平成二十二年度各会計決算特別委員会第一分科会速記録第三号

平成二十三年十月十九日(水曜日)
第十一委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十名
委員長神野 吉弘君
副委員長村上 英子君
副委員長大津 浩子君
小林 健二君
中屋 文孝君
中山 信行君
山口  拓君
野上ゆきえ君
吉田 信夫君
田中たけし君

 欠席委員 なし

 出席説明員
会計管理局局長松田 芳和君
管理部長安藤 弘志君
警察・消防出納部長丸山和喜夫君
会計制度担当部長佐藤  敦君
選挙管理委員会事務局局長影山 竹夫君
知事本局局長秋山 俊行君
儀典長高原 寿一君
次長理事兼務小林  清君
理事大井 泰弘君
総務部長雜賀  真君
調整担当部長鈴木  勝君
地方分権推進部長潮田  勉君
自治制度改革推進担当部長山内 和久君
外務部長中山 正雄君
国際共同事業担当部長熊谷 克三君
基地対策部長市毛 良之君
横田基地共用化推進担当部長新美 大作君
政策部長松下 隆弘君
計画調整部長澤   章君
計画調整担当部長瀬口 芳広君

本日の会議に付した事件
平成二十二年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
会計管理局関係
・平成二十二年度東京都一般会計決算(質疑)
選挙管理委員会事務局関係
・平成二十二年度東京都一般会計決算(質疑)
知事本局関係
・平成二十二年度東京都一般会計決算(質疑)

○神野委員長 ただいまから平成二十二年度各会計決算特別委員会第一分科会を開会いたします。
 本日から四日間にわたり、本分科会所管局の決算に対する質疑を行ってまいります。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、会計管理局、選挙管理委員会事務局及び知事本局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十二年度東京都一般会計決算中、会計管理局所管分を議題といたします。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○田中委員 私から、大きく二項目にわたって、一つは公金の管理運用について、そしてもう一点は公会計制度改革について、お伺いしたいと存じます。
 会計管理局の歳入の中で財産収入が大きな割合を占めておりますが、それに係る基金の運用を初めとする公金管理への取り組みについて、まずお伺いをしたいと存じます。
 東日本大震災により甚大な影響を受けた日本経済は、サプライチェーンの復旧など、生産活動の回復が進み、持ち直しの動きが見られております。しかし、欧米を初めとする海外の不透明な経済情勢が、国内景気の先行きにも影を落としている状況であります。
 中でも、ギリシャの財政危機に端を発する欧州の政府債務問題、いわゆるソブリンリスクが深刻化し、金融市場において大きな不安要因となっている状況であります。このように先を見通すことが困難な経済金融情勢のもとでは、従前以上に安全で確実な公金管理が求められております。
 会計管理局では、三兆円余りの資産の管理運用を所管しておりますが、それらは都民から預かった大切な財産であり、毀損することがあってはならないと思います。聞くところによれば、一部の自治体などにおいては、外債などへの投資を行って損失を出した事例もあったようでありますが、公金を預かる立場として、そうした危険を冒すことは厳に慎むべきであると思っております。
 何よりも安全性の確保に重きを置いた運用を行っていくことが肝要であると考えておりますが、会計管理局で公表している資金管理実績を見ると、預金や債券などの運用商品に資金を配分しながら運用を行っている状況が見てとれます。
 そこで、まずお伺いいたしますが、運用に当たってはさまざまなリスクを伴っておりますが、どのような考えに基づいて、リスクを抑えつつ、安全な運用商品を選定しているのかお伺いをいたします。

○安藤管理部長 預金を行うに当たりましては、当該金融機関の格付を初めとして、自己資本比率や預金量などの経営指標、その他の定性的な評価を行いまして、一定の水準を上回ると判断した金融機関について、経済金融分野などの専門家により構成される東京都公金管理委員会の意見を聞いた上で、預金先を選定してございます。債券についても、同様の仕組みで安全性を確認した上で、運用対象を選定してございます。
 ご指摘の外貨建ての債券につきましては、為替相場の変動により運用元本を損なうリスクを伴うことから、投資の対象としてはございません。

○田中委員 今ご説明がありましたように、格付や経営指標に基づく詳細な分析を行うとともに、外部の専門家、東京都公金管理委員会の方々、専門家の方々の意見を参考とすることで、投資対象の選定が合理的になされていると思っておりますが、今般の金融市場は、大変急激な円高であったり、あるいはギリシャの情勢を初めとして、日々大きな変動が起きております。急激な情勢変化などへの対応はどのように行っているのか、お聞かせいただきたいと存じます。

○安藤管理部長 日々変動いたします預金先金融機関の株価や債券価格には、金融情勢の変化による影響や金融機関の経営状況に対する株式、債券市場での最新の評価を反映している側面があることから、その値動きを注視しながら、ご指摘のような情勢変化をとらえていくように努めてございます。
 株価や債券価格の急落といった動きがあれば、事実関係の情報収集を早急に行うとともに、公金管理委員会の意見を聴取しまして対応を決定する体制を整えてございます。深刻な経営状況の変化が見られる場合などには、新規の預金を見合わせるなどの措置を講ずることとしてございます。

○田中委員 今ご答弁いただきましたように、安全性の確保のために構築したさまざまな枠組みに基づいて、運用に取り組んでいただくことを踏まえまして、これまでの資金管理の実績について確認したいと思います。例えば、ここ十年に限ってみても、景気や都の財政の状況も大きく変化をしております。それに伴って、基金の残高など、運用の規模も変わってきたのではないかと思っております。直近の実績とあわせてお伺いをしたいと存じます。

○安藤管理部長 資金管理実績の公表を始めましたのは平成十四年度でございますが、そのときは基金の平均残高は一兆三千五百九十三億円でした。平成十七年度にはこれが六千八百九十一億円まで減少いたしまして、その後、財政再建への積極的な取り組みによりまして、資金面での余力を高めてきた結果として、基金の積み立てが進み、ここ数年は残高が二兆円台後半で推移してございます。
 直近の実績を比較いたしますと、平成二十一年度は平均残高が二兆八千四百十六億円、運用収入が百六十四億円、運用利回りは〇・五七五%だったのに対しまして、平成二十二年度は平均残高が二兆八千二百七十五億円、運用収入が八十九億円、利回りは〇・三一三%となりました。平均残高はほぼ横ばいでございましたけれども、利回りが約〇・二六ポイント低下したことによりまして、運用収入は七十五億円、約四六%の減少となりました。

○田中委員 今、平成二十二年度の資金管理実績に基づいての説明がありました。前年度との比較では運用収入が七十五億円の減少、また利回りにおいても〇・二六ポイントの減少、低下ということでございました。
 あわせて、平成二十二年度の決算説明書を見ますと、財産収入の収入率が予算に対して三五・二%となっております。いずれも日銀の金融緩和政策などの影響を反映してのことだと思っておりますが、その要因をどのように見ているのかお伺いをします。

○安藤管理部長 ご指摘のように、平成二十年秋の金融危機、いわゆるリーマンショック以降、相次いで政策金利の引き下げなど、金融緩和策が実施されました。市場金利は低い水準での推移が続いておりまして、都における公金運用も大きな影響を受けてございます。
 このほか、民間の資金需要の低迷を受けて、金融機関において預金を集めて貸出資金を調達するニーズが後退していることが、預金金利の低下につながっていると考えてございます。加えて、運用難となっている金融機関の資金が債券市場に集まって、需給が逼迫しまして、債券価格が上昇した結果、債券利回りが下がっていることも、資金管理実績における運用収入の減少、利回りの低下の一因になっていると思います。
 収入率につきましては、予算要求を行った平成二十一年夏時点では、リーマンショック後、急速に悪化した景気が徐々に持ち直していくという中で、平成二十二年度中の利上げを見込む専門家の予測もございましたので、そちらも踏まえて財産収入を見込んでございました。しかし、平成二十二年度に入ってみますと、ギリシャ危機の影響などで急激な円高が進んだこともございまして、日銀の金融緩和策が相次ぎまして、十月にはゼロ金利政策が実施されるなど、預金金利や債券利回りの実績は、想定を大幅に下回る水準で推移いたしました。
 日銀の統計によりますと、一年物の平均預金金利が、平成二十一年七月には〇・四五%だったのですが、ゼロ金利実施直後の平成二十二年十月には〇・一九%に下がってございます。こうした金融情勢を反映して、予算に対する収入率は三五・二%となったものでございます。

○田中委員 リーマンショック以降、厳しい運用環境に置かれているということは理解をいたしました。現下の金融情勢を見ても、日銀の緩和的な金融政策は当面続く見通しであり、今後も運用難の状況が続くこととは思いますが、運用収入がふえることは都民から預かっている財産がふえることでもあります。安全性と流動性の確保を前提とした上での効率性の追求、また運用利回りの向上を求められるだろうと思っております。
 しかし、運用利回りを求めるということは、それもリスクも伴います。ハイリスク・ハイリターンであり、ローリスク・ローリターンであるという中で、安全性を求めながらの利回り向上を目指すということは、極めて難しい基金の運用が要求されているんだろうと思っておりますが、運用上工夫している面などがありましたらお伺いしたいと存じます。

○安藤管理部長 預金の設定や債券の購入に当たりましては、複数の金融機関に金利を提示させることにより競争性を高める、いわゆる引き合いというものを実施してございます。また、債券を市場実勢に見合った適正な価格で購入するために、専門性の高い金融情報を随時に収集することが可能な専用端末を設置いたしまして、市場動向の的確な把握に努めております。
 また、一般的に運用期間を長くしていきますと、利回り水準も上がることでございますので、資金の見通しをより精緻に立てることで、運用する期間を少しでも長くするよう工夫しているところでございます。

○田中委員 冒頭で述べましたように、ヨーロッパ、欧州における国のデフォルト、債務不履行の蓋然性が高まりつつあるなど、依然として不安定な金融情勢にあり、会計管理局では、公金の安全性を確保しつつ、効率性を高めるためにさまざまな取り組みを行っているということ、理解をさせていただきました。今後も、都民から託された公金であることを念頭に、安全性に十分配慮しながら、運用面での工夫を重ねて、少しでも多くの収益を上げられるよう、不断の努力を続けていただきたいと存じます。
 経済金融情勢の先行きを見通すことが困難な環境ではありますけれど、公金の管理運用をどのように行っているのか、その考え方を改めてお伺いをいたします。

