各会計決算特別委員会第二分科会速記録第四号

平成二十年十月二十四日(金曜日)
第十委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十名
委員長山下 太郎君
副委員長神林  茂君
副委員長大山とも子君
遠藤  守君
吉倉 正美君
山口 文江君
吉田康一郎君
泉谷つよし君
田代ひろし君
村上 英子君

 欠席委員 なし

 出席説明員
生活文化スポーツ局局長秋山 俊行君
総務部長小林  清君
広報広聴部長石原 清次君
都民生活部長平林 宣広君
消費生活部長清宮眞知子君
私学部長小笠原広樹君
文化振興部長廣瀬 秀樹君
スポーツ振興部長細井  優君
東京マラソン事業担当部長岸本 良一君
参事萩原まき子君
参事高橋  博君
参事桃原慎一郎君
参事池田 俊明君

本日の会議に付した事件
 平成十九年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
生活文化スポーツ局関係
・平成十九年度東京都一般会計決算(質疑)

○山下委員長 ただいまから平成十九年度各会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、生活文化スポーツ局関係の決算に対する質疑を行います。
 これより生活文化スポーツ局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十九年度東京都一般会計決算中、生活文化スポーツ局所管分を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○小林総務部長 去る十月十日の当分科会におきまして要求のありました資料についてご説明申し上げます。
 お手元に配布の平成十九年度各会計決算特別委員会第二分科会要求資料の表紙をおめくり願います。
 目次に記載しておりますとおり、十一件の資料がございます。
 それでは、一ページをお開き願います。1、東京ウィメンズプラザ相談件数の推移でございます。
 平成十五年度から十九年度までの過去五年間におきまして、東京ウィメンズプラザに寄せられました相談件数につきまして、配偶者暴力相談とその他の相談の区分ごとに記載をしているところでございます。
 二ページをお開き願います。2、東京ウィメンズプラザ図書資料室における図書購入経費の決算の推移でございます。
 平成十五年度から十九年度までの過去五年間につきまして、東京ウィメンズプラザ図書資料室における図書購入に係る決算額の推移を記載しております。
 三ページをお開き願います。3、消費生活相談件数の推移及び特徴でございます。
 平成十五年度から十九年度までの過去五年間につきまして、東京都消費生活総合センター及び各区市町村に寄せられました消費生活相談件数の推移並びに各年度におきます相談内容の特徴について、それぞれ記載をしております。
 四ページをお開き願います。4、都立文化施設等に係る予算及び決算の推移でございます。
 表の左側に記載している施設ごとに、平成十六年度から十九年度までの予算現額及び決算額並びに平成二十年度の当初予算額を記載しております。
 五ページをお開き願います。5、文化振興施策に係る予算及び決算の推移でございます。
 表の左側の記載の区分ごとに、平成十六年度から十九年度までの予算現額及び決算額並びに平成二十年度の当初予算額を記載しております。
 なお、備考欄には、当該事業区分に係る主な事業等をそれぞれ記載しております。
 六ページをお開き願います。6、都立文化施設等の職種別職員数の推移でございます。
 表の左側に記載している施設ごとに、平成十六年度から二十年度までのそれぞれ四月一日時点におきます常勤職員数について、雇用形態別及び職種別に区分して記載しております。
 七ページをお開き願います。7、都民芸術フェスティバル等の予算及び決算の推移でございます。
 表の左側に記載している事業ごとに、平成十六年度から十九年度までの予算現額及び決算額並びに平成二十年度の当初予算額を記載しております。
 八ページをお開き願います。8、私立学校の耐震化の状況でございます。
 平成二十年四月一日現在の都内私立学校の耐震化の状況につきまして、表の左側に区分した学種ごとに、全棟数とそのうちの耐震性のある棟数、その割合である耐震化率を記載しております。
 九ページをお開き願います。9、私立学校経常費補助決算の推移でございます。
 平成十五年度から十九年度までの過去五年間につきまして、経常費補助の決算の推移を表の左側の区分ごとに記載しております。
 一〇ページをお開き願います。10、東京都育英資金一般貸付の規模の推移でございます。
 平成十五年度から十九年度までの過去五年間につきまして、(1)に貸付の計画額及び実績額の推移を、(2)には、表の左側の区分ごとに貸付人数の推移をそれぞれ記載しております。
 一一ページをお開き願います。11、私立学校経常費補助における授業料減免補助実績の推移でございます。
 都は、家計状況の急変などの理由によりまして私立学校が生徒の授業料を減免した場合には、私立学校経常費補助の中で、学校に対しまして減免額の三分の二を補助しておりますが、この補助の実績として、平成十五年度から十九年度までの過去五年間につきまして、補助を行った学校数及び補助額の推移を記載しております。
 以上、簡単ではございますが、要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山下委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○神林委員 それでは、私の方から、若者の消費者トラブルについてと東京都育英資金についてと二点、これから順次伺っていきます。
 平成十九年度一般会計決算説明書の四三ページにあります消費生活対策費について、まず、何点か伺います。
 高齢者の消費者被害の深刻化がいわれておりますが、それと同じくらい、若者からの消費者相談が都内の消費生活センターに寄せられていると聞いております。確かに、私の身近な知人も実際に被害を受けたわけでございますが、昨年は大手の英会話学校の経営破綻で、若い人たちを初め多くの消費者は、前払いした授業料が返されず、被害をこうむり、社会問題になりました。最近も、海外留学を仲介する会社が倒産し、将来の夢のために苦労してためた百万円単位のお金が戻ってこなくなってしまったという事件もございます。
 消費者被害は、あらゆる世代がその危険にさらされ、特に高齢者の場合には、一千万円を超える被害のため、生活基盤が根底から損なわれる例もあると聞いております。
 若い人たちも、社会経験が浅いことなどから、街角で声をかけられたり、あるいは携帯電話などから架空請求に巻き込まれたりと、悪質な消費者被害に遭う危険性が高いと考えられます。
 そこで、まず、平成十九年度、都内の消費生活センターに寄せられた若者の相談状況がどうなっているのか、また、若い人たちからの主な相談内容について伺います。

○清宮消費生活部長 平成十九年度に都内の消費生活センターが受け付けました相談は、全体で十四万二千七百六十件でございました。このうち契約当事者が二十九歳以下の相談は約二割を占めまして、二万七千七百二十件、これは、六十歳以上の高齢者相談が二万九千五百七十三件でございますので、ほぼ匹敵する件数でございます。
 若者の相談で被害事例として多いのは、例えばエステなどが無料で体験できますといって、無料であることをセールストークとして高額な契約を迫る無料商法が最も多くなっています。
 そのほかに、化粧品などのキャッチセールス、サラ金からお金を借りさせるアルバイトなどのサイドビジネス商法、化粧品、健康食品などのマルチ商法に関するトラブルも多くございます。
 具体的な相談例を一つだけ挙げますが、繁華街で呼びとめられて、無料美顔エステをしないかと誘われて、店に行って予約をし、後日、エステを体験した後で、今のうち対策をとらないとひどくなるよ、ほかの店だと百万円かかるけれど、キャンペーン中だから三十万円でいいよといわれて、エステと化粧品の契約をした、肌も改善されない、解約したい、こんな相談が寄せられているところでございます。

○神林委員 今、ちょっとご答弁を聞いてまして、すごい数ですよね。これは恐らく、実際にはもっともっと、寄せられた以外に何倍もあるわけですよね。そういうことからしますと、本当にすごい数だなという気がいたします。
 あわせまして、今、ご答弁にあった中では、若者の相談は高齢者と同じくらいに多いということでございまして、相談事例からすると、安易に契約してしまったことが多いのかなということを感じさせていただきます。
 今日、商品やサービスの契約は、インターネットによる電子取引であったり、また、キャッシュがなくても契約できるクレジット契約であったり、以前に比べ、若者が容易に高額な契約を結べる社会環境になっているということだとも思います。
 そこで質問ですけれども、こうした若者の消費者トラブルの防止のために、平成十九年度はどのような取り組みを行ったのか、伺います。

○清宮消費生活部長 平成十九年度の若者の消費者トラブル防止のための取り組みでございますが、平成二十年の一月に、区及び市と合同で、特別相談「若者のトラブル一一〇番」を実施いたしました。二日間で二百二件の相談がございまして、架空不当請求に関する相談が多く、そのほかに賃貸アパートや、ヤミ金融業を含むフリーローン、サラ金に関するものが見られていました。
 また、進学や就業に向けた一月から三月の時期には、東京都と近隣九県と国民生活センター等が合同いたしまして、若者向けの悪質商法被害防止共同キャンペーンを展開いたしました。ポスターやリーフレットを都内の大学、短大、専門学校や図書館を初め、カラオケ店、漫画喫茶、インターネットカフェなどの若者が多く立ち寄る娯楽施設にも配布いたしました。
 さらに、一月が成人式の時期でもございますので、十九年度には新たに新宿、渋谷、立川の三カ所の大型街頭ビジョンを活用いたしまして、悪質商法にだまされるなというテーマで、イメージキャラクターが登場する動画によりまして、インパクトの強いメッセージを放映したところでございます。

○神林委員 ただいま、平成十九年度は大型街頭ビジョンを活用するなど、いろいろ若者向けに消費者啓発に取り組んでいるということは十分理解できるところなんですけれども、現実には被害がなかなか減っていないというのが現状だという気もいたします。
 そこで、そうした取り組みとともに、消費者被害はあらゆる世代に及び、社会に出たばかりの若者の消費者被害も多いことから、学校教育の段階から、契約とは何か、クレジットとはどういうことかなどの基本的なことから始まり、実際の社会経済の中で賢い消費者となるためのさまざまな知恵を授けていくことが大切ではないかと考えております。
 そこで、区市の学校教育と連携しながら小中学生向けのモデル事業を予定していると聞いておりますけれども、具体的にどのように行うのか、また、そのほか若者に対する消費者教育にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○清宮消費生活部長 ご指摘のとおり、消費者教育は早い時期から、発達段階に応じまして学校教育と連携協力しながら進めていくことが大変重要でございます。このため、都内の幾つかの区市の協力を得まして、小中学校で、お話しの金融経済教育のモデル授業を実施する予定でございます。
 具体的には、小中学生向けの教材を新たに開発してモデルとなる学校に提供し、学校は、この教材を活用しながらさまざまな工夫を凝らして授業を進め、効果を検証してまいります。
 また、必要な場合には、消費者教育の専門家を講師として学校に紹介するなどの支援も行います。
 さらに、大学生に対しては、大学生協と連携して金融、経済に関する学習会を開催するとともに、高校生の消費者教育充実施策につきましても、今後、関係局と検討を進めてまいります。
 そのほか、消費者問題に関する専門家を学校に派遣する悪質商法被害防止講座、この実施回数を拡大するほか、若者に受け入れやすいビジュアルによる啓発を進めるため、ビデオ教材を新規に作成してまいります。
 こうした取り組みを通じて、若者に対する消費者教育につきましても積極的に展開してまいります。

