各会計決算特別委員会第一分科会速記録第四号

平成十九年十月二十二日(月曜日)
第十一委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十名
委員長きたしろ勝彦君
副委員長門脇ふみよし君
副委員長ともとし春久君
松葉多美子君
宇田川聡史君
松下 玲子君
山加 朱美君
大西さとる君
植木こうじ君
三宅 茂樹君

 欠席委員 なし

 出席説明員
警視庁警視総監矢代 隆義君
総務部長岩瀬 充明君
警務部長金高 雅仁君
交通部長松本 治男君
警備部長西村 泰彦君
地域部長一ノ瀬 隆君
公安部長植松 信一君
刑事部長舟本  馨君
生活安全部長石田 唱司君
組織犯罪対策部長三浦 正充君
総務部企画課長安江  選君
総務部会計課長蛭田 正則君
東京消防庁消防総監小林 輝幸君
次長警防部長事務取扱新井 雄治君
企画調整部長伊藤 克巳君
総務部長佐竹 哲男君
人事部長秋山  惠君
防災部長齋藤 隆雄君
救急部長野口 英一君
予防部長北村 吉男君
装備部長石川 節雄君
企画調整部企画課長村上 研一君
企画調整部財務課長柏木 修一君
収用委員会事務局局長中田 清己君
審理担当部長太田雄二郎君
財務局局長村山 寛司君
経理部長新田 洋平君
参事竹本 節子君
主計部長真田 正義君
財産運用部長塚本 直之君
建築保全部長戸田 敬里君
参事岡沢  裕君
参事山本 康友君

本日の会議に付した事件
 平成十八年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
警視庁関係
・平成十八年度東京都一般会計決算(質疑)
東京消防庁関係
・平成十八年度東京都一般会計決算(質疑)
収用委員会事務局関係
・平成十八年度東京都一般会計決算(質疑)
財務局関係
・平成十八年度東京都一般会計決算(質疑)
・平成十八年度東京都用地会計決算(質疑)
・平成十八年度東京都公債費会計決算(質疑)

○きたしろ委員長 ただいまから平成十八年度各会計決算特別委員会第一分科会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、警視庁、東京消防庁、収用委員会事務局及び財務局関係の決算に対する質疑を行います。よろしくお願いいたします。
 これより警視庁関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十八年度東京都一般会計決算中、警視庁所管分を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言のある方、お願いいたします。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○きたしろ委員長 なしとのことでございます。
 お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、ご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○きたしろ委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で警視庁関係を終わります。

○きたしろ委員長 これより東京消防庁関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十八年度東京都一般会計決算中、東京消防庁所管分を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○大西委員 消防団のことについて簡単にお伺いいたします。
 消防団員は、当然皆様お仕事をお持ちです。その傍ら、いざ災害が発生すると、一人でも多くの都民の生命、身体、そして財産を守るため、昼でも夜でもすぐに出ていくことになります。先日も私の地元の足立区で火災が発生した際、消防団員の方々が消防の職員と連携して果敢に活動されている姿を拝見し、本当に頭が下がる思いがいたしました。
 しかし、その消防団員の方々は、年々高齢化され、また減少の傾向にあるとも伺っております。消防団員の方々が地域に密着した防災活動をさらに継続していくためには、消防団員の確保が喫緊の課題だと考えます。
 そこでお伺いいたしますが、東京消防庁では、特別区消防団員の確保のため、どのような取り組みをされているのでしょうか。

○齋藤防災部長 特別区消防団員の確保につきましては、消防団活動体制の充実強化を図る上で極めて重要であります。このため、現在、制服や活動服、防火服を改善するなどしてイメージアップを図るとともに、入団促進キャンペーンを展開し、事業所従業員、女性、大学生など、幅広い層からの入団促進に努めております。
 また、より多くの消防団員を確保するためには、地域住民や事業所の理解を深めることが重要でありますことから、今後ともインターネット、広報ビデオ及びポスターなどの各種媒体を通じて、広く募集広報を展開してまいります。

○大西委員 消防団員の確保には、消防団員の装備、資材と、さらには消防団の活動の拠点となる分団の施設など、少しでも消防団員の方々が活動しやすい環境づくりを積極的に推進する必要があると考えます。
 東京消防庁の皆様には、消防団員が活動しやすい、魅力ある消防団づくりに向けて、さらなるご努力をお願いしたいと思います。
 そこでお伺いいたしますが、東京消防庁は、献身的に活動されている消防団の方々に対し、どのようなご認識をお持ちか、お伺いいたします。

○齋藤防災部長 消防団員は、平常時はもとより、震災時における火災の拡大防止や救出、救護など、その役割は極めて重要であり、都民の安全を確保する上で欠くことのできない存在であると認識しております。
 さらに、消防団員の方々は、生業の傍ら、日夜献身的に地域防災のためにご尽力されており、その崇高な使命感と活動に対し、心から敬意を表し、感謝をしております。

○大西委員 今のご答弁のとおり、東京消防庁は消防団の重要性というものを本当に認識しておられます。しかしながら、中には、古い施設や装備で頑張っているところもたくさんあります。
 一方、さまざまな理由があることは認識しておりますが、今予算における執行率が一〇〇%に達していないのも事実です。むだ遣いはなくす必要がありますが、苦労されて節約された分は、他の装備の充実に回すべきだと考えます。
 私は、個人的には、消防団の装備充実には執行率が一〇〇%を超えても、これはいいものだと思います。大切な消防団の皆様がより活動しやすい環境を整えていただくことを強く要望させていただきまして質問を終わらせていただきます。

○植木委員 今も消防活動について重視をというお話がございました。
 消防団、本当に大事ですし、消防活動、消防署の活動全体が非常に多岐にわたる都民のニーズにこたえて積極的に行われている。それで、多発する火災や、それから最近では直下地震のときにどう備えるかということもありますし、救急活動への要望も非常に強いということで、大変多くの任務を持っているわけですが、東京消防庁が保有する消防各車両については、消防力の整備の指針に基づいて整備をされているというふうにお聞きしておりますが、この基準達成に向けてはどのような取り組みを行っているのかをまずお示しいただきたいというふうに思います。

○伊藤企画調整部長 消防車両等の整備についてのお尋ねでございますが、東京消防庁では、市街地が全都的に連続している管内特性を考慮し、国の定める消防力の整備指針に準拠した消防力配備の基準を定めております。
 近年では、大規模災害等に迅速に対応するため、消防救助機動部隊を配備するとともに、救急需要の増大に伴い、救急車を増強するなど、首都東京の消防力の充実強化を図ってまいりました。
 今後とも、市街化の進展や都市構造の変化など、消防行政需要に即した消防力の適正な配備に努めてまいります。

○植木委員 確かに市街化もだんだん変化されてきて、都市構造という点で高層ビルなんかもふえてきて、非常に困難な躯体がたくさんありますけれども、積極的に努力されてきている。
 私がかつて警察・消防委員会のときから比べてみますと、救急車は二十台以上増加しているんじゃないでしょうか。そういった点でも非常に努力されておりますけれども、配備の基準達成にはまだ若干ありますので、ぜひ引き続き努力をしていただきたいということを要望したいというふうに思います。
 それから、先ほども消防団活動についてのお話がございましたが、昨日も中野で消防団の合同点検も行われて、非常に団員の皆さん、積極的に活動されていたり、それから職場や学校だとか、そういうところのいわゆる自力で活動する部隊も一緒に参加をしておりました。
 それにしても、消防署とあわせて特別区の消防団の活動というのは、やはりかなめになる役割ですので、そういう意味で、その拠点となる分団本部の施設の整備状況について伺いたいと思います。

○齋藤防災部長 特別区消防団の分団本部数につきましては、四百三十九であります。このうち分団本部の機能を有する施設は、平成十八年度末現在、二百六十九棟であります。また、平成十九年度には、単独で整備するもの十六棟、消防出張所等との合築により整備するもの四棟、計二十棟を整備する予定であります。

○植木委員 この間、分団本部の施設整備についても、以前から比べますと分団設置数においても増大しているということで、多くの努力をされております。
 私どもも積極的に、この本部の建設や資器材の確保の問題等については、これまでも要望してまいりましたけれども、全都的に見ますと、まだまだこれからの面もございますので、引き続き努力していただきたい。消防整備の指針、それから特別区の分団本部の問題と、課題はたくさんありますけれども、私たちも努力いたしますが、ぜひ引き続きのご努力を重ねてお願いして質問を終わりにします。よろしくお願いします。

○きたしろ委員長 ほかにございますか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○きたしろ委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○きたしろ委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で東京消防庁関係を終わります。

○きたしろ委員長 これより収用委員会事務局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十八年度東京都一般会計決算中、収用委員会事務局所管分を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○ともとし委員 それでは、私の方から事務事業について何点かお伺いしたいと思います。
 東京都では、昨年十二月、「十年後の東京」を策定し、目指すべき将来像を明らかにされました。東京がさらに機能的で魅力的なそうした都市に発展していくためには、どうしても道路あるいはまた公園などの都市のインフラの整備が必要であります。
 私の地元の足立区においては、今、大規模な舎人公園の整備が進められているわけですが、そうした中で、何人かの方が、土地の所有者でありますけれども、用地買収交渉が調わなくて都収用委員会にお世話になっているという状況もあるというふうに聞いております。
 また、足立区のみならず、東京には、道路事業においても、過去に収用事件として処理されたものがあるというふうにも聞いております。国や都の事業に限らず、こうした用地取得に関しての紛争が区市においてもあるというふうにも聞いておりますし、これがまた現実だというふうに思うんです。
 まちづくりを推進していく、そうした立場あるいはまた公益性という観点から、できる限り早期に土地所有者等へ正当な補償を行い、問題解決を図っていくということは非常に大事かなというふうに思っております。
 収用委員会事務局では、こうした時代の要請を踏まえて、収用制度活用プランを策定して収用制度の一層の活用が図れるよう努力されているということもよく伺っております。
 そこでまず、収用制度活用プランの取り組みの主な内容、どのようなものか、その辺をお伺いしたいと思います。

○太田審理担当部長 収用委員会事務局は、平成十六年十一月に、収用制度の活用促進を進める指針として、区市町への支援の働きかけや事件処理の適正化、効率化などを柱とする収用制度活用プランを作成いたしました。
 このうち、区市町への支援の働きかけといたしましては、収用制度への理解を深め、区市町による収用制度の活用を促すため、平成十六年度から集合研修や個々の区市町への出張研修などを実施しております。
 また、平成十七年度には相談支援センターを開設し、区市町などの起業者や土地所有者などの権利者からの事前相談を受ける体制を整備いたしました。あわせて、職員の専門能力の向上やIT化の推進により、より適正かつ効率的な事件処理を図りまして、収用制度の活用促進に努めているところでございます。

○ともとし委員 国や都に比べて、どちらかといえば収用制度に対してふなれな区市町に働きかけというか、支援という立場から、問題解決を促して、この制度に取り組まれるように積極的に進めていただきたいというふうに思っております。本当にある意味では意義のあることかなというふうに思っております。
 そこで、収用制度活用プランの取り組みによって、どのような具体的な成果が上がったのか、この辺についてお伺いします。

○太田審理担当部長 区市からの裁決申請は、平成十六年度以前は毎年度十件程度で推移しておりましたが、平成十七年度は四十三件、平成十八年度は四十六件と、大きく増加いたしました。
 このことは、平成十六年度後半から収用制度活用プランに基づく取り組みとして、区市町への支援の働きかけを強化したことや、適正かつ効率的な事件処理に努めたことも一つの要因であると考えております。
 今後とも収用制度の活用促進に向けて、引き続き努力してまいります。

