、河川を整備しろとか、下流部の整備をしろという中では、スーパー堤防もやりませんよというような話の中で、全く都市づくり、まちづくり、そして防災対策の整合性のないことを平気で国の方はいっているわけです。
 ですから、私たちはそういうことに惑わされずに、やっぱり東京に必要なことは東京がしっかりとやっていくんだと。もちろん国の補助、今は補助じゃなくなったのかな、交付金になったのかもしれませんけれども、国のお金も含めて、そういうものをしっかりと私たちは国にも要求をしながら、私たちの東京の万全なる都民に対するサービス、都民に対する防災対策というものをつくり上げる、そういう心意気で都市整備局の皆さんにはぜひ頑張っていただきたいというふうに思っております。
 私は、今回、そういった都市整備局の多岐にわたる事業の中で、二つの課題について取り上げさせていただきたいと思っています。
 一つは、東京の景観についてであります。屋外広告物については、都市の景観を構成する重要な一部、そういう認識で、私たちも屋外広告物、都市景観に対して取り組んでまいりました。
 中でも、私はずっと、まちのランドマークというふうにいってまいりましたが、商店街というのはまちのランドマークなんです。ここはやっぱりまちの顔ですし、地域の顔、そして地域の、ある意味では、いうなればコミュニティの核といってもいいのか、そういうものだというふうに思っています。
 商店街の広告については、まちのにぎわいに大きく寄与するということを思っておりまして、我が会派が働きかけて、屋外広告物、特に商店街の問題については、勉強会を立ち上げてこれまで議論を積み重ねてきた結果、都が屋外広告物の規制を緩和することによって、商店街の活性化と都市景観の向上という二つの効果を持つ事業が実現をする運びとなったわけであります。これはもちろん国の方の規制緩和もあったんですが、そのことを受けて、東京都としてはそういうことを私たちと一緒になってやっていただいたわけであります。
 改めて、この事業の社会的な意義というのがあるわけで、社会的な意義とその仕組みについて教えていただきたいと思います。

○永島景観・プロジェクト担当部長 屋外広告物を活用した商店街活性化事業でございますが、屋外広告物の規制緩和を行い、良質なデザインの統一感あるフラッグ広告がまち並みを飾ることで、魅力的な都市景観を生み出すとともに、まちににぎわいを生み、商店街の活性化につながる事業であると認識しております。
 通常、企業広告を道路上の街路灯へ掲出することは禁止されておりますが、本事業では、商店街が企業広告を掲出することを都が許可し、広告収入を道路清掃や街路灯の保守管理など公的な事業に活用することで、まちのにぎわいと商店街の振興を実現させた制度でございます。
 あわせて、広告デザインの質を向上させるため、都のガイドラインに基づき、事業の実施主体が自主的に広告の審査を行う仕組みを整備いたしました。
 平成二十一年度からモデル事業を行った結果、フラッグ広告による市民の好感度は高く、幅広い広告効果があり、また、広告料による収益がまちづくりの面でも有効に使われたことが検証されました。さらに、商店街の魅力的な風景を新たに創出するなど、都市景観の向上を確認することができました。

○高木委員 今のお話しにありましたように、私は非常にいい試みを今続けていただいていると思っているんです。それで、全都的にこういうことが広がっていってほしいなと思いながら、幾つかまだ問題がありますので、そういうこともこれから検証しながら進めていただきたいと思っています。
 東京都モデル事業での経験を踏まえて、さらなるまちのにぎわいと都市景観の向上を実現するために、本事業にどのようにこれから取り組んでいくのかお伺いします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 本事業につきましては、赤坂、立川など四カ所でのモデル事業を経て、本年六月から本格的に事業を開始しておりまして、本格実施から現在までの間、既に二カ所で事業を実施し、さらに複数箇所で実施が予定されているなど、事業の着実な展開が図られております。
 さらに、今後は、商店街の街路灯における規制緩和に加えて、新たに地域の公共的な空間において、案内板などに企業の広告を認める仕組みづくりに取り組んでまいります。
 例えば、近年、住民や企業がみずからのまちをみずからの手で維持管理などを行うエリアマネジメント活動に取り組む地域がふえております。このエリアマネジメント活動は、魅力あるまち並みの形成など、まちの活性化に大きく寄与することから、この活動を支援する規制緩和を組み合わせた仕組みを構築しているところでございます。
 こうした取り組みを積極的に展開することで、にぎわいのある魅力的な景観づくりを進めてまいります。

○高木委員 今ご答弁の中にエリアマネジメントという話がありました。
 それで、私は、都市整備局の皆さんが考えていただいて、商店街フラッグからエリアマネジメントに向けて、一つの政策的なステップを踏んでいただいたんだと思っているんです。
 つまり、エリアマネジメントというのは、商店街というのは、基本的には一本の道路を商店街というわけでして、それを面でとらえていただくという発想は、これはなかなか、後から考えると、そういう発想もあるんだなと思うかもしれないけれども、これは発想の転換で非常にいい発想だったと思っているんです。
 ですから、私は、こうした取り組みをこれからもぜひ引き続き続けていただいて、まちのにぎわいや躍動感というのを創出すべく、官民挙げてというのか、民の方にも協力をしていただく、官の方もそういうことを後押ししていただくということで進めていただきたいと思っています。
 知事が常々おっしゃられているように、東京は千客万来の世界都市といわれていますから、そういう千客万来の世界都市東京にふさわしい都市景観というのを、フラッグ事業だけじゃないんですけれども、エリアマネジメントも含めて、これからも、外国から来たお客様が、東京はすばらしいね、この都市景観はやっぱり世界の東京都だねといっていただけるような、そうしたことをぜひご努力いただければ大変ありがたいなというふうに思っております。私たちもこのさらなる取り組みに期待をいたしておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 続きまして、防災対策の関係で、木造住宅密集地域の改善についてお伺いをさせていただきます。
 今回、第三回定例会で、知事が木密地域不燃化十年プロジェクトというのを立ち上げて、木密地域の改善に力を入れて取り組むことを表明されたわけであります。
 この木密については、以前からずっとやられてきておりまして、大震災が発生した場合に、建物の倒壊や市街地の火災などによって甚大な被害が生じるおそれがあるということは、もう明らかなわけでして、その改善は、高度防災都市を実現する上で最大の課題の一つ、こういうふうにいわれています。
 たまたま私の地元北区にも木密地域はたくさんございまして、重点地域でいえば北区十条、それから、重点とはなっていないのかもしれませんが、滝野川ですとか、北区志茂とか、そういうところに木密地域が散見されているわけで、戦災で焼け残ってしまったというのか、いい意味で焼け残ってしまったところが、今、木密になってしまっていますので、そういうところはこれからどういうふうにしていくのか、あるいはどういうふうにしなければならないのかということに、大変大きな関心を持っている一人であります。
 十年プロジェクトを応援する立場から質問するわけですが、まず平成二十二年度の木密関係の予算と取り組みの実績についてお伺いをしたいと思います。

○藤塚民間開発担当部長 木密地域につきましては、生活道路や公園、広場等の整備、老朽住宅の共同建てかえ等への助成を行う木造住宅密集地域整備事業、延焼遮断帯の形成に資する建築物への助成を行います都市防災不燃化促進事業、道路整備と沿道のまちづくりを一体的に整備いたします沿道一体整備事業、それから東京都建築安全条例に基づきます新たな防火規制、木造住宅の耐震診断、耐震改修への助成など、さまざまな事業や規制を組み合わせながら推進しているところでございます。
 主な事業の平成二十二年度の予算と実績でございますが、木造住宅密集地域整備事業につきましては、予算額約十九億六千万円に対し、決算額約十七億七千万円、執行率は約九割となっております。主な整備実績といたしましては、生活道路や公園、広場などで約〇・八ヘクタールの空地を確保したほか、助成を受けて整備された共同住宅等が二棟、七戸でございます。
 また、都市防災不燃化促進事業につきましては、予算額約一億二千八百万円に対し、決算額約五千四百万円、執行率は約四二%でございまして、助成を受けて建築された不燃建築物が四十七棟でございます。

○高木委員 平成二十二年度における道路、公園の整備実績は一ヘクタールにも満たないという状況で、これでは何年たっても整備は終わらないんです。そういうことも含めて、知事が力を入れろよという発言をされたんだと思いますが、共同化や不燃化の実績も、今ご披瀝があったように、例えば執行率四二%の不燃化促進事業、こういうのも含めて、実績は申しわけないけど少ないわけです。これは非常に少ない。首都直下地震がいつ起きてもおかしくないといわれている中で、とても間に合わないわけであります。
 首都直下地震の問題は、先日、何かの新聞だか記事に出ていましたけれども、マグニチュード七クラスの地震が今後三十年以内に起こる確率というのが、七〇%とかつていわれていましたけれども、東大の地震研究所でしたか、そこの研究で、最近では九八%ということをいっているという報道が先日ありましたので、そういわれてしまうとほぼ確実に来るんだろうということになるわけであります。ですから、とても間に合わないといっている場合ではなくて、とにかく一日も早くやらなければいけないんだろうと思います。
 木密地域の整備は、これまでも多大な費用と時間をかけてきていますが、先ほど来申し上げておりますように、なかなか進んでいないのが実情。それは一体なぜなのか、どういうところに問題があるのかということを、東京都なりに多分分析はされていると思いますので、なぜなのかということをぜひ教えていただきたいと思います。

○藤塚民間開発担当部長 都は、区と連携いたしまして、防災都市づくり推進計画を策定し、重点整備地域などを定めて、延焼遮断帯の形成に向けた道路の整備や街区内の建物の共同建てかえ等による不燃化、耐震化などに取り組んでまいりました。
 しかしながら、木密地域では、居住者の高齢化により建てかえ意欲が低下していること、敷地が狭小であること、借地権や借家人が多く権利関係がふくそうしていることなど、種々の要因により建てかえが進みにくい状況にございます。
 さらに、住みなれた地域での居住継続を希望する居住者も多い中、希望に合う移転先の確保が難しいといった問題もございます。
 こうしたことが事業がなかなか進まない原因となっております。