○安藤管理部長 約十年前と比べますと、運用残高はおよそ二倍の規模に達しておりまして、都民の貴重な財産を預かる責任はますます重みを増しております。公金の運用に当たりましては、何よりも安全性の確保を最優先にとらえることが重要でございまして、資金を毀損することはあってはならないものであると考えてございます。
 その前提を踏まえまして、運用収益という果実を上げていくことが公金管理に課せられた使命でございまして、運用期間の最適化や、より効果的な資金配分など、さまざまな工夫を凝らしながら、安全で効率的な取り組みを積み重ねていくことが、都民福祉の向上にも資するものであると考えております。
 公金の管理運用を取り巻く環境は刻々と変化しており、ご指摘のように、ギリシャを初めとする欧州の金融情勢についても、依然として不安定な状態が続いてございます。このため、金融政策や景気の先行き等に細心の注意を払いつつ、情勢の移り変わりを敏感にとらえ、変化に即応し得るリスク管理体制を整えるとともに、今まで以上にきめ細かな運用ポートフォリオの構築を進めていく必要があると考えております。都民財産を預かる重責を全うすべく、公金の管理運用に今後とも着実に取り組んでまいりたいと考えております。

○田中委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、公会計制度改革についてお伺いをいたします。
 都は、平成十八年度から複式簿記・発生主義会計による新公会計制度を導入し、財務諸表の作成も今回の決算で五回目を迎えております。新たな公会計制度に基づき作成したこの本格的な財務諸表を事務事業の評価に活用し、予算編成に反映されるなど、財政運営の重要なツールと、今はなっております。
 また、都は石原知事の初当選以降、東京から国を変えていくとした公約の一つであると認識をしておりますが、全国自治体における公会計制度改革推進のため、種々の取り組みを通じて、新公会計制度の普及に努めていることも承知をしております。公会計制度改革を推進することは、自治体にとって大変重要な課題でありますので、都がこれまで取り組んできたさまざまな普及活動について、何点かお伺いしたいと存じます。
 まず初めに、全国の自治体における財務諸表の作成状況はどのようになっているのかお伺いをいたします。

○佐藤会計制度担当部長 お尋ねの全国の状況でございますが、総務省が行いました平成二十一年度決算につきましての財務諸表作成状況の調査によりますと、平成二十三年三月の時点で、全国の自治体千七百六十三団体の九割以上に当たります千六百三十団体が、何らかの財務諸表を作成してございます。また、財務諸表を作成している団体の八割以上は、総務省方式改訂モデルを採用しているところでございます。
 また、都と同様の本格的な複式簿記・発生主義会計の制度を導入して、日々の会計処理により仕訳を行い、財務諸表を作成する地方自治体としましては、大阪府や町田市がともに平成二十四年度から本格導入を予定してございます。

○田中委員 今、九割以上の自治体が何らかの財務諸表を作成しているとの説明でありましたが、そのほとんどは総務省方式改訂モデルを使って作成されたものであるということでありました。
 東京都方式では、税収を行政サービスの提供に要した財源として行政コスト計算書に計上しているのに対しまして、総務省方式改訂モデルでは、税収を行政コスト計算書には計上しておりません。このため、行政コスト計算書の収支のバランスが不明瞭になるなど、課題があると伺っておりますが、このいわゆる総務省モデルの主な課題についてお伺いをしたいと存じます。

○佐藤会計制度担当部長 ただいまご指摘をいただきましたとおり、都では税収を行政コスト計算書に計上いたしまして、行政活動の結果を当期収支差額として明らかにしております。一方、総務省方式改訂モデルでは、税収を行政コスト計算書の収入に計上しないため、当期収支差額は把握できず、収支のバランスが不明瞭となる形でございます。
 この改訂モデルでは、基本的に決算統計の数値の組みかえによりまして財務諸表を作成するため、既に滅失した資産や、国や都道府県と区市町村との間で異動のありました固定資産の金額についても、財務諸表に計上されたままとなります。また、個々の固定資産の種別や耐用年数を反映することができないため、減価償却の金額も実態とはかけ離れたものとなるところでございます。
 したがいまして、こうしたことによりまして、実際に自治体が保有している資産の実態を正確に反映することが困難となるところでございます。
 さらに、財務諸表の活用の観点から見ますと、事業別、組織別といった財務諸表の作成を想定しておりませんで、事業評価への活用に課題があると考えております。

○田中委員 今ご答弁いただきましたように、総務省のモデルでは当期収支差額が把握できず、収支のバランスが不明瞭である等、資産の実態を正確に反映することが困難であるということで、多くの課題があるということがわかりました。
 このモデルに基づき作成した財務諸表では、正確性が不十分であり、事務事業の見直しなどにも活用しづらいものとなると思われます。全国自治体はこのモデルを使った財務諸表の作成にとどまるのではなく、都と同様の本格的な複式簿記の導入を推進していくことが何よりも重要であろうと認識をしております。
 そこで、都はこれまで、新公会計制度の先駆者として、他の自治体に対して、公会計制度改革の推進に向け、どのように取り組んできたのかお伺いをいたします。

○佐藤会計制度担当部長 都はこれまで新公会計制度導入後、蓄積してきたノウハウと経験を最大限に活用しながら、他の自治体に対する説明会の開催や個別相談など、普及活動を積極的に行ってまいりました。
 平成二十二年度には、自治体からの視察の受け入れや個別相談等は二百七十六団体、二十八回に上り、平成二十一年度に比べ倍増しております。また、本格導入を決めた大阪府や町田市に対しましては、会計基準の作成、資産台帳の整備、システム構築などにつきまして、きめ細かな支援活動を行ってまいりました。
 さらに、都内町村を初めとしまして、小規模であることなどにより体制やノウハウに課題がある等の事情を抱える団体に対しましては、本格導入までの過渡的な取り組みとしまして、東京都方式簡易版の提案や作成支援を行うなど、自治体の取り組み状況を踏まえた新公会計制度の普及を進めております。昨年度には、全国の自治体に向けて、本格的な複式簿記導入の機運を高めていくため、大阪府と連携しまして公会計制度改革シンポジウムを開催し、公会計白書を作成したところでございます。

○田中委員 今ご答弁いただきましたように、これまでに都がいろいろな普及に取り組んできた状況を改めて確認をさせていただきましたし、このご尽力を高く評価をさせていただきたいと存じます。
 先ほどのご答弁では、九割以上の自治体が何らかの財務諸表を作成しているとのことでしたので、表面的には、公会計制度改革に向けた自治体の取り組みが進展しているようにも見えますが、実際、複式簿記を本格導入している自治体は、今後の導入予定も含めて、数少ない状況にあります。
 そこで、これまでの東京都の普及活動や公会計制度を取り巻く現状を踏まえ、自治体が新公会計制度を本格導入するに当たって、具体的にどのような課題があると認識をされているのかお伺いいたします。

○佐藤会計制度担当部長 財務諸表の作成にはそもそも法的義務がございませんで、国は全国標準となる会計基準もつくらないまま、改訂モデルと基準モデルという二つの全く異なる公会計モデルを提示しまして、自治体に財務諸表の作成を要請しているにすぎません。まず、国としての取り組みが不十分であることが挙げられます。
 また一方、自治体側の課題としましては、特に小規模団体では、本格的な複式簿記の導入のために要する作業負担や財政コストに対応する余力がないこと、新公会計制度の本格導入に取り組んだ経験がないため制度構築を進めるノウハウがないこと、また、本格的な財務諸表を作成しても活用方法等が明らかでないといったことなどがございます。

○田中委員 今ご答弁いただきましたが、国は統一的な会計基準を示さず、全く異なる二つの公会計モデルを示し、自治体に財務諸表の作成を要請しているとのことでありましたが、これでは自治体側は判断に迷い、困惑するばかりだろうと思っております。このように国のスタンスが定まっていなければ、自治体が複式簿記の本格導入になかなか踏み出せないという意識を持つのは当然のことだろうと思っております。
 また、複式簿記の本格導入に当たっては、自治体側に実務的な課題が多々あることも理解をいたしました。しかしながら、公会計制度改革は自治体経営の重要な基礎であり、都は先駆者としての普及活動をさらに推進していくことが重要であろうと思っております。
 今後、都は、公会計制度改革の一層の推進に向けてどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。

○松田会計管理局長 委員ご指摘のように、公会計制度改革におきましては、やはり国が統一的な会計基準を示しまして自治体を支援していくことが極めて重要でございます。
 都は、これまで国に対しまして、全国標準たり得る会計基準の策定を提案要求してきておりまして、さらにことしの春からは本格的な複式簿記を導入する際に生じるコストや作業負担に配慮した環境整備の着手につきましても、提案要求をしております。
 また、国は平成二十二年度に新地方公会計の推進に関する研究会を設置いたしましたけれども、都は大阪府とともにこの研究会に参加をいたしまして、意見の反映に努めております。
 今後とも引き続きまして、国に対して、統一的な会計基準の策定や本格導入を支援する環境整備等について、あらゆる機会を活用しながら強力に働きかけてまいります。
 一方、国の制度改革を待つばかりではなく、都として普及活動に取り組んでいくことも極めて重要でございます。大阪府や町田市の本格導入も間近となりましたこれからは、普及活動の新たなステージと認識しておりまして、今後、都といたしましては、これまでの新公会計制度運用で培った経験に加えまして、大阪府や町田市に対する支援の過程で蓄積したノウハウを活用しながら、負担感に配慮した効率的な導入手法を提案するとともに、大阪府や町田市と共同したPRの取り組みなども検討いたしまして、全力で普及活動に取り組んでまいります。

○田中委員 都は、平成十八年度決算より、ある意味石原知事の肝いりの事業の一つとして、全国の自治体に先駆けて本格的な新公会計制度を導入してまいりました。その間のいろいろな経験、ノウハウを積み上げてまいりました。また、国の制度面の整備が進まない中でありますが、都として普及活動に力を注いでいただいていることも十分理解をいたしました。
 まだ多くの自治体では本格的な複式簿記の導入に至っておりませんが、基本的には、今お話もございましたシンポジウムを含め、これまでの普及を通じて都が発信してきた公会計制度改革の必要性は認識されてきているものと思っております。
 今後とも、日本の地方公会計の最先端を走るフロントランナーとして、役割と責任を十分に認識しながら、まず国に対して、自治体が本格的な複式簿記の導入に取り組みやすい環境整備をするよう、揺るぎなく、かつ強力に働きかけをしていただきたいと思います。そして、全国の自治体に向けて、新公会計制度導入の具体的な効果やメリットをわかりやすく伝えることに一層の工夫を凝らして、さらなる普及に努めていただきたいと存じます。
 最後に、引き続き、全国の公会計制度改革の推進をリードするとともに、地元東京においても、区市町村に対して手厚い普及活動を行っていただきたい。そのことを要望し、質問を終わります。ありがとうございました。