○ともとし委員 十六年度に策定した、このプランに取り組まれたというふうに聞きました。十七年度以降、区市からの申請件数が大きく増加していると、十分な成果があったというふうに私も評価をさせていただきたいと思います。
 ことしの六月ですか、圏央道のあきる野インターと八王子のジャンクションが、その間が開通いたしました。関越道と中央道が直接的につながって、新潟、群馬方面から山梨の方に行くのに中心部を通らなくても行けるということから、非常に物流のルートの開拓ができたとか、あるいはまた観光客の誘致が大きく高まったということも聞いております。
 また、報道によりますと、収用委員会では、現在審理中の圏央道高尾山事件についても、九月十三日、公開審理が終了して、十月から現地調査に入るというふうに伺っております。収用委員会の処理に当たっては、土地所有者などの権利には十分配慮しなければならないことは当然です。
 二〇一六年のオリンピック招致や、東京の機能的な、あるいはまた魅力的な都市づくりを推進するためには、どうしても圏央道を初めとする国や都の事業に限らず、区市などの事業も含めて、収用委員会の迅速かつ公正な事件処理というのが非常に大事になってきておりますし、また重要だというふうに思っております。
 そこで、最後にお伺いいたしますけれども、こうした迅速かつ公正な事件処理のより一層推進に向けた努力をお願いするとともに、まず先頭に立っている局長の決意をお聞かせ願いまして質問を終わりたいと思います。

○中田収用委員会事務局長 ともとし副委員長ご指摘のとおり、事件を公正に処理することは収用委員会の重要な責務でございます。それとともに、事件を迅速に処理することも、公共事業の円滑な推進という社会的要請にこたえるものでございまして、そうした意味から、収用委員会が東京のまちづくりに果たす役割は非常に大きいものと認識しております。
 収用委員会は、平成十二年度以降、年間百件を超える事件を取り扱っております。それに加えまして、近年では圏央道事業などのトラスト運動やマンション敷地のように多数の当事者に関係する事件、市街地再開発事業に伴う資産評価を争点とする事件など、今までと比べまして複雑かつ困難な事件が増加しております。収用委員会を取り巻く状況は、一段と厳しくなっております。
 このような状況ではございますが、事務局といたしましても、ご指摘のありました東京のまちづくりに果たすべき役割を十分認識し、収用制度活用プランも含めまして、従来にも増して公正かつ迅速な事件処理に向けまして万全を期して取り組んでまいる所存でございます。

○きたしろ委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○きたしろ委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で収用委員会事務局関係を終わります。

○きたしろ委員長 これより財務局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十八年度東京都一般会計決算中、財務局所管分、平成十八年度東京都用地会計決算、平成十八年度東京都公債費会計決算を一括して議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○新田経理部長 それでは、私から、先日の分科会においてご要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の平成十八年度各会計決算特別委員会第一分科会要求資料をごらんください。
 最初に、表紙をおめくりください。今回ご要求のございました資料は、目次に記載してございますとおり五件でございます。
 一枚おめくりいただきまして、要求資料第1号、中小企業受注実績(十年間)をごらんください。
 平成九年度から十八年度までの工事関係及び物品関係の中小企業の受注実績につきまして、件数と金額を集計したものでございます。
 次のページをお開きください。要求資料第2号、平成十八年度中小企業受注実績(局別)でございます。
 平成十八年度における工事関係及び物品関係の中小企業の受注実績につきまして、それぞれ局別に件数と金額をお示ししたものでございます。
 次のページをお開き願います。要求資料第3号、一般会計の当初予算額と補正予算額の推移でございます。
 平成九年度から十九年度までの一般会計の当初予算額及び補正予算額をお示ししたものでございます。
 次のページをお開き願います。要求資料第4号、都債償還額及び減債基金残高の推移(一般会計)でございます。
 平成九年度から十九年度までの都債償還額及び減債基金残高をお示ししたものでございます。
 なお、平成九年度から十八年度までは決算ベースで、十九年度は予算ベースでお示ししてございます。
 次のページをお開き願います。要求資料第5号、国直轄事業負担金の推移(普通会計決算)でございます。
 平成十二年度から十八年度までの国直轄事業負担金の決算額をお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○きたしろ委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○宇田川委員 東京都の十八年度決算を拝見しますと、二年連続の黒字を維持しておりまして、黒字の額もふえてきております。こうした状況を見てみますと、財政再建に窮していた時代から、新しい都政へと変わる転換期に来た、そんな実感をしたところであります。
 そのことについて幾つかお伺いをいたしますが、決算の分析について質問もさせていただきますので、総務省が基準を定めている普通会計決算の数字を若干使わせていただくことをご了承いただきたいと思います。
 十七年度決算で十六年ぶりに黒字に転換した都財政でありますが、十八年度決算でさらに伸びてきております。その伸びは、原因はどこにあるのか、どんな分析をされているのか、まずお尋ねをいたします。

○真田主計部長 平成十八年度決算でさらに黒字が伸びましたのは、これまでの財政再建の取り組みの成果に加えまして、好調な企業収益などを反映した都税の大幅な増収によるものと考えております。
 まず、歳入面で見ますと、これまでの徴税努力に加えまして、景気回復を背景に、好調な企業収益などを反映した法人二税を中心とする都税収入が、前年度よりも七・〇%、三千億円以上伸びている状況にございます。
 一方、歳出面では、減債基金の積み立て不足の解消に努めました結果、公債費が二千四百億円以上も大幅に伸びることとなりましたけれども、人件費につきまして、退職手当が二百十一億円増加したものの、定数削減あるいは給与減額改定などによる職員給の減少によりまして〇・二%、三十四億円の増にまで圧縮しております。
 また、その他の歳出につきましても、施策の見直しやコストの削減の取り組みの中で財政再建推進プランの取り組みを続けまして、一般歳出全体で約五百二十一億円、割合で見ますと一・三%の増と、ほぼ横ばいの水準となってございます。そのような結果、平成十八年度決算で、さらに黒字額が伸びたものというふうに認識しております。

○宇田川委員 昨年度の決算と比べますと、税収が大幅に伸びていると、その割には公債費負担比率が一二・三%から一五・五%へと、外見上は悪化しているように見受けられます。その他でも、経常収支比率についても八五・八%が八四・五%となっておりまして、思ったよりよくなっていないのかなと、そう見受けられることもございます。この辺の数字の仕組みはどんな形なのかをお聞きいたします。

○真田主計部長 財政再建期間中には、財源対策といたしまして、減債基金への積み立ての見送りや他会計からの借り入れなどを行ってまいりましたが、これらは長らく隠れ借金として積み重なりまして都財政の懸案となっておりました。この隠れ借金は、臨時的、緊急避難的な対応として実施したものでございまして、このまま放置すれば将来の都財政の足かせにもなるため、早期に解消すべきものでございます。
 そこで、平成十八年度には、都税の大幅増収を活用いたしまして減債基金の積み立て不足の大半を解消するとともに、他会計借入金についても全額を返済いたしまして財政基盤の強化を図ったところでございます。
 このうち、特に三千八百億円にも上ります減債基金積立金の増額につきましては、経常収支でございます公債費として計上されることになります。この結果、公債費負担比率あるいは経常収支比率を上昇させる原因となっておりまして、隠れ借金の解消を図ったことが、お話のような財政指標の数値に影響しているものというふうに認識しております。

○宇田川委員 今、隠れ借金解消によってというお話がありましたが、お話のとおり、公債費が一時的に伸びて、そのため、見かけ上、決算の数値を悪くしている原因だということはよくわかりました。
 おもしとなっていた隠れ借金は、十九年度予算とあわせて基本的に解消できると聞いております。税収が伸びたときには、このように過去からの不良ストックの解消を図ったり、基金に積んだりして将来に備える、こういったことは未来の東京都民に対して責任ある財政運営を行っているものでありまして、評価をしているところであります。
 隠れ借金という大きな課題は解消となりますが、今後の財政運営にはどのような課題があるとお考えでしょうか。

○真田主計部長 都財政は、残されていた課題でございました隠れ借金の解消にめどがつきまして、財政再建には区切りをつけることができました。
 しかし、そもそも歳入の根幹でございます都税収入は、ご案内のとおり景気動向の影響を受けやすく、不安定でございます。それに加えまして、都の財源を奪う国の動きがますます現実味を帯びてきておりまして、都財政は決して安穏としていられない状況にございます。
 また、歳出面におきましても、少子高齢社会の進展に伴います社会保障費の増加、あるいは大規模施設などの社会資本の老朽化に伴う改築改修経費など、今後財政需要が増大していくものと考えられます。
 こうした中にありまして、今後の財政運営におきましては、「十年後の東京」の実現を図るための施策を、景気の変動にも左右されることなく、着実かつ安定的に展開できることが重要でございます。このため、それを可能にする弾力的で強靱な財政体質を確立しまして、都民に対する責任ある財政運営を今後とも継続して行っていくことが必要であるというふうに考えております。

○宇田川委員 おっしゃるように、不安定な税収構造に配慮した運営というのは必要不可欠であると私も思います。
 そうした中で、最近特になんですが、国が大都市の財源を奪おうという動きが慌ただしくなってきております。大都市と地方の法人二税の格差を強調しまして、その格差を是正するためには法人二税を見直さなければいけないという声が出てきております。格差是正ありきという流れが、このまま年末の税制改正まで進んでいくことを危惧しているんですが、このあたりでこの嫌な流れをとめなければならないのではと考えております。
 国が都の財源を奪おうという動きに対して、どのように対抗していこうとお考えなのかを伺います。

○真田主計部長 国が都から財源を奪おうとする動きは、いろいろな動きが聞こえてきておりますけれども、特に最近よく聞こえてきますのは、法人二税を国が一括徴収して地方に配分するといった議論でございますが、そういった議論は、受益に応じた負担という地方税の大原則に反する上、もはや事実上の国税化を行うものでございまして、地方分権の流れにも逆行する、まことに乱暴きわまりない議論であるというふうに考えております。
 都は、これまでに身を削る努力を積み重ねまして、ようやく今日の健全な財政状況へたどり着くことができましたが、こうした成果は都民に還元されるべきものでございまして、地方交付税を大幅に削減して地方財政を困窮させた張本人である国が、都から財源を奪って地方に回すというようなことは、都民の財産を奪い取るにも等しい暴挙だというふうに考えております。
 こうした不合理な国の動きに対抗していくため、近日中に都の見解をまとめまして発表する準備を現在進めておるところでございます。その中で国の責任を追求するとともに、日本を牽引する東京の膨大な財政需要、さらには東京の衰退は国全体の衰退を招く愚策でありますよというようなことなどにつきましても主張していきたいというふうに考えております。
 今後、都の財源を奪おうとする動きがさらに活発化することが予想されますけれども、引き続き都議会の皆様と力をあわせまして、国の不合理な動きを阻止するよう一生懸命努めてまいりたいというふうに考えております。

○宇田川委員 ぜひ精いっぱい、そういう動きをしていただきたいなと思います。
 ようやく都財政は好転に向かいまして、フロー、ストックの両面から着々と財政基盤の強化が図られているということがわかりました。
 先ほども答弁にありましたが、これから「十年後の東京」の実現や社会資本ストックの更新など、財政需要がますます増加していくことは予想されます。引き続き見直すべきところはきちんと見直しをしていただいて、やるべきことはきっちりやっていただいて、現在だけでなく、未来の都民の皆さんに対しても責任を持った財政運営を引き続き行っていただきたいことを要望しておきます。
 今回、複式簿記・発生主義会計に基づいて処理された財務諸表がこの決算特別委員会に報告されましたが、このことは画期的な出来事だと思います。こういった形で決算をきちんと見ていけば、未来の姿も見えてくるんではないかと思います。
 去る十七日、先週ですが、総務省の研究会から、全国の自治体が財務諸表を作成するに当たってのモデルが示されたところですが、東京都ではこうした動きに先駆けて、既に個別の事業も対象に財務諸表を公表しております。議会でも審議を行うという段階に来ているわけです。公会計制度改革の成果を生かして、都の事業運営のあり方について着実に議論を行うことによって、今後の地方行財政改革を後押ししていくことも今回の質疑の重要な役割であると考えております。
 こうした視点の中で、何点かお伺いいたします。
 このたびの決算認定に当たりまして、第三回定例会に提出された中にも主要施策の成果というものがあります。この内容は、昨年までは主な事業の内容と官庁会計による予算額、決算額を対比させるだけのものでありました。
 今回、この中身を見ますと、今までの内容に加え、各事業ごとの財務諸表や、そこから得られる情報が載っております。個別事業ごとの財務諸表がこうした形で発表されることは、それだけでも大きな前進だと考えております。もちろん、これは新たな公会計制度の導入による成果でありますが、今回、こうした情報を掲載した意義について、改めてお伺いいたします。