○高木委員 東京の区部が特に、木密をたくさん抱えているんです。それで、地域によって状況も異なると思いますが、木密不燃化の十年プロジェクトでは、地域の実情を踏まえて問題点をぜひ研究していただきたいし、その上に立って実効性のある施策を構築していただきたいと思っています。
 今の答弁にあったように、木密地域の改善がなかなか進まない要因の一つに、狭い道路に面した狭い敷地の住宅が多いという実情があるわけです。
 例えば、よく考えてみればすぐわかるんですが、土地が十坪しかないと、接道しているところは狭隘道路だということになれば、当然、建築基準法でセットバックを要求されるわけです。そうすると、十坪の土地をセットバックして、状況にもよりますけれど、接道部分が長ければ長いほど、セットバックすれば敷地が小さくなって、十坪が八坪になったり七坪になったりということになるわけです。そうすると、当然建てかえるのをやめようかということに自然となるわけでして、むしろ、建てかえたいんだけど建てかえられない、建物自体はもう本当に耐震も危ないと、やりたいんだけれども、それで土地を減らされて建ぺい率も小さくなって、今住んでいるスペースが確保できないから、やりたくてもできないんだという声は、やっぱりどうしても出てくるんです。
 ですから、不燃化に効果のある条例に基づく新たな防火規制の区域を拡大するとともに、例えば、持っている容積が全部使い切れないというのは、斜線規制なんかがかかってくるわけで、あるいは建ぺい率の建築規制の緩和を組み合わせることなどによって、不燃建築物への建てかえをしやすくするような制度構築をしていくべきだし、私は、それは東京都から声を出さなきゃいけないんだろうと思うんです。
 木密の問題というのは、ある意味で日本全国の中で特に東京都の問題だと思うんです。田舎に行けば木密なんていうのはあり得ないわけですから、そうすると、全国一律の建築基準法をどうやっていじっていくかというのは、東京の特異な課題だといわれれば、優先順位が低くなってきて、法改正になかなか至らないという事情になってくるんだろうと思います。しかしながら、首都東京の首都機能を維持していくということを考えれば、木密はやっぱり解消しなきゃいけない、解消されなければならないというロジックを国に強力に訴えていくべきだというふうに思うんです。
 そこで、私は、新たな防火規制の区域指定の状況と、建てかえを促進するための建築規制の緩和というのは絶対に必要だと思いますけれども、そのことについて現状をお伺いしたいと思います。

○藤塚民間開発担当部長 都は、建物の不燃化を促進し、木密地域の再生産を防止するため、平成十五年に東京都建築安全条例を改正し、新たな防火規制を創設いたしました。
 これまでに、防災都市づくり推進計画に定める整備地域を中心に、約三千百四十ヘクタールを新たな防火規制区域に指定しておりますが、整備地域のある二十区のうち、規制を導入しているのは十一区にとどまっております。
 また、建てかえを促進するための斜線制限や容積率などの緩和につきましては、区がまち並み誘導型の地区計画や建築基準法に基づく緩和の仕組みを活用することにより可能でございますが、整備地域内での実績は少なく、その活用に向けては地域の実情に即した検討が必要と考えております。

○高木委員 せっかく制度があっても使われないのであれば、都として区や住民に十分にPRをしていくことが重要だと思います。
 今のご答弁の中で、木密地域の再生産を防止するというのは、私は非常に的確な指摘だと思っているんです。木密地域を、これからどんどんどんどん老朽化していく住宅がふえてきた中で、その地域が広がっていってしまうというのは、ぜひ食いとめなきゃいけないんだろうと思いますから、そういうことも含めて考えると、そんなに時間がないはずなんです。
 先ほどちょっと触れましたけども、木密の中で住宅が老朽化をしていく。もっと問題なのは、高齢者がふえてきますから、お亡くなりになって空き家になっちゃう、そうすると相続をすることになるわけです。それがなかなかうまくいかなくなったときに、空き家が何年も置いてあるなんていうケースはよくありまして、今、法律が改正されて、危ない、ぼろぼろになったような住宅については、強制的にそれをきれいにするということもできるようになったようでありますが、しかしながら、木密地域が再生産をされていくという恐怖は、どこかでちゃんと食いとめるべく施策を講じていかなきゃいけないと思うんです。
 先日、いつだったかちょっと日付は忘れましたけども、石原知事が、毎月、産経新聞に寄稿されている「日本よ」という記事がありましたけれども、あの中で、とっぴな発想を持ってこれからの我が国の道を切り開いていかなきゃいけないというような話がありましたけれども、まさに木密なんかは、そのとっぴな発想を導入すべき事案だというふうに私は思っているんです。
 今までの木密のやり方というのは、先ほど申し上げましたけれども、建築基準法の部分を直してほしいとかということをずっといってきましたが、しかしもっといえば、木密は、この間、知事も本会議で答弁をされていましたけれども、道が狭いことによって地域の密着度が非常に高いとか、隣近所の関係か強いとか、いい部分もたくさん実はあるわけじゃないですか。ただ、防災的にいえば危険度が高いと。
 だとするならば、防災の部分で、木密は災害に弱い、その部分を特化して、まちのコミュニティとしてはそういう密着度の高いまちでいいけども、しかしながら、災害に強いまちをつくっていくという意味では不燃化を進めていかなきゃいけないと。その二つの問題を一緒に解決するとすれば、逆にいえば、狭隘道路だってそのまま残して、それでもそこは安全だというふうにしていくということの方が、むしろ理にかなっているんだと思うんです。
 ということになれば、無理にセットバックをさせるという手法ではなくて、例えば木密地域のどこかに大きな防火水槽をつくって、狭隘道路の端々に、街路灯と同じようにスプリンクラーをつけるとか、そういうことだってできるはずなんです。それは確かにとっぴな発想だといわれればそうかもしれないけど、しかしそういうことも含めてやらないと、多分、木密はなくならないと思うんです。
 ですから、例えば消防自動車が入れないところは、スプリンクラーをちゃんとつけてくださいと、かたい建物を建ててくださいと。例えば、日本の家屋というのは木造建築が主体ですから、木造建築ではない燃えにくいものをきちっと建ててくださいと。そのときには容積の割り増しを認めますとか、いろんな手法がきっとあるはずなんです。
 ですから、木密解消というのはかけ声だけではなくて、ぜひ私は、知事がおっしゃるような、ちょっと発想を転換していただいて、少しとっぴだなと思われることも含めて、いろいろとお考えになることが必要なんじゃないかというふうに思っています。
 最後に、十年プロジェクト、常々いわれておりますが、防災の専門家や阪神大震災の被災体験者らとともに、意識啓発に取り組むことでありますけれども、ただ危機感をあおることだけではなくて、都からもそうした制度について説明して、住民に理解してもらい、取り組みを促していくことが必要であるということだと私は思います。
 ですから、そのことに対して、これからどういうことをやりたいのか、東京都の見解を伺いたいと思います。

○遠藤市街地整備部長 申すまでもなく、木密地域の改善は首都東京の最大の課題の一つでございます。木密の問題は、そこに暮らす住民がみずからの問題としてとらえ、地域が一体となって改善に取り組んでいく必要がございます。
 今回、木密地域不燃化十年プロジェクトがスタートいたしまして、そのキックオフイベントといたしまして、来月六日、お話しございましたように、防災の専門家や阪神・淡路大震災の被災体験者を招いて講演会を実施いたします。
 また、これを皮切りに、木密地域の現地に出向きまして、住民と直接意見を交わす場を順次開催してまいります。
 お話しのございました、不燃化を進めるための防火規制の導入あるいは建築規制の緩和につきましては、そのための制度は用意されているわけでございますけれども、それらが十分に活用されていないという面がございます。このため、講演会や意見交換会などを通じまして、こうした制度でありますとか建物の共同化の必要性などを丁寧に説明いたしまして、理解がいただけるように努めてまいります。
 さらに、都有地等を活用した効果的な生活再建支援など、新たな誘導策についても鋭意検討を進めまして、地域の実情に応じて施策を組み合わせて、地元区と連携しながら積極的に実施することにより、木密地域の改善に取り組んでまいります。

○高木委員 木密地域の不燃化十年プロジェクトは新しい試みですから、期待をさせていただいておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 木密の課題は、もう従前からいわれているように大変難しい課題ですし、それを一気に直していくというわけにいかないんです。
 そうはいいましても、先ほどいったように時間も余りないんです。ですから、建築規制の思い切った緩和とか、あるいは相続が発生したときの相続税の優遇措置だとか、生活再建支援策なども含めて、新しい誘導策を含めて具体的な検討を進めて、それぞれ地元の区とも連携をして、都としてしっかりとぜひ取り組んでいただきたいと思っております。
 繰り返しになりますけども、時間が本当にありませんので、早くやらないと、いつ来てもおかしくない地震に対応できなくなりますから、その部分はぜひご努力をお願いしておきたいと思います。
 以上で終わります。

○長橋委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後三時十二分休憩

   午後三時二十五分開議

○長橋委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○加藤委員 まず初めに、平成二十二年度都営住宅等事業会計決算について伺います。
 都は、平成三年度から、既存住棟へのエレベーター設置の取り組みを初め、これまでの二十年間に千二百基を超えるエレベーターの設置を行っており、平均しますと毎年六十基のペースで整備を進めています。しかし、平成二十二年度は、六十五基の予算に対して設置実績は三十二基、平成二十一年度も三十一基であり、ここ数年、そのペースが鈍っていると感じています。
 一方、居住者の高齢化は急速に進んでおり、日々の暮らしに欠かすことができないエレベーターを一日も早く設置してほしいと望む切実な声が数多く寄せられております。都営住宅全体のバリアフリー化の早期実現に向けて、さらに取り組みを強化すべきであると考えます。
 そこで、近年、エレベーターの設置が進まない理由について伺います。

○妹尾営繕担当部長 平成三年度から既存住棟へのエレベーター設置を開始いたしまして、お話しのように、これまで千二百基余りの設置を進めてまいりましたが、近年では、日影規制等に対し既存不適格建築物であるなど敷地の条件が厳しい住棟、また、耐震改修とあわせて進める必要がある住棟など、技術的に困難を伴うものが多く残ってございまして、エレベーターの設置に時間を要する状況となっております。
 また、これまで、設置に当たりまして居住者全員の同意を要件としてまいりましたが、これも設置が進まない理由の一つに挙げられると考えてございます。