○神林委員 少し矛盾に聞こえるかもしれませんけど、私自身、理想をいわせていただければ、やはり基本的には人が信じられ、このような被害が起こらない社会を目指すことの方が先決であるのかなと、そういいたいところなんですけれども、これだけ現実に被害が多発しているわけですから、社会生活の中で何らかの防衛策をとらざるを得ないというところが現状なのかなという気がしております。
 消費者問題はあらゆる世代にかかわるものであり、消費者が生涯にわたって真に賢い消費者となるためには、学校教育の段階における消費者教育こそが大変重要であると考えております。今後とも、庁内各局が一層連携を強めながら推進することを期待して、次の質問に移ります。
 次に、東京都育英資金について伺います。
 倒産による親の離職などにより、高校生が学業を断念あるいは転校を余儀なくされる事態が頻発しております。都では、勉学意欲がありながら経済的理由により修学が困難な高校生、公立、私立をもちろん問わず、ということに対しまして奨学金を貸し付ける育英資金事業や、私立高校生に対しては、一定の所得以下の保護者に対して授業料の一部を給付する特別奨学金事業などにより、これらの事態に対応しております。
 特別奨学金については、我が党の要望などを受け、十九年度、二十年度と充実を図ってきているので、今回は育英資金について伺っていきます。
 先ほどご説明いただいた委員会資料でいうと、一〇ページの育英資金の一般貸付の十九年度実績が記載されております。十八億六千七百八十一万二千円となっており、経済的な理由により修学が困難な高校生にとって大きな助けとなっております。
 そこで、この育英資金については、平成十七年度に高校奨学金事業が国から都に移管され、そして、その後に、都ではこれを契機に東京都私学財団に育英資金事業を移管し、現在は財団が実施する事業に都が補助金を交付する形となっております。
 資料によりますと、十七年度の新規貸付分から順次財団に移管し、平成十九年度に移管が完了し、約三千六百人の高校生に貸し付けております。貸し付けには所得要件などがあると聞いておりますが、移管後、要件に合致した者にはすべて貸し付けられているのか、申請したが予算の関係で貸し付けられていない者はいたのかどうか、この点につきましてお伺いいたします。

○小笠原私学部長 育英資金は、勉学意欲がありながら経済的理由により修学が困難であることなどの要件により貸し付けを行っておりますが、予算の制約により奨学金を受けたくても受けられない者がいるという状況にはなっておりません。

○神林委員 そこで、私が特に注目したいのは、倒産などによる家計の急変により、年度途中で育英資金が必要になった場合への対応が図られているのかどうか、まず、お伺いいたします。

○小笠原私学部長 育英資金の募集には、生徒が応募できる時期によりまして、年度当初に在学中の生徒を対象とする通常募集と、進学前の中学三年生を対象とした予約募集、このほかに、家計急変により経済的に修学困難になった者に対して随時申請を受け付ける特別募集がございます。
 副委員長お話しの緊急に奨学金の貸与が必要となった生徒へは、この特別募集により対応しております。

○神林委員 今、お聞きしてほっとしたんですけれど、最近ちょっと、景気が余りよくありませんから、こういうケースが非常にふえているのかなという気がいたしました。申請者には全員貸し付けられており、家計急変の生徒にも対応しているとのことで、本当に安心しているところでございます。
 今後とも、必要としている者には奨学金が受けられるよう十分予算の確保と適切な運営に努めてほしいことを、ここでしっかり要望させていただきます。
 さて、全員に貸し付けられているとなると、次に考えられるのは貸付金額が十分かどうかということになると思います。勉学のための費用の目安として伺いますが、十九年度の授業料と貸付金額を、都立、私立別でどの程度になっているのか、お伺いいたします。

○小笠原私学部長 平成十九年度におきまして、都立高校の授業料の年額が約十一万五千円に対しまして、都立高校生への育英資金貸付金額は二十一万六千円、月額にいたしますと一万八千円でございます。
 一方、都内の私立高校の平均授業料の年額が約四十一万円に対しまして、私立高校生への育英資金貸付金額は三十六万円、月額にいたしますと三万円となっております。

○神林委員 今、ご答弁を聞きまして、都立高校では貸付額が授業料を上回っておりますが、私立高校の場合は授業料に達していないということでございますね。もちろん私立高校生の場合は、特別奨学金の制度により、一定所得以下の保護者に対して一定の給付が行われておりますけれども、学業を継続するには、授業料以外にも、施設費などの学校納付金や参考書代など種々の経費がかかるわけでございます。それを考えると、現行の貸付金額の月額三万円は低いのではないか、月額三万円はどのように設定されるのか、お伺いいたします。

○小笠原私学部長 現在の貸付月額の三万円は、国から都への事業移管前の平成十三年度において、国の旧日本育英会、現在の日本学生支援機構でございますが、この旧日本育英会が実施していた貸付月額の水準に合わせて定めたものでございまして、それを移管後も引き続き適用してございます。

○神林委員 そこでなんですけれども、ということになると思うんですが、国から移管されて、貸付金額の設定は自治体で決められるようになったわけでございます。近県では、私立高校生に対する貸付金額が月額三万円を超えるところもございます。教育にかかる経費は年々増加していると認識しております。貸付金額の増額を図るべきと考えますが、所見を伺います。

○小笠原私学部長 私立高校生に対する貸付月額は、平成十三年度に旧日本育英会に合わせて増額改定を行って以降、平成二十年度までの八年間にわたりまして、三万円に据え置いたままとなっております。現在において育英資金の貸付金額が私立高校の授業料もカバーできない水準になっている状況などを踏まえまして、貸付金額について検討してまいりたいと考えております。

○神林委員 今、お聞きしてまして、学生が安心して勉学が継続できるよう、実情を十分把握していただきまして、早急に検討を進めていただきたいと思いますので、このことについては強く要望させていただきます。
 今、お金の問題が出、それから、先ほどは、みんな何とか受けられるというようなことがございましたので、当然、次には、いかに受けやすいかどうかという点にかかってくると思うんですね。
 そこで、育英資金を借りなければならない理由は、個人個人で異なります。資金を借りることに戸惑いがある生徒もいれば、個人情報が漏れないかどうかを心配する生徒もおります。資金を貸すだけではなく、このような実情を配慮して親身になって相談できるようにすることが必要であり、そのためには学校現場でのカウンセリング機能を充実すべきと考えておりますが、いかがでしょうか。

○小笠原私学部長 育英資金の募集に当たりましては、生徒の勉学意欲などについて、生徒との面談等を学校に依頼しているところでございますが、学校に対する本事業の説明会などの機会をとらえまして、生徒や保護者が安心してこの制度を利用できるよう、各学校に配慮をお願いしてまいります。

○神林委員 昨今、厳しい不況の波が押し寄せてきているのは、皆さんも実感されていることだと思います。都内でも企業の倒産が相次いでおります。これにより、勉学の意欲がありながら経済的理由により修学が困難な生徒が急増する懸念が大変ございます。
 このような状況の中においては、今まで質問してきた私立学校の奨学金の充実が必要であるとともに、奨学金事業を含めた私学振興施策の充実は極めて重要であると考えられます。
 最後でございますので、局長の決意をお伺いしまして私の質問を終わります。

○秋山生活文化スポーツ局長 育英資金事業でございますけれども、私学におきましては、特別奨学金などと相まって、経済的理由で修学が困難な生徒の皆さんに対して、教育を受ける機会の拡充に寄与する制度であるということでございまして、副委員長ご指摘のとおり、経済情勢の変動が大きい昨今、これまでにも増してその役割が重要になってきているというふうに認識しているところでございます。
 先ほど私学部長から、育英資金の貸付金額が私立高校の授業料もカバーできない水準になっている状況などを踏まえ、貸付金額について検討してまいりたいというふうに答弁させていただきましたけれども、まさにそういった形で適時適切に見直していくことが必要だというふうに考えております。
 また、東京では多くの子どもたちが私立学校に通っておりまして、幼稚園児では九割、高等学校生徒では六割弱になりますでしょうか、私立学校が大変大きな割合を占めているという状況にございます。これは、私立学校がその建学の精神に基づきまして、一貫教育や人間教育、情操教育といったさまざまな面で、個性的で特色ある教育を展開されていて、多くの保護者や児童生徒の信頼を得ている結果にほかならないというふうに考えております。
 このように私立学校が東京の公教育において大変重要な役割を担っているということから、都でもこれまで教育条件の維持向上、修学上の経済負担の軽減、学校経営の健全化を目的とした経常費補助のほかに、耐震化に対する助成や保護者負担軽減策など、私学振興のための施策を非常に広範に展開してきたところでございます。
 今後とも、東京における私立学校の役割の重要性を十分認識しました上で、その特色でもあるそれぞれの建学の精神と自主性を十分に尊重しながら、私立学校の振興に努めてまいる所存でございます。

○吉田委員 よろしくお願いいたします。
 私からは、まず、消費生活対策ということについてご質問を申し上げます。
 先ほど神林副委員長から、特に若者の被害というか、こういうことを中心に大変すばらしい質疑がありまして、私も拝聴していたんですが、ご説明は割愛しますけれども、今、振り込め詐欺を初め、都民の消費生活に大変被害、そして不安を与える大きな問題が起きていることは、改めていうまでもないことであります。
 先ほどご説明のありました被害の状況ですが、東京都消費生活総合センターの平成十九年度消費生活相談内容、こちら、私も拝見しましたけれども、先ほどご紹介のあった全相談件数十四万二千七百六十件、十九年度というのは、十八年度の十三万六千六百九十二件と比べて残念ながら増加をしている、そして、不明、無関係と整理されているものは、十八年度が二万四千六百六十八件に対し、十九年度は二万三千三百十八件と減っていることを考えますと、相談件数は増加しているわけであります。
 そして、この内訳を見ても、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、マルチまがい商法、今、申し上げたすべてが平均契約金額も、平均既払い金額も前年度よりも増加している、一件当たりの被害額がふえているということであります。
 そしてさらに、特に高齢者の場合は、平均契約金額が三百一万六千円と非常に高額でありまして、前年度と比較しても六十二万八千円高くなっている。大変残念ながら被害は拡大しているんだなということであります。今回、決算の場でございますので、政策目的を達成できているのか、次年度の予算、施策にどういうふうに反映させていくのかという観点で、いろいろお聞きをしていきたいと思います。
 東京都は、とにかく一生懸命、悪質商法から高齢者などを含め都民を守るために、これまで悪質事業者に対して指導中心の対応から行政処分の強化へと、いち早く方向を転換して積極的に取り組んでいると伺っております。
 そこで、まず、十九年度の悪質事業者の取り締まりの成果がどのようなものであったのか、十八年度と比較してご説明をお聞きしたいと思います。

○清宮消費生活部長 悪質事業者の取り締まりについてでございますが、行政処分を行うためには、被害者である消費者の証言を得るとともに、事業者への立入調査等によりまして、裏づけとなる証拠を収集することが不可欠でございます。
 このため東京都では、平成十三年度に、現職の警察官でございます警視庁併任職員を含む特別機動調査班を設置し、悪質事業者の取り締まりに取り組んできました。十九年度には、新たに経験豊富な警視庁のOB三名を非常勤職員として配置いたしまして、立入調査等の能力を高め、迅速な取り締まりを実施してきています。
 具体的には、十九年度は、同じような手口を使う悪質事業者の一斉処分や、マルチ商法につきまして関係者の大量処分を行ってまいりました。
 その結果、行政処分等の実績は、十八年度の二十一件から、十九年度には四十七件となってございます。この実績は、国の処分件数四十件を超えるものでございます。