○真田主計部長 今回の新たな公会計制度の導入によりまして、複式簿記と発生主義会計の考え方に基づきまして、都全体だけでなく、個別事業の財務諸表につきましても、都民に対し、これまで以上に正確かつ詳細な形で示すことが可能となりました。
 都全体の財務状況につきましては、東京都年次財務報告書においてマクロ的な視点に立った分析を行ったところでございますが、主要な施策の成果につきましては、個別事業の財務状況をミクロ的な視点から示すことによりまして、それぞれが車の両輪となって都民に対する説明責任の強化を果たせるものというふうに考えております。
 主要施策の成果の中につきましては、都の主要な施策に係る事業の成果について、減価償却費や都債の利子などを含むフルコストを行政コスト計算書において示すとともに、事業によりましては資産と負債の状況を貸借対照表によって明らかにしております。
 こうした情報を単式簿記・現金主義に基づく従来の決算の数値とともに活用いたしまして、事業の効果的、効率的な運営に結びつけ、都庁のマネジメントの能力の向上に役立てていくことも重要だというふうに考えております。

○宇田川委員 この主要施策の成果を見ますと、掲載に当たってさまざまな工夫を凝らされている、そういった様子がうかがえるわけですが、今回の主要施策の成果の中で、こうした財務情報の掲載方法については、どのような考え方に立って整理をしてこられたのかお聞かせください。

○真田主計部長 財務諸表の掲載方法の考え方についてでございますけれども、主要施策の成果の中では、個別事業の成果について、新たな公会計制度によって明らかとなるコストやストックの状況を通じまして、これまでよりも正確かつ詳細に示すことに力を注いでおります。
 そのため、一般会計の全事業につきまして事業ごとに行政コスト計算書を掲載いたしまして、減価償却費や都債の利子など、従来は事業ごとに出てこなかった情報を内書きで示しまして、コストの内容をわかりやすく明らかにしております。
 また、資産が形成される事業のうち、その財源としての都債残高があるものなどにつきましては、ストック情報による分析が有益な事業でございますので、そういったものにつきましては貸借対照表を掲載いたしまして、行政財産等の資産と負債との対比が可能となるような工夫を行ったところでございます。

○宇田川委員 先日の三定で東京都年次財務報告書をめぐる質疑がありましたが、その中でも、財務諸表を読み解くに当たっては、公と民との違いに留意をしなければならないと、こういった説明がございました。
 今回の主要施策の成果に掲載された個別事業の財務諸表を見ても、多くの事業において行政コスト計算書の収支が赤字であったり、一部の事業においては貸借対照表の正味財産がマイナスとなったりしております。こうした状況は、一般の企業で例えるならば赤字の決算になってしまったとか、あるいはそれ以上行って、債務超過によって破産に追い込まれるのではないか、そうした危機的な状況に当たるのではないか、こういう議論もあると思います。
 都民として非常に不安を覚えざるを得ないかな、そういう数字の結果なんですが、実際には行政の財務諸表をそれなりの読み取り方をすることによって、決してそのような状況ではないと、こういうこともわかるんだと思います。都民の不安を取り除くためにも、こうした部分について説明が必要だと願っておりますが、こうした行政コスト計算書の通常収支差額の赤字ですとか貸借対照表の正味財産のマイナスの値はどのように理解したらいいのか、ご答弁をお願いします。

○真田主計部長 民間企業では、事業活動の対価として得られる収益を損益計算書に計上しておりますけれども、我々地方自治体の場合には、主要な財源である税収は事業活動の結果により得られるものではございませんので、事業ごとには計上しておりません。このため、見かけ上、先生ご指摘のとおり、行政コスト計算書では収入よりも費用が多くなりまして、両者の差額は基本的にマイナスという形になってございます。
 また、正味財産のマイナスにつきましても、例えば河川事業のように、東京都が整備を行いましても、河川法の規定によりまして資産が国のものとなるなど、事業の仕組み上、都がつくり上げた資産が貸借対照表に計上できず、負債のみがそのまま残る場合などに生ずることになります。
 いずれのケースも、ただいま申し上げましたとおり、都の会計処理のルールあるいは事業の仕組みによるもので、民間企業のように事業経営の悪化や破綻を示すものではございません。しかし、こうした部分につきまして、先生ご指摘のとおり、都民から見てわかりにくいものでもございますし、また都民の方の不安を招いてはならないというふうに考えておりますので、今後も丁寧に説明を行うことで、そういった都民の不安の解消をしていきたいというふうに考えております。

○宇田川委員 きちんと都民の不安を解消するということは大事だと思うので、ぜひ丁寧にわかりやすく説明していただきたいと思います。
 掲載された情報というのは、行政コスト計算書、貸借対照表のほかに、一規模当たりの行政コストというものが載っております。一つ一つ見ていくと、都民一人当たりのコストが幾らだとか学校在学者一人で割ると幾らだとか、そうしたさまざまなものがあるんですが、都民が数字を身近に実感してもらうための工夫なのかなと思うところであります。
 一規模単位のとり方については、いろいろな考え方もあると思いますし、幅広くいろいろな考え方、とらえ方をするべきとも思っているんですが、この一規模単位のとり方についてどうお考えなのか、伺わせてください。

○真田主計部長 一規模当たりの行政コストにつきましては、公会計制度で得られた事業別のフルコストを都民一人当たりあるいは利用者一人当たりにし直して、より身近にわかりやすい形で示したものでございます。
 その単位のとり方につきましては、お話のように、今回掲載したもののほかにもさまざまな見方があるものというふうに考えておりまして、来年度以降もそのあり方についてさらに検討を深めまして、柔軟に見直すことも必要であるというふうに考えております。
 この一規模当たり行政コストを含めまして、財務諸表から得られた情報を分析するに当たりましては、将来に向けてデータを積み重ねまして経年比較を着実に行うとともに、他の自治体あるいは民間企業との比較を的確にできるよう、今後とも掲載内容あるいは分析の手法につきまして検討を深めていきたいというふうに考えております。

○宇田川委員 一規模単位のとり方というお話をいたしましたが、これに限らず、新しい公会計制度についてはいろいろな意味で幅広い可能性を持っていると思います。ぜひ今後とも研究を重ねていただいて、今後に生かしていただく、これが一番大事なことなので、ぜひやっていただきたいと思います。
 決算についていろいろと伺ってきましたが、こうした形で決算をきちんと分析することによって、次の予算というか、未来に向かってつながっていくことだと思います。その分析の一つの道具として、これまでの現金主義の官庁会計に加えて、複式簿記・発生主義会計に基づいた新たな公会計が導入されたわけでありまして、より多角的な分析ができるようになったと思います。
 これまでのやりとり、議論を踏まえた中で、新たな公会計制度のさらなる活用を含めた今後の財政運営全般について、局長よりご所見、決意をお伺いさせていただいて、質問を終わります。

○村山財務局長 都財政は、財政再建を一つ区切りをつけることができたという段階に来ているわけですけれども、そのことは、ある面では一つの達成点ではあるわけでございますけれども、これでいよいよ都政としてロングレンジで都政のありようを見詰めながらしっかりと挑戦していくというスタートという点でもありまして、そこのところに重要な意義があるというふうに私ども考えております。
 そういう意味では、改めて手綱を引き締めながら、「十年後の東京」の実現という、より大きな課題に向けまして、これからやっていかなければならないというふうに決意を新たにしているわけでございますが、その際、るるご指摘がありましたように、それをちゃんと支えていけるだけの強い財政的な力がどうやってつくっていけるのかということが大きな課題でございます。そういう上では、財政運営あるいは財務運営の基本に改めて立ち返って、自分たちの行政の一つ一つの取り組みをミクロも含めて見直していくということが非常に大事で、ご指摘いただいた、見直すべき、正すべきことはちゃんと正して、しっかりやっていくという原点に立ち返りながらやっていかなければならないというふうに考えております。
 その上で、新たな公会計制度というものは、我々のいろいろな一つ一つの行政上の事業の行為というものを、もう一つ原点に立ち返るという意味においては非常に有効な道具だというふうに理解しておりまして、私どもが今回、従来にも増して結果重視型の事業検証に基づく施策の質的バージョンアップというのを図っていこうじゃないかというふうに今、方針を出しているわけでございますけれども、その際に、コストの分析とか、あるいは資産の活用であるとか、本当に東京都の都民の持っている資産やお金がどういうふうに有効に活用されていくのかということをもう少しミクロの視点に立ち返ってやっていく上で、これはぜひ活用していきたいというふうに考えております。
 ただ、その際、何しろこの間は、この制度というものを、実際の仕事の中で日々仕訳をしてやっていくという、その数字をちゃんと正しくつくるというところにこの数年をかけてやってきたという、一つのスタートラインにようやく立ったというところでもありまして、先ほどご指摘いただきました公の部門において、民間で開発されてきた複式簿記あるいは発生主義の会計というものをどう具体的に生かしていくのか、活用していくのかということについては、非常にまだ課題の多い段階だというふうに思っております。
 それを都民の前にどういうふうに示していくのか、あるいは我々の中にどういうふうに活用していくのかという手法の問題についても、ご指摘を真摯に受けとめながら、今後ある面では開発自体を一つのプロジェクトとしてやっていかなければならないというふうに、改めてご質問いただきまして決意をいたしているところでございます。
 また、先ほど財政運営の中でお話のございました、ここに来て高まっております、都の財源を不合理に奪おうとする動きにつきましては、十月半ばを過ぎまして、さらに切迫した局面を迎えているところでございます。ぜひとも都議会の皆様方のお力添えをいただきながら、我々としては全力を挙げてこの問題に今後取り組んでいきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

○門脇委員 委員長からご指名をいただきましたので、所管局について質問いたします。なお、一部、今、質問された宇田川委員と重複する質問についてはできるだけ割愛してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
 最近、新聞報道などで、いわゆる大都市と地方都市においての財政格差というものがあり、それを是正するために、我が東京都あるいは大阪府、それから愛知県などの財政規模の大きい都市から、とりわけ東京都でありますけれども、税金を移転する動きが顕著になってきております。
 具体的にいえば、法人事業税と法人住民税の配分割合を大幅に見直そうということ。それから、移転の金額ベースでは一兆円を超えるということであります。当然これは、国というか財務省も、当該決算審査年度の結果を見て、こういうことをいい始めた--過去からそうなんですけれども、この報道の出方と、それから東京都の決算を締めて、そして今、文字どおり私たちがそれについて審議をしているんですけれども、余りにも一致し過ぎるというのは、私はそこに一つの国・財務省の戦略があるものだと思っております。その意味からも、当該決算年度の一千三百億円の黒字というものは、その影響というものは多分少なくないんだろうと思います。
 そこで、これに関連する現在の国の動向を、新聞で随分出ていますけれども、どのように認識しているのか。あるいは、法人二税のいわゆる国がいうところの格差是正について、その問題点と試算に基づく影響額をお示しいただきたいと思います。

○真田主計部長 そもそも現在の地方の疲弊を招いた原因は国にございますが、そうした国がみずからの責任を棚上げにしまして、都市の財源を地方に配分して済まそうという小手先のやり方は問題のすりかえでございまして、この問題の本質的な解決はできないというふうに考えております。
 しかしながら、国の一部では、先生のお話にございましたけれども、都市と地方の格差是正を名目に、法人二税を例えば事業所数あるいは従業員者数あるいは人口などによりまして地方へ再配分するといった、極めて乱暴なことが検討されております。これは受益に応じた負担という地方税原則にもとるのは当然でございますけれども、事実上の国税化でもございますし、地方分権の流れにも全く逆行するものであります。
 さらに、地方が国から自立して独自の地域活性化に挑もうとする意欲を失わせる全くの愚策であるというふうに考えております。もしこれが現実のものになりますと、東京からは一兆円を超える財源が奪われるというふうに試算してございます。