○加藤委員 ただいま答弁いただきました理由のうち、敷地の条件や耐震改修などの技術的な課題についても、鋭意解決に向けて取り組んでいただきたいと思いますが、居住者全員の同意を要件としてきたことが設置が進まない大きな理由ではないかというふうに思うんです。都営住宅にはさまざまな方がお住まいでありまして、中には、たった一人の居住者の同意がいただけないためにエレベーターの設置に至らず、居住者全員が不便な生活を強いられている、そういった例も多くあるというふうに聞いています。
 そこで、これまで自治会としての要望が出されながら、未同意の居住者が存在することで設置に至っていない住棟の数、また、その中で未同意の居住者が一人であった住棟の数について伺います。

○妹尾営繕担当部長 既存住棟へのエレベーター設置を開始して以降、自治会から設置の要望書が提出された住棟で、全員同意が得られずにエレベーター設置に至っていない住棟は二十棟ございます。
 このうち、未同意の居住者が一人であった住棟は八棟と把握してございます。

○加藤委員 今答弁がありましたように、これまでで八棟が一人の反対により設置に至っていないということがわかりました。
 都は、さきの第三回定例会におきまして我が党の代表質問に答え、エレベーターの使用や維持管理が円滑に行われていくと見込まれる場合などには、全員同意の要件について弾力的な運用を図っていくという答弁を行い、新たな方針を表明いたしました。この方針の表明を受けて、これまで居住者の全員同意が壁となってエレベーターの設置をあきらめていた住棟の居住者の方々の中にも、改めて設置に向けた期待が高まっています。
 そこで、今後どのような住棟が弾力的運用の対象となるのか、その考えについて伺います。

○妹尾営繕担当部長 弾力的運用についてでございますが、エレベーター設置後の使用や維持管理の実施を担保していくために、三つの要件を満たす住棟を対象としてまいりたいと考えております。
 具体的には、第一に、未同意の居住者が一人であること、第二としまして、未同意の居住者がエレベーターの設置に反対する理由が社会通念に照らしまして受忍すべきものであると判断されること、第三に、エレベーターの使用や維持管理が確実に行われると判断されることでございます。
 このような要件に該当する住棟につきまして、関係法令への適合性の確認も踏まえ、設置が適切であるものにつきまして、自治会と連携を図りながら設置を推進してまいります。

○加藤委員 今答弁のありましたエレベーターの使用や維持管理が確実に行われると判断される場合とは、具体的にはどのような場合か伺います。

○妹尾営繕担当部長 設置したエレベーターにつきましては、円滑な使用と確実な運行を担保することが重要と考えております。
 そのため、まず第一に、設置したエレベーターを、未同意の居住者の使用も含め、だれもが使用することについて、居住者間で合意されていること、第二といたしまして、仮に、未同意の居住者が自治会の共益費を負担しない場合においても、エレベーターの電気料金の支払いを確実に行うための方法が、居住者間で合意されていること、以上の二点が確認できる場合を対象としてエレベーターの設置を進めてまいります。

○加藤委員 日々、階段の上りおりに苦労されている高齢者など、居住者の方々にとってエレベーターの設置は、もう本当に切実な願いでありますけれども、自治会の運営形態や居住者の状況は団地ごとに千差万別で、全員同意に向けたハードルは厳しい場合も多々あるのが現実だというふうに思います。
 今回は、未同意の居住者が一人の住棟を対象として、これまでの制度から一歩踏み出した取り組みを開始するとのことで、評価いたしますけれども、今後は、この取り組みにおける課題も踏まえながら、さらに弾力的に運用できるところは大いに運用していただき、未同意者が複数の場合も含めて、エレベーター設置のすそ野を広げていくことを要望します。
 続きまして、今度は都営住宅の管理について伺いたいと思います。
 都営住宅において、新たな入居者の方も含め、居住者の方が円滑に生活していくためには、良好なコミュニティの形成が重要と考えます。
 そこで、まず、平成二十二年度に都営住宅に入居した世帯は何世帯だったか伺います。

○笹沼経営改革担当部長 平成二十二年度に都営住宅において新たに入居許可を行った世帯数は、約六千三百世帯でございます。

○加藤委員 約六千三百世帯とかなりの数の世帯が入居されています。このように、都営住宅には毎年度多くの世帯が入居されており、入居者の方の居住ルール遵守や自治会との協力が、コミュニティを良好に保持する上で重要であると考えます。
 そこで、改めて確認しますが、都営住宅への入居に当たって、良好なコミュニティ保持の観点から都はどのように対応しているのか伺います。

○笹沼経営改革担当部長 都営住宅への入居に際しての説明会におきまして、都営住宅における居住のルール等について、居住者向けのガイドブックであります「住まいのしおり」を配布し、説明を行っております。
 また、説明会では、入居者の方に自治会の役員等とお話しいただき、入居団地における住まい方のルールを確認していただくよう要請しております。
 さらに、居住のルール等につきましては、居住者向けの広報紙「すまいのひろば」により随時周知を図っております。

○加藤委員 都がいろいろ行っていることは確認できましたけれども、都営住宅には外国人の方も多く入居されておりまして、自治会等からは、外国人の入居者がごみ出しなど居住ルールを守らず、清掃活動など自治会の活動にも協力しないなど、対応に苦慮しているとの声を聞いております。
 外国人の入居者が居住ルールの重要性を認識し、自治会とも良好な関係を築いていくことが必要だと思いますが、これについて都はどのように取り組んでいるのか伺います。

○笹沼経営改革担当部長 お話しのとおり、都といたしましても、外国人を初め居住者の方々が居住のルールや生活マナーを守り、自治会等に協力しながら、コミュニティの維持、活性化が図られていくことが必要であると考えております。
 そのため、居住のルール等を記載した「住まいのしおり」を英語、中国語、ハングルの三カ国語で要約した冊子を作成し、外国人の入居者の方に配布しております。また、入居者が住まい方のルールを守らない場合には、都及び東京都住宅供給公社により、自治会等とも連携して指導を行っております。
 今後も、居住者の方々に対しまして、居住のルール等の周知徹底を図るとともに、自治会等と連携し、都営住宅の適正な管理に努めてまいります。

○加藤委員 今答弁がありましたように、都におかれては、居住ルールの周知徹底や自治会等との連携や支援など、引き続き、知恵を絞って、実効性のある取り組みを進めていただくよう切にお願いをしまして、次に移りたいと思います。
 続きまして、東京ユビキタス計画について伺います。
 都はこれまで、ユビキタス技術の実証実験として、観光案内や障害者への移動支援などに取り組んでいます。日本の誇る最先端技術を活用して、いつでも、どこでも、だれでも必要な情報を手に入れることができる社会、すなわちユビキタス社会を目指すものであり、都民がより機能的で快適性の高い都市生活を送る上で大変重要な取り組みであります。
 そこで、平成二十二年度の東京ユビキタス計画実証実験の取り組みについて伺います。

○邊見企画担当部長 実証実験の取り組み状況についてですけれども、平成二十二年度は、銀座地区などにおきまして、情報提供サービスの向上を図るなど、より便利で使いやすいものとなるよう取り組みを進めてございます。
 例えば、無線LANからの電波を使って位置を計測する技術、これはWiFi測位とも呼ばれておりますけれども、これも活用して、銀座地区の銀座通り、晴海通り以外のエリアについても面的に情報提供できるようにしたこと。それから、地元の協力をいただいて、参加する店舗数を前年度の約七十店舗から約四百五十店舗にふやしたこと。また、晴海通りの歩道に埋め込み式の路上マーカを新たに十六基追加設置して、交差点など必要な場所でタイミングよく情報提供できるようにしたこと。さらには、視覚障害者への移動支援実験では、コースの延長を約二倍の四百三十メートルに拡大したことなどでございます。
 これらの結果、銀座地区で行ったアンケート調査によりますと、位置案内サービスについて、利用した八割の人が役に立ったと回答するなど、高い評価を得てございます。

○加藤委員 これまでメーン通りだけだったものから、銀座地区全体でサービス提供ができるようになったことなどが、利用者からの評判にもつながっていると考えます。
 また、さきの第三回定例会において我が党から代表質問をしたところですけれども、ユビキタス技術の活用につきましては、災害時も含め、こうした技術のさらなる活用が大事だと思っております。
 そこで、改めて今後の取り組みについて伺います。

○邊見企画担当部長 今年度は、これまでの取り組みに加えまして、より汎用性を高める取り組みを行う予定でございます。
 例えば、利用者が専用端末の貸し出しを受けることなく、普及の進んできたスマートフォンを活用することで情報提供を受けられるようにすること。また、民間企業八社の参画によりまして、普及、実用化に向けた取り組みも促していくことなどでございます。
 一方、東日本大震災では携帯電話が利用不能となるなど、災害時における情報提供の難しさが明らかになりました。ユビキタス技術は、外国人や、そのまちを初めて訪れる人、障害のある人などへの情報提供手段として有効でありますけれども、災害時には健常者でも情報面で移動制約を受ける可能性があることから、災害時の情報提供手段としても有効であると考えてございます。
 今後、この面での活用についても検討を進めて、防災にも寄与するシステムの構築につなげていきたいと考えてございます。

○加藤委員 国内では、昨年がスマートフォン元年というふうにいわれていまして、民間の調査では、スマートフォンの所有率は約五%、ことしは、推定ですけれども、九・五%と倍増して急速に普及しております。専用端末ではなく、スマートフォンの利用が進めば、大いに利便性が高まり、活用の仕方も広がっていきます。大いに期待しておりますので、今後も事業の進展をお願いいたします。
 それでは、最後に、補助一二〇号線鐘ヶ淵通りの沿道一体整備事業について伺います。
 補助一二〇号線は、防災拠点である白鬚地区と亀戸・大島・小松川地区の二つを結ぶ大切な路線であり、災害時に火災が広がらないようにする延焼遮断効果など、地域の防災性向上の観点から早期に完成させることが必要です。
 この路線は、道路整備とあわせて沿道建物の建てかえを支援する仕組みによって事業が進められています。現在、一期区間として事業中の水戸街道側から約三百七十メートルの区間の現場を見ますと、大分用地買収が進んできたという感じがいたしておりますけれども、一期区間の今までの成果と取り組み状況について伺います。