○小林委員 私からも、公会計制度改革について何点か確認をさせていただきます。ただいまご質問されました田中委員と、若干質問の趣旨等もかぶる点もあるやもしれませんが、よろしくお願いをいたします。
 都は、全国に先駆けて本格的な複式簿記・発生主義会計を導入され、この新公会計制度の運営も五年を経過いたしました。この間、都は作成した財務諸表を事業評価に活用するなど、行財政運営に生かすとともに、財務諸表をわかりやすく解説した概要版を公表するなど、積極的な都民への理解促進に努めてこられたと理解をいたしております。
 自治体の行財政改革は喫緊の課題であり、公会計制度改革の推進は極めて重要であると認識をいたしております。都は我が党のこれまでの提案を受けまして、他の自治体への説明会の開催や個別相談の実施など、多様な普及活動を行っていただいておりますが、引き続き公会計制度改革の先駆者としての取り組みを他の自治体に伝えるとともに、導入に前向きな自治体に対する支援を積極的に行っていく必要があると考えております。
 平成二十二年度も、都は公会計制度改革推進に向けて、他の自治体に対しさまざまな普及活動を行っていると思いますが、その結果、公会計制度改革にどのように寄与してきたのかをまずお伺いします。

○佐藤会計制度担当部長 都はこれまで、全国標準たり得る公会計基準を策定することなどにつきまして、知事会や九都県市とも広範に連携しながら、国へ強く働きかけてまいりました。国は平成二十二年度にようやく、今後の新地方公会計の推進に関する研究会を立ち上げまして、自治体の財務諸表作成についての検証や、国際公会計基準等を踏まえた新地方公会計の推進方策などについて検討することとしたところでございます。都は大阪府とともにこの研究会に参加をし、自治体の立場から積極的に意見を反映するよう努めてございます。
 また、都は、自治体への説明会の開催や個別相談の実施に加えまして、公会計制度改革シンポジウムの開催など、新公会計制度の推進に向けてさまざまな普及活動を実施してまいりました。
 こうした取り組みもありまして、都では自治体からの問い合わせや視察が着実にふえるなど、自治体の公会計制度改革に対する認識が高まってきていると考えております。
 こうした動きの中で、都に続いて大阪府と町田市が複式簿記・発生主義会計を取り入れた新公会計制度の本格導入を決定し、精力的に準備に取り組んでおります。都は、大阪府及び町田市に対しまして積極的に支援を行っており、本格導入に向けた準備も最終段階に差しかかっているところでございます。

○小林委員 自治体の公会計制度改革に対する認識が高まってきていると、このようなご答弁でございましたけれども、都に続いて、大阪府やまた町田市が新公会計制度の本格導入を目前に控えているわけでありますが、都道府県とは規模が大きく異なる点で、町田市の取り組みは画期的なものがあるというふうに思っております。
 町田市は、地方財政が厳しい運営を迫られる状況にあって、財政の健全化に取り組むとともに、市民そして納税者に対して、納められた税金などがどのように使われ、運用されているかについて、できる限りわかりやすく説明する責任があるという認識に立って、新公会計制度の本格導入の検討を始めるに至ったというふうに聞いております。町田市の経営改革会議では、市の財産は市民、地域社会からの預かりものであり、その的確な把握が経営の基本であるとの考え方も示されており、行財政改革の核心を突いた考え方であると思っております。
 このように、町田市が平成二十四年度から複式簿記・発生主義を取り入れた新公会計制度を本格導入するため、準備を進めていることは、大変意義深いことであると思います。
 そこで、基礎的自治体としては初めて、この東京都方式を採用する町田市の本格的な複式簿記の導入の準備に当たり、都の具体的な支援策についてお伺いをいたします。

○佐藤会計制度担当部長 町田市では、平成十九年度の市の経営会議におきまして新公会計制度の導入が了承されまして、平成二十年度より、町田市新公会計制度導入委員会を設置し、新公会計制度の導入について検討を進めてまいりましたが、都はこの委員会やその下部組織に発足当初から職員を派遣しまして、きめの細かいアドバイスを実施してきております。
 町田市のこの委員会では、新公会計導入の意義や基本方針を初め資産評価、整備する財務諸表、システム構築などにつきまして検討を行い、平成二十一年度に報告書を取りまとめましたが、その作成に都の職員も参画をしてございます。
 その後、町田市は平成二十二年度の経営会議におきまして、都と同様の新公会計制度を導入することを決定してございます。
 さらに、平成二十三年度には、都のノウハウを実地で学んでいただくために、町田市から研修職員を受け入れますとともに、平成二十四年度からの本格導入を控え、町田市が円滑に準備を進められますよう、都は支援体制を充実し、会計基準の策定やシステム構築などにつきまして詳細な支援を行っているところでございます。

○小林委員 ありがとうございます。
 町田市が本格導入の検討に着手する段階からきめ細かな支援に努めてきたということですが、東京都やまた大阪府と規模が大きく異なる町田市に対して実際に導入支援を進めてきた経験から、区市町村への普及活動について認識を新たにされたこと、また学んだこともあったのではないかというふうに思います。
 区市町村が本格的な複式簿記を導入する際にはさまざまな実務的課題に直面すると思いますが、町田市はどのようにそれらを乗り越えてきたのかをお伺いいたします。

○佐藤会計制度担当部長 ご指摘がございましたように、都道府県に比べまして規模の小さい区市町村では、本格的な複式簿記の導入のような新規の課題に対応する余力が限られる面もございますが、とりわけ新公会計制度は、本格導入までに時間を要することや、組織体制を整える必要があるということでございますので、さらに効率的な導入手法が必要となるところでございます。
 ご指摘の実務的な課題としましては、正確な財務諸表作成の出発点として資産台帳が必要でございますが、区市町村ではその整理のノウハウが不足しているところも多いといったことや、作成する財務諸表をその自治体の行財政運営にどう生かしていくのか、漠然としたイメージはあるものの、具体的に示せないといったようなことがございます。
 これらの課題に対して、町田市におかれては、新公会計制度の導入検討に先行しまして、資産の有効活用を図るための未利用地等検討委員会を組織し、強い意欲を持って市有財産の適正な把握を進めるなど、本格的な財務諸表作成の前提となる作業に取り組んでおられます。
 また、新公会計制度の本格導入の検討に当たりましては、アドバイザーである公認会計士や、都の職員と町田市職員が緊密に連携をしながら、年度ごとに段階的な資産評価を行い、台帳を整備するなど、工夫も凝らしてございます。
 さらに、本格導入の検討段階から、複式簿記・発生主義会計やこの制度の導入意義なりにつきまして、市職員の理解を高めるための研修を行うなど、制度を着実に構築し、円滑な導入に結びつけるためのさまざまな手だてを講じ、組織を挙げて取り組んでいることが挙げられます。

○小林委員 町田市が具体的な課題、それを一つ一つをどのように克服をされ、この平成二十四年度の本格導入に至っているのかということを、まず克明にご答弁いただきましたが、新公会計制度の構築やこれまでの運用の過程で得た経験と、また積み上げた都のノウハウが大きな羅針盤となって、都と、そして町田市の緊密な連携と努力で実務的な課題が一つ一つ解決をされて、平成二十四年度の本格導入に向け、着実な歩みを進めてこられたというふうに理解をいたしております。
 そこで、町田市へのこれまでの支援などを踏まえまして、区市町村において、複式簿記を備えた新公会計制度の導入が一層進むよう、都として普及活動をさらに強化すべきと考えますが、局長のご見解をお伺いいたします。

○松田会計管理局長 先ほど来、委員からもご指摘のように、複式簿記を伴います新公会計制度の導入は、都道府県に限らず、区市町村におきましても、行政運営に経営の視点を一層取り入れることや、住民に対してアカウンタビリティーを果たすという観点などから、極めて重要な事柄だと考えております。
 町田市では、都の普及活動や取り組みなども参考にしながら、新公会計制度導入の必要性を認識いたしまして、平成十九年度に区市町村としてはいち早く本格導入を決定いたしました。都は、町田市が本格導入に向け検討を始めた初期の段階から現在に至るまで、切れ目なく支援を行ってきておるところでございますが、こうした経緯を踏まえまして、都は区市町村に対して、会計基準の策定や必要なシステムなど本格導入に向けた具体的な検討事項とともに、資産の正確な把握の進め方など、それぞれの団体の取り組み状況に応じた本格導入までのプロセスを提示してまいります。
 また、新公会計制度の本格導入を検討する意欲のある区市町村に対しましては、大阪府や町田市への支援と同様に、人材の相互派遣や詳細なノウハウの提供を行うなど、都としてできる限りの支援を実施していく考えでございます。
 今後とも、都は、一つでも多くの自治体で複式簿記を伴う新公会計制度の導入が進むよう、きめの細かい普及活動を行いまして、公会計制度改革に全力で取り組んでまいります。

○小林委員 ありがとうございます。
 国の明確なスタンスが固まっていない中、自治体が公会計制度改革を推進する環境は、これは余り整っていない中ではありますけれども、都は先駆者として、全国の自治体の公会計制度改革を牽引していく使命があるというふうに思っております。
 住民に最も身近な基礎自治体である区市町村において公会計制度改革の取り組みが進むことは、住民が身近な地域の施策について意見を述べる際の判断材料がふえることになり、住民参加のまちづくりを推進する上で有効ではないかと考えます。町田市の取り組みをモデルケースとして、都内はもとより、全国に発信をしていただき、公会計制度改革を着実に進めていただくよう改めて要望し、また、我が党もそうした取り組みをしっかりと支援していくことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

○神野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○神野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○神野委員長 これより選挙管理委員会事務局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十二年度東京都一般会計決算中、選挙管理委員会事務局所管分を議題といたします。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○神野委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○神野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で選挙管理委員会事務局関係を終わります。