○門脇委員 とんでもない話だと思います。東京都では、知事も記者会見等でいつもいわれるように、職員団体の協力を得ながら行財政改革を進め、また同時に、大変タイトな、皆さん方にとって文字どおり厳しい人員削減というものも行ってきましたし、また、せんだって出されました副知事名の依命通達でも、少し財政状況がよくなってきたから、いろいろな新規事業をどんどんやろうというようなことはどこにも書いていないわけですね。依然として、しっかりとむだのないように都民の皆さんからの税金を使っていかなければいけないということになっております。
 ですから、こういうことについて、今、主計部長の答弁にもありましたとおり、こんなことは国からとやかくいわれる筋合いではないと思います。第一、今回の国の、あえて日本語、余りよくない言葉を使いますが、ふらちな財源移転案というのは、そもそも地方分権とか、あるいは地方自治の拡充、拡大といった視点からも、私は大きな問題があると思います。
 余り私ばかり感情的になってはいけませんので、それでは本当に東京は裕福であるのか、これを検証しなければならないと思います。
 まず、東京の標準税収は、標準的な行政サービス、都民サービスに必要ないわゆる基準財政需要を三兆円上回っているとの報道が今なされておりますけれども、それはどのような数字か、お伺いいたします。

○真田主計部長 お話の三兆円の内容につきましては、財務省の財政制度等審議会の資料などによりまして、平成十九年度の普通交付税の算定におけます財源超過額の約一兆六千億円、それと留保財源の約一兆五千億円、これを合わせていっているものというふうに思われます。
 まず、この財源超過額につきましては、これは交付税算定上の数字でございまして、決して都財政の実態をあらわすものではございません。また、留保財源につきましても、もともと各自治体の独自の施策のために設けられているものでございまして、また都だけに認められているものでもございません。これを余剰というのは、地方の独自施策を否定するもので、全くナンセンスだというふうに考えております。
 このように、これらの財源超過額と留保財源を合わせまして、都に三兆円もの余剰があるかのような主張は、全く根拠がないものというふうに考えております。

○門脇委員 今、答弁の中にもありましたとおり、留保財源というのは決して都だけに認められているわけではなくて、四十七都道府県すべてにある数字であろうかと思います。
 今、具体的に主計部長からお話ありましたけれども、そのような明らかな曲解に基づいて一兆円を超える財源を都から奪うべきというような議論が今なされていると思うと、私は本当に恐ろしくなってまいります。寒けがしてくるぐらいであります。
 三兆円はさすがに暴論だとしても、地方交付税算定で一兆六千億円も財源超過があるのに驚きであります。都は、この一兆六千億円の超過財源に対して、今、決して財政の実態をあらわすものではないと答弁がありましたけれども、このことについてどのようにお考えになっているのか、お伺いいたします。

○真田主計部長 都の財源超過額の約一兆六千億円につきましては、国が限られた交付税総額を地方公共団体に配分するために行う算定の結果、生じているものでございまして、あくまでも交付税制度におけます配分技術上の数字でございまして、都財政の実態をあらわすものではございません。
 具体的に申し上げますと、まず算定内容について見ますと、東京における区部の膨大な昼間流入人口は、横浜市の人口に匹敵する三百七十万人ほどございますけれども、地方交付税算定上は、この三百七十二万人分のうち七十二万人分しか対象とされておりません。また、土地価格が適切に反映されていないなど、都財政の実態が反映されないものとなってございます。また、本来の財政需要が臨時財政対策債に振りかえられました結果、見かけ上、大きくなっているということもございまして、これは全く机上の数字であるというふうにいえます。
 さらに、都の場合は、東京都と二十三特別区を合わせて算定されておりますため、要は二十四団体分を含むものでございまして、その点でも団体としての東京都の実態をあらわすものではないというふうに考えております。

○門脇委員 そうですね。そういう仕組みになっているということは、私も改めて再認識いたしました。
 当然のことでありますけれども、それだけのいわゆる原資が削減されれば、それにもしかわるものがないとするならば、その分丸々、行政サービスあるいは都民サービスというものを都としては削減しなければならないわけですね。もちろん内部努力というものもありますけれども、その辺、私は、結構いっぱいいっぱいのところに来ているんではないかなという思いもいたしております。ですから、東京の行政需要を全くわかっていないと考えざるを得ません。
 そこで、東京都から一兆円という、しかも代替措置がないと仮定するならば、これだけの財源を文字どおり収奪、奪われるということになると、どのような影響が出てくるのか、お伺いいたします。

○真田主計部長 万一、都から毎年一兆円もの財源が奪われることになりますと、当面、基金の取り崩しなどの財源対策によりしのいでいくこととなりますけれども、それにも限界がありますので、当然歳出削減を行うことが避けられなくなります。
 その場合、さらなる内部努力はもちろんのこと、投資的経費の削減によりまして、必要な社会基盤整備が進まなくなりましたり、あるいは都の単独事業として行っております都民施策が大部分実施できなくなる可能性もございまして、都民サービスが大きく低下することが避けられませず、都では厳しい政策判断を迫られることになるというふうに考えております。
 さらには、財源が回復しなければ、早晩、財政再建団体に転落することは必至でございまして、この場合は、夕張市の報道に見られるように、提供するサービスは必要最小限のレベルになりますし、住民負担は高額のものとなってしまいます。このほか、国の指導監督のもとで財政再建計画を策定し、これに従うことになりますので、地方自治体としての主体性が著しく制限される、そういった状況になってしまうというふうに考えております。

○門脇委員 今、主計部長の答弁の中で、財政再建団体という言葉が出てきました。これはもうゆゆしきことだと。私は逆にいえば、財務局も、このまま行ったら財政再建団体になってしまうというほどの危機感が皆さん方の間にしっかりあると、そのように認識いたしますので。
 この問題については、正直なところ、政権与党と都議会会派とのいろいろな問題もあると思います。私たち民主党も、大都市における富裕論ということは、特に財源を移転するということは参議院選挙等ではいっておりませんでしたが、一般的には格差是正ということをいっておりましたので、私たちみずからにも問うていかなければいけない部分も確かにあることも事実であります。
 しかし、いずれにいたしましても、都民から選出された議員として、党派、会派を超えて、国の方針について反撃をしていかなければならないと思っております。場合によっては、これは超党派で私たちも霞が関にデモに行くぐらいの、そのぐらいの覚悟を持たないと、議会側もいけないのかな、これは私の個人的な意見ですけれども、そんなふうに思っております。
 結局、先ほど申しましたように、国はある意味、報道を使ってといったら報道機関の人に失礼になるかもしれませんけれども、一兆円のアドバルーンをどんと上げて、大都市の動向を見ているんですね。特に東京都ですよ。あるいは議会も含めてだけれども、東京都がどれだけ反撃をしてくるかということを見ていますから、結局、今の時期が一番大切だと思います。
 今も申しましたように、行政と議会がある意味協力をして強力に行動しなければ、一兆円とはいわなくても、相当な税収を収奪されると思います。広報宣伝塔としての石原知事は頑張っておりますけれども、やはり今後の展開というものは、財務局、主税局、そして知事本局、とりわけその中でも財務局の取り組みというのが私は重要だと思います。
 それと同時に、さっきもちょっとありましたけれども、都民の皆さんに対するPRというのも必要だと思います。そのことを含め、国と妥協のない対峙が求められておりますけれども、それに向けての決意をお示し願います。

○真田主計部長 国が検討しているといわれております法人二税を国が一括徴収するなどして配分する案は、受益に応じた負担という地方税の基本原則を根底からゆがめるとともに、自治体の自主的な財政運営を侵害する極めて不当なものでございます。このような小手先の方法によりまして都の財源が不当に奪われることになれば、都財政、たちまち窮地に陥りまして、都民生活に大きな影響が及ぶことは避けられません。
 東京が直面しているこうした危機的状況を都民の皆様にも広く知っていただきまして、理不尽な国の動きに対して抗議の声を上げていただくことが、国と対峙していく中で大きな力となるものというふうに認識しております。
 今後は、近々取りまとめに向け準備を今進めております都としての見解の書を広くアピールいたしまして、これを活用しながら、東京の財源を奪おうとする国の動きに対しまして、都議会の皆様のご指導、ご協力をいただきながら、あらゆる機会をとらえて徹底的に対抗していきたいというふうに考えております。

○門脇委員 質問としては以上でありますけれども、今、答弁の中にもありました、私も要望いたしましたけれども、行政も議会もよしといたしまして、都民の皆さんに対するPRというものも大変重要だと思います。見解を広くアピールしてということですから、どのようなものができてくるのか、私も現在の段階ではわかりませんけれども、納税者あるいは都民の皆さんにとってわかりやすいパンフレットのようなものも、私は非常に有効だと思います。余りややこしい数字を使わないで、図やグラフを--予算のこともあると思うので、なかなかカラーにしたりできないかもしれませんけれども、そういったものも作成していただきたいと思います。
 東京都内で生活していても、実は私もその一人でありますけれども、東京の住民の方というのは日本全国、いわゆる地方から出てきている方が大変多い地域であります。ですから、こういった問題が出てきたときに、何となく東京は裕福で、地方はかわいそうだなということが、地方の方はともかく、東京の都民の方がそういうイメージを抱いては、これは国の思うつぼになってしまうわけですね。ご理解いただけると思いますけれども。ですから、先ほどのようなPR活動もしていただきたいと思います。
 それから、最後になりましたけれども、たまたまですが、きょうの新聞にこういうふうなことが出ておりました。時間がまだちょっとありますから。宮城、山形、佐賀、徳島、鳥取の五県知事は二十一日--二十一日ですから昨日ですか、東京都内で会合を開き、地方法人二税、住民税、事業税--先ほどのですね--見直し案に反対する声明を発表した。都市と地方の対立をあおって中央集権の強化につながると指摘。一見すると地方に魅力的だが、毒まんじゅうにほかならず、地方再生に名をかりた偽装表示だ--これは佐賀の知事がいっているんですが--として毒まんじゅう拒否を宣言した。毒まんじゅうというのは随分いうものだなと思いました。
 確かにこれは後で聞いてみましたら、この五県は財務省ではなくて、もう一つの総務省のグループというか、グループといったら失礼ですけれども、その関係での発言ということのようでありましたけれども、これから私たちも、八都県市とか、それから愛知、大阪というところだけではなくて、切り口は違うんでしょうけれども、ほかの人口規模、財政規模が小さい県とも連携ができる部分はしながら、闘っていっていただきたいと思います。そのことを要望して質問を終わります。

○ともとし委員 それでは、私の方は、提出されました資料に基づいて、主要施策の成果、財務局財務諸表等に関して何点かお伺いしたいと思います。
 今年度の決算、この十八年度の決算から、初めて複式簿記・発生主義会計に基づく会計処理についての財務諸表が出されまして、まさに初めての決算になったわけでございます。これらのことを見ながら、今回、主要施策の成果、ことしは昨年と違って異なった形の中で、若干ではありますが、編集されているように思いますが、都政の数多くの主要な施策について、見せ方を工夫しながら財務諸表の情報が掲載された点がことしの冊子の特色であるのかなと思っているわけですが、今回、さまざまな個別事業について幅広く財務情報を掲載することになった意味について、まず伺っておきたいと思います。

○真田主計部長 主要施策の成果におきましては、議会の決算認定に当たりまして、都の主要な施策の成果について各分野から幅広く取り上げまして、それぞれの事業としての有効性、あるいは費用対効果の状況を個別に議論していただくこととしております。
 個々の事業の状況を的確に理解することによりまして、都政全体としてのマネジメントのあり方を判断することが可能となるよう、対象事業につきましては、従前の冊子と同様に特定の分野に偏りが生じることがなく総合的に取り上げるよう、まず配慮を行ったところでございます。
 こうした中、新たな公会計制度の成果を活用しまして、事業ごとに財務諸表から得られます情報、あるいは一規模当たりの行政コストを計算することで、費用対効果の検証に不可欠なコスト情報の充実を図りまして、より効率的な事業運営のあり方を検討していただくための基礎情報としてお示しできたというふうに考えております。