○藤塚民間開発担当部長 鐘ヶ淵地区の補助一二〇号線の一期区間でございますが、平成十七年に事業着手いたしまして、現在までに約六割の用地を取得しております。
 今年度は、早期に事業効果を発現する取り組みとして、道路の本整備に先行して仮歩道の整備を予定しております。
 現道に沿いまして、用地買収であきました約八十メートルの区間に幅員五メートルの仮歩道を整備することによりまして、地域の方々に将来の歩道の形をイメージしていただき、事業の促進につなげてまいります。
 また、沿道のまちづくりでは、建物の共同化などによる建てかえの支援に取り組んできております。
 その成果といたしまして、本年一月には、単独での利用が困難な狭小な残地を集約した協調建てかえによる建物が完成し、現地での生活再建を図ることができたところでございます。

○加藤委員 古くから住んでいる方が多くて、地区内で生活再建できることは地元の要望にもかなうものであり、今後も大いに期待するところです。
 そして次に、墨堤通りまでの残された区間についてですけれども、先月発行された日本共産党の墨田区議団ニュースには、事業化が十年先になるかのような記事がありました。私もその広報紙のコピーを見て驚きました。これなんですけれど、一応持ってきたんですけれどね。
 この区間につきましては、私がこれまで何度か議会で質問をしており、都は早期の事業化に向けて検討していくことを答弁しています。こうした状況をかんがみず、地元の方々に、将来の生活設計や事業再建をどうするかというお気持ちに対して誤ったイメージや不安を抱かせるような記事を載せることは、厳に慎むべきと考えます。
 また、必ずしも一期区間が終わらなければ残りの区間が着手されないということもないと認識しておりますけれども、そこで、残りの区間の取り組み状況について改めて伺います。

○遠藤市街地整備部長 残りの区間の取り組み状況についてのお尋ねでございます。
 補助第一二〇号線は、一期区間から先の墨堤通りまで約五百三十メートルが未着手となってございます。この区間につきましても、防災性の向上はもとより、道路ネットワークの強化や沿線地域の活性といった観点から、早期に事業化を図るべきものと考えております。
 また、事業の具体化に当たりましては、東武伊勢崎線との立体交差化や鐘ヶ淵駅を含めた周辺のまちづくりについて検討を進めていくことが必要でございます。
 現在、地元墨田区におきましては、道路と鉄道との立体交差方法の比較などの検討が行われております。
 また、まちづくりにつきましては、昨年度行ったアンケート調査をもとに、駅前広場を含むこの地区のまちづくり計画について検討が進められておりまして、年度内に素案として地元に示す予定、このように聞いてございます。
 一方、都は、昨年秋から区と連携いたしまして、専門家の力もかりながら、沿道の地権者に働きかけまして、街路整備を契機としたまちづくりの機運醸成に取り組んできたところでございます。
 このような地元におけますまちづくりの動向を見ながら、早期に事業認可を取得できるよう取り組んでまいります。

○加藤委員 いうまでもなく、鐘ヶ淵周辺は防災都市づくり推進計画で重点整備地域に指定されており、道路整備などを重点的に行い、早期に防災性の向上を図っていく地域と位置づけられています。
 今、答弁で、残りの区間の事業認可が早期に取得できるよう取り組んでいくとの力強い答弁をいただきました。墨田区においても駅前広場等のプランを近々示すということであります。歩道のない危険な踏切の現状を解消する事業に反対する人もいないと認識しております。
 一期の工事を二十二年度末に五年間延長いたしましたけれども、その中で、できるだけ早く二期工事の認可申請に入れるよう努力を重ねていただくよう要望しまして、質問を終わります。

○畔上委員 資料の作成、ありがとうございました。
 私は、まずその資料の分譲マンションの耐震化助成について伺いたいと思います。
 都内のマンションの高経年化が進みまして、十年後には、築四十年以上のマンション、これが現状の四・五倍になるといわれております。
 私は、実は専門家の方々のお力もおかりして、マンション相談会というのを取り組んでいるんですけれども、そういう相談会を通じて非常に感じているのは、今回の地震を受けて、マンションの居住者の耐震化に対する関心が非常に大きく広がっているというふうに思っております。
 二十二年度のマンション耐震改修の促進事業の実績を見ますと、執行率はなかなかいっていないというのが現状だと思います。なぜ進まないのか、都はどのような理由だと考えていらっしゃるのかまず伺います。

○高田民間住宅施策推進担当部長 分譲マンションの耐震化につきましては、区分所有者間の意見調整が難しいこと、耐震化の検討には専門的知識を要すること、新たな費用の負担の検討が必要なこと、さらには、合意形成を経て耐震化が実現するまでに相当の時間を要することなどが、助成実績に反映しているものと考えております。

○畔上委員 今ご説明もありましたが、区分所有者の意見調整が難しいその大きな要因の一つに、経済的な負担が重いということだと思うんです。
 しかし、三月十一日の大震災で、私の居住するマンションも改修工事を行ったんですけれども、多くの中古マンションは、耐震化をどうするのかということに真剣に向き合う、そういう状況が今生まれているというふうに思います。
 ある築四十年を超えるマンションなんですが、ここは五億円かけて大規模改修をやったんです。一件当たり百万円の負担だったんですけれども、すべて積立金で大規模改修を行ったということなんですが、しかしその改修直後に三月十一日の大震災を受けてしまったということで、耐震診断もやっていないので、じゃあどうするかと。管理組合の中でもけんけんがくがくの議論になったそうですが、耐震診断と耐震補強工事のお金は大規模改修で全くなくなってしまったから、もうやめようじゃないかと、結果的にそうなってしまったというお話なんです。耐震診断と耐震改修工事の必要性、この認識は深まっても、先立つものがなければ、やっぱり足踏みせざるを得ないというのが実情じゃないでしょうか。
 私の居住しているマンションもそうなんですけれども、どうやって大規模改修の財源をつくるかということは、本当に各マンションご苦労されていて、例えば、敷地を活用して駐車場台数をふやして修繕積立金をふやすとか、そういう形でいろいろご苦労されながら、修繕積立金を積み立てているのが実態だというふうに思います。だからこそ、私は、耐震診断や耐震補強工事の促進、そのためには行政が出番なんだというふうに思うんです。
 分譲マンションに対する耐震診断と耐震改修工事に対する補助の引き上げ、これをすべきだと私は思うんですけれども、二十二年度どんな検討をされたのか伺います。

○高田民間住宅施策推進担当部長 建築物の耐震化は、自助、共助、公助の原則を踏まえ、建物所有者が行うことが原則であると考えております。
 しかし、分譲マンションの耐震改修には、多数の区分所有者による合意が必要とされるなどの課題がございます。
 このため東京都は、区市と連携して、アドバイザーの派遣や耐震診断、耐震改修への助成など、耐震化に取り組む管理組合を支援しており、補助率の見直しは考えておりません。

○畔上委員 このたびの大震災を受けて、例えば、横浜市では緊急措置だということで、これまでの二分の一補助から三分の二補助に上限なしに引き上げたわけです。
 今のお話では、所有者が行うことが基本だ、自己責任だというふうにおっしゃったんですが、先ほども議論の中で、直下型地震がいつ起きるかわからないというお話もありましたが、そういう中で、耐震診断だけはやっておけば、次の手を考えることができるわけです。自分たちの住まいがどういう状況にあるのかということをきちんと認識するということは、私は非常に大事なことだと思います。そういう点では、耐震診断の助成制度を拡充して診断を促していくということは、やっぱり必要だというふうに思うんです。
 同時に、マンション居住者の安全・安心の確保と住宅市街地の防災の向上、その観点から、耐震改修による耐震化を図ることは喫緊の課題なんだという認識をきちんと都市整備局としても持っていただきたいと思います。
 今回の地震では、私の地元は江東区なんですが、江東区内のマンションでいろいろな被害がありました。エレベーターのロープが絡まってしまって故障してしまったとか、天井が落ちてしまったとか、モルタルなどにクラックが入った。躯体そのものではなくて、躯体以外の非構造物の破損や故障が多くあったんです。
 建築基準法で求められている耐震性能というのは構造躯体についての基準であって、非構造物の設備やそういったものの耐震化は定められていないわけです。だから非構造物の被害も大きかったのかなというふうに思いましたが、こうした分譲マンションの高置水槽とか、天井などの非構造物の耐震化に対して助成をすべきだというふうに思うんですけれどもいかがでしょうか。

○高田民間住宅施策推進担当部長 建築設備などの非構造部分であっても、耐震診断で補強等が必要とされたものについては、建築物の耐震改修工事とあわせて実施する場合、既に現行の耐震改修助成制度の対象となっております。

○畔上委員 あくまでも耐震補強工事とあわせての場合ということです。私は、非構造物の耐震化だけでも早く進めるということは、命や暮らしをしっかり守る上で大事なことだというふうに思うんです。もちろん構造の方は当然ですけれども、しかし、非構造物に対しても耐震化するということは非常に大事なことだと思います。
 実は、今回の地震でも、室内の温水器の転倒による漏水などがあったマンションが結構あったんですけれども、耐震補強の金具による固定を行ったマンションでは被害が少なかった、こういう実態も伺っています。都として、必要な非構造物の耐震化に対する助成制度とともに、適切な指導を求めたいと思います。
 次に、被害に対する支援なんですけれども、今回の地震で、都内でもマンションの被害が多くあったわけですけれども、被害が非構造物の場合、地震保険の対象外となっているわけですから、この修繕も大きな負担になっているわけです。新しいマンションでも、エントランスに被害が集中したマンションも多く見受けられました。
 江東区内や江戸川区の清新町などでは、ひどかったなというふうに、いろいろ調査をして思ったのは、液状化で地盤が沈下して、建物は地中くいで支えられているんで、建物との接合部分、そこに陥没やひび割れ、破損などの被害が集中していました。駐車場や駐輪場の地面が波打って、いわゆる敷地のタイルとか敷地内のマンホールとかが浮いてしまっている、そういう状況を何カ所も見ました。
 液状化によるこういったマンションのエントランスが破損したときの被害を受けたマンションに対する支援制度、これを求めますがいかがでしょうか。

○高田民間住宅施策推進担当部長 エントランスなどの分譲マンションの共用部分の修繕を行う場合は、既にマンション改良工事助成制度の利子補給による支援を行っており、地震により被害があった共用部分の修繕にも利用することは可能でございます。