○神野委員長 これより知事本局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成二十二年度東京都一般会計決算中、知事本局所管分を議題といたします。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○大津委員 本年三月十一日、東日本大震災が発生し、沿岸部の仙台空港は津波による甚大な被害に見舞われました。一方、羽田、関西、中部国際など、日本の主要空港は沿岸部に位置をしており、関東で見れば、東日本大震災により羽田空港と成田空港はともに一時閉鎖をいたしました。沿岸部の羽田が閉鎖すると、東京都内にある内陸の空港は、福生市外四市一町に所在する横田基地と、調布市の調布飛行場となります。
 そこで、成田も含めて四つの空港を比較してみますと、羽田空港は約千二百七十一ヘクタール、成田約九百四十ヘクタール、横田基地約七百十三ヘクタール、そして調布飛行場約三十九ヘクタールと、横田基地は広大な面積を有しております。都心から数えた距離も、羽田は十六キロ、横田三十八キロ、成田は六十六キロとなっております。
 横田基地の滑走路は、都内でも最大級の三千三百五十メートル級の長さがございまして、都では軍民共用化の実現に向けて取り組んでいるところであります。本年の東日本大震災の被災も受けたことを契機といたしまして、今後、忘れたころにやってくる天災、例えば地震、台風、竜巻、火山も含めた被災時には、被災地支援や人命救助支援等の連携もできるような横田基地軍民共用化を推進していっていただきたいと存じます。
 米国から迅速な国際支援協力をいただいたこのトモダチ作戦ですが、新聞報道によれば、さきの東日本大震災では、この横田基地にトモダチ作戦の作戦司令部が置かれ、震災対応の広域的な拠点として活躍、活用されたと聞いております。しかし、横田基地は都内にあっても、都民にとっては情報が見えにくく、わかりにくいものです。
 そこで改めて、横田基地ではこのトモダチ作戦として、実際どのような活動が行われたのかお伺いをいたします。

○市毛基地対策部長 横田基地では、トモダチ作戦の実施のために、米軍の航空機が約一千三百回の離着陸を行ったと聞いております。また、そのほかに自衛隊三機、オーストラリア軍三機、タイ軍一機、それからニュージーランド救助隊一機の航空機が、この横田基地を活用しまして、物資及び人員の輸送や、福島第一原子力発電所の事故対応などを行ったと聞いております。

○大津委員 かなりの規模で航空機が離着陸し、さまざまな国の活動が行われ、まさに国境を越えて地球規模で助け合い、きずなの精神が生まれ、災害対応の拠点として重要な役割を担ったことはわかりました。
 次に、三月十一日、羽田空港、成田空港が閉鎖をされましたが、それではおりることができなくなってしまった航空機は、当日どうなったのでしょうか。着陸できなくなった航空機が急遽横田基地に着陸したとの話も聞きましたが、これも都民にとっては、都内にある横田基地で震災時にどのようなことが行われたのか、どのような連携や協力があったのか、見えにくい点があります。都民としても知っておきたい情報であります。
 そこで改めて、震災当日、まず羽田空港、成田空港はどのような状況となってしまったのか、そして横田基地にはどのくらいの航空機が着陸したのかお伺いをいたします。

○市毛基地対策部長 まず、羽田、成田両空港の状況でございますけれども、国土交通省などによりますと、津波や液状化などの被害はなかったものの、羽田、成田両空港とも、当日の地震発災直後の十四時四十六分に閉鎖されました。その後、羽田は一時間後の十五時四十六分に離着陸とも運営が再開されましたが、一方、成田では、この離着陸ともの運営の再開がされたのは翌日の朝の六時ということで、このように、一時的に空路は混乱を来しました。
 そのために、これらの空港に着陸をできなかった航空機でございますけれども、各地の空港に代替着陸を行いましたが、米軍によりますと、横田基地にはアメリカ機十機、オランダ機一機の、計十一機の民間航空機が代替着陸を行ったと聞いております。

○大津委員 今回の被災では、浦安市など沿岸部では、震源から相当離れているにもかかわらず、液状化で多くの被害を出しました。羽田などの被害はなかったとのことですが、今後三十年間で七〇%の確率で起きると想定をされている、切迫性の高いマグニチュード七クラスの首都直下型大地震が関東を襲うことがあれば、まさに海に接する埋立地の羽田空港は大きな被害を受けるのではないでしょうか。
 そうしたときに、羽田の機能を補完するのに十分な三千三百五十メートル級の長さの滑走路を有し、都心にも三十八キロと至近で、しかも内陸にある横田基地は、有効活用されるべき貴重な拠点であります。その意味でも軍民共用化によるメリットは大きく、改めて東京都はこれを推進していくべきと考えております。
 東京都では、軍民共用化の実現に向け取り組んでこられましたが、どのような状況になっているのかお伺いをいたします。

○新美横田基地共用化推進担当部長 横田基地の軍民共用化につきましては、在日米軍の再編計画として平成十八年に定められた再編実施のための日米のロードマップに、日米両国政府で検討することと明記され、両国のスタディーグループによる検討が行われてきましたが、これまで合意に至っておらず、継続協議の扱いとなっている状況にございます。
 この間、在日米軍の再編に関する日米協議をめぐっては、沖縄の問題など、本件以外についても種々難しい課題があることから、厳しい環境が続いてきたと認識しております。
 このような状況において、都としては、関東地方知事会や九都県市首脳会議などとの連携を強化しながら、横田の共用化に関する協議促進を図るよう、外務省を初め関係省庁に強く働きかけてまいりました。

○大津委員 米軍基地の取り扱いは、安全保障という非常に大きな問題も抱えており、ほかの基地問題を見てもいろいろと難しい課題があることはわかります。横田共用化の日米協議が合意に至るにはさまざまなハードルがあると思いますが、東京都としてはどのように取り組んできているのかお伺いをいたします。

○新美横田基地共用化推進担当部長 東京都では、国に対して、横田基地の軍民共用化に関する日米協議の促進を働きかけていくに当たりまして、横田をめぐるさまざまな状況変化に対応した調査検討を進めるとともに、軍民共用化の意義を広くアピールする取り組みを行ってまいりました。
 その一環として、東京は空港容量の不足から、世界の大都市と比べ、ビジネスジェットの受け入れが著しく立ちおくれている状況にあることを踏まえまして、昨年十一月、横田の活用を柱の一つとする、首都圏におけるビジネス航空の受け入れ体制強化に向けた取り組み方針を、都市整備局と連携して取りまとめ、発表したところでございます。
 十二月には、元在日米軍司令官や、元米国の国防総省日本部長など、日米の専門家をお招きしまして、東京で横田基地軍民共用化推進セミナーを開催し、広く都民や関係者の方々の理解を深めていただく機会を設け、共用化への機運の醸成に取り組んでまいりました。
 また、昨年秋には、羽田空港の第四滑走路が供用開始されるとともに、国際化が図られましたが、それ以外にもオープンスカイの拡大を求める流れ、あるいはLCC、格安航空会社の台頭など、首都圏の空港、航空をめぐる環境が大きく変化しております。
 これらの状況を踏まえ、望ましい横田の共用化のあり方について、多角的な視点から調査検討を進めてまいりました。

○大津委員 首都圏の空港容量や機能の拡大とともに、災害時のバックアップ機能を持たせる観点から、東日本大震災時の東京に及ぼした被害も検証し、今後に向けて、都内の貴重なインフラである横田基地を積極的に連携できるような共用に取り組んでいっていただきたいと存じます。
 変わりつつある航空事情を踏まえた調査や、共用化に対する理解を深める取り組みを行ったとのことですが、今後も変化する状況を踏まえつつ、さまざまな方面に働きかけるなど、共用化を推進していくことも大変重要であると考えております。
 そこで、今後の共用化の実現に向けてどのように取り組みを進めていくのか、秋山局長からお伺いをしたいと思います。

○秋山知事本局長 横田基地の軍民共用化に向けた日米協議でございますけれども、先ほど担当部長から申し上げましたとおり、スタディーグループの検討が合意に至らず、継続協議というままとなっております。日米協議そのものは国対国の外交交渉でございますから、さまざまな隘路があり、大変時間もかかるということは重々承知してございますけれども、現在、このような状況に至りましたのは、ここ一、二年の在日米軍をめぐる大きな問題、それから波及しております日米の安全保障のあり方というものが大きく影響しているというふうに思っております。
 こうした状況をいかに打開していくかということを、都として考えたときに、やはり国やアメリカ側へのアプローチを工夫していくということが必要だろうという認識に、現在立っております。
 そのための一つの方向性といたしまして、在日米軍の再編という安全保障の枠組み、これは国家間の議論でございますけれども、この促進を促すということでこれまで大分やってまいりましたが、それに加えまして、航空関係者や経済界など、いわゆる広くステークホルダー、これを巻き込んだ議論に拡大させて、日米両方にメリットになるウイン・ウインの提案をしていくということも一つ重要かなと思っておりまして、先ほどのビジネスジェットの乗り入れというのも、これはアメリカの経済界から極めて大きな要望がある。日本がその受け入れが進んでいない。横田にその条件は整っていると。こういったことを使って提案をしていくと、一つ新たな取り組みかなと考えておりまして、これを積極的に行っていきたいと思っております。
 また、アメリカの国防総省が設立して、アメリカの連邦航空局にも技術的にサポートを行っておりますアメリカのシンクタンクが、ことしに入りまして、首都圏の空港容量が早ければ二〇二〇年にも限界に達する。それで三千三百五十メートルの滑走路を持つ横田の共用化は実現可能性の高い有効な対策であるという指摘も行っております。これ自身、国防総省が設立したシンクタンクからの提言でございますので、そういう面では米国サイドからの発信でもあるということで、協議を進めるための材料としては非常に有効かなというふうに思っておりまして、これを日米の関係者でさらに議論し、検証していくというようなことも、今後進めていきたいというふうに思っております。
 今後とも、横田の共用化につきましては、現状を冷静にきちんと十分に把握した上で、戦略的に取り組んでいくということ。それから、協議推進に資する環境づくり、これも都として進めていくという両面から促進を図りながら、国にも強く迫っていきたいというふうに思っております。

○田中委員 石原知事が提唱し、アジアの大都市とともに推進してきましたアジア大都市ネットワーク21につきまして、何点かお伺いをしたいと存じます。
 アジア地域はダイナミックな成長力を有しており、IMF、国際通貨基金の二〇一一年の世界経済見通しでも、実質GDPの伸び率が他の地域を上回る六%と予想され、アジアは引き続き急速な発展が見込まれるなど、世界経済においても重要な役割を担う地域として成長し続けております。
 このようなアジア地域の中にあって、アジア大都市ネットワーク21は、二〇〇一年に設立されてからの十年の間に、アジアの大都市間の連携と協力のもとさまざまな事業を展開してきたものと存じております。
 まずは、この十年間を総括し、この間の取り組みとその成果についてお伺いしたいと思います。