○ともとし委員 コストの状況を示していくということは、非常に重要だというふうに思っております。
 我が党についても、この事業執行にかかわるコストのあり方については、さまざまな機会を通して問題提起を行ってきたところでございますが、今般、その都政全般の財務諸表については、九月に東京都年次財務報告書が発表されました。これらについても、さきの第三回定例会で質疑をしてきたところでございますけれど、今回のこの決算特別委員会については、都政全般の財務諸表と先ほどの事業別財務諸表とのちょうど中間に当たるような、局別財務諸表が提出されているわけです。東京全体の財務諸表については、東京都年次財務報告書が発表されてきたわけですけれど、この年次財務報告書というのは、都全体の財務諸表をマクロの視点から分析するものであるわけですが、今回の局別財務諸表は、各局それぞれの事業成果を決算数値として表現したものですから、まさに議論をしているそういう切り口としても、年次財務報告書とは異なるものとして考えているわけです。各局の事業の状況を、財務諸表を通じて浮き彫りにして、事業運営の向上を図る都の建設的な議論を展開していかなければならないのかなというふうに思っております。
 財務局といえば、それこそ都庁全体の財政運営と財産の管理を行う部署であるわけですが、局の特性、局別の財務諸表にあらわれているんじゃないかと思います。配布されました東京都決算参考書、財務諸表の五ページ以降にそれが出ているわけでありますが、この財務局の財務諸表にはどのような特徴があるのか、この辺についてお伺いしたいと思います。

○新田経理部長 財務局では、先生ご指摘のとおり、局業務の重要な柱の一つといたしまして、庁内各局から引き継ぎを受けた土地や建物などの利活用や、全庁の事務事業の用に供する都庁舎の維持管理などを行っております。このため、財務局貸借対照表におきましては、各局から引き継いだ多額の土地建物などの普通財産を資産計上するとともに、都庁舎を行政財産として資産計上しております。
 また、一般会計の歳計現金を財務局貸借対照表に一括計上しているほか、他会計への出資金、減債基金などの基金や都債など、全庁にかかわる資産、負債を計上しております。
 こうしたストック面の特徴を受けまして、フロー面の行政コスト計算書及びキャッシュ・フロー計算書におきましては、財産収入や繰出金、公債費などの収入や費用を計上するとともに、全庁の一般財源に充てる収入といたしまして、地方特例交付金を計上しているところでございまして、ストックとフロー両面にわたる以上のような点に、財務局財務諸表の特徴があると考えております。

○ともとし委員 都庁全体の管理部門としての特徴が示されたということであると思います。
 今回作成した財務諸表については、今までの官庁会計では捕捉することができなかった、時間がもたらすコスト、あるいはまた減価償却費、金利などを把握することが可能になったわけです。
 これまでの現金中心主義の決算ではよくわからなかった土地や建物といった財産のストック情報が、これまた貸借対照表という形で、会計としては一体的に把握することができるようになったと。この土地建物といった財産については、貸借対照表の固定資産の部分に着目するわけですが、行政財産が約一千三百五十億、普通財産が三千二百十七億、重要物品が十七億というふうになっているわけですが、財務局としては、とりわけ普通財産が大きなウエートを占めているような気がします。
 普通財産は、行政目的を一たん終えた財産ですから、売却あるいは新たな行政財産として再利用するまでの間は、これに備えて財務局が管理することになると思っているわけですが、これだけの財産をただ管理しているというだけでは、経費がかかるだけだというふうに思います。できる限り運用して、収入を確保することが重要だというふうに思っているわけですが、行政コストが、計算書やキャッシュ・フロー計算書によれば、こうした財産収入は約二十八億円となっていますが、普通財産をどのように運用した結果なのか、これについて伺いたいと思います。

○塚本財産運用部長 普通財産の運用に当たりましては、将来において行政目的での利用の支障とならないことを第一に、定期借地や定期借家など、あるいは一時貸付など、暫定的な活用を積極的に行っているところでございます。
 暫定活用の内容といたしましては、区市町村などが公用または公共用に使用するために都有地などの利用を希望する場合は、随意契約により有償貸付を行っているほか、平成十四年度からは、貸付先の多様化を図るため、広く一般を対象に入札による一時貸付を実施しておりまして、平成十八年度は十一カ所で貸し付けを行ったところでございます。
 このほか、旧丸の内庁舎、旧一〇〇〇days劇場など当面利用予定のない建物については、民間事業者に対し期間を定めて貸し付けを行っております。
 このように、普通財産の利活用に取り組んだ結果、平成十八年度の財産収入は、土地の貸し付けによる収入が約十九億円、また建物の貸し付けについては約九億円の収入となっております。

○ともとし委員 今ご説明があったことでよくわかるわけですが、しかしながら、この東京区市町村の中での東京都が管理するところ、あるいは財務局とはいいませんけれど、主要局が管理するところの土地建物の財産というのは、物すごいものがあります。小さなものを入れると大変な数があるわけですが、それらが本当に有効に活用しているのかというと、必ずしもそうではないなという感じが、現場の中で思うんです。
 それこそ三角地帯になるような、そういうちっちゃな土地であっても、駐車場に貸してもらいたい、そういうお話を局の方にする、あるいは財務局の方にすると、しかしながら、これは何々によってお貸しすることができません、お貸しすることができませんと一年も二年もほったらかしにされているのは、もう我々が議員になってからもたくさん見ています。こうしたものについては、しょせんは全部都民の税金によって買ったんですから、それを有効利用して都民に還元するということは、ある意味では当たり前の手法ではないかなというふうに思います。
 その意味で、財務局は積極的にいろんなものを一生懸命やられているというのは、よくわかっておりますので、さらにこの都有地の利活用を拡大していくためには、財産の利活用に当たっては、今後とも積極性を持ちながらやっていただきたい。この都施策の実現というものをしていく観点を踏まえて、今後、普通財産をどのように活用していくのか、この辺についてお伺いします。

○塚本財産運用部長 財務局では、本年六月に今後の財産利活用の指針を発表いたしまして、普通財産については、今後財産収入を確保しつつ、同時に「十年後の東京」を初めとするさまざまな施策を実現するため、民間の知恵や活力を取り入れた多様な利活用を図っていくこととしております。
 具体的には、当面使用する予定のない未利用地について、緑化や環境負荷の低減など都が推進する施策と連動した条件を付した上で、定期借地により民間に貸し付けるなどの仕組みを進めてまいります。
 また、都立学校の廃校跡などを、私立学校の耐震改修のための仮校舎や民間団体による文化事業の育成拠点として貸し付けるなど、収益だけではなく、施策の実現にも資するよう各局と連携した利活用に取り組んでまいります。
 さらに、昨年度、地方自治法が改正になりまして、行政財産についても未利用地の余剰部分の貸し付けが行えるようになってまいりました。今後、このような貸し付けなども積極的に行って、なるべく未利用地を有効に活用していきたいと考えております。

○ともとし委員 行政財産については、貸借対照表では財務局が所管する行政財産のうち建物の資産額、約一千四十五億というふうになっているわけですが、有形固定資産及び無形固定資産附属明細書では、これらの建物の当初資産額は一千七百五億円になるというふうに出されているわけなんですけれど、減価償却費は、当期約三十九億円を含めて、当期末累計で約六百四十三億円となっているというふうに報告を受けています。
 実際は、この一千七百五億円のほとんどが、この庁舎なんですよね。本庁舎であるわけなんですが、これは民間でいうところの超高層ビルにおいても、建築後、一定期間を経過した時期に、設備等の劣化が進むというふうにいわれています。設備、内外装の大がかりな修繕や更新を、数百億かけて、数年に分けて実施しているところがあるわけなんですが、この庁舎についても、他の超高層ビルと同様に問題を抱えているのかなというふうに思います。
 そこで、これまでも庁舎維持のために改修を実施していると聞いていますが、今後どのように管理していくのか、その辺についてお伺いいたします。

○岡沢参事 この都庁舎は、平成三年に建設いたしました。それ以来既に十六年を経過しておりますので、設備機器を中心といたしまして、経年による劣化が徐々に進行しているところでございます。
 こうした状況に対応するため、財務局では、これまでも故障でありますとか停止することが許されない機器を初めといたしまして、予防的に保全措置をさまざま講じてきたところでございます。
 例えば、照明器具の安定器につきましては、既に更新を完了いたしました。また、非常用の空調機でございますチリングユニットというのがございますが、これにつきましては、今年度から更新を行う予定にしてございます。なお、今後ともこうした設備機器の選定に際しましては、地球環境にも配慮いたしまして、省エネ性能も重視していきたいというふうに考えております。
 ご指摘いただきましたとおり、都庁舎は首都行政の中枢機能を担う、とりわけ重要な施設でございます。大震災の発生時などには、都民の生命と安全を守る司令塔としての機能を発揮する責任が課されている施設でもございます。
 また一方、都庁舎は、ここに年間百七十万人の国内、海外からの観光客が訪れている都内の主要な観光資源ともなっております。こうした都庁舎のさまざまな機能を今後とも低下させることなく十全に維持し、さらには情報化の進展でありますとか、ユニバーサルデザインの導入といった時代状況に即応いたしまして、都民サービスの向上に有効な新たな機能を付加していくということは、極めて重要なことと考えております。
 今後とも、長期的な視野に立ちまして、常にコスト縮減を図りながら、長期的かつ効率的な設備改修などによりまして都庁舎の管理を適切に行ってまいります。

○ともとし委員 今、部長からご答弁があったように、この庁舎というのは観光の名所になっているんです。別に宮崎県の庁舎ばっかりに集まっているんじゃなくて、はるかその人数よりも多い人数が、この都庁舎には来ていらっしゃるのかなというふうに思います。そういう意味で、この庁舎の維持管理についても都民の大切な財産になるわけでして、議会棟も含めてしっかりお願いしたいなというふうに思っております。
 今までいろんな説明がありましたけれども、こうして伺っておりますと、財務諸表ということが、ある意味では数字によって都の財産のありようというものが明確になってきたのかなと、そんなふうに思います。公会計制度の導入によって、これまで見えなかったものが見えてきたと。そうした新たな展開を今現在進めているわけですが、都民共有の財産をしっかりと管理運営をされております財務局、そうした思いの中で、新しいこうした制度の状況の中で、まさに先ほど申し上げたとおりの都民の大切な財産を預かる財務局長として、その辺の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

○村山財務局長 お話しいただきましたように、新しい公会計制度は、これまでどうしてもなかなか財産という視点というのは、役所の会計の中ではどうしても余りはっきりしないという部分だったわけですけれども、その点を明らかにするという意味では、非常に大きな変化を来したものだというふうに思っております。
 例えば、財務局は都民サービスの基本となるたくさんの都有施設の管理、建設、保全という役割を担っているわけでございますけれども、その減価償却累計額が一兆三千億に上ると。ということは、裏を返せば日々老朽化が進んでいるということでもありますし、それを放置すれば都民サービスにも支障を来すということで、サービスというには安全とかそういうことも含んだ意味でございますし、そのまま放置しておくと、またそこに、それをまた原状に復するためのより多くのコストもまたかかるというような問題を提示をしているわけでございます。
 さまざまに都財政をめぐる外部環境も変動しているわけでございますけれども、そういう中にあっても、しっかりと長い視野を持って都民サービスを維持向上させるための、より効率的、効果的な、シビアで計画的な財産管理、更新をしていかなければならないというふうに思っております。そのためにも、公会計制度改革を一つの契機といたしまして、コスト、ストック両面で中長期的な視点から財産状況を検証して、効率的な手法というものを選択していく必要があるというふうに、改めて決意をいたしております。
 そういう点では、お話のございましたライフサイクルコストなどを考えると、そういう意味では建設するという、確かにお金がかかるわけでございますけれども、建設という局面だけではなくて、維持管理、修繕、解体というトータルな時間感覚を持った仕事を、これからはより意識的に進めていくべきだというふうに考えてございます。
 それから、お話しいただいた中に、財産の活用という面で、ストックを最大限有効活用してこそ、都民から財産を預かっている財務局としての責務は全うできるんだという趣旨のお話がございまして、まさしくそのとおりでございますので、そういう点では財産利活用の効率性を分析する指標を検討することや、あるいは財産の保有コストの明確化などの取り組みを進めると同時に、当面使用する予定が、使用したいんだけれどもなかなか予定がつくり切れないというような未利用地についても、休眠させることなく民間への貸し付けなどのより効果的な、効率的な財産の利活用を追求していくという課題について、そのための条件整備も含めて努力をしてまいりたいと考えております。
 新たな公会計制度というのは、事実を明らかにしたということはもちろんあるわけでございますけれども、そのことは、同時に私どもに対してその事実を通して課題というものを突きつけたということでございますので、その点をしっかり踏まえまして、今後財務局としての役割をしっかりと果たしてまいりたいと思っております。