○畔上委員 現行のこの制度そのものは非常に重要な制度だと私も思っておりますが、やはり緊急で対処しなければいけないということで、各マンションは、どういうふうに緊急のお金を集めるかということで非常にご苦労されているわけです。ですから、ぜひ検討していただきたいと思います。
 このたび、既存マンションの全棟調査を行うというふうになったわけですけれども、所在や規模などの基本的な情報と耐震診断や耐震補強工事の実施状況の把握、実施していない場合の理由などを調査するというふうに伺っているんですが、今回の地震による被害状況、それからそれにかかった費用、修繕の費用がどのぐらいかかったのか、そういった状況、それから、マンションの理事会や自治会の行政に対する要望、これをせっかく全棟の調査をするんですから聞き取っていただきたい。そして、聞き取って調査することが次の行政としてのマンション支援策の対策につながっていくんだというふうに思います。ぜひそのことを強く要望しておきたいと思います。
 それから、都営住宅についてです。
 都営住宅の承継問題です。十九年八月から実施されました使用承継の制度改正の問題ですけれども、二十二年度内にも、都営住宅の居住者から、ひきこもりの息子がいて、私がもし死んでしまったらこの子はどうなるんだろうかと本当に不安で仕方ない、承継の特別事情として認めてほしいとか、失業中の子どもは自分が死んだらどうなるのか、あと二年間、この息子さんは五十八歳だったんですけれど、石にかじりついても、生きていかなければならないというふうな切実な声が寄せられました。
 高齢者か、障害者及び病弱者の特別の事情により必要が認められる場合しか、名義人の三親等親族までの承継というのは認められなくなってしまったわけです。
 そこで伺いたいと思いますが、先ほど、二十二年度入居した世帯は六千三百世帯というご説明があったんですが、それでは二十二年度退去した世帯は何世帯だったんでしょうか。

○笹沼経営改革担当部長 平成二十二度に都営住宅を退去した世帯数は、約七千世帯でございます。

○畔上委員 退去の理由の内訳まではカウントしていないというふうに伺っておりますが、私はその中には、使用承継できずに退去せざるを得なかった人も結構あるんじゃないかというふうに思います。
 こんな方もいらっしゃったんです。他県にいらっしゃったんですが、母親の介護のために仕事をやめて、自分の住まいも引き払って都営住宅に同居したんですが、母親が死んでしまって失業状態で、都営住宅も退去、わずかな蓄えで、転々とネットカフェを渡り歩き、仕事も住まいも見つけられずに、結局ホームレスになってしまったという方です。
 たまたま私、相談を受けて、何とかホームレス状態から脱することはできたんですけれども、その方が居住していた都営住宅の団地の人たちは口々に、彼は寝たきりになった母親の介護でわざわざ来た、親孝行しようと頑張る人を切り捨てていいんだろうか、せめて仕事が定着するまで、仕事が見つかるまで使用させるべきじゃないのかという声もいただきました。
 これまで、退去者の中で相談があったのでしょうか。どのような内容の相談があったんでしょうか伺います。

○笹沼経営改革担当部長 都営住宅の使用承継につきましては、居住者の方から退去期限、高齢者等についての特例、退去後の住宅などの相談を受けることがございます。

○畔上委員 次の住まいの相談をしても、なかなか次の住まいが見つからないという、先ほどの例をいいましたが、失業者の方とか、ひきこもりの方とか、そういう方々があきらめてしまって、家も失っているという方もいるわけです。
 私は、特別の事情の中には、こうした失業やひきこもり、こういった特別な事情が配慮されないのはおかしいというふうに思いますが、特別な事情を規定するに当たって、規定したときに都民や居住者から意見を聞いたんでしょうか。

○笹沼経営改革担当部長 都営住宅の使用承継制度につきましては、平成十八年の東京都住宅政策審議会答申及び平成十七年の国の通知を踏まえまして、公営住宅の入居者と非入居者間の公平性を確保するため、平成十八年八月に制度を改正したところでございます。
 実施に当たりましては、一年間の周知期間を設けまして、居住者に配布しております広報紙への掲載、東京都住宅供給公社の窓口や団地内でのポスターの掲示、また、局のホームページ等で見直しの内容を周知いたしました上で、平成十九年八月から実施をいたしました。

○畔上委員 それはあくまでも周知であって、居住者の意見を反映されたものではないわけです。居住しなければ生活の維持が困難な場合は、まさしく特別な事情ということなわけですから、失業、それからひきこもり、当然、特別な事情の方です。こういう方も特別な事情に含めるべきだというふうに思いますし、この問題で居住者の意見をきちんと聞く場を設けるように強く求めたいと思います。
 この間、特別な事情の病弱者について、都立か公社病院の医師の診断書でなければ認めないといった問題なども、私は道理が通らない問題だと思います。あわせて改善を求めたいと思います。
 今、居住者と非居住者との不公平ということをおっしゃいましたけれども、それをいうのであれば、二〇〇〇年から都営住宅を一戸もつくってこなかった、そのことが問題で、増設すべきだというふうに思います。
 公営住宅法の公営住宅の目的である健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備して、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、または転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与すると、この目的、このためには、貧困世帯が今非常にふえている、そういう実態から、やっぱり増設すべきなんだということを私は強く求めたいと思います。
 次に、型別供給の問題ですが、一DKは三十二平米から三十五平米に改善されたなど、型別供給でのスペースの若干の広がりの改善というのは、これはよかったわけですけれども、とはいっても、平成五年までは、一DKはたしか三十五平米から四十三平米ですから、少し戻ったといった方がいいのかもしれないですが、居住者の方々からは、介護ベッドを置いたら車いすが入らない、入浴サービスのおふろおけが入らないなど、とても狭過ぎて、介護もまともにできないというのが実態だという声を聞いております。
 建てかえ後に建設される住宅は、高齢者が多いということで、一DKとか二DKが全体の九〇%を占めるようになるわけです。そうすると、バリアフリーはもちろんですけれども、介護ができる、そういう居住スペースをしっかり確保すべきだというふうに思います。
 実際に私も、建てかえ前のおうちなども何軒も見せていただきましたけれども、例えば二DKの場合でも、おふろやトイレの狭い入り口で、車いすは中まで入れないということで、家族が大変苦労されながら介護しているわけです。特に老老介護が多い中で、時々、体を支え切れないで、介護する人も、それから介護される側も、一緒になって倒れていると、そういうことがたびたび起きるという事態も伺ってきました。
 そういう点では、東京都のみずから計画されました住宅マスタープラン、これでは、二十二年度までに単身者で四十四平米という誘導居住面積の水準を全世帯の五〇%にするんだ、こういう目標をみずから掲げているわけです。だから、私は、都営住宅も建てかえに当たってはその水準にきちんと拡充すべきだと思うんですがいかがですか。

○荒川建設推進担当部長 建てかえで供給する都営住宅の住戸の面積につきましては、都営住宅が都民共有の住宅セーフティーネットでありますことから、入居対象世帯の人員に応じた最低居住面積水準を確保するとともに、バリアフリーなどを考慮しまして設定しておりまして、拡大することは考えてございません。

○畔上委員 都営住宅は最低居住水準でいいんだと、誘導居住水準ではないんだという考え方は、住宅政策の後退だといわざるを得ないと思います。
 今の都営住宅を見せていただくと、よく、洗濯機の置く場所がトイレの横になっていて、カニ歩きじゃないとトイレに行けないとか、そういう中で、足の不自由な方がトイレに行くことさえ本当に苦労されていたり、ガスの口が台所に一個しかないのでガスコンロしか使えないとか、そういう設備面とか間取りにおいても、居住者の意見が本当に反映されているのかなと疑問に思うようなことが多々あるわけです。
 私は、病気とか障害があっても安心して暮らし続けられるような設備や間取りの改善も含めて行っていただきたいと思いますし、何よりも、住まいは人権なわけですから、そういう立場で対応することを要望したいと思います。そのことを強く要望して、質問を終わります。

○今村委員 それでは、四項目について質疑を行いたいと思います。
 まず、都においては、「十年後の東京」で掲げた水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京の実現に向け、二〇〇七年一月に全庁横断的組織である緑の都市づくり推進本部を設置し、緑の東京十年プロジェクトを推進しています。緑の創出、保全、維持に関するさまざまな取り組みが行われておりますけれども、市区町村においても、特別緑地保全地区を指定し、緑の保全に努めています。
 そこで、都は、二〇一〇年度に特別緑地保全地区への補助制度を創設したと聞きました。この特別緑地保全地区指定促進補助制度について、制度の目的、昨年の執行状況についてお伺いいたします。

○町田都市づくり政策部長 特別緑地保全地区は、都市計画として指定をいたします一定の開発行為を規制することにより都市の緑地を保全するという地域地区の一種でございます。
 特別緑地保全地区の指定区域内では、開発行為が許可をされない場合、地権者は地方公共団体に対しまして土地の買い取りを請求することができます。自治体もこれに応ずる義務が生ずるため、特別緑地保全地区の指定がなかなか進まず、結果として緑地の保全が担保されないという状況にございました。
 このため都は、用地費の三分の一を上限として国が補助するのに加えまして、都も三分の一を上限として区市町村に補助する制度を創設し、特別緑地保全地区の指定を推進することといたしました。
 昨年度は、青梅市の青梅の森特別緑地保全地区、それから清瀬市の神山特別緑地保全地区、この二地区、合計約三十三ヘクタールにつきまして、都は一億九千四百万円の補助を行いました。国と合わせまして三億八千六百万円の補助額となっております。

○今村委員 私の地元町田市を初め多摩地区でも、特別緑地保全地区の指定に積極的に取り組んでおります。緑の保全にはこうした制度の取り組みを推進することが重要です。
 そこで、特別緑地保全地区制度の活用も含め、東京に残された貴重な緑を保全するために、都は今後どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○町田都市づくり政策部長 都は、平成二十二年度に区市町村と合同で、緑確保の総合的な方針を策定いたしました。この方針に基づきまして、都内に残された屋敷林や崖線などの緑の保全を推進する新たな施策を展開しております。
 例えば、ただいまお答えをいたしました特別緑地保全地区の指定拡大のための補助制度に加えまして、都市農地を保全し、農のある風景を維持していくため、農の風景育成地区制度を今年八月よりスタートさせております。
 また、こうした民有地の緑の維持、保全を図るため、民間の基金の協力を得まして、NPOなどの市民団体に活動費を助成する取り組みも昨年度より行っているところでございます。
 今後とも、区市町村と連携をいたしまして、緑確保の総合的な方針に基づき、多様な施策を通じまして東京に残された貴重な緑を保全してまいります。