○吉田委員 ありがとうございます。
 取り締まりの体制を強化したことで、十八年度に比べて十九年度の処分件数が倍増したと、また、国の処分件数を超えるということがわかりました。
 そして、事業の評価としては、こういう処分件数の実績も本当に大切でありますし、また、効果的に取り組める体制の整備や取り締まり方法の工夫もまた重要であると考えます。
 そこでお伺いしますけれども、行政処分の対象となった悪質商法はどのような内容のものが多いのか、そして、どのように効果的に処分を行ったのか、この際、事例や被害額、非常に極端なものも含めて、具体的にわかりやすくご説明をお願いいたします。

○清宮消費生活部長 十九年度の行政処分の特徴は、依然として、いわゆる次々販売や催眠商法など、高齢者をターゲットといたしました悪質商法に関するものが多かったことでございます。
 次々販売というのは、一度被害に遭った消費者を何度も訪問し、布団や乾燥剤などを次々と販売する商法でございまして、契約総額が五百万円を超える例があるなど、高齢者の老後の蓄えを根こそぎ奪ってしまう極めて悪質なものでございます。
 また、催眠商法は、チラシなどで消費者を空き店舗などに集め、安い商品を配って会場の雰囲気を高め、健康器具などの商品を高額で販売するものでございます。
 とりわけ十九年度に処分に取り組みました催眠商法の手口は、数カ月にわたり安い商品を配り続け、時間をかけて消費者との間に信頼関係をつくった上で、高齢者の方の健康不安につけ込み、多種多量の健康食品を長期にわたって販売する巧妙なものでございました。中には、三年間で三十数回の契約をさせられまして、総額千八百万円の被害額になった消費者の方もいらっしゃいました。
 東京都では、このように同様の手口の問題商法をまとめて一斉に処分する取り組みを行ってございまして、十九年度から今年度にかけて、催眠商法を行う悪質事業者十六者を処分いたしました。
 こうした取り組みの結果、都内の消費生活センターに寄せられる催眠商法に関する相談件数は、大幅に減少しているところでございます。

○吉田委員 ありがとうございます。
 まさしく数カ月にわたって催眠するように、信頼関係というか、だましてつくって、三年で一千八百万円もだまし取られてしまうような方がいらっしゃると、こういうことに対して厳しい取り締まりをしていただいて、本当に都民としてありがたいと思っております。
 一方では、なぜ消費者が簡単にひっかかってしまうのかということでありますが、それだけ本当に手口、セールストークも巧妙でありまして、健康不安など人の弱みにつけ込むというひきょうなことをやっているわけでありまして、都民に悪質商法の、今ご説明いただいたような手口などを十分に周知することが非常に今、大切であります。神林副委員長の方からもいろいろ、いいご質疑があったわけですが、都民への注意喚起、啓発について、例えばテレビやラジオなどメディアも含めて、どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

○清宮消費生活部長 悪質商法の被害をなくしていくためには、効果的な取り締まりとともに、都民の方々みずからが悪質商法について知識を深め、賢く対応していただくことも重要と考えています。
 このため、行政処分を行った場合には、消費者が同様の被害に遭わないよう、悪質商法の手口や違反内容、事業者名について詳しく報道発表するとともに、東京都のホームページや「東京くらしねっと」などという広報媒体を活用いたしまして、その内容を掲載し、広く周知を図っています。
 また、東京都提供のテレビ、ラジオ番組を使い、悪質商法の対処方法を茶の間に提供する機会も設けてございます。
 さらに、日々の消費生活相談のほかに、高齢者被害特別相談など、テーマを決めまして年に数回の特別相談を実施するとともに、区市町村相談窓口に対しましても、その都度、最新の情報提供を行い、都民に身近な区市町村との連携を図っているところでございます。
 今後とも、都民一人一人の消費者被害を未然に防止するため、悪質商法に関する情報の発信につきまして、積極的に取り組んでまいります。

○吉田委員 ありがとうございます。
 いろいろお聞きをしてまいりまして、警察を含め、関係各局との連携、あるいは悪質業者を一網打尽にする一斉処分、あるいは都民へのさまざまな啓発、いろいろな取り組みを今後とも強化をしていただいて、処分も強化をしていただいて、ぜひ来年度、二十年度は、相談件数も被害額も減る、これからどんどん減っていくというように、消費者被害がなくなることを強く希望申し上げます。
 最後に、消費者、生活者である都民の暮らしを守る都政の最高責任者として、局長のご決意をお伺いいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 悪質商法によります消費者被害はもちろんのこと、商品やサービスに関する不安など、都民の消費生活をめぐる課題は深刻な状況にございます。
 都はこれまでも、都民の安全・安心を確保するため、国に先駆けまして、悪質事業者の取り締まりを初めさまざまな取り組みを進めてまいりましたが、本年八月には、東京都消費生活基本計画を改定いたしまして、今後五年間の施策の方向性を定めますとともに、緊急に実施すべき対策につきましても明らかにしたところでございます。
 今後、この計画に基づきまして、現場に根差した施策を積極的に展開することによりまして、消費者被害の拡大を阻止し、都民の不安の払拭に取り組んでまいります。

○吉田委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 では、次に、私立学校の安全対策ということについてお伺いをいたします。
 まず、私学関係の十九年度決算の中から、生徒児童の安心・安全という極めて重要な観点から、私立学校の安全対策に関する補助について、何点かお伺いします。
 十九年度決算説明書の五四ページの表の上から三つ目に、私立学校安全対策促進事業費補助として、予算額九億九千万円、支出済額約七億円、執行率七〇・七%と記載されてございます。この予算額には、AEDにかかわる一億七千万円と、校舎等の耐震化に関係した補助としての八億二千万円が入っておると思いますけれども、今回は、私立学校の校舎等の耐震化に焦点を当てさせていただいて、そもそも耐震化にかかわる補助制度がいつごろから開始されたのか、まずお伺いいたします。

○小笠原私学部長 耐震化にかかわる補助制度につきましては、都では既に平成十五年度から、私立学校の安全対策促進事業費補助制度をスタートさせ、校舎等の耐震化の促進に努めているところでございます。

○吉田委員 直近で中国の四川の地震や、あるいは岩手・宮城内陸地震など大規模な地震が起きていることから、東京都としても取り組みを強めていらっしゃるというふうに思いますが、おっしゃった十五年度からこれまでに、耐震化の促進を取り巻く状況がどのように変わってきたのか、たしか「十年後の東京」においても学校の耐震化、これが取り上げられておりましたけれども、これを整理してご説明いただきたいと思います。

○小笠原私学部長 平成十八年一月に改正された耐震改修促進法に基づき策定した東京都耐震改修促進計画では、私立学校を含む特定建築物の耐震化率を今後の十年間で九〇%とする目標が定められました。
 また、平成十八年十二月策定の「十年後の東京」におきましては、平成二十七年度までに小中学校は一〇〇%の耐震化が目標とされました。
 これらを受けて平成十九年十二月に策定された「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八におきまして、三年後の小中学校の耐震化率は八五%が目標数値となっております。

○吉田委員 そうだと思います。そこで、都も耐震化の促進に向けて努力をしていただいているというわけでありますが、成果は、実際にどれだけの成果が上がっているのかということで、十五年度から補助制度が開始されたわけでありますので、十四年度末の耐震化率と十九年度当初の耐震化率をまずお尋ねいたします。

○小笠原私学部長 平成十九年四月一日現在の私立学校の耐震化の状況は、学校種別ごとに申し上げますと、幼稚園五九・二%、小学校七六・八%、中学校八二・三%、高等学校七〇・六%で、これらの全体では六六・五%となっております。
 平成十四年度末の耐震化率は、全体で五二・九%でしたので、この四年間で一三・六ポイント、耐震化が上昇しております。

○吉田委員 ありがとうございます。
 では、十八年度に比べますと、十九年度は、耐震化促進のためにどのような方策を講じ、その結果どれだけの成果が上がったのか、お伺いいたします。

○小笠原私学部長 平成十九年度におきましては、これまで対象としていなかった個人立などの幼稚園、専修・各種学校を補助対象に加えることとしました。
 また、耐震診断に対する補助制度を整備いたしました。
 その結果としての耐震化率でございますけれども、平成二十年四月一日現在では、幼稚園六一・六%、小学校七七・一%、中学校八四・六%、高等学校七三・〇%で、これら全体では六八・七%でございます。
 先ほどお答えいたしましたとおり、平成十九年四月一日現在は全体で六六・五%でしたので、一年間で二・二ポイント上昇しております。

○吉田委員 都としていろいろと頑張っていただいているというのはよくわかります。しかしながら、先ほどご答弁いただいた、平成二十二年度までに小中学校の耐震化率八五%という目標数値でありますが、年間で二・二ポイントの上昇という今のペースでは、達成できないのではないかという懸念があるわけでございますが、これについてお伺いいたします。

○小笠原私学部長 平成二十年度当初予算から補助対象施設に木造の園舎、校舎等を加えますとともに、耐震化に伴う園舎、校舎等の改築工事についても補助の対象といたしました。
 さらに、補助率を従来の二分の一から三分の二に改善いたしました。
 また、さきの第三回都議会定例会で可決されました補正予算におきまして、耐震診断に係る補助率を三分の二から五分の四に引き上げたところでございます。
 これらの施策につきまして周知を図ることによりまして、その活用を促進し、耐震化の目標を達成してまいりたいと考えております。

○吉田委員 ありがとうございます。十九年度の施策等、結果を踏まえて、二十年度、さらに一層施策を新たに展開されているということを理解いたしました。
 耐震化は命にかかわることでありますだけに、いまだ耐震化が進んでいない各私立学校には早急に取り組んでいただきたいわけでありますけれども、実際には、耐震改修には莫大な費用がかかりますので、私立学校は大変な負担をしなければいけないわけであります。
 それでも私立学校に早急に耐震化に取り組んでいただくために、何らかのさらなる手助けというか、例えば、低利での融資をあっせんするなど、耐震化推進のためにさらに加速させるべきだと考えておりますが、所見を伺います。

○小笠原私学部長 私立学校に対する融資につきましては、財団法人東京都私学財団におきまして、教育環境の整備や学校の経営の安定化を図るため、市中金利よりも低利で長期の融資を行っております。都の補助事業とこれらの融資制度を活用することによりまして、私立学校の耐震化の促進を図っているところでございます。