○きたしろ委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時三十六分休憩

   午後二時四十三分開議

○きたしろ委員長 休憩前に引き続き分科会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言をお願いいたします。

○植木委員 私も、財務諸表が出されたその関係をまず質問したいというふうに思います。
 新たな公会計ということで、決算の財務諸表が提案されました。これは、もともと民間で開発された企業会計がベースになっているという説明も先ほどありました。そういう点での問題点、あるいはコスト意識という問題だとか、いろいろ先ほど来の質疑の中で出されました。
 私もコストを意識するというのは非常に大事なことだとは思うんですけれども、いわゆる企業会計のもとでのコスト論で、ひとり歩きするといろんなことが出てくるというような気がするんです。もちろん我々もコスト問題、随分今までもやってきました。先ほども出ましたけれども、この都庁舎をつくるとき一千数百億円ということでありましたし、当時は国際フォーラムから江戸東京博物館、あるいは国際展示場、大規模施設が軒並みにつくられて巨大な金額がかかるという意味でのコスト論を随分私たちもいいました。
 石原知事の海外出張問題でもそういう点はいいましたけれども、いずれにしても、コスト意識を持つということは決して悪いことではないんですけれども、例えば臨海副都心開発にしてもそうですが、スタートするときはどのくらい建設費がかかるのかということも、非常に甘い見通しのもとに立てられて、結果的にずるずる後から対策で穴埋めをしていくというようなこともありましたし、今回のオリンピックも、一体どのぐらいの規模がかかるのかという点では、いろいろいわれていますけれども、正確なものはわからない。
 こういう点で、巨額な都民負担に、後年度につながるようなものについては、当然慎重に、それから正確な分析のもとにやらなければいけないという意味で、非常に大事なことだと思います。
 ところが、この主要施策の成果、あるいは今回の財務諸表をいろいろ見ていく中で、そういう今私が挙げたようなことはほとんど出ていなくて、専ら直接都民にかかわるものが中心になって書かれている。そういう点では、本当にコスト意識を持つんなら、もっと持つべきところがあるんじゃないかというふうに私は常々思っているんですが、そういう点で、この財務諸表をつくってきた公会計--財務局がこの主要施策の中でそういうふうに出しましたので、その点について、まずどのように考えているのかお聞きしたいというふうに思います。

○真田主計部長 今回の主要施策の成果では、さまざまな事業を取り上げて、いろんなコスト情報あるいはストック情報を掲載させていただくことにしております。
 この考え方ですけれども、東京都が行っております主な事業につきまして、このような官庁会計に基づく情報に加えまして、そういった公会計による情報を付加することによって、一つは都民に対する説明責任を果たせる。それからもう一つは、やっぱりそれを通じて都政の効率的な運営等々、そのマネジメントの向上にも役立つということで、そういうことをねらいにしておりますので、取り上げた事業につきましても、ハード、ソフトを問わず各種事業を満遍なく取り上げさせていただいたところでございます。

○植木委員 今、満遍なくといわれたんですが、これだけじゃないからそうなのかわかりませんけれども、少なくとも先ほど僕が取り上げたようなことは、必ずしも書かれているというふうには見えないですよね。
 老朽化が進んでいる度合いによってどうと先ほども質問がありましたけれども、つまり、それだけ大もとでは巨大な金額がかかっているということですよね。それで都民施策の方はコスト意識を持てという、非常にたくさんのことが出ています、それはね。
 そういう点で、やっぱり行政というのが、行政目的や、その目的をつくる段階で慎重にするということがまず基本で今までの公会計、官庁会計というのはつくられていて、ところが、そこの肝心なところは不十分で、財務諸表の方で後でコスト意識を持てと、こういう感じを受けざるを得ないというふうに思うんですね。
 そういう中で、今回も出されておりますけれども、一事業当たりのコストとか一規模当たりの行政コストとか、それからホームページなんか見ますと、学校関係が一番詳しく出ていて、一人当たりのコスト、すごいのは一時間当たりのコストまで書かれているんですよね。そういうことで書かれているんですが、この一事業当たり、一人当たりのコストを出すということは、何を都民に求めているのか。その辺をちょっとまずお聞きしたいと思います。

○真田主計部長 先ほど申し上げましたとおり、この財務諸表に基づく情報をお示ししました目的としましては、都民に対する説明責任、それとマネジメントの向上ということでございます。
 そういうことで、一規模当たりのコストというのは、まさにこの事業が目的に照らして効率的に行われているかどうか、それを判断するに当たり、一つの適切なメルクマールというふうに考えておりますので、そういう観点からこの指標を取り上げさせていただいたところでございます。

○植木委員 今の説明は、先ほど来も出されてはいたんですけれども、これがひとり歩きした場合どうなのかなというのをいつも私は考えているんです。実際にホームページでですよ、出ているのは学校しかないものですから、事例が学校しか挙げられないんですけれども、障害者の養護学校が幾ら、それから中学、普通高校が幾ら、全日制、それから定時制が一人当たり幾ら、一時間当たり幾らというようなコストが出ていますよね。それはご存じだと思うのですけれども。
 しかし、これは、こういう比較を提示されたお母さん方、お父さん方、ご家族がどう受けとめるかということもあると思うんですけれども、こういう比較をされるということについては、どのように見ているんでしょうか。やっぱり同じ答えですか。

○真田主計部長 事業を継続するか、あるいは見直すか、それを具体的にどう判断するかに当たりまして最も重要な点は、その納税者であります都民がどういうふうにお考えになるか、都民の理解が得られるかどうかということだというふうに考えます。
 そのためには、やっぱり事業運営の状況を都民にわかりやすく説明する必要がございまして、費用対効果の状況を明らかにすることは、行政としては当然の責務であるというふうに考えております。そうしたことから、今回も一規模当たりのコストを示して、その水準が適切かどうか、それが速やかに理解できるようにお出ししたところでございます。
 もとより事業を評価するに当たりましては、コスト情報だけがすべてということではございませんで、さまざまな情報を総合的に判断して、その中の一つにコスト情報が当然あるわけでございますけれども、事業の必要性、あるいはその他諸般の状況を、最終的には総合的に判断して行うことになるかと思いますけれども、その判断する上においてもコスト情報というのは一つの貴重な情報であるというふうに考えておりますので、私どもは今回そういうふうに出させていただきました。

○植木委員 もちろんコスト情報だけですべて判断するなんて、私も考えてはいませんけれども、しかし今お話ししただけでも、継続するか見直しするか、こういう判断にするんだと、こういうお話ですよね、コストを出すということはね。
 しかし、例えば、養護学校の方々でいえば、障害の程度に応じて、この障害、こういう障害の方には学校の先生をこういうふうに配置するという配置基準、あるいは普通高校でもそうですよね、そういうものが決まっていたり、それから建物は最近は耐震化ということもあって、非常に昔から比べたら丈夫でしっかりしたものが建っている。当然、減価償却費は大きくなる。そういう決まっているものをどんどん除いていくと、学校運営費をどうするんだというようなことだとか、先ほどの極論にすれば見直しという、そういう結局、事業の見直しを進める材料あるいは予算に差別化をする材料、あるいは単に情報提供だと、受けとめによってもいろいろ違ってくる。それから出す方の目的によっても若干違ってくる。そういう意味で、こういうことがひとり歩きしかねない。そういう意味で、本当に事業の見直しを促進するための材料という先ほどの説明で、私はいいのかなというのをちょっと疑問に思うんですけれども、いかがですか。

○真田主計部長 ただいまの件でございますけれども、事業の、継続するにせよ見直すにせよと先ほど申し上げたんですけれども、これは事業をすべて見直すためということは当然ございませんで、事業をよりよい形で、コストパフォーマンスを高める形で、同じ事業でも、より少ないコストで、より高いサービスが提供できれば、それは都民あるいは利用者にとってもハッピーな世界になるわけでございまして、そういった方向での見直しも当然あり得るわけでございますので、そういうコストの分析によって、そういう形の事業の見直しにつながれば、それはそれで一つの望ましい姿かなというふうに考えております。
 ちょっと先生の方のお話を聞いていますと、例えば教育ですとか福祉とかいう分野については、そういったコスト情報というのは全く出す意味がないというふうにおっしゃっているのかどうか。先生のお話を聞いていますと、そういうのはもう出すべきじゃないんじゃないかというふうにちょっと聞こえたんですけれど、私はまさにそういった福祉であれ、教育であれ、その他の事業であれ、すべの事業においてそういった情報を出すことこそが、行政が行わなければならない責任だというふうに考えておりますけれども。

○植木委員 違う、違う。論点をすりかえないでください。私は、大規模開発だとか、そういうものがきちっと出ていないのにもかかわらず教育や福祉は出ているよといっているんですよ。だれも否定までもいってないんですよ。ただ、これがひとり歩きした場合どうなのかということをいっているんです。
 それは、例えばホームページを見て一人当たりこれだけかかっているよ、ああ、これだけやってくれたのかと思う人もいるかもしれない。いや、こんなにかかっているといわれちゃった、こういうふうに思う人もいるかもしれない。それは、使いようだとか行政目的との関係が出てくるんですよ。だから、それであえていうわけなんです。
 さっきいったように、教員や建物については既に配置基準が決まっていたり、コストというのはつくる側で決まってくる。それは一人一人の生徒の必ずしも責任ではない。だけれども、これだけかかったよということですよね。だからそういう意味で、僕は重視しなきゃいけない。
 むしろですよ、例えば本当にコストをかけた方がいいと、四十人学級より三十人学級がいいということで全国ではコストを入れているんです。だから僕はコスト意識を持つことは、最初にもいったように、否定はしていないんですよ。どう見るか、あるいは、どうこれが受けとめられるかということを常に考えてやらなきゃいけないということをいっているんですよ。ところが、ホームページを見ているとそういうふうに見えないんだ、はっきりいって。これは皆さんの局じゃないから、これ以上いいませんけれども。
 いずれにしても、例えばですよ、学校の、途中で耐震補強工事をやったりすると、当然それはコストにはね返ってくる。これだけかかりましたよ、ああ、こんなによくやってくれてるのかというふうに見るのもあるし、こんなにあんたのところはかかってるんだぞと、こういうふうに見られる場合もあるんですから。そういう意味で、分母のとり方もいろいろあると思うんですよ。これは絶対ひとり歩きするものですから、私はさっきからいっているんです。
 そういう意味で、学校の現場の生徒数で割っているけれども、耐震補強というものを加味した場合、これも計算されてくるとどんどん膨れ上がっていくわけですよね。そういう点についてはどうなんでしょう。

○真田主計部長 そういったコスト情報を示して、例えば、コストが非常に高いじゃないか、どうしてなんだというようなことがご質問にあった場合に、当然それに対して、これこれこういうことでコストがかかっているんですよというふうにご説明するわけですよね。
 最終的には、そういう説明を受けて判断するのは、それがいいかどうかは都民の方でありまして、私は、都民の方は、ちゃんと説明すれば、その事業の趣旨、目的に照らして、そのコストのかけ方は正しい、あるいは正しくないというのは、ちゃんとご判断いただけるものと考えていますし、まさに都民の方に適正な判断をしていただくためにも、正確な情報というのはお示しするのが我々の責務だというふうに考えています。