○今村委員 都はこれまでも、民間企業の資金や活動などを取り入れて緑施策の推進を図ってきておりますので、特別緑地保全地区など市区町村が行う緑施策においても、民間企業などの支援が受けられるように、今の答弁にあったように、市町村と連携し、都のノウハウを伝えながら、緑の保全により一層取り組むことと、緑の東京募金の繰り入れ先についても、より広げることを都市整備局初め関係局で検討されるよう要望し、次の質問に移ります。
 緑の保全などは、東京の景観を豊かにする上で欠かすことができないということはいうまでもありませんが、東京の景観を豊かにするためには、緑と同じく、民間企業やそこに生活する都民一人一人の協力のもと、地域の歴史や風土、文化や伝統をいま一度見直しして、そしてまちづくりを行うことが重要だと考えます。
 二〇〇四年景観法の成立で、東京都も景観行政団体となり、二〇〇七年、東京都景観計画を施行してから、市区町村に対し景観行政団体の移行を進めていますが、これまでの取り組み並びに昨年度の状況についてお伺いいたします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 都は、広域的な観点から景観誘導を図る一方で、区市町村は住民に身近な地域において重要な役割を担うべきであると認識してございます。このため、景観行政団体の移行に向けて区市と協議を行っておりまして、平成十九年に景観計画を策定してから現在まで、十四区三市が景観行政団体に移行しております。
 そのうち、平成二十二年度は品川区、江戸川区及び板橋区の三区が移行してございます。

○今村委員 今のご答弁で、景観行政団体に移行している自治体が着実に増加していることが確認できましたが、その効果を都はどのようにとらえ、今後取り組みを行うのかお伺いをいたします。

○永島景観・プロジェクト担当部長 景観行政団体の移行に際しましては、複数の区市にわたる施策の整合性を図るとともに、区市がそれぞれの地域特性を生かして主体的に取り組めるよう協議を行っております。
 平成二十二年度に景観行政団体に移行した品川区では、歴史や文化を伝える旧東海道品川宿地区を重点地区に定め、景観づくりに取り組んでおります。
 さらに、板橋区では、崖線を景観形成重点地区に定め、江戸川区では、古川親水公園などを親水公園景観軸に指定するなど、地域の個性ある魅力的な都市景観の形成に取り組んでおります。
 今後とも、都は、皇居周辺の景観誘導や丘陵地景観基本軸の景観形成など、広域的な見地からの取り組みを進めていくとともに、区市が各地域の個性を生かしたきめ細やかな景観形成を実行できるよう支援し、東京全体として魅力的な景観づくりを進めてまいります。

○今村委員 先ほども申し上げましたけれども、ぜひこうした景観に対する市区町村の取り組みについても、都の助成や民間企業の資金など支援が受けられるように、都のノウハウをしっかりとサポートしていただくように期待したいと思います。
 さらに、この間、担当の職員の皆さんとヒアリングなどを通じながら、眺望についても話をしてまいりました。京都の例などを出しながら、まちづくりや都市づくりに重要な案件として取り入れていかなければいけないという話をしたところでありましたけれども、ちょうどきょうの新聞にも、日暮里富士見坂の都内最後の富士見坂眺望が消滅をするという記事が載せられておりました。
 都の担当者の言葉として、眺望を守るために建物の開発を規制することは難しいということが述べられております。まさにそのとおりでありますけれども、事前に、眺望を大切にする都市計画、まちづくりというものを、ぜひこれからの都の施策に生かしていただけるように改めて要望して、次の質問に移りたいと思います。
 次に、耐震関連の質疑を行います。
 決算説明書の六三ページの耐震改修促進事業の執行率は二二・三%、六八ページにありますマンションの耐震改修促進事業は一六・七%とあるように、これまでの都の努力を初め市区町村の協力があっても、残念ながらこれまでのように執行率が低い傾向が続いています。
 そこで、耐震改修促進事業のうち、木造住宅とマンションの耐震化助成について、その原因をどのように考えているのか伺うとともに、昨年度末、三月十一日の東日本大震災を経て、今年度上半期の状況に変化があるのか伺います。

○小野耐震化推進担当部長 木造住宅の耐震化助成の執行率が低い要因でございますが、大地震は起こらないと思うといった所有者の耐震化の必要性に関する認識が低いこと、診断や改修にお金がかかるといった費用面での負担感があること、また、だれに依頼してよいかわからないといった業者や工法等に対する信頼性の不安などが、耐震化が進まない要因となっていると考えられます。
 マンションにつきましては、多数の区分所有者間の意見調整が難しいというマンション特有の課題があること、耐震化の検討には専門的知識を要すること、新たな費用負担の検討が必要であること、さらには、合意形成を経て耐震化が実現するまでに相当の時間を要することなどが要因として考えられます。
 次に、震災後の平成二十三年度前半の状況でございますが、区市への耐震化助成の事前相談受け付け件数でございますが、木造住宅につきましては、耐震診断が約九百五十件、耐震改修が約二百五十件、マンションにつきましては、耐震診断が約三百件、耐震改修が約七十件と、それぞれ昨年度の同時期の実績を大幅に超える状況となっております。

○今村委員 東日本大震災で、私たち、また多くの都民は、震災、災害への備えの大切さを改めて思い知らされたと答弁からも推察されます。安心・安全なまちづくりのために耐震診断、耐震補強の促進は待ったなしの状況です。
 今後の執行率向上のために都はどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。

○小野耐震化推進担当部長 耐震化を促進するためには、まず所有者みずからがその必要性を認識し、主体的に取り組むことが不可欠でございます。
 このため、都としましては、耐震キャンペーンによる普及啓発やポータルサイトによる情報提供、耐震改修事例の紹介、耐震改修等に要する費用負担の軽減などの施策を行ってまいりました。
 引き続きこうした施策を展開するとともに、さらに、マンションにつきましては、本年度実施しています実態調査により得られた情報をデータベース化し、個々のマンションが必要とする情報を、地元区市などとともに連携して的確に提供してまいります。
 三月十一日の東日本大震災を受け、都民の耐震化への関心もかつてなく高まっていることから、この機をとらえまして、区市町村等とも連携し、木造住宅やマンションの耐震化を強力に推進してまいります。

○今村委員 次に、多摩ニュータウン事業会計について質疑をいたします。
 決算説明書を見ると、宅地販売経費の執行率は四八%となっておりますが、これに対し、土地売り払い収入率は二五〇%と高い数値になっています。
 二〇一〇年度決算における土地売り払い状況と、好決算となった理由、年度末でなお残っている土地、宅地の面積について伺います。

○五十嵐多摩ニュータウン事業担当部長 平成二十二年度の宅地販売収入は、町田市域の四宅地、三・三ヘクタールなど、合計で七宅地、五・六ヘクタール、三十二億円となってございます。
 好決算となった理由といたしましては、平成二十年のリーマンショック以降、低迷していた住宅需要が回復基調に向かいまして、その機をとらえまして住宅事業者に積極的な営業活動を行ったこと、また、地元市や住民に対して事前に十分な調整や説明を行い、公募を円滑に進めることができたこと、こうしたことが好決算につながったものと考えております。
 また、平成二十二年度末現在において残っている宅地については、四十四宅地、五十一・八ヘクタールでございます。

○今村委員 二〇一〇年度は、多摩ニュータウン事業会計の最終前年度決算であったわけですけれども、最終年度となる上半期の販売状況と会計閉鎖に向けた販売の見通しについてお伺いいたします。

○五十嵐多摩ニュータウン事業担当部長 多摩ニュータウン事業会計の最終年度である本年九月末までの販売状況は、五宅地、〇・三ヘクタール、四億一千万円でございますが、これに十一月に契約締結予定の一宅地を加えますと、六宅地、一・四ヘクタール、九億二千万円となります。
 さらに、十月に公募を開始した五宅地、二十二億円相当分につきましては、事業者からの引き合い状況が良好なことから、今年度の収入見込み額十八億円につきましては、これを上回ることができるものと考えております。
 今後とも、まちづくりに貢献できますよう、地元市と十分連携を図りながら、販売に取り組んでまいります。

○今村委員 私は、多摩ニュータウン事業会計について以前より議会の質疑で取り上げてまいりましたけれども、今の答弁でも、私が指摘してきたように、すべてを販売することは難しい状況で会計を閉じることになります。まちづくりのためということはありましたけれども、片や地元の自治体にとっては、余り望ましくない販売につながることもあったことも事実であります。
 今後の土地利用については、一層地元自治体の意向が反映されるような取り組みをされるよう要望して質疑を終わります。

○桜井委員 それでは、私の方から、歴史的建造物を生かしたまちづくりについて質問させていただきたいと思います。
 特に、私が子どもの時代を振り返ってみても、時代とともに、まち並みというのは本当に大きく変わってきて、子どもの当時は何とも気にしなかった建物が、非常に価値観がある建物であったというものが、なくなってしまったということもあって、今から思えば大変寂しい思いをしている部分もあるわけなんですけれど、そういう中で、今、東京都内にまだまだ、明治以降の近代建築物が数多く存在していると思います。
 それらの建物の中には、まちの人々になじみが深くて、また、まちにとってかけがえのないものが少なくないというふうに思うわけなんですけれど、この歴史的な価値を持つ建造物を生かして、今、各地域でまちづくりが進められていると思いますけれど、こういう部分を生かしていくということは、東京にとって都市の価値を高めていくことにつながっていくのではないかというふうに考えるわけです。
 そこで、改めて確認をしたいと思うんですが、歴史的建造物の保全について、現在、都の取り組みについて状況を伺いたいと思います。

○永島景観・プロジェクト担当部長 都は、歴史的な価値を持つ東京における良好な景観の形成を推進する上で重要な建造物を都選定歴史的建造物として選定してございます。
 平成二十二年度に東京歴史まちづくりファンドを設立し、歴史的建造物の修繕に必要な費用の一部についての助成を開始いたしました。
 このファンドは、歴史的建造物の保存や修復を社会全体で支援していくことを目的に、都と財団法人が資金を拠出するとともに、この趣旨に賛同する都民や企業から広く寄附金を集め、財源とする仕組みとなってございます。ファンドからの助成を活用することにより、まち並みを形成する都民共有の貴重な景観資源である歴史的建造物の保存や修復を行ってございます。