○熊谷国際共同事業担当部長 アジア大都市ネットワーク21の取り組みについてでございますが、平成十三年の設立以降、アジアの大都市が直面する課題の解決に向けて、航空機の開発促進、危機管理、感染症対策、観光キャンペーンなど、幅広い分野の共同事業に各都市と連携協力して取り組み、実績を積み重ねてまいりました。
 共同事業の一つである中小型ジェット旅客機の開発では、MRJ、三菱リージョナルジェットの製造への台湾とインドの企業の参画が実現いたしました。また、感染症対策プロジェクトでは、東京の発熱外来の事例を参考に、台北市が地域インフルエンザセンターを二百カ所設置するなどの具体的な成果も生まれております。
 個々の実務者レベルでも、各都市の専門家によるネットワークの構築や人材育成を通じ、技術や経験の共有が進んでおります。
 こうした取り組みを通じて、各都市との協力関係を強化し、アジア地域の発展とプレゼンスの向上に貢献をしてきたところでございます。

○田中委員 今ご答弁をいただきましたさまざまな分野で成果を上げているということ、改めて認識をさせていただきました。
 こうしたアジア大都市ネットワーク21の活動の中心は、都市の代表者が一堂に会する、年一回開催される総会ではないかと思っております。
 昨年度、東京で開かれた第九回総会は、設立されてから十年目の節目の年の総会でありました。アジアの大都市の首長クラスが集まる会議でありながら、単なる儀礼的な内容にとどまることのない、中身のある会議が十年間も継続しているのは、加盟しているアジア各都市にとっても非常に有意義な会議体であることの証左であろうと思っております。
 そこで、昨年の東京総会において、どのような点に重点を置いて議論されたのか、またどのような成果があったのかお伺いをいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 東京総会は、新たにロシアのトムスクをオブザーバーとして加えた十二の都市から、六十名の出席を得て開催いたしました。環境負荷の低減や産業振興と新技術をテーマに、活発な意見交換を行うとともに、企業等を含めたアジアの幅広い協力関係などについて議論を深めました。
 その結果、企業や住民などの多様な主体の活力を取り込んだ交流の推進、各都市の産業や技術を相互に紹介する経済交流の促進を図ることに合意し、その内容を東京宣言として採択したところでございます。
 この具体化として、産業交流展二〇一〇にアジアの企業の工業製品や技術を紹介するANMC21アジアゾーンを初めて設置をし、都市間の経済交流の促進を図っております。

○田中委員 東京総会において、アジアにおける経済交流を進め、成功事例を共有し、幅広い分野での多角的な協力関係を構築することに合意されたとのお話もございました。大都市における課題解決に取り組む上で、行政体だけではないさまざまな主体と協力していくことは非常に重要なことだと思っております。
 この視点を含め、今お話をいただいた昨年度の東京総会での成果が、先ごろ開催されましたソウルにおいての総会でどのように生かされているのかお伺いをいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 アジア大都市ネットワーク21では、東京宣言を踏まえ、官民の連携や、アジアの経済交流の促進に取り組んできております。
 まず、ことし六月にソウルで開催された実務担当者会議において、アジア大都市ネットワーク事業への民間部門の参加の拡充について意見交換を行うとともに、今年度の経済交流事業について検討いたしました。その結果、ソウル総会の開催と連動し、十月にソウルと東京の見本市に、ANMC21アジアゾーンを設置し、アジアの企業、経済団体、技術や製品を紹介し、ビジネスチャンスを提供することといたしました。
 先週開催されたソウルの低炭素グリーン成長博覧会のアジアゾーンでは、東京の企業を中心に、連日、多数の商談が行われ、盛況を呈しました。また、来週十月二十六日から東京で開催される産業交流展二〇一一では、アジア六カ国、計三十の企業、団体が出展する予定ですが、こちらも成果が期待されるところでございます。
 今後とも東京総会の成果を踏まえ、アジアの経済交流をより一層深める具体的な取り組みを継続して進めていきたいと考えております。

○田中委員 ただいまご答弁いただきましたように、東京総会の成果が着実に生かされているというお話を伺いました。大変心強く感じた次第であります。首長クラスが一堂に集う総会でしっかり議論をし、その成果を着実に将来につなげることが大切だろうと思っております。今後とも、一過性のものではない、継続的な取り組みを期待したいと存じます。
 また、今回のソウルでの総会に先立ちまして、共同事業の一つである危機管理ネットワークの会議がやはりソウルで開催され、東日本大震災での警視庁や東京消防庁の活動などが報告されるなど、八都市から約百名の専門家が参加をし、実り多い会議であったと伺っております。この八都市の中には、オブザーバーとして、モンゴルのウランバートル市も参加されたとのことであります。既に行われておりますジュニアスポーツアジア交流大会にも、ウランバートル市が同様にオブザーバーとして参加をしており、相撲界ではご案内のとおりでありますが、経済界においても、モンゴル、ウランバートルとの交流が盛んになっている中、今後、ウランバートル市を初め、先ほどのご答弁でも、ロシアの都市もオブザーバー参加をされたというご答弁もありましたが、新たな参加都市を迎えながら、アジア大都市ネットワーク21の充実、発展を願うものであります。
 さて、このアジア大都市ネットワーク21における共同事業の中で、石原知事が最も力を入れており、アジネットを始められた最大の動機ともいわれているのが、中小型ジェット旅客機の開発促進事業であろうと思っております。この事業は、アジアの航空需要が増大する中、成長が見込まれる航空機産業の発展に寄与するため、アジアの技術と能力を生かした旅客機の開発、製造を促進することを目指すものであります。
 また、欧米のメーカーに占められている航空機産業において、アジア製旅客機が実現すれば、それはアジアのアイデンティティーを確立する上で大きな意味がある取り組みだと思っております。
 この事業において、昨年十一月に羽田空港で、石原知事や多くの航空関係者が参加した国際会議が開かれたと伺っております。国際線ターミナルが開業し、アジアへの玄関口となった羽田空港での開催は、このプロジェクトの目的からしても時宜にかなったものと考えております。
 会議では、これからの中小型ジェット機開発の方向性を示すものとして策定されましたアジア旅客機ビジョンについて発表されたと伺っておりますが、このビジョンの概要についてお伺いをいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 中小型ジェット機の開発を促進するためには、アジアの航空機産業を取り巻く現状や将来動向を踏まえた長期的なビジョンを持つことが重要でございます。アジア旅客機ビジョンは、このような観点に立って、研究者、メーカー、エアラインなどで構成される中小型ジェット旅客機の開発促進検討委員会において検討を重ね、昨年十一月に策定をしたものでございます。
 ビジョンでは、インド、マレーシア、台湾、韓国、日本など、アジア各国の航空機産業の現状や潜在的能力について整理をするとともに、経済成長、人口増加に伴って高い伸びが予想されるアジアの航空需要について予測を行っております。
 こうした分析を踏まえ、アジアの技術、能力を生かしながら、アジアの航空需要に対応する百から百五十席クラスの中小型ジェット機の開発に、二〇二〇年をめどに着手することを目標として掲げたところでございます。

○田中委員 アジア旅客機ビジョンが、アジアの技術や能力を結集し、今もご答弁ありました百席から百五十席クラスの中小型旅客機、いわばアジア旅客機の開発を目標として定めているということでございました。YS11以来、四十年ぶりの国産旅客機開発となるMRJ、三菱リージョナルジェットは、アジア旅客機の第一歩と位置づけられております。それはまさにアジネットの国際会議を契機として、台湾の航空機メーカーとインドのIT会社がMRJの設計や製造に参画したからであり、各国のメーカーやエアラインとの連携を進めてきたこのプロジェクトの大きな成果といえるのではないかと思っております。ただ、このMRJにしても、客席数は最大九十二席で、アジア旅客機ビジョンが示す座席数である百席から百五十席には、残念ながら及んでおりません。
 そこで、ポストMRJともいうべき新たなアジア旅客機の開発を促進するためには、アジア各国の航空機に関連する技術や能力の活用に向け、さらなる連携強化を図ることが重要だと考えますが、都の今後の取り組みについてお伺いいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 アジア旅客機を実現するためには、この共同事業に参画していない都市や国を含む、アジア全体の航空関係者との連携を進めることも重要であると考えております。このため、ことし十一月に初めて韓国で国際会議を開催し、成長著しい韓国の航空機産業や研究機関等の参加を得て、各国の技術者、研究者との間で情報や知見の交換を行うことといたしました。
 アジア旅客機ビジョンでは、韓国の航空機産業について、国の強いリーダーシップのもと、三つの大手企業の統合により発足した航空機メーカーを中心に、急速に業績を伸ばしている状況であることを取りまとめております。こうしたことから、現地韓国での会議においては、産学官の連携の取り組みなどについて有意義な議論が期待されるところでございます。
 こうした試みにより、アジア各国の航空機産業間での情報共有と連携を拡充し、ポストMRJともいうべき新たなアジア旅客機の開発を促進してまいります。

○田中委員 中小型ジェット機の開発促進に関する国際会議が初めて韓国で開催されるのは、非常にいい取り組みだと思っております。韓国の航空機産業や研究機関との連携を試みることで、アジアの旅客機の共同開発の輪が一層広がることを期待しております。また、東京が、日本が、ぜひその主体的な立場で展開できるように、また改めて期待をしているところであります。
 今後、アジア旅客機ビジョンが掲げた、二〇二〇年に百席から百五十席の座席数を有するジェット機の開発着手をするという目標に向かって、アジア各国、各都市のさらなる連携が進むよう取り組みをお願いしたいと思います。
 ここまでの質疑を通じまして、アジア大都市ネットワーク21が着実な成果を上げ、また中小型ジェット機の開発促進事業では新たな取り組みを進めようとしていることを改めて確認をさせていただきました。アジア大都市ネットワーク21は、昨年、発足以来十年目を迎え、ことしのソウル総会は、二〇〇五年の総会が開催されなかったために、ことしのソウル総会が十回目の総会という節目の時期に来ているところであります。
 東京宣言が採択された昨年の東京総会では、議長である石原知事を補佐されている局長の奮闘ぶりも拝見をさせていただきました。知事が進行するアジア大都市ネットワーク21総会を見るにつけ、改めてこの会議の重要性を認識した次第でございます。
 このような時期を迎えたアジア大都市ネットワーク21について、今後どのように取り組んでいくのか、局長のご所見をお伺いいたします。