○植木委員 もちろん正確な情報でなきゃ困るんですよ。当然なんです、それは。当たり前の話ですよ。
 例えばですよ、先ほど耐震補強したのが分母で一人当たりの--それから少子化対策でくくった事業は、確かに個々の中身を見ると利用者で割った方がいいというものもあるけれども、少子化対策というくくりでくくった場合に、本当にそれでいいのかという慎重な検討も必要だと思う。それは当然、都民的に必要なものということでやっているわけですから、子どもがどんどん減ってくると分母が減ってくる可能性もあるわけですよね。高齢者なんかは逆に分母が広がってくる。そういうものについての、これは一例ですから、僕が全部調べたわけじゃないんで、分母をどうするかという問題についても、いろいろ慎重といいましょうか、検討が必要だと思うんですけれども、各局ともそういう点では話し合っているのか、基準があるのか、よくわかりませんけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○真田主計部長 先ほど来申し上げましたとおり、一規模当たりのコストを出す場合には、当然その分母が縮小したり拡大することによってその影響があるのは、先生ご指摘のとおりですけれども、まさにそのこと自体を説明すれば、そういった縮小事業なのにこれだけのコストをかけるのがまさにいいのかどうか、あるいは、これだけの拡大事業だからもっとやっていくべきじゃないかみたいなことにつきましては、その正確な情報を踏まえて、都民の方がちゃんとご判断いただけるというふうに考えております。

○植木委員 適正なその判断をしてもらうためにも、その分母についてはよく検討してほしいと私は思うんです。
 知事の発言では、職員の金利感覚、コスト意識を研ぎ澄ます、言葉でいえばそのとおりだと私は思うんですけれども、では肝心の知事が海外出張なんかでいろいろ選挙のときにも大きな問題になりましたよね。そういう本当にコスト情報といったって、最初いった大規模施設の問題だとかそういうことも含めて、本来あるべき、大規模施設だとか、そういう計画段階から慎重な計画や、それから実際のコストがこれだけかかっているという、そういう分野は余り出ていないというのでは、やっぱり知事の海外出張の問題もそうですよ。そういうことで見ると、やっぱり出し方については、僕は慎重さが、特に財務局は必要だと思うんです。原局それぞれまた違う判断があるかもしれませんけれども、元締めである財務局ですから、そのことを重ねて強調しておきたいというふうに思います。
 もう一つの質問は、十八年度の決算ですから、第一次、第二次の財政再建推進プラン、これが最終年度という意味で、財政再建推進プランの総括的な意味があるというふうに思うんです。
 そこで、まず概括的に見ますと、第一次財政再建推進プランでは、施策の見直しや受益者負担などでも二千五百億円を超える削減が打ち出された。それから五億円以上の事業の例示が百三十八項目も見直しの対象になっていました。
 それから第二次財政再建推進プランでは、長期に継続している補助、あるいは補助率の高いもの、年間一千万円未満の少額補助など、七百三十項目に及ぶあらゆる都民施策の削減や廃止が打ち出されました。そういう意味で、どのように全体を見ているかわかりませんけれども、結果的に都民から見ますと、都民施策切り捨ての財政再建推進プランだと、こういうふうにいえると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○真田主計部長 私どもは平成十一年度来、第一次、第二次にわたる財政再建推進プランを実施してまいりましたけれども、その目的とするところは、単に収支を均衡することだけではなくて、もちろん収支を均衡しませんと財政運営が成り立ちませんので、当然その収支の均衡というのはやらなきゃならないことでありますけれども、それを通じまして、財政構造を改革して、中長期的にも安定的な行政サービスを提供できる持続可能な財政を実現するために行ってきたというふうに考えております。そういう意味では、決して福祉を切り捨て、あるいは大型開発を進めるために行っておるものでもございません。
 施策の見直しにつきましても、先生お話しございましたとおり、第一次、第二次でいろいろ実施させていただきましたところでございますが、それにつきましても、その時代状況の変化に伴って、必要性があるかどうか、そういったことを踏まえまして、必要の薄れた事業につきましては廃止しましたし、逆にそういったことを通じて財源を捻出しまして、新たな都民ニーズ、本当に苦しい財政状況の中でもやっていかなきゃならない都民ニーズには適切に対応して、そういうスクラップ・アンド・ビルドということで、新しい時代に対応した施策の質の向上も図ってきたというふうに考えております。
 そういう意味で、この七年間、いろいろ施策の見直しなどを進めることによりまして、財政再建は一通り区切りをさせていただきましたけれども、それにつきましては、都民福祉の切り捨てでは決してございませんし、新たな施策を実現するための財政体質の改善、財政構造の改善ということで、既に都民の理解を十分得ているというふうに考えております。

○植木委員 財政構造の改革あるいは時代の状況の変化に対応するというようなことをいわれたんですが、今の第一次、第二次プランの具体的な中身を見てみますと、いろいろありますよね。シルバーパスの全面有料化、マル福、それから介護保険が当時ちょうど始まろうとしているときに、寝たきり老人、高齢者の老人福祉手当の廃止、障害者医療費助成あるいは重度障害者手当など、経済給付的事業の廃止が行われた。
 それから国の医療費の負担の引き上げなど一連の社会保障の改悪で大変なときに、これらが打ち切られた。特に、障害者とかそういう点では、行政の支えがなくてはならないものまで打ち切ってこられましたよね。
 そのほか私立学校補助だとか、都立病院、都営住宅の新規建設問題等々、先ほどいいましたように第一次だけで百三十八項目の見直しが行われて、第二次の方でも、市町村補助が二十一項目。それから私立保育園のサービス推進補助の段階的な廃止、幼稚園保護者負担の軽減補助、それから小児科、産科の問題が、これだけ大きな問題に今なっていますけれども、そういうときに世田谷の母子保健院の廃止ですね。都庁改革アクションプランが一緒に進められて、保健所の廃止、都立病院の削減、あるいは板橋の養育院、青少年センター、それから青少年が働くときに必要な労政事務所の廃止、こういうことで、当時知事は、何がぜいたくかといえば福祉がぜいたくだといって波紋を呼びましたけれども、こうして見ますと、いろいろいわれていましたけれども、当時、第一次の福祉切り捨てについて、八百八十六億円が切り捨て額として提示されましたよね。
 第二次もちょうど決算が出たわけですが、第二次はどのくらいの削減額になるんでしょうか。

○真田主計部長 第二次財政再建推進プランにおきましては、聖域なく施策の見直しを行うという考え方で行っておりますので、個々の事業について、どれだけその見直しが行われたかという積み上げの集計は行っておりません。

○植木委員 第二次では集計していないというお話ですが、第一次のときは福祉だけでも切り捨て額は八百八十六億円と、これは正式な答弁があったわけですから事実であります。そういう意味で、この第一次、第二次、とにかく巨額な財源不足があるぞと、税収が不足するんだ、こういうことで、どんどんどんどん見直しが進められていった。問題は、その結果どういうことが起きているか、これからどうするかということですよね。こうした第一次、第二次プランで切ってきた事実があるわけですから。
 今、一連の社会保障の改悪で、最近でいえば後期高齢者の医療制度の問題で、余り評判が悪いんで、一定期間実施を延期するとかというお話も出ていたり、それから格差と貧困が大きな社会問題になっていて、政府の調査でもネットカフェ難民という言葉が公式に出てくるとか、正規職員でもなかなか住む場所を確保できない現実があったりする。そういうときに住宅の方は、なかなか倍率が高くて入れないという都営住宅の問題もありますし、それから先ほどいった労政事務所、それから最近ではもっと出産難民とか介護難民、小児夜間救急医療などの不足、医師の不足など、まさにこの構造改革路線のもとで都民にさまざまな影響が出てきている。
 いわば、こういうのを国と一緒になって社会保障の切り捨てなどをやってきたという、そういう結果になっているんじゃないかなというふうに思うんですけれども、いかが考えているでしょうか。

○真田主計部長 先ほど来、先生のご議論を承っていますと、第一次、二次のプランに基づく施策の見直しの部分だけ殊さら取り上げてご議論されているみたいですけれども、私どもは、時代状況の変化に合わせて必要の薄れた事業につきましては、このプランの期間中、見直しさせていただきまして、先生がご例示なさった事業なんかもその一部でありますけれども、一方で、そういったことによって生み出された財源を活用して、さまざまな新規施策、レベルアップ施策も講じてきております。
 そのことにつきましては、毎年度毎年度、予算でもご議論いただいておりますし、当然ご議決いただいた上でそういった形の事業組み立てになっておりますので、そういう意味からしますと、この間、施策の見直しだけが行われてきたということは一方的な見解でありまして、むしろそのスクラップとビルドがうまく組み合わさって、その時代時代に合ったふさわしい施策展開が、この財政プラン期間中にも行われてきたというふうに考えております。

○植木委員 時代のニーズに合ったというなら、やっぱり途中で財政状況が変わってきていたわけですから、途中でも、もっともっとできたはずですよ。だけれど、それはやってきたと今いうんですけれども、全体から見れば、それはそうはいえないというのが実態だと思うんですよ。
 それで、では見直しといいますけれど、プランで示した国の直轄事業の見直しはちゃんとやったのかどうか。
 それから、当時、知事も無利子貸付の問題は、国の直轄事業は--無利子貸付はどうだったかな、国の直轄事業は少なくともおかしいといっていたんですけれども、この見直しが行われたのか。
 それから、道路公団の間で無利子貸付、これは今公団ではありませんけれども、これ見直しの対象だったんですけれども、これはどのぐらい見直しがされたんでしょうか。

○真田主計部長 そもそも国直轄事業といいますのは、事業区域が複数の地域にわたるとき、事業の規模が著しく大きいときなど、地方自治体がその事業を施行することが不適当な場合に、国がみずから実施するものというものでございまして、そういうことからしますと、全国的視野のもとに、国道あるいは一級河川などの国家的施策として整備されるべきものでありますけれども、これらの事業によりまして、一方では当該地方自治体の住民も利益を受けますことから、地方がその経費の一部、通常三分の一程度でございますけれども、これを負担することになっております。そのこと自体については一定の合理性があるというふうに考えております。
 ただ、一方で、事業の実施に当たって、経費負担をする地方自治体の意見を反映する仕組みが不十分である、あるいは維持管理経費の負担まで求められている、そういった問題もございますので、都としては、制度自体は一定の合理性があるけれども、さまざまな問題は抱えているということで、これまでも国に対して改善要望をしておりましたし、今後もそういったことでやっていきたいというふうに考えております。

○植木委員 この国直轄事業負担金のところで、こういうふうにいっていますよ。国庫補助事業における事務額の額については事業規模によって上限が設定されているが、国直轄事業で地方から国への負担金の額について客観的な規定がなく整合性がないと、云々ということで、いっているぐらい、知事も当時、これは問題だといっていたわけですから、これはきょう財務局の資料の中へ、今考えたら出ていたんですね。ほとんど同じような金額で推移しています。だから本当にこの七年間の第一次、第二次の財政再建推進プランが一体どうだったのかということですよ。では、一番の大もとになった財政事情が大変だ、とにかく当時、財政が大変なんだから我慢しろというのはずっといわれていました。
 そこで、税収見込み額が大もとになっておりましたから、その点についてお聞きしますけれども、第一次財政再建推進プランの税収見込み額と実際の税収、その差がどのくらいにあったのか。これは、第二次についても同様に示していただきたい。

○真田主計部長 第一次財政再建推進プラン、これは平成十二年から十五年度まででございますので、その四年間の都税収入の決算額で申し上げますと、合計で十六兆五千五百七十四億円でございます。
 一方、同時期のプランの収入見通しが十五兆八千四百億円でございましたので、七千百七十四億円の実績増という形になってございます。
 次に、第二次財政再建推進プラン、同様に申し上げますと、これは平成十六年度から十八年度の三カ年でございますが、決算額は合計で十三兆七千七百六十一億円、同様にプランの収入見込みは十一兆三千七百億円でございまして、結果として二兆四千六十一億円の実績増という形になっております。
 したがいまして、七年間トータルで申し上げますと、三兆一千二百三十五億円の増という形でございます。

○植木委員 とにかく税収不足だから、税収不足だからといって、この七年間来たんですよ。その結果、当初からの見込みが七年間合計で、一次、二次、今お話しいただきまして、三兆一千二百三十五億円税収増になっている。これこそ巨額ですよ。当時は巨額な財政赤字、だから我慢すべきだ、こういって第一次だけでも八百八十六億円でしたか、切り捨てられたということが出ましたよ。これが、では一体何に使われるのであるか。やっぱり際限ない財政投入があったわけですよね。もちろん財政構造の改革という面もあったでしょうけれども。
 かつての臨海副都心、行くも地獄、去るも地獄というふうに知事もいっていましたし、新銀行、現在ではオリンピック問題、いろいろあると思うんですよ。こういう巨額の財政不足になるよ、しかし三兆円を超える税収増があったということに対して、一体どう考えているのか、改めてお聞きしたいというふうに思います。