○吉田委員 ありがとうございます。たしか利率一・三%という、市中金利よりも大変低利ということだと認識しております。そしてまた、十年返済のものが二十年というふうに借りやすくなったというお取り組みをしていらっしゃると思いますが、東京都私学財団の融資にも予算枠というのがあると思います。財団の十九年度決算では、融資枠は四十一億一千三百万円というふうな実績であります。今後、いろいろな取り組みを都として進めていただいて、融資を借りて一層早く取り組もうという私立学校がたくさん出てきて、ご相談があった場合に、貸し出しの予算枠を超えたので、ちょっと貸し出せませんというようなことが絶対に起きないように、都はしっかりと関係の各方面に働きかけるなど、東京都私学財団をサポートしていただいて、一日でも早く耐震化の目標が達成できるように強く念願をさせていただいて、次の質問に移ります。
 最後になりますが、漫画ということについて質問をさせていただきます。
 近年、クールジャパンという言葉が欧米を中心に使われるようになりまして、日本の文化というのが今、再評価というか、高く評価されるような、こういう時代になりました。この中で、今や日本で本当に独自の進化を遂げてまいりましたアニメ、漫画を中心としたポップカルチャーというのが世界で高く評価されているわけです。
 アニメにつきましては、産労局中心に、二〇〇二年から東京国際アニメフェアというのを開催され、世界を視野に入れた一大イベントとして定着しつつあると思います。
 今回、十九年度決算を拝見している限り、多くのアニメーションやドラマ、さまざまなコンテンツの原作となっている漫画というものについて、これをクローズアップした振興策や世界に発信する、こういう取り組みが十分に行われるようには、ちょっと読み取れないわけであります。
 欧米でもアジアでも、古くは「ドラえもん」に始まって、最近でも、日本でも人気の高い井上雄彦さんの「スラムダンク」とか、並べ立ててもしようがないんですが、多くの作品が日本発で、世界で楽しまれているわけで、深く浸透し、日本に対する親近感というのを高めているわけであります。
 また、他産業への波及という意味では、鳥山明さんの「ドラゴンボール」がハリウッド映画として公開されるなど、さまざまなテレビドラマ、映画、コンピューターゲームの原作にもなっていて、まさしく日本の漫画というのは、さまざまなエンターテインメントの原点、コアになっているわけであります。
 さらに、東京ビッグサイトで毎年開催されているコミックマーケットでは、延べ入場者数約五十万人の漫画ファンが集まったり、秋葉原、池袋、中野などには大型の漫画専門店が集まっているなど、日本の中でも東京というのは、世界に冠たるというか、漫画文化の発信地となっているわけであります。
 こういうような状況を踏まえまして、東京都としても、世界に発信するべき文化として漫画の振興ということを積極的に検討すべきだと思うわけでありますが、所見を伺います。

○廣瀬文化振興部長 平成十八年五月に策定いたしました東京都文化振興指針におきまして、東京都の文化振興の対象を芸術、メディア芸術、伝統芸能などとしております。
 本来、文化の意味するところは極めて多様でございまして、さまざまなあり方があろうかと思います。日常の中にある文化、また、創造性と表現あふれる芸術文化、そして、身近な楽しみとしての娯楽文化というようなさまざまな多様性があるということがあろうかと思います。
 今後、東京が文化都市としてのプレゼンスを高めていくためにも、さまざまな分野を対象とした文化の振興を進めていく必要がございます。
 その中にあって、委員おっしゃるとおり、漫画も文化振興におけるテーマの一つとして検討していくことが必要であろうかというふうに思ってます。

○吉田委員 ありがとうございます。
 国におきましても、今の麻生総理が外務大臣だった時代に、外務省が我が国のポップカルチャーを文化外交に活用していくという方針を掲げて、漫画文化の普及啓発に貢献する海外の漫画家を対象とした、外務省ですから、国際漫画賞、外国の方を対象にした賞を創設されております。
 我が国の漫画を文化として世界に発信していくには、東京都としてもぜひ、将来の漫画家を志す若者たちを初め、既にこれまで頑張ってこられた方々、今、頑張っている方々を顕彰するなどのインセンティブが必要ではないかと思うわけであります。
 先ほどちょっと申し上げた、例えば東京国際アニメフェアでも、大賞というものを位置づけて、ことしは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版・序」ですか、これが大賞を受賞しているわけでありますが、こういうことも含めて、顕彰、褒める、別にお金をばらまくということまでいかなくても、すばらしい文化の振興の仕事をしていただいているんだというふうに公に認めてあげる、こういうことが必要なんじゃないかなと思うわけですが、ご見解を伺います。

○廣瀬文化振興部長 ただいまの吉田委員のご意見も踏まえながら、漫画は世界から日本特有の文化として高く評価されておりますので、今後、世界に向けて文化を発信するに当たりまして、非常に評価されているコンテンツとしての活用を含めた検討が必要と考えております。
 なお、東京都としては、来月に、東京文化発信プロジェクトの一環といたしまして、江戸東京博物館におきまして、生誕八十周年を迎えます手塚治虫さん、あの方を記念した手塚治虫アカデミーというのを開催しまして、また、手塚治虫さんのご長男でございます手塚眞さんがナビゲーターとなりまして、藤子不二雄○A氏など著名な漫画家の方々にお越しいただきまして漫画文化を語っていただく、そういう試みをしようと思っております。
 また、来年四月には、同じく江戸東京博物館におきまして手塚治虫展を計画しております。

○吉田委員 ありがとうございます。既にいろいろの取り組みもしていただいているということでありますが、かつて東京都現代美術館におきましても、ディズニー・アート展やスタジオジブリ関連の展覧会を開催するなど、アニメーションをアートとしてとらえた取り組みを行っておられます。
 そもそも今の漫画というのは、平安時代の鳥獣戯画に始まって、江戸時代の北斎漫画、あるいは幕末になって外国から非常に評価されるようになった浮世絵、こういうものも、日本というのはなかなか、外国に評価されないと評価しないというきらいがあって残念なんですが、私は、日本人というのは、文化の特質として、三次元のものを二次元に表現する上で、世界で類を見ない、非常に特徴的なというか、価値のある表現の感性と技術を持っている、そういう人たちなのではないかなと思います。
 こういう日本人の文化の特質を表現する文化資産でもあります漫画というものについて、単なる風俗としてとらえるのではなくて、我が国文化の歴史的な背景、蓄積をバックグラウンドとして、今、花開いている文化性の高いものなんだと、また、そういう部分を称揚していくんだということを踏まえて、おっしゃったように都の文化施設でもより一層スポットを当てていただいたり、あるいはさまざまな振興に努めていただくように改めて要望いたしまして、私からの質問を終わらせていただきます。

○吉倉委員 平成十九年度決算説明書に基づいて、生活文化スポーツ局の都政広報について何点かお尋ねいたします。
 決算説明書によりますと、平成十九年度広報広聴費に関する支出済額は二十五億百万余円であり、内訳は、「広報東京都」の発行を初め新聞、テレビ、ラジオのマスメディアの活用、都庁ホームページなどにより、都政全般の広報活動を行っております。
 都政広報は都民と都政を結ぶ接点として、都政の重要施策や取り組みなどの情報を発信し、都民に共有してもらうために非常に重要であります。それだけに一千二百万都民に対する効率的、効果的な広報展開の戦略と方針が最も大切だと思っております。
 そこで、平成十九年度における各媒体の特性に応じた広報展開とその方針についてご説明いただきたいと思います。

○石原広報広聴部長 都政広報につきましては、各局は、それぞれ所管する事業に関し、主としてパンフレットあるいはポスター等による広報を行い、生活文化スポーツ局では、テレビ、ラジオなどのマスメディアや広報紙を使いまして、都政全般の広報を実施しているところでございます。
 平成十九年度におきまして、テレビ、ラジオは一度に多くの視聴者に向けて情報発信ができ、注目度も高い、こういうことから、視聴者層に合わせた番組づくりを行い、都政の解説番組や、あるいは都のイベントなどをお知らせする告知番組など、テレビ六番組、ラジオ三番組を提供したところでございます。
 広報紙でございます「広報東京都」は、情報量も多く、比較的高齢者層や女性層に広く読まれております。紙面のカラー化など読みやすさに工夫を行い、毎月一回、四百五十万部を発行し、主に新聞折り込みにより各戸配布を行ったところでございます。
 さらに、インターネットを活用した広報では、より迅速な情報提供が可能なことから、ポータルサイトとして都庁総合ホームページを運用してございまして、都民が見やすくわかりやすい画面づくりを目標として、トップページのリニューアルを行うとともに、視覚障害者の方の利便性にも配慮いたしまして、音声読み上げ機能を一部導入したところでございます。
 今後とも、各媒体の特性に応じた広報を展開してまいります。

○吉倉委員 ご説明いただきましたとおり、媒体特性を生かした広報を展開していただいているわけですけれども、都民の立場から見て都政の重要施策や取り組みについての情報は非常に多く、また多岐にわたっているために、なかなか全体としてわかりにくいということがあります。そこで、発信する側がこうした情報を選択し、重点的にテーマを絞って広報展開することは非常に効果的であるというふうに考えております。
 都は十七年度よりテーマ広報を実施していると聞いておりますが、その実施状況についてお伺いします。

○石原広報広聴部長 これまで複数の局にまたがった都の重要施策等の広報活動は、各局が個別に行っておりました。そのため全体としてわかりにくく、都民へのアピールが弱い面がございました。
 そこで、平成十七年度から、各局との連携を強化いたしましてテーマ広報を開始したところでございます。
 これは、都政のさまざまな施策の中で各局が共通して取り組んでいる重要かつ喫緊の課題をテーマといたしまして、生活文化スポーツ局と各局の広報部門あるいは事業所管課が連携をいたしまして、計画的、重層的な広報を実施するものでございます。
 平成十九年度は環境先進都市づくり、さらに都民を守る安全対策、この二つをテーマといたしまして取り上げました。
 環境先進都市づくりにつきましては、環境局などにおいてシンポジウム等を実施し、広報広聴部では、「広報東京都」で特集ページを組み、あるいはテレビのCMスポット、ポスターを製作、放映、掲出をいたしたところでございます。
 次に、都民を守る安全対策につきましては、福祉保健局などにおいてポスター、リーフレットを作成、配布し、広報広聴部では都庁総合ホームページにバナーを掲載したり、あるいは新聞広告や映像ビジョンを使った広報を行ったところでございます。
 平成二十年度につきましては、スポーツムーブメントの醸成、環境先進都市づくりをテーマに取り組んでいるところでございます。

○吉倉委員 ただいま実施状況をお聞きいたしました。このように重要かつ喫緊の課題をテーマとして選定し、広報展開しているテーマ広報は、実施して三年が経過しております。
 そこで、生活文化スポーツ局として都民の反応、都民の声をどのように収集されているのか、実態調査を毎年実施されているというふうに聞いておりますけれども、平成十九年度の結果についてご説明いただきたいと思います。

○石原広報広聴部長 広報広聴実態調査でございますが、都の広報広聴活動につきまして広く都民の方々の意見を聞き、都の広報広聴について都民の方々がどのように接し、どう理解し、評価しているかなど、今後の事業に役立てることを目的に、満二十歳以上の都民三千人を対象に、毎年度実施しているところでございます。
 お尋ねの平成十九年度の調査の主な結果でございます。
 まず、都政情報の入手経路につきましては、「広報東京都」が四一・五%と最も多く、特に高齢者層においては七割を超えております。
 また、平成十六年度の調査において「広報東京都」の紙面の印象がごちゃごちゃして読みにくいというのがトップでございましたが、文字サイズを拡大するなど努力した結果、平成十九年度の今回の調査では、ちょうどいいというのが八一・九%となっております。
 次に、今後力を入れてほしい媒体といたしましては、テレビ番組やCMとお答えになった方が五三・二%と、五割を超えております。
 このほか、一般的に広告媒体の中で有効に活用されているといわれております新聞の紙面広告でございますが、この調査の中でも七二・六%の方がごらんになっているとお答えになっておりまして、特に中高年齢層がよく見ているという結果になっております。
 今後とも、こうした調査結果などの傾向を踏まえた広報展開を図っていきたいと考えております。

○吉倉委員 ご説明のとおり、平成十九年度のテーマである都民を守る安全対策については新聞、雑誌の広告、あるいは環境先進都市づくり、地球温暖化対策についてはテレビCMとポスターの製作、掲出を実施しておられますが、これは、生活文化スポーツ局と、例えば福祉保健局や都市整備局、あるいは環境局といった所管各局と実際にどのように調整を行ってきたのか、お伺いしたいと思います。