○秋山知事本局長 アジア大都市ネットワーク21でございますけれども、もともとのアジアの大都市がそれぞれの国を牽引するという位置づけのもと、また大都市にはその国の問題が顕著にあらわれるという流れの中で、東京を中心にアジアの大都市がこういったネットワークをつくって、個別の都市課題に対応するということで、具体的な成果のある都市外交を展開するという目的で発足したものでございまして、先ほど部長からもるるご説明いたしましたけれども、中小型ジェット機、それから大規模災害、環境、感染症対策など、十二の共同事業をかなり具体的に推進できたと思っております。
 また、首長同士が顔見知りになるだけではなくて、それぞれの部署が比較的恒常的に連絡ができるような体制にもなってまいりまして、それからアジアネットワーク21のホームページにはそれぞれの都市の問題や成功事例などもそれぞれ掲載されるというところまで、具体的な課題の解決については成果を上げてきたというふうに思っております。
 一方、先ほど田中委員からもお話がございましたこのネットワークでございますけれども、石原知事の提唱で十三年、開いたと。東京でスタートしたものが、昨年、また東京に戻ってきたと。ことしソウルで既に開かれ、来年シンガポールで行われるということになりますと、ほぼ会員都市が一巡するということになります。成果もかなり上がってきたということで、おっしゃるとおり節目の年、節目の時期にあるというふうに考えております。
 そういった認識のもとで、昨年の東京宣言では、これまでの具体的な都市課題の個々の成功事例、これはこれで共有しつつ発展させますが、それに加えて、官民の連携をさらに進めて、各都市の産業や技術を相互に紹介する機会などを設定するという方向を打ち出しております。先ほどお話がありましたとおり、具体的には昨年の産業交流展二〇一〇、アジネットの総会と同時期に開いて、ネットワークのブースも設けて、そこでマッチングを図るというようなことも行いました。ことしのソウル大会でも、同じ時期のグリーン成長博覧会で同じような取り組みを行うということで、着実に、都市間だけではなくて、都市をキーワードとしたその国の産業界、経済団体なども踏まえたネットワークをつくっていこうという、ある種の方向のプラスアルファを、昨年つけかえたものが、ことし着実に動きつつあるという状況にあると思っております。
 また、先ほどウランバートルの話も先生の方から出ましたけれども、昨年にはトムスクがオブザーバー参加ということで、ロシアから参加しております。またウランバートルもということで、そういう意味では地域的な広がりを見せているという時期にもございまして、今後ともこの十年の成果を生かすということだけではなくて、都市を軸に企業や経済団体を含む複合的なネットワーク、これをつくることで、よりアジア大都市ネットワーク21を深化していきたいというふうに思っています。

○田中委員 どうもありがとうございました。
 これまでも数多くの成果が上がっていることを改めて認識をいたしましたし、中小型ジェット旅客機を初めとする、今、取り組んでいる課題についても、実現を大いに期待をしているところであります。
 また、先ほど触れましたけれども、ソウルで開催された危機管理ネットワークの会議において、東日本大震災の状況の報告があったと。そういうことの情報共有をすることによって、また新たな東京の防災対策にもつながる新たなアイデアも出てくるんだろうと期待をしておりますし、また、水道局や下水道局が現在国際ビジネス展開をしようとしている中で、また、場合によってはこのネットワークを通じて新たなビジネス展開といったことも期待されるのであろうと認識をしております。
 また、さらには二〇二〇年に、東京ではオリンピックを何としてでも実現をしていきたい。その目標に向かって邁進をするわけですが、このネットワークを通じ、またオリンピックの実現に向けた一つの大きな力になっていくことも期待をしているところであります。
 いずれにしましても、このアジア大都市ネットワーク21のさらなる充実が、都民福祉の向上、また東京都政の推進につながるものと大いに期待をし、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○小林委員 私からも、このアジア大都市ネットワーク21及びアジア人材育成の推進についてお伺いをさせていただきます。
 先ほど来お話がございましたように、平成十三年の十月に第一回東京総会を開催して、アジア大都市ネットワーク21を正式に発足をさせて、本年で満十年という節目を迎えました。
 このアジア大都市ネットワーク21では幾つかの共同事業に取り組んでおりますが、その一つに危機管理ネットワークがございます。この危機管理ネットワークは、アジア地域の各都市の危機管理能力の向上を目的として設置されているわけでありますが、自然災害や大規模事故などの危機に対するノウハウを共有していくことは、アジアの団結を図る上でも非常に重要な要素であるというふうに考えております。
 特に本年は、東日本大震災という未曾有の自然災害を日本は経験いたしましたので、そのとき東京がどう行動したのか、また、これからどのような対策を講じていこうとしているのかは、アジア各都市も注目をしていると思います。
 初めに、危機管理ネットワークでは、年一回、アジア各都市において危機管理会議を開催しておりますが、これまでの会議の経緯と、昨年度、台北で開催されました第八回危機管理会議の成果についてお伺いをいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 アジア危機管理会議でございますが、平成十五年から各都市の危機管理の実務担当者が一堂に会し、年に一回開催をしております。これまで、大都市におけるNBCテロ対策、災害時の大都市機能の維持と被害の軽減などをテーマに、情報や意見の交換を行ってまいりました。
 第八回危機管理会議は、平成二十二年九月に、アジアの六都市から約百名の参加を得て、台北市において開催されました。会議では、地球温暖化と気候変動に適応した災害軽減策をテーマに、台湾の大規模台風への対応など、参加都市が先進的な取り組み事例を報告し、経験やノウハウを共有いたしました。
 今後とも、各都市の危機管理能力の一層の強化、知識と経験の共有、継続的な訓練、演習によって、危機管理ネットワークを通した都市間の連携強化を図っていく、そのことを確認したところでございます。

○小林委員 さまざまな角度でのテーマで、情報、意見交換されているわけですが、実際に有事の際にこのネットワークがどう生きてくるのかが重要であると思います。
 そこで、三月の東日本大震災が起こった際の危機管理ネットワークとしての取り組みについてお伺いいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 東日本大震災の発生を受け、直ちに各都市に対し、危機管理ネットワーク連絡網によって震災の情報を発信し、東京の状況などをお知らせいたしました。これに対し、バンコク、ジャカルタ、マニラ、マレーシア、台北から、お見舞いの言葉や支援の申し出をいただいたところでございます。
 また、震災後初めての開催となる本年九月の第九回危機管理会議、ソウル会議におきまして、警視庁、東京消防庁、総務局総合防災部から、東日本大震災への対応と教訓について発表を行い、各都市との間でこの未曾有の経験を共有していく契機といたしました。
 引き続き、総合防災訓練への海外救助隊の参加、職員能力向上プログラムによる研修の実施、危機管理ネットワーク連絡網を活用した情報提供などにより、東日本大震災の経験、ノウハウの共有をさらに進め、アジアの各都市におけます防災対策の一層の強化を図ってまいります。

○小林委員 ありがとうございます。
 今のご答弁にもありましたように、この東日本大震災で得た経験、そしてまたノウハウ、これはしっかりとまた検証し、そしてアジアの各都市との情報共有をしていただいて、さらなる防災対策、これを東京がリードしていただきたいというふうに思っております。
 次に、人材育成についてお尋ねします。
 危機管理ネットワークでは、人材育成の一環として、都市における捜索救助研修と救助技術研修を実施しておりますが、この二つの研修の取り組みについてお伺いいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 危機管理に関する二つの研修でございますが、危機管理ネットワークの事業の柱として、実務専門能力の向上と人材の育成を図るため、毎年実施しているものでございます。
 都市における捜索救助研修は、シンガポールの主催により、各都市のレスキュー隊員を対象に、捜索や救助の高度な技術を習得してもらうためのコースでございます。これまで東京消防庁からの派遣を含む合計十三名が、各都市から参加しております。
 一方、救助技術研修は、救助技術の推進指導者を養成するもので、東京消防庁で救助技術に関する研修を行った後に、参加各都市に東京消防庁の職員が赴いて、現地の状況に応じた技術指導を実施しているものでございます。これまでにバンコク、クアラルンプールから、合計十四名の研修生を受け入れるとともに、両都市の現地において合計百五十五名の消防隊員に対し訓練を行っております。
 両研修に参加した職員からは、研修で学んだ手法を地域に普及していきたい、国際協力の重要性を認識できた等の声が寄せられておりまして、今後とも各都市の危機管理に関する実務能力の向上とネットワークの強化に役立ててまいります。

○小林委員 最後に、アジア人材バンクについてお伺いをいたします。
 このアジア人材バンクは、将来的に東京とアジアの各都市のかけ橋となる人材の育成を目的として設置されたわけですが、当然のことながら、人材の育成というのは短期間でなし遂げられるものではなく、長期にわたってはぐくんでいく必要性があります。その意味においても、アジア人材バンクの運営や成果については、節目節目で目的とした人材輩出に向けての取り組みを検証していく必要があると考えます。
 二十二年度におけるアジア人材バンクの取り組みと成果についてお伺いいたします。

○熊谷国際共同事業担当部長 アジア人材バンクは、アジア大都市ネットワークの研修事業に参加した各都市の職員や、首都大学東京の留学生などの人材情報を登録し、将来にわたる東京とアジア諸都市の人的ネットワークの構築に寄与することを目的に、平成二十年度に設置したものでございます。登録者に対し、ウエブマガジン、アジア通信を定期的に発行し、東京に対する親近感の醸成を図るとともに、専門分野ごとにメーリングリストを設け、登録者のニーズに応じて、きめ細かく専門性の高い情報を提供しております。
 平成二十二年度の取り組みとしては、首都大学東京で受け入れた留学生のための新たなページを設け、活動報告や研究成果の発表の場として活用を図りました。
 バンクの実績でございますが、毎年着実に登録者数を伸ばし、平成二十三年三月には計八百十名の登録者数に達しました。
 閲覧数、いわゆるページビューでございますが、平成二十一年五月に月当たり約四千件だったものが、この二十三年八月には約十万三千件に達するなど、順調に増加の一途をたどっております。
 今後もアジア人材バンクの取り組みにより、将来、アジアの各分野を先導していく人材のきずなを築き、交流を通じてその知識や経験を共有するとともに、長く東京とアジアのかけ橋となる人材を育てていくことを目指してまいります。