○桜井委員 今のご答弁にもありましたとおり、昨年度は東京まちづくりファンドを創設されて、都選定歴史的建造物に助成をしていく仕組みづくりを、歴史的な建造物を保全していくということで都は進められているというふうに思いますが、このファンドによる効果は、歴史的建造物の修繕などについて支援を行っていくだけでなく、その保存を推進することによってまちづくりに寄与させていくということも期待されるというふうに思うわけであります。
 そこで、昨年度助成された建造物について、具体的な取り組み事例についてお伺いしたいと思います。

○永島景観・プロジェクト担当部長 昨年度、ファンドにおける助成事業につきましては、早稲田奉仕園スコットホールや柴又帝釈天題経寺大客殿など、四つの都選定歴史的建造物に対して実施をいたしました。
 その一つである早稲田奉仕園スコットホールは、大正期につくられた赤れんがづくりで、完成当初より礼拝堂などや集会場として利用されるなど、地域となじみが深い建造物でございます。
 助成した改修工事により、外壁れんがの落下のおそれがあるなど施設の老朽化が問題となっていた部分が補修され、対象の歴史的建造物を地域に開放することや商店街が主催するイベントや地域住民のコミュニケーション活動等に施設を提供していくことが可能となりました。
 今後、こうした取り組みを通じ、歴史的建造物を核とした地域の魅力的な景観づくりを進めてまいります。

○桜井委員 今、東京都内ですけど、景観条例とか、そういう各区市町村の動きによって、そういう景観を大事にしているという地域は当然あって、そういうところはいいんですけれど、それ以外のところでは、ずっと見ていましても、何も考えず無作為な建物がどんどん建ってきて、本当に味気ないまちが非常に多いんじゃないかというふうに思っているわけなんですけれど、今ご答弁もありましたとおり、こういう歴史的な建造物を良好な状態で保存して、地域のまちづくり、地域の一つの目玉といいますか、意義のある建築物ということで、貢献するということは実際できるというふうに思うんです。そういう意味で、こういう支援制度については、引き続き精力的に取り組んでいくべきであるというふうに考えます。
 このような取り組みを継続的に支援していくことにより、まちの魅力を維持するだけでなく、風格あるまち並みというものが形成されていくことにつながるのではないかというふうに期待するわけなんですけれど、歴史的建造物の保全は、都市の記憶を次世代に引き継ぐ貴重な取り組みであるということを念頭に置いていただいて、さらなる事業の推進に努力されることを期待したいというふうに思っております。
 それから、あと一点、要望なんですが、今、対象の歴史的建造物というのが、民間の建造物のみが対象ということなんですけれど、行政が持っている財産ということでの歴史的な建造物というのも当然あるんです。ですから、そういうものに対しても、このファンドの助成対象になるような検討もぜひしていただきたいということで、これは個人的に要望させていただきたいと思います。
 それでは、以上で質問を終わらせていただきます。

○いのつめ委員 決算書の六三ページに耐震改修促進事業費がありまして、そこには、木造住宅の耐震化のための助成制度初め、緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業、地震による住宅倒壊から高齢者等の命を守る助成事業などに約四億円支出をしています。
 緊急輸送道路沿道建築物の耐震化については、耐震診断を義務づける条例がことしの四月に施行されました。都市整備委員会においてもさまざまな議論がなされましたが、くしくも東日本大震災が起こった三月十一日に可決された条例です。まずはこの条例を円滑に、かつ着実に実施していくことが重要です。条例にあわせて助成制度も拡充し、診断については所有者の負担なく行えるようになり、すべてのオーナーに診断を受けていただくことを目指しています。
 緊急輸送道路沿道建築物所有者に対し、ローラー作戦がこれまで実施されてきました。平成二十一年には千件、二十二年には三千件行い、二十三年、本年度は五千件にアプローチをすると伺っています。都市整備局の耐震化促進への強い意気込みを感じているところでございます。
 そこで、来年四月の義務化に向けて、建築物所有者の反響について伺います。

○小野耐震化推進担当部長 来年四月からの耐震診断の義務化に先立ちまして、建物所有者に、条例の内容や条例にあわせて整備した新たな助成制度を十分理解してもらうために、約五千棟を対象として、区市町村と連携し、八月末から個別訪問と説明会を行っております。
 既に二千棟近くを実施しておりますが、所有者からは、マンションの区分所有者間の合意形成がなかなかできなかったが、条例によって耐震化に向けて動き出すことができた、耐震診断をすぐに実施したいが、助成の申請はいつからできるのかなど、耐震化に向けて前向きな意見や質問が多数寄せられております。
 今後とも、きめ細かい個別訪問や説明会を行っていくとともに、所有者の意見や質問に丁寧に対応し、理解と協力を得ながら、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を進めてまいります。

○いのつめ委員 沿道建築物には築年数が古いビルやマンションも多く、改修だけでなく、建てかえを選択したい所有者も少なくないと思います。
 条例では建てかえについてどのように支援していくのか伺います。

○小野耐震化推進担当部長 築年数が古いビルやマンションなどでは、建物の老朽度や使い勝手を踏まえ、耐震改修だけでなく、建てかえも視野に入れて検討することが耐震化を進める上で有効であります。
 実際、昭和三十年代や四十年代に建てられた建築物の所有者から、建てかえを選択したいという声が多く寄せられており、このような要望にこたえるため、新たな助成制度では、耐震改修だけではなく、建てかえ、除却についても助成の対象としております。
 また、所有者が耐震化に向けて幅広く検討できるように、本年度からアドバイザーを派遣する制度を開始しております。
 こうした財政的、技術的支援を積極的に行い、所有者の耐震化への取り組みを促してまいります。

○いのつめ委員 この条例が施行されても、各市区町村に助成制度が開設されていないと、その行政の住民は助成が受けられません。
 ことしの四月から各自治体に開設をお願いしてきたと思いますが、受け皿の用意の進捗状況を伺います。

○小野耐震化推進担当部長 助成の申請手続につきましては、所有者の利便性やサービスの観点から、建築物が所在する区市町村が行うことになっており、都が創設した助成制度を活用するためには、区市町村が補正予算を措置し、助成要綱を策定するなどの準備が必要となります。
 耐震診断の義務づけ対象となる特定沿道建築物の所在する五十の区市町村のうち、既に四十二区市町村でその準備を終えております。残りの八区市町村につきましても、所有者の取り組み状況等を勘案しながら調整、準備等を行っているところでございまして、都としましても、できるだけ早期に助成制度が活用できるよう、連携して取り組んでまいります。

○いのつめ委員 条例や助成制度に対する建築物所有者の反響は、整いつつあることがわかりました。緊急輸送道路は、震災時には避難、救急救援、緊急物資の輸送、復旧、復興に利用される大動脈として大変重要な道路となります。
 この条例は、まず耐震診断ですが、都民の命を守る最終ゴールは耐震改修です。しかし、耐震改修や建てかえは所有者に経済的負担がかかることですし、さまざまなご事情もあると思います。たやすいものではありません。アドバイザーには、きめ細やかな対応と耐震に協力いただけるよう、働いていただくようお願いいたします。
 都市整備局に流れる、地震が怖くない東京の実現のための力を結集して、短期的かつ集中的に沿道建築物の耐震化がされるよう期待しております。
 私は、七月に仙台市を視察いたしました。東日本大震災とその余震で都市部のマンションも大きな被害を受け、仙台市内では約六十棟が全壊とされました。当初、要注意であったマンションが、四月の余震で全壊に切りかわった例がありました。
 私が視察したマンションは、築三十五年、十四階建て、百八十九戸で、四百人の住民は避難を余儀なくされていました。立ち入りはできません。崩れてはいませんが、若干傾いていました。窓やドアは変形し、亀裂が入り、鉄筋がむき出しになったところもございました。
 このマンション、建てかえをすると約三十億円かかる見込みで、一戸当たり一千六百万円の負担になる。解体だけなら震災の特例で市が担い、住民負担はないと。近隣住民からも、危険で近寄れない建築物を早く解体してほしいと要望され、このマンションの自治会は解体のみを選択いたしました。
 建てかえや大規模修繕の場合は、それぞれ五分の四以上、二分の一以上の所有者の同意が必要だと定めています。しかし、解体のみについては同法に定めがないため、民法の規定が適用され、所有者全員の同意がなければ作業に入ることができません。所有者は、賃貸して居住していないケースや海外に居住しているケースなどで、所有者全員の同意を早期にとることは、かなりの労力が費やされていました。理事会の決定から二カ月が経過し、やっと全員の同意書がそろったのは六月中旬でありました。市との手続はそれから始まるわけでございまして、解体できるのは秋以降といっていました。
 大地震などの非常時や倒壊の危険性が生じたときには、所有者全員の同意を得なくても、多数決で進められるような対応策が必要であろうと私は思いました。
 そこで、東京都としてのお考えをお聞かせください。

○高田民間住宅施策推進担当部長 マンションの解体につきましては、区分所有法にその手続が規定されていないことから、民法の規定に基づき区分所有者全員の同意が必要となりますが、建てかえに伴い解体を行う場合には、区分所有法に基づき、全員同意でなく、区分所有者数及び議決権の五分の四以上の同意により行うことは可能でございます。
 東京都といたしましては、管理組合の建てかえに向けた取り組みに対しアドバイザー派遣などの支援を行ってまいります。