○石原広報広聴部長 テーマ広報を実施していくに当たり、関係各局との連携は最も重要であると考えております。広報広聴部では、各局の広報部門との連絡調整を円滑に行い、都の広報広聴関連施策の充実を図るために、全局の広報広聴担当者が参加をいたします東京都広報広聴会議を設置、運営してございます。この会議におきまして、全庁的に重要なテーマを絞り込み、毎年度、広報テーマを設定しております。
 平成十九年度におきましても、設定したテーマごとに、関係する福祉保健局や都市整備局、環境局と連携会議を設けまして、効果的、効率的な広報とするために、広報時期あるいは広報内容、また、媒体の組み合わせ、こういったものにつきまして随時調整をし、実施したところでございます。

○吉倉委員 媒体が多様化し、広報活動を取り巻く環境は絶えず変化しております。これに対応して効果ある広報を展開するためには、多くの情報の中から選択と重点化を図り、受け手である都民に何をどこまで伝えるのかを絶えず意識しながら実施していく必要があります。例えば化粧品や飲料水といった商品広告の場合、テレビのCM等によって商品名や理解率等をある一定のレベルに上げておくことがマーケティング戦略上の重要課題であります。このため、量販店や問屋との新製品の扱いや取引条件の交渉には、テレビCMの本数、達成すべきGRP、これはテレビCMが到達したと考えられる総視聴率でありますけれども、こういうことが非常に重要な決め手になっております。
 こうした商品広告と都政広報を一緒に論ずるつもりはありませんけれども、一千二百万都民に対して効果的、効率的に都政広報を展開する場合、テレビ、新聞あるいは「広報東京都」などの媒体効果を高めるために戦略をどう組み立てるのか、これが非常に重要であります。特に、情報提供する媒体を組み合わせながら広報を展開していくメディアミックスの手法は、非常に有効であるというふうに考えております。
 そこで、最後に、今後、効果的な広報展開をする上での提供情報の選択、そして媒体の活用についてどのような方針で取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。

○石原広報広聴部長 効果的な広報手段として、ただいまご指摘がございましたメディアミックスというのは大変有効でございます。これまでも広報の実施に当たっては、「広報東京都」を初め都の提供番組、都庁総合ホームページ、テレビCM、雑誌広告、交通広告、インターネットのバナー広告、新聞の広告、こういった多様な広報媒体を選択いたしまして、テーマ内容及び訴求対象に合わせて媒体を組み合わせながら実施をしてきたところでございます。
 また、広報の新たな取り組みといたしまして、都庁総合ホームページにおきまして、高画質動画配信を本年八月から開始いたしました。具体的には、東京への関心、理解を深めてもらうため、東京の歴史や現況とともに、将来像とその実現に向けた都の主要施策を紹介する東京紹介DVDや東京の魅力を広く世界に発信する東京観光DVD、この二種類の映像をホームページのコンテンツとして掲載することといたしました。
 今後とも、多様化するメディアの動向に合わせた情報提供の選択や新たな媒体の特性を生かした効果的な広報に取り組んでまいります。

○吉倉委員 答弁いただきましたが、広報媒体が多様化する中、広報活動を取り巻く環境は大きく変化しております。この変化に対応して効果ある広報を展開するためには、媒体選択と同時に、年齢、職業などを考慮したターゲットの選定も必要であります。都の広報として都民に対するメッセージがどれだけ刺さっているのか、また、メッセージを受けとめた都民にどういった変化があったのか、こうしたことを十分に測定をいただきまして、次の広報展開につなげていくことが重要だというふうに考えております。
 そこで、情報の選択や効果測定に加えて活用媒体の戦略などについて、局の内部だけでなく、都民の方々や専門家あるいは有識者も加えた都政広報のための会議体、これを立ち上げていただきまして、今後の都政広報の効果的な展開にぜひ取り組んでいただきたい、このことを要望いたしまして、質問を終わります。

○大山委員 まず、私学助成について伺います。
 子育て世帯にも貧困が広がって、経済的な格差が親から子に引き継がれていくことが、今、大きな社会問題にもなっています。それは、貧困によって教育を受ける機会の平等まで奪われているからです。
 高校一年生の息子さんを持つお母さんが、私立高校に通っていた息子さんの友達が一学期で退学してしまったというんですね。理由は経済的問題だったといっていました。経済的理由で高校を退学せざるを得ない生徒が実際にいます。修学旅行に参加できない生徒もいます。経済的な理由で教育を受ける権利を奪われることがあってはならないと考えていますけれども、どう認識されているでしょうか。

○小笠原私学部長 都は、私立高等学校に在学する生徒が経済的な理由により就学を断念することにならないよう、さまざまな手段を講じているところでございます。具体的に申し上げますと、私立学校に関しては、私立高等学校経常費補助や私立学校特別奨学金補助により、保護者負担の軽減を図っております。
 また、都内在住の生徒に対しましては、育英資金事業によって必要な学資金の一部を貸し付けております。

○大山委員 つまり、経済的な理由で教育を受ける権利を奪われることがあってはならないという認識だからこそ、私学への経常費補助と保護者への直接補助を実施しているということですね。
 一九七一年に中央教育審議会が、学生は教育の受益者であるという口実で学費値上げに道を開きました。その後、日本では、教育を受ける生徒が受益者、自己責任という考え方が政策的につくられてきました。しかし、これは、負担できない生徒を教育から排除するものであって、憲法と教育基本法が禁じる経済的地位による教育上の差別を生み出すことになってしまいます。若者が学ぶということは社会の財産であって、高校や大学などで新しい知識や技術、理想を身につけることは、社会の発展にとって不可欠な営みであって、それは社会にとっての貴重な財産といえます。だからこそ経済的な問題で教育を受ける権利を阻害してはならないと私たちは考えています。この立場で幾つか質疑をしたいと思います。
 まず、特別奨学金補助、授業料の補助ですね。私立高校に通っている保護者への直接補助に特別奨学金補助、つまり授業料補助があります。平成五年度からの実績をいただきました。毎年、全私立高校生に占める支給率は上がっていて、平成四年は一〇・六%だったんですね。十九年度は二二・七%ですから、十五年間で受給率は二倍以上になりました。
 十九年度に何と、先ほどありましたが、十二年ぶりに補助単価を上げました。しかし、単価は上がりましたけれども、生活保護世帯では、私立高校の平均授業料をカバーすることはできません。つまり、私立高校の十九年度授業料の平均は四十一万二百三十円です。生活保護世帯への補助額は、十九年度は十八万円ですね。ですから、生活保護の生業扶助で公立高校授業料は出ます。したがって、平均授業料であっても、生活保護受給世帯の高校生は、年間十一万五千二百円が不足するということなんです。都立高校は、生活保護世帯の生徒は授業料が全額免除です。高校生の約六割が私立高校生、とりわけ私学への依存度が高いわけですね、東京は。それだけに保護者負担の面から公私格差の是正は重要な課題だと考えますが、どうでしょうか。

○小笠原私学部長 都は、私立高等学校に通う生徒の保護者負担を軽減するため、基本的補助である経常費補助の充実に努めるとともに、世帯所得に応じまして特別奨学金補助を実施しまして、公私格差の是正を図っているところでございます。

○大山委員 私立学校への経常費補助、実質的に五〇%を達成していくということは基本だと思っています。同時に、家庭は経済的に困難であっても、教育を受ける権利を阻害されないために、生徒が学び続けられるようにするためには、保護者への経済的な支援も重要です。高校生への就学費を生活保護で給付するようになったのは平成十七年度からです。その前の年の十六年の十二月に、社会保障審議会生活保護制度のあり方に関する専門委員会では、高校進学率の一般的な高まり、貧困の再生産の防止の観点から見れば、子どもを自立、就労させていくためには、高校就学が有効な手段となっているものと考えられる、こう報告されました。高校の教育は最低限保障することが必要だから生業扶助に入れたんだということですね。私立高校生でも、授業料と入学料、受験料については、公立高校分が給付されますが、私立高校に通っていたら不足分を補わなければなりません。先ほどいいましたように、十九年度の平均授業料が四十一万二百三十円ですから、授業料補助の十八万円と生活保護の扶助十一万五千二百円を引きますと、年間十一万五千三十円になります。これ不足するということですね。生活保護世帯が私立高校に行く場合は、ただでもぎりぎりの生活ですけれども、十一万五千三十円程度、生活を切り詰めなければ、授業料も出ないんだということなんですね。
 特別奨学金補助を受けている生保世帯は、十九年度は三百七十二人でした。三百七十二人なんですよ。授業料を負担なしにするには、四千二百七十九万一千百六十円で実現できるんです。同時に、住民税非課税世帯と一般世帯への補助を現在の特別奨学金補助の割合で単価を設定すれば、合計しても十九億三百四十四万八千七百六十円です。約十九億で実現できるんですね。十九億円といえば、例えばオリンピックのための毎年の積み立て一千億円あれば、五十二年分以上あるということなんです。
 次に、育英資金ですけれども、特別奨学金補助のほかに育英資金、貸与の奨学金の制度があります。資料10で出してもらいました。高校、高専で三千六百三十八人となっていますが、これは公立、私立合わせての人数ですから、貸し付けを受けている私立高校生は、十九年度で二千百六十人ですね。特別奨学金補助を受けている生徒が合計二万九千百二十五人ですから、育英資金を受けている生徒は、授業料補助を受けている生徒の七・四%でしかないわけです。非常に少ないというのが私の実感なんですけれども、育英資金を受けている生徒が少ない理由は何であるのかと分析しているんでしょうか。特別奨学金補助を受けている生徒数との乖離をどう認識していらっしゃるんでしょうか。

○小笠原私学部長 お話しの特別奨学金補助と育英資金の二つの事業は、全く性格の異なる事業でございます。特別奨学金補助は給付事業でございます。一方、育英資金は将来の返還義務を伴うため、育英資金の利用につきましては慎重になっていると考えております。

○大山委員 そのとおりだと思うんですね。高校生が育英資金を受けようとして相談に行って、返済が必要だということがわかると、返さなきゃならないんですねといって、じゃ、いいですと帰ってしまう、そういう生徒がいるというんですね。高校を卒業しても安定した雇用があるのかどうかさえわからない中で、返済する自信が持てない、こういうわけなんです。だからこそ私たちは、第三回定例会で返済不要の奨学金の条例を提出したんです。それが育英資金ですね。
 あと、授業料減免のことです、この質問の最後は。特別奨学金補助は、東京都としての授業料補助ですけれども、経常費補助の特別項目には、学校が実施した生徒への授業料補助に対して補助をする制度がありますね。学校が授業料補助制度をつくって実施すれば、経常費補助に加算されるというものですね。しかし、出してもらった資料11で見ますと、授業料減免を実施している学校は、高校で八十五校、中学で四十四校、小学校では八校にとどまっています。全校に対する実施校の割合はどれぐらいになりますか。

○小笠原私学部長 全校数に対する割合でございますが、高等学校では三五・七%、中学校では二四・七%、小学校では一五・四%となっております。
 なお、ご質問の学校数は、生徒からの授業料減免申請に基づきまして学校が実際に減免を実施し、都に補助金申請を行った学校数でございます。これに、授業料減免制度を有していますが、生徒からの申請がなかった学校などの数を加えますと、高等学校では百三十六校、全校に対する割合は五七・一%、中学校では九十校で、全校に対する割合は五〇・六%、小学校では二十一校で、全校に対する割合は四〇・四%となってございます。