○小林委員 ありがとうございます。
 平成二十年度に設置をされたということでございますので、まさにこれからが、この設置をされたアジア人材バンクの本領が発揮をされる時期になってくるかと思いますので、また着実な推進をお願いしたいというふうに思います。
 これからのアジアの発展、また繁栄を考えたとき、東京の果たすべき役割は極めて重要であります。アジア大都市ネットワーク21のホームページにおける都知事のあいさつの中では、アジア大都市ネットワーク21の活動を中心として、アジア各都市と連携を深め、二十一世紀がアジアの世紀であることを世界に向けて発信していきますと述べられておりますが、私も同感でございます。
 アジアの中の日本を考えたときに、何が重要か。ある識者が次のように述べております。日本はもっとアジアの人々から信頼されるよう、真剣に、誠実に努力していかねばならない。だからこそ、互いの文化の根底をなす思想や哲学に光を当て、ともに理解し合い、学び合っていく対話が必要であると、このように述べております。
 知事本局が進めておられるアジア大都市ネットワーク21、またアジア人材育成の推進は、アジアの世紀を築いていく上でも着実な前進とともに、目に見える結果が求められてくると思います。そして、アジアの人々から信頼される日本を築いていく上でも、東京のこの取り組みは大事なかぎを握っているといえます。
 アジアの大都市が共通の課題に共同して取り組んでいく国際的ネットワークではありますが、根本は人であります。ともに理解し合い、学び合って、真の友好と連帯を築き、そして実効性のある事業展開をしていただきますことを要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○吉田委員 私は、知事本局が所管局として推進している総合特区に関連して、若干質問させていただきます。
 都はことし九月に、アジアヘッドクオーター及び国際コンテナ戦略港の二つの総合特区の申請を、国に提出をいたしました。それに先立って、本決算年度である昨年九月だと思いますけれども、総合特区制度に関する提案募集、これは国が行いましたが、これに応じて四つの提案、総合特区を提出したというふうに聞いていますが、この国の提案募集に対して都はどのような総合特区を提出したのか。その概要についてご説明をお願いいたします。

○澤計画調整部長 冒頭、一点、ご確認申し上げたいんですけれども、昨年九月に国が実施をしました募集はアイデア募集でございます。これとは別に、ことしの九月、先月でございますけれども、正規の提案募集を実施してございます。
 そうした中、昨年九月に行いました国のアイデア募集についてでございますけれども、これは、国が本制度を創設するに当たりまして、特区制度に係る政策課題や求められる共通事項を抽出いたしまして、これらを法制度や税制改正などに反映させることを目的としまして、民間事業者等も含め、広くアイデアを募集したものでございます。
 これに対しまして、都は国際戦略総合特区として三つ、具体的には、アジア域内ヘッドクオーター構想、また国際コンテナ戦略港湾総合特区、カジノ特区構想、また、地域活性化総合特区といたしまして、アニメコンテンツ産業拠点構想、以上の四つのアイデアを提案したところでございます。

○吉田委員 この提案募集については、私ども初めて、今、具体的にここで聞いた次第でございます。それで、あくまでもアイデアだということを、冒頭、確認したいという旨のご発言がありましたけれども、私はその中で、もう既に二つの総合特区についてはことし九月に提出をされた。残るカジノ特区と、アニメコンテンツ特区ですか、これは申請はされておりません。
 ただ、アイデアとは強調されましたけれども、四つのうちの一つにカジノ特区なるものが提出されたということは、見過ごすことができないというふうに思います。しかも、四つのうち二つについては既に具体的な申請手続に入っている。そうすると、カジノ特区についても、単なるアイデアだということで、私としては聞き過ごすことはできないというふうに思います。
 なお、アイデアだということが強調されましたけれども、私、総合特区制度に関する提案募集要項を改めて見させていただきましたが、これは単なるアイデアという次元のものではなくて、地域におけるとるべき戦略を主体的に検討していただき、それを実行する上でのボトルネックや必要な支援措置を抽出していただくというものとして募集したわけですね。すなわち、国が総合特区を考える上で一方的に優遇策を検討するのではなく、各自治体や民間企業が、どうしてもこういうことをやりたいということを主体的に検討して、その上で解決すべき課題を、国としてもそれを受けて検討したいということですから、アイデアといっても決して空想的なものというふうに、私は受け取ることはできないというふうに思います。
 それで、改めて、なぜこの四つの一つとしてカジノ特区を提案したのか。都としてまさに実現をしていくという意思があるからこそだと思わざるを得ませんが、いかがでしょうか。

○澤計画調整部長 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、昨年九月のアイデア募集に対しまして、都として規制緩和、財政支援、税制支援などが一体的に取り組むことができるものとしまして、アイデアとして四つの特区を提案しております。
 カジノ特区につきましては、実現に向けました法整備を国に求めてきた経緯を踏まえまして、特区のアイデアの一つとして提案したものでございますが、法整備がなされていない状況でありますことから、都としては国の動向を注視していきたいというふうに考えております。

○吉田委員 カジノについては、国の法整備を求めてきた経過があるから提出をいたしましたと。国の動きを注視していくということですけれども、現段階では国の法整備の見通しは全く明らかになっていない。したがって、特区ということでその地域を限定して、法令等の緩和によってカジノが運営できるように考えて、アイデアかもしれませんけれども、出したんだというふうに受けとめざるを得ないわけですけれども、改めて、私はこの問題を通じて、都としてどういうふうにこの間対応してきたのかということを注視したいというふうに思っております。
 知事は就任直後から早い時期に所信表明でカジノについて言及し、また、私も直接見に行きましたけれども、都の展望台で模擬イベントを実施したということもあったと思います。
 改めて、カジノ誘致に関して、都としての基本的なスタンス、方針、そして取り組みの経過について、この機会にご説明をお願いいたします。

○潮田地方分権推進部長 カジノは有力な観光資源であるとともに、経済波及効果、あるいは雇用創出効果が期待できるものであることから、世界の多くの国で合法化されまして、開設をされておるところでございます。
 一方で、我が国では、カジノは刑法で規制をされてございます。こうしたことから、カジノについて、平成十三年九月の都議会第三回定例会での所信表明におきまして、石原知事が、カジノ実現には法制度の整備が必要であり、国に対して強く働きかけていくと発言をしたところでございます。
 そして、十四年の十月、先ほど先生がおっしゃいましたが、都庁の南展望室で、参加者らがルーレットなどのゲームを疑似体験できる、新たな観光資源カジノのイベントを実施したところであります。また、国に対しましては、十五年の六月から、毎年継続をいたしまして、観光資源としてのカジノ実現のための法整備を提案要求をしているところでございます。
 今後も、都としましては、国への提案要求を行いつつ、国の動向を注視してまいります。

○吉田委員 今述べられたような経過を振り返ってみて、改めて、今回四つの特区の一つとして、昨年度、本決算年度でカジノ特区を提案したということは、非常に重大だと思っております。
 そこでお伺いいたしますが、募集要項を見ますと、極めて、単なるカジノ特区を実現をしたい、何を優遇してくださいという程度のものではなくて、例えば詳細に、どの地域を、まずその指定をするのか。例えば、もちろん都道府県でいえば東京都だと思いますが、その中のどのエリアなのかということですとか、その地域でその戦略を実現するために都としてどのような支援策を行う意思があるのかということが、この提案では詳細に書くことが義務づけられているし、それに準じてきちんと書かれたものが提出をされているというふうに認識をしております。
 それで、具体的にどのようにこうした内容について記載をして提出をされたのか。その内容についてさらに、より詳細にご説明をお願いいたします。

○澤計画調整部長 カジノ特区は、エンターテインメントとしてのカジノを核とした複合的総合観光拠点の整備を行う特区として、アイデア募集を行ったものでございます。本提案の中には、法整備に加えまして、安全・安心確保のための犯罪防止措置や、ギャンブル等への依存症対策、青少年に対する教育活動の充実などを提案しているところでございます。
 なお、対象地域や支援策等の具体的な内容につきましては、これを公にすることによりまして、不当に都民や関係者等の間に混乱を生じさせるおそれがあることなどから、明らかにはしてございません。

○吉田委員 ただ、これも私、国の募集要項を確認しましたが、国は各都道府県や団体から提案を募集するに当たって、寄せられた提案については原則公開いたしますということを明らかにして、もしどうしても不都合な場合には、その旨要望を添えていただくというのが原則になっていますよね。実際に内閣官房のホームページを開きますと、多くの道府県は、一部ですけれども、東京と同じように非公開の県、案件によって若干ありますが、例えばお隣の神奈川県にしても、あるいは大阪府にしても、相当数の提案をしていますが、全部それを公開しております。もちろん、地域も含めて、詳細な戦略も含めて。これは事実ですよね。
 そういうことからすれば、なぜ東京都だけがこれを、ましてや議会の中にも明らかにすることができないのか。さらに、混乱を及ぼすという旨のご発言がありましたけれども、やはり政策形成過程であったとしても、それを透明化するということは、私はやっぱり行政としてはあるべき姿だと思いますし、さらに、先ほどの知事の発言等の経過の中で、私も改めて調べてみましたが、例えば二〇〇三年の知事の記者会見の中では、カジノ実現に向けて、臨海副都心の台場にカジノを想定した巨大なゲームセンターを誘致したいということまで発言した経過があるわけですよね。
 そうすると、この今回の提案は、知事のそうした構想とは違うものなんですか、どうですか。

○澤計画調整部長 まず、東京都だけが非公開というようなことがあったかと思いますけれども、これは東京都の判断として公開をしていないということでございます。
 都といたしましては、先ほど申し上げたような理由によりまして、詳細について具体的な内容については明らかにしていないというところでございます。

○吉田委員 アイデアだ、アイデアだといいながら、こうしたことについて聞くと公開をしないということ自身が、私は非常に矛盾した話だというふうに思いますし、それは単なるアイデアにとどまらず、東京都としての政策過程の一環ではないかというふうに思わざるを得ません。
 それで、改めて伺いますけれども、こういう特区制度を活用するか否かは別として、東京都として、このエンターテインメントとしてのカジノを軸とした複合的総合観光拠点の整備ということを進めていく意思、構想はあるというふうに受けとめざるを得ませんが、ご回答をお願いいたします。

○潮田地方分権推進部長 先ほど来、計画調整部長が申し上げましたとおり、構想につきましてはあくまでもアイデア募集ということに対します提案でございまして、カジノを今後実現していくというためには、まずは国が法整備を行うことが必要でございます。
 一方で、一般的にカジノにつきまして申し上げますと、先ほど来の繰り返しになりますが、有力な観光資源であるとともに、経済波及効果あるいは雇用創出効果が大いに期待できるものであることでございまして、世界の多くの国々で合法化されておりまして、また、国内におきましても、さまざまな自治体が現在検討を進めているものと承知してございます。
 国において法整備がなされますれば、カジノを含む複合リゾート施設などは、さまざまな効果がある事業としまして活用が期待できるものと考えられます。都としましても、法整備がなされれば、そうした観点から、今後検討を進めてまいります。

○吉田委員 法整備ができないものは進めることはできないのは当たり前ですけれども、いずれにしても、法整備を前提としてそうしたことを検討していきたいという旨のご答弁がありました。
 しかし、やはり私は、都民の中には東京都にカジノを誘致するということについて強い批判や懸念の声があるというふうに思いますし、この議会の中には積極的な誘致議員連盟があるということも私は承知しておりますけれども、しかし、カジノ誘致ということは、東京の経済のあり方やまちのあり方、さまざまな意味で極めて重大な新たな一歩を踏み出すという問題だというふうに思います。都民的な合意もされていないし、その確認すら全くされていない中で、国の法整備を前提として検討を進めていくということは行うべきではないということを強く述べて、私の質問を終わります。