○いのつめ委員 今の部長の答弁は、建てかえに伴う解体は五分の四とおっしゃっていますが、災害直後に、こういう全壊といわれたようなマンションの皆さんが、どうやって建てかえまで話が進むのでしょうか。現実問題として、地震後、マンションの皆さん方が、建てかえをしようというところにはなかなか早急に話は進まないと思います。平常時でも、先ほどの答弁の中にもありましたように、マンションの建てかえはさまざまな意見が出て、まとまるにはかなりの時間が必要です。
 日本マンション学会も、非常時には多数決で進められるよう区分所有解消制度の創設を緊急提言しています。解体のみ行う場合は一〇〇%という同意について、私はここが問題だというふうに思っています。この教訓を生かした都の対応策が必要であろうと私はいっているんです。もし東京に大きな地震が来たときに、生死が確認できないような地権者がいる場合もあると思います。
 また、決算書の六八ページで、マンション耐震改修促進事業では、耐震診断助成事業に一万四千戸分の約一億二千六百万円の予算が講じられているにもかかわらず、三千五百八十二戸、二千八十二万円の執行率一六・五%です。診断を受けてもらう努力ももっとしていただかなければ困ります。
 また、耐震アドバイザー派遣事業は、百四十件分の予算に対してたった三十二件の派遣に終わっています。もっと積極的にアドバイザーを派遣する努力もしてもらわなければ困ります。
 大地震が起こったときに、想定外であったということにならないように、転ばぬ先のつえが必要であると思います。私たちも国に対して、災害時における解体のみの合意について準備するよう働きかけてまいりますが、都でも国に先駆けての対応をお考えいただくようにお願いをいたします。--よろしくお願いします。
 次に、建築行政所管の駐車場条例の駐車場附置義務について伺います。
 この条例は、先ほど質問した緊急輸送道路建築物の耐震化を促進する条例とは違い、昭和三十三年に施行された古い古い条例です。今後、車社会になるだろうというような、先につくった条例でして、そういう時代もかつてはありましたが、もう既に車社会かといわれると、公共交通を利用しようというような時代に今はなっているんじゃないかと私は思います。
 この条例、特別区の地域では全地域が、市の区域では、駐車場整備地区と周辺地区及び自動車ふくそう地区が駐車場条例の適用地区になります。これらの地区で、建築物を新築、増築または大規模な修繕もしくは大規模な模様がえに伴う用途変更する場合に、駐車施設の附置義務がかかるものです。
 特定用途に劇場やホテル、結婚式場、斎場、百貨店などが含まれるのは理解できますが、私が理解できないのは、飲酒を伴うキャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バーも特定用途に含まれることは理解できません。飲酒の取り締まりも厳しく、飲酒運転を撲滅させようという時代です。それに反して共同住宅は非特定用途になっています。
 特定用途と非特定用途の見解を伺います。

○砂川市街地建築部長 駐車場条例におきましては、店舗や劇場、業務施設など多くの人々が出入りし、駐車需要を生じさせる程度の大きい施設を特定用途として定めております。
 これらの施設につきましては、施設の管理者や事業などの関係者、荷物の搬入などのさまざまな駐車需要が発生することから、キャバレーなどの飲酒目的の施設であっても、駐車場条例の附置義務の対象とすることは必要であると考えてございます。

○いのつめ委員 いつまでもそういうようなことをいっているから、なかなか耐震化が進んでいかないネックにもなってしまっているわけですが、私はすべての駐車場が不要だといっているのではありません。デパートや大型店舗、パチンコ屋さんやコンビニなどは、やはり附置義務が必要だと思っています。
 しかし、特別区の区域の中で、千五百一平米の小規模な商業ビル、店舗、事務所、倉庫に二台の駐車場が附置されています。千五百一平米は十階建てなら一階は百五十平米です。都心では平置きは不可能ですから、二台の駐車場のために専用のエレベーターを設置しなければなりません。営業スペースを脅かすばかりか経済的な負担も大きくなります。
 このような小規模な建築物にたった二台の駐車場を附置する必要があるのか見解をお伺いいたします。

○砂川市街地建築部長 駐車場条例は、建物から発生する駐車需要に対応して、必要な駐車場の設置を義務づけるものであることから、床面積千五百平米を超える商業ビルにつきましては、駐車場整備地区などにおいては駐車場の設置を義務づけております。
 附置義務駐車場は、原則として敷地内に設置することとしておりますが、建築物の構造または敷地の位置によりまして、特にやむを得ない場合には、建築敷地以外の場所に駐車場を設けることを認めております。
 また、地区特性に応じた附置義務のルール、いわゆる地域ルールを定めることにより、個々の建築物の敷地に必ずしも駐車場を設けることなく、地域内で駐車場を集約することなどが可能でございます。

○いのつめ委員 敷地内に駐車スペースをとれない場合は、近隣に附置相当分の駐車場を確保する、いわゆる飛ばしの制度があると今おっしゃいました。これは不公平にはならないのでしょうか。
 どのような場合に飛ばしは認められるのか、過去にどのくらい認めた件数があるのかあわせて伺います。

○砂川市街地建築部長 飛ばし、いわゆる隔地駐車場につきましては、当該建築物が存在する期間は敷地外に確保し続ける必要があります。交差点付近など、前面道路の交通規制によりまして自動車の出入りが不可能な場合や敷地の間口が狭いなどにより、駐車場の出入り口や駐車施設の設置が極めて困難な場合など、やむを得ない事情のある場合に限って認めております。
 これらの要件につきましては都の事務処理要領で規定しておりまして、区市へも周知することにより、運用の統一を図っているところでございます。
 なお、平成十九年度から二十一年度における隔地駐車場は、区部で四十五カ所、合計五百八十六台、市部で五カ所、合計百五台の実績がございます。

○いのつめ委員 飛ばしといういい方が、いいイメージ、余りないんですけど、この飛ばしの方がいいまちというのもあるんです。例えば私の地元の神楽坂のようなまちでは、まちの周辺部に駐車をしていただいて、まちの中は歩いて、細い路地などを探索していただいた方がいいような地域もありますので、この飛ばしが私は悪いとは思っていませんし、もっと逆に、必要であるならば、同じ台数を確保するためにほかの離れた場所でもいいんじゃないか、そういうふうに緩和していただいた方がいいのではないかと思うところもあります。
 また、間口が狭くて表面でしか接道していないビルでは、歩道を横切り車の出入りをすることになり、歩行者にとってとても危険です。また、駐車場によってビルの連続性が途切れ、景観やまち並みの美しさが壊されてしまいます。
 平成二十三年四月の新宿区駐車場整備計画の駐車需要の現況では、新宿駅東口周辺地域の四輪車駐車場整備台数は四千七百三十七台です。ピーク時の駐車場利用台数は二千四百六台、路上台数は四百十八台で、合計二千八百二十四台です。供給率が一六八%と、需要との差は千九百十三台で、駐車場の供給には余裕があります。駐車場が多いということです。なのにまだ、新宿駅東口の皆さんは、駐車場を附置されているばかりにビルが新しく建てられない、建てたくても建てられないとおっしゃっているオーナーさんがいます。
 今、路上駐車も減少していますから、車はスムーズに走行しています。逆に不足しているのは二輪車の駐車スペースです。また、駐車の取り締まりが厳しいから荷さばきが十分に行えない、路上の荷さばき所は必要だという声があります。
 加えて、中心部への自動車流入を抑制して、歩行者中心のまちづくりの推進が可能となる環境を整えるとともに、まちづくりの方向性と適合した駐車施設の展開を図るというふうに、新宿区の駐車場整備計画は施策を掲げています。
 特別区の区域と市の区域だけでは、そのまちごとの現状に合っているとは思えません。地域差についての見解を伺います。

○砂川市街地建築部長 駐車場条例では、区部と市部において、それぞれ公共交通機関の整備や自動車利用の状況を踏まえまして、建築物の立地する地域地区、用途及び床面積に応じた基準が定められております。また、公共交通機関が発達している地区や小規模な敷地が連担する商業地区においては、地域ルールを策定し、地域の特性に応じた駐車場の設置を可能としております。

○いのつめ委員 三十年以内に東京はマグニチュード七程度の大地震が発生するといわれて、もう七、八年たったかと思いますけれど、都内の建築物約二百七十万棟のうち、この程度の地震が来ると十二万七千戸棟が全壊、約三十四万六千棟が半壊と予想されています。
 都市整備局では耐震改修を全力で進めていると思います。この駐車場附置義務が建てかえの大きなネックになっています。耐震化への影響をどのように考えているのか伺います。

○砂川市街地建築部長 耐震化のための耐震改修を行う場合には、少なくとも増築を伴わない改修につきましては駐車場条例の対象とはならず、新たな駐車場の附置義務は生じません。
 一方、建築物の建てかえを行う場合は、駐車場条例では、敷地内に駐車場を設置することが極めて困難な場合などについて隔地駐車場を認めているほか、地域ルールを定めることにより地域内で駐車場を集約することが可能であり、このような場合には敷地内に駐車場を設置せずに建てかえることができます。

○いのつめ委員 今、地域ルールというお話が出ましたが、銀座は地域ルールをつくったので、最近、新しいビルが次々とできて、まち並みもすごくきれいになりましたが、この地域ルールづくりは五年がかりでした。
 大・丸・有地域も、また渋谷地域でも地域ルールができています。渋谷は何年かかって地域ルールをつくったのでしょうか。また、地域ルールに取りかかっている行政はほかにあるのか伺います。

○砂川市街地建築部長 渋谷区では、平成十七年度から六年をかけまして地域ルールが作成されました。今後、このルールを活用して、渋谷駅周辺における駅施設の機能更新や再開発などの総合的なまちづくりが行われていきます。
 新宿区では、新宿駅東口のまちづくりとあわせまして、平成二十一年度より地域ルールの導入の検討が進められており、今後、地元住民や区などによる策定協議会の設置が予定されております。
 地域ルールの策定に当たりましては、都は構想段階から参画し、区に対して必要な情報提供や技術的支援などの協力を行っており、今後とも、地域のまちづくりと連携した地域ルールの策定を促してまいります。

○いのつめ委員 新宿区でも地域ルールを策定しているんですけれど、これが待てなくて建てかえに入った紀伊国屋の近隣のビルがありますし、有名なおまんじゅう屋さんも、この地域ルールはあと四、五年かかるでしょう、これが待てなくて、今、建てかえをしておりますが、しようがなく駐車場をつけているのが状況です。
 時代に合わなくなった、私、尾てい骨みたいだと思うんですけれど、こんな条例を後生大事に持ち続けて、緩和したければ各市区町村でと押しつける、この東京都の姿勢は、残念ですが評価できません。同じ都市整備局の中で、片や一生懸命耐震を進めて、片やブレーキになるような条例を大事に持ち続けている。耐震と駐車場とどちらを優先させるのか、しっかりと考えていただきたいと思います。
 その前に地震が来ないことを祈りながら、私どもも一生懸命考えますが、ともに都民の命を守り、また、にぎわいも一番の東京都を目指すために、安全で安心してお客様に来ていただけるような都市を目指すために、古いものは新しく変えていく勇気も持っていただきたいとお願いして質問を終わります。

○長橋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○長橋委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 以上で都市整備局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後五時一分散会

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