○真田主計部長 ただいま申し上げましたプランの税収見積もりといいますのは、一定の条件のもとで機械的に試算したものでございまして、実際の決算数値との間でどれだけ差が生じたかという議論をすることは余り意味がないかというふうに思いますが、ちょっと考え方をご説明しますと、第一次財政再建推進プランの策定時におきましては、景気は依然として厳しい状況でありましたが、やや改善の兆しも見えてきたということで、税収の伸びを一定程度、十二年度は〇・五、十三年度は一・〇、十四年度は二・〇ということで、後半に従って多少伸びていくだろうということで見積もったところでございますが、実際、トータルでは先ほど七千億円ぐらい上回ったと申し上げましたけれども、実際年度別で見ますと、十四年度、十五年度につきましては、税収がプランを、見込みより下回ったこともございまして、伸び率の見積もりが高過ぎるんじゃないかという、当時ご批判もいただいたところでございます。
 そういった状況を踏まえまして、第二次財政再建推進プランにおきましては、当時も景気回復の兆しがかいま見えるものの、やはり先行き不透明であるということで、先ほど申し上げたような十四年度、十五年度の税収が一次プランのあれを下回っていたというようなこともございましたので、税収の伸びをゼロというふうにした上で、一定の試算をしたところでございまして、当時の状況を踏まえて考えますと、意図的に収入を低く設定したということはないというふうに考えます。
 そういうことでございますので、一次、二次プラン、それぞれ設定したときには、それぞれのその時々の状況に応じて適切に見積もったものというふうに考えておりまして、ために税収を低目に見たということはございません。

○きたしろ委員長 そろそろまとめてください。

○植木委員 その税収見込みによって具体策が出てくるわけでしょう。責任があるわけですよ。
 第二次のだけでいえば、給与関係費の削減で五百億円、給与関係等内部努力で一千億円、施策の見直しで一千二百億円等々、具体的な数字になって出てくるわけですから、各局はそれに基づいてやらざるを得ないわけですから、そういう巨額なものが出ていたに対して、単純にいうことできないというんじゃ、それは財務局としては責任を負えない立場ですよ。そうしたら途中で見直せばいいわけですから。見直しはやらなかったんです。最後まで削減の方はきちっとやったんですから。それで見直すべきさっきの国直轄事業だとか、やれていないんですから。
 そういう点で、改めてこの第一次、第二次財政再建推進プラン、この決算、年度でありますから、改めて強調したわけですが、いずれにしても、こういう都民施策を切り捨てたままで、それで大規模開発の方は温存、あるいはこれからもどんどん進めていく、都民施策の方は減らしっ放しということじゃ、これは都民の納得を得られないわけです。
 いずれにしても、こういう第二次、第一次に対して、やっぱり財務局としてきちっとした反省と総括が必要だということを重ねて強調して、終わりにしたいと思います。

○松下委員 私は、都が行う事業に関する土地の取得についてご質問します。
 先日、都議会民主党豊洲土壌汚染対策プロジェクトチームで、豊洲新市場予定地の追加調査の視察を行い、結果について、中央卸売市場から説明を受けました。この追加調査は、本年四月の都知事選で築地市場の移転先である豊洲地区予定地の土壌汚染が大きな争点となり、選挙後に豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議が設置され、この専門家会議の指摘により追加調査として地下水調査、土壌調査、表層土壌ガス調査が実施されました。調査結果は、知事も記者会見でびっくりしたとおっしゃっていましたが、私も驚きました。多くの都民も大変驚いていると思います。
 地下水調査では、これまでの東京ガス調査に基づく濃度分布図では低濃度とされていた六街区の区域の地下水から、基準値を大幅に上回る一千倍ものベンゼンが検出されました。
 また、障害物の存在等により、東京ガスの調査が不可能だった区域土壌から一千六百倍ものベンゼンも検出され、今後、より詳細な地下水、土壌の調査が必要であるとプロジェクトチームで報告を受けました。今後の土壌汚染調査や対策は、専門家会議や事業主体である中央卸売市場が取り組む課題ですので、ここでは言及しませんが、財務局の事業の中にある事業用不動産の取得に関して、何点かお伺いいたします。
 平成十八年度、財務局が取得手続を行った不動産のうちで、豊洲新市場の予定地はありましたか。あったとしたら、どの土地を取得したのでしょうか。お伺いいたします。

○塚本財産運用部長 平成十八年度は、豊洲新市場の用地として二件の取得手続を行っております。
 一件目は、豊洲土地区画整理事業施行区域内五街区に所在いたします保留地、街区の名称としてはホの五の二という土地でございます。
 もう一件は、同じく豊洲の土地区画整理事業施行区域内七街区に所在する仮換地豊六、十七の一の土地でございます。

○松下委員 昨年度、都は、豊洲新市場の予定地に関して二件の土地を取得したことがわかりました。
 それでは、その二件の土地のそれぞれの面積と、それぞれ幾らで取得しているのかお伺いいたします。

○塚本財産運用部長 平成十八年度中央卸売市場会計予算で、五街区に所在いたしますホの五の二の土地は、面積三万四千三百三十五・二九平方メートルを二百十六億三十三万九百三十九円で、七街区に所在いたします豊六、十七の一の土地は、面積二万九千四百三十七・〇一平方メートルを百五十一億三千六百五十一万五百四十二円で取得いたしました。

○松下委員 中央卸売市場会計で取得されているとのこと、市場事業は地方公営企業法の財務規定等の一部適用事業として独立採算を原則に運営しているので、一般会計ではなく公営企業会計の中で東京都中央卸売市場会計決算が行われているということは承知しております。財務局は、各局からの依頼に基づいて、それぞれの局が事業に用いる土地の取得手続を行うのだと思うのですが、中央卸売市場からこれらの土地の取得の依頼を受けたのはいつだったのでしょうか、お伺いいたします。

○塚本財産運用部長 五街区に所在しますホの五の二の土地及び七街区に所在いたします豊六、十七の一の土地は、ともに平成十八年八月二十九日付で中央卸売市場から取得依頼の文書を受け取っております。

○松下委員 事業に用いる土地を取得してもらいたい旨、依頼を受けたら、それを今度は幾らで取得するのか、すなわち、その土地の価格を決定するために評価を行わなくてはなりません。これらの土地の評価はいつ行ったのでしょうか、お伺いいたします。

○塚本財産運用部長 ホの五の二の土地につきましては平成十八年九月四日、豊六、十七の一につきましては平成十八年十一月十日に評価額を決定いたしました。

○松下委員 中央卸売市場からの取得依頼を受けて、直ちに評価を行ったようですが、ここで気になるのが、冒頭で述べました土壌汚染に関してであります。
 築地市場は東京の台所であるにとどまりません。首都圏の台所であり、日本を代表する卸売市場であります。新市場の食の安全については、大きな関心が寄せられています。昨年度取得をしたこの二件の土地は、今回、結果が発表されました追加調査の前に取得されており、また、先ほど五街区、七街区とお答えいただきましたので、今回の追加調査で基準一千倍のベンゼンが検出された土地ではないようです。しかし、昨年度、取得のための評価を行った時点でも、これらの土地が東京ガスの工場跡地であり、土壌汚染があったことはわかっていたはずです。
 そこで、お伺いいたします。
 今回、中央卸売市場から取得の依頼を受けるに当たり、土壌汚染の取り扱いについてどのような評価条件をつけられたのでしょうか。その内容と、評価の考え方をお伺いいたします。

○塚本財産運用部長 評価の条件といたしましては、土壌汚染については、土壌汚染物質が発見された場合には、従前の土地所有者が処理対策を実施することになっているとされていたため、土壌汚染は存在しない話として評価をいたしました。
 具体的には、ホの五の二と隣接地にまたがって評価事例地を設定し、ホの五の二、豊六、十七の一、ともにこの評価事例地との比較により価格を算定しております。

○松下委員 今のお答えから、今回は土壌汚染の処理費用が評価の考慮外としたことがわかりました。つまり、土壌汚染対策については、売買契約と切り離して別途行うことにしたわけで、仮に今後、当該地で基準地を超える土壌汚染が明らかになった場合に、汚染の除去や改善に要する費用は、従前の土地所有者が負担するんだということだと思いますが、それについてはわかりました。
 この評価の考え方、評価方法は、隣接する評価事例地との比較により評価を行ったとのこと、いわゆる比較方式をとられたのだと思いますが、私も土壌汚染地の評価方法に関して調べてみました。
 国税庁は、土壌汚染対策法が平成十五年二月に施行され、今後、土壌汚染地であることが判明し、相続税等の課税上、問題となる事例が生ずることが考えられることから、土壌汚染地の評価方法の基本的な考え方を取りまとめています。
 その中で、評価方法は平成十四年七月三日付の不動産鑑定評価基準の改正により、不動産鑑定士が鑑定評価を行う場合は、土壌汚染の状況を考慮すべきこととされてはいますが、現在のところ標準となる鑑定評価の方法は公表されておりません。そのため、米国における土壌汚染地の鑑定評価を参考に三つの評価方式があり、土壌汚染地の基本的な評価方法としては、原価方式というものを取り上げております。この原価方式では、汚染地が、汚染がないものとした場合の評価額から浄化改善費用に相当する金額、使用収益制限による減価に相当する金額、心理的要因による減価に相当する金額を差し引いて評価額を出しています。
 この心理的要因による減価に相当する金額とは、スティグマとか心理的嫌悪感等ともいわれ、土壌汚染の存在に起因する心理的な嫌悪感から減価が生じるとの考え方のようです。
 比較方式については、多数の売買実例が収集できるときには評価上の基本的な方法であると考えられるが、土壌汚染地の売買実例の収集は困難であり、現段階において標準的な評価方法とすることは難しいと考えられています。一千倍のベンゼンがこの当該地では出てこなかったけれども、このスティグマといった心理的嫌悪感という、この減価が生じる可能性も、この土地に関してあるのではないかとも思えました。
 この汚染地の評価手法がいまだ確立されていないという現在において、土地の取得には大きなリスクが伴い、当該財産の評価に大きく影響すること、金額のみならず土壌汚染は都民生活に与える影響が極めて大きいものであるのではないかと思います。
 そこで、最後にお伺いいたします。
 公有財産を所管する財務局として、各局から依頼を受けるに当たっては、土壌汚染対策の徹底を指導すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○塚本財産運用部長 土地の取得あるいは評価に当たりまして、土壌汚染の取り扱いは大変重要な問題だと認識しております。
 これまでも、評価に当たりましては、依頼局に対し、対象地の来歴などを踏まえ、土壌汚染の有無や汚染があった場合の取り扱いを明確にするよう指導してまいりました。今後とも、土壌汚染については必要な調査と対応方法の明確化を行い、適切な評価に努めてまいります。

○松下委員 私は、そもそも土壌汚染地が市場の予定地であるということ自体に疑問を感じておりますが、現在の土壌汚染対策法には、法施行前に操業を停止した工場跡地については法の適用から外す附則第三条というものがあり、民主党は、今、都議会民主党豊洲土壌汚染対策プロジェクトチームの申し入れも受けて、この附則三条に関して法改正を目指しているところであります。
 都民、国民の生命や財産を守るためには、学校や市場など公の事業が適用除外であってはならないと考えているためです。土壌汚染地の鑑定評価については、国交省の研究会においても現在、鋭意検討されているようですが、先ほども述べましたが、なかなか評価手法の確立、正値化というものは難しいものがあるようです。こうした評価方法が定まっていない土壌汚染地の取得に当たっては大きなリスクがあり、土壌汚染地の取引には慎重な上にも慎重に取り扱っていただきたいと思います。
 都民の生命や財産を守るため、事業所管局による適切な対策とあわせて、公有財産を所管する財務局におかれても、土壌汚染地の評価方法について研究検討を重ねていただきたいと強く要望をしまして、私の質問を終わります。

○きたしろ委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○きたしろ委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後三時三十七分散会

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