○大山委員 制度を持っている学校はもっとあるんですよということですね。実績があった学校が、高校の場合、八十五校、三五・七%だということですね。また、高校の場合、東京都が減免のために支出した額が一億二千二百七十八万三千円ですから、平均すると、一校当たり約百四十四万円、これは東京都が出す三分の二の額ですから、実際に生徒が受けた授業料減免額は約二百十七万円ということですね。平均授業料が約四十一万円ですから、非常に規模が小さいものといえるんではないでしょうか。
 授業料減免について、制度を持っている学校が半数、実施していても規模は小さいわけです。理由は何だと考えていますか。

○小笠原私学部長 授業料減免を行うかどうかは、設置者である各学校が判断するものであり、都としては、各学校が授業料減免を実施していない理由を承知していないところでございます。
 授業料減免制度につきましては、今後とも説明会などにおいて周知を図っていくなど、多くの学校で活用されるよう働きかけてまいります。

○大山委員 できる限り多くの学校でこの制度が積極的に活用されるよう働きかけていくということですけれども、この補助は経常費補助の中の特別補助で、学校の負担が三分の一あるわけですね。この実績の減免規模が大きくなればなるほど生徒は助かりますが、学校の持ち出しも多くなるということです。学校の経営自体が、今、大変厳しくなっているときに、三分の一の自己負担というのは大きいわけですよね。どういう理由で学校が実施していないのかということは把握していないということでしたけれども、やはりどういうことで実施できないのかということも、よく話を聞いた方がいいと思うんですね。
 そして、やはり学校負担を軽くするように補助率を上げることが必要ではないでしょうか。とりわけ小学校や中学校は、高校である特別奨学金補助などは、現在のところないわけですから、学校独自の授業料減免制度、これが非常に重要だといえると思うんです。引き続き、私学からも、どうして広がらないですかということも聞きながら、経済的な問題で学業をあきらめざるを得ないことがないように、私学助成の充実を求めておきます。
 私学の関係でもう一つなんですけれども、教育を充実させていくためには教育条件の整備が重要です。その中でも、教員が見通しを持って安心して働けるというのは重要な要素です。しかし、最近、私立高校などで、専任教員と同じ仕事内容であるにもかかわらず、一年契約などの教員を採用する学校が広がっています。教員という重要な職責にふさわしい待遇を保障することが必要という点からも、また教育という教師集団としての力量を向上させる意味からも、重大な事態だと考えています。私学行政を受け持っている生活文化スポーツ局として、このような状況についてどのように認識していらっしゃいますか。

○小笠原私学部長 私立学校における教員採用につきましては、各学校法人が法令等を遵守し、独自の運営方針に基づいて自主的に判断するものでございます。一年契約の教員を採用することに関して、都として何かを述べる立場ではございません。

○大山委員 そんなこといっていますけれども、どういうことになっているのかということが重要だと思うんです。年契約の教員でも、仕事は専任と同じ内容ですから、担任も持つし、校務分掌も同じように分担するわけですね。しかし、給与はといったら、例えば月額十九万から二十万円、一時金なしとか、いいところでも正規雇用の八割程度、一年から三年契約が多くて、生徒数が減ったときには人員削減の対象となって、まさに調整弁としての役割だといわれています。
 教育基本法は、その九条で「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。」、二項で「前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。」としているんですね。このことから考えても、雇用の安定というのは不可欠なことではないんでしょうか。私学行政を担当している生活文化スポーツ局は、実態は把握しているんでしょうか。また、把握していなければ、まずは実態を把握することが必要だと思いますが、どうですか。

○小笠原私学部長 先ほど答弁いたしましたとおり、一年契約教員の採用につきましては、私立学校が自主的に判断するものであり、また、学校の設置基準上、教員の雇用形態についての規制もございません。こうしたことから、実態の把握の予定はございません。

○大山委員 教育内容のことではなくて教育条件のことなんですよ。教育内容を充実させるための教育条件の整備、これは行政としての責任ですよね。
 私立学校教職員組合の調査では、八十校調査したうち、契約教員は三十八校に在職しています。百五十人にも上っています。私立学校教職員組合には、不安定な雇用で、まるで試用期間のような扱いを受けているということだとか、意見をいったら、別に君じゃなくても、教員になりたい人はたくさんいるんだから、など、学校の現場でパワハラやセクハラがあるなどの相談が増加しているんです。雇用関係と無関係ではありません。
 中には、一つの学校で十二人とか十五人とか、一年契約の教員を雇用している学校もあります。子どもたちにとっても、いい影響があるはずがないんですね。先生が充実した教育、よい授業のために研さんに努められなくなる、力量が向上させられないということは先ほど述べましたけれども、それだけではなくて、人格形成期にある子どもたちは、先生との信頼関係の中で励まされて成長していきます。その先生自身が、三月以降、学校にいるのかどうかもわからない。ですから、先生と一緒に頑張ろう、先生は君の頑張り見ているよ、そういうふうにいえるでしょうか。また、先生が当然のように使い捨てられていく状況を目の当たりにしているとき、生徒は、人間が大切にされているという実感を持って、社会への帰属意識や信頼をはぐくみ、自分の将来に希望が持てるでしょうか。
 東京の私学行政の教育条件整備を担当している局としては、教育条件の悪化につながる教員の雇用形態について実態を把握することは、必要なのではないでしょうか。
 同時に、低賃金、不安定な雇用にしなくても済むようにするにはどうしたらよいのか、学校とも話し合うことが求められているのではないでしょうかという意見を述べて、次に移ります。
 フレッシュ名曲コンサートなどについてです。資料で出してもらいましたが、都民芸術フェスティバルなどの事業補助の一覧、これを出していただきました。どこかというと、7ですね。フレッシュ名曲コンサートというのがあります。ことしの資料は十六年度からですけれども、去年の資料を見ましたら、十五年度から載っていました。十五年度の決算は九千四百九十四万九千円だったんですね。十六年度で補助額が減りますが、十九年度決算では六千六百六十六万三千円に、十五年度と比べると約七割に減ってしまいました。
 フレッシュ名曲コンサートは、都内に八つあるプロのオーケストラの団体からも、世界に羽ばたく新進の音楽家を育てるために重要な事業であり、一層の拡充をと要望されていますね。ピーク時の平成六年から九年にかけては、区部と多摩地域で合わせて三十五公演を行っていました。フレッシュ名曲コンサートについて、どう評価しているでしょうか。

○廣瀬文化振興部長 フレッシュ名曲コンサートでございますけれども、都民が身近にクラシックコンサートに接する機会を提供するとともに、新進音楽家を登用、育成することを目的といたしまして、財団法人東京都歴史文化財団が都内の各区市町村と共催して行う事業でございます。都はその事業に対して補助金を支出してございます。
 本事業は、東京都文化振興指針に掲げております文化、芸術に触れる多様な機会や情報の提供という取り組みに目的が合致しておりまして、文化振興に寄与するというふうに我々は考えております。

○大山委員 都民が身近なところでクラシックコンサートを聞くことができる機会を提供できるし、新進音楽家の育成にもなるということですね。私も非常に重要な事業だと思っています。それで、しかも東京都と共催ということですから、東京都の責任も大きいわけですね。
 フレッシュ名曲コンサートは、十七年度以降、予算が同額で計上されていますが、執行額は下がっています。この理由は何でしょうか。

○廣瀬文化振興部長 補助金の決算額が減となっている主な理由でございますが、歴史文化財団と共催して事業実施を予定しておりました区市町村等が会場の都合等により事業を実施できなかったということがありました結果、こういう状況になっております。

○大山委員 予定が、やるよといっていたけど、できなくなっちゃったところがあるんだということですね。各区市町村への分担金は、どのような出し方をして、それぞれの団体への分担金の限度額の推移はどうなっているでしょう。
 それと同時に、その分担金と入場料との関係というのはどうなっていますか。

○廣瀬文化振興部長 各区市町村等へは、歴史文化財団から毎年、翌年度の事業実施希望の有無につきまして照会をかけまして、希望する区市町村等がすべて事業実施できるように、予算の範囲内で区市町村等に対する分担金限度額を設定しているところでございます。
 分担金限度額の推移でございますが、東京音楽コンクール入賞者起用コンサートを例に申し上げますと、平成十八年度は三百万円、平成十九年度は二百八十万円、本年度、平成二十年度は三百万円となっております。
 なお、入場料金につきましては、各区市町村等が開催規模等を勘案しながら決定しているというふうに承知しております。

○大山委員 予算の範囲内で各区市町村に対する分担金の限度額を設定するということは、つまり予算が決まっていて、手を挙げた団体でその予算を分け合うということですね。
 十八年度からしか分担金の額をおっしゃらなかったんですが、十六年度の予算は、資料にありますように八千六百五十六万円です。一団体当たり、新進音楽家を起用すると四百万円でした。十五年度も四百万円だったんですね。で、十七年度になると三百七十万、十八年度は三百万、十九年度は二百八十万、二十年度は三百万円なんだということなんですけれども、十七年度で全体の予算を減らして、その後は毎年同じ予算にして、予算の範囲内でということで手を挙げた団体で分け合うわけですから、やりたい団体がふえれば、一団体当たりの補助額といいますか、東京都の分担金は少なくなってしまうわけですね。よい事業だからやりたいと思うところが出れば出るほど、一団体当たりの額は減るということになってしまいます。
 実施している団体にも聞いてみましたが、在京オーケストラとのコンサートができるすばらしい事業だというんですね。若手アーチストを活用する上でも意義が大きいし、例えば区民合唱団も一緒に毎年やっているんですというところがいて、やはり区民の合唱団の方がプロのオーケストラとの共演という貴重な体験もできるということで、非常に評価していました。
 同時に、毎年補助金が減ってしまっているので、減らさないでほしい、それも意見として幾つかありました。自分のところだけではなかなか難しいから、東京都のこの助成は重要ですとおっしゃっているんですね。
 先ほど、この事業は評価しているわけですから、評価しているんだったら、毎年同額の予算を分け合うという縮小路線ではなくて、予算自体を拡大することが必要なんではないでしょうか。

○廣瀬文化振興部長 現行の予算額、規模の範囲内におきまして、ここ数年、公演回数は安定的に推移しております。およそ二十五回前後というふうに考えております。
 また、現在のところ、区市町村等から予算増額の要望はございません。

○大山委員 今、安定的に二十五団体程度ですけれども、以前は三十五団体ぐらいやってたわけですから、縮小されているというのは、もう事実としてあるわけですね。ですから、心配があるわけですから、いい事業だと思って実施しているところでも、やっぱりもうちょっと東京都が分担金を出してくれればいいなと思っているし、もっと団体がふえちゃったら、もっと少なくなっちゃうのかしらということになるわけですから、それはちゃんと予算自体を拡大していく方向で考えてもらわなきゃいけないと思います。
 また、入場料についてなんですけれども、この事業は、都民に身近な地域で本格的なオーケストラでのクラシックコンサートを聞く機会を提供するという役割があるわけですね。
 同時に、入場料が低廉であるということは重要な要素なんです。各区市でのフレッシュ名曲コンサートの入場料、大体千円とか二千円とか千五百円とかというところが多いわけですけれども、四千円、五千円というところもあるわけですね。東京文化会館で行っていたフレッシュ名曲コンサート、入場料がS席でも二千円でした。やはり都民が家族連れでオーケストラを楽しめるようにするためにも、この二千円程度というか、東京都が文化会館で行っていたとき程度の入場料で提供できるように予算化することが必要だと思いますが、どうですか。