○中山委員 冒頭、先ほど小林委員から、アジア大都市ネットワークを通じた危機管理、危機対応の話がありましたけれども、関連しまして、タイの洪水被害につきまして、今後、どう広がっていくかわかりませんけれども、アジア大都市ネットワークを通じてきちんとお見舞いの旨をお伝えいただきたいというふうに思います。
 先ほど横田基地の質疑に関して、大津副委員長の質疑の中で、タイの飛行機が飛んできていただいたという話もございましたけれども、お見舞いのほどをお伝えいただきたいと思います。
 私からは、毎年度、知事本局の決算には、政府、全国知事会等との連絡という項目がございまして、平成二十二年度の決算では五千五百万円ほどが支出されております。私はこの約五千五百万円に含まれております広域連携、九都県市首脳会議の事業成果について質問させていただきます。
 交通網の発達などにより、住民の行動範囲が飛躍的に広域化し、一体的な生活圏や経済圏を形成していることが、首都圏の自治体に共通する特徴の一つでございます。それにより、防災を初め環境や医療、福祉など、個々の自治体だけでの対応では限界があるような広域的な課題が数多く発生しております。
 こうした問題の解決にいち早く取り組み始めたのが、九都県市首脳会議でございます。ちなみに、九都県市首脳会議とは、首都圏の一都三県と政令指定都市により構成されるもので、既に三十年以上の歴史があります。この一都三県だけで人口は三千五百万人余、これに仮に関東の残りの県を足せば四千三百万人余、これだけの人口が、実質、一つの通勤圏を形成している。世界のさまざまな国はそれぞれの首都圏がございますが、人口の大きさ、密接性、そして生活水準の高さという点でも、日本の首都圏はまれに見る、アジアでも他に例の少ない優位性を持っていると思います。この優位性によるポテンシャルをいかに効果的に活用していくかが、我が国の命運を左右するかぎではないかと、私は考えます。
 ところで、一般にこうした広域的な自治体間の首脳会議は、機能不全に陥りやすいのが常といわれております。その中で、本取り組みは、石原知事の成果に限っても、ディーゼル車規制により、国の基準を上回るより厳しい排出基準を設定して、粒子状有害物質の排出削減を推進した取り組みや、先駆的な災害時の相互の応援協定の締結、帰宅支援ステーションとかそういうことも含めて、九都県市の中小企業の技術を広く売り込むための合同の商談会の実施、さらには横田基地の軍民共用化等の早期実施のため、国への働きかけの共同実施など、活発な実績を上げております。
 さて、平成二十二年度は、この首脳会議の座長を石原知事が務められて運営したと伺っておりますが、この二十二年度の主な活動内容についてお伺いをいたします。

○潮田地方分権推進部長 九都県市首脳会議は、構成団体が一年ごとの持ち回りで座長を務め、運営してございます。昨年は東京都知事が座長を務めまして、座長である知事主宰のもと、都内で五月と十一月に首脳会議を開催いたしました。首脳会議では、羽田空港の国際空港機能の強化を初めとしまして、成田空港の国際線ネットワークのさらなる強化、首都圏三環状道路等の整備促進によります空港アクセスの向上など、首都圏の実情を踏まえました航空政策に関する国への提言を行ったところでございます。
 また、急速に高齢化が進む首都圏共通の課題といたしまして、特別養護老人ホームの整備につきまして、待機者の解消や低所得者に対する負担軽減などが議論されたところであります。そこでの議論を踏まえまして、地方の実情に応じました柔軟な施設整備が行われますよう、緊急提案を決議いたしまして、関係省庁に対して要望活動を実施したところでございます。
 さらに、首都圏の中小企業の振興と活性化を図りますために、お話のございました九都県市合同商談会、こちらは平成二十年度から実施しているものでございますが、こちらに加えまして、座長であります都知事の発案によりまして、すぐれた企業や技術に対して、九都県市のきらりと光る産業技術として表彰いたしまして、首都圏の産業力のポテンシャルを九都県市全体でPRする制度を新たに立ち上げたところでございます。

○中山委員 今のご答弁にございました表彰制度で、東京都の場合は、株式会社ユーグレナのユーグレナの大量培養技術がベンチャー技術大賞も受賞されたものですけれども、非常に魅力のある、可能性がある分野でございまして、それが表彰されたということで、ぜひ具体的な進捗を期待したいところでございます。
 今のご答弁によりまして、九都県市首脳会議が、石原知事が提唱した新たな事業展開に着手されるなど、形式化したりマンネリ化したりすることなく、そうした悪弊に陥ることなく、今もなお首都圏の広域的な政策を実現する場として、意欲的な取り組みが進められている点について、私も、都民の皆さんは大きく評価してくださるというふうに思っております。
 ただその際、広域行政、広域連携だといっても、首脳会議を開催するだけで問題解決が図られるわけではございません。首脳だけではなく、各首脳のもとに力を発揮する自治体職員が、広域的な行政課題に具体的に力を合わせ合って対応できる仕組みが必要であります。
 同時に、微妙に立ち位置の異なる構成団体間の利害、思惑について、円滑に調整を行い、迅速に意思決定を行うことができなければなりません。一つの自治体では解決できない広域的な取り組みが必要となる課題においては、そもそも、例えば災害ですとか、医療ですとか、インフルエンザですとか、人の生命にかかわるような重大な問題が多いわけであります。したがって、人命に及ぶ、一刻を争うような重大な問題を伴うケースが多いだけに、意思決定の迅速さ、電光石火な対応が不可欠であります。
 九都県市首脳会議では、迅速な対応を行うためにどのような仕組みをつくっているのかお伺いをいたします。

○潮田地方分権推進部長 九都県市首脳会議では、首脳によります議論を踏まえて、共通の広域的課題に対応することが必要な場合には、九都県市関係職員によりまして、速やかに事務レベルの委員会あるいは部会などを立ち上げることが可能な仕組みとなってございます。これによりまして、九都県市の職員同士が直ちに検討や政策立案を行いまして、課題への対応を迅速に行うこととしてございます。
 また、首脳会議開催時以外にも、密接に連絡や対応がとれますように、企画担当部局長間の連絡網といたしまして、ホットラインを設置してございます。異なる自治体間で、しかも防災あるいは救急関係以外の対応で連絡網を持つのは貴重な仕組みでございまして、これまで緊急要望などを行う際にも大きな効果を果たしてきておるところでございます。
 今後も首脳会議が最大限の効果を発揮できますよう、九都県市においてより一層連携を強化いたしまして、迅速で実効性のある取り組みを広域的に進めてまいります。

○中山委員 いろいろと工夫を凝らしていただいていることがよく理解できました。
 私は、九都県市首脳会議のもと、分科会的な連絡、調整、時にはワーキングチームのようなものを常時行っていくことが大切だと考えております。そうした意思疎通、共通の取り組みを常に行っておくことが、いざというときの迅速な対応にも結びつくと思います。
 また、場合によっては九都県市すべてに共通した足並みとならない問題であっても、九都県市首脳会議での連携を一つのきっかけに、協力し合える幾つかの自治体同士が独自の取り組みを開始してもよいのではないかと思います。
 例えば、私の地元足立区では、つくばエクスプレスが開通いたしました。その沿線自治体が互いの強みを生かし合って、産業や教育、医療や介護、レジャーなどの発展計画を練り上げ、その具体の進捗を図るための国からの権限移譲や広域連携、民間投資を刺激するためのグランドデザインの設計や、時には特区申請などを考えてもよいと思います。
 同じようなことは、先ほども質疑がございましたけれども、横田基地の軍民共用化の早期実現を促すためのアピールとしても、関係自治体が新たなエアポートの活用の未来絵図をコンペティションしたり、多摩シリコンバレーの活用を含む、都県を越えた次なる総合特区申請へと結びつくようなものも考えていいのではないかと思います。
 また、先ほどご答弁もありましたが、医療、介護の分野でも、かつては都県を越えた連携が重要な課題として取り組まれておりました。都内の高い地価、人件費の現状の中で、困難な都民用の施設を昔は近県に確保しておりましたが、法の関係から、それはなかなか難しいという状況になりました。しかし、現状、雇用創出の機会をつくりたいとか、あるいは平成の大合併によって巨大化した市内の遊休地を有効に活用したいということに悩んでいる周辺自治体も多くありまして、そうしたところの利害と、そして都民の利益というのはマッチングする可能性もあります。必要な規制緩和を一定条件のもとかち取る動きを進めていくことも、有益ではないかと思います。
 先ほどご答弁で紹介のありました優良なユーグレナ等の未来技術も、今回、都が都心区に選定を目指し、他の近県でも選定されるかもしれません総合特区制度を活用して、生産工場は近県に、外国資本との契約交渉は特区内の都内で、そして海外販路の拡大は都の海外販路ナビゲーターでといった連携も可能になると思います。
 今後、首脳の議論の結果が政策として実現できる有効な制度であり続けるよう、状況に合わせた改善や工夫を続けていってほしいと要望いたします。
 各県の首脳も、我々議員も、いつかは交代していくものでありますけれども、都民、県民にとって有益な成果をもたらし得る九都県市首脳会議でありますよう、事務レベルでの工夫、取り組みの前進をお願いしたいと思います。
 日本の頭脳、心臓である東京には、近県から通勤や通学で出入りする人は、一日当たり三百五十万人、平成十七年度の国勢調査だそうですが、横浜市全体に匹敵するほどの人数が都県境を行き来していることになります。冒頭で触れましたように、世界でもまれな巨大な人口と高い消費力に裏打ちされた首都圏というメリットをどう生かしていくかが、日本の大事なポイントであります。
 こうした現実の前では、東京都内に住む都民が安心・安全に暮らせるような政策を考えるだけではなく、それももちろん大事なんですけれども、それだけではなく、首都圏全体の住民の安心・安全も含めた政策を考えて実施していく必要があります。そのため、都の首都圏域での広域的な対応は、いよいよ重要度が増してくる。
 今後とも、都民の意見、東京の実情を十分に踏まえて、首都圏のさまざまな実情を抱えた自治体と密接に連携し、この九都県市首脳会議を主体的かつ戦略的に活用して、行政課題の解決を図られるよう期待して、質問を終わります。

○神野委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○神野委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で知事本局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後三時散会