○廣瀬文化振興部長 確かに、東京文化会館におきましては二千円ということでございますが、その他、特別区等におきましても二千円程度、そういうケースがございます。そういった意味では、区市町村と財団法人東京都歴史文化財団が努力しながら、今、現時点やっているということでございますので、それに対して東京都は引き続き適切に対応してまいりたいと思います。

○大山委員 大体、分担金と入場料で運営していこうというのが各団体ですよね。ですから東京都の分担金が多くなれば、それだけ入場料も減らせるというのは筋なわけですね。
 気軽に家族で行きたいとなると、低廉な入場料というのは重要な要素なんですよね。例えば一人千円だったら、四人家族で聞いても四千円。今、若い子育て家族というのは、本当に仕事も不安定だったりして大変なわけですけれども、こういう機会があるということが、子どもたちを豊かに育てるという点でも、若い子育て家族への大きな応援にもなると思います。
 せっかく実施している団体も、とてもいい事業だと評価して、東京都も評価しているものですから、実施していない自治体も踏み出せるように、区市町村に知らせていくことも重要なんではないでしょうか。

○廣瀬文化振興部長 今後、東京都といたしましても、区市町村との文化行政連絡会議等ございますので、その場でPR等、努めてまいりたいと思います。

○大山委員 PRをすれば、うちでもやりたいというところがきっと出てくると思うんですね。ですから、これ以上、各団体への分担金を減らさないという意味でも、ぜひとも予算額の拡充をしないといけないと思います。
 いただいた資料にもありますように、音楽鑑賞教室は十五年度で、下の方に注2で小さく書いてありますけれども、十五年度で終了させてしまいましたが、この音楽鑑賞教室というのも非常に重要な事業だったわけで、実施しているときには毎年百回程度行っていて、数十万人の都内の児童生徒が鑑賞していました。子どもの時代に感性豊かな本物に触れる、その機会をすべての東京の子どもたちに保障するというのは、東京都としては本当に重要な役割だと思います。区市町村が独自で継続させているところもありますが、オーケストラメンバーと一緒に演奏するなど、いろいろな形で参加をして体験するワークショップも含めて実施しています。新たな音楽鑑賞教室を実施することが求められていること、それから、シルバーエイジ芸術鑑賞補助も復活させるなど、都民が芸術を体験できる機会をより多くすることが東京都の役割です。で、より充実を求めておきます。
 また、これらの事業を支えて、都民の音楽文化を支えている都内八つのプロのオーケストラは、どのオーケストラも貴重な都民の財産だといえます。日フィルだとか東フィルなどは、スポンサーを持たないオーケストラですね。都として運営費補助を行うことも強く要望して、質問を終わります。

○山口委員 私の方から、男女平等参画のための東京都の行動計画について、何点か質問いたします。
 東京都は、すべての都民が性別にかかわりなく個人として尊重されるよう、男女が対等な立場でさまざまな活動に参画し、責任を分かち合う男女平等参画社会の実現を目指し、十二年度、全国の自治体に先駆けて、東京都男女平等参画基本条例を制定しました。この基本条例では、労働の分野における男女平等参画の視点を持ち、雇用に関する項目が明記され、評価されていると聞いています。
 条例に基づいて策定された男女平等参画のための東京都行動計画が改定されたチャンス&サポート二〇〇七は、二〇一二年度までの行動計画であり、十九年度が初年度に当たります。この中で、新たに基本的な考え方として、仕事と生活の調和、いわゆるワークライフバランスと女性のチャレンジ支援の二つを掲げ、中心に取り組むとしております。
 女性の社会進出が目覚ましい中で、長年、家事や育児、介護という生活労働を担ってきた女性が仕事を続けるには、まだまだ高いハードルを越えなければなりません。女性の約六五%が、初めての出産をきっかけに仕事をやめるというのが日本の実態です。少子高齢化が進む中、意欲ある女性に職場復帰の機会をつくり、再び社会で活躍してもらうことは重要であります。一たん仕事をやめて子育てが一段落したころに再び働きたいと考えている女性は非常に多いわけですが、現実はなかなか厳しく、希望する仕事につくのが極めて困難です。
 また、一時期仕事を離れて子育てに専念したいと思っても、もとの職場に復帰することが難しいために、無理を承知で仕事を続けている人もいます。それぞれの人生の場面で女性が働く意思を実現できることが社会の活力に大きな影響を与えることになります。
 そこで、女性の社会参加を促進するために行政に期待されている、女性が再チャレンジできる環境づくりとしての女性の再チャレンジ支援について、計画に掲げられた意味は大変大きいと思いますが、十九年度の主な取り組みを伺います。

○高橋参事 女性のチャレンジ支援とは、女性の意欲や能力を十分に発揮し、多様な生き方が選択できるようにするための施策でございます。具体的には、従来、女性が少なかった分野への新たな活躍の場の拡大、子育てや介護等で一たん仕事を中断した女性の再チャレンジなどを積極的に推進することでございます。
 再チャレンジに当たりましては、再び仕事に戻ろうとしても、自身の能力への不安や情報不足など、さまざまな困難が伴いますことから、都としては再就職のための相談や能力開発セミナーなど、さまざまな再就職支援施策を実施しております。
 当局としては、一たん仕事を離れ、もう一度働きたいと考えている女性の就業をめぐる状況や課題、必要な支援の仕組みなどについての調査を行い、その結果をもとに女性の再チャレンジ応援マニュアルを作成してございます。

○山口委員 では、その女性の再チャレンジマニュアルの概要と、どのように活用しているのか、伺います。

○高橋参事 再チャレンジ応援マニュアルにつきましては、再就職を希望する女性と雇用する側の企業、双方のニーズにこたえられるよう、再就職を成功させるためのヒントや企業側の意識や工夫などの取り組み事例、相談や職業紹介の窓口など、都の支援に関する情報をまとめております。
 このマニュアルは、区市町村の相談担当部署や女性センター、ハローワーク、都のしごとセンターなど、関係機関に配布し、活用していただいております。
 また、都のホームページでも公開いたしまして、再就職を希望する女性が必要に応じてごらんいただけるようにしてもございます。

○山口委員 専業で子育てをしている女性の不安は、一人で子育ての責任を負わされているという負担感もありますが、家庭の中で家事や育児のみに追われ、社会から取り残されているような孤立感、また、一人の大人として生きている実感が持てないなど、心理的な不安が大きいともいわれています。女性の生き方として多様な選択肢が広がり、仕事を通して自己実現を図るなど、一人の人間として生きることが可能になり、結婚して仕事を続けていたいにもかかわらず、出産を機に家庭に閉じ込められたという思いが子育ての閉塞感につながる一因にもなっているのではないでしょうか。
 育児休職者の職場復帰に向けて、ITによるキャリアアップ講座、職場復帰プログラムの実施など、努力を続けている企業の先駆的な取り組みについて、情報提供のみでなく、都としての支援をしていただきたいというふうに思っています。
 では、もう一つの柱であります仕事と生活の調和、ワークライフバランスは、長時間労働の削減や育児、介護休暇の取得促進、また、だれもが希望する形で、ボランタリーな活動など地域を含めた社会の活動に参加しながら、より豊かな生き方が選択できるよう、社会全体で働き方を変えていくことだと思います。
 そのために仕事と生活の調和を図れるようにしようというものですが、国も含め、社会的な課題として各方面で動きが活発になってきているところですが、東京都は、十九年度にはどのような取り組みを行ったのか、伺います。

○高橋参事 ワークライフバランスとは、ただいま山口委員のお話にもございましたように、だれもが年齢や性別に関係なく、仕事と子育てや介護、自己啓発など、自分自身の生活を柔軟にバランスよく調和させることでございます。
 都としては、働く女性のために、保育施設整備などの子育て支援や中小企業における雇用環境改善のための施策など、さまざまな取り組みを行っております。
 当局におきましては、東京都男女平等参画審議会で、ワークライフバランスの定着に向けてについて、調査審議いただきました。
 また、審議会のもとに設けた専門調査会で、ワークライフバランス推進上の課題や解決の方向について、企業の実態に即した具体的な検討を行い、その報告を本年二月に公表してございます。

○山口委員 その専門調査会では、策定過程においてどのような検討がされたのか、伺います。

○高橋参事 専門調査会におきましては、ワークライフバランスを定着させていくため、企業における先進的事例をもとに検討を行っております。
 具体的には、一、経営戦略としての位置づけ、二、人事評価、処遇などの仕組み、三として、職場のマネジメント、四、個人の意識改革、この四つの視点に分けて、それぞれの視点から休業制度や短時間勤務など、ワークライフバランスに関連する企業内の支援制度が利用されにくい原因などを分析し、課題解決の方向を示してございます。

○山口委員 専門調査会の報告では、企業におけるさまざまな事例の裏づけのもとに、経営戦略としてのワークライフバランスの推進、人事評価、処遇など、また職場のマネジメントのあり方、個人の意識改革という四つの視点が示されているということですが、この報告を受けて、今後、生活文化スポーツ局ではどのようにワークライフバランスの推進に取り組んでいくのか伺います。

○高橋参事 今年度におきましては、企業の状況を直接把握するためのヒアリング調査や企業との意見交換会を実施し、課題解決の方法などについて検討を行っております。これらをもとに、企業がワークライフバランスを導入するためのマニュアルともいうべきワークライフバランス実践プログラムを作成いたしまして、ワークライフバランスの推進を図ってまいります。

○山口委員 企業でのワークライフバランスの推進に向けて、その実践プログラムを活用して、東京都には普及啓発に努めていただくわけですけれど、これを推進する東京都も、事業主としての立場で、各局が連携してワークライフバランスを推進する必要があると考えますが、取り組みについて伺います。

○高橋参事 都といたしましては、次世代育成支援対策推進法に基づきまして、事業主として東京都職員次世代育成支援プランを策定し、職員への周知やその利用促進に取り組んでおります。
 また、昨年度より、企業や住民一人一人にワークライフバランスを呼びかける八都県市ワークライフバランス推進キャンペーンを展開しておりまして、このキャンペーンの中で、当局も関係局と連携して共同アピールや企業への定時退社の呼びかけなどを行うとともに、職員の一斉定時退庁にも取り組んでおります。

○山口委員 専門調査会の報告書には、従業員の満足度調査、意識調査を毎年実施する、あるいは社長が従業員の誕生日に面接して要望を聞くなど、企業の事例が紹介されていましたが、都においても、職員の実態を把握して、なお一層の努力をしていただきたいと思います。
 ワークライフバランスの定着を図るには、継続した取り組みが必要であり、個人の意識改革という点では、教育の果たす役割も大きいと思います。各局の十分な連携のもとで取り組んでいただきたいと思います。
 人口の半数を占める女性が働き、自立することは、成熟した社会にとって当たり前のことだと思いますが、現実には、雇用の間接差別は温存されたままであり、働く女性にとっていまだ大きな壁となって立ちはだかっています。国を挙げて取り組んでいる子育てや介護など、社会の問題解決をおくらせないためにも、都はこうした問題にも積極的に切り込み、真の男女平等実現に向けて取り組んでいただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。

○遠藤委員 私の方からは、東京都美術館の運営、とりわけ都美術館での大きな事業の柱となっております公募展のあり方について、何点か質問させていただきたいと思っております。
 いただきました決算説明書にもあるとおり、東京都美術館は、平成十九年度、延べ観覧者数が約二百四十万人ということで、大変なにぎわいを見せているわけでございます。
 現在、この東京都美術館には、ことしの都美でのメーンイベントとして、十七世紀にオランダが生んだ光の画家といわれておりますフェルメールの作品展を行っております。何でも、三十数点しかないフェルメールの作品のうち七点も来ていると、これだけの点数の作品が一堂に展示されるのは、日本でも初めてのことであり、また、フェルメールの本国でございますオランダでもなかなかできないことということで、連日多くの観客でにぎわっているということでございました。
 私もきょう質問に立たせていただくに当たりまして、一昨日、このフェルメール展、見てまいりました。都議会から、あいているかなと思って、大至急で行きましたけれども、閉館時間の間際にもかかわらず、本当にどんどんどんどん人が訪れていて、大好評なんだなということを改めて実感したわけでございます。
 この東京都美術館では、今、申し上げましたフェルメールの展示会、これは共催展といわれておりますけれども、こうした共催展とあわせて、美術団体が開催します公募展というものが毎日のように行われておりまして、その会場として、この東京都美術館は、開館以来八十年の歴史と伝統を持っているわけでございます。昨日も、フェルメール展とあわせて開催されておりました公募展、さまざまございましたけれども、そこでも多くの方々が入場されておりました。
 この公募展、日本における美術の創造活動の牽引力として我が国の美術界をリードしてきた実績があって、その会場である東京都美術館は、都民にとって大きな財産であろうと思っております。
 この公募展のための施設は大変広大でございまして、公募展を行うための審査会場を含めますと、一万六千平米もあるということでございます。しかしながら、この公募展、新しい団体がここで公募展を開くにはなかなか壁が厚いということを、私は、世界的にも極めて著名なある美術団体の方から、お話をかつて聞きました。幸い、平成十九年に六本木に国立の新美術館ができましたけれども、それまでは、このような公募展ができるのは、この東京都美術館が日本で唯一の会場であったと、それゆえに競争率が高いということも、一理、当然あるかと思います。
 そこで、まず初めに、六本木の国立新美術館ができてから、東京都美術館の状況はどうなったのか、昨年度の実績をお示しいただきたいと思います。

○桃原参事 東京都美術館でございますけれども、委員、お話にございましたとおり、フェルメール展などの共催展の会場として使用しております企画展示室と、院展や二科展などの美術団体が開催する公募展の会場である公募展示室がございます。
 このうち公募展示室の利用状況でございますけれども、平成十八年度には二百四十一ありました利用団体でございますけれども、平成十九年度におきまして、同年の一月に国立の新美術館が開館したことに伴いまして、東京都美術館から国立新美術館に活動の場を移した団体が三十四団体あった一方で、新たに四十四団体ご利用いただいたというような結果でございまして、十九年度の実績といたしましては二百五十四の団体にご利用いただいております。
 また、国立新美術館の状況でございますが、東京都美術館から移行した三十四団体を含めまして、計六十九団体の利用となっておりまして、これら二つの施設、いずれも利用率がほぼ一〇〇%になっている状況から勘案しますと、公募展会場の利用ニーズは高いものと考えております。

○遠藤委員 今、答弁にありましたとおり、昨年度、十九年度でしょうか、三十四団体が国立の新美術館に移動したと、しかし、移動しても直ちに四十四団体が新たに都美の方にエントリーをしてきたということで、埋まれば直ちにプラス、新規参入があるということでございまして、国立新美術館ができても、公募展全体としては、都民の会場確保のニーズが極めて高いということが、今のご答弁で明らかになったわけでございます。
 ところで、東京都美術館は、現在の建物が建ってから三十二年が経過したということで、老朽化が大変に進んでおります。こうした中で、ようやく大規模改修に着手すると聞いておりますけれども、改めてその改修内容について確認をしたいと思います。

○桃原参事 委員のご指摘にございましたとおり、東京都美術館は建築以来三十二年間が経過しておりまして、設備面を中心といたしまして、大変劣化が進んでございます。
 改修工事でございますけれども、平成二十二年度、二十三年度の二カ年間にわたりまして、館を全面的に閉鎖をして行う計画となってございます。
 改修に当たりましては、これまで利用者の皆様方に親しまれてまいりました前川國男さんの設計された建物を保存しつつ、老朽化した施設設備の全面更新を行うこととなりますけれども、これに加えましてバリアフリー化、照明など展示環境の改善、レストラン等来客サービス面での充実などを予定しているところでございます。

○遠藤委員 今、ご答弁にありましたけれども、第二次世界大戦後の我が国の建築界をリードしました前川國男先生が設計しましたこの都美の建物、躯体を残すということ、これは、非常に私は大事なことだなと思って評価をいたしたいと思います。
 図らずも、この前美術館に行ったときに、婦人の方二人が並んで歩いていて、多分関西から来た方だと思いますけれども、この美術館、階段ばっかりやで、ということで文句いってましたので、バリアフリー化についてもぜひ進めていただきたいと思います。
 これもこれから、基本計画--躯体は残すということで、中のみですから--基本計画に入るということですから、ぜひとも世界の主要都市東京の顔となる新しい美術館、リニューアルオープンなので、世界の国々のさまざまな美術館をぜひ見て回っていただいて、最高レベルの美術館としていただきたいと思います。
 話を戻しますけれども、先ほど来言及しています都美における公募展、これまで大きな役割を果たしてきたというのは、これまでの質疑で明らかになりましたけれども、東京が芸術文化の面でより大きな存在感を発信していくためには、現状にとどまらない新たな視点も必要だと思っております。
 美術館のリニューアルオープンに際しまして、今後の公募展に関して、東京芸術文化評議会等さまざまな機関から、新しい美術館のオープンに当たって、さまざまな提言をいただいておると思いますけれども、この公募展についてどのような提言がなされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○桃原参事 改修に向けました検討の経過でございますけれども、資生堂の名誉会長でございます福原義春さんを座長とする都立文化施設のあり方検討会、また、同じく福原さんを会長とする東京芸術文化評議会におきまして、検討が行われたところでございます。
 これらの中におきましては、公募展の今後の展開につきまして、これまでの実績を踏まえ、都民の芸術文化活動の場として継続することが必要とされた一方、新たな表現形態に門戸を広げたり、アートを通じた教育普及活動に力を入れるべきであるなど、新たな取り組みが必要であるとの提言をいただいたところでございます。

○遠藤委員 提言の中で、これまでの公募のあり方を継続する一方で、新たな表現形態に門戸を広げる、こういうような提案が来ているという答弁でございました。新たな表現形態というのは、一般的には、こういう展示会というと、私の本当に少ない経験ですけれども、絵画ですとか、書であるとか、こういうものがメーンになると思いますけれども、ここでいう新たな表現形態というのは、例えば写真ですとか、映像だとか、詩ですとか、またそうしたものを全部ミックスするものとか、あと、知事がいつもおっしゃっているような先鋭的ないろいろな美術、こういうものに門戸を広げていきたい、広げなければいけないという提言だと思います。
 そこで、新たな表現形態に門戸を広げる、こういう提言がありますけれども、私は、それとあわせて、新たな団体にも広く門戸を広げるべきであろうと考えております。
 この東京都の美術館の運営のあり方につきましては、生活文化スポーツ局が東京都美術館運営要綱というものを定めております。その中で、公募展に参加できて、そして使用承認、要するに使っていいですよと、使用承認が受けられる団体として、六つほど規定があります。一つが、団体創立後五年以上経過していること、二つ目に、団体主催の公募展示会を定期的に五回以上実施している--この五回以上というのは、都美じゃなくて、ほかのところでも多分いいと思うんですけれども--三つ目に、団体運営に関する基本的事項が成文化されているなどなど六項目にわたって、この六項目をクリアすれば美術館を公募展に利用していただいて結構ですよと、こういう規定だと思いますけれども、間違いないでしょうか。

○桃原参事 委員ご指摘のとおり、六項目が使用承認の基準として定められているところでございます。

○遠藤委員 ところが、運営要綱の最後には、指定管理者--この都美は指定管理者を財団法人東京都歴史文化財団に定めて、ここに管理運営を委託しているわけでございますけれども、この指定管理者に、こういうくだりがあるんですね。指定管理者は、この要綱、すなわちこの要綱というのは東京都美術館運営要綱、この施行について必要な項目及び館の管理運営に必要な項目について規定を定めることができる、こういう規定がございます。多分この規定に基づいてだと思いますけれども、この要綱にはない、継続使用団体と抽せん使用団体という二つのカテゴリーがあると聞いておりますけれども、それぞれどういう団体でしょうか。

○桃原参事 お話しの継続団体でございますけれども、昭和の六十一年度からこの区分が行われているところでございますけれども、それ以前から使用申し込みを行ってきた団体を継続団体として指定をしておりまして、その後、それと同時に抽せん団体という区分を設けているところでございます。
 継続団体につきましては、それ以前の使用に基づいて使用を承認しておりまして、抽せん団体につきましては、継続団体に割り当てたほかの部分について、それぞれ使用の方法について、抽せんによって割り当てを行っているところでございます。

○遠藤委員 わかったようなわからないような説明ですけれども、要するに継続使用団体と抽せん使用団体というのがあって、継続使用団体というのが、都美は一年間、何日オープンしているかわかりませんけれども、公募展については、まず継続使用団体が入って枠を確保する、その残ったものを残りの抽せん使用団体がくじ引きでやる、こういうことなんですね。
 それで、実際、事前に聞きましたけれども、昨年だけでも、公募展のうち、年間約九二%が継続使用団体が利用している、残りは七・数%、これが抽せん使用団体ということであるわけでございます。この辺の数字は、過去数年は変わっていないんだと思いますけれども、先ほどの答弁でもありましたとおり、六本木の新国ができて三十四団体が出た、新しく四十四団体が都美の方に入ってきたといっていますけれども、こうした団体というのは、通常考えると抽せん使用団体に入ってくるわけだと思いますので、事実上、こうした新しい団体には、私は門戸が開かれていないんだろうと思っております。
 首都美術館にふさわしい一定の格式、レベルを尊重するというのは、私は大事な観点であると思いますけれども、その一方で、公立美術館として広く開かれているということも、片方では大変大事な点だと思います。
 リニューアルオープンに向けて、今、準備を進めておりますけれども、新しく生まれ変わる美術館、その公募のスタートが二十二年の十月からということでスタートするわけです。二十四年の春にリニューアルオープンするために、その一年半前から、すなわち二十二年の十月から、どの団体が使用しますかということで公募が始まるわけでございますので、どうかそれに向けて、早急に公正、公平なルールづくりをしていただきたいと思いますけれども、見解をお伺いしたいと思います。

○桃原参事 先ほど申し上げました提言などを受けまして、ただいま委員の方からご指摘ございました平成二十四年度のリニューアルオープンに向けまして、公募展示室の運営方法につきまして、その見直しと新たな取り組みに向けた検討を行っているところでございます。
 今後、利用団体など幅広い意見をちょうだいしながら、検討を進めてまいります。

○山下委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山下委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で生活文化スポーツ局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後三時十八分散